2013年12月15日

コートを脱いで昼食を 24

「いっただきまーす!」
 古泉オーナーさんとシーナさまの元気なお声と共に、おふたりの右手がお目当てのサンドイッチに伸びました。
「ほら、直子も好きなの食べなさい。お腹空いているでしょ?」
「あ、はい・・・いただきます・・・」
 シーナさまにうながされて、自分の近くに置いてあった適当なサンドイッチに手を伸ばしました。
 自然に顔が下に向き、その視界に否応なしに、Tシャツに空けた穴から飛び出している、熱を帯びてコチコチに硬くなった自分の卑猥な乳首が飛び込んできます。
 いやん、私ったら、こんなところで、なんていうふしだらなものを晒しているのだろう・・・

 サンドイッチのお味なんて、ぜんぜんわかりませんでした。
 平日の真昼間、お外には通行人が行き交う営業中のセレクトショップの店内。
 下半身丸出しで腰掛けて、尖った乳首を空気に触れさせながら、サンドイッチをちびちびと口に運んでは、お紅茶で流し込みます。
 シーナさまは、このあいだのエステティックサロンでくりひろげた私の痴態のお話を、古泉オーナーさんに面白おかしくご披露されていました。
 古泉オーナーさんは、うわー、とか、すごーい、とか大げさなリアクションで、そのたびに対面に座る私の顔や胸をまじまじと見つめてきます。
 その遠慮の無い、肌を舐めまわすような好奇の視線に、顔もからだもどんどん火照ってきて、下半身のムズムズが止まりません。

「あらら、モリタさんはあんまり、食が進んでいないようね?」
 お紅茶を注ぎ足してくれながら、古泉オーナーさんがニッって笑いかけてきました。
「それはそうでしょう。今、直子の頭の中は食欲よりも性欲で、パンパンに腫れ上がっちゃってるでしょうから」
 ニヤニヤ笑うシーナさま。
「そう言えば純ちゃん?さっきからヘンにあらたまった感じで直子に話しかけているけれど、あなたたち、お互いに初対面じゃないのよ?」

 えっ!?
 シーナさまの意外なお言葉にびっくりして、思わず顔を上げました。
 はずみでTシャツにぴったりフィットなおっぱいが、布地ごとプルンと弾みました。

「あーーっ。やっぱりそうなんですか?モリタさんて、ひょっとしてあたしが駅ビルのお店にいたとき連れてきた、あのえっちな人?」
「ピンポーン!大正解でーす!」
 シーナさまがおどけておっしゃり、正解者には賞品でーす、と、古泉オーナーさんのお口にフライドポテトを1本、咥えさせました。

「・・・もぐもぐゴクン・・・あたし、さっきから、そうなのかもしれないなー?って思ってはいたんです」
 古泉オーナーさんがテーブル越しに身を乗り出して、私の顔をジーッと見つめながらつづけます。
「あのときのカノジョは、もうちょっとお顔が地味で年齢もいっていたようなにも思うのだけれど、さっきモリタさんの裸のお尻と前を見て、腰のラインとか肌の色とか、おへその形とか、どっかで見たことあったなー、って」
「あのときは、わたしが直子に渾身の老け顔メイクを施したからね。池袋はこの子の地元だから、もし知り合いに出会っちゃったときの用心のために」
 シーナさまのお言葉に古泉オーナーさんが、うんうん、ってうなずいています。

「あのときもすっごい恰好していましたしたよねー?ノーブラのおっぱいをロープで絞るみたいに縛ってて、下半身にはヘンな貝のオブジェくっつけて」
「そうだった!パンツをわざと腿までずり下げていませんでしたっけ?アレがすんごくいやらしかった!」
「ショーゲキだったなー!露出癖ってネットとかで目にはしていたけれど、そんな変態オンナって本当に実在するんだ、ってカンドーものでした」
「それでその正体は、こんなカワイラシイ子だったんですね!今日もけっこうショッキングです」

 心底感心した口ぶりの古泉オーナーさんを見ながら、私もビックリです。
 この、目の前の見るからに可愛らしい女性が、半年位前、目の周りを派手に染めて、まばたくと風が起きそうなエクステ睫毛だった、あのギャル店員さんらしいのです。
「そのお顔だと、モリタさんもあたしのこと、気がついていなかったみたいね?」
「あたしもかなり、あの頃はヤンチャしてたからねー。あの当時はちょうど、自分の中にブリッ子ギャルブームが来てたのよ」
 古泉オーナさんが照れ臭そうに笑われました。

「あの確か数日後に、シーナさんがひとりでお店に遊びに来て、そのとき、ショップをやる気ない?ってお誘いを受けたのでしたね」
「あの頃知り合いからちょうど、この物件の新規出店の相談を受けていたのよ」
「それで、直子と行ったときの対応がとてもユニークだったから、純ちゃんを鮮明に覚えてて、一度ゆっくり話してみたいな、って思ったの」
 シーナさまがお紅茶をひと口すすり、お手拭きで指先を拭いました。
 そう言われればシーナさま、あの直後にもスカウトとか、そんな謎なことをおっしゃっていたっけ。

「話してみたら外見に似合わず考え方もしっかりしているし、独立も考えていて資金も貯めているって言うじゃない。この人なら大丈夫、って思ったわ」
「ありがとうございます。おかげさまでなんとかうまくいっています。一日も早く雇われオーナーから 本当のオーナーになれるように、がんばります」
「シーナさんとお知り合いになれて、本当に良かったです。お仕事もだけれど、こうしてたまーに面白いもの見せてくれるし」
 古泉オーナーさんがシーナさまのほうに向いて、笑顔でペコリと頭をさげました。

「ああ美味しかった。ごちそうさまでしたっ」
 古泉オーナーさんがティーカップをテーブルに置いてフーッと一息。
 じーっと私の胸をしばらく見つめてから、シーナさまに向き直りました。

「でもシーナさんも人が悪いですね?あんなにショーゲキ的なアソビの現場を見せておきながら、あのあと一言もモリタさんのお話、出なかったじゃないですか?」
「妙に色っぽい感じの薄着なおばさまは何度かお連れになったけれど、モリタさんのことはまったく話題にしないから、あたしも忘れかけていましたよ」
「純ちゃんが聞いてこなかったから、わたしも言わなかっただけよ。わたしの趣味嗜好やドレイが何人もいることは、純ちゃんにもちゃんと教えたでしょ?」
「それはそうですけれど。あたしもシーナさんとのお仕事の話のほうに夢中になっていたから、聞きそびれてました」
「あたしは、シーナさんと違ってやっぱり、お年召したおばさまよりも若くてカワイイ子のほうが、虐め甲斐があるなー」
 古泉オーナーさんが私を見て、視線を落として乳首をじっと見て、またニッと笑いました。

「それでシーナさん?今日はあたしのお店で、モリタさんに何をさせるおつもりなんですか?」
「あたし、モリタさんがあの日の子だって聞いて、がぜんヤル気が出てきました。出来る限りご協力しますよ?」
「モリタさんがえっちな命令を受けたときの困ったような表情って、何て言うか、そそりますよね?もっと虐めて困らせてみたい、ってイジワル心を煽られちゃう、みたいな」
「あたしにとって、あの日の出来事は本当にショーゲキだったんです。あのあと帰ってから、思い出してひとりで慰めちゃったくらいに」
「人がたくさんいるお店の中であんな格好にさせられて、それでもあの子、感じていたみたいだなー、あんなことして嬉しいのかなー、なんて考えていたら、指が止まらなくなっちゃって・・・」
「あらあら・・・」
 シーナさまの苦笑い。

「何をする、って別に具体的に決めているわけじゃないのよね。ただ純ちゃんのお店なら、ほとんど女性しか来ないだろうし、試着とかも大胆に出来そうだし、っていうくらいで・・・」
 思案顔のシーナさまが、ふっと気づいたみたいに、古泉オーナーさんに向き直りました。
「そうそう。協力してくれるのなら徹底しておいたほうがいいわね。純ちゃん、直子みたいなマゾ女はね、常に身の程をわきまえさせておかなければいけないの。ドレイとしてのね」
「だから、一応お客さんと言えどもドレイはドレイ。モリタさん、なんて丁寧に呼ばないで、ナオコ、って呼び捨てにしてやってちょうだい」
「直子も純ちゃんのことは、純さま、ってお呼びなさい。いいわね!?」
「あ、はいっ!」
 急にお声をかけられて、ドキンと胸が弾みおっぱいがプルン。

「カーテン開けっ放しでとっかえひっかえ試着させるとか、この格好にエプロン一枚で接客させるとか、あと何かないかなー?」
「さすがにアソコ丸出しはちょっとヤバイわよね?あ、でも毛も無いからそんなに目立たないか」
「だけど今日は、あの日と違って老けメイクしていない素の顔ですよね?モリタさ、あ、いえ、ナオコは。いいんですか?そんな大胆なことさせて、もしお知り合いに目撃されたら」
「だってこんな格好で出歩くことを決めたのは、直子の意志だもの。素の顔のままでいいって判断したんでしょ?万が一知ってる人に見られたとしても自業自得よ」
 シーナさまのお言葉で、不安な気持ちが急速に広がりました。

「まあ、直子は西口初めてって言ってたし、大丈夫とは思うけれど・・・」
 シーナさまも少し不安になったのか、ちょっと考え込んでから、おもむろに店内を見回します。
 シーナさまの頭が、ある方向を向いたまま止まりました。
「純ちゃん、あのウイッグをいただくわ。後で会計してね」
 立ち上がったシーナさまは、レジカウンターの脇に飾られていた真っ黒髪のウイッグをひとつ手に取り、そのまま私に近づいてきました。

 そのウイッグは、前髪ぱっつんの典型的なおかっぱショートボブでした。
 両脇が内向きに軽くカールしているレトロ系。
 シーナさまは、座っている私の背後に立ち、私の髪を頭上にまとめ始めました。

「人から聞いた話だけれど、大昔のエロ本のモデルって、写真が出回っても身内に身元バレしないように、ほとんどがウイッグ着けて、顔の雰囲気変えて撮影していたんだって」
「中でも一番人気だったのが、このぱっつんボブらしいの。確かにこのヘアスタイルは雰囲気がガラッと変わるものね」
「だから、昔のヌード写真には、このヘアスタイルの人が多いらしいのよ。大昔の見せたがりスケベ女。直子の大先輩たちね」
 そんなことをおっしゃりながら、私の頭にウイッグがかぶされました。

「やっぱりね。妙に似合うわ。一気にいやらしさが増しちゃった。これでもう知り合いでも直子だってわからないわよ」
 鏡になるようなものが周りに見当たらないので、自分では確認出来ませんでしたが、そのお言葉でいくらかホッとしました。

 純さまは、テーブルの上を片付け始めていました。
「ほら、ボーっとしてないで直子も手伝いなさい。純ちゃん、ゴミはレジのほうへ持っていけばいい?」
「あ、いいわよ、あたしがやるから・・・」
 純さまは、そうおっしゃってからちょっと考え、つづけました。
「でもお言葉に甘えちゃおうっと。ナオコ、容器とかナプキンとかゴミをひとまとめにして、レジのところまで持ってきておいてちょうだい」
 純さまの口調が、上から気味になっていました。

 お食事中は座っていたのでテーブルで隠され、下半身のことはさほど気にしないで済みました。
 でも立ち上がって、歩き回れば当然のこと、私の裸のお尻と剥き出しのアソコが、おふたりの目に触れることになります。
「ほら直子?返事は?」
 私の正面に戻ったシーナさまから睨まれました。
「あ、はい。すぐにお持ちします・・・純さま」
 観念してよろよろ立ち上がると同時に、強烈な恥ずかしさが今更ながらに、全身に押し寄せました。
 やっぱりこんなのヘンタイです。
 白昼堂々営業中のお店の中でひとりだけ、性器剥き出しの、こんな格好をしているなんて・・・

「あたし以前、ネットで面白い動画を見たことあるんですよ」
 レジの向こうのお部屋で洗い物をされているらしい純さまの大きなお声。
「確かどこかヨーロッパの、ナオコみたいな性癖の女性を撮ったビデオらしくって」
 純さまが良く通る綺麗なお声でつづけます。

「人通りがけっこうある大通りに面したブティックのショーウインドウに、その女、ブロンドでかなりの美人でした、がマネキンのフリして立っているんです」
「ファッショナブルなブラウスにタイトスカートでポーズをとって」
「やがて店長さんらしき男性がショーウインドウの中へ入って来て、ブラウスのボタンをはずし始めるんです。マネキン役はじっと動かない」
「ブラウスを脱がせて、スカートを取って、下着も全部脱がせて裸でしばらく放置」
「通りには人や車がひっきりなしで、その裸マネキンに気がつく人もちらほらいるんです」
「その女も綺麗なパイパンだったなー。うっすら笑みを浮かべて愉しそうだった」
「再び店長がやって来て、今度は違う服を着せてはまた脱がせてって、何回か繰り返しているうちに、通りには人だかりが出来ちゃって」
「まあ、オチはなかったですけれど、最後のほうではマネキン役の女が開き直っちゃって、裸でさまざまなポーズとって、通行人に写真撮らせたりしてました」

「へー、それ、面白そうね、やらせてみよっか?」
 シーナさまは、ブラブラとお店のあちこちを見て回りつつ、純さまのお話に反応されていました。
「でもあんまり騒ぎになって、ケーサツのご厄介とかだとメンドーだわね。西欧人と違って、こっちだと口うるさいおばさんとかが、すぐ通報しちゃいそう」
 私は、純さまのお話を聞きながら、とてもじゃないけれど出来ない、っていう気持ちと、今ならご命令されればやっちゃいそう、っていう気持ちが鬩ぎあっていました。
 普通に考えたらもちろん絶対出来ないのですが、そのときは、そのくらい性的に昂ぶってしまっていたのです。

「そうそう。すっごくセクシーっていうかえっちぽい薄手シースルーのチャイナドレスが入荷したから、手始めにあれ着て接客してもらおっかな?」
「背中がお尻の割れ始めくらいまで大胆に開いているの。でもまあ、今のナオコの格好からしたらヘンタイ度が大幅後退だけれどねー」
 レジカウンターに戻られた純さまが、からかうようにおっしゃいます。
「いずれにしてもそろそろお店、開けるわね。もう2時前だし。そろそろ学生さんたちも放課後だから」
「ナオコは、お客様をギョッとさせないように、そこに座っているか、お客様が近づいてきそうだったらハンガースタンドの合間とかにでも隠れてね」
 純さまが、ギャル店員さんだったときの私に対する扱いのような、少し蔑み気味の口調を復活させていました。

 いよいよ、誰でも自由にお店に入って来れる状態になってしまうんだ・・・
 それでもおふたりとも、私の下半身をこのままの状態にしておくおつもりのようです。
 コートを返してくださいと、シーナさまや純さまに言えるはずも無く、下半身丸裸の私は、店内での逃げ場所をキョロキョロ探します。
 シーナさまは?と探すと、のんきに店内散策中。
 何かアクセサリーを胸に当てて、鏡を覗いていました。

 純さまが、休憩中のプレートをはずそうと入口のほうへ一歩踏み出したそのとき。
「おはようございまーす!」
 入口とは反対の方向から大きな声が聞こえ、間もなくひとりの女性がひょっこりと、レジ裏のお部屋のドアを開けてお顔を覗かせました。


コートを脱いで昼食を 25


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