2011年10月23日

ピアノにまつわるエトセトラ 07

 ちなみに今回は、ヌードクロッキー遊びに誘いこめそうな新入部員がなかなかみつからず、2年つづけてクリスさんていうのも新鮮味が無いので、文化祭での秘密の展示品は無しになりそうだったとか。
 
 でも、夏休みの合宿のときに例年通りいろいろ盛り上がった末、モデルをやってもいい、っていう1年生が現われて、その人の裸婦画がクリスさんたちを中心にめでたく例年通り創作され、展示作品のどれかの裏側に隠されているそうです。
 
 ただし、その1年生が、部員以外の人には絶対見せたくない、って涙ながらに言い張ったので、残念ながら私には見せてもらえませんでした。

「ごめんなさいね、森下さん。この子は本当に恥ずかしがり屋さんで」
 
 小川先輩のお隣に座っている内気そうな可愛い女の子がうつむいてモジモジしていました。

「いいえ。お気になさらないで、でも、ちょっぴり残念だけれど」
 
 私は、お芝居っぽい感じで少しイジワルに笑って答えましたが、内心では、うつむいている彼女の恥ずかしさに同調してドキドキしていました。
 
 自分の裸の絵を見られる、っていうことは、もちろんすっごく恥ずかしいことですが、自分からすすんで裸婦画のモデルになって、みんなに裸の姿を見てもらった、ということを、見ず知らずの私に知られたことにも、同じくらいの恥ずかしさを感じているのではないでしょうか。
 
 自分はそういう性癖を持つ女だ、って公言しちゃったみたいで。

 小川先輩たちは、その1年生の子のヌードについて、なんだか初々しくて甘酸っぱい裸だった、とか、熟しきっていないところがかえってエロティック、とか、彼女の前でワザとみたいにあれこれ論評していました。
 
 彼女は、ずっとうつむいたっきり。
 すっごく恥ずかしいのだろうなあ。
 私だったら、それだけで濡れてしまいそう。

 彼女も、今うつむきながら濡れているのかな?
 席を立たないでガマンしているところを見ると、恥ずかしさの中にやっぱり気持ち良さも感じているのだろうな。
 
 ツインテールに結んた彼女の髪の分け目を見つめながら、なんだか彼女がいじらしくって、なぜだか逆にもっとイジワルしてみたいような気持ちにもなっていました。
 でも、もちろんそんなことはせず、話題もあちこちに飛んで、楽しいおしゃべり時間が過ぎていきました。
 
 今現在、美術部内の公認百合カップルは6組。
 部員は総勢16名だそうで、残りの4人も美術部外にパートナーがいるそうです。
 つまり、百合率100%!

 帰り際、しーちゃんとクリスさんがドアまで見送ってくれました。

「はい、これ。なおちゃんにあげる。ワタシたちの処女作」
 
 しーちゃんがそう言って、同人本みたいな一色刷りの薄い本を2冊、私にくれました。

「ワタシとクリスとでストーリーを考えて、絵も分担して描いたんだヨ。ワタシとクリスはネ、チームになってマンガを描いていくことにしたの。ほら、未来から来た青いネコ型ロボットのマンガ描いた人たちみたいに」
「一冊は二次もの。一冊は18禁。高校生だけど18禁」
 
 しーちゃんがケラケラ笑いながら本をペラペラめくりました。
 ちらっと見えた中身は、なんだかすごくえっちそう。

「高校生だから、今はコピー本しか作れないし、即売会とかにも出れないけど、いずれ同人活動とかしていくつもりなんだ。二人で」
 
 しーちゃんとクリスさんが目を合わせて、ニッって笑い合いました。

「ペンネームはネ、姉妹白百合。姉妹って書いてスールって読むんだヨ」
「それで、スール白百合デビュー作の美術部員以外の栄えある読者第一号は、なおちゃんに決定しましたー」

「うわー。ありがとう。しーちゃん、クリスさん」

 お礼を言って、いったんお教室に戻ろうと思ったのですが、どうしてもガマン出来ずにもう一度振り向き、聞きたくてしょうがなかったことを聞いてしまいました。
 
「ねえ、しーちゃん?美術部って、毎年必ず、ヌードモデルになってもいい、っていう部員さんが一人くらいは、いるの?」

「えっ?」
 
 しーちゃんとクリスさんは、一瞬、この人何を言っているのかわからない、っていう面持ちでお互いにお顔を見合わせていました。
 少しして、クリスさんが私の顔をじっと見つめて、言葉を選ぶようにゆっくりとお話し始めました。

「そうねえ。深く考えたこと無かったけれど、先輩方のお話だと、毎年一人か二人くらいは、裸婦画のモデルをされた部員がいたみたいね」
「ほら、女子高だから女同士だし、自分のからだに自信があって、見てもらいたい、って思う人もいるだろうし」
「わたしみたいに、恥ずかしいことをするのが好き、っていう変わった趣味の人間もいるし」
 
 クリスさんたら、あっけらかんとご自分の性癖を開示されました。

「それに美術部は、昔から百合属性の強い部だから、そういうのにおおらかになりやすいんじゃないかな」
 
 クリスさんがしーちゃんを見て、クスリと笑いました。

「これは、わたしだけの個人的な意見なのだけれど・・・」
 
 クリスさんが今度は私をじっと見つめてきます。

「人前で裸になりたい、とか、異性よりも同性と仲良くしたい、とか、そういう、何て言うか、普通とは少し異なった嗜好を持っている人たちって、無意識のうちになんとなく、惹かれ合ってしまうものなのじゃないかしら」
「惹かれ合って、集まって、そういう人たちが居心地のいい場所が出来た、それが我が校の美術部なんじゃないかな、って」
 
 クリスさんがしーちゃんを見つめてしーちゃんがうなずき、それから私に視線を移して、ニッコリ笑いました。

「そ、そうかもしれませんね…」
 
 私は、クリスさんのお言葉に、大いに納得していました。
 その反面、すっごく動揺もしていました。
 クリスさんの視線が私を見透かしているのが、はっきりわかりました。
 クリスさんは実際に言葉にはされませんでしたが、その視線が私に問いかけていました。

 わかっていてよ、森下さん。
 あなたもわたしたちのお仲間っていうことは。

 読んだら感想を教えるね、ってしーちゃんに告げてクリスさんにお辞儀をして、なんだか逃げるみたいにその場を離れました。

 お家に帰ってお風呂の後に、しーちゃんたちのマンガを読み始めました。
 
 一冊目は人気アニメの二次創作。
 ヒロインと敵対する組織のツンデレ女子が、いがみ合いながらもいつしか惹かれ合っていく、っていう百合展開のラブコメ。
 絵は丁寧でキレイだし、ストーリーもセリフも気が利いていて、そのへんの同人誌よりぜんぜんいい感じでした。
 
 しーちゃんたち、スゴイなー。
 純粋に感心しました。

 二冊目は18禁。
 こちらはオリジナルストーリーで、すっごくえっちでした。
 お話の大筋は、以前しーちゃんから聞かされていた、クリスさんに対するえっちなご命令。
 
 授業中にショーツを脱ぎなさい、とか、ノーパンで体育の授業を受けなさい、とかを主人公が実行していく、というものでした。
 でも、しーちゃんたちと大きく違うのは、マンガでは、それがいわゆるイジメの一環として行なわれていること。
 その上、クラスメイトや先生までもがみんなえっちでイジワル。

 だから、授業中こっそりショーツを脱いでいると、隣の席の子にみつかって、ヘンタイってなじられた挙句、スカートを脱がされてショーツを膝までずり下げた格好で、黒板の前に出て問題を解かされ、罰として丸裸で廊下に晒し者にされてしまいます。
 
 体育の時間にノーパンでマット運動をしていたら、ジャージのゴムが切れて足元まで一気に下がり、下半身丸裸で開脚前転をさせられてしまいます。
 最後は、跳び箱の上に丸裸で仰向けに縛り付けられて、アソコにオモチャを挿れられたまま放置されていました。

 そんなお話が、デッサンのしっかりした可愛らしくて色っぽいキャラクターとリアルな構図、緻密な筆致で背景まで丁寧に描かれていました。
 
 舞台はどう見ても、この学校そのものでした。
 虐められるほうの女の子はクリスさんに、苛めるほうはしーちゃんにそこはかとなく似ている感じで、乳首が勃っていく様子やアソコの中までもが克明に描かれていました。

 そして、絵と同じくらい良かったのが、虐める側の人たちのセリフでした。
 虐められているほうの子の羞恥心や被虐心を徹底的に煽り立てる、侮蔑や憐憫、罵倒のセリフで埋め尽くされていました。

 クリスさんて、こんなことをされたくて、こんなことを言われたいんだ…
 しーちゃんも、こんなにいやらしいお話を考えられるようになったんだ…
 しーちゃんたちは、このマンガを二人で描きながらも、欲情を抑えきれずに何回も抱き合ったんだろうなあ…

 私は、そのえっち描写の迫力に圧倒されていました。
 そして、しーちゃんとクリスさんの関係を、心の底からうらやましいと思いました。
 何度か読み返すうちに結局ガマン出来ず、文化祭で疲れたからだなのにもかかわらず、マンガと指だけで激しく2回イってしまいました。

 しーちゃんたちのマンガのコーフンがようやく落ち着いて、ベッドに仰向けになって目をつぶりました。
 
 私だって…
 
 明日目が覚めたらいよいよ、ゆうこ先生のお家で二人きりです。
 いきなりは無理でしょうけれど、一歩だけでも踏み出したいな。
 頭の中に、クリスさんが別れ際におっしゃったことが、グルグル渦巻いていました。

 普通とは少し違った嗜好を持っている人たちって、無意識のうちになんとなく、惹かれ合ってしまうものなのじゃないかしら…

 あの遠い夏の日、私に舞い降りた直感。
 オオヌキさんと私は似ている…
 それが明日、少しでも確かめられたら、いいな。


ピアノにまつわるエトセトラ 08

2011年10月22日

ピアノにまつわるエトセトラ 06

 その週の金曜日は、10月最後のピアノレッスンでした。
 レッスンが終わって、私のお部屋でしばし雑談。
 
 その頃には、ゆうこ先生ともかなり打ち解けて仲良くなれて、いろんなお話を和気藹々としていました。
 私の部活のこととか、お友達のこととか、ゆうこ先生の学生時代のお話とか、最近のお仕事のお話とか。
 
 母ももう、私のお部屋でのレッスンには同席しないようになっていて、キッチンで篠原さんと一緒に、美味しいお夕食を作るのに張り切っているはずです。
 ゆうこ先生と二人きりのレッスンタイム。
 
 それでも私は、ゆうこ先生にえっち関係のご質問、とくに、遠い夏の日の水着をめぐる謎、については、出来ないままでいました。
 それを言い出しちゃうと、ゆうこ先生との楽しい関係のバランスが崩れてしまうような気がして、どうにも言い出せないままでいました。

 レッスンのとき、ゆうこ先生は私の背後に立ち、ときどき私の背中に覆いかぶさるようにからだをくっつけてきて、私の運指の間違いやタッチのミスをやさしく正してくれます。
 
 背中に感じるゆうこ先生のやわらかい胸。
 両手に触れるゆうこ先生のしなやかな指。
 鼻腔をくすぐるゆうこ先生のパフュームの甘い香り。

 鍵盤に集中していた緊張感がフッと緩み、何とも言えない気持ち良さを感じながら、急に胸がドキドキし始めます。

「ほら、こうしたほうが弾きやすいでしょ?」
 
 私の手の甲に、ご自分の手のひらを重ねて運指を教えてくれた後、私の顔を覗き込むように見つめてニコッと笑いかけてくださるゆうこ先生。
 私は、その笑顔を見るたびに、振り向いて正面から、ゆうこ先生を思いっきり抱きしめて、胸に顔を埋めたい衝動に駆られ、抑え込むのが大変でした。

「来週のレッスンのことなのだけれど…」
「それでですね、私、来週は…」

 私の部活のお話が一区切りして、会話が途切れて一呼吸置いた後、私とゆうこ先生が同時に口を開いて、お互いの言葉がかぶってしまいました。

「あ、ごめんなさい。直子ちゃんからどうぞ。なあに?」

「あ、いえ、いいんです。先生からお先におっしゃってください」

「そう?じゃあ、わたしから・・・」

「直子ちゃん、予想以上に上達が早いから、そろそろ次のステップに移ろうと思うのね」
「デジタルピアノとアコースティックピアノは、やっぱり鍵盤のタッチが違うから、打鍵の強弱による音の響かせ方とか、あと、足元のペダルの使い方なんかも、そろそろ知って、慣れておいたほうがいいと思うの」

「試験のとき、デジピかアコピかは、たぶん半々くらいだと思うけど、アコピに当たったときにまごつかないように」
「それに、幼稚園もきっと、アップライトのアコピのところが多いと思うし」
「だから、これからは月に一、二回くらい、わたしの家に来てアコピでのレッスンもしたらどうかな?なんて考えているの」

 ゆうこ先生のお宅におじゃましてのレッスン!
 それは、願ってもない嬉しいお誘いでした。
 
 母たちに気兼ねすることなく、ゆうこ先生と二人きりで親密に、何時間か一緒に過ごせるんです。
 考えただけでどんどん胸が高鳴ってきます。

「どう?」

「もちろん、お願いします!先生さえご迷惑でなかったら」
 
 小首をかしげて私を見つめるゆうこ先生に、私は即答しました。

「でも…」
 
 答えてから、さっき私が言おうと思っていたことを思い出して、盛り上がったテンションが一気に降下しました。

「さっき、私が先生に言おうと思っていたことなのですけれど、来週は、文化祭の前日なので、準備とかで夕方まで忙しいと思うのでレッスンお休みにしてもらいたい、って…」

「あら、そうだったの。文化祭かあ、懐かしいなあ」
 
 ゆうこ先生が遠くを見るような目で宙を見つめました。

「それなら、再来週の金曜日にしましょう。そうか。あそこの女子高、文化祭なんだ」

「はい」

「直子ちゃんたちは何をやるの?」

「クラスではクレープ屋さん。文芸部では毎年恒例の機関紙作りとバザー、です」

「へー。楽しそうね。わたしも高校の頃の文化祭では、毎年体育館のステージで演奏していたわ。高校の頃は、いわゆるハードロック」

「えっ、そうなんですか?先生がハードロック!?見たかったなー」

「たぶんビデオが残ってるから、うちに来たら見せてあげる。直子ちゃんビックリするよ。すんごいステージ衣装だから」
 
 ゆうこ先生が、うふふ、って笑いました。

「先生もよかったら来てくださいよ、うちの文化祭。ご案内しますよ?」

「そうねえ。近くだから行きたいのはやまやまなのだけれど、仕事の一つの締め切りが迫っているからなー。行けるかどうか、って感じだから、お約束は出来ないの」

  ゆうこ先生が残念そうに言って、私はがっかり。

「あの高校にはね、私の昔からの友達が今、先生やっているのよ。美術の先生」

「へー。そうなんですか」

「だから何度か、文化祭に遊びに行ったことはあるの。けっこう人が集まるのよね?」

「はい。なんかお祭りみたいで、すっごく楽しいです」

「だって直子ちゃん、文化祭って、お祭りよ?」

「あ、そっかー」
 
 二人でアハハと笑いました。

「そうだっ!先生!文化祭の翌日、月曜日は学校お休みなんですよ。だから金曜日のレッスンを月曜日にする、っていうのはどうでしょう?」
 
 私は、我ながら名案を思いついた、って、またテンションが上がってきました。

「それはかまわないけれど・・・でも直子ちゃん、お祭りの翌日で疲れていない?」

「ううん。ゆうこ先生に会えるなら、疲れなんてぜんぜん感じません!」

「それはそれは。嬉しいお言葉をありがとう。レッスンは月四回ってお約束だったから、一回飛ばすのは心苦しかったけれど、それならお約束もクリア出来そうね」

「あ、でも先生、お仕事の締め切りが…」

「それは大丈夫。そういうことならなんとか、早々に仕上げちゃうから、直子ちゃんのために」

「ねえ、直子ちゃん。どうせなら早い時間から、わたしのお家に来ない?その日」

「いいんですか?」

「うん。わたし、レッスンのたびに直子ちゃんちでご馳走になりっぱなしだから、その日は直子ちゃんにご馳走してあげる。それに、直子ちゃんとは、もっとゆっくりたくさん、おしゃべりしてみたいから」
 
 ゆうこ先生が私をじっと見つめてから、お花が咲く瞬間みたいな綺麗な笑顔を私にくれました。

 ピンポーン。
 そのとき、お夕食の準備が出来たという、母からのコールが私のお部屋に届きました。

「それじゃあ直子ちゃん、月曜日のこと、もとこさんにはわたしからご説明するから、ね?」
 
 ゆうこ先生がゆっくり立ち上がり、私に一つ、パチンとウインクをくれました。
 あっ、そうそう。
 もとこさん、っていうのは素子って書いて、私の母の名前です。

 文化祭二日目に、私はまた、しーちゃんがいる、名物!!喫茶 白百合の城 美術部、に、ご招待されていました。

 今回のコンセプトは、砂漠の民と王室のハーレムパーティ、だそうで、お部屋のあちこちにエジプトというか中近東あたりというか、ピラミッドやスフィンクスやラクダさんっぽいオブジェが飾られ、全体にゴールドと赤とベージュなキラキラした雰囲気のお部屋になっていました。
 
 部員の人たちは、みんなお鼻の下からをシースルーのシルクみたいなペラペラな一枚の布で覆い、目のまわりのお化粧が派手め。
 
 服装も、ビキニまではいかないセパレートの水着にツヤツヤなガウンを羽織っている人や、金の紙で作ったらしい王冠やアクセサリーで飾り立てた人、ギリシャの哲学者みたく白いカーテンをからだに巻きつけただけみたいな人など、全体的に昨年よりキンキラ&セクシーな感じになっていました。

「ねえ、しーちゃん。去年より、みなさんのお肌の露出度が上がっていない?」
 
 大きめな男物のストライプなワイシャツに黒いスカーフ、薄茶色のスカートに大きめの黒縁メガネとヒール、っていう、この空間ではかなり地味めな、でも見ようによっては、インディジョーンズとかに出て来そうなインテリ歴史研究家、みたいなたたずまいのしーちゃんに尋ねました。

「去年まで風紀を細かくチェックされていた高齢の先生が退任されたからネ。今年は少し羽目が外せるんだヨ。井上先生のおっけーももらってるし」
「その代わり、今年はカップルさんでも先生でも男子禁制入室不可。完全無欠な女の園なんだヨ」
 
 しーちゃんが笑いながら説明してくれました。

「それから、これはインディージョーンズじゃないヨ。ハムナプトラのエヴリンのイメージ、ネ?」
「それで、こちらがアナクスナムーンっ!」

 長い髪を左右に分けて前に垂らし、おっぱいのふくらみは髪に隠れていますが、その下はビキニの水着でしょう。
 黒い布地が髪の隙間から少し覗いています。
 まっすぐで真っ白なお腹におへそがちょこん。
 
 下半身はさすがにビキニはまずいのか、黒いパンストに黒いハイレグな短パン。
 スラッと伸びた足がすっごくセクシー。
 目元パッチリでキラキラ光るメイクを施した端正なお顔は、まさに砂漠のお姫さまなクリスさんが、ニッコリ微笑んでくれました。

「ごきげんよう。お久しぶりね、森下さん」

「あっ、ごきげんよう、えっと、クリスさん、じゃなくて二宮先輩」
 
 クリスさんの艶やかなお姿にボーッと見蕩れていた私は、声をかけられて盛大にアタフタしてしまいました。

「あら、ごきげんよう森下さん。お変わりなくて?」
 
 クレオパトラ風おかっぱソバージュに金の飾りを付けて、衣装も胸元が大胆に開いたエナメルっぽいテカテカなボディコン姿の村上先輩や、金ぴかアクセサリーを山ほど身に着けて、一歩歩くたびにジャラジャラ音がしそうな小川先輩にお声をかけられて、しばらくおしゃべりタイムに花が咲きました。
 
 そんな格好をしていても、口調は基本、マリみてなのがなんだかミョーに微笑ましいです。

 そのうちに、卒業された鳥越先輩と落合先輩もお顔を見せ、他にも去年知り合った先輩がたや、しーちゃんと仲がいい同級生や後輩の人たちも入り乱れて、楽しい時間が過ぎていきました。


ピアノにまつわるエトセトラ 07

2011年10月16日

ピアノにまつわるエトセトラ 05

 そんな恥ずかしすぎる映像課題を提出してから約一週間後。
 学校から帰ると、やよい先生からパソコンにメールが届いていました。
 
 きっと、提出した映像についてのご感想が書かれているのだろうな、なんて書いてあるんだろう? やよい先生、イジワルなこと書いてるだろうな、読むの恥ずかしいな…
 なんて考えながら、ドキドキする胸を押さえてメールを開きました。

 そこには意味不明なアルファベットと数字の羅列。
 それだけ。
 他に、説明だとかご挨拶文さえも書かれていませんでした。
 ???
 私は、考え込んでしまいました。

 お夕食やお風呂の間も、ずっとその謎なメールについて考えていました。
 やよい先生にメールか電話で聞いちゃおうか。
 お風呂から上がって、自分のお部屋で髪の毛をお手入れしながら少しイライラしていました。
 
 つまり、あれはきっと何かのパスワードなんだよね?
 やよい先生から、何かパスワードが必要なもの、もらっていたっけ?
 パスワード、パスワード…パスワード!

 不意に、思い出しました。
 やよい先生がお引越しされてすぐの頃、最初の課題をいただいたときに送ってこられた、アダルトビデオのえっちな映像が満載な数枚のDVDと一緒に入っていた1本のUSBメモリ。
 
 そのUSBメモリにはあの夏の日、やよい先生とのプレイ中にケータイやデジカメでたくさん撮られた私の写真が入っているのだけれど、日が経ってあらためて見返すと、私がショックを受けそうな刺激が強すぎる、恥ずかしすぎる写真ばっかりなので、もうちょっと課題が進んで私のヘンタイ度が上がったらパスワードを教えてくれる、ということになっていました。
 
 そのときに、お勉強机の鍵がかかる引き出しの奥にしまいこんで以来、今の今まですっかり忘れてしまっていました。

 私が提出したオナニーショーの映像を見て、やよい先生は私のヘンタイ度が上がった、と判断されたのでしょうか。
 それはそれでなんとなく、嬉しいような、情けないような…
 フクザツな心境。

 いずれにせよやよい先生は、あの日の自分の写真を見てみなさい、とご命令されているわけです。
 あの日やったさまざまな行為は、もちろん今でも鮮明に憶えていますし、どのプレイで写真を撮られたかも、だいたい憶えていました。
 
 そんなプレイの数々を、久しぶりに引き出しから発掘されたUSBメモリを握りしめながら、まるで昨日のことのように思い出していました。
 あんな場面、あんないやらしいことをした、今より少しだけ若い私自身の画像が、この中に入っている…
 もはや見る前から、心臓がドキドキ高鳴り、顔は赤面、からだはみるみる紅潮していました。

 絶対に平常心で見つづけることなんて出来るはずないので、最初からそれなりの準備をすることにしました。
 
 着ているものは全部脱ぎ、椅子の上にはバスタオルを敷きました。
 やよい先生からいただいたえっちなお道具が詰まったバッグも傍らに置きました。
 それからお部屋のドアの鍵をかけ、全裸でパソコンに向かい、USBメモリを差し込んで教えていただいたパスワードを慎重に打ち込みました。

 naokoの後に日付らしい数字が加えられたフォルダが現われ、恐る恐る開くと、画像を表わすアイコンがぎっしり詰まっていました。
 画像ファイルは、5桁の通し番号で整理されているみたい。
 お部屋の電気を暗くして、手動のスライドショーモードに設定しました。

 最初の2枚は、ポラロイド写真のスキャン画像。
 これらは、私も一度見ていますから、そんなに衝撃度は強くありません。
 でも、自分のいやらしい姿が強烈に恥ずかしいことには変わりありませんが…
 やよい先生に差し上げた2枚以外のポラロイド写真は、私が持っていて、一度見たきり厳重に封をしてヒミツの隠し場所に保管しています。

 3枚目からはすべて初見の写真。
 最初の写真は、ピザの配達バイトさんだったユマさんに、やよい先生のお家の玄関先で、裸で椅子に縛り付けられた私がイタズラされている写真でした。
 真横から撮られたその写真の中で、ニヤッと笑ったユマさんの右手が私の股間に伸び、私の顔はなんとも気持ち良さそうに歪んでいました。
 少しアングルを変えながら7枚ほど、撮られていました。

 それらの写真を見ながら、私はもう、いてもたってもいられなくなっていました。
 あれから約3ヶ月。
 時折甘酸っぱい記憶とともに思い出す、誰も知らないやよい先生たちとの秘め事…
 のはずだったのに、現実にその日の証拠が、記録が、鮮明に残っているのです。
 もちろん、私も同意の上で撮っていただいた写真でした。
 
 でも…

 この後ユマさんが去ってから次の日の夕方自宅に帰るまで、やよい先生とどんなことをしたのか、私は全部憶えています。
 だからこの後、どんな写真が出てくるのかも、予想出来ます。
 
 それらを見るのは、すっごく怖くて、逃げ出したいくらい恥ずかしいことでした。
 自分主演のハードSM写真集なんです。
 でも一方で、私の両手は私の意思とは無関係に、こそこそと自分のからだをまさぐり始めていました。

 時折目をそむけたり、急に立ち上がってお部屋をうろうろしたり、写真の自分があまりにも恥ずかしすぎる罰として肌を洗濯バサミで噛ませたりしながらも、スライドショーの、次の写真へ、をクリックすることが止められませんでした。

 素肌にエプロン一枚で、食器を片付けている私。
 全裸でトイレに四つん這いになって、お尻にお浣腸器を挿されている私。
 おっぱいのところだけ切り取られたタンクトップ姿で、泣きべそかいている私。
 
 机に這いつくばって、お尻を真っ赤に腫らしている私。
 お尻の穴を自分で拡げて、タンポンを突っ込まれている私。
 コブつきロープをまたいで、裸の下半身を擦りつけている私。
 仰向けのカエルさんみたいな格好で、アソコをまあるく拡げる器具をつけられた私…

「いやっ、いやっ、いやん・・・」
 
 ちっちゃな声でつぶやきながら、私の左手の指が3本、アソコの中でクチュクチュ啼いています。

 車の助手席でお洋服をめくって、おっぱいとアソコがあらわな私。
 神社の境内で、自らお洋服の裾をめくってノーパンの下半身を晒している私。
 おっぱいとお尻を出したまま駐車場を歩く私。
 
 ファミレスの座席で、おっぱいを露出する私とユマさん。
 車の後部座席で、全裸で絡み合う私とユマさん。
 通っている高校の裏門で、露出狂変質者の人みたいにレインコートの前をはだける私。
 学校裏の農道を全裸で屈んで、お尻を突き出して歩く私とユマさん…

 最後は、私と、やよい先生、ユマさん、シーナさんとのそれぞれのツーショットでした。
 写真は全部で200枚以上ありました。
 私は、それらの写真をくりかえしくりかえし見ながら、いつしか本格的に自虐オナニーを始めていました。

 こんな写真たちが現存する、ということ自体が、マゾな私の被虐心を煽り立てる責めのお道具でした。
 写真の一枚一枚が、ヒュン、という、鞭が空気を切り裂くような音をたてて、私の被虐心を打ちつけてきました。

 私は、なんてはしたない女。
 こんな写真を平気で撮らせちゃう女。
 日本中の女子高校生の中で、こんなにもいやらしい写真を撮られている人なんて、いないはず。
 
 私は、本当にいやらしいヘンタイマゾ女。
 気持ち良くなるためなら、どんなに恥ずかしくて屈辱的な責めも、悦んで受ける女。
 一生、普通の人間には戻れないんだ。
 だから私はどんどん、自分を虐めて、苦しまなければいけないけないんだ。

 そんな自分への侮蔑の言葉を自分に投げつけながら、私の両手は自分のからだを虐めつづけました。
 
 スライドショーが4周くらいした頃、私のからだはフラフラとお勉強机から離れ、ベッドの上に四つん這いになっていました。
 頭の中では、今見た自分主演のヘンタイ画像スライドショーと、約一週間前に見た自分のオナニーショーの映像とがごちゃまぜになって、延々と再生されていました。

 いつの間にか、からだ中にたくさんの洗濯バサミがぶら下がり、おっぱいを麻縄でキツク縛り、猿轡をして、股縄をアソコに食い込ませて、ローターを挿れて、オモチャの手錠をかけて、何度も何度も何度も何度も、イきました。
 
 イってもイっても、からだの奥底の発情が収まることは無いんじゃないか、と思うほど、からだへの快楽を貪欲に欲していました。

 真夜中一時前、イき疲れてウトウトしていたらしい意識が、からだにしつこくまとわりついている疼痛の刺激にハッとして目覚め、やっと我に帰りました。
 
 お部屋のどこかに飛んでいってしまったオモチャの手錠の鍵を焦りながらやっとみつけて手錠をはずし、びっくりするほどたくさんからだに付いている洗濯バサミを、顔をしかめながら一つ一つはずし、めちゃくちゃに結んでしまったロープを苦労して解きました。
 後片付けをしてからバスルームに下りて、こっそりシャワーを浴びました。

 バスルームの鏡の中には、肌に食い込んだロープ痕や洗濯バサミが噛んだ赤い痕が全身に残る、無残な、でも見方を変えれば艶かしい、私のからだがありました。
 
 あーあ…
 またやらかしちゃった。
 きっと2、3日、痕が消えないな…
 今は冬服だからたぶん隠せるけれど、明日、明後日、体育の授業は無かったけか…
 急激に眠くなってきた頭で、そんなことを考えながらシャワーを手早く浴びました。

 お部屋に戻ると、パソコンは点けっ放しでした。
 naokoフォルダからは、やよい先生たちとの健全な写真だけをパソコンに移し、念のためUSBメモリを開くためのパスワードを変えてから、机の引き出しに再びしまいました。

 やよい先生と私のツーショット写真の、ニッコリ微笑むやよい先生のお顔をじっと見つめていたら、なんだかすっごくせつない気持ちになってしまいました。
 今すぐに、やよい先生に、ユマさんに、シーナさんに会いたいと思いました。
 会って、ギュッと抱きしめて欲しいと思いました。

 いけない。
 ウルウルしてきちゃった。
 涙が零れ落ちてしまわないうちに、あわててパソコンを終了して、裸のままベッドに潜り込みました。


ピアノにまつわるエトセトラ 06