2022年9月19日

肌色休暇三日目~避暑地の言いなり人形 06

「メイクはこんなもんでいいでしょ。次はイガちゃんにコーデしてもらいなさい」

 お姉さまのご指示で五十嵐さまのもとへ。
 テーブルの上に色とりどりのお洋服類が乱雑に置かれています。

「ほい、じゃあまずこの下着を着けて」

 五十嵐さまから手渡されたのは、シルクっぽい手触りの薄手なブラとショーツ。
 光沢のある薄い青色で、ブラはハーフカップ、ショーツはローライズ気味のビキニタイプ。

「あれ?ノーブラノーパンで連れ回すんじゃないんだ?」

 ご自身でのメイクを終えられ一段と艶やかなお顔となられた中村さまが、からかうみたいに五十嵐さまへご質問。

「あたりまえじゃない。露出調教のキモって、まわりにたくさん人がいるところでだんだん薄着になって、なんで自分はこんなありえない場所で、ありえないくらい恥ずかしい格好をしているんだろう、っていう背徳的な興奮を愉しむものだもん」
「最初から大サービス全部おっぴろげーじゃ、ファーストインパクトだけですぐ行き詰まっちゃうし、運が悪けりゃ公然猥褻、即通報。ね?直子?」

 ね?と同意を求められても私は、これからされることへの不安7と期待3のドキドキでおっしゃっているお言葉の意味を考えることが出来ず、上目遣いに五十嵐さまを見つめるばかり。

「ふーん、そんなもんなのかー。生憎アタシにはそういう特殊でアンモラルな性癖、ないからなー」

 相変わらず茶化されるみたいにご愉快そうな中村さま。

「はいはい、シャツはこれね」

 中村さまの軽口をスルーでいなされて、クタッとした白い布片を私に渡してくださる五十嵐さま。
 布片を広げてみるとシフォン?の半袖ブラウス。
 一昨日駅に着いたときに、前結びTシャツの上に羽織るのを許されたシャツブラウスによく似た質感。

 襟ぐりと袖口にレースが施してあってふうわり可愛いらしいのですが、生地全体が頼りなさげに薄っぺらい気が…
 前ボタンを全部外してから袖を通すと案の定、薄いスカーフのような真っ白い生地が光を通し、ブラの青色がスケスケ。
 
 はっきりと言うほどではないにしても、薄っすらというほど奥床しくもなく。
 生地はしんなり軽やかで夏向きの良い素材なのでしょうけれど、汗をかいたらすぐにべったり肌に貼り付いちゃいそう。

「で、下はこれ」

 差し出されたのは真っ赤な布地。
 広げてみると台形シルエットのショートスカート、フロントに銀色の大きめなボタンが六つ並んでいます。

 ウエスト部分のボタンをひとつ外して両脚を通すと、丈は膝上10センチくらい。
 ウエストも私にピッタリでベルトをしなくても大丈夫な感じ。
 ただし、普段こんな派手に真っ赤なスカートは穿かないので、なんだか気恥ずかしい。

「シャツはスカートにインしちゃったほうが可愛いいね。うん、そうそう。あと胸元はもうひとつ空けちゃって」

 五十嵐さまのご指示通りにすると、シャツの薄い布地がますますバストに吸い付き、ブラジャーの青色が白地の下にますます浮かび上がってしまいます。
 胸元のボタンは三つ目まで外れ、おっぱいの膨らみ始めまで素肌が覗いています。

「直子って、こういうブリっ子ぽいのもよく似合うんだよね。地下アイドルグループの一番右端、歌はいまいちだけどダンスのキレはダントツ、みたいな」

 お姉さまからの褒めらているんだか、茶化しているだけなのかご不明なご感想。
 私は、明らかに透けているブラが気になって仕方ありません。
 こんな格好で本当に人前に出るのでしょうか…

「あのお姉さま?…このシャツ、ブラが完全に透けちゃっているのですけれど…」

 堪えきれずお姉さまに向かってすがるように直訴してしまう私。
 お手持ちのタブレットに視線を落とされていたお姉さまがお顔を上げられ私を見遣り、ニッと笑いかけておっしゃいます。

「それくらいなら気にすることないわ。透け感コーデはここ数年定着しているし、今年の夏はへそ出しや肌見せも流行っているじゃない」

 にべ無く却下されるお姉さま。

「あ、そのスカート、ポケットに小銭とか入れないでね。左右ともざっくり穴空きだから」

 五十嵐さまがいたずらっぽくおっしゃって、私をじっと見つめてきます。

「どうしてだかわかる?」

 見るからにえっちなお顔で私の顔を覗き込まれる五十嵐さま。

「えっ?あっ、ぃいえ…」

 自分の衣服にもそういう細工を施したことがあるので、思い当たるフシが充分にあるのですが、ここは敢えて知らんぷり。

「直子みたいなスケベな変態ちゃんがいつでもどこでも、ポッケに手を突っ込みさえすればバレずに直でクリちゃんに触れちゃう街角アクメ仕様、って、そんなのAVとかエロ漫画でしか見たこと無いんだけどもね」

 とても嬉しそうに教えてくださった五十嵐さま。
 つまりこれで、私は公然の場でクリ弄りを命ぜられるのが確定したということです。
 それにこのスカートの前ボタン仕様にも不穏な意図を感じています。

「だったら直子の私物はポシェットに入れてぶら下げさせればいいわね」

 五十嵐さまにお応えされつつ、お姉さまが私のポシェットに私のスマホを入れられます。
 これでパイスラも確定。
 ついで、という感じで、一昨日から私を何度も悦ばせてくださったリモコンローターのローター部分だけを放り込まれたのも見逃しません。

「直子はこれでよしとして、うちもお出かけ仕様に着替えようっと」

 その場で何の躊躇もされず、スルスルっとTシャツをお脱ぎになられる五十嵐さま。
 やっぱりノーブラで白い素肌に控えめな膨らみ、淡いピンク色の頂点だけが艶かしく目立っています。

 ふたつの頂点に幅広めなニップレスを貼り付けられた五十嵐さまが、無造作にグレイのスウェット生地らしき半袖パーカーを素肌に羽織られます。
 更にジーンズ地のショートパンツも勢いよく下ろされ、下着は何の変哲も無い白無地フルバックショーツ。
 その上に同じスウェット地の膝丈ボトムを合わせられます。

「ちょ、ちょっと、イガっちの基準だとそれでお出かけ仕様になるの?あたしのジョーシキだと、それってただの部屋着なんだけど」

 心底ご愉快そうにツッコまれるお姉さまを、唇の前でチッチッチと人差し指を振られてお芝居っぽくいなされる五十嵐さま。

「ふふん、うちはジモッティだからね、モールに行くぐらいでいちいちオシャレとかしないのだよ。それに今日はカントクだし」

 得意満面な笑顔を見せられた五十嵐さまが、その笑顔でお姉さまと中村さまをじーっと見つめられました。

「エミリー姉さんは直子のマネージャーみたいなものだから、そのままオシャレッティでいいけど、かなぴっぴのそのキャミ、ちょっとえっち過ぎない?主役にケンカ売ってる的な。かなぴっぴは今回、うちのAD的な役割なんだし」

 中村さまを挑発されるように見つめられる五十嵐さま。
 その視線をまっすぐに受け止められた中村さまの唇が苦笑の形に綻びました。

「ワタシだってこの格好で外に出かけるつもりは無いわよ。ヘンに目立つと後々めんどくさいし、毎年来るところだからね」

 テーブル上の衣類を物色され、やがて決められたのか、キャミワンピの裾を一気にまくり上げられます。
 上下黒で布小さめな三角ブラにTバック、その他は何も身に着けていらっしゃらない中村さまの艶やかな肢体に息を呑む私。

 形良く上向きなバスト、シュッとくびれたウエスト、そのくびれからなだらかにつづく引き締まったヒップ。
 そこから更につづくスレンダーなおみ足が黒いレギンスに包まれ、上半身は鮮やかなグリーンのざっくり半袖チュニックで隠されます。
 先ほど仕上げられたメイクとも相俟って、妖艶な美女ADさまの出来上がり。

「これなら文句無いでしょ?で、お迎えは何時だっけ?」

 最初のは五十嵐さまへ、後のはお姉さまへのお尋ね。

「もうそろそろと思うけれど…」

 お姉さまのお答えが終わらないうちに中村さまの絶叫が響き渡りました。

「あーっ!洗濯物取り込むの忘れてたぁーっ!」

「そう言えばさっきネットニュース見てたら、午後からゲリラ豪雨あるかも、って」

 お姉さまのお言葉にみなさま大慌てで散りました。
 中村さまは厨房の中に一度引っ込まれ、すぐに大きなランドリーバッグを肩に提げて戻られます。
 五十嵐さまはテーブル上に残った衣類をひとまとめにしてスーツケースに戻した後、ホール奥のお廊下のほうへと走られます。

「ほら、あたしたちも手伝わないと」

 お姉さまに手を引かれ、私たちは正面玄関へ。
 扉を開けるとお外はドピーカンの残暑晴れ。
 サンダルをつっかけて芝生へと急ぎます。

 そう言えば、こんなにちゃんと下着まで着けてお洋服を着たのはいつぶりだろう?
 木立を抜けながら考えたら、たぶん出発のとき、お姉さまのお車に乗り込んだとき以来?
 からだに纏わり付く布地の感触に違和感を感じてしまっている自分に少し呆れてしまう私。

 五十嵐さまは芝生のほうの出入口から、大きなランドリーバスケットを携えてご登場。
 ちょうど例のシースルーバスルームのすぐ裏手に当たり、そんなところに出入口があるなんて知りませんでした。
 でもまあ知ったところで、私には使わせていただけないのでしょうけれど…
 
 そよ風にひらひら揺れているお洗濯物たちは、どれも完全に乾いているようでした。
 広大なシーツ類を私たちが取り込んで雑にたたむと五十嵐さまがランドリーバスケットに投げ込まれ、中村さまは下着類のほうを手際良くバッグに取り込まれます。

 急に全員わらわら現われた私たちに気づかれたジョセフィーヌさまが、喜び勇んだご様子で駆け寄ってこられ、中村さまと私とのあいだを行ったり来たりじゃれつかれます。
 まばゆいばかりのお陽さまが真上近くまで昇り、緑の芝生に陽光が燦々と降り注いでいます。

 空調の効いた室内からいきなりの炎天下ですから、全身に汗がじわりと滲み出ます。
 そして気づいてしまいました。

 今着ているこの白いブラウス。
 濡れると嘘みたいに透けるんです。

 大きなシーツを持ち運べるくらいにたたんでランドリーバッグへ。
 それだけの作業で私の首筋から胸元くらいまで汗じんわり。
 濡れたブラウスの布地が私の素肌に貼り付き、その部分がまるで透明ビニールみたいに肌色とブラの青色に透けていました。

 布地を肌から離せばいくらかマシにはなるのですが、濡れた布地はすぐに肌にくっつきたがります。
 全部の取り込みを終える頃には、私のバストアップは満遍なくブラウスが貼り付いて青色ブラジャー丸見え状態。

 これ、もしもノーブラで着せられていたら…
 やっぱりお姉さまにお願いして、せめて上に何か羽織るものくらいお許しいただこう…
 そう決めてお姉さまのお姿を探そうとしたとき、木立の向こうでお車のエンジン音が。

「あ、来たみたいね。タイミングいいじゃない」

 私から離れた支柱から紐を外されていたお姉さまが、お近くにおられた五十嵐さまに話しかけられ、五十嵐さまに紐を預けられて玄関口のほうへと駆け出されました。
 離れて見守っていた私は五十嵐さまと目が合い、五十嵐さまが近づいてこられます。

「へー、そのシャツ、汗で濡れるといい感じに透けるねー。本番が愉しみ…」

 お独り言にしては大きめなのは、ワザと私に聞こえるようにおっしゃったのでしょう。
 そのお一言で私は、お姉さまに助けを乞うタイミングを失います。
 そこにブッ、ブッと短いクラクションの音。

「ほら、直子もお出迎えしなくちゃ。今日の運転手と撮影カントクだってさ」

 今度は五十嵐さまに手を引かれ、正面玄関側へと連れ出されます。
 アプローチにお車が二台。
 玄関に近いところにお姉さまの愛車、その後ろにシルバーグレイで大きめのバン?ワゴン車?

 その傍らでお姉さまとお話されている男性おふたり。
 本橋さまと橋本さま。
 そう言えば昨日、ここまで送っていただいて去り際に、明日お姉さまのお車を戻しにこられる、とおっしゃっていたのを思い出しました。

「あっ、直子が来た。ほら、こっち来てご挨拶なさい」

 お姉さまに呼ばれ近づきます。
 本橋さまは相変わらずのラグビージャージ姿ですが、昨日のとは色が違って今日は黒と山吹色の横縞模様。
 橋本さまもTシャツにアロハはお変わりありませんが、今日のアロハは赤やピンクの極彩色で目眩ましみたいなペイズリー柄。
 ボトムは昨日と同じ、おふたりお揃いの濃茶のバミューダパンツ。

「イガちゃんの取材ツアーに無理言ってつきあってもらうことにしたのよ。ほら、いろいろアブナイことすることになるから、女性だけより周りにゴツい男性もいたほうが何かと心強いでしょ」

 お姉さまに促され、胸元に貼り付いているブラウス布地をさりげなく剥がしてから、よろしくお願いいたします、とお辞儀してご挨拶。

「いやいや、チーフにはいつもお世話になっていますし、今日はちょうどぼくらが買い出し当番だったから予定的にも問題無いんです」

 マッチョ体型の本橋さまがにこやかな笑顔でおっしゃいます。

「それに、森下さんは、あのイベント以来すっかり弊社のアイドルになっているんです。大胆なのに儚げで、絶対に汚してはいけない存在、みたいな。あ、もちろんそこに男女間の性的な意味は一切ないですよ」

 最後の部分だけ慌てたように強調される本橋さま。

「だから今日も、くれぐれも粗相のないように、って言われてきてるんです」
 
 あの急遽モデルをさせられたファッションショーイベントのとき、スタンディングキャット社の方々もたくさんお手伝いに来てくださいました。
 あのときはメイクやウイッグで別人のモデルになりすましたはずだったのですが、その後も両社の交流で社員同士お顔を合わせていたりしていましたので、あのモデルが私だったということは、すっかりバレていました。

「ちょっとモッチーの脚、見てやってくださいよ」

 それまでニヤニヤと本橋さまのお話を聞いておられたアロハ姿の橋本さまが、お話に割り込まれてきます。

「あーっ!」

 私とお姉さまで綺麗なユニゾン。
 確か昨日はモジャモジャだったスネ毛が今日はツルツルのスベスベ。

「昨日の夜の宴会で、チーフたちを迎えに行ったときの話になったんですよ」

 思い出し笑いを堪えきれない、という感じの橋本さま。

「で、俺らが旅館に着いて車から降りて、チーフたちが出迎えてくれたじゃないですか。あのとき、おまえの脚を見て姫が、あ、俺ら身内では森下さんのこと姫って呼んでるんで、姫が怯えてたぞ、と」
「姫が男性のモジャモジャした体毛や体臭が苦手なことは、チーフや玉置さんから聞いてみんな知っているんで。で、明日もお供を頼まれたのにそいつはケシカラン、ってことになって」

 もはや半分笑いながらお話をつづけられる橋本さま。
 私、橋本さまたちから姫なんて呼ばれてたんだ…と、なんともこばゆい気分。

「で、俺ら八人で旅行に来てるんだけど、七人がかりで嫌がるモッチー押さえつけてズボン脱がせて、脱毛テープでスネ毛をバリバリっと…」

 そこまでおっしゃられて、もはやお話できないくらいに吹き出された橋本さま。

「本当ひどいやつらでしょ。でも最近の脱毛テープって意外に痛くないんだね。専用のローションとかもあってスーッとして。スベスベも案外悪くない」

 マッチョな本橋さまが満更でもないお顔でおっしゃいます。
 私あのとき、そんな顔しちゃっていたのかな、と申し訳ない気持ちも湧きますが、お姉さまはただただ呆れられているご表情。
 そこに五十嵐さまが興味津々なお顔で割り込まれてきます。

「あなたたちって、本物のゲイカップルなんだ!?」

 率直と言うかいささか不躾なご質問。
 眉間にちょびっとシワを寄せられたお姉さまが割って入られ、ご紹介が始まります。

「ごめんなさいね。こちらは、この別荘の住人のお友達の五十嵐ショーコさん。あたしも昨日初めてお会いしたばかり。同人で漫画を描かれていて、その取材の一環として今日の直子の大冒険を企画した首謀者でありディレクター。イガちゃんて呼んであげて」

 つづけて五十嵐さまに向けて、

「こちらは、あたしたちの会社とパートナーシップを結んでいるスタンディングキャット社の社員さんで、マッチョなこちらが本橋さん、チャラ男風なこちらが橋本さん」

 チャラ男はひどくね?と本橋さまに小声で訴えられる橋本さま。

「スタンディングキャット社、あたしたちはタチネコ社って呼んでいるんだけど、ていうのは、あたしたちがレズビアン向けのアパレルを扱っているように、タチネコはダンショクカの人たちに向けての商材を専門に扱ってる会社。目指す方向が同じかつ特殊だから生地の相談とか何かと話が早くて、仲良くさせていただいているの」

 そこでいったんお言葉を切られ、いたずらっぽく微笑んだお姉さま。
 
「それでイガちゃんのさっきの質問だけど、答えはイエス。昨日ここに着く前にランチタイム休憩を森の中で別行動で取ったのだけれど、あたしらから離れた場所でここぞとばかりにくんずほぐれつヤッてたみたい」

 本橋さまが照れたようなお顔をされ、五十嵐さまの瞳が爛々と輝いてお独り言みたいにつぶやかれます。

「今日は夢みたい。エロ可愛い真性マゾ娘の野外羞恥露出と本物三次元BLのイチャイチャをこの目で生ライブで堪能できるんだ…」

 感極まって祈るようにお空を見上げる五十嵐さまの瞳からお星様がキラキラ本当に零れてきそう。
 そこへ、お洗濯物のお片付けを終えられたのでしょう中村さまが、片手に小さなバッグを提げられ、私たちへと近づいてこられました。


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