2021年12月19日

肌色休暇二日目~いけにえの賛美 15

 「あ、でも髪は洗ったほうがいいね、見た目でもかなりベタついちゃってるし。脱衣所の収納にシャンプー類やドライヤーが入っているから」

 バスルーム小屋へ向かおうと向けた背中に、中村さまからお声がかかります。

「あ、はい、ありがとうございます」

「全身をいったんすっかり清めてリフレッシュするといいわ。夜はまだまだ始まったばかり、これからが長いんだからさ」

 意味深なお言葉を残されて、プイッと踵を返された中村さま。
 どうやらこの後も、普通に過ごさせてはもらえなさそうです。

 目隠し樹木を抜けてガラス張りお外から丸見えバスルーム小屋へ。
 室内の電気を点けると夕方の薄闇にそこだけボーッと浮かび上がる感じ。

 もしお外にどなたかがいたら、灯りに照らされた私の入浴姿をまるで映画館で映画を観ているみたいに赤裸々かつ鮮明に鑑賞出来ることでしょう。
 どなたも覗いていないとわかっていても、凄く気恥ずかしい雰囲気です。

 脱衣所で首輪を外し、シャンプー類とドライヤーを確認してから浴室へ。
 今回は気兼ねなく頭からシャワーを浴び、ソープを入念に泡立ててボディアンドヘアケア。

 やっぱりずいぶん陽射しを浴びちゃったみたいで、白く残した恥ずかしい日焼け跡部分の肌がうっすらピンクに変わり始めています。
 この感じならお尻上の恥ずかし過ぎる自己紹介文も、東京へ戻る頃には読めなくなっていそう。

 余計なことは一切しないで丁寧にお手入れだけしてから、再び脱衣所へ。
 バスタオルでからだを拭った後、全裸のままドライヤーで髪を乾かしました。
 それからからだにバスタオルを巻きつけて首輪を嵌め、オールバックに髪をまとめたすっぴんでお外に出ます。

 お外は入浴のあいだに一層暮れなずみ、湿度の低い高原のそよ風がお湯で火照った素肌に心地良い。
 目隠し樹木を抜けて石畳を進み、正面玄関前へ。

 お屋敷の扉を開けた途端、美味しそうな匂いが鼻腔に飛び込んできました。
 ホールに入ると、中央付近の大きめな楕円形テーブルに色とりどりのお料理が並べられています。
 それを見た途端、グゥ、とお腹が小さく鳴り、お腹が空いていることにあらためて気がつきます。

「おお、戻ってきたね。さっぱりした顔しちゃって。髪上げた感じも色っぽくていいじゃん」

 おひとりだけ早々とお席に着かれていた五十嵐さまがお声をかけてくださいました。

「今日のメインディッシュは寺っち特製のスタミナカルボナーラパスタだよーっ」

 中村さまがホテルのルームサービスで使うみたいな銀色の配膳カートを押され、厨房のほうから現われます。
 つづいてワインボトルが2本刺さったクーラーを片手に提げられた寺田さま。
 最後にもう一台、何かが乗ったカートを押されてこちらへと近づいてこられるお姉さまのお姿が見えました。

「でも残念。直子はみんなと一緒には食べられないの。先生からご指名、入っちゃったから」

 カートを私のそばまで押してこられ、私に向き合わられたお姉さまの右手が、スッと私のほうへと伸ばされます。

「あんっ、いやんっ!」

 スルッと当然のように剥ぎ取られる私のバスタオル。
 またまたみなさま着衣の中で私ひとり全裸。

「直子は先生のお部屋にお食事を持っていって、一緒に食べなさい。それでしばらくまたお相手ね」

 お姉さまが運ばれたカートの上には山盛りのサンドイッチとスコーン、そしてミルクティのペットボトル2本にティカップがふたつ。
 つまり、このカートを先生、いえ、あるじさまのお部屋まで運びなさい、ということなのでしょう。

「この格好で…ハダカのままで、ですか?」

 他のお三かたからニヤニヤ見つめられる中、今更隠すのもワザとらしいし…とモジモジ尋ねる私。

「もちろんよ。直子を虐めてから先生、創作意欲がビンビンらしいから、いい作品になるように精一杯ご協力差し上げてきなさい」

 お姉さまが私を覆っていたバスタオルを丁寧に折りたたみながら素っ気なくおっしゃいます。

「あ、でもちょっと待って」

 異を唱えられたのは寺田さま。

「うちの先生、M女を脱がせていくシチュにも拘るほうだから、最初から全裸じゃないほうがいいかも…」

「そうだね、確かに」

 ご賛同されたのは中村さま。
 それからおふたりでしばしディスカッション。

「先生、今は何に取り掛かっているのかな。女教師凌辱もの?令嬢もの?時代もの?」
「直子とアソんでインスピレーション湧いたっていうんなら、令嬢誘拐ものじゃない?」

「令嬢ものか…でもさっきのブラウスはボロボロだし、スカートもヨレヨレだったよね?何着せよう」
「でも逆にさ、さっきのプレイで外にマッパで連れ出すまでしちゃったから、先生の中でその令嬢はもうM女奴隷状態にそこそこ堕ちてるんじゃない?」

「そっか、直子ちゃんも凄い乱れっぷりだったし、もう本格調教に移行しているかもね。それなら裸エプロンくらいでいいのかな」
「それだとエプロン外して即全裸でつまんないじゃない。脱がせる愉しみが味わえない」

「そっか、じゃあエプロンの下に先生好みのアレでも着せとこっか?」
「ああ、アレね。いいんじゃない、賛成。この子にピッタリそうにエロいのが確かあったはず」

 おっしゃった中村さまがタタタッとホールの奥のほうへと駆けだされます。
 そのお姿を呆気にとられて見ている私の背後で、寺田さまが後ろに結んだ私の髪を解かれました。

「そういう格好ならオールバックよりこっちの髪型のほうが似合うはず」

 そんなことをおっしゃりつつ、手慣れた感じで私の後ろ髪を分けられる寺田さま。
 あっという間に両耳の上で結んだツインテールヘアに早変わり。
 そこへタイミング良く中村さまが戻られます。

「ほら、まずはこれ着て」

 差し出されたのはクタッとしたブルーグレイの布片。
 手に取って広げてみると、これは水着?それともレオタード?
 ワンピース型で襟ぐりと背中が大きく開いていて、たぶんハイレグ。
 凄く軽くて薄くて伸縮性があって、しかもたぶん私には少し小さい…

 なにはともあれご命令ですので着てみます。
 両脚を通してからだを布片で覆い、肩紐を両肩へ。

「んっ!」

 やっぱり私には少し小さいみたい。
 伸縮性のある布地が早くも股のあいだへと食い込み、おっぱいを押し潰すように貼り付いてきます。

 やっぱり超ハイレグで骨盤の上ぐらいまでの素肌が露わ。
 股間を通る布片は幅5センチにも満たないくらいなので、大陰唇を隠すのがやっと。

 襟ぐりはおろか両脇も盛大に開いているので谷間はおろか横乳までもろ見え。
 更に薄くて伸びる生地のため、両乳首はもちろん前ツキな私の陰核の位置まで、布地がこれ見よがしに突き出され、正確にそれらの位置はおろか形状までを教えてくださっています。

「おお、やらしいねー。裸より断然えっちだ」
「早速股間が濡れてきちゃってるじゃん。ほら、色が濃く変わってる」
「これなら先生も、ヤル気倍増じゃない?」

 代わる代わる囃し立ててこられる寺田さまと中村さま。
 五十嵐さまはお姉さまのビデオカメラをずーっと私に向けておられます。

「このレオタって、確かエミリーんとこの製品よね?」

 寺田さまがお姉さまに尋ねられます。

「うん。うちで扱った素材みたいね。製品ではないけれど、たぶん新素材の試作で余った布地でリンコたちが作ったんじゃないかな?何かのコスプレ用に」

「ああ、エミリーんとこの社員の可愛い子たち、コスプレ写真撮りたいって女の子おおぜいで来たときあった。確かにあの子たちが先生へのお礼兼ご参考にって、エロい衣装たくさん置いて行ったような記憶があるわ」

 中村さまが相槌を打たれます。
 こんなに遠くまで来ても、私はリンコさま特製の辱め衣装から逃れられないようです。

「あとはこれを着て、仕上げにこれ、ね」

 ジョセフィーヌさまとのお散歩のときに着せられたのと同じようなミニ丈のヒラヒラ純白なメイドエプロンを着せられ、仕上げはメイドカチューシャ。
 真っ白なヒラヒラが付いたカチューシャが私の頭に嵌められました。

「おお、かわいーっ!」
「エロメイド、一丁上がりっ!」
「エプロン着けても勃起乳首が布地に響いていて、どっからどう見ても性的オモチャなM女召使いって感じ」

 今度は五十嵐さままでご一緒になられ、お三かたから囃し立てられます。

「さあ、それじゃあ先生のところへ行ってきなさい。場所はわかるわよね?直子が拘束された和室。あそこが先生のお仕事部屋」

 お姉さまが私を、お姉さまが押してこられたカートの押手の前に誘導しつつおっしゃいます。

「あ、カートは部屋の中まで入れてはダメよ。廊下に置いてお料理類だけ部屋に運ぶの」

 寺田さまがお優しく教えてくださいます。

「先生がお仕事している文机のそばに、もうひとつ座卓があるはずだから、まずその上のポットや湯呑を下げて、そこに置くといいわ」
「下げたポットとかは廊下のカートの上に置いといてくれれば、後でアタシらが回収するから」
「それで、ご一緒するように寺田に言われました、って言えば、先生も察するはずだから」

 細やかなご指示をくださる寺島さま。
 でも先生、つまりあるじさまは何をお察しになられるのでしょう…

「くれぐれも粗相の無いようにね。先生のご要望には何でもはい、はいって応えるのよ」

 なんだか母親のようなことをおっしゃるお姉さま。

「うふふ。今のエミリーの言い方って、タレントを枕営業に送り出す芸能マネージャーみたいよね」
 
 そんなふうに混ぜ返されたのは寺田さま。

「あたしたちもこれからディナータイムだから、食べ終えて一息ついて気が向いたら救出に向かってあげる。それまでがんばってきなさい」

 ずいぶん無責任なお姉さまのお言葉に送り出され、カートをしずしずと押しながらホールの奥へと向かい始めました。
 裸エプロンは免れましたが、ラバースーツ並みにからだを締め付けてくる極薄ハイレグレオタードに首輪とメイドカチューシャの格好で。

 ホールの扉を抜け左に折れると市松模様の瀟洒なお廊下。
 押しているシルバーのカートは高級品なのでしょう、軽々と音も無くスイスイ進むのですが、私のほうがなんだか歩き辛い。

 ハイレグ仕様の股布が一歩進むたびに食い込んでくるみたいに、恥丘から会陰までを刺激してくるんです。
 両乳房に貼り付いた伸縮性に富む薄布も、からだが動くたびに乳首先端が擦れる感じ。

 市松模様が途切れると今度は右に折れて一気に和風な板張りのお廊下。
 あるじさまのお部屋も、もうすぐそこです。

 あるじさま、今度は何をしてくださるのだろう…
 また本気なビンタをいただけるかな…
 今度はあるじさま自らお手を下され、あれこれされちゃうのかも…

 お部屋の敷居戸の前までたどり着いたときには、不安と期待の入り混じった妄想に布地からの肉体的刺激も加わって、狂おしいほど淫らな気持ちになっていました。

 いけないいけない。
 まずはちゃんとお勤めを果たさなくては。
 一度深く深呼吸してから強めにトントンと木の敷居戸をノック。

「失礼しまーすっ。お食事をお持ちしましたっ!」

 ハッキリゆっくりよく通るように大きめな声でご挨拶。

「あらあらハイハイ、どーぞー」

 思いがけずも、ずいぶんお優しげな柔らかいお声が返ってきました。

「あ、はいっ!失礼しまーすっ!」

 もう一回大きめの声でご返事してから、敷居戸をスルスルっと開きます。
 最初は寺田さまのお言いつけ通り、何も持たずに沓脱ぎへ。

 内側の障子戸はすでに開け放されていて、煌々と照っている照明。
 畳部屋のずっと奥の文机のところに、お背中を向けられたあるじさまが見えました。
 私の視線があるじさまを捉えると同時に振り返られるあるじさま。

「あらあら、あなたが持ってきてくださったの?えーっと、森下さん、直子さんだったわよね?」

 私に向けてたおやかな笑顔をくださるあるじさま。
 あれ?さっきと雰囲気が全然違う…

「あ、はい。森下直子です。今日からこちらにお世話になります。よろしくお願いいたします」

 お部屋にはどこからともなく薄っすらと女声の流麗で清楚な歌声が流れています。
 これって確かカーペンターズさんだっけ…

「はい、こちらこそ。ちょうどいいタイミングでしたわ。ちょっと待っててね。この段落だけ書き上げてしまうから」

 畳に正座して頭を下げ上げした私にニコヤカな微笑みをくださった後、スッと文机に向き直られ、それきりまた後ろ姿なあるじさま。
 ノートパソコンのキーを叩かれているのであろうカタカタという音が聞こえます。

 待って、とご指示され、その場で正座のままお部屋内を見渡します。
 昼間のときとは打って変わってずいぶん乱雑。

 あるじさまの文机を中心に畳に散らばるたくさんの本、本、本。
 開きっ放しもあれば閉じているのも、厚いの薄いの、数冊積み重なっていたり。

 あるじさまから少し離れた右隣にはもうひとつの座卓。
 そして寺田さまがおっしゃった通り、大きめな銀盆の上にポットと湯呑、それに何かを召し上がられたのであろう数枚のお皿も。
 まずはそれらを片付けるのが私のミッションその一なのでしょう。

 他にも何か変わったところは…と見渡したときに、気づいてしまいました。
 あるじさまのお背中側で開きっ放しになっている本の何冊かが写真集なことに。
 そしてその写真が悉く、裸だったり縛られていたりのSM系写真なことに…

 そのときあらためて、私の目の前で執筆作業に没頭されているこの女性は、私が高校生の頃にM心とマゾマンコをキュンキュンときめかせてくださった、鬼百合と姫小百合、の名塚先生なのだな、と実感しました。
 同時に得も言われぬ不思議な感動が…

「まあ、こんなものでしょう、ふぅーっ。それではわたくしも一息入れましょうか。森下さん?お待たせしちゃったわね」

 私が感動でジーンとしている真っ最中に、名塚先生からお優しいお言葉がかかります。

「あ、はいっ!それではご用意させていただきますっ!」

 ご尊敬の念にすっかり一ファンと化した私は、ご崇拝六割、マゾ性四割の召使いとなり、急にソワソワとお勤めを遂行し始めます。
 まずは座卓上のポットやお皿類を銀盆ごとカートに撤去、持参したおしぼりで丁寧に座卓上を拭ってから、あらためてサンドイッチ山盛りお皿をセット。
 それからお紅茶のペットボトルとティーカップ二組も座卓に乗せます。

 極薄レオタード一枚のメイドエプロン姿でドタバタと働く私の姿を名塚先生が嬉しそうに眺めていらっしゃいます。
 私は名塚先生に視られていることを必要以上に意識してしまい、マゾ性がグングン昂ぶってしまいます。

「あら、今夜はずいぶんとたくさんサンドイッチを持ってきたのね?」

 純粋に驚かれたお顔でご質問される名塚先生。

「あ、はい。寺田さまからのご提案で、私も名塚先生とお食事をご一緒しなさいと…」

 寺田さまのお言いつけ通りに、ワクワクとビクビクが一緒くたになった気持ちでお答えします。

「そう。寺田がそう言ったの…それならそうしましょう。わたくしも執筆中に誰かと一緒に食事するなんて久しぶりだから嬉しいわ」

 あくまでもたおやかに名塚先生はおっしゃいました。
 あれ?
 でも、そもそも私は名塚先生直々のご指名でお給仕を任されたのではなかったでしたっけ…???