2016年5月1日

オートクチュールのはずなのに 48

「まだ、そのポーズしているんだ?」
 しほりさまのお見送りから戻られたリンコさまが、ニヤニヤなお顔で私をじーっと見つめてきました。

「こういう見慣れた場所で、マッパの知り合いとふたりきり、って、なんかヤバイ感じ。無駄に照れちゃう」
 そんなお言葉とは裏腹に、リンコさまの舐めるような視線を全身に感じます。

 とくに下半身。
 私の半開きパイパンマゾマンコ。
 リンコさまの視線は、私の顔と上半身をたゆたっては、必ずそこに舞い戻っていました。

「恥ずかしい、よね?」
「・・・はい」
「だけど、その恥ずかしさが、いいんでしょ?」
「・・・はい」
「ふーん。マゾかあ。あの純情そうだったナオっちがねぇ」
 リンコさま、愉しくってたまらない、っていうお顔。

「そのポーズは、勝手にやめちゃいけないんだ?」
「・・・はい。次に何かご命令が、下されるまでは」
「ふーん。ここにはアタシしかいないんだから、次にナオっちが命令をきくのはアタシ、っていうことになるわよね?」
「・・・はい。そうです」

「それなら、もうしばらくそのポーズでいて。あ、違うか。命令だもんね?そのポーズでいなさい、だな」
「はい・・・」
 リンコさまをすがるように見つめながらお答えすると、とても嬉しそうにニッと微笑まれました。

 全裸で立ち尽くす私をしげしげとご覧になりながら、リンコさまが私の周りをゆっくりと一周されました。

 胸元に大きなリボンをあしらったシフォンドレープのベアトップドレス。
 こんな感想は大変失礼なのですが、普段のリンコさまの服装からは想像出来ないほどフェミニンなそのお姿は、意外なことに、とてもお似合いでした。
 パステルパープルがフワフワ揺れる女性的なシルエットの中で、剥き出しの華奢な両肩と端正なネコさん顔にショートヘアが、アンドロジナスな妖しさを醸し出していました。

「こんなふうにアタシに視られているだけでも、感じちゃってる?」
「・・・はい」
「わかってて聞いたんだ。だって、さっきからナオっちのソコ、よだれタラタラだもん」
 
 私の下半身を指さすリンコさま。
 唇が少しだけ開いた無毛のマゾマンコからは、ときどき思い出したようにツツーっと、はしたないおツユが内腿を、かかとのほうへと滑り落ちていました。

「チーフと初めて会ったとき、インナーの試着しながら、フィッティングルームでイッちゃったんだって?」
「あ、えっと・・・はい」

 お姉さまってば、そんなことまで、みなさまにお教しえされちゃったんだ。
 あ、違うか。
 お姉さまが綾音さまにお伝えして、綾音さまからみなさまへ、かな。

「お店、営業中だったんでしょ?」
「はい・・・」
「他にお客さん、いなかったの?」
「えっと、数人いらっしゃったかもしれません・・・ずっと中にいましたから、確かなことは・・・」
「中って言っても、仕切りはカーテン一枚でしょ?大胆ねえ。声は我慢してたんだ?」
「・・・はい」

 興味津々なご様子のリンコさまから、矢継ぎ早なご質問。
 ランジェリーショップのあの日を、鮮やかに思い出しました。
 あのときも狭い試着室の中で、同じポーズになって、お姉さまにされるがまま、だったっけ。

「こないだのアイドル衣装の試着テストのときも、ナオっち、なんだかずいぶんエロっぽかったから、ひょっとしたら、とは思ったけれど、ここまでだったとはねえ」
 感心されているような呆れられているような、ビミョーなまなざしで私を見つめるリンコさま。

「まあ、外面は清純そうなお嬢様タイプの女子の頭の中が実は・・・っていうシチュは、エロ系創作物の定番、腐るほどありがちなんだけれどさ」
「実際こうして目の当たりにしちゃうと戸惑っちゃう。今、ナオっちはアタシの命令、なんでもきいちゃうつもりなんでしょ?」
「・・・はい。そ、そいうことに・・・なります」
 リンコさまが少し困ったような、だけどとても嬉しそうに微笑まれ、私の真正面に立たれました。

「ナオっちは、人様から辱められたいタイプのマゾなんだって?」
「・・・はい」
「みんなの中で、ひとりだけ裸だったり、恥ずかしい服装をさせられたり。そういうのでコーフンしちゃうんだ?」
「はい・・・」

「だったら、今日のイベントなんて、ナオっちの好みにドンピシャのシチュじゃん。マゾっ子としては、夢のような体験になるんじゃない?」
「あ、でも、そう言えば、どんなアイテムなのかは、知らないんだっけ?」

「さっきパンフレットだけは見せていただきました。午前中にモデルのお話をお願いされたときに」
「そりゃそうだよね。どんなの着せられるかわからないまま、引き受ける訳ないか」
 愉快そうに笑うリンコさま。

「見て、どう思った?」
「ただただ、すごいな、って」
「でしょ?テーマがエロティック・アンド・エクスポーズだもの。エクスポーズって、晒す、とか、陳列、露出、っていう意味ね」

「普段、公序良俗的に公衆で見せてはいけない部分を、いかに見せつけるか、っていうコンセプト。まさにナオっちのために作られたようなもんだよね」
 そこまでおっしゃって、ハッと何か思いつかれたような表情になったリンコさま。

「ひょっとしてチーフ、イベントのテーマをナオっちの影響で決めていたりして。ナオっちがチーフと出会ったのって、いつって言ってたっけ?」
 身を乗り出すようにリンコさまが尋ねてきました。

「横浜のランジェリーショップにお邪魔したのは今年の春、3月の始めです」
「なんだ。それじゃあ違うな。テーマが決まって準備を始めたの、1月の終わり頃だったから」
 せっかくの面白そうな思いつきが、あっという間に萎んでしまい、リンコさまがつまらなそうなお顔でおっしゃいました。

「でも、ああいう普段にはとても着られそうもないお洋服を買ってくださるお客様って、いらっしゃるのですか?」
 会話をつづけなくちゃ、と思ったので、パンフレットを見てからずっと思っていた疑問をぶつけてみました。

「それは至極真っ当な疑問よね。でもね・・・」
 リンコさまが、待ってました、という感じの得意げなお顔になられ、説明してくださいました。

「広い世間には、ああいう非日常的なアイテムに対する需要が、意外と大きくあるものなの。ある種の場所や人、ギョーカイでね」
「今日来るお客様は、そういう、ある意味、浮世離れしたところとパイプの繋がっている人たちばかりだから、余裕があったら、お客様の顔をいろいろ観察すると、面白いことがわかるかもしれないよ」

 イタズラっぽくおっしゃるリンコさま。
 ショーモデル初体験の私にお客様がたを観察するなんて、そんな余裕があるとは到底思えませんけれど。

「つまり、世間には意外と、ナオっちみたいな人種も少なからず生息している、っていうことよ。もっともアタシも、直で知り合いになるなんて、初めてだけどさ」
「そういう人たちが、着てみたいな、または、パートナーに着せてみたいな、って思うようなアイテムを、アタシたちは、一生懸命考えて、悩んで、作って、今日めでたく発表する訳」

「だから、アタシらには、そういう性癖の人たちに対して、一切の偏見はないの。もちろんナオっちにもね」
「むしろ、そういう人が仲間になって、企画とかデザインとか断然やりやすくなった、っていう感じ」
「今回のイベント、絵理奈さんよりナオっちのほうが、だんぜんお似合いだと思う。エロさのオーラが一桁違うもん。きっと大成功するよ」

 褒められているのか、面白がっているだけなのか。
 だけど、リンコさまの人懐っこい笑顔を見ていたら、モデルのお役目がんばらなくちゃ、と、今更ながら思いました。

「ついでに言うと、ナオっちがもし気に入ったのがあったら、イベント後は、ナオっちがプライベートやオフィスで着てもいいんじゃない?オートクチュールのサンプルなんだし」
「オフィスで着るのって、いいな。ナオっちがそういう格好で働いていてくれたら、アタシ、すんごくヤル気出ちゃう」

「オフィスは法人で、プライベートとは言えないけれど、万人に開かれたお店でもないんだから、そこでどんな服装で勤務してようが、そこの社員全員に文句がなけりゃ、無問題だよね?」
「アタシらはもう、ナオっちのそういうセーヘキを知っちゃったし、身に着けるのは自社ブランド製品だもの、ブランドショップの店員さんと同じよ。昔で言うところの、ハウスマヌカンだっけ?」

 ご自分の思いつきに酔ってらっしゃるのか、何の屈託なく、ものすごいことをおっしゃるリンコさま。

 そのご提案をお聞きして、少し前から頭をよぎり始めた、イベント後のオフィスでの自分の立場、という妄想が、みるみるうちに広がりました。

 さっき見たパンフレットで、うわすごい、と思ったアイテムを身に着けた自分を想像してみます。
 その姿の自分を勤務中のオフィスに置き、社員のみなさまがいらっしゃる中で、たとえば、お電話を受けたり、打ち合わせをしたり、お客様にお茶をお出ししたり・・・
 それは、考えただけでも、ものすごく恥ずかしいことでした。
 たちまちキュンキュンと粘膜が蠢き、全身がヒクヒクひくつきました。

「おっと、あんまりおしゃべりしていると、どんどん時間がなくなっちゃう。ナオっち、大丈夫?」
「へっ!?」
 話しかけられてパッと妄想が破られ、マヌケな声を出してしまう私。

「ぜんぜん大丈夫じゃないみたいね。どんどん溢れてる」
 リンコさまが私の足元を指さしました。
 内腿を滑り落ちたはしたない液体が、右足のかかとのところにこんもりと、粘っこそうに白濁した水溜りを作っていました。

「一度発散しちゃったほうがよさそう。こんなんじゃアイテムがみんなベトベトになっちゃうもの」
 ちょっとイジワルそうなニヤニヤ笑いを浮かべたリンコさまが、私に一歩近づきました。

「していいよ。そうね、20分あげる。2時45分までね。思う存分しちゃいなさい」
「・・・えっと・・・???」
「だから、ウズウズしてるんでしょ?自分で慰めなさい、っていうこと。クリちゃん、そんなに腫らしちゃって」

「あの、私がひとりでする、っていうことですか?」
「そう。アタシも出来ることなら、ものすごく手伝いたいんだけれど、このドレス、シルクだから水シミになりやすいんだよね」

「そういうおツユとか飛び散っちゃうと、これから人前に出るのに、ちょっとヤバそうだからさ。ナオっちのからだは、さっきからずっと、すぐにでも弄ってみたいんだけど、今日のところは我慢しとく」
 リンコさまが本当に残念そうにおっしゃいました。

「ちなみにチーフからは、キスとアヌス虐め以外なら、どこをどうしてもかまわない、っていう許可も、もらってるんだけどね。本当残念」
 たぶん、みなさまが会場へ行かれる前、おふたりでヒソヒソ話をされていたときにでしょう。

「ナオっち、アヌスも開発済みなんだ?チーフにしてもらったの?」
「は、はい・・・」
「ふーん。チーフもあんな顔して、やることはやってるんだね。あ、でもそっか。今日のアイテムにはプラグ挿すのも、あったんだっけ」

「でも、キスにNG出すっていうのは、恋人同士らしいよね。ナオっち、愛されてるじゃん」
 リンコさまのひやかしに、たちまちすっごくシアワセな気持ちになりました。

「ま、とにかく今日は、ナオっちのオナニー鑑賞で我慢しておくことにする。この先、また何度もチャンスありそうだし」
 明るい笑顔で、ゾクゾクしちゃうようなことをサラッとおっしゃるリンコさま。
 マゾの服従ポーズのまま立っている私の真正面、2メートルくらい離れたところに椅子を移動し、そこにお座りになりました。

「ほら、早く始めないと時間なくなっちゃうよ?ポーズはもう解いていいから」
「は、はい・・・」
「ここからナオっちのアヘ顔、じっくり視ててあげる。あ、でも今日は、スーパーモデル、夕張小夜ちゃんのアヘ顔だったか」

 目の前のリンコさまを見つめながら、ゆっくり両手を下ろしました。
 恥ずかしさより戸惑いが勝っている感じで、どうやって始めたものか、と考えてしまいます。

「そっか。命令されないと、その気になれないのかな?じゃあ、命令してあげよう」
 リンコさまが立ち上がられ、近づいてきました。

「まず、その1。立ったまますること。どんなに気持ち良くてもひざまずいちゃダメ。膝小僧赤くなってるモデルなんて、超カッコワルイでしょ?」
「しゃがむのはオーケーだけど、お尻を床についちゃダメ。理由は膝と同じ」

 間近に見るリンコさまの瞳が、エス色に染まりつつあるように感じました。
「返事は?」
「あ、はいっ」

「その2。なるべくたくさんイクこと。イッた後も手を休めず、アタシがいいと言うまでイキつづけるの。どんどんどんどん。エロい気持ちがすっからかんになるまで」
「はい」

「その3。イキそうなときは、必ずアタシに許可を取ること。イキそうです、イッていいですか?って。まあ、こういうプレイのお約束だけれど」
「アタシがいいって言ったらイッて、ダメっていったら許可するまで我慢ね」
「はい」

「その4。なるべく肌を虐めないように。全身よ。これから人前に出て裸を晒すんだから、おっぱい揉み過ぎて赤く腫らしたりしないように」
「必然的に、弄れるのはオマンコの中と乳首くらいになっちゃうけれど、今のナオっちなら充分よね?」
「は、はい。大丈夫、です」

 リンコさまのお口から、さりげなくオマンコなんていうお下品なお言葉が出てドキン。
 いつになく冷たく響くリンコさまからのご命令のお声を聞いているうちに、全身がどんどん疼いてきて、いてもたってもいられなくなってきました。

「そんなとこかな。あ、あとそれからね・・・」
 リンコさまが一度テーブルのほうへ向かわれ、ご自分のバッグをちょっとガサゴソされてから戻られました。

「さっき、しほりんが別れ際、こんなもの渡してくれたんだ」
 右手に持っていたある物を見せてくださいました。
「これで、ナオコの尖った乳首や腫れ上がったクリットを挟んだら、面白そうじゃない?なんて言ってた」

 その、ある物は、ビューラーでした。
 まつげを挟んでクルンとさせる、別名アイラッシュカーラー。
 ハサミみたいな持ち手が付いて、ハサミみたいにチョキチョキすると、まつげを挟むシリコン部分が開いたり閉じたりする仕組み。
 実は私も、自虐オナニーで使ったことのある、お気に入りのお道具。

 見た瞬間にその感触を思い出しゾクゾクしていたとき、ほぼ同時に実際に、左乳首を同じ快感がつらぬきました。
 リンコさまが素早く、私の左の乳首をビューラーに挟み、力任せにギュッと挟み込んだようでした。

「はぁっぅぅぅーーっんぅんぅんぅうっ!」

 カチコチに固くなった乳首を思い切り絞り上げられ、激痛とともに得も言われぬ快感が脳天を突き抜け、自分の耳にもおぞましいほどの、はしたない歓喜の淫声が喉奥からほとばしり出ました


オートクチュールのはずなのに 49