2026年6月14日

我慢と免許と脅迫状 06

 お約束は午前10時、オフィスビルに隣接する高層ホテルのエントランス前。
 ワクワクし過ぎて随分前なのに早起きしてしまいます。

 まずはシャワーを浴びて沐浴潔斎。
 入念にからだを洗ってから姿見に自分の全身を映します。
 こうしてじっくり自分の裸を見るのも凄く久しぶり。

 禁欲期間中は激しい運動や思い切り汗をかくこともなかったので、少し体重増えちゃったかな?
 でも今日これからに昂ぶる期待で、両乳首にはすでに血流が集まり始めています。

 裸身をいったんバスタオルに包み、ジャムトーストとバナナミルクで軽い朝食。
 ひと息ついてからもう一度歯磨きしておトイレへ、バスタオルを取り全裸で便座に腰掛けます。
 
 もう一ヶ月以上のあいだ、お浣腸はおろかお尻弄りもしていませんので順調なお通じ。
 ビデでアソコも綺麗に洗浄し全裸のまま、これまた長らくえっちな遊びには使われていなかったマジックミラー張りのサンルームへ。

 何を着ていくか。
 いくらお姉さまでも運転超初心者の私を運転中にイタズラしてくることは無いでしょうから、脱ぎやすい服装を考える必要はないのですが、その後には待望のお愉しみが控えているはずです。

 女性が運転するときはパンツルックが望ましいと教習所で習ったのですが、ガーリーな雰囲気も欲しいので、下は山吹色で少しフワッとした膝丈のキュロットスカート、それに白のフリルブラウスを合わせて、濃紺でマオカラーのショートジャケットを羽織ることにしました。
 靴はローファーにするとして膝下が寂しいので黒いハイソックスを履いて、首には小さなハートのチャームが付いた細めで黒のベルベットチョーカー。
 なんだか教習所に通っているときによくしていた服装になってしまいました。
 
 ただし下着類だけは、お愉しみのことも考慮して服を着ていても脱ぎやすいアイテム、すなわちブラはフロントホックでストラップもホックで外せるリンコさまたちによって魔改造された白のハーフカップブラ。
 ショーツも両サイド紐で結ぶ式な白いローライズショーツ。
 この手の下着を身に着けるのも久し振りですから、それだけでワクワクも膨れ上がってしまいます。

 今日はお姉さまに可愛がってもらえるんだ、という期待が大きすぎてマゾ性さえ隅っこに追いやられているみたいな私。
 でも念のため長らく愛用してくすみの目立つワンちゃんみたいな赤い首輪と長めの縄状ロープなリードをポシェットに忍ばせてお部屋を出ます。
 あ、ポシェットにはその他にスマホとお財布も入っています。

 透き通った青空が広がる秋晴れの池袋。
 お約束の20分も前なのに待ち合わせ場所に着いてしまいます。
 高層ホテルに出入りされているのは外国籍のかたばかり。
 知らない言葉のかまびすしいおしゃべり声が耳元を通り過ぎていきます。

 スマホのソリティアで暇を潰しつつ待っているとSNSにお姉さまからのご連絡通知。
 あと数分で着くとのこと。
 時計を見るとジャスト10時です。

 エントランス前の通りを眺めてみても、お姉さまのサファイアブルーなお車は見当たりません。
 そっか、今日はお姉さまのあの高級車を運転するんだ…教習所のお車より大きいし…大丈夫かな…
 一抹の不安とともにしばらくキョロキョロ通りを見渡していると、目の前にグレーの地味なお車が止まりました。
 プップッと小さくクラクションが鳴ります。

 何なのかな?私が邪魔なのかな?
 そう思ってお車の中を見遣ると運転席に座っていらっしゃるのは、紛うことなきお姉さま。
 えっ!?と思う間もなくお姉さまがドアを開けて降りてこられます。

 今日のお姉さまは、鮮やかなスミレ色のボートネックな七分袖チュニックに落ち着いたブルーのイージーパンツで足元は白いスニーカーという、ずいぶんカジュアルながら素敵すぎる装い。
 右手の薬指には私とお揃いなシルバーのリングがキラキラ輝いています。
 困惑と喜びがごちゃまぜになって、どんな顔をすればいいのかわからない私。

「お待たせー、運転を代わりましょー。直子は運転席に乗って乗って」

 ご陽気なお声で私を促すお姉さま。
 私はまだこの事態を飲み込めていませんが、それでもご挨拶。

「おはようございます、お姉さま。でも、このお車は…」

「あれ?知らなかった?これは会社の車、営業車よ。地下の駐車場で見かけたことあるでしょ、あたしの車の隣で」

 まだ?マークな私。

「ああ、そうか、アヤやたまほのが営業でしょっちゅう乗り回しているから駐車場で見たことないのかもね」

 ずっと顔が?マークな私が面白いらしくすごく愉しげなお姉さま。

「たまほのが免許取ったときに会社で買ったのよ。たまほのも免許取り立てで心細いだろうからって教習所の車と同じ車種のワゴンを」

 お車をよく見てみると確かに教習車と同じお顔をしていて、ひとつ違うのは後ろ部分が箱状になっていること。

「大きめな荷物を積むこと多いからワゴンにしたの。でもハンドル周りは教習のときに乗った車と同じはずよ」

 そう再度促されて運転席におずおずと乗り込むと確かに、運転席まわりが教習のとき乗っていたお車とほぼ同じ外観でした。
 お姉さまが助手席に収まりになり、私も幾分ホッとして私のメイデンドライブが始まります。

「そうそう。免許取り立ての子って発車するまでの儀式が無駄に長くて細かいのよね」

 エンジンはかけっ放しでバトンを渡されたのですが、シートベルトをして運転席の椅子を調整してミラーを確かめて…と緊張している私をご愉快げにからかわれるお姉さま。
 サイドブレーキを外し発車合図のウインカーを出してアクセルを遠慮がちに踏み込むと、お車がソロソロと動き始めました。

 始めのうちはおっかなびっくりだったのですが、車線変更などナビゲーターなお姉さまのご指示が的確でだんだんと運転に余裕が出てきています。
 路上教習で通った道も抜けて未知の領域へ。
 初体験の工事規制片側交互通行や緊急車両優先もどうにかこなし、右へとのご指示で右へ、左に寄ってとのご指示なら左へ、ドビュッシーさまのピアノ曲が低く流れるお車はお姉さまのご指示通りにどこかへ向かっています。
 ちなみに私の予想通り、運転中にお姉さまからのえっちなご命令はまったくありません。

 いつの間にか片側二車線の国道らしき道路を快調に進んでいる私が運転するお車。
 道路はそれなりに混み合ってはいますが、幸いひどい渋滞にも合わず先行車のお尻に車間を取って着いていく安全運転ドライブ。
 お車に備え付けのカーナビはオフったまま、ここがどこなのか、どこへと向かっているのか、さっぱりわかりません。

 ドライブのあいだ、お姉さまは会社の社員さまたちの面白いクセとかお取引先のユニークな方々のことなど面白可笑しくお話くださって、私にずいぶんお気を遣われているみたい。
 おかげで私もずいぶんリラックスしています。
 やがてお昼少し前頃、お姉さまからご提案が。

「週末だし混み合う前に少し早いけれどランチを済ませちゃいましょう。もう一時間以上走っているから直子も少し疲れたのじゃない?」

「あ、はい…」

 私たちが走っている街道沿いには、周辺の土地を広く使ったファミレスやアウトレットが現われては遠ざかっていきます。

「あそこなんかどう?」

 お姉さまが指差された方向に、田舎そば、という大きなのぼりと看板が見えました。
 ウインカーを左に出した私は慎重に左車線へと移り、広い駐車場へと滑り込みます。
 幸い駐車場もまだ混んではなく空きがたくさんあったので、若干不安だった駐車も難なくクリア。
 でもやっぱりそれなりに緊張はしていたみたいで、車外に出たときは思わず、んーーっ、と思い切り両腕を上げて伸びをしてしまいました。

 お姉さまとお揃いで、とろろせいろに小さな山菜おこわが付いたセットをオーダー。
 お食事中もお姉さまは出張中にご一緒したお得意先さまの卵かけご飯に対する過剰なこだわりを面白可笑しくお話くださり、いつぞやのバカンス初日のお蕎麦屋さんみたいにえっちなご命令などはまったくありませんでした。

 お食事も終わり、私たちが柚子のシャーベットに舌鼓を打っているころ、お店がだんだんと混み始めます。
 学生さんぽいカップル、ご年配のご夫婦らしき男女、小さなお子さん連れのご家族、お仕事の途中らしい制服姿の男女4名…
 みなさまそれぞれ楽しげにメニューを選ばれ、美味しそうにお食事を楽しまれています。
 みなさまとお姉さまの笑顔を交互に見つつ、世間で一般的に言われているデートってこういう雰囲気なのだろうなと、ふと思います。

「お店も混み始めてきたし、あたしたちはそろそろ出よっか」
 
 お姉さまに促されてお蕎麦屋さんを後にします。

「この辺まで来ればあともう少しのはずだから、直子もがんばって」

 助手席からの励ましに、はい、とお返事する私。

「それで私たちは、どこに向かっているのですか?」

 私の問いかけに、それはまだ内緒、とはぐらかされるお姉さま。
 しばらく国道らしき幹線道路を進んでから、その角を左ね、とご指示をいただきます。
 片側一車線の細い道路へ入った途端に車外の風景が一変しました。

 長い一本道の左右に広がる広大な畑や空き地や田んぼや林。
 道路脇には雑草が生い茂り、たまに木立、たまに民家。
 すれ違うお車も激減し、私の前後にも一台も見えません。

 秋晴れの青空な秋のお昼どき。
 交差点も信号も無い一本道でお車をひたすら走らせていると、何だか別世界に来てしまったみたい。
 遥か前方に西洋のお城みたいな建物が見えてますます混乱し、通り過ぎるとき横目で見たら、えっ!?あれってひょっとしてラブホ?

 そんな感じに5~6分ほど走るとようやく赤信号に突き当たりました。
 正面には背の高い丘のような草ぼうぼうの斜面。
 それ沿いに道路が左右に横切っています。

「この信号を左ね」

 お姉さまのおっしゃる通りに丘沿いの道をしばらく行くと、やがて丘へと上がる右カーブへとつづいていきます。

「ここは利根川沿いの土手ね、って、あれ江戸川だったけか…」

 自信なさげなお姉さま、と思う間もなくお車は、その利根川だか江戸川を渡る立派な橋へと侵入していました。
 運転席から見る限り川のお水はそんなになみなみとはしていなくて、茶色と緑色の草がぼうぼうな感じ。
 橋を渡りきると今度は川の反対側の土手で、そのまま土手沿いを左へ、というご指示。

 橋を渡り終えてすぐのときはそうでもなかったのですが、土手沿いの道を進んでいくとやがてお車がやっとすれ違えるくらいの道幅となりました。
 土手の反対側も見渡す限り田舎の田園風景でその奥のほうにまた別の土手らしき丘がつづいているのも見えます。
 遥か遠くに民家らしき建物が木立に囲まれてポツンポツンという感じで、道路もいつの間にか舗装が途切れた砂利道に。

 右前方に林っぽい木立が見えるなと思ったときお姉さまから、その林の脇に車を停めなさい、というご指示をいただきました。
 小ぢんまりとした林まで近づいてみると、その入口っぽいところはお車三台くらいが停められる空き地となっていたので、一番左端にフロントから突っ込んでお車を停めました。

「はい、よくできましたー。エンジン止めていいわよ」

 私がエンジンを止めると同時にお姉さまが私のシートベルトを外され、いささか強引に上半身を引き寄せられたと思う間もなく私の唇にお姉さまの唇が重なります。

「んぐぅっ!」

 思いがけないお姉さまの行動に再び困惑と悦びがごちゃまぜとなってしまう私の脳内。
 お姉さまは私の口腔内奥深くまでご自分の舌を潜り込ませて、私の舌や歯、口内粘膜全体を蹂躙してきます。
 絡み合う舌と舌、舐め上げられる歯の裏側。
 お互いのよだれが垂れてしまうのもお構いなしな激しい口づけに、性器の奥底から激しく潤んでくるのをはっきり感じています。

 私にとっては永遠につづいて欲しいくらいの熱烈なディープキスも気がつけば終わっていて、ふたりとも小さくハアハアと荒い息をつきつつ見つめ合います。
 嬉しさで心臓が破裂しそうなほどドキドキ。
 見つめ合っていたお姉さまの瞳がふと、やり過ぎたかな、という感じで照れたようにそらされます。

「あ、あの、ここはどこなのですか?」

 少し気まずい空気に、何か話題を作らなきゃと浮かんだ言葉をそのまま口に出した私。

「ああ、ここは千葉と茨城の県境あたり。あ、埼玉もだったかな。利根川だか江戸川だかの土手沿いのどこか」

 お答えくださるお姉さまは、もういつものご様子に戻られています。

「このあたりは農村部で幹線道路からも離れているし周りは田畑ばかりだから、ネットとかではカーセックスの穴場なんて言われているの。夕方から夜にかけて不審な車があちこちに駐まっているって」
「とくに今の時期は稲刈りも終わって人通りも無さそうだから、久しぶりの直子と車で愉しむにはうってつけだと思ったのよ」

 嬉しすぎるお姉さまのお言葉ですが、ここでまたひとつの疑問が湧き上がります。

「でもお姉さまは、なんでこんな場所をご存知だったのですか?お仕事とも関係無さそうですし…」

「ああ、それはユカリの実家がこのあたりだったから」

「ユカリさまって、お姉さまの服飾部時代のお仲間で今はモデルさんをやっていらっしゃるという…」

「そう、そのユカリの実家っていうのが、何ていうか豪農でね。この辺りの土地をいくつも持っている大富豪で、実家の広大な敷地内にも立派なお屋敷が三つも四つも点在しているの。そのうちのひとつをユカリは自由に使えたから、あたしたちも合宿だ、お泊り会だと言ってはお邪魔していたんだ」
 
 そこでお姉さまがイタズラっぽく微笑まれました。

「ユカリの直子みたいな性癖もここで育まれたらしいわよ。あの子も幼いときから自分が恥ずかしいメに遭うのを妄想するのが大好きだったみたいで、小学生高学年のころから夜な夜な寝床を抜け出して表に出ては自然の中で裸になって、背徳的なスリルを愉しんでいたらしい」
「その頃だったら今にも増して人通りも少なかっただろうし、夜の闇も深かったのだろうけれど、怖さよりも性的な興奮が上回っていた、って言ってた」

 お言葉を紡ぎながらお姉さまの瞳が妖しく輝きます。

「その頃に始めて一番興奮出来てしばらくはルーティンになっちゃったっていう自慰行為っていうのが、最初にやったのは中学一年の夏休みだったらしいけれど、実家の裏手から少し歩くと土手に出れたのね。それでその土手沿いの砂利道にひとつだけポツンと夜になると電灯が灯る電信柱があったそうなの。たぶんユカリの実家から電線が繋がれていたのだと思うけれど」

「夜中の一時過ぎにそっとベッドを抜け出してパジャマにサンダルでその土手沿いの電灯を目指すの。それで電灯の下に着いたらゆっくりとパジャマを脱いでいくの、何者かに脅迫されているみたいに怯えながら。漆黒の暗闇の中をわざわざ一点だけ明るく照らし出している電灯の光の下でね」

「下着まで脱いで素っ裸になったら、立ったままおもむろに自分を慰め始めるの。頭の中で得体の知れない魑魅魍魎たちに乱暴に汚される妄想を思い描きながら。もちろん声は精一杯我慢しながらね。口は真一文字につぐんで苦痛ゆえな悦びの声を必死に堪えながら」

「それでその魑魅魍魎たちはなかなか開放してくれないんだって。何度かイッてもまだ素肌を舐め回したり乳首を引っ張ったり膣内を掻き回したりしていて。気がついたら午前三時を回っていた、なんてこともあったらしい」

「まあそれが今のユカリを形作っているとも言えるわよね。モデルとしてたくさんの見知らぬ人たちに裸身を晒したり、ランウェイをほぼ裸の格好でスポットライト浴びながら歩いたり…」

 そこまでおっしゃったお姉さまが束の間私をじっと見つめ返したと思ったら、今度はゆっくりと唇を近づけてくださいます。
 今度は慈しむように優しい蕩けるようくちづけ。
 互いの舌がふざけあうように絡み合い、お姉さまの右手は私の左おっぱいに。

「あれ、直子の乳首、カッチコチでハードグミみたい。それに大きく膨らんじゃってブラの布地を突き破りそう。なあに?今のユカリの話で興奮しちゃった?」

 私の唇からご自身の唇を離されたお姉さまがからかうみたいにおっしゃいます。

「あ、いえ、それよりもお姉さまのキスで…」

 お姉さまの右手がためらうことなく私の股間に伸びてきます。

「うわ、パンツの上から触ってもわかるくらい湿ってる。ていうことはマゾマンコはもうビショビショグショグショだわね」

「は、はい…」

「直子があたしをのキスだけでそんなに濡らしてくれるなんてとても嬉しいわ」

 そこでもう一度優しいキッス。

「本当はここでカーセックスとやらも体験してみようかなとも思っていたのだけれど、やっぱり昼日中のまだ明るい林の中でっていうのは不安で落ち着かないわね。よし、さっき通り過ぎたホテルに行きましょう。直子は席を代わって。ホテルまではあたしが運転するから」

 私が助手席に回りお姉さまが運転席へ。
 すぐにお車が方向転換しドビュッシーさまが流れ始めます。

「直子はそこで下着を上下とも取ってしまいなさい。外しやすい下着を身に着けていることはお見通しなのだから」

「…は、はい…」

 やっといつものお姉さまが戻ってこられたようです。
 私は恥じらいつつもモソモソとブラウスの内側に腕を入れてフロントホックと肩紐を外し、襟ぐりからかつてブラジャーだったものを引っ張り出します。

 つづいて今度はキュロットパンツのウエストから右手を差し込み、両サイドの紐を解いてから少し腰を浮かせ、お腹のところからかつてショーツであった布を引き摺り出します。
 案の定ショーツのクロッチ部分を中心に盛大に濡れそぼっていて、キュロットパンツの裏側を盛大に汚してしまいました。

「ショーツの裏側をあたしに見せなさい」

 ハンドルを握られ前方を向いたままなお姉さまのご命令で、私は両手でショーツを裏向きに広げ、クロッチの濡れそぼった汚れ部分をお姉さまの横顔に突き出すように差し出します。

「見なくてもわかるくらい臭ってくるわね、直子の匂い。ホテルに着いたら覚悟なさい。当分あたしの顔を見たくないって思えるくらいご奉仕させてあげるから」

 お姉さまがイジワルっぽくおっしゃった後、ポツンとおひと言つづけられました。

「あたしだって一ヶ月以上我慢していたんだからね…」


2026年4月11日

我慢と免許と脅迫状 05

「ああ夢イキかー。それは盲点だった。でもスケベな直子ならさもありなんな充分考えられるイシューだったわね」

 予想外にお姉さまがご納得されたお顔になられています。
 てっきり叱られると思っていた私は戸惑いと共に自分でも予想外なご質問を口走ります。

「チーフは夢イキってご存知なのですか?」

「それは知っているわよ。寝ているあいだに夢の中でイッちゃうことでしょ。あたしの初めては中二だったか中三だっか、あれ?高一だったけかなぁ…」

 お姉さまが束の間遠い目をされて、私はその麗しいお顔にズキュン!
 そのお話、すごく知りたい。

「あ、でもそれを夢イキって呼ぶと知ったのはもっと後でネットで、睡眠中、イク、って検索してからだけどね」

 お茶目に笑われるお姉さま。

「そう言えば直子、さっき、夢イキしちゃったみたい、って曖昧なこと言っていたけれど、経験したの、まさか初めてなの?」

「あ、はい。起きたらシーツやパジャマが物凄く濡れていて、からだにもなんだか気持ち良さの余韻みたいなのが残っていて…」

「でも直子のことだからえっちな夢なんて年がら年中見ているでしょうに」

「それはそうなのですけれど、あんなにお布団やパジャマを汚してしまったことは今まで一度もなくて、最初はオネショしちゃったんじゃないかって焦っちゃったくらいでした」

「そっか。まあ直子の場合、現実でイキまくっているしすぐに我慢せずにオナニーもしちゃうから就寝中に夢の中でもイク暇なんてないんだね。つまりは直子がいかに今まで禁欲していなかったかっていうことだから、いかにも直子らしい初体験よね」

 ご愉快そうにおっしゃるお姉さま。
 この事態をあまり深刻に捉えられてもいないご様子なので、少し調子に乗って一番気になっている点をお尋ねしてしてみます。

「それで、あの…これってお約束を破ってしまったことになってしまうのでしょうか?」

 恐る恐る、懺悔をした信徒が審判を委ねるような敬虔な気持ちを込めたお伺い。
 お姉さまは目線を上げて少し考えるようなお顔をした後、あっさりおっしゃいます。

「仕方ないんじゃない、不可抗力だし。自分ではコントロール出来ない、言ってみれば性的欲求の暴発でしょ?防ぎようがないもの。寝るな、って命令するわけにもいかないし」

 相変わらずあっけらかんとされたお姉さま。
 でもワザとらしく笑顔をひっこめられて、こうつづけられました。

「でもこれに味をしめて夢イキを期待するようなことをするのは駄目よ。寝る前にえっちなことばかり考えて、そういう夢を見るように自分を誘導したりするのは」

「あ、はい、それはもちろん…」

「この禁欲期間は直子が今までいかに恥知らずな方向に傾いてきちゃっているかを確認して反省して軌道修正する機会なのだから、極力えっちなことは考えずに日々普通の生活を送ること」

 ごく生真面目ご口調でそうおっしゃってから再びパソコンのほうへ向き直られ、どうやらお仕事に戻られるようです。

「は、はいっ!がんばります」

 右手の薬指に嵌めた銀色に輝く百合の花モチーフを眺めながら、お姉さまのお背中に向けて改めて覚悟を決めて宣言して、私も先週やりかけだった見積書のための原価集計作業にとりかかります。
 
 ふたりしばらくお仕事に集中してフッと一段落、顔を上げてみるとお姉さまがいつの間にか椅子をこちらに回転され私を見ていることに気づきました。
 目が合うとお姉さまがニッと笑われます。

「ねえ、今までであたしが一番印象的だった夢イキの話。教えてあげよっか?」

 いたずらっぽいお顔になられたお姉さまが私を見つめながらおっしゃいます。

「あ、はい。すごく聞きたいです」

 お姉さまからの唐突なご提案に戸惑いつつも、その内容に興味津々な私。

「横浜で直子と出会って二週間くらい経った頃かな。ショップでのマケリサ上がってオフィス勤務に戻った頃」

 えっ!私が関係あるの!?
 少し遠い目をされたお姉さまのお顔をますますじっと見つめてしまいます。

「しばらくオフィスを留守にしていたから書類仕事がたまっちゃって、ひとりで残業してたんだ。部室に数日泊まり込んでね」
「それがやっと終わって一安心した日の夜。部室のベッドにひとりで寝たときのことだった」

 そこまでおっしゃったお姉さまが再び私を見つめ意味ありげに微笑まれます。
 私はなぜだかドキドキし始めています。

「気にかかっていたことが片付いてぐっすり眠ったはずなのだけれども、何度か夢を見てね。その夢の内容は全部はっきり覚えてる」

 お姉さまがまっすぐ私を見つめてくださいます。

「全部横浜で直子と出会ったときにしたことを反芻する夢。試着室で裸にさせてランジェリーを着せたり脱がせたり、恥ずかしい格好でわざと放置したり」
「でもひとつ実際と違うのは、試着室でもあなたはアンアン盛大によがり声を上げて他のお客さんの見世物になっていたこと。試着室のカーテンも開け放しちゃってね。ギャラリーもいっぱいいて…」

 からかうように笑われるお姉さま。

「あたしも気持ち良さで目が覚めそうになって、あれ?これって夢?現実?ってわからなくなっていたけれど、でも実際気持ちいいからつづき見たさにすぐ微睡んで」

 デスクの上にあった飲みさしのティーカップに一口唇をつけられたお姉さまが再び語り始められます。

「で、あたしがあまりの気持ちいいオーガズムで朝方目覚めちゃったときに見ていたのも、モールの防音スタジオであの日、直子が見せてくれたオナニーショーの再現」
「これも大まかにはあの日の記憶通りなのだけれど、ひとつ違うのは、あたしも下着姿になってショーに乱入しちゃっていたこと」

 少し照れたようなお顔になられるお姉さま。

「仰向けの大股開きで、おっぱいにいくつも洗濯バサミぶら下げてバターナイフで自分を虐めている直子にどうにも我慢できなくなって、ワンピース脱ぎ捨ててあなたの顔面にまたがったの」
「あなたが一生懸命ベロを伸ばしてご奉仕してくれて、ショーツ越しでもそれが凄く気持ちいいのよ。ああ、凄くイイ、イクイク、イッたーって深い余韻と共に目覚めたのが朝方の6過ぎ」
「実際は酷い有様よ。部室だから私物のビッグTシャツ一枚とショーツで寝ていたのだけれど、ショーツはお尻のほうまでぐっしょり、Tシャツもシーツも下半身部分中心にジットリ、全身汗ばんでヌルヌル。でも不思議に嫌な感じはほとんどしていなくて、快感の余韻と満足感が勝っていた」

 ご記憶を反芻されるように目を瞑られたお姉さま。

「あれであたし、あ、あの子とは相性いいかも、って思ったんだ。それで次に会う約束の日が俄然愉しみになってきた。何をやらせようか、どこで脱がせようかって」

 笑いながらおっしゃるお姉さま。

「で、実際に会ったら、あたしの予想を遥かに上回るド淫乱なヘンタイさんだったのがあなただったってワケ」

 そこで私のほうを向かれたまま両目を閉じられ、真面目なお顔に変わられました。
 少しの沈黙の後、静かにお言葉をつづけられます。

「あたしも調子に乗っていたことは認める。あなたって自分のマゾ性に本当に素直で、あたしのどんな命令にも従順に従って、それがあたしも愉しくて」
「だけどここ最近、どんどんエスカレートしていっているあなたを見ていて、だんだん不安になってきた。このまま突っ走ったら直子は、ただ快楽だけを貪り尽くす恥知らずな総受け性欲モンスターに成り下がっちゃうんじゃないかって」

 憐れむようなお顔で私を見つめてくださるお姉さま。

「最近の直子って、ひどく辱められそうな命令を受けるほど目がトロンと潤んでうっとりした顔になっちゃうような傾向があるじゃない」
「それがドマゾ女のサガって言ってしまえばそれまでなんだけれど、人として女性として最低限の羞恥心て言うか、品格、エレガントさみたいなものは失わずに保っていてほしいのよ」

 そこまでおっしゃったお姉さまは突然立ち上がられ、デスクの上のバーキンを肩に提げられました。

「だから今回の禁欲命令は一度クールダウンして直子が自分を見つめ直す内省期間。そのあいだに自分のしてきたことを振り返ってみて直すべきところは直して、より品のあるエレガントなマゾ女を目指しなさい」
「あたしも、っていうかあたしたちもこの禁欲期間が明けたら直子への接し方を少し変えるつもりだから。で、まあとりあえず直子は免許の取得まであと少しなのだからがんばりなさい。じゃあまたね」

 最後のほうのお言葉はお部屋のドアを開けながら。
 投げキッスひとつを私にくださったお姉さまは、あわただしくも颯爽と次のご出張先へと旅立たれました。

 そんな会話をお姉さまとしたせいなのか、はたまた夢イキで一息ついたのか、それからの数日間はめったにムラムラの発作が起きることもない普通な日々の中で教習に集中することが出来ました。

 教習所での講習は第二段階の路上教習に移っていました。
 初めのうちは一般のお車も普通に走られる路上に出るなんて、と無駄にドキドキしていたのですが、二度三度とくり返せば日常となっていきます。
 これといったアクシデントもなく順調にハンコをいただけました。

 ときどきえっちな妄想が頭にチラつくこともあるのですが、こうして下着まできっちり身に付けた普通の服装で普通の生活を送りつづけていると、私がこれまでしでかしてきたあの手の行為がいかに世間一般の常識から逸脱したアブノーマルなことであったのかを思い知らされます。

 ある日の路上教習でこんなことがありました。

 その日はみきわめ間近でもあったため土曜日の午前中に二時限連続で予約を入れていました。
 担当教官さまは、それまでも何度かご一緒したことのある40代くらいのややふくよかな女性のかた。
 お言葉遣いが柔らかでお優しい感じのかたでした。

 路上に出てしばらく走った後、繁華街近くの交差点で信号待ちをしたときのこと。
 横断歩道手前の停止線一番前に停車したのですが、その目の前の横断歩道をキワドイ格好の女性おふたりが談笑されながらゆっくりと繁華街の方へ横断していきました。
 おそらく何かのアニメのコスプレだと思うので、近くで何かイベントがあるのかもしれません。
 
 おふたりとも背は低めの可愛らしい感じで、紫髪のお一人は上半身は星型のブラのみで下半身は濃い紫色のレギンス。
 銀髪のもうお一人は上半身こそ緑色で軍服ふうのしっかりした長袖上着を召されていましたが、丈はウエストまでしかなく下半身は下着なのか水着なのか、かなりローライズな黒のタンガショーツに緑のロングブーツ。

 おふたりで一本のクラシカルな日傘を相合傘にさされ、上には私物らしいお揃いのロングカーディガンを羽織られていました。
 紫髪のかたが星型のモチーフの付いたステッキ状のアイテムも持たれていましたので、魔法少女ものなのかな。

 10月にしては温かくよく晴れた繁華街の週末。
 カジュアルかつファッショナブルな服装で週末を楽しむ方々の中でも明らかに異質でした。
 行き交う人々の中でもとくに男性のかたが、さりげない好奇の視線を彼女たちに投げかけています。

「あーあ、あんなに素肌さらしておへそまで出しちゃって、裸同然じゃない。そんなにまでして注目を浴びたいものなのかしらねえ」

 突然、助手席の担当教官さまが普通のお声でつぶやかれました。
 ビクッとして担当教官さまのほうへ顔を向けた私と担当教官さまの視線がぶつかります。

「コスプレだか何だか知らないけれど、よくあんな恥ずかしい姿で表通りを堂々と歩けるものよね。まるで露出狂そのものじゃない」

 御冗談めかしたご口調で私に同意を求めるように笑いかけてこられる担当教官さま。
 露出狂という私の代名詞のような思いがけないお言葉にもう一度ビクンと反応したものの、そうですよね、という意味合いを込めて作り笑いでうなずく私。
 
 でも心の中では、ああいう恥ずかしい格好を人前に晒すことで快感を得てしまう種類の人間も稀にいるんですよ、とおずおず反論しています。
 そのお話はそれだけその場で終わったのですが、私にとっては、ああ、普通の人の感覚ってこういうものなんだな、ということをあらためて再確認させていただけるものでした。

 その日、家に戻ってから考えました。
 担当教官さまがこのあいだの夏のバカンス時の私、たとえばモールの駐車場の片隅にひとり放置され薄物一枚で自慰行為を強制されている私を目撃されていたら、どんなご感想を持たれるのだろう。
 
 露出狂、社会不適応者、性嗜好障害、色情狂、ヘンタイ…
 でもあのとき、もうどうなってもいいと思うほど、もの凄く気持ち良かったのもまた事実なのですけれど…

 みきわめも無事合格をいただき卒業検定を残すのみとなった頃、次の生理が訪れそうな予兆と一緒に、けっこう激しく、無性に屋外で恥ずかしいメに遭ってみたい、という欲求がこみ上げてきたときがありました。
 ようやくゴールが見えてきたので気が緩んだのでしょうか。

 イケナイとは思いつつも頭の中にはえっちな妄想、そのときはなぜだか一昨年の秋、シーナさまと伺った西池袋のセレクトショップでさんざん恥ずかしい見世物にされたときの切なすぎる逡巡を鮮明に思い出していました。

 悶々とした気持ちで教習所からオフィスへと戻り、パソコンを立ち上げて何気なく大手SNSを覗いたら、とある動画配信者の女性が白昼の街中で半裸になって撮影しコーゼンワイセツで書類送検されたというニュースが飛び込んできました。
 その途端に頭から雲散霧消する私の妄想。

 気になって、公然わいせつ・逮捕、というワードで検索してみると、その多くは男性が街中で下半身を露出した、というものでしたが、そういう行為をすれば目撃されたどなたかしらにツーホーされてケーサツに捕えられハンザイになってしまう、ということが現実でした。
 もともとが臆病な私ですから、すっかり萎縮してしまっています。

 そんなこんなでしたが10月中旬、禁欲のご命令をいただいてから一ヶ月と十数日で試験場の本免学科試験も一発でクリアし、待望の自動車運転免許証を拝受することができました。
 そのあいだ、一度の自慰行為をすることもなく夢イキの一回だけで乗り切れたのは我ながら驚きでした。
 なんだ、私だって我慢しようと思えば我慢できるんじゃん、なんて自画自賛したり…

 運転免許取得の翌朝は、ちょうどお姉さまも出張からお戻りになられる日だったので、ワクワクしながら眠りに就きます。
 おっと、その前にもちろんお姉さまにメールでご報告。
 禁欲生活をつづけていたにも関わらず、お姉さまに逢えるという喜びだけで、えっちなムラムラも心の奥底に引っ込んだまま。

 その日の早朝も私の次にオフィスにご出勤されたのはほのかさまでした。
 朝のご挨拶につづいて運転免許を取得できたことをご報告すると、おめでとう、とご自分のことのように喜んでくださいます。
 
 次にご出社くださったリンコさまミサさまも同じようなご反応で、私としては少し肩透かし。
 禁欲期間が明けたら嵩にかかって恥ずかしいご命令を連発されてくるかな、と心のどこかで思っていましたから。
 オフィス内での凌辱でしたらコーゼンワイセツには該当しませんし…

 そんなちょっと釈然としない思いを抱きつつ、ノルマを達成した開放感を感じながら久々のオフィスワークに専念した午前11時半ば過ぎ、相変わらずノックの音もなく唐突に、お姉さまが社長室にお顔をお出しになられました。

「免許取れたらしいじゃん、おめでとう。これで直子もまた一歩、社会人に近づいたわね。免許証見せて」

 お姉さまの第一声。
 免許を取るということは社会人に近づくということなんだ…
 とミョーに感慨深い私。

「それで昨夜は思い切りオナニーしたの?今まで溜まっていた分を吐き出すみたいに」

 私が差し出した免許証を眺めつつ、からかうようにお姉さまが聞いてこられます。

「あ、いえ、なんだか達成感が凄くて、メールをお送りした後ぐっすり眠り込んでしまいました」

 照れながらも正直に打ち明ける私。

「あら、いい傾向じゃん。それだったらあと二日だけ我慢しなさい。あたしが直子のメイデンドライブにナビゲーターとして助手席で付き合ってあげる。この週末はゆっくり出来るから」

 お姉さまがニッコリおっしゃいます。

「メイデン?ドライブ?」

 引っかかったお言葉をそのままオウム返しする私。

「あら、案外教養無いのね。メイデンは初めてのっていう意味。メイデンボヤージュって聞いたことない?新しく作った船の初めての航海のこと。日本語訳は処女航海」
「アイアンメイデンっていう有名な拷問具があるでしょ?人型の鉄の人形の内側に何本も棘があって、そこに閉じ込められると身体中に突き刺さるっていう。あれも訳すと鉄の処女」

 屈託の無い笑顔で恐ろしいことをおっしゃるお姉さま。

「あれって一説によると、とある中世の貴族のご夫人が粗相してしまったメイドを刺し殺したら返り血を浴びた肌がツヤツヤしたから、処女の血を浴びると肌が綺麗になるって思い込んじゃって、処女をありったけ集めてその血を搾り取るために作らせた拷問具とも言われているわね」

 その手の蘊蓄にお詳しいお姉さま。

「まあ、それは関係ない話として、この週末は直子の運転でどこかへドライブしましょう。行き先は決めないで、行った先で泊まってもいいし、もちろん初めての運転で疲れたようなら直子の部屋に帰ってゆっくりしてもかまわないし」

 えっ、つまりは週末はずっとお姉さまとご一緒ていうこと!?
 お姉さまとの久しぶりのお泊りデート!
 それに、あと二日オナニーを我慢しなさいというご命令って、つまり…
 私のHPもMPも完全復活です。

 週末までの二日間もオフィスでのえっちなご命令はどなたからも無く無難に過ごし、もちろんオナニーも自重して、待望の土曜日を迎えました。


 

2026年1月3日

我慢と免許と脅迫状 04

 生理が来て最初の出社日な月曜日。
 ご指示通り普通の下着を着けて濃紺のビジネススーツに身を包み自宅を出ます。
 秋本番ということで、そろそろ外出ではコートがいるかな、という感じの気温。
 あ、チョーカーは習慣になってしまっていて気持ち的に外せなく、今日も細くて黒いのを着けています。

 一番乗りで出社してまずはオフィスのお掃除。
 上着を脱いでブラウス姿となり、エプロン着けて拭き掃除から。
 やっているあいだにほのかさま、つづいてリンコさまミサさまが出社され朝のご挨拶。
 ほのかさまはご自分のデスクへ、リンコさまミサさまは開発室へ、そして私は社長室へ。

 いつもならこのあたりでもう、私は何かしらの恥ずかしい格好にされているところ。
 たとえ生理中でもタンポンを挿れて、少なくとも上半身は露、ノーブラでなければブラジャーくらいは外されていたものでした。

 でもすんなり完全着衣のまま社長室に入れる違和感。
 ひとりになってパソコンの電源を入れてもなんだか落ち着かない感じ。

 それでも月曜日は伝票の整理やら社員のみなさまのスケジュールをSNSに書き込んだり先週の金銭出納の再確認したりと忙しさに紛れます。
 お弁当の時間もほのかさまとあたりさわりのない会話、リンコさまたちとも休憩時間に世間話、主にアニメや漫画の話題を交わし、退社時間の5時半前にはすることもなくボーッとしていました。

 生理のだるさもあり早めに就寝して翌火曜日はいよいよ自動車教習所入所の日。
 午前中はルーティーンをこなしつつ落ち着かない時間を過ごし、指定時間13時の40分前にオフィスを出ました。

 教習所はオフィスの入ったビルと広い通りを挟んだ真向かい。
 エレベーターや信号の待ち時間等を考慮しなければ徒歩で2分もかからないところにありますが、最初だから受付手続き等で30分前には着いていたほうがよいというほのかさまのアドバイスに従いました。
 ほのかさまは営業職ですが私がオフィス不在のあいだはオフィス勤務中心で商談を進め、私の最優先業務である電話番を代わってくださる手筈になっています。

 都心の教習所らしく教習コースは鉄筋らしきコンクリート2階建ての立体式。
 いつもの出勤路なので気にしていなかったのですが、あらためて見ると敷地に大きなビルが建てられそうなほどかなり広いです。
 受付事務所は、その教習コースを隔てたもう一本向こうの通りにあって、ドキドキしながら建物のエントランスをくぐります。

 私が教習を受けるのはオートマチック車限定免許という種類のもので、一番簡単に取得できる運転免許とのこと。
 入所式に出席したのは私の他にアラフォーくらいのご婦人が2名のみでした。
 この時期の平日は空いているみたい。

 入所式の後、運転適性検査というのをやって、その後一回目の学科講習。
 運転適性検査では、私はかなり普通という結果でした。

 第一段階という仮免を取得するまでの段階で学科を10時間、実技を12時間以上受けなくてはならないそうで、そのスケジュールは前もってチーフがお申込み時に組んでおいてくださっていました。
 基本的に平日の午前中2時間学科講習を受けて、午後に2時間実技講習を受けるというもの。
 月曜日は教習所がお休みですから私の場合、火曜日から金曜日まで連日の教習所通いとなります。

 運転教本や模擬試験問題集などの教科書類を受け取って終わったのが15時過ぎ。
 オフィスには戻ったもののさしあたってのお仕事は無く、ほのかさまに免許取得の心構えなどをレクチャーいただきつつ教本を眺めて退社までの時間を潰して、翌日から私の教習所通いが始まりました。

 最初のうちは順調でした。
 学科はオフィスでも暇さえあれば教本を開いてお勉強していたのですんなり理解することが出来ましたし、実技も安全確認やハンドル操作など初歩的なことなので、さほど苦労はしませんでした。

 あ、そう言えば入所式の日、少しヒールのある靴を履いてきてしまい、実技のときはスニーカーやローファーとか踵のない靴にしてくださいとご注意をうけましたけれど。
 教官の先生も男性女性問わずとてもお優しくご熱心な印象。

 雲行きが怪しくなったのは生理を終えて数日経った頃でした。
 それまで気張っていた緊張感がフッと解けた瞬間の油断とでも言うのでしょうか?
 強烈な性的恥辱欲求=私によくあるムラムラ期を迎えてしまったのです。

 オフィスもお休みで教習所も予約していない日曜日の午後。
 交通ルールの模擬問題集をやり終えて一息ついたとき無性に、今すぐ裸になりたい、裸になってからだ中をまさぐり虐めたいと思ってしまったのです。
 でもお姉さまを裏切ってはいけないと思い返し性的妄想を無理矢理振り払って、もう一度模擬問題集に取り組む私。

 でも入浴するために裸になればお湯の中で知らずしらずに手が股間や乳房にいきそうになるし、パジャマに着替えてベッドに横たわれば自然と腕が股間に伸びそうになってしまいます。
 そのたびにお姉さまが悲しげなお顔になるのを想像して我慢する私。

 私が必死に我慢しているのには、お姉さまのご命令に背いて悲しませたくない、という他にも理由がありました。
 それは生理前にお姉さまから渡されたバカンス三日目の私の恥ずかし過ぎる痴態をミサさまがラフにまとめてくださったというDVDです。

 そこにはショッピングモールの駐車場でのノーブラ歩行からフードコートでのお留守番遠隔ローター羞恥責め、五十嵐さまとのおトイレ内下半身丸出し放尿ショーから駐車場での公然自慰行為、そして大雨の中での全裸お使いまでがテンポよくまとめられていました。
 もちろん生理前の私はそれを観て赤面しながら何度も何度も、お姉さまおっしゃるところの溜めオナニーをしていたのですが、同時に心の奥底で形容し難い恐怖と言うか不穏なものを感じているのも事実でした。

 そこに映っていた映像はどれもハンザイスレスレ、いえ、まさにコーゼンワイセツそのものと言っても過言ではない代物。
 一見AVのように作り物っぽい感じもしているのですが、もちろんAVなどではなく実際に私が不特定多数の眼前で行なったドキュメントなのです。

 快楽に任せてこんなことをつづけていたら、いつかきっと取り返しのつかない事態で破滅してしまう…
 そんな不安と言うか予感と言うか、どす黒いシミのような感情が芽生えていました。

 入社してから、いえ、厳密に言えば六月のショー以来のお姉さまの会社での私の境遇が異常だったのは確かなことで、それをすっかり受け入れて居心地がいいと感じたのは私です。
 でも確かにお姉さまがおっしゃった通り、私もお姉さまを含む社員のみなさまもエスカレートし過ぎているのかも…

 翌月曜日に出社して業務も一段落しボーッとしてるとき、リンコさまからお声をかけられました。

「直子、なんだかお疲れ気味じゃん。ひょっとしてお休み中に我慢できずにオナニーしちゃった?」

「違いますっ!していませんっ!お約束はずっとちゃんと守っていますっ!」

 からかい気味のお言葉でしたが、私はいつになくムキになって否定しました。
 だって実際していませんし、お姉さまに誤解されるようなご報告をされたら困りますから。

 私のらしくもない語気に少しビビられたようなリンコさまでしたが、すぐにニコッと笑われつづけられました。

「ああ逆か。我慢しているからお疲れ気味なんだ。その調子でがんばりな」

 そうお優しくおっしゃって開発部屋に早々と戻られました。

 火曜日からはまた教習所通いの日々。
 学科講習は飽きるほど教本を読み返していましたから規定の10時間で難なくクリア。
 実技講習もS字とクランクで少しつまずきはしましたがなんとかハンコをいただき、来週の効果測定とみきわめという技能試験に受かれば仮免許まで進めることとなりました。

 そのあいだにも性的欲求は絶え間なく訪れていたのですが、そのたびに教本や交通ルールの模擬試験集に没頭し、ネットで教習所体験の参考動画を観まくりました。
 それでも気が紛れないと、クローゼットにしまい込んでいた電子ピアノを引っ張り出してきて、ヘッドフォンをかぶって数年ぶりにピアノの練習まで始めちゃいました。
 
 そんな時間をくりかえす中、あるとき私好みなとある妄想が浮上して私はそれに飛びつきました。

 これは愛するお姉さまからの、私がはしたな過ぎる女性にならないよう親心で課した放置プレイ、焦らし責めという愛ゆえの躾の鞭。
 お姉さまのご命令を遵守して、我慢して我慢して私の禁欲期間が明けた暁にはお姉さまが今までより一層お優しく迎え入れてくださり、ふたりでこの世のものとも思えないほどの快感に酔い痴れるという妄想。
 縛られるのも痛くされるのも見知らぬかたたちに恥ずかしい姿を見られるのもとても気持ち良いけれど、何よりも気持ち良いのは愛するお姉さまとの濃密な交わりなのですから。

 そんなふうな自己暗示で性的衝動を欺きつつ我慢を重ね、翌週の数々の試験もなんとか合格して仮免許をいただくことが出来ました。

 でも好事魔多し、いいことと悪いことは並行して起こります。
 来週から第二段階、路上教習へと進めるということで気が緩んだのでしょう。
 その週の土曜日就寝後、日曜の朝方に目覚めたとき、私にとってはたぶん生まれて初めて、夢イキ、という行為を経験してしまったのです。

 夢イキというのは俗語で、ネットで調べると、男性の夢精のようなものの女性版。
 つまり寝ながら夢の中でオーガズムを迎えるということです。

 その日は一日中家に閉じ籠もり家事とネットとピアノの練習に明け暮れ、就寝したのは23時頃。
 ちなみに就寝するときはブラは外し、素肌にシルクのパジャマ上下でショーツは穿いています。

 ぐっすり眠っていたはずですが、なんだか気持ちいいのとお布団の下腹部が濡れているような違和感で目覚めたのが明け方の5時過ぎでした。

 直前まで何かとてもえっちな夢を見ていたような気もするのですが、それよりもショックだったのはジットリ濡れそぼったシーツです。
 えっ!ひょっとしてこの年になってオネショしちゃった?それとも早々とまた生理が来ちゃった?

 あわててベッドサイドの灯りを点け、掛け布団を跳ね除けて起き上がり確認してみると、シーツやパジャマ、ショーツを濡らしている液体は無色透明、でもちょっと粘り気も感じる…
 クリトリスと両乳首はショーツを脱いで見なくてもわかるくらい、ビンビンに腫れている自覚がありました。

 そこで思いついたのが寝ているあいだに無意識に胸や性器をまさぐってしまった、という疑念。
 でも起きたとき、からだ中は汗ばんでいたけれど両手は乾いて濡れていなかった…
 ここにきて真剣に眠気が覚めて起き上がりベッドを離れてお部屋の電気を点けました。

 濡れたパジャマとショーツのままベッドの枕元に腰掛け、就寝しているあいだのことを思い出してみます。
 まず目覚める直前までに見ていた夢は、どなたかに執拗に乳首を弄られている感覚だった気がします。
 その前のことを思い出そうとするのですが、何だかぼやっとしていてうまくいきません。

 何か凄く気持ちの良い感覚に何度も包まれたような…
 どこかの広場で群衆に囲まれる中、全裸の大の字で磔にされている夢も見たような…
 たくさんの手で乳房や女性器をいろいろもてあそばれる夢も見ていたような…
 イッているあいだ凄く美しいお顔の女性に顔を覗き込まれているような気がしたような…

 ほとんどはっきりとはしないのですが、昔トラウマとなった事態のような嫌な感じは微塵もなく、逆に何か満足感みたいなものがからだに残っている感覚までそこはかとなくありました。
 今までもえっちな夢を見ることは数え切れないほど度々あったのですが、ここまで盛大に濡れ散らかしてしまったことはありません。

 気になったのでネットで、女性、夢の中、イク、と検索したら、夢イキ、という言葉を知りました。

 それによると、事前に充分オナ禁すること、えっちなことを考えながら眠りにつくこと、深い眠りにつくこと、うつ伏せで寝ることなどで夢イキしやすくなると書いてありました。

 そう言えば私、いつもは横向きか仰向けで眠っていることが多いはずなのだけれど、今日目が覚めたときはうつ伏せだった気がします。
 その他の項目も今の私に該当することばかり。
 
 ちなみにうつ伏せで寝るとシーツやお布団が乳首やクリットに接触しやすくなるので、シーツや寝返りの際のお布団からの刺激を愛撫と誤認して性感が高まるそうです。
 だとすると私、夢を見ながら盛んにお布団の中で腰をクネクネしていたのかもしれません…

 そんな中、ひとつ不可解なのは夢の中に出てきたかたたちがすべて見知らぬ女性、思い出せる限り男性器のイメージはまったく残っていないので女性と思います、だったことでした。
 夢の中で私のからだをもてあそんでくださる方々は、みなさまお顔だけはボーッとぼやけて、綺麗な人だなとは思ったりもしたのですが、それがどなたなのかが誰ひとりわかりませんでした。
 麗しのお姉さまを筆頭に会社のかたやお知り合い、昔のお友達なども含めて私の知っているお顔はどなたもご登場されませんでした。
 こんなに毎日お姉さまのことを想っているのに…と、そこには大いに不満を感じました。

 人生初のとてもショッキングな出来事だったので、その朝は寝直す気にもなれずにそのまま早起きして汚したシーツやパジャマとショーツのお洗濯やお布団を干した後、大好きなアニメシリーズのDVD、性的刺激が皆無なタイトル、を一気観したりして、教習所のことも忘れてダラダラと過ごしました。
 そして夕方になり窓の外がだんだんと暗くなるにつれ、考えまいとしてずっとくすぶっていた不安がムクムクと広がり始めます。

 これってお姉さまのご命令を破っちゃったことになるのかな?
 えっちな夢見てイッちゃったことは事実っぽいし…
 でも夢の中でだし私自身の手はまったく関与していないから絶対オナニーではないし…
 でも私のからだが無意識でもえっちな反応をしちゃっているのは私の責任だし…

 あれやこれやと考え過ぎると結局悪いほうの結論に引っ張られてしまうものです。
 悩み疲れて悲観的な気持ちでいつしか眠りに就いたようなのですが、その割には悪夢も見ずにぐっすり眠ったようでした。
 もちろん連日の夢イキもありませんでした。

 明けて月曜日。
 なんだかいつになく清々しい気分とご命令を破ってしまった罪悪感とを半分づつ抱えたフクザツな気持ちで出社しました。
 いつも通りルーティンワークをこなしてフッと一息ついた、開発部以外みなさま外出中の11時過ぎころ、ノックもなしにドアが静かに開かれました。

「あ、お姉さま…」

 そこに立たれているのは、あの無慈悲なご命令を下されて以来、半月以上ぶりに拝見する愛しのお姉さまのご尊顔です。
 ダークグレイのシックなビジネススーツに白のシフォンブラウス、いつものバーキンを左肩に提げられた麗しきお姿。

「こら、ここではチーフでしょ」

 からかうような笑みでご叱責をくださった最愛のチーフがご自分のお席に優雅に腰掛けられます。

「昨夜までインドネシアだったのよ、縫製工場の視察。あ、これお土産、ジャワ島のココナッツやらカシューナッツのクッキー。みんなで食べるように掲示板に告知して」

 バーキンから大きな包みを取り出されたお姉さま。
 お姉さまのスケジュールはSNSに書き込む身として承知の上ですが、真っ先に私のところに来てくださったのが嬉しい。

「あとこれは直子だけに特別。銀細工のリング。あたしとお揃いであたしもプライベートのときは着けるから。右手の薬指にしよう」

 小さな濃紺のジュエルケースを照れたようなお顔で手渡されます。
 なんて嬉しいお土産!

 ケースをそっと開けてみると、そこには繊細な銀細工が施された百合の花モチーフのシルバーに輝く細い指輪。
 わっ!と一言歓声を上げてから早速ご指示通り右手の薬指に嵌めてみます。
 サイズもぴったり、すごく綺麗で品があって物凄く嬉しい!

「銀は黒ずみやすいから小まめにお手入れしてね。お手入れ用のセーム革もケースに入っているから」

 お姉さまが笑顔でおっしゃりながらご自分の右手も見せてくださいます。
 確かに同じデザインの指輪が薬指に燦然と光り輝いています。
 私の歓喜モードがマックスを振り切っています。

「直子だからチョーカーっていうのも考えたのだけれど、時期が時期だしねって思って自粛した」

 相変わらずからかうような笑顔なお姉さまがつづけます。

「で、免許のほうはどんな感じ?」

「あ、はい。先週やっと仮免許までいけまして、今週から路上教習が始まります」

 ここまでは本当のことなので淀むこと無くお答えすることができます。

「へー。あれから二週間?三週間?ちょっとでしょ、直子にしては上出来じゃん。正直言ってあたし、もっとモタつくかと思ってた」

 本当に意外というお顔をされながら嬉しそうにおっしゃってくださるお姉さま。

「順調じゃない。そんな感じならあと数週間で、直子の運転でどこかへドライブが出来そうね」

 嬉しいことをおっしゃってくださるお姉さまですが、その後に必ずされるであろうご質問がわかっているので私は萎れ始めています。

「で、あっちのほうはどうなの?」

 いたずらっぽくお問いかけくださるお姉さま。
 それから椅子をクルッと回転させてデスクに向き合わられたお姉さまは、ご自分のパソコンを立ち上げるようです。

 来てしまいました。
 伏し目がちになり、声のトーンも抑え気味になってしまう私。

「あ、はい。あれから自分では一度もえっちなことはしていません…社員のみなさまも毎日普通に接してくださっています…」

「へー、頑張って我慢しているんだ、すごいじゃん。直子はやれば出来る子だと思ってた」

 背中越しの相変わらず明るいお声。
 ご自分のデスクのパソコンを操作されながらの会話なので、私の異変には気づかれていないご様子。

「…でも…」

 やっぱりお姉さまに嘘はつけません。
 自白することに決めました。

「でも?」

 お姉さまが私のほうに向き直られ、覗き込むように見つめてきます。
 私も申し訳ない気持ちで顔を上げ、すがる想いで視線を合わせました。

「…ごめんなさい…昨日…お休みの日の明け方に私、夢イキしちゃったみたいなんです…」

 お姉さまのふたつの瞳が驚いたように一瞬大きく見開かれ、すぐにスッと細くなられました。