2024年4月21日

彼女がくれた片想い 12

 それにしても彼女に話しかけてしまったのはつくづく失敗だった。
 あれ以来彼女は、テニスの時は必ずショーツの上からアンダースコートを穿くようになり、木曜日も午前中で帰ってしまうことが続いている。

 更に、彼女が会釈をくれても目を逸らすといった塩対応を続けていた結果、最近では何かの拍子で視線が合っても彼女の方から気弱な笑みで先に目を逸らす、というギクシャクした関係に陥っていた。
 その上、彼女が私を一個人として認識してしまったという事実は変わらないので、うかつに彼女の姿を追うことも出来ず、監視まがいの行動が思うように出来なくなっていた。

 ただ、私も彼女の行動を注視するよりも心惹かれる悩ましい遊びをみつけていた。
 講義中のトイレで人知れず全裸になること、に嵌ってしまったのだ。
 あの日初めて行なって以来、その背徳感と恥辱感、そしてみつかったら終わりだという薄氷を踏むようなスリルの虜になってしまっていた。

 講義と講義の間の空き時間は、今までならどこかの空き教室に忍込み専ら読書に耽っていたのだが、今ではいそいそと誰もいないトイレに赴き、個室で全裸になるようになっていた。
 自慰行為までは出来なくても、全裸になって佇むだけで得も言われぬ陶酔が感じられる。

 また、今までは三限や四限でその日の講義が終わったらそそくさと学校を後にしていたのだか、最近は五限目の時間まで学内に居残ってトイレに籠もることも普通になった。
 火曜日と水曜日は一限ないしは二限目からびっしり五限まで講義があるが、月曜日は四限以降、木曜日は三限と五限、金曜日も二限と四限以降がお愉しみタイムとなった。

 トイレ個室全裸デビュー翌日金曜日の二限目が空き時間となった私は、講義開始のチャイムとともに三階のトイレに入った。
 五つ空いた個室のうち、出入口から一番遠いいつもの個室に入り鍵を掛ける。
 すぐに想像上の彼女の命令によって衣服を脱いでいく。

 今日の服装は昨日と同じジーンズにモスグリーンのフリルブラウス。
 下着はオーソドックスな白のフルカップブラにフルバックのショーツにした。
 普通のありふれた下着の方が脱いで裸になった時との落差が大きくてより興奮出来ると思ったからだ。

 下着姿になってから一呼吸置き、おもむろにブラジャーとショーツを脱いでいく瞬間は、全身の細胞が総毛立つようにゾクゾクと感じてしまう。
 全裸になってしばし後ろ手を組んで佇んでからスマホを取り出して記念撮影。

 前回はスマホをバッグにしまい込んでしまったため時間配分がよくわからなかったので、今回からスマホを手元に置いておくことにした。
 うちの大学は90分授業、その時間内で終了チャイムが鳴る前に退散するための安全策だ。

 しゃがみ込んで右腕を伸ばし恥ずかしい自撮り開始。
 これから必ず自分の変態行為をセルフィーで撮影し、自分の黒歴史ライブラリーを貯めていこうと自虐的に決めていた。

 シャッター音が鳴るたびに股間の粘膜がヒクヒク疼いてくる。
 左手は当然のように陰毛の上、大きく割った両腿の中心部分をコソコソと愛撫している。

 私は今、恥ずかしい自慰行為を撮影されている…
 そう考えただけでもう我慢は効かず、中指と薬指が膣中深くに吸い込まれていく。

 二度三度と身体の奥から蕩けそうなほどの絶頂感を味わった後、小休止。
 弾む吐息が収まるのを待ってから、今度は個室の外に出てみようと思い個室の鍵に手を伸ばす。

 その時、バタンとトイレ出入口のドアが開閉する音がした。
 伸ばした手をすぐに引っ込めて昨日のようにしゃがみ込むまではいかないが、やはり盛大にドキドキしている。
 すぐにどこかの個室が閉まるバタンという音も聞こえてきた。

 さっきすぐに外へ出ていたら危なかった。
 全裸の私と見知らぬ誰かが完全に鉢合わせしていたはずだ。
 収まらないドキドキで性的に翻弄されながら個室からの退出を待つ。

 ジャーという水洗の水音で退出間近と心躍った瞬間、また別の物音、トイレ出入口のドアが開閉するバタンという音が聞こえてきた。
 また別のトイレ利用者のようだ。
 個室のドアを閉じるような開くような音が立て続けに二回聞こえ、しばらくしてトイレの出入口ドアがバタンと閉まる音がした。

 昨日とは違ってどうにも落ち着かない。
 個室のドアの鍵をそっと外し、ドアも少しだけそっと開けて顔だけ覗かせ通路を見ると、真ん中の個室のドアが閉じていた。
 それだけ確認して顔を引っ込め個室の鍵をそっと掛けた。
 スマホで確認すると時刻は11時42分。

 うちの学校の学食が11時から始まるので、それに合わせて早めに昼食を摂る学生や午後から講義の学生が空いているトイレを探してここを利用するのかもしれない。
 そんな風に考えた矢先にまたトイレ出入口のドアがバタンと開閉する音が聞こえてきた。
 もうあと30分くらいで二限終了のチャイムが鳴って昼休みとなるし、ここではもう落ち着けそうにないと判断した私は、名残惜しいけれど着衣して早々と退散することにした。

 空いた学食で早めの昼食を摂り、少し長めの昼休みはいつものように読書で潰した。
 三限目の講義で彼女と一緒になった時、友人らに向けたいつも通りの彼女の笑顔を盗み見て、なぜだか少し気恥ずかしく感じた。

 四限目以降、暇となった私は、三階の例のトイレより人の出入りが少なくて落ち着ける場所があるかもしれないと思い、他の階のトイレも見て回ることにした。
 四階建ての本校舎には各階のほぼ同じ位置にトイレがある。
 もちろんその他にも教職員用や来客用のトイレも点在していたが、それらに忍び込むほどの度胸は無かった。

 一階は正面玄関があり講義中、休み時間を問わず人の出入りが不規則で、トイレにも時間を問わず頻繁に出入りがあるようだった。
 二階には、各教授の研究室と呼ばれる小部屋が集まっており、ここも時間を問わず出入りがあり、また万が一変態遊びが学生以外に露見してしまった時のリスクが大き過ぎる。
 四階は比較的に閑散としてはいるのだが、講義の空き時間に利用できるピアノの練習室が五部屋と歓談出来る広いラウンジルームがあるため、トイレ利用者も時間を問わずのランダムとなる。

 結局、講義のための教室だけが集まった三階が講義中であれば一番落ち着いて利用出来るトイレであった。
 彼女がそこまで見極めて三階を利用したのであれば慧眼だな、とあらためて彼女のことを見直してしまった。

 明けて月曜日は四限目から暇となるので、私はいそいそと三階トイレに向かった。
 例によって全個室ガラ空きの一番端に入り込み鍵を掛ける。
 想像上の彼女の命令によって衣服を脱いでいく。
 その間中、私は前回や前々回よりもひどく興奮していた。

 実は前日、正確に言うと休日だった土曜日の夜に自宅のバスルームで全裸になり、自ら陰毛を剃り上げていた。
 土曜日の午前中にネットで安全な陰毛の剃毛について調べ、午後に繁華街の家電量販店等でシェーバー他を買い求め、夜間に決行したのだ。

 夕飯後の午後七時過ぎ、全裸になってバスルームに入った。
 まずはハサミで伸びすぎた陰毛を五分刈り程度に剪定する。
 下半身をシャワーのぬるま湯で洗浄し、よく拭き取った後、慎重にシェーバーを当てていく。

 みるみる赤裸々となる私の恥丘。
 肛門周りまで生え茂ったヘアーは、ネットに書いてあった、手鏡を床に置き、その上にしゃがみ込む、という恥ずかし過ぎる方法で行なった。
 バスルームのタイルの床に置かれた手鏡に映った、陰毛で囲まれた性器と肛門をしげしげと覗き込み、ラビアをあちこち引っ張って赤面しつつシェイブした。
 終わる頃には滲み出た愛液で性器の周囲がヌルヌルになっていた。

 すっかり剃り終えると衝撃の事実が待っていた。
 私の小陰唇は左右対称ではなかったのだ。
 今までは毛に隠れっぱなしで気にすることはなかったが、赤裸々になると一目瞭然だった。

 自分から見て左側の小陰唇が右よりも全体的に2センチ位長めで、普通に真っすぐ立っても割れ筋から1センチ位、常時外にはみ出しているのだ。
 おそらく積年の自慰行為がもたらした結果なのだろうが、ワレメからラビアがはみ出ているという事実を目の当たりにして、自分がやはりかなりふしだらな女だったのだ、と思い知らされた。

 性器を無毛にしたことで確実に性感は上がってしまい、日曜日は一日中部屋に籠もり頻繁に下半身に右手を滑らせてツルツルな感触を愉しみ、結局自慰行為に至ってオーガズムを貪るというくり返しだった。
 剥き出しになった性器はかなり恥ずかしく、それでいて淫靡にエロティックだ。

 そんな週末を過ごした翌月曜日、待ちに待った個室に籠った私であるから、その興奮ぶりもわかってもらえるだろう。
 ブラジャーを外す前から、両乳首が尖りきっているのがわかる。
 ホックを外し緩んだ瞬間に、そんなに大きな乳房ではないが、布地を撥ね付けるようにプルンと弾むのがわかった。

 次はいよいよショーツだ。
 ウエストゴムに指を掛けただけで性器の奥が潤むのがわかった。
 思い切ってそのまま膝辺りまで一気にずり下げる。
 無毛の土手を個室内の空気が直に触れてくる。

 …あら?この間まであった毛が無くなってるじゃない?どうしたの?…

 想像上の彼女が目ざとく気づき、からかうように詰問してくる。

 …綺麗サッパリ剃り落としちゃって。自分で剃ったの?やっぱりソコをよーく視てもらいたいからなのかしら…
 …あら、普通に立っていてもビラビラがはみ出しちゃっているじゃない。オナニーのしすぎでラビアが伸びちゃったのね…
 …ふしだらなおまえにはよーくお似合いの変態ぶりだこと。ほら、もっと足を広げて中身まで見せなさい…

 ますます下品になった想像上の彼女の嘲りを浴びながら、後ろ手全裸の私は屈辱に震える。
 悔しいのに、あがらいたいのに、気持ちの良い電流が全身を駆け巡る。

 スマホを手に取り自撮り棒を取り付ける。
 これも土曜日に家電量販店で買って用意しておいたものだ。
 これでしゃがみ込まなくても全身をカメラに収めることが出来る。

 想像上の彼女に命令されるまま、恥ずかしいポージングで撮影が始まる。
 全身、大股開き、M字開脚、無毛な局部のドアップ、自らの指で開いた膣口と肛門のドアップ…
 シャッターが鳴るたびに性感がグングン高ぶり、遂には自慰行為に埋没してしまう。

 幾度かのオーガズムの余韻の後、個室の外に出てみようと考える。
 今日は幸運なことにこれまで一人も闖入者がいない。
 個室の鍵を外し顔を覗かせても、他の個室の扉はすべて開いたままだ。

 自撮り棒の付いたスマホを持って個室を出て、トイレの通路に立つ。
 出入口脇の洗面台上の鏡に裸の自分のおへそから上、乳房から上気した顔までが映っている。
 外廊下の様子に注意深く聞き耳を立てつつ、自撮りしながら鏡に近づいていく。

 こんなところにまで全裸で出てしまう自分。
 洗面台に足を掛け、無毛の性器を鏡に映す。
 すぐ横に出入口のドアがあることに気づき、あわてて後ずさる。

 性器から愛液が零れて太腿伝いに床へと滑り落ちる。
 自分で剃り上げてツルツルに露出した剥き出しのふしだらな性器。
 そんな行動の一つ一つをつぶさに、客観的に見せてくれる鏡とセルフィーのカメラ。
 私って、本物の変態だ…

 我慢しきれなくなり、その場で立ったまま性器を弄り始める。
 トイレ通路のほぼ真ん中。
 自撮り棒は三脚にもなるのでカメラは動画にして自分の股間に向け、私は鏡で自分の顔を視ながら、声を殺して快感を貪る。

 …あれ、こんなところでもオナニー始めちゃうんだ。誰か来ちゃっても知らないよ…
 …クチュクチュクチュクチュ凄い音だこと。またラビアが伸びてもっとはみ出しちゃうんじゃない?…
 …ほら、もっとおっぱい揉んで、乳首つねって、クリトリスつまんでオマンコ掻き回しなさい…
 …おまえ本当はそんな浅ましい姿、誰かに視られたいんじゃないの?視られて破滅したいんじゃないの?…

 イッてもイっても湧き上がるオーガズムの渇望。
 足下に小さな水溜りが出来るほど愛液を垂れ流して身悶えていたとき…

 キーンコーンカーンコーン…

 突如チャイムが鳴り響いた。
 最初のキの音が聞こえたときにビクンとはしたが、それが何を意味する音なのかはわからなかった。

 が、次の瞬間、これは四限目終了を告げるチャイムの音だ、と瞬時に理解し、それからは早かった。
 目の前に置いた三脚代わりの自撮り棒をひったくるように片手に持ち、一目散に端の個室に逃げ込んだ。
 個室の鍵を掛けるのとトイレ出入口のドアが開く音が聞こえたのがほぼ同時だった。

 心臓が飛び出てしまいそうなほどの危ういスリルと、同じくらいに高ぶる性的興奮。
 他の個室に利用者が居るのはわかっているのに、性器を弄ることが我慢出来ない変態の性。
 喉奥から迸る歓喜の喘ぎを必死に押し殺しつつ、断続的なオーガズムに身を委ねる自分…

 そんな感じで、暇をみつけては禁断の個室遊戯に耽っていた私は、回を重ねるごとに自分に課す要求も自虐的にどんどんエスカレートしていった。


2024年4月13日

彼女がくれた片想い 11

 今度の闖入者は割とがさつな性格の人物なようで、靴音もやけに大きくドアの開け閉めも乱暴で、私のいる個室の二つ隣、すなわち真ん中の個室に陣取ったことまで手に取るようにわかった。

 さすがに脱衣の衣擦れの音までは聞こえてこないが、しばらくしてから無遠慮にプゥーという間抜けな放屁の音が聞こえてきた。
 どうやらその人物は大きな方に取組んでいるようだ。

 そんな音を響かせるくらいだから、端の個室のドアが閉じていたことにも気づいていないのだろう。
 途中で聞こえてきた、これまた無遠慮な咳払いの声もしゃがれ気味だったので、本当に教授、准教授か講師の先生なのかもしれない。

 しばらくしてからザーッと水を流す音が聞こえ、つづけてカタカタとトイレットペーパーを引き出す音、もう一度水を流す音。
 しばしの沈黙の後、バタンと個室のドアを開ける音、カツカツと通路を歩く足音、ジャーッと手を洗う音、化粧や身だしなみを直しているのであろう長い沈黙を経てギーバタンと出入口のドアを開閉する音がつづいた。

 その間中ずっと私は、想像上の彼女の命令通り個室のドアに向いたまま後ろ手の全裸で立ち尽くしていた。
 何かの間違いでドアが開いてしまってもそのままでいろ、という命令だ。
 現実の彼女も絶対、個室の外に裸で出ることもしていたのだろうなと、ふと思う。

 闖入者が去ってホッとすると共に、私の心はなんだか落ち着いてきてしまった。
 慣れない興奮がつづいたせいもあり心地よい疲れが、今日はここまで、と告げていた。

 トイレットペーパーと持参のウェットティッシュで全身をよく拭ってから普通に着衣し個室を後にした。
 個室のタイル床のちょうど便座の前辺りを白濁液の混ざる水溜まりが汚していたが、それはそのままにしておいた。
 トイレ内の通路に出ると、洗面台でさっきの闖入者が噴霧したのであろうローズメインなパフュームの残り香が漂っていた。

 四限の途中、午後四時過ぎという半端な時間に帰宅するため電車に乗った。
 まばらな空席の一つに腰掛けて揺れに身を任せながら、さっきまで自分が行なっていた痴態の数々を頭の中で反芻していた。
 寝たふりをしてうつむいていたから周囲にはわからなかっただろうが、思い出すこと一々が赤面を呼ぶものだった。

 自分で一番驚いたのは自分の中に隠れていたマゾヒスト的な資質だった。
 どちらかと言えばM寄りかなとは自分でも思っていたのだが、高圧的な態度や理不尽な命令には反発を覚えるタイプだとも思っていたので。

 だが、想像上の彼女から無理な命令を受けて恥ずかしい状態に追い込められるほどに性的興奮をしている自分がいた。
 変態な姿が誰かに視られてしまうかもしれないというスリルに、より淫らに反応してしまう自分の身体があった。
 しかしながらこれらを屈辱的と感じている自分も常にいたわけで、これはマゾ性というよりも破滅願望的な傾向に近いのかもしれない。

 午後五時前に自宅のマンションに着き、倒れるようにそのまま小一時間仮眠した後、夕食を買い置きの冷凍食品で軽く済ませてからゆっくりお風呂に浸かった。
 シャワーを浴びながら自分の身体を撫ぜていると、どうしても昼間の興奮を思い出してしまう。

 お風呂から上がると下着も着けず肌の手入れもそこそこに、全裸のままベッドにダイブした。
 昼間の興奮を蘇らせたくて、四つん這いになり自分の性感帯を執拗に愛撫した。
 大きな姿見の前で乳房を揉みしだいたり膣口を広げてみたり、思い切り恥ずかしいと思える自分の姿を模索した。
 やっぱり陰毛は邪魔だな、と思った。

 そんな思い出し自慰の終盤で私は結局、想像上の彼女、の言いなりになっていた。
 なにしろ想像上の彼女には私の恥ずかしい写真という切り札があるので、言いなりになるしか道は無いのだ。

 想像上の彼女がえげつない命令を次々に下してくる。
 それは私が今までマンガやラノベ、アニメや映画やAVやネットで好んで摂取してきた潜在的欲求の塊なのかもしれない。

 …こんなところで素っ裸なのだから、視られる覚悟も出来ているのよね?オマンコを自分の指で広げなさい…
 …そのまま目を瞑って恥ずかしい全裸で五分間、そこに立っていなさい。誰か来た気配がしても絶対隠してはだめよ…
 …あら、ここはずいぶん人通りが多いのね。誰もがおまえの全裸を凝視していくわ。あの人なんか立ち止まってしゃがみ込んで、おまえのオマンコを食い入るように奥の奥まで下から覗き込んでいるわよ…

 想像上の彼女は容赦無く公衆の面前に裸の私を連れ出す。
 言いなりな自分はまるで彼女の性奴隷玩具だな、と私は屈辱の中で思う。

 …ここでおまえが大好きな自慰行為をしなさい。イクときはみなさんに許しを乞うてからイクこと…
 …オチンチンを出してくる人がいたら悦んでしゃぶって気持ち良くさせて上げなさい…
 …セックスを望む人がいたらどんな人にも従順に応じなさい。たとえ避妊具無しの中出しだとしても…

 そんな自分の股間を熱くする破滅的な妄想で何度も何度もイキ果てた。
 そこはかとない満足感と絶望感の中、私はいつしか全裸のまま眠りに就いていた。

 想像上の彼女に大人しく従っている私だったが、自分はレズビアンではない、と思う。
 現実の彼女と肌を寄せ合って一緒に気持ち良くなりたいとかは全然思わないし、初めての性行為も高校の頃、同級生の異性だった。

 高校一年の夏休み後に告白されてつきあった、同じクラス同い年の男子。
 顔がその頃そこそこ人気のあったややイケメンお笑い芸人に似ていたため、女子にもそこそこ人気のあった男子ではあった。

 最初の頃こそよく気の利くやさしいカレシであったが、プラトニックで迎えた次の年のお正月後、何かの弾みでディープキスを許してからはただのヤリタイお化けに豹変した。
 ことあるごとに二人きりになりたがり、ことあるごとに私の身体を触りたがった。

 セックスに対しては好奇心も有り不安も有りのやじろべえ状態な自分だったが、執拗な懇願に、そんなに言うのなら、と好奇心が僅差で勝った結果だった。
 二年生進級目前の春休み前、彼の両親が親戚の不幸で一晩帰ってこないという彼の一軒家の彼の部屋で、であった。
 自分の両親には、仲の良い女子四人でのお泊り会、と嘘をつき、その頃の友人にも口裏を合わせてもらっていた。

 初めて勃起した男性器を見たときは驚愕だった。
 こんなものが私のソコに本当に入るのかと思った。

 それ以前から自慰行為はしていた。
 中学二年の春頃から、性器の周辺を弄ると時々凄く気持ちのいい電流が全身をつらぬくことを知っていた。
 ただ、あまりに気持ち良すぎるので、逆にあまりシてはイケナイことだとも思っていた。

 それでも何度かシているうちに、これは陰毛に隠れた性器の割れ始め付近にある包皮をかぶった硬いしこりのせいだとも気づいていた。
 そのしこりは、何でも無い時にはひっそりとしているのだが、生理と生理の間に訪れる自分では制御不能なムラムラ期間のときには少し大きく包皮を持ち上げ、触ると感電したようにビリビリと気持ち良い快感がつらぬくのである。
 そんな感じで、私のそれまでの自慰行為はクリトリス一辺倒であった。

 その日は夕食の時間頃に彼の家に行き、彼の母親が彼の為だけに作り置きしてくれた夕食と買ってきた菓子パンを二人で分け合って食べ、九時半くらいまでゲームで遊んだ後、お風呂にも入らず唐突に彼が部屋の電気を暗くした。
 常夜灯の焦げ茶色い薄闇の中、彼が私の着衣を脱がせていくが、ブラジャーの外し方はわからなかったらしく私が自分で外した。
 彼も焦ったようにパンツ一つの裸になり、いきなり抱きついてくる。

 性急に唇を合わせてきて、性急に私の胸を激しく揉んだ。
 彼の口内は夕食に食べたトンカツのせいか、なんだか獣臭かった。
 その間に彼は自分のパンツを脱ぎ、私のショーツも脱がせた。

 それから身体を離した彼は前屈みになり、コソコソと避妊ゴムを着けた。
 そのとき私は生まれて初めて勃起した男性器を見た。

 私に覆いかぶさった彼は闇雲に硬く充血した男性器を私の股間に押し付けてくる。
 粘膜を押してくる異物は痛いだけだった。
 少しの間そうしているうちに私の粘膜中に収まりの良さそうな窪みがみつかり、そこへ強引に異物を捩じ込んでくる。
 入口近辺がヒリヒリ痛くて不快なだけだった。

 自分の性器に熱くて硬い何かがめり込んで来る感じ。
 意外と深くまで挿さるものなんだな。
 不快な痛みに顔を歪めながら、そんなふうに思った。
 彼にはおそらく感じている顔に見えたことだろう。

 無我夢中な彼は目を瞑って私にしがみついたまま、数秒間無闇に腰を押し付けてきたかと思ったら静かになった。
 果てたようだった。
 私から身体を離し、仰向けになってハアハアと息を上げていた。
 性器からの出血はなかった。

 その三十分後くらいにもう一度望まれて従ったのだが、やはり痛くて不快なだけだった。
 彼は満足げに眠りに落ち、私は釈然としない気持ちでなかなか寝付けなかった。
 セックスってこんな程度のものなのか、と失望していた。

 高校二年へ進級のクラス替えで彼とは違うクラスとなったが、つきあいはまだ続いていた。
 仲の良かった女子たちとも散り散りとなってしまい、クラスでは孤立気味だった。

 彼の両親が夜まで不在のときに度々彼の部屋に誘われたが、のらりくらりと断っていた。
 五月の連休の頃、ヤリタイだけお化けからの度重なる誘いに、しょうがなく一度だけ乗ってあげたのだが、やっぱり痛いだけで、もうしたくないと喧嘩になった。
 それで完全に諦めがつき彼を避けるようになって、いつの間にか交際は自然消滅していた。

 その頃からクラスの同性数人による軽いイジメのようなものが始まった。
 イジメと言っても無視されたり悪口陰口のような可愛らしいものだったが。

 ある日には教室の黒板に私の名前と、マグロ女、という文字が大きく書かれていた。
 おそらく彼があることないこと言いふらして、それを書いた人物は彼を好いていたのだろう。
 男性の身勝手さと女性の陰湿さを身を以て体験した私は諦観して内に籠るようになり、教室の隅で読書ばかりしている陰気な女になっていった。

 ただ、そんなことがあったおかげで逆に性への興味は大いに刺激され、その手の文章や画像、映像、創作物を手当たり次第摂取していった。
 ノーマルだろうがSMだろうがBLだろうがGLだろうが、そういう類の情報を主にネットで夜な夜な収集した。
 誰もが気持ち良いと口を揃える性行為なのに、何故自分だけは不快だったのか、その理由が知りたかった。

 ある日、いつものようにネットサーフィンをしていると、とあるお菓子の容器で自慰行為をすると気持ち良いという記事をみつけた。
 そのお菓子とはグミで、口の中でグニュグニュする感触が好きで私もたまに買っていたお菓子だったが、その容器をそういう目で見たことはなかった。
 確かに長さも太さも、私が見た勃起した男性器とほぼ同じ、ただし容器のように緩い瓢箪型にウネウネはしていなかったが。

 その記事は懇切丁寧に書かれており、ビニールの包装紙は剥がすこと、避妊ゴムを被せた方がいいこと、潤滑ゼリーを併用すること等々が書かれていて、私は素直に従った。
 避妊ゴムは彼が私に預けていた分がたくさん残っていたし、潤滑ゼリーはネット通販で入手した。

 実際にそれで自慰を行なってみて驚いた。
 避妊ゴムを被せて潤滑ゼリーを垂らしたグミ容器は難なく私の膣内に収まり、それを動かすたびにグングンと性感が高まった。
 痛みも不快感もまったく感じずに、ただただ気持ち良かった。
 凸凹した表面が粘膜にピッタリ吸着したまま滑り、出し挿れをくり返すとこれまで経験したことないほどの恍惚とした快感が股間から全身へと広がっていった。

 一度達した後は少しの刺激で前にも増した快感を味わえる。
 より強烈な快感を求めて何度も何度も貪るうちに、私は膣中イキも出来るようになっていた。

 残りの高校生活を内向きなまま、自慰行為とそのネタ集めに費やした私は、結婚も子供を作ることも生涯出来ないだろうなと考えた。
 それならばせめて他人様のちっちゃくて無垢な子供の世話でもして静かに暮らしていこうと思い、この女子大を志望し合格した。

 そんな根深いコミュ障をこじらせている私が久々に興味を抱いた人物、それが彼女だった。


2024年4月7日

彼女がくれた片想い 10

 物音が聞こえたと同時に、その場にしゃがみ込んだ。
 ここが誰でも自由に出入り出来る場所だったということをあらためて思い知らされる。
 個室なので中まで入ってこられる恐れはないのに、裸を隠すように縮こまってしまう。

 無遠慮な足音がコツコツと響き、個室のドアを閉じたのであろうバタンという音がする。
 少なくとも隣の個室ではないようだが。

 再び静けさが訪れる。
 衣擦れの音も排尿の音も聞こえてこない。
 ここからだいぶ離れた個室、たぶん出入口から一番近い個室に陣取ったのであろう、ホッと安堵の息をついた。

 しゃがみ込んでいるので手の位置が性器に近い。
 闖入者が退出するまで大人しくしていなければとわかっているのだが、考える前にすでに右手が性器に触れていた。
 それくらい身体が物理的刺激に飢えていた。

 下腹部全体がねっとりと熱い。
 陰毛に隠れた割れ始めの包皮が皮を被ったまま、しこりのように腫れている。
 その下の穴の方に中指を滑らせると、ヌルッと難なく侵入した。

 思わず、んふっ、と小さな淫声が洩れる。
 ほんの入口に第一関節くらいを挿れただけなのに、肉襞がヌメヌメ蠢き奥へと誘い込むようにキュンキュン締め付けてくる。
 これ以上動かしては駄目、と自分に言い聞かせて真一文字に口をつぐむ。

 右手の掌が腫れた包皮に当たっている。
 私はクリトリスがかなり弱い。
 その部分を極力刺激しないように性器を掌で包み込む。
 凄く熱くなっている。

 眉根に深いシワを刻ませたまま、一分、二分とそのときを待つ。
 やがてジャーッと水を流す音が聞こえ、しばしの沈黙のあとカタン、ギーッと扉が開く音が聞こえた。
 コツコツという足音、ザーッと手を洗うらしい音が聞こえて再びしばし沈黙。
 またコツコツと足音がしてカタン、バタンでやっとトイレから退出した物音。

 その音が聞こえた瞬間、中指が私の膣を奥深くまでつらぬいていた。
 掌も腫れた包皮に思い切り押し付ける。
 あっという間に深く激しく達していた。

 今まで味わったことのないオーガズムの波が何度も何度も打ち寄せてくる。
 全身がプルプル震え、いつの間にか薬指も加わった二本の指がヒクヒク痙攣している膣壁をこれでもかと甚振っていた。
 つぐんでいるはずの口なのに、んぐぅぅっ、という嗚咽が喉奥からほとばしる。
 やがて最大級のオーガズムで頭の中に火花が弾け飛ぶ。

 やっと本望を遂げた私は、この場から闖入者が去った安堵感もありハァハァと荒い呼吸音を発していた。
 下半身を中心に今だにヒクヒクとあちこちで痙攣する全身の余韻を愉しんでいる。
 これほどまでの絶頂快感は予想していなかった。

 自分の吐息以外は再び静まり返った個室内で、私は思いあぐねていた。
 続行してもう一度天国を味わうか、ここで一区切りして四限目に向けて撤収するか。
 けっこう長くこの場にいるのでそろそろ三限目終了チャイムが鳴りそうだとも思うが、スマホはバッグにしまったので時計を確かめることは出来ない。
 私の中の良識はそんなふうに比較的冷静に状況を考えているのだが、身体は勝手に動いていた。

 いつの間にか自分の部屋でいつもしている格好、すなわちお尻を突き上げた四つん這いになって行為を続行しようとしていた。
 四つん這いと言ってもトイレの中なので、いくばくかの制御が効いていた。
 両膝は広げて床に突き、顔面は便座の上の脱衣した着衣の上。
 お腹側から股間に伸ばした右腕の中指と薬指がグチョグチョと膣中を捏ね繰り回していた。

 一度達して敏感になっている性器はすぐに過剰反応。
 キュンキュン疼く膣中、グングン昂る性感、クチュクチュ響く膣音。
 さっきよりも強烈に寄せては返すオーガズム波に頭の中は真空状態。
 意識まで飛んでしまうかも、と思った瞬間、唐突にチャイムの音が響く。
 ビクンとした拍子に膣壁がギュッと指を締め付けた。

 便座の衣服に頬を埋めてハアハア言っていると、講義が終わって廊下に出た学生たちで騒がしくなってきた。
 トイレの出入口ドアも各個室のドアもひっきりなしにどこかしら開け閉めされている。

 そんな中まだ私は起き上がれずにいた。
 便器の蓋に突っ伏して、個室のドアに両膝を割ったお尻を向けたまま。

 もしも今、切羽詰まった学生が満室な状態に血迷ってこの個室のドアに手を掛け、何かの間違いで鍵が外れて個室のドアが開いてしまったら…
 その人物は、白濁液にまみれた陰唇がだらしなくパックリ開いた膣口と、その上の肛門までを真正面からドアップで視ることになるだろう。
 そう考えていたら、その目撃者として自然と彼女の顔が浮かんだ。
 もっと滅茶苦茶になってみたいと思った。

 休み時間中は我慢した。
 指は挿入せず、口をつぐんで足の付け根から陰唇付近をさするだけで我慢した。
 長い10分間。
 膣内に潜りたがる指をなんとかなだめ、悶々とそのときを待つ。

 トイレ内の喧騒が徐々に落ち着き、やがて休み時間終了のチャイムが鳴る。
 耳を澄ましても聞こえるのは、しーん、という自分の耳の神経細胞が活動する音のみ。
 今日も四限目は自主休講となってしまうが、これで心置きなく行為が続行できると思う反面、ひとつの懸念が急浮上した。

 本当に今、このトイレには誰もいないのか…
 万が一、四限目に講義のない学生がまだ個室に籠っていたり、いないとは思うが自分や彼女のような人物が不埒な目的で個室に入っていても、今の私にはわからない。
 誰かが残っていた場合、大きな物音や声を発することは当然ながら憚れる。

 懸念は不安へと変化し、どうしても確かめたくなっていた。
 確かめるのは簡単、個室が空いているときは内開きドアが開いている筈なので、そっと覗いて確認するだけだ。
 もし個室がひとつでも閉じていたら、そのときは慎重に行動して退出の物音を待てばいい。

 方針が決まり立ち上がることにした。
 顔を埋めていたジーンズがよだれで少し湿っていた。
 裸足で個室ドアの前に立つ。

 極力音を立てないようにドア鍵のスライドバーを外す。
 そのままそーっとドアを内側に引いて隙間から顔だけ覗かせ、トイレ出入り口の方へと素早く視線を走らせる。
 四つの個室はどれも内側に開いている。
 よしっ。

 安堵と一緒に顔を引っ込め、今度は音を気にせずドアを閉めて再び鍵を掛ける。
 四限目も諦めたことだし、ここでもう少し愉しんでいくことに決める。
 今度はどんな妄想にしようかと考えていたら、ある好奇心が湧き上がってきた。

 トイレ内に誰もいないということは、今なら個室の外に出ても大丈夫ということ。
 個室内でこんなにドキドキするのだから、その個室からもっと広い空間に出たら、どんな気分になるのだろう。

 ただし、個室なら鍵を掛けられるがトイレ全体の出入口はオールオッケーの誰でもウェルカム状態。
 でもそれも、廊下の足音に注意深く耳を澄ませていれば大丈夫な気もする。
 危険を察知したら素早く個室に逃げ込めばいいのだから。

 少しの間、不安という理性と好奇心が逡巡していたが結局、猫をも殺す好奇心が天秤を傾かせた。
 再び個室ドアのスライドバーに手を掛ける。

 私は露出狂ではない。
 誰かに自分の裸を見せたいという願望はさらさら無いし、逆に人前では極力ひっそり同化して目立ちたくないタイプだ。
 それなら何故、個室の外に出るというような大胆な行動に惹かれてしまうのか。

 おそらく、視られてしまうかもしれない、というスリルが今まで味わったことの無い興奮を呼ぶからだ。
 自分の浅ましい姿を発見されてしまうかもしれないというリスク。
 もちろん絶対目撃されたくはないのだが、行動しなければスリルは味わえない。
 踏ん切りをつけるために、もう一度想像上の彼女にご登場いただいて、命令を待つことにする。

 …ほら、さっさと表に出なさい。誰もいないんだから…

 思い切って個室ドアを開き、裸足で恐る恐る個室の外へ出る。
 この期に及んで今更だが、胸と股間は庇ってしまう。
 しんと静まり返った空間。

 …またおっぱいとオマンコを隠しているの?おまえの腕はそこでは無いでしょう?同じことを何度も言わせないでちょうだい…

 想像上の彼女に叱責された私は渋々両腕を下ろし、トイレ空間の真ん中あたりで後ろ手を組む。
 見慣れた学校の女子トイレの通路で素っ裸になっている自分。
 一時落ち着きを見せていた性感が前にも増してグングンと上がってきている。

 命令されて嫌々トイレ通路で全裸を晒している自分、の屈辱気分に浸りつつ、何気に出入口の方を向くと、出入口ドア脇に並んだ洗面台の鏡に私の臍から上くらいの裸が映っていた。
 客観的に見せられる、ありえない場所で晒している自分の裸。
 自慰行為でオーガズムに達したばかりの締りのない顔で上気した裸体を晒している女。
 自分が今、いかに破廉恥な行為をしているのかを問答無用で突き付けられた。

 もはや躊躇いは無かった。
 一刻も早くこの場で性器を弄り倒し、すべてを忘れて性的快楽を貪りたくなっていた。
 後ろ手に組んだ両腕を解いて前に回し、鏡に向かって立ち尽くしたまま右手を性器に近づけていく。

 そのとき、トイレ外のどこかからカツカツと足音のような物音が微かに聞こえたような気がした。
 空耳かとも思ったが、その足音はトイレから見て左側に位置する階段の方から実態を持ったテンポで徐々に音量を上げ、どんどん近づいてくる気配。

 今は四限の講義中でずいぶん時間が経っているし足音も落ち着いていることから遅刻の学生とかではなさそうだ。
 だとすると間違いなくこのトイレが目的地であろう。
 案の定、そのハイヒールらしき靴音は高らかに響きながらこの場に近づいてくる。
 もしかすると非番の教授か講師なのかもしれない。

 慌てて個室に逃げ込んだ。
 個室ドアを乱暴に閉めてカタンと鍵を掛けた三秒後、バタンとトイレ出入口ドアが開く音が聞こえた。

 プルプル震える身体とハアハア押し殺した吐息。
 個室の外で全裸を晒したという背徳感と期せずして鏡によって視せられた自分の裸体のいやらしさ。
 ヒールの足音でなかったらみつかってしまっていただろうという危機一髪のスリルに、一切身体を触ってもいないのにビクンと小さく達していた。
 
 左太股にツツツーと白濁した愛液が滑り、頭の中で想像上の彼女が蔑みきった瞳でニヤニヤ笑っていた。


2024年3月30日

彼女がくれた片想い 09

 両手を背中に回しブラジャーのホックに触れる。
 今日の下着は、ブラは黒レースのハーフカップ、ショーツもブラと同じ黒レースのビキニタイプ。
 誰に見せるあてもないけれど下着にはけっこう凝るほうだ。

 ホックを外しバスト周りが緩んだとき、再び軽い電流が背筋を走った。
 ストラップを両肩から抜き、ブラジャーも小さくたたんで便器の上に。
 剥き出しになった乳首が外の空気に直に触れるだけでゾクゾクッと感じてしまう。
 その乳首は左右とも今まで覚えもないほど硬く大きく尖立していた。

 トイレの個室内で乳房丸出し。
 言いようのない疚しさ、後ろめたさ。
 視ている者など誰もいないのに思わず両腕でバストを庇ってしまう恥ずかしさ。

 でもここでは終われない。
 ここまで来たら最後まで体験しないと、毒を喰らわば皿まで、の心境だ。
 胸を庇っていた両手を外し、ショーツのゴムに指を掛ける。

 目を瞑って一気に膝までずり下ろした。
 覆うものを失った下腹部が外気に晒される感覚に恐る恐る目を開けてみる。

 最初に視界に飛び込んで来たのは自分の手入れをしていない濃いめの陰毛。
 そして両膝辺りにだらしなく引っかかっている黒い布片。
 こんなところで肌を晒して陰毛を見せている自分がとんでもなく猥雑な存在に思えてきて、その恥辱感に三度めの電流が背筋をヒリヒリと震わせた。

 しばし呆然と佇んでから、ゆっくりと足首まで下ろしたショーツを引き抜いた。
 ショーツのクロッチ部分は当然のようにジットリ濡れていた。
 自慰行為のたびに、自分は愛液の分泌が少ないのかも、と悩んでいた耳年増の自分にとっては珍しいことだった。
 これで一糸纏わぬ全裸、大学のトイレの個室の中で。

 気がつくと乳房と陰毛を隠そうとしている自分に苦笑いしてしまう。
 全身がカッカと火照っているのに鳥肌のような悪寒が泡立ち、性器の奥がジンジン痺れている。
 今まで生きてきたうちで最大の性的興奮状態だと思う。

 身体中が更なる刺激を欲しており、このまま自慰行為に移ることにあがらう術はなかった。
 おそらくちょっと性器を弄るだけで全身が蕩けるほどの濃厚なオーガズムに達してしまうことだろう。
 大きな喘ぎ声だけは発さないようにしなければ、と自分に言い聞かす。

 行為に取り掛かる前にもう一度大きく深呼吸。
 そのとき思いついた。
 記念写真を撮っておこう、と。

 もっと自分を惨めに辱めてみたいという欲求があったのかもしれない。
 生まれて初めての浅まし過ぎる変態行為を、そんなことをやってしまう、やってしまいつつある自分への戒めとして記録に残しておきたいと思った。
 もちろんその画像は誰にも見せることなく、帰宅したらスマホには残さず家のPCにすべて移し、パスワードもかけて厳重に管理するつもりだ。

 バッグからスマホを取り出しインカメラにして右腕を伸ばす。
 ズームアウトが出来ないので立ったままだとバストアップしか映らない。

 少し考えて、相撲の蹲踞の姿勢のようにしゃがみ込み、腕を思い切り伸ばすと顔から足までがかろうじて画面に収まる。
 でも下半身まで裸だということがよくわからない。

 試しに踵がお尻につくほど両膝を大きく開いて姿勢をより低くし、なおかつ上半身を縮こまるように丸めたら頭の天辺から爪先まで綺麗に縦長の画面に収まった。
 ただし、綺麗にというのはあくまで構図上の意味で、絵面的には頭を上から見えない力で押さえつけられた全裸の女が大股開きを強要されているといった趣だが。

 自分のヌード写真を自画撮りするのももちろん生まれて初めての経験だ。
 画面には上気しきっただらしない困惑顔で左右の乳房をそれぞれの腿に押し付けるような大股開きで身体を丸めた、見るからに助平そうな下卑た女が映っている。
 恥ずかしげもなく左右に広げた両膝の中心に黒々とした陰毛の茂み、その茂みの隙間にピンクの肉弁が濡れそぼって芽吹いているのまでが見えている。

 最初の一枚を撮ったとき、カシャッというシャッター音が異様に大きく響いたように感じた。
 大丈夫、今このトイレ内には私以外誰もいない、と自分に言い聞かせる。

 カシャッ、カシャッとたてつづけにシャッターを押していると、今度は他の誰かに撮影されているような気持ちになってきた。
 いやっ、視ないで、撮らないでっ、と心の中で懇願しつつ、尖った乳首を誇示したり性器を押し広げてみせたり、より扇情的なポーズを取っていた。
 シャッター音が私の心に第三者の存在を想像させている。

 異様な興奮の中で何枚も写真を撮ってからスマホの時計表示を見ると、三限目が終わるまでまだ30分くらいあった。
 これなら自慰行為も心いくまで愉しめそうだ。
 スマホにロックを掛けてからバッグにしまう。
 そして、このあいだこの個室で何故、彼女が独り言を口走りながら独り芝居をしていたのかの理由がわかったような気がした。

 言い訳が欲しいのだろう。
 自分の意志で自分の快楽の為に、あえて他人の動向が気になるような場所で変態的な行為を行なっている自分をごまかす為に。
 誰かに強要され嫌々やらされているというエクスキューズを求めて、想像上のご主人様的命令者に従うのだ。
 こんな場所でひとり裸になって自慰行為に耽るのは紛れもなくアブノーマルな行為なのだが、自分がそれほどの非常識な変態性癖者だとは認めたくない葛藤の表れなのかもしれない。

 そういう流れで私も妄想の脅迫者にご登場願うことにした。

 …まあ、なんてはしたない恰好だこと。こんな所で下着まで脱いで丸裸になっているなんて…

 お嬢様風味な口調なのは、さっきまで読んでいた小説に引っ張られたのであろう。
 脅迫者の顔として真っ先に浮かんだのはもちろん彼女である。

 …あなたが悪いのよ。こんな所でこんな破廉恥なことしているのに、ちゃんと鍵を掛けていないのだもの…

 どうやら私は今、この現場を彼女に似た誰かに踏み込まれたようだ。
 便座の前に立ち竦んだ私は右腕でバストを、左手で股間を隠し、想像上の彼女と対峙している。

 …証拠写真も撮ったし、もうあなたはわたくしに逆らえないわね。通っている学校のトイレで真っ裸になっている写真なんてバラ撒かれたくないでしょう?…

 想像上の彼女が愉しげにほくそ笑む。
 羞恥と屈辱を感じながら想像上の彼女を私は睨みつける。

 …誰が隠していいって言ったのかしら?おまえはそのいやらしい身体を隅々まで誰かに見せたくて、こんな所で裸になったのでしょう?両手は後ろに回しなさい…

 あなたからおまえ呼びとなり主従関係が決定した。
 口調にも高圧的なニュアンスが交じり始めたので、あまりお育ちの良ろしいお嬢様ではないようだ。

 庇っていた両手を外して背中に回し、後ろ手を組む。
 乳房も陰毛も剥き出しの全裸。
 両乳首は痛いほど尖り、性器も子宮の奥から疼いている。

 このときふと、自分の性器を覆っているモジャモジャとした陰毛がとても邪魔なもののように感じた。
 少なくともこんな状況に陥ったこの手の女にこんな陰毛はそぐわない気がする。

 ツルツルにしたら、どんな気分になるのだろう…
 いっそのこと私も、彼女のように剃り落としてしまおうか…

 …それでおまえは、こんな所で裸になって何がしたかったのかしら?正直に答えなさい…

 想像上の彼女が蔑みきった目で覗き込むように私を見てくる。

「…自慰…自慰行為…」

 実際に、その場でつぶやくように声に出していた。
 自分で始めた妄想上の焦らしプレイなのだが、もう我慢しきれなくなっていた。
 今すぐ乳房や性器を滅茶苦茶に弄りたくなっている。

 …自慰?ああ、オナニーのことね。こんな所で真っ裸で発情しているおまえにピッタリな情けない醜態ね。いいわ。ヤりなさい。わたくしがちゃんとおまえのいやらしい姿を視といてあげる。おまえが浅ましくイキ果てる恥ずかしい姿をじっくりと視せてもらいましょうか…

 嘲笑と共に許しを貰いいよいよというとき、トイレの出入口ドアが無遠慮に開けられたような物音がした。


2024年3月23日

彼女がくれた片想い 08

 彼女に話しかけたのは失敗だった。
 あれ以来彼女は、私を見かけると曖昧な笑顔で会釈してくるようになったのだ。
 それまでモブ扱いだった私が、彼女の中で顔と、おそらく名前まで知る一個人として認識されてしまった。

 普通にコミュ力のある者ならば、それをきっかけに会話して友達とは言えずとも知り合いくらいにはなり、すぐには無理だろうが成り行き次第でもっと核心を突いた話、たとえば、体育の後ノーパンになるのは何故か?とか、講義中のトイレに籠って何をしているのか?とか聞き出すことも出来ただろう。

 その答えによっては、淫靡な秘密を共有する性的友好関係になったり、逆に悪用して私が脅迫者になる世界線もあったかもしれない。
 しかしながらコミュ障をこじらせている私にはそういった普通の対応が出来ず、会釈をくれる彼女からわざと目を逸らすような塩対応をくり返していた。

 それでも彼女が気になる私は、その週の木曜日、二限目の終わった教室を出る彼女の背中を追っていた。
 今日は彼女、どうするのだろう?
 午前中で帰宅するのか、それとも学食で昼食を摂った後、例のトイレに籠もるのか。
 今日の彼女の服装はガーリーな花柄で長めのワンピースなので、もはやすでにノーパンでトイレの線が濃厚かと勝手にワクワクしていた。

 大部分の学生が一階の学食ホールへ向かうのであろうかまびすしい集団の中、彼女の背中を見失わないよう数メートルの間隔を保ち階段を降りる。
 やがて一階の長い廊下へ。
 途中にある正面玄関前の広めなスペースにはけっこうな人溜まりが出来ている。
 後の講義がなくて下校する者や校外で昼食を摂る者などが集っているのであろう。

 数メートル先を歩いていた彼女も、その一群のほうへと方向を変えた。
 一緒にいた数名の友人たちが見送るように対峙して、にこやかに何事か言いつつ手を振り合っている。
 どうやら今日の彼女は学食で昼食は摂らずに学外へ出るらしい。

 そんな様子をゆっくり歩きながら横目で眺めて尾行決定と思っていたら、彼女が近くを通る私に気がついたらしく小さな笑顔で会釈を送ってきた。
 彼女の仕草に彼女の友人たちも振り返り、私のほうを見ている。

 私はそれに気づかないフリをした。
 そんなフリをした以上立ち止まる事も出来ず、そのまま学食方向へ歩き去るを得ない。
 どんどん広がる彼女との距離。
 やれやれ、今日も尾行は出来ないか、と落胆した。

 学食ホールのいつものぼっち飯指定席で美味しいドライカレーをもそもそ頬張りながら、サボりがちだった今日の四限目の講義にも出なくちゃいけないし、と自分を納得させる。
 食後にお茶を一杯飲んでから席を立ち、読書をするために三階のいつもの空き教室へと向かった。

 まだ休み時間中なので三階と言えどもかなりざわついていた。
 早々と次の講義の教室へと入る者、廊下で立ち話に花を咲かせるグループ、トイレへの入口ドアも引っ切り無しに開け閉めされている。
 そんな中、私はいつもの空き教室ドア際席にひっそりと身を沈め、文庫本を開いた。

 ネットで手に入れて昨日から読み始めた羞恥責めをテーマにした官能小説的ラノベ。
 彼女の一連の行動に触発され、それっぽい単語を検索して買ってみた聞いたこともない著者の作品だ。

 知性も品性も感じられない直接的な描写の羅列にいささかげんなりもしたが、読み進めるうちに、そのあからさまに下劣な嗜虐描写の数々に性的な高揚感も感じていた。
 責める側も責められる側も女性の百合と言うかレズビアンメインの小説で、ヒロインが理不尽な辱めを受け羞恥に染まる描写に彼女の姿を何度も重ねていた。

 読書に没頭しているとチャイムが鳴り三限の講義開始。
 さっきまでの喧騒が嘘のように辺りが静まり返る。
 
 文庫本の章立てもちょうど一段落したところで、うつむいていた顔を上げ何気に送った視線の先にトイレ入口のドア。
 そのときふと思った。
 ああいうところで全裸になったらどういう気持ちになるのだろう、と。
 小説の中でも、ヒロインが街のアパレルショップのカーテン一枚の試着室で全裸になることを命じられる場面があったからかもしれない。

 少し迷ったが意を決して文庫本をバッグにしまい、バッグを提げてトイレの入口ドアの前に立った。
 ドアをそっと開くと五つある個室のドアはすべて開いており、しんと静まり返っている。
 彼女が使っていた入口から一番遠い五つ目の個室のドアへ吸い込まれるように入り込みカタンと鍵を掛けた。

 本当にやる気なの?と私の中の良識が呆れたように問い質すが、未知への好奇心が呼ぶ得体のしれない性的高まりがその声をかき消した。
 蓋の閉じた便座の上にバッグを置いて、一度大きく深呼吸。

 今日の私の服装は濃いグレイの長袖無地ブラウスに黒のスリムジーンズ、そして真っ白なスニーカー。
 彼女を尾行することも考えてあまり目立たないようなコーデにしていた。
 六月に入り少し蒸し始めているので、このくらいの服装がちょうど良い。

 まずはブラウスのボタンを外していく。
 トイレの個室でまず上半身を脱ごうとしているという事実がなんだかヘンな感じだ。
 ブラウスから両腕を抜いたら軽くたたんで便座の上に置く。

 次にジーンズを脱ぐためにスニーカーを脱いだ。
 靴下が汚れるのも嫌なので靴下も脱いだ。
 裸足でトイレのタイル張りの床に立つ。

 ジーンズのボタンを外しジッパーを下げ、少し屈みながら足元までずり下げる。
 左右の膝をそれぞれ曲げてジーンズを足首から抜き去り、こちらも軽くたたんで便座に置いた。

 これで私はブラジャーとショーツだけの下着姿。
 そう思った途端にゾワッとした電流が背筋を駆け抜けた。
 ありえない場所でありえない格好になっている自分。

 誰もが自由に出入り出来る女子大のトイレ。
 個室内はプライベートな場所だけれど、着替えを除けば下着姿になる必然性なんてまったく無い。
 日常的な場所での非日常的行為。
 誰かに命じられたり脅されたりもしていない、勧んで自ら行なうインモラルな秘め事。

 つまり背徳感。

 その浅ましい行為に凄まじいほどの性的興奮を覚えている私。
 この段階でこうだったら、下着まで脱ぎ去ったら自分はどうなってしまうのだろう…
 怯む気持ちが一瞬頭をかすめたが、すでにショーツに少量の愛液を滲ませている私に、ここでとどまる選択肢はなかった。


2024年3月17日

肌色休暇四日目~類に呼ばれた友 01

 翌朝、尿意を感じて起きると枕元のデジタルはまだ朝の6時40分。
 おトイレに行こうと起き上がると、お隣でご就寝したはずのお姉さまのスペースはもぬけの殻。

 あれ?お姉さまもおトイレなのかな?
 寝惚け頭で訝しみつつおトイレ前まで行っても鍵はかかっていません。

 ここでようやく不安を感じ始め、小用を足しながら、なぜお姉さまがいないのか、について考えます。
 どんどん不安が膨らんできて、済ませるや否やおふんどしも締め直さずそのままにおトイレを飛び出しました。

 まずは広い寝室をグルっと見回します。
 するとすぐに発見。
 リビングへ通じるドア脇のソファーに置かれたレポート用紙大の置き手紙。
 急いで駆け寄り目を通しました。

 My Dear NAOKO
 昨夜の片付けの手伝いをしてきます。
 シャワーを済ませて7時40分迄にホールに来ること。
 もちろん全裸で。首輪も忘れずに。

 昨夜の片付け、ということは私もお手伝いしに行ったほうがよいのでしょうか…
 でも、シャワーを済ませて、と書かれてもいるので、シャワーを浴びるのはおーけーみたい。
 それならば出来るだけ手早く済ませてからお手伝いに加わるのが得策と判断しました。

 あらためて洗面所に入り、まずは歯磨きと洗顔。
 それからもう一度おトイレに入って大きいほうを排泄。
 髪を濡らさないようにシャワーキャップを着けて浴室へ。
 全身に気持ち良い水圧を感じていると、昨夜のことが思い出されます。

 結局あの後、お尻花火をもう二回、やらされました。
 花火が六本あって二本づつですから計三回というわけです。

 二回目からはお尻をいやらしく揺らすことも命じられ、私は花火を挿したお尻を精一杯突き上げて上下左右にグラインドさせました。
 もちろんそうしながらも内側から伸ばした右手で肉芽を苛めることはやめず、たてつづけにイッていました。
 みなさま、わあキレイ、なんてはしゃぎつつキャハハと大笑いされていました。

 お尻花火の後、五十嵐さまはそのままテーブルに私を寝かせてのローソクプレイをやらせたがったのですが、中村さまの強いご反対のため却下。
 なんでも以前、あるM女さまにローソクプレイをシた後、そのM女さまが肌に付いた蝋をよく落とさずにシャワーを浴びたため排水溝を詰まらせて、修理に来られた業者のかたへのご説明で、とても恥ずかしい思いをされたそうで、後片付けが面倒臭いから、とにべ無くお断りされていました。

 結局、他に良い案もないので、そこでオナニーショーでもしていなさい、ということになり、もっと明るく照らし出されるようにとスポットライトが私の近くに配置し直されました。
 空になったなで肩のワインボトルが手渡されたのは、それをマゾマンコに突っ込めという意味でしょう。

 そして、見物の方々を飽きさせないように自分が今何をシているのかいやらしい言葉でご説明しつつ喘ぎ声も大きく張り上げて身悶えながらイキなさい、という五十嵐さまからのご命令。

 クリットイキで充分火の点いていた私のからだは、より深い膣中イキの快楽を貪欲に切望していたので、表向きは恥じ入りながらもそのご提案をワクワクで受け入れました。
 テーブルに仰向けに寝転んで両膝を立て、その中心に容赦無く空きワインボトルを呑み口のほうから突き立てます。
 ボトルを掴んだ右手はすぐに抜き挿しを始め、左手は大きく膨らんだ右乳首を捻り潰します。

 …あん、奥まで深く突き挿さっています…ひんやりしていて気持ちいいですぅ…直子はワインボトルさまに犯されて悦ぶヘンタイ女なんですぅ…
 …あぁん、奥まで届いてるぅ、イッちゃうぅん、みなさまぁイッてもよろしいですかぁ、ああん、イクぅ、イッちゃうぅぅ…

 ご命令通り自分の浅ましい行為を自分の口で説明しながらクネクネ身を捩らせてアンアン喘ぎます。
 目の前にはわざわざ椅子を移動されてこられた寺田さまと中村さま、私のマゾマンコ側には五十嵐さまと角田さまがそれぞれご親密に身を寄せ合われ、クスクスニヤニヤと薄笑いを浮かべて私の痴態を凝視されています。
 愛しのお姉さまだけはなぜだかお背中を見せて、大きなテーブルのほうを向かれて何かされていました。

 それでも、私の恥じ入るべき姿が好奇の目で視られている、という状況に私の被虐はヒートアップ、ボトルを乱暴に出し挿れしつつグングン昂ぶっていきました。

 …あぁん、またイキますぅぅ、イッちゃいますぅぅぅ…みなさまぁぁぁ、イッてもよろしいで、ぁんっ!よろしいでしょうかぁぁ!!あぁんイクっ!!キちゃうぅぅぅ!!!…

 失神寸前の深く激しい絶頂感の中、意識を手放してはいけないとハァハァ荒い吐息とともにギュッと瞑っていた両目をなんとか開きます。
 始めはボンヤリとしていた視界が徐々につまびらかになってくると、すぐには信じられない光景がそこにありました。

 寺田さまと中村さまが椅子から立ち上がられ、ひしと抱き合いながら熱い口づけを交わしておられます。
 おふたりとも浴衣の前がはだけ気味で、元からサイズ違いの浴衣をお召しな寺田さまに至ってはすっかり帯は解け両襟が割れ、たわわな果実がおふたつともお外に飛び出ていました。

 更に中村さまがその寺田さまの豊満な右おっぱいを左手でむんずと鷲掴みされ、更に更にわしわし揉みしだきもされています。
 恍惚のご表情でお顔を歪められる寺田さま。
 密やかに洩れるふたつの淫声。
 中村さまも寺田さまの左手で下半身を責められているようです。

 何か視てはいけないものを視てしまった気がして視線を逸らすと、そちらには五十嵐さまと角田さま。
 こちらのおふたりも浴衣を盛大にはだけられてくんずほぐれつの真っ最中。
 
 露わとなった五十嵐さまの控えめな胸部に角田さまの長い舌が執拗に這い回っています。
 夜目の中で影を作るほどいきり勃っている五十嵐さまの乳首。
 こちらも恍惚のご表情で弓なりにのけぞられる五十嵐さま。
 断続的に音量の変わる悩ましい吐息。

 思いもよらぬ方々の痴態を唐突に見せつけられて最初は戸惑っていた私でしたが、これは私の浅ましいオナニー姿に誘発されて発情なさっているのでは、と思いついた途端になんだか嬉しくなってきました。
 緩慢になっていた私の右手の動きに活気がよみがえります。

 私が淫らになればなるほど寺田さまや五十嵐さまたちにも気持ち良くなっていただける…
 そう考えただけで得も言われぬ淫靡な高揚感に支配され、自分を虐める両手に拍車がかかり無我夢中の境地に。

 いつの間にか手放してしまっていた意識が戻り、そっと両眼を開けるとそこにはどなたもいらっしゃいませんでした。
 ライト類はまだ灯っているものの聞こえるのは晩夏に気の早い控え目な虫の音、そして仰向けな目の前に広がる満点の星空。
 えっ!?放置されちゃった?と思った瞬間…

「あっ、起きたんだ?意外に早かったね。それじゃあ部屋に戻りましょう」

 聞こえてきたのは愛しのお姉さまのお声。
 お優しげなお顔で互いの唇が触れ合わんばかりに覗き込まれました。

 スポットライトやカンテラを全部消すと本当に怖いくらい真っ暗となり、お空の月や星たちが一層きらびやかに瞬きます。
 お姉さまに手を引かれ裏口からお部屋に戻ると、時刻はまだ夜の10時前。

 ほろ酔いのお姉さまは上機嫌で、それからふたりでお風呂に入り、お互いのからだを洗いっこしてから裸のまんまベッドに倒れ込んで抱き合い、パジャマ代わりのロングTシャツを着てからもしばらくイチャイチャしていたのですが、いつの間にか眠りに就いていました。
 もちろんそのあいだ中、お互いのからだをまさぐり合い貪り合い、お姉さまを何度もイカせて差し上げたのは言うまでもありません。

 気持ち良いシャワーを浴びながら昨夜のあれこれを反芻してバスルームを出ると、時刻はもう7時15分に。
 急がなきゃ、と大急ぎで首輪を嵌め、軽くファンデと髪を梳かしてから全裸のままお部屋を飛び出します。

 大広間に降りるといつもの楕円形テーブル席に中村さまがポツンとおひとり座って、スマホをいじっておられました。
 たっぷりした白いワイシャツをルーズに羽織られた色っぽいお姿。
 頭上のシャンデリアが煌々と輝き、ヨハンシュトラウスさまのワルツ曲が低く流れています。
 これは、美しく青きドナウ、だったかな…

「あ、直子、おはよー。今日はどうしたの?ずいぶん早いじゃない」

 私に気づいてくださった中村さまがお声をかけてくださいました。

「あ、おはようございます。あの、昨夜のお片付けがあるとお姉さまから知らされて、早めに出てきたのですが…」

 中村さまのお声を聞いた途端、昨夜の終わり際の光景を思い出してしまい、なぜだかドギマギしてしまう私。

「ああ、もうとっくに終わったよ。食べ残しや生ゴミを昨夜エミリーがまとめておいてくれたから、テーブル類やカンテラを片付けるだけだったしね」

 中村さまのお声につられるように、厨房へ通じるドアを開けて寺田さまとお姉さまもお姿をお見せになります。
 中村さまは真っ赤なタンクトップにジーンズ、お姉さまは黒のスウェット上下といういでたちです。

「あたしもここでバーベキュー参加するのもう三度目だからね。終わり間際にしっちゃかめっちゃかになるのは知ってたから。去年うちの会社で来たときは、うちの社員一同だけドン引きしていたし」

 お姉さまが呆れたようにおっしゃると、寺田さまが後を引き継がれます。

「ああ、あのときは大人数だったから広場でやったのよね。昨夜みたいにライト照らしてM女ふたりに調教ショーやらせて。百合草ママのお店のお客さんたちもいたから、いたるところでアオカン三昧だったっけ」

 毎年ここでそんな愉しそうなことをされているんだ、と羨ましく思っていると、寺田さまがつづけます。

「でも、去年も昨晩もエミリーが生ゴミを片付けておいてくれて助かったよ。一晩放置しちゃうと野生動物やカラスが食い散らかしたり虫が湧いたりして大変だったろうから」

 お姉さまは私がオナニーショーをやっているとき、どうやらおひとりでせっせと宴会の後片付けに精を出されていたみたいです。
 さすがお姉さま。

「ジョセの散歩までまだ時間あるから、直子もしばらくまったりするといいわ。今、お茶淹れてあげるから。二日酔い気味でしょ?」

 寺田さまがおやさしくお声がけくださいます。
 不思議なことにそんなに二日酔いでもないのだけれど…
 寺田さまが厨房へと引っ込まれ、つづいてお姉さまも。
 中村さまも再びスマホに没頭されたので、手持ち無沙汰の私は座らずにフラフラと大広間の散策へ。

 それにしても立派な大広間。
 思えばここへ来てからこの大広間をじっくり観察するのは初めてなような。
 そう言えば今日は東京へ帰る日だっけ、と思い出し少し感傷的な気分になりつつ、白黒市松模様のフロアをゆっくり歩いて、壁の絵画や見事な彫刻に目を遣ります。

 五十嵐さまと角田さまはどうされたのかな、ひょっとしてまだ眠ってらっしゃるのかな?なんて考えていたら、広間に設えてあるグランドピアノの前にたどり着いていました。
 
 鍵盤の蓋は開きっぱなしで譜面台の上にも数枚の楽譜が置きっぱなし。
 その、ところどころに手書き文字でメモが書かれたスコアシートのコピーには、確かな見覚えがありました。

「あれ?この譜面…」

 私が思わず独り言を洩らしたところへ、寺田さまが湯呑に淹れた熱いお茶をわざわざ私のもとまで持ってきてくださいました。

「はい、煎茶のいいやつ淹れてあげたから。いくらかスッキリするはずよ」

 寺田さまから手渡され、フーフーしながら一口啜ります。
 いい香りとやわらかな口当たりで美味しい。
 エアコンが適度に効いていますから熱いお茶でも美味しくいただけます。

「五十嵐さまと角田さまはまだご就寝されているのですか?」

「彼女たちは片付け手伝ってから、ちょっとその辺ひと回りしてくるって散歩に出かけたの。昨夜ずいぶん燃え上がったみたいだから、まだふたりだけで余韻に浸りたいんじゃないの」

 からかうようにイタズラっぽくおっしゃって、私の顔を覗き込むような仕草をされる寺田さま。
 なぜだかドギマギしてしまう私。
 
「あの、それでこの楽譜なんですけれど、どなたの…」

 お茶を半分くらいまで飲んで一息ついてから気を取り直し、目前に現われた不可思議な疑問について寺田さまにお聞きしてみようと思いました。

「ああ、それは先週来ていたM女さんのものね。忘れてっちゃったんだ。東京に戻ったら返してあげなきゃ」

 あっけらかんとおっしゃった寺田さまがつづけられます。

「アタシらはM女さんとだけ認識してて本名は知らないんだけど、音楽の世界ではそこそこ知られたお名前の人らしいわよ。今どきの若い人向け音楽の裏方さんなんだって。アタシはそういうのぜんぜん疎いのだけれど」
「マダムレイって呼ばれてる三十路半ばくらいのマダムのツレのM女さんで、たぶん百合草ママのお店のお客さんじゃないかな」

「実際、そのピアノで何曲か弾いてくださったの。全裸に乳首クリップと錘ぶら下げて、ボールギャグ噛まされてヨダレぽたぽた垂らしながら」
「えっちだったわよー。豊満なバストがゆらゆら揺れて、そのたびにクリップも痛そうに揺れて」
「演奏の善し悪しってよくわからないけど、確かに凄くお上手だったし、なにより凄く色っぽかった」

「どんな曲を弾かれたのですか?」

「うーん、アタシ、クラシックそんなに詳しくないから、知ってた曲は、亡き王女のためのパヴァーヌ、だっけ?ラヴェルの綺麗なやつ。実際凄く綺麗だった。弾いてるのはおっぱいユラユラ、ヨダレだらだらなM女のクセにね」
「あと印象に残っているのは、なんだか軽やかな曲で、あっ、そう、テレビのお料理番組で聞いたようなメロディの曲」

 その曲の楽譜が目の前のピアノの譜面台に乗っています。
 ストラヴィンスキーさまのペトリューシュカ。

「こんな感じの曲ですか?」

 ピアノに向かい、立ったまま鍵盤に指を置きます。
 あんな難曲、もちろん弾きこなすことは出来ませんが、両手でざっと冒頭のテーマのメロディをなぞるくらいのことは出来ます。
 たぶんそのM女さまであろうかたに、途中まではレッスンしていただいた曲ですから。

 この旅行中も名塚先生絡みで何度かそのお名前を思い出していました。
 中学生の頃にその大胆な水着姿に衝撃を受けた母とお知り合いの美しい女性。
 高校生のある時期には文字通り身も心もご一緒し、私に名塚先生の官能小説を教えくださったそのかたのお綺麗なお顔といやらしいおからだがまざまざと脳裏によみがえります。

 大貫ゆうこ先生。
 マダムレイさまというかたは、その当時からゆうこ先生のパートナーだった立花レイカさまのことでしょう。 
 
 まだつづいていたんだ…
 そしてゆうこ先生は今でもマゾヒストでレズビアンなんだ…
 なんだか凄く嬉しい気持ちに満たされます。

「そうそうそれそれ。タカタンタカタカタッタッターン!」

 嬉しそうな寺田さまのお声。
 私も今でも意外と指が覚えていて、つっかえずに八小節ほど音符が追えました。

「そのM女さまってたぶん、私が高校生の頃に個人レッスンしてくださっていたピアノの先生だと思います」

「あれー?あたしその話、たぶん聞かされていないよ?」

 私が告白すると同時にいつの間にか私の背後まで来られていたお姉さまが訝しげなお声をあげられました。

「あらあら、エミリーがなんだか不満そうね。青かった頃の直子の秘められた思い出なのかな?」

 寺田さまが愉しそうに混ぜ返されます。
 あれ?私、お姉さまにゆうこ先生とのことは告げていなかったかな?
 お姉さまのリアクションを見て私も動揺しています。
 そこに助け舟を出してくださったのは中村さま。

「まあまあ、その話は後でふたりでゆっくり追求してもらうとして、ジョセの散歩時間が迫っているから準備しなきゃ」

「あら、もうそんな時間?じゃあ直子、こっちに来なさい」

 少し怒ってるようなご様子を見せつつ、お姉さまが私を楕円テーブルのほうへと引っ張ります。
 ぞろぞろと後へつづかれる寺田さまと中村さま。

「直子、今朝のお通じはどうだった?大きいほう」

 楕円テーブルの前に対峙してのお姉さまからのご質問。

「どう?とおっしゃいますと…」

「だから出したのか?って聞いてるの」

「あ、はい。出ました…少しゆるめでしたけれど…けっこうたくさん…」

 ゆるめだったのはお酒のせいだと思います。

「ゆるめね。それだと200ってとこかしら」

 お姉さまが背後の中村さまを振り向かれます。
 その中村さまの右手には、いつの間にご用意されたのかガラス製のシリンジ、つまりお浣腸器。
 あの大きさだと100ミリリットルのやつ。

「このシリンジで二発ってとこね」

 お姉さまの手にシリンジが渡り、傍らのボウルから何やら液体を吸い込まれるお姉さま。
 満タンになったシリンジを私に見せてニヤリと笑われたお姉さまがおっしゃいました。

「直子、そのテーブルに上半身だけ突っ伏して、お尻をこちらに差し出しなさい」


2024年2月25日

肌色休暇三日目~避暑地の言いなり人形 20

 サンダルを脱いでバスルームに入ると、少し薄暗いのでまず電気を点けました。
 予想以上の明るさに包まれるガラス張りの浴室。

 リードを外し、それから首輪も外して正真正銘の全裸になります。
 脱衣籠の中にはベージュのボディタオルと真っ白なバスタオルが用意されています。
 首輪に繋がっていたリードとボディタオルを手に浴室へ。

 ぬるま湯に調整してからシャワーのコックをひねり、まずは首から下に強い水滴を浴びます。
 気持ちいい…
 しばらくそうした後リードを手にし、リードに染み付いていた私の恥ずかしい粘液を丁寧に洗い流します。

 お道具を綺麗に洗って濡れないところに干した後、ボディソープでからだを本格的に洗い始めます。
 少し迷ったのですが、汗で髪がベタついていることもありシャンプーもしちゃうことにしました。

 それにしてもこのバスルーム。
 温かいお湯を出すと束の間、ガラスが全体に曇るのですが、すぐに透明な素通しガラスに戻っちゃうんです。
 どういう仕組みなのかはわかりませんが…

 けっこう暗くなったお外に明る過ぎるバスルーム、そして曇り一つ無いガラス張り…
 お外から私の全裸での一挙手一投足が文字通り赤裸々に視えていることでしょう。
 私のほうからもバーベキューのご準備をする皆さまのお姿がいくつかのカンテラに照らされて幻想的に視えていました。

 10分くらいかけて全身を念入りに洗い、最後に冷水を浴びてサッパリしてから脱衣所に戻ります。
 からだを丁寧に拭いつつ姿見で全身を確認すると、二日前にはクッキリ残っていた乳首周りや陰部の恥ずかしすぎる日焼け跡がだいぶ小麦色に同化していました。
 ただし、常時首輪を着けていた首周り部分だけは、逆により白くクッキリ目立つようになってしまっていました。

 まるで首輪していなくても白い首輪を嵌めているみたい…
 これだと東京に戻っても肌の日焼けが引くまで当分のあいだ、首輪やチョーカーを外せないな…
 街中を首輪姿で歩く自分を想像してゾクゾクっと感じてしまいます。

 髪を拭いながらお外に目を向けると、遠くカンテラの灯りの下で数名の人影がまだ行ったり来たりしているみたい。
 時間に余裕があると判断した私は、脱衣所に設えられたチェストの抽斗のひとつに手を伸ばします。
 そこにあることは知っているけれど、今朝は時間に追われて使えなかったドライヤーとヘアブラシ。

 手早く髪を整え、同じ抽斗に入っていたファンデーションと日焼け止めを軽く塗って首輪を着け、どうせすぐに剥ぎ取られてしまうだろうなと思いつつバスタオルをからだに巻きつけてバスルームの灯りを落とし、サンダルを履いて小屋を出ます。
 時計的なものを持っていないので正確なことはわかりませんが、そろそろ午後七時になろうとしているであろうお外はいい感じに黄昏れています。
 バスタオル一枚でちょうどいいくらいにそよ風の吹く心地よい夕暮れ。

 そんな中でお姉さまたちが準備されているバーベキューパーティの一帯だけが一際明るく輝いています。
 カンテラの灯りだけではなくて、スポットライトみたいなのもいくつか配置されているみたい。
 パソコンか何かも持ち込んでいるのでしょうか、ムーディなピアノトリオのジャズ演奏がうっすらたなびく中、薄暗い芝生を進んで近づいていくと、その全容が見えてきました。

 ほぼ中央にパンやオードブルを乗せた大きめなテーブルが置かれ、その脇にバーベキューコンロが2台。
 その周辺に食材を乗せた銀色の配膳カート数台、飲み物を冷やすクーラーボックスとアイスペールを乗せた小さめのテーブル。
 ディレクターズチェアーと呼ぶのでしょうか、背もたれとアームレストの付いた木製の椅子が六脚、その周りを囲んでいます。

 私が着いたときにはみなさま立ったまま中村さまが持たれた深緑色のボトルから、それぞれのプラスティックコップに何やら黄金色の飲み物を注がれておられる最中でした。
 バーベキューコンロからはもうすでにお肉が焼けるいい匂いが漂っています。

 それにみなさま揃って、色艶やかな浴衣をお召しになっています。
 お姉さまは温泉旅荘でいただいた紫寄りの青い浴衣、中村さまは黒地に赤い花柄のシックな浴衣、五十嵐さまは中村さまと色違いで黄色地にピンクの花柄の可愛らしい浴衣。
 そして角田さまはお姉さまが貸し出されたのでしょう、私がいただいたはずの水色の浴衣を召されていらっしゃいました。
 そんなみなさまにまとわりつくようにジョセフィーヌさまも、尻尾を興奮気味にブンブン振り回しながらウロウロしています。

「ああ来た来たー、ナイスタイミング。そろそろ始めようとしてたとこ」

 五十嵐さまが元気なお声で私にプラコップを渡してくださいました。
 すかさず中村さまがシュワシュワの液体を注いでくださいます。
 みなさまが中村さまの周りに集まられました。

「直子も来たことだし、まずカンパイしましょう。うちの秘蔵のシャンパン出してきちゃった」

 中村さまがプラコップを持った右手を高く掲げます。
 いつの間にか私の隣に来られていたお姉さま。

「ほら、いつまでこんなもの巻いて出し惜しみしているの?」

 おっしゃるなりコップを持っていないほうのお姉さまの左手が一閃。
 ハラリとバスタオルが剥ぎ取られました。

「それじゃあ今日はみんなお疲れー、明日も存分に愉しみましょう!カンパーイッ!!」

 同時に乾杯の音頭を取られる中村さま。
 いやん、と声をあげる暇も無く、艶やかな浴衣姿のみなさまの中ひとり、首輪ひとつの全裸で右手を弱々しく掲げる私。
 でも、いただいたシャンパンは凄く美味しくて、ゴクゴク飲み干してしまいました。
 すかさず五十嵐さまが冷えた赤ワインを注ぎ足してくださいます。

 バーベキューコンロを采配してくださるのは中村さまとお姉さま。
 片手に大きめのトング、もう一方の手にはお酒のコップを持たれて時々呑みながら、美味しく焼けた頃合いを見計らって私たちの紙皿に取り分けてくださいます。

 牛肉も焼き鳥も、海老もウインナーも、串に刺したお野菜類もエリンギも、みんな美味しい。
 とくに牛肉は良いお肉みたいでご用意されていたタレを付けて食べると、口の中で蕩けるように旨味が広がり、普段お肉はあまり食べない私でもパクパクいけちゃいます。
 お酒のコップが空くとすかさずどなたかが何かしらのお酒を注ぎ足してくださいます。
 ジョセフィーヌさまも生肉やお芋などのおこぼれを貰ってご満悦なご様子。

 辺りがだんだん暗くなって来て、それにともない、まばゆく輝くカンテラには羽虫さんたちが徐々に集まってきていますが、防虫効果があるらしく時々パチパチ音がして虫さんたちの亡骸が落下しています。
 
 宴の話題の中心は、この二日間で私がしでかした破廉恥な痴態のあれこれ。
 あのときこうだったよねと、どなたかがおっしゃると私に視線が集まり、何か質問やからかいがあって私がモゴモゴとお答えするというくりかえし。
 
 そのうちにお姉さまが会社での私のマゾペット振りをご披露し始めた頃、私の素足にまとわりつかれていていたジョセフィーヌさまが急にタッタッタッと表玄関のほうへ駆け出されました。

「でもさ、やっぱ第三者の目が無いと盛り上がんないし、直子もつまんないでしょう?」

 五十嵐さまからの唐突なご質問。
 だいぶお酒が進んでらっしゃるご様子で、呂律がちょっと怪しい感じ。
 ニヤニヤ笑いで私を睨めつけながらつづけられます。

「…らってもうほら、うちらの前じゃあもう、へーきでおっぱい丸出しーの、パイパンオマンコおっぴろげーじゃん」

「いえ、あの、そんなことは…」

 お話の脈絡がわからないので一応当たり障りのないお返事を、と口に出したとき…

「あー、おかえりー。もう先にやっちゃってるからさー、って、なにーその格好、超エロいぃー」

 急に満面の笑顔になられた五十嵐さまが私の背後に向けて明るいお声を掛け、途中から更にそのお声が嬉しそうに弾みました。
 私も急いで振り返ると…寺田さまでした。

 名塚先生の送り迎えでご帰還されたのでしょう。
 片手に大きめな紙袋を提げられ足元にはジョセフィーヌさまがまとわりつかれています。
 思わず息を呑む私。
 問題は、そのご格好でした。

 私が旅荘でいただいたふたつめの浴衣を召されています。
 裾が私の股の付け根までしかないハッピのような水色の浴衣。
 私が着て股の付け根スレスレでしたから身長のお高い寺田さまがお召しになると付け根を数センチ上回る着丈となってしまっています。

 そしてその付け根部分から扇情的に覗いている赤い布片はおふんどし。
 それも旅荘でのご宴会前にご用意くださったシルクのやつのようで、それが証拠に両おみ足のあいだに見える赤い前垂れ部分がずいぶん短かくて薄い。
 それを私よりも背が高くてナイスプロポーションの寺田さまが、おそらく素肌に直にお召しになられていて、大きく開いた胸元から形の良いバストが今にも零れ落ちそうですし、バストトップの位置も丸わかりで見事に尖立しています。

「締めにみんなでやろうと思って花火買ってきた。あと口さみしいとき用の乾き物」

 ご自分のずいぶんキワドイお姿に照れもせず、艶やかに笑われる寺田さま。
 テーブルに紙袋を置かれました。

「宴会は浴衣縛りってメール貰ってたからさ。あなたたちが広間に散らかしていた浴衣を見繕ってたらこれ発見して、なんかエロいなと思って着てみたんだけど、これ、うちのじゃないわよね?」

 ニコニコ顔の寺田さまのお問いかけにお応えされたのはお姉さま。

「ここに来る前に寄った温泉宿で直子がもらったのよ。直子が着るとただのスケベな露出狂だったけれど、寺ちゃんだとずいぶんとセクシーになるのね」

「ありがと。でもこんな浴衣プレゼントしてくれるなんて、さばけた温泉宿なのね。さてはそこでも直ちゃんに裸同然の格好させていろいろえげつないことさせたんでしょう?」

 みなさま一同がアハハとお笑いになられ、寺田さまは中村さまのお隣の椅子に落ち着かれました。
 いらっしゃることを見越して取っておいたのであろうお肉や食材をお姉さまが焼き始めます。
 そこで一転、笑顔を引っ込められた寺田さま。

「もう、今日のインタビュアー最悪でさ、若い女の記者だったんだけど全然勉強して無くて、先生のこと殆ど知らなくて先生もどんどんご機嫌ナナメになっちゃうし」

 とりあえずもう一度カンパイしてから、自然と寺田さまのお話を聞くモードに入りました。
 寺田さまは注がれるままに、急ピッチでお酒のコップを飲み干しています。
 私は寺田さまの色っぽいお姿にドキドキですし、寺田さまもときどきチラチラと全裸の私に視線をくださいます。

「先生もさすがに疲れたみたいで、今夜は早くに寝むって。お庭で宴会してますよって言ったんだけど、じゃあ二階の洋間の寝室で寝るからって」
「なんかムシャクシャするから、今夜は思い切り弾けちゃおうと思ってさ。こんな格好になってみた」
「そっちの彼女は…ああ、イガっちのツレアイのツノちゃんか。相変わらず可愛いね。今夜は楽しんでってね」

 出されたお料理をパクパク食べつつお酒をグイグイ飲み干される寺田さま。
 やがて再び話題が、今日の私のショッピングモールでの痴態に戻ります。
 今度は寺田さまから集中的にご質問され、私が顔を真っ赤に染めてお答えします。

「…恥ずかしかったです…三回くらいイキました…視られていたと思います…おっぱいを揉まれました…気持ち良かったです…」

 気がつくとお空はすっかり暗くなり、見上げると東京では信じられないほどの星々が夜空を埋めていました。
 私もいつになくたくさんお酒をいただいたせいか、星空に吸い込まれちゃいそうなくらいホワホワ気持ち良くなっています。
 
 お料理はあらかた食べ終わり、みなさまお酒のコップ片手に話題も途切れがちになった頃。
 五十嵐さまが突然また、私に絡んでこられました。

「だーかーら、直子には他人の、身内じゃない第三者の目がないとだめなんだって」

 お隣に座っている角田さまに訴えているような、対面にいる私やみなさまに聞こえるようにおっしゃっているのか。
 かなり酔われて大きなお声になっているので、みなさまのご興味が五十嵐さまに自然と向きました。

「今だって直子だけ素っ裸でいるのに直子は恥ずかしがってもいないし、うちらも全然気にしちゃないじゃない。まあ、うちらが慣れて飽きちゃったってのもあるけど」

 そう言えばこの宴会中、どなたも裸の私に物理的なちょっかいを出してくるかたはいらっしゃいませんでした。
 お言葉ではいろいろイジられましたけれど。

「それじゃあ直子はつまんないの。見慣れちゃったうちらに裸視られてもコーフンできないし、おっぱい乳首だって全然勃ってないじゃない」

 いいえ、五十嵐さまからお言葉責めされて、乳首に血液がだんだん集まってきているのは感じています。

「だからうちらはもっと直子を虐めてあげるべき、辱めてあげるべきなの。それがマゾ女の悲しい性なんだから」

 五十嵐さまが立ち上がられ、私の正面までフラフラといらっしゃいました。
 すっかりマゾモードに染まった私も立ち上がり、両手を後頭部に押し付けます。

「そうよね直子?虐められたいよね?恥ずかしい姿をみんなに視られたいよね?もっとみじめになりたいよね?」

 イジワルそうなまなざしで息がかかるほどお顔を近づけられて念押しされる五十嵐さま。
 事実、凄くアルコールの香る吐息が私の鼻孔をくすぐります。

「は、はい…虐められたいです…蔑まされたいです…マ、マゾですから…」

 五十嵐さまの今までで一番のエスっぷりに気圧される形でグングンとマゾ度が上がっていく私。
 すでに乳首はビンビン、膣内も激しく潤んでいます。

「だったらアレやって欲しいな。花火があるんだよね。うち、一度この目で視てみたかったんだ」

 五十嵐さまが不穏なことをおっしゃり、クーラーボックスが乗っているテーブルを指さされました。
 
「あのテーブルの上で四つん這いになりなさい」

 角田さまの手でクーラーボックス類が片付けられ、寺田さまたちが愉しげに花火を物色し始めます。
 
「…はい」

 降って湧いたような急展開に私のマゾ度は限界超え。
 おずおずとテーブルに向かいお尻からテーブルの上に。

 そのテーブルの大きさは学校にある一般的な教卓くらい。
 四つん這いになるのには少し狭すぎる感じのスペースで、両膝を胸側に寄せてからだを縮こまらせると無駄にお尻が持ち上がってしまいます。
 中村さまがご丁寧にスポットライトの位置を、そのテーブルを照らすように調整されています。

「ねえねえ、これなんかいいんじゃない?持ち手のところも全体も長いし六本もあるし」
「打ち上げ連発式のこれはちょっとヤバいかな。面白そうだけどお尻やけどしちゃったら可哀相だし」
「持ち手まで紙のこれは無理よね、やけど確実」

 みなさまの愉しそうなお声が聞こえてきます。
 私にはこれから何をやらされるのかわかっていました。
 なぜならネットの画像で何度が見たことがあるから。
 なんて惨めな辱めなんだろうと胸とアソコをキュンキュン疼かせていたことを思い出します。

「じゃあ誰が突っ込んで火を点けるかだけど、ここはやっぱりお姉さまでしょう」

 これは五十嵐さまのお声。

「えー、あたしは見物に回ったほうがいいなー。なんかあたしネトラレらしいし」

 お姉さまが笑いながら異議を申し立てて立候補されたのは寺田さま。

「んじゃあアタシやるー。直っちを今日のダメなインタビュアーだと思ってアヌスにぶっ刺してやるー」

「おーおー、寺っちってば、先生やワタシの前ではネコなのに、エム属性前にすると途端にタチに早変わりって、根っからのリバなんだねー」

 中村さまが混ぜ返すと角田さまも、

「中村さんとこもそうなんだー。うちのショーコもボクには根っからの受けのクセに、ちょっとエロくて従順そうなやつ見つけるとバリバリの攻めに転じちゃうんだ」

 へーそういうものなんだ、と感心する間もなく花火の束を持たれた寺田さまが私に近づかれます。
 私を囲むように他の方々も、もちろん手に手にスマホやビデオカメラを構えられて。

「刺さりにくそうだったら直子のマゾマンコに指突っ込んでオツユでアヌスを潤滑するといいわ。どうせもうグショグショに濡らしているでしょうから。あ、でももちろん無理やり突っ込むのもありだけれどね」

 お姉さまからのご愉快そうなアドバイス。
 それを聞いて私の粘液が膣口からテーブルへツツツーっと垂れ下がります。
 
 寺田さまが私の背後に立たれた、という気配を感じたと同時にバチーンと左尻たぶに強烈な一撃。

「はうんっ!」

「ほら、もっと両膝広げてお尻突き出さないと、火の粉が飛び散ってふくらはぎとか火傷しちゃうよ?」
「四つん這いっていうより土下座状態でお尻を差し出すイメージかな」
「手は突かないで肩と顔面で上半身を支えなさい。お尻だけ大きく突き上げて、顔は横向きにして常時みんなによく見えるようにね」
「両手は内側からマンコやおっぱいに伸ばしてもいいよ。花火が燃えているあいだにまさぐってイッちゃいなさい」

 ご命令をくださるたびにバチンバチンと強烈に私のお尻を叩かれる寺田さま。
 そのたびにあふんあふんと喘ぎ悶える私。

「あーあーマンコからこんなにヨダレ垂らしちゃって、本当にドスケベな女だこと。痛いのがそんなにイイのかしら」

 寺田さまの蔑むお声とともに膣内に指が二本、無造作にズブリと挿し込まれたと思ったら、すぐにその上の肛門をサワサワと撫ぜられました。
 とろりとした粘液が肛門を塞ぐ感覚。

「んふぅ…」

 それから何か細い棒で肛門の縁をつつくような刺激、そしてその棒が肛門の内部に侵入してくる異物感。

「ああんっ」

「うん、この角度ならお尻を火傷する心配もないでしょう。風向きが変わったらわからないけど」
「でも一本だとなんか寂しいわね。もう一本入れちゃおう」

 先に挿し込まれた棒に寄り添うようにもう一本の棒が体内に侵入してきました。
 再度、あふん、と喘ぐ私。

「覚悟を決めなさい」

 寺田さまのお芝居がかったお声にブルルンと全身が震えます。 
 少ししてから火薬の匂い、お尻のほうからシューパチパチと何かが弾ける音、小刻みに揺れる肛門内の棒の震動、やがて盛大な火薬の匂いと火花の散る破裂音、ときどきお尻のあちこちを一瞬襲う熱いという感覚、どなたかからのわぁ綺麗という感嘆のお声…

 顔を向けている先には、お姉さま、寺田さま、中村さま、五十嵐さま、角田さまがそれぞれにスマホやビデオカメラを私に向け、シャッターの音やフラッシュを私に浴びせていました。
 
 私は、今みなさまにご披露しているみじめで無様で恥ずかし過ぎる醜態が切なすぎて、マゾマンコの奥からグングン感じながら、股間に伸ばした右手でクリトリスを押し潰していました。


2024年1月1日

彼女がくれた片想い 07

 結論から言うと、その日それ以降の彼女の尾行は出来なかった。

 トイレの個室を出てすぐに向かいの空き教室に入りトイレの出入りを監視していた。
 と言っても、どうせ休み時間中は出てこないだろうと高を括り、チャイムが鳴るまでの監視がおざなりになっていたことは否めない。
 スマホをチェックしたりノーパンが気になってジーンズのジッパーを少し上げたり下げたりもしていた。

 次の講義開始のチャイムが鳴り再び辺りが静けさに包まれて5分10分、いっこうに彼女は出てこない。
 15分を過ぎた頃に、これはおかしい、それともひょっとして2回戦に突入しているのかも、と考え、再びトイレへ忍び込むことにした。

 トイレの出入口ドアをそっと押して中を窺う。
 中はもぬけの空。
 5つある個室のドアはすべて内側に開いていた。

 束の間途方に暮れた。
 いつ見過ごしたのだろう?
 でもすぐに思い当たる。
 油断していた休み時間中に出ていったのだろうと。

 尾行のための変装用小道具まで用意していた身としては残念ではあったが、すぐに仕方ないと諦めもついた。
 結局私のミスなのだから。

 それよりも先程のトイレ内での彼女の一部始終である。
 衝撃的だった。
 その興奮はまだ私のからだを奥底からしつこく疼かせていた。
 そのまま家路につき自分の部屋に戻ってから、彼女が洩らした一字一句を思い出しつつ遅くまで自慰行為に耽った。

 次の体育の授業の日、私はひとつの決意を心に秘め、黒い膝下丈スカートを穿いて臨んだ。
 いつもより早めに人影まばらな更衣室に入り、彼女がいつも着替えをするロッカー脇の物陰でまずショーツを脱ぐ。
 もちろんスカートは穿いたまま素早く脱いだショーツをバッグに隠し、間髪をいれずアンダースコートを穿いた。

 穿き終えた後にいつもの自分の着替え定位置に戻り、ゆっくりと着替えを続行する。
 ブラウスを脱いでウエアを被り、スカートを脱いでスコートを着ける。
 これで私も彼女とお揃いだ。

 そうしているあいだに更衣室が賑やかになってきた。
 着替えをほぼ終了している私は近くにあった椅子に腰掛け、ゆっくりとテニスシューズに履き替えている。
 両脚を幾分大きく広げてスコートを無駄に翻し、中のアンダースコートを周囲に見せつけるような格好になって。
 誰にも気づかれない秘めやかな恥ずかしさ。
 その高揚感にゾクゾク感じていたら彼女が現われた。

 いつものように隅のロッカー脇、さっき私がショーツを脱いだ場所、に陣取った彼女はバッグから着替え一式を取り出し、一つ一つ確認した後に着替えを始める。
 
 濃いベージュ色の薄手のジャケットを脱いだ後、七分袖で淡いピンクのニットの袖から両腕を抜いて頭から抜く。
 間髪を入れずテニスウエアを被って上半身は終了。
 本日のブラはピンクで背中にこれといった痕はなし、というのは、シューズの紐を整えるフリをしながら凝視していた私の見解。

 つづいて下半身。
 少し背後をキョロキョロしてから彼女は完全に背中を見せる。
 茶系でエスニックな柄の膝下丈スカートに両手が差し入れられ、ショーツがスルスルっと下げられる。
 今日も長めのスカートを穿いているということは、今日も授業の後はノーパンで過ごすつもりなのかもしれない。

 それから彼女がアンダースコートを手にし、これから脚にくぐらせようと屈んだ刹那、私はどうにも我慢が出来なくなってしまった。
 彼女に本当のことを伝えたら彼女はどんな反応を示すのか?
 幾分サディステイックな衝動とともに、それが知りたくてたまらなくなったのである。

 自分でも思いがけないほどからだが自然に動いていた。
 すっかり着替えの終わった私は彼女と私の間にいる数人の女子を掻き分け、背中を向けている彼女の前に立つ。
 どうしようかと少し迷ったが、背中を向けた彼女の左肩甲骨辺りを右手の人指し指でチョンチョンと軽くつついた。

 彼女は屈んでアンダースコートをずり上げている途中だった。
 彼女のからだが一瞬ビクンと震え、アンダースコートは中途半端なまま両手を離してこちらに振り返る。

「それ、下着の上に穿くもの」

 小声でもちゃんと意味がわかるように滑舌は良くしたつもりだ。
 彼女は瞬間、呆けたような顔して、えっ!?と絶句した。
 無言で私の顔を見つめながら言葉の意味を吟味しているようだ。

「アンスコは下着を隠すためのもの。だから下着は脱がなくていい」

 そう追い打ちをかけると、あっ!と大きな声を上げて見る見る顔が赤く染まっていく。

「あっ、あっ、そ、そうなのっ?」

 私が告げた言葉の意味を完全に理解したらしい彼女は、羞恥に身悶えるように顔を歪めてうろたえている。
 顔全体をバラ色に染め、目尻には今にも零れ落ちそうな涙まで溜めて。
 膝まで上げたアンダースコートはそのままだ。

 私に指摘された後の彼女の狼狽ぶりが演技だとは思えない。
 どうやら彼女はアンダースコートの何たるかを本当に知らなくて、その行為をやっていたらしい。

「そ、そうなんだ、教えてくれてありがとう…」

 とても小さな声でつぶやいた彼女をすごく可愛いと思った。
 同時にサディスティックな気持ちももう一段階加速して、余計な一言を追加してしまった。

「でも、したくてしているなら、それでもいいと思う」

 授業後にノーパンになることも知っているから、という意味を持たせた皮肉だが、言い過ぎたかな、とも思い、私はそそくさとラケットを持ってその場を離れた。

 テニスの授業中、私はソワソワ落ち着かなかった。
 ショーツを脱いでアンダースコート一枚ということは、下着を常時丸出しで授業を受けているのと同じこと。
 他の人にはわからないけれど、している本人にはその認識となる。
 からだを動かしてスコートが派手に翻るたびに、得も言われぬ恥ずかしさが下腹部を襲い、濡れにくい私でも秘部の奥から粘液がジワジワ潤み出ているのがわかった。

 彼女はと見ると、彼女も今までとは違っていた。
 いつもなら無邪気にコートを駆け回っていた彼女が、今日はなんだかモジモジ恥ずかしげ、しきりに自分の下半身を気にしている。
 ということは、あの後彼女は下着を穿き直さずにそのままコートに出てきたのだろう。

 テニス授業を受けている者の中で彼女と私だけが恥ずかしい下着丸出し状態。
 その事実がなんだか嬉しかった。

 授業後の着替えでは、さすがに彼女をジロジロ観察することは躊躇われた。
 話しかけてしまった手前、彼女も私を意識しているだろう。
 なので彼女から見えない場所に陣取ったため、アンダースコートを脱いだ彼女がショーツを穿き直したのかは確認出来なかった。
 その代わり私が、スカートを着けてからアンダースコートを脱ぎ、そのままのノーパン状態でその後を過ごした。

 三限目の授業前の教室で、彼女がわざわざ私のところまで来て律儀に再度お礼を言ってくれた。
 私はそんな彼女がますます好きになったけれど、ねえ今あなたもノーパン?って問い正したかったのも事実だ。