2015年1月25日

就職祝いは柘榴石 15

「あーーっ!うぅぅ・・・」
 圧しつけられた珠が、菊の蕾をグイグイ抉じ開けてきます。
 今までの珠より大きいことは、抉じ開けてくる感触でわかります。
「いやーんっ、だめぇーっ、入らなぃーですぅぅぅっ」
 シーナさまの両手が私のふたつの乳房をわしづかみ、握りつぶすように揉みしだき始めました。
 下半身に集中していた意識が分散し、肛門とバストから疼痛を伴った快感が、ゾクゾクッと全身を駆け巡りました。

「ふぅーっ。なんとかおさまった」
 お姉さまの大きなため息。
 結局7つめも入っちゃったみたい。
「でも、ここまでで限界みたいね。もう余裕なさそう。お尻全体が小刻みにプルプル震えているもの」
 お腹がシクシク痺れる感じ。
 お姉さまのつぶやきにシーナさまが応えます。

「抜きに移るのなら、これも使うといいわ」
 シーナさまからお姉さまに手渡されたのは、もう一種類のほうのビーズでした。
 珠の大きさがランダムでつらなっているやつ。
 最初の珠が直径2センチくらい、次が5ミリくらい小さくなって、1センチくらい大きくなって、という具合に凸凹した形状。
 真ん中へんの一番大きな珠は4センチくらいありそうです。
「どこに挿れるかは、わかるわよね?抜きながら挿れたり、両方同時に抜いたり、いろいろ試してみるといいわ」
 薄く微笑むシーナさま。

「はうぅっ!」
 ランダムビーズを左手に持ったお姉さまが早速、溢れるばかりの蜜をたたえた私の膣口に最初の珠を圧しつけてきました。
 同時にお尻のほうのテグスがピンと張り、内側から抉じ開けられる感触。
「ううぅーーーっ!」
 再びあの排泄時に似た、背徳的な感覚に下半身が包まれました。
「あああー、だめぇー」
 何かが一緒に溢れ出てしまいそうな、羞恥と屈辱に満ちた禁断の刺激。

 珠の直径どおりに肛門が広がった、そのときがピークでした。
「だめー、視ないでーっ、でちゃうでちゃうでちゃうーっ!」
 珠がスポンと抜けたとき、頭の中に閃光がスパークし、意識が一瞬飛びました。
 
 肛門から珠が抜け出るのと同じタイミングで、一番大きな珠がお姉さまの手で膣内に圧し込まれ、同時に充血しきってパンパンに腫れたクリトリスにもカリッと爪を立てられたのです。
 シーナさまの指が両乳首を思い切り捻り潰したのも同時でした。
 達成感+苦痛=絶頂。
 凄まじい快感の余韻で、全身はヒクヒクといつまでも痙攣しつづけ、口からはよだれが、性器からは白濁した愛液が、トロトロ滴り落ちていました。

 すぐにまた、お尻のテグスが緊張しました。
 アソコから覗くテグスも、お姉さまの同じ指に繋がっています。
 今度は2本同時に引っ張るおつもりみたい。

 そのとき、今まで感じなかった特徴ある匂いが鼻腔をくすぐりました。
 何かが焦げるような臭い・・・
 シーナさまの右手に、火の点いた赤いローソクが握られていました。

「これもトッピング、ね?」
 乳首に赤い蝋が垂れました。
「はぁうっ!」
「ほらほら、あんまり暴れると、蝋がお顔にまで垂れてしまってよ?」
「ひぃっ!」

 肌を襲う熱さは、爪を立てて皮膚をつねられたような一瞬の鋭い痛み。
 ポタポタ、ポタポタ・・・
 尖立した乳首を頂点として、左おっぱいがみるみる赤く染まっていきます。
「あふぅ」
 上半身には熱の刺激、下半身は摩擦の刺激。
 肛門の内側と膣壁を大きさの珠う珠がゴツゴツ擦ってきます。
 お尻とアソコに圧し込まれた珠たちが、ほんの少しの隔たりで互いに干渉し合い、私の下半身の内側で嬲るように粘膜を蹂躙してきます。

「あうっ、いやー」
「だめだめだめ、ゆるしてーーー」
「でちゃうでちゃうでちゃうーー」
「許して、ゆるして、ゆるしてーーー」
「あっ、あっ、あっ、あーーーーっ」
「うーーんっ、うーーんっ、くるぅううぅーーーっ」

 傍から視ていたら私はまさしく、発情期のケダモノそのものだったことでしょう。
 ひっきりなしに喘ぎ、叫び、唸り、嗚咽し、身悶えました。
 肛門に、膣に、珠が何度も埋め込まれては抜かれました。
 おっぱいを赤く染めて固まった蝋は、そのたびにわしづかみで崩され取り除かれて、すぐに新たな熱の刺激が垂れてきました。

「ねえ、エミリー?」
 気が遠くなりそうになると刺激で目を覚ます、をくりかえしている私の耳に、シーナさまのお声がぼんやりと聞こえました。
「相談があるのだけれど・・・」
「はい?」
 お姉さまの声も遠く掠れ気味です。

「直子さんのすけべな喘ぎ声をずっと聞かされていたら、もうどうにもがまん出来なくなっちゃって」
「ああ、それ、あたしもです。さっきからからだがムラムラ疼いちゃって。あたしにしては珍しいのだけれど」
「そうよね?こんないやらしい声を聞かされっぱなしじゃ、誰だってサカっちゃうわよね?」
「ひぃーーっ!」
 シーナさまが私の蝋だらけの左おっぱいを乱暴に掴みました。
 せっかく固まって、襲い来る熱から守ってくれていた蝋が、またボロボロと崩れてしまいました。

「だからさ、ちょっと直子さん貸してくれないかな?口だけでいいし、もちろんエミリーの後でいいから」
「ああ。そんなことでしたら、さっきも言ったように、どうぞご自由にしてください。あたしに気兼ねなどせずに」
「本当?それならお言葉に甘えちゃおうかな」
「ええ。あたしはいつでもこれに奉仕させることが出来ますし、それに、シーナさんがいらっしゃる前に、一度味わいましたから」
 テグスをツンツン引っ張る手は緩めず、シーナさまに微笑むお姉さま。
 これ、って、自分が物扱いされたことに、キュンと感じてしまう私。

「直子、シーナさんをちゃんと満足させて差し上げなさい。さっきあたしにしたみたいに」
 お姉さまの指が、私のクリトリスをギュウッと摘みました。
「あふうっ!は、はぁい!お姉さまぁ!」
 からだ全体が蕩けちゃいそうな苦痛と快感の中で、お姉さまの冷たいお声さえも、いっそう甘く響きます。
 お姉さまがお望みなら、どんなことだってやります。

 シーナさまは、いったん私から少し離れ、Tバックをスルスルっと脱ぎました。
 つづいてエナメルのビスチェまで。
 お姉さまがまじまじと、全裸のシーナさまを見つめていました。
「ツルツルなんだ・・・」
 小さくつぶやくお姉さま。

 再び私に近づいてきたシーナさまは、お姉さまに背を向けて私の顔に跨りました。
「んぐっ!」
 私の口にアソコ、鼻の下辺りにクリトリスが押し付けられました。
「直子さん、お願いね」
 口を塞がれたら、お返事できません。
 シーナさま、されているときのお顔をお姉さまには、見せたくないのかもしれないな。
 ふと、そんなふうに考えました。

 何ヶ月ぶりだろう。
 シーナさまの香り、シーナさまの味。
 ツルツルの肌と濡れた粘膜。
 舌をありったけ伸ばし、粘膜の中に捻じ込みました。

「はうぅ、いいわ、そこ、そこよっ」
 シーナさまの上ずったお声が聞こえ、アソコを口にグイグイ押し付けられます。
 シーナさま、いつもよりもずいぶん濡れていらっしゃる。
 たぶん今までで一番凄いかも。
 無我夢中でシーナさまを味わいました。

「はっ、はっ、はっ、はっ・・・」
 シーナさまの息遣いが早くなってきました。
 私の舌と唇は、シーナさまの性器のいたるところを舐め上げ吸い上げ、息を吹き込み肉の芽を転がします。
「はあっ、そこ、はっ、はっ、はあっ、そこよそこそこぉ・・・」

「シーナさん?イキそうになったら教えてくださいね。直子も一緒に、イカせますから」
 心なしか切なげな感じな、お姉さまのお声が聞こえてきました。
 お姉さまのお姿は、シーナさまの股間に遮られて見えません。
 今の私に見えるのは、ご自分の裸のバストに両手を遣って激しく揉みしだきながら、眉間にシワを寄せて切なげに歪むシーナさまの可愛らしいお顔を、真下から見上げた構図だけ。

 見えなくなってしまったお姉さまは、ビーズを埋め込んだり抜いたりするのがまどろっこしくなられたのか、お尻にいくつかのビーズは埋め込んだまま、責めるお道具をご自分の指に切り替えられたみたい。
 何本かの指が激しく暴れながら、私の膣を出たり入ったりしているのが感じられます。

「あっ、イきそう、そう、そこそこ、もっとぉ・・・」
 シーナさまの息遣いがどんどん激しくなり、その鼻にかかった可愛らしいお声に、私のはしたない喘ぎも重なります。
「あうっ、んんんんーーっふぅぅーっ!」
「あっ、あっ、もっと、もっと、そこそこ、イク、イクぅーーーっ!!」
 シーナさまの腰の上下が激しくなり、それに合わせて私もどんどん高まっていきます。
「いっ、いいっ、いいのっ、いいのっ、イクッ!イクぅぅぅーーーーっ!!!」
「あぁん、お姉さま、イキます、イっちゃいますぅ、イクぅぅぅーーーっ!!!」

 シーナさまのお声の昂ぶりに合わせるように、お姉さまの指が私のクリトリスを集中攻撃してきました。
 始めは撫ぜるように擦られ、摘まれ、やがて爪でカリカリひっかくように。
 私も急激に高まり、シーナさまとほぼ同時にイったみたいです。
 そのとき、んんーーっ!って、艶っぽく唸るような、お姉さまのお声も一緒に聞こえたような気がしました。

 今夜何度目だったのかは、もはやわからないけれど、たぶんベスト3に入るくらい強烈な頭の中の閃光スパークを味わった後、しばらくして目を開けると、私の目前にシーナさまの股間はありませんでした。
 聞こえてくるのは荒い息遣いだけ。
 はあ、はあ、はあ、はあ・・・
 
 これは自分が出しているものだと思ったのですが、よく聞いてみると、私の頭の後方、そして前方からも聞こえていました。
 ゆっくり顔を上げると、私の股間の向こう側でお姉さまが、横座りの形で激しく肩を上下させていました。
 それも、いつの間に脱がれたのか、ビスチェもTバックも着けていない生まれたままのお姿で。
 えっ!?なぜお姉さまが全裸になっているの!?

 後方からの息遣いはシーナさま。
 少しくぐもっているのは、私の頭ギリギリのところにペタンと内股でお尻を落とし、前のめりに突っ伏しておられるからのようでした。

「はぁぁ、気持ち良かった・・・直子さんのクンニテクは、人間国宝級よね。指もオモチャも使わず、舌だけで強烈にイカせちゃうんだもん」
 掠れたお声でおっしゃいながら、シーナさまがゆっくりと立ち上がられたようでした。
 私の顔を跨ぐように立たれたシーナさまの視線が、私の開いた股間の先でうずくまっているお姉さまのお姿をみつけたようです。
「あらあら。エミリーもがまん出来なかったみたいね。ひょっとして自分でしちゃったの?」
 シーナさまの嬉しそうなお声に、お姉さまのうなだれていたお顔がこちらに向きました。

「ええ。お恥ずかしながら、どうにもがまん出来なかったのよ。シーナさんの上ずったヨガリ声がまた、とても可愛らしいのだもの」
 照れ臭そうに微笑んだお姉さまも、ユラリと立ち上がりました。

「うわー。エミリーのオールヌード、初めて見たわ。やっぱりプロポーションいいわねぇ」
「あたしもシーナさんの裸、初めて見ましたよ。ハイジニーナだったのですね。知りませんでした」
「わたしは天然なの。直子さんと違ってお手入れ要らずよ。エミリーのヘアもかっこいいわよ」
 おふたりとも、イってスッキリ、ご機嫌なご様子で、あいだで寝転んでいる私のことなんか忘れたみたいに、楽しげにおしゃべりしています。

 それにしてもお姉さまったら、ご自分で慰めてしまうなんて、もったいない。
 私に言ってくだされば、全身全霊を込めてご奉仕して差し上げたのにぃ。
 だけどさっき、たぶん3人ほぼ同時にイったことがなんだか無性に嬉しくて、おふたりの会話を聞きながら私の顔も自然にほころんでしまいます。

「エミリーのイキ顔も見たかったなー」
 シーナさまがイタズラっぽくおっしゃると、お姉さまもすかさず。
「あたしもシーナさんがイクところ、拝見したかったです。この次にもし機会があったらぜひ」
「そうね。今度は直子さんだけ緊縛放置プレイでそのへんに転がしておいて、わたしたちがイチャイチャしてイカせ合うところを見せつけてやりましょうか?」
 ふたりの女王さまの楽しげな笑い声を聞きながら、あ、それもいいかな、なんて思う私。

「さあ、スッキリもしたことだし、アナルビーズの使い方も教えたしでお役目終わり。わたしはそろそろ自分の部屋に帰ろうかな」
 ンーッて背伸びしながらシーナさまがおっしゃいました。
「はりきりすぎて疲れたのか、眠くなってきちゃった」
「あ、お帰りになってしまうのですか?最後にシャワーでもゆっくり浴びて、サッパリしていかれればいいのに」
 お姉さまがお引き止めします。

「いいのよ。わたしんち、ここの上だし、これ以上おふたりの邪魔しちゃ悪いもの」
「それに、明日の夜からしばらく出張なの。また東南アジア。このあいだ持ち帰った案件のいくつかが本決まりになって、もう一度現地で詰めてこなくちゃならないの」
「その準備もあるから、ちょうど眠くもなったことだし、ここはひとまず、ひとりでゆっくり眠っておいたほうが建設的なのよ。起きたらやること、いっぱいあるしね」
「だから邪魔者は消えるわ。あとはふたりで、眠くなるまで思う存分イチャイチャするがいいわ」

 おっしゃりながらシーナさまは、私のからだを自由にしてくださいました。
 手枷と足枷を外し、棒枷を外し、首輪を外し。
 途中からお姉さまも加わり、私の上半身に貼り付いた蝋の残りカスを丁寧に剥がしてくださいました。
 
 蝋は、思いの他容易に、キレイに剥がれました。
 シーナさまがローションを塗ってくださったのは、このための下準備だったんだ、って今更ながら気がつきました。
 まだお尻に埋まったままだった珠2個も、無造作に引きずり出されました。
 私のお尻の穴は、直径1センチの珠が2個埋まったままでも、ぜんぜん違和感を感じないようになってしまったみたいです。
 これがつまり、開発、っていうことなのかな。
 久々に自由に動かせるようになったからだで、私も仰向けに寝転んだままンーッて伸びをひとつ。

「片付けるのを手伝わなくてごめんなさいね。今は一刻も早くベッドに倒れこみたい気分なの」
「いえいえ、そんなことは気になさらないで。直子が気持ち良くなるために散らかしたのだから、全部直子にやらせますから」
 お姉さまが笑いながら私を見ました。

「ありがと。それとあと、一応注意事項ね」
 シーナさまも笑いながら私を見て、つづけました。
「くれぐれもローソクのカスはバスルームに流さないこと。シートごと丸めてゴミに出すといいわ」
「あと、使ったオモチャ類はよーく洗って常に清潔に保つこと。お尻関係のはとくにね。寝る前にシャワーを浴びがてらにでも、洗っとくといいわ。エネマリンジは使用前に熱湯消毒するのよ」
「今日撮ったビデオ類はエミリーが持っていて。そのうちダビングしにオフィスのほうにでも行くから」
 子供にお留守番を頼む母親のような口調のシーナさまは、おっしゃりながら素肌に白いバスローブのようなガウンを羽織りました。

「それだけ着てお部屋に帰るのですか?」
 呆れたようなお姉さまのお声。
「そうよ。来たときもこの下はビスチェとTバックだけだったし。部屋まで1分もかからないもの」
 そのビスチェとTバックしか入っていないのであろうペッタンコのバッグを片手に持ち、リビングを突っ切って玄関のほうへスタスタ歩き出すシーナさま。
 シーナさまの背中を追う私とお姉さま。
 時計は深夜の2時32分。

「それではごきげんよう。おやすみなさい、エミリー、直子。末永くおしあわせに」
 サンダルを履いたシーナさまがいったん振り返り、ニッコリ笑いかけてくださいました。
「おやすみなさい。シーナさま」
「ごきげんよう。シーナさん」
 ふたりほとんど同時のご挨拶。

 玄関前の大きな鏡に、全裸のお姉さまと私の等身大の姿が、室内灯に照らされて明るく浮かび上がっています。
「よそんちの玄関で、まっ裸の女性ふたりに見送られるのって、なんだかシュールで不思議な感じよね」
 シーナさまが照れたみたいにおっしゃって、クルッと踵を返しました。

 バタン。
 シーナさまの白くて小さな背中が闇に紛れ、玄関ドアが閉じました。
 私とお姉さまは軽くつないでいた手を、どちらからともなくギューッと握り合いました。


面接ごっこは窓際で 01


2015年1月18日

就職祝いは柘榴石 14

「んぐぅっ!」
 ローションまみれなお姉さまの両手が、私のお尻にペチャッと吸い付きました。
 冷たい感触に思わず喉が鳴りますが、ガーネットビーズを頬張っているので、ちゃんとした声にはなりません。
 大開脚まんぐり返しで拘束されている私のお尻越しに、お姉さまの端正なお顔が見えました。
 ときどきお顔を上げて私と目線を合わせる、その瞳が好奇心に爛々と輝いています。

 お姉さまのしなやかな指がお尻の割れスジをスリスリなぞり、お尻の穴周辺の皮膚を引っ張ったりすぼめたり、やさしくほぐしてくださいます。
「ふぅんんぅ」
 つられてアソコの唇までパクパクしているのが目前に見えて、どうしようもないほどの恥ずかしさです。

「そろそろいいかな」
 シーナさまの指でガーネットビーズ先端のリングが引っ張られ、ビーズの珠たちが私の口から引っ張り出されました。
「ケホンケホンッ」
 口内と喉を圧迫していた異物が去り、よだれだらけの唇で大げさにむせてしまいました。
「一応これにもローションを垂らしておきましょう」
 
 シーナさまの指にひっかけられたまま、私の目の前、丸めたお腹ギリギリに吊り下げられたガーネットビーズ。
 先端の珠の直径は1センチくらい。
 それぞれの珠のあいだには2~3センチくらいのテグスだけの空白があって、上に行く毎に珠の大きさが少しづつグラデーションで大きくなっていきます。
 同じ大きさの珠が2つづつ、合計8個の珠がつらなり、一番上の先端にはシーナさまの左手人指し指に通された金色のリング。

 そのガーネットビーズに、シーナさまが右手に持ったボトルからローションをたらたら垂らします。
 粘性で透明な液体が私のお腹にポタポタ垂れて、やがてわき腹のほうへと、左右に別れて流れ落ちていきます。

「はうっ!」
 マッサージ中のお姉さまの指が、私の肛門に突然侵入してきました。
「さっきよりいっそうやわらかくなったみたいよ。スルッと入った」
 お姉さまのお言葉に視線を遣ると、目の前にその光景。
 
 お子様ランチのケチャップライスのてっぺんに突き立てられた旗のように、私のお尻の真ん中頂上に、垂直に刺さっているお姉さまの細くて綺麗な指。
 第二関節くらいまで埋め込まれています。
「あううぅ」
 中をかきまわすみたいにヌルヌル動くお姉さまの人差し指。
「それなら準備万端ね。さあ始めましょう」
 シーナさまのお声と共に、指がスポンと抜けました。

 ガーネットビーズをお姉さまに手渡すシーナさま。
 ビーズを手にすると、お姉さまは嬉しそうに、ニッて笑いました。

「直子さんは緊張しないで、お腹の力を抜いていてね。いつもより大きく呼吸していると、挿入もラクになるはずよ」
 シーナさまのアドバイスに従って深く息を吐いたとき、肛門からヌルンと、何かが内部に侵入してきたのがわかりました。
「んっ!」
 
 私の目の前ではお姉さまとシーナさまが並んで身を屈め、私のお尻に手をかけて、真剣なお顔で私の肉体のある一点を熱心に見つめていました。
 まるでお医者さまと看護師さんみたい。
「んんっ」
 また何かが挿入される感覚。
 お姉さまとシーナさまの手によって私の肛門が押し広げられ、挿入が終わると手がどけられ、穴がすぼむのがわかります。

「このへんまではスルスルいくわよね。さっきみたいに指が難なく入っちゃうくらいは使っていたみたいだから」
 シーナさまのこれみよがしなイジワル声。
「直子さんてアナルオナニーも、けっこうしていたのでしょう?」
「い、いえ、そんなには・・・」
「ふーん。それが本当なら、やっぱり天性のものなのかしら。生まれついてのA感体質」
「だって、エミリーに肛門弄られ始めてからオマンコが凄いわよ、大洪水。感じすぎ」

 自分でもわかっていました。
 目の前にソレが見えているのですから。
 洞窟から溢れ出したおツユがラビアに沿ってクリトリスを濡らし、下腹をおへそのほうへとトロトロ滑り落ちていくのが、さっきから見えていました。

「このカーバンクルはね、一番小さいのが直径1センチ。それから5ミリづつ大きくなっていくの、同じサイズ2個づつでね」
 シーナさまが愉快そうに私の顔を覗き込み、語りかけてきました。
「今4つまで入ったから、直径の長さで言うと5センチ。さっき突っ込まれた指の深さと同じ長さくらいだわね。まだ苦しくはないでしょ?」
「ううっ、は、はい・・・」
「でも、ここから先は未知の領域かもね、珠も大きくなるし。ひとつ入れば7センチ、2つ入ると9センチ」
 私のお尻の頂点とお姉さまの指のリングとのあいだには、まだ珠が4つ残っています。
 それも、さっきより大きめの珠たちが。

「9センチって言ったら、あたしの薬指の長さくらいですね」
 お姉さまが左手の甲をこちらに向けて、薬指だけまっすぐに立ててみせます。
 お姉さまってば、それって欧米でのお下品なサインになっています。
「こんな長さがお腹の中におさまっちゃうんだ、凄い・・・」
 独り言のようにつぶやくお姉さま。
「その上、直径2センチっていったら、指の根元よりもいくらか太いからね」
 シーナさまが愉しそうに補足説明されました。

 再びお尻の穴を広げられる感覚。
「ううっ!」
 今度はさっきより強引に抉じ開けられる感じで、穴がいっぱいいっぱいなのが自分でわかります。
「痛いの?」
 お姉さまのお声。
「うっ、あ、いえ、すこし・・・」
「その痛さこそがマゾのご馳走でしょ?」
 こっちのイジワル声はシーナさま。
「あぅぅっ」
 もうこれ以上広がらない、と思った途端、スッポリと珠が体内におさまったのがわかりました。

 間髪置かずもうひとつ、ヌルッとした曲線の物体が、せっかくすぼんだ穴に圧し付けられます。
「あふうぅ」
 珠の侵入を拒む筋肉が圧力と潤滑に屈し、イヤイヤをしながら内側にめり込んでいきます。
「ううぐぅうう」
「これで珠6つ。見事に9センチ飲み込んだわね?初回にしては上出来よ。どう?苦しい?」
 今まで味わったことの無い感覚に肌が粟立ち、シーナさまのお声が、どこか遠くのほうから聞こえているような気がしました。

 苦しいか?と問われればまさにその通りなのですが、それよりも、何て言うか、得体の知れないおぞましさ、みたいなもののほうが勝っていました。
 お腹の中に感じる異物感と圧迫感は、まさに生まれて初めて味わう感覚でした。
 挿入された異物に、お腹の中全体が拒絶を露にして排除しようと蠢く、その肉体的な気持ち悪さと、脂汗さえ滲みそうな苦痛。
 でも片方で、そんな汚辱さえ甘美な刺激に変換してしまうヘンタイな自分。
 本来排泄だけに使われるべき場所から性具を挿入され、その苦痛に苛まれながらも性的に悦び興奮している自分のからだ。
 それらをひっくるめて感じる、自分のからだに巣食う欲望のおぞましさ。
 私はいつの間にか、ハアハアと荒く大きな、いやらしい吐息をくりかえしていました。

「あらあら、ずいぶん興奮しちゃっているみたいね。からだが小刻みに震えているわよ?」
 シーナさまのお声が朦朧とした意識にフェードインしてきました。
「ひとまずこのくらいで、いったん抜いてみましょうか。まずはオプション無しで」
 お姉さまに語りかけたのであろうシーナさまのお声が聞こえ、ビーズを繋いでいるテグスが緊張したような気がしました。
「なんてったってここからが、このアソビの醍醐味なんだから」
 シーナさまの得意気なお声。

 目前を見ると、お姉さまの指と一番最後の珠とのあいだのテグスがピンッと一直線に張りつめていました。
 お姉さまはなおも、テグスを上に引っ張ろうとされています。
「ゆっくり、ゆっくり、ツンツンって、じらすみたいにね」
 シーナさまのお姉さまへのアドバイス。

 引っ張られた珠によって、お尻の穴を内側から膨らませつつ押し広げられる感覚は、言葉に出来ないほどの衝撃でした。
「あーーーっ、あーーーっ!」
 思わず大きな声をあげてしまいます。
 これって排泄をするときの、あの感じとほとんど同じです。
 その行為が、お姉さまの指によってコントロールされているのです。

「いやーっ、だめーーーっ、あああーーーっ」
 直径2センチの珠が肛門を内部から抉じ開けてきます。
 排泄行為を見物されているような屈辱感、背徳感、罪悪感・・・
 だめ、だめだめ、ああ、出ちゃうぅ、出ちゃうぅ、あああ・・・

「ここのことを、菊の蕾、って最初に喩えた人は、たいしたものよね」
 テグスのコントロールをすっかりお姉さまにお任せしたシーナさまが、私の肛門を大げさに覗きこみながらの実況中継。

「襞ひだの花弁が割れて、ガーネットの紅がまあるく覗き始めたわ。柘榴石とも呼ばれるけれど、この色ってなんだか卑猥よね?グロに近いエロさ」
「あーーーっ、いやーーっ!」
 私はひっきりなしに愉悦の声をあげています。
「菊の弁がもっこり盛り上がってる。あと少しで抜けそう、ゆっくりゆっくり、焦らして焦らして」
「だめーー、いやーー、んんんーーっ、だめーっ」
「ほら、菊の穴が満開」
 蕾の内側を擦る球状の感覚が最大限になり、これ以上は無理、ってなったとき、最初の珠がスポンと飛び出しました。

 珠がようやく外へ抜け出し、蕾がシュルンとしぼんだときの感覚も、今まで味わったことのないほどの爽快感でした。
 達成感にも似た安堵感と、排泄を視られたような恥辱感、肛門をもてあそばれている被虐感。
 それらが一体となった、私みたいな被虐願望マゾにとっては至高の超快感。
 ハアハア息を切らしながら、からだ中しびれたみたいに陶酔していました。

 すぐにテグスに緊張が戻り、2個目の珠が内側から肛門を抉じ開け始めます。
 皮膚の内側を珠の球面が滑る感覚に、五感がゾワゾワ震えます。
 無理矢理抉じ開けられる筋肉に、マゾ性がヒクヒク身悶えます。
 そんなふうにして、3個、4個と、体内に埋め込まれた珠を引っ張り出されました。
 そのたびに私は大騒ぎで喘ぎ、からだを打ち震わせました。
 肛門を内側から責められる、その未知だった感覚は、異様としか言いようの無い不思議な快楽で、私はすっかり虜になっていました。

「あらら、目尻に涙まで溜めちゃって。とてもお気に召したみたいね、直子さん?」
 私の体内から抜き出されたばかりのビーズをプラプラ揺らしながら、シーナさまが顔を覗き込んできます。

「生え際にすごい汗。脂汗かしら?苦しいクセにゾクゾク感じちゃったんでしょう?」
 おっしゃいながら、吊り下げたビーズの先端を私の鼻先に持ってきました。
 微かに香る、ケモノじみた匂い。
 一瞬顔をそむけてしまいましたが、すぐに思い直します。
 かつて、その匂いを嗅いだ途端、理性が吹っ飛んだことがありました。
 そしてもちろん今の私には、その背徳的な匂いは欲情の促進剤でした。

「もう一度、して欲しい?」
「はいっ!お願いします。もう一度してくださいっ」
 何日もごはんをもらっていないワンちゃんみたいに、飛び掛るようにお願いしました。
「そんなに気持ち良かったの?もうマゾ全開ね」
「はい。はしたなくてごめんなさい。ヘンタイでごめんなさい。だけどもっとされたいんです」
「だったらこれをキレイにしなくちゃ」
 躊躇無く、大きく口を開いて受け容れました。

 めちゃくちゃになりたい。
 めちゃくちゃにして欲しい。
 いつまでも屈辱と快楽の挟間で溺れたい。

 自分の体内、それも肛門から排出されたばかりのガーネットビーズを口いっぱいに頬張りました。
 ローションと自分の体液や愛液が入り混じり、少し苦味のある珠を夢中で味わいました。
「またひとつ、リミッターが外れちゃったみたいね」
 心の底から愉快そうなシーナさま。
 ほどなく口からビーズが引きずり出されました。

「直子さんがお願いするのは、わたしじゃないわ」
 ビーズに再びローションを垂らしながら、シーナさまがお姉さまに目線を送りました。
「直子さんの今の飼い主はエミリーなのだから。ほら、大好きなお姉さまに、直子さんが何をして欲しいのか、はっきりお願いしなくちゃ」
 私のお腹にもローションを垂らしつつ、シーナさまがお姉さまの傍に戻っていきました。

「お姉さま、私に、直子のお尻に、もう一度それをください」
 私の正面で睨むように私を見つめてくるお姉さま。
「それ、って何よ?」
 冷たいお声が投げつけられます。
「ビ、ビーズです。柘榴石のビーズ・・・ア、アナルビーズです・・・」
「直子のどこに挿れろ、って?」
「お尻の穴・・・こ、肛門です。直子のいやらしい肛門にです」
「そんなところに、こんなものを挿れて欲しいんだ?それで直子は悦んじゃうの?」
 お姉さまの瞳が放つ妖しい輝きは、完璧にエスの人のそれでした。

「はい。直子はマゾでヘンタイなんです。汚らわしい肛門にアナルビーズを突っ込まれて、挿れたり出したりされると、苦しくて気持ち良くって、めちゃくちゃになっちゃうんです・・・めちゃくちゃになりたいんです・・・」
 私は泣きそうな勢いで、お姉さまに哀願しました。
「だからどうか、こんなヘンタイ直子に、直子のふしだらな肛門に、その、唾液やいろんなもので汚れたアナルビーズをもう一度、思いっきり突っ込んでやってくださいぃ!」
「本当にいいのね?今度はここまで、全部挿れるよ?」
 お姉さまは冷たい瞳のまま、ビーズの端の一番大きな珠を指差しました。

 一瞬、ゾクリとからだが震えました。
 でもすぐ決心して、コクリとうなずきます。
 「いい子ね」
 お姉さまが唇の端で、ニヤリと笑いました。

「はい。よく言えました。ご褒美にトッピングを加えてあげましょう。マゾっ子直ちゃんが大好きな各種トッピング~」
 シーナさまが歌うようにおっしゃりながら、私の頭のほうへ近づいてきます。
「エミリー、直子さんのからだにさわるの、許してくれる?」
「どうぞどうぞ、ご自由に。こんなヘンタイマゾ女でよろしかったら」
 お姉さまもお顔を崩し、笑顔でお芝居っぽく応えました。

 シーナさまが私の脇にしゃがみ込みました。
「ちょっと体勢を変えましょう」
 首輪とバーを繋いでいた短い鎖を外してくださり、窮屈な体勢が少しマシになりました。
 丸まっていた背中を伸ばすと、上半身が自然に後方へ倒れていき、床の銀色シート上のバスタオルにペタンと背中を着ける私。
 お腹の中央に溜まっていたローションが、からだの四方へと滑り出しました。

「だけど、このままじゃエミリーがやりにくいわね」
 相変わらず1メートル近くの左右泣き別れ状態な両手足。
 その格好で背中を着けて寝転ぶと、腰の浮き方が中途半端。
 上下左右を見渡して少し考えてからシーナさまは、エイヤッとバーを掴んで私の顔のほうに引きました。
 両脚が上がって引っ張られ、つられて浮き上がる私の腰。
 バーの真ん中の金具にロープを通し、天井付近に通るスチールパイプに結び付けて高さ調整。
 私の股間は大股開きのまま、再び宙に浮き上がって固定されました。

「これでだいたいさっきと同じ位置よね?」
「そうですね」
 開脚前転の途中で固定されたようなまんぐり返し姿勢は同じ。
 今回は、バーと一緒に手足が上に行き、肩から背中半分くらいが床に着いた半宙吊りのような格好。
 からだがそれほど丸まっていないので、頭が床に着き、おっぱいがさっきより露になったのが違うところです。
 顔を上げれば自分のアソコも見えちゃうでしょう。

「それじゃあ始めましょうか」
 お姉さまにウインクするシーナさま。
 笑顔で応えるお姉さま。

「最初のトッピングは、これね」
 シーナさまが私のバストやお腹にローションをたっぷり垂らし、私の上半身を撫ぜ始めました。
「はうっ」
 ヌルヌルな薄手ゴム手袋の両手に素肌を撫ぜられます。
「気持ちいいでしょ?さっきまで窮屈な姿勢だったものね」
 妙におやさしいシーナさまが、私のおっぱいを揉みしだき始めます。
「あふうぅ」
 ずっとかまってもらえなかった乳首が、グングン硬くなっていくのがわかります。

 私の股間で膝立ちのお姉さまは、そこへのマッサージもそこそこに、私の肛門に珠を圧し当ててきました。
 最初のふたつまでは難なくツルンと飲み込んで、3個目、4個目と進み、直径2センチの5個目。
 シーナさまの手でおっぱい付近をマッサージされているので、そちらの気持ち良さでお尻への違和感もさほど辛くなく、あふあふ喘いでいると6個目になりました。
 珠が圧し当てられてちょっと苦しかったとき、シーナさまが突然、右の乳首をつまみました。
「あぁんっ!」
 腰がビクンと動いて、珠をヌルンと飲み込んじゃったみたい。
 
 シーナさまはそのまま乳首虐めに専念することにしたようです。
「コリッコリだね、直子さんの乳首。それにすごく熱い」
 潰され引っ張られ捏ね繰り回されて、私の喘ぎ声はどんどん騒がしくなっちゃいます。
 お尻にあてがわれた珠のことも忘れそうなほどだけれど、次は初体験の7個目、2.5センチ珠のはず。
 これが入っちゃったら10センチ超え、11.5センチです。
 怖さと期待半々で、意識がお尻ばかりに集中してしまいます。

 珠を肛門にギュッと圧しつけられると、お腹の中の珠の圧迫感なのか、腰全体に痺れみたいなものが広がりました。
「あうっ、んんん、いたいぃ」
 珠の三分の二くらいはもう体内にめりこんでいるみたい。
「はうぅぅ」
「大丈夫よ。じきに良くなるわ」
 私の左右の乳首をヌルヌルの両手でキュッキュッと捻りながら、シーナさまが天使の笑顔でおっしゃいました。


就職祝いは柘榴石 15

2015年1月3日

彼女がくれた片想い 02

 彼女とは、一般教養でのクラス分けが同じだったので、語学やコンピュータの講義で必ず顔を合わせていた。
 トイレでの一件以来、彼女のことを気に留めていた私は、それからしばらく、顔を合わせるたびにそれとなく彼女に注目していた。
 
 彼女はたいてい、数人の決まった友人たちと行動を共にしていた。
 その中での彼女は、人当たり良さそうな笑みをいつも浮かべ、おっとりした雰囲気を醸し出していた。
 天然ボケ気味いじられキャラだけれど、決して苛められはしないタイプ。
 髪も染めず、ファッションもどちらかと言えば地味目な少女趣味。
 野暮ったさと紙一重ながら自分に似合う服装がわかっているようで、コーディネートのセンスがいいな、とは思った。
 ざっくりまとめるなら、典型的なミッション系女子高出身者。
 共学の学校だったら、クラスの異性数人はファンになるであろう、お育ちの良さそうなプチお嬢様、という印象だった。

 トイレでの一件から数日経った体育の授業の日。
 テニスを選択していた私は、体育館の更衣室で着替えを始めていた。

 体育の授業は、提示されたいくつかのスポーツからひとつを選択する仕組みで、クラス分けとはまた別の集団となる。
 すなわち、すべての一年生のうちテニスを選択した人たちの一群。
 鍵付きロッカーが整然と並ぶ広めの更衣室内では、同じクラスなのであろう人たちと小さな群れを作ったいくつものグループが、姦しく嬌声をあげながら着替えに勤しんでいた。
 私は、どのグループにも属さず、隅のロッカーの陰でひとり黙々と着替えた。
 入学以来、誰に話しかけられても無愛想に生返事を返しつづけてきた報いだった。

 その日はジーンズを穿いていた。
 脱ぐためにうつむいてボタンに手をかけたとき、誰かのからだが私の肩に触れ、顔を上げると彼女の顔があった。
「あ、ごめんなさいっ」
 からだをぶつけてしまったことを詫びているのであろう彼女と、一瞬目が合った。
 軽く会釈してはにかむように微笑み、すぐに目を逸らした彼女は、そそくさと私より奥のロッカーへと歩いていった。
 あの様子だと、私が彼女と同じクラスなことさえ、認識されていなさそう。

 私はその場で、あからさまにならないよう横目で彼女を窺がった。
 彼女は壁際一番奥のロッカーに荷物を入れ、壁のほうを向いて、すなわち皆に背を向けて、着替えを始めようとしていた。
 私は自分の着替えをスローペースに切り替え、彼女の着替えをそっと観察することにした。

 彼女は、妙にこそこそとしていた。
 ロッカーと壁のあいだの狭い空間に小さく背中を丸めて、授業の開始時間が迫っているわけでもないのに、何か急いでいる風のせわしなくもひそやかな挙動。
 ブラウスのボタンを全部はずし、脱ぐと同時に間髪を入れずポロシャツ風のウェアをかぶる。
 セミロングのスカートを穿いたままアンダースコートを着け、スカートを取ると同時にウェアのスコートを大急ぎでたくし上げる。
 自分の着替えもあったので、一部始終すべてを見ていたわけではないが、まるで、一瞬たりとも素肌を外気に曝したくない、という決意で臨んだような、ずいぶんあわただしい着替え方だった。

 更衣室には同性の目しかないし、自分のプロポーションを誇示したいのか、無駄に下着姿のままいつまでもキャッキャウフフじゃれ合っている子たちさえいる中で、彼女の内気な中学生のような着替え方は新鮮だった。
 ひょっとしたら、他人に素肌を見られたくない理由、たとえば傷跡とかタトゥとか、があるのだろうか。
 それとも単純に、極度の恥ずかしがりやなのか。
 私の中で、彼女に対する興味が一層増していた。

 授業後の更衣室。
「私、あっちのロッカーだから」
 友人たちに小さく手を振って彼女がひとり、自分の使用ロッカーへと近づいてきた。
 私はすでに着替えを済ませ、ウェアをたたむフリをしながらじっくり彼女の着替えを見てやろう、と待ち構えていた。

 壁向きになって、まず上のウェアを脱ぎ始める彼女。
 両腕を袖から抜き、首からも抜いた後、手早くブラウスを羽織る。
 束の間見えた白くて綺麗な背中、そして純白のブラのベルト。
 背中には、タトゥや傷跡は無いみたい。

 それからスコートを床に落とし、一瞬のアンダースコート姿。
 手早くしゃがんでスカートに両脚を入れ、白くしなやかな脚線美がブルーの生地に隠される。
 前屈みのままスカートの中に両手を入れ、アンダースコートがひきずり下ろされる。
 これで彼女の着替えは終了。
 と、思った瞬間、彼女が思いがけない行動に出た。

 アンダースコートから両脚を抜いた彼女は、一度背筋を伸ばしてロッカーのほうへ向き直り、右手をロッカーの中に入れて何かを取り出した。
 彼女がロッカーに向いたとき、私はあわててうつむき、自分のウェアを丁寧にたたみ直しているフリをした。
 私が見つめつづけていたことには気づかなかったらしく、彼女は再び背を向けて前屈みになった。

 真っ白な三つ折ソックスの右足、つづけて左足をくぐらせた布片は、紛れも無く下着、純白のショーツだった。
 その布片は、スカート内に潜らせた彼女の両手によって、所定の位置まで一気に引きずり上げられたようだった。

 その後、彼女は再びロッカーのほうへ向き直り、テニスウェア一式が丁寧にたたまれてバッグの中にしまわれた。
 ラケットケースを抱えバッグを肩に提げた彼女は、そそくさと私の横を素通りし、出口のほうへ向かっていった。
 その間、おそらく3分にも満たない、あれよという間の出来事だった。

 今見たことについて考えてみた。
 彼女は、アンダースコートの意味を理解していない。
 身に着けている下着の上に重ね穿きし、下着を隠すいわゆる見せパン、として活用するのが本来のアンダースコートの役目。
 わざわざ下着を脱いで、素肌に直接アンダースコートを着けていた彼女は、アンダースコート自体を下着として認識しているのだろうか。

 さっきまでのテニスの授業。
 ほとんどラケットの素振りだけに一時限が費やされた。
 数十名の学生たちがコートに並び、講師の号令の下、ラケットを振るたびに翻る色とりどりのスコート、露になるアンダースコート。
 ほとんどの人たち、いや、おそらく彼女以外の全員が下着の上にアンダースコートを着けていたはず。
 誰に見られても構わないユニフォームの一部、ファッションの一部として。
 だけど彼女だけは、下着を丸出しにしている感覚だったのではないか。

 傍から見ている分には、彼女のアンダースコートと他の人たちのアンダースコートにまったく差異は無い。
 ただ、彼女がわざわざ下着を脱ぎ、その代わりにアンダースコートを着けていたことを知ってしまった私は、頭が混乱してきていた。

 これも彼女の天然ボケのひとつなのだろうか。
 それとも、意図的に行なったものなのだろうか。
 だったらそれは、何のために・・・

 気がつけば人影もまばらになった更衣室。
 彼女のはにかんだような笑顔が頭に浮かんだ。
 ついさっき見た、裸の白い背中としなやかな脚線美。
 それらに、先日のトイレでの出来事が加わり、結果として私の思考は、どんどんエロティックな方向に流されていった。


彼女がくれた片想い 03