2021年4月25日

肌色休暇一日目~幕開け 14

 帯が浴衣からすっかり離れてしまうと、胸の前で合わさっていた両襟も当然のことながら左右へハラリと割れてしまいます。
 浴衣の下は肩先からくるぶしまであますところなく素肌ですから、当然のことながら浴衣の前が開いてしまう前に襟を掴み、露呈を阻みます。

「こら。あなたはそんなしをらしいことするような種類のオンナじゃないでしょう?」

 イジワルそうな薄い笑みを浮かべ、からかうようなお姉さまのお声。
 私をまっすぐ見つめつつ、ご自分の両手をご自身のおへそのあたりに集め、おもむろに左右へ大きくパッと開くような仕草。

「あなたよく言っているじゃない、一度でいいから裸コートのとき人混みでこうしてみたい、って」

 ご愉快そうにおっしゃるお姉さま。
 でも私、お姉さまにそんなこと、一度も告げたことないはずです。
 
 だけどつまり、それはお姉さまからのご命令。
 えっちなマンガとかでよくある局部見せたがりなヘンシツ者みたく、自ら前をバッと開いてハダカを視ていたただきなさい、というご指図。

 胸の前で浴衣の布地をかき抱くように掴んでいた両手が、諦めたみたいに緩みます。
 左右の指先がそれぞれ左右の衿先を掴みます。
 それからギュッと目をつむり、思い切って両腕をバッと左右へと広げました。
 今まさに滑空しようとしている飛膜を広げたモモンガさんみたいに。

 目を瞑っていてもまぶたにお陽様の強い光を感じます。
 ああんっ、まだ全然明るくておまけにお外なのに、出会ったばかりの見ず知らずの方々の前で私ったら、何て格好をしているの…
 絵に描いて額に飾ったような、まさに、the 露出狂…
 羞恥と被虐と背徳と快感がないまぜとなり、下半身の裂けめを痺れさせてきます。

「おおぅっ!…」
 
 ザバザバと水面が波立つような音と一緒に、どよめくお声が大きく聞こえてきて束の間の陶酔が破られ、恐る恐る目を開けるとお三かたが思いがけずもずいぶん近くまで来ていらっしゃいました。
 お湯の深さは、一番小さくてロリっぽいサラさまでも太ももの付け根辺り。
 お三かたともオールヌード丸出しのお姿で、the 露出狂ポーズを晒している私のカラダをシゲシゲと見つめてきます。

「すげえ、超パイパンっ!」
「その日焼け跡、何よ?どこで焼いたの?どんな水着着たらそんなふうにエロやらしく焼けるのよ?」
「尖った乳首がツンツンにイキリ勃ってて痛そう。下乳は意外に垂れ気味なんだ…」
「クリもでかっ!皮がすっかり剥けちゃって、こっちもビンビンに飛び出してる…」
「首の白いスジは、チョーカーとか首輪の日焼け跡なのかしら…」

 口々に私のハダカの感想を投げ合わられるお三かた。
 温泉の湯船は一段低くなっていますし私は岩場でヘンシツ者ポーズですので、裸のお三かたから股間を仰ぎ見られる態勢。
 その好奇に満ちて不躾な視線の圧、何もかもが視られ吟味されている…という被虐に、マゾの血脈が全身で波打ちます。

「あなたの性癖も、みなさんに愉しめていただけているみたいでよかったじゃない?」
「引かれちゃったらどうしようかと思っていたわ」

 岩場に優雅に腰掛けられたお姉さまも嬉しそうに微笑まれ、片手に持たれていたスマホの画面をチラッとご覧になられました。
 それからスクっとお立ちになると、まだthe 露出狂ポーズな私の背後に来られました。
 
 間髪入れず、剥ぎ取られるように強引に私の背中から離れていく浴衣。
 少し緩めてしまっていた指先から、いとも簡単に私の唯一の着衣はお姉さまの腕の中へ。
 お外で全裸!?と意識するや否や条件反射のように、胸と股間を庇うヴィーナスの誕生ポーズへと移る私。

「だからー、あなたの両手はそこではないでしょ?何今更ぶりっ子しているのかしら?」

 すかさず投げつけられるお姉さまの呆れたような叱責。
 優美な曲線を描くアゴを優雅に、でも私にしかわからないくらい微かにしゃくられるお姉さま。

 はい…ごめんなさい…
 おずおずと両足を休めの姿勢くらいまで開き、両手を重ね合わせ自分の後頭部へと持っていく私。
 
 マゾの服従ポーズで間近のお三かたと向き合います。
 隠そうと思えばたやすく隠せるのに、自ら両手を後頭部にあてがい裸身の何もかもをさらけ出した私の姿を、唖然としたお顔つきで凝視されるお三かた。

「あたしはこれからさっきの脱衣所に戻って、タオルやら何やら、露天風呂を楽しむ準備をしてくるから、あなたはその格好のまま回れ右して、背中の自己紹介もみなさんに見ていただきなさい」
「あなたがどうしようもないヘンタイ性癖なんだって理解してもらえれば、みなさんもあなたも気兼ねなく愉しめるでしょうし」

 おっしゃりながら岩場に落ちていたカッパ様こけしを拾い上げられ、湯船のお三かたのほうへ軽く放られました。
 ポチャンと飛沫を上げて湯船に落ちたカッパ様。
 木製だから沈まずに、お三かたの背後でプカプカ浮かんでいらっしゃいます。

「この子、それ大好きだから、みなさんで好き放題しちゃっていいですから」

 無慈悲なお言葉を残されたお姉さまは、私がさっきまで着ていた浴衣と帯を手早くおまとめになって小脇に挟み、ハンディビデオカメラだけ岩場の高い位置に置き去りにされ、その場を離れられます。
 
 服従ポーズをお三かたに向けたまま首だけ捻じ曲げた姿勢で、脱衣所のほうへと戻られるお姉さまのお背中を未練がましく追っていると、お姉さまが不意に立ち止まられ、こちらを振り返ってくださいました。
 私に向けてニッコリ微笑まれ、右手の指先で空中にクルリと大きな円を描かれ、再びプイッという感じで向き直られ、脱衣所のほうへと歩き始められます。

 そうでした…
 私はお三かたに背中をお向けしなければいけないのでした。
 ある意味、おっぱいや性器を見られるのより恥ずかしい、私の素肌に刻まれた自分のヘンタイ性癖の自己紹介…

 再び湯船のほうへと顔を向け直します。
 お三かたとも湯船の縁まで集まられ、興味津々に舐め回すような六つの瞳が私の裸体を見上げています。
 その視線たちから目をそむけて意を決し、ゆっくりとその場で180度ターン。
 一瞬の沈黙の後、キャハハハと甲高い嘲笑が弾けました。

「なにそれ!マゾですの、だってー!」
「ですのって何よ?ちょーウケるんですけどぉ」
「日焼け跡って、引くまで消えないじゃん。あの姐さん、マジ鬼畜」
「だろうとは思ったけど、そんな言葉を肌に焼きつけちゃうなんて、正真正銘のヘンタイじゃん」
「やっぱり首の白いのは首輪の痕なんだ。マゾだから首輪を普段からさせられてるのね…」

 容赦無い好奇の嘲りが私のお尻に浴びせられます。
 侮蔑的なお言葉責めが切なくて唇をギュッと噛んでしまうのに、ジンジンと火照ってしまう私の乳首とマゾマンコ。
 ひとしきりお三かたのかまびすしい哄笑がつづきました。

「でもまあ、せっかく裸になったんだからさ、マゾですのちゃんも温泉、入んなよ。うちらと楽しもう」

 半笑いのお声ですが、お優しいお言葉を投げてくださったのは、最初にお声がけくださった金髪のカレンさまでしょう。
 そっと振り向くと案の定、さっきお姉さまが放られたカッパ様こけしを右手に握ったカレンさまがお湯の中で立ち上がられ、カッパ様をぶんぶん振っておられます。

 どうしよう…
 お姉さまが戻られるのを待ったほうがいいのかな…
 でもさっきお姉さま、この子を好きにしちゃっていい、ともおっしゃられていたけれど…

 少し迷ったのですが、お言葉に甘えさせていただくことにしました。
 一番の理由は私の股間。
 さっきからの羞恥辱責めで感じ過ぎてしまい、このまま服従ポーズでいるとだらしないマゾマンコから滴り落ちる恥ずかしいおツユまで目撃されてしまいそうだったからです。

「あ、はい…お心遣いありがとうございます。それでは失礼させていただきます…」

 丁寧にお答えしてポーズを解いて向き直り、湯船の縁までゆっくり歩を進めます。
 縁に立つとお三かたが少しだけ後退され、身を屈めた私は右足の先をちゃぷんとお湯に浸けてみます。
 
 熱すぎもせず温すぎもせず、人肌よりちょっと高いくらいの温度。
 両足をそろりと挿し入れ浴槽に立つと、お湯の深さは膝上、腿の真ん中少し上くらい。
 湯船の底は自然石のタイル状石畳になっていました。

 その場にしゃがみ込み肩まで浸かってみます。
 お湯は、ほんのり濁っていて少しポテっと重たい感じで、お肌に優しく絡む感じの滑らかな泉質。
 
 火照った全身がしっとり潤いの人肌に包まれ、うーんっ、気持ちいい…
 裸身もお湯に隠せてホッと一息ついたのも束の間、あっと言う間にお三かたに取り囲まれました。

 それからは、ご質問に次ぐご質問攻め。
 お姉さまとはどういう関係なの?から始まって、本当の仕事は何?それどこで焼いたの?剃毛?それとも永久脱毛?普段はどんな命令をされてるの?イジメじゃないの?今も感じちゃってるの?etc…etc…

 それらのご質問にすべて、正直にお答えしました。
 ご質問のあいだ中、お三かたのどなたかが私のからだに手を伸ばしてくることは無く、それはちょっと意外でした。

「ふーん。ですのちゃんは同性とでしか感じないレズでマゾで露出狂なのかー。けどそれって特殊性癖盛りすぎじゃない?もしオトコ好きだったら引く手あまたでモテモテだろうに…」

 金髪のカレンさまが感心されたようにおっしゃいます。

「アタシも男相手ならドスケベだけど、同性に見られたいってのは信じられないなー。だって、自分がサカって乱れてる姿を見ず知らずの同性に見られるなんて超恥ずくない?屈辱的っていうか…」
「ああ、女はそういうの見下してくる傾向ってあるよね。とくに自分より若かったり可愛かったりすると、嫉妬が絡んだマウンティングっていうか虚勢を張るための軽蔑っていうか。シモネタNGがカワイイと思ってる女ってまだまだ多いから」

 ロリなサラさまのご意見に賛同されるカレンさま。

「こないだのハコネでの宴会、ひどかったじゃない?うちらが何かやるたびに凄い目で睨まれて」
「あー思い出した。なんであんな女性交じりの場にアタシら呼ぶかな?中でも一番薹が立ってたお局様?の目がスゴかった」
「そうそう。他の女も野球拳とか見たくないならさっさと部屋に戻ればいいのに、なぜだかいるんだよね、最後まで」
「でもまあオトコ共も大半萎縮しちゃってある意味、仕事は超ラクだったよね。お酌だけしてりゃいいって感じで」
「場がシラケきってた。あの会社、あの後揉めたろうな。潰れてたりして」

 ご愉快そうな笑い声をあげられるカレンさまとサラさま。

「ですのちゃんのお姉さまって、ですのちゃんが他の女性とえっちなことをしても怒らないのよね?」

 話題を仕切り直すみたいに、ナイスボディなシヴォンヌさまがお口を挟まれてきました。
 そして私の呼び名はいつの間にか、ですのちゃん、で定着しちゃったみたい。

「あ、はい…怒らない、って言うか、私が他の女の人に虐められているのを見るのもお好きみたいです…」

 至近距離で向き合っているシヴォンヌさまの、お湯の波間から見え隠れしているハリウッド女優さんみたいなお胸の谷間にドギマギしながらお答えします。

「やっぱり。ですのちゃんのご主人様は寝取られ属性があるんだ。それじゃあですのちゃんも、いろいろやらされて大変でしょうね」
「…ネトラレ?ですか?」

「あれ?知らない?大好きな人が他の知らない人にヤラれちゃうのを見て悦ぶ特殊性癖。夫婦の旦那のほうが奥さんを他の男にヤラせて、それをこっそり覗き見したり。エスな人の調教の一環だったりもするらしいけれど」
「そんなの…知らなかったです」
「でも、あの姐さんは、そんな感じなんでしょ?そういうのをネトラレって呼ぶのよ」

 妖艶な笑顔のシヴォンヌさまにそう諭されて、確かに私のお姉さまはネトラレなのかな、って思いました。

「おっと、シヴォンヌ姐さんがノッてきたよ」
「アタシらん中じゃ姐さんが一番、エスエムとか詳しいもんね」
「姐さんはエムっぽくにもエスっぽくも変幻自在の百戦錬磨だから」

「じゃあ、ですのちゃんに何かマゾっぽいことしてもらおうよ」
「ですのちゃん見てると、たしかに何かこう、イジメたくなっちゃうの、わかる気がする」
「ドマゾって、痛いのとか屈辱的なのも好きなんじゃなかったっけ?」

 カレンさまとサラさまが俄然はしゃぎ始めます。
 私もお三かたからの虐められモードに突入したことを察知して、お湯の中でぐんぐんムラムラしてきています。

「それじゃあ、ですのちゃんにはとりあえず、オナニーショーでもしてもらおっか?ご主人様の置き土産のこけしもあることだし」

 シヴォンヌさまが艶っぽい半笑いのまなざしを私に向けたまま、他のおふたりにご提案されます。

「いいねいいねー」
「ですのちゃんのえっちなイキ顔見てみたーい」
「アタシ、他の女が男に姦らてるのは見たことあるけど、ひとりえっちでイクとこは見たことなーい」
「でもお湯の中でモゾモゾチャプチャプされてもうちらにはよく見えないし、なんかつまんなくね?」

 カレンさまサラさまの無慈悲なお言葉。

「あー、それもそうね。それじゃあ、あの真ん中の島に上がってやってもらおっか」

 シヴォンヌさまが我が意を得たり、みたいなご表情で温泉中央に設えられている東屋を指さされます。
 私はさっきの、シヴォンヌさまの妖しく翳る瞳を見て、ある程度の覚悟はしていました。
 シヴォンヌさまは絶対最初から、そこで私を晒し者にされるおつもりであったはずです。
 お姉さまが私に残酷なご命令を企まれているときと同じまなざしでしたから。

「いいねいいねー。あそこちょうど足湯っぽく腰掛けられるようになってるから、そこでバーっと大股開きで」
「ライブショー、最前かぶりつきだね」

 カレンさまサラさまがキャッキャとはしゃがれる中、お湯の中でシヴォンヌさまにサッと右手を掴まれました。
 初めてのボディタッチにビクンと震えた刹那、シヴォンヌさまがザバッと立ち上がられたので私も引っ張られて立ち上がらざるを得ません
 
 ナイスボデイな全裸女性に手を引かれ、刑場に連行されるみたいに湯船中央の東屋のほうへ。
 私たちの後からサラさまカレンさまがつづかれ、全裸女性4名での湯中の行進を、ずいぶん傾いてもまだまだ明るい夕陽が煌々と照らしてくださっています。

「さあ、ですのちゃんはこの上にお上がりなさい」

 シヴォンヌさまの声音はあくまでおやさしげでしたが、有無を言わせぬ威厳と言うか高貴さと言うか、人にご命令され慣れているような感じのカリスマ的オーラを感じました。
 
 目の前にある小島には、ちゃんと湯船から陸地まで上がれる石の階段もあり、ふたりぐらい並んで腰掛けられる石のベンチが湯船を見渡す位置に三脚、そして島の中央部分は、更に一段上がっていて陽射しを遮る木製の屋根を設えた東屋になっています。
 
 湯船の中からお三かたが見上げる中、私はシヴォンヌさまのご命令に従い、ひとり島へと上がりました。
 温泉から出た一糸まとわぬ素肌を微かに吹いている風が優しく撫ぜてくださいます。

「そのベンチに座って、まず最初は、ですのちゃんが普段ヤッてるみたいにからだをまさぐって、気分を盛り上げてみて」
「いい感じになってきたら、このこけしを渡してあげる」

 カレンさまから手渡されたのでしょう、カッパさまこけしを片手にシヴォンヌさまからのディレクション。
 湯船の縁に両肘をついた横並びのお三かたがベンチに腰掛けた私を見上げています。

「は、はい…」

 すっかり覚悟を決めた私は、恥ずかしさ半分、辱めていただける嬉しさ半分のマゾモードで両脚を大きく開きました。
 両足はベンチの上に置き、自ら進んでのM字開脚。
 
 左手を右おっぱいに当てると、ビクンと電流。
 乳首が今にもポロリと零れ落ちそうなほど大きく硬く背伸びしています。

 右手をそっと股間に滑らせると同時に、あふんっ。
 手のひらがもろに、充血して腫れ上がった肉芽を擦ったからです。

「うわ、自分からあんなに思いっ切り股広げちゃって、パイパンだからケツの穴まで何もかももろ見えじゃん」
「オマンコの中がビチャビチャにテカってない?」
「呆れた、もう感じちゃってるんだ。本当に視られるのが好きなんだね」
「あ、早くも指の出し挿れし始めちゃった。へー、中指と薬指使うんだ…」

 みなさまからのにぎやかな実況中継が聞こえてくるのですが、私の両手は怯むこと無く自分の性感帯を陵辱しつづけています。
 これまでのあれこれで疼ききっていた私のからだにやっと訪れた快楽のチャンスに、恥も外聞も消し飛んでいます。

 おっぱいを揉みしだき、乳首をつまみ、ひねり潰し、ひっぱり。
 右手のひらでクリットを擦りつつ、膣口に埋めた二本の指でジュブジュブ膣壁を捏ね回します。
 それでもお外にいる、という意識はあるみたいで、目と唇を真一文字に結んで歯を食いしばり、淫らな声は極力我慢しています。

 甘美な刺激は的確に蕩けるような昂りへと変換され、その蓄積がめくるめく頂きへと徐々に昇り詰めていきます。
 ああんっ、そろそろっ、あとちょっと、もう少しぃ…
 
 お三かたは固唾を呑んで見守っていらっしゃるのか、実況中継のお声も聞こえなくなっています。
 視られている、という被虐を実感したくて、そっと顔を上げて瞑っていた瞼を開きます。
 視界の先に唖然という面持ちのみなさまのお顔。

 ああんっ、視て…こんなお外で、みなさまの目の前で、マゾな直子が浅ましくイッてしまうふしだらな姿を、どうぞ存分に視てやってください…んっ!…

 ふと視線を上げると、お三かたの後方数メートルの位置にお姉さまのお姿が見えました。
 濃いめなブルーグレイの湯浴み着をお召しになり、ビデオカメラのレンズをまっすぐ私に向けられたお姉さまのお姿が。
 それに気づいた瞬間、強烈な快感の波が下腹部から全身へと駆け巡り、頭の中が真っ白になりました。

「イッたね…」
「うん…間違いなくイッてる…」
「早くね?始めてからまだ5分も経ってないっしょ?」
「ぐったりハアハアしてるのに、からだのあちこちがヒクヒク痙攣してる…やだっ、ケツの穴まで…」

 そんなお声がどこか遠くのほうから聞こえた気がしました。

2020年10月11日

肌色休暇一日目~幕開け 13

 「女将さん、直子のからだ、凄い勢いでガン見してたね」

 おふたりをお見送り出してお部屋の中へと戻りつつ、お姉さまが嬉しそうにおっしゃいました。

「あの調子なら、館内で多少はっちゃけても、大目に見てくれそうじゃない?」
「たとえば廊下を四つん這いリードでメス犬プレイとか、庭でヌード撮影とか、ね?」
「ま、とりあえず散歩がてら、女将さんご自慢の野外露天風呂まで行ってみましょうか」
「タオル類は現地に用意してあるから手ぶらでいい、って言っていたわね」

 お姉さまが座卓の上に置きっ放しだった鍵入りの透明リストバンドを右手首に嵌められました。

「あとは小銭と部屋のカードキーか…直子のポシェット、借りるわよ」

 私のポシェットの中身が全部出され、代わりにお姉さまのスマホと小銭入れ、カードキーだけを入れてお姉さまが斜め掛けに提げられます。
 お淑やかな青色浴衣に白いハート型のポップなポシェット。
 一見ミスマッチなコーデなのに、お姉さまが提げるといっそうエレガントになるから不思議です。

 貴重品類はセーフボックスに入れ、座卓の上にはまだ充電中な私のスマホとリモコンローター本体だけが置き去り。
 カッパさまこけしは、私が締めている帯の結び目付近に無造作に挿され、私と行動を共にすることに。
 最後にお姉さまがハンディビデオカメラを剥き出してお持ちになられて準備完了。

「それじゃあ行きましょう」

 玄関にご用意いただいたお草履をそれぞれ履き、お部屋を出ます。
 玄関扉はカードキーなので、オートロックなのでしょう。

 よく磨き込まれて木目が綺麗な板張りのお廊下。
 灯籠を模した照明器具が淡く照らす中、お姉さまが先をお行きになりなり、時折私にレンズを向けてきます。

「ほどよくレトロで風情があって、いい旅館よね、ここ」

 ビデオカメラを下ろされたお姉さまが私と並び、やがて十字路。
 野外露天風呂、と記されたプレートの矢印が示す方向、一階へと下りる階段とは逆方向、つまり建物の奥へと向かうべく左へ折れます。

 すぐに右側の壁沿いに扉が見えたので、こちらも客間となっているのでしょう。
 高い天井には組木細工の模様が施され、相変わらず低く流れている艶っぽいジャズピアノの調べ。
 その静謐な雰囲気になぜだか官能がくすぐられ、秘めた願望をお姉さまに告げたくなりました。

「お姉さま?私、あのお部屋で…」

 先を行かれるお姉さまのお背中にそこまで言いかけたとき、クルッと振り向かれ、しっ、と唇に人差し指。
 右側の客間の扉を過ぎて少し進まれたところで立ち止まられ、板張りの壁にお顔の側面を寄せられています。
 どうやら聞き耳を立てていらっしゃるご様子。
 私も一緒に耳を澄ますと…

「…んんぅ、はぁぅ、んぅぅーんっ、はぁぁんっ…」

 せつなそうな女性のくぐもった息遣いが漏れ聞こえてきました。
 んっ、んっ、と男性の踏ん張るような低い唸り声とピタンピタンと肌と肌がぶつかるような音も。

「真っ最中みたいね」

 ご愉快そうなヒソヒソ声を私の耳元で囁くお姉さま。
 つまりこれって、今このお部屋の中で男女がイタしている生ライブ音、っていうこと?
 思考がフリーズし、カーッと全身が熱くなりました。

「…あっ、あんっ…くっぅ、いいっ、そ、そうよっ、ひぃぃんっ…」

 30秒くらいその場に佇んでから、お姉さまがスッと歩き始めました。
 いろいろ混乱して固まっていた私もあわてて後を追います。

 お廊下は行き止まりとなり、突端の扉上のプレートに矢印と共に、野外露天風呂。
 お姉さまがガチャリと内開きのドアを開けると、その先は屋外でした。

 立派な木枠の渡り廊下が、まだ奥へとつづいています。
 周りには、ポツンポツンと大きな岩肌、その合間をお廊下を覆うように草木が生い茂っていますが、お廊下はさほど汚れていないので日常的にお手入れされているのでしょう。
 二階から出たので5、6歩行くと一段降りる式の階段状となった木々のトンネル渡り廊下。
 10メートルくらい先までまっすぐつづいています。

「あの感じだとバックスタイルで奮闘中ってところかしらね。こんな時間からお盛んなこと」
「まあ、互いに合意の上のお愉しみなんだろうし、余計なお世話だけどさ」

 お姉さまが私にビデオカメラのレンズを向けつつおっしゃいました。
 さっき聞いた生々しい物音を思い出します。
 確かにありふれた男女の営みなのでしょうが、胸の奥がチリチリ騒ぐ私には、その光景をあまり想像したくないものでもありました。
 頭の中に浮かんできそうな絵面を振り払いたくて、無意識のうちに二度三度と首を振る私。

「そう言えば直子さっき、何か言いかけていたわね、何?」

 私の動揺にお気づかれたのでしょう、ビデオカメラを下ろして私の顔を覗き込み、話題を変えてくださるお姉さま。
 そのお優しさにホッと安堵し、何を言おうとしていたのかド忘れてしまう私。
 あれ、何だっけ?えっと…あ、そうだった…

「あの、私、今日泊まるお部屋の昔の日本のお座敷っぽい雰囲気が妙にツボに入ってしまって、以前にそういう写真やビデオを見たことがあったので…」
「それで、あのお部屋で、お姉さまに荒縄で、思いっ切り恥ずかしい格好で柱とかに縛り付けられてみたいな、なんて…」

 お姉さまに、というところをとくに強調して告白しました。

「呆れた。廊下歩きながらそんなこと考えていたんだ?アナタの頭の中って、えっちなことしか入っていないの?」

 心底呆れた、というご表情で眉間にシワを寄せられるお姉さま。
 でもすぐにシワは消えて、真面目なお顔に戻られます。

「でもごめん。それはちょっと無理。あたし、ここにロープとか拘束具とか直子の好物、持ってきていないんだ」

 そっけなくおっしゃったお姉さまが私の反応を探るみたいに束の間私を見つめた後、一転して今までで一番イタズラっ子のお顔に豹変されました。

「でも明日、別荘に着いたらそんなことを言ったの後悔するくらい、あれこれヤられちゃうはずだから、愉しみにしていなさい」
「言ってみれば、今日のふたりだけの温泉バカンスはアペリティフ、前菜なの。明日からがメインディッシュだと思って、今日は成り行き任せでまったり過ごしましょう」

 ご愉快さとイジワルさを一緒くたにされたお顔で、お姉さまがビデオカメラのレンズを向けてこられました。
 ヤられちゃう、とおっしゃったということは、別荘ではどなたか別のかたもいらっしゃる、ということなのでしょう。
 お姉さまとふたりきりでいられるのは、今日だけなのかな?
  少しの落胆と少しの期待。

 そうこうしているうちに渡り廊下が地面に接し、木々が途切れて少し開けた場所に出ました。
 正面にはキャンプ場のバンガローみたいな建物があり、脱衣所、というプレートが掛かっています。
 
 その右側には矢印の付いた立て看板に、野外露天風呂、という表記。
 おそらくそこまで連れて行ってくださるのでしょう、草木の刈り取られた地面にスノコ状の板が敷かれ、もう少し低いほうへとつづいています。

「着いたみたいね。いいじゃない、見渡す限り360度自然の岩と草木で、まだ現物は見えないけれど、これぞ露天風呂のあるべき姿、ってロケーション」

 お姉さまがご満足そうにおっしゃいました。

「でも一応入る前に、先に来ている人がいないかチェックしておきましょう。混浴だって言っていたし、先にオトコが入っていたりしたらいろいろメンドクサそーだから」

 お姉さまがお迷いの無いお足取りで脱衣所の脇を通り越され、露天風呂へつづくのであろうスノコの上を進まれます。
 もちろん私も後ろにつづきます。

 緩やかな下り坂が終わると、岩肌と樹木が目隠しフェンス状に囲んでいる場所に出ました。
 ジョボジョボという永続的な水音も聞こえてきます。
 ワクワクしながらフェンスの内側へ入ってみると…

 想像していたより広くて立派。
 大きな岩盤をいびつな楕円形にくり抜いたかのような、広大な楕円ドーナツ状の湯溜まりが目の前に広がっていました。

 広さは小中学校によくある25メートルプールくらい?
 湯溜まりの真ん中が岩場の大きめな島になっていて、木造の東屋が設えてあります。
 温泉の周りを木々が囲っているとは言え、湯溜まりの真上は青空なので、午後4時を回っていくらか和らいだ残暑の陽射しが湯溜まりの水面に燦々と降り注ぎキラキラ光っています。

 お姉さまと一緒に湯溜まりのすぐ縁まで進んでみます。
 水面はやや白く濁った感じで独特の匂いも強く、見るからに何かしらの効能がありそうな感じ。
 思わずお姉さまとお顔を見合わせ、お互いにニッコリ微笑み合いました。

「誰もいないし、入ってみようか」

 お姉さまがおっしゃると同時に、対面の東屋の陰からポチャンという水音が聞こえ、すぐに白い人影が現われました。
 
 東屋のある島の脇の湯船にまっすぐに立たれた人物。
 その曲線的なフォルムで女性だとわかります。
 お湯の深さは膝上、腿の半分くらいまでらしく、そのかたの両腿の付け根に小さく翳っている黒い茂みが、白濁したお湯とのコントラストで絶妙に目立っています。

 お姉さまとふたり、唖然として見つめる中、そのかたにつづいて東屋の陰からもうおひとかた、いえ、もうおひとりも加わり総勢お三かたの女性が湯船の中から、こちらを見つめてきました。
 やがて最初に現われた女性が右手を高々とお上げになり、左右にヒラヒラと腕を振り始めます。

「おーいっ!」

 こちらを呼ばれるお声とともに、大きめのおっぱいがユサユサ揺れています。

「なんか、呼んでるね」

 さすがのお姉さまも戸惑い気味に、私と見つめ合います。
 私たちがその場から動かないことに業を煮やしたのか、お三かたが横一列に並ばれ湯船の中をバシャバシャと、こちらへ近づいていらっしゃいました。

 どなたも一糸まとわぬスッポンポン。
 全員髪の毛はヘアバンドなどで上にまとめられ、三者三様のおっぱいをプルンプルン揺らしながら。
 真ん中のかたが一番背が低くて、左端のかたが一番背が高い。

 あれよという間に私たちの前に全裸の女性が三名、並ばれました。
 お近くで見ると、ご年齢も私たちとはそう変わらなそう。

「おたくら、さっき送迎バスでここに来たお客さんだよね?」

 最初にお姿を現わされた一番右側の女性がお声をかけてきました。
 お三かたの中では一番派手っぽく、髪を一番明るめな金髪に染められています。
 それなのに下のヘアーは漆黒なのが凄くアンバランス。

「うん、そうだけど…」
 
 お姉さまがお答えされたお声は、幾分ご警戒気味。

「おたくらってさ、エーブイギョーカイの人でしょ?」

 金髪の女性が消えかかった眉毛を上下させ、ご興味津々なお顔でつづけられました。
 私にこのご質問が向けられるのは本日二回目です。

「えっ!?違いますよ。あたしたちは東京から遊びに来たただのしがないOLです」

 お姉さまがそっけなく言い返すと、真ん中の一番背が小さな女性が初めてお口を開かれました。

「えーっ、だってそっちのカノジョ、凄い大胆にエロい格好してたじゃん。おっぱいはみ出そうなトップスに土手丸出しのボトムス、おまけに犬の首輪まで着けちゃってて」

 真ん中の女性は、髪は濃いめの茶系、全体的に小柄で瞳だけが大きく胸の膨らみも控えめ、ヘアーも薄め、お声も多少舌足らずで、小悪魔ロリータぽい雰囲気。
 とんがらかした唇に、容姿に反したお気の強さが感じられます。
 お三かたの好奇丸出しな視線が集中的に私へと注がれました。

「あー、それね。あれはこの子の趣味なの。あたしたちはそういう関係で、今日はこの温泉宿でえっちなアソビでも愉しもう、って思っているのよ」

 お姉さまはお三かたのご様子にご警戒をすっかり解かれたようで、打ち解けた口調になっています。
 私はと言えば、三名の全裸女性から相変わらずジロジロ注がれる視線に、浴衣を着ているのにドッキドキ。
 
 考えてみれば、私だけ裸で周りは着衣、という経験は何度もありましたが、その逆は初めてかも。
 あまりジーッと視るのも失礼だろうし、でもお三かたともお綺麗な裸なのでじっくり視ていたいし…
 
「なーんだ、アタシ絶対AV女優とマネージャーが先乗りで来て、撮影隊が後から合流して今夜にも撮影するんだろうって、ワクワクしてたのに…」
「だよね?さすが、きり乃さんの宿、って思ってた。うまくすれば今夜のエイギョウに結びつくかな、くらい期待してたんだ…」

 ロリータさんと金髪のかたがワイワイと内輪話をお始めになります。
 そのあいだも一番左端の女性、一番背が高く黒髪でおっぱいも一番大きくボンキュッボンな美人さん、は、お一言も発さずニコニコ笑顔で私たちを見つめられていました。

「大胆て言うなら、あなたたちだってずいぶん大胆じゃない?」

 お姉さまがお三かたに、イタズラっぽくお問いかけになります。
 ロリータさんと金髪さんのおしゃべりがピタッとやみました。

「ここって混浴なのでしょう?なのにあなたたちったら、タオル一枚も持たずに、こんな明るいうちから優雅にマッパで湯治アンド日光浴。もしスケベなおやじ軍団でも入ってきたら…」

「あ、それは大丈夫なんだなー」

 お姉さまのお言葉が終わる前に、金髪さんが遮ります。

「今日は団体のドタキャンがあったせいで、逗留してるのはうちら以外、昨日から連泊の女子会OL4人組とカップル二組だけなんだ」
「カップルの一組は大学生ぽい初々しい感じで、もう一組はどう見てもオンナのほうがかなり年上のワケ有りそうな組み合わせ」

「両方ともどう見ても、ヤリに来た、って感じだったから、今頃ふたりだけの世界にズッポリよ。無粋な邪魔が入りそうな露天風呂になんて顔出すワケない」
「つまりオトコはふたりっきゃいないってこと。それも両方ウブそうな若いヤツだから、入ってきたとしてもどうとでもなるし。ま、来ないだろーけど」

 ロリータさんと金髪さんが口々にご説明してくださいました。
 私はさっきのお廊下で聞いた物音を思い出します。

「へー、ずいぶん内部事情にお詳しいのね。あなたたちも連泊なの?」

 お姉さまのお尋ねに、初めて黒髪の女性がお口を開かれます。

「て言うかワタシたちは厳密に言うと宿泊客ではないの。今夜の宴会に呼ばれたコンパニオンなの。でも今朝方別のホテルからこっちへ移動中に、予定客のキャンセルを告げられて」
「明日もこの近くの別の旅館に呼ばれているって言ったら、そういうことなら今夜はここに泊まっていきなさい、って、女将さんが格安でお部屋を提供してくれたの」

 黒髪の女性のお声は落ち着いていて、他のおふたりよりも少しお年上みたい。

「へー、コンパニオンて宴会に呼ばれてお酌とかする人のことでしょ?ああ、それでさっきエイギョーがどうとか言っていたんだ」

 お姉さまのお言葉に金髪さんがお答えになります。

「うちらの場合はピンパニ、ピンクコンパニオンだけどね」
 
 そのお答えに俄然お身を乗り出されるお姉さま。
 好奇心満々なお顔でご質問攻め。

「それってお色気全開のコンパニオンのことでしょ?ねえねえ、具体的にどんなことするの?」
「うーんまあ、基本的にはセクシーな衣装でお酌して回ったり、あと野球拳とかツイスターゲームとか」
「乳揉まれたり、おサワリくらいは仕方ないかな、って感じ」

「全部脱いじゃったりするの?」
「ケースバイケースだけど、その場のノリだよね」
「うちなんかワザと後出しして負けて、先に脱いじゃうよ。明るい部屋でじじいのキタネー全裸なんぞ見たくもねーし、酔っぱらいじじいに下手に先に半勃ちチンコなんか出させたら、ヌケだのヤラせろだの、その後のフォローが超メンドクサそーじゃん」

「じゃあやっぱりその先も、ヌイたりヤっちゃったりもあるんだ?」
「表向きにはもちろんNGだけどね。ただ、旅館によってはわざわざ別室用意してるところもあったりはする。アタシはもちろん断わるけど」

「でも客がお金持ちだったら、チップもはずんでくれるんじゃない?」
「昔は凄かったみたいだけど最近は不景気でそうでもないのよ。どっちにせようちらのチームはウリはしないな」
「シヴォンヌ姉さんは前に特別料金で女体盛り、してたよね?」

 そんなふうにいささか品位に欠ける会話がしばらくつづきました。
 お三かたは思い思いに湯船におからだを沈められ、私たちは陸地の平らな岩に腰を落ち着けています。

「へー、あなたたちってチームなんだ?」
「そう。事務所から組めって言われて、たいていこの3人で営業してる。うちがカレンで、こっちの小柄なのがサラ、ナイスバディなのがシヴォンヌ姉さん」
「あっ、それって…」

 金髪さんのご紹介に思い当たる節があり、思わず声が出てしまいました。

「あ、カノジョわかるんだ?事務所が勝手につけた源氏名なんだけど、なんでも昔の外国のガールズグループのメンバーの名前らしい」
「これでもマシになったのよ。チーム組まされた当初なんて、うちがスー子でサラはラン子、姉さんがミキ子だったんだから」

 カレンさんのご説明に他のおふたりが苦笑されています。

「そっちのカノジョなんかエロ可愛いから、パニオンやれば一発で人気者になれるだろーね。うちの事務所、紹介しよっか?」

 カレンさんがからかうみたいにお湯の中から私を指さしてきました。
 ビクンと震えた私の肩に右手が置かれ、お姉さまが代わりにお答えくださいます。

「確かにこの子はエロいし、頭の中はいつもスケベなことで一杯なのだけれど、そのお話には乗れないの」
「なぜならこの子は男性嫌悪症で、女性からの辱めにしか性的興奮を覚えないどうしようもないヘンタイ娘だから」

 一斉に、あらま、というお三かたのお顔。
 お姉さまに促され、ふたりで岩から立ち上がりました。
 お姉さまの右手が私のウエストの帯に掛かります。

「今日ご一緒したのも何かのご縁でしょうから、みなさんのお暇潰しに、ここでちょっと虐めていただきなさい」

 お言葉と一緒に私の浴衣の帯がスルスルっと解けていきます。
 帯に挟んであったカッパさまこけしがスルスルッと滑り落ち、岩盤の地面に当たってコツンと小気味良い音を響かせました。

* 

2020年9月27日

肌色休暇一日目~幕開け 12

  一度イッたくらいじゃカッパさまは許してくださいませんでした。
 イッているのがわかっているのに、お姉さまに操られたカッパさまは、私のマゾマンコへの出挿りを止めてはくださいませんでした。
 たてつづけに二度、三度、結局合計4回もイカされてしまいました。

 はしたない声を抑えるのも困難になっていたので、最後のほうは手ぬぐいで猿轡をされ、それを噛み締めながらてイキ果てました。
 その時間、旅荘のお庭にいたかたなら間違いなく、私のあられもない喘ぎ声を耳にされたはずです。

「可愛かったわよ。呼吸が落ち着いたら、お部屋に戻りましょう」

 浴槽の縁に腕と顎を乗せ、息だけをハアハア荒げぐったりしている私の上半身を、お姉さまが背後からお優しく抱いてくださっています。
 まだドキドキ跳ねている私の胸を、お姉さまの両腕がやんわり包んでくださっています。
 背中に当たっているお姉さまの硬くなったニップルが心地よく、いつまでもこうしていたい気持ち。

 しばらくそうしているうちにドキドキも鎮まってきて、お姉さまに促されて浴槽を出ました。
 幾分弱まったかな、くらいの残暑の陽差しの中、紛れもない屋外で全裸のふたり。
 お姉さまが先にサクサクと全身の水滴をバスタオルで拭われ、それから私のからだも拭いてくださいました。

 バスタオルのザラついた感触が肌を擦るたび、ゾクゾクッと官能がぶり返します。
 やだっ、たてつづけのオーガズムで、最近よく陥るイキ癖の状態になっちゃったみたい…

「なに肌に触られるたびにビクンビクン感じているの?ひょっとしてもう、どMモードに入っちゃった?」

 お姉さまは私のイキ癖状態を、どMモードとお呼びになります。

「は、はい…なんだかメチャクチャにして欲しい気分です…」

 今の気持ちを正直に告げ、媚びるようにお姉さまを見てしまいます。

「まだ着いたばっかりじゃない?早過ぎ。それに、あたしとふたりきりでメチャクチャにされても、直子には刺激が足りないのではなくて?直子は、辱められる姿を誰かに視られてこそ乱れるヘンタイさんなのだから」

 お部屋への引き戸が開けられ、私の肩を抱いて室内へと押し込まれるお姉さま。
 お部屋に入ると引き戸をピシャリと閉められ、スタスタと冷蔵庫のほうへと向かわれました。

「ほら、これでも飲んで少し落ち着きなさい。まだ陽があるうちに、お庭や館内も散策してみたいじゃない?」

 冷蔵庫から取り出されたスポーツドリンクを手渡してくださいました。
 キャップを捻ってゴクゴクっと一口。
 
 ふーっ。
 冷たい液体が喉からお腹へと染み渡り、性的ではない心地良さ。
 少しだけ理性が戻り、あらためて室内を見回します。

 座卓の上では、私とお姉さまのスマホ、それにハンディビデオカメラが仲良く並んで充電中。
 電車のあいだ中、私の中に埋まっていたローターも、フェイスタオルの上に無造作に置かれています。
 その横に、私を存分に悦ばせてくださったカッパさまがお仲間入りして甲羅干し。
 箪笥のそばでは、お姉さまが全裸のままで、ご自分のバッグ内を物色中。

 考えてみると、ベッドルームならともかく日中の普通の室内でふたりとも全裸、という状況も、あまり記憶にありません。
 こちらへ突き出されている形の良いお尻を眺めながら、温泉旅行に来ている、というありがたみを実感します。

 お隣の、おそらく寝室なのであろう畳のお部屋との襖が開け放たれ、太い木の立派な柱が一本剥き出しとなっています。
 途端に以前見たことのある純日本風な緊縛写真を思い出し、あの柱にあられもない姿で縛リ付けらてみれたい、と思ってしまいます。
 縄を掛ける梁もあるし、後ろ手縛りで片足だけ大きく吊り上げられて…

 目を瞑ってそんな妄想にふけってから目を開けたら、お姉さまはいつの間にか下着姿。
 それも上はスポーツブラみたいな形、下は男性用のボクサーショーツみたいないでたち。
 薄いベージュの布地でお姉さまの宝物が隠されしまいました。

「お姉さま?それって…」
「うん。温泉なら浴衣、と思って持ってきたのよ、和装用の下着。わかっていると思うけれど、直子の分は無いわよ」

 お姉さまがニヤニヤ笑いで近づいてこられました。

「本来着物とか浴衣って素肌の上に下着無しで直に着るものだしね。裸コート大好き人間の直子が浴衣の下に下着なんてありえないでしょ?」
「ちなみに直子が今日着ていた服一式、ワンピも下着も前結びシャツもデニムパンツも、今、洗濯してくれているから明日の朝まで返ってこないわ」

「えっ?いつの間に?」
「キサラギさんを呼んだのよ、直子を露天風呂に締め出した後に。チップ渡すの忘れちゃったから」
「袖の下って、着いた途端に渡しておかないと意味ないじゃない?」
「呼ぶ口実でランドリーサービスを頼んだの。直子がサカって汚したショーツとパンツは渡す前に洗面で軽く水洗いしておいたから安心なさい」

「だから、この宿に宿泊中、直子が着てもいい服はその浴衣一枚だけ。もしくは全裸ね」
「あたしが着終えたら直子に着付けしてあげるから、ちょっとそのまま待っていなさい」

 お姉さまがご自分で選ばれた紫色寄りの青い浴衣の入ったビニール袋を破り、取り出されます。
 その脇には私の水色浴衣のビニール袋。

 そそくさと袖を通されたお姉さまは、慣れたお手つきで前を合わせられ、手際よくウエストに帯を巻きつけます。
 温泉浴衣ですから幅広のちゃんとした帯ではなく、細い一本帯。
 それでも器用に巻きつけた帯に帯の端を何度かくぐらせ、ウエストの左前に羽を開いたトンボさんが上を向いてぶら下がるみたいな、綺麗な帯締め姿になられました。

「どう?」

 浴衣を着終えられ、ちょっとお胸を反らして気取られたポーズをお取りになるお姉さま。
 スレンダーなおからだのラインに沿って真っ直ぐに伸びる浴衣の生地。
 適度に開いた襟元、ほどよく覗く細い足首。
 落ち着いた青色もよくお似合いで、全体的にスラッとシャープで粋な浴衣美人さま。

「ス、ステキです、お姉さま!ステキ過ぎます」

 思わず上ずった声でのお返事になってしまいます。

「ありがと。直子にも着せてあげるから、こっちへいらっしゃい」

 水色浴衣のビニール袋をお手に取り、座卓から離れて引き戸前の広めなスペースに移動されるお姉さま。
 全裸の私も喜んでお姉さまの御許へ。
 ビニール袋を破って浴衣を取り出され広げられたお姉さまのお顔が束の間、おや?という具合に曇りました。

「あたしに背中向けて立っていて」

 ご指示通りに露天風呂のほうへ顔を向けて立ちます。
 ほどなく両肩にパサッと布地が掛かり前合わせが胸を覆ったので、そそくさと両腕を袖に通します。

「ああ、やっぱり…」

 お独り言のようなお姉さまのお声。
 私も羽織った瞬間に気がつきました。

 私が羽織っている水色浴衣、裾が余って床面まで落ちてしまっているんです。
 つまり丈が長過ぎる。
 お姉さまの浴衣姿を見て、同じサイズだったら私が着たらくるぶしまですっぽり隠れちゃうかな、なんて思ってはいたのですが、それどころではない余りよう。

「これじゃあ、おひきずりさんになっちゃうわね。明らかにサイズ違い。取り替えてもらわなくちゃダメね」

 後ろ襟が背後から引っ張られ、スルスルっと私のからだから去っていく水色浴衣。
 あっという間に全裸に逆戻り。
 お姉さまのほうへ振り向くと、水色浴衣の裏地側を丹念に調べられています。

「ほらやっぱり、TLって書いてある。キサラギさんに言って取り替えてもらいましょう」

 水色浴衣を素早く軽くたたんで座卓のビニールの上に置き、館内電話の受話器をお取りになるお姉さま。
 あの、えっとお姉さま?ということは私、キサラギさまを全裸のままお迎えしなくちゃ、ですか?
 しばらく鳴りを潜めていたマゾ性がキュンキュン戦慄き始めました。

「すぐ来てくれるって。よかったじゃない?キサラギさんにハダカ視てもらえて」

 受話器を置いたお姉さまがニヤニヤ笑いで近づいてこられます。
 ぶつかるほどの距離まで対面して、お姉さまの右手のひらが私の両腿の付け根を覆いました。
 声を出す暇もなく薬指だけが直角に立てられ、粘膜穴にズブリと差し込まれました。

「はぅんっ!」
「またこんなに濡らしちゃって。マゾマンコもずいぶん熱くなっているわよ?」

「キサラギさんが来る、って聞いただけで、こんなに興奮しちゃっているの?本当、浮気者なんだから」
「どうする?服従ポーズでお迎えする?それとも待受画像のポーズがいいかしら」
「でも直子は恥ずかしがりたいのよね?なんなら精一杯隠していてもいいわよ。それで直子が興奮出来るのなら」

 イジワルなお顔で膣穴をクチュクチュ虐めながらの、お姉さまからのお言葉責め。
 後頭部に両手を当てて、アウアウ喘ぐ私。
 そのとき、コンコン、と玄関扉をノックする音。
 
 お姉さまの右手がスッと下腹部から離れたとき、お姉さまの薬指と私の膣穴のあいだにか細い糸がススーっと引き、プツンと切れました。
 その指をご自分のお口でジュルルっと舐め取ったお姉さまが、はーいっ、どうぞぉ、と大きなお声でお応えされました。

「このたびはお手数をお掛けしてしまい、申し訳御座いません」

 平身低頭なご風情のキサラギさまが風呂敷包みを抱えて座卓前へ。
 あれ?背後にもうおひとかたいらっしゃる…

「ごめんなさいね。お見せする浴衣を選ぶとき、係の者がそのお色だけサイズを取り違えてしまったようですの」
「ここ最近は、ありがたいことに外国人のお客様も増えてまいりまして、背の高い女性の外国人様用に丈の長いサイズを導入してから、まだ日が浅いものでして…」

 キサラギさまにつづいてお部屋へ入ってこられたのは、レモンイエローの付け下げがエレガントな女将さまでした。
 女将さまはキサラギさまの斜め後ろにスッとお立ちになり、まっすぐに私を見つめています。

 私は玄関が開く音を聞いた瞬間に、ヴィーナスの誕生ポーズを取っていました。
 すなわち、右腕でバストを庇い、左手で股間を隠す羞じらいのポーズ。
 お部屋に人が訪れてくるのがわかっていたのに全裸で待っていたのですから、今更羞じらいも何もないのですが。

「あらあら、直子さまは裸のまんまでしたのね。本当にごめんなさいねぇ」

 女将さまが薄い笑みを浮かべたお顔で私におっしゃいます。
 その視線が舐めるように、私の頭の天辺から爪先までを幾度か往復しました。
 股間を押さえている左手のひらの指先近辺が、ヌルっと潤みました。

「いいんですよ。バスでもご説明したように、この子はそういう子ですから」

 お姉さまがご愉快そうにフォローにならないフォロー。

「やはりトールサイズでした。Mサイズの保管ラックに何かの拍子でトールサイズが紛れ込んでしまったようです。申し訳ございません」
「わかりました。二度とこんな間違いが起こらないように、戻ったらすぐ、保管庫内の全色全サイズを点検し直してください」

 キサラギさまと女将さまの緊張をはらまれた遣り取りの後、キサラギさまがご持参された風呂敷包みを解かれました。
 中には同じ水色の浴衣が入ったビニール袋。

「念の為、MサイズとSサイズをお持ちしました」

 キサラギさまが座卓の上に並べられ、女将さまが私とお姉さまを交互に見遣ります。

「渡辺さま、のお姉さまがお召しになられているのは、Mサイズですよね?」
「あ、はい。たぶん…」

 女将さまに尋ねられ、お姉さまが自信なさげなお答え。
 キサラギさまがスタスタっとお姉さまへ歩み寄られます。

「失礼いたします。少し身を屈めていただいて、襟足をお見せいただけますか?」

 キサラギさまにおっしゃられ、お姉さまが少し前屈みになられて後ろ髪を上げて手で押さえ、お綺麗なうなじをキサラギさまに差し出します。
 お姉さまの後ろ襟に手を差し入れ、お姉さまの横からつま先立ちで襟足を覗き込まれるキサラギさま。
 やがて、Mサイズでした、というキサラギさまのお声が聞こえました。

「ごめんなさいね。浴衣の衣紋にサイズ表記が見えてしまうのは無粋ですから、タグの裏側に小さく書いてありますの。お召しになられていなければ、掛衿の裏にもあるのですけれど」
「それにしても、お姉さまの着こなしはお見事ですわ。どなたかに習われたのですか?」

 女将さまが嬉しそうにお姉さまへお尋ねになります。

「あ、いえ、あたしも一応アパレル関係を仕事にしていますので、和装も一通りのことは学校や独学で」
「ああ、服飾関係っておっしゃっていましたっけ。それにしても、帯はお綺麗な元禄結びですし、衣紋抜きもちゃんとお作りになられていて、さすがですわ」

「お褒めいただいてありがとうございます。この子の浴衣も、少しくらいの余りだったら、おはしょり作ればいけるかな、とも思ったのですが」
「いえいえ、浴衣帯でこの余分な長さでおはしょり作るのは、わたくしどもにも無理です。ご迷惑をお掛けしてしまって、本当に申し訳ございません」

 女将さまとお姉さまの、私にはチンプンカンプンな和装談義が終わり、再びみなさまの視線が私に集まります。

「お姉さまでこの着丈でしたら、直子さまにはSサイズのほうが可愛らしいでしょう。キサラギ、着付けして差し上げなさい」
「かしこまりました」

 女将さまのご指示でキサラギさまがビニール袋をお開けになり、水色浴衣をお広げになります。
 それを小脇に抱え私の背後へ回られるキサラギさま。
 私のすぐ目の前には、お姉さまと女将さまが並ばれて、私の裸身をじっと見つめています。

 純和風な木と畳のお座敷で、粋な和装のお綺麗な女性お三かたに囲まれた全裸の私。
 またもや以前見たSM緊縛写真の一コマが脳裏によみがえります。

「それではお嬢さま、着付けをさせていただきますので、両腕をだらんと左右に下げてお立ちください」

 いきなり、お嬢さま、と呼ばれて面食らったのも束の間、おっしゃられた内容はお言葉責めそのもの、自ら手をどけて、目の前の方々に何もかもをお見せなさい、という私へのご命令。
 ヴィーナスの誕生を禁じられてしまいました。
 目前のおふたかた、とくに女将さまのほうがググっとお顔を突き出されるようにお身を乗り出されてこられます。

 今の私は、普通の全裸ではありません。
 ふたつの乳首と股間の割れスジを、否が応にも視線を惹きつけたいみたいに日焼けさせられた全裸。
 広めの乳輪と尖りきった乳首、無毛の恥丘と割れスジ、腫れ上がった肉芽に嫌でも目がいってしまう、それらの部分だけをピンポイントに青白く焼け残した日焼け跡。
 
 首周りの首輪状の日焼け跡も含めて、この全裸では、どんな言い訳も出来ないのです。
 私が視られたがりのマゾ女であるという事実に対して。
 
 それらを遂に、私のヘンタイ性癖をご存知ではない第三者さまにお披露目しなくてはなりません。
 それもこんなにお綺麗でエレガントな若女将さま、きり乃さまの至近距離ご面前で。

 まずゆっくりと左腕を、両乳房から外します。
 女将さまのお口が、あらまあ、の形に動かれ、痛いほどの視線が精一杯背伸びする両乳首に注がれます。

 それから今度は、マゾマンコを覆っていた右手をそっと外しました。
 覆っているあいだ中、下腹部でどんどん高まる熱気を手のひらに感じていました。
 指先が離れたとき、糸が幾筋か引いた気がします。

 私は、お言いつけ通り両腕を左右にだらんと垂らし、生まれたままの姿で女将さまの前に立っています。
 女将さまの視線は吸い寄せられるように私の股間へと移り、じっと視つめられた後、傍らのお姉さまに何やらコソコソ耳打ちされています。
 ハイジニーナ、という単語が聞こえた気がします。
 
 破顔一笑、ご愉快そうな笑顔のお姉さま。
 私は恥ずかしくってたまりません。

 なのにキサラギさまは、なかなか浴衣を羽織らせてはくださいません。
 絶対ワザとです。
 私の肩越しから女将さまをご覧になり、女将さまがご満足されるまで、私の裸を晒し者にされるおつもりなのでしょう。

 実際には10数秒くらいだったでしょうか。
 私が両腕を垂らしてから、私には永遠にも感じられる恥辱の時間が過ぎた後、唐突に両肩に布の感触がありました。

 それからは あれよあれよ。
 キサラギさまにご操縦されて、右を向いたり左を向いたり、両腕を上げたりグルっと回ったり。
 あっという間にお姉さまと同じくらい綺麗に、浴衣を着せられていました。

 お姉さまは、と見ると、女将さまと何やらくだけたご様子でご談笑中。
 おふたりがときどき私のほうをチラ見されるのは、たぶん私の性癖について、お姉さまが面白おかしくご説明されているのでしょう。

「お姉さまとお揃いに、帯は元禄結びにしておきました。もし解いたら、いつでも呼んでくださいましね。もちろん、お姉さまに頼まれてもかまいませんが」

 キサラギさまがお優しくおっしゃってくださり、スタスタと座卓のほうへ戻られ、間違ったほうの水色浴衣をお綺麗な正座姿でたたみ始めます。

「あら、終わったのね。いいじゃない。やっぱりSサイズで正解ね。丈もぴったり、可愛らしいこと」

 女将さまが嬉しそうなお顔で私に近づいてこられます。
 今度の浴衣の丈はくるぶしの上、脛も少し見えちゃうくらい短いので、少し子供っぽいかな、とも思うのですが。

「やだ、直子ったら、浴衣着ても乳首の位置、ちゃんと丸わかりじゃない。本当に元気のいいド淫乱乳首だこと」

 お姉さまに呆れられたお顔でご指摘され、自分の胸元に目を落とすと…
 確かに左右のその位置に、水色の布地を突き破らんばかりに、尖りきった乳首が自己主張していました。
 瞬く間に全身がカーッと羞恥色に染まります。

「まあまあ、色っぽくっていいじゃない?直子ちゃんも和服は素肌に着たいタイプなのよのね?わたくしもそうなの」

 女将さまが助け舟?を出してくださいます。
 さま、から、ちゃん付けに呼び方が変わったのは、打ち解けてくださった、と理解して良いのでしょうか。
 女将さまもキサラギさまも、到着した当初とはずいぶんご対応がくだけられた気がします。

「わたくしも和装のときは下着類は一切、身に着けないの。今だってそうよ。襦袢は着ているけれどね。そのほうが身が引き締まるの」
 
 女将さまがお胸を張るように、シナを作られたポーズを取られます。
 もちろん女将さまのニップルの位置はわかりません。

「そうそう直子ちゃん、早速差し上げたこけしも使ってくださったのね?どうだった?」

 女将さまの視線が座卓の上のローターのお隣のカッパさまを見遣り、ご興味津々なお顔で再び私に戻ります。

「あ、いえ、あの、えっと、あ、ありがとうございますっ」

 何てお答えしていいかわからず、しどろもどろな私。

「そう。あれよりも一回り太いのもあるのよ。お使いになられたい?」
「あ、いえ、あの、あれで結構です。あ、いえ、あれが、あれでちょうどいいです…」
「そう。お役に立てたようで、良かったわ」

 ひょっとしたら女将さまって、すごくえっちなかたなのかもしれません。

「とにかくこのたびは、余計なお手間をお取らせしてしまいまして、本当に申し訳ございませんでした。この後もどうぞ、ごゆっくりお寛ぎくださいませ」

 責任者のお顔に戻られた女将さまがキサラギさまともども深々とお辞儀され、お戻りのご準備。

「そう言えばおふたり、裏の野外露天風呂にはもうお入りになられました?」

 玄関口までおふたりをお見送りに出て、女将さまがこちらを振り返ってのお一言。
 お姉さまとふたり、フルフル首を左右に振ります。

「ぜひお入りになってくださいませ。手前味噌になりますが周りの景色が見事で広くて、本当に気持ち良いんですのよ。まだ4時過ぎですし、暗くなるまで間もありますし」
「まったりとお肌に絡みつくような泉質で、直子ちゃんのお気に召すこと間違いないの」
「他にお客様がいらっしゃなければビデオ撮影されても結構ですのよ。直子ちゃんのお綺麗過ぎるパイパンに、晩夏の緑がとても良く映えると思いますし、きっとあのこけしも悦びます」

 恥ずかし過ぎるご助言を残され、女将さまとキサラギさまがお部屋を出ていかれました。


2020年9月22日

肌色休暇一日目~幕開け 11

 スリッパに履き替え、キサラギさまのお背中に着いていきます。
 フロントと言うよりも、お帳場、と呼んだほうがしっくりくる、純和風な調度品で統一された板の間の広間。
 館内に低く流れているジャズピアノが微妙にミスマッチで却ってお洒落。
 その脇にある緩い傾斜で上へとつづく幅広な階段を、ゆっくりと上がられるキサラギさま。

 階段を上りきると、その先にも広めな廊下が奥へとつづいています。
 この旅館、正面からの見た目より、ずいぶん奥行きのある造りみたい。
 やがて十字に交差した廊下を左に折れ、少し歩いたところで立ち止まられました。

「こちらのお部屋でございます」

 お部屋の扉脇の柱に、如月、という木製プレートが掛かっています。
 外開きの扉を開けると小じんまりとした三和土。

「お部屋には裸足でお上がりください」

 スリッパを脱ぎ、玄関入ってすぐの障子を開くと…

「うわー、ひろーいっ」

 お姉さまと私、同時に声が上がりました。
 板の間と畳で分けられた純和風の広々としたお部屋。
 全体で20畳くらいあるのではないかしら。
 襖で隔てられてまた別の間もあるみたい。

「ここは角部屋になりますから、二面に窓があって採光も良く、存分に景色を楽しんでいただけると存じます」

 お綺麗な正座姿でお茶を淹れてくださりながら、キサラギさまがおっしゃいました。
 居間のほぼ中央に大きめな座卓、差し向かいに立派な座椅子が二脚。

「さ、お茶をどうぞ」

 キサラギさまに促され、お姉さまと私は座椅子へ。
 座卓の上には真っ白なお茶碗に淹れられた熱い緑茶と急須、そして丸くて薄茶色いお饅頭がふたつ。
 キサラギさまのご説明が始まりました。

「そちらの窓の向こう側がお部屋付きの露天風呂でございます。掛け流しですので24時間、いつでもご利用いただけます」
「お外は当旅荘の裏庭で、森を隔てて山並となっております。人目に付くご心配はまったくございません」
「シャンプーや石鹸を使われる場合は、恐れ入りますが内風呂か当館一階の大浴場をご利用ください」

「そこの扉の向こう側が洗面所、お手洗いと内風呂となっております。内風呂もお外に面したガラス張りですので、お外の景色を楽しみながらご入浴いただけます」
「お部屋を出て、先ほどお廊下を曲がったところをそのまま奥へとまっすぐしばらく進んでいただきますと、野外露天風呂となります」
「館内の大浴場は殿方とご婦人で分かれていますが、野外露天風呂は混浴となります。本日は殿方のご逗留は少ないですが、抵抗がおありであれば湯浴み着のご用意もありますので、お気軽にお使いください」

「大浴場、野外露天風呂ともに脱衣所に手ぬぐいとバスタオル、湯浴み着他を専用ロッカー内にご用意してありますので、手ぶらでお出かけされて結構です」
「各脱衣所にこのお部屋専用のロッカーがございます。この鍵が渡辺さまのロッカーとなりますので、恐れ入りますがこれだけは携帯してくださいませ。ご使用されたタオル類はロッカーへ戻さず、備え付けの籠にお捨て置きください」
「このお部屋専用ロッカーの番号は205、となります」

 腕時計のベルトのような、ビニール製らしき中に小さな鍵が収められた透明のリストバンドが座卓の上に置かれました。
 ほぼ同時に、コンコンと扉がノックされる音。
 キサラギさまが優雅にお立ちになり、玄関へと向かわれます。

 開け放された障子の向こうを注目していると、現われたのはキサラギさまとお揃いの作務衣を召した、キサラギさまより一回り以上お若そうな可愛らしい女性。
 大きな風呂敷包みをキサラギさまにお渡しになり少しのあいだ小声で会話され、淡い微笑みの会釈で去っていかれました。

 座卓前に戻られたキサラギさまが濃紺の風呂敷包みを開くと、中はなにやらカラフルな色合い。

「浴衣でございます。どうぞお好きなお色をお選びください」

 赤、青、黄、オレンジ、ピンク…
 ビニール袋に包まれた色とりどりの浴衣が座卓の上に並べられます。
 基本的に単色の生地に、白抜きの可愛らしいお花模様が散りばめられたデザイン。
 数えてみると8色ものバリエーション。

「あたし、これにする」

 お姉さまがその中でも一番渋い、紫色寄りの青い浴衣を手にされました。
 私も迷った末、お姉さまに倣って青色系の水色のものに。

「館内履きとしてお部屋玄関に草履もご用意しました。浴衣も草履もお発ちの際にはお持ち帰りになられて結構です」
「館内どこでも、どうぞ浴衣でお寛ぎください。お庭に出られる際は、下駄をご用意いたします。肌寒いようであれば、そちらの箪笥に半纏のご用意もございます」

 残った浴衣を風呂敷にお戻しになられながら、キサラギさまの立て板に水のご説明。
 それから細長い紙の箱が座卓の上に、あらためて置かれます。

「これは女将から、ご逗留の記念として、ぜひお納めください、とのことです」

「へー、ありがとうございます。何かしら?」

 お姉さまが気さくなご様子で箱をお手に取り、パカッとかぶせ蓋を開けました。

「あ、こけし」

 箱の中に横たわっていたのは、木彫りでツヤツヤとした、お土産屋さんでよく見る形の素朴な民芸品、こけし。
 制汗スプレー位の長さ、太さで、頭は球形、胴は円柱状で少しだけくびれがついています。
 頭の天辺近くにまあるく切れ込みの段差が入っていて、お顔にはお鼻なのか嘴なのか小さな突起。

「これは…カッパさん?」

 思い浮かんだ言葉が思わず口をついてしまいました。

「はい。この辺りは川沿いですし河童にまつわる言い伝えがいくつもありますから、昔から当地の一般的なお土産品となっております」

 キサラギさまがお優しい笑顔で私を見つめつつ、穏やかにおっしゃいます。

「女将さんにありがとうございます、とお伝えください。このお気遣いはとくに、うちの直子が悦ぶと思います」

 お姉さまがご愉快そうに笑いながらおっしゃいました。

「はい。それでお夕食なのですが、何時頃がご希望でしょうか?」

 風呂敷をしっかり結わい終えたキサラギさまが、お姉さまにお尋ねになります。

「そうね、7時くらいかしらね」

「かしこまりました。それでは6時半よりご用意を始めさせていただきます」
「お食事は、そちらの小上がりのお座敷にご用意いたします。しばらく配膳のものが出入りしますが、お客さまはご不在になられていてもかまいません」

 窓際の一段高くなった畳敷きのスペースを指さされたキサラギさま。
 窓の外には陽射しに照らされた鮮やかな緑が広がっています。

「お布団はご夕食のお片付けを終え次第、そちらの襖の向こうの寝室にご用意いたします。それと…」

 ずっと明朗だったキサラギさまが珍しく口ごもられました。

「これは女将からたってのお願いなのですが、蝋燭のご使用とお手洗い以外での排泄行為だけは、ご勘弁願いたい、とのことです…」

 キサラギさまが私を見透かすみたいにじっと見つめつつ、薄い笑顔でおっしゃいました。
 私はそのお言葉の意味を瞬時に理解してしまい、居ても立っても居られないほどの羞恥が全身を駆け巡ります。

「わかりました。御旅荘のみなさまに余計なご迷惑はお掛けしないことを、お約束いたします」

 お姉さまがキリッとしたお顔つきに戻られ深々とお辞儀をされたので、私もあわてて頭を下げます。
 キサラギさまも正座でお辞儀。

「女将から万事申し付けられておりますので、どうぞごゆっくりお寛ぎ、ご自由にお愉しみくださいませ」
「恐れ入ります。よろしくお願いいたします」

 お姉さまとキサラギさまがもう一度交互にお辞儀され、キサラギさまだけ優雅に立ち上がれました。

「何かありましたら遠慮なくそこの館内電話で呼びつけてくださいませ。それでは失礼いたします」

 キサラギさまがもう一度深々とお辞儀され、しずしずとご退室されました。

「キサラギさんて、絵に描いたようにきちんとした仲居さんだわね」

 お部屋にふたりきりになった途端、お姉さまと私は同時に立ち上がりました。
 お部屋内の至るところが物珍しくてたまりません。

 床の間の何て書いてあるのかわからない掛け軸、白い百合と胡蝶蘭の生花。
 襖を開け、障子を開け、箪笥を開け、冷蔵庫を開け。
 貰われてきたネコさんが自分の新しい縄張りを確認するみたいに、ふたりそれぞれお部屋の気になるところをチェックしました。

「あの女将さんもお茶目よね。あのこけし、絶対そういう意味じゃない?」
「直子も見た途端に、挿れたい、って思ったのじゃなくて?女将さんに敬意を表して、ここに滞在中はマゾマンコにはあれしか挿れちゃいけないことにしましょう」

 一通りお部屋内を見て回った後、ふたりはお部屋付きの露天風呂へと出られる引き戸の大きな窓ガラスの前で合流しました。
 ベランダ状に突き出たスペースに、檜造りらしい四角く大きな湯船と木製のベンチが置かれています。

 私の背後に立たれたお姉さまの両腕が私に覆い被さるように私のお腹の前に来て、スルスルっと前結びシャツのリボンが解かれます。

「あん、いやんっ」

「何が、いやん、よ。あたしと会ってからずーっと乳首に血液集めっ放しのクセに」
「早く裸になりたくて仕方ないんでしょ?」

 お姉さまの手でスルスルっとシャツを脱がされ、おっぱい丸出し。
 両手で胸を庇った隙に無防備となった下半身のデニムがずり降ろされました。
 お姉さまの手首の時計を見ると、まだ午後3時を少し回ったくらい。

「ああ、これも挿れていたんだっけ。すっかり忘れて使うの忘れてた」

 膣穴から少しだけ覗いた紐状アンテナが引っ張られ、充分に濡れそぼっている膣穴をローター本体がヌプヌプっと抜け出していきます。
 抜かれたローターからポタポタ滴る私の欲情のシルシ。

「床を汚しちゃうから舐め取りなさい」

 アンテナからぶら下げられたローターを鼻先に突きつけられ、舌を伸ばして咥え込み、ジュブジュブしゃぶります。
 アンテナが引っ張られ、私の口腔から抜け出るローター。

「あふぅん」

 肩まで伸びた髪をまとめてひとくくりに後頭部まで押し上げられ、手際よくゴムで括られます。
 お姉さまの両手が露わとなったうなじへと伸び、首輪も外されました。

「今の直子は、何もしなくても天然の首輪をさせられているようなものだものね」

 首周りの白い日焼け跡をスーッと撫ぜられました。

「ほら、一番風呂は直子に譲るわ。汗まみれのからだと愛液まみれのマゾマンコを洗い流してきなさい」

 露天風呂への引き戸がガラガラっと開けられ、裸のお尻をピシャっと叩かれ背中を押され框を跨いで露天風呂の簀の子の上へ、すかさず引き戸がピシャリと閉ざされ、カチャッとご丁寧に鍵までお掛けになるお姉さま。

「ああん、お姉さまぁ…」

 全裸でベランダに締め出されてしまいました。
 たちまち心細くなりガラス越しにお姉さまのお姿を追ってしまいます。
 お姉さまは、しばらくご自分のバッグをゴソゴソされた後、キサラギさまが洗面所へ繋がるとおっしゃっていた扉を開くと、中へと消えていかれました。

 仕方なく空を見上げると相変わらずの青空。
 全裸でも少し暑く感じるくらいの残暑。
 時折吹く風が心地よく全裸を撫ぜてきます。

 恐る恐るベランダの突端まで近づいてみます。
 私のおヘソ位置くらいの高さで、粗い格子状の木の柵が空間を囲っています。
 見えるのは辺り一面の、緑、緑、緑。
 階下を見下ろすと、この旅荘がお山の中腹くらいに建っているのがよくわかります。

 キサラギさまのお言葉通り、この露天風呂がまったく人目を寄せ付けない造りだとわかり、盛大な安堵感と少しの失望感。
 それと同時に凄い開放感に包まれました。

 掛け湯をして汗をざっと洗い流した後、ざぶんと湯船に浸かります。
 広い湯船で大きくからだを伸ばし、んーっと深呼吸。
 大自然の中で生まれたままの姿で、ちょうどいい温度のお湯に身を任せる快感。
 リラックスという状態の本当の意味を、生まれて初めて体感した気がします。

 湯船ギリギリまで満たされたお湯は、絶えず床へと溢れているのですが、湯船のお湯が一向に減らない不思議。
 温泉て本当に湧いて出ているんだな、って実感。
 お湯に肩まで浸かりすっかり寛いでいたら不意に、引き戸がガラガラっと開きました。

「あ、お姉さまっ!」

 湯船の中で息を呑む私。
 だって、お姉さまが裸で、こちらに向かって来るのですもの。
 胸の前に片腕で押さえた手拭いを前に垂らしただけの全裸のお姿で。

 私と同じようにお姉さまも、まずは周囲の状況をご確認されたかったのでしょう。
 ベランダを囲む木の柵まで歩まれてお外の景色を見渡されました。
 柵沿いを少し歩かれてご安心なさったのでしょう、前を覆っていた手拭いを外され、何もかも丸見えのお姿で湯船のほうへと戻ってこられます。

 こんな屋外の明るい陽射しの中で、お姉さまのオールヌードを拝見するのは初めてでした。
 お姉さまが湯船の縁にお立ちになり、私を見下ろしてきます。

 湯船からお姉さまを仰ぎ見る形となった私。
 照りつける陽射しにいっそう輝く白いお肌。
 やはり興奮されていらっしゃるのか、突起されたニップルが陽射しに影を作るほど。
 ショートヘアーが風にそよぎ、少し開いたスラッとしたおみ足のあいだから覗く亀裂。
 状況の新鮮さとも相俟って、そのお美しさは神々しいほど。

「外で裸になるっていうのも、開放感あって意外と気持ちいいものね」
「お湯加減はどう?窓から見ていたら直子、すっごく気持ち良さそうだった」

 お姉さまがしゃがみ込まれ、私の目の前に剥き出しのアソコ。
 思わず顔を近づけたくなってしまいます。
 お姉さまは桶でお湯を汲み、数回の掛け湯の後ザブンとお湯に入られました。

「あーーっ、気持ちいいっ!」

 両手両足を全開にして大の字でおからだを湯船に沈められるお姉さま。
 私は縁側に身を寄せて、お姉さまの一挙手一投足を見守ります。

「見上げると青い空って、すっごい開放感ね。シアワセーッ!」

 水中に沈んだ白い裸身、一箇所だけ翳りを作るお手入れされたヘアーが可憐な海藻みたいに揺れています。
 やがて満足されたのか、伸ばしきった手足をまとめられ、姿勢を変えられました。

「ほら、直子もこっちにいらっしゃい」

 湯船の真ん中あたりで膝立ちになられているのでしょう。
 形の良いバストを惜しげもなく陽射しに晒して、手招きされるお姉さま。

 飼い主に呼ばれたワンちゃんみたいに、バシャバシャお湯を掻き分けてお姉さまのお傍へ。
 すかさず顔を捕まえられ、唇が重なったと思ったら舌がねじ込まれ、熱いくちづけ。
 思わずお姉さまの細いウエストをギュッと抱き寄せてしまいます。

「ハア、ハア、これでお姉さまも野外露出デビューですね」

 蕩けるようなくちづけが離れ、なにか言わなくちゃ、と思い口をついたセリフがこれ。
 お姉さまは至近距離で私を見つめたまま、ニヤリと微笑まれます。

「何言ってるの?あたしはただ単に露天風呂を楽しんでいるだけよ?浴衣に着替える前に汗を流してサッパリしたいしね」
「誰かさんみたいに誰彼構わず裸を視てもらいたいようなヘンタイさんではありませんよーだ」
 
 からかうようにおっしゃったお姉さまの右手が私の下腹部に伸びてきます。
 無毛の割れ目を抉じ開けて侵入してきた二本の指。

「はうんっ!」
「呆れた。お湯の中だっていうのに直子のマゾマンコの中、相変わらずヌメっているじゃない?ひょっとしてあなたの愛液って油性なのじゃなくて?」

 軽口をたたかれるお姉さまのニクタラシイ笑顔。
 私も負けじとお姉さまのソコへ手を伸ばそうとすると、スイっとおからだが引かれました。

「あたしはいいの。まだそんな気にならないから。直子は電車以来イケてないから疼いちゃっているんでしょ?たっぷり可愛がってあげるからちょっと待ってなさい」

 いったん湯船から上がられ、引き戸のそばまで行かれると何かを拾い上げられ、再び戻っていらっしゃいました。

「ほら、せっかく女将さんがくださったのだから、早速使わせてもらいましょう。直子の温泉一発目オーガズムは、ご当地代表の河童こけしに犯されながら味わうの」

 お姉さまの右手に握られたカッパさんがお湯に潜り、お姉さまの左手が私の背中を引き寄せます。

「あたしにイタズラ出来ないように、両手は頭の後ろよ。直子はマゾなのだから」
「はうっ!」

 ラビアに何か当たったと思った途端、ズブリと何の抵抗もなくカッパさんの頭を飲み込んでしまう、私のふしだら過ぎる女性器。
 やがて水面がユラユラ波立ち始めたのは、水中でお姉さまの右手がストロークし始めたから。

「あ、あっ、あ、あんっ、あっ、あんっ、あんんっ…」

 カッパさまの頭が出し挿れされる同じタイミングで、はしたない淫声がほとばしってしまいます。

「そんな大きな声上げたら、他の宿泊客や仲居さんたちに聞こえちゃうわよ?直子のいやらしいヨガり声」
「んっ、んっ、んふっ、んふぅ、んふぅーんっ…」

 お姉さまに諌められ、必死で声をガマンします。
 カッパさまの頭のお皿の段差と嘴が、凄く効果的に膣壁を擦り上げてくださいます。
 お湯の中で人肌ぐらいに温まったカッパさまの木肌は今まで味わったことのない官能に誘ってくださいます。
 出し挿れされるたび膣内に、お湯も一緒に入ってきているからかもしれません。

「んふぅっ、んふぅっ、んふぅぅん、うふぅんっ、んふぅぅぅーっ…」

 湯船の水面がますます波立ち、お姉さまの右腕のピッチが上がりました。
 こけしの胴を握られたお姉さまの拳が、ラビアを打ち付けては引くをくりかえしています。
 そのたびに押し潰される私の腫れ上がりきった肉の芽。
 腟内がひっきりなしに痙攣しながら蠢いているのが自分でわかりました。

「あんっ、おっ、お姉さまっ、も、もうダメですっ、イッ、イッちゃいますぅ…」
「おねえさまぁ、イッてもよろしいでしょうかっ、イッてもよろしいでしょうかっ、イッてもよろしいでしょうかぁーっ…」

 バシャバシャ跳ねる水音。
 ざぶざぶ波立つ湯船の中で、マゾの服従ポーズでうねうね身悶えしながら懇願する私。

「そう。イキなさい。イッちゃいなさい。直子は河童に犯されて、自然の中であられもなくイッちゃいなさい」

 水面に見え隠れするお姉さまの美乳がプルプル揺れているのが見えました。
 襲いくる凄まじい快感に身を任せ、大きくのけぞると眼前いっぱいの青い空。
 
「んーーーーっ、あぁーーーーーっ!!!」

 その瞬間、頭の中でいくつもの星が弾け、やがて真っ白になりました。


2020年9月6日

肌色休暇一日目~幕開け 10

「でもまあ、そんなしょーもないハプニングがこの時間帯で良かったわよね?」
「えっ?」
「直子たちの会話、あたしが居た場所でも途切れがちにだったけれど、意外に風に乗って聞こえてきてたわよ。ま、風向きにも因るのでしょうけれど」
「とくにあいつが目に見えてイラつき始めた後、直子でもあんなふうに怒ること出来るんだ、って、感心しちゃった」

 確かに嫌悪感が高まってからは、おのずと声も大きくなってしまっていたと思います。
 
「これが駅に電車到着直後の観光客で混み合った時間帯だったら、直子たちの下ネタ満載な修羅場、もっと大勢のギャラリーに注目されていたでしょうね。お蕎麦屋さんに入る前は、けっこうあちこち人がいたじゃない」
「お店から出た頃は、次の到着列車まで時間の空いている空白期間。駅前広場に人が少ない時間帯に解決出来たのだから、直子にとってはラッキーだったのではなくて?」

「人がいっぱいいるときに、私はマゾだから、なんて宣言していたら、たまたまそばにいて聞きつけたしょーもないオトコどもがゾンビみたいにワラワラ寄ってきたりしていたかもね」

 お姉さまのからかい口調に促され、あらためて広い駅前広場を見渡してみます。
 確かにお蕎麦屋さんへ入る前に比べたらグンとまばらとなった人影。
 サッカーコートが余裕で二面以上取れそうな広い敷地内に、相合い日傘のカップルさんニ組、女性のお二人連れ二組、単独の男女が3名くらい、あちらこちらにそんなもの。
 
 目前に迫ってきた立派な屋根が設えられた足湯処にも、若いカップルさんと、お蕎麦屋さんで出会った外国人さまとはまた違う欧米系らしき恰幅の良いカップルさんしか足を浸していません。

「あのヘタレ男子、どうせカノジョもいなそうだから今晩のオカズは当然、直子でしょうね」
「全裸画像も脳裏に焼き付いているでしょうし、半裸の生身も間近で視たし、声も聞いたし匂いもかいだし」
「おまけにいいようにあしらわれちゃって、おっぱいには触れずプライドも折られたしで、可愛さ余って憎さ百倍。あいつの妄想の中の直子は、目も当てられないくらいひどい凌辱を受けながら犯されちゃうのでしょうね」

 あきらかに面白がっていらっしゃるお姉さまをジト目で見つめてしまいます。
 他人の妄想の中でだって男性に凌辱なんてされたくありませんが、自分が可哀想な目に遭うことになる、とだけ考えると、ジワッとマゾの血が騒ぎ出してしまいます。
 あぁんっ、やっぱり今日の被虐欲求は制御不能ぽい。

 気がつくと足湯処に着いていました。
 神社とかお寺さんを連想させる立派な木造屋根の下の吹き抜けの一画。
 四角く囲った屋根の下、中央に台座を置いて六角形に仕切られた幅4~50センチほどの溝に、温泉なのであろうお湯がヒタヒタと溜まっています。

「この暑さなのに足湯ってなんだかな、とは思うけれど、せっかくあるのだから話のネタにちょっと浸かってみましょう」

 お姉さまがフラットシューズをお脱ぎになり、サブリナパンツの裾を捲くり上げられるのを見て、私も従います。
 座席は木製の一枚板、お湯が流れる溝は大理石みたい。
 
 座ってしまうと日焼け跡のある背中が気になりますが、ちょうど靴箱を背にする位置に座らせてくださったのは、お姉さまのお優しさでしょうか。
 足を浸してすぐは、ちょっと熱いかな、と思いましたが慣れるとちょうどいい感じ。
 屋根下の風通しも良いようで、こんな暑さなのに意外にふわふわリラックス出来て気持ちいい。

 余裕が出来て周辺を見渡すと、座席の余白を充分置いてポツンポツンと二組、寄り添い合うカップルさん。
 どちらさまも私たちのことをじっと窺っていらっしゃいました。
 今更ながらに今している自分の服装の非常識さを思い出し、羞恥が全身を駆け巡ります。

 羞恥心が汗となり、額や首筋を濡らし始めます。
 でもそのせいだけではないみたい。
 足先から吸収された熱は着実に血行を促進し、体温調節に余念のない私のからだ中の毛穴。

 前を見ると、六角形の台座越しほぼ対面にいらっしゃる恰幅の良い外国人カップルさんも、おふたりともお顔からTシャツまで汗みずく。
 私のお隣のお姉さまだって御髪の生え際がジットリですし、私の薄いブラウスは白シャツごと素肌に満遍なく貼り付いてしまっている始末。
 おかげで透け度も格段に上がり、本人の意識としてはまさに裸同然。
 
 そろそろいったん出たほうが、とお姉さまにご提案しようと思ったとき、どこからともない人影が、音も無くスッと背中に寄り添ってきました。
 
「失礼ですが、渡辺さまでいらっしゃいますか?」

 鈴を転がすようなお声のほうを首だけ捻って見上げると、鮮やかなレモンイエロー色の和服を涼しげに着こなされたスラッとした女性がおひとり。

「あ、はい」

 お姉さまが足湯からおみ足を脱出させつつ、お応えになられました。

「お迎えに上がりました。湯乃花屋旅荘で女将を務めさせていただいております、きり乃、と申します」
「わざわざご丁寧にありがとうございます。渡辺です。本日はお世話になります」

 お姉さまが立ち上がられたので私もあわてて立ち上がります。
 立ち上がると、薄いブラウスは満遍なく汗まみれで、私の素肌に肌色露わにぴったりと貼り付いています。
 バスト周りも白シャツもろとも凹凸通りにぴったり貼り付き、私のおっぱいそのものな形を白日下に晒しています。

 思わず胸を庇ってしまいますが、女将さまはそんな私にもお優しい微笑み。
 真正面から拝見した女将さまは、背筋がピン、立ち姿がシュッとされた和風美人さま。
 おそらくお年はお姉さまよりもふたつ三つ、お年上でしょうか、その凛とした佇まいに品の良い色香が薫る艶っぽいご婦人。

「本日はお暑いですからよろしければこちらをお使いください。それにお邪魔でなければこちらも」

 和装によくマッチしたシックなバッグからタオルとよく冷えたスポーツドリンクを、お姉さまへ私へと、おっとり手渡してくださいます。

「ありがとうございます」

 お姉さまと私で少しタイミングはズレてしまいましたが、お礼とともにありがたく頂戴し、顔や手足の水滴を拭います。
 火照った全身に沁み渡る冷たいドリンクの美味しさといったら…
 そのあいだも女将さまは、はんなりとした笑みを浮かべつつ、私たちを眺めていらっしゃいました。

「それではご案内いたしますね、こちらへどうぞ」

 靴を履き終えた私たちが一段落したとご判断され、女将さまの白いお草履がしずしずと足湯処から離れ始めます。
 そんな女将さまのお背中を追う、お姉さまと私。
 少し歩いた車道に、お宿のお名前が大きく書かれたベージュ色のマイクロバスが駐車されていました。 
 こんなふうな可愛らしいマイクロバス、幼稚園の頃に乗った記憶があります。

 女将さまに促され運転席脇から乗り込みます。
 運転手さまはニコニコ愛想の良い、青い半纏を羽織られたご中年の丸顔な男性。
 
 バスの中央付近、通路を隔てて前向きの二人掛けが並ぶ座席の奥窓際に私、通路寄りにお姉さま、通路を隔てたお隣に女将さまの順で腰掛けました。
 他にお客様はどなたも乗られていません。

「ほら、そんなビショビショを羽織っていたら風邪引いちゃうわよ?エアコンも適温だしタオルもあるし、さっさと脱いで汗を拭いておきなさい」

 お姉さまが私の耳元で囁かれ、私は座ったままポシェットを外し、ブラウスからもぞもぞと腕を抜き、濡れそぼったブラウスをお姉さまへとお渡ししました。
 そんな私たちをたおやかな微笑みとともに、お見守りになる女将さま。
 ああん、また下着同然、と身を縮こませつつ素肌にタオルをあてがったとき、ブルンと一際大きくエンジンが唸りました。

「本日は遠路遥々ようこそいらっしゃいました。それでは発車いたします」

 運転手さまの渋めなお声と共にマイクロバスが走り始めます。

「えっ?お出迎えって、あたしたちだけのためだったんですか?」

 私も思っていた疑問をお姉さまがストレートに投げかけました。

「あ、いえ、結果的にはそうなのですが、お気になさらないでください」

 女将さまのご様子に少しの動揺を感じました。

「実はこの時間帯に外国からの団体のお客様もお迎えする予定でスケジューリングしていたのですが、なんでも昨日からお国のほうに台風が直撃してしまって飛行機が飛べなくなってしまったそうで…」
「それで急遽宿泊がキャンセルとなってしまったのですが、わたくしどもの宿は人里離れていますしタクシーでもワンメーター以上はかかってしまいます。それではわたくしどもも心苦しいので、喜んでお迎えに上がった次第です」

 女将さまが深々とお辞儀くださいます。

「でもご心配なさらないでください。代理店からちゃんと所定のキャンセル代金はいただけますし、団体さまの振り替え日時も決まりました。渡辺さまにはご予約いただいたお部屋よりも更にゆったり出来るお部屋に御案内させていただきますし、ご用意していた食材も、よりふんだんに使わさせていただきます」
「余裕が出来た分、より充実したおもてなしが出来ると存じます。もちろんご予約時にお約束した料金以上はいただきません」

 あくまでご丁寧な女将さまが、そこまでおっしゃって一息おつきになられました。

「それで、お手数をお掛けしてしまい恐縮なのですが、宿帳のご記入をお願いします。渡辺絵美さまに直子さま、でしたよね?」

 お姉さまに下敷きを敷いた用紙とボールペンが渡されました。
 窓の外を見ると山間の川縁登り坂を、マイクロバスは快調に進んでいます。

 ほどなくお姉さまがお書き終えたのでしょう、女将さまに用紙をお戻しなりました。
 チラッと覗くと、渡辺絵美、渡辺直子、と書いてあり、住所はふたりともオフィスが入っているビルの番地になっていました。
 もちろん何階何号室までは書かれておらず、違うのはそれぞれの生年月日とケータイ番号だけ。

「それにしてもさっきの足湯で、よくあたしたちが渡辺だっておわかりになられましたね?お約束の時間よりも10分くらい早かったのに」

 お姉さまが女将さまにボールペンをお返しになりながらお尋ねになります。

「あ、それは、先ほどのお電話で、何か目印になるようなお持ち物は?と宿の者がお聞きしたところ、赤い首輪、あ、いえ首飾りをされた女性とご一緒されている、とお答えになったとお聞きしていましたので」
「ブランド物のバッグなどをご指定されると、偶然同じ物を持たれた方が複数いらっしゃって当惑することも偶にあるのですけれど」
 
 首輪、のところで少し言い淀まれたものの、あくまでたおやかに微笑まれる女将さま。
 お姉さまってば、そんなお教え方をされていたんだ。
 
「不躾なのですが、おふたりのご関係は、ご姉妹、ですか?」

 宿帳?にお目を落とされた女将さまが思慮深気なご様子でおっしゃいました。

「あ、いえ、血は繋がっていません。この子はあたしにとっての嫁と言うか、恋人と言うか、そんな関係ということで…」

 照れたようにおっしゃるお姉さまに胸がキュンキュン!
 きゃー、嫁だって!恋人だって!

「あらー、最近話題のエルジービーティーでしたっけ?まあ素敵!」

 心做しか女将さまのテンションが上がられたご様子。

「そう言えば本日、わたくしどもをご利用いただくのはミサキさまからのご紹介でしたよね?やはりそういったご関係のお仕事をされているのですか?」

 女将さまのご表情が興味津々のお顔になられた気がします。

「あ、いえ、直接的にそういう仕事ではないのですが、衣装協力でおつきあいをさせていただいています」
「それで、ミサキさまからお伺いしたところ、御旅荘はそういった点についてはけっこうご寛大でいらっしゃるとお聞きしましたので…」

 お姉さまがイタズラっぽく私を振り向きました。

「直子、ちょっと立って、女将さんにあなたのお尻を見ていただきなさい」
「えっ!?」

 私と女将さまでぴったりユニゾン二重唱。

「あ、お尻って言っても、ここでこの子がパンツを脱ぐとかっていう意味ではありませんから」

 女将さまにお愛想笑いを向けられるお姉さま。

「ほら、早く立って、これから一晩お世話になるのだから、ちゃんとお見せしておきなさい」
「は、はい…」

 バスの窓際で立ち上がり、おずおずと通路側に背中を向けていきます。
 お姉さまを除けば今日初めて、自らすすんで日焼け跡のイタズラ書きをご披露することになります。
 なぜだか両手も後頭部へ。
 ドキドキとムラムラでヘンになりそう。

 お姉さまが背もたれにお背中を押し付けて空間を作り、女将さまによく見えるようご配慮されているご様子。
 私の恥ずかしい性癖を読まれている…下腹部だけにジンジン熱が集まってきています。

「こういう子なもので、出来れば御旅荘のお部屋や露天風呂などで個人的な趣味的に、プレイや撮影が出来たらな、とは考えているのですが…」
 
 横目でそっと窺うと、女将さまに向けて上目遣い、お姉さまにしてはお珍しくおもねるようなお顔。
 対する女将さまは、顎を少しだけお上げになり思慮深気なご思案顔。
 顎から喉元へのラインがキリッとした鋭角を描き出し、もの凄くお美しい。
 きっとイタズラ書きをご覧になった直後は、あらまあ、というお顔だったのでしょうけれど。

「かしこまりました。本日は、先ほどもご説明申し上げました通りお客様も少ないですし、他のお客様の御迷惑にならない程度にならば、ご自由におくつろぎになられてくださいませ。スタッフと仲居たちにもその旨、伝えておきますから」

 フッと目線を上げられた女将さまと、首だけ曲げて通路側を窺っていた私と、バッチリ目が合ってしまいました。
 私に向けて蕩けちゃうくらい妖艶に微笑まれる女将さま。

「ありがとうございます。直子?もう座っていいわよ。良かったじゃない?今日は宿をあげて直子につきあってくださるって。ほら、ちゃんときり乃さまに、マゾらしくお礼なさい」

 満面の笑みのお姉さま。
 艷やかに微笑まれる女将さま。

「わ、私みたいなヘンタイマゾにご配慮いただきまして、本当にありがとうございます」

 言ってしまってからカーッと熱くなります。
 今日の私のマゾテンション、相当舞い上がっちゃってる…

 気持ちを落ち着けようとバスの窓へ目を向けると、草木が青々と生い茂るなだらかな坂の底を、バスとは逆方向へと滔々と流れる川が見えます。
 その川沿いをバスは快調に飛ばしています。

 速度を緩めたバスが広めな川幅を渡る橋で曲がり、橋を渡り終えると傾斜の緩い坂を登る山道に入りました。
 生い茂る木々のトンネルをしばらく走り、やがて見えてきた大きく開けた場所。

「お疲れさまでございました、到着です。お足元にお気をつけてお降りくださいませ」

 足湯で出会ったときのはんなりした雰囲気にお戻りになられた女将さま。
 旅館の正面玄関前にバスが横向きで停まり、私たちが座っている座席のすぐ後ろのドアがスルスルっとスライドしました。

 お姉さま、私、女将様の順に石畳に降り立ちます。
 目前に人影が五、六人。
 
「ようこそいらっしゃいませ!」

 お揃いの鮮やかなオレンジ色の作務衣を召された女性が3名、運転手さんと同じ青い半纏を羽織られた和装の男性2名が、お宿の出入口であろう軒下にズラリと並び、深々としたお辞儀と共にお出迎えしてくださいました。

 お出迎えのみなさまの背後にそびえる建物は、山間の温泉旅館、と言われてパッと思い浮かぶイメージそのものを具現化したような、決してホテルという単語は浮かばない、まさに旅荘。
 カオナシさんが出てくる有名なアニメ映画の舞台となったお風呂屋さんを、上から押し潰して地味めに二階建てにしたような外観。
 玄関先に広がる、木々の一本一本までよくお手入れされた閑麗な庭園とも相俟って、和風レトロテイスト全開のひなびた雰囲気。

 お辞儀からお顔を起こされたかたたちのほとんどが一瞬、えっ!?というお顔になられたのは、私の姿に気づかれたからでしょう。
 赤い首輪と前結びシャツにローライズショートパンツ姿で素肌の殆どを晒している私の姿は、この純和風な郷愁さえ漂う空間の中、著しく場違いなのですから。

 ただ私は、こんなふうに和風レトロな雰囲気の中で、梁や柱に荒縄で、世にも恥ずかしい格好で縛られてお顔を歪ませている和服女性の緊縛写真を何種類も見たことがあり、それが憧れでもあったので、人知れずときめいたりもしていました。

「ご逗留中、渡辺さまの身の回りのお世話をさせていただきます、仲居のキサラギです」

 女将さまのご紹介で、列の真ん中に立たれていたオレンジ色作務衣の女性が、しずしずとこちらへと近づいてこられました。

「キサラギと申します。どうぞよろしくお願いいたします」

 お姉さまの前で丁寧にお辞儀をされ、お顔をお上げになったそのご婦人は、女将さまよりもお年上っぽい?
 御髪をオールバックでキリリと束ねたご愛嬌のある丸顔のお顔に、人懐っこい笑みが浮かんでいます。
 いくぶんふくよかなその体躯とも相俟って母性を感じさせると言うか、頼り甲斐ありそうですごくいい人っぽい。

 そんなキサラギさまは、お姉さまから私へと視線を移され、私の形丸わかりバストを嬉しそうにじっと見つめた後、再びお姉さまへと視線を戻されました。

「それではお荷物をこちらへ。お部屋へご案内いたします」

 お姉さまから手渡されたバーキンを大事そうに抱えられたキサラギさまを先頭に、お姉さま、私、女将さまの順にお宿入口の自動ドアをくぐり広い三和土に到着、その後を残りの従業員さまたちがしずしずとつづかれました。

 三和土で靴を脱ぐお姉さまと私の背中を、みなさまが見守られています。
 これで私のお尻上の自己紹介、マゾですの、は、お出迎えに出られたみなさま全員に読まれてしまったことでしょう。


肌色休暇一日目~幕開け 11


2020年8月30日

肌色休暇一日目~幕開け 09

「あ、領収書ください。宛名は…」

 お姉さまが伝票の上に一万円札を乗せ、和服のご婦人に手渡しました。
 ご婦人はニコニコ微笑みながらお受け取りになり、正面に座っている私をまじまじと見つめてきます。
 笑みを浮かべたそのお顔の唇両端がわざとらしく不自然に上がっていることで、ご婦人が私の姿に呆れられ凌蔑されているのだとわかります。

「一万円お預かりいたします。お釣りと領収書をお持ちしますので、少々お待ちください」

 ご婦人が再びレジの方へと戻られるのを見届けてから、お姉さまがおっしゃいます。

「ほら、直子も立ってブラウス着ちゃいなさい」

 お姉さまのよく通るお声に促され、背中とお尻を店内に向けないように用心深く立ち上がります。
 鴨居に吊るしていたブラウスは、すっかり乾いていました。
 横向きのまま素早く袖を通してお姉さまのほうへと向き直ったとき、店内のすべてのかたの視線が自分に向けられていることに気づきました。

 それまでぎこちないお箸さばきでお蕎麦を啜っていた外国人さまたちのグループは男性も女性も一様にお箸を止め、こちらに背を向けている女性陣は背中ごと首を捻ってまでして、私の姿を凝視しています。
 
 学生さん風のカップルさんは、頬を寄せて私を見つつ何やらヒソヒソ内緒話。
 作務衣姿のおふたりももちろん厨房からのお料理受け渡し口のところにお立ちになり、じっと私を視ています。
 胃の腑を満たしていたお酒の火照りが瞬く間に全身に広がり、とくに両腿の付け根付近がジンジン熱を帯びていくのがわかりました。

 今やすべてのみなさまから目視できるであろうふたつの乳首突起を、わざと目立たせるみたいに無駄に胸を張り、ブラウスのボタンをおへそ近くのひとつだけ嵌めました。
 ポシェットをパイスラに掛けるとバストの谷間が凹み、なおさら勃起乳首が一目瞭然。
 ダメ押しするみたいにブラウスの裾まで引っ張ってしまう私。
 乳房が布地に押され潰れる感覚にキュンキュン疼く、ローターで蓋をされたマゾマンコ。
 
 お酒のせいでしょうか、理性が被虐願望を抑え込めません。
 快感に耐えつつ極力平然を装う私の視界正面に、和服のご婦人のニコニコ笑顔が再び近づいてきます。

「ありがとうございました。温泉、愉しんでいってくださいね」

 ご婦人からお釣りと領収書を受け取られ、お釣りのお札何枚かをチップとしてご婦人にお渡しになるお姉さま。
 いえいえ、まあまあ、お姉さまとご婦人との束の間の応酬の後、お約束通りお姉さまが私の右手を握ってくださり、手を繋いでゆっくりとお店の出口のほうへと歩き始めます。

 チラリと振り返ると、食べ終えた食器類が乱雑に並ぶお姉さまと私のテーブル。
 その中にポツンと置かれたまっ白い紙ナプキンの存在に、ドクンと跳ねる私の心臓。

 外国人さまたちのテーブル脇を通り抜けたとき、まるでお見送りくださるように私たちを視つづけていてくださったみなさまの中から、ヒュー、シーズソーフォクシー、という感嘆混じりな男性のつぶやき声が聞こえた気がしました。
 ドッという弾けたような笑い声から早口意味不明な外国語ガヤガヤの中、お店の出口までたどり着き、ありがとうございましたー、という男女混声ユニゾンのお声を背にお店の外に出ました。

 相変わらず情け容赦無くギラギラな残暑。
 冷房の効いたお店から野外の炎天下なのでうんざり加減もひとしおなのですが、今の私には大した問題ではありません。
 そんなことよりも…

「お姉さま?私のスマホ、大丈夫でしょうか?」

 お蕎麦屋さんからほどほど離れた、庇の飛び出た日陰でお姉さまが立ち止まられ、私に振り向かれたのをきっかけに、心中の不安を勢い込んで投げかけました。

「大丈夫って、何が?」

 わざとらし過ぎるお姉さまからの素っ気無いご返事。

「何がって、あの、そのまま盗られちゃったり、あ、忘れ物っていうことで交番に届けられちゃったりしたら…」

「そうね。遺失物として警察に届けられでもしたら猥褻物陳列罪で捕まっちゃうかもね。なんてたって直子の無修正女性器丸出しだもの」

 からかうようにイジワルい笑顔で私を見つめてくるお姉さま。

「なーんてね。びびった?でも、テーブルを片付けたらすぐに気がつくはずだし、すぐにお店の人が追いかけて来て返してくれるわよ」

 お姉さまはご愉快そうにそんなフォローをしてくださいますが、それが問題なんです。
 忘れ物スマホに気づいて手に取り、それを持ち上げた途端にディスプレイに浮かび上がる私の恥ずかし過ぎる待受画像。
 どなたかが手にしているあいだは、消えても何度でも呼び戻すことが出来るのです。
 あんな恥晒しな写真を、いったい何人のかたに視られてしまうのか…

「誰があたしたちのテーブルを片付けてスマホを手にするか、でその後の展開が変わりそうよね?あの店員の女の子か男の子か、それともお店の女将さんらしい、あの和服のおばさんか…第一発見者が面白がって店中のみんなに見せて回る、ってことも充分ありうるでしょうし」

 私が一番気になっていることをイジワル笑顔全開でお姉さまがつぶやかれます。
 第一発見者、私の希望としては、女の子、ご婦人、男性の順。
 そして、絶対ありえないとわかってはいるのですが、あの画像を万が一ダウンロードされてご自分のケータイなどに保存され面白半分にネットのSNSなどで公開されてしまったら…という恐怖が頭の中で渦巻いていました。

「まあしばらくこの辺で待ってみて、返しに来ないようだったらあたしから直子のスマホに電話してあげるわよ」

 お姉さまの笑顔が悪魔のよう。
 そんなことをされてしまったら恥辱画像だけではなく、私のヘンタイ過ぎる音声までお蕎麦屋さん店内に鳴り響いてしまいます。

「ま、仕方ないわよね。これは直子があたしとの約束を破った、お仕置きなのだから」

 お姉さまがご自分のスマホ画面にわざとらしく視線を落とされ、私の心臓がドキンッ!
 すぐにお顔を上げられニヤッとされたかと思ったら、あっ!とお声を上げられました。
 私の肩越し、遠くのほうの何かを見つめられています。
 私もつられて振り返ります。

 先ほどのお蕎麦屋さんの引き戸の前で、作務衣姿のどなたかがキョロキョロ周辺を見渡されています。
 その右手には、遠目で小さいながら見覚えのある私のスマホ。
 目を凝らすと作務衣姿のかたは、お料理を運んでくださった男性のようでした。

「ほら、言った通りでしょう?さっきの店員さんよ。さっさと返してもらってきなさい」

 お姉さまがまだ目を凝らしている私の背を軽く小突きました、
 小突かれるのと同時に、私は作務衣姿の男性のほうへと小走りに駆け出していました。

 男性への距離は10数メートルくらい。
 右手に私のスマホをお持ちになり、左手は手ぶら。
 周囲をキョロキョロ見回しつつ、時たま食い入るように私のスマホ画面を見つめています。
 ああん、完璧に視られちゃってる…

「ごめんなさい、私さっき、お店のテーブルにケータイ、忘れちゃったみたいで…」

 男性まであと数メートルと近づいたところで、息せき切ってお声掛けしました。
 まだ駆け寄っている最中なので、薄い布地の下のおっぱいがプルプル上下しています。

「あっ!」

 男性の視線が私へと向き、驚かれたようなご表情で私を見つめ、そして再び視線はスマホ画面へ。
 近づく私の胸はプルンプルン弾み、ブラウスの前立てや裾も風で割れて、おへそも下腹部も太股の付け根まで肌色丸出しのはずです。
 
 男性は何度かその動作をくりかえされていました。
 見比べていらっしゃるんです。
 生身の私とスマホ待受画面の私の画像とを。
 その画像の私は、覆う衣類一枚無い剥き出しのおっぱいと女性器をこれみよがしに晒し、おまけにご丁寧に自ら肉襞まで押し広げて膣内まで視せてしまっているんです…

「あの、わざわざお店の外まで探しに出てくださったのですね?ありがとうございます。お手数をおかけしてしまい申し訳ございませんっ!」

 今すぐどこかへ逃げ去りたいような恥ずかしさと被虐を感じつつ、なんとか作務衣の男性のすぐ傍らまで近づきペコリと頭を下げ、早口でお礼を述べてから右手をそっと伸ばしました。
 私の腕の動きにつられるように、スマホを握っている男性の右手もそろそろと私の差し出した手に近づいてきたのですが、あと十数センチというところでピタッと止まり、ススっと背中側に引っ込んでしまいました。

「えっ!?」

 思わず声が出ると同時に、初めて男性のお顔をまっすぐに見ました。
 街でよく見かける眉にかかるくらいのメンズマッシュ、中肉中背、全体的に小さめ地味めな目鼻立ち。
 一回目線を切ったらもう忘れてしまいそうな、印象薄いよくあるお顔立ち。
 ただ、その小さめな瞳だけが好奇心を抑えきれず、ランランと輝いていることだけはわかりました。

「ねえ、君ってエーブイ女優の人なの?」

 お店でのマニュアル的なご対応とは打って変わって、少し上ずったずいぶん馴れ馴れしい口調で尋ねられました。

「えっ!?ち、ちがいますっ!」

 ご質問があまりにも想定外過ぎて、思わず大きな声で即座に否定してしまいます。
 なんだか脱力してしまい伸ばしていた右腕がだらんと垂れ下がってから、問われたお言葉の意味を反芻し、男性の思考の身勝手さを垣間見た気がして、性的な意味ではなく生理的な拒否感で全身がブルッと粟立ちました。

「だって、そんな首輪なんかしてそんな格好で、こっちの写真なんて、全部見せちゃってるじゃん」

 一歩後ずさった私にお構いなしで待受画像を私に向けてくる男性。
 お言葉羞恥責め、と捉えることも出来るシチュエーションですが、男性の発しているオーラが性的に生々しいというか、生臭過ぎるんです。

 馴れ馴れしいを通り越して図々しさまで感じさせる、軽薄にくだけきった雰囲気。
 繁華街を歩いていると唐突に話しかけてくる種類の男性とも共通する口調、本心は別のところにあるのであろう胡散臭い薄笑み。
 被虐にも傾きかけていた私の中のマゾメーターは一気に、不安感へと揺り戻されました。

「あ、それともあの怖そうな女の人に脅されてるとか?何か弱み握られたとか、パワハラのイジメとか」

 男性が私の肩越し方向を、横柄に顎だけしゃくって指し示します。
 つられて振り返ると、お姉さまはさっきと同じ庇の下でこちらを向き、遠くから私を見守ってくださっているようです。
 右手でビデオカメラを構えてレンズ越しに、ではいらっしゃいますが。

「そ、そんなことありませんっ!お姉さま、あ、いえ、あそこにいるかたは、私の一番大切なかたで、脅したりパワハラするようなかたではありませんっ!」

 見守ってくださっているお姉さまのお姿を確認したことで、俄然勇気が湧いてきました。
 一刻も早くスマホを取り戻して、お姉さまのお傍に戻らなければ。

「そ、そんなことより、早く私のスマホ、返してくださいっ!」

「ふうん。AVでもなくて無理矢理誰かにやらされているんでもないんだったら、なんでそんなエロい格好して、わざわざ人目の多い観光地をウロウロしているんだよっ?」

 私の強気な勢いが癇に障ったのか、もはやフレンドリーな取り繕いも放棄して、野卑な性的好奇心丸出しのぞんざいな口調。
 これほど好色剥き出しでギラついている成人男性のお顔を間近で見るのは、生まれて初めてです。

 そしてやはり私は、男性ではダメだ、と今更ながらに再確認します。
 言葉の端々に滲む高圧的な根拠の無い俺様感、女性とは明らかに違う獣じみた体臭、肉体的にねじ伏せればこっちのもの的な威圧感、…
 その粗野な振舞いの前では、性的興奮や被虐願望など水中に没したワタアメみたいに萎び、恐怖と嫌悪しか感じられません。

「そ、それは…」

 どうやってスマホを取り返そうか、と頭をフル回転させながら、男性のご質問にもお答えしようと口を開きました。

「それは私が、私がマゾだからです…」

「えっ!?」

 自分でも思いもよらなかった答えがごく自然に自分の口から飛び出してしまい、言い終わえた後、心の中で、えっ!?という驚愕を男性とユニゾンしてしまいました。
 自分で言ってしまった言葉で、マゾの血が全身にジワジワぶり返し始めます。

 男性も一瞬、虚を突かれたように固まっていましたが、やがて言葉の意味を理解されたのでしょう、ますます下卑た笑みを浮かべてズイっと私のほうへ一歩、詰めてきました。

「マゾって、やっぱヘンタイ女じゃん。そんなエロい格好やこんなスケベな写真視られて悦んでるってことだよな?マゾってイジメられるのが嬉しいんだろ?」

 その粗暴な振舞いと口調にマゾの血は再びスーッと引き、滾るのは嫌悪感ばかり。

「そんなことはあなたには関係ないことです。早くケータイを返してください。返さないのならお店に入って店長さんとか偉い人に、あなたの失礼な振舞いを言いつけますっ!」

 勇気を振り絞って、頭に浮かんでいた脅し文句を、ありったけの怒りを込めて口にしました。
 男性に言葉を投げつけている最中、フッとやよい先生、中学高校時代私が通っていたバレエ教室の先生で私のSM初体験のお相手の女性、のお顔が脳裏を横切りました。

 男性はいまだに語気荒い私の反撃に少し怯んだようで、いたぶりを愉しんでいたのであろう、にやけた視線が気弱そうにスッと外れました。

「ま、まあそんなにマジになるなよ、ちょっとからかっただけじゃん。わかったから、ちゃんとケータイは返すから」

 男性がいきなり卑屈なお顔つきになり、後ろ手で隠していた私のスマホをおずおずと差し出してきます。
 せっかく暗くなっていたのに動かしたせいでディスプレイに浮き上がる私の裸身。

 受け取ろうと私が手を伸ばすと、再びスイっと腕を引っ込める男性。
 あーもうっ!なんなの?この人…

「ケータイは返してやるからさ、その代わりそのヤラシイおっぱい、触らしてくんない?服の上からでいいからさ。ノーブラ乳首、エロ過ぎ…」
「マゾだったら、そんなのむしろご褒美じゃん?誰でもいいから男にいじられたくて、ヤラれたくてウズウズしてるマゾ女なんだろっ?」

 ドスケベオーラ全開で迫りくる男性の汗臭い体臭。
 瞬時に跳ね上がる憎悪、そしてなぜだか恐怖よりも、必死な男性に対する呆れと侮蔑、そして憐憫。

 そのときでした。
 より縮まってしまった私と男性との物理的距離の、その僅かな空間に響き渡るエロさ全開の淫声。

「これが直子のマゾマンコです…奥の奥まで、どうぞ、じっくり、視てください…」

 男性と私、同時に固まりました。
 私の中のマゾっ気、被虐欲が瞬時に全身を駆け巡ります。

 おそらく着信と同時にスマホが振動しているのでしょう、後ろ手に隠していた私のスマホを怖いものでも見るように恐る恐るご自分の目の前へと持ってくる男性。
 無情にリピートする私のマゾ宣言。

「これが直子のマゾマンコです…奥の奥まで、どうぞ、じっくり、視てください…」

 男性にはくりかえし聞こえてくる着信音が告げる文言の意味が、掴み切れていないご様子。
 唖然とされたご表情で、私の目前で呆然とスマホ画面を凝視される男性。

「あんっ、ダメぇ!いやんっ!」

 先に我に返ったのは私のほうでした。
 無防備に握られていた男性の右手からスマホを文字通りの意味でひったくり、あわてて着信ボタンを押して自分の淫声を遮りました。

「あっ!てめえ…」

 スマホをひったくられてやっと我に返られた男性。
 私のほうへともうニ歩三歩詰め寄ろうとされたときには、私はお姉さまへと一目散に駆け出していました。

「おいっ、ヘンタイマゾ女っ、それじゃ話が違うだろうがっ!」

 男性の遠吠えが小さく届く頃には、私はすっかり頼もしいお姉さまの傍ら。
 今にもこちらへ向けて駆け出して来られそうな勢いでしたが、お姉さまにずっとビデオのレンズを向けられているのに気がつかれたのでしょう、最後に精一杯虚勢を張るように私たちを睨みつけた後、すごすごとお蕎麦屋さんの店内へと戻っていかれました。

「なんだか揉めていたみたいだったからさ、助け舟のつもりで電話してみたのだけれど」

 お姉さまとやっと再び手を繋いで庇を出て、旅館さまとのお約束場所だという足湯の方向へ向かっています。

「ありがとうございます。あれでなんとか私のスマホ、取り返せました」
「で、なんで揉めていたの?」
「それが、あの人がすぐにスマホを返してくださらなくて、AV女優か?なんでそんなエロい格好しているんだ?なんて聞かれて…」
「ふーん。それで直子は何て答えたの?]
「それが…自分でもそんなお答えするつもりはぜんぜん無かったのになぜだか、私はマゾだから、って…」
「あらら、真っ正直に教えちゃったんだ?」

 お姉さまがこれ以上ご愉快なことはない、というくらいの嬉しそうなご表情で私の顔を覗き込んでこられます。

「それで、あの男の子は何て言ってきたの?」
「あ、はい…マゾのヘンタイ女だったら、イジメられるのはご褒美だろう?おっぱいを触らせればスマホを返してやる、って…」
「ふふん。あの年頃の男ってそうよね。画像と生身の直子で下半身もギンギンだったろうし。でも男性苦手な直子にとっては、すごく怖かったんじゃない?」
「は、はい…それでどうしようかと迷っているときにお姉さまからの着信が来て」
「それであの男性ともどもフリーズしちゃって、一瞬早く隙を見つけた私が奪い返すことが出来たんです。これもお姉さまのおかげです、ありがとうございます」
 
 繋いでいる右手を、感謝を込めてギュッと握り返す私。
 お姉さまも私の顔を覗き込み、ニコニコ笑顔をお返してくださいます。

「なるほどね。やっぱりあの店員はあたしの読み通りのヘタレだったんだ。おっぱい触らせろ、ってガキンチョか。あたしは、一発ヤらせろ、くらい言われているんじゃないかって、ちょっとハラハラ心配していたのに」
 
 ご本心なのか、ただのご冗談としてのからかいなのか、お姉さまの少しだけ火照ったお顔からは読み取れませんでした。

「でも、今回のことではっきりわかりました。やっぱり私は、男性とは性的なあれこれは愉しめないんだな、って」
「これまでの色んなアソビで、心もからだもちゃんと気持ち良くなれたのは、全部お姉さまのおかけだったんだな、って」

「ふーん、あたしのお仕置きがちゃんと効いたみたいね」

 照れたようなお困り顔になられたお姉さま。
 繋いでいる手を握る力を、突然あからさまにお緩めになりました。
 私は、離しません、という想いを込めて、いっそう力を込めて握り締めました。


肌色休暇一日目~幕開け 10


2020年8月16日

肌色休暇一日目~幕開け 08

「あ、はい…ごめんなさい…」

 座ってもまだ肩から提げていたポシェットを開き、おどおどとスマホを取り出します。
 手に持った途端に明るく浮かび上がる、自分のオールヌードくぱぁ画像。
 おずおずとテーブルの上に表向きで置くと、しばらく公然に晒されてからスッと暗闇に消えてくれました。

 それを見届けてから、今度はパイスラのポシェットを外し、ひとつだけ留めていたブラウスのボタンも外します。
 こんなスケスケの役立たずなブラウスでも、こんな場所で自ら脱ぐ、という行為には羞恥と躊躇が生まれます。
 これを脱いでしまったら、トップとボトムだけの下着姿も同然なのですから。

 それでもお姉さまからのご命令、意を決して両袖から汗ばんだブラウスの袖を抜きました。
 脱いだブラウスはお姉さまが引き取ってくださり、空席となっているお隣の椅子の背もたれに掛けてくださいました。

「こうしておけば、出る頃には乾くでしょ。さてと、直子は何が食べたい?」

 お店には、軽やかなピアノを中心にしたジャズっぽい音楽が流れています。
 でも、それを掻き消すみたいに、きっと随分年季が入っているのでしょう、店内二箇所に設えられた大きめなエアコンから発せられるブーンという低音もずっと聞こえています。

 私にも読めるようにと横向きでメニューを開いてくださるお姉さま。
 綺麗なカラー写真付きで美味しそうなお料理が満載です。

 美味しそうではあるのですが、今の私はメニューに集中することが出来ません。
 だってブラウスを脱いでしまった私は、素肌の殆どの部分を外気に晒してしまっているのですから。
 それもプライベートなお部屋内ではなく、どなたでもお出入り自由な温泉地のお蕎麦屋さん店内で。

 現に今も新しいお客様、ご年配のおじさまと若い女性のカップルさんがお見えになり、先客のおふたり連れのお隣のお席に着かれました。
 おじさまが私の姿に目を惹かれたようで、たぶん首輪だと思いますが、女性に何やら耳打ちをされ、背中を向けていた形の女性も首だけひねって私を視てきます。

 私は身を固くしてメニューに集中しているフリでうつむきます。
 でもやっぱり気になって、そちらを上目でチラチラ窺ってしまいます。

 今の私は、街中のお蕎麦屋さんにひとりだけキワドイ隙だらけの水着姿で座っているようなもの。
 これがたとえば海水浴場の近く、とかならば、みなさま開放的でさして目立たないのでしょうけれど、ここでは明らかに日常の中の異物。
 
 なんでここでその格好?なんで女連れ?なんでノーブラ?なんで首輪?
 そんな疑問が湧くのは当然です。
 私のマゾ性が理性を、ジワジワ隅っこへと追い詰め始めています。

「やだ、直子にぴったりのお蕎麦があるじゃない。ちくびそば、だって」

 メニューの写真を指さし、はしゃいだお声を上げられたお姉さま。

「えっ?」

 そのお声でフッと理性が戻る私。
 そんなお蕎麦あるの?お姉さまのしなやかな指が置かれているメニュー写真を確認します。
 本当だ、乳首そば(かけ・せいろ)って書いてある…あれ?でもこれって…

「あの、お姉さま、これ、首じゃなくて、きのこっていう字じゃないですか?」

「あ、本当だ。茸っていう字だね。じゃあ何て読むんだろう?ちちだけそば?」

「下にローマ字で小さく書いてあります。Chitake-Sobaって」

「ふーん、ちたけそばね。初めて聞くけど面白いんじゃない?字面が気に入っちゃった。注文お願いしまーすっ!」

 お言葉の後半でお姉さまはまっすぐ高く右手をお挙げになり、お店のかたをお呼びになりました。

「はーいっ!」

 先ほどの作務衣の女の子がいそいそと近づいてこられました。
 あらためて見ると、小柄で目がパッチリ大きくて小さいお顔にひっつめポニーテール、どこかのアイドルグループの一員と言われても信じられるくらい可愛らしいかた。

「この乳茸そばっていうのは、たぶん乳茸っていう茸が入っているのよね?どんな茸なの?」

 お姉さまがメニューを指さしつつ、お尋ねになります。

「あ、はい。具材としても入っていますが、よいお出汁が取れるんです、この茸」

 私の胸にチラチラ視線を飛ばしつつ、お答えになる女の子。

「あたし最初、乳首そばって読んじゃって、ギョッとしちゃった」

「ああ、間違われるかた、たまにいますよ。ご年配の男性とか、嬉しそうにお下品なご冗談をおっしゃるかたも」
「乳茸っていうのはこの辺で夏から秋にかけて採れる茸で、切るとミルクみたいな白い液が出るのでこの名前になったそうです。香りが凄くいいんですよ」

 お姉さまと傍らに立たれた女の子、フレンドリーに会話されています。
 女の子はお愛想よくお姉さまのお相手をされながらも、視線が頻繁に私へ。
 布地を突き上げているふたつの突起がどうしても気になるみたい。
 少しつま先立ちになって、座っている私の剥き出しなお腹の更に奥を覗き込むような仕草も。

「なるほどね。それじゃあこの乳茸そばをせいろで二人分と…」

 お姉さまがご注文を告げつつ、テーブルに置いたご自分のスマホを手に取られます。
 ドキンと跳ねる私の心臓。
 私のスマホは女の子からも、充分に画面を目視出来る位置に置いてあります。

「あと、湯葉刺しと卵焼きをひとつづつ、それと、この地酒の冷酒の2合ボトル1本ね。グラスはふたつ」

 よどみなくご注文を告げられた後、ついでという感じでお手元のスマホをポンとタップされました。

「んっ!」

 吐息を洩らしたのは私。
 股間のローターが緩く振動し始めたのです。

「お酒はすぐにお持ちしていいですか?」

 にわかに挙動が不審になった私を興味津々な瞳で見つめつつの女の子のお尋ね。

「うん。食前に乾杯したいからね。よーく冷えたやつ持ってきて。いいわよね、直子?」

 直子?という呼びかけと一緒に、スマホ画面上のお姉さまの指がスッとスワイプしました。

「あんっ、あ、はいっ、はいぃ…」

 ローターの震えが一段と激しくなり、股間からブーンという音さえ聞こえてそう。
 椅子に座っている姿勢なのでデニム越しの膣穴は椅子の薄いお座布団に密着しています。
 ローターのモーターがその下の民芸風な木製の椅子もろとも震わせているような感じ。
 エアコンの音にうまく紛れてくれていれば良いのですが…

「それでは、ご注文は、乳茸そばをせいろで二人前、単品で湯葉刺しと卵焼き、冷酒二合を食前に、でよろしいですね?」

 テーブルに前屈みになって快感に耐えている私の頭上を、女の子の涼やかなお声が通り過ぎていきます。

「あ、あと氷入りのお水を一杯、お酒と一緒に持ってきてくれる?この子、日本酒弱いから、チェイサーにしたいの」

「はい。かしこまりました。では少々お待ちください」

 女の子がテーブルから離れたとき、やっとローターが止まりました。
 ハァハァ息を切らし、うらめしげにお姉さまを見上げる私。

「お姉さまぁ…あんまりイジメないでください…それでなくてもこんな格好で恥ずかしいのに…」

「あら、何言ってるの?あの可愛い従業員さんが物怖じしないでじっくり直子のこと視てくれるから、あたしもちょっとサービスしてあげただけじゃない」
「直子だって嬉しかったでしょ?あの子の目の前でマゾマンコが震える音、聞いてもらって」

 ヒソヒソ声で、私の抗議を一蹴されるお姉さま。
 私がまだお姉さまをうらめしげに見つめていると、その視界に女の子が再びツカツカと近づいてこられました。

「あの、お客さま?そのお召し物、汗で湿っているのなら、このハンガーをお使いください。高いところに干したほうが乾くのも早いと思いますよ?」

 空席な椅子の背もたれに掛けてあったブラウスを指差し、針金製のハンガーをお姉さまに差し出してくる女の子。

「あら、気が利くのね。遠慮なく使わせていただくわ」

「はい。その壁の上の鴨居に掛けると、ちょうどエアコンの風が当たってイイ感じかな、と」

 私が背にしている壁の上のほうを指さされた女の子。
 相変わらず私のバストをまじまじと見つめてきます。

「そうね。ほら直子、あなたが掛けなさい」

 スケスケブラウスをハンガーに掛け直して一番上のボタンだけひとつ留め、対面の私に手渡そうと右腕を伸ばされるお姉さま。
 受け取るために私も手を伸ばしたとき、いらっしゃいませ~、のご挨拶とともにガヤガヤと数人の方々がご来店。
 今度は欧米系らしき外国人さん4人連れ、男性2女性2のグループさんでした。

 つづけざまに大学生風カップルさんが一組。
 ふと気づくとあまり広くない店内がほぼ満席、私たちの隣の四人掛けのお席以外、全テーブルが埋まっていました。

 忙しくなってきたのに私たちのテーブルからまだ離れない女の子。
 彼女はたぶん、私を立たせたくてハンガーを持ってきてくださったのだと思います。
 私の全身、ブラウスを脱いだらどういう姿なのかを確認したくて。

 ブラウスを鴨居に掛けるために立ち上がるとしても、店内のみなさまに背中を向けてしまうことは絶対に避けなければなりません。
 私のお尻の少し上には、自分の性癖を明記した恥ずかしい日焼け文字が記されているのですから。
 素肌が剥き出しとなっている今、どんなに素早く済ませたとしても、カタカナひらがなの5文字はいともたやすく読めてしまうことでしょう。

「ほら、何をもたもたしているの?さっさと掛けちゃいなさいよ」

 すべてを察していらっしゃるであろうお姉さまが、ご愉快そうに煽ってこられます。
 私は観念して、ハンガー片手に立ち上がります。

 幸いなことに私たちのテーブルはお店の隅、私は壁を背にして座っているので、立ち上がっても横向きでいれば、その背中側も直角を作ってつづく壁面でした。
 お尻をお店の内部側に向けさえしなければ、どなたにもイタズラ書きを読まれる心配は無い位置です。

 ただし、立ち上がるとテーブルは私の腿の位置、剥き出しのお腹から狭すぎるデニム地パンツ下まで、半裸の肌色のほとんどが丸出しとなりました。
 横向きになると、尖った乳首の突起も余計に目立つことでしょう。
 私が立ち上がった途端、お店にいらっしゃるすべてのお客さま、従業員さまの視線が私のほうへと集中するのを感じました。

 晒し者、という言葉が頭の中を渦巻く中、素早くハンガーを鴨居に掛け、素早く着席しました。
 腰を下ろす途中、今しがた見えられた外国人男性のおひとりと目が合ってしまい、そのかたは、口笛を吹くように唇をすぼめられた後、パチンとウインクをくださいました。

 作務衣の女の子もいつの間にかいなくなられて、お姉さまはうつむいてご自分のスマホを何やらいじられています。
 いつまたローターがオンになるか、私のスマホが着信してしまうか、ドキドキソワソワしながら、ふと今しがた鴨居に掛けたスケスケブラウスを見上げました。

 このお店の民芸調渋めインテリアの中でひどく不釣り合いな、ほんのり白いスケスケブラウス。
 お店内のどなたの視界にも入る高さに、これ見よがしなセクシーアンドガーリーな異物。
 それはまるで、こんな破廉恥な服を着ていた女が何食わぬ顔してここにいますよ、と知らしめる目印のようにも思えます。
 お店中のみなさまから、ヘンタイ女と蔑まれる妄想に没入しかけたとき、近づいてくる人影に気がつきました。

「お待たせしました。こちら、冷酒となります」

 えっ?男性?

 お声のしたほうを見ると、先ほどの女の子とお揃いの作務衣を着たお若い男性が、お酒の瓶とコップを乗せたお盆を手に、お姉さまの横にたたずんでいました。

「ありがとう。お水はこの子の前に置いてあげて」

 お姉さまのご指示で、お盆の上のものを次々にテーブルにお置きになる男性。
 その視線がずーっと私に注がれています。

 最初こそ驚いたようなお顔ですぐ視線を逸らされたのですが、それからチラチラと盗み見るように私の首輪、胸やお腹、下腹部へと散らばり、お盆が空になる頃には好奇心丸出しの好色なお顔で、バストの突起や太腿の付け根を凝視してきました。

「あ、それからこれはお通しの季節の山菜で、こちらが湯葉刺しになります。わさび醤油がお薦めですが、お好みでこちらのポン酢、ゴマダレもお使いください」

 すべてをテーブルに並び終え、名残惜しそうに離れていく男性。
 厨房に向かうあいだも何度もこちらを振り返っていました。

「凄い勢いで直子のからだ、ガン見していたわね、今の子」

 お姉さまがお酒をグラスに注いでくださりつつ、ご愉快そうにおっしゃいました。

「見たところウブそうだから大学生のバイトくんってとこかしら。直子のその格好は刺激が強すぎたみたいね。困惑と嬉しさがごちゃまぜになって、どうしたらいいのかわからない、って顔してた」
「必死にお澄まし顔していたけれど直子も気づいていたのでしょう?どうだった?あれだけガン見されて」

「あ、はい、すごく、恥ずかしかった、です」

「でも気持ち良かった?」

「あ、はい…」

「直子が苦手な男性でも?」

「はい…」

 男性とわかった瞬間は少し怯みましたが、チラチラ視られるたびにゾクゾク疼き、好色丸出しなお顔で凝視されると、蓋をされたマゾマンコがキュンキュンと咽び泣くのがわかりました。

「直子今、ちょっとヤバいくらいマゾ顔になっているわよ」

 からかうようにおっしゃってからじっと私を見つめた後、お姉さまが気を取り直すようにつづけられました。

「ま、それはそれとして、あたしたちのバカンスの初日に乾杯しましょう。まずは温泉で直子がたくさん辱められますように、カンパーイ!」

 身も蓋もないお姉さまの音頭で、グラスをチンと合わせます。
 よく冷えた冷酒はフルーティで、冷たい液体が心地よく喉を滑っていきます。
 お店に入ってから緊張の連続で、思いの外喉が乾いていたみたい。

「んーっ、平日の真昼間から温泉地のお蕎麦屋さんで冷や酒なんて、なんだか文豪にでもなったみたい」

 お姉さまの可愛らしいご感想。
 私もお酒が胃の腑に落ちた途端、からだも心もなんだかフワッと軽くなった感じ。
 それにつられるように、ジワッと食欲が高まりました。

「直子は日本酒だとすぐに酔っ払っちゃうんだから、ちゃんと水も飲んでセーブしなさい」
「こんな時間から理性失くされちゃったら、いくらあたしでも面倒見きれないからね」

 お姉さまから釘を刺され、氷の浮いたお水をゴクリと一口くちにしたとき、メインディッシュの乳茸そばが運ばれてきました。
 
 運んで来られたのは先ほどの作務衣の男性。
 再び舐めるように私の全身を視姦しつつ、お盆からお料理をテーブルに置いてくださいます。
 
 お酒のせいかさっきより余裕の生まれた私は、視線を意識してときどきわざと胸を両手で庇ったりして、恥じらいながらも視られるがまま。
 心の中では、ちゃんと視て、イヤらしいでしょ?もっとよく視て、と懇願しています。
 マゾマンコの潤みはとうとう決壊して、腿から垂れたおツユが一筋、ふくらはぎへと伝い滑るのがわかりました。

「へー、本当にいい香り。これは食欲そそるわね。いただきましょう」

 お姉さまのお言葉で私にしては珍しく、性欲から食欲モードへとあっさり切り替わりました。
 それだけお腹が空いていたのかな。
 確かにテーブル上から、まつたけにも似た良い香りが漂っていました。

「いただきます!」

 お姉さまと差し向かいで手を合わせてから、せいろのお蕎麦に箸を伸ばします。
 ズルズルズル…美味しい!

 茸独特のコクのあるお出汁が効いたつけ汁には、乳茸と思われる茸とお茄子のザク切りが浮かび、これらもおツユをほどよく吸って、噛みしめるほどに滋味が広がります。
 冷たいお蕎麦に温かいつけ汁というコンビも相性良く、スルスルと喉を通っていきます。

 お出汁の効いた卵焼きとわさびの効いた湯葉刺しを箸休めにして、ふたり無言で食べ進めました。
 時折チビッと口をつけるお酒の冷たさも格別で、どんどんお箸が進んでしまいます。
 
 ただ、何気なく視線を上げたとき、厨房への出入り口のところで作務衣の女の子と男性がこちらを見ながら、何やらヒソヒソとお話されていたのが気にはなりましたが。

「ハァー美味しかった。おツユが美味しいからせいろとお酒追加、って言いたいところだけれど、やめておきましょう。温泉旅館のお夕食って量が多いらしいし」
「それにお蕎麦屋さんでのお酒は長居せずにほろ酔い腹八分が粋、って言うしね」

 お姉さまがボトルに少し残っていたお酒をご自分のグラスに注ぎ、グイッと飲み干されます。
 私はすでに、一杯目のお酒とチェイサーの氷水を両方、全部飲み干していました。
 少しだけ胃の腑がポカポカしています。

「それじゃあそろそろ、待ち合わせ場所に行きましょうか。外は暑いだろうけれど、足湯も気になるし」

 お姉さまが傍らの伝票をお手に取り、お背中ごと曲げて店内を見渡します。
 私もつられて見渡すと、店内には外国人さんの4人連れと最後に入ってきた大学生風カップルさんしか残っていませんでした。

「さすがに昼間っからお酒飲んでまったりする人は少ないのね。まあ、みんなもこれから心待ちにしていた温泉だろうし」

 お独り言ぽくおっしゃったお姉さまの右手がスクっと挙がります。

「お勘定お願いしまーす」

「はーい、ただいま」

 どなたなのか、弾んだ女性のお声がやまびこみたいに返ってきました。

「直子はブラウス着直して、お勘定したら手を繋いで一緒に出ましょう」

 嬉しいことをおっしゃってくださった後、ニッと笑って手招きされ、顔を近づけた私の右耳に唇を近づけられます。

「直子はわざとここに、このままスマホを置き忘れなさい。これは命令よ」

 卓上の白い紙ナプキンを一枚お取りになり、私のすぐ前に置きっぱなしだったスマホ上にそっと置いたお姉さま。
 私のスマホがすっぽり隠されてしまいました。
 
 ずっとレジ前に陣取っていた和服姿のご中年のご婦人が私たちのテーブルへと、ゆっくり近づいてこられました。


肌色休暇一日目~幕開け 09


2020年8月10日

肌色休暇一日目~幕開け 07

 お姉さまが私の傍らまで来てくださり、メイクを直してくださいました。
 向かい合って髪を軽くブラッシングしてくださってから、お姉さまのメイクアップパレットを使って。

 お姉さまとおそろいのファンデ、チーク、シャドウ、リップ…
 肌をくすぐるこそばゆいブラシの感触は、さっき私が味わった精神的高揚感に付け足された、気の利いたデザートみたい。
 しばしうっとり、至福の時間が流れました。

「よしっ!こんなもんかな。直子、立って」

 メイクキットを手早く片付けつつ、お姉さまも立ち上がられます。

「そこじゃちょっと窮屈ね。こっちのドアのところにもたれるみたいに立ってみて」

 個室の出入り口ドアのほうを指さされるお姉さま。
 テーブルの上から私のスマホを拾い上げられました。

「そう、そこでいいわ。こっち向いて笑って、うん、そんな感じ。もう少し胸張って」
「おーけー、今度は後ろ向いて。うん、ちょっとお尻突き出す感じで、そうそう、顔だけこっちに向けてみて」

 お姉さまのご指示の下、たてつづけなシャッター音が個室内に響き、即席の撮影会はすぐに終わりました。

「ほら、今の直子はこんな感じ。凄くキュートよね?夏の妖精さん、みたい」

 スマホのディスプレイをこちら側に向けてくださり、たった今撮影したばかりの写真を私にも見せてくださいます。

 メイクを直していただいたので、顔の各パーツが色味を帯びて、いくぶん艶やかになっています。
 そんな顔にミスマッチな、くたびれた感じに年季の入ったエンジ色の無骨な首輪。
 その下の胸周りを、乳房の形通りにぴったり包み込む、柔らかそうな薄くて白い布地。
 そのふたつの膨らみの先端は、ひと目で分かるくらい露骨に生々しく突き出ています。

 下乳の谷間から少し隙間を空けて、可愛らしく垂れ下がる真っ白いリボン結び。
 その下はおへそを経て恥丘の膨らみ始めまで、薄い小麦色の剥き出しなお腹。
 下腹部を狭く覆うデニム地もすぐに途切れ、再び小麦色の太腿と生足。

 背中を向けた写真では、上半身は普通に白いチビTを着ている感じですが、肩甲骨下からお尻の割れ始めまで背中丸出し。
 おまけに尾骶骨少し上あたりにハッキリ読める、マゾですの、の日焼け跡イタズラ書き。
 私、本当にこんな大胆な姿で、温泉街を観光することになるのでしょうか。

「ね?なかなかそそるコーデでしょう?小悪魔的にエロティック、ううんコケティッシュっていうほうが、ぽいわよね。電車降りたら注目の的、間違いなしだわ」

 スマホの画面と生身の私を交互に見比べながら、ご愉快そうなお姉さま。
 そんなお姉さまの視線が生身の私のバストに向いたまま射るように数秒見つめた後、ふっとお顔が曇りました。

「ただ、やっぱりそのおっぱいを白昼人目に晒すのは、ちょっと刺激的すぎるかな…」

 おっしゃりながらお姉さまの右手が伸びてきて、クッキリ浮き出ている左の乳首を布地ごと、ギュッと摘まれました。

「あぁんっ!」

「直子のおっぱいって、そんなに大きくはないくせに、形そのものがイヤらしいのよね」
「ぽってり丸くて重そうなのに乳首は上向きで大きくて、思わずこんなふうに手を伸ばして触りたくなっちゃうワイセツおっぱい」
「そんなふうに形丸わかりな布地で無駄に包まれていると余計に中身が拝みたくなるから、スケベ男に問答無用で襲われちゃうかも」

 お姉さまが右手のひらで私の左おっぱいを下から包み込み、ときに優しくときに乱暴に、ニギニギともてあそんてくださっています。

「あん、あんっ、あふんっ、あふぅっ…」

「だから特別に、上に一枚羽織ることを許してあげる。余計なトラブルを招くとメンドクサイもの」

 お姉さまがバッグから再び小さなショップ袋を取り出されました。
 中から出てきたのは、これまた小さく折りたたまれた衣服らしき布片。

 その布片を広げてみると、一応は半袖パフスリーブのシャツブラウスの形。
 ただし透け感全開、ところどころに小さなレース編みの白いお花模様が散らばっている以外、まったく肌色を隠すつもりのない見事にシースルーなヘナヘナブラウス。

 お姉さまに促され羽織ってみます。
 軽くて薄くて着心地は満点、でもやっぱり何の役にも立っていません。

 前を掻き合わせても肝心なところにお花模様は無く、薄い生地が密着して陰影を作るので、乳首の突起はかえって目立っちゃいそう。
 後ろはお尻の半分くらいまで丈が来てくれてはいますが、果たしてこの透け感でイタズラ書きが読めなくなるでしょうか。

「うん。いい感じにエレガントさが加わったわ。それならワイセツおっぱいもパッと見じゃ目立たないはず」

 お姉さまはそうおっしゃいますが、私はまったく賛成できません。
 だって私が少し視線を下げたら、そこにふたつの突起が二枚の薄い布地を突き上げてイヤラシく存在を主張しているのですから。
 かえってエロさが増している気がします。

「ボタンはおヘソのとこらへんのひとつだけ、留めていいわよ」
「駅降りたらしばらくその格好で様子を見ましょう。厄介そうな輩が見当たらなかったら、脱いで思う存分、ワイセツおっぱいを周囲に見せびらかせばいいわ」

 からかうようにおっしゃったお姉さまが再びバッグをごそごそされ、何かを私に差し出してきました。

「あと、ついでにこれも挿れておきなさい。ただ観光するだけじゃつまらないのでしょ?直子は」

 お姉さまから手渡されたのは、細長い円柱が少し反り返るようにカーブした、シリコンコーティングされた物体。
 片手で緩く握るのにちょうどいいくらいの太さ、軟らかさで、握った手のひらから1~2センチくらい飛び出るほどの長さ。
 私だからなのかもしれませんが、その形状と手触りで、手渡された瞬間に物体の用途がわかってしまいました。

「いいでしょ?ミサとリンコが直子の膣の深さと具合を計測した上で、直子のマゾマンコ専用に開発してくれたローターよ」
「それでこれ、あたしのスマホからコントロール出来るんだって。ほら、早く挿れて」

 お姉さまに急かされてショートパンツの前ボタンを外し、少しずり下げます。
 露わになったマゾマンコに円柱の丸まった先っちょをあてがい、慎重に内部へと侵入させます。
 充分に濡れそぼっている膣穴からヌルっとしたおツユが滲み出し、円柱は難なく私の中に収まりました。

「どう?ジャストフィットでしょう?」

 デニムパンツをずり上げる私に向けて、笑いかけてくるお姉さま。
 ボタンをはめ直すのを待ちかねていたかのように、ご自分のスマホをタップされました。

「あうっ!いやんっ!」

 お姉さまのお言葉通り、私の膣穴粘膜に満遍なく密着したローターがブルブル震え始めます。
 しばらく刺激を受けていなかった粘膜が悦びに打ち震え、盛大にざわめいているのがわかります。

「あんっ、だめっ、だめぇーっ、お姉さまぁ、これ以上はぁ…」

「それにこれね、バイブのバリエーションも豊富なの。たとえばこんなふうに」

 お姉さまがスマホの画面をタップされます。

「あっ…あっ…あっ…あん…あんっ!…」

 膣内のローターが等間隔な規則正しいリズムで、より深く侵入しようとしているみたいにドクンドクン震えてきます。
 そのたびにビクンビクンと淫声を洩らしてしまう私。

「ね?まるでピストンされているみたいでしょ?他にもいろいろあるみたいよ?もっと試してみる?」

「あんっ、お赦しくださいぃ、あんっ、これ以上つづけられたらもう、おっ、お姉さまぁ、イっ、イキそうっ、またイッちゃいますぅっ!!」

 コンパートメント出入り口ドアのすぐ傍らで、膝から崩れ落ちる私。
 ローターを挿入する前からすでにパンパンに腫れ上がっていた剥き出しクリトリスがざらつくデニムの裏地に盛大に擦れ、しゃがみ込むと同時にイキ果て、同時にローターの振動も止まりました。

「あーあ。またイッちゃったの?かなりの威力なのね、これ。まだ使い方マスターしていないから、リンコが作ってくれた取説でしっかり勉強しなくちゃヤバそうね」

 バッグからレポート用紙大の紙束を取り出されたお姉さま。

「そろそろ目的地に着くはずだから、降りる準備をしながら、しばしまったりしましょう」

 お姉さまに促され、乗車したときに着席した座席に向かい合わせで収まりました。
 お姉さまは、ご自分のスマホと取説を交互に眺め、ときどきスマホをタップすると私の膣中のローターがブルっと震えます。
 そのたびに私は、んっ、と身構えますが、振動が長くつづくことはなく、またしばらく沈黙。
 
 気まぐれに私を襲う振動には、確かにたくさんのバリエーションがあるようでした。
 強さだけでも、震えているのかわからないくらいの微弱から、股間からブーンと音が聞こえるくらいの最強。
 震えのパターンも、規則正しい震え、強弱をつけたランダムな震え、膣中を掻き回すような乱暴な震え、さっき味わったピストンのような震え、などなど。

 ただ、あくまでもお姉さまが操作方法の把握のためにいじられているわけですから、どんな振動も数秒で途切れ、お姉さまが取説を読まれる長い沈黙の後、再び唐突な数秒の陵辱、沈黙のくりかえし。
 結果的に私の中に、欲求不満が溜まっていくばかり。
 
 穿いているショートパンツの股部分は、デニム地のインディゴブルーが傍目でわかるほど色濃く変色していました。
 まるでお洩らしでもしてしまったみたいに。

 そんな焦らし責めを受けつつ、気を紛らわすために窓の外に目を遣ります。
 雲ひとつ無く晴れ渡った青空と山間の田園風景。
 お外はすごく暑そう。
 車内アナウンスによると次に停車してその次が終点みたいです。

 いつしかお姉さまは、ローターのコントロール方法を完全にマスターされたみたいで、私の膣中はずっと沈黙しています。
 お姉さまに視線を合わせると、ニヤニヤ笑いを浮かべたまま黙って見つめてくださるばかり。
 テーブルの上は、私のスマホ以外すっかり片付けられ、もういつでも電車を降りる準備は万端。

 いよいよ次は終点となった途端、電車の速度が変則的になり、快調に飛ばしては停まりそうなほど減速、をくりかえし始めました。
 とうとう停まってしまったのは停車駅ではない見知らぬひなびた駅のホーム。
 アナウンスによると、どうやら対向線路の電車をやり過ごすためのよう。
 
 そのホームに人影はまったく無く、あわてて両腕で自分の胸元を隠した私の行為は無駄でした。
 そんな私を薄い微笑みを浮かべたお姉さまがじっと見つめていました。

 やがて電車のスピードが緩み始め、いよいよ終着駅のホームへと滑り込んでいきます。 
 終着駅の乗降口はこちら側の窓際でした。
 ホームには、おそらく折り返すのであろうこの電車を待っている人たちが、意外にたくさんいました。

 いよいよ私は、たくさんの見知らぬ人たちが往来する公共の場で、こんなヘンタイ性癖丸出しの格好を晒すんだ…
 おっぱいの形丸わかりの薄い布で包んだだけのバストに、完全シースルーのブラウス…
 恥丘の大半が見えているスーパーローライズなデニムショーパン直穿きの膣肉にはローターが埋め込まれ、背中には自分の性癖自己紹介文が刻まれた、こんなイヤらしい姿を…

 全身の毛穴が粟立つような興奮が脳天から股間をつらぬきます。
 乗車中あれほど何回もイッたのに、未だに鎮まることのない悩ましい疼き。
 一刻も早く視られたいと渇望する気持ちと、こんな恥ずかし過ぎる姿を公衆の面前に晒すなんてとんでもないという理性の逡巡は、呆気なく被虐という名の快楽に飲み込まれます。

「さあ降りましょう。これ返すわね」

 お姉さまが私のポシェットにテーブル上のスマホを入れ、私の首に掛けてくださいました。
 たすき掛け、俗に言うパイスラッシュの形にポシェットを掛けられたので、胸の谷間がより強調され、もちろん乳首の尖立もよりクッキリ。

 お姉さまと手をつなぎ、コンパートメントを後にします。
 通路に出ると、他のお部屋のみなさまはすでに降車したようで私たちだけ。
 ドキドキ高鳴る鼓動を感じつつ、うつむきがちにお姉さまにつづきます。

「ほら、もっと平然と歩きなさい。いつも言っているでしょう?やり過ぎな萎縮は悪目立ちするって」
「視たければ視なさいな、くらいの気持ちでモデルウォークよ」

 お姉さまから叱責され、視線を高めに戻します。
 乗降口からホームへ降りると、そこはまさに残暑真っ盛り。
 第一印象は、暑い!

 恐ろしげな漢字二文字の川の名前を冠した有名な温泉街の駅。
 そのホームをたくさんの人々が歩いています。
 今着いた列車から降りた人たち、乗る人達。
 そして、改札へと進んでいるのであろう降りた人たちでは、お姉さまのお言葉通り、若いカップルさんのお姿が目立ちます。

 改札を抜けると冷房が良く効いた広々とした駅舎内。
 そのあいだにもたくさんの人たちとすれ違いました。
 もちろん池袋の駅構内ほどではないですが。

 やっぱりいちばん目立つのは大学生っぽいカップルさんたち。
 中にはダブルデート、トリプルデートなのか、2対2、3対3のグループも。
 次に目についたのは女性同士や女性だけのグループ。
 男性だけのグループは見当たらず、あとは単独の老若男女。

 そして、それらの人たちすべてから、と言っても過言ではないくらい、私とお姉さまは注目されました。
 妙齢の女性同士が手をつないで歩いている、とういう点も興味を惹いた一因でしょうが、最大の好奇の的が私の服装であり姿であることは間違いありません。

 遠慮会釈のない無数の不躾な視線が私の首元に、胸元に、下腹部に、太腿に投げつけられました。
 チラチラ盗み見る人、ガン見する人、一瞥してすぐ目を背ける人。
 
 お姉さまのご忠告通り、カップルさんの場合は一様に、男性からは好色そうな興味津々の舐めるような視線、女性からは見下すような敵意ある険しい視線。
 女性グループの場合はもっとあからさまに、こちらを指さして蔑み交じりにドッと笑い声をあげられるかたたちも。
 なにあれ?撮影?わざと?首輪?調教?露出狂?
 そんなヒソヒソ声も聞こえた気がします。

 視てる、視られてる、私の恥ずかし過ぎるはしたない姿に、みなさまが侮蔑の眼差しを注いでくださっている…
 からだが火照っているのは残暑のせいばかりではありません。
 ドキドキが液体化したような熱を帯びた汗が腋の下周辺から噴き出し、薄いブラウスをべったり素肌に貼り付かせます。

 ローターで栓をされた膣肉の奥も、ジンジンと熱を帯び、粘性の汗がヌルヌルと出口を探しているのがわかります。
 出来るならこのまま、歩いているだけでイッてしまいたい。
 みなさまの視線に犯されてイキ果て、愛液が溢れ出して腿をつたうところまでを視姦されて更に蔑まれ、取り囲まれた屈辱の中でイキまくりたい…

 そんな束の間の妄想を掻き消したのも、ひどい暑さでした。
 お姉さまに引かれた手は、いつの間にか駅構内を抜け、屋外である駅前の広場まで連れてこられていました。

 時刻は午後の一時少し前、雲ひとつないドピーカンな青空の下。
 同じ列車で来られたのであろうカップルさんたちが、広い広場のあちらこちら相合い日傘でいちゃついておられます。

「ちょっと一本、連絡入れるから」

 駅舎内から出たドアのすぐ脇、庇で覆われた日陰。
 つないでいた手を解き、ご自分のスマホを構えられるお姉さま。
 お姉さまの手が離れた途端、急に心細くなってしまいます。
 今の自分の姿と、置かれている状況に。

 お姉さまがスマホをタップされます。
 ドキンと高鳴る心臓。
 まさかここで、私の中のローターでイタズラしようとされているのでは…
 でもそれは杞憂に終わり、どなたかとお話し始めるお姉さま。

 手持無沙汰でお姉さまから視線を逸らし、ぐるっと周囲を見回してみます。
 私たちからほんの4、5メートル先、同じ庇の日陰から私たちのほうをじっと視ているカップルさんに気づきました。

 男の子はボーダーのTシャツにジーンズで頼りな気な感じ、女の子はタンクトップにショートパンツで勝気な感じ。
 男の子がしきりに私を気にしているのを、女の子が怒っているみたい。
 男の子は女の子に脇腹を小突かれても、どうしても私が気になるみたい。
 女の子が時折私に向ける視線には、明確な敵意が感じられます。

 それでも私はお姉さまのお言いつけ通り、視たければ視なさいな、とばかりに平静を装います、表向きは。
 内心では視線にキュンキュン感じてしまっているのですが。

「2時10分までに車で迎えに来てくれるって」

「へっ?」

 突然お姉さまからお声をかけられ、間の抜けたお答えと共にビクンとからだを震わせる私。
 ノーブラおっぱいがプルンと跳ねました。

「だから旅館の人が2時過ぎに迎えに来るの、車で」
「今夜泊まる宿に電話していたのよ。駅に着いたら電話くれって言われていたから」

 再び私の右手を握ってくださるお姉さま。
 嬉しさにまたもやおっぱいがプルン。

「駅前の道路脇に足湯があるから、そこで待っていて、だって」

 お姉さまが周辺をグルリと見渡されます。

「あっ、あれね」

 お姉さまが指さされた先、ここから数十メートル先の広場が途切れる寸前あたりに何やら屋根で覆われた場所があり、数人の方々が腰かけていらっしゃる姿が見えました。

「そうと決まったら、時間までご当地グルメと洒落込みましょう。あたし、すっかりお腹空いちゃった」

 お姉さまに手を引かれ、広場に軒を連ねる食べ物屋さんを物色していきます。
 もちろん私は、すれ違う人たちからの好奇の視線をビンビン感じながら。

「やっぱりこういう山間の温泉地はお蕎麦かな。あ、ここなんかどう?ほどよくひなびてるし、空いているし」

 私の返事は待たず、青い暖簾をくぐって一軒のお蕎麦屋さんへ。
 いらっしゃいませー、の女性声とともに、ほどよく冷えた空調の冷気が心地良く迎えてくださいました。

 お店には先客で女性のおふたり連れが窓際にひと組のみ。
 レジ前でお出迎えくださった和服姿のご中年のご婦人に、そのお客さまたちとは対角線上に離れた壁際の4人掛け席に案内され、お姉さまのご指示で私が壁側の席、お姉さまは対面へ。

 ご婦人と入れ代わりに、厨房のほうから作務衣姿の若い女の子が冷たいおしぼりとお茶とメニューを運んでくださいました。

「ご注文がお決まりになりましたらお呼びください」
 
 そうおっしゃって厨房のほうに戻るまで、女の子の視線は私の全身に釘付けでした。
 驚きと好奇と若干の軽蔑がないまぜになった、フクザツな視線。
 そんな女の子のご様子をニヤニヤ眺めていたお姉さまが、おしぼりで手を拭きながら、ご愉快そうにおっしゃいました。

「ねえ、そのブラウス、汗で満遍なく肌に貼り付いちゃっているわよ?脱いで乾かしといたほうがいいのではなくて?」

 そこで一呼吸置き、ニッと微笑まれた後、こうつづけられました。

「それと、忘れちゃった?お仕置き。ス・マ・ホ・」


肌色休暇一日目~幕開け 08


2020年7月26日

肌色休暇一日目~幕開け 06

 カーテンを閉じると、個室内が薄暗くなりました。
 薄暗くなったことで、お部屋の照明が灯っていたことに初めて気づきました。
 間接照明なので光源が隠れて、妖しい薄暗さのなんだかセクシーなムード。

 あらためてお姉さまに覆いかぶさりご奉仕再開。
 乳首を舌で転がし、右手の指の腹を裂けめに沿って這わせます。

 お姉さまの弱点は4つ。
 キュッとくびれた両脇腹への刺激、会陰=アソコとお尻の穴のあいだ=蟻の戸渡りへの愛撫、そして乳首とラビアへの甘噛み。
 クリットと膣内への刺激を焦らしつつこれらの部位を愛撫することで、発情されているお姉さまならカンタンに昇り詰めてくださいます。

「あんっ、いいっ、いいわよっ、そこっ、もっとっ!」
「あぁ、んぅ、きっ、ぃもちいぃっ!いぃっ!…ぅくぅぅ!!!」
「はぁ…はぁ…あぁ、またっ、すぐっ、すぐっ、また、スゴいのくるうぅぅっ!!!」

 お姉さまがアクメに達されると、腰とお尻と太腿と腟内が同時にヒクヒクキュンと強ばるので、すぐわかります。
 ギュッと目をつむり眉を深く寄せて、半開きになったお口から漏れる切ないお声。
 駅に停車しているあいだはさすがに我慢されていたみたいですが、列車が動き出すと、堰を切ったように荒い息遣いがお部屋を満たします。

 お姉さまも私に絡めた両手で、私のからだをあれこれ愛撫してはくださるのですが、私はお姉さまが気持ち良くなってくださることだけに専念しています。
 だって、お姉さまがオーガズムを迎えられているときのお顔って、めったに拝見出来ない超貴重なもの。
 その神々しいまでにお美しいお顔は、私だけが拝見することの出来る私だけの宝物なのですから。

「そう、そこ、もっと、もっと…」
「いいっわ、いいのっ、もっと深くぅ…もっと強くぅぅっ!!」
「だめ、止めちゃダメ、そのままそのままぁ、いいっ!いいぃぃっっ、ぅくくくぅぅっ!!!」

 陶酔しきっていらっしゃる淫らなお声が私の官能をゾクゾク揺さぶります。
 それは肉体的な絶頂とは異なる精神的な、内側からの快楽。
 しとどに濡らしていらっしゃるお姉さまの膣内の感触が、私を至福の高揚感に導いてくださいます。

 不意に、どうしてもお姉さまのアソコを舐めて差し上げたい欲求が湧き上がってきました。
 でもどうしましょう…

 シックスナインの態勢を取るのが一番安直ですが、それだと舐めているあいだ、お姉さまのお顔が拝見出来ません。
 それに私のマゾマンコもお姉さまのお顔の前にいってしまい、お顔を無駄に汚してしまって失礼。
 両膝を立てていただき、座席の隅から顔を埋めるには、両端の肘掛けが邪魔になり、座席の長さ的に無理そう。

 結局私は、お姉さまのお背中に腕を差し入れて誘導し、座席のドア側のほうのお席に座っていただく姿勢になっていただきました。
 ぐったりなお姉さまは、されるがまま。

 私は座席から降り、テーブルの下に潜り込む形で絨毯の床に跪きます。
 お姉さまの足首にまだ丸まって絡みついていたスウェットパンツの残骸を抜き取り、お姉さまの両膝をガバっと押し広げます。

「ぁあんっ!」

 可愛らしく呻いたお姉さまのお背中が背もたれを滑り、つられて腰も座席を滑り、より私の眼前に突き出すようにお姉さまの秘唇が迫ってきます。
 最初は手を使わずに、顔だけを寄せてくちづけするみたいに自分の唇を重ねます。

「んふぅっ」

 愛液でねっとりとコーティングされた熱っぽい唇のスジに沿って、入念に唇を這わせます。
 ヘアーが途切れた少し下のところで、皮をかぶったまま腫れている可愛らしい突起は、あえて無視して。

「ああっ、なめて、かんで、もっと上、もっとうえぇ」

 はしたないお願いを私にくださるお姉さま。
 私はお姉さまの甘い蜜を存分に舐めつくしてから、舌で裂けめを抉じ開けます。
 開いた口で膣口を塞ぎ熱い吐息を送り込みます。

「んんっ、んふぅーんっ!」

 上目遣いでお姉さまを視ると、尖りきったふたつのニップル越しに、苦悶するようなお姉さまの悩ましいお顔。
 満を持してラビアを甘噛み、唇をすぼめて肉の芽に吸い付きます。
 もちろん舌で皮を剥くのも忘れずに。

 お姉さまの両腿の筋肉がビクビクンと痙攣し、私の顔を挟んできます。
 膣内から白濁した蜜がトロリと溢れ、舐め取ろうとした私の舌をギュンギュン締め付けてきます。

「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」

 お姉さまの荒い吐息だけがしばらく個室内を満たしていました。
 そろそろ落ち着かれたかな?それじゃあ今度は…

 私が次のご奉仕に移ろうとしたとき、次の停車駅接近を告げる車内アナウンスが個室内に響きました。
 ビクンと震えたお姉さまのおからだ。

「…あら、もうそんなとこまで来ちゃったんだ…」

 スウェットの前をアンニュイに掻き合わせ、汗で額に張り付いた髪を掻き上げたお姉さま。

「となるともうあと30分もしないうちに着いちゃう。そろそろ降りる準備をしなくちゃ、だわ」

 お姉さまが床で正座姿勢の私を避けるように立ち上がられ、私に脱がされたスウェットパンツをお手に取られました。

「ありがとうね、直子。すごく良かったわ。なんだかからだが軽くなった感じ」

 座席に敷いていたタオルをお手に取られ下半身を軽く拭きながら、おやさしくおっしゃってくださったお姉さま。
 スウェットパンツを両脚にくぐらせ、前開きのジッパーも首元までお上げになります。

「あたしはこれからまたおトイレに行って身だしなみ整えてくるから、直子もそのタオルでからだの汗、拭いておきなさい」

 私の席のお尻に敷いたバスタオルを指さされるお姉さま。

「あ、はい…それであのぅ、私はいつまで、裸でいるのでしょうか…」

 私が着てきたワンピースや下着はお姉さまに没収され、お姉さまのバッグの中にあるはずです。

「ああ、そうだったわね。いくら直子でも温泉地の駅をすっ裸で闊歩する勇気は無いわよね」

 スッキリされたというお姉さまに、いつものイジワルさも復活しています。

「安心して。直子のバカンスにぴったりな、直子らしいコーデを特別に用意してきたから。絶対気に入るはず」

 ご自分のバッグからうちのブランドのショップ袋を取り出されたお姉さま。
 テーブルの上に置かれたそれはずいぶん小さく、たとえばその中にワンピースが、どんな薄い生地だったとしても入っているようには見えません。

「直子はそれを着て、あたしが帰ってくるまで大人しくしてなさい」

 スウェットスーツをしっかり着込んだお姉さまがバッグを肩に提げ、つかつかと窓際に歩み寄りました。
 ザザザー。
 カーテンを開くと途端に個室がまばゆい光に満たされます。
 今更ながら裸で居ることが無性に恥ずかしくなってきます。

「それじゃあ、よろしくねー」

 おトイレへ向かわれたお姉さまをお見送りして、ひとり明るい個室で全裸の私。
 とにかく早く身繕いをしなくちゃ。
 バスタオルの乾いている部分で全身の汗や体液をまず拭いました。

 テーブルに手を伸ばしお姉さまが置いていかれたショップ袋を手に取ります。
 シールを剥がして右手をツッコミ、中身を取り出しました。
 出てきたのは…

 妙にクタッとした布地の白くて小さなTシャツ?
 デニム地のショートパンツだけれど布地部分がすごく少ない?

 Tシャツを広げてみると、襟元が真っ二つに切れていて、前開きのシャツ、と言うかショートガーディガンのよう。
 それなのにボタンは一つも付いていません。
 背中側の丈は凄く短く、肩甲骨もはみ出るくらい。
 それに比べて前側は、ふたつに割れた布地が先細りでお腹の辺までつづいています。

 ボトムのほうは、どう見てもローライズショートパンツ。
 とにかく股上が浅く、前ボタンの下にジッパーさえありません。
 ビキニパンツをデニム地で作った感じ。
 おまけにダメージ加工してあるので、ところどころメッシュになっています。

 これを、これだけを着て駅に降りるの?
 背筋がゾクゾクッと疼いたのと同時に、電車が減速を始めました。

 あ、駅に着いてしまう。
 何でもいいからとにかく着なくちゃ。
 急いでまず、ショートパンツに足を通します。

 案の定でした。
 私の股の付け根周囲を、ほんの幅5センチ位に隠してくださるデニム地ビキニ。
 前ボタンを嵌めないと恥丘のほぼ全貌が露呈しています。
 普通にヘアのある方であれば絶対人前には出られない、パイパン専用ボトム。

 お尻の側はフルバックとはいかないまでも、お尻の割れスジ四分の三くらいは覆ってくださっているみたい。
 ただ、ご丁寧にダメージ加工されているゆえ、お尻のお肉ところどころがメッシュ状にシースルー。
 いくらずり上げても、お尻の上に刻印された日焼け跡のイタズラ書きを隠すことも出来ないみたい。

 そうこうしているちに列車の速度がグンと緩みました。
 そろそろ駅に着くみたい…
 思う間もなくホームに滑り込む電車。
 おまけに窓側が乗降ホームのよう。
 いやんっ…

 あわてて窓に背中を向け、大急ぎでTシャツのような布片に袖を通します。
 腕部分は普通のややルーズな半袖
 両袖を通した途端わかりました。
 
 これはあれです。
 前を布地で結ぶ式のシャツ。
 よくプールとかで水着のビキニトップの上からルーズに羽織っているショートガウンと言うかボレロと言うか。

 取り急ぎ胸前に垂れ下がっている2枚の布地をおっぱいの下辺りで結んでみます。 
 うわっ!露骨…
 クッタリした生地な上に伸縮性に富んだフィット感が完璧で、ふたつの乳房をその形通りにまあるく包んだ布の頂点に、これみよがしなふたつの突起が、これまた形通りに君臨していました。

 そうか、きつく結び過ぎるとこうなっちゃうんだ。
 それなら今度は…

 結び目を解き、今度はふうわりおっぱいを包むくらいの感じなルーズフィットで。
 露骨さは減少しました。
 
 そのときホームに停車していた列車が、ガタンと動き始めました。
 油断していた私は、トットットと少しつんのめります。
 
 その途端にやんわりおっぱいを包んでいたクッタリ布地の端から、暴れた左生おっぱいが見事にこんにちは。
 いやんっ!
 あわてて前を掻き合わせます。
 うーむ…

「お待たせっ!わっ!やだっ、直子っ、ずっぱまりじゃない!」

 私が途方に暮れているところに、テンション高くお姉さまがお戻りになられました。
 スウェットに着替える前にお召しになられていたニットとサブリナパンツにお戻りになり、メイクもバッチリ、もちろん下着もきちんと身に着けていらっしゃるはず。

「でも、トップスの着こなしがだらしないわね。とてもレディスアパレル勤務とは思えないわ」
「直子、こういうタイプ着るの初めて?任せて、あたしがバッチリ着こなさせてあげる」

 お姉さまの右手でスルスルと結び目が解かれ、それから両手の布がわたしのおっぱいを包み始めます。
 お姉さまの着付けは私が独り試したときよりも大胆でした。

 両肩先からおっぱいのふくらみを斜めに横切るように大きなVの字を作り、下乳少し下でまずひと結び。
 これで胸元は大胆にがら空きとなり、正面からも下乳が少し覗く仕様。
 それから私の胸元に手を入れ左右それぞれ、クッタリ布とおっぱい皮膚がシワひとつ出ないよう入念に調整されました。

「可愛くリボン結びにしてあげましょう」

 からかうようにおっしゃったお姉さまが、余分に垂れ下がっていた布片を器用にまとめ、確かに可愛いリボンの白い結び目が私の剥き出しなお腹を飾りました。

「お、お姉さま…私、本当にこの姿で、駅で降りて温泉旅館さんか、ホテルさんかは知らないですけれど、そこまで行くのですか?」

 うつむいた自分の視界に映る自分の姿に、思わず上ずった声で抗議してしまいます。
 おっぱいはそのものズバリの姿形で薄く柔らかい白い布に包まれただけ。
 おへそはおろか恥丘の大部分まで晒し、僅かに亀裂部分のみを覆うようなショートパンツに腰回りを覆った私の姿。

「あら、何か可笑しい?せっかくのバカンスだもの、ちょっと大胆に冒険していんじゃない?旅先で出会うひとたちなんて、どうせ行きずりなんだし」

「でもこれ、やりすぎじゃないですか?世間的にもいろいろマズイのでは…」

「あら、公序良俗に反するような部位はちゃんと布地で包んでいるのだから、文句は言わせないわ。れっきとしたファッションよ。今年の夏は暑いから、それレベルの服装なリゾート女子なんて、海やら街でもたくさん見かけたものよ」

「で、でも、私の背中のイタズラ書き、完全に読めちゃいますぅ…」

「ほら、旅の恥はなんとやら、って言うじゃない?もっとも直子にとっては恥辱のじょくのほう、はずかしめ、のほうでしょうけれど」

 何を訴えても暖簾に腕押しなお姉さま。
 テキパキとテーブルに散らばった空き瓶やゴミをレジ袋にまとめ、あらためて最初にお座りなったお席に腰掛けられました。
 私も促されるように対面の席に歩み寄ります。

「今は一応、ボトム穿いているのだから、タオルもいらないわね」

 お姉さまが差し出された右手にバスタオルを差し出してから、座席にちんまりと座り込む私。
 この座席、直だとこんなにフカフカ柔らかいんだ。

 窓を過ぎる風景は、もうすっかり山間の景色でした
 時折過ぎ去る白樺並木が、避暑地に向かっているんだなぁ、と思わせてくれます。
 避暑地と露天温泉が両立するのかはわかりませんが。

「そうそう、さっきおトイレから戻る途中、他の個室の様子をチラ見してみたんだけれどさ」

 お姉さまがお愉しそうに身を乗り出され、私に語りかけてきました。

「ものの見事に全室カップル。一番端の部屋までは行かなかったけれど、うちを除いた4部屋はみんな若い男女のつがい」
「凄かったわよ。片方の座席の隅で抱き合っちゃってずっとキスしていたり、完全に寝そべってからだ重ねていたり。通路側の窓のことなんてまるでおかまいなしみたい」

「大学はまだ夏休みだから、学生さんたちでしょうね。あの調子じゃ直子に説明できないような不埒な行為に及んだカップルもきっといるはずよ」
「ま、あたしたちだって他人の事とやかく言える立場じゃないけどさ」

 そこで一区切りつかれたおねえさま。
 わざとらしい事務的な声色でこうおっしゃいました。

「さて、このことから導き出される結論は何でしょう?はい、森下さん」

「えっ!?あの、えっと…」

「ブッブー。時間切れー。答えは、これから私たちが行く温泉地には若いカップルが多いだろう、ってことよ」

 勝ち誇ったように端正なお顔を反らされるお姉さま。

「まあ、全部が全部大学生カップルってわけではないだろうけれど、こんな平日の真昼間から暇なのは、リーサラや家族連れはまずありえない。百歩譲って老いらくのリビドーに狂った年の差不倫カップル、ってとこなんじゃないかな」
「となると直子?あなたのその格好には、同性から最大限の厳しい視線が注がれると思うわ」

「へっ?」

 間の抜けたお答えを返す私。

「あら、わからない?そんな格好で屋外を闊歩する、誰とでもヤリそうなふしだら淫乱女なんて、カレシ持ち女性共通のエネミーじゃない。防衛本能よ。今までの街中プレイじゃ浴びせられたことなかった憎悪100%の熱い視線に射抜かれるはず」

 嬉しそうに口角を上げられるお姉さま。
 でも、私はあんまりピンときていませんでした。
 だって私はずっと、同性に恥ずかしい姿を視られることに悦びを感じてきたのですから。

「まあ、あんまり目に余るようなのがいたら、あたしがキッチリフォローしてあげるから、直子は安心して恥辱の視線にまみれなさい」

 お姉さまのお優しいお声が私の耳朶を震わせ、スイっと離れると再び、ご自分のバッグ内をガサゴソ探し始められました。

「はい」

 嬉しい。
 これだからお姉さまのことが大好きなんです。


肌色休暇一日目~幕開け 07