2010年11月27日

図書室で待ちぼうけ 02

「あ、あなた・・・!?」
その顔には、見覚えがありました。
二年生のときに同じクラスだった相原さんです。

相原さんは、私がいつも一緒にいた愛ちゃんたちのグループとは、ほとんど接点が無かったので、たまに近くの席になったときにお勉強のお話をするくらいで、親しくお話したことはありませんでした。
お勉強は出来るほうでしたが、シャイな性格みたいで、休み時間になるといつもフラっとどこかに一人で出かけてしまう、無口で、目立たない女の子でした。
でも、眉毛のちょっと上で直線に切り揃えた前髪と襟足が長めのボブカットが特徴的で、目鼻立ちも品良く整った、エキゾチックな感じのキレイなお顔の女の子なんです。

「相原さん!?」
「なんで、どうしてあなたがここで、そんな格好してるの?」
「ねえ、あなた、服はどうしたの?」
「ひょっとして、誰かにイジメ・・・」
私がそこまで矢継ぎ早にまくしたてたとき、相原さんがポツンと小さな声でつぶやきました。
「よかった・・・」
「えっ?なに?」
「見られたのが森下さんで、よかった」
「えっ?どういう意味?」
「見られたのが森下さん、あなたで本当によかった」
相原さんは、今度ははっきりした口調でそう言って、唇の両端を少しだけ上げて、薄く微笑みました。
その目は、まっすぐ私を見ています。
ゾクっとするほど綺麗な笑顔でした。

「わたしね、自分の裸を森下さんに見てもらいたいと思ってたの」
「えっ?なんで私に・・・」
私は、頭が混乱し過ぎて、相原さんの言っている言葉の意味はわかるのですが、それがどういうことなのか全然わかりません。

「そ、そんなことより、早く服着たほうがいいよ。あっ、ごめん。明るくて恥ずかしいよね。私、電気消してくるっ」
自分でも何を言っているのか理解できないまま、私がドアのほうへ戻ろうとすると、相原さんの手が私の手首をぐっ、と掴みました。
「いいの」
相原さんは、掴んだ私の手首を軽くひいて、自分のほうへ引き寄せました。
「だから、ね、森下さん。わたしのからだをよーく見て・・・」
そう言うと、私を掴んでいた右手を離し、内腿の間を隠していた左手も背中に回して、休め、のような姿勢で私の前にまっすぐ立ちました。
「見て」

綺麗なからだでした。
小ぶりながら張りのある、まだまだ成長しそうな形の良いバスト。
ツンと上を向いている、小さくてかわいらしいピンク色の乳首。
腰にかけてなだらかなS字にカーブを描く細いウエスト。
陶磁器のように真っ白で平らなお腹。
小さな子が拗ねたときの口みたいな、へ、の字を縦にしたようなちっちゃなおヘソ。
こんもりとした土手を薄っすらと狭く覆う、直毛な陰毛。
膝の上まで隠している黒いニーソックスも妙に艶かしくて・・・

「どう?」
相原さんの裸の美しさに見蕩れていた私は、思わず、
「すごくキレイ・・・」
正直に答えていました。
「そう?うれしい・・・」

しばらく見蕩れていた私は、ああ、さわってみたいなあ、と思い、無意識に相原さんのバストに手を伸ばしかけていました。
そこで、ハッと我に返り、伸ばしかけた手を慌ててひっこめ、ごまかすように口を開きます。
「と、とにかく、早く服を着たほうがいいから。相原さん、あなた、服は?」
「教室。わたしのバッグの中」
「なんでそんなとこにあるの?」
「わたしが教室で自分で脱いで、それから裸で廊下に出て、ここに来たの」
「そ、そうなの?でも、でもとにかく、早く服を着たほうがいい。こんなとこ誰かに見られたら大変」
相原さんは、黙って薄い微笑を浮かべたまま立っています。

「私が取ってきてあげる。相原さん一組だったよね。席はどこ?」
「窓際の後ろから3番目」
「わかった。相原さんはここで隠れていて。待っててね」
相原さんは、黙ったままコクンと頷きました。

私は小走りに図書室のドアへ向かい、電気のスイッチを切ってから、廊下へ飛び出しました。
一組の教室は、図書室から階段のスペースを隔てたお隣です。
廊下には誰もいません。
私は、そのまま三年一組の教室のドアのところまで走って行き、一応、
「失礼しまーす」
と大きな声で行ってから、横開きのドアをガラガラっと開けました。
教室にも誰もいません。
整然と並んでいる机のうち、一つだけ上にスクールバッグが置いてある机がありました。
言われた通り、窓際の後ろから3番目の机でした。
ファスナーが開いていて、制服のブラウスらしき白い布が覗いています。

そのバッグを手に持って、急いでまた廊下に出ました。
図書室のほうに目をやると、相原さんが裸のまま、胸と下半身に手をあてて隠すように前屈みになりながら、図書室のドアから出て来るのが見えました。
「相原さんっ!」
思わず大きな声が出てしまいます。

私の声に気がついた相原さんは、ドアの前で立ち止まり、あたりをキョロキョロした後、私を見ながら胸と下半身を隠していた両手をはずして、まっすぐに立ちました。
それから、顔に小さく笑みを浮かべて、ゆっくりとモデルさんみたいな歩き方で私のほうに歩いてきます。
でもやっぱり恥ずかしいのでしょう、頬が上気してほんのりピンク色に染まっています。

見慣れた学校の廊下、蛍光灯の灯りを浴びて恥じらいながら、こちらに歩いて来る白い裸身の綺麗な少女。
その光景は、なんだかシュールで、現実ではないような気がして、そして、すごくエロティックでした。
私の胸が激しくどきどき高鳴ってきます。

近づいてくる相原さんに気圧されるように、私もゆっくりと後ずさりしながら、三年一組のドアの前まで戻りました。
目だけは、相原さんの姿に釘付けです。
相原さんがあと2メートルくらいの距離まで近づいたとき、私は、後ろ手で教室のドアをガラガラと開け、からだを教室の中に入れました。
相原さんも当然のように入ってきます。
私は、後ずさりのまま、さっきバッグを見つけた相原さんの席のところまで後退します。
相原さんは、私の正面一メートルくらい手前で、立ち止まりました。
相変わらず頬を染めたまま、薄く微笑んでいます。

「あ、相原さん、あなた出てきちゃったの?」
喉がカラカラに渇いてしまっていて、声が掠れてしまいます。
「うん。廊下にも誰もいないみたいだったから」
「じゃ、じゃあ、ここで早く服着たほうがいいよ。誰かに見られたら大変だよ」
私は、手に持っていた相原さんのバッグを相原さんの前の机の上に置きました。

「わ、私は、図書室閉めて、鍵、職員室に返してこなきゃならないから・・・」
この場をどうすればいいのか、わからなくなってしまった私は、とりあえずこの場から逃げ出すことにしました。
相原さんの横をすり抜けて教室を出ようとすると、相原さんの右腕がススッと動き、私の右手首が強い力で掴まれました。

「ねえ、森下さん?」
「は、はいっ!」
私は、急に掴まれた右手首の感触にびっくりして大きな声で返事してしまいます。
「用事が終わったら、またこの教室に戻ってきて・・・」
「・・・」
「わたし、森下さんとお話がしたい。なんでこんなことやってるのかも教えてあげるから・・・」
「・・・うん・・・」
「戻ってきてくれる?」
相原さんが私をじーっと見つめながら、かすかに首をかしげます。
すごく綺麗です。
そしてなんだか可愛い・・・
「う、うん。戻ってくるから、だからちゃんとお洋服、着ておいてね」

私はどぎまぎしながらも、相原さんの顔をまっすぐに見つめました。
いつの間にか、二人の位置が逆転していて、相原さんは、教室の窓に背中を向けていました。
低くなったお日様の淡い光が窓から差し込んで、相原さんを背中から照らしています。
相原さんの裸身を背後から金色に輝かせていて、すっごく綺麗です。
私はあらためて、相原さんのからだを上から下まで、舐めるように見蕩れてしまいました。

相原さんの両脚が一つになる付け根付近、薄い陰毛が僅かに隠している付け根の交わる頂点に、今にも滴りそうになっている小さな水滴が一粒、夕日を後ろから受けてキラキラ光りながらぶら下がっているのに気づきました。

私は、それを見た途端、カーっと全身が熱くなって、顔が見る見る赤くなっていくのがわかりました。
相原さん、感じているんだ・・・

私は、急いで窓辺に駆け寄り、相原さんが立っているところまでカーテンをザザーっとひきました。
いくら3階とは言え、学校の窓から裸の女の子の背中が見えたらマズイと思ったんです。
「じゃ、じゃあ私、職員室行って戻ってくるから、早く服着て、待っててね」
私は、相原さんを見ずに早口でそう言って、また廊下に飛び出しました。


図書室で待ちぼうけ 03

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