個室に鍵を掛けるのは卑怯だと思った。
自宅PCの黒歴史フォルダに自撮りの破廉恥画像や動画がそこそこ溜まってきた頃。
三限から五限途中にかけて個室やトイレ内で脱衣、撮影、自慰を、途中に休み時間中の声押し殺し自慰、をも含めて三セットたっぷり愉しんだ後、心地良い疲れで着衣しつつ唐突にそう思った。
これだけ破廉恥な行為を個室内でしでかしているのに鍵一つで安全が守られているのはフェアじゃないと考えたのだ。
何に対して、誰に対して卑怯なのかはわからないが、これだけ背徳的な愉しみを謳歌しているのならそれなりのリスクも背負うべきだと。
自分を追い込む謎理論だが私には正論だと思えた。
着衣を終え、あらためて個室の鍵をしげしげと見る。
スライドバー式、いわゆる閂方式の鍵で、ドア部分に可動な凸、壁部分に凹があり、凸部分を凹部分にスライドさせることで閉めたドアに鍵がかかる。
開いている時は青いプレート、閉じると赤いプレートがドア表面に提示され、使用中か空室かの判断がトイレ通路側から出来る。
空室の時はドアの自重で個室の内側に開きっ放しとなる仕組みだ。
すなわちドアを閉じて鍵を掛けないとドアは自然に開いてしまう。
開かないようにする一番容易な方法はドアの前にバッグ等重しになる物を置いて押さえることだが、トイレの床に自分のバッグを直に置くのは衛生上嫌悪感がある。
鍵のスライドバーをカタカタ弄りつつ色々考えたのだが、良いアイデアは浮かばなかった。
結局、ごく浅く施錠することでよしとすることにした。
スライドバー凸部分の先端を1、2ミリ程度凹部分に引っ掛けてかろうじて閉まる状態にし、強く押せば開いてしまうかも、というスリルを愉しむことにする。
実際にこの感じにスライドバーを動かすとドア表面のプレートは青と赤が半々づつ表示される。
次から鍵はこの仕様にしてトイレが混み合う休み時間をまたぐ時は、休み時間の10分間、後ろ手全裸でドアに向き合って立っていなければいけないことにする。
トイレが満室の時の順番待ちは出入口付近でフォーク並びがルールだし、ドアが閉じていれば普通は使用中と思うので無いとは思うが、切羽詰まった人や列を無視したやんちゃな学生に開けられてしまう可能性も皆無ではない。
そう考えただけでドキドキと性的に昂った。
また、すべての空き時間で個室遊びを行なった中で、五限目、とくに金曜日の五限目がすこぶる安全だということもわかった。
この時間帯にはこのトイレから遠く離れた端の二教室でしか講義が行なわれてなく、そちらの側にも昇降階段があり学生たちもそちらを主に使うのでトイレ前にはほとんど誰も近づかないみたいなのである。
スリルを味わうという意味では物足りなさもあるが、安心して行為に没頭出来る貴重な時間でもある。
とある金曜日の午後。
三限目の講義が終わって本日の全講義終了となり、四限の途中まで空き教室で羞恥調教メインのラノベを読み耽った後、バッグを携えて誰もいない例のトイレに忍び込んだ。
最近は膝丈位のスカートを着用することが多くなった。
これは個室遊びの後、その余韻のままにノーパンでいたいが為である。
性器を無毛にしたことで、その欲求はより激しいものとなっていた。
ノーパンスカートのまま人前を歩き、ノーパンで帰宅することで、自分が本当にどうしようもない変態だということが実感出来る。
テニス授業の後、あえて下着を穿かなかった彼女の気持ちがわかる気がした。
この日は二限目にもトイレで全裸になっていたが、四限目以降にもう一度脱ぎたいがために穿き直していた。
鍵をルール通りごく浅く掛けた後、ゆっくりと脱衣して全裸になる。
後ろ手を組んで立ち尽くし羞恥と背徳感をしばらく愉しんでから自撮り。
悩ましい顔を作ってみたり四つん這いになってお尻の方から狙ってみたり、何回も何回もシャッターを押す。
最近はシャッター音を聞くだけで膣の粘膜が潤むようになっている。
自慰行為に移りたいと思った時、四限目終了のチャイムが非情に響き渡る。
お預けを食らった私はドアが開いても当たらないギリギリの位置にドアを向いて立ち尽くす。
開いてしまうかもしれないという不安と期待を胸に抱いて。
このときふと考えて後ろ手にしていた両腕を後頭部に持っていってみた。
海外のSMサイトでよく見かける性奴隷が主人に対峙する時にやらされている捕まった犯罪者のようなあのポーズだ。
こうすることで両腋の下までが全開となり、乳房も誇示するように突き出すこととなるので、秘部はすべて絶対に隠せないという屈辱感が倍増する。
トイレ内が賑やかとなり、あちこちからドアを開閉するバタンという音が聞こえてくる。
友人同士連れ立って来たのだろう、止まらないおしゃべりと弾けたような笑い声。
やがて、お先にー、とどこかのドアが閉まったと思うとどこかのドアが開く音。
ごくありふれた日常的な生活空間で私一人、何もかも剥き出しの全裸となり性奴隷のポーズで立ち尽くしている。
目の前のドアが開いてしまうのは死ぬほど怖いのだが、何も起こらないのもつまらないというアンビバレントな感情。
内腿の交わりが蕩けそうなほど潤んできて早く弄りたくてどうしようもなくなってくる。
やがて時間とともに喧騒が徐々に鎮まりトイレ内にはおそらく二名の滞在者を残すのみ。
もう少しすると五限開始のチャイムが鳴るだろうという頃、出入口ドアをバタンと乱暴に開閉する音がした。
そのままコツコツと足早な靴音が響き、私の隣の個室に吸い込まれてゆく。
隣の個室のドアがバッタンとやけに乱暴に閉ざされる音が響き、その振動が私の個室の壁も大げさに震わせた。
と同時にこちらの個室でもカタッと小さな音がしてドアが静かに開き始める。
あっ、と思わず大きな声が出て身体がビクンと戦慄き、何とも言えない目の眩むような快感が全身を駆け抜け、軽く絶頂に達していた。
目の前にトイレの通路が見えているのを後頭部に両手を当てたまま為す術もなく呆然と眺めている私。
やってしまった、もう終わりだ、という残酷な後悔が甘美な快感の余韻と一緒になって頭を埋め尽くす。
二、三秒後ハッと我に返り、慌てて腕を伸ばし、大きな音を立ててドアを閉め直した。
今度は鍵もしっかり掛けた途端、全身の血液が煮えたみたいにカーッと熱くなり、心臓がドッキンドッキン跳ね回る。
おそらく隣の個室のドアが激しく閉まった振動でこちらのドアのスライドバーがズレて外れてしまったのだろう。
誰もいなかったよね?視られてないよね?自己防衛の為の自問自答。
幸い見える範囲に人影は無かったので誰かに視られてはいないようだが、他人がまだ複数居るトイレ内で自分の裸身を無防備に晒してしまったことは事実だった。
鍵で守られた個室内でハアハア息を荒くしている間に五限目始業を告げるチャイムは鳴り終わっており、それに前後してバタンバタンと個室やトイレ出入口のドアが開閉する音もいくつか聞こえていた。
再び静まり返ったトイレ。
もう我慢出来なかった。
鍵を外してそっと顔を覗かせると残り四つの個室はすべて扉が開いている。
自撮り棒を装着したスマホを片手にトイレの通路に出る。
自撮り棒を三脚状にしてスマホを動画モードに切り替え、自分が映るスマホ画面の前に立つ。
両足を休めの姿勢位に開き、恥丘を画面に差し出すみたいに上体を軽く反らして無毛の股間に右手をあてがう。
中指と薬指は濡れそぼった膣口に、親指はパンパンに腫れ上がり皮から半分顔を出した肉芽の上に。
右手が活発に動き始める。
すぐにクチュクチュジュブジュブと卑猥な水音がトイレ内に響き渡る。
左手は腕ごと胸に押し付け、両乳房を乱暴に上下に揺さぶり嫐っている。
上体を大きく仰け反らしてオーガズムに達するが、まだ全然足りていない。
今度は後ろ向きになってお尻を映しながら膣中を責める。
前屈してお腹の方から伸ばした右手が膣粘膜の奥深くまで潜り込む。
垂れ下がった乳房の硬く尖立した乳首を左手で痛いほど捻り潰す。
間断なく続くオーガズムラッシュ。
…自分で課したルールでドアが開いちゃうなんて、バカな女ね…
…もう外の様子も全然気にしてないんじゃない。イクことだけしか眼中にないって感じ…
…視てもらえなく残念だったわね。いっそのことそのドア開けて廊下まで出ちゃってみれば…
想像上の彼女から浴びせられる侮蔑の言葉に反発を感じながらも止まらない自涜。
トイレ出入口のドアを横目で見ながら、廊下に出てみようか、とは考えていた。
が、瞬時にさっき個室のドアが開いてしまった時の絶望感がよみがえる。
私にはまだ、そんな勇気は無い…
梅雨が本格的になりそうな気配漂う曇り空の日曜日。
昨日から生理が来てしまった私は性的な遊びも出来ないので暇つぶしに繁華街でもぶらつこうと考えた。
池袋に行って同人誌漁ったり新刊コミックをチェックしたり。
昼過ぎに着いて一通り見て回った後、服も一応見てみようと思い駅改札やファッションビルに続く広い地下街に入った。
時間は三時過ぎ、休日なので大勢の老若男女がそれぞれの目的で右往左往している。
地下街のとあるカフェの前を通り過ぎようとした時、意外な人物を視界の端に捉えた。
彼女だった。
彼女はちょうどカフェから出てくるところで、ベージュのブレザーにチェックのスカートと大学でよく見た服装をしている。
その横にはスラリとしたジーンズ姿の女性がいて、店の前で二人にこやかに談笑している。
その女性はさっぱりめのウルフカットでシャープな顔立ち、ヨレたGジャンに薄化粧、全体的にラフな感じで、なんとなくオフの時の水商売ぽい雰囲気があった。
年齢は明らかに彼女より上、二十代半ばから後半、いわゆるアラサーな感じだ。
楽しそうにおしゃべりしている感じも彼女の笑顔が媚を含んで甘えているように見えた。
カフェ入口前で立ち話していた二人にカフェ内から遅れて出てきたもう一人の女性が合流した。
大きなバッグを肩に提げ、デニムのショートパンツ生足に膝下までのブーツ、身体に吸い付くようにピッタリしたボートネックの黒いTシャツが胸の隆起と身体の線を浮かび上がらせている。
年齢は彼女と話している女性と同じくらいだろうか。
小顔にショートボブで憂いを帯びたような顔立ちは誰もが振り返るような美形振りで、現にその場でも行き交う人が一度はチラ見していく。
ひょっとしてモデルかタレント?いかにもカタギの女性ではないという感じだ。
更にその女性は首にチョーカーを嵌めていた。
真っ白で正面に大きめなリングが一つぶら下がった、まるで犬の首輪のようにも見えるチョーカー。
それは私に、性奴隷、マゾヒスト、肉便器という単語群を容易に連想させた。
彼女を真ん中にして三人がゆっくりと地下街を進んでいく。
私の今日の服装はいつもよりかなりくだけたTシャツにジーンズというラフなものだし、ベースボールキャップもかぶっていた。
思いがけずに彼女の私生活を垣間見るチャンスが訪れたので念のため伊達メガネもかけてバレないように尾行を開始した。
人混みをすり抜けて進む三人の背中を見つめながら考える。
あの三人はどういう関係なのだろう。
友人と言うには彼女と年齢が離れている気もするし、でも雰囲気は何か親密そうだし。
女性同士だからエンコーというわけでもないだろう。
ひょっとするとどちらかが、あの日個室で彼女が口走った、やよい先生、なのかもしれない。
ショートボブの女性はマゾっぽくもあるからウルフカットの方になるのか。
そうだとするとこれからどこへ行くのか益々気になるところだ。
地下街をずいぶん長く歩いた三人はやがて階段を上り地上へ出る。
曇天模様の休日でもそれなりの数の人々が行き交う池袋。
三人は線路沿いの道をゆっくりと進んでいく。
この辺りは北池袋と呼ばれる一画で、確か裏に入ると風俗店やラブホテルが林立しているのではなかったっけ。
ネットで仕入れた情報を思い出す。
だとすると…下世話な好奇心がムクムクと騒ぎ始める。
果たして彼女たちは路地を一つ曲がり、派手めというかいささか品に欠ける大きな建物の入口に吸い込まれていった。
時刻はまだまだ明るい午後三時半前、どう見てもラブホとしか思えない建物に女性三人で消えていったのである。
入る直前に、彼女が嬉しそうに上気した顔でショートボブの女性に何か語りかける様子が見えた。
やっぱり、と思いながらスマホでそのホテルの名を検索するとSMルームもある正真正銘のラブホテルであった。
いつぞやに見た彼女の白い背中を染めていた鞭の痕をまざまざと思い出す。
同時に私の中で何かが確実に終わった。
線路沿いの道を引き返しながら考える。
おそらく彼女はあそこで色々、性的快楽を享受するのであろう。
女性二人がかりでか、それともショートボブの女性も虐められる側なのかはわからないが。
年上の女性たちから性的調教を受ける彼女、私がまだ知らない快楽をたくさん知っているのであろう彼女。
彼女は学校のトイレ個室で自慰行為をするような変態性癖者であるだけではなくレズビアンでありマゾヒストでもあることは確実だった。
あんな顔をして彼女は私の何倍もしたたかで何倍も変態だった。
彼女には敵わないと思った。
彼女への片想い的に惹かれる想いは、私に変態的な快楽だけを残して、呆気なく潰え去っていた。
私は今、空き教室で裸になることを計画している。
私がよく読書をしている空き教室はプロジェクターを使う講義が主な為、窓際には分厚い暗幕カーテンがかかっており、常時窓の三分の一が暗幕に覆われている。
そのため使用していない教室のドアは開いておくルールでも中は適度に薄暗く、木曜、金曜の四、五時限目であれば滅多に人は来ない。
ここですべて脱いで全裸になり、席に座って読書をしたり、あわよくば自慰行為をしたり廊下に出たりもしてみたい。
鍵で守られていない普段講義で使用している教室で全裸になったら、どんな気持ちになるのだろう。
万が一人が来てしまった場合は暗幕の裏に隠れれば良い。
その場合、窓が素通しガラスゆえ外からは丸見えとなってしまうが、梅雨時なので雨が降っていれば外にいる人は皆傘を差しているはずだし、三階を見上げたりもしないだろう。
なので生理が終わリ次第、雨の降る木曜日か金曜日に決行するつもりだ。
私が破滅する日は意外と近いのかもしれない…
*
*END
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最高でした。一歩間違えば破滅していた興奮…僕もいつかのことを思い出しました。
返信削除チョーカーさま
返信削除いつもコメントをありがとうございます
懸念だったスピンオフになんとか決着をつけたので、次の更新から本編に戻ります
お暇なときにまた覗いてみてください
直子