2022年6月2日

肌色休暇二日目~いけにえの賛美 19

 ご陽気にはしゃがれるみなさまの中にひとり全裸で放り込まれてしまった私は、どうしても目線がうつむきがち。
 車座中央に置いてあるおつまみの乗った大きなお皿をボーッと眺め、使い捨ての紙のやつみたい…なんて、どうでもいいことを考えながらモジモジしていました。

「全員揃ったことだし、もう一度乾杯しましょうか」

 寺田さまが私に、大きめで半透明なプラスティックのコップに注がれた飲み物を差し出してくださりながらみなさまにお声がけ。
 渡してくださった飲み物は、飲み口側が泡で包まれ、コップが黄金色に染まっているのでビールだと思われます。

「我らが名塚先生のレズビアンハーレム、官能の楽園へようこそ!存分に愉しんでいってね。カンパーイッ!」

 寺田さまの音頭で、それぞれのコップを高く掲げられるみなさま。
 お姉さまと寺田さまと中村さまのコップは葡萄色に染まっているので、おそらく赤かロゼのワイン、名塚先生と五十嵐さまのは無色だから、白ワイン?日本酒?焼酎?

「明日、明後日のあと二日間、よろしくお願いいたします」

 お姉さまが名塚先生に頭をお下げになっているのを見て、私もあわてて同じ動作。
 お姉さまの動きの気配に少し遅れてそっと頭を上げると、名塚先生がたおやかな笑顔でうなずき返してくださいました。
 お風呂上がりで喉が乾いていたこともあり、いただいた飲み物をゴクっと喉に流し込みます。

「あれ?このビール、あまい…」

 驚いた拍子に思わず声に出てしまいました。

「ビールをジンジャーエールで割っているのよ、シャンディガフって名前でイギリス由来の歴としたカクテル」

 寺田さまが教えてくださいました。
 口当たりが良いのでゴクゴク飲めてしまいます。

「おっ、直子もイケるクチなんだ。コップ貸して、あかわり作ってあげる」

 中村さまが手を伸ばしてくださったので、空になったコップをお渡ししました。

「ほら、もうこんなの取っちゃいなさい」

 左隣のお姉さまが私の頭のタオルを外してくださり、まだしっとり気味な私の髪を、開いた右手の指四本で優しく梳いてくださいます。
 甘えるように首を左側へと傾ける私。
 そうしているあいだに中村さまがおかわりを渡してくださいました。

「ほらショーコちゃん、直子も落ち着いてきたようだから、あれ、やってもらえば?」

 こちらの様子をニヤニヤ眺めていらっしゃった寺田さまから、五十嵐さまにお声がかかりました。

「あ、そうだった。せっかく地下室からえっちらおっちら持ってきたのに、危うく忘れちゃうところだった」

 スクっと立ち上がられた五十嵐さまが入口近くの壁際に立て掛けてあったご自分の身長よりも少し低いくらいな長方形の大きなガラス板?を軽々とお持ちになり、近くの襖に立て掛け直してから元の位置まで戻られました。

「さっきお食事しながらみんなで色々話したの。イガちゃんさ、直子に人間テーブルして欲しいんだって」

 左隣のお姉さまが教えてくださいます。

 …人間テーブル?

「外国の写真だったかビデオだったかで見たことあって衝撃的だったんだって。それで今度の作品にそういうエピソードを出したいから、実際にそういう場に臨んだらどんなふうに思うのか実体験してみたいんだってさ」

 中村さまからの補足説明。

 そう言えば五十嵐さまは、同人でえっちな漫画を描かれていらっしゃる、ってどなたかから聞かされた覚えが…
 私にこの格好でテーブルになれ、ということでしょうか…
 全身の温度がグンと上がった気がしたのは、お酒のせいだけではないみたい。

「それはフォルニフィニアって呼ばれるフェティシズムの一種ね。人間のからだをモノ扱いしたりされたりすることで生まれる支配と被支配、征服と隷属の関係性の具現化。とくにエロティックな裸の女性をテーブルや椅子、燭台や照明器具みたいな家具として拘束放置する行為がフォルニフィニアと呼ばれているの」

 いきなりのアカデミックな解説は名塚先生。
 コップの中の透明な液体をクイッと飲み干され、つづけられます。

「欧米だとBDSMの一分野としてアート的な見地で語られたりもしているし、日本だと、乱歩の人間椅子は性倒錯ものとして有名だし芸術として評価もされているわよね。あ、でもほら、あれ、裸の女性にお刺身乗せて愉しむ、女体盛り?は、脂ぎった男性目線で悪趣味なだけだと思うけれど」

 名塚先生のコップに寺田さまが注ぎ直された瓶を拝見すると、どうやら飲まれているのは日本酒のよう。
 そのコップを再びクイッと傾けられ、名塚先生が尚もつづけられます。

「わたくしも、たまにここでM女を家具にしているのよ。お尻を上向きに柱に縛り付けて花器にして性器とアヌスにお花生けたり、縁側にうずくまらせてオットマンにしたりね」

 ひと月ちょっと前、やよいママさまのお店に伺ったとき、シーナさまのテーブルのお足下に裸でうずくまられていたジャクリーンさまを思い出します。
 名塚先生もいくらかお酔いになられておられるのでしょう、ご執筆中の憑依状態とはまた違う、品を残されながらもサディズム全開のえげつないお話をスラスラ口にされています。

「それならアタシらもアートにしなきゃね。とりあえず真ん中を片付けて空けて、テーブルの設置場所にしましょう」

 寺田さまのひと声で車座中央のお酒の瓶類やおつまみのお皿が脇に退けられました。

「畳に直は可哀想だから毛布を敷いて上げる。せっかくお風呂でキレイにしたんだし、ショーコちゃんの資料としての写真映えも良くなるだろうしね」

 例の桐箪笥に取りつかれた寺田さまが、真ん中くらいの抽斗から真っ赤な毛布を引きずり出されました。
 お座敷の広い場所でいったん広げられたそれが二つ折り、三つ折りされ、車座中央に敷かれます。
 畳一枚が三分の二くらい隠れるスペースです。

「四つん這いかな?それとも、まさかの仰向け?」

「うちが見たのは四つん這いだったけど…」

 中村さまと五十嵐さまの会話。

「あ、でも仰向けってスゴそうじゃない?いかにもセキララって感じになりそう」

 茶化すようにおっしゃったのは寺田さま。

「そうね。それでやってみましょう。直子?その毛布の上に仰向けで横になりなさい」

 すごく久しぶりにお聞きした気がする、お姉さまのご命令口調。

「は、はい…」

 その冷ややかな声音にゾクゾク感じながらお座布団から立ち上がった私。
 座っているみなさまから全裸を見上げられつつ、赤い毛布の真ん中辺りにお尻をつけ、そのまま背中を倒して寝そべりました。
 もちろん両脚はぴったりと閉じて真っ直ぐに伸ばし、両手も両脇につけた一直線状態。

 周りのみなさまが中腰になられたので、今度はみなさまから裸身を見下される形。
 なんだか生贄とか人体実験の被験者になった気分です。

「ほら、そんなふうにお行儀良く寝そべっていても、テーブルには成れないでしょう?」

 お姉さまの詰るようなご叱責。

「あら社長、そもそもお行儀の良い女の子は、こんなふうにみんなの前に素っ裸で寝そべったりは、しないものではなくて?」

 寺田さまがニクタラシイお芝居声でまぜっかえされます。

「両手のひらをたいらにして、両腕を高く上げるの。脚もね。足の裏も上向きでたいらになるように上げるのよ」

 苦笑いを浮かべられたお姉さまがしゃがみ込まれ、私の顔を覗き込んでいらっしゃいます。

「は、はい…」

 両手を高く差し伸べるのは簡単です、寝たまま虚空に両腕を突き上げればいいだけですし、肘を曲げれば高さだっていかようにも調節可能。
 問題は両脚でした。

 両脚をびったり閉じたままでも高く突き上げることは出来ますが、それでは腕に比べて高く上がり過ぎてしまうのです。
 高さを減らすためには膝を曲げなければなりませんし、膝を曲げようとすると自然と股も開きます。
 その上、足の裏を上向きにしなければならないのです。

 膝を曲げて高度を下げるたびに私の両腿の付け根がどんどん開いていきます。
 それにつられて腰は浮き、足の裏を意識するたびに両膝のあいだもどんどん広がっていきました。

「うわ、これは恥ずかしいねー」
「ひっくり返ったカエルって感じだね。何もかも全部おっぴろげー、で」
「何がスゴいって、この子今、自分からこのポーズになったんだよね」
「全面降伏、どうにでもして、って感じ」
「ほら、早くテーブル乗せてみよう」

 ご容赦の無い嘲りのお声が上から降り注ぎ、私の全身に羞恥の火照りが駆け巡ります。
 名塚先生以外のみなさまがお立ち上がりになられ、五十嵐さまが運んでこられたガラス板?を私の上にかぶせてきます。

 まず左手、すぐに右手。
 想像していたよりもずいぶんと軽い…あ、硬度のある透明なアクリル板なんだ…
 つづいて左足、右足。

「うーん、足のほうがちょっと高くてナナメってるよ」

 五十嵐さまのお声がしたと思ったら、足側の板がグイッと下に押されました。

「ああんっ!」

 押されると同時に私の両膝が更にグイッと割られ、股関節も更に開いてしまいます。

「あれ?なんか今、テーブルが啼かなかった?」

 寺田さまのクスクス笑い混じりなお芝居声。
 五十嵐さまは、あちこちアングルを変えられて、私の姿をカシャカシャ写真に撮っているみたい。

「まさかー、テーブルが啼くわけないじゃない。そんなことより、コップを戻してテーブルの具合を試してみませんこと?」

 中村さまもお芝居声でお応えになり、私が支えるアクリル板の上に、おつまみの大皿とみなさまの飲みかけのコップが戻されます。
 重そうな酒瓶類やアイスペールは戻されなかったのは、みなさまのお優しさなのでしょうか。

 コップ類が置かれても重さはさして変わりませんでしたが、みなさまがそれぞれのお座布団にお座り直され、至近距離から透明越しに見下される立場となり、被虐感がグンと増します。

「このテーブル、なんだか微妙にグラグラ揺れてる気がするわね」
「ワタシの目の前に、ねっとり濡れそぼった卑猥な穴があるんですけど」
「アタシのとこでは、眉根にシワ寄せて辛そうに火照った顔がアタシを恨めしげに見上げてるわよ」
「あら、テーブルの下のこのふたつのポッチは何かしら?すごく弄って欲しそうにそそり立っているけれど」

 みなさまお芝居口調で口々に私をいたぶるようなご感想を述べられています。
 そのあいだも五十嵐さまは、私の無様な痴態撮影に大忙し。

「はうんっ!」

 横向きな私の裸身を見下ろす位置に座られたお姉さまが、不意にアクリル板の下に手を伸ばされ、私の硬く尖立した右乳首を指先でピンッと弾かれました。
 途端に全身にビリビリっと電流が駆け抜け、テーブルが大きくグラリと揺れてしまいます。

「あっ!ヤバいっ!」

 あわててそれぞれのコップに手を伸ばされるみなさま。
 テーブルのアクリル板からあやうく滑り落ちそうになったおつまみの大皿は、名塚先生が間一髪で持ち上げられ、中身を周囲にぶちまけてしまうことを阻止してくださいました。

「なんだか危なっかしいテーブルね。とんだ不良品だわ」

 相変わらずのお芝居口調でおっしゃった中村さまが、マドラーの持ち手で私の濡れそぼった肉襞を楕円に沿うようにススーッと撫ぜました。

「あぁんっ!」

 今度は何も乗っていないアクリル板だけが大げさにガクンと跳ねました。

「まあ、こんな格好で支えつづけるのって空気椅子みたいなもので、ある意味拷問だから、数分で手も足もガクガク痙攣しちゃうわよ。そこにイタズラなんかされたら、ひとたまりもないでしょうね」

 ご愉快そうに微笑まれた名塚先生、少し周囲をキョロキョロされた後、つづけられます。

「仰向けでテーブルにするのなら、肘と膝を縄で括っちゃって動けないように固定するのが安全ね。ほら、こんな具合に」

 名塚先生が傍らに散らばっていた書籍のうちの一冊をパラパラっとめくられ、広げたページをみなさまにお見せになられています。

「こんな感じに拘束しちゃえば、おっぱいや性器をちょっとくらいイタズラしても、プルプル震えて身悶えるくらいの芋虫みたいな反応しか出来ないから、安心して使えるでしょう?」
「ただし棒枷まで使ってここまでカッチリ拘束されちゃうとM女は辛いでしょうね。それこそ腹筋くらいしか動かせないもの」

 シラッと恐ろしことをおっしゃる名塚先生。
 みなさまも、なるほどねー、というご反応をされた後、私にもその写真を見せてくださいます。

 赤いボールギャグを噛まされた首輪全裸の金髪白人美人さんが、両腕両脚を左右それぞれ肘折と膝折に束ねた四本の支柱として縛り上げられ、棒枷で大股開きに固定された両膝とお顔の両側に突き出した両肘で大きなガラス板?を支えておられるお写真でした。
 
 ガラス板?の上には、大きなガラスの灰皿とブランデーの瓶、アイスペール、そして乗馬鞭が重そうに置かれ、その人間テーブルの直ぐ側に置かれた高級そうなソファーにセクシーなボンデージスーツ姿の黒人美人さんが優雅にブランデーグラスを傾けられていました。

 今の私よりも数倍無様に人間テーブル化されてしまった金髪美人さんのお姿にもゾクッと震えたのですが、間髪を入れずに該当書籍の該当写真ページを指し示される名塚先生の博識ぶりと言うかリファレンスの迅速さは、このかたの頭の中って、こういう知識とデータで溢れかえっておられるんだ、と別の意味でゾクゾクっと身震いしてしまいました。

「だから初心者なら、四つん這いでさせたほうが、お酒こぼされたりナッツばらまかれたりみたいな後々の手間がかからなくてよ」

 優雅におっしゃいつつ、ふわーっと可愛らしく欠伸をされた名塚先生。

「今日は久しぶりに長い時間お陽さまに当たったせいか、お酒がほどよく効いて、いい感じに眠くなっちゃった。明日は早いことだし、わたくしはこのへんでお先にやすませていただくわ。あとはよしなに、ね」

 名塚先生がンーーッと伸びをされたのが合図だったかのように寺田さまがスクっと立ち上がられ、別の間へつづく襖をスーッと開けられました。
 おふたりが襖の向こう側へお消えになると、今度は中村さまが立ち上がられ、私が支えていたアクリル板を外してくださいました。

「そういうことだから、ほら直子、今度は四つん這い」

 中村さまが、さも当然のようにおっしゃると、お姉さまがお応えになります。

「そうね。なんか中途半端にこれで終わっちゃうのもオチがつかないし。イガちゃんの参考資料のためにも四つん這いもやっておかなくちゃ」

「でも、先生がお隣でおやすみになるのなら、いつまでもここで騒ぐのは不味いんじゃない?」

 至極真っ当なご意見を述べられる五十嵐さま。

「それもそうね。ならササッと直子の四つん這いテーブルも写真に撮って、今夜はお開きということにしましょうか。ほら直子、さっさと四つん這いにおなりなさい」

 お姉さまに急き立てられ、アクリル板が消えてもずっと恥ずかし過ぎる格好をキープしつづけていた私はあわてて身を翻し、両手両膝を毛布について四つん這いになります。
 そこで襖が開き、寺田さまが戻っていらっしゃいました。

「お、今度は四つん這いね。こっちだとちょっと高めなテーブルになるんだ」

 寺田さまが嬉しそうに元の位置にお座りになられます。

「うん、そうなんだけれど、先生がお隣でおやすみになられているのに、あたしたちがまだ騒いでいるのもどうかな、と思って…」

 お姉さまがヒソヒソお声のご相談。

「先生がこんな時間におやすみになるのも珍しいのだけれど、本当に眠そうだったし、それだけ今日のあれやこれやが愉しくて充実満足されたのだと思う。お布団敷いたらコテンと目を閉じちゃったし」

 寺田さまが手酌でご自分のコップに白ワインを注ぎ足されます。
 ちなみに時刻は夜の10時半ちょっと過ぎです。

「でもまあ、明日が早いのはアタシも同じだしエミリーたちだってふたりだけでイチャイチャもしたいだろうし、今夜はこのへんでお開きにしようか。ショーコちゃん、直子にテーブルかぶせて」

 寺田さまからお声がけされ、五十嵐さまが四つん這いな私の背中に再びアクリル板を乗せてこられました。
 そのあいだに寺田さまが名塚先生の机上から何やら片手大のものを手にされます。

「ここでまたお酒のコップとか乗せてもつまんないし、せっかく人間テーブルがあるのだから最後のひと勝負をしましょう」

 寺田さまのお手の中に一組のトランプ。
 それをご器用にパラパラっとお切りになりながらおっしゃいます。

「最後の一発勝負。勝った人はレズ便器直子のからだを思う存分好きに出来る!」

 お得意気におっしゃったのですが、途端にブーイングの嵐。

「それって今の状態と同じじゃん」
「ぜんぜんご褒美じゃないしー」
「それってエミリーに恨まれそうでやだー」
「もっとスリリングなのがいいー」

 みなさま大人のかたですから、お隣でやすまれておられる名塚先生にご遠慮されてか、見た目かなり酔われていても大きなお声はなく、高校生の修学旅行の消灯後みたいなテンションで盛り上がられています。

「わかった、それじゃあこうしましょう。ご褒美ではなくて罰ゲーム。ビリの人は直子がして欲しいこと、性的なこと限定ね、を、この勝負の後ひとつ叶えてあげること。その代わり直子はゲーム中何をされても絶対テーブルを崩さないこと」
「もしも直子が堪え切れずにまたテーブルをぶちまけてしまったら、今夜は庭のジョセフィーヌの犬小屋で仲睦まじく一晩過ごす、ってことでどう?」

 私以外の満場一致で決まり、一発勝負のゲームは七並べ。
 名塚先生がおられた位置に寺田さま、私のお尻の位置に五十嵐さま、寺田さまの向かいにお姉さま、私の顔の位置に中村さまという布陣。
 もちろん五十嵐さまはゲームが始まるまで、私の四つん這いテーブル姿を様々なアングルでカシャカシャ写真に収められています。

「アタシ、七並べは得意なの。性格悪いから」
「うちの真ん前がお尻の穴だよ。でもこんなに酷いことされているのにドマゾのマンコってグジュグジュダラダラに濡れちゃうんだね、肛門も時々ヒクヒクしてるし」
「ほら、直子はあまり飲んでいないでしょ?ストロー刺してあげるから、お酒も愉しみな」
「さっきは飛び出てたポッチが今度はぶら下がってる。本当、弄りたくなる形と大きさなのよね」

 みなさまコップ片手に口々にお好きなことをおっしゃいつつゲームのあいだ中、意味も無く私の乳首がつままれ、マゾマンコと肛門を弄くられ、パスを強いられるたびに八つ当たりでお尻や乳房やほっぺたをピシャっとはたかれ…
 それでもテーブルに並べられているカードを極力乱さないよう、名塚先生のご安眠のお邪魔をしないよう、身悶えと淫声を必死に堪え、目尻に涙を溜めて懸命に耐え忍ぶ私。

 私の体感時計では永遠にも感じる時間でしたが、実際は10分に満たないくらいだったと思います。
 着順は、寺田さま、五十嵐さま、中村さま。
 ビリはまさかのお姉さま。
 
 後で寺田さまがこっそり教えてくださったのですが、あのトランプには、お姉さま以外のお三かたはご存知なイカサマの仕掛けがあって、初めて来られたお客様をえっちな勝負に嵌めて愉しむのによく使われているそう。
 つまり、お姉さまは負けるべくして負けたわけで、あの勝負は私のために、みなさまからの歓迎の意味を込めた接待七並べだったのだそうです。


2022年5月8日

肌色休暇二日目~いけにえの賛美 18

 薄闇の中にボーッと浮かび上がるパソコンモニターの青白い光の向こうで、あるじさまがうつむきがちにキーボードを打たれています。
 私が縛り付けられた柱からはノートパソコンの天板の陰となるので、そのご表情までわかりませんが、キーボードを叩かれる音のリズミカルさで物語が着々と紡がれているのであろうことはわかります。

 電マの頭に取り付けられた軟体動物のような触手にマゾマンコをつらぬかれたまま、完全放置状態な私。
 左側からキーボードを叩かれるパタパタという微かな音。
 右側からはリーリーリーと軽やかに晩夏を告げる虫さんたちの声。
 そして本当に時折、思い出したように足下のボウルを打つ、ポタッという恥ずかしい水音…
 拷問具がいつ動き出すのか、ゾクゾク、ソワソワ、ムラムラ怯えている私。

 じっとしていると両乳首を苛むクリップの疼痛が、皮膚の内側で増大してきます。
 膣穴を圧迫するだけな異物感ももどかしい…

 ああんっ、あるじさま、早くスイッチを入れてくださらないかな…
 入れられた途端に恥ずかしい嬌声をあげてしまいそう…
 あっ、でも、ガラス戸まで開けっ放しだから、私の恥ずかしい淫ら声がお庭にまで響いちゃう…

 そんなことを考えつつ、あるじさまのほうを物欲しげに窺いながら5分くらい過ぎた後…
 股間にあてがわれた異物が突然、唸り始めました。

 ンヴゥーーーーーーーーーーーーーーーーーッ…

 低い唸り声と一緒に下腹部が振動に包まれます。
 それも、いきなり、立っていられないほどに激しく。

「はぁぅーっんっ!!」

 ひと声いなないてからは、もう制御不能。
 膣壁に満遍なくへばりついたグミのかたまりみたいな触手が、てんでばらばらにウネウネ震えて膣穴の奥底から全身を揺さぶってきます。
 恥丘を覆うゼリーのような凹凸に、腫れたクリトリスが高速で擦られています。

「あうっ、あんっ、あっ、はうっ、あんっ、あーっ…」

 急激に昂ぶる私。
 柱に縛り付けられているのでしゃがみ込む事も出来ず、前屈み気味になると乳房から二の腕を這う縄が一層素肌に食い込み、不自由なからだがクネクネ身悶えて乳首の鈴がでたらめにリンリン高鳴っています。

「あぁんっ、はぁんっ、ふぅんっ、ひぃっ、ふふぅっ、いいっ、いひぃっ…」

 吸う、吐く、の呼吸すべてが、淫らなヨガり声になってしまっています。
 股の裂け目から快感の粒々がどんどんジワジワ全身へと広がり、脳へとせり上がってきます。

「あんっ、いいっ、ふーんっ、あっ、あっ、あっ、だめっ…」

「いいっ、ああっ、あるじぃ、あるじぃさまぁっ、んーっ、いいっ、いってもぉ、イってもよろしぃっ、んっ…」

 いつものクセで、私を責め立ててくださるかたにお許しを乞う私。

「いっても、んんっ、ああんんっ、もうっ、イッてもよろしぃでしょーかあぁぁぁーッ!!!」

 あるじさまのほうへ顔を向けて必死の懇願をするも、あるじさまはお顔も上げてくださらず、だけどお許しの無いままあっさりイッてしまった私。
 からだ中がガクンガクン震えて体内に火花が駆け巡り頭の中は真っ白に…

 一瞬意識が飛んだ、と思う間も無く容赦無く股間を刺激してくる振動で現実に戻されます。
 より腫れ上がったクリトリスが、より敏感になって…

「あっ、あんっ、もうっ、またっ、いいっ、いいーっ、もうっ、あーーーッ!!!」

 全身を細かく痙攣させてイキ果てた、と思ったらまたすぐに…

「あ、あ、あんっ、いやっ、また、またっ、またっ、またぁーーーーッ!!!」

 イキ癖がついてしまったら、今度こそ完全に制御不能。
 だって電マさまはそ知らぬお顔で、決して許してくださらないから…
 ずっと激しく震えっ放しだから…

「あっ!またっ、あんっ!またイクっ!ごめんなさいっ!またイクゥゥゥゥーッ!!!」

「いやっ!もうっ!もうだめっ!あっ、あっ、あぁぁぁぁーーッ!!!」

 自分でもびっくりするほどの大きな淫声をあげてイキつづけます。
 だらしなく開いた口からはよだれダラダラ。
 足下から聞こえている音がピチャピチャに変わっています。

「いやーっ!許してッ!もうっ!ゆるしてくださいーーッ!だめっ!もうだめっ!ンンンンーーーッ!!!」

「あーっ!いやっ!もうっ!こわれちゃう!なおこのこわれちゃうっ!またっ!だめェーーーーッ!!!」

 絶え間なく襲い来るオーガズムの大波小波に翻弄されるだけの私。
 ギュッと目を瞑り、自分がどこにいるのかも忘れ、思いつくままの懇願を声にします。
 普段ならうっとり酔い痴れちゃう絶頂時の快感が、耐え忍ぶものに変わってきています。

「あうっ、あうっ、あうっ、あうっ、あうーっ、んんんんーーーッ!!!」

 なんで私は、こんなことをされなければいけないのだろう…
 気持ちいいのなんてとっくに通り越して、今の状態はまさしく拷問…

「あっ!いやっ!もうっ!許してッ!だめっ!あんッ、いやーーーーッ!!!」

 だけどこれは私が望んで飛び込んだ窮地。
 自分でからだを柱に縛り付け、何をされても抵抗出来ない状態にしたのは自分。
 そんないやらしいことばかり考えているマゾ牝には、罰が下って当然。

 振動に蹂躙されつづけてどんよりした頭に、そんなとりとめのない悔恨が浮かびます。
 内腿やふくらはぎがビチョビチョに濡れている気がします。
 もう声を出すことにも疲れ果て、快楽の波と同じリズムの唸り声と鼻息を洩らすだけ。

「んーふぅッ!んーふぅッ!んーふぅッ!んーぐぅッ!んふぐぅーーーーッ!!!」

 頭の中が真っ白になり、意識がスーッと遠のいていきました。
 プツンと途切れる寸前に、自分の下半身だけが別の生き物のようにガクガク前後に揺れているのが見えました。

***

 鼻腔をくすぐる甘ったるい刺激臭を感じて目が覚めました。
 えっ?何っ?ここどこ?えっ?…
 目覚めたときのお約束な軽いパニックはすぐ終わり、私の眼前に名塚先生。

 私は背中を柱に預け、お尻を畳の上に置いて両脚を投げ出して、全裸で座っていました。
 バストの縄も股縄も乳首のクリップも股間の拷問具もメイドカチューシャも、全部外されています。
 更にピチピチレオタードも脱がされ、ツインテールも解かれて、私が身に着けているのはいつもの赤い首輪だけ。

「起きたな。さすがに若いマゾ牝は回復が早い」

 名塚先生、いえ、ご口調はまだあるじさまっぽいかな、が私の傍らにしゃがみ込まれ、私の鼻先に小さなグラスを突きつけていらっしゃいました。
 昼間にジョセフィーヌさまと広場にお散歩に行ったときにも嗅いだ果実系の甘い香り、ブランデーの香りです。
 ただ、あるじさまが持たれているグラスの中身は、水で薄めていない原液みたい。

「ほら、これをクイッと飲み干せばいくらかシャキっとするだろう」

 そうおっしゃてグラスの縁を私の唇にあてがってくださるあるじさま。
 グラスが傾き、口内から喉、胃の腑へとトロリとした液体が滑り落ちていきます。
 体内に入った途端にカッと燃えるように全身の細胞がザワついて、五感が戻った感じ。

 ただ、そのあまりに強烈な刺激にケホケホっとむせてしまった私に、すかさず別のお水の入ったグラスを渡してくださる、お優しいあるじさま。
 冷たいお水が喉を滑るに任せてゴクゴクゴク、ふぅーっと一息つくと同時に、からだがポカポカ火照り始めました。

「おまえは本当にいい声出してイクんだねえ。おかげでわたくしも捗って捗って、予定していたよりも随分先まで進んだよ」

 空になった私のグラスに、あるじさまが水差しからおかわりをついでくださいます。
 それもゴクゴク、一息で飲み干す私。

「あれだけ喘いでいたのだから、そりゃあ喉も渇くだろうねえ。小一時間くらいのあいだに二十回以上はイッてたんじゃないか?」

 あるじさまの呆れたようなお言葉が羞恥を呼び、それに伴う肌の火照りで両乳首に血液が集まり、皮膚感覚の敏感さまで舞い戻ってきます。
 私から少し離れられたあるじさまの右手が、スーッと私の右乳房を撫でました。

「ぁふぅーーんッ!」

 自分でもびっくりするくらい大きくていやらしい吐息が自分の口から零れます。

「おまえの縄を解いてやっていたときも、気を失っているようなのに今みたいにいやらしい息吐いて、クネクネ身悶えていたな。張形を抜いたときも、尻の穴までヒクヒク蠢いていた」

 そう言われてみれば目覚める寸前まで、何て言ったらいいのか、凄くマゾ牝好みな、もの凄くえっちに陵辱される夢を見ていたような気もします。

「ほら、もう立てるだろう?ちょっと立ち上がってイリカワに出てごらん」

「えっ?ど、どこにですか?」

「入側だよ。若い子にはわからないか。庭側の廊下のことだ」

 苦笑いされながらあるじさまが教えてくださいます。
 よろよろと立ち上がった私は、まだガラス戸を開け放したままなお庭側の板の間に、そっと足を踏み入れます。

 網戸から室内よりほんの少しだけ冷たい空気が全裸の素肌を撫ぜて、火照っているからだに気持ちいい。
 んーーっと背伸びをしてからふと足下を見ると、板の間に置かれた白いボウル。

「それがおまえの淫乱なおまんこから延々と垂れ流されたドスケベ汁だ。張形を抜くとき、潮も勢い良く溢れ出ていたがな。それに臭いから言って小便も少なからず混ざっているだろうな」

 直径60センチはあろうかというボウルの白い底を満遍なく、少し泡立って透明度も低めな粘性ぽい液体が、水深1~2センチくらい溜まっています。
 これ全部、私のマゾマンコから分泌されちゃったんだ…
 喩えようのない恥ずかしさがゾワゾワっと全身に駆け巡ります。

「おまえは本当にどうしようもないドマゾ牝なんだな。さっきあれだけイキ果てたクセに、こんなものを見てまたサカリ始めてマゾ臭さをプンプンさせている。辱めを受けたくて仕方ないんだろうねえ」

 心底呆れ果てたというお顔で裸の私をジロジロ眺められるあるじさま。
 その蔑まれたご様子に私のマゾセンサーがまた、性懲りもなくウズウズ。

「でもわたくしは明日、人と約束があるから午前中に寺田と出かけなくてはならない。原稿も進んだことだし、今夜は早めに眠ることにする。だからその前にわたくしの寝酒につきあってくれると嬉しい」

 あるじさまが名塚先生にお戻りつつあるみたい。

「片付けはわたくしがやっておくから、あなたは汗を流していらっしゃい。外風呂の場所は知っているわよね?」

 たおやかなご口調、どうやら完全にお戻りになられた名塚先生。

「あ、はい…」

「悪いけれど、その洗面器も一緒に持って行ってお風呂で綺麗に洗ってきてくださると助かるわ」

 そうおっしゃってニッコリ笑われます。
 ご本心なのか辱めなのか、どうにも量りかねてしまいます。

「そこにある履物、どれでも使ってちょうだい。なるべく早く戻ってきてくださると嬉しいわ」

 おっしゃりながら網戸をスルスルっと開けてくださった名塚先生に、あ、はいっ、とお返事し、自分の恥ずかしい液体が溜まったボウルを両手で持ち上げます。
 やだ、思っていたよりちょっと重い…ずいぶん出しちゃったんだ…
 考えた途端に恥ずかしさがぶり返します。

 お部屋の灯りでぼんやり見えるウッドデッキに並んだサンダルのうち、白っぽく目立つ一揃いをつっかけ、ウッドデッキに降り立ちます。
 両手で捧げ持つように自分の淫らな分泌液が溜まったボウルを持ち、タオルも着替えも持たずな素っ裸で。

 お空には満点のお星さまたち。
 闇の中にぼんやり、昼間吊るされた立木が見えます。
 あの辺りまで歩いて行って左側を見れば目隠しの木立、それ沿いに建物のほうへと寄ったところに、あのシースルーバスルームがあるはずです。

 脳内シミュレーションを終え芝生に降り立ったところで、右前方からワンッと一声。
 ほどなくタッタッタと近づく足音はジョセフィーヌさま。

「あんっ!」

 私の足下にまとわりつくように戯れつかれ、ときどき私の剥き出しのお尻をぺろりと舐めてこられます。
 両手で持っているボウルがグラリと傾き、危うく自分の恥ずかしい液体を自分のからだに浴びせそうになります。

「あぁんっ、ごめんね。今は遊んであげられないの…」

 内腿と内腿のあいだを狙ったように舌を伸ばしてこられるジョセフィーヌさまから逃げるように、早足で立木にたどり着くと、左斜め前方、暗闇の中でボーッと光を放つバスルームが視認できました。
 どなたかが電気を点けてくださったのかな…?
 
 これだけの立派なお屋敷ですから、各施設の電気のオンオフくらい邸内からコントロール出来るのだろうな、とさして不思議にも思わず、その灯りを目指して歩を進めました。
 ジョセフィーヌさまも私がバスルームに向かっていると気づかれたのでしょう、急におとなしくなられ、私の右側にぴったり寄り添いエスコートしてくださるようについてこられます。

 無事バスルームに着き、ボウルをいったん地面に置いて、横開きのガラス戸を開きます。
 再びボウルを持ち、私が中へ入ろうとすると、扉の手前一メートルくらいの芝生にちょこんと座られたジョセフィーヌさまが小さくワンッと吠えられ、名残惜しそうに見送ってくださいました。

 このバスルームを使わせていただくのは今日だけでもう三回目ですから、勝手知ったる他人のお家という感じでタオルやソープをお借りし、首輪を外してさっさと浴室へ。
 
 ぬるま湯シャワーを流しっぱにして、まずはボウルの洗浄。
 恥ずかしい液体を排水口に流してから、スポンジでボウルの底面をゴシゴシ。
 高い位置に固定したシャワーの真下で作業していますから、あっという間に私もびしょ濡れ。

 シャンプーとトリートメントをちゃちゃっと済ませて髪の毛を頭上にまとめてから、ゆっくりと熱いシャワーをからだに浴びます。
 ソープを泡立てて全身を撫ぜていると、リラックスと一緒にあらためて今日一日の出来事が思い出されます。

 私今日一日で、どれだけイッちゃったんだろう…
 広場で吊るされ、お庭で吊るされ、あるじさまに虐められて、寺田さま、中村さまから辱められ、ジョセフィーヌさまにももてあそばれて…

 あるじさまは、もう今夜はおやすみになられるとおっしゃっていたけれど、私はお姉さまとのお部屋に戻って一緒に寝られるのかな?
 それにしてもさっきの電マ責めは凄かったな、本当に壊れちゃうかと思った…でも、無慈悲な拷問っていう感じが凄くヨかった…
 あ、そうだ、明日の朝もほぼ裸で、ジョセフィーヌさまとお散歩に行かなければいけないんだった…

 反芻しているうちに性懲りもなくムラムラも芽吹き、思わず両手を所定の位置に滑らせたくなってしまうのですから、困ったものです。
 いけないいけないとシャワーを冷水にして自分を律し、ボウルを携えて脱衣所に戻ります。

 バスタオルで髪の水気を丹念に拭った後、フェイスタオルを頭に巻いてから全身を拭います。
 シャワーしながらその部分を揉むようにマッサージもしていたのですが、両方の二の腕外側にまだくっきりと縄目の痕が残っています。
 そんなにきつく縛っちゃっていたんだ…とその痛々しい凸凹を指でそっと撫ぜたり。

 首輪を嵌め終えて少し迷いましたがバスタオルは巻かずに籠に戻して、そのまま戻ることにします。
 白いボウルに液体はもう入っていないので縁を右手で持ち、全裸のまま芝生に出ました。
 ジョセフィーヌさまのお姿が見えないのは、おそらく待っているのもご退屈になられ、ご自分の寝床へと戻られたのでしょう。

 夜も更けてお星さまたちがたくさん一層キラキラ瞬き、虫さんたちの音も増えた気がします。
 木立のところまで戻ったところでボウルを芝生に置き、両手をお空に大きく広げてンーーッて深呼吸。
 暑くもなく寒くもなく、すべて剥き出しの素肌に当たるそよ風が心地いい。

 何も着ていない状態に慣れ過ぎちゃったかな…
 この旅行のおかげで私、裸族になっちゃいそう…
 あ、でも東京でもこの季節は、お家でもオフィスでもほとんど裸で過ごしてたっけか…

 そんなしょーもないことを思いながら、ウッドデッキまでたどり着くと、網戸越しのガラス戸の向こう側がなんだかお賑やかそうな状態になっていました。

 網戸を滑らせガラス戸をそっと開けると…

「あっ、帰ってきた」
「やだっあの子、お風呂からそのまま真っ裸で戻ってきたんだー」
「本当、根っからの見せたがり露出狂マゾ女なんだねー」
「これは明日の遠征も大いに期待できそうじゃん…」

 一斉にかまびすしい嬌声を浴びせかけられます。
 名塚先生は座卓を方向転換されここからはお背中しか見えませんが、右回りに寺田さま、五十嵐さま、お姉さま、中村さまが車座になって畳の上のお座布団にお座りになられ、その中央の空間には何本かのお酒類らしきボトルとおつまみらしき大皿。
 どうやらひと足お先にご宴会を始められていたみたいです。

 恐る恐る板の間に上がり、今更ですがおっぱいと股間をぎこちなく隠しつつ、開けっ放しの障子戸をくぐってお座敷へ。
 みなさまご就寝の準備なのでしょう、オシャレなスェットやジャージをお召しの中、またもやひとりだけ全裸なCFNF状態。
 五十嵐さまが小さなデジカメを私に向けられ、盛んにシャッターをお切りになられています。

「お風呂お疲れー。ほら、オナ子はここにお座りなさい」

 中村さまがからかうみたいにおっしゃって立ち上がられ、お姉さまの右横にお座布団で席を作ってくださいます。
 五十嵐さまとお姉さまに挟まれ、一メートルくらいの空間越しに名塚先生とほぼ差し向かいの位置です。

「お屋敷中に響き渡っていた直子のヨガり声がぷっつり止んだから、そろそろ救出の頃合いかなと思って先生を訪ねたのよ。あたしもイガちゃんもまだちゃんと先生にご挨拶していなかったしぃ」

 お姉さまがご説明くださいますが、少しだけ呂律が怪しいご様子。
 あらためてみなさまのお顔を見遣ると、どなたもほんのり桜色。

「それで来てみたら直子はお風呂に行ってて、先生がこの後少しナイトキャップにもつきあってもらうおつもりっておっしゃったから、それなら我々もご相伴、ってなったの」
「直子が戻ってくるの遅いから、今までの直子の恥ずかしいあれやこれやをサカナにしてたら、ずいぶん盛り上がちゃった」

 とても愉しそうなお姉さまのお顔にホッと安堵すると同時に、なぜだかマゾ的なドキドキも高鳴ってしまう私でした。


2022年4月24日

肌色休暇二日目~いけにえの賛美 17

 あるじさまの机上を片付け、自分の食器類も飲み物だけを残してお廊下のワゴンへと下げました。
 それから自分の座卓へ戻り、ペタンと正座座り。
 この姿で正座すると、薄いレオタ越しに麻縄四本分な幅の股縄がクイッと、裂けめと内腿に食い込んできます。
 ちょっとキツくし過ぎたかな…

「あるじさま、終わりました」

 一応お声がけしておこうと、あるじさまのお背中へ問いかけます。

「そう。なら箪笥から、今度は10メートルの縄を二束取り出して一本に結びなさい」
「結び終えたら、抽斗の仕切りの右側の包みの中からからひとつ取り出して箪笥を閉めなさい」
「取り出すときに選んでは駄目だよ。視線を移してパッと最初に目についたものを取り出すこと」

 相変わらず両手をパタパタとキーボード上に滑らせつつ、振り向きもせずにご命令くださるあるじさま。

「は、はい…かしこまりました…」

 あるじさまに縛られてしまうのかな…でも、こういう純和風なお部屋で縛られるのって、ずっと以前からの憧れだったな…
 マゾ性をビンビン反応させつつ、再び膝立ちで箪笥に向かいます。

 10メートルの札が付いた麻袋をふたつみつけて縄を取り出し、縄の両端をしっかり結びつけました。
 今している股縄と同じく、どちらの縄もかなり年季が入ってクタクタでツヤツヤ、そしてしなやかです。
 そうしてから、箪笥抽斗の右側に目を移し、最初に目についたもの…

 白状すると、ここで私はズルをしてしまいました。
 右側に収められているのは、20~30センチ四方くらいのカラフルな不織布ポーチたち。
 その中で一番目立っていたのは500mlのペットボトルくらいに大きく膨らんだオレンジ色のポーチでした。
 そして先ほど、この抽斗についてあるじさまがご説明くださったお言葉も、しっかり覚えていました。

 …その段には、おまえみたいなマゾ女が大好きな麻縄と張形類がしまってある…

 おそらくあるじさまは、私を蹂躙するお道具を自分で選ばせて、追い込みながら嘲笑われるおつもりなのでしょう。
 そのくらいの太さのものでシーナさまに虐められた経験もあるにはあるのですが、お姉さまのいらっしゃらないところであまり淫らに乱れたくないという気持ちもありました。
 それに私は、男性器を模した形の張型類、ディルドやバイブには嫌悪感のほうが勝ってしまいます。

 そんな思いが一瞬のうちに脳内を駆け巡り、その大きく膨らんだポーチのふたつ横、制汗スプレーくらいの穏やかな膨らみを見せる緑色のポーチを咄嗟に手に取り、ガタンと抽斗を閉めました。

 結んだ麻縄と緑色の不織布ポーチを携えて再び膝立ち歩きで座卓に戻ります。
 正座してあるじさまへご報告。

「ご指示通り、いたしました…」

「そう。なら、そっちの襖とこっちの障子戸を開けると角が大きな柱になるから」

 キーボードから離れられたあるじさまの右手が、ご自身のご正面斜め右、正面お庭側の障子戸と右側の別の間とを区切っている襖が交わる一角を指さされます。
 確かにそこには、太くて四角い立派な木の柱が天井から床へと通っています。

「その柱に縄を結びつけて、自分が柱に磔になるように自縛しなさい。両手は後ろ手に固定して、身動き出来ないようにね」
「あと、お前が選んだオモチャは、ここに置いておきなさい」

 ご自身の文机の右端、さっきまで食器類が置いてあった空きスペースを指でトントンと叩かれたあるじさま。

「はい、承知いたしました」

 正座から、今度は完全に立ち上がり、ご指示通りに緑色の不織布ポーチを文机に置いた後、しずしずとお部屋の右隅へと移動。

 まず、正面側の障子戸を左側にスルスルッと滑らせます。
 少しの板の間の向こうに、漆黒に染まった大きなガラス窓。
 
 ピチピチレオタードに股縄だけ締めた私の恥ずかし過ぎる姿が、そのガラス窓にまるで鏡みたいに、クッキリと映り込んでいます。
 ツインテ頭の真っ白なメイドカチューシャと首に巻かれたペット用の赤い首輪が、この女はこの場で、明らかに蔑まれている最下層の存在だと雄弁に物語っています。

 つづけて右側のお部屋とのあいだを区切る襖を一枚、右側に滑らせます。
 右側のお部屋も畳敷きのようですが、電気が点いていないので薄暗く、中がどんな感じになっているのかはわかりません。

 そして、障子戸と襖が離れた一角が、30センチ四方くらいの太くて立派な濃茶の木柱と化しました。
 私を縛り付けて晒し者にするための磔柱…

 柱を用いての自縛は何度も経験済みでした。
 最初は高校生の頃、やよい先生、あ、いえ、今はやよいママさまのパートナーであるミイコさま自演のビデオで、そのノウハウを教わりました。

 その頃の自分の部屋には適した柱が無かったので、出窓の把手にロープを結んですぐさま実体験し、凄まじい快感を得ることが出来ました。
 独り暮らしになってからはシーナさまがレイアウトしてくださったお仕置き部屋で、お洗濯物用のポールやバレエレッスン用のバーに磔となり、ひとりで幾度も快楽を貪っていました。

 ただ、古いSM写真でよく見るような、こんなに雰囲気のあるレトロな和室で自縛したことはなかったので、もうそれだけでゾクゾク、ムラムラ…
 目の前のツヤツヤ黒光りする冷たい木柱の表面にそっと触れただけで、ヌルんと感じてしまっています。

 柱の位置は文机に向かわれたあるじさまの右斜め前方3~4メートルくらい。
 パソコン画面を見つめられているあるじさまがフッとお顔をお上げになれば、たやすく視界に入る位置。
 そう考えてあるじさまのほうを見ると、あるじさまがお顔を上げられ、私と視線がぶつかりました。

 その視線に促されるように、二つ折りにした麻縄を柱に巻き付け始めます。
 高さは私の胸の位置、ちょうど乳首の位置くらいがベスト。
 緩んで下がってしまわないように、キツキツの巻き結びでしっかり固定します。

 それから縄をピンと張りながら、自分の体に三回巻き付くくらいの長さを測りつつ、柱から離れます。
 あるじさまはキーを叩く両手を止められ、じっと私の行動を見つめていらっしゃいます。

 位置が決まったら余った縄は右手首に巻きつけ、両手を後ろ手に組みます。
 背中から二の腕へ左回りにからだを回転させて、縄を胸に巻きつけていきます。

 最初のひと巻きはおっぱいの上部分、膨らみ始めの辺りを狙って二の腕ごと、肌に縄が食い込むくらい張り詰めさせたままからだを回します。
 ふた巻目は乳房の丸みの下部分を狙って、下乳の裏に潜り込ませて持ち上げるみたいな感じ。
 こうすることで、おっぱいが縄で上下から絞られるような縛り方になります。

 最後のひと巻はおっぱいの上。
 両乳首の下あたりを狙って脂肪に食い込ませるように這わせます。
 乳首周辺の皮膚が突っ張り、尖った乳首がより一層背伸びさせられ、恥ずかしいほどにそそり立つんです。

 こうして私は、あるじさまの斜め前方に横向きの形で、木柱に縛り付けられた格好になりました。
 極薄レオタード生地に食い込む三層の二重になった縄模様、柱に背中を預けて身動きできない私…

「はうぅん…」

 思わず被虐の溜め息が洩れてしまいます。

「ふうん、ずいぶん手慣れているじゃないか?」

 あるじさまの感心されたような、同じくらい呆れられているようなお声が聞こえました。

「一緒に来たあの女社長に仕込まれたのかい?」

 ゆらりと立ち上がられつつ、あるじさまのあざ笑うようなお声。
 ご口調が完全に昼間のときと同じ嗜虐色に染まっています。
 どうやらご自分の物語の中に入られて、お話の中のサディストなミストレスに同化されてしまったみたい。
 
 立ち上がられると同時にお手元のリモコンか何かを弄られたのでしょう、室内の照明が一段階、明るくなりました。

「あ、いえ、き、緊縛はほとんど独学で覚えました…わ、私…オナ子は子供の頃からそういうのが好きなので…あ、もちろんお姉さまも縛りはお上手ですが…」

 私もオナ子になって名塚先生のシナリオに身を委ねてみることに決めました。
 そしてこの際、自分の性癖を包み隠さず打ち明けてしまおう、ひょっとしたらそれが何かご執筆の手助けになるかもしれないし、なんて生意気なことも考えていました。

「ふん、とんだ深窓のご令嬢がいたものだ。おまえは本当に生まれついてのマゾ牝なんだな」

 私のすぐ側まで来られたあるじさまは、左手首に緑色のポーチの絞り紐を引っ掛けられ、両手を腰に当てられて、まじまじと私の姿をご覧になられています。

「おっぱいをそんなに潰しちゃって。それ、わざとだね。いやらしい乳首が悦び勇んでおっ勃っているのを見せびらかせたいのだろう?」

 あるじさまの両手が私の胸元に近づいてきます。
 と思う間もなく、レオタードの胸のV字生地があっさりと縄下をくぐり、下乳まで押し開かれます。
 かろうじで薄い布地に覆われていた両乳房とその先端が、明るくなった室内灯の下に露わとなりました。

「ほら、見てごらん?」

 あるじさまが薄暗いままのお庭側の板の間を指さされます。
 そこには実際より少し大きくなった私の影が映っていました。
 お部屋の照明に照らされて暗い板の間に落ちる影。

 お部屋の照明に向かって横向きですから、落ちる影も横向きになります。
 横顔、首と下っていくと次は胸…
 そこには、いささか垂れ気味でいびつに歪んだお椀型の突端に、ちょっと恥ずかしくなるくらい飛び出ている親指大な突起物の影が落ちていました。

 喩えて言うなら、ホテルやレストランで従業員さまを呼び出すための、金属製銀色なお椀型で突起をチンと押す、呼び出しベル。
 縄でひしゃげているためお椀型はいびつですが、手で押す突起部分にずいぶん存在感があって、縄で根本を潰されている分、余計に痛々しく精一杯背伸びしているようで…
 それが実物の150%くらい大げさに、ほら、おまえはそういう女だ、と見せつけるみたいに板の間の平面に黒く描かれていました。

「ぁあっ…いやぁんっ…」

 今すぐ縄を解いて逃げ出したいくらいの恥ずかしさと、同じくらいの気持ち良さに、またもや吐息を洩らしてしまう私。

「でもまあ、オナ子が手のかからない生粋のマゾ牝で良かったとも思っているよ。縄の縛り方やら口のきき方やら、いちいち調教しなくちゃならない手間がはぶけるから」

 ニンマリと笑われたあるじさまが緑色のポーチを開かれます。

「なるほど。オナ子がピンときたのはこれか。確か去年の同じ頃、元気のいいコスプレ娘たちが置いていった、何やらややこしいことを言っていたやつね。わたくしはまだ使ったことなけれど…」

 あるじさまが素に戻られたのか、取り出されたそれと一緒に入っていたのであろう小さな紙片を黙読し始められます。
 あるじさまがお手に取られたそれは、私の目にはどう見てもマッサージ機、いわゆる電マの形状。
 
 それも、ほんの一ヶ月ちょっと前、リンコさまの計略で年端もいかない男の子たちに言いなりオモチャにされたとき当てがわれ、結局先っぽを膣内にまで挿入されてしまった、絶妙な大きさの電マです。

「ふふん、単三電池3本で約70分稼働…マゾ虐め専用なのでコントロールはリモート…アタッチメント……」

 あるじさまがご確認されるように小さなお声をお出しになられ、もう一度紙片のメモをおさらいされているのが微かに聞こえます。
 私は、その電マが自分のマゾマンコに当てられる妄想を先走りしてしまい、ゾクゾク濡れてきています。

 使い方をご理解されたらしいあるじさまがもう一歩私に近づかれ、私の鼻先にその電マを突きつけてこられます。
 私の顔を覗き込まれる、そのまなざしは淫らに歪んでいらっしゃるのですが、お眼鏡越しの瞳の怜悧さに背筋がゾクリッ、マゾマンコがヌルリッ。

「わたくしはねえ、哀れなマゾ女の淫らな喘ぎ声が大好物なんだ。いやらしくヨガってあられなく達する声をBGMにしていると不思議に仕事が捗るのさ。だからオナ子もイイ気持ちになっていいから、下品な声を存分に聞かせなさい」

 低いお声で囁かれると同時に、あるじさまの左手のひらがいきなり私の股間にあてがわれました。

「はぁんっ!」

「ふん、ビショビショじゃないか?縄までグズグズに湿らせて、内腿をスケベ汁がダラダラ垂れちゃってるよ?」

 あるじさまは、私の無毛な恥丘の上を四本通る麻縄を二本づつに抉じ開けられ、その隙間から指を一本、私の秘裂に挿し込んでこられました。
 もちろん、そこを覆っていたレオタードのか細い布地などたやすくずらされ、潤みきった膣穴に直接指、たぶん中指が挿入されてきます。

「ああんっ!あっ、あーっ!」

「まだ指を一本挿れただけで動かしてもいないのに、そんなに身悶てしまうんだ?身動き出来なくされて、縄の感触にどんどん発情しているのだろう?本当にどうしようもなくいやらしいドマゾ牝だよ」

 少し屈まれ気味だったあるじさまが、左手はそのままにスクっとご姿勢を直され、私を正面から見つめてこられます。
 私が媚びるようにあるじさまのお顔を見つめ返すと、お眼鏡越しの瞳が微笑まれるようにスーッと細くなられ、同時に右手が一閃!

パンッパンッ!!

「あうっ!はぁーんっ!!!」

 強烈な往復ビンタが私の両頬に炸裂。
 頭の中で火花が散って真っ白になると同時に、マゾマンコの膣壁がギューッとあるじさまの指を締め付けたのが自分でわかりました。

「あらあら、おまえのスケベ汁でわたくしの手が手首までビシャビシャ。こんな調子じゃ、ちゃんと拷問始めたら畳と板の間がグショグショになってしまいそうだね」

 私の股間からあるじさまの左手がスッと外れました。
 明らかに粘性の液体でツヤツヤ濡れ光りしているその左手が、私の鼻先に無造作に突きつけられます。
 ヒリヒリ火照る両頬と軽く達してしまった快感の余韻で思考停止状態の私は、条件反射でその左手を口中に含み、自分の愛液をベロベロしゃぶり始めます。

「やれやれ、よだれまでポタポタ垂らして。後が面倒だから何かしら手を打っておいたほうがよさそうだ」

 私の口中からスッと手を引かれたあるじさまは、そのままスタスタと、さっきの桐箪笥のほうへと向かわれ、そこにしゃがみ込まれます。
 口中の人肌が消え、やっと思考が戻ってきた私は、あるじさまがおっしゃられた、ちゃんと拷問、というお言葉に今更ながらゾクッと身震いし、まだヒリヒリしている両頬と侵入者の去ってしまった膣壁が、もっと、もっと、とあるじさまのお背中に無言の訴えを投げかけています。

 一番下の抽斗から何やら大きな器のようなものを取り出されたあるじさまは、次にその上の抽斗を開かれ、しばらくガサゴソ物色されています。
 やがて、取り出された細々したものを、その大きな器に投げ込まれ、それを捧げ持たれるようにして戻ってこられました。

「わたくしにこんな余計な手間を取らせたんだ、それなりの代償は払ってもらうよ」

 あるじさまが持ってこられた器は、幼い頃、よく病院で見た記憶がある、おそらく消毒液が入っていたのであろう真っ白いホーローのボウルのようでした。
 円周の縁だけが赤く塗られたそのボウルは、よく見たものより深め大きめで直径が60センチくらいありそう。

 そのボウルが私の両足のあいだ、股下に置かれ、必然的に私の両足も60センチ以上に開かれます。
 ボウルの中に転がっているのは、短い鎖に大きめの鈴が付いた目玉クリップふたつと、何やら卑猥な形をしたシリコン製らしき突起物。
 あるじさまの両手でそれらが拾われ、ボウル底の真っ白い円が露わになります。

「これはオナ子を罰するために選んだのだけれど、こんなものでは少しの罰にもならないんだろうねえ。マゾ牝にとってはむしろご褒美か」

 イジワルくおっしゃり私の勃起右乳首を無造作につままれたあるじさま。
 幅広な銀色の目玉クリップに乳暈もろともしっかり挟まれました。

「はうっ!」

 バネが強いのでしょう、かなり強烈な噛まれ心地…
 身悶えると同時にチリンと鳴る涼やかな鈴の音…
 つづいて左乳首にも同様の苦痛が与えられ、鈴の音がチリンチリン…

「うん、いい声だ。オナ子が悦んでくれて、わたくしも嬉しいよ」

 鈴をぶら下げたおっぱいをペチンペチンとはたかれて、そのたびに鈴が、チリンチリン、私が、はうんっはうんっ…
 足下のボウルから、ポタッ、ポタッと私のはしたない液体がマゾマンコから滴ってボウルの底面を打っているのであろう水滴音が、恥ずかしいくらい大きく響いています。

「あとは、これでおまえの愛液まみれのいやらしい穴を塞げば準備完了だ。たっぷり淫ら声を上げるがいい」

 マッサージ機の頭のところに、さきほどのシリコンぽい器具を被せられるあるじさま。
 電マの先っぽが突起状に長い出っ張りとなり、その側面にも狭いカバー状のシリコン部分が飛び出ている、奇妙な形状となりました。

 あるじさまの手によって再び私の股縄が抉じ開けられ、私のマゾマンコに電マが当てられます。
 いいえ、当てられるなんて生やさしいものではなく、突起部分はズブリと膣穴を奥深く貫き、側面のカバーは私の裂け目の割れ始め、すなわちクリトリス部分にピッタリ貼り付くように密着しています。
 そんな拷問具が股縄によって、私のマゾマンコに食い込むようにピッタリ固定されてしまいました。

「これでオナ子をイカすも焦らすも、わたくしの手の中にあるこのコントローラーの操作ひとつとなったわけだ。精一杯わたくしを愉しませて、わたくしに貢献することだな」

 私の目の前で仁王立ちされたあるじさまの右手が微かに動きました。
 途端に弱くプルプル震えだす股間の拷問具。

「はうんっ…」
 
 極緩い振動ではありますが、膣内を満たす柔らかい突起物が、無数の軟体動物が中で蠢いているように膣壁全体をくすぐってきます。
 クリトリスに貼り付いているカバーも、裏側に無数の柔らかい突起が施されているようで、膨らんだ肉芽の表面を絶妙なタッチでサワサワ刺激してくださっています。

「あんっ…あっ、あっ…んっ、あーんっ…」

 自ら施した縄による不自由の身を、早くも小さく捩らせ始める私。
 チリンチリン、ポタンポタンと恥ずかしいリズムが不規則に響き始めます。

「少し暗くして、もっと淫靡な雰囲気にしてあげようかね」

 あるじさまがお独り言のようにおっしゃり、別のリモコンで室内灯の明度を下げられ、一緒に低く流れていた音楽も鳴り止みました。
 お部屋の中は常夜灯と呼ばれる薄茶色より、少しだけ明るい感じ。
 あるじさまのノートパソコンのモニターの光だけがボーッと目立つくらいの薄闇です。

 それからあるじさまは、お庭側の障子戸をすべて開け放たられ、お庭とを隔てるガラス戸も一枚、ガラガラと開けられました。
 エアコンで暑くも寒くもない適温に保たれていた空間に、少しだけ冷たい空気が流れ込んできて、同時にリーンリーン、リーリーとお庭のあちこちから聞こえてくる虫の声。
 開いたガラス戸のもう一枚向こう、虫さんたちの侵入を防ぐ網戸に大きな蛾が二匹、お腹をこちらに向けてとまっているのが見えました。

 あるじさまがご自分の文机にお戻りになり、モニターの明かりにお顔だけがボーッと浮かび上がっています。
 あるじさまの一連の動きに気を取られているあいだに、私の股間の拷問具はいつの間にか動きを止めていました。


2022年3月27日

肌色休暇二日目~いけにえの賛美 16

 「あ、でもごめんなさいね。わたくし、食事中の顔を誰かに見られるのって苦手なの。だから、取り分けてこちらの机に持ってきてくださると嬉しいのだけれど」

 名塚先生が本当に申し訳なさそうにおっしゃいます。

「あ、はい。そういうことでしたら、もちろん喜んで」
 
 居住まいに品があり、かつフレンドリーな名塚先生のご様子にすっかり崇拝者と化した私は、寺田さまを前にされたジョセフィーヌさま並にシッポが振れています。

「わたくしはとりあえず、レバーペーストのとトーストしたハムチーズ、あとレーズン入のスコーンにベリージャムでいいわ。あとはあなたがお好きにお上がりなさい」

「かしこまりました。ご用意させていただきます」

 レバーペーストらしきものが挟んであるのは小ぶりのフランスパンでレタスがはみ出しているやつみたい。
 薄いイギリスパンをトーストしたハムチーズ、それにスコーンをそれぞれ三つづつ取皿に移し、ガラスのジャム入れにブルーベリージャムとバターをたっぷり入れてバターナイフを添えます。
 ティカップに注いだ冷たいミルクティと小さなビニール袋に入った使い捨てお手拭きを銀盆に乗せて、机上に空きスペースを作ってくださった名塚先生の文机へ。

「ありがとう」

 文机の脇で膝立ちであれこれやっている私の姿をご興味深げにジーッと眺めていらっしゃった名塚先生が、ニッコリ微笑まれます。
 すべてを机上にお乗せしてから、膝立ち歩きで座卓前に戻る私。

「あら、裸エプロンではないのね?それも寺田の指示かしら?」

 座卓の前に正座姿で落ち着いた私に、名塚先生からお声がかかります。
 昼間のときとは似ても似つかない、ごく普通のご中年女声の柔らかな声音です。

「あ、はい…」

 寺田さまたちがディスカッションされていた名塚先生のご嗜好に忖度された思惑をバラしてしまっていいものかわからないので、肯定するだけに留めました。

「そう…まあ、それはさておいて、いただきましょう。美味しそうなものばかり目の前に並べられて、わたくしもお腹が空いていたことを急に思い出しちゃった」

 一瞬、やれやれ、みたいなお顔になられ、すぐに照れ隠しのようにお道化たようなお顔を私に向けられ、お手拭きで両手を拭われる名塚先生。

「いただきます」
「いただきます」

 名塚先生の涼やかなお声に少し遅れて私の声も重なり、まずはティカップを唇に運びます。
 目の前の大皿には、取り分けたのにまだ三分の二くらいは埋まっているサンドイッチ類の群れ。
 タマゴサンド、ハムチーズキュウリ、BLT、何かフライが挟まったのなどなど。
 とても全部は食べ切れなさそう、と思いつつハムチーズキュウリをひとつ口に運ぶと…

   美味しい!
 パンはフワフワしっとりで、芥子バターがピリッと効いて、具材もどれもが新鮮で…
 ひとつ食べ終えると同時にふたつめに手が伸びていました。
 みっつめにBLTサンドを食べ終えて、そっと名塚先生のほうを盗み見ました。
 
 名塚先生は文机の正面、ラップトップパソコンのモニターを凝視されたまま、左手にサンドイッチを持たれ、右手は軽やかにキーボード上を跳ね回っておられます。
 ときどき何か思案されるように少し上をお向きになられ、そのときは右手の動きもピタリと止まります。
 どうやらお食事中もご執筆の手は止められないご様子。

 文机の左脇、すなわちサンドイッチのお皿が乗っていないほうには、何かの資料なのでしょう、積み重ねられた数冊の書籍。
 お顔は前に向けたまま時折右手がお皿に伸び、手探りでサンドイッチをつまみ取って左手に持ち替えられ、再びキーを叩き始める右手。
 ふたりとも沈黙したまま、しばし無言のお食事タイムがつづきます。
 
 そろそろ空腹も落ち着いてきたかな、と思いつつ、まだ手をつけていなかったスコーンにジャムを塗るべく私がバターナイフに手を伸ばしたとき…

「そう言えば森下さん?昼間はごめんなさいね?」

 名塚先生から唐突にお声がかかりました。
 それもなぜだか謝罪のニュアンス。

「えっ、あの、な、何がでしょうか?…」

 バターナイフまで届きかけていた手をあわてて引っ込め、スコーンもお皿に戻して名塚先生のほうへと向き直ります。
 名塚先生はいつの頃からか半身をこちらに向けられ、私のほうをずっとご覧になられていたみたい。

「わたくしって、お話のプロットを練り始めるとそれだけに夢中になっちゃって、登場人物に同化しちゃうところがあるから」
「書き始めたらもう、その世界に入り込んじゃうの」

 ティーカップを優雅に傾けつつ、私を淡い笑顔でじっと見据えてご説明くださる名塚先生。

「昼間のときも、誘拐してきた深窓のご令嬢を辱めるのが趣味な有閑マダムになりきっていたの。だからあなたを手加減無しに引っぱたいたりしちゃって」
「痛かったでしょう?本当にごめんなさいね」

 本当に申し訳無さそうに私を見遣る名塚先生。
 昼間とは完全に別人に思える、その品のある物腰に私のほうが恐縮してしまいます。

「あ、いえ、大丈夫です…あの、先生もお気づきだとは思いますけれど、私は、あの、そういう性癖、あ、いえ趣味を持つ、マ…じゃなくて、お、女…はしたない女ですから…」

 いただきます、と宣言してからつづいた沈黙に対する何て言うか、重苦しさ?からの開放感もあったのでしょう、有名な作家さまでいらっしゃる名塚先生にいろいろお聞きしたい、という好奇心が渦巻いていました。
 でも、名塚先生の優雅なオーラにあてられて、先生の前で、はしたない言葉は使いたくない、みたいな気持ちにもなっていました。

「私のほうこそ、先生があのご高名な小説家でいらっしゃるということを知らなくて、ずいぶんご無礼なことを言ったりしたりしてしまったと思います。本当にごめんなさい」

 名塚先生は曖昧な笑顔を私に向けたまま、先を促すように私を見つめています。

「私が大好きな、高校生の頃にすごく感銘を受けた小説を書かれたかただと知らなくて…」

 やよい先生と前後して出会った、私が大好きだった年上の素敵な女性が貸してくださった、今思えば生涯初めての本格的なレズビアン官能小説でした。

「あら、わたくしの作品、読んでいてくださったの?それは何だったのかしら?タイトル覚えていらっしゃる?」

 名塚先生が嬉しそうな笑顔で尋ねてくださいます。

「あ、はい、忘れるはずありません。鬼百合と姫小百合、っていうタイトルの文庫本で、全寮制の女子学園が舞台のお話でした」

 少し驚いたようなお顔になられる名塚先生。

「あらあら、それはまたずいぶん昔の作品ねえ。百合薔薇学園サーガは、わたくしの初めての少女向け文庫本描き下ろしシリーズだったの。もうン十年前ね」
「それまでSF寄りなお話ばかり書いていたのだけれど、ファンタジーに逃げないシスもの、今で言う百合ね、同性愛的な少女小説の学園ものを書いてみようと思って書いたの」

「最初の二、三冊までは普通の少女小説だったのよ。でもちょうどその頃、とある女性と初めて肌を合わせてね、それがとても刺激的だった…」
「そうしたらどういうわけかSF寄りからSM寄りになっていってしまったのよ」

 嬉しそうに、懐かしそうにお顔をほころばせて教えてくださる名塚先生。
 そのままのお顔で、こんなことをおっしゃいました。

「それにしてもあのタイトル、意外と人気あったのね。発表当時は確か賛否両論で、売上もあまり芳しくなかった記憶があるのよね…」
「それで、先週遊びに来られた人も同じようなことをおっしゃっていたのよ。あなたより一回りくらい年上の女性だったけれど」

 私の顔をまっすぐに見つめられる名塚先生、そしてつづけられます。

「その人もあなたと同じくらいマゾっ気撒き散らしていたの。ずいぶん前に一度結婚したこともあるらしいのだけれど結局すぐ離婚、その後は男性の前ではエスっ気全開でセックスなんて以ての外、でも同性相手だと虐めて欲しくて仕方ないんだって。それで、数日お相手してもらったの」

「そのM女さんは器用でね、ピアノが物凄くお上手なの。ここにいるあいだもお仲間にせがまれて、オールヌードの両乳首からクリップで重たそうなチェーンを垂らした奴隷姿で、ホールのピアノで見事な演奏を聞かせてくださったのよ。ラベルやドビュッシー、ストラヴィンスキーやラフマニノフまで」
「彼女のおかけでわたくし、今月入稿の小説誌の短編、一気に書き上げられちゃったもの」

 そこまでおっしゃって私にニコっと微笑みかけられた名塚先生は、お皿に残っていた最後のサンドイッチを右手でひょいっとつままれ、パクっとお口にしたかと思うとフイっとパソコンの画面に向き直られました。
 名塚先生の右手がしばらく口元に留まっていたと思うとすぐ、両手が凄い勢いでキーボードを叩き始めました。

「…そうなんですね…そのかたにはどんな……」

 会話をつづけたくて名塚先生のお背中に語りかけますが、先生には聞こえていないみたい…
 それきり再び沈黙の時間が訪れ、私は仕方なく何も付けないスコーンをモソモソと咀嚼します。

 スコーンを食べ終え、もうお腹いっぱいかなとトレイを見ると、まだサンドイッチが四、五片残っていました。
 これ、どうすればいいのかな?と思いつつ、振り向いてくださらない名塚先生のお背中に視線を遣ると、座椅子に座られたお尻の数十センチ後ろに見開きにされた肌色ばかりで少しピンク色が散りばめられた大きめなご本、写真集?
 
 そちらに焦点を合わせたら何やら横文字と、見開きの片側はベッドに磔姿で縛られた綺麗な西洋女性の写真、もう片側は紛れもなく、その女性のものであろう無毛の女性器をクスコで拡げられた無修正どアップの写真でした。
 おそらく外国のそういう写真集なのでしょう、それを見たとき、ああ、この先生は本当に、そういうお話を書くことをお仕事にされているのだな、とあらためて思いました。

 それから5分間くらいでしょうか、手持ち無沙汰の沈黙がつづきました。
 
 聞こえるのは名塚先生がキーボードを叩かれるカタカタという音と、相変わらず薄っすらと漂うように流れている女声の旋律。
 耳を澄まさなければ聞き取れないくらいの微かなお声が、雨の日と月曜日は気分が沈むの、って物憂げに歌っています。
 実家にいた頃、母に教えてもらって大好きになったその曲を聞き取ることに、自然と意識が集中していました。
 
「オナ子は、ジバクは出来るわよね?」

 不意に名塚先生からお声がかかりました。
 慌てて先生のほうを見遣ると、先生は相変わらずお背中を向けたまま、お顔もモニターに向かわれたまま。 

「オナ子?そこに居るのでしょ?返事は?」

 名塚先生の声音がお食事中のときとはまったく違っていました。
 ここに着いてすぐに、ここでいたぶられたときと同じ高圧的なご口調。

「あ、はい、先生。ナオ子、あ、いえ、オナ子はここにいますっ!」

 私も無駄に声が上ずってしまいます。

「何が先生だい?わたくしはおまえの何だったっけ?」

「あ、はい、ごめんなさいっ、あ、あるじさまっ!」

 名塚先生ったらどうやらまた、ご創作中の登場人物とご同化されてしまったみたい。
 本当に私を参考にしてご執筆くださっているんだ…
 なんだか嬉しくなってきました。

 今この瞬間から、私のお相手をしてくださるのは、官能小説家・名塚毬藻先生ではなくて、有閑マダムでサディストで容赦の無い本気ビンタをくださるあるじさま。
 そして私は慰み者にされるために誘拐されてきた、憐れな令嬢マゾ娘。
 すでに昼間の壮絶なご調教で完全服従状態、何もかも言いなり人形と化しているのです。

「ふん、で、質問に答えなさい」

「あ、はいっ。ジ、ジバクですか?…ジバク出来るかとおっしゃられても…」

 私の頭の中では、自爆、という単語が渦巻いていて、爆発物をからだに巻いたゲリラさんの姿が浮かんでしまい、軽いパニック状態。

「ジバクはジバクだよ。自分で縛ると書いて自縛。それともおまえみたいな若いのにはセルフボンデージとか横文字のほうがいいのかい?」

「あ、いえ、はいっ、せ、セルフボンデージなら一通りのことは心得ています…ひ、菱縄縛り亀甲縛りとか後ろ手縛りとか…エ、M字開脚縛りだって自分で出来ます…」

 うろたえてしまい、自分でもかなり恥ずかしいことを口走っている自覚はありました。

「ふん、いやらしい女だね。それなら股縄なんて目を瞑っていても出来るね?」

 また一段階、名塚先生のお声が冷たくなりました。

「あ、は、はい…大丈夫です…」

 私の両腿の付け根がヒクヒク疼き、はしたないよだれがジュクジュク分泌されています。

「それならエプロン取って、その恥ずかしい肌着のまま、そこの箪笥の下から二段目を開けなさい。おまえみたいな淫乱マゾ娘が好きな道具がたくさん入っているから」

 お顔は正面を向かれたまま後ろ手に、お部屋の左壁際の立派な総桐箪笥を指さされる戸塚先生。
 私が初めてこのお部屋に通されたとき、寺田さまがその箪笥をガサゴソしておられたのを覚えています。

「は、はいっ」

 正座のまま両手を背中に回し、まずはエプロンの腰紐を外します。
 それから左右の肩紐をずらすと、ハラリと外れたメイドエプロン。

 その下にはピッタリと素肌に吸い付くように貼り付いたブルーグレイの薄い布地に包まれた私の肢体。
 おっぱいの丸みも乳首の位置も、裸でいるのと同じくらいクッキリとわかります。
 
 立ち上がろうと腰を上げた途端、ヌルっと食い込んでくる股間のVの字。
 その一帯の布地はあからさまに色濃く変色していて、それを着ている人物が紛れもなく発情していることを周囲に伝えてしまっています。

 お言いつけ通りの姿になってから、壁際板の間の箪笥へしずしずと向かいました。
 箪笥の目の前で腰を下ろすと、桐の香りがほのかにプーン。
 中腰になり下から二段目の抽斗の、銀製らしき重厚なふたつの取っ手を両手にそれぞれ握ります。

 んっ!
 力を込めてグイッと引っ張ると、最初は重そうな抵抗を感じたものの、大きさの割に建て付けが良いのでしょう、スルスルッと抽斗が飛び出しました。

 横幅一メートルくらいの抽斗の中は半分で仕切られていて、奥行き50センチくらいの片側には膨らんだ麻袋の束、もう片方には20センチ四方くらいのカラフルな不織布ケースが様々な形に膨らんで整然と並んでいました。

「その段には、おまえみたいなマゾ女が大好きな麻縄と張形類がしまってある。これまで数え切れないほどのマゾ女を虐げてきた道具たちだけれど、安心しな。使用後の手入れと殺菌はしっかり施してあるから」

 幾分お芝居がかった凄みのあるおっしゃりようにあるじさまのほうを見遣ると、あるじさまは未だモニターに向かれたまま。
 私はそのお背中をじっと見つめています。

「そこから7メートルと書いてある麻袋をひとつ手にして、中の縄を取り出しなさい。抽斗は閉めなくていいよ。まだ使うものもあるから」

「は、はい…」

 あるじさまのお背中に促されて抽斗の中身に目を戻すと、各麻袋の結い紐部分にプラスティックの札が付いていて7mとか10mとか書いてありました。
 7mの札の付いた袋をひとつつまみあげ、結い紐を解いて中身を取り出します。

 相当使い込まれている感じな浅黒い生成りの麻縄。
 油でまんべんなくテラテラに光っていて見た感じゾクっと凶々しいのですが、手にしてみると軽くてしっとりしなやか肌馴染み良さそうで…
 別の意味でゾクゾクっと感じてしまいました。

「その縄でまず、股縄をしなさい。三つ折りにして、四本の縄を並べておまえのマンコを包み込むような感じで」
「骨盤の上で一度しっかり結んで後々緩まないように。あと、余計なコブとか作らなくていいよ。食い込まない程度にギッチリ締めればいい」

「はい、わかりました…」

 あるじさまのご指示通り麻縄を持って立ち上がり、あるじさまのお背中のほうを向いて、おずおずと股縄縛りの準備を始めます。
 
 まずは紐のように食い込んでしまい、大陰唇が完全に左右にはみ出してしまっていたハイレグレオタの股部分を直しました。
 お漏らししてしまったように濡れそぼっているのに火照る熱を帯びたその部分、指先が触れるたびに糸を引く粘液、薄い布越しにクッキリいきり勃つはしたない肉の芽…
 自分のからだながら、恥ずかし過ぎて仕方ありません。
 
 股縄の縛り方は基本的にお褌の締め方と同じです。
 お言いつけどおり長い縄を真ん中からまずは二つ折り、さらにその真中を折ると二メートル弱な四本の縄の束となります。
 おヘソの下、骨盤の上辺りに回した縄の束をまずおヘソの下で一度縛って垂直に垂らし、股の間をくぐらせてからお尻の側で結ぶだけ。

 最後に余った縄をお尻の側で結ぶとき、いつもなら刺激を欲して食い込ませる感じに締め付けてしまうのですが、あるじさまは、包み込む感じ、とのご命令でした。
 グッと我慢して内股にピッタリ密着する感じにとどめます。

「締め終えたらわたくしの机周りの食器類を片付けなさい、オナ子の食べ残しもね。全部廊下に出しちゃって」

「はい…」

 裸同然レオタードの下半身に股縄だけ締めて、おずおずとあるじさまのお机へと近づきます。
 私のマゾマンコを覆う極薄生地の上には、ぴったり寄り添った四本の麻縄が通っています。
 一番外側左右の縄目が内腿なのか大陰唇なのかに擦れて、一歩踏み出すたびにもどかしい…
 それでもあるじさまの文机近くでひざまずき、食器を片付け始めました。

「あ、それはいいわ、そこに置いておいて」

 あるじさまのお飲みかけのティーカップに私が手を伸ばしたとき、あるじさまが振り向かれ、初めて私を視てくださいました。
 私の顔から始まって、首筋、胸の谷間、両乳首の突起、おヘソ、胴を絞る縄目、恥丘を這う縄、股間を覆う四本の縄を濡らす今にも滴りそうな雫…

 そこまで視線が下ろされて、もう一度私の顔に戻られたとき、あるじさまが凄く嗜虐的にお口の両端を歪められ、ニッコリ笑いかけてくださいました。


2021年12月19日

肌色休暇二日目~いけにえの賛美 15

 「あ、でも髪は洗ったほうがいいね、見た目でもかなりベタついちゃってるし。脱衣所の収納にシャンプー類やドライヤーが入っているから」

 バスルーム小屋へ向かおうと向けた背中に、中村さまからお声がかかります。

「あ、はい、ありがとうございます」

「全身をいったんすっかり清めてリフレッシュするといいわ。夜はまだまだ始まったばかり、これからが長いんだからさ」

 意味深なお言葉を残されて、プイッと踵を返された中村さま。
 どうやらこの後も、普通に過ごさせてはもらえなさそうです。

 目隠し樹木を抜けてガラス張りお外から丸見えバスルーム小屋へ。
 室内の電気を点けると夕方の薄闇にそこだけボーッと浮かび上がる感じ。

 もしお外にどなたかがいたら、灯りに照らされた私の入浴姿をまるで映画館で映画を観ているみたいに赤裸々かつ鮮明に鑑賞出来ることでしょう。
 どなたも覗いていないとわかっていても、凄く気恥ずかしい雰囲気です。

 脱衣所で首輪を外し、シャンプー類とドライヤーを確認してから浴室へ。
 今回は気兼ねなく頭からシャワーを浴び、ソープを入念に泡立ててボディアンドヘアケア。

 やっぱりずいぶん陽射しを浴びちゃったみたいで、白く残した恥ずかしい日焼け跡部分の肌がうっすらピンクに変わり始めています。
 この感じならお尻上の恥ずかし過ぎる自己紹介文も、東京へ戻る頃には読めなくなっていそう。

 余計なことは一切しないで丁寧にお手入れだけしてから、再び脱衣所へ。
 バスタオルでからだを拭った後、全裸のままドライヤーで髪を乾かしました。
 それからからだにバスタオルを巻きつけて首輪を嵌め、オールバックに髪をまとめたすっぴんでお外に出ます。

 お外は入浴のあいだに一層暮れなずみ、湿度の低い高原のそよ風がお湯で火照った素肌に心地良い。
 目隠し樹木を抜けて石畳を進み、正面玄関前へ。

 お屋敷の扉を開けた途端、美味しそうな匂いが鼻腔に飛び込んできました。
 ホールに入ると、中央付近の大きめな楕円形テーブルに色とりどりのお料理が並べられています。
 それを見た途端、グゥ、とお腹が小さく鳴り、お腹が空いていることにあらためて気がつきます。

「おお、戻ってきたね。さっぱりした顔しちゃって。髪上げた感じも色っぽくていいじゃん」

 おひとりだけ早々とお席に着かれていた五十嵐さまがお声をかけてくださいました。

「今日のメインディッシュは寺っち特製のスタミナカルボナーラパスタだよーっ」

 中村さまがホテルのルームサービスで使うみたいな銀色の配膳カートを押され、厨房のほうから現われます。
 つづいてワインボトルが2本刺さったクーラーを片手に提げられた寺田さま。
 最後にもう一台、何かが乗ったカートを押されてこちらへと近づいてこられるお姉さまのお姿が見えました。

「でも残念。直子はみんなと一緒には食べられないの。先生からご指名、入っちゃったから」

 カートを私のそばまで押してこられ、私に向き合わられたお姉さまの右手が、スッと私のほうへと伸ばされます。

「あんっ、いやんっ!」

 スルッと当然のように剥ぎ取られる私のバスタオル。
 またまたみなさま着衣の中で私ひとり全裸。

「直子は先生のお部屋にお食事を持っていって、一緒に食べなさい。それでしばらくまたお相手ね」

 お姉さまが運ばれたカートの上には山盛りのサンドイッチとスコーン、そしてミルクティのペットボトル2本にティカップがふたつ。
 つまり、このカートを先生、いえ、あるじさまのお部屋まで運びなさい、ということなのでしょう。

「この格好で…ハダカのままで、ですか?」

 他のお三かたからニヤニヤ見つめられる中、今更隠すのもワザとらしいし…とモジモジ尋ねる私。

「もちろんよ。直子を虐めてから先生、創作意欲がビンビンらしいから、いい作品になるように精一杯ご協力差し上げてきなさい」

 お姉さまが私を覆っていたバスタオルを丁寧に折りたたみながら素っ気なくおっしゃいます。

「あ、でもちょっと待って」

 異を唱えられたのは寺田さま。

「うちの先生、M女を脱がせていくシチュにも拘るほうだから、最初から全裸じゃないほうがいいかも…」

「そうだね、確かに」

 ご賛同されたのは中村さま。
 それからおふたりでしばしディスカッション。

「先生、今は何に取り掛かっているのかな。女教師凌辱もの?令嬢もの?時代もの?」
「直子とアソんでインスピレーション湧いたっていうんなら、令嬢誘拐ものじゃない?」

「令嬢ものか…でもさっきのブラウスはボロボロだし、スカートもヨレヨレだったよね?何着せよう」
「でも逆にさ、さっきのプレイで外にマッパで連れ出すまでしちゃったから、先生の中でその令嬢はもうM女奴隷状態にそこそこ堕ちてるんじゃない?」

「そっか、直子ちゃんも凄い乱れっぷりだったし、もう本格調教に移行しているかもね。それなら裸エプロンくらいでいいのかな」
「それだとエプロン外して即全裸でつまんないじゃない。脱がせる愉しみが味わえない」

「そっか、じゃあエプロンの下に先生好みのアレでも着せとこっか?」
「ああ、アレね。いいんじゃない、賛成。この子にピッタリそうにエロいのが確かあったはず」

 おっしゃった中村さまがタタタッとホールの奥のほうへと駆けだされます。
 そのお姿を呆気にとられて見ている私の背後で、寺田さまが後ろに結んだ私の髪を解かれました。

「そういう格好ならオールバックよりこっちの髪型のほうが似合うはず」

 そんなことをおっしゃりつつ、手慣れた感じで私の後ろ髪を分けられる寺田さま。
 あっという間に両耳の上で結んだツインテールヘアに早変わり。
 そこへタイミング良く中村さまが戻られます。

「ほら、まずはこれ着て」

 差し出されたのはクタッとしたブルーグレイの布片。
 手に取って広げてみると、これは水着?それともレオタード?
 ワンピース型で襟ぐりと背中が大きく開いていて、たぶんハイレグ。
 凄く軽くて薄くて伸縮性があって、しかもたぶん私には少し小さい…

 なにはともあれご命令ですので着てみます。
 両脚を通してからだを布片で覆い、肩紐を両肩へ。

「んっ!」

 やっぱり私には少し小さいみたい。
 伸縮性のある布地が早くも股のあいだへと食い込み、おっぱいを押し潰すように貼り付いてきます。

 やっぱり超ハイレグで骨盤の上ぐらいまでの素肌が露わ。
 股間を通る布片は幅5センチにも満たないくらいなので、大陰唇を隠すのがやっと。

 襟ぐりはおろか両脇も盛大に開いているので谷間はおろか横乳までもろ見え。
 更に薄くて伸びる生地のため、両乳首はもちろん前ツキな私の陰核の位置まで、布地がこれ見よがしに突き出され、正確にそれらの位置はおろか形状までを教えてくださっています。

「おお、やらしいねー。裸より断然えっちだ」
「早速股間が濡れてきちゃってるじゃん。ほら、色が濃く変わってる」
「これなら先生も、ヤル気倍増じゃない?」

 代わる代わる囃し立ててこられる寺田さまと中村さま。
 五十嵐さまはお姉さまのビデオカメラをずーっと私に向けておられます。

「このレオタって、確かエミリーんとこの製品よね?」

 寺田さまがお姉さまに尋ねられます。

「うん。うちで扱った素材みたいね。製品ではないけれど、たぶん新素材の試作で余った布地でリンコたちが作ったんじゃないかな?何かのコスプレ用に」

「ああ、エミリーんとこの社員の可愛い子たち、コスプレ写真撮りたいって女の子おおぜいで来たときあった。確かにあの子たちが先生へのお礼兼ご参考にって、エロい衣装たくさん置いて行ったような記憶があるわ」

 中村さまが相槌を打たれます。
 こんなに遠くまで来ても、私はリンコさま特製の辱め衣装から逃れられないようです。

「あとはこれを着て、仕上げにこれ、ね」

 ジョセフィーヌさまとのお散歩のときに着せられたのと同じようなミニ丈のヒラヒラ純白なメイドエプロンを着せられ、仕上げはメイドカチューシャ。
 真っ白なヒラヒラが付いたカチューシャが私の頭に嵌められました。

「おお、かわいーっ!」
「エロメイド、一丁上がりっ!」
「エプロン着けても勃起乳首が布地に響いていて、どっからどう見ても性的オモチャなM女召使いって感じ」

 今度は五十嵐さままでご一緒になられ、お三かたから囃し立てられます。

「さあ、それじゃあ先生のところへ行ってきなさい。場所はわかるわよね?直子が拘束された和室。あそこが先生のお仕事部屋」

 お姉さまが私を、お姉さまが押してこられたカートの押手の前に誘導しつつおっしゃいます。

「あ、カートは部屋の中まで入れてはダメよ。廊下に置いてお料理類だけ部屋に運ぶの」

 寺田さまがお優しく教えてくださいます。

「先生がお仕事している文机のそばに、もうひとつ座卓があるはずだから、まずその上のポットや湯呑を下げて、そこに置くといいわ」
「下げたポットとかは廊下のカートの上に置いといてくれれば、後でアタシらが回収するから」
「それで、ご一緒するように寺田に言われました、って言えば、先生も察するはずだから」

 細やかなご指示をくださる寺田さま。
 でも先生、つまりあるじさまは何をお察しになられるのでしょう…

「くれぐれも粗相の無いようにね。先生のご要望には何でもはい、はいって応えるのよ」

 なんだか母親のようなことをおっしゃるお姉さま。

「うふふ。今のエミリーの言い方って、タレントを枕営業に送り出す芸能マネージャーみたいよね」
 
 そんなふうに混ぜ返されたのは寺田さま。

「あたしたちもこれからディナータイムだから、食べ終えて一息ついて気が向いたら救出に向かってあげる。それまでがんばってきなさい」

 ずいぶん無責任なお姉さまのお言葉に送り出され、カートをしずしずと押しながらホールの奥へと向かい始めました。
 裸エプロンは免れましたが、ラバースーツ並みにからだを締め付けてくる極薄ハイレグレオタードに首輪とメイドカチューシャの格好で。

 ホールの扉を抜け左に折れると市松模様の瀟洒なお廊下。
 押しているシルバーのカートは高級品なのでしょう、軽々と音も無くスイスイ進むのですが、私のほうがなんだか歩き辛い。

 ハイレグ仕様の股布が一歩進むたびに食い込んでくるみたいに、恥丘から会陰までを刺激してくるんです。
 両乳房に貼り付いた伸縮性に富む薄布も、からだが動くたびに乳首先端が擦れる感じ。

 市松模様が途切れると今度は右に折れて一気に和風な板張りのお廊下。
 あるじさまのお部屋も、もうすぐそこです。

 あるじさま、今度は何をしてくださるのだろう…
 また本気なビンタをいただけるかな…
 今度はあるじさま自らお手を下され、あれこれされちゃうのかも…

 お部屋の敷居戸の前までたどり着いたときには、不安と期待の入り混じった妄想に布地からの肉体的刺激も加わって、狂おしいほど淫らな気持ちになっていました。

 いけないいけない。
 まずはちゃんとお勤めを果たさなくては。
 一度深く深呼吸してから強めにトントンと木の敷居戸をノック。

「失礼しまーすっ。お食事をお持ちしましたっ!」

 ハッキリゆっくりよく通るように大きめな声でご挨拶。

「あらあらハイハイ、どーぞー」

 思いがけずも、ずいぶんお優しげな柔らかいお声が返ってきました。

「あ、はいっ!失礼しまーすっ!」

 もう一回大きめの声でご返事してから、敷居戸をスルスルっと開きます。
 最初は寺田さまのお言いつけ通り、何も持たずに沓脱ぎへ。

 内側の障子戸はすでに開け放されていて、煌々と照っている照明。
 畳部屋のずっと奥の文机のところに、お背中を向けられたあるじさまが見えました。
 私の視線があるじさまを捉えると同時に振り返られるあるじさま。

「あらあら、あなたが持ってきてくださったの?えーっと、森下さん、直子さんだったわよね?」

 私に向けてたおやかな笑顔をくださるあるじさま。
 あれ?さっきと雰囲気が全然違う…

「あ、はい。森下直子です。今日からこちらにお世話になります。よろしくお願いいたします」

 お部屋にはどこからともなく薄っすらと女声の流麗で清楚な歌声が流れています。
 これって確かカーペンターズさんだっけ…

「はい、こちらこそ。ちょうどいいタイミングでしたわ。ちょっと待っててね。この段落だけ書き上げてしまうから」

 畳に正座して頭を下げ上げした私にニコヤカな微笑みをくださった後、スッと文机に向き直られ、それきりまた後ろ姿なあるじさま。
 ノートパソコンのキーを叩かれているのであろうカタカタという音が聞こえます。

 待って、とご指示され、その場で正座のままお部屋内を見渡します。
 昼間のときとは打って変わってずいぶん乱雑。

 あるじさまの文机を中心に畳に散らばるたくさんの本、本、本。
 開きっ放しもあれば閉じているのも、厚いの薄いの、数冊積み重なっていたり。

 あるじさまから少し離れた右隣にはもうひとつの座卓。
 そして寺田さまがおっしゃった通り、大きめな銀盆の上にポットと湯呑、それに何かを召し上がられたのであろう数枚のお皿も。
 まずはそれらを片付けるのが私のミッションその一なのでしょう。

 他にも何か変わったところは…と見渡したときに、気づいてしまいました。
 あるじさまのお背中側で開きっ放しになっている本の何冊かが写真集なことに。
 そしてその写真が悉く、裸だったり縛られていたりのSM系写真なことに…

 そのときあらためて、私の目の前で執筆作業に没頭されているこの女性は、私が高校生の頃にM心とマゾマンコをキュンキュンときめかせてくださった、鬼百合と姫小百合、の名塚先生なのだな、と実感しました。
 同時に得も言われぬ不思議な感動が…

「まあ、こんなものでしょう、ふぅーっ。それではわたくしも一息入れましょうか。森下さん?お待たせしちゃったわね」

 私が感動でジーンとしている真っ最中に、名塚先生からお優しいお言葉がかかります。

「あ、はいっ!それではご用意させていただきますっ!」

 ご尊敬の念にすっかり一ファンと化した私は、ご崇拝六割、マゾ性四割の召使いとなり、急にソワソワとお勤めを遂行し始めます。
 まずは座卓上のポットやお皿類を銀盆ごとカートに撤去、持参したおしぼりで丁寧に座卓上を拭ってから、あらためてサンドイッチ山盛りお皿をセット。
 それからお紅茶のペットボトルとティーカップ二組も座卓に乗せます。

 極薄レオタード一枚のメイドエプロン姿でドタバタと働く私の姿を名塚先生が嬉しそうに眺めていらっしゃいます。
 私は名塚先生に視られていることを必要以上に意識してしまい、マゾ性がグングン昂ぶってしまいます。

「あら、今夜はずいぶんとたくさんサンドイッチを持ってきたのね?」

 純粋に驚かれたお顔でご質問される名塚先生。

「あ、はい。寺田さまからのご提案で、私も名塚先生とお食事をご一緒しなさいと…」

 寺田さまのお言いつけ通りに、ワクワクとビクビクが一緒くたになった気持ちでお答えします。

「そう。寺田がそう言ったの…それならそうしましょう。わたくしも執筆中に誰かと一緒に食事するなんて久しぶりだから嬉しいわ」

 あくまでもたおやかに名塚先生はおっしゃいました。
 あれ?
 でも、そもそも私は名塚先生直々のご指名でお給仕を任されたのではなかったでしたっけ…???


2021年11月7日

肌色休暇二日目~いけにえの賛美 14

 自分が今どこに居て何をしているのかもわからないほどの痺れるような快感が、全身を駆け巡っていました。
 両腿の付け根奥から絶え間なくほとばしる微電流で、からだが金縛りにあっているみたい。

 遠ざかりそうになる意識を理性なのか本能なのか、何かが必死に引き留めようとしています。
 そのとき、仰向けの私のからだを地面に押しつけるようにのしかかっていた重しが、フッと軽くなった気がしました。
 いつの間にかギュッとつむっていた両目を恐る恐る開けたとき、聴覚と嗅覚と視覚が一気に戻りました。

 寝そべっている私の視界に見えるのは…ワンちゃんの脚?あ、ジョセフィーヌさま…
 おそらくジョセフィーヌさまが私のからだの上に乗られていたのでしょう。
 今は、だらしなく寝そべった私のからだを大きく迂回され、投げ出している私の左手のほうへと芝生の上をゆっくり歩かれています。

 右のほうは?と視線を動かしたとき、不意に私の首輪が軽く左のほうへと引っ張られました。
 中村さまだな、と思い、たわむリードを先へと辿っていくと…ジョセフィーヌさま。

 リードの持ち手をお口に咥えられ、起きてよ、とでもおっしゃりたげなお顔で私を見つめてきます。
 私がからだを起こすのを促すように、二歩三歩の前進後退をくり返され、そのたびに遠慮がちに張り詰めるリード。

 見上げる空は、ああ、もうすっかり夕方だな、と思えるくらいには翳っていました。
 帰らなくちゃいけない時間なんだな、と朦朧とした頭で考え、ゆっくりと上半身を起こします。

 あらためて眺めた自分のからだはひどいありさま。
 汗なのかジョセフィーヌさまのよだれなのか、テラテラ満遍なく濡れた素肌のあちこちに点々と浮かぶワンちゃんの茶色い足跡。
 膝を立ててだらしなく広げきった両腿、膣口に中途半端に挿さったままのバナナ。

「あふぅんっ!」

 立たなくちゃ、と思い、股間のバナナを抜くために手を掛けたとき、柔らかい異物が膣壁を刺激して思わず声が洩れてしまいます。
 快楽の余韻、の一言では片付けられないくらい、未だにからだのあちこちがヒクヒク引き攣って疼いています。

 手に持ったバナナは人肌くらいに生温かくなっていて、外側の皮がふやけてずいぶん柔らかくなっていました。
 そんなバナナを右手に持ち、両足に力を込めてよろよろと立ち上がりました。

 私が立ち上がるまで辛抱強く待っていてくださったジョセフィーヌさまが、わたしのほうを振り返りつつゆっくり歩き始めます。
 お口に咥えられたリードが張り詰め、私の首輪が引っ張られます。

 幾分前屈みになってジョセフィーヌさまに先導される全裸の私。
 ワンちゃんと人間の立場が完全に逆転していました。

「淫乱マゾ女を起こして連れてきてくれたんだ?本当にジョセは賢いねー」

 東屋のベンチでひと足先に待たれていた中村さまが両手を広げてジョセフィーヌさまを迎え入れられ、ジョセフィーヌさまも尻尾をブンブン振られ応えられています。
 お口からリードの持ち手が外れ、引き綱が私の両脚のあいだに戻ってきました。

「ずいぶん派手にアクメってたじゃない、どう?スッキリした?」

 中村さまが紙コップに何か液体を注いでくださり、差し出しつつ尋ねてこられます。

「あ、はい…もう何がなんだか…危うく気を失ないそうでした…」

 あらためてお尋ねされると逃げ出したいほど恥ずかしいのですが、小声で正直にお答えしました。

「だろうね。いやらしい声が広場中に響き渡っていたもの。凄い映像が撮れたからエミリーも満足なはず」

 レンズを私に向けながら呆れたような笑顔をお見せになる中村さま。

「まあとりあえずそれ飲んで、あなたを悦ばせてくれたバナナをいただいて、いったん落ち着きなさい」
「食べられる性具は粗末にしない、っていうのがお姉さまとのお約束なんでしょ?」

 からかうようにおっしゃって紙コップが手渡されます。

「あ、はい…」

 渡された紙コップは冷たくも温かくもない常温で、メープルシロップを薄めたような薄茶色の液体が入っています。

「ブランデーの水道水割よ。直子はイキ過ぎると気絶することがあるってエミリーが言ってたから、気付け薬代わりに小瓶を持ってきてたの」

 そう教えられると、軽くツンと鼻を刺しはするけれどほのかに甘いアルコールの香りがする気がします。
 唇を付け紙コップを傾けると舌に甘い味わい、喉を滑り落ちる液体が心地良い。
 渇きにあがらえずゴクゴク一杯飲み干してしまいました。

「あれだけ喘げば、そりゃあ喉は渇くよね。酔わせるのが目的じゃないからお代わりは水だけ」

 中村さまが空になった紙コップに再び水道水を注いでくださり、テーブルの上に置いてくださいました。
 私は右手のバナナを剥き始めます。

 バナナの皮は満遍なく私の愛液に塗れ、剥いた途端に崩れそうなほどに中の実もグズグズ。
 きっと私の恥ずかしいマン汁が実まで浸透して滲み込んでいるんだろうな、なんて思いながら、そのクリームみたいに柔らかくなったバナナを頬ばります。

 生温かくて少し生臭く香るバナナでしたが、口中にはちゃんと甘味が広がりちゃんと美味しい。
 お水と交互に、あっという間にたいらげました。

「はい、よく出来ました」

 ビデオカメラのレンズを私に向けて、自分を犯していたバナナを美味しそうに食べるマゾ女、の一部始終を撮影された中村さまが、カメラをいったん下ろされ、リードの持ち手に左手を伸ばされます。

「さてと、じゃあ戻ろっか。直子、そのバッグ持って」

 中村さまがリードの持ち手を右手に握られ、左手でテーブルの上のバッグを指さされます。
 テーブルの上はキレイに片付けられ、すべての私物やゴミ類はバッグ内にしまわれた後みたい。

「あの、私が着てきたエプロンは…」

 過度な期待は抱かずに一応尋ねてみます。
 あんな布片一枚でも、前を覆ってくれるかくれないかは、気分的に大きな違いがあるんです。

「しまっちゃったわよ。泥で結構汚れていたし、誰かさんのおツユも派手に沁みていたしね。寺っちの私物だから帰ったらサクッと洗濯しなくちゃだわ」

 さも当然のように答えられた中村さま。
 それからニヤッと笑われ、こうつづけられました。

「直子も、この周辺ならハダカでいても大丈夫なことが身を持ってわかったでしょ?だから明日からは仲良く朝晩、全裸でジョセとお散歩よ」

 首輪がクイッと引っ張られます。

「ジョセフィーヌ?ヒールッ!帰りはワタシの横について。森の清々しい空気を充分味わいながら、ゆっくり帰りましょう」

 中村さまの足元に寄り添わられたジョセフィーヌさまのお鼻先に、中村さまがリードの持ち手をプラプラ指し示されます。
 それをパクリと咥えられるジョセフィーヌさま。
 中村さまの足取りに合わせるように歩き始められ、私の首輪が張り詰めた引き綱に引っ張られます。

 帰りの山道は緩い上り坂。
 翳った陽射しもほとんど差し込まず、来たときよりもずいぶん薄暗くなっていました。
 規則正しく立ち並んだ背の高い木立が導く一本道を、三つの薄い影が進んでいきます。

 一番左側にパーカーとジャージ姿の中村さまのお背中。
 その右脚にピッタリ寄り添われて進まれるジョセフィーヌさま。

 ジョセフィーヌさまのお口には輪っかになったリードの持ち手がしっかり咥えられています。
 その引き綱の後方、おふたりから二、三歩下がった一番右側を、とぼとぼついていく全裸の私。

 途中、中村さまが振り返られ、ジョセフィーヌさまの引き綱に先導される私の姿をしばらく撮影されました。
 悠然としたお足取りでリードを引っ張られるジョセフィーヌさま、首輪を引っ張られ、付き従うように後を追う私。
 どう見てもジョセフィーヌさまが飼い主で、私はペットの飼い犬でした。

 素肌を撫ぜる風を少しひんやり感じだことで、今更ながら自分が全裸なことを思い知ります。
 そうです、今私は見知らぬ山奥の夕暮れの木立道を、ワンちゃんにリードを引かれ、素っ裸で歩いているのです。

 …今まで経験した中で、一番大胆な野外露出行為かもしれない…
 幼い頃から人知れず心に秘めていた妄想を今現実に体験している、と思うと性懲りもなく性的にゾクゾク感じてしまいます。

 時折中村さまが撮影のために振り向かれる以外、終始無言で歩きつづけます。
 中村さまからからかうようなお声掛けも無いのは、私に全裸お散歩の恥ずかしさを満喫させてくださるためのお心遣いかもしれません。

 綺麗な夕焼けの山道は全裸でも寒さを感じるほどの冷えではなく、却って適温で気持ち良いくらい。
 それでもお外での全裸が心細いのは変わらず、その被虐がマゾ性をキュンキュン煽り立ててきます。

 十分くらい歩いたかな、と思った頃、お屋敷へ通じる玄関前の道に出ました。
 まださほど暗さを感じるほどではないのですが、お屋敷の正面玄関周辺は常夜灯ですでに明るく照らし出されています。
 おそらく決まった時刻に灯る仕掛けなのでしょう。
 その灯りの下に三人、たどり着きました。

「明るいところであらためて見ると、直子のからだ、ひどいありさまだね」

 中村さまがビデオカメラのレンズ越しに私のからだを見つめてこられます。

「これはみんなに見せなくちゃ。呼んでくるからちょっとそこで待ってて。記念写真を撮っておこう」

 嬉しそうにおっしゃって、中村さまがお屋敷内に駆け込まれました。
 取り残された形のジョセフィーヌさまと私。
 寄り添うお相手に立ち去られたジョセフィーヌさまが、リードの持ち手を咥えられたまま私のほうへと駆け寄ってこられました。

 私も中腰になってジョセフィーヌさまをお迎え入れます。
 素肌にフワフワ毛玉状なジョセフィーヌさまを抱き寄せると、なんとも言えず気持ちの良いことを、私はすでに知ってしまっていました。

 ジョセフィーヌさまがお口からリードの持ち手をポトリと落とされ、顔の位置を合わせている私の顎やほっぺたをペロペロ舐め始められます。
 もはや完全にしゃがみ込んでしまった私は、懐にジョセフィーヌさまの毛並みをやんわりと抱え込み、いやん、くすぐったい、なんて嬌声をあげつつイチャついていました。

 このとき私は、地面に落ちたリードの引き綱を跨いでしまっていたのだと思います。

 ひとしきりじゃれ合った後、ジョセフィーヌさまからおからだを離され、私の背後へトトトっと回られました。
 私も立ち上がろうとしゃがみ込んでいた膝を伸ばそうとしたとき…
 首輪から繋がった引き綱が、私の裸身前面のド真ん中を縦断するようにピッタリと貼り付き、股のあいだの裂けめに食い込んでくる感触がありました。

「あぁんっ!いやんっ!」

 それはまさしく、これまで何度も味わったことのある股縄の感触。
 それも二重にした麻縄よりも更に太い、ゴツゴツザラザラとした乱暴な感触。

「いやんっ、だめぇーっ!」

 下腹部から恥丘へとピッタリ貼り付いた縄が、裂けめの先端でテラテラ芽吹いていた肉芽をギュウギュウ押し潰してきます。
 私のお尻側で再びリードの持ち手を咥えられたのであろうジョセフィーヌさまの気配。

「あっ、あーんっ、そ、そんな、そんなに引っ張らないでぇーっ!」

 私の嬌声を、この友達は嬉しがっている、と捉えられたのでしょう、ますます激しくグイグイと出鱈目に引っ張られる引き綱。
 たわんでは張り詰め、私のマゾマンコに緩んでは食い込んでくる引き綱の陵辱。
 今日何度目なのか、私はジョセフィーヌさまにもてあそばれていました。

「あっ、あっ、あーんっ、いやっ、だめっ、いたいっ、そこっ、だめっ、あーーっ!!」

 裂けめから両脚が引き裂かれてしまうのではないか、と思うくらい強烈な縄の食い込み。
 でもフッと緩んだ瞬間ホッとすると同時に、もっと欲しい、と思ってしまうのは私のマゾ性ゆえなのでしょう。
 SM写真で見たことのある、三角木馬責め、っていうのはこんな感じなのかな、なんて思ってみたり。

 股間への食い込みによる刺激は、そんな私でも我慢しきれないほどの激しさになっていました。
 ジョセフィーヌさまがはしゃがれて、グイグイ引き綱を引っ張られるのです。
 しゃがみ込んだ姿勢から立ち上がろうと中腰にまではなったものの、それ以上は絶対無理。

 股間から引き綱を離すには、もう一度しゃがみ込むだけでは駄目でした。
 首輪から繋がれているので、上半身を低くして腰を高く起こさない限りからだ前面、股のあいだに密着してしまうのです。
 この状態で股間に引き綱を密着させない姿勢…それは私も四つん這いになることでした。

 しゃがんだ姿勢から前屈みになり、石畳に両手を突いて腰だけ高く突き上げます。
 ようやく股間から引き綱が離れ、首輪からジョセフィーヌさまのお口までピンと空中に一直線に張り詰める形に。

 自ら四つん這いになった私にジョセフィーヌさまも何かを感じ取られたのでしょう。
 すぐさま持ち手をお口から落とされ私に近づき、突き上げたお尻の下の太腿後ろをペロペロ舐め始められます。

「ああんっ、ジョセフィーヌさまぁ、いやんっ、くすぐったいーっ」

 そんな嬌声をあげつつ、どうせならお尻を舐めて欲しい、とジョセフィーヌさまの舌が届く位置までお尻を下げていくスケベな私。
 思惑通り、大きく広げたお尻の割れスジに沿ってペチャペチャ舐め上げてくださるジョセフィーヌさま。

「あんっ、いいっ、そこっ、いいっ、もっと下、もっと下もぉーっ!」

 あられもない淫声をあげて身悶えていると、四つん這いの眼前にそびえるお屋敷の正面玄関扉がバタンと開きました。
 現われたのはもちろん、お姉さまを筆頭に、中村さま、寺田さま、そして五十嵐さま。

「あーあー、またイチャついてるよ、この子たち、人んちの玄関先で」
「でもまあ、ペットってそーゆーもんだから、しょーがないんじゃない」
「君たちもうつきあっちゃいなよ。あ、でもそれだとエミリーが寂しいか」
「ううん、あたしネトラレのケがあるらしいから、かまわなくってよ」

 ノリが軽くてかまびすしいご様子は、みなさま多少アルコールが入っていらっしゃるのかも…
 みなさまが口々に軽口を叩かれる中、両手を地面に突いてみなさまを見上げる土下座同然な四つん這い姿の私は、その屈辱的な恥ずかしさで顔面が真っ赤っか。
 
 ジョセフィーヌさまはと言えば、みなさまのお姿が見えた途端に私のお尻をプイと離れられ、一目散に寺田さまのお足元へ。
 どうやらジョセフィーヌさまは、みなさまの中ではとくに寺田さまを慕われているようです。

「本当に全裸で散歩から帰ってきちゃったんだ!?大胆て言うかヘンタイって言うか…ほら、直子?立ちなさい」

 一歩近づいてこられたお姉さまに促され、おずおずと立ち上がります。
 お姉さまが顎をしゃくられたので、服従ポーズ。

「あららら、からだ中に犬の足跡たくさん付けちゃって。またまたジョセに手篭めにされちゃったんだねー。本当に、君たちもうつきあっちゃいなよ、だわ」

 黒スウェットの上にメイドエプロン姿なお姉さまにからかわれます。
 五十嵐さまがビデオカメラのレンズを向けています。

「これは確かに記念写真に撮っておくべき姿よね。直子もこっちに来て並びなさい」

 お姉さまの号令で五十嵐さまが素早く三脚を立てられ、立派なカメラを私が居た位置に据え付けられます。
 
 カメラのレンズに向かって一番右端にパーカー、ジャージ姿の中村さま、そのお隣に私に貸してくださったのとはまた別のメイドエプロンを召された寺田さま。
 そのお隣に寺田さまに寄り添われるようにジョセフィーヌさまがちょこんとお座りになられ、その横に服従ポーズ全裸の私、私の左隣にメイドエプロン姿のお姉さまという配置です。

「エミリーさんはもっと直子ちゃんにくっついてください。その横にうちも入るので」
「リードの持ち手はジョセに咥えさせるのがいいんじゃないかな?寺っち、お願い」

 五十嵐さまのご指示で構図が決まり、セルフタイマーをセットしてから五十嵐さまがお姉さまの横に並ばれます。
 
「レンズの横のランプがチカチカしだしたらすぐシャッターが下りるからね」

 五十嵐さまのお声でみなさまがカメラレンズに視線を合わせます。
 私もそこを見つめていると、ほどなくランプがチカチカし始めました。

「あぁんっ!」

 そのタイミングでお姉さまが私の膣口に二本指を挿入されたんです。
 私が顔を歪ませるのとフラッシュの光が同時でした。

「おっけー。うまく撮れていたら大きくプリントして額装して、ホールに飾ることにするわ」

 そんなことをのんきにおっしゃるのは寺田さま。
 他のみなさまもガヤガヤとお屋敷に戻られ、ジョセフィーヌさまもご自分の小屋のほうへサッサと駆け出されます。

 残されたのは私と中村さま。
 中村さまが首輪からリードを外してくださり、代わりに白いバスタオルだけ渡されます。

「直子はさっき行ったシャワールームでからだの汚れを落としてきなさい」

 この位置からだと目隠し樹木の向こう側にあるスケスケバスルームの方向を指さされた中村さま。

「戻ってきたら夕食だから、自分のからだまさぐってムラムラとかしてないで、さっさと切り上げるのよ?」

 見透かすみたいにおっしゃって、裸のお尻をパチンとぶたれました。


2021年10月10日

肌色休暇二日目~いけにえの賛美 13

 私たちが木立の草むらへ足を踏み入れたとき、ジョセフィーヌさまはひと仕事終えられようとされていました。
 草むらのずいぶん奥の方に横向きなお姿で、前肢を揃えて突っ張られ、いくぶん窮屈そうに後肢を折り曲げられて腰を踏ん張っておられます。
 私たちに気づかれたと同時に、お顔だけ不自然にこちらを向かれました。

「今日はずいぶん奥まで行ったねぇ」

 中村さまがズンズン近づいていかれます。

「ワタシらが埋めちゃうのを知ってるから、現場をいい感じに散らしてくれるのよね。この子、頭いいから」

 中村さまにリードを引っ張られ、私は恐る恐るなへっぴり腰で草むらを踏み分けています。
 この広場にはあの草も生えていることを知っていましたから。
 秘部への刺激ならクセになりそうなくらいなのですが、生足への無駄に不快な痛みはもう味わいたくありません。

「大丈夫よ。ここらへんにはイラクサ、生えてないから。ジョセが平気で歩いているでしょ?」

 ジョセフィーヌさまのすぐ傍らまで近づかれた中村さま。
 ジョセフィーヌさまがそのお顔を見上げられブンブン尻尾を振られています。

「犬だって痛い思いはしたくないからね。ジョセはこの辺りでイラクサの生えてる場所、全部知ってるんだ。生えているのは、広場の入口周辺の木立沿いだけ」
「そんなことより直子も早くこっちに来てワタシがやることを見て覚えて。明日からはあなたひとりでやるんだから」

 リードがグイッと引っ張られ、顔からつんのめるように中村さまの脇へ。
 中村さまが指さされる地面に横たわる茶色い塊。
 ジョセフィーヌさまの体格からすれば、それくらいだろうな、と思える納得の量でした。

「ジョセがし終えたらこのシャベルで近くに穴を掘って、深さはだいたい30センチくらいかな、シャベルですくって埋めるの」
「土が柔らかくてヘンに掘りやすいところは最近埋めた跡かもしれないから避けて、適度に土が硬い場所を選んで掘ってね」

 手首に引っ掛けられていた巾着袋が私に手渡され、中村さまがその塊の傍らにしゃがみ込まれます。
 ご説明通りに淡々と処理される中村さま。
 ジョセフィーヌさまは少しその作業を眺められていましたが、すぐにタッタカタッタと草むらのもっと奥へと駆けて行かれました。

「埋め終わったらさっきの東屋のところに水道があるから、シャベルをよく洗ってね」

 しゃがみ込まれていた中村さまが立ち上がられ、木立を出て芝生広場のほうへと歩き始められます。
 そのお背中を見つめつつ、ふと気になったことをお尋ねしました。

「あの、ジョセフィーヌさまのお尻は、拭いて差し上げなくて良いのでしょうか?」

「直子、犬飼ったこと無いんだね?」

 振り向かれた中村さまの嬉しそうなお顔。

「犬ってね、排便するとき肛門から腸が少し外に出るの。で、終わったら体内に引っ込むから肛門は汚れないの」

 幾分得意げに中村さまがおっしゃって、すぐに前を向かれます。
 やがて東屋にたどり着きました。

「あとはジョセが巡回定期点検に満足してワタシらに擦り寄ってきたら運動の時間。で、適当に切り上げて4、50分で屋敷に戻ると。ジョセとの散歩でやることはそれだけだから、簡単でしょ?」

 ベンチに腰掛けることなく水道へと向かわれる中村さま。
 私に繋がるリードも手放されました。

「そう言えば直子、屋敷に着く前にもこの広場に寄って、素っ裸に剥かれて木に吊るされたんだって?いやらしくアンアン喘いでたってエミリーが言ってたわよ」

 水道の蛇口を捻られシャベルを水洗いされる中村さま。
 リードが手放されたので、からだの前にブラブラさせつつ傍らに立っている私。

「は、はい…」

「露出狂なんでしょ?脱ぎたかったら脱いでいいよ。ここには誰も来ないって、もうわかったでしょ?」

 シャベルを洗い終えた中村さまがタオルで丁寧に水気を拭いながら、私の顔をからかうように覗き込んでこられます。
 水飛沫がTシャツも濡らしてしまったようで、ノーブラの胸元が美乳なおっぱいの形そのものに貼り付いてしまっています。
 とくにピンと目立っている二箇所の乳首位置。

「あ、はい、じゃなくて、いえ…」

 そのお言葉をご命令と受け止めるべきなのか迷っている私。

「あ、でもワタシはどっちでもいいよ。今の格好も充分エロいし、チラ見せテイストが全裸より変態ぽいから」

「あっ、いやんっ」

 おっしゃりながら中村さまが私の裸エプロンの裾をピラっとめくられたとき、ジョセフィーヌさまが舌をハアハアさせながら戻ってこられました。
 すぐに私にじゃれついてこられるジョセフィーヌさま。
 私の背中側に回り込まれ、私の剥き出しなお尻をペロペロ舐めてくださいます。

「おーけー、移動するよ」

 巾着袋を手にされた中村さまが東屋を出られ、広場の木立沿いのもう一方の隅のほうへ。
 そこだと中央にある日陰を作る木々からも逸れて、遮るもののない芝生だけの空間が眼前に広々と見通せます。
 私の足元をグルグル回られながら嬉しそうについてこられるジョセフィーヌさま。

「直子、フリスビーは投げたことある?」

「あ、はい。何回かは…」

 大学の頃キャンパスで何度かお友達と遊んだことはありました。

「そう。じゃあジョセとの遊び方をやってみせるから覚えてね」

 私からフリスビーを取り上げた中村さまが、ジョセ、と呼びかけられ、ジョセフィーヌさまの眼前でフリスビーをひらひら揺らされます。
 ワクワクなお顔のジョセフィーヌさま。

 それからフリスビーを芝生の彼方へと放り投げられ、フェッチ、と一声。
 緑の芝生の上をヒューンと飛んでいく青いフリスビーめがけて、脱兎の如く駆け出されるジョセフィーヌさま。

「で、ジョセが追い掛けて咥えて戻ってくるあいだに、これを用意しとくの。一回で二粒」

 少し開いた巾着袋に右手を突っ込まれ、手が拳状になって引き抜かれます。
 中村さまが手を開くと手のひらにはボーロの形をしたクリーム色の丸いお菓子がふたつ。

「ご褒美ね。ジョセの大好物おやつ、ヘルシーチーズビスケット」

 そんな会話をしているあいだにジョセフィーヌさまがフリスビーを咥えられ全速力っぽく戻っていらっしゃいます。

「よーしよしよし」

 フリスビーを咥えたまま中村さまを見上げるジョセフィーヌさま。
 その頭をやや乱暴にワシワシ撫ぜながら左手でフリスビーを掴まれる中村さま。

 フリスビーがジョセフィーヌさまのお口から離れると同時に、そのお鼻先に中村さまが右手を差し出されます。
 その手にお鼻先から突っ込まれるようにお顔を埋め、ご褒美を咀嚼されるジョセフィーヌさま。
 食べ終えられると、もっと、って、おねだりするように中村さまを見上げられます。

「よーし、もう一回ね。フェッチ」

 再び中村さまがフリスビーを放り投げられ、駆け出して行かれるジョセフィーヌさま。

「こんな感じで10回から12回くらいかな、つきあってあげるの」
「ジョセが飽きたらご褒美食べた後、ちょこんと座り込むから、それが切り上げのサインね」
「たまに元気いっぱいでサインが出ないときもあるけど、12回が限度ね。切り上げたかったらフリスビー持って東屋に戻ろうとすればジョセも諦めるから」

 それから中村さまが二回投げられ、五投目から私がやってみることになりました。
 四投目のあいだに巾着袋を渡され、ご褒美は私の手から。

 戻ってこられたジョセフィーヌさまはふたりが並んで待ち構えているので少し戸惑われたご様子でしたが、チーズの匂いが私の右手から匂っているのに感付かれたのでしょうか、フリスビーを私に差し出してこられました。
 フリスビーを受け取り右手を開きます。
 ベロンと生温かいお口で舐められて、お菓子が取り去られます。

「そうそう、ジョセは賢いねー。今からはこの人が遊び相手。仲良く出来るといいねー」

 中村さまが一歩退かれ、ちっちゃな子供さんをあやされるようなご口調でジョセフィーヌさまに語り掛けられます。
 私はジョセフィーヌさまの頭をなでなで。
 それからフリスビーを右手に持ち替え、ジョセフィーヌさまの眼前でひらひら揺らします。

「じょ、ジョセフィーヌさまっ、よろしくお願いします…ふぇ、フェッチ!です…」

 初めてゆえの緊張でぎこちなくそう語り掛けてから、ぎこちなくフリスビーを放り投げる私。
 緊張し過ぎで力が入り過ぎて空高く舞い上がってしまうフリスビー。
 滞空時間の割に飛距離は余り出ていません。
 それでも嬉々として追い掛けてくださるジョセフィーヌさま。

「まあ、そんな感じだね。もっと肩の力抜いてリラックスして、直子も愉しまないとジョセも楽しめないよ。犬ってそういうところ敏感だから」

 私の五投目は一部始終を見守ってくださった中村さま。
 六投目を投げ終えてから振り向くとお姿が無く、キョロキョロ見回すと東屋のほうへと向かわれているお背中が見えました。

 え?どうされたのかしら?
 少しの不安がよぎりましたが、フリスビーを咥えて私に向かって一目散に駆け寄ってこられるジョセフィーヌさまの健気過ぎるいじらしさを目にしたら、もうそちらに夢中。
 私の手をベロベロ舐められ、おやつを美味しそうに召し上がられるお姿が本当に可愛らしい。

 ジョセフィーヌさまの心底楽しげなお姿に余計な力みも消えて七投目、八投目はちゃんと飛距離も出せるようになりました。
 余裕が出てくると余計なことにも気がついてしまいます。
 フリスビーを投げるために思い切り腕を振り抜くと、エプロンの裏地に乳首が思い切り擦れて、ビクンと感じちゃうほど性的にも気持ちいいんです。

 八投目を投げ終えたときに中村さまが戻っていらっしゃいました。
 右手にはビデオカメラを携え、左手は後ろ手に隠されて。

「今何回目?」

「あ、はい。八回目です」

「愉しい?」

「はい。ジョセフィーヌさま、すっごく可愛らしいです」

 フリスビーを私へと差し出され、私の手のひらをペロペロと舐めてくださるジョセフィーヌさま。
 ご褒美を堪能され、やがて私の顔を見上げられたので九投目。

 少しづつ夕暮れに近づく青空をクルクルスイスイ飛んでいく青いフリスビーと、それを跳ぶように追い掛けて駆け回られるジョセフィーヌさま。
 そのお姿を見守りながら巾着袋に右手を突っ込もうとしたとき、中村さまから、待った、がかかりました。

「今日はこういうおやつも用意してるんだ。こっちもジョセの大好物。直子、右手をこっちに出して」

 隠されていた左手に握られていたのは歯磨き粉のチューブみたいな形状のもの。
 お屋敷のお庭で寺田さまも同じようなのをお持ちになられていました。
 そして、その後に起こったこと…
 そこまで考えて、私のからだが性的にキュンと疼きました。

 カメラを持たれたままの右手も器用に使われて、チューブのキャップをクルクルっと外された中村さま。
 差し出した私の右手のひらにシュルシュルっとペーストを絞り出されます。
 少し黄ばんだ乳白色のペーストからも、ほのかなチーズの匂い。

「ジョセが戻ってきてフリスビー突き出してきたら、直子は自分でエプロンの前をめくり上げて、このクリームを自分のマンコに塗り付けなさい」
「それでマンコをジョセに差し出せば悦んで舐めてくれるわよ。どうせ、ジョセにそういうことされたくって仕方なかったのでしょう?」

 中村さまが私の耳元でイジワルく囁かれました。
 耳朶に息が吹きかかるたびにビクンビクン。
 楽しいフリスビー遊びが一瞬にして淫靡な快楽責めへと変わった瞬間でした。

「これは命令だから。エミリーから、その様子をビデオに撮ってくるように頼まれちゃったんだ、悪く思わないでね」

 中村さまがからかうようにそう囁かれ、私から数歩離れられてレンズをこちらへ向けてこられます。
 お約束通りお姉さまのために、その一部始終を撮影されるのでしょう。

 そして、その囁きは私にとって言いなりにならざるを得ない恥辱を呼ぶ呪文。
 それがお姉さまのご希望であるなら、どなたがお相手でも、どなたのお言葉でも、従わないという道は残されていない、つまりお姉さまからのご命令なのです。

 ずいぶん遠くでフリスビーを咥え上げられたジョセフィーヌさまが、一直線に私へと迫ってこられます。
 やがて私の足元で私を見上げられるジョセフィーヌさま。
 ゆっくり左手でそれを受け取ります。

 ああっ…

 目をギュッとつぶり、フリスビーを持ったままの左手でエプロンの裾を掴みます。
 サッとまくり上げると同時に右手のひらを自分のマゾマンコに押し当てました。
 やだっ、ずいぶん熱い…

 マゾマンコは内部から沸き立つように熱を帯びていて、そこに少し冷たいペーストの感触が気持ちいい感じ。
 私が右手をずらすと同時にジョセフィーヌさまのお鼻先が私の股間に挿し込まれます。
 間髪を入れず生温かくてヌルっとしたベロにベロンと撫ぜられる感触。

「ああんっ!」

 思わず洩れてしまう淫ら声。
 肛門から会陰、膣口、陰唇、恥丘まで、忙しない舌使いでベロベロ蹂躙されています。

「あんっ、あっ、あっ、あーーんっ!」

 クリトリスはみるみる腫れ上がって表皮を脱ぎ捨て、その尖った肉芽がジョセフィーヌさまの舌でプルプルもてあそばれます。
 右手に少し残っていたペーストを下腹部やお尻で拭うと、舌はすぐにそちらまで侵食してくださいます。

「あっ、いいっ、そこっ、あんっ、ああーんっ!」

 今現在は一切拘束などされていないのですから逃げようと思えばたやすく逃げられるはずなのに、背中を反らし気味にしてまるで差し出すようにマゾマンコを突き出している私。
 私の左前方から中村さまが構えたレンズが、その浅ましい痴態をデジタルで記録されています。

「あっ、あっ、あんっ、いいっ、いいっ、ふぅーーんっ!」

 すでに私の貪欲なマゾマンコからはいやらしいおツユがジワジワジュクジュク滲み出ていますから、ペーストのお味も薄まっているでしょうに、私の股間から離れてくださらないジョセフィーヌさま。
 こんな状態では、とてもじゃないけれどフリスビーは投げられません。
 ビスケットのおやつのときと比べて数倍の時間が経っている気がします。

「いいっ、あんっ、だめっ、あ、そこ、だめっ、いやんっ、いいっ、いいーっ!!」

 どんどん昂ぶる私のからだ。
 欲望に火が点いてしまった私は、ジョセフィーヌさまにマゾマンコを差し出したまま、いつの間にかエプロンの隙間から右手を差し入れ、生おっぱいまでまさぐり始めていました。

「あーあーあー、ペット二匹で仲良すぎ。こんなんじゃ埒が明かないじゃない」

 あともう少し、というところで水を差してこられたのは中村さまでした。

「ほらジョセ、いつまでマンコ舐めてるの?ジョセは本当にM女を喘がせるのが大好きなんだから」

 私の手からフリスビーを奪い取られ、そのプラステイック表面で私の股間に潜り込まれたままなジョセフィーヌさまの頭を軽くポンポンと叩かれます。

「直子も直子よ。いったんサカッちゃうと手がつけられなくなる、ってエミリーも言ってたけど」

 心底呆れられている、ということがよくわかる中村さまのお声。

「ほら、ジョセフィーヌ!これが最後。ラスト。これをちゃんと取ってこい出来たら、たっぷりとご褒美をあげるから。フェッチ!」

 中村さまからジョセフィーヌ、と、ちゃんとお名前を呼ばれてようやく私の股間から頭をお上げになられたジョセフィーヌさま。
 中村さまがそのお鼻先にフリスビーをヒラヒラさせたと思ったら、ツツーッと放り投げられます。
 条件反射のように駆け出されるジョセフィーヌさま。

「ほら、直子ももう、こんなの脱いじゃいなさい」

 私の背後に回られて、素早く首後ろとウエスト後ろの紐が解かれました。
 フリルエプロンが束の間ふわりと宙を舞い、足元にパサッ。
 結局この広場で本日二回目の全裸姿お披露目です。

「直子にもおやつをあげる」

 中村さまがジャージのポケットから取り出されたのは黄色いバナナ。
 その太めな一本は出かける間際に寺田さまがくださったものでしょう。

「下の口で充分味わってから、上の口で栄養補給なさい」
「ほら、そこに仰向けに寝そべって、ジョセが帰ってくるまで自由に出し挿れしていいのよ」

 緑の芝生を指さされた中村さま。
 そのお言葉で催眠術にかかったように言いなりになる私。
 芝生に背中を預け両腿を大きく開いて両膝を立て、躊躇なくバナナの実を膣口に挿入します。

「ああーんっ!」

 待ち侘びていた粘膜がすんなりバナナを迎え入れ、すぐさま始まる抽送運動。
 中村さまのレンズが私を見下しています。

 ハアハアハア…
 耳の中でヤケに大きく聞こえるのは興奮している自分の息遣いなのかな?と思い、つぶりがちな目をふと開けると、間近にジョセフィーヌさまのお顔。
 その横には中村さまがしゃがまれているのか、レンズを構えられたまま、私のからだに空いているほうの手を伸ばしてこられようとされています。

 まずは左おっぱいをギュッと掴まれました。

「はうんっ!」

 その甘美な感触が去ると左おっぱいに残るねっとりとした感覚。
 ペーストが塗られたんだ、と理解したときにはすでにジョセフィーヌさまの舌が這い回っていました。

 もはやいちいち手に取ってから塗るのも面倒臭くなられたのか、チューブから直に右おっぱい、お腹、脇腹、下腹、恥丘スレスレまで、次々に塗り付けられるペースト。
 ジョセフィーヌさまはそのすべてを舐め尽くすべく、私のからだを跨ぎ、踏み越え、覆いかぶさるように伸し掛かられて、私のからだのあちこちを熱心に愛撫してくださっています。
 そのあいだ中、止まらない私の右手、バナナの抽送。
 
 恥丘と裂け目の境まで下りてこられたジョセフィーヌさまの長いベロは、そのすぐ下で腫れ上がっている肉のお豆をも転がしてくださいます。

「あーーっ、そこぉーっ、あーーーんっ、だめーーっ、いいぃくぅぅーうふぅぅーっ!!!」

 中村さまのビデオカメラのレンズに見守られ、ジョセフィーヌさまに69の形で伸し掛かられたまま、ふやけたバナナの実に犯された私の感極まった淫声が、晩夏の夕暮れの芝生にはしたなく響き渡りました。


2021年10月3日

肌色休暇二日目~いけにえの賛美 12

「直子ちゃんにシャワーを急がせたのは、受け持ってもらいたいお仕事があるからなのよ」

 ニヤニヤ笑顔の中村さまが立ち上がりつつおっしゃいました。
 中村さまと同じような笑顔のお姉さまが中村さまのお隣に並ばれ、私をじっと見つめつつ不自然なくらい大げさにご自身の顎を上にしゃくられました。

 ドキン!
 お姉さまからその合図をされたら、私は服従ポーズを取るしかありません。
 恥ずかしさで顔が上気してくるのを感じながらヴィーナスの誕生ポーズだった両手をゆっくりと外し、いったんお腹の前で両手を組んだ後、両腋を徐々に開いて後頭部へ。

 全裸のなにもかもを剥き出しのままみなさまの眼前に。
 お姉さま以外のお三かたのお顔が、一様に唖然とされたお顔に変わります。

「直子にジョセフィーヌのお散歩係を受け持って欲しいそうなの。ここに滞在させてもらっているあいだ、ずっとね」

 中村さまが覗き込まれていたビニールバッグの中から、何か青くて丸い円盤状のものとワンちゃんのリードらしき紐を取り出されたお姉さま。
 円盤状のものを団扇のようにパタパタ揺らしながらつづけられます。

「朝の8時前と夕方の今頃、つまり5時半くらいの一日二回。明日と明後日、つまりあたしたちがおいとまするまでね」
「今日の当番は中村さんだそうだから、最初だけついて行ってくださるって。それで手順を覚えて、明日からはひとりで、ね」

 私の首輪にリードを繋いでくださるお姉さま。
 リードはあるじさまが使われていたのと同じような縄状ロープでしたが、あるじさまのよりも長めで、持ち手が私の脛のところくらいまで垂れています。

 それからお姉さまの手に導かれて服従ポーズが解かれ、右手に渡された青い円盤。
 近くで見てわかったのですが、それはプラスティック製のフリスビーでした。
 滑らかな表面のあちこちに小さな凸凹、たぶんジョセフィーヌさまの歯型、噛み痕でしょう。

「それじゃあさっさと行こうか」

 中村さまがビニールバッグを手に取られ、私を見ます。
 えっ!?あの、ちょ、ちょっと待って…

「あの、あの私、私は、裸のままで、ですか?…」

 私のリードを掴もうと伸ばされてきた中村さまの手より一瞬早く、自分の右手でリードの途中を握って後ろ手に隠します。

「大丈夫よ。ここら一帯は私有地だから一般の人は入って来れないことになっている、って教えたじゃない?」

 お姉さまが、忘れちゃったの?とでもおっしゃりたげなお顔で、私の顔を覗き込んでこられます。

「でもでもあるじさまが、郵便屋さんや宅配便屋さんがいらっしゃることがある、って…」

 全裸でワンちゃんとお外をお散歩する、という行為は露出マゾの私にとって凄く刺激的で魅力的な冒険なのですが、初めて訪れた知らない土地ですし、お姉さまもご一緒してくださらないようなので、生来の臆病が顔を出して怖気づいてしまっています。

「あるじさまって?ああ、先生のことか。配達の人たちは、ここがそういう屋敷だって知っているから、もう慣れっこになってるし、そもそも今日はもう郵便、来てるよ」
「それにもし万が一、知らない誰かに絡まれたとしても、ジョセが守ってくれるって。あの子ああ見えて、不審な人物には敏感で、人が、じゃなくて犬種が変わったみたいに獰猛になるから」

 焦れったそうにおっしゃる中村さまの背後から、寺田さまが近づいていらっしゃいました。
 一見、エプロンの下に何も着ていらっしゃらないように見える妖艶な寺田さま。
 おそらくあるじさまの助手をされていたときに召されていたレオタードのままなのでしょう。

「でもまあ直子ちゃんが尻込みしちゃうのもわかるわ。今日来たばっかりだし、この屋敷の周辺がどんな感じなのかも知らないでしょうし」

 おやさしくおっしゃりながら、着けていたエプロンの紐を解き始められました。

「だから今日はこれを貸してあげる。真っ裸で出るよりも、いくらか気分も落ち着くでしょう?」

 外したばかりのエプロンを私に手渡してくださる寺田さま。
 私の予想は外れて着替えていらっしゃいました。
 エプロンを取られた寺田さまの着衣は、黒のキャミソールにデニムのショートパンツ、変わらずのナイスバディなボン・キュッ・ボン。

「悪いわね、うちの直子がわがままで。ほら、直子、裸エプロンも大好きでしょ?ちゃんとお礼をなさい」

 お姉さまのニヤニヤ笑いが止まりません。

「あ、はい。ありがとうございます…」

「あたしが紐を結んであげる」

 お姉さまが私の素肌にエプロンを纏わせ、首後ろとウエストの紐をきつく結んでくださいました。
 布地にうっすらと寺田さまの体温がまだ残って生温かい。
 エプロンの丈は私の太股半分くらいまで、胸当ての左右から横乳が三分の二くらい覗いています。
 もちろんお尻は丸出し。

「あら可愛い。そのままメイド喫茶で働けるわね」

 からかうような寺田さまのお声。

「ほら行くよ。たぶんもうジョセが焦れて玄関の外で待ってる」

 中村さまがあらためて私のリードを手にされ、グイッと引っ張られます。
 どうやら有無を言わさずこの格好でお外に連れ出されるみたい。

「直子?フリスビーは剥き出して持っていてね。それで空いている手でそのバッグを持って」

 中村さまにご指示され、何やらごちゃごちゃ詰め込まれているビニールバッグを手にします。
 中村さまからも呼び捨てに変わりました。
 そんな中村さまは片手に私のリード、もう片方の手にはお姉さまのハンディビデオカメラ。

「あ、ちょっと待って。ジョセのおやつは入っているけれど、直子用のおやつも入れてあげなきゃだよね」

 寺田さまが出てこられたドアの向こう側に優雅なお足取りで消えられ、すぐに戻っていらっしゃいます。
 手にされた黄色いバナナ三本が連なった房が、私が提げたビニールバッグの一番上に乗せられました。

 意味有りげにお顔を合わせられ、ニッと小さく笑い合わられるお三かた。
 中村さまが玄関方向へと一歩踏み出され、私の首輪も同じ方向へと引っ張られます。

「いってらっしゃーい。気をつけて、ごゆっくりー」

 明らかに愉しまれているお姉さまと寺田さまのお声を背中に聞きながら、ホールを抜けて玄関口へと出て、スリッパからサンダルに履き替えました。

 外開きの扉を開けた途端に、力強く、ワンっ!のひと吠えが。
 ジョセフィーヌさまが尻尾ブンブン、お口ハアハアで待ち構えていらっしゃいました。

 お外は陽射しがずいぶん弱まったものの、まだまだ充分な明るさ。
 裸エプロンがちょうどいいくらいの暑くもなく寒くもなく。
 そよそよそよぐ風が素肌に気持ちいい夏の夕方。

 ジョセフィーヌさまはまず、中村さまのお足元を嬉しそうにグルグル回られてご挨拶。
 それから私のほうを見遣り、持っていたフリスビーに気づかれたのでしょう、尻尾の揺れが一際激しくなられました。

 リードに引かれた私のもとへと飛びかかってこられるジョセフィーヌさま。
 白いエプロンの胸元に前肢をお掛けになり、爪先立ちで私の顔を舐めようと長い舌を伸ばしてこられます。
 
「あぁんっ…」

 それから今度は私の背後に回られ、足元にまとわりつくようにおからだ擦り寄せつつ、剥き出しの背中やお尻をペロペロ舐めてこられます。
 
「そうよジョセ、今日からしばらくはこの人がおまえの遊び相手。仲良くなれるといいね」

 私の数歩先を歩かれつつ振り向かれた中村さまが、ジョセフィーヌさまにそんなふうにお声掛け。
 その右手のお姉さまのビデオカメラのレンズが、私とジョセフィーヌさまに向いています。
 玄関先の庭園を抜け、間もなく私たちが来るときに車で走って来た山道に出ようとしています。

「あのう…お散歩って、お屋敷の外に出るのですよね?」

 先ほどからずっと気になっていたことを、我慢しきれず中村さまのお背中に問い掛けます。

「そうよ。犬のお散歩だもの…」

 あたりまえじゃない、とでも呆れられたようにつづきそうな、振り向かれた中村さまのお顔。

「ジョセフィーヌさまにリードを付けなくてもいいのですか?」

 そうお声がけすると中村さまのお足取りがピタッと止まりました。
 数歩で追いついた私。
 そこからは中村さまと肩を並べて歩くことになりました。

「ジョセはいいのよ。ここでは放し飼い。何度も言うようだけれどここら一帯はワタシらの私有地だから」

 中村さまを真ん中に左に私、右にジョセフィーヌさまという並びで、どんどんお屋敷の建物から離れていきます。
 敷石の舗道もそろそろ終りとなり、もう少しで山道に出るはずです。

「ジョセが夏をここで過ごすのも4年目だからね、ジョセにとってここら一帯はまさに、勝手知ったるなんとやら、なのよ」
「ワタシらが用事で散歩につきあえないときは、時間になるとひとりでここらへんを散策しているみたい。なんか知り合いも増えているみたいだし」

 おひとりで可笑しそうに含み笑いされる中村さま。
 
 お散歩の道順は、まさしく私たちが車でやって来た山道を、逆に辿っています。
 ジョセフィーヌさまは山道に入った途端に、その緩やかな下り坂をタッタッタッと軽やかに駆けていかれ、十数メートルくらい先に行ったところで立ち止まられて振り向かれ、早くおいでよ、とでもおっしゃりたげなお顔で私たちを待つ、というのをくりかえされています。

 同じ首輪の身ながら、自由奔放に振る舞われるジョセフィーヌさまと、中村さまのリードに繋がれたままの裸エプロンの私。
 私ってここではワンちゃんよりも地位の低い存在として扱われるんだ…
 そんなふうに考えた途端、甘美な被虐の電流が下半身をつらぬき、キュンキュン感じてしまいます。

「寺っちから聞いたよ、あなた、先生にずいぶんしつこく虐められたそうじゃない?」

 中村さまがビデオカメラのレンズをこちらへ向けながら尋ねてこられます。

「あ、いえ、そんな…」

「四つん這いでずいき咥えさせられて、シャワーでイカされて、イラクサでイカされて、ジョセにイカされて。本気のビンタで涙まで落としてたって」
「エミリー、それ聞いてとても嬉しそうにしてたわよ?あなたたちって本当に理想的な主従カップルなのね」

 なんてお答えしていいのかわからず、ただモジモジうつむくだけの私。

「あなたと遊んで先生もノッちゃったみたいで、あれからずっと仕事部屋に籠もりっきりよ」

 そのお言葉をお聞きした途端、私が一番知らなくちゃいけないことがあったことを思い出しました。
 ここに着いてからのあれこれがいちいち強烈で、すっかり失念していました。

「あのう、教えて欲しいことがあるのですが…あるじさま…先生って、何の先生なのですか?…」

 私が中村さまにそう単刀直入にお尋ねすると、中村さまのおみ足が再度ピタリと止まりました。
 それまで私のからだのあちこちに向けられていたビデオカメラのレンズも下ろされます。

「呆れた。そんなことも知らずに今まで先生に好き放題にされていたんだ?てっきり知っててファンだから悦んでいるんだと思ってた。エミリー教えてくれてなかったの?」

「はい…お姉さまからは、とにかく偉い先生ということだけで…あと、容赦無く責める怖い人、だとも…」

「ふーん、エミリーらしいわね。当たらずとも遠からず、ってとこ」

 私たちが立ち止まってしまったのでご心配されたのでしょう、ジョセフィーヌさまが私たちの足元まで戻って来られ、怪訝そうに見上げられています。
 そのお顔に促されるように中村さまが再び歩き始められました。
 
 左右に立ち並ぶ木々の葉っぱで翳った陽光が遮られ、昼間のときよりずいぶん薄暗く感じます。
 でも却ってそれが神秘的と言うか幽玄な感じと言うか、非日常っぽい絵画の世界に迷い込んでしまったかのようでもあり、幻想的。
 この感じなら私の裸エプロン、意外と合っているかも、なんて…

「あなた、百合薔薇学園サーガ、っていう小説シリーズ、知ってる?」
 
 中村さまからの妙に具体的なご質問で現実に引き戻されます。

「あ、はい。学生の頃に何冊か読んだことがあります。確か…鬼百合と姫小百合…っていうタイトルだったと思いますけれど、あのお話の印象が鮮烈で…」

 その小説は私が受験を控えた高三のとき、ピアノを個人レッスンしてくださっていた妙齢の女性が貸してくださったものでした。
 全寮制の女子学院を舞台にした百合小説で、そのお話は寮長である美貌の女性教諭が新入生の可憐な美少女をSM的な展開で言いなりドレイに調教していく、という、私の性癖のド真ん中をジャストミートなものでした。
 
 お借りした当時、そのピアノの先生との甘酸っぱい関係性とも相俟って大いに感化され、夜毎ページを繰ってはオナニーに耽ったものでした。
 何年かぶりに思い出して、自然と顔が火照ってしまいます。

「ははーん、その顔は直子もあの話でオナってたくちでしょ?あのシリーズの作者先生よ」
「ライトノベルがまだジュブナイルなんて呼ばれていた頃から少女小説の連載を何本も持たれ、その後はSFや時代小説、BLやエッセイなど手広く手掛けて、近年は正統的な甘酸っぱい百合小説と女性主従のレズビアン官能小説をメインに執筆されている名塚毬藻先生」

 お名前をお聞きしても申し訳ないのですが、ああ、あのお話はそんなお名前の作者さまだったな、くらいの印象でした。
 教えていただいて思い出したくらいな…
 
 なにしろ、そのピアノの先生がその頃の私くらいのご年齢のときにご感銘を受けた作品です。
 ピアノの先生と私に10歳くらいの年齢差がありましたから、その頃には新品が本屋さんには売っていませんでした。
 お借りした本も夜毎の酷使でだいぶくたびれていましたので、もう一冊買っておこうとご近所の古本屋さんをこまめにチェックしてやっと買えたくらいでした。
 
 そのときシリーズの他の巻も数冊一緒に買いました。
 それらは百合小説として普通に充分面白かったのですが、えっちな描写はどれもなぜだか控えめで、私にとっては一冊目ほどのインパクトはありませんでした。
 
 それでも、あのお話を書かれた先生、というのは驚きで、何か運命の綾みたいなものを感じます。
 そんな先生って、今おいくつなんだろう?…

「ワタシは某出版社に勤めていて先生の担当編集者だったの。でも連載している文芸誌の編集長が変わって、先生の担当も変えるって言い始めて揉めて。先生も、中村とじゃなきゃ書かない、っておっしゃってくださって」
「それで編集長と喧嘩みたいになって出版社飛び出して今はフリーの編集。文芸誌にはきっちり連載終わりまで半年分の原稿を先生が預けてくれた」

「先生は毎年夏はここに来て、読み切りの作品をいくつか仕上げるの。出版社からの依頼じゃなくてご自分で書きたいと思う小説ね」
「今年は女子校の女教師転落陵辱ものとご令嬢誘拐のサスペンスもの、あと大奥を舞台にした時代物を何か書きたいって言ってる」

「女教師ものは先週来ていたM女がいいインスピレーションになったみたい。で、今日はご令嬢もので臨まれたみたいね。それで直子のドマゾっぷりが見事にツボに嵌ったみたい」

 先生、あるじさまのことになるとご饒舌になられる中村さま。
 もう10分くらいは歩いたでしょうか、気がつけば見覚えのある道、来る途中のランチタイムでお姉さまに虐められた芝生広場から車へと戻る際にお姉さまと手を繋いで歩いた細い脇道、に入っていました。
 ということは、お散歩のゴールもあの広場なのかな。

「それにしても、レズビアンでSM寄りの性癖持ちって、もれなく、鬼百合と姫小百合、の洗礼を受けているみたいね。ワタシや寺っちとイガちゃんはもちろんだけど、直子もだって言うし、先週のM女だって…」

 中村さまがそこまでおっしゃったとき、あの広場の入口に着きました。
 木々が途切れた四角形のただっ広い芝生広場なので、陽光もまだ充分に射して山道とは段違いの明るさ。
 一足先に辿り着いていたジョセフィーヌさまが私たちの顔を見上げてワンッ!

「ああ、いいよー、いっといでー」

 中村さまがおやさしくおっしゃり、広場の入口から真向かいのほうをまっすぐ指さされます。
 その指さされたほうへとまっしぐらに駆け出して行かれるジョセフィーヌさま。

 ジョセフィーヌさまは広場中央の木陰も突っ切られ向こう側の草むらにお姿を消されます。
 私たちは入って左手の屋根が付いた東屋でひと休み。

 私が持っていたビニールバッグをテーブルの上に置き、中村さまが中からいろいろ取り出されます。
 バッグの中に入っていた学校の体操着入れくらいな大きさの巾着袋に、何かチューブみたいなものやらをいろいろ詰め込まれ、それを手首に掛けられてその手には園芸用みたいな金属製のシャベル。

「ジョセはね、ここに来たら真っ先にさっきみたいに草むらに飛び込んでうんちするんだ。どうやらお気に入りの場所があるみたい。直子はフリスビーだけ持ってついてきて」

 笑いながらおっしゃる中村さまが、シャベルを持たれた手の指先に私のリードの持ち手も引っ掛けられ、ジョセフィーヌさまが先ほど消えられた草むらのほうへと私を引っ張っていきます。
 中村さまの空いたほうの手にはしっかり、お姉さまのビデオカメラ。

「明日からは直子もジョセと一緒に、したかったらしちゃっていいからね」

 途中振り向かれた中村さまがイタズラっぽく、そうおっしゃいました。


2021年9月26日

肌色休暇二日目~いけにえの賛美 11

  目隠し越しでも、私の目の前にどなたかがいらっしゃるのが気配でわかります。
 おひとりではなくおふたりかお三かたか、もしかしてそれ以上かも。
 ふうわり嗅ぎ慣れないフローラル系パフュームの香りも漂ってきていますので、女性のかたたちだけだと思いたいのですが…

「あうっ!」

 無言のまま、いきなり右おっぱいを鷲掴みにされました。
 そのまま乱暴にわしわしと揉みしだかれ、更に乳首をギュッとつままれ痛いほど引っ張られます。

「あんっ、いたいぃ…」

 快感よりもやっぱり怯えと不安のほうが勝っています。
 郵便か宅配便の配達員のかたなのかしら…

「あんっ、や、やめてくださいっ!な、なんなんですか、あなたがたはっ!」

 あるじさまのお話では、お庭のM女に手を出すのはお約束違反なはず。
 憤りと恐怖で私には珍しく声を荒げてしまいました。

「おーおー、素っ裸の晒し者マゾ女が何かイキガッているなー。大人しくしてりゃあ悪いようにはしねーよ」

 聞き馴染みのないドスの効いた低めなお声。
 だけどなんだか女性がわざと低くお下品に作られたお声にも聞こえます。

「なかなかいい乳してるじゃねーか。おいっ、あんまり暴れるなっ!泥水が跳ねるだろが」

 左おっぱいも鷲掴まれ揉みしだかれ始めます。
 右おっぱいのより、包まれた感触が少し小さい?
 両方とも手のひらの感触がしなやかで、乳首をつまむ指も女性の指っぽい。

「あんっ、あーっ、あんっ、や、やめてくださいぃ…」

 自由に動かせる左腕で払いのけることも出来るのですが、左手に握り締めている肥後ずいきさまを見られるのが恥ずかしくて腕ごと背中側に隠しています。
 それをいいことに乱暴に嬲られまくる私の無防備おっぱい。

 性的刺激に身悶えしながらも、どんなかたの仕業なのか見てやろうと思い、目隠しを取ることに決めます。
 素顔写真を撮られてしまうかもしれませんが、ここで事件にしてしまえば悪用も出来ないはず。
 男性がひとりでも混ざって居たら、ありったけの大声であるじさまと寺田さまをお呼びしようと心に決めます。

 自由に出来る私の左手には使用済みの肥後ずいきさま。
 でもこのヌメヌメ濡れそぼった肥後ずいきさまを、泥濘んだ地べたに置きたくはありません。

 少し考えて、お座敷のときみたいにいったん口に咥えることにし、隠していた左手をそっと口元に持っていきます。
 肥後ずいきさまの側面に軽く噛み付いたとき、あっ、咥えたら叫べないな、と遅ればせながら思い至ります。

 素早く目隠しを取って状況を確認して、再び肥後ずいきさまを手にしてから叫べばいいんだ…
 そんなふうな段取りを頭の中で組み終えたとき、一足早くどなたかの手で目隠しがあっさり外されました。

「まったく、こんな泥水の上に中途半端に吊るされちゃって、何をされていたんだろうねえ、この淫乱マゾ娘は」

 背後から聞こえる呆れたようなお声は、聞き覚えありまくる麗しの声音。

「ふぁっ、ふぉっふぇーさまっ!」

 私の間の抜けた叫び声で、おっぱいに伸びていた手たちがスッと引いていきました。
 思わず叫んだ途端に咥えていた肥後ずいきさまがポロリと口中から転げ落ち、足元の泥濘んだ芝生へ。
 そこから斜面を尚もコロコロ転がり、小さめな泥水溜りで止まりました。
 あーん、ごめんなさい、肥後ずいきさま…

 それはさておき、私の背後におられたのは紛れもなく愛しのお姉さま。
 お姉さまが目隠しを外してくださったようです。
 行きの電車個室内で愛し合う前におトイレで着替えられた、黒地に白いストライプのスウェットスーツをお召しになられています。

 私の右おっぱいを揉みしだかれていたのは、立ち位置から言って中村さま。
 大広間で出会ったときと同じTシャツにジャージ姿で、カーキ色の薄めなブルゾンを羽織られています。

 そして、私の左おっぱいに取り付かれていたのは…

「あ、こちらはあたしも初対面の五十嵐ショーコさんね、通称イガちゃん。町のスーパーで買い物中にバッタリ会ったの。地元在住で中村さんのプー太郎仲間なんだって」

 お姉さまがご説明してくださいます。

「中村さんが、今日からしばらくうちに露出狂のうら若いマゾ娘が泊まっていくよ、って誘ったら、ナニソレ面白そー、ってノッちゃって、遊びに来てくださったの」
「イガちゃん、これが噂のマゾ娘、直子。あたしのプティスール兼マゾペット。可愛い子でしょ?でもね、ドン引きしちゃうくらいのド助平なんだ」

 私の紹介の仕方がヒドすぎる気もしますが、五十嵐さまに視線を合わせ無言でペコリと頭を下げました。

 五十嵐さまは赤とグレイのボーダー柄VネックTシャツにスリムジーンズ、麦わらのパナマハットをかぶられています。
 ショートカット細面でボーイッシュな感じのキツネ顔美人さん、バストは控えめでからだ全体がスリムな感じ。
 一瞬、美少年系の男性か、とも思ったのですが、手から腕の感じが明らかに女性でしたし、嗅ぎ慣れないパフュームも五十嵐さまから香っていました。

「イガちゃんは趣味の同人で漫画を描いてらっしゃるんだって。エロいのばっかりだそうだから、直子は絶対ネタになるはずよ」

 私の右手右足の拘束ベルトを外してくださりつつ、お姉さまがおっしゃいます。

「うん。来るなりいきなりこれだもんね。うちも何度かここにお邪魔しているけれど一番インパクトあった。どんなことされたのか、後で詳しく聞かせて欲しいな」

 少し低めだけれど耳触り良くてよく通る五十嵐さまのお声。
 そのお声をお聞きして、最初に男性風の作り声で脅かしてこられたのも五十嵐さまだな、と思いました。

「それにしても直子、酷い格好だねぇ」

 お姉さまがおふたりのほうへと戻られ、正面からしげしげと見つめてこられます。
 両手足首のベルトが外され、首輪とそこに繋がるリード、そして両足に泥まみれのハイソックスを履いただけの全裸で皆様の前に立たされた私。

 五十嵐さまが不意に数歩お下がりになられ、水溜りから肥後ずいきさまを拾い上げてくださり、持ち手のところの端っこをつまむようにお持ちになって、私のところへ持って来てくださいました。

「はいっ。これ、大事なものなんでしょ?」

 イタズラっぽく探るような笑顔で渡してくださる五十嵐さま。

「あ、ありがとうございます…」

 小さな声でお礼をお返しし、仕方なく再び左手に握ります。
 みなさまの前で、裸で肥後ずいきさまを大事そうに持っていることがなんだか凄く恥ずかしい…
 肥後ずいきさまは、粘液でヌメっている先端部分のほうがベットリ泥で汚れています。

 そんなふたりのやり取りを眺めてご愉快そうな笑顔のお姉さまが、私のからだを指差しつつ、つづけられます。

「下半身ヌルヌルにして裸のあちこちに泥まみれな犬の足跡付けちゃって、まるでお犬様にレイプされた直後みたいじゃない」
「それにずいぶんと長いあいだ、全裸で炎天下に放置されたんじゃない?恥ずかしい日焼け跡が周りの日焼け肌と同化し始めてる」

 ご指摘いただいて自分の乳首に目を落としてみると、確かに乳輪の周りを目立たせるように白く残っていた日焼け跡が淡くピンクに色づいていて、薄い小麦色との区別が曖昧になっています。
 この感じで旅行中晴天がつづいてくだされば、お尻上の恥ずかし過ぎる自己紹介も、東京に戻る頃には判読出来なくなっているかもしれません。

「まあ、なんにしても直子ちゃんは、このままじゃ屋内に入ることは出来ないわね」

 やれやれという感じで呆れたようにおっしゃる中村さま。
 そのお言葉になんとなくイジワルっぽいニュアンスを感じて不安になる私。
 まさかこの後ずっと、お庭にある大きめな犬小屋でジョセフィーヌさまと一緒に裸で寝起きしなさい、なんてことになったりして…

「あら?そんなに怯えた顔しないでよ直子ちゃん。別に一晩中このまま裸で閉め出す、っていう意味じゃないから」

 薄く笑いながらお庭の隅の一角、表玄関に近い建物の壁のほうを指さされた中村さま。

「あそこに庭から直で入れるシャワールームがあるから、そこで汚れをキレイに落として、それから室内に入ってね、っていうこと」
「最初はワタシが教えてあげるから、先生に庭で虐められたときは、次からは頃合いを見計らって自分の判断で汚れ落としてから屋内に入ってね」

 ということは、ここに滞在中はずっと、あるじさまからの屋外調教がつづく、ということでしょうか…
 思わずお姉さまのお顔を、助けを求めるみたいに見つめますが、お姉さまはニヤニヤ見つめ返してくださるだけ。

「じゃあワタシは直子ちゃんをシャワールームにお連れするから、悪いけれどイガちゃんとエミリーは買ってきた食材を車から厨房まで運んでおいてくれない?」

 中村さまが私の首輪から垂れたリードの先端に手を伸ばされながらおっしゃいます。
 が、不意にその手をスッと引っ込められて、

「あ、そうか。はい、これ車と玄関の鍵。イガちゃん、厨房の場所わかるよね?」

 キーホルダーが付いた鍵束をポーンと、五十嵐さまに向けて放り投げられる中村さま。

「勝手知ったる他人のお屋敷、ってね」

 嬉しそうにおっしゃりながらナイスキャッチされた五十嵐さま。
 お姉さまと肩を並べられ、お庭を隔てる目隠し樹木のほうへと歩き始められます。

「入ったら玄関の鍵は締めなくていいからね、ワタシもすぐ行くから」

 おふたりのお背中にそんなお声掛けをされた後、リードがグイッと引っ張られます。
 泥濘んだ芝生を二歩、三歩トトトっとつんのめる私。

「このリードもベッチョベチョね。これって、ジョセのよだれでしょう?」

 私の首輪に繋がったリードを引いて数歩先を歩かれる中村さま。
 泥に汚れたハイソックスのみの全裸でリードに引かれトボトボついていく私。

「は、はい…」

 中村さまとは着いたときにお顔を合わせただけで、そのときもほとんど会話が無かったので、人見知りモードを発症している私。
 裸でいることが凄く恥ずかしくて、言葉少なになってしまっています。

 建物の壁沿いと表玄関への目隠し樹木との境目の角に、ポツンとプレハブハウス的な小屋が建っています。
 外観はレンガ柄で正面も側面も大きなガラス窓、大きさは街で見かける標準的な交番くらい。
 
 正面の殆どを占める大きな素通しガラス二枚のスライドドアを開けると、内部はまさにバスルーム。
 床は全面タイル張りで、隅の方に薄いシャワーカーテンで仕切った脱衣スペースに収納チェスト。
 
 お部屋の正面奥は、これまた大きな素通しガラスのスライドドアで仕切られたユニットバス一式。
 ワンルームマンションにあるようなトイレと洗面が一緒になったタイプです。

「先生がゲストのM女を庭に連れ出すの好きなんだよね。でも外でプレイした後、屋内のバスルームまで連れていくと廊下とか壁とか汚しがちじゃない?」
「だから外にも建てたの。ここでならエネマプレイだって仕放題」
 
 中村さまが脱衣スペースのチェストからいろいろ出しながらご説明くださいます。

「どうせM女しか使わないから、って外から覗けるシースルー仕様にしたんだ。公然猥褻バスルーム。わざわざ湯気でも曇りにくい特殊なガラス使ってるんだ。風情のない露出M女専用露天風呂だね」

 確かに建物の入口もバスルームの入口も大きな素通しガラスのスライドドアですから、お庭から中の様子はまさに交番みたいに丸見えです。
 
「ソックスとリードは軽く水洗いしてからこの袋に入れて脱衣籠に入れておいて。後でまとめてワタシらが洗濯するから。そのずいきも洗って乾かせばまた使えるわ。で、これ、ボディソープね」
「今、5時5分過ぎか。シャンプーしている暇は無さそうね。じゃあ、これがバスタオルでこっちがカラダ洗う用タオル。これも使用後は一緒に袋に入れておいてくれればいいから」

 首輪からリードを外してくださり、私にいろいろ手渡してくださる中村さま。
 すべて渡し終え、あらためて私の全身、顔からおっぱい、下腹部、無毛な恥丘の裂け目まで舐めるようにご覧になった後、フッと視線を逸らされます。

「シャワーの使い方はわかるよね?これがスイッチで、お湯の温度はパネルに出るから適当に調節して。こっちは換気扇。終わったらこっちのスイッチ押せば全部落ちるから」

 バスルームに入られ、すべての段取りを整えてくださいます。

「ということで5時20分、遅くとも25分までには広間のホールに戻ってきてね。このバスルームからはご覧の通り館内には入れないから、いったん外に出て、すぐ脇にある木々を突っ切ると表玄関のほうに出るから、そこから玄関目指して。鍵は掛けていないから」

 必要なことだけをおっしゃると、そそくさとバスルーム小屋から出ていかれました。
 寺田さまに比べて打ち解けた感じとか、からかってくるような雰囲気もありませんでした。
 
 中村さまも人見知りの気がお有りなのかな、それとも私のあまりのマゾっぷりに呆れられて軽蔑されちゃったのかな、なんて考えつつハイソックスを脱ぎリードを外し、少し迷ってから首輪も外しました。

 シャワーを少しぬるいくらいの温度に設定して、まずはハイソックスとリードのお洗濯。
 バスボウルにお湯を溜めてそれぞれ浸すとみるみるお湯が泥色に濁っていきます。
 
 何度かくりかえすとあまりお湯は濁らなくなりましたが、白いハイソックスにはまだ薄茶色のシミが点々と。
 やっぱり洗剤を使わないと真っ白には戻らないみたい。
 
 その合間に、肥後ずいきさまの汚れをシャワーの水流で洗い流します。
 こちらはあっさりと泥は落ちましたが、濡らしているあいだはヌメヌメが増すばかり。
 リードのヌメヌメは感じられなくなったので、まあいいか、とお洗濯を切り上げ、次は自分のからだです。

 髪を上にまとめてから、肩から下に強めのシャワー。
 タオルにボディソープを染み込ませ、全裸の全身を撫ぜ回します。

「あんっ…」

 だいぶ落ち着いたとは言え、まだ肌の敏感状態が少し残っているみたい。
 そう言えば、あれほどしつこかったイラクサさまの皮膚一枚内側からの痛痒さは、それが嘘だったみたいにすっかり消えていました。
 消えてしまうと、それが名残惜しく感じてしまうのは、私が根っからのマゾ体質だからでしょうか。

 肥後ずいきさまが膣内に残されたムズムズする痒さはまだ少し感じていたので、シャワーを強めにして至近距離から直接マゾマンコに当てました。

「あんっ!」

 指で膣口を開き、水流が直接粘膜を洗い流すように当てていると、徐々に気持ち良くなってきます。
 このままちょっとオナニーしちゃおうか…という不埒な考えがよぎりますが、私には時間がありません。
 
 15分間から20分間で大広間に戻るようにとのご指示なのですが、見渡したところここに時計は無く、もちろん私も持っていないので体感で計って間に合わせるしかないんです。
 余計なことに時間を費やしていると、ご指示を破りかねません。

 左手で至近距離からマゾマンコに強いシャワーを当て、右手の指を膣口に潜らせて指先で愛液を掻き出すみたいに膣壁を引っ掻き、最後にクリトリスをギューッとつまんで、大急ぎでビクンと小さくイキました。
 それだけでもかなりスッキリ。

 だけど私の体感では、バスルームに入ってから確実に10分間は過ぎている感じ。
 大急ぎでシャワーを止めスイッチを切り、洗い物たちを持って脱衣所に戻ります。

 脱衣籠の中には白いバスタオルが一枚。
 当然のように着替え的なものは下着を含めて何一つ用意されていません。

 でもまあそれも想定内。
 バスタオルでからだの水滴を拭いつつ、ハイソックスなどをご指定通り所定の位置に収めます。
 それから髪を下ろして首輪をし直し、バスタオルを胸元からきつく巻き付けて出口へ。
 スライドドアの向こう側には、ピンク色のサンダルがお約束どおり用意されていました。

 スライドドアを開けてサンダルを履き、素肌にバスタオル一枚でお庭に降り立ちます。
 だいぶ陽が落ちましたがまだまだ明るい晩夏の夕方。

 あらためてバスルーム小屋を見遣ると、見事なまでに中のバスタブまで丸見え。
 シャワーを浴びていたときは湯気で少し曇っていたようにも見えたガラス戸も、すっかり曇り一つ無い素通し状態。
 確かにこれは公然猥褻バスルームです。

 ご指示通りに、すぐそばの目隠し樹木に入ります。
 ほんの数本の木々のあいだをくぐり抜けるとすぐに、着いたときに見渡せた立派なほうの庭園、ロックガーデンが目の前に広がりました。

 えっ、表玄関からこんなに近かったの!?
 私の感覚では、表玄関前の大庭園とあるじさまのお庭とはずいぶん離れているように思っていたのですが、目隠し樹木を挟んで隣り合わせ、と言ってもいい近距離でした。
 この感じだったら、私がお庭でアンアン喘いでいた声も、この辺りまで筒抜けだったのだろうな、と今更ながらの恥ずかしさがぶり返してしまいます。

 砂利道、敷石と歩いて、あの立派な正面玄関扉の前へ。
 重い外開き扉をグイッと開けると、何とも言えない洋食系の美味しそうな匂い。
 ホール入口の内扉も開け放されていて、その奥からお声がかかりました。

「あーきたきた、直子ちゃーん、早くこっちに上がってきて。お姉さまがお待ちかねだよー」

 五十嵐さまのよく通るお声。
 用意されていたスリッパに履き替えてホールに入ると、着いてすぐにみなさまとシャンパンで乾杯した、向かって右寄りのソファーコーナで五十嵐さまが右手を振っておられます。
 そのお隣には中村さまがビニールバッグのようなものの中を覗き込んでおられます。

 私が近づいていくと、不意にもっと右側壁際の扉が開き、寺田さま、つづいてお姉さまが出ていらっしゃいました。
 おふたりともヴィクトリア調と呼ぶのでしょうか、両肩のところとウエスト部分がヒラヒラフリルで飾られた格調高めな純白のエプロンを着けられています。
 いい匂いはそちらから漂っていますから、おそらく厨房でお夕飯のためのお料理をされていたのでしょう。

「おーおー、湯上がり直子は一段とエロっぽいねー」

 おふたりとほぼ同時にソファーコーナーに到着した私。
 寺田さまからそう冷やかされたと思ったら、スーッと伸びてきたお姉さまの右手で、さも当然のようにからだに巻き付けたバスタオルを引き剥がされます。

「あんっ、いやんっ!」

 みなさまの前に再び全裸姿を晒す私。
 私の左腕はバストを庇い、右手は股間なヴィーナスの誕生ポーズ。

「何が、いやんっ、よ。今更隠したって仕方ないでしょうに。右内腿の会陰近くに小さなホクロがあることだって、ここにいる全員がもう知っているわよ?」

 お姉さまのイジワルいお言葉にワッと沸いたみなさまのご愉快そうな笑い声が、天井の高いホール内に響き渡りました。


2021年9月20日

肌色休暇二日目~いけにえの賛美 10

 シュルルルルという音を立てて、一直線の強烈な水流が私の胸元を襲ってきます。
 右おっぱい、左おっぱいと小刻みに標的を変えながら左右のおっぱいを揺らしてくる激水流の陵辱。
 為す術もなくプルプル翻弄される私の乳房。

 水飛沫が派手におっぱいを揺らしているときは、確かにあの意地の悪い疼痛を忘れることが出来ましたが、水流が移動してしまうと元の木阿弥。
 皮膚の表面ではなく、ごく薄く一皮残したくらいの内部からジンジンシクシクと疼かせてくるイラクサの陵辱がまだしつこく残っています。

「あーーーーっ!!!」

 やがて水流は私のマゾマンコへ。
 粘膜と肉芽を執拗に嬲られ、何度か達してしまう私。
 それでも疼きの消えないイラクサさまの威力。

 あやつり人形はもはや、手足をジタバタさせる気力も失せて力無く頭を垂れ、ダランとうなだれるばかり。
 首輪から垂れ下がったリードの持ち手が、地面スレスレでプランプラン揺れています。

 水音の蹂躙が過ぎ去り、素肌に静寂が訪れます。
 素肌を水滴が滑り落ちていく微かな感触の内側で弱まったとは言え、まだ消え失せてくれないイラクサさまの痺れ。

「んふうぅっ…」

 水流の物理的刺激で幾度か達していたはずなのに、秘部三ヶ所をまだ疼かせてくる微熱が貪欲に新たな刺激を欲しています。
 うなだれていた顔を上げ、眼前に立たれているあるじさまと寺田さま、それにジョセフィーヌさまに向かって、媚びるように身をクネクネ捩らせてしまいます。

「どうした?満足出来たのだろう?寺田の放水に犯されてジタバタ踊り狂ってイキ果てていたじゃないか」

 あるじさまが乗馬鞭のベロで、私の相変わらずな勃起右乳首をペロンと撫ぜ下ろされます。

「はうんっ!」

 そんな軽い愛撫にさえビクンと反応してしまう今の私のからだ。

「それとも、まだ足りないのかい?」

 今度は左乳首をペロン、私は、あんっ!

「は、はい…イ、イラクサ、さまの痛痒さがまだ、まだ治まらないんです…どうか、どうかもっとソコを弄ってください、虐めてください…罰をお与えください…」

 静寂が深まるとともにジンジンシクシクと威力を盛り返されるイラクサさま。
 その焦燥から一刻も早く逃れたくて、恥も外聞もなく懇願します。

「やれやれ。とんだド助平なご令嬢がいたものだ。淫乱という概念は、おまえの為にあるのだろうな」

 おっしゃりながらあるじさまが寺田さまに目配せ。
 ススっと私に近寄ってこられた寺田さまが、吊り上げられていた私の左足首のベルトに繋いだ縄を解いてくださいました。

 久しぶりに地面を踏みしめる自由となった左足。
 体勢がずいぶん楽になりました。
 右足と両手はまだ拘束されたままなので、ここから逃げ出すことは出来ないのですが。

「おまえのような好色なドマゾ女はわたくしの手にも余る。そんなに虐められたいのなら、オナ子のもうひとりのあるじさまにお願いすればいい」

「ぁふぅぅーんっ」

 あるじさまの乗馬鞭が私の両脚のあいだに滑り込み、お尻のほうから前方へとベロで擦るように撫ぜていかれます。
 より的確に粘膜と肉芽に当たるようにと、自由な左脚を大きく開いてしまう私。

 ベロですくい取られた私の恥ずかしい愛液をジョセフィーヌさまの鼻先にあてがうあるじさま。
 クンクンお鼻を鳴らされ、ペロペロとベロを舐められ、ブンブンと尻尾を振られるジョセフィーヌさま。
 私の顔を嬉しそうに見つめ、今にも飛びかかってきそうな前傾姿勢なジョセフィーヌさまのお背中を、あるじさまがお優しく撫でつつなだめられています。

「ジョセフィーヌ、ステイ、まだだ。オナ子?」

「は、はい…」

「どうした?ジョセフィーヌにお願いすることはないのか?遊んで欲しくはないのか?」

「…はい、遊んでいただきたいです…」

「ふん、お前の場合は、もて遊んで、だろうがな。それならちゃんとお願いしなけりゃだめだろ?」

「はい、ジョ、ジョセフィーヌさま…ど、どうか、直子を、あ、いえ、オナ子を、も、もて遊ばれてくださいませ…」

 私が、ジョセフィーヌさま、とお名前をお呼びした途端にピクンと動かれたジョセフィーヌさまの両耳。
 それに気づいたのと、あるじさまが小さく、ジョセフィーヌ、オーケー、ゴー、とつぶやかれたのが同時でした。

 5メートルくらい離れた位置から私に向かって、一直線に駆け寄ってこられるジョセフィーヌさま。
 その勢いに気圧されて思わず内股になって腰を引いてしまう私。
 その引っ込めた両脚の付け根部分にジョセフィーヌさまがグイグイと、その毛むくじゃらなお顔を突っ込んでこられます。

「あっ、あんっ、あんっ!」

 私の股のあいだをくぐり抜けたジョセフィーヌさまがお尻をペロペロ舐めてくださいます。
 少し開いた内腿と内腿のあいだに舌を挿し込むようにされ、私の肛門から陰唇、恥丘にかけてのこそばゆい愛撫。

「んっ、あっ、あんっ、あーんっ…」

 ジョセフィーヌさまは忙しなく動き回られ、お尻と言わず腿と言わず、私の下半身の至るところを舐め回してくださいます。
 足元は先ほどからの放水で小さな水溜りが出来るくらい泥濘んでいますが、そんなことはお構いなしなジョセフィーヌさま。
 私の左足ハイソックスにも泥水が跳ねてグズグズ。

 寺田さまがお澄まし顔をされて正面から私に近づいてこられます。
 寺田さまのミラーサングラスに今の私の姿が映り込んでいます。
 自ら左脚を宙に高く上げ、股間に潜り込まれたジョセフィーヌさまの舌使いにクネクネ身を捩らせている私の姿が。

 寺田さまは左手に歯磨き粉みたいなチューブ状の容器を持たれ、そこからひねり出したペースト状の粘液質な何かを左手に受けられています。
 ほんのり香リ来るチーズのような匂い。
 ジョセフィーヌさまもその香りに気づかれたのか、私から離れて寺田さまへとまっしぐらに飛びつかれます。

 後ろ肢立ちのジョセフィーヌさまでも届かないくらい左腕を高く掲げられた寺田さまが、私のすぐ前まで来られました。
 やおらその左手を私のお腹に当てられ、そのペースト状のクリームを私の素肌になすり付けてこられます。
 寺田さまの左手のひらが上へと滑り、遂に私の右おっぱいを包み込んでくださいました。

「ああーんっ」

 つづいて横にずれて左おっぱいも。
 私の上半身はペースト状クリームでヌルヌル。
 チーズのような匂いもずいぶん強くなっています。

 すかさず私に飛びついてこられるジョセフィーヌさま。
 泥に汚れた前肢を私のお腹に当てられ後肢立ちになられ、その長い舌をベロンベロンと突き出しながら私のおっぱいを一生懸命舐めてくださいます。
 全身が性感帯となっている今の私にとって、その執拗な愛撫の気持ち良さと言ったら…

「あーっ、あんっ、あんっ!あーーーんっ!」

 私の素肌に舌を這わせてくださりながら、ハアハア荒い息を吐かれているジョセフィーヌさま。
 本当にジョセフィーヌさまからご奉仕、別の言い方をすれば征服されているみたい。
 ジョセフィーヌさまの一挙手一投足に翻弄される私のマゾ性とドマゾなからだ。

 後肢立ちはお疲れになるのでしょう、時折前肢を下ろされ私の周りをグルグルお回りになられます。
 ふくらはぎや腿をフワフワ撫で回す柔らかな体毛。
 
 それから私の脚やお尻を丁寧に舐めてくださり、やがて再び後肢立ちとなられ脇腹やおっぱいまで執拗に舐め回してくださる長い舌。
 それらの感触全てが私にとって至上の愛撫です。

 寺田さまも適宜、私の素肌にペーストを追加してくださり、そのたびに素早く追い掛けて舐め取ってくださるジョセフィーヌさまの長い舌。
 私の頭の中では、どこでどなたに教わったのか自然にネットで覚えたのか、バター犬、という単語がグルグル渦巻いていました。

「あんっ、あんっ、そこっ、あーーっ、もっと、そう、そこ、もっとぉ…」

 あられもなく淫声をほとばしらせる私。

「あんっ、あーーっ、あんっ…えっ!?…」

 そのときフッと視界を奪われました。
 目の前が真っ暗。
 どうやらまた目隠しをされてしまったみたい。

 そんなことにはお構い無しなジョセフィーヌさまからの舌責めはつづいています。
 私の太股、内腿、お尻、女性器、脇腹、おへそ、下乳、乳頭、胸元まで、唾液ダラダラな滑らかな舌で執拗に愛撫されています。

 いつの間にか私の両手を幹から吊るしていた縄の結び目が緩められていたようで、自分でしゃがみ込める程の長さになっていました。
 と言っても相変わらず、両手は手錠の形に拘束されたままですが。

 いつしか私は、ジョセフィーヌさまがより舐めやすいようにと、中腰ガニ股に大きく股を広げ、ジョセフィーヌさまを迎え入れていました。
 おそらく傍から見れば凄く浅ましくもみっともない格好。
 
 そんな私にお応えくださるかのように、鎖骨から顔面までベロベロ舐めてくださるジョセフィーヌさま。
 舐められるたびに、そんな格好で全身をプルプル震わせている私。

「あんっ!そこっ!あーんっ、そうっ、そうっ、そこをもっと、あっ、だめっ、もっとぉーっ!」

 もはやジョセフィーヌさまは私のかけがえのないパートナーさまのおひとりです。

「ふん、踊りにキレが戻ってきたじゃないか。ペットはペット同士、心ゆくまでそうして戯れるがいい」

 真正面からあるじさまのお声。

「さて、私は仕事に戻るとするか。寺田?あとは貴方がよしなにするがいい。任せたぞ」

「承知いたしました、先生」

 寺田さまのキリッとシャープなお声でのご返事。
 そのあいだも私はアンアン喘ぎっ放し。

「そうだ、オナ子にひとつだけ教えておいてやろう」

 少し遠ざかられた感じなあるじさまのお声。

「おまえはさっきから安心しきったようにアンアン喘ぎ声を上げているがな、この屋敷にも郵便や宅配便は届くぞ?」

 そんなお言葉が聞こえ、あわててムッと口をつぐむ私。

「来るとしたら今頃の時間帯だ。郵便屋や宅配便の配達員のあいだで噂になっているらしいな、この屋敷の裏庭には時々素っ裸の若い女が無防備に吊るされている、って」
「そのせいで奴等のあいだでは、この屋敷への配達が争奪戦となっているという話だ。ポストは表玄関だが、裏庭と言っても表側から目隠しとなっている木々のあいだから覗き込めば、ここら一帯丸見えだからな」

 そのあいだもジョセフィーヌさまからの陵辱は止まりません。
 必死に口をつぐんで、あるじさまのお声に耳をそばたてる私。

「何年前だったか、そんな配達員のひとりが、そのとき吊るされていた全裸のM女に不埒な悪戯をしようとしたのだな。幸い未遂で終わったが、そのときこんな取り決めをした」
「ここが私有地である限り、庭で女がどんな格好をしていようとも手を出すのは紛れもなく犯罪だ。ただし、わたくしどもとて、余り褒められた行為をしているわけではない」

「だから妥協案としてこう決めたのだ。ここで面白い見世物を見つけても手を出すのは問答無用でアウト。こちらからそれなりの法的手段に訴えてその行為の落とし前はつけてもらう」
「その代わり、運良くその場に居合わせたなら、見物したり撮影するのはセーフ。その後その写真や動画がどう使われようが、それはそのM女の運の無さだ、ってな」

「だから今、オナ子に目隠しをしてやったのさ。運良く誰かに撮影されたとしも、素顔までは晒されないように、という親心でな」

 それっきりあるじさまのお声は聞こえてきません。
 おそらくお言葉の通り、お仕事に戻られたのでしょう。
 
 気がつけばジョセフィーヌさまからの愛撫もあっさりと消えていました。
 おそらく最愛のあるじさまに着いて行かれたのでしょう。

「直っちってば、凄いね。あんなにノリノリな先生、先週のM女に匹敵するわ」

 突然左耳に息を吹き込むような掠れた寺田さまのお声。
 その熱い吐息にビクンとからだを震わせる私。

「そんなに貪欲な若いドマゾ娘、そうそうはいないわよ?アタシまでゾクゾク濡れてきちゃったもの。直っち、ううん、畏敬の念を込めて直子って呼び捨てにさせてもらうわ」
「直子、まだまだ満足し切れていないのでしょう?まだまだ乳首とクリット、ぴんこ勃ちだし」

 からかうようにハスキーにおっしゃった後、私の左耳たぶを軽く噛むようにしゃぶってくださる寺田さま。

「はうんっ!は、はい…ジョセフィーヌさまにも何度かイカせていただいたのですが、や、やっぱり直子のマゾマンコに強烈な陵辱が欲しいのです…」

 このかたなら私をキチンとイカせてくださるかもしれない、という一縷の望みを込めて、寺田さまに懇願してしまいます。

「いいよ。アタシもそろそろみんなの夕食の準備に取り掛からなければならないし、直子もこのままでは可哀想だものね」

 お優しいお言葉をくださった寺田さまのおからだが離れる気配がし、すぐに吊るされている両手から左手だけがベルトごと、解放されました。
 
 自由になった左手に手探りで握らされた、ちょうど良い握り心地な感触。
 それは紛れもなく、私がお座敷からお庭に出るまでずっと口に咥えさせられていた、あの肥後ずいきの太めな胴体。

「ほら、それを自分でオマンコに突っ込んで、心ゆくまで自分で自分を慰めなさい。アタシはそろそろ戻らなくてはならないけれど、直子はいつまででもここで愉しんでいていいから」

 それきり寺田さまのお声も聞こえなくなりました。
 いつの間にか目隠しの向こう側に感じる晩夏の陽射しも、幾分薄暗くなっているような気がします。

 私の左手には肥後ずいき。
 気がつけば、あんなにしつこかったイラクサさまの蹂躙もずいぶん薄らいでいました。
 
 それでもまだまだ新たな性的刺激を欲している私のからだ。
 この期に及んで肥後ずいきさまをマゾマンコに突き立てない、という選択肢はありえませんでした。

 ジュブっ!

「あーーーーっ!!」

 左手で握った肥後ずいきさまを手探りでマゾマンコに突き立てました。
 久々に膣口全域を満たしてくださる異物の感触。
 すぐに私のマン汁が繊維質に溶け合い、粘膜を熱くさせてくださる肥後ずいきさま。

「あんっ、あんっ、あんっ、あーんっ…」

 先ほどのあるじさまからのご忠告もどこへやら、制御の効かない淫声を撒き散らす私。
 私の左手はピストン運動を延々とくりかえし、イラクサさまとはまた違ったむず痒さをマゾマンコに与えてくださる肥後ずいきさま。

 右手が拘束されているので、おっぱいを弄れないのがもどかしい…
 それに、ここにジョセフィーヌさまからのおっぱいへの愛撫があれば…
 無い物ねだりなことを思いつつもジュブジュブと卑猥な音を立てつづける私のマゾマンコ。

「あーーっ!あーーーーーっ!!…あーーーーーーーっ!!」

 まっしぐらに昇り詰めている最中に、ふっと自動車のエンジン音のような音が聞こえた気がしました。
 えっ!?と思うのですが、私の左手はもう止まりません。
 同時によみがえる先ほどのあるじさまからのご忠告。

 えっ?この音って郵便屋さま?それとも宅配便さま?
 心の片隅ではそう思うのですが、一方で大丈夫大丈夫イッちゃえイッちゃえ、と楽観的な私。
 あるじさまを信じるなら写真を撮られるくらいだし、素顔がわからないように目隠しも施してくださったし…

 そうしているあいだにエンジン音はどんどん近づいて来て、ついに表玄関に停まったみたい。
 エンジン音が消え、バタンバタンとドアを開く音。
 その音と一緒に私はイキ果てていました。

 泥濘んだ泥水の中にお尻ごと突っ込みへたり込んでいる私。
 頭の中が真っ白になってハアハア息を荒げている使い物にならない耳朶をくすぐってくる微かな足音。

 それもおひとりだけではないみたい。
 だんだんとその聴力を取り戻した私の耳に聞こえ来るその足音は、どう聞いても複数。
 その足音たちが石畳を踏まれ砂利道を踏まれ、やがて木々の葉っぱがザワザワとさんざめきながら、草と土を踏まれる音に変わります。

 もちろん今なら、左手左足は拘束されていませんから、左手から肥後ずいきさまを手放しさえすれば、自分で右手右足の戒めを解き、目隠しをも取り去って、その場から一目散に逃げ出すことも出来るでしょう。
 だけどなぜだか、そうする気持ちにはなれませんでした。

 右手右足拘束で目隠しもそのままに、その場にほぼ全裸姿で怯えている私。
 その足音たちは明らかに、私のほうへと近づいて来られています。

 不意に目隠し越しにもわかる眩い光が真正面から浴びせられます。
 立てつづけに閃光が数回。
 眼前が眩むたびにゾクゾクっと戦慄する私の全身。
 
 近づいて来られたどなたかから、私の恥ずかし過ぎる写真を数枚撮られてしまったのは確かなようでした。