2026年1月3日

我慢と免許と脅迫状 04

 生理が来て最初の出社日な月曜日。
 ご指示通り普通の下着を着けて濃紺のビジネススーツに身を包み自宅を出ます。
 秋本番ということで、そろそろ外出ではコートがいるかな、という感じの気温。
 あ、チョーカーは習慣になってしまっていて気持ち的に外せなく、今日も細くて黒いのを着けています。

 一番乗りで出社してまずはオフィスのお掃除。
 上着を脱いでブラウス姿となり、エプロン着けて拭き掃除から。
 やっているあいだにほのかさま、つづいてリンコさまミサさまが出社され朝のご挨拶。
 ほのかさまはご自分のデスクへ、リンコさまミサさまは開発室へ、そして私は社長室へ。

 いつもならこのあたりでもう、私は何かしらの恥ずかしい格好にされているところ。
 たとえ生理中でもタンポンを挿れて、少なくとも上半身は露、ノーブラでなければブラジャーくらいは外されていたものでした。

 でもすんなり完全着衣のまま社長室に入れる違和感。
 ひとりになってパソコンの電源を入れてもなんだか落ち着かない感じ。

 それでも月曜日は伝票の整理やら社員のみなさまのスケジュールをSNSに書き込んだり先週の金銭出納の再確認したりと忙しさに紛れます。
 お弁当の時間もほのかさまとあたりさわりのない会話、リンコさまたちとも休憩時間に世間話、主にアニメや漫画の話題を交わし、退社時間の5時半前にはすることもなくボーッとしていました。

 生理のだるさもあり早めに就寝して翌火曜日はいよいよ自動車教習所入所の日。
 午前中はルーティーンをこなしつつ落ち着かない時間を過ごし、指定時間13時の40分前にオフィスを出ました。

 教習所はオフィスの入ったビルと広い通りを挟んだ真向かい。
 エレベーターや信号の待ち時間等を考慮しなければ徒歩で2分もかからないところにありますが、最初だから受付手続き等で30分前には着いていたほうがよいというほのかさまのアドバイスに従いました。
 ほのかさまは営業職ですが私がオフィス不在のあいだはオフィス勤務中心で商談を進め、私の最優先業務である電話番を代わってくださる手筈になっています。

 都心の教習所らしく教習コースは鉄筋らしきコンクリート2階建ての立体式。
 いつもの出勤路なので気にしていなかったのですが、あらためて見ると敷地に大きなビルが建てられそうなほどかなり広いです。
 受付事務所は、その教習コースを隔てたもう一本向こうの通りにあって、ドキドキしながら建物のエントランスをくぐります。

 私が教習を受けるのはオートマチック車限定免許という種類のもので、一番簡単に取得できる運転免許とのこと。
 入所式に出席したのは私の他にアラフォーくらいのご婦人が2名のみでした。
 この時期の平日は空いているみたい。

 入所式の後、運転適性検査というのをやって、その後一回目の学科講習。
 運転適性検査では、私はかなり普通という結果でした。

 第一段階という仮免を取得するまでの段階で学科を10時間、実技を12時間以上受けなくてはならないそうで、そのスケジュールは前もってチーフがお申込み時に組んでおいてくださっていました。
 基本的に平日の午前中2時間学科講習を受けて、午後に2時間実技講習を受けるというもの。
 月曜日は教習所がお休みですから私の場合、火曜日から金曜日まで連日の教習所通いとなります。

 運転教本や模擬試験問題集などの教科書類を受け取って終わったのが15時過ぎ。
 オフィスには戻ったもののさしあたってのお仕事は無く、ほのかさまに免許取得の心構えなどをレクチャーいただきつつ教本を眺めて退社までの時間を潰して、翌日から私の教習所通いが始まりました。

 最初のうちは順調でした。
 学科はオフィスでも暇さえあれば教本を開いてお勉強していたのですんなり理解することが出来ましたし、実技も安全確認やハンドル操作など初歩的なことなので、さほど苦労はしませんでした。

 あ、そう言えば入所式の日、少しヒールのある靴を履いてきてしまい、実技のときはスニーカーやローファーとか踵のない靴にしてくださいとご注意をうけましたけれど。
 教官の先生も男性女性問わずとてもお優しくご熱心な印象。

 雲行きが怪しくなったのは生理を終えて数日経った頃でした。
 それまで気張っていた緊張感がフッと解けた瞬間の油断とでも言うのでしょうか?
 強烈な性的恥辱欲求=私によくあるムラムラ期を迎えてしまったのです。

 オフィスもお休みで教習所も予約していない日曜日の午後。
 交通ルールの模擬問題集をやり終えて一息ついたとき無性に、今すぐ裸になりたい、裸になってからだ中をまさぐり虐めたいと思ってしまったのです。
 でもお姉さまを裏切ってはいけないと思い返し性的妄想を無理矢理振り払って、もう一度模擬問題集に取り組む私。

 でも入浴するために裸になればお湯の中で知らずしらずに手が股間や乳房にいきそうになるし、パジャマに着替えてベッドに横たわれば自然と腕が股間に伸びそうになってしまいます。
 そのたびにお姉さまが悲しげなお顔になるのを想像して我慢する私。

 私が必死に我慢しているのには、お姉さまのご命令に背いて悲しませたくない、という他にも理由がありました。
 それは生理前にお姉さまから渡されたバカンス三日目の私の恥ずかし過ぎる痴態をミサさまがラフにまとめてくださったというDVDです。

 そこにはショッピングモールの駐車場でのノーブラ歩行からフードコートでのお留守番遠隔ローター羞恥責め、五十嵐さまとのおトイレ内下半身丸出し放尿ショーから駐車場での公然自慰行為、そして大雨の中での全裸お使いまでがテンポよくまとめられていました。
 もちろん生理前の私はそれを観て赤面しながら何度も何度も、お姉さまおっしゃるところの溜めオナニーをしていたのですが、同時に心の奥底で形容し難い恐怖と言うか不穏なものを感じているのも事実でした。

 そこに映っていた映像はどれもハンザイスレスレ、いえ、まさにコーゼンワイセツそのものと言っても過言ではない代物。
 一見AVのように作り物っぽい感じもしているのですが、もちろんAVなどではなく実際に私が不特定多数の眼前で行なったドキュメントなのです。

 快楽に任せてこんなことをつづけていたら、いつかきっと取り返しのつかない事態で破滅してしまう…
 そんな不安と言うか予感と言うか、どす黒いシミのような感情が芽生えていました。

 入社してから、いえ、厳密に言えば六月のショー以来のお姉さまの会社での私の境遇が異常だったのは確かなことで、それをすっかり受け入れて居心地がいいと感じたのは私です。
 でも確かにお姉さまがおっしゃった通り、私もお姉さまを含む社員のみなさまもエスカレートし過ぎているのかも…

 翌月曜日に出社して業務も一段落しボーッとしてるとき、リンコさまからお声をかけられました。

「直子、なんだかお疲れ気味じゃん。ひょっとしてお休み中に我慢できずにオナニーしちゃった?」

「違いますっ!していませんっ!お約束はずっとちゃんと守っていますっ!」

 からかい気味のお言葉でしたが、私はいつになくムキになって否定しました。
 だって実際していませんし、お姉さまに誤解されるようなご報告をされたら困りますから。

 私のらしくもない語気に少しビビられたようなリンコさまでしたが、すぐにニコッと笑われつづけられました。

「ああ逆か。我慢しているからお疲れ気味なんだ。その調子でがんばりな」

 そうお優しくおっしゃって開発部屋に早々と戻られました。

 火曜日からはまた教習所通いの日々。
 学科講習は飽きるほど教本を読み返していましたから規定の10時間で難なくクリア。
 実技講習もS字とクランクで少しつまずきはしましたがなんとかハンコをいただき、来週の効果測定とみきわめという技能試験に受かれば仮免許まで進めることとなりました。

 そのあいだにも性的欲求は絶え間なく訪れていたのですが、そのたびに教本や交通ルールの模擬試験集に没頭し、ネットで教習所体験の参考動画を観まくりました。
 それでも気が紛れないと、クローゼットにしまい込んでいた電子ピアノを引っ張り出してきて、ヘッドフォンをかぶって数年ぶりにピアノの練習まで始めちゃいました。
 
 そんな時間をくりかえす中、あるとき私好みなとある妄想が浮上して私はそれに飛びつきました。

 これは愛するお姉さまからの、私がはしたな過ぎる女性にならないよう親心で課した放置プレイ、焦らし責めという愛ゆえの躾の鞭。
 お姉さまのご命令を遵守して、我慢して我慢して私の禁欲期間が明けた暁にはお姉さまが今までより一層お優しく迎え入れてくださり、ふたりでこの世のものとも思えないほどの快感に酔い痴れるという妄想。
 縛られるのも痛くされるのも見知らぬかたたちに恥ずかしい姿を見られるのもとても気持ち良いけれど、何よりも気持ち良いのは愛するお姉さまとの濃密な交わりなのですから。

 そんなふうな自己暗示で性的衝動を欺きつつ我慢を重ね、翌週の数々の試験もなんとか合格して仮免許をいただくことが出来ました。

 でも好事魔多し、いいことと悪いことは並行して起こります。
 来週から第二段階、路上教習へと進めるということで気が緩んだのでしょう。
 その週の土曜日就寝後、日曜の朝方に目覚めたとき、私にとってはたぶん生まれて初めて、夢イキ、という行為を経験してしまったのです。

 夢イキというのは俗語で、ネットで調べると、男性の夢精のようなものの女性版。
 つまり寝ながら夢の中でオーガズムを迎えるということです。

 その日は一日中家に閉じ籠もり家事とネットとピアノの練習に明け暮れ、就寝したのは23時頃。
 ちなみに就寝するときはブラは外し、素肌にシルクのパジャマ上下でショーツは穿いています。

 ぐっすり眠っていたはずですが、なんだか気持ちいいのとお布団の下腹部が濡れているような違和感で目覚めたのが明け方の5時過ぎでした。

 直前まで何かとてもえっちな夢を見ていたような気もするのですが、それよりもショックだったのはジットリ濡れそぼったシーツです。
 えっ!ひょっとしてこの年になってオネショしちゃった?それとも早々とまた生理が来ちゃった?

 あわててベッドサイドの灯りを点け、掛け布団を跳ね除けて起き上がり確認してみると、シーツやパジャマ、ショーツを濡らしている液体は無色透明、でもちょっと粘り気も感じる…
 クリトリスと両乳首はショーツを脱いで見なくてもわかるくらい、ビンビンに腫れている自覚がありました。

 そこで思いついたのが寝ているあいだに無意識に胸や性器をまさぐってしまった、という疑念。
 でも起きたとき、からだ中は汗ばんでいたけれど両手は乾いて濡れていなかった…
 ここにきて真剣に眠気が覚めて起き上がりベッドを離れてお部屋の電気を点けました。

 濡れたパジャマとショーツのままベッドの枕元に腰掛け、就寝しているあいだのことを思い出してみます。
 まず目覚める直前までに見ていた夢は、どなたかに執拗に乳首を弄られている感覚だった気がします。
 その前のことを思い出そうとするのですが、何だかぼやっとしていてうまくいきません。

 何か凄く気持ちの良い感覚に何度も包まれたような…
 どこかの広場で群衆に囲まれる中、全裸の大の字で磔にされている夢も見たような…
 たくさんの手で乳房や女性器をいろいろもてあそばれる夢も見ていたような…
 イッているあいだ凄く美しいお顔の女性に顔を覗き込まれているような気がしたような…

 ほとんどはっきりとはしないのですが、昔トラウマとなった事態のような嫌な感じは微塵もなく、逆に何か満足感みたいなものがからだに残っている感覚までそこはかとなくありました。
 今までもえっちな夢を見ることは数え切れないほど度々あったのですが、ここまで盛大に濡れ散らかしてしまったことはありません。

 気になったのでネットで、女性、夢の中、イク、と検索したら、夢イキ、という言葉を知りました。

 それによると、事前に充分オナ禁すること、えっちなことを考えながら眠りにつくこと、深い眠りにつくこと、うつ伏せで寝ることなどで夢イキしやすくなると書いてありました。

 そう言えば私、いつもは横向きか仰向けで眠っていることが多いはずなのだけれど、今日目が覚めたときはうつ伏せだった気がします。
 その他の項目も今の私に該当することばかり。
 
 ちなみにうつ伏せで寝るとシーツやお布団が乳首やクリットに接触しやすくなるので、シーツや寝返りの際のお布団からの刺激を愛撫と誤認して性感が高まるそうです。
 だとすると私、夢を見ながら盛んにお布団の中で腰をクネクネしていたのかもしれません…

 そんな中、ひとつ不可解なのは夢の中に出てきたかたたちがすべて見知らぬ女性、思い出せる限り男性器のイメージはまったく残っていないので女性と思います、だったことでした。
 夢の中で私のからだをもてあそんでくださる方々は、みなさまお顔だけはボーッとぼやけて、綺麗な人だなとは思ったりもしたのですが、それがどなたなのかが誰ひとりわかりませんでした。
 麗しのお姉さまを筆頭に会社のかたやお知り合い、昔のお友達なども含めて私の知っているお顔はどなたもご登場されませんでした。
 こんなに毎日お姉さまのことを想っているのに…と、そこには大いに不満を感じました。

 人生初のとてもショッキングな出来事だったので、その朝は寝直す気にもなれずにそのまま早起きして汚したシーツやパジャマとショーツのお洗濯やお布団を干した後、大好きなアニメシリーズのDVD、性的刺激が皆無なタイトル、を一気観したりして、教習所のことも忘れてダラダラと過ごしました。
 そして夕方になり窓の外がだんだんと暗くなるにつれ、考えまいとしてずっとくすぶっていた不安がムクムクと広がり始めます。

 これってお姉さまのご命令を破っちゃったことになるのかな?
 えっちな夢見てイッちゃったことは事実っぽいし…
 でも夢の中でだし私自身の手はまったく関与していないから絶対オナニーではないし…
 でも私のからだが無意識でもえっちな反応をしちゃっているのは私の責任だし…

 あれやこれやと考え過ぎると結局悪いほうの結論に引っ張られてしまうものです。
 悩み疲れて悲観的な気持ちでいつしか眠りに就いたようなのですが、その割には悪夢も見ずにぐっすり眠ったようでした。
 もちろん連日の夢イキもありませんでした。

 明けて月曜日。
 なんだかいつになく清々しい気分とご命令を破ってしまった罪悪感とを半分づつ抱えたフクザツな気持ちで出社しました。
 いつも通りルーティンワークをこなしてフッと一息ついた、開発部以外みなさま外出中の11時過ぎころ、ノックもなしにドアが静かに開かれました。

「あ、お姉さま…」

 そこに立たれているのは、あの無慈悲なご命令を下されて以来、半月以上ぶりに拝見する愛しのお姉さまのご尊顔です。
 ダークグレイのシックなビジネススーツに白のシフォンブラウス、いつものバーキンを左肩に提げられた麗しきお姿。

「こら、ここではチーフでしょ」

 からかうような笑みでご叱責をくださった最愛のチーフがご自分のお席に優雅に腰掛けられます。

「昨夜までインドネシアだったのよ、縫製工場の視察。あ、これお土産、ジャワ島のココナッツやらカシューナッツのクッキー。みんなで食べるように掲示板に告知して」

 バーキンから大きな包みを取り出されたお姉さま。
 お姉さまのスケジュールはSNSに書き込む身として承知の上ですが、真っ先に私のところに来てくださったのが嬉しい。

「あとこれは直子だけに特別。銀細工のリング。あたしとお揃いであたしもプライベートのときは着けるから。右手の薬指にしよう」

 小さな濃紺のジュエルケースを照れたようなお顔で手渡されます。
 なんて嬉しいお土産!

 ケースをそっと開けてみると、そこには繊細な銀細工が施された百合の花モチーフのシルバーに輝く細い指輪。
 わっ!と一言歓声を上げてから早速ご指示通り右手の薬指に嵌めてみます。
 サイズもぴったり、すごく綺麗で品があって物凄く嬉しい!

「銀は黒ずみやすいから小まめにお手入れしてね。お手入れ用のセーム革もケースに入っているから」

 お姉さまが笑顔でおっしゃりながらご自分の右手も見せてくださいます。
 確かに同じデザインの指輪が薬指に燦然と光り輝いています。
 私の歓喜モードがマックスを振り切っています。

「直子だからチョーカーっていうのも考えたのだけれど、時期が時期だしねって思って自粛した」

 相変わらずからかうような笑顔なお姉さまがつづけます。

「で、免許のほうはどんな感じ?」

「あ、はい。先週やっと仮免許までいけまして、今週から路上教習が始まります」

 ここまでは本当のことなので淀むこと無くお答えすることができます。

「へー。あれから二週間?三週間?ちょっとでしょ、直子にしては上出来じゃん。正直言ってあたし、もっとモタつくかと思ってた」

 本当に意外というお顔をされながら嬉しそうにおっしゃってくださるお姉さま。

「順調じゃない。そんな感じならあと数週間で、直子の運転でどこかへドライブが出来そうね」

 嬉しいことをおっしゃってくださるお姉さまですが、その後に必ずされるであろうご質問がわかっているので私は萎れ始めています。

「で、あっちのほうはどうなの?」

 いたずらっぽくお問いかけくださるお姉さま。
 それから椅子をクルッと回転させてデスクに向き合わられたお姉さまは、ご自分のパソコンを立ち上げるようです。

 来てしまいました。
 伏し目がちになり、声のトーンも抑え気味になってしまう私。

「あ、はい。あれから自分では一度もえっちなことはしていません…社員のみなさまも毎日普通に接してくださっています…」

「へー、頑張って我慢しているんだ、すごいじゃん。直子はやれば出来る子だと思ってた」

 背中越しの相変わらず明るいお声。
 ご自分のデスクのパソコンを操作されながらの会話なので、私の異変には気づかれていないご様子。

「…でも…」

 やっぱりお姉さまに嘘はつけません。
 自白することに決めました。

「でも?」

 お姉さまが私のほうに向き直られ、覗き込むように見つめてきます。
 私も申し訳ない気持ちで顔を上げ、すがる想いで視線を合わせました。

「…ごめんなさい…昨日…お休みの日の明け方に私、夢イキしちゃったみたいなんです…」

 お姉さまのふたつの瞳が驚いたように一瞬大きく見開かれ、すぐにスッと細くなられました。


0 件のコメント:

コメントを投稿