直子のブログへお越しいただきまして、ありがとうございます。ここには、私が今までに体験してきた性的なあれこれを、私が私自身の思い出のために、つたない文章で書きとめておいたノートから載せていくつもりです。
2013年5月12日
独り暮らしと私 08
最初にキッチンの水切り棚の上にバターナイフとアイストングを発見。
ベッドルーム兼お勉強部屋の机の上で50センチ定規とルレット、アイマスクを発見。
バスルームの鏡横の棚に電動歯ブラシ2本発見。
刑事さんが洗面所であきらめてくれて良かった。
電動歯ブラシは、お揃いのデザインのブルーと赤で、もし彼女がこれをみつけたら、あらぬカレシ疑惑が確定しちゃうところでした。
今までの発見場所を見ると、どうも私は、本来それがあるべき場所、に置いてごまかそうとしているようです。
木は森に隠せ、というやつですね。
それならって、サンルームに行ったらやっぱり、洗濯バサミ入れのバスケットの一番上に、私がお洗濯物には絶対使わない、おびただしい数の木製洗濯バサミがこんもりと山になって溢れ出ていました。
そう言えば洗面所から戻るときにひとりがこれを見て、
「わー、木の洗濯バサミって、珍しいよね今時」
って言われてドキンとしたことを思い出しました。
「うん。形が可愛いな、と思って通販で思わず買っちゃった」
って、ごまかしました。
本来あるべき場所が無いものたち=見られたら言い訳出来ない恥ずかしいオモチャたち、は、ウォークインクロゼットに吊るされたいろんなお洋服のポケットから続々と出てきました。
リモコンローター3つ、クリットローター、コントローラー、ほぼ円錐形バイブレーター、鎖付きの手枷足枷・・・
麻のロープと長い鎖はまとめて、台に乗らなければ届かないクロゼットの一番上の棚に突っ込まれていました。
でもこの隠し場所は、今考えると危なかったかもしれません。
女子同士は、ねえクロゼット見せて、みたいな展開になることもありますから。
それで、ちょっと着てみていい?ってなったら・・・
もっとも、このときのお友達はアニメやマンガのお話で趣味が合って意気投合したお友達で、ファッション関係のお話はほとんどしていませんでしたから、たぶん大丈夫って思ったのでしょう。
そして、最後までみつからなかったのが、シーナさまからいただいたばっかりのチョーカーでした。
これまでの隠し場所パターンから言って一番可能性ありそうなクロゼット内の、全部のお洋服の全部のポケットを探ってみてもありませんでした。
まだ捜索していなかったバルコニーも隅から隅まで探し、アクセサリー入れの中身を全部ぶちまけ、家中の戸棚や収納をすべて開けて探し、納戸の奥深くに隠してある私とシーナさまのオモチャ箱の中身もそれぞれ総点検し、トイレもバスルームも、家具と壁の隙間も全部探ったけれどみつかりませんでした。
チョーカーが入っていた立派なケースだけは、空のまま私の机の鍵がかかる抽斗に保管されていました。
素敵なチョーカーが失くなってしまった事はもちろんショックでしたが、何よりもプレゼントしていただいたシーナさまに申し訳ない気持ちで一杯でした。
お気を悪くされて、私とはもう遊んでくれなくなっちゃうかもしれない・・・
そんなふうにウジウジ考えて、あんなに旺盛だったムラムラも嘘のように萎んでしまいました。
不幸中の幸いは、シーナさまがしばらくお忙しくて、このマンションにいらっしゃらないこと。
このお部屋中のどこかに絶対あるはずだから、シーナさまがお戻りになるまでに絶対みつけよう。
みつからないうちにシーナさまに聞かれたら、全部正直にお話しよう。
そう覚悟を決めて、ヒマがあればいろいろ探していたのですが、なぜだかこの洗濯バサミのバスケットだけは、探し直していなかったのでした。
早々と木製洗濯バサミがみつかったことで、無意識のうちに捜索範囲から除外してしまったようでした。
だけど、何故チョーカーだけ、洗濯バサミバスケットの奥深くに押し込んだのだろう?
自分の行動なのに、その理由がまったく思いつきません。
ま、いっか。
そんないわくつきのチョーカーがみつかって、私は心の底からホッとしていました。
これがみつかっただけでも、がんばってお洗濯した甲斐があったというもの。
全裸家政婦生活することを決めて良かったー。
ホッとしたせいなのか、なんだか少しお腹が空いてきた気がしました。
私は、ムラムラの強いときはあまり空腹を感じない性質なのですが、今日は朝からいろいろやって体力もたくさん使ったし、このへんで栄養補給をしておいたほうがいい気もします。
時計は、すでに午後の1時を回っていました。
4回目の洗濯機さまのお仕事が終わっていたので、そのお洗濯物を干してから軽くランチをとることにしました。
ほぼ1ヶ月ぶりに再会出来た、シーナさまにいただいたチョーカー。
着けた途端に私のマゾ気質が目に見える形で顕われてしまうという、おそろしいアクセサリー。
バスケットの底から取り出そうとチョーカーに触れたらもう、一刻も早くそれを首に嵌めたいという願望にあがらうことは出来ませんでした。
そして嵌めた途端、私のからだがムズムズ疼き始めました。
全裸にチョーカーだけ着けて4回目のお洗濯物を干しながら、ランチタイムもマゾっぽくするべきだな、って考えていました。
首輪を着けたらからには、やっぱりワンちゃんスタイルということになるでしょう。
そう、SMの写真でよく見る、四つん這いになって手は使わず、お口だけで食べ物を摂取しなくてはいけない、屈辱的なお食事作法。
これも、やってみたかったけれどまだやったことがないこと、の一つでした。
お献立は当然ドッグフード?
でも、私はワンちゃんを飼っていないので、そんなものお家に置いてありません。
ていうか、あれって人間が食べても大丈夫なのかな?
そういうビデオで女優さんがお口に入れているの観たことあるけれど。
見た目は美味しそうにはとても見えないな。
ふと頭の中に、猫さんがうずくまってミルクをピチャピチャ舐めている絵が浮かびました。
そうだ、ミルクがいいかな。
ミルクにシリアルを浸して、あと、さっき買ってきたバナナを・・・
なんとなくイメージが湧いてきました。
メス犬じゃなくてメス猫になっちゃうけれど。
猫さんて、マゾっていうイメージではないな。
やっぱりワンちゃんのほうが、ご主人様には従順だからマゾっぽい。
どうでもいいことを考えながらお洗濯物を干し終え、すぐにキッチンに向かいました。
大きめのスープボウルを食器棚から出しました。
この大きさならバナナ2本でも大丈夫そう。
それから冷蔵庫を開けてホイップクリームの素を取り出し、別のボウルにあけてミルクを注ぎました。
何本かのワイヤーがまあるくバルーン状になっているホイッパーでシャカシャカシャカ。
シャカシャカすると、剥き出しのおっぱいがプルプル揺れちゃいます。
ホイップクリームが出来たので、次はバナナを剥きます。
2本剥いてそれぞれ真ん中で半分に切り、まあるいスープボウルの四隅に断面を下にして立てて置きました。
こうしておけば咥えて食べやすいはず。
スープボウルにミルクを半分くらいの深さまで注ぎ、お気に入りのあんまり甘くないチョコ味のシリアルをひとつかみ、バナナに囲まれた真ん中に投入。
仕上げに、さっき作ったホイップクリームを絞り出す用のビニールに入れて、全体に満遍なくニュルニュルニュル。
シリアルはすっかり隠れ、バナナも先っちょがちょっと見えるくらいになっちゃいました。
あらら、それでもまだけっこうクリーム、余っちゃった。
スープボウルにこんもり盛られたまっ白いクリームの山。
これをお顔で迎えにいったら、顔中クリームだらけになるでしょう。
コメディのテレビ番組でたまに見かける、パイ投げの犠牲者、みたいな自分の絵が頭に浮かびました。
うん、マゾっぽい。
さて、これをどこで食べましょう?
絶対に床を汚しちゃうことはわかっています。
どうせこの後お掃除もする予定だし、リビングでもいいかな。
でも、せっかくだから何の気兼ねも無く、とことんはしたなくなってみたい気もしています。
余ってしまったクリームを見て、思いついたこともあるし・・・
となると、後片付けが一番ラクそうな場所、床にお水が流せるバスルームということになります。
よーし、ランチの後はバスルームを先にお掃除することにしよう。
まだ手をつけていないお洗濯物も少しだけ残っていましたが、洗濯バサミも干すスペースも足りなそうなので、明日にすればいいや。
そうすれば明日も、洗濯機さまと遊べるし。
今作ったバナナ&ショコラミルクのクリーム添えマゾナオコ風をトレイに載せ、しずしずとバスルームまで運びました。
洗い場の大理石風な冷たいタイルの上に、スープボウルを直に置きました。
もちろん、食べている姿が壁に嵌めこまれた等身大の鏡に映って、それが自分でよく見える位置にです。
見慣れたバスルームに食べ物を置いただけで、なんだか非日常的な空間に変わったように感じられます。
ここで四つん這いになって、ミルクをピチャピチャ舐めるのか・・・
そう考えると、じわじわ感じてきてしまいます。
メニューは猫さん用ですが、あくまでメス犬マゾペットにこだわるためにも、首輪に付ける引き綱、リードが欲しいところ。
数週間前からシーナさまが置きっ放しにしている、シーナさまのオモチャ箱。
中身は自由に使っていいとお許しをいただいているので、チョーカーをいただいた日の夜に、確か鎖が入っていたはず、と探しました。
2メートルくらいの鎖が入ってはいたのですが、それはけっこう本格的な重め太めの鎖で、チョーカーに繋いだら華奢なチョーカーのほうが壊れちゃいそうな感じでした。
チョーカーに繋ぐのはあきらめましたが、私は、その鎖のえっちな別の使い道をすでに編み出していました。
バスルームからキッチンへといったん引き返す間に、屈辱のランチタイム妄想の方針が決まりました。
*
*独り暮らしと私 09へ
*
2013年5月11日
独り暮らしと私 07
チョーカーをケースからおずおずとはずします。
意外に重い。
金具の装飾がたくさん付いているから、そのせいでしょうか?
腕時計より幾分重たい感じ。
ビーズとパール周辺の細工模様がすごく細かくて刻んであって、確かに高級品ぽい。
「あっ、ベルトみたく巻きつけるんじゃないんだ」
ケースの台に隠れていて見えなかったのですが、着脱の方法はネックレスのように背中側の金属製の留め具でした。
デザインがベルト風で長さ調節の穴まで空いていたので、てっきり首に巻きつける方式と思い込んでいました。
留め具をはずして、肩にかかる髪を軽く払ってから、恐る恐るチョーカーを首にあてがいました。
「やってあげる」
シーナさまが席を立ち、私の隣の席に移動してきました。
二人並んで座る格好。
「背中を向けて」
座ったまま上半身だけをひねって言われた通りにすると、窓の外に顔を向けることになります。
窓の外はデパートのグルメフロア通路。
まばらですが、お買い物やお食事を楽しむ人たちが行き来しています。
ガラスにはうすーく、首に何かを巻かれている私の姿も映っています。
私は、目を伏せては上目で通路をチラッと見て、をくりかえして落ち着きません。
いまのところ私に目を留める人はいないみたいだけれど・・・
マゾの首輪を嵌められている私の姿。
心臓のドキドキが止まりません。
「出来た。サイズもあつらえたみたいにピッタリね。こっち向いて」
「はい・・・」
ゆっくりとシーナさまのほうへ向き直りました。
目が合うと、シーナさまが瞬間、息を呑んだように見えました。
それからしばらく、ふたりして無言で見つめ合っていました。
首輪をされる、ということを想像していたときに予想したほど、きつくも苦しくも無かったのですが、やっぱり首周りに形容し難い奇妙な圧迫感を感じていました。
マフラーやショールを巻いたときには感じたことの無い、異物感と言うか拘束感と言うか・・・
「あ、あの・・・どう、どうですか?似合ってますか?」
シーナさまがずっと何もおっしゃらないので、沈黙に耐え切れなくなって私のほうから聞いてしまいました。
「あ、うん。どう、って言うか・・・」
シーナさまは、私から目をそらして宙を見るようにしてから目を閉じ、返す言葉を探しているようでした。
なんだか少し動揺されているみたい。
「どう、って言う次元じゃないわ。あなた、似合い過ぎよっ」
小さく吐き捨てるように言って、再び私を見つめてくるシーナさまのお顔は、なぜだか怒っているみたい。
私を睨みつけるようにまっすぐに見ながら言葉をつづけます。
「さっき、わたしのほうに振り向いたときの、あのうっとりした顔は何?もう、マゾ丸出しじゃない」
「なんでこんなもの着けただけで、そんなにいやらしくなっちゃうの?呆れちゃう」
決して乱暴な調子ではなく、突き放すような冷ややかな口調。
数週間前に、このお声にたくさん虐められました。
この口調のときのシーナさまは、完全にSになっています。
「直子、今、濡らしてるでしょ?」
イジワルく私の顔を覗き込んできます。
「あっ、え、は、はい・・・」
さっきチョーカーを自分で首にあてた途端にキュンときて、シーナさまにうなじをさわられている間、ジワジワ溢れ出ていました。
「やっぱりね。わたしはまだまだ直子のこと、甘く見ていたみたいね」
「さっきあなたが振り向いたとき、わたし、この後の仕事キャンセルしようかって、一瞬本気で考えたもの」
「このまま直子をどっかのホテルに連れ込んで、思いっきり虐めて虐めて虐め抜きたいって」
「それくらいすごいドマゾオーラが出てた」
思いもよらないシーナさまのお言葉にびっくりすると同時に、それを言葉責めと捉えて疼きだすからだ。
ああんっ、たぶん私、今もどんどん、マゾオーラを出しちゃってる。
「だから、それはもうはずしなさい」
「えっ?」
「えっ、てさあ?そんなもの着けてマゾ全開の直子を一人で街に放り出せるわけないじゃない?」
「本当はこの後、ここでパンツでも脱がせて、首輪にノーパンでさよならまたねマゾっ娘なおちゃん、なんて別れようかと思ってたけど、そんなこと出来っこないわよ、今の直子見たら」
「今、直子の頭の中、いやらしいことで一杯でしょう?」
「それしている間中、気になって気になって、妄想しつづけちゃうに決まってるわ」
「それ着けたまま、そんなマゾオーラを街中に振りまきながら帰ってごらんなさい、ここは池袋だし、家に着くまでに何人のバカな男からちょっかい出されることか」
「それで直子の身に何かあったら、わたし、ゆりさまに顔向け出来なくなっちゃうわよ」
もう一度背中を向けて、チョーカーをはずしてもらいます。
窓ガラス越しの視界右端に、おかあさまらしい女性に手を引かれた幼稚園児くらいのフリフリドレスを着た可愛いらしい女の子が現われました。
私が気づいたときには、その子はもう私を見ていました。
珍しいものを見る興味津々のまなざしで、歩きながらずっと私の喉元を凝視していました。
私の目の前を通り過ぎたときは、バッチリ目が合ったので、私がうつむいて目をそらしました。
左端のほうへ消え去るときも、お顔だけこっちに向けてまだ見ていました。
視界から消え去る寸前、こちらを指差して女性に何か言ったようでした。
シーナさまがチョーカーを元通りケースに収め、パチンと金具を留めました。
「そろそろ時間だからわたしは行くけれど、直子はもう少しここにいて気持ちを落ち着けなさい」
「えっちなことを考えちゃだめよ、いい?」
「ここを出たらトイレに行って、アソコをビデで丁寧に洗って、お化粧を念入りに直してから帰りなさい。わかった?」
「・・・はい」
「それと、そのチョーカーは、わたしかゆりさまが一緒じゃないときは、絶対着けて外出しないこと。着けていいのは当分直子の家の中でだけ。いい?これも命令だからね」
「今晩電話するから」
そう言って立ち上がり、私の頭を軽く撫ぜるとパッと伝票を取って、スタスタ歩いて行ってしまいました。
シーナさまに言われた通りの手順をちゃんと踏んで、デパートを後にしました。
音の出ていない携帯音楽プレイヤーのイヤホーンを両耳に突っ込んで、うつむいて足早に繁華街の雑踏を抜けました。
お家について、すぐにでももう一度チョーカーを着けてみたかったのですが、着けたら最後、歯止めが効かなくなってしまうのがわかっていたのでグッとがまん。
学校の課題やお夕食を手早く済ませ、あとはもう寝るだけとなった夜の7時過ぎ、さっきの服装のままリビングの鏡の前で着けてみました。
チョーカーの留め具を喉のところで留めて、それからグルッと後ろに回しても大丈夫なくらいの余裕が、チョーカーと首の間にありました。
着けた途端に私から発せられるというドマゾオーラ。
自分で見てもよくわからないけれど、鏡の中の私はなんとなく普段より従順そうに見えなくもない、かな?
でもそれって、首輪を着けたから囚われの人っぽくなったていう、イメージからくる連想ですよね。
いずれにせよ着けた途端に、さっきのティーラウンジのときと同じように、私のからだが疼き始めたのは事実でした。
このリングに乳首を挟んだりラビアを挟む鎖が付けられる、って言ってたっけ・・・
その夜私は、久しぶりに自分のからだを本格的にロープでギッチリ縛っての、緊縛自虐オナニーに長時間耽りました。
夜の9時過ぎに携帯電話が震えて、着信を見るとシーナさまでした。
手錠で繋がれた不自由な両手でなんとか出ました。
出先かららしく、電話の向こうに街のざわめきが聞こえました。
何をしてるのかと聞かれたので、正直に、チョーカーを着けて緊縛オナニーをしています、と答えました。
「わたし、今夜からしばらく、そっちに帰れそうにないのよね」
シーナさまが電話の向こうで、本当に悔しそうにおっしゃいました。
それから数日後。
夏休み前最後の登校日。
学校帰りに、ゼミで仲の良いお友達ふたりと連れ立って池袋で映画を観ました。
観終わって、イタリアンのお店でおしゃべりしていたら成り行きで、おふたりがこれから私のお部屋に来る、ということになってしまいました。
「いいじゃなーい、ここから近いんだしー」
「うわー。なおっちの私生活って、チョー興味あるぅ。楽しみぃー」
さあ大変。
シーナさまからチョーカーをいただいた日以来毎晩、そのチョーカーを着けての自分虐めに精を出していました。
昨夜も、妄想の中のシーナさまにリビングでたくさん虐められてイキ疲れたように眠り、今朝は、シャワーなどをしていたら時間が無くなって、昨夜の後片付けをちゃんと出来ずに登校してしまったのでした。
「今すっごく散らかってて恥ずかしいから、ざっと片付けるまで悪いけれどちょっと待っててね」
4階の我が家のドアの鍵を開けながら早口でそう言って、返事も待たずに自分だけササッとドアの内側に滑り込み、ガチャンとドアを閉じてカシャンと鍵をかけました。
さあ、急げー。
リビングの床に転がっていたのは、ローター数個、洗濯バサミたくさん、ロープ、ルレット、チョーカー、アイストング、電動ハブラシ、長い定規、バスタオル、etc、etc・・・
5分間くらい家中をドタバタしてから、やっと玄関の鍵をカシャンとはずすと、
「ケーサツだ!動かないで!家宅捜索します」
まだ私がドアを開かないうちに向こうからグイッと開かれ、学生証を高くかざしたお友達がお芝居声で言って、はしゃぎながらおふたりが玄関になだれ込んできました。
「ひゅーひゅーひゅー!なおっちもスミにおけないねえ」
「なあに?ゆうべ男でも来てたの?通い夫?」
「別に隠さなくてもいいのにぃ。あたしたちの仲じゃない」
ニヤニヤ笑いで盛大に冷やかされます。
「ううん。そんなんじゃなくて、本当にすごく散らかってたから・・・」
「まあまあまあ。わたくしに任せれば、一発で犯人の嘘を暴いてやりますよ」
「へー、ここがなおっちの部屋かー。広いねー。セレブじゃん」
「うわーテレビでけー」
異様にテンションの高いおふたり。
リビングのあちこちを、もの珍しそうに見て回っています。
しまい忘れたものがないか・・・私は気が気ではありません。
「ところで奥さん、洗面所に案内していただけますか?」
さっきから刑事さん気取りのひとりが、またお芝居声で聞いてきました。
洗面所にお連れすると、
「ふーむ。歯ブラシはピンクのが一本だけ。おお、カミソリが!ああでもこれは女性用ですな」
それからキッチンの食器棚の中と冷蔵庫の中とランドリールームを見られました。
「おっかしーなー。男が出入りしてれば、このうちのどっかに痕跡があるはずなのになー」
「だから、散らかってただけなんだってー」
「まあ、いいや。今日のところは、そういうことにしておきましょう」
刑事さんがあきらめてくれたみたいです。
その後、デパ地下で買ってきたお惣菜やスイーツをつまみながらDVDを見たりゲームをしたり、ガールズトーク花盛り。
本当はいけないことなのですが、来る途中にコンビニで買ってきた甘いカクテルで異常に盛り上がってしまい、最後はいつの間にかリビングのソファーで各自眠りこけていました。
翌朝早くにおふたりが帰り、私はカクテルのせいか頭が痛くて、自分のベッドで本格的に就寝。
起きたら夕方近くになっていました。
まだ少しズキズキする頭で昨夜の宴の残骸を片付けていたら、その宴が始まる前にも、私一人で急いでリビングのお片付けをしたことを唐突に思い出しました。
ただ、何をどこにどう隠したのか、まったく思い出せません。
思い出そうとすると頭がズキズキ痛みます。
その日はそんな調子なのであきらめてゆっくり休み、翌日朝から、本格的な捜索に取りかかりました。
*
*
2013年5月5日
独り暮らしと私 06
「ハァハァ・・・ああ、気持ち良かったぁ・・・」
ランドリールームの床に横座りになって、洗濯機にもたれたまましばし休憩。
すっかり大人しくなった洗濯機のまっ白い外装が、火照ったからだの余韻を冷ますように、ひんやり肌を包んでくれます。
ようやく息も落ち着いてきて、立ち上がろうと洗濯機の側面に手をついたらヌルリと滑りました。
おっと危ない。
よろけた体勢を立て直しながらあらためて洗濯機を見ると、アソコを押し付けていた角を中心に、その左右の側面がベットリ私の愛液まみれ。
床には、見るからにトロリとした白濁液の水溜りまで出来ていました。
うわー、恥ずかしー。
「すぐにお拭きしますのでお許しください、洗濯機さま」
深々と礼をしてタオルを取りに走る私は、もうすっかり洗濯機さまの虜です。
自分のからだも乾いたタオルでざっと拭いて、ンーッって一回大きく伸びをしたら、なんだかからだが軽やかで気分もスッキリ、労働意欲も湧いてきました。
よーし、お洗濯をちゃっちゃと終わらせちゃおう。
それからしばらく、真面目にお洗濯に取り組みました。
2回目のお洗濯物を干す間に3回目を回し、3回目が終わったらすぐ4回目。
ただ、真面目とは言っても全裸生活中の私ですから、えっちなことはチラチラ考えてしまいます。
2回目のお洗濯物を干しながら、さっき洗濯機さまから責められていたときに浮かんだ宇宙人の妄想を思い出していたら、スーパーでの異国美人さんとの妄想とつなげられるストーリーが浮かびました。
スーパーの女子トイレで、全裸のまま取り残され途方に暮れていた私を、突然、淡い不思議な光が包みます。
フワッっとからだが浮く感覚がしたと思うと意識が途切れ、気がつけば宇宙船の中。
そして、さっきの洗濯機型ロボットによる人体実験をさせられたのでした。
宇宙人からテレパシーで教えてもらったところによると、彼らの星では、地球人を密かにさらってきて飼うのが流行していたのですが、虐待が絶えないため星の権力者から全面的に禁止されてしまい、仕方なく地球まで出張してきて、宇宙船内で楽しんでいるのだそうです。
何故そんなことをするのかと言うと、地球人が性的に興奮してオーガズムやエクスタシーに達するときに発せられるオーラみたいなパワーが、彼ら宇宙人の健康にとても良いらしいのです。
地球人が森林浴をするようなものだ、と言っていました。
中でもマゾな女性の羞恥を多く含んだオーガズムを浴びるのが一番良いそうで、私はずいぶん気に入られてしまい、必ずまた近いうちにさらうから、と約束までされてしまいました。
あの異国美人さんも宇宙人に気に入られちゃった一人で、今では宇宙人の手先になって、それっぽい女性を見つけると誘い込んで裸にしてから宇宙人に連絡する、というブローカーみたいなことをしているのだそう。
ということは、異国美人さんも本性はマゾなんだ。
全裸にするのは、服を着ていると宇宙船への転送を失敗しちゃう恐れがあるからで、虐めかたは、地球上のコンピューターネットワークから各国のアダルトビデオをハッキングしていろいろ研究している・・・
そんなストーリーでした。
今こうして文章にしたら、失笑しちゃうほど拙いご都合主義な設定ですが、そのときの私は、自分の考えたお話がうまくつながった、って悦に入って大満足でした。
そうこうしているうちに3回目のお洗濯も終わり、六帖くらいあるサンルームが、竿とロープとハンガーに吊り下げられた色とりどりのお洗濯物でびっしりになってきました。
こういうのを何て呼ぶのだっけ?・・・万国旗、じゃなくて・・・満艦飾?だったっけ?
私が中学の頃、母と一緒に聞いたCDの中に、ランドリーゲートのなんとか、っていう曲があったな・・・あれはいい曲だったな・・・誰が歌っていたのだっけかな?
お洗濯にまつわるとりとめのないことを考えながら、お洗濯物を干していきます。
わりと深めな籐製バスケットの中にギッシリ詰まっていたプラスティック洗濯バサミも、残り少なくなってきました。
バスケットに手を突っ込むと、もう底についちゃうくらい。
あらら、足りるかな?
そう思ってバスケットを覗き込んだら、まばらになった洗濯バサミの隙間から思いがけないものを発見しました。
「ああー!ここにあったんだー!」
思わず大きな声を出しちゃうくらい、ずっとずっと探しつづけていたものでした。
あれは7月の下旬。
その日、学校が早く終わって午後3時頃には池袋に戻り、なんとなくプラプラとデパートのブランドショップをウインドウショッピングしていたら偶然、シーナさまとお逢いしたのでした。
数週間前に初めてシーナさまと遊んで以来、その後も何度かお逢いしていました。
ただ、シーナさまがいろいろとお忙しいため、まとまった時間が持てず、差し入れを持って私のお部屋にいらして普通にお食事とおしゃべりをするくらいのもので、えっちな遊びはあまりしていませんでした。
おしゃべりの合間にリモコンローターで遊ばれたり、一緒にお風呂に入ったり、鞭の扱いかたを教えてもらったり、そんな程度。
私のムラムラが大人しい時期だったこともありますが、何よりシーナさまとふたりでおしゃべりするのが楽しくて嬉しくて、充分満足していました。
「なんてステキな偶然!」
明るいベージュのパンツスーツ姿のシーナさまが満面の笑顔で近づいてきました。
聞けば、次のお仕事のお約束までの時間潰しでプラプラしていたそう。
まだ1時間ちょっとは余裕があるとのことなので、上のティーラウンジでお茶することになりました。
半端な時間帯だったのでティーラウンジはガラガラ、グルメフロアの通路に面した窓際の席に向かい合わせで座りました。
その頃ふたりとも、同じケータイゲームにハマっていたから話題には事欠きません。
あーだこーだと夢中でおしゃべり。
「それで、あそこで出てくる犬がさあ・・・」
そこまで言って、シーナさまがハッとしたお顔をされました。
「いけないいけない。肝心なことを忘れちゃうところだった」
シーナさまが意味ありげな笑顔を向けてきます。
「さっき、ステキな偶然、って言ったのは、あまりにタイミング良く直子が現われたからなのよ」
シーナさまは、いつの間にか私を、直子、と呼び捨てにするようになっていました。
私にはそれがなんだか、同年代のお友達同士、ぽく思えて、とても嬉しく感じていました。
「今日のわたしは、すごくいいものを持ってるの。もちろん、直子にとっていいもの、よ」
フフフンッ、て、ちょっと得意気に笑います。
「直子、犬の首輪、欲しがってたわよね?」
突然、話題がアダルティになりました。
SMの定番、メス犬マゾペットの必需品とも言っていいワンちゃんの首輪。
確かに、欲しいけれど買うのは恥ずかしい、みたいなことをシーナさまに言った覚えはあります。
でも、平日午後のデパートの明るく健全なティーラウンジで口にするような話題ではありません。
あわてて周りを見回してしまいましたが、相変わらずお店は閑散としていて、離れた席で中年のおじさまがひとり、ケータイを見つめているだけでした。
「え、えっと・・・」
私が答えられずにいるのにはおかまいなく、シーナさまはご自分のバッグをガサゴソやっています。
えっ?ここで出しちゃうつもりなの?
「ジャジャジャーン!」
お口での効果音と共に、テーブルの上にネックレスケースみたいなビロード地の立派な箱が置かれました。
ゴールドの金具をはずしてパッカンと開けると・・・
「見てわかるとは思うけれど、犬用の首輪じゃないわよ?ちゃんとしたブランド品の人間様用チョーカーだから」
「革もパールもいいものを使っているし、手造りで仕上げもしっかりしてる。その分お値段もそこそこするけれど」
「わあ、綺麗・・・」
濃い赤色と言うより、むしろエンジ色と言うべき艶のあるなめし革にゴールドの金具。
革全体にビーズとパールの細工飾りがいくつも付いていてキラキラ光っています。
太さは、男性用の腕時計のベルトくらい?
着けたら正面に来るであろうところに、直径3センチくらいのゴールドのリングがぶら下がっています。
「これのいいところはね、そのゴールドのリングに、チョーカーとおそろいのビーズやパールを使ったニップルチェーンやラビアチェーンをオプションで付けることか出来るの。ニップルチェーンってわかる?」
「え?えっと・・・」
ニップルは乳首、チェーンは鎖・・・
「簡単に言えば、乳首にクリップで留めるチェーンアクセね。直子そういうの好きでしょう?欲しかったら都合してあげる。クリットチェーンなんていうのもあるわよ?」
シーナさまのいたずらっ子な笑顔。
「まあ、チョーカーだけならアクセとして普段使いも出来るデザインだし、ゴシック系の服だとすっごく合うわね」
「そんなオプションまで作るくらいだから、メーカーはボンデージマニア向けのアクセとして作っているのは間違いないけれどもね」
「今度機会があったら、欧米でのパーティとかの画像や映像で、イブニングドレスにネックチョーカーを合わせている映画女優とかセレブのご婦人をよーく観察してごらんなさい」
「チョーカーからチェーンが垂れて、その先がドレスの中に隠れていたり、チョーカー以外胸元にアクセしていないのに背中にチェーンが見えたら、乳首かアソコにクリップ付けてるマゾッ子婦人だと思って間違いないわ」
「チェーンを短かめに調節すると、一足歩くたびに乳首が引っ張られたり、ラビアがパクパクしたり、たまらないらしいわよ?」
シーナさまったら、この場に似つかわしくないアダルティワード、炸裂です。
「今日、撮影見本で貸し出していたのがちょうど返ってきたの」
「わたしも、貸し出したことさえすっかり忘れていたのだけれど、現物見たらパッと直子の顔が浮かんでさ」
「これは直子にあげよう、って決めてたの」
「そしたら、よりによってその日に出会っちゃうのだもの。直子、あなた超ラッキーよ」
シーナさま、なんだか楽しそう。
「これを・・・くださるのですか?」
「そう。嬉しいでしょ?」
「でも、お高いのでしょ?」
「ああ、それは気にしないでいいの。お高いっていうのは上代、あ、お店で売るときの値段ね。わたしはサンプルとしてもらったようなものだから」
「それにこれ、意外に売れてて、もうけっこう儲けさせてもらっているし」
「そうそう、あの人も買ってくれたらしいのよ、オプションチェーン全部付きで・・・」
シーナさまは、かなり有名な日本の若手美人女優さんの名前を挙げました。
シーナさまのお仕事は、ご本人にちゃんと聞いたことはまだ無いのですが、これまでにしたいろいろな会話の断片を組み合わせると、輸入雑貨の仕入れと卸しを個人的にやっていらっしゃる、ということみたいです。
その手のものにとてもお詳しいし、今日みたいに会話にもよく出てきます。
海外へ買い付けにも頻繁に行ってらっしゃるみたい。
だからシーナさまは、ご自分のお仕事のことを隠しているのではなく、ただ単に説明するのがめんどくさいだけなのかもしれません。
でも、以前やよい先生にもはぐらかされた、やよい先生のお手伝い、がシーナさまのお仕事とどうつながるのか?という謎は、まだ残されたままでした。
「タダでもらうのがどうしても心苦しいって言うのなら、ここのお茶代で手を打つわ」
シーナさまがケースごとチョーカーを私の前に滑らせました。
「さあ、早速着けてみて」
「えっ?ここでですか?」
「そうよ。ただのよくあるアクセサリーだもの、別に恥ずかしがることはないでしょう?」
「直子の今日の服なら、むしろピッタリよ。なんだか、これを着けるために選んできたような色だもの。そういうのも含めて今日の直子は超ラッキー」
確かに私が今着ているお洋服、今日は曇り空で、そんなに暑くなかったので薄手のボートネックな半袖ニットを着ていました。
その色は、目の前にあるチョーカーとほとんど同じようなエンジ色でした。
「で、でも・・・」
私は再び、あたりを見回してしまいます。
シーナさまはアクセサリーとおっしゃいますが、その形も、その色艶も、前にぶら下がるリング=リードを付けて引き回す、からしても、私にはどうしても、メス犬マゾペットの首輪、にしか思えませんでした。
ここでこれを着けるということは、私はマゾです、と世間の皆様に宣言するのと同じ、って感じていました。
これは、シーナさまお得意の羞恥プレイ?
なんだかからだが火照ってきました。
「そ、それは・・・ご命令ですか?」
上目遣いにシーナさまを見て、すがるみたいに聞きました。
「そう。命令よ。ここで着けられないのなら、あなたにこれはあげられないわ」
数週間前のあの日みたいな冷たい口調になったシーナさまの瞳が、半分Sになりかかっていました。
「・・・わかりました」
マゾな私は、シーナさまのご命令には絶対逆らえないのです。
*
*独り暮らしと私 07へ
*
ランドリールームの床に横座りになって、洗濯機にもたれたまましばし休憩。
すっかり大人しくなった洗濯機のまっ白い外装が、火照ったからだの余韻を冷ますように、ひんやり肌を包んでくれます。
ようやく息も落ち着いてきて、立ち上がろうと洗濯機の側面に手をついたらヌルリと滑りました。
おっと危ない。
よろけた体勢を立て直しながらあらためて洗濯機を見ると、アソコを押し付けていた角を中心に、その左右の側面がベットリ私の愛液まみれ。
床には、見るからにトロリとした白濁液の水溜りまで出来ていました。
うわー、恥ずかしー。
「すぐにお拭きしますのでお許しください、洗濯機さま」
深々と礼をしてタオルを取りに走る私は、もうすっかり洗濯機さまの虜です。
自分のからだも乾いたタオルでざっと拭いて、ンーッって一回大きく伸びをしたら、なんだかからだが軽やかで気分もスッキリ、労働意欲も湧いてきました。
よーし、お洗濯をちゃっちゃと終わらせちゃおう。
それからしばらく、真面目にお洗濯に取り組みました。
2回目のお洗濯物を干す間に3回目を回し、3回目が終わったらすぐ4回目。
ただ、真面目とは言っても全裸生活中の私ですから、えっちなことはチラチラ考えてしまいます。
2回目のお洗濯物を干しながら、さっき洗濯機さまから責められていたときに浮かんだ宇宙人の妄想を思い出していたら、スーパーでの異国美人さんとの妄想とつなげられるストーリーが浮かびました。
スーパーの女子トイレで、全裸のまま取り残され途方に暮れていた私を、突然、淡い不思議な光が包みます。
フワッっとからだが浮く感覚がしたと思うと意識が途切れ、気がつけば宇宙船の中。
そして、さっきの洗濯機型ロボットによる人体実験をさせられたのでした。
宇宙人からテレパシーで教えてもらったところによると、彼らの星では、地球人を密かにさらってきて飼うのが流行していたのですが、虐待が絶えないため星の権力者から全面的に禁止されてしまい、仕方なく地球まで出張してきて、宇宙船内で楽しんでいるのだそうです。
何故そんなことをするのかと言うと、地球人が性的に興奮してオーガズムやエクスタシーに達するときに発せられるオーラみたいなパワーが、彼ら宇宙人の健康にとても良いらしいのです。
地球人が森林浴をするようなものだ、と言っていました。
中でもマゾな女性の羞恥を多く含んだオーガズムを浴びるのが一番良いそうで、私はずいぶん気に入られてしまい、必ずまた近いうちにさらうから、と約束までされてしまいました。
あの異国美人さんも宇宙人に気に入られちゃった一人で、今では宇宙人の手先になって、それっぽい女性を見つけると誘い込んで裸にしてから宇宙人に連絡する、というブローカーみたいなことをしているのだそう。
ということは、異国美人さんも本性はマゾなんだ。
全裸にするのは、服を着ていると宇宙船への転送を失敗しちゃう恐れがあるからで、虐めかたは、地球上のコンピューターネットワークから各国のアダルトビデオをハッキングしていろいろ研究している・・・
そんなストーリーでした。
今こうして文章にしたら、失笑しちゃうほど拙いご都合主義な設定ですが、そのときの私は、自分の考えたお話がうまくつながった、って悦に入って大満足でした。
そうこうしているうちに3回目のお洗濯も終わり、六帖くらいあるサンルームが、竿とロープとハンガーに吊り下げられた色とりどりのお洗濯物でびっしりになってきました。
こういうのを何て呼ぶのだっけ?・・・万国旗、じゃなくて・・・満艦飾?だったっけ?
私が中学の頃、母と一緒に聞いたCDの中に、ランドリーゲートのなんとか、っていう曲があったな・・・あれはいい曲だったな・・・誰が歌っていたのだっけかな?
お洗濯にまつわるとりとめのないことを考えながら、お洗濯物を干していきます。
わりと深めな籐製バスケットの中にギッシリ詰まっていたプラスティック洗濯バサミも、残り少なくなってきました。
バスケットに手を突っ込むと、もう底についちゃうくらい。
あらら、足りるかな?
そう思ってバスケットを覗き込んだら、まばらになった洗濯バサミの隙間から思いがけないものを発見しました。
「ああー!ここにあったんだー!」
思わず大きな声を出しちゃうくらい、ずっとずっと探しつづけていたものでした。
あれは7月の下旬。
その日、学校が早く終わって午後3時頃には池袋に戻り、なんとなくプラプラとデパートのブランドショップをウインドウショッピングしていたら偶然、シーナさまとお逢いしたのでした。
数週間前に初めてシーナさまと遊んで以来、その後も何度かお逢いしていました。
ただ、シーナさまがいろいろとお忙しいため、まとまった時間が持てず、差し入れを持って私のお部屋にいらして普通にお食事とおしゃべりをするくらいのもので、えっちな遊びはあまりしていませんでした。
おしゃべりの合間にリモコンローターで遊ばれたり、一緒にお風呂に入ったり、鞭の扱いかたを教えてもらったり、そんな程度。
私のムラムラが大人しい時期だったこともありますが、何よりシーナさまとふたりでおしゃべりするのが楽しくて嬉しくて、充分満足していました。
「なんてステキな偶然!」
明るいベージュのパンツスーツ姿のシーナさまが満面の笑顔で近づいてきました。
聞けば、次のお仕事のお約束までの時間潰しでプラプラしていたそう。
まだ1時間ちょっとは余裕があるとのことなので、上のティーラウンジでお茶することになりました。
半端な時間帯だったのでティーラウンジはガラガラ、グルメフロアの通路に面した窓際の席に向かい合わせで座りました。
その頃ふたりとも、同じケータイゲームにハマっていたから話題には事欠きません。
あーだこーだと夢中でおしゃべり。
「それで、あそこで出てくる犬がさあ・・・」
そこまで言って、シーナさまがハッとしたお顔をされました。
「いけないいけない。肝心なことを忘れちゃうところだった」
シーナさまが意味ありげな笑顔を向けてきます。
「さっき、ステキな偶然、って言ったのは、あまりにタイミング良く直子が現われたからなのよ」
シーナさまは、いつの間にか私を、直子、と呼び捨てにするようになっていました。
私にはそれがなんだか、同年代のお友達同士、ぽく思えて、とても嬉しく感じていました。
「今日のわたしは、すごくいいものを持ってるの。もちろん、直子にとっていいもの、よ」
フフフンッ、て、ちょっと得意気に笑います。
「直子、犬の首輪、欲しがってたわよね?」
突然、話題がアダルティになりました。
SMの定番、メス犬マゾペットの必需品とも言っていいワンちゃんの首輪。
確かに、欲しいけれど買うのは恥ずかしい、みたいなことをシーナさまに言った覚えはあります。
でも、平日午後のデパートの明るく健全なティーラウンジで口にするような話題ではありません。
あわてて周りを見回してしまいましたが、相変わらずお店は閑散としていて、離れた席で中年のおじさまがひとり、ケータイを見つめているだけでした。
「え、えっと・・・」
私が答えられずにいるのにはおかまいなく、シーナさまはご自分のバッグをガサゴソやっています。
えっ?ここで出しちゃうつもりなの?
「ジャジャジャーン!」
お口での効果音と共に、テーブルの上にネックレスケースみたいなビロード地の立派な箱が置かれました。
ゴールドの金具をはずしてパッカンと開けると・・・
「見てわかるとは思うけれど、犬用の首輪じゃないわよ?ちゃんとしたブランド品の人間様用チョーカーだから」
「革もパールもいいものを使っているし、手造りで仕上げもしっかりしてる。その分お値段もそこそこするけれど」
「わあ、綺麗・・・」
濃い赤色と言うより、むしろエンジ色と言うべき艶のあるなめし革にゴールドの金具。
革全体にビーズとパールの細工飾りがいくつも付いていてキラキラ光っています。
太さは、男性用の腕時計のベルトくらい?
着けたら正面に来るであろうところに、直径3センチくらいのゴールドのリングがぶら下がっています。
「これのいいところはね、そのゴールドのリングに、チョーカーとおそろいのビーズやパールを使ったニップルチェーンやラビアチェーンをオプションで付けることか出来るの。ニップルチェーンってわかる?」
「え?えっと・・・」
ニップルは乳首、チェーンは鎖・・・
「簡単に言えば、乳首にクリップで留めるチェーンアクセね。直子そういうの好きでしょう?欲しかったら都合してあげる。クリットチェーンなんていうのもあるわよ?」
シーナさまのいたずらっ子な笑顔。
「まあ、チョーカーだけならアクセとして普段使いも出来るデザインだし、ゴシック系の服だとすっごく合うわね」
「そんなオプションまで作るくらいだから、メーカーはボンデージマニア向けのアクセとして作っているのは間違いないけれどもね」
「今度機会があったら、欧米でのパーティとかの画像や映像で、イブニングドレスにネックチョーカーを合わせている映画女優とかセレブのご婦人をよーく観察してごらんなさい」
「チョーカーからチェーンが垂れて、その先がドレスの中に隠れていたり、チョーカー以外胸元にアクセしていないのに背中にチェーンが見えたら、乳首かアソコにクリップ付けてるマゾッ子婦人だと思って間違いないわ」
「チェーンを短かめに調節すると、一足歩くたびに乳首が引っ張られたり、ラビアがパクパクしたり、たまらないらしいわよ?」
シーナさまったら、この場に似つかわしくないアダルティワード、炸裂です。
「今日、撮影見本で貸し出していたのがちょうど返ってきたの」
「わたしも、貸し出したことさえすっかり忘れていたのだけれど、現物見たらパッと直子の顔が浮かんでさ」
「これは直子にあげよう、って決めてたの」
「そしたら、よりによってその日に出会っちゃうのだもの。直子、あなた超ラッキーよ」
シーナさま、なんだか楽しそう。
「これを・・・くださるのですか?」
「そう。嬉しいでしょ?」
「でも、お高いのでしょ?」
「ああ、それは気にしないでいいの。お高いっていうのは上代、あ、お店で売るときの値段ね。わたしはサンプルとしてもらったようなものだから」
「それにこれ、意外に売れてて、もうけっこう儲けさせてもらっているし」
「そうそう、あの人も買ってくれたらしいのよ、オプションチェーン全部付きで・・・」
シーナさまは、かなり有名な日本の若手美人女優さんの名前を挙げました。
シーナさまのお仕事は、ご本人にちゃんと聞いたことはまだ無いのですが、これまでにしたいろいろな会話の断片を組み合わせると、輸入雑貨の仕入れと卸しを個人的にやっていらっしゃる、ということみたいです。
その手のものにとてもお詳しいし、今日みたいに会話にもよく出てきます。
海外へ買い付けにも頻繁に行ってらっしゃるみたい。
だからシーナさまは、ご自分のお仕事のことを隠しているのではなく、ただ単に説明するのがめんどくさいだけなのかもしれません。
でも、以前やよい先生にもはぐらかされた、やよい先生のお手伝い、がシーナさまのお仕事とどうつながるのか?という謎は、まだ残されたままでした。
「タダでもらうのがどうしても心苦しいって言うのなら、ここのお茶代で手を打つわ」
シーナさまがケースごとチョーカーを私の前に滑らせました。
「さあ、早速着けてみて」
「えっ?ここでですか?」
「そうよ。ただのよくあるアクセサリーだもの、別に恥ずかしがることはないでしょう?」
「直子の今日の服なら、むしろピッタリよ。なんだか、これを着けるために選んできたような色だもの。そういうのも含めて今日の直子は超ラッキー」
確かに私が今着ているお洋服、今日は曇り空で、そんなに暑くなかったので薄手のボートネックな半袖ニットを着ていました。
その色は、目の前にあるチョーカーとほとんど同じようなエンジ色でした。
「で、でも・・・」
私は再び、あたりを見回してしまいます。
シーナさまはアクセサリーとおっしゃいますが、その形も、その色艶も、前にぶら下がるリング=リードを付けて引き回す、からしても、私にはどうしても、メス犬マゾペットの首輪、にしか思えませんでした。
ここでこれを着けるということは、私はマゾです、と世間の皆様に宣言するのと同じ、って感じていました。
これは、シーナさまお得意の羞恥プレイ?
なんだかからだが火照ってきました。
「そ、それは・・・ご命令ですか?」
上目遣いにシーナさまを見て、すがるみたいに聞きました。
「そう。命令よ。ここで着けられないのなら、あなたにこれはあげられないわ」
数週間前のあの日みたいな冷たい口調になったシーナさまの瞳が、半分Sになりかかっていました。
「・・・わかりました」
マゾな私は、シーナさまのご命令には絶対逆らえないのです。
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