2014年11月30日

就職祝いは柘榴石 10

「直子さんの場合はね、最低限ここを縛っておけば、それだけで何倍も感じやすくなっちゃうのよ」
 シーナさまが手馴れたご様子で私の胸元に、二つ折りにした麻縄をあてがいました。

「まずは、バストの膨らみ始めのところらへんでひとまわりさせて、それからロープの折り返しにもう片方の端を通すでしょ」
「そしたら、折り返し部分を背中にまわして、ギュッと絞るの」
「はぁうっ!」
 麻縄が肌に食い込んでくる、その痺れるような感覚に、思わず歓喜の声が出てしまいます。

「それから今度は、アンダーのほうへロープをまわして・・・」
 シーナさまの麻縄が、私の下乳に潜り込みます。
「あふぅん!」
「このときね、上下のロープで乳房を挟んで絞り出すように、きつめに縛るのがコツね」
「この子のおっぱいってほら、ちょっぴり垂れ気味じゃない?だからアンダーの裏側に潜り込ませるようにロープを入れて、上下に挟むように絞り出すの」
 余った麻縄が手際良く背中で結ばれます。

「ほら、見てよ、この乳首」
 シーナさまがニヤニヤ笑いで、私の乳首を指さします。
「ただでさえ存在感あるのが直子さんの乳首なのだけれど、こうすると、ロープで皮膚が引き攣って突っ張りながら背伸びしちゃって、痛々しいくらい尖っちゃっているでしょう?」
「思わず指で弾きたくなっちゃうわよね?この硬そうなもの。こうなっちゃったらもう、すっごくビンカンだから、息を吹きかけただけでも悶えちゃうはずよ、この子は」

 お姉さまが、私の恥ずかしいほど尖立したその部分を、食い入るように見つめてきます。
 そしておもむろに、右のそれに、フーッと息を吹きかけました
「ぁふぅん!」
 ゾクゾクッと快感が背筋を駆け上がり、同時にお腹がグルグルッと鳴りました。
 あわてて下腹を引き締めます。
「ほらね?」
 シーナさまがしたり顔で、愉快そうに笑いました。

「本当は、後ろ手にさせて二の腕ごと縛ったほうが捗るのだけれど、直子さんには、これからまだまだやってもらうことがあるから。まだ腕は自由にしておいてあげる」
 シーナさまがお姉さまに、残った麻縄を手渡しました。

「おっぱいだけでも、縛りかたはいろいろあるの。ブラみたく八の字にしたり、首から十字にかけたりね」
「独特の結びかたがたくさんあるから、それを先に覚えるといいわ。実生活でも活用できるし。あ、でも、エミリーは服飾だから、その辺は得意分野かもね」
「まあ、直子さんなら、自分でもいろいろ縛ること出来るひとだし、プレイのためだけだったら、エミリーが無理してロープにこだわる必要も無い気もするかな」
 お姉さまは、うんうんうなずいて、シーナさまのお話に真剣に聞き入っています。

「直子さんて、縛られかた云々よりも、何かしら拘束されること、が最優先ぽいのよね。だから手錠とか首輪だけでも、されただけであっさり乱れちゃうの」
「ただ、やっぱりきっちり縛ってあげると、本当にいい顔するわよ、この子。うっとりした顔して恍惚状態。縄酔いの気持ち良さ、誰かさんたちに教え込まされちゃったから」
「だから、菱縄縛りとか亀甲縛りくらいは、覚えて損は無いと思うわ」
 ずっとお姉さまに語りかけていたシーナさまが、チラッと私を見ました。

「そう言えば直子さん?あなた以前、ミーチャンからセルフボンデージレッスンのDVD、もらったのよね?」
「あ、はい・・・」
 まだ地元にいる頃、自縛の練習用にと、やよい先生がミイコさまをモデルにしてわざわざ作ってくださったものです。
 その映像で私もずいぶん、ロープの扱いかたが上手になりました。
「それ、あとでエミリーに貸してあげて。あれはとてもわかりやすいもの。エミリーならすぐ出来るようになるはずよ」
「ぁ、は、はい・・・」

 上ずった声でそうお答えしたものの、私はそれどころではありませんでした。
 緊急事態が差し迫っていました。
 お腹の中がひっきりなしにグルグル蠢き、中のモヤモヤしたものたちが、お外へ出たいと、しきりに私に訴えかけていました。
 棒枷で広げられているためにピッタリとは閉じられない膝立ちの両腿を出来る限り内股にして、お尻の穴を必死にすぼめてがまんしています。

「あ、あのぅ、今、わ、私、すぅごく、お腹が、痛いのですけれど・・・」
 お話がひと段落して、黙って私を見下ろしているおふたりに上目遣いで、すがるようにお願いします。
「もう、で、出ちゃいそうなんですぅ・・・」

 これから私の、もっとも動物的でお下品な姿を、おふたりに至近距離でご披露しなければならない・・・
 屈辱の瞬間を目前にして覚悟を決めると、恥辱と被虐がないまぜになった不思議な陶酔がありました。
 
「あら、もうとっくに5分、過ぎていたわね」
 腕時計をチラッと見たシーナさまが、その場にしゃがみ、私に目線を合わせてきました。
「もうそろそろ限界?」
「はい・・・」
「そう。だったら早く、そこに四つん這いになりなさい」

 ついに来た・・・
 絶望的なお言葉に、私はゆっくり上半身を前方へ倒し始めます。
「四つん這いになって、犬みたく大急ぎにトイレへ駆け込んで、思う存分出してきなさい」
 ???
 一瞬、お言葉の意味することがわかりませんでした。

「えっ!?えっと・・・」
「ほら、早く行かなくていいの?ここで漏らしちゃ嫌よ」
「い、いいんですか?」
「だって直子さん、からだ健康そうだし、今だったらきっと、それなりのしっかりしたものがたくさん出てくるでしょう?」
「そんなのをここにぶちまけられても お掃除だの臭いだの後始末だの、めんどくさいことになりそうだもの」
「とりあえずスッキリ出して、出し終わったらまたここに戻ってくること。いい?」
「は、はい・・・」
 イタズラが成功したときの子供のようなお顔で、シーナさまがニッと笑いました。

「エミリーは、ついていきたっかたらついていってもいいわよ」
 シーナさまに促され、私同様キョトンとしたお顔だったお姉さまが、ハッと我に返りました。
「あっ、え?あたしもいいですよ。ほら、直子、さっさと行ってきなさい。間に合わなくなるわよ?」
 お姉さまのお言葉が合図だったかのように、私のお腹の中が再び盛大に騒ぎ始め、お返事もそこそこ、バスルームの隣にあるおトイレへ四つん這いで駆け込みました。

 危機一髪!
 便座に腰を下ろすのと同時でした。
 シーナさまの予想どおり、かなりしっかりとしたものが私の予想以上に出て行きました。
 一通りの行為を終えて洗浄した後も、しばし呆然と佇んでしまいました。
 お下品な姿をおふたりに視られてしまうことを回避した安堵と、果たせなかった陶酔へのちょっぴりな後悔。
 でも、トイレ内に漂う、自分が今したことの残り香に気づき、そんな後悔はすぐかき消されました。

 気が抜けたような四つん這いでバスルームに戻ると、お姉さまとシーナさまは、バスタブの縁に腰掛けて何やら楽しげに談笑中でした。

「あ、おかえりー。どう?スッキリした?」
 私に気がついたシーナさまが明るくお声をかけてくださいます。
「はい、おかげさまで・・・」
 四つん這いのままでいるべきか、膝立ちの服従ポーズになるべきか迷いながら、四つん這いでお答えしました。

「すごい音してたわね?ここまで聞こえたわよ?」
 イジワル顔なシーナさまの蔑んだお声。
「ご、ごめんなさいぃ」
 恥辱感が一気にぶりかえし、四つん這いの身をさらにちぢこませて土下座のような私。
 尖った乳首が濡れたタイルを擦りました。

「さてと。さあ、ここからが本番よ」
 シーナさまが立ち上がり、私の首輪のリードをお姉さまに握らせました。
「直子さんは、四つん這いで待機していてね。あ、お尻はあっちの排水口に向けて」
 シャワーをぬるま湯にして床を流しているシーナさまのご命令で、私は方向転換、入口に顔を向け、お尻を奥に向けました。
 一体、これから何をされるつもりなのだろう?

 シャワーを止めたシーナさま。
 バスルーム内がジンワリと湿気を帯びて、ほの温かくなっています。
 大きな鏡も綺麗に洗い流され、私たちの姿がクッキリ映っています。
 シーナさまがタオルに包まれた何かを持って、私の傍らに立っているお姉さまに近づいてきました。

「今日からこれが、エミリーと直子さん専用の相棒ね」
 シーナさまがタオルを開き、目の前に現われたのは、ガラス製のお浣腸器でした。
「正真正銘の新品で煮沸消毒も済ませてあるから安心して。実物見ると、けっこう禍々しいでしょ?これも、わたしからふたりへのプレゼント」
 シーナさまが笑いながら、私の鼻先にそれを突き出してきました。

 以前、ご近所のお薬屋さんにお浣腸薬を買いにいったとき、そのお店のおばさまに見せていただいたことがありました。
 でも目の前にあるのは、それより少し小さい感じ。

「実物って、ずいぶん大きいんですね?」
 傍で覗き込まれていたお姉さまが、驚いたようにつぶやかれました。

「そう?これは標準的な50ミリリットルサイズ。大きいのだと100とか200とか。逆に小さいのだと30ミリのもあるわね」
「えっちビデオとかでは、見た目優先で大きなの使っているけれど、100ミリのは女性の手だと扱いづらいのよ、大き過ぎて」
「逆に30ミリだと小さくて、お医者さんごっこしているみたいだし」
「このくらいなら、見た目的にも、SMプレイで浣腸している、って思えるでしょ?」
 最後はクスクス笑いまじりで、シーナさまがご説明してくださいました。

「あのぅ、私、また、お浣腸されちゃうのですか?」
 たまらずお口を挟んじゃう私。
「そうよ。まさかわたしやエミリーがするわけないじゃない。今日のテーマは、あなたのアナル開発なのよ?」
 シーナさまの心底バカにしたようなツッコミ。
「さっきのは、プレイのための事前準備。これからするのは、直子さんにみじめな気持ちを味わってもらうためのSMプレイよ」
 シーナさまのあっけらかんとしたイジメ宣言に、マゾ心がズキンと疼きました。

「大丈夫。今度はぬるま湯しか入れないから。さっきのでたぶん、あらかた出ちゃっているはずだから、今度はもう水しか出ないはずよ」
「ただまあ、音とか臭いとかがどうなるかは、何とも言えないけれどね。でも、そういうのがいいのでしょう?直子さんはヘンタイドマゾなのだから」
 シーナさまのイジワルなご説明で、私の被虐メーターがグングン上昇していきます。

 ぬるま湯浣腸。
 ガラスのお浣腸器を見せてくれた薬屋さんのおばさまが、今度来たときやってあげる、とおっしゃってくれて、私も行く気満々だったのですが、いつしか機会を逸し、それきりになっていました。

 これから私は、それを体験するみたいです。
 それも、大好きなお姉さまの目の前で。
 顔を上げてお姉さまのほうを見ると、お姉さまと目が合い、意味ありげなウインクをくださいました。
 その瞳は、好奇心で爛々と輝いていらっしゃいました。

「考えてみたら、直子さんのエネマプレイを目の当たりにするのって、わたし、初めてなのよね」
 シーナさまがお姉さまに語りかけました。
「ご存知の通り、アナル開発禁止令が出ていたから。百合さまから」
「ね?わたし、ほとんど直子さんのお尻は、虐めなかったわよね?」
 今度は私に向けられたご質問。
「あ、えっと、そうですね。少なくともお浣腸姿は、お見せしていないと思います・・・」

「わたしは、直子さんがときどきひとりでこっそり、浣腸愉しんでいるのは知っていたわよ。だって、使用済み容器がバスルームに転がっていたことがあったもの」
 え!?私、そんな無用心なこと、していたんだ・・・
 みるみるからだが熱くなり、火照った頬でうつむきます。

「だけど百合さまには、初お泊りの日、ヴァージン破られた翌朝に浣腸されて、タンポンまで突っ込まれたのよね?高校二年で」
 シーナさまの悪意に満ちたからかい口調に、私は、お姉さまに申し訳なくて、消え入りたい気分で身をちぢこませました。
「ね?この子、素養があるのよ。これからはおふたりで、せいぜい存分に愉しむがいいわ」
 シーナさまのお言葉がお姉さまへ向き、お姉さまがフクザツそうなお顔をされました。

「だけど最後の最後に、直子さんのエネマプレイに立ち会えて、本当に良かったわ」
 少し間を置いて、しみじみとした口調でそうおっしゃってから、シーナさまがお姉さまをじっと見つめました。

「直子さんのお相手が、エミリー、あなたで本当に良かった。もしそうじゃなくて、わたしの知らない人だったら、わたし、いつか直子さんを拉致して、今までがまんしていたプレイのあれこれ、やっちゃうつもりだったから」
 最後のほうは冗談ぽい感じでしたが、しみじみとした雰囲気のままおっしゃいました。
「これからも仲良くしましょうね。いろいろと」
 一転してイタズラっぽく笑うシーナさまに、お姉さまも戸惑いつつもニッコリ返しました。

「さ、それじゃあ始めましょう。エミリーはこれ持って」
 シーナさまがお姉さまにガラスの浣腸器を渡しました。
「直子さんは、お尻突き出して、迎え入れる準備をしていてね」
 ご命令通り、四つん這いの腕を折りたたみ、腕を床に着けて上体を下げ、代わりにお尻を高く突き上げます。
 緊縛されたおっぱいがタイルの床に、べったり押し付けられました。

「それで、これを吸い上げて」
 床に這い蹲るような形の私の顔の前に、水らしき液体がなみなみと注がれたガラス製のボウルが置かれました。
「これはあらかじめ作っておいたぬるま湯。害はまったく無いから安心して。先端を浸して、そのピストンを上に引き上げて」
 私の見ている前で、シリンダーにぬるま湯がグングン吸い上げられていきます。
 これが全部、私のお腹の中へ入っていくんだ・・・
「最初だから、100ミリで様子を見ましょう。つまり、この浣腸器2回分」
 えーっ、2回も!?

「よくビデオや小説で2リットルとか3リットルとか言うけれど、そんなの危ないからね。腸は水を吸収するから、下手すると水中毒とかあるから」
「要は、排泄する恥ずかしい姿を愉しむためのプレイなのだから、がまん出来ないギリギリ分量だけ入れればいいの。うちのメス犬は、1リットルくらい入るけれどね」
 
 シーナさまが楽しそうに解説してくださいますが、私の目はお姉さまの持つガラス浣腸器に釘付けで、ドキドキが止まりません。
 あの冷たそうなガラスの先端が私のお尻の穴に突き挿さり、ピストンで無理矢理ぬるま湯を注入されて、それから・・・
 麻縄で絞り出された両乳首が痛いほど尖って、両腿の裂け目の粘膜がヌルヌル疼いています。

「水が入ると、けっこう重いですね?」
 ぬるま湯を注入し終えたガラス浣腸器を危なっかしく両手で持ったお姉さまが、シーナさまに尋ねました。
「でしょ?女性が扱うならそのくらいが限度よね?100ミリだと、水がその倍だもの」
「それに、このくらいならひとり遊びでも重宝するはずよ。その先っちょにホースを付ければ、ひとりでも不自由なく注入できるはず。専用ホースも一緒に持ってきてあげたから」

「これで直子さんも、気軽にひとりエネマプレイが愉しめるわね?」
 シーナさまがからかうように私の顔を覗き込みました。
「いいえ。そうはさせません」
 
 突然、お姉さまのきっぱりとした冷たいお声が、私の頭上から降ってきました。
 見上げると、お姉さまが真剣なお顔で、まっすぐに私を見つめていました。
 そして、その視線がシーナさまへと移りました。

「あたしは今後、直子の性生活の一切をあたしがコントロールしようと思っています。だってこの子、放っておくとどんどんエスカレートしそうだから」
「オナニーもあたしに断らずにするのは禁止って、言い渡してあります。これからは一緒にいる機会も増えると思うので、直子の性欲は、あたしが満足させてあげるつもりです」
「でも、やっぱり手に余ることがあったらまたご相談させていただきたいと思っていますので、そのときはシーナさんも、協力してくださいね?」

 右手に持ったガラス浣腸器を肩の高さくらいまで上げてニッコリ笑いかけるお姉さまに、今度はシーナさまがフクザツそうなお顔をされていました。


就職祝いは柘榴石 11


2014年11月24日

彼女がくれた片想い 01

 彼女に興味を持ったきっかけは学校のトイレでの、とある出来事だった。

 俗に五月病と呼ばれる症状が発症しやすいとされる若葉の頃。
 昼休みの後、次の講義まで丸々一限分時間が空いていた私は次の講義が行われる教室のフロアまで移動した。
 そして、その時間帯に講義が行われていない空き教室のひとつに忍び込み、読書をしていた。
 
 小さめなその教室内にも廊下にも人影はまるで無く、しんと静まり返って快適だった。
 しばらく読書に集中し、あと20分くらいで次の講義という頃、微かな尿意を覚え、講義前にトイレをすませてしまうことにした。

 開け放したままの出入口ドアに一番近い席に座っていた私は読みかけの本に栞をはさみ立ち上がった。
 愛用のバッグを肩に提げ、引いた椅子は戻さずに廊下へ出た。
 用を足したらここに戻り、もう少しだけ読書をするつもりだった。
 
 使用されていない教室は出入口ドアを開け放したままにしておくことが学校の規則となっているのでドアもそのまま。
 そのドアのほぼ真向かいがトイレの出入口ドアだった。

 女子トイレ、女子大なので校内のほとんどのトイレが女子トイレなのだが、には誰の姿も無く、5つ並んだ個室のうち一番奥の個室だけドアが閉ざされていた。
 使用中の個室から一番離れた出入口ドアに最も近い個室に籠もり、便座に腰を下ろした。
 
 微かな尿意はなかなか実体化せず、なかなか出てこない。
 だけど次の講義終了まで持ち越すのは気持ち悪いので気長に待つことにした。
 さっきまで読んでいた本があと数ページで終わることを思い出し、下着を下ろしたままその本を広げて読み始めた。

 そのとき…

「んぅふぅっ…」
 
 誰かが入っているのであろう一番奥の個室の方から、くぐもった、押し殺したような声が微かに聞こえた気がした。
 きっと難産なのだろう、お疲れさま。
 たいして気にも留めず、再び活字に視線を落とした、

 すると再び…

「ぁふうぅ…」
 
 さっきより明確に、せつなげな吐息が聞こえてきた。

「んふぅぅぅっ…」

 排泄行為に伴うそれとは明らかに異なる、ある種の息遣い。
 この手の鼻にかかった呻き声には心当たりがふたつある。
 意図を持って押し殺しているにも関わらず喉の奥から漏れてしまう、妙に艶っぽい扇情的な吐息。

 ひとつは、何かしら悲しいことでもあって個室で人知れず涙に暮れている、その押し殺した嗚咽。
 もうひとつは、こっそりと何か性的な行為で高揚している、そのひそやかな愉悦。

 そこまで考えた時、自分の排尿が始まった。
 静まり返った個室にチョロチョロという水音が響き、案の定、数秒で出尽くした。
 洗浄して下着を上げ、いざ流そうとした時、ふと考えた。
 
 ここで勢い良く水を流せば、奥にこもっている彼女は数十秒前に漏らした呻き声を誰かに聞かれたことに気づくだろう。
 そしてそれは彼女にとって、とても恥ずかしいことなのではないかと。

 だがすぐにそんな気遣いは何の意味も無いという結論に達した。
 私には奥の個室の彼女がその中で泣いていようが、あるいは自分を慰めていようがまったく関係の無いこと。
 彼女だって私がさっさと出て行ってしまえば安心することだろう。
 私がすべきことは何も無かったようにここを出て空き教室に戻り、あと数ページの本を読み終えてしまうことだ。

 普通に大きな音をたてて水を流し、普通に個室のドアを開けた。
 あれから一度も声は聞こえてこない。
 手を洗いながら奥の個室を見ると、相変わらずぴったりと閉ざされたままだった。

 廊下へと出る時、私と入れ違いにひとりの学生がトイレに駆け込んでいった。
 可哀相に奥の個室の彼女、誰にも邪魔されずゆっくりひとりになりたくて個室に籠ったのだろうに。
 切羽詰っているふうな学生の後姿を見送ってそんなふうに思った時、ふと小さな好奇心が湧き出てきた。

 スマホを見ると、次の講義まであと約10分。
 そろそろ現在進行形の講義終了チャイムが鳴る頃だ。
 
 そのあいだに奥の個室の彼女が出てくるか、待ってみようか。
 あんな艶っぽい呻き声を出す彼女がどんな顔をしているのか、見てみるのも面白いかも。
 行かなければならない教室はこのフロアの一番端で、ものの数秒でたどり着ける。

 ひとまず空き教室に戻り、元いた席に座って本を開いた。
 この席からなら少し首を右斜め後ろに捻って窺えば、背後にある開け放しの出入口ドアからトイレ出入口ドアの閉開は確認出来る。
 なんだか探偵みたいだな、なんて考えた時、講義終了のチャイムが鳴った。

 休み時間となり、廊下が騒がしくなっていた。
 教室移動の人たちが廊下や階段を行き来し、いくつかの教室を出たり入ったり。
 高めなトーンの嬌声がザワザワとフロア内を満たしている。
 幸いこの小さめな教室は次の講義でも使われないらしく、誰も入ってこない。

 読書しているフリをしながらトイレの入口ドアを監視しつづけた。
 その間、私と入れ違いになった学生も含めて5人の学生がトイレに入り、それぞれ数分の間を置いて全員出てきていた。
 服装を全部憶えて確認していたので間違いは無い。
 
 奥の個室はまだ閉じたままなのだろうか。
 そうであるなら彼女がいつ個室に入ったのかは知らないが、少なくとも20分近くは奥の個室に籠っていることになる。

 講義の時間が迫り、どうしようか迷った。
 すでに廊下に人はまばら、遠くの教室からは女子集団独特の華やかながらやや品に欠ける喧騒が微かに聞こえていた。
 
 奥の個室の彼女は次の講義も出ないつもりなのだろうか。
 考えていたら講義開始のチャイムが鳴り始めた。
 今なら廊下を走ればぎりぎり間に合う。
 どうしよう…

 結局私はチャイムが鳴り終わり、フロアに再び静寂が戻った後もトイレの出入口ドアを見つめていた。
 単位集めの滑り止めで取った選択科目だし、ま、いいか、と自分を納得させた。
 それよりも20分以上トイレにこもったままの彼女のほうが気にかかった。
 ひょっとして急な病気か何かで苦しんでいて動けないのではないだろうか。
 そんな嫌な予感も生まれていた。

 私が受けるはずの講義が始まってから早くも5分近く経った。
 奥の個室の彼女は一体何をしているのだろう。
 もう一度トイレに入って思い切って声をかけてみようか。
 
 もはや完全にからだをトイレの出入口ドアに向けて睨みつつ逡巡していると、そのドアがゆっくりと内側に動き始めた。
 あわてて背を向け、読書をしているフリをする。

 うつむきながらも首を少し右に曲げて横目で観察しているとトイレのドアはじれったくなるようなスピードで内側に開いていった。
 開き切る寸前、唐突にドアの陰からマンガなら絶対に、ひょい、という擬音が添えられる感じで首から上の小さな顔が空間に現われ、その顔が不安そうに廊下の左右をきょろきょろ見回した。
 
 それはまるで安っぽいテレビドラマにありがちな、不審者、の行動そのもので、私は思わず苦笑いしてしまった。
 同時に、その顔を見て驚いた。
 その不審者は廊下に人影ひとつも無いことに安心したようで、素早く廊下に躍り出た。

 シンプルな茶系のブレザーにえんじ色の膝丈チェックスカート。
 白いフリルブラウスと三つ折ソックス、そして焦げ茶のタッセルローファー。
 この、いまだに女子高生のようなファッションに身を包んだふんわりミディヘアーの彼女に私は見覚えがあった。

 廊下に出てからの彼女の行動は素早かった。
 空き教室の開けっ放しのドアから私の背中が見えたのだろう、一瞬ギョッとしたように立ち止まってからガクンとうつむいて、ささっと階段の方向へ消えた。
 
 彼女が視界から消えると私も素早く立ち上がり、教室の出入口ドアの陰から彼女の姿を目で追った。
 彼女の背中は無人の廊下を小走りに校舎突き当たりの階段方向へと小さくなり、そのまま右に折れて階段を下りていく。
 そこまで見送ってから廊下に出て、再びトイレの出入口ドアを開いた。

 5つある個室はすべてドアが内側へと開いている。
 すなわち、ここには私ひとりきり。
 まっすぐに一番奥の個室へ向かう。

 別におかしなところは無い。
 床にも便器にも汚れは無く、いたって普通。
 ここで何が行われていたのかを教えてくれるような形跡は何も残っていなかった。
 ただ、微かにフローラル系パフュームの残り香が漂っているような気がした。

 講義をひとつ無駄にしてしまった自分の行動に苦笑しながら空き教室に戻り、最後の数ページとなった小説に没頭することにした。


彼女がくれた片想い 02

2014年11月16日

就職祝いは柘榴石 09

 ゴージャスなブルーベルベットの上に横たわっていたのは、2種類の、数珠、のような形状の一見ブレスレットぽいオブジェでした。
 ひとつは、直径1センチから2センチくらいのえんじ色の珠が徐々に大きくなるように連らなった、全長20センチくらいのもの。
 もうひとつは、直径1センチから最大4センチくらいの珠が凸凹ランダムに連らなっている、やっぱり全長20センチくらいのもの。
 えんじ色の珠は、どれもツヤツヤピカピカ、壮麗に輝いています。

「うわー、綺麗!」
 思わずつぶやいてしまいました。
「でしょ?ガーネット、和名だと柘榴石のカーバンクルよ。石も仕上げも質が良いから、本来ならこのままブレスとか、大きいのはカットして指輪やペンダントトップにするべき宝石なのだけれどね」
 シーナさまが意味ありげに微笑みました。

「それで直子さん、これが何だかわかる?」
「えっ?」
 シーナさまに尋ねられ、あらためてその数珠っぽいものをじっくり見つめました。
 宝石、っておっしゃったから、きっと何かアクセサリーの一種なのかな?

 どちらの数珠にも、片方の先端に直径3センチくらいのゴールドのリングが付いています。
 指とか何かにひっかけて、ぶら下げるためなのでしょうか?
 でも、そんなアクセ、聞いたこともない。
 何だかわかる?と尋ねるくらいですから、見た目どおりの数珠やブレスレットではないでしょう。
 ひとつのほうは、珠の大きさもバラバラだし・・・

 そこまで考えたとき唐突に、以前ネットで見たことのある、とあるえっちな画像が頭の中に浮かびました。
 裸の四つん這いで、お尻から数珠状のものを尻尾のように垂らしていた女性の画像。
「あっ!」
 私が声をあげると、シーナさまが嬉しそうにニッと唇の両端を上げました。
「さすがヘンタイ直子さん。お気づきになったようね」
 
 シーナさまが、まっすぐなほうの数珠状のものを手に取り、私の目の前にダランとぶら下げました。
 珠と珠とのあいだは、ぴっちりと詰められていないようで隙間が出来、珠をつないでいる糸の全長だと25センチくらいあるみたい。

「これはね、俗に言う、アナルビーズ、として作らせたの。つまり、この綺麗なカーバンクルが直子さんのお尻の穴を出たり入ったりする、ってわけ」
 シーナさまは、数珠、いえ、いささか高級過ぎる柘榴石で作ったアナルビーズを私の目の前でブラブラ揺らしながら、ニンマリと笑いました。

「直子さんは初心者だから、最初はこの一番小さな珠から始めて、開発されてきたら、こっちの大きな凸凹で存分に愉しむといいわ」
 もう一方の、珠の大きさランダムなアナルビーズも手に取り、ブラブラさせるシーナさま。
 開発、というお言葉に被虐心がズキュンと震えてしまいます。
 私、お尻の穴を、開発、されちゃうんだ・・・
 いたたまれない恥ずかしさに、真っ赤になってうつむきました。

「あら、ずいぶんと嬉しそうじゃない?もちろん、実際に開発するのはエミリーの役目。今日のわたしは、そのとっかかりのコーチ役」
「エミリーもね、直子さんのアナル開発にはとっても興味がおありのようよ。このあいだお会いしたとき、お話がはずんちゃったものね?」
「はい。あたし、その手のプレイは今まであまりやったことがないので、ワクワクしています」
 お姉さまがアナルビーズと私の顔を交互に見つつ、切れ長な瞳を煌々と輝かせています。

「これ、現地でも評判な、腕利きのジュエリー職人にわざわざ作ってもらったのよ。さっきも言ったように、最初はうちのメス犬用に、ピンクサファイアで」
「こっちの珠がランダムなやつをね。あいつ用のは、全体にもうひと回り珠が大きいけれどね」
「その職人、わたしのデザイン画見て、いったいこれは何なんだ?って怪訝そうな顔をしていたわ」
 思い出し笑いのシーナさま。

「それがあまりにも出来が良くて加工賃も妥当だったから、直子さん用のも作ることにしたの。でも、直子さん、初心者だから小さいのから二種類作らなきゃならないし、それだと、ピンクサファイアでは石のお値段張り過ぎるでしょ?ちょうどそのアトリエに程度のいい大きな柘榴石の原石の塊があったから、それから削り出してもらったの」
「ストリングスもまず切れることの無い高品質ナイロンテグスだし、このリングは18金だし、お尻の穴に挿れて遊ぶにしては、あまりにも贅沢すぎる一品よ?」
 シーナさまがからかうようにおっしゃり、その高級アナルビーズを私の鼻先でブラブラ揺らしました。

「現地でずっとガイドしてくれた子がすっごく興味持っちゃって、何に使うんだ?アクセサリーなのか?って、ずっとうるさかったのよ」
「だから、現地を離れる前の夜のパーティの席で、こっそり彼女にだけ教えてあげたの。うちで飼っているセックススレイブのアヌスに突っ込んで愉しむんだ、って」
「彼女、一瞬ギョッとした顔してから、大声で笑い出したわ。大受け。ひとしきり笑い転げて、やっぱりニッポンジンは、アブノーマルなヘンタイばっかりだ、って半ば感心、半ば呆れの、目に涙溜めた笑顔で言われちゃった」

「デザイン画、そのアトリエにおいてきちゃったから、ひょっとしたら今頃、現地の日本人向けお土産のラインナップに加わっているかもしれないわね、これ。安めの石を加工して」
 お姉さまとシーナさまがお顔を合わせて、しばらくクスクス笑っていました。

「そんなわけで、これから直子さんのアナル開発を始めるのだけれど、直子さん?最近、お通じのほうはどう?」
 シーナさまに突然お通じ状況を尋ねられ、ビクンとわななく私。
 アナル開発、という淫らでヘンタイ過ぎる語感が、私のマゾ性を刺激し過ぎて、全身が疼いて疼いてたまりません。

「あの、え、えっと、ふ、ふつう、です・・・」
「今日は?」
「あ、はい、午前中に一度、ふつうに・・・」
「そう。一度出した後は、何食べた?」
「え、えっと、お昼にバナナ一本とヨーグルトを食べて、夕方にお姉さまとお逢いして、サラダとパスタとピザをご馳走になって、それから今、アイスクリーム・・・」
「ふーん。今11時前か。一応もう一度出しておいたほうが無難なようね。直子さんも、あまりエレガントでないのは、お好きではないでしょう?」
 イタズラっぽい口調のシーナさま。
「あ、はい・・・」
 エレガントに虐められたいなら、まず、エレガントとは対極な自分の姿を、おふたりにご披露しなければならないようです。

「おっけー。やっぱり一度出しておきましょう。エミリー、直子さんをバスルームに連れて行って。わたしもすぐに行くから」
 シーナさまが私の首輪から垂れている鎖リードの先端をお姉さまの右手に握らせて立ち上がり、おひとりでサンルームのほうへスタスタ歩いていかれました。
 シーナさまのお言葉が何を意味しているのかわかった私は、これから訪れるであろうみじめ過ぎる恥辱にグングン昂ぶりながら、無言でお姉さまのお顔を、すがるように見つめました。

「さ、直子?行くわよ?」
 お姉さまが立ち上がり、私も立ち上がり、お姉さまがクイッとリードを引っ張ったのを合図に、私は腰を沈めて床に四つん這いになりました。
 お姉さまのTバックのカッコイイお尻を見上げつつ、棒枷で抉じ開けられた丸出しの股間とお尻をフラフラ上下させて、フローリングの床をワンちゃんのように進みます。
 鎖を引かれて膝を交互に動かすたびに、粘膜が擦れて溢れ出したおツユが腿を滑り落ちるのがわかりました。

 バスルームの横開きな扉をお姉さまが開き、そのままスタスタと中へ入りました。
 私の両手のひらと両膝に触れる感触が、フローリングから濡れたタイルに変わります。
 先ほどお姉さまがシャワーされたので、バスルームの中はまだほんのり温かく、ソープ類の良い香りがして、全体に湿っていました。
 大きめの鏡は全体に曇っていて、私たちの姿もぼんやりぼやけて映っています。

「これからあたしは、ここで直子の排泄姿を見せられる、っていうことよね?」
 お姉さまが振り返り、四つん這いの私を見下ろして静かにおっしゃいました。
「出逢ってから3度目、つきあい始めて2回目でのそんな姿、って、どう考えたってアブノーマルよね?」
 お姉さまは、普通に世間話するような口調で、私に尋ねてきます。
「さ、さあ?・・・」
 何てお答えすればいいのかわからず、ボーっとお姉さまを見上げる私。
「まあ、初対面でオナニー姿、このあいだはオシッコ姿視ちゃったのだから、妥当なのかな?あたしたちみたいな仲なら」
 ニコッと微笑まれたその瞳は、好奇心で爛々と輝いていました。

「ねえ、直子はどう?あたしにそういう姿視られちゃうのって、嬉しいの?それとも恥ずかしい?」
「恥ずかしいです!すっごく恥ずかしいです!お見せしたくないですぅ!」
 被虐に全身を震わせて、泣きそうな顔でお姉さまを見上げました。
「本当?直子は、そういう姿を視て欲しくてたまらない種類の人間のくせに」
 お姉さまがイジワルにおっしゃり、リードをクイッと引っ張りました。

「あうっ!本当ですぅ。お姉さま、どうか私がみっともない姿を、お下品な姿をお見せしても、どうか嫌いにならないでください。お願いしますぅ」
 お姉さまからのお言葉責めに、私のマゾ心は狂喜乱舞、心の底から恥辱のヒロイン役に酔い痴れていました。

「シーナさんたちには、何回くらい視られたことあるのよ?」
 お姉さまの口調が一転して冷ややかに変わりました。
 ドキンとした私も、急にオドオドしてしまいます。
「あ、えっと、お浣腸姿は、やよい、いえ百合草先生に2回・・・オシッコ姿だと3回か4回か、えっと5回か・・・」
「へー。そんなに視られちゃっているんだ?はしたない子ねえ」
 お姉さまの心底軽蔑したようなお声。

「そんなに視られているなんて、嬉しいからとしか思えないわ。やっぱり直子は、排泄姿を見せつけてオマンコ濡らしちゃうようなヘンタイ娘なんじゃない!」
「シーナさんたちには負けられないから、今日はあたしもじっくり視させてもらうわ!何もかもっ!」
「あうぅぅ!」
 リードをグイグイ引っ張られ、私の顎は天井に向いています。

「それに、これから直子のお尻と肛門は、あたしだけのものになるのだからね?無闇にあたし以外に視せたり弄らせたりしたら、あたしたちのスール関係は即、解消するから。いい?わかった?」
 思い切り冷たい口調で投げつけられ、お尻をバチンと叩かれました。
「ひぃっ!はいぃっ!直子はお姉さまだけのものですぅぅ・・・」
 四つん這いのまま、お姉さまをすがるように見上げると、お姉さまが裸足の右足を私の目の前に突き出してきました。
 私はその濡れた親指を口に含み、じゅるじゅるしゃぶりました。

「あらあらー、仲がおよろしいことで」
 シーナさまが何か荷物を片手にバスルームに現われ、お姉さまがササッと右足を引っ込めました。
「お待たせー。さあ、さくさくやっちゃいましょう。とりあえずまず、エミリーにはこれね」
 シーナさまがお姉さまに何か手渡しました。
 お姉さまの手に乗っているのは、果実の形をしたおなじみのお浣腸薬と、薄でのゴム手袋。
「一応その手袋着けて、直子さんに浣腸してあげて」
 シーナさまがお姉さまにご指示されました。
 いよいよ、と思った私の心臓はドッキドキ。

「浣腸プレイならエミリーもしたことあるんだったわよね?お尻の穴ほぐして突き挿すだけだから。ローションが必要だったら直子さんの愛液を肛門になすりつければいいわ。直子さんって、本当、ローション要らずで捗るのよね」
 おっしゃりながら、シャワーをひねって床を流し始めるシーナさま。
 私の両手と両膝がみるみるぬるま湯に浸ります。

 お姉さまは私の背後に回り、突き出しているお尻の穴をゴム手袋のひんやりした指が撫ぜ始めました。
 さわられるたびに、穴の円周のヒダヒダがヒクヒク動いてしまうのが、自分でわかります。

「あふぅん・・・」
「あら、直子さん、もう気分出しているの?いくらでも悶えていいわよ、今は」
 シーナさまのからかい口調で、お姉さまの指遣いがより激しくなりました。
「あうっ!んんんぅー」
 穴を広げるように、皮膚が引っ張られたり撓まされたり。
 穴周辺を激しく揉みしだかれ、甘えるような声が出てしまう私。

「やっぱり直子さん、根っからのヘンタイだけあって、そこの感度も超敏感みたいね」
 シーナさまの蔑んだ口調が私の耳を心地よくくすぐりました。

「いくわよ直子。肛門の力を抜きなさい」
「あ、はいぃ」
 お姉さまのご命令に従って下半身の力を抜いたと同時に、お浣腸容器の先端がプスリと突き刺さる感触がありました。
 
 シーナさまは、バスルームの鏡にもシャワーをかけ、曇りを完全に消していました。
 大きな鏡には、全裸四つん這いでお尻を高く突き上げた私と、エナメルボンデージ姿でお浣腸容器を私のお尻に突き立てているお姉さまのお姿、そして、片手に持ったハンディビデオカメラを私のお尻に向けているシーナさまのお姿が、鮮明に映し出されていました。

「あうううっ・・・」
 お尻の穴から内部に、冷たい液体が侵入してくる感触がしばらくつづき、やがて肛門に挿さっていたものが抜かれたのがわかりました。

「終わったようね。これから5分間、直子さんは、何があってもがまんすること。膝立ちになりなさい」
 シーナさまにうながされ、上半身を起こします。
「直子さんがギブアップするまでのあいだに、さっきエミリーが言ってたロープの扱い方をちょっと説明しておくわ」

 ビデオカメラをお姉さまに渡し、シーナさまが愛用の麻縄を一束つかみ、膝立ちになった私の前に立たれました。
 シーナさまがロープを手にして目前にいらっしゃると、何も言われなくても反射的に、私の両手は後頭部で組まれ、マゾの服従ポーズになってしまうのです。


就職祝いは柘榴石 10


2014年11月2日

就職祝いは柘榴石 08

 お姉さまは、私の両手首と両足首を繋いでいるジョイントをそれぞれ外してくださり、まず両腕が自由になりました。
 それから、私のアソコの目前にしゃがみ込み、ラビアにとりついている悪魔のオモチャを取り外し始めました。
 
 噛みついたクリップのねじが緩むたびに、ラビアに血流が戻りズキンと痛みます。
 クリップが全部はずされ、オレンジ色のリングが取り除かれて、私のアソコはようやく唇を閉じることが出来ました。
 棒枷は、外していただけませんでした。

「直子の柏餅、まだちょっと半開き状態ね」
 お姉さまがからかうみたいに笑い、手に持った悪魔のオモチャを私の顔の前で揺らします。
 リングやクリップに着いていた私のおツユの雫が、私の顔に数滴、降りかかりました。

「リビングのテーブルにアイス用意するから、行きましょう。飲み物のグラスを適当に借りるわよ」
 シーナさまは、勝手知ったる他人の家、という感じでスタスタとリビングのほうへ消えていきます。

「わかりました。ほら、直子、立てる?」
 差し伸べられたお姉さまの右手にすがりつき、仰向けの上半身を起こしました。
 それから両足を踏ん張って、ヨロヨロ立ち上がります。
 腰全体が重いのにフワフワもしているみたいで、ヘンな感じ。
 立ち上がると今度は、上半身のほうが重く感じてフラフラとよろけてしまいました。

 自由になった両手で髪をかき上げると、顔中汗びっしょり。
 不自由だったとき気になっていた部分、おっぱいや乳首やアソコやお尻を、実際に手で触れて、無事を確かめます。
 
 お尻がまだ少しヒリヒリしている以外は、異常無し。
 乳首もおマメも敏感なまま。
 ただし、全身が汗やいろんな体液でヌルヌルでした。

「あの、お姉さま?私もちょっとシャワーを浴びてこようかと思うのですが・・・」
 立ち上がってからの私の振る舞いを、傍らでずっと無言で眺めているお姉さまに、おずおずとお願いしました。
「ああ、確かにからだ中ベトベトね。でもいいわよ、浴びなくて。どうせ休憩の後、またすぐ同じ状態になっちゃうのだから」
 お姉さまに、取り付く島も無い口調で却下されました。

「このタオルで軽く拭いとけばいいわ」
 私の頭部分の下敷きになっていたバスタオルを手渡してくだいました。
「それにあたし、匂いフェチのケもあってね。直子がヌルヌルになったときに鼻をくすぐる、なんて言うか、だらしのない臭い?も意外と好きなのよ」
 お姉さまがイタズラっぽく笑い、私の手からバスタオルを取り上げてお顔を埋めました。

「さあ、行きましょう、シーナさんがお待ちかねよ」
 お姉さまに左手を引っ張られ、私はツツッと前につんのめります。
 両足に棒枷を施されたままの私は、ズルズル摺り足のロボット歩行しか出来ないのです。

「ねえねえ、早く来ないと、アイス溶けちゃうわよ?どうせふたりでイチャイチャしているんでしょ?まったく!つきあい始めのカップルは、サカリのついた猫と一緒なんだから・・・」
 待ちかねたらしいシーナさまが、サンルームに戻っていらっしゃいました。
 摺り足ロボット歩行でちまちま進み始めた直後でした。

「何しているの?足に棒枷着けているドレイが、立って歩こうなんてナマイキよ?」
 シーナさまったら、私の姿を見た途端、愉しそうな罵声です。
「ちょっとそのまま待ってて」
 
 シーナさまは、床に散らばっているお道具の中から、何かを拾い上げ、私に近づいてきました。
 手にされているのは細い鎖。
 私の赤い首輪の正面のリングに鎖の端のジョイントをカチリと繋ぎ、もう片方の端をお姉さまに握らせました。

「ほら、直子さんは四つん這いになって、エミリーはそのリードを引っ張って。それが飼い主とドレイの正しい関係よ」
「わかったらさくさく、リビングに集合しなさい」
 それだけ言い渡すと、再びスタスタ、リビングのほうへ戻られました。

「なるほどね。直子?」
「あ、はい」
 お姉さまの問いかけに、その場でしゃがみ込んで両手を床に着けました。
 お姉さまがグイッと鎖を引っ張ると、私は四つん這いで歩き始めます。
 右手、右膝、左手、左膝と順番に出せば、摺り足より断然早いのは確かです。

 四つん這いになると、突き上げている腰と、棒枷によって無理矢理開かれている無防備な股間への羞恥心が増大します。
 室内のあちこちにある鏡やガラスに、お姉さまに鎖で引かれて四つん這いで歩く、自分のみじめな全裸姿が映ります。
 住み慣れた自分の部屋なのに、私、どうしてこんな格好をしているのだろう?
 左右に切れよく揺れるお姉さまのかっこいいヒップを見上げながら、私の被虐心がみるみる満たされていきました。

 リビングに着くと、L字ソファーの前のテーブルにアイスクリームと飲み物がセッティングされていました。
 シーナさまはすでに腰掛けられています。
「やっと来たわね。ほら座って座って。直子さんも、今は休憩だから立ち上がっていいわよ」
 飲み物は、シャンパンらしきボトルとスポーツドリンクのペットボトル。
 アイスクリームは、何やら高級そうなカップアイス。

 お姉さまがL字のもう一方の奥へ、私はそのお隣に、棒枷の足で苦労して腰掛けました。
「このアイス、なぜだかけっこうシャンパンに合うのよ。さ、とりあえず乾杯しましょう」
 シーナさま自ら、それぞれの細いシャンパングラスに注いで、かんぱーい!チーンッ!
 私は死ぬほど喉が渇いていたので、一気にゴクゴク飲み干してしまいました。

「ああ、やっぱりね。直子さんたちはきっと死ぬほど喉が渇いていると思ったから、もう一本冷やしてあるの」
「あ、でも直子さんは、それだけにしておいたほうがいいわ。この後も大変だから。あとはこのスポーツドリンクを好きなだけお飲みなさい」
 私のグラスにスポーツドリンクを注いでくださりながら、シーナさまが愉しそうにおっしゃいました。

 そのアイスクリームは、フルーツの果肉やチーズクリームとかも詰まっているようで、濃厚なのにさわやかで、すっごく美味しかった。
 まだ充分に固いアイスをスプーンで突っつきつつ、スポーツドリンクを何杯もゴクゴク飲んで、おふたりのお話に耳を傾けました。

「それにしてもエミリー、見事なご主人さまっぷりじゃない?充分よ。わたしが教えることなんて、もう無さそう」
「いえいえ、まだぜんぜん自信が無くて。だからこの後、シーナさんにいろいろご教示いただこうと思っています」

「部屋に入って、直子さんの姿を一目見たとき、やるなー、って思ったわよ。この子のマゾ心を的確に突いた拘束具合だったもの」
「あたしなりにけっこう考えたんですよ。直子に悦んで欲しくて」
「おおお、いいわねー、お熱いこと!」
 シーナさまにおどけてひやかされ、お姉さまと私が盛大に照れます。

「やっぱりロープの使い方はマスターしたいな、って思っています。直子が好きそうだし。あとは責めの加減がまだまだわからなくて」
「それは、場数をこなせばだんだんわかってくるはず。直子さんは、かなりハードにしてもネを上げないし」

「そうそう、鞭って、愉しいですね。ふるっているうちにどんどん興奮しちゃって、止まらなくなりそうでした」
「それを愉しめるのなら、もう立派なエスよ。素質充分」
「最初は、打たれてどんどん赤くなるお尻が痛々しくて、可哀想に思えていたのに、だんだんと、もっと赤くしてやるっ、てなっちゃう」
「わかるわかる。その上、直子さんて、ゾクゾクするほどいい声あげるでしょ?あの声聞くと、もっと啼かせてやるっ、てなるわよね?」

「あの鞭はお高いのですか?すごくしっかりとした造りですよね?」
「ああ、わかる?あれはかなりいいものよ。バラ鞭も乗馬鞭も職人手造りの一点もの。もともと直子さんのために用意したものだから、これからも自由に使っていいわよ」
「本当にいいのですか?」
「うん。エミリーにあげる。わたしからのお祝いと思って。あとで名前も入れてあげるわ」
「うわー。ありがとうございます」
 私も一緒にお辞儀をします。

「そう言えば、直子のオモチャ箱を見て思ったのですけれど、口枷類、ボールギャグとかは、まったくありませんでしたね?」
「ああ、気がついた?わたしはあまり、その手は好きではないのよ。エミリーは、そういうの、してみたいほうなの?」
「あ、いえ、あたしはイキ顔フェチですから、相手の顔面を故意にいじくるのは好きではないです。口枷とかマスクとか」
「へー。そのへんでもわたしたち、気が合うようね。直子さんもその手は好きじゃないみたいよ。せいぜい手ぬぐいで猿轡とか、舌を洗濯バサミで挟むくらいでしょ?許容範囲」
 突然私に問いかけられて、はいっ!と、あわてて答えます。

「あたしが見たいのは、可愛い顔が苦痛や快感で淫らに歪む様子なので、顔は絶対見えていなきゃだめだし、声も、ボールギャグとかで塞ぐのではなくて、がまんさせるほうが好みです」
「うん。わたしも同じ感じ」
「欧米のボンデージものとか見ていると、絶対すぐに、ボールギャグとか口枷をかましますよね?縛りものはどれも。その上、ひどいのになると目隠しやら全頭マスクまで」
「うんうん。でも、あちらの人は、ヨガリ声も大きいから、口塞いでおかないとうるさくて仕方ないのかもしれないわよ?、ビデオの収録だと」
 シーナさまが笑いながらの相槌。

「せっかく綺麗なモデルさん使っているのに、真っ先に顔崩してどうする!? ってあたしなんか思っちゃいますけれど」
「欧米のエスエムは、ドミネーションアンドサブミッション、支配と服従だから、口答えの自由なんて真っ先に封じたいのかもしれないわね」
「もったいないなー、って、いつも思います」
「まあ、あちらだと、それが、正統派ボンデージ、っていう風潮があるみたいだからね。とくにラバーコスチューム系フェチにとっては、肉体すべてを覆って無機質になること、が最上らしいし」
「ああ、なるほどねー」

「このあいだ他の人と似たような話題をしたときに出たのだけれど、鼻フック、ってあるじゃない?鼻の穴に引っ掛けて豚鼻にしちゃうやつ」
「はい、わかります」
「あれってオトコの発想だよねー、って話になって」
「あれもあたしは、嫌いです。あんなの、何が愉しいんだろ?」

「女同士であれをすると、相手の顔を醜くしてやりたい、っていう、やる側の願望が露骨に見てとれちゃうから、責めている側が一回り小さく見えちゃう。嫉妬?コンプレックス?みたいな。それか、愛の無いエスエム、ただのイジメプレイ。単純に醜くなった相手を嘲笑するっていう」
「日本のエスエムは、一部を除いてイジメっぽいのがはびこっていますからね。愛のある責め、が一番見受けられる日本のフィクションて、たぶん女性作家が書いたボーイズラブの世界なんじゃないかな?薦められたのをいくつか読んだだけだけれど」

「まあ、でも、知り合いには、けっこう美人なのに、あの手のプレイを好むマゾ女もいるから、一概には言えないけれどね」
「へー」
「それが言うには、こんなに醜くされた顔を世間様に見られて恥ずかしい、っていう美人ゆえの自虐の愉悦らしいけれどね。ある意味高慢」
「ふーん。そういうのもあるのですね」
「わたしも、どうでもいい相手なら、全身拘束してボールギャグに鼻フックで鏡の前に放置プレイ、ってラクでいいな」
 シーナさまとお姉さまが、あはは、と笑いました。

「ところで直子さんは、エミリーの会社にお世話になること、決めたの?」
「えっ?あっ、えっと・・・」
 シーナさまとお姉さまのエスエム談義に、真剣に聞き入っていた私は、突然の話題転換に面食らってしまいました。

「一応勧誘して、資料渡して、返事は後日、ということになっています」
 お姉さまが代わって答えてくださいました。
「ふーん。直子さんは、迷っているの?」
 私をじっと見つめて、シーナさまが尋ねます。
「あ、いえいえ。ぜんぜん迷ってないです。お話を伺ったときから、お世話になることに決めていました」
 本心をありのままに、焦り気味早口でお答えしました。

「そう。よかった。エミリーの会社なら、わたしもたまに出入りしているし、わたしと直子さんとは、まだまだ友情を深められるというわけね」
「シーナさんには、海外のアパレルの動向や生地の買いつけなんかで、何かとお世話になっているのよ。このあいだもインドネシアからすっごくいい生地をひいてもらって」
「ああ、あれね。どんなドレスになるのか、楽しみだわ」
 お姉さまとシーナさまが仲睦まじく微笑み合います。
 そっか、おふたりには、そんな接点もあったんだ。

「だったらこれは、就職祝い、として渡せるわね。わたしから直子さんへの手切れ金かな?」
 冗談めかして笑いながら、シーナさまがネックレスケースのような大きめな紫のビロードの平たい宝石箱を取り出し、テーブルの上に置きました。

「最初に、上のメス犬用に、わたしのデザイン画を渡して現地の職人に作らせたの。そしたらその出来栄えがすごくいいから、ふと思って、直子さん用のもついでに作ってもらったの。冬に南アジアを巡ったときのお土産よ」
 シーナさまが天井に顎をしゃくりながらおっしゃっいました。
 メス犬というのは、このマンションの階上に住んでいらっしゃるお金持ちなマゾおばさまで、シーナさまのパトロンさん兼ドレイさん兼恋人さんです。

「ただ、これ作っても、わたしが直子さんにこれを使う機会は来ないとも思っていたのよ。百合様との約束があるから」
「でも、直子さんにちゃんとした恋人が出来る気配も無いし、わたしも使ってみたくてウズウズしてきて、百合様には内緒でこっそり使っちゃおうか、って考えていた矢先だったから、エミリー、あなた超ラッキーよ」

「それで、直子さんが選んだパートナーがエミリーだったおかげで、百合様との約束は破らずに、わたしもその場に立ち会えるというわけ。世の中って意外と上手くできているものね」
「うちのメス犬に使った感じだと、かなり具合いいみたいよ?ヒーヒー啼いて悦んでいたわ」
「でも直子さんの場合は、未知との遭遇だからねー。どうなるのかしら?」

 シーナさまの一方的な思わせぶりで謎だらけのご説明に、私とお姉さまの目は、ビロードの宝石箱に釘付けです。
 いったい何が入っているの?
 私たちふたりのワクワクな様子にご満悦な笑みを浮かべたシーナさまが、おもむろにケースの金具をパチリと外しました。


就職祝いは柘榴石 09


2014年10月26日

就職祝いは柘榴石 07


「はぁうぅぅっ!」
 パンパンに腫れ上がったおマメにキュッと吸い付いたクリットローターの強烈な刺激に、思わず腰がビクビクンと跳ねました。
 おマメを覆うカバーの内側には、ヘアブラシのようなケバケバがついていて、それが、充血し切って超敏感になっている表皮をザワザワと擦ってきます。
「あーんっ、いやぁー、だめぇー!」
 あっ、という間に天国への階段を駆け登っていきます。

 ブゥゥゥーーーン。
 悪魔のオモチャで抉じ開けられた穴の中には、ローターがふたつ、互いに身を寄せ合うように震えているので、その振動にプラスティック同士も共鳴して、びっくりするくらい大きな音となり、私の股間から淫らに鳴り響いてました。

「あーーっ、あーーーっ、あーーーーっ!」
 視界が閉ざされた暗闇の中だからこそ、他の四感が研ぎ澄まされ、中でも触覚が突出して敏感になっているようです。
 膣壁を擦るように震えるローターの振動が直接脳に響き、脳から全身へと快楽信号が伝達されていきます。
「イくぅぅ、イぃますぅ、おねえまさぁぁ、イきますぅぅ!!」
 お姉さまとのお約束通り叫ぶように宣言し、階段のてっぺんから身を躍らせました。
「んんーーーーーーっ!!!」

 一度イってからは、たてつづけに二度、三度、四度と小さくイって、最後に一番大きな絶頂感がやって来ました。
 頭の中が真っ白にスパークして意識が吹っ飛びます。
「イクっ、イクイクイクイグぅんぐうんぅーーーーーぐぅーーっ!!!」
 あまりの気持ち良さに、自分のからだが溶けて消えてしまったよう。
 五感すべても消え去って、残ったのは快感だけ。
 ヌメヌメの液体のようなからだで、そのまま快感の海をフワフワ漂いました。

 そんな至福の静寂も長くはつづかず、やがて、ブゥゥゥーーン、という低い持続音がフェイドインしてきました。
 再び、自分の窮屈な肉体を思い出します。
 私の脳裏には、さらに数倍も高い、天国への階段がそびえ立っていました。
 アソコへの物理的な陵辱はまったく緩むことなく、プルプルサワサワ私を苛んでいます。

「あうっ、んんんんぅー」
 さらなる高みに到達するために、再び一歩一歩、快感の蓄積。
 からだに四感が戻り、私は身悶え、喘ぎ始めます。

 このような、不自由に拘束されての強制的な連続オーガズム放置責め、を、私は今までに何度か体験していました。
 最初はシーナさまから、アイスタイマーあそびの一環として教わって、その後ひとりで何回かやってみて、より大きな快感が得られる方法を、自分なりに編み出していました。
 その方法とは、今、自分がこうしてみじめに拘束放置責めされている姿が、大勢の見知らぬ人たちの見世物にされている、と思い込むことでした。
 
 私の周りに何十人もの人たちが好奇の目を光らせて、その淫乱ぶりを観察している、という妄想。
 ケダモノのように何度も何度もイク姿を、見ず知らずのみなさまに視られてしまう、なんて、女性にとって何よりも浅ましく恥ずかしいことです。
 だから、なるべくはしたなく身悶えたり暴れたりせずに、出来る限りじっと、イキそうになってもがまんにがまんを重ねること。
 自分がヘンタイマゾ女であるということを、最後の最後まで隠すこと。

 そんな妄想で、被虐感や陵辱感、自分のみじめさや可哀相さをより高めると、否応なくからだに与えられ蓄積されていく物理的な快感との相乗効果となって、いずれどうしてもがまん出来なくなって迎え入れざるをえない絶頂時の快楽とカタルシスが、何倍にも、何十倍にも膨らむのです。

 最初の大きな波が去ったあと、そのことを思い出し、その妄想をしようと思いました。
 だけど、頭の中に思い浮かぶのはお姉さまのことだけ。
 敏感な箇所をノンストップで陵辱しつづけているローターたちの刺激も、お姉さまからの乱暴な愛撫と変換されていました。
 もはや、余計な妄想など必要無く、お姉さまを想いながら、感じるままからだに任せればそれだけで、妄想の力を借りたとき以上の快楽を得られるようになっていました。

「ああ、もうだめぇ、許してくださいぃ、お姉さまぁぁ」
 ひたすらがまんしつつ、被虐やみじめさをも感じて高まっていくのは妄想のときと一緒なのですが、妄想では得られなかった、ある種の幸福感さえも同時に感じながら、幾度も幾度もグングン昇りつづけました。

「ああっ、またくるぅ、きちゃう、イっちゃうぅ、おねえさまぁ!!!」
「だめぇ、もうだめぇ、いやいや、イちゃうぅ、おねえさまぁ、イきますぅ!!!」
「ごめんなさい、ごめんなさい、おねえさま、またくる、またくるぅぅんぐうんぅーーーーーっ!!!」

 何度イったのかわからないくらいの何度目かの天国の後、股間への振動がすべて止まっているのに気がつきました。
 からだはぐったり、意識は朦朧。
 うるさいくらいに聞こえていたローターの唸りも途絶え、しんと静まり返った中、自分のハアハア荒い息遣いだけが聞こえています。

 視界が無いので、自分のからだが今どんな状態なのかもわからず、とくに下半身を中心にジンジン痺れているのだけ、感じられました。
 意識がだんだんハッキリしてきて、興奮状態の全身の熱が、まず皮膚に戻ってきました。
 つづいて早鐘のような心臓の鼓動。
 汗やよだれに濡れているのであろう肌の感覚。
 棒枷に繋がれて自由に動かせない両方の手と足。
 そんなふうにひとつひとつ、現実の自分を認識していきます。
 天空から地上へと、徐々に舞い降りてくる感覚です。

「ぉ、お姉さま?」
 ローターたちが停止したのだから、きっとお姉さまが戻って来て、スイッチを止められたのだろう。
 それに、微かに我が家のシャンプーの香りもしたので、嬉しくなって声をかけました。
 でも、お返事はありません。
「お姉さま?戻られたのですよね?」
 気配のするほうへ顔を向けて発した私の声は、かなり掠れていました。

「あぅっ!」
 そのとき、突然私のアソコから、ふたつのローターが一緒にスポンと抜かれました。
「はぁうっ!」
 つづけてクリットローターが引っ張られ、おマメが伸びる感覚とともにスポッと抜けました。
「ああんっ、お姉さまのイジワルぅぅ」
 媚びるような私の声と同時に、明らかに人の指の感触で、再びおマメがつままれました。

「あうっ、お姉さま、そこは、そこはもう・・・」
 言い終わらないうちに、穴にも指が二本、挿入されました。
「あっ、いや、だめですぅ、お姉さまぁ、さっきいっぱいイったから、もう、もうぅ・・・」
 おマメはプニプニ弄られ、アソコの穴もおそらく二本の指でグリグリ掻き回され始めました。
「本当にもう、だめぇ、許して、ゆるしてくださぁいぃ、おねぇさまぁ・・・」
 言っていることとは裏腹に、性懲りも無く昂ぶり始めました。
 ローターではない、本物のお姉さまの指、お姉さまのいたぶり。
「あっ、お姉さま、もっと、もっとつよぉくぅ・・・」

 そのとき、今度は私の胸を、何かパラパラした紐状のものが撫ぜてくるのを感じました。
 これはきっとバラ鞭・・・

 えっ!?
 お姉さまってば、片手でアソコを嬲って、もう片方の手でバラ鞭を操ろうとされているの?
 下半身を嬲られる快感にグングン高まりながらも、必死に考えようとします。
 でも、クリットは間違いなく指二本に挟まれているし、アソコの中にも指が二本から三本、入っている感覚なのに・・・
 おっぱいを撫ぜるバラ鞭はユラユラ揺れて、両乳首の洗濯バサミをフルフル揺らしてきます。
 どういうことなの???

 クリットをつまむ指と、膣内を描き回す指のピッチが上がり、グングン昂ぶっていきます。
「あっ、お姉さま、イ、イキそうですぅ、いいっ、いいっ!」
 その瞬間、バラ鞭がパサッと、私のおっぱいを軽く打ちつけてきました。
「はうっ!いい、もっとぉ!」
 私の懇願とは裏腹に、バラ鞭の感触はおっぱいに戻りません。

「ほら、直子。イっていいわよ」
 唐突なお姉さまのお声は、私の股間のほうからでした。
「あっ!お姉さま!イキますっ、イってもいいですかぁ?」
「いいわよ、ほらっ!」
 クリットを爪で引っ掻かれました。
 ヒュンッ!
「あふぅっ!ぎゃぁっ!!」

 激痛がからだをつらぬき、全身がビクンビクン跳び跳ねました。
 お姉さまの、ほらっ、というお声を合図に、おマメにギュッと爪を立てられ、同時にヒュンという空気を切り裂く音とともに、鞭、おそらく乗馬鞭の切っ先が私の左乳首を噛んでいた洗濯バサミを弾き落としたのです。

「うんうん。いい啼き声だわ。瞬間、直子の膣がギュッと締まったわよ?こんなに無理矢理抉じ開けられているにも関わらず」
 お姉さまの愉快そうなお声は、相変わらず股間のほうから。
 そのあいだ乗馬鞭のベロが、ジンジン痺れて痛痒い私の左乳首を慰めるみたいに、サワサワ愛撫してくれていました。

「イったの?ねえ直子、今のでイった?」
 アソコを責める指は止めずに、お姉さまが尋ねてきます。
「あぅっ、え、えっと、イったような、ちがうような・・・んっ、んーっ・・・」
 あまりに唐突な激しい痛みに、瞬間すべてが真っ白く逝ってしまい、快感は間違いなく感じたのですが、自分でもよくわからない状態。
 からだはまだまだ、どんどん昂ぶっています。

「そう。でも大丈夫よ、もうひとつあるから。今度こそちゃんとイきなさいね?いい?」
「は、はい。お姉さまぁ・・・イ、イカせてくださいぃ」

 再びあの激痛がやってくる。
 唐突なのはもちろんですが、来るとわかっているのも、それはそれで怖いもの。
 あの痛みは、まぎれもなく快感でした
 だけど、出来れば何度も味わいたくない種類の激痛でもありました。
 恐怖と快楽は紙一重。
 左おっぱいの疼痛が薄れると、右おっぱいの洗濯バサミの疼痛に意識が集中して、ドキドキが止まりません。

「さあ直子、イクときはどうするのだっけ?」
「はい。お姉さま、イカせてください、マゾでヘンタイのどうしようもない直子を、どうか、どうかイカせてくださいぃ」
「ふふふ。からだが小刻みに震えているのは、気持ちいいからだけではなさそうね?」
 お姉さまの愉しそうなお声に覚悟を決めて、アイマスクの下でギュッと目をつむります。

 鞭を操っているかたの見当はついていました。
 こんなに見事に乗馬鞭を操れるのは、あのかたくらいしかいらっしゃらない。
 憶えのあるパフュームも微かに香っているし。
 でも、なぜ今日ここへ?

「さあ、イクわよ、さん、にー、いち、ぜろっ!」
 お姉さまの、ぜろっ、の掛け声でさらに目をギュッと強くつむると、ワンテンポ、いいえツーテンポ遅れて、ヒュンと鞭が鳴りました。
「ぎゃあっ、あぁーーーーーっ!!!」
 
 フェイント大成功。
 来るっ!と思ったら来なくて、あれっ?と思った瞬間、緊張が途切れた瞬間を、激痛が見事に襲いました。
 そのあいだ中、クリットが潰され引っ張られ、膣内は滅茶苦茶に掻き回され、弾け跳んだ洗濯バサミが転がる音に間髪入れず、バラ鞭がバシバシッとおっぱいを乱れ打ってきました。
 私のからだは、触覚がヘンになったみたく、どこもかしこも感じまくっていました。
 後から後から快感の波が全身に押し寄せてきます。

「あっ、あっ、まやイク、またイク、イっちゃうーーーっ!!!!」
「いやっ、だめっ、もう、もうっ、いやーーーっ!!!!」
「イクイクイクイクイクぅーーーーっ、くるくるくるくぅーーっ!!!」

 私の意識は、この日最大級の快楽の大波に遠くまでさらわれ、からだの機能もすべて失われ、今度はしばらく戻ってきませんでした。

「ごきげんよう。おひさしぶりね、直子さん。お元気そうで何より」
 目を開けると、アイマスクはすでにはずされていました。
 仰向けの私の視界に、覗き込むように私を見下ろすシーナさまのお姿がありました。

 シーナさまは、黒のエナメルっぽいビスチェと、同じ素材らしいTバックを身に着けていらっしゃいました。
 あとは、素肌に素足。
 こういうちゃんとした、と言うのもおかしいですが、本格的なボンデージファッションに身を包んだシーナさまを拝見するのは、ずいぶん久しぶりな気がします。

「ご、ごきげんよう、シーナさま。あの、えっと、お久しぶりです・・・」
 一応ご挨拶を返す私の姿は、赤い首輪に手枷足枷の全裸で仰向け。
 おまけに両足は棒枷で大きく広げられたまま、左右とも手首と足首を繋がれた超M字状態。
 さらにとどめで、アソコは相変わらず悪魔のオモチャでポッカリ抉じ開けられたまま。
 そんな私の姿を、シーナさまがニヤニヤ見下ろしていました。

「あたしが無理言ってお呼びしたのよ。いろいろアドバイスいただこうと思って」
 おそらく私が不思議そうな声を出したからでしょう。
 視界の届かないところからお姉さまのお声が聞こえ、やがてお姿も視界に入りました。

 お姉さまもシーナさまとお揃いのボンデージファッションでした。
 シャワー上がりらしく、いつもはサイドに垂らしているワンレングスをセンター分けして後ろに束ねたお姿は、とても知的で切れそうな感じ。
 ボンデージ姿とも相俟って、一段とクール、この場合は意味通りに冷酷、に見えました。

「これはエミリーのブランドの商品なのよ。私も出た頃一着作ってもらって愛用しているの。すごくいい感じよ」
「ありがとうございます。シーナさんにそうおっしゃっていただけると、あたしも一安心です」
 
 お姉さまがにこやかに、シーナさまの後ろに立たれました。
 お揃いのボンデージファッションの女王さまがおふたり。
 ふたりの女王・・・あれ?あっちは王女だったかな?・・・そう言えば、お姉さまのお見立てだとシーナさまは、月影先生だったな・・・

「だから、まあ、今日はそういうことなの。直子さんの所有権の移譲と、引き継ぎもろもろね」
 シーナさまがお姉さまを振り返り、おふたりで、うん、と頷かれました。
「それと、一応おめでとうも言いにきたのよ。直子さんにもやっと、ステディな恋人が出来たのだから」
「あ、ありがとうございます・・・」
 私はまだ、なんだかドギマギしながら、小さくお礼を言いました。

「それにしても、こんなに大歓迎されるとは思ってもいなかったわ。わたしがこの部屋に入るなり、直子さんはいやらしい声でイクイク喘いでいるし、そばに寄ったらオマンコ、こっちが恥ずかしくなるほど大きく開きっぱにしちゃっているし」
「こういうの、ネットでは、くぱぁ、って呼ぶのよね」

「エミリーがまだシャワー中だったから、しばらくそばで見ていたのよ?そしたら、アンアン喘ぎながらも、お姉さま、お姉さまって、ひっきりなしにエミリーのこと呼んでいて、お熱いったらありゃしない」
「こういうのはネットで、リア充爆発しろ、っていうのよね」
「あたしが見ていた限りでも直子さん、最低3回はイっていたわね。あ、あたしがまざってからのは除いてよ」

 シーナさまは、なぜだかネット用語の注釈を挟みながら、いつものイジワルなお声で私をからかってきます。
 その毒舌口調がニクタラシクも懐かしくて嬉しいのですが、反面、私への呼び方が、直子、から、直子さん、へ戻っているのに気がついて、一抹の寂しさも感じました。
 お姉さまを見ると、お姉さまはシーナさまと私を交互に見ながら、シーナさまのお話にニコニコうんうん頷いていました。
 シーナさまはお姉さまのこと、エミリー、って呼んでいるんだ・・・

「ま、とりあえず、一休みしましょうよ。直子さんもイキ疲れてぐったりしているようだし。わたし、美味しいアイスクリーム買ってきたから」
 シーナさまが、私とお姉さまのお顔を交互に見ておっしゃいました。
「そうですね。このあとの予定もありますし」
 お姉さまも賛成され、私を見てニッと笑いました。

「そうそう。このあと直子さんは、さらなる未体験の快感に打ち震えることになるのだから。夜はまだまだ、これからだもの」
 シーナさまが愉快そうにおっしゃって、録画装置に付いているデジタル時計のほうに視線を遣りました。
 私もつられてそちらを見たら、時刻は22時22分でした。


就職祝いは柘榴石 08


2014年10月19日

就職祝いは柘榴石 06

 私の下腹部でハァハァ荒い息をされていたお姉さまは、やがて、ゆっくりと上半身を起こし、私のからだを跨いで立ち上がりました。
 それから、よろよろとベッドまで行って、ストンと腰を下ろしました。
「もっと早く、直子と出会えていたらよかったかな」
 気怠そうなお声で独り言ぽく、おっしゃいました。

 私は顔をそちらへ向け、仰向け大股開きのまま、お姉さまの次のお言葉を待ちます。
「鞭だけでイっちゃう人、見たの初めてだし、クンニだけでイっちゃったのも初めてよ」
 乱れた髪をかきあげて、物憂げに私を見ています。

「でも、今の直子が凄いのは、百合草女史やシーナさまの教育のおかげでもあるわけだから、このタイミングがベストなのかもしれないわね」
 ふっと笑うお姉さま。
「それにこれからは、直子はあたしひとりだけのものになるのだし」

 お姉さま、確か先週も同じようなことをおっしゃっていました。
 やっぱり私の過去のこと、気にかかるのかな。
 私は今は、お姉さまだけが一番大好きなのに。
 ちょっぴりモヤモヤ、フクザツな気持ちになりました。

 困惑顔になってしまった私に気を遣われたのか、お姉さまは私を見つめてニッと笑い、明るいお声でおっしゃいました。
「さあ、あたしもイってスッキリしたし、はりきって直子のマゾ度チェックのつづきをやりましょう!」
 スクッと立ち上がるお姉さま。
 黒のブラだけ身に着けて下半身は剥き出しのフェティッシュなお姿で、ツカツカと私に近づいてきました。

「とりあえず手錠をはずしてあげるわ。からだ起こせる?」
「あ、はい」
 仰向け状態から、腹筋運動の要領で上半身を起こしました。
 お姉さまが私の背中にまわり、後ろ手になっている両手首に巻かれた手枷同士を繋ぐ鎖ジョイントを、はずしてくださいました。

「ブラのホック、はずしてくれる?」
 お姉さまがシートに膝立ちになって、背中を向けてきました。
 私は、久しぶりに自由になった両手で、お姉さまのブラのホックをはずしました。
「ありがとう」
 お姉さまが立ち上がり、はずしたブラジャーをベッドに置いて、また戻ってきます。
 これでお姉さまも全裸。
「裸になるのって、やっぱり気持ちいいわよね?とくにこの部屋では、オールヌードが似合う気がするわ」
 お姉さまは、鏡にご自分の全身を映して、しげしげとご覧になられています。

「お姉さまのおからだ、とってもお綺麗です。素敵ですっ」
 私が心の底から思っていることです。
「ありがと。直子のからだは、とってもいやらしいわ」
 お姉さまが小さく笑いながら、私の勃ちっぱなしの右乳首を、指でピンと弾きました。
「あんっ!」
「鎮まる、っていうことを知らないみたいね?そこも相変わらずビショビショだし」
 大きく開いた私の股間を、人差し指で指さします。

「お姉さまも、今日は先週よりもたくさん、濡れていらっしゃいましたよ?嬉しかったです」
 さっきのことを思い出し、思わず告げてしまったら、お姉さまの驚き顔。
「あ、そうだったの?あたし、鈍感なのか、自分が濡れているかどうかって、実際にさわってみるまでわからないのよね」
「えっ?そうなのですか?私は、すぐわかっちゃいます。奥がチリチリムズムズして・・・」
「へー。あたしは、性的に興奮したら、たぶん今濡れているのだろうな、とは考えるけれど、それがどのくらいなのかまでは、ぜんぜんわからないわ」
 鏡に映ったご自分の股間に目を遣って、苦笑いされるお姉さま。

「だけど今日、先週よりもあたしが濡れていたとしたら、それは間違い無く、直子に鞭をふるったせいだわ」
 銀色シートに転がっている乗馬鞭とバラ鞭に、チラッと視線を遣ってつづけます。
「直子のお尻に鞭していたとき、すっごく興奮しちゃったもの。直子が呻くたびにゾクゾク感じちゃった」
「自分の手で直接、誰かに物理的な苦痛を与えることなんて、そうそう出来ることではないものね?」
「しかも直子は、それを望んでいるし、悦んでくれるのだもの」
「どんどん興奮して、とうとうがまん出来なくなっちゃって、直子に舐めてもらったの」
「そっちも気持ち良くって、病みつきになっちゃいそう。征服感って言うのかな?やっぱりあたしって、苛めっ子体質だったのね」
 お姉さまが私の顔を覗き込み、イジワルそうにニッと笑いました。

 それは重々承知しております、お姉さま。
 だから私はお姉さまに惹かれたのです。
 私をいたぶるときのお姉さまの美しい瞳には、シーナさまにも負けないくらいの激しいエスの炎が、煌々と灯っておりました。

「ローターもたくさん持っているのねえ?それもリモコンのばっかり」
 全裸のお姉さまが銀色シートにしゃがみ込んで、オモチャ箱を覗き込んでいます。
 細長い翳りの下にチラチラと、濡れそぼったピンク色が見え隠れして卑猥です。
 思わずじっと、そこばかり追いかけてしまいます。

「どれがどれのコントローラーだか、わかるの?コントローラーもたくさんあるけれど」
「だいたいは、わかります。でも、そのブルーの、昔の携帯電話みたいな形のやつを使えば、全部が動きます。シーナさまが改造してくださいました」
「へー。器用な人ね。このクリットローターも、この貝みたいなやつも?」
「はい。リモコンのバイブも動きます。シーナさまがしたわけではなくて、誰かに頼んでやっていただいたらしいですけれど」
「ふーん。こういうのは、外で遊ぶときに愉しそうね」

 お姉さまがブルーのコントローラーをパチパチ試して、小首をかしげています。
「あ、今は全部電池を抜いてありますから、動かないです。電池類はまとめて、そっちの小さな箱に・・・」
「なるほどね。これが全部一斉に動き出したら凄いだろうな、って思ってやってみたけれど、電池抜いてあるのね、残念」
 さほど残念そうでもないお姉さまが、ローター類も銀色シートに並べていきます。

「そう言えば直子は、モロな形のバイブはNGだったわね?男性器型の」
「あ、はい・・・」
「あたしも賛成よ。生々しいのは好きじゃないわ。なんだか笑っちゃうのよ、あの形で」
「あっ、シーナさまも同じこと、おっしゃっていました」
「直子んちのバイブはみんなオシャレな形よね、ディルドも」

「ディルド?って?」
「あら、ディルド、知らないの?たとえばこれのことよ」
 お姉さまの右手に、直径の違うガラス球を何層も重ねたような形状の、私お気に入りの一品が握られています。

「バイブっていうのは、正式にはバイブレーターだから、バイブレーションするもののこと。つまり電池で震えたり、クネクネ動いたりするもの」
「ディルドっていうのは、動かない、ただの張り型ね。ほら、よく電動コケシなんて言うじゃない?」
「電動コケシはバイブレーター、ただのコケシはディルドなのよ」
「そうだったのですか。私、深く考えずに、そういったものは全部、バイブって呼んでいました」
「ふふ。直子らしいわね。あたしもこのガラスディルドは好きよ。うちにもひとつあるわ」
 お姉さまの手が愛おしそうにガラスディルドの凸凹を撫ぜています。

「直子は、この中ではどれが一番お気に入りなの?」
 銀色シートにズラリと並べられた、色も形もさまざまな8本のバイブとディルド。
「えーっと、一番良く使うのは、そのピンクのディルド、じゃなくてバイブです。電池を入れると動くから」
 さっきのガラスディルドと似た形状なのですが、スイッチを入れると球と球のつなぎ目の所を軸にディルド全体が震えながら、クネクネとランダムにうねり始める仕掛けのものでした。

「ふーん。それもシーナさんから?」
「あ、はい」
「だったらあたしが、それよりもっと直子が夢中になっちゃうようなやつを、探してこなくちゃいけないわ、ね?」
 お姉さまがピンクのバイブを手に取り、パチンと私にウインクしました。

「さすがの直子のオモチャ箱も、もうあと残り少なくなってきたわね」
 お姉さまは、そろそろ空になりつつあるスーツケースの、ポケットや仕切りの中を調べ始めました。
「これは、掃除機の先に取り付けるアダプターね。これで吸い込んじゃうんだ」
「玩具の手錠に縄手錠、こっちのはマジックテープ式か。南京錠、ローション類、馬油、ベビーオイル、ローソク」
「こっちの小さな袋には・・・あらあら、スースーする塗り薬が一杯。よく集めたわね?この虎のやつとか、凄そう」
「ナワトビトと、鎖もけっこうあるのね。これは使わせてもらおうっと。あら、手枷と足枷もあったのね」

 お姉さまが引っ張り出した赤いエナメルの手枷を見て、思い出しました。
 東京に来て初めての夏のある日、シーナさまにアイスタイマーの遊びを教わったとき、ベッドに磔にされる際に使ったものでした。
「でも、これエナメルだし、あたしのやつのほうがずっといいから、今後はあたしのだけ使いなさい!」
 お姉さまの真面目なお顔に気圧されて、思わず、はいっ!と大きく頷く私。

「うわー!これは強烈ね!」
 一際大きい、お姉さまの呆れたようなお声とともに引っ張り出されたのは、例の悪魔のオモチャでした。
「これって、洗濯物干しを改造したのよね?この洗濯バサミでラビアを挟んで、広げたまんま丸見えにしちゃうのでしょう?」
 さすが、お姉さま!
 その形状をご覧になっただけで、用途まで当ててしまわれました。

「これもシーナさん?」
「いえ。これはもともとミイコさま、あ、えっと水野さまのお手製で、私のために作っていただいたものです」
「へー。水野先輩も器用なのね。最初はきっと、ご自分のために作ったのでしょうね」
 お姉さま、ミイコさまもマゾなことまでご存知なんだ。
 おつきあいお古そうだから、当然といえば当然なのでしょうけれど・・・
 あ、そっか。
 ミイコさま、服飾部の先輩だったのかな?

 ミイコさま作の悪魔のオモチャは、やよい先生のお宅におじゃまするたびに持参するように言われ、ヴァージョンアップを施されました。
 最初にいただいたときは、リングが直径20センチくらいの赤いプラスティック。
 そこにゴムの滑り止めが付いた金属製の洗濯バサミ4つがゴムで繋がれた、簡単なものでした。
 それが何度かのヴァージョンアップの末、現在は、すごく使いやすく、その上情け容赦の無い仕様になっていました。

 リングは直径約25センチほどの合成樹脂製で、鮮やかなオレンジ色。
 そこに等間隔で6つの金属クリップが繋がれています。
 金属クリップの挟む部分は滑り止めラバー、挟む力はイヤリングと同じ方式で調節出来ます。
 クリップとリングを繋ぐのはゴムではなく細い鎖。
 そして、その鎖の長さも、リングに施されたストッパー機能で自由に調節出来ます。
 なので、一度ラビアを噛んだクリップは、どんなにヌルヌルしてもはずれることなく、また、鎖を目一杯引かれて留められると、ゴムと違って決して緩むことなく、恥ずかしい部分を思い切り広げられたまま固定されてしまうのです。

 最近は使っていなかったこの悪魔のオモチャを、お姉さまに取り付けていただく場面を妄想してゾクゾクしていたら、お姉さまの唐突なお声に遮られました。

「あらら、もうこんな時間なの!?いけないいけない。あたしいったん、シャワーを借りて汗を流してくるから、ね?」
 なんだか慌てたふうのお姉さまが、念を押すように私の顔を覗き込んでから、すぐにお顔をそむけました。
 何かをごまかすようなご様子。
 頭にクエスチョンマークを浮かべながら録画装置に付いているデジタル時計を見ると、21時35分でした。

「あたしがシャワーしているあいだ、直子は独りで愉しんでいていいからね」
 銀色シートに並べたお道具を眺めながらの、お姉さまのお言葉。
「直子って、からだ柔らかいのよね?少しくらい窮屈な格好でも平気よね?」
「あ、はい・・・」
「それと、コントローラーやローターの電池を教えて。これとこれとこれと・・・」
 お姉さまが選んだのは、楕円ローター3つとクリットローター、お気に入りのピンクのバイブとあともう一本でした。 
 仰せの通り、合う電池を指定すると、お姉さまがそれぞれに入れて試運転。
 ひとつのコントローラーで、全部がそれぞれヴーンと震え始めました。
「おっけーね。それじゃあ、愉しむためのセッティングをしてあげる」

 まず、私の右手首の手枷が右足首の足枷に繋がれました。
 腕は脚の外側を通り、もはや上半身をまっすぐ伸ばすことは出来ません。
「あっ!お姉さま?」
 同様に左の手首と足首も。
 背中を丸めて無理矢理な体育座りのような格好の私は、その窮屈さに、たまらず背中を床に着けて寝転んでしまいます。
 棒枷で大きく広げられた両足が宙に浮き、盛大な大股開きで寝転がる格好。
 棒枷の銀色パイプが、土手の上辺りをひんやり通り、膝を折った両脚がアソコを基点とした見事なMの字を描いています。

「ああんっ、いやんっ」
 アソコを大きく広げたまま宙に放り出すようなこの格好は、恥ずかし過ぎます。
「いい格好よ。とても直子らしいわ。両脚が綺麗なMの字だし」
 全裸のお姉さまが嬉しそうに見下ろしています。

「それから、これもやっぱり試したいわよね」
 悪魔のオモチャを手にしたお姉さま。
 ニッと笑って私の股間に腕を伸ばしてきました。

「あうっ!お姉さまぁっ」
 しなやかな指でラビアをつままれ、クリップの先がぎゅうぎゅうとラビアのお肉に食い込んできます。
「ヌルヌルしていてもクリップが滑らないのね。さすが水野先輩」
 お姉さまの指が手際良く動き、クリップが私のラビアを次々に挟んでいきます。
「あっ、いたぁぃぃ、お姉さままぁぁっ」
 あれよという間にアソコの円周を6つのクリップで囲まれてしまいました。
 だけどまだ、鎖は弛んだままなので、噛まれている痛みだけです。

「指先ビショビショになってふやけちゃった、直子のそこ、とても熱いんだもの」
 愉しそうなお声。
「次は鎖を引っ張って、このピンで留めればいいのね。こういうのは、対角線ごとがセオリーよね」

 私から見て、アソコの楕円の右上を噛んでいるクリップが、まず引っ張られました。
「ああんっ、だめですぅぅぅ」
 ラビアの皮膚がビローンと引っ張られ、粘膜がひきつります。
「うわー、ここって意外と伸びるものなのね」
 好奇心一杯なお声と共に、今度は左下。
「いゃぁぁっ!」
「直子自慢の柏餅の中身は、熟した柘榴だったのでしたー」
 右下、左上、左横、右横と、こじ開けられて固定されました。

 噛まれているラビアの疼痛、引っ張られてひきつる粘膜のむず痒さ、滲み出て滴るおツユのこそばゆさ、その部分をどうにも出来ない恥辱感・・・
 そういうのがないまぜとなり、アソコ全体がズキズキ疼いて、中もヒクヒク蠢いてしまいます。

「うわー、凄いことになっちゃった。ポッカリ空いちゃって、これは恥ずかしいわね。全部丸見えよ?」
「あたし、誰かのここをこんなに押し広げて、まじまじ見るの生まれて初めてだわ。皮膚が引っ張られて、肛門までちょっと広がっちゃってるわよ」
 お姉さまがカメラのリモコンを操作し、その部分から私の顔までが綺麗に収まるアングルに調整されました。

 お姉さまったら、なぜ急に、こんなたたみかけるように私を虐め始めたのだろう?
 なんだか時間も気にされているようだし、何かこの後、予定でもあるのかしら?
 頭の片隅に、そんな疑問もふと湧いたのですが、手際良く次々と責めてくるお姉さまに翻弄されて、深く考えることは出来ませんでした。
 
「さあ、これで準備完了。思う存分愉しむがいいわ」
 右手にピンクのバイブを握ったお姉さまの愉快そうなお声は、完全にエスの人のそれでした。

「あ、でもこのバイブ挿れても、これだけポッカリ空いていると、震え始めたら、バイブが暴れてすぐに抜けちゃいそうね」
「残念だけれどローターにしておきましょう。その代わり大きいの、2個挿れてあげる」
 お姉さまが、楕円形のローターを一度ご自分でしゃぶってから、私のソコに挿入しました。

「はあうっ!」
「ツルンと入っちゃった。はい、もうひとつね」
 ローターのリモコン受信アンテナが昆虫の触覚みたく、こじ開けられた穴から2本、飛び出しています。

「それから、これね」
「うっ!んふーんっ!」
 不意に肉芽をつままれ、カバーがかぶせられ、スポイトで吸いつけられました。
 クリットローター!
「これさえあれば、もうイキっぱなしでしょう?」
 お姉さまがコントローラーを私に見せ、スイッチを入れるフリをして、からかいました。

「これはオマケね」
「はうっ!だめぇっ!」
 両乳首にスースーするお薬、たぶん虎さん印のやつ、が塗り込められ、間髪を入れず、木製の洗濯バサミでギュッと挟まれました。
「はあうぅぅーっ!」
 独特なメンソールの強い匂いが目と鼻を刺激し、両乳首がポカポカズキズキ疼いてきました。

「さてと、シャワーしてくるわね。あたしが戻るまで何度だってイっていいのよ、嬉しいでしょ?」
 お姉さまがご自分の指に残ったスースーするお薬を、私のおへそのあたりになすりつけています。
「ただし、イクときは、シャワーを浴びているあたしにも聞こえるくらいの声で、イキまーす、って宣言するのよ?それがあたしたちスールのルールなのだから、わかった?」
「は、はい」
 お姉さまが身を屈め、私の唇にチュッとキスをくださいました。

「それじゃあ行ってくるわね、ボン・ボヤージ、マシェリ、ナオーコー」
 お姉さまは、私から離れるときにサササッと、私の両目をアイマスクで覆いました。
「あっ!お、お姉さま!?・・・」
 
 突然視界が真っ暗になって、びっくりして、咄嗟に呼びかける声が終わらないうちに、ローター類が一斉に震え出しました。


2014年10月13日

就職祝いは柘榴石 05

「一声出すごとに腰がガクガク上下に揺れてたいわよね?いやらしい言葉を口にするだけでも、そんなに感じちゃうんだ?」
 お姉さまの蔑むようなお声が背中に降りかかります。
「ぅぅっ、ご、ごめんなさいぃ、マゾでごめんなさいぃ・・・」

「それにほら、今もすけべなヨダレがトロトロ滴っているわよ?ひょっとして、イっちゃったの?言葉だけで」
「いえ、ま、まだ、でもあともうちょっとで・・・」
「ふうん。もうちょっとかあ」
 からかうようなお姉さまの口調。
「は、はぃぃ、お願いしますうぅ、イカせてくださいぃ、お姉さまぁ」
 ここぞとばかりに、声を振り絞る私。

「わかったわ。直子の顔が辛そうすぎて可哀相だから、一回イカせてあげる。でも普通の方法ではないわよ。面白いものがあったから」
 何かひんやりとした布のようなものが、私のお尻をスルッと撫ぜました。
「ひゃんっ!」

「こういう本格的な鞭って今まで実際に使ったことないから、愉しみだわ」
「この、先っぽがいくつもに分かれているのがバラ鞭よね?それでこっちは乗馬鞭かな?」
 バラ鞭の、その名の通りバラバラになった紐状の革の先っちょで、高く突き出しているお尻をパラパラと撫ぜられました。
 からだが期待でゾクゾク震えてきます。

「もっとちゃちなのはさわったことあるけれど、これはずいぶん本格的よね。本革みたいだし」
「これもきっとシーナさんの置き土産よね?どっちがより痛いのかしら?これとこれ」
 ニ番目の、これ、のとき、左の尻たぶを乗馬鞭のベロ部分で、ペシッと叩かれました。
「あぅっ!い、痛さで言えば、い、今の、乗馬鞭のほうですぅぅ」
「ふーん。それじゃあまずはバラ鞭からかな」

 おっしゃりながらリモコンを操作されたらしく、カメラが私のお尻から後方へ引いていき、床に這いつくばった私の全身を、上方斜め右から見下ろすように狙うアングルになりました。
 右側を向いている私の顔も、小さいながらしっかり映っています。
 いやらしく突き上げている自分のお尻の左横に、黒のブラとショーツだけを身に着けたお姉さまのスレンダーなお姿が見えました。
 お顔までは画面に入りませんが、右手にバラ鞭を、左手に乗馬鞭を握っていらっしゃるのがわかります。

「さっき定規でちょっと叩いただけで、あんなに身悶えちゃった直子だもの、こういうちゃんとした鞭なら、きっとすぐイっちゃうのでしょうね?」
 お姉さまの右手のバラ鞭が、パサッと軽く、私のお尻に振り下ろされました。

「あうっぅ、はいぃ、どうぞ存分に、直子のお尻を虐めてくださいぃ」
「どのくらい耐えられるの?」
「あ、いえ、どうぞお好きなだけ」
「本当にいいのね?」
「はいぃっ!」

 私は、モニターに映るお姉さまの右手の動きを、今か今かと凝視しています。
 やがてお姉さまの右手がスーッと上がりました。

 パサッ!
「あうっ!」
 パシャッ!
「うぅぅ!」
 お尻にバラバラと当たる鞭の感触は、それほど痛いものではありません。
 だけど、回数が増えるごとにジワジワと火照りが蓄積し、いてもたってもいられない被虐感に包まれていくのです。

 お姉さまは、最初は恐々という感じでしたが、そのうちにコツを掴まれたらしく、打擲がリズミカルになってきました。
 パシャッ!
「うぅぅ!」
 パシャッ!
「ひぃっ!」
「なんだかだんだん愉しくなってきたわ。気持ちいい。SMしている、っていう感じ」
 お姉さまのハスキーなお声が、少し上ずっています。

 上から打ち下ろし、左から打ち払い、右からも打ち払い、下から打ち上げる。
 そのたびにてんでバラバラの革鞭が、私のお尻の皮膚を満遍なく、強く弱く打ちつけてきます。
 そのたびにいやらしい呻き声をあげる私。

「どう?気持ちいい?」
「はうっ!、はいぃぃっ!」
「ほら、もっといい声で啼きなさい」
「ひゃんっ!」

 自虐オナニーのとき、自分で自分を鞭打つことは、今まで何度もしてきました。
 でも、やっぱり誰かにされるほうが何万倍もいい。
 自分で打つと、当然ながら自分の手のやることですから、いつどこに鞭が来るか事前にわかりきっているので、スリルがまったく無いのです。
 お姉さまの、ときに連打、ときに焦らすような鞭使いが、私のドキドキをどんどん駆り立ててくださいます。

 ヒュンッ!ピシッ!
「はうっ!!」
 突然、空気を切り裂く鋭い音の後、一際強い痛みが左臀部を襲いました。
 お姉さまが乗馬鞭に持ち替えたようです。

「あら、こっちは本当に強烈みたいね。ベロの形通りに痕がついたわ。見るからに痛そう」
 ヒュンッ!ピシッ!
「キャンッ!」
 今度は右の尻たぶ。
「いい声ね。ゾクゾクしちゃう」
 お姉さまの愉しそうなお声の中に、明らかに冷酷な響きが混じってきていました。

 お尻がジンジン熱を持って、感覚が鈍くなっているようにも感じるけれど、鞭が当たった瞬間の痛みは、回を増すごとにどんどんエスカレートしていきます。
 同じ場所に連続して当たると、痛くて痛くて涙が滲みます。
 もうこれ以上無理、許してください、と懇願したい気持ちと、もっとください、めちゃくちゃにしてください、という自虐的な気持ちの鬩ぎ合い。
 焦らされてしばらく鞭が落ちてこないと、ホッとしているのに、おねだりするように腰が動いてしまいます。
 お姉さまは鞭を頻繁に持ち替えて、容赦無く私のお尻を打ち据えました。

「直子のお尻、満遍なく真っ赤っかよ?満遍なく腫れちゃってる。内出血もしてそうだし、大丈夫?」
 お姉さまのちょっぴり心配そうなお声。
「はぁはぁ、大丈夫ですぅぅ、もっと、もっとぉぉ」
「まだイケないの?」
「もう少しですぅ、もっとぉ、もっとくださいぃ・・・」

「まったく!呆れたヘンタイマゾムスメね!早くイきなさいっ!」
 心配して損をした、とでも言いたげな冷酷非情なお声。

 バシッ!
 お姉さまのバラ鞭が、私の大きく開いた股間を下から上へ、ちょうど性器を撫で上げる格好で勢い良く当たりました。
「はうぅぅっ!!」
 からだ全体を電流がつらぬきました。
 暴れた鞭先の一本が、私の腫れ上がったクリトリスをジャストミートでヒットしたのです。
 その瞬間、目の前が真っ白になりました。

「からだ全体がヒクヒク痙攣しているわね?何?イったの?直子」
「もっとくださいぃ、もう一回、もういっかいぃぃぃ」
 お尻をグラグラ振ってアピールします。

「イってませんんーっ!もう少しなんですぅぅ、イかせてぇ、イかせてくさいぃぃぃ」
「あっ!そっか。今、鞭の先がクリットに当たって、それでビクンとしたのね?なるほど」
 おっしゃりながらもう一回、バラ鞭が股間を勢い良く撫で上げました。
「ううぅ、そうですぅ、もっと、もっとそこに鞭をくださいぃぃ」

「そっか、これが気持ちいいんだ」
 お姉さまのバラ鞭が、まさに乱れ打ちという感じで、私のお尻を乱打し始めました。
「お尻ぶたれて、クリットぶたれて、ヘンタイ直子はそんなのが気持ちいいんだ?そんなのでイキたいんだ?」
「はいぃはいぃ、気持ちいいいいぃぃですぅぅぅ」

 股間を下から上への打擲割合が増え、そのたびに私の性器がピチャピチャ音をたて、ときどきクリットをヒット。
「ほら、イキなさい!」
 バチンバチンという打擲音と、あうあう呻く私の喘ぎ声の淫靡な輪唱。

「ほら、直子がイクときは、どうするのだっけ?」
 絶え間なく鞭を振るいながら、お姉さまも息を荒くされています。

「はぅっ!イキますぅ、イキますぅ、お姉さまぁぁ・・・」
「ほらっ、イキなさい!」
「ひぃっ!イキますぅ、イカせてくださいぃ、お姉さまっ、おねえさまぁぁぁ」
「さっさとイキなさいっ!」
 かなり強烈な一撃が連続で、二度三度と私のクリットをクリティカルヒット!
「はうぅぅっ!!あっ、あっ、いッ、イキますぅぅぅぅぅっ!!!」

 ハァ、ハァ、ハァ・・・
 気がつくと私もお姉さまも、荒い息遣いで肩を上下させていました。
 お姉さまは、私のお尻の横にしゃがみ込んでいます。
 私は、激しくイッた余韻とお尻ヒリヒリのムズ痒さに懲りもせずまだムラムラ。
 アソコがひっきりなしにムズムズ疼いています。

 突然、お姉さまが、ゆらり、という感じで立ち上がりました。
「はぁ、はぁ・・・直子、あたし、もう、がまん出来ないの・・・」
 おっしゃるなり、私の両足を繋いでいる棒枷がむんずと掴まれました。

「仰向けになるのよ!はら、早く!」
 棒枷で下半身を吊り上げるように乱暴に持ち上げられたので、顔がタオルに押し付けられました。
「あんっ、お姉さまっ!痛いっ!」
 からだが下半身から強引に捻られて、まずは横向きになりました。

 大股開きの側臥開脚を恥じらう暇も無く、後ろ手のまま仰向けに。
 ずっと潰されっぱなしだったおっぱいが息を吹き返しました。
 両腕は背中の下。
 両足が大開脚状態なので、膝を立てると即大股開き。
 でも、火照ったお尻に銀色シートの冷たさが気持ちいい。
 ただし、シートは自分のおツユでヌルヌルベタベタですが。

 仁王立ちのお姉さまが私を見下ろしています。
 久しぶりに肉眼で拝見するお姉さまのお姿。
 細かいレースのゴージャスな黒のランジェリー。
 トップもボトムもシースルーっぽい、とてもエレガントかつエロティックな下着姿。
 クールなワンレングスが乱れて、白くて細い首に黒い髪が汗で貼り付き、からだ全体もうっすら汗ばんでいらっしゃるようで、匂い立つようなオトナの色香ムンムンなお姿です。
 お姉さまは、少し潤んだような瞳で私を見下ろしています。

「直子ばっかり気持ち良くなるのは、不公平よ!」
 少し怒っていらっしゃるようなお声でつぶやくと、その場でスルスルッと黒いショーツを下ろされました。
 足首からショーツをはずすと、そのままツカツカと寝ている私の頭のほうに歩いてきました。
 そして、お顔を私の膝のほうに向けて私の顔面を跨ぎ、そのまま腰を落としてきました。

「舐めなさい。舐めてあたしも気持ち良くしなさい!」
 私の顔面の真上にお姉さまの剥き出しの股間があり、お姉さまのご命令のお声と共に、その部分がグングン私の顔面に迫ってきました。
「は、はぃ、むぐぅぅ・・・」
 私がお答えしようとしたときには、すでに私の唇はお姉さまの下の唇に塞がれていました。

「しっかり舐めてっ、あたしをイカせなさいっ!」
 明らかに興奮されているお姉さまの息遣いに、私はすっごく嬉しくなります。
 一週間ぶりのお姉さまのヘア、お姉さまのお味。
 先週よりも遥かにたくさん濡れていらっしゃいました。

 舌を思い切り突き出して、お姉さまの中に侵入します。
 お姉さまも両腿を一直線にまで広げて、侵入を助けてくださいます。
 舌を動かして、お姉さまの中を舐め上げます。
 花びらをしゃぶり、粘膜を舐め上げ、壁を擦り、美味しい蜜をジュルジュル飲み込みます。
 私の顎の先あたりがお姉さまの肉芽のはずなので、顎をしゃくり上げてその部分も刺激して差し上げます。
 ときどき焦らすように舌を抜いて、お尻の穴までペロペロ舐め上げます。

「あっ、いいわっ、そこよ、そこ・・・」
「あうっ、もっと、もっと強く・・・」
「うっ、それ、それがいいわっ・・・」
「いいわ、じょーずよ、そう、そこぉ・・・」

 お姉さまの悩ましいお声に、私はますます激しく舌を動かします。
 お姉さまが腰を押し付けるようにグイグイ密着させてくるので、窒息しちゃいそう。
 でも、お姉さまのアソコに息の根を止められるのなら本望です。
 顔中をお姉さまのお尻に押し付けて、うーうー唸りながら一生懸命ご奉仕しました。
 ネットリとした白い蜜を、夢中ですすりました。

 お姉さまのせつないお声が切れ切れになり、荒い息遣いのリズムが上がって、すぐにハスキーな遠吠えが響き渡りました。
 お姉さまの腰が私の顔の上でピクピク痙攣しています。
 やがて、お姉さまのお顔ががっくりと、私の下腹部に倒れ込んできました。
 顔面からお姉さまのアソコが離れ、私の口の周りはびしょ濡れでした。

 顔を上げた私の目の前に、お姉さまの美しいお尻の穴がありました。
 お姉さまはしばらくのあいだ、ときどきからだをヒクヒク震わせて、私のお腹に頬を埋めていました。
 私はお姉さまのお尻をうっとりと見つめ、喩えようのない幸せな気持ちに包まれていました。


就職祝いは柘榴石 06


2014年10月5日

就職祝いは柘榴石 04

「これは何?ああ、電動歯ブラシね。1、2、3・・・なんで6本もあるの!?」
「えっと、ほとんど私ので、あとのはシーナさまです」
「ふーん。何に使うのかは、だいたいわかるけれど、どうして6本も必要なのかしら?」
「あの、えっと、2本組み合わせて使ったり、あと、メーカーによって振動がけっこう違ったりもして・・・」

「へー、研究熱心だこと。でも今これ使ってどこか磨いたりしたら、きっと直子はすぐイッちゃうでしょうから、とりあえずパスね」
 色とりどりの電動歯ブラシを私の足元に並べるお姉さま。

「ホイッパー、ガラスのマドラー、栄養ドリンクの空き瓶。このへんは挿れて愉しむのよね?あっ、これ、懐かしい!」
 明るいお声と共にお姉さまがスーツケースから引っ張り出したのは、小さなカエルさんのおもちゃでした。
 ゴム製のけっこうリアルなカエルさんと、楕円形で手のひらサイズの空気ポンプが細くて長いチューブで繋がっていて、ポンプを押して空気を送ると、カエルさんの脚がビョーンと伸びて、ジャンプしたり泳いだりするおもちゃ。

「これもまさか、挿れちゃうの?」
 おっしゃりながら、お姉さまがポンプをプニプニ押すと、そのたびに緑色のカエルさんがピョンピョン跳ねました。
「あ、えっと、これはお友達にどこかのお土産ってもらって、可愛いからお風呂で遊んでいたとき、ふと思って、これを挿れたらどんな感じかなって、試したら・・・良くて」
 私とカエルさんを交互に見て、呆れたようなお顔をされるお姉さま。

「・・・アソコの中でモゾモゾ動いて、なんだか得体の知れない生き物に中を検査されているみたいな妄想が広がって、夢中でパフパフしちゃって・・・」
「ふーん。そんなにいいのなら、あとでやってあげるわ。これ、全部挿れてあげる」
 後日、私がおもちゃ屋さんなどを巡って買い足して全部で3匹となったカエルさんたちも、私の足元に並べられました。

「いろんな種類の筆に刷毛、メイクブラシ、ペットグッズのネコじゃらしまであるのね」
「使い捨てのゴム手袋、くっつく包帯。この大きな麻袋の中は何かしら?」
 お姉さまは、ひとつひとつ品物をスーツケースから取り出しては、私の足元に並べていきます。

「ああ、麻縄か。なんだかいい色に光って、年季が入っているわね。ちゃんとお手入れしているんだ?」
「はい・・・ミイコさまとシーナさまから教わって・・・」
「こっちの袋にはクリップ類が一杯。洗濯バサミは木製かステンレスなのね。あら、目玉クリップなんて、挟んだらかなり痛くない?」
 麻縄の束も洗濯バサミも、わざわざ袋から出して私の足元に置かれました。

 銀色のレジャーシートの上に、一見脈絡の無いさまざまな品物が、公園のフリーマーケットのお店みたく並びました。
 どれも最低一度は、私の肌や粘膜をいたぶったことのあるものたち。
 自分で集めた、自分を虐めるためのお道具をこうしてあからさまに目の前に並べられると、自分のどうしようもないヘンタイ性癖の歴史を赤裸々に突きつけられている気がして、ものすごく恥ずかしくなってきます。

「日用品系は、こんなところかしら」
 お姉さまは、スーツケースから取り出した30センチのプラスティック定規を右手で持ち、ご自分の左手のひらを軽くペチペチ叩いています。

「まだまだ面白そうなものがたくさん入っているけれど、このへんでちょっと、気分転換しましょうか」
 私の足元に並べたお道具たちをザザザっと、無造作に私の左側、お姉さまの足元のほうに押しやりました。
「充分にスペースを空けておかないと、体勢崩したとき、金属とかの上に倒れこんで怪我でもしたら危ないからね」
「・・・?」
 私は、キョトンとお姉さまを見ていました。

「直子?」
「はい?」
「四つん這いになりなさい」
「えっ!?」
「そこでまずひざまづいて、頭は鏡に向けて、お尻をカメラに向けて、四つん這いになりなさい」
「あ。えっと、はい・・・」
 お姉さまの豹変した冷たいお言葉に、背筋がソクソクッ。

 ご命令に従うには、まず回れ右をしなければいけません。
 棒枷で固定された両足をズルズル摺り足で、からだを180度回しました。
 鏡の中の自分と目が合い、私の全裸正面が映ります。
 それから、ゆっくりと両膝を曲げ始めました。

 この過程で私は、棒枷の、その残酷な威力に気がつきました。
 両足のあいだを約70センチ幅にも広げられたまま両膝を床に着いたら・・・
「ほら、さっさと床に這いつくばりなさいっ!」
 プラスティック定規でペチッと、背後のお姉さまにお尻を叩かれました。
「ひっ!あんっ!はいぃ!」
 膝を深く折るごとに、恥ずかしさが増していきます。

 和式のおトイレで用を足すときよりも数段大げさに両足を開いた状態で、その場にしゃがみ込む格好になりました。
 この段階ですでに、私の両腿の付け根部分は全開です。
 それから少し上体を前傾させ、両膝を床に着けます。
「ああんっ、いやぁんっ!」
 このあと、前屈みになってお尻を持ち上げたときの自分の格好がまざまざと脳裏に浮かび、激しい羞恥に思わず声が出てしまいました。

 四つん這い、と言っても、両手は手錠状態で背中に回されているので、上半身を両腕で支えることは出来ません。
 必然的に、上半身の支点となるのは頭。
 膝立ち姿勢から上体を前に傾けて、床に頭から飛び込んでいくのは、かなりの恐怖心を伴います。
 躊躇しているとお姉さまが、40センチ四方くらいに折りたたんだ白いバスタオルを、私の目の前に置いてくださいました。

「ほら、とりあえずここに頭を着けなさい」
 私の傍らにしゃがみ込んだお姉さまが、バスタオルを定規でツンツンつつきます。
「は、はいぃ」
 意を決した私は、その場で土下座するみたいに、バスタオルに正面から顔をうずめました。

 背中がお尻からの急降下斜面となり、背後のお姉さまに開ききったお尻を突き出す格好になります。
「顔は、モニターが見える方向に向けておきなさい。ほら、お尻はもっと高く上がるでしょ!?」
 タオルにうずめていた顔を右に向けると、左頬がタオルに沈みます。
 ふくらはぎと太腿が直角になるほど、グイッとお尻を上に突き上げました。
 両おっぱいの上部分のカーブが銀色のシートにベッタリ貼り付いて潰れ、両乳首がシートに擦れます。

「ふふ。すごい姿になったわね。直子が好きなカエルそっくり」
 お姉さまの愉しそうなお声。
 リモコンを弄っているのでしょう、右側のモニターに私のお尻がズームアップしてきました。

「いい眺めだこと。直子って、お尻の穴周辺にもまったくヘアが無いのね。ツルッツル綺麗で羨ましいわ」
 そんなに羨ましくもなさそうな、お姉さまのお芝居がかったお声。
 ドアップになった私の裸のお尻の前に、お姉さまの後頭部が邪魔するみたいに大きく映り込んでいるので、直接至近距離で、まじまじとそこを覗き込んでいらっしゃるのでしょう。

「お尻が左右に目一杯割れちゃっているから、アソコも割れて中の具まで覗けているわよ?」
 お姉さまがおしゃべりするたびに、その部分の皮膚にお姉さまの吐息がコソコソかかります。
 そのじれったい刺激と、あまりの屈辱恥辱感、それに相反するはずの恍惚感がごちゃ混ぜとなり、私の息もどんどん荒くなってしまいます。

「おツユがダラダラ垂れて、すごくいやらしい匂い。あら、お尻の穴がヒクヒク動いたけれど、直子、感じているの?こんな格好にされたのに?」
「はぁ、はぁ、はぁぃ・・・」
「こんなにみじめでみっともない格好なのに、そんな姿を視られて嬉しいんだ。何もかも丸見えで、クリットなんて、弾けて破裂しちゃいそうに膨れ上がっているわよ?」
「あぅぅっ、はぁ、はぁ、はぁぃ・・・」
「ふん!いやらしい子!」
 不意にモニターからお姉さまの後頭部が消えました。

 大きなモニター画面には、私のお尻を画面全体に捉えた白い肉塊のドアップ。
 お姉さまがおっしゃった通り、左右の尻たぶが見事に泣き別れになって、その中央に、周囲をシワシワで飾られた小さくて丸い穴と、その少し下に縦長の楕円形に広がったピンクの穴が、まるっきり無防備にさらけ出されていました。
 普通の女の子なら、絶対誰にも視られたくない、あまりにも屈辱的なアングル。

 そう考えた刹那、左の尻たぶに強い刺激が。
 パチンッ!
「あうっ!」
 お姉さまのプラスティック定規が私のお尻に振り下ろされた音でした。

「こんな格好にされたのに、悦んで愛液をダラダラ垂らすようないやらしい子には、お仕置きが必要よね?」
 パシンッ!
「あうっぅぅ、はぁぃぃ」
「だけど直子みたいなヘンタイだと、お仕置きもご褒美になっちゃうのよね?」
 パシンッ!
「うっぅぅ、はぁぃぃ」
「直子はお尻叩かれるの、大好きなんでしょ?」
 パシンッ!
「はうっぅぅ、はぁひぃぃ」
「マゾだものね?」
 パシンッ!
「はうっぅぅ、はひぃぃ」

「叩いたところがみるみる赤くなって、面白いわね、これ。もっと強いほうがいい?」
「はぁいぃ」
 バシッ!
「いたぁひぃぃっ」
「もっと強く?」
 バシンッ!
「はぁひぃぃ。もっとぅぅ」
 バシンッ!
「気持ちいいの?」
 バシンッ!
「はぁひぃぃ・・・」
「そろそろイキそう?」
 バシンッ!
「はぁひぃぃ!もっとぅ、もっとぅぅぅ!」
「じゃあやーめた」

 それきり、お姉さまの定規がお尻に降ってこなくなりました。
 また、焦らし責め。
 息をハァハァ荒くしながら、しばらくはお姉さまのイジワルさを呪っていた私でしたが、いつまでもつづく沈黙にだんだんと不安になってきました。
 
 床のタオルに左頬を押し着けた私の視界は、右側のモニターとその周辺しか見れません。
 お姉さまが私の背後や左側に居られると、そのお姿がモニターに映り込んだときしかお姿を確認出来ないのです。

「・・・お姉さま?」
 お尻への打擲が途絶えてしばらくすると、お姉さまの気配がまったくしなくなっていました。
 お姿も見えず、お声も聞こえず。
 苦労して顔を左側に向け、そちらも確認してみましたが、お姉さまのお姿はありません。
「・・・お姉さまぁ?」
 私が二度目に、大きな声でお姉さまを呼んだとき、私のお尻のほうから、微かな衣擦れの音が聞こえました。

 あ!
 きっとお姉さま、お洋服を脱いでいらっしゃるんだ!
 思い当たった途端に、不安が消し飛びました。

「直子のお尻叩いていたら、少し汗ばんじゃったから、リビングで服、脱いできたわ」
 私のお尻間近から、お久しぶりなお姉さまのお声が降ってきました。
 私は急いで、自分の顔をモニター側に向け直しました。
 でも、モニターには相変わらず、私のお尻のドアップしか映っていませんでした。

「うわー。お尻の左側だけ真っ赤っか。熱そう」
 お声と共に、モニターに再び、お姉さまの後頭部が侵入してきました。
 チラッと見えた白い肩先には、黒いブラジャーの紐らしきものが見えました。
「でも、叩かれて感じる、っていうのは本当のようね。ワレメが、以前にも増して濡れそぼって開き気味だもの」
 お姉さまの興味津々なお声が、吐息と共に私の皮膚を愛撫してきます。
「熱持って、なんだか痛々しいから、これで撫ぜてあげる」

 お声と同時に、赤くなった右の尻たぶに、こそばゆいものが当てられました。
「あふぅんっ!」
 モニターにチラッと映った感じでは、たぶんメイクブラシ。
 それも一番毛先が細くて柔らかい、私お気に入りのチークブラシのよう。

「ふぅん、んふふんっ、だめですぅぅぅ」
 熱を持ったお尻の敏感になっている皮膚をコショコショとくすぐられて、思わずお尻が大きく揺れてしまいます。
「おねだりしているみたいに腰振っちゃって、本当にスケベな子ね」
 なじるようなお姉さまのお言葉とは裏腹、ブラシの愛撫は止まらず、どんどんお尻の穴のほうに近づいてきます。
「いやんっ、くすぐったいですぅぅ」
 蜜がトロトロ、粘膜から滲み滴り落ちるのが、自分でも分かります。

「百合草女史とお会いしたとき、面白いこと、おっしゃっていたのよ」
 お姉さまは、私のお尻の穴の円周をなぞるようにブラシの毛先で撫ぜ回しながら、愉しげな口調でおっしゃいました。
「直子、女史やシーナさんに、ここはあんまり可愛がってもらえなかったんだって?」
 
 ここ、っていうお言葉と同時に撫ぜられたのは、お尻の穴。
 お姉さまのブラシが、今はもろに、私のお尻の穴を上から下から撫ぜつけていました。
「あふんっ、は、はい?」
 くすぐったさと恥ずかしさに身悶えしつつ、ご質問の意味がよくわからず、曖昧にお返事する私。

「あのふたりに、今までここにされたこと、思い出せる?」
 相変わらずピンポイントでそこをブラッシングされながら、再度のお尋ね。
「あぁん、えっと、百合草先生には、ぅふぅんっ、お浣腸と、あと、タンポンを挿れられたのは、憶えていますぅ」
「シーナさまには、そ、そう言われてみれば、ぁふうんっ、ゆ、指とか、ローター当てられたくらい、ですぅ、ううう、かな?」

「ふーん。自分では?」
「あ、えっと、自分だと、お浣腸と、指と、あと、マ、マドラーの先っちょを、ちょっ、ちょっとくらい、ですぅぅ」
「ふーん」
 お姉さまが操るブラシの毛先が、私のお尻の穴から離れました。

「おふたりがおっしゃるにはね、直子が将来、ステディなパートナーをみつけたときのために、ここだけは、そのまだ見ぬパートナーのために開発しないで、とっておいてあげよう、って決めていたのですって」
「えっ!」
「ほら、百合草女史は直子のヴァージン破っちゃったし、マゾ性を開花させちゃった張本人。シーナさんは、マゾの心得をどんどん教え込んで、直子のヘンタイ度を上げちゃったわけじゃない?」
「だけど、おふたりとも、直子を自分だけのパートナーに出来る立場ではないから。それぞれすでに本命がいるしね」

「だから、いつの日か直子にめでたく相手が出来たとき、ひとつくらい、その人の手で開発出来ることを残しておいてあげよう、って決めたんだって。それがここ」
 お姉さまのブラシが、もう一度私のお尻の穴をスルッと撫ぜました。
「あはんっ!」
「そしてあたしが、めでたく直子のパートナーとして認められたのよ、おふたりから」

「直子はもちろん、ここを弄くられるの、好きよね?」
「ぁあんっ、はいぃ」
「たとえキライって言われたって、あたしはヤル気マンマンよ?せっかくふたりが残してくれた未開発部分なのだもの」
 お姉さまが毛先を穴に強く押し付けて、やがて離れました。
「あはぁんっ!」
 微かなチクチクがもどかしい。

「あたしも、今まで誰かのここをイタズラしたのって、アユミにふざけて浣腸して紙オムツさせたくらいだったな」
「がまんしきれずに洩らしちゃったアユミの辛そうな顔を見たときは、すごくゾクゾクしたものだわ。あの情けない臭いにも、妙に興奮しちゃったし」
「それにここって、開発すればするほど、どんどん淫乱になっちゃうらしいじゃない?直子がそうなったとき、どんな顔を見せてくれるのかしら?」
 夢見るようなお姉さまの愉快そうなお声が、背中へ降りそそぎます。

「ねえ?直子はここのこと、いつも何て呼んでいるの?」
 お姉さまのブラシが、私のお尻の穴に戻りました。
「あんっ!えっと・・・お、お尻、の穴」
「他には?」
「ア、アナル・・・」
「他には?」
「ア、アヌス・・・」
「他には?」
「えっ、えっと、こ、肛門・・・」
「その呼び名の中で、どれが一番恥ずかしいと思う?」
「そ、それはやっぱり・・・えっと・・・こ、肛門がやっぱり・・・かな?」
「おーけー。それなら、こう宣言なさい」

 背後でお姉さまがカサカサ何かされる音がして、やがて一枚の紙片が私の目の前に差し出されました。
 レポート用紙大の紙に、細めの黒マジックの端整な文字で、短い文章が書かれています。
 紙片を置くときにチラッと見えたお姉さまのお姿は、上下黒の艶やかなランジェリー姿でした。

「大きな声で、ゆっくり、はっきり読むのよ?あたしたちスールのロマンティックな思い出として一生ビデオに残るのだから」
 お姉さまのお芝居がかったお声には、クスクス笑いが少し混じっていました。
「は、はいぃ!」
 
 お返事すると、カメラが更にズームアップしてきて、画面の中心が私のお尻の穴のアップになりました。
「あ!いっ、いやんっ!」
 直径10センチくらいにまで拡大された、自分のお尻の穴。
 恥ずかし過ぎて死にそうです。
「ほら、早く読むのっ!」
 パチンと平手で、高く突き上げたお尻をお姉さまにぶたれます。
「はいぃっ!」

「わ、私、も、森下直子の、のい、いやらしい、こ、この、こ、こう、もん、んっ、こ、肛門は、こ、これから一生、え、絵美お姉さま、ぁんっ、お姉さまだけの、もの、んっ、ものであることを、ち、誓いますぅぅぅぅ」
 
 自分で読んでいる文章の意味、その一字一句が私のマゾ性を激しくゆさぶり、お姉さまへの忠誠心が漲ります。
 同時に、被虐な血の昂ぶりで全身が滾り、イク寸前、息も絶え絶えにつづきを読み始めます。

「ど、どうぞ、どうぞっ、い、いつ、いつでも、ご、ご自由に、にっ こ、このこ、この肛門を、お、お使いください、くださいませぇぇぇ、ハァハァハァ・・・」
 
 まさしく私の本心が代弁された文章と、自分の肛門のドアップ画面を交互に見ながら、私の恥辱メーターは、振り切れたまましばらく戻りませんでした。


就職祝いは柘榴石 05


2014年9月28日

就職祝いは柘榴石 03


「この中のもの、全部使ったことあるのよね?」
「・・・はい」
「自分で買い揃えたの?」
「あ、いえ。日用品ぽいものはそうですけれど、オトナのオモチャ的なものはほとんど、シーナさまが置いていかれたものです」
「ふーん。これ全部試したら、一晩中かかりそうね。愉しみだわ」
 スーツケースから離れたお姉さまは、ソファーの上のご自分のバッグから何か取り出しました。

「これ敷いて。レジャーシート。直子んちの床を汚さないように一応持ってきたの。今日は直子に思う存分グズグズベトベトになってもらう予定だから」
 薄い笑みを浮かべたお姉さまから、銀色のレジャーシートを渡されました。
「ちなみに今後の直子の行動範囲は、あの固定カメラで追える範囲内ね。全編しっかり録画するつもりだから」
「あのカメラ、首は振れるのでしょ?」
「あ、はい、上下左右に」

 今現在カメラが映しているアングル、すなわち、鏡と化したマジックミラー窓の前、背後からのカメラが鏡に映る私をモニター画面の中央に映し出すような位置をまず確認して、シートを敷き始めました。
 シートは予想外にずいぶん大きくて、バルコニーに張り出したタイルの床全体を覆い、フローリングの室内まで、サンルームのほぼ全域をカバー出来ました。

 私がシートを敷いているあいだに、お姉さまはSDカードを録画装置にセット。
 つづいてソファーをベット状にしてから、監視カメラのリモコンと録画装置をしばらくいろいろ弄っていました。

 シートを敷き終わってお姉さまの傍らに戻ると、お姉さまは再びご自分のバッグから、今度は細長い金属の棒のようなものを何本が取り出されました。
 一本が30~40センチくらいの銀色に光る棒は、端がねじ式で連結出来るらしく、お姉さまが一本の棒をクルクル回して繋げると倍の長さの棒になりました。
 この棒にもいくつか銀色のリングが付いています。
 長い棒を2本作って、もう一度ご自分のバッグを覗き込むお姉さま。

「今日はバッグが重くて大変だったわ」
 苦笑いでおっしゃりながら、パンパンに膨れた巾着状の大きな布袋をバッグから取り出されました。
 巾着の紐を解き、中身をベッドの上に無造作にぶちまけました。
 ジャラジャラジャラ!
 巾着袋の中に詰まっていたのは、見るからに冷たそうな何本もの銀色の鎖でした。

 黒地の合皮ベッドの上にとぐろを巻いて、鈍く銀色に光るたくさんの鎖。
 アクセサリーで使われる鎖とは比べものにならない、自転車のチェーンくらいの太さの禍々しい鎖を見つめていると、からだがゾクゾク震えてきました。
 これからこの鎖で私は、両手両足を不自由に繋がれ、思い切りあられもない格好に拘束されて、散々いたぶられるんだ、大好きなお姉さまの手で・・・
 そう考えただけで、アソコのヒクヒクが止まりません。

「オシャレなバーキンにこんなもの入れて街中歩いてるのって、世界中であたしくらいでしょうね」
 お姉さまが自嘲気味にクスクス笑われました。
「でも今日は、直子がどのくらいマゾなのか、しっかり確かめたかったら、あたしなりにがんばって準備してきたのよ」
「さあ、ぼちぼち始めましょう。まずは直子にこの棒枷を付けてもらうわ。もっとそばにいらっしゃい」
 お姉さまが銀色の長い棒を手に持ち、私を手招きしました。

 ベッドに座るように指示され、鎖を少しどかして腰掛けました。
 鎖に触れたとき、そのひんやりとした感触にキュンキュン感じてしまいました。
「この棒枷を付け終わったとき、直子にとってのやさしいお姉さまは、いなくなるからね?」
 お姉さまのお顔から笑みが消えています。
「あたしの中のサディスティックな気持ちを総動員して、出来るだけサディストに成りきるつもりだから、覚悟してね」
 冷たい瞳でおっしゃりながら、腰掛けた私の足元にひざまづきました。

 私の左足首の足枷のリングにジョイントのようなものが繋がれ、5センチくらいの鎖のもう一方の端を、棒枷の左端のリングに繋がれました。
「足を大きく開いて」
 お姉さまのお言葉で左右の足の間隔を恐々少しずつ広げます。
「だめだめ、もっともっと」
 怒ったようなお言葉と共に、右足首が掴まれて、外側へ大きくグイッと広げられました。
「あっ、いやんっ!」
 両膝が大きく割れます。
 お姉さまはお構い無しに、右足首の足枷に棒の右端を繋ぎました。
 腰掛けている私の両足は、70センチくらいの幅に左右泣き別れになったまま棒枷で固定され、一生懸命内股にしても、まったくアソコが隠せない状態になっていました。

「立ちなさい」
 お姉さまに促され、ゆっくり立ち上がります。
 左右の足幅が固定されているので、すごく不自由でよろめきます。
 さっき強引に足幅を広げられたとき、腿の付け根の裂け目が割れてしまい、滴り出たはしたないヨダレが右の内腿をトロリと滑り落ちていきました。

「両手はどうしようかしら?」
 お姉さまの独り言。
「とりあえず後ろでいいか」
 5センチくらいの短い鎖を掴んだお姉さまに後ろ手にされ、左右の手枷を背中で繋がれました。

「おっけー。その格好でカメラの前に戻りなさい」
 軽く背中をこずかれ、よたよたと歩き始めます。
 両足が大きく広げられたままなので、歩きにくいことこの上ありません。
 遠く離れた右足と左足を床に摺るように、ちまちま前進するしかありません。
 膝を大きく上げてガニマタっぽく歩を進めれば、いくらかマシに歩けそうですが、その姿はひどくお下品そう。
 出来の悪いロボットのような摺り足でズルズルと、なんとか窓際までたどり着きました。

 鏡に映った自分の姿は、とてもみじめなものでした。
 赤い首輪の全裸の女。
 両足に巻きつけられた赤い足枷を繋ぐ、銀色の無機質な長い金属棒。
 70センチくらいのその棒の長さより狭く閉じることを禁じられた両足が、すごく不自然に床に踏ん張っています。
 
 両手はほとんど動かす余裕無く、背中で拘束。
 必然的に、胸を張るような格好になり、痛いほど尖りきったふたつの乳首を誇示するように、おっぱいを無防備に前へ突き出す姿勢です。
 裂け目からヨダレがポタポタ、銀色のシートを汚していました。

「これから直子のマゾっぷりをひとつひとつチェックして記録していくから、聞かれたことにはすべて、正直に答えること。いいわね?」
 お姉さまがリモコンで、カメラの角度やズームを調整しながら、投げつけるような口調でおっしゃいました。
 右脇に見えるモニターには、私の全身が綺麗に収まっていました。
 少し遠目ですが、足元に置かれたオモチャ箱と、鏡に映る正面からの姿もしっかり見えています。
 お姉さまったらいつの間に、カメラとモニターの操作方法を把握しちゃったみたいです。

「まずは、直子が言うところの日用品ぽいものから、使い方を説明してもらうことにするわ。カメラのほうを向きなさい」
 私の背後に来たお姉さまのご命令。
 振り返ろうとしますが、強制足幅固定の両足では、180度回転するのも一苦労です。
 お姉さまがリモコンを使い、モニターに生身の私の膝から上の全身が入るように調整されました。

 私のオモチャ箱の傍らにしゃがみ込んだお姉さまが、中からいくつかのお道具を手に取りました。
「トング類ばっかりいくつもあるわね?アイストングにパスタトング、パントング。こんなの何に使うの?」
「あ、はい・・・私、金属類の感触が好きで、こういうので挟まれたり、からだを弄られると気持ちいいんです」
「なるほどね。こんな感じ?」
 お姉さまがパントングで、私の右おっぱいの下乳をいきなりムギュッと掴んできました。
「あぁんっ!」

「手で揉まれるより。こういうので掴まれるほうがいいんだ?」
 パントングをグリグリ動かしながら、お姉さまが聞いてきます。
「あんっ!い、いえ、お姉さまならば手でももちろんいいのですが、あぁんっ、オ、オナニーのときは、こういう無機質なものに虐められるほうが、被虐感に萌えるというか・・・」
「ふーん。金属フェチの気もあるのね」
「あふんっ!」
 今度はパスタトングで左乳首をつままれました。
「もっと強いほうがいい?」
「ああんっ、はいぃ・・・」
 パスタトングの先で乳首を挟まれたまま、グイッと引っ張られました。
「あはぁぅっ!ぃやぁん!」

「マゾなら当然、先がもっとチクチクしてたほうがいいのよね?これみたいに」
 お姉さまがアイストングに持ち替えて、カチカチ鳴らします。
 そのアイストングの先っちょの細かいギザギザは、私の一番のお気に入りでした。

「はいぃ。それで乳首をつままれると、いつもジンジン感じちゃうんですぅ」
「へー、そうなの?」
 イジワルな笑みを浮かべたお姉さまが、右乳首にアイストングの開いた先っちょをあてがいました。 
 火照った乳房にひんやりした感触。
「ひぃっ!」

「これをどうして欲しい?」
「閉じてください、ギュって閉じてくださいぃ」
「こう?」
「ひいぃーーっ!」
 お姉さまがおもむろにトングの先を閉じました。
「コチコチの乳首にトゲトゲが喰い込んでいるわよ?痛くないの?」
「痛いですぅ。でも気持ちいいんですぅぅぅ」
「ヘンな子」
「ううぅぅぅーっ!」
 お姉さまが操るアイストングで、私の両乳首がしばらくもてあそばれました。
 開きっぱなしの私の股間から、悦びのヨダレがダラダラ垂れ滴り落ちました。

「もう一箇所、これで挟んで欲しい場所があるのでしょう?」
 執拗な乳首虐めで、私の両乳首は破裂寸前、凄い熱を持っていました。
 もう少しつづけられたら、それだけでイっていたと思います。
 絶妙なタイミングでお姉さまのアイストングが肌を離れました。

「はいぃ・・・挟んで欲しいですぅぅぅ」
 息を荒くしてお答えします
「どこ?」
「あの、ここ、ここです、ク、クリトリスです、クリトリスを挟んでください!」
 下半身をお姉さまに突き出すように背中を反らして、懇願しました。
「はしたない子ね。女の子はそんなお下品なこと、大きな声で言うものではなくてよ?」
 すごくイジワルなお顔の、すごく愉しそうなお姉さま。
「ごめんなさい。でも、でもぅ」
 ますます背中を反らして、アソコを突き出す私。

「だって、そのえっちなおマメをこれでつまんだら、直子、あっさりイッちゃうでしょう?」
「はい。イッちゃいます。イかせてぇ、イかせてくださいぃ」
「だめよ。まだ始めたばかりだもの。そんなのつまらないわ」
 お姉さまは身を屈め、私の足元近くに使ったトング類を並べて置いて、また立ち上がりました。

「それからね、これから直子は、あたしの許可無しに、勝手にイってはいけないことにしましょう」
 私の顔をまっすぐ見つめておっしゃいました。
「イキたいとき、イキそうなときは、必ずあたしに言って許しを請わければいけないの、イってもいいですか?って」
「そうだ!プライベートでもそうしようか?オナニーもあたしの許可制。直子がオナニーしたくなったら、あたしに連絡して許可をもらわなくちゃいけないの」
「でもまあ、あたしも四六時中相手はしていられないから、メールでいいわ。オナニーしたくなったらあたしにメールを送ること。これからオナニーします、って」
 本気なのか冗談なのか、お姉さまは蔑むような笑みを浮かべて私を見つめています。

「決まりね。いい?わかった?」
「は、はい」
 お姉さまとのおつきあいが順調につづけば、きっとひとりでオナニーする回数も減ることでしょう。
 私は深く考えず、喜んで同意しました。

「無機質な感覚が好きなのかあ。そう言われてみれば金属製の道具が多いわね」
 オモチャ箱のスーツケースを覗き込んでいたお姉さまが、また何かを手に取って立ち上がりました。
「ルレットにバターナイフ。これはまあ、使い方はわかるわ」
 右手に持ったバターナイフで、私の下半身の裂け目をペタペタッと撫ぜてきました。

「あふんっ!」
「溢れ出たおツユがペタペタして蜂蜜みたいね。穴の中に戻してあげましょう」
 ワレメの縁に沿うように、無機質な金属の感触が私の粘膜をヌルヌル擦ってきます。
 腫れ上がったピンクの肉芽をギュッと押し潰されます。
「あっ、あっ、あー・・・」
 粘膜の中をなめらかにいたぶる硬い感触。
「いぃ、もっと、もっとぉ・・・」

「それで、ルレットは、こうよね?」
 お姉さまの左手に握られたルレットのギザギザ歯車が、私の右おっぱいに歯を食い込ませてグルグル走り回り始めました。
「いいっ、あっ、あぁんっ、いたぁいっ!」

「服飾部の頃、これでアユミのこと、よく虐めたものだわ。この感触ってマゾの子には、クセになるみたいね」
 刃先が乳首に乗り上げると、鼻先からおでこへツーンと、痛痒い快感が駆け抜けていきます。
「あんっ、はいぃ。よ、横浜で、スタジオのとき、ああんっ。お姉さまが用意してくださったお道具の中に、そ、それがあって・・・うぅんっ・・・」
「すっ、すごく、嬉しかったですぅ。お姉さまが、わ、私のこと、あんっ!わかってくださって、い、いるみたいで・・・あっ、あーっ!」
 バターナイフとルレットの絶え間ない陵辱に、私はたちまち、ぐんぐん昂ぶっていきました。

「お、お姉さまぁ・・・イ、イってもよろしい、うぅっ、よろしぃですかぁ?」
「だーめ。がまんしなさい」
 からかうようにおっしゃりながらも、手を止めないお姉さま。
「あうっ、イっちゃいますぅ、うっ、イかせてくださいぃぃ!」
「だーめ、まだよ」
「いぃ、いいぃ、イかせて、イかせてっ、あっ、もっと強くぅ、あぁぁぁぁっ・・・」
「だーーめ!」
 あともうちょっと、というところで、お姉さまの両手がススッと、私のからだから離れました。

「ハァハァハァハァ・・・」
 体内の昂ぶりが名残惜しそうに引いていくのがもどかしく、お姉さまをうらめしげに見つめました。
「そうそう。その顔。直子のその顔が見たかったのよ」
「欲求不満を募らせたそのふくれっ面。あたし直子のその顔が、一番ゾクゾクしちゃうの」

 とても愉しそうなお姉さまのニクタラシイお顔。
 何事も無かったみたいにルレットとバターナイフをシートの上のトング類の横に並べたお姉さまが、瞳を妖しく輝かせて、再びスーツケースを覗き込みました。


就職祝いは柘榴石 04


2014年9月23日

就職祝いは柘榴石 02

「へー、いいお部屋じゃない?」
 お姉さまをリビングにご案内して、私はお紅茶の用意。

「ずいぶんと落ち着いた感じなのね。直子のイメージだと、大きなクマさんのぬいぐるみとか、もっとメルヘンチックなお部屋を想像していたけれど」
 お姉さまは、リビング内をゆっくりと歩き回りながらスーツの上着を脱ぎ、テレビ周りやサイドボードの中を興味深げに眺めています。
「モノトーンにブラウンとグリーンが基調なのね?いいセンスだと思うわ」

「これは、地元にいた頃におじゃました、やよい先生、あ、いえ、百合草先生のお部屋の真似をしただけなんです」
 L字に並べたソファーの前のガラステーブルにティーカップを置いて、お姉さまの上着を預かりハンガーに吊るしました。
 
 上着を脱いだお姉さまは、シャープな白ブラウスと濃茶のタイトスカートにベージュのストッキング。
 ソファーに腰掛けると、膝上丈のタイトスカートから伸びたピカピカ光る美しいお膝とスラッとしたおみ足がすごくなまめかしい。
 そこばかりじーっと見入ってしまうほど。

「ふーん、百合草女史のねえ・・・」
 お姉さまがティカップに唇をつけてから、隣に座った私の顔を覗き込むように見つめてきました。

「こんなシックなお部屋で、いつもひとりで裸になって暮らしているんだ?全裸家政婦ごっこで」
「い、いつも、というわけではないですけれど・・・」
 お姉さまのいたずらっぽい瞳に悩ましく見つめられて、急激にドギマギしてしまいます。

「このお部屋に入ったら、裸にならなければいけないルールなのでしょう?ムラムラ期のときは」
「直子、このあいだ教えてくれたじゃない。今はどう?ムラムラしていないの?」
「あの、えっと・・・」
 お姉さまの隣でモジモジする私を、お姉さまが薄い笑みと共に見つめてきます。
 不意にお姉さまのお顔が動き、私の唇にチュッと軽くキスをくださいました。

「遠慮しなくいいのよ?ルール通りに裸におなりなさい。あたしは気にしないから」
「あ、は、はい・・・」
 これはお姉さまからのご命令、と理解した私は、ソファーに腰掛けたままブラウスのボタンをはずし始めました。

「百合草女史とシーナさんにお会いしたとき、直子のえっちな性癖をいろいろたくさん、詳しく教えてもらったのよ」
「どういう悪戯が好みか、とか、どんなことをされると悦ぶのか、とか」
 お姉さまは、私がブラウスのボタンをはずしていくのを至近距離でじーっと見つめながら、ささやくように語りかけてきます。
「直子って、えっちな妄想物語とかも、ずいぶん書いているのね。愉しく読ませてもらったわ。面白かった」
「テキストデータを全部もらったわ」

 えっ!そんなものまで見られちゃったの!?
 ハイソックスを脱ごうとしていた私の手が、思わず止まりました。
 恥ずかしさで全身の血液が逆流しそう。

「今日はその下着を着けていたのね?ちょっと立ってみてくれる?」
 お姉さまに促され、両方の靴下を脱いでから立ち上がりました。
 すべてのボタンがはずれたブラウスと、ホックとジッパーをはずしていたので、立ち上がった途端に足元に落ちたスカート。
 お姉さまも立ち上がり、私の両腕からブラウスを抜いてくださいました。
 ランジェリーだけの姿で、自然とマゾの服従ポーズになる私。

「このブルーの上下も、あたしが見立てたやつだったわよね。やっぱりすごく似合っている」
 フロントホックでストラップレスのブラと、両サイドを紐で結ぶ式のハイレグフルバックショーツ。
 ソファーの前で、両足は、やすめ、両手は後頭部で組んでいる私の全身を、お姉さまがまじまじと見つめてきます。

「それでね、あたし考えたのよ。あ、さっきの話のつづきね」
 お姉さまが前屈みになり、私の左腰のショーツの紐をスルスルっと解きました。
 アソコに密着していた狭めな布がアソコを離れ、ダランとだらしなく右内腿のほうに垂れ下がりました。

「あらあら、もう濡らしちゃっているの?ほんと、いやらしい子」
 アソコの裂け目から布の内側へとか細く透明な糸が伸びて、切れました。
 奥はもう、キュンキュン疼いています。

「百合草女史もシーナさんも、今までずいぶんエグイ悪戯を直子にしてきたじゃない?それに直子が書いた妄想物語もすごくえげつなかったし」
「だから、あたしが直子のマゾ気質を満足させて、女史やシーナさんを忘れさせて、あたしだけの直子にするためには、かなりいろいろがんばらなければいけないぞ、って」
 
 おっしゃりつつお姉さまの手で右腰の紐も解かれ、ショーツが足元にパサリと落ちました。
 これで下半身は剥き出し。
 お姉さまからの嬉しい、がんばる宣言、にゾクゾク感じてしまい、右内腿を歓喜の涙がダラダラ滑り落ちていきます。

「だから今夜は、あたしも未知の領域までチャレンジして、自分がどのくらいサディスティックになれるか、試してみようと思っているの」
「直子が妄想物語で書いているようなことは、して欲しいことなのよね?あたしにとっては、けっこうエグイと思っちゃうことばかりなのだけれど、直子はそのぐらいでは、音を上げないのよね?真性マゾだから」
「あ、えっと、は、はい・・・だ、大丈夫です・・・」

 お姉さまの手でフロントホックもはずされた私は、全裸になってゾクゾク震えています。
 乳首が痛々しいほどの超背伸び。
「あたしもかなりワクワクしているの。新しい自分に出会えそうな気がして」
 うふふ、と笑ったお姉さまの瞳に妖しい官能の炎がユラユラと揺れていました。
 Mだけがわかる、Sな舌なめずりの音と共に。

 私が脱ぎ捨てたブラウスや下着を全部綺麗にたたんで、お部屋の片隅に片付けてくださったお姉さま。
 つづいてご自分のバッグの中をがさごそされていました。

「手始めにこれ、着けてくれる?」
 お姉さまがテーブルの上に並べられたのは、レザーらしき質感の短いベルト状のものたちでした。
「あたし、ロープはうまく扱えないから、手っ取り早く拘束するなら、こういうの使ったほうが早いと思ってね」
「これが首輪。そっちが手枷でこっちが足枷ね」

 鈍い赤色をしたそれらは、それぞれに大小のリングがいくつかぶら下がっていて、見るからに禍々しい感じでした。
 きっとこのリングに鎖をあれこれ繋いで、あられもない格好で拘束されてしまうのでしょう。
 やよい先生もシーナさまもロープの達人で、拘束はもっぱらローブでしたから、こういう器具での拘束は逆に新鮮、ワクワクウズウズです。

「手枷と足枷着け終わったら言って。首輪はあたしが着けてあげる」
「は、はい・・・」
 
 その場でしゃがんで足枷から着け始めます。
 裏地がフワフワしているので、きつく締めても想像していたより痛くはありません。
 両足首に赤いレザーを巻きつけたら、立ち上がって両手首。
 左手を終えて右手に移ったとき、お姉さまが私の背後に立ち、おもむろに首輪を巻きつけてくださいました。

 首輪の裏地が首に触れた瞬間、背筋を被虐的な官能がゾクゾクっと駆け上がりました。
 シーナさまからいただいたチョーカーより倍も太い無骨な首輪。
 この首輪を着けたら、私は一生お姉さまのペット。
 痛くない?とお姉さまに聞かれつつ、ギュッと首を締め上げられるだけで、アソコの中がヒクヒク騒ぎました。

「この拘束具、知り合いに頼んで、一番いいものを選んでもらったのよ。そのスジでは最高級品なんだって」
 お姉さまに手を引かれ、姿見の前に連れていかれました。

 白いブラウスに濃茶のタイトスカートなクールビューティさまの隣に立つ、赤い首輪の全裸女。
 首、と名の付くすべての部位に鈍い赤色のレザーを巻きつけておどおどしている、みじめな裸の女。
 銀色のリングが鏡の中でキラキラ光っています。
「ふふ。だいぶドレイらしくなったじゃない?可愛いわよ」
 鏡の中の私の全身を、お姉さまが舐めるように見つめていました。

「さてと、次は直子のお仕置き部屋とやらを、見せてくれる?」

 お仕置き部屋というのは、我が家のサンルームのことです。
 バルコニーに温室のように張り出した、窓全面がマジックミラー張りの畳6畳分くらいのスペース。
 主にお洗濯物干しに活用しているスペースなのですが、シーナさまが頻繁に訪れるようになって、やがてこのお部屋がメインのプレイルームとなっていました。

 マジックミラーなので夜になると、窓が全面鏡と化すこと。
 お洗濯ものを干すために物干し用パイプやポールが設えてあるので、私を恥ずかしい格好で縛りつけるのに好都合なこと。
 窓脇のドアからすぐにバルコニー、つまりお外に出られること。
 バルコニー側のお隣は広い駐車場なので、近くに建物が無く、バルコニー内を覗かれる危険が少ないこと。
 バルコニーに張り出した部分の床はタイル敷きでお外に排水できるため、汚してもお掃除が楽なこと。
 トイレとバスルームに隣接していること。

 などなどの理由でシーナさまが気に入って、いつしか私を虐めるときはいつも、このサンルームを使うようになっていたのでした。

 そしてシーナさまは、このスペースを、ご自分の好みに合うようにいろいろ改造されました。
 
 まずはパイプ式の簡易ソファーベッドを導入。
 それからインターフォンで使うような監視カメラを設置して、持ち込んだ大きなモニターでリアルタイムにお部屋の様子が映し出されるようにしました。
 もちろん録画も出来ます。
 カメラを何台か繋げて一度にモニターに映す装置まで置いてあります。
 さらに、本格的なバレエバー、バレエの練習のときに手でつかまる手摺りのこと、まで壁際に設えてしまいました。
 もちろん大家さんの許可をいただいて。
 私がバレエをやっていたことは、大家さんもご存知でしたので、お話はスムースだったそうです。

 こうしていつしかお仕置き部屋と呼ばれるようになったこのスペースで、私はシーナさまからさまざまなお仕置きを受けてきました。
 
 パイプとポールに磔のような格好で縛り付けられて全身を鞭打たれたり、タイルの上で蝋責めされたり、全裸のM字縛りでローターをアソコに挿れられたまま深夜のバルコニーに放置されたり、バレエバーに結び付けたコブつきロープで股間を嬲られたり、パイプベッドに大の字のままシーナさまの股間を舌だけでご奉仕したり・・・
 そんな恥ずかしいお仕置きの様子は、監視カメラやシーナさまの手持ちカメラで逐一記録され、シーナさまのライブラリーになっていました。

 サンルームに入って電気を全部点け、下がっていたブラインドをすべて上げました。
「うわー。ここは、すごいわね!」
 煌々と輝く光の中で窓ガラスがすべて鏡となり、着衣の美人さんと全裸に首輪のマゾ女を容赦無く映し出しました。

「こんな鏡張りの部屋でえっちなことしたら、かなり恥ずかしいわよね」
 おっしゃいつつ、窓横にあるバルコニーへの出口ドアを躊躇無く開いたお姉さま。
「見晴らしは広々としているんだ。これなら陽当たりいいわね。あ、ほんとだ、高層ビルがバッチリ見える」
 バルコニーに降りたお姉さまは、夜空を見上げているようです。

「直子、ちょっとこっち来てごらん。ほら、あのへんがあたしのオフィス」
「えっ?」
 全裸に首輪ですから一瞬、躊躇。
 でも、見られちゃう心配はほぼないことがわかっているので、意を決して、それでもやっぱり前屈み気味になって、バルコニーに降り立ちました。

「ほら、真ん中より少し上の左端のほう、電気の点いているフロアが縦に3つあるでしょう?その上の暗い窓があたしたちのオフィスよ」
「えっ?あ、あの、えっと・・・」
 
 お姉さまの背中から一歩下がった位置で、胸と股間を両腕で隠した中腰のまま、おずおずとお姉さまが指さす方向に目を向けました。
「シーナさんに教えてもらったのよ。直子んちのベランダからオフィスが見えるはずよ、って」
 遠くに見える高層ビルの一角に、ご指摘通りの箇所がありました。

「この感じなら、うちのオフィスからもここが覗けるかもね。オフィスの開業祝に天体望遠鏡いただいたのよ。とある業者さんから」
「高層ビルの窓からなら、きっと夜空が綺麗でしょうから、って。最初は面白がってみんなで覗いていたけれど、最近はぜんぜん使わずに埃かぶっているわ」
「今度ヒマなときに試してみるわね。あ、でも知ってる?天体望遠鏡って、景色が逆さまに見えるのよ・・・」
 
 ハイテンションでおしゃべりされていたお姉さまが、私のほうを振り向いた途端にお口をつぐみました。
 薄暗闇の中、今更のように私の全身をしげしげと見てきます。

「直子ってすごいのね。自分ちのベランダに、まっ裸で出ちゃうんだ?」
「あ、こ、これはその、よ、夜ですし、周りからは覗けない、って知っていますから・・・」
「だとしたって、ヘンタイよ。ここだってれっきとした外、パブリックプレイスなのよ?見上げた露出狂っぷりだわ」
「そ、それに、今はお姉さまと一緒ですから・・・い、いつもより大胆になれる、って言うか・・・」

 私の本心でした。
 お姉さまが一緒にいてくださるなら、どんどん大胆になれる気がしていました。
 それを聞いたお姉さまは、ニコッと笑って裸の私をその場でギュッと抱き寄せ、唇を重ねてくださいました。
「んぐっ」
 少しだけ舌を絡め合います。
 お外の風がやさしく私の素肌にまとわりついてきます。

「そう言ってくれると、なんだか嬉しいわ。あたし、直子にそんなに信頼されているのね」
 唇を離してから、お姉さまが照れたように微笑みました。
 それからちょっとイジワルなお顔になって、
「もしもあたしのオフィスからここを覗けるようだったら、そのときは直子に、ここでオナニーしてもらうからね」
「それをあたしは、遠く離れたオフィスの窓から望遠鏡で覗き見るの」
 冗談ぽくそんなふうにつづけて、私の手を引いてお部屋の中に戻りました。

「そうそう、直子って、えっちなオモチャ箱を隠し持っているのでしょう?宝箱だっけ?それも見せてよ」
 ソファーベッドに腰掛けたお姉さまが、そんなことをおっしゃりながら、手許にあったリモコンのボタンを何気なく押しました。

 壁際の大画面モニターに一瞬閃光が走り、モニターに窓際の一帯が、右斜め後ろからのアングルで映し出されました。

「なるほどね。鏡の前でえっちなことをしていると、鏡に映った正面からの姿が横のモニターにも大画面で映るっていうしかけなのね」
「あ、はい。何台かカメラを繋げられるので、モニター画面を4分割にしてそれぞれを全部一度に映すことも出来ます」
「ふーん。それは愉しそう。録画も出来る?」
「はい。SDカードで」
「あたしちょうど未使用のカード持っているわ。今夜の様子が残せるわね」
 お姉さまが再び、ご自分のバッグをがさごそし始めました。
 
 そのあいだに私はお姉さまのお言いつけ通り、寝室にしている自分の部屋から、海外旅行に使うような大きなスーツケースを運び出しました。
 この中には、私のからだを虐めるために、自分で買ったり、やよい先生やシーナさまからいただいたえっちなお道具がぎっしり詰まっています。

「うわー。これまたすごいわね!」
 スーツケースを開くと、お姉さまが感嘆のお声をあげられました。


就職祝いは柘榴石 03

2014年9月14日

就職祝いは柘榴石 01

 その年の私は、卒業はしたもののお仕事が決まっていない、いわゆる、就職浪人、の身の上でした。
 希望だった幼稚園教諭免許は、なんとか取得出来たのですが、実習の過程でどんどん自信がなくなっていました。
 実習に伺った幼稚園の先生方もみなさまいい人たちでしたし、可愛い子供たちと遊ぶのもとても楽しかったのですが、ひとさまの大事な幼いお子様のお世話をする、というお仕事の責任の重大さに怖気づいてしまったのです。

 両親は、せっかく独り暮らしを始めたのだから、あと1、2年がんばって、自分がやりたいことをみつけてきなさい、と励ましてくれました。
 在学中に図書館司書の資格も取得出来たので、これから公務員試験のお勉強をして、どこかの公立図書館に入れたらな、と考えていました。
 なので、東京に来て3年目の私は、公務員試験の通信教育を受けつつ、何か他の資格、たとえばお料理とか薬剤師とか、にも挑戦してみよう、という、とても中途半端な状態で4月を迎えました。

 でも見方を変えれば、就職出来なかったからこそ、絵美お姉さまと出逢えた、とも言えます。
 もしも幼稚園などに就職が決まっていたら、3月中はその準備でてんてこまいで、絶対に、知らない街のランジェリーショップで破廉恥な冒険をしてみよう、なんていう心境にはならなかったでしょうから。

 絵美お姉さまと初めてのお泊りデートをした日の翌週、お約束通り火曜日にお姉さまからご連絡をいただき、その週末にまた、お姉さまとお逢い出来ることになりました。
 今度は、どんな展開になるのだろう?
 ふしだらな期待にドキドキしながら、指折り数えて当日を待ちました。

 4月の第一週目の金曜日、午後6時40分。
 待ちあわせ場所は、有名高層ビルの名前を冠したショッピングモール内のイタリアンレストランでした。
 
 例によって何を着ていくか迷いましたが、今回も無難に、ブラウス、スカート、ジャケットの学生風にしました。
 前回、最初は普通の格好だったのに、お姉さまのご命令によって、公の場所でどんどんみるみる恥ずかしい格好にさせられてしまった、あのめくるめく恥辱感が忘れられなくなっていました。
 それを再び期待しての選択でした。

 先週お借りしたニットワンピースは、クリーニングに出して、戻ってきたビニール袋ごとバッグに入れ、お姉さまにお返しするつもりです。
 少し早く着いたのでレストランの入口前で待っていると、濃茶のビジネススーツに身を包まれたお姉さまが、大きなバーキンを肩に提げて現われました。

 席に案内され、オーダーを決めてホッと一息。
 このあいだみたく個室ではない、普通にたくさんテーブルが並んだレストランなので、秘密のアソビは出来なそう。
 ウェイターさんが立ち去ると、お姉さまが私を見てニッて笑い、会話の口火を切りました。

「一昨日にね、百合草女史とシーナさんにお会いしてきたのよ」
「えっ?」
 予期せぬ告白になぜだか少し動揺しちゃう私。

「あ、百合草先生のお店に行かれたのですか?」
「ううん。いろいろお聞きしたかったから、水野先輩に頼んで無理言って、お店始まる前に時間作ってもらったの」
 水野先輩というのは、通称ミイコさまのことで、やよい先生とご一緒にお店をやられているパートナーの女性です。
「結局夜まで居て、お店でも軽く呑んできちゃったけれどね」
 お姉さまが小さく笑いました。
 
「でもなぜ急に、百合草先生のところへ・・・?」
「直子とあたしがつきあうことになりました、っていうご報告を一応ちゃんとしておこうと思ってね」
 そのお答えを聞いて、すっごく嬉しい気持ちになりました。
 お姉さま、私とのこと、本当に真面目に考えてくださっているんだな、って。

「ほら、直子にとって百合草女史って、紫のバラのひと、みたいな感じじゃない?シーナさんは、うーんと、月影先生かな?」
 わかるようなわからないようなたとえでしたが、そう言われてみればそんな気もします。
「だから、これからは直子を気安く誘わないでくださいね、っていう軽い威嚇も込めてね」
 冗談めかしておっしゃって、クスッと笑いました。

 そう言えば私が、やよい先生やシーナさまとの過去を告白したとき、お姉さまが、ジェラシー感じちゃう、なんて感想をおっしゃっていたっけ。
 嬉しさがどんどん膨らんじゃう私。

「おふたりともお元気そうでしたか?」
「そうね。ふたりとも直子のこと、とても気にかけているみたいよ。いろいろ褒めていたわ。昔のえっちなアソビのこと、たくさん聞いちゃった」
「ほとんどは、このあいだ直子が話してくれたのと同じだったわね。あたしたちがつきあうって聞いて、シーナさんは少し残念そうだったわ」
 そんなお話をされても、私はどんな顔をすればいいのでしょうか。
「私、百合草先生のお店、一度も伺ったこと無いんです。だから先生には、ずいぶんお会いしていないんです」
「ああ、ぜひ今度ふたりでいらっしゃい、っておっしゃっていたわよ」

 そこでお料理が運ばれてきて、しばらくはそれを美味しくいただきながら、私の昔のえっちなあれこれで、お姉さまからいろいろからかわれました。
 食後のリモンチェッロが運ばれてきたとき、お姉さまが少し真面目なお顔つきになり、私を見つめてきました。

「これを飲む前に、素面なうちに、今日の一番大事な話をしておくわね」
 わー美味しそう、ってグラスに口をつけようと持ち上げていた私は、あわててグラスをテーブルに戻しました。
「あ、はい」

「直子って、今年卒業したけれど、就職していないんだって?」
「はい、そうです・・・」
「あたしてっきり、まだ学生さんだと思っていたのよ。だからそういう発想、無かったのだけれど」
「直子は、今後のビジョンとかあるの?将来こういう仕事につきたい、とか」
「いえ、これといって・・・とりあえず公務員試験を目指そうかな、くらいしか、今のところ・・・」

「だったらさ、うちで働いてみない?」
「うち、ってお姉さまの会社ですか?」
「そう」
「お仕事は、アパレル、でしたよね?」
「そう。デザイン主体だけれど、企画から製作、販売、いろいろやっているわ」
「私、そういう知識無いですし、センスもたぶん・・・」
「ううん、そういうのは関係ないの、あんまり。直子には、あたしの秘書的なお手伝いをして欲しいのよ」
「秘書、ですか?」

 お姉さまの秘書・・・
 秘書というお仕事の、なんとなくなイメージはあるのですが、具体的に何をするのかはぜんぜんわかりません。
 でも、漠然とカッコイイ感じだし、お姉さまといつでも一緒にいれそうだし・・・

「シーナさんが言い出したのよ。あの子、あ、つまり直子のことね、就職決まっていないから雇っちゃえば?って。そしたら女史も先輩も大賛成」
「あの子は、たぶん今までバイトもしたことないし、ああいう子だから就職するにもいろいろややこしいと思うのよね、って」
「男性ばかりの職場は絶対無理だろうし、お金にも困っていないから、放っておくとずっと働かなそうだし、って、これは全部シーナさんの発言だからね」
「だから、あたしが養ってあげるしかない、って、3人からさんざん売り込まれちゃった」
 お姉さまが嬉しそうにクスクス笑いながら、リモンチェッロのグラスに口をつけました。

「あたしのオフィスは、社員はあたしを含めて女性6名、全員男性不用のレズビアン。ペイはあまり出せないけれど、居心地は良いはずよ」
「コンセプトは、簡単に言うと、女性による女性のためのファッションブランド。だから、おつきあいしている会社もほとんど、女性主体なの」
「これがうちの会社概要資料ね。ひとりになってからゆっくり見て、じっくり考えてみて」
 オフィス・ダブルイー、というオシャレなレタリング文字が踊る厚めな白い封筒を手渡されました。

「ダブルイー、っていうのはWEではなくてEEって書いて、エレガントアンドエロティック。偶然あたしのイニシャルでもあるから、あたしが無理矢理社長にされっちゃったというワケ」
「ほんとですか!?」
「嘘みたいだけどほんと」
 お姉さまの色っぽい苦笑い。
「でも、私なんかでいいのですか?」
「私なんか、ってどういう意味?直子だから誘うんじゃない。何言ってるのよ?」
 少し怒ったようなお姉さまのお言葉がハートにズキュン!

「さあ、これで直子への勧誘はいったん終わりね。これからは、スールとしてのデートを楽しみましょう」
 ふたりのグラスをチンとして、私は封筒を自分のバッグにしまいました。
「これ飲んだら、今夜は直子の部屋へ行くからね。百合草女史やシーナさんにいろいろ教えられて、試してみたいことがたくさんあるの。いいわよね?」
 お姉さまのお顔が、えっちぽく笑っています。
「はい。それはもちろん」
 なんとなく予感がして、お部屋は綺麗にお掃除してきました。

「ところでお姉さま?お姉さまのオフィスって、この近くにあるのですよね?」
 お誘いに耳を傾けながら、ずっと気になっていたことを聞いてみました。
「どのあたりなのですか?」
「あれ?まだ教えていなかったけ?」
「はい。聞いていません」
「そうね、ここからだと、一階まで降りて少し歩いてからエレベーターに乗って1分くらいかしら」
「えっ?ひょっとして・・・」
「このビルの高層階、真ん中より少し上」

 うわー、こんな有名なビルのすごーく高いフロアでお仕事が出来るんだ。
 見晴らし良さそう。
「お外見えます?」
「もちろん。夜景とか、すっごく綺麗よ」
 私の中で、お姉さまの会社への就職は、完全に決まりました。

 それからお外へ出て、すっかり陽の落ちた薄暗い道を私が住むマンションへと、おしゃべりしながらぷらぷら歩き始めました。

「お姉さまの会社って、高校のときの服飾部のお友達が集まって作られた、っておっしゃっていましたよね?」
「そうよ。あたしと同学年のあとふたりが主要メンバー。デザイン部門と営業部門」
「それでその服飾部の頃、私みたいな人がいて、その人をよく虐めていたって、このあいだ・・・」
「ああ、アユミのことね。でも虐めていたんじゃないってば。悪ふざけみたいなもの。彼女だってキャッキャ悦んでいたもの」
「どんなことをされていたのですか?すごく知りたいです」

「よくある悪戯よ。授業中にこっそりパンツ脱げ、って命令したり、ノーブラで体育の授業受けさせたり」
「ああ」
「仲間にそういうオモチャが手に入る子がいたから、授業中にリモコンローターで虐めたりね」
「すごいですね」
「あら、直子だって、友達にそういう子がいたって言っていたじゃない?ヌードモデルさせたとか。美術部の子だっけ?」
 私の高校時代のお友達、しーちゃんとクリスさんのことです。
「はい。でもお姉さまたちのほうがもっとすごそう」
「アユミも美術部に貸し出したことあるわよ。ヌードデッサンのモデルとして」

「女子高はね、けっこうそういうの、えげつないよね。休み時間にトイレにこもってイかせ合ったりしていたもの」
「うわー。うちの学校では、そこまではなかったと思いますよ?たぶん」
「そうなの?まあ、あたしたちもノリの良さそうな子としかしなかったけれどね」

「服飾部ならではで言うと、スクール水着の裏地こっそり取っちゃったり、胸と腰周りだけメッシュのワンピース作って着せてみたり」
「服飾部だと、採寸や試着で着たり脱いだりを部室で頻繁にするから、肌を見せることには抵抗が薄れちゃうのよね、まわりみんな同性だし。うちの学校、教師もほとんど女だったし」
「でも、そんな中でひどく恥ずかしがる子がいると、一気に愉しくなっちゃうのよ。いろいろ悪戯考えて」

「一番傑作だったのは、制服のとそっくりな色合いでもっと軽くて薄い布地でスカート作って、風の強い日にアユミに穿かせて街に遊びに出たの」
「一緒に歩いていると、もう面白いくらい、アユミのスカートだけフワフワめくれちゃって、凄かったわよ」
「ちゃんと膝丈で、一見みんな同じスカートなのにね。道行く人も呆気にとられていたわ。ずっとついてくる男子とかいたし」
「卒業してから昔話したとき、アユミも、あれが一番恥ずかしかった、って言ってたな」
「でも彼女、そのわりには気に入ったらしくて、その後もよく好んで穿いていたのよ。下にTバックのパンツとか着けて」

「そのアユミさんていうかたは、お姉さまの会社には入らなかったのですか?」
「うん。彼女はその後、モデルになったの。いわゆるグラビアアイドルってやつ?けっこうその世界では有名みたい」
 お名前をお聞きしましたが、聞いたことあるような無いような。
「今でもDVD出してがんばっているわよ。やっぱり視られるのが好きなのよね。うちでたまにコスチュームのデザインもしているから、うちに入れば、そのうち会えると思うわ、アユミに」
「へー。まだおつきあいがあるのですね?」
「もちろん。だからぜんぜんイジメじゃないでしょ?」

「直子にもそのうち、いろいろ恥ずかしい衣装を作ってあげるわ。嬉しいでしょ?」
「・・・はい・・・愉しみです」

 そんなおしゃべりを楽しくしつつ、夜8時ちょっと過ぎに私のマンションに到着しました。


就職祝いは柘榴石 02


2014年9月7日

ランデブー 6:42 10

 押入れとエアコン以外は何も無い和室六畳間の中央に、二組のお布団が並べて敷いてありました。
「わぁ、なんだか旅行に来たみたい。旅館みたいですね」
「ここは本当に寝るためだけの部屋だからね。余計な物は置いてないの」
 おっしゃりながら、お姉さまがバスローブの紐を解き、スルスルッと脱ぎ捨てて裸になりました。

「裸になると、また何かしたくなっちゃうけれど、あたし、明日のために寝ておかないとまずいから、ごめん、電気消すね」
 お姉さまが枕元に置いてあったリモコンで電気を消し、お布団の上に座っていた私を抱き寄せてチュッと頬にキスをくださってから、ドアに近い側に敷いたほうのお布団に潜り込みました。
 残念だけれどわがままは言えないので、私も隣のお布団に潜り込みます。

「直子はあたしが出て行った後も、好きなだけ寝ていていいからね。明日はうちの会社もお休みだから、ここにも誰も来ないはず」
 暗闇の中、私のほうを向いているらしいお姉さまのハスキーなお声が聞こえてきました。

「冷蔵庫に冷凍ピラフとか、いろいろあるがら遠慮しないで自由に食べていいわよ。シャワーもご自由に」
「あ、はい」
「そうそう、この部屋はオートロックだから、いったん外に出たらもう入れないからね」
「もしもうっかり裸のまま廊下に出てドア閉じちゃったら、大変なことになっちゃうわよ?」
 おそらく、そうなったときの私を想像しながらおっしゃったのでしょう、クスクス笑い混じりなお声でした。

「たぶん来ないとは思うけれど、宅配便とか、他の誰が来ても出なくていいから。インターフォンにもね」
「あと、明日もし晴れていたら、掛け布団だけ、ベランダに干してくれると嬉しいかな、午前中いっぱいくらい」
「出来たらでいいわ。用事があって午後まで居られないなら、そのまま押入れにしまってくれればいいから」
「はい。別に明日は用事ありませんから」

「ンンーーーッ」
 お姉さまがお布団の中で伸びをされたよう。
「おっけ。それじゃあ、おやすみー」
「おやすみなさい」

 お姉さまのお布団が束の間ゴソゴソ動いて、やがてしんとなりました。
 私も目をつぶりましたが、頭の中で今日の出来事のおさらいが始まり、なかなか寝つけません。
 4、5分くらいそうしていたら、再びお姉さまのお布団がゴソゴソしだしました。

「直子?」
 ひっそり声で問いかけられます。
「はい」
「起きてたの?」
「はい、なかなか眠れなくて」
「あたしもよ。気が昂ぶっているのか目が冴えちゃって」

「お姉さまは、明日何時に起きるおつもりなのですか?」
「5時半のバスだから、4時半くらいには起きないとね」
「あらら。もうあんまり時間がないですね」
 おそらくもう深夜2時近くになっているはずです。

「直子?」
「はい?」
「こっちおいで」
「え?」
「もういいや。バスや飛行機の中でも眠れるし、この昂ぶりを鎮めるほうが建設的みたいだから」
 お姉さまがご自分の掛け布団の端を開き、私は喜んで滑り込みました。

 お姉さまのスベスベなお肌に密着して、横向きに抱き合いました。
 唇を重ね、お布団の下でおっぱい同士を密着させ、脚を絡めます。
 お姉さまのしなやかな右の太腿を私の両脚で挟み、お姉さまの右腿が私の股間をスリスリ、私の左腿がお姉さまの股間をスリスリ。
 いやらしい声が出そうになると、お姉さまの舌が塞いできます。
 粘膜を互いの腿に擦りつけるように腰を振って、ふたり、じわじわと高まっていきました。

 そのうち、お互い左腕だけで抱き合う形となり、右手は互いの秘部へ。
 互いの指が互いの粘膜を執拗に責め立てます。
 上半身をクネクネくねらせて乳首を弾き合うあいだも、唇はずっと重ねたまま。
 掛け布団はすっかりはだけたようで、真っ暗闇の中、上と下の唇を貪り合うクチュクチュという音と、ハアハア荒い息遣いだけが響きました。

「んんんぅーうっ!」
「うっうぅーんっ!」
 クチュクチュのピッチが上がり、互いの背中が弓反ります。
「んはぁーっ!!!」
「あふぅーっ!!!」
 ふたり、ほぼ同時にイって、抱き合ったまま、ぐったり。
 そして、ぐっすり。

 目覚めたとき、自分がどこに居るのか一瞬わかりませんでした。
 すぐに思い出して上半身を起こします。
 私は、最初に寝たほうのお布団に戻っていて、お隣のお布団はもぬけの殻。
 掛け布団だけ、きれいにたたまれていました。

 今何時なのだろう?
 薄暗い寝室を見渡しても、どこにも時計は無いみたい。
 お姉さまったら、目覚ましもかけず時計も無しで、ちゃんと起きて出かけられたんだ。
 さすがお姉さま、って感心しながらも、フワーッとあくびをひとつ。
 えいやっ、て立ち上がり、お隣のリビングへ。

 壁の丸い時計は、朝の9時を少し回っていました。
 ターコイズブルーのカーテンを開くと、もう一枚真っ白なレースカーテン。
 大きな窓から眩しい陽射しがパーッとリビング内に射し込んで、お外は快晴のようでした。

 昨夜までお姉さまの上着を着ていたワイヤートルソーが、私のジャケットだけまとっています。
 テーブルの上に、旅行用のような歯磨きセットと白い紙と外国ブランドのショッパーがひとつ、そして私のバッグが置いてありました。
 白い紙は、お姉さまからの置き手紙でした。

 直子へ
 おはよう。よく寝ているようなので起こさずに行きます。
 火曜日に戻る予定なので、戻ったら連絡します。次に会う日を決めましょう。
 ブラウス、スカート、ソックスは汚れているのでクリーニングに出しておきます。
 代わりの服を置いておくので、帰りはそれを着て。直子にはニットが似合うと思う。
 下着は無しよ。ドレイだから(笑)
 ハブラシも持って帰ってね。
 次に会う日が楽しみです。それではよい一日を

 そのお手紙を二度読み返してからたたんで自分のバッグにしまいました。
 それからショッパーの中身を取り出します。
 真っ白なニットワンピース!
 生地がふわふわ軽くって、ひょっとしてカシミア?
 ラウンドネックの七分袖で、すっごく可愛い!

 すぐにでも着てみたかったのですが、まずは朝のおつとめをしなければ。
 歯磨きセットを手に取り洗面所へ。
 
 鏡を覗いたら、それに気づいてしまい、途端に全身が火照ってしまいました。
 私の首筋や胸元、二の腕にうっすらと残る淡い内出血。
 お姉さまからのキスマーク。
 数えたら、鏡で見えるだけでも5つありました。
 もう、たとえようもないくらい幸せな気持ちです。

 歯を磨いてから顔を洗おうと前髪を上げたとき、おでこにも赤っぽい痕があるのに気がつきました。
 こちらのは、ルージュの痕のよう。
 淡いながらも、はっきり唇の形に残っています。
 きっとお姉さまがお部屋を出る直前に、私のおでこにチュっとしてくださったのでしょう。
そう考えたら、鏡の中で自分の顔がだらしなく緩み、えへへ、って笑ってしまいました。

 おでこのマークを消さないように注意深く顔を洗っていたら、良いアイデアが浮かびました。
 
 今日は別に予定も無いし、ゆっくりしていけます。
 それに、このお部屋にいる限り、着ける下着が無いので、必然的に全裸でいることになります。
 だったら、いつも自分の家で妄想と共に実行している全裸家政婦を、実際に、このお部屋でやってみたらどうだろう、って。
 
 昨日のお姉さまとのあれこれを思い出して余韻に浸りつつ、お姉さまへの感謝の気持ちを込めて、このお部屋を綺麗にお掃除してから帰るのです。
 お姉さまのお願い通り、お布団を干して、ついでにバスタオルとかもお洗濯して、自分で汚した床やソファーももう一度綺麗にして・・・
 そう決めたら、ワクワクムラムラしてきました。

 おトイレの後、とりあえずリビングに戻って、段取りを考えることにします。
 ソファーにバスタオルを敷いて腰掛け、あらためてお部屋を見渡しました。
 昨日まで来たこともなかったよそさまのお部屋で、ひとりこうして全裸で居ることに、そこはかとなく興奮してきます。
 なんで私は今こんなところで、裸ん坊なのだろう?
 誰も訪ねて来ないことがわかっているとは言え、絶対非常識です。
 不安感、背徳感、罪悪感、倒錯感・・・
 そういうのがないまぜになって、あそこがキュンキュン疼きます。
 
 だめだめ、そういうのはあと。
 お仕事が終わってから。

「全裸家政婦直子、絵美お姉さまのために、精一杯ご奉仕、がんばります!」
 マゾの服従ポーズになって、実際に口に出して言ってみて、自分で照れてしまいました。

 お布団やお洗濯ものは、お日様がある早いうちにお外に干さなければいけません。
 まずはお布団を干してしまいましょう。
 
 リビングの突き当たりのレースのカーテンが掛かった大きな窓。
 その向こう側がベランダのようです。
 あの窓を開けると、お外の様子がどうなっているのか?
 全裸家政婦にとっては、最初から難問でした。

 立ち上がって窓際へ。
 レースカーテンを開けると全面曇りガラスの窓。
 窓の鍵をはずしてから、向かって右側のターコイズブルーのカーテンに裸身をくるみ、窓をそっと開けてみました。
 もあーっとした街の喧騒音と共に、春の陽射しとそよ風がお部屋に舞い込んで来ます。
 いいお天気。

 カーテンの陰からお外を覗くと、一段低くなっているベランダ自体は意外に狭く、幅は畳一畳分くらい、細長いスペースでした。
 目隠しフェンスはコンクリート製ぽくて、隙間も無くかなり高め。
 ベランダの向こう側は青空で、見える範囲に建物は見えません。

 これなら裸のまま出ても大丈夫かな?
 でも、ここはお姉さまの会社のお部屋だし、万が一誰かに見られちゃって変な噂になったらご迷惑だし・・・
 目隠しフェンスが高めなことはわかったので、カーテンの陰から出て、その場にしゃがみました。
 片方の窓を全開にして、しゃがんだままベランダに降りてみます。
 両脇のお部屋のベランダとは上まできっちり目隠しされているので、しゃがんでいる分には、どこからも見られちゃう心配は無いみたい。

 お外側の目隠しフェンスは、1メートル3~40センチくらい?
 私が立ち上がったら、バストギリギリかな。
 ステンレスの物干し竿が、そのフェンスより高い位置に二段あるので、そこにお布団を掛けるとしたら、背伸びしなければ無理。
 だからやっぱり、最低バストだけは何かで隠さないと。
 バスタオルでも巻こうか・・・

 しゃがんだままフェンス際まで寄って、恐る恐る少しづつ腰を上げ、顔だけフェンスを超えるように外へ向けると、眼下に緑の木々が見えました。
 ベランダの対面は広めな公園のようです。
 子供たちのはしゃぐ声が聞こえてきます。
 中腰のまま急いでリビングに戻りました。

 全裸のままベランダに出て、お布団を干すのは無謀のようです。
 さあどうしましょう?
 考えながらも、私の下半身は今の冒険でヌルヌルでした。
 だって、しゃがんだままとは言え、全裸でよそのお家のベランダに出ちゃったのですから。
 お外の空気が、文字通り全身をやさしく包んで愛撫してくれたのですから。

 ああんっ、今すぐオナニーしたいぃ!
 だめよ!お仕事が終わってから!
 
 心の中のふたりの私の鬩ぎ合いは、お外が公園、と知ったとき、すでに答えを出していました。
 ベランダ下の景色を見て、公園、という言葉が浮かんだ瞬間、昨夜の裸ブレザーのスリル、恥ずかしさ、興奮をまざまざと思い出していました。

 この状況なら、こうするしかありません。
 寝室に戻り、掛け布団を2枚とも窓際に運びました。
 それから、お姉さまのトルソーに駆け寄り、自分のジャケットを取って素肌の上に羽織りました。
 ジャケットの裏地が素肌を包む感触で、昨夜の性的高揚が鮮やかに蘇ります。
 上のボタンひとつだけ留めて、窓際に戻りました。

 掛け布団を一枚持ってベランダへ。
 上半身は裸ブレザー、下半身は丸裸。
 ベランダとは言え立派にお外なのに、私ってば、なんていう格好。
 破裂しそうなドキドキを感じつつ、何食わぬ顔で背伸びしてお布団を物干しに掛けます。
 背伸びするとジャケットの胸元が浮いてたわみ、自分の胸元を見下ろすとたわんだVラインの中で、おっぱいが乳首まで丸見えになっていました。
 
 二段ある物干しの高いほうにお布団を掛けると、お布団がいっそう高い目隠しとなり、私の全身をすっぽり隠してしまうようです。
 ということは、干したお布団の裏側なら・・・
 淫らに歪む自分の顔を自覚しながら、まだ何も干していないほうのフェンスに寄って眼下の公園を見下ろしました。

 公園では何組かのママさんと小さい子供たちが甲高い声を上げて遊んでいました。
 フェンスに両手を乗せて公園を眺めながら自分の淫らさに酔っていると、こちらを見上げている女の子に気づきました。
 ずいぶん遠くだったけれど、目が合った気がしました。

「おねえーさーん、おはよーございまーすっ」
 5、6才くらいの可愛らしい女の子が私を見上げて手をぶんぶん振ってきました。
 傍らに居たママさんらしき人も、娘につられて私を見上げ、こちらに小さく会釈をしてから、ニコニコと女の子に何か語りかけています。
 私も会釈を返し、小さく手を振り返しました。
 それを見た女の子は、ますます喜んで手を振りつづけます。
 しばらく手を振り合っていたら、もうどうにもがまん出来なくなって、リビングに戻りました。

 もう一枚のお布団を、お外を見ないようにして大急ぎで干し終え、リビングに戻るなりジャケットのボタンをはずし、フローリングに寝転びました。

 なんてはしたない女なのよ、直子!
 裸ブレザーに下半身丸出しで、よそのお家のベランダに出て、いたいけな女の子にニコニコ手を振ったりして・・・
 こんなによく晴れた土曜日の午前中なのよ?普通の人は健全に親子で公園を楽しんでいるのよ?
 それなのに直子はえっちなことばっかり考えて、ヘンタイなことしか頭になくて、オマンコからおツユをだらだら垂らしながら嬉しそうに微笑んで・・・

 乳首とおマメをぎゅうぎゅう潰して自分を虐め、しばらくふしだらな快楽に耽ってしまいました。

 やっとムラムラが落ち着いてからは、真剣に全裸家政婦にいそしみました。
 昨夜ふたりが使ったバスタオルとシーツをお洗濯。
 干すときは、掛け布団2枚が目隠ししてくれているので、思い切って全裸のまま、ベランダに出ちゃいました。
 お布団をあげて仕舞って和室のお掃除。
 リビング全体の床とソファーをもう一度念入りに拭き掃除。
 おトイレとバスルームも水浸しになりながら入念に磨きました。

 気がつくともう午後2時近く。
 さすがにお腹が減ったので、お姉さまのお言葉に甘えて、冷凍ピラフとインスタントのスープをご馳走になりました。
 食休みはファッション雑誌をめくって、しばしまったり。

 3時前にベランダに出ると、バスタオルもシーツもポカポカに乾いていました。
 シーツは寝室の押入れへ、バスタオルは脱衣場の籠の中にしまいました。
 ここまでは全裸。
 あとはお布団です。
 これを取り込んだら、もう帰るだけ。
 なので、お姉さまがご用意してくださったニットワンピースを着てみることにしました。

 すっごくいい感じ。
 布地表面はスベスベで、とっても軽くて、素肌でもチクチクしなくて、それでいてあったかい。
 ただひとつ。
 サイズが小さいのか、もともとそういうデザインなのか・・・
 すっごくボディコンシャス。

 完全に私のからだのライン通りのシルエットなんです。
 丈は膝のちょっと上くらいなので、下半身はノーパンでも良いのですが、問題は上半身。
 バストのふくらみが、わたしのおっぱいの形通りに布に包まれ、その左右の先端にまさに、これ見よがし、と言う感じで、恥ずかしい突起がポチポチッと浮き出ていました。
 うわー、なんだかすごくえっちぃ。
 洗面所の鏡に映して、ひとり赤面してしまうほど。
 だけど、これはお姉さまのお見立て。
 そう考えたら、この姿が自分らしいのかな、とも思えてきました。

 その姿でベランダに出て、お布団を取り込みました。
 お外は少し陽が翳ってきていますが、公園内にはまだ、けっこう人がいました。
 みなさんベンチに座ってまったりされているご様子。
 取り込んだお布団を寝室の押入れにしまい、窓に鍵をかけてカーテンを2枚とも閉じました。

 さあ、そろそろおいとましましょう。
 ジャケットを羽織ってボタンを留めたらバストのポッチも隠れ、コーディネート的な色合いもおシャレ。
 昨夜の裸ブレザーノーパンミニスカに較べたら、ぜんぜんファッショナブル。
 
 このままショッピングモールにお買い物にでも行きたいような気もするけれど、やっぱり今日はまっすぐ帰ります。
 お姉さまとの昨日からのあれこれを反芻して、もう一度思い切り身悶えたい気分だから。
 戸締りをしっかり確認して、忘れ物をチェックして、お部屋の玄関ドアを出たのは、午後3時42分。

 そんなふうにして、私と絵美お姉さまとのおつきあいは、始まりました。


就職祝いは柘榴石 01

2014年8月31日

ランデブー 6:42 09

「あの、お姉さま、バスタオルか何かをお借り出来ますでしょうか?」
「いいけれど、なぜ?」
 
 私が自分の足元に視線を落とすと、つられてお姉さまも、同じ場所に目線を移されました。
 ニーハイソックスを脱がされてしまったため、内腿を滑り落ちるおツユを途中で堰き止めてくれるものがなくなり、床に恥ずかしい水溜りが出来ていました。

「このまま座ったら、ソファーを汚してしまいます」
「そんなこと気にしなくていいわ。そのソファー合皮だし、あとで拭き取れば大丈夫。それより早く、いやらしく悶える顔を見せて」
 
 お姉さまに促され、おずおずとソファーに腰掛けました。
 お尻の下がヌルッと滑ります。
 両手は後頭部で組んだまま、両膝をピッタリ閉じて、背もたれに背中を預けました。
 火照った素肌に、冷たいソファーが気持ちいい。

「両手、解いていいのよ。直子の好きなようにからだをまさぐって、好きなだけイキなさい」
 両手を腰に当てたお姉さまが私の真正面に立ち、ソファーに座った全裸の私を見下ろしていました。
「明るいままでいいわよね?視られたがりなのだから」
「あ、はい」
 お姉さまの瞳が妖しく輝いています。

 射抜くように見つめてくるお姉さまの瞳に視線を合わせ、ゆっくりと両手を後頭部から放し、体の前に持ってきます。
 居酒屋さんや街中での羞恥プレイで焦らしに焦らされた昂ぶりを、ついに慰めることが出来るのです。
 それも、大好きなお姉さまに間近で視られながら。
 すぐにイッちゃうだろうな・・・
 そう思いながら、自分のふたつの乳房を、左右それぞれの手でわしづかみました。

「はうんっ!」
 乳首に手のひらが触れた途端、からだがビクンと震え、閉じていた膝がだらしなく開き、恥ずかしい声がほとばしりました。
 ずっと長いあいだ物理的な刺激を渇望しながらもお預け状態だった私のからだは、全身が性感帯と化していました。
 
 乳首を指のあいだに逃がしてギュッと挟みつけながら、おっぱいをわしわしと揉みしだきます。
「あっ、あっ、あうっん!」
 おっぱいが歪むたびに下半身の奥がジーンと痺れ、粘膜から粘液がジワジワ滲み出てくるのがわかります。
「んっ、んっ、ぅうぅっん!!!」
 自分のからだが欲している淫らな刺激をお姉さまにもわかっていただけるように、すがるようにじっと見つめつつ、自分のおっぱいをいたぶりました。
 両方の乳首を指先で思い切り潰すように責めていたら、早くも頭の中で火花が炸裂しました。
 腰全体がクネクネ大きく悶えて、おっぱい虐めだけであっさりイってしまいました。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
 無我夢中でついつぶってしまった両目を開けると、お姉さまの視線とぶつかりました。
 お姉さまが形の良い唇の端を微かに上げて、小さな笑みをくださいます。
「はあんっ、お姉さまぁ・・・」
 その微笑にお応えしたくて、両膝を大きく広げました。
 両足をそれぞれソファーの上に乗せ、全開のアソコだけ前に突き出すような恥ずかしいM字です。
 
 直子のいやらしく濡れたオマンコ、中までじっくり視てください、お姉さま・・・
 お姉さまが大好き過ぎて、実際に声に出すことを躊躇してしまうヘンタイな科白を、心の中でつぶやきました。

 左手はおっぱいにそのまま、右手を裂け目へ。
 瞬く間にベットリ濡れる右手のひら。
 つづけてイキたい、何度でもイキたい。
 割れ始め付近でプックリ腫れている肉芽を、ギューッとつまみました。
「あうぅぅっ!!!」
 全身を電流がビリビリッとつらぬき、腰がソファーから大きく浮き上がりました。

「あっ、あっ、あぁっ・・・」
 親指と人差し指でおマメをつまんだまま、中指と薬指を曲げて穴へ潜り込ませました。
 そのまま膣壁をひっかくようにピストン運動。
 左腕でおっぱい全体を潰し、指先で右乳首を執拗に捻り回します。

「あああ、いい、いい、いぃーのぅっ!」
 お姉さまのお顔を見上げながら、訴えるように喘ぎます。
「あ、あっ、イク、イク、イッちゃうぅぅぅ!!!」
 潜り込んでいる指が強くキュッと締め付けられました。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」 
 右手全体が濡れてふやけてふにゃふにゃ。
 そのヌルヌルの手で左おっぱいを掴み、交代に左手を股間へ。
 ソファーの上で膝立ちの四つん這いになり、お尻をお姉さまに向けました。
 このほうがオマンコの奥までよく視ていただけるし、お尻の穴だって視て欲しいから。

 今度は左手の指三本を潜り込ませ、粘膜をかきまわします。
 ヂュプヂュプヂュプヂュプ・・・
 卑猥な淫音が自分の股間から聞こえてきます。
 首を思い切り捻ってお姉さまに向けると、バチッと視線がぶつかりました。

「何回イッたの?」
 相変わらず両手を腰に当て、真剣なご表情で私を見守るお姉さま。
「ああんっ、えっと、3回か、4回か・・・」
 自分のアソコを嬲る手は止めず、喘ぎ喘ぎお答えします。
「すごいわね。いくらか落ち着いた?」
「い、いいえ、どんどんどんどん昂ぶっちゃって、どんどんどん気持ち良くなっちゃっていますぅ・・・」

 お姉さまに高く掲げたお尻をぶって欲しい、思いっきり強く、何度も何度もぶって欲しい・・・
 そんな願望も口に出せないまま、それでもグングンのぼりつめていきます。
「あっ、あっ、あぁぁーーっ!」
 お姉さまの視線、お姉さまのお声、お姉さまの香り、お姉さまの息遣い・・・
 それらをこんなに近くに感じながら、浅ましく恥ずかしい自慰姿をご披露出来るだけで、本当に夢のよう。
「あーっ、あんっ、あぅんっ、え、絵美お姉さま、だ、大好きですぅぅ・・・!!!」
 はしたなくも贅沢な願望は封印して、心の底から想っている本心を叫ぶように声にすると、クリトリスを擦る速度が猛烈に上がって、またまたイってしまいました。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
 四つん這いだとお姉さまのほうを向きにくいことに気づき、再びM字に戻りました。
 今度こそずーっとお姉さまを見つめながらイこう。
 そう決めて、再び右手を股間に滑らせました。

 お姉さまは私から目線をはずし、うつむいていました。
 両手がご自分のおへそのあたりでゴソゴソしています。
「ああんっ、お姉さまぁ?・・・」
 アソコをまさぐる手は止めず、こちらを向いて欲しくて語尾が上がりました。
「んっ?」
 気づいたお姉さまが上目遣いで私を見ました。

「あたしのことは気にしないで、つづけてて」
 おっしゃりながらお姉さまは、スーツのスラックスのベルトをはずし、ジッパーをジジジッと下げました。
「直子の凄いオナニー姿見ていたら、あたしもがまん出来なくなっちゃった」
 照れたようにおっしゃってから身を屈め、スラックスを脱ぎ捨てました。

 お姉さまがお洋服を脱いでいる!
 お姉さまが裸になる!?
 一瞬、何がおきているのかわからなくなり、軽いパニック状態。

 それまでの私は、私だけが裸になってお相手は着衣のまま辱められる、という羞恥マゾプレイばかりを経験していたので、今日も、それが当然と思い込んでいたようでした。
 ランジェリーショップのときもそうでしたし。
 でも今日は、お姉さまも裸になって、私のお相手をしてくださるおつもりなんだ!
 考えてみれば、おつきあいを始めたふたりが夜更けにお部屋でふたりきりなのですから、そうなるのはあたりまえのことなのですが、マゾプレイに馴れ過ぎていた私にはひどく新鮮でした。

 今夜はマゾプレイではなく、恋人同士。
 初めてお姉さまの裸が見れる。
 初めてお姉さまと裸で抱き合える。
 初めてお姉さまと一緒にイける。
 ワクワクが止まりません。

 お姉さまは、スラックスの下は生足で、品の良いパープル色の布地が小さめな下着を着けていらっしゃいました。
 レースっぽいキラキラした生地で、とてもローライズ。
 ああいうのをスキャンティって呼ぶのかな。
 薄い布地にうっすら翳りが透けているような気がします。

 ブラウスのボタンをはずし始めるお姉さま。
 スキャンティとお揃いなパープル色のお洒落な小さめブラが覗きました。
 キリッとしたビジネススーツの下に、あんなえっちぽい下着を着けていたんだ。
 それってひょっとして、私のため?
 心臓がドキドキ弾んでいます。

「ほら、手が止まっているわよ?」
 セクシー過ぎるランジェリー姿になった美し過ぎるお姉さまが、ゆっくりソファーに近づいてきました。
 私の目前で立ち止まり、右手を伸ばしてきます。
 この世の人とは思えないほどクールビューティ!
「立って」
 お姉さまの右手を右手で捕まえると、ゆっくり引っ張られました。
 よろけるように立ち上がった瞬間、お姉さまのしなやかな両腕が私の背中に絡みつきました。

「むぐぅ・・」
 強く抱きすくめられると同時に、お姉さまの唇が私の唇を塞ぎました。
 あのショッピングビルのエレベーターのときと同じように。
 お姉さまの甘い舌が私の口内に挿し込まれます。
「むぅう・・・」
 私も舌を伸ばして迎え入れ、ふたりの舌が激しく絡み合います。
 お姉さまの右手は私の裸のお尻を撫で回し、私はお姉さまの背中に回した手探りで、ブラのホックをはずしにかかります。

 長く熱いくちづけの後からだを離すと、お姉さまのブラがスルスルッとふたりのあいだに落ちました。
「直子のからだ、すっごく熱くなっているのね。それにベトベト」
「お姉さまのからだ、ほんとにほんとに、すっごくお綺麗です」
 初めて見るお姉さまの生おっぱいは、少し小ぶりながら上向きにツンと尖った円錐形で、まさに美乳。
 淡いピンクな小さめ乳輪の中心に、感度の良さそうな小さめ乳首が精一杯背伸びをしていました。

 たまらず今度は、私からお姉さまにしがみつきます。
 私が勢い良く飛びついたために、お姉さまがバランスを崩してよろけ、ソファーの上にお姉さまを押し倒すような格好になってしまいました。
 仰向けになっても崩れない、お姉さまの美乳。
「あ、ごめんなさい、お姉さま」
 あわててからだを離す私。
「大丈夫よ。脱がせて」
 ソファーに腰掛け直したお姉さまが両脚をまっすぐに揃えて、私の前に突き出してきます。
 私は床にひざまづき、お姉さまの腰から慎重に、スキャンティを抜き取りました。

 お姉さまのソコには、細い逆三角形に美しく刈り揃えた小さな茂みがありました。
 スキャンティの内側がしっとり湿っています。
 お姉さまも感じていらっしゃるんだ。
 すっごくシアワセな気持ちになりました。

「隣に来て。ふたりで気持ち良くなりましょう」
 オールヌードのお姉さまがご自分の右隣をトントンと叩きました。
「はいっ」
 喜び勇んでピッタリ寄り添います。
「試着室のときから、ずっとこうしたいと思っていたのよ。あなたとふたりきりで」
 お姉さまが私の耳元でささやき、今度はやさしく唇が重なりました。

 お姉さまの右手が私の股間をまさぐり、負けずに私もお姉さまのソコへ指を侵入させます。
 ヘアがある人のをさわるのは、すっごく久しぶり。
 サワサワした感触が新鮮です。
 お姉さまの中も、すでに充分潤っていて、とっても熱くなっていました。

 それから長いあいだ、お姉さまと私は互いのからだを貪り合いました。
 唇を合わせ、乳房を揉みしだき、乳首をつまみ、肌を吸い、爪を立て、舌を這わせました。
 指でかきまわし、宝石を磨き、蜜を舐め合い、粘膜を擦りつけ合って、再び唇を合わせました。

 お姉さまのソコはやや上付きで、ラビア派手めで薔薇の花のようにとっても綺麗。
 クリちゃんは、私よりぜんぜん小さいけれど感度良好。
 ラブジュースも私より少ないながら、酸味ちょっぴりのしょっぱめで、大変美味でした。
 しなやかでしっとりとした素肌は、肌を合わせると吸いつくようで、いつまででも抱いていたい、抱かれていたいからだでした。

「あぁっ!いいわっ。そこ、そこよっ!」
「直子、上手よ!そこをもっと、もっとぉーーー!」
「ああん、お姉さま、イキますぅ、イっちゃいますうぅ」
「あっ、だめっ、いやっ、もっとっ、だめーーーっ!」

 貪欲に、何度も何度も求め合い、何度も何度もイカせ合いました。
 ソファーからフローリングの床の上へ、そして、ふたりのからだ中がヌルヌルのベトベトになると、お姉さまのご提案でバスルームに移動。
 泡まみれで抱き合いながら、お互いのからだをからだで洗いました。

 湯船の中で向き合い、互いの股間に伸ばした指で同時にイったあと、ようやくふたり、落ち着きを取り戻しました。
 湯船の中でギューッと抱き合い、お顔を寄せ合って、うふふ、って笑い合いました。
 バスルームから出て、パウダールームでからだを拭き合いながら、お姉さまが私の無毛な土手を指さしました。

「直子って、オナニー好きを自認するだけあって、すごく上手よね、ソコへの愛撫が」
「あたし、こんなに乱れたの、生まれて初めてよ。自分では、そういうのには淡白なほうだと思っていたのに」
「私も、縛ったり痛くしていないのに、こんなに何度も何度も気持ち良くなったの、初めてです」
「きっとお姉さまが素敵過ぎるんです。だからキスされるだけでもう、舞い上がってしまうんです」

「そっか、そう言えば直子って、ドMのヘンタイさんだったわね。抱き合ったらすっかり忘れちゃっていたわ」
 お姉さまが白いバスローブを羽織りながらおっしゃいました。
「それだったら、もっと虐めてもっと奉仕してもらえば良かったわ。直子のフィンガーテクに負けられない、って夢中になっちゃった」
 おどけておっしゃるお姉さま。
「おっしゃってくだされば、いつでも精一杯ご奉仕させていただきます。だって私はお姉さまという魅惑のカゴの中の小鳥、恋のドレイなのですから」
 私もおどけて返すと、お姉さまがあははと笑いました。

「ドレイだったら服はいらないわね。直子、自分の家ではほとんどいつも全裸って言っていたじゃない」
「あとはもう寝るだけだから、今夜はずっと裸でいてね。バスタオルも巻いちゃダメ」
「あたし直子の裸好きだから、ずっと視ていたいの」
「はい。もちろんです。ドレイ直子はいつでもお姉さまの仰せのままに・・・」
 いやん、あんなにイったのに、また疼いてきちゃう。

 リビングに戻ると、ソファー周辺が悲惨な有様でした。
「やだっ!もうこんな時間!?まいったなー。明日の朝早いのに」
 ホワイトボードの脇に掛けてある学校にあったような丸いアナログ時計を見ると、すでに深夜0時を大きく回っていました。

「お姉さまは先にお寝みください。床とソファーは私が綺麗にしておきますから。ほとんど私が汚したようなものですし」
「何言ってるの?こんなのふたりでやればあっという間の楽勝じゃない。あたしはソファーを拭くから、直子は床をお願いね」

 バスローブ一枚のお姉さまと全裸の私で拭き掃除開始。
 固く絞ったタオルを何度かゆすいで、10分くらいで後片付けが終わりました。
 髪を乾かし身繕いをして、寝室に入ったのは1時を過ぎた頃でした。


ランデブー 6:42 10


2014年8月24日

ランデブー 6:42 08

「直子って、本当に面白いわね」
 エレベーターの中で、お姉さまはずっとクスクス笑いっぱなしでした。

「あそこの床に、そんな仕掛けがあったなんて、あたしも今まで気がつかなかったわ」
「立った位置とか光の加減にもよるのでしょうけれど、あんなにハッキリ映ってしまうものなのね」
「ひとりで真っ赤になっているから、何事?って思ったわよ」
「そばに誰も居なくてよかったわね?あ、それとも残念?」
  矢継ぎ早にからかってくるお姉さまにジト目を返す私。

「まあ、あたしは、そこまで短いスカートを、しかもノーパンでなんて絶対穿くつもりないから、関係ないけれどね」
 この姿はお姉さまの仕業じゃないですか、って抗議しようとしたらチーンと鳴り、エレベーターの扉が開きました。

 ホテルみたいな間接照明のオシャレな廊下を少し歩いた先で、お姉さまがカードキーをかざしました。
「さ、どうぞ」
 玄関の扉を開いてお姉さまが先に立ち、奥へと案内してくださいました。

 通されたお部屋は、どう表現したらいいのか、不思議な雰囲気の空間でした。
 10帖以上はある広いフローリングのお部屋のほぼ中央に、会議テーブルくらい大きくてシックなダイニングテーブルがどーん。
 その左右に3脚づつ、キャスター付きのダイニングチェアーが並んで収まっています。
 壁際にはソファー、その対面に大画面テレビ。
 もう一方の壁際には、オーディオラックとブックシェルフが並び、その脇にはワイヤートルソーが1、2、3・・・6体も。
 一番広い壁には、大きなホワイトボードと、雑誌の切り抜きか何かなのか、ピンナップみたいな写真がたくさんピンで留められたコルクボードが掛けてありました。
 
 普通の一般的な家庭のリビングとは、明らかに趣を異にするお部屋。
 ホテルのミーティングルームが少しくだけた感じ、みたいな。

「あら、たまほのったら、ずいぶん綺麗にかたづけていってくれたのね」
 お姉さまが独り言みたいにおっしゃって、脱いだスーツの上着を当然のように、一体のワイヤートルソーに掛けました。
 つられて私も、上着を取ろうか、と一瞬思いましたが、ジャケットの下のことをすぐに思い出してやめました。

「このトルソーはね、うちのスタッフの体型に合わせて特注したものなのよ。それぞれ自分専用なの」
 とするとみなさん、プロポーションよさげです。
 真っ白なシャツブラウス姿になったお姉さまの大きく開いた胸元がすっごく艶かしくて、ドキドキしちゃいます。

「ヘンな部屋、って思っているのでしょう?」
「あ、えっと、なんだか、隠れ家ぽい個室レストラン、みたいな感じで、素敵だと思います。生活感が希薄で・・・」
 思っていたことを正直にお答えしました。

「ここはスタッフ全員が使う部屋だから、私物とか置くのは一切禁止にしているの。ほら、なくなったとかで身内で揉めるのって馬鹿らしいじゃない」
「ここにあるものは全部、全員が協議の上で選んだ共有物。あとは所有を放棄してご自由にお使いください的なもの。だからインテリアが誰か一個人の趣味志向に偏らなくて、結果、生活感も出ないのよ」

「うちのスタッフは、この部屋のこと、部室、って呼んでいるわ」
 ああ、なるほど。
 言われてみれば、この妙に居心地の良さそうな雰囲気は、学生時代の部活やサークルの部室に似ていました。
 気の合う仲間だけが気軽に集まれるヒミツのカクレガ、みたいな。
 それのゴージャス版。

「あ、そうだった。洗面所はあそこだからね。外から帰ったらまず手を洗ってうがいでしょ?」
 お姉さまが突然、今入って来た玄関のほうを指さしておっしゃいました。
「あ、はい」

「それと、寝るときはどっちがいい?そっちの洋間にはベッドがふたつ。くっつけることも出来るわよ。こっちの和室だったらお布団敷いて」
 今度はリビング内のふたつのドアを順番に指さすお姉さま。

「うーんと、それでしたら和室、かな?お布団敷いて寝るのって、旅行以外ではしたことないですから・・・」
「おっけー。それじゃあ準備しておくから、直子は手を洗ったら、そこのソファーにでも座ってくつろいでいて」
「あ、私もお手伝いしますよ?」
「いいのいいの。直子はお客さまなのだから」

 お姉さまが先に手を洗い、洗面所に私を残してどこかへ消えました。
 私がリビングに戻ると、テーブルの上にペットボトルのお茶とグラスがふたつ出ていました。
 そのお茶をいただきながら、お部屋内を観察してみます。

 リビングの突き当りがお外に向いた窓のようで、今は綺麗なターコイズブルーのカーテンで閉ざされています。
 そこから壁に沿ってゆっくり歩いてみます。

 ブックシェルフの本や雑誌は、やっぱりファッション関係が多く、発行順にきれいに並べられています。
 コミックスや小説、DVDもぎっしり。
 CDの背表紙は横文字が多くて、私が知らないのばっかりみたい。

 トルソーは、一見アンティークぽい感じで、作りもしっかりしていて、見るからに高級そう。
 一番バストが大きいかたのは、ウエストもキュッとくびれていてプロポーション凄そう。
 お姉さまの上着からはふうわり、グリーン系のパフュームが香っていました。

 ホワイトボードは、落書きなど無くてほぼ真っ白。
 一行だけ、一番左端に女の子らしい可愛らしい文字で、
 おつかれさまでした!次の企画もみんなでがんばりましょう!!! ほのか
 と、小さく書いてありました。

 ソファーの上の壁に掛かっている大きなコルクボードにピンで留められた写真たちを、ソファーに両膝を乗せて眺めます。
 近くで見ると、雑誌の切抜きだったり、手描きイラストだったり、チェキだったり。
 乱雑にたくさん貼り付けてありました。
 素敵なドレスを召した超美人のファッションモデルさんらしき外国人女性の写真が多いみたい。
 たまに、私でも知っている映画スターやロックスターの写真も混ざっています。
 カラフルで綺麗で、なんだか楽しくなって、順番にじっくり見てしまいました。

「お待たせ。準備完了。あら、これを見ていたのね」
 いつの間にかお姉さまが私の背後に来ていました。
「あ、はい。これってデヴィッドボウイさんですよね?」
 突然お声をかけられ驚いてビクンとして、そのとき考えていたことがそのまま口から出てしまいました。
「え?あ、そうね」
 私が指さした切抜きを見てうなずくお姉さま。
 お部屋に小さく、ラヴェルのピアノ曲が流れているのに気づきました。

「その写真はジギースターダストの頃ね。この頃のボウイが一番素敵だわ。って直子、よく知っているわね?もうン十年前よ?もちろんあたしもまだ生まれていないけれど」
「両親が、とくに父が昔から洋楽好きなんです。ちっちゃい頃から父の部屋にはレコードやCDがたくさんあって、よく聴かせてくれたから」
「なるほどね。それで直子はボウイのファンなの?」
「いえ、別にですけれど、綺麗なお顔だな、とは思っていました」

「うちのスタッフのひとりがね、この頃の彼に顔がそっくりなのよ。あたしの高校からの友達なのだけれど」
「高校の頃からもうモテモテだったわよ。バレンタインデイなんて下級生からのチョコの山。女子高だけれどね」

「あっ、そのスタッフさんて、女性なのですね?」
 お姉さまの、高校からのお友達、というお言葉にひっかかった私は、ホッと胸を撫で下ろします。
「そう。うちの会社って、高校のときの服飾部がそのまま会社になったようなものなの。創立メンバーは同期の部員3人だから」
「へー、ステキですね。ボウイさんそっくりなお顔の女性のかた、一度お会いしてみたいです」
「あはは。まあそのうちね」

「このかたは、どなたなのですか?」
 さっきから気になっていた写真のことを尋ねてみました。
 素肌に白いシャツ一枚でイタズラっぽくこちらを見ている西洋系の超美人さん。
 髪型はまったく違うけれど、お顔の、とくに瞳の雰囲気がお姉さまにすっごく似ていました。

「ああ、それはジーナガーション。アメリカの映画女優」
「お姉さまに似ていますよね?」
「そう?たまに言われるけれど、あたし、そんなにアヒル口ではないわよ?」
 少し照れたようなお姉さま。
 確かにお口は少し違うけれど、このかたのお口をもう少し小さくして、東洋系の細面にすればズバリ、お姉さまです。

「この人はね、えっちな映画が多いのよ、知らない?けっこう前に悪い意味で話題になったショーガールっていうラスヴェガスのストリップダンサーの映画」
「あっ!知ってます。興味があってDVDで観ようかなって少し調べたら、男の人とのそういうシーンも多そうなので、あきらめましたけれど」
「ああ、直子はそういうのも気になっちゃうのね。ま、無理して観るほどの映画ではなかったわ。衣装とジーナは良かったけれど」
「それよりも直子だったら、バウンド、は観たほうがいいわ。これもジーナが出ていて、こっちはレズビアンの話だから。DVD持っているから、今度貸してあげる」

 お話が途切れた、と思ったら、ソファーの背もたれのほうに向かって膝立ちになっている私の背中に、お姉さまが突然、覆いかぶさってきました。
 私の背中にシャツ越しのお姉さまのバストが密着します。
「あっ、お姉さま・・・」
 背後から抱きつかれた形の私が驚いて首をひねると、私の左肩にお姉さまのお顔がありました。
 頬と頬がぶつかります。

「そんなことより、どうして直子はいつまでもジャケットを脱がないの?自分の家だと思ってリラックスしていいのよ?直子は自分の家だといつも裸ん坊なのでしょ?」
 お姉さまの両手がジャケットのボタンをふたつともはずし、ジャケットと一緒にお姉さまのからだも離れました。
「ああん、いやんっ」
「さあ直子、ソファーの前に立って、こっちを向いて」

 上半身裸にされた私は、ソファーから降り、おずおずとお姉さまのほうへ向きました。
 両腕でバストをかばったまま。
 お姉さまと目が合い、私を見つめたまま、ご自分の端正な顎を少し上にしゃくりました。
 うなずくときの動作と反対の動作です。

 その動作に促されるように、私の両手はバストを離れ、頭の後ろへ。
「本当に良く躾けられているのね、直子って。なんだか悔しいわ」
 マゾの服従ポーズになった私を、お姉さまが薄い笑いを浮かべながら見つめてきます。

「そのニップルパッドもずいぶんがんばったわね。あたしが取ってあげるわ」
 お姉さまの右手が私の左おっぱいに近づいてきて、皮膚を爪の先で軽くひっかかれた、と思ったら、スルッという感じで剥がれました。
 異物感が去り、ホッとする開放感。
 背伸びしたい欲求をシリコンの下で虐げられ、皮膚にいくぶんめり込んでいた乳首が息を吹き返すのが、自分でもわかりました。

「直子の大きなコリコリ乳首に負けないで、よく今までしがみついていたものだわ。優秀な製品ね」
 右乳首のも剥がされて、私の乳首たちが久しぶりにお姉さまの視線に晒されます。
 そう考えた途端に、今まで以上に乳首がムズムズ疼きだすのを感じました。

「どうだった?ニップルパッド初体験は?」
 お姉さまが私の乳首をじーっと見つめて尋ねます。
「そ、そうですね・・・」
 マゾの服従ポーズのまま、お答えしようとしますが、乳首がどんどんムズムズしてたまりません。

「や、やっぱり、肌に何か貼り付けている、という違和感が気になりました。ムズ痒い、と言っても、気持ち良いほうのではない、不快感て言うか・・・」
「あと、うまく言えないのですが、ズルイと言うか、ただ隠すために着けている気がして、スリルが無いって言うか・・・」
「ふーん。で?」
 お姉さまが小さく首を傾けて、先を促してきます。

「実は私、お外歩いているときも、どうせなら着けていないほうが良かったな、なんて思っていたんです。べ、別に、誰かに見せたい、っていうわけではないのですけれど・・・」
「そのほうがもっとドキドキ出来るし、スリルを感じられるのにな、なんて・・・」
「なんだか、安心感が逆に残念だったんです・・・」
「私は、今日みたいな場合だったら、すっごく布面積の小さなマイクロビキニブラとか、シースルーブラとか、逆にそこだけ穴の空いているTシャツとかを下に着ていたほうが、もっとゾクゾクしたと思います」

「ああ。なんとなくわかる気がするわ」
 お姉さまが近づいてきました。

「考えてみると、ニップルカバーって、乳首だけは絶対見せたくない、っていう人がするものだものね。セクシーな格好をしてもそこだけは見えない安心感、が売り物の」
「あと、セクシータレントとかグラビアモデルやダンサーが、自分の最後の砦を死守、と言うか、より価値を上げたいために着けているイメージもあるし」
「乳首さえ見せなければ、ってほぼ全裸で嬉しそうにニッコリしているのもなんだかなって思うし、隠すためだけのもの、っていう実用性一点張りなのは、エレガントではないわ」
「直子みたいに、見えちゃうかも、気づかれちゃうかもっていうスリルを味わいたいヘンタイさんとは、相容れないものなのかもね」
 おっしゃりながら私のスカートのウエストを手際良く直し、ホックをはずしてジッパーを下げ、お話が終わると同時に私のスカートがストンと床に落ちました。

「うん。素敵よ、直子の裸」
 お姉さまの視線に私の全身が上から下まで、くまなく舐め回されます。
「もうこれも取っちゃいましょう」
 お姉さまが私の足元にひざまづき、左のニーハイソックスに手をかけました。

「うわー。ソックスの履き口のところ、両方ともベトベトよ?ずいぶん下まで湿っちゃっているわ」
「あ、私、自分で脱ぎます!」
 あまりの恥ずかしさに、思わず体勢を崩す私。
「いいからいいから。直子のおツユの洪水にはもう慣れちゃったから、あたし」
 手馴れた手つきで左右のソックスがクルクルっと丸められ、私の両足を離れました。

「これで今日初めての、正真正銘オールヌードね。気分はどう?」
 私の目の前50センチくらいに立ち、腰に手を当てて挑むように尋ねてくるお姉さま。
「・・・は、恥ずかしいです」
「あたししか見ていないのに?」
「お姉さまだから・・・です」

「へー、可愛らしいこと言ってくれるのね。それならあたしのお願いも、聞いてくれるわよね?」
「はい。もちろんです。何だって喜んで」
 マゾの服従ポーズで熱くお姉さまのお顔を見つめます。
 内腿をまた、おツユがツツーッと滑り落ちていきます。

「そこのソファーに座って、オナニーをしてみせてくれる?」
「今日はえっちな道具無しで、直子の指だけで、あたしを見ながら。出来るわよね?」
「はい・・・」
 そのご命令だけで、すでにもうイキそうでした。


ランデブー 6:42 09