2022年9月25日

肌色休暇三日目~避暑地の言いなり人形 07

「あ、それでこちらは某出版社で名塚毬藻先生のご担当を長らくつづけられて、今はフリー編集者の中村佳奈さん。夏のあいだずっと先生とここで過ごされている、言わばこのお屋敷の管理人のおひとり」

 お姉さまのご紹介に身を乗り出されたのが橋本さま。

「名塚先生って、あの、S氏の典雅な生活、の名塚先生ですよね?俺、中坊の頃から大ファンでシリーズ全部持ってます。先生、今いらっしゃるんですか?」

 少し早口お声高になられ、ずいぶんご興奮気味な橋本さま。
 名塚先生って男性向け?たぶんBL?も書かれているんだ、って私もちょっとびっくり。

「ごめんなさいね、名塚は今日は仕事でタカサキのほうまで出ているんです。でも、そんな以前からの作品を今でも読んでくださっている男性ファンがいると知ったら名塚もとても喜びますわ」

 なんだかお仕事っぽい口調になられている中村さま。

「ハッシーはね、こんなサイケなアロハ着てチャラいけれど美大の映像科出てるんだって。だから今日は直子の資料映像の撮影カメラマンもやってもらおうって」
「あ、橋本だからハッシーね。で、こちらのガタイのいいほうが彼のパートナーの本橋さん、モッチー」

 お姉さまのご紹介にペコリと頭を下げられる本橋さま。

「ちょい訂正。俺、美大出てはいない。中退。小難しい理屈ばかりの講義に途中で飽きて嫌になった…」

「あ、でもこいつ、今でもボディビル大会があるとあちこちから呼ばれるほど撮影の腕とセンスはいいんですよ。アングルのとり方とか躍動感の捉え方とか…」

 ご中退告白で少しやさぐれられた橋本さまを、すかさずフォローされる本橋さま。
 五十嵐さまがこれ以上無いくらい嬉しそうにご相好を崩されています。

 そんなご様子を曖昧な笑顔で眺められていた中村さまが、提げていたバッグからスポーツドリンクのペットボトルを二本出され、おふたりにそれぞれ手渡されます。

「ワタシたちはもう少し準備があって、ほら、女の支度は長いから。本当は中で待っていただくのが筋なのだけれど、名塚の滞在中には男性を屋敷の中に入れてはならない、っていうジンクスみたいな不文律みたいなのがあるの。だからあと5分くらい、本当に申し訳ないのだけれど、ここでお待ちいただいていい?」

 おふたりが頷かれるのを見極められてから、お言葉がつづきます。

「渡辺社長のお車は、そこを右に折れて突き当たって左、建物の裏手が駐車場になっていますから、適当に空いているところに入れておいてください」

 なぜだかずっとお仕事っぽくよそよそしい事務的口調な中村さまに促され、私たち4人はもう一度お屋敷の中へ。

「モッチー✕ハッシーいいじゃんっ!お揃いのバミューダパンツ穿いちゃって、見るからにラブラブだねえ」

 上機嫌な五十嵐さまは、ご自分の大きめリュックを覗き込まれ、持っていかれるもののチェックをされているご様子。
 お姉さまが私に近づいてこられ、私のポシェットをたすき掛けのパイスラ仕様にセッティング。

 またブラに布地が貼り付いちゃう、と思ったのですが、乾きも早い生地みたいで空調の効いた室内に戻ったせいか、着たときに感じた通常の透け具合に戻っていました。
 厨房にしばらくこもられてから出てこられた中村さまは、把手の付いた大きなクーラーボックスをぶら下げていらっしゃいます。

「夕方まで時間があるからさ。生鮮食料品は遅めに買って、この中に突っ込んどけばいいわ」

 そのお腰には緑のチュニックによく映えるお洒落可愛い橙色のウエストポーチが巻かれています。

「かなちゃん、ハッシーと話すとき妙によそよそしかったけれど、あの手の男、苦手なの?」

 お姉さまはいつものトートバッグ、たぶん私を虐めるおもちゃもたくさん入っている、を肩に提げられ、中村さまに笑顔でお問いかけ。

「うーん、出版社にいた頃、バイトの女子や作家志望で持ち込みに来る若い女の子にすぐに下品なセクハラまがいかます、ワタシより少し年上の既婚編集者がいてさ、そいつにルックスや雰囲気が似ていたんで、ちょっと身構えちゃった」

 苦笑いを浮かべられる中村さま。

「でも彼、ホモセクシャルなんでしょ?なら心配ないよね。好きだって言っていた先生の小説もちゃんとBLものだったし」

 ご自分に言い聞かせられるように中村さまがおっしゃいます。

「かなぴっぴ?うちらに害をなすかもっていう杞憂なら大丈夫。ハッシーはどう見てもゲイ、それも絶対ウケのほうだよ」

 五十嵐さまが自信満々におっしゃり、私たち声を揃えて、えーーっ!?

「ああいうちょっとヒネた感じのやさ男って、ゲイの中では総じて受けになりがちなんだ。ハッシーは誘い受けだね。ベッドじゃ組み伏せられて悦んでるタイプ、つまるところエム」

「でもあのマッチョな彼のほうが物腰柔らかくて、受けっぽくない?」

 中村さまが異議を申し立てられますが、ふふんとお鼻で笑われる五十嵐さま。

「ううん、彼のほうはベッドじゃたぶんケダモノよ。ラグジャー着ていてあのガタイだもん、絶対脳筋だし、本能に忠実な攻めタイプ」

「ふーん、ホモセクシャルってそういうものなのかしら…」

 何やら生々しい会話が繰り広げられ、私はかなり引き気味。
 そうこうしているうちにみなさまのご準備が整ったようです。

 4人で再びお庭に出て、中村さまがしっかり施錠。
 玄関の壁に掛かったアンティークな振り子時計を見ると、時刻は午前11時を15分くらい過ぎた頃。
 本当に私は、人がたくさん集まっていらっしゃるらしいアウトレット?モール?に、こんな透けブラ姿で連れ出されることになってしまいました。

 見慣れぬ男性おふたりをご警戒されていたのか、少し遠巻きにウロウロされていたジョセフィーヌさまが、現われた私たちをみつけられ嬉しそうに駆け寄ってこられます。
 中村さまが持たれていたコンビニ袋をお見せになられつつ、ジョセフィーヌさまに何事かを語りかけられながら、芝生の小屋へと連れ戻されます。
 
 アプローチには門に向けて方向転換されたシルバーグレイのワゴン車のみ。
 お姉さまのお車は駐車場に入れられたのでしょう、消えていました。

 出てきた私たちに気づかれ、車外へと降りられる本橋さまと橋本さま。
 同時にワゴン車側面のスライドドアがススーっと開いたのですが、それを無視され五十嵐さまが橋本さまに駆け寄られます。

「はい、これビデオカメラ。充電バッチリで32ギガ積んである。頼んだわよ、撮影カントク、ハッシーさん?」

「あ、いや俺、自分の使い慣れたやつ持ってきたから。メモリーカードに録画するから終わったらすぐに渡せる」

 そうおっしゃって右手に嵌めたオレンジ色のハンディビデオカメラを私に向けてこられる橋本さま。
 思わずバストを庇ってしまう私。

「そっか、ならこのビデオはエミリーさんに託そう。撮影されている直子を撮影するのもメイキング映像みたいで面白そう」

 この三日間、私の痴態を記録しつづけてきたビデオカメラが本来の持ち主さまのお手に戻ります。

「おっけー、任せといて」

 お姉さまの朗らかなお声が合図だったかのように、本橋さまと橋本さまがそれぞれ運転席と助手席へ。
 スライドドアから覗く車内はずいぶん広く、座り心地の良さそうな立派な後部座席シートがフロントグラス向きに三列も並んでいます。

 運転席に本橋さま、助手席に橋本さまがお座りになられ、その後ろの席に私と五十嵐さま、その後ろに中村さまとお姉さま。
 それぞれのお荷物を足下に置き、大きなクーラーボックスを積んでもまだまだ余裕な広さ。

 それぞれがシートベルトを締め、スライドドアがススーっと閉じるとブルンッとエンジン音。
 一拍置いて流れてきたノリのいい音楽は、来るときにも聴いた覚えのあるレディ・ガガさまのヒット曲。
 車内にはエアコンがほどよく効いて、フローラル系の芳香剤っぽい香りが甘く漂っています。

「森下さん?大丈夫?臭くない?」

 ゆっくりと滑り出すお車のシートに背中を預けてひと息ついていた私に、唐突にお尋ねくださる本橋さま。

「えっ?あの、えっと、何が…ですか?」

「この車、いつも男ばかりの集団で使っているからさ、シートとかに男臭い体臭が染み込んでるんじゃないかと思って、掃除がてら消臭剤と芳香剤みんなでかけまくってきたんだ。タバコ吸うやつもいるし」

「あ、そうだったのですか…大丈夫です。ぜんぜん気になりません。それにあの、却ってお気を遣わせてしまって、ごめんなさい…」

 その細やかなお心遣いに恐縮してしまう私。
 私、スタンディングキャット社の方々から、本当に姫扱いされているのかもしれません。
 でも、そんなせっかくのご厚意をまぜ返すお声が、私の背後から聞こえてきました。

「あれ?あたしの車のほうは?」

 お姉さまのお声にすかさず応えられたのは橋本さま。

「はいはい、チーフの車は近くのスタンドで洗車ワックスと室内清掃オイル点検殺菌消毒までして、ガス満タンでお戻ししましたよっ」

 お姑さんがお嫁さんに口答えするみたいなニクタラシイご口調でのお答えに車内爆笑。
 和気藹々とした雰囲気で発車です。
 ジョセフィーヌさまのお散歩コースな広場へとつづく曲り角もお車だとすぐに通過。

 お車はずーっと木立の道、未舗装の林道のような道を進んでいきます。
 時折ガタガタはしますが乗り心地はいい感じ。
 なだらかな円周カーブがつづいているので、お山をグルっと周りながら下っているのでしょう。

 風景は見渡す限り延々つづく木立で、その奥はいずれも草木の生い茂る森林です。
 人家や建物っぽいものは何一つ見えず、もちろん信号機もすれ違うお車もひとつもありません。

 お車が走り始めてからしばらくは、お隣に座られた五十嵐さまから、いつ私に恥ずかしいご命令が下されるのか、とビクビクしていたのですが、今のところそんな気配もありません。

 と言うか五十嵐さま、本橋さま橋本さまへの取材に夢中なご様子で、本当に女性の裸を見ても興奮しないのかとか、初見で会ってホモとノンケの区別はつくのかとか、サウナや銭湯の男湯で好みのからだに出会ったらマークするのかとか、いささか下世話なご質問を矢継ぎ早に投げかけられています。

 そんなご質問にひとつひとつ律儀にご丁寧に、ときにユーモアを交えてお答えになられる橋本さまと本橋さま。
 ちなみに、女性の裸で興奮しないのか、というご質問に橋本さまは、綺麗な裸だったら、ああ綺麗だなーと美的芸術的な感心はするけれど性的な興奮は無い、綺麗じゃなかったら不快感しか無い、というお答えでした。

 お姉さまは後ろのお席で、私の知らないお仕事関係のかたのお話で中村さまと盛り上がられているご様子。
 どちらの会話にも混ざれない私だけ暇を持て余し気味に、車窓を流れる森林の景色を漫然と眺めていました。

 そんな感じで20分くらい走った頃、延々つづいていた森林が突然途切れ、草ばかり生い茂る平地に出ました。
 緩いカーブがつづくその道の左右は、以前は何かの畑だったのだろうなと思わせるそれほど広くはない草地となっていて、私の窓の側に凄く久しぶりに見る人の手が入った建物らしきものが迫ってきています。

 通り過ぎるときに目を凝らすと、そこだけ少し人為的に草を刈り取られたっぽい空き地の奥に、お寺か神社かなと思わせる木造二階建ての大きめな建物。
 
 なにぶんお車があっという間に通り過ぎてしまったので、その建物が何なのかまではわかりませんでしたが、もう長いあいだ使われていない=どなたも住まわれてはいない、ということは、見た感じの古さや荒れ具合でわかります。
 せっかくの建物なのに他のどなたも気に留められなかったようで話題にはならず、通り過ぎるとすぐにまた鬱蒼とした森へと入り、木立の林道へと戻りました。

 その林道を更に5分くらい走った後、お屋敷から走り始めて初めてのブレーキ。
 えっ?どしたの?と前を見ると、道の両脇から踏切の遮断機みたいな黄色い棒が行く手を塞いでいました。

 本橋さまが窓を開けられ、傍らの機械にカードみたいのをかざすと棒がスルスルっと左右に割れます。
 お車が通過してから振り向くと、棒がすぐに元に戻って再び通せんぼ。

 なるほど。
 これでみなさまが、ここは私有地だから、とおっしゃる意味が初めて理解出来た気がしました。
 でも、あんな遮断器、その気になればたやすく突破出来ちゃうような気もしますが…

「ほい、カード返しますわ」

 橋本さまが背もたれ越しにカードを私に差し出されてきます。
 受け取ると、表面に少し前に流行った動物を擬人化したアニメの美少女キャラ百合カップルの絵柄シールが貼られたクレジットカード大のプラスティックのカード。
 私も振り返り、斜め後ろのお姉さまに差し出します。

「それはエミリー、持っていていいよ。どうせ来年も来るでしょう?」

 お姉さまは中村さまに渡されようとされたのでしょう、中村さまのそんなお声が聞こえてきました。
 お車はいつの間にかまた木立を抜けて田園風景の中を一直線、やがてT字路に突き当り、舗装された普通の二車線道路が現われます。

「国道だー、やっと外界に降りられたーっ」

 五十嵐さまのずいぶんはしゃいだお声。

「今日は空いていそうだし、ここまで来たらもう20分も走らずに着けるはずです」

 運転席の本橋さまからのご説明。

「今日って金曜日でしょ?やっぱ混んでるんじゃない?先週の金曜日なんて駐車場どこも一杯だったよ」

「いや、でももうガキンチョの夏休みは終わってるから、少なくとも家族連れはもういないでしょ。いるのは暇な大学生と外国人観光客くらいじゃない?」

「でも週末だから、夕方から夜にはカップルとか増えそうね。モール目当ての客目当てで駅周辺にホテルも増えたし」

 口々にいろんなことをおっしゃるみなさま。
 車窓の田園風景にも民家やお店のお姿が混ざり、すれ違うお車も増え、歩道を歩かれる人のお姿もちらほらお見かけして私も、今までいたお屋敷周辺は明らかに別世界だったんだ、と実感しています。

 そんな窓を見ていてふと気づいた、スモーク加工された暗めのガラスに薄っすらと映り込む今の自分の姿。
 赤い首輪を嵌めて青いブラが透けている薄物一枚な私の上半身。

 すっかり別世界に馴染み切っていたので、自分がワンちゃんの首輪を嵌めていることをすっかり忘れていました。
 首輪…マゾ女のシルシ…
 途端に背筋を快感のような悪寒のような、心地良いような悪いようなさざめきがゾゾゾーっと駆け上ります。

「直子的にはギャラリー多いほうが嬉しいんだろうけど、そもそもあのモールって撮影おっけーだったっけ?」

 中村さまから今更ながらの根本的な疑問のご提示。

「うーん、知らないけれど動画投稿サイトであのモールの食レポとかお店ガイドやレビューとかよく見るし、大丈夫なんじゃない?」

 五十嵐さまからのいたって楽天的なお答え。

「でもまあ有名企業の運営だから、あんまり目立たないほうがいいことだけは確かだよね。あたしらは動画をネットに上げる気は更々無いけれど」

 ご慎重なご意見はお姉さまから。

「目立たないようにって言ったって、アブノーマルな首輪嵌めてスケスケ衣装のこんな女の子被写体にしていたら、人目につかないわけないとは思うな」

 中村さまの至極常識的なご意見。

「まあそのへんはハッシーモッチーのボディガード勢に頑張ってもらいましょう」

 あくまで楽天的な五十嵐さま。

「あ、でも先週来てたM女も、ここでけっこうキワドイ撮影したって寺っちが言ってたっけ。ワタシは用事で参加出来なかったのだけれど」

 傍証を思い出された中村さま。

「ヤバいゲリラ撮影したいなら変にコソコソせず、許可ちゃんと取ってまーす、って感じであっけらかんとカメラ向けていれば、見てるほうも、あ、何かのロケだな、って感じで意外とスムースに無駄なトラブル無く撮れるもんだよ」

 橋本さまの、おそらくご経験則からきているのであろうお言葉で、その議論は終りとなりましたが、逆に私のドキドキは最高潮。
 これからどんな辱めが待ち受けるのか、両腿の付け根が潤みっ放しで股間のクロッチがべったり貼り付いているのがわかります。

 お車は舗装された道路を快調に進み、行き交う他のお車や歩道を歩かれる方々のお姿もどんどん増え、日常世界に舞い戻ってしまったことをあらためて思い知ります。
 平日のランチタイムが終わった午後二時過ぎ頃の池袋繁華街くらいに人波とお車が増えてきた頃、進む先の路上に赤い棒を持たれた警備員さまらしき制服を着られた複数の男性のお姿が。

 その警備員さまが振られる赤い棒に導かれ、お車は広大な駐車場へ。
 とうとう着いてしまいました。
 意味も無くブルッと身震いしてしまう私。

 出入口近くこそ色とりどりのお車が整然と駐車されていますが、もっと奥の広大な駐車スペースにはまばらにポツンポツンという感じ。
 お近くに空きスペースをみつけられ駐車態勢に入られようとする橋本さまに、五十嵐さまから待ったがかかります。

「もちろん車は出入口近くに駐めるとして、直子とうちはあの警備員から死角になりそうな遠くで降ろしてくれない?もちろんモッチーもカメラマンとして着いてきて」

 五十嵐カントクさまのご指示が下され、いよいよ私の辱め映像撮影が始まるようです。
 駐車態勢から方向を変えられた橋本さまは、そのままゆっくりと広大な駐車場の出入口から見て一番端っこ、芝生と建物の背面で隔てられた駐車まばらなスペースまでお車を移動されます。

「そうね、この辺でいいわ。戻って車を駐車しておいて。悪いけれどみんなはちょっと待っていてくれる?外が暑かったら車の中で」

 五十嵐さまに促され、お車を降りる私とビデオカメラ片手な本橋さま。
 本橋さまはいつの間にか、これもペイズリー柄の真っ赤なバンダナを頭に海賊巻きにされています。

 お車が私たちを離れ、相変わらず快晴なお空の下、五十嵐さまと私が芝生の手前で対峙し、その横から本橋さまのレンズが私たちを狙っています。
 遠くにはひっきりなしに行き交う人たちのお姿が見え、背中側からはショッピングを楽しまれているのであろう賑やかな人々の喧騒が聞こえてきます。

「さて直子ちゃん、これからお望み通り、あなたの露出癖が充分満足出来るくらいに、おまえを公衆の面前で辱めてあげる。ふふっ、嬉しいでしょう?」

 ずいぶんお芝居がかった、でも充分嗜虐的なお顔になられた五十嵐さま。
 あの、いえ、私、それほど望んでもいないんですけれど…
 
 反発心からか心ではそう思うのですが、反比例するみたいに肉体でざわめく性的興奮。
 聞こえ来る人々の喧騒が頭の中でわんわん鳴り響いています。

「まずはこの場で、そのブラジャーを外しなさい」
 
 最初から悪魔のような五十嵐さまのご命令。

「シャツを脱いでからでも、着たまま両手を中に入れてのモゾモゾでも、どっちでもいいよ。要はさっさと脱いでブラをうちに渡しなさいっ!」

 心の底から蔑み切ったような五十嵐さまのお声が、怯える私に投げつけられました。

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