2010年10月31日

トラウマと私 16

「姉貴もそのとき、すごくびっくりしちゃって、懐かしさもあって思わず声かけそうになったんだけど、こっちは仕事で向こうはプライベートだし、よく考えるとお互い気まずいシチュだしで、なんとか踏みとどまったんだって」
「姉貴は、さっき言ったみたいに髪型変わってて高校生の頃の面影全然無いから、百合草先生にはまったく気づかれなかったみたい」

「それで、その二人のことを仕事しながら露骨にならないように、チラチラと注目してたんだって」
「お相手の女性が本当に綺麗な人で、そのまま今すぐ女優さんになれそうなほど、それも誰が見ても清純派のね」
「その女性がかいがいしく百合草先生にお料理取ってあげたり、フォークで口元まで持っていって食べさせてあげたりしてるんだって」
「姉貴流に言うと、一見その女の人が攻めで百合草先生が受けに見えたけど、あの女の人は誘い受けね、たぶんベッドでは百合草先生が攻め、だって」

「とにかく久しぶりにすごくコーフンした、って姉貴ノリノリだった」
「姉貴も今まで何組かビアンカップル見たことあるけど、あんなにカッコ良くて美しいカップルはいなかったって、例えがヘンだけどタカラヅカみたいだったって」

「とまあそんなワケで、百合草先生はやっぱり名前の通り百合だった、っていうお話でしたー」
曽根っちがおどけてお話を締めくくりました。

「なんて言うか、ビミョーな話よね」
ユッコちゃんが腕を組んで思慮深げな顔になっています。
「百合草先生って、愛子たちにレッスンするときは、どうなの?なんかヘンなこととかするの?」
聞いてきたのは、あべちんです。
「まさかー。普通に熱心に指導してくれてるよ。別にえっちな目付きでもないよねえ?なおちゃん?」
「うん。そんなこと感じたことなかった」
そう答えながらも私は、今の曽根っちのお話に内心すごい衝撃を受けていました。
「そんなに綺麗な大人のカノジョさんがいるんでしょ?ワタシたちみたいな子供は、まったく眼中にないのよ、その先生」
しーちゃんが嬉しそうに言いました。

「ねえ、曽根っち?」
何か考え込むような顔をしていた愛ちゃんが曽根っちのほうに顔を向けました。
「今の話なんだけどさ、その、あんまり広めないようにしてくれるかな?」
「あたしは、百合草先生が女性とおつきあいしていても、今まで通り好きだし尊敬してることに変わりないんだけどさ、そういうのって、やっぱり気にする人もいると思うのよ」
「だから、ウワサになって百合草先生がお仕事し辛くなっちゃったりすると、アレでしょう?だから・・・」
私も愛ちゃんの横で、うんうん、と大きくうなずきます。
私も全面的に愛ちゃんと同じ意見でした。
「うん。わかったよ。じゃあこの話はアタシたちだけの秘密ね。もう誰にもしゃべらないね」
曽根っちがニッコリ笑って約束してくれました。

「ビアンカップルかー。なんか憧れちゃうなー」
しーちゃんは、相変わらず嬉しそうな妄想顔になっています。
「じゃあさ、レズっ子しーちゃんとしては、アタシたちの中だったら誰がいい?」
曽根っちが笑いながらしょーもないことを聞いています。
「うーん・・・この5人となら、誰とでもおっけーだけど・・・」
「この浮気娘!」
あべちんがすかさずツッコミました。
「誰か一人だったら・・・なおちゃんかなっ」
「おおーっ!」
4人の唸るような声を聞いて、なぜだか私の頬が赤くなってしまいます。
「なんで直子も頬染めてるんだよっ!」
ユッコちゃんが私の頭を軽くはたきました。
「残念でしたー。なお姫はわたしのモノよーん」
あべちんが私の背後にまわって、両手をブラウスの上から私のおっぱいに置いて、軽くモミモミしてきます。
「あーーん、いやーん」
私もワザと色っぽい声をあげます。
「キャハハハハ~」
6人の笑い声が誰もいないクラスの教室に響きました。

それから、久しぶりに6人揃って途中まで一緒に帰りました。
夏休み中にみんなで遊んだ、楽しいことをたくさんおしゃべりしながら。

お家に着く頃には、昨日までの憂鬱な気持ちは、ほとんど消えていました。
もちろん、父の実家でのイヤな出来事の記憶まで消えたわけではありませんが、今は、それよりももっとよーく考えてみたいことがありました。

いつもより早めにお風呂に入って、パジャマに着替えてホっとした夜の9時半。
私は、自分のお部屋でベッドに腰掛けて、愛ちゃんたちから聞いたお話について考えをめぐらせました。

ウチダっていう人の一件は、男の人ってやっぱりヘンな人が多いんだなあ、っていう感想で、私の男性に対する苦手意識、マイナスイメージを増幅するだけのものでした。
それに対して、あべちんたちが私にしてくれたことを思うと、やっぱり女の子同士のつながりっていいなあ、お友達っていいなあ、って再認識させてくれました。
そして、百合草先生のこと・・・
私はいつも、やよい先生、と呼んでいるので、ここから先は、そう呼ばせてください。

女性同士で恋人同士・・・
ラブホテルに二人で入っちゃう間柄・・・
レズビアン・・・

曽根っちがやよい先生のお話をしてくれている間中、私は、どきどきどきどきしていました。
やよい先生と女優さんみたいに綺麗な女性が恋人同士。
それはある意味、私が今まで漠然としたイメージで妄想していた理想に、一番近い現実でした。

あらためて考えてみると、私は、父の実家でのあの出来事を体験する前から、性的な妄想をするときのお相手を男性に想定したことがありませんでした。
愛撫されるときも、苛められるときも、痛くされるときも、命令されるときも、いつもお相手は女性でした。
それは、自分に似た声の知らない女性だったり、父の写真集で見たモデルさんだったり、えっちぽい映画で見た女優さんだったり、最近で言えばオオヌキさんだったり、そしてもちろん、やよい先生だったり・・・

私は、やよい先生に憧れています。
バレエを習うために母と訪れたお教室の受付で、初めてやよい先生を見たときから、ずっと憧れています。
今思うと、そういう気持ちをみんなは普通に、恋、と呼ぶのかもしれません。
そのやよい先生には、女性の恋人がいる・・・
単純に考えればショックを受けるはずなのに、私は逆にすごく嬉しく感じました。
だって、たぶんやよい先生も男性がキライなのでしょう。
男性といるより女性といるほうが好きなのでしょう。
私と同じなんです。

私は、やよい先生に、父の実家での出来事でいろいろグダグダ悩んだことや、それ以前の、誰かに裸を見られるのが好きだった子供の頃のこととか、父のSM写真集を見て感じてしまったこと、妄想オナニーがやめられないこと、などなど普段両親やお友達に隠している恥ずかしいこと何もかもすべて、話してしまいたくて仕方なくなっていました。
きっと、やよい先生なら、それらを全部真剣に聞いてくれて、私に一番合った答えを教えてくれるはずです。
何の根拠も無いのですが、私はそう確信していました。

レズビアン・・・

えっちなことをするお相手を女性に限定してしまえば、間違ってもあのグロテスクなモノが出てくることはありません。
だって女性は、最初から持っていないのですから。
お酒を飲んで深く眠り込んでしまっても、縛られてからだが動かせなくても、お相手が女性なら、アレで嬲られる心配は無くなります。

今ならちゃんとオナニー出来る気がしてきました。
やよい先生のことを考えていたら、からだが少しずつ興奮してきていました。


トラウマと私 17

2010年10月30日

トラウマと私 15

「それでね、さっきの昼休み、みんなでウチダのクラスの教室まで怒鳴り込みに行ってきたの」
あべちんが笑いながら教えてくれました。
「兄キとウチダはクラス違うから、兄キに、昼休みウチダのクラスに行って足止めしておくように頼んでさ。最初は兄キも元部員を裏切るみたいでイヤだ、ってごねてたんだけど、なお姫の写真見せたら、やる、ってさ」
「こんなカワイイ子に告られたのが本当だったら、ウチダが断わるわけがない、って笑ってたわ」

「3年生の教室に怒鳴り込むのは勇気要ったけど。みんなと一緒だし、何よりもみんな本気で怒ってたし」
「教室の後ろの窓際にあべちんのお兄さんがいたから、近づいていくと愛ちゃんが、あいつだっ!って大声上げて指さして」
ユッコちゃんもなんだか楽しそうに言います。

「それで、愛ちゃんがウチダの席の前で腰に両手をあてて見おろしながら、あんた自分でラブレター出してフられたクセに、自分がフったなんて言いふらすのは、どういうつもりなのよっ!って大きな声で怒鳴りつけてさあ」
「最初はウチダもヘラヘラしてしらばっくれてたんだけど、そのうち、うるせーなーとかふてくされ始めたんで、愛ちゃんが、あんたの書いたラブレター一字一句まで覚えてるわよ、なんならここでみんなに披露してあげようか?あと、なおちゃんにフられたときの状況も、って凄んだら、今度は震えだしちゃってさあ」

「3年のクラスの人たちも、最初は、なんなんだ?って感じだったんだけど、事情がわかるにつれて、女子の先輩たちから、うわーっ!ウチダ、サイテー、とか、クズだとは思ってたけどクズにもほどがある、とか声が聞こえ始めて、みんなで呆れてた」
「サッカー部の後輩に自慢したときに一緒にいたらしい友達もいて、なんだよおまえ、大嘘なのかよ?って大声上げて」
「あべちんが、わたしたちにきちんとあやまんなさいよっ!て詰め寄ったら、ウチダ、直立不動になって上半身90度曲げて、すいませんでしたーっ、だって」
「その瞬間、教室中、男子も女子も大爆笑だったよねー」
みんなが口々にそのときの状況を教えてくれました。
あの控えめなしーちゃんさえ楽しそうに笑っています。

「そんな感じで仇はとったから、なお姫も早く元気出してね」
あべちんが私の顔を覗き込むように笑いかけてきます。
「・・・ありがとう」
私は、なんだか感動していました。
ウチダっていう人のことは、まあどうでもいいのですが、愛ちゃんたちみんなが私のためにそこまでしてくれたことが、すっごく嬉しくて、ありがたくて涙が出そうでした。
それと同時に、少しだけど前向きな気持ちが戻ってきました。

「でも、ウチダ、あんなに追い込んじゃったから、なおちゃんのこと逆恨みしてストーカーになったりして」
曽根っちが冗談めかして怖いことを言います。
「へーきへーき。あいつにそんな根性ないって。ヘタレそのものって顔だったじゃん。わたしの兄キにもよく言っておくし、わたしたちが絶対に、なお姫守ってあげるよ」
あべちんが頼もしいことを言ってくれます。
「だからなお姫も、なんかあったらスグにわたしたちに相談しな、ね?」
「ありがとう、みんな・・・」
私は、本当に嬉しくて、思わずあべちんの両手を取って、強く握っていました。

「それにしても男子って、なんでそんなすぐバレるような嘘、つくのかねえ?信じられない」
とユッコちゃん。
「見栄をはるベクトルが間違ってるよねー」
と曽根っち。
「ああいうクズ男子見ちゃうとあたしも当分、ボーイフレンドとかいらないなあって思っちゃうよ」
と愛ちゃん。
「でも、男子がみんなウチダみたいなクズってわけではないよ」
と曽根っち。
「どっちにしても中学男子ってやっぱガキっぽいよねえ。わたしは、大人っぽい人がいいなあ。高校生とか」
とあべちん。
「今は、女子だけでワイワイやってるほうが全然楽しいよねー」
とユッコちゃん。
そうだよねー、ってみんなで言い合った後、しーちゃんがポツンと言いました。
「でもワタシ、女の子同士の恋愛でも、いいよ・・・」

「しーちゃんは、レズっぽいマンガもよく読んでるもんねー。でもBLも好きなんでしょ?」
あべちんがすかさずツッコミます。
「うーん、どっちかって言うと百合系のほうが好き、かなー。キレイだし、カワイイし」
しーちゃんがうっとりした感じで言いました。

「そうそう。百合系って言えばこないださあ・・・」
話を引き取ったのは曽根っちでした。

「愛ちゃんとなおちゃんの通ってるバレエスクールに百合草っていう名前の講師の人、いるでしょう?」
「うん。百合草先生は、あたしたちの担当講師だよ」
と愛ちゃん。
「あー、そうなんだ。じゃあこの話、ちょっとマズイかなあ・・・」
曽根っちは、じらすみたいに少しイジワルな言い方をします。
「えっ?なになに?すごく気になるんだけど」
愛ちゃんが曽根っちに食い下がります。
私もまっすぐ曽根っちを見つめます。

「百合草っていう先生、どんな感じの人なの?」
曽根っちが私に問いかけます。
「すっごくキレイで、プロポーションも良くて、しなやかな感じで、踊りももちろんうまくて、性格もさっぱりしていて頼りがいのあるいい先生、だよね?愛ちゃん?」
愛ちゃんも黙って大きくうなずきます。
「ふーん。なおちゃんも愛ちゃんもぞっこん、て感じだね。じゃあ、びっくりしないで聞いてね」

「アタシの姉貴、今、東京の大学に通っていてね、一人暮らししているんだけれど、夏休みに一週間くらい、こっちに帰って来ててね、そのときに聞いた話」
「姉貴も中学から高校2年まであのバレエスクールに通っててね、けっこう真剣にバレリーナ目指してたのね」
「でも今は、なんだかアニメのコスプレとかにはまっちゃってて、髪の毛ベリベリショートのツンツンにしちゃってるけど。そのほうがウイッグかぶりやすいんだって」
しーちゃんが目を輝かせます。
「今の姉貴なら、しーちゃんと話、すっごく合いそうね」
曽根っちもしーちゃんのほうを向いて、ニコっと笑いました。

「それで、もう一年くらい、渋谷にあるおしゃれ系な居酒屋さんでバイトしてるんだって」
「でも、その居酒屋さんって、ホテル街の入口にあるんだって。いわゆるラブホ街ね。だから来るお客さんもそういうカップルさんばっかりなんだって」
「お店に来たお客さん見ると、これからヤルのかヤった後なのか、たいがいわかるって豪語してたわ。あと、シロートなのかショーバイなのかも」
「ショーバイ、って?」
あべちんがおずおずと口をはさみます。
「だからつまり、お金もらってそういうことする女のことね。援交とか。そのお店で待ち合わせてホテルへ、ってパターンに使われてるみたいね」
「お客さんがみんなそんなだから、お金はけっこう使ってくれるみたいなのね。ほら、そういう場になれば男ってみんな見栄はるじゃない?ラブラブだったら終わった後、おしゃれなお店で美味しいものでも食べていくか、みたいになるし」
「高めの値段設定でもお客さん入るからバイト代はいいみたい。こっち来てるとき、アタシも誕生日プレゼントにブランドもののバッグ、買ってもらっちゃったし」
みんな興味シンシンで曽根っちのお話を聞いています。

「それで、8月の始めの頃、その日は姉貴、遅番だったんで夜の7時過ぎに出勤したんだって、ラブホ街抜けてね」
「そしたら、とあるおしゃれっぽいホテルから、女性が二人、寄り添うように出てくるのを見たんだって」
「姉貴はそのときは、後姿しか見なかったんだけど、二人ともスラっとしてて、片方の女性がもう片方の女性の腕に絡みつくみたいにぶら下がってて、ラブラブな感じだったって」
「姉貴は、へー、女性同士でこういうところ使うカップルも本当にいるんだなあ、ってヘンに感心しちゃったって。でもまあ、そんなの人の好きずきだからね。なんだかカッコイイなとも思ったって」

「それからお店に入って、仕事するためにフロアに出たら、どうもその女性カップルらしいお客さんが二人で奥のほうのテーブルに座ってたんだって」
「姉貴は後姿しか見ていないんだけれど、そのカップルのうちの一人の女性がすごく特徴のある柄の白っぽいノースリワンピを着ていたんでわかったんだって。スカートんとこの柄が同じだったって」
「向かい合わせの二人がけの席なのに隣同士で座っちゃって、からだぴったりくっつけてイチャイチャしてるんだって」
「でも、二人ともなんかスラっとしてて、モデルさんみたいでカッコイイから、いやらしい感じや下品な感じは不思議としなかった、って言ってた」
「そのお客さん、二人とも大きなサングラスをかけていたんで、気がつかなかったのだけれど、姉貴がそのテーブルにお料理を運んで行ったら、短い髪のほうの女性がサングラスはずしたんだって」

「それで、その顔見たら・・・間違いなく百合草先生だったんだって」


トラウマと私 16

トラウマと私 14

月曜日の朝。
少し寝坊してしまい、始業時間ぎりぎりにクラスの教室に入りました。
ものすごく投げやりな気持ちのままでした。

私のからだからは、相変わらず陰気オーラが漂っているので、休み時間になっても誰も話しかけてきませんでした。
昼休みのチャイムが鳴った途端、愛ちゃんたちのグループ全員が揃って席を立って、どこかに行ってしまいました。
私は、それを見ても何も感じませんでした。
早くお家に帰ってベッドに横になりたいな、なんて考えながら、自分の席で頬杖ついてボーっとしていました。

6時限目が終わって、そそくさと帰り支度をしていると、愛ちゃんたちが私の席のまわりに集まってきました。
私といつも遊んでくれる仲良しグループのメンバーは、愛ちゃんの他に4人います。

ユッコちゃんは、背が少し小さいけれど運動神経バツグンの明るいスポーツ少女。
運動会では愛ちゃんと二人で大活躍なクラスの人気者。

曽根っちは、背が高くて大人っぽい雰囲気で一番オマセさんかもしれませんが、私たちと一緒だと独特のボケでみんなを笑わせる三枚目役。

あべちんは、J-ポップ好きでおしゃべり好きな快活な女の子で、曽根っちのツッコミ役。
私を姫と呼んだ張本人のイタズラ好きで、私の胸やお尻によくタッチしてきます。

しーちゃんは、大人しめ控えめな美少女さんで、コミックやアニメが大好きで、絵を描くのもうまくて、テレビでエアチェックしたアニメDVDをみんなによく貸してくれます。

「なお姫、ごめんっ!」
まだ座っている私の正面に立ったあべちんが、両手を自分の胸の前で合わせて、私を拝むような格好で大げさに頭を下げてきます。
「えっ?」
私は、びっくりして顔を上げ、あべちんを見ました。
あべちんは、本当にすまなそうにからだを屈めて謝っています。
「わたしがヘンなウワサ流しちゃったから・・・なお姫に迷惑かけちゃって・・・」
私には、なんのことやら、さっぱりわかりません。
「はい?」
私は、私を取り囲むように立っている5人の顔を見回しながら、疑問符全開で首をかしげます。
「あべちん、ちゃんと説明してあげないと、直子、なにがなんだかわからないよ」
ユッコちゃんがじれったそうにあべちんに言いました。

「夏休みの最後の日に、わたしが必死こいてたまった宿題してたらさ、兄キがわたしの部屋に入ってきたの・・・」
あべちんが話始めました。
あべちんには、一つ上のカッコイイお兄さんがいて、サッカー部のキャプテンを務めていることも聞いていました。
「それで、おまえのクラスに森下っていう女子、いる?って突然聞くのよ」
「わたしはもちろん、いるよ、って答えた」
「そしたら兄キ、なんだか聞き辛そうに、その子、その、なんだ、あんまりカワイくないのか?なんて聞いてくるのよ」
「私、頭来ちゃって、なおちゃんは、姫って呼ばれるくらい可愛いし、おっとりしてて、育ちいい感じで、勉強も出来て、ちょっと天然ぽいとこもあるけど、誰に聞いても可愛いって即答するくらい可愛いらしい女の子だ、って言ってやったのよ」
私は、面と向かってそんなことを言われて恥ずかしくなって、うつむいてしまいます。

「で、なんでそんなこと聞くのか、って兄キを問い詰めたの」
「そしたら、兄キが言うには、その2、3日前に学校でやってるサッカー部の練習に顔出したんだって・・・」
「3年生は夏休み前までで引退だから、練習はできないんだけどね。ヒマだったから差し入れのアイス買って、ちょこっとからかいに行ったんだって」
「で、休憩のときにアイス食べながら、2年生の部員たちとおしゃべりしてたら、後輩の一人が、ウチダ先輩ってスゴイんですねえ、って言い始めたんだって」
ウチダ?
なんだか憶えのあるような、ないような名前・・・

「なんでも、そのウチダってやつも、夏休みの真ん中頃に下級生の練習見に来たんだって。なんとかって友達と一緒に」
「それでそのとき、夏休み中に2年生の女子から告られたんだけど、好みじゃないからフってやった、って自慢げに話していったんだって」
「ウチダとその友達っていうのは、結局3年間サッカー部にいてもレギュラー取れなくて、そもそも女子にもてそうだからサッカー部にいただけ、みたいないいかげんな奴ららしいんで、後輩たちも話半分で聞いてたらしいけど」
あべちんは、そこでいったん言葉を止めました。

「それでね・・・」
あべちんは、言い辛そうにまた話始めます。
「その、ウチダがフった女子の名前が森下だ、って兄キが言うのよ・・・」
「そ、それは・・・」
私は、思わず大きな声が出てしまいます。
すかさず愛ちゃんが私の肩にやさしく手を置いて、わかってるから、って言うみたいに私を見つめながら二度三度、大きくうなずいてくれました。
私は、話の先を促すようにあべちんを見つめます。

「わたしだって、まさかあ、と思ったわよ。なお姫が誰か男子に告る姿なんて、想像もつかないし・・・」
「その話聞いちゃったから、夏休みの宿題どころじゃなくなっちゃって、おかげで先週は先生たちに叱られて、追加の宿題までもらって散々だったわ・・・」
あべちんが私を見てほんの小さく笑いました。

「でもね、夏休み終わって学校に来たら、なお姫は確かになんだか落ち込んでるみたいだし、わたしたちとはロクにおしゃべりもしないでスグ帰っちゃうし・・・」
「夏休みも後半は、なお姫、わたしたちと全然遊んでなかったじゃない?」
「・・・ひょっとしたら本当なのかも、って思えてきちゃったのね。今考えれば、さっさと直接なお姫に聞けば良かったんだけどさ」
「それで、曽根っちやしーちゃんにもしゃべっちゃたのよ」
「2年の他のクラスじゃけっこうウワサになってるみたいでさ、わざわざうちのクラスまでなお姫の顔、見に来た奴らもいたみたい」
それでなんだかみんなよそよそしいような、居心地悪い感じがしてたのか・・・
「うちのクラスには、幸か不幸かサッカー部に入ってる男子がいないのよねえ。いたらそいつにもう一度確かめたんだけど・・・だから、余計になお姫には聞き辛くって」

「で、それをユッコと愛子に初めてしゃべったのが金曜日の放課後。愛子が木曜日にバレエ教室一緒に行ってたから、何か知ってるかなあと思って・・・」
「そしたら愛子、すごい剣幕で怒り始めちゃってさあ・・・」
「だって、あたし、その場にいたんだもんっ!」
愛ちゃんが待ってましたとばかりに、話し始めます。

「あのガキっぽい手紙の文面も覚えてるし、なおちゃんがあいつに手紙つき返したのに、あいつ受け取らなくて、封筒が地面にヒラヒラ落ちてったのも全部見てたもんっ!」
「だいたい自分から呼び出しといて、遅刻してくるって、なんなの?何様のつもりよっ!それで今度は、自分からフったなんて言いふらして・・・ぜーったい許せないっ!」
愛ちゃんはどんどんコーフンしています。
あべちんが、まあまあ、と愛ちゃんの背中をさすりながら、話を戻します。
「愛子に聞いたら、なお姫が沈んでいるのは、アレだったのと、おじいさまが亡くなったせいだって教えてくれて、わたし、そのウチダってやつがどうにも許せなくなっちゃってさあ」

「それで、土曜日にあべちんの家にみんなで集まって、どうしてやろうか、って話し合ったのよ」
ユッコちゃんが言いました。
「あべちんのお兄さんも交えてね。それで・・・ね」
曽根っちが愉快そうにニヤっと笑いました。


トラウマと私 15

2010年10月25日

トラウマと私 13

土曜日の夜。
考えごとが一段落して一息ついて、ゆっくりお風呂に入ってからお部屋で身繕いしているとき、あるアイデアが浮かびました。

激しいオナニーをして思いっきりイったら、あんな出来事、忘れられるかもしれない・・・

そのとき私は、ブラとショーツを着けてコットンのパジャマの上下を着ていました。
まったくムラムラは感じていなかったのですが、試してみたい気持ちが大きく膨らんできました。
時刻は、夜の11時少し過ぎ。
この時間なら、母も、珍しく家にいる父も、私の部屋に来ることはまずありません。
さっき階下のお風呂から出たとき、すでにリビングの灯りは消えていました。
おそらく父と母は、防音されている寝室にいるはずですから、多少大きな声が出てしまってもだいじょうぶなはずです。

念のためにドアに鍵をかけて、窓の戸締りを確かめてからベッドの縁に腰掛けました。
パジャマの上から、おっぱいをサワサワと撫ぜてみます。
ゆっくり、やさしく撫でまわしていると、だんだんとその気になってきました。

パジャマの上下を脱いで、下着姿でベッドに上がり、仰向けになりました。
電気を消してしまうと、あの日の状況に似てしまうので、明るいままにしておきます。
上半身をやさしく撫ぜつづけます。
ブラの上からおっぱいを軽くもみしだきます。

頭の中では、ミサコさんたちが我が家に来たとき、お昼寝したときに見たオオヌキさんとの夢をイメージしていました。
頭の中をステキなオオヌキさんの、あの大胆な水着姿で一杯にしようと努力しました。
ブラをはずして、おっぱいや乳首をじかにさわり始めます。
あくまでやさしくソフトに、日除け止めを塗ってくれたときのオオヌキさんの指のイメージで・・・

乳首も少し勃ってきたし、ショーツの下のアソコも少しだけ潤ってきたようです。
ゆっくりとショーツも脱いで、足首から抜きました。
全裸です。
右手を徐々に下のほう移動していきます。
あくまでやさしく、あくまでソフトに。
頭の中は、オオヌキさん一色に染まっていました。
これならだいじょうぶ。
気持ちいい。

右手でやさしく薄い陰毛をなぞり、左手で左のおっぱいをやわらかく掴みます。
乳首を軽くつまんで、少しだけひっぱります。
「あんっ」
じらすようにゆーっくりと、右手の指の先がアソコの亀裂の割れ始めまで届いたとき・・・

唐突に思い出しました。
私、あのとき確かにあの男に、アソコも弄られていました。
イヤな夢を見ながら感じたイヤな感触が一気に甦りました。
クリトリスをぞんざいに擦るザラザラとした感触・・・

その途端に、自分でさわっているおっぱいへの愛撫もザラザラとした感触に変わりました。
もう両手は動かせません。
同時に、頭の中のオオヌキさんを蹴散らして、あの場面が大きくフラッシュバックしてきました。
あのイヤな臭いまで漂ってくるように感じます。
「いやっー!」
私は思わず起き上がり、両手で顔を押さえました。

しばらく呆然としていました。
エアコンは効いているのに、じんわりとイヤな汗もかいていました。

かなり長い間、ベッドの上で呆けていたと思います。
ふっと我に返り、そそくさとバスタオルで全身を拭いて、ショーツを穿き、ブラはしないでパジャマの上下を着て、お部屋の電気を消し、ベッドに横になりました。

私、この先、アソコをさわるたびに、あんな悪夢を思い出さなければいけないのでしょうか?
私、これからずーっとオナニーできないのでしょうか?
私、イくことはもう一生できないのでしょうか?
・・・あんまりです・・・

ベッドに寝転んで、天井を見上げながら、頭の中で何度も何度も同じ言葉がくりかえされていました。
それ以外、頭の中は、真っ白でした。
あのフラッシュバックさえ入り込んで来れないのが、救いと言えば救いでした。

いつ眠りに落ちたのか、わかりません。
たぶん明け方近くだと思います。
目が覚めたのは、翌日の午前11時過ぎでした。
晴天でした。
気分はサイテーでした。

日曜日の午後を無気力に過ごして、その夜。
あきらめきれない私は、もう一つの方法を試してみました。

父のお部屋から持ち出してきた2冊のSMの写真集を見て、初心を取り戻そうと考えたのです。
最近は、あの写真集を見ながらオナニーすることは滅多にありませんでした。
気に入った写真はすべて、頭の中に叩き込まれているので、オナニーのときの妄想では大活躍していましたが、もう一度実際に写真を見ることで新鮮に感じられるかもしれません。
写真を見ながら、初めてオナニーで激しくイってしまったときみたいにどんどん興奮できれば、今、私を苦しめているおぞましい出来事の記憶も頭から追い出せるかもしれない、という目論見でした。

勉強机に向かって椅子に座って、あえて自分のからだにはまったく触れず、じっくり写真を見ていきました。
性的に興奮してきたらすぐ、服を脱ぐつもりでした。
2冊を1度づつ、時間をかけて眺めました。
ムダでした。

逆に、こんな風に縛られたところにあの男がやってきたら・・・
なんて、今まで考えたこともなかった妄想が広がって、恐怖のほうが勝ってしまい、性的に興奮するどころではありませんでした。
眉根にシワを寄せたモデルさんたちの表情も、今までは苛められて悦んでいるように見えていたのですが、今日は本当にイヤがっているようにしか見えませんでした。

そのうちに、なんだか自分がやっていること、考えていることがすべて、すごくバカバカしく思えてきて、写真集をしまい、さっさとパジャマに着替えてベッドに寝転びました。

何もかもがつまらなく感じていました。


トラウマと私 14

2010年10月24日

トラウマと私 12

夏休みの残り数日を、煮え切らない悶々とした気持ちと、生理で重くだるくなったからだとで過ごしました。

母や父の前では、なるべく沈んだ素振りを出さないようにしていましたが、お部屋で一人になると、どうしてもあのときのことを考え始めてしまいます。
考え始めると、ちょっと疑問に思う点とか、調べてみたいことがいくつか出てきました。
もちろん、できることなら、きれいさっぱり忘れてしまいたい記憶でした。
瞼に焼きついたように離れないあのおぞましい場面を、なんとか思い出さないように、頭のずーっと隅に追いやろうと努力しました。
でも、一度湧いてしまった疑問や、私の五感に残る感触の真相は、調べずにはいられないものでした。

愛ちゃんたちから、遊びのお誘い電話もあったのですが、生理で体調が良くないから、と母にお断りしてもらいました。

二学期の始業式の日も、まだ生理は終わっていませんでした。
私は、沈んだ気持ちで学校へ行き、帰りの時間になるのをひたすら待ちました。
どこかに寄って遊んで行こう、って誘ってくれる愛ちゃんたちに、ちょっと家庭の事情があって、と嘘をついて、まっすぐに町の図書館に飛び込みました。
翌日の放課後も・・・次の日も。

木曜日は、愛ちゃんと一緒にバレエ教室に行きました。
「なおちゃん、夏休み明けてから、なんだか元気ないみたいねえ」
愛ちゃんが聞いてきてくれます。
「何か悩み事?」
「うーん、そういうワケじゃないのだけれど・・・私、今アレだから・・・ちょっと、ね」
生理は2日前に終わっていました。
「それに、夏休みの終わりに、大好きだったおじいさまが亡くなってしまって、それもちょっとね」
大好きだった、ていうのは嘘です。
「ふーん、そうなんだ・・・」
愛ちゃんも一緒に沈んだ顔になってくれます。

私は、愛ちゃんになら、全部しゃべってしまってもいいかな、とも思っていました。
でも・・・
しゃべったからと言って、どうなるワケでもないし、かえって愛ちゃんを心配させてしまいそうだし・・・

バレエのレッスンにも、やっぱりあまり身が入りませんでした。

金曜日になると、クラスのお友達も心なしか、なんだかよそよそしい感じになっているように思えました。
今の私、陰気だもの・・・
あまり近づきたくないと私でも思うでしょう。
その日の放課後も一人で図書館に行きました。

週末に自分のお部屋で一人、今まで図書館で調べた成果と、私が悶々と考えていた仮説について、真剣に検討してみました。

まず、あのとき私のからだをヌルヌル、ベトベトにしていた液体の正体です。
私は、からだに射精されてしまったのでしょうか?
精液についていろいろ調べました。
図解が付いているページは、その図を他の本で隠しながら、文字だけを追いました。
今の私は、たとえ簡略な図だとしても、アレの形を見たくありませんでした。

精液は、白濁、または薄黄色気味の粘り気のある液体で、栗の花のような匂いがする、ということでした。
あのとき私のお腹を汚していた液体は、ヌルヌルはしていましたが、ネバネバまではしていなかった気がします。
色は、辺りが真っ暗だったのでよくわかりませんが、電気を点けてから見たときは、透明でした。
でも、精液は時間が経つと透明になる、とも書いてありました。
すると、あれは一回射精されて、時間が経ったものなのでしょうか?

同じページに、射精の前に分泌される、カウパー氏腺液、とういうのも出ていました。
こっちは無色透明無臭で、糸を引くほどヌルヌルしていると書いてありました。
いわゆる、感じたとき、にまず出てくる液だそうで、女性の愛液と同じようなものなのかな?
私は、こっちのほうがアヤシイと思いました。

白濁した液、という字面を見て、自分のえっちなお汁のことも思い出しました。
オナニーを何度かして、慣れ始めた頃、少し長めに熱心にアソコを指でクチュクチュしていると、透明だった液がだんだん白く濁ることがありました。
そのときも最初はずいぶんびっくりして、まさかヘンな病気?とか思って、すぐに図書館で調べました。
他のなんとかっていう液が混じって白濁することもあるが異常ではない、と書いてあって安心したものでした。

次に匂いです。
あのとき鼻についたイヤな臭いの正体は?
精液の匂いは、栗の花の匂いに似ている、と書いてありましたが、私は、栗の花がどんな匂いなのかを知りません。
花が咲くのは6月上旬頃だそうなので、嗅ぎにいくこともできませんでした。
カルキの匂い、と書いてある本もありました。
カルキの匂いっていうと、プールの消毒液の匂いのはずです。
あのとき、そんなケミカルな匂いは感じませんでした。
もっと、生々しい、ツンとくる、なんていうか獣じみた臭いでした。

いろいろ調べると、わきが、っていうのがありました。
いわゆる、腋の下の臭い、の強いやつみたいです。
そう言われれば、そんな感じでした。
体育の時間、汗びっしょりの男子から漂ってくる臭いをもっと強烈にした、みたいな。
これが男性の匂いなのでしょうか?
男性にも体臭が強い人と弱い人がいるようですが・・・

私が眠っている間、からだをさわられていたのは確実のようです。
あのイヤな夢の中ででの感触は、リアルすぎました。
Tシャツをめくられても、ショーツを下ろされても気がつかなかったくらいですから、さわられててもしばらくは、気がつかないくらい深く眠っていたのでしょう。
やっぱりワインのせいなのかな?
お酒はもう飲まないほうがいいな、と思いました。

さわられるだけならまだしも、ひょっとすると舐められたりもしていたかもしれません。
あのとき、私の上半身を覆っていたヌルヌルの液体は、よだれっぽくも感じました。

結局、確かなことは何一つわからないのですが、一応こういう結論にしました。
あの日、私のからだを汚した液体は、私の汗と、知らない男の汗と、よだれと、カウパー氏腺液、で、射精はされなかった。
根拠は、精液の臭いを感じなかったことと、男のアレが勃っていたこと。
ひょっとしたら舐められはしたかもしれない・・・

ここまで考える間も、私は、何度も悪寒でからだをゾクゾク震わせていました。

もしも、もう少し目が覚めるのが遅かったら、私はどうなっていたんだろう・・・
そう考えた瞬間、からだをゾクゾクゾクーっと強烈な寒気が襲いました。

男性のモノは、みんなあんなにすごいのか?という疑問もありました。
本には、日本人成年男子の平均は、勃起時13~15センチとありました。
定規を見ると、これでもけっこうな長さです。
そして私が見たのは、そんなものじゃありませんでした。
それに太さも・・・

でも、この疑問は、これ以上真剣には、考えられませんでした。
本気でズキズキと頭が痛くなってきてしまうんです。

最後の疑問は、あの男の正体でした。
と言っても、あの日あの場所にいた男性の中で私が知っているのは、父とワインのおじさまだけなので、わかるはずはないのですが、後になって考えていたら一つだけ、引っかかることがあるのに気がつきました。

母は、ワインに酔った私をお部屋まで連れて行った後、ドアに鍵をかけずに戻ったのか?
普通に考えると、母の性格から言って、鍵はかけていくと思います。
私物のバッグとかも置いてありましたし、母が戻ってきたときも私が鍵をかけていたことに関しては、何も言いませんでしたし。
鍵がかかっていたとすると、あの日、私の寝ているお部屋に入って来れるのは、かなり限られた人だけになるはずです。
すなわち、あのお屋敷に住んでいる身内の人、もしくは使用人の人・・・
その中で、体格が良くて筋肉質で毛深くて体臭がキツイ男性、がいたら、その人は限りなくクロです。
その男が一言だけ発した声は、意外と若い声に聞こえました。
これでかなり絞り込めるかもしれません。

母がうっかり鍵をかけないで戻ったのなら、この仮説はまったく無意味になります。
父と母に聞いてみようか・・・
しばらく真剣に悩みました。

お部屋の中をウロウロ歩きながらさんざん迷った挙句、やっぱり、やめておくことに決めました。
犯人がわかったところで今さら、起こったことが無かったことになるわけでもないし・・・
いずれにしても、父の実家にはもう二度と行かない、と心に決めました。

一通りの結論を一応出したので、ほんのすこーしだけ気持ちが落ち着きました。
そして、この出来事を体験したおかげで、苦手なものがずいぶん増えてしまったことがわかりました。

まず、毛深い男性、がダメになりました。
木曜日に愛ちゃんとバレエ教室に行ったときも、電車の中で吊革に掴まっている男の人の半袖の腕にどうしても目が行ってしまいました。
それで、もじゃもじゃと毛深い人がいると、それだけで背筋がゾワゾワっときてしまいました。

同じように、男の人の体臭にも過敏になりました。
あのときと同じような臭いがちょっとでもすると、逃げ出したくなってしまいます。

筋肉質の男性にもあまり近寄りたくありません。

雷様は、以前から苦手でしたが、輪をかけてダメになりました。
とくに稲妻は、条件反射であの場面を呼び起こしてしまいます。

もちろん、男性のアレに関しては、無条件でパスです。
この先二度と見たくない、と思いました。

一番深刻な被害に気づいたのは、土曜日の夜中でした。

私、オナニーができなくなっていました。


トラウマと私 13

2010年10月23日

トラウマと私 11

シャワーを止めて、そろそろ出ようと思いました。
オシッコがしたくなりました。
隣にあるトイレに行こうか、と一瞬迷いましたが、なんだか面倒になって、はしたないけれどここでしちゃうことにしました。

シャワーを再び強くほとばしらせてから、その場にしゃがみました。
アソコの奥がウズウズっとしました。
オシッコが出てきました。
生理も来てしまいました。

もう一度全身にシャワーを浴びてからバスタオルをからだに巻き、お部屋のドアを少し開いて顔だけお部屋に出しました。
「ママ、生理が来ちゃったの。私のかばんの中からアレ取ってくれる?」
母は、ベッドの縁に浅く腰掛けてボンヤリしていました。
「あらあらそうなの?大変ねー。ちょっと待っててね」
台詞とは裏腹にのんびりと立ち上がると、私のかばんをガサゴソして、ナプキンを手渡してくれました。

ナプキンをあててから新しいショーツを穿いて、母に借りたブルーのTシャツを素肌にかぶります。
胴回りがゆったりしていて、丈が私の膝上まであって、いい匂いがします。
私は、からだがスッキリした開放感と、生理が来てしまったどんより感がないまぜになった、中途半端に憂鬱な気分でお部屋に戻りました。

ヨシダさんは、喪服のワンピースのままベッドに仰向けに、タオルケットを掛けて寝かされて、軽くイビキをたてていました。
「なおちゃん、お疲れさま。シャワー気持ち良かった?ママもやっぱり、シャワーしとこっかなあ」
母が欠伸をしながら、自分のバッグの前にしゃがみ込みました。
「ママがシャワーしている間に、なおちゃん、お布団敷いておいてくれる?今夜は二人、枕並べて寝ましょう」
「はーい」
私は、ちょっとだけ嬉しくなります。

母がバスルームに消えて、私は、髪や顔のお手入れをした後、お布団を並べて二つ敷きました。
そのお布団の上に座って、やれやれ、と一息ついたとき、コンコンとドアがノックされました。
私は、ビクっと震えます。
今は、あんまり知らない大人の人とは、お話ししたくない気分です。
「は、はーい」
一応大きな声で返事します。
「おっ、直子か?ドア、開けてくれ」
父の声でした。

父の後から、やさしそうな感じのキレイなお顔の喪服の女性も微笑みながらお部屋に入ってきました。
「直子、誰だったっけ?って顔をしてるな。忘れちゃったか?オレの妹の涼子」
「直子ちゃん、お久しぶりね」
その女性がニコニコ笑いながら、私にお辞儀してくれます。
私もあわててペコリとお辞儀しました。
 
涼子さんのお顔は、確かに言われてみれば、なんとなく父に似ていました。
くっきりした瞼の線とか、鼻筋とか、細い顎とか。
父がもし女性だったら、こんなお顔になるのかあ。
この人の旦那様がさっきの全体にまんまるい感じのワインのおじさまなんだあ。
私は、そんなことを考えてヘンに感心してしまいます。

「そろそろ直子たちが風呂に入る頃かな、と思って様子を見に来たんだけど、ここのシャワー使ったんだ」
「パパたち、昨日、見張りしてくれてたんだって?」
「ああ、なんかこの辺り、ヘンな奴が出没するらしいからな。でもまあ、シャワーしたんなら、今夜は見張り、しなくていいな」

それから三人で、今敷いたお布団の上に座って、しばらくお話をしました。
質問役は、主に涼子さんでした。
何年生になったの?から始まって、好きな科目は?とか、普段は何してるの?とか、ボーイフレンドいるの?とか。
私がバレエを習っている、と告げるとすごく興味を持ったみたいで、いろいろ聞いてきました。

涼子さんは、本当にやさしそうで、おっとりとしていながら好奇心も強いみたいで、どことなく母に感じが似ている気もしました。
私は、すぐに涼子さんのことが好きになりました。

父は、喪服から着替えて、ワインカラーのポロシャツにカーキ色のバミューダパンツを穿いていました。
お葬式が無事終わってホっとしているみたいで、お酒が入っているせいもあるのでしょうが、ずいぶんリラックスしているみたいでした。
私と涼子さんの会話に、ときどき冗談で茶々を入れて笑っています。

私は、あぐらをかいて座っている父の、バミューダパンツから伸びている脛から上の部分や、ボタンを全部はずしているポロシャツの襟元から覗く肌にチラチラと視線を投げていました。
父は、やっぱりあまり毛深くありません。
私は、心底良かったと思いました。

そうこうしているうちに、母もシャワーから出てきました。
私とおそろいのTシャツを着ています。
でも、母のほうが胸がばいーんと出ていて、数段色っぽいです。

母も交えてしばらく4人で雑談していました。
涼子さんたちも途中まで帰る方向が一緒なので、帰りは、父の車に同乗していくことになりました。
「ねえパパ、私、明日の朝、早くにお家帰りたい。知らない人のお家だから、なんだか疲れちゃった・・・」
私は、思い切って父に言ってみました。
一刻も早く、このお屋敷から立ち去りたいと思っていました。
「そうね、それになおちゃん、アレが来ちゃったから、ね」
母が援護してくれました。
「アレ?」
父が一瞬首をひねってから、あわてて言いました。
「そうだな。オレも帰って揃えなきゃならない資料もあるし、兄キたちと顔合わすとまたゴタゴタした問題を押し付けられそうだしな・・・早めに出るか」
父も賛成してくれました。
明朝6時に出発することになりました。

父たちがお部屋を出て行って少ししてから、ヨシダさんが目を覚ましました。
「なおちゃん、ごめんなさいねえ、ベッド」
「いいえ。だいじょうぶですから。今夜は母とお布団で寝ます」
ヨシダさんは、照れたように笑いながらおトイレに入って、しばらくして戻ってくると、のろのろとワンピースを脱いでゴソゴソと浴衣に着替えました。
「まだ、全然お酒抜けないから、今夜はこのまま先に休ませてもらうわ。おやすみ、なおちゃん」
まだ真っ赤なお顔を私に向けて、ニっと笑ってからベッドに横になると、タオルケットをかぶって横向きに丸くなりました。
すぐに寝息が聞こえてきました。

その夜は、母と枕を並べてお布団に入りました。
母は、しばらく、父と出会った頃の思い出話を聞かせてくれていましたが、やがて先に眠ってしまいました。

取り残されて、お布団の中で目をつぶっていると、やっぱりどうしてもあのときの場面が瞼の裏に浮かんできてしまいます。
私は、他のことを考えようと努力しました。
小学生の頃のことや、バレエのことや、愛ちゃんたちと遊んだことや、オオヌキさんたちのことや・・・
でも、他のことを考えようとすればするほど、かえって鮮明にさっきのあの場面が頭の中を占めてしまって、うまくいきません。
その場面が浮かぶたびに、生理的な嫌悪感に頭もからだも支配されてしまいます。
また、他のことを考えようと努力します。
同じことを一晩中、何度もくり返しました。
眠気をまったく感じなくなって、私は一人、お布団の中に丸まって、ひたすら朝がやって来るのを待ちました。

腕時計を見て、5時半になって、私は、お布団から上半身を起こしました。
あれから一睡もできませんでした。
母ものそのそと起き上がりました。

朝の支度をいろいろ済ませて、6時5分前にお庭に出ると、もう父と涼子さんたちが待っていました。
ワインのまあるいおじさまがニコニコ笑って手を振っています。

母が運転して、私が助手席、父と涼子さんと旦那様が後部座席に座りました。
知らない中年のおじさま二人とおばさま一人が、お庭で見送ってくれました。
私は、どうしてもそのおじさまたちを注意深く観察してしまいます。
体型や腕の毛深さから言って、彼らはシロみたいでした。

車の中では、涼子さんの旦那様が絶え間なく面白い冗談を言ってくれて、和気藹々な感じでした。
途中、ファミリーレストランでゆったりと朝食を取って、高速道路に入ってからは、涼子さんの旦那様のお仕事のお話にみんなで興味シンシンでした。
ワインのまあるいおじさまは、テレビ局の偉いディレクターさんだそうで、いろんな有名タレントさんのウワサ話や大きなニュースになった事件の裏話を聞かせてもらいました。
私は、だんだんと眠たくなってきていたのですが、お話が面白くて、ずっと起きていられました。

高速道路を途中で降りて、涼子さんたちを最寄の駅前まで送っていきました。
駅でお別れするとき、涼子さんが近い内に我が家に遊びに行く、って約束してくれました。
私はすっかり、ワインのまあるいおじさまと涼子さんご夫婦の大ファンになっていました。

来た道を戻って、再び高速道路に乗り直します。
今度は、父が運転して母が助手席。
私は、後部座席に移って、やがてぐっすり眠り込んでしまいました。


トラウマと私 12

トラウマと私 10

ゴンゴン、とドアを強くたたく音で目が覚めました。
私は、ベッドの上に座ったまま脱力して、またうつらうつらしてしまっていたようです。

「なおちゃーん、ちょっと鍵、開けてくれないー?」
母の大きな声がドア越しに聞こえました。
私はあわててドアに駆け寄り、鍵をはずします。
とりあえず今は、何もなかったフリでいよう、と決めました。
外開きのドアをそーっと開けると、母が誰か女の人と寄り添うように立っていました。

「ヨシダのおばさまが酔っ払ってしまわれて、ね」
母の肩に腕を絡めてしなだれかかっているのは、昨夜このお部屋に一緒に泊まったおばさまがたのうちの一人でした。
「ベッドに腰掛けさせてあげたいから、なおちゃん、ベッドの上、お片付けしてくれる?」
私は急いでベッドの上をささっと手で払い、たるんでいたシーツを伸ばしました。
ヨシダのおばさまは、へべれけでした。
薄目を開いて、ぐでーっとしたまま、なんだか嬉しそうなお顔をしています。
母がおばさまをベッドの縁に座らせると、そのままコテンと上半身をベッドに倒して動かなくなりました。
すぐにかすかな寝息が聞こえてきました。

「雨が小降りになったから、やっとみなさん、お帰りになり始めたわ」
「ママ、鍵持ってるのだけれど、ヨシダさん支えていたからポッケに手を入れられなくて」
「今夜はみなさん、ほとんどお帰りになるみたい。今夜泊まっていくのはパパの親戚筋のかたたちだけみたいね」
「あのワイン、美味しいから、ママもちょっと飲みすぎちゃったー」
母は、着替えをしながら脈絡の無いお話を投げかけてきます。
私の返事は別に期待していないみたいです。

「昼間のマイクロバスで全員、駅まで送ってくださるんだって」
「そうそう、さっきのカミナリさま、スゴかったわねー」
「きっと近くに落ちたのよ」
「今夜このお部屋に泊まるのは、ヨシダさんと私たちだけだって」
お酒のせいでだいぶテンションが上がっているみたい。

黒いワンピースから生成りなコットンのシンプルなワンピースに着替え終えた母は、言葉を切って、まじまじと私の顔を見つめてきました。
「なんだかなおちゃん、ちょっと顔色、悪いわねえ。まだ気持ち悪いの?」
「ううん。そんなことないけど・・・」
母の口から、ほんのりアルコールの香りが私の鼻に届きます。
私は、さっきの出来事を誰にも話さないことに決めました。
今さら話しても、もうしょうがないし・・・

「ねえ、ママ。私、お風呂に入りたい・・・」
「うん?」
「寝る前にエアコンのタイマーかけたから、起きたときは切れていて、汗びっしょりだったのね・・・だから、早くお風呂、入りたいの・・・ママと一緒に」
私は、母の顔を上目使いに見ながら言いました。
「そう・・・ママ酔っ払っちゃったから、今日はお風呂、いいかな、って思ってたのだけれど・・・でも、なおちゃんが入りたいって言うんなら・・・つきあってあげよっかー?」
母がニコっと笑って、そう言ってくれました。

「だけど、もう少し、そうねえ、あと30分くらいがまんしてね」
「今は、お帰りになるかたたちや宴会の後片付けで、お屋敷中がバタバタしてるから・・・」
「身内のかたたちばかりじゃなくて、知らない人たちもたくさんいるから、ね・・・」

それから母は、急にイタズラっぽい顔になって声をひそめました。
「前に、大おじいさまの何回目かの法要のときにも、泊りがけで盛大な宴会をしたことがあったんだって・・・」
「そのときにね、夜にお風呂に誰か女性が入っているとき、お風呂覗こうとした人がいるらしいの・・・」
「パパのご親戚筋の女性のみなさんは、美人さんばっかりだからねえ・・・」
「だから、なおちゃんも今お風呂に入ると、覗かれちゃうかもよ?」
母が冗談めかして笑いました。
私は全然、笑えません。

母は、そんな私の表情には無頓着にお話をつづけます。
「昨夜もリョーコさんたちがお外で見張っていてくれたのよ、私たちがお風呂に入っているとき」
「リョーコさん、て?」
「パパの妹さん。ほら、さっき、なおちゃんにワインを勧めてくれたおじさまがいたでしょう?あの人の奥様。とてもお綺麗なかたよ」

昨夜使わせていただいたお風呂は、すごく広くて立派で、檜造りのすごく大きくていい匂いがする浴槽で、まるでどこかの温泉宿みたいでした。
お庭に面したところが大きな曇りガラスの窓になっていて、開けたら露天風呂みたくなるねー、なんてのんきに母と話していました。

「昨夜もお通夜に来られたお客様が何人か、夜になってもお庭でブラブラされてたでしょう?」
「リョーコさんとパパが窓のところでおしゃべりしながら、ヘンな人が近づかないように見張っていてくれたんだって」

「それにしても、男の人ってお酒入ると子供みたいになっちゃうのねえ」
母が何か思い出したみたいにクスクス笑いながらつづけます。
「さっきも酔っ払った何人かの人たちがワイシャツとか脱ぎ出しちゃって・・・中にはズボンやパンツも脱いじゃう人がいてね」
「ヘンな踊りを踊りだすの・・・もう可笑しくて可笑しくて」
母は口元を押さえてクツクツ笑っています。
「なおちゃん、いなくて正解だったわよ」

「ねえママ、宴会の人の中にランニングシャツの人はいた?」
私は、思わず聞いてしまいました。
「うーんと、みなさんワイシャツ脱いだらランニングシャツだったわねえ・・・でも、ランニングシャツがどうかしたの?」
「・・・ううん・・・なんでもないけど・・・」
その中にスゴク毛深い人はいた?
とは、やっぱり聞けませんでした。

母は少し訝しげな顔をしていましたが、突然、明るい声で言いました。
「そうだ!なおちゃん。シャワーでいいなら、このお部屋で浴びれるわよ」
「えっ?」

「ここのところをね・・・」
お部屋のドアのところまでスタスタ歩いていった母は、お部屋の突き当たりの木製の壁の端っこに手をかけてスルスルっと横に開きました。
今まで壁だと思っていた向こうに、またお部屋があるみたいです。
私も母のところまで歩いていきます。

そこは、一段下がってタイル敷きになっていて、その向こうに8帖くらいの空間があり、半分がトイレとシャワー付きのユニットバス、廊下で仕切って半分が流しやオーブンレンジとか小さな冷蔵庫が置いてある簡易キッチンみたいになっていました。
「なおちゃんに、ここにおトイレがあるの、教えてなかったけ?」
私は、このお屋敷に着いたときに教えてもらった、母屋のお風呂場のそばにあるトイレに、いつもわざわざ渡り廊下を歩いて通っていました。
「そっかー、ごめんね。お湯が出ることは昨夜確認したから、今すぐ入りたいなら使わせてもらえば?」
「うん」
「パパはね、ここに住んでいるときは、ほとんどこの離れにこもってて、よっぽどの用事で呼ばれない限りめったに母屋には顔を出さなかったらしいのよ」
母は、何が可笑しいのか、嬉しそうにまたクスクス笑いながら、冷蔵庫から日本茶のペットボトルを取り出しました。

「ねえママ、何かパジャマ代わりになるものある?このTシャツ、汗かいちゃったから、もう着たくないの・・・」
母は、自分のバッグをガサガサやって、丈長めのあざやかなブルーのTシャツを貸してくれました。
母がいつも付けているコロンのいい香りがします。
私は、それと新しいショーツを持ってバスルームに入りました。

シャワーを最強にして、熱いお湯にしばらくからだを打たれました。
さっきの感触をすべて、できれば記憶ごと、洗い流して欲しくて仕方ありませんでした。
でも、目をつぶっていると瞼の裏に、さっきの場面がまざまざと浮かび上がってきてしまいます。
私は、イヤイヤをするように激しく顔を左右に振ります。
気を取り直して、タオルに石鹸を擦り付けてゴシゴシゴシゴシ、首から下全体をしつこく洗いました。
乳首を擦っても、股間を洗っても、えっちな気分になんて微塵もなりませんでした。
ついでに、さっきまで着ていたピンクのTシャツと穿いていたショーツも丹念にゴシゴシ洗います。
ワインの酔いも、もうすっかり消えてなくなっていました。
髪も洗って、ぬるま湯にしたシャワーを頭から全身に浴びていると、すこーしだけだけど気分が落ち着いてきました。


トラウマと私 11

2010年10月18日

トラウマと私 09

目が覚める寸前まで、すごくえっちな夢を見ていました。
それは、ミサコさんたちがお泊りに来た約2週間前のあの日、お昼寝したときに見た夢と似ていました。
ただ、不思議なことに、まったく気持ちいいとは思えない夢でした。

私のからだをさわっているのは、オオヌキさんやともちゃんの手ではなくて、なんだかもっとザラザラした感触の何かでした。
私は全裸で、なぜだかからだが動かせません。
M性の強い私ですから、今までにも何度か同じような状況の夢は見ていました。
からだが動かせなくて身悶えしながらも、いつしかそのやさしい愛撫に負けて気持ち良くなっていく、というのがパターンでした。
けれどこの日見た夢は、違っていました。
私は、必死にもがいて、その手から逃げ出そうとしていました。
ザラザラした何か、による愛撫がすごくイヤな感じだったんです。

動かないからだを必死にくねらせて、その愛撫から逃れようとします。
それでも、その何かは執拗に私のからだを撫で回してきます。
「やめて、やめて、やめて・・・」
声を出そうとしているのですが、なぜだか声も出せません。
「やだ、やだ、やだ、やだ、やだ、やだ・・・」
私はそう叫んでいるつもりなのに、夢の中では、
「うーん、うーん、うーん、うーん・・・」
という呻き声にしかならないのです。
私は、もうそれ以上どうにも耐え切れなくなって、最後の力を振り絞りました。
「やめてーーーーーーーっ!」
叫べた、と思った瞬間、両目がパチっと開きました。

真っ暗でした・・・
今、自分がどこにいるのかわかりません・・・
一瞬の間を置いて、ザーーっというラジオのノイズみたいなのが私の耳にフェードインしてきました。
そうだ、ここは父の実家のお部屋で、聞こえているのは雨の音、私はベッドの上、私はワインを飲んで・・・

次の瞬間、私のからだの異常に気がつきました。
私は、ベッドに仰向けに寝ていました。
掛けて寝たはずのタオルケットがありません。
パジャマ代わりのTシャツが首のところまでまくり上げられていました。
ショーツが両膝までずり下げられていました。
全身汗まみれでした。

えっ!?
ちょ、ちょっと、なに、これ・・・
と、同時に鼻をつく、酸っぱいような、生臭いような、不快な臭いに気がつきました。
愛ちゃんに連れていってもらって覗いた真夏の運動部の更衣室みたいな臭い・・・

私は、からだを起こそうとしました。
その瞬間に何か、たぶん生き物、の気配を近くに感じました。
ベッドの傍らに・・・誰かいる・・・

そのとき、激しい稲妻がピカピカピカーッとベッド脇の窓から射し込んで、ベッド付近を数秒、明るく照らしました。
ベッドの傍らに立っている、誰か、の姿が闇にくっきりと浮かび上がりました。

太い二本の脚は、太腿のいたるところまで毛むくじゃらでした。
がっしりとした腰まわりから脇腹も引き締まった、筋肉質っぽい体型でした。
おへそから上は、窓から射し込んだ閃光の陰になってしまい、よく見えませんでした。
白っぽいTシャツ?ポロシャツ?をおへその上までまくっていました。

そして・・・

軽く開いた両太腿の付け根の間から、お腹とほぼ平行にまっすぐに天を突いてそそり立つ、太いゴツゴツした棍棒のような物体が生えていました。
それは、何か禍々しい爬虫類のように全体にゴツゴツしながらもヌラヌラとぬめっていて、先のほうで一回くびれていました。
根元のほうは、三分の二くらい硬そうなもじゃもじゃの毛でびっしりと覆われていて、その毛は、お腹をつたい、おへその上までつながっていました。
棍棒の先のほうは、まさに大きな亀の頭そっくりで、濡れてテラテラと赤黒く光っていました。
膝から下もよく見えませんでしたが、どうやら下着、たぶんブリーフを自分の膝のところまで下げているようでした。

嫌な生臭さが一段と強くなりました。

稲妻の光が消えてお部屋に暗闇が戻ってきたとき、その何者かが、
「うわっ!」
と小さく低く声をあげました。
それと同時に、私の裸の左脇腹に、傍らに立つ何者かから垂れてきたらしい液体が一滴、ポタりと落ちました。

私がありったけの声で悲鳴を上げるのと、凄まじい音の雷鳴があたり一面に響き渡るのと、同時でした。

雷鳴が響くと同時にまた、鋭い稲光が窓に走りました。
ベッドの傍らにいた男は、ガサガサっと大きな音をたててその場を飛び退き、ズボンをずり上げながら脱兎の如くドアから出て行く後姿が、稲光のおかげで見えました。
上半身は、白いランニングシャツでした。

私がもう一度悲鳴をあげようしたとき、再びバリバリバリと更に大きな雷鳴が轟きました。
私は、盛大にビクっとして、タイミングを逸してしまいました。

それでも、あわてて上半身を起こし、両手で裸の胸をかばいます。
汗なのか、何なのか、おっぱいからお腹にかけてヌルヌル、ベトベトです。
悲しいことに、乳首が勃っています。

急いでアソコに手をやります。
じっとりと湿っています。
でも、アソコに何か入れられたりは、していないみたいです。

ショーツを上げて、ベッドに座り直して、しばらく脱力してしまいました。

頭の中では、今すぐ母のところへ行って今のことを話して、犯人を捕まえてもらわなければいけない・・・
と、わかっていました。
でも、からだが動きませんでした。
ショックが大きすぎました。
初めて間近で見た・・・大人の男性のアレの・・・

あんなにグロテスクなものだとは、思っていませんでした。
私が見たことあるのは、子供の頃見た小学生のと保健の教科書に載っていた解説図。
いわゆる勃起した状態のソレは、見たことありませんでした。

初めて見たソレは、禍々しすぎました。
邪悪で汚らしい、どこか遠い星から侵略に来た巨大水棲生物の触手のよう。
大人になって恋愛したら、愛情の確認として、あんな醜悪な、あんな気味の悪いものを私のアソコに受け入れなくてはならないのでしょうか?
第一、私のアソコにあんな太くてゴツゴツしたモノが入るわけありません。

稲妻がピカッと光るたびに、今さっき見た場面がフラッシュバックします。
鼻をつく臭いまで甦ります。
そのたびに私は、両目をギュッとつぶって両膝に顔を埋めます。
つぶった両方の瞼の裏にも、その場面が鮮明に焼き付けられてしまっていて、私には逃げ場がありません。

とりあえず一刻も早く、この汚されたからだをシャワーでキレイに洗い流そうと思いました。
シャワーを浴びよう、と思ったとき、ここが自分の家ではないことに気がつきました。
あまりに気が動転していて、お部屋の電気を点けることもエアコンを入れ直すことも忘れていました。

手探りで天井の灯りからぶら下がっている紐をひっぱると、見慣れないお部屋が目の前に広がりました。
そう、ここは父の実家の父のお部屋でした。
エアコンもつけます。
エアコンが止まっていたということは、ベッドに入ってから一時間以上は経っているはずです。

そうだ、シャワーだった。
バスタオルを出そうと思って手が止まりました。
お風呂場は昨日、母と一緒に入ったから場所はわかっています。
でも、もしも私が一人で入っているのを知って、あの男がまたやって来たら・・・

私は、Tシャツをまくり上げて、胸とお腹と背中を乾いたバスタオルで入念に拭きました。
それから、ショーツを少し下げて下半身も入念に拭い、またショーツを穿き直しました。
エアコンが効いてきて、汗が引いていきます。

母も同室のおばさまたちの誰も、まだお部屋に帰って来ないということは、まだ宴会がつづいているのでしょう。
さっきのすごく大きな雷鳴も宴会の喧騒に紛れてしまったのでしょうか。
私の悲鳴も・・・

今、母のところに行って、これこれこういうことがあったと訴えたとします。
母の性格ですから、絶対うやむやにはせずに、徹底的に犯人を捜すでしょう。
父は、実家とあまり折り合いが良くないみたいです。
今日は、父のお父様のお葬式です。
そんな状況で、宴会の真っ最中にヘンな騒ぎをおこしてしまったら・・・

私は、どうすればいいのか、まったくわからなくなってしまいました。

窓の外では、雨がザーザー降りのようです。
雷様は、おさまったみたい。
私は、窓のカーテンをピッタリと閉めました。
お部屋のドアの鍵もかけました。

私は、このお部屋から出られなくなってしまいました。
ベッドの上に正座で座りました。
私には今、母だけが頼りです。
「早く帰ってきて・・・ママ・・・」
涙が一粒、ポタリと落ちました。


トラウマと私 10

2010年10月17日

トラウマと私 08

顔を真っ赤にした小柄なおじさまが空のコップ片手に一人、フラフラと私たちのほうにやって来ました。
おばさまたちにビールを注いでもらって、しばらくワイワイやっています。

そのうちに、いつのまにか私と母のお膳の前に座り込んで、声をかけてきました。
「おやぁ、直子ちゃん。大きくなったねえ」
真っ赤な顔をニコニコさせています。
お腹が突き出た小太りの典型的な中年のおじさまです。
まん丸いツルツルした愛嬌のあるお顔で、悪い人ではなさそうです。

「何年生になったの?」
「中二です・・・」
うつむきがちに答える私。
やっぱり、知らない大人の人との会話は苦手です。
「直子ちゃんも、ママに似て美人さんだねえ」
私は、恥ずかしくなってうつむきます。
「おじさんのこと、覚えてる?」
私に顔を近づけて覗き込もうとするおじさまに、まわりのおばさまたちが、
「ほら、なおちゃん、困っちゃったじゃない」
「なおちゃん、酔っ払いは嫌いだってさー」
「あんた、ちょっと飲みすぎだよっ」
と笑いながらおじさまを叱って、助けてくれました。

おじさまは、乗り出していたからだを戻して、照れ笑いをしながら薄い頭を掻いています。
それから、イタズラっぽく笑ってこんなことを言いました。
「そうだ、直子ちゃん。ワイン飲んでみる?美味しいよ」
まわりのおばさまたちは、
「またあんたはっ!何考えてるの?」
「子供にお酒すすめて、どうするのっ!?」
と今度はさっきより真剣な口調で、口々におじさまを叱ってくれました。

私は、飲んでみたいな、ってなぜだか思いました。
母の顔を見ます。
「なおちゃん、飲んでみたい?」
私は小さく頷きます。
ちょっと考える風をしてから母は、
「それなら、いただいてみれば?帰るのは明日だし、今夜はゆっくり寝れるし、ちょっとなら大丈夫でしょう。何事も経験よ」
と言って、私の頭に軽く手を置きました。

嬉しそうな顔になったおじさまは、お部屋の端のほうに置いてあるクーラーボックスから、わざわざまだ口の開いていない白ワインのボトルを持ってきてくれました。
オープナーでコルク栓をくるくると開けてくれます。

「これは、すごくいいワインだよ」
言いながら、大きめのワイングラスに半分くらい注いでくれます。
「これはね、おじさんがケチなんじゃないんだよ。ワインはね、香りも楽しむお酒だから、一度にたくさん注いじゃいけないの」
「ワイングラスの半分ちょっと下くらいがベストやね」
「それで、飲むときは、グラスのこの脚のところ持つんだよ。それがエレガントなレディのマナー」
おじさまが得意げに説明すると、またおばさまたちから、
「あんたの口からマナーなんて言葉、聞きたくないねっ!」
「いつもそんなこと言って、飲み屋で女の子たぶらかしてんでしょ?」
「リョーコさんに言いつけるわよっ!」
いっせいにイジメられています。
このおじさま、おばさまたちに人気あるみたい。

受け取ったグラスを言われた通りに脚のところを持って、母の顔を見ました。
母が頷きます。
私は、おそるおそるグラスを自分の唇に近づけていきます。
その場のみんなが私に注目しています。

葡萄のいい香りが私の鼻をくすぐります。
唇についたワイングラスを少し上に傾けると、冷たい液体が口の中に流れ込んできました。
酸っぱくて、ちょっと苦くて、かすかに甘味もあって。
美味しいと思いました。

「どう?」
おばさまの中の一人が聞きます。
「・・・美味しいです、とても」
小さな声で答えます。
「そう。やっぱりなおちゃん、お母さん似ねー」
「このあと、からだがポカポカして気持ち良くなってくるから」
「でも、本当は20歳になるまで飲んじゃいけないのよ」
おばさまたちがまた、いろいろ言っています。
母も微笑みながら私を見ています。

その間に、グラスに残っている液体をゆっくりと飲み干しました。
「もう一杯飲むかい?」
空になったワイングラスを見て、おじさまが調子に乗って聞いてきます。
私は、また母の顔を見ました。
母は、今度はきっぱり首を左右に振りました。

それが合図だったかのように、その場の話題は私から離れて、おばさまたちがまた違う話題でおしゃべりし始めます。
おじさまも立ち上がって、私にヒラヒラと片手を振ると、またフラフラと他のグループのほうへ歩いて行きました。

その姿を見送りながら私は、顔が急激に火照ってくるのを感じていました。
からだ中がポカポカしてきて暑いくらいです。
そして、なぜだか急激に眠くなってきました。

「あらー、なおちゃん、顔真っ赤」
母の声で、目が開きました。
どうやら、その場で数分間うつらうつらと居眠りしてしまっていたようです。
「あらあら、なおちゃん、お部屋に戻って、しばらく横になってなさい」
「・・・うん」
私は、立ち上がろうとしますが、からだ全体に力が入りません。
胸の鼓動がすごく早くなっている気がします。
「しょうがないわねー。初めてのお酒だし、ま、仕方ないか」
母は、私の片腕を肩にかけて抱き起こしてくれました。
「ちょっと、直子を部屋で休ませてきます」
おばさまたちにそう告げて、私をよいしょっとおぶってくれました。

「なおちゃん、知らない間にずいぶん重くなったわねえ」
母は、そんなことを言いながら、私を背負って渡り廊下をゆっくり歩いていきます。
母におんぶされるのなんて、何年ぶりなんだろう?
私は、猛烈に眠たい頭ながらも、すっごく嬉しく感じていました。

お部屋に着くと、なんとか一人で立てました。
「ちゃんとお着替えしてから、ベッドに入りなさいね。そのまま寝たらワンピース、シワシワになっちゃうから。一人でできる?」
母がやさしく聞いてくれます。
「うん。なんとかだいじょうぶみたい。ママありがとう。ごめんね」
「一眠りして、具合良くなったらまた、一緒にお風呂に入りに行きましょう。ママ、もう少し宴会のお付き合いしてくるから、何かあったら呼びにきなさい」
「はーい。それじゃあとりあえずおやすみなさーい」
「はい。おやすみ」
母は、ゆっくりとお部屋を出て行きました。

私は、少しよろけつつ、ワンピースを脱いで、胸もなんだか息苦しいのでブラジャーもはずしました。
全身がほんのりピンク色に火照っていました。
パジャマ代わりに持ってきていた丈長め、ゆったりめのピンクのTシャツを頭からかぶります。
エアコンのタイマーを一時間にセットして、電気を消してベッドに潜り込みました。
ベッド脇にある大きなガラス窓を、強風に吹かれた雨が時折強く打ちつけているようで、パラパラと音がします。
雷鳴は聞こえませんが、稲妻がときどき光っているみたい。

「カーテン閉めたほうがいいかなあ・・・」
なんて思いながらも、ズルズルと眠りの淵に引き摺り込まれていきました。


トラウマと私 09

2010年10月16日

トラウマと私 07

いろいろと楽しかった夏休みも、終わりが近づいてきた8月下旬、悲しいお知らせが我が家に届きました。
父のお父さま、私から見ればおじいさま、が病気で亡くなったっというお知らせでした。

父の実家は、現在私たちが住んでいる町から車で、高速道路を使って3時間くらいの山間の町にあります。
父は、四人兄弟の3番目。
上の二人はお兄さまで、下は妹さん、年齢はそれぞれ2、3歳づつくらいの差だそうです。

父にちゃんと聞いたことはありませんが、父は、この数年間ずっと実家に帰るのを避けているように見えました。
あまり実家に近寄りたくないみたい。
私が憶えてる限りでは、私を連れて行ってくれたのは、小学校の低学年の頃に一回だけ。
とても広くて立派なお屋敷だったのは、薄っすらと憶えていますが、おじいさまやその他の親戚の人たちのことは、お顔も含めて何も憶えていません。

父も母も、自身の実家のことについては、ほとんど話題にしませんでした。
母がたまに、結婚前の思い出を聞かせてくれるくらい。
私もあえて聞く必要も無かったので、今に至るまで、両親の実家のことは、よく知らないままです。

そんな父でもさすがに、お父さまがご病気だったことは、知っていたのでしょう。
母が父の実家から電話をもらい、すぐに父のケータイに電話をしたら、すごく冷静だったそうです。
その日父は、珍しく夜の8時前に家に帰ってくると、どこかに何本か電話をしていました。
翌日朝早く、親子3人で父の実家へ行くことになりました。

8月最後の金曜日の早朝、父の運転で父の実家に向かいました。
篠原さん親娘もご一緒に、とお誘いしたらしいのですが、ともちゃんがカゼ気味らしく、様子を見て、なるべく明日の告別式だけは参列したい、ということになったそうです。
篠原さんは、亡くなったおじいさまのお姉さまの次男の娘さん、だそうで、私から見ると、はとこ、になるのかな?

途中、サービスエリアでゆったりと朝食を取ったり、高速道路を降りてからは、有名なお城跡に寄り道したりして、その間、まったくおじいさまとは関係の無いお話ばかりしてて、父の実家の門をくぐる頃には、午後の3時を回っていました。
父は、本当に実家に帰るのがイヤなんだなあ、ってよくわかって、ちょっと可笑しかったです。

数年ぶりに訪れた父の実家は、やっぱり広大なお屋敷でした。
丁寧ににお手入れされた立派な樹木が立ち並ぶ石畳を抜けると、広いお庭に出て、何人ものお客様が入れ替わり立ち代り、お庭を右往左往していました。
お家も和風で、一見、大きなお寺みたいな立派な造り。
お庭に面した廊下を隔てた20畳以上ありそうな畳敷きの大広間で、お通夜の準備が始まっていました。

父は、なんだか急に忙しそうで、こっちに着いてからは、知らない男の人たち数人とずっと一緒に行動していました。
母は、幾人かの人たちとご挨拶を交わしていましたが、私は、誰一人として知りません。
私と同じくらいの年齢の男女もちらほらいましたが、誰が誰やら全然わかりません。
なので、私はその三日間ずっと、母にぴったりくっついていました。

着いた日の夕方からお通夜で、すごくたくさんの方々が訪れてきました。
花輪がたくさん飾られて、聞いたことあるような政治家さんの名前もちらほら見えました。
父の会社の名前のもちゃんとありました。
お通夜の仕切りは、専門の人たちがやっているので、私と母は、父のご親戚のかたたちにご挨拶をしてしまうと、まったくヒマになってしまいました。
母も、なんとなく居心地悪そうです。
仕方ないので、大広間の隅っこに並んで座って、二人で小声でテーマ別しりとりをしながら時間が過ぎるのを待ちました。

その夜は、お屋敷に泊まりました。
他にも何人ものかたが、泊まっていくみたいです。
私たちが案内されたのは、大広間から渡り廊下を隔てた離れにある、ベッドが一つだけ窓際に置かれた広い洋風のお部屋でした。
「ここは昔、パパのお部屋だったそうよ」
母が教えてくれました。

そのお部屋に私と母、それに母より年上な知らないおばさま3人と泊まりました。
夕ご飯もお膳をそのお部屋まで運んで来てくれて、そこで食べました。
おばさまたちは皆、気さくな人たちで、
「なおちゃん、本当に大きくなったわねえ」
「この前会ったときは、こんな小さかったのにねえ」
「もうすっかり、女性のからだつきねえ」
などと、口々に言ってくれます。
でも、私は彼女たちが誰なのか全然わかりません。
私にベッドを使わせてくれて、母と3人のおばさまたちは、フカフカの絨毯の上にお布団を敷いて寝ていました。

次の日がお葬式で、車で20分くらいのこれまた大きなお寺に参列者みんなで移動しました。
お屋敷に集まっていた人たちだけでマイクロバス5台が満席、すごい人数です。

「ねえママ、この人たちみんな、あのお屋敷に昨夜泊まったの?」
私がびっくりして聞くと、母は、
「まさかあ。半分くらいの人は今日来られたんじゃない?そう言えば、篠原さんは、来られたのかしら?」
生憎の曇り空で湿気が強く、今にも雨が降り出しそうな蒸し暑い日でした。

お寺では、篠原さんたちと会うことができたので、少しホっとしました。
お葬式の間は、ともちゃんとずっと手をつないでいました。
ともちゃんも黒いワンピースを着ていて、カゼがまだ直りきっていないのか、いつもの元気がありませんでした。

告別式が終わると、篠原さん親娘は、ともちゃんの調子も良くなさそうなので、火葬には立ち会わずにそのまま帰っていきました。
私たち家族は、もう一泊して、明日朝早く帰ることになりました。

夕方からは、お屋敷に戻った人たちが集まり、大宴会になりました。
精進落とし、と言うそうです。
昨夜お通夜をした大広間に、ずらっとお膳が並んでいます。
入りきれなかった人は、廊下に座っています。
100人くらいいるのかな?

大きな祭壇が設えられて、最初は、お坊さんが出てきてブツブツお経をあげていました。
それが終わるとお食事となり、大人たちがお酒を飲み始めて、ワイワイガヤガヤし始めます。
私は母の隣に座り、黙ってお料理をいただいていました。
普段はあまり食べない和食な献立でしたが、お腹が空いていたので、すごく美味しかった。
母は、ビールのグラスを持って知らないおばさまたちとお話しています。
私たちのいる一角は、女性ばかりです。
昨日一緒に泊まったおばさまのうちの一人もいます。
お料理を食べ終わり、退屈になってきた私は、あのお部屋に戻って横になりたいなあ、なんて考えていました。

お外は、空が一段と暗くなって雨が降りだしたみたいで、パタパタと屋根を打つ雨のかすかな音と共に、ときどきピカピカ光る稲妻が天井近くの明かり窓を走っているのが見えました。


トラウマと私 08

トラウマと私 06

バスタオルと新しい下着とお風呂セットを入れた布袋を持って階段を下り、バスルームに入ろうとしたら、電気が点いていて、誰かが先に使っているみたいでした。
喉も渇いていたので、ダイニングに飲み物を取りに行くことにします。
リビングに通じるドアが開いていて、リビングでは、母とミサコさんだけが並んでソファーに座っていました。
二人とも湯上りのようで、母は黒の、ミサコさんは白のゆったりしたTシャツに、ボトムは二人とも黒のスパッツ。
テレビには、フラを優雅に踊っている外国の女性の映像が映っていて、ハワイアンな音楽が低く流れていました。
たぶんDVDでしょう。

「あら、なおちゃんお風呂入りたいの?今は、タチバナさんたちが入っているから、もう少し待っててね」
母が私を見て言います。
「夕ご飯は、篠原さんがおソーメン茹でていってくれたから、それを適当にね。おツユとか全部冷蔵庫にあるから。あとは、ダイニングのテーブルにあるものをお好きに」
「ともちゃんが、お帰りにおねーちゃんにご挨拶するってきかないから、なおちゃんのお部屋行ったけど、ぐっすり眠ってたから、起こさなかったって言ってたわ」

私は、リンゴジュースを注いだコップを持って、母たちの正面に座りました。
タチバナさんとオオヌキさん、一緒にお風呂入ってるんだ・・・
あ、でも女性同士だしお友達同士だし、何にもおかしくはないか・・・
寝起きのボーっとした頭でそんなことを考えていると、ミサコさんが聞いてきました。

「ねえ、なおちゃん。あなたボーイフレンドとか、いるの?」
「えっ?」
私は、ちょっとあたふたしてしまいました。
「えーと、私は、今は、そういうの、ぜんぜん興味ないって言うか・・・」
「あらあ、そうなの?でもなおちゃん、カワイイからもてるでしょ?アナタも心配よねえ?」
母に話を振っています。
「そうねえ・・・でもまあ、そういうのって、なるようにしかならないから、ね」
母は、のほほんとそう言って、視線をテレビに戻しました。

リビングのドアが開いて、タチバナさんとオオヌキさんが戻ってきました。
「あーさっぱりしたあ」
タチバナさんはピッチリしたブルーのタンクトップにジーンズ地のショートパンツ姿。
胸の先端がポチっとしていて完璧ノーブラです。
でも全然隠す素振りもありません。
オオヌキさんは、バスタオルを胸から巻いたままの姿です。
湯上りのためか、上気したお顔で相変わらず、もじもじと恥じらっています。
脱衣所にお着替えを持って入るの、忘れちゃったのかしら?

「それじゃあなおちゃん、お風呂入っちゃえば?」
母がのんびりと言いました。
「はーい」
私は、コップを戻すために一度ダイニングに戻って、ついでに洗ってシンクに置いてから、今度はリビングを通らず廊下に出て、リビングのドアの前を通ってバスルームに向かいました。

リビングの前を通ったとき、
「今度は、どれを着てもらおうかなあ?」
という、ミサコさんかタチバナさんらしき声が聞こえてきました。
えっ?どういう意味?
やっぱりオオヌキさんって、誰かの言いなりな着せ替えごっこ、させられてるのかなあ?
私は、またドキドキし始めてしまいます。

バスルームに入ると、いつもとあきらかに違う香りが充満していました。
香水というか、シャンプーというか、体臭というか・・・
それらが一体化した、我が家のとは違う、まったく知らない女性たちの香り。
今日のオオヌキさんの一連の行動や、さっき見た夢、今リビングの前で聞いた言葉・・・
それらが頭の中で渦巻いて、ムラムラ感が一気に甦ってきました。
私は、強いシャワーでからだを叩かれた後、バスタブにザブンと飛び込んで、声を殺して、思う存分自分のからだをまさぐってしまいました。

ずいぶん長湯をしてしまいましたが、ムラムラ感もあらかた解消されて、お腹も空いてきました。
夜の8時ちょっと前。
自分の部屋で丁寧に湯上りのお手入れをしてから、パジャマ姿でダイニングに行きました。
リビングへのドアは閉じていましたが、母たちは、どうやらお酒を飲み始めたようで、DVDのBGMの音量とともに話す声のトーンも上がっていました。
誰かの噂話とか、お仕事関係のお話のようでした。
聞くともなく聞きながら、おソーメンをズルズルと食べました。
冷たくて美味しかった。

食べ終えて、お片付けしてから、一応みなさんにご挨拶しておこうとリビングに顔を出しました。
テーブルの上にワインやブランデーの瓶やアイスペール、缶ビールが乱雑に置いてあります。
「あらーなおちゃん、うるさかった?」
ミサコさんがトロンとした目で言います。
「いえ。だいじょうぶです。楽しんでください」
オオヌキさんは、どんな格好をしてるのかなあ、ってワクワクしながら見てみると・・・
昼間のと同じような、乳首がかろうじて隠れるだけなデザインの白い、たぶん今度のは下着で、上にグレイっぽい渋いアロハを羽織っていました。
下半身は、床にぺタっと座り込んでいるので見えません。
私は、ちょっと期待はずれでした。
「直子ちゃん、本当にカワイイわねえー」
私と目が合ったオオヌキさんが黄色い声で言います。
オオヌキさんは、もうけっこう酔っ払っているみたいです。
今は全然恥ずかしそうでもありません。

「ママ、私は明日、愛ちゃんたちと電車で遊園地に遊びに行くから、朝の九時頃には出かけちゃうから・・・」
「あらー?、もしかしてデート?」
タチバナさんが聞いてきます。
「い、いえ、女の子6人で、です」
「へー、それじゃあナンパされちゃうかもしれないわねー」
ミサコさんも嬉しそうに言ってきます。
私は、苦笑いを浮かべてから、
「だ、だから、もしもママたちが起きてなかったら、そのまま行っちゃうからね」
「はーい。了解ー。楽しんでいらっしゃーい」
母も陽気です。
「それでは、みなさんおやすみなさい。ごゆっくりー」
「はーい、おやすみー」
皆が口々に言ってくれます。
私は、自分の部屋に戻りました。

明日、遊園地に着て行く服の準備や、日記を書いていたら10時をまわっていました。
寝る前にトイレに行ったついでに、今日着たレオタードをバスルームの脱衣所にある洗濯カゴに入れに行くと、リビングの灯りは点いているのに、しんとしていました。
覗いてみようかと一瞬思いましたが、やめときました。

さっきお昼寝したから、なかなか寝付けないかなあとも思っていましたが、ベッドに寝転んで、村が発展すると町になるから、ムラムラが強くなるとマチマチだ、って書いてたのは誰の本だっけかなあ、なんてくだらないことを考えていたら、いつの間にか眠っていました。

翌朝、顔を洗うために階下に降りると、しんとしていました。
リビングを覗くと、テーブルの上もすっかり片付けられています。
歯を磨いたり身繕いを整えてから、一応母の部屋を小さくノックしてみました。
返事はありません。
鍵もかかっていなかったので、そーっと開けてみました。
誰もいませんでした。

愛ちゃんたちと待ち合わせている駅に向かいながら、考えました。
母たち4人は、おそらく父と母の広い寝室で一緒に寝たのでしょう。
それはそれで、別におかしなことではありません。

でも、オオヌキさんの存在が私のイケナイ妄想を駆り立てます。
昨日一日、ほとんど裸のような格好で過ごしていたオオヌキさん。
いえ、過ごすことを命じられていた、なのかもしれません。
そんなオオヌキさんとあの寝室に入ったら、少なくともミサコさんとタチバナさんは、大人しく眠るはずがない、と思えて仕方ありませんでした。

オオヌキさんと私は似ている・・・
ということは、今、私が考えているようなことをオオヌキさんも期待していた?

駅の切符売り場の壁にもたれて、そこまで考えたとき、おはよう、って愛ちゃんが声をかけてきました。
私は、あわててその妄想を頭の片隅に追いやり、愛ちゃんにニコっと笑いかけました。


トラウマと私 07

2010年10月11日

トラウマと私 05

さっきから、ゆったりほわほわしたメロディな同じ曲が何回も流れてきます。
ビニールプールに浸かったまま、母たちがいるほうを見ると、調理器具やお皿がすっかり片付けられたテーブルの上に、ポータブルのCDプレイヤーが置かれていました。
母たちは、4人で輪になって音楽に合わせて、クネクネと踊っています。
ときどき音楽が止められて、4人でワイワイとおしゃべりし合っています。
フラの練習のときのリーダーは、タチバナさんのようでした。

私とともちゃんは、プールから出てタオルで濡れたからだを拭きながら、母たちが練習している場所の近くにあったチェアに並んで腰掛けました。
篠原さんも後片付けが終わったらしく、ウッドデッキのドアを開けて、またお庭に出てきました。

「なおちゃんたちもみんな揃ったみたいだし、私たちもだいたい復習終わったし、そろそろ私たちのフラをみなさんに見てもらいましょう」
母が明るく言います。
「ほら、篠原さんもエプロン取って、そこにお座りになって」
篠原さんが恥ずかしそうにピンクのエプロンを取りました。
真っ白いワンピースの水着で、胸元がV字に大きく割れて途中からメッシュになっています。
下半身は、けっこう鋭角なハイレグでお尻はTバック。
ウエストがキュッと細くって、なんだかレースクイーンの人みたいです。
「あらあ。篠原さんもプロポーション、いいのねえ・・・」
母が感嘆の声をあげました。
篠原さんは、ニッコリと微笑ながらも頬を盛大に染めています。

「これから踊るのは、カイマナヒラっていう曲で、ハワイにあるダイヤモンドヘッドのことを歌ったお歌よ」
左から、タチバナさん、ミサコさん、母、オオヌキさんの順に並んでいます。
全員、パレオやサングラスも取って、身に着けているのはキワドいビキニの水着だけです。
母もミサコさんも下半身は、おとなしめなハイレグでした。
タチバナさんがCDプレイヤーのスタートボタンを押して、曲が始まりました。
4人一斉にヒラヒラと踊り始めます。
4人ともニコニコ笑って、両手で優雅に同じ動作をしながら、腰をゆったり振ってステップしています。

立っているだけのときは、まだ少し恥ずかしそうだったオオヌキさんも、踊り始めると堂々としていました。
舞台馴れしてるみたい。
堂々としていると、イヤラシイ感じが全然なくなって、すごくセクシーでカッコイイ姿に見えてくるから不思議です。
私は、うっとりと4人の踊りを見つめていました。

曲が終わると、私と篠原さん親娘で盛大に拍手しました。
4人がお辞儀したとき、ミサコさんのビキニの肩紐が片方、スルっとはずれて、おっぱいがこぼれそうになって、あわてて両手で押さえて苦笑いしています。
私たち3人は、ヒヤっとしてから、スグに大きな声で笑い出してしまいました。

「ママたち、スゴイ。とってもキレイだった」
私は、思わずみんなに駆け寄りました。
「フラの手の動きって、なんだか手話みたいだね?」
「あら、なおちゃん、よくわかったわね。手の動きで、空とか波とかお花とか風とかを表現してるのよ」
ミサコさんが教えてくれました。

「次は、なおちゃん。何か一曲踊って」
ミサコさんが私を指名してきました。
母たちの踊りを見て、私もやる気マンマンです。
「ちょっと待っててください」
急いで自分の部屋に戻って、曲の入ったCDと履き古したトゥシューズを持ってきました。

「ドン・キホーテのキューピッドをやります」
バレエ教室で、今課題曲になっている曲です。
トゥシューズに履き替えて、芝生の真ん中くらいに立ちました。
「直子ちゃん、がんばって」
オオヌキさんが声援をくれます。

芝生の上なので、ターンはだいぶはしょってしまいましたが、なんとか踊りきりました。
「おねーちゃん、すごいー」
ともちゃんがまっしぐらに駆けて来て抱きついてきました。
母たちも拍手してくれています。
オオヌキさんがやわらかくハグしてくれます。
そのやわらかいおっぱいの感触に、私は思わずからだをギューっと押し付けてしまいました。

ふと、自分の下半身を見ると、レオタードの股の部分の布が派手に食い込んで、アソコのスジがくっきり浮かんでいました。
あれだけ脚を大きく上げたり、ジャンプしたりしたのですから、当然と言えば当然。
私は、あわててみんなに背中を向けて、こそこそと直しました。

「それじゃあ、トリは篠原さんね。アレやって」
母が何か細長いケースを渡しながら、言いました。
「えっ!わたしもですか?」
篠原さんは、ちょっと躊躇していましたが、やがてそのケースを開いて何かを組み立て始めます。
フルートでした。

緑の芝生の真ん中に真っ白な水着の美しい篠原さんが、銀色に光るフルートをかまえてスラっと立っています。
その絵は、なんて言うか、すごくカッコよくて、セクシーって言うよりエロティックな感じもちょっとしました。
やがてその唇が吹き始めた旋律は、ホルストのジュピター。
すっごく上手でした。
ときどきからだを揺らしながら、篠原さんが優雅に奏でています。
私と母たち4人は、別に打ち合わせをしていたワケでもないのに、一斉に晴れ渡った夏の青空を見上げていました。
とても気持ちのいい風が私たちの髪をやさしく揺らす、夏の午後でした。

即席の発表会を終えると、母たちは、またデッキチェアに寝そべって、まったりと談笑していました。
ともちゃんは、おネムになってしまったらしく、篠原さんに抱かれてリビングのほうに消えていきました。
私も午前中から泳いだり、オオヌキさんにコーフンしたりで疲れたみたいで、加えて、めったにしない日光浴を長い時間していたせいもあるのか、急激に眠くなってしまいました。
時刻は午後3時半。
少しお昼寝することにします。

お部屋に戻ってレオタードを脱いで全裸になります。
オオヌキさんのことで、まだ少しコーフンはしているのですが、すごく眠くてオナニーをする気力もありません。
下着は着けずにパジャマの上下を素肌に着て、お部屋の鍵もかけずにベッドに潜り込みました。

目が覚める寸前まで、すごくえっちな夢を見ていました。
オオヌキさんがあの水着を着て、私のからだのあらゆるところをやさしく愛撫して、気持ち良くさせてくれていました。
ときどき、ともちゃんも私をさわってくれています。
私は全裸で、なぜだかからだを動かせないのですが、それは全然イヤではありませんでした。
仰向けに寝ているはずなのに、おっぱいもお尻も同時にさわられていました。
あーん、そんなにされたら、私ぃぃ・・・

そう叫ぼうとしたとき、パチっと目が覚めました。
汗をびっしょりかいて、うつ伏せに寝ていました。
つけっぱなしだったはずのエアコンが止まっています。
えっちな夢だったなあ・・・でも気持ちよかったなあ・・・

ふと気づいて、パジャマのウエストのゴムから手を入れてアソコをまさぐってみると、しっとり濡れていました。

私は、スグにシャワーを浴びようと決めました。
ベッドからのそのそと降りて、大きな欠伸をひとつ。
とりあえずエアコンを入れようとリモコンを探して机の上を見ると、
「なおこおねえちゃんへ。バイバイ。またね。ともこ」
ともちゃんがノートの切れ端にエンピツで豪快に手書きした置手紙がありました。
午後の6時半になっていました。


トラウマと私 06

2010年10月10日

トラウマと私 04

お食事の間、ともちゃんは、お母さんにくっついてお手伝いしながらお料理を食べさせてもらっていたので、私も気ままに大好きな焼きトウモロコシやピザを齧りながら、母たちの会話を聞いていました。

それでわかったことは、
ミサコさんは、宝飾関係のお仕事をされていて、順調に発展していて、とても裕福らしいこと。
タチバナさんは、ミサコさんの秘書さんらしいこと。
ガレージに停めてあるレジャータイプの大きな車はミサコさんのもので、今日はタチバナさんが運転して3人連れ立って我が家にいらしたらしいこと。
オオヌキさんは、タチバナさんの昔からのお友達で、1年前に離婚されていて今は一人身らしいこと。
オオヌキさんは、ピアノの演奏がすごくうまいらしいこと。
でした。

そして、母たち4人の振る舞いを見ていて一番気になったのは、やっぱりオオヌキさんだけ、すごく恥ずかしそうにしていることでした。
母とミサコさんとタチバナさんも、普通に見かける水着よりは、かなり大胆なデザインの水着を着ているのですが、堂々と、たぶん自信をもって着こなしているので、キワドイ感じもありながら健康的なセクシーさで、素直にキレイだなあ、カッコイイなあと思えます。

それに較べてオオヌキさんは、その水着を着ていることが恥ずかしい、っていう気持ちが全身に顕れていました。
たぶん私だって、あんな水着を着たら、気になって気になって、恥ずかしさ全開になってしまうでしょうけれど、乳首を隠している布部分や腿の付け根部分の小さな布に落ち着き無く頻繁に手をやっては、うつむきがちに気にしているオオヌキさんを見ていると、見ている私のほうがどんどん恥ずかしくなってきてしまいます。
なぜだかとってもイヤラシイ感じなんです。

端正なお顔を羞恥に火照らせながらも健気に会話に加わって、お料理を取るために立ったり座ったりして、一生懸命平気なフリをしているオオヌキさんが、なんだかとてもえっちでスケベな女の人に見えて、困りました。
オオヌキさんは、おっぱいの形も良いしプロポーションも良いので、そんなキレイな大人の女性が恥ずかしい水着を身に着けて、恥ずかしさに身悶えしながらも普通なフリをしている、という状況は、父が隠し持っていたSMの写真集を盗み見たときから培ってきた私の性的妄想のツボをピンポイントで貫く、すごく刺激的な光景でした。
事実、私の乳首は、オオヌキさんの姿に目をやるたびにレオタのカップの裏で硬く尖っていきました。

もう一つ気になったのは、母たち3人もオオヌキさんのそんな姿を見て、楽しんでいるように見えたことでした。
オオヌキさんがこんなに恥ずかしがっているのですから、たぶんあの水着は、オオヌキさんが選んだものじゃなくて、誰かから着るようにと渡されたものなのでしょう。
普通、こんなに恥ずかしがっていたら、他の誰かが気にかけて、そんなに恥ずかしがらなくても似合っててキレイよ、と励ましたり、逆に、イジワルくもっと恥ずかしがるようなことを言ったりしてからかったりするのではないでしょうか?
でも、母たち3人は、あくまで普通にオオヌキさんと接して、会話しています。
たまにチラチラとオオヌキさんのからだに視線を向けて、三人ともなんだか嬉しそうにしています。

誰がそんな命令をしたのか?
オオヌキさんがそれを拒めない理由は何なのか?
なぜオオヌキさんは、そんな恥ずかしい格好をしなければいけないのか?
この4人は、本当はどんな関係なのか?

頭に浮かんだ疑問を今すぐ聞いてみたくて仕方ありませんでしたが、母もいるこの場でそんなこと絶対聞けません。
ただ、オオヌキさんが恥ずかしい格好をさせられてすごく恥ずかしがりながら、でも本心からイヤがってはいなくて、むしろ喜んでいる、ということは、直感的にわかっていました。

オオヌキさんと私は似ている、と思いました。

「な、直子ちゃん、食べてる?」
私は、知らず知らずにトウモロコシを持ったままオオヌキさんを凝視していたみたいです。
オオヌキさんに上ずった声をかけられて、私の心臓がドキンと波打ちました。
「あ。あは、はいっ。おいしいですっ!」
私の心臓がバクバク音を立てて、顔が真っ赤に火照ってきます。
「そ、その水着、セクシーで、カ、カッコイイですね。よくお似合いでっす」
私は思わず立ち上がって、直立不動で言ってしまいました。
「そ、そう?ありがと。すごく恥ずかしいのだけれど・・・でも直子ちゃんに誉められて嬉しい・・・」
オオヌキさんは、頬を赤らめてまたうつむきました。

「こういう超セクシーなのは、オオヌキさんのからだだから似合うのよ。なおちゃんにはまだ10年早いわね」
母が笑いながら私に言います。
「あら、直子ちゃんのレオタード姿だって、かなりイケテルわよ」
タチバナさんが弁護してくれました。
ミサコさんは、微笑を浮かべて、黙ってそんな様子を優雅に眺めています。
この四人組のリーダーは、ミサコさんなのかな?

お食事を終えた4人は、それぞれが日焼け止めを背中に塗りっこしています。
ミサコさんとタチバナさん、母とオオヌキさんがペアになっていました。
母に塗り終えたオオヌキさんは、私に近づいてきました。
「直子ちゃんにも塗ってあげる。そこのチェアに寝そべって」

至近距離で見るオオヌキさんの水着は、予想通り両方の乳首のところがこっそりと出っぱっていました。
完全に露出している弾力のありそうな下乳のまあるいカーブがものすごく扇情的です。
僅かな布に隠されただけの下半身にもムダ毛はまったく見えません。
剃っちゃってるのかな?
私は、ドギマギしながらデッキチェアにうつぶせになりました。

「直子ちゃんの肌、スベスベねえ」
オオヌキさんの細くしなやかな指が私のレオタードの大きく開いた背中を撫でさすります。
背骨に沿って、ツツーっと滑っていく指。
両方の肩紐を遠慮がちにちょっとずらされて、両手を前に回しておっぱいの裾野付近まで撫で回されたとき、私の両腿の奥がジュンときてしまいました。

「さあ、もう少しだけ休憩したら、フラの練習を始めましょう」
太陽の下で大きく背伸びをした母が大きな声で言って、皆さん立ち上がりました。
篠原さんは、お食事の後片付けを始めています。
ともちゃんが私のほうに駆け寄ってきました。
「おねーちゃん、プールーっ」
「はいはいはいーっ」
オオヌキさんの指に感じてしまった照れ隠しで、ムダに大きな声でともちゃんに答えてしまいます。

私は、オオヌキさんにも、
「ありがとうございましたっ!」
と必要以上に丁寧にお礼を言ってから、デッキチェアを下りて、スプリンクラーのそばにパラソルを一本立て、ビニールプールの足踏み空気入れを踏み始めます。
股間がヌルヌルし始めています。
サポーターは穿いていません。
その部分が湿ってシミが浮き出てしまったレオタ姿なんて、母には絶対見せたくはありません。
スプリンクラーの水にワザと当たりました。
「冷たいねー」
ともちゃんも真似して、お水に当たっています。
ホースを引っ張ってきてプールにお水を入れながら、一刻も早く下半身をお水の中に浸したいと思っていました。
私のからだは、完全にムラムラモードに突入していました。

ともちゃんと一緒に小さなビニールプールに浸かります。
お水にびっしょり濡れたので、レオタードは全体がすっかり濃いグリーンになっていました。
これなら下半身の恥ずかしいシミも目立ちません。
胸もカップが付いているので、スケないはず。

お水のかけっこをしながら私は、必要以上にともちゃんを抱き寄せたり、自分の胸に押し付けたりしていました。
幸いともちゃんもイヤがらずに、むしろスキンシップを喜んでくれているみたいです。
ともちゃんのからだを私のおっぱいに押し付けて私は、さっきのオオヌキさんの指の感触を頭から追い出そうとしていました。
ともちゃんの小さな手が無邪気に私のおっぱいを掴んできます。
私は、気持ちがいいときの声が洩れないようにがまんしながら、しばらく夢中でともちゃんとじゃれあって水遊びをしました。


トラウマと私 05

2010年10月9日

トラウマと私 03

「あっ。直子さん、おかえりなさーい」
ウッドデッキのドアを開けてお庭に出てきたのは、篠原さん。
今年の四月から週二ペースで我が家のお手伝いをしてくださっている女性です。

篠原さんは、父の親戚筋のかたで、我が家から歩いて15分くらいのマンションに住んでいます。
去年旦那様を交通事故で亡くしてしまい、今は5歳になる娘の智子ちゃんと二人暮らしの28歳。
パートを探していた篠原さんに父が相談にのってあげて、母が一人でこの広いお家をお掃除するのも大変だから、ハウスキーパーとして来てもらうことにしたそうです。
すごくたおやかな笑顔のおしとやかで華奢な感じの、これまた美人さんです。
我が家は、基本的に自分の部屋は自分でお掃除するルールですから、それ以外のリビングとかダイニング、廊下や階段などと、父母の寝室を除く各空部屋のお掃除やお庭のお手入れ、今日みたいな来客時のお世話をしてもらっています。

そんな篠原さんも、白いレオタードみたいなワンピースの水着の上に淡いピンクのレースのエプロンをしています。
「奥様が私も水着で参加なさいって・・・すごく恥ずかしいんですけど・・・」
頬を軽く赤らめて、篠原さんが照れています。
エプロンの紐で縛られている水着のウエストがすごく細い。

「あー。直子おねーちゃん、おかえりなさいー」
篠原さんの後ろから飛び出してきて、私の脚にじゃれついてくるのは、篠原さんの娘さんの智子ちゃんです。
我が家に働きにくるときは、いつも連れて来てくれます。
篠原さんが働いている間は、母か、私が家にいるときは私が、遊んであげています。

「ねえー、おねーちゃん、早くプールふくらましてー」
ともちゃんも真っ赤なセパレートのちっちゃな水着を着ています。
両手で小さな足踏み式の空気入れを抱えていました。
「今、子供用のビニールプールを膨らませようとしていたんですよ」
篠原さんが説明してくれます。

「よーし。じゃあおねーちゃん、お部屋でお着替えしてくるから、その後で膨らませてあげる」
「わーい。とも子もおねーちゃんのお部屋、行くー」
「こらこら・・・」
ともちゃんを諌めようとする篠原さんに笑いかけながら、
「よーし。じゃあ一緒に行こうかー」
言いながら、ともちゃんの小さなからだを抱き上げました。
「ごめんなさいねえ。智子、直子おねーさんを困らせたら、ダメよ」
「はーい」
兄弟姉妹のいない私は、ともちゃんのこと、大好きなんです。

篠原さんが深々と私にお辞儀してくれました。
エプロンの隙間から見えた水着の胸元が大きく開いていて、その谷間が予想外にふくよかで、ドッキリしました。

階段を上がって私の部屋に入ると、ともちゃんはいつものようにベッドにまっしぐらに駆けていって上に乗り、ぴょんぴょん飛び跳ね始めました。

「今日はいいお天気でよかったねー」
「そうだねー」
「おばちゃんたち、みんな裸ん坊みたいだったねー」
「そうだねー」
「早くプールはいりたいねー」
「そうだねー」
「今日は楽しいねー」
「そうだねー」

ともちゃんの無邪気な問いかけに空返事しながら私は、まず髪を頭の上に大きなおだんごにしてまとめました。
それから、Tシャツとショートパンツを脱ぎます。
「あれー。おねーちゃんもう水着、着てるー」
「これはね、さっき市民プールで泳いできたやつだから、お洗濯しなきゃいけないの」
確かに、このままお庭に出て行ってもいいのですが、さっきの母たちのセクシーな姿に刺激されてしまい、なんとなく、バレエのレオタードでお庭に出たいと思っていました。
「えー。もうプールにはいっちゃったのー。ずるいー」
「ごめんねー。今度はともちゃんと入ろうねー」
水遊びをするとなると白のレオタはマズイかな、透けちゃいそうだし。

私は、スクール水着の両肩紐を腕から抜いて、ゆっくり足元にずり下げていきました。
オナニーを覚えて、いろいろ妄想をするようになってから、誰かに見られながら全裸になるのは、このときが初めてのはず。
それがたとえ5歳の小さな女の子でも、めちゃくちゃ恥ずかしい気分です。
でも、裸を誰かに見られる、その恥ずかしさをすごく気持ちいいと感じてしまうのも事実でした。

私は、学校のプール授業の着替えのときでも、もちろん、まわりは女子だけなのですが、スカートを脱がずにショーツだけ下ろしてからとか、いろいろ工夫して、なるべく普段隠している肌を見せないように着替えをしていました。
中には、パッパと脱いで気にせず丸裸になって着替えている子もいました。
そういう子は、ぜんぜん恥ずかしがっていませんでした。
私もそうやってみたい気持ちは、すごくあるのですが、恥ずかしがらずに裸になることは、私には不可能でした。
そして、恥ずかしいのにワザとみんなの前でそれをやることは、私のヘンタイ性をみんなにバらしてしまうことと同じです。
それは絶対イヤでした。

「あー。おねーちゃん、裸ん坊さんになっちゃったー」
ともちゃんが無邪気に指さしてきます。
今の私には、ともちゃんぐらいの子に見てもらうのが、ちょうどいい刺激です。
「おねーちゃんの裸、どう?キレイ?」
私は、調子に乗って、ともちゃんの正面で腰に手をあてて、ちょっと気取ったポーズをとります。
「うん。きれーだよ。ママと同じくらいー」
ともちゃんは、私のおっぱいからアソコの薄い陰毛までをしげしげと見つめながら言ってくれました。
「ありがとー」
言いながら、やっぱり少しやりすぎたかな、と思い、急いでグリーンのレオタードを足から穿きました。
サポーターは着けませんでした。
下半身に大きな花柄模様のシフォンのラップスカートを巻いてから、
「はーい。準備完了。それじゃあお外へ行こう!」
私は、またともちゃんを抱き上げて、部屋を出ました。

お庭に出ると、すでに篠原さんが鉄の串に刺したお肉やお野菜を焼き始めていて、いい匂いが漂っていました。
「あら、なおちゃん。レオタ着てきたの?なかなかいい感じよ」
母が私をめざとくみつけて声をかけてきます。
ホットプレート2台を中心にして大きなテーブルが置かれて、それを囲むように、大きな日除けのパラソルとデッキチェアがいくつか並べられて、半裸の女性が4人、思い思いの格好でくつろいでいました。

空は、雲ひとつ無いライトブルーで、強い日差しが照りつけてきます。
ときどき、お庭の真ん中へんに置いてある園芸用のスプリンクラーから扇状にお水がピューーっと噴き出ています。

「なおちゃんは、バレエを習ってるの?」
聞いてきたのはミサコさんです。
「はい」
「それなら、後で何か一曲踊ってみせて、ね」
私とともちゃんに氷の入ったジュースのコップを渡しながら、色っぽい微笑を投げかけてきました。


トラウマと私 04

トラウマと私 02

夏休み中は、愛ちゃんたちとほぼ一日おきくらいに会っては、市民プールに泳ぎに行ったり、バレエ教室のある町まで電車で行って、繁華街のゲームセンターで遊んだり、誰かのお家でお泊り会をしたりして楽しく遊んでいました。

そして、本題に入る前にもう一つ、この年の夏休み中で鮮明に記憶に残っている出来事のこともお話しておきます。

その年の夏は、猛暑だったので、市民プールはいつも大混雑でした。
私の家は、市民プールから比較的近かったので、愛ちゃんたちと遊べないときは、一人でも頻繁に泳ぎに行っていました。
いつも更衣室が混んでいたので私は、スクール水着の上からゆったりめのTシャツとジーンズのショートパンツを穿いて自転車でプールに行って、帰りも濡れた水着をタオルで拭った上から、それらを着て帰ってくる、ということをしていました。

プールに行くのは、泳ぐのが好きだから、というのはもちろんですが、ときどきいる、ちょっと大胆な水着を着けている女の人をみつけるのも楽しみの一つでした。
市民プールですから、そんなにスゴイ水着を着けている人は来ませんが、高校生か大学生くらいのカレシと一緒な女の子や小さな子供連れの若い奥様たちの中には、何か勘違いしちゃってるんじゃないかな、と思うくらいの肌露出多めな水着を着けている人がたまにいました。

そういう人たちは、たいがいがほとんど泳がないで、プールサイドに寝そべったり、意味も無くプールのまわりをウロウロしたりして、気持ち良さそうにしていました。
市民プールでは、サンオイル禁止ですから、焼きにきているわけでもなさそう。
やっぱり、誰かに自分のセクシーな水着姿を見てもらいたいんでしょうか。
そして、プールに来ている、とくに若い男性たちや中年のおじさまたちは一様に、そんな大胆水着姿の彼女たちを、ことあるごとにチラチラニヤニヤと眺めているようでした。

私も大人になったら、あんな水着を着てみたいなあ、でもやっぱり恥ずかしいかなあ、なんて思いながら私も、そんな彼女たちを見つけるたびに、チラチラと目線で追ってえっちな妄想を楽しんでいました。

8月に入って2週目のある日。
朝から真夏日だったので、午前中早くに一人で市民プールに泳ぎに行って帰宅したお昼の12時少し前。
門を開けてお庭に入ると、裸の美女が4人、ウッドデッキでくつろいでいました。
「えっ!?」
私は一瞬、絶句してしまいました。

ソロソロと近づいていきながらよーく見ると、母と、同年齢くらいのご婦人方3人でした。
裸に見えたのは、皆さん、布面積の小さめなビキニを着用されているから。

「あら、なおちゃん。ちょうどいいところに帰ってきたわ。これからお庭でバーベキューするの。と言ってもホットプレートで、だけどね」
母が嬉しそうに私に寄ってきます。
母は、鮮やかな赤の布地小さめな大胆ビキニで、その豊満美麗なおっぱいを飾っています。
下半身は、ヒラヒラしたカラフルなパレオに隠れて見えません。

「こちら、ママのお友達の皆さん。ミサコさんには、会ったことあるわよね?」
「こんにちはー、なおちゃん。お邪魔してるわよー」
黒でラメみたいのがキラキラ光ってる、これまた布小さめなビキニで形の良い胸を隠した女性が挨拶してくれました。

そう言えば先月の初め頃、学校から帰ってきたら、この人と母がリビングでおしゃべりをしていて、ご挨拶したことを思い出しました。
その夜、母とミサコさんはずいぶんお酒を飲んだみたいで、泊まっていかれました。
母の大学時代の同級生だそうで、顔全体の作りが派手でお化粧もキッチリしていて、複雑にウェーブしたセミロングな髪が印象的なゴージャスな感じのキレイな人でした。
確かあのときはお名前、聞かなかったなあ。
今日のミサコさんは、つばの広い白い日除け帽子で、その印象的な髪型が隠れています。
とりあえず私はお辞儀しながら、
「こんにちはー」
と挨拶しました。

「こちらのお二人は、ママがフラのスクールでお知り合いになったかたたち。タチバナさんとオオヌキさん。」
タチバナさんとオオヌキさんは、母やミサコさんよりもっと若いみたいでした。
20代後半か30少し超えたくらい?

タチバナさんは、鮮やかなレモンイエローに小さく白い水玉が入った、母たちのよりもっと布部分が小さい水着を着けています。
おっぱいはどちらかというと控えめですが、それを幅が10センチ無いくらいの布を胸に巻いているだけみたいなデザインのストラップレスなビキニで隠しています。水着が今にも胸の隠すべき位置からずり落ちそうな感じで、あやういセクシーさです。
パレオも付けていなくて、ボトムは、腰骨フィットで極端に食い込んだTバック。
前は鋭角なV字、後ろはほぼ紐なので、お尻のお肉がほとんど見えています。
ボーイッシュなショートカットに大きな垂れ目のサングラスで、大きめな口の両端を上げて、ニッと笑いかけてくれました。

オオヌキさんのほうは、もっとスゴクて、ピンポイントに乳首とアソコを三角形に隠すだけ、みたいなスゴク小さな水着でした。
布部分以外は、透明なビニールの細い紐です。
オオヌキさんは、タチバナさんよりもおっぱいが大きいので、形の良い下乳が完全に露出しています。
加えて、その水着の色がベージュなので、遠くから見たらまるっきり裸に見えます。
髪は、漆黒で豊かなセミロングストレートを狭い額を露出して後ろにオールバックで結んでいます。
顔が小さくて目鼻立ちがクッキリしていて、まるでヨーロッパのアンティークドールみたくてすごく綺麗。
でも、4人の中ではオオヌキさんだけがなんだかすごく恥ずかしそうで、私を見てニコっと笑った後、うつむいてモジモジしていました。

「森下直子です。母がお世話になっています。今日はお越しいただいてありがとうございます。どうぞごゆっくり楽しんでいってください」
そんなお二人の姿を間近で見て、私は、なんだかドキマギしてしまい、上ずった声で早口にご挨拶してから、ペコリと頭を下げました。
4人全員、タイプは違うけれどみんな美人さんで、それぞれにキレイでセクシーなからだをしています。
私は、なぜだかドキドキしてきて、やがてどんどん嬉しくなってきました。

「ママの習い事って、フラダンスだったんだあ?」
明るい声で母に問いかけました。
「そうなの。そのお教室で偶然ミサコさんと再会して、このお二人ともお友達になったのよ」
「今日はパパも帰って来ないからミサコさんと相談して、皆さんをお招きしてガーデンパーティをすることにしたの」

「でも、そんな格好でお庭に出て、ご近所に見られちゃったりしない?」
「だいじょうぶよ。我が家は塀が高く作ってあるし、ご近所に高い建物もないし。今日は皆さんにどこか海辺にでも来たと思って、思う存分日光浴していただこうと思ってお招きしたのよ。よく晴れて本当に良かったわあ」
母は、のんびりとそんなことを言いました。
でも、お隣の二階からなら見えちゃうような・・・今はカーテン閉まってるけど・・・
考えながら、私は家の周りを見上げます。
「お隣さんなら両隣とも一昨日から旅行に行ってるはずよ。ママだってちゃんと考えてるの」
そう言ってパチンとウインクしてきます。
「それから、フラっていうのは踊りっていう意味なの。だからフラダンスじゃなくて、フラ、だけでいいのよ」
「ママもやっとフラ、一曲通して踊れるようになったから、今日なおちゃんに見せてあげる。ほら、なおちゃんも水着に着替えてらっしゃい。一緒にお昼食べましょ」
「はーいっ!」

お庭で白昼堂々水着になれる。
それも4人のキレイな大人の女の人たちと一緒に・・・
私は、すごくワクワクしてきました。


トラウマと私 03

2010年10月3日

トラウマと私 01

明日から中学二年生の夏休みという終業式の朝、登校すると靴箱の中に手紙が入っていました。
真っ白な封筒の中に、パソコンのワープロで打ち出したらしい文字が書かれた白い紙が一枚。

「森下様
僕はあなたのことが最初に見たときからずっと好きです。
よかったら夏休み中に僕と一緒に映画でも見に行きませんか?
返事を聞かせてください。
本日11時15分に通用門のところで待っています。」

そして、あまりキレイとは言えない字で、全然知らない男性の名前が黒のボールペンで書かれていました。

これって、ひょっとしてラブレター?
読んだ瞬間は、少しビックリしましたが、すぐに私は、なんだかメンドクサイことになっちゃったなあ、と思っていました。

その頃、自分が男の子とおつきあいするなんて、まったく考えたことなかったし、そんな気も全然ありませんでした。
中二にもなれば、クラスの女子たちの中には、上級生の男子に憧れてきゃーきゃー騒いでいる子たちとか、こっそりクラスの男子とつきあっているらしい子とかもいました。
でも、当時の私は、そういったことに一切関心がありませんでした。
恋愛をしたい、という欲求自体を持っていなかったんです。

当時すでに、オナニーでイくことも覚えてしまっていたけれど、かと言って、早くセックスを経験してみたい、とも全然思っていませんでした。
初めてのブラを買ってもらったとき、母に、自分を大事にしなさいね、って諭されていましたし、当時の私の中では、セックスと恋愛はイコールだったので、まず恋愛をしなければ、セックスもありえません。
そして、私が恋愛するのは、もっと自分のからだがキレイに成長してから、たぶん高校2年生くらい、となぜだか一途に思い込んでいたんです。

なので、当時の私に、どこの誰かもわからない男子と映画を見に行く、という選択肢はありえませんでした。

この呼び出しを無視しちゃおうか、とも思ったのですが、ちゃんとお返事してあげなきゃ悪いかな、とも思いました。
誰かに相談してみよう。
こういうとき、頼りになるのは、川上愛子さんです。

同じバレエ教室に通っている縁でお友達になった川上さんは、明るく活発な人好きのする性格で、クラスの女子の中心的人物でした。
川上さんは、男子女子分け隔てなく気軽におしゃべりできちゃう人気者でしたが、スポーツや学校行事など学校生活自体を楽しむことを一番大切にしているみたいで、童顔ポニーテールなカワイイ系女子なのに、男女交際とかにはあまり興味が向かないタイプのようでした。
バレエ教室の他に陸上部にも入っていて、一年生のときの運動会でも大活躍でした。
二年生になっても川上さんを中心とする仲良しグループがみんな同じクラスになれて、愛ちゃんは、私の一番の親友になってくれていました。

私は、終業式からお教室へ帰る途中に愛ちゃんを呼び止めて、ものかげに行き、手紙を見せました。

「うわー、これラブレターじゃない?」
「そうみたいなの。愛ちゃん、この人知ってる?」
「知らない。内田ねえ・・・何年生なのかなあ?」
「・・・無視しちゃっていいかな?」
「えっ?なんかもったいなくない?カッコいい人かもしれないじゃん?」
「でも・・・私今はそんな気が全然無いの・・・男子とおつきあいするなんて・・・」

「これ、なんか、あんまり頭の良さそうな文章じゃないね・・・」
愛ちゃんは、文面と私の顔を交互にしばらく見比べてから、
「じゃあ、どんな人なのか、顔だけでも見に行かない?あたしもつきあうからさ」
興味シンシンな顔で言いました。
「見てから決めてもいいんじゃない?ヘンなやつだったら、シカトして帰っちゃえばいいよ」
笑いながら私の肩に手をかけます。
「・・・そうだね。悪いけど、愛ちゃん、後で一緒に行ってくれる?」
「もちろんっ!」

私は、どんな人だったとしてもおつきあいする気はまったく無かったのですが、一人で断りに行くよりも愛ちゃんがいてくれたほうが何十倍も心強いので、とても嬉しくなりました。

手紙で指定されていた通用門は、正門から校庭と校舎を隔てた直線上の真裏にあります。
幅5メートルくらいの横開きの門のそばには、自転車通学の人たち用の駐輪場と先生方や来客用の駐車場があって、普段は主に先生方の出入りに使われていて、下校時だけ、生徒もこの門から帰ることができます。

呼び出しの時間の5分くらい前から、私と愛ちゃんは、ちょうどいい具合に駐車場に並んで停まっていた背の高いワゴン車二台の陰に身を潜めて、誰にもみつからないように通用門を見張っていました。
「どんな人なんだろうねえ?なんだかワクワクするねえ、探偵ごっこ」
愛ちゃんが、車の陰に屈んでときどき顔だけ出して通用門を覗き見る私の右肩に顎を乗っけて、同じように通用門に目を向けながら、耳元にヒソヒソ声で囁きます。
自転車を取りに来た生徒がぱらぱらとやって来ては帰っていく以外、あまり通用門を使う人はいないようです。

呼び出しの時間になっても、人待ち顔な男子は、その付近に現れません。
「ひょっとして、そいつも、なおちゃんが現れたら出てくるつもりなんじゃないかな?」
愛ちゃんが言います。
「だとしたらそいつ、サイテーだね。自分から呼び出しといてさ」

約束の時間から5分過ぎても、通用門の前で人を待っている風な男子の姿はありませんでした。
「自分で呼び出しといて時間守らないんだから、どっちみちそいつ、サイテーなやつだよ。なおちゃん、帰ろう」
愛ちゃんはプンプン怒って、私の手を引いてその場を離れました。

クラスのお教室に戻ろうと二人で裏庭を歩き出すと、ふいに後ろから、もりしたさん、と小さく声をかけられました。
「すんません、ちょ、ちょっと時間に遅れちゃって・・・」
振り向くと、息をきらしてハアハア言っている見知らぬ男子がいました。

背は高くもなく低くもなく、太ってもなく痩せてもなく、髪も長くもなく短くもなく、顔も・・・
見て、一回目をつぶるともう忘れてしまうような、そんな顔立ちでした。
愛ちゃんも振り向いて、その男子の顔を敵意丸出しで、まっすぐに睨みつけています。

そんな愛ちゃんを見て私は、なんだかホっとしていました。
こういう人なら、お断りしてもあまり心が咎めません。
最初からまったく縁が無かったのでしょう。
私は、スカートのポケットに入れていた封筒を黙って差し出しました。
その男子は、きょとんとしたまま、封筒を受け取りません。
私は、曖昧な笑顔を浮かべて、
「これ、お返しします」
とだけ言いました。
それでも封筒を受け取らないので、指をゆっくり広げました。
白い封筒がヒラヒラと地面に落ちていきました。
それから、愛ちゃんの手をぎゅっと握って、二度と振り返らずに二人で小走りに校舎の入口へ向かいました。

「あいつ、確かどっかの運動部の3年だよ。部活のときにあの顔、見た覚えがある」
愛ちゃんと教室に戻ると、もうみんな下校してしまったようで誰もいませんでした。
「なんか冴えないやつだったね。あれになおちゃんなんて、もったいなさ過ぎって感じ」
「だいたい3年て、もうすぐに受験じゃない?色気づいてるヒマなんてあるのかしら?」
愛ちゃんは、自分のことのようにご立腹です。
「愛ちゃん、つきあってくれてありがとうね。おかげでなんだかスッキリしたから」

私と愛ちゃんは、それから一緒に下校して、途中コンビ二でアイスの買い食いとかしながら、夏休みに何をして遊ぼうかをたくさんしゃべって、ラブレターのことは、その日のうちにすっかり忘れてしまいました。


トラウマと私 02

また雨の日にカクレガで 20

その日が近づいてくると、私は悩み始めました。

あの日から時間が経つにつれて客観的になってきて、やっぱり、あんな小さな男の子とそんな遊びをするのは、すごくイケナイコトだ、という気持ちが日に日に大きくなってきていました。
でも、心の片隅とからだには、あの日の快感が強烈に刻まれていて、カズキくんともっとあんなこともしたい、こんなこともされたいという気持ちもふくらんでいました。

いよいよその日が近づいてきて、会いに行くのはやめよう、とほぼ決めながらも、まだあれこれ考えていたら、ふと気づきました。
その日、会ったからと言って、またカクレガであんなことが出来るとは限りません。
晴天だったら神社にも人がいて、スカートまくりさえできないかもしれません。
でも、カズキくんに会って普通におしゃべりするだけでも、それはそれで楽しいはずです。
あの日みたいに軽い気持ちで、思い出の場所でちょっと冒険してみるみたいな感じで、過度な期待は持たないで、お友達になったカズキくんに会いに行こう。
約束の日前日に、そう決めました。

当日は、幸か不幸か、時折こまかい雨が降ったりやんだりな小雨模様のお天気でした。
朝早く起きた私は、再び真剣に悩み、迷いました。
神社の様子にもよりますが、この感じだとまた、カクレガへ行くことになりそうな気がします。
やっぱり会いに行くのはやめるべきか・・・

でも、私のからだは、すでにウズウズ疼き始めていました。
カズキくんの小さな手の感触をからだが欲していました。
そして何よりも私自身の心が、もう一度カズキくんの笑顔が見たい、会っておしゃべりがしたいと思っていました。

お友達の家に遊びに行ってくる、と母に告げ、お昼ごはんを食べてから家を出ました。
あの日と同じネイビーブルーのノースリワンピースと素足にヒール低めな白いサンダル。
バッグには、一応着替えの服と、バスタオルとタオルを多めに入れてきました。
目的の駅のトイレで、今日は着替えはしないでワンピースのまま、ショーツだけ脱いでノーパンになりました。
アソコの上の狭い範囲に、ポツポツ薄っすら陰毛が生え始めています。
私は、一回大きく深呼吸をして気持ちを落ち着けてからトイレを出て、改札を抜け、神社に向かいました。

トタン屋根の下に着いたのは、約束の時間の10分前でした。
雨は、小降りですがパラパラと降っていて、蒸しています。
ここに来るまで、神社内では誰にも会いませんでした。
神主さん一家は、今日はいるのかな?
そんなことを考えながら、トタン屋根の下でドキドキしていました。

約束の時間の5分前に、赤い傘をさした小柄な女の子が、ゆっくりとこちらに近づいて来るのが見えました。
傘を低くさしているので顔は見えませんが、白いフワフワなスカートから伸びた細い脚が、一歩一歩近づいてきます。
私の3メートルくらい前まで来て、その脚はピタっと止まり、傘が後ろに傾いて、その子の顔が見えました。
私をじーっと見つめています。
「あ、あのう・・・やましたなお子さん、ですか?」
その女の子の唇が動きました。

その女の子は、見たところ小学校高学年くらい?
夏らしい真っ白なフワフワ半袖ワンピースに白いハイソックスを履いて、通学用らしい濃茶色のローファーを履いています。
髪は、肩までの柔らかそうなウェーブヘアを白いカチューシャで留めています。
細面の、どちらかと言うと内気そうな顔立ちですが、切れ長の目が聡明そうな雰囲気も醸しだしています。
全体的には、ちょっと儚げな感じのするキレイな女の子です。

「は、はい?」
私は、少しドギマギしながら答えました。
「わたしは、今日カズくん・・・あっ、サトナカカズキくんに頼まれて、ここに来ました・・・ナガオカミキっていいます・・・」
落ち着いた感じのよく通る声質です。
「は、はい?」
「えーっと・・・みきねーちゃん・・・」
「ああっ!あのバトンの?・・・」
「はいっ!」
ミキちゃんがニコっと笑いました。

「カズくんは、今日ここに来れないんです。それでわたしがカズくんに頼まれて、なお子さんにこれを渡すようにって・・・」
ミキちゃんが、可愛らしい女の子がペロっと舌を出しているイラストが描かれた赤くて平べったいキャンディの空き缶を私に差し出してきました。
空き缶は、セロテープで厳重に封がされていて、振るとカタカタ音がします。
「中に手紙が入ってるんだと思います。わたしの目の前で読んでもらって、その様子を後で教えて欲しいって、カズくんに頼まれました」

私は、悪い予感を感じながら、その缶に巻かれたテープを苦労して剥がしました。
缶を開くと、キレイに折りたたまれた手紙らしき紙片と、ぐるぐる巻きにした封筒に入った何か小さな塊が入っていました。
私はまず、紙片を広げました。
そこには、縦書きの便箋に丁寧にエンピツで書かれた、カズキくんからのメッセージが書かれていました。

「なお子お姉さんへ
ごめんなさい。ぼくは、今日おやくそくを守ることができません。
ぼくのお父さんとお母さんがきゅうにりこんすることになって、
ぼくは、お父さんといっしょに、とおくの町でくらすことになりました。
ぼくは、すごくくやしいです。
なお子お姉さんともう一どあそびたかったです。
おやくそくを守れなくて、本当にごめんなさい。
お姉さんからもらったうでどけいは、一生大切にします。
あと、かくれがのかぎをお姉さんにあげます。
けんちゃんのお父さんにかえしに行ったら、
おまえが思い出のためにもっていろ、と言われました。
ぼくは、なお子お姉さんが思い出になってほしいので、このかぎをあげます。
ぼくは、本当にかなしいです。
なお子お姉さんにもう一どあいたかったです。
さようなら」

手紙を読んでいる途中から、私の目から大粒の涙が次々に溢れ出てきて、手紙の上にポタポタと落ちました。
手紙を読み終えて、封筒を広げて開けてみると、中から、あの未来から来たネコ型ロボットのフィギュアが付いたキーホルダーが出てきて、一本だけ小さな鍵がぶら下がっていました。

それを見た途端、私はその場に崩れるようにしゃがみ込んで、顔を膝に埋めて本格的に泣き始めてしまいました。
いつの間にかミキちゃんが私の隣に来ていて、同じようにしゃがんで、私の背中をゆっくりとやさしく、さすってくれていました。

「一週間前の夜に、カズくんがわたしの家に、真剣な顔をして来たんです・・・」
ミキちゃんが背中をさすってくれていた手を止めて、震えている私の肩を抱くような形で身を寄せてきて、小さな声で話し始めました。

「最初は、カズくん、すごく興奮していて、何を言いたいのかわからなかったのだけれど・・・」
「カズくんのご両親が離婚することは、知っていました。わたし、あやっち、あ、えーと、カズくんのお姉ちゃんと同じクラスだから・・・」

だとするとミキちゃん、中学一年なんだ・・・
私も、意外な成り行きの最初の衝撃がちょっと収まってきて、膝から顔を上げてミキちゃんのほうを向きました。
カズキくんからみきねーちゃんのことを聞いたときから、みきねーちゃんって小学校5年生くらいの女の子って、勝手に思い込んでいました。

「なんでも、二週間くらい前に神社で、すっごくキレイな大人の女の人とお友達になって、今度の土曜日にまた会う約束をしたのだけれど、カズくんが急に引越しちゃうことになったから、約束守れないから、わたしが代わりに行って謝って欲しい、ってことでした」
「わたし、最初はめんどくさいなあ、って思っちゃって・・・お姉ちゃんに行ってもらえばいいじゃない、って言っちゃって・・・ごめんなさい」
ミキちゃんが私の顔を見つめて、ニコっと笑いました。
「あやっちは、お母さんと一緒にまだしばらくこっちで暮らすんです」
「でも、カズくんは、どうしてもみきねーちゃんじゃなきゃダメなんだ、って言い張るんです」

「わたしが、なんでわたしじゃなきゃダメなの?って聞いたら・・・」
「そのお姉さん、つまり、なお子さんとわたしが、なんとなく雰囲気が似ているからって言うんです」
「カズくん、なお子さんのこと、すごくキレイだキレイだ、って何度も言ってたから、わたしもそんな人に似ているって言われて、ちょっと嬉しかったりもして・・・」

「それで、ちょっと好奇心湧いちゃって、そのお姉さんと、どんなことして遊んだのか教えてくれたら行ってあげる、って言ってみたら、カズくん、顔真っ赤になっちゃって・・・」
「でも、普通におしゃべりしただけ、って言い張って、具体的なことは、何も教えてくれませんでした。あと、みきねーちゃんのバトンをちょっと借りた、って言ってました」
私の顔が赤くなってしまいます。

「カズくんは、今週の木曜日に、迎えに来たお父さんと一緒に引越していきました」
ミキちゃんは、しんみりとそう言ってから、急に顔を上げて、まっすぐに私を見つめます。
「でも、今日、来て良かった。なお子お姉さん、本当にステキですね」
言いながら、ミキちゃんがゆっくりと立ち上がりました。
私も誘われるように、ゆっくり立ち上がります。

「ねえ、なお子お姉さん。カズくんとカクレガで、何して遊んだんですか?」
ミキちゃんが、軽く首をかしげてイタズラっぽく聞いてきます。
私は、答えられるはずがありません。

それにしてもミキちゃん、中学生になってもまだ、小学生の男の子たちと一緒にお医者さんごっこの患者さん役をしているのでしょうか?
あらためてミキちゃんの全身を上から下まで眺めてしまいます。
身長は、私より5センチくらい低いから150センチまん中くらい?
胸もまだそんなに膨らんでいないみたい。
もう初潮は来たのかな?

そんなことを考えながらうつむいて黙っていると、ミキちゃんがゆっくりと建物の軒下のほうに数歩、歩いて行ってから立ち止まりました。
「なお子お姉さん・・・」
私に小さく手招きしています。

「そこに立ってくれますか?」
ミキちゃんの50センチくらい前を指さします。
私たちは、向かい合いました。
ミキちゃんの両手がゆっくりと下へ伸びていき、自分のフワフワな白いスカートの裾をつまむと、またゆっくりと上にまくり上げていきます。

「・・・見てください・・・」
ミキちゃんの白くて細い両腿の付け根付近が徐々に現れてきます。
ミキちゃんは、下着を着けていませんでした。
薄っすらと生え始めたわずかな陰毛に飾られたミキちゃんの幼いアソコが私の目に映りました。
ミキちゃんは、スカートの裾を握ったまま、少し頬を染めて私の顔を潤んだ瞳で見つめています。

「なお子お姉さんのも、見せてくれませんか。今、ノーパンですよね?さっきしゃがんだとき、ちょっと見えました・・・」
ミキちゃんがまたイタズラっぽく微笑みます。

「・・・それともこれから、わたしと二人でカクレガ、行きましょうか?・・・」



2010年10月2日

また雨の日にカクレガで 19

次にショーツを取り出します。
来るときに駅のトイレで脱いできたものなので、これは湿っていません。
それを手に持ったまま、また便器に腰掛けます。

「あと、今日お姉さんと遊んだことは、絶対の絶対、誰にもしゃべっちゃだめ。オネーチャンにもママにもパパにもさとしにーちゃんにも、誰にも」
「うん」
「もししゃべったら、なお子お姉さんは、二度とカズキくんに会わないから。さっきのお約束もなし。私、この町にもお友達いるから、しゃべったらすぐわかるんだからねっ!」
ちょっと怖い感じで、カズキくんの目を見つめて釘を刺しときます。
「うん。ボク、ぜったい誰にもしゃべらないよ。だってなお子お姉さんと遊べないの、ぜったいイヤだもんっ!」
カズキくんも真剣な顔で私を見つめます。

でも、私が立ち上がってスルスルとショーツを穿いてしまうと、あからさまにがっかりした顔になりました。
わかりやすいなあ、もう。

「今日帰ったら、オネーチャンやママには、どこへ遊びに行ってたって言うの?」
「うーんとね、うーんとね。きーちゃんちに行ってたって言う。きーちゃんは、こないだ転校してきたばかりだから、ママもおネーチャンもよく知らないから」
「ふーん」
私は、ワンピースを頭からかぶりながら腕時計を見ようとして、カズキくんに渡したままなのに気がつきました。

「カズキくん、今何時?」
カズキくんも時計をしていたことを忘れていたみたいで、一瞬固まってから、自分の左手を見ました。
「えーっとね、6時15分」
言いながら、腕時計をはずそうとしています。
「あっ、いいよ。その腕時計、カズキくんにあげる。今日、私をいっぱい気持ち良くしてくれたお礼」
「でも、それも絶対見つからないところに隠しておいてね。ママとかに見つかったら絶対、これどうしたの?ってことになっちゃうからね」
私が自分のおこずかいで買った、あまり高くはないけど、かわいいキャラクターの絵のついた腕時計でした。
このときは、なぜだかカズキくんに持っていて欲しいと思ったんです。
「えー。本当にいいの?ありがとう。ボク、ずーっと大切にするよ」
カズキくんたら、本当に嬉しそう。
「私に会うときは、いつも持ってきてね。私に会えないときは、その腕時計をなお子お姉さんだと思ってね」
私は、本心からそう思っていました。
カズキくんに私のことを忘れて欲しくない、と思っていました。

トイレの鏡の前で髪を解き、軽くブラッシングしてからまた、今度はさっき使った赤いゴムで髪を後ろにまとめました。
まだ髪は、全体に軽く湿っています。
身繕いをすませてトイレの外に出ると、あたりは一段と暗くなっていましたが、雨は上がっていました。

私とカズキくんは、無言のまま手をつないで、神社をぐるっとまわって鳥居を目指します。
あの軒下には、もう寄りませんでした。
二人で、ゆっくりと石の階段を下りて、車の通る道路まで出ました。

「なお子お姉さんの帰る駅、あっちでしょ?ボクはこっちなんだ」
カズキくんが名残惜しそうに指さします。
「そっか。じゃあ気をつけて帰ってね。お風呂入ったら、ちゃんと、やさいいため、残さないで食べなさい」
「あはは。なお子お姉さん、ママみたい」
二人で、うふふと笑います。
それから急に声をひそめて、
「ねえ、なお子お姉さん?」
「なあに?」
「最後にもう一回だけ、お姉さんのおっぱい、さわらせてくれる?・・・」
「もう、カズキくんは、ほんとにえっちだねえ」
私は、そう言いながらもしゃがみ込んで、カズキくんの腕の高さに私の胸を持ってきます。
小さくてカワイらしい両手が、ワンピースごしに私のおっぱいに置かれて、思いっきり、ぎゅっと掴まれました。
「あぁーんっ!」
小さなため息が漏れてしまいます。
「ボク、なお子お姉さんのその声、カワイクて大好きっ!」
カズキくんが笑いながら私に飛びつきました。
私は、少しの間その小さなからだを両腕に包んで抱いてあげた後、やんわりとからだを引きながら立ち上がります。

「それじゃあまた、その日にね」
「うん。一時半にあのトタン屋根の下ね。ボクすっごく楽しみ」
「私もよ」
「じゃあねー」
カズキくんは、一、二歩、歩き始めてから、ふいに振り向いて言いました。
「ねえ、なお子お姉さん?」
「うん?」
「その日も雨降りだと、いいねえ」
カズキくんは、ニコっと笑ってから、左手を高く上に上げてヒラヒラ振りながら、薄暗い道を駆け出していきました。

私は、その後姿が見えなくなるまで、その場で見送っていました。
カズキくんは、一度も私のほうを振り返りませんでした。

その姿が見えなくなってから、私は、ゆっくりと駅への道を歩き始めます。
頭の中で、今日、こんなに帰宅が遅くなってしまったことの、母への言い訳を考えながら・・・


また雨の日にカクレガで 20

また雨の日にカクレガで 18

涙をぐっとこらえて、頭の中をからっぽにして、足元に神経を集中して歩いていると、やがて生い茂る木々の葉っぱのアーケードが終わり、柵の入口のところまで、ようやくたどり着きました。
雨は、カクレガを出たときより、いくぶん雨粒が小さくなって小降りになっています。
林の中にいたときよりも、表はまだずいぶん明るいです。

カズキくんは、懐中電灯を消して、内鍵をはずしてから鉄の扉を開け、私を先に表へ出してくれました。
カズキくんも表に出て、ウエストバッグから鍵を取り出し、扉の鍵をカチャンとかけます。
ずいぶん注意深くしていたつもりでしたが、やっぱりブラウスの胸元はしっとりと濡れてしまい、ノーブラのおっぱいに貼りついて、両乳首を露骨に浮き上がらせてしまっています。

幸い、まわりには相変わらず人っ子一人いないみたいですが、このノーブラ濡れスケは、かなり恥ずかしいです。
カズキくんもまた、そこをじーっと見ています。
私は、バッグを胸元まで上げて隠しつつ、ちょっと足早に歩き始めました。
カズキくんは、自分の傘をさして、黙って後ろから着いてきます。

「カズキくん、私また、ちょっとおトイレに寄るね」
「ボクも」
二人でトイレまでやって来ました。
私は、トイレで下着を着けて、駅まで着てきたワンピースに着替えるつもりでした。
トイレの入口で二人、傘をたたみます。

「なお子お姉さん・・・」
カズキくんがぽつりと言います。
「ボクのオチンチンは、見なくていいの?」
「えっ?」
「今日は、ボクが見てばっかりだったから、悪いでしょ?ボクがオシッコするとこ、見てもいいよ」
「・・・うーんとねえ・・・」
別に見たくはなかったのですが、うまい断りの言葉がみつからずにいると、カズキくんが私の手をひいて、男子トイレに連れ込まれてしまいました。

そこは、小便器が並んでいるのではなくて、溝みたいになったところをベニヤ板みたいなもので4箇所に仕切っただけのトイレでした。
あまりキレイではない内部が明るい電気に煌々と照らされています。
カズキくんは、床から一段上がったとこに立つと、半ズボンのベルトをゆるめてズボンを足元まで下ろし、パンツも下ろして、下半身裸になってから小さなサオに手を副えました。
「なお子お姉さん、見える?」

私は、カズキくんの肩越しに、カズキくんの放尿姿を見ていました。
男の子のオチンチンを見たのは、最初が小学校3年のときのお医者さんごっこ。
そして、次は・・・

今回が3回目ですが、カズキくんのカワイラシイものさえ、もはや、あまり見たくはありませんでした。
「あー恥ずかしかった」
カズキくんは、オシッコし終えるとサオをピッピっと軽く振って、雫を切ってからパンツをずり上げました。
「次は、なお子お姉さんの番ね」
「えっ?」

「わ、私がオシッコ、してるとこ、見せるの?」
「うん。ボク、女の人がオシッコしてるとこ、見たことないんだ。なお子お姉さん、見せて」
カズキくんは、あくまで無邪気に私の顔を覗き込んできます。
当然、私なら見せてくれるだろうと信じきっている顔です。
オチンチンを見て、沈み気味だった私の気持ちが、羞恥色にじんわりと染まってきます。

「で、でも、どこで?」
「確かここだけ、洋式だったんだ」
手を洗い終えたカズキくんが私の手を引きながら言います。
男子トイレの二つある個室のうち、入口のそばにあるほうの一つが、ハンディキャップのある人用に洋式で若干広く作られていました。
おそらく最近増設されたのでしょう。
新らしめの便器で、内装もオシッコのところに較べると格段にキレイです。
私は、そこに連れ込まれました。

「・・・うん、わ、わかった。カズキくんになら、見せてあげる。よ、よーく、見ててね」
私は、顔を火照らせながらバッグからウエットティッシュを取り出し、便座をキレイに拭きました。
それから、さっき穿いたばかりのラップスカートをまたはずし、下半身裸になります。
蛍光灯の明るい光の下で、恥ずかしさは倍増しています。
おまけに上半身は、濡れブラウスにノープラ。
この放尿姿晒し責めに、またムクムクと起き上がってきた左右の乳首がスケスケ・・・
もう一つおまけにカズキくん、個室のドア、閉めてくれないんです。
外には猫の子一匹、姿がありませんでしたから、たぶんおそらく、誰かがこのトイレに入ってくることはないでしょうが、それも絶対ではありません。
私は、ドキドキ震えながら、裸のお尻を便座に置きました。

私の横に立って、私の一挙一動をじーっと見ていたカズキくんは、私が便座に座ると、私の正面に来て、中腰になりました。
真上から覗き込んでいます。
「カ、カズキくん・・・そんなに見つめちゃ、は、恥ずかしい・・・」
私は、本気で恥ずかしく思っています。
下半身に力を入れるのですが、奥がムズムズするばかりで、なかなかオシッコが始まりません。
カズキくんは、しゃがみ込んで頬に両手をあてて、私のアソコを好奇心丸出しの目で真正面からじーっと見つめています。
「なかなか出てこないね?なお子お姉さん?」

やっとオシッコが始まると、今度はなかなか終わりません。
いつまでもジョロジョロと音を立てて、放出されていきます。
その間私は、顔を真っ赤にさせてうつむいて、ときどきカズキくんをチラチラうかがっていました。
カズキくんは、微動だにせず一点を見つめていました。

長い長いオシッコが終わって顔を上げると、カズキくんは、まだそのままの姿勢で動きません。
流そうと思い、便器の横に付いているパネルを見ると、男子トイレなのになぜだか、ビデ、のスイッチもありました。
良かった、と思いながらスイッチを押すと、勢いの良い水流が今の恥ずかしさでまた疼き始めた私のクリトリスを直撃しました。
「あーんっ!」
思わず声が出てしまいます。
「なお子お姉さん、また気持ちいいの?」
カズキくんの声は、なんとなく呆れているように聞こえました。
「なお子お姉さんて、本当にえっちなんだね?」
カズキくんは、ようやく立ち上がって、私の顔を見つめてニコっと笑いました。

私は、またえっちな心に火が点いてしまいます。
ここでまた、ちょっとカズキくんに弄ってもらおうか?
いえいえ、そんなことをしていたら、いつまでたっても終わりません。
私は、心を鬼にしてその欲望を振り払い、切り替えることにしました。

「あー恥ずかしかった。カズキくん、女の人のオシッコ見て、どう思った?」
「うーんとね、なんか不思議だった。男の子のほうが、やりやすいみたいだよね。持ってコントロールできるし」
「そうかな?うーんと、そうかもね」
私は、上の空で返事しながら立ち上がりました。

「カズキくん、お姉さんはここでお洋服お着替えしてから帰るけど、カズキくんは、もう遅いから、先にお家に帰っていいよ」
カズキくんは、うつむいてしまいます。
「ううん、ボク待ってる。それで途中までお姉さんと一緒に帰る」
「そんなこと言って、カズキくん、なお子のお着替え見たいだけでしょ?」
「えへへー」
カズキくんが顔を上げて笑います。
「カズキくんも本当に、えっち、だね」
私は、カズキくんの顔を見つめてニコっと笑いました。

濡れたブラウスを脱いで、また全裸になりました。
バッグから半乾きのブラを取り出して、肩紐を両腕に通します。
明るい蛍光灯の下で、カズキくんに見せつけるように、ゆっくりとおっぱいをカップに包みます。
便器のふたを閉めて、その上に裸のお尻で腰掛けました。
ブラのホックははめないまま、立っているカズキくんの目を見て問いかけます。

「カズキくん?」
「はい?」
「この後、お家に帰ったら、なるべくオネーチャンにカズキくんの濡れちゃった姿を見られないよーに、すぐお風呂場に行って、お風呂用意してなかったら、シャワーだけでも、浴びなさい。一人でもできるよね?」
「うん」
「そのときに、今着ているお洋服も全部持って入って、シャワーで濡らして軽く洗っちゃいなさい。石鹸は使わなくていいから」
「はい」
「それで、出るとき、洗濯のところに絞って入れておきなさい」
「はーい」

「それじゃあ、このホックをはめてくれる?」
私は、便器からお尻を上げて中腰になり、カップにゆるく包まれたおっぱいをカズキくんに突き出します。
「このホックのコレにココを差し込んでパチンてして」
カズキくんの小さな指が私のブラのフロントホックをはめてくれました。


また雨の日にカクレガで 19