2013年12月8日

コートを脱いで昼食を 23

 地上に出ると、広い大通り沿いの舗道でした。
 沿道にはビルが立ち並び、その一階はどこも何かしらのお店屋さんで、歩道も車道もひっきりなしの往来。
 地下道を歩いてきた感じだと、ずいぶん駅から離れたように思えましたが、そうでもないのかな?
 東口の大通りと同じくらいに賑わっていました。

 シーナさまは、私の手を引きながら大通りをさらに駅とは逆方向に少し歩いてから、一本の路地を左へ曲がりました。
 確かこっちのほうには有名な大学があるのではなかったかしら?
 お引越ししてきた頃に地図を眺めながら、この街に慣れたら一度訪れてみたいな、と思っていた一帯のようでした。

 その路地の左右にも小さなビルが立ち並び、何かのお店や飲食店がちらほら。
 シーナさまが、そのうちのひとつの前で立ち止まりました。

「ここよ」
 真っ白なビルの一階、全面ガラス張りのショーウインドウ一杯に飾ってあるカラフルなお洋服。
 見た感じ、お洒落なブティックでした。
「わたしの知り合いが最近開いたのよ。アパレルと輸入雑貨。いわゆるセレクトショップっていうやつね。海外の古着とかも置いていて、わたしも仕入れとかでお手伝いしているの」
 シーナさまが私に説明しつつ、外開きのドアを躊躇無く開きました。
 カランカランって軽やかにドアチャイムの音が響きました。

「ああ、シーナさん。いらっしゃいませ。お茶の用意してお待ちしてましたーっ!」
 すぐに奥のほうから元気のいいお声とともに女の人がひとり、こちらに近づいてきました。
「シーナさんのアドバイス、バッチリでしたよーっ!」
 ニコニコ顔で出てきたその人は、前髪だけ垂らしたポニーテイルでお目々パッチリ、両端がクイッと上がったイタズラっ子ぽい口許の、すっごく可愛らしい女性でした。

「お手頃なお値段のセクシードレスを置いてみたら飛ぶように売れちゃって。ついでに雑貨とかも買っていってくれるから、ここのところ売り上げ大幅アップです!」
「それは良かったわ。このあたりって夜のお勤めの女性がけっこう住んでいるから、ひょっとしたら、と思ったのよね」
「外国人のかたがよく買ってくださるから、そっちのお菓子とかも置いてみたらいいかなーって」
「あら、それもいいわね。そういう業者なら、2、3心当たりあるわよ」

 シーナさまとその女性が親しげにお話しているのに耳を傾けつつ、私は店内を興味津々で見回していました。
 お洒落なお洋服、靴や帽子、カワイイ小物雑貨、ぬいぐるみやステッカー、アクセサリー類など、けっこう広めの店内に所狭しと並べられています。
 女の子が好きそうなものなら何でもある感じ。
 一番多いのはお洋服。
 ブラウスやワンピース、ニットに混じって本格的っぽいデコルテのドレスまでぶら下がっています。
 あっ、あのワンピ、かわいい!

「それで今日は何をご提案してくださるんですか?シーナさんのご推薦なら何でも、うちは無条件で置かせてもらいますよ」
「ううん。今日はビジネスの話じゃないんだ。近くに来たから思い出して、一緒にランチでもどうかな、と思ってさ」
「でもまあ、見てもらいたいものがあるのも、本当なんだけれどね」
 シーナさまが、目をつけたワンピースが飾られているハンガーラックに吸い寄せられかけていた私の手を取って、グイッと引っ張りました。

「直子、こちら古泉純ちゃん。こちらのお店のオーナーさん。わたしのビジネスパートナーでもあるの」
「あっ、はじめまして・・・」
 ペコリとお辞儀をして、自己紹介したほうがいいのかな、って考えていると、
「純ちゃん、これはわたしのドレイのひとりで、モリタナオコ。こんな顔して、マゾで露出狂でヘンタイなのよ」
 シーナさまのものすごい紹介の仕方に、私が顔を火照らせていると、古泉オーナーさんがアハハって笑いました。
「ああ。そっちのほうのアソビのお話でしたか。シーナさんもお好きですねえ。見てもらいたい、っていうのも、この人なんですね?」
 古泉オーナーさんがシーナさまと私の顔を半々に眺めつつニッと笑って、私にだけ、オシャレな名刺をくださいました。

「まあ、立ち話もアレですからあっちに移動しましょう、テーブルがありますから」
 古泉オーナーさんが先に立ち、お店の奥へ進むとレジカウンターの脇にアンティークな木のテーブルとベンチが置いてあるスペースがありました。
「あたしもちょうどお腹が空いてきた感じだったんです。何か店屋物でも取ろうかなと思ったとき、シーナさんから電話があって」
「今、お茶の用意をしますから、そこに腰掛けていてください」
 古泉オーナーさんはそう言い残し、レジのさらに奥にあるらしい別のお部屋へ入っていきました。

「直子、サンドイッチと荷物はそこらへんに置いて、直子は座らずに、そうね、そのへんに立っていなさい」
 シーナさまのご指図通り、サンドイッチをテーブルの上に、自分のバッグはベンチの上に置き、お店の入口方向を背にして、もう片方のベンチの対面に立ちました。
 私の背後にも、ハンガーに掛けられたたくさんのお洋服が飾られています。
 シーナさまは、サンドイッチの包みを開けてテーブルの上に容器ごと並べ始めました。
 ずいぶんたくさん買ったんだなー。
 切り口からいろいろな中身が覗いた美味しそうなサンドイッチが、テーブル一杯に置かれました。

 でも・・・
 私がここに立たされているということは、まずはあの古泉オーナーさんに、私のコートの中身をお見せすることになるのだろうな・・・
 そう思うと、美味しそうなサンドイッチを見て湧いていた食欲が、みるみるうちに性欲に取って代わられていきます。
 さっきのシーナさまとのお話しぶりから察するに、古泉オーナーさんは、シーナさまのそういうご趣味をすでにご存知のご様子。
 古泉オーナーさんも、あんなに可愛らしのにエスなのかな?
 古泉オーナーさん、私の格好を見て、どんな反応を示されるのだろう?
 ドキドキが最高潮です。

「うわー。美味しそう!モリタさんがお持ちになっていた袋が、あのサンドイッチ屋さんのだったから、ちょっと迷って紅茶にしたけれど、正解でしたね」
 古泉オーナさんがトレイの上にティーカップやポットなどを載せて、しずしずとお持ちになりながら大きな声をあげました。
「今、紅茶を淹れますね。今日は朝を抜いてきたから、もうお腹ペコペコなんです」
 ほどなくお紅茶のいい香りが漂ってきました。
「さ、いただきましょう。モリタさんはお座りにならないの?」

 古泉オーナーさんの私に向けたお言葉を引き取るように、シーナさまがお話し始めました。
「それがね純ちゃん。わたし、さっき道で偶然直子に会って、時間もちょうどいいからランチに誘ったのよ、ほら、あの有名なフレンチのお店」
「うわー。超高級店じゃないですか!リッチですねー!」
「だけどね、なぜだか直子が行きたがらないのよ。ヘンだなーと思ったら、どうもそのコートを脱げないような理由があるらしいの、ね?」
 シーナさまが私をチラッと見て、ニヤッと笑いました。
「だからフレンチあきらめて、ちょうど純ちゃんのこと思い出したから、ここに来たってわけ」
「だけどさ、フレンチじゃなくてテイクアウトのサンドイッチだけれど、ひとさまのお店を訪ねて、コートを着たままお食事、っていう作法は無いわよね?レディとして」
「だからさっき、せめてマナーとして食事中は、そのコートはお脱ぎなさい、って叱ったところなのよ」
 シーナさまがすっごく嬉しそうにニコニコして私を見つめてきます。

 シーナさまには、そこに立っていなさいと言われただけでしたが、古泉オーナーさんにおっしゃった今のお言葉が、つまりは私へのご命令でした。
 とうとうシーナさま以外の人の前で、コートの前を開けなければならないときが来たのです。
 このコートを脱いだら、私の下半身は丸裸、上半身には一応Tシャツを着ていますが、ご丁寧に乳首のところだけ穴が空いて、乳首だけがこれ見よがしに飛び出しています。
 なんて破廉恥な格好。
 そんな格好を、今日初めて訪問したお洒落なセレクトショップの一角で、初対面の可愛らしいオーナーさんの目の前で、晒さなくてはいけないのです。

 その上、お店は営業時間中。
 大通りから一本路地に入ったので、さほど人通りが激しくはないみたいですが、それでも普通に人や車が行き来していました。
 2軒隣のラーメン屋さんには、短かい行列も出来ていました。
 このお店の外装は、ほとんどガラス張り。
 お洋服や雑貨でディスプレイされたショーウインドウだったので、店内丸見えというわけではありませんが、ちょっと真剣に覗けば、今も私の頭くらいは見えているはずです。
 それに、何と言っても、いつ別のお客さまが入って来るか、わからないんです。
 ドアを開けてお店に入り、奥まで来てちょこっと右側を向けば、レジ周辺は丸見えでした。

「ほら、せっかく淹れていただいたお紅茶が冷めてしまうじゃない?早くコートを脱いで席に着きなさい」
 シーナさまに冷たく言われて覚悟を決めます。
 これは私が望んでいたこと。
 シーナさまと出会ったおかげで、独り遊びでは絶対出来ない、こんな大胆な状況になったのだから。
 シーナさまのお言葉には、すべて従わなくちゃ。
 私の中のマゾメーターがグングン上がり、コートの一番上のボタンにゆっくりと手をかけました。

 そのとき、シーナさまの隣に腰掛けていた古泉オーナーさんがスクッと立ち上がりました。
「ちょっと入口に、休憩中、のプレートを掛けてきますね。いつもここでランチするときは、そうしているんです」
「この時間帯はいつも、ほとんどお客さん来ないけれど、邪魔されずにゆっくり食べたいし」
「それにきっと、これからあたしに、何かえっちなものを見せてくれるんでしょ?」
「それならなおさら、誰かに邪魔されたくないもの、ね?」
 古泉オーナーさんが私を見てまたニッと笑い、何かのプレートを持って入口のほうへ駆け出し、すぐに戻って元通りに着席しました。

「もう!純ちゃんたら、直子にそんな気配りはいらないのに。誰かお客さんが入ってきたら、それはそれで面白いのに」
 不満げなシーナさまを古泉オーナーさんが、まあまあ、ってなだめています。
 古泉オーナーさんのおやさしいお心遣いに幾分ホッとしつつ、コートの前ボタンをすっかりはずし終えました。

「ボタンはずしたら、まずコートの前を大きく開けて、純ちゃんにその中身をお見せしなさい。さっきデパートのトイレでしたのと同じ格好よ」
「はい・・・」
「わたしがいいと言うまで、その格好でいること」
「はい」
 シーナさまのご命令口調なお言葉が、私のマゾ性をグングン煽ります。
 こんなところで、こんな格好をお見せしなければばらない、みじめで可哀相な私。
 強烈な被虐感に酔い痴れつつ、ゆっくりとコートを左右に広げました。

「うわーっ!」
「どう?」
「どう、って、すごいですね。エロすぎ。これって、やっぱりシーナさんが命令してやらせているんですか?」
 私のからだを上から下まで矯めつ眇めつ眺めつつ、古泉オーナーさんがシーナさまに尋ねました。
「それがねー、違うのよ。この子が自発的にこの格好になって外出したところを捕まえたの」
 ニッコリ笑ったシーナさまったら、本当に愉快そう。

「なんでもね、この子が一生懸命考えた結論らしいの。真っ裸よりいやらしい恰好ってどういうのだろう?って」
「それで出た答えがこれ。下半身は丸裸で、上半身は乳首だけ出し。その上にコート一枚だけ羽織って、ひとりでショッピングに出かけるつもりだったのよ?考えられないわよね?」
「へー。確かにいやらしいですよね、普通の裸より。じゃあその穴も自分で空けたんだ」
 古泉オーナーさんが私に向かって尋ねてきました。
「は、はい・・・」
 うつむきがちに答える私。
「それってつまりその、乳首だけ見せたい、ってことなの?」
「あ、えっと、は、はい・・・」
「すごいねー。でも確かにいやらし過ぎて、逆にある意味ステキかも。モリタさんってお肌も綺麗だ しプロポーションもいいし、見せたがるのがわかる気もするかな」
 そうおっしゃる古泉オーナーさんの目は、私の下半身に釘付けです。

「あなたのソコって、天然なの?すっごく綺麗にツルツルなのね?」
 私の土手を指差して聞いてきます。
「あ、いえ、これは・・・」
 私が答えるより先に、次の質問が放たれました。
「そこに覗いているヒモは、タンポン?今、生理なの?」
「あ、そ、そうです。あ、でも・・・」
「ああ、これはね・・・」
 私が答えるのを制して、シーナさまが割り込んできました。

「この直子って子はね、すんごく濡れやすいの。ちょっとでも辱めるとすぐにダラダラよだれ垂らしちゃうのよ、ソコから。つまり淫乱なのね」
「だからタンポン挿れて、お店汚さないようにしたの。もし挿れてなかったらここの床、もう愛液でビチャビチャになっちゃてるわ」
「へー、こんな格好しているだけで、そんなに感じちゃうんだ?」
「常識では考えられない場所で、はしたない格好になって、それを視られている、っていうのが、直子がサカっちゃうキモみたいね」
「たぶん今なんか、純ちゃんに視られてイク寸前くらいになっているはずよ。今だったら純ちゃんの言うこと、何でも聞くはずだわ、ね?直子?」
 シーナさまの冷静な私の性癖分析に古泉オーナーさんも真剣にうなずいていらっしゃいます。
 私は恥ずかしさで、もう頭がクラクラ。

「まあ、そういうことで、純ちゃんへのお披露目も終わったことだし、ひとまずランチにしましょう。本当にお紅茶が冷めちゃうから」
 シーナさまが私を見ました。
「直子、もうコート広げてなくていいわよ。さっさと脱いで席につきなさい」
「えっ!脱ぐんですか?」
 私は、てっきりコートは羽織ったままで許されるかと思っていたので、真剣にびっくりしちゃいました。

「あたりまえでしょ?コート羽織ったままお食事なんて、そんなはしたないマナーは無い、って、何度同じことを言わせるのよっ!?」
 急速にイライラモードのシーナさま。
「だって・・・」
 私はお店をグルッと見回してお外のほうをじっと見てから、シーナさまに視線を戻しました。

「大丈夫よ。外からここは見えないし、純ちゃんが休憩中のサイン出してくれたから他のお客も入って来ないし」
「で、でも・・・」
「このお店はエアコンがよく効いているから、裸んぼでも寒くないはずよ。わたしも失礼して上着脱がせてもらおう」
「あたし寒がりだから、室内温度高めなんですよね。ごめんなさいね」
「・・・」
「あんまりグズグズしていると、わたし本気で怒るわよ。そのコートひん剥いて、Tシャツも破り捨てて、真っ裸で外に放り出すわよっ!」

 シーナさまの本気っぽいお怒り顔に気圧されて、渋々腕をコートの袖から抜き始めます。
 このコートを脱いでしまったら、私が身に着けているのは短かい破廉恥Tシャツ一枚だけ。
 何かあったとき、誰かが来たとき、私にはもう自分の恥ずかしい姿を覆い隠す術が、まったく無くなってしまいます。
 両腕を袖から抜くまではしたのですが、コートを両肩からはずせずにいました。

「それならコートは、あたしが大切にお預かりするわね」
「あっ!」
 いつの間にか私の背後に来ていた古泉オーナーさんが、私が羽織ったままのコートをそっと肩からはずしました。
「わー。いいコートね。ブランド物じゃない。センスいいわね?モリタさん」
 そんなお褒めの言葉にも私は上の空。
 コートがはずされると、私の下半身はセレクトショップの空間の中で、文字通り丸出しになってしまいました。
 裸のお尻に直に空気が当たり、剥き出しのアソコを思わず両手で隠しました。
 背後の古泉オーナーさんは、私の裸のお尻をじっと視ていたのでしょう、コートを取られてしばらくしてからゆっくりとレジに戻り、私のコートを丁寧にハンガーに掛けて、レジカウンターの後ろの壁に吊り下げてくださいました。

「まったく!何を今更隠しているのよ?こうなりたくて、していた格好でしょ?」
「それにしてもドレイの分際で、でも、とか、だって、とかよく言えるものね。まだまだ教育が足りないみたいね。帰ったらキツイお仕置きが必要だわっ!」
 不機嫌そうにブツブツおっしゃっているシーナさまを、古泉オーナーさんが笑いながらなだめます。
「まあまあ。せっかく楽しいランチタイムが始まるのだから、そんなに怒らないで。ほら、モリタさんもこちらへいらっしゃい」
 古泉オーナーさんは、冷めてしまった3人分のお紅茶をわざわざ淹れ直して、再度テーブルに並べてくださいました。

「あ、純ちゃん?バスタオルを一枚売ってくれる?どんなのでもいいわ。安いやつ」
「だったら確か・・・あったあった。これ、差し上げます。業者さんがサンプルでくれた子供向けキャラクターのタオル。カワイイでしょ?」
 古泉オーナーさんが差し出したカラフルなタオルを受け取ったシーナさまは、それを私に差し出してきました。

「ほら、これをお尻の下に敷いて、直子もさっさと座りなさい」
「裸のお尻で直子がそのベンチに座ったら、ベンチの表面と直子のお尻の穴が直に触れちゃうことになるものね。そんなの、次に座る人が可哀相すぎるわ。ヘンタイ菌が感染っちゃう」
 シーナさまのイジワルいお声。
「もう!これからお食事っていうのに、シーナさんたらお下品なんだからー。ほら、モリタさんも、早く」
 古泉オーナーさんの明るいお声に促されて、おふたりの対面のベンチの上にタオルを折って敷き、裸のお尻でおずおずと腰を掛けました。

「さっきシーナさんが、コートを羽織ってのお食事なんてはしたない、っておっしゃったけれど、お尻丸出しでのお食事とだったら、どっちがよりはしたないのかしらね?レディとしたら・・・」
 古泉オーナーさんが小さくクスクス笑いながら、独り言みたいにつぶやきました。


コートを脱いで昼食を 24


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