2014年8月24日

ランデブー 6:42 08

「直子って、本当に面白いわね」
 エレベーターの中で、お姉さまはずっとクスクス笑いっぱなしでした。

「あそこの床に、そんな仕掛けがあったなんて、あたしも今まで気がつかなかったわ」
「立った位置とか光の加減にもよるのでしょうけれど、あんなにハッキリ映ってしまうものなのね」
「ひとりで真っ赤になっているから、何事?って思ったわよ」
「そばに誰も居なくてよかったわね?あ、それとも残念?」
  矢継ぎ早にからかってくるお姉さまにジト目を返す私。

「まあ、あたしは、そこまで短いスカートを、しかもノーパンでなんて絶対穿くつもりないから、関係ないけれどね」
 この姿はお姉さまの仕業じゃないですか、って抗議しようとしたらチーンと鳴り、エレベーターの扉が開きました。

 ホテルみたいな間接照明のオシャレな廊下を少し歩いた先で、お姉さまがカードキーをかざしました。
「さ、どうぞ」
 玄関の扉を開いてお姉さまが先に立ち、奥へと案内してくださいました。

 通されたお部屋は、どう表現したらいいのか、不思議な雰囲気の空間でした。
 10帖以上はある広いフローリングのお部屋のほぼ中央に、会議テーブルくらい大きくてシックなダイニングテーブルがどーん。
 その左右に3脚づつ、キャスター付きのダイニングチェアーが並んで収まっています。
 壁際にはソファー、その対面に大画面テレビ。
 もう一方の壁際には、オーディオラックとブックシェルフが並び、その脇にはワイヤートルソーが1、2、3・・・6体も。
 一番広い壁には、大きなホワイトボードと、雑誌の切り抜きか何かなのか、ピンナップみたいな写真がたくさんピンで留められたコルクボードが掛けてありました。
 
 普通の一般的な家庭のリビングとは、明らかに趣を異にするお部屋。
 ホテルのミーティングルームが少しくだけた感じ、みたいな。

「あら、たまほのったら、ずいぶん綺麗にかたづけていってくれたのね」
 お姉さまが独り言みたいにおっしゃって、脱いだスーツの上着を当然のように、一体のワイヤートルソーに掛けました。
 つられて私も、上着を取ろうか、と一瞬思いましたが、ジャケットの下のことをすぐに思い出してやめました。

「このトルソーはね、うちのスタッフの体型に合わせて特注したものなのよ。それぞれ自分専用なの」
 とするとみなさん、プロポーションよさげです。
 真っ白なシャツブラウス姿になったお姉さまの大きく開いた胸元がすっごく艶かしくて、ドキドキしちゃいます。

「ヘンな部屋、って思っているのでしょう?」
「あ、えっと、なんだか、隠れ家ぽい個室レストラン、みたいな感じで、素敵だと思います。生活感が希薄で・・・」
 思っていたことを正直にお答えしました。

「ここはスタッフ全員が使う部屋だから、私物とか置くのは一切禁止にしているの。ほら、なくなったとかで身内で揉めるのって馬鹿らしいじゃない」
「ここにあるものは全部、全員が協議の上で選んだ共有物。あとは所有を放棄してご自由にお使いください的なもの。だからインテリアが誰か一個人の趣味志向に偏らなくて、結果、生活感も出ないのよ」

「うちのスタッフは、この部屋のこと、部室、って呼んでいるわ」
 ああ、なるほど。
 言われてみれば、この妙に居心地の良さそうな雰囲気は、学生時代の部活やサークルの部室に似ていました。
 気の合う仲間だけが気軽に集まれるヒミツのカクレガ、みたいな。
 それのゴージャス版。

「あ、そうだった。洗面所はあそこだからね。外から帰ったらまず手を洗ってうがいでしょ?」
 お姉さまが突然、今入って来た玄関のほうを指さしておっしゃいました。
「あ、はい」

「それと、寝るときはどっちがいい?そっちの洋間にはベッドがふたつ。くっつけることも出来るわよ。こっちの和室だったらお布団敷いて」
 今度はリビング内のふたつのドアを順番に指さすお姉さま。

「うーんと、それでしたら和室、かな?お布団敷いて寝るのって、旅行以外ではしたことないですから・・・」
「おっけー。それじゃあ準備しておくから、直子は手を洗ったら、そこのソファーにでも座ってくつろいでいて」
「あ、私もお手伝いしますよ?」
「いいのいいの。直子はお客さまなのだから」

 お姉さまが先に手を洗い、洗面所に私を残してどこかへ消えました。
 私がリビングに戻ると、テーブルの上にペットボトルのお茶とグラスがふたつ出ていました。
 そのお茶をいただきながら、お部屋内を観察してみます。

 リビングの突き当りがお外に向いた窓のようで、今は綺麗なターコイズブルーのカーテンで閉ざされています。
 そこから壁に沿ってゆっくり歩いてみます。

 ブックシェルフの本や雑誌は、やっぱりファッション関係が多く、発行順にきれいに並べられています。
 コミックスや小説、DVDもぎっしり。
 CDの背表紙は横文字が多くて、私が知らないのばっかりみたい。

 トルソーは、一見アンティークぽい感じで、作りもしっかりしていて、見るからに高級そう。
 一番バストが大きいかたのは、ウエストもキュッとくびれていてプロポーション凄そう。
 お姉さまの上着からはふうわり、グリーン系のパフュームが香っていました。

 ホワイトボードは、落書きなど無くてほぼ真っ白。
 一行だけ、一番左端に女の子らしい可愛らしい文字で、
 おつかれさまでした!次の企画もみんなでがんばりましょう!!! ほのか
 と、小さく書いてありました。

 ソファーの上の壁に掛かっている大きなコルクボードにピンで留められた写真たちを、ソファーに両膝を乗せて眺めます。
 近くで見ると、雑誌の切抜きだったり、手描きイラストだったり、チェキだったり。
 乱雑にたくさん貼り付けてありました。
 素敵なドレスを召した超美人のファッションモデルさんらしき外国人女性の写真が多いみたい。
 たまに、私でも知っている映画スターやロックスターの写真も混ざっています。
 カラフルで綺麗で、なんだか楽しくなって、順番にじっくり見てしまいました。

「お待たせ。準備完了。あら、これを見ていたのね」
 いつの間にかお姉さまが私の背後に来ていました。
「あ、はい。これってデヴィッドボウイさんですよね?」
 突然お声をかけられ驚いてビクンとして、そのとき考えていたことがそのまま口から出てしまいました。
「え?あ、そうね」
 私が指さした切抜きを見てうなずくお姉さま。
 お部屋に小さく、ラヴェルのピアノ曲が流れているのに気づきました。

「その写真はジギースターダストの頃ね。この頃のボウイが一番素敵だわ。って直子、よく知っているわね?もうン十年前よ?もちろんあたしもまだ生まれていないけれど」
「両親が、とくに父が昔から洋楽好きなんです。ちっちゃい頃から父の部屋にはレコードやCDがたくさんあって、よく聴かせてくれたから」
「なるほどね。それで直子はボウイのファンなの?」
「いえ、別にですけれど、綺麗なお顔だな、とは思っていました」

「うちのスタッフのひとりがね、この頃の彼に顔がそっくりなのよ。あたしの高校からの友達なのだけれど」
「高校の頃からもうモテモテだったわよ。バレンタインデイなんて下級生からのチョコの山。女子高だけれどね」

「あっ、そのスタッフさんて、女性なのですね?」
 お姉さまの、高校からのお友達、というお言葉にひっかかった私は、ホッと胸を撫で下ろします。
「そう。うちの会社って、高校のときの服飾部がそのまま会社になったようなものなの。創立メンバーは同期の部員3人だから」
「へー、ステキですね。ボウイさんそっくりなお顔の女性のかた、一度お会いしてみたいです」
「あはは。まあそのうちね」

「このかたは、どなたなのですか?」
 さっきから気になっていた写真のことを尋ねてみました。
 素肌に白いシャツ一枚でイタズラっぽくこちらを見ている西洋系の超美人さん。
 髪型はまったく違うけれど、お顔の、とくに瞳の雰囲気がお姉さまにすっごく似ていました。

「ああ、それはジーナガーション。アメリカの映画女優」
「お姉さまに似ていますよね?」
「そう?たまに言われるけれど、あたし、そんなにアヒル口ではないわよ?」
 少し照れたようなお姉さま。
 確かにお口は少し違うけれど、このかたのお口をもう少し小さくして、東洋系の細面にすればズバリ、お姉さまです。

「この人はね、えっちな映画が多いのよ、知らない?けっこう前に悪い意味で話題になったショーガールっていうラスヴェガスのストリップダンサーの映画」
「あっ!知ってます。興味があってDVDで観ようかなって少し調べたら、男の人とのそういうシーンも多そうなので、あきらめましたけれど」
「ああ、直子はそういうのも気になっちゃうのね。ま、無理して観るほどの映画ではなかったわ。衣装とジーナは良かったけれど」
「それよりも直子だったら、バウンド、は観たほうがいいわ。これもジーナが出ていて、こっちはレズビアンの話だから。DVD持っているから、今度貸してあげる」

 お話が途切れた、と思ったら、ソファーの背もたれのほうに向かって膝立ちになっている私の背中に、お姉さまが突然、覆いかぶさってきました。
 私の背中にシャツ越しのお姉さまのバストが密着します。
「あっ、お姉さま・・・」
 背後から抱きつかれた形の私が驚いて首をひねると、私の左肩にお姉さまのお顔がありました。
 頬と頬がぶつかります。

「そんなことより、どうして直子はいつまでもジャケットを脱がないの?自分の家だと思ってリラックスしていいのよ?直子は自分の家だといつも裸ん坊なのでしょ?」
 お姉さまの両手がジャケットのボタンをふたつともはずし、ジャケットと一緒にお姉さまのからだも離れました。
「ああん、いやんっ」
「さあ直子、ソファーの前に立って、こっちを向いて」

 上半身裸にされた私は、ソファーから降り、おずおずとお姉さまのほうへ向きました。
 両腕でバストをかばったまま。
 お姉さまと目が合い、私を見つめたまま、ご自分の端正な顎を少し上にしゃくりました。
 うなずくときの動作と反対の動作です。

 その動作に促されるように、私の両手はバストを離れ、頭の後ろへ。
「本当に良く躾けられているのね、直子って。なんだか悔しいわ」
 マゾの服従ポーズになった私を、お姉さまが薄い笑いを浮かべながら見つめてきます。

「そのニップルパッドもずいぶんがんばったわね。あたしが取ってあげるわ」
 お姉さまの右手が私の左おっぱいに近づいてきて、皮膚を爪の先で軽くひっかかれた、と思ったら、スルッという感じで剥がれました。
 異物感が去り、ホッとする開放感。
 背伸びしたい欲求をシリコンの下で虐げられ、皮膚にいくぶんめり込んでいた乳首が息を吹き返すのが、自分でもわかりました。

「直子の大きなコリコリ乳首に負けないで、よく今までしがみついていたものだわ。優秀な製品ね」
 右乳首のも剥がされて、私の乳首たちが久しぶりにお姉さまの視線に晒されます。
 そう考えた途端に、今まで以上に乳首がムズムズ疼きだすのを感じました。

「どうだった?ニップルパッド初体験は?」
 お姉さまが私の乳首をじーっと見つめて尋ねます。
「そ、そうですね・・・」
 マゾの服従ポーズのまま、お答えしようとしますが、乳首がどんどんムズムズしてたまりません。

「や、やっぱり、肌に何か貼り付けている、という違和感が気になりました。ムズ痒い、と言っても、気持ち良いほうのではない、不快感て言うか・・・」
「あと、うまく言えないのですが、ズルイと言うか、ただ隠すために着けている気がして、スリルが無いって言うか・・・」
「ふーん。で?」
 お姉さまが小さく首を傾けて、先を促してきます。

「実は私、お外歩いているときも、どうせなら着けていないほうが良かったな、なんて思っていたんです。べ、別に、誰かに見せたい、っていうわけではないのですけれど・・・」
「そのほうがもっとドキドキ出来るし、スリルを感じられるのにな、なんて・・・」
「なんだか、安心感が逆に残念だったんです・・・」
「私は、今日みたいな場合だったら、すっごく布面積の小さなマイクロビキニブラとか、シースルーブラとか、逆にそこだけ穴の空いているTシャツとかを下に着ていたほうが、もっとゾクゾクしたと思います」

「ああ。なんとなくわかる気がするわ」
 お姉さまが近づいてきました。

「考えてみると、ニップルカバーって、乳首だけは絶対見せたくない、っていう人がするものだものね。セクシーな格好をしてもそこだけは見えない安心感、が売り物の」
「あと、セクシータレントとかグラビアモデルやダンサーが、自分の最後の砦を死守、と言うか、より価値を上げたいために着けているイメージもあるし」
「乳首さえ見せなければ、ってほぼ全裸で嬉しそうにニッコリしているのもなんだかなって思うし、隠すためだけのもの、っていう実用性一点張りなのは、エレガントではないわ」
「直子みたいに、見えちゃうかも、気づかれちゃうかもっていうスリルを味わいたいヘンタイさんとは、相容れないものなのかもね」
 おっしゃりながら私のスカートのウエストを手際良く直し、ホックをはずしてジッパーを下げ、お話が終わると同時に私のスカートがストンと床に落ちました。

「うん。素敵よ、直子の裸」
 お姉さまの視線に私の全身が上から下まで、くまなく舐め回されます。
「もうこれも取っちゃいましょう」
 お姉さまが私の足元にひざまづき、左のニーハイソックスに手をかけました。

「うわー。ソックスの履き口のところ、両方ともベトベトよ?ずいぶん下まで湿っちゃっているわ」
「あ、私、自分で脱ぎます!」
 あまりの恥ずかしさに、思わず体勢を崩す私。
「いいからいいから。直子のおツユの洪水にはもう慣れちゃったから、あたし」
 手馴れた手つきで左右のソックスがクルクルっと丸められ、私の両足を離れました。

「これで今日初めての、正真正銘オールヌードね。気分はどう?」
 私の目の前50センチくらいに立ち、腰に手を当てて挑むように尋ねてくるお姉さま。
「・・・は、恥ずかしいです」
「あたししか見ていないのに?」
「お姉さまだから・・・です」

「へー、可愛らしいこと言ってくれるのね。それならあたしのお願いも、聞いてくれるわよね?」
「はい。もちろんです。何だって喜んで」
 マゾの服従ポーズで熱くお姉さまのお顔を見つめます。
 内腿をまた、おツユがツツーッと滑り落ちていきます。

「そこのソファーに座って、オナニーをしてみせてくれる?」
「今日はえっちな道具無しで、直子の指だけで、あたしを見ながら。出来るわよね?」
「はい・・・」
 そのご命令だけで、すでにもうイキそうでした。


ランデブー 6:42 09

2014年8月16日

ランデブー 6:42 07

 手をつないだまま小走りに路地を抜け、公園が見えなくなって、やっとお姉さまが歩調を緩めました。
「ああびっくりしたー」
 私を振り向いたお姉さまの愉しそうなお顔。

 おトイレの鏡から目を逸らしてお外を見たとき。
 おトイレ入口の2メートルくらい向こうに、ぼんやり人影が見えました。
 入るとき、そこには誰も居なかったはず。
 おトイレの電気を点けてからも、一度お外を見たので確実です。

 その人影は、4人掛けくらいの細長いベンチの一番端に座っていました。
 少し前のめりになって、真正面にある女子トイレの入口をじーっと窺がっていたように見えました。

 その人影にびっくりした私が小さく悲鳴を上げると、お姉さまもすでに気づかれていたようで、さっと壁に腕を伸ばし、おトイレの電気を消して真っ暗にしました。
 それから私の右手を引っ張り、おトイレの建物の裏手へと誘導してくださいました。
 幸いその近くにも公園への出入り口があったので、そこから路上に出て、路地を小走りに公園から離れました。

「あの人、私たちがトイレに入るのを見て、近づいてきたのでしょうね」
「外を見てすぐに気づいたわ。あたしを見てニヤって笑った気がしたから、気持ち悪くて咄嗟に電気を消したの」
「黒っぽいカーディガンみたいの着ていて浮浪者風ではなかったわね。夜なのにサングラスなんかして、プロの覗き魔か何かかしら」
「周りがしんとしていたから、トイレ内での会話も聞かれちゃっていたかも」
「あの様子だと今頃女子トイレに侵入して、あたしたちの置き土産をみつけているでしょうね」
 
 矢継ぎ早に話しかけてくるお姉さま。
 お姉さまも意外に興奮されているご様子。

「直子、どうする?あなたのえっちなおツユの臭い、絶対オカズにされちゃっているわよ?」
 茶化すようなお姉さまのイジワル声。
「そ、それは、恥ずかしいですし、気持ちも悪いですけれど、でもちょっとだけ、その恥ずかしさにちょこっと疼いちゃうような感じも・・・」
「あら?変態覗き魔男のオカズにされちゃうのよ?直子は男性が苦手、なんじゃなかったっけ?」
「あ、はい。それはそうなのですが、でも今は、お姉さまといるから・・・」
 さっきおトイレで告げられた、何かあったらあたしが守ってあげる、というお姉さまの頼もしいお言葉に、私の男性恐怖症さえ霞んでいました。

「さっきお姉さまに手を引っ張られたとき、弾みでスカートが思い切り暴れちゃったんです」
「電気は消えていたけれど、きっとあの人に私のお尻、視られちゃったと思います」
 その瞬間を思い出してゾクゾクしながら、お姉さまに告げました。
「あらあら。ずいぶんサービスしちゃったのね。今頃あの覗き魔男の右手、止まらなくなっちゃっているのじゃないかしら」
 お姉さまが笑いながら、お下品なご想像を述べました。

「それにしてもひどいトイレだったわね。まだスーツに臭いが染み付いているような気がするわ」
 ご自分の右袖をクンクンされるお姉さま。
 同感でしたし、行く手にまた別のコンビニの灯りが見えて、つい言ってしまいました。

「私、あのときお姉さまに、コンビニに寄ってくれませんか?って頼もうとしたんです。そこでおトイレをお借りしようかと」
「そしたらお姉さまが、公園のことをおっしゃられて・・・」
「ああ、なるほど。コンビニね。そういう手もあったわね」
 感心したようにおっしゃってから急に立ち止まり、イタズラっぽい笑顔で振り向いて、私を見つめてきました。

「直子はもしコンビニ入ったら、まっすぐトイレに直行する気だったの?」
「いえ、それはちゃんと店員さんに許可をいただいて・・・」
「そうよね。トイレ借りるならちゃんと断って、帰り際にガムのひとつでも買っていくのが都会人としてのたしなみよね」
 お姉さまが愉しそうなイジワル顔になっています。

「そっか。直子はコンビニのレジで店員さんに、そのえっちな胸元を間近で視てもらいたかったんだ」
「コンビニみたいな明るいところなら、店員さんにもお客さんにも、セクシーな姿をじっくり視てもらえるものね。ごめんね、気がつかなくて」
「ブラウスを取る前だって、見事に胸の谷間が見えてとてもコケティッシュだったもの。それを見せるチャンスを奪っちゃったのね、あたし」
 お芝居っぽくおっしゃって、私の手を引いて再び歩き出すお姉さま。

「あっ、いえ、違うんです。そういう意味ではなくて・・・」
 そんなこと、まったく思い当たらなかった私は、大いにあわてます。
 そうでした。
 コンビニの店内って、すっごく明るいんでした。

「直子が恥ずかしいかなー、と思って、なるべく人通りの少ない、暗めの道を選んでここまで来たのだけれど、直子の旺盛な露出欲にとっては、余計なお世話だったみたいね?」
「いえいえいえ、そんなことぜんぜんっありません。暗いほうがいいです。人通りが無いほうがいいですぅ。ごめんなさいぃ」
 この後の展開が容易に読めたので、必死になって謝ります。
 コンビニがどんどん近づいてきます。
「ちょうどあそこにもコンビニがあるから、寄って行きましょうか。露出魔ナオちゃんのリクエストにお応えして」
 ふたり、コンビニの灯りの少し手前で立ち止まりました。

 間近で見るコンビニ店内は、明る過ぎるくらい明るくて、健全でした。
 お姉さまの肩越しにそっと覗くと、店内にお客さんが3人くらい、レジの店員さんは若い男性でした。
 そして、そのコンビニの周辺を見渡したとき、不意に気づいてしまいました。
 そのあたりは、私が昼夜問わずよく利用する、完全に生活圏内であることを。

 コンビニに面した通りには、マンガやアニメ関係のグッズやコスプレ用品を扱うお店がたくさん集まっていて、私もよく通っていました。
 もちろんそのコンビニにも、何度も入ったことがありました。
 通りを渡ると自動車教習所があって、郵便局があって・・・
 東京に来てから、数え切れないくらい行き来した一帯で、私は今、裸ブレザーにミニスカノーパンでした。

 お姉さまと一緒にいる楽しさから薄れていた、羞恥心と背徳感が一気に、強烈によみがえりました。
 こんな格好でいるところを、誰か知っている人に見られたら・・・
 アニメ関係のお店には、顔見知りになった店員さんも何人かいます。
 夜更けなのでお店は全部閉まっているでしょうけれど、お仕事を終えた彼女たちに出会ってしまったら・・・
 偶然ご近所さんに目撃されちゃったら・・・
 いてもたってもいられず、一刻も早くこの通りを離れ、どこか暗い路地に逃げ込みたい心境でした。

「お姉さま、お願いですから許してください。ここのコンビニ、けっこう使っているんです。こんな恥ずかしい姿を店員さんに視られたら、もう来れなくなっちゃいますぅ」
 お姉さまの手をギューッと握り締め、祈るようにお願いしました。

「だと思ったわ。この辺はアニメ関係のお店多いから、きっと直子も通っているだろうな、って」
「うふふ。わかったわ。直子がこの界隈で露出狂のヘンタイさんとして有名になっちゃったら可哀想だものね。コンビニ露出は許してあげる。別に買うものも無いしね」
「だからそんな、今にも泣き出しそうな顔しないの。あ、でも直子のそういう顔は、あたし好きよ」
 
 私を虐めてご機嫌なご様子のお姉さまに手を引かれ、明るいコンビニの脇を素通りし、ちょうど車が途切れた車道を横切りました。

 そこからはオフィス街なので、灯りの点いた窓もまばら、外灯だけの薄暗さに戻りました。
 人通りもほとんどなくなって、しんとした静けさ。
 お姉さまのヒールの音だけがコツコツと響きます。

「直子と一緒に居ると退屈しないわね。次から次へと面白いことがおこるから」
「そのたんびに直子の表情がコロコロ変わって、ほんと見ていて飽きないわ」
 からかうようにおっしゃるお姉さまの手をギュッと握り、左腕に寄り添うようにからだを寄せて、暗い道をしばらく幸せに歩きました。

 灯りが全部消えて真っ暗になっている立体駐車場のような外観の広い自動車教習所のはずれを右に曲がると、池袋のランドマークとも言える一画に出ます。
 有名な高層ビルを中心に、高層ホテル、ショッピングモール、イベント会館などが一体となった広大なエリア。
 私も毎日と言っていいくらい、行き来する見慣れた場所です。
 思わず緊張が増しますが、夜更けなので灯りも少なく人通りもあまり無くてホッ。

「この信号を渡ればもうすぐよ。このエリアの向こう側だから」
 信号待ちをしながらお姉さまが指さす方向だけ、やけに明るく闇に浮かんでいました。
 エリアのはずれの、昼間は観光バスとか荷物のトラックとかが出入りしている、向こう側まで吹き抜けになっている広い場所でした。

「あそこだけ、ずいぶん明るいですね?こんな夜更けなのに」
「ああ、あれは高速バスを待っている人たちがいるのよ。昼間にも観光バスとかが停まっているでしょ。夜はその一画が深夜高速バスのターミナルになるの」
「ここから関西とか信州上越とかに車中泊で行って、朝から現地で遊ぼうっていう人たちね」
「学生さんは今春休みだから、テニスやらお花見やらするのでしょうね。うらやましいこと」

 信号を渡って近づくと、夜更けにしては派手めな嬌声がキャッキャウフフと聞こえてきました。
 若めな男女が2、30人くらいいるみたい。

「建物の横の道をバカ正直にまっすぐ行くより、ここを斜めに突っ切っちゃうと、近道なんだけどなあ」
 お姉さまがイタズラっぽく、私の顔を覗き込んできます。
「えっ!?こんな、こんなに明るいところを、ですか?人もたくさん居るし・・・」
 自分のえっちな胸元をあらためて確認してドキドキしながら、出来れば許して欲しい、というニュアンスを込めてお答えしました。

「大丈夫よ。さっきやりたがっていたコンビニ露出よりは、ぜんぜんリスクは小さいから」
 お姉さまったらもう!私、やりたがってなんていません!

「コンビニだと店員さんやお客さんが地元民の確率が高いけれど、ここに今来ている人たちは、ただバスに乗るためにいろんな所から集まってきただけだし、バスが来れば乗ってどこかへ行っちゃう、一過性の人たちだもの」
「たとえ視られたって、直子がどこの誰かなんてわかるはずないし、目的地で遊んで帰って来る頃には忘れているわ」
 よくわけのわからない理屈で、説得にかかるお姉さま。

「ね?大丈夫よ。だってあたしがついているのだから、ね?」
「そ、そうですね・・・」
 結局、その殺し文句でその気になっちゃう私。

 勇気を出してその明るい空間に一歩足を踏み入れました。
 ワイワイガヤガヤのボリュームが一段上がります。
 バスを待つ人が集まっているのは、私たちが立つ出入り口周辺の壁際の一画、空間全体の四分の一くらいだけで、その奥の広い空間には誰もいないみたいです。
 ただし、そちらのほうも満遍なく灯りが点いていて明るいですが。

「さあ、行くわよ。なるべく堂々と歩きなさいね」
 お姉さまが私の右耳にささやきます。
「それと、遊びに行く前の若い子たちってテンション上がっているから、ヘンなのにみつかったらお下品に冷やかされるかもしれないわ。その覚悟だけはしておきなさい」
 とても愉しそうなお姉さまのお声。
「さ、行きましょう」

 私の右手を握り直し、お姉さまがみなさまのたむろする壁側、私がその左側を少し遅れて、という形でゆっくり歩き始めました。
 壁際でてんでばらばらにワイワイしている一団の5、6メートルくらい前を斜めに横切ることになります。
 煌々と照っている明るい灯りの下、裸ブレザーにミニスカノーパンという破廉恥な格好の私が堂々としていられるわけがありません。

「あっ、あの男の子、直子のほう視てる」
「隣の子の肩つっついて、こっちを指さしているわよ」
「おい、あれって露出狂じゃねーの、なんて言ってるのかしら」
「あ、あっちの子もじーっと視てるわ」

 小声でいちいちイジワルく実況中継してくださるお姉さまのお言葉を、嘘かほんとか確かめることなど出来るはずも無く、ひたすらうつむいて自分の足元を見ながら歩く私。
 お姉さまの優雅な歩き方に比べて、肩を落とした私は、叱られたばかりの子供のようだったでしょう。

 私たちが近づいていくとガヤガヤのトーンが急に下がったように感じたので、みなさまに注目されてしまったのは確かなようです。
 ジャケット一枚だけに覆われた心臓はドッキドキ、足を動かすごとに空気が直に撫ぜてくるアソコの奥がキュンキュン。
 一団の前を通り過ぎるまで、すごく長い時間がかかったような気がしました。

 なんとか無事に通り過ぎて、行く手が無人の空間になったとき、ターミナル内に低いエンジンの音が響きました。
「バスがやって来たようね」
 甲高い女性声で行き先や乗車の仕方を告げるアナウンスが大きく聞こえ、ガヤガヤザワザワが再びボリュームアップ。
 私もホッと一息です。
 もう彼らからは、私の背中しか見えません。

「けっこう視られていたわよ、男にも女にも。みんなしきりにこっち見てヒソヒソしていたもの」
 もうすぐターミナルの外、というところでお姉さまが立ち止まり、バスのほうを振り返りました。
 バスの低音なアイドリング音が空間内を満たし、さざめきを飲み込んでいました。

「あら?まだバスに乗り込まずに、バスの前で未練たらしくこっちを見ている男の子がいるわ」
「ずいぶんなスケベさんね。ご褒美としてちょっとサービスしてあげましょう」
 おっしゃるなり、お姉さまの手が私のスカートのお尻側を、大きくペロンとめくり上げました。
「あ、だめぇ!」
 めくられたのは後ろなのに、咄嗟に前を押さえる私。

「大丈夫よ。一瞬だったし10メートル以上も向こうだもの。パンツ穿いているかいないかさえ、わかりっこないわ」
「でもあのスケベさんには、この一連の行為が、直子の恥ずかしい姿を見せたいがためのもの、ということはわかってもらえたはずよ。どう?嬉しい?」

 心底愉しそうなお姉さまのお声も上の空。
 私は、こんな見慣れた普段使いの公共の場所で、意図的に生お尻を露出して、そしてそれを目撃した赤の他人が確実にひとりはいた、という公然猥褻な事実に、ズキンズキン感じまくっていました。
 足腰がもうフラフラです。

 エリアの反対側の通りに出ました。
「ここまで来れば、もうすぐそこよ」
「で、でも、こっち側は人通りが多いですね。灯りも多いし」
 通りの向こう側へ渡ろうと、車が途切れるのを待っている私たちに、行き交う人がチラチラ視線を飛ばしてくるのを感じていました。

「そうね。こっち側には24時間営業の大きなスーパーもあるし、地下鉄の駅も近いから」
 おっしゃりながらもキョロキョロ左右に目を配り、車の流れが途絶えた隙を突いて、通りに飛び出すお姉さま。
 手を引かれた私もおたおたと、車道を突っ切って反対側へ。
 支えの無いバストがジャケットの下でプルプル揺れて、スカートの裾もヒラヒラ揺れました。

 すぐに通りを逸れて路地に入るお姉さま。
「ここよ」 
 マンションの入口らしきゲートが、まぶしいくらいの電飾で煌々と照らし出されていました。

「ずいぶん立派なマンションですねー」
 ゲートも入口も乳白色の大理石でツヤツヤ光り、カードキーで入ったエントランスには、品の良い柔らかそうなソファーがでーんと置いてありました。
 大きな姿見に自分の姿が映ってドキンッ!
「そうね。建物自体はけっこう古いみたいだけれど、お手入れも行き届いているし、調度品の趣味もいいし、住み心地はいいわよ」

 エントランスの奥にエレベーターホール。
 空間全体が明るく照らし出されていますが、幸い誰の姿も無く私たちだけだったので、少しリラックス。
 エレベーターが降りてくるのを待ちます。

 うわー、ここは床も大理石なのかな?
 墨汁に白い糸をパラパラ散らしたような模様の黒光りする床が、ピカピカに磨かれて輝いています。
 12階にいたエレベーターが6階を通過しました。

 そのとき何気なく自分の足元を見て、愕然としてしまいました。
「いやんっ!」
 思わずつないでいた手を振りほどき、両手でスカートの前を押さえて、前屈みの中腰になっていました。

「どうしたの?」
 お姉さまが驚いたお顔で聞いてきます。
 私は真っ赤になって首を振るだけ。
 内腿を勢い良く、おツユが垂れていくのがわかりました。

 このマンションのお掃除の係りの人、お仕事がんばりすぎです。
 ピカピカに磨き上げられた床は鏡となり、短いスカートの下で剥き出しな私のワレメが、ソコを真下から覗き込んだらそう見えるであろう構図で、黒光りの床にクッキリと映し出されていたのでした。


ランデブー 6:42 08

2014年8月9日

ランデブー 6:42 06

「スカートは自分で、充分気をつけて脱ぎなさいね。床に落としちゃったり、汚い水が跳ねないように。上はあたしが・・・」
 
 背後から抱きつくように伸びたお姉さまの両手で、あっという間に私のジャケットのボタンがふたつともはずされ、そのままブラウスごと後ろに肩脱ぎにされて両腕からも抜かれ、あれよという間に上半身裸。
「ぃゃぁんっ!」
「こらこら。そんなエロい声出したらダメでしょ?公園の様子、見なかった?」
「こんな夜更けに真っ暗な中でベンチに寝転がっているような、ヘンなのが何人もいたのよ」
「そんないやらしい声を聞きつけたら、絶対寄ってきちゃうわよ?女子トイレだろうが入ってきちゃうかも。それでもいいの?」
 私は無言で激しく首を左右に振りました。

「へー。ニップルパッド、まだちゃんとしっかりくっついているわね。あの国製にしてはいい仕事だわ」
 露になった私の上半身をまじまじと見ながら、お姉さまが独り言みたいにつぶやきました。
「ほら、早くスカートも取って。オシッコしたいのでしょう?」
「あ、はい」
 スカートのウエスト部分を片手でしっかり掴み、もう片方の手でホックをはずしてジッパーを下げ、それから布地をパンプスの底やヒールに引っかけたりしないように、慎重に両脚を抜きました。

「こっちのもちゃんとまだ貼り付いているわね。布地はもう、ほとんどグッショグショなのに」
 私の股間を指さして、苦笑いのお姉さま。
 自分で見下ろすと、前貼り部分の逆三角形の三分の二以上が濡れて、ベージュ色が色濃く変色していました。
「まさか、すでにちょっと、お漏らしもしちゃっていたりして」
 からかうようなお姉さまのお声に再び私は、激しく首を左右に振りました。
 裸な上半身の乳房も、つられてプルプル震えます。

「ほら、こっちに来て背中を向けて」
 お姉さまに呼ばれて一歩近づき、足元に気をつけながらからだをそっと半回転しました。
 お姉さまは、私が持っていたスカートを取り上げてジャケットとブラウスと共に左腕に抱えてから、少し屈んで右手を伸ばし、私のお尻近くの背中に貼り付いているストラップレスパンティの糊しろ部分をペリッと剥がしました。
 そのままお姉さまが布を少し強く下へ引っ張ると、私の土手に貼り付いていた部分も意外に簡単に剥がれ、ベージュの布片が股のあいだから私の背後に消えていきました。
 明るい蛍光灯の下で、丸出しになった私のアソコ。

「さ、これならいいでしょう。服は持っていてあげるから、早くしゃがんでしちゃいなさい」
「はい・・・」
 ニーソックスとニップルパッドだけのほぼ全裸になった私は、恐る恐る汚れた便器を跨ぎ、恐る恐る腰を落としていきます。

「公園にいる人たちも、まさかこんなところで可愛い女の子が、わざわざ真っ裸になって用を足しているなんて、思ってもいないでしょうね」
 私のお尻側に立って、しゃがんだ背中を見下ろしているのであろうお姉さまのからかうようなお声が、頭上から降ってきます。
「こんなに不潔で汚れまくりの個室にうずくまっている直子の背中の白い肌が、とってもシュールでエロティックよ」
「している顔が見えないのは残念だけれどね」
 茶化しているのか本気なのか、お姉さまがお芝居っぽくささやくハスキーなお声が、すっごくいやらしく聞こえました。

 しゃがんでしばらくは、なかなか出ませんでした。
 場所、今の自分の姿、お姉さまがご覧になっていること、性的に興奮していること、そういうのがプレッシャーとなって、緊張のあまりオシッコもびっくりしちゃったのでしょう。
 早く出して、ここから立ち去りたい。
 目をつぶって意識をオシッコだけに集中させていると、やがて、引き篭もっていたオシッコがチョロッとお外に飛び出しました。
 
 それからが長かった。
 よく今までがまん出来たな、と思うくらい、出つづけました。
 お姉さまもお声をかけてこないので、しんと静まり返った個室の中に、ジョロジョロという私の排尿音だけが鳴り響きました。
 自分がたてている音が、そしてそれを聞かれているということが、すっごく恥ずかしい。

「ずいぶんがまんしていたのね」
 やっと水音が止まると、お久しぶりなお姉さまのお声が降ってきました。
「拭いてあげるから、そのまま中腰になって」
 えっ!?お姉さまが拭いてくださるの!?
 ドキンと跳ねる心臓の合図で、防御レベルを最大限に上げます。
 お姉さまと出会ったランジェリーショップの試着室でも、似たようなことをされたのを思い出していました。
 絶対にヘンな声を出さないように、口を真一文字に結びながら、恐る恐るしゃがんでいたお尻を浮かせ始めました。

「ぁぅっんっ!」
 中腰くらいまでになったとき、お尻のほうからひんやりとしたものが両腿のあいだに侵入してきて、内股にピタッとあてがわれました。
 ウエットティッシュでしょう。
 私のアソコを背後から手のひらでやんわり掴むようにティッシュで覆ってから、そのまま二度三度、中の粘膜に押し付けるように前後に擦られました。
「んんんっ!」
 私は両手のひらで自分の口を塞ぎ、必死に悦びを堪えました。
 
 ウエットティッシュを何回か変えて入念に。
 お尻側から差し込まれたウエットティッシュは、前のほうで飛び出している肉の芽をも、おかまいなしに擦ってきます。
 ウエットティッシュを操るお姉さまの右手中指が、そこの担当のようです。
「ぅぅぅ・・」
 必死に快感に抵抗しながら、いつまでもつづけて欲しい、という思いと、でもきっとまた寸止めで終わるのだろうな、という残念な安心感がありました。

「このくらいでいいでしょう。さあ、服を着て、とっととここから出ましょう」
 お姉さまの手が私の股間から離れ、急速に昂ぶりが遠去かり、モヤモヤの中で私も渋々立ち上がりました。
 お姉さまは、私のお洋服類をトートバッグの持ち手のあいだに挟んで左肩に提げ、空いた両手で使用済みらしいウエットティッシュをたたんでいました。
「はい。これで手も拭いて」
 新しいウエットティッシュを手渡してくださいました。
 レバーを踏んでも、予想通りお水は流れませんでした。

「手を拭いたら、これ。スカートね。前貼りはもういわよね。グショグショだったし、あとちょっと歩けばもう着いちゃうから」
 否を言わせない決定事項伝達的な口調と共に、スカートが私の目の前に突き出されました。
 確かにあの変色したストラップレスパンティを、またあらためて貼り直すのも、間が抜けた感じです。
 素直にうなずいた私は、手を拭き終えたウエットティッシュと交換にスカートを受け取り、再び慎重にパンプスの両脚をくぐらせて、裸の腰にまといました。

「それからこれ、上着ね。ブラウスももういいでしょう。着てても着てなくても同じみたいだから」
 えーっ!?
「そ、それはちょっと、違うような・・・」
 ジャケットを受け取りながら不服な顔をお姉さまに向ける私を、お姉さまの笑顔が迎え撃ちます。

「ここに来るまでだって、もう完全にはだけていたわよ、直子の胸元。ブラウスが見えていたの、襟元だけだったもの」
「あたしはそんな姿を見て、いいな、色っぽいな、って思っていたの。直子にとても似合っていたから」
「そ、そうおっしゃられると嬉しいですけれど・・・」
「大丈夫よ。もうあと2、3分歩けばうちだし、こんな時間だから人通りも少ないし、暗いからよく見えないでしょう」

「何よりも、あたしと一緒にいるのだから、直子はもっともっと冒険しちゃっていいのよ。何かあったらあたしが守ってあげるから」
 思いがけないお姉さまのおやさしいお言葉に、一瞬意味が掴めず、ワンテンポ遅れてすっごく嬉しくなりました。

「お姉さま・・・」
「ね?だから早くジャケット着て」
 見れば、お姉さまのトートバッグの持ち手のあいだには、もう何も挟まっていませんでした。
 おそらく脱がせた後、ブラウスだけさっさとバッグの中にしまっちゃったのでしょう。
 ここを出るときは、上着だけしか着せないことを、とっくに決めていたようです。
「わかりました」
 お姉さまがおっしゃった、守ってあげる、というお言葉に背中を押されて、私は大胆に冒険してみることにしました。

 素肌に直に、ジャケットを羽織ります。
 Vラインが大きく開いたブレザータイプのベージュのジャケット。
 裸コートならぬ、裸ブレザー。
 裸コートなら、一見普通の格好と変わりありませんが、裸ブレザーは一目見てバレバレです。
 普通に考えて胸元の肌の露出量が多過ぎるし、ノーブラなことも一目瞭然。
 ニップルパッドを着けていることが不幸中の幸いとは言えるでしょう。
 わかりました、とお答えしてしまった手前、今更わがままは言えず、両腕を通し、ボタンを留めようとしたとき、お姉さまからお声がかかりました。

「ちょっと待って。せっかくだから、こっちももっと色っぽくしちゃいましょう」
 お姉さまの両手が私のウエストに伸び、スカートのウエスト部分の布地を折り返し始めました。
「お店に来たとき、直子、こうしていたものね」
 お姉さまの手で私の膝上丈の紺色ボックスプリーツスカートは、膝上20センチ以上にまで短くなっていました。
「いい感じよ。ニーソックスの黒とスカートの紺に挟まれた白い太腿とのコントラストが、とても色っぽいわ。もう少し上げちゃいましょう」
 一歩下がって私の全身をまじまじと見つめる、お姉さまの笑顔。
 また一折短くなりました。

 普段でもこんなに短いスカートでは外出しません。
 穿くとしたらアンダースコートや見せパンを着けた上での、テニスのときとかコスプレのときくらい。
 その上、スカートの下は完全にノーパンなのですから、不安感がぞぞぞぞっと背筋を駆け上がりました。
 強い風が吹いたら、つまずいて転んだら、誰かに悪戯でめくられたら・・・
 心細いったらありません。
 今となっては、あのペラペラで頼りないストラップレスパンティでさえも頼もしく感じます。

「大丈夫よ。普通に歩いていれば見えやしないわ。屈むとお尻が少しヤバイかもだけれど」
 またしても私の心を読むエスパーお姉さま。
「もし万が一、めくれちゃったとしても、直子はヘアが無いから、ただ真っ白でなんだかわからないわよ。夜だし」
 能天気なお姉さまのお言葉に、少しだけ勇気づけられて覚悟を決めました。
 お姉さまが居ればこその大冒険です。

「あのぅ、ジャケットのボタン、もう留めてもいいでしょうか?」
「うん。いいわよ。留めて、さっさとここを出ましょう」

 ボタンをふたつ留め終えてお姉さまを見ると、ちょこっと思案顔。
「これ、どうしようかしら?」
 右手に使用済みウエットティッシュの束。
「サニタリーボックス、あるにはあるけれど、汚すぎて触りたくないし、便器に捨てても詰まっちゃうだろうし。あ、そう言えば水も流れなかったわね」
「持って帰るべきなのでしょうね。直子のえっちなおシルとオシッコにまみれてベットベトなこの使用済みティッシュ」
「あ、それなら私が何かに包んで自分のバッグに・・・」
「ううん。やっぱりここに置いていくことにする。こんなに汚いトイレをほったらかしにして使わせた管理者への罰として、抗議としてね」
 お姉さまが右手の束をサニタリーボックスの蓋の上にそっと置きました。

「でも罰じゃなくてご褒美になっちゃうかもね。外に居る人たちの誰か、あたしたちが出た後、きっとここを覗きに来ると思うから」
「ちょっと嗅いだらすぐわかっちゃうはずよ?これはオシッコだけの臭いじゃないって」
 お姉さまったら、すっごく愉しそう。
「直子どうする?あなたのえっちな愛液の臭い、嗅がれちゃうのよ?得体の知れないヘンタイな人に・・・」
 怪談でも語っているかのような、お姉さまのお芝居がかった口調。

 瞬時に、誰か気味の悪い人がこの個室にしゃがみ込んで、真っ暗な中で私の使用済みウエットティッシュをクンクン嗅いでいる図が頭に浮かびました。
 そう言えばオシッコだって、流していないんだった。
 オシッコも見られちゃう。
「もう!お姉さまったらぁ」
 その想像になぜだかキュンキュン感じちゃいながらも、わざとおどけて抗議する私。
「うふふ。まあ捨てたゴミを誰がどうしようが、あたしたちの知ったことじゃないけれどね。さあ行きましょう」
 バタン!
 お姉さまが個室のドアを開けました。

 おトイレの建物から出る間際に、洗面台上の割れて汚れて曇った鏡の中に、お姉さまに右手を引かれた自分の姿が映りました。
 ジャケットのVラインから大胆に覗く素肌。
 横向きだとカーブした襟の隙間から、横乳が丸見え。
 正面が映ると、左右のおっぱいの谷間のふくらみと丸みが完全に見えていました。
 いやんっ!
 自分で自分の胸元を見るのより、鏡に映った姿のほうが想像以上に大胆かつ露骨な感じです。
 正面姿が映った直後、反射的に鏡から目を逸らしていました。
 目を逸らしたって、今の自分の格好がマシになるわけでは無いのに。

 鏡から目を逸らすと視線がお外に向きました。
 明るいおトイレから暗い公園内がぼんやり見えました。

「キャッ!」
 私が小さく悲鳴を上げると同時に、パチンとおトイレの電気が消され真っ暗な中、グイッと右手を引かれました。
「こっちよ!」
 お姉さまのお声、と思った途端、私は更に強い力で暗闇のほうへ強引に引っ張り込まれました。
 前屈みのへっぴり腰になって、薄闇のほうへ大きくお尻を突き出した格好。
 急に激しくからだを動かしたために、短いスカートが大きく翻りました。
 いやんっ!スカートの中が見えちゃう・・・


ランデブー 6:42 07

2014年8月3日

ランデブー 6:42 05

 お姉さまおっしゃるところの、前貼り、一枚だけでほぼ裸な腰にスカートをまとい、ボタン全開で頼りないことこの上ないブラウスの前を掻き合わせてから、ジャケットに袖を通しました。
 
 私が着てきたベージュのジャケットは、ブレザータイプで前ボタンは二つ。
 Vラインの下、一番上のボタンが私のおへそのちょっと上くらい。
 そのボタンを留めても、首下からブラウスのボタンで数えて5つ分、V字の胸元が大きく覗いてしまいます。
 ブラウスの前立てに施されたフリルがストッパーとなって、ブラウスの前合わせがジャケット襟の裏側まで潜り込んでしまうことは無さそうですが、左右に分かれたフリルのあいだには、私の胸元の素肌がバストの谷間からアンダーまで、全部大胆に見えていました。
 ちょっと前屈みになったらジャケットが浮いて、Vライン越しにおっぱい全体が覗けそう。

「いいわね。とってもコケティッシュ。さあ、そろそろ出ましょうか」
「で、でも、お姉さま・・・」
 左手でブラウスの襟元をギュッと押さえながら、お姉さまのお顔をすがるように見ました。

「こ、これでお外を歩くのですよね?ちょっと大胆すぎるような・・・」
 じっと座っているのならともかく、歩いたり、からだを動かしたら、ジャケットの下でブラウスの前がどんどんはだけてしまいそうな気がします。
 なにしろブラウスは一番下まで、まったくボタンが留まっていないのですから。
 それに、ジャケットの裾からブラウスの裾が5センチくらいはみ出しているのもだらしないし。

「大丈夫。そういうルーズなコーデの女子高生やギャル、この街にはたくさん歩いているから。もう夜で暗いし、多分誰も気にも留めないわ」
「それに、万が一前がはだけちゃっても、さっきニプレスしたじゃない?乳首は見られずに済むわよ」
 それから、私の顔を細めた瞳でじっと見つめ、イジワルっぽいお声でつづけました。

「直子だって、内心ワクワクしているのでしょう?心配そうな顔をしていても、目がサカッちゃっているもの」
「直子には、お似合いなのよ。そういう格好が」
 フッと笑って、襟元を掴んでいた私の左手を取り、下へと降ろさせます。
「ほらまた。襟が、曲がっていてよ」
 私の首元に両手が迫り、掻き合わせていた襟元をゆっくり左右に押し広げました。
 フリルの縁取りで大きくV字に露になる、私の胸元。
「それ、直したらダメよ。さあ、行きましょう」

 ご自分のトートバッグを左肩に提げ、右手で私の左手を握ってくるお姉さま。
 手をつないだまま個室を出て、お会計のレジへ。
 廊下に出ると、左右の個室からの賑やかな酔声が、いっそう大きく耳に飛び込んできます。
 私は手を引かれつつ、自分の胸元に視線を落とし、ドキドキキュンキュン感じていました。

 お会計をしてくれたのは、さっき伝票を持ってきてくれた女の子、間宮さんでした。
「ありがとうございましたぁ。またのご来店を心からお待ちしておりまぁす」
 可愛いらしいお顔をペコリと下げながらも、その視線は私の大きく開いた胸元に釘付けでした。

「ふう。やっぱり夜になると少し肌寒いわね」
 お外に出たお姉さまと私。
 時刻は10時ちょっと前。
 ネオン瞬く週末の繁華街には、まだまだたくさんの人たちが行き交っています。
「でも、ワインが少し回っているから、このくらいの温度が気持ちいいわ」
 私の右手を握って歩き始めるお姉さま。

 私はうつむいて自分の胸元を見つめながら、お姉さまに引っ張られています。
 かなり大胆に開いちゃってる・・・
 ブラジャーをしていたら、センターモチーフがあるべきところまで素肌が覗いちゃっているので、ノーブラということもバレバレです。
 私の右手はお姉さまの左手に握られ、左手には自分のハンドバッグ。
 だから歩きながら直すことは出来ません。
 からだがどんどん火照ってしまって、気温を正しく感じることも出来ません。

「もっと堂々と歩いたほうがいいわよ?モジモジしていると悪目立ちするから」
 そんなことをおっしゃられても・・・
 妙齢の女性がふたり、手をつないで歩いているだけでも目立つと思うのに、その上、お姉さまは超美人だから普通に目を惹くし、私はこんな格好だし。
 絶え間なく行き交う老若男女な人たちから、次々と視線が浴びせられるのを全身で感じていました。

「ところで直子は、このへんに住んでいるのよね?ここから歩くと何分くらい?」
 大きな交差点の信号待ちで立ち止まったとき、お姉さまが私を振り返って尋ねてきました。
「そうですね・・・地下鉄の駅まで行けば、ソコから5分かからないくらいですから、このへんからだと20分くらいでしょうか・・・」
 私の隣に立ったご中年の男性が、私の胸元にチラチラ視線を投げてくるのを感じながら、ボソボソとお答えしました。
「そう。あ、でも、同じマンションにシーナさんも住んでらっしゃるのだったわね?」
 信号が変わり、男性の視線から逃げるようにお姉さまを追いました。

「はい。最近はぜんぜんお会い出来ないのですけれど」
「今日はいらっしゃるのかしら?そのマンションに」
「さあ・・・先月メールしたときは、インドネシアにいらっしゃるって返ってきましたが・・・私も去年の暮れにちょこっとお会いしたきりなんです」
「ふーん。いるかいないかは、わからないのね。でも、もしいらっしゃったら、さっきの話だと、直子のところには出入り自由なのでしょう?」
「そうですね。お部屋の鍵を渡してありますから・・・」
「せっかくの直子との夜に、万が一乱入されたら台無しよね。やっぱり、あたしんとこ行こっか」
「えっ!?お姉さまもこの辺に住んでらっしゃるのですか?」
 自分が今しているはしたない服装のことも一瞬忘れるほど、本気でびっくりしてしまいました。

「あたしの住まいというワケではないのだけれど、スタッフたちのために一部屋あるのよ、オフィスの近くに」
「仕事が立て込むと徹夜もままあるからね。オフィスに泊まれないこともないけれど、シャワーとかが無いから。トイレも室外だし」
「うわー。すごいですね。スタッフ思いの社長さんなんですね、お姉さま」
「ほら、みんなで寝泊りとかすると楽しいじゃない。学生時代みたいで」

「一昨日ちょうど、全社挙げてずっとかかりきりだった大きめなプロジェクトが終わってね、パーッと打ち上げてからみんなで泊まったのよ」
「まあ、全社挙げて、なんて言っても、スタッフはあたしも入れて6人だけだけどね」
「だから今日はみんな早めに自宅に帰ったわ。今夜あそこを利用する人はいないはず」
「でも、社長と呼ばれる身にとっては、それからが仕事なの。最終確認だの契約だの。あたしは、明日の朝早くに羽田に行って北海道」
「だから都合がいいって言えばいいのよね。空港行きバス乗り場もすぐそこだし」

 お姉さまは、メインの通りからは少しズレた、私もあまり通ったことの無い路地を、有名な高層ビル方面へと歩いていました。
 確かこのへんはお役所街。
 お勤めされているかたたちは、とっくに帰宅されたろうとは思うのですが、それでもけっこう人が行き交います。

 私の胸元は、歩いているうちにブラウスのフリルがどんどんジャケットの襟裏に潜り込んでしまい、ほぼジャケットのV字通りに露になっていました。
 ジャケットの下に着ているブラウスのボタンがひとつも留まっていないのですから、フリルがあったとしてもからだを動かしつづけていればやっぱり、そうなってしまいます。
 ジャケットの裾からはみ出ているブラウスの裾も、左右の腰骨の辺りにまで泣き別れ。
 直したいけれども、両手は塞がっていって直せません。

 だけど、こんな格好をしている自分を自分で、愉しみ始めていることも事実でした。
 誰かとすれ違うたびに、恥ずかしさに疼いてしまって仕方ありません。

「あたしはね、実家は鎌倉なの。それで会社起ち上げるときは、横浜あたりにしようと思っていたの」
 私の手を引いて、のんびりと歩くお姉さま。
「鎌倉と横浜って、近いのですか?」
 その辺の地理はまったく疎い私。
「そうね。電車だけなら30分かからないくらい。場所にもよるけれど、歩き入れても充分通勤圏内よ」

「だけど、いろいろ成り行きで結局、池袋に決まってね。だから飯田橋にマンションを買ったの」
「どこに住もうかいろいろ迷ったけれど、探していたのがちょうど春で、ほら、あそこってお濠端の桜がとても綺麗じゃない?だから決めちゃった」
「飯田橋だったら、都内のターミナル駅ならどこにも近いし」
「でもいざ仕事始めてみたらすごく忙しくて、ほとんど家に帰れないのよ。終電逃してオフィスに泊まったり、ビジホで仮眠したり」
「だからオフィスのそばに、寮的なものも置くことにしたの」
「最初の頃は毎日って言っていいくらい、みんなでそこに泊まっていたわ。やっと最近、かなり落ち着いたけれどね」
「でも、あたしは、明日みたいに地方に行くことも多いから、今でも飯田橋に帰るのは、忙しくないときの週末くらいね」

「それで今は、そのお姉さまの会社のほうへ向かっているわけですよね?」
「そう。でもあたし、ごちゃごちゃした人混み苦手だから、少し遠回りしているけれどね。歩道橋も嫌いだし」
 車のヘッドライトがまぶしく行き交う幅の広い通りを渡ると、人通りがずいぶん減りました。
 ときたますれ違う人はみんな駅のほうへ向かう中、私たちだけが反対方向へと歩いています。

「あのぅ、お姉さま?そこに着くのって、まだまだ時間がかかりますか?」
 数分前から徐々に催していたある感覚が急に勢いづいてきたので、がまん出来ずにお姉さまに尋ねました。
「うーん。あと5、6分だと思うけれど、どうしたの?」
「あの、私、ちょっと、急におトイレに行きたくなって・・・」
 かなり向こうでしたが、コンビニのネオンが見えたので、そこに寄ってくれませんか、ってお願いするつもりでした。

「あら、困ったわね。オシッコ?」
 お姉さまがとても嬉しそうなお顔で、振り返りました。
「直子は視られたがりのマゾっ子なんだから、どこかそのへんの物陰でちゃちゃっとしちゃえば?って言いたいところだけれど、そんなことしたら、この辺のご近所さんに迷惑だものねぇ」
 私のはだけた胸を見ながら薄い笑みを浮かべています。
「はい。だからあそこのコンビ・・・」
 私が提案を言い終わらないうちに、お姉さまのお声がかぶさってきました。
「歩きながら漏らしちゃってもいいのよ。そういうのも好きなんでしょ?マゾっ子ちゃんは」
「あ、でも、お漏らしするなら、もっと人通りがたくさんある道に行けばよかったかな」
 もうっ!お姉さまのイジワル・・・
 私がつないでいる手に力を込めてギュッと握ると、お姉さまが振り向いてニッて笑いかけてくださいました。

「大丈夫よ。安心して。このあたりにはね、なぜだか公園が多いのよ。確かその先を曲がったところにもあったはずよ」
 お姉さまはマイペースで、私の手を引っ張って進んでいきます。

「ほら、あった。これだけ広い公園だったらトイレもあるでしょう。あ、あれかな?」
 たどりついた入口のちょうど対面奥に、コンクリート製っぽい長方形の小さな建物がありました。
 手をつないだまま、公園の敷地内に入ります。
 かなり広いのに、灯りは縁石沿いにポツンポツンとしか点いていないので、公園内の暗闇が濃くてなんだか不気味な感じです。
 ふたり、早足で公園のほぼ真ん中を突っ切ります。

 遊具などは置いていない広場のような公園でした。
 あまり背の高くない木々でほぼ正方形に囲まれた暗闇。
 灯りの傍の木にもたれて、煙草を吸っているスーツ姿の男性が居ます。
 ベンチが点在していて、その上で寝ている人も何人か居るみたい。
 公園内に何人の人がいるのかはわかりませんが、おしゃべりしている人はひとりもいません。
 聞こえるのは、遠くを走る車の音と屋外灯のジーッという音だけ。
「お昼時は、お弁当持ったOLとかで賑わっているのに、さすがに夜は別世界ね」
 お姉さまがヒソヒソ声でおっしゃいました。
 私たちが突っ切った公園中央はとくに暗かったので、彼らに私の服装までは分からなかったと思うけれど・・・

 白地にぼんやりと赤い女子マークが浮かんでいる建物に飛び込みました。
 外灯の近くなので少し明るい薄暗闇。
 ぼんやり見える内部はかなり古い感じ。
 そしてもちろん、綺麗とは言えず、臭いもかなり。
 入ってすぐに洗面台と三分の一くらいが割れて失くなっている鏡。
 その奥の個室はふたつ?

「電気はどこかしら?」
 お姉さまが目を凝らしてみつけたらしく、パチンという音とともに、ふたり、つないでいた手を互いにギュッと握り合うほど、びっくりするくらい明るくなりました。
 同時に、その絶望的なまでの、綺麗じゃなさ、も目に飛び込んできました。
 黄ばんだ壁、剥がれ落ちたタイル、濡れた床、お下品な落書き・・・
「さ、ちゃっちゃとやっちゃって、さっさと行きましょう」
 怒っているみたいなお声と共に、お姉さまが私を奥の個室に押し込みました。

「えっ?お姉さまもご一緒ですか?」
「もちろんよ。あんな真っ暗で得体の知れない人たちが居る中で、直子のオシッコが終わるのを独りポツンと待つなんて、絶対ごめんだわ」
 ということは、私のオシッコ姿、お姉さまに視られちゃう。
「ここでじっくり視ていてあげる。あ、ひょっとして直子、大きいほうだった?」
「えっ?いえいえ、違いますけど・・・」
「ふぅー。出会って2回目で、いきなりそんな姿まで見ちゃうのは、いくら直子がマゾっ子でも、うら若き女子としてどうなのかなって、一瞬、考えちゃったわ」
 お姉さま、その最初のため息は、安堵?それとも落胆?

 オシッコ姿をお姉さまに視られちゃうのも、うれしはずしなのですが、別の理由で私は、臨戦態勢に入るのを躊躇していました。
 
 煌々と輝く蛍光灯に照らし出された個室内の全貌。
 満遍なく汚れた便器は、和式でした。
 そしてなぜだか満遍なく水浸しな、黒く汚れた床。
 こんなところでしゃがんだら・・・

「ここでしゃがんだら、間違い無く服の裾が汚れてしまうわね。スカートだって危ないわ」
 私の心を読んだかのようなお姉さまのお言葉。
「紙が無いのは想定内ね。大丈夫、あたしはウエットティッシュをいつも持ち歩いているから」
「だけど、ここまで汚いとは思っていなかったわ」
 お姉さまのお顔が、ここに足を踏み入れたときとは打って変わって、なんだか愉しそう。

「仕方ないわね。服を汚したくないなら、全部脱いでからするしかないみたいね」


ランデブー 6:42 06


2014年7月27日

ランデブー 6:42 04

「直子のココがヌルヌルだから、お箸が難なく滑り込んじゃったわね」
 膝立ちだったお姉さまが更にからだを屈めて、私のアソコを下から覗き込むように見ています。

「この中にいいものが隠れているのよね?今でもちょこっと顔を出しているけれど」
「直子のは大きいのに包む皮が浅いから、気持ちがいいとすぐに、こんにちは、しちゃうのよね。かまって欲しくて」
 おっしゃりながら、2本の箸先がゆっくりと左右に分かれ始めます。
「ぁぁんっ!ぉ姉さまぁ・・・」
 柔らかな皮膚がひきつる感覚、粘膜が無理矢理抉じ開けられる感覚がからだを駆け巡り、痺れるような恥ずかしさと被虐感が全身に広がります。

「このあいだのスタジオライブショーのとき、直子、ココを自分で思いっきり押し広げていたでしょう?洗濯バサミまで使って」
「あのときあたし、本当に驚いたの。人前でそこまでする女の子って本当にいるんだ、って。こういう子を本当の自虐マゾっていうんだな、って」

「もう釘付けだったわ。間近で見たい、今すぐスタジオのドア開けて、かぶりついて見ていたい、って、いてもたってもいられなかったのよ」
「自分の立場を考えて、なんとかガマンしたけれどね。うふふ、でも今日からココは、あたしだけのもの」
「あたしが直子のからだを独り占めして、自由にもてあそんでいいのよね?楽しみだわ。ゾクゾクしちゃう」
 独り言みたいなお姉さまのSっぽいお言葉に、私の隷属願望が狂喜乱舞しています。

 お姉さまの箸先は、私の亀裂のほぼ真ん中に潜り込み、お箸を開く力で幅4~5センチくらいの菱形っぽい窪みを作り出していました。
 その箸先が粘膜を擦りながら徐々に上のほう、すなわち私のお腹側のほうへと動き始めています。
 割り箸のザラザラとした木の感触が粘膜に新鮮。

「わたしのお目当ては・・・やっぱり今日もテラテラ元気一杯に飛び出しているわね」
「あのときもスゴイと思ったけれど、やっぱりスゴイわ」
「まるで大きな真珠みたい。露に濡れてツヤツヤ輝いてとっても綺麗。だけどシャボン玉みたいに敏感なのよね、直子のピンクパールは」

「ぁ、そ、そこは・・・お姉さまぁ・・・だめ・・・ここでは・・・だめです・・・」
 箸先は、ゆっくりその部分へ近づいています。
「ぉ姉さま、本当にソコは、今、今は、ぁ、ゆるして、ゆるしてくださぃ・・・ぃやっ、やめて・・・」
 途切れ途切れのコソコソ声でお姉さまにお許しを請いました。
 こんなところで、こんな状況で、こんな格好でソコを弄られたら、声を押し殺せる自信がまったくありませんでした。
 窪みからは嬉し涙がトロトロ滴り落ちて、腿を濡らしています。

「んっ!」
 片方の箸先がとうとう、ソコの側面に軽く触れました。
「んんっ!」
 つづいてもう片方の箸先も。
「んんんーっ」
 腫れ上がった肉の突起が、お箸の先で軽くつままれ引っ張られます。

「がまんしなさい。そして、そのがまんしている顔をあたしに見せて。ほら、直子、下を向いて。あたしの顔を見なさい」
 
 ほぼ真下から聞こえてくるお姉さまのお声に、後頭部で組んだ両手に力を込め、歯を食いしばってうつむきます。
 見上げるお姉さまの妖艶な笑顔と目が合いましたが、そのときお箸がソレをもっと強く挟んできて、たまらずに目をギューッと閉じました。
 唇は真一文字、目もギューッ、からだは硬直、膝はガクガク。
 一瞬でも力を抜いたら、私の喉元からはしたない淫声がほとばしってしまうことでしょう。
 お姉さまの箸先は、ときに強く、ときに弱くその部分を挟み、円を描くように引っ張ったり離したり。
 ・・・だめ・・・これ以上はもう・・・やめて・・・ぉ願い・・・ィキそう・・・だめ・・・ほんとうに・・・

 もういい、もうどうなってもいい、がまん出来ない、快感に身を委ねよう・・・
 頭の中が真っ白になりかけて、捨て鉢になる寸前。
 唐突に蹂躙が終わりました。
 充血した芽への刺激が消え、ジーンと興奮が遠のいていきます。
 私の両膝がヘナヘナと崩れました。

「よく声をがまんしたわね。偉いわ、直子」
 しゃがみ込んだ私と同じ頭の位置にお姉さまのお顔。
「あら?イけなかったから拗ねているの?わかりやすい子。試着を終えたときも、そんな顔をしていたわね」
 
 昇華出来なかった快感の渦が行き場を失くしてモヤモヤとした欲求不満に姿を変え、その憤りの矛先は、さっきまで刺激を与えてくれていた人、すなわちお姉さまに向けられて・・・
 おそらく私は、すっごく恨みがましい顔で、お姉さまを睨んでいたと思います。

「それよりもそろそろお店を出る仕度をしなくちゃ。9時半までには出るって言っちゃったし」
 しれっとしたお姉さまのお言葉に、ますますジト目になる私。

「そんな顔しなくても大丈夫よ。夜はまだ長いのだし、あたしだって久しぶりだから見たいもの、直子のマジイキ顔」
「だけど、直子が本気出したときのヨガリ声の凄さも、あたしは知っているから。こんな場所であんな声出されたら、たまったものじゃないわ」
 お姉さまの愉快そうなお顔が、すっごくニクタラシイ。
「だから寸止め。ね?」
 
 お姉さまったら、美味しそうに割り箸の先端をキャンディみたいにしゃぶっています。
 もう!お姉さまのイジワル!
 だけど、お姉さまとのデートはまだまだ終わらないってわかって、お姉さまが私のイク顔を見たいっておっしゃってくれて、ずいぶんご機嫌が直りました。

「とりあえず服を着ましょう。ブラウスはここにあるけれど、スカートは?」
「あ、えっと、あそこです」
 スカートはさっきお姉さまに脱がされて、まだ掘りごたつ式テーブル下の床に横たわったままでした。

「そうだったわね。すっかり忘れていたわ」
 マゾの服従ポーズを解いてテーブルに向かおうとした私を、お姉さまが手で制しました。
「せっかくあんなところに落ちているのだし、直子はマゾなんだし、ここはやっぱり四つん這いで手を使わずに回収する、っていう牝犬プレイじゃない?ベタだけれどさ」
 
 お姉さまってば、どんどん調子が出てきているみたい。
 ご自分では、エスっぽいとは思わない、なんておっしゃっていたけれど、どうしてどうして、なかなかのイジワルなご主人さまっぷりです。

「はい。わかりました、お姉さま」
 おずおずと両手をついて四つん這いになった私のお尻を、お姉さまの右手がペチンと軽くはたきました。
「ほら、取っておいで。直子のスカート」
 居酒屋の個室のお座敷を、ニーソックスだけのほぼ全裸の四つん這い、両肘と両膝を交互に動かし、裸のお尻だけ高く突き上げて這うようによたよた進みます。

 スカートが落ちている掘りごたつ風テーブルの床下は、お座敷から5~60センチの段差。
 お座敷とテーブルの間が40センチくらい空いているので、その隙間から潜り込めば床下に降りられます。
 手を使ってはいけない、ということなので、スカートは、本当のワンちゃんみたくお口で咥えるしかありません。
「犬だったら当然、こういう軒下みたいなところには、頭から潜り込むわよね?」
 お姉さまの愉しそうなお声が背中から降ってきました。

 四つん這いのまま、まず頭をテーブルの下に入れ、それから右手、左手と床下につきました。
「ああんっ!」
 剥き出しで垂れ下がったおっぱいがお座敷の縁でべったり潰され、動くたびに尖った乳首が木の床を擦ります。
 この状態をお姉さまから見たら、お座敷とテーブルの間にぽっかり、私の裸のお尻だけ覗いていることでしょう。

「あらあら、いい格好だこと。柏餅の中身も、お尻の穴まで全開、丸見えよ」
 案の定、愉快そうなお声と共に、尻たぶをまたペチンと叩かれました。
「あ、いい忘れていたけれどあたし、直子のお尻も大好きよ。白くて柔らかくてまん丸で」
 
 お姉さまの手が私のお尻をさわさわ撫で回してきます。
 ああん、気持ちいい・・・
 いつまででもそうされていたかったのですが、お姉さまの、早く取ってらっしゃい、の一言で、股間を大きく割って両膝とも床下に降ろし、スカートを咥えてお座敷に這い戻りました。

「よしよし。いい子ね。服を着せてあげるから、またそこに立ってくれる?」
 さっきの衝立の前で再びマゾの服従ポーズ。

「今日は、本当はね、これを直子に試させるのが、あたしの中ではメインだったのよ」
 お姉さまがガサコソとご自分のバッグの中から何かを取り出しながらおっしゃいました。

「直子のノリがいいから、ずっと出しそびれてしまったけれど」
「このあいだ直子が言っていた、服を着たままでも脱げる下着、っていうのが印象的だったから、頭の中にずっとひっかかっていたの」
「あたしにはそういう発想は無かったから、面白いな、って思って。あたしの仕事にも大いに関係することだし」
「それで、まあこれは下着っていうのとは少し違うのだけれど」

 お姉さまの手のひらの上に、直径5~6センチくらいのピンクがかった肌色の平べったくて少しだけ厚みのある、まあるいものが乗っていました。
 まあるいものの円周は、梅の花形に可愛く波打っています。

「あっ、それってニプレスですね?」
「それは日本特有の呼び方ね。ヌーブラとか。欧米ではパスティーズとか、ニップルカバー、ニップルパッドって呼ぶみたい」
 お姉さまが手のひらを軽く握ってまた開くと、そのまあるいものが手品みたいに2枚になりました。

「一般的には、ノーブラのときに乳首を目立たせたくない人が着けるのだけれど、直子は着けたことある?」
「いえ、ないです」
「直子の乳首は大きいから、大きめで接着力の強いのを持ってきたわ」
「肌が湿っているとつきが悪いから、汗を拭ってあげるわね」

 バッグから取り出したタオル地のハンカチで、お姉さまが私のおっぱいを拭いてくださいました。
 タオル越しにやさしく揉むような手つき。
「ぁんっ」
 乳首がタオル地のザラザラに包まれて、ピクっと反応してしまいます。

 そのパッドから透明な薄紙のようなのを剥がしたお姉さまが、私の右おっぱいの先端にペタリとそれを貼り付けました。
「あら。直子の尖った乳首でもちゃんとくっついたわね」
 つづけて左おっぱいにも。
「ほら、さわってごらん」

 後頭部で組んでいだ手をほどき、おそるおそるパッドの表面に触れてみます。
「プニプニしてますね?」
「シリコンだからお肌っぽいでしょ?乳首つぶされて痛かったりはしない?」
「それはないです。内側もやわらかいし。だけどやっぱりなんだか、周辺がむず痒いような・・・」
「素肌に何かがくっついているワケだしね、接着剤はお肌に害の無い成分らしいけれど」
 パッドが肌とよく似た色なので、ぱっと見るとあるべきところに乳首が無くて、おっぱいがのっぺらぼうでヘンテコな感じです。

「それで、ボトムはこれ」
 次にお姉さまがバッグから取り出したのは、ペラペラの布きれでした。
 広げると全長30センチに満たないくらいの奇妙な形をした一枚の布。
 底辺の幅が5~6センチくらい、高さ15センチくらいの細長い二等辺逆三角形のV字の頂点から、数センチだけ細い帯状となり、その先に三角形の幅と同じくらいのハート型が逆向きに付いています。

「ストラップレスパンティなんて呼ばれている代物なの。薄い生地のドレスのときとかに下着のラインが出ないから、欧米のセレブたちが愛用している、っていう宣伝文句。本当か嘘かは知らないけれど」
「両端の接着部分を肌に直に貼るシール式。まあ俗に言う、前貼り、ね」

「直子はソコにヘアが無いから貼りやすいのはよいのだけれど、ちょっとその周辺の湿りは拭っておかないと、つきが悪そうね」
 お姉さまが小さく笑いながら、テーブルの上にあったおしぼりのビニールを破き、私の股間にあてがいました。
「ぁぁんっ」
「あらあら、腿までヌルヌルだわ」
 おしぼりを私の割れ目にしばらくぎゅうっと押し付けてから、たたみ直して左右の内腿、太腿まで拭いてくださいました。
 新しいおしぼりも使って念入りに。
 冷たいおしぼりが火照った肌に気持ちいい。

「おしぼりが2本ともくまなくヌルヌルベトベトになっちゃったわ。これ片付ける人、かわいそうよね?」
「時間がたつと臭ってきちゃうでしょうね。分かる人には分かる臭いが」
 ご自分のタオル地ハンカチで、私の土手とお尻の上のほうを乾拭きしてくださりながら、そんなイジワルをおっしゃるお姉さま。
 私の奥は、今さっき綺麗に拭いていただいたのに、いろいろ弄られた刺激で懲りもせずヒクヒクヌルリ。

「まず、ここにこうして・・・」
 三角形の底辺に幅2センチくらいの糊代があり、その部分を私の無毛な土手の割れ始めすぐ上くらいに貼り付けました。
 逆三角形が私の局部を覆い、そのまま余っている布をふんどしみたく股のあいだに通して、お尻側で持ち上げます。
 逆三角の頂点付近がお尻の穴を隠し、Tバックくらいの細い帯からつながったハート型の部分が、お尻の割れ始めあたりの背中まできたようです。
 ハート型部分の糊代の台紙も剥がして背中にペタリと貼り付けると、私の股間は、必要最小限の布地で隠されました。
 これも布地が肌の色に近いので、ぱっと見のっぺらぼう。

「なんだか一昔前のマネキン人形のボディみたいね」
 立ち上がって一歩下がり、私の全身をまじまじと見つめつつ、お姉さまがおっしゃいました。
「セクシー、っていうのとは少し違う感じね。隠そうとして、かえって不自然さが目立っちゃって少し不気味かな。機能的過ぎるのね。色っぽさが感じられないわ」
「いっそ下のヘアをちゃんとケアしていないほうが、微妙にはみ出したヘアで、ぐんと卑猥っぽくなるかもね」

「これは、お姉さまの会社の製品なのですか?」
「ううん。両方とも輸入物。開発の資料として取り寄せたの。うちが扱うとしたら、もっと何かしらオシャレな感じにイロつけるわよ」
 お姉さまが真面目なお顔で即答しました。

「ちょっとそこでしゃがんでみてくれる?」
「あ、はい」
 お言葉通りにその場でしゃがんでみます。
 当然、両腿が左右に割れ、アソコのスジも開きます。
「剥がれない?背中側」
「はい。大丈夫みたいです」
「ふーん。けっこう接着力強いんだ。布の伸縮性もいいみたいね。立っていいわよ」
「はい」

 立ち上がった私の股間に目を遣ったお姉さまが、苦笑いみたいなものを浮かべました。
「やれやれ。直子のソコって、まるで枯れない泉ね。伝説のせいなる泉。セイントじゃなくてりっしんべんのほう」
 
 お姉さまのお言葉で自分の股間に目を遣ると・・・
 アソコが当たっている部分が、はしたないおツユに濡れて薄い生地に浸み出し、色濃く変色していました。
 肌の色に近いベージュ色が、そこだけクッキリ濃い茶色になってしまっています。
「そのシミはずいぶん目立っちゃって、かなり恥ずかしいわね。一気に淫靡な感じになったわ」
「辱められ願望の直子にはそれでいいのでしょうけれど、布質はよーく考えなければいけないみたいね」
 お姉さまの呆れたような薄笑みに、私の奥が更にヒクヒクヌルリ。

「ワッハハーッハーッ!いやー、今日はもうサイコーでしたねーっ!」
 突然、数人の男性たちの出来上がっちゃったらしい酔い声の洪水が、遠慮の一切無い大きな笑い声とバタバタという乱暴な足音とともに、格子戸を隔てた通路をフェイドインしてフェイドアウトしていきました。
 途端に、自分が今居る場所、していること、を今更ながらに思い出します。
 忘れていた不安が一気に押し寄せ、いてもたってもいられないのに、アソコの奥が盛大にビクビクン。

「ま、それはそれとして、そろそろお店を出ましょう。約束の時間、少し過ぎちゃったから」
「急いで身支度して。はい、これ。ブラウスとスカートね」
「あ、はいっ!」

 やっとお洋服を着ることを許された安堵感に大きな声でお返事し、お姉さまから渡されたブラウスの袖に大急ぎで腕を通します。

「ただし、ブラウスのボタンは全部はずしたままよ。スカートにもウエストインしないで裾は出しっぱね」
「えっ!?」
「ほら、早くスカート穿いて」

 お言いつけに戸惑いながら、ブラウスの前を開きっ放しのまま、スカートを着けました。
 まさかこんな全開な格好で、週末で賑わう夜の繁華街へ出ろと!?

「うんうん。ブラウスから覗く肌がなかなかセクシーでいい感じ。はい上着。そのジャケットのボタンだけ、留めていいわよ」


ランデブー 6:42 05


2014年7月19日

ランデブー 6:42 03

「お姉さまっ?!」
「ほら、早く!店員さんが来る前にはずし終えていなかったら、スール解消するわよ?」
「そ、そんな・・・」
「大丈夫。あたしがうまくやるから、直子はうつむいて、そのアイスクリームを食べているフリでもしていればいいわ」
「わ、わかりました・・・」
 
 お姉さまにイジワルなお顔で促され、震える指でボタンを全部はずしました。
 ゆったりめのブラウスなので、前がモロに左右に割れてしまうことはありませんが、開いた胸元とチラチラ覗く素肌がすっごく不安。
 ドキドキして乳首が痛いくらい。

 コンコン!
 ドキンッ!
「お呼びでしょうかっ?」

 格子戸がガラガラッと開くと、作務衣のような制服を着た若い男性の店員さんが満面の笑みを浮かべて立っていました。
 その瞬間、私はブラウスのお腹のあたりを左手で押さえながら思いっきり背中を丸めてうつむき、目の前のアイスクリームのスプーンを口に運びました。

 私の左隣、店員さんに近い側で背中を向けていた形のお姉さまが、ゆっくりと店員さんを振り返ります。
 隣でうつむいている私の視線には、Vラインがたわんだブラウスの襟ぐりから自分の胸の谷間が丸見え。
 だけど、これだけ前傾していれば、お座敷の縁に膝立ちの店員さんからは、私の後頭部とブラウスの背中しか見えていないはず・・・

「えーっと、グラスワインの白、同じ銘柄をもう一杯と、直子のは何だっけ?あ、梅酒のソーダ割をおかわり」
「それからお食事のお皿は全部さげてください。ご馳走さま」
 おっしゃりながら、テーブルの上の空になったお皿を次々と、店員さんの膝元に置いてあげているようです。
「一緒に冷たいお水もふたつ、いただけますか。それとチェックを。9時半前には出ますので」
「かしこまりました。少々お待ちください」

「ずいぶん大げさに丸まっていたわねえ。店員さんが不思議そうに見ていたわよ?」
「だって・・・」
 格子戸が閉じられた音と同時に顔を上げた私の真正面に、愉快そうなお姉さまのお顔がありました。
「ちゃんとボタンはずした?」
「はい・・・」
「本当?自分でブラウス開いてみせて」
「えっと、あの、は、はい・・・」
 お姉さまの瞳にまっすぐに見つめられた私は、従うほかはありません。

 ブラウスの前立てを両手でつまみ、おずおずと左右に開き始めます。
 素肌が徐々に外気に晒されていきます。

「もっと開いて」
「そんなんじゃだめ。もっとよ、もっと」
 私の両手は、縄跳びをするときみたいな形で左右に分かれ、ふたつのふくらみが完全に露になりました。
「やっぱりツンツンね。硬そうに尖ってる」
 愉しそうなお姉さま。
 衝立越しに聞こえてくる他のお客様たちの喧騒が、一段と大きくなったような気がしました。

「あたしがいいと言うまで閉じたらダメよ」
 おっしゃりながらお姉さまの上半身が私のほうへ傾いてきました。
 パンティをはずされたときと同じように、私の下半身に膝枕みたいな格好のお姉さまが、私の左腰のあたりをゴソゴソいじっています。
 ジジーーッ。

「あっ!?」
「おっけー。少しお尻を浮かせてくれる?」
 お姉さまの言いなりモードな私は、招く結果がわかっていても、逆らうことは出来ません。
 お姉さまの手が私のスカートのホックをはずし、ジッパーを一番下まで下げていました。
 私がためらいながらも少しお尻を浮かせたタイミングを逃さずスカートが下へと引っ張られ、腿からニーソックスの脛、足先へとスルスルッと滑り落ちていきました。

「ああんっ、お姉さまぁ・・・」
「そのブラウス、意外と丈が長いから大丈夫。ギリギリ隠れるわよ」
 上体を起こしたお姉さまが私の横にピッタリ寄り添うように座り直し、満足そうに微笑みます。
「それに直子は余計なヘアがまるで無いから、ソコが悪目立ちしないし」
 ブラウスを開いているので今は丸見えな私の肌色な土手に、ジーッと視線が注がれます。
「これで残るはブラウスだけね。こんなところで裸にされるのって、どんな気分?・・・」

 コンコン!
 ドッキーン!!
 お姉さまのイジワルなご質問が終わらないうちに、またしてもノックの音が。
 私は反射的に開いていたブラウスを掻き合わせ、両手で前立てをギュッと押さえたまま盛大にうつむきました。

「お待たせしましたぁ。お飲み物をお持ちしましたぁ」
 ふうわりしたお声の主は女性です。
 うつむいたまま横目で窺がうと、作務衣姿にひっつめ髪の可愛らしい女の子店員さんでした。

「ありがとう」
 お姉さまがグラスを受け取ってテーブルに置いています。
「あとこれ、おしぼりです。お帰りの前にお使いください。それと、これがお会計の伝票です。お帰りの際に出口脇のレジでお支払いください」
「はい。ありがとう」
 お姉さまと店員さんの会話を聞きながら、再び視線を下に落としました。

 やだっ!隠れてないっ・・・
 自分の視線の先に、掻き合わせたブラウスの白い裾。
 そのほんの少し先に、ピッタリ閉じた私の両腿の付け根の肌色が覗いていました。
 少しプックリふくらんだ丘の先端にはちょっぴりスジまで。

 まさか店員さんから、見えていないよね???
 あっ!て言うか、後ろは?
 ひょっとして私の生お尻、お座布団の上ではみ出しちゃっているかも!?
 店員さんから丸見えかも!?
 ブラウスの背中側って、普通、前よりちょっと丈が長いよね?だから隠れているよね?大丈夫よね!?
 ちょっとしたパニック状態。
 パニックがコーフンを呼び、コーフンがムラムラを呼び起こします。

「へー、あなた間宮さんっていうんだ?こういうお仕事大変でしょう?」
「あれ?なんで名前を・・・って、ああ、この名札でしたね。いえ。楽しいです。うちのお店は良いお客様ばかりですから」
「けっこうカップルとかが多いみたいね」
 お姉さまったら、のんきに店員さんとおしゃべりされています。
 ああん、早くその店員さんにお引取り願ってくださいませぇ、バレないうちにぃ・・・

「それではどうぞごゆっくり」
 世間話がやっと終わって、店員さんが立ち去ろうとするのを、
「お待ちなさい」
 お姉さまが呼び止めました。

「直子、あなたの前のそのアイスクリームのお皿も下げてもらいましょう。こっちにちょうだい」
 お姉さまが店員さんのほうを向いたままおっしゃいました。
「あ、はい・・・」
 お姉さまが取ってくれない以上、私から差し出すしかありません。
 覚悟を決めて前屈みの上体を少し正しました。
 左手でブラウスの胸元、ちょうどおっぱいの上辺りをギュッと押さえたまま、目の前のアイスクリームのお皿を右手で持って上体だけひねり、お姉さまのほうへ差し出しました。
 左肩越しに店員さんと目が合いました。

 お皿を受け取ったお姉さまは、それを店員さんの膝元に置きました。
「これもお願いね」
「はい。あのう、そちらのお客さま、大丈夫ですか?お顔が真っ赤ですよ?」
「ああ。この子はね、お酒が弱いのよ。飲むのは好きなクセにね。だからちょっと休んでいるの。ご心配ありがとう」
「そうでしたか。どうぞごゆっくり」
 
 それからお姉さまが私のほうへ向き直りました。
 至近距離で見つめあうふたり。

「襟が、曲がっていてよ」
 お姉さまの両手が私の襟元に伸び、ブラウスの襟を左右に押し広げるように引っ張られました。
 私は本能的に、胸元を抑えている左手にギューッと力を込めます。
「身だしなみは、いつもきちんとね。間宮様が見ていらっしゃるわよ」

 きょとんとした表情でその様子を見ていた店員さんは、ペコリとひとつお辞儀をすると首を少し右に傾けたまま、静かに格子戸を閉じました。

「どうやらあの子は、スールの小説は知らなかったようね。残念」
 店員さんが去ってから、お姉さまがそんなに残念そうでも無い感じでおっしゃいました。
「天然ぽい子だったけれど、あの子の位置からなら、直子のブラウスのボタンが全部はずれているのもわかったはずだし、何かヘンだって感づいたかしら?」
「帰るとき首をかしげていたから、今頃厨房で誰かに話しているかもね」
 
 ワイングラスに唇をつけて少し傾けた後、お姉さまはそんなことをおっしゃりながら、なぜだか新しい割り箸を一膳、パチンと割りました。
 もうお料理もおつまみも何も無いのに。

「さあこれで、あと20分くらいは誰もここには来ないわね。ゆっくり楽しみましょう」
 お姉さまの両手が再び私のブラウスに伸びてきました。
「ほら早くそれも脱いで。あたしの可愛い妹の、生まれたままの姿を見せて」
 お姉さまの手でブラウスが両肌脱ぎとなり、あれよという間に両袖からはずされました。
 私の素肌を隠しているのは黒いニーソックスだけの、ほぼスッポンポン。
 お姉さまがまた、私の横にピッタリ密着するようにからだを寄せてきました。

「うふふ。あたし、直子のこのおっぱい、大好きよ。アンダーがぽってり重そうで、ふしだらな感じ」
「直子のお顔からすると、もう少しこう、青い果実的なもの想像しちゃうけれど、実際は熟々、たわわ、って感じよね」
「それにこの乳首。すごい存在感。それに乳輪も派手めで。直子って、ぱっと見清楚そうなのに、脱いだらアンバランスなところがいいわ」
 お姉さまが右手に持った割り箸で、私の左乳首をつまんできました。
「ああんっ!」
「ほら!声は出さないのっ!」
 おっしゃりながらもお箸でキュッキュッとつまんできます。
「すごく硬い。コリコリ。軟骨みたい」
「んんっ・・・」

「えっちな声って意外と通るものなのよ?酔った男性とかとくにそういうのにはビンカンだから、直子がヘンな声出していると、なんだなんだ、って、個室の前に人だかりが出来ちゃうわよ?」
 今度は割り箸を下乳にあてがい、持ち上げたり下ろしたりして、たゆんたゆん揺らされます。
「あうっぅーっ・・・」
「それともそれがお望みなのかしら?おっぱい揺らされているところ、みんなに見てもらいたいの?」
「い、いえ、ちがいますぅ・・・」
 快感をこらえながら、小声で必死の弁明。
「そう。いい顔よ。あたし、直子がそうやって、気持ちいいのを一生懸命ガマンしている顔が大好き」
 お姉さまのお箸の先が胸の真ん中をツツツッと滑っておへその中へ。
「んぐぅっ・・・」

「座ったままだと直子の一番ステキな部分が暗くてよく見えないわね。立ちましょう」
「で、でも、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫よ。衝立は充分な高さがあるし、さっきも言ったけれどもう誰も来ないから」
「は、はい・・・」
 立ち上がるために恐る恐る右腿から上げると、内腿が擦れてヌルッと滑りました。
 もうこんなになっちゃってる・・・

 今更意味の無いことと知りつつも、右腕で胸をかばい左手で股間を隠して、その場に立ちました。
「あらあら、お店の座布団、汚しちゃったわね」
 お姉さまが小さく笑いながら、私のお尻が敷いていたお座布団を、クルッとひっくり返しました。
「そこじゃなくて、そっちの衝立の前に立って。それから、直子の両手は、そこじゃないと思うけどな」
 お姉さまがお隣のお部屋とを仕切る衝立の前を指差しながら、ご自分も立ち上がりました。
 私はお言いつけ通りに場所を移動し、両手を組んで後頭部に回して、両足を、休め、くらいまで広げました。

 今まで何人かのかたから命ぜられ、お姉さまと出逢ったときも当然のように要求された、私に一番お似合いの姿勢。
 腋の下から乳房、そして下半身までも一箇所として自分で覆い隠すことの出来ない、自分のからだのあらゆる部位の鑑賞と処遇を全面的にお相手に委ねる完全降伏状態、マゾの服従ポーズ。
 お姉さまの瞳が私の全身を舐め始めました。

 立ち上がると、周りから聞こえてくるお話し声や店員さんの応答、酔客独特の奇声や騒ぎ声が更にボリュームアップした気がしました。
 私ったら、こんなころで、こんな格好に・・・
 そしてそれを、お姉さまだけにじっくり視られている・・・
 背徳感みたいなアブノーマルさが興奮に油を注ぎ、いっそうムラムラを煽り立ててきます。
 そんなことを考えている私を知ってか知らずか、お姉さまがニッと笑って私の背後に目を遣りました。

「さっきトイレ行ったときチラッと見たら、お隣の個室は合コンみたいだったわ。直子と同じ年頃くらいの男女が5、6人、楽しそうにキャッキャウフフしていたわ」
 私が背にしている個室のことでしょう。
「そこだけじゃなくて、トイレの行き帰りに、サラリーマンの上司悪口大会とか学生さんのバカ騒ぎとか、絶え間なく聞こえていたわ」
「そんな中で全裸になっている、あ、正確には全裸じゃないわね。でもそのソックスは脱がなくていいわよ。裸にソックスだけっていうのも妙にいやらしいものね」
 お姉さまのお箸がまた、私の乳首をつまんできます。
「ぁぅっ、はぁはぁ・・・」
 私は必死に悦びを押し殺し、その分息遣いがどんどん荒くなってしまいます。

「今、このお店の中でそんな格好しているのって、間違い無く直子だけでしょうね。他のお客さんはみんな楽しく飲んでいるというのに」
「どう?このあいだの試着室と比べて、どっちが興奮する?」
 お箸が乳首をキュッ。
「ぁんっ。どっちも同じくらい、は、恥ずかしいです・・・」
「でもさ、少なくとも試着室なら、試着っていう、服を脱ぐための大義名分があるから、裸になっているのがもしもみつかっても、幾らか言い訳出来るわよね?」
「だけど、居酒屋で裸は、おかしいわ。だって脱ぐ理由がないもの」

「あ、いいこと思いついたわ。直子はあたしと飲みながら野球拳をして、負けちゃったの。負け続けて全裸。お酒の席でそういう遊び、することあるものね」
「言い訳出来るなら見られても大丈夫よね。呼び出しベル押して、店員さん呼んでみようか?」
 お箸がおっぱいの皮膚をツンツン突いてきます。
「ぁ、許してくださいぃ・・・そんなイジワル言わないで・・・」
 小さな声で途絶え途絶えに、お姉さまのご提案に異議を申し立てます。
「いいじゃない?さっきの可愛い店員さん、間宮さんだっけ?に、直子の裸、見てもらえるかもしれないのに。直子、そういうの好きなクセに」

 お姉さまのお箸が私のバストからだんだん下に降りてきました。
 それに伴って、お姉さまが私の足元で膝立ちになりました。
 お姉さまのすぐ目の前に私のアソコ。

「でもまあ今日は、あたしがじっくり直子を見せてもらわなくちゃね。スールになった記念の日なのだから」
 おっしゃいつつ、お箸で私の土手をつつきます。
「ううっ・・・」
 背中を這い上がってくる快感が口から出てしまうのを、必死にこらえます。
「そう。一生懸命がまんなさい。あたしはその顔が見たくて直子とおつきあいするのだから」
 お姉さまが私の顔を下から見上げて妖しく微笑みました。

 お姉さまのお箸が円を描くように、私の下腹部を撫ぜ回します。
「あたし、直子のココも大好きよ。色白でプックリしててプヨプヨの柏餅」
 お箸が徐々に両腿の付け根に近づいてきます。
「中身のアンコは、何味かしら?あらあら、おシルが滲み出てきちゃっているわね」
「あうっ!」
 愉しそうなお姉さまのお声と共に、プスリ、という感じで、2本のお箸の箸先が私のワレメにごく浅く、突き刺さりました。


ランデブー 6:42 04

2014年7月12日

ランデブー 6:42 02

「あっ、いえ、あの、えっと、はい・・・」
 
 不意を突かれてあわてた私は、持っていた梅酒ソーダのグラスをあやうく落としそうになってしまいました。
 目の前で絵美さまが薄く微笑んでいます。
 ついに本題です。
 落ち着いてお話しなくちゃ。
 梅酒ソーダを一口ゴクンと飲んで、姿勢を正しました。

 私は今日、絵美さまに私の恥ずかしい嗜好と性癖を、すべて包み隠さずお話しすることに決めていました。
 すべてを知っていただいた上で、絵美さまが私のパートナー、いいえ、ご主人様になっていただけるよう、お願いするつもりでした。

「いつも、というわけではないのですけれど・・・」
 すっごくドキドキしながら、私は話し始めました。
 
 子供の頃、SMの写真集を盗み見たことから始まって、トラウマのこと、やよい先生とのこと、しーちゃんのこと、シーナさまとのこと・・・

 絵美さまがとても聞き上手で、基本的には黙って聞いていてくださり、私の話が散らかりそうになったときだけ的確に誘導して、更に新たな話題を引き出してくださいました。

「へー。そのときはどんな感じだった?」
「通っている学校の門の前で全裸って、すごいわねー」
「その人、次から次へとよくそんな恥ずかしいこと、思いつくものね?」
「そんなに感じちゃったんだ?えっちな子ねー」
 
 興味津々のお顔で、じーっと私を見つめつつ真剣にお耳を傾けてくださる絵美さまに性的な興奮さえ感じながら私は、東京に来てからのはしたない独りアソビのことまで、ほとんど洗いざらい白状していました。

「ふーん。なるほどね。あなたはそういう女の子なんだ?」
 私の告白がひと段落すると、絵美さまがまっすぐに私の顔を見ながらおっしゃいました。
 涼しげなふたつの瞳が少し笑っています。
「・・・はい」
 私は小さくコクンとうなずきました。
 言わなくちゃ。
 ここでちゃんと言わなくちゃ。
 覚悟を決めて、絵美さまのふたつの瞳に視線を合わせました。

「それで・・・」
「うん?」
「それで、こんな私なのですけれど、ぜひこれからもずっと、私とおつきあいしていただけませんか?」
 絵美さまのお顔が一瞬、えっ?という表情になりました。
 それからゆっくりと、淡い微笑が広がっていきます。

「おつきあい?」
「はい。私、恋しちゃったみたいなんです。お姉さ、あ、いえ、絵美さまのことが大好きになっちゃったんです」
 戸惑いのような表情を浮かべた絵美さまが、ふっと目を伏せました。

 その後の沈黙は、私にはすっごく長く感じられました。
 どんなお答えが返ってくるのか・・・
 絵美さまに嫌われてしまっただろうか・・・
 やっぱりすでにおつきあいされているかたがいらっしゃるのだろうか・・・

「あたしはかまわないけれど、本当にいいの?」
 実際には5秒くらいの沈黙の後、絵美さまが、拍子抜けするようなお答えをくださいました。
 あまりに予想外すぎて、今度は私が戸惑う番。

「えっ?」
「だってあなた、あたしのこと何も知らないでしょ?」
「あ、それはそうですけれど・・・あ、誰かもう、おつきあいしているかたが・・・?」
「ううん。あたしもあなたと同じで、オトコには興味ないたちだし、かといって、同性の決まった相手もいない」
「それならぜひ、おつきあいしてください。私、なんでもやりますから」
 すがるように絵美さまを見ました。

「実を言うと、あたしもあなたのこと、このあいだのアレでとても気に入ったから、おつきあいするのはいいのだけれど・・・」
 気に入った、というお言葉に天にも昇る気分。
「だけどあたしはね、けっこうめんどくさいオンナよ?」
 絵美さまが自嘲気味につづけました。
「誰かとつきあってもあまり長続きしないのよ。わがままだし、気分屋で飽きっぽいし、嫉妬深いし、仕事忙しいし・・・」
 ここは押すしかない、と思った私は、思い切り恥ずかしい科白で攻め込みました。
「だいじょうぶです・・・どんな仕打ちをされても耐えられます。私、マゾですから」
 あはは、って笑った絵美さまが美味しそうに、グラスに少し残っていたワインを飲み干しました。

「なるほどね。それならあたしたち、つきあってみようか?」
 絵美さまがニッコリ笑って、注ぎ直したワイングラスを私のほうに差し出してきました。
「ほんとですか!」
 チーンッ!
 勢いよく差し出した私の梅酒ソーダのグラスとワイングラスが触れ合い、綺麗な高音が響きました。

「それにしても、あなたが百合草女史と知り合いだったなんて、世の中ってほんとに意外と狭いのね」
「あ、やよい先生、いえ、百合草先生を、ご存知でしたか?」
「ご存知も何も、お店によく遊びに行っているし、水野さんがあたしの高校の先輩なのよ」
「ああ、ミイコさまですね」
 水野美衣子さま、やよい先生のパートナーで、ご一緒に新宿でレズビアンバーをやっていらっしゃる女性です。
「そう。お店でシーナさんにもお会いしたことあるし」
「そうだったんですか?」
「まあ、こういう嗜好を持つと、同じ嗜好の人たちが、自然に顔見知りになってしまうのかもね」
 絵美さまが感慨深そうにおっしゃいました。

「それで今のあなたの話だと、百合草女史やシーナさんが、今までさんざんあなたのからだをおもちゃにしてきたのでしょ?」
「これからあなたとつきあう身としては、彼女たちになんだかジェラシーを感じちゃうわ」
 からかうような口調でしたが、なんだか申し訳ない気持ちになってしまいます。
「ご、ごめんなさい・・・」
「冗談よ。これからあなたは、あたしだけのものだものね?たくさん愉しいことをしましょう」
「はいっ!」

「と言ってもあたし、自分ではそんなにエスっぽいとも思っていないのよね」
「いえいえ。私を虐めるの、すっごくお上手でしたよ。ずいぶん慣れている感じで」
「高校のときに、あなたみたいな子がひとりいたのよ。人前で裸にされて悦んじゃうような子が」
「もちろんいわゆるイジメじゃないわよ?仲良しグループの中の悪ふざけの延長みたいな、他愛も無いじゃれあい。その子もやられて嬉しそうだったし」
「へー」
「服飾部だったのよ。洋服作って着せあったり、学校祭ではファッションショーしたり」
「そのお話、すっごく聞きたいです」
「詳しいことは今度ゆっくり聞かせてあげるわ。そのときに、その子を辱めることに快感を覚えるようになっちゃったみたいなのね」

「あたしはね、顔フェチなの。イキ顔フェチ」
「可愛い女の子がせつなげに顔を歪めているのを見るのが大好物なの」
「綺麗な子が苦痛に苛まれている顔とか、気持ち良すぎて涙目になっていたり」
「可愛ければ可愛いほどいいのはあたりまえよね。そういうのを見ているのが好きなの」
「だから虐めたり責めたりするのは、別にあたしの手でじゃなくてもぜんぜんよくて、誰かがしているのを傍で見ているだけでもよかったのだけれど・・・」
 絵美さまがそこでいったんお口をつぐみ、私を真正面からじーっと見つめてきました。
「あなたの場合は違ったの。あたしが自分の手で、その可愛い顔をどんどんどんどん歪ませてみたい、って心の底から思ったのよ」

 私の心臓は、嬉しさで飛び出しそうなほど。
 今すぐ絵美さまに抱きつきたい、と思いました。

「だから・・・」
 腰を浮かせかけた私を制するように、絵美さまのお言葉がつづきました。
「SMで言う、ご主人様と奴隷、みたいな関係はピンと来ないのよね。なんだか字面が生々しくて。それよりも、なんて言うか・・・」
 絵美さまが視線を落とし、ご自分の思考の中に沈まれました。

「そうだ!」
 お顔を上げた絵美さまの妖艶な微笑み。
「あなた、マンガとかアニメが好きだって言ったわよね?」
「はい」
「だったら、スール、って知ってる?」
「あ、はい。全部読んでます。絵美さまもお好きなのですか?」
「うん。あのシリーズは面白いわよね。甘酸っぱくて」

 その頃人気のあった、由緒正しいお嬢様学校が舞台の少女小説でアニメにもなった作品内の設定。
 スール、とはフランス語で、姉妹。
 学園生活を清く正しく美しく過ごすために、上級生が下級生と、姉妹、になって、姉が妹を導く関係。

「あたしたち、スールになりましょう」
「はい、喜んで」
「そうなるとあたしはあなたを、直子、って呼ぶことになるわね」
「はい。私は絵美さまを、お姉さま、とお呼びします」
 私はルンルン気分でお答えしました。
「実は私、絵美さまのお名前がまだ分からないときからずっと、心の中で、お姉さま、ってお呼びしていたんです」

 チーン!
 もう一度グラスを軽く合わせ、私とお姉さまはめでたくスールとなりました。
 でも、私とお姉さまとのスール関係は、清く正しく、とはいかないでしょうけれど。

「さて・・・と」

 お料理もあらかたいただいて、お話もひと段落。
 お姉さまが少し目を細め、イタズラっぽい目つきで私を見つめてきました。
 イジワルそうな笑みが唇の端を歪めています。

「直子はもうお料理はいい?食べたいものある?」
「いえ、だいじょうぶです。お腹一杯。ごちそうさまでした」
「そう。だったら少し食休みしましょうか」
 絵美さまが呼び出しベルを押して、駆けつけた店員さんにアイスティとデザートのアイスクリームを二人分頼みました。

「そろそろ8時半ね。お店もけっこう混んできているみたいね」
 確かに四方の仕切りの向こう側は、来たときよりもずいぶんガヤガヤしています。
「週末ですからね」
「あたしちょっと、おトイレに行ってくるわね」
 お姉さまが席を立ってしばらくしてからデザートとグラスが運ばれてきて、そのすぐ後にお姉さまが戻られました。

 お姉さまは、出入り口側のご自分の席に座ってから、私を呼びました。
「直子の顔、もっとよく見せて。あたしの隣にいらっしゃい」
 ご自分の右隣を指差しました。
「あたしたちがめでたくスールになった、記念の儀式をしましょう」
「はい」
 私は自分のグラスを持ち、お姉さまの右隣に腰を下ろしました。
 お姉さまの右手が私の顎を軽くつまみ、ふたり、至近距離で向き合いました。
 アルコールが少し回ったのか、お姉さまの目元がほんのりピンクに染まっていて艶かしい。
 キスしてくれるのかな?
 ドキドキしたまま目をつぶりました。

「本当に、虐めたくなるお顔だこと。ねえ、直子、裸を見せて」
 左耳に吹きかかる吐息にゾクっとしつつも、おっしゃられたお言葉の意味にビクンとからだが跳ねました。
「えっ!?今ここで、ですか?」
「もちろん今ここでよ。大丈夫。もう注文したお料理は全部出ているし、そこの呼び出しベルを押さない限りお店の人は来ないから」
「で、でも・・・」
「それに直子は、あたしにそういうことをまたされたくて、あたしに会いに来たのでしょう?恥ずかしい思いがしたいのでしょう?」
 お姉さまがニッと笑って、私のスカートを捲り上げました。
「あっ、いやんっ!」
「こら。大きな声は出さないの。まわりは酔っ払いのオトコばっかりよ?ヘンな声出したら襲われちゃうわよ?」
 お姉さまったら、その振る舞いはどこから見ても立派に、SMで言うところのご主人様です。

「あら、このパンツを穿いているということは、ブラもピンクのアレね?」
「はい・・・」
「それなら、あの日直子が言っていたこと、今すぐここで実行出来るじゃない?ほら、服を着たまま下着を取るって」
「そ、そうですね」
「だったらあたしがボトムは取ってあげるから、直子は自分でブラをはずしなさい。いつでもどこでもすぐ脱げる、っていう露出マゾなコンセプトのフロントホックストラップレスブラを」

 愉快そうなお姉さまのお声が左耳をくすぐり、座っている私の下半身に膝枕するように上体を傾けてきました。
 スカートの裾から潜り込んだ手があれよあれよと言う間に、腰で結んだパンティの紐をスルスルっと左右とも、解いてしまいました。
「少し腰を浮かせて」
 お言いつけ通りにすると、私のスカートの裾から手品のように、一片のピンク色の布地がお姉さまの右手につままれて現われました。

「ねえ直子?このパンツ、ここのところ、グッショリ濡れているわよ?」
 パンティのクロッチ部分が私の鼻先に突き出されました。
「きょうはまだ、濡れるようなことしていないのに、なんでこうなっているの?ねえ?」
「あん、それは・・・」
「ひょっとして、あたしと話すだけで感じちゃってたの?そんなにあたしが好き?」
「は、はい・・・」
「それならちゃんと言いつけも守らなきゃ。早くプラも取りなさい」

 ブラウスの上からフロントホックをはずすと、乳房がプルンと跳ねてブラが肌の上を滑り落ちました。
 これをどうやって取り出そうか?
 長袖だから袖からとはいかないし、ボタンをちょっとはずして首周りから・・・
 考えていたら、お姉さまの手が私のブラウスに伸び、ブラウスの裾がスカートのウエストからたくし上げられ、ついでにブラジャーもブラウスの裾から引っ張り出されました。

「これで直子はノーパンノーブラね。今の気分はどう?」
「恥ずかしいです・・・」
「嘘おっしゃい。気持ちいいクセに。お顔が蕩けちゃっているわよ?」
 からだ全体が上気して、粘膜がヌルヌルピクピクと蠢き始めていました。

「次はブラウスのボタンを全部はずしてみようか」
「えっ!本気ですか?」
「本気、って聞くのは失礼よね。あたしはさっき、直子の裸を見せて、って言ったじゃない?」
「裸って言うのは服を着ていない状態のことよ。あたしは直子の、たぶんもうツンツンに尖っている、あの日みたいな乳首を今すぐ見たいのよ」
 もう!イジワルなお姉さま・・・
「わ、わかりました」

 私がブラウスのボタンを上からはずし始めると同時に、お姉さまがテーブルの上の呼び出しベルを勢いよく押しました。


ランデブー 6:42 03

2014年7月6日

ランデブー 6:42 01

「あなたはあんなこと、しょっちゅうやっているの?」

 とある居酒屋さんの衝立で仕切られた小さな個室。
 私の対面に座っている絵美さまの唇が、そう問いかけてきました。

 あのランジェリーショップでの出来事から約ひと月後、桜の蕾もほころび始めた、3月がもう終わりそうな頃。
 私は、絵美さまと再会することが出来ました。

 もちろん、横浜から戻ったその日の夜、自宅から絵美さまにお電話しました。
 目を閉じればまぶたの裏にはっきりと浮かぶ、絵美さまの端正なお顔を思い出してドキドキしながら。
 ツーコールも鳴らないうちにつながりました。
「待っていたわ、電話」
 絵美さまは、私が名乗る前に、少し掠れ気味のハスキーなお声でそうおっしゃり、電話に出てくださいました。

「先日は、本当に失礼いたしました・・・」
 から始めて、緊張しつつ慎重に言葉を選びながら、もう一度お逢いしたい、という意味のことをなんとか伝えました。
 絵美さまは、つっかえつっかえな私の言葉にも気さくな感じで答えてくださり、ぜひ会おうということになりました。
 でも、絵美さまのお仕事のご都合や、私が卒業を控えた時期であったこともあり、ふたりのスケジュールが合う日は、ずいぶん先のことになってしまったのでした。

 絵美さまが待ち合わせに指定された場所は、意外なことに池袋でした。
 私は、当然またあの横浜のショップに伺うことになるのだろうと勝手に思い込んでいたので、思わず、えっ!?って聞き返してしまいました。

「あなたのおうちからは遠い?」
「いいえ。ぜんぜん逆です。私今、東池袋に住んでいるんです」
「あら、それならなおさら好都合じゃない?」
「あなたに会えるの、楽しみに待つことにするわ」
 電話を終えるとき、絵美さまは艶っぽいお声で、そうおっしゃってくださいました。

 ステキな絵美お姉さまにもう一度逢える・・・
 それからの毎日は、遠足の日を心待ちにしている子供みたいに、ルンルンワクワクな気分で過ごしました。
 絵美さまはもうすでに、私がどういう性癖を持つ人間なのかご存知です。
 だからお逢いしたらきっと、あのときみたいなえっちなアソビで、私を辱めてくれるはず・・・
 ルンルンとムラムラがごちゃ混ぜになったルラルラ気分。
 お約束の日を指折り数えながら私は、文字通り毎日、思い出しオナニーをくりかえす日々でした。

 ランジェリーショップでの出来事から日が経つにつれ、あの日のあれこれを客観的に考えることが出来るようになっていました。
 そして考えれば考えるほど、あの日、私がしでかした数々のはしたない行為は、どんなに言葉を繕ってみてもくつがえらない、あまりに異常でヘンタイな露出マゾそのものの痴態だったという事実と、それを行なったのが紛れもなく自分だった、という現実を確認することとなり、そのいてもたってもいられない恥ずかしさが、私を更にどんどん欲情させました。

 前の年の夏休み以降、やよい先生とシーナさまが、お仕事、プライベート共に一段とお忙しくなり、ほとんどお会い出来ない日々がつづいていました。
 そのあいだはずっとひとりアソビばかりだったので、誰かとリアルに会話しながら辱めを受けたのは、すごく久しぶりでした。
 そのせいもあってあの日の私は、自分でも信じられないくらい大胆になり、後先も考えられないほど発情していました。

 日曜日のお買い物客が大勢行き来しているファッションビルの、薄い壁で仕切られただけの試着室。
 そんな危うい場所で全裸になり、ほぼ初対面の絵美さまに視られ、虐められながら、声を押し殺して何度か絶頂を迎えた私。
 関係者しか入れないビルのスタジオに忍び込み、たくさんのいやらしいお道具を使って、性癖丸出しオナニーショーをご披露した私。

 現実にやってしまった、あまりにも破廉恥な行為の数々に今更ながら凄まじい羞恥を感じ、その恥ずかしさが、子供の頃から私のからだを蝕んでいる、自己制御不能な被虐心を強烈に疼かせました。
「あなたは正真正銘の露出マゾ。ヘンタイ性欲者なのよ、直子」
 自分で自分を蔑む心の声に支配された私の両手。
 からだをまさぐる10本の指は、いつまでも止まることがありませんでした。

 快感の余韻の中て少し気持ちが落ち着くと、今度は、絵美さまと再会出来る喜びが、みるみる心を満たしていきます。

 当日は何を着ていこうかな?
 あのお話もこのお話も聞いてもらおう。
 また手をつないでくれるかな?
 またキスしてくれるかな・・・

 自分にとって大きなイベントのはずな大学の卒業式当日も上の空、絵美さまのことばかりを考えていました。
 中でも大いに頭を悩ませたのが、当日どんな服装をしていくか、でした。

 本当に真剣に、すっごく迷いました。
 出会いのときは、駅ビルのおトイレでえっちめな下着に穿き替え、ファッションビルのおトイレでは、わざわざミニスカートをクロッチギリギリまで無理やり短かくしてからショップを訪れました。
 そんな服装が功を奏して、絵美さまもすんなり私の性癖に気づいてくれたような面があったような気もします。
 絵美さまは、そういう私を期待されているかもしれない。
 まだ街中では春物コートを着た女性も目立つ頃でしたから、いっそ裸コートで行っちゃおうか・・・
 確か絵美さま、あの日の別れ際、次回もあたしがびっくりするような格好でいらっしゃい、っておっしゃていたし・・・
 そんな大胆なことを考えてはドキドキ昂ぶるのですが、一方では、私の中に生まれたひとつの決意が、そのような浮わついた気持ちにブレーキをかけていました。

 当日、私は絵美さまに、ぜひ自分とおつきあいして欲しい、とお願いするつもりでした。
 私だけのパートナーになってください、と。
 私にとっては一大決心でした。

 思えば今まで私が好きになったり、実際に性的なお相手をしてくれた人たちは、そのときすでに私とは別の決まったお相手がいたり、私がぐずぐずしているうちに別のお相手をみつけてしまったりで、誰ともちゃんとした、と言うか、ステディなパートナー関係にはなれずじまいに、今まできていました。
 そういうのは終わりにしたい。
 もう一歩踏み込んだ、私と誰か、ふたりきりの親密な関係が欲しい、と切実に願っていました。
 
 そして何よりも私は、あの日の出来事を通して、絵美さまのこと以外考えられなくなっていました。

 私が絵美さまに、こんなにも恋焦がれてしまう最大の理由。
 ひと月近く、ずーっと絵美さまのことだけを考えて導き出された結論。
 それは、私のあられもない行為の一部始終を、まるでご自分の頭の中のビデオカメラで記録しているかのように、冷ややかに、かつ真剣に目撃されていた絵美さまの瞳でした。
 絵美さまが私をじっと見つめる、その視線・・・

 それは、やよい先生やシーナさまとのアソビでも感じられたものではあるのですが、絵美さまのそれは、もっともっと強力に私を惹きつけました。
 その視線に晒されているだけで、心の奥底からジンジン感じてしまう、絵美さまの瞳の光がちょっと変化しただけで性的興奮が異様に昂ぶってしまう、私にとって特別な視線でした。
 視姦、という言葉は、知識としては知っていましたが、あの日初めて身をもって体験した気がします。
 とにかく視ていて欲しい。
 一瞬でも視線が私からそれると、それだけで言いようも無い寂しさに襲われてしまう。
 そんな魔力を、絵美さまの視線は持っていました。

 哀れむような、呆れているような冷たい瞳の中に、チロチロとゆらめいていた絵美さまの官能。
 私が恥ずかしがれば恥ずかしがるほど大きくなっていく、絵美さまの愉悦の炎。
 私は、その炎をより燃え立たせたくて、絵美さまに悦んでいただきたくて、どんどん自らを恥辱の果てに追い込みたくなるのです。

 もう一度、あの視線で私のからだをつらぬいて欲しい。
 からだの隅々までを、あの視線で舐められたい、責められたい、嬲られたい・・・

 もちろん視線だけではなく、絵美さまのお声や振る舞いも、何もかもが私のマゾ心の琴線を激しく震わせてくださいました。
 絵美さまは私にとって、心から本当に理想的と思えるパートナー。
 いいえ、マゾな私がパートナーなんて、そんな生意気なことを言ってはいけません。
 主従関係、ご主人様と奴隷、飼い主とペット・・・
 絵美さまが悦ぶことであれば、なんでも、どんなに恥ずかしいことでも出来る。
 絵美さまが私を視ていてくださるなら、他には何もいらない。
 そのくらい私は、絵美さまに心を奪われていました。
 絵美さまにだけは嫌われたくない、と思いました。

 魅力的な絵美さまですから、すでに誰かとおつきあいしている可能性も大きいとは思いましたが、その場合は、その次のポジションでもいいから、私とも遊んで欲しい、と頼み込むつもりでした。
 そしていつか、私だけの絵美さまになれば・・・
 やよい先生にもシーナさまにも感じたことの無かった、私にしては珍しく、独占欲、までもが芽生えているみたい。

 そんなことをごちゃごちゃ考えているあいだも、私の粘膜は絵美さまの視線を思い出して疼き始めます。
 自分の指で疼きを鎮め、少し冷静になった頭でまた考えます。

 結局、臆病さゆえなのでしょう、嫌われたくない、という想いばかりがどんどん募っていきました。
 絵美さまは、社会人で教養もおありだろうし、普段はちゃんと常識をわきまえているかたのはず。
 今回お逢いするのはショップではなくて、人通り多い街中だし、あんまりだらしのない格好で行くと失望されちゃうかもしれない。
 それに、私がおつきあいをお願いする大事な日なのだし・・・
 そう考えるようになって、やっぱり普通に無難な格好で行くことに決めました。

 お約束の日は、金曜日でした。
 絵美さまは、お仕事を早めに終わらせて駆けつけてくださるということで、夕方6時40分の待ち合わせでした。

 当日は、4月間近にしては少し肌寒い曇り空。
 お出かけ前にウォークインクロゼットで、手持ちのお洋服をあれこれ引っ張り出し、長い時間悩みました。

 少し厚めな純白コットンのフリルブラウスにベージュのジャケットを羽織り、膝上丈の濃いブルーのボックスプリーツスカートに黒ニーソックス。
 悩んだワリには、普通の真面目な学生さん風になっちゃいました。。
 下着だけは、あの日絵美さまが選んでくださったピカピカピンクのストラップレスブラと紐パンにしました。

 すっかり薄暗くなった繁華街を抜け、灯りが煌々と灯るデパートのショーウインドウ前。
 待ち合わせ時間に少しだけ遅れて現われた絵美さまは、濃いグレーのパンツスーツ姿でした。
 仕立ての良いやわらかそうな生地に包まれたウエストからヒップのラインがすっごく綺麗。
 大きめに開けたシャツブラウスの襟元から覗く白い肌がセクシー。
 お仕事が出来そうなオトナの女性っていう感じ。
 ごあいさつも忘れてしばし見蕩れてしまうほどカッコイイお姿でした。

「こ、こんにちは。きょ、今日はわざわざおこしいただいて・・・」
 すっかりアガってしまい、ごにょごにょご挨拶する私に、ニッと笑いかけてくださる絵美さま。
 ズキューン!

 絵美さまは気さくに、元気にしてた?みたいなお言葉をかけてくれながら、ズンズンと大股で歩き始めました。
 さすがにいきなり手をつないではくれないようなので、半歩くらい後ろを追いかけます。
 案内してくださったのは、雑居ビルの上のほうにあるオシャレな居酒屋さんでした。
 予約してあったらしく、すぐに通された場所は四方を和風な格子戸のような衝立で仕切った完全個室でした。
 真ん中に正方形のテーブルがあって、足元が掘りごたつみたく凹んでいて床にお座布団を敷いて座るタイプ。
 絵美さまは、私に奥を勧め、ご自分は入り口格子戸に背を向け、私と差し向かいにお座りになりました。

 ほどなく店員さんが来て、絵美さまが慣れた感じでお料理をいくつか注文され、私は梅酒のソーダ割を注文しました。
 絵美さまは白ワイン。
 しばらくは、お食事をいただきながら、絵美さまのお仕事についてのお話になりました。

 絵美さまは、その服装のせいか、ショップでお逢いしたときとはまた少し違った印象で、なんて言うか、知的できりりとした感じで、まさしくクールビューティという言葉がぴったり。
 私は、お話をお聞きしながらも、絵美さまの綺麗なお姿にうっとり見蕩れていました。

 絵美さまは、横浜のランジェリーショップの店長さんが本職というわけではなく、普段は、アパレル系のデザイン事務所を経営されているのだそうです。
「新作が出たときとか、お客様のニーズを調べたいときなんかに、懇意にしているお店に頼んでマヌカンの真似事させてもらったりしているの。いわゆる市場調査」
「そんなにしょっちゅうではないけれど、新宿とか渋谷、銀座、いろいろなところでね」
「あの横浜のお店は、うちも多少出資しているから、アンテナショップみたいなものかな」
 絵美さまが、生ハムを器用にフォークで丸めながら説明してくださいました。

「それはつまり、会社の社長さん、ということですか?」
「そうね。らしくないのだけれど、行きがかりでそうなっちゃったのよ」
 絵美さまが照れくさそうに笑いました。
 そのお顔がとてもコケティッシュで、キュンとしてしまいます。
「少人数だけれど、けっこう手広くやっているの、アパレル全般ね」

 美味しいお料理をいただきつつ、梅酒ソーダをちびちび飲みながら絵美さまのお話に耳を傾けていると、ふいにデジャヴを感じました。
 こんな感じの場面、ずっと前に体験したことがある・・・
 すぐに思い出しました。
 中学生のとき、私のトラウマとなった事件のことでやよい先生にご相談したとき、連れて行かれた居酒屋さん。
 あのときの感じにそっくり。

 私が少しのあいだ、遡った時間に思いを馳せていたとき、不意にお言葉を投げかけられました。

「ところであなたはあんなこと、しょっちゅうやっているの?」


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2014年6月16日

コートを脱いで昼食を 32

「ねえシーナさん?よかったらレジ裏の部屋、使います?」
 ショーウインドウの向こう側からの視線がもたらす、羞恥の愉楽に浸りきっていた私の頭の片隅に、純さまのくぐもったお声が侵入してきました。
「だってナオコったら、さっきからずっとだらしなく口開けっぱのアヘ顔で、サカリっぱなしですよ?」
「こんなんじゃいったんイかせてあげないと、おさまりつかないんじゃないかと思って・・・」
 純さまの呆れたようなお声が、私の後方から聞こえていました。

「そうねえ。だけどこの状態の直子はもはやケモノなのよねえ。下手にどっかまさぐったら凄い声あげるわよ?」
「ドア閉じたって絶対ヨガリ声が店内に響いちゃうだろうから、今以上にお店に迷惑かけちゃうわ」
 シーナさまの、多分に軽蔑を含んだ、でもなんだか愉しそうなお声が応えました。
「シール貼っているあいだ中、お尻の穴がヒクヒク蠢いているのだもの、なんだかこっちのほうが恥ずかしくなっちゃいましたよ」
 桜子さまも呆れ果てているご様子。
 私の意識が徐々に現実に引き戻されました。

「だからまあ、直子の後始末はわたしが責任もってどうにかするわ」
 シーナさまのお声が聞こえたと同時に、私のお尻がパチンと勢いの良い音をたてました。
「ああーんっ!」
「ほら直子、いつまでわたしたちにいやらしいお尻突き出している気なの?まだ視られ足りない?」
「シールはもうとっくに終わっているわよ?さっさとこっち向きなさい」
「あ、はいぃ」
 前屈み気味だった上体を起こしつつ、シーナさま、そしてギャラリーのみなさまのほうへ恐る恐る向き直りました。
 途端に、私の顔面めがけて、みなさまの好奇と侮蔑に満ち溢れた視線の束が襲いかかってきました。

「ほんとに、見事にどヘンタイ淫乱マゾ丸出しの顔になっているわねえ。ねえ直子、あなた今、一触即発でしょ?」
 薄ら笑いを浮かべたシーナさまの瞳がキラキラ輝いています。
「はい・・・」
「イきたくてイきたくて仕方ないでしょう?」
「はい・・・」
「たとえば今、どこを弄って欲しい?」
「あ、えっと、どこでもいいですけれど・・・おっぱいとか、ち、乳首・・・」
 シーナさまの誘導ではしたない言葉をスラスラ口走ってしまう私。
 シーナさまの背後で見守るギャラリーのみなさまが気にはなるのですが、それでも、いやらしい言葉を自ら口にしたくてたまりません。

「おっぱいだけでいいの?」
「あ、あとはえっと、こ、ここ・・・」
 両手は頭の後ろなので、顎を引いて自分の下半身を覗き込む私。
「ここじゃわからないわね。ちゃんと呼び名で教えてくれなくちゃ」
「あの、アソコ・・・せ、性器・・・です」
「あら?今日はずいぶんとお上品なのね。いつもと違う呼び方じゃない?」
「あの、えっと、ク、クリトリス・・・」
「そこだけ?」
「いえ、あの、お、オマン・・・」
 口に出しかけて、ギャラリーのみなさまを上目遣いで見た途端、下半身が電流に貫かれました。

「え?聞こえなかったわ、何?」
「だからあの・・・オマンコ、オマンコ全体を弄って欲しいんです!」
 ハッキリクッキリ言葉にした私。
 うわっ!てギャラリーのどなたかが呆れたお声をあげました。
 フフン、と満足気に笑われたシーナさまがつづけます。

「だけどね、純ちゃんのお店もいつまでも直子のヘンタイアソビにつきあっているワケにはいかないのよ?これから夕方はかきいれどきだし」
「だからそろそろわたしたちはおいとましましょう」
「でもその前に、直子は自分のしたことの後始末をしなければいけないわ」
 そこでシーナさまは一呼吸置き、ニッて笑いました。

「シャツを脱ぎなさい」
「え?」
「シャツ脱いで素っ裸になって、床にひざまずいて自分のいやらしいおツユで汚したお店の床を綺麗に拭き取りなさい。さあ早く!」
「は、はいっ!」
 語気の荒くなったシーナさまのご命令口調に、あわててシャツの裾を捲り上げ、Tシャツを脱ぎました。
 とうとうお店で全裸です。
 すぐに床にひざまずき、這いつくばってお尻を突き上げ、自分が立っていた足元の恥ずかしい水溜りを、たたんだシャツで丁寧に拭き始めました。
 
 小さなTシャツ全体がぐっしょりになるほどの量でした。
 そして、自分では嗅ぎ慣れている臭い。
 それがギャラリーのみなさまにまで届いていることを思うと、今更ながらの強烈な恥ずかしさ、みじめさ。
 純さまがコンビニ袋をくれたので、それにぐっしょりTシャツを入れると、横からシーナさまの手が伸びて奪われました。
「これは直子のバッグに入れておくわ。後で自分で洗って、もちろんまた着ること。ものは大切に、ね?」

「立ち上がったら、こちらを向きなさい」
 お言いつけ通り立ち上がり、みなさまと対面します。
 両足は休め、両手は自然と頭の後ろへ。
 さっきと今で違うのは、私が正真正銘の全裸なところ。

「これからわたしは純ちゃんとお会計してくるから、戻ってくるまでのあいだ、お客様に桜子さんのスキンアート作品の出来栄えを、近くでじっくり見ていただきなさい」
「あ、その前にまず、今まで見守っていただいたお礼をみなさんに言わなくてはね。そのおかげで直子がこんなに気持ち良くなれたのだから」
 シーナさまが細目で私を睨みつつ、顎でうながします。
「ほら、今日は、見てくださってありがとうございました、でしょ?」
「あ、はい、み、みなさま、今日は、見てくださいまして、本当にありがとうございました」
 マゾの服従ポーズのまま上体を前傾させ、ペコリと頭を下げました。
 剥き出しのおっぱいがプルンと揺れます。

「何を見てもらったのよ?」
「・・・わ、私の裸です・・・」
「ただの裸じゃないでしょう?」
「あ、えっと、いやらしいマゾ女の直子のからだです・・・」
「からだって、具体的にどことどこよ?直子のどこを見てもらったから嬉しかったのよ?」
「あ、っと・・・」
「ほら、よく考えて、わたしが満足できるように、正直なご挨拶をなさい!もう一度最初からやり直し!」
 シーナさまの苛立ったようなお声が、私のマゾ性をグングン煽ってくれます。

「み、みなさま、今日は、私・・・な、直子の、ヘンタイマゾ女の直子のいやらしい裸を・・・あの、つ、つまり、おっぱいやち、乳首・・・尖った乳首や、お、オマンコ、いやらしく濡らしたオマンコ、の穴と充血したクリトリスと、あとえっと、汚いお尻の穴も、見てくださって、本当に、あ、ありがとうございました・・・」
 
 理性のストッパーがはずれ、恥辱の洪水に溺れている私の唇からは、はしたなくえげつない言葉が次から次へとスラスラ湧き出ていました。
「私は、直子は、みなさまに恥ずかしい姿を視られて、虐められて辱められてえっちに興奮してしまう、いやらしいヘンタイのどマゾ女なんです・・・今日は、みなさまのおかげで、とても気持ち良くさせていただいて、本当にありがとうございました」
「ま、また機会がございましたら、そのときも存分に虐めてやってください・・・お願いいたします。ありがとうございました・・・」
 そこまで言ったとき、懲りもせず左内腿を愛液がドロリと滑り落ちていきました。

「あーあ、まーた床汚して!もう際限ないわね!」
 シーナさまが呆れたお声でコンビニ袋を投げつけてきました。
「拭いたらまたその姿勢に戻って、スキンアート作品の見本になること!」
「みなさんも遠慮せずに、近くでご覧になってくださいね。このお店の桜子さんの腕前は一流アーティスト並みだから」
「でも、あんまり近づくといやらしい臭いでクラクラしちゃうかもね。直子への質問もご自由に。直子はちゃんと正直に答えること」
「それに、ちょっとなら作品にさわってもいいわよ。ペイントは完全に定着しているらしいから。直子のいやらしい汗でも滲んでいないしね」
「でも直子は絶対ヘンな声をあげないこと。がまんするのよ。この後すぐ、わたしがいい所に連れて行って、存分に喘がせてあげるから」
 笑い混じりなシーナさまが言い捨てて、純さまと一緒にレジのほうへ消えました。
「ワタシもトイレ行ってくる」
 桜子さまが後を追いました。

 全裸で無防備に立ち尽くす私の前に残ったのは、今日初めて出会ったかたたちだけになっていました。
 試着のお客様、そのあといらっしゃったおふたかた、そのまたあと更に4名のお客様が見物に加われたようでした。
 シルヴィアさまとエレナさまは、残念ながらいつの間にか帰られてしまったようですが、それでも合計7名の初対面なかたたちの視線が私の裸身に注がれていました。
 全員、私とあまり年齢に開きの無さそうな学生さん風な女性ばかり。
 お名前も素性も知らない同年代の女の子たちの遠慮無い視線が、私の素肌を嘗め回していました。
 みなさまは先ほどより近い位置、桜子さまの作業デスクの脇、まで近づいてきて、裸の私を半円形に取り囲んでいました。

「本当にこういう趣味の人いるんだねー」
「露出狂、って言うんでしょ?」
「さっき、通行人もけっこうこっち、見てたよね?わたしのほうがドキドキしちゃった」
「乳首が飛び出てたの、気づいたのかしら?」
「ひとり、立ち止まって覗き込むようにガン見してたおにーちゃんがいたね」
「あれ?女の子じゃなかった?」
「ガイジンさんが笑いながらウインドウに近づいてったら、ササって逃げちゃったけど」
 みなさま、私に直接は話しかけずにヒソヒソ、好奇心丸出しのおしゃべりです。

「スキンアートって、意外とオシャレなもんなんだね」
「うん。けっこういい感じだよね」
「でもアタシ、こんなとこにしてもらう勇気ないわー」
「それって別に勇気じゃなくね?」
「やだ!よく見たらおっぱいにマゾヒストって描いてある!」
 私は曖昧な微笑を浮かべつつ、みなさまのおしゃべりを黙って聞いています。
 それなりに着飾っている同年代女子の中に、たったひとり全裸でいる屈辱を全身で感じながら。

「ねえあなた、あなた学生?ニート?OLさん?」
 不意に、それまで好奇心おしゃべりに加わっていなかった、あの試着のお客様が私に直接話しかけてきました。
 この中では一番最初から、私がくりひろげる痴態を目の当たりにしてきた彼女。
 私の真正面に立って、私をまっすぐ見つめて聞いてきました。

「あ、はい。一応大学生です」
「へー。それならわたしと年変わらないんだ。まさかこの近くのガッコ?」
「いえ、違います・・・」
「こんなことすると気持ちいいんだ?人前で裸になるのが」
「は、はい・・・あの・・・ごめんなさい・・・」
 彼女のお言葉には、明確な侮蔑が感じられました。
 私のような女に対する嘲笑と嫌悪みたいなものを、まったく隠そうともしない冷たい口調。
 今の私には、ゾクゾクしちゃう、心地よい罵倒。

「ふーん。さっきいろいろ命令していたお姉さんがあなたのご主人様なんだ?」
「はい・・・」
「でもさ、こういうのって普通、男とやるものでしょ?」
 桜子さまと同じ疑問をお持ちのよう。
「私は男性はダメなんです。同性じゃないと・・・」
「レズってこと?・・・」
「・・・はい」
「そうなんだ。じゃあ、あのご主人様は恋人でもあるの?」
「まさか・・・恋人だなんて・・・」
 自分が答えた言葉に、なぜだか胸がキュンと疼きました。

「同性に裸見られて興奮するんだ?」
「はい・・・あと、虐めらたり辱められたり・・・」
「ふーん。それなら今、こうして同性のわたしたちに見られているこの状況って、あなたにとっては天国みたいなものなんだ?」
「・・・はい、そうですね・・・」
 試着のお客様が代表インタビュアーみたいになって、その一問一答を他のみなさまが見守る形になっていました。

「そんな性癖だとあなた、クアハウスとかサウナの女湯、興奮して入れないんじゃない?」
 みなさまがドットと沸きます。
「そ、それは、あらかじめの心構えが違いますし、みなさんも裸ですから・・・」
「ああ、なるほど。こういうありえない場所で自分だけ裸になるのがいいのね?」
「・・・はい」
「はい、だってー!」
 再び沸くギャラリーのみなさま。

「あなたみたいな人を本当の、マゾ、っていうのね。わたし今まで、ドMだとかマゾいよねー、なんて言葉をなんとなく超テキトーに使っていたけれど、今日初めてわかった気がするわ」
 試着のお客様が、独り言みたいに、心底感心したご様子でつぶやきました。
 それから再び、私の顔をキッと睨みつけ、興奮気味につづけました。

「わたし、今日あなたのしていること見て、すっごく、心の底から、虐めてみたいーって思ったのよ。あなた見て、わたしの中のSッ気が目覚めちゃった感じ」
「あなたの顔、しっかり憶えたから、今度どこかで会えたら、そのときはわたしにつきあってよ?ご主人様には内緒で」
 彼女の冷たい瞳が、まっすぐに私を射抜いていました。
「は、はい・・・喜んで・・・」
 彼女の迫力に気圧された私は、従順にうなずきました。
「そう。ありがとう。嬉しいわ。あと、最後にひとつお願いしていいかしら?・・・」
「はい?」

 そのとき、シーナさまと純さま、桜子さまがお揃いで戻っていらっしゃいました。
「あら、盛り上がっているみたいね。直子、ちゃんとみなさんに見てもらった?」
「あ、はい・・・」
 シーナさまは私のコートとバッグを手にされていました。
「それじゃあわたしたちは失礼させていただくわ。直子、そのままコートだけ羽織りなさい」
「あ、はい」
 シーナさまが手渡してくれたコートに、全裸のまま、まず片手を通しました。
 コート着ちゃうの、ちょっと名残惜しい・・・

「みなさんも、お騒がせしちゃったわね。また、このお店でこの子のショーをするかもしれないから、ご縁があったら、そのときはまたよろしくね」
「純ちゃんも桜子さんもありがとね。また近いうち寄らせていただくわ」
「いえいえ、シーナさん、今日はたくさんのお買い上げ、ありがとうございました」
 純さまがおどけた感じでお辞儀をして、私にもニコッと笑いかけてくださいました。

「ほら、コート着たらとっとと行くわよ。ボタンなんて適当でいいから、どうせすぐ脱ぐんだし」
 シーナさまが私の右手を取り、お店のドアのほうへと引っ張っていきます。
 そのお顔は完全なドエス。
 つぶらな瞳が妖しく輝き、小さなからだ全体の温度が数度、上がっているような感じ。
 やる気マンマン、テンションマックス。

 ちょうどあのとき、アンジェラさまのワックス脱毛エステを受けての帰り道、のシーナさまも、こんな感じでした。
 自宅マンションに近づいていたシーナさま運転の車は、スーッとその脇を通り越し、そのまま少し走りつづけて池袋のラブホテルの地下駐車場に、当然のように滑り込んでいました。

「直子はさんざんアンジーたちにイカせてもらったからいいでしょうけれど、わたしは直子のイキっぷり見てて、羨まし過ぎて、蘭子さんの超絶マッサの気持ち良さまで吹っ飛んじゃったわよ」
「これはみんな直子のせいなのだから、直子はわたしに奉仕する義務があるの。わたしがもういいって言うまで、わたしを気持ち良くさせる義務がね」
 その日、ふたりとも疲れ果て、裸で抱き合ったまま寝入ってしまうまであれこれしたので、結局マンションのお部屋に戻ったのは明け方でした。

 あのときと同じ、いいえ、それ以上のドエスオーラを発しているシーナさまは、お店の入口まで見送ってくれたみなさまが呆気に取られるほどの勢いで、私の手を引いてお外に飛び出しました。

「まったくあなたって子は、淫乱にもほどがあるわ」
「きっと今頃、お店ではあなたの話題でもちきりよ。本物のどヘンタイだって」
「ウイッグ着けて大正解だったわね。予想外にいろんな人に見られちゃった。直子は嬉しかったでしょうけれど」
「シルヴィアたちは今日撮った写真、絶対お店でお客に見せちゃうわね。直子の裸」
「まあ当分この界隈には近づかないほうがいいわね。ほとぼり冷めるまで」
「だから今日はSMホテルに行くからね。あなたを虐め倒したくてたまらないわ。覚悟なさい」
「もちろんわたしにもきちんと奉仕するのよ。わたしが満足するまでね」
 
 そんなことをブツブツおっしゃりながら、人波を切り開くように、夕暮れ近い雑踏をズンズン進むシーナさま。
 右手を引かれた私は、一番下を留め忘れたコートの裾がヒラヒラ大きく翻り、無毛の下半身にお外の風を直に感じていました。

 交差点の向こう側にお城のような外観の派手な建物が見えました。
 あそこかな?
 シーナさまがその入口を睨むように見つめています。
 発情されているシーナさま、大好きです。

 ああ、やっとイかせてもらえそう。
 そしてもちろん、今日も長い夜になるはずです。





2014年5月25日

コートを脱いで昼食を 31

 座っている桜子さまのお顔と私の股間との距離は50センチくらい。
 桜子さまは、さらに前のめりになって私の土手にお顔を近づけてきました。
「場所が場所なのに肌ツルツルなのねえ。毛穴のブツブツ、ほとんど無いじゃない?」
 桜子さまの鼻先に私のスジの割れ始めがあります。
 その状態で桜子さまがお話しされると、吐息が直に敏感な部分にかかります。
 シャツまくり上げのほぼ全裸な姿で桜子さまの後頭部を見下ろしながら、私のムラムラが下半身にグングン集まってきました。

「このへんに貼るからね」
「ぁぁんっ!」
 不意に土手麓のキワドイ場所を指でツツーッと撫ぜられ、そのはがゆい感触に私の両膝がガクンと崩れました。
「動かないでっ!」
 お顔を離した桜子さまがピシャリ。

「すぐに終わるから、ガマンしててよねっ!動かれたら失敗しちゃうじゃない?」
 デスクに向いてなにやら準備しながらの不機嫌そうなお声。
 でも、こちらに振り向いた桜子さまは、ニンマリ笑っていました。
「さっきナオがガクンとなったときにさ、スジがぱくって割れて中のピンクの具が丸見えだっわよ?濡れてヌメヌメ光ってて、ほんとにいやらしかった」
 ギャラリーのみなさまに呆れたようなクスクス笑いが広がりました。

「始めるからね」
 アーティストのそれに戻った桜子さまのお顔が再び、私の股間に近づいてきます。
「んぅぅ」
 濡れティッシュのようなもので下腹部右側の内腿近くを撫ぜられました。
 私は唇を真一文字に結び、こそばゆい愛撫で折れそうになる両膝を踏ん張って必死に耐えます。
「そんなに力入れてたら皮膚まで突っ張って、シールが歪んじゃうわよ?リラックスリラックス」
 生真面目な桜子さまのお声。
「は、はいっ・・」
 でも、濡れティッシュの水気にはアルコールのような成分が含まれているらしく、撫ぜられたところがスースーし始めて、もどかしい快感に拍車を掛けてくるんです。
 どんどんどんどんヘンな気分になってきて、もっと内側、もっと内側までさわってください、って、頭の中で叫んでいました。

 濡れティッシュで拭かれた部分に台紙ごとシールがあてがわれ、台紙の上からスースーする液体がさらに塗られました。
 液体を伸ばすために私の皮膚を撫ぜる桜子さまの指は、おっぱいのときとは違ってスムースではなく、なんて言うか、無駄に指先に力が入っている感じでした。
 その部分がへこむほどの力で、皮膚が外へ外へと引っ張られます。
 
 ワザとだと思いました。
 内腿すぐそばの皮膚を外向きに引っ張られれば、中央の亀裂部分の唇までつられて引っ張られ、お口が開いてしまいます。
 上からでは桜子さまの頭に遮られて見えませんが、私のアソコの唇が小さくパクパクしているのを感じていました。
 あぁんっ、桜子さまが私の中までじっくり視ているうぅ・・・
 恥ずかしさと嬉しさがごちゃまぜの、すっごく甘酸っぱい気分。

 だけどそれもすぐに終わり、ガーゼみたいなものでその上をポンポンと叩いてから、桜子さまのお顔が離れました。
 台紙がスルッと剥がされると、4センチ四方くらいの鮮やかな青色模様の綺麗な蝶々が現われました。
「はい!一丁上がり!」
 桜子さまの大きなお声が響いて、今まで桜子さまの頭で隠れていた私のソコに、ギャラリーのみなさまの視線が一斉に注がれるのを感じました。

「ワタシ、なんだか無性にチーズケーキ、食べたくなっちゃった。それもすっごくコッテリしたやつ」
 クルッと後ろを振り向いて、冗談っぽい口調でおっしゃった桜子さまのお言葉に、ギャラリーのみなさまがドッと湧きました。
「そんなに間近ならそれはそうでしょうねー。ここまでだってけっこう匂っているもの・・・」
 お気の毒に、とでもつづきそうな同情まじりのシーナさまの合の手に、私の全身がカッと火照りました。
 私の発情した性器の臭いが、このお店中に漂っているんだ・・・
 奥がキュンキュン、性懲りも無く蠢きます。

「でもやっぱりこれだけだとなんか物足りないなあ・・・」
 再び私の股間に向き直った桜子さまが、ソコを凝視してきます。
「やっぱり少し手を加えたいな・・・そうだ、鱗粉を散らしてみよっか。そうすれば蝶々にもっと躍動感が出るはず」
「ナオ、まだ動かないでね、もう少しだけ。それとちょっと反り気味になって、蝶々の部分をもっとこっちに近づけてくれる?」
 細いブラシを手にした桜子さまが、真剣なまなざしに戻っておっしゃいました。

「あ、は、はぃ・・・」
 私は、クラクラしちゃう甘美な疼きを感じながら、ご指示通り素直に、と言うよりむしろ悦んで、胸を張るように背中を反らしました。
 まるでギャラリーのみなさまに、自ら露出させているおっぱいを、さらにのけぞって見せつけるかのように。
 背中の弓なりに比例して腰がグイッと前に出て、桜子さまの眼前すぐにまでアソコを突き出す格好です。
 私の股間にお顔を埋めるようにして、桜子さまのブラシによるチロチロ愛撫が始まりました。

 この時点で、もはや私の中に理性や常識は、まったく残っていませんでした。
 この至福の時間がずーっとつづいて欲しい・・・
 そんなふうに思っていました。
 
 恥丘を思い切り前に突き出して桜子さまのブラシの愛撫を感じながら、私を取り囲んでいるみなさまのお顔を順番に盗み見ました。
 シーナさまのニヤニヤ笑い、純さまの呆れたような苦笑い、試着のお客様の軽蔑しきったまなざし、新しいギャラリーさまたちの好奇に爛々と輝くお顔・・・
 いつの間にかシルヴィアさまとエレナさまも輪に加わっていました。
 おふたかたともさっきよりももっと肌も露でキワドイ原色のドレス姿で、私に笑いかけていました。
 レジ側のハンガーラックのほうには、さらに新しいお客様が数人増えて、こちらを視ているみたいでした。

 みなさまからの視線のシャワーを浴びて、私のからだ全体いたるところが、ビクンビクンと淫らに反応していました。
 普通の女の子なら、絶対人前で外気に曝け出すようなことの無いはずな部分を、見せびらかすようにみなさまに晒している私。
 肌に突き刺さってくるすべての視線が、私のからだを容赦なく値踏みして嘲弄と共に陵辱してきます。
 そんな陵辱を例えようも無いほど心地よく感じている私は、もっともっと、さらなる恥辱をも望んでいました。

 今の私は、ここにいらっしゃるどなたの、どんなご命令にも、従順に従うことでしょう。
 脚をもっと開けと言われれば、思い切り大きく開きます。
 四つん這いになれと言われれば、即座に額突きます。
 そのままお店の外に出ろと言われたとしても、素直に歩き出すことでしょう。
 鞭でも洗濯バサミでもローソクでも、お浣腸だって喜んでいただきます。
 
 だから、その代わりに、私のこの、どうしようもないくらいに疼いているムラムラを解消して欲しい。
 昂ぶりきって今にも爆ぜそうな欲情を開放させてください。
 もっと虐めて、もっと辱めて、もっといたぶって。
 そのためなら何だってしますから。
 身も心も、私のすべてがマゾヒズム一色に染まっていました。

「うん、だいぶ良くなったわ!」
 爆発寸前の昂ぶりは、桜子さまの一言で現実に戻されました。
「ほら、こんな感じよ」
 桜子さまがまあるい手鏡をかざして、私のアソコ周辺を映してくださいました。
 
 青い蝶々は、私の割れ始め3センチくらい右側で、やや左斜め上に向いて綺麗な羽を広げていました。
 私の左おっぱいに描かれた山百合へと、キラキラした鱗粉を撒き散らして飛び立ったところ、といった感じの構図でした。
 
 下からかざされた手鏡には、私の内腿奥のほうまでもが映っていて、アソコ周辺が粘性の液体でヌメヌメ濡れそぼっているのが丸分かりでした。
 両内腿には下へ向かって、カタツムリさんが這ったような跡が幾筋も。
 私に向けて鏡をかざす桜子さまの嬉しそうなお顔が、ほら、ナオはこんなにオマンコ周辺をビチャビチャに濡らしたはしたないヘンタイ女なんだよ、っておっしゃっているように見えて、たちまち昂ぶりが戻ってきました。

「じゃあ最後にお尻ね。今度は背中向けてお尻を突き出しなさい」
 桜子さまのご命令。
 私は、もうすっかりその気でした。
 そのご命令をワクワク待っていました。
 もっとたくさんの人に視てもらいたい、見せたい。
 今の私のこんな恥ずかしい姿、こんな昼間にこんなお店でひとり裸になっているヘンタイな私の姿を、通りすがりの見知らぬ人たちにも気づいて欲しい、驚いて欲しい、笑って欲しい、蔑んで欲しい。
 もうどうなったってかまわない・・・

「ごめんナオコ!ちょっと待ってくれる?」
 桜子さまのご命令に頷いて回れ右をしようとしたとき、純さまからあわてたようなお声がかかりました。

「盛り上がっているところに水を差すみたいで申し訳ないのだけれど・・・」
 純さまが桜子さまの隣に歩み出て、主にシーナさまに向けて語りかけました。
「こんなオッパイ丸出しの子を、オッパイ丸出しのまんま外からバッチリ見えるように放置するのは、やっぱちょっとマズイかなーって、お店的に・・・」
「いえ、個人的には面白いと思うんですけど、ほぼマッパでしょ?外を誰が通るかわからないし・・・」
 今までに無く歯切れの悪い純さま。

「そうね。確かにちょっと、リスキーかもしれないわね」
 真面目なお顔でシーナさまが引き継ぎました。
「万が一ケーサツやら商店街の自治会みたいな人に見られたら、純ちゃんのお店に迷惑かかっちゃうものね」
「それに、こんな直子のしょうもないヘンタイ性癖のために、純ちゃんのお店にヘンな噂がたったり、営業停止とかなっちゃったら理不尽だし、割に合わないわよね」
 シーナさまが私を睨みつけるように見ながら、冷ややかにおっしゃいました。

「でもほら、直子はわかっていないようよ。視てもらう気マンマンのマゾ顔全開だもの」
 薄ら笑いを浮かべて私を見ながらシーナさまがつづけます。
「まったく、本当にはしたない子。わたしのほうが恥ずかしいわよ」
 ギャラリーのみなさまのクスクス笑いがさざ波みたいに広がりました。
 確かに私は、純さまのご提案を聞いて、がっかりした顔になっていたと思います。
 シーナさまには、全部お見通し。

「それならこうしましょう」
 シーナさまがギャラリーのみなさまに説明するみたく、少し大きなお声でおっしゃいました。
「桜子さん、直子の胸のペイントはもう乾いているわよね?」
「ええ。普通、描いて5分もすれば完全に乾いていますよ。だからナオは、ずっとそうやってシャツをたくし上げている必要なんて、ぜんぜん無かったんです、本当は」
 嘲るような桜子さまの口調。
「でもきっと、ナオはそうしていたいんだろうな、って思って何も言わなかったんです」
 再びギャラリーのみなさまの嘲笑のさざ波。

「おっけー。それじゃあ直子、そのシャツ下ろしていいわよ、残念でしょうけれど」
 シーナさまも冷ややかな嘲り口調。
「とりあえずそのはしたないおっぱいはしまいましょう。あ、でも直子が自分で空けたっていうシャツの穴から、そのいやらーしく尖りきっている乳首は露出させていいわよ」
「乳首だけなら、ショーウインドウ越しならたいして目立たないでしょう?その格好ならお店のリスクも減るし、直子の見せたがり願望も少しは満たされるんじゃない?どう?純ちゃん」
「そうですね。そのくらいなら大丈夫そう。それでいきましょう」
 純さまも同意されました。

 ここにいらっしゃるギャラリーのみなさまのうち、お店にお買い物にいらした見ず知らずのお客様のかたたち全員は、すでにおっぱい全体をはだけてほぼ全裸姿の私しか見ていません。
 このお店に来たときの、自ら破廉恥な細工を施した恥ずかしすぎる着衣、を、ここでみなさまに暴露されることになってしまいました。

「ほら、そうと決まったら早くシャツを下ろしなさい」
「は、はい・・・」
 私は、自らたくし上げていたTシャツの裾をズルズルと下ろし始めました。

「この子はね、東池袋の自宅からこんな格好して、その姿を誰かに見せたくってここまで来たのよ?」
「ピチピチTシャツの上にコート一枚だけ羽織って、下半身は裸。お股にはタンポン突っ込んでね。どうしようもないヘンタイでしょう?」
「全部自分で考えた、ヘンタイアッピールのためのコーディネートなのよ」
 ギャラリーのみなさまにシーナさまがわざわざご説明されるお言葉を聞きながら、ピチピチTシャツをゆっくりウエストまで下ろしました。
 とくに調節するまでも無く、大きな乳首は布地に擦れながらも自分で穴を探り当て、Tシャツ姿に戻ったときにも、2つの乳首だけは相変わらず外気に晒されていました。

「ね?いやらしい女でしょ?自分からすすんでシャツに穴空けたのよ?乳首穴」
 シーナさまはご丁寧にも、シルヴィアさまとエレナさまにも同じ内容を外国語で説明されているようです。
 チビT姿に戻った私も、今更ながらにそのいやらしさを実感していました。
 自分で考えたことながら、やっぱりこれってある意味、全裸より恥ずかしい・・・

「なにボーッとしてるの?桜子先生にお尻向けるのよ、お尻!」
 傍らに来たシーナさまが私の左の尻たぶを右手のひらでピシャリとはたきました。
 シーナさまもかなりコーフンされているみたい。
 完全にエスの目になっています。

「あうっ!はい!」
 あわてて回れ右すると、眼前に広がるお外の景色。
 数メートル先に素通しの大きなガラス。
 街路樹、標識、向かいの雑居ビルの入口。
 その向こうを自動車がゆっくり横切って行きました。
 ああん、見られる、見られちゃう!

「もうちょっとこっちにお尻突き出してよ」
 桜子さまのお声に上体を少し屈めて下腹部を引きます。
 両足は、休め、で40センチくらいに開いていますから、お尻を突き出すと間違いなく肛門まで見えちゃうことでしょう。
 両手は、誰にご命令されたのでもなく自然に、頭の後ろで組んでいました。

 お尻にシールを貼られているあいだ、私は異空間に旅立っていました。
 目の前に広がる街の日常の風景、通り過ぎる車と人々。
 私の背後でざわめくギャラリーのみなさま、時折鳴る来店を告げるチャイム。
 それらを皮膚で感じながら、頭の中には、ずっと同じ言葉が渦巻いていました。

 見て、見て、見て、見て、見て・・・
 直子のいやらしく歪んだ顔を、尖った乳首を、濡れた性器を、広げたアヌスを、膨れたクリトリスを・・・
 見て、見て、見て、見てください・・・
 どうしようもないヘンタイ女の恥ずかしい姿を・・・

 ショーウインドウの向こうでは、けっこうたくさんの人が通り過ぎて行きました。
 こちらを見る人もいれば素通りの人も。
そのすべての人たちに心の中でお願いしていました。
 見て、見て、見て、見てください・・・


コートを脱いで昼食を 32


2014年4月13日

コートを脱いで昼食を 30

「はい・・・」
 お答えしてから私は、両腿をぴったりと合わせたままゆっくりと立ち上がり始めました。
 腰を上げた拍子に内腿同士が擦れ、その部分がヌルッとしているのが自分で分かりました。
 視界が上がっていくにつれ、私のアソコがみなさまに見えやすい位置まで上がってしまうことを、すごく意識してしまいます。
 意識すると、アソコの奥がチリチリ疼いてきます。
 ぬるんだ内股を、無性に激しくスリスリ擦りつけたくてたまりません。
 なんとかがまんしつつ完全に立ち上がると、自分でたくし上げているTシャツから下の裸部分、おっぱいから足首までがすべて無防備に、みなさまの視線に晒されました。

「まずは前からね。どのへんに貼ろうかしら?」
 シーナさまが桜子さまに尋ねると同時に、
「ワオ!インクレディボーボールドプッシーー!ソークール!ジャスタウェイト!アワナテイカピクチャーウイズハー!」
 突然エレナさんの興奮されたご様子なお声が響きました。

 エレナさんは跳ねるように試着室のほうへ駆け出し、すぐ戻ってきました。
 手にした携帯電話を嬉しそうにシーナさまに渡し、私の横に寄り添ってきます。
 私の右脇にピッタリと身を寄せ、
「オモイデ、オモイデ!ネッ?」
 と笑いながら私の顔を覗き込んできました。
 左脇にシルヴィアさんもやって来ました。
 両脇に彼女たちの体温を感じて私はもうドッキドキ。
「ひゃん!」
 左隣のシルヴィアさんが右手をこっそり下に伸ばし、私の裸のお尻をそっと撫ぜたようでした。
 やれやれ、という感じで、座ったままの桜子さまが小さく笑いました。

「オーケー、ユーレディ?セイ、チーーーーッズ!」
 あれよあれよと言う間に、シーナさまが何度もシャッターを押しています。
 美形の外国人さんに挟まれたおっぱい丸出しな私の写真が、何枚もあの携帯電話の中に記録されちゃっているのです。
 いやん、恥ずかしい。
 きっと、こっちでもご自分のお国に戻っても、何人もの人に私のおっぱい写真を見せちゃうのだろうな・・・
 あっ!そう言えばさっきエレナさん、プッシーがどうとかおっしゃっていたから、シーナさまのことだもの、きっと下まで入るように写しちゃっているはず・・・
 両脚ぴったり閉じているから、携帯電話のカメラの解像度なら、ただの無毛な土手にしか見えないだろうけれど。
 おかっぱウィッグで普段とはずいぶん雰囲気の違う顔なことだけが、せめてもの慰めです。

「ほら直子、もっと愉しそうな顔をなさい!」
 シーナさまがからかい口調で私に投げつけてから、つづけてエレナさんたちに何か外国語でおっしゃいました。
 それを聞いたシルヴィアさんが、すっごく嬉しそうに大笑いした後、オッケー、と大きなお声でお答えしました。
 私のお尻をずっとやんわり掴んでいたシルヴィアさんの右手が離れました。

「ラストワン!レディ?トレイ、ドイ、ウヌ!」
 シーナさまのドイというお声のあたりで、シルヴィアさんたちがからだを動かす気配がありました。
 横目で見ていると、シルヴィアさんはドレスのVラインを左右に押し広げ、エレナさんはハート型からつづくジッパーを一気に下へおろしました。
 えっ!?まさか・・・
「ナイスブーブス!ステイ!ワンモア!」
 何度かシャッターを押したシーナさまが構えていた携帯電話をたたんだのを見て、私は左右の彼女たちに素早く視線を走らせました。

 ぽってりとしてボリューミーなシルヴィアさんの巨乳。
 ツンと上向き乳首にもぎたての桃の実のようなエレナさんの美乳。
 おふたりとも自ら胸元を開き、見事なおっぱいをお外にこぼれ落としていました。

「センキュー、マゾッコナオチャン!アイラァビュー!」
 おふたりが私を左右からやんわりハグしてきて、ほっぺたにチュッチュッてキスしてくれました。
 私はボーっとして硬直、されるがまま。
 おふたりの剥き出しなバストが左右から両腕に当たり、その体温と少し汗くささの混じったローズ系パフュームの良い香りに、頭はクラクラからだはムラムラ。
 だけどなぜだかからだが動かず、Tシャツたくし上げな直立不動のままでした。

 シーナさまから携帯電話を受け取った彼女たちは、はだけた胸元はそのままに、再び試着室のほうへ楽しそうに戻っていきました。
 まだ試着したいドレスがあるのでしょう。

「陽気でいいわよね、外国の子たちって」
 純さまが半分呆れたようなお顔でおっしゃいました。
「直子、よかったじゃない?お仲間と写真が撮れて。抱きつかれてムラムラしちゃったんじゃない?」
 シーナさまがからかうようにおっしゃってから、ふと試着室のほうへ視線を向けました。
 つられてそちらを見ると、シルヴィアさんが再び着替え始めているところでした。
 って、なぜわかるかと言うと、シルヴィアさんたら、試着室のカーテン開けっ放しで青いドレスを脱いでいるのです。
 試着室の中で後ろ向きになった上半身裸の真っ白な背中とまあるいお尻がこちらを向いていました。

「やれやれ。もう好きにさせておくわ。今日のここはそういうお店、っていうことで、ね?」
 純さまが自嘲気味に笑いながら、周りの人たちを見回しました。
 つられて私も視線を上げると、あれっ?
 いつのまにかギャラリーさんが増えていました。
 私と同い年くらいの比較的地味めな服装、おひとりはベージュのブレザーに膝丈のスカート、もうおひとりは水色のフリルワンピース、の学生さんらしき女性がおふたり、シーナさまたちの背後の少し離れたところから私をじーっと見ていました。

「あら、いらっしゃいませ。驚いた?これはね、スキンアートの実演なの。これからこの子の下半身にシールを貼れば完成なのよ」
 シーナさまが気さくな調子でその子たちに呼びかけました。
「こんな格好でも同性だし気にならないでしょ?よかったらゆっくり見ていってね。この子は見られたがりのヘンタイだから」
「あ、はい・・・面白そうだから見ていきます」
 興味津々というお声が返ってきました。
 ああん、シーナさまのイジワル・・・

「でもね、ここにも夕方になると男性客が来ることもあるんですよ。ほら、シルヴィアたちみたいなお店のお客さんとか・・・」
 純さまがシーナさまに相談するみたく問いかけました。
「ああ。ドーハンってやつね。嬢がお客さんにねだって何か買ってもらおう、って」
「そうそう。だからあんまりこういう無法痴態もつづけていられないんですよね、残念ながら」
「それならさっさとすませちゃいましょう。桜子さん、お願いするわ。蝶々のシールだったわね」
「はい。シーナさんからは、何かご希望あります?」
 シルヴィアさんたちとの記念撮影をニヤニヤ顔でご覧になっていた桜子さまが、やっと出番がきた、というお顔でシーナさまに尋ねました。

「うーん・・・時間に余裕があれば、面白いアイデアがあるのだけれどねー」
 シーナさまが、周りのみなさまにご説明するかのようなワザとらしい、お芝居がかった口調でおっしゃいました。
「ほら、この子って見た通り、けっこう上付きじゃない?こうしてまっすぐ立っていてもワレメちゃんのスジが正面からクッキリ見えるほど」
 私の下半身を指さしながら周りを見渡しつつ、つづけました。
 シーナさまのご指摘で、周りのかたたちの視線が一斉に私の剥き出しな無毛の股間に注がれるのがわかりました。
 うぅっ・・・
 ピッタリと閉じた襞を抉じ開けるように肥大化している肉の芽が、奥でズキズキと疼きます。

「だから、そのスジを蝶々の胴に見立てて、左右の内腿に開いた羽をそれぞれ貼れば、直子が脚を動かすたびにパタパタ羽ばたいているように見えるかな、って」
 シーナさまのお言葉に、試着のお客様と新しいギャラリーさんたちがクスクス笑っています。
「あ、それ、ワタシも考えました。ご依頼いただいて最初に思いついたのが、それでした」
「ねー。絶対お似合いよね?ヘンタイ直子になら」
「でも、それするにはやっぱり寝そべってもらわないと・・・」
「そうよね。今は時間がないし、今度にしましょう」
 あっさりシーナさまが却下され、みなさまの前でそうされることを想像してドキドキしていた私は、安堵ほぼ100パーセントでちょっぴりだけがっかり。

「まあ無難に、そのスジの割れ始めあたりに一匹って感じかしら?」
「そうですね。今まさにバストのお花にめがけて飛んでいく、みたいな感じでやってみましょう」
 桜子さまの手にあるのは、5センチ四方くらいの綺麗な青い羽を広げた蝶々のシールでした。
 桜子さまが椅子から立ち上がりました。

「このへんでいいですか?」
「ぁあんっ!」
 私の傍らに来た桜子さまが、右手人差し指でちょこんと、私の下腹部の割れ始めギリギリのあたりを撫ぜました。
 微妙な位置を刺激されて思わず声を洩らしてしまう私。
「そうね。そこでいいわ。桜子さんにお任せするから、ご自由にやっちゃってちょうだい」
 シーナさまはそう言い残し、新しいギャラリーさんのほうへ近づいていかれました。

「ねえナオ?そんなにぴったり脚を閉じていたらちょっとやりにくいのよね。皮膚も撓んじゃうし」
 私の前に立った桜子さまが冷たい感じでおっしゃいました。
「少し自然な感じに脚を開いてくれない?気をつけ休めの休め的な感じで」
「脚を・・・開くのですか?・・・」
 ついにそのときが来ちゃった、という絶望的な気持ちで、桜子さまを上目遣いにすがる思いでお尋ねしました。
「そうよ。早くしてっ!」
 あくまでも冷酷な桜子さま。

 今、脚を開いちゃったら、タンポンの防波堤がとっくに決壊している私の股間から、ヘンタイ淫乱マゾの証明となる液体がトロトロ溢れ出してしまうことは、わかりきっています。
 それどころか、おそらく小指の先くらいにまでピンク色に膨れ上がっているはずな私の欲望の塊も、みなさまの眼前に曝け出されてしまうことになるでしょう。
 それを見れば、どんなにウブな人だって、その女が性的に興奮状態にあることは一目瞭然。
 そして、こんな街中の明るいお店の一角で、見知らぬ人たちを含む数人に囲まれた中でそんな状態になる女は、紛れも無くアブノーマルな露出狂以外の何者でもない、ということも。

 今日シーナさまに出会ってから今までのことで蓄積されてきたすべてのムラムラが一気に昇華しようとしていました。
 もうどうなってもかまわない。
 私の恥ずかしく浅ましい姿を、ここにいるすべての人たちに嘲笑って欲しい、軽蔑して欲しい、辱めて欲しい。
 そして私を恥辱のどん底に叩き落して欲しい。
 私の理性の最後の箍が弾けたようです。
 死にそうなくらい恥ずかしい気持ちなのに胸がどんどん高鳴って、心地良い陶酔感がからだ中に押し寄せました。

「・・・わかりました」
 桜子さまをまっすぐに見つめて、私は右足をジリジリと外側にずらし始めました。
 くっついていた内腿が離れ、まず白くて短い紐がぷらんと、私の両脚付け根から垂れ下がりました。
 おおお、と、どよめくみなさま。
 両脚を閉じているあいだは見えなかったから無理もありません。
「あれはタンポンよ。と言っても生理ではないのだけれどね」
 いつのまにか新しいギャラリーおふたりを前へとお連れしていたシーナさまが、桜子さまのすぐ後ろでおふたりに笑顔でご説明されています。

 そうしているあいだにも、私はジリジリと両脚を開いていきました。
 ワレメの襞が割れるのを感じると同時に、右内腿を粘質な液体がトロトロっと滑り落ちていきました。
 腿をつたい、ふくらはぎをつたって踵へ。
 両足の間隔が開くにつれ、左腿にもおツユがつたう感触。
「あらあら、やっぱり垂れ流し状態ね」
 シーナさまのイジワルなお声。
 恥ずかしさでバクハツしそう。
 それでも私はすでに観念していましたから、口を真一文字につぐんでシーナさまたちを見つめていました。
 心の中で、もっと視てください、もっと蔑んでください、とお願いしながら。

「純ちゃん、どうしよう?床にもタオル敷こうか?」
「ううん。もういいですよ。後でモップで拭けばいいだけから。こうなったら、どれくらい溢れちゃうのか、とことん見せてもらいますよ」
 純さまが苦笑いを浮かべ、私の顔とアソコを交互に見ています。
「それだったら靴が邪魔ね。靴がおツユを吸っちゃうもの。直子、そこで靴脱いで裸足になりなさい」
 シーナさまのきっぱりとしたご命令。
「みんなが驚くくらい、床に水溜りが出来るはずよ」
 嬉しそうにみなさまを振り返るシーナさま。

 お言いつけ通り、その場で軽く膝を曲げ、履いていた靴を脱ぎました。
 バレエシューズ風のフラットなパンプスだったので、脱ぐこと自体は簡単だったのですが、膝を曲げたおかけで股間が大きく割れてしまい、溜まっていたおツユが待ちかねたようにダラダラと両脚を滑り落ちていきました。

「ほら、もうあんなに水溜り」
 シーナさまが嬉しそうに私の足元を指差します。
「うわー。あの人、かなり本気なんですね。愛液、けっこう濁っていません?」
 新しいギャラリーのおひとりが口にされたお言葉に、からだがカァーッと熱くなりました。
「いいところに目をつけたわね。あんな格好してみんなに視られて、もう何時間もひっきりなしにビンビン感じちゃってるから、きっとアソコの中もずっとウネウネ蠢きっ放しなのよ」
 シーナさまが嬉しそうに引き継いで、つづけました。
「たぶん膣が無駄にキュッキュ締まって、膨らみきったタンポンをグイグイ絞っていることでしょうよ」
 蔑みきったシーナさまの口ぶりに、私のアソコが懲りもせずキュンキュン感じてしまいます。

 ひとしきり笑われたあと、不意にみなさまが静かになりました。
 シーナさまだけは、相変わらずニヤニヤ笑っています。

 私は、両足のあいだを40センチくらい開いて、いわゆる、休め、の姿勢で立っていました。
 このくらい脚を開くとラビアが少し割れ、そのちょっと奥で包皮を完全にめくり上げるほど肥大したピンクの肉の芽が、外界に姿を覗かせているはずです。
 事実、シーナさま以外のみなさまの目はすべて、その部分を凝視されていました。

「おっきい・・・」
 試着のお客様の独り言みたいなつぶやき。
「直子のオマンコって、閉じているときは柏餅みたいにプックリしてとても可愛いのに、ちょっと開くと中身は例えようもないくらい卑猥なのよねえ」
 シーナさまのお下品なご説明がお言葉責めの矢となり私の敏感な芽をつらぬいて、いやらしいよだれが足元にヒタヒタと溜まっていきました。


コートを脱いで昼食を 31

2014年3月30日

コートを脱いで昼食を 29

「ハーイ、マゾッコナオチャン。ワタシ、セクシーデスカ?」
 シーナさまったら、シルヴィアさんになんていう日本語を教えているんだか。
 桜子さまのお道具が置いてあるテーブルのすぐそばまでやって来たシルヴィアさんは、ピルエットぽく、その場でクルッと綺麗に一回転されました。
 ドレスの裾がフワッと舞い上がり、深いスリットが大きく割れて、白くて張りのある両太腿の大部分が露になりました。

 間近で見ると本当に肌が綺麗。
 大きく開いたホルターネックから零れ落ちそうに覗いている真っ白な胸元のふくらみに淡く青い血管が浮いていて、眩暈しそうなほどに艶かしい。
 光沢のあるブルーの生地はずいぶん薄いらしく、シルヴィアさんの豊満なバストの先っちょが2つ、クッキリと浮き上がっています。
 キュッとくびれたウエストに手をあててポーズをとるシルヴィアさんの全身からほとばしるセクシーフェロモンにクラクラしながら、
「と、とてもステキです・・・」
 美しいお顔を見上げて、そう答えるのが精一杯でした。

 そうしているあいだに、再び試着室前から賑やかな嬌声が聞こえてきました。
 エレナさんも着替えを終えて、シーナさまとおふたりで盛り上がっているご様子。
 試着室のカーテン前でポーズを取るエレナさんは、真っ赤なチャイナ風のミニドレス姿でした。
 おふたりでひとしきり騒いだ後、エレナさんもシルヴィアさんと同じように、気取ったモデルウォークで嬉しそうに近づいてきました。

 からだの線がバッチリ分かるボディコンシャスなドレスは、胸元のところが大胆にハート型にくり抜かれていて、バストの谷間の大部分がクッキリ丸見え。
 バストトップもこれ見よがしにポチポチ。
 ハートの形の一番下からドレスの裾へとジッパーが一直線につづいているフロントジップアップなので、もしもそのジッパーを一気に下ろされちゃったら・・・
 チャイナドレス風ですから、首周りや袖部分はしっかり覆われているまま、バストから下全部が無防備な状態になっちゃうはず。
 そんな姿を想像をしたら、ゾクッとアソコが震えちゃいました。
 
 クルッと廻ると背中もⅤ字に大きく空いています。
 膝上20センチ以上ありそうな超ミニなのに、ご丁寧に脇にスリットも入っています。
 下着が見えないからノーパン?
 スラッと伸びた細い脚がすっごく綺麗。
 シルヴィアさんほどグラマラスではないエレナさんですが、スレンダーなからだつきにドレスのシルエットが見事にフィットしていて、色っぽさではまったく負けていません。
 コケティッシュ、って、こういう人を形容する言葉なんだろうなあ、なんて考えていました。

「うわーっ!なんだかうちのお店の中、ずいぶんナマメカシクなっちゃたわねえ!」
 試着のお客様のお会計を終えて戻ってきた純さまが、苦笑いを浮かべつつ、大きな声で冗談ぽくおっしゃいました。

 試着のお客様もショッパーを肩に、純さまと一緒に戻ってきました。
 セクシードレスのシルヴィアさんとエレナさん、そして私をまっすぐに見つめてくるそのまなざしが、好奇心で爛々と輝いています。
 なぜだかこんなところでほぼ素ッ裸になっている同年代くらいのヘンタイ女と、陽気なセクシー外国人さんおふたりとのなりゆきに興味津々なご様子で、驚嘆と軽蔑が入り混じったような、マゾの私にとってはすっごくズキンと来る、絶妙な笑顔を浮かべていました。

「こういうキャバドレスって、夜のお店の中でなら気にならないけれど、昼間の明るい光の中で見ると非日常感が強過ぎて、露骨にインビな感じよね?」
 エレナさんを追って戻ってきたシーナさまが、ニヤニヤ笑いで純さまに問いかけました。
「まあ、シルヴィアたちみたいな洋風の美形が着れば、それなりにサマにはなるけれど、でもやっぱりちょっと、スケベな刺激が強すぎるって言うか、着ていないのと同じって言うか・・・」
 純さまも笑いながら同意しています。
「でも、それよりももっと破廉恥な格好をした子も、なぜだかここにいるけれどね」
 シーナさまが私を見て、それから試着のお客様に同意を求めるように微笑みかけました。

 試着のお客様は、薄い笑いを口許に浮かべつつ無遠慮に私を眺め、小さくコクコクうなずきました。
 シルヴィアさんとエレナさんは、座っている私の両脇に立ち、BGMのヒップホップに軽くからだを揺らしながら、妖艶な笑みを浮かべて私を見下ろしています。
 私はと言えば、あまりの恥ずかしさで消え入りそう。

「あら?スキンアート、終わったのね。ステキじゃない!イイ感じ。桜子さん、さすがだわ」
 シーナさまが、今気がついた、という感じで少しワザとらしくおっしゃり、愉しそうに私に近づいてきて、腰を屈めて私のおっぱいを覗き込みました。
「ずいぶんオシャレに仕上がるのね。ほんと、アートって感じだわ」
「はい。ワタシ的にも満足出来る出来栄えですね」
 桜子さまもしばし私のおっぱいをじっと見つめ、それから私の顔に視線を移しました。
 私が伏目がちに見つめ返すと、桜子さまがニッと笑い返してから、シーナさまに向き直りました。

「それで、染料が乾くのを待つ間、サービスで蝶々のシールを貼ってあげる、ってナオに言ったんです。そしたら彼女たちが出てきて騒がしくなっちゃって・・・」
 桜子さまがシルヴィアさんたちに愛想よく微笑みかけてサムアップすると、おふたりはキャーキャー喜びました。
「そうなの?それならお言葉に甘えて、やってもらいなさいよ、直子。シールは、どこに貼るのがいいかしら?」
「やっぱり下半身じゃないですか?バランス的に。下着で隠れる場所に、っていうご指定でしたし」
「そうね。お花のあるところに蝶々はつきものだし」
「それでさっきナオに、前か後ろかどっちがいい?って聞いたところです」

 桜子さまのお言葉にシーナさまと純さま、そして試着のお客様の3人が一瞬、互いにすばやく目配せと言うか、アイコンタクトをされたように見えました。
 お3人のお顔が、面白くなってきたぞ、って書いてあるみたいに、みるみる愉しそうにほころび、じっと私のからだを見つめてきます。
「そうだったの。それで直子は、どっちにしてもらいたいの?」
 シーナさまが、私に注がれている好奇の視線の意味を、その場を代表するようにお言葉にされました。

 前、と言うと、アソコの周辺、土手のあたりに貼られることになるでしょう。
 そこに貼るためには、私のアソコ周辺に桜子さまが目一杯お顔を近づけてくることになります。
 そしてソコを、指でスリスリ愛撫されることになるでしょう。
 考えただけでゾクゾクします。
 すごくやって欲しいけれど、すっごく恥ずかしい・・・
 みなさまが見ている前で、いやらしい声が出ちゃったら、身悶えしちゃったらどうしよう・・・
 それに、桜子さまのお顔が近づけば、すでにお役目を果たしていないタンポンから溢れちゃった蜜の匂いまで嗅がれてしまうかも・・・

 後ろ、と答えれば、お尻。
 それなら私は桜子さまに背を向けることになります。
 桜子さまのお顔も見えないから、さほど恥ずかしくないし、お尻への愛撫なら声もガマン出来そう・・・
 お尻のほうが気が楽みたいかな・・・

「えっと、それではお尻に・・・」
 桜子さまにそう告げると、桜子さまのお顔が一瞬ほころび、すぐに、ふーん、てイジワルそうな笑顔に変わりました。

「本当にお尻でいいの?」
「えっ?あ、はい」
「ほんとにほんとにいいのね?」
「えっと・・・はい」
「後悔しない?」
「えっと・・・」
 桜子さまったら、何をおっしゃりたいのだろう?
 何か企みがあるのかな?
 お顔がとっても嬉しそう。

「ナオのお尻にシールを貼るなら、ナオには立ち上がってもらわなきゃならないわよね?」
「あ、はい・・・」
「それで、ナオにこの場で後ろ向きになってもらうことになるわよね?」
「・・・はい」
「その椅子の背もたれの向こうがどうなっているのか、わかっていて言っているのよね?」
「えっ?」
 したり顔な桜子さまのお言葉に、シーナさまたちも私の背後を見据えて、一斉にニヤッと笑いました。

「直子、そのままの姿勢でちょっと後ろ、振り向いてごらんなさい?」
 シーナさまに言われ、首だけ後ろに捻じ曲げて、籐椅子の背もたれの陰から顔を出してみます。
「あっ!」
 そうでした。
 この背もたれの背後は、全面透明ガラスの大きなショーウインドウになっていたのでした。
 椅子から窓までは約1メートルちょっと。
 今ちょこっと顔を覗かせてみただけでも、お外の通りを行き交う人たちの姿がハッキリと見えました。
 そして、ガラス窓に薄く映った、唖然としているおかっぱウイッグの女の顔。

「何を今更気がついたようなフリしているの?知っていたクセに」
 シーナさま、めちゃくちゃ嬉しそう。
「直子が立ち上がってわたしたちにお尻を向けたら、外からは直子の正面が丸見えになるのよね?」
「それも自らシャツをたくし上げて、見せつけるようにおっぱい丸出しにしたヘンタイ女丸出しの姿で」
 シーナさまの瞳がエス色に爛々と輝きます。
「それをしたかったのでしょう?だからお尻を選んだのよね?」
「そんなに誰彼かまわず見せたかったんだ、そのいやらしいおっぱいを。直子がそこまでヘンタイだとは、さすがのわたしも思わなかったわ」
 白々しいシーナさまの科白。

 確かに私がこの場で立ち上がれば、ショーウインドウ越しに外から丸見えとなります。
 シールを貼るだけなら1分くらいで済みそうですが、そのあいだ私はずっと、自分の手でTシャツをたくし上げておっぱいを露出したまま、お外に向いて立っていなければならないのです。
 幸い、籐椅子の背もたれが高いので、椅子を前にして立てば下半身は隠せそうですが、上半身と顔はハッキリ見えちゃうはず。
 
 そのあいだ、何人くらいの人が通り過ぎるだろう?
 裸の私に気がついちゃう人もきっといるはず・・・
 下半身がビクンビクンときて、チャレンジしてみたい気持ちもありました。
 でも、もしも知っている人が通りがかったら、知らない人だとしても写真とか撮られてネットに晒されちゃったら・・・
 なんて考えると、恐怖心のほうが何倍も勝りました。

「ご、ごめんなさい・・・許してください・・・やっぱり前にしてください」
 シーナさまと桜子さまを交互に見て、すがるようにお願いしました。
「ワタシは別にどっちでもいけれど。そういうのは本当のご主人様に決めてもらえば?」
 桜子さまが冷たく言い放ちます。
「呆れた子ね。自分でお尻がいいって言ったクセに、もう心変わり?なんだかわたしたち、バカにされているみたいよね?ねえあなた、どう思う?」
 シーナさまが不意に、試着のお客様にお話をフリました。

「えっ!?あ、そうですね・・・」
 急にお話をフラれて少し面食らった気味の彼女でしたが、すぐに薄い笑みを浮かべ、睨むように私を見つめてきました。
「最初にご自分でおっしゃったのだから、やっぱりご自分の発言には責任を持つべきだと思いますね」
 試着のお客様のお声は冷たく、私をいたぶることを愉しんでいるように聞こえました。
 同年代だからわかる、女子が本気で同性を苛めようとしているときの口調でした。

「よくわかりませんが、この人は・・・」
 と、試着のお客様が右手をまっすぐに伸ばし、私を指さしました。
「この人は、変わったご趣味の持ち主みたいですし、見せたいならどんどん見せればいいのに、取り繕おうとするところが逆にイヤラシイですよね」
 侮蔑100パーセントの口調で投げつけられました。

「なるほど。わかったわ。今のあなたの意見で決まったわ」
 シーナさまが試着のお客様に微笑みかけてから私に向き直りました。
「直子は、このお客様を不愉快な気持ちにさせちゃったのだから、相応の罰が必要よね」
「だから、みなさんの見ている前で両方にシールを貼ってもらいましょう。つまり、前も後ろも」
「シール代はちゃんと払うから、お願い出来る?桜子さん」
「あ、それは別にかまいませんよ。シールの一枚や二枚。喜んで両方やりますよ」
「ありがとう。それじゃああとは桜子さんに任せるわね。絶対服従よ、いいわね?直子!」

 カランカラン
 ドアベルが鳴って、純さまがレジのほうへ駆け出しました。
 シーナさまは、何語か分からない言葉でシルヴィアさんたちとお話されています。
 きっと彼女たちに今の状況をご説明されているのでしょう。
 試着のお客様はその傍らで、薄笑いのまま私を見ています。

「それじゃあサクッとすませちゃいましょう。ナオ、立ってくれる?」
 桜子さまがアーティストのお顔に戻っておっしゃいました。


コートを脱いで昼食を 30


2014年2月2日

コートを脱いで昼食を 28

 ブラシのか細い毛先がチロチロと、上気した肌をじれったく愛撫してきます。
 視線を落とすと、真紅の薔薇が濃い緑色の葉っぱを二枚従えて、右乳首の左斜め下に鮮やかに咲いていました。
 お花の大きさは、普通よりやや広めな私の乳暈とだいたい同じくらい。
 桜子さまのブラシが繊細に踊り、棘を散らした茎が乳房の上部分へ伸びるように描き加えられていきます。
 桜子さまのお顔は私のおっぱい目前まで迫り、掌がときどき肌を擦ります。

 その感触に集中してしまうと、どんどん高まるムラムラにいてもたってもいられなくなってしまいそうなので、気を逸らすために顔を上げました。
 試着室のほうを横目で窺がうと、どうやら普通に試着が始まったようでした。
 ぴったりと閉ざされたカーテンの前で、シーナさまがうつむいてケータイを弄っていました。

 カランカラン・・・ありがとうございましたー。
 カランカラン・・・いらっしゃいませー。
 新規のお客様がお店に出入りする音が、頻繁と言うほどではない間隔で聞こえていました。
 そのたびにドキッとはするけれど、そのドキッは、さっきまでのような不安なドキッではなくなっていました。
 試着のお客様に視られたときに感じた、もっと視て欲しい、という自分のマゾ性丸出しのはしたない高まり。
 それをもう一度味わいたくて仕方なくなっている私。
 また誰かこっちに来ればいいのに、というふしだらな期待のドキドキに変わっていたのでした。

 見ず知らずの人に剥き出しのおっぱいを視られてしまうのは、それはもちろんすっごく恥ずかしいことです。
 でも、さっき試着のお客様からの視線を受けたとき、その恥ずかしさ以上の、なんて表現したらいいのか、息苦しいのに甘酸っぱいような、えもいわれぬ快感を感じていたのは事実でした。
 ありえない場所でありえない姿を晒している自分に対する自虐の昂ぶり。
 信じられない・・・正気なの?・・・露出狂?・・・ヘンタイ?・・・
 そんな視線の陵辱をからだの隅々にまで浴びてみたい。
 頭の中で渦巻く願望が抑えきれなくなっていました。

 根っから臆病な私がそれほど大胆な気持ちになれたのは、紛れもなく純さまと桜子さま、そしてシーナさまのおかげでした。
 私をからかい虐めながらも、同時に、社会的にヘンなことにならないようにいろいろ気を配ってくださっているのも感じていました。
 このかたたちがそばにいてくだされば、こんな場所でこんな姿をしていても、さほど大変なことにはなったりしないだろう、という甘えた安心感が私を大胆にさせていたのだと思います。
 ひとりアソビでは絶対に出来ない、不特定多数の人たちへの露出行為。
 シーナさまたちが整えてくださったそのシチュエーションに、私はどっぷり、ハマっていました。

「うん。サイズもバッチリですね。お客様、お顔が小さくて細身だから、シルエットもクールでぐうお似合いですよ!」
 試着室のほうが騒がしくなり、シーナさまと着替え終えたお客様が試着室の中の鏡を見ながら、ニコニコ顔でお話されています。
 お客様もお洋服を気に入ったらしく、お買い上げを決めたご様子。
 お洒落なワンピースを着たそのお客様は、薄い笑みを浮かべて鏡の中の私を一瞥してから、再び試着室のカーテンを閉じました。

 カランカラン・・・いらっしゃいませー。
「ハーイ、シルヴィア。ハーイ、エレナ。おひさしぶりー!」
「ハロー!ニュードレス、サガシニキマシタ」
 入口のほうからカタコトの日本語が聞こえてきました。
 どうやら外国人のお客様がいらっしゃったみたい。
 途端に店内が賑やかになりました。
 カタコト日本語と英語っぽい外国語によるハイテンションな会話が響き渡り、入口との目隠しのために移動したハンガーラックがユサユサ揺れ始めました。
 そのハンガーラックには、純さまおっしゃるところの、セクシードレス、がたくさん吊るされています。

「ワオ!ソゥセクスゥイー!」
「イッツキュート!」
「コレモカワイイ!」
「コッチモイイネー」
 ラックの向こう側でドレスを選んでいるのでしょう、楽しそうに弾んだお声が聞こえてきます。
 これって、ひょっとしたら・・・
 私のドキドキが一段と高まりました。

「キャナアイトライディスオン?」
「シュア。バットウェイトフォアラホワイル、ビコーズアナザカスタマー・・・」
 純さまが流暢な発音で応対されているのを聞いて、私のドキドキは最高潮。
 外国人さんたちが試着でこちらにやって来るみたい。

「はい。お疲れ様でしたー。こちらとこちら、両方お買い上げでよろしいですね?ありがとうございます」
 試着室のほうからもお声が聞こえてきました。
 試着室のカーテンが開け放されて、中の鏡に再び横向きな私の裸が映し出されています。
「純ちゃーん、お客様お買い上げでーす。フィッティングルームも空いたのでどうぞーっ!」
 シーナさまが大きなお声をあげながら、お客様と一緒に私のほうへと近づいてきました。

「はーい!オッケー、プリーズフォロウーミー・・・」
 純さまの元気の良いお声に導かれ、外国人さんたちがハンガーラックの陰から現われました。

 おふたりとも西洋系の整ったお顔立ち。
 白くて小さなお顔にパッチリな瞳、スッと通った鼻筋にアヒル口、誰が見ても、あ、美人さんだ、と思わざるをえない美形さんたちでした。
 ボリューミーなブロンドヘアーの人のほうが背が高く胸も豊かそうで、絵に描いたようなゴージャス系西洋美人さん。
 もうおひとかたは、栗色がかったブルネットのセミロングで、やや小柄で機敏そうな感じの小悪魔的な美人さん。
 おふたりともシンプルなブルゾンにジーンズと言うラフなファッションでしたが、そんな格好でも、夜のお仕事で培ったのであろう色っぽいオーラが全身から滲み出ていました。

 そんな彼女たちも私の姿をみつけると、試着のお客様と同じようにまず一瞬、息を呑んでその場に立ち止まりました。
 でもやっぱり外国人のかたはオープンなのでしょう。
 唖然としたお顔が瞬く間に興味津々のお顔に切り替わり、私のほうに駆け寄ってきました。

「ワオ!ワッツゴーイノオン?・・・タトゥ?」
「ナイスブーブス!イズディスジャパニーズボディペインティン?・・・」
 おふたりが私の傍らに来て、私の剥き出しのおっぱいを指さしながら口々に何かおっしゃっています。
 
 試着を終えたシーナさまたちもちょうど通りがかったところで、試着のお客様も今度は私の目前で足を止めました。
 そのお客様の目が、驚きでみるみる見開かれます。
 私が下半身も裸だということに気づかれたみたいです。
 伏目がちにお客様の視線を追うと、私の無毛な下半身を凝視して、それから私の顔を見て、おっぱいに移動してからもう一度私の顔に戻りました。
 そのときお互いの目と目が合ってしまいました。
 試着のお客様の瞳には、ありありと侮蔑の色が浮かんでいました。

 シーナさま、純さま、外国人の彼女たち、そして試着のお客様と、今や5人の女性がほぼ全裸の私を取り囲んでいました。
 そんな中でも黙々と作業をつづける桜子さま。
 外国人の彼女たちは、いつしか英語ではない、私にはわからないお言葉で声高々にお話されていました。
 シーナさまがそんな彼女たちの会話のお相手をされ、何やらご説明されています。
 試着のお客様は純さまと、私をチラチラ視ながらコソコソクスクス密談中。
 ああん、恥ずかしい・・・でも、もっと視て・・・
 桜子さまのブラシの愛撫を右おっぱいに受けながら、みなさまの不躾な視線を全身に浴びて、私はすぐにでもイっちゃいそうなくらいの昂ぶりを感じていました。

「ハズカシイデスカ?」
 桜子さまのブラシが交換のためか私の肌を離れたとき、ブルネットのほうの外国人さんが好奇心を抑えきれないご様子で、話しかけてきました。
 その瞳は遠慮無く、私の全身を舐めまわしています。
「ほら、直子さん?答えてあげなさい」
 シーナさまがニヤニヤしながらおっしゃいます。
「あ、はい・・・恥ずかしい・・・です・・・」
 私のすぐそばで腰を屈めている美形な外国人さんにお答えした途端に、股間がウルッとぬるみました。

「彼女たちはね、東欧から来ているんだって。ブロンドのほうがミス・シルヴィア。栗毛がミス・エレナ」
「ハジメマシテ」
 おふたり揃って、ペコリとお辞儀されました。
 再びブラシをかまえかけていた桜子さまは、作業に戻るタイミングを逸したようで、テーブルにブラシを戻し、ちょっと休憩ね、とつぶやいてニヤニヤしています。

「なぜこんなところで裸なんだ?日本ではこういうことが許されるのか?彼女は恥ずかしくないのか?とかいろいろ聞かれたから、丁寧に説明しておいてあげたわよ」
 シーナさまがイジワルそうに笑います。

「直子さんのバストに描かれている単語を見て納得したみたいね。ノーティだとかキンキーだとか、やっぱりニッポンジンはクールだけれどヘンタイばかりだ、とかいろいろ言っていたけれど」
 そうおっしゃってからシーナさまが彼女たちを振り向いてニッと笑いました。
 それを受けて妖艶に微笑み返すおふたり。
 私のおっぱいに描かれた単語は、Masochist と、まだ途中だけれど Exhibitionist。
 英語がわかる人なら、それだけで私のヘンタイ性癖はバレバレです。

「アナタノハダカ、トテモキレイデス。ソゥキュート」
 ブロンドのシルヴィアさんが私の目をじっと見ながら話しかけてきました。
「ダカラ、ミセタイキモチ、ワカリマス」
「ワタシモソウデスカラ。セクシーナドレス、ダイスキネ」
 私は何も言えず、魅入られたようにシルヴィアさんのお顔に見蕩れていました。
「ダカラ、コノドレスキテ、アナタニミセマス。ワタシモセクシーデスヨ?」
 シルヴィアさんがいたずらっぽく微笑みました。
「ダケドワタシハ、マゾヒストジャナイデスケド」
 そうおっしゃってパチンとウインクしました。
 私のからだ中がカーッと熱くなりました。

 シルヴィアさんとエレナさんが試着室に向かい、シーナさまがお手伝い。
 純さまとお客様は、お会計のためにレジのほうへ消えました。
 再びふたりきりになって桜子さまがブラシを手にされ、作業が再開しました。
 横目で窺がう試着室では、まずシルヴィアさんが中に入ったよう。
 カーテンの前でシーナさまとエレナさんが私のほうを向いたまま、何かおしゃべりされています。
 自分の胸元に視線を落とすと、そろそろ完成間近。
 薔薇の茎のようなグリーンの装飾字体が右乳首の下半分を囲むように弧を描き、逆から綴られてきたスペルの最初の E の字の装飾に取り掛かっていました。

 試着室のほうが騒がしくなり、また横目で窺がうと、シルヴィアさんが着替え終えて出て来たところでした。
「ワーオゥ!」
 エレナさんもシーナさまも大はしゃぎです。

 シルヴィアさんが試着したのは、光沢のあるブルーでテラテラな生地のホルターなノースリーブロングドレス。
 胸元のV字が大胆におへそのあたりまで割れ開いていて、横乳丸見え。
クルッと一回転すると背中もお尻の割れ始めあたりまで大きく開いていて、腿のスリットも腰まで切れ込んでいました。
 それなのに上も下も下着がまるで見えないっていうことは、全部脱いでから着たのかしら?
 大胆だなー。
 他人事ながらドキドキしてしまいました。

 交代にエレナさんが試着室へ入り、シルヴィアさんとシーナさんが何語かわからない言葉でキャーキャーおしゃべりしています。

「よーしっ!完成!」
 試着室に気を取られていた私は、あわてて桜子さまに視線を戻しました。
「フゥーーッ、フゥーーッ」
 桜子さまが私の右おっぱいに目一杯お顔を近づけ、尖らせた唇で完成したての作品に息を吹きかけてきます。
 火照った肌にこそばゆい感触。
「はぅぁ・・」
 思わず小さく吐息が漏れてしまいました。

「我ながらいい出来映えだわ。Exhibitionist はスペルが長いから、乳首の円周で収めるのが大変だったけれど」
「あ、出来たと言ってもまだ染料が乾いていないから、ナオはしばらくシャツ下げちゃだめよ?」
 イジワルくおっしゃる桜子さまも、心なしかお顔が紅潮されて、なんだか高揚されているみたい。
 前屈みだった姿勢を直されて、座ったまま私のからだ全体を、今更のようにしげとしげと無遠慮に眺めてきます。

 そんな桜子さまの視線が、ふっと私から逸れて右側に動きました。
 つられて私もそちらに視線を動かします。
 セクシーなブルーのドレスに身を包んだシルヴィアさんが妖艶な笑みを浮かべつつ、ファッションモデルさんのウォーキングみたいな優雅な足取りで私たちのほうに近づいて来るところでした。
 うわー、カッコイイ!
 桜子さまのお顔は、シルヴィアさんと私を見比べるように交互に動いています。

「そうだ!」
 桜子さまが不意にお声をあげました。
「染料が乾くまでただ座って待っているのもつまらないから、ナオにサービスしちゃうわ」
「そこに」
 おっしゃりながら座っている私の下半身を指さします。
「えっ?」
 おっしゃっている意味がわからずドギマギする私。

「シールをひとつ、貼ってあげるわよ。せっかく綺麗な花が2つも咲いたのに、蝶々がいないのはバランスが悪いもの」
「特別にサービスでやってあげる。時間的に模様は描けないけれどね。シールならすぐ終わるし」
 桜子さま、なんだか嬉しそう。
 それに気のせいか、目つきもいやらしくなっているような・・・

「それでナオ?どっちにして欲しい?お尻?それとも前?」


コートを脱いで昼食を 29

2014年1月13日

コートを脱いで昼食を 27

 籐椅子に腰掛けた私の真正面に、桜子さまが座っています。
 ふたりのあいだにテーブルはありません。
 両内腿をピッタリ合わせて揃えている私の両膝を、黒いスリムジーンズな桜子さまの両膝が左右から挟みこむくらいの至近距離。
 背筋を伸ばし、胸を張るように指示された私と、前のめりな桜子さま。
 自分でたくしあげているTシャツの裾から零れた私の左おっぱいのすぐ前に、桜子さまのお顔があります。

 桜子さまがそのおっぱいの表面を、ウエットティッシュみたいなもので丁寧に拭い始めました。
「んっ・・・」
 ひんやりとした感触に思わずからだがヒクっと震えてしまいます。
「ずいぶん火照っているのねえ?直じゃなくても指先に体温が伝わってくるわよ?」
 上目遣いに私を見つつ、桜子さまがフフンて笑いました。
 乳首を中心として満遍なく、おっぱいが撫ぜ回されます。
「ぷにぷに。やわらかいのね」
「んんっ!」
 桜子さまの手首の辺りが、尖った乳首に引っかかりました。
 私は口を真一文字に結んで、悦びの声を必死に堪えます。

「ナオの乳首、本当にカチンコチンね?よくもまあこんな長い間、尖らせっぱなしに出来るものだわ」
 そんなイジワルをおっしゃりながらも、桜子さまはテキパキと両手を動かしています。
 3~4センチ四方くらいの百合のお花のシールが乳首の右上に貼られ、軽くポンポンと叩かれてから、ゆっくり台紙が剥がされました。
 白地に黄色い筋と赤い斑点の入った綺麗な山百合が一輪、私のおっぱいの乳首脇に咲きました。

「うん。いい感じね」
 満足そうにうなずいた桜子さまが、パフでシールの上をポンポンと叩きます。
 私の左おっぱい全体がプルンプルンと弾みました。
「ナオのおっぱいの揺れ方って、なんて言うか、ぽってり重そうで、すごくいやらしい」
 薄い笑みを浮かべた桜子さまがそうおっしゃってから、傍らに置いたデスク上のお道具に右手を伸ばしました。

 細いブラシを手にした桜子さまのお顔が、再び私のおっぱいにグイッと近づいてきました。
 そして、肌を這う微かな感触。
 アイラインブラシくらいのか細い筆先で、百合のお花に茎部分が緑色で描き加えられていきます。
 そのコショコショとしたもどかしい愛撫。
「ふぅぅん・・・」
 思わず鼻息が洩れてしまい、恥ずかしさに目をつぶってしまいます。

 まるで、すっごく小さな虫に乳首の周りを這いずりまわられているような、じれったい愛撫がしばらくつづきました。
 その虫は、少し動いては止まり、また少し動いては止まり。
 虫の愛撫とは別に、ブラシを持つ桜子さまの人肌の掌も、ときどき乳首周辺の肌に触れたり触れなかったり。
 目をつぶっていると、どうしてもその感触に全神経が集中してしまい、からだがモヤモヤ疼いてきてしまいます。
 あまりにももどかしくて、あまりにもじれったくて、このままだとヘンになっちゃう。
 気を散らさなきゃ。
 そっと目を開けると、至近距離に桜子さまの真剣な目つき。
 私のおっぱいに絶え間なくブラシを走らせ、ときどき、ご自身の指で肌の染料を伸ばしたりもされています。

 お道具を変えるのか、ブラシが肌から離れ、桜子さまが傍らのデスクに手を伸ばしたとき、お店のドアチャイムが突然鳴りました。
 カランカラン・・・いらっしゃいませー。
 ドッキーン!
 上半身がビクンと跳ねて、反射的に入口ドアのほうへ振り向く私。
「動かないの!」
 桜子さまの鋭いお声。

「何をそんなにビクビクしているの?ナオは、みんなに裸を視られたくて、そんな格好してきたんでしょう?そういうのが好きなんでしょう?」
「だったら視てもらえばいいじゃない?ワタシもお金をもらう以上、中途半端な仕事はしたくないの」
「お客様が来るたびにビクビク動かれたら作業が進まないわよ?平気な顔していれば、お客様も、そういうものかな、って思うから、終わるまで何があってもじっとしていなさい」
 桜子さまのお顔に薄ら笑いはもはや無く、ご自分の作品に没頭している精悍なアーティストの面持ちでした。
 カッコイイ。
「は、はい。わかりました・・・ごめんなさい」
 またまた見蕩れてしまう私。
 桜子さまのお顔が私の左おっぱいに覆いかぶさるように前のめりになり、再びブラシが肌を撫ぜ始めました。

「あ、それはね、今週入ってきた新柄なの。色違いもありますよ」
 純さまが接客されるお声が聞こえてきます。
 そう言えばシーナさまは?
 顔は動かさず、視線だけで周りを見渡してみましたが、私の視界内にシーナさまの姿はありませんでした。
 私の背後で、桜子さまの作業を見ていらっしゃるのかな?
 なんて考えているとまた、カランカラン・・・いらっしゃいませー。

 やっぱりけっこう、お客様いらっしゃるんだ。
 思った途端に体温が上がり始めました。
 こんな調子なら、いつか絶対、誰かに視られちゃう・・・
 こっちの売り場まで、誰も来ませんように・・・
 両脚の付け根がヌルッってきたのを感じて、内股にギュッといっそう力が入ってしまいました。

「なんだかまた肌が上気してきたわね?他のお客様が来たから興奮しているの?」
 桜子さまがブラシを動かす手は止めず、くぐもったお声で尋ねてきます。
「あともう少しだから、がまんしてじっとしててね。ナオが動いて失敗したら、ワタシ、あーあ、って大きな声出して、ナオのことみんなに注目させちゃうからね」
「は、はい・・・」
 心を落ち着けるために再び目を閉じて、ひたすら終わりを待つことにしました。

 カランカラン・・・ありがとうございましたー。
 カランカラン・・・いらっしゃいませー。
 カランカラン・・・いらっしゃいませー。
 カランカラン・・・ありがとうございましたー。
 カランカラン・・・いらっしゃいませー。

 頻繁にお客様が訪れては帰られているようです。
「今日は何をお探しですか?ゆっくり見ていってくださいねー」
 店内に響く桜子さまの快活な接客のお声を聞きつつ、店内を歩き回る複数の足音にも真剣に耳を澄ませていました。
 幸い今のところ、こちらのほうへ近づいて来る足音はありません。
 でも心臓は、爆発しちゃいそうなくらいハラハラドキドキ。

「おっけー。こっち側は完成よ。我ながらなかなかの出来栄えだわ!」
 少し大きめな桜子さまのお声に、反射的に目を開けました。
 私の左おっぱいからお顔を離した桜子さまが、対面からじーっと私の左おっぱいを凝視していました。
「へー。いいじゃない。さすがだわ、桜子さん」
 いつの間にかシーナさまも桜子さまの傍らに立ち、私の左おっぱいを見つめています。

 視線を自分の左胸に落としました。
 左乳房の乳首右斜め上に、乳暈よりひと回り大きいくらいの綺麗な山百合の花が一輪、咲いていました。
 そのお花の下から緑色の茎が、乳暈の円周を廻りこむように左側へ流れています。
 茎は途中から英語の筆記体になっていて、小さな葉っぱをちりばめた草のような装飾書体で、Masochist Naoko、と読めました。
 文字は、乳暈の円周に沿って乳首を囲むように描かれていて、Naoko の最後の o の字がちょうど乳首の左側まで来ていました。

 確かにデザイン的には、とってもシャレていて格調高いアートな感じでした。
 山百合の白と黄色と赤、茎と葉の緑と薄茶、そして乳首と乳暈の濃いめなピンク。
 それらがまあるいおっぱいの肌色の上で、鮮やかなコントラストを描いていました。
 だけど、描いてある文字の意味は、私のアブノーマルな性癖のこと。
 マゾヒスト直子。
 これからしばらくのあいだ、私はおっぱいにこんなことを描かれたまま、暮らさなくてはいけないんだ・・・
 そんなふうに思うとたちまち、股間がキュンキュン盛大にざわめいてしまいました。

「ふぅーーっ。染料が乾くまで2、3分、休憩させてね。次は薔薇だったわよね?」
「んーーーっ!」
 桜子さまが座ったまま、両手を思い切り上にあげて伸びをされました。
「よかったじゃない直子。すっごくステキに仕上がって。今日、純ちゃんのお店に来た甲斐があったわね」
 シーナさまがケータイを向けてカシャッと写真を撮りつつ、嬉しそうに笑いました。

「あ、ご試着ですか?でしたらこちらへどうぞー」
 小休止で緊張が少し緩まったのも束の間、緊急非常事態発生みたい。
「そのデザインなら絶対、お客さまにお似合いですよ。もしサイズが合わなかったら同じお色で他のサイズもありますから・・・」
 純さまのお声が近づいてきたと思ったら、私から見て右奥のハンガーラックの陰から、何かお洋服を手にした純さまが現われました。
 純さまはそのまま、スタスタと桜子さまの背後を歩いていかれます。
 つづいて現われたのは見知らぬお客様。
 私の視界に入ったと同時に、そのお客様も私の姿に気づいたようでした。
 そのお客様は私を見て、ギョッとしたように一瞬立ち止まってから、うつむいて小走りで、私のほうを見ないようにしながら純さまに追いすがりました。

 純さまが現われたとき、私もドキッとしつつその方向を凝視していましたから、つづいて現われたそのお客様ともバッチリ視線が合って、しばし見つめ合う形になりました。
 驚きでまんまるに見開かれたそのお客さまのふたつの瞳。
 たぶん同い年くらいの学生さんぽい、可愛らしい感じのスレンダーな女性でした。
 あまりの恥ずかしさに、からだ中の血液が闇雲にグルグル駆け巡りました。
 しかしながら、今さっき染料で描かれて乾ききっていない作品を、Tシャツをずり下げて覆い隠すわけにはいきません。
 剥き出しのおっぱいを見せつけるように自分でTシャツをめくりあげたまま、全身が羞恥に染まるに任せるしかありませんでした。

「ああ、あれはスキンアートのサービスなんです。スキンアートってほら、タトゥシールとかペイントタトゥとかの・・・」
 おそらく、そのお客様が純さまに尋ねたのでしょう、純さまがご説明されるお声が、今度は左側から聞こえてきました。
 って、え?試着室って、そこなの!?

 私が腰掛けている籐椅子の左横、3メートルくらい向こうの壁際。
 そこには濃い緑色のカーテンがかかっているだけで、お洋服類は何もディスプレイされていませんでした。
 最初ここに座ったとき、左側を見て、その周辺だけ妙に片付いているな、とは思ったのですが、お店の一番奥だし、まったく気にしていませんでした。
 今は、そのカーテンの前で純さまとお客様が、私のほうをチラチラ見ながらお話されています。
 間の空間を遮るものは桜子さまの低めなデスクひとつきりなので、横向きな私の姿が余裕で丸見えのはずです。

「バストにして欲しい、っておっしゃるので、ああいう格好なの。ほら、ウチはほとんど女性のお客様しか来ないから、お客様がよろしいのならかまいませんよ、って」
 そのお客様が何か答えたようでしたが、お声が小さくて聞こえませんでした。
「そうですね。大胆て言えば大胆だけれど、人それぞれ、いろんなご趣味があるから・・・」
 その後、純さまもヒソヒソ声になって、おふたりでクスクス笑っているようです。
 ああん、なんていう恥ずかしさ。
 私は真っ赤になってうつむきます。
 だけどやっぱり気になって、上目遣いに周囲を見回します。
 桜子さまとシーナさまは立ったまま私を見下ろし、お顔を見合わせてニヤニヤ笑い。

 シャーッ!
 桜子さまが試着室のカーテンを開いたようです。
 その音につられて左側を見ると・・・
「あっ!」
 試着室の奥一面の大きな鏡に、横向きな私の姿がクッキリと映っていました。
 自らTシャツをまくりあげておっぱいを丸出しにしているショートボブな女の横顔。
 それはまぎれもなく私でした。
 籐椅子のアームレストで下半身こそ見えませんが、お腹から上、まあるい乳房とツンと尖った乳首は鮮明に丸見えでした。
 私に背を向けていたそのお客様が鏡の中の私に気づいたのでしょう、その華奢な両肩がビクンと震えました。

 鏡によって客観的に自分の姿をつきつけられると、今更ながら我がことながら、その格好と状況があまりにアブノーマルだと実感させられます。
 カラフルなお洋服や雑貨に囲まれた営業中のお洒落なブティック店内で、ファッショナブルに着飾った人たちの中、ひとりだけおっぱい丸出しの私。
 私の数メートル向こうにいる試着のお客様は、まるっきり見ず知らずの女性。
 賑わう店内のハンガーラックの向こうには、あと数人、見知らぬお客様がいらっしゃるのです。
 そんな中で、ひとりだけ、ほぼ全裸な私・・・

 そう言えば、あの試着のお客様が桜子さまの背後を通ったとき、私の下半身まで見えちゃったのかしら?
 たぶん、桜子さまやシーナさまの背中で隠れていたとは思うけれど・・・いいえ、そう思いたい・・・
 おっぱいだけじゃなくて、お尻もアソコも実は丸出しだなんて知られちゃったら・・・
 異常過ぎ、破廉恥過ぎ、ヘンタイ過ぎ・・・

 その試着のお客さまは、今は、鏡の中の私をジーッと視ているご様子。
 私の中の被虐願望がグングン燃え上がり、奥がグジュグジュ騒ぎ始めていました。
 ああん、そんなに視ないで・・・だけどもっと視てぇ・・・
 今すぐ立ち上がって、下半身まですべてを視せてしまいたい・・・
 ハンガーラックの向こうのお客様に、こっちに来て私を視てください、ってお願いしたい・・・
 そんなアブナイ衝動をなんとか抑えつけながらも、今、自分が感じている羞恥と恥辱がもたらす甘美な興奮にたまらず、ウットリと目を閉じました。

「あら純ちゃん、ご試着のお客様?それならわたしがお手伝いしよっか。あちらには他にもお客様がいらっしゃっているのでしょう?」
 シーナさまのお声で渦巻く妄想が途切れ、我に返りました。
 シーナさまが桜子さまの傍らを離れ、試着室のほうへ歩いていきます。
「あ、ほんと?ありがとう。それじゃあお言葉に甘えてお願いします。こちらのワンピース2種類。もしもサイズが合わなかったら言ってください」
 純さまがお洋服をシーナさまに渡し、スタスタとレジのほうに戻っていきます。
 途中、私の前で立ち止まり、二ッて笑いかけてきました。

「さて、そろそろワタシたちも再開しますね。お客さま、先ほどのようにお顔を上げて胸を張ってください」
 桜子さまの私への口調が、突然、とても丁寧になりました。
 おそらく、普通のお客様が試着のために近くにおられるので、さっきまでみたいなエスエムごっこぽい内輪な接し方はマズイと判断されたのでしょう。
 さすが接客のプロな状況判断。
 そのお声に私も、さっきまでの興奮をなだめるべく、籐椅子の中でシャンと背筋を伸ばしました。
 
 試着室前のシーナさまの動向も気になります。。
 左側に寄り目してそちらをうかがうと、そのお客様はまだ試着室に入らず、シーナさまとなにやらコソコソクスクスとお話されているようです。
 試着のお客様は、今ではすっかりこちらを向いて、遠慮無い視線で生の私を視ながら、ときどきクスッと笑ったり、へーって感心したりしつつ、シーナさまのお話にうなずいています。
 シーナさまったら、そのお客様にどんなお話をされているのかしら?
 たぶん、私を辱めるようなことだとは思うけれど・・・

 そうしているあいだに、桜子さまの手で私の右おっぱいに真紅の薔薇が咲かされ、細いブラシが再び肌を這いまわり始めていました。


コートを脱いで昼食を 28