2016年7月24日

オートクチュールのはずなのに 52

 舞台袖までリンコさまが付き添ってくださいました。
 カーテンの陰から垣間見える会場が明るいことに、まずびっくり。
 
 さっきモニターで見たステージ、お姉さまがお話しされていたときは、薄暗い中にライトで照らし出されていたのに。
 今はステージ上もお客様がいらっしゃるフロアも、このビル階下のショッピングモール並に会場全体、電気が煌々と照っています。

「ず、ずいぶん明るいのですね?」
 思わず小声でリンコさまに尋ねてしまいました。

「うん。今はアイテムの前説だからね。お客様も配られた資料をご覧になっているから」
「このショーは、お客様にアイテムを実際に肉眼で見て検討していただく説明会的な位置づけだから。でもまあ演出で、たまに暗くなったりもするよ」
 リンコさまのご説明でなんとなく納得ですが、私としてはもっと暗いほうが気が楽なのに。

 この明るさでこのワンピース、ということは、両脇からおっぱいが覗けちゃいそうな乳首ツンの薄物一枚で、ショッピングモールを歩くのと同じこと。
 さらに、ここにいるお客様がたすべての視線を私だけに惹きつけて、ということになります。
 さっき楽屋で全裸が隠せた安堵感で頼もしく思えたエスニックワンピが急に頼りなく思えてきました。

「・・・ということで、準備が整ったようなので、そろそろショーに移りたいと思います」
 私たちから見てステージの向こう端。
 仲良く肩を並べて司会をされている、ドレス姿の綾音さまとスーツ姿の雅さま。

「それではアイテムナンバー1番・・・」
 雅さまが告げると、BGMがインド音楽っぽいエスニックな曲に変わりました。
 小気味よい太鼓の音に絡まるシタールの音色が、かなり大きめに響き始めます。
 そのあいだに綾音さまがリンコさまにアイコンタクトされ、リンコさまがジェスチャーでオーケーサイン。

「それでは、じっくりお愉しみください」
 雅さまのお声と同時にリンコさまが私の背中を軽く叩きました。
「ほら、お仕事開始。行っといで」
「は、はいっ」

 視線を前方一点に定め、軽くアゴを引いて背筋を伸ばすこと。
 足を前に出すのではなく、腰から前に出る感じ。
 体重を左右交互にかけ、かかっている方の脚の膝を絶対に曲げない。
 両内腿が擦れるくらい前後に交差しながら、踵にはできるだけ体重をかけない。
 肩の力を抜いて、両腕は自然に振る。

 ステージの真ん中へと歩くあいだ、やよい先生から教わったモデルウォークの要点を必死でおさらいしました。
 視線はまっすぐに定めていましたが、どこにも焦点を合わせないよう、敢えて周りを見ないように努めました。
 それでもぼんやりと、会場の状況はわかりました。

 ステージ中央から会場奥へとつづくレッドカーペットを挟んだ両側に、たくさんの方々が着席されているのがわかります。
 昨日並べられたお客様用の長テーブル席すべてが埋まり、更にその外側までテーブルと椅子が増えているみたい。
 50人くらいっておっしゃっていたけれど、なんだかもっといらっしゃる感じ。
 その視線のすべてが自分に注がれているのを肌で感じていました。

 ステージ中央の階段を下り、お客様が並ぶフロアに降ります。
 ここからは、赤い絨毯を一直線。
 お姉さまからのアドバイスに従って、一歩踏み出すごとに歩数を数えながら進みます。
 お客様を意識しちゃうと途端にパニクりそうなので、視界を極力ぼんやりさせたまま、前へと歩くことだけに集中しました。

 それでもやっぱり明るすぎるせいか、場内の雰囲気がわかります。
 私の両脇1メートルくらいの至近距離からジーっと私の姿を目で追ってくる目、目、目。
 ノースリーブの脇からきっと、横おっぱいが覗けているのだろうな・・・
 腕を振りながらテーブルをひとつひとつ通過するたびに、心臓のドキドキが高まっていきました。

 48、49.50・・・
 51歩めで、ランウェイの先端に到達。
 ふぅ、と一息ついた途端、場内の明かりがすべて消え、真っ暗になりました。

「おおっ」
 お客様の小さなどよめきが合図だったかのように、頭上前方から一筋のスポットライトが私めがけて飛びかかってきました。
 暗闇の中ですでに回れ右をしていた私は、真正面から眩し過ぎるライトを全身に浴びました。

「おおぉーっ!」
 さっきとは比べものにならないくらいの大きなどよめきが会場全体に広がりました。

「なお、本日のモデルを務めますのは、今回がショーモデルデビュー、期待のニューフェイス、夕張小夜です。皆様、盛大な拍手をお願いします」
 綾音さまのアナウンスにつづいて沸き起こる割れんばかりの拍手。
 ライトにひるんで少しのあいだ立ち尽くしていた私は、その拍手に促されるように、今度はステージへ向かって歩き始めました。

 1、2,3・・・
 私を中心にして直径2メートルくらいを照らし出しつつついてくるライトのおかげで、赤い絨毯を踏み外す心配はありません。
 場内のお客様がたは、まだ少しザワザワされていますが、会場が暗くなったおかげで私は幾分気が楽になりました。
 視線をステージに合わせてまっすぐ前を向き、モデルウォークを崩さないように慎重に歩きます。
 11、12、13・・・

 15まで数えたときに、ふっと場内に薄明かりが差しました。
 今まで真っ暗だったステージ向かって右側上の大きなディスプレイスクリーンが点灯したようでした。
 会議室によくあるホワイトボードよりやや大きめのスクリーン中央に、私の姿が映っていました。

 カメラはステージ上から向けられているようで、だんだん近づいてくる私のバストアップが、ほぼ正面から映し出されていました。
 そして驚いたことに・・・

 着ているはずのワンピースの布地が完全に透け切っていました。
 茶とグリーンのエスニック模様を身に纏っていたはずなのに、そのお洋服が忽然とどこかへ消え失せてしまったかのように、強い光にハレーション気味な白っぽい肌色の肉体だけがクッキリ映し出されています。
 
 シースルーなんていう生半可なものではなく、まるで最初からワンピースなんて着ていなかったかのよう。
 足を踏み出すたびにプルンプルン揺れるおっぱいの弾みも、布地に擦れてなおも尖ろうとしている硬そうな乳首のピンク色までハッキリとスクリーン上に曝け出されていました。

 ど、どういうこと???
 今、お客様から私は、こんなふうに見えているの?
 少し視線を落として自分の胸のあたりを見てみますが、確かにエスニック模様のワンピースをちゃんと着ていました。
 頭の中が真っ白になりました。

 スポットライトが当たった後、どんな状態になってもあわてちゃだめよ・・・
 出の前のリンコさまのお言葉の意味がわかりました。
 お言いつけ通り、ポーカーフェースに努めながら歩きつづけます。
 視界の右端に見えるスクリーンの中の自分の姿が気になって仕方ありません。

 歩むに連れてカメラがゆっくりと引いていき、スクリーン上には私の全身が真正面から映りました。
 どう見たって何も着ていない状態。
 両脚の付け根まで鮮やかに剥き出しです。
 全裸の女性が歩いているようにしか見えません。
 光の中の私の肉眼では、確かに布地が全身をちゃんと覆っているにも関わらずです。

 私今、ここにいらっしゃるお客様全員に全裸姿をご披露しちゃっているんだ・・・
 恥辱と愉悦が入り混じったような、何とも言えないマゾ的高揚感が背筋を駆け上ったとき、不意にスクリーンが消えました。
 最後に映っていた私の白っぽい裸身の全身像が残像となって、脳裏に刻み込まれました。
 同時にスポットライトが後方からに切り替わりました。

 私は、いつの間にかステージ手前までたどり着いていました。
 あとは階段を上がり、ステージ中央でポーズして楽屋に戻るだけ。
 一刻も早く楽屋に逃げ込みたい・・・
 でも、お姉さまのイベントをぶち壊しにすることは、絶対出来ません。

 動揺を悟られないよう、一歩一歩踏みしめるように階段を上がります。
 背後から私を照らし出すライトの中、お客様がたには、全裸の女が階段を上がる丸い剥き出しのお尻が見えていることでしょう。

 ステージに戻ったら正面を向き、数秒ほど何かポーズを決めなければなりません。
 ライトの中だとこのワンピは透けている、と、わかってしまった私にとって、ここでお客様に向き直る、という振る舞いは、自ら望んでもう一度みなさまに私の全裸正面姿をご披露する、という露出狂らしいヘンタイ行為以外の何物でもありません。
 スクリーンも消え、暗闇のステージ上に私だけが浮かび上がる中、ゾクゾクしながら思い切ってお客様に向き直りました。

 何かポーズ・・・
 向き直った途端、会場のすべての視線が私に集中したのが闇の中でもわかりました。
 右手を脇腹に当ててちょっと気取る感じ、ってリンコさまはおっしゃっていたっけ・・・
 思い出して右手を挙げようとしたら、自然と左手もついてきてしまいました。

 あぁん、どうしよう!
 と思う間もなく両手は脇腹を超え頭近くまで挙がり、両足は休めの位置。
 気がつくと自然に、両手を後頭部で組んだ、例のポーズになっていました。

 そのまま5秒ほど数えるあいだ、ステージ近くからフラッシュが二度三度、光りました。
 そこで場内の灯りが点き、最初のときのような明る過ぎる状態に戻って、割れんばかりの拍手。
 私はポーズを解き、そそくさと楽屋へ向かいました。

「うん。上出来上出来。最初とは思えないくらい落ち着いていたじゃん」
 楽屋へのドア前で見守ってくださっていたらしいリンコさまのバスタオルに出迎えられ、楽屋に入りました。

「お疲れさまー」
 ほのかさま、しほりさま、里美さまが口々にねぎらってくださり、鏡前に連れて行かれました。

「今の感じでいければ問題無いね。ただ、ウォーキングはもう少しゆっくりめがいいかな」
「ポーカーフェース、さまになってたよ。シースルーになってもぜんぜん動じない感じで、よかった」
「最後のポーズもナオコ、いや夕張さんらしかったね。決めポーズは全部あれでいいよ」
「やっぱりけっこう汗かいているのね。興奮しちゃった?拭いてあげる」

 どなたがどれをおっしゃっているのかわからないほど、頭の中が混乱しきっていました。
 今起こったことが現実だとは思えないほど。
 鏡に映っているのが自分なのかもわからなくらい、ボーッと放心状態でした。

 そんな私から手早くワンピースを脱がせ裸にし、次のアイテムを着せてくださるリンコさま。
 同じような生地で、今度はピチピチパツパツ、ボディコンシャスなエスニック柄マキシ丈かぶりワンピースを、もちろん素肌に直で。
 
 長袖でからだのラインがクッキリ浮き出ています。
 スタンドカラーがチャイナドレス風というかアオザイっぽいというか。
 スリットは膝くらいまでで、ちよっと歩きづらそう。
 何をどう感じたらいいのか、思考がぜんぜん定まらない頭で、そんなことを考えていました。
 
「この生地はね、うちと、とあるバイオ研究所との共同開発なの。暗いところで強い光が当たると本当に綺麗に透けるんだ」
 リンコさまが私の着付けを直しながら嬉しそうに教えてくださいました。
 しほりさまは、私の顔にくっつくくらいお顔を寄せて、アイラインを修正してくださっています。

「おお、小夜っちがボディコン着ると、やっぱかなりエロいね。とくにバスト周りが」

 リンコさまのお言葉で自分の胸元に目を遣ると、柔らかい生地が私のおっぱいそのままの形に撓み、肉感的に包み込んでいました。
 もちろん、ふたつの頂点は露骨過ぎるほど生地を派手に押し上げています。
 うわ、いやらしい・・・
 自分で思わず目をそむけちゃうほどの生々しさ。

「はい、スタンバイしてください」
 羞じらいを感じる暇もないほどのあわだたしさで、美里さまからのご指令。
 リンコさまに手を引かれ舞台袖でキューを待ちます。

「このアイテムもさっきのと同じ段取りね。ランウェイ端で暗転するから」
「さっき言ったみたいに、ウォーキングを少しゆっくりめに、音楽のリズムにノッた感じで。アイテムとその優秀な透け具合をじっくり見ていただかなくちゃ」
「このアイテムが終わったら、長めな着替え時間でちょい休憩取れるから、がんばって」

 そんなふうに教えてくださっているあいだに、早くも綾音さまからのゴーサイン。
 最初みたいな明るさに戻ったステージに、ボディラインクッキリのボディコン姿で立ちました。
 BGMは、オリエンタルなメロディのアフタービートが効いたミディアムテンポに変わりました。

 頭の中は、相変わらずしっちゃかめっちゃかなのですが、人前に出る気分はかなり落ち着いてきていました。
 たぶん、先ほどのステージ去り際にいただいた盛大な拍手が、効いたのだと思います。
 あ、私、みなさまから歓迎されている・・・
 それは、生まれて初めて味わった、と言っていいほど、とても気持ちの良いものでした。

 最初のアイテムの暗転の後、スポットライトを浴びた私は、自分では予想もしていなかった全裸姿を、お客様すべてに視られてしまいました。
 暗転してライトが当たった直後に起きたどよめきの意味を、スクリーンに映った自分の姿で知りました。
 そして、最後にステージでもう一度お客様と向かい合い、マゾの服従ポーズをご披露したときにいただいた大拍手。

 それを浴びて私は、お客様がたが私の味方だ、と思えたのでした。
 こんなヘンタイなのにみなさまが私に注目され、私の裸を視たがっていらっしゃる、ということが、とても嬉しかったのです。
 心の中の私のマゾ性=恥ずかしい姿を視られるという恥辱の悦び、が拍手という心強い援軍を得て、臆病な理性と常識を片隅に追い遣りつつありました。

 ボディコンおっぱいが露骨に揺れるのも構わずランウェイを一歩一歩踏みしめながら、お客様がたを見渡せる余裕が出来ていました。
 ざっと数えただけでも、確実に60名以上はいらっしゃるでしょう。
 お若そうなかたからご年配まで、色とりどりに着飾ったご婦人たちが私の動きを目で追っていました。

 ときどき見知ったお顔がいらっしゃるのにも気づきました。
 あそこにアンジェラさまと小野寺さま。
 こっちにはシーナさまと純さま、それに桜子さまも。
 カメラやビデオを構えているのはスタンディングキャット社の男性陣。

 お姉さまのお姿が見つからないな、と思ったとき、ランウェイの端まで来ていました。
 両手を後頭部に添えてポーズを取った瞬間、暗転。
 すかさずスポットライトの洗礼。
「おおっ!」
 どよめく会場。

 ポーズのまま回れ右。
 ポーズを解いて歩き始めます。
 まだスクリーンが映らないので、自分がお客様からどんなふうに見えているのかわかりません。

 今度のはボディコンだから、さっきよりいっそう生々しい全裸姿になっているのだろうな。
 そんな恥ずべかしい姿を、お久しぶりなアンジェラさまや純さまに視られているんだ。
 どうか私だってバレませんように・・・

 今のこんな状況を愉しむ余裕まで出てきたのか、そんなことをワクワク考えながら、さっきよりゆっくりめにランウェイを進んでいると、さっきと同じような位置で、パッとスクリーンが輝き出しました。
 そこに映しだされた自分の姿・・・

 今度は最初から全身が映っていました。
 でも、予想したような全裸姿ではありませんでした。

 首周りまで隠れたチャイナドレス、アオザイ風のボディコンマキシワンピのシルエット。
 そのバスト周りと下腹部周りだけが綺麗に透けていて、その他の部分はちゃんと隠れているんです。
 普通はひと様にお見せしてはいけない部分だけを誇示するように、あからさまにそこだけ、鮮やかに露出しているんです。

 真っ暗な中に浮かび上がる、一見、着衣姿の私。
 シルエットのコントラストで点々と白く浮き上がった私の顔と両手両足、そしておっぱいと股間。
 そんなにソコを見せたくて仕方ないの?って言いたくなっちゃうくらい、あまりにヘンタイな半裸着衣。
 予想を超えるふしだら過ぎる自分の姿に、被虐感と背徳感がギューっと凝縮され、それらが淫らな欲求へと姿を変えて下腹部をキュンキュン疼かせました。

 先ほどみつけたアンジェラさまたちの真横を通り過ぎました。
 これってやっぱり後ろから見たら、おっぱい裏の背中とお尻の部分だけ透けているのだろうな・・・
 喩えようの無い恥ずかしさがマゾマンコの奥を潤ませてきます。

 階段を上がってステージ上へ、スクリーンも消え、スポットライトが闇の中、私だけを照らし出します。
 楽屋に捌ける前に、この破廉恥過ぎる衣装にお似合いの、一番私らしいポーズをみなさまにご覧いただかなくてはなりません。

 クルッと回転してお客様がたと向き合います。
 ゆっくりと両手を後頭部へ。
 自分が今、みなさまからどんな格好に見えているのかを想像すると、羞恥にプルプル震えだしちゃいそうなほど。

 みなさま、どうぞじっくり、ヘンタイドマゾな私の恥さらしな姿をご覧くださいませ・・・
 心の中でお願いしながら、マゾマンコをみなさまに突き出すように少し弓反りになった服従ポーズで、ゆっくり5つ数えました。

 下腹部の透けた部分にじっと目を凝らしていたお客様がおられたなら、少しだけ開いた陰唇のほとりから零れ出た生温くも淫らな液体が左脚の内腿を伝って一筋、ツツツーッと滑り落ちていくのが見えたことでしょう。


オートクチュールのはずなのに 53


2016年7月17日

オートクチュールのはずなのに 51

「し、失礼しまーす」
 自分の格好が格好ですから、どうしても声は小さくなってしまいます。
 リンコさまに軽く背中を押され、そっと楽屋に足を踏み入れました。

「はーい。きたきた。時間通りだね」
 明るいお声、たぶんしほりさま、が聞こえ、こちらに背を向けて立ったまま談笑されていた3つの背中が一斉に振り返りました。

 私の姿を見た瞬間の、しほりさま、ほのかさま、そして里美さまの呆気に取られたお顔は、今でも忘れられません。
 えっ!?という形のままお口をポカンと開けられ、目を見開いて数秒間フリーズしつつ、私の裸を見つめていました。

「まさか、その姿のまんまでマンションから来た、のではないよね?」
 フリーズが最初に解けたしほりさまが、ひどく真面目なお顔で尋ねてきました。
「あっ、いえ、これは・・・」
 おっぱいと股間を両腕で隠し、ゴニョゴニョと弁明しようとしているところに、リンコさまの快活なお声がかぶさりました。

「あはは。実はねナオコ、じゃなくて小夜さん、チーフたちに服を全部取り上げられたまま部室に残されちゃったわけ。だからさー・・・」
 リンコさまが私の隣に並ばれ、嬉しそうにダンボール箱の顛末を面白おかしく、みなさまに説明されました。

 楽屋になったお部屋は、いろいろ物があってけっこう狭く、寄って来られたお三人が私を取り囲むようにして、リンコさまのお話に興味津々に頷きながら、チラチラ視線を送ってきます。
 股間に添えた手のひらが、ジワジワ熱くなってきていることに気がつきました。

「やっぱり直子さんだったんだ。メイクとウイッグで雰囲気違うから、誰かと思っちゃった」
 ベージュのパンツスーツをシックに着こなされた里美さまが少し呆れたようにおっしゃいました。
 その好奇に満ちた視線が私の剥き出しの肌を刺してきます。
 ほのかさまは、困ったような笑顔を浮かべ、まぶしそうに私の顔ばかり見つめていました。

 羞じらいに身を固くしながらも、あらためて楽屋内を見渡してみました。
 6帖くらいの長方形な空間の壁際にテーブルが設えられ、その上にしほりさまのメイクアップお道具が整然と並べられています。
 その横には今日ご披露するアイテムなのでしょう、衣装がズラリと掛かったハンガーラックとシューズボックス。
 
 奥のほうに三人掛けくらいのソファー、あと折りたたみ椅子が数脚。
 スタッフのみなさまの私物らしきバッグやカートがソファーの上に山積みなっていました。

 お化粧品の甘い香りが充満した蛍光灯が明るく煌めく室内で、華やかに着飾られた4人に囲まれ、ただひとり全裸の惨めな私。
 それは、さっき箱詰めにされたときに浮かんだ妄想とも相俟って、お伽話によくある、これから魔物の生け贄に差し出されるお姫様のような、ひどく切ない気持ちとなり、私の被虐願望を強烈に煽り立ててきました。
 
 みなさまにはすでに、私の全裸姿はおろか性癖までも知られちゃっていますし今更隠しても仕方ないのですが、その屈辱的な状況がとても心地良く、ふしだらなおっぱいとマゾマンコを隠す腕にいっそう力を込めて、羞恥に酔い痴れていました。

「さ、それじゃあメイクの最終チェックをしちゃいましょう。小夜さん、ここに腰掛けて」
 しほりさまが壁際の大きな鏡の前にある椅子を指さされました。
「今、社長さんがご挨拶されているから、あと15分ぐらいで出番よ」

 しほりさまのその一言で、それまで和やかだった雰囲気がピリッと張り詰めました。
 私も急激にドキドキしてきました。
 本当に私、これからショーのモデルをして、見知らぬたくさんのお客様に裸同然の姿を視ていただくことになるんだ・・・
 両方の乳首にグングン血液が集まってきているのがわかりました。

 促されるままに鏡の前に座りました。
「背筋伸ばして、まっすぐ鏡を見ていてね・・・」
 それから、しほりさまが鏡越しに私と目が合ったのを確認されてから、ニヤッと笑ってご自分の顎をクイッと前に突き出す仕草。

 ああん、しほりさまのイジワル・・・
 でもお約束したのだから、その仕草=ご命令をされたら逆らうことは出来ません。
 私の両手は、おずおずとおっぱいと股間から離れ、頭の後ろへと。
 リンコさまの愉しそうなお顔と、ほのかさまと里美さまの不思議そうなお顔が、正面の鏡の端に映っていました。

 もはやおっぱいも股間も隠すことは出来ません。
 それどころか、視て、と言わんばかりのおっぱい突き出しポーズ。
 鏡の中で自分の大きめな乳首が痛々しいほど背伸びして尖っているのがわかります。
 そして背後から鏡の中を覗き込むみなさまの視線が、そこに集中していることも。

「まっすぐ前向いていて。よかった。そんなにメイクは崩れてないわね」
 おっしゃりながら、リップやシャドウをチョコチョコっと足してくださるしほりさま。
 ほのかさまもブラシで入念にウイッグを整えてくださっています。

 鏡の横には、会場の様子が映った大きめのモニター。
 薄暗がりの中、スポットにライトに照らしだされた艶やかなお姉さまが、マイク片手に何かお話されている映像が映っていました。

「おっけー。完璧よ。小夜さんは立って。リンちゃん、最初のアイテム着せちゃって」
 しほりさまがテキパキとご指示を出され、リンコさまが茶色っぽい布地を持って傍らにやって来ました。

「そう言えば、マエバリは?するんでしょ?」
 リンコさまが私に最初のアイテムを着せようとして、ふと思いついたように傍らのほのかさまに尋ねられました。

「あ、それなのですけれど、こちらに来てからのミーティングでチーフが部長たちとお話し合いされて・・・」
「今日は小夜さんがモデルだから、パスティースもマエバリも、しなくていいでしょう、って・・・」
 ほのかさまがおっしゃりづらそうに、私の顔と尖った乳首を交互に視ながら、小さなお声でおっしゃいました。
「そのほうが、お客様に与えるインパクトが強くなるし、モデルさん、つまり小夜さんだってノルはず、って、きっぱりと」

「へー。チーフったら、勝負賭けてきたじゃん」
 リンコさまが嬉しそうにおっしゃったとき、不意にお部屋一番奥の壁の一部分が開き、盛大な拍手の音が楽屋内に雪崩れ込んできました。
 どうやらそこがステージへ出るドアのよう。
 つづいて、バッチリメイクをキメたお美しいお姉さまの少し上気されたお顔がひょっこり。

「はあぁぁ、これでお役ご免。あとはゆっくりショーを愉しむだけね」
 うっすらと汗の浮いたお顔でニッコリ微笑まれたお姉さま。
「おつかれさまでーす」
「おつかれさまでーす」
 お姉さまに向け、口々にご挨拶されるみなさま。

「お、来てたわね、期待のスーパーモデル小夜ちゃん。あとはしっかり頼むわよ」
 私だけに向けてニコッと笑って人目も気にせず、まだ全裸のままの私を抱き寄せてギュッとハグしてくださるお姉さま。
 パフュームの心地良い香りに包まれ、スーツの布地に剥き出し乳首がザラッと擦られてマゾマンコがキュン。

 数秒間の抱擁が解けると、お姉さまが至極真面目なお顔で、みなさまに向けておっしゃいました。
「さあ、このあと司会のふたりがざっと最初のアイテムの説明したら、ショーの始まりよ。準備はいい?」

「あ、はいっ!」
 あわてたようにリンコさまが私に最初のアイテムを着せるために私の右腕を取りました。
 里美さまはインカムを装着し、ほのかさまはズラリと衣装がぶら下がったハンガーラックへと駆け寄ります。
 リンコさまの手でかぶりのワンピースのようなお洋服を着せられながら、傍らのお姉さまからレクチャーを受けました。

「ランウェイは片道だいたい50歩くらい。先端まで行ったら5秒ほどポーズ決めて、回れ右ね」
「戻ったらステージでまたお客様に向けてポーズ決めて、ここに戻る、基本的にそれのくりかえし」
「最初のうち緊張気味だったら、頭からっぽにして歩数だけ数えながら歩くといいわ」

「後半のアイテムは、ステージに戻ってから仕様によってはステージ上に残ることもあるけれど、それは事前にリンコが教えてくれるわ。ステージ上ではアヤに従いなさい」
「朝にも言ったように、モデルは基本高飛車ね。ポーカーフェイスをキープ」
「モデルウォークに関しては、まったく心配していないけれど、照れ笑いとか困惑顔は絶対見せちゃだめよ。あくまでもエレガントにね」

 そこまでおっしゃってから、そっと私の耳に唇を寄せてきました。

「思う存分愉しんできなさい。大勢の人前で恥ずかしい姿を晒すの、ちっちゃい頃からの夢だったんでしょ?」
 私の耳朶をくすぐるお姉さまのヒソヒソなイジワル声。

「顔にさえ出さなければ、どんどん感じちゃっていいわよ。直子がずっと溜め込んでいたヘンタイ性癖を今日のお客様に見せつけてやりなさい」
「日曜日には直子の部屋で、ふたりきりでたっぷり反省会してあげる」
 コショコショっと早口でおっしゃって、唇が離れました。

「営業部のがんばりのおかげで、今日は今までで一番たくさんお客様が来てくだっさったし、絶対成功させましょう」
 普通のお声にお戻りになったお姉さまが、みなさまにお聞かせするようにおっしゃいました。
「はいっ!」
 綺麗で力強いユニゾンが楽屋に響きました。

「あたしはミサのところで見てるから、何か急な連絡があったら里美、イヤモニで呼んで」
「はい。了解です」
 里美さまのお答えに頷かれてから、さっき私たちが入ってきたドアの向こうへと、お姉さまが消えました。

 ドアを閉じる前、
「頼んだわよ、夕張小夜さん?あたしを悦ばせてね」
 というお言葉とウインクをひとつ残して。

 私は、いつの間にか最初のアイテムを着せられていました。
 それは、グリーンと茶色をベースにしたアーシーな色合いのワンピースでした。
 か細い糸を幾重にも織り込んだ薄手のとても軽い生地で、丈も長いストンとしたシルエット。
 アジアの暑い国のほうっぽいエスニックなデザインで、シックな感じ。

 今日のイベントのアイテムはキワドイキワドイって、今までさんざんみなさまから吹きこまれていたので、ちょっと拍子抜けでした。
 ノースリーブの脇が大きめに開いていて横から中が覗けちゃいそうな感じな以外、さほどセクシーな印象はありません。
 素肌に直で着て生地が柔らかいため、私の尖ったバストトップはあからさまに浮き出ているのは恥ずかしいけれど。
 確かに素肌にこれだけ着て街中を歩け、と言われたら躊躇してしまうでしょうが、すごく久しぶりにようやく全裸の状態を隠すことが出来たので、なんだかホッとさえしていました。

「そろそろ出番です」
 ラップトップのパソコンに向かっていた里美さまがこちらを振り向き、おっしゃいました。
 ドキン、と心臓が跳ね上がります。
 リンコさまに手を引かれ、先ほどお姉さまが入ってこられたステージへと向かうドアの前に導かれました。

「このアイテムは裸足のままで。裾をひるがえす感じで颯爽と歩いて。足の裏、汚れていない?」
 すかさずほのかさまが濡れタオルを持ってきてくださり、ひざまずいて私の両足を拭いてくださいました。

「そのドアを出るとステージ下手に出るの。司会の演壇は上手。出てすぐはカーテンで隠れているから客席からは見えない」
「ステージに出たら、モデルウォーク開始ね、中央にランウェイに降りる階段が三段あるから、そこまで進んで階段降りて、そのままランウェイを端まで直進ね。出てもお辞儀とか一切しなくていいから」
 リンコさまが真剣なお顔で注意事項をレクチャーしてくださいます。

「端まで行ったら場内が暗転してスポットが当たるから、少し歩調を緩めて戻ってきて」
「ステージに戻ったら、中央付近で一度、お客様のほうに向き直してポーズ。そうね、右手を脇腹に当ててちょっと気取る感じ」
「スポットライトが司会のふたりに移ったところで退場。お辞儀は無しでスタスタと。すぐに次のに着替えるから」

「は、はい。わかりました」
 お答えしながら、どんどんどんどん、ドキドキが高まってきました。

 いよいよショーモデルデビューです。
 最初のアイテムは、脇からおっぱいが覗いちゃいそうな以外、無難なワンピース。
 でも、それは最初だからで、きっとこれからどんどんキワドクなっていくはずです。
 
 午前中に見せていただいたイベントパンフレットに載っていたアイテムたちを思い出そうとしてみますが、自分が着て人前に出たら恥ずかしさでおかしくなってしまいそうなアイテムばかりだった、ということ以外、具体的なことはまったく思い出せませんでした。

 もしも思い出せたとしても、もはや逃げられません。
 イベントはすでに始まっていて、私には、お客様がたの前にそれらを着て出つづけることしか選択肢は無いのです。
 私がどんなに恥ずかしい思いをして、辱められ蔑まれたり嘲られても、それは私の望んだこと。
 そうすることによって、愛するお姉さまに悦んでいただけるのですから、覚悟を決めるしかありません。

「スタンバってください」
 里美さまのお声。
 ほのかさまがドアをそっと開け、私はドアのすぐ前に立たされました。
 早いビートのダンスミュージックぽい音楽が大きめなボリュームで聞こえています。

「緊張してる?大丈夫。リラックスしてがんばって」
 リンコさまが私の右手をギュッと握っておっしゃってくださいました。
 それからイタズラっ子のようなお顔になり、

「暗転してスポットライトが当たった後、どんな状態になってもあわてちゃだめよ。スーパーモデルはポーカーフェイス。忘れないで、ね?」

 ニッとイタズラっぽく笑いかけるリンコさまに背中を押され、ステージ上に一歩、足を踏み出しました。


オートクチュールのはずなのに 52


2016年6月26日

オートクチュールのはずなのに 50

「あっちの部屋でね、いいものみつけちゃったんだ。で、ピンて閃いちゃった」
 洋間のドアを指さしたリンコさまが、含み笑いを浮かべて私をじっと見つめながらおっしゃいました。

「そのいいものって、ガウンとか、お洋服ではないのですよね?」
「もちろん。今持ってきてあげる」
 タタタッと小走りに駈け出したリンコさまが洋間のドアの向こうへ消えました。
 すぐに戻られたリンコさまは、両手で大きな板のようなものを持っていました。

「これね、イベント会場の飾り付けに使うトルソーとかを運ぶためにさ・・・」
 おっしゃりながら、持ってきた一枚の板を慣れた手つきで広げると、ずいぶん大きめなダンボールの箱になりました。

「トルソーを一度に四体詰め込めたから、人ひとりくらいなら余裕で入れるはず」
 6~70センチ四方くらいの底で、高さも同じくらいの頑丈そうなダンボール箱。

「玄関に台車があるから、アタシが押して会場まで運んであげるよ。中に入っちゃえば裸でもへっちゃらじゃん?」
「私が、この中に、入るのですか?」
「うん。アタシ、台車のハンドリング、上手いんだよ。学生の頃、宅配便のバイトしてたことあるから」
 屈託ない笑顔でおっしゃるリンコさま。

「ほら、いけるかどうか、ちょっと入ってみて。そろそろ時間だからさ」
「裸のまんまで、ですよね?」
「仕方ないじゃん。着るものなんもないんだから」
「は、はい・・・」

 リンコさまが押さえてくださっているダンボール箱の縁をまたぎ、恐る恐るな感じで箱の中に足を踏み入れました。
 両足とも踏み入れると、突っ立った姿勢でおへそくらいまでが箱の中。

「それで、しゃがんでごらん」
 お言いつけ通りにすると、ひょっこり頭だけが箱から覗く感じ。
「やっぱりペタッとお尻着けなきゃ、完全には入んないか・・・座り込んじゃってみて」

 お言葉に促され後ろ手を着き、ダンボールの底に裸のお尻を着きました。
 ダンボールがひんやり、おしりの熱を奪います。
 足を崩して胡座をかくような格好になると、その分、箱の中がちょっと窮屈になりました。

 リンコさまが蓋を閉めようと、折れたダンボールを被せてきました。
 私が首をかしげるように折り曲げると、ダンボール内にからだが全部隠れました。
 真っ暗な中に二箇所、おそらく箱の持ち手のために空けられたのであろう細長楕円形長さ10センチ位の穴があり、そこから薄っすらと光が差し込んできます。

「よかった。大丈夫そうじゃん。それじゃ急がなくちゃ。もうすぐ3時になるし」
 蓋が開いて、リンコさまが手を差し入れてきました。
「えっ?出るのですか?」
「あったりまえじゃない。ナオコが入ったままの重い箱なんて、アタシが玄関まで運べるワケないでしょ」
 リンコさまの手に縋って、箱から出ました。

「入り心地はどう?もし窮屈だったら、膝を抱えて丸まって寝転んじゃったほうがラクかもしれない」
 おっしゃりながら、ウイッグとビューラー、サングラスを紙袋に詰め、さっき使った白いバスタオルを箱の底に敷いてくださいました。
 それからご自分のバッグを肩に提げ、ぐるっと周りを見渡したリンコさま。

「忘れ物なし。はい、これ持ってついてきて」
 紙袋を私に渡し、片手で空ダンボールをひきずり、玄関へ向かわれました。
「ほら、もたもたしないで。遅れちゃうよ?」
「あ、はいっ!」
 紙袋片手に全裸のまま、リンコさまを追う私。

 リンコさまは、玄関ドアを外開きに開け、ドアが閉じないようにストッパーをかけた後、玄関先に折りたたまれていた台車をギーガッチャンと組み立てて廊下に置きました。
 その上に空のダンボール箱が置かれます。
 
 私はと言えば、左腕でおっぱいを庇い、右手に持っている紙袋で股間を隠しつつ靴箱の陰から、そんな廊下の様子を見ていました。
 だって、開け放たれた玄関の向こうは、紛れも無く公共の場ですから。

「ナオコの靴、これ?」
 沓脱ぎにポツンと残されたベージュのパンプスを指さしてリンコさまが尋ねてきました。
「はい・・・」
「ヒールがあるから、履いて箱に入ると危なそうだね。いいわ、アタシが持ってってあげる」
 おっしゃるなりパンプスを拾い上げ、ご自分のバッグに押し込みました。

 それから、ダンボール箱の側面に黒くて長いゴムバンドをあてがい、台車の押し手のハンドル部分もろとも括りつけました。

「こうしておけば、台車が前のめりになっても箱が台車から落ちないでしょ?バイト時代に培った隠しワザ」
 ずいぶん得意そうなお顔のリンコさま。

「今ジャスト3時。ほら早く廊下に出て、鍵閉めるから」
 なんでもないことのようにおっしゃるリンコさまですが、お部屋を出てしまえばマンションの公共の廊下、そして私は全裸です。
 どうか廊下に誰もいませんように・・・誰も通りませんように・・・お部屋からも出てきませんように・・・
 祈る気持ちで玄関ドアを裸足でくぐり抜けました。

「はい、入って入って」
 リンコさまがダンボールの縁を押さえながら急き立てます。
 大きく脚を開いてダンボールをまたぎました。

「こんなところで真っ裸の女子を箱に詰めるなんて、かなり淫靡でハンザイぽいシチュだよね?」
 とても嬉しそうなリンコさまのひそめたお声が頭上から降ってきます。

「出来れば後ろ手に縛ったり、M字開脚拘束とかしてると、もっと雰囲気なんだけどなー。猿轡とかさ」
「令嬢ラチユウカイカンキンコウソク、みたいな?もしくは悪の秘密組織の調教済みセイドレイの出荷、みたいな?」

 ワクワク妄想全開なリンコさまのお声を裸の全身に浴びながら、ダンボール箱の中に座り込みました。
 持っていた紙袋はお尻の横に置き、はしたなくお股開き気味の胡座。
 今度はお尻の下にバスタオルが敷かれているので、さっきより少しだけ座り心地がいいみたい。

「おっけー?閉めるからね。それじゃあ、しゅっぱーつ!」
 進行方向前後から蓋が下りてきて、箱の中が真っ暗になりました。
 持ち手用の穴も進行方向の前後に有り、かしげた首の目線を少し上げると、お外の様子がチラチラッと見えました。

 ガラガラと床を転がる4つのキャスターの振動が、台車の荷台とダンボール越しに私のからだをプルプルと震わせています。
 進行方向に向いて立て膝気味の胡座ずわりな私。
 前屈みになっているので、右おっぱいの先が右の太腿に押し付けられています。
 
 絶え間なくつづいていた振動が止まりました。
 前方の持ち手穴を覗くと、エレベーター前のよう。

 いよいよ私、ダンボールに詰め込まれた、モノ、みたいな、こんなふしだらな状態でお外に出されちゃうんだ・・・
 と、思う間もなくエレベーターが到着し、ガタガタっと中へ。
 すぐに下降を始めてチーン。
 台車が動き、マンション一階のエレベーターホール。
 そこで台車が静止しました。

 あれっ?と思っていると、突然、ダンボールハウスの天井が開きました。
 いやんっ、開けちゃだめーっ!
 箱の中に突如差し込んできた眩しい光に、思わず顔を背けてうつむきました。

「大丈夫よ、周りに誰も居ないから。ちょっと一応、記念撮影しとこうと思ってさ」
 そのお声に恐る恐る顔を上げると、箱の方に携帯電話を突き出したリンコさまが笑っていました。
「ほら、ちゃんと顔上げて。おっぱいも見えるように腕どけなさい」
 たてつづけにカシャッカシャッという撮影を告げる電子音が鳴り響き、天井が閉じられました。

「さあ、急がなくちゃ」
 独り言のようなリンコさまのお声を合図に、再び台車が動き始めました。
 ガラガラ音がしばらくつづいた後、急に辺りのざわめきが大きくなりました。
 マンションのエントランスドアを抜け、とうとうお外に出たようです。

「うひゃー。まだポツポツ降ってるんだ」
 濡れた車道を走り抜けるシャーッという自動車のタイヤ音とエンジン音。
 人々が通り過ぎる足音とさざめき。
 ダンボール箱を打ち付けるポツポツという雨音。
 そんな街の喧騒の中、かすかにリンコさまの独り言が聞こえました。

 マンションからオフィスビルへ入るには、舗道を一度一番端の交差点まで行って渡り、そこから少し戻る感じに進むことになります。
 オフィスに通うようになってからは毎日のように行き来してきた、歩き慣れた道。
 沿道に大きめな24時間営業のスーパーマーケットがあるので、交通量、歩行者共に終日かなり多いことも知っています。

 そんな私にとって極めて日常的な空間を、今はダンボール詰めの全裸で運ばれています。
 先ほど出発前にリンコさまがおっしゃった一言を思い出しました。
 ・・・悪の秘密組織の調教済みセイドレイの出荷・・・
 今の私って、まさしくそんな感じに思えました。

 オフィスに着くなりお姉さまのご命令で丸裸にされ、綾音部長さまにからだの隅々まで観察され・・・
 裸コートで離れたマンションの一室に連れ去られ、お姉さまからお浣腸を施され・・・
 他のスタッフ全員の前でも全裸を隠すことは許されず、無毛のマゾマンコまでしっかり目撃され・・・
 初対面のしほりさまに全身隅々もてあそばれ、会社の先輩のリンコさまに何度もイキ顔をご披露し・・・
 今こうしてモノのようにダンボール詰めで運ばれて・・・
 この後は、何人もの見知らぬ方々の前で、エクスポーズ=露出というテーマのお洋服姿を視ていただく・・・

 今日これまでの一連の流れを思い出してみるだけで、自分の中のマゾの血が沸々と滾ってくるのがわかりました。
 そして、今日を境に、自分の人生が確実にガラッと変わってしまうであろうことへの不安と期待。
 もう私は、昨日までには戻れないんだ・・・
 頭の中では、小学校のときに習ったドナドナというお歌のメランコリックなメロディがくり返されていました。

 ダンボール箱の中で揺られながら、いつの間にか左手が左足首を、右手が右足首を掴み、自主的にM字開脚姿勢となっていました。
 少し背中を滑らせて、お尻を宙空に持ち上げて突き出すようにのけぞります。
 あの持ち手の穴から、私の広げたマゾマンコが、チラッとお外に覗いちゃったりしないかな・・・
 自分を辱めたくて仕方なくなっていました。
 狭い箱の中が、嗅ぎ慣れた自分の淫らな臭いで充満しているのがわかりました。

 スロープを下ったり上ったり。
 ガタガタ揺れる箱の中ですっかり被虐に浸っていると、いつの間にか喧騒が遠のいていました。
 どうやらオフィスビル内に入ったみたい。

「やれやれ。この界隈のバリアフリーはあんまり優しくないね。エレベーターに辿り着くまでかなり遠回りだもん」
 不意なお声とともに再び天井がパカっと開き、リンコさまが覗き込んできました。

「あっ!いやんっ」
「って、ナオコ、すごい格好してるじゃん。こっちに向けてオマンコパックリ拡げちゃって」
「あっ、いえ、こ、これは・・・」
 慌ててふんぞり返った姿勢を正そうとすると、リンコさまに止められました。

「だめっ!そのまま足首掴んでなさい。こんな激エロい格好、ナオコの愛するお姉さまにお見せしなくてどうするの?撮影しとかなきゃ」
 素早く携帯電話を構えてカシャカシャっと連写されました。

「で、まあ、それはそれとして、ごめん。失敗しちゃった」
 リンコさまが携帯電話を仕舞いながら、いつにない早口でおっしゃいました。

「アタシ、ずっと興奮してたから気づかなかったけど、今急に、すっごくオシッコしたいのよ。部屋出る前にしておこうと思ってたのに」
「雨に濡れて冷えちゃったのか、交差点の辺りから、すっごくしたくなっちゃって。トイレ見えたら、もう我慢できなくなっちゃった」
「大丈夫。ここは業者用の荷物エレベーター前だから、一般客は使わないから。ほんの1、2分だから、待ってて」

 切羽詰まった感じでそう言い残し、ササッと消えたリンコさま。
 ダンボール箱の蓋を閉めるのも忘れて、私は放置されてしまいました。
 ちょっ?ちょっと、リンコさま・・・
 焦って蓋を閉めようと頭上に手を伸ばしかけ、あらためて、辺りがすごくシンとしていることに気づきました。

 本当に周りに誰もいないみたい。
 だったらちょっと冒険して、状況を把握しておくべきかも。

 恐る恐る箱から頭を出してみると、そこはオフィスビルの一番端っこ、確かに経験上、人通りは少ない場所ではありました。
 吹き抜けの広いバスターミナル沿いで、イベント会場付近に直通しているエレベーターホールのある長い通路の片隅。
 確か、ドアを越えた奥にお客様用エレベーターがあって、ここは駐車場からの出入り業者納品用エレベーター。
 
 そのエレベータードアの前に、私の入ったダンボール箱を載せた台車がポツン。
 女子トイレは確か通路並びで、ここのすぐ横にあったはず。

 状況はつかめたものの全裸でこんなところにひとり放置され、不安であることに変わりはありません。
 いつ、どこかの業者さんがエレベーターの方に来てもおかしくありませんし。
 ここは大人しく、箱に篭ってリンコさまを待つしかないようです。
 再び箱の中に潜り込み、手を上に伸ばして蓋を閉じようとしました。

 よくあるダンボール箱のように、前後二枚を閉じてから左右二枚。
 ただ、前後二枚を引っ張って閉じると、左右の二枚に手を伸ばすことが出来ません。
 仕方がないので、前後の二枚をグイッと内側まで引き込み、空いた空間から手を伸ばして左右の二枚も引き寄せます。

 うまくいった!
 と思って引き寄せていた手を離すと、前後左右4枚ともフワッと浮いて、蓋の真ん中に隙間が出来てしまいます。
 きっと運んでいるときは、リンコさまのバッグか何かを重しに置いて蓋を押さえていてくださったのでしょう。

 蓋が中央に作る隙間は5センチ四方くらい。
 真上から見下ろせば、目を凝らさなくても、中に見える私の肌色に気づいちゃうはず。
 かと言って、隙間を指で引っ掛けて引き寄せたら、却ってその指のほうが注目を惹いちゃいそうだし。
 考えあぐねていたら、ふと自分の左手に触れるものがありました。

 そうだ、リンコさまがウイッグとかを入れてくださったこの紙袋で穴を塞いでしまえば、中は見えなくなる。
 ううん、この紙袋をお外に出して、蓋に載せて重し代わりにするほうがいいかも。
 
 思いついたら即実行と蓋を開けかけたとき、上のほうでガタンと物音が聞こえました。
 つづいてウィーンってモーターが回るような音。

 エレベーターが動いている?
 誰かが傍らに来て呼んだのかしら?
 でもさっきからずっと、周囲で不審な物音はしなかったし。
 だったら、きっと誰かがエレベーターで何階からか、降りてくるんだ。

 私は、左手に持った紙袋を天井の穴を塞ぐようにかざし、箱の中に光が入り込まないようにしてジッと息を殺していました。
 やがてすぐ近くでガタンと物音がし、モーター音が止まりました。
 ポーンという電子音の後、ザザーッと扉が開く音。

「おおっと!どこのどいつだ、こんなところに荷物置きっぱなしにしたやつ!」

 ガラガラなご中年ぽい男性のお怒り声が聞こえたと思ったら、台車がグインと動いてガタンッ!
 前の右角が壁に当たったようです。
 台車の持ち手のところでも、押すか蹴飛ばすか何かされたのでしょう。

 うわ、どうしよう!?
 どこの荷物だこれ?ってダンボール開けられちゃったら・・・
 お相手は、怖そうな男性っぽいし・・・
 一気にパニクりそうになったとき、聞き覚えのある大きなお声がフェードインして聞こえてきました。

「ごめんなさーいっ!おじゃまでしたよねー。今どかしまーすっ!ちょっと、おトイレに寄っていたものでー」
 リンコさまのお声がすぐ近くに聞こえるようになって、ダンボール天井の穴が何か重いもので塞がれました。

「ああ、お姉ちゃんのか。だめだよ、扉の真ん前に置きっぱなしにしちゃ。エレベーター使う人が迷惑だろーが」
「はい。ごめんなさい。ご迷惑おかけしましたー」
 台車が1メートルくらい、ゆっくりと動いた感じがしました。
 たぶん、男性から遠ざけたのでしょう。

「やむをえず置いとくなら隅っこの方にな。ここはみんなが使うんだから。気をつけなよ」
 最後はずいぶんお優しげなお声に変わって、ガラガラと台車を押すような音が遠ざかって行きました。
 入れ違いにエレベーターへ乗り込みます。

「ああびっくりした。あの宅配便のおじさん、箱開けようとしてんだもん。危機一髪だったー」
 エレベーターの中で、リンコさまが心底ホッとされたようなお声でおっしゃいました。

「えっ?そうだったのですか?」
「うん。箱に右手を伸ばしているところが見えたから、大慌てで叫びながら帰ってきたんだから」
 ふぅー、と大きくため息をつかれるリンコさま。

「あれでもし、あのおじさんに箱開けられちゃってたら、どうなってたんだろうんね?ナオコもアタシも。あんまり品のいい人じゃなさそーだったし」
 ポツンとおっしゃったリンコさまのお言葉に、私も今更ながら嫌な汗が背中をツツーッ!

 もう一度リンコさまがハァーッと大きなため息をつかれたとき、ポーンと電子音が鳴り、どうやら目的階に着いたようでした。
 エレベーターを出ると、さっきまでのあれこれが嘘だったみたいに再びシーンと静まり返った中、なんだか眠そうなストリングスBGMが低く聞こえてきました。

「もうこの時間は、どの会場もそれぞれイベントやら会議やらの真っ最中だからね。フロアには人っ子一人いないみたい」
 台車のキャスターの音もお外の道路みたくガタガタせず、ススーっと進んでいます。

「おっけー、着いた。出て」
 えっ?だって会場のドアを開けたようなご様子も全然無かったし、ここってまだフロアの廊下なのでは?
 私の心を知ってか知らずか、天井があっさりパッカリ割れて全開になりました。

「大丈夫だって。ここは楽屋へつづくドアの前の廊下。誰もいないから」
 箱の蓋が開いても立ち上がってこない私を安心させるように、箱の中にリンコさまの右手が差し出されました。

 その手に縋り、恐る恐るゆっくり、立ち上がり始めます。
 周囲の雰囲気は紛うこと無く、昨日下見に訪れたイベント会場フロアそのものでした。

「会場、長細かったでしょう?お客様が出入りする入口ドアはあっち」
 今進んできたのであろう廊下の先を指さされるリンコさま。
「そんで、このドアはステージ側、関係者以外立入禁止の楽屋へ通じるドア」
 目の前のドアを指さされました。

「ここからはナオコじゃなくて、我が社のイベント成功のカギを握るスーパーエロティックモデル、夕張小夜なんだからね」
 台車の横に私のパンプスを、きちんと揃えて置いてくださりました。
 リンコさまが押さえてくださるダンボールの縁をまたいで、ひとまず裸足でリノリュームの床に降り立ち、それから身を屈め、ベージュのパンプスを履きました。

 全裸に、なぜだかパンプスだけの私。
 それもこんな昼下がりの瀟洒なオフィスビルの廊下で・・・

 性懲りもなくぶり返してくる被虐の滾りにクラッとしつつ立ち上がると、更にびっくり。
 会場を仕切る壁沿いに通る廊下のもう一方の側は、ビルの外壁。
 そしてそこに並ぶ、大きな窓。
 
 窓からはお外のお空が見え、雨模様曇りがちなガラス窓には、私の全裸姿がクッキリ鮮やかに、映っていました。
 公共の場所でのありえなくもあられもない自分の姿を客観的かつ強制的に見せつけられ、羞じらいが全身にドッと押し寄せてきました。

 そこにスッとウイッグを被せられました。
 さも当然のようにガラスを鏡代わりに、そこに映った私の裸身をじっと視ながらウイッグを整えてくださるリンコさま。

「さあ、これでいいわ。小夜さん、楽屋に入りましょう」

 前髪パッツン、ストレートセミロングのウイッグとベージュのパンプス以外、何も身に着けていない私の手を引いて、リンコさまがゆっくりと、イベント会場楽屋へのドアをお開けになりました。


オートクチュールのはずなのに 51

2016年6月19日

オートクチュールのはずなのに 49

 あまりの気持ち良さに、背中が弓なりにのけぞりました。
 同時に左乳首への刺激が緩みます。
 ああん、もっと・・・

 カシャン!
 足元で聞こえた音に上体を戻すと、ドレス姿のリンコさまは、いつの間にか椅子のほうへと戻られ、今まさに腰掛けようとされているところでした。
 私と目が合うとニコッと微笑み、黙って私の足元を指さされました。
 まつげビューラーが床に落ちていました。

「使っていいよ」
 リンコさまのお言葉に弾かれたように上体を屈め、ビューラーを右手で拾い上げます。
 からだを起こしたときにはすでに、持ち手の2つの穴に親指と中指を潜り込ませていました。
 迷うことなくビューラーのシリコンゴム部分を今度は右乳首にあてがい、指に力を込めました。

「はうっ、んんんんんーーーーっ!」
 再びあの痛みの快感が戻ってきました。
 今度は背中がのけぞっても、自分で押し当てているビューラーは乳首から外れることなく、噛みつかれたまんまです。

「あっ、あっ、あっ・・・」
 噛みつかせたままビューラーを引っ張ったり捻ったり。
 濃い桜色に染まった乳暈がゴムのように伸びたり縮んだり。
 
 そのあいだに左手は当然のように下腹部へと伸び、中指と薬指が折れ曲がって膣内へ。
 手首の手前、掌の盛り上がった部分で膨らみきったおマメをギュウギュウ潰しながら擦っていました。

「あんっ、あっ、あっ、あーっ」
「んーーっ、あっ、あっ・・・」
「んーっっ、んんーーっ、あんっ、ああんっ、んんーっ!」

 期せずして始まっちゃったオナニーは、もう無我夢中。
 バスルームでお姉さまからイカせていただいて以来今まで、必死に抑え込んできた欲情が暴発しちゃったみたい。
 ギュッと目をつぶった瞼の裏側で、全身の細胞が快感だけを追い求めていました。
 
 股間に貼り付いた左手が、そこだけまるで別の生き物のように、せわしない複雑な動きをくりかえします。
 浅ましくがに股気味に折れた膝がガクガク震え、みるみるうちにグングン高まっていきました。

「あああ、いぃっ、いいっ、いぃぃぃ・・・」
「あっ、いぃ、いく、いくぅぅ・・・」
 からだ中を快感が駆け巡り、その快楽に前のめりになって酔い痴れていると・・・

「あれ?もうイッちゃうの?イクときは、どうするんだっけ?」

 唐突にやけにハッキリとしたお声が、鼓膜を揺らしました。
 そうでした。
 目の前にリンコさまがいらっしゃるのでした。
 とにかくイキたい一心で、完全に自分だけの世界に没入していた私は、リンコさまの存在さえ、すっかり忘れ去っていたのでした。

 私ったら、なんの羞じらいもなく、いつのまにかリンコさまの目の前で、オナニーを始めちゃっていたんだ・・・
 つぶっていた目を薄く開けると、目の前にリンコさまの愉しげな笑顔。
 
 遅まきながらの羞恥が全身に広がり、それは快感の炎を更に燃え立せる油となりました。
 もちろんそうしているあいだも私の両手は欲望に忠実に休むことなく、自分のからだを瀬戸際へと追い立てていました。

「あぅ、イ、イッていいですか?リ、リンコさまぁ、ぁんっ」
 リンコさまをじっと見つめてお願いしました。

 リンコさまに視られている、ということを意識した途端、快感の質がグンと研ぎ澄まされました。
 リンコさまの視線が釘付けとなった私の左手は、その注目に精一杯応えるべく、マゾマンコの内側を抉るように激しく陵辱しています。
 手のひらはクリトリスを、摩擦熱で火が点いてしまいそうなほど乱暴に上下しています。

 視てください、リンコさま・・・私のどうしようもなくふしだらな本当の姿・・・
 もはや待ったなしのところまで来ていました。

「ああん、お願いですぅ、いぃっ、イッていいですかぁ、リンコさまぁぁ・・・」
 両膝がガクガク震え、もう立っていられないかも・・・

「いいよ、最初だしね。そのまま、イッチマイナー」
 最後の部分だけなぜだか外国人のカタコト日本語みたいな発音で、ご冗談ぽくおっしゃったリンコさま。
 そのお言葉を聞いた途端、からだがフワッと浮き上がるような感覚とともに、頭の中が真っ白になりました。

「ああっ、視て、視ててくださいぃリンコさまぁ、イキます、直子、イキますぅぅぅ・・・」
「あぁぁいぃぃぃーーーっ、イクっ、イクっ、イっクぅぅぅーーっ!!!」

 マゾマンコをリンコさまのほうへと見せつけるみたいに突き出して、大きく後ろへのけぞったまま快感に打ち震えました。
 ヒクつく腰をなんとか支えようと、両足が大きく開いていました。
 膝をついてはダメ、というご命令が頭の片隅に残っていたようで、砕けたがる膝を踏ん張りつつ、オーガズムの余韻に酔い痴れていました。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
「これで一回ね。気持ち良かった?」
 リンコさま、呆れたようなお顔をされている・・・

「アタシが見ていようが、おかまいなしなんだ?」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
「恥ずかしくないの?」
「はぁ、はぁ、恥ずかしい・・・です・・・」
「それでもイッちゃうんだ?」
「「はぁ、はぁ、ごめんなさい・・・」

「まだまだイケるよね?ナオコのオマンコ、ポカンて大きく口開けちゃって、ぜんぜん物足りなさそうだもん」

 私は、がに股の両膝に両手を置いた中腰の前屈み姿勢で、快感の余韻に息を荒くしていました。
 座っていらっしゃるリンコさまの視点からだと、腰は引いているものの、私の無防備な股間は丸見えなのでしょう。
 そして、リンコさまも私を、ナオコ、と呼び捨てにし始めたことにも気づきました。

「はぁ、はぁ、はいぃ・・・」
「本番前にエロい気持ち、全部発散させとかなくちゃ、ね?」
 からかうようにおっしゃったリンコさまの瞳に宿った妖しいゆらめきに、私のマゾ性がビンビン反応しています。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・はいぃ」
「それじゃあ今度はさ、アタシの顔をずっと見ながらやってみてよ。うつむいたり目をつぶっちゃダメ、ってことで」
 唇の端に薄い笑みを浮かべたリンコさまは、ゾクゾクするほどお綺麗でした。

 そんなふうにして私は、リンコさまの目の前で何度も、イキつづけました。
 最後のほうは、イク間隔がどんどん短かくなり、触ったらすぐ達しちゃうような状態。
 だから、自分でも何回イッたのか、わからないくらいでした。

 自分の手で膣口を大きく押し広げ、指三本を奥深くまで侵入させて掻き回しました。
 目線はずっとリンコさまを見つめ、イッていいか、何度もお許しを乞いました。
 
 ときにはあっさり許され、ときには無慈悲なまでに焦らされ・・・
 焦らされた代償は、私のマゾマンコからシオとなり、リンコさまの目前までほとばしりました。
 そのときリンコさまが、まさしくネコさんのように敏捷に、椅子を立って避けられるのを見ることが出来ました。

 途中、リンコさまがケータイのカメラを私に向けたことにも気づきましたが、私に拒絶する権利なんてありません。
 リンコさまのケータイの中に、私の浅ましい姿が記録される・・・
 リンコさまがその気になれば、私の恥ずかしい姿を誰にでも容易に見せることが出来るんだ・・・
 そんな考えが私のマゾ性をいっそう激しく煽り立てました。

 リンコさまから時間切れを告げられたとき、私はしゃがみ込み、快感の余韻に全身でハアハア息をしていました。

「残念だけど、そろそろ出かける準備をしなくちゃの時間。どう?ちょっとは落ち着いた?」
 近づいてきたリンコさまにウイッグをスポッと外され、肩にバスタオルを掛けられました。 
「汗びっしょりだから、それで拭くといいわ。あ、でもゴシゴシ擦っちゃダメ。肌をポンポンって叩く感じでね」
 
 いただいたタオルに、まずは顔を埋めて汗やよだれを拭き取りました。
 タオルがフワッとしていて気持ちいい。
 さすがにプロのモデルさん仕様のウォータープルーフ。
 タオルから顔を離すと、白地のタオルにメイクがまったく色移りしていませんでした。

 それからヨロヨロと立ち上がり、お言いつけの通りにからだをタオルでポンポン叩きました。
 そんな私をじっとご覧になっていたリンコさまが立ち上がり、近づいてこられました。

「やっぱし拭っただけじゃ、まだからだがベトベトしてそうね。バスルームに行きましょう」
 リンコさまに促され、バスルームへと移動しました。

 つい数時間前にお姉さまと裸で愛し合い、更にお浣腸までしていただいたバスルームは、全体がまだほんのり湿っていました。

「ナオコはそのバスタブの前辺りに立って、アタシの言う通りにするのよ?」
 おっしゃりながらリンコさまは、シャワーヘッドを何やら弄っていらっしゃいます。
「シャワーのままだと雫が飛び散って、アタシまで濡れちゃいそうだからさ」

「よし、っと。じゃあナオコ?」
 私から2メートルくらい離れた場所でニヤッと笑ったリンコさまが、お芝居っぽいわざとらしさでご自身の顎をグイッと手前にしゃくられました。
 
 ああ、やっぱり・・・
 薄々勘付いていた私は、ゆっくりと両手を挙げ、マゾの服従ポーズを取ります。
 それを見て、なんとも嬉しそうなリンコさまの笑顔。

「汚物は消毒だ~ひゃっはー」
 愉しそうなお声とともに間髪を入れず、勢いのある一筋の水流が私のからだめがけて飛んできました。

「あうっ、冷たいーっ」
 水流は真水で、当たった場所の皮膚が少しへこむほど水圧がありました。
 一直線の水流が、私の両腋の下を狙い、おっぱい、おへそを撃ち抜いて今は恥丘に襲いかかっています。

「ほら、後ろ向きなさい」
 ご命令に、おずおず背中を向けました。
 たちまち背中がびしょ濡れとなります。
 最初は冷たいと思ったお水も、火照ったからだにはちょうどいい気持ち良さに感じていました。

「そのまま前屈みになって、お尻をこっちへ突き出しなさい。マンコの中まで洗ってあげるから」
 お尻の割れスジに水圧を感じながら、すっかり板についてきたリンコさまのご命令口調通りの姿勢になりました。

「もうちょっと脚を広げて」
 そのお声に両足を左右へ滑らせると、水流が一直線に、私の膣付近に当たるようになりました。
 激しい水圧で抉じ開けるように、膣内まで水が侵入してくる感じです。
「んんーっ」
 その気持ち良さに、思わず淫らな声が洩れてしまいました。
 
「またえっちな声出しちゃって。もうすぐにイベントが始まるんだから、切り替えてよね?」
 お口では咎めるように、そんなことをおっしゃるリンコさまですが、その水流は執拗に、私が突き出している下半身のふたつの穴をせわしなく交互に狙っていました。

「あうっ、は、はいぃ・・・ご、ごめんなさいぃ・・・」
 口では謝っているものの、水圧に包皮をめくりあげられ完全に露出したクリトリスへの乱暴な刺激がたまりません。
 ああん、もっとぉ・・・

「ま、こんなもんか」
 肌を嬲る水流と、やかましく響いていた水音が唐突に途絶えました。
 目をつぶって徐々に昂りつつあった私は、なんだかがっかり。

「ほら、早くこっちへおいで。拭いてあげるから」
 シャワーヘッドを所定の場所へと戻されたリンコさまが、白いバスタオルを広げておっしゃいました。

 脱衣所で再びマゾの服従ポーズにされ、全開となった私の全身を、リンコさまが持たれたバスタオルでポンポン水気を拭ってくださいました。
 タオル越しの手のひらで私のおっぱいをふんわり包み込み、やんわりとタオル地を押し付けてくるリンコさま。
 
 タオル越しとはいえ、リンコさまの体温が素肌に伝わってきます。
 お腹、下腹、太腿、背中、お尻・・・
 リンコさまの至近距離でのバスタオルの愛撫に、うっとり、されるがままの私。

「おーけー。これでよしっと。なんとか間に合いそう。ナオコ、服着て」
 リンコさまのバスタオルがからだから離れ、手を引かてれて再びリビングへ。

「早く着て。ちょっと早いけれどもう会場へ出かけちゃいましょう。あ、下着は着けなくていいよ」
「えっと、あの・・・」
「だから、ここに来るときに着てきた服、どこに置いたの?」
「えっと、それは・・・」

 あわててお部屋中を見渡しましたが、それらしいものは見当たりません。
 トルソーもみんな裸ん坊。

 綾音部長さまにお借りしたレインコートは、お部屋に入る前の廊下で脱いでお姉さまにお渡しして・・・
 お姉さまは、お部屋に入ってからすぐにご自分もお洋服を脱いで、そのあとすぐ始めちゃったから・・・
 あのコートを、お姉さまはどこに置かれたのだろう?

「あの、あのですね・・・」
 リンコさまに手短かに、オフィスからここまで来たときのことをご説明しました。
 ご説明しながら、悪い予感が胸に渦巻いてきました。

「ふーん。オフィスでチーフとアヤ姉の前で丸裸にされて、そのままアヤ姉に借りたレインコート一枚で、ここまで来たんだ?」
「はい」
「裸コートっていうやつよね?ヘンタイさんがよくやる。ショッピングモール歩いて興奮した?」
「あ、えっと・・・はい・・・」
「だよね。ナオコは露出願望マゾッ娘だもんね」
 すっごく愉しそうなリンコさまのイジワル口調。

「そのコートなら、アヤ姉がさっき持って帰ったよ」
 リンコさまが素っ気なく、なんでもないことのようにおっしゃいました。

「さっきみんなが会場へ向かったとき、アヤ姉、左手にそれ提げてたもん。渋目のグリーンのやつでしょ?」
「そう・・・です・・・」
「さすがアヤ姉は、いいモノ揃えてるなー、って感心したから、覚えてる」

 ということは・・・

「ということは、今ここにナオコの着るべき服は無い、っていうことになるよね?」
「・・・はい」
「どうする?」
「あの・・・どうするって言われましても・・・」
「その素っ裸のまんま、会場まで行くしかないか。もう入り時間迫ってるし」
 からかうように私を見つめてくるリンコさま。

 全裸のままお部屋を出て、全裸のままマンションのエレベーターに乗り、全裸のまま通りに出て、全裸のまま交差点を渡り、全裸のままオフィスビルに入り・・・
 瞬時にそんな恥ずかし過ぎる情景が、鮮やかな走馬灯のように脳裏を駆け巡りました。
 そんなこと・・・出来る訳ありません。

「なーんてね」
 リンコさまの戯けたお声に顔を上げると、相変わらず超愉しそうな笑顔。

「それってぜひともやらせてみたいけれど、普通に考えて、見た誰かにすぐ通報されちゃうよね?公然ワイセツで。そうなったらイベントもろともアウトだし」
「たぶん羽織るものくらい、何かあるでしょ」

「あの、そう言えばお姉さまが、お風呂上がりにバスローブを着ていらっしゃいました。白くてピカピカした」
 私も必死に考えて思い出しました。
 バスローブを羽織っただけで公共の場に出るのもかなり恥ずかしいことですが、全裸よりは何百倍もマシです。

「なるほどね。私物だろうけど、チーフがそれ、そのままここに置いてってくれたらいいけど」
 おっしゃるや否や、お姉さまがお着替えに利用されていた和室の中へ入られました。

 しばらくして手ぶらで出てこられたリンコさまは、すぐに洋間のほうへ。
 ものの数分で、やっぱり手ぶらで出てこられました。

「いいニュースと悪いニュースがあるの。まず悪いほうね」
 お芝居がかった口調でそうおっしゃったリンコさまは、私の返事も待たずに嬉しそうにつづけました。

「残念ながら今この部屋内には、服のようなものは一切無かった。イベント準備期間中は、けっこうみんなの私物でごちゃごちゃいていたんだけどね。パジャマとかジャージとか」
「イベント前日にチーフがここに泊まるの、みんな聞いていたから、その前に急いで片付けたんだろうね。ナオコの言ってたバスローブもチーフが持っていったみたい」

 えーっ!

「あのあの、リンコさまは、お着替えとか、お持ちじゃないのですか?そのバッグの中に」
 絶望的な気持ちになりながら、お部屋の隅にぽつんと置かれたリンコさまのであろうバッグを指さして、すがるようにお尋ねしました。

「うん。残念ながらねー。今日はこのドレスで家から来ちゃったし。入っているの、スカーフくらいかな」
 相変わらずお芝居っぽく、わざとらしいくらい、さも残念そうにリンコさまがおっしゃいました。

「そ、それなら、会場の誰かにお電話して、大急ぎで綾音さまのレインコートを持ってきてもらうしかないです。リンコさま、ケータイ今お持ちですよね?」

「そんな泣き出しそうな声出さなくても大丈夫よ。アタシ、いいニュースもある、って言ったじゃない?」
 心の底から愉しそうなお顔のリンコさまは、間違いなく私をいたぶることに快感を感じられているようでした。

「アタシ、閃いちゃったんだ。ナオコが裸を晒さずに外へ出て会場まで行ける方法」
 ニコッと微笑んだリンコさまの冷たいお顔は、ゾクッと肩が震えるくらいサディスティックでした。


オートクチュールのはずなのに 50


2016年5月1日

オートクチュールのはずなのに 48

「まだ、そのポーズしているんだ?」
 しほりさまのお見送りから戻られたリンコさまが、ニヤニヤなお顔で私をじーっと見つめてきました。

「こういう見慣れた場所で、マッパの知り合いとふたりきり、って、なんかヤバイ感じ。無駄に照れちゃう」
 そんなお言葉とは裏腹に、リンコさまの舐めるような視線を全身に感じます。

 とくに下半身。
 私の半開きパイパンマゾマンコ。
 リンコさまの視線は、私の顔と上半身をたゆたっては、必ずそこに舞い戻っていました。

「恥ずかしい、よね?」
「・・・はい」
「だけど、その恥ずかしさが、いいんでしょ?」
「・・・はい」
「ふーん。マゾかあ。あの純情そうだったナオっちがねぇ」
 リンコさま、愉しくってたまらない、っていうお顔。

「そのポーズは、勝手にやめちゃいけないんだ?」
「・・・はい。次に何かご命令が、下されるまでは」
「ふーん。ここにはアタシしかいないんだから、次にナオっちが命令をきくのはアタシ、っていうことになるわよね?」
「・・・はい。そうです」

「それなら、もうしばらくそのポーズでいて。あ、違うか。命令だもんね?そのポーズでいなさい、だな」
「はい・・・」
 リンコさまをすがるように見つめながらお答えすると、とても嬉しそうにニッと微笑まれました。

 全裸で立ち尽くす私をしげしげとご覧になりながら、リンコさまが私の周りをゆっくりと一周されました。

 胸元に大きなリボンをあしらったシフォンドレープのベアトップドレス。
 こんな感想は大変失礼なのですが、普段のリンコさまの服装からは想像出来ないほどフェミニンなそのお姿は、意外なことに、とてもお似合いでした。
 パステルパープルがフワフワ揺れる女性的なシルエットの中で、剥き出しの華奢な両肩と端正なネコさん顔にショートヘアが、アンドロジナスな妖しさを醸し出していました。

「こんなふうにアタシに視られているだけでも、感じちゃってる?」
「・・・はい」
「わかってて聞いたんだ。だって、さっきからナオっちのソコ、よだれタラタラだもん」
 
 私の下半身を指さすリンコさま。
 唇が少しだけ開いた無毛のマゾマンコからは、ときどき思い出したようにツツーっと、はしたないおツユが内腿を、かかとのほうへと滑り落ちていました。

「チーフと初めて会ったとき、インナーの試着しながら、フィッティングルームでイッちゃったんだって?」
「あ、えっと・・・はい」

 お姉さまってば、そんなことまで、みなさまにお教しえされちゃったんだ。
 あ、違うか。
 お姉さまが綾音さまにお伝えして、綾音さまからみなさまへ、かな。

「お店、営業中だったんでしょ?」
「はい・・・」
「他にお客さん、いなかったの?」
「えっと、数人いらっしゃったかもしれません・・・ずっと中にいましたから、確かなことは・・・」
「中って言っても、仕切りはカーテン一枚でしょ?大胆ねえ。声は我慢してたんだ?」
「・・・はい」

 興味津々なご様子のリンコさまから、矢継ぎ早なご質問。
 ランジェリーショップのあの日を、鮮やかに思い出しました。
 あのときも狭い試着室の中で、同じポーズになって、お姉さまにされるがまま、だったっけ。

「こないだのアイドル衣装の試着テストのときも、ナオっち、なんだかずいぶんエロっぽかったから、ひょっとしたら、とは思ったけれど、ここまでだったとはねえ」
 感心されているような呆れられているような、ビミョーなまなざしで私を見つめるリンコさま。

「まあ、外面は清純そうなお嬢様タイプの女子の頭の中が実は・・・っていうシチュは、エロ系創作物の定番、腐るほどありがちなんだけれどさ」
「実際こうして目の当たりにしちゃうと戸惑っちゃう。今、ナオっちはアタシの命令、なんでもきいちゃうつもりなんでしょ?」
「・・・はい。そ、そいうことに・・・なります」
 リンコさまが少し困ったような、だけどとても嬉しそうに微笑まれ、私の真正面に立たれました。

「ナオっちは、人様から辱められたいタイプのマゾなんだって?」
「・・・はい」
「みんなの中で、ひとりだけ裸だったり、恥ずかしい服装をさせられたり。そういうのでコーフンしちゃうんだ?」
「はい・・・」

「だったら、今日のイベントなんて、ナオっちの好みにドンピシャのシチュじゃん。マゾっ子としては、夢のような体験になるんじゃない?」
「あ、でも、そう言えば、どんなアイテムなのかは、知らないんだっけ?」

「さっきパンフレットだけは見せていただきました。午前中にモデルのお話をお願いされたときに」
「そりゃそうだよね。どんなの着せられるかわからないまま、引き受ける訳ないか」
 愉快そうに笑うリンコさま。

「見て、どう思った?」
「ただただ、すごいな、って」
「でしょ?テーマがエロティック・アンド・エクスポーズだもの。エクスポーズって、晒す、とか、陳列、露出、っていう意味ね」

「普段、公序良俗的に公衆で見せてはいけない部分を、いかに見せつけるか、っていうコンセプト。まさにナオっちのために作られたようなもんだよね」
 そこまでおっしゃって、ハッと何か思いつかれたような表情になったリンコさま。

「ひょっとしてチーフ、イベントのテーマをナオっちの影響で決めていたりして。ナオっちがチーフと出会ったのって、いつって言ってたっけ?」
 身を乗り出すようにリンコさまが尋ねてきました。

「横浜のランジェリーショップにお邪魔したのは今年の春、3月の始めです」
「なんだ。それじゃあ違うな。テーマが決まって準備を始めたの、1月の終わり頃だったから」
 せっかくの面白そうな思いつきが、あっという間に萎んでしまい、リンコさまがつまらなそうなお顔でおっしゃいました。

「でも、ああいう普段にはとても着られそうもないお洋服を買ってくださるお客様って、いらっしゃるのですか?」
 会話をつづけなくちゃ、と思ったので、パンフレットを見てからずっと思っていた疑問をぶつけてみました。

「それは至極真っ当な疑問よね。でもね・・・」
 リンコさまが、待ってました、という感じの得意げなお顔になられ、説明してくださいました。

「広い世間には、ああいう非日常的なアイテムに対する需要が、意外と大きくあるものなの。ある種の場所や人、ギョーカイでね」
「今日来るお客様は、そういう、ある意味、浮世離れしたところとパイプの繋がっている人たちばかりだから、余裕があったら、お客様の顔をいろいろ観察すると、面白いことがわかるかもしれないよ」

 イタズラっぽくおっしゃるリンコさま。
 ショーモデル初体験の私にお客様がたを観察するなんて、そんな余裕があるとは到底思えませんけれど。

「つまり、世間には意外と、ナオっちみたいな人種も少なからず生息している、っていうことよ。もっともアタシも、直で知り合いになるなんて、初めてだけどさ」
「そういう人たちが、着てみたいな、または、パートナーに着せてみたいな、って思うようなアイテムを、アタシたちは、一生懸命考えて、悩んで、作って、今日めでたく発表する訳」

「だから、アタシらには、そういう性癖の人たちに対して、一切の偏見はないの。もちろんナオっちにもね」
「むしろ、そういう人が仲間になって、企画とかデザインとか断然やりやすくなった、っていう感じ」
「今回のイベント、絵理奈さんよりナオっちのほうが、だんぜんお似合いだと思う。エロさのオーラが一桁違うもん。きっと大成功するよ」

 褒められているのか、面白がっているだけなのか。
 だけど、リンコさまの人懐っこい笑顔を見ていたら、モデルのお役目がんばらなくちゃ、と、今更ながら思いました。

「ついでに言うと、ナオっちがもし気に入ったのがあったら、イベント後は、ナオっちがプライベートやオフィスで着てもいいんじゃない?オートクチュールのサンプルなんだし」
「オフィスで着るのって、いいな。ナオっちがそういう格好で働いていてくれたら、アタシ、すんごくヤル気出ちゃう」

「オフィスは法人で、プライベートとは言えないけれど、万人に開かれたお店でもないんだから、そこでどんな服装で勤務してようが、そこの社員全員に文句がなけりゃ、無問題だよね?」
「アタシらはもう、ナオっちのそういうセーヘキを知っちゃったし、身に着けるのは自社ブランド製品だもの、ブランドショップの店員さんと同じよ。昔で言うところの、ハウスマヌカンだっけ?」

 ご自分の思いつきに酔ってらっしゃるのか、何の屈託なく、ものすごいことをおっしゃるリンコさま。

 そのご提案をお聞きして、少し前から頭をよぎり始めた、イベント後のオフィスでの自分の立場、という妄想が、みるみるうちに広がりました。

 さっき見たパンフレットで、うわすごい、と思ったアイテムを身に着けた自分を想像してみます。
 その姿の自分を勤務中のオフィスに置き、社員のみなさまがいらっしゃる中で、たとえば、お電話を受けたり、打ち合わせをしたり、お客様にお茶をお出ししたり・・・
 それは、考えただけでも、ものすごく恥ずかしいことでした。
 たちまちキュンキュンと粘膜が蠢き、全身がヒクヒクひくつきました。

「おっと、あんまりおしゃべりしていると、どんどん時間がなくなっちゃう。ナオっち、大丈夫?」
「へっ!?」
 話しかけられてパッと妄想が破られ、マヌケな声を出してしまう私。

「ぜんぜん大丈夫じゃないみたいね。どんどん溢れてる」
 リンコさまが私の足元を指さしました。
 内腿を滑り落ちたはしたない液体が、右足のかかとのところにこんもりと、粘っこそうに白濁した水溜りを作っていました。

「一度発散しちゃったほうがよさそう。こんなんじゃアイテムがみんなベトベトになっちゃうもの」
 ちょっとイジワルそうなニヤニヤ笑いを浮かべたリンコさまが、私に一歩近づきました。

「していいよ。そうね、20分あげる。2時45分までね。思う存分しちゃいなさい」
「・・・えっと・・・???」
「だから、ウズウズしてるんでしょ?自分で慰めなさい、っていうこと。クリちゃん、そんなに腫らしちゃって」

「あの、私がひとりでする、っていうことですか?」
「そう。アタシも出来ることなら、ものすごく手伝いたいんだけれど、このドレス、シルクだから水シミになりやすいんだよね」

「そういうおツユとか飛び散っちゃうと、これから人前に出るのに、ちょっとヤバそうだからさ。ナオっちのからだは、さっきからずっと、すぐにでも弄ってみたいんだけど、今日のところは我慢しとく」
 リンコさまが本当に残念そうにおっしゃいました。

「ちなみにチーフからは、キスとアヌス虐め以外なら、どこをどうしてもかまわない、っていう許可も、もらってるんだけどね。本当残念」
 たぶん、みなさまが会場へ行かれる前、おふたりでヒソヒソ話をされていたときにでしょう。

「ナオっち、アヌスも開発済みなんだ?チーフにしてもらったの?」
「は、はい・・・」
「ふーん。チーフもあんな顔して、やることはやってるんだね。あ、でもそっか。今日のアイテムにはプラグ挿すのも、あったんだっけ」

「でも、キスにNG出すっていうのは、恋人同士らしいよね。ナオっち、愛されてるじゃん」
 リンコさまのひやかしに、たちまちすっごくシアワセな気持ちになりました。

「ま、とにかく今日は、ナオっちのオナニー鑑賞で我慢しておくことにする。この先、また何度もチャンスありそうだし」
 明るい笑顔で、ゾクゾクしちゃうようなことをサラッとおっしゃるリンコさま。
 マゾの服従ポーズのまま立っている私の真正面、2メートルくらい離れたところに椅子を移動し、そこにお座りになりました。

「ほら、早く始めないと時間なくなっちゃうよ?ポーズはもう解いていいから」
「は、はい・・・」
「ここからナオっちのアヘ顔、じっくり視ててあげる。あ、でも今日は、スーパーモデル、夕張小夜ちゃんのアヘ顔だったか」

 目の前のリンコさまを見つめながら、ゆっくり両手を下ろしました。
 恥ずかしさより戸惑いが勝っている感じで、どうやって始めたものか、と考えてしまいます。

「そっか。命令されないと、その気になれないのかな?じゃあ、命令してあげよう」
 リンコさまが立ち上がられ、近づいてきました。

「まず、その1。立ったまますること。どんなに気持ち良くてもひざまずいちゃダメ。膝小僧赤くなってるモデルなんて、超カッコワルイでしょ?」
「しゃがむのはオーケーだけど、お尻を床についちゃダメ。理由は膝と同じ」

 間近に見るリンコさまの瞳が、エス色に染まりつつあるように感じました。
「返事は?」
「あ、はいっ」

「その2。なるべくたくさんイクこと。イッた後も手を休めず、アタシがいいと言うまでイキつづけるの。どんどんどんどん。エロい気持ちがすっからかんになるまで」
「はい」

「その3。イキそうなときは、必ずアタシに許可を取ること。イキそうです、イッていいですか?って。まあ、こういうプレイのお約束だけれど」
「アタシがいいって言ったらイッて、ダメっていったら許可するまで我慢ね」
「はい」

「その4。なるべく肌を虐めないように。全身よ。これから人前に出て裸を晒すんだから、おっぱい揉み過ぎて赤く腫らしたりしないように」
「必然的に、弄れるのはオマンコの中と乳首くらいになっちゃうけれど、今のナオっちなら充分よね?」
「は、はい。大丈夫、です」

 リンコさまのお口から、さりげなくオマンコなんていうお下品なお言葉が出てドキン。
 いつになく冷たく響くリンコさまからのご命令のお声を聞いているうちに、全身がどんどん疼いてきて、いてもたってもいられなくなってきました。

「そんなとこかな。あ、あとそれからね・・・」
 リンコさまが一度テーブルのほうへ向かわれ、ご自分のバッグをちょっとガサゴソされてから戻られました。

「さっき、しほりんが別れ際、こんなもの渡してくれたんだ」
 右手に持っていたある物を見せてくださいました。
「これで、ナオコの尖った乳首や腫れ上がったクリットを挟んだら、面白そうじゃない?なんて言ってた」

 その、ある物は、ビューラーでした。
 まつげを挟んでクルンとさせる、別名アイラッシュカーラー。
 ハサミみたいな持ち手が付いて、ハサミみたいにチョキチョキすると、まつげを挟むシリコン部分が開いたり閉じたりする仕組み。
 実は私も、自虐オナニーで使ったことのある、お気に入りのお道具。

 見た瞬間にその感触を思い出しゾクゾクしていたとき、ほぼ同時に実際に、左乳首を同じ快感がつらぬきました。
 リンコさまが素早く、私の左の乳首をビューラーに挟み、力任せにギュッと挟み込んだようでした。

「はぁっぅぅぅーーっんぅんぅんぅうっ!」

 カチコチに固くなった乳首を思い切り絞り上げられ、激痛とともに得も言われぬ快感が脳天を突き抜け、自分の耳にもおぞましいほどの、はしたない歓喜の淫声が喉奥からほとばしり出ました


オートクチュールのはずなのに 49


2016年4月24日

オートクチュールのはずなのに 47

 即席のメイクルームとした場所は、リビングルーム中央にあるダイニングテーブルのすぐ脇。
 リビングへ入った途端、真っ先に視界へと飛び込んでくる場所で、私はご丁寧にもリビングの入口のほうに向いて立っていました。

 先頭を歩いていらした早乙女部長、いえ、綾音さまと目が合うと同時に、ガヤガヤがピタリと止まり、お部屋の中が静まり返りました。
 綾音さまだけが笑みを浮かべられ、他の4名の方々は、立ち止まったままギョッとしたようなお顔で私を見ていました。
 咄嗟に胸と股間を隠そうと、両手がピクッと動いたのですが、訪れた沈黙の重さにそのまま固まってしまい、結局、元の立ち尽くし姿勢のままでいました。

「すごくいいじゃない?しほりさん」
 綾音さまがツカツカと近づきながら、私の横のしほりさまにお声をかけられました。
「ええ。わたし自身も納得のいく出来栄えです」
 しほりさまが満足そうにおっしゃって、私を視ました。

 綾音さまから数歩遅れで、恐る恐るという感じでこちらへとジリジリ近づいてこられる他のみなさま。
「ナオっち・・・だよね?」
 私の顔を穴が空くほど見つめたまま、リンコさまが尋ねてきました。
「あっ、しほりん、オハヨー」
 取ってつけたようにしほりさまに小さく手を振るリンコさま。

「違うわよ。わたくしが東奔西走してようやくみつけてきた、代役のモデルさんよ」
 綾音さまがご冗談ぽくおっしゃる横で、コクンと首を縦に振る私。

「やっぱりナオちゃんなんだ。すごい、見違えちゃったじゃない」
 間宮部長、いえ、雅さまのお顔がパッとほころび、私に駆け寄ってきました。
 
 いつものように抱きつこうとされたのでしょうが、私が全裸なことに今更ながらお気づきになったようで、50センチ手前くらいで立ち止まると、嬉しそうなお顔であらためて、私の全身を吟味するようにしげしげと見つめてきました。
 ほのかさまとミサさまはまだ、信じられない、という微妙なお顔つき。

 不躾な視線、好奇の視線、気まずそうな視線・・・
 それらをいっぺんに集中放火され、私、どうにかなっちゃいそう。
 それも昨日までは普通に、同じオフィスでお仕事をご一緒してきたかたちから。

「みんな揃ったわね。早乙女部長から聞いたと思うけれど、そういうことになっちゃったの。今日は破れかぶれでいいから、イベントが成功するように、一丸となってがんばりましょう」
 いつの間にか背後にいらしたお姉さまが、私の頭越しにみなさまにおっしゃいました。
 それから私の正面に来られ、顔をじーっと見つめられました。

「いい感じじゃない、しほりさん。これなら直子を知っている人が見ても、絶対、直子とは思わないはずよ」
 お姉さまのご登場で、ようやく場が和み始めたようでした。

「そうですよね。アタシ、部屋に入った途端、なんだ、絵理奈さん来ているんじゃない、って思いましたもの。ウイッグ変えたんだ、って」
 リンコさまのお言葉に雅さまも大きくうなずかれました。
「うんうん。ワタシは絵理奈さんをよく知らないから、単純に、ずいぶんセクシーなモデルさんがいるな、って思った」

 さすがに晴れのイベントの日。
 みなさま、とてもおめかしされていました。

 シックな黒のタイトスーツでビシっとキメたお姉さま。
 光沢のあるワインレッドのイブニングドレスを艶やかに着こなした綾音さま。
 ストライプのパンツスーツがマスキュリンかつエレガントな雅さま。
 ミルキーベージュのアフタヌーンドレスで清楚に佇むほのかさま。
 いつもの服装からは想像できないベアトップのパーティドレスで超フェミニンなリンコさま。
 本番でパソコンや機材をを駆使しなくてはならないミサさまは、動きやすそうなミリタリーっぽいオシャレな制服風、きっと何かのアニメのコスプレなのでしょう。

 しほりさまも含めて、そんなオシャレに着飾ったレディたちに取り囲まれた私だけ、一糸も纏わぬ丸裸。
 顔だけは綺麗に飾っていただいたとは言え、女性として普段みなさまに隠しておかなければいけない、性的な箇所はすべて剥き出しのまま立ち尽くす、みじめな私。
 今日何度目かわからない、ほろ苦くも甘酸っぱい羞じらいと屈辱に、全身が熱く火照りました。

「ねえ、ナオっちの顔って、なんか、ゴーゴー、って感じがしない?」
 リンコさまが誰に、というわけでもなさそうな感じでポツンとおっしゃいました。
「わかる。キルビルでしょう?」
 逸早く応えられたのは、雅さまでした。
「ワタシ、あの女優さん、大好きなんだ」

「ハーイ!」
 突然ミサさまに向けて、お顔の横で小さく手を振るリンコさま。
「ゴーゴーダネ」
 すかさずミサさまが、外国人さんぽいカタコトな発音で受けられました。
「ビンゴ。そっちはブラックマンバ」

 そこまでつづけたリンコさまが、ミサさまとお顔を合わせてクスクス。
 雅さまもほのかさまもしほりさまもお姉さまも、知ってる、というふうにうなずく中、ただおひとり、綾音さまだけが怪訝そうなお顔。

「なにそれ?」
 そのお顔のまま綾音さまが、傍のリンコさまに尋ねられました。
「キル・ビルっていう、そこそこ話題になったヘンテコな映画がありまして、それに出てくるゴーゴー夕張っていう女子高校生の殺し屋が、今の森下さんの顔によく似ているんです」

「へー、そうなの?わたくしは、こんなヘアスタイルを見ると真っ先に、山口小夜子さんを思い出してしまうけれど」
「ああ。パリコレに日本人モデルで初めて出演されたっていう、伝説のモデルさんですね」
 一同が深く頷かれました。

「なるほどね。それじゃあ直子のモデルとしての芸名は、夕張小夜、にしましょう。ちょうどさっきひとりで、どんな芸名にしようか考えていたところだったの」
 お姉さまが私の顔を見ながらおっしゃいました。

「ゆうばりさよ、なんだかカッコいいじゃない?」
「ええ。この容姿にぴったりな、聞いた途端、なるほど、って思う、らしい名前ね。いいと思うわ」
 ひとしきり、いいねいいね、のざわめきが立ちました。

 私の顔についての議論が一段落してモデル名が決まる頃には、みなさまの視線は当然の事ながら、私の顔以外に散らばり始めていました。
 とくに、胸のふくらみの先端と下腹部に、興味津々な好奇の視線が頻繁に突き刺さってきます。
 誰も何もおっしゃらず、しばし決まりの悪い沈黙がつづきました。

「さあ、本番前の最終確認をするから、みんなホワイトボードの前に集まって」
 沈黙のあいだ、ずっとニヤニヤとみなさまのご様子を眺めていたお姉さまが、ふと時計を見てあわてたようにパンッとひとつ拍手をし、少し離れたホワイトボードの方へとみなさまを誘導されました。
 ホワイトボードには、今日のイベントの段取りや会場の見取り図が書かれていて、結婚式の二次会パーティみたいに着飾った華やかなみなさまが、ぞろぞろそちらへと移動していきました。

「さ、わたしたちも仕上げてしまいましょう。座って」
 しほりさまに促されて座ると右手を取られ、マニキュアが始まりました。

 ホワイトボードの前では、お姉さまと綾音さまを中心にキビキビと、最終打ち合わせをされています。
 時折お姉さまがこちらを指さし、みなさまが一斉にこちらを振り向きます。
 みなさまから見ると横向きに座っている私は、相変わらず尖りきっている乳首が恥ずかしくてたまりません。

 マニキュアが終わり、つづいてペディキュアのために両脚を向かい側のソファーへ投げ出すように指示されたとき、打ち合わせが終わったようでした。
 みなさまが再びこちらへ集まってこられ、私は座ったまま、右足を向かいのソファーの上に、股を30度くらい開いた左足をしほりさまの手に取られた格好で、みなさまを迎えました。

 立っているみなさまから、私の30度くらいに開かれた両腿の無毛な付け根を、ちょうど真下に見下ろされるような姿勢でした。
 当然のことながら、みなさまからの視線はソコに集中していました。

 ちょっと離れたところでは、お姉さまとリンコさまがおふたりで、私のほうをチラチラ見ながら何かヒソヒソとお話しされていました。
 その他のみなさまは私としほりさまを取り囲み、ペディキュアされつつある私の足先を含む下半身全体を、じっと無言で見守っていました。

 おそらくみなさまも、裸の私に内心ではドギマギされていたのだと思います。
 おちゃらけて冷やかしたり、からかうワケにもいかないし、かといって、会社のためにごめんね、とか、がんばって、ていうのもなにか違うし。
 かける言葉がみつからないから、黙っている。
 そんな、何て言うか、お気遣いをされているような重苦しい雰囲気でした。

 少しして、お話しが終わったらしいお姉さまとリンコさまが輪に加わりました。

「直子、じゃなくて夕張小夜さんは、開演時間、つまり3時になったらここを出て会場に向かって」
 戻ってこられたお姉さまがみなさまにもお聞かせするみたいに、少し大きめなお声でおっしゃいました。
 ようやく沈黙が破られ、私はホッ。

「えっ!?そんな時間で大丈夫なのですか?」
 再び場が沈み込むのが怖かったのと、実際、段取りが不安になったので、間髪を入れずにお尋ねしました。

「もうそろそろお客様が集まって来る頃だからね。開場して、お客様を会場に収容し終わってからのほうがいいと思って」
「入場待ちのお客様がゾロゾロいるところにノコノコ出て行って、せっかくのシークレットモデルが開演前に顔バレしちゃったらつまらないじゃない」

「大丈夫よ。最初はあたしの挨拶だし、早乙女部長の挨拶もあるし。それに、しょっぱなのアイテムは着付けに手こずらないシンプルなやつだから」
「直子も、楽屋入ってスグ本番、無駄にドキドキする時間が無いほうが気がラクでしょう?3時20分見当でお願いね」

「という訳で、あたしたちは先に会場に入っているから。夕張さんの付き人はリンコね。もともと絵理奈さんだったとしてもリンコがする役目だったから、問題無いわよね?」
「はい。もちろんです」
 リンコさまが、なぜだかずいぶん嬉しそうにうなずかれました。

「夕張さんは、あとはリンコの指示に全面的に従って。しほりさんは頃合いを見計らって楽屋でスタンバってください。それじゃあみんな、無事終演までがんばりましょう」
「おーーっ」
 お姉さまの後ろをみなさまがゾロゾロとついて、玄関へと向かわれました。

 私の傍を離れるとき、ほのかさまが私の右耳に唇を寄せてきました。
「なんだか大変なことになっちゃったけれど、がんばってね。今日の直子さん、とっても素敵よ」
 ヒソヒソ声で早口におっしゃってからニコッと微笑まれ、あわててみなさまの後を追っていかれました。
 雅さまとミサさまは笑顔で振り向きつつ、大げさに手を振ってくださいました。

 玄関ドアが閉じる音がして、再び静寂が訪れました。
「ふぅー。これにてすべて終了。乾くまであと5分くらい、動かず、触らずでお願いね」
 私の右足をソファーに戻され、しほりさまが立ち上がられました。
 私の両手両足の爪はすべて、艶やかなローズピンクに染まっていました。

「わたしも大急ぎで片付けて、楽屋でまたお店を広げなくちゃだわ」
 しほりさまがお道具のお片付けを始められました。
「アタシも手伝うよ」
 リンコさまが姿見をどかしたり、散らばったティッシュを拾い始めます。
「ありがと」
 リンコさまに向けてニコッと微笑むしほりさま。

「しっかし驚いたよねえ。ナオっちがこんなことになっちゃうなんて」
 テキパキとお片づけしながらも、おしゃべりは止まらないリンコさま。
 興味津々なご様子が、全身からほとばしっています。

「わたしだって驚いたわよ。いきなり全裸の女の子に出迎えられて、社長さんからは、この子マゾだから、って紹介されたのよ?」
「そうなんだ。それはびっくりするよねー」
 おふたりでキャハハと屈託なく笑い合うお姿は、どうやらとっくに仲良しさんのようでした。

「ナオっちがマゾっちていうのは薄々感じていたけれど、チーフとSMスールの関係だったなんて、アタシには晴天の霹靂だったよー」
「ロープもローソクも楽しんでいらっしゃるご関係だそうよ」
 そのへんはとっくに取材済みよ、とでもおっしゃりたげな、しほりさまのお得意げなお顔。

「さっきもナオコ、じゃなくて夕張さんにボディローション塗っていたら、どんどん感じちゃって苦しそうだったの。だから、イカセてあげようか?って聞いたら、とても嬉しそうだったわ」
「うわー。しほりん大胆。って言うか、しほりんまで、ナオコって、呼び捨てなんだ?」
「うん。社長さんがそう呼べって。それにナオコも自分から、わたしに絶対服従するって宣言してくれたのよ」
「うわー。なんだかエロ小説の世界だね。でもアタシも、さっきチーフに言われたんだ。ナオっちを好きにオモチャにしていい、って。スタッフ全員に絶対服従って言い聞かせてある、って」

 そうおっしゃって、私の顔をイタズラっぽく覗き込んでくるリンコさま。
 ペディキュアが乾くまで動くなというご命令ですから、私は同じ姿勢のまま、気弱に微笑み返すくらいしか出来ません。

「それに、もしナオっちがサカっているようだったらイカせちゃってくれ、って頼まれちゃった。裸を視られているだけで感じちゃうような子だから、本番でヘマをしないように、って」
「それが賢明よね。今だって、ほら」

 しほりさまが呆れたようなお顔で、私の股間を指さされました。
 しほりさまは、気心の知れたリンコさまとおふたりきりになってリラックスされているのか、私に対する口調や表情、態度にエス度が露骨に増していました。

 その指さされた股間は、自分で形容するのがためらわれるくらい、はしたない状態でした。
 しほりさまとリンコさまの、私の性癖に関する情け容赦無いあけすけな会話をお聞きしていて、羞恥と被虐が股間に蓄積された結果でした。
 脚を30度くらいにしか開いていないのに、ラビアがパックリ開ききり、溢れ出た淫液が合皮のソファーにこんもり水溜りを作っていました。

「うわー。これってつまり、感じちゃっているんだよね?ナオっち、インラーン」
「わたしは仕事だから、もう行かなくちゃだけれど、リンちゃんは役得ね、いいなあ」
「ガンガンイカせちゃっても大丈夫よ。メイクもボディも、イベント中保つように強力なウォータープルーフにしたから、ちょっとやそっとじゃ崩れないはず」

 臨時のメイクルームはすっかり片付き、テーブルの上にはしほりさまの大きなバッグだけ。
「ナオコももう動いていいわよ。ただ、まだあんまり塗った所をさわらないこと」
 お言葉に促され、投げ出していた両脚をそっと床に下ろしました。
 潤んだ股間を閉じるとひんやり。

「おおー。しほりん女王様、っていう感じじゃん」
 リンコさまのからかうお声に、ニッと微笑むしほりさま。
「もっと面白いもの、見せてあげる。ナオコ、立ちなさい」
 すっかりエスモードとなった冷たいお声のご命令に、私はゾクゾクしながら立ち上がりました。

「わたしの真正面に」
 しほりさまが照明の真下の明るい場所に移動され、私もついていきました。
 もちろんリンコさまも。

「いい?よく見ていてね」
 斜め後ろのリンコさまを一度振り向いて念を押し、再び私と向き合います。
 あれだろうな、と思ったら、やっぱりあれでした。

 正面に立たれたしほりさまが私を無表情で見つめ、一瞬間を置いて、少し上を向くような仕草をされました。
 お綺麗に尖った顎が私に向けられます。
 同時に私は、下ろしていた両手をまず、降参、みたいな形に肩のところまで上げ、それから頭の後ろ側に回して重ねました。
 
「なにそれ?なにそれ?なんかヤバイ。ゾクッとした」
 リンコさまが身を乗り出してこられ、私としほりさまを交互に見比べています。

「マゾの服従ポーズ、っていうみたいよ。恥ずかしい箇所を無防備にして、服従の意志を表わしているんですって」
「もともとは社長さんとナオコのあいだだけの取り決めだったらしいけれど、なぜだか今日、わたしも使えるようになっちゃった」
 しほりさまが可笑しそうにおっしゃいました。

「顎をしゃくるだけでいいの。もちろんリンちゃんも使えるはずよ。そうよね?ナオコ?」
「・・・はい、もちろんです・・・よろしくお願いいたします、リンコさま」

 私はこんなふうにして、社員のみなさまに服従を誓い、全員の共有マゾドレイになっていくんだ・・・
 そんな想いに全身を震わせながら、すがるようにリンコさま見つめました。
 すっごく嬉しそうなお顔のリンコさま。

「ああん、もうこんな時間。早く行って準備しなくちゃだわ」
 しほりさまが時計をご覧になって、残念そうにショルダーバッグに手をかけました。
「開演まであと一時間ちょっと。わたしにはギリギリだけれど、リンちゃんにはたっぷりよね?羨ましい」
 しほりさまが右肩にバッグを担ぎ終え、私を正面から見つめたままつづけました。

「あたしの代わりにナオコをたっぷり可愛がってあげて。本番でサカッちゃわないように」
「うん。任せといて。あ、カートは玄関までアタシが引いていってあげるよ」
 弾んだお声のリンコさまが、しほりさまのカートに手をかけました。

「それじゃあ、また後ほどね、ドマゾの夕張小夜さん。それと、さっきの約束、忘れないでよ」
 背中を向けたしほりさまをリンコさまが追いかけました。

 私はマゾの服従ポーズのまま、おふたりのお背中を眺めていました。
 この後ふたりきりになったら、リンコさまは私を、どう扱われるおつもりなのだろう?
 人懐っこくて気さくで、いつも明るいリンコさまをよく知っているだけに、お姉さまや綾音さま、そしてしほりさまのように、エスに傾いたリンコさま、というのが、ちょっと想像しにくい感じでした。
 心の中で期待と不安が半分ずつ、シーソーのようにギッタンバッコンしていました。


オートクチュールのはずなのに 48

2016年4月17日

オートクチュールのはずなのに 46

「ふーん。マゾね。裸を視られるだけで感じちゃうんだ?」
 しほりさまが、私の背後に立たれ、正面の鏡越しに視線を合わせてきました。

「あの、えっと・・・」
「でも、相手が男ならともかく、女同士じゃない?そんなのでいちいち感じていたら、お友達と温泉旅行にも行けないんじゃない?」
 私の頭からウイッグを外しながら、しほりさまがからかうようにおっしゃいました。

「だけど興奮しているのは、本当みたいよね。さっきからあなたの乳首、見ていて痛々しいくらい起き上がっちゃってる」
「そういう反応って、なんだか新鮮だわ。わたしが呼ばれるイメージビデオとかの現場って、羞じらいとか、ほとんどないから」

「場数を踏んだグラビアアイドルなんて、カメラが向いているときこそ、えっちな衣装着せられてハズカシー、なんて顔しているけれど、撮影の合間は、平気でスッポンポンで食事とかケータイ弄ったりしているもの」
「撮影スタッフや裏方なんて、それが男でも女でも、人とも思っていないのじゃないかしら?ビジネスライクと言えば、そうなのだけれど」

 しほりさまが私の髪からウイッグ用のネットを外してくださり、半乾きの髪をブラッシングしつつドライヤーをかけてくださっています。

「絵理奈さまも、そうなのですか?」
 ふと気になって、お尋ねしました。

「彼女も堂々としたものよ。一昨日のゲネプロでも、ずっと裸かガウン一枚羽織っただけで、キワドイ衣装を取っ換え引っ換え、淡々とこなしていたわ」
「まあ、自分のからだに自信があって、それが売り物だっていう自覚もあるからでしょうね。そういう現場にも慣れているし」

「わ、私も、そんなふうにもっと、何て言うか、堂々としなくては、いけないでしょうか?」
 絵理奈さまのお話を聞いて、不安になってきました。
 今だってこんなに恥ずかしくてドキドキしている私に、沢山の人たちを前にしたイベントのモデルなんて務まるのでしょうか・・・

「あなた?あなたには無理なんじゃない?だって、視られるだけで感じちゃうマゾなのでしょう?」
「今だって、鏡の中でわたしと目が合うたびにビクビク感じているみたいじゃない?肌もずいぶんと火照っているみたいだし」

 おしゃべりされながらも、しほりさまの両手はテキパキ動き、乾いた髪を再び頭上にまとめられ、ネットをかぶせられました。
「あなたは、そういう人なのだから、そのままでいいんじゃない?」

「でもでも、モデルするときは、不機嫌なくらいのポーカーフェイスにして、決して表情を出してはダメ、って言われているんです。お姉さまから」
「ああ。それは正論だわね。ショーの最中ずっとモデルがそんなエロい顔してランウェイを行ったり来たりしていたら、見ているお客様のほうが困っちゃうもの」

「安心して。わたしが精一杯、生意気そうな顔に仕立ててあげるから。そんなエロ顔さえ怒っているみたいに見えるくらいにさ。それじゃあ、顔に移るわよ」
 しほりさまが愉快そうにおっしゃり、私の顔にファンデーションを塗り始めました。

 しほりさまの少しひんやりとしたしなやかな指が、私の顔を満遍なく撫ぜ回してきます。
 目尻が引っ張られ、鼻先を押し上げられ、唇をなぞられ、耳の穴を穿られ。
 なんだか、やさしく顔面嬲りをされている気分。

「あなたがさっきしたポーズ、社長さんが顎で指図したら取ったポーズって、よくアメリカのドラマとかで、ポリスがハンザイシャにやらせるポーズよね?抵抗するな、っていう感じで」
 しほりさまが私の顔を撫ぜ回しながら、尋ねてきました。

「はい。そう言われてみれば、そうですね・・・」
「ふたりのあいだで、そういう決まりがあるんだ?ああしたら、あのポーズになる、っていう」

「はい・・・あ、あれは、マゾの服従ポーズ、って呼んでいて、何もかも露わにして言いなりになりますから、このからだをご自由にされてください、っていう服従の気持ちを表わしています」
 お答えするために自分で言葉に置き換えながら、その被虐な内容にキュンとなりました。

「ふーん。マゾの服従ポーズかあ。マゾって言ったら、痛いのとか、縛られたりも好きなの?」
「はい・・・」
「縛られて、鞭とか、ローソクとか?」
「・・・はい」
「社長さんと、そういうことして遊んでいるんだ?」
「はい・・・たまにですけれど」
「ふーん」

 しほりさまの両手が私の顔から離れ、あらためて私の顔を鏡越しに、じーっと見つめてきました。

「決めた。やっぱりわたしもあなたのこと、呼び捨てることにするわ。いいわよね?」
「は、はい・・・もちろんです」
「そのほうがあなたも嬉しいみたいだし。本当に根っからのマゾなのね、ナオコって」
「は、はい。ありがとうございます」
 しほりさまから初めて、ナオコ、って呼び捨てにされて、ゾクゾクッとしちゃいました。

 しほりさまの手で、テーブルの上のさまざまなお道具が取っ換え引っ換え選ばれ、本格的なメイクアップが始まりました。
 至近距離にお顔を近づけられ、真剣な眼差しが私の顔面を刺してきます。
 私はずっとされるがまま、鏡の中の自分を見つめていました。

 眉はいつもよりクッキリ太めに。
 マスカラをフル盛りして、更に目尻に毛足の長いつけまつげ。
 アイラインもハッキリ、目尻を上げてシャドウも濃いめ。
 ノーズシャドウにチークも強め。
 リップは濡れたようにぽってりなチェリーレッド。

「はい。こんな感じで、どう?」
 鏡の中の私は、確かに別人になっていました。
 
 連休のとき、オフィス街での露出遊び用にお姉さまがしてくださったメイクより、もっともっと生意気風。
 小生意気じゃなくて、大生意気。
 試しにウイッグをかぶせてもらったら、顔の輪郭まで変わって、本当に別人。
 そして、自分で言うのもはしたないのですが、すいぶんキリッとした美人さんに見えました。

「我ながらうまくいったと思うわ。ほら、こうしても・・・」
 唐突に、しほりさまの両手が背後から、私のおっぱいを両方鷲掴みにしてきました。

「あぁんっ!そんなぁ!」
 生おっぱいを乱暴にギュッと掴まれ、思わずいやらしい声をあげてしまいました。

「ね?悶えてるっていうより、イヤがってるみたいな顔に見えるでしょう?」
 両手をニギニギ動かして私のおっぱいを揉みしだきながら、しほりさまが嬉しそうにおっしゃいました。

 確かに、眉間にシワを寄せて半眼になって身悶える自分の顔が、いつもなら媚びるようなだらしないアヘ顔になってしまうのですが、このメイクだと不快そうにジトッと睨むような顔になっていました。

「それにしてもナオコの乳首、すごい尖りよう。コリッコリに硬くなってる」
「あっ、あっ、あっ・・・」
 指と指のあいだで乳首を挟まれ、ギュギュッと絞られると、もうダメ・・・
 強く弱くおっぱいをもてあそばれ、瞬く間に下半身がムズムズ熱くなってきました。

「会ったときからずっと気になっていたのだけれど、ナオコって、見事に綺麗なパイパンよね?ひょっとしてそれって、生まれつき?」
 私のおっぱいを虐める手は止めず、しほりさまが尋ねてきました。
 鏡に映るしほりさまの視線が、両腿をピッタリ閉じて座った私の、その逆Yの字の部分を凝視しているのがわかりました。

「あんっ、い、いえ、あの、生まれつきではないです・・うぅぅ、薄かったけれど・・・」
「処理しているんだ。でも剃った感じじゃないわよね?抜いたの?永久脱毛?」
「あんっ、あっ、あっ、はいぃ、一年くらい前から、えっ、エステサロンに何度か通って、や、やんっ、やっていただきましたぁ・・・」

「へー。本格的なのね。グラドルにだってそんな子、なかなかいないわよ?ずっと一生パイパンでいいんだ?」
「あぁ・・・は、はいぃぃ・・・」
 しほりさまがおっしゃった、一生パイパン、というお言葉に、私のマゾ性が盛大に疼きました。
 始まったときと同じように、しほりさまの両手が私のおっぱいを、唐突に開放してくださいました。

「ねえ、ちょっと脚、開いてみてよ」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
「あ、そっか。ナオコには、こういう言いかたじゃダメなんだ。こうかな?ナオコ、脚を開きなさい」
 しほりさまが、後半は学校の先生のような無表情になって、ご命令口調でおっしゃいました。

「はぁ、はいぃ・・・」
 お答えしたものの、今、脚を広げるのはすごく恥ずかしい。
 だって、今のおっぱい嬲りで私の下半身にはジンジン血液が集まり、ヌルヌルなことは明白でしたから。
 それでもご命令には逆らえません。
 揃えていた両足を左右に滑らせ、ゆっくりと両腿を開き始めました。

「もっと」
「もっともっと」
「もっともっともっと」
 しほりさまのお声に煽られて、私の両腿は180度近くまで開いていました。

「ここから見ても、中がヌレヌレなのが一目瞭然じゃない?鏡の中で粘膜がキラキラ光ってる」
「ラビアが開ききって、中がヒクヒク蠢いているわよ?いやらしい子」
「わたしに視られて、触られて、そんなに濡らしてくれちゃっていたんだ。なんだか嬉しい」
 しほりさまの恥ずかしすぎるご指摘に、私はビクンビクン震えてしまいます。

「ナオコの反応見ていると、社長さんがナオコを虐めたくなる気持ちがわかる気がする。人の嗜虐欲を絶妙にくすぐる、いちいちエロい反応なのよね。虐め甲斐があるって言うか」
 鏡に映った私の開ききったマゾマンコをじっと見つめながら、しほりさまが愉しそうにおっしゃいました。

 ふと鏡の中で目が合うと、しほりさまはニッとイタズラっぽく笑ってから、軽く顎を上に向けられました。
 それを合図に、もちろん私の両手は頭の後ろへ。
 ご満足そうなしほりさまの笑顔。

「おーけー。それじゃあ立って。今度は全身にファンデーションするから」
 しほりさまから次は、どんなご命令が下されるのか、とドキドキしていた私は肩透かし。
 でもすぐに、そのお言葉の意味に、えっ!?となりました。

「からだにも、ですか?」
「あたりまえじゃない。モデルのからだっていうのは、ショーで身に着けるアイテムを最大限に引き立てるためにあるのだから」

「とくに今回のイベントは、あえて裸を見せる方向のアイテムが多いのだから、からだも綺麗に見せるように、メイクするのはあたりまえなの」
「まあ、ナオコは、素肌も綺麗なほうではあるけれどね。でも、しておけば、汗を抑える効果もあるし。知らないでしょうけれど、舞台照明、とくにスポットライトって、浴びると、かなり暑いのよ」

 両手を後頭部に当てたまま、姿見の前で立ち上がりました。

「わたししかいないのに、そのポーズをしてくれるということは、わたしにもマゾとして絶対服従するつもり、ということよね?」
「はい。その通りです」
「うふふ。嬉しいわ。なんだかすごくいい気分。手、下ろしていいわよ」

「これからわたしがナオコのからだを隅々まで撫ぜ回すけれど、ナオコは絶対、感じてはいけない、ということにしましょう。声を出したり、顔をしかめるのもダメ」
「ショーのときの、社長さんから言われているポーカーフェースのいい練習になるでしょ?どんなに気持ちよくても我慢すること。いい?」
「・・・はい」
 ドキドキしながら、しほりさまの手の感触を待ちました。

 最初にウイッグが外され、すぐに背中にひんやりとした感触がきました。
 クリーミーな粘液が肌を滑るのがわかります。
 しほりさまの手のひらが背中を満遍なく滑っていきます。

 一度首筋まで登った手のひらは、やがて脇腹までいったん下がり、腋の下から右腕へ。
 こそばゆい感覚でやんわり愛撫され、そのもどかしい感触に思わずトロンとしちゃいそう。
 左腕も終わると今度は正面へ。
 鎖骨から胸元、そしておっぱいへと。

 うなじや脇腹、背骨の上など、私が弱いところを優しく撫ぜられるたびに、淫らな声が出そうになって、必死で耐えました。
 全身がポカポカ火照って、クネクネ身悶えたくて仕方ありませんでした。
 でも、我慢するようにとのご命令。
 鏡の中の自分の顔を睨みつけながら、一生懸命堪えました。

 だけど、おっぱいを両手でやさしく包み込まれたとき、とうとう唇が開いてしまいました。
 さっきのような、強く揉みしだくような感じではなく、ふうわりと慈しむような絶妙なタッチ。
 しほりさまの手のひらに、尖った乳首がやさしく押し潰されます。
 それがすっごく気持ち良かったんです。

「あふうぅ・・・」
 喉の奥が鳴ってしまってから、しまった、とあわてて口をつぐみました。
「こらあ。感じちゃダメだって言ったでしょ?」
 そうおっしゃるしほりさまの口調は、怒っているというより、面白がっている感じでした。

 しほりさまの両手は休むことなく下半身へ。
 私の足元にひざまずかれ、左足首からふくらはぎ、そして太腿。
 同じように右脚も太腿途中まで撫ぜてから、唐突にお尻へ。
 お尻の割れスジを抉じ開けるようにして隅々にまで、クリーミーな粘液に覆われました。

 おへそから下に塗るときは、いったんタオルで股間を拭かれました。
 溢れ出しそうな私の愛液を拭ってくださったのでしょう。
 それは、とても恥ずかしいことでした。

 しほりさまの真正面、目と鼻の先に私の股間。
 その部分に右手をあてがい、私の股間を撫でさするしほりさま。
 私は歯を食いしばって、湧き上がる快感に抵抗しました。

「こんなところでいいでしょう」
 立ち上がられたしほりさまが濡れタオルで両手を拭い、私にまたウイッグをかぶせてくださいました。

「うん。なかなかの仕上がりだわ」
 私の全身をしげしげと眺め、ご満悦な表情のしほりさま。
 鏡の中の私は、全身がツヤツヤ、テラテラと輝いていました。

「ナオコって、肌スベスベなのね。ずいぶん念入りにお手入れしているのでしょう?」
「あ、いえ、そんなには・・・」
「それって謙遜にならないわよ?本当だったら、ほとんどの女性を敵に回す発言ね」
 ご冗談ぽくおっしゃるしほりさま。

「そんなことを言うから虐めたくなるのよね。ナオコのクリトリスって、ずいぶんご立派だこと、とか」
 笑いながらおっしゃるしほりさまに、私は全身がたちまちカーーッ。

「テカテカになって爆ぜちゃいそうなくらいに飛び出ていたわよ?ずいぶん感じてくれちゃったみたいね」
「そ、それは・・・」
「今、すごくウズウズしているんじゃない?いっそのこと、ここでわたしが弄って、一度発散してあげようか?」
「あ、あの、えっと・・・」

「なんてね。期待した?でももう、あんまり時間がないから、ちゃっちゃと最後の仕上げをしなくちゃなのよね。残念ながら」
 相変わらずの笑顔で、テーブルの上の他のお道具を物色し始めました。

「でも今のは本心よ。時間があったら、ナオコが乱れるところ、この目で視てみたいと本心から思ったの」
「イベントが無事終わったら、機会作ってよ。社長さんも一緒でいいからさ。ナオコが社長さんに虐められてイッチャウとこ、すごく視てみたいのよ」
 背中を向けたまま、しほりさまがおっしゃいました。

「約束して。わたしからも社長さんにお願いしておくから」
「・・・はい・・・」
 
 そうお答えする他ありません。
 そしてきっとお姉さまも、しほりさまのご提案にご同意されると思いました。
 あたしじゃなくて、しほりさんが存分に虐めちゃっていいわよ、なんておっしゃって。

 私の性癖がみなさまに知られ、これからどんどん、私はそういう扱いの、みなさまの慰み者マゾドレイになっていく・・・
 そんな予感がありました。

「最後は、ペディキュアとマニキュアね。腰掛けていいわよ」
「あ、はい」

 私が座ろうと腰を落としかけたとき、玄関のほうで鍵を開けようとする、ガチャガチャという音がしました。
「えっ?」
 反射的に時計を見ると、午後1時を少し回ったところ。

 社員のかたたちがいらっしゃったんだ!
 開場が2時、開演は3時。
 時間的に、そろそろ集合して会場へ向かうべき頃合いとなっていました。

 とうとう社のスタッフ全員に、私の全裸姿を視られてしまう・・・
 ほのかさまに、リンコさまに、ミサさまに、そして雅部長さまに。

 今すぐどこかへ逃げ出したい、という羞恥と、遂にそのときがきてしまった、という被虐が、恥辱という塊になって全身を駆け巡り、それらは結局、ほろ苦くも甘酸っぱい、ある種の性的快感に姿を変えて全身を麻痺させ、座るのも忘れて立ち尽くしました。

 やがて、玄関のドアが開いて閉じるバタンという音につづき、女性声の華やかなガヤガヤという喧騒が、こちらへと近づいてきました。


オートクチュールのはずなのに 47


2016年4月11日

オートクチュールのはずなのに 45

 盛大にあわてました。

 えっ!?ど、どうしよう・・・私今、裸だし・・・メイクの人って?お会いしたこと、たぶんないし・・・あっ、今私、頭にタオル巻いたままだった・・・取ったほうがいいかな?でもまだ全然乾いていないし・・・
 初対面でタオル巻いたままなんて、失礼よね?でも、濡れ髪のザンバラじゃ、もっと失礼かも・・・ううん、失礼って言ったら、裸が一番失礼よね・・・
 そうだ、何かお飲み物のご用意もしなくちゃ・・・お湯は沸いているのかな?今から沸かしていたら遅くなっちゃうな・・・

 ピンポーン!

 ただただあたふたしているうちに、ご来訪を告げるチャイムが鳴り響きました。
 あ、はいはいーっ!
 反射的に大急ぎでインターフォンに飛びつきました。

「はいっ」
「あ、ヘアメイクの谷口と申します。早乙女部長様から、ここへ来るように言われまして・・・」
「は、はい。お待ちしておりました。少々お待ちください」
 
 受話器を戻して、今度は盛大にうろたえます。
 落とした視線のすぐ先に、剥き出しの乳房がプルプル震えていました。

 と、とにかくお出迎えしなくちゃ。
 左腕で胸を庇うように隠し、右手で股間を押さえた格好でペタペタと、玄関まで走りました。
 沓脱ぎで片足にサンダルをつっかけ、ドアノブに右手を伸ばして鍵を開けます。
 
 カチャン。

 自分でたてた音にビクンとしつつ、そーっと外開きのドアを開けていきます。
 左腕はずっとバスト、右手は伸ばしてドアノブにかけているので、股間は隠しようがありません。
 なので、内股でお尻だけ後方に突き出すように腰を引いた、絵に書いたような屁っ放り腰の私。

「このたびは、うちの絵理奈が大変なご迷惑をお掛けしてしまい、本当に申し訳ありませんでしたっ!」
 
 ドアを半分くらい開けたところで、ドア前で黒ずくめな女性が、深々とお辞儀をされているのが見えました。
 両脚と上半身が腰で直角になるくらい折り曲げた、それはそれはご丁寧なお辞儀。
 そのかたの頭頂部のつむじを、私が見下ろすような格好で数秒が過ぎました。

「あ、いえ、あの、えっと、ど、どうぞ、とりあえず中へお入りください・・・」
 下を向きっ放しのそのかたへ、そうお答えする他ありません。
「はい。それではお邪魔させていただきます」
 多分そのかたも緊張されているのでしょう、ずいぶんと堅苦しい口調でおっしゃって、上半身をゆっくり起こし始めました。

 まだ沓脱ぎ内には入ってくださらないので、私の右手はドアノブを掴んだまま。
 股間を隠すことは出来ません。
 完全に上体を起こしたそのかたは、一瞬、呆気にとられた表情で私を見つめたまま固まりましたが、すぐにニッと白い歯を見せて微笑まれました。
 セシルカットっぽいショートヘアがよくお似合いな、人懐っこい感じの素敵な笑顔でした。

 身長は私と同じくらい。
 シンプルな黒のラウンドネックカットソーにブラックジーンズで、スリムなプロポーションがスラっと決まっています。
 胸元にゴールドの細いネックレスがキラキラ揺れて、いかにも仕事が出来そうな、華やかなギョーカイの人、という感じ。

「あ、ごめんなさい。間が悪かったみたいですね。シャワーの途中でしたか?」
「あ、いえ、そうじゃないんですけれど、あ、そうだ、スリッパ、スリッパ」
 なんとなくそのかたが、私が裸なことをさして気にされていないようなご様子だったので、私もなんとなく気がラクになり、バストを隠すのをやめ、しゃがみ込んでスリッパをご用意しました。

「えっと、とりあえず、こちらへおかけください。お荷物はテーブルの上にどうぞ」
 裸のお尻に強い視線を感じつつ先に立ち、お部屋の奥へと誘導しました。
 お部屋の真ん中にあるダイニングテーブルの椅子をひとつ引き、お勧めしました。
 そのかたは、右肩に大きなショルダーをかけ、アンティークなトランク風のオシャレなカートを引いていました。

「あ、今何か、お飲み物ご用意しますので、しばらくおくつろぎください」
「あ、いえいえ、おかまいなく。渡辺社長様は、まだお見えではないのですか?」
「あ、えっと、お姉さ、あ、いえ、社長、じゃなくてチーフは、今ちょっと別室で・・・あ、すぐに出てくるとは思います」
 ふたりでぎくしゃくした会話をした後、私はキッチンへと逃げ込みました。

 冷蔵庫にペットボトルの緑茶があったので、グラスに注いでお出しすることにしました。
 トレイにグラスを並べて注いでいると、リビングのほうからお声が聞こえてきました。

「わざわざありがとうね、しほりさん。今、ちょっと着替えていたところだったから、ご挨拶が遅れちゃった」
「あ、社長!」
 ここで、おそらくヘアメイクのかたがお席を立たれたのであろう、ガタガタッという物音。
「このたびは、うちの絵理奈がご迷惑をお掛けしてしまって・・・」

「いいっていいって。急病じゃ、仕方ないわよ。盲腸なんて、予防のしようがないもの」
「おかげで、うちとしても、思いがけなく面白そうな展開になってきたのよ。まあ、ある意味ギャンブルでもあるけれど」

「あのアイテムを着こなせる代理のモデルさん、よくみつけることができましたね?昨日の今日、いえ、今朝の今なのに」
「ラッキーだったわ。モデルを絵理奈さんに決めていたからこそ、みつけられたとも言えるのよ。絵理奈さんにそっくりな体型の子が、たまたま身近にいたから」

 ヘアメイクのかたの恐縮されたお声と、お姉さまの愉しそうなお声が交互に聞こえ、私は、お茶をお持ちするタイミングを掴めずにいました。

「そう言えばさっき、驚いたでしょう?いきなり真っ裸の子に出迎えられて」
「あ、はい。ちょっと焦りました。でもわたし、絵理奈とか、イメビの現場でそういうのは慣れていますから。それに、たまにアダルトの現場にも呼んでいただいていますし」
「へー。そういうお仕事もされるんだ。面白そうね。興味あるから、後でゆっくりお話聞かせて?」
「ええ。それはいいのですけれど、さっきの裸のかたが絵理奈の代役を務めてくださるのですね?確かにプロポーションがほぼ同じに見えました」

「そう。絵理奈さんに合わせたオートクチュールを、奇跡的に着こなせそうな、我が社を救ってくれる今回のイベントの救世主なの」
 お姉さまがご冗談ぽくおっしゃってから、声量を上げてこちらへお声をかけてきました。
「ほら、直子?早くこっちへ来てご挨拶なさい」

 グラスを載せた銀盆を両手で持って、しずしずとお姉さまたちに近づきました。
 お姉さまも、頭にはまだタオルを巻いたままで、ゆったり気味なマリンブルーのロングTシャツ一枚のセクシーなお姿。
 ファンデーションとアイブロウまでは終わった、みたいな、お化粧真っ最中なお顔でした。

 お姉さまもヘアメイクのかたも、にこやかなご様子でこちらを向いて、じーっと私を見つめてきます。
 両手が塞がっているので、おっぱいも股間も、もちろん隠せません。

「直子、こちらが今回お世話になる、ヘアメイクアップアーティストの谷口しほりさん」
 私がトレイをテーブルに置くのを待って、お姉さまがご紹介してくださいました。
「しほりさん、この子が今日、絵理奈さんの代わりをする、臨時モデルの森下直子」

「あ、はい。森下さん、はじめまして。よろしくお願いします」
 しほりさまが立ち上がられ、私に向けてペコリとお辞儀をしてくださいました。
「あ、こ、こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」
 私もあわててお辞儀を返します。
 おっぱいがプルンと揺れました。

「あら、いいのよ、しほりさん。この子のことは、直子って呼び捨てにしちゃって。うちの社員なの。今日いらっしゃる他のお客様がたには内緒にして欲しいのだけれど」
「えっ!?でも今日、モデルをやられるのですよね?ぶっつけ本番で」
 私とお姉さまのお顔を交互に見つつ、信じられない、というお顔をされるしほりさま。

「この子にしか、今回のアイテムは体型的に着こなせないから、苦肉の策なの。幸い本人もやる気になってくれたし、まあ、素養もあるみたいだから」
「そうだったのですか」
「だから、ショーのモデルのノウハウに関しては、ドが付くくらいの素人なの」

 そこまでおっしゃって、お姉さまがしほりさまに、再び腰掛けるよう促しました。
 しほりさまはお座りになられましたが、私にはご指示がないので、そのまま立っていました。

「それで今日はね、この子をメイクの力で、出来るだけ別人に仕立て上げて欲しいのよ。イベントにいらしたお客様が後日、素の直子に会っても気づかないくらいに」
「ああ、なるほど。あくまで実在する架空のモデルさん?あれ?変な言い方でしたね、だと思わせちゃうわけですね?」
 しほりさまが興味津々のお顔でうなずかれました。

「確かに、今日絵理奈が着るはずだったアイテムですと、ショーのモデルが社員さんてわかったら、後々のお仕事が、いろいろとやりづらいかもしれませんね、お取引先さんとか」
「でしょ?」
「絵理奈も本来なら今日は、名前は売らないイレギュラーなお仕事として、過剰気味なメイクで臨むはずでしたので、その点は用意もしてあるし、大丈夫と思います」

 腰掛けられたおふたりが、私をジロジロ眺めながら会話を弾ませていらっしゃいました。
 視線が来ているのはわかっていたのですが、今更バストや下を隠すのもヘンなので、両手をだらんと下げたまま、手持ち無沙汰で立っていました。
 ちゃんとお洋服を召したおふたりの前にひとり全裸で立ち尽くしている、というのは、見世物にでもされているようで、なんだかみじめで、とても恥ずかしいものでした。

 しほりさまは、とくに私の下半身を熱心にご覧になられているような気がしました。
 恥丘のあたりをじっと視て、それから顔を視て、私に向けてニッと微笑まれる。
 そんなことが数回、ありました。
 そのたびに私の頬は、どんどん火照っていきました。

「それで、直子の扱い方、なのだけれど、この子って、マゾなの」
 お姉さまが世間話するみたいに、サラッと言い放ちました。
「へっ?」
「それも、ドがつくほどのヘンタイマゾ」
「はあ・・・」
 しほりさまがリアクションに困られています。

「だから、何て言えばいいのかな、恥ずかしがりのクセに視られたがりで、人がたくさんいるところで裸になりたがり、って言うか」
「つまり、恥辱願望。露出狂女。恥ずかしいメに好んで遭いたがる、みたいな。そんな種類のドマゾなの」
「・・・」
「そうよね?直子?」

 お姉さまがこちらを向いて、冷たい瞳でニヤッと微笑まれ、一瞬間を置いて、顎を軽く上にしゃくられました。
 私とお姉さまにしか、わからない秘密の合図。
 その合図があったら、私は直ちに、あるポーズを取らなくてはいけません。

 両手を合わせて頭の後ろへ、両足を、やすめ、に広げ、顔はまっすぐお姉さまに向けて。
 おっぱいも腋の下もマゾマンコも、すべてを包み隠さずお姉さまにご覧いただく、マゾの服従ポーズ。
「・・・はい。おっしゃる通りです、お姉さま」

「ね?」
 お姉さまがしほりさまに微笑まれました。
 マゾの服従ポーズな私をまじまじと見つめ、唖然としたお顔のしほりさま。

「直子にとって、あたしはお姉さまで、あたしの言うことは何でも聞かなくてはいけないの。あたしたちは、そういう関係」
「それで、今日のイベントモデルは、そんな直子のヘンタイ性癖を、堂々と仕事として、たくさんのお客様がたにご披露出来る、直子にとってご褒美イベントでもあるの」

「その代わり、失敗は許されないから、イベントが終わるまで、あたしのどんな命令にも絶対服従。ううん。あたしだけではなく、早乙女部長にも、他のスタッフ全員にも。そう言い渡してあるの」
「そこに今、しほりさんも加わったというワケね。しほりさんのご命令にも絶対服従よ、いいわね?直子?」

「・・・はい。よろしくお願いいたします、しほりさま」
 マゾの服従ポーズのまま、しほりさまをすがるように見て、お辞儀をしました。
「好きなように弄っちゃって、もしも何かわがまま言ったら、ひっぱたいちゃっていいからね。多分それで、直子は悦んじゃうでしょうけれど」
 お姉さまがイジワルっぽくおっしゃって、しほりさまは困ったような苦笑い。
 でも、なんとんなく嬉しそうなご様子でした。

「とりあえずわかりました。それではまず、ウイッグから決めちゃいましょう」
 苦笑いが引っ込むと、抑えきれない好奇心で、そのおふたつの瞳が爛々と輝き始めたしほりさま。
 私の全身を遠慮無い視線で舐めるみたいにじっくりと眺められてから、お姉さまにお尋ねになられました。

「大きめな鏡ってありますか?違うお部屋にあるなら移動してもよいですけれど」
「ああ、洋間に姿見があったわね。ここに移動してくるから、そこのソファーのところを使いましょう」
 お姉さまが答えられ、席をお立ちになりました。

「ほら、直子も手伝って。しほりさんのお荷物をお持ちなさい」
「は、はい」
 マゾの服従ポーズを解くお許しが出て、テーブルに駆け寄りました。

「それじゃあ直子さん、これ、持ってくれる?」
 しほりさまが肩から提げられていたショルダーバッグを指さされました。
 なんだか急に気安くなったそのおっしゃりかたで、しほりさまも私を蔑むことに決めてくださったのだとわかりました。

「重いから、落とさないように気をつけてね」
 両手で持ち上げてもかなり重い。
 しほりさま、あの細い肩にこんなに重いバッグを提げられていたんだ。
 思わず尊敬の眼差し。
 両手で持ってヨタヨタとソファーまで運びました。

 お姉さまが洋間からキャスター付きの姿見を転がしてこられ、いったんソファーのところに置きましたが、壁際でちょっと暗い、ということになり、それからソファーごといろいろ移動して、最終的には中央のテーブルから少し離れた、照明下の明るい場所に落ち着きました。

 私の座るソファーを中心にして、周りにソファーやテーブルを囲むように置き、即席のメイクルームが出来上がりました。
 テーブルの上には、しほりさまのメイクアップお道具がズラリと並べられました。

「これが絵理奈が着けるはずだったウイッグです」
 しほりさまが黒髪がツヤツヤなウイッグを取り出しました。
「ちょっと失礼するわよ」
 鏡に向かっている私の背後に立ったしほりさまが、私の髪に巻いたタオルをスルスルッと解きました。

「あっ、まだ濡れているかもです」
「大丈夫よ、今は試すだけだから」
 地毛を手際よく頭上にまとめられ、慣れた手つきでネットをかぶせられました。

「こんな感じですね」
 明らかにお姉さまだけに向けられた、しほりさまのお言葉。
 緩いウエーブのサイド分け、胸に届かないくらいのセミロング。

「へー。なんだかゴージャスだけど、ちょっと重いかしら」
「もうひとつは、こんな感じです。黒髪限定ということだったので、今日は黒髪しか持ってきていませんが」
 スポッと外され、スボっとかぶされました。
 もっとウエーブの派手めな、もっとゴージャスなセミロング。

「ふーん。なんかピンとこないかな。あとは無いの?」
「あとは、これですね」
 目の上で前髪をまっすぐパッツン、ストレートセミロング。
「あっ!」
 思わずお姉さまと鏡の中で目が合いました。

「これね。これで決まりだわ」
 お姉さまと私の様子に、しほりさまは目をぱちくり。

 あれはまだお姉さまとおつきあいする前、大学一年の初秋の頃。
 ひとりで街に出て裸コート遊びをしていたら、偶然シーナさまにみつかってしまい、連れて行かれた西池袋のオシャレなアパレルセレクトショップ。
 そこではスキンアートという、素肌に絵を描くサービスをされていて、コートを脱がされ、当然のようにおっぱいやお尻を出すはめになりました。
 見知らぬお客様がたが頻繁に出入りする白昼の店内で、丸裸同然の姿で晒し者になった私。

 そのときシーナさまが、距離的には離れているとはいえ地元の駅でもあることだし、と私の身バレを心配してくださり、変装のためにかぶせてくださったウイッグ。
 もっと短かいフレンチボブタイプのウイッグでしたが、鏡に映った前髪パッツンな私の正面顔は、そのときのふしだら露出狂女にそっくりでした。
 お姉さまもシーナさまから、そのときの写真を見せてもらっているはずですから、瞬時に思い出されたようでした。

「このウイッグに合わせてメイクをお願い。そうね、かなり小生意気風に、ね」
 お姉さまが愉快そうにおっしゃいました。
「生意気風、とすると、キツネ顔っぽく、がいいのかな?でも直子さんて、どちらかと言えばタヌキ顔ですよね?」
「ああ、そう言われれば、そうね」

「絵理奈は、どちらかと言えばキツネ顔で、雰囲気変えるために今回、タヌキ顔っぽくしようとしていましたから、直子さんの場合、素の絵理奈に寄せればいいのかな。要は素顔から離れれば離れるほど、いいのですよね。」
「ええ、それでいいと思うわ。何て言うか、お高くとまりやがって、っていう感じ?それで、思わず虐めたくなっちゃうような」
 お姉さまがご冗談ぽくおっしゃいました。

「なんとなくわかりました。それでは、そういう方向で努力してみます」
「うん。あとはしほりさんに任せるから、お願いね。あたしも急いでメイクして、着替えもしなくちゃいけないし」

 お姉さまがチラッと壁の時計に目を遣りました。
 つられて見ると、お昼の12時を10分ほど過ぎていました。

「何かあったら、あたしはそこの部屋にいますから。直子は、ちゃんとしほりさんの言う通りにするのよ」
 それだけ言い残して和室に戻るお姉さま。

 お姉さまが引き戸の向こう側に消えると、しほりさまが好奇に溢れた、ちょっとイジワルそうなお顔で鏡の中の私を視つめ、嬉しそうにニッと微笑まれました。


オートクチュールのはずなのに 46

2016年4月3日

オートクチュールのはずなのに 44

「凄いわね。最初はギクシャクしていたけれど、今はもう、歩きかたも仕草も、プロのモデル顔負けじゃない?」
 マンションに着き、部室の階まで昇るエレベーターホールで、やっとお姉さまと向き合いました。
「後ろから見ていて、惚れ惚れしちゃった。すれ違う人のほとんど、男も女も、みんな直子に見蕩れていたわよ」

「そ、そうですか?」
 お姉さまのおやさしいお声に、フッと我に返るような感覚があり、同時に、過剰なほど張りつめていた背筋と心の緊張が解けていくのがわかりました。
 
 やがてエレベーターが到着。
 降りる人はなく、乗り込むのもお姉さまと私だけ。

 エレベーターの箱内に足を一歩踏み出したとき、とんでもないものが視界に飛び込んできました。
 私の真正面に、等身大以上の大きな鏡、そして、そこに映った自分の姿・・・

 鏡に映った私は、胸のVゾーンが乳首寸前まで大きくはだけ、裾もワレメギリギリまでせり上がった、目のやり場に困り過ぎるほど破廉恥な、裸コート姿でした。
 
 こんな姿で自信満々で前から歩いてこられたら、注目するのはあたりまえです。
 心の片隅に無理やり追いやっていた羞恥心が一気によみがえり、火照りとなって全身を駆け巡りました。

「わ、私・・・私、こんな姿でモールやお外を歩いてきたのですね・・・」
「そうよ。みんなの注目の的だったじゃない。でも直子もひるまずに堂々と歩き切って、偉かったわ」
 それって単に、驚いていたのか、呆れていたのだと思います。

「でもでも私、よく行くお店もあるし、知っている店員さんもたくさんいるし、どうしよう・・・もう恥ずかしくてお店に行けない・・・」
 やってしまったことの重大さに今更、からだが震えてきました。

「ううん。その点は大丈夫と思うな。注目の的は首から下だったし」
 お姉さまのからかうようなお声。

「まず服装に目が行って、それからあわてて顔を確認する、って具合だったわ」
「こんな格好したがる女って、どんな顔なんだろう、って感じでね。だけど、そのド派手なメガネでしょ?顔が半分以上隠れているから、知り合いだってわかりゃしなかったわよ」
 今度は真面目に、諭すみたいにおっしゃいました。

「それを貸してくれたアヤに感謝しなくちゃ、ね?」
 最後はおやさしくおっしゃり、不意にギュッと抱きしめてくださいました。
「あんっ!?」

「だから、さっきの感じでいいの。さっきの感じでイベントもしっかり頑張って。やっぱり直子はやれば出来る子なのよ。あたしのパートナーが直子で、本当に良かった」
 耳元でそうささやかれ、唇に甘いキス。
 
 それだけでさっきまでの不安が、綺麗サッパリ吹き飛んでしまうのですから不思議です。
 お姉さまが悦んでくださっているのだから、これでいいんだ・・・
 唇が離れたとき、タイミング良くエレベーターのドアが開きました。

 手をつないでエレベーターを降りました。
 目の前には、ホテルみたいな間接照明のオシャレな廊下が、シンと静まり返っています。
 エレベーターのドアが完全に閉まるのを待って、お姉さまがおっしゃいました。

「ここまで来たら、そのコートももう、脱いじゃって大丈夫でしょう」
「えっ!?」
「さっきのあたしのキスで気が緩んじゃった?直子には今日一日、でも、や、だって、は許されていないはずよ」
「あ、はい・・・ごめんなさい・・・」

 お姉さまからのキスで引っ込んだはずの羞恥心が、まだ少し、心のどこかでくすぶっていました。
 私にはイベントまで服は一切着せない、って、オフィスでお姉さまも断言されたじゃない?
 むしろ、ここまでコートを着せていただけたことに、感謝しなくちゃダメ。
 自分に叱るように言い聞かせ、コートの残りのボタン3つを、思い切るように手早く外しました。

 脱いだコートはニヤニヤ顔のお姉さまにお渡しし、今度はマンションの廊下で全裸。
 サングラスも一緒に外されました。
 お部屋へたどり着くまでに通り過ぎる、他所様のドアふたつが開きませんように、とドキドキお祈りしながら、携帯電話のカメラをこちらへ向けているお姉さまを追いました。

 お部屋へ入るとすぐ、お姉さまが着ていたスーツをスルスルと、お脱ぎになり始めました。
 そのとき、きっと私は、不思議そうな顔になっていたのでしょう。
 お姉さまが照れ隠しみたいに微笑みつつ、おっしゃいました。
「言ったじゃない?部室に着いたらご褒美上げる、って」

 ブラジャーも取り、ストッキングもショーツもお脱ぎになって、生まれたままのお姿になられたお姉さまが、そのままギュッと私を抱きすくめてくださいました。
「はぅぁぁー」
 お洋服を着ていらっしゃらなくても、いい匂いなお姉さま。

「これから直子を、シャワー浴びながらとことんイカせてあげる」
 耳元をくすぐる甘いささやき。
「今日は、あたしをイカせようとか、余計なことは考えないで、自分がイクことだけ考えていなさい」
 おっしゃるなり、お姉さまの右手人差し指が私のマゾマンコへズブリ。
「はぅっん!」

「相変わらずグッショグショなのね。スケベな子。モールでの注目がそんなに良かった?」
「イベントでは、それ以上の熱い視線が待っているからね」
「あうっ!あっ、あっ、あーっ}
 しばらくグチョグチョ掻き回されてから、唐突に指が抜かれました。

「おっと、その前にすることがあった。直子、今日のお通じは?」
「あん、えっ・・・お通じ、ですか?えっと、普通ですけれど・・・」
「いつしたの?」
「えっと、起きて、シャワーして、朝ごはん食べて、その後、です」

「朝食は何?」
「あのえっと、レタスとキュウリのサラダにジャムトースト一枚。あとミルクティで、食後にバナナを一本・・・」
「ふーん。ヘルシーね。今日は、イベント終わるまで何も食べられないけれど、我慢してね」
「はい。それは、構いません・・・」

「終わったら何食べてもいいから。あたしが何でもご馳走してあげる。だけど今はお腹の中、すっからかんにしちゃいましょう」
 おっしゃりながら全裸のお姉さまは、ご自分のバッグの中を物色されていらっしゃいました。

 バッグから引っ張りだされたのは、オフィスを出るときに綾音さまから手渡された小さなショッパー。
 その中から出てきたのは、私もお姉さまも見慣れている青地に白十字の箱に入ったあのお薬でした。

「そこに四つん這いになりなさい」
 お姉さまの右手が、ご自分の足元のフローリングの床を指しました。
「は、はい・・・」
 冷たさが戻ったお姉さまのご命令口調に、ゾクゾクっと鳥肌を立たせつつ、床に手を着きました。

 確か綾音さまは、あのショッパーをお姉さまに渡されるとき、絵理奈さまのためにご用意された、とおっしゃっていたっけ・・・
 ということは、本来なら絵理奈さまがイベントの前に、綾音さまの手でお浣腸されるはずだったんだ・・・

 ふと、そんな考えが浮かび、思わずその図を妄想していました。
 絵理奈さまの急病が無かったら今日の綾音さまは、盗聴のときとは打って変わって、絵理奈さまに対してエスのお役目をされていたんだ・・・
 その妄想は、私を凄く興奮させました。

「さっきアヤに診せていたときも思ったのだけれどさ、直子の肛門、確実に拡がっているわよね?少なくとも連休のときよりは」
 ギクッ!
 お姉さまのその一言で、綾音さまと絵理奈さまについての妄想が消し飛びました。

「連休明けからずっと、アヌスばっかり弄ってオナニーしていたんじゃない?凄い開発具合だもの」
 からかうようなお姉さまのあけすけなお言葉に、身を縮こませながらもキュンキュン感じちゃう私。
「・・・は、はい・・・そ、その通りです・・・」
 お姉さまに嘘をつくことは出来ません。

 アヌスばっかり、というワケではありませんが、ムラムラがひどくて激しくオナニーするとき、シャワーしながらお浣腸をして、がまんしながらイクこと、イッた後、シーナさまから就職祝いでいただいた柘榴石のアナルビーズを出し挿れすることが、ルーティーンワークとなっていました。
 
 さすがにまだ、直径40ミリの珠が付いたランダムなほうのアナルビーズは無理でしたが、直径10ミリから5ミリづつ大きくなるほうのであれば、8個の珠全部を収められるようにまでなっていました。
 あのなんとも言えない、もどかしい圧迫感がクセになっちゃったみたいなんです。

 そんなことを途切れ途切れに白状しました。

「ほら、もっと高く、お尻突き上げなさい、このヘンタイ女」
「はうっ!」
 ピシャっとお尻を叩かれて、ビクンとお尻が突き上がりました。

 お姉さまの指が私のマゾマンコから愛液をすくい取り、お尻の穴周辺になすりつけられます。
「あっ、はぅぅぅっ」
 お尻の穴が抉じ開けられ、指が内部へと埋没してくるのがわかります。
「ずいぶん挿れやすくなっているわよ?淫乱ケツマンコ」
「あう、あう、あうぅ」

「あたしにも開発の余地、残しておいてよね。一番大きな珠は、あたしの手で挿れるんだから。今度すっごく太いアナルバイブでも、買ってあげるわ。この穴が引き裂かれちゃうくらいのやつ」
 指がしばらくグリグリしてからスポンと抜け、代わりに今度は、何かもっと細いものが奥深く挿入されたのがわかりました。

「あああぁぁ・・・」
 間髪を入れず、直腸の中に冷たい刺激が注ぎ込まれてきます。
「今日は念のため、3つ入れておくわね」
 代わる代わるに細いものを突き立てられ、最後に何か柔らかいもので穴を塞がれました。

「うふふ。アナルプラグまで用意しちゃって、あのふたりも、かなりヘンタイな遊びを日常的にしているみたいね?」
 愉快そうなお姉さまのお声。
「そっか。あたしのプレゼントもアナルプラグにしようっと。これの2倍位太いやつ」

 挿入されたものは、柔らかいのですが中で膨らんでいる感じで、その圧迫感が妙に心地良くムズムズするものでした。
 でも、これの2倍って言ったら・・・
 本当に私の、裂けちゃうかも。

「直子って、マゾマンコにならあるでしょうけれど、ケツマンコに何か挿れっ放しで歩いたことって、あったっけ?」
「あ、いえ、お尻には、ないです・・・」
「今日のアイテムの中には、アナルにプラグ挿れっぱのものもあるから、それならいい練習にもなるわね。さ、バスルームへ行きましょう」

 お姉さまが差し伸べてくださった右手にすがって立ち上がり、手を引かれてバスルームに向かいました。
 お浣腸されたお尻の穴に、プラグを挿し込んだたままで。

 バスルームでのお姉さまとの行為は、いつもとちょっと違ったものになりました。
 ぬるめのシャワーを勢い良く全開にして、まず、その下で抱き合いました。
 髪の毛が顔にベッタリ貼りつくのもおかまいなく、唇を貪り合いました。
 湯気で曇る前の鏡に映った私のお尻には、赤ちゃんのおしゃぶりの先っちょのような輪っかが、滑稽に覗いていました。

 抱き合った胸元にボディソープを垂らし、からだを擦りつけ合います。
 やがて泡立つと、いったんシャワーの雨から避難して、お姉さまが私を愛撫し始めました。
 シャワーは出しっ放しで、相変わらず激しい水音がふたりを包んでいました。
 
 お姉さまは、これからモデルをする私の肌に痕を残してはいけない、と思われたのでしょう。
 いつものように叩いたりつねったり、もちろん縛ったりも無く、マッサージするみたいにやんわりジワジワとした愛撫がつづきました。
 おっぱいが念入りに揉みしだかれ、腋やうなじなど私が弱い場所を集中的に弄られたり。
 
 私の大好きな、痛い、という刺激は皆無なものの、お姉さまのおやさしいマッサージは執拗につづき、私が人肌に飢えていたこともあって、どんどん高揚してきました。
 焦らされていた乳首への責めで、最後はあっという間に昇りつめました。

 一度私がイッてからは、お姉さまの右手が、ずっと私の股間に吸い付きっ放し。
 最初から私の腫れた肉芽を執拗にいたぶってきました。
「んぐっ、んぐぅーーーっ!!!」
 お姉さまの唇で塞がれた自分の喉奥から、くぐもったような歓喜の嗚咽。
 それをかき消すような、激しいシャワーの水音。

 私がビクンビクンとイクたびに、お姉さまは攻撃の仕方を変えてきました。
 指が2本、マゾマンコ奥まで潜り込んで掻き回され、尖った乳首が噛み切られるくらい歯を立てられました。
「あああーーっ、あんあんっ、いぃぃーーーっ!!!」

 私の両手もお姉さまの乳房や秘唇をまさぐってはいるのですが、お姉さまは気にも留めていらっしゃらないご様子。
 ひたすら私を責め立てて、そして私はどんどん、お腹が痛くなってきました。

「あん、お姉さま、そ、そろそろダメです・・・出、出ちゃいそうですぅ・・・」
「うん、知っているわ。さっきから直子のお腹、グルグルゴロゴロ、煩いくらい鳴っているもの」
「だ、だから、あんっ、いったん離れてくださいぃ・・・でないと、お姉さまのおからだまで、わ、私の汚いもので汚してしまいますぅ・・・」

 私の膣壁をしたい放題いたぶってくる、お姉さまの指が与えてくださる快楽に飲み込まれそうになりながらも、なんとか必死に訴えました。
 そのあいだ下半身はずっと、プルプル震えっ放し。

「大丈夫よ、お尻に栓をしているのだから。直子の意志や諦めだけでは、派手に漏れだしたりしないはず」
「それに、出してもシャワーがすぐに流しれくれるから、あたしのことも気にしなくていいわよ」
 お姉さまが激しいシャワーの下で私のマゾマンコを責める手は止めず、クールにおっしゃいました。

 おっしゃる通りでした。
 一生懸命ガマンはしているのですが、お姉さまがくださる快感に気を許すと、どうしてもガマンのほうの力が緩んでしまうのです。
 栓をしていなかったら、もはやとっくに垂れ流してしまっていたはずでした。

「それに、もうちょっとがんばってみなさい。ほら、アヌスに力を入れて」
 ご命令通り、キュッと肛門を締め上げると、同時にお姉さまの指に陵辱されている穴の方も締め上げることになります。

「そう、その調子。あたしの指が奥へ奥へと咥え込まれていくわ。もう一本挿れちゃおうかしら、ほら締めて」
「んんーーっ!」
 膣壁がパンパンに圧迫され、尿意みたいなものまで催してきました。
 耐え難いお腹の痛みさえ、快感に変換されています。
 もちろん昂りも、頂上まであと一息のところまで。

「あうっ!お、お姉さま・・・もう、もうダメです・・・もう、もう・・・いやぁーー」
「なあに?イキそうなの?いいわよ、イっちゃいなさい、ヘンタイ直子らしく、あたしの目の前でウンチ垂れ流しながら、イっちゃいなさい」
 
 お姉さまの左手でグイッと抱き寄せられると同時に、膣内への摩擦も最高潮になりました。

「いやーーーっ、あっ、あっ、いや、いや、だめ、はぁっ、はぁっ、でちゃう、イッちゃぅぅぅ」
 膣内への刺激が一瞬途切れ、同時に肛門に筆舌に尽くし難い爽快な開放感が訪れました。
 栓を抜かれた瞬間、スポンという音さえ聞こえたような気がしました。
 間髪を入れず膣内への摩擦が戻り、昂りが何十倍にも増幅して戻ってきました。

 すさまじい快感が全身を駆け巡っていました。
 私の肛門は、自分でも制御不能。
 からだ中の穴という穴から、何かしらの液体が放出されているような感じでした。
 自分自身が液体となって、溶け出しているような絶頂感でした。

 集中豪雨のようにけたたましいシャワーの水音の中でも、自分の下半身から断続的に発せられた、はしたない破裂音は聞こえていました。
 そして、そこはかとなく香ってくる、懐かしくも不穏な臭い。
 それらの恥ずかしささえ、そのときの私には快感の増幅を呼ぶスパイスに過ぎませんでした。

「ああああーーーごめんなさいぃ、イキます、イキます、もうイキますうぅぅぅぅ!!!」
 お姉さまのおっぱいに顔を擦りつけ、シャワーの音に負けないくらいに叫びました。
 シオなのかオシッコなのか、マゾマンコからも何らかの液体がほとばしる感覚がありました。

 いつの間にか両膝が崩れ、シャワーの下で四つん這いに力尽きたまま、それでもたてつづけに何度もイキました。
 シャワーが背中に、お尻に当たる、その打擲の刺激だけで、果てしなくイッちゃいそう。
 そのくらい全身の肌がビンカンになっていました。

 シャワーの勢いがだんだん弱まり、やがて止まりました。
「ハァ、ハァ、ハァ・・・」
 水音が消えたバスルームに、自分の荒い息遣いだけがエコーしていました。

「どうだった?あたしからのご褒美」
 裸のお姉さまがしゃがみ込んで、四つん這いでうなだれている私の顔を覗き込んできました。
「は、い・・・ありがとう、ございます・・・さ、サイコーでした・・・」
「これで底無しな直子のムラムラも、いくらかは落ち着いたでしょう。からだ拭いちゃって、イベントの準備に移りましょう」
「は、はい・・・」

 ぐったり疲れきったからだをお姉さまに助け起こされ、フラフラたどり着いた脱衣場では、ただ立ち尽くす小さな子供状態。
 お姉さまにからだの隅々まで丁寧に拭いていただきました。
 ブラジャーの跡もパンストのゴム跡も、跡形もなく消え去り、両手の指なんてもうシワシワ。

 頭にタオルを巻いてもらい、私は裸、お姉さまは真っ白なバスローブ姿で部室のメインルームであるリビングルームに移動しました。
 お姉さまがグラスに冷たいスポーツドリンクをたっぷり注いで、持ってきてくださいました。
 
 お部屋壁際のソファーにタオルを敷いて裸のお尻で腰掛け、最初はそれをグイッと、残りはゆっくりといただきました。
 お姉さまは、脱ぎ散らかしたご自分のスーツ類を拾い集めてはハンガーやトルソーに掛け、それからバスローブのまま和室に入られました。

 バスルームで、何回くらいイッたのかしら?
 さすがに今は大人しくなっている自分の乳首を見下ろしながら考えました。
 数えてみようか、とも思いましたが、イキグセがついてからはずっと、頭の中が真っ白に吹っ飛んでいて正確には思い出せないことに、すぐ気づきました。
 そのぐらいたくさんイッたはずです。

 だんだん冷静になるとともに、この場でまだ自分が全裸であることを恥ずかしく思い始めた頃、ご来客を告げるチャイムが室内に鳴り響きました。
 すぐにバスローブ姿のお姉さまが和室から出てこられ、インターフォンの受話器を取られました。

「はい。あ、どうも。わざわざありがとうございます・・・」
 その後、フロア階数とルームナンバーを告げられ、受話器を置かれました。

「メイクのしほりさんがみえたわ。今エントランスだから、ほどなく上がってこられるはず」
「あたし今、手を離せないから、次にチャイムが鳴ったら、直子、玄関でお迎えしてあげて」

 それだけ告げて、再び和室に戻られるお姉さま。
 和室の引き戸がピシャリと閉じられます。

 私、どうやら全裸のまま、見知らぬお客様をひとりで、お出迎えしなくてはいけないみたいです。


オートクチュールのはずなのに 45


2016年3月27日

オートクチュールのはずなのに 43

「あたし今、本気で外に出るところだった!」
 ご自分でもびっくりされたようなお顔で、お姉さまが私の顔をまじまじと見つめてきました。

「なぜ直子も何も言わないのよ?あなた今、真っ裸なのよ?普通は、何か着せてください、とか、あたしを引き留めるものでしょ?まさか、そのまま外に出ても構わなかったの?」
「いえ、あの、だって・・・」

 お姉さまにあまりに自然に手を引かれ、戸惑いながらも抗議出来る雰囲気でもなく、ただただパニクっていたのでした。
 あのままお外へのドアを開けようとされたら、さすがに声をあげていたことでしょう。
 だけど、それをどうお伝えすればいいのか適切な言葉が浮かばず、黙って顔を左右にブンブン振って否定の意思を表しました。

「ねえ・・・」
 やれやれ、というお顔をされたお姉さまが、ご自分のデスクでこちらに背を向けている綾音さまに呼びかけようと、お声をかけかけたのですが、綾音さまがお電話中とわかり尻すぼみで終わりました。
 すぐにお電話は終わり、綾音さまが受話器を置くのを待って、もう一度呼びかけるお姉さま。

「ねえ?デザインルームに何かガウンみたいな羽織れるもの、なかったかしら?コートとかジャケットとか。この際カーディガンでもバスローブでも、何でもいいわ」
 お声に呼ばれてこちらをお向きになった綾音さまが、私を見てニッと笑いました。

「あら?ナオコはこれから本番までずっと、裸で過ごさなくてはいけないのではなかったかしら?」
 イタズラっぽい目つきでからかうようにおっしゃる綾音さま。

「なーんてね。いくらなんでも、このビルからマンションまでオールヌードで歩き回らせる訳にはいかないわよね。大騒ぎになってイベントどころじゃなくなっちゃう」
 立ち上がった綾音さまがデザインルームに向かいかけ、すぐ立ち止まりました。

「そうだわ。今日わたくし、レインコート着てきたから貸してあげる」
 おっしゃってから、綾音さまのお顔が少し曇りました。
「夜明け前からずっとシトシト降りつづけているのよ、このイヤな雨」

 絵理奈さまは今日の明け方に苦しみ出したと、お姉さまがおっしゃっていたので、きっとそのときのことを思い出されているのでしょう。
 小さくお顔をしかめながら綾音さまが、更衣室のほうへと向かわれました。

 ほどなく戻られた綾音さまから、少しくすんだグリーンのオシャレなコートを手渡されました。
 裏地を見たら一目でわかる、イギリスを代表する有名なブランドものでした。

「あ、ありがとうございます・・・」
 うわー、このコート、おいくらぐらいするのだろう・・・なんて下世話なことを考えながら恐縮しつつ、おずおずと袖に腕を通しました。

 見た目よりもぜんぜん軽い感じのトレンチコート。
 綾音さまのほうが私より5センチくらい背がお高いので、ちょっぴりブカブカ気味なのはご愛嬌。
 羽織ると、いつも綾音さまがつけていらっしゃるミント系のフレグランスが香りました。

「ショートコートだからギリギリかな、と思ったけれど、ナオコだと股下5センチくらいは隠れるのね」
 綾音さまがからかうみたいにおっしゃいました。

 確かに、6つあるボタンを全部留めると、ミニのワンピースを着ているような着丈でした。
 うっかり前屈みにはなれないくらいの、微妙なキワドさ。
 生地が薄めで柔らかいので、乳首の出っ張りも微妙にわかります。

「おお。いい感じ。じゃあ行こうか」
 お姉さまが再び私の右手を握りドアへ向かおうとすると、綾音さまに止められました。
「待って。これもしていくといいわ」

 差し出されたのは、見覚えのある派手なサングラス。
 絵理奈さまがオフィスへお越しになるときいつも着けていた、いかにもタレントさんがオフのときにしていそうな、茶色いレンズでセルフレーム大きめなサングラスでした。

「昨日から東京に来られている地方のお客様が、イベントまでの暇つぶしに、下のショッピングモールとか観光されているかもしれないでしょ?」
「ナオコはともかく、絵美の顔は知られているから、みつかったらちょっとはお相手しなきゃ。そのときナオコの顔も覚えられちゃったら、後々マズイじゃない?」
「もしそうなったら、ナオコは失礼して、先に部室に行っちゃいなさい。くれぐれもお客様に、うちの社員とは思わせないこと」

 綾音さまのご説明に、はい、とうなずいてはみたものの、こんな目立つサングラスに、ミニワンピ状態のトレンチコートって、かえって人目を惹いちゃうのでは?と思いました。

「それと、メイクのしほりさんは、今原宿だから、大急ぎでこちらへ向かうって。3、40分てところね」
「おっけー。それじゃあ、後のことは任せたから。行こう、直子」

 期せずして、こんな平日のお昼前に勤務先のビル内で裸コートを敢行することになってしまった私は、お姉さまに右手を引っ張られ、オフィスを出ました。

「思いがけず、面白いことになっちゃったわね」
 エレベーター内はふたりきりでした。
 お姉さまが私の全身をニヤニヤ眺めながらおっしゃいました。

「まさかこんなことで、直子のヘンタイ性癖をうちのスタッフにカミングアウトすることになるなんて、思ってもみなかった。その上、ショーでうちのアイテムを身に着けるモデルまで直子になっちゃうなんて」
「こんなに大っぴらに、勤務中にみんなの前で堂々と直子を辱められるなんて、あたしもう、愉しくって仕方ないわ。ある意味、こんな機会を作ってくれた絵理奈さまさまね」

 本当に嬉しそうなご様子のお姉さまを見ていると、私も嬉しくなります。
 ただし、心の中は不安で一杯ですが・・・
 ほどなくしてエレベーターが一階へ到着しました。

 オフィスビルのエレベーターホールは、ずいぶん賑わっていました。
 お昼が近いからかな?
 大部分はスーツ姿のビジネスマンさんやOLさんたち。
 右へ左へ、忙しそうに行き交っていました。
 サングラスをかけるときに思ったことは杞憂に終わらず、エレベーターを降りた途端に、いくつもの不躾な視線が私に注がれるのを感じました。

 今までいた身内だけの空間から、見知らぬ人たちが大勢行き交う、公共、という場にいきなり放り出され、裸コートの私は途端に怖気づいてしまいました。
 こんな場所に私、コートの下は全裸で、短かい裾から性器まで覗けそうな格好で、立っているんだ。
 東京に来てから、頻繁にショッピングやお食事で立ち寄り、会社に入ってからは毎日通勤している、こんな場所で。
 怯えながらも甘く淫らな背徳的官能に、被虐マゾの血がウズウズ反応していることも、また事実でした。

「何早くもビビッているのよ?」
 私の緊張をいち早く察したお姉さまが、エレベーターホールの柱の陰へ私を連れ込みました。
「このくらいで怖気づいていたら、ショーのモデルなんて到底務まらないわよ?」
 壁ドンの形でヒソヒソ諭されました。

「いい?今日の直子はいつもの直子じゃないの。このビル内のオフィスに勤める一介のOLじゃなくて、これからファッションイベントで主役を務める、デザイナーから選ばれたモデルなの」
「直子にショーモデルとしての心得を教えてあげる。まず、モデル、つまり服を魅せるマネキンになりきりなさい。一流のモデルは人前で喜怒哀楽を出してはダメ。高飛車なくらいのポーカーフェイスが基本よ」

「恥ずかしさに照れ笑いとか困惑顔は、見ているほうがかえって気恥ずかしくなっちゃうの。それでなくても今日直子が着て魅せるアイテムは、一般論で言えば恥ずかし過ぎるようなものばかりなのだから」
「心の中では、どんなにいやらしく感じていてもいいから、表の顔はポーカーフェイスをキープ。不機嫌なくらいでちょうどいいわ」

「練習のために、ここから部室まで、ふたりでモデルウォークで歩いていきましょう。あたしもつきあってあげるから」
「当然、人目を惹くけれど、臆してはダメ。逆に人目を惹かなければ、モデルとしての価値なんて無いのだから。注目浴びて当然、あたし綺麗でしょ?って感じで澄まして颯爽と歩くこと」

「昨日、ランウェイでふざけてやっていたじゃない?雅と一緒に。上手いものだったわ。あの感じで歩けばいいから」
 そこまでおっしゃって、お姉さまの目が私の着ているコートへと移りました。

「それにしてもずいぶんキッチリとボタン留めたのね?こんなジトジト湿度なのに」
「それ、かえって不自然だわ。暑苦しい。上のボタン、二つ外しなさい」

 でも・・・と思ったのですが、ご命令口調には逆らえません。
 お姉さまのお顔をすがるように見つつ、首元まで留めていたボタンとその下を、そっと外しました。

「ほら、すぐそんなふうに嬉しそうな顔する。どんな命令にも淡々と無表情で従いなさい。内心はどんなに悦んでもいいから」
 叱るようにおっしゃりながら、ボタンを外した襟を開いて、整えてくださるお姉さま。
 視線を落とすとコートのVゾーンが、おっぱいの谷間が覗けるくらい、肌色に開いていました。

「うん、トレンチはやっぱり、この襟を開いた形が一番恰好いい。胸元が風通し良くなったでしょう?」
 いえ、お姉さま、前屈みになると隙間から乳首まで覗けちゃいそうなのですけれど・・・

「ついでに裾のほう、一番下も、外しましょう」
 えっ!?と思っても、表情に出してはいけないのでした。
 こんなに短かくて、生地が柔らかいから裾だって割れやすそうなのに、モデルウォークで歩いたら足捌きで・・・と思いつつも、努めて無表情で外しました。

 6つあるボタンのうち3つを外してしまいました。
 今留まっているのは、下乳の辺りからおへその辺りまでの3つだけ。
 何かの拍子で、いとも簡単にはだけてしまいそうな、なんとも頼りないコートになってしまいました。

「大丈夫よ。トレンチだからダブルだし内ボタンも留めているのでしょう?それにベルトもしているし、おいそれと全開にはならないわ」
 コートの裾をピラッとめくるお姉さま。
 内腿の交わりに外気が直に当たりました。

「うん。エレガントだし肌の見え具合もちょうどいい。やっぱり老舗のブランドものはシルエットが違うわね」
「直子も負けないでちゃんと着こなしているじゃない。そのド派手なメガネといい、もう立派なスーパーモデルね」
 お姉さまから、からかわれ気味に褒められても無表情。
 だけど心臓はドキドキで、今にもバクハツしそうでした。

「準備万端。モデルウォークの練習は、と・・・せっかくだし、こっちから行きましょう」
 えっ!?
 お姉さまが選んだのは、ショッピングモール側の通路。
 エレベーターホールから近い、道路沿いの通路のほうが人通りが少ないのに。

「せっかくの裸コートなのだから、見物人が多いほうが直子も嬉しいでしょ?」
 私の戸惑いを見透かしたみたいに、耳に唇を寄せてささやくお姉さま。

「さあ、行きましょう。ここからは手はつながないからね。まっすぐ前を見て視線は散らかさず、大きめのストライドで颯爽とね」

 おっしゃるなり、お姉さまが胸をスッと張った美しい姿勢で、颯爽と歩き始めました。
 うわー。
 お姉さまのモデルウォーク、なんて華麗で優雅。

 見惚れている場合ではありません。
 あわてて私も背中を追います。

 視線を前方一点に定め、軽くアゴを引いて背筋を伸ばすこと。
 足を前に出すのではなく、腰から前に出る感じ。
 体重を左右交互にかけ、かかっている方の脚の膝を絶対に曲げない。
 両内腿が擦れるくらい前後に交差しながら、踵にはできるだけ体重をかけない。
 肩の力を抜いて、両腕は自然に振る・・・
 
 お姉さまのお背中を見つめ、一歩下がる感じで着いていきました。

 これからショッピングモールが本格的に始まる、という地点でお姉さまが立ち止まれました。

「ここからは、直子が先に歩きなさい。あたしは後ろに着くから」
 耳元でささやかれ、背中を軽く押されました。
 ご命令には絶対服従。
 そこからは、数メートル先の宙空に視点を置き、極力周りを見ないようにして進みました。
 
 ショッピングモールは、オフィスビルよりもっと賑わっていました。
 週末平日のお昼前。
 小さなお子様連れの若奥様風のかたたちが多いようでした。
 他には学生さん風とか、隣接のホテルの外国人宿泊客さんたち。
 モールのお店が若い人向けばかりなので、お年を召されたかたはあまり見かけません。

 そんな中を、場違いに気取ったモデルウォークで進んでいく女性ふたりの姿は、明らかに異質でした。
 前を行くのは、タレント然としたド派手なサングラスに、妙に肌の露出が多いトレンチのレインコートを着た若い女。
 その後ろに、仕立ての良いビジネススーツを優雅に着こなしたスラッとした美人さん。
 芸能人の端くれとそのプロダクションのマネージャー、くらいには、見えたかもしれません。
 
 すれ違う人たちの視線を惹きつけていることが、みなさまの頭の動きで如実にわかりました。
 私たちに気がつかれたみなさまは誰も、首がこちらのほうへぐるっと動くのです。
 私たちの姿を数メートル先で見つけ、すれ違うまでその場で固まったまま不思議そうに見つめつづける若い男性もいました。

 一歩進むたびに短かい裾を腿が蹴り、そのたびに裾が不安定に、股間ギリギリで揺れているのがわかりました。
 歩き始めると、ウエストで絞ったベルトを境に、下部分は少しづつせり上がり、上部分は胸元がたわんで広がってきました。
 見下ろす形の自分の視界的には、胸元のVゾーンからおっぱいのほとんどが見えていました。
 かと言って、必要以上に胸を張ると、乳首が裏地に張り付き、布を押し上げるのがわかります。

 いったい私の姿、周りの人にどんなふうに見えているのだろう・・・
 胸の谷間は?浮き出た乳首は?裾のひるがえりは?

 一番気になるのは裾でした。
 コートの布地が末広がりなので、自分では確認出来ませんが、歩いている感じでは、両腿のあいだを空気が直に通り過ぎていました。
 正面から見たら、すでにもうソコが露になっちゃっているのかもしれない・・・

 視線をまっすぐに定めていても、視界にはこれから通り過ぎる場所の情報が飛び込んできます。
 あそこのお店は、先週ワンピースを買ったところ、あそこのお店のマヌカンさんとは顔見知り、あそこのカフェのケーキは美味しかった・・・
 そんな日常的な場所を私は、キワドイ裸コート姿で、何食わぬ顔で歩いているのです。

 心の中はもう、収拾のつかないくらいの大混乱でした。
 視ないで、と、視て、の相反する想い。
 視られたくないのに視られているという被虐と、視せつけたいから視せているという自虐。
 ヘンタイマゾの願望を実践している自分に対する侮蔑と賞賛。
 それらが一体となった羞恥と快感のせめぎ合いで、全身にマゾの血が滾っていました。

 歩きつづけて周囲の視線に慣れてくるほどに、羞恥よりも快感が上回ってきました。
 あそこでふたり、こちらを見てヒソヒソしている。
 あの人、すごく呆れたお顔をされている。
 こっちの人は、なんだか嬉しそう・・・
 視線を動かさなくても、周りの雰囲気を肌で感じ取ることが出来ました。

 両腿のあいだは、自分でもわかるほどヌルヌルでした。
 このまま溢れ出た雫が腿を滑り落ちても構わないと思いました。
 むしろそのほうが、マゾな自分にはお似合いです。

 視ないで、と思うより、もっと視て、と思うほうがラクなことにも気がつきました。
 そのほうが私自身が悦べるし、皮膚感覚がどんどん敏感になって、ちょっとした視線の動きだけで、触れられたのと同じくらいに感じられるのです。
 どんどん視ればいい、舐めまわすように私を視て、ふしだらなヘンタイ女って蔑めばいい、それこそが私の望みなのだから。
 そんな気持ちになっていました。

 それは、ある種の開き直りなのかもしれません。
 恥ずかしさが極まり過ぎて、そこから逃げ出すよりも、いっそ身を委ねてしまおう、という選択。
 その選択をしてからの私は、人とすれ違うたびに、そのかたに、視てくださってありがとうと、と心の中でお礼を言いつつ、マゾマンコの奥をキュンキュン疼かせていました。
 
 いつの間にかモールを通り過ぎ、ビルの出口まで来ていました。
「いい感じよ直子。いい感じにトロンとして、すごく色っぽい無表情になっている」
「さあ、ここからは外、あと一息ね。部室に着いたらご褒美あげるわ」

「はい。ありがとうございます、お姉さま」 
 最愛のお姉さまにも褒められた、ということは、私の選択は間違っていなかった、ということ?
 
 思わずほころびそうになる口元を引き締めて無表情に戻り、再び歩き始めます。
 高速道路の高架下の薄暗い広場を抜け、スーパーマーケットのある通りへと。
 その裏が部室のあるマンションです。

 お外には、ビルの中とはまた違った種類の人たちが行き来していました。
 ご年配のスーパーへのお買い物客らしきおばさま、疲れた感じの初老なサラリーマンさん、何かの工事の人たち、宅配便の配達員さん・・・
 いっそう日常的となった空間を再び、場違いなモデルウォークで歩き始めました。
 視て、もっと視て、って心の中でお願いしながら。

 スーパーマーケット側へ渡るための横断歩道で、赤信号に止められました。
 お姉さまの傍らで、うつむかずまっすぐに立ち、信号が変わるのを待ちます。
 向こう側にも数人のかたたちが待っていて、そのあいだを時折、トラックやタクシーが走り抜けていきます。
 
 強めのビル風がコートの裾を乱暴に揺らしても、いつもみたいにあわてたりしません。
 もっと吹いて、マゾマンコが露わになっちゃえばいい。
 そう考える、私の中にいるもうひとりの私、自分を辱めたがる嗜虐的なほうの私の声が、思考を支配していました。

 道路の向こう側にいるご中年のサラリーマン風男性は、明らかに私のコートの下のことに気づいているようでした。
 遠くから、たとえ目を瞑っていてもわかるほど強烈に、熱い視線が私の下半身へと突き刺さっていました。
 信号が変わり、お互いが歩き出してからも、じーっと粘っこい視線が私の胸元と下半身にまとわりついていきました。
 
 私はそれを、身も心もとろけちゃいそうなほど、心地良く感じていました。


2016年3月20日

オートクチュールのはずなのに 42

「せっかく直子のために手に入れたのに、ずっと使いそびれていたのよ」
 
 お姉さまが魔法少女の変身シーンみたいに、魔法のステッキならぬ乗馬鞭を軽やかに振り回すと、ヒュンヒュンッ!と空気が切り裂かれる煽情的な悲鳴が私の鼓膜を揺らしました。
 私はもうそれだけで、全身鳥肌立つほどゾックゾクッ!

「あら、それって老舗のブランドもの、それもレアものじゃなくて?」
「うん。そうらしい。エイトライツの竹ノ宮さんから譲っていただいたの」
「ああ。あのかた、乗馬がご趣味だったわね」
 お姉さまから乗馬鞭を手渡された早乙女部長さまも、物珍しげにその場でヒュンヒュンさせています。

「彼女、乗馬に興味を持つ人が増えるのが、嬉しくて仕方ないみたい。あたしも鞭を一本、手元に置いておこうかな、って何気に言ったら、喜々としてこれを譲ってくださったのよ」
「まさか、馬じゃなくて人間の躾で使う、なんて思ってもいないのでしょうね」
 おっしゃってから、クスクス笑うお姉さま。

「でもまあ、これからお客様の前に出るモデルのお尻を、真っ赤に腫れ上がらせちゃうのもどうかと思うから、今日もちゃんと本格的には、使えないけれどね」
「あら、少しくらいなら、アクセントになっていいのではなくて?何て言うか、デカダンスなムードが出るかも」
 部長さまが、鞭の先のベロの部分を指先でプルプルさせながら、真面目なお顔でおっしゃいました。

「以前どこだったかで、そういう写真を見たことがあるのよ。真っ白なお尻のアップに一か所だけ、鞭のこのフラップの形の赤い痕がクッキリと残っている写真」
「形のいい綺麗なお尻の割れスジ付近に一か所だけポツンて。それはそれは耽美で退廃的で、ゾクッとするくらいエロティックだったわ」
 
 そのお写真を思い出しておられるのでしょう。
 両目を瞑って夢見るようなお顔つきで、部長さまがおっしゃいました。

 すぐに目を開けて、冷えた視線に戻られた部長さま。
「少なくとも、そのウエストにある忌々しいパンストのゴム跡とか、背中のブラのストラップ跡とかよりは、数倍マシだわ」
 視線と同じく冷えた口調で、そうおっしゃいました。

 確かに自分でも気になっていました。
 慣れないパンストを久しぶりに穿いたせいなのか、締め付けられていたゴムの跡が、薄っすらしつこくお腹に赤く残っていました。
 下乳には、ブラのカップ跡もクッキリあるし。

「うん、わかってるって。それはこの後、シャワーでも浴びさせて消すわ。それに、これから本番まで、直子には一切、下着も服を着せないつもりだから」

 お姉さまが冷静なお声で助け舟を出してくださいました。
 だけど、その後半部分にドッキン。
 えーーっ!?お姉さま、そんなおつもりなの!?
 私、裸のままで、イベント会場まで移動することになるのかしら・・・

「それはそれとして、今は直子のアヌスの話だったわよね?」
 早乙女部長さまから乗馬鞭を返してもらったお姉さまが、乗馬鞭の先を私のほうへと伸ばしてきました。
 おふたりに背を向けたまま、顔だけひねって会話に聞き耳を立てていた私は、またもやドッキン。

「ほら、その机のほうへ前屈みになって、お尻をこちらへ突き出しなさい」
 ご命令と同時に、鞭の先のベロが私の左の尻たぶを、スススッと撫でました。
「あはぁっ・・・」
 瞬間、総毛立つほどゾクゾク感じてしまい、思わず淫らな声が漏れてしまいました。

「脚はもっともっと開いて、もっと前屈みになって、お尻を高く突き上げるのっ」
「は、はい・・・」
 
 鞭の先が私の両脚のあいだに入り込んで左右に揺れ、両方の内腿を軽くペチペチ叩いてきます。
 それにつれてどんどん広がる私の両足の幅。

 最初はデスクの上に突いていた両手もデスクを離れ、今は床に着くほどの前屈姿勢。
 両足幅も1メートル近く広がり、腰高の四つん這い、と言ってもよい姿勢になっていました。

 お姉さまが操る鞭の先端ベロは、絶えず私のお尻周辺を這い回っていました。
 お尻の割れスジに沿った、と思ったら尻たぶへ。
 そこから内腿へと滑り、だんだんと左右が交わる地点へと。

 早乙女部長さまもいらっしゃるのだから・・・
 しきりに声帯を震わせたがる淫らな昂ぶりを、唇を真一文字に結んで一生懸命がまんしました。
 今は優しく撫で回すだけのベロが、いつ牙を剥いてお尻にキツイ一発がバチンとくるか、気が気ではなく怯えていました。

「ほら。これがお待ちかねの直子のアヌス」
 ベロの感触が消えた、と思ったら、お姉さまのお声。

「へー、アヌスと性器のあいだにも、まったくヘアが生えていないのねえ。毛穴さえわからないくらいツルツル」
 部長さまの弾んだお声がすぐに追いかけてきました。

「それに森下さん、絵理奈より上付き気味なのね。アヌスも少し後ろめで、穴と穴のあいだ、会陰が広いわ」
 私のお尻に微かに息がかかっているような気がするのは、部長さまがそれだけ、お顔をお近づけになっているのでしょう。

「ふふふ。それにしても、こんな午前中の明るいオフィスで、うちの社員の裸のお尻をこんなに近くで覗き込んでいるなんて、何だかキマリ悪くて照れちゃうわね」

 それは、覗き込まれている私のほうのセリフです、部長さま。
 大開脚状態ですからスジも割れ、濡れそぼった肉襞まで全部見えてしまっているはず。
 私の顔が真っ赤に火照っているのは、窮屈な前屈姿勢のせいだけではありませんでした。

「ちょっと触ってみてもいいかしら?」
 私にではなくお姉さまにお伺いを立てる部長さま。

「どうぞどうぞ、もちろん。ちょっとと言わず、いくらでも、お好きなだけ」
 半分笑っているような、お姉さまのお声が聞こえました。

 お尻に何か触れた、と思ったらいきなり割れスジが左右に割られ、肛門が押し拡げられたのがわかりました。
「ああんっ、いやんっ」

「あら、可愛らしい声だこと。驚いちゃった?」
 私の返事は期待されていないらしく、すぐにお言葉がつづきました。

「見た感じ、穴がこのくらいまで広がるなら大丈夫そうね。柔らかいし、皺の放射も慎ましくて美しいわよ、森下さんのアヌス」
 穴は押し拡げられたまま、前と後ろの穴と穴のあいだを、何かでツツツツと撫ぜられました。
 たぶん指の爪の先。

「ひゃんっ!」
 思わず膝がガクンと落ちるほど感じてしまい、悲鳴に近い声まであげてしまいました。

「あらあら。姿勢が崩れちゃったわね?ここは誰でも弱いものね?いい鳴き声を聞かせてもらったわ」
 部長さまのからかうようなお声で、あわてて元の姿勢に戻ろうとすると、部長さまに手で制せられました。
「ううん、お尻はもういいから。もう一度わたくしのほうを向いてくださる?」

 絵理奈さまとの秘め事を盗聴したときは、オフィスでのお仕事ぶりがらは想像できないほど、完全に絵理奈さまの言いなりエムだったのに、今日の早乙女部長さまは打って変わって見事なエスっぷりでした。
 部長さまって、お相手次第でエムにもエスにもなれる人なんだ・・・
 おずおずと振り向くと、同じ種類の妖しい光を湛えたお姉さまと部長さまの瞳が待ち構えていました。

「最初は両脚揃えて、気をつけ、の姿勢ね。はい、気をつけっ!」
 学校の朝礼での先生みたいなきっぱりとした部長さまの号令に、あわてて直立不動になりました。
 その瞳はずっと一点、私の両腿の付け根が交わる部分、を凝視しています。

「はい、やすめっ!」
 反射的に両足を軽く開き、両手は背後へ。
 部長さまの瞳は、定位置で不動。

「最後に、その机の上にお尻乗っけて座ってみてくれる?」
「あ、はい・・・」
 振り向かずに後ずさりして、手探りでデスクにぶつかり、縁に両手を掛けてお尻を持ち上げました。

「座ったら、両足も机の上に引き上げて」
「はい・・・」
 両脚を出来るだけ閉じたまま膝を曲げ、デスクの上に体育座りするような格好になりました。

「ふふん。さすがに長年バレエをやっていただけあって、からだが柔らかいのねえ。脚閉じたまま机の上に上げられちゃうんだ」
 なぜだか愉快そうな部長さまのお声。
 だけどその瞳には、嗜虐の炎がユラユラゆらめいていました。

「だけどそれではダメなの。両脚は思い切り開きなさい」
 部長さまの、開きなさい、のお言葉が終わるか終らないかのときに、部長さまの横で成り行きを見守っていたお姉さまが、ヒュンと乗馬鞭を素振りされました。
 
 鞭は宙空を切り裂いただけでしたが、私は盛大にドッキーン!
 あわてて両腿をガバッと、盛大に開きました。
 同時にお姉さまのほうを見ると、すっごく愉しそうに笑っていました。

「もうちょっとわたくしに性器を突き出すみたいに後ろにのけぞって、アヌスまで見えるようにね」
「膝が閉じないように、両手で自分の太腿をそれぞれ、押さえておくといいわ」
 
 部長さまのご命令通りにすると、なんとも破廉恥なM字大股開脚姿になりました。
 それも、自分の両手で左右の膝を押し拡げ、大きく開いた内腿の中心に楕円の粘膜を見せて息づくマゾマンコを、自らすすんで見せつけているような。

「あたしが知っている直子に、これ以上無いくらい、お似合いな格好になっているわよ」
 お姉さまが鞭をヒュンヒュン素振りしながら、嬉しそうにおっしゃいました。

「今、直子が言いたいこと、あたしにはわかるわよ?部長さま、あ、違うな、アヤネさま、か。アヤネさま、どうぞ直子のいやらしいマゾマンコを、じっくりご覧ください、でしょ?」

 でしょ?と問われてうなずく訳にもいきませんが、まさに心の中でつぶやいていたことでした。
 お姉さまは、その先は何もおっしゃらず、薄い笑みを浮かべて私の顔をジーッと見つめていました。
 部長さまと同じ種類の炎にゆらめくその瞳が、ほら、早く言っちゃって、ラクになっちゃいなさい、とそそのかしていました。

「・・・ア、アヤネさま・・・」
 
 いつしか私の思いは声帯をか細く震わせ、唇が言葉を紡ぎ始めでいました。

「アヤネさま、ど、どうぞ、どうか直子の・・・直子のいやらしい・・・いやらしいマゾ、マゾマンコを・・・」
 
 さすがに最初は驚いたご様子だった部長さまのお顔が、私の言葉が進むうちにどんどん、嬉しそうなお顔へと変わっていきました。

「・・・マゾマンコをじっくり、じっくりとご覧になられて、く、くださいませ・・・」
 
 言い終えた途端に左の内腿をドロリと、溢れ出た愛液が滑り落ちたのがわかりました。
 部長さまのふたつの瞳は、その一部始終を、まるで脳内で録画でもされているかのように、じっと凝視されていました。

「森下さんて、本当に凄い子だったのねえ。何て言うか、ここまで性的に貪欲な子だったなんて・・・」
 
 私の恥部からやっと視線を外され、少し呆然とされたような部長さまのお声。
 だけど私にはまだ、お赦しのご命令が下されないので、自ら両内腿を押し拡げている姿勢のままです。

「絵美がさっき言っていた、部長さまじゃなくてアヤネさま、っていう呼び方の違いって、何なの?」
 部長さまがお姉さまにお尋ねられました。

「ああ、それはね、見ての通り直子はドマゾなのだけれど、肩書にかしずくのではなくて、人にかしずいて、その人のドレイになるの。そういう志の高いマゾなの」
 お姉さまが茶化すみたいに、薄い笑顔でおっしゃいました。

「よくわからないのだけれど、今さっき、森下さんはわたくしにかしずいてくれたのかしら?」
「そう。さっきはっきり直子は、アヤネさま、って言ったのだから、ダブルイーの早乙女企画開発部長にではなくて、早乙女綾音っていう個人のマゾドレイになることを宣言したのよ」

「ふーん」
 今一ご納得されていないご様子の部長さま。
 矢面の私でさえ、何が何やら・・・

「だから、アヤもいつまでも森下さんなんて他人行儀に呼んでいないで、直子!って呼び捨てにしちゃいなさい。今日からあなたのドレイでもあるのだから。そうよね?直子?」
「えっ?あっ、はいっ!」
 突然私に振られ、条件反射で肯定しちゃいました。

「絵美がそう言うのなら、そうするけれど・・・森下、あ、いえ、ナオコもそれでいいのね?」
「あ、は、はい・・・お願いします」
 部長さまのお見事な虐めっぷりに、私があがらえるはずがありません。

「直子はアヤのこと、これからは、綾音さま、と呼びなさい。今日一日直子はイベントのモデルとしての別人で、うちの社員でもないのだから。他のスタッフについては、来たら後でまた考えるから」
 お姉さまがキッパリとおっしゃり、部長さま、いえ綾音さまも、うなずかれました。

「ところで絵美?わたくし、ずっと観察して思ったのだけれど、森下、いえ、ナオコって、つくづく今日のイベントモデル、いえ、今後のうちの開発モデルとしても、まさにピッタリな人材だと思うの」
 綾音さまが姿勢解除のお赦しを出してくださらないので、私はまだデスクの上で大股開き状態。

「ナオコって性器が上付き気味で、真正面からだと割れ始めが少し表に出るじゃない?まず、そこが妙にエロティック」
「この通り、ハイジーニーナも毛穴さえわからないくらい会陰まで完璧、ツルツルスベスベでしょう?恥丘も綺麗だし、清潔感だって申し分無し」

「大陰唇はぷっくりしていてラビアの外へのはみ出しが皆無だから、見た目がとてもシンプルで、ヘンに目を引く余分なアクセントが無いの」
「それにどういう意味があるかと言うと、隠しやすいのよ。幅が8ミリくらいの紐があれば、あ、パールのロザリーとかでもいいわね、そんなのがあれば、スジからアヌスまでキレイに隠せちゃう」

「こういう品のいいヴァジャイナを、オシャレに、綺麗に見せるアイテムを作って発表したら、それを見た人も、自分の性器周辺の身だしなみに、気を遣い始めると思うのよね」

 綾音さまが突如として、私の恥ずかしい箇所に関して、お姉さまに熱く語り始めました。
 服飾デザイナーをされていると、普通の人とは違うフェティシズムが生まれるのかもしれません。
 
 いまだに大開脚の体勢で見せつけている部分へ、それを指さしながらの論評でした。
 それは当然、ものすごく恥ずかしいことだったのですが、基本的には褒められているようなので、不思議と悪い気分はせず、こそばゆい感じもしていました。

「ほら、これ見てよ。この子のラビアって、アジア系にしては色素沈着が少なくて、少しも黒ずんでいないのよ。膣内が綺麗なピンクの薔薇みたいでしょ?それが柏餅みたいにぷっくりした大陰唇に包まれているの」

「だからワレメがこそっと割れたとき、中の襞のピンクが眩しいくらいで、凄くエロティックなの。初めて見たとき、驚いちゃったもの。ワザと膣内を見せちゃうのもアリだな、なんて思っちゃう」
 私がさらけ出しているマゾマンコを前に、綾音さまの熱弁がつづきました。

「ナオコの裸視ていたら、エロティックなアイテムのデザインがいくつも浮かんできたわ。来年は、もっと凄いのが作れそう」
「わたくしが知る限り、この裸と同じくらいエロティックなのって、絵理奈くらいのものね」
 最後の最後に、綾音さまがノロケられました。

「でも今回は、そのステキな絵理奈ちゃんがドジ踏んだのを、マゾドレイの直子に助けられるのよね、ダブルイーの早乙女部長さんは?」
 お姉さまにしては珍しく、わざとらしいくらい憎たらしい感じでからかうように、綾音さまを冷やかしました。
 私もハッとしたくらいですから、綾音さまもムッとされたお顔でお姉さまを睨みつけられました。

「ふんっ!来年は、ナオコを素材にどんどん凄いアイテムをデザインして、絵理奈に着せるわよ。見ていなさい。ショーでは絵理奈が完璧に着こなしてくれるはずよっ!」
 綾音さまがたたきつけるようにおっしゃり、しばらくお姉さまの涼しげなお顔を睨みつけていらっしゃいました。
 やがて、ふっと眉間の皺を緩められた綾音さま。

「でも絵美?わたくし、ひとつだけ、とても心配なことがあるのだけれど・・・」
 真顔に戻られた綾音さまが、お姉さまと私を交互に見ながらおっしゃいました。

「ナオコって、ちょっと敏感過ぎやしない?」
「正真正銘のマゾって、こういうものなの?さっきからずっと、乳首もクリットも腫らしっ放しじゃない」
 
 綾音さまの視線は、私が押し拡げている楕円形の襞の頂点で、萼をすっかり脱ぎ捨ててツヤツヤ輝いている小豆大の突起を見つめていました。

「それに、この愛液。机の上まで溢れ出しちゃって。感じちゃっているから濡らしているのでしょう?」
「ナオコはつまり、今わたくしたちに裸を視られて、まあ、こんな恥ずかしい格好もさせられて、それで感じちゃって、興奮しちゃってこうなっているのよね?そういう種類のマゾなのよね?」
「今でさえこうなのに、うちのアイテム身に着けて、たくさんのお客様の前に出たとき、この子、正気でいられるのかしら?興奮しすぎちゃって、何か大変なことになったりしないかしら?」

「うん。それはあたしも一抹の不安があるのだけれど・・・」
 お姉さまが少し動揺されたように私を見ました。
 でもすぐに、無理矢理な明るいお声で、こうつづけました。

「でもきっと大丈夫。これから直子を部室に連れて行って、あたしなりに対策も取るからさ」
「今回のアイテムに関してのアヤのお墨付きももらえたし、直子をモデルにして行けるところまで行きましょう。何か起きたらその都度の現場主義でいいじゃない?」
「本番は待ってくれないから、どうなるかわからないことで悩んでいるよりも、とにかく動きましょう」
 
 お姉さまが私に右手を差し伸べてくださり、私のマゾマンコさらけ出しタイムがようやく終わりました。

「絵理奈さん担当のヘアメイクさんは、手伝ってくれるのだったわね?」
「ええ。呼べば30分以内に駆けつけてくれるはずよ」
「じゃあ、すぐ電話して直接部室にきてもらって。黒髪のウイッグを何種類かお願いね」
「わかったわ」

「これからあたしは、直子と部室にふたりきりでこもるから、他のスタッフが来ても、こちらからいいと言うまで部室には来させないで、ここで待機していて。メイクさんだけ寄越して」
「わかったわ。うちのスタッフには経緯を、わたくしから説明しておくわ」

「あたしがアヤに教えたことは、全部言っちゃっていいから。直子がどんな女なのかも含めてね。それで、対外的には、直子は本日、急な家庭の事情で欠勤ね。里美たちやスタンディングキャットの連中にも、そう伝えて」
「シーナさんにはバレちゃいそうだから、頃合い見てあたしから言うわ」
「それも了解。これ、持っていくといいわ。今日、絵理奈に使うはずだったものだけれど」
 
 綾音さまが小さめのショッパーをお姉さまに手渡されました。
 お姉さまは中身も見ずに、それをショッパーごと、ご自分のバッグに詰め込みました。

「アヤもちゃんとお召かししなさいよ?ヘアサロンは残念だったけれど、ドレスは持ってきているのでしょう?」
「ええ。わかっているわよ。絵美もね」

 急にあわただしく時間が動き始めました。
 時計を見ると午前11時を5分ほど過ぎたところでした。
 でも、お姉さまと綾音さまの会話をお聞きするだけで、全裸の私は何も出来ません。

「おっけー、直子?それじゃあ、部室に行こうか」
「えっ!?」
 
 私の右手を握って引っ張って、強引に一歩ドアへと向かいかけ、不意にお姉さまが振り向いて私をまじまじと見てきました。
 全裸の私をオフィスの外へ連れ出そうとしていることに、今更ながら気づかれたようでした。


オートクチュールのはずなのに 43