2015年9月6日

オートクチュールのはずなのに 18

 緑色のカーテンをきっちり閉めて、ドキドキを鎮めるために深呼吸をひとつ。
 側面の壁に貼ってあった操作説明に目を通すと、さっきの機械とは違う種類でした。
 でも、撮り方自体は大体同じで一安心
 先にウェットティッシュでショーツと股間を拭ってしまおう、とベンチ状の椅子に腰掛けたとき、大問題に気がつきました。

 このブース、さっきのブースに比べて目隠しカーテンの丈が異様に短かいのです。
 腰掛けると下半身、腰から下部分がすべてカーテンの下にきてしまい、お外からまったく隠せていません。
 あわてて立ち上がり確認してみたら、まっすぐ立った状態でカーテンの裾が私の太腿付け根の少し下くらいでした。
 腰掛けて股間を弄っていたら、その様子は途切れたカーテン下の空間から、行き交う人たちに剥き出しの太腿ごと丸見えとなることでしょう。
 
 さっきのブースは確か、膝のあたりまであったのに。
 かなり動揺してしまいました。
 どうしよう・・・?
 
 いつまでこうしていても仕方が無いので、立ったままミニワンピースの裾をめくり、ウェットティッシュをショーツの股間にあてがいました。
「はぅん」
 ひんやりとしたティッシュ越しに、乳液みたくヌルンとした液体が滴らんばかりに、布地を湿らせているのがわかりました。
 ティッシュを何度か折り直して丁寧に拭うと、ウェットティッシュ全体がベトベトになりました。

 渡されたウェットティッシュは、あと三枚ありました。
 お姉さまがこれだけの枚数をくださった、ということは、それだけ丁寧にキレイにしてきなさい、という意味なのでしょう。
 ショーツの裏側、あとやっぱり膣内も、拭っておかないと。

 だけど、ショーツの裏側を拭うには、いったんショーツをずり下げなければなりません。
 まっすぐ立っていても腿の付け根辺りまでしか隠してくれないカーテンですから、ここでショーツを下げたりしたら、その一連の動作がお外から丸わかりになってしまう上、拭いているあいだ中、下着を中途半端にずり下げた生足を、行き交う人たちにご披露しっぱなし状態になっちゃうはずでした。

 私はそれを、お姉さまからのご命令と受け取りました。
 お姉さまは、ここのカーテンがこんなに短かいことを知った上で、私にそういう辱めを受けることを望んでいらっしゃる、と。
 そして、お姉さまの言いなりドレイである私には、従う以外の選択肢はないのです。
 覚悟を決めました。

 カメラのほうを向いてまっすぐに立ち、ミニワンピの裾に潜らせた両手でショーツのゴムをつまみました。
 私、これから、こんな場所で下着を脱ごうとしている・・・
 そう思った途端に、辺りの雑踏と喧騒のボリュームが盛大に上がった気がしました。

 ひっきりなしに行き交う靴音、人々のざわめき、電車の到着を告げるアナウンス・・・
 ごくありきたりの正常な日常生活の中で、ひとり、異常なことをしようとしている私。
 見知らぬ人がいつ気づいてもおかしくない、下半身までカーテンが届かないブースの中、自ら下着を下ろして性器を露出しようとしているヘンタイ。

 そんな恥ずかしい姿、絶対誰にも視せたくないのに、なんでこんなに昂ぶっているのだろう?
 視られたくない気持ち以上に、視られてしまうことを期待している、もうひとりの自分がいました。
 被虐のジレンマで張り裂けそうな自分の心に焦れたみたいに、両手が勝手に動き始めていました。

 ショーツを裏返すみたく縁から丸め、ゆっくり腿のほうへとずり下げます。
 まずは太腿の中間くらいまで。
 ショーツが股間を離れるにつれ、股間とショーツの裏地との空間を、か細い糸が何本も引いては切れました。
 ずり下げられて丸まった銀色ショーツの布地は、左右の太腿を束ねて縛る一本の黒い縄のよう。
 その黒い縄はもちろん、途切れたカーテンの下から、お外に丸見えとなっていることでしょう。

 上半身を少し屈め、二枚目のウェットティッシュでショーツの裏地を拭います。
 左手をショーツに添えてクロッチ部分を広げ、右手のティッシュを裏地に押し付けました。
 ヌルヌルの感触で、すぐに二枚目も満遍なくベトベト。
 それをベンチ端に置いた使用済み一枚目の上に重ね、三枚目に手を伸ばしました。

 この三枚目のウェットティッシュは、自分の性器、いえ、直子のはしたない剥き出しマゾマンコを直に拭うためのもの。
 そう考えたら、被虐のジレンマが昂ぶり側にグラリと傾き、これから自分がすべきことが決まりました。
 マゾならマゾらしく。
 こんな場所で剥き出し性器を弄ろうとしているヘンタイ女は、それにふさわしい格好にならなければいけないのです。

 立ったまま、ミニワンピースのボタンを上から外し始めます。
 おっぱい写真を撮るだけならおへそくらいまで外せばいいのですが、全部外します。
 そのほうが私らしいから、そのほうがお姉さまに悦んでいただけるはずだから。

 ボタンをひとつ外すごとに、割れた前立ての隙間から覗く肌の比率が増えていきます。
 おへその下まで外し終えると、残ったボタンはふたつだけ。
 それらも外してしまえば、すでにショーツは下ろされているので、私のふしだらな剥き出しマゾマンコがブースの中で、文字通り剥き出しになってしまうのです。

 今までにも、駅や学校の公衆トイレやブティックの試着室など、公共の場のかりそめの密室で人知れず裸になり、その被虐的、背徳的な状況をひとりこっそり愉しんだことが何度もありました。
 でも、この証明写真ブース内は、それらの経験を軽く凌駕するほどの、危う過ぎるスリルに満ち溢れていました。
 
 現実世界とヘンタイな私を隔てるには、あまりに短かく薄っぺら過ぎるヘナヘナなカーテン。
 そんな頼りないカーテンのすぐ向こうを、ひっきりなしに行き交う大勢の人たち。
 今だって、誰かちょこっとこちらに目を遣れば、写真ブースの中でなぜだか下着を下ろしている女性がいる、ということは一目瞭然でしょう。
 スリルがもたらす興奮は、理性と呼ばれるブレーキをまるっきりの役立たずにして、今や完全に、視て欲しい、の側にシフトした私に、更にもっとヘンタイなことをさせようとしていました。

 今の私がこれほど大胆になれるのは、ひとえにお姉さまが傍らにいてくださるおかげでした。
 独り遊びでオドオドビクビクしていたときとは違い、お姉さまから見守られているという安心感に、どっぷり甘えている私。
 だからこそ、お姉さまの前では自分の性癖に忠実になって、そのことでお姉さまにも愉しんでいただきたい、という使命感をも感じていました。

 ボタンをすっかり外し終えると前立てがハラリと左右に割れ、銀色のブラジャーから下腹部、そして布に覆われていない無毛の恥丘までもが、ワンピース布地の隙間から細い長方形にさらけ出されていました。
 躊躇せず、袖から両腕も抜き、脱ぎ去ったネイビーブルーの布地をベンチ状の椅子右端に置きました。
 これですっかり下着姿。
 と言ってもショーツはすでに腿まで下ろしていますし、ブラジャーだってこの後すぐ、本来の役目を放棄させられる運命なのです。

 立ったままブラジャーのハーフカップに手を掛けます。
 そのままおっぱい全体をブラジャーから引き剥がすみたいに、カップをお腹側にずり下げました。
 ブルンと揺れながら姿を現わすぽってり下乳と、自分で見ても痛々しいほどに尖りきって宙を突く乳首たち。
 ブラジャー左右の肩ストラップに挟まれ、カップの縁で上のほうへと持ち上げられ、全体が窮屈そうに中央付近へ寄せ集められたおっぱいは、谷間クッキリ、ボリュームアップ、いつもより肉感的で卑猥な感じ。
 そのままからだを前屈させ、ショーツも膝のところまで更にずり下げました。

 これが私の望んだ、私らしい姿。
 下着は上下ともちゃんと着けているのに、隠すべきところは一箇所も隠せていない、ある意味全裸より浅ましい、ヘンタイ露出狂女の脱げかけ半裸姿。
 正面の鏡におへそを中心とした白い肌が、艶かしく映っています。
 
 その画像を見ながら腰をゆっくりと落とし、再びベンチ状の椅子に腰掛けました。
 裸のお尻に椅子がひんやり。
 おそらくお外には、何にも覆われていない肌色の腰部分が、カーテンの下から覘いていると思います。
 もちろん、膝まで下ろした紐状ショーツも。

 背筋を伸ばしてまっすぐ座り、あらためて正面の鏡と向き合いました。
 そこには、赤い首輪を嵌められて不自然な形におっぱいを露出した、見るからに発情しきった淫ら顔マゾ女の悩ましげな表情が映っていました。

「・・・必要な証明写真の種類をお選びください」
 料金の投入口にお金を入れると突然、甲高くチャイムが鳴り、かなり大きな女性のお声が!
 えっ!?何これ?しゃべるの!?
 さっきのブースはしゃべらなかったので、ちょっとしたパニック。
 て言うか、そんなに大きなお声を出されたら、お外からも注目されちゃいそう。
 女性のお声で急に現実に引き戻され、同時に今自分がしていることのとんでもなさ、こんなところでほぼ全裸になっている現実を、あらためて思い知りました。

 俄然不安になって、カーテンの下から見えているお外に視線を走らせると、ブースのすぐ近くに見覚えのある細くしなやかなジーンズのおみ足。
 そう、お姉さまが見守ってくださっているから大丈夫。
 その周辺に他の足元は一切見えなかったので、かなり安心しました。

 と同時に股間のローターが激しく震動し始めました。
「んふぅーっ!」
 きっとお外にいらっしゃるお姉さまにも女性のお声が聞こえ、私が写真を撮り始めることを知り、イタズラを仕掛けてきたのでしょう。
 
 別の見方をすれば、お姉さまが私にイタズラ出来るくらい、今のところブースは注目されていない、とも考えられます。
 もしも、ブースの中で誰かが裸になっている、って何人かに気づかれて周囲がヒソヒソしていたら、お姉さまにもイタズラ出来る余裕なんてないでしょうから。
 その考えは、私をずいぶんホッとさせてくれました。

 操作方法を教えてくださる女性のお声に従って操作をしているあいだ中、お外から注目されやしないかと気が気ではありませんでしたが、それでも考えていたことは、実行に移しました。
 写真を撮られるあいだ、顔は正面を向けたまま、左手のウェットティッシュでずっと股間を拭っていたのです。

 腫れ上がった肉芽にティッシュが触れるたびに、眉間にいやらしくシワが寄りました。
 強く押し付けたティッシュ越しにもわかるほど、股間全体が熱くなっていました。
 ローターは相変わらず、中で激しく震えています。
 お姉さまったら、そんなふうにローターを震わせていたら、せっかくティッシュで拭っている意味が無いですよ?
 
 ああん、このまま指を潜り込ませて、クリトリスをつまんで、最後までイっちゃいたい・・・
 さすがにそこまでは出来ませんでしたが、ティッシュを押さえる指がモゾモゾ動いてしまうのを、止める事も出来ませんでした。

 鏡の中の自分の顔が、自分でも恥ずかしくなるほど淫らに歪んでいました。
 からだ中が疼き悶え、大興奮していました。
 拭っても拭ってもジワジワ溢れ出てくる粘性の液体。
 そんなさ中、パシャン、とシャッターが切れたらしい音が聞こえました。

「ありがとうございました。写真は外の取り出し口から出ます」
 女性のお声と同時にローターも止まり、達し切れなかった私はガクンとうなだれます。
 あぁんっ、また生殺し・・・
 股間を押さえていたティッシュは前の二枚以上にグッショリ濡れそぼっていました。

 ブースに入って撮影まで、時間にすれば、ほんの5、6分のことだったのでしょうが、私には小一時間もかかったように思えるくらい、グッタリ疲れていました。
 でも、あまりお姉さまをお待たせしてはいけない。
 すぐに気持ちを切り替えました。

 よろよろと立ち上がり、膝のショーツをモゾモソずり上げます。
 ショーツのクロッチはまだ湿っていて、そこに新しいシミが更に広がっていくのがわかりました。
 ミニワンピースを羽織り、下から順にボタンを留めていきます。
 お言いつけ通りブラジャーは直さず、おっぱいを飛び出させたまま。

 ここに入ってきたときと同じように、上から三番目の胸元ボタンまでを、きっちり留めました。
 そのときより、バスト全体の位置がせり上がっている感じ。
 アンダーをカップで持ち上げられていつもより高い位置になった乳首が、胸元に貼りついた布地をポッチリ浮き上がらせ、ひと目でノーブラと分かる状態となりました。
 ボタンふたつ外れた状態のVゾーンからは、盛り上がったおっぱいの谷間が不自然なくらいクッキリ覗いています。
 こんなふしだらな格好で、今度は街中をお散歩するんだ・・・
 どうしても目が行ってしまうほど自分の胸元で派手に目立っている恥ずかしい突起にクラクラしながら、ゆっくりとカーテンを開きました。

「・・・お待たせしました、お姉さま」
 お姉さまは、私と目が合うとニッと笑い、私の眼前に今撮ったばかりの写真を突きつけてきました。
 そこには、半開きの目と唇で、なんとも悩ましく顔を歪ませたおっぱい丸出し女のバストアップが、同じ構図で四枚写っていました。

「ずいぶんと大胆なことしていたわね?まさか中でワンピまでさっくり脱いじゃうとは、思ってもいなかったわ」
 写真をつかもうと思わず伸ばした私の右手をヒラリとかわすお姉さま。
 置いてきぼりになったその右手をご自身の左手で捕まえると、引っ張るみたいにホームのほうへとスタスタ歩き始めました。
 
 電車が出て行ったすぐ後のようで、ホームにはけっこうな人波が右へ左へと行き交っていました。
 お姉さまはずっと無言。
 人混みに紛れてしばらくしてから、ようやくお姉さまが歩調を緩めました。

「カーテンの下から直子の生足、丸見えだったわよ?もちろん下げたパンティまで」
 階段をゆっくり上りながら私にヒソヒソ耳打ちしてくるお姉さま、
「座ったときは裸の腰まで見えていたし、見ているこっちのほうがハラハラしちゃったわよ」
 階段を上りきると10メートルくらい先に改札が見え、その向こうは都会らしい駅ビル地下っぽいたたずまいでした。

「歩きながらブースの中をチラチラ見ていく人もいたから、けっこうな人数の人がブースの中の生足とパンティには気がついていたみたい」
「でも、普通の人は立ち止まらないからね。そのまま通り過ぎるだけなのだけれど」
「ひとりだけ、中年のリーサラっぽいオジサンが、一度通り過ぎたのにわざわざ戻ってきたのよ。直子が座って撮影が始まった直後だったな」
「あたしがブース前に陣取って、次の順番待ちで並んでいるようなフリをしていたから、近づいては来れなかったみたい」

「それでそのオジサン、ブースが見える対面の壁にもたれてケータイを弄り始めたの。頻繁に視線をこちらに投げながら、まるで張り込みの刑事みたいに」
 人混みをすり抜けながら、お姉さまがヒソヒソしてきます。
「ブースに注目しているのは丸わかりだったから、ちょっとヤバイかなと思って、直子が出てきたらすぐ逃げることにしたの。見るからにスケベそうな顔していたから、そのオジサン」
 お姉さまが呆れたようなお声でそこまで教えてくださったとき、改札口にたどりつきました。

 いったん互いの手を解き、改札を抜けました。
 そのまま通行の邪魔にならない壁際までふたりで退避。
 お姉さまと向かい合いました。

「それにしても、直子もいい度胸よね。カーテンが短かいの、わかっていてやったのでしょう?」
「・・・はい」
「どうだった?あんなところで裸になったご感想は?」
「それは・・・」
「この写真見れば一目瞭然よね。いやらしい顔しちゃって」
「・・・」
 お姉さまが再び私に写真を突きつけ、その向こうからじっと私を見つめてきます。

「命令どおり、ブラはずり下げたままのようね?」
 お姉さまの視線が私のバストを凝視。
「はい・・・」
「そんなに露骨にワンピの前を尖らせていたら、街中の人たちに、わたしはノーブラです、って宣言して歩くようなものよ?それでもいいの?」
「あの、えっと、はい・・・」
「そうよね、直子はそういうので悦ぶマゾ女だものね?」
「・・・はい」

「剥き出しマゾマンコはちゃんと拭いた?」
 お姉さまの視線が更に下がりました。
「はい・・・」
「知ってて聞いたのよ。直子がマゾマンコ弄りながら写真撮られてるとこ、外から丸わかりだったもの」
「・・・あれは、ただ拭いていただけです・・・」
「ふーん。どうだか」
 お姉さまの蔑むようなお声。

「それで、キレイになったの?」
「えっと、それは・・・」
「でしょうね。相変わらずクロッチがグショグショだもの。あとからあとから滲み出る愛液に追いつかなかったのでしょう?」
「はい・・・そうです」

「あたしもそう思って、いっそ一度イってしまったほうがいいのかなとも考えてさ」
「・・・」
「せっかくローターで助けてあげたのに、イケなかったんだ?」
「・・・はい」
「それはご愁傷様。でも、あたしの経験上、イキたくて仕方ない状態の直子ほど、面白いオモチャはないのよ。これからのお散歩がますます愉しみになったわ」
 そうおっしゃって、愉快そうに微笑むイジワルお姉さま。

「使用済みのウェットティッシュは、どうしたの?」
「あ!いけない!椅子の上に置きっぱなしでした」
 すっかり忘れていました。
「あーあ。次に使う人はいい迷惑ね。うっかり触らなければいいけれど」
 ドロドロヌルヌルのティッシュの感触を思い出し、ひとり強烈に赤面してしまう私。

「あ、でも、さっきの張り込みオジサンが戦利品としてとっくに回収していったかもしれないわね。今夜のオカズに」
「オジサンの脳裏には座った直子の艶かしい裸の腰のラインが焼きついているはずだからね。きっといろいろ捗るはずよ」
 お姉さまがお下品に冷やかしてから唇を寄せてきて、私の耳にフッと熱い息を吹き込みました。
「ぁぁんっ!」

「おーけー。では行きましょう。この周辺は繁華街も近いし、今までよりずっとたくさんの人たちに、そのいやらしい姿を視てもらえるはずよ」
「でもその前に、あたしにいつまでバッグを持たせておく気?」
「ご、ごめんなさい、お姉さま」
 あわてて左手を差し出しました。

「バッグは直子の係って最初に伝えておいたのだから、さっさと気を利かせなさい」
 おっしゃりながらご自分の左肩からビニールトートの提げ手を抜き、私に渡す前に中を何やらガサゴソされました。
「さ、これでいいわ。どちらを表に向けても、直子の好きにしていいわよ」

 渡されたバッグには、絶望的な仕掛けが施されていました。
 片面に麻縄や鎖、洗濯バサミや銀色ディルドなど、私を虐める不健全なお道具たちが、薄いブルーのビニール越しに透けて見えているのは相変わらずでした。
 もう片面の、今まではまっ白いバスタオルのタオル地だけが見えていて健全だったほうに、今さっき撮影された私の淫ら顔証明写真が表向きで見えていました。

 ハガキ大の紙に四分割で、同じ構図の写真が四枚。
 ビニールとバスタオルのあいだに挟まれ、バッグ側面のほぼ中央部分に配置されたそのカラー写真は、真っ白なタオル地の中、青色を背にした肌色ばかりの写真が唯一のアクセントとなり、否が応でも目を惹き、かなり鮮やかに目立ちました。
 その写真を見て、それから、そのバッグを持っている人物に目を遣れば、写真の中でいやらしく顔を歪めているおっぱい丸出し女と、バッグの持ち主が同一人物だとすぐにわかってしまうことでしょう。
 
 更にご丁寧に、その前に撮影した顔を半分隠したおっぱい丸出し写真は、バッグのマチ部分、もちろんここも透明です、に移動され、正面または背後から、いつでも丸見え状態となっていました。

 自分のおっぱい丸出し喘ぎ顔ヌード写真をさらしながら街を歩くか、それとも、見る人が見ればピンときちゃう、自分を虐める破廉恥なお道具を持ち歩いていることを誇示しながら街を歩くか・・・
 どちらもあまりに恥ずかし過ぎる恥辱の選択。

 迷った末に、私は前者を選びました。
 理由は、今さっきお姉さまが敢えてそうされたのだから、つまりはそれがお姉さまのお望みだと思うから。
 それにそっちのほうが、より露出狂マゾらしいとも思ったから。
 写真の側を表に向けてバッグを提げた私を見て、お姉さまが嬉しそうに、ふふん、と笑い、私の右手をつかみました。

 お姉さまと手をつないで駅ビルっぽい通路の人波をかき分けていきます。
 改札のすぐそばが大型量販店の入口であることもあり、ひっきりなしに人とすれ違います。
 からだに感じる視線の数も、今までとは桁違いに増えていました。
 それは、今の私のいでたちに、通りすがりの人の視線を惹いてしまうような箇所が増えていることとも、無関係ではないのでしょう。

 今までもさんざん注目されてきた赤い首輪。
 少し視線を下げると、Vゾーンから覗いている盛り上がった胸の谷間。
 布地を押し上げている乳首の突起。
 もっと下げると、割れた裾からチラチラ覗く黒いクロッチ。
 おっぱい丸出し女の写真が透けて見えているビニールトート。
 少し数えただけでもこれだけあります。

 更に、お姉さまが人目を惹く超美人さんであること、女同士で手を繋いでいること、私の顔が汗ばんではしたなく上気していること、などなど。
 ありふれた街の喧騒の中で、私とお姉さまがいる空間だけが浮きまくり、目立ちまくっていることを痛切に感じていました。
 そして、その不躾な好奇の視線を受けることが妙に心地良く、全身が敏感にチクチク疼きまくってしまっているのも事実でした。

 そんな視線をすれ違う人たちからビンビン感じつつ、階段を上りきり地上に出ました。
「あら、駅ひとつぶんで、外がずいぶん暗くなっちゃってる」
 お姉さまが驚いたようにお空を見上げました。
「まだ午後3時過ぎなのにこの空の暗さは、やっぱり天気予報ってたいしたものなのね。間違いなくひと雨くるわ」
 お姉さまがなぜだかとても嬉しそうに、そうおっしゃいました。


オートクチュールのはずなのに 19


2015年8月23日

オートクチュールのはずなのに 17

 プリペイドカードを持ってきていない私のために、切符を買ってきてくださったお姉さま。
 ご自分のカードを抜いた後、私が左肩に提げているビニールトートに、お財布を戻されました。
 
 そのとき、気がつきました。
 さっきお姉さまが私の左肩にビニールトートを掛けてくださったとき、表に見える側をバスタオルではないほうにしちゃったみたい。
 今現在、バッグのシースルーなビニール側面からは、とぐろを巻いた麻縄や鎖、えっちなお道具の数々が見えているはずです。
 
 だけど私が勝手に提げ変えることは許されません。
 お姉さまがそうされたということは、それがお姉さまのご意志であり、こう提げなさい、というご命令なのですから。

 改札を抜けると、数メートル先にホームへと下りる下りエスカレーター。
 そこへ向かっている途中、ちょうどホームに電車が侵入してきて、ここでも凄い風が吹き上げてきたので、ミニワンピースの裾前を手で押さえることが許されました。

「ただし、さっきの階段のときと同じように、押さえていいのは下腹部のあたりまでよ」
 お姉さまの念を押すような耳打ち。
「はい。わかっています・・・」
 少しでも風圧がかかれば裾の前立てがあっさり左右に割れ、はしたないおツユで濡れそぼったショーツの恥丘部分を、みなさまに見せつけながら下りることになるはずです。

「今度は先に行きなさい」
 お姉さまに促され、エスカレーターのステップ左端に立ちました。
 すぐ後ろにお姉さまもつづきます。
 下りエスカレーターの右隣は、ホームから改札口へと向かう人たちのための上りエスカレーター。
 今到着した電車に乗っていたのであろう人たちが次々と、その上りエスカレーターに乗り込んできます。

 下りエスカレーターに乗っている私の前には、一番下まで誰も乗っていませんでした。
 すなわち、私が先頭状態。
 上りエスカレーターで上がってくる人のうち、うつむいている人以外は、その視界に否応無く、私の姿が入り込んでくるはずです。
 
 いくつもの視線がまず私の首に貼りつき、次に股間へと移動していくのを感じていました。
 自分では見えませんでしたが、ミニワンピの裾が絶えず左右に割れてはためいているのは、わかっていました。
 
 私は、ずっとそ知らぬ顔を作り、目の焦点をどこにも合わせさず、まっすぐ眼前の宙空を見つめていました。
 内心では、心臓が壊れちゃうんじゃないかと思うくらいのドキドキで、キュンキュン感じまくっていました。

「ずいぶんジロジロ注目されていたわね。すれ違った後もずーっとこっちを振り向いていたオジサンまでいたわよ」
 エスカレーターを降りた途端にお姉さまに肩を叩かれ、ヒソヒソされました。

 たまらず私は、お姉さまの左腕にギューッとしがみつきました。
 誰かにしがみついていないとヘナヘナとへたり込んでしまいそうなほど、下半身がジンジンかつフワフワしていたのです。
 お姉さまは、私がしがみついてくることについては別に何もおっしゃらず、そのままゆっくり、ホームの中央のほうへと進んでいかれました。

「なんだか狭いホームなのね。それなりに有名な駅なのに、ホームドアも無いし。混雑したら危なそうよね?」
 ホームをしばらく進み、何本目かの太い円柱で足を止めたお姉さま。
 私を振り向き、世間話みたいにそうおっしゃいました。
「それに、予想通りではあるけれど、人が少なすぎ。これじゃあ直子もがっかりでしょう?」
 からかうように私の顔を覗き込んでくるお姉さま。

「いえ、そんなことは・・・」
 少ないと言っても、エスカレーターを降りてからここまでで十数人の人たちとすれ違いましたし、そのうち半数以上の人から、首輪やバッグへの不躾な視線をいただいていました。
「次の駅行けば、もっとたくさんいるはずだから、もう少しの我慢よ」
 あくまでも私が残念がっていると決めつけるお姉さま。
 やがて轟音と共に電車が到着しました。

 各ドアから乗る人、降りる人、ほんの数人づつ。
 電車内も、都会の地下鉄にしては珍しいくらいガラガラでした。
 空席のほうが目立つロングシート、プラス、これだけ席が空いていてもなぜだか立っている人がドア際にポツンポツン。

「見事にガラガラね。これじゃあ痴漢ごっこも出来やしない」
 お姉さまが冗談めかしておっしゃいました。
「一駅だけだけれど、座りましょう」
「はい」
 私たちが乗り込んだドアのすぐ脇のロングシートが丸々空いていたので、私がドア脇の一番端に座る形で、ふたり並んで腰掛けました。

 この服装で腰掛けると裾がせり上がり、ショーツのクロッチ先端が見えっ放しになることは、車の助手席に座ったときにわかっていました。
 でも、私たちが座っているシートの周辺、お姉さまから向こうにも対面側にも、誰もいませんでした。
 
 この位置から見える人影といえば、対面側シート脇のドア際で、手摺りにもたれかかってお外を向いている男性の背中だけ。
 その男性の両耳にはイヤホンが見え、まったく周囲を気にされていないご様子。
 なので、私も安心して座ることが出来ました。
 もちろん座ってすぐ、肩から外したトートバッグを膝の上に乗せ、剥き出しショーツを隠しました。

「エスカレーターでは失敗しちゃった。バッグを右肩に提げ直すように命令すればよかった」
 お姉さまが地下鉄の騒音に負けないように私の耳に唇を近づけ、大きめヒソヒソ声でおっしゃいました。
 視線はずっとビニールトートに注がれていて、私もつられて見たら、あら大変!
 私ってば、無造作に麻縄や鎖が見えるほうを表側に向けていました。

 あわててひっくり返そうとする手を制され、お姉さまがつづけました。
「さっきのエスカレーターって、すれ違うとき、かなりの至近距離だったでしょ。でも直子のバッグは左肩で、壁のほうに向けて提げていたから、すれ違う人に中を見てもらえなかったじゃない?」

「直子の姿を見て、このバッグの中身も見てもらえれば、直子がどんな種類の女なのか、いっそう明確にわかってもらえたと思うのよね」
 お姉さまが本当に残念そうなお声でおっしゃいました。
 お得意のお芝居とは思いますが。

 それよりも私は、膝の上のバッグにもっと恥ずかし過ぎる事実を発見していました。
 シースルーのビニールトート表面ほぼ中央左寄り、麻縄がとぐろを巻いているその上に、さっき撮った証明写真がハッキリ表向きで見えていたのです。
 顔は隠しているものの、おっぱい丸出しの自分の写真。
 
 写真が小さいので、遠目からはなんだかわからないでしょうけれど、このくらいの距離なら、えっちなおっぱい写真だとバッチリわかっちゃいます。
 私、こんなもの見せびらかせたまま、駅の中を歩いてきたんだ・・・
 今更手遅れなのですが、さりげなく右手をバッグの上に置き、写真の部分を隠しました。

「そう言えば、次の駅で小銭が必要なのだったわ。ちょっとバッグ貸して」
 写真を隠した私を見透かしたみたいに、お姉さまの手が私の膝からバッグを奪い去りました。
 再び剥き出しとなった、私のびしょ濡れショーツ先端。
 周囲に人がいないのが本当に幸いです。

 バッグの中をガサゴソして目的を果たされた後も、お姉さまはバッグを返してくださいません。
 一度周囲を見回してから、ヒソヒソ耳打ちしてきました。

「膝小僧をぴったりくっつけちゃって、ずいぶんお行儀がいいのね?どうせ誰も見ていないのだから、もうちょっとリラックスしたら?」
「えっと、あの、やっぱり一応は、電車の中ですから・・・」
「そんなお堅いこと言っても、今だってパンティ、隠しきれていないじゃない?」
「それは、そうですけれど・・・」
「ふーん。素直じゃないわね、マゾのクセに。これならどう?」
「んふぅっ!」

 ショーツの奥でローターが強烈に震え始めました。
 思わず眉間にシワが寄ってしまうほど。
「うわー。エロい顔になっているわよ?そんな顔をしていたら、遠くから見た人にだって、感じているのがバレちゃうわよ?」
 愉しげなヒソヒソ声が右耳をくすぐりました。

 両腿をピッタリ閉じてローターを締め付けていると余計感じてしまうので、仕方なく徐々に両膝を開き始めました。
 両足は揃えたまま膝だけ大きく開いたので、もしも誰かが視ていたら、すごく卑猥かつお下品な格好だったことでしょう。

 股を開いて震動は幾分ラクにはなりましたが、今まで昂ぶりつづけていたところに、今回の刺激は強烈でした。
 お姉さまは、まだローターを止めてくださいません。
 両膝が無意識に、パクパク開け閉めの動きをしちゃっています。

 私、こんな走っている地下鉄の中で、感じちゃっている・・・
 他のお客様も普通に乗っている明るい車両の中で、イキそうになっちゃっている・・・
 そんな背徳的な想いが被虐の炎に油を注ぎ、益々敏感に疼き悶える下半身。
 感じていないフリを必死に繕いながらも、どんどん高まっていました。

 間もなく次の駅に到着、というアナウンスと共にローターがピタッと止まりました。
 ああんっ、もう少しでイケたのに・・・
 ホッとする気持ちと残念に思う気持ちが半々の私。
 髪の生え際にジンワリ汗が滲むほど火照った顔は、すごくエロくなっていたと思います。

 両膝を無駄にパクパク開け閉めしちゃったせいでしょう、ワレメが割れておツユがもっと染み出してしまったようで、ショーツのクロッチは滴らんばかりのぐしょ濡れ。
 事実、座っている両腿のあいだから見える紫色のシートに少し白濁した水滴が一粒、半透明な宝石のようにキラッと光っていました。

 電車が減速し始めると、お姉さまがバッグを持ったまま、おもむろに立ち上がりました。
 私もあわててつづきます。
 立ち上がるとき、シートの水滴と私の股とのあいだに、細い糸が一本スーッと伸びて、すぐ切れたのがハッキリ見えました。
 からだ中の血液が沸騰しそうでした。

 入ってきたときと同じドアの手摺りに掴まり、電車が停まるのを待ちました。
 お外の暗闇で鏡と化した窓ガラスに映る、赤い首輪の女。
 その辛そうな顔がなんとも悩ましく淫ら過ぎて、今すぐどこかに逃げ去りたい気持ち。
 鏡の奥には、そんな私を愉しそうに見つめるお姉さまのお顔もありました。
 やがて窓ガラスが明るくなり、電車がホームへと滑り込みました。

 駅のホームに降り立つと、お姉さまが再びビニールトートを私の左肩に提げさせました。
 もちろん、タオルの側ではないほうを表に出して。
 私も再び、お姉さまの左腕にしがみつきました。
 
 広くて明るいホーム内に、聞き覚えのある日常的な雑踏と喧騒。
 閑散とした電車内から一変した雰囲気に戸惑ったのか、電車内でのローター陵辱による昂ぶりの余韻が急激に引き始めたのが、少し残念でした。

「ず、ずいぶん人が多いですね・・・」
 さっきの駅のホームとは打って変わって、それなりの人数の人たちが広めのホームを右へ左へ、忙しそうに歩いていました。
「ここの駅一帯に、確か五種類の地下鉄路線が乗り入れている一大乗換え駅だからね。ここからなら、池袋でも渋谷でも銀座でも浦安でも、なんなら神奈川にだって埼玉にだって一本で行けちゃうのよ」
 お姉さまが人波を優雅にすり抜けながら、教えてくださいました。
「でもやっぱり、普段に比べれたらかなり少ないほうね。歩いている人種も違うし。普通の日はほとんどサラリーマンだけだもの」

 確信を持った足取りで、いくつものエスカレーターや階段を上ったり下りたりしながら、歩きつづけるお姉さま。
 置き去りにされないように、私もその左腕にくっついています。
 絶えず誰かとすれ違い、追い越され、ときどき首輪に視線を感じました。
 そして歩いているうちに、さっきみたいな空いている駅よりも、このくらい混んでいたほうが気がラクなことに気がつきました。

 誰かにすれ違いざま注目されたとしても、それはほんの数秒間の出来事。
 ずっと歩きつづけているので、お互い違う方向に歩き去れば、すぐに忘れてしまう。
 二度見しようとしても、私の姿はすでに人混みの中に消えているでしょう。
 そんな、人混みに紛れている感、が、安心感をもたらしてくれたのだと思います。
 もちろんたくさん人がいる分、私の首輪や股間に気がつく人数も増えているはずですけれど。

「ずいぶん広い駅なのですね?」
 優雅に歩きつづけるお姉さまにお尋ねしました。
「うん。この駅は構内で別の駅ともつながっているの。まだ改札出ていないでしょ?」
「そう言えば・・・」
「降りたのは永田町駅だったけれど、あたしが目指しているのは赤坂見附の改札。取引先がいくつかあるから、そっちから出たほうが土地勘があるのよ」
 短かいエスカレーターに乗ったところで、お姉さまが教えてくださいました。

「そんなことより直子はさ、さっき電車の中でローターに感じまくっていたとき、誰かにずっと、じーっと視られていたの、気がついていた?」
 エスカレーターを降り、まっすぐの通路になってお姉さまと並んだとき、ヒソヒソ耳打ちしてきました。
 青天の霹靂でした。

「えーっ!?だってあのときは、前にも横にも、誰も座っていませんでしたよ?」
「そうね。座ってはいなかったわね。でもひとり、直子の斜め前くらいに、いたでしょう?」
「あっ!」
 イヤホンをしてドア際に立っていた、あの男性のことのようです。

「でもでも、あの人はずっと背中を向けて、お外を見ていましたよ?窓ガラス越しに・・・」
 自分で言い訳している途中に、はっ、と気がつきました
 人混みの安心感から余裕が出て、せっかく装えていたお澄まし顔が、みるみる崩れてしまいました。

 「やっと気がついたみたいね。さっき直子も自分の顔に見惚れていたじゃない?地下鉄って外がずっと暗いままだから、窓ガラスが鏡みたいになって、車内の様子が鮮明に映り込んじゃうのよ」
 お姉さまのヒソヒソ声がすっごく愉しそう。
 ゆっくりと歩きながら、お姉さまのお話がつづきました。

「あたしが見ていた感じでは、かなり早い段階で気づいていたみたいよ。あたしが直子の膝からバッグを取り上げたとき、彼の肩が一瞬、ビクンと揺れたもの」
「たぶんその前、乗り込んで座ったとき、直子のパンティが見えていることに気づいて注目していたのだと思うわ。そうじゃなくても、そんな首輪をしているのだもの、ヘンな女だなって注目しちゃうでしょうけれど」
 ご自分でやらせたクセに、イジワルなことをおっしゃるお姉さま。

「後姿を見た感じ、若めで細身でスーツ姿でもあったし、害は無さそうって判断して、サービスしてあげることにしたの」
「あたしの姿も一緒に窓に映り込んでいるはずだから、あたしが彼に気づいていることに気づかれないように観察するのが大変だったかな。なるべく視線を動かさないようにしてね。でも見ていてすごく面白かったわよ、ふたりとも」
「直子が膝を広げ始めたとき、手摺りを握っている彼の右手に力が入って、白くなってたのが可笑しかったわ。きっと彼も充分愉しめたでしょうね」

「あたしたちが降りるまで一度も振り向かなかったのは偉かったわね。あんなの見せつけられたら、一度は肉眼で、生で拝みたかったでしょうに」
「降りる前にドアのところに立って確認してみたら、対面の端のシート一帯がガラスにバッチリ映っていたから間違いないはず。彼の位置から直子の挙動は、鏡状態で丸見えだったの」

「あれだけ長い時間視ていれば、直子の股間の黒いものがマン毛でないことも、だったらなぜ黒くなっているのかも、わかっちゃったでしょうね」
「それに、あたしたちがどういう関係で、直子が何をさせられていたのかだって、ちょっと知識があればわかったはずよ。あの女は露出狂マゾだって、彼が正しく理解してくれたら、直子も本望でしょう?」
「彼が交差点のオタク君たちみたいに、えっちな知識をたくさん持っていてくれることを祈るわ。降り際にやっとこっちを振り向いたのを見た感じでは、気弱そうなメガネ君だったけれど」

 お姉さまが愉しげにお話されているあいだ中、私はお姉さまの腕にギューッとしがみついていました。
 お話が進むごとに、いてもたってもいられなくなりました。

 全部、視られていた・・・
 周囲に目がないことに安心しきって、自らいやらしく開け閉めしていた股間も、ローターで感じているのを必死に取り繕う顔も、愛液がジュクジュク滲み出るショーツも、立ち上がったときに引いた糸までも・・・
 知らない男性に全部、視られていた・・・
 やよい先生やシーナさま、そして最近ではお姉さまにしかお見せしたことのない、マゾ女直子がイク寸前まで高まった姿、私のヘンタイな本性・・・

 恥ずかしいとか、羞恥とか、そういう言葉では到底収まりきらないほどの恥辱感が、全身を駆け巡っていました。
 でもその恥辱感には不思議なことに、今までに感じたことの無い甘美な開放感も少し、混ざっていたのも事実でした。

「ふう。やっと着いた。ここからが丸の内線、赤坂見附駅のホーム。それで、ここに寄りたかったの」
 お姉さまからのショッキングな暴露で腑抜けのようになった私を、お姉さまが引き摺るみたいに誘導してくださいました。
 通路からホームへ向かう少し広くなったスペースの片隅に、見覚えのある形がありました。
 さっきの駅にあったのと同じような、証明写真機のブースでした。

「またここで、おっぱい写真を撮ってもらうおうと思ってさ」
「はい・・・」

 どんなに恥ずかしいめに遭わされても、それを見知らぬ人に視られても、していただいたこと、視ていただいたことを、悦んで受け入れなければいけない・・・
 だってそれは、マゾでヘンタイな私のことを想うお姉さまが、敢えてしてくださることなのだから・・・
 私はそういう女なのだから・・・
 そんな気持ちになっていました。

 傍らを人々がひっきりなしに行き交う証明写真機ブースの前で、お姉さまと向かい合わせに見つめ合いました。

「おっぱいの出し方はさっきと同じ。ブラを下にずらす。わかるわよね?」
「はい」
「今回あたしは覗かないから、全部ひとりでやりなさい」
「はい」
「おっぱい出して、今度は顔を隠さないで写真を撮りなさい」
「はい」
「撮り終わったらおっぱいはしまわずに出したまま、ワンピのボタンだけ留めて出てきなさい」
「・・・はい」

「なんだか急に素直になっちゃったのね?ちゃんとわかってる?」
「はい。わかっています。直子はお姉さまの言いなりドレイですから、何でもお姉さまのおっしゃる通りにいたします」
「うふふ。あのメガネ君に視られちゃったと知って、開き直っちゃったみたいね。ますます愉しくなってきたわ」

 お姉さまの瞳がエス色に妖しく揺れて、私のマゾ度も臨界点を突破。
 今の私は心身ともにドエム一色でした。
「これ、お金ね。あと、これ」
 ウェットティッシュを数枚渡されました。

「パンティから雫が今にも垂れそうよ。直子の剥き出しマゾマンコを、中でキレイに拭ってきなさい。まあどうせ、すぐにまた濡らしちゃうのでしょうけれど」
「お心遣いありがとうございます、お姉さま」
「バッグは持っていてあげるから、早くやっていらっしゃい」
「はい、お姉さま」
 右手にお金、左手にウェットティッシュを握り締め、ブースの中に入りました。


オートクチュールのはずなのに 18


2015年8月16日

オートクチュールのはずなのに 16

 低めのビルが立ち並ぶ、いかにもオフィス街というたたずまいの一画を、お姉さまとふたり、歩いていきます。
 たまにみつかる飲食店もお休みばかりで、街全体がまさしく、休日、という感じ。
 当然、人通りもとても少ないのですが、まったく無いというわけではありません。
 奥様風のご婦人や子供連れのご家族とすれ違ったり、曲がり角から突然、若い男性が現われたり。
 
 そのたびに私はビクビクしてしまい、寄り添ったお姉さまから、うつむかない、顔を上げて堂々と、って小さなお声で叱られました。
 少し風が出てきたみたいで、向かい風が吹くとワンピースの裾の真正面が完全に左右に割れて、はためきました。

 どうやら先ほど車で走ってきた幹線道路のほうへ戻るようです。
 四つ角を二、三度曲がり、路地から幹線道路が見える頃には、道行く人たちもけっこう増えていました。
 お姉さまに叱られるので一生懸命頑張って、まっすぐ前を向き普通の顔をしているように努めました。
 ミニワンピースの裾からは濡れそぼったショーツの股間が始終チラチラしているはずです。
 リモコンローターはいつの間にか止まっていました。

 うつむかずに歩いていると、行き交う人たちが私を視たときの反応がわかりました。
 最初に視線が注がれるのは、やっぱり首輪。
 一瞬チラッと見てから、たいていの人が二度見してきました。
 首輪をじっと見て、それから視線が上下して顔と全身。

 ただ、私に気づく人は、正面からやって来てすれ違う人たちばかりで、視られている時間もほんの数秒間。
 後ろから追い越して行く人や道幅を隔てた反対側を行く人たちなど、ほとんどの人たちは、私のことなど一瞥もせず、ただ通り過ぎていきました。
 そっか、道を歩いているときって、意外と他人のことなんて見ていないものなんだ。
 それがわかって、気持ちがかなりラクになりました。

 路地が尽きて、幹線道路の歩道に入りました。
 どこかの駅が近いみたいで、開いているお店も並び、賑わっている、というほどではないにしろ、それなりに人通りがありました。
 少し歩くと交差点があり、信号待ちの人波が出来ていました。
 人波と言っても、10数人ほど。
 お姉さまに手を引かれ、その最前列に立ちました。
 幸い、風は弱まっています。

「平日のお昼時とか、この交差点にもかなりの人数が集まるのだけれどね」
 のんびりしたお声で教えてくださるお姉さま。
 つないでいた手をいったん解き、その手をジーンズのポケットに入れました。
 同時に股間のローターが震え始めます。
「んっ!」
 唇を真一文字に結んで、なんでもないフリを装う私。
 お姉さまは、スイッチを入れたり止めたりして遊んでいます。

「あっ、あそこのふたり、直子に注目しているみたいよ?」
 お姉さまが、軽く顎を突き出して示される視線の先を追ってみます。
 片側3車線の幅広い交差点の向こう側には、こちらと同じくらいの数の歩行者の方々が信号の変わるのを待っていました。
 全員の目がすべてこちらに向いているので、最前列で対面している私は、それらの視線にじっと観察されているような錯覚を覚えました。

 お姉さまがおっしゃったおふたりは、すぐにわかりました。
 年齢は私とそう変わらなそうな、学生さん風男性二人連れ。
 おふたりとも中肉中背で、遠いのでお顔まではわかりませんが、ひとりはリュックを、もうひとりはショルダー掛けのバッグを提げていました。
 リュックの人がこちらを指差し、ショルダーの人に何やら耳打ちしていました。

 交差点をまばらに車が通過して、ミニワンピの裾がそよそよと風に揺れます。
「いい?まっすぐ前を見て、絶対裾を押さえては駄目」
 お姉さまのささやきが、私の右耳をくすぐりました。
「ほら、あたしにもっとくっついていいわよ」
 おっしゃると同時にローターが強く震えだし、ポケットに突っ込んだままのお姉さまの左腕に、自分の右腕を絡めてしがみつきました。

 ようやく信号が変わって歩き始めます。
 ローターは止まっています。
 一歩踏み出すたびに裾がヒラヒラ割れています。
 すれ違う人や追い越す人たちが、チラチラと私の首輪に視線をくれるのがわかりました。
 お姉さまにピッタリ寄り添って、視られていることを充分意識しながら、それでも普通のフリで歩きました。

 学生さん風の二人連れも、向こう側から歩き始めていました。   
 時折何かおしゃべりしては、おふたりともずーっと私たちのほうを向いたまま。
 近づくにつれて、その視線がとくに下のほう、すなわち私の股間周辺に集中して注がれているのがわかりました。
 一歩先を歩くイジワルなお姉さまは、横断歩道を斜めに誘導し、わざとその人たちに近づくように仕向けています。
 その人たちとの距離がみるみる縮まってきました。

 その人たちと絶対目を合わせないように前を見つつも、その視線の行方がすっごく気になって仕方ありません。
 ヒシヒソ話しているのは、お姉さまがおっしゃった通り、股間にチラチラ見え隠れしている黒いものが、陰毛だと思っているからかもしれない。
 そんなふうに考えるともう、いてもたってもいられない気持ちになります。
 あと2メートルくらいですれ違う、というときに、股間のローターが突然震え始めました。
「ぁふぅっ」
 小さく喘いでお姉さまの左腕にギュッとしがみつく私。
 同時に目もつぶってしまったので、すれ違いざまの彼らのリアクションを知ることは出来ませんでした。

 彼らとすれ違った後も、首輪に他の人たちから、いくつかの視線を感じながら、交差点を渡り終えました。
 渡りきった後、お姉さまが一度背後を振り向き、それから再び手をつないできました。

 そこからは、車がすれ違えるくらいの道幅の下り坂になっていました。
 交差点を渡る前の路地よりは、人通りが若干多い感じ。
 お店は開いていたり閉まっていたり。
 ローターは止まっています。

「さっきの二人組、直子のことガン見していたわね」
 お姉さまが少し歩調を緩めて、耳打ちしてきました。
「すれ違うとき、背の低いほうがニヤニヤ笑っていて気持ち悪かった。すれ違った後も振り返って、まだあたしたちのこと見ていたのよ」
 背の低いほうというと、リュックの人のほうです。
 でも、私はと言えば今の体験にドキドキし過ぎて何も考えられず、お姉さまのお言葉にお返事出来ません。

「ずーっと直子の股間ばかり視ていたわよね?たぶんあいつら、直子がノーパンで、マン毛が見えていると思ったのよ」
 お姉さまも私と同じことを考えていたようです。

「いでたちからいってオタクぽかったわよね?あの手の人種は知識だけは豊富だから、あたしたちが何をしているのか、わかっちゃったでしょうね」
「女同士で腕組んで、片方が首輪なんか着けてエロい格好していて、もう片方はそ知らぬ顔で先に立って歩いている・・・」
「すなわち、レズビアンのエスとエムの野外露出調教羞恥プレイ。まあ、あたしたちが今やっていることって、実際その通りなのだけれどね」
「オトコのオタクって、そういう妄想ばっかりしているらしいじゃない。現実で目の当たりにしちゃったから、あの子たち今夜、いろいろと捗っちゃうでしょうね」
 愉快そうなお姉さまの弾んだお声。

 そんなお話をしながら歩いているあいだも、いくつもの通り過ぎる視線を自分の首に感じていました。
 そうです。
 少しでもその手の知識がある人なら、首輪をしている女イコール、マゾ性癖を持つ女、とみなすのです。
 そして、そのマゾ性癖の女がきわどくエロっぽい格好をしていれば、露出願望を持つ視られたがりマゾ女なのだな、とも理解するでしょう。
 自分からしているのか、強制されてイヤイヤしているのかまではわからないでしょうけれど。
 今現在、私がそういう格好、つまり、自分のヘンタイ性癖を赤裸々に露にした格好で、公衆の面前を歩いているという現実に、今更ながら全身の血液がカーッと萌え上がってしまいます。

「見えた見えた、あれね」
 一歩先を歩くお姉さまが指さす先には、地下鉄の駅があることを示すマークがありました。
「あたしもここから乗ったことはないのよね。って直子、なんだか目がトロンとしちゃってる。さてはまた、えっちな妄想をふくらませていたでしょ?」
 お姉さまの冷やかすようなお声。
 私を振り向いてくださったお姉さまを、すがるように見つめました。

「あの、いえ・・・私、あの、さっきから感じっぱなしなんです・・・」
 思い切って正直に告白しました。
「ふーん。視られることが恥ずかしいっていう気持ちより、気持ちいいっていう感覚が勝ってきたのね。いい傾向よ。それこそ直子の本性なのだから。でもまだまだこんなものでは終わらないからね」
 握っていた手を解くお姉さまと、股間の振動に備えて身構える私。

 今日のお姉さまは、かなり本気。
 お部屋を出てから今までのあれこれで、それがはっきりわかりました。
 本気で、公衆の面前で私を辱めようとしている。
 それで私が悦ぶから、私がそれを望んでいるから。
 自分のマゾ性を何に臆することなく、さらけ出せる喜び。
 それを与えてくださるお姉さまに、精一杯お応えしなければ。
 そう考えるようになっていました。

 地下鉄の駅へ降りる階段は狭く、傾斜も急でした。
 そして何よりも風がすごい勢いで吹き上げていました。
 
 その前に立ったとき突風を浴び、私のミニワンピの裾はあっさり大げさにひるがえり、ちょうど上がって来たご中年の男性にパンモロをバッチリ視られてしまいました。
 さすがの私もあわてて前を押さえるほど。
 それでも風に煽られてふくらみつづけるスカート。
 歩道を歩いていた人たちには、丸出しショーツのお尻をしっかり見られちゃったことでしょう。

「まあ仕方ないわね。この風でミニスカの裾を押さえない女性なんて、それこそ頭がヘンだと思われちゃうもの」
 お姉さまも苦笑いで、いったん階段入口の脇にふたりで避難しました。

「おーけー。あたしが先を歩くから、直子は後ろに着いてきなさい」
 愉しそうにおっしゃるお姉さま。
「前も押さえていいわ。ただし、一番下を押さえるのは駄目。そうね、下腹部の、その留まっている一番下のボタンのとこらへんを押さえて、クロッチ前は、はためくようにしておくこと」
「もちろん直子は、完全に隠しきれていると思って余裕の表情をしていること。常にあたしの二段後ろね、それ以上詰めちゃ駄目」
「・・・はい、わかりました」
 お姉さまのイジワル声が一段と愉しげです。

「これからこの階段を上がってくる、とくに男性にはご褒美タイムね。もれなく直子の愛液が滲み出たシミつきパンティのクロッチがバッチリ拝めるの。それをマン毛だと思い込むのも自由」
「何人とすれ違うかは、日頃の直子の行ない次第かしら。あ、それと、前屈み気味に歩けば、すれ違うときおっぱいも覗いてもらえるかもよ?」

 そうなのです。
 強い風を孕んだワンピースは上半身の布も浮かせ、さっきの突風であわてて前を押さえて前屈みになった私の視界には、風を孕んで浮き上がったVゾーンからブラジャーも丸見えだったのでした。
「さあ、行きましょう」
 お姉さまに右腕を引っ張られ、再び階段の入口に立ちました。

 人がやっとすれ違えるくらい狭く、普通の膝丈スカートだったとしても一番下から一番上を見たらスカートの中が覗けちゃいそうな、長くて急勾配な階段。
 その左側をゆっくり下りていくお姉さまの背中を追って、私も下り始めました。
 強い風が正面から、絶えず吹きつけて来ます。
 お言いつけ通り、裾の少し上を押さえ、急勾配なので幾分前屈みになって。
 風が内腿のあいだを吹き抜けて行くのがわかりました。

 三段も下りないうちに、一番下に人影が現われました。
 スーツ姿のご中年サラリーマン風男性。
 休日出勤なのかな。
 通路をうつむきがちに歩いてきて、階段一段目の前でおもむろに上を見上げました。

 まず、前を行くお姉さまに目を留め、つづいてその背後の私にも。
 そこで、おやっ?、というお顔になり、上を見上げたまま、階段の向かって右端の一段に、ゆっくりと右足を踏み出しました。

 距離と勾配と私のミニワンピの裾丈を考えれば、風が吹いていようがいまいが、前を押さえていようがいまいが、あの位置からなら、裾の中身は丸見えでしょう。
 本来であれば、バッグなどを前に持って防御するべき、ミニスカ女性の天敵のような階段でした。

 必要以上にゆっくりと階段を下りていくお姉さま。
 お言いつけ通り、その二段後ろを、少し前屈み気味に着いていく私。
 風を孕むミニワンピース。
 始終左右に割れっぱなしの裾で、剥き出しとなっているクロッチ。
 その男性は私とすれ違うとき、なぜだか少し申し訳無さそうなお顔をされていました。

 最初の階段を下り終えると、少し平地を歩いてまた次の長い階段。
 運が良いのか悪いのか、ちょうど電車が到着した後だったようで、最初の男性につづいて、十数人の人たちと次々にすれ違いました。

 女性にはあまり関心を示されませんでしたが、男性は老いも若きもみな一様に、私を視界に認めたときから歩調が緩くなり、首輪と股間へ交互にチラチラ視線を送ってくださいました。
 その視線を感じるたびに、全身がゾクゾク疼きました。
 すれ違った後にも振り返ってくる気配を感じ、更に前屈みになって胸元を覗き込みやすいような姿勢になってあげたりもしました。

 お姉さまは、ときどき振り向いてはカメラを向けてきました。
 そんなふたりを呆気にとられたお顔でまじまじと見てくるご婦人もいらっしゃいました。
 階段を降りているあいだ中、注がれる視線のすべてが心地良く私を陵辱してくださいました。
 ローターが震えてもいないのに、膣内がヒクヒクしっぱなしでした。

 階段を下りきると風も弱まり、電車が行ったすぐ後なので、数メートル先の切符券売機近くにも人影は無く、私たちの後から階段を下りてきた人たちがちらほら、私たちを追い越して改札を通っていきました。

「かなり注目を集めちゃったわね?」
「お姉さまがお綺麗で、人目を惹いてしまうからだと思います」
「あら、嬉しいこと言ってくれるのね。おだてても、直子への命令が甘くなることはないわよ?」
「はい。わかっています」
「たくさん視てもらって、どう?濡れちゃった?」
「あ、はい・・・」
 はしたないけれど真実だから仕方ありません。

「あの階段、下りだったからまだマシだったかもね。上りだったら、下りてくる人からは直子の谷間覗き放題、直子の後ろに着いた人には、パンティのお尻ずっと丸出し状態だもの」
 私の手を取ってゆっくりと、券売機方向へ向かうお姉さま。
 お姉さまのお言葉に、どうせならそれもやってみたいかも、なんて思っちゃう、ふしだらな私。

「あっ!この駅にもあるんだ」
 もうすぐで券売機というところで、お姉さまが立ち止まりました。
 お姉さまがご覧になっている方向にあるのは、駅や街角にたまに設置してある、証明写真の撮影ブースでした。
「ちょうどいいわ。ちょっとここで練習していきましょう」
 お姉さまが謎なことをおっしゃり、私の手を引いてブースに近づきました。

「直子、入って」
「はい・・・」
 開きっ放しのカーテンの向こうに、作り付けの小さな椅子がひとつだけ。
「直子も使ったことあるでしょう?こういう証明写真機」
「あ、はい。学生の頃、何度か・・・」
「お金はあたしが出してあげるからバッグをちょうだい」
「あ、はい」
 肩に提げたビニールトートをお姉さまに差し出して、椅子に腰を下ろしました。

「それじゃあ、閉めるわよ」
「えっ?お姉さまは?」
「そんな狭いところに二人で入っていたらヘンに思われるでしょ?プリクラじゃあるまいし」
 苦笑しながらカーテンが閉じられたと思ったら、ブースの壁とカーテンの隙間から、お姉さまがニュッとお顔だけ入れてきました。

「もうわかっているとは思うけれど、そこでカメラに向かって、おっぱい出しなさい」
 隙間から顔だけお姉さまの、抑えた声でのご命令。
 もちろん、えっ?とは思ったのですが、ご命令には絶対服従なので、一度うなずいてから、胸元のボタンを外し始めました。
 だけど、お姉さまが覗いて撓んでいるカーテンに隙間が出来ていないか、内心気が気ではありません。
 ドキドキしながらおへそ近くまでボタンを外し終えました。

 これからどうすればいいのでしょう。
 ブラジャーも外すのかな?
 考えながら、お姉さまをすがるように見ました。
「ブラを下にずらして、おっぱいを出しなさい。カップを下乳まで下げて」

 お姉さまに促され、ブラジャーのハーフカップ全体をお腹のほうへ引き下げました。
 尖った乳首がプルンと跳ねて、おっぱい全体が露になりました。
 下げたハーフカップに下乳が持ち上げられ、いつもよりひと回り大きく見えます。
「ちゃんとおっぱいまで写るように背筋を伸ばしてね。あと、そのおっぱいの出し方、しっかり憶えておいて」
 そうおっしゃって、お姉さまのお顔が一度引っ込みました。

 カーテンの端が意地悪するみたいにユラユラ揺れて、お外がチラチラ覗けます。
 目の前の鏡に映る、赤い首輪を嵌めて不自然な形に両乳房を露出した不安げな女の上半身。
 カーテン越しに駅のアナウンスや電車が走り去る轟音、人々のざわめきが聞こえてきて、私のドキドキは最高潮。
 どんどん心細くなっているとき、お姉さまのお顔がニュッと、再び現われました。

「はい。お金」
 小銭を渡され、投入口に入れました。
「顔は隠していいから、おっぱいはバッチリ写るようにね。顔は、右の手のひらをカメラに向けて、目と鼻だけ隠しなさい」
「こう、ですか?」
 試しにお言いつけ通りの方法で顔を隠すと、お姉さまからおーけーをいただきました。
「写真撮ったらさっさとおっぱいしまって、元通りに服装直して出てきなさい」
 それだけおっしゃると、お顔がまたひっこみました。

 操作盤の説明に従って、写真を撮りました。
 ストロボが光ったとき、かなりびっくりしてしまいました。
 それから大急ぎでブラジャーを直し、胸元のボタンも留め直しました。
 出来上がった写真は、お外の取り出し口から出てくるということなので、自らカーテンを開けてお外へ出ました。
 写真はすでに出来ていたみたいで、お姉さまがお手に取ってニヤニヤされていました。

「なんだか、どこかの風俗嬢の紹介写真みたいね」
 お姉さまが差し出してきた紙には、両目と鼻付近だけを手のひらで隠したおっぱい丸出し女のバストアップ写真が、無機質な青色をバックにまったく同じ構図で4枚、鮮明に印刷されていました。
 赤い首輪と尖った乳首が淫猥で、ひと目でこの女はマゾだとわかっちゃうように感じました。
 それよりも何よりも、こんな自分の恥ずかし過ぎる写真を、すぐ横を見知らぬ人たちがたくさん行き交う駅の改札近くで見せられていることに、アブノーマルな興奮を感じていました。

「この写真は、あたしが記念にいただくわ。お金を出したの、あたしだもの」
 お姉さまがイタズラっぽく微笑み、ビニールトートをガサゴソし始めました。
「それで、あたしのものっていうことは、あたしがどうしようが勝手っていうことよね?」
 お裁縫セットから取り出したちいさなハサミで、写真を上下2枚づつの二分割にチョキンと切り離しました。

「こっちは、バッグに仕舞って・・・」
 ビニールトートのバスタオル側ではないほうに、写真が透けて見えるようにわざわざ表を向けた形で無造作に突っ込むお姉さま。
「そして、残りのこっちは・・・」
 お姉さまがニッと微笑み、証明写真ブースの中に入り込んで、操作盤の下の狭い台になったところの隅っこに、裏を向けて置きました。

「散歩の帰りにもう一度ここに立ち寄って、この写真が残っているか確認するの。賭けみたいなもの。面白いと思わない?」
 お姉さまの超愉しそうな笑顔。
「つ、つまり、もしかしたらこの写真が、誰かに視られちゃう、ということですよね?」
 自分で尋ねながら、誰かがこの写真をみつけたときの光景を想像して、キュンキュン感じてしまう私。

「この時期に証明写真を撮ろうなんていう人は少ないとは思うけれど、中に入ったら絶対に気づくわよね?それで写真見れば、まあ、オトコなら絶対持って帰るでしょうね」
「直子はどう思う?残っているか、誰かが持っていっちゃうか」
「うーん・・・やっぱりこの時期だと、誰もここを使わなくて、そのままのような気も・・・」
「おーけー。それじゃあ、もしなくなっていたら直子の負け、ということで、特別なお仕置き。それで決まりね。ちょっとここで待ってて」
 お姉さまは、ビニールトートの提げ手を私の左肩まで強引に通した後、お財布だけ持って券売機のほうへと向かいました。

 その背中を見送りながら、私は帰りに再び、あの階段を下りなくてはいけない、ということに、ふと気づきました。
 帰りの頃の私は、いったいどんな姿にされているのだろう・・・
 変わらず下着を着けているとは、到底考えられませんでした。
 
 そして、あの写真があるかどうかを確認したら、今度は電車に乗るのではなく、下りてきたあの急階段を上がって戻らなければならないのです。
 ノーパンノーブラにされていたら・・・
 そのときの自分を思うだけで、頭がクラクラするほどムラムラ疼いてしまいました。


オートクチュールのはずなのに 17


2015年8月14日

オートクチュールのはずなのに 15

 階下へ降りるエレベーターの奥に貼ってあった大きな鏡で、今、自分がどんな姿になっているのか、その全身をまじまじと視ることが出来ました。

 何よりも一番最初に目が行くのは、首に巻かれた赤い首輪。
 えんじ色に近いダークな赤色のベルトにメタリックな銀色の金具。
 着ているフェミニンなワンピースとのコーディネートとしては、明らかに異質な装飾具。
 その違和感が否が応にも視線を引き寄せてしまいます。

 視線を少し下ろすと、濃紺ワンピースの胸元にハーフカップのブラジャーに押し上げられた胸の谷間がクッキリ。
 ウエストを絞ったおかげで上半身のシルエットがふんわり逆三角形となり、バストのふくらみがより強調されています。
 
 ウエストから若干の末広がりとなった裾は、膝上25センチくらい。
 股下でいうと5、6センチ幅くらいの布地が太腿周りを覆っている状態。
 更に最下部を留めるはずのボタンが取り去られてしまい、留まっている一番下のボタンは、ちょうど私の恥丘の位置。
 今はまっすぐ立っているので大丈夫ですが、歩き始めたら両腿が裾を蹴り、ショーツのクロッチ部分が常時チラチラ見え隠れしてしまうことでしょう。

 そんなきわどい着衣の上に、生意気メイクを施された加虐心をそそる顔が乗り、こんなこと自分で言うのは本当にはしたないのですが、見るからにエロくて扇情的、いろいろとえっちな妄想がふくらんでしまう姿だと思いました。

「自分の姿に見惚れちゃってるの?」
 鏡から目を離せない私の背後で、お姉さまがからかいます。
「街に出たら、かなり注目を集めそうな格好よね?えっちなオーラがムンムンしてる」
 愉しそうな声音でお姉さまがおっしゃいました。

 マンション地下の駐車場は誰もいなく、しんと静まり返っていました。
 思った通り、一歩歩くごとにショーツに直に空気があたる感触があり、両腿のあいだがスースーします。
 
 助手席に乗り込もうと、腰を曲げた途端にワンピースの裾が全体にせり上がりました。 
 腰掛けると前立てが派手に割れ、銀色ショーツのクロッチ部分が剥き出しとなりました。
 座るために脚を大きく開いたとき、ラビアが開いて漏れ出してしまったようで、クロッチ中央の私のワレスジと同じ位置に、一筋の濡れシミが黒くクッキリ浮き出て、その先端部分が僅かに見えていました。
 全身がカッと熱くなり、あわててビニールトートバッグを膝の上に乗せ、その部分を隠しました。

 お姉さまは、それについては何もおっしゃらず、滑るように車が発進しました。
 お外は相変わらずの曇り空。
 でも雲の切れ間ところどころに青空も覗いていました。
 時刻は午後の2時15分。
「この感じなら、雨降らないかもしれないわね」
 人も車もまばらな街並みを、快調に車は進んで行きます。

「昼間の街中で露出遊びするなんて、アユミのとき以来かな。すごく愉しみ」
 信号待ちで停まったとき、お姉さまが独り言みたいにおっしゃいました。
「アユミとしたのは横浜だったから、東京では初めてよ」
 今度はしっかり私に向いて、語りかけてきました。

「アユミさんとは、どんなことをされたのですか?」
 ワクワクとドキドキのリズムが急激に跳ね上がり、思わず聞いてしまいます。
「そんなこと、今教えちゃったら面白くないじゃない。安心なさい。これから直子に身をもってひとつひとつ体験させてあげるから」
 イタズラっぽく微笑むお姉さま。
 安心どころか、不安のドキドキがよりいっそう高まる私。

「思った通り、道路も空いているわね。普段はなかなか停められないコインパーキングもガラガラだし」
 再び走り出して前を向いたままのお姉さまが、気怠そうにおっしゃいました。
「まあ、連休最終日でこんなお天気じゃ、仕方ないか。でもせっかくそんなエロい格好してきたのに、あんまりギャラリーが少ないと、直子もつまらないでしょう?」
 冷やかすようにおっしゃいながらハンドルを右に切るお姉さま。
 
 道幅の広い幹線道路から、小さめなビルが建ち並ぶ路地へと入っていきました。
 すぐにビルの谷間の空き地のようなコインパーキングに侵入して駐車。
 走り始めてからまだ10分も経っていませんでした。

「さあ、ここからいよいよお散歩開始ね」
 エンジンを切って静まり返った車内に、お姉さまの嬉しそうなお声が響きました。
 車に乗っているあいだ、別にこれといってえっちなイタズラをされなかったことが、かえって不気味です。

「あの、えっと、ここって、どの辺なのですか?」
 お姉さまのご様子を探りたくて、とりあえず車から降りるのを引き伸ばそうとする私。
「うーん、 麹町というか半蔵門というか、まあその辺」
 そうおっしゃられても、東京の地理に疎い私には何が何やら。

「ここにひとまず車を停めて、これから地下鉄に乗って永田町まで行くの」
「えっ?私、この格好で電車に乗るのですか?」
 尋ねながら体温がグングン上がっていくのがわかりました。
「そうよ。それで永田町界隈をうろうろ散策しつつ、またここまで歩いて戻ってくる。距離的にはひと駅ぶん。永田町って知っているでしょ?国会議事堂とか首相官邸とかがある」

「・・・はい、それは一応」
「この辺り一帯はビジネス街プラス官庁街だから、平日昼間と夜との人口差が20倍なんて言われているのよ。つまり企業や官庁が休みの休日は、普段の二十分の一しか街に人がいなくなっちゃうわけ」
「ほどよく閑散としていて、直子の街角露出デビューにはうってつけじゃない?」
 お姉さまがシートベルトを外し、私のほうを向きました。

「手始めにそのパンチラワンピで電車に乗って、直子に慣れてもらおうかと思うのよ、他人から視られることを」
 後部座席に置いたご自分のバッグをガサゴソさせつつ、お姉さまがおっしゃいました。
「その首輪だけでも、かなり人の目を惹きつけちゃうでしょうね。その上、谷間見せつけーの、ミニスカ裾割れパンチラだもの。視線独り占め間違いなし」
 お姉さまが冷やかすようにおっしゃいました。

「アユミたちと遊んだときの経験から言うと、直子は、視たければいくらでも見せてあげる、くらいの気持ちで堂々としていればいいわ」
「必要以上に照れたり恥ずかしがったりしていると、逆に目立って、勘違いしたオトコどもがちょっかい出しやすいスキが出来ちゃうから」
「あと、一緒にいる友人たち、今日の場合はあたしだけれど、と親密な雰囲気を醸し出していると、不思議とギャラリーがみんな遠巻きになるのよね」

「まあ、そのへんはあたしに任せて、直子は、誰かの視線を感じたら、その視線に臆さないで、自分の性癖に正直に、もっと視て、って思っていればいいの。事実、直子は露出狂のヘンタイで、視られたくて仕方ないマゾ女なのだから」
  お姉さまが私の顔をじっと覗き込んできました。
「ずっと妄想で思い描いていた恥辱の悦びを現実で味わうのよ?それも、これまでにない大勢の人の前で。愉しみでしょ?」

 お姉さまからのご説明のひとつひとつが、私の淫らな官能を強烈に揺さぶりました。
 私がこれから街に出てしようとしていることを、生々しく頭に思い描くことが出来ました。
 思い描くだけならば自由ですが、実際に街に出てやってしまったら、それは明らかに異常、アブノーマル。
 私、これからどうなってしまうのだろう・・・
 内腿のあいだが痺れるように、ムズムズウネウネ疼きました。

「・・・はい」 
 お姉さまに対するそのうなずきは、自分が露出マゾとして新たな一歩を踏み出す覚悟を込めたものでした。

「念のため再確認しておくわよ?散歩のあいだ、直子はあたしの言葉に絶対服従、でも、だって、は全面禁止。何を命令されても粛々と従うこと」
「あ、はい・・・」
「なんだか気のない返事だけれど、これはね、街中での露出遊びでは凄く重要なことなのよ?下手したらふたりともハンザイ者になってしまうのだから」
 真剣なまなざしで、怖いお顔になられたお姉さま。

「たとえばあたしがあるタイミングで、ここでおっぱい出しなさい、って命令したとするでしょ?だけど直子がグズグズしていると、どんどん周りの状況が変わってしまうわけ」
「あたしは、周りの状況を見計らって、ベストのタイミングで命令したのに、グズグズモジモジされると、その振る舞いが悪目立ちして、人が集まってきちゃったりすることになる」

「それで通報されたりしたら、あたしも直子も望んでいない状況になりかねないの。直子があたしを信頼して、すべてを委ねてくれないと」
「脱いで見せても大丈夫そうな相手、場所、なのか、みたいな状況判断は、あたしが真剣にするからさ、それを信頼して、すべて、あたしの言う通りに動くドレイに成りきりなさい」

 おでこがくっつくほどお顔を寄せ、私の瞳を見つめてくるお姉さま。
「わかりました。お姉さまのご命令にすべて従います」
 私の露出願望を満たそうと、とことん真面目につき合ってくださるお姉さまの真摯なご忠告を、とても頼もしく感じました。

「おーけー。それじゃあ最初の命令。直子の剥き出しマゾマンコにローターを突っ込みなさい」
 冷たくおっしゃったお姉さまが、ハンディカメラを私の股間に向けてきました。
「パンティのクロッチちょっとずらして、脇から挿れなさい」
「・・・はい」

 絶対服従の私は、ビニールトートからピンク色のローターを取り出し、一度しゃぶりました。
 それからワンピースの裾をまくり、銀色ショーツのクロッチを右内腿のほうへずらします。
 膣口を指先で抉じ開けると、中からねっとりとした熱いおツユが滲み出てきて、指先を濡らしました。

「はぅぅ」
 楕円の物体を指でワレメへと圧し込むと思わず小さくため息が洩れ、先っちょの紐だけを覗かせて楕円全体がズブリと膣内に隠れました。
 溢れ出たおツユがショーツとシートを汚しました。

「あらあら、瞬く間にパンティにシミが滲んじゃったわね」
 同時にローターが最強で震え始めました。
「ぅぁあぅうぅ」
「黒いシミがどんどん広がっていく。本当にいやらしい子」
 蔑むようなからかい声とともにローターがピタッと止まりました。
「裾を戻しなさい」
 裾を戻すと、左右に割れた前立てのあいだから、微かにショーツの先端が黒く覗いていました。

「直子がサカっている証拠の、そのパンティ先っちょの黒いシミって、ワンピの隙間から見えたら絶対、マン毛だと思われるでしょうね」
 わざとらしいお下品口調で私を嘲るお姉さま。

「ローターが突然震えても、出来る限り普通のフリをすること。感じても感じていないフリ。そのほうがあたしが萌えるから」
「せっかく生意気顔メイクしてあげたのだから、今日はツンデレ風でいきましょう。もちろんデレるのはあたしにだけ。街中ではツンツン直子ね」
 お姉さまの愉しげな瞳は、完全にエスの人のそれになっていて、加虐の炎が舌なめずりするみたいにチロチロと揺れていました。

 車を降りる前にお姉さまは、ビニールトートバッグにお化粧ポーチとお裁縫セットも突っ込みました。
 ご自分は右手にハンディカメラだけ、私は左肩にビニールトートを、もちろんバスタオルの側をお外に向けて提げ、コインパーキングのコンクリートに降り立ちました。

 7、8台駐車出来そうなコインパーキングに停まっている車は2台、私たちが3台目。
 敷地内にも、入ってきた路地周辺にも人影はまるでありません。
 周囲には5、6階建てくらいの小さめなビルが立ち並んでいました。
 遠くで車の走る音が小さく聞こえるのは、たぶんさっき走ってきた幹線道路からのものでしょう。

「出かける前に、まずはここで記念撮影しておきましょう。直子の記念すべき初、都心露出散歩のスタートなのだし」
 お姉さまが辺りをキョロキョロ見回してから、カメラを構えておっしゃいました。
「そこに立って」
 指さされたのは、コインパーキングのチェーン店名を記した大きな看板の前でした。
 その看板は、路地から曲がって駐車場へと入る入口ゲートの、ちょうど真正面奥に立っていました。

 トートバッグを左肩に提げたまま、その看板の前に立ちました。
 お姉さまが私から2メートルくらい離れた正面に来て、カメラを構えました。
「笑わなくていいからね。カメラを睨みつける感じで。今日はツンツン直子だから」
 写真を撮っているのかビデオなのか、ずっとカメラ脇のモニターを凝視したまま、お姉さまがおっしゃいました。
 お言いつけ通り、真面目な顔でレンズを睨みました。

「うーん、ただ突っ立ってるだけじゃ面白くないわね。スカートまくってパンツ、おっと、パンティ見せなさい」
「えっ!?」
 一瞬うろたえて躊躇してしまった私に、すかさずカメラを下ろしたお姉さまからツッコミが入りました。

「ねえ?さっきの話をもう忘れちゃったの?あたしが何か言ったら、直子はどうしなければいけないのだっけ?」
「あ、はい。ごめんなさい。お姉さまのお言葉には絶対服従です」
 あわててワンピースの裾に両手をかけました。

「そう。命令、即、実行。タイムラグは一切認めないから」
 お姉さまが、カメラを構え直し、モニターを覗き込みました。
 私もあらためて、完全に覚悟を決めました。

 マゾの服従ポーズをするときのように、両足を、やすめ、の形に開きました。
 両手でワンピースの裾を握り、その両手を少しずつ上げていきます。
 うつむいてみても持ち上げた裾が邪魔をして、自分ではどのくらいショーツが見えているかはわかりません。

「うつむかないの。まっすぐこっちを見て。もっと上までまくりなさい。おへそが見えるくらいまで」
 お姉さまのご命令をいちいち忠実に実行します。
 お腹に直に空気が当たる感触がするので、小さな銀色ショーツは丸出しのはずです。

「黒ずんだシミがさっきより広がっているわよ?パンティのフロント全体に。こんなことでもう感じちゃったの?」
「いえ、あの、はい・・・ごめんなさい」
「それに、何?そのいやらしい、泣きそうなマゾ顔。もうちょっとまともな顔出来ないの?」
「あ、はい、ごめんなさい・・・」
 そのお言葉に開き気味だった唇を一直線に結び直し、一生懸命カメラのレンズを睨みました。

 そのとき、視界の右端に動くものを捉えました。
 私の正面は、コインパーキング脇の路地。
 その路地をひとりの男性が向かって右のほうから歩いてくる姿が、敷地と路地を隔てる格子の鉄策越しに見えたのでした。
 ドキン!
 実際に肩がビクンと震えるくらい、心臓が飛び跳ねました、

 姿をみつけたときからもはや目が離せなくなり、視線がその姿を追ってしまいます。
 その男性は、けっこう若い感じで、グレーのスエット上下というラフないでたちなので、地元のかたでしょうか。
 携帯電話を片耳にあてて何やらお話しながら、リラックスされた感じで路地を歩いてきます。

 鉄柵が途切れて駐車場入口となり、再び鉄柵が始まるまでの幅3メートルくらいの空間では、その人と私を隔てる目隠しとなりそうなものは、お姉さまの背中しかありません。
 その空間に差し掛かったとき、その人がふっとパーキングのほうに目を遣れば、ほんの5、6メートル先に、たやすく私の姿を認めることでしょう。
 自らワンピースの裾をまくり上げ、えっちなおツユで汚れた銀色ショーツを、カメラに向かって丸出しにしている私の姿を。
 もちろん、それ以前の鉄柵の格子越しでも、こちらに目を向ければ私が何をしているのかは、充分に認識できるはずです。

 私の目の動きで、背後の路地に誰か現われたのは充分ご承知のはずなのに、お姉さまから、裾を戻してよい、というお許しは出ませんでした。
 ずっとカメラのモニターを覗きこんだまま。
 その唇が薄く微笑んでいらっしゃるように見えました。

 男性は、もう入口のすぐそばまで進んでいました。
 お電話しながら、そのお顔がフラフラ動くたびに、私の心臓がドッキンドッキン飛び跳ねます。
 どうか気づかないで、そのまま通り過ぎてください・・・こっちを視ないで・・・
 同じ言葉を心の中でお祈りのようにくりかえしました。
 裾を握る両手が、小刻みに震えていました。

 その男性が現われてから視界左端に消えるまで、実際には十数秒ほどだったでしょう。
 でも私には、永遠のように長い時間に感じられました。
「スカート、戻していいわよ」
 お姉さまのお声を聞いた途端、からだ中の力が一気に抜け、その場にへたり込みそうでした。

「誰かその道を通ったみたいね?」
 お姉さまが背後を振り返り、路地を指さしました。
「は、はい・・・」
「直子ったら目がオドオドしちゃって、すごいキョドりかただったわよ。オトコ?オンナ?」
「男性です・・・」
「で、直子のことを見たの?」
「いえ・・・気がつかなかったみたいです。携帯電話に夢中だったみたいで、そのまま通り過ぎていきました」
「そう。それは残念だったわね」
「いえ・・・それは別に・・・あの、でも・・・はい・・・」

 その人が私に気づかないまま駐車場入口を通り過ぎ、鉄柵の陰に隠れそうになったとき、私は急に、気づいてもらえないことが、残念に思えてきました。
 お外でこんな破廉恥な姿を晒している私を、視て、驚いて、呆れて、蔑んで欲しいと、心の底から望んでいました。
 さっきまでとは正反対に、遠ざかっていくその人の背中を目で追いながら心の中で、私を視て、このいやらしい姿に気がついて、って、見えなくなるまでお願いしました。
 
 そして、そんなことをお願いしてしまっている自分のどうしようもないマゾ性に、甘美な陶酔を感じていたのも事実でした。
 その人が男性だったのに、不思議と怖さを感じなかった理由が、お姉さまが傍にいてくださるから、なのも間違いありません。

「あたしが、残念だったわね、って言ったのは、そのオトコに対してよ。ちょこっと顔をこっちに向けさえすれば、間近で凄いヘンタイ女の姿を拝めたのにね、って」
 お姉さまが呆れたようにおっしゃいました。

「そっか。直子も視てもらえなくて残念だったんだ。キョドりながらも妙に艶かしい淫らなドマゾ顔だったのは、そういうワケなのね?」
「・・・は、はい・・・」
 自分でもコントロール出来ないほど、辱めを受けたい、という欲求が全身を駆け巡っていました。
「今日の直子は、完全に露出狂モードが覚醒しちゃったみたいね。愉しみだわ。良い絵がたくさん撮れそう」

 お姉さまの左手が私の右手をギュッと握りました。
「さあ、出発しましょう」
 恋人同士のように肩を寄せ合う今日のふたりは、ご主人様と、その言いなり露出ドレイ。
 股間のローターが緩く振動し始めて、私は一瞬ビクン。
 それでも、お言いつけ通り極力、何でも無いフリを取り繕って、昼下がりの街中へと一歩踏み出しました。


オートクチュールのはずなのに 16


2015年8月2日

オートクチュールのはずなのに 14

 私の舌と指で精一杯ご奉仕して、お姉さまに心行くまでご満足していただいた後、ふたりで軽くシャワーを浴びました。
「今日は直子の裸を、街の景色の中で視ることが出来るのね。愉しみだわ」
 私の全身をボディソープのヌルヌルで、やさしく愛撫してくださるお姉さま。
「そういうアソビにつきあうのって久しぶりだから、なんだかドキドキしてきちゃった」

 お姉さまが背後から抱きつくみたいに、からだを合わせてきました。
 お姉さまの乳首が硬くなっているのを背中に感じます。
 私もさっきのお姉さまのお言葉で即座に、都会のビル街の一角に全裸で立つ尽くす自分の姿を想像し、不安と期待がシーソーみたいにぎっこんばったんしていました。
 泡まみれのからだをピタリくっつけ滑らせて、しばらくその心地良い愛撫に身を任せました。

 バスルームから出てからだを拭いているとき、お姉さまが私を見ながらおっしゃいました。
「だけど慎重にやらないとね。もしもそのスジの人にみつかったら、ややこしいことになっちゃう。あたしたちが、と言うか、直子がこれからしようとしていることって、コーゼンワイセツっていう、一応立派なハンザイだもの」
 その現実的で不穏な内容とは裏腹に、お姉さまのお声はウキウキ弾んでいるように聞こえました。

「あたしはこれから寝室で、出張の準備も含めていろいろ荷造りしてくるから、直子も自分の荷物をまとめておいて。もうここへは戻らず、夜には池袋へ向かうから」
「はい」
「冷蔵庫に残っている食材は、直子が持って帰って。あたしはまた当分戻れないから。あ、直子のオモチャはまだ仕舞わないでね。いくつか今日使いたいものがあるから」
「・・・わかりました」
 全裸のままスタスタ寝室へ向かうお姉さまの背中をお見送りしつつ私の右手は、シャワーの前に外した赤い首輪へと自然に伸びていました。

 キッチンとソファー周辺をお片づけしてから、お洗濯ものを取り込みました。
 お外は相変わらず、どんよりジメジメでしたので、タオルもお姉さまのワンピースも生乾きでした。
 それらを窓際に吊るし直してから、さて、と考えました。

 外出するのですから、当然何らかのお洋服を着ることになるはずです。
 一昨日、お姉さまのお部屋に伺った目的が、全裸家政婦、で当然ずっと裸でいるつもりでしたから、来たときに着てきた前開きのミニワンピース以外、着替えは持ってきていませんでした。
 となると、選択肢はそのミニワンピしかないのですが、このお部屋では、お姉さまのお許しがないと着衣は認められない決まりです。
 なので私は裸のまま、お姉さまの準備が終わるのを、ソファーに浅く座って待ちました。

 待っているあいだも、いろいろ考えました。
 おそらくお姉さまは、ノーパンノーブラ、ミニワンピ一枚でお外に出るようにご命令されるだろうな。
 そうなると私は、一昨日のスーパーでの恥辱を、昼間の街中でもう一度味わうことになりそう。
 ボタンをジワジワ外されて、誰かいるところで前を開くようにご命令されて・・・
 妄想がどんどんふくらんで、全身がぐんぐん火照ってきました。

「お待たせー」
 大きめなカートといつものバーキンバッグを手にしたお姉さまが、リビングに戻ってこられました。
 着古した感じのスリムなウォッシュアウトジーンズに黒Tシャツ、その上に、これも着古した感じのタンガリーシャツを羽織っています。
 こんなにラフなコーデのお姉さまを見るのは初めて。
 でもカッコイイ!
「雨になるみたいだからね、濡れてもいい感じでざっくりしてみた」
 驚いたような私の視線に気がつかれたのか、お姉さまが言い訳するみたくおっしゃいました。

「準備は終わった?」
「あ、はい。一応・・・あの、お姉さま?」
「ん?」
「私もお洋服を着て、よろしいでしょうか?」
「なあに?あたしの許しが出るまで着ないで待っていたの?いい心がけじゃない」
「・・・はい、決まりですから」
「さすがのあたしも、この部屋からずっと裸のまま街中を連れ回す勇気は無いわ。着ていいわよ」

「何を着ればよいのでしょう?」
「えっ?あのミニワンピ以外に何か着替え持ってきているの?」
「いいえ」
「それなら、それしかないのじゃなくて?」
「あ、はい。それで、下着は・・・」
「ああ、そういうことね。ちょっと待って。あたしに考えがあるから」
 お姉さまが嬉しそうに薄く笑って、バーキンの中から何か小さめな箱を引っ張り出しました。

「まずは下着ね。初日に穿いていた黒以外、替えの下着も持ってきているの?」
「はい。一応お姉さまがお店で見立ててくださった他の3種類は持ってきました」
「ああ。フロントホックのストラップレスブラと紐パンね。どこでもこっそり脱ぎやすいっていうコンセプトの。確か前割れとかスケスケのパンツもなかったっけ?」
「はい・・・ありました」
「それしか持ってきていないということは、あたしといるときはいつでも、直子は下着を脱ぐ気満々ていうことなのね。やらしい子」
「そ、そんなつもりではありません・・・」
「うふふ。最初から露出マゾ全開でいくなら、ノーパンノーブラでワンピだけ着ててもらったほうが手間が省けるのだけれどさ、今日は直子に、何て言うのかな、合法的な辱めも存分に味わってもらおうかなって考えているの。そのためには、脱ぎやすい下着だとつまらないのよね」
 お姉さまの唇両端が、イジワルそうに少し吊り上がりました。

「スケスケも前割れも、それはそれで面白いのだけれど、それは次の機会にして、今日はあたしの下着を貸してあげる。安心して、買って一回しか身に着けたことないやつだから」
「ちょっと待ってて」
 お姉さまがそそくさと寝室に向かわれました。
 さっきからお姉さまがおっしゃっていることの意味をほとんど理解出来ていない私は、お姉さまの下着をお借り出来るんだ、どんなやつなのだろう?私なんか想像も出来ないほどのえっちさだったりして、なんて考えながらドキドキ待ちました。

「はい、これ」
 お姉さまが差し出されたのは、グレイというよりシルバーと呼ぶべきテラテラ光沢の有る生地で出来たブラジャーとショーツでした。
 ショーツに触ってみると、この滑らかさは明らかにシルク。
 縁取りとかにレースっぽい装飾も施してあって、ゴージャスなのに可愛いらしい感じです。

「ブラは、直子にはキツイはず。直子のほうがボインだものね。まあ、ハーフカップだからなんとかなると思う」
「それに直子、そういうのも好きでしょう?おっぱい締め付けられるの。最初にお店来たときもそうだったものね?」
 お姉さまがからかうように笑いながら、ショーツとお揃いのブラジャーも手渡してくださいました。
 私が早速身に着けようと、まずショーツを広げて身を屈めようとしたら、お姉さまから、待った、がかかりました。

「このワンピなのだけれどさ、何か物足りないのよね。ゆったりめだからシルエットがストンとしちゃって、いまひとつ色っぽさに欠ける気がするの」
 昨日お洗濯して壁際に吊るしておいた私のミニワンピースをはずし、私に手渡してきました。

「下着着ける前に、ちょっと着てみてくれる?あ、全体を裏返しにしてね」
 お言いつけ通り裏返しにしてから、両袖を通して羽織りました。
「ウエストを絞るともっと可愛くなると思うのよ。あたしが応急処置してあげる。たぶん、いい感じのシルエットになるはず」
 羽織り終えると、お姉さまの両手が前を合わせてきました。
「ボタンも嵌めてね。胸元からおへそあたりまででいいから」
「あ、はい」
 裏返しになって、ボタンと穴との関係がややこしくなっている前立てを、苦労してちまちまと、なんとか留め終えました。

「おーけー。そのままじっと立っていて。針を使うから動くと危ないわよ」
 お姉さまがメジャーと、カップケーキみたいな形の可愛らしい針山を持って近づいてきました。
 さっきお姉さまがバッグから取り出した箱は、お裁縫セットだったようです。

「こんなものかな・・・うーん、もう少し詰めちゃおうか・・・」
 お姉さまが小声でブツブツおっしゃりながら、私のウエストにメジャーを当て、針山から抜いたマチ針で手際良く布を留めていきます。
 さすが元服飾部部長さまで、今はアパレル会社の社長さま。
 その手馴れた手つきに見惚れつつ、じーっと眺めていました。

「これでよし、っと。脱いで」
「あ、はいっ」
 一歩離れたお姉さまの一声が聞こえ、あわててまたちまちまと、ボタンを外し始めました。
「あたしはこれをちゃちゃっと縫っちゃうから、直子はそのあいだに下着を着けちゃいなさい」
「わかりました」
 ワンピとお裁縫箱を持ったお姉さまがダイニングのほうへと移動し、裸に戻った私は、お姉さまがご用意くださった銀色の下着たちに再び手を伸ばしました。

 確かにブラジャーは、少しきつめな感じがしました。
 ハーフカップなので下乳を持ち上げる形になり、その分普段より、上から見るとおっぱいの谷間がクッキリ出来て、強調されています。
 これでワンピースを着てVゾーンを広めに開けたら、かなりエロそう。
 生地が薄いので、私の尖った乳首だとカップの上からでもその位置が、かすかに突起していました。
 でもワンピースを着ちゃえば、たぶんわからなくなるでしょう。

 ショーツのほうはローライズ気味ながら、いたって普通な感じで、下腹部とお尻をしっかり覆ってくれていました。
 ブラジャーもショーツもすごく肌触りが良く、着け心地はいい感じ。
 ただ、およそ二日ぶりの下着の布地の感触に皮膚がとまどっているみたいで、なんだかこそばゆい。
 そう言えば、お姉さまも一度着けたことがある、っておっしゃっていたっけ、なんて思い出し、キュンと感じちゃいました。

「出来たわよー」
 ワンピースを手にしたお姉さまが戻っていらっしゃいました。
「おおお、直子ったらまたいっそう、ボインちゃんになっちゃって」
 ハーフカップで下から持ち上げられた私の谷間を指さして、お姉さまがからかいました。
「はい、着てみて」
 お直しされたミニワンピースを手渡され、そそくさと腕を通す私。

「お姉さま、すごいです。ほんの少しの時間で、こんな見事にお直しが出来てしまうなんて」
 両袖を通しただけで、ワンピースが生まれ変わっているのがわかりました。
 ルーズめなシャツワンピだったのに、ウエストを詰めただけで、ゆるふわな感じのフェミニンワンピに様変わりしていました。
「ボタンも全部留めてみて」
 ご自分の成果にニコニコ満足そうなお姉さま。
「はい」

 上からボタンを留め始めると、お姉さまの意図がだんだんと見えてきました。
 ウエストが絞られ胴回りがタイトになり、その分バストとヒップ部分は前にも増してゆったりめ、つまり布地が肌から浮いた状態になっていました。

 たとえばVゾーンを開け過ぎたら外部から中身が覗けやすいし、スカート部分も前より横に広がりがちなので、よりひるがえりやすい状態。
 もしもこのワンピースをノーパンノーブラで着たなら、以前よりも容易に、生おっぱいや生お尻が露出しやすいルーズフィット状態になっていたのでした。
 なるほど、だからお姉さまは、まずは下着をちゃんと着けるようにご命令されたのでしょう。
 このワンピースでお外に出て、ノーパンノーブラにされてしまったときのことを考えると、頭がクラクラしてきます。
 それでもなんとかがんばって、震える指でボタンを留めつづけました。

「あの、お姉さま?」
 9個のボタンを嵌め終わり、最後のひとつを嵌めようとしたとき、気がつきました。
 10個目のボタンが、無いのです。

「ん?なあに?」
 ソファーに腰掛けたお姉さまが、満面に笑みを浮かべて私を見ました。
「あの、一番下のボタンが無いのですが・・・」
「あ、それね。ごめんごめん。さっき縫っていたとき、そこのボタンだけ取れそうだったのに気づいて付け直そうと思って、いったん取ったのよ」
 ニヤニヤ笑いなお姉さまの、白々しいお芝居口調。

「そしたら誤って落としちゃって、床の上をコロコロって。いくら探してもみつからないの。仕方が無いからそれでがまんして」
 お姉さまのてへぺろは、ちっとも可愛くありませんでした。
 
 一昨日のスーパーから駐車場へ戻るときの夜道を、あざやかに思い出していました。
 ここのボタンが留まっていないと、割れた隙間から私の股間が、一歩歩くたびにチラチラ覗いてしまうはずです。
 その上、ウエストを絞ったために布地が引き攣り、裾全体も以前より1、2センチ短かくなっていました。
 広がり気味フンワリめとなったこととも相俟って、今だって、ちょっと動いたら両腿の付け根付近が覗きそうでした。
 ありったけのジト目でお姉さまのお顔を睨みました。

「なーんてね。いいじゃない?パンツ穿いているのだから」
 お姉さまも薄笑みを引っ込め、まっすぐに冷たい視線を合わせてきました。
「合法的な辱めっていうのは、そういうこと。パンチラならハンザイではないもの。直子も、ボタン嵌めていないことに気づいていないフリをして、平気な顔して歩けばいいのよ。そういうの、得意でしょ?直子は」
「で、でも・・・」

 お姉さまから強気に出られると、すぐ、本来のドエムに戻ってしまう私。
「見せたがり露出マゾなのだから、パンツくらい、いくらでも見せてあげればいいじゃない。まあ、いずれ、そのパンツだって脱がなくてはいけないことになるのだけれどね。それも、こっそりとではなくて、街中で、大胆に」
「そのために、脱ぎやすい紐パンではなくて、普通のパンツを穿かせたのよ。どう?愉しみでしょ?」
 イジワルさ全開のお姉さまからの淫靡なお言葉が、私のマゾ性をブルブル揺さぶって、それ以上の抵抗を諦めさせました。

「事前のネタバラシはこれくらいにして、最後の仕上げをしましょう。こっちに来て」
 お姉さまがまた、バッグから何かを取り出し、腰掛けているソファーの横をトントンと指さしました。
「は、はい・・・」
 私が横に腰掛けると、お姉さまがテーブルの上にお化粧ポーチを広げました。
「これからすることを考えると、やっぱり多少は、リスク回避の策も施しておかないとね。いくら人口が多い東京砂漠とは言え、万が一直子を知っている人に視られてしまう可能性もあるわけだから」
 おっしゃりながら、私の顔をメイクし始めるお姉さま。

「それでなくてもこんな真っ赤な首輪嵌めて、否が応でも人目を惹くマゾ丸出しの姿でお散歩するのだから、とくにヘンなオトコどもが近寄り難い雰囲気を作っておかないと」

 そうでした!
 すっかり慣れきってしまっていましたが、私、この首輪も嵌めたままお外に出るのでした。
 ファッショナブルなチョーカーとは明らかに一線を画す、見るからにペット用な赤い首輪。
 すっごく目立って、ジロジロ視られちゃうのは間違い無さそう。
 それは、私にとって生まれて初めての経験です。
 一昨日の夜もしたことでしたが、夜と昼間とは大違いでしょう。
 そして、3日間首輪を嵌めていること、とお姉さまとお約束した以上、私に拒める術はないのでした。

「直子って、いつもナチュラルメイクでしょう?オトコが一番声掛けやすいのがナチュラルメイクなんだって。オトコってすっぴん美人が大好きだから。でも、街行く女子のほとんどは、ナチュラルっぽい厚塗り化粧なのよね」
 苦笑しながらおっしゃるお姉さまと、されるがままの私。
「うちのスタッフと、そのへんを研究したことがあってさ、オトコが近寄らないメイクってどんなのだろう、って。それで出た結論のひとつが、失敗メイク。塗りたくって、すっぴんより残念になっちゃうメイク」
「もうひとつが、どちらかと言うとお水寄りのゴージャスメイク。こっちは、奇麗な人がすると本当奇麗になるの。なのに、気後れしちゃうのか怖がっちゃうのか、オトコは寄ってこない、遠巻きにするだけ」

「はい。出来た」
 お姉さまが間髪を入れず、目の前にコンパクトをかざしてくださいました。
「えーーっ!」
 ひと目見てびっくり、これが私?

 いつもより小さめに、でも艶やかなツヤツヤローズピンクで塗られたルージュ。
 アイラインパッチリ、睫毛クルクル、眉毛クッキリ。
 チークがずいぶん色濃くて、いつもより顔が細く見えます。
 お姉さまがドライヤーで髪の分け目を変え、左サイドに流してくださいました。
 鏡を覗いての全体の印象としては、なんだかこの女、生意気そう。

「うん。けっこう化けたわね。意識して顔にメリハリつけたから、予想通りハーフっぽくなって、その上、妖艶にもなったわ。それでツンと澄ましていれば、首輪していようがパンツ見せていようが、ビビッて誰も声かけてこないはずよ」
 お姉さまが愉快そうにおっしゃいました。
 私的には、やり過ぎな感じもしましたが、お姉さまが良いとおっしゃってくれているし、確かにこれなら私を知っている人でもわからないだろうな、とも思い、いいことにしました。

「ちょっとあたしを睨みつけてみてよ、さっきみたいに」
 お姉さまにせがまれて、ワザと取り去られた一番下のボタンのことを思い出し、同じようなジト目をしてお姉さまを見つめました。
「うわ、生意気そう。あたしこれから、この生意気な女を好きなだけ虐めていいのよね?すっごく愉しみ。めちゃくちゃやって泣かせてやりたい」
 お姉さまも今の私の顔に関して、私と同じご感想をお持ちになったようでした。

「本当、直子とのアソビって面白い。メイク変えただけで、これだけ盛り上がれるのだもの。あたし今、この生意気女を辱める方法が次から次へと湧き出てきている。直子があたしのパートナーで、本当に良かったわ」
 お姉さまからの嬉しいお言葉に悦ぶべきか、ちょっぴりフクザツ。
 だけど何よりもお姉さまが愉しそうなので、これもよしとしました。

「はい。直子はこのバッグを持ち歩くのよ」
 お化粧ポーチをバーキンに仕舞った後、お姉さまから今度は、少し小さめなトートバッグを渡されました。
 持ち手のラインと縁取りが濃いブルーで、バッグそのものは水色の透明なビニールで出来たトートバッグでした。
 中にはすでに、白いバスタオルとビニールシートのようなものが入っていました。

「それで、これと、これと・・・」
 お姉さまがしゃがみ込み、ソファー周辺に並べておいた私がお家から持ってきた虐め道具のうちのいくつかを、無造作にそのバッグに詰め始めました。
 リモコンローターふたつ、円錐形のバイブレーター二個、アナルビーズ、手錠、首輪のリード、短いロープ、木製洗濯バサミたくさん・・・
「あ、あの、お姉さま?・・・」
 あわてる私の声も聞こえないフリで、それらがバッグに詰め込まれ、最後にお姉さまのお財布が入れられました。

「あたしのお財布も入っているのだからそのバッグ、絶対に失くさないでよね?」
 お姉さまにビニールトートバッグを手渡され、しげしげと眺めました。
 バッグの片方の面は、バスタオルの白地が全面に見えていて、何の問題もありません。
 でも裏返すと、先ほどお姉さまがお入れになったおどろおどろしいお道具たちが、水色のビニール越しに透けて見えていました。
 ピンク色した卵型の物体、見るからにえっちぽい銀色の円錐形、鎖、麻縄、どう見ても、それ以外のものには見えない手錠と洗濯バサミ・・・
 透けたバッグの中身を少し目を凝らして見れば、それらが何に使われるものかピンときてしまうえっちな人も、都会には少なからずいることでしょう。

「残ったオモチャは直子のバッグに仕舞って持って帰っていいわ。準備が出来たら出発よ。あ、冷蔵庫の中は片付けたのよね?」
「はい。今入っているのはお飲み物だけです」
「お散歩のときはそのビニールトートのほうだけ持ち歩いて、あたしが、出して、って言ったものは、いつでもどこにいても、すぐ取り出すこと。それが出来なかったら、その後、直子はもっと恥ずかしいお仕置きをされることになるから、よーく憶えておいてね」
「・・・はい」
「あたしはお散歩中は、このビデオカメラしか持ち歩かないつもりだから」
 お姉さまがニッと笑って、ちっちゃなハンディカメラをこれ見よがしに見せてから、立ち上がりました。

「戸締りはしたし、カーテンもおっけー。ガスの元栓も締めた。さあ行きましょう。直子はそっちのゴミ袋も持ってね。一階のゴミ置き場に出しちゃうから」
 お姉さまがカートとバーキンともうひとつのゴミ袋を持って、スタスタ歩き始めました。
 私も自分の荷物を持って、後を追います。
 もちろんビニールトートは、バスタオルの面を表側に出して。

 玄関で靴を履いているとき、お姉さまが不意におっしゃいました。
「どう?直子。マゾの首輪嵌めたまま外出する気分は?」
「どう、って聞かれましても・・・かなり恥ずかしいし・・・怖いです・・・」
「それだけ?えっちなオモチャが透けたバッグ持って、パンツすれすれのミニ穿いてお出かけだよ?直子みたいなヘンタイ露出マゾ女には、夢みたいなシチュエーションじゃなくて?」
「・・・あ、あの、えっと、それは・・・」
 私が口ごもっていると、お姉さまが私の耳に熱い息をヒソヒソ吹きかけてきました。

「出発前に、もうひとつだけネタバレしてあげる。あたしがなぜ、直子にグレイのパンツを穿かせたと思う?」
「・・・わ、わかりません・・・」
「グレイのシルク地だとね、直子がいやらしい気持ちになってマゾマンコを濡らしちゃったとき、そのシミが一番クッキリ目立つのよ。黒々と、遠くから見てもわかるくらい」
「・・・」
「そんなのみんなに見られたら、ある意味ノーパン見られるより恥ずかしくない?サカっている証拠だし、ぱっと見でもお漏らしみたいだし。だからせいぜい濡れないように、がんばりなさい」
 そこまでおっしゃって私の右耳から唇を離し、玄関ドアをゆっくりと開けるお姉さま。

「あっ、言い忘れてた。胸元のボタンをふたつ外しなさい」
 振り向いたお姉さまが、冷たく微笑んでおっしゃいました。
「は、はい、お姉さま・・・」
 ゴミ袋をいったん靴脱ぎに置き、右手だけでボタンを外しているとき、股間の奥がヒクヒクっと震え、ジンワリ潤んできたのが、自分ではっきりわかりました。
 

オートクチュールのはずなのに 15


2015年7月26日

オートクチュールのはずなのに 13

 目が覚めたとき、傍らにお姉さまはいらっしゃいませんでした。
 おそらく私が寝入ってしまった後、寝室にお戻りになられたのでしょう。
 私のからだは、掛けた記憶の無いタオルケットにくるまれていました。

 昨日に比べるとお部屋の中がずいぶん暗い感じ。
 ひょっとして昨日より早起き出来たのかな?
 起き上がって窓辺へ行きカーテンを開けると、お外はどんより曇り空。
 時計を見たら9時5分でした。

 朝のルーティーンワークを済ませたら家政婦モードに突入です。
 まず、昨日出来なかったリビングルームのお掃除からすることにしました。

 お部屋の中央付近にそのままになっていた、昨日のお姉さまからの陵辱の残骸。
 すなわち、溶けた蝋と洗濯バサミが点々と散らばったビニールシートから片付け始めます。
 洗濯バサミを手に取ると、それがくれた痛みと共に、お姉さまからされたこと、を鮮明に思い出してしまい、みるみるからだに淫らな反応が顕われてしまいます。
 だめだめ、今はお仕事優先。

 ダスターで高い所の埃を払うので、窓を開けなくちゃ。
 窓辺に近づいてお外の風景が見えると、やっぱり少し、開けることをためらってしまいます。
 大丈夫、ここは誰にも覗かれないのだから。
 そろそろと開け始めたら、その隙間からねっとりとしたお外の空気が、全裸の素肌全体にまとわりついてきました。
 気温は裸でも寒くない程度、湿度がかなり高いみたいです。

 窓を開け放すにつれて、徐々にヴォリュームを上げて耳に飛び込んで来る、お外の世界の日常的な喧騒。
 ベランダに降り立ち、景色を見渡した後うつむいて、自分が全裸であることを意識したとき、マンション沿いの通りを歩いているっぽい若そうな男性たちの、あははは、という楽しげな笑い声が近くで聞こえ、途端にキュンと感じてしまいました。

 埃を払ってからお部屋の隅々まで満遍なく掃除機をかけ、最後は絞った雑巾で床を拭き掃除。
 なにしろ広いお部屋ですから、雑巾がけだけでも重労働。
 四つん這いになってお尻を高く突き上げ、おっぱいをプルプル揺らしてがんばりました。

 お掃除を終えたら、次はお洗濯。
 このお天気では乾かないかもしれないけれど、一応やっておくことにしました。
 お洗濯すべきものは数枚のタオルと、お姉さまが昨日お召しになっていたマキシワンピースだけですから。
 そう言えば昨日、私とお姉さまは一切下着類を着けていなかったのでした。

 ランドリールームに入ると、奥のバスルームから物音がしていました。
 お姉さまも起きられたんだ!
 今日はどんなことをされちゃうのだろう。
 ワクワクとドキドキがからだ中に漲りました。
 雨にならないうちにお洗濯ものを手早く干して、お食事の用意をしなくっちゃ。

 疼きが増したからだをなだめるために、エプロンは直子流で身に着けました。
 一度きちんと結んだエプロンの紐を、洗濯バサミに両乳首とクリットを布越しに噛ませてから解きました。
「はうんっ!」
 ヒラヒラなエプロンを、秘所三点止めが必死に噛み付いて支えてくれています。

 今朝のメニューはベーコンエッグとオニオングラタンスープ、そして昨日好評だったコールスロー。
 サンドウイッチも作っておいて、トーストとサンドウイッチ、お好きに選べるようにしました。
 お紅茶の用意もしようかと迷っていたら、お姉さまがお顔をお見せになりました。

「おはよう。朝っぱらからドエム全開なのね?」
 私のエプロン姿をご覧になってのご感想。
「あ、おはようございます!」
 今日のお姉さまは、渋いグレイのシンプルなTシャツワンピース姿。
 ボートネックから覗く鎖骨がセクシー。
 下着ラインがまったく見えないので、今日も素肌に直みたいです。

「なんだか今日は生憎の天気みたいね。さっきネットニュース見ていたら、午後には東京でゲリラ豪雨あるかもですって」
 窓際まで行かれたお姉さまがお空を見上げました。

「お食事どうします?ベランダにご用意しますか?」
「うーん。このお天気じゃねえ・・・直子はもちろん、外でしたいのでしょ?」
「えっ?いえ、私はお姉さまのご希望に従うだけですので」
「今にも降ってきそう。食べている最中に降ってきちゃってもメンドクサイし、残念だけれど中にしときましょう」
 お姉さまが戻ってこられ、ダイニングの椅子に腰掛けられました。

「ワインはどうします?お飲みになられますか?」
「うーん。昨夜少し飲みすぎちゃったからなー。あ、でもぐっすり寝たから体調はいいけれど」
「ではお紅茶で?」
「そうね」
 お答えを受けて、テーブルにお料理を並べていきました。

「心なんてお天気で変わる、っていう歌があったけれど、本当ね。曇り空だとやっぱり気持ちもアンニュイ。休日ラストだっていうのにがっかり」
 今朝のお姉さま、なんだか少しご機嫌ナナメなご様子。

「晴れていたら食事の後、裸の直子にベランダでバレエ踊ってもらおうと思っていたのになあ。ローター挿れて、音楽かけて、本格的に」
 スープを置くためにお姉さまへ近づいた私の胸にお姉さまの右腕が伸び、洗濯バサミがひとつ、無造作に外されました。
「あぅっ!」
 前掛け部分がペロンとめくれ、左のおっぱいだけ剥き出しになりました。
「相変わらず乳首勃てちゃって。直子ってブレないわよね?ん?あ、いい匂い」
 気だるい感じでおっしゃってから最後に付け加えたお言葉は、オニオングラタンスープへ向けられたものでしょう。
 その後はイタズラもされずお料理を並べ終わり、エプロンを自分で外しました。

 全裸に首輪の私とTシャツワンピ一枚のお姉さまとで差し向かい。
 お食事が始まると、お姉さまのご機嫌もだんだん落ち着いてきたようでした。
 美味しい美味しい、って何度も褒めてくださり、嬉しくなりました。
「このサンドウイッチの、ピリッと効いたマスタードの加減が絶妙よね」
 ニコニコ頬張るお姉さま。
 私の頬も自然と緩んでしまいます。

「そう言えば直子って、辛い食べ物大好きでしょう?」
「えっ?あ、いえ、あんまり得意なほうでは・・・」
「そうなの?絶対好きだと思ってた」
「学生の頃、お友だちと、凄く辛いけれど美味しいって有名なカレー屋さんに挑戦したことがあって、確かに美味しかったのですけれど、食べている最中の汗や鼻水がすごくて・・・」
「うん」
「それ以来、そういうのは敬遠気味です」

「ふーん。あのね、辛さっていうのはね、味覚ではないんだって」
「えっ?」
「取引先の人との雑談で聞いたのだけれどね、辛いっていう味覚は無くて、辛さを感じるのは痛覚なんだって」
「へー」
「つまり、辛い、っていうのは、痛い、と同じ。それで、痛い、がつづくと痛みを和らげようとしてベータエンドルフィンとかいう脳内麻薬みたいなのが分泌されるの。それで、気持ちいい、になるわけ」
「はぁ・・・」
「これって、何かに似ていない?」
「ああ」
「そう。直子みたいなマゾの苦痛が快楽に至るプロセスと同じなのよ。だから、檄辛好きはドエム、っていうのが、その人の結論だったの。直子なら檄辛好きになる素質、充分あるのじゃない?」

「うーん・・・辛いものが好きイコール痛いのが好き、というこですよね?確かにそうなのかもしれませんが、私は食欲と性欲を結びつけたことがないので、あまりピンときません・・・」
「私もたまに辛いものが食べたくなるときもありますけれど、そのときムラムラしているわけでもないですし、ムラムラは別の方法で解消しちゃいますから・・・」
「マゾへの責めのひとつとして、辛いカレーを無理矢理食べさせて、そのつらそうなだらしない顔を見て愉しむ、っていうのをされたら、私も目覚めちゃいそうな気もしますが・・・」

「なるほど、その責めは面白いかもね。だけど辛いものの摂り過ぎはからだにも悪いから、直子が好きでないのなら、したくないな」
 お姉さまからの、なんておやさしいお言葉。
「それに辛さ、って一口に言っても、いろいろあるじゃない?たとえばトウガラシならホットって形容されるし、ミントやワサビみたいな辛さならクールでしょ。だから、たぶんやっぱり辛さって、味でもあるし痛さでもあるのよ。エムだエスだっていうよりは、好みの問題よね」
 
 その話題はそこで終わり、お食事もあらかた終えて、お紅茶アンド食休みタイムになりました。
 お姉さまがテレビを点けると、レジャーを終えた車の都会へのUターンラッシュのニュースをやっていました。

「大型連休中の都心て、本当に人も車も激減して、ひっそりするのよね。とくにお正月なんてガラガラ。あ、もちろん遊び場所のある繁華街は別よ」
「そのぶん、こっちに残った人たちは静かでいいけれどね。今年の年始の連休中に用事があって官庁街のほうへ車で行ったらスイスイでさ、ビル街にまったく人影が無くて、まるでゾンビ映画のワンシーンみたいだった」
 小さく笑いながらそこまでおっしゃって、ふと何かを思いつかれたような表情になったお姉さま。
 カップを手にしたまま窓辺まで行き、しばらくお外を眺めていました。

「直子ってさ、今まで街中で、本当のオールヌードになったことはある?」
 テーブルの上を片付けようと立ち上がりかけた私の傍まで来たお姉さまが、覗き込むように尋ねてきました。
 その瞳が愉しげに輝いています。
「あの、えっと・・・」
「本当のオールヌード、っていうのはさ、つまり、上にコートとか上着とかを羽織っていない状態の全裸で、誰かが来てもすぐに隠せる状態じゃないことね。つまり正真正銘のスッポンポン。今みたいな状態。あ、もちろん首輪は別。こういうのって、マゾのシンボルみたいなものだから」
 再び座り直した私に背後から、覆いかぶさるように抱きついてきて、私のおっぱいをやんわりもてあそぶお姉さま。
 ああん、くすぐったいですぅ。

「あの、えっと・・・」
 おっぱいをやさしく愛撫されながら、一生懸命思い出しました。
「高校2年のとき、やよい、あ、いえ、百合草先生と遊んだとき、通っていた高校の裏門で写真を撮られたときは、ぜ、全裸でした・・・あんっ、雨がざんざん降りで、もうひとり、ユマさんと一緒で・・・あぅっ、ちょうど小さなトラックがやってきて・・・あんっ」
 私の言葉に合わせるように、両方のおっぱいを強く弱く揉みしだくお姉さま。

「ふーん。それだけ?シーナさんとは?」
「あとは、えっと、シーナさまとは、お外では・・・ああんっ、セレクトショップで、結果的に全裸にされたことは、ありました・・・知らないお客様が何人かいらっしゃって・・・」
「ああ。あの裸コートのときね。でもそれは、一応屋内か」
「は、はい・・・ああんっ」
 お姉さまの指のターゲットが私の乳首に移り、私はハァハァ興奮していました。

「その2回きりなの?」
「は、はい・・・他にもお外でえっちな格好をしたことは、な、何度かありましたけれど、全部脱いだりはしていません、たぶん・・・ああんっ・・・スケスケとか、ノーパンとか・・・あっ!・・・」
 そのとき、唐突に思い出したことがありました。
 私ったら、もう一回あるじゃない、お外で真っ裸になったこと・・・

「何?今の、あっ、は?」
 すかさずお姉さまからツッコまれ、乳首を捻り上げられました。
「ひーぃんっ!ごめんなさいぃ、もう一回だけありましたぁ・・・高三のとき、地元の小山みたいな森で・・・」
「あら、それは初耳ね。それも百合草女史と?」
「あの、いえ、それはひ、ひとりで、と言うか、成り行きで・・・」

 高三のとき、やよい先生が住んでいらっしゃった町に遠征して、ひとりノーパン遊びをしていてカズキくんと知り合ったことは、今まで誰にも、やよい先生にもシーナさまにもお姉さまにも、お話したことはありませんでした。
 その状況やお相手があまりにも特殊で、ある意味アブノーマル過ぎるし、自分自身に後ろめたい気持ちが少なからずあったので、誰にも言わず、出来れば死ぬまで隠匿しておくつもりだった、私だけのヒミツでした。

 お姉さまにおっぱいと乳首を執拗にもてあそばれて喘ぎながら、カズキくんとの一部始終を白状しました。
 カクレガのこと、お医者さんごっこのこと、生まれて初めて潮を吹いてしまったこと、ざんざん降りの森で全裸で抱き合ったこと、そしてミキちゃんとのことまで。
 今まで秘密にしていたことの罰として、お姉さまにたくさんお尻をぶたれました。

「直子ったら、オネショタのケまであったのね?本当に呆れたヘンタイお姉さんぶりだこと」
「そのくらいの子なら、勃たないものね。でもそれって限りなくハンザイに近いわよ」
「ずいぶん強烈なお医者さんごっこだこと。その子のその後の人格形成が心配になっちゃうわね」
「それってたぶん、ちっちゃな子のこぶしで、ボルチオ開発されちゃったのよ。それで直子、中イキまで覚えちゃったのね」
 お姉さまからのからかいと蔑みのお言葉を聞きながら、あの子たち、今頃どうしているかな、なんて考えていました。
 あれから早くも3年以上、経っていました。

「おーけー、わかったわ。ヘンタイ直子は今まで2回、外で素っ裸になったことがある、と。それもいずれも雨の日。つまり、3度目を経験するのに、今日なんかおあつらえむきな天気だと思わない?」
 ダイニングを離れ、床に四つん這いになっている私のお尻にバラ鞭を振るいながら、お姉さまがおっしゃいました。
 私はもうすでに2回、お姉さまの指と鞭でイかされていました。

「あうっ!えっと、それは・・・」
「だからつまり、今日はこれから出かけることにするの。車出してあげる。直子の露出マゾレベルの経験値を稼ぎに行くのよ」
「えっ!」
「前にも言ったでしょ?あたしは、百合草女史やシーナさんと直子との甘酸っぱい思い出をことごとく上書きして、直子の一番のお相手になりたいの」
「まあ、今聞いたカズキくんとの思い出は、さすがのあたしも太刀打ちする術が無いけれど」
 お姉さまの唇が近づいて、深ーいくちづけをくださいました。

「それにさっき教えてあげたじゃない、連休中の都心は人が少ないの。こんな天気だし、連休最終日だし、輪をかけて少ないだろうことは保証するわ」
「で、でも、どこに行くのですか?」
「そうね、官庁街なら絶対休みで人いないから、丸の内あたり行ってビルをバックに写真を撮ってきましょう。今日の目標は、直子が街中で素っ裸になること」
「・・・東京の街の中で私、全裸にならなくてはいけないのですね?」
「そうよ。ワクワクしちゃうでしょ?一昨日のスーパーのときも、直子、すっごく嬉しそうだったものね」
 おっしゃってから、お姉さまの瞳がキラッと妖しく輝きました。

「そうだった。直子の露出レベルは一昨日、ずいぶん上がっちゃったんだっけ」
 私のお尻をスリスリさするお姉さま。
「ごめんごめん。忘れていたわ。あのとき直子が一番興奮していたのって、直子が自分からレジの子に、裸のお尻を見せつけたときだったものね?」
 お姉さまの指がどんどん、私のお尻の穴のほうに寄ってきていました。

「もう裸になるぐらいじゃ、直子はぜんぜん興奮出来ないわよね?ちゃんと誰かに視てもらわなくちゃ」
「それならこうしましょう。今日の直子の目標は、街中で素っ裸になって、その姿を見知らぬ誰か三人以上に見せつけてくること」
「まず人通りの少なそうなところでウォーミングアップして、徐々に人混みに入っていく、っていうのはどう?」
「そ、そんなこと私・・・あうっ!」
 お姉さまの指が私の肛門にズブリと挿さりました。

「せっかくあたしがドライブデートに誘っているのに、なんだかあまり乗り気ではないみたいね?直子にノーっていう選択肢なんて無いこと、忘れちゃった?」
「あぅ!、いえ、あの、ごめんなさいぃ」
 お姉さまが挿し込んだ指をグリグリしながら、もう片方の手で尻たぶをバチバチ叩きます。

「どうせ明日は朝から羽田だし、あたしも今夜は池袋にいたほうが便利なのよ。それに、直子には部屋もすっかり奇麗にしてもらったから、家政婦直子へのお礼として、夕食はどこかのレストランで奮発してあげる」
「あうっ、はいぃ、あ、ありがとうございますぅぅ」
「連休最後に、ふたりで忘れられない思い出をつくりましょう!」
「はいぃぃ、お姉さまぁ・・・」

「そうと決まったら準備しなくちゃ。ほら、早くイっちゃいなさい!」
 お尻の穴をほじられながらクリットをつままれました。
「あぅぅ、いぃぃ、もっとぉぉ・・・」
「いやらしい声だこと。あたしも興奮しちゃっているから、ちゃんと鎮めて、少し冷静にならなくちゃ」
「ほら早くイって!次はあたしの番なのだから」
 お姉さまが片手でスルスルと、Tシャツワンピを脱ぎ始めました。


オートクチュールのはずなのに 14


2015年7月19日

オートクチュールのはずなのに 12

 立ったままぐんぐん昇りつめていく私のからだを、小刻みに震える両膝が支えきれなくなってきました。
 たまらず背後のお姉さまに、しなだれかかります。
 崩れ落ちたがる腰を、両足を踏ん張ってなんとか支えると、股間をこれみよがしに前へ突き出すような格好になりました。
 のけぞるようにお姉さまにからだを預け、後頭部にあった両手を後ろ手にしてお姉さまの背中に回し、ギュッとしがみつきます。

 お姉さまはしっかりと私を支えてくださり、私を穢す両手の勢いも増しました。
 尖りきった乳首に爪を立てられ、今や何本なのかも分からなくなってしまった指たちがグイッと奥深くまで潜り込み、膣壁を圧迫してきます。
「んぐぅぅ・・むぅぅ・・・」
 背中からお尻にかけてピッタリ密着しているお姉さまの体温を感じながら、必死で歓喜の嗚咽を抑え込みます。

「イキなさい、ほら、こんな青空の下ではしたなく、お嬢様たちの演奏を聞きながら、立ったままイっちゃいなさい」
 耳元で、からかうようなささやき。
 同時に、乳首を虐めていた指が離れ、すーっとお腹を滑って剥き出しの肉芽にたどり着きました。
「んぐっぅえ!」
 躊躇なくギュッと捻り潰され、喉の奥からたまらず悲痛な悲鳴がせりあがり、まるで嘔吐いているみたいにお下品な喘ぎが漏れてしまいました。
 かまわずコリコリの肉芽をもてあそぶお姉さまの指先。
 もはや限界でした。
「んんんんんんーーーんーーぐぅっ!!!」

 グッタリと力が抜け切った私のからだを、お姉さまがまだ、支えてくださっていました。
「ずいぶん気持ち良さそうなイキっぷりだこと!」
 左耳をくすぐるお姉さまのお声が、なぜだか少し怒っているみたいに聞こえました。
「ちょっと足元を見てごらん?」
 そのお言葉に素直にうつむくと、コンクリートの床にずいぶん大きく、濡れた痕を示す黒いシミが出来ていました。

「イクときの唸り声がかなり大きかったから、ちょっとハラハラしちゃったじゃない?さあ、一度室内に戻るのよ」
 私の返事は待たず、私を背後から支えたまま、お姉さまが歩き始めました。
 後ろから押されるように私も歩き出します。
 お姉さまの右膝が私の右裏腿を蹴ると、私の右脚が一歩前へ。
 まるで、背後から抱きかかえられた等身大の操り人形みたいにおぼつかない足取りで、なんとかリビングまで戻りました。

 室内に入ると、お姉さまからの支えがなくなりました。
 途端にペタリと床にへたりこむ私。
 お姉さまは、窓を手早くすべて閉め、ソファーの周辺で何やら物色していました。
 お外の喧騒がすっかり聞こえなくなり、緊張感がゆっくり解けていきました

「青空の下での食事って、やっぱり気持ちいいものね。明日もベランダでしましょう」
 私の傍らに来たお姉さまの手には、私が自宅から持参した木製の洗濯バサミがいくつか握られていました。
「ほら、仰向けに寝そべりなさい。ここでだったらいくらでも喘ぎ声あげていいから」
 お部屋の中央付近を指さすお姉さまの瞳が、淫らに輝いているのがわかりました。
 ご命令通りに仰向けになると、間髪を入れずに視界が真っ暗に塞がれてしまいました。

 お姉さまが私の顔面に跨ったのでした。
 マキシワンピースの裾がバサリと広がり、私の顔全体を覆ってしまったのです。
 もちろんその下には何も着けてなくて、潤った泉が私の鼻先に圧しつけられています。
 真っ暗な空間に、お姉さまの甘酸っぱい臭いだけが充満していました。

「直子に舐めてもらうの、あたしとても気に入っちゃったの。とくにこうやって、無理矢理顔に圧しつけてやるのが好き・・・はぅぅ」
 事態を把握して私が舌を伸ばすと、お姉さまの色っぽいお声が聞こえてきました。
「直子がイクのを見た後って、なぜだか無性に虐めたくなっちゃうのよね。あっ、うん、そこ・・・」
「あんまり気持ち良さそうだから、イライラしちゃうのかもね。ペットのクセに、自分だけいい思いしてって・・・あぁんっ」
 お姉さまのお声がだんだん切なげになってきて、私のご奉仕にもどんどん熱が入ります。
「いいわ、そこぉ・・・もっと奥までベロをねじ込んでぇ・・・」

 お姉さまが前のめりになると、お尻の穴まで舌が届くようになりました。
 すかさず舌を伸ばし、ベロベロ舐めあげます。
「はぁんっ、いいわ、じょーずよ・・・ご褒美あげる」
「はぁうっ!」
 左乳首への激痛に思わず声があがります。
 洗濯バサミで挟まれた痛みです。
「あぅっーぅ!」
 右乳首にも。

「ほらほら、もっとご褒美欲しいでしょ?がんばってあたしを悦ばせなさいっ」
 両手を暗闇に潜り込ませた私は、お姉さまのお尻を抱え込むように撫ぜ回しながら、お姉さまの奥へと舌を伸ばしつづけました。
 お姉さまも次々にラビアやクリットへ洗濯バサミをくださり、それらをフルフル揺らして虐めてくださいます。
 最終的にはふたり、69の形でお互いの性器を愛し合い、幾度もエクスタシーの波に呑まれたのでした。

 ふたりの喘ぐ声が一際高くお部屋に響いてから、しばらくは肩で息する音だけがつづいていました。
 むせかえるようなお姉さまの臭いの中で、シアワセの余韻に浸っていたら、不意に視界が明るくなりました。
 お姉さまが立ち上がられたようでした。
「シャワーしてくる」
 その場でワンピースを脱ぎ捨て、オールヌードになられたお姉さま。
 その遠ざかる形の良いお尻を、私はまだ床に仰向けになったままで見送りました。

「ちょっと直子、この洗いっぱなしの洗濯物、どうするの?」
 開けっ放しのリビングのドアの向こうから、呆れたようなお声が聞こえてきました。
 あっ!いっけなーいっ!
 すっかり忘れていました。
 あわてて洗面所に駆けつけると、お姉さまの冷たい苦笑いに迎えられました。
 私のからだには、右脇腹と左側のラビアにひとつづつ、洗濯バサミがまだ噛みついていました。

「ご、ごめんなさい。すぐに干します」
 時計はすでに午後の二時を少し過ぎていました。
「忘れていたのでしょう?使用人がそんなことでは困るわねー」
 お姉さまがお芝居っぽく、なじってきます。
「でもまあ、この陽気なら2時間も干せば乾いちゃうでしょ。さっさと干しちゃいなさい」
 おっしゃりながら、お姉さまの右腕が伸び、私の右脇腹を噛んでいた洗濯バサミが外されました。

「はうんっ!」
 興奮しているときには気がつかない、長い時間噛んでいた洗濯バサミを外すとき特有の刺すような痛みが走り、思わず顔が歪みました。
「あら、えろい顔しちゃって、まだサカっているの?本当に底無しのドエムね。ちょっと待っていなさい。シャワー終わったら、まだまだたっぷり虐めてあげるから」

 ご自分の性的欲求が発散されて落ち着いて、余裕が戻ったお姉さま。
 こうなったときのお姉さまは、さらに強い興奮を得る為にイジワルさが増してエス度が格段に上がることに、これまでの経験で気がついていました。
「あうっ!」
 左ラビアの洗濯バサミも無造作に外されました。
 そして、それがさも当然のように、私の左右乳首にあらためてぶら下げられます。
「あっつぅぅぅ!」

「これはご褒美じゃなくて、一応罰だから。クリットにもうひとつ自分で挟んで、その姿でベランダに出て、洗濯物を干しなさい」
「まあ、どうせ誰にも視られることはないし、直子にとっては罰にはならないかもしれないけれど、あたしにとっては、素っ裸でそんなのぶら下げたまま外に出る女なんて、充分みっともなくて恥ずかしい存在だと思うわ」
 冷たく蔑むお言葉とともに、お姉さまが右乳首の洗濯バサミをパチンと弾きました。

「ああんっ、ごめんなさい・・・」
「それと、食器とクロスの後片付けもよろしくね。テーブルと椅子はそのままでいいわ。明日はもっと恥ずかしい姿でのお食事会にするつもりだから」
 それだけ告げたお姉さまは、私のお尻をパチンと叩き、スタスタとバスルームへ向かわれました。

 お洗濯ものを入れた籠を片手にリビングへ戻った私。
 お言いつけ通り、洗濯バサミをひとつ拾い、自分の股間へとあてがいました。
「いたぁいーっ!」
 少し大人しくなっていた肉芽がギュッと潰され、途端に血液が集まり始めました。
 激痛の後、鈍痛、そして疼痛。
 すでに疼痛と化している二箇所にもう一箇所の鈍痛が加わって交わり、ジンジンする痛みに全身が支配されます。
 その痛みたちは、なぜだか私の剥き出しマゾマンコの奥へと集結すると、いつの間にか心地良い刺激へと変化してしまうのです。

 ベランダに出ると、相変わらずの柔らかな陽射し。
 少しだけ風が強くなったようで、乳首にまっすぐに噛みついてぶら下がる洗濯バサミたちが、風が吹くたび微かに揺れました。
 タオル類を物干しに掛け、ワンピースはハンガーに、下着類はピンチハンガーに吊り下げていきます。
 からだを動かすたびに、三つの洗濯バサミたちが、その存在を痛みで私に誇示してきます。

 全裸に首輪、そして女性なら誰もが隠したがる敏感な部分に洗濯バサミ。
 そんな姿でベランダに出ているヘンタイ女は、世界中で今、きっと私だけでしょう。
 喧騒に混じって遠く聞こえてくる誰かの微かな話し声の中に、ハダカとかマゾ、ヘンタイ、露出なんていう、私を蔑む単語が混ざっているような、空耳を感じてしまいます。
 
 喧騒の中で一際大きく、突然始まった吹奏楽部の練習曲は、フニクリフニクラに変わっていました。
 その、たどたどしくも勇ましい演奏を聞いていると、自分自身が高校時代から、ずいぶん遠くまで来てしまったような気持ちになり、自嘲的なせつなさを感じました。
 だけど、それとは裏腹に、ベランダの目隠しフェンスから身を乗り出して、自分の今の恥ずかしい格好を誰かに視てもらいたい、知って欲しいという自虐的な衝動にも駆られていました。

 私は再び、急激に発情していました。
 ベランダとは言え、こんな格好でまた、お外に出たせいでしょう。
 お姉さまがおっしゃるとおり、私の露出マゾレベルは、確実にワンステップ、上がってしまったみたいです。
 
 マゾマンコの奥がズキズキと疼き、罰を受けている三箇所が更なる責めを強烈に欲していました。
 洗濯物を干し終わり、ブランチの後片付けでベランダとキッチンを何度か往復するあいだ中ずっと、私はお姉さまからの次なる恥ずかしいご命令を心待ちにしていました。
 キッチンで食器を洗いながら、飛び散る水飛沫が肌に当たっただけで、クネクネ身悶えてしまうほど。
 食器を拭くタオルが肌を擦っただけで、いやらしい声が洩れてしまうほどに。

 お仕事すべてを終えてソファーのところに戻ると、ちょうどお姉さまが、バスタオルだけ巻きつけてリビングに戻ってこられました。
「仕事は終わった?」
「あ、はい。あとはここ、リビングのお掃除だけ、まだですが・・・」
「ここ?ここはもういいわよ。どうせこれからまた、直子のいろんなおツユで汚れちゃうのだから」
「明日、あたしが起きてくるまでに掃除しておいてくれたらいいわ。今日の直子の家政婦の仕事で残っているのは、夕食作ることだけよ」
 お姉さまがおやさしげにおっしゃってくださいました。

「このあと直子には、家政婦としてではなくて、あたしの加虐趣味を満たすセイドレイとして、がんばってもらうつもりだから」
「あたしにも日頃の鬱憤とかフラストレーションとかあるからね。もちろんそれは直子のせいではないのだけれど、そのハケ口として活用させていただくわ」
 お姉さまが愉しそうに笑って、巻いていたバスタオルを床に落としました。
 何てお美しい、お姉さまの裸。

 それからのお姉さまは、まさにエスな人そのものでした。
 その理知的な瞳に妖しい炎をユラユラさせて、私を虐め抜いてくださいました。

 首輪にはリードの冷たい鎖を付けられ、おっぱいを麻縄でギュッと絞られ、手錠で両手は後ろ手に括られ、棒枷で股を大きく割られた格好で、シートを敷いた床に転がされました。
 全身に洗濯バサミを噛まされ、ローソクを満遍なく垂らされては、バラ鞭で払い落とされました。
 キュウリもニンジンもバナナも、ゴーヤさえ突っ込まれました。
 イク寸前に焦らされるのはあたりまえ。
 何度も何度も涙目になって懇願しました。
 全裸のお姉さまが愉快そうに、そんな私の姿へハンディカメラを向け、熱心に撮影されていました。

 陽が傾いてきて洗濯物を取り込むときには、手錠と棒枷だけ外してくださいました。
 その代わり、果実の形をしたお浣腸をふたつ注入され、ふたつめのお薬の容器はお尻に挿したままベランダに出るよう、ご命令されました。
 お腹がグルグル痛むのを必死に堪えてお洗濯物を取り込んでいると、練習を終えた吹奏楽部の女学生さんたちでしょうか、ごきげんよう、またお休み開けにね、ってさわやかにご挨拶し合うお声が聞こえてきました。
 そっとフェンスから階下を覗き、彼女たちの可憐な制服姿を見て、今の自分の姿との対比に、またまたひどくせつなくなりました。

 だけど、そんな感傷に浸りきるには、お腹が切羽詰り過ぎていました。
 顔にダラダラ脂汗が浮かび、膝がガクガク震えています。
 取り込んだお洗濯物を放り出すように床に置くと、一目散におトイレに駆け込みました。
 もちろんお姉さまも後を追ってきて・・・
 とうとうお姉さまに私の排泄姿を目撃されてしまうと同時に、映像に記録までされてしまいました。

 うちひしがれるヒマも無くバスルームに連れ込まれ、今度はぬるま湯のお浣腸。
 シーナさまからいただいた大きなお浣腸器を、お姉さまは愉しそうに私の肛門に突き立てました。
 シャワーでお尻にお湯を当てられつつ我慢に我慢を強いられ、結局、何度もお尻から噴水を吹き上げました。
 おかげで首輪までぐっしょり。
 
 これもシーナさまからの就職祝い、ガーネットのアナルビーズを渡されて、お尻の穴だけでイクように命じられました。
 バスルームの鏡に自分のお尻を映し、自分で珠を押し込んでいきます。
 今ではすべて埋め込めるようになった私の肛門。
 埋め終わったら、お姉さまにお願いして抜いていただくのです。
「お姉さま、どうか直子の汚い肛門から、ビーズを抜いてやってください」
 お姉さまが私のお尻をパンパン平手打ちしながら、焦らすように抜いてくださいました。
 3回くりかえした後、自分で人差し指を肛門に挿入、グリグリ動かしているうちに、全身がビクビク痙攣してきました。
「ああ、イッちゃう、お姉さま・・・お尻の穴でイっちゃいますぅ・・・ううううぅぅ!!!」

「さあ、からだの内も外もキレイになったところで、お夕食の支度をしてちょうだい」
 さすがにお料理をするときは、危ないちょっかいはありませんでした。
 乾かしておいてあげる、と首輪は外され、おっぱいを締め付けていた麻縄も解かれました。
 ただし、例のエプロンを、お姉さま曰く、直子流、で着けるように命じられました。
 直子流、というのはつまり、エプロンの紐を結ばず、胸当ての乳首の位置に洗濯バサミをふたつ噛まして、エプロンが落ちないように留める方法です。
「それだけじゃちょっと頼りないわね」
 お姉さまの一言で、左右脇腹にひとつづつ、あと、もちろん股間にひとつ、追加されました。
 リビングでお姉さまがのんきにドライヤーで首輪を乾かしているあいだ、ちょっと動くと疼痛が走るお下劣裸エプロン姿で、スパゲティカルボナーラと野菜サラダを一生懸命作りました。

 今夜のディナータイムはふたりとも全裸。
 私は乾いた首輪を着け直しましたが。
 お食事のあいだ、お姉さまはご機嫌でした。
「これ、さっき直子のマゾマンコが咥え込んでいたキュウリよね?」
 なんておっしゃりながらパクパク食べていらっしゃいました。
 私も、やっぱりずいぶん体力をつかったのでしょう、ゆっくりペースで最後までたいらげました。
 お姉さまは、ワインもけっこうなペースで飲み干されていて、私もつられて4杯飲んじゃいました。

 食休みにソファーでくつろいでいると、どちらからともなく唇が重なり・・・
 その後は、自然に抱き合って何度も何度も愛し合いました。
 お互いに悦ばせるツボみたいなものがわかってきていたので、お互いの指と唇だけで飽きることなく幾度もイキ合いました。

 ちょっと疲れると、抱き合ったままシャワーを浴び、抱き合ったままバスタブで愛し合い、抱き合ったままからだを拭いて、抱き合ったままソファーに倒れ込み・・・
 結局、いつ眠りに落ちたのかわからないまま、翌朝を迎えました。


オートクチュールのはずなのに 13


2015年7月12日

オートクチュールのはずなのに 11

 自宅のベッド以外で目覚めると、決まっていつも軽いパニック状態に陥ります。
 あれ?ここはどこ?私は誰?なんで裸で寝ているの?
 だけど、首周りにまとわりつく異物感に右手が思わず伸びてそれに触れ、自分が置かれている状況を即座に思い出しました。
 見慣れないお部屋を見回しているうちに全身がワクワク感に包まれ、眠気があっさり吹き飛びました。

 枕元に置いた携帯電話の時計を見ると、午前9時10分。
 んーーっ、って大きく伸びをして、立ち上がりました。

 お姉さまは、お昼ごろまで起きないつもり、っておっしゃっていたっけ。
 それまでに家政婦として一仕事、やっつけてしまいましょう。
 その前に洗面所をお借りして、顔を洗って歯を磨いて。
 リビングルームのドアを開け、洗面所に向かいました。

 洗面所の大きな鏡に、赤い首輪を嵌めた裸の上半身が鮮やかに映し出されます。
 首輪を嵌められている、イコール、私はお姉さまの所有物、飼い主とペット・・・
 そんな連想をした途端に、鏡の中のふたつの乳首がみるみる背伸びを始めました。

 歯を磨きながら、午前中の段取りを考えます。
 リビングのお掃除、お洗濯、お姉さまが起きる頃を見計らってブランチの用意。
 とりあえず、そのくらいかな。
 時間があったら、バスルームとおトイレもお掃除しちゃおう。
 それで午後は、お姉さまとゆっくり過ごせたらいいな。

 リビングに戻って、ソファーを元通りに直しました。
 真っ白なカーテン越しにでもわかるくらい、降り注ぐ陽射しがお部屋中を明るく照らしています。
 今日はすごく良いお天気ぽい。
 そう思って無意識にカーテンを開こうとして、ふと気づきました。

 私は今、全裸。
 カーテンを開いて、もしもお向かいにも窓があって誰かいたら、裸を視られてしまいます。
 お姉さまのお部屋の窓から裸の女が見えた、なんてご近所のウワサになったら、私はいいとしても、ここに住んでいるお姉さまにご迷惑がかかってしまいます。
 そう言えば私、ここが何階で、周囲がどんな状況か、ぜんぜん知らないことに、今気がつきました。

 気を取り直して、カーテンの境目から恐る恐る顔だけ出して、お外を覗いてみました。
 窓のすぐ外は広くて奥行きの有るベランダ。
 そのフェンスの向こうは大部分が青空で、遥か遠くにここより高そうな建物が見えました。
 そして、大きな5枚のガラス窓は完全な素通しで、カーテンを開けたら横長のスクリーンのように、お外から室内全体が丸見えになる、ということがわかりました。

 けっこう高い階のお部屋みたいだな。
 顔を引っ込めてから考えました。
 今見た感じでは、窓は大きいけれど、近くの建物から覗かれちゃう心配は少なそう。
 だけど・・・

 もしも、このお部屋をお掃除するとなると、窓を開けて換気をしながら、ということになりそうです。
 昨夜は気がつきませんでしたが、昼間の明るい光の中で見ると、やっぱり家具の上やお部屋の隅にうっすら埃が積もっているので、ダスターをかけて埃を床に落としてから、のほうが効率的なので。
 となると、お姉さまにお伺いを立ててからのほうが良さそうです。
 カーテンはそのままにして、バスルームのお掃除から始めることにしました。
 せっかく裸なのだし。

 バスルームとおトイレを一時間くらいかけてピカピカにしてから、次はお洗濯。
 お洗濯ものはそんなにたくさんはなく、タオル類と私のワンピース、それにお姉さまと私の下着類くらい。
 置いてあった説明書を読みながら洗濯機にはタオル類とワンピースを任せ、下着類は手洗いしました。
 
 出張中に溜め込んだのであろう、色とりどりのお姉さまの下着を手洗いしながら、ふと気がつきました。
 これらのお洗濯物を干すとき、否が応でも私は、あのベランダに裸で出ることになることを。
 からだの奥がキュンと疼きました。

 洗い終えた洗濯物はとりあえず放置して、お料理に移ります。
 お姉さまからのリクエストはホットケーキ。
 油を使うので、昨夜お姉さまから唯一許された着衣として託されたエプロンを広げてみました。

 一見すると真っ白な可愛らしいフリルエプロンなのですが、お姉さまがおっしゃったとおり、お下劣な細工が施してありました。
 バスト部分と腰周りだけ、ビニールみたいな透明な素材で見事にシースルーなのです。
 自分のからだにあてがってみると、尖った乳首が滑らかなビニールにペタッと貼りつきます。

 いやん、えろい。
 お姉さまったら高校のとき、こんなのをアユミさんていうかたに着せて愉しんでいたんだ。
 お会いしたこともないアユミさんが羨ましくて、ちょっぴり嫉妬してしまいます。
 首と背中の紐を結ぶと、とくに視ていただきたい部分だけがスケスケの、いかにも露出狂そのものな裸エプロン姿になりました。

 コールスローを作り、ホットケーキミックスをかき混ぜます。
 腕を動かすたびに、乳首がツツツとひきつるようにビニール地を擦り、ますます硬くなってしまいます。
 その感触でアソコの、いえ、剥き出しマゾマンコの奥もウルウル。
 お姉さま、早く起きてこないかなー。
 
 ホットケーキを、あとは焼くだけ、の状態にして、食器類をダイニングテーブルに並べ始めた頃、リビングのドアが開きました。

「おはよう」
 ざっくりしたシルエットでゆるふわな濃紺のマキシワンピース姿のお姉さまが、近づいてきました。
「あ。おはようございます、お姉さま。お早いですね?まだ12時前ですよ。ゆっくりお休みになられましたか?」
「うん。いつもだったらまだまだ寝ているのだけれど、直子がいると思うとワクワクしちゃって、早めに起きちゃった。あ、でも、昨夜はぐっすり眠れたから問題なし、よ」
 お姉さまが歩くたびに、柔らかそうな生地にからだのラインが浮き上がります。
 たぶんお姉さま、素肌にそれしか着ていないみたい。

「すぐにお食事にされますか?ホットケーキは、もう焼くだけになっていますけれど・・・」
「うん、そうね。って、直子、そのエプロン、やっぱり似合うわね」
 目の前に来られたお姉さまが、私の透けているバスト部分をまじまじと覗き込みました。
「赤い首輪ともよくマッチしている。えっちビデオのタイトルっぽく言うと、ヘンタイ肉奴隷マゾメイド直子、って感じ」
 そのお下品なお見立てが、私のマゾ心をゾクゾク煽り立てます。

「直子のほうがアユミよりおっぱい大きいから、尚更卑猥な感じ。乳首がペッタリ貼りついて、ひしゃげちゃってる」
 布地越しに私の右乳首を無造作につまんでくるお姉さま。
「ああんっ」
「相変わらずコリコリね。朝っぱらからサカっちゃって、いやらしい子」
 
 不意に私の唇が、お姉さまの唇で塞がれました。
 でもすぐ離れて、お姉さまが、んーーって、伸びをひとつ。
 お姉さまからのモーニングキスは、微かに歯磨き粉の香りがしました。

「あら直子?どうしてカーテン開けないの?」
 ふと窓のほうに目を遣ったお姉さまが、訝しげに尋ねてきました。
「あ、それは・・・」
 私がご説明しようと言葉を探しているあいだに、お姉さまはスタスタと窓際に行かれ、ザザーッとカーテンを全開にされました。
「あーっ!」
 お姉さまを追っていた私は、お部屋の中間あたりで、それ以上進めなくなりました。
 素通しガラス5枚分の陽射しで、お部屋の中が一段と明るくなりました。

「うわー、いいお天気だこと!まさに五月晴れだねー」
 のんきにはしゃぐお姉さま。
「直子も来てごらん、空が真っ青だよ」
「あの、えっと、大丈夫ですか?」
「何が?」
「私、今、裸ですから、えっと、その、ご近所さんとか・・・」
「ああ、それを気にして開けなかったんだ。大丈夫。いいから来なさい」
 最後はご命令口調に変わっていましたから、行かないわけにはいきません。
 腕で胸を庇う格好でおどおど近づきました。

「ほら見て。この窓の向こうは学校で、今日はお休み。その奥はずっと神社の森。おまけにここは坂の途中で高台のほうだから、この窓を覗ける建物なんて周りにないのよ」
 お姉さまのお言葉に勇気を得て、思い切って窓際まで行き、お外を覗いてみました。
 
 おっしゃる通り眼下には、ここより低い建物と校庭らしき敷地、その奥には緑がつづいていました。
 そしてお空は抜けるようなライトブルー。
「ね、わかったでしょ?だからおっぱい、隠さなくていいの」
 いつの間にか背後に来ていたお姉さまに、胸を庇った左腕を無理矢理剥がされました。
 腕に弾かれた乳首がプルン。

「向かいの学校はね、けっこう有名な名門女子高なのよ。幼稚園から大学までのお嬢様学園。大学だけ別のところにあるらしいけれどね」
「あたしがここに来るのは、たいてい休日か夜中でしょ?たとえ窓を開け放しでも、いつもしんとしているの。平日の昼間がどのくらいかまびすしいのかは知らないけれど、あたしにとってここの印象は、とても居心地のいい閑静な住宅街なのよ」

「このお部屋は、何階なのですか?」
「えっ?覚えていないの?そう言えば直子、スーパー出てからは、ずーっとボーッとしていたものね、なんだかやり遂げちゃった感じで」
「ここは8階。このマンションの最上階。ここを覗こうと思ったら、たとえば、あのビルからだったら.・・・」
 遥か遠くのビルを指さしてつづけます。
「かなりの高倍率の双眼鏡が必要なはずよ」
 そこまでおっしゃって、お姉さまが何かに気づかれたようなお顔になりました。

「そっか。そういう観点で見たことが無かったから気づかなかったけれど、ここって、直子の趣味にぴったりな部屋だったんだ!」
「まっ裸で窓辺に立とうが、ベランダに出ようが大丈夫っていう、裸になりたがりの露出狂にはうってつけの物件だったのね」
「それならさ、ブランチはベランダでしない?こんないいお天気だし、きっと気持ちいいから。確かガーデンテーブルが物置に入っていたはず」
 みるみるテンションが上がり、愉しそうなお声をあげたお姉さまが次々に窓枠のロックを外し、ススススーッと三面分開きました。
 お外の爽やかなそよ風がふわふわっとお部屋に侵入してきて、私の裸のお尻を優しく撫ぜました。

「あれ?直子はあんまり愉しそうじゃないのね?あ、そうか。誰も覗いてくれないって分かっているから、スリルが無くてつまらないのか」
「いえ!そんなことないです。視られないほうがいいですっ!」
 あわてて否定する私を、ニヤニヤ笑いが迎え撃ちます。
「あらあら、また嘘つき直子に戻っちゃったか。昨夜のスーパーでは、あんなに素直だったのにね?」
 お姉さまのからかうようなお声に、そのときの一連の恥辱が一気によみがえり、全身の体温が数度、カッと跳ね上がりました。

「ベランダのほうはあたしが用意しておくから、直子はパンケーキを焼き始めて」
 浮き浮き声のお姉さまの号令で、女子高の校庭を見下ろしての青空ブランチ開催が有無を言わさず決定しました。
 
 私がキッチンでパンケーキを焼いているあいだ、お姉さまは何度も、ベランダとリビングやキッチンのあいだを往復されていました。
 やがて、焼きあがったパンケーキをお皿に盛ってダイニングテーブルへとひとまず置いたときには、さっき私がテーブルに用意した食器類などはすべて消え失せていました。

 ホカホカのパンケーキを積み上げたお皿ふた皿とシロップ類をトレイに乗せ、しずしずとベランダに向かいます。
 だけど今の私は、赤い首輪におっぱいと下腹部だけスケスケの裸エプロン。
 いくら地上8階で周りから覗かれる心配の無いベランダとはいえ、そんな姿で青空の下に出るには、かなりの勇気を必要としました。
 フローリングから窓枠のレールを跨ぎ、ベランダのコンクリートへと片足を下ろす、その一歩に躊躇してしまいます。
「ほら、何しているの?早く早く」
 お姉さまからの非情な一言で、思い切ってコンクリートに足を着けました。

 横長長方形のベランダは、目隠しフェンスまでの奥行きが3メートルくらいと、かなり広め。
 空間の半分くらいが庇で覆われています。
 エアコンの室外機とフェンスのそばにお洗濯物用のパイプが通っている以外、他に装飾はありません。
 ベランダ中央付近に、大きくて真っ白な日除けパラソルが立っていました。
 その下に、キャンプで使うような木製のテーブルが置かれ、折りたたみの木製椅子が2脚。
 その片方にお姉さまが、優雅に腰掛けていらっしゃいました。

 テーブルには真っ白なクロスが掛けられ、私が作ったコールスローと、氷が詰まったワインクーラーに埋まった白ワイン一本。
 何枚かの取り皿とグラス、ナイフとフォークが奇麗に並べてありました。
 真ん中の空いているスペースにパンケーキのお皿を置きます。
「アーッ、気持ちいい。なんだかいいわよね?優雅な感じで。こんなことになるならもう少し、このベランダも飾っておけばよかった。観葉植物とかで」
 お姉さまがワインのコルク栓をグリグリしながらおっしゃいます。
「あ、でもあたし、めったに帰らないから世話できないか。それじゃ植物がかわいそうだわね」

「このアウトドアセットはね、確か一昨年、河原でみんなでバーベキューすることになって揃えたのよ」
「行きがかり上、保管はあたしに押し付けられて、邪魔って思っていたけれど、捨てなくてよかった」
「会社のみなさまとしたのですか?」
「そう。まだ、たまほのが入る前のことね」
「社員全員でご旅行とか、されるのですか?」
「うーん。とくに決まってはいないけれど、気が向けばね。去年は温泉に行ったな。全員が休めるようにスケジュールが取れればね」
「あ、でも今年は直子も入ったし、ぜひ行きたいわね、秋頃にでも」
 そうおっしゃって、なぜだかパチンとウインクをくださるお姉さま。
 そのときが、私のパイパンがみなさまにバレる日となるのでしょう。
 
 パンケーキを置き終わって、恐る恐る目隠しフェンスのそばまで行ってみました。
 高さは私の肩のちょっと下くらいで、茶色い金属の密なメッシュ状になっていました。
 これなら確かに、たとえ、ここと同じくらいの高さの建物が近くにあったとしても、フェンスの中は覗けなそう。
 唯一覗くことが出来るとしたら、ここより高い位置からだけ、という結論に達して見上げてみれば、近くにそんな建物はひとつもありません。
 ようやくずいぶんホッとして、テーブルのほうに戻りました。

「まだ向こうの部屋から持ってくるものある?無ければ早く席について」
「はい。もう大丈夫です。お待たせしました」
「休日って、昼間からお酒飲めるのも醍醐味よね。眠くなったら寝ちゃえばいいのだから」
 お姉さまがワイングラスにワインを注ぎ始め、私は向かい側に座ろうと椅子を引きました。
「だけど今日は寝るわけにはいかないのよね、直子をいっぱい虐めてあげなくちゃ。だからまあほどほどにしとく。そっちにお水とジュースも入っているから」
 私の足元に置かれたクーラーボックスを指さされました。

「それではカンパイということで」
「はい」
 腰を下ろしながらグラスを持ちました。
「あ、ちょっと待ちなさい」
 椅子にお尻が着く寸前、お姉さまからヒヤリと冷たいお声がかかりました。

「せっかくこうセレブの休日、っぽい雰囲気なのだから、あくまでも優雅にいきましょうよ。直子がエプロンしたままじゃ、ご主人様と使用人のブランチだわ。エレガントさに欠けるでしょう?」
 ドキン!
「えっと、つまり、エプロンを取れ、と・・・?」
「うん。だってそのエプロン、おっぱいが貼りついちゃって卑猥すぎるもの。優雅なブランチには似合わないわ」
 作ったご本人のお言葉とは思えません。
「わ、わかりました・・・」

 下ろしかけた腰を戻しグラスを置き、お姉さまの前で首の紐から解き始めました。
 胸当てがペロンと外れ、さらけ出されたおっぱいに五月の太陽が降り注ぎます。
 つづいて背中側。
 皮膚に触れていた布地一切が取り払われました。
 外したエプロンを折りたたんで置き場所に迷っていると、お姉さまの右手が伸びてきて取り上げられました。

 青空の下、丸裸。
 しかもこれで終わりではありません。
 これからゆっくり、お食事をしなければならないのです。
 全裸のままで、しかも優雅に。

 あんなにお下劣な薄っぺらエプロンでさえ、有ると無いとでは大違いでした。
 からだを覆う布が無くなった瞬間に、周囲からの音が大きくなっていました。
 遥か下を走る自動車の音、時折聞こえてくる誰かの小さな話し声や足音、鳥のさえずり、遠い木々のざわめき・・・
 そういった日常にありふれた喧騒のボリュームが格段に上がり、私の背徳感を煽ってきます。
 おまえはなんでこんなところで裸になっているんだ?と、喧騒たちが私を責め立てているように感じていました。

「うん。いい感じになった。それじゃあ、またひとつ、露出マゾレベルが上がった森下直子さんにカンパーイ!」
 イジワルイお言葉でたたみかけてくるお姉さまをニクタラシク思いながら、ワインのグラスをクゥーッと空けました。

「うん。美味しい。直子のパンケーキは絶品だね」
 本当に美味しそうに頬張りながら、合間合間に私のおっぱいをじーっと見つめてくるお姉さま。
 今の私には味なんてぜんぜんわかりません。
「コールスローも美味しい。これ、明日も作っておいて」
「今夜はパスタにしてね。カルボナーラ。あと夜食用にサンドウィッチも作っておいて欲しいな、チーズとハムのやつ」
 
 お食事のあいだはずっと、屈託の無いお姉さまの笑顔とおしゃべり。
 ご機嫌なご様子のお姉さまを見つめつつ、グラスワイン2杯のほろ酔いで、やがて私も少しづつ、リラックスしてきました。
 私もお腹は空いていたみたいで、パンケーキもけっこうな枚数、食べちゃいました。
 お皿が空になると、お姉さまはまだワイン、私はグレープフルーツジュース。

「西洋の名画とかでさ、ピクニックか何かなのか、着飾った貴族っぽい人たちが森で食事している絵画とかがあるじゃない?」
「ああ。はい・・・」
「ああいうのになぜだかひとりだけ、裸のご婦人とかが混ざっていることがあるけれど、それってつまり、その時代の直子みたいな趣味のご婦人なのかな?」
「そ、そんなの、知りません・・・わ、わかりません・・・」

「直子、今、どんな感じ?こんなところで全裸に首輪で」
「えっと、そ、それは、恥ずかしいです・・・すごく」
「でも、さっき言ったように、ここ、誰にも覗かれないよ?」
「で、でも、お外ですし・・・」
「気持ちいいんでしょ?乳首勃ってるよ?」
「・・・」
「濡れてる?」
「・・・はい・・・」
 もうっ!イジワルなお姉さまが戻ってきちゃった・・・

「あー美味しかった。ワイン3杯も飲んじゃった。ごちそうさまー」
 心底愉しそうなお姉さまがそうおっしゃったとき、下のほうから何か管楽器を合奏する音が小さく聞こえてきました。
 これはたぶん、コパカバーナかな?

「へー。休日でも部活の練習とかするんだ、あの学校も。あっ、そうか。午後一時開始だったのかな」
 お姉さまがふらりと立ち上がり、音のするほうに歩いていかれます。
 たどたどしい感じで曲が進み、ワンコーラスくらいで中断しました。
 音が消えて興味を失ったのか、すぐに戻ってきたお姉さまは、ご自分の席に着かず私の背後に立たれました。

「立って、直子」
「あ、はい」
 何をされるのか、ビクビクしながら立ち上がりました。
 間髪を入れず後ろから抱きつかれました。
 お姉さまの左手は私の胸元に、右手は股間へと。

「あふぅんっ!」
「うわっ、本当にグッショグッショ」
「あっ、あっ、あんっ!」
「だめよ!直子」
 私の右おっぱいを揉みしだき、マゾマンコをさすっていたお姉さまの両手がピタリと止まりました。

「ここは、覗かれはしないけれど声はだめ。前にも教えたでしょう?そういう声って意外と通るのよ?」
「下まで聞こえちゃうかもしれないし、すぐ両隣にだって住んでいる人がいるのよ?もし窓が開いていたら丸聞こえのはず」
「うちの左隣は、上品そうなイギリス人ご夫妻。右隣は知らないな。あたし、あんまり帰ってないから」
「今、お隣さんがいるかどうかわからないけれど、とにかく、あたしに恥をかかせないように、出来る限りがまんなさい」

 おっしゃりたいことだけを私に耳打ちしたお姉さまは、私の返事は待たずに、再び両手を動かし始めました。
 左手は右乳首をぎゅっと潰し、右手の二本の指がズブリと膣口に突き挿さりました。
「んんむぅーーっ!!」
 真一文字に口をつぐんで、必死に悦びの声を抑え込みます。
 私の両手はいつの間にか、後頭部にまわっていました。
 下のほうから再び、合奏の音が聞こえてきました。

「吹奏楽部の無垢なお嬢様たちには、自分たちが一生懸命練習している同じときに、まさかすぐ向かいのマンションのベランダで、素っ裸になった元お嬢様がマゾマンコからだらだらスケベ汁垂らして、いやらしい喘ぎ声を必死にがまんしているなんて、想像も出来ないでしょうね」
 
 とことんイジワルなお姉さまの残酷な囁きが、耳の奥深くに流し込まれます。
 クチュクチュクチュクチュ・・・
 お姉さまが動かす指が、コパカバーナのリズムに乗っています。

 どうか止めないでお姉さま・・・このままイかせてお姉さま・・・声は絶対がまんしますから・・・焦らして寸止めだけは勘弁してください・・・
 心の中でそうお願いしながら、お姉さまからの乱暴な陵辱に身を任せます。

「んっ、んゅ、んぐぅ、ぐぬぅー・・・」
 容赦なくどんどんどんどん高まってくる快感で、歓喜に震えそうになる声帯。
 下唇をギューッと噛みしめ、死に物狂いでそれを封じ込みながら、やがて私のからだは、五月の澄み切った青い空の高みへと、溶け込んでいきました。


オートクチュールのはずなのに 12


2015年7月6日

オートクチュールのはずなのに 10

 座ったまま、あらためてリビングルームを見回してみました。
 すっごく広い。
 確実に20帖以上ありそう。
 玄関からまっすぐ入って突き当たったドアが、リビングルームの横幅のちょうど真ん中あたりに位置して、その先に横長な長方形の空間が広がっています。

 お部屋の突き当たりは、横長な一面全体が白いカーテンで覆われているので、おそらく全面窓なのでしょう。
 だとしたらすごく陽当たり良さそう。
 窓を背にすると左側にダイニングテーブルセット。
 右側は、床にライトブラウンのふかふかそうなシャギーラグが敷かれたソファーコーナー。
 大きなモニターの壁掛けテレビが側面に掛かっていました。
 たとえば8帖のお部屋を横並びに三つ並べて、全部の仕切りを取り払った感じ。
 そのくらい広々とした空間でした。

 私は、そんなお部屋のほぼ中央、周りに何も無いフローリングの上に座っていました。
 私とお姉さまが転げまわったとおりに、床のあちこちに小さな水溜りが出来ていました。
 お姉さまと私の、欲情の落し物。
 大変!まずはお掃除しなくちゃ。
 立ち上がろうとしたとき、お姉さまが戻ってこられました。

「はい、これでとりあえず汗を拭くくらいで、しばらく我慢してね」
 ふかふかのバスタオルをくださいました。
「あと、お料理で油や熱湯を扱うときは、これだけは身に着けてもいいことにするわ」
 折りたたんだ真っ白い布を手渡されました。

「エプロンよ。飛沫が跳ねて、肌を火傷したりしちゃったら可哀相だからね」
 お姉さまが、そこまでおっしゃって、いたずらっぽくニッて微笑みました。
「もっとも、直子みたいな子なら、そういう痛ささえ愉しめるのかもしれないけれど」
「あの、いえ、お気遣い、ありがとうございます」
 まだ全裸のままのお姉さまの、形の良いバストに目が泳いで仕方ありません。

「さっき入ってきたドアを抜けて、左側の最初のドアが洗面所、その向かいのドアがトイレ。トイレ側にある別のドアはあたしの寝室だから開けちゃだめ」
「キッチンは、見れば分かると思うけれど、ダイニングの奥ね。掃除用具とかは洗面所に入ってすぐのロッカーにあるから」
「ということで、あたしはシャワーしてくるから、後はよろしくお願いね」
 左手にまだ何か持ったままの全裸なお姉さまが、今度は玄関のほうへつづくドアへとスタスタ歩いて行かれ、ドアの向こうへ消えました。

 いただいたタオルでざっとからを拭ってから、えいやっ、と家政婦モードに切り替えました。
 まずは、床に脱ぎ散らかしたお姉さまのお洋服一式を回収。
 お姉さまの残り香にアソコがキュン。
 玄関口に置きっ放しだったお買物のレジ袋やふたりの私物をリビングへと運び、片隅にひとまとめ。
 
 キッチンに移動して、お買い物の成果を所定の位置へ。
 キッチンも広々としていて使いやすそう。
 大きな冷蔵庫には、お姉さまがおっしゃった通り、数本の飲み物と調味料類しか入っていませんでした。

 教えていただいた洗面所へのドアを開けると、これまた広々。
 洗面所というより、パウダールームと呼びたいお洒落な内装でした。
 その奥がバスルームらしく、お姉さまがシャワーを使う音が微かに聞こえていました。

 ロッカーから拭き掃除のお道具一式をお借りし、玄関からずーっと廊下を雑巾がけ。
 確かにあまりお掃除していなかったみたいで、バケツに汲んでいたお水がみるみる汚れていきました。
 リビングに戻って、広大なフローリングを四つん這いで這い回りました。

 今日初めて訪れたお宅の床を、なぜだか全裸で雑巾がけしている私。
 自宅でしていた、妄想ごっこ、ではなくて、正真正銘、ご主人さまにお仕えする全裸家政婦状態。
 念願が叶っちゃった、なんて考えたら、四つん這いで垂れ下がったおっぱいの先端へと、血液がぐんぐん集まってきました。

 床のお掃除を終えてキッチンへ。
 お姉さまは軽くとおっしゃっていたけれど、冷凍ピザだけではさみしいので、簡単な野菜サラダを作ることにしました。
 レタスやキュウリを洗い、使いそうな食器類も念のため丁寧に水洗いしました。

 食器棚のガラスやステンレスに、自分の赤い首輪だけの全裸姿が映っています。
 使い慣れていないよそさまのシンクで、お腹の辺りの素肌を濡らしてくる水しぶきの飛沫に、ピクピク反応してしまいます。
 これから二日間、私はずっと裸のままお姉さまのお部屋で過ごすんだ・・・
 艶かしくも甘酸っぱい、エロティックな気分でレタスをちぎりました。

 ダイニングテーブルに食器やドレッシングを並べていたら、リビングのドアがバタンと開きました。
「ふぅー。いい気持ち。さっぱりしたぁー」
 頭にタオル、からだにバスタオルを巻きつけただけのお姉さま。
「サラダも作ったんだ、気が利くじゃん。洗面所で髪乾かしてくるから、もうピザ焼き始めていいわよ。あと、飲み物はビールね」
 それだけ言い残して、再びドアの向こうに消えました。

 ツヤツヤした布地、たぶんシルク、で薄いベージュ色のバスローブを羽織ったお姉さまがダイニングテーブルに着席するのと、二枚目のピザを入れたオーブンレンジがチーンと一声鳴いたのがほぼ同時でした。
 お風呂上りのほんのり上気した艶やかなお顔に、ついさっき、ふたりで貪り合ったときの、悩ましいお顔がオーバーラップします。

「カンパーイッ!」
 チンッ、とガラスが触れ合う音が響いた後、黄金色の液体がなみなみと注がれたくびれグラスをゴクゴク一気に飲み干したお姉さま。
「あーーっ美味しいっ!やっと休日が来た、っていう気分になれたわ」
 ピザをつまみ、サラダをつつき、楽しいおしゃべりタイムの始まりです。

「すごくステキなお部屋ですね。あんまり広いのでビックリしちゃいました」
「うん。西洋型1LDKっていう触れ込みだったの。最初はあたしもただっ広くていいな、って思ってたのだけれど、最近は持て余し気味かな。なんだか逆に寒々しい感じしない?」
「そんなことないです。うらやましいです」
「住み始めの頃は、こんな家具を置いてとか、いろいろ夢膨らませていたのにね。帰ってくるヒマがないから、ぜんぜん弄れなくて。結局今でも、ほとんど引っ越してきたときのまんまなの」
「だからあまり物が置いていないのですね?」
「たまに帰って来ても、結局寝室に閉じ籠っちゃうからね」
「ああ・・・」
「ここは誰かに貸しちゃって、会社のそば、って言うか直子んちのそばにでも引っ越そうかなって、最近は考えたりしてる」
「えーっ!?そんなのもったいないです、こんなにステキなお部屋なのに。あ、でもお姉さまが近くに住まわれたら、すっごく嬉しいですけれど」

「ところで直子、あのエプロンは着けてみた?」
「あ、いいえ。まだ・・・」
「あら残念。あれはなかなかの傑作なのよ。直子なら絶対気に入ると思う。もともとはアユミ用に作ったんだけれど」
「アユミさん?て?」
「忘れちゃった?あたしの学生の頃の友達」
「ああ、服飾部で、なんて言うか、私と同じような感じのかたっていう・・・」
「そう。思い出した?彼女のために作ったお下劣衣装のうちのひとつ。ほとんど彼女が持っていったはずだったのだけれど、なぜだかあれだけ、あたしの手許に残っていたの。捨てなくてよかった」
「へー。ちょっと着けてみましょうか?」
 席を立ち上がろうとして、お姉さまに止められました。
「いいわよ、焦らなくても。明日ゆっくり見せてもらうから」

「直子は、あっちのソファー周辺を陣地にして。一応ゲストテリトリー。背もたれ倒せばベッドになるから。毛布と枕は持ってきてあげる」
「あ、はい」
「ほとんどの電気製品は、あっちのテーブルのリモコンでオンオフ出来るから、勝手に使って」
「わかりました」

「明日起きたら、この部屋に直子が裸でいるのよね?なんだか不思議な感じ。いつの間にかあたしがマゾのメス犬ペットを飼うはめになっているのだもの、って、そうか!直子はゲストじゃなくてペットっだった」
「はい・・・それにそれは、私がお願いしたことですから・・・」
「うん。あたしもかなり愉しみではあるの、直子のマゾっぷり。明日はめいっぱい虐めちゃうつもりだから、覚悟しておきなさい。持ってきたグッズ類は全部出しておいてね」
「はいっ!お姉さま」

「モップもあったのに、わざわざ雑巾がけしてくれたのね?」
 リビングの隅に置きっぱなしの、雑巾を掛けたバケツをご覧になっての一言。
「やっぱりメス犬だから、四つん這いになりたがるのかしら?」
 愉しそうに笑って、グラスを飲み干すお姉さま。
「直子がこの部屋にいるあいだ、身に着けていいのは、さっきのエプロンと、拘束用にロープとかチェーン。あ、手錠と足枷もおっけー。あとは、そうね、洗濯バサミならいくつでもいいわよ」
「明日起きたとき、全裸家政婦直子がどんな姿で迎えてくれるか、今からとっても愉しみ」

 パクパク食べてビールもグイグイ飲んで、いっぱいしゃべる絶好調なお姉さまも、やがてだんだん、なんだかトロンとおねむさんなお顔になってきていました。
「ふぁーっ。なんだか気持ち良く酔ってきた。グッスリ眠れそう」
「少しのあいだ仕事は忘れて、直子をたくさん虐めなきゃ・・・」
 テーブルの上のお料理も、あらかたなくなっていました。

「この感じが消えないうちに、今夜は休ませてもらうわね。あたしって、ホロ酔いが醒めちゃうと、一転して寝付けなくなっちゃうタチだから」
 お姉さまがユラリと立ち上がりました。

「明日は多分、お昼頃まで起きてこないと思って・・・ブランチはホットケーキがいいかな・・・バスルームにはあたしのシャンプーやらが置いてあるし、ドライヤーとかもご自由に」
「あたしが寝ているあいだは、何をしていてもいいから・・・寝室は防音してあるから掃除機でも洗濯機でも使って大丈夫・・・オナニーも許しちゃう・・・あ、もちろん疲れていたら寝ちゃってもいいけれど」
「直子、歯ブラシとか、お泊りセットは持っているわよね?・・・ああ、眠い・・・」
 心底眠たそうなお声で、ゆっくりゆっくり思い出すようにおっしゃるお姉さま。

「あと、あたしの下着とかタオルとかを、洗濯しておいてくれると嬉しいかな、明日でいいから・・・えっと、あたしの服は・・・」
「はい。あそこにまとめてあります」
 部屋の隅を指さす私。
「ああ。ありがとね・・・スーツはクリーニングに出さなきゃだめかな・・・洗濯機は洗面所の奥、洗剤もそのあたりにあるはず・・・ふわーぁ」
 ご自分のバッグと衣類を手にしたお姉さまがフラフラ、ドアの向こうへ消えていきました。

 テーブルを片付け食器類を洗っていると、ドアの開く音。
 あわててリビングに出ると、お姉さまが毛布類を抱えて、ドアの前に立っていらっしゃいました。
「あ。わざわざありがとうございます」
「うん・・・それじゃあ、おやすみー」
 お姉さまのからだが、ふうわりと私を包みました。
 シルクのなめらかな感触に包まれる、私の天使さまからのハグ。

「あー、直子、かなり臭うわよ・・・えっちな臭い・・・寝る前にこんなの嗅いだら、いやらしい夢見ちゃいそう・・・早くシャワーしなさい」
 からだを離したとき、お姉さまがからかうみたいにおっしゃって、ふわーっと大きな欠伸。
 いくら眠くても、イジワル口調を忘れないお姉さま、
「おやすみー」
「おやすみなさい、お姉さま。良い夢を」
「愛してるよ、直子」
「私もです」
 
 今にも崩れ落ちそうなくらい眠たげなご様子だったので、それ以上のわがままは言わず、ドア口でお姿が消えるまでお見送りしてから、キッチンに戻りました。

 洗い物を片付けてから、お姉さまのお言いつけ通りバスルームへ直行。
 赤い首輪は濡らさないように脱衣所で外し、今さっき嗅いだばかりの、お姉さまと同じ香りのローションやシャンプーをお借りして、全身を入念に洗いました。
 お姉さまの香りに包まれながら全身を撫ぜ回していると、自然と今日一日、お姉さまとお逢いしてからのあれこれを思い出してしまいます。

 ほのかさまもいる前でのリモコンローター責め。
 人前での首輪姿ご披露。
 後部座席での全裸オナニーと四つん這いお尻露出行為。
 スーパーでの前開きボタン外しと自発的露出。
 駐車場での下半身丸出し。
 
 どの行為でも、今まで感じたことの無いほどの強烈な羞恥と恥辱、喩えようもないほどの興奮と快感を感じていました。
 とくに、裾の一番下のボタンを外してから、レジカウンターのみなさまに向けての自発的なお尻露出、そして、そのままの格好で駐車場までの夜道を歩いていくときに味わった被虐と羞恥は、このまま世界が終わって欲しい、と思うほどの恥辱感とともに、私でもここまで出来るんだ、という、達成感を伴う淫靡な高揚感で気がヘンになりそうなほどでした。

 同時に思い出す、大好きなお姉さまの蠱惑的なお言葉とその口調、お顔や振る舞い、その愉しげな表情・・・
 そして最後にたどり着いた、ケダモノの交わり。
 私の両手は自然に敏感な場所へと伸び、そこを中心に泡まみれの全身を執拗に、いつまでもいつまでも責め立てつづけました。

 バスルームを出てリビングに戻り、横になったのは夜の11時過ぎ。
 いつもの私なら、まだ眠るには早い時間でした。
 精神的にはとても高揚していて、もう少し起きていたかったのですが、全身が心地良い疲労感でぐったりしきっていました。
 今夜は早く寝て、明日は早く起きて、お姉さまが起きてくるまで家政婦のお仕事をがんばろう!
 そう心に誓って、目をつぶりました。

 さっき脱衣所でからだを拭った後、ごく自然に、当然のように、お化粧台の上に置いておいた赤い首輪に手が伸びていました。 
 今は枕に押し付けられて首周りに当たるそのレザーの感触を、とても愛おしく感じ始めていました。


オートクチュールのはずなのに 11


2015年6月28日

オートクチュールのはずなのに 09

 時間にしたらほんの10秒足らずのことだったでしょう。
 上半身を前に傾け、ワンピース背中側の裾がせり上がるのを意識し、裸のお尻が布地の外へ露出していることを感じて・・・
 前開きの一番下のボタンも外したので、前側の裾はもちろん思い切り左右に割れ、自分の視界には生々しい下腹部の白い肌が、女性器の割れ始めまで大胆に見えっ放しでした。
 
 右手を伸ばして床の500円玉を拾い上げ、ゆっくりと上体を起こすまで、いえ、起こした後も、私のからだは、制御不能の被虐的快感にプルプル打ち震えていました。

 そのあいだ、私の頭の中も大騒ぎでした。
 私、レジカウンターに向けてノーパンのお尻をわざと見せちゃっている・・・
 見知らぬ人たちに注目されていることを承知の上で、破廉恥なことをしている・・・
 剥き出しマゾマンコまで丸出しで・・・
 私のお尻、どんなふうに視えているのだろう・・・
 本当に、正真正銘の露出狂になっちゃったんだ・・・
 でも、気持ちいい・・・

 考えてみれば、公共の場で自らすすんで、まったく面識の無い人たちに自分の恥ずかしい箇所を見せつけるような行為をするのは、生まれて初めてのことでした。
 
 それまででも、同じような状況を味わったことはあります。
 神社やファミレス、デパートの屋上や試着室、営業中のセレクトショップなどで、キワドイ格好になったことが何度もありました。
 だけどそれらの体験では、マゾですからもちろん、そんな状況にゾクゾク感じてはいましたが、生来の臆病さからくる、やっぱり不特定多数の人には視られたくない、公衆の面前でそんな、はしたな過ぎる姿は見せたくない、という健全な羞恥心のほうが、いつも大きく勝っていました。

 今回、決定的に違っていたのは自分自身の意識でした。
 レジにお尻を突き出して500円玉を拾う、という動作をしているあいだ中、上に書いたように頭の中がパニックになりつつも、同時に心の中でずっと、視てください、視て呆れて、蔑んでください、私はこんな行為をして悦ぶヘンタイ女なんです、もっと良く視て、って唱えつづけていたのです。
 これまで無理矢理抑えつけていた自分の欲求に正直になったことで、それまでとは違った種類の、凄まじい性的高揚を感じていました。

 実際に何人くらいの方々が私のお尻を視てくださったかは、振り向かなかったのでわかりません。
 でも、空調の効いた少しヒンヤリとした外気にさらされた裸のお尻に、いくつもの粘り付くような視線を感じていました。
 
 その視線たちが、お尻や性器の穴を蹂躙するように突き刺さり、私の内面までもが犯され、陵辱されているように感じていました。
 500円玉を拾う直前には、ゆっくり拾いなさい、一秒でも長くみなさまに直子のいやらしい姿を視姦していただけるように、という、お姉さまからではなく、私自身からの内なる命令の声が聞こえていました。

 からだをまっすぐに直し、500円玉を手渡すためにお姉さまに顔を向けました。
 お姉さまは、少し唖然としたお顔をされていましたが、私が500円玉を握った右手をゆっくり差し出すと、唇の両端をキュッと上げて、すっごく妖艶な微笑を見せてくださいました。
 その笑顔で、私の恥辱は報われたような気持ちになりました。

 何度も同じことを書いてしまって申し訳ないのですが、私がこんなに大胆に自分の性癖嗜好を素直に曝け出せるのは、偏にお姉さまのおかげでした。
 お姉さまがご一緒してくださるからこそ、今までなら怖くて尻込みしてしまう大胆な行為が出来るのです。

 お姉さまは、大きなレジ袋を左手で持ち、空いている右手で私の右手を500円玉ごと握ると踵を返し、そのまま無言でスタスタとスーパーの出口のほうへ歩き始めました。
 右手を引っ張られる格好の私も、左手に大きなレジ袋を持って、よたよたと着いていきます。
 足を交互に動かすたびに裾が割れ、白い素肌がチラチラ覗きました。

 スーパーの自動ドアを抜け、灯りが届かない大きな木陰のところまで歩いて立ち止まりました。
 お外はすっかり夜。
 人影は、ビル周辺の明るいところにチラホラと見えるだけ。

「直子って、本当にからだが柔らかいのね」
 暗闇で見つめ合ったお姉さまからの第一声は、そんな拍子抜けするようなものでした。
「小銭を拾うとき、完璧な立位体前屈だったじゃない。膝をまったく曲げないで、手のひらを床にべったり着けて」
「そ、そうでしたか?」
 暗くて表情がよく見えないお姉さまに、そんな間の抜けたお返事しか出来ませんでした。

「さあ、あとは車に戻って、愛しの我が家へ一直線。だけどこの荷物、重いわね。ちょっと買いすぎちゃったかな」
 お姉さまが持っていたレジ袋を舗道に置きました。
 いったん右手を解いて500円玉をお姉さまがスーツのポケットに突っ込んでから、再びつなぎ直しました。

「そのワンピの裾、ボタン留め直さないでいわよね?駐車場まですぐだし」
「あ、えっと・・・」
「暗いし、人通りも無さそうだし、そのまま行きましょう」
「も、もしも私が、ボタンを留めさせてください、ってお願いしたら、お姉さまは許可してくださいますか?」
「うーん・・・許可しない」
 お姉さまのお声に、少し笑いが混ざっています。
「それでしたら、このままでいです・・・」

「あっ、直子、そうやってあたしに責任をなすりつけようとしているでしょう?何か起きたら、あたしの命令のせいだって」
 今度は、お姉さまのからかうようなイジワル声。
「いえ、そうではなくて、何て言えばいいか、私はお姉さまがお望みになること、悦ばれることを、したいだけなんです・・・」
 お答えしながら、なぜだか泣き出しちゃいそうな気持ちになっていました。

「ふーん。さっきのスーパーから直子、なんだか雰囲気が変わったわね。大胆になったというか、目覚めちゃったというか・・・」
 お姉さまのお言葉が少しのあいだ途切れ、私も無言でうつむいていました。
 つないだ手と手が、どちらのせいなのか、ジンワリと汗ばんでいました。

「おーけー。それじゃあこのまま行きましょう。そのお買物袋を左右にひとつづつ持ちなさい。ちょっと重いけれど、直子はあたしの使用人なのだから」
 私の手を離したお姉さまのお言葉に、冷たい響きが戻りました。

「わかっているとは思うけれど、両手に荷物を持ったら、ワンピの裾を押さえることは出来ないわよ?」
「はい。わかっています・・・」
「前から誰か来ても、隠すことは出来ないのよ?それでもいいのね?」
「・・・はい」
「つまり直子は、誰とすれ違うかわからない夜道を、剥き出しマゾマンコが覗いてしまう格好で歩きたいのね?」
「・・・はい」
「それは、私の命令だから?それとも直子がそうしたいから?」
「そ、それは、私がそうしたいから、です・・・」
 お答えしたとき、今日何度目かの快感電流がからだをつらぬきました。

 木陰を出て、暗い舗道を歩き始めました。
 両手に大きなレジ袋をぶら下げた私の左隣にお姉さま。
 先に立って私を隠してくださる気もないようです。
 
 うつむいた視線の先に、始終自分の下半身の白い肌がチラチラ見え隠れしています。
 こんなに無防備な、少し風でも吹いたらたちまち裸の下半身剥き出しになってしまうような服装で、夜の街を歩いている私。
 荷物の重さなんて感じる暇もありませんでした。

 歩き始めてすぐ、ビル側の明るい舗道を行くサラリーマン風の男性とすれ違いました。
 お姉さまを挟んで、その人との距離は2メートルくらい。
 私のワンピースのハタハタひるがえる裾を、明らかに凝視しながら近づいてきて、行き過ぎていきました。
 暗いせいなのか、今ひとつ、視られた、という実感が湧いてこなくて、一度振り向いたときに、その人も振り返っていてドッキーン!
 自分が今していることのヘンタイ性を思い知りました。
 
 ビルの敷地外にある歩道から聞こえてくるヒールの音や話し声。
 その向こうにある車道を行く車のヘッドライトが、私を横からぼんやり照らし出して走り去ります。
 そんな些細なことのひとつひとつに、背徳感を感じてしまいます。

 今度はOLさんらしき二人連れ。
 さっきの男性より近い距離ですれ違いました。
 暗い中でも、おふたりが私の下半身の異常に気がついているのがわかりました、
 私は一層身を縮こませながらも、必死に何でもない風を装います。
 私をチラチラ窺がいながら、ヒソヒソ耳打ちし合う、その内容が聞こえてくるようでした。
 お姉さまは私の横をゆっくり歩きながら、そんな私をじーっと視ていらっしゃいました。

 やっとたどりついた駐車場入口。
 しかしながら、駐車場内は夜になると、照明のせいで舗道よりもずいぶん明るく感じます。
 駐車場に向かう坂道に入ると弱い向かい風が吹いていました。

 「やんっ!」
 下り坂に一歩踏み出すと裾が風に煽られ、始終開きっ放しになってしまいました。
 お尻のほうへとマントのようにひるがえるワンピースの裾。
 全開剥き出し状態の私の下半身。
 お姉さまは振り向いたまま、私のそれをずっと視ながら下りていかれます。
 強烈な恥ずかしさに全身が包まれました。
 幸か不幸か、まわりに人影はまったくありませんでした。

 坂道を下りきると風は弱まり、裾が戻りました。
 静まり返った駐車場を進みます。
 さっきの坂道のあいだ数秒間の出来事に、胸のドキドキが収まりません。
 お姉さま以外に、その姿を視てくださる人がいなかったのを、残念と感じていました。

 お姉さまの車の助手席に乗り込んだとき、緊張が一気に解けました。
 からだ中が今更のようにカッカと火照り、心臓が早鐘のように脈打っています。
「あまり視てくれる人がいなくて、つまらなかったのじゃない?」
 ずっと無言だったお姉さまがポツンとおっしゃった一言で、私の欲望が爆ぜ迸りました。

 運転席のお姉さまに飛びついて、しがみつきました。
「私をめちゃくちゃにしてください、お姉さま!ぶって、虐めて、蔑んで、どうか無茶苦茶にしてください!」
「私、このままでは気がヘンになってしまいます!どうか、見捨てないでくださいっ」
 半泣き声で叫んで、やみくもにお姉さまの唇を求めました。

 お姉さまは、黙ってされるがままになっていました。
 唇を重ねても、お姉さまからの積極的な反応は無く、ただやんわりと私の背中に両腕を回してくれただけでした。
 それでも、お姉さまの体温を感じているうちに、私の激情がゆっくりと収まっていきました。
 しばらくそうして抱き合った後、どちらからともなく、ゆっくりとからだが離れました。

「もう少し辛抱していてね。あたしの部屋はもうすぐそこだから」
 お姉さまがシートベルトを締めながら、何も無かったようにそうおっしゃった後、不意に左手を伸ばし、私の股間にあてがいました。
「はぅっ!」
「グッショリ濡れているのにすっごく熱くなってる」
 私の耳奥に蕩けるようなため息を吹き込むお姉さま。
「安心なさい。今日の直子は、すごく可愛かったわ」
 私の股間で汚れた手のひらをペロッと舐めて、おもむろにエンジンをかけました。
 ブルンッ!
 同時に、性懲りも無く再び燃え上がる私のからだ。

 それからお姉さまのお家の玄関にたどり着くまでのことは、ほとんど憶えていません。
 どこをどう走り、どこで車を停め、お姉さまがお住まいのマンションがどんな形で、どういう風にお部屋までたどりついたのか。
 憶えているのは、そんなに時間がかからなかったことと、お姉さまがずっと無言だったことだけでした。

 気がついたら、お姉さまのお部屋の玄関口で、きつく抱き合っていました。
 お互いの唇を舌で貪り合い、右手を互いの股間に伸ばし合っていました。
 私はすでに全裸で、お姉さまはスーツのまま。
 お姉さまの股間は、パンストの上からでもわかるくらい濡れて、熱くなっていました。

「あうっ!お姉さまぁ、もっとぉ」
 お姉さまの右手が私のマゾマンコに深く侵入して、クチュクチュ音をたています。
 私も負けじとお姉さまのパンストを擦り上げます。
「あふうぅ」
 お姉さまの色っぽいお声。

 玄関ドア側に立っていたお姉さまにじりじりとにじり寄られ、しっかり抱き合ったままお相撲でもしているかのような形で、玄関ホールの廊下にあがりました。
 運転用のローファーを穿いたままのお姉さまも、土足であがってきました。

 そのまま抱き合った形でドアを開け、電気も点けず薄暗いリビングらしきお部屋まで入ってから、お姉さまが私に体重をかけてきて、私はそのフローリングの床へ仰向けに押し倒されました。
 私の腰の上に騎乗位の体勢になったお姉さまが、もどかしそうに着衣を脱いでいきます。
 上着を乱暴に脱ぎ捨て、ブラウスのボタンを手際良く外し、サファイア色のブラジャーも床に投げ捨てました。
 仰向けになっても私の両手はお姉さまを求め、腕を伸ばしてお姉さまの股間を擦りながら、もう片方の手でスカートのフックを外そうとしていました。

 お姉さまが上半身裸になると、片時もからだを離したくないふたりは、まずお姉さまの上半身が私に覆いかぶさってきてキスを再開。
 そのあいだに私がお姉さまの下半身を脱がせにかかります。
 両手でスカートを剥ぎ取り、つづいてパンストごとショーツをずり下ろしました。
 膝くらいまで脱げた後は、お姉さまが自らの手で足首まで一気に下ろし、靴もろとも脱ぎ捨てて全裸。
 すぐに両脚を絡ませ、きつくきつく抱き合いました。

 フローリングを上に下になって転げまわりながら、互いを精一杯悦ばせました。
 唇を貪り、乳房を揉みしだき、乳首を噛み、指を潜り込ませ、肉芽を擦り、全身を舐めまわして、指を絡ませて・・・

「あぁ、もっと、もっとぉ」
「ううっ、いいわっ、そこ、そこぉぉ」
「つよく、もっとつよくぅぅ」
「あ、イっちゃう、イっちゃいますぅぅぅぅ」
「イきそう、イキそう、そこ、そこよ、もっと、もっとぉ、イクぅぅぅぅ」

 お姉さまと私の、汗とよだれといろんな体液がひとつに混じり合い、甘酸っぱい官能的な匂いに包まれます。
 肌が密着しているだけで感じる至福感。
 お姉さまがエロっぽく喘いでくださるたびに感じる満足感。
 何度イってもイキ足りないくらいの渇望感。
 お姉さまのお部屋に入って、しばらくのあいだ、ふたりはまさしくケダモノでした。

「はあ、はあ、はあ・・・」
 フローリングにぐったり横たわっていたら、不意にパッと電気が点きました。
 思った以上に広々とした空間が目の前に広がりました。

「はあ、はあ、こんなはずじゃなかったんだけどなあ・・・」
 お声のしたほうを向くと、お姉さまが汗まみれの全裸仁王立ちで、明るい光に照らされていました。
「直子をこの部屋に迎え入れるときは、もっとこう、いろいろ恥ずかしいことをさせて、なんて計画していたのだけれど、全部パーになっちゃった」
 冷たいお水の入ったグラスを差し出してくださるお姉さま。
 そのとき飲んだお水の美味しさは、忘れることが出来ません。

「まあ、仕方ないわね。あたしもどうにも我慢出来なくなっちゃったのだから」
 お姉さまが、まだ寝そべったままの私の傍らにしゃがみ込まれました。
 目の前に濡れそぼったお姉さまのかっこいい逆三角形ヘア。
 うっとり見惚れてしまう私。

「スッキリしたからよしとしましょう。それでここから、直子の全裸家政婦の本番開始ね。家事手伝い、がんばってよ?」
 お尻を軽くパチンと叩かれました。
「あ、はい!」
 あわてて起き上がり、床に正座の形になりました。

「とりあえずあたしは、ゆっくりシャワーを浴びてくるから、そのあいだに今の後始末と、軽く何か食べるものを用意しておいて。さっき買った冷凍のピザでいいわ」
「はい」
「シャワー浴びて一息ついたら、すぐに寝るつもりだから、直子は悪いけれどその後にシャワーしてくれる?」
「はい。もちろん大丈夫です」
「ここでもダイニングでも、戸棚や物入れは勝手に自由に開けて、中のものを自由に使っていいからね。見られて困るようなものは入っていないから」
「わかりました」
「エアコンも好きに調節して。風邪引かないようにね。それじゃあ頼んだわよ」

 立ち上がったお姉さまが、リビングの端にある扉のほうへと全裸のまま歩いて行かれました。


オートクチュールのはずなのに 10

2015年6月21日

オートクチュールのはずなのに 08

 ハム売り場でも私は当てることが出来ず、下から2番目のボタンを外すことを命ぜられました。
 その後もいろいろお買物中、たまに私に選ばせることで、ゲームはつづきました。
 ヨーグルト選びもドレッシング選びもパスタソース選びでも、悉くハズレでした。

 前開きワンピースには、全部で10個のボタンが付いていました。
 一番上とその次は、すでに駐車場で外していたので、残り8個。
 それらのボタンたちが、パスタ売り場にたどり着いた頃には、ほとんど外されていました。
 今現在留まっているのは、胸元の上から4番目と、裾の一番下、それにおへその上辺りのひとつ、合計たったの3箇所というキワドイ状態。

 まっすぐ立っている分には、胸元が広めに開いている以外は普通のワンピース姿ぽく保たれていますが、からだを少し動かすと軽い生地がフワリと揺れ、今にも前立てが割れて隙間から肌が覗いてしまいそうな頼りなさ。
 背筋をまっすぐ伸ばし、なるべくからだが揺れないようにしずしずとカートを押して、お姉さまの後ろを着いていきました。

 胸を張るように背筋を伸ばしていると、その部分を覆う薄い生地の曲線頂点に、ふたつの大げさな突起がクッキリ浮き上がりっ放し。
 他のお客様とすれ違うたびに、気づかれませんように、と、ビクビク祈る気持ちでしたが、気持ちとは裏腹に、下半身全体がムズムズ疼き、発熱量が増しているのもわかりました。

「さあ、あとはパスタを選べばショッピング終了かな。もう留まっているボタンも残り少ないみたいだから、がんばりなさいよ」
 お姉さまが振り向いて、からかうみたいにおっしゃいました。
「今回は特別にヒントをあげる。あたしはね、太めの麺のほうが好きなの。長さはロング。あとはさっき選んだソースとの相性とで考えてみれば、たぶん外さないはずよ」

 カートから離れ、陳列棚と向き合いました。。
 六段に分けられた陳列棚の上から下までぎっしりと、さまざまなメーカーの袋入り乾燥パスタが並べられています。
 上のほうが細くて、下のほうが太いみたい。
 そして、お姉さまがお好きなのは太め。
 
 そこまで考えて、小さくキュンと感じてしまう私。
 私が当てようが当てまいが、お姉さまは最後に絶対、私にパスタを取るようにご命令されるはずです。
 そして今度は、さっき耳打ちされたように、膝を曲げない前屈姿勢を守らなければならないのです。

 パスタの太さは0.9ミリから2.2ミリまで。
 お姉さまが選ばれたのは、カルボナーラソースでした。
 カルボナーラなら確かに少し太めのほうが美味しそう。
 以前、好奇心から2.2ミリのパスタを買ったことがあって、すごく太いのにびっくりしたことがありました。
 お姉さまも、これは選ばないだろうな・・・

 陳列棚の左のほうでは、若奥様風の女性がパスタソースを熱心に選んでいます。
 私はなるべく直立不動のまま、目線だけ動かして棚のパスタたちを吟味しました。
 若奥様風女性が棚を離れて去っていくのを確認してから、一種類のパスタを指さしました。
「これ、ですか?」
 陳列棚の下から二段目に並べられた、青色の袋に包まれた1.9ミリのロングパスタ。
 指さしたままお姉さまを、すがるように見つめました。

「惜しいなあ。太さは合っているけれど、あたしが好きなのは、こっちのブランドなの」
 私が指さしたパスタのすぐ右隣を指さすお姉さま。
 緑色の袋に入った、イタリアからの輸入物でした。

「せっかくヒントあげたのに、また外しちゃったのね。直子、ひょっとしてわざと間違えて、ボタン外すの愉しんでいるのじゃなくて?」
「そ、そんなことありません・・・」
 ちっちゃな声で抗議します。
「ふーん。あと三箇所でしょ?直子の好きなところを外していいわよ」
 お姉さまが冷たく微笑みました。

 好きなところ、って言われても・・・
 胸元を外したら、おへそのところまでVゾーンがはだけてしまうし、一番下を外したら、歩くたびに裾が大きく割れてしまうはず。
 素早く周りを見渡した後、素早く真ん中のボタンを外しました。
 
 その結果、今現在ワンピースが開いてしまうのを阻止しているボタンは、もしもブラジャーを着けていたらセンターモチーフが来るであろうところくらいに位置するボタンひとつと、裾の一番下のひとつ、合計たったのふたつに成り果てていました。
「やっぱりそこよね。ま、いいか。そのパスタをふたつ取ってカートに入れてくれる?」
 お姉さまが、当然のようにおっしゃいました。

 お目当てのパスタは、私の脛くらいの位置。
 そのパスタを、膝を曲げない前屈姿勢で取らなくてはなりません。
 そんな格好になれば、現在辛うじてお尻全体を隠している背中側の裾が大きくせり上がり、営業中のスーパーマーケットの明るい蛍光灯が、私の剥き出しとなったお尻を煌々と照らし出すことになるでしょう。

「ほら、早く」
「ほ、はい・・・」

 陳列棚のそばに一歩踏み出しました。
 念のため一度通路側を振り返ると、私の背後には薄い笑みを浮かべたお姉さまだけ。
 この通路全体に他のお客様はひとりもいません。
 今がチャンスと棚に向き直り、素早く右手を伸ばして前屈みになりました。

 裸のお尻全体が外気にさらされるのが、はっきりわかりました。
 その上、上半身を折り曲げたせいで、たわんだワンピースの襟ぐりの空間が視界に飛び込んできて、その中の自分の乳房の尖った乳首まで全部見てしまいました。
 真ん中のボタンも外したので、胸元から太腿のあいだの生地も楕円に開き、その隙間から、おへそ、下腹部、土手までもが覗いていました。
 自分が今、いかに危うい服装で人前に出ているのか、ということを、一瞬のうちに目の前に突きつけられた気がしました。
 パスタを2束握って上体を起こしたとき私の顔は、火傷しそうなくらいに火照っていたはずです。

 お姉さまのほうに向き直り、カートにパスタをそっと置きました。
 お姉さまの満足そうなニヤニヤ笑い。
 その笑顔から視線を外したとき、更なる事実が待ち受けていました。

 私の視界の右端に、まったりとカートを押していく、いかにも休日の旦那様風な若い男性の姿がありました。
 そして、その男性と手をつないだ小学校低学年くらいの女の子。
 男性は私たちから5メートルくらい離れた対面側の棚で立ち止まり、何かを選び始めました。
 
 その傍らで女の子が、手をつながれたままこちらを振り向き、私のことをじーっと見ていました。
 何か不思議なものでも目撃したような、ぽかんとした表情でした。

「直子が前屈みになったとき、ちょうどあの人たちが後ろを通過して行ったのよ」
 お姉さまが再び、私にヒソヒソ耳打ちしてきます。
「残念ながらパパは気づかなかったみたいだけれど、あの子には見られちゃったみたいね」
「お尻丸出しだったもの。私の位置からだと、スジが濡れているのも、肛門のシワまでハッキリ見えていたのよ、こんな営業中のスーパー店内で」
 私をいたぶるのが愉しくて仕方ないご様子な、お姉さまのイジワル声。

「あの子、びっくりしたでしょうね。なんであのお姉さん、お尻見せているのだろう?パンツ穿いていないのだろう?って」
「きっと今、迷っているはずよ。パパに今見たことを教えたほうがいいのかな、って」

 そんなやり取りをしているあいだにも、陳列棚の陰から学生さん風の男性が現われ、私たちをチラチラ見ながら通路を通り過ぎていきました。
 その男性の粘り気ある視線が束の間、私の首の赤い首輪に絡みついたことを、私は全身で感じていました。

 首輪を見て、あの人はどう思ったろう?
 首輪はマゾ女の象徴だと、理解してくれたかな・・・
 そう考えた瞬間、からだ中が官能的な陶酔感に包まれました。

 私はこの場の、晒し者なんだ。
 こんな目立つ首輪を嵌めて、素肌に羽織った前開きワンピースのボタンのほとんどを外したままうろうろしているヘンタイ女なのだから、注目されるのはあたりまえ。
 そしてこれは、私自身が望んだこと。
 全身を駆け巡る激しい羞恥と同じくらい、いえ、それを凌駕するほどの性的興奮を感じていました。

 もっと興奮したい、もっと視てもらいたい。
 どうせならボタンを全部外すまで、お姉さまがご命令してくださればいいのに。
 そんな自虐的な願望すら、躊躇無く湧き出てきました。
 自分をもっと辱めたくて、仕方なくなっていました。
 あれほど恐れていた男性からの視線さえ、まったく恐怖に感じていませんでした。
 それはつまり、お姉さまが一緒にいてくださるがゆえの安心感がもたらした、今まで抑え込んできた欲求の発露だったのだと思います。

「完全なドマゾ顔になっているわよ、直子。トロンとしちゃって。やっぱり視られて嬉しいのね?」
「はい・・・」
「あら、ずいぶんと素直になったのね。でも残念。ショッピングはもうおしまいよ。お会計しましょう」
 先に立ってスタスタと歩き出すお姉さま。
 ふらふらと後を追う私。

 レジカウンターへ向かう道すがら少し遠回りして、先ほどの女の子連れパパさんと、もう一度すれ違うようにしてくださったのは、お姉さまの計らいだったのかもしれません。
 女の子は私の姿をみつけると、みつけてからすれ違うまで、可愛らしいお顔を180度動かして、再びじーっと見つめてきました。
 私はドキドキしつつも、曖昧な笑みを唇に浮かべ、ゆっくりすれ違いました。
 女の子の視線が、今度は首輪に釘付けなことに、背徳感を感じてしまいます。

 レジカウンターには先客がふたり。
 ひとりは、さっきの学生さん風男性でした。
 みっつあるレジのうち、一番奥にある右端だけ空いていました。
 そちらに向かっていたお姉さまが不意に立ち止まり、少しわざとらしく大きめな声をあげました。

「あっ!ホットケーキミックス!忘れてた。あたしこれ、大好きなの!」
 レジ前の棚に方向転換。
 お姉さまのそのお声に、レジ係の店員さんとお客様、全員が私たちのほうを向きました。
 注目されている・・・
 それだけでキュンとしてしまう私。
 学生さん風の男性を含め、すべての視線が私の首輪に注がれている気がしました。

「直子んちに行ったときも作ってくれたっけね。あれ、美味しかった。うちでも作ってよ。このブランドのが一番好きなの」
「あ、はい・・・」
 お姉さまが棚に手を伸ばそうとして、なぜだかすぐひっこめました。
「直子が取って」
「あの、えっと・・・」
 お姉さまを見ると、無言のイタズラっぽい笑顔。

 ホットケーキミックスは、幸いなことに私の胸くらいの高さの棚に並んでいたので、前屈姿勢にはならずにすみます。
 お姉さまが伸ばしかけた腕の角度から推理して、恐る恐るひとつの箱を手にしました。
 ここのスーパーのオリジナルブランド製品のようでした。

「ううん。それも美味しいのだけれど、あたしの一推しは、そっちの青い箱。シロップが絶妙なの」
「以前はレモンタイプっていうのもあったのだけれど、いつの間にか見なくなっちゃったのよね。人気無かったのかな、あれも美味しかったのに」
 お姉さまの腕が横から伸びてきて、青い箱を掴み、カートに入れました。
「そうなると、ミルクも必要ね。あたし取って来る」
 普通のお声でそうおっしゃった後、嬉しそうに私の耳に唇を近づけてきました。

「また間違えた。あたしが戻ってくるまでに一番下のボタンを外しておきなさい」
 絶望的なヒシヒソ声が、私の耳奥に吹き込まれました。
 腿の付け根から脳天へと、眩暈にも似た痺れるような快感がつらぬきました。
「ぁぅぅ・・・はぃ」
 小さくうなずいた私は、小さくイってしまいました。

 お姉さまがその場を離れ、私は右手を裾に伸ばします。
 このボタンを外したら、その後は一歩、歩を進めるたびに、股間を覆う布が割れてしまうことでしょう。
 お姉さまから命名された剥き出しマゾマンコを、文字通り剥き出しにしながら、少なくともここからお姉さまの車までは、歩いていかなければなりません。
 望んだ恥辱が現実となるのです。
 そう、これは私が望んだことなのだから。
 覚悟を決めてボタンを外し終えたとき、お姉さまが戻っていらっしゃいました。

「おっけー。これでバッチリね。お会計しちゃいましょう」
 持ってきた牛乳パックをカートに入れて屈託ない笑顔のお姉さま。
「はい、これ」
 ご自分のバッグからお財布を取り出し、何枚かのお札を剥き出しで握らされました。
「これだけあれば足りるでしょう。あ、変な気は遣わないでね、これはあたしの買い物だから、直子は一銭も出さなくていいの」
「あたしはレジ出たところで待っているから、よろしくね」
 スタスタと私の傍から遠ざかるお姉さま。
 急に心細くなる私。

 私たちがホットケーキミックスでごたごたしているうちに、レジに並ぶお客様はいない状態に戻っていました。
 ということは、しばらくのあいだレジ係の女性店員さんたちは、私たちの挙動に注目していたかもしれません。
 私は始終レジには背を向けていたから、自らワンピースの一番下のボタンを外したことには気づかれていないはず、と自分に言い聞かせ、しずしずとカートを押してレジカウンターに向かいました。

 思った通り、一歩足を踏み出すたびに腿がワンピースの裾を蹴り、フワリハラリと生地が左右に割れてしまいます。
 カートに下半身を押し付けるみたいにして隠しながら、3名いるレジ係さんのうち、一番お優しそうなお顔をされた左端の女性店員さんを選んで、カートを進めました。

「いらっしゃいませー。ありがとうございます」
 カウンターに入ると、カートをからだから引き剥がされ、無防備になりました。
 レジ係さんは、なんだか困ったような笑顔を浮かべながら、商品を丁寧にスキャンしてはレジ袋にてきぱき詰めていきます。
 そのプロフェッショナルなお仕事ぶりの合間にときどきチラチラ、ボーっと突っ立っている私へと視線を走らせてくることに気づきました。

 首輪をチラッ、開きすぎた胸元をチラッ、生地を浮かせているふたつの突起をチラッ、外れているボタンをチラッ、そして顔をチラッ。
 湧き上がる好奇心を隠し切れないご様子。

 それはそうでしょう。
 赤い首輪を嵌めて胸元を大きく開いたノーブラ丸分かり女が、前開きワンピースのボタンをほとんど外して顔を赤らめているのですから。
 私とあまり変わらないお年頃っぽいレジ係さんでしたから、何かしら不純なえっちぽい雰囲気を感じ取っていたとしても、何の不思議もありません。
 ああん、恥ずかし過ぎる・・・早くこの場から立ち去りたい・・・
 レジを出てすぐの左斜めでは、お姉さまが壁にもたれて、そんな私を愉しそうにじっと見つめていました。

「ありがとうございます。合計で・・・円になります」
 突然の元気良いお声に、遠くのお姉さまと見つめ合っていた私は大げさにビクン。
 レジ係さんが相変わらず困ったような笑顔で、私をまっすぐ見つめていました。
 私たちが選んで買った荷物は、大きなレジ袋ふたつ分になっていました。
「あ、はいっ」
 お金払わなくちゃ、と動揺した私は、あわてて一歩踏み出しました。
 ワンピースの裾が一瞬大きく割れて、私の目にもハッキリ、無毛の土手が丸見えになりました。

 ハッとして思わずレジ係さんに視線を移すと、レジ係さんの目線はまさしく私の股間の位置。
 その可愛らしいお口をポカンと開けて、唖然とした表情になっていました。
 すぐに見つめている私に気づいたようで、こちらに向き直り、取り繕うような笑顔を無理矢理みたく引っ張り出した後、さっきよりも一層困ったような笑顔に落ち着きました。
 
 その一連の表情の変化を見ていた私のほうも大パニック。
 視られちゃった、視られちゃった、視られちゃった、視られちゃった・・・
 その言葉だけが頭中に渦巻いていました。
 それでもなんとか、お姉さまから預かったお札をトレイに置くことは出来たようでした。

「・・・円お預かりしまーす。・・・円のお返しでーす」
 レジ係さんのお言葉に反応したのはお姉さまでした。
 ツカツカと近寄ってきて、レジ袋をひとつ持ちました。
「ありがとう。お釣りとレシートはあたしにちょうだい」
 
 突然のお姉さまの登場に、レジ係さんは一瞬驚かれたご様子でしたが、店内で私がずっとお姉さまと一緒だったのをご存知だったのでしょう、すぐになんだかホッとされたようなお顔になって、お釣りをお姉さまに渡しました。
「ありがとうございましたー。またのご利用をお待ちしていまーす」
 お姉さまに向けてにこやかに微笑んだ後、私を一瞥して、憐れむような表情を見せてくださいました。

 この人、私がマゾ女だって理解してくれた。
 そのとき私は、直感的にそう思いました。
 お姉さまと私の関係性もわかっている。
 そして、私は蔑まれ、しょうがないヘンタイ女だと思われた、と。

 一番下のボタンを外しておきなさい、とご命令されたときに勝るとも劣らない快感が、再び私の下半身を震わせました。
 このレジ係さんにもっと私を視て欲しい。
 私がどんな女なのか、もっと深くわかって欲しい。
 そして心の底から蔑んで欲しい。

「ほら直子、もうひとつのほう持って。行くわよ」
「あ、はい」
 お姉さまに促され、大きなレジ袋を左手に持って、片足を一歩踏み出しました。
 もはや裾が割れるのも気にしていません。
 二歩、三歩。
 立ち止まって待っていてくださったお姉さまに追いつきました。

 チャリーン!
 私を待つあいだ、お財布にお釣りを戻していたお姉さまが、誤って小銭を落としてしまわれたようでした。
 いいえ、たぶんわざとでしょう。
 レジカウンターからはまだ3メートルも離れていない距離でした。
「あ、500円玉一個落ちちゃった。悪い、直子、拾って」

 500円玉は、レジカウンターに背を向けている私の足元50センチくらい先に転がっていました。
 さっきのチャリーンという音で、レジカウンター周辺の人たちの注目も集まっていることでしょう。
 私はレジ袋を床に置き、そのまま躊躇せずに上半身を前に傾け始めます。
 両膝は折らず、お尻をレジカウンターに突き出すように。
 心の中で、視て、視て、よく視ていて、ってレジ係さんに訴えながら。


オートクチュールのはずなのに 09