2022年11月6日

肌色休暇三日目~避暑地の言いなり人形 12

 五十嵐さまのお言葉に甘えて、元の席の椅子にスカートごと座ってしまう私。
 生尻で直に座るより座面を汚さないであろうという判断です。

「理不尽な命令に嫌がるようなフリはするクセに、結局受け入れちゃうところがいいよね。それもけっこう嬉しげ愉しげに」

 同じ目線の高さとなった五十嵐さまが身を乗り出されるようにされ、話しかけてくださいます。

「うちもけっこう幼い頃から屋外露出には興味あったんだ。最初に触れたエロものがそういうシチュだったから。近所の畑に捨ててあったエロ本。小四だったかな…」

「もちろん男性向けの雑誌で今思えばえぐい内容の調教物だったんだけどね。外で恥ずかしい格好させられている女の子たちの切なげな表情が、なんて言うか、凄く儚げで綺麗だと思ったんだ…」

「外で裸にされて見知らぬ人たちににジロジロ視られたらどんな気持ちになるんだろう、って思うけど、でも、自分でやる勇気なんてないから、漫画描いて発散してんだよね、昔から絵を描くのが好きだったから…」

 お言葉を選ぶように途切れ途切れに、照れ臭そうにおっしゃる五十嵐さま。

「だから今日は直子と、って言うか、直子で遊べてすっごく愉しい。うちが頭ん中であれこれ思い描いていた妄想が現実に目の前で起こるんだもん。感謝してる」

 あらためてお礼を告げられると私のほうこそ照れ臭いのですが、逆にそれだけ露出に思い入れがあるとすれば、これから私は何をさせられちゃうのか、少し怖い気もしてきます。
 五十嵐さまがつづけて何かおっしゃろうとしたとき、橋本さまが悠然と戻っていらっしゃいました。

「お待ちどうさん」

 戻られた橋本さまはまず、テーブルに置かれたご自分のビデオカメラを大事そうにお手に取られ、その代わりにたたまれたメガネ状の物体をテーブルに置かれます。

「へー、これがスパイカメラなの…」

 横細な四角いレンズの黒縁素通しメガネ。
 つるのところが少し太い感じですが、メガネレンズの幅に合わせた感じでデザイン的にはマッチしています。

 五十嵐さまは物珍しげにお手に取られてしげしげとご覧になっておられますが、私は既に経験者。
 リンコさまのお部屋で行なわれた夏休み女体観察会で、同じようなメガネをかけられたお子さまたちにさんざん撮影されました。

「カメラのレンズはどこにあるの?」

「フレームの眉間のところ」

「ああ、ちょこっと凹んでる。でもぱっと見じゃわかんないね」

「充電フルだから回しっぱなしでも一時間くらいは保つはず。使いたいときは言って」

 五十嵐さまがメガネ型カメラをテーブルに戻されて、橋本さまがそれをご自分のウエストポーチに仕舞われます。

「そんじゃあカントク?ご指示を。我々はカントクの仰せのままの下僕ですから」

 橋本さまがお芝居っぽく茶化すようにおっしゃいます。

「うーん、迷ってるんだよね。買い物もしなきゃいけないし、撮影場所も探さなきゃなんないし…」

 座ったまま頬杖をつかれ、本当にお悩みなご様子の五十嵐さま。

「ドラッグストアって、どこにあるの?」

 橋本さまが五十嵐さまにお尋ね。

「うーんと、ここからだとちょっと距離あるかな?通りから車で入ってきたあの入口の辺り」
「頼まれた買い物もけっこう嵩張りそうだから、買うのは最後でいいかな、とも思ってるんだけど…」

 それきりまた黙り込んでしまわれる五十嵐さま。
 やがてお顔を上げられて橋本さまにお尋ねになります。

「ハッシーのそのカメラって、ううんメガネじゃないほう、ってズーム、どれくらい?」

「光学で50倍」

「それって10メートルくらい離れてても表情までくっきり写るの?」

「そのくらいの距離なら余裕でラクショーだね」

「うちが考えてるのは、そこそこ人通りのある場所に直子をひとり放置して、うちらが遠くから隠し撮りみたいに撮影するプランなんだけど、どこで撮ればいいのか、場所が浮かばないんだよね」

 五十嵐さまが、ひとり放置、なんて何やら不穏なことをおっしゃって、私の背筋がゾクッと震えます。
 五十嵐さまのお話が途切れて少しの沈黙の後、橋本さまがいつになく真面目なお顔でご自分のお考えを述べ始められました。

「なるほど。それだと姫をどこに置くかじゃなくて、俺らがどこから撮影するかを考えたほうが早いよね」
「たとえばこの場で、姫を10メートル先に立たせてここからカメラで狙っても、隠し撮りにはならないわな。姫にカメラ向けているのが周りから丸見えなわけだし」

「かと言ってどこかのお店の中からとかは建物内撮影禁止でNG、となると俺らの車から狙うしか無いんじゃない?つまりは駐車場周辺」

 理路整然とお話を進められる橋本さま。

「駐車場内なら車は動かせるし、移動しちゃってもチーフたちとの合流はケータイでどうにでも連絡つくし」
「となると、まずは買い物済ませて、嵩張る荷物はいったん車に置いて、それから駐車場周辺でロケーションするのが最適解なんじゃないかね」

 淡々とお話される橋本さまを、爛々としたまなざしで見つめられる五十嵐さま。

「何ハッシー?美大中退のクセに理系脳だったの?」

 嬉しそうに幾分ご無礼なことを口走られる五十嵐さま。

「それ採用。それで全部うまくいきそう。ハッシー段取りの天才。そうと決まればレッツでゴー!」

 勢い良く立ち上がられる五十嵐さま。

「ほら、直子も」

 五十嵐さまに軽く左肩を叩かれ、私もビクッとしつつ立ち上がります。
 すると五十嵐さまの右手が私の胸元へと伸ばされ、ボレロカーディガンの結び目リボンがスルスルっと解かれます。

「あっ、いやんっ!」

 ハラリと左右に割れた短いカーディガンの布地の下に、私のスケスケおっぱい。
 ブラウスの布地は乾いていて透け具合もそれほど露骨ではないのですが、膨らみ始めから下乳まで、その全貌が白くて薄い布地越しに薄っすら浮かび上がっています。
 思わず胸元を両手で庇う私。

「大丈夫よ、乳首は絆創膏で隠したのっぺらおっぱいだもん。目線を惹くアクセントになるような色味や突起が無いから見た人も、なんだベージュの肌着か、くらいにしか思わないって」

 他人事ですから、思い切り楽観的なご意見を述べられる五十嵐さま。
 私の左手首が五十嵐さまの右手で掴まれ、胸元から強引に引き剥がされます。

「いい?これからドラッグストアまで歩いていくけど、直子はおっぱいを一切隠してはダメ。そうね、後ろ手に組むくらいの感じで付いてきなさい」
「もしも命令に背いたら、もっとひどいことになるから。その絆創膏剥がしてブラウスまで脱がせたり…」

 心底愉しそうにご命令くださる五十嵐さま。
 そのご無体なご命令に、私の心も着々とドマゾモードへと移行しています。
 橋本さまのハンディカメラがいつの間にか少し離れた位置から、私を被写体にして撮影を再開されています。

「それじゃあ移動しよっか」

 五十嵐さまが私のスマホをポシェットに収められ、パイスラ仕様に掛けてくださいます。
 ブラウスの布地がポシェットのストラップで押さえ付けられ、私のおっぱいの谷間が割られて膨らみが殊更強調されてしまいます。
 橋本さまは私たちの前へ横へと撮影アングルを工夫されつつ歩調を合わされています。

 フードコートの建物を背にし、芝生の広場をもう一方の建物側へと進む私たち。
 やがてモールの通路へと入ると、擦れ違う人たちがグンと増えてきました。

 お洒落な雑貨を扱われているお店が立ち並ぶ、広い通路を行き交う老若男女。
 派手な服装の男性が構えるビデオカメラに誘導されるようにゆっくり歩く女性ふたり連れに、幾人かの人が好奇の視線を投げかけてきます。

 完全に左右に割れてしまい役立たずのボレロカーディガン。
 乳首は隠されているとは言え、気分的にはおっぱい丸出しで歩いているも同然なのですが、そんなの何も気にしていない、というフリを必死に装い、モデル的無表情で歩を進める私。

 そしてこのとき私にはもうひとつ、差し迫った懸案事項が浮上していました。
 お姉さまがくださったカシスオレンジのせいではないのでしょうが、急に尿意が高まってきてしまっていたのです。

 でも下手に、おトイレに行かせてください、なって頼んでしまうと、より一層ご無体なご命令、例えば物陰に連れて行かれて、ここでしちゃいなさい、みたいな事態にもなってしまいそうなのでガマンしていました。
 
 だけどガマンし切れなくて歩きながらお漏らししてしまっても結果は同じ…いえ、もっと悲惨なことになるかも…
 どうしようか、と内心悶え苦しんでいます。

 モール通路を進んで道路からのお車の出入口近くまで辿り着くと、ショッピングモール全体の出入口のひとつでもあるようで、前にも増して行き交う人が増えてきました。
 そんな一画にある東京でも有名なカフェチェーン店の前まで来たとき、五十嵐さまが私を振り返りおっしゃいました。

「ちょっとトイレ行ってくるけど、直子も行く?」

 えっ?これは奇跡?想いが通じたの?

「は、はいっ!」

 思わず大きな声でつんのめるようにご返事。

「あ、んっじゃあ俺も」

 橋本さまもご便乗されます。

「で、ハッシーさ、スパイカメラっていうの貸して」

 やっぱり一筋縄ではいかれない五十嵐さま。

「ああ、そういうことね。ほい」

 何を察されたのか、あっさりとメガネ型カメラをお渡しになる橋本さま。

「それ、実際の自分の目線よりも下気味に撮影されるから、対面で撮るなら若干顎を上げ気味にしてたほうがいいよ」

 何度か使われていないとわからないはずの適切なのであろうアドバイスまでくださいます。

「録画オンにしたから、行っといで。またこの店の前で合流な」

 五十嵐さまがメガネをかけられ、私を見つめてきます。
 黒縁メガネ姿の五十嵐さまは、知力がグンとアップした感じで、なんて言うか、お召し物が上下スウェットなので、体育の授業を抜け出してきた名門高校生徒会副会長という感じ。
 サイドに流された髪の毛でメガネの太めなつるも隠れ、不自然さはありません。

 カフェを素通りして少し行くと男女隣り合わせのお手洗いがありました。
 ドア前に並ぶ行列もなく、橋本さまと別れて女子トイレに入ります。

 中にはおふたりほどの先客さま。
 ご中年であろう派手めなお召し物のご婦人とノースリワンピの女子大生風なかた。
 私たちが後ろに並ぶなり、おふたりが振り向かれ、しばらくじっと、主に私が視られます。

 それはそうでしょう。
 アクセサリーと呼ぶにはいささか大げさな首輪を着けて、下着を着けているのかわからない薄物でバストを透けさせている女が、生徒会副会長風黒縁メガネ女子に従うように入ってきたのですから。
 個室は全部で六つ、全て扉が閉じています。

 女子大生風のかたはすぐに前を向かれてそれきりでしたが、ご婦人のほうは私が気になるらしくお顔をしきりに動かされてチラチラと目線を送ってこられます。
 私は素知らぬふうを装って無表情に努めているのですが、内心、何か言われたらどうしよう、とドキドキです。

 そうしているあいだに一番手前の個室のドアが開き、真っ赤なワンピースのご婦人が出てこられました。
 そのかたは私たちを一瞥もされず、急いでるふうに洗面スペースへと直行されました。

 これでご中年のご婦人がその個室へと消えられ、入れ代わるようにおふたり連れらしき女性、おひとりはロックバンドのロゴ入Tシャツ、もうおひとりはボーダー柄のタンクトップというお若いであろう方々、が私たちの後ろに並ばれます。

 後ろからなら首輪も髪で隠れているし、ボレロガーディガンで背中も上のほうが隠れるしで、ブラウスが透けていてもヘンタイぽいところはないな、と一安心。
 でも安心したら、そのぶんだけ尿意が高まった感じ。
 
 私の前に立たれている五十嵐さまは、おからだを半分私のほうに向けられ、無言で私の顔をじっと視られたり、ときたま舐めるように全身を眺めたり、その合間におトイレ内全体をぐるっと見渡されたり。
 でもこれってつまり、五十嵐さまは今、女子トイレ内を盗撮されている、っていうことだよね、なんて思ってみたり。

 すると今度は一番奥の個室、少し遅れてそのお隣の個室の扉がたてつづけに開きました。
 出てこられたのはいずれもスラッとした妙齢の女性。
 擦れ違うときにそのおふたりからは、同じように訝しげな視線を、主に首輪の辺りに投げつけられました。

 ノースリワンピの女性がひと足早く一番奥の個室に入られました。

「一緒に入ろっか」

 えっ!?
 問いかけられたお言葉の意味を咀嚼できないうちに、五十嵐さまの左手に私の右手を掴まれます。

「あの、えっと…」

 戸惑いマックスのまま引っ張られるように、奥から二番目の扉前まで連行される私。
 個室に入るときに列のほうを見遣ると、Tシャツとタンクトップのおふたりが、信じられない、とでもおっしゃりたげな唖然としたお顔をされていました。

 個室の内部はけっこう狭く、ドアに向いた便器の前のスペースは一メートル四方くらい。
 お先に入られた五十嵐さまが便器の蓋を開けられます。

「失礼して先にやらせてもらうね」

 おっしゃりながらこちらを向かれたまま、スウェットパンツのゴムにお手をかけられます。

「え?あの、ちょっと…」

 うろたえながら後退り、個室のドアにべったりと背中を預ける私。

「何ビビってるの?オシッコするだけだよ。女同士だし、見たかったら見てていいから」

 五十嵐さまってば、お着替えになるときも無造作に裸になられていたし、そういうところは意外と無頓着なご性格のよう。
 ドギマギしている私のほうがおかしいのかもしれません。

 お立ちになられたまま少し上体を前傾された五十嵐さまが、スウェットのハーフパンツを膝下まで勢い良く下ろされます。
 ショーツごと下ろされたのでしょう、薄め少なめの陰毛に覆われた下腹部が眼中に飛び込んできて心臓がドキン。
 五十嵐さまの下腹部はマシュマロみたいに色白で、そこに小さく翳る漆黒の逆三角形が鮮烈です。

 便座に腰掛けられた五十嵐さまは、薄い笑みを浮かべて私をじーっと見つめられています。
 その不自然さで、あのメガネで撮影されている、ということを思い出しました。

 五十嵐さまのオシッコ姿には興味あるけれど、そんなことに興味津々な私の腑抜けた顔が後で他のみなさまにも見られてしまう…

「ご、ごめんなさいっ」

 なぜだかお詫びの言葉を口走りつつ五十嵐さまに背を向ける私。
 私が好きな種類の性的な恥ずかしさとは別物の、照れ臭いような居心地悪い恥ずかしさがこみあげてきたからです。

 個室のドアを見つめている私に音が聞こえてきます。
 ジョロジョロという音はおそらく放尿されている音。
 それが静まりンーッという機械音の後のシューッと言う音はたぶんビデを使われた音。
 
 その後にガサゴソとトイペを使われる音がして、一番大げさなザバーっという音は排出物が流された音。
 少しの衣擦れの音の後、背後から左肩を叩かれます。

「はい、お待たせ。タッチ交代」

 五十嵐さまが壁際へ避けられるようにお立ちになられ、私に便座に座るようご誘導されます。
 私の尿意もかなり差し迫っていましたから、すんなり便座の前までは行きました。

 でも…
 ここで私と五十嵐さまの立場の違いにはっきり気づきました。
 五十嵐さまに見られる、ということはすなわち、私の放尿姿が撮影され保存される、ということなのです。
 
「ノーパンだったよね。スカートは脱いで下半身丸出しになりなさい」
「それで両脚は大きく広げて自分の指でラビアも開いて、うちの顔をじっと見つめながらオシッコしなさい」

 五十嵐さまの扇情的に歪んだ微笑みで、私への辱めを心の底から愉しまれていらっしゃることがわかります。
 五十嵐さまだけではなく決壊寸前の尿意にも追い込まれている私には、ご命令通りに従って恥ずかしい放尿姿をご披露するしかありません…


2022年10月30日

肌色休暇三日目~避暑地の言いなり人形 11

「…で、でも…」

 さっき後ろ手に回したときの感触を思い出し、座っているプラスティック製の椅子の背後を手探りで確認したら案の定だったので、その結果マゾとして禁句な否定語をまた発してしまいました。

 だって今座っている椅子、背もたれと座面のあいだが背もたれの幅の分だけ20センチくらい隙間となって空いているんです。
 生尻で腰掛けたとしたら、ちょうどあの恥ずかし過ぎる自己紹介文からお尻の割れ始めまで、バッチリ素肌が覗けちゃうくらいに。

「でも何?何がでも?それじゃ答えになっていないわよね?直子はあたしの提案に対してどう考えたのかから、みんなにわかるようにきちんと説明なさい」

 お仕事のときの会議のようなご真剣なまなざし。
 一瞬オフィスにいるのか、と錯覚しちゃうほど。

「あ、はい…お姉さま、あ、いえ、チーフのお考えをお聞きして、私が汚してしまったスカートは直ちに水洗いなりをするべきだと思いました…」

「だけど私がこのスカートを脱いでしまうと、私の下半身を覆う衣服はありませんから、汚れを落とすあいだ私は下半身裸で過ごすことになります…」

「椅子の背もたれで隠れるならそれでもいいかなとも思ったのですが、念の為に背もたれを確認すると下の方に隙間が空いていました…」

 一生懸命頭を整理して弁明します。

「私がそれをした場合、芝生におられるみなさまに後ろから裸のお尻が視られ放題となるので、その結果ご迷惑をおかけしてしまうかな、と…」

 ただ、自分で説明しているうちに、その状態になりたい、と思っているもうひとりの自分がいることに気づいてしまいます。
 
 お昼時フードコートのテラス席で下半身を剥き出しにして、椅子の背もたれ下から生尻を覗かせている女…
 背後を行かれる方々に、あれ?あの人、お尻が出ていない?なんてコソコソ後ろ指をさされたい、なんて思ってしまっているのです。

「ご迷惑と言ったら、現在進行系で迷惑を被っているのは五十嵐さんよね?私物のスカート汚されちゃっているのだから。まず、そのご迷惑を解消するのが最優先ではなくて?」

 至極ごもっともなご意見を投げかけてこられるお姉さま。
 カメラを構えられた五十嵐さまのレンズの下から覗いているお口元がニンマリと歪んでいます。

「それに、ラッキーなことに直子が今座っている椅子の色、肌色に近いベージュだから、少しくらい生尻が覗いていたって、よっぽど近寄らない限り気づかれないわよ」

 決めつけられるようにおっしゃったお姉さま。
 そこで質疑は終了、私の異議はあっさり却下されます。

「わ、わかりました…」

 不安なのか被虐の悦楽なのか、こんな場所で下半身丸裸になるという緊張に震える指先を、そっとスカートのウエストに近づけます。
 一番上のボタンを外せばスカートは脱げるはずですが二番目、三番目と六個すべてのボタンを外して一枚の布地状態となったスカートを、お尻を少し上げて腰から外します。

 ブラウスの裾は私の恥丘手前、下腹部の始まり辺りで途切れていますから、私のうつむいた視線に自分の露わになった無毛の下半身が女性器の割れ始めまではっきり見えています。

 細長い一枚の布状となった真っ赤なスカートを、テーブルの下からおずおずと差し出します。
 すぐにお姉さまが取り上げられ、矯めつ眇めつしげしげと検められます。

「やっぱりちょうどお尻のとこらへんの裏地がベッタリ汚れちゃってるわね。表側まで少し湿ってる」
「あたしが持ってるウエットティッシュくらいじゃ、どうにもならない感じ」

 真っ白なテーブルの上に広げて置かれた派手な赤い布地は、きっと遠くからでも目立っているはずです。
 何をしているんだろう?と吸い寄せられた視線が私の浅ましい姿に気づかなければいいのですが…

「だったらちょうどワタシ、お手洗い行きたいから、ついでに水洗いしてきてあげるよ」

 中村さまがお足下に置かれたご自分のバッグからお化粧ポーチを取り出されながらおっしゃいました。

「誰かタオル持っていない?フェイスタオルくらいのがいいかな。あとエミリー?ウエットティッシュも貸して」

 中村さまご要望のお品を、どちらもお姉さまが差し出されました。
 中村さまはスカートの濡れている部分にウエットティッシュをかぶせてからたたまれ、タオルで包んで小脇に挟まれます。

「パンツも洗っとく?」

 テーブルの上にポツンと残された私が汚した薄青色のショーツ。

「いや、パンツはいいよ。直子に自分の淫乱さを反省してもらうために、ずっとここで晒し物にしておく」

 ずっと私にビデオカメラを向けられている五十嵐さまが、私の顔を撮影しつつおっしゃいました。

「そう。んじゃあ、行ってくる」

 お席を立たれた中村さまをお見送りすると、カメラを構えられた五十嵐さまはわざわざお席を立たれ、テーブルの上の私のショーツにレンズを向けられます。
 それから私のすぐそばまで寄り添われ、至近距離から私の視線と同じアングル、すなわち剥き出しの恥丘を上から撮影された後、背後に回られ生尻を覗かせている私も撮影されています。

「お待たせー、いやードリンク類は行列で予想外に混んでてさ…」

 中村さまと入れ違うように近づいてこられる、本橋さまの明るいお声。
 トレイにさまざまなドリンクやスイーツを乗せた男性陣がお戻りになられました。

「うわっ、なんでテーブルの上に下着が置いてあるの?」

 お飲み物をそれぞれに配ろうとされていた本橋さまの驚きのお声。
 ショーツを数秒じっと見つめられた後、迷いなくその視線を私に移されます。

「あーあー、とうとう姫がパンツまで脱がされちゃったんだ」

 私のすぐそばまで来られていた橋本さまからは呆れたお声。
 そんな橋本さまは立たれたまま私を見下ろされ、その視線の先のことにも気づかれ、今度は、えーっ?という大きな驚きのお声。

「てか、スカートまで脱がされちゃってるじゃん…まったく、オンナ同士のイジメってのは情け容赦無いからなー」

 心底呆れられているような、はたまた、からかいたいだけのような、お芝居っぽいご口調で嘆かれる橋本さま。
 その視線はずっと、椅子の座面に剥き出しな形で乗っている、私の恥丘とその先の割れ始め部分に釘付けです。

「あら、イジメだなんて失礼ね。直子がお料理待っているあいだに勝手にひとり遊びして下着とスカートを汚しちゃったから洗うために脱がせただけよ。これはお仕置きであり躾けなの」

 お姉さまがニヤニヤ笑いでご反論。

「それにこれがイジメだとしたら、この子がこんなエロい顔をしているわけないじゃない?」

 確かに、男性おふたりから剥き出しの股間をじっと覗き込まれ、私は得も言われぬ甘美な恥辱を感じていました。
 しかも、この場は公共の屋外、周囲や背後からは見知らぬ人々がさんざめくお声も聞こえているのです。

 裸のお尻を直に乗せたプラスティックの椅子の座面が、性懲りもなく潤んできているのがわかります。
 視られていると実感することで、はしたないおツユが滲み出し、腫れきった肉芽が萼を脱ぎ捨てます。

 あーんっ、こんな恥ずかしいお仕置きをされているみじめな私をもっと視て…
 自分が今していることの破廉恥さに興奮してしまっている私は、困ったような曖昧笑顔を浮かべてこの状況を耐え忍ぶしかないのです。

「あたしたちはこの子がして欲しそうなことをしてあげてるだけ。あなたたちだって昨夜、みんなでモッチーを押さえつけてスネ毛をひん剥いたって言ってたじゃない。むしろそういうのこそイジメじゃないの?」

 テーブルにはそれぞれの飲み物が行き渡り、お姉さまがハイボールのグラスを軽く傾けられてからおっしゃいました。
 五十嵐さまはソフトクリーム、私の目の前にはカシスオレンジのグラス、本橋さま橋本さまは仲良くお揃いで、片手にソフトクリーム、片手にコーラのグラス。
 男性おふたりはご自分たちのテーブルにお戻りにならず、私の傍らにお立ちになったまま。

「確かにあれはイジメに近いと思う」

 本橋さまのお声が私の背後から聞こえてきます。
 ひょっとすると本橋さま、椅子の背もたれ下に覗く私の生尻をご自分のからだで隠してくださっているのかも…

「でもおまえ、機会があれば全身脱毛とかもしてみたい、って俺に言ってたじゃん」

 私の右脇の橋本さまの茶化すようなお声。

「言ったけど、その機会はぼくが決めることでしょ?ぼくは森下さんみたいにマゾッ気強くないから、この旅行中みんなにそれぞれリベンジするつもり。だからハッシーも覚悟しておいて」

 本橋さまがきっぱりしたご口調でおっしゃって女性陣がワッと沸きます。

「ほらね、ハッシー、やっぱり誘い受け…」

 五十嵐さまがお姉さまに向けてコソッとつぶやかれました。

 それからしばらくは、脱毛した後のお手入れ方法などの雑談が主に五十嵐さまと本橋さまのあいだで交わされ、そこにお姉さまと橋本さまが茶々をいれられるという感じ。
 そんな会話を聞きながらカシスオレンジをチビチビいただいていると、赤い布地を剥き出しで持たれた中村さまがお戻りになられました。

「あら?意外と早いお戻りね」

 お姉さまが中村さまにお問いかけ。
 中村さまはテーブルの上に置きっぱなしだったアイスコーヒーをブラックのまま半分ほどクイッと煽られてホッとひと息。

「うん。個室は混んでたけど洗面とパウダールームは空いてたから使い放題だった」
「お尻のほうだけ水洗いしてドライヤー当ててきたの。ポリエステル100パーだからか乾きが早かった」

 おっしゃりながらスカートをお姉さまに手渡された中村さまは、ご自身もメイクをし直されてこられたみたいで、お顔の艶やかさがよみがえっています。

「だけどもう一時を回ってしまったから、買い物も急いだほうが良さそうね、ワタシらもタチネコさんにもこの後の予定があるでしょうから」

 残っていたアイスコーヒーをもう一口で飲み干された中村さまがご自分のバッグの中をガサゴソ掻き回されて紙片を引っ張り出されます。

「ここからは二手に別れましょう、ワタシとエミリー、それにそちらも買い出しがあるでしょうから本橋さん、は食材の買い付け担当。残りの三人は、ショーコの取材でどこでも好きにしていていいのだけれど、ひとつだけ頼まれて欲しいの」

 おっしゃりながら紙片を五十嵐さまに渡された中村さま。

「先生からの頼まれ物。全部ドラッグストアで揃うはず。あとついでに虫除けスプレーも4、5本買っておいて」

 紙片に視線を落とされた五十嵐さまが素っ頓狂なお声を上げられます。

「やだっ、コンドームと浣腸薬とベビーローションだって。それもこんなにたくさん。先生、誰に使う気なのかしら」

 五十嵐さまが私の前に紙片を置かれ、見せてくださいます。
 ご年配のかたっぽい流麗なご筆跡。
 避妊具もお浣腸薬もローションもブランドと個数がご指定されています。

「そういうのは直子に買わせるといいわよ。店員に聞かせて売り場まで案内させるの。この子、それだけで濡らしちゃうはず」

 お姉さまからのイジワルなサジェスチョン。

「あ、それいい。この組み合わせを女子が買うの、かなり恥ずかしいもんね。あ、でも店内じゃ撮影は出来ないか…」

 五十嵐さまのテンションが上ったり下がったり。

「あ、俺、そういうこともあろうかとスパイカメラも持ってきてるよ、メガネ型の。今は車に置いてきちゃってるけど」

 橋本さまがあっさりおっしゃって、五十嵐さまが、さすがハッシー、と再びハイテンション。

「それじゃあ、そうね、二時十分前に駐車場に再集合ということにしましょう」

 中村さまのご提案にみなさま頷かれ、すぐにもみなさま散開という雰囲気なのですが、あの、私は…

「いや、ちょっと待って。森下さんはどうするの?このままはいくらなんでもマズイでしょ」

 背後に立たれている本橋さまが助け舟を出してくださいます。

「ああ、そうだったわね。直子はまだ下半身スッポンポンだったっけ」

 知っておられるクセにイジワルくおとぼけなさるお姉さま。

「あたしたちがこのまま移動し始めたら、この子どうする気だったのかしら。案外その格好のままで大人しく従ってきたかもね、直子ってそういう子だから」

 イジワルさ全開のお姉さまに股間の襞がヒクヒクッ。

「で、イガちゃん?パンツはどうする?」

「無しで」

 お姉さまのご相談に即答なさる五十嵐さま。

「おっけー。なら直子?立ちなさい」

 えっ、ここでですか?でも…とは思うのですが、異議を申し立てたところで時間の無駄になることはわかりきっています。
 背後は本橋さまが守ってくださっていますし、前方の椅子には中村さま、その背後にも遠くのほうにしか人影は見えません。
 ここはさっさとスカートを穿いてしまうのが得策です。

「はい…」

 椅子を少し後ろにずらして立ち上がると、テーブルの高さが私の両腿の付け根ギリギリ。
 したがって下腹部、恥丘と割れ始めは白日の下に曝け出されています。
 そこにおられる全員の視線とカメラのレンズがその部分に集まっているのを感じています。

 ああん、お姉さま、早くスカートをお渡しください…
 私の願いを嘲笑われるように、まずタオルを差し出して来られたお姉さま。

「どうせこうしているあいだもムラムラしっ放しで、椅子をマン汁で汚しちゃっているんでしょう?汚したままだと次に座る人があまりにも可哀想じゃなくて?」
「ほら、このタオルで椅子の汚れと、あなたの淫乱マゾマンコをまず拭いなさい。かなちゃんがせっかく洗ってきてくださったのだから」

「は、はい…」

 確かに私の裸のお尻を乗せていたプラスティック椅子の座面はじっとりと粘液でヌルンでいました。
 手渡されたタオルも中村さまがお手洗いで使われたものなので、絞ってはありましたが全体が湿っています。

 立ち上がった私は椅子をもう少し後方へとずらし、テーブル側に裸のお尻を突き出す格好で前屈みとなり、椅子の座面を丁寧に拭き取り始めます。
 両腿をくっつけたまま、というわけにはいかないので、どうしても両脚が開いてしまい、テーブル側の方々には、その裂け目から濡れそぼった陰唇が見事に覗けていることでしょう。

 椅子を拭き取り終わって上体を起こしたとき、見下ろされている本橋さまと目が合います。
 その瞳に憐れみが宿られているような気がして、どうして私はこんなところでこんな格好でこんなことをしているのだろう…という被虐に全身が包まれます。

 椅子を拭いた側の布地を裏返してからテーブル側へと向き直り、今度は自分の股間にタオルをあてがいます。
 みなさまにまっすぐに見つめられる中で、自分の性器をタオル越しにまさぐる私。

「…んぅッ…」

 絶対にヘンな声は洩らすまいとがまんしていたのに、クリットに擦れた布地で喉奥から迸ってしまう淫声…

「ほら、いつまでマゾマンコ撫ぜてるの?急がなきゃって言われたでしょう」

 呆れたお声と一緒にやっとスカートを手渡してくださるお姉さま。
 それをいただくと同時にタオルをテーブルに置いて赤い布地をウエストに巻きつけた私。
 大急ぎですべてのボタンを留め終えます。

「パンツはあたしが洗っておくから」

 最後までテーブル上で晒し物となっていた薄青色のショーツは、私が今使ったタオルに包んでビニール袋に入れられ、お姉さまのバッグに仕舞われます。
 これで私が着けていた下着類はすべて没収されました。

「イガちゃんはタオル持ってる?次に直子をどこかに座らせるときは、生尻の下に敷くように命令したほうがいいよ、スカート汚されたくないなら。持ってなかったら貸すけれど」

 お席を立ち上がりつつのお姉さまから五十嵐さまへのアドバイス。

「大丈夫。持ってるし、直子がどのくらいマン汁を垂れ流すのかにも興味あるから」

 一応身支度の整った私をなおも撮影しつづけられている五十嵐さま。

「じゃあワタシらはグラス類とゴミをお店に返しがてら、そのまま買い物に向かうから。一時五十分に再集合ね。さ、行きましょう、本橋さん」

 中村さまの号令でそれぞれのお荷物を手にフードコートの建物のほうへと歩き始められた中村さまとお姉さま。
 本橋さまが空のグラスや紙くずの乗ったトレイを捧げ持たれて後からつづかれます。

「んじゃあ俺はひとっ走り車まで戻ってスパイカメラ取ってくるから。きみたちはもう少しここでまったりしてな」

 橋本さまがご自分のビデオカメラをこちらのテーブル上に置かれたまま、ささっと芝生のほうへと駆け出されます。
 五十嵐さまとふたりきりで取り残される私。

「直子って、ホント、面白いよね。虐め甲斐があるって言うか、虐めざるを得ないって言うか」

 ビデオカメラをやっと下ろされた五十嵐さまが私の顔をじっと見つめながら感慨深げにおっしゃいます。
 ふたりともテーブル脇に立ったまま。

「うち、直子がモデルならいくらでもエロい露出調教漫画描けそうな気がする」

 おっしゃりながら五十嵐さまはお近くの椅子に腰掛けられますが、私はさっきのお姉さまのお言葉もあり、座ってもいいものか考え中。

「直子も座っていいよ。タオルなんか敷かずにスカートのまんまで」

 おやさしくおっしゃってくださる五十嵐さま。

「またスカートのお尻をマン汁で濡らして、傍から見てお漏らしみたいになったとしても、それは直子の自業自得だし、そんな姿で公衆の面前を徘徊する直子を見てみたい気もするし」

 五十嵐さまの唇の両端がニヤリと歪みました。


2022年10月16日

肌色休暇三日目~避暑地の言いなり人形 10

「…コです…奥の奥まで、どうぞ、じっくり…」

 お姉さまからのお電話でいただいた、動いては駄目、両手は椅子の背もたれの後ろに、というご命令が頭をよぎり、お電話に出てもいいものか一瞬迷います。
 だけどこれは明らかにお姉さまからのコールなのだし…
 結局、着信音声を黙らせたのは、すべて言い終えてしまい二周めに移った真ん中辺の頃でした。

「んっ、ハァ、はいィ…」

 お電話に応答しつつも周りをキョロキョロ見回してしまいます。
 …よかった、気づいた人はいないみたい…
 そう思っていると、唐突に停止するローター。

「お料理受け取ったから、これから戻りまーす」

 お姉さまってば、人の気も知らないでとても愉しげなお声。

「んーッ、は、はいィ……」

「どうしたの?ずいぶんと声が上ずっているけれど」

 んもう、わかっていらっしゃるクセに、お姉さまのイジワル…
 私が数秒黙り込むと、すかさずお姉さまのヒソヒソ声。

「それで、イッちゃった?」

「あ、あの、ハアァ、えっと、はい…」

「ふうん、そんな感じじゃまだご不満みたいね」

 なんでもお見通しなお姉さま。

「なら、そっちに戻るまでボーナスタイムをあげましょう。数分かからずに着くと思うけれど、せいぜい頑張りなさい」

「ハァハァ…いえ、あの、それはもう…」

 充分ですから、とつなげるつもりがプチンと切れた通話。
 数秒遅れて膣内でローターが前にも増した勢いで暴れ始めました。

「いやんっ、んんーーーッ、ンッ、ンッ、ンヌぅーーーーッ!!!」

 電話を置いて十数秒で膣奥から全身へとくまなく行き渡る気持ちいい陶酔、あんなにがまんしていたのにあっさりイキ果ててしまう私。
 頭の中はハレーション状態、ご命令も忘れて両手で顔を覆ったままテーブルに突っ伏してしまいます。

 それでも股間のローターは相変わらずの暴れまくりで、意識を手放すことさえ許してくださいません。
 頭脳以下のからだはぐったりしているのに、下半身だけがヒクンヒクン反応しています。
 快感が極まった、と思った途端にもっと深くて濃密な絶頂感がこみ上げてきています。

 両手を枕にしてテーブルに突っ伏したまま終わらない快楽の暴力を耐え忍んでいると、複数のお声が近付いてこられるような気配。
 と思う間もなく伏せた背中をゆさゆさ揺すられます。

「ちょっと、大丈夫?」

 あ、お姉さま?と思い、しんどいながらもなんとかからだを起こすと、私の顔を覗き込まれているのは中村さま。

「顔、真っ赤じゃない。まさか熱中症?暑くてまいっちゃった?」

 ご心配してくださっているような声音ですが何かお芝居っぽくて、無理矢理笑みを噛み殺されているようなそのお顔を拝見すれば、中村さまが愉しんでいらっしゃることが丸わかりです。

「へー、本当にあんな距離からでも届いちゃうんだ!直子、ちゃんとイっちゃってるじゃん」

 弾んだお声は五十嵐さま。

「今朝、何気に取説を読み返していて気づいたのよ。あたしも半信半疑だったのだけれど」

 今度こそ正真正銘なお姉さまのお声。

「最初にセッティングしたときは、あたしのスマホから直でコントロールしていたのだけれど、直子のスマホをハブとして介することで、どんなに遠くからでも管理可能なんだって」

 気がつけばいつの間にか、あんなに暴れておられたローターさまが今は力尽きたみたいに沈黙されています。

「ブルートゥースでしょ?確か届く範囲はせいぜい10メートルって言われてるよね?」

「それがあたしのスマホから直子のスマホを呼び出して、直子のスマホのブルートゥースでコントロールするらしいの。だから、どんなに遠く離れていても、極端な話、海外からでもネットさえ繋がれば直子のマゾマンコに埋まったローターを管理出来るそうよ」

 五十嵐さまとお姉さまが喜々として何やら専門的なお話をされています。
 そんな会話をお聞き流しつつ、私も徐々に現実世界へと意識が戻ってきました。

「ほら、とりあえずこれ、飲みなさい」

 お姉さまが差し出してくださったのは、プラスティックのコップになみなみと注がれた透明の液体。
 恐る恐る口をつけたら普通の冷たいお水で、これが火照ったからだに気持ち良くて、ごくごくごくごく飲み干しました。

 ひと息つくと急にいい匂いに鼻をくすぐられ、テーブル上にみなさまのお料理が乗せられているのに気づきます。
 パスタらしき平皿に盛られた麺類が二種類と、一番良い香りを漂わせているのはオムライスのプレート。

「直子の分はモッチーたちが持ってきてくれるわよ。彼らステーキ頼んでいたからもう少し時間がかかるみたい」

 お姉さまからのご説明は、自分の分は無いみたいとちょっと落胆気味に曇った顔を見られてしまったからでしょうか。
 五感が落ち着くにつれて空腹が戻ってきています。

「あたしたちは先にいただいちゃいましょう。どうせ彼らのほうが食べるの早いでしょうから」

 お姉さまの音頭でみなさま、いただきまーす。
 中村さまが良い匂いのデミグラスソースたっぷりなオムライス、五十嵐さまは冷やしごまダレぶっかけのおうどん。

 お姉さまは何かのバラ肉と温泉玉子等が乗った、こちらも冷たいおうどんでパスタではありませんでした。
 お姉さまだけ生ビールのジョッキをお供にされています。

 お姉さまがたが食べ始められて少ししてから、本橋さまと橋本さまもお戻りになられました。

「森下さん、お待たせー」

 本橋さまが私の目の前に置いてくださったのは、学校のお給食みたいなワンプレートに盛られたお料理。
 ハンバーグがメインで付け合せのナポリタンとコーンバターにポテトフライ、そこに市販のフルーツゼリーが付いて、ご飯は型で半球形に盛られ頂上に小さな緑色の旗まで立っています。

「可愛らしいでしょ?キッズプレート、お子様ランチ。直子は食欲よりも性欲だから、そのくらいがちょうどいいんじゃないかなって思ったのよ」

「でも、お子様なのに性欲のほうが強かったらやばくない?」

「うちはおねショタも好物だけどね」

 私の左隣のお席に陣取られたお姉さまから私へのご説明を混ぜっ返されたのは、私の対面のお席の中村さま。
 右隣の五十嵐さまが脈絡の無いご感想を述べられ、そこから私が先月リンコさまのご親戚の男の子とそのご友人たちと行なったあれこれをお姉さまが面白可笑しくお話され始めて、バツの悪さにお尻がムズムズしちゃう私。
 その一件も映像でちゃんと残されているから今度見せてあげる、なんてお約束までしてしまわれるお姉さま。

 極力聞こえないフリを装ってお食事に全集中しようとしていると、

「いっただきまーす」

 右隣のテーブルから弾んだ男性のお声。
 本橋さま橋本さまの前には、肉片がびっしり敷き詰められた大きな丼がおふたつ。
 ああいうの、ステーキ丼ていうのかな?

 おふたりともその丼を片手で持たれ、もう片方の手でお箸を動かされ、お口からお迎えに行かれて美味しそうにわしわし食べ進めていらっしゃいます。
 私もハンバーグが好みの味付けだったので俄然食欲が湧き、食べ切れるかな?と思った量でしたが大丈夫みたい。
 こちらのテーブルの話題がずっと私の事なので、全集中のまま黙々と食べ進めます。

「美味かったー。ごちそうさまでした」

 私たちより5分くらい遅く食べ始めたのに私たちより先に食べ終えられる男性おふたり。

「早っ。あそこのステーキ、美味しいからね。うちも肉でもよかったかな」

「うん。でもワタシらは夜のお楽しみがあるでしょ?冷凍庫に秘蔵のマツザカ、あるから」

 五十嵐さまと中村さまがこそこそ謎の会話。

「食休みに何か飲み物でも買ってきますよ。今度はぼくらが奢ります。ドリンクでもデザートでも」

 本橋さまが立ち上がられ、私たちにお声がけ。
 あら、気が利くじゃない、と盛り上がる女性陣。

「アルコールが欲しいところだけれど車の運転ありそうだしなー」

「まあそれも夜のお楽しみってことで、ワタシはアイスコーヒー」

「あたしたちは純然たる観光客だから昼飲みおっけーよね。あたしにハイボールで直子にはカシスオレンジ」

 五十嵐さまがソフトクリーム、中村さまがアイスコーヒー、お姉さまがハイボールで私にカシスオレンジ。
 私もネットで評判のご当地ソフトクリーム食べてみたいな、とも思うのですが、お姉さまのご決定は絶対です。

 ご注文品を忘れないようにということなのでしょう、男性おふたりはお隣のテーブルに座り直され、何やらメモを書かれているご様子。
 それからガタガタとトレイや食器をまとめられる音。

「空いた食器もついでに戻してきますよ」

 本橋さまが再度立ち上がられます。
 その頃には私も含めてみなさま食べ終えられていて、橋本さまが形の違う食器をひとつのトレイ上にご器用にまとめられます。
 そんなトレイをお互い両手で捧げ持たれ、肩寄せ合わられテラス敷地から建物へと遠ざかっていかれる男性おふたりのお背中。

「やっぱりゲイって一般男性に比べて細やかでよく気が利くんだね」

 五十嵐さまがなんだかしみじみとおっしゃいます。
 テーブルの上にはお水の入った手つかずのコップがふたつと私のスマホだけ。
 ランチを終えた方々がフードコートの建物からショッピングに戻られるのでしょう、背後の芝生に人影が増えてきています。

「ひと息ついたら二手に別れようか、ワタシとエミリーで食材買ってくるから、イガちゃんと直子は好きに遊んでいて。あ、でも先生から頼まれている…」

 中村さまがお話しされている最中に、突然割り込んできた音声。

「これが直子のマゾマ…」

 中村さまもびっくりされたようで、お言葉が宙ぶらりんのまま絶句されます。

 ギョッと一瞬うろたえた私も、すぐに立ち直り急いでテーブルに手を伸ばしながら横目で見ると、すぐ横でお姉さまがニヤニヤ笑いでテーブルに置いたご自分のスマホを見つめつつ、ハンディビデオカメラのレンズを私に向けておられます。
 えっ、どういうこと?少し迷ってしまい、…どうぞ、じっくり、視て…のところでやっと応答ボタンを押しました。

「もしもし…」

 困惑しつつ私が答えてもお姉さまはスマホを見つめられたまま。
 伸ばされた指がスマホ画面上で踊っています。

「あれ?」

 今度はお姉さまが怪訝そうなお声を出されます。

「直子?ローター動いていない?」

 お隣のお席から直接私に尋ねられるお姉さま。
 カメラもいったん下げられました。

「あ、はい…」

「おっかしいな、故障?それとももう電池切れ?距離が長いとたくさん電池使っちゃうのかしら」
「あたしのも直子のもスマホはまだバッテリー充分だし、ローターのほうの充電が不充分だったのかな。いずれにしてもこれは今後の製品化に向けて要検討事項だわね」

 ご不満そうなお姉さまのお声。
 そのお声のまま私にこう告げられます。

「動かないんじゃ挿れていても意味ないし、直子?ローター出しちゃっていいわよ」

 お姉さまがそうおっしゃると、右隣の五十嵐さまが身を乗り出されてきます。

「いいですね。うちも、そろそろ直子のパンツを脱がせようかな、って思ってたとこ」

「そうなの?ならイガちゃん、直子に命令してやって。今日は本来イガちゃん用の取材でディレクターなのだから」

 ご命令役をあっさり五十嵐さまに譲られ、お姉さまは再び私にカメラを向けてこられます。

「そういうわけだから直子?今ここでパンツを脱いでマンコに挿しているローターを抜きなさい。こんな屋外でひとりイキ果てていた直子のパンツがどれくらい濡れまくっているのか、見ものだわね」

 五十嵐さまの私への蔑みぶりに、どんどん磨きがかかっています。
 私ももう、でも、とか、今ここでですか?とかの異議は申し立てません。
 
 したところで状況が変わらないのはわかり切っていますし、お食事をいただいて食欲が収まった代わりにムラムラがぶり返してきている私自身が、性懲りも無くドマゾモードに逆戻りしたがっていました。

 椅子に座った腰を少し浮かせて両手を裾側からスカートの内側奥へと入れ、腰骨の辺りのショーツのゴムに指を掛けます。
 少し触っただけでショーツがゴムの辺りまで、じんわり湿っているのがわかります。

 もう少し腰を浮かせた半立ち前傾姿勢となり、ショーツを一気に膝まで下ろします。
 そこからは手探りで、サンダルに引っ掛けないように右足、左足とくぐらせると、私の左手に生暖かい濡れた布片が残りました。

 それをテーブルの下で隠し持ったまま、今度は右手だけをスカートの奥に突っ込み、膣口から覗いているはずのローターのアンテナ部分を手探ります。

「んっ!」

 最初の淫声は、股間をまさぐっていたとき誤って、やっぱり貪欲に充血しつつある肉芽を指先で擦ってしまったときのもの。

「んーっ!」

 二度目の淫声は、やっとみつけたアンテナを引っ張り、ローターが膣壁をなぞって出ていったときのもの。
 このとき、腫れ切った肉芽が完全に脱皮して空気中に露出したのが自分でわかりました。

「ほら、早くテーブルの上に出して、見せなさい」

 五十嵐さまにせっつかれますが、ふたつとも、こんな晴天の公衆の場でお見せ出来るような物体ではありません。
 かたや、ヌルベトな愛液にまみれた薄青色のビキニショーツ、こなた、ついさっきまで私の中に埋まっていた体温でまだホカホカ温かい、これまた愛液滴るローター…

 だけどいつまでもそうしているわけにもいきません。
 目を瞑って思い切って、えいやと左右の手を同時にテーブルの上に出します。

「ぅわっ!」

 お化け屋敷で耳にするような驚愕のお声がユニゾンで聞こえ、私も思わず目を開けます。
 ぅわっ!
 みなさまと同じように驚き、心の中で盛大に恥じ入る私。

 細長い円柱が少し反り返るようにカーブしたローターの黒くシリコンコーティングされた側面が満遍なく濡れそぼり、ひと筋、ふた筋、白い粘液状のラインも見て取れます。
 それは明らかに、俗に言う本気汁、白濁した愛液が作る筋でしょう。

 ショーツのほうも、最初に穿いたときのお色とは全く変わり、薄青色が満遍なく濃青色に変色し、薄青色が見えるのはゴム近辺に僅かだけ。

「うわ、パンツ、グッショグショじゃない、これ本当にえっち汁だけなの?潮も吹いていない?」
「ローターのほうにはしっかり本気汁。本気で気持ち良かったんだろうねえ」
「どっちも冬だったらホカホカ湯気立ってるよね。生々し過ぎてまさに、the性欲、theスケベって感じ」

 口々に私を恥じ入らさせてこられるみなさまですが、本当に生々し過ぎるようで、どなたも現物には手を伸ばしてこられません。
 両手をテーブルの上に伸ばし、恥ずかしい貢物をただ差し出している私に、お姉さまが黙ってレンズを向けています。

「イガちゃん?ちょっと撮影変わってくれる?」

 最初に行動に移られたのはお姉さまでした。
 五十嵐さまにビデオカメラを渡され、まず私の右手からローターを取られます。

 しげしげと少し眺められた後、形の良い唇を艶っぽくお開けになり、ローターの先っぽから躊躇なくパクっとお咥えになられます。
 キュンと高鳴る私の心臓。
 少しのあいだジュブジュブとしゃぶられた後、ご自分の足下に置かれたバッグからタオルをお出しになられ、ローターを包んで仕舞われました。

「さすがお姉さま。直子のおツユは美味しいの?」

 からかうように問われた中村さまに、それが困ったことに美味なのよ、クセになっちゃった、と嬉しいご返事を返されるお姉さま。
 そして、お姉さまの右手が濡れそぼったショーツに伸びてきます。

 お姉さまの手に渡ったショーツはお姉さまの手で機械的に広げられ、完全なビキニショーツの形となってテーブル中央に置かれます。
 それもご丁寧にクロッチ部分を中心として裏返された状態で。

「うわっ、触らなくてもベトベトヌルヌルってわかるわね」
「こっちにも本気汁が混ざってる」
「それに少しオシッコ臭くもない?」

 再び口々に私を恥じ入らさせてこられるみなさま…
 それに、こんな場所でみなさまが身を乗り出されて凝視するようなものではないはずのものなのですが…
 周りからでも少し注意して見れば、それが何なのか、すぐにわかってしまうはず…

「パンツがお尻のほうまでこれだけ濡れているということは、スカートのお尻のほうにも滲み出しているはずよね、どう?直子」

 お姉さまの的確なご指摘に、私は正直にお答えするだけ。

「は、はい…」

 実際、今は生尻が直にスカート裏地に密着する状態で座っているのですが、お尻を下ろした途端にヒヤッとするほど布地が湿っているのがわかりました。

「それなら今のうちに粘液だけでも拭っておかないと、シミが残ったり、乾いたら嫌な臭いを放ったりしそうだわよね?」
「そのスカートはあたしや直子の私物じゃなくて、今日知り合ったばかりの五十嵐さんからお借りしているスカートだったわよね?」

「…は、はい…」

 お姉さまが私の顔を覗き込まれ、その様子を五十嵐さまが至近距離からじーっと撮影されています。

「だったら直子は、どう対処するべきだと思う?」

 イジワルさご満開なお顔で尋ねてこられるお姉さま。
 すなわちお姉さまは私に、この場でスカートまで脱いで下半身丸出しにおなりなさい、とおっしゃられているのです。

* 

2022年10月10日

肌色休暇三日目~避暑地の言いなり人形 09

 スカートにインしたブラウスの裾も抜いて完全に脱ぎ去り、上半身スッポンポン状態。
 お外にはスモークガラス越しに私の剥き出しな背中が見えているはずです。

「ふーん、確かに直子の乳首はいやらしいわ。こう、思わず手を伸ばして摘みたくなっちゃうのはわかる」

 私のおっぱいにお顔を寄せられ、至近距離からしげしげと見つめてこられる五十嵐さま。
 お話されるときの息が敏感乳首に吹きかかってきて、こそばゆい。

「乳輪も大きめだから、こっちの指用じゃガーゼに収まらないだろうな」

 普通の切り傷で指に巻き付けるくらいの絆創膏の箱と私の乳首を見比べていらっしゃいます。

「でも、乳輪がチラッと絆創膏からはみ出しちゃってるのも、それはそれで卑猥な趣があるんだけれども…バッテンに貼ったりして」

 車内におられるすべての方々の視線が私のおっぱいの先端に集中されています。

「だけどやっぱり安全策としは面積の広いこっちだな。それにこっちのほうが見るからに絆創膏然としていて、見てくれるギャラリーにもわかりやすいだろうし」

 もうひとつの箱のほうは、肘とか膝のケガに貼る、四角くて真ん中がガーゼのタイプ。
 と言うか、せっかく隠すのに、周りのみなさまに見ていただくことが前提となっていません?
 そんな私の戸惑いも知らず、箱を開けて中から数枚取り出される五十嵐さま。

「ちゃんと汗を拭き取っておかないと、すぐ剥がれちゃうからね」

 五十嵐さまがリュックから小さなハンドタオルも取り出され、私が丸出しにしているおっぱいに近づけてこられます。

「んっ!」

 ザラッとしたタオル地が尖り切った敏感乳首に触れた途端、ビクンと感じてしまいます。
 ハンドタオルを被せた五十嵐さまの右手が私の左おっぱいを優しく包み、その手を押し付けるように握ったり開いたり。

 絶対ワザとでしょうが、タオルに被せた人差し指と中指のあいだに私の乳首を挟まれ、キュッキュッとしごくように刺激してこられるんです。
 その心地良さに私の腰は思わずモジモジとくねり、屈めた両膝を切なく擦り合わせてしまいます。

「んふっ…んっふぅーんっ…」

 はしたない声は極力がまんしようと努力はしているのですが、口をつぐんでも鼻から洩れてしまう淫ら息。
 
 左おっぱいが存分に弄ばれた後、五十嵐さまのタオルが右おっぱいに移ります。
 こちら側はやや乱暴に、揉みしだくようにタオルが押し付けられ、尖った乳首を潰されます。

「んふぐぅっ…」

 絶妙な愛撫に思わず漏れ出てしまう歓喜の鼻息。
 タオルで覆われた乳首を爪先でコリコリ嬲られ、ゾクゾクっと背筋を駆け上がる快感。
 ローターを挿れられた股間から一筋のおツユがツツーっと内腿を滑り落ちたのがわかりました。

「こんなもんでいいか」

 タオルがおっぱいから離れて股間のムズムズだけが置き去りに。
 五十嵐さまってば、ご自分のおっぱいは控えめなのに、ぽってりおっぱいへの愛撫が的を射ていて手慣れた感じなのは、なぜなのかしら?
 
 そんな謎を秘められた五十嵐さまは、5、6センチ四方の四角い絆創膏シール部分のあて紙を剥がされ、私の左おっぱい乳頭へと近づけて来られます。
 何かが肌に貼り付く感覚、つづいて何かに乳首を覆われる感覚。

「んっ!」

「ちょっと、直子の乳首、超3D。おまけに凄く硬いから横向きに押さえ付けるみたいになっちゃうけどがまんしてね」

 五十嵐さまのお言葉通り、硬く飛び出した乳首がガーゼ部分に押し倒され、おっぱいのお肉にめり込む感じに。
 それでも懸命に起き上がろうとしているので、絆創膏中央にうっすら頂点が出来てしまっています。

 右おっぱいにも同じ仕打ちを施され虐げられた私の両乳首。
 見た目は肌と同色に近い肌色絆創膏のおかげで、シュールなのっぺらぼうおっぱいと化しました。

「これでよしっ、猥褻物が人の目に触れる心配はなくなった、と。シャツ着て上着羽織って」

 ご満足気におっしゃる五十嵐さま。

「終わった?じゃあ早く行こう。ワタシもうお腹ペコペコ」

 中村さまのお言葉に急かされて大慌てでブラウスを着直し、ボレロカーディガンを羽織り直します。
 リボンを結んでパイスラポシェットを提げ直すと同時に、どなたかに右手を引っぱられました。

 顔を上げると、手をつないでくださったのはお姉さま。
 そのままみなさまと一緒に車外へ。
 駐車場内からショッピングモールの表側へと出る通路をぞろぞろ歩くと、やがて目の前に開ける芝生の広場。

「やっぱり夏休みが終わるとぐんと人が減るわね。先週なんかこの辺り、ごった返してショップによっては入場制限までしていたのに」

 中村さまのお言葉に周りを見回すと、こちらのモールは有名なハイブランドばかり集まっているみたい。
 そして確かにおっしゃられた通り、行き交う人はまばらでのんびりした雰囲気です。
 私も今は、何か恥ずかしいものが見えてしまう心配が全く無くなったので超リラックス。

 目指すフードコートはVの字に連なるモール通路の、開いている上部分に位置するらしく、男性おふたりと女性四名の謎集団が人影まばらな芝生広場をぶらぶらと斜め横断していきます。
 太陽が真上で輝くお昼どき、暑いは暑いのですが、嫌な湿気がなく時折り心地良いそよ風も吹いてくださり、まさに高原の夏という感じ。

「天気いいからテラス席で食べると気持ち良さそうだね。熱いラーメンとかはさすがにカンベンだけど」

 五十嵐さまがどなたにおっしゃるでもない感じのお独り言。

「それにここって店内での撮影は軒並みNGらしいけど、テラスなら撮影出来そうだし」

 今度は、はっきりと私に笑みを向けられておっしゃいました。
 ドキンと跳ねる私の心臓。

 お食事中にも何かしらの辱めを考えられているみたい。
 思わずお姉さまの手をギュッと握りしめたのが合図となったかのように、お姉さまが前を行かれる男性おふたりにお声をかけられます。

「あなたたちはどうせ肉なんでしょ?直子の貪欲なヘンタイ性癖につき合ってくれるギャラとして今日はあたしが全員に奢るから、何でも好きなもの好きなだけ食べていいわよ」

 お姉さまがおっしゃったお言葉でみなさまがドッと沸き、口々に、さすがチーフ、あざーす、あざーす、とお礼を述べられます。
 ひと気少ない芝生広場でわいわい騒ぐ男女グループに、たまにすれ違う人たちから訝しげな視線が集まります。
 目前にグリーンやベージュのパラソルの海が見えてきて、その奥数十メートル先が飲食店の連なる建物みたい。

「やっぱ人少な。夏休み中の混雑が嘘みたい」

 五十嵐さまがおっしゃるように、お昼時のフードコートですからそれなりの数の人々が集まってはおられるのですが、敷地も広いのでちょっと寂しい賑わい。
 パラソルのテラス席にも、こちらにおひと組、遠くのあちらにもうおひと組という感じです。

「ワタシたちは六人だから、こことそこのテーブルを使わせてもらおっか」

 芝生に近いグリーンのパラソル下のお席を指さされた中村さま。
 五十嵐さまとお姉さまがそのテーブルにリュックやバッグを置かれ、一メートルくらい離れたお隣のお席に本橋さまも提げていたバッグを置かれます。

「ハッシーもカメラ置いていいよ。一時休憩ね」

 五十嵐さまのお声で橋本さまが、お車にいるときからずっと私に向けられていたビデオカメラをやっと下ろされます。

「あー、腹減ったぁ。今朝は二日酔いヒドくて殆ど食えなかったんだよな…」

 橋本さまの情けないお声にみなさまがクスクス笑われています。

「直子はここで席取り荷物番ね。メニューはあたしが選んだものでいいでしょ?どうせ一文無しなんだし」

 お姉さまからからかうように尋ねられ、もちろん、はいっ、と即盲従。
 それからお姉さまは、ご自分のバッグからいつものビデオカメラをわざわざお出しになられてテーブルに置かれ、こうつづけられました。

「あ、それと、直子のスマホもテーブルの上に出しておきなさい」

「あ、はい…」

 私の前にある椅子を引いてくださるお姉さま。
 私がそこへ腰掛けてポシェットからスマホを取り出すのを横目に、みなさまぞろぞろとお店のほうへと歩き始められます。
 そのお背中をお見送りしてから、目前に視線を落としました。

 目の前には自分のスマホとお姉さまのビデオカメラ。
 その奥にみなさまのお荷物。

 スマホを出しておけというご指示は、ランチを頼みに行かれたお姉さまからやがてお電話が来る、と理解していいように思います。
 私のスマホの今の着信音は自分の恥ずかし過ぎる音声ですから、もしも着信が来たら、すぐに応答しなければなりません。

 今は幸い周りのテーブルも空席ばかりで、見知らぬ人に聞かれる心配もありませんが、いつ、近くに人が来られるかはわかりません。
 それにあの音声、ボリューム大きめだし周りは静かだしで、少し離れた所でも聞き取れちゃいそうだし。

 そう考えて、着信が来たらすぐ手に取れるようにと、スマホの真っ黒な画面とにらめっこを始めます。
 ときどき無音のスマホを手に取ると、自分の恥ずかし過ぎる待受画面が映っては消え、ついでに映る時計で時間がわかります。

 置き去りにされて3分くらい経った頃、緊張が少し緩み、周りを見渡す余裕が出てきます。
 ごくたまにですが、私のテーブルの傍を通り過ぎて行かれる方々もいました。
 仲睦まじそうなカップルさんや、女性同士または男性同士のおふたり連れ、ご中年のご夫婦のような方々。

 そんな方々がなぜだか一様に、じーっと私のほうを見ていくような気がしていました。
 通り過ぎてからも振り向いて見てくるかたとか、一度目線を切られても慌てて二度見されてくる人とか。
 なんでだろう、今はじっと視られるような恥ずかしい服装ではないのに、と当惑していたら、はたと気づきました。

 おそらく首輪です。
 自分では慣れすぎていて、していることも忘れ去っていた首輪。
 今の私のファッションでは明らかな異物である、くすんだ赤色の無骨なワンちゃん用首輪。

 私にとってはマゾのシルシとしていたって自然な姿なのですが、こんな健全な商業施設にマゾ女がそのシルシを着けて平然と座っていること自体、市井の人たちにとっては奇異に映っているんです。
 長らく眠り込んでいた理性という常識がやっと息を吹き返し、今、自分はとんでもなく恥ずかしい姿を世間様に晒しているんだ、という逃げ出したいほどの羞恥が一気に押し寄せてきました。

 もちろん首輪をしているからと言って、それをマゾという性癖にすぐ結び付けられる人は多くはないとも思います。
 でも変なファッションの変な女、とは誰しもが思われ、だからこそじろじろ視られているのは事実でしょう。
 知られたくないはずの不健全で後ろめたい性癖を、こんなに明るく健全な公然で平然と晒してしまっている自分…

 そうなんです…私、マゾなんです…どうぞご自由に貶めてください…
 
 やっと目覚めた理性がマゾ特有の自虐願望でみるみる隅に追いやられ、脳内の変なスイッチが入ってしまったとき、目前のスマホがブルッと震えて画面が明るくなります。

「あっ!」

 大慌てでスマホを手に取ると浮かび上がる自分のヘンタイ画像。
 着信音が鳴ったらすぐ応答しなきゃ、と周りをきょろきょろ見回す私。
 幸い近くに人影は見当たりません。

 スマホに視線を戻し、自分のくぱあ画像を数秒見つめますが、一向に着信音は鳴りません。
 代わりに別のところに反応が…

「んっ!」

 思わず声が出てしまうくらい、股間のローターが震え始めます。
 スマホの時刻表示では、置き去りにされて6分後くらい。
 最初は強烈だったローターの震えがだんだんと緩めになってきたなと思っていたら…

「これが直子の…」

 私のスマホがいきなり喋り出し、焦って応答ボタンをタップする私。

「もしもし?ハンバーグか牛ステーキ小さめ4切れか、あと小ぶりなチャーハンだと、どれがいい?」

 お姉さまからの突然&想定外のご質問にパニックとなる私。
 お電話の向こうでは、あの子、サカッちゃうと食欲出ないのよ、とどなたかにご説明されるお姉さまの小さいお声。

「あ、ではハンバーグでお願いします…」

 確かに今の私は食欲どころではないので、一番最初に告げられた選択肢をオウム返し的にお答えします。

「おーけー、ハンバーグね。その他に何か変わったことあった?」

 お電話の向こうにおられても、お姉さまがイタズラっぽい笑顔になられていらっしゃるのがわかるようなニュアンス。

「あ、あの、私の中のバイブ、あ、いえローターが震え始めているのですけれど…」

 恥ずかしい会話をしている自覚はあって、ヒソヒソ声になってしまいます。

「へー、こんなに距離があってもちゃんと動くんだ、やっぱりうちのミサは優秀ね」

 お姉さまがご感心されたお声をあげられ、数秒してからローターも完全に鎮まります。

「じゃあ直子?これからあたしの言う通りにしなさい」

 お声のニュアンスががらりと変わられ、冷たくご命令されるミストレスのご口調に。

「テーブルの上のあたしのビデオカメラの電源を入れて直子の顔がちゃんと映るようにモニターを見ながらセットしなさい。出来るわよね?今朝だって上手に自撮りしていたのだから。で、セット出来たらあたしにコールバック」

 それだけおっしゃってプチっと通話が切れました。
 そしてそれだけでお姉さまが何をなされたいのかを察してしまう私。

 更に今朝のジョセフィーヌさまとのお散歩映像をすでにお姉さまがご覧になっていた、という事実に、自ら率先して繰り広げたジョセフィーヌさまとの痴態の数々を思い出し、体温が二度くらいカーッと上がってしまいました。
 
 おそらく私がシャワーしているあいだにみなさまでご覧になられたのでしょう。
 嬉々として自撮りしたのは自分ですから、完全な自業自得ではあるのですが。

 気を取り直してビデオカメラの電源を入れ正面に置き、モニター画面を自分に向けます。
 自分の顔が画面中央に映るようレンズを向けるために距離を調節し、少し上向きにするために空になった自分のポシェットを外してビデオカメラ本体の下にかませて微調整。
 お姉さまのご指示通りになったところでコールバック。

「はい?」

「出来ました」

 すぐにお出になったお姉さまから、おーけー、のお返事。

「ビデオを録画にして、直子はその場から絶対動いちゃ駄目よ。両手は椅子の背もたれの後ろに」

 冷たいお声のご指示をいただき、通話は再度、唐突に切断されます。
 スマホをテーブルに置き、ご命令通り両手を背もたれの後ろで組んでセルフ磔状態に。

「んーっ!」

 数秒の沈黙後、股間に強烈な振動。
 思わずうつむいて両腿をギュッと擦り合わせてしまうほど。

 ついさっきまで、せっかく挿れたのに動かしてくださらないんだ、なんて無い物ねだりをしていた思いが、あっさり後悔に塗り替えられます。
 膣壁の粘膜を乱暴に震わせてくださる振動で、その後悔も瞬く間に悦びへと変わっていきます。
 ブゥウンという低い振動音さえ聞き取れるくらいの激しい震え。

「んーーーっ、んーーーっ!!」

 薄れている理性とは言え、こんな場所ではしたない淫ら声を洩らしてはいけないということはわかっています。
 必死に唇を噛み締めて、必死に悦楽の波に逆らいます。

 来るときの電車内でお姉さまが試されていた振動のパターン、規則正しい震え、強弱をつけたランダムな震え、膣中を掻き回すような乱暴な震え、膣奥に侵入してくるようなピストンに似た震え…
 そんな振動たちが電車のときよりも強めの振動をキープしたまま、ランダムな間隔で私のマゾマンコを蹂躙してくださっています。

 いやっ、だめっ、許してっ…
 そうつぶやかずにはいられないほど嬲られ放題な蹂躙の嵐。

 目の前にはビデオカメラのレンズ。
 私がこうして人知れず身悶え犯され乱れているライブな表情が、カメラ本体横の小さなモニターで確認出来、更にもれなくデジタルで記録されているのです。

 振動のパターンは、強弱をつけたランダムな震え、に落ち着いたみたい。
 ときに強く長く、かと思うと急に弱くという焦らし責め。
 押し潰されている両乳首が絆創膏の下でヒクヒク暴れています。
 股間はビシャビシャに潤み、スカートのお尻側まで染み出して椅子の座面をも汚しているのが布地の冷たさでわかります。
 
 両膝を固く閉じ合わせたまま、全身が細かく痙攣しています。
 快感の蓄積を感じつつ、小さく何度もイッています。
 ここは公共の場、避暑地の商業施設。
 なのに陵辱の振動を止めてくださらない、イジワルなお姉さまの手の内にあるコントローラー。

 目の前に置いた自分のスマホは、なぜだかずっと待受画面を映し出したまま。
 それが私に、ほら、おまえはつまりそういう女なんだよ、と思い知らしめてくださっているかのよう。

 絶え間なく迫りくる快感に何度もうつむいたり顔を上げたり。
 フードコートのテラス席に独り座って独り身悶え、ハッハッと熱い息を吐きつづけている首輪の女。
 モニターには、私の背後の芝生を歩いて行かれる人影が時折り映り込んではいましたが、もはや私に周りを気にする余裕なんてありません。
 
 ヴイィィン…ヴゥン…ヴイイィィィィーーッ…ブン…ヴゥン…

 股間から響く振動音が一段上がった気がします
 振動は、膣中を掻き回すような乱暴な震え、に変わったみたい。
 お姉さまは私をこの場でイカせてしまうことに決められたようです。

 膣壁を縦横無尽に揺すりたてて蹂躙しつづけてくる振動。
 どんどん増幅される快感の波に翻弄され、意識はもはやホワイトアウト寸前。
 
「んーッ、んぬーーーッ、んぐぅーーーーッ!!」
 
 抑えようにも抑えきれない喉奥から湧き上がる淫声。
 じっと見つめてくるレンズ横のモニターに、自分の泣き出しそうに切なげで、それなのにとても嬉しそうな、つまりは淫靡に歪んだアヘ顔が映っています。

「んっ、んっ、んーっ、ンッンッンッンッーっ…」
 
 もうがまんするのはやめて、すべてを受け入れてラクになっちゃおう…
 覚悟を決めたとき、テーブルのスマホがブルッと震え、またもや喋り始めます。

「これが直子のマゾマン…」

2022年10月2日

肌色休暇三日目~避暑地の言いなり人形 08

 この場でブラウスを脱いでブラを外すか、脱がないままモゾモゾ外すか…
 そんなのどっちもおいそれと出来るわけありません。
 今だって少し離れた場所に白いお車が駐車され、大学生風のカップルさんが私たちのほうをチラチラ見遣りながら数メートル前を歩いて行かれたのですから。

「ほら、早くしないと、もっとひどい命令にアップグレードしちゃうよ?」

 とっても愉しげに残酷な笑みを浮かべられる五十嵐さま。
 仕方ありません…
 ブラウスのボタンを外して、脱いで、ブラを取って、またブラウスを着てボタンをして、という行程はあまりにも時間がかかって危険そうなので、着たまま外すことに決めます。

 両手を背中に回してブラウスの布の上からブラのホックを外しました。
 それからブラウスの前ボタンをもうふたつ外し、左半袖の中へ肘のほうから左腕を無理やりブラウスの中に押し込みます。
 この時点でブラウスの前立てはおへそ上まではだけているので、緩んだ薄青色のブラジャーのほとんどが外気に晒されています。

 ブラウス内に潜り込ませた左腕からブラの左肩紐を抜き、急いで左腕を左袖に通し直してブラウスのボタンも留め直しました。
 その後は左手を右半袖に潜り込ませ、右肩紐を引っ張って袖からブラを引き摺り出すだけ。
 その一部始終は、橋本さまが構えられたビデオカメラで記録されているはずです。

「へー、ずいぶん手慣れてるもんだ、すごいすごい。何度もやっていなくちゃ出来ない芸当だね」

 五十嵐さまからのお褒めのお言葉は良いのですが、良くないのはブラが去ってしまった私の格好です。
 炎天下の汗と私の冷や汗が重なり、それでなくても透けやすい生地がべったり肌に貼り付いて、ところどころだけ乳白色な肌色ビニール状態。
 おっぱいの形はもちろん、乳暈と、自分でも恥ずかしいくらい尖りきっている乳首の色と形まで丸わかりなんです。

 外したブラを握ったまま、思わず両手を交差してバストを隠してしまう私。
 五十嵐さまが前抱きにされたリュックからスマホを取り出され、どこかにお電話されています。

「P3のラルフの裏あたりで右のミラーに黄色いバンダナね。了解」

 通話を終えられた五十嵐さまが私に近づかれます。
 無造作に伸ばされた右手でブラがひったくられ、五十嵐さまのリュックの中へ。

「なに今更おっぱい隠しちゃってるの?誰が隠していいって言った?」

 胸の前で交差した私の右手首を握ってこられる五十嵐さま。
 離れる腕に弾かれた乳首がピクンと跳ねて布地を押し上げます。

「あっ、あの、で、でも…」

 木々と建物で隔てられた私の背面側のモールのほうから、キャハハハという数人の女性の甲高い笑い声。
 そこから私が見えているはずはないのに、私に向けての嘲笑に思えてしまいます。

「露出狂のクセにデモもストもないの。えっちな格好をみんなに視てもらって恥ずかしい思いがしたいんでしょう?それで興奮しちゃう変態マゾ女なんでしょう?」

 こんな健全な公共施設の屋外で、変態マゾ女、なんて面と向かって決めつけられたら、それだけでドキンと心臓が口から飛び出しそう。
 同時に両腿の付け根もヒクヒクンと盛大に疼いてしまいます。

「ほら、汗でいい感じの透け具合になってるし、そのいやらしいおっぱいをみんなにしっかり視てもらわなくちゃ」

 おっしゃりながら五十嵐さまに掴まれた手首がゆっくりと私の背中側に回されます。
 されるがままに左手も胸から剥がされ、お尻の上くらいで両手がひとまとめに。
 うつむく私の目前に恥ずかし過ぎる透け乳首がふたつ。

「でも、とか言って嫌がるわりに、全然抵抗はしてこないんだね。直子ってほんとマゾ」

 からかうようにおっしゃった五十嵐さまが後ろ手となった私の手首に何か硬い物を押し付けてこられます。
 あっ!と思う間もなくカチンカチンッと軽めな音が二回。
 そこまでされるとは思っていなかった、想定外の後ろ手錠。

「これでよしっと。さ、みんなのところに戻ろっか。ハッシー?周りの雰囲気込みでじっくり撮ってね」

 五十嵐さまに軽く背中を押され、閑散とした駐車場の端っこから、普通に人とお車が行き交うもう片側のモール沿いのほうへ。
 後ろ手錠されてしまったので、透け透けのおっぱいを隠すことは一切出来ません。
 橋本さまが近づかれたり遠ざかれたり、前へ横へ後ろへとポジショニングされつつ撮影してくださっています。

 施された手錠はその軽さや感触から、お姉さまやシーナさまが私に使われるスチール製の本物仕様ではなく、お子様向けけいさつごっこ用なプラスティック玩具みたい。
 私も以前、同様のものを百円ショップで購入したことがあるので知っているのですが、この手のオモチャは安全対策として鍵を使わなくても手錠本体に外せるボタンが付いている場合がほとんど。
 今されている手錠も、見えないながら表面を指でなぞると、それらしきボタンがちゃんとあるのが確認出来ました。

 それでも私は自分からこの手錠を外すことはしません。
 お姉さまがご懇意にされているかたからのご命令は絶対服従、というレズ便器体質がからだに刷り込まれているのもあるのですが、何よりも自分が、今のこんなご無体な境遇に興奮してしまっているからです。

 五十嵐さまは前抱きリュックのまま薄い笑みを浮かべられたお顔をまっすぐ前に向けられ、私の左横を同じ歩調で歩かれています。
 撮影されている橋本さまが私にレンズを向けての後ずさりな感じになってしまうので、どうしても歩くペースはゆっくりになってしまいます。

 私はと言えば、とても正面に顔を上げることは出来ずうつむきがち、それでもときどき視線だけ動かして周りを窺わずにはいられません。
 お姉さまなら、そんなにモジモジしていると却って悪目立ちするわよ、とすかさずご叱責されることでしょう。
 うつむいた視野には否応なく自分の透け乳首が入り、そこから目を逸らすと青空と駐車場。

 場内を進むごとに、駐車されているお車と周りを行き交う人の数が増えてきます。
 これから進む方向にある空きスペースにお車が駐められ、ドアが開いて男女が出てこられたり、若い女性のおふたり連れと一メートルも隔てていない距離で擦れ違ったり。
 私たちから5、6メートル離れた駐車スペースで棒立ちになられ、明らかに私たちをじーっと見つめている男性おふたり組を視界の端にみつけたとき、視られている、という実感が股間の粘膜を震わせながらせり上がってきました。

 視られて当然です。
 こんなに目立つ首輪を嵌めて、衣服の用を成していないブラウスの下の生おっぱいを見せびらかすように晒している変態女が、ランチタイムの健全なショッピングモールの駐車場を撮影されながら歩いているのですから。

 罪悪感と恐怖感を盾として崩落を食い止めている理性と呼ばれるストッパーが、恥辱願望という性的興奮でみるみる緩んできます。
 こんな恥ずかしい姿、お願い視ないで…という懇願が、どうぞじっくり視て蔑んでください…という被虐の快楽へと飲み込まれそう。

 自分の生活圏ではない一期一会の見知らぬ土地であるという開放感も、大胆さへとそそのかされる呼び水になっているみたい。
 視られている、という実感をより強烈に体感したくなり、歩きながらうつむいている顎を徐々に上げていく私。

 知らぬ間にずいぶん歩いたみたい。
 広い駐車場でも、ひときわ密集してお車が駐車されているほうへと近づいているので、そちら側のショッピングモールへと出るのに便利な場所なのでしょう。
 当然のこと人々の姿も増え、前から後ろから、さまざまな人に追い越されたり擦れ違ったり。

 顔は前に向けたまま、そんな方々と極力目を合わせないよう無表情を繕って、でも浴びせられる視線は充分意識して歩きつづける私。
 時代劇で見たことのある、市中引廻し、みたいな猥雑な見世物になっている気分で心臓はドキドキ冷や汗タラタラ、なのに下半身はキュンキュン感じてしまっているのです。

「やっとみつけた。あそこだね」

 五十嵐さまが突然立ち止まられ、目前を指さされます。
 いろんなお車が前後左右に整然とズラッと並んだ一画に、確かに見覚えのあるシルバーグレイのワゴン車。
 いいえ、さっきのドライブ中の会話で本橋さまがおっしゃっていたお話によると、こういうお車を今はミニバンと呼ぶのだそう。
 そして五十嵐さまがお電話でおっしゃていた通り、確かにミラーのところに黄色いバンダナが巻かれて垂れ下がっています。

 戻ってこられた五十嵐さまや私のはしたない姿をお車のほうでもみつけられたのでしょう、ドアが開いてお姉さま、中村さま、本橋さまもお外に降りてこられました。
 居並ぶお車たちのあいだを縫うように進み、お姉さまたちと合流します。

「そんな姿であそこから歩いてきたの!?」

 私の姿を見られた中村さま、ご驚愕の第一声。

「バンダナ付けてくれて助かったよ。似たような車ばっかりで、もうみんなに一生会えないかと思った」

 中村さまのご驚愕を、大げさなご冗談でスルーされる五十嵐さま。

「バスト丸出しじゃない?透けているっていうレベルじゃないわよ?」

 なおも呆れ果てられている中村さまとご愉快そうに苦笑いのお姉さま。
 唖然としたお顔で私の上半身を見つめられている本橋さま。
 
 みなさまに取り囲まれ、更に周りも背の高いお車ばかりで自分の姿が隠されて、ちょっとホッとしている私。
 そんな私から五十嵐さまがおもちゃの手錠を外してくださいました。
 両手は自由になったのに、あらためておっぱいを隠そうともしないのは、お姉さまが私を見て微笑んでくださっているから。
 
「でも人って意外と他人のこと気にしていないもんなんだね。これだけ凄い格好した女子がすぐ近くを歩いているのに、他所向いてたりスマホに夢中だったり」

 五十嵐さまがあらためてしげしげと私の透けおっぱいを見つめてこられます。
 その後ろから橋本さまも変わらず撮影をつづけておられます。

「もちろんガン見してきたり、痴女?なんてつぶやく声も聞こえたけど、ほとんど男で、うちがそっちに目線向けると慌てて視線逸らすの」
「ひと組だけ中年の夫婦っぽい男女が、一瞥してしかめっ面になって、あ、これはひょっとするとヤバいかな、と思った。あのときが一番焦ったな」
「でもまあ、こんな首輪もしてるし業界風のハッシーも付いているしで、そういう撮影なんだろうって有耶無耶に納得した人たちがほとんどなんじゃないかな」

 五十嵐さまのお言葉で、やっぱりそんなに大勢に視られていたんだ、とゾクゾクがぶり返す私。
 ビクンと震えて視線を上げると、その先にお姉さま。
 薄い笑顔の冷たい目でじっと私を見つめられてから、おっしゃいます。

「でも、ランチタイムのフードコートにその格好はいろいろマズイと思うな。この子は良くてもあたしたちの立場的に」

「うん、うちもそれはそう思う。一応羽織るものも用意してるから、それを着せようかなって」

 五十嵐さまが素直にご同意され、リュック内をもぞもぞされ始めます。

「フードコート行くなら、もう少し車を近いところまで移動させましょうか?見たところ、まだ空きはいっぱいあるし」

 気不味い話題を無理矢理はぐらかされるような本橋さまのご提案で、もう一度みなさまミニバンに乗ることに。
 橋本さまが構えていたカメラを下ろそうとされたとき、お姉さまから待ったがかかります。

「いい機会だからその前にカメラの前で、直子がどういう女なのかはっきりさせておきましょう。直子、スカートをまくりあげなさい」

 お姉さまの冷たいご命令口調。

「は、はい…」

 お姉さまがみなさまに何をお見せになりたいのかは、わかりきっています。
 橋本さまを中心に、みなさまが私の正面に並ばれます。
 私はおずおずと両手をスカートの裾に添え、ゆっくりとめくり上げていきます。

「うわー、グショグショじゃない」
「パンツの色まで変わっちゃって、土手に貼り付いちゃってる」
「腿にも垂れてない?クロッチに雫浮いてるし」
「露出狂って恥ずかしさだけでここまでなっちゃうんだ」

 いたたまれないご感想は、中村さまと五十嵐さまから。
 本橋さまはただただ唖然、お姉さまだけが艶然と微笑まれていらっしゃいます。

「イガちゃんはまだ、直子のパンツまで脱がす気は無いんでしょ?」

「ああ、うん。もっと人目の多い日常的な場所で脱がさせたほうが、露出症的には嬉しいのかな、と」

 お姉さまのご質問に率直に答えられる五十嵐さま。

「正解。見ての通り直子のスケベさは底無しだから、ちゃんと緩急つけておかないと好き勝手に暴走しちゃって、あたしたちまで危ない目に遭うことになるかもしれないの。とくにこういう公然猥褻スレスレ事例だと」

 お姉さまがビデオカメラのお邪魔にならないように一歩前に出られ、私を嗜虐的な瞳で見据えられます。

「直子、今、何がしたい?」

「えっ、あの、何って…」

「オナニーしたいでしょう?早くイキたいのでしょう?」

「えっ、あ、は、はい…」

「でもこんなところでそんなことしちゃったら、どんなことになるかもわかるわよね?」

「はい…」

 唇の両端を微かに上げられたお姉さまがつづけられます。

「聞き分けがよくて助かるわ。ご褒美を上げましょう」

 もう一度唇の両端を上げられたお姉さまの右手が、すっかり私の背中側まで回っていたパイスラポシェットを開けられ、何か取り出されます。
 もちろん私に手渡されたのは例のリモコンローターのローター部分。

「ほら、これを許して上げるから、みなさんの前で、自分で挿れなさい」

「はい…」

 もはや私にはお姉さましか見えていません。
 ゾクゾク感じながら再度自らスカートをまくり上げ、いそいそとショーツを太腿中間まで摺り下げます。

 か細い糸を何本も引いて股間から離れた布片。
 外気に晒された無毛の膣口にローターを押し当て、ズブリと右手で押し込みます。

「んっ!!」

 刺激を渇望していた粘膜がヒクッとざわめき、小さくイッてしまいます。
 そのままの格好で縋るようにお姉さまを見つめる私。
 膣口からはリモコン受信用の柔らかいアンテナがピンと飛び出しています。
 それ以上の刺激が欲しくて堪りません。

「ほら、さっさとパンツ上げなさい。これからみんなでランチなのだから」

 お姉さまの突き放すようなおひと言で、渋々ショーツを股間に戻します。
 はしたない声を抑える準備は出来ていたのに…
 やっぱり一番イジワルなのはお姉さまです。

「ド淫乱でド変態の百合主従で露出狂なドマゾ女…うちが蓄えた知識だけじゃ追いつかなそう…」

 五十嵐さまがお独り言のようにつぶやかれたお言葉で、私とお姉さまだけだった世界が呆気なく崩れ去ります。

「さあ、これで当面は穏やかに過ごせるはず。ランチにしましょう」

 お姉さまの号令で、みなさま我に返られたみたいにお車に乗り込まれます。
 本橋さまがブルンとエンジンをおかけになられ、静かに流れ出すバラード曲、確かジョージ・マイケルさん、に乗ってお車が走り始めます。

 五十嵐さまが羽織らせる用にご用意されていたというお洋服は、薄いニットのクタっとした半袖カーディガンでした。
 淡いピンク色の無地で、丈がバスト下くらいまでしか無いのでボレロカーディガンと呼んだほうがよいかも。
 前ボタンも付いてなく、ブラジャーのセンター位置くらいをリボンで結ぶタイプ。

 羽織ってみると軽くて着心地良く、前リボンを結べばおっぱいもすっぽりキレイに隠れます。
 なんだかブラウスの上から緩いブラジャーを着けたみたい。

 ただ、ブラウスもカーディガンも生地が薄いので、バストトップは露骨に響き、位置も形も丸わかりな感じ。
 それにリボンが解けたら生地が容易に左右に割れ、透けおっぱいは丸出しに逆戻りとなります。

「うーん、やっぱり乳首が露骨だわよね」

 中村さまに、見せて、とお願いされ、お車のスライドドア脇まで出て、膝を屈めた姿勢で胸を突き出しています。

「直子が戻ってきたとき何よりも驚いたのが、その格好よりも左右の乳首の存在感だったのよ」
「痛そうに尖りながら膨らんでいて、うわー卑猥だーこれはどう見ても猥褻物だー、って思ったの」

 中村さまがお隣のお姉さまに向けて力説されます。
 橋本さまが助手席から半身を乗り出され、そんなご様子まで撮影されています。

「だからあの卑猥な勃起乳首は、なるべく不特定多数の公衆の面前には出さないほうがいいと思うのよね」

 捉えようによっては、ずいぶん失礼なご意見ではあります。
 私の乳首って、そんなに卑猥なんだ…

「んなこと言ったって、じゃあどうすんの?またブラ着け直す?なんかそれって調教プレイの流れとしてマヌケ過ぎじゃん」

 中村さまのお話を黙って聞いていらっしゃった五十嵐さまが、ご不満げにご抗議のお声。
 今していることって五十嵐さまの中では、調教プレイ、っていう位置付けなんだ、と妙に納得してしまう私。
 でもすぐに何か新しいアイデアが閃かれたらしい五十嵐さまが、お声のトーンを上げてつづけられます。

「ならこうしない?絆創膏貼るの。グラドルとか着エロでよくある絆創膏ヌード。乳首とワレメだけ絆創膏で隠すやつ。あれなら全裸とはまた違った独特のエロさがあるし、服にも響かなくなるはず」
「うちの予備のニップレスもあるけど、それより断然、絆創膏のほうがエロいよね。見せたいけど見せたくない、ここさえ隠せば裸じゃない的屈折した乙女心」

 みなさまのお返事も待たられずに五十嵐さまが再び、ご自分のリュックの中を漁り始められます。

「あったあった。じゃあ直子、上半身全部脱いで」

 お車はすでにフードコートに近い場所まで移動したようで、今は駐車の状態。
 今度はさっきよりモールの店舗脇通路に近い場所に駐められたらしく、お外から漏れ聞こえる喧騒もさっきより賑やかな気がします。
 スモーク加工が施されたお車の窓をそっと覗くと、平日朝10時過ぎの東池袋駅周辺くらいの人通り。

 そんな中で私は、スライドドアの大きな窓を背中にして、ブラウスのボタンを外し始めました。

2022年9月25日

肌色休暇三日目~避暑地の言いなり人形 07

「あ、それでこちらは某出版社で名塚毬藻先生のご担当を長らくつづけられて、今はフリー編集者の中村佳奈さん。夏のあいだずっと先生とここで過ごされている、言わばこのお屋敷の管理人のおひとり」

 お姉さまのご紹介に身を乗り出されたのが橋本さま。

「名塚先生って、あの、S氏の典雅な生活、の名塚先生ですよね?俺、中坊の頃から大ファンでシリーズ全部持ってます。先生、今いらっしゃるんですか?」

 少し早口お声高になられ、ずいぶんご興奮気味な橋本さま。
 名塚先生って男性向け?たぶんBL?も書かれているんだ、って私もちょっとびっくり。

「ごめんなさいね、名塚は今日は仕事でタカサキのほうまで出ているんです。でも、そんな以前からの作品を今でも読んでくださっている男性ファンがいると知ったら名塚もとても喜びますわ」

 なんだかお仕事っぽい口調になられている中村さま。

「ハッシーはね、こんなサイケなアロハ着てチャラいけれど美大の映像科出てるんだって。だから今日は直子の資料映像の撮影カメラマンもやってもらおうって」
「あ、橋本だからハッシーね。で、こちらのガタイのいいほうが彼のパートナーの本橋さん、モッチー」

 お姉さまのご紹介にペコリと頭を下げられる本橋さま。

「ちょい訂正。俺、美大出てはいない。中退。小難しい理屈ばかりの講義に途中で飽きて嫌になった…」

「あ、でもこいつ、今でもボディビル大会があるとあちこちから呼ばれるほど撮影の腕とセンスはいいんですよ。アングルのとり方とか躍動感の捉え方とか…」

 ご中退告白で少しやさぐれられた橋本さまを、すかさずフォローされる本橋さま。
 五十嵐さまがこれ以上無いくらい嬉しそうにご相好を崩されています。

 そんなご様子を曖昧な笑顔で眺められていた中村さまが、提げていたバッグからスポーツドリンクのペットボトルを二本出され、おふたりにそれぞれ手渡されます。

「ワタシたちはもう少し準備があって、ほら、女の支度は長いから。本当は中で待っていただくのが筋なのだけれど、名塚の滞在中には男性を屋敷の中に入れてはならない、っていうジンクスみたいな不文律みたいなのがあるの。だからあと5分くらい、本当に申し訳ないのだけれど、ここでお待ちいただいていい?」

 おふたりが頷かれるのを見極められてから、お言葉がつづきます。

「渡辺社長のお車は、そこを右に折れて突き当たって左、建物の裏手が駐車場になっていますから、適当に空いているところに入れておいてください」

 なぜだかずっとお仕事っぽくよそよそしい事務的口調な中村さまに促され、私たち4人はもう一度お屋敷の中へ。

「モッチー✕ハッシーいいじゃんっ!お揃いのバミューダパンツ穿いちゃって、見るからにラブラブだねえ」

 上機嫌な五十嵐さまは、ご自分の大きめリュックを覗き込まれ、持っていかれるもののチェックをされているご様子。
 お姉さまが私に近づいてこられ、私のポシェットをたすき掛けのパイスラ仕様にセッティング。

 またブラに布地が貼り付いちゃう、と思ったのですが、乾きも早い生地みたいで空調の効いた室内に戻ったせいか、着たときに感じた通常の透け具合に戻っていました。
 厨房にしばらくこもられてから出てこられた中村さまは、把手の付いた大きなクーラーボックスをぶら下げていらっしゃいます。

「夕方まで時間があるからさ。生鮮食料品は遅めに買って、この中に突っ込んどけばいいわ」

 そのお腰には緑のチュニックによく映えるお洒落可愛い橙色のウエストポーチが巻かれています。

「かなちゃん、ハッシーと話すとき妙によそよそしかったけれど、あの手の男、苦手なの?」

 お姉さまはいつものトートバッグ、たぶん私を虐めるおもちゃもたくさん入っている、を肩に提げられ、中村さまに笑顔でお問いかけ。

「うーん、出版社にいた頃、バイトの女子や作家志望で持ち込みに来る若い女の子にすぐに下品なセクハラまがいかます、ワタシより少し年上の既婚編集者がいてさ、そいつにルックスや雰囲気が似ていたんで、ちょっと身構えちゃった」

 苦笑いを浮かべられる中村さま。

「でも彼、ホモセクシャルなんでしょ?なら心配ないよね。好きだって言っていた先生の小説もちゃんとBLものだったし」

 ご自分に言い聞かせられるように中村さまがおっしゃいます。

「かなぴっぴ?うちらに害をなすかもっていう杞憂なら大丈夫。ハッシーはどう見てもゲイ、それも絶対ウケのほうだよ」

 五十嵐さまが自信満々におっしゃり、私たち声を揃えて、えーーっ!?

「ああいうちょっとヒネた感じのやさ男って、ゲイの中では総じて受けになりがちなんだ。ハッシーは誘い受けだね。ベッドじゃ組み伏せられて悦んでるタイプ、つまるところエム」

「でもあのマッチョな彼のほうが物腰柔らかくて、受けっぽくない?」

 中村さまが異議を申し立てられますが、ふふんとお鼻で笑われる五十嵐さま。

「ううん、彼のほうはベッドじゃたぶんケダモノよ。ラグジャー着ていてあのガタイだもん、絶対脳筋だし、本能に忠実な攻めタイプ」

「ふーん、ホモセクシャルってそういうものなのかしら…」

 何やら生々しい会話が繰り広げられ、私はかなり引き気味。
 そうこうしているうちにみなさまのご準備が整ったようです。

 4人で再びお庭に出て、中村さまがしっかり施錠。
 玄関の壁に掛かったアンティークな振り子時計を見ると、時刻は午前11時を15分くらい過ぎた頃。
 本当に私は、人がたくさん集まっていらっしゃるらしいアウトレット?モール?に、こんな透けブラ姿で連れ出されることになってしまいました。

 見慣れぬ男性おふたりをご警戒されていたのか、少し遠巻きにウロウロされていたジョセフィーヌさまが、現われた私たちをみつけられ嬉しそうに駆け寄ってこられます。
 中村さまが持たれていたコンビニ袋をお見せになられつつ、ジョセフィーヌさまに何事かを語りかけられながら、芝生の小屋へと連れ戻されます。
 
 アプローチには門に向けて方向転換されたシルバーグレイのワゴン車のみ。
 お姉さまのお車は駐車場に入れられたのでしょう、消えていました。

 出てきた私たちに気づかれ、車外へと降りられる本橋さまと橋本さま。
 同時にワゴン車側面のスライドドアがススーっと開いたのですが、それを無視され五十嵐さまが橋本さまに駆け寄られます。

「はい、これビデオカメラ。充電バッチリで32ギガ積んである。頼んだわよ、撮影カントク、ハッシーさん?」

「あ、いや俺、自分の使い慣れたやつ持ってきたから。メモリーカードに録画するから終わったらすぐに渡せる」

 そうおっしゃって右手に嵌めたオレンジ色のハンディビデオカメラを私に向けてこられる橋本さま。
 思わずバストを庇ってしまう私。

「そっか、ならこのビデオはエミリーさんに託そう。撮影されている直子を撮影するのもメイキング映像みたいで面白そう」

 この三日間、私の痴態を記録しつづけてきたビデオカメラが本来の持ち主さまのお手に戻ります。

「おっけー、任せといて」

 お姉さまの朗らかなお声が合図だったかのように、本橋さまと橋本さまがそれぞれ運転席と助手席へ。
 スライドドアから覗く車内はずいぶん広く、座り心地の良さそうな立派な後部座席シートがフロントグラス向きに三列も並んでいます。

 運転席に本橋さま、助手席に橋本さまがお座りになられ、その後ろの席に私と五十嵐さま、その後ろに中村さまとお姉さま。
 それぞれのお荷物を足下に置き、大きなクーラーボックスを積んでもまだまだ余裕な広さ。

 それぞれがシートベルトを締め、スライドドアがススーっと閉じるとブルンッとエンジン音。
 一拍置いて流れてきたノリのいい音楽は、来るときにも聴いた覚えのあるレディ・ガガさまのヒット曲。
 車内にはエアコンがほどよく効いて、フローラル系の芳香剤っぽい香りが甘く漂っています。

「森下さん?大丈夫?臭くない?」

 ゆっくりと滑り出すお車のシートに背中を預けてひと息ついていた私に、唐突にお尋ねくださる本橋さま。

「えっ?あの、えっと、何が…ですか?」

「この車、いつも男ばかりの集団で使っているからさ、シートとかに男臭い体臭が染み込んでるんじゃないかと思って、掃除がてら消臭剤と芳香剤みんなでかけまくってきたんだ。タバコ吸うやつもいるし」

「あ、そうだったのですか…大丈夫です。ぜんぜん気になりません。それにあの、却ってお気を遣わせてしまって、ごめんなさい…」

 その細やかなお心遣いに恐縮してしまう私。
 私、スタンディングキャット社の方々から、本当に姫扱いされているのかもしれません。
 でも、そんなせっかくのご厚意をまぜ返すお声が、私の背後から聞こえてきました。

「あれ?あたしの車のほうは?」

 お姉さまのお声にすかさず応えられたのは橋本さま。

「はいはい、チーフの車は近くのスタンドで洗車ワックスと室内清掃オイル点検殺菌消毒までして、ガス満タンでお戻ししましたよっ」

 お姑さんがお嫁さんに口答えするみたいなニクタラシイご口調でのお答えに車内爆笑。
 和気藹々とした雰囲気で発車です。
 ジョセフィーヌさまのお散歩コースな広場へとつづく曲り角もお車だとすぐに通過。

 お車はずーっと木立の道、未舗装の林道のような道を進んでいきます。
 時折ガタガタはしますが乗り心地はいい感じ。
 なだらかな円周カーブがつづいているので、お山をグルっと周りながら下っているのでしょう。

 風景は見渡す限り延々つづく木立で、その奥はいずれも草木の生い茂る森林です。
 人家や建物っぽいものは何一つ見えず、もちろん信号機もすれ違うお車もひとつもありません。

 お車が走り始めてからしばらくは、お隣に座られた五十嵐さまから、いつ私に恥ずかしいご命令が下されるのか、とビクビクしていたのですが、今のところそんな気配もありません。

 と言うか五十嵐さま、本橋さま橋本さまへの取材に夢中なご様子で、本当に女性の裸を見ても興奮しないのかとか、初見で会ってホモとノンケの区別はつくのかとか、サウナや銭湯の男湯で好みのからだに出会ったらマークするのかとか、いささか下世話なご質問を矢継ぎ早に投げかけられています。

 そんなご質問にひとつひとつ律儀にご丁寧に、ときにユーモアを交えてお答えになられる橋本さまと本橋さま。
 ちなみに、女性の裸で興奮しないのか、というご質問に橋本さまは、綺麗な裸だったら、ああ綺麗だなーと美的芸術的な感心はするけれど性的な興奮は無い、綺麗じゃなかったら不快感しか無い、というお答えでした。

 お姉さまは後ろのお席で、私の知らないお仕事関係のかたのお話で中村さまと盛り上がられているご様子。
 どちらの会話にも混ざれない私だけ暇を持て余し気味に、車窓を流れる森林の景色を漫然と眺めていました。

 そんな感じで20分くらい走った頃、延々つづいていた森林が突然途切れ、草ばかり生い茂る平地に出ました。
 緩いカーブがつづくその道の左右は、以前は何かの畑だったのだろうなと思わせるそれほど広くはない草地となっていて、私の窓の側に凄く久しぶりに見る人の手が入った建物らしきものが迫ってきています。

 通り過ぎるときに目を凝らすと、そこだけ少し人為的に草を刈り取られたっぽい空き地の奥に、お寺か神社かなと思わせる木造二階建ての大きめな建物。
 
 なにぶんお車があっという間に通り過ぎてしまったので、その建物が何なのかまではわかりませんでしたが、もう長いあいだ使われていない=どなたも住まわれてはいない、ということは、見た感じの古さや荒れ具合でわかります。
 せっかくの建物なのに他のどなたも気に留められなかったようで話題にはならず、通り過ぎるとすぐにまた鬱蒼とした森へと入り、木立の林道へと戻りました。

 その林道を更に5分くらい走った後、お屋敷から走り始めて初めてのブレーキ。
 えっ?どしたの?と前を見ると、道の両脇から踏切の遮断機みたいな黄色い棒が行く手を塞いでいました。

 本橋さまが窓を開けられ、傍らの機械にカードみたいのをかざすと棒がスルスルっと左右に割れます。
 お車が通過してから振り向くと、棒がすぐに元に戻って再び通せんぼ。

 なるほど。
 これでみなさまが、ここは私有地だから、とおっしゃる意味が初めて理解出来た気がしました。
 でも、あんな遮断器、その気になればたやすく突破出来ちゃうような気もしますが…

「ほい、カード返しますわ」

 橋本さまが背もたれ越しにカードを私に差し出されてきます。
 受け取ると、表面に少し前に流行った動物を擬人化したアニメの美少女キャラ百合カップルの絵柄シールが貼られたクレジットカード大のプラスティックのカード。
 私も振り返り、斜め後ろのお姉さまに差し出します。

「それはエミリー、持っていていいよ。どうせ来年も来るでしょう?」

 お姉さまは中村さまに渡されようとされたのでしょう、中村さまのそんなお声が聞こえてきました。
 お車はいつの間にかまた木立を抜けて田園風景の中を一直線、やがてT字路に突き当り、舗装された普通の二車線道路が現われます。

「国道だー、やっと外界に降りられたーっ」

 五十嵐さまのずいぶんはしゃいだお声。

「今日は空いていそうだし、ここまで来たらもう20分も走らずに着けるはずです」

 運転席の本橋さまからのご説明。

「今日って金曜日でしょ?やっぱ混んでるんじゃない?先週の金曜日なんて駐車場どこも一杯だったよ」

「いや、でももうガキンチョの夏休みは終わってるから、少なくとも家族連れはもういないでしょ。いるのは暇な大学生と外国人観光客くらいじゃない?」

「でも週末だから、夕方から夜にはカップルとか増えそうね。モール目当ての客目当てで駅周辺にホテルも増えたし」

 口々にいろんなことをおっしゃるみなさま。
 車窓の田園風景にも民家やお店のお姿が混ざり、すれ違うお車も増え、歩道を歩かれる人のお姿もちらほらお見かけして私も、今までいたお屋敷周辺は明らかに別世界だったんだ、と実感しています。

 そんな窓を見ていてふと気づいた、スモーク加工された暗めのガラスに薄っすらと映り込む今の自分の姿。
 赤い首輪を嵌めて青いブラが透けている薄物一枚な私の上半身。

 すっかり別世界に馴染み切っていたので、自分がワンちゃんの首輪を嵌めていることをすっかり忘れていました。
 首輪…マゾ女のシルシ…
 途端に背筋を快感のような悪寒のような、心地良いような悪いようなさざめきがゾゾゾーっと駆け上ります。

「直子的にはギャラリー多いほうが嬉しいんだろうけど、そもそもあのモールって撮影おっけーだったっけ?」

 中村さまから今更ながらの根本的な疑問のご提示。

「うーん、知らないけれど動画投稿サイトであのモールの食レポとかお店ガイドやレビューとかよく見るし、大丈夫なんじゃない?」

 五十嵐さまからのいたって楽天的なお答え。

「でもまあ有名企業の運営だから、あんまり目立たないほうがいいことだけは確かだよね。あたしらは動画をネットに上げる気は更々無いけれど」

 ご慎重なご意見はお姉さまから。

「目立たないようにって言ったって、アブノーマルな首輪嵌めてスケスケ衣装のこんな女の子被写体にしていたら、人目につかないわけないとは思うな」

 中村さまの至極常識的なご意見。

「まあそのへんはハッシーモッチーのボディガード勢に頑張ってもらいましょう」

 あくまで楽天的な五十嵐さま。

「あ、でも先週来てたM女も、ここでけっこうキワドイ撮影したって寺っちが言ってたっけ。ワタシは用事で参加出来なかったのだけれど」

 傍証を思い出された中村さま。

「ヤバいゲリラ撮影したいなら変にコソコソせず、許可ちゃんと取ってまーす、って感じであっけらかんとカメラ向けていれば、見てるほうも、あ、何かのロケだな、って感じで意外とスムースに無駄なトラブル無く撮れるもんだよ」

 橋本さまの、おそらくご経験則からきているのであろうお言葉で、その議論は終りとなりましたが、逆に私のドキドキは最高潮。
 これからどんな辱めが待ち受けるのか、両腿の付け根が潤みっ放しで股間のクロッチがべったり貼り付いているのがわかります。

 お車は舗装された道路を快調に進み、行き交う他のお車や歩道を歩かれる方々のお姿もどんどん増え、日常世界に舞い戻ってしまったことをあらためて思い知ります。
 平日のランチタイムが終わった午後二時過ぎ頃の池袋繁華街くらいに人波とお車が増えてきた頃、進む先の路上に赤い棒を持たれた警備員さまらしき制服を着られた複数の男性のお姿が。

 その警備員さまが振られる赤い棒に導かれ、お車は広大な駐車場へ。
 とうとう着いてしまいました。
 意味も無くブルッと身震いしてしまう私。

 出入口近くこそ色とりどりのお車が整然と駐車されていますが、もっと奥の広大な駐車スペースにはまばらにポツンポツンという感じ。
 お近くに空きスペースをみつけられ駐車態勢に入られようとする橋本さまに、五十嵐さまから待ったがかかります。

「もちろん車は出入口近くに駐めるとして、直子とうちはあの警備員から死角になりそうな遠くで降ろしてくれない?もちろんモッチーもカメラマンとして着いてきて」

 五十嵐カントクさまのご指示が下され、いよいよ私の辱め映像撮影が始まるようです。
 駐車態勢から方向を変えられた橋本さまは、そのままゆっくりと広大な駐車場の出入口から見て一番端っこ、芝生と建物の背面で隔てられた駐車まばらなスペースまでお車を移動されます。

「そうね、この辺でいいわ。戻って車を駐車しておいて。悪いけれどみんなはちょっと待っていてくれる?外が暑かったら車の中で」

 五十嵐さまに促され、お車を降りる私とビデオカメラ片手な本橋さま。
 本橋さまはいつの間にか、これもペイズリー柄の真っ赤なバンダナを頭に海賊巻きにされています。

 お車が私たちを離れ、相変わらず快晴なお空の下、五十嵐さまと私が芝生の手前で対峙し、その横から本橋さまのレンズが私たちを狙っています。
 遠くにはひっきりなしに行き交う人たちのお姿が見え、背中側からはショッピングを楽しまれているのであろう賑やかな人々の喧騒が聞こえてきます。

「さて直子ちゃん、これからお望み通り、あなたの露出癖が充分満足出来るくらいに、おまえを公衆の面前で辱めてあげる。ふふっ、嬉しいでしょう?」

 ずいぶんお芝居がかった、でも充分嗜虐的なお顔になられた五十嵐さま。
 あの、いえ、私、それほど望んでもいないんですけれど…
 
 反発心からか心ではそう思うのですが、反比例するみたいに肉体でざわめく性的興奮。
 聞こえ来る人々の喧騒が頭の中でわんわん鳴り響いています。

「まずはこの場で、そのブラジャーを外しなさい」
 
 最初から悪魔のような五十嵐さまのご命令。

「シャツを脱いでからでも、着たまま両手を中に入れてのモゾモゾでも、どっちでもいいよ。要はさっさと脱いでブラをうちに渡しなさいっ!」

 心の底から蔑み切ったような五十嵐さまのお声が、怯える私に投げつけられました。

2022年9月19日

肌色休暇三日目~避暑地の言いなり人形 06

「メイクはこんなもんでいいでしょ。次はイガちゃんにコーデしてもらいなさい」

 お姉さまのご指示で五十嵐さまのもとへ。
 テーブルの上に色とりどりのお洋服類が乱雑に置かれています。

「ほい、じゃあまずこの下着を着けて」

 五十嵐さまから手渡されたのは、シルクっぽい手触りの薄手なブラとショーツ。
 光沢のある薄い青色で、ブラはハーフカップ、ショーツはローライズ気味のビキニタイプ。

「あれ?ノーブラノーパンで連れ回すんじゃないんだ?」

 ご自身でのメイクを終えられ一段と艶やかなお顔となられた中村さまが、からかうみたいに五十嵐さまへご質問。

「あたりまえじゃない。露出調教のキモって、まわりにたくさん人がいるところでだんだん薄着になって、なんで自分はこんなありえない場所で、ありえないくらい恥ずかしい格好をしているんだろう、っていう背徳的な興奮を愉しむものだもん」
「最初から大サービス全部おっぴろげーじゃ、ファーストインパクトだけですぐ行き詰まっちゃうし、運が悪けりゃ公然猥褻、即通報。ね?直子?」

 ね?と同意を求められても私は、これからされることへの不安7と期待3のドキドキでおっしゃっているお言葉の意味を考えることが出来ず、上目遣いに五十嵐さまを見つめるばかり。

「ふーん、そんなもんなのかー。生憎アタシにはそういう特殊でアンモラルな性癖、ないからなー」

 相変わらず茶化されるみたいにご愉快そうな中村さま。

「はいはい、シャツはこれね」

 中村さまの軽口をスルーでいなされて、クタッとした白い布片を私に渡してくださる五十嵐さま。
 布片を広げてみるとシフォン?の半袖ブラウス。
 一昨日駅に着いたときに、前結びTシャツの上に羽織るのを許されたシャツブラウスによく似た質感。

 襟ぐりと袖口にレースが施してあってふうわり可愛いらしいのですが、生地全体が頼りなさげに薄っぺらい気が…
 前ボタンを全部外してから袖を通すと案の定、薄いスカーフのような真っ白い生地が光を通し、ブラの青色がスケスケ。
 
 はっきりと言うほどではないにしても、薄っすらというほど奥床しくもなく。
 生地はしんなり軽やかで夏向きの良い素材なのでしょうけれど、汗をかいたらすぐにべったり肌に貼り付いちゃいそう。

「で、下はこれ」

 差し出されたのは真っ赤な布地。
 広げてみると台形シルエットのショートスカート、フロントに銀色の大きめなボタンが六つ並んでいます。

 ウエスト部分のボタンをひとつ外して両脚を通すと、丈は膝上10センチくらい。
 ウエストも私にピッタリでベルトをしなくても大丈夫な感じ。
 ただし、普段こんな派手に真っ赤なスカートは穿かないので、なんだか気恥ずかしい。

「シャツはスカートにインしちゃったほうが可愛いいね。うん、そうそう。あと胸元はもうひとつ空けちゃって」

 五十嵐さまのご指示通りにすると、シャツの薄い布地がますますバストに吸い付き、ブラジャーの青色が白地の下にますます浮かび上がってしまいます。
 胸元のボタンは三つ目まで外れ、おっぱいの膨らみ始めまで素肌が覗いています。

「直子って、こういうブリっ子ぽいのもよく似合うんだよね。地下アイドルグループの一番右端、歌はいまいちだけどダンスのキレはダントツ、みたいな」

 お姉さまからの褒めらているんだか、茶化しているだけなのかご不明なご感想。
 私は、明らかに透けているブラが気になって仕方ありません。
 こんな格好で本当に人前に出るのでしょうか…

「あのお姉さま?…このシャツ、ブラが完全に透けちゃっているのですけれど…」

 堪えきれずお姉さまに向かってすがるように直訴してしまう私。
 お手持ちのタブレットに視線を落とされていたお姉さまがお顔を上げられ私を見遣り、ニッと笑いかけておっしゃいます。

「それくらいなら気にすることないわ。透け感コーデはここ数年定着しているし、今年の夏はへそ出しや肌見せも流行っているじゃない」

 にべ無く却下されるお姉さま。

「あ、そのスカート、ポケットに小銭とか入れないでね。左右ともざっくり穴空きだから」

 五十嵐さまがいたずらっぽくおっしゃって、私をじっと見つめてきます。

「どうしてだかわかる?」

 見るからにえっちなお顔で私の顔を覗き込まれる五十嵐さま。

「えっ?あっ、ぃいえ…」

 自分の衣服にもそういう細工を施したことがあるので、思い当たるフシが充分にあるのですが、ここは敢えて知らんぷり。

「直子みたいなスケベな変態ちゃんがいつでもどこでも、ポッケに手を突っ込みさえすればバレずに直でクリちゃんに触れちゃう街角アクメ仕様、って、そんなのAVとかエロ漫画でしか見たこと無いんだけどもね」

 とても嬉しそうに教えてくださった五十嵐さま。
 つまりこれで、私は公然の場でクリ弄りを命ぜられるのが確定したということです。
 それにこのスカートの前ボタン仕様にも不穏な意図を感じています。

「だったら直子の私物はポシェットに入れてぶら下げさせればいいわね」

 五十嵐さまにお応えされつつ、お姉さまが私のポシェットに私のスマホを入れられます。
 これでパイスラも確定。
 ついで、という感じで、一昨日から私を何度も悦ばせてくださったリモコンローターのローター部分だけを放り込まれたのも見逃しません。

「直子はこれでよしとして、うちもお出かけ仕様に着替えようっと」

 その場で何の躊躇もされず、スルスルっとTシャツをお脱ぎになられる五十嵐さま。
 やっぱりノーブラで白い素肌に控えめな膨らみ、淡いピンク色の頂点だけが艶かしく目立っています。

 ふたつの頂点に幅広めなニップレスを貼り付けられた五十嵐さまが、無造作にグレイのスウェット生地らしき半袖パーカーを素肌に羽織られます。
 更にジーンズ地のショートパンツも勢いよく下ろされ、下着は何の変哲も無い白無地フルバックショーツ。
 その上に同じスウェット地の膝丈ボトムを合わせられます。

「ちょ、ちょっと、イガっちの基準だとそれでお出かけ仕様になるの?あたしのジョーシキだと、それってただの部屋着なんだけど」

 心底ご愉快そうにツッコまれるお姉さまを、唇の前でチッチッチと人差し指を振られてお芝居っぽくいなされる五十嵐さま。

「ふふん、うちはジモッティだからね、モールに行くぐらいでいちいちオシャレとかしないのだよ。それに今日はカントクだし」

 得意満面な笑顔を見せられた五十嵐さまが、その笑顔でお姉さまと中村さまをじーっと見つめられました。

「エミリー姉さんは直子のマネージャーみたいなものだから、そのままオシャレッティでいいけど、かなぴっぴのそのキャミ、ちょっとえっち過ぎない?主役にケンカ売ってる的な。かなぴっぴは今回、うちのAD的な役割なんだし」

 中村さまを挑発されるように見つめられる五十嵐さま。
 その視線をまっすぐに受け止められた中村さまの唇が苦笑の形に綻びました。

「ワタシだってこの格好で外に出かけるつもりは無いわよ。ヘンに目立つと後々めんどくさいし、毎年来るところだからね」

 テーブル上の衣類を物色され、やがて決められたのか、キャミワンピの裾を一気にまくり上げられます。
 上下黒で布小さめな三角ブラにTバック、その他は何も身に着けていらっしゃらない中村さまの艶やかな肢体に息を呑む私。

 形良く上向きなバスト、シュッとくびれたウエスト、そのくびれからなだらかにつづく引き締まったヒップ。
 そこから更につづくスレンダーなおみ足が黒いレギンスに包まれ、上半身は鮮やかなグリーンのざっくり半袖チュニックで隠されます。
 先ほど仕上げられたメイクとも相俟って、妖艶な美女ADさまの出来上がり。

「これなら文句無いでしょ?で、お迎えは何時だっけ?」

 最初のは五十嵐さまへ、後のはお姉さまへのお尋ね。

「もうそろそろと思うけれど…」

 お姉さまのお答えが終わらないうちに中村さまの絶叫が響き渡りました。

「あーっ!洗濯物取り込むの忘れてたぁーっ!」

「そう言えばさっきネットニュース見てたら、午後からゲリラ豪雨あるかも、って」

 お姉さまのお言葉にみなさま大慌てで散りました。
 中村さまは厨房の中に一度引っ込まれ、すぐに大きなランドリーバッグを肩に提げて戻られます。
 五十嵐さまはテーブル上に残った衣類をひとまとめにしてスーツケースに戻した後、ホール奥のお廊下のほうへと走られます。

「ほら、あたしたちも手伝わないと」

 お姉さまに手を引かれ、私たちは正面玄関へ。
 扉を開けるとお外はドピーカンの残暑晴れ。
 サンダルをつっかけて芝生へと急ぎます。

 そう言えば、こんなにちゃんと下着まで着けてお洋服を着たのはいつぶりだろう?
 木立を抜けながら考えたら、たぶん出発のとき、お姉さまのお車に乗り込んだとき以来?
 からだに纏わり付く布地の感触に違和感を感じてしまっている自分に少し呆れてしまう私。

 五十嵐さまは芝生のほうの出入口から、大きなランドリーバスケットを携えてご登場。
 ちょうど例のシースルーバスルームのすぐ裏手に当たり、そんなところに出入口があるなんて知りませんでした。
 でもまあ知ったところで、私には使わせていただけないのでしょうけれど…
 
 そよ風にひらひら揺れているお洗濯物たちは、どれも完全に乾いているようでした。
 広大なシーツ類を私たちが取り込んで雑にたたむと五十嵐さまがランドリーバスケットに投げ込まれ、中村さまは下着類のほうを手際良くバッグに取り込まれます。

 急に全員わらわら現われた私たちに気づかれたジョセフィーヌさまが、喜び勇んだご様子で駆け寄ってこられ、中村さまと私とのあいだを行ったり来たりじゃれつかれます。
 まばゆいばかりのお陽さまが真上近くまで昇り、緑の芝生に陽光が燦々と降り注いでいます。

 空調の効いた室内からいきなりの炎天下ですから、全身に汗がじわりと滲み出ます。
 そして気づいてしまいました。

 今着ているこの白いブラウス。
 濡れると嘘みたいに透けるんです。

 大きなシーツを持ち運べるくらいにたたんでランドリーバッグへ。
 それだけの作業で私の首筋から胸元くらいまで汗じんわり。
 濡れたブラウスの布地が私の素肌に貼り付き、その部分がまるで透明ビニールみたいに肌色とブラの青色に透けていました。

 布地を肌から離せばいくらかマシにはなるのですが、濡れた布地はすぐに肌にくっつきたがります。
 全部の取り込みを終える頃には、私のバストアップは満遍なくブラウスが貼り付いて青色ブラジャー丸見え状態。

 これ、もしもノーブラで着せられていたら…
 やっぱりお姉さまにお願いして、せめて上に何か羽織るものくらいお許しいただこう…
 そう決めてお姉さまのお姿を探そうとしたとき、木立の向こうでお車のエンジン音が。

「あ、来たみたいね。タイミングいいじゃない」

 私から離れた支柱から紐を外されていたお姉さまが、お近くにおられた五十嵐さまに話しかけられ、五十嵐さまに紐を預けられて玄関口のほうへと駆け出されました。
 離れて見守っていた私は五十嵐さまと目が合い、五十嵐さまが近づいてこられます。

「へー、そのシャツ、汗で濡れるといい感じに透けるねー。本番が愉しみ…」

 お独り言にしては大きめなのは、ワザと私に聞こえるようにおっしゃったのでしょう。
 そのお一言で私は、お姉さまに助けを乞うタイミングを失います。
 そこにブッ、ブッと短いクラクションの音。

「ほら、直子もお出迎えしなくちゃ。今日の運転手と撮影カントクだってさ」

 今度は五十嵐さまに手を引かれ、正面玄関側へと連れ出されます。
 アプローチにお車が二台。
 玄関に近いところにお姉さまの愛車、その後ろにシルバーグレイで大きめのバン?ワゴン車?

 その傍らでお姉さまとお話されている男性おふたり。
 本橋さまと橋本さま。
 そう言えば昨日、ここまで送っていただいて去り際に、明日お姉さまのお車を戻しにこられる、とおっしゃっていたのを思い出しました。

「あっ、直子が来た。ほら、こっち来てご挨拶なさい」

 お姉さまに呼ばれ近づきます。
 本橋さまは相変わらずのラグビージャージ姿ですが、昨日のとは色が違って今日は黒と山吹色の横縞模様。
 橋本さまもTシャツにアロハはお変わりありませんが、今日のアロハは赤やピンクの極彩色で目眩ましみたいなペイズリー柄。
 ボトムは昨日と同じ、おふたりお揃いの濃茶のバミューダパンツ。

「イガちゃんの取材ツアーに無理言ってつきあってもらうことにしたのよ。ほら、いろいろアブナイことすることになるから、女性だけより周りにゴツい男性もいたほうが何かと心強いでしょ」

 お姉さまに促され、胸元に貼り付いているブラウス布地をさりげなく剥がしてから、よろしくお願いいたします、とお辞儀してご挨拶。

「いやいや、チーフにはいつもお世話になっていますし、今日はちょうどぼくらが買い出し当番だったから予定的にも問題無いんです」

 マッチョ体型の本橋さまがにこやかな笑顔でおっしゃいます。

「それに、森下さんは、あのイベント以来すっかり弊社のアイドルになっているんです。大胆なのに儚げで、絶対に汚してはいけない存在、みたいな。あ、もちろんそこに男女間の性的な意味は一切ないですよ」

 最後の部分だけ慌てたように強調される本橋さま。

「だから今日も、くれぐれも粗相のないように、って言われてきてるんです」
 
 あの急遽モデルをさせられたファッションショーイベントのとき、スタンディングキャット社の方々もたくさんお手伝いに来てくださいました。
 あのときはメイクやウイッグで別人のモデルになりすましたはずだったのですが、その後も両社の交流で社員同士お顔を合わせていたりしていましたので、あのモデルが私だったということは、すっかりバレていました。

「ちょっとモッチーの脚、見てやってくださいよ」

 それまでニヤニヤと本橋さまのお話を聞いておられたアロハ姿の橋本さまが、お話に割り込まれてきます。

「あーっ!」

 私とお姉さまで綺麗なユニゾン。
 確か昨日はモジャモジャだったスネ毛が今日はツルツルのスベスベ。

「昨日の夜の宴会で、チーフたちを迎えに行ったときの話になったんですよ」

 思い出し笑いを堪えきれない、という感じの橋本さま。

「で、俺らが旅館に着いて車から降りて、チーフたちが出迎えてくれたじゃないですか。あのとき、おまえの脚を見て姫が、あ、俺ら身内では森下さんのこと姫って呼んでるんで、姫が怯えてたぞ、と」
「姫が男性のモジャモジャした体毛や体臭が苦手なことは、チーフや玉置さんから聞いてみんな知っているんで。で、明日もお供を頼まれたのにそいつはケシカラン、ってことになって」

 もはや半分笑いながらお話をつづけられる橋本さま。
 私、橋本さまたちから姫なんて呼ばれてたんだ…と、なんともこばゆい気分。

「で、俺ら八人で旅行に来てるんだけど、七人がかりで嫌がるモッチー押さえつけてズボン脱がせて、脱毛テープでスネ毛をバリバリっと…」

 そこまでおっしゃられて、もはやお話できないくらいに吹き出された橋本さま。

「本当ひどいやつらでしょ。でも最近の脱毛テープって意外に痛くないんだね。専用のローションとかもあってスーッとして。スベスベも案外悪くない」

 マッチョな本橋さまが満更でもないお顔でおっしゃいます。
 私あのとき、そんな顔しちゃっていたのかな、と申し訳ない気持ちも湧きますが、お姉さまはただただ呆れられているご表情。
 そこに五十嵐さまが興味津々なお顔で割り込まれてきます。

「あなたたちって、本物のゲイカップルなんだ!?」

 率直と言うかいささか不躾なご質問。
 眉間にちょびっとシワを寄せられたお姉さまが割って入られ、ご紹介が始まります。

「ごめんなさいね。こちらは、この別荘の住人のお友達の五十嵐ショーコさん。あたしも昨日初めてお会いしたばかり。同人で漫画を描かれていて、その取材の一環として今日の直子の大冒険を企画した首謀者でありディレクター。イガちゃんて呼んであげて」

 つづけて五十嵐さまに向けて、

「こちらは、あたしたちの会社とパートナーシップを結んでいるスタンディングキャット社の社員さんで、マッチョなこちらが本橋さん、チャラ男風なこちらが橋本さん」

 チャラ男はひどくね?と本橋さまに小声で訴えられる橋本さま。

「スタンディングキャット社、あたしたちはタチネコ社って呼んでいるんだけど、ていうのは、あたしたちがレズビアン向けのアパレルを扱っているように、タチネコはダンショクカの人たちに向けての商材を専門に扱ってる会社。目指す方向が同じかつ特殊だから生地の相談とか何かと話が早くて、仲良くさせていただいているの」

 そこでいったんお言葉を切られ、いたずらっぽく微笑んだお姉さま。
 
「それでイガちゃんのさっきの質問だけど、答えはイエス。昨日ここに着く前にランチタイム休憩を森の中で別行動で取ったのだけれど、あたしらから離れた場所でここぞとばかりにくんずほぐれつヤッてたみたい」

 本橋さまが照れたようなお顔をされ、五十嵐さまの瞳が爛々と輝いてお独り言みたいにつぶやかれます。

「今日は夢みたい。エロ可愛い真性マゾ娘の野外羞恥露出と本物三次元BLのイチャイチャをこの目で生ライブで堪能できるんだ…」

 感極まって祈るようにお空を見上げる五十嵐さまの瞳からお星様がキラキラ本当に零れてきそう。
 そこへ、お洗濯物のお片付けを終えられたのでしょう中村さまが、片手に小さなバッグを提げられ、私たちへと近づいてこられました。


2022年8月27日

肌色休暇三日目~避暑地の言いなり人形 05

 さあ大変。
 これから10分以内にこの場を片付けて、お屋敷別荘に戻らなくてはなりません。
 これまで一往復半した経験から10分あればまあまあ余裕で帰れる道のりではあるはずなのですが、広場のお片付けにもある程度時間を見ておかないと…

 電話が切れてすぐ、まずテーブル上のあれこれをバッグに闇雲に詰め込みます。
 バスタオル、濡れタオルと言うか今は乾いているタオル、フリスビー、シャベル、カリカリの袋、使わなかったゴミ用レジ袋。

 そのバッグを片手に芝生に戻り、ビデオカメラを外して三脚をたたみ、タオルに巻いてバッグに詰め込みます。
 芝生に転がっている肥後ずいきさまを手に取ったとき、その全体がヌルヌルに湿っていることに気づきました。
 突端から持ち手まで満遍なくヌラヌラグズグズ、そして嗅ぎ慣れ過ぎている自分のソノ臭い…
 落ちていた場所も私が寝そべっていた場所の下腹部付近…

 えっ?私、ずいきさま、アソコに挿入しちゃっていたの?知らず知らず無意識のうちに…???
 そう思った途端に膣内の粘膜がムズムズ疼くような…

 恥ずかし過ぎる疑問が湧き上がりますが、今は追求している暇がありません。
 このまま芝生上に放っておくわけにもいきませんから、空となったおやつチューブとペットボトル2本と一緒にゴミ用レジ袋に放り込みます。

 あと、洗濯ばさみさまがもうひとつあったはずなのだけれど、それとおやつチューブのキャップ…
 痴態を繰り広げた一帯の芝生を真剣に見回してみますが、そんな小さなものたちがおいそれと見つかるはずがありません。
 仕方ありません、今は時間のほうが大切なんです。

 東屋に戻ろうと視線を上げてふと見回すと…
 あの大木の木陰に猫さんたちが絶妙な距離感で、仲よさげにダランとリラックスされていらっしゃいます。
 テーブル下でお見かけしたキジトラさんと、お初にお目にかかる白黒のハチワレさん?

 いつもだったらそっと歩み寄ってご挨拶したいところなのですが、今はだめ。
 後ろ髪を引かれる思いで再び東屋へ。

 猫さん、おふたりになってカリカリとお水、足りているのかな…
 しつこくそう考えてしまう私は、バッグの中からカリカリの袋を引っ張り出し、袋のジップを半分だけ開けた状態でバッグから覗くように一番上に置きました。
 それから水道の蛇口をほんの少しだけ緩め、一秒に一滴くらい水滴が落ちるようにします。

 そんなバッグを早朝キジトラさんが眠られていた簀子のすぐ手前に安置。
 これでお片付け完了、と思ったらテーブル上にポツンと残された私のスマホ。

 右手にビデオカメラを持って、左手に日傘、左手首に引っ掛けたゴミ入のレジ袋。
 私は全裸なので、スマホを押し込めるポケットなんてどこにもありません。

 レジ袋には自分の愛液でグズグズになった肥後ずいきさまもそのまま入っているので、スマホを一緒に入れたくないし…
 一瞬途方に暮れましたが、ビデオカメラに手のひらが差し込めるグリップがあったことに気づき、右手のひらをそこに差し込み、その手でスマホを握ります。

 今度こそオールオーケー。
 スマホの液晶画面は9:27の文字…あ、28になっちゃった。
 あと7分以内にお屋敷まで戻らなければなりません。
 通話を終えて以来、途端に機敏となって右往左往している私の後を、嬉しそうに付いて回られているジョセフィーヌさま。

「さあ急いで帰りましょう、ジョセフィーヌさま」

 もう一度広場全体を見渡してから、勢い良く駆け出す私。
 広場から去り際に入り口脇の草むらが目に入り、あ、イラクサさまに虐めていただくの忘れちゃった、なんて性懲りも無い私。

 おっぱいの先にぶら下がる洗濯ばさみさまがでたらめにプランプラン揺れるのもかまわず、早足よりももうちょっと早い校内体育マラソン走りで木立の道を駆けていきます。
 ジョセフィーヌさまは競争と思われたのか、ワンちゃんらしい敏捷さであっという間に私の十数メートル先へと突っ走られ、振り向いて私を待たれる余裕のご表情。

 思わぬ誤算は、帰り道はずっと緩い上り坂となること。
 最初の数分はマラソン走りをつづけられたのですが、上り坂道にどんどん体力を削られ、途中からは息も切れ切れの早足競歩にペースダウン。
 それでも街中に全裸で置き去りにされるなんて絶対にイヤですから、汗みずくになって一生懸命両脚を動かしました。

 お屋敷の門をくぐったときチラッとスマホを見ると9:32の文字。
 なんとか間に合ったみたい。
 ヘトヘトになりつつ石の階段を上り、あの荘厳な正面玄関扉前へ。

 ハアハア…えっと、インターフォンっておっしゃっていたっけ…
 目の前に聳える全体に細かい流麗な魔除けの文様?みたいのが施された西洋のお城ライクな観音外開きの重厚な扉。

 そのどこにもインターフォンの押すところ、みたいなボタンは見当たりません。
 えっ、嘘でしょう?
 確かにこの扉なら、お獅子のお顔が付いたノッカーとかのほうがお似合ですけれど…

 かなり焦って扉の把手を引っ張りますが、鍵がかかっているようで開きません。
 ひょっとしてインターフォンて門のほうに付いていたのかしら…
 間に合っているのに…こんなことでお仕置きになっちゃう…

 そのとき、石階段までは上がってこられずアプローチの舗道で待機されていたジョセフィーヌさまが、石階段脇をグルっと迂回され私の右側下からワンッと一声。
 そのお声につられてそちらを見遣ると、向かって右側へと開く扉が取り付けられている脇の太い石柱にインターフォンらしき物体が。

 ハガキくらいの大きさで応答のためのマイクとスピーカーらしき凸凹も付いた、どこにもあるようなずいぶん庶民的な外見。
 大あわててそこに取り付き、ボタンを押すなりの大声です。

「直子ですっ!ハアハア…今戻りましたっ!」

 室内でチャイムやらブザーが鳴ったかは、こちらには聞こえてこなかったのでわかりません。
 ただ、ボタンを押したときマイクが通ったのであろう、ブチッ、という雑音はスピーカーから聞こえました。
 
 スマホをチラ見して9:34の文字にとりあえずホッ。
 数秒遅れてインターフォンのスピーカーからお姉さまのお声が。

「お帰りおつかれー、残り10秒、ギリギリだったねー。待ってて、今開けるから」

 お姉さま、なんだかとっても愉しそうなお声。
 やっと心底ホッとしてスマホを見ると9:35に変わるところでした。

 やがて観音開きがススーッと開き、お姉さまを中央にして左に中村さま、右に五十嵐さま。
 お三かたとも私が出かけたときと同じお服装です。

「あらあら、息切らしてヨレヨレに薄汚れちゃって、なんだか山賊にでも襲われて命からがら逃げてきた、って感じ」
「乳首に洗濯バサミぶら下げたまんま帰ってきたんだ?さすが、先生に気に入られるドエムは格が違うわ」
「よく見るとからだ中、ジョセの抜け毛と足跡だらけじゃない?さぞかしお愉しみだったのねぇ、あーあーお熱いこと」

 お三かたご三様にとってもご愉快そう。
 まだハアハア荒い息を吐きつつ、うつむくしかない私。。
 五十嵐さまがデジカメで、そんな私の姿をパチパチとデジタル保存されています。
 中村さまが一歩前に出られ、私からビデオカメラと日傘、ついでに私のスマホも回収されました。

「その手首にぶら下げているコンビニ袋は何?」

 お姉さまがワザとらしいイジワルなお顔で詰問されます。

「あ、これは…ゴミ、って言うか、ペットボトルとか、使っちゃったものとかで、お片付けしなくちゃって…」

 この後きっと私は、シャワーを浴びてこいと言われるでしょうから、そのときに汚した肥後ずいきさまも一緒に洗おうと思っていました。
 そんな矢先のご質問だったので、なんとなく左腕を背中に回して隠すような素振りをしてしまいました。

「そう。だったらこっちで捨てておいてあげるから」

 今度はお姉さまが一歩近づかれ、右腕を私に伸ばして来られます。

「あ、あの、でも…」

 ベチョベチョの肥後ずいきさまを見られてしまうのが恥ずかしくて躊躇する私。

「渡しなさい」

 お姉さまの取り付く島もない高圧的なご命令口調。
 おずおずと左手を差し出します。

「さっさとシャワーを浴びてきなさい。シャンプーしてもいいけれど出かける準備もあるから、なるべく早くホールに戻ってくること」

 レジ袋を受け取られたお姉さまは、その場で中身を確かめられることはせず、お庭のシースルーバスルームの方向を指さされます。

「あと、直子は気に入っているのだろうけれど、いつまでおっぱいに洗濯ばさみをぶら下げてる気?自分で外して、それもあたしに渡しなさい。あとリードも」

「あ、はい…」

 ご存知のように皮膚を噛ませたクリップ類を外すときは、滞っていた血流が戻るためか、かなりの痛みを伴います。
 更に今回はかなり長いあいだ挟みっ放しだったはずなので、その痛みを想像するだけでゾクゾクッ。

「あっつぅっ!ぃたぁぃぃ…」

 左乳首のを外したときの悲痛な喘ぎ。
 それをもう二回くりかえして、3個の洗濯ばさみさまとリードの引き綱をお姉さまに手渡しました。

 そんな私の様子を無言のニヤニヤ笑いで眺めていらした中村さま、五十嵐さまとご一緒にお姉さまのお背中が玄関扉の内側に引っ込まれ、重い扉がバタンと閉じられます。
 ジョセフィーヌさまも何かやるべきことがおありになるのか、さっさとご自分の小屋へ。
 私はすごすごと木立の向こうのシースルーバスルームへと向かいます。


 玄関アプローチ沿いの木立を抜けて芝生に出ると、そこに広がる予想外のランドリーゲート。
 支柱に渡された長いロープに吊るされたお洗濯物たちが緩いそよ風に揺れていました。

 最初に目を引くのは真っ白で広大な数枚のシーツ。
 枕カバーやタオル類、お姉さまと私が就寝時に使用したパジャマ代わりの純白ロングTシャツも数枚干されています。

 別のロープに目を移すと、どなたのものかはわからない色とりどり形さまざまな下着類とジャージやスウェット。
 その一番端でひときわヒラヒラひらめいて目立っているのは、私の真っ赤なおふんどし。

 青い空と緑の芝生にひるがえる真っ白いシーツと真っ赤なおふんどし…
 そのシュールな風景にしばらく呆然と見惚れてしまいますが、いけない、急がなきゃ。

 ガラス張りの小屋に入り、脱衣所でタオル類を確認してから首輪を外して浴室へ。
 熱めのシャワーを頭から浴びた後、ボディソープでからだを洗って手早く洗髪。
 仕上げにぬるま湯で全身の泡泡を洗い流しながらお肌のチェック。

 全体に日焼けが進んじゃって、乳首や恥丘の焼け残しも赤みを帯びて殆どまわりと同化しているし、これならたぶんお尻の上の恥ずかしい自己紹介も読めなくなっているはず…
 ほとんどずっと首輪を嵌めている首の周りが全身で唯一、元の肌色が白く残る部分となっています。

 あ、右脇腹の噛まれ痕が内出血して薄紫の痣になっちゃってる…
 首筋や鎖骨脇のお姉さまからのキスマークもまだ消えてないな…
 水流に打たれながら素肌のあちこちをまさぐっていると、また性懲りも無くムラムラが…

 だめだめ、さっさと戻ってきなさいって言われたでしょ?
 急いで脱衣所へ出てバスタオルでからだを拭います。
 濡れた髪をもう一枚のタオルで包み、首輪を嵌め直し、バスタオルは…

 いいか、どうせホールに戻ったらすぐ脱がされちゃうのだろうし…
 この旅行中、お外や人前に全裸で出ることへのためらいが、どんどん薄れてきているみたい…
 私はここでは慰み者セイドレイなんだから、なんてマゾ気分に浸りつつ、バスタオルは巻きつけず裸んぼのまま芝生に出ました。

 正面玄関の扉に鍵はかかってなく引っ張ったら開いたので、インターフォンのお世話にはならずに屋内へ。
 ホールへ通じるドアをそっと開けると…

「あっ、超淫乱娘が帰ってきた」
「ほらね、うちの予想通り、それがあたりまえみたいにマッパでご登場」

 中村さまと五十嵐さまが私を見るなり、愉しそうにからかってこられます。
 それを聞いて私も、やっぱりはしたかなかったかな、と今更ながらの羞恥心。

 ホールの中はとても明るく、早朝のときと少しレイアウトが変わっていました。
 厨房の近くにもうひとつテーブルが用意され、それを囲んで洒落た木製の椅子が三脚。
 いつも集まるソファー周りには、おでかけのご準備なのでしょうか、テーブル上に衣類らしきものやバッグなどがゴチャゴチャ乗っています。

「まったくあなたって子は。中村さんが呆れ返っていたわよ、ジョセのペーストのチューブ、新品だったのに丸々一本使い切っちゃってる、って」

 お姉さまご自身も心底呆れられているお顔をされながら、私を手招きされます。
 今お三かたがおられるのは厨房近くのテーブル脇。
 ホール内には小さく、ショパンのピアノ曲が流れていて、テーブルにはお一人分くらいのお食事が乗っています。

「普通ならチューブ一本で散歩三、四回分は保つはずなのに直子が大サービスしちゃうから、今日のジョセの栄養配分が大変だって。こんな朝からたぶん使わないでしょう、ってみんなで予想していたずいきもベタベタにしているし」

 詰るような感じも強いのですが、ご愉快そうなニュアンスも混ざったお姉さまのご口調。

「まあそのへんは後でしつこくイジるとして、それだけ盛り上がったのならお腹も空いたでしょう?さっさと朝食いただいちゃいなさい」

 お姉さまが椅子を引いてくださり、おずおずと腰掛ける私。

「この後もうすぐにランチも食べることになるから、少なめにしといたよ」

 中村さまの補足ご説明。
 目の前のお料理は、ベーコンエッグケチャップ添えが乗ったバタートーストが一枚とメロン、スイカ、イチゴ、リンゴ、バナナなどをチマチマ盛ったフルーツサラダ、それにアイスミルクティ。
 その美味しそうな香りにお腹がグゥ、いただきます、勢い込んで食べ始める私。

 周りで見ていたらかなり、はしたない光景だったと思います。
 湯上がり頭髪にタオルだけの全裸女がフォーク一本忙しなく動かしながら黙々とお食事に没頭しているのですから。
 
  そのあいだお姉さまたちはソファーのほうへ移動され、中村さまはコンパクト片手にメイクを直され、五十嵐さまはテーブル上に並べられたお洋服のチェック、お姉さまはタブレットで何やらご覧になられています。

「食べ終わったらこっちへいらっしゃい。メイクしてあげるから」

 少し遅めの朝食を全部美味しくいただいて、アイスミルクティをゴクンと飲み干したとき、タイミング良くお姉さまからお声がかかります。

「あ、はい」

 空のグラスをテーブルに置き、お席を立ってお姉さまのもとへ。
 髪に巻いたタオルが外され、そのタオルを敷いたソファーに座らされます。

 まずはドライヤーとブラッシング。
 乾いた髪を頭の上でまとめられてから顔全体にファンデーション、コンシーラー…

「嬉しいでしょ?」

 お姉さまに顔のあちこちを弄り回されている私に、五十嵐さまが話しかけてこられます。
 最愛のお姉さまにかまっていただけていることについてのご質問なのだろうと思い、はい、と素直に応える私。

「だよね。せっかく全裸になっているのに、ここだとうちらしか視てくれる人いないし、二日目ともなるとうちらも見飽きて慣れちゃってるし、直子くらいの露出上級者には物足りなさすぎるよね?」

 なんだか謎なことをおっしゃる五十嵐さまに、私の頭は???

「任せといて。そんな直子でもGスポまでキュンキュン疼いちゃって人目憚らずに深イキしちゃうような恥ずかしい目に遭わせてあげるから。あのアウトレットならそれなりにギャラリーいるだろうし」

 更につづいた五十嵐さまのご説明に、思わず、えっ!?とお顔を向けてしまう私。

「こら!動かないのっ!」

 私のアイメイクに移られていたお姉さまからご叱責。
 作業をつづけられつつ、五十嵐さまからのお話を引き継がれるお姉さま。

「イガちゃんも野外露出には興味津々なんだって。それで、そういう新作漫画のプロットを練っていたところに昨日買い出しに行ったスーパーで、あたしと中村さんと偶然会って、直子の話をしたら是非取材させて、ってなったのよ」

「だからワタシは、そんなに興味あるならイガちゃんが自分で実践してみればいいじゃん、っていつも言ってるんだけどね」

 茶化すように会話に割り込んでこられたのは中村さま。

「だから、いつも却下してるように悪いけどうちにそんな度胸はないんだって。ジモッティだから、それなりにどこ行っても知ってる顔にも会うし…それに…」

 少しお顔を赤くされながらご弁解される五十嵐さま。

「それに、うちの裸なんて誰も視たくないって。胸もお尻も凹凸無い子供体型の裸なんて…」

 ご自嘲気味におっしゃった五十嵐さまを横目に見遣られ、ニッと笑われた中村さま。

「あら、ワタシはイガちゃんの裸、好きだけどな。なんて言うか、薄幸の美少年を愛でてる感じ?明治大正の耽美派浪漫って言うか、ワタシはレズだけどBLにも萌えるみたいな倒錯的な気持ちになれるんだよね」

「だから、それはヒンヌークラスタのフォローになっていないって、何度も言ってるでしょ?」

 傍から見ているとずいぶんと仲良さそうに、言い争いを始められるおふたり。
 苦笑気味なお姉さまがその場をまとめられるように教えて下さいます。

「とまあそんな感じで、これからあたしたちはこのへんで一番人が集まる観光地までドライブしてランチをいただくついでに、直子の露出願望も心ゆくまで満足させてあげよう、っていうイガちゃん発案の企画」
「で、あたしは、せめて顔くらいは視られて恥ずかしくないようにメイクしてあげているってワケ。せっかく有名な観光地へ繰り出すのだから」

 どんどんイジワル度が濃くなっていかれるお姉さまのお言葉。
 私の顔へのメイクは唇へと移り、お姉さまのしなやかなお指先で私の唇が撫ぜられています。

「それの一部始終を記録して、イガちゃんの作品の参考資料にもしてもらうっていう、一石二鳥か三鳥かっていう大事なイベント。もちろんディレクター、監督はイガちゃんで他のみんなはイガちゃんの補助役」
 
 私の唇に塗られたルージュが残る指先を、意味ありげにペロッと舐められたお姉さま。

「だからここから先はイガちゃん、じゃなくて五十嵐翔子統括ディレクターさまが直子のご主人さま、あ、いえ、名塚先生に倣うなら、あるじさま、ね。で、あるじさまのご指示には絶対服従、口答えは許されないのはわかっているはずよね?」
「そしてもちろんこれは、直子が一番守るべき、あたしからの命令、でもあるの」

 嗜虐に揺れるお姉さまの瞳に見つめられながら、これから確実に私の身に襲いかかるであろう未だ見ぬ恥辱=羞恥と辱めに、どうしようもなく疼き始める思いを馳せていました。


2022年8月15日

肌色休暇三日目~避暑地の言いなり人形 04

 ペーストの量が多かったせいもあるのでしょうが、ずいぶん念入りに舌で蹂躙してくださるジョセフィーヌさま。
 肥大したクリット裏側の辺りにお尻から垂れてくるペーストが溜まるのでしょう、その周辺を執拗に愛撫してくださっています。

「あーんっ、イぃっ、そこっ、そこイーのっ、もっと、もっとーぉっ!!」

 大陰唇をなぞるように舐め回され、膨れ上がった肉の芽も頻繁に舌先で転がされて…
 前の二回で充分に昂ぶっている性感に加えて、四つん這いというマゾの大好物の屈辱…
 私の淫欲が仕上げに向けて加速していきます。

「あんっ、じょ、ジョセフィーヌさまぁ、どうかそのまま、あんっ、そのまま直子をイかせてくださいーっ!!」

 知らず知らずに両腕を背中に回し、互いの手首を握リ合っています。
 すっかり拘束されている気分になっているんです。

「はっ、はっ、はっ、はぁんっ、そこっ、それっ、だめっ、イやっ、もっと…」

 脳内妄想は剣と魔法のファンタジー世界。
 悪い魔物に囚われてしまった一国の姫が、魔物の手下のケモノたちによって蹂躙される見世物なのです。
 私の周りには無数の群衆が好奇と侮蔑の視線でせせら笑いながら見物しているんです。

 快感がどんどんせり上がってくるのがわかります。
 こんなに惨めなのは死んでも嫌なのに、肉体が貪る快楽に抗いきれないドマゾ姫。
 膣内の肉襞とその上の菊門がパクパク弛緩と収縮をくりかえしているのが自分でわかります。

「あっ、イキそうっ、んーーーっ、んんーーーっ、んーーーーっ!!!」

 頭の中に真っ白な花火が散り、お尻がビクンと跳ね上がります。
 遠退きそうになる意識と、それを食い止めようとする意識。
 ふたつがせめぎ合うあいだも股間のくすぐったさはつづいています。

「あんっ、ジョセフィさまぁ、もうだめ、もうやめてっ、んふぅーっ、んーーっ!!!」

 後者がなんとか勝って、戻った皮膚感覚を愚弄するようにつづく執拗な愛撫責め。
 ジョセフィーヌさまが私のマゾマンコから離れてくださらないのです。

「んっ、あっ、いやっ、もうだめっ、ゆるしてっ、ああんっ!!!」

 一度しっかりイッて全身が敏感になっているところに追い討ちを掛けてくる苦痛寄りの快感。
 内腿を撫ぜられただけでも全身がゾワゾワ粟立ち、ビクンビクンと小さく何度もイッてしまいます。

「んーっ、ゆるしてっ、もうっ、もうゆるしてくださぃーーーっ、イーーーっ、んぬぅーーーっ!!!」

 腫れ上がったクリットに、おそらくジョセフィーヌさまのおヒゲでしょう、何かチクッと刺さるような刺激を感じたとき、二回目の花火が盛大に飛び散りました。
 その後に股間への愛撫も止んだみたい。

「はぁはぁ、はぁはぁ…」

 右頬を芝生に押し付けたまま荒い息をくりかえす私。
 意識はどうにか飛ばさずに済んだようです。

 ジョセフィーヌさまが私の顔のところまでいらしてくださり、不思議そうに覗き込まれます。
 それからペロッと左頬を舐められました。

「はぁ…はぁっ…ああんっ、ジョセフィーヌさまぁっ」

 よろよろとからだを起こし、女の子座りの格好で懐にジョセフィーヌさまを抱き寄せます。
 もちろん私は全身汗みずく火照りっ放しですが、嫌がらずに抱かれてくださるジョセフィーヌさま。
 フワフワした毛並みが敏感素肌にすごく気持ちいい。

 しばらくそうしていたら呼吸も落ち着いてきたので、フリスビー遊びに戻ることにしました。
 でもこんなイキ癖のついた状態だと、ご褒美でどこを舐められてもまたすぐにイッてしまいそう…
 そんなことを考えてゾクゾクムラムラ疼いてしまうのは、私の心がもはやマゾ性一色に染まり切っているからでしょう。

 ゆっくりと立ち上がり、芝生に放り出したままのフリスビーを拾おうと二歩三歩踏み出したとき…
 横から飛び出されたジョセフィーヌさまが一足早くお口で拾い上げられ、私に持ってきてくださるのかな、と思っていたら東屋のほうへと駆け出されました。

 東屋のベンチにピョンと跳び乗られたジョセフィーヌさまは、テーブルの上にペッとフリスビーをお捨て置きになり、そのまま私のもとへとまっしぐらに駆け戻っていらっしゃいます。
 あれ?これってもうフリスビーはしたくない、帰ろうよ、っていうことなのかな?

 でもそのわりに戻られたジョセフィーヌさまは、また私にまとわりじゃれつかれ、まだまだ遊ぶ気満々なご様子。
 うーん、どうすればいいのでしょう…

 私が困惑していると不意に首輪が引っ張られます。
 リードの先を咥えられているのは、もちろんジョセフィーヌさま。
 引かれるままに付いていくと、少し離れた芝生の上にご褒美用おやつのチューブが転がっています。
 知らないあいだに私がでたらめに投げ出していたみたい。

 それを私が拾い上げるとジョセフィーヌさまも、リードの先を離してくださいました。
 再び元の場所、ビデオカメラの設置場所、まで戻られるジョセフィーヌさま。

 ははーん、なんとなくわかった気がします。
 つまりこんな炎天下の朝早くからでは、さすがのジョセフィーヌさまでも何度もフリスビーを追いかけて駆け回るのはキツイ、と。
 だからフリスビー遊び無しで、ご褒美プレイだけでもう少し遊ぼうよ、と。
 オナ子もフリスビーより、そういうことのほうがしたいのでしょ?と。

 もしもう帰りたいというのであれば、私のリードを引っ張って出口に向かわせるようなアピールをすればいい、ということを、賢いジョセフィーヌさまならご理解されているはずです。
 それをせず、私におやつチューブを拾わせただけでご満足された、ということは、つまりそういうことなのでしょう。
 この推理は正しい、と、そのとき私は確信していました。

 そういうことならば、私もとことんおつきあいさせていただきます。
 私の生足にまとわりつかれるジョセフィーヌさまの頭をわしわし撫ぜながら、萎みつつあったマゾ性がぐんぐん息を吹き返しています。

「ジョセフィーヌさま?では、もう少しだけ、オナ子を虐めてくださいね」

 媚びるようにお願いして、タオル上に置いた肥後ずいきと洗濯ばさみを芝生の枕元となる位置に移動します。
 そう、今度は仰向けに寝そべるつもりなのです。
 ビデオモニターに全身が映るよう、慎重に調整します。

「ジョセフィーヌさま?ステイです。オナ子が準備するあいだ、ちょっと待っていてください」

 昨日の昼間のあるじさまとジョセフィーヌさまとのやりとりを思い出し、お願いしてみます。
 賢いジョセフィーヌさまは、その場にチョコンとお座りになられ、舌をハアハアさせつつちゃんと、待て、のご態勢。

 芝生の上にお尻をついた私は、そのまま背中を倒して仰向けに寝そべります。
 そうしてから両膝を立て、更に両膝のあいだを広げていきます。
 そう、つまり仰向けでの秘部全開放M字開脚状態。
 首輪に繋がれているリードは、私の頭のほうに丸めておくことにします。

 脳内妄想は、魔物世界での野外見世物パート2。
 囚われの姫が実はとんでもない淫乱マゾ女ということがバレてしまい、そういうことなら皆でよってたかって性的なおもちゃにして滅茶苦茶にしてやろう、という公開拷問ショー。
 もちろん私はこの格好で身動き出来ないように拘束されています。

 右手に持ったおやつチューブには、まだ中身が半分以上残っています。
 ペーストを私が舐めて欲しい箇所に塗れば、ジョセフィーヌさまは必ずそこを舐めてくださるでしょう。

 そして今度は仰向け。
 ジョセフィーヌさまとお顔を突き合わせ見下されながら、その眼前にあられもない痴態とアヘ顔をさらけ出すこととなるのです。

 最初は、私のふしだらなおっぱいを虐めていただくことにします。
 右手と左手をおっぱいの上で交差してチューブのキャップを緩めると、お座りされていたジョセフィーヌさまのお顔がピクッと動きました。

「ジョセフィーヌさま?まだですよ?まだステイです」

 ジョセフィーヌさまはお座りされたまま、お顔だけお首ごと乗り出すようにこちらへ向けられ、私の両手の動きに釘付けです。
 左手のひらに多めに乗せたペーストを、まずは左おっぱいの裾野から頂上まで、満遍なく塗りつけます。
 乳首が軟骨かと思うくらい硬く大きくいやらしく、突起しています。

 つづいて右おっぱいも同じようにコーティングした後、仕上げとして両乳首の頂がペーストで隠れるくらいの増量トッピング。
 手のひらに残ったペーストは脇腹や腋の下になすりつけます。

「あ…あの、ジョセフィーヌさま?お、オーケーです、ご、ゴーです…」

 本当にこれから魔界のケモノたちに襲われてしまうかのような、ドマゾ全開の被虐的な気持ちでジョセフィーヌさまにご合図しました。
 私の右側におられたジョセフィーヌさまは、任せなさい、みたいなご様子で、そのまま側面から私の胸の上にまでお首を伸ばされ、まずは右おっぱいが餌食となります。

「あっ、あんっ、んふっ、んふぅぅ、あんっっ、ああんっ…」

 ヌメヌメした軟体生物におっぱいを這い回られている感じ。
 幾分垂れ気味でぽてっとした下乳の裏側にまで舌を挿し込まれ、乳房の付け根をくすぐられるのがたまりません。
 それ以上に、コリコリ硬い乳首が乱暴に弾かれる刺激に、思わず淫ら声が…

「あぁんっ、イやっ、そこっ、だめっ、イぃっ、もっと、そこぉ…」

 右おっぱいがあらかた舐め尽くされ、ジョセフィーヌさまのご興味は左おっぱいへ。
 私の右側からいっそう身を乗り出され、懸命に舌を伸ばされます。

「んふぅ、イぃっ、そうっ、そこっ、ああんっ、んーーっ…」

 私の右脇腹と右おっぱいはジョセフィーヌさまのフワフワなお腹の体毛でくすぐられ、左おっぱいの頂点が重点的に責められています。
 放って置かれている右おっぱいにも、ときどきおヒゲがチクチク刺激をくださいます。

 そのうちにジョセフィーヌさまの右前肢が私のみぞおち辺りに置かれ、体勢によってジョセフィーヌさまの体重がかけられるのか、ときたまギュギュッと踏み込まれてしまいます。
 そんなふうに蹂躙されている感じが、私のどうしようもないマゾ性を益々昂ぶらせてくださいます。

「あうっ、もっと、もっぉと、んふーーっ!」

 やがてジョセフィーヌさまは両前肢ともに私のお腹に乗せられ、私は組み伏せられたようにされるがまま。
 ペーストが塗られていないはずの首筋や顔までペロペロ舐められます。

 両おっぱいへの蹂躙がひと段落ついてしまったようなので、そろそろ他の箇所にも愛撫と陵辱が欲しいところ…
 
 右手に持っているおやつチューブはキャップを外したまま。
 タイミングを見計らって、そっとその右手を下腹部へ伸ばします。
 恥丘の辺りに直にペーストをひねり出し、素早く左手で股間周辺に塗りたくります。

 私のマゾマンコからはすでに愛液がトロトロ溢れ出し、芝生を汚していたようです。
 恥ずかしいくらいに火照ったそこに左手が届いた瞬間、弄り回したくて仕方なくなってしまいます。

 だけど本来この状況はジョセフィーヌさまへのご褒美遊びであり、私如きの勝手な行動は許されません。
 愛液にまみれて味が薄くなってしまっているであろうペーストを、内腿やアヌス付近など、自分がもどかしい場所になすりつけます。

 匂いで気づかれたらしいジョセフィーヌさまのお顔がピクンと動き、私の股間へと向きました。
 そう、そこです…早く虐めてください…
 心の中でお願いするのとジョセフィーヌさまの行動は、ほぼ同時でした。

 私のお腹に乗せていた両前肢を私のウエスト左右の芝生に下ろされ、後肢はそれぞれ私の首の両脇の芝上。
 すなわち私の顔面上にジョセフィーヌさまの下半身が覆いかぶさり、フワフワな尻尾が私の頬から額の辺りをユラユラ撫ぜています。

 これって人間で言えばまさしくシックスナインの体位そのもの。
 ジョセフィーヌさまに完全征服されてしまったような屈服感に、私のマゾ性が大騒ぎ。

 ピチャピチャピチャピチャ…

「あぁぁぁーんぅぅぅーーーんっ!!」

 期せずして恥丘からクリトリスへと、ピアノ演奏の高速トリルみたいに小刻みな集中攻撃が加えられ、思いも寄らず大きな淫声を洩らしてしまいました。
 クリットの苞片やラビアの襞に溜まったペーストを嬉々として舐め取られているのだと思います。
 その舌技が絶妙で呆気なく私は小さくイッてしまいました。

 私の唐突な大淫声にびっくりされたのか束の間、ジョセフィーヌさまの舌が私の皮膚から離れました。
 私はもちろんつづけていただきたい一心で極力、淫ら声をがまんすることに決めます。
 そんな私が、んーんー唸り始めると、すぐに股間に愛撫が戻ってきました。

 ピチャピチャピチャピチャ…

「んーっ、んーーっ、んふぅーーーっ!」

 組み伏せられている私は屈服している身ですから、ジョセフィーヌさまを驚かせてしまった罰は当然、受けなければなりません。
 昨日あるじさまがしてくださった私へのお仕置きを思い出し、手探りで肥後ずいきを手に取り、自分の口に横向きで咥えて口枷とします。

「んっ、んぐぅーっ、んふぅーん…」

 これでいくら気持ち良くても、喉鳴りと鼻息と唇の端からよだれが洩れるだけです。
 ジョセフィーヌさまの舌使いは私が四つん這いのときとは変わって、恥丘から膣口へ向けてのストローク。
 上から下への舐め方では、どうも効率的ではなさそう。

「んふぅんっ!んぬぐぅっ!」

 ジョセフィーヌさまも同じように考えられたらしく、後肢が私の右おっぱいと左脇腹を思い切り踏み付けてシックスナイン状態をお解きになり、ぐるっと回られ私の両脚のあいだに位置を移されます。

 私のM字、もはや両腿が180度近くまで割られてM字とさえ言えなくなっていますが、の真正面、マゾマンコを至近距離真正面から堪能出来る位置にジョセフィーヌさまのお顔があります。
 早速、私の菊門からラビア、恥丘まで、舐め上げモードに移行されたジョセフィーヌさま。

 ペチャペチャペチャペチャ…

「んんーっ、んふぅーん、んぐぅーーぅーぅぅんっ!!!」

 たちまちの花火で全身痙攣。
 それなのにより腰を浮かせてペーストをその部分に補充してしまう私。

 ごめんなさいジョセフィーヌさま、舐めにくかったですよね?全部直子のせいです…
 言葉は発せないため、心の内で勝手に謝罪して勝手にお仕置きを受ける私。
 洗濯ばさみさまたちに両方の乳首とその周辺を噛んでいただきます。

「んーぐぅーーっ、ふぬぅーんっ、ふぅぅーーんっぅぅぅぅっ!!!」
「んふぅんーーーんっ、んぐぅうーーっ、んむーーーーーーっ!!!」
「ぬぅーぅーんっ、んっぐぅっ、んぬぅーーぐぅむぅーーーっ!!!」
「んぁーーっ、イぃーーーっ、いゃっ、だめっ、んぁーーーっ!!!」

 もうさっきから何度も何度もイッていました。
 それでも何度もチューブからペーストをひねり出して全身になすりつけ、全身が性感帯。
 
 ジョセフィーヌさまのおからだの一部、舌でもお鼻先でも体毛の毛先、尻尾でも、が私の皮膚に触れたらそれだけでイッてしまうようなド淫乱マゾ牝恍惚状態。
 
 妄想の中で私は、性別不明な異形の魔物たちに囲まれ、見るからに卑猥でおぞましい器具によって性的刺激を施されて何度も何度も絶頂するさまを嘲笑われながら、ぐったり意識を手放そうとしていました…

「…ンゥーンッ、ワンッ!」

 どなたかに耳元で呼ばれている気がして、目が開きます。
 朦朧とした意識で、ここはどこ私は誰状態。
 
 右頬を舐められるような感触でそちらを向くと、舌を伸ばされたワンちゃんのお顔。
 あっ、ジョセフィーヌさま?…
 途端に意識がスーッとクリアになっていきます。

 私が気がついたことをご確認されたジョセフィーヌさまは、プイッとお顔を逸らされ、そのまま東屋の方向に駆け出されました。
 
 えっ?何?
 東屋に到着されたジョセフィーヌさまがテーブルに跳び乗られてこちらを向かれ、私を呼ぶように大きなお声でもう一度、ワンッ!

 えっ?どうしたの?またフリスビーがしたいの?それともお水が飲みたいの?
 困惑している私の耳に、風に乗って微かなお声、木々のざわめきでも鳥さんの囀りでも蝉さんの鳴く声でもない、確かに人間の日本語、女性のお声が聞こえてきました。

 え?嘘、まさか…誰かいるの?
 
「…まで、どうぞ、じっくり、視てください……これが直子のマゾマンコです…奥の奥まで、どうぞ、じっくり、視てください……これが直子のマゾマンコです…奥の奥まで、どうぞ、じっくり、視てください……これが直子のマゾマンコ…」

 耳を澄ませばクッキリ聞き取れるのは、来るときの電車で私が吹き込んだ、と言うかお仕置きとして吹き込むようにご命令された、恥ずかし過ぎる着信音。
 ということは私のスマホが着信しているのです。

「いやーーーーっ!」

 後から思えば、その場にいたのは私とジョセフィーヌさまだけで、他のどなたに聞かれる憂いも無かったのですが、そのときはあまりの恥ずかしさにガバっと立ち上がり、つんのめるみたいに東屋に走りました。
 果たして着信画面には、私が自ら膣口を押し広げているM字開脚写真、発信者はお姉さまでした。

「あ、もしもし…直子です…」

 走ってきたからか喘ぎすぎたのか、声が掠れてしまいます。

「ちょっと、いつまでジョセと遊んでる気?もうとっくに9時回って半近くなんだけど?」

 呆れていらっしゃるようなお姉さまのお声。

「…あ、はい…ごめんなさい…」

「息弾ませて声嗄らしちゃって、どうせジョセとスケベなことしてたんでしょ?」

「あ、いえ…あの、えっと、はい…」

「今日はランチタイムにみんなで街に繰り出すことになったから。準備もあるし、早く戻ってらっしゃい」

 そのとき、お姉さまの背後からどなたかがお呼びになったような気配があり、しばらく無言がつづきました。
 ただ当惑しているうちに再びお姉さまのお声。

「あ、もしもし?散歩用の道具は広場に置きっ放しでいいって。ビデカメと日傘だけ持って帰ってきてって。あとのもろもろは適当にバッグに詰めて東屋のテーブルの下に置いておいて、ってさ」
「それと、今のその状態のままで帰ってきなさい。からだをタオルで拭いたり、水道で洗ってはだめ。からだの汚れ方を見ればそこで直子が何していたか、だいたいわかるからね」

「そういうことで、今から10分以内に戻ってきなさい。うーんと、今9時24分だから、あたしの時計で9時35分ジャストまでね。玄関のインターフォンを押したらゴール。1秒でも遅れたら罰としてドライブの途中、ひと気の多い場所を見繕って素っ裸で放り出して置き去りにするからそのつもりで」

 一方的にそれだけおっしゃって電話が切れました。
 そのとき初めて、私の両乳首と右脇腹に洗濯ばさみさまがまだ噛み付いていらっしゃることに気づきました。