2010年11月28日

図書室で待ちぼうけ 03

図書室に戻って自分のバッグを手に持ち、もう一度戸締りを点検してから廊下に出ます。
図書室のドアに鍵をかけて、階段を一段飛ばしで一階まで駆け下りました、
その間、私の心臓は、ずーっとどきどきしっぱなし。
さっき見た光景が現実にあったこととは、どうしても信じられません。

廊下を走るな!のポスターを横目で見ながら、早足で歩いて職員室のドアの前までたどりつきました。
ドアの前で立ち止まると、ハアハア盛大に息が切れています。
落ち着かなくちゃ・・・
大きく深呼吸して呼吸を整えてから、ノックして、
「失礼しまーす」
大きな声で言いながら、職員室に入りました。

職員室には、先生方が数人いました。
どの先生も目礼だけで、私に声をかけてくる先生はいません。
鍵を所定の場所に吊るして少しホっとしてると、
「ご苦労さま」
音楽の若い女性の先生が声をかけてくれました。
私は、その先生に会釈してから入ってきたドアのほうへ向かい、
「失礼しましたー」
また、大きな声で言って廊下に出ます。

このままお家に帰っちゃおうか・・・
さっき見た光景は、私には刺激が強すぎました。
まさか私が普段妄想していることを現実にやっている人がいるなんて・・・
でも、だからこそ、一方では、相原さんとお話してみたくてたまりませんでした。
聞いてみたいことがたくさんありました。
私には絶対できないことをしている相原さんに。

しばらく職員室の前で迷っていましたが、結局、好奇心が勝ちました。
ただ、私にもそういう願望があることは、極力悟られないようにしようと思いました。
一緒にやろうなんて言われたら、私の身が破滅してしまいます。
さっきの感じだと相原さんは、私に好意を持ってくれているみたいです。
でも、私の隠している性癖を教えてもだいじょうぶなのかどうか、判断できるほど相原さんのことを知りません。
て言うより、ほとんど何も知りません。
とりあえずお友達として、お話を聞いてみよう。
それから判断しよう。
そう決めました。

ゆっくりと階段を上がって3階に戻りました。
三年一組の教室は、電気が消えたままでした。
相原さん、いるのかな?
どきどきしながら一組の教室のドアを開けました。

相原さんは、自分の席、窓際の後ろから3番目の席に座って頬杖をついていました。
私がドアを開ける音を聞いて、顔だけこちらに向けてニッコリ笑い、
「おかえりなさーい」
明るい声で言いました。
制服をブレザーまで、ちゃんと着ています。
私が閉めたカーテンも再び開けられて、窓から夕焼けが射し込んでいます。

「そこに座って」
相原さんの前の席の椅子を指さします。
私は、おずおずとその席まで行き、自分のバッグを机の上に置いてから、黒板のほうを向いている椅子に横座りに腰を下ろして、顔を相原さんのほうに向けました。

「ごめんね。びっくりさせちゃって」
相原さんは、なぜだか嬉しそうな笑みを浮かべて私を見つめます。
「誰にも言わないで、ね?」
私の顔を覗き込むように顔を近づけてきます。
「うん・・・」
私は、気恥ずかしい気持ちになってしまい、うつむきながら、なんとなくチラっと自分のしている腕時計に目をやりました。
5時5分過ぎ。
うちの学校の最終下校時刻は、この時期だと部活参加者なら5時45分、それ以外の生徒はもうとっくに帰っていなければなりません。
「だいじょうぶ。この時間帯は教室の電気さえ点けてなければ、絶対見回りとか来ないから。下校時刻まで。わたしもずいぶんそういうこと、詳しくなっちゃった」

相原さんは、可笑しそうに笑って頬杖を解いてから、両手を組んで上に挙げて、うーんっ、て背伸びしました。
相原さんの胸が私のほうに突き出されます。
ボタンをしていないブレザーの前が割れて、ブラウスの胸が私の目の前に迫ります。
ブラウスは、上から三つ目までボタンをはずしていて、ブラウスの布に突起が二つあります。
ブラジャー着けずに、素肌にじかにブラウス着ているようです。

「うふふ。気がついた?わたし、こういうことするの、好きなの」
相原さんは、私の反応を試すみたいなイタズラっ子の目つきで私を見つめます。
「森下さん、何から聞きたい?」

私には、聞いてみたいことが山ほどありました。
でも、そういうことにまったく興味のないフリをしていないと、感づかれてしまう恐れがあります。
ああいう現場を見て、普通に思うありふれた感想、って何だろう?
あれこれ考えて、出てきた言葉は、
「えっと、どうして学校で、裸になったりするの?」
バカみたいな質問でした。

「どうしてかなあ・・・うーんと・・・スリル・・・かな?」
「わたし、小さい頃から、自分が恥ずかしいめにあうのが、なんでだか、好きだったの。ヘンでしょ?」
相原さんは、落ち着いた声で話し始めました。

相原さんも、お医者さんごっこで患者さん役になるのや、小学校で男子からスカートめくりの標的にされることが、口ではイヤイヤって言ってたけれど、内心、すごくワクワクしていたそうです。
「もっとやってー、て感じで、ね?」
笑いながらも私の反応を確かめるみたいに、私に目を合わせてきます。

「それで、中学二年になったとき、パソコンを買ってもらったの」
突然お話が飛びました。
「そうすると、やっぱりえっちなこととかも調べたくなるじゃない?」
「私、パソコン、持ってないから・・・」
「そうなんだ。インターネットってスゴイよ。調べたら、だいたいのことは教えてくれる。いいことも悪いことも」

私の知ってる限りでは、普段無口でクールな印象だった相原さんが、雄弁に語り始めました。

「それで、野外露出プレイ、っていうのを知ったの」
「女の人が、ありえない場所で胸やお尻やアソコを出したり、裸になってるの。公園とかコンビニとか遊園地とか、もちろん学校でとか」
「ノーパンにミニスカートでコンビニ行って、わざと低いところにある商品を取るとか、観覧車に乗って上のほうに行ったとき胸出すとか、そういう写真がいっぱい載ってるの、インターネットに」
「でも、そういうのにも種類がいろいろあって、外国の人なんかだと、ワタシノカラダキレイデショ?みたいな感じで、堂々と人がいっぱいいる表通りとかをオールヌードで歩いてたりするの。まわりの男の人たちがニヤニヤ喜んじゃって」
「わたし、そういうのはなぜだかあんまり好きじゃない。わたしが好きなのは・・・」
「わたしが好きなのは、やっぱり、見られちゃうかもしれない、って恥ずかしさにドキドキしてる感じのやつ。あと、やりたくないのに脅されているかなんかで無理にやらされてるようなの」
「もちろん男の人にもそういう趣味の人がいて、男の人がやると、夜道で知らない女性や子供に向けてズボンのチャック下げて、自分のモノ見せる、とか、そういうの。変質者。こっちはわたしも見たくない」
相原さんがクスクス笑いました。

そう言えば、春先に近所の小学校周辺にそういう人が現れて、ちょっとした騒ぎになってたなあ・・・
なんて考えつつ、うつむきがちに相原さんのお話のつづきをワクワクしながら待っていたら、相原さんに左肩をポンと叩かれました。

「ごめん。森下さん?こういうえっちぽい話は好きじゃない?苦手?」
「えっ!?うーんと、苦手ってわけじゃないけど・・・私、そういうの、全然よく知らないから・・・」

私は、大嘘つきです。

「つづけていい?」
私は、コクンとうなずきます。

「写真ばっかりじゃなくて、そういうことを実際やってみた、っていう女性からの告白文みたいのや、そういうのを題材にした小説みたいなのも探すとたくさん出てくるの」
「そういうのを読むと、そういうこと考えてるのは、わたしだけじゃないんだなー、って思えてドキドキしちゃって。わたしも恥ずかしいことしてみたい、ってたまらなくなったの」

「最初は、学校でノーパンになってみた。忘れもしない去年の12月1日」
去年って言ったら、私とまだクラスメイトの頃です。
「午前中は、ドキドキしてなかなか決行できなかったのだけれど、昨夜決めたでしょ?って自分に言い聞かせて、お昼休み中に女子トイレでパンティ脱いで、スカートのポケットに入れて、そのまま5時限目の授業を受けたの。佐々木の英語」
「そのとき、ちょうどわたし、当てられてしまって、立って教科書読まされたの。すっごくドキドキした。バレちゃったらどうしよう、って。普通にしてればわかるはずないんだけど。声も上ずっちゃって」
「わたし、あの頃、クラスの真ん中辺りの席だったじゃない?後ろが誰だったか忘れちゃったけど、今スカートめくられたらすっごい恥ずかしい思いをすることになるんだあ、なんて考えて」
「森下さんは、確かわたしの右隣だった、よね?わたしの声がちょっと震えてたの、気がつかなかった?」
私は、顔を左右に振ります。
そんなこと全然気がつきませんでした。

でも、そう告白されると、なんだか私もどきどきしてきます。
そのとき、私の横でノーパンの相原さんが恥ずかしさに震えながら英語の教科書を読まされていた・・・
相原さんは、また私の反応を確かめるみたいに、しばらく私の目を見つめていました。


図書室で待ちぼうけ 04

1 件のコメント:

  1. こんにちは。ご無沙汰をしております。
    いやぁ~~あおいの大好きな露出物ですね。
    3話いっきに読んじゃいました。
    これからのなおちゃんと相原さんの関係はどうなっていくのか!
    ワクワクドキドキ!! 楽しみにしております。

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