それによく考えてみれば、戻っては来たけれど、別にお家の中に入らなければならない用事もありません。
それならさっさとここでレオタードを脱いで、お散歩続行したほうが効率的です。
ケータイの時計を見ると、まだ午後の二時半過ぎ。
こんな、まだ明るい時間にマンションの通路で裸になるのは、初めてでした。
でも、さっきの公園で脱ぐことを考えれば、格段に安全。
気をつけるべきは、エレベーターの動きだけです。
すでに玄関ドアに差し込んでいた鍵は、念のためにそのままにしておきました。
もしもエレベーターが動いたら、すぐさま玄関内に飛び込めるように。
この時間帯だと、何かのご用時で柏木のおばさまがいらっしゃる可能性も大いにありますから。
早く裸コートになりたいって、はやる気持ちは満々なので、すぐさまコートの前ボタンをはずし始めました。
すべてはずしてから、そっとコートの前を開きます。
うわっ、いやらしい・・・
見下ろした自分のからだのあまりのいやらしさに、自ら両手でコートの前を開いたまま、えっちなマンガやお話によく出てくるヘンシツシャの人のような格好で、顔だけ下げたまましばし立ち尽くしてしまいました。
肌に吸い付くようにピッタリなレオタードの白い布を、これでもかという勢いで不自然に突き上げている胸の頂の二つの突起。
股間は、肌色が透けそうなほどにぐっしょり濡れて、くっきりとその形の通りなスジが刻まれていました。
どう見ても、この女のからだが発情していることは明白です。
そして今度は、この白い布も無しの真っ裸になって、コートひとつでお外をお散歩しなくちゃいけないんだ・・・
別に誰に命令されたわけでもなく、自分で好きでやっているクセに、被虐感がどんどん募ってクネクネ身悶えしちゃいます。
レオタードを着ていてもこんなに感じちゃったのだから、裸だったらどうなっちゃうのだろう・・・
思わず妄想の世界に入り込みそうになりますが、現実がもはや、その一歩手前のところまで来ていることを思い出して苦笑いしつつ、コートの袖から両腕を抜いて脱いだコートを軽くたたみ、通路に置いたバッグの上に乗せました。
大きく一つ深呼吸して気持ちを落ち着けてから、レオタードの両肩紐をそれぞれ外側にずらします。
胸を隠していた布地が前方へペロンと垂れ下がり、押さえつけられいていた乳房が勢い良くプルンと跳ねました。
そのままウエストを通り過ぎ腰骨へ。
両腿を通過するときには、両脚の交わりから布の該当部分へと、透明なか細い糸が幾筋も下へ伸びては切れました。
ふくらはぎまで下ろしたら、ショートブーツにひっかけないように、踏まないように、注意深く足元から抜き去ります。
右手にクタッとした白い布片を持ち、足元のグレイのブーツ以外は丸裸になった私。
心臓はもうドッキドキ。
たたんだコートを大急ぎで広げて、袖に腕を通しました。
ボタンを嵌める前にもう一仕事。
バッグからティッシュを取り出し、前屈みになって股間の湿り気を丁寧に拭います。
ティッシュごしの自分の手が、もっとえっちに活躍したがるのをなんとかなだめつつ入念に。
脱いだレオタードは小さくたたみ,使ったティッシュをそのあいだに挟み、バッグの奥底にしまいました。
コートのボタンを上から嵌めていきます。
一番上だけは開けたまま、膝元まで。
待ちに待った裸コートの完成です。
その姿で通路を少し歩き回ってみると、レオタードを着ていたときとは、全身とコートとの関係と言うか、コートとあいだの空気と剥き出しの皮膚が、触れたり触れなかったりする感触がぜんぜん違うことを実感しました。
さっきまでレオタードに押さえつけられていたおっぱいは、ルーズフィットなコートの中で自由奔放に揺れ動きます。
そのたびに尖った乳首がコートの裏地に直に擦られ、ますます勢いづいて背伸びしちゃいます。
内腿より上の部分も、そこを覆う布地が無くなったために、妙にスースーすると同時に、その一帯の皮膚の感度がより敏感になったのか、歩くたびに粘膜がヌルヌルと擦れている様子まで、生々しく脳に伝わってきます。
すっごく刺激的。
そんなことをしているあいだにも、股間がジワジワ潤ってきているのがわかります。
さっきあれだけ拭ったのに・・・
こんな状態でお外に出たら、絶対溢れちゃうだろうな・・・
期待のワクワクと不安のドキドキ7:3くらいの割合でエレベーターに乗り込みました。
お外に出たら、とりあえずもう一度、さっきのブチネコさんに会いに行ってみようかな。
もしまだいたら、ブチネコさんの前でしゃがんで、下だけこっそり視てもらうのもいいかな。
ブチネコさん、まだいるといいな。
魔除けのおまじないを両耳に挿し直しながら、そんな不埒なことを考えていました。
エレベーターが一階に到着し、エントランスホールをゆっくりと横切ろうとしたとき、
「あらー、直子ちゃん。もう帰ってらっしゃってたのね?」
管理人室のほうから大きな声がかかりました。
「ひゃっ!」
思わず小さく悲鳴をあげると同時に、心臓が早鐘のように波打ちました。
背後から、スタスタとこちらに近づいてくる足音が聞こえます。
私は仕方なく立ち止まり、足音の方向へ振り返りました
黒いタートルネックのセーターに白いエプロン姿の柏木のおばさまが、ニコニコしながら近づいてきました。
「あっ、おばさま。ごきげんよう。いつもご苦労様です」
内心はドキドキなのですがつとめて平静を装い、いつもより丁寧にお辞儀をしました。
右手がなぜか、コートの胸元をつかんでいます。
「はい、ごきげんよう。急に声かけて驚かせちゃった?ごめんなさいねー」
「いえいえ。音楽に夢中になっていたので、ちょっとびっくりしただけです」
耳から無音のイヤホンをはずして、胸元に押し込みました。
「今日はお帰りが早いのね?」
「あ、ええ。学校が早く終わったので、お昼過ぎには戻っていました」
自分の引け目を意識しすぎて、受け答えがヘンに優等生っぽくなってしまいます。
「そうだったの。気がつかなかったわ。それで、これからお出かけ?」
「あ、はい、ちょっと・・・」
「いえね、直子さんにご実家からお荷物が届いているから。それで声をかけたのだけれど」
「あっ、そうたっだのですか」
「お荷物ランプ、点けておいたはずなのだけれど、気がつかなかった?」
お荷物ランプというのは、管理人さんがお届け物などを預かったときに知らせてくれる装置で、各お部屋のインターフォン応答装置の横に付いていました。
「あ、えっと、ごめんなさい・・・」
「ううん、別にいいのだけれど。どうする?今持っていく?」
「お荷物自体は大きめだけれど、そんなに重くはないわよ」
実家からの荷物というのは、数日前に電話で送ってくれるように頼んだ、私の冬物のお洋服だと思います。
「あっ、でもこれからお出かけなら、お時間の都合もあるわね」
私が迷っているのがわかったのか、おばさまが気を遣ってくださいました。
「戻ってきてからでもいいわよ。おばさん今日は出かける予定ないから」
「あ、はい。ちょこっとお買物に行くだけですから、遅くとも5時までには戻ります」
「そう、それならお戻りになったら声かけてちょうだいね」
おばさまがそう言って、私の姿をあらためて上から下まで、まじまじと見つめてきました。
「とってもステキなお色のコートね。よーくお似合いよ」
「あ、ありがとうございます。おばさまのセーターもシックですごくステキですね」
「やだあ。これはただの普段着よ」
おばさまがコロコロ笑い、私の右肩を軽く叩きました。
コートの下で生おっぱいがプルンと揺れました。
「それじゃあお気をつけて、いってらっしゃい」
「はい。それではごきげんよう。また後ほど」
おばさまにお見送りされて、エントランスを抜けてお外に出ました。
レオタードのときと同じ路地に入り、少し歩いて、周りに誰もいないのをよく確かめてから、立ち止まりました。
ああん、びっくりしたー。
私はぐったり疲れ、すっごくコーフンしていました。
おばさまにお声をかけられたときから、心はドキドキ、からだはカッカと火照りつづけていました。
裸コートをしていると、普通に会話するだけで、こんなにコーフンしちゃうんだ・・・
私がおばさまと会話しているあいだ、頭の中のもうひとりの私が、いちいちその会話にツッコミを入れていました。
「何が、ごきげんよう、よ?お上品ぶったって、そのコートの下は真っ裸じゃない」
「びっくりしたときにヒクッとした、あなたのスケベなアソコをおばさまに見せてあげたいわね」
「何言ってるの?今日は裸コートをしたいがために早く帰ってきたクセに」
「頭の中、スケベなことでいっぱいだから、ランプなんて確認するヒマ無いわよね」
「正直に、裸コートでネコさんにアソコを見せに行きます、って言っちゃいなさいよ」
「コートを褒められたとき、中はもっとステキですよ、って開けて見せちゃえば良かったのに」
おばさまにお見送りされたときには、すでにアソコから溢れ出したおツユが一筋、左腿からふくらはぎへと滑り落ちてブーツの中へ達していました
たぶん今の私は、シーナさま言うところの、ドマゾオーラ、全開のはず。
気を引き締めないと。
イヤホンを挿し直し、背筋を伸ばして、無駄におっぱいが揺れないようにゆっくりと歩き始めます。
すれ違う人は相変わらず少ないですが、そのたびにドキンとするのも相変わらず。
さっきと同じルートで、さっきの小さな公園に着きました。
ブチネコさんはもういませんでした。
かなりがっかり。
それでも同じカメさんベンチに腰を下ろし、これからどうしようかを考えます。
このままでたらめに歩き回ってもいいのですが、それだけではもう面白くないかも。
おばさまとの会話で得たコーフンをもう一度味わいたい、という気持ちになっていました。
この格好で誰かとおしゃべりがしたい。
恥ずかしい格好をしていることなんておくびにも出さず、普通に、いいえ、あえていつもよりお上品な感じで。
そのギャップが大きければ大きいほど、コーフン出来ちゃうみたいでした。
我がことながら、かなり変わったヘンタイ性癖だと思います。
かと言って、そのへんですれ違う人に無闇に話しかけるワケにはいきません。
見知らぬ人と会話するもっとも手っ取り早い方法と言えば、お買い物。
まっさきに頭に浮かんだのは、このコートを買ったファッションビルのブティックでした。
あのお店で適当にお買い物をして、店員さんのお姉さんとあれこれおしゃべりして。
想像しただけでゾクゾクしてきました。
だけど、あのファッションビル周辺は、この住宅街とは比べものにならないくらいたくさんの人たちが行き交っているはずです。
もう午後の3時過ぎですから、学校帰りの高校生の子たちなんかも押し寄せているでしょう。
裸コート初日で、そんな人混みの中に身を投じるのは、ハードルが高過ぎる気がしました。
住宅街に普通にあるのはコンビニとかスーパー。
でもああいうところは、それこそ一声も発せずともお買い物が出来ちゃうようなしくみです。
何かを探してもらうくらいしか、店員さんとお話しすることはありません。
ところどころに個人商店もあるから、行くとしたらそういうところかな。
うーん・・・
つまりは、店員さんと相談しながら買うようなものがあれば、それを買いに行けばいいのだけれど、そういうものって何かなー。
お洋服と大げさな電気製品くらいしか思いつきません。
本屋さんで本を取り寄せてもらう、っていう手もあるけれど、それって一瞬で終わっちゃうし。
柏木のおばさまに、お買い物に行ってくる、と告げた手前、何かお買い物をして帰らなければいけない気分にもなっていました。
そうだ!
思い出しました。
そういえば、確かこの界隈に小さな商店街があったはず。
以前、闇雲に路地のお散歩をしていたときに、近くに駅も無いのに突然商店街が始まって、突然終わる一角があってびっくりしたことがありました。
それも、八百屋さんお魚屋さんお肉屋さん、お豆腐屋さん金物屋さん雑貨屋さんとか、最近ではあまり見かけない、古くからやってらっしゃるのであろう小じんまりとした個人商店ばかりがつづくレトロな商店街でした。
一度しか迷い込んだことはないけれど、ここからならなんとなく、記憶を頼りにたどり着けそうな気がします。
あの商店街なら、何を買うにもいちいちお店の人とお話ししなければならないはず。
レトロな商店街なので、お店の人もたぶん皆ご年配だろうから、お話しするのも気分的に楽そうだし。
あそこで、精一杯世間知らずのお嬢様を気取って、お野菜とか、お惣菜とかを買ってみようか。
思いついたアイデアにワクワクしてきました。
早速ベンチから立ち上がり、レトロ商店街探しの冒険に旅立ちました。
冒険の途上でも、しつこく、何か買うべきものはなかったかなー、って考えていました。
前から欲しいなと思っていたもの、買わなきゃと思ってつい忘れちゃうもの、最近きらしちゃったもの・・・
と考えていたとき、突然すごいアイデアが浮かんでしまいました。
あまりに恥ずかしく、あまりに自虐的な、それゆえ今の私にぴったりお似合いな羞恥プレイ。
これから行く商店街に、それを売っていそうなお店は・・・確かあったはずです。
そんなことを思いついてしまった自分を、アクマだと思いました。
本当にやってみるつもりなの?
そう自問すると、さっき柏木のおばさまとの会話にさんざんツッコミを入れてきたもうひとりの自分が、即座にこう答えました。
「当然でしょ?思いついちゃったんだから。今日、最初にレオタードなんか着てもたもたしていたあなたへの罰ゲームよ。お望み通り、見知らぬ人の前で思う存分辱めを受けるがいいわ」
*
*コートを脱いで昼食を 05へ
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