2015年8月2日

オートクチュールのはずなのに 14

 私の舌と指で精一杯ご奉仕して、お姉さまに心行くまでご満足していただいた後、ふたりで軽くシャワーを浴びました。
「今日は直子の裸を、街の景色の中で視ることが出来るのね。愉しみだわ」
 私の全身をボディソープのヌルヌルで、やさしく愛撫してくださるお姉さま。
「そういうアソビにつきあうのって久しぶりだから、なんだかドキドキしてきちゃった」

 お姉さまが背後から抱きつくみたいに、からだを合わせてきました。
 お姉さまの乳首が硬くなっているのを背中に感じます。
 私もさっきのお姉さまのお言葉で即座に、都会のビル街の一角に全裸で立つ尽くす自分の姿を想像し、不安と期待がシーソーみたいにぎっこんばったんしていました。
 泡まみれのからだをピタリくっつけ滑らせて、しばらくその心地良い愛撫に身を任せました。

 バスルームから出てからだを拭いているとき、お姉さまが私を見ながらおっしゃいました。
「だけど慎重にやらないとね。もしもそのスジの人にみつかったら、ややこしいことになっちゃう。あたしたちが、と言うか、直子がこれからしようとしていることって、コーゼンワイセツっていう、一応立派なハンザイだもの」
 その現実的で不穏な内容とは裏腹に、お姉さまのお声はウキウキ弾んでいるように聞こえました。

「あたしはこれから寝室で、出張の準備も含めていろいろ荷造りしてくるから、直子も自分の荷物をまとめておいて。もうここへは戻らず、夜には池袋へ向かうから」
「はい」
「冷蔵庫に残っている食材は、直子が持って帰って。あたしはまた当分戻れないから。あ、直子のオモチャはまだ仕舞わないでね。いくつか今日使いたいものがあるから」
「・・・わかりました」
 全裸のままスタスタ寝室へ向かうお姉さまの背中をお見送りしつつ私の右手は、シャワーの前に外した赤い首輪へと自然に伸びていました。

 キッチンとソファー周辺をお片づけしてから、お洗濯ものを取り込みました。
 お外は相変わらず、どんよりジメジメでしたので、タオルもお姉さまのワンピースも生乾きでした。
 それらを窓際に吊るし直してから、さて、と考えました。

 外出するのですから、当然何らかのお洋服を着ることになるはずです。
 一昨日、お姉さまのお部屋に伺った目的が、全裸家政婦、で当然ずっと裸でいるつもりでしたから、来たときに着てきた前開きのミニワンピース以外、着替えは持ってきていませんでした。
 となると、選択肢はそのミニワンピしかないのですが、このお部屋では、お姉さまのお許しがないと着衣は認められない決まりです。
 なので私は裸のまま、お姉さまの準備が終わるのを、ソファーに浅く座って待ちました。

 待っているあいだも、いろいろ考えました。
 おそらくお姉さまは、ノーパンノーブラ、ミニワンピ一枚でお外に出るようにご命令されるだろうな。
 そうなると私は、一昨日のスーパーでの恥辱を、昼間の街中でもう一度味わうことになりそう。
 ボタンをジワジワ外されて、誰かいるところで前を開くようにご命令されて・・・
 妄想がどんどんふくらんで、全身がぐんぐん火照ってきました。

「お待たせー」
 大きめなカートといつものバーキンバッグを手にしたお姉さまが、リビングに戻ってこられました。
 着古した感じのスリムなウォッシュアウトジーンズに黒Tシャツ、その上に、これも着古した感じのタンガリーシャツを羽織っています。
 こんなにラフなコーデのお姉さまを見るのは初めて。
 でもカッコイイ!
「雨になるみたいだからね、濡れてもいい感じでざっくりしてみた」
 驚いたような私の視線に気がつかれたのか、お姉さまが言い訳するみたくおっしゃいました。

「準備は終わった?」
「あ、はい。一応・・・あの、お姉さま?」
「ん?」
「私もお洋服を着て、よろしいでしょうか?」
「なあに?あたしの許しが出るまで着ないで待っていたの?いい心がけじゃない」
「・・・はい、決まりですから」
「さすがのあたしも、この部屋からずっと裸のまま街中を連れ回す勇気は無いわ。着ていいわよ」

「何を着ればよいのでしょう?」
「えっ?あのミニワンピ以外に何か着替え持ってきているの?」
「いいえ」
「それなら、それしかないのじゃなくて?」
「あ、はい。それで、下着は・・・」
「ああ、そういうことね。ちょっと待って。あたしに考えがあるから」
 お姉さまが嬉しそうに薄く笑って、バーキンの中から何か小さめな箱を引っ張り出しました。

「まずは下着ね。初日に穿いていた黒以外、替えの下着も持ってきているの?」
「はい。一応お姉さまがお店で見立ててくださった他の3種類は持ってきました」
「ああ。フロントホックのストラップレスブラと紐パンね。どこでもこっそり脱ぎやすいっていうコンセプトの。確か前割れとかスケスケのパンツもなかったっけ?」
「はい・・・ありました」
「それしか持ってきていないということは、あたしといるときはいつでも、直子は下着を脱ぐ気満々ていうことなのね。やらしい子」
「そ、そんなつもりではありません・・・」
「うふふ。最初から露出マゾ全開でいくなら、ノーパンノーブラでワンピだけ着ててもらったほうが手間が省けるのだけれどさ、今日は直子に、何て言うのかな、合法的な辱めも存分に味わってもらおうかなって考えているの。そのためには、脱ぎやすい下着だとつまらないのよね」
 お姉さまの唇両端が、イジワルそうに少し吊り上がりました。

「スケスケも前割れも、それはそれで面白いのだけれど、それは次の機会にして、今日はあたしの下着を貸してあげる。安心して、買って一回しか身に着けたことないやつだから」
「ちょっと待ってて」
 お姉さまがそそくさと寝室に向かわれました。
 さっきからお姉さまがおっしゃっていることの意味をほとんど理解出来ていない私は、お姉さまの下着をお借り出来るんだ、どんなやつなのだろう?私なんか想像も出来ないほどのえっちさだったりして、なんて考えながらドキドキ待ちました。

「はい、これ」
 お姉さまが差し出されたのは、グレイというよりシルバーと呼ぶべきテラテラ光沢の有る生地で出来たブラジャーとショーツでした。
 ショーツに触ってみると、この滑らかさは明らかにシルク。
 縁取りとかにレースっぽい装飾も施してあって、ゴージャスなのに可愛いらしい感じです。

「ブラは、直子にはキツイはず。直子のほうがボインだものね。まあ、ハーフカップだからなんとかなると思う」
「それに直子、そういうのも好きでしょう?おっぱい締め付けられるの。最初にお店来たときもそうだったものね?」
 お姉さまがからかうように笑いながら、ショーツとお揃いのブラジャーも手渡してくださいました。
 私が早速身に着けようと、まずショーツを広げて身を屈めようとしたら、お姉さまから、待った、がかかりました。

「このワンピなのだけれどさ、何か物足りないのよね。ゆったりめだからシルエットがストンとしちゃって、いまひとつ色っぽさに欠ける気がするの」
 昨日お洗濯して壁際に吊るしておいた私のミニワンピースをはずし、私に手渡してきました。

「下着着ける前に、ちょっと着てみてくれる?あ、全体を裏返しにしてね」
 お言いつけ通り裏返しにしてから、両袖を通して羽織りました。
「ウエストを絞るともっと可愛くなると思うのよ。あたしが応急処置してあげる。たぶん、いい感じのシルエットになるはず」
 羽織り終えると、お姉さまの両手が前を合わせてきました。
「ボタンも嵌めてね。胸元からおへそあたりまででいいから」
「あ、はい」
 裏返しになって、ボタンと穴との関係がややこしくなっている前立てを、苦労してちまちまと、なんとか留め終えました。

「おーけー。そのままじっと立っていて。針を使うから動くと危ないわよ」
 お姉さまがメジャーと、カップケーキみたいな形の可愛らしい針山を持って近づいてきました。
 さっきお姉さまがバッグから取り出した箱は、お裁縫セットだったようです。

「こんなものかな・・・うーん、もう少し詰めちゃおうか・・・」
 お姉さまが小声でブツブツおっしゃりながら、私のウエストにメジャーを当て、針山から抜いたマチ針で手際良く布を留めていきます。
 さすが元服飾部部長さまで、今はアパレル会社の社長さま。
 その手馴れた手つきに見惚れつつ、じーっと眺めていました。

「これでよし、っと。脱いで」
「あ、はいっ」
 一歩離れたお姉さまの一声が聞こえ、あわててまたちまちまと、ボタンを外し始めました。
「あたしはこれをちゃちゃっと縫っちゃうから、直子はそのあいだに下着を着けちゃいなさい」
「わかりました」
 ワンピとお裁縫箱を持ったお姉さまがダイニングのほうへと移動し、裸に戻った私は、お姉さまがご用意くださった銀色の下着たちに再び手を伸ばしました。

 確かにブラジャーは、少しきつめな感じがしました。
 ハーフカップなので下乳を持ち上げる形になり、その分普段より、上から見るとおっぱいの谷間がクッキリ出来て、強調されています。
 これでワンピースを着てVゾーンを広めに開けたら、かなりエロそう。
 生地が薄いので、私の尖った乳首だとカップの上からでもその位置が、かすかに突起していました。
 でもワンピースを着ちゃえば、たぶんわからなくなるでしょう。

 ショーツのほうはローライズ気味ながら、いたって普通な感じで、下腹部とお尻をしっかり覆ってくれていました。
 ブラジャーもショーツもすごく肌触りが良く、着け心地はいい感じ。
 ただ、およそ二日ぶりの下着の布地の感触に皮膚がとまどっているみたいで、なんだかこそばゆい。
 そう言えば、お姉さまも一度着けたことがある、っておっしゃっていたっけ、なんて思い出し、キュンと感じちゃいました。

「出来たわよー」
 ワンピースを手にしたお姉さまが戻っていらっしゃいました。
「おおお、直子ったらまたいっそう、ボインちゃんになっちゃって」
 ハーフカップで下から持ち上げられた私の谷間を指さして、お姉さまがからかいました。
「はい、着てみて」
 お直しされたミニワンピースを手渡され、そそくさと腕を通す私。

「お姉さま、すごいです。ほんの少しの時間で、こんな見事にお直しが出来てしまうなんて」
 両袖を通しただけで、ワンピースが生まれ変わっているのがわかりました。
 ルーズめなシャツワンピだったのに、ウエストを詰めただけで、ゆるふわな感じのフェミニンワンピに様変わりしていました。
「ボタンも全部留めてみて」
 ご自分の成果にニコニコ満足そうなお姉さま。
「はい」

 上からボタンを留め始めると、お姉さまの意図がだんだんと見えてきました。
 ウエストが絞られ胴回りがタイトになり、その分バストとヒップ部分は前にも増してゆったりめ、つまり布地が肌から浮いた状態になっていました。

 たとえばVゾーンを開け過ぎたら外部から中身が覗けやすいし、スカート部分も前より横に広がりがちなので、よりひるがえりやすい状態。
 もしもこのワンピースをノーパンノーブラで着たなら、以前よりも容易に、生おっぱいや生お尻が露出しやすいルーズフィット状態になっていたのでした。
 なるほど、だからお姉さまは、まずは下着をちゃんと着けるようにご命令されたのでしょう。
 このワンピースでお外に出て、ノーパンノーブラにされてしまったときのことを考えると、頭がクラクラしてきます。
 それでもなんとかがんばって、震える指でボタンを留めつづけました。

「あの、お姉さま?」
 9個のボタンを嵌め終わり、最後のひとつを嵌めようとしたとき、気がつきました。
 10個目のボタンが、無いのです。

「ん?なあに?」
 ソファーに腰掛けたお姉さまが、満面に笑みを浮かべて私を見ました。
「あの、一番下のボタンが無いのですが・・・」
「あ、それね。ごめんごめん。さっき縫っていたとき、そこのボタンだけ取れそうだったのに気づいて付け直そうと思って、いったん取ったのよ」
 ニヤニヤ笑いなお姉さまの、白々しいお芝居口調。

「そしたら誤って落としちゃって、床の上をコロコロって。いくら探してもみつからないの。仕方が無いからそれでがまんして」
 お姉さまのてへぺろは、ちっとも可愛くありませんでした。
 
 一昨日のスーパーから駐車場へ戻るときの夜道を、あざやかに思い出していました。
 ここのボタンが留まっていないと、割れた隙間から私の股間が、一歩歩くたびにチラチラ覗いてしまうはずです。
 その上、ウエストを絞ったために布地が引き攣り、裾全体も以前より1、2センチ短かくなっていました。
 広がり気味フンワリめとなったこととも相俟って、今だって、ちょっと動いたら両腿の付け根付近が覗きそうでした。
 ありったけのジト目でお姉さまのお顔を睨みました。

「なーんてね。いいじゃない?パンツ穿いているのだから」
 お姉さまも薄笑みを引っ込め、まっすぐに冷たい視線を合わせてきました。
「合法的な辱めっていうのは、そういうこと。パンチラならハンザイではないもの。直子も、ボタン嵌めていないことに気づいていないフリをして、平気な顔して歩けばいいのよ。そういうの、得意でしょ?直子は」
「で、でも・・・」

 お姉さまから強気に出られると、すぐ、本来のドエムに戻ってしまう私。
「見せたがり露出マゾなのだから、パンツくらい、いくらでも見せてあげればいいじゃない。まあ、いずれ、そのパンツだって脱がなくてはいけないことになるのだけれどね。それも、こっそりとではなくて、街中で、大胆に」
「そのために、脱ぎやすい紐パンではなくて、普通のパンツを穿かせたのよ。どう?愉しみでしょ?」
 イジワルさ全開のお姉さまからの淫靡なお言葉が、私のマゾ性をブルブル揺さぶって、それ以上の抵抗を諦めさせました。

「事前のネタバラシはこれくらいにして、最後の仕上げをしましょう。こっちに来て」
 お姉さまがまた、バッグから何かを取り出し、腰掛けているソファーの横をトントンと指さしました。
「は、はい・・・」
 私が横に腰掛けると、お姉さまがテーブルの上にお化粧ポーチを広げました。
「これからすることを考えると、やっぱり多少は、リスク回避の策も施しておかないとね。いくら人口が多い東京砂漠とは言え、万が一直子を知っている人に視られてしまう可能性もあるわけだから」
 おっしゃりながら、私の顔をメイクし始めるお姉さま。

「それでなくてもこんな真っ赤な首輪嵌めて、否が応でも人目を惹くマゾ丸出しの姿でお散歩するのだから、とくにヘンなオトコどもが近寄り難い雰囲気を作っておかないと」

 そうでした!
 すっかり慣れきってしまっていましたが、私、この首輪も嵌めたままお外に出るのでした。
 ファッショナブルなチョーカーとは明らかに一線を画す、見るからにペット用な赤い首輪。
 すっごく目立って、ジロジロ視られちゃうのは間違い無さそう。
 それは、私にとって生まれて初めての経験です。
 一昨日の夜もしたことでしたが、夜と昼間とは大違いでしょう。
 そして、3日間首輪を嵌めていること、とお姉さまとお約束した以上、私に拒める術はないのでした。

「直子って、いつもナチュラルメイクでしょう?オトコが一番声掛けやすいのがナチュラルメイクなんだって。オトコってすっぴん美人が大好きだから。でも、街行く女子のほとんどは、ナチュラルっぽい厚塗り化粧なのよね」
 苦笑しながらおっしゃるお姉さまと、されるがままの私。
「うちのスタッフと、そのへんを研究したことがあってさ、オトコが近寄らないメイクってどんなのだろう、って。それで出た結論のひとつが、失敗メイク。塗りたくって、すっぴんより残念になっちゃうメイク」
「もうひとつが、どちらかと言うとお水寄りのゴージャスメイク。こっちは、奇麗な人がすると本当奇麗になるの。なのに、気後れしちゃうのか怖がっちゃうのか、オトコは寄ってこない、遠巻きにするだけ」

「はい。出来た」
 お姉さまが間髪を入れず、目の前にコンパクトをかざしてくださいました。
「えーーっ!」
 ひと目見てびっくり、これが私?

 いつもより小さめに、でも艶やかなツヤツヤローズピンクで塗られたルージュ。
 アイラインパッチリ、睫毛クルクル、眉毛クッキリ。
 チークがずいぶん色濃くて、いつもより顔が細く見えます。
 お姉さまがドライヤーで髪の分け目を変え、左サイドに流してくださいました。
 鏡を覗いての全体の印象としては、なんだかこの女、生意気そう。

「うん。けっこう化けたわね。意識して顔にメリハリつけたから、予想通りハーフっぽくなって、その上、妖艶にもなったわ。それでツンと澄ましていれば、首輪していようがパンツ見せていようが、ビビッて誰も声かけてこないはずよ」
 お姉さまが愉快そうにおっしゃいました。
 私的には、やり過ぎな感じもしましたが、お姉さまが良いとおっしゃってくれているし、確かにこれなら私を知っている人でもわからないだろうな、とも思い、いいことにしました。

「ちょっとあたしを睨みつけてみてよ、さっきみたいに」
 お姉さまにせがまれて、ワザと取り去られた一番下のボタンのことを思い出し、同じようなジト目をしてお姉さまを見つめました。
「うわ、生意気そう。あたしこれから、この生意気な女を好きなだけ虐めていいのよね?すっごく愉しみ。めちゃくちゃやって泣かせてやりたい」
 お姉さまも今の私の顔に関して、私と同じご感想をお持ちになったようでした。

「本当、直子とのアソビって面白い。メイク変えただけで、これだけ盛り上がれるのだもの。あたし今、この生意気女を辱める方法が次から次へと湧き出てきている。直子があたしのパートナーで、本当に良かったわ」
 お姉さまからの嬉しいお言葉に悦ぶべきか、ちょっぴりフクザツ。
 だけど何よりもお姉さまが愉しそうなので、これもよしとしました。

「はい。直子はこのバッグを持ち歩くのよ」
 お化粧ポーチをバーキンに仕舞った後、お姉さまから今度は、少し小さめなトートバッグを渡されました。
 持ち手のラインと縁取りが濃いブルーで、バッグそのものは水色の透明なビニールで出来たトートバッグでした。
 中にはすでに、白いバスタオルとビニールシートのようなものが入っていました。

「それで、これと、これと・・・」
 お姉さまがしゃがみ込み、ソファー周辺に並べておいた私がお家から持ってきた虐め道具のうちのいくつかを、無造作にそのバッグに詰め始めました。
 リモコンローターふたつ、円錐形のバイブレーター二個、アナルビーズ、手錠、首輪のリード、短いロープ、木製洗濯バサミたくさん・・・
「あ、あの、お姉さま?・・・」
 あわてる私の声も聞こえないフリで、それらがバッグに詰め込まれ、最後にお姉さまのお財布が入れられました。

「あたしのお財布も入っているのだからそのバッグ、絶対に失くさないでよね?」
 お姉さまにビニールトートバッグを手渡され、しげしげと眺めました。
 バッグの片方の面は、バスタオルの白地が全面に見えていて、何の問題もありません。
 でも裏返すと、先ほどお姉さまがお入れになったおどろおどろしいお道具たちが、水色のビニール越しに透けて見えていました。
 ピンク色した卵型の物体、見るからにえっちぽい銀色の円錐形、鎖、麻縄、どう見ても、それ以外のものには見えない手錠と洗濯バサミ・・・
 透けたバッグの中身を少し目を凝らして見れば、それらが何に使われるものかピンときてしまうえっちな人も、都会には少なからずいることでしょう。

「残ったオモチャは直子のバッグに仕舞って持って帰っていいわ。準備が出来たら出発よ。あ、冷蔵庫の中は片付けたのよね?」
「はい。今入っているのはお飲み物だけです」
「お散歩のときはそのビニールトートのほうだけ持ち歩いて、あたしが、出して、って言ったものは、いつでもどこにいても、すぐ取り出すこと。それが出来なかったら、その後、直子はもっと恥ずかしいお仕置きをされることになるから、よーく憶えておいてね」
「・・・はい」
「あたしはお散歩中は、このビデオカメラしか持ち歩かないつもりだから」
 お姉さまがニッと笑って、ちっちゃなハンディカメラをこれ見よがしに見せてから、立ち上がりました。

「戸締りはしたし、カーテンもおっけー。ガスの元栓も締めた。さあ行きましょう。直子はそっちのゴミ袋も持ってね。一階のゴミ置き場に出しちゃうから」
 お姉さまがカートとバーキンともうひとつのゴミ袋を持って、スタスタ歩き始めました。
 私も自分の荷物を持って、後を追います。
 もちろんビニールトートは、バスタオルの面を表側に出して。

 玄関で靴を履いているとき、お姉さまが不意におっしゃいました。
「どう?直子。マゾの首輪嵌めたまま外出する気分は?」
「どう、って聞かれましても・・・かなり恥ずかしいし・・・怖いです・・・」
「それだけ?えっちなオモチャが透けたバッグ持って、パンツすれすれのミニ穿いてお出かけだよ?直子みたいなヘンタイ露出マゾ女には、夢みたいなシチュエーションじゃなくて?」
「・・・あ、あの、えっと、それは・・・」
 私が口ごもっていると、お姉さまが私の耳に熱い息をヒソヒソ吹きかけてきました。

「出発前に、もうひとつだけネタバレしてあげる。あたしがなぜ、直子にグレイのパンツを穿かせたと思う?」
「・・・わ、わかりません・・・」
「グレイのシルク地だとね、直子がいやらしい気持ちになってマゾマンコを濡らしちゃったとき、そのシミが一番クッキリ目立つのよ。黒々と、遠くから見てもわかるくらい」
「・・・」
「そんなのみんなに見られたら、ある意味ノーパン見られるより恥ずかしくない?サカっている証拠だし、ぱっと見でもお漏らしみたいだし。だからせいぜい濡れないように、がんばりなさい」
 そこまでおっしゃって私の右耳から唇を離し、玄関ドアをゆっくりと開けるお姉さま。

「あっ、言い忘れてた。胸元のボタンをふたつ外しなさい」
 振り向いたお姉さまが、冷たく微笑んでおっしゃいました。
「は、はい、お姉さま・・・」
 ゴミ袋をいったん靴脱ぎに置き、右手だけでボタンを外しているとき、股間の奥がヒクヒクっと震え、ジンワリ潤んできたのが、自分ではっきりわかりました。
 

オートクチュールのはずなのに 15


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