2013年12月29日

コートを脱いで昼食を 26

 シーナさまが指さしたのは、Tシャツの穴から飛び出している私の両乳首の周辺でした。
 正確に言うと、左乳首のすぐ右斜め上と、右乳首のすぐ左斜め下。
 そこにしてもらうとしたら・・・
 つまり、このTシャツさえも脱ぎ去って、この場で文字通りの一糸まとわぬ姿、全裸になっておしまいなさい、というシーナさまのご命令なのでしょうか?
 こんな営業中のおしゃれなブティックの窓際で・・・
 
 いざ脱げと言われると、こんな小さな破廉恥Tシャツと言えども、有ると無いとでは大違いなような気持ちになってきました。
 見知らぬ人がいつやって来るかも分からない場所で完全に全裸なんて、あまりにも非常識、あまりにもアブノーマル。
 いやっ、恥ずかし過ぎます・・・お許しくださいぃ・・・
 からだ中がグングン火照ってきて、すがるようにシーナさまを見上げました。

「あれ?意外ですね」
 桜子さまの驚いたお声。
「ワタシ、てっきり下半身を指定してくるだろう、ってちょっぴりワクワクしていたのですけれど」
 桜子さまは、シーナさまを見てから私に視線を移し、目が合うとイタズラっぽくニッと笑いました。
「それはそうなのだけれどね・・・」
 シーナさまが見本帳のアルバムを開いたまま、デスクの上に置きました。

「まず、お尻だと、直子自身が、そのアートを見ることが出来ないから、つまらないと思ったのよ。普通に生活しているときは忘れちゃいそうじゃない?」
「わたしはね、せっかく桜子さんに描いてもらうのなら、ある種、ヘンタイの烙印、みたいなデザインにしたいの。直子がそれを見るたびに自分の恥ずかしい性癖を思い知る、みたいな」
「だから、直子が着替えやらお風呂で裸になったときとかに、否応無く目に飛び込んできちゃう場所がいいな、って」

 シーナさまは、そうおっしゃりながら、私が座る籐椅子の傍らにいらっしゃいました。
「ここの場合は、また全然違う理由だけどね」
 両膝頭をピッタリと合わせ、両腿をまっすぐにピタッと閉じて座っている私の無毛な下腹部周辺を指さしました。

「直子はね、今日、私に出会ってから今までの出来事で、もう爆発寸前のド淫乱状態になっているはずなのよ」
「そんな状態の直子のこんなところを、桜子さんの繊細な指や筆でなぞったりしたら直子がどうなっちゃうことやら」
 おっしゃりながら、シーナさまが右手の人差し指で、私の両腿の付け根あたりを軽くツツツーッと撫ぜました。
「あふうんっ!」
 背中にゾクゾクッと電流が走り、私の背中が籐椅子の中でビクンと大きく跳ねました。
「ほら!ね?」
 嬉しそうに桜子さまを振り返るシーナさま。

「10数分もの間、ここへ桜子さんからコチョコチョ愛撫を受けて、直子がじっとしていられるワケがないわ」
「結果、この子がなりふりかまわず身悶えし始めちゃったら、お店や他のお客様にたくさん、ご迷惑をおかけしちゃいそうだもの」
「それに・・・」
 今度は右の乳首を、デコピンの要領で軽く弾かれました。
「あうっ!」
 再び背筋に電流が走り、私の奥が盛大に潤んだのがわかりました。

「直子の中でがんばっていたタンポンも、決壊寸前、そろそろ役立たずになっているはずなのよ」
「ただでさえ濡れやすい淫乱女が、自分の性癖的に夢のようなシチュエーションにいるのですもの、少しでも両腿開いたら、トロトロ垂れてくるはずよ」
「ここに描いてもらうとしたら、桜子さん、ソコにお顔を近づけなきゃいけないでしょう?」
「きっと至近距離だと、すんごくいやらしい匂いがするはずよ。そんなもの嗅がせるの、桜子さんに申し訳ないわ」
「だから、まあ、おっぱいが無難かな、と思ったのよ」

「なるほどです。お気遣い、ありがとうございます。でもまあ、ワタシはお客様のご希望通り、どこであれ、無心で描くだけですけどね」
「まあ、プロフェッショナルな発言ね。ステキだわ。もしも、下半身、て指定したら、直子を立たせてお描きになる?それとも寝そべらせる?」
「そうですね・・・お尻なら、立ってもらってお尻向けてもらえば、ワタシは座ったままで出来そうですけど・・・」
「前の場合はやっぱり、寝そべってもらったほうが良さそうですね。脚も少し開いてもらったほうが描きやすそうだし」
「それだと、このスペースだと窮屈そうね?」
「ご希望ならレジ裏のお部屋、使っていただいても結構ですよ?あ、でもそれだと、他のお客様に見てもらえないか?」
 純さまがイジワルくお口をはさんできました。

 私は、お3人の私に対する言葉責めのような会話にいたたまれない気持ちになりながらも、一方では、ずっとこの会話がつづけばいいのに、って祈っていました。
 だって、この会話が終わって、さあスキンアート開始、ってなれば、私はおそらくこの場で、全裸にさせられちゃうのですから。

「桜子さんは、スキンアートをおやりになるなら、いわゆるボディペインティングもしたことあるの?」
「ああ、全身に塗りたくるやつですね。興味があって少し研究したことはありますが、まだ実際にしたことはありませんね。今までニーズも無かったし」
「海外のネットによく、服そっくりに描いたり、水着やレオタっぽくして街中とか歩いている写真があるじゃない?わたしもリオで本物見たことあるけれど。あれも一度、直子にやらせてみたいのよね」
「ワタシが研究した限りでは、染料にいろいろあって、塗ってからペロンて剥がせるラバーと言うかラテックス素材の染料が面白そうですよ」
「ああ。それ見たことある。薄皮みたいに剥がれちゃうやつでしょ。剥がすと肌が覗いて、なんだかフェティッシュで良かったわ」
「水性の染料で描いて、きちんと描いたビキニとかが汗で滲んで崩れていく様子も、かなりエロティックですけれどね」
「どっちにしても、されたほうは、肌に何か描いてあるとは言え、全裸は全裸だからね。それで人前に出るのは、直子みたいな女にとっては、たまらない快感なんだろうなー」

「ワタシ、一度やってみたかったんです、誰かにボディペインティング。もしもご希望であれば、ぜひご用命くださいませ」
 桜子さまがシーナさまに丁寧にお辞儀をしてから、言いにくそうにつづけました。
「でも、からだ全体を染めることになりますから、使う染料の量もハンパじゃなくて、お値段もそれなりになっちゃいそうです」
「まあ、だけどワタシの練習みたいないなものですから、やらせていただけるなら、お値段も材料費プラスちょこっとで抑えます。約束します」
 桜子さまったら、ヤル気マンマン。
 私、近いうちにボディペインティング、されちゃいそうです。

「12月にね、直子がまたエステへ行くのよ。ヘアの処理でね。その後にまたここに来て、直子のからだをえっちに飾ってもらおうかな、って考えているの」
「暮れ近くに身内のパーティがあるから、そこで直子を披露したいのよ。いかにも直子らしい姿で」
「うわー。なんだかすごくいやらしそうなパーティですね。時間が合ったらあたしもぜひ、誘ってください!」
 純さまが高く手を上げて、シーナさまにアピールしました。
「いいけれど、そのパーティ、女性しか来ないわよ?」
「大丈夫です。あたし、そっちもイけますから!ナオコも虐めたいし」
 純さまったら、すっごく嬉しそう。
「桜子さんもいらっしゃる?」
「うーん、後学のために覗いてみようかなあ・・・」

 そこで会話が一段落しました。
「さてと・・・」
 シーナさまのお声に、私はドキン!
 いよいよです。

「それで、今日の直子のスキンアートだけれど、この山百合のシールをこっちの胸に。それから・・・」
 シーナさまが桜子さまにご説明を始めたとき、傍らの純さまが大きくお声をあげました。
「いっけなーい!休憩中のプレート、出しッぱだったー!」
「もう2時半近くよね?あーあ、お客様、けっこう逃がしちゃったかなー?」
 あわててドアのほうへ行こうとして、純さまの足がピタッと止まりました。

「えっと、これからナオコはそこで、おっぱい出すのですよね?」
 シーナさまに向けて尋ねます。
「そうよ。出さなきゃ桜子さんが施術出来ないもの」
「店内でお客様がおっぱい出しちゃってても、それはお客様の意志で、そこにサービスを受けたいって言うのだから仕方ないじゃない?そんな理由でなんとかごまかせますよね?何かあったら」
「そうね。なんとかなるんじゃない?スキンアートって、そういうサービスなのだから」
「そうですよね。あ、でも、その位置だと、お店に入って来て左向いたら、すぐに見えちゃうわね・・・」
 純さまが思案顔です。

「入ってきた人が気味悪がって、回れ右しちゃったら問題だわ」
「一応、入ってから奥へ進まないと見えないようにしておこう・・・どうすればいっかなー」
 純さまが独り言をブツブツおっしゃってから、壁際にあった大きめのハンガーラックをすべらせて、私の位置から入口ドアが見えなくなる位置に、目隠しとして置きました。
 それからもハンガースタンドやマネキンの位置をあちこちいじり、その後、タッタッタと入口ドアへ駆け寄りました。
 目隠しに使ったハンガーラックには、カラフル原色系で光沢のある生地がピカピカ光る、レースやリボンが派手めなドレスみたいなお洋服がたくさん吊るされていました。
 このドレスたちがおそらく、ここに来たときにシーナさまと純さまがお話されていた、夜のお勤めのかたたち用のお手頃セクシードレス、なのでしょう。

「おっけーみたいでーす。これなら店内をぐるっと回らないと、そこにはたどり着けないわ」
「こうしておけばほぼ安心。だからもうそこでナオコは、おっぱいだろうがパイパンだろうが、どんどん出しちゃっていいから」
「じゃあ、お店開けるわね。まあ、この時間帯に来るのは近くの大学の女の子とかだし、カワイイものよ。ナオコのお知り合いとかだったら面白いけれどね」
 純さまの大きなお声にかぶって、ドアが開くカランカランという音が店内に響きました。
 店内BGMの軽快なヒップホップ音楽のボリュームも少し上がりました。

 ああん、ついにお店に誰でも入って来れるようになっちゃった・・・
 途端に、ギュッと閉じている内股がヌルんできました。
 シーナさまがおっしゃっていた通り、とうとうタンポンがお役目を果たせなくなったようでした。

「それで、山百合を左胸、こっちの赤い薔薇を右胸ね」
 純さまが落ち着いたのを見計らって、シーナさまが桜子さまへのご説明を再開しました。
「メインはシールでいいのですね?」
「うん。それで、それぞれの周りにこう書いて欲しいの」
 シーナさまがデスクの上のメモ用紙に、何やらサラサラと横文字をお書きになり、桜子さまに渡しました。
「えと、マゾ・・・。あはは。なるほどです。こっちはエクス・・・、ああ、そういうことですね。こっちはちょっとスペルが長いな」
「字体っていうかレタリング?と色使いは、桜子さんにお任せするわ。なるべくえっちぽく、直子ぽくしてね」
「了解しました」
 うふふ、って愉快そうに含み笑うおふたり。

「ほら、何ボーッとしているの直子!さっさと胸を出しなさい」
 シーナさまが私の右肩を軽くはたきました。
 ついにそのときが来てしまいました。
 昼間のお店でスッポンポン。
 だけど、今やもはや、それを待ち望んでいる自分がいました。
 私の全身を、淫乱な露出願望マゾの血が熱く滾ってムラムラ駆け巡っていました。

 座ったまま半袖から腕を抜こうとからだをモゾモゾさせていると、シーナさまのお声。
「何しているの?直子。別に脱がなくていいわよ?それともなあに?脱いで素っ裸になりたいの?こんなところで?」
「え?あ、そ、そうなのですか?」
 脱ぐ気マンマンだった私は拍子抜け。
 うろたえつつシーナさまを見上げました。

「シャツを裾から上にまくって、おっぱいを出せばいいだけじゃない?それでそのまま、自分でシャツ掴んでいなさい」
「あ、は、はい・・・」
 ご指示通り、あらためてTシャツの裾を両手で掴み、上にまくりあげていきました。
 Tシャツの布に押し付けられていた二つの乳房が抑圧から逃れ、生き返ったようにプルンと勢い良く跳ねました。
 汗ばんだおっぱいに外気が直接触れてひんやり。
 喉元までまくりあげたシャツを両手で持ったまま、シーナさまを見ました。

「いい格好よ、直子。ほら、もっとおっぱい前に突き出して。桜子さんがやりやすいように、もっと気を遣いなさい」
 桜子さまは、膝と膝が触れそうなくらい至近距離の真正面にお座りになっています。
 少し身を屈めた桜子さまのお顔の数センチ先に、私のおっぱい。
「この格好だとなんだか、モリタさんが私に自慢のおっぱいを見せつけているみたいですね」
「そうよね。露出狂の面目躍如って感じ。心の中じゃ絶対、見て見てもっと見て、って叫んでいるわよ」

 そう言われると、この格好が全裸よりも数段恥ずかしく思えてきました。
 確かにこのポーズは、自らシャツをめくりあげて、これ見よがしに見せつけている感がハンパありません。
 まさしく見せたがりの露出狂そのもの。
 中途半端脱ぎかけフェチな私の性癖にもジャストフィットなほぼ全裸で、被虐感がグングン昂ぶりました。

「おっぱい全体がうっすら汗ばんで上気しているわね?これって視られて興奮しているからなの?モリタさん?」
 桜子さまがお声のトーンを下げて聞いてきました。
「あ、それは・・・」
「桜子さんも直子のご主人さまなのだから、モリタさんなんてご丁寧に呼ばなくていいわよ。直子はこのお店全員のドレイなんだから」
 シーナさまが桜子さまにアドバイス。

「それならワタシは、ナオって呼ぶことにしますね。ねえナオ?ワタシに視られて感じているの?」
「あら、桜子さん、その冷たい言い方、いい感じね。素質あるわよ。ほら直子、お答えなさい」
「あ、それは、桜子さまにおっぱいを視られて、とても恥ずかしく感じています・・・」
「ふーん。嘘つきね、ヘンタイナオは」
 桜子さまがさっきのシーナさまみたく、デコピンで左乳首を軽く弾きました。
「ぅうんぐっ!」
 その予期せぬ桜子さまからの責めに、私のアソコがヒクっとヒートアップ、あからさまに蜜が内腿に洩れました。
「さっきからここ、ずっと尖りッぱじゃない?誰に視られても感じちゃうんでしょ。ふんっ、いやらしいオンナ!」
 桜子さまったら、お見事なエスっぷりです。

 カランカラン・・・いらっしゃいませー。
 ドキン!
 誰かお客様がお店に入ってきたようです。
 純さまが丁寧に接客されるお声が聞こえてきます。
 シーナさまと桜子さまは、おふたりでお顔を見合わせてニヤリと笑い合いました。

「それでは、この山百合のシールはこのへんに配置すればよろしいですか?」
「そうね、もうちょっとチクビに近いほうがいいかな?このへんで」
 シーナ様と桜子さまが私の剥き出しの左おっぱいを指さしつつ、お芝居っぽい調子で打ち合わせを再開しました。
 そんな大きなお声で、チクビ、だなんて、いらっしゃっているお客様に聞こえてしまう・・・
 私は真っ赤になってうつむいています。

「で、この紅薔薇のシールはここですね?」
「うーん、それはもう少しチクビから離したほうがいいかな。オッパイのここらへんで」
「わかりました。それでこの文字をチクビを囲むようにこう入れる、と」
「そう。エキシヒビショニスト、ナオコって」
 ああん、もう、お許しください、おやめくださいぃ・・・

 ありがとうございましたー・・・カランカラン。
「残念。こっちまで来なかったわね」
「けっこう大きな声、出したつもりだったんですけどねー」
「次に誰か来たら、もう少しロコツな言葉も使ってみましょう」
 またおふたりでニヤニヤ笑い。

「それじゃあそろそろ始めるわね。ナオ、おっぱいさわられてもモジモジ動かないでよね?」
「まくっているシャツから手を離しちゃだめよ。自分でおっぱいを見せびらかしている感じをキープすること」
 シーナさまがケータイをかざしてパシャッと写真を撮った後、私の背中側のショーウインドウのほうへゆっくり歩いて行かれました。


コートを脱いで昼食を 27


2013年12月23日

コートを脱いで昼食を 25

「あっ、おはよー。って、あれ?今日、予約入っていたっけ?あたしすっかり忘れてた。ぜんぜん準備してないや!」
 少し慌てたご様子の純さま。
「もう聞いてよっ、それがさー」
 その女性は、レジカウンター内に入るなり、うんざりしたご様子で純さまにしゃべり始めました。

「2時半からの約束でネイルの予約が入っていたんだけどさ、家を出てここに着く寸前に、急用が出来た、ってキャンセルの電話よ?信じられない。絵に描いたようなドタキャンていうやつね」
「今日のその次の予約は夕方の6時からだから、どうしようかって迷ったのだけれど、もうお店も目の前だったし、暇つぶしに行くところも無いから来ちゃったってわけ」
「6時までサービスで、お店番でもお手伝いするわ」
「まったく、あっちの人たちって約束とか、本当にルーズよね!だけど彼女、いいお得意さんで遅かれ早かれリピート確実だからキャンセル料とかも言えないし」
 そこまで一気にまくしたててから、ふっと私のほうを向きました。

 私はランチタイムのときと同じように、カウンターに対面するベンチに座っていました。
 その女性が現われたとき、あまりに突然だったので、しばしキョトンとしてしまいましたが、ハッと我に返ると同時に反射的に、両手で胸をかばうようにして二つの乳首を隠していました。
 幸いその女性が立っていらっしゃる位置からだと、私の下半身はテーブルで隠れているはずです。
 そのままの姿勢でその女性と見つめ合いました。
 顔がどんどん火照ってきて、先にうつむいてしまいました。

「あ、お客様がいらしてたのね。ごめんなさい。お騒がせしてしまいました」
 その女性が今度はシーナさまのほうを向き、ペコリとお辞儀をしました。
「大丈夫よ。こちらのかたたちは、言わば身内のようなものだから。紹介するわ。こちらが、あたしがいつも言っている、凄腕バイヤーのシーナさん」
「ああ、このかたがそうなんだ。紹介してくださるものが悉くどんどん売れちゃう、超目利きのバイヤーさんて!純がいつもお世話になってまーす」
 その女性がシーナさまに、今度はずいぶん丁寧にお辞儀しました。
 
 つづいて純さまがシーナさまのほうへ向きました。
「こっちは、あたしの学生時代からの親友で、小野沢桜子。ここでネイルアートのコーナーを受け持ってもらっているんです」
「へー。純ちゃん、ネイルアートも始めたんだ?いいところに目をつけたわね」
「常連のお水の子何人かから要望があったんです。ちょうど桜子がやっていたから、すんなりラッキーでした」
 シーナさまが桜子さまから名刺を受け取り、シーナさまもお返ししています。

「それでこちらが・・・」
 純さまが右手のひらを上へ向け、バスガイドさんみたく私を指しました。
「シーナさんの・・・連れのモリタナオコ・・・さん」
「連れって言うか、ペットみたいなものね」
 シーナさまが訂正して、純さまが笑いを押し殺すみたいにクックッと喉を震わせ、桜子さまの表情には?が浮かんでいます。
 私はおずおずと顔を上げ、桜子さまと視線を合わせてから深々とお辞儀をしました。

 桜子さまは、全体に細身でモノトーンのお洋服が良く似合う美人さんでした。
 細面に毛先の跳ねたウルフぽいショートカット、黒目がちの大きな瞳がクルクル動いて、いかにも好奇心旺盛なアーティストっぽい雰囲気。
 カッコイイ。
 私は、下げた頭をもう一度ゆっくりと上げ、桜子さまのお顔に見蕩れていました。

「ちょっと直子?そんなご挨拶の仕方は無いでしょう?初対面なんだから、きちんとしなさいっ!」
「あ、はい・・・」
「はい、じゃないわよ。早くちゃんと立って。直子がどんな女なのか、桜子さんによーくお見せしなさい」
「それにその両手!ドレイの両手はそこじゃないでしょう?」
 シーナさまから矢継ぎ早に、厳しいお言葉を浴びせかけられました。

「はい・・・」
 シーナさまのご命令は絶対です。
 私がこの格好でシーナさまとこのお店にいる限り、お店に入ってきた人すべてに、私の性癖をご披露することになるでしょう。
 それに、こんなにカッコイイ桜子さまになら、むしろ視てもらいたい、っていう気持ちが湧いていたのも事実でした。
 今日何度目かの甘酸っぱい被虐感を感じながら、両腕でまだ胸をかばったまま、ゆっくりと腰を浮かせていきました。

 丈の短いTシャツは、おへそさえも隠せていません。
 立ち上がりつつある私の膝が伸びるごとに、桜子さまの大きな瞳がさらに大きく開かれました。
 桜子さまの立たれている位置からだと、テーブルの向こう側でTシャツの白い布地が途切れ、その視界に私の肌色が徐々にどんどん、現われているはずです。
 完全に立ち上がってから、ゆっくりと両腕を頭の後ろに回しました。
 ピンッと天を衝く二つの大きな乳首が恥ずかし過ぎます。

「なんて言うか・・・スゴイ格好ですね・・・これって・・・罰ゲームか何かですか?」
 しばし呆然とされていた桜子さまが、訝しげにシーナさまに問いかけました。
「違うの。この子は、この子の意志で、こんな場所でこんな格好をしているの」
「まあ、話せば長くなっちゃうのだけれど、簡単に言えば、この子はこういう子なのよ」
「こういう子、って・・・つまり、よく言う露出狂、みたいなものですか?」
 私の剥き出しの下半身をじっと見つめたまま、桜子さまが、信じられない、っていう面持ちで聞いています。
「今日はね、その格好に、このコートを一枚だけ羽織って、このお店にいらしたのよ、ナオコは。あたしたちにその中身を見てもらいたくて、ね?」
 純さまが、レジ裏の壁に掛けられた私のコートを指さし、私に向けてニヤニヤ笑い。
「は、はい。その通りです・・・」
 アソコがムズムズして身悶えそうになるのをガマンしつつ、なんとかお答えしました。

「へー。いるところにはいるんですね、本当にそんな人が。そういう格好をしていると、感じちゃうんだ?そのつまり、性的に?」
 最初の衝撃が去って、桜子さまは、がぜん興味津々になられたようでした。
 渦巻く好奇心を隠せないお顔で、身を乗り出して私に尋ねてきました。
「あ、はい・・・」
 マゾの服従ポーズで、小さく答えます。

「へー。でもさ、それなら、そういうのってむしろ、男の前でやったほうが気持ちいいんじゃない?同性の前じゃ、あんまり意味無いような気がするけれど」
「それがこの直子はね、いろいろあって男性はまるでダメなの。女性とでしか発情しないのよ」
 シーナさまが私の代わりに答えてくださいました。
「ああ、そっちのほうの人でしたか。なるほどなるほどー」
 桜子さま、しきりに感心されています。

「でもなー。ワタシには生憎そっちのケはないし、見ても、なんだかみっともないなー、変態なんだなー、なんて思うくらいで」
 おっしゃってから、しまった、というお顔になる桜子さま。
 あわてたご様子でフォローしようと、お言葉をつづけました。
「あ、ごめんなさい!モリタさんのご趣味をとやかく言うつもりはないのよ。むしろモリタさんの裸は綺麗だと思うわ。肌も綺麗だしプロポーションもいいし・・・」
 桜子さまの焦ったお顔も、なんだか色っぽくてお綺麗でした。

「あはは。いいのよ。ぜんぜんお気になさらないで」
 今度はシーナさまが笑いながら、桜子さまをフォロー。
「この直子はね、そういう同性からの蔑みの言葉も大好物なの。どんどん思ったまま言っちゃっていいわよ。辱められるほどいっそう感じちゃうヘンタイ女なんだから」
「それって、つまり、エスとエムで言うところのエム。虐められて悦ぶっていう、いわゆるマゾ、っていうことですか?」
「そう。直子は女性に虐められて悦ぶドヘンタイ淫乱マゾ女なのよ」
「そっかー。露出狂でレズでマゾなんだ。三拍子揃っちゃった。ワタシ今、スゴイ人とお会いしてるんですね」
 幾分の侮蔑を混ぜつつの冗談めいた桜子さまのお言葉に、私のマゾ性は大騒ぎ、アソコの奥がヒクヒク蠢きました。

「まあ直子についての詳しいことは後でゆっくり純ちゃんに聞いてもらうとして、桜子さんがおヒマなら、せっかくだから直子にネイルアートしていただこうかしら?」
「あ、それはぜんぜんかまいませんよ。ってそっか。その格好でお店の中をウロウロするのが、今日のモリタさんのヘンタイプレイなんですね?それでシーナさんはモリタさんのご主人さま、と」
「ピンポーン。まあそういうことね。さっき純ちゃんも、ご主人さま2号になったけれど」
「桜子さんは、ご主人さま3号ね。どんどん直子を虐めちゃっていいわよ」
 この先、誰が現われたとしても、このお店の中で一番身分が下なのは、私です。

「そう言えばあっちの奥に机が置いてあるコーナーがもうひとつあったけれど、あそこで施術されるの?ショーウインドウの脇の」
「施術っていうほどのものでもないですけれどね。基本、対面で事足りますから小さなスペース借りて、そこでやってます」
「窓際にしたのは純のアイデアで、何かやっているな、って外から見えていると、興味持ったフリーのお客さんも呼び込めるかもしれない、って」

 窓際、というお言葉に、私の心臓がドキンと跳ねました。
 ネイルアートって、けっこう時間がかかるはず。
 そのあいだずっと、この格好をショーウインドウ越しにお外に向けて晒さなくちゃいけなくなっちゃうの?
 そんなことして大丈夫なのかしら・・・

「まあ、窓際って言っても、外向きに座るのは桜子で、お客様は窓に背中を向ける配置だから」
 純さまの補足説明に少しホッとした私。
「お客様用の椅子には背もたれもあるし、外から見えるのは後頭部、肩から上くらいでしょう。もちろんお店の中に入ったら、横から丸見えだけれど」
「あたしも、いくらなんでも乳首と下半身丸出しの女を、外から見えちゃう場所にずっと放置させておくほどの勇気はないですよ。通報されたら確実に営業停止になっちゃうし」
 純さまが笑いながら立ち上がりました。

「ネイルをしていってくださるのなら、そちらへご案内しますね」
 純さまを先頭に4人でゾロゾロとお店内を移動しました。
 私は、敷いていたバスタオルを当てて前の下を隠し、もう片方の腕で乳首を隠しながら小さく身を屈め、なるべくぶら下がっているお洋服たちの陰に隠れるようにして、一番最後をビクビクついていきました。

 ちょうどレジ側とは正反対の隅、お洋服や雑貨の棚が途切れた窓際の一画に、お食事したテーブルより一回り小さいデスクが置かれていました。
 その部分のショーウインドウは、高さが2メートル以上はありそうな大きなガラス窓の下半分くらい、内部からだと私のおへそのあたりの高さまでは、木製の横長な棚でガラス部分が目隠しされていて、その蜂の巣状の区割りの中や棚の上に、シューズやぬいぐるみ、帽子など、こまごまとした雑貨が飾られていました。
 この感じなら、お外から覗かれても多分、ショーウインドウにピッタリ近づかない限り、中にいる人の上半身くらいしか見えなそうです。
 
 ただし、それより上部分は全面透明ガラス。
 1メートル数十センチ四方くらいの曇りひとつ無いガラス窓の向こうに、お外の通りの様子がクッキリと見えていました。
 お店の前を通り過ぎる人のお顔まで、ハッキリと見えます。
 それに気づいて、私はあわてて窓に背中を向けました。
 背を向ける直前に、ガラスに映った自分の顔を見て、そうだった、今はおかっぱのウイッグ着けていたんだ、って思い出しました。
 確かに妙に似合っていて、我が事ながら普段よりずいぶんエロっぽい感じがしました。

 ショーウインドウから1メートルくらい離れたところに、洒落た籐製の椅子が窓を背にして置かれていました。
 施術を受ける人がそこに座るのでしょう。
 確かに背もたれも大きく、籐製なのでたくさん隙間はありますが、肩先まですっぽり隠れそうです。
 その脇にデスクがあって、籐椅子の対面にもう一つ、背もたれのない椅子が置いてありました。
 純さまが、そのデスク近辺に飾ってあったお洋服や雑貨をせっせとあちこちに移動されています。
 きっと、桜子さまが快適に施術出来るだけのスペースを作られているのでしょう。

「あら?そこに書いてある、スキンアート、って?」
 デスク横の壁に貼られた手書きポップを指さして、シーナさまが誰ともなしに尋ねました。
「ああ、それは、簡単に言うと彫らないタトゥっていうか、お好きな絵柄やデザインをお肌に、タトゥみたいに描いて差し上げるサービスです」
 桜子さまが答えました。
「へー。そういうのもやるんだ?それ、面白そうね」
「はい。ネイルをマスターして、なんとなく物足りなかったので、同じスクールで開講していたそっちのコースにもひきつづき通ってモノにしました」
「あと、お望みであればケータイのデコレーションだって、やりますよ」
「桜子は昔から絵が上手かったんですよ。その上、手先は器用だし、デザインセンスも良くて、さらに努力家なんです。あたしみたいなぶきっちょにとっては、その才能が羨ましい限りよ」
 純さまが我が事のように嬉しそうにおっしゃいました。

「そのスキンアートっていうのは、からだのどこにでも描いてくださるの?」
「はい。お客様のご要望であればどこにでも。一般的なのは、肩や二の腕、太股とかかな?」
 そこまでおっしゃって、桜子さまがチラッと私を見ました。
「うふふ。ワタシ、シーナさんの考えていらっしゃること、わかっちゃいました」
 桜子さまがシーナさまを見て、それからまた私をじっと見て、ニヤッと笑いました。

「今までに描いた一番キワドイ場所は、内腿でしたね。右脚の付け根近くだったな」
 桜子さまがお道具をいくつかデスクに並べながらつづけます。
「アパレル業界の大手がいくつか集まったイベントで、とあるコンベンションセンターにブース出店したことがあったんです」
「展示即売会みたいな感じの大きなイベントで、若い女性客がたくさん集まりました」
「そのときは、ネイルだと他の出店者とかぶっちゃうので、スキンアート一本に絞ったんです」
「主催者側からの助成金も出るイベントだったので、施術料金を少し安めに設定して。そうしたらけっこうお客さん押し寄せちゃって」

「それで、暑い盛りのイベントだったから来場者はみんな薄着で、それも若い女性ばかりでしょ?お買物の熱気で興奮しちゃうのか、みんななぜだか大胆になっちゃうんですよ」
「ブースはオープンで通路からも丸見え、引っ切り無しに人が行き来して、ワタシのブースにも行列まで出来ているんですけれど、ぜんぜん臆せずにみんな、当然のように肌や下着を出していましたね」
「Tシャツまくって、おへその横に描いてくれとか、ジーンズちょっと下げて尾骶骨のあたりに描けとか」
「前の人が描いてもらっているのを見て、私も、ってなっちゃうのでしょうね。躊躇無く服をめくってましたから。二の腕とか肩とかの、普通な人はあんまりいなかったな」

「中でも一番大胆だったのが、ミニスカートたくし上げて、パンツ丸出しで内腿に描いて、って」
「二十歳そこそこくらいの見た目派手だけれどけっこう可愛い子でした。パンツは普通のフルバックで、描いてくれって指定された場所がパンツぎりぎりで、ちょっと毛がはみ出てましたね」
「なんだか女子高時代を思い出しちゃいましたよ。着替えのときとか。男の目が無いと恥らいの概念無くなりますからね、女は」
「あれだけ大っぴらにやられちゃうと、男も怖気づいちゃうんでしょうね。数少ない運営の男性スタッフが、ワタシのブースには一切近寄らないようにしていましたもん」
 桜子さまが愉快そうに笑って、シーナさまと純さまがつづきました。

 笑いが収まった後、シーナさまが切り出しました。
「それで、スキンアートって、ひとつ仕上げるのにどのくらいの時間がかかるものなの?」
「うーん。全部手描きだと30分以上はかかっちゃうかな。デザインにもよりますけれど。それに、それなりのお値段にもなります」
「ワンポイントにシールを使って、周りをチョコチョコっと装飾するのなら15分くらいですね。そっちはお値段もリーズナブルです」
「これがデザイン集とお値段表です」
 桜子さまがシーナさまに分厚いアルバムみたいなものを手渡しました。

「へー。シールでも可愛いの、たくさんあるじゃない?」
 シーナさまがアルバムをゆっくりとめくっていきます。
「それで、これってどのくらい保つの?」
「耐水性の染料を使いますから、普通にお風呂やプールにも入れますし、擦って落とそうとしなければ10日くらいは余裕で保つはずです」
「もちろん、消したくなったらクレンジングでサクッと落とせますし、シールも簡単に剥がせます」
「そうなの。ネイルよりこっちのほうが、断然、直子向きだわね」
 シーナさまが私を手招きしました。

「バスタオル敷いて、その椅子に座りなさい」
「あ、はい・・・」
 みなさまがデスクの周りでお話しているとき、私は窓から死角になりそうなハンガースタンドのお洋服の陰でお話を聞いていました。
 シーナさまのお声で素早く移動し、籐椅子の背もたれの陰に身を滑り込ませました。
 至近距離の対面の椅子には、桜子さまがお座りになっています。
 デスクは桜子さまの斜め右脇にあり、桜子さまの目から私の剥き出しな下半身を隠すものは、何もありませんでした。

「ところで直子、この先2週間位の間に、人前で服を脱ぐ予定はある?」
「えっ?そんな予定は別に・・・」
「あら?学校の体育の授業で着替えたりしないの?」
「あっ、そういうことでしたか・・・」
「どうせ直子は、服を脱ぐ、って聞いて、えっちなことしか思い浮かばなかったのでしょう?」
「ごめんなさい。そういうことでしたら、来週の水曜日に体育の授業があります。それと・・・」
「それと?」
「お友達にコスプレのイベントに出てくれないか、って頼まれていまして、出ることになったらそれの衣装合わせを来週、するかもしれません」
「へー。初耳ね。それは面白そう。ぜひ出なさい。時間が合えばわたしも見に行くから」
 ああん、まだ迷っていたのに、出なさい、ってご命令されちゃった。
 言わないほうが良かったかも・・・

「そういうことだとやっぱり、服脱いで目立つ場所はNGだわね。腕とか背中はやめておいたほうがよさそうだわ」
「たとえシールでも肌にタトゥだなんて、学校のお仲間内での直子の清楚なお嬢様イメージが崩れちゃうもの、ね?」
 シーナさまがお芝居がかった調子で、イジワルそうにおっしゃいました。
「となると、人前で着替えても下着で隠れて見つからない場所にしてもらうのが無難だわね。そう思うでしょ、直子も?」
 シーナさまの嬉しそうなお顔が私に迫ってきました。
「は、はい・・・」
 下着で隠れている場所って言ったら・・・アソコとアソコとアソコしかありません。
 
「決めたわ!」
 シーナさまが桜子さまを振り向きました。
「直子の、ここと、ここに、やっていただけるかしら?そのスキンアートっていうのを」


コートを脱いで昼食を 26


2013年12月15日

コートを脱いで昼食を 24

「いっただきまーす!」
 古泉オーナーさんとシーナさまの元気なお声と共に、おふたりの右手がお目当てのサンドイッチに伸びました。
「ほら、直子も好きなの食べなさい。お腹空いているでしょ?」
「あ、はい・・・いただきます・・・」
 シーナさまにうながされて、自分の近くに置いてあった適当なサンドイッチに手を伸ばしました。
 自然に顔が下に向き、その視界に否応なしに、Tシャツに空けた穴から飛び出している、熱を帯びてコチコチに硬くなった自分の卑猥な乳首が飛び込んできます。
 いやん、私ったら、こんなところで、なんていうふしだらなものを晒しているのだろう・・・

 サンドイッチのお味なんて、ぜんぜんわかりませんでした。
 平日の真昼間、お外には通行人が行き交う営業中のセレクトショップの店内。
 下半身丸出しで腰掛けて、尖った乳首を空気に触れさせながら、サンドイッチをちびちびと口に運んでは、お紅茶で流し込みます。
 シーナさまは、このあいだのエステティックサロンでくりひろげた私の痴態のお話を、古泉オーナーさんに面白おかしくご披露されていました。
 古泉オーナーさんは、うわー、とか、すごーい、とか大げさなリアクションで、そのたびに対面に座る私の顔や胸をまじまじと見つめてきます。
 その遠慮の無い、肌を舐めまわすような好奇の視線に、顔もからだもどんどん火照ってきて、下半身のムズムズが止まりません。

「あらら、モリタさんはあんまり、食が進んでいないようね?」
 お紅茶を注ぎ足してくれながら、古泉オーナーさんがニッって笑いかけてきました。
「それはそうでしょう。今、直子の頭の中は食欲よりも性欲で、パンパンに腫れ上がっちゃってるでしょうから」
 ニヤニヤ笑うシーナさま。
「そう言えば純ちゃん?さっきからヘンにあらたまった感じで直子に話しかけているけれど、あなたたち、お互いに初対面じゃないのよ?」

 えっ!?
 シーナさまの意外なお言葉にびっくりして、思わず顔を上げました。
 はずみでTシャツにぴったりフィットなおっぱいが、布地ごとプルンと弾みました。

「あーーっ。やっぱりそうなんですか?モリタさんて、ひょっとしてあたしが駅ビルのお店にいたとき連れてきた、あのえっちな人?」
「ピンポーン!大正解でーす!」
 シーナさまがおどけておっしゃり、正解者には賞品でーす、と、古泉オーナーさんのお口にフライドポテトを1本、咥えさせました。

「・・・もぐもぐゴクン・・・あたし、さっきから、そうなのかもしれないなー?って思ってはいたんです」
 古泉オーナーさんがテーブル越しに身を乗り出して、私の顔をジーッと見つめながらつづけます。
「あのときのカノジョは、もうちょっとお顔が地味で年齢もいっていたようなにも思うのだけれど、さっきモリタさんの裸のお尻と前を見て、腰のラインとか肌の色とか、おへその形とか、どっかで見たことあったなー、って」
「あのときは、わたしが直子に渾身の老け顔メイクを施したからね。池袋はこの子の地元だから、もし知り合いに出会っちゃったときの用心のために」
 シーナさまのお言葉に古泉オーナーさんが、うんうん、ってうなずいています。

「あのときもすっごい恰好していましたしたよねー?ノーブラのおっぱいをロープで絞るみたいに縛ってて、下半身にはヘンな貝のオブジェくっつけて」
「そうだった!パンツをわざと腿までずり下げていませんでしたっけ?アレがすんごくいやらしかった!」
「ショーゲキだったなー!露出癖ってネットとかで目にはしていたけれど、そんな変態オンナって本当に実在するんだ、ってカンドーものでした」
「それでその正体は、こんなカワイラシイ子だったんですね!今日もけっこうショッキングです」

 心底感心した口ぶりの古泉オーナーさんを見ながら、私もビックリです。
 この、目の前の見るからに可愛らしい女性が、半年位前、目の周りを派手に染めて、まばたくと風が起きそうなエクステ睫毛だった、あのギャル店員さんらしいのです。
「そのお顔だと、モリタさんもあたしのこと、気がついていなかったみたいね?」
「あたしもかなり、あの頃はヤンチャしてたからねー。あの当時はちょうど、自分の中にブリッ子ギャルブームが来てたのよ」
 古泉オーナさんが照れ臭そうに笑われました。

「あの確か数日後に、シーナさんがひとりでお店に遊びに来て、そのとき、ショップをやる気ない?ってお誘いを受けたのでしたね」
「あの頃知り合いからちょうど、この物件の新規出店の相談を受けていたのよ」
「それで、直子と行ったときの対応がとてもユニークだったから、純ちゃんを鮮明に覚えてて、一度ゆっくり話してみたいな、って思ったの」
 シーナさまがお紅茶をひと口すすり、お手拭きで指先を拭いました。
 そう言われればシーナさま、あの直後にもスカウトとか、そんな謎なことをおっしゃっていたっけ。

「話してみたら外見に似合わず考え方もしっかりしているし、独立も考えていて資金も貯めているって言うじゃない。この人なら大丈夫、って思ったわ」
「ありがとうございます。おかげさまでなんとかうまくいっています。一日も早く雇われオーナーから 本当のオーナーになれるように、がんばります」
「シーナさんとお知り合いになれて、本当に良かったです。お仕事もだけれど、こうしてたまーに面白いもの見せてくれるし」
 古泉オーナーさんがシーナさまのほうに向いて、笑顔でペコリと頭をさげました。

「ああ美味しかった。ごちそうさまでしたっ」
 古泉オーナーさんがティーカップをテーブルに置いてフーッと一息。
 じーっと私の胸をしばらく見つめてから、シーナさまに向き直りました。

「でもシーナさんも人が悪いですね?あんなにショーゲキ的なアソビの現場を見せておきながら、あのあと一言もモリタさんのお話、出なかったじゃないですか?」
「妙に色っぽい感じの薄着なおばさまは何度かお連れになったけれど、モリタさんのことはまったく話題にしないから、あたしも忘れかけていましたよ」
「純ちゃんが聞いてこなかったから、わたしも言わなかっただけよ。わたしの趣味嗜好やドレイが何人もいることは、純ちゃんにもちゃんと教えたでしょ?」
「それはそうですけれど。あたしもシーナさんとのお仕事の話のほうに夢中になっていたから、聞きそびれてました」
「あたしは、シーナさんと違ってやっぱり、お年召したおばさまよりも若くてカワイイ子のほうが、虐め甲斐があるなー」
 古泉オーナーさんが私を見て、視線を落として乳首をじっと見て、またニッと笑いました。

「それでシーナさん?今日はあたしのお店で、モリタさんに何をさせるおつもりなんですか?」
「あたし、モリタさんがあの日の子だって聞いて、がぜんヤル気が出てきました。出来る限りご協力しますよ?」
「モリタさんがえっちな命令を受けたときの困ったような表情って、何て言うか、そそりますよね?もっと虐めて困らせてみたい、ってイジワル心を煽られちゃう、みたいな」
「あたしにとって、あの日の出来事は本当にショーゲキだったんです。あのあと帰ってから、思い出してひとりで慰めちゃったくらいに」
「人がたくさんいるお店の中であんな格好にさせられて、それでもあの子、感じていたみたいだなー、あんなことして嬉しいのかなー、なんて考えていたら、指が止まらなくなっちゃって・・・」
「あらあら・・・」
 シーナさまの苦笑い。

「何をする、って別に具体的に決めているわけじゃないのよね。ただ純ちゃんのお店なら、ほとんど女性しか来ないだろうし、試着とかも大胆に出来そうだし、っていうくらいで・・・」
 思案顔のシーナさまが、ふっと気づいたみたいに、古泉オーナーさんに向き直りました。
「そうそう。協力してくれるのなら徹底しておいたほうがいいわね。純ちゃん、直子みたいなマゾ女はね、常に身の程をわきまえさせておかなければいけないの。ドレイとしてのね」
「だから、一応お客さんと言えどもドレイはドレイ。モリタさん、なんて丁寧に呼ばないで、ナオコ、って呼び捨てにしてやってちょうだい」
「直子も純ちゃんのことは、純さま、ってお呼びなさい。いいわね!?」
「あ、はいっ!」
 急にお声をかけられて、ドキンと胸が弾みおっぱいがプルン。

「カーテン開けっ放しでとっかえひっかえ試着させるとか、この格好にエプロン一枚で接客させるとか、あと何かないかなー?」
「さすがにアソコ丸出しはちょっとヤバイわよね?あ、でも毛も無いからそんなに目立たないか」
「だけど今日は、あの日と違って老けメイクしていない素の顔ですよね?モリタさ、あ、いえ、ナオコは。いいんですか?そんな大胆なことさせて、もしお知り合いに目撃されたら」
「だってこんな格好で出歩くことを決めたのは、直子の意志だもの。素の顔のままでいいって判断したんでしょ?万が一知ってる人に見られたとしても自業自得よ」
 シーナさまのお言葉で、不安な気持ちが急速に広がりました。

「まあ、直子は西口初めてって言ってたし、大丈夫とは思うけれど・・・」
 シーナさまも少し不安になったのか、ちょっと考え込んでから、おもむろに店内を見回します。
 シーナさまの頭が、ある方向を向いたまま止まりました。
「純ちゃん、あのウイッグをいただくわ。後で会計してね」
 立ち上がったシーナさまは、レジカウンターの脇に飾られていた真っ黒髪のウイッグをひとつ手に取り、そのまま私に近づいてきました。

 そのウイッグは、前髪ぱっつんの典型的なおかっぱショートボブでした。
 両脇が内向きに軽くカールしているレトロ系。
 シーナさまは、座っている私の背後に立ち、私の髪を頭上にまとめ始めました。

「人から聞いた話だけれど、大昔のエロ本のモデルって、写真が出回っても身内に身元バレしないように、ほとんどがウイッグ着けて、顔の雰囲気変えて撮影していたんだって」
「中でも一番人気だったのが、このぱっつんボブらしいの。確かにこのヘアスタイルは雰囲気がガラッと変わるものね」
「だから、昔のヌード写真には、このヘアスタイルの人が多いらしいのよ。大昔の見せたがりスケベ女。直子の大先輩たちね」
 そんなことをおっしゃりながら、私の頭にウイッグがかぶされました。

「やっぱりね。妙に似合うわ。一気にいやらしさが増しちゃった。これでもう知り合いでも直子だってわからないわよ」
 鏡になるようなものが周りに見当たらないので、自分では確認出来ませんでしたが、そのお言葉でいくらかホッとしました。

 純さまは、テーブルの上を片付け始めていました。
「ほら、ボーっとしてないで直子も手伝いなさい。純ちゃん、ゴミはレジのほうへ持っていけばいい?」
「あ、いいわよ、あたしがやるから・・・」
 純さまは、そうおっしゃってからちょっと考え、つづけました。
「でもお言葉に甘えちゃおうっと。ナオコ、容器とかナプキンとかゴミをひとまとめにして、レジのところまで持ってきておいてちょうだい」
 純さまの口調が、上から気味になっていました。

 お食事中は座っていたのでテーブルで隠され、下半身のことはさほど気にしないで済みました。
 でも立ち上がって、歩き回れば当然のこと、私の裸のお尻と剥き出しのアソコが、おふたりの目に触れることになります。
「ほら直子?返事は?」
 私の正面に戻ったシーナさまから睨まれました。
「あ、はい。すぐにお持ちします・・・純さま」
 観念してよろよろ立ち上がると同時に、強烈な恥ずかしさが今更ながらに、全身に押し寄せました。
 やっぱりこんなのヘンタイです。
 白昼堂々営業中のお店の中でひとりだけ、性器剥き出しの、こんな格好をしているなんて・・・

「あたし以前、ネットで面白い動画を見たことあるんですよ」
 レジの向こうのお部屋で洗い物をされているらしい純さまの大きなお声。
「確かどこかヨーロッパの、ナオコみたいな性癖の女性を撮ったビデオらしくって」
 純さまが良く通る綺麗なお声でつづけます。

「人通りがけっこうある大通りに面したブティックのショーウインドウに、その女、ブロンドでかなりの美人でした、がマネキンのフリして立っているんです」
「ファッショナブルなブラウスにタイトスカートでポーズをとって」
「やがて店長さんらしき男性がショーウインドウの中へ入って来て、ブラウスのボタンをはずし始めるんです。マネキン役はじっと動かない」
「ブラウスを脱がせて、スカートを取って、下着も全部脱がせて裸でしばらく放置」
「通りには人や車がひっきりなしで、その裸マネキンに気がつく人もちらほらいるんです」
「その女も綺麗なパイパンだったなー。うっすら笑みを浮かべて愉しそうだった」
「再び店長がやって来て、今度は違う服を着せてはまた脱がせてって、何回か繰り返しているうちに、通りには人だかりが出来ちゃって」
「まあ、オチはなかったですけれど、最後のほうではマネキン役の女が開き直っちゃって、裸でさまざまなポーズとって、通行人に写真撮らせたりしてました」

「へー、それ、面白そうね、やらせてみよっか?」
 シーナさまは、ブラブラとお店のあちこちを見て回りつつ、純さまのお話に反応されていました。
「でもあんまり騒ぎになって、ケーサツのご厄介とかだとメンドーだわね。西欧人と違って、こっちだと口うるさいおばさんとかが、すぐ通報しちゃいそう」
 私は、純さまのお話を聞きながら、とてもじゃないけれど出来ない、っていう気持ちと、今ならご命令されればやっちゃいそう、っていう気持ちが鬩ぎあっていました。
 普通に考えたらもちろん絶対出来ないのですが、そのときは、そのくらい性的に昂ぶってしまっていたのです。

「そうそう。すっごくセクシーっていうかえっちぽい薄手シースルーのチャイナドレスが入荷したから、手始めにあれ着て接客してもらおっかな?」
「背中がお尻の割れ始めくらいまで大胆に開いているの。でもまあ、今のナオコの格好からしたらヘンタイ度が大幅後退だけれどねー」
 レジカウンターに戻られた純さまが、からかうようにおっしゃいます。
「いずれにしてもそろそろお店、開けるわね。もう2時前だし。そろそろ学生さんたちも放課後だから」
「ナオコは、お客様をギョッとさせないように、そこに座っているか、お客様が近づいてきそうだったらハンガースタンドの合間とかにでも隠れてね」
 純さまが、ギャル店員さんだったときの私に対する扱いのような、少し蔑み気味の口調を復活させていました。

 いよいよ、誰でも自由にお店に入って来れる状態になってしまうんだ・・・
 それでもおふたりとも、私の下半身をこのままの状態にしておくおつもりのようです。
 コートを返してくださいと、シーナさまや純さまに言えるはずも無く、下半身丸裸の私は、店内での逃げ場所をキョロキョロ探します。
 シーナさまは?と探すと、のんきに店内散策中。
 何かアクセサリーを胸に当てて、鏡を覗いていました。

 純さまが、休憩中のプレートをはずそうと入口のほうへ一歩踏み出したそのとき。
「おはようございまーす!」
 入口とは反対の方向から大きな声が聞こえ、間もなくひとりの女性がひょっこりと、レジ裏のお部屋のドアを開けてお顔を覗かせました。


コートを脱いで昼食を 25


2013年12月8日

コートを脱いで昼食を 23

 地上に出ると、広い大通り沿いの舗道でした。
 沿道にはビルが立ち並び、その一階はどこも何かしらのお店屋さんで、歩道も車道もひっきりなしの往来。
 地下道を歩いてきた感じだと、ずいぶん駅から離れたように思えましたが、そうでもないのかな?
 東口の大通りと同じくらいに賑わっていました。

 シーナさまは、私の手を引きながら大通りをさらに駅とは逆方向に少し歩いてから、一本の路地を左へ曲がりました。
 確かこっちのほうには有名な大学があるのではなかったかしら?
 お引越ししてきた頃に地図を眺めながら、この街に慣れたら一度訪れてみたいな、と思っていた一帯のようでした。

 その路地の左右にも小さなビルが立ち並び、何かのお店や飲食店がちらほら。
 シーナさまが、そのうちのひとつの前で立ち止まりました。

「ここよ」
 真っ白なビルの一階、全面ガラス張りのショーウインドウ一杯に飾ってあるカラフルなお洋服。
 見た感じ、お洒落なブティックでした。
「わたしの知り合いが最近開いたのよ。アパレルと輸入雑貨。いわゆるセレクトショップっていうやつね。海外の古着とかも置いていて、わたしも仕入れとかでお手伝いしているの」
 シーナさまが私に説明しつつ、外開きのドアを躊躇無く開きました。
 カランカランって軽やかにドアチャイムの音が響きました。

「ああ、シーナさん。いらっしゃいませ。お茶の用意してお待ちしてましたーっ!」
 すぐに奥のほうから元気のいいお声とともに女の人がひとり、こちらに近づいてきました。
「シーナさんのアドバイス、バッチリでしたよーっ!」
 ニコニコ顔で出てきたその人は、前髪だけ垂らしたポニーテイルでお目々パッチリ、両端がクイッと上がったイタズラっ子ぽい口許の、すっごく可愛らしい女性でした。

「お手頃なお値段のセクシードレスを置いてみたら飛ぶように売れちゃって。ついでに雑貨とかも買っていってくれるから、ここのところ売り上げ大幅アップです!」
「それは良かったわ。このあたりって夜のお勤めの女性がけっこう住んでいるから、ひょっとしたら、と思ったのよね」
「外国人のかたがよく買ってくださるから、そっちのお菓子とかも置いてみたらいいかなーって」
「あら、それもいいわね。そういう業者なら、2、3心当たりあるわよ」

 シーナさまとその女性が親しげにお話しているのに耳を傾けつつ、私は店内を興味津々で見回していました。
 お洒落なお洋服、靴や帽子、カワイイ小物雑貨、ぬいぐるみやステッカー、アクセサリー類など、けっこう広めの店内に所狭しと並べられています。
 女の子が好きそうなものなら何でもある感じ。
 一番多いのはお洋服。
 ブラウスやワンピース、ニットに混じって本格的っぽいデコルテのドレスまでぶら下がっています。
 あっ、あのワンピ、かわいい!

「それで今日は何をご提案してくださるんですか?シーナさんのご推薦なら何でも、うちは無条件で置かせてもらいますよ」
「ううん。今日はビジネスの話じゃないんだ。近くに来たから思い出して、一緒にランチでもどうかな、と思ってさ」
「でもまあ、見てもらいたいものがあるのも、本当なんだけれどね」
 シーナさまが、目をつけたワンピースが飾られているハンガーラックに吸い寄せられかけていた私の手を取って、グイッと引っ張りました。

「直子、こちら古泉純ちゃん。こちらのお店のオーナーさん。わたしのビジネスパートナーでもあるの」
「あっ、はじめまして・・・」
 ペコリとお辞儀をして、自己紹介したほうがいいのかな、って考えていると、
「純ちゃん、これはわたしのドレイのひとりで、モリタナオコ。こんな顔して、マゾで露出狂でヘンタイなのよ」
 シーナさまのものすごい紹介の仕方に、私が顔を火照らせていると、古泉オーナーさんがアハハって笑いました。
「ああ。そっちのほうのアソビのお話でしたか。シーナさんもお好きですねえ。見てもらいたい、っていうのも、この人なんですね?」
 古泉オーナーさんがシーナさまと私の顔を半々に眺めつつニッと笑って、私にだけ、オシャレな名刺をくださいました。

「まあ、立ち話もアレですからあっちに移動しましょう、テーブルがありますから」
 古泉オーナーさんが先に立ち、お店の奥へ進むとレジカウンターの脇にアンティークな木のテーブルとベンチが置いてあるスペースがありました。
「あたしもちょうどお腹が空いてきた感じだったんです。何か店屋物でも取ろうかなと思ったとき、シーナさんから電話があって」
「今、お茶の用意をしますから、そこに腰掛けていてください」
 古泉オーナーさんはそう言い残し、レジのさらに奥にあるらしい別のお部屋へ入っていきました。

「直子、サンドイッチと荷物はそこらへんに置いて、直子は座らずに、そうね、そのへんに立っていなさい」
 シーナさまのご指図通り、サンドイッチをテーブルの上に、自分のバッグはベンチの上に置き、お店の入口方向を背にして、もう片方のベンチの対面に立ちました。
 私の背後にも、ハンガーに掛けられたたくさんのお洋服が飾られています。
 シーナさまは、サンドイッチの包みを開けてテーブルの上に容器ごと並べ始めました。
 ずいぶんたくさん買ったんだなー。
 切り口からいろいろな中身が覗いた美味しそうなサンドイッチが、テーブル一杯に置かれました。

 でも・・・
 私がここに立たされているということは、まずはあの古泉オーナーさんに、私のコートの中身をお見せすることになるのだろうな・・・
 そう思うと、美味しそうなサンドイッチを見て湧いていた食欲が、みるみるうちに性欲に取って代わられていきます。
 さっきのシーナさまとのお話しぶりから察するに、古泉オーナーさんは、シーナさまのそういうご趣味をすでにご存知のご様子。
 古泉オーナーさんも、あんなに可愛らしのにエスなのかな?
 古泉オーナーさん、私の格好を見て、どんな反応を示されるのだろう?
 ドキドキが最高潮です。

「うわー。美味しそう!モリタさんがお持ちになっていた袋が、あのサンドイッチ屋さんのだったから、ちょっと迷って紅茶にしたけれど、正解でしたね」
 古泉オーナさんがトレイの上にティーカップやポットなどを載せて、しずしずとお持ちになりながら大きな声をあげました。
「今、紅茶を淹れますね。今日は朝を抜いてきたから、もうお腹ペコペコなんです」
 ほどなくお紅茶のいい香りが漂ってきました。
「さ、いただきましょう。モリタさんはお座りにならないの?」

 古泉オーナーさんの私に向けたお言葉を引き取るように、シーナさまがお話し始めました。
「それがね純ちゃん。わたし、さっき道で偶然直子に会って、時間もちょうどいいからランチに誘ったのよ、ほら、あの有名なフレンチのお店」
「うわー。超高級店じゃないですか!リッチですねー!」
「だけどね、なぜだか直子が行きたがらないのよ。ヘンだなーと思ったら、どうもそのコートを脱げないような理由があるらしいの、ね?」
 シーナさまが私をチラッと見て、ニヤッと笑いました。
「だからフレンチあきらめて、ちょうど純ちゃんのこと思い出したから、ここに来たってわけ」
「だけどさ、フレンチじゃなくてテイクアウトのサンドイッチだけれど、ひとさまのお店を訪ねて、コートを着たままお食事、っていう作法は無いわよね?レディとして」
「だからさっき、せめてマナーとして食事中は、そのコートはお脱ぎなさい、って叱ったところなのよ」
 シーナさまがすっごく嬉しそうにニコニコして私を見つめてきます。

 シーナさまには、そこに立っていなさいと言われただけでしたが、古泉オーナーさんにおっしゃった今のお言葉が、つまりは私へのご命令でした。
 とうとうシーナさま以外の人の前で、コートの前を開けなければならないときが来たのです。
 このコートを脱いだら、私の下半身は丸裸、上半身には一応Tシャツを着ていますが、ご丁寧に乳首のところだけ穴が空いて、乳首だけがこれ見よがしに飛び出しています。
 なんて破廉恥な格好。
 そんな格好を、今日初めて訪問したお洒落なセレクトショップの一角で、初対面の可愛らしいオーナーさんの目の前で、晒さなくてはいけないのです。

 その上、お店は営業時間中。
 大通りから一本路地に入ったので、さほど人通りが激しくはないみたいですが、それでも普通に人や車が行き来していました。
 2軒隣のラーメン屋さんには、短かい行列も出来ていました。
 このお店の外装は、ほとんどガラス張り。
 お洋服や雑貨でディスプレイされたショーウインドウだったので、店内丸見えというわけではありませんが、ちょっと真剣に覗けば、今も私の頭くらいは見えているはずです。
 それに、何と言っても、いつ別のお客さまが入って来るか、わからないんです。
 ドアを開けてお店に入り、奥まで来てちょこっと右側を向けば、レジ周辺は丸見えでした。

「ほら、せっかく淹れていただいたお紅茶が冷めてしまうじゃない?早くコートを脱いで席に着きなさい」
 シーナさまに冷たく言われて覚悟を決めます。
 これは私が望んでいたこと。
 シーナさまと出会ったおかげで、独り遊びでは絶対出来ない、こんな大胆な状況になったのだから。
 シーナさまのお言葉には、すべて従わなくちゃ。
 私の中のマゾメーターがグングン上がり、コートの一番上のボタンにゆっくりと手をかけました。

 そのとき、シーナさまの隣に腰掛けていた古泉オーナーさんがスクッと立ち上がりました。
「ちょっと入口に、休憩中、のプレートを掛けてきますね。いつもここでランチするときは、そうしているんです」
「この時間帯はいつも、ほとんどお客さん来ないけれど、邪魔されずにゆっくり食べたいし」
「それにきっと、これからあたしに、何かえっちなものを見せてくれるんでしょ?」
「それならなおさら、誰かに邪魔されたくないもの、ね?」
 古泉オーナーさんが私を見てまたニッと笑い、何かのプレートを持って入口のほうへ駆け出し、すぐに戻って元通りに着席しました。

「もう!純ちゃんたら、直子にそんな気配りはいらないのに。誰かお客さんが入ってきたら、それはそれで面白いのに」
 不満げなシーナさまを古泉オーナーさんが、まあまあ、ってなだめています。
 古泉オーナーさんのおやさしいお心遣いに幾分ホッとしつつ、コートの前ボタンをすっかりはずし終えました。

「ボタンはずしたら、まずコートの前を大きく開けて、純ちゃんにその中身をお見せしなさい。さっきデパートのトイレでしたのと同じ格好よ」
「はい・・・」
「わたしがいいと言うまで、その格好でいること」
「はい」
 シーナさまのご命令口調なお言葉が、私のマゾ性をグングン煽ります。
 こんなところで、こんな格好をお見せしなければばらない、みじめで可哀相な私。
 強烈な被虐感に酔い痴れつつ、ゆっくりとコートを左右に広げました。

「うわーっ!」
「どう?」
「どう、って、すごいですね。エロすぎ。これって、やっぱりシーナさんが命令してやらせているんですか?」
 私のからだを上から下まで矯めつ眇めつ眺めつつ、古泉オーナーさんがシーナさまに尋ねました。
「それがねー、違うのよ。この子が自発的にこの格好になって外出したところを捕まえたの」
 ニッコリ笑ったシーナさまったら、本当に愉快そう。

「なんでもね、この子が一生懸命考えた結論らしいの。真っ裸よりいやらしい恰好ってどういうのだろう?って」
「それで出た答えがこれ。下半身は丸裸で、上半身は乳首だけ出し。その上にコート一枚だけ羽織って、ひとりでショッピングに出かけるつもりだったのよ?考えられないわよね?」
「へー。確かにいやらしいですよね、普通の裸より。じゃあその穴も自分で空けたんだ」
 古泉オーナーさんが私に向かって尋ねてきました。
「は、はい・・・」
 うつむきがちに答える私。
「それってつまりその、乳首だけ見せたい、ってことなの?」
「あ、えっと、は、はい・・・」
「すごいねー。でも確かにいやらし過ぎて、逆にある意味ステキかも。モリタさんってお肌も綺麗だ しプロポーションもいいし、見せたがるのがわかる気もするかな」
 そうおっしゃる古泉オーナーさんの目は、私の下半身に釘付けです。

「あなたのソコって、天然なの?すっごく綺麗にツルツルなのね?」
 私の土手を指差して聞いてきます。
「あ、いえ、これは・・・」
 私が答えるより先に、次の質問が放たれました。
「そこに覗いているヒモは、タンポン?今、生理なの?」
「あ、そ、そうです。あ、でも・・・」
「ああ、これはね・・・」
 私が答えるのを制して、シーナさまが割り込んできました。

「この直子って子はね、すんごく濡れやすいの。ちょっとでも辱めるとすぐにダラダラよだれ垂らしちゃうのよ、ソコから。つまり淫乱なのね」
「だからタンポン挿れて、お店汚さないようにしたの。もし挿れてなかったらここの床、もう愛液でビチャビチャになっちゃてるわ」
「へー、こんな格好しているだけで、そんなに感じちゃうんだ?」
「常識では考えられない場所で、はしたない格好になって、それを視られている、っていうのが、直子がサカっちゃうキモみたいね」
「たぶん今なんか、純ちゃんに視られてイク寸前くらいになっているはずよ。今だったら純ちゃんの言うこと、何でも聞くはずだわ、ね?直子?」
 シーナさまの冷静な私の性癖分析に古泉オーナーさんも真剣にうなずいていらっしゃいます。
 私は恥ずかしさで、もう頭がクラクラ。

「まあ、そういうことで、純ちゃんへのお披露目も終わったことだし、ひとまずランチにしましょう。本当にお紅茶が冷めちゃうから」
 シーナさまが私を見ました。
「直子、もうコート広げてなくていいわよ。さっさと脱いで席につきなさい」
「えっ!脱ぐんですか?」
 私は、てっきりコートは羽織ったままで許されるかと思っていたので、真剣にびっくりしちゃいました。

「あたりまえでしょ?コート羽織ったままお食事なんて、そんなはしたないマナーは無い、って、何度同じことを言わせるのよっ!?」
 急速にイライラモードのシーナさま。
「だって・・・」
 私はお店をグルッと見回してお外のほうをじっと見てから、シーナさまに視線を戻しました。

「大丈夫よ。外からここは見えないし、純ちゃんが休憩中のサイン出してくれたから他のお客も入って来ないし」
「で、でも・・・」
「このお店はエアコンがよく効いているから、裸んぼでも寒くないはずよ。わたしも失礼して上着脱がせてもらおう」
「あたし寒がりだから、室内温度高めなんですよね。ごめんなさいね」
「・・・」
「あんまりグズグズしていると、わたし本気で怒るわよ。そのコートひん剥いて、Tシャツも破り捨てて、真っ裸で外に放り出すわよっ!」

 シーナさまの本気っぽいお怒り顔に気圧されて、渋々腕をコートの袖から抜き始めます。
 このコートを脱いでしまったら、私が身に着けているのは短かい破廉恥Tシャツ一枚だけ。
 何かあったとき、誰かが来たとき、私にはもう自分の恥ずかしい姿を覆い隠す術が、まったく無くなってしまいます。
 両腕を袖から抜くまではしたのですが、コートを両肩からはずせずにいました。

「それならコートは、あたしが大切にお預かりするわね」
「あっ!」
 いつの間にか私の背後に来ていた古泉オーナーさんが、私が羽織ったままのコートをそっと肩からはずしました。
「わー。いいコートね。ブランド物じゃない。センスいいわね?モリタさん」
 そんなお褒めの言葉にも私は上の空。
 コートがはずされると、私の下半身はセレクトショップの空間の中で、文字通り丸出しになってしまいました。
 裸のお尻に直に空気が当たり、剥き出しのアソコを思わず両手で隠しました。
 背後の古泉オーナーさんは、私の裸のお尻をじっと視ていたのでしょう、コートを取られてしばらくしてからゆっくりとレジに戻り、私のコートを丁寧にハンガーに掛けて、レジカウンターの後ろの壁に吊り下げてくださいました。

「まったく!何を今更隠しているのよ?こうなりたくて、していた格好でしょ?」
「それにしてもドレイの分際で、でも、とか、だって、とかよく言えるものね。まだまだ教育が足りないみたいね。帰ったらキツイお仕置きが必要だわっ!」
 不機嫌そうにブツブツおっしゃっているシーナさまを、古泉オーナーさんが笑いながらなだめます。
「まあまあ。せっかく楽しいランチタイムが始まるのだから、そんなに怒らないで。ほら、モリタさんもこちらへいらっしゃい」
 古泉オーナーさんは、冷めてしまった3人分のお紅茶をわざわざ淹れ直して、再度テーブルに並べてくださいました。

「あ、純ちゃん?バスタオルを一枚売ってくれる?どんなのでもいいわ。安いやつ」
「だったら確か・・・あったあった。これ、差し上げます。業者さんがサンプルでくれた子供向けキャラクターのタオル。カワイイでしょ?」
 古泉オーナーさんが差し出したカラフルなタオルを受け取ったシーナさまは、それを私に差し出してきました。

「ほら、これをお尻の下に敷いて、直子もさっさと座りなさい」
「裸のお尻で直子がそのベンチに座ったら、ベンチの表面と直子のお尻の穴が直に触れちゃうことになるものね。そんなの、次に座る人が可哀相すぎるわ。ヘンタイ菌が感染っちゃう」
 シーナさまのイジワルいお声。
「もう!これからお食事っていうのに、シーナさんたらお下品なんだからー。ほら、モリタさんも、早く」
 古泉オーナーさんの明るいお声に促されて、おふたりの対面のベンチの上にタオルを折って敷き、裸のお尻でおずおずと腰を掛けました。

「さっきシーナさんが、コートを羽織ってのお食事なんてはしたない、っておっしゃったけれど、お尻丸出しでのお食事とだったら、どっちがよりはしたないのかしらね?レディとしたら・・・」
 古泉オーナーさんが小さくクスクス笑いながら、独り言みたいにつぶやきました。


コートを脱いで昼食を 24


2013年12月1日

コートを脱いで昼食を 22

 包帯の戒めを解かれたのにも気づかないくらいの放心状態で、だらしなく両脚を広げたまま、私はしばらくベッドに仰向けのままでした。
 気を失なっていたというわけではなく、ただただ頭の中が真っ白になっていました。
 ときどき思い出したようにからだのあちこちで、自分の意志とは関係なく、ピクンピクンと筋肉が痙攣しているのがわかりました。
 そのたびに、甘美な快感の余韻が下腹部をくすぐりました。

「あら、気がついたみたいね。どう?立てる?」
 シーナさまのお声。
 えっと、立つ、っていうのは、どうすればいいのだっけ?
 からだを動かそうと力を入れるのですが、その意志をからだの該当部位に伝えることがうまくいかないみたい。
「ぐったりしているのはわかるけれど、いつまでもそこに寝ていられると、片付かないのよね」
 シーナさまがイジワルクおっしゃいます。
「いいのよ、ゆっくり休んでいらっしゃい。お疲れでしょう?わたくしたちも片付けや着替えがあるから、お気になさらずに」
 アンジェラさまのおやさしいお言葉。
「・・・ぁ、だ、大丈夫です。ありがとうございました」
 掠れた声でお答えして、なんとか上半身を起こしました。

 足元がおぼつかないからだをシーナさまと蘭子さまに支えていただいて、ゲスト用のドレッシングルームに戻りました。
 すぐにバスルームに入り、ローションと私のいろいろなおシルでヌルヌルベタベタになった全身を、ぬるいシャワーで洗い流しました。
 両膝の裏が包帯ロープに擦れたのか、少し赤くなっていました。

 シャワーの流れに沿ってお肌をさすっていると、何だかお肌が以前よりスベスベしている気がしました。
 マッサージしていただいて血行が良くなったせいでしょうか。
 アソコ周辺は、まるで生まれたての赤ちゃんみたいにツルツルのスッベスベ。
 からだ全体がふうわり軽くなったような気がして、意識もハッキリスッキリ、気持ちまで軽やかになっていました。
 シーナさまと蘭子様は、シャワーを浴びる私を眺めながら、楽しそうに談笑されていました。

 タオルで丁寧に水気を拭ってから、全裸のままバスルームを出ました。
 首のチョーカーが全体にしっとり濡れちゃったことだけが、ちょっと気がかりでした。
「なんだかずいぶん晴れ晴れとした顔をしているわね、直子」
 シーナさまが裸の私をマジマジと眺めながらニヤニヤ笑いでおっしゃいます。
「まあ、あれだけ何回も凄腕テクニシャンにイかせてもらったら、直子の底無しな性欲も、さすがに落ち着くわよねー。羨ましいこと!」
 シーナさまってば、本当に羨ましそうなご様子に見えました。

「それじゃあ、わたしたちも着替えてくるから、直子も帰る支度をして、さっきのゲストルームに戻ってらっしゃい」
「直子のバッグは、ゲストルームに置いてあるからね」
 そう言い残すとシーナさまは、テーブルの上にあった紙袋を掴んで、蘭子さまと一緒にドレッシングルームを出て行かれました。

 お洋服を着ようと思い、ハンガーにきちんと掛けられた自分のスーツを見て、ふと思い出しました。
 そう言えば、私の下着は?
 思えば私は、あのゴージャスなお部屋でストリップをさせられたので、ここに来るときはすでに全裸でした。
 脱いだ下着類は、小野寺さんがすべてまとめてどこかへお持ちなっちゃったのです。
 ブラジャーと、あと、私のいやらしいおツユで汚れたショーツとパンティストッキング・・・
 今更ながらに、赤面してしまいました。

 ドレッシングルームをひととおり見回してみましたが、それらしいものはありません。
 どこかにしまってあるのだろうか?
 でも、まさかチェストとかを無断で開けて見るわけにもいかないし、第一、しまい込む必要なんてまったく無いはずです。
 
 どうしよう?
 恥ずかしいけれど、小野寺さんに聞いてみようか・・・
 施術ルームの扉をそっと開けてみましたが、電気がすべて消されて真っ暗、誰もいらっしゃらないようでした。
 となると、おそらくあのゴージャスなお部屋に戻られたのでしょう。
 うーん・・・ま、いっか。
 とりあえず下着は着けずに身なりを整えて、あのお部屋に戻ろう。
 身も心もスッキリして楽観的になっていた私は、どうせあとは車でお家へ帰るだけなのだから、ノーブラノーパンもさほど大した問題ではないような気分になっていました。

 素肌にブラウスを着て、裸の腰にそのままスカートを履きました。
 生地が薄いブラウスですが、大人しくなった乳首ならぜんぜん目立ちません。
 いつもなら、こんな格好をすればすぐそれなりにムラムラくるのですが、さすがに今はそんな気持ちも湧いてきません。
 メイクを軽く整えてからジャケットを羽織り、裸足にスリッパでスタスタとゴージャスなお部屋に戻りました。

 ゲストルームでは、再びお洒落な私服に着替えられたみなさまが、おのおのソファーや椅子に腰掛けてお紅茶を召し上がっていらっしゃいました。
「失礼します」
 私が入っていくと一斉の拍手。
 どなたもにこやかで、最初の頃より私に対する親密さが増している感じがしました。
 シーナさまとアンジェラさまから、私のからだや最後のマッサージのときのことをいろいろからかわれ、他のみなさまも、もはや遠慮一切無しで楽しげに笑っていらっしゃいました。
 私も、自分を話題にされるのはやっぱり恥ずかしかったけれど、でもそれ以上に楽しい時間がおだやかに過ぎていきました。
 下着のことは自分でも忘れたまま、小一時間ほどみなさまとお茶を飲みながらおしゃべりをしました。

「ワックス脱毛すると、次に生えてくるヘアーはいっそう細くなっているの。ナオコのだったら、たぶん2~3週間はそのままで、その後だんだんチョロチョロって出てくるはずよ」
「だから、次に施術出来るようになるのはたぶん12月ね。今日くらいの濃さになったらまた、必ず来なさい」
 アンジェラさまが私の手を取って、ニコニコ笑いながらのご命令口調でおっしゃいました。
「ナオコのヘアーなら、あと数回通えば、ほとんど生えてこなくなるはずよ」
「だから必ずいらっしゃい、ね?」
 アンジェラさまに固くお約束させられて、サロンを後にしました。

 そんな恥辱まみれないわくつきのパイパンな土手を、シーナさまがスルスル撫ぜてきます。
 デパートのおトイレの狭い個室の中。
 私は必死に口をつぐんで、えっちな声をがまんします。

「あの日の帰り、直子は平気でノーパンノーブラで車に乗っていたわよね?」
「あの頃から、裸でコートなんて破廉恥なアソビを計画していたのじゃないの?」
 シーナさまが私の土手を軽くさすりながら聞いてきます。
「あ、はぃ・・・」
「やっぱりねー。あれだけイかせてもらってまだ10日ちょっとでしょ?本当、ヘンタイ性欲のかたまりなのね、直子って」
「夏休みは全裸生活、エステサロンでみんなの前で死ぬほどイって、懲りもせずに今度は裸コート。呆れた女子大生がいたものだこと」

 結局あの日、私が身に着けていた下着類はすべて小野寺さんがお洗濯してくれて、施術後にはキレイにたたまれた状態でドレッシングルームのテーブルの上に置いてあったのだそうです。
 シーナさまが私のシャワー中にそれを隠し、お部屋からの去り際に手にした紙袋の中身がそれだったのでした。
 車の中でシーナさまに渡されて、あんなに辱めを受けたのに性懲りも無くまだノーブラノーパンでいたいのね、なんてさんざん虐められました。

「今日は自分の意志でそんな格好しているのだから、それなりの覚悟は出来ているのよね?」
 シーナさまがタンポンの紐を引っ張って、一気に引き抜きました。
「うぐっ!」
「わたしと一緒なんだもの、もうこんなものいらないわ。スケベ汁だらだら垂らしながら街中をお散歩しましょ?」
 私から抜き取ったタンポンをポイッと汚物入れに投げ捨てました。
 シーナさまの瞳が、どんどんエス色に染まってきていました。

「まずはどこへ行こうかしら?コートのボタンはずしたまま繁華街を歩いてみる?その後、公園にでも行ってオナニーとかしてみよっか?」
「あのう、シーナさま?私、誰にでも視られたい、っていうわけでは・・・」
「わかっているわよ。男子禁制でしょ?それを破るとわたしがゆりさまから叱られちゃうもの。だから悩んでいるの!」
 怒ったようなシーナさまのお声。
 シーナさまが私の股間から手を離し、腕を組んで考え込みます。

「直子の計画は、ブティックでお買い物して逆ストリップ、だっけ?」
「はい・・・」
「ブティック街でのショッピングは比較的安全だけれど、なんだかマンネリだわね。確かこっちで最初に会ったときもやったわよね?」
 おっぱいを縛られて、貝殻ローターをアソコに挿れたまま試着させられたっけ・・・
「あ、はい・・・」
 あの初夏の日の恥ずかしさを思い出しながら私が答えると同時に、シーナさまのお顔がパッとほころびました。

「そうだった!あの子がいたわ!」
 シーナさまのすっごく嬉しそうなお声。
「うふふ、直子、いいこと思いついちゃったー」
 シーナさまは、ご自分のケータイを開けて何か確認されています。
「たぶん大丈夫と思うわ。この時間帯なら。わたしこれからちょっと電話してくるから、直子はコートをきちんと直して、メイク整えてから出てきて」
 おっしゃりながら個室から出て行こうとされます。

 今のシーナさまのご様子だと、あの日のブティックのノリのいいギャル店員さんに、もう一度会いに行くのかもしれません。
 それはそれで、なんだか懐かしいかも・・・
 でもそれなら、別に電話することもないような・・・
 あっ、ご出勤されているかの確認なのかな?
 そんなことを考えていたら、個室を出かけていたシーナさまが振り向きました。

「あっ、そうだ。直子、代わりのタンポン持ってる?」
「え?いいえ、生憎・・・」
「もう使えない子ね。ならわたしのあげるから、それ突っ込んでおきなさい。まだ新しいお店、汚しちゃったら可哀相だから」
「あのう、これから誰かとお会いするのですか?」
「そうよ。お会いって言うか、お見せって言うか」
 くくっと笑うシーナさま。
「せっかく直子が一生懸命考えた晴れ姿ですもの、わたし一人で愉しむだけじゃもったいないわ。そう思わない?」
 ご自分のバッグからタンポンを一つ出して私に握らせ、そそくさと個室から出て行きました。

 お言いつけ通りに真新しいタンポンを挿入し、コートのボタンをきっちり留めてメイクを直し、女子トイレを出ると、シーナさまは廊下でまだ電話中でした。
 新しいお店?
 ていうことは、このデパートのブティックではないっていうことだよね。
 だとすると、これからいったい、私はどこへ連れて行かれるのだろう?
 こんなに恥ずかしすぎる私の姿を、誰にお視せになるつもりなのだろう?
 エステサロンに連れて行かれたときと同じような、不安7期待3くらいのフクザツな思いが胸に渦巻いていました。

「おっけー。それじゃあ行きましょう」
 シーナさまは、私の右手を取って一直線にエレベーターに向かいました。
 手を引かれておたおたとついていく私。
 エレベーターで地下まで降りると、私鉄とJRの地下連絡通路を進みます。
 これでもう、あのギャル店員さんのお店ではないことが決まりました。
 
 平日の昼間だというのにちょっとびっくりするくらい大勢の老若男女が地下通路を行き来していました。
 裸コート姿でこんなに大勢の人の前に出るのは、もちろん初めてです。
 すごい緊張感が全身に走ります。
 普通にしていればバレるはずないのに、ヘンタイな行為をしているという負い目が背徳感を煽り、ゾクゾク感じてしまいます。
 私ひとりでは、こんなに人がいるところに、この格好で出てくることなんて絶対出来そうもありません。
 シーナさまはずっと無言で、私の手を引いたままスタスタと人混みを優雅にすり抜けていかれます。
 私はシーナさまの左手を命綱のようにギューッと握って、一生懸命ついていきました。

 途中の地下街で、有名なサンドイッチショップのサンドイッチをシーナさまがたくさん買って私に持たせ、さらに地下通路を進んでいきました。
 ここまで来ちゃうと確かもう西口のはず。
 こっちに来て半年以上経ちますが、西口に来るのは初めてでした。
 地下通路が突き当たりになる頃、シーナさまがようやく地上への階段を上り始めました。


コートを脱いで昼食を 23


2013年11月24日

コートを脱いで昼食を 21


「さあ、これで蹴飛ばされる心配も無くなったし、残りの半分とビキニラインは、あなたたちで実習してちょうだい」
「3人で代わりばんこに施術するといいわ。仕上げは、わたくしがやるから」
「はいっ!」
 アンジェラさんが一歩退き、代わってリナリナトリオのみなさんが、ほぼ180度に両腿を開いたままベッドに縛り付けられた私の下半身を取り囲みました。
「ワックスを塗るときは毛流れに沿って、剥がすときは逆方向へ水平に、よ」
「はいっ!」
 アンジェラさんのご指導に元気良くお返事されるお3人。

 最初はアリナさん。
 恐る恐るという感じで私のラビアを引っ張りながら、ヘラでワックスを塗りました。
「剥がしまーす」
 可愛らしいお声とともにベリッとワックスが剥がされます。
「あうっ!」
 アンジェラさんのときよりも痛さが増しています。
 慣れていらっしゃらないので仕方ないことなのでしょうけれど。

 つづいてマリナさん、セリナさんの順番で、施術が進んでいきました。
 アンジェラさんのようにテンポ良くとは行かず、ぎこちない手つきで性器を弄られ、ラビアを引っ張られ、下半身のムズムズが治まりません。
「あぁんっ!」
 毛を引き抜かれる痛みに、思わず両膝を閉じようとしますが、きっちり縛り付けられた私の両脚はビクとも動きません。
 包帯のロープが膝の裏側に食い込んでくるだけです。
 下半身を拘束されアソコを全開にしているという被虐感と、性器周辺を襲う物理的な痛みに、私のマゾ性は大悦び。
 どんどんいやらしい気分になっていました。
 エステティックの施術を受けているはずなのに、私の頭の中では、誰か悪い人に拉致監禁され、えっちな拷問を受けている妄想が渦巻いていました。

「ぁはんっ!」
「ぃやんっ!」
 ワックスが剥がされるたびに呻いてしまいます。
「あら、ナオコったら、お声がずいぶん色っぽくなってきたわね?」
 アンジェラさんがイタズラっぽく微笑みかけてきます。
「もう少しの辛抱よ。あとはビキニラインだけだから」
 何度も呻いているうちに、施術は土手部分に移っていました。
 モニターの中の私のアソコ周辺はもはやツルツル。
 毛が残っているのはその上部分だけになっていました。

 その部分もリナリナトリオのみなさんの、幾分慣れてきた感じの施術ですっかり抜かれ、最後にアンジェラさんがピンセットみたいなので仕上げをされている最中に、シーナさまと蘭子さんが戻っていらっしゃいました。

「あらあら、スゴイ格好にされちゃったわねー」
 入ってくるなりシーナさまが、さっきアンジェラさんがおっしゃったのと同じようなお言葉を、私に投げかけてきました。
「直子のお望み通りな展開じゃない?嬉しいでしょう?」
 シーナさまは白いバスローブ姿、蘭子さんは水色のユニホーム姿でした。

「あら?ミス・シーナ、お帰りなさい。こっちももうそろそろで終わるわ」
 私のラビアを掻き分けて、毛を一本引き抜きつつ、アンジェラさんがおっしゃいました。
「ああんっ!」
 毛が抜かれた痛みに、私のはしたない喘ぎ。
「こんな声をずっと聞かされどうしじゃ、あなたたちもさぞやりにくかったでしょう?」
 シーナさまのおどけたお言葉に、リナリナトリオの快活な笑い声がかぶさりました。

「さ、これでいいわね。ナオコ、長い間お疲れさま。ローション塗って施術完了」
 土手から性器にかけて、ひんやりとしたローションが、アンジェラさんの手で揉み込むように塗られます。
「あぁううーんっ」
 その冷たい感触にアソコを撫ぜられ、クリトリスにもスースーする刺激を感じて、抑えきれずにいやらしい声が洩れてしまいました。

「ねえ?ミス・シーナ。ご相談なのだけれど・・・」
 アンジェラさんが私の股間をさすりながら、シーナさまに尋ねました。
「わたくし、ナオコを見ていたらなんだかかわいそうになっちゃって。この子、一生懸命がまんして、わたくしたちに協力してくださったでしょう?」
「ここもこんなになっちゃっているのに、ヘンな声をあげないように、真っ赤になってがまんしてたわ」
 私のクリトリスをゴム手袋の指でサワサワ撫ぜつつ、つづけます。
「んふんっ!」
「だからご褒美をあげたいの。わたくしの特別マッサージで」
 アンジェラさんの手が私の股間から離れました。

「つまり、直子をイかせてあげる、っていうこと?」
「まあ!お下品な言い方ね。オーガズムに導くのよ」
 アンジェラさんが笑いながら訂正されました。
「どう?直子。オーガズムに導いてくれるってさ?」
 シーナさまが私の顔を覗き込みます。
「あ、はい・・・」
「はい、じゃないわよ。イきたいの?」
「あ、えっと、は、はい・・・」
「こんなみんなが見ている前で、イきたいんだ?はしたない子ねー。呆れちゃう。だったら自分からアンジーにお願いしなさい。どうかイかせてください、って」
 シーナさまのお顔がイジワルそうに笑っていました。

 私の性的昂ぶりは、もう爆発寸前でした。
 一刻も早く出口へ誘導してあげないと、気がヘンになってしまいそうなほどの、待ったなし状態でした。
 もはや恥も外聞もありません。
「ア、アンジェラ先生さま、どうか、どうか直子をイかせてくださいぃ」
 上半身だけ起こして、マゾの服従ポーズのまま、アンジェラさまに哀願しました
「あらー、先生だなんて、かわいい子ね。わかったわ。わたくしがすごく気持ちのいいマッサージしてさしあげるわ」
「施術の後は、その部分はあまり刺激しないほうがいいのだけれど、幸いナオコは出血もなかったし、肌も比較的丈夫そうだから」

「下半身は縛ったままでいいわよ。直子は、そういうのが好みなヘンタイだから」
「あなたたちもよーく見ていてやってね。他人のイキ顔なんて、ライブでそうそう拝めるものじゃないから、貴重な体験よ」
 リナリナトリオのみなさんが、ドッと笑いました。

 私の腰を浮かせていた毛布が取り除かれ、フワフワタオルも取り除かれました。
 合皮らしいベッドの表面に直に肌を付けている状態。
 仰向け全裸で、頭の下に両手を置いた服従ポーズ、下半身は全開で縛り付けられたまま。
 そんな私を、アリナさん、マリナさん、セリナさん、蘭子さん、シーナさま、アンジェラさま、そして小野寺さんのビデオカメラが取り囲み見下ろしています。

「からだの力を全部抜いて、リラックスしていてね?」
 おっしゃりながら、透明なローションをボトルから直に、私の胸やお腹にたっぷり垂らしてきました。
「あんっ!」
 その冷たい感触に全身がピクリと跳ねます。
 ヌルヌルローションをからだ全体に行き渡らせるようにアンジェラさまの両手が私の肌を這い、やがて私のふたつのおっぱいをやんわり包んで来ました。
「あはぁん」
「ナオコのブレストはやわらかいわねー。いいさわり心地。でもニップルはコチコチね」
「うふぅん」
 おっぱいをふわふわ揉みしだかれて、私はクネクネ身悶えます。
「ううぅんっ」
「いいわよ、気持ち良かったらどんどんお声を出して鳴いちゃって。もうがまんすることはないわ」
 アンジェラさまの両手が、私の上半身のいたるところを、揉み解すみたいに撫ぜ回してきます。
 すっごく気持ちいい。
 からだが溶けちゃいそう。

 アンジェラさんの両手は、段々と下腹部に移っていき、私の全身はローションまみれのヌルヌル。
「このローションはね、ちょっぴり媚薬みたいな効果もあるの」
 そして右手がついに、アソコを包み込みました。

「蘭子さん?わたくしはナオコに、これ以上無いくらい気持ち良くなって欲しいから、ブレストのケアを手伝っていただける?」
「はい。わかりました」
 アンジェラさまのお言葉で、蘭子さまが私の傍に立ち、私のおっぱいを揉み始めました。
「あー、いいなー直子。アンジーと蘭子さんふたりがかり。なんて豪華なマッサージだこと!」
 シーナさまの拗ねたようなお声が可笑しくて、思わずつぶっていた目を開けると、リナリナトリオのみなさんの食い入るような視線とぶつかりました。

 それと同時に、アンジェラさまの指がズブリと、私の中に侵入してきました。
「あうっ!」
 再びギュッと目をつぶり、4本の手が与えてくれる快感に身を委ねます。
 それからは、完全に我を忘れていました
 おっぱいは、時に優しく、時に激しく揉みしだかれ、ときどき乳首が指の間でキュッと挟まれます。
 アソコに入った指は、本数が2本に増え、膣壁を擦るように至るところを掻きまわし、もう片方の手はずっと、クリットを撫でたりつまんだりしています。
「あふん」
「んぐっ」
「いやん」
「いい、いいい!!!」
 すぐに一回目の絶頂がきましたが、4本の手は止まりません。

「ナオコのヴァジャイナの中、すごく熱いわね。キュッキュッて締め付けてくるわ。あ、また達したわね?」
「ふぅぅんっ!」
「ああん、そこぉ」
「いく、いく、いっちゃうぅ」
「だめ、だめ、もっとぉ・・・」
 何回イってもアンジェラさまと蘭子さまは許しでくださいません。
 ピチャピチャという卑猥な音と私のハアハアと荒げた息遣いが、低く流れるモーツアルトのピアノ曲をかき消します。

 なんだか手が増えたな、と思い目を開けると、おっぱいはシーナさまの担当になっていました。
 私の乳首を乱暴につまんで引っ張ったり潰したりしています。
 蘭子さまは、わき腹やお腹をマッサージされています。
「あぅ、あぅ」
「いい、いいぃ・・・」
 もう何度イったかわかりません。
 6本の手にさわられている部分すべてが性感帯となり、グングン昂ぶります。
 からだが宙に浮いているように、気持ちのいい波が寄せては返しつづけます。

「ああん、でちゃうぅ、でちゃうぅぅぅ」
 中を掻きまわしている指が手前のほうのある部分に触れたとき、とっさにそんな言葉が自分の口から飛び出しました。
「いいわよー。出しちゃうと気持ちいいから、出しちゃいなさーい」
 アンジェラさんのお言葉に、そうか、出しちゃっていいんだ、って素直に思い力を抜いた途端、ピューッと何かを放出しました。
「うわーーっ!」
 リナリナトリオの盛大なざわめき。
 潮を吹いちゃったのです。

「もうナオコのGスポットは覚えたわ。ここを刺激すれば何度でも出るわよ。どんどん出しちゃってスッキリしちゃいましょう」
 アンジェラさまの指で執拗にソコを責め立てられ、私は何度もピューピュー吹いて、ビクンビクンとイきました。

「そうそう、最近の若い子は、ネットの掲示板やつぶやきなんかで、職業上で知ったお客様のプライバシーを気軽に書いちゃって問題になっているけれど」
「今日のナオコみたいに、少し普通とは違うご趣味のかたは、あなたたちにとっては興味津々で、誰かにお話したくなる気持ちもあるでしょう」
「うちのお客様には、世間でお名前の知られたかたや、社会的な地位の高いかたのマダムなどもたくさんいらっしゃいます」
「このお仕事では、そんな方々のプライバシーを知る場合もあるでしょうけれど、それらは決して、一切口外してはいけません」
「わたくしたちのお仕事は、肌を直接触れるお仕事でもありますから、お客様からの信頼と守秘義務とで成り立っています」
「ですから、お仕事上で知ったお客様のご趣味や嗜好を、たとえお友達との世間話と言えども、話題にすることは厳禁です」
「もしも、そのようなことをして発覚した場合は、この手のお仕事はそれ以降、一切出来ないように全国的に手配しますし、それなりの損害賠償も直接請求します」
「これはプロとして必ず絶対に守ってください。わかりましたね?」
「はいっ!」

 私のアソコを責め立てつつ、リナリナトリオのみなさんに、そんなふうに言い聞かせるアンジェラさまのお言葉を、どこか遠くのほうから聞こえてくるように感じながら、私は何度も何度も全身を震わせてイきつづけました。


コートを脱いで昼食を 22


2013年11月18日

コートを脱いで昼食を 20

「それでは施術をつづけましょう」
 アンジェラさんが再びタオルを持ち、私の股間を覆って拭い始めました。
「ナオコのヴァジャイナ、すごく熱くなっているわね?もう少しの辛抱だから、がんばってね」
 おやさしげにおっしゃりながら、膣を軽く叩くみたいにして、滲み出た私のえっちなおツユをタオルに染み込ませています。
「ぁぁんっ!」
 ときどきタオルの端がコソッと剥き出しの肉の芽をくすぐり、そのたびにピクンと感じてしまいます。

 さっきと同じように汚れたタオルをセリナさんに渡した後、施術が始まりました。
「無駄な力は抜いて、下半身をリラックスした状態にしていてね?ナオコ」
 私の左側に立ったアンジェラさんが、私の股間に覆いかぶさるようにしながら、手早くヘラでワックスを塗っては、剥がしていきます。

「んっ!」
 お尻のときよりは、何て言うか、ちゃんと痛い感じ。
 ローソクプレイで言えば、より低い位置からロウを垂れされている感じです。
「あうっ!
「はぁんっ!」
 アンジェラさんの指で陰唇を引っ張られつつ、伸ばした輪ゴムをパチンと当てられたような痛みが、性器ギリギリの敏感な皮膚を襲いつづけます。
「はうっ!」
「ううっ!」
 一生懸命抑え込んでいるつもりなのですが、どうしても呻き声が洩れてしまいます。
 からだ中がどんどん疼いてきて、身悶えしちゃいそうになっています。

「セリナさん、タオルを」
 アンジェラさんのお声で小休止。
 モニターを見ると、パックリ開いたピンクの粘膜が懲りもせず、水あめでコーティングしたようにライトを反射して再びキラキラきらめいていました。
 恥ずかしい・・・
 私が見入っているモニターの中で、その部分にタオルがかけられました。

 シーナさまがお部屋からいなくなってから、この場の雰囲気も少し和らいだみたいでした。
 内輪っぽい雰囲気が漂い、私語も増えてきました。
 リナリナトリオのおひとりが、ニヤニヤしながらセリナさんに何か耳打ちしています。
 それを聞いてセリナさんがあらためてモニターに目をやり、それから私の顔を窺うように視線を泳がせ、頬を赤らめてうつむきました。
 そんな彼女たちを見ていると、私もあらためて、今の自分の格好と状態の恥ずかしさに、いたたまれなくなってきてしまいます。
 彼女たちは真面目にお仕事をされているだけなのに、私だけ勝手にどんどん発情してしまっているのですから。

 タオルがはずされると、私の性器周辺左側下四分の一くらいの毛が見事に無くなっていました。
 間髪を入れず、アンジェラさんが施術を再開されます。
「あんっ!」
「んんっ!」
 再び呻き始める私。
 声ぐらい出していないと、本当にどうにかなっちゃいそうなほど欲情していました。

 ワックスの位置が段々上に来て、裂け始めのすぐ脇、恥ずかしい肉の芽のすぐ横の毛に塗られ、剥がされたときでした。
 今までより格段に激しい痛みが、全身をつらぬきました。
「ぃたいっ!!」
「キャッ!」
 私の呻きにアンジェラさんの悲鳴が重なりました。

「ごめんなさいっ!」
 上半身をあわてて起こして、アンジェラさんに謝りました。
 思わぬ痛みに反射的に両膝を立てて閉じてしまい、両方の膝頭でアンジェラさんの右の二の腕を強く挟んでしまったようでした。
「いいのよ。心配しないで。痛かったのよね?よくあることよ。逃げ遅れたわたくしがいけないの」
 アンジェラさんがニッコリ笑って、私を見つめてくれます。
「本当にごめんなさい。これからは絶対にがまんしますから、許してください」
 泣きそうになりながら、その目をすがるように見て謝ります。

「大丈夫。ナオコはがまん強いわ。痛さで暴れるお客様もけっこういらっしゃって、それは承知のことですから。今のはわたくしのミスよ」
「みなさんも注意してくださいね。ワックスを剥がしたら、さっとお客様から離れること。これも技術のひとつです」
「予想外の痛みを感じると、お客様のからだは反射的に動いてしまいます」
「とく仰向けの場合は、脚をでたらめに振り上げてしまうかたもいらっしゃいます」
「膝蹴りとか、まともに受けると怪我しちゃいますからね」
「だから、うまく避けることも、一流エステティシャンとして必要なテクニックです」
「なるべく痛みを感じさせないように施術するのが一番なのですけれどね」
 右の二の腕をさすりながら、アンジェラさんがリナリナトリオのみなさんに説明されています。

「でも、あなたたちはまだ慣れていないから、ちょっと危ないかなー?」
 アンジェラさんが私の顔をまだ見つめつつ、思案顔になりました。
「こっちの半分は、あなたたたちに実習してもらおうかと考えていたのだけれど・・・」
 まだ毛が残っている私の性器の右半分の側を指さしながらのお言葉。
「あなたたちが交代で、ナオコの両膝を押さえていてもらえば、大丈夫かしら?・・・」

 同年代くらいの女性たちの手で両脚を押さえつけられ、無理矢理アソコの毛を引き抜かれる私・・・
 アンジェラさんのお言葉を聴いた途端、パーッと屈辱的な妄想が広がり、ゾクゾクが止まりません。

「それでしたらっ!」
 リナリナトリオの中で、一番明るくて快活な感じな、フワフワウェーブヘアが可愛らしい小柄な女性が一歩前に出て来て、アンジェラさんに向かって右手を高く上げました。
 発言したくてしょうがなかったようなご様子。
 大きな丸いふたつの瞳が、好奇心で爛々と輝いているように見えました。

「先ほどのお連れのかたがおっしゃったように、失礼して軽く縛らせていただいたらどうでしょう?」
 溌剌とした明るいお声。
「こちらのお客様、そういうご趣味をお持ちのようですし・・・」
 私の顔に、盗み見るような視線を走らせてから、クスリと小さく笑ったのを聞いて、今まで私が辱めを受けるたびにクスクス笑っていたのは、この人だと思いました。
 今はそのつぶらな瞳を大きく開いて、至近距離からじっと私のアソコを見つめています。
 その全身から、興味津々、という四文字がほとばしっています。

「あら、アリナさんたら、大胆ねぇ」
 アンジェラさんが小さく苦笑いを浮かべ、まだ上半身を起こしたままの私の顔を覗き込んできました。
「ねえナオコ?本当に縛っちゃってもいいの?」
「あっ、はい。もちろんかまいません。縛られるのは慣れていますし・・・」
 服従ポーズのまま小さくお答えしたら、アリナさんがまたクスッと笑いました。
 私は、余計なことを言っちゃった、って真っ赤になりつつも、思いもよらない展開にドキドキが治まりません。

 まさかこんなところで縛られちゃうなんて・・・
 それも今日会ったばかりの女性たちの目の前で・・・
 その上、ビデオで記録のオマケつき・・・
 きっと今の私は、マゾ顔全開のはずです。

「そうねえ・・・でもうちにはそういう種類のロープとかないし。マダム・ワカバヤシのときはいつもミス・シーナがご持参されるから」
 シーナさまってば、やっぱりここで、そういうこともやってらしたんだ・・・
「荷造り用のビニールヒモでは、何て言うか、エレガントではないわよねぇ・・・」
 アンジェラさんがまた思案顔になると、すっごく嬉しそうなお顔のアリナさんがまた、右手を高く上げました。
「はい!あたしいいもの知っています。確かコスメのお部屋に、サニタリーの業者さんからモニターでいただいた包帯がたくさんあったはずです。あたし、取ってきます!」
 弾んだお声でそうおっしゃると即座に、タッタッタとお部屋を出て行きました。

「包帯ね。それはいいわ。包帯ならお肌も傷つかないし」
 アンジェラさんが私を見ました。
「本当にいいのね?縛っちゃうわよ?」
 イタズラっぽく聞いてきました。
「は、はい・・・お願いします・・・」
 私はゾクゾク感じながらお答えしました。
「ひょっとして、嬉しいの?」
「は、はい・・・」
 私にもはや理性は残っていません。
 恥辱の快感に、身も心もどっぷり浸りきっていました。

 アリナさんが包帯のロールを両手一杯に抱えて戻ってきました。
「これだけあれば足りますよね?」
 本当にすっごく嬉しそうです。
「包帯だったら、マリナさんがお得意だったわね?お願いできるかしら?」
 アンジェラさんからマリナさんと呼ばれた女性、ショートカットで理知的なお顔をされた、細身でちょっぴりボーイッシュな感じの美人さん、が、はい、と答えて近づいてきました。
「この人もね、看護師の免許をお持ちなの。整形外科の病院に2年くらい勤めていらっしゃったのよね?」
「はい」
 涼しげなお声でお答えになるマリナさん。
 これでお三人のお顔とお名前が一致しました。

「このままの姿勢で固定すればよろしいですか?」
 マリナさんがアンジェラさんに尋ねています。
 私は、上半身は起こしていますが、下半身は自発的にさっきまでの姿勢、足の裏をペッタリくっつけて、両膝を内腿とふくらはぎがくっつくまで折り、左右ほぼ水平にまで開いた形、に戻っていました。
 したがってアソコはまた、パックリ開きっ放しです。

「そうね。ナオコがそれでいいのなら。どう?ナオコ」
「はい・・・大丈夫です・・・お、お願いします・・・」
アンジェラさんを見て、それからマリナさんを見ました。
「わかりました」
 薄く笑ったマリナさんが、包帯のロールを片手にツカツカと私の足元まで移動しました。
「失礼します」
 言うや否や、ペッタリと合わせた私の足の左右の甲を、やんわりと捕まれました。
「背中を下ろして仰向けに戻ってください」
 言われた通りにふわふわタオルに再び背中を預けました。

 寝そべると同時に私の両足首が持ち上げられました。
 腰が浮いて、お尻を宙に突き出す格好になります。
 マリナさんの視線のすぐ前に、私のお尻の穴があるはずです。
 その状態のままマリナさんが手際良く、私の両足首から下をひとつにした形で、包帯でグルグル巻きにしていきました。

 両足のかかとから爪先までが包帯の白いひとかたまりとなって、まったく動かせなくなりました。
 その包帯は、普通のものより少しザラザラしている感じで、とくに何もしなくても巻いただけでくっついちゃう仕様のようでした。
 その感触に、そう言えば以前、こういう仕様の赤いテープで、やよい先生に拘束されたことがあったなあ、なんて唐突に思い出しました。

 足先が終わって、今度は膝の固定です。
 まず左脚。
ふくらはぎと内腿をピッタリくっつけたまま、太腿から脛のあたりまでを包帯でグルグルひとくくりにされました。
 同様に右脚も。
 これで私の両脚は、膝を折ったままの、ほぼ全開状態に固定されました。

「ちょっと両脚を閉じようとしてみていただけますか?」
 マリナさんのお言葉で両脚に力を入れ、膝を閉じようと試みます。
 でも、両足首ががっちり固定されているので、太腿がいくらか内側に動くくらい。
 閉じることなど出来ません。
 これでもう、いくら痛くても、両膝で施術のかたを挟んでしまう心配はないようです。

 だけどマリナさんは、なんだかまだ不満そう。
「やっぱり、少し動いちゃうわね・・・」
 独り言のようにつぶやきました。

「この後、Vラインもつづけてやってしまうのですよね?」
 マリナさんが今度はアンジェラさんに尋ねました。
「そうね。一気にやってしまいましょう」
「それだったら、ちょっとくらい包帯が緩んでも動けなくしておいたほうがいいですよね・・・」
 マリナさんの冷静なお顔は、私にはとてもエスっぽく見えました。

 少し考えてから、マリナさんがおもむろに、包帯を数メートルずつに切り始めました。
 そして、それらを束ねて縄のように縒ってから、まず曲げた左膝の内側の隙間から通し、その端をベッド下のパイプに括り付けました。
 私の折り曲げた左脚は、ピンと張りつめた包帯のロープでベッドにベッタリと固定され、敷かれたタオルから離れることが出来なくなりました。
 同じように右膝、そして、ひとつに括られた両足先もベッド下のパイプに繋がれました。

「痛くないですか?」
 マリナさんが、お仕事中の看護婦さんそのものなクールなお声で聞いてきます。
「ぁ、はぁぃ・・・」
 自分の下半身がどんどん動かせなくなっていくことに、眩暈しちゃうほどの陶酔を感じていた私は、いやらしいマゾ声でうなずきました。

「今、縛っていて思いついたのですが、こうするともっと施術がしやすくなると思います」
 マリナさんがアンジェラさんに向けておっしゃってから、今度はセリナさんのほうを向いてつづけました。
「セリナさん、あそこの戸棚から毛布を一枚、持ってきてくださる?」
 セリナさんがタタッと駆け出し、すぐに毛布を抱えて戻ってきました。
「ううん、たたんだままでいいの」
 毛布を広げようとされたセリナさんを制します。

 マリナさんはその毛布をさらに、大きめな枕くらいの大きさにまでたたんでから、ちょっと失礼、と、私の腰のあたりのふんわりタオルの下に手を潜り込ませ、私の腰を持ち上げて、その隙間に折りたたんだ毛布を挿入しました。
 その結果、差し込まれた毛布によって私の腰は以前より10センチくらい浮き上がり、背中が若干弓反りな姿勢になっていました。
 仰向けに寝そべっている私から見ると、中空に自分の下腹部が突き出され、その先が見えない状態。
 必然的に傍から見れば、剥き出しの股間を高く突き出すような格好になっているはずです。
 腰の位置が高くなったおかげで、両脚を繋ぐ包帯ロープの張力も増して、膝の内側にいっそう食い込み、被虐感を煽ってきます。。
 私の下半身は、すっごく恥ずかしい状態で完全に拘束されてしまいました。

 小野寺さんのカメラが私の今の状態を、足元からゆっくり舐めるように映してくれています。
 
 真っ白な包帯で固められた両足先。
 両膝を折り曲げたまま全開でベッドにくくりつけられた両脚。
 これみよがしに高く突き出された、施術途中の毛が残る、開いて濡れそぼったアソコ。
 薄い毛が翳る土手部分から下り坂になり、縦に伸びたおへそ。
 仰向けのために若干左右に垂れ下がり気味なふたつの乳房。
 相変わらず天を衝くふたつの乳首。
 マゾの服従ポーズの両腋には汗が滲んでいます。
 首に巻かれたメス犬マゾな証の赤いチョーカー。
 そして、恥辱の興奮に歪む、私の真っ赤な顔。

「あらあら、スゴイ格好になっちゃたわねえ、ナオコ」
 アンジェラさんが少し呆れたようなお声でつぶやきました。
「でも白い包帯っていうのはいいわね。なんだかフェティッシュで。ゾクゾクしちゃうくらいエロティックだわ」
 アンジェラさんの右手が私の足先の包帯をそっと撫ぜました。

「それにしてもマリナさん、あなた手際がいいわね?感心しちゃった」
「あ、はい。わたしも以前の職業柄、SMとか興味あったので、看護師時代に少し研究しました。看護師には多いですよ。その手の人」
 照れ臭そうにおっしゃるマリナさん。
「あ、でもわたしは、あくまでもエスのほうですから」
 お口の端をクイッと上げたクールな微笑を私に向けながら、マリナさんがそう付け加えられました。
 やっぱり、と思いました。


コートを脱いで昼食を 21


2013年11月10日

コートを脱いで昼食を 19

 お尻をされていたときは、ずっとうつぶせだったので、アンジェラさんたちがどんなご様子で、どんな表情で私の恥ずかしい姿をご覧になっていたのか、わかりませんでした。
 逆に私も、施術でお尻を弄られて感じてしまい、いやらしく歪んでいたであろう自分の表情を、みなさまに見られずにすんでいました。
 それが、ある意味救いでもあり、ある意味物足りなくもありました。

 今度は仰向け。
 否が応でもアンジェラさんたちとお顔をつき合わせて、お互いの反応を目の当たりにしながら施術を受けることになります。
 仰向けになれば、尖っている乳首も淫らな表情も隠せません。
 アソコの周辺の施術ですから、それなりの格好にもさせられるでしょう。
 溢れるほどの蜜をたたえたその部分を、さらけ出さなくてはいけなくなるはずです。
 お尻のときに間近でご覧になっているとはいえ、アンジェラさんたちは、そんな私を見てどんな反応を示されるのでしょう?

 お尻の施術で蓄積された欲情は、一刻も早い昇華を望んでいました。
 こんな状態でアソコを弄られたら・・・
 もちろん出来る限りはガマンするつもりですが、まったく自信はありません。
 きっとお尻のとき以上に、はしたなく身悶えてしまうはずです。
 私がいやらしく悦ぶ姿を、正面から間近で、みなさまに見られてしまうことになるでしょう。
 私のドキドキは最高潮。
 視て欲しいけれど、でもやっぱり恥ずかしい・・・
 はい、と答えはしたものの、からだを反転させることを躊躇していました。

「アイ部分というのは、アヌスからヴルヴァの先まで、ヴァジャイナの左右ラビアを含む直線的な部分です」
「アヌスからヴルヴァの端までは、日本語だと、会陰とか蟻の門渡り、なんて言い方もあるわね」
「この部分は全体に皮膚がやわらかく、また、性器というからだの中で一番プライヴェートな箇所でもありますから、女性にとって肉体的にも精神的にも一番デリケートな領域です」
「その部分に触れての施術となりますし、痛みを感じるお客様もこの部分の施術が一番多いので、あらゆる面で細心の注意と心配りが必要です」
「ヘアの生え方の流れも、部位によって細かく異なります。ですからまず、じっくり観察することです」

 アンジェラさんが研修のお3人にご説明されているあいだ、小野寺さんが近づいてきて、私の頭のところにあったテレビモニターをベッドの左側に移動されました。
 仰向けになっても私がモニターを見られるように、というご配慮でしょう。
 今度はあのモニターに、私のアソコが大写しになるんだ・・・
 うつぶせのまま枕にギューッと顔を押し付けていたら、アンジェラさんからお声が掛かりました。

「恥ずかしがる必要はないのよ?ミス・ナオコ。あなたのからだは綺麗だもの。この子たちもみんな、ずっと羨ましそうに見ていたわ」
「感じたら感じるままでいいから、だから、さ、早く仰向けになりなさい?」
 アンジェラさんの手が私の背中に触れました。

「は、はい・・・」
 意を決して、両手で顔を覆って隠してから、思い切ってからだを反転し、仰向けになりました。
 みなさまと視線を合わせるのが、なんだかきまりが悪くて、とても怖かったのです。
 勢いが良すぎて、おっぱいがブルルンと派手に揺れました。
 顔を覆う両手の肘で、ふたつの乳首を押し潰すように隠し、もちろん両脚もピッタリと揃えています。

 すかさずシーナさまから冷たいお声が降り注ぎました。
「何をいまさら顔とおっぱい、隠してるのよ?直子は視られたがりのマゾでしょ?マゾの両手は頭の後ろよっ!」
「直子がえっちにサカっちゃっているのは、もうみんなわかっているんだから、さっさと言われた通りになさい!」
 ポインターペンで手の甲をつつかれ、仰向けでの、マゾの服従ポーズ、のご命令。
 あーん、もうどうにでもしてくださいーっ!
 開き直り気味に観念して両手を顔からはずし、腹筋運動をするときみたいに後頭部にあてました。

 アンジェラさん、リナリナトリオのお3人、蘭子さん、シーナさまが、ベッドを取り囲んで私を見下ろしていました。
 仰向けから見上げると、どなたのお顔も翳り気味で、みなさん、薄いニヤニヤ笑いを浮かべでいるように見えました。
 気分はまさに、淫らな生体実験の被験体、囚われの慰み者・・・
 羞恥と被虐感で胸が張り裂けそうです。

 不意にベッド脇のモニターが明るくなり、横目で追うと、私の顔が映っていました。
 これはつまり小野寺さんの視線。
 しばらく私の顔を映してからゆっくりと外れたカメラは、首筋を通って両腋を映し、右のおっぱいで止まりました。
 天を衝くように隆起しているラズベリー色の大きめな乳首にズームしてしばらく留まった後、左の乳首に移りました。
 それからおへそを通過して、まばらに陰毛の生えた土手へ。
 私のからだを、文字通り隅々まで舐めまわすこの映像は、全部記録されているんだ・・・
 見知らぬ人たちに、私のその部分を見せるために・・・
 そんなことを考えていたら、アソコの奥から、淫らな欲求がキュンキュン渦を巻いて湧き上がってきます。
 ああんっ!
 被虐な妄想が止まりません。

「はい。それでは I 部分の施術に入りましょう」
 アンジェラさんの一声で、妄想が途切れました。
 ベッドの左側、私の腰のあたりにアンジェラさんと研修のお3人、その対面右側にはビデオカメラを構えた小野寺さん。
 シーナさまと蘭子さんは、足元のほうに立ち、まっすぐに私を見下ろしています。

「ミス・ナオコ?そんなに脚をぴったり閉じていたら、施術出来ないわ」
 アンジェラさんが、からかうみたいな笑みを浮かべておっしゃいました。
 ビクン!
 いずれアソコをみなさまにお見せするような格好にならなくてはいけない、と覚悟はしていましたが、とうとうそのときがやって来てしまいました。
 どんな格好にされるのだろう?
 ドキドキしていたら、またおツユが・・・

「わたくしの言うとおりのポーズにおなりなさい」
 アンジェラさんの口調が、なんとなくご命令ぽくなってきている気がしました。
「左右の足の裏をペッタリくっつけるの。爪先からかかとまで、ペッタリとね」

 一瞬、おっしゃた意味がわかりませんでした。
 足の裏をくっつける?
 そんなことだけでいいのかしら?
「は、はい・・・」
 お答えして、実際にそうしようと脚を動かし始めたらすぐ、気がつきました。

 足の裏を向き合わせるためには、両脚を横向きにしなければなりません。。
 そうして足裏を合わせようとすれば、膝を左右とも外向きに曲げなければならず、ペッタリ合わせようとするほど、より深く曲げることになります。
 必然的に両太股が割れて、その交差部分のスジも開いてしまいます。
「ぁんっ!ぃやん」
 仰向けで、両脚の膝だけ45度くらいずつ曲げています。
 足の裏をペッタリ合わせるために、両脚で菱形を形作っているような格好になりました。

 下半身の小さく割れた唇から、ようやく出口をみつけた洪水がトロリとお尻の穴のほうへと滴り、タオルに吸い込まれていきます。
 その粘液の感触で、施術したての無毛なお尻の穴がくすぐったい。
 アンジェラさんたちの目は、そこに釘付け。
 モニターにももちろん、蜜が滴る唇がアップで映っていました。
 いやっ!恥ずかしすぎるっ!
 一刻も早く隠したいけれど、両手は頭の下なので隠すことは出来ません。

「はい。良く出来ました。でももう少し開いていただけるかしら、ミス・ナオコ?」
 アンジェラさんが私のソコを覗き込むようにしながら、おっしゃいました。
「両足をくっつけたまま、もっと腰のほうへ近づけるの」
「えっ?」
 戸惑いつつも、お言いつけ通りにしてみます。
「んっ!」
 足のかかとがお尻に近づくと、両腿がいっそう広がります。
「もっと!」
「んっ!」
「もっとよ!」
「ぁぁーんっ!」

 両腿がほぼ180度に開いていました。
 膝の関節は閉じたコンパスのように、ふくらはぎと内腿がピッタリくっついた状態。
 その状態で左右にほぼ全開しているので、両腿の交わり部分もパックリとお口を開けっ放しになってしまいました。
「ちょっと辛いかもしれないけれど、そのポーズをキープしておいてね」
 アンジェラさんが私の開かれた部分をまじまじと見つめつつ、おっしゃいました。

「それにしても本当に、お綺麗なヴルヴァよねー。肌と一緒で真っ白だし、余計なものが一切はみ出ていないわ」
「これ、ヘア処理したら一直線でしょ?プックリしていて、まさにキャメルトゥね。艶かしいわ」
「ヘアは少ないから、施術はイージーね。セリナさん、タオル取ってちょうだい」
 セリナさんと呼ばれた、リナリナトリオで一番背が高いワンカールボブの子が、あわててタオルを差し出しました。
 その小さくて綺麗なお顔が、真っ赤に火照っていました。

「ミス・ナオコ、ちょっと失礼するわよ?」
 アンジェラさんがおっしゃりながら、タオルで私の股間を塞ぎました。
「あんっ!」
 不意の感触に思わず声を上げてしまいます。
「あら、可愛いらしいお声だこと。感じやすいのね?」
 そのまま中の粘膜を擦るように、溜まった蜜を拭っています。
 私は一生懸命、はしたない声をガマンします。

「だけどこんなにビシャビシャだと施術しにくいから、ね?」
「ねえミス・ナオコ?これって、さっきのアヌスでの施術で感じてしまったからなの?」
 アンジェラさんが、まだ私の股間をさすりながら尋ねてきます。
「あっ、それは、えっと・・・」

「それもあるけれど、この子は視られていること自体でも感じちゃうのよ。ね、直子?」
 シーナさまがお口をはさみました。
「でも、わたくしたちは同性じゃない?恥ずかしさは、それはあるでしょうけれど、ここまでセクシーな気分になってしまうもの?」
「だから直子は、そういう子なのよ。同性に恥ずかしい格好を視られて、虐められて、辱められるのが大好きなの。ちなみにオトコは一切NG」
「あらぁ、そうなの。それならひょっとして、ここには、殿方のアレは、一度も入ったことがないのね?」
 アンジェラさんのタオルが、より奥へ入ってきました。
「ぁふんっ・・・」
 ザラザラとしたタオル地で粘膜を擦られ、喉元からせり上がった吐息で唇が開いてしまいました。

「そう。なのにこんなに淫乱だなんて、なかなかレアでしょう?それが直子っていう女なのよ」
「そうなの。でもそれはそれでステキだわね。女性限定のイジメられっ子さんかー。なんだかわたくしも、このからだを触っていたら、虐めてみたくなってきたもの」
 アンジェラさんが笑いながらおっしゃり、タオルが股間から離れました。
 私は、おふたりの会話にいたたまれなくなって、今すぐこの場を逃げ出したい気持ち。

 使用済みのタオルを、アンジェラさんがセリナさんに渡しました。
 セリナさんは、何か不潔なものでも受け取ったかのようにビクビクした感じで、人差し指と親指でつまんだままお部屋の奥に駆け出しました。
 それを見た私は、なんだかひどくみじめな気分。

「さて、それでは施術の準備です。ナオコのヴルヴァはヘアが少ないけれど、しっかり生え方を見極めるために、まずじっくり観察しましょう」
 アンジェラさんは、撮影のジャマにならないようにというご配慮でしょう、その場にしゃがんで、お顔だけを私のソコに近づけています。。
 リナリナトリオは、アンジェラさんの反対側に回り、モニターをじっと見つめています。
 リナリナトリオに挟まれた小野寺さんは、ずーっとビデオカメラを下に向けて、私のアソコをレンズで覗きっ放しです。

「ナオコは、アヌスからヴルヴァまでのあいだには、まったくヘアが無いのね?ツルツルのスベスベ。羨ましいわ」
 アンジェラさんの薄いゴム越しの指が、私の会陰をスーッと撫ぜました。
「ぅぅ・・」
 こぼれそうな吐息を必死でこらえます。
 そして、私の呼び方から、ミス、が消えて、呼び捨てになったことに気がつきました。

「ヴァジャイナを開いて、ラビア周りはとくに念入りにチェックすること。このあたりは、ヒダの内側にヘアが隠れていることが往々にしてありますから」
 アンジェラさんに大陰唇を広げられました。
「ラビアも綺麗だこと。普段からミス・シーナに虐められているとは思えないほど初々しい感じだわ」
 そんなことをおっしゃりながら、執拗に陰唇を引っ張り、ヒダを広げてきます。

「ワックス7~8回ってところかしらね。あらあら、またジュースが溢れてきちゃったわ」
 吐息は必死にガマンできますが、分泌物は止められません。
 モニターに、今まさにトロリと流れ出たおツユがアップで映って、リナリナトリオのみなさんが食い入るように見つめていらっしゃいます。
 画面上部には、とっくに皮が剥けて飛び出してしまったグミのような突起物が映りっぱなしで、恥ずかしすぎます。

「それにクリットをこんなに腫らしちゃって、痛々しいくらいね?わたくしがヴァジャイナを触っているの、そんなに気持ちいい?」
「ほら直子?お答えしなさい!」
「は、はい・・・気持ちいです・・・ごめんなさい・・・」
「あらー、謝らなくてもいいわ。それに気持ち良いのならお声だって、がまんしてなくていいのよ?」
 アンジェラさんの指は、クリトリスだけには決して触れず、大陰唇や小陰唇を引っ張りまわしています。
 欲求が満たされないモヤモヤとした憔悴感で、私は気がヘンになりそう。

「ここを虐めるのは、全部終わってから、ね?」
「あうっ!」
 最後の最後に肉芽を指で軽く弾いて、アンジェラさんが立ち上がりました。

「さあ、それでは・・・」
「さてと・・・」
 アンジェラさんとシーナさまのお声が重なりました。
「あっ、ごめん、アンジー」
 シーナさまがツカツカと私の顔のところまで来て、つづけます。

「アンジーも直子の扱い方がわかってきて、調子が出てきたようだから、わたしは別室で蘭子さんに天国に連れて行ってもらうことにするわ」
「マッサが終わる頃には、直子のソコもスッキリしている頃でしょう?」
「もしも直子が言うこと聞かなかったり、クネクネ身悶えてやりにくかったら、遠慮なく縛りつけちゃっていいからね」
「この両膝と足を縛っちゃえば動けなくなるし、M字でもまんぐり返しでも、施術のしやすいようにしちゃっていいから、そのほうが直子も悦ぶし」
「脱毛も、研修のあなたたちが実際に練習されるといいわ。少しくらい間違えて痛くなっちゃっても、この直子にはそんなの、気の利いたスパイスだから」
「でもそのたんびにいやらしいおツユが溢れて、もっとやりにくくなっちゃうかもしれないけれどね」
 リナリナトリオのみなさんも、もはや遠慮無く、キャハハって大きく笑いました。

「この後の様子は、後で小野寺さんから未編集のビデオで見せていただくわ」
「くれぐれも紹介者のわたしに恥を掻かせないように、マゾはマゾらしくしていること。わかってるわね?直子?」
 シーナさまが私の左乳首をギュッとつまんで捻りました。
「あうぅっ!・・・は、はいっ・・・シーナさま・・・」

「それじゃあ行きましょうか?蘭子さん」
 シーナさまと蘭子さんが連れ立って、お部屋から出て行かれました。


コートを脱いで昼食を 20


2013年11月3日

コートを脱いで昼食を 18

「それではまずO部分から始めましょう。ミス・ナオコ、ちょっと失礼するから、からだの力を抜いていて」
 アンジェラさんがうつぶせの私の両腿のあいだに、やんわりと両手を差し込んできました。
 アンジェラさんの両手のひらで膝の辺りから左右へ押し開くようにゆっくりと押され、ピタッと揃えて閉じていた私の両脚が40度くらいに開かれました。

「オー部分とは、アヌスの周辺です。アヌスを中心にOの字状の施術になるのでこう呼ばれます」
 私の目の前のモニターに、私のであろうお尻が再び大写しになりました。
 両脚を開かれてしまったので、すぼまったお尻の穴まで丸見え。
 その部分がモニターの真ん中に映っていました。
 これはつまり、ビデオカメラを覗いている小野寺さんが、私のその部分をじっと凝視しながら映しているということでしょう。
 ものすごい恥ずかしさが全身を駆け巡りました。

「このO部分と I 部分は、お客様ご自身ではお手入れしにくい箇所ですから、入念にケアしてあげてください」
「大切なのはまず、その部分をよく観察することです。ミス・ナオコ、失礼してお尻を触らせてもらいますよ?」
「は、はい・・・」
 モニターに映る自分のお尻の穴を見つめながら、私は羞恥で消え入りそうです。
 アンジェラさんの極薄ゴム手袋に包まれたひんやりとした両手が私のお尻のワレメにかかり、その部分をゆっくり左右に押し広げました。
「あぁん・・・」
 お尻の穴周辺の皮膚が左右に引っ張られる感触と共に、モニターの中で、すぼまっていた私の肛門がまあるく小さくお口を開けました。

「今回のお客様は、全体にヘアが薄くていらっしゃるので、施術がしやすい例ですが、お客様の中には、この部分にも太いヘアが密集していらっしゃるかたなどもいらっしゃいます」
「毛足が長すぎる場合は、あらかじめハサミで切ります。15~20ミリくらいが理想ね」
「ヘアの密度によってワックスを塗る面積と回数を変えたり、ワックスそのものの種類を選んだり、といった判断が必要になってきます」
「炎症や傷、ホクロの有無などもしっかりチェックしてください」

 カメラが後ろに引いて今は、私のお尻を覗き込んでいる数人の後頭部が映っています。
 みなさまが、私の押し開かれたお尻の穴を、じーっと見つめている・・・
 うぅっ、恥ずかしい・・・
「このようにアヌスのシワのところにヒョロっと生えているヘアも見落とさないように。それにしても綺麗なアヌスだわー」
 いやんっ!
 アンジェラさんのお言葉の前半部分に、いたたまれないほどの羞恥が駆け巡りました。

「ミス・ナオコは、ここの部分もご自分で処理されているのでしょう?カミソリで、よね?」
「は、はい・・・」
「鏡に映したとしても大変よね。ほとんど手探り状態でしょ?」
「はい・・・」
「だめよ。もったいないわ。カミソリで剃るっていうことは、どんなに注意深くしても角質層も削ってしまうから、回数を重ねるほど色素沈着して、やがて黒ずんできてしまうものなの」
「せっかくこんなに白くて綺麗なお肌にピンクのアヌスなのだもの、カミソリは使わないほうがいいわ」
 アンジェラさんが私のお尻の穴を左右に押し広げたまま、やさしくおっしゃいました。

 小野寺さんのカメラは再び私のお尻に寄り、モニターに、短い毛がまばらに生えた私のその部分が鮮明に映っています。
 みなさま、どんなお顔でソコを視ているのだろう・・・
 うつぶせなので、タオルに押し付けられてひしゃげているおっぱいの、その先端が痛いほど尖ってムズムズしてきました。

「ねえアンジー?いっそ四つん這いにさせてお尻を突き上げさせちゃったほうがやりやすくない?」
「遠慮しなくていいわよ?直子はそういうの、慣れているから、メス犬スタイル」
 足先のほうからシーナさまのお声。
「それもそうなのだけれど・・・、でも、ほら・・・」
 モニターには私のお尻しか映っていないので、足先のほうでどんな仕草がされたのかはわかりません。
 リナリナトリオのうちの誰かがクスリと笑ったのが聞こえました。
「そうね。あんまりソコを開いちゃうと面倒そうね。そのままの格好でタオルに吸わせちゃったほうがいいかも」

 シーナさまの、苦笑混じりのそのお言葉で理解しました。
 モニターを見ればまさしくその通り。
 お尻の穴を押し開かれているので、そこから数センチ離れた亀裂の周りの皮膚も引っ張られ、中身が少し覗いていました。
 その少し開いた唇の端に、いやらしいよだれがたっぷり溜まり、ライトにキラキラ反射していました。
 もしも今、四つん這いにさせられて同じようにお尻の穴を押し広げられたら、亀裂からよだれをポタポタ、タオルに滴らせてしまうことでしょう。
 こんな仕打ちを受けている私が性的に興奮していることは、誰が見ても一目瞭然。
 恥ずかしさで爆発しそうな私は、モニターから目をそらし、真っ赤になった顔を枕に埋めました。

「それでは施術に入りましょう」
 アンジェラさんは、いつのまにかマスクを着けたようで、お声が少しくぐもっています。
 アンジェラさんの両手が私のお尻から離れて、ホッと一息。
 でもすぐに、アンジェラさんが私に、ものすごく恥ずかしい行為を要求してきました。

「ミス・ナオコ、悪いのだけれどちょっとご協力をお願いしたいの」
「あ、はい?・・・」
「施術のあいだ、さっきわたくしがやっていたみたいに、ご自分の手でアヌス周辺の皮膚を引っ張っていて欲しいのよ」
「えっ!?」
「ヘアを抜くときは、皮膚が張っていたほうが痛みが少ないのね。痛くないほうがいいでしょう?」
「無駄な力は抜いてリラックスした感じでお願いね。ほんの数分だから」

 自分で自分のお尻の穴を広げていろ、っていうことです。
 私の羞恥心は、恥ずかしさなどとっくに通り越し、被虐の愉悦へと姿を変えつつありました。
「わ、わかりました・・・」
 恥辱まみれな今の自分の状況に酔い痴れながら両手を背中へ回し、自分のお尻に両手を添えて左右に広げます。
 ああっ・・・
 自らの手で押し広げた肛門が、モニターにアップで映りました。
 私の被虐メーターが振り切れました。

「まずはウェッティで施術箇所を消毒。それからワックスの塗布と剥離をくりかえします。ヘアの生え方の流れを見極めること」
「一度施術した箇所に再度の塗布は厳禁です。取り残しがあれば後にトゥイーザーで取り除きます」
 アンジェラさんが研修のお3人に説明しつつ、ひんやりしたウエットティッシュみたいのが私のお尻にあてられました。

 もはや私はマゾ性のかたまり。
 辱めは、すべて気持ちいいことに変換されていました。
 モニターに映った自分の手で押し広げた肛門周辺の恥ずかしい映像を、まるでお気に入りのえっちビデオを観ているみたく、瞬きもせずに凝視していました。

 アイスのキャンディバーの棒のようなヘラですくいとられた水あめみたいな半液体状のもの、おそらくこれがワックスなのでしょう、が、私の肛門周辺に数センチくらい塗られました。
 じんわりと温かい。
 なんだか官能的な温かさです。
 すぐに、剥がしますよ、というアンジェラさんのお声と共に、白い紙を持ったアンジェラさんの手がフレームインしてきて、ワックスを塗った箇所にあてがわれ、ペリッとワックスが剥がされました。

「ぁあんっ!」
 思わず声が出てしまいましたが、毛を抜かれる、ということで予測していたほど、激しい痛みではありませんでした。
 どちらかと言えば、私が好きな種類の痛み・・・

 それからのアンジェラさんは無言で、塗っては剥がしをテンポ良くつづけていました。
 剥がしますよ、ってお断りされたのは最初だけで、温かいな、ペリッ!、が小気味良いスピードでくりかえされました。

 私は、ワックスが剥がされ、毛が抜ける小さな痛みを感じるたびに、
「んっ!」
「あんっ!」
「はんっ!」
「うっ!」
 と小さく吐息を洩らしていました。
 それは決して痛みによる苦痛の呻きではなく、紛れもなく官能的な理由による、悶え、でした。

 モニターで、私のお尻周辺の毛が徐々に無くなっていくのを見ながら、ワックスが剥がされ毛が抜かれるときに感じる小さな痛みの刺激は、ローソクプレイのときの熱いロウがもたらす刺激に似ている、と感じていました。
 素肌にロウを垂らされたときの、あの一瞬の痛み。
 度重なるごとに、いつしかもっともっとと求めてしまう不思議な苦痛。
 その感覚を思い出した途端、吐息を抑えることは出来なくなっていました。
 心の中で、もっと・・・もっと強く、ってアンジェラさんにお願いしていました。

「はい、これで終わりね。残ったワックスを拭き取ってクールダウンしましょう。ひとまずお疲れさま、ミス・ナオコ」
 お尻が再びウェットティッシュみたいなもので丁寧に拭われ、ローションみたいなものも塗られました。
 そうして、モニターに映った私の肛門周辺は見事にツルッツル。
「もうお尻広げてなくていいわよ?」
 アンジェラさんの笑い混じりなお声に、あわてて手の力を緩めました。

「最後に取り残しがないか、チェックね。ルーペをちょうだい。もしあればトゥイーザーで丁寧に抜きます」
 モニターにアンジェラさんの後頭部がにゅっと入ってきて、モニターが真っ暗になりました。
 再びお尻の皮膚が引っ張られるのを感じると、カメラが引いたらしく、アンジェラさんが私のお尻に覆いかぶさるようにお顔を近づけて、私の肛門周辺を覗き込んでいる後姿が映りました。

「ほらあった。こういうところが見落としがちなのよ」
「アヌスのシワのあいだに2本。一応撮影しておきましょう」
 アンジェラさんのお声で、モニターが真っ暗になりました。
 あれ?と思う間もなく、モニターに明るさが戻りました。

 今度は、ルーペ越しの映像でした。
 私のお尻がまたまた押し広げられ、その上に誰かがルーペをかざし、さらにその上からカメラが映しているようでした。
 モニターいっぱいに私の肛門のドアップ。
 シワシワの一本一本から中の粘膜まで鮮明な、まさに菊門と呼ぶべきその姿かたち。
 まあるく肛門を飾るシワの上部外側に1本、左側のシワに隠れるように1本、極短い毛先が覗いていました。
 ピンセットの先のようなものがフレームインしてきて、まず1本めが手際よく抜かれました。
 抜かれる瞬間に、私は、ぃやんっ、と喘ぎ、肛門がヒクっと動き、アソコの奥がゾクッと潤みました。
 2本目のときも、まったく同じ。
 私はもう、とにかく、いてもたってもいられない気持ちで、気がヘンになりそうなくらい発情していました。

 その2本を抜いたところで、私のお尻への施術は終了のようでした。
 足元のほうにいるみなさまの緊張が解け、少しのあいだコソコソとリナリナトリオのみなさまがおしゃべりしているようでした。
 私はうつぶせの枕に顔を埋めて、フゥーッと大きくため息。
 疼くからだの欲求不満に、からだが弾けてしまいそう。

 パンッ!
 アンジェラさんが一回、アテンションの拍手をしたようで、みなさまのコソコソが収まりました。
「さて次は I 部分に移りますが・・・」
 そこまでおっしゃって、アンジェラさんが少し黙り込みました。
 モニターは真っ暗になっていて、足のほうにいるみなさまがどんなご様子なのかはわかりません。
 私は、一行程終わってしまった寂しさを感じつつも、次は何をされるのかという期待にドキドキムラムラしていました。

「今日はビデオ撮影もしているし、ミス・ナオコがそういうかたなので、何て言うか、ちょっとヘンな雰囲気になってしまっているけれど・・・」
 アンジェラさんのお話が再び始まりました。
「普通のお客様との施術のときは、世間話などをしながら明るい雰囲気で、なるべく施術でお客様が感じる恥ずかしさとか痛みから、意識を逸らして差し上げられるように気配りする必要があります」
「はいっ!」
 リナリナトリオの元気良いお返事。
「今日のように、施術中にセクシーとなムード言うか、性的な昂ぶりをお感じになられてしまうお客様もたまにいらっしゃいますが、そういうかたにも極力普通に、気づかないフリをして接して差し上げるのが無難です」
「はいっ!」

「だけど直子みたいに露骨にアンアン喘がれちゃうと、アンジーたちもやりにくいでしょう?」
 笑いを含んだシーナさまのイジワルいお言葉に、私はカーッ、リナリナトリオはクスクス。
「いいえ。わたくし、ミス・ナオコみたいな女性も好きよ。そういうお客様には、そういうおもてなしも出来るの、わたくしのサロンなら」
 アンジェラさんが枕側にツカツカと歩いていらっしゃいました。
「心配いらないわ、ミス・ナオコ。あなたは感じたままの自然体でいればいいの。すべてわたくしたちにまかせて、ね」
 アンジェラさんが私を見下ろしながら、おやさしい口調でおっしゃってくださいました。
「はい・・・」
 アンジェラさんのほうに首をひねって見上げると、アンジェラさんはマスクをはずされて、ニッコリ微笑まれました。

「それでは施術をつづけるわね。ミス・ナオコ、今度は仰向けになってくださる?」
「あ、はい・・・」
 どこが、とは言えませんが、アンジェラさんの私に対する物腰が、少し変化したような気がしました。


コートを脱いで昼食を 19


2013年10月27日

コートを脱いで昼食を 17

 お部屋の入口でサンダルを貸していただき、ゴージャスな応接室をいったん出て、ホテルのフロントみたいなエレベーターホールを横切ります。
 もちろん私だけ裸のまま。
 右手をシーナさまに引かれ、左手に持ったタオルでアソコを押さえて歩く自分の姿が、明るい廊下を飾るお洒落な鏡や窓に映り、無性に恥ずかしくなりました。

 いくつか並んだドアのうちのひとつを、シーナさまが迷わず開けました。
 どうやらそこが、アンジェラさんがおっしゃっていたゲスト用のドレッシングルームのようです。
 応接室ほどゴージャスではないですが、明るい空間に品のいいドレッサーやチェスト、テーブルなどがセンス良く置かれていました。

「みんなに視られながら裸になったご感想は?キュンキュン感じちゃったんでしょ?」
 シーナさまは、みなさまといたときの雰囲気とは打って変わって、なんだかご機嫌良さげに、愉しそうに尋ねてきました。
「えっ、えっと、すっごく恥ずかしかったです・・・」
「でも直子、そういうの大好きじゃない?わたし、このアイデア思いついたとき、直子なら絶対悦ぶ、って確信していたんだ」
「初対面の綺麗な女性が6人も、じーっと視ていてくれたんだものね?直子にとっては、夢のようだったでしょう?」
「・・・」
 私はうつむいたままモジモジ。

「そう言えば、あのリナリナトリオの中にひとり、直子のご同類がいたようね?」
「気がつかなかった?直子のこと、すごく羨ましそうに、頬を真っ赤に染めて食い入るように視ていた、向かって右端の子」
 私は顔を上げ、シーナさまを見つめながら小さく首を横に振ります。
 私に、そんなことに気がつくような、そんな余裕があるワケがありません。
 研修のかたたちのお顔も、どのかたがどのお名前だったかも、まったく覚えていませんでした。
 それどころか、ご紹介いただいたお名前さえも。
 マリナさんとサリナさん?あれ?カリナさん?あれ???

「あの子は絶対Mっ子ね。直子に感情移入しちゃっていたわ」
 シーナさま、とても嬉しそう。
「でもね直子?さっきのなんてまだまだ序の口よ。直子にはこれから、もっともっと恥ずかしい痴態をみんなに晒して、恥辱色に染まってもらうことになるのだから」
「あんっ!」
 シーナさまのポインターペンが私の尖りっ放しな右乳首を軽く弾きました。

「そのガラス戸の向こうがシャワールームだから、首から下をざっと洗っておきなさい」
 ポインターペンで指し示された素通しガラスの向こうを見ると、確かにそこは浴室のようでした。
 大きなガラス戸はまるっきり素通しで、中が丸見えです。
 ふと横を見ると、私がさっき脱いだスーツとブラウスが、ハンガーにきちんと掛けられ、洒落たハンガーラックにぶら下がっていました。
 きっと小野寺さんがしてくれたのでしょう。
 小野寺さんに私が汚したパンティストッキングとショーツをモロに見られたことを思い出し、恥ずかしさがぶり返してきました。

「下半身は中まで、よーく洗っておきなさいよ。これからいろいろ弄られまくることになるのだから」
 シーナさまがニヤニヤしながらおっしゃいました。
「まあ、洗ったところですぐに濡らしちゃうのでしょうけれど、出来る限りはがまんなさい。はしたなく大声とか出して、わたしに恥を掻かせないでよね?」

 バスタオルを床に置き、シャワールームに入ろうとして、気がつきました。
「あの、シーナさま?これははずしたほうが・・・」
 首のチョーカーを指さしながら尋ねました。
「え?ああ、それはそのままでいいわよ。凄く似合っているし、一応防水加工もしてあるはずだから」
「濡れてシミが浮いたりして、見た目が汚らしくなっちゃったとしても、それもそれで直子にはお似合いだし、本当にみっともなくなっちゃったら、また新しいのをあげるから、気にしなくていいわ」

 シーナさまがシャワールームの前まで来て、私の全身をあらためてジロジロ眺めてきます。
「失敗しちゃったなー。直子用にそれに付けるチェーンももう確保してあったのよ。ニップルとクリットとラビアの完全セット」
「オフィスの机の抽斗にずっといれっぱなのよね。持ってくるの忘れちゃったわ」
「帰りはあれ着けてドライブっていうのも良かったわねー。惜しいことしちゃった」
 お言葉の内容ほどは、さほど惜しそうなお顔でもないシーナさまのニヤニヤ笑い。
「ほら、はやくからだ洗っちゃいなさい」

 シャワーをぬるま湯にして、チョーカーをなるべく濡らさないように肌にお湯を当てました。
 ガラス戸の片方は開けっ放しのまま。
 そこからシーナさまが覗き込んでいるので、お部屋のほうにお湯が飛び散らないよう、奥でシャワーを使います。
 下半身は念入りに、というご指示だったので、シャワーを強めにしてアソコとお尻に当てます。
「あっ、もしオシッコしたかったら、そこでしちゃいなさい。これから当分、出来ないから」
 少し尿意を感じていた私は、シーナさまのお言葉を深く考えず、それでも一応シーナさまには背中を向けて、シャワーを出しっ放しのままその場にしゃがみ込みました。
 シャーッ・・・

「あらあら呆れた。直子って、平気で人前でオシッコ姿晒すような女になっちゃたのねー?はしたない子。いくらマゾだからって恥じらい忘れたら、人間おしまいよ?」
「だって・・・あ、いえ、ごめんなさい・・・」
 シーナさまにまんまとノせられた気もしましたが、確かに今の私はシーナさまだからいいや、と思って普通にオシッコしてしまいました。
 言われた途端に、カーッと恥ずかしさが全身を駆け巡りました。
「ま、そのくらいでいいでしょう。あんまりお待たせしたら悪いから出てきなさい。からだ拭いてあげるわ」
 シーナさまは、オシッコのことにはそれ以上深くツッコまれず、新しいバスタオルを持って私を待ち構えています。

 シーナさまにからだを拭いていただくときのふたりの暗黙の了解、マゾの服従ポーズになりました。
 シーナさまが、私の全身の水気を丁寧に拭ってくださいます。
 最後にシーナさまの右手人差し指が、スルッと私のアソコに潜り込みました。
「ぁあんっ!」
「難なくヌルッと入っちゃうわね?まだ中ジュクジュク。まあ仕方ないわね、直子だから」
「アンジェラたち、驚くでしょうね?言ってあるとはいえ、直子の濡れ方は想像以上だから」
 シーナさまの愉快そうなお声。

「さ、それじゃあそろそろ本番よ。グッドラック、直子」
 パチンと私の裸のお尻を叩いてから、ドレッシングルームの一番奥にあるドアのほうへひとりでスタスタ歩いていかれるシーナさま。
 私もあわてて後を追いました。

 そのドアの向こう側は、何て形容したらいいのか、摩訶不思議で妖しい雰囲気のお部屋でした。
 いの一番に、甘いアロマの香りに全身が包まれました。
 裸足に冷たい大理石の床。
 モーツァルトのピアノ曲が小さく流れています
 お部屋の真ん中に小さめなベッドがひとつ置かれ、ベッドを中心にその周辺だけがスポットライトで照らされたみたく、眩しく浮かび上がっていました。
 四方の壁際は間接照明で薄暗く、無機質で殺風景な感じです。

 ベッドの周りには、ナース服に似た清潔そう、かつお洒落なデザインのユニフォームに身を包んだアンジェラさんと研修のお3人。
 アンジェラさんのユニフォームは淡い藤色、研修のお3人は淡いレモン色です。
 蘭子さんと小野寺さんは、先ほどと同じ私服姿で、4人とは少し離れて座っていらっしゃいました。

「お待ちしていたわ。こちらは準備万端よ。さあ、始めましょう」
 アンジェラさんがニッコリ微笑んで、私を手招きしました。
「まずはこのベッドに上がって、うつぶせになってくださる?」
 アンジェラさんが傍らのベッドを指さしました。
 私は、恐る恐る近づいていきました。

「こちらに頭を向けてね」
 大きな枕と、なぜだか20インチくらいの薄いテレビモニターが乗ったラックが置いてある方向を指示されました。
 その反対側のほうには、見慣れない器具やタオルなどが乗ったキャスタートレイと大きめな姿見がベッドの傍らに置かれ、アンジェラさんたちは、その足側のほうに集まっています。
 
 そのベッドは、普通のベッドよりもやや高めで、私のおへその下くらいの高さ、幅も一般的なシングルベッドよりひとまわり狭い感じでした。
 あまり柔らかそうには見えないベッド表面には、見るからにふんわりしていそうな大きいタオルが敷かれていました。
 私は、踏み台を使っておずおずとベッドに上がり、柔らかい枕に顔を埋めてうつぶせに横たわりました。
 まばゆいくらいの光に照らされた私の背中とお尻を、みなさまが上から見下ろしてきます。
 まるで手術台に乗ったような気分です。

 小野寺さんが立ち上がったな、と思ったら、目の前のテレビモニターが明るく瞬き、何かが映り始めました。
 何だろう?と思う間もなく、モニター一杯に誰かのお尻らしき映像が映りました。
「あっ!」
 あわてて首を後ろに捻ると、ベッドの傍らに立った小野寺さんがハンディなビデオカメラを覗き込んでいました。
 そのカメラのレンズの先には、私のお尻。

「今日の様子はね、録画して編集して、このサロンの新人エステティシャンの研修用教材として、活用していただくのよ」
 シーナさまが枕側にいらして、私を見下ろしつつおっしゃいました。
「もちろん、施術する部分だけを映して、ミス・ナオコのお顔は一切出さないし、音声も全編アフレコで再編集するし、サロン関係者だけの内部閲覧に徹するから、ミス・ナオコには絶対ご迷惑はお掛けしないことを誓うわ」
 アンジェラさんが、お優しいお声でつづけます。
「だから、ミス・ナオコも痛かったり気持ち良かったりしたら、遠慮せずにお声をどんどん出していいから、ね?」
「それに、こうして自分が何されているか、逐一自分で見れるのって、直子の性癖にぴったりでしょう?わたし、アンジーから誰かモデルになってくれる人いない?って相談されたとき、まっさきに直子の顔が浮かんだもの」
「そういうことだから、いいわね?直子?」
 シーナさまに冷たいお声を投げつけられて、首を横に振れる私ではありません。
「は、はい・・・」
 お答えしながら眼前を見ると、自分のお尻が超どアップで映っていました。

「さあ、それでは施術に入りましょう。みなさんは、すでにご自分のからだで具体的な手順は試してきたのよね?」
「はいっ!」
 足のほうで、アンジェラさんと研修のお3人のやりとりが始まっていました。
 小野寺さんは、いったんビデオカメラを切ったらしく、モニターは真っ暗になっていました。

「それならワックスの使い方などに関しては、言及しません。今日は、実際にお客様に施術するとき、どういう点に気を遣うべきか、に重点を置いて説明していきます」
「はいっ!」
 アンジェラさんと研修のお3人、シーナさまが命名されたところのリナリナトリオのみなさんとのあいだに、緊張した雰囲気が流れています。
 シーナさまは、私の頭を見下ろしながらニヤニヤ笑い。
 蘭子さんも立ち上がって、私のお尻付近を見下ろしていらっしゃいました。
 私は枕に顔を埋め、でもまたすぐに不安になって上下左右をキョロキョロ。

「さて、まず最初の注意点ですが、O・I・V脱毛の場合、今日のミス・ナオコのように全裸になっていただく必要は、まったくありません」
「ケースバイケースですが、脱毛だけのお客様なら、上半身は普通に着たまま、もしくはローブを着ていただくとか、なるべく羞恥を感じられないように心配りすることが大切です」
「ご年配のかたは、それほどでもないですが、お若いと、とても恥ずかしがるかたもいらっしゃいます。そんな場合は、施術が見えないようにお腹のところにカーテンをしたり、お部屋を暗くしたり、工夫してください」

「そういう意味で、施術前のカウンセリングは重要です。お客様のニーズをしっかり把握して、出来る限り合わせるように」
「お客様が満足されれば、必ずリピーターになってくださいます。ですので、とくに初回のお客様には細心の心配りで接すること」
「ちなみにミス・ナオコの場合は、ミス・シーナが、ミス・ナオコはこうしたほうがお悦びになるとアドバイスをくれたので、そうしただけです」
 リナリナトリオのうちの誰かおひとりがクスっと笑ったようでした。
 それも恥ずかしかったのですが、何よりも冒頭のアンジェラさんのお言葉にピクンとからだが震えました。

 脱毛。
 エステにかかる、ということ自体が生まれて初めての体験でしたので、いったいこれから何をされるのか、ほとんど見当がついていませんでした。
 マッサージ的な何か、かな、と思いながらも、シーナさまから無駄毛処理を禁じられての訪問でしたから、そっちの関係だろうな、とも予想はしていました。
 今のお言葉でハッキリしました。
 私はこれから、みなさまの前でアソコ周辺の毛を脱毛されるんだ・・・

 いったいどんな方法で?
 私が知っている脱毛方法は、カミソリか脱毛テープ、それとレーザー。
 レーザー脱毛器ぽい機械は見当たらなかったので、たぶんテープなのかな?
 そう言えばさっき、ワックスっておっしゃっていたな・・・
 ワックスって、ローソク?

 いずれにしても私はこれから、その部分をみなさまにじっくり視られながら、思う存分弄られちゃうことにはなるのでしょう。
 おまけにそれがビデオとして残されてしまうのです。
 あっ、だめぇ・・・
 アソコの中がみるみるうちに、ウルウル涙ぐんできました。


コートを脱いで昼食を 18


2013年10月20日

コートを脱いで昼食を 16

 ソファー、テーブル、ソファーと川の字にレイアウトされた豪華な応接セット。
 みなさまがよーくご覧になれるようにとシーナさまに手を引かれ、ソファーが無い側のテーブルの後ろに立たされました。
 さっきまで私とシーナさまが座っていたソファーには、研修のお3人がお座りになり、5人全員が座ったまま少しからだを斜めにひねって、私に注目しています。
 小野寺さんは、入口近くの椅子に座ったままでしたが、視線はしっかりこちらに向けられていました。

「ほら、さっさと脱ぎなさいっ!」
 私の傍らにお立ちになったシーナさまが、どこから取り出したのか、アンテナ式のポインターペンを伸ばして、私のジャケットをつっついてきます。
「もう少しテーブルから離れなさい。みなさんから下半身が見えにくいでしょう?」
 シーナさまのご指示通りにしながら、私は観念しました。
 こんな状況になったら、もはやシーナさまに逆らえるはずがありません。
 それに私は、こんな状況をいつも妄想していたはず。
 シーナさまは、私の妄想を実現させてくれようとしているのです。
 だけど現実になると、やっぱりすごく、例えようもないほど恥ずかしいです。

 ジャケットのボタンをはずし、両腕を袖から抜きました。
 いつの間にか私の傍らに来ていた小野寺さんが、私が脱いだジャケットを受け取ってくださいました。
「あ、ありがとうございます・・・」
 小さな声でお礼を言うと、小野寺さんはニコッと笑い、ジャケットを持ったまま私の至近距離に立ち、そのまま待機されました。

 ちょっと迷ってから、先にスカートを脱ぐことにしました。
 ホックをはずして足元に落とし、スリッパを脱いで拾い上げました。
 小野寺さんが手を差し伸べてきたのでお渡しします。

 次はブラウス。
 このブラウスを脱ぐと、上半身はブラジャーだけになってしまいます。
 でも、それよりも心配なのは下半身でした。
 一枚づつ脱いでいるあいだずっとドキドキ心臓が高鳴り、それはもちろん性的興奮なので私の淫乱なアソコはヒクヒクとのたうち、恥ずかしいおツユをとめどなくジワジワ分泌していました。
 それは、淡いピンク色のショーツの薄いシルク地など、いともたやすく浸透して広範囲を色濃く変色させ、パンティストッキングの表面にまで滲み出ているはずでした。
 今はブラウスの裾でかろうじて隠れていますが、ブラウスを取れば、誰の目にもあからさまにわかってしまうくらいに。
 リボンをほどき、ボタンをはずしていきます。
 ブラウスを左右にそっと開くと案の定、股間がお漏らしでもしちゃったみたいに盛大に変色していました。

 私は、お洋服を脱ぐあいだ中ずっとうつむいていました。
 アンジェラさんたち6人のほうを、どうしても見ることが出来ませんでした。
 どんなお顔をされて、どんなお気持ちで、私の、この突然のストリップショーをご覧になっているのだろう?
 ちょっぴり知りたくもありましたが、それの100倍以上の恥ずかしさで、どうしても顔が上げられませんでした。
 みなさまも、誰も一言も発さず、まるでこのお部屋には誰もいないかのようにシンと静まり返っていました。
 ただ、痛いほどの視線が素肌に突き刺さってくるのだけを感じていました。

 ブラウスを開いたとき、この後、とめどなく襲われることになる、今すぐこの場を逃げ出したいほどの恥ずかしさの、最初のピークが訪れました。
 こんな恥ずかしいシミで汚れたソコは、絶対視られたくない。
 もういてもたってもいられず、クルッとみなさまに背中を向け、手早くブラウスを脱ぎました。
 すかさず小野寺さんの手がブラウスに伸び、レストランのウェイターさんのトーションのように左腕に掛けていた今までのお洋服とひとまとめにして両手で持ち、入口のほうへスタスタ歩いて行かれるのが、視界の端に映りました。
 
 シーナさまに叱られるかな?とも思ったのですが、何もおっしゃらないので、背中を向けたままの姿勢で一気にパンティストッキングもずり下げました。
 穿き慣れていないので、足首から抜くのに少し手間取り、からだが大きく揺れて、おっぱいがプルンと跳ねます。
 足首から抜いて丸まったパンティストッキングの一部分は、少し粘りのある液体でジットリ濡れていました。

 これでもう、あとはブラジャーとショーツだけになってしまいました。
 首にマゾの首輪も着けていますが、たぶんこれは、はずさないほうが良いのでしょう。
 シーナさまがまだ何もおっしゃってこないので今のうちと思い、みなさまに背中を向けたまま、両手を背中へまわしてブラのホックをはずし始めました。
 気が焦って手元が震え、なかなかはずれないホックにジリジリしながら、頭の中で考えていました。

 これはすべて、シーナさまの計算ずく。
 私におめかしさせたのも、みなさまの前で時間を掛けてお洋服を脱がさせることで、私の羞恥心を最大限に煽るための手段だったのでしょう。
 どうせ人前で裸になるのであれば、始めからノーパンノーブラのワンピース姿か何かで、一枚脱いで即全裸、みたいなほうが、気持ち的にラクだったような気がしていました。
 
 ノーパンノーブラで人前に現われること自体が、すでにかなり恥ずかしいことではあるのですが、そんな格好をする人はつまり、そういう人として見られますから、裸になったときのインパクトもそれなりのものになるでしょう。
 一方、お洒落してきちんとした格好をしていれば、一般的にごく普通の人として見られます。
 そんな人が、シーナさまのご命令ひとつで、お洋服を脱ぐ過程を第三者にじっと視られながら、裸になる。
 視ていらっしゃるかたも、この人はいったいどんな人なのだろう?って興味シンシンになられるだろうし、脱ぐほうも、出来ることなら隠しておきたい自分のヘンタイ性癖を、自らの手で、時間を掛けてあからさまにすることになるので、その恥辱感は相当キツイものになります。
 そこまでお考えになっての、シーナさまのご指示。
 シーナさまって、やっぱりスゴイな、って、そんな場合ではないのですが、感心してしまいました。

 ブラジャーをはずして足元に置き、覚悟を決めてショーツに手をかけたとき、シーナさまのポインターペンがヒュンと一閃、前屈みでショーツを脱ぎかけていた私の裸のお尻をペチッと叩きました。
「ぁんっ!」
「ちょっと何?みなさんにお尻なんか突き出して?失礼な子ね。みなさんのほうへ向きなさい!」
「あっ、は、はい!」
 膝の上までずり下げていたショーツを素早く足首まで下ろしました。
 中途半端に生え揃った翳りの下から垂れ下がる透明なか細い糸が、何本か足首のほうへとツーっと伸びては切れました。

「それと、悪いのだけれど小野寺さん?バスタオルか何か、一枚貸していただけるかしら?」
 再び私の傍らに戻っていた小野寺さんが、またスタスタと入口のほうへ行かれたようでした。
 私は背中を向けたままその場にしゃがみ、ショーツの濡れている部分が表に出ないように丸めてから、隠すように足元のブラジャーのカップに押し込みました。

「ほら、小野寺さんからタオル受け取って、自分の足元に敷いて、さっさとみなさんのほうに向きなさい!」
「直子、お股からえっち汁、ダラダラじゃない?綺麗なペルシャ絨毯が台無しになっちゃうわよ?この絨毯、お高いのよ?ほら、早くしなさいっ!」
 誰かがクスッと笑い声を洩らしたのが聞こえました。
 ポインターペンでお尻をペチペチされ、私は足元にバスタオルを敷き、右手は股間に、左腕でバスト全体を隠しながら、ゆっくり回れ右をしました。

 私がみなさまのほうを向いたと同時に、小野寺さんがその場にひざまずき、私が脱いだブラジャーとショーツとパンティストッキングを拾い上げました。
「あっ、それは・・・」
 小野寺さんは立ち上がってニッと笑い、丸まったパンティストッキングとショーツをもう一度広げ、丁寧に折りたたんでからブラジャーと一緒に入口のほうへ持って行ってしまいました。
 小野寺さんの指が私のおツユで汚れちゃった・・・
 言いようのない恥ずかしさが、全身を駆け巡りました。

「ねえ直子?あなたのさっきからのその態度は何?」
 シーナさまが怒ったみたいなお顔になり、私の顔を覗き込みます。
「今日はね、アンジーたちがあなたのからだをいっそうキレイにケアするためにわざわざ集まってくださったのよ?」
「それなのに、背中を向けるは、お尻を突き出すは。今だって、うつむいちゃって、隠しちゃっててどうするのよ?」
「直子が裸になったら、するべき姿勢があるでしょう?わたし、さんざん教えたはずよ?」
「ほら、まず顔を上げなさい!」
 同時にお尻をペチッとされて、私はうつむいていた顔を恐々上げました。

 アンジェラさんと蘭子さんは、困ったような曖昧な笑顔をされています。
 研修のお3人は、肩を寄せ合って興味シンシンのワクワク顔。
 小野寺さんは唇の両端だけを少し上げたクールな微笑。
 みなさんじっと私のからだを見つめていました。
 おのおののかたと視線が合うたびに、からだの奥がキュンキュン疼いてしまいます。
「顔を上げて、前を向いて、それから?」
 シーナさまが間髪を入れずにたたみかけてきました。
「直子のからだを隅々までじっくり視ていただくのに、ピッタリなポーズがあるでしょう?」

 シーナさまがおっしゃっているのは、マゾの服従ポーズ、のことだとわかっていました。
 ここまで来たらもう仕方ありません。
 私は、まず両脚を、休め、の姿勢くらいに開き、一呼吸置いてから意を決して、両手をゆっくり胸と股間からはずし、頭の後ろで組みました。
 私の動きに合わせて、アンジェラさんたちが少し身を乗り出し、隠されていた部分が露になるに連れて、視線がアチコチに散らばるのがわかりました。

 ああんっ!
 なんていう恥ずかしさ。
 なんていうみじめさ。
 みなさまがきちんとお洋服を着ている中で、ひとりだけ裸んぼの私。
 それもこんな豪華なお部屋の中で、全員がファッショナブルに着飾っている中で、私だけが首にマゾな証のチョーカーひとつだけの素っ裸。
 両腕を頭の後ろで組み、腋からおっぱい、アソコまで隠すことを禁じられた恥ずかしすぎるポーズで、シーナさまを含めて7人からの容赦ない好奇の視線を素肌に浴びせかけられている私。
 このセレブな空間の中で、一番身分が低いのは誰なのか、ということを嫌と言うほど思い知らされる、残酷なシチュエーションでした。

 妄想の中でなら今まで何度も思い描いたことがありましたが、現実でこんな目に遭うのは初めてでした。
 今日出会ったばかりの、昨日までは見知らぬ同士だった人たちに全裸を視られている私。
 この場にいるかたたち7人が全員お美しく、服装にも居住まいにも優雅な雰囲気を醸し出されているので、なおさら今の自分の立場が屈辱的でした。
 みなさまの慰み者・・・
 そんな言葉が頭に浮かび、狂おしい被虐感で今にも膝が崩れ落ちそう。
 今の私ほど、メス犬マゾペットの首輪が似合う女は、この世にいないでしょう。

「あら、ずいぶんと薄いのね・・・」
 私の股間をじっと見つめていたアンジェラさんが、ポツンとつぶやきました。
「そのくらいなら、たいした手間もかからなそうだし、研修にはうってつけね」
 張りつめていた緊張を和らげるみたいに、アンジェラさんがおやさしいお声でおっしゃり、ほっこり笑いかけてくださいました。
「それにミス・ナオコ、きれいな裸だわ。バストも良い形だし、腋も綺麗ね。肌も良くお手入れされているようだし」
「まあ、強いて言えばウエストをもう少し絞りたいかな?」
「ほら直子、褒められたのだからお礼を言いなさい」
「あ、ありがとうございます」
 シーナさまに促されて、服従ポーズのままペコリと頭を下げました。

「そんなに薄いのなら、うちに3、4回通ったら、永久ハイジニーナにもなれそうね。ミス・ナオコはそれがお望みなのでしょう?」
「あ、えっと、ハイジニーナって?・・・」
「パイパンのことよ。パイパンのエステ風おシャレな呼び方」
「直子はずっとパイパンのままが理想なんでしょ?視られたがりのマゾだから」
 シーナさまが教えてくださり、私は小さく、はい、とアンジェラさんにお答えしました。
 アンジェラさんが沈黙を破ってくださったおかげで、場にリラックスしたムードが若干戻り、研修のお3人も、私を視つつ、何やらヒソヒソしてはクスクス笑っていらっしゃいます。

「ご覧いただいた通り、直子はこういう女なの」
 シーナさまが私の横に立ち、アンジェラさんたちにお話し始めました。
「人前で裸にされて、恥ずかしがっているクセに、ここはこんなだし・・・」
 ポインターペンで、私の尖りきった左乳首をピンと弾きました。
「ぁあんっ!」
「ここも洪水みたいに濡らしちゃう、露出症のヘンタイ女」
 ポインターペンが私の土手をつつきます。
「その上、わたしの命令には絶対服従の真性マゾヒスト」
 ポインターペンが私の両腿の間を通過してから上に上がり、ワレメにグイッと食い込んできました。
「あっ、だめ・・・ですぅ・・・」
 シーナさま、ヒドイ。
 みなさまの前でそんなこと・・・

「だからくどいようだけれど、一切遠慮無しで、ぞんざいに扱っちゃっていいからね。虐めれば虐めるほど、この子は悦ぶはずだから」
「ほら、直子からもお願いしなさい」
 私の股間にポインターペンの側面を食い込ませてゆっくり前後しながら、シーナさまがニヤリと笑いました。
「ほ、本日は、よ、よろしくお願いいたしますぅ」
 ポインターペンの刺激にクラクラしつつ、マゾの服従ポーズのまま、悦びの声を抑え込んでなんとかご挨拶しました。
 アンジェラさんたちもそれぞれ、ビミョーな笑みを浮かべて会釈を返してくださいました。

「さあさあ、それではみんな着替えて。手早く準備をしましょう!」
 アンジェラさんの一声でみなさまが立ち上がりました。
「あ、直子のシャワーは、わたしが連れて行くから、蘭子さんたちはまだゆっくりしていて」
 シーナさまが蘭子さんと小野寺さんにそう告げて、私の右手を取りました。
「直子は、その今踏んでいるタオルで自分のオマンコを押さえて、わたしについてきなさい」
 アンジェラさんについてお部屋の外に出ようとしていた研修のお3人が、クスクス笑う声が聞こえてきました。


コートを脱いで昼食を 17


2013年10月14日

コートを脱いで昼食を 15

「ほら、直子?あなたもちゃんとご挨拶なさい」
 シーナさまが肘で私の脇腹をつっつきますが、私は恥ずかしさで顔を上げることが出来ません。
 今のシーナさまのお言葉を聞いて、アンジェラさんたちがどんなお顔をされているのか・・・
 うつむいたままモジモジするだけです。

 助けてくださったのはアンジェラさんでした。
「大丈夫よ。心配しないで。わたくしたちは、ミス・シーナがとてもイジワルな人だということを、みんな知っていますから」
 すっごくやさしいお声で、でもちょっぴりクスクス笑いながらおっしゃいました。
「親子ほども年の離れたマダムにイジワルしているところ、今まで何度も見ていますから、ね?」
 私がそっと顔を上げると、アンジェラさんももう一人の女性も、たおやかな笑顔を浮かべて私を見つめていました。

「ところで直子はさ、ここがどんなサロンなのか、わかっている?」
 シーナさまがニヤニヤしながら聞いてきます。
 私は首を小さく左右に振りました。
「あら、ミス・シーナは、ミス・ナオコに何も教えずに、ここにお連れしたの?」
 アンジェラさんが呆れたお顔でシーナさまを見ています。
 シーナさまはアンジェラさんには答えず、さらに私に聞いてきました。

「じゃあさ、想像でいいから、このサロンは、何をするところだと思う?」
「えっと・・・」
 言っちゃっていいのか、少し迷いましたが、正直に思ったことをお答えしました。
「あの・・・よくはわかりませんが、たぶん・・・な、なにか、えっちなことを、するところ?」
 本当は、SMプレイのサロンで、アンジェラさんたちは、おやさしそうなお顔をされているけれど、実は女王様なのじゃないかな、って考えていたのですが、それではあまりにストレート過ぎるので、少しぼかしました。

「ほらね。聞いたでしょ?直子、それは想像じゃなくて、あなたの願望よ」
「この子はね、こういう子なの。こんな澄ました顔してても、頭の中では年がら年中、いやらしいことばっかり考えているのよ」
 すかさずのシーナさまのツッコミに、私は再びうなだれてしまいます。
 うなだれる寸前に、アンジェラさんが苦笑いを浮かべているのが見えました。

「いい?直子。このサロンはね、知る人ぞ知る、とっても評判のいいエステティックサロンなの」
「それも富裕層のマダムやその子女限定で、完全紹介会員制。表立っては一切広告宣伝していなくて、ある種のステイタスがなければ施術を受けるどころか、この場に入ることさえ出来ない、隠れ家的な高級エステなの」
「こちらにいるアンジー、アンジェラ先生が、このサロンのチーフ・エステティシャンで、スゴイのよ。世界中の美容業界を飛び回って、最新の技術をいつも研究されているの」
「その上、看護師やら美容師やら整体師やら、あと何だっけ?とにかくその手の資格全部持っているから、美容関係のことは何でも出来ちゃうの」
「エンヴィって英語で、妬む、とか、羨む、っていう意味なのだけれど、ここに来れば誰でも、人から羨まれて妬まれるくらい美しくなれる、っていう意味が込められているんだって」
 シーナさまがまくしたてるみたいに説明してくださいました。

「わたしのアレのひとりがここの会員だったからさ、わたしも出入り出来るようになって、いろいろお世話になっているのよ」
「ミス・シーナには、良いお客様を何人もご紹介いただいて、感謝しているわ」
 アンジェラさんが嬉しそうにうなずきながらおっしゃいました。

「そう言えばミス・シーナ。マダム・ワカバヤシはお元気かしら?」
「あら?二週間前くらいに来なかった?わたし、バンコクにいたときにメールで命令を出しておいたのだけれど」
「ああ、ご存知だったのね。それならいいわね。確かにいらしたわ。いつものコースで」
「そうでしょう?キレイになっていたもの。相変わらずよ。あのメス犬の貪欲なド淫乱さには、わたしのほうが疲れちゃうくらいだわ」
「あらあら。だけどマダム・ワカバヤシがあのお年になっても若々しくてお綺麗なのは、80パーセントくらいはミス・シーナのおかげよね」
 シーナさまとアンジェラさんが楽しそうに笑っています。

 マダム・ワカバヤシさんて、たぶん私のマンションの一番上の階を所有している、シーナさまのドレイ兼パトロンなおばさまのことでしょう。
 楽しそうにお話されるシーナさまに、私はなんだかフクザツな気分。

「それにアンジー、さすがだわ。うちのメス犬とわたしとの関係は知っているクセに、無闇に顧客の情報を漏らさない、その姿勢はたいしたものよ」
 シーナさまが私のほうに向きました。
「アンジーはね、スペイン系のクォーターでね、日本語以外も5、6ヶ国語くらいペラペラなのよ」
「それでね、会員制とは言っても、めんどくさいお客も少しは来るのよね」
「なまじお金が有り余っているから傲慢になりがちなのよ、そういうマダムは」
「そんなときアンジーはね、そのお客に絶対わからない言葉、ドイツ語とかスペイン語とかでね、ちっちゃな声でヒドイ悪態ついてたりするのよ、その客の目の前でニコニコ笑いながら」
 愉快そうに笑うシーナさま。
「あらやだ!ミス・シーナ、気づいていたの!?困ったわ、あなたの前だったら何語で悪態をつけばいいのかしら?」
 ひとしきり、楽しげな笑い声が響きました。

「そんなわけで、今日は直子に、このサロンの超一流の技術で、よりいっそうキレイになってもらおうと思って連れてきたのよ」
「ここのエステのモットーはね、お客様が喜ぶことを全力でしてさしあげること、なんだって。直子が喜ぶこと、って、わかるでしょ?」
「だから安心して、わたしの言う通りにしなさい」
 シーナさまの目が一瞬、妖しく光った気がしました。

「そうそう、ご紹介が遅れてしまったわ。わたくしの隣のこの女性は、うちのスタッフの一人で・・・」
 アンジェラさんのお言葉が終わらないうちに、その女性がスクッと立ち上がりました。
「夏目蘭子です。どうぞよろしくお願いいたします」
 スッと私に名刺が差し出され、私も慌てて立ち上がりました。

 夏目蘭子さんは、三人の中では一番肉感的なタイプでした。
 と言っても決してふくよかなのではなく、出るところは出て、引っ込むべきとことは引っ込んでいる、つまりすっごくプロポーションが良いのです。
 薄手のカシミアらしいベージュのロングセーターに包まれたその肢体は、まさにボンキュッボン、見蕩れちゃうほどセクシー。
 細面に涼しげな目元、少しカールしたボブカットでニッコリ微笑んだ姿は、まるでファッションショーの一流モデルさんのようでした。

「蘭子さんのマッサージはね、本当、魔法みたいなのよ」
 シーナさまが嬉しそうに、お口をはさんできました。
「それはもう、からだ中が蕩けちゃうくらい気持ち良くて、終わったら何もかもがスッキリ。肩凝りでも筋肉痛でもストレスでも、跡形もなく消えちゃうの。まさにマジックね」
「あとでわたし、蘭子さんにマッサージしてもらうんだ。それで指名して、わざわざ今日来てもらったのよ」
 シーナさま、本当に嬉しそう。

「そして、あそこに座っているのがわたくしの秘書、小野寺梓さん。事務関係全般とスケジューリングなんかをやってもらってるの」
 アンジェラさんのご紹介で、受付の美人さんが立ち上がり、私に向かってさっきと同じような完璧なお辞儀をしてくださいました。
 私も丁寧にペコリ。

「さあ、これで今日来ているスタッフの紹介は終わったわね。ミス・ナオコも今日からわたくしのサロンの会員よ。ミス・シーナのご紹介だもの、大歓迎よ。いつでもお好きなときに遊びにいらっしゃい」
 アンジェラさんがニッコリ笑いながらおっしゃってくれました。
「もちろん、ペイのほうは全部、ミス・シーナにツケておくから。何も心配はいらないわ」
「望むところよ。わたしも直子がもっとキレイになるのなら、そんな出費なんてまったく気にもしないわ」
「でも、お振込みの名義はなぜだか、マダム・ワカバヤシなのでしょう?」
 またひとしきり、楽しげな笑い声が響きました。
 シーナさまもアンジェラさんも、どこまで本気なのだか。

「さて、それじゃあそろそろ始めたいと思うのだけれど、その前にやっぱり、もう一度確認しておくわ。ミス・シーナ、例の件だけれど」
「例の件、って・・・ああ、研修のこと?」
「そう。わたくし、てっきりミス・シーナはまた、誰かそういうマダムをお連れになると思っていたから、気軽にお頼みしちゃったのだけれど、お連れになったのはマダムどころか、可愛らしいマドモアゼルじゃない?本当にいいのかな、って」
「大丈夫よ。気にしないでやってちょうだい」
「でも、ああいうところを見られるのって、すごく恥ずかしいのじゃない?それも、年が近い子たちだと、とくに・・・」
 ご心配顔のアンジェラさんが私の顔を覗き込むように見てきます。

「大丈夫よ。モーマンタイ。直子なら、むしろそのほうがいい、っていうくらいよ」
 シーナさまも私の顔をチラチラ見ながら、つづけました。
「この直子はね、こう見えて、かなりのヘンタイ娘なのよ。見せたがり、っていうよりも、視られたがり、ね」
「だからこの後のことも、余計な気遣い、気配りは一切、まったくいらないから。うちのメス犬にするときみたいに、いいえ、もっと大胆な格好をさせてもかまわないわ」
「直子はクラシックバレエをやっているから、からだがかなり柔らかいの。だから研修もやりやすいと思うわよ。言うこときかなかったら遠慮なくお尻叩いちゃっていいから」
「だけどこの子、すごく敏感ですぐ濡れちゃうから、そういう意味ではちょっと、やりにくいかもしれないけれどね」

 えっ!?
 シーナさまったら、普通のお顔でシラッと、スゴイことをおっしゃっていません?
 私の恥ずかしい性癖をどんどんバラしちゃってる。
 それで、アンジェラさんも、それを真剣に聞いていらっしゃる。
 ここってエステなのよね?
 私、これから何されるの?
 再び頭がパニックになって、全身を火照らせたままうなだれてしまいました。

「そう。そういうことなら、お言葉に甘えて予定通りでいきましょう。ミス・ナオコがそれを望んでいらっしゃる、と聞いて安心しました」
 えーーっ!そんなこと私、言ってない・・・
「それなら一応、始める前に研修の子たちにもご挨拶させるわね。小野寺さん、呼んでちょうだい」
 私がうなだれているあいだに、事態はどんどん進行していきました。

「ほら、直子っ」
 シーナさまに肘で脇腹をつっつかれて、恐る恐る顔を上げました。
 新たに、それぞれカラフルな私服を着た可愛らしい系の女性が3人、アンジェラさんの後ろに並んでいました。
 私が顔を上げたと同時に、
「よろしくおねがいしまぁーす!」
 声を揃えて元気良く、ご挨拶されました。

「えーっと、向かって左から、アリナさんとマリナさんとセリナさん。偶然3人とも似たような名前だけれど、こういう名前を付けるのが流行っていた世代なのかしらね?」
「3人ともうちの見習いスタッフで、入ってまだ日が浅いから、アロマテラピーやマッサージはほぼ習得したのだけれど、これからやる施術の現場は初めてなのね」
「だから今日、わたくしがミス・ナオコに施術するところを見せて、覚えてもらおうと思っているの」
「ひょっとすると、実際にこの子たちにもやらせてみるかもしれないけれど、わたくしが付いて細心の注意を払っているから、どうかご安心してご協力くださいね?」
「どうぞよろしくおねがいいたしまぁーす!」
 再び声を揃えて元気良く、お願いされてしまいました。
「は、はい・・・」
 そう答える他ありません。

「それにしても、アンジーのサロンのスタッフって、全員もれなく美人よね?」
 シーナさまが前に並んだ5人をしげしげと見回しながらおっしゃいました。
 私もそう思っていました。
 それもみんなタイプの違う美人さん。
 アンジェラさんは華やかなエキゾティック・ビューティ、小野寺さんはインテリジェント・クール・ビューティ、蘭子さんはグラマラス・ビューティ。
 研修でご一緒されるという3人も、年齢は私とそう変わらない感じで、それぞれ、どこかの美少女アイドルグループや女性ファッション誌の読者モデルさんと言われても信じちゃうくらい、キュートな美人さん揃いでした。

「それはそうよ。わたくしたちは、女性の美を追求するエステティシャンなのですもの」
「ねえ、ミス・シーナ?たとえばあなた、頭に毛がなくなっちゃった社員が何人も働いている製薬会社の育毛促進剤、買う気になる?」
「つまりそういうこと。スタッフが美しくないビューティサロンなんて、誰も来やしないわよ」
「だからわたくしはいつも、スタッフには自分の美しさをキープする努力を、まず一番に要求しているの」
「ミス・ナオコ、あなたもその気があったら、うちで修行させてあげるわよ?」
 アンジェラさんがパチンとウインクをくださいました。

「さあ、それでは始めましょうか?」
 アンジェラさんのひと声で、その場にピーンと緊張感が走りました。
「ミス・ナオコには、あちらのドレッシングルームで準備していただいて、施術するみんなはユニフォームに着替えて・・・」
 アンジェラさんがそこまでおっしゃったとき、遮るようにシーナさまの鋭いお声が響きました。
「ちょっと待って。アンジー?わたし言ったはずよ?余計な気遣いは一切無用だって。直子にはドレッシングルームなんて贅沢なものは、いらないの」
「みなさんも、もう少しそこでラクにしていていいわ。今、面白いものをお見せするから」
 そして、シーナさまが私を見ました。

「直子?」
「は、はい」
「裸になりなさい」
「えっ?」
「今すぐ着ているものを全部脱ぎなさい」
「え、えっと、こ、ここで、ですか?」
「何回言わせるの?早く裸になりなさい」
 シーナさまの瞳にエスの炎がチロチロと揺れ始めていました。


コートを脱いで昼食を 16


2013年10月13日

コートを脱いで昼食を 14

 ジュエルケースにしまっておいたチョーカーを取り出しました。
 手に取っただけでからだが火照ってきます。
 鏡の前で、そっと首にあてがってみました。
 うわ、すっごく目立っちゃう・・・
 白いブラウスとベージュのジャケットといういでたちの中では、首元に艶のあるエンジ色はとても目立ちます。

 これを着けると街中にマゾオーラを撒き散らしてしまうので、外出時の装着は禁止されていた首輪型チョーカー。
 それなのに今日は、これを着けて外出、っていうご命令です。
 メス犬マゾペットの首輪を着けてマゾオーラ全開の私の姿を、シーナさまはいったい誰にお見せになる気なのでしょう?
 下半身がモヤモヤ疼いて仕方ありません。

 チョーカーをジャケットのポケットに入れて、ハンドバッグを片手にマンションを出ました。
 マンションの門から10メートルくらい離れた路上に、見覚えのある黄色くて四角張った可愛らしい感じのシーナさまの愛車が、ライトをチカチカさせて待っていました。

「お待たせしました」
 助手席に乗り込むと、シーナさまが右手のひらを上に向けて、黙ったまま私の前に突き出してきました。
「あ、はい・・・」
 ポケットからチョーカーを取り出し、シーナさまの手のひらの上に乗せて、背中を向けます。
 シーナさまが手際よく、私の首にチョーカーを装着してくださいました。

 前を向くと、車のルームミラーに私の首元が映りました。
 やっぱり目立つ・・・
 鏡の中の自分と目が合って、頬が火照ってきました。

「うん。いい感じ。とても直子らしくなったわ」
 首だけ左にひねってずっと私を見ていたシーナさまが、嬉しそうにおっしゃいました。
「今日はわたしと一緒だから、思う存分マゾオーラ発散しちゃっていいから。でも、普通にアクセとしても、ちゃんと似合っているわよ」
 シーナさまが私の右頬に軽くチュッとしてくれました。

 そのまま私の右耳に唇を寄せて、
「どうせまた、濡れてきてるんでしょ?」
 低くささやかれました。
「は、はい・・・」
 チョーカーを着けられたときから、アソコの奥がキュンキュンうごめきだし、今のシーナさまのささやきの途端に、自分でも、あっ、と思うくらいたくさん、分泌物が滲み出てきているのがわかりました。
「ふんっ。いやらしい子」
 シーナさまが投げ捨てるみたいにつぶやき、車がスイーッと滑り出しました。

 車の中でも、スカートをまくれとかいう類のえっちなご命令は一切無く、シーナさまは運転しながら、イスタンブールで食べたサバのサンドウィッチのお話などをされていました。
 私は首のチョーカーが気になって、お話をお聞きしながらも時折ルームミラーをチラ見してはドキドキしていたのですが、やがて気持ちが落ち着いてきました。
  
 車はしばらく、交通量の多い大通りを走ってから、住宅街ぽい脇道に入りました。
 その住宅街は、どのお家も一軒一軒の敷地が広く、ゆったりと立ち並んで、全体的に落ち着いた雰囲気を醸し出していました。
 どのお家もデザインが洒落ていて、塀や門が立派で緑も多く、どう見てもお屋敷、という感じな趣のあるお住まいもありました。

「もうすぐ着くわよ」
 窓の外をもの珍しげに、熱心に眺めている私に、シーナさまからお声がかかりました。
「あ、はい。えっと、ここは、このあたりは、どこなのですか?」
「駅で言うと目白になるわね。いわゆる高級住宅街っていうやつよ」

 目白って言うと、池袋の一つ隣です。
 駅一つ違うだけで、こんなに街の雰囲気が変わるなんて。
 あらためて東京ってすごいなー、って思っていると、車が減速して左へ曲がり、アーチ型のゲートをくぐって地下へつづくらしいスロープを降りていきました。

 ゲートをくぐるときに、その敷地内に建っている建物が見えました。
 高校のとき、家族旅行で訪れて見たことのある、パリの高級アパルトメントのような瀟洒な、目を惹く外観のアンティークぽい建物でした。
 リゾート地のホテルとかにありそうなデザイン。
 ホテルなのかな?
 でもまさか、こんな高級住宅街にはホテルなんて建てないだろうし・・・

 スロープを降りた先は、車が10台くらい置ける駐車場になっていました。
 シーナさまは空いているスペースに手慣れたハンドルさばきで車を停めました。
「充分間に合ったわね。よかった。土曜日だからもう少し渋るかと思ったわ」
「あの、シーナさま、ここは・・・何ですか?」
「え?あっ、ひょっとしてラブホかなんかだと思ってる?あの外観見て」
 シーナさまが可笑しそうにクスクス笑います。
「そんなわけないじゃない。ここは普通のマンションよ。あ、でも普通ではないわね、お家賃的には、高級マンション、に該当する物件だから」

 車を降りてふたり、駐車場に隣接したエレベーターホールへ向かいました。
「そうそう、今日の直子は、モリタナオコだから。その名前で先方には言ってあるから」
「だから、モリタさま、って呼ばれたらちゃんと返事してね」
「本名だとちょっとマズイかな、とも思ったのよ。だから、これからずっと、ここに来たらあなたは、モリタナオコだから、ね?」
「は、はい・・・」

 本名だとマズイこと、って何だろう?
 シーナさまが企てたことですから、えっちな事柄に関連することであるのは間違いありません。
 先方、とおっしゃったから、これから誰かと会うことになるのも確実です。
 本名を隠しておいて良かった、と思うくらい、その人の前でとんでもなく恥ずかしいめに遭わされちゃうのでしょうか。
 ドキドキがどんどん激しくなってきました。

「14時から予約を入れているシーナです」
 エレベーターの扉脇に付いたテンキーを操作してから、シーナさまがインターフォン越しに告げました。
 ほどなくエレベーターが降りてきて、扉が開きました。
 シーナさまが4階のボタンを押し、エレベーターが上昇を始めます。
 監視カメラが付いているらしく、天井付近のモニターに私たちふたりの姿が俯瞰図で映っていました。
 その映像の中でも、私の首のチョーカーは、かなり目立っていました。

「さあ、いよいよだわね、直子。いろいろがんばって、ね?」
 シーナさまが嬉しそうに謎な言葉を投げて、私にパチンとウインクしました。

 エレベーターの扉が開くと、そこはホテルのフロントみたいになっていました。
 大理石の床と壁に、木目も鮮やかで重厚なカウンターが置かれ、その向こうでスーツを着た綺麗な女性がニッコリ微笑んでいました。

「ようこそいらっしゃいませ、シーナさま、そしてモリタさま。お待ちしておりました」
 両手を前で揃えた完璧なお辞儀の後、またニッコリと微笑みます。
「どうぞ、こちらのお部屋へお入りください。チーフも中ですでに準備して、おふたりのご到着をお待ちしておりますから」
 カウンターから出てきて、私たちを案内するために一歩先を歩いていく彼女。
 そのタイトなスカートからスラリと伸びた脚線美に見蕩れていたら、お部屋のドアが開きました。

「お履物はここでお脱ぎいただいて、ご用意いたしましたその室内履きにお履き換えください」
 女性が一歩退いて、私たちを入口のお部屋側に通してくれました。
 そこから覗いたお部屋の様子に、もうびっくり。
 ゴージャス。
 その一言しか思い浮かびませんでした。

 応接間にしては、いささか広すぎる床のほとんどを覆っている、暖色系のグラデーションによるアラベスク文様鮮やかな、毛足の長いペルシャ絨毯。
 適材適所に置かれた、アンティークながらお手入れの行き届いていそうな、見るからに高級そうな猫脚の家具たち。
 品良く飾られた、どこかで目にしたことのあるような絵画と彫刻。
 きっとレプリカではなく本物なのでしょう。
 お部屋の中央付近には大理石の大きめなテーブルが置かれ、そのテーブルを挟んで、柔らかそうなソファーに腰掛けたご婦人がふたり、ティーカップを前にして談笑されていました。
 お部屋全体に、お香なのかアロマキャンドルなのか、何とも言えない甘くていい香りが漂っています。

 豪華すぎるお部屋を前にして呆然と立ち尽くす私を尻目に、シーナさまはスタスタとテーブルのほうへと歩いていかれました。
「ミス・シーナ、お久しぶりね。会いたかったわ」
 こちらを向いてソファーに腰掛けていたご婦人がゆっくりと立ち上がり、テーブルの脇に立ってシーナさまを迎え、やんわりとふたり抱擁されました。
「チーフのお仕事、順調に伸びているみたいね。下の駐車場で見たわよ。また車、変えたでしょ?」
「ああ。あれはお客様の送迎用の車よ。設備投資みたいなもの」
「ここのお得意様って、新型のジャガーで送り迎えしてもらえるんだ。リッチだわねー」
 おふたりがとても親しげに、お話されています。

 シーナさまのお相手をされているご婦人は、パッと見た感じ20代後半から30代前半。
 ゆったりとした品の良いパープル系のワンピースで、からだつきはスレンダー、胸元に3連の細いゴールドチェーンがキラキラ揺れています。
 お顔が小さくて彫りが深く、背もけっこう高めだから、ひょっとすると欧米系のハーフさんかもしれません。
 そのクッキリした目鼻立ちをキツクならないように上手にメイクして、ショートめの髪をゆるやかなウェーブで左右に分け、全体として、すっごく華やかな美人さん、という印象です。

「ほら、直子も早く、こちらにいらっしゃい」
 シーナさまに促され、案内していただいたスーツの女性にも、微笑みながら、どうぞ、という手振りで後ろから促され、おずおずと柔らかな絨毯をフワフワのスリッパで踏んで、シーナさまに近づきました。
「それにしても、ミス・シーナがこんなにお若いかたをお連れになるとは、思いもよらなかったわ。ミス・シーナ、あなた最近、趣味変わったの?」
 チーフと呼ばれた、ハーフなお顔のご婦人が、心底驚いたという感じで、シーナさまを見つめています。
「そういうことではないけれどね。この子はいろいろワケありでさ。まあそれはともかく、紹介する・・・」
 シーナさまが私のほうを向いて、チーフさんのことを私にご紹介してくれそうになったとき、チーフさんが私に向けて名刺を差し出してきました。
「ミス・モリタさん、だったわよね?わたくしはこういうものです。今後ともよろしくね」
 チーフさんがニコッと笑いかけてくれました。

 受け取った名刺を見てみます。

 サロン エンヴィ envy (艶美)
 代表 アンジェラ 樹里

 それに住所と電話番号が書いてありました。
 裏返すと同じことが英語で書いてあります。

「サロン?」
 思わず独り言を小さくつぶやいてしまいました。

「だからね、ここは・・・」
 シーナさまが私に説明しようとすると、再びチーフさん、つまりアンジェラさんが遮りました。
「まあまあ、立ち話もなんだから、一回みんな座りましょう。小野寺さん、お茶をご用意して」
 小野寺さんと呼ばれた、受付のスーツ姿の女性がお部屋の奥へ消え、私とシーナさまは、さっきまでアンジェラさんが座っていた側のソファーに並んで腰掛け、アンジェラさんは、先ほどまで談笑されていたもうひとりの女性の隣に腰掛けました。
 ほどなく小野寺さんが、お紅茶とチーズケーキを人数分持ってきてくださり、小野寺さんは、お部屋の入口近くにある椅子に、ひとり離れてお座りになりました。

「それじゃあまずわたしから、あらためてご紹介するわ」
 おのおのがティーカップを一口傾け、チーズケーキをひとかけら頬張り一息ついた後、シーナさまが口火を切りました。
「今日初めてこのサロンのお世話になる、こちらの女性は・・・」
 そこで一呼吸置き私のほうを見て、ニッと一瞬笑いました。
 すぐにアンジェラさんたちのほうに向き直り、私を右手でバスガイドさんのように指し示しながら、シーナさまがつづけます。
「一番新しいわたしのドレイ、モリタナオコです」

 えっ!?
 シーナさま今、私のことを、わたしのドレイ、っておっしゃらなかった?
 えーっ!?
 私の聞き間違いじゃないよね?
 えーーっ!?
 何それ?そんなこと言っちゃっていいの?えーーーーっ!何?何?何?何?
 思いもよらないシーナさまのお言葉に、私はあっさりパニックに陥りました。


コートを脱いで昼食を 15


2013年10月6日

コートを脱いで昼食を 13

 発端は夏休み終盤、私が実家に帰っていたときに届いた、シーナさまからのメールでした。

 直子へ
 久しぶりに池袋に戻って来たのに、直子は帰省中とのこと、なんだかがっかり。
 こちらに帰ってきたら連絡すること。
 それと、このメールを読んだら、次に私と会う時まで、陰毛の処理は一切禁止。
 これは命令、厳守すること。

 というメールでした。

 その当時の私は、久しぶりの実家でのんびりと過ごし、生理中でもあったので、全裸家政婦の頃からつづいていたムラムラも、ずいぶん大人しくなっていました。
 でも、そのそっけない文面のメールを読んだ途端、からだがウズウズ疼き始めました。

 一番最近にソコの毛を処理したのは、全裸家政婦生活を思い立った8月の下旬でした。
 あれから約二週間ちょっと。
 もともと薄い私の股間にも、ようやくうっすらと翳りの片鱗が見え始めている頃でした。
 ナプキンをあてるときにそれが気になって、東京に戻ったらまたキレイに剃ってしまおう、なんて考えていた矢先のメールでした。

 処理するな、って言われると、余計に処理したくなってしまうもの。
 けれどシーナさまのご命令ですから、絶対逆らえません。
 シーナさまがまた、何か企んでいらっしゃる・・・
 アソコの毛を処理するな、というご命令が、ひどく淫靡なことに思えて、いろいろ妄想をめぐらせては、実家でひとり悶々としていました。

 東京に戻って学校に通い始めると、夏休み中とは生活のサイクルが一変して、しばらくは慌しく日々が過ぎていきました。
 シーナさまには、もちろん戻ってすぐにご連絡したのですが、お仕事で遠方へお出かけされていて、お戻りになるのは2、3週間後ということでした。
 そうこうしているうちに月が変わり、念願の裸コート用にオリーブグリーンのコートを手に入れたこともきっかけとなり、秋・冬物のお洋服をウォークインクロゼットで整理していた日曜日の午後。
 とっかえひっかえいろんなお洋服を着ては脱ぎ、鏡の前でひとりファッションショーをしていたとき、からだ全体がムラムラ、すっごく昂ぶっていることに気がつきました。

 その日から再び、お部屋での全裸生活が始まりました。
 エレベーターからお部屋のドアまでのあいだにストリップすることを決めたり、乳首穴空きTシャツを考えついたのもこの頃のことです。
 学校へは毎日ノーパンジーンズ&チュニックで通い、体育授業の着替えでスリルを味わったり、おトイレの個室で慰めたりもしていました。

 最後に処理してから約一ヶ月。
 私のソコの毛は、ほぼ普通の状態に戻っていました。
 と言っても、もともとが薄い私です。
 土手の割れ始め付近から上への狭い範囲に、密度も粗く一本一本細くて直毛な短い毛がチョロチョロ生えた状態。
 私の場合、ここまで生えるともうこれ以上伸びたり濃くなったりはしなくて、ずっとそのままな感じなのです。
 鏡に映すと、何て言うか、貧相、っていう言葉がぴったりな感じで、剃り落としたくてたまらなくなります。

 高二の頃、やよい先生に初めて剃られちゃうまでは、薄い、という自覚はあったものの、そんなに気にすることも無かったのですが、パイパンを覚えてしまい、それがずっと、普通の状態、になってしまった今となっては、ソコに毛があることにうまく馴染めなくなっていました。
 恥毛、という言葉がありますが、私にとってソコに毛がある状態は、まさしく、恥ずかしい毛を生やしている、という感覚でした。
 だから逆に、その状態が新鮮と言うか、自分のソコがパイパンのときよりもより卑猥でだらしなくも思えて、そんな毛を生やしている自分を責め立てる自虐オナニーに、いつもより力が入っちゃったことも事実でした。

 その週の週末の夜に、シーナさまが私のお部屋にいらっしゃることになりました。
 シーナさまとお逢いするのは、夏休み前にデパートでばったり遭遇してチョーカーをいただいたとき以来でしたから、丸々二ヶ月ちょっとぶりでした。
 ムラムラ期真っ最中で全裸生活中の私でしたから、これも何かのご縁と思い、思い切って全裸でシーナさまをお迎えすることにしました。

 金曜日の夜7時過ぎ。
 お部屋のインターフォンが鳴って、モニターでシーナさまとしっかり確認してから、全裸のままそーっと玄関のドアを開けました。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」
 そのときのシーナさまのびっくりされたお顔。
 でもすぐに視線を私の胸から下半身へとすべらせながら、
「あらあら、やる気マンマンね」
 と、嬉しそうにニッと笑ってくれました。

 秋らしい浅紫色のステキなワンピースに身を包んだシーナさまは、両手にたくさんの荷物を持ってらっしゃいました。
 お逢い出来なかったあいだシーナさまは、海外を含むいろいろな場所に行ってらしたようで、私のために食べ物や雑貨など、たくさんのお土産を持ってきてくださいました。

 そのお土産にまつわるシーナさまの旅のお話や、私が始めた全裸生活のことなどを、シーナさまに私のからだをいろいろもてあそばれながら、夜が更けるまでたくさんおしゃべりしました。
 一緒にお風呂にも入りました。
 私の予想では、ご命令で伸ばした私の陰毛は、きっとお風呂のときにシーナさまからどうにかされちゃうのじゃないかな?って期待していたのですが、まったくそんなことはなく、普通にイチャイチャしただけでした。

 ずいぶん夜更かしをしてから、ふたりとも裸のままひとつのベッドで寝て、ずいぶん朝寝坊しちゃいました。
 私は全裸、シーナさまは素肌にバスローブを羽織ってのブランチの後、しばらくボーっとしていたら、唐突にシーナさまがおっしゃいました。

「さてと、そろそろ準備したほうが良さそうね」
「え?何のですか?」
「午後になったら出かけるわよ、ふたりで。ちょっとしたドライブね」
「あ、そういう予定だったのですか。えっと、どちらへ?」
「そんなのヒミツに決まっているじゃない。だから直子にも、それなりの格好をしてもらわないと」
 シーナさまがイタズラっぽく笑いました。
 シーナさまとお外へお出かけ、となると、つまりは何か羞恥プレイをすることになるのでしょう。
 となると・・・

「えっと、それはつまり、やっぱりノーパンとか・・・」
「ううん。今回はそういうのじゃなくて、きっちりキメて欲しいのね」
「たとえば、良家のお嬢様風とか・・・あ、でもそんなこと言うと直子、無駄に悩んじゃいそうだわね」
「フォーマルな感じって言うか、セレブな感じって言うか。まあ、カッチリした感じならいいかな。直子ってスーツ、持ってる?」
「あ、はい、一応は・・・」
 大学の入学式用に買った、薄めなベージュ色でノーカラーのショートジャケットと膝丈スカートの可愛いっぽいスーツを、このあいだのお洋服整理のときに久々にみつけて着てみたばかりでした。

「ならそれを基本に清楚っぽくね。あと下着もちゃんとしたやつをね。もちろんメイクも普段よりちょっと気合を入れてみて、ね?」
 シーナさまがパチンとウインクして、私の頬にチュッとしてくれました。
「わたしもいったん上に戻って準備してくるから。1時までには、またここに戻ってくるわ」
 それだけ言い残すと、シーナさまはバスローブの前をちょちょいと結んで、ご自分のバッグから鍵の束だけ取り出してポケットに突っ込み、タタタッと玄関から出て行ってしまいました。

 シーナさまったら、素肌にバスローブだけの姿で8階まで戻るんだ。
 エレベーター内には監視カメラがあって管理人さんが見ていらっしゃるかもしれないのになー、大胆だなーって思って、思い出しました。
 そうだった、エレベーターは使わずにお外の非常階段を使っているんだった。
 
 以前、あんまり頻繁に直子の部屋に出入りしていると、管理人さんに不審がられそうじゃない?とおっしゃって、管理人さんとそのフロアの住人しか持っていない、建物の側面に設えてある非常階段に出られる非常口の鍵を、お貸ししたことがありました。
 シーナさまはそれで合鍵を作り、私の部屋の出入りには、あまりエレベーターは使わず、お外の非常階段を使われているみたいでした。
 だけど、バスローブ一枚で土曜日のお昼時にお外の非常階段を登るのって、それはそれでもっと大胆ですよね。
 シーナさまらしい、ってクスッと笑ってしまいました。

 シーナさまはいったい、私をどこへ連れて行こうとしているのだろう?
 考えながら着替えをしました。
 着替えと言っても、元が全裸でしたから、お洋服を身に着けただけですが。

 お言いつけ通りに、下着はシルクでレースがたくさん付いた可愛らしいピンクの上下。
 スーツだからパンティストッキングも穿かなくちゃ。
 フリルがヒラヒラの白いリボンブラウスを羽織り、メイクもいつもより念入りに。
 なんだか久しぶりのおめかしに、ワクワクしてきました。

 どこかの一流レストランにでも連れて行ってくれるのかな?
 なんだかテレビドラマとかでよく見る、お見合い、の前みたい。
 まさか・・・ないよね?
 誰かのパーティにお呼ばれでもしているのかしら?
 シーナさま、そういうセレブなお知り合い、多そうだから・・・

 慣れないおめかしに意外と手間取り、ジャケットの袖に腕を通したときには、もう1時前でした。
 ほどなくインターフォンが鳴り、シーナさまが戻っていらっしゃいました。

「へー。なかなかいい感じね。良家のお嬢様に見えるじゃない?」
 私の姿を見るなり、シーナさまが満足そうにおっしゃいました。
「そのスーツって、あのブランドのでしょ?直子、いいもの持ってるのねー」
 
 そういうシーナさまは、ダークなストライプのパンツスーツに、黒のシースルー気味なフリルブラウスで、なんだかマニッシュな感じ。
 カッコいい!
 髪も片方にまとめてサイドに流し、メリハリの効いたメイク、中性的って言うか美少年ぽく変身されていました。
「本当はもっとフェミニンな感じにしようかとも思ったのだけれどさ、車運転するの考えると、どうしてもパンツスーツになっちゃうのよね」
「だから今日は思い切って、そっち寄りにちょっとやり過ぎてみたの」
「たまにはこんなのもいいでしょ?」
 シーナさまが自嘲気味におっしゃりながら、私の全身をマジマジと見つめています。

「うーん、すごくいいのだけれど、何かが足りないわねー」
 美少年なシーナさまが考え込んでいます。
「そうだ。ずいぶん前に会ったときにあげたチョーカー、着けてごらんなさい。あれ着けたら完璧よ、きっと」
 ドッキーン!

 シーナさまのお口から、チョーカー、という言葉が出たとき、心臓が口から飛び出しそうなくらいに跳ねました。
 久しぶりのおめかしのワクワク気分なんて、一気に吹き飛びました。
 普通の人には単なるアクセサリーに見えても、私にとっては、メス犬マゾペットの首輪、としか思えない、あのチョーカー。
 いただいた当初は、お部屋で自分をいたぶるときによく着けていたのですが、汗やいろいろなおツユで汚してしまうのがもったいない気がして、だんだん着けなくなり、最近はずっと大事にしまったままでした。

 まがりなりにもシーナさまとお出かけするのですから、そこに何かしらのえっちな目論見が無いわけがありません。
 それを私ったら、おめかししてどこかでお食事かしら?なんて能天気にワクワクしたりして。
 きっとこのおめかしだって、私をより効果的に辱めるために必要な道具立てのひとつなのでしょう。
 忘れかけていたムラムラが全身に広がり、健全だったワクワクを瞬く間に不健全なワクワクに塗り替えてしまいました。
 
 私、これからどこで、何をされちゃうのだろう?
 チョーカー、という一言だけで、全身がみるみるうちに疼きだしたのがわかりました。
 久しぶりに穿いたパンティストッキングとショーツの下で、早くもアソコが潤み始めていました。

「あら、もうこんな時間。急がなくちゃ。わたし、車をマンションの前まで持って来るから、先に出るわ」
「直子は、チョーカーを持って、門の前で待ってて。チョーカーは車の中で着けてあげるから」
 そう言い残すと、シーナさまは慌しく玄関から出て行きました。


コートを脱いで昼食を 14