ふたりのあいだにテーブルはありません。
両内腿をピッタリ合わせて揃えている私の両膝を、黒いスリムジーンズな桜子さまの両膝が左右から挟みこむくらいの至近距離。
背筋を伸ばし、胸を張るように指示された私と、前のめりな桜子さま。
自分でたくしあげているTシャツの裾から零れた私の左おっぱいのすぐ前に、桜子さまのお顔があります。
桜子さまがそのおっぱいの表面を、ウエットティッシュみたいなもので丁寧に拭い始めました。
「んっ・・・」
ひんやりとした感触に思わずからだがヒクっと震えてしまいます。
「ずいぶん火照っているのねえ?直じゃなくても指先に体温が伝わってくるわよ?」
上目遣いに私を見つつ、桜子さまがフフンて笑いました。
乳首を中心として満遍なく、おっぱいが撫ぜ回されます。
「ぷにぷに。やわらかいのね」
「んんっ!」
桜子さまの手首の辺りが、尖った乳首に引っかかりました。
私は口を真一文字に結んで、悦びの声を必死に堪えます。
「ナオの乳首、本当にカチンコチンね?よくもまあこんな長い間、尖らせっぱなしに出来るものだわ」
そんなイジワルをおっしゃりながらも、桜子さまはテキパキと両手を動かしています。
3~4センチ四方くらいの百合のお花のシールが乳首の右上に貼られ、軽くポンポンと叩かれてから、ゆっくり台紙が剥がされました。
白地に黄色い筋と赤い斑点の入った綺麗な山百合が一輪、私のおっぱいの乳首脇に咲きました。
「うん。いい感じね」
満足そうにうなずいた桜子さまが、パフでシールの上をポンポンと叩きます。
私の左おっぱい全体がプルンプルンと弾みました。
「ナオのおっぱいの揺れ方って、なんて言うか、ぽってり重そうで、すごくいやらしい」
薄い笑みを浮かべた桜子さまがそうおっしゃってから、傍らに置いたデスク上のお道具に右手を伸ばしました。
細いブラシを手にした桜子さまのお顔が、再び私のおっぱいにグイッと近づいてきました。
そして、肌を這う微かな感触。
アイラインブラシくらいのか細い筆先で、百合のお花に茎部分が緑色で描き加えられていきます。
そのコショコショとしたもどかしい愛撫。
「ふぅぅん・・・」
思わず鼻息が洩れてしまい、恥ずかしさに目をつぶってしまいます。
まるで、すっごく小さな虫に乳首の周りを這いずりまわられているような、じれったい愛撫がしばらくつづきました。
その虫は、少し動いては止まり、また少し動いては止まり。
虫の愛撫とは別に、ブラシを持つ桜子さまの人肌の掌も、ときどき乳首周辺の肌に触れたり触れなかったり。
目をつぶっていると、どうしてもその感触に全神経が集中してしまい、からだがモヤモヤ疼いてきてしまいます。
あまりにももどかしくて、あまりにもじれったくて、このままだとヘンになっちゃう。
気を散らさなきゃ。
そっと目を開けると、至近距離に桜子さまの真剣な目つき。
私のおっぱいに絶え間なくブラシを走らせ、ときどき、ご自身の指で肌の染料を伸ばしたりもされています。
お道具を変えるのか、ブラシが肌から離れ、桜子さまが傍らのデスクに手を伸ばしたとき、お店のドアチャイムが突然鳴りました。
カランカラン・・・いらっしゃいませー。
ドッキーン!
上半身がビクンと跳ねて、反射的に入口ドアのほうへ振り向く私。
「動かないの!」
桜子さまの鋭いお声。
「何をそんなにビクビクしているの?ナオは、みんなに裸を視られたくて、そんな格好してきたんでしょう?そういうのが好きなんでしょう?」
「だったら視てもらえばいいじゃない?ワタシもお金をもらう以上、中途半端な仕事はしたくないの」
「お客様が来るたびにビクビク動かれたら作業が進まないわよ?平気な顔していれば、お客様も、そういうものかな、って思うから、終わるまで何があってもじっとしていなさい」
桜子さまのお顔に薄ら笑いはもはや無く、ご自分の作品に没頭している精悍なアーティストの面持ちでした。
カッコイイ。
「は、はい。わかりました・・・ごめんなさい」
またまた見蕩れてしまう私。
桜子さまのお顔が私の左おっぱいに覆いかぶさるように前のめりになり、再びブラシが肌を撫ぜ始めました。
「あ、それはね、今週入ってきた新柄なの。色違いもありますよ」
純さまが接客されるお声が聞こえてきます。
そう言えばシーナさまは?
顔は動かさず、視線だけで周りを見渡してみましたが、私の視界内にシーナさまの姿はありませんでした。
私の背後で、桜子さまの作業を見ていらっしゃるのかな?
なんて考えているとまた、カランカラン・・・いらっしゃいませー。
やっぱりけっこう、お客様いらっしゃるんだ。
思った途端に体温が上がり始めました。
こんな調子なら、いつか絶対、誰かに視られちゃう・・・
こっちの売り場まで、誰も来ませんように・・・
両脚の付け根がヌルッってきたのを感じて、内股にギュッといっそう力が入ってしまいました。
「なんだかまた肌が上気してきたわね?他のお客様が来たから興奮しているの?」
桜子さまがブラシを動かす手は止めず、くぐもったお声で尋ねてきます。
「あともう少しだから、がまんしてじっとしててね。ナオが動いて失敗したら、ワタシ、あーあ、って大きな声出して、ナオのことみんなに注目させちゃうからね」
「は、はい・・・」
心を落ち着けるために再び目を閉じて、ひたすら終わりを待つことにしました。
カランカラン・・・ありがとうございましたー。
カランカラン・・・いらっしゃいませー。
カランカラン・・・いらっしゃいませー。
カランカラン・・・ありがとうございましたー。
カランカラン・・・いらっしゃいませー。
頻繁にお客様が訪れては帰られているようです。
「今日は何をお探しですか?ゆっくり見ていってくださいねー」
店内に響く桜子さまの快活な接客のお声を聞きつつ、店内を歩き回る複数の足音にも真剣に耳を澄ませていました。
幸い今のところ、こちらのほうへ近づいて来る足音はありません。
でも心臓は、爆発しちゃいそうなくらいハラハラドキドキ。
「おっけー。こっち側は完成よ。我ながらなかなかの出来栄えだわ!」
少し大きめな桜子さまのお声に、反射的に目を開けました。
私の左おっぱいからお顔を離した桜子さまが、対面からじーっと私の左おっぱいを凝視していました。
「へー。いいじゃない。さすがだわ、桜子さん」
いつの間にかシーナさまも桜子さまの傍らに立ち、私の左おっぱいを見つめています。
視線を自分の左胸に落としました。
左乳房の乳首右斜め上に、乳暈よりひと回り大きいくらいの綺麗な山百合の花が一輪、咲いていました。
そのお花の下から緑色の茎が、乳暈の円周を廻りこむように左側へ流れています。
茎は途中から英語の筆記体になっていて、小さな葉っぱをちりばめた草のような装飾書体で、Masochist Naoko、と読めました。
文字は、乳暈の円周に沿って乳首を囲むように描かれていて、Naoko の最後の o の字がちょうど乳首の左側まで来ていました。
確かにデザイン的には、とってもシャレていて格調高いアートな感じでした。
山百合の白と黄色と赤、茎と葉の緑と薄茶、そして乳首と乳暈の濃いめなピンク。
それらがまあるいおっぱいの肌色の上で、鮮やかなコントラストを描いていました。
だけど、描いてある文字の意味は、私のアブノーマルな性癖のこと。
マゾヒスト直子。
これからしばらくのあいだ、私はおっぱいにこんなことを描かれたまま、暮らさなくてはいけないんだ・・・
そんなふうに思うとたちまち、股間がキュンキュン盛大にざわめいてしまいました。
「ふぅーーっ。染料が乾くまで2、3分、休憩させてね。次は薔薇だったわよね?」
「んーーーっ!」
桜子さまが座ったまま、両手を思い切り上にあげて伸びをされました。
「よかったじゃない直子。すっごくステキに仕上がって。今日、純ちゃんのお店に来た甲斐があったわね」
シーナさまがケータイを向けてカシャッと写真を撮りつつ、嬉しそうに笑いました。
「あ、ご試着ですか?でしたらこちらへどうぞー」
小休止で緊張が少し緩まったのも束の間、緊急非常事態発生みたい。
「そのデザインなら絶対、お客さまにお似合いですよ。もしサイズが合わなかったら同じお色で他のサイズもありますから・・・」
純さまのお声が近づいてきたと思ったら、私から見て右奥のハンガーラックの陰から、何かお洋服を手にした純さまが現われました。
純さまはそのまま、スタスタと桜子さまの背後を歩いていかれます。
つづいて現われたのは見知らぬお客様。
私の視界に入ったと同時に、そのお客様も私の姿に気づいたようでした。
そのお客様は私を見て、ギョッとしたように一瞬立ち止まってから、うつむいて小走りで、私のほうを見ないようにしながら純さまに追いすがりました。
純さまが現われたとき、私もドキッとしつつその方向を凝視していましたから、つづいて現われたそのお客様ともバッチリ視線が合って、しばし見つめ合う形になりました。
驚きでまんまるに見開かれたそのお客さまのふたつの瞳。
たぶん同い年くらいの学生さんぽい、可愛らしい感じのスレンダーな女性でした。
あまりの恥ずかしさに、からだ中の血液が闇雲にグルグル駆け巡りました。
しかしながら、今さっき染料で描かれて乾ききっていない作品を、Tシャツをずり下げて覆い隠すわけにはいきません。
剥き出しのおっぱいを見せつけるように自分でTシャツをめくりあげたまま、全身が羞恥に染まるに任せるしかありませんでした。
「ああ、あれはスキンアートのサービスなんです。スキンアートってほら、タトゥシールとかペイントタトゥとかの・・・」
おそらく、そのお客様が純さまに尋ねたのでしょう、純さまがご説明されるお声が、今度は左側から聞こえてきました。
って、え?試着室って、そこなの!?
私が腰掛けている籐椅子の左横、3メートルくらい向こうの壁際。
そこには濃い緑色のカーテンがかかっているだけで、お洋服類は何もディスプレイされていませんでした。
最初ここに座ったとき、左側を見て、その周辺だけ妙に片付いているな、とは思ったのですが、お店の一番奥だし、まったく気にしていませんでした。
今は、そのカーテンの前で純さまとお客様が、私のほうをチラチラ見ながらお話されています。
間の空間を遮るものは桜子さまの低めなデスクひとつきりなので、横向きな私の姿が余裕で丸見えのはずです。
「バストにして欲しい、っておっしゃるので、ああいう格好なの。ほら、ウチはほとんど女性のお客様しか来ないから、お客様がよろしいのならかまいませんよ、って」
そのお客様が何か答えたようでしたが、お声が小さくて聞こえませんでした。
「そうですね。大胆て言えば大胆だけれど、人それぞれ、いろんなご趣味があるから・・・」
その後、純さまもヒソヒソ声になって、おふたりでクスクス笑っているようです。
ああん、なんていう恥ずかしさ。
私は真っ赤になってうつむきます。
だけどやっぱり気になって、上目遣いに周囲を見回します。
桜子さまとシーナさまは立ったまま私を見下ろし、お顔を見合わせてニヤニヤ笑い。
シャーッ!
桜子さまが試着室のカーテンを開いたようです。
その音につられて左側を見ると・・・
「あっ!」
試着室の奥一面の大きな鏡に、横向きな私の姿がクッキリと映っていました。
自らTシャツをまくりあげておっぱいを丸出しにしているショートボブな女の横顔。
それはまぎれもなく私でした。
籐椅子のアームレストで下半身こそ見えませんが、お腹から上、まあるい乳房とツンと尖った乳首は鮮明に丸見えでした。
私に背を向けていたそのお客様が鏡の中の私に気づいたのでしょう、その華奢な両肩がビクンと震えました。
鏡によって客観的に自分の姿をつきつけられると、今更ながら我がことながら、その格好と状況があまりにアブノーマルだと実感させられます。
カラフルなお洋服や雑貨に囲まれた営業中のお洒落なブティック店内で、ファッショナブルに着飾った人たちの中、ひとりだけおっぱい丸出しの私。
私の数メートル向こうにいる試着のお客様は、まるっきり見ず知らずの女性。
賑わう店内のハンガーラックの向こうには、あと数人、見知らぬお客様がいらっしゃるのです。
そんな中で、ひとりだけ、ほぼ全裸な私・・・
そう言えば、あの試着のお客様が桜子さまの背後を通ったとき、私の下半身まで見えちゃったのかしら?
たぶん、桜子さまやシーナさまの背中で隠れていたとは思うけれど・・・いいえ、そう思いたい・・・
おっぱいだけじゃなくて、お尻もアソコも実は丸出しだなんて知られちゃったら・・・
異常過ぎ、破廉恥過ぎ、ヘンタイ過ぎ・・・
その試着のお客さまは、今は、鏡の中の私をジーッと視ているご様子。
私の中の被虐願望がグングン燃え上がり、奥がグジュグジュ騒ぎ始めていました。
ああん、そんなに視ないで・・・だけどもっと視てぇ・・・
今すぐ立ち上がって、下半身まですべてを視せてしまいたい・・・
ハンガーラックの向こうのお客様に、こっちに来て私を視てください、ってお願いしたい・・・
そんなアブナイ衝動をなんとか抑えつけながらも、今、自分が感じている羞恥と恥辱がもたらす甘美な興奮にたまらず、ウットリと目を閉じました。
「あら純ちゃん、ご試着のお客様?それならわたしがお手伝いしよっか。あちらには他にもお客様がいらっしゃっているのでしょう?」
シーナさまのお声で渦巻く妄想が途切れ、我に返りました。
シーナさまが桜子さまの傍らを離れ、試着室のほうへ歩いていきます。
「あ、ほんと?ありがとう。それじゃあお言葉に甘えてお願いします。こちらのワンピース2種類。もしもサイズが合わなかったら言ってください」
純さまがお洋服をシーナさまに渡し、スタスタとレジのほうに戻っていきます。
途中、私の前で立ち止まり、二ッて笑いかけてきました。
「さて、そろそろワタシたちも再開しますね。お客さま、先ほどのようにお顔を上げて胸を張ってください」
桜子さまの私への口調が、突然、とても丁寧になりました。
おそらく、普通のお客様が試着のために近くにおられるので、さっきまでみたいなエスエムごっこぽい内輪な接し方はマズイと判断されたのでしょう。
さすが接客のプロな状況判断。
そのお声に私も、さっきまでの興奮をなだめるべく、籐椅子の中でシャンと背筋を伸ばしました。
試着室前のシーナさまの動向も気になります。。
左側に寄り目してそちらをうかがうと、そのお客様はまだ試着室に入らず、シーナさまとなにやらコソコソクスクスとお話されているようです。
試着のお客様は、今ではすっかりこちらを向いて、遠慮無い視線で生の私を視ながら、ときどきクスッと笑ったり、へーって感心したりしつつ、シーナさまのお話にうなずいています。
シーナさまったら、そのお客様にどんなお話をされているのかしら?
たぶん、私を辱めるようなことだとは思うけれど・・・
そうしているあいだに、桜子さまの手で私の右おっぱいに真紅の薔薇が咲かされ、細いブラシが再び肌を這いまわり始めていました。
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*コートを脱いで昼食を 28へ
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