2011年6月4日

しーちゃんのこと 07

高校へ進むのを機会に、心に決めていたことがありました。
念願だった女子校にも進めたことだし、今までの自分の性格を少し意識して変えてみよう、と。
なるべく明るくふるまうようにして、積極的に知らない人とも接するようにして、たくさんお友達を作って、たくさん楽しいことが出来るといいな、と。

もちろん中学での三年間でも、楽しいことはたくさんありました。
でも、入学時にこの地域に転居してきた関係で、知っている人がクラスに一人もいなかったこともあり、なんとなく人間関係全般で受け身な立場に慣れてしまい、愛ちゃんたちと仲良くなった後でも、なんだかいつも、みんなに引っぱってもらっているような感じをずーっとひきずっていました。
それに加えて、中二の夏休みに受けたトラウマ・・・
自分の内向きがちな性格とも相まって、中学での三年間は、自分から何かをする、ということがほとんど無かった気がしていました。
それを変えたいと思ったんです。

今度進む高校は、いろんな地域から生徒が集まりますから、みんな最初は知らない同士です。
今までの私を知っている人は、たぶんしーちゃんだけ。
それまでの人間関係が一度リセットされる進学は、自分の内向きがちなキャラを変える絶好のチャンスだと思ったんです。

卒業式の後で私はしーちゃんに、そんな自分の決意を告げました。
「それ、わかる気がする。ワタシもなおちゃんと同じようなことを考えてたヨ。ワタシももう少し社交的にならなきゃナー、って」
しーちゃんがニッコリ賛同してくれました。
「それに、新しい学校でまったくみんな知らない人ばっかだったら、やっぱりちょっと身構えちゃうけど、なおちゃんも一緒だしネ。もしも同じクラスになれなくても、同じ学内ならいつでも会えるし」
「ワタシもいろいろと、高校デビューしちゃうつもりだヨ」
しーちゃんも、まだ見ぬ女子高生活にすっごくワクワクしているようでした。
「でもやっぱり、なおちゃんと一緒のクラスになれるといいナー」
それは、私も同じ気持ちでした。

私が住んでいる町の最寄りの駅からターミナル駅を超えて5つめの駅に、その女子高校はありました。
初めての電車通学です。
入学式の朝、車で送ると言ってくれる母の申し出を断って、しーちゃんと駅で待ち合わせ、一緒に学校に向かいました。
朝の電車は混むし、痴漢とかのことも聞いていたので、女性専用車両に乗り込みました。
想像していたより全然、電車内は混んでいなくて、これなら別に無理して女性専用車両に乗らなくてもいいみたい。

私としーちゃんは、もちろん同じデザインの制服を着ています。
濃いめのグレーのブレザーに同じ色の膝丈スカート。
ブレザーの下には、ブレザーと同じ色で、ショルダーラインの幅が広く、両脇が大きく開いた、ちょうど和服の裃みたいなデザインのベスト。
その下には、白のブラウスに紺色のネクタイ。
全体的に直線の多いシャープなデザインで、なんだかオトナっぽくって、私は一目でこの制服をすっごく気に入っていました。
この制服が着たかった、っていうのもこの学校を選んだ大きな要因でした。
ショートヘアのしーちゃんが着ると、西洋の美少年お坊ちゃまみたいで、それはそれですっごく似合っていました。

校舎は、駅を出てから商店街、住宅街を10分くらい歩いて、周囲に田園風景が広がり始めるのどかな一角にありました。
昭和の戦争のずっと前からあったというその女子高は、さすがに時代を感じさせる厳かな雰囲気の校門とクラシカルながら立派な校舎。
受験のときは、ちらほらと雪が舞っていた畑沿いの道も、今日は、両脇に植えてある何本もの桜の木に、キレイなピンクの花びらが満開でした。

校門をくぐり、クラス分けが載っているプリントを受付でもらいました。
「やったヨー、なおちゃん!おんなじクラスだヨ!」
しーちゃんが大きな声をあげて私に飛びついてきました。
「よかったー。しーちゃん、また一年、よろしくねー」
私もすっごく嬉しくて、しーちゃんと抱き合って喜びました。

一年A組。
入学式を終え、クラスのお教室に入ると、私たちはとりあえず出席番号順に並んで着席させられました。
一クラス32名、全員女子。
なんだかホッとしてしまいます。

順番に短かく自己紹介をしていきました。
もしも知っている顔が誰もいない一人ぼっちの状態でしたらドキドキの瞬間ですが、私の3つ前の席にしーちゃんがいると思うと、ずいぶん気がラクになって、スラスラと自己紹介できました。
イイ感じです。
この調子でお隣の人にも声をかけてみようか・・・
担任となった30代くらいの女性の先生のお話が終わって解散になったとき、そう考えて右隣に顔を向けたら、
「森下直子さん、だったっけ?あたし、ナカガワアリサ、よろしくね?」
その人のほうから声をかけてきました。
肩くらいまでの髪を真ん中で分けて、左右を短くおさげにした人なつっこそうなカワイイお顔がニコニコ私を見つめていました。
「あ、はいっ。こちらこそよろしくですっ!」
私も精一杯明るい笑顔でごあいさつしました。
ナカガワさんは、なおいっそうやさしげな笑みになって、右手を小さく左右に振りながら、ご自分のお友達らしい人のところへゆっくりと歩いていきました。

早速お友達が出来そうです。
しーちゃんとも一緒のクラスになれたし、今のところ最高な滑り出し。
そんなふうに、私の高校生活が始まりました。

高校進学と前後して、我が家にも大きな変化がいくつかありました。

一つは、ハウスキーパーの篠原さん親娘が、我が家の二階で同居することになったこと。
それまで篠原さんが住んでいたマンションが更新になるのを機に、いっそのこと住み込みで働いたら?、という父の提案でした。
これ以上ご迷惑はかけられない、と篠原さんはずいぶんご遠慮されたそうですが、篠原さんのことをすっごく気に入っている母がモーレツに説得したようです。
家賃がもったいないし、我が家の二階には使っていないお部屋がいくつもあるし、私の受験も終わるし、ともちゃんも大きくなったし・・・
それまで、篠原さんが来られない日には、日中をずっと一人で過ごしていて、大いにヒマをもてあましていたらしい母の熱心な説得に篠原さんも恐縮しつつもうなずいてくれて、四月の中旬にお引越ししてきました。

もちろん私も大歓迎です。
篠原さんは、優しくて優雅でキレイで大好きですし、小学校二年生になったともちゃんは、私にとても懐いてくれていて、ちっちゃいからだでニコニコしてて本当に可愛らしくて、ずっと長い間、妹が欲しかった私は大喜び。
これからいつでも、お家に帰るとともちゃんがいて、一緒に遊んだり、お風呂に入ったりできるんだ、と思うと知らず知らず、顔がほころんでしまいます。

我が家の二階の改装は、私の受験が終わった2月下旬から始まっていました。
一階に、篠原さん宅専用の玄関を設けて、我が家の玄関を通らなくても篠原さん宅に入れるようにして、二階のお部屋も、篠原さんのほうからは、棟つづきの私のお部屋のほうには来れないようにすることになっていました。
「親しき仲にも礼儀あり、でしょ?篠原さんたちが気兼ねなくくつろげるように、お仕事以外のプライベートでは、お互いのプライバシーが完全に守れるようにしましょう」
という母の提案でした。
そのため、二階にもお風呂場やキッチンを増設したり、篠原さん宅用玄関からつづく階段を新たに加えたり、と大々的な改装工事となって、完成が予定より一週間ほど遅れてしまいました。

私がちょっぴり不安だったのは、お部屋でオナニーするときの声・・・
今までは、二階には誰もいなかったけれど、これからは篠原さん親娘がお部屋一つと壁を挟んだ向こう側にいつもいることになります。
もちろん今までも声はなるべく押し殺すようにしていたので、あまり気にすることもないとは思うのですが・・・

もう一つの変化は、パソコン一式と携帯電話を買ってもらったこと。
とくにパソコンは、中三のとき、相原さんのお家でさわらせてもらって以来、欲しいなあ、と思っていたものなので、すっごく嬉しかった。

高校の入学式が迫った日曜日の昼下がり。
めずらしく父と二人で、車でおでかけしました。
画面が大きめのノートタイプのパソコンとプリンター、その他を父が選んでくれて、お家に戻ると、設置も全部父がやってくれました。
「ほれ。これで一応インターネットの接続もプリンターも全部動くから。あとはこの本をよく読んで、自分で覚えなさい。なあに、直子ならすぐに使いこなせるようになるさ」
言いながら父は、分厚い本を3冊、私に手渡してくれました。
「タイピングの基本とワープロと表計算、それくらいをまず覚えればいいから」
父はなんだか嬉しそうに笑うと、私の肩を軽くポンッて叩いてお部屋から出て行きました。

パソコンを使いこなせるようになれば、あの日相原さんのお部屋で見たえっちなホームページとかも自由に見ることができる・・・
私は、早速その夜から、熱心にパソコン操作のお勉強を始めました。


しーちゃんのこと 08

2011年5月29日

しーちゃんのこと 06

私の背より50センチくらい高くて頑丈そうな本棚には、少女マンガ、少年マンガ混ぜこぜで、ずいぶん昔の名作から最新刊まで膨大な数のコミックス本が判型を合わせて整然と並んでいます。
棚が横にスライドする方式の本棚なので、裏にもまだ本が詰まっています。
軽く1000冊くらいはありそう。
「親が持っていたのも並べてあるからネー」
最初にお部屋を訪ねたとき、しーちゃんが言っていました。

有名作家さん以外の作品は、ジャンルによっておおまかに分けられているみたいで、ラブコメ、スポーツもの、ギャグマンガ、ファンタジーもの、グルメものなどなどでひとかたまりになっていました。
これまだ読んでないっ、あっ、これも・・・
心の中でタイトルにチェックを入れながら、上から下まで順番にじっくり見ていきました。
一番下の段は、週刊マンガ誌と同じ判型の本が並んでいて、その大部分が背表紙のついていない、パンフレットみたいな二つ折り中綴じの薄い本でした。

私たちが中二で、私がまだあのトラウマを受けてない頃、みんなでしーちゃんのお部屋で遊んでいたとき、このコーナーから何気なく一冊取り出した私は、ひどいショックを受けました。

すっごく人気のある男子向けサッカーマンガの主人公とそのライバルが、上半身裸で顔をくっつけあってキスしているカラーイラストが表紙に描かれていました。
「うわっ!」
私は思わず、大きな声をあげちゃいました。
「あーあっ。なおちゃん、みつけちゃったねー」
曽根っちがニコニコ笑って近づいてきます。
「そのへんはBLのどーじんぼんなんだよ」
「ビーエル?・・・ドージンボン?」
「同人本。アマチュアのマンガ好きな人たちが自主制作で、人気マンガの主人公や設定だけ借りて、自分の考えたストーリーで描いた本のことだヨ。それで、男の子同士でえっちなことをさせちゃうのがBL、ボーイズラブ、ネ」
しーちゃんも私の傍らに来て、教えてくれます。
「やおい、って前に話題になったじゃない?あの流れの二次創作本で、一年に何回か、そういうのばっかり集まった盛大な即売会があってね・・・」
しーちゃんと曽根っちで、いろいろ詳しく教えてくれました。

その解説を聞きながら中身をパラパラッとめくると、二人が真っ裸になって抱き合っていたり、ライバルの告白に主人公が頬を染めていたり・・・
正直、私は、なんだかキモチワルイ・・・って思っちゃいました。
「パロディみたいなもんだからネー。ワタシは純粋にギャグマンガとして楽しんでるヨー」
しーちゃんは、無邪気に笑いながら言っていました。

そんなことを思い出して、今の私はこの段のは見れないなー、なんて考えていたら、ベッドのしーちゃんから声がかかりました。
「そこにあったBL本は、全部お姉ちゃんの部屋に移しちゃったから、今そこにある同人誌は、非エロと百合系だけだヨ」
しーちゃんは、月刊マンガ誌を読み終えたらしく、ベッドから下りて私の横にペタンと座り込みました。
「お姉ちゃん、BLにどっぷりハまっちゃったみたいで、最近は自分でも何か書いているみたい。もうすっかりフジョシ」
「フジョシ?」
「腐った女子って書いて腐女子」
「えーっ?しーちゃんのお姉さん、キレイな人じゃない?それに生徒会副会長でしょ?」
「そういうのはカンケーないの。考え方が腐っているから腐女子。だって一日中、男同士のカップリング、考えてるんだヨ?どっちが受けでどっちが攻め、とか」
「お姉ちゃんがそうなっちゃったから、ワタシはじゃあ、女同士でいこうかなア、なんて。百合系のほうが絵柄的にもキレイでしょ?」
しーちゃんはそう言うと、その段から一冊の薄い本を抜き出しました。
これまた良い子に大人気な美少女戦士が二人、裸で抱き合っている表紙でした。
私は少し、ドキンとします。

「お姉ちゃんがネー、ワタシが高校進んだら、同人誌の即売会、連れて行ってくれるって。そんときは、なおちゃんも、一緒に行こう?」
「う、うん。ぜひ」
「実はネー、ワタシも最近、ちょこっとマンガ描き始めたんだ。まだまだ人に見せられるほどじゃないけど・・・」
「今は受験勉強でそれどころじゃないけど、終わったら本格的に描くんだ!ガラかめの二次ものとか、描きたいなア・・・コスプレもしてみたいし」
しーちゃんが夢見る目つきでつぶやきます。

しーちゃんから手渡された美少女戦士の本をパラパラとめくってみます。
絵はあんまりうまくない感じですが、女の子同士で胸をさわりあったりして、感じている顔になっていたりします。
「しーちゃんは、こういうマンガをみると、何て言うか、その、コーフンしたり、するの?」
その絵を見ていたら、ちょっと大胆な気持ちになってきたので、思い切って聞いてみることにしました。
「うーん・・・コーフンってほどじゃないけど、ちょこっとドキドキしたりはするかナ・・・でも・・・」

しーちゃんはうつむいて、言おうか言うまいか少し迷ってたみたいでしたが、やがて真っ赤になったお顔を上げて小さな声で言いました。
「でもワタシ、まだ・・・まだひとりエッチをちゃんとしたことないんだよネ・・・マンガでやってるみたいに自分のからださわってみても、くすぐったいだけだったり、痛かったり・・・ぜんぜん気持ちいい感じがしないって言うか・・・」
「たぶんきっとまだ、ワタシのからだはオトナじゃないんだヨ。もうちょっと成長しないとサ・・・」
「・・・ふーん」
私は、ドキドキしながらしーちゃんの告白を聞いていました。
「だから、そういうのはきっと高校生になったらいろいろわかるんじゃないかなー、って思ってるヨ」
しーちゃんが私を見つめて、恥ずかしそうにニッて笑いました。
「ワタシ、こんなこと教えたの、なおちゃんだけだヨ。曽根っちにも言えない。なおちゃん、何でもちゃんと聞いてくれる感じがして、すごーく安心できるから」
しーちゃんがいつもの感じに戻って、ニコニコ笑って照れ臭そうに私を見つめてくれます。

その告白はすっごく嬉しかったのですが、私の心は、その後の展開に先走りしていました。
しーちゃんから、なおちゃんはどうなの?ひとりエッチしてるの?って絶対聞かれると思って、心臓が飛び出しそうなくらいドキドキしていました。
聞かれたら何て答えよう・・・少しだけ、でいいかな?どういうふうにするの?って聞かれたらどうしよう・・・こんなふうに、なんて教えてあげたりして、そのまま一気に今夜が二人の記念日になっちゃったりして・・・

でも、しーちゃんとのおしゃべりは、いつの間にか、今一番お気に入りのライトノベルのお話に移ってしまい、二度とえっち系な話題には戻ってきませんでした。

その後また少しゲームをやったり、おしゃべりをして夜が更け、二人とも眠くなってきました。
パジャマ代わりのロングTシャツに着替え、お夕食の後しーちゃんのお母さまが持ってきてくれたお布団を床に敷き、電気を消して横になりました。

「ねえ、なおちゃん、そっちだと寒くない?」
少ししてから、ベッドのしーちゃんが声をかけてきました。
「ううん。だいじょうぶ」
「暖房消すとけっこう寒いし、床も冷えちゃうし・・・なおちゃんもこっちで寝ヨ?って言うか、寝て・・・」
「う、うん。いいけど・・・」
私はまたドキドキしてきました。

お布団から出て、枕だけ持って、ベッドのしーちゃんの左横にからだをすべらせました。
「うふふ。ほらー、二人だとあったかいネー」
しーちゃんの体温でほんわか温まった毛布の中で二人、横向きに向き合いました。
しーちゃんのベッドは、二人だとちょっとだけ狭い感じ。
「今日はすごーく楽しかったヨー。ワタシなおちゃん、だーいすきっ!」
しーちゃんがそう言って、寝ている私のほうに両腕を伸ばし、私のからだを抱きしめてきました。
しーちゃんの頭が私の首の下あたりに埋まっています。
まるで小さな子がお母さんに抱きつくみたいな感じです。
「あらあら、しーちゃんは甘えん坊さんねー」
私も両腕でしーちゃんの背中を抱き寄せ、右手でしーちゃんの髪をやんわり撫ぜます。
「修学旅行のときお風呂で見たなおちゃんの裸、すごーくキレイだった・・・」
しーちゃんが私の胸に顔を埋めたまま、ボソボソっとつぶやきました。
「やんっ。恥ずかしい・・・」

しーちゃんは、下半身を丸めていて、毛布の中でしーちゃんの両膝が私の伸ばした太腿にあたっていました。
私の心臓がひっきりなしにドキドキしているのが、しーちゃんにも伝わっているはずです。
しーちゃんのからだは細くて、しなやかで、温かくて・・・
私は、この後どうするか、盛大に迷っていました。

そのうち、私の胸の谷間あたりに規則正しい寝息が、くすぐったく感じられるようになっていました。
どうやらしーちゃんは、私にしがみついたままあっさり、眠ってしまったようでした。

しーちゃんの生身のからだの感触にしばらくドキドキしていた私の鼓動が徐々に治まって、今は何て言うか、自分の中の母性のようなものを感じていました。
しーちゃんを守ってあげなくちゃいけない、みたいな。

焦る必要はないみたいです。
さっきのお話だと、しーちゃんは、まだ自分がえっちなことをするのは早すぎると思っているみたいだったし、高校に入ってから、いろいろしてみたいようだったし。
しーちゃんが私を好いていてくれることは、充分確認できたし。
新しいステップを踏み出すのは、高校に入ってから、が正解かな?
しーちゃんを抱く腕に力を込めて、そんなことを考えているうちに、私もいつしか眠りに落ちていました。

そんな夜を過ごしつつも、お勉強会の成果もあり、翌年の二月中旬、私としーちゃんは無事、第一志望の女子高校に合格することができました。


しーちゃんのこと 07

2011年5月22日

しーちゃんのこと 05

修学旅行の後、文化祭、体育祭とたてつづけにあり、文化祭では、私たちのクラスは演劇をやることになりました。
演目は、星の王子さま、で、曽根っちがキツネさんの役、あべちんが火山その2の役に選ばれました。
しーちゃんは背景美術、ユッコちゃんはタイムキーパー、私は衣装作りで、愛ちゃんが総監督。
みんな遅くまで学校に残って準備して、たくさん練習して。
文化祭最終日に体育館のステージで、たくさんのお客さんを前に曽根っちとあべちんが可憐な演技を見せてくれました。
体育祭では、愛ちゃんとユッコちゃんが徒競走やクラス対抗リレーで大活躍しました。

それも終わってしまうといよいよ、本格的な受験モードになってきました。
私も入試が終わるまで、バレエ教室をお休みすることにしました。
愛ちゃんグループでときどきやっているお泊り会も、お勉強会という名目に変わりました。
途中まではちゃんと真面目にお勉強していても結局、真夜中にはおしゃべり会になってしまうんですけどね。

グループのお勉強会とは別に、しーちゃん一人でもよく私の家にお勉強をしに来るようになりました。
「ほら、ワタシの部屋は勉強に適した環境じゃないんだよネー。遊ぶ物だらけだから、集中できなくって」
一週間に一、二回、放課後からとか、お夕食が終わった頃に訪ねてきました。
2、3時間集中してお勉強してからおしゃべり、っていうのがパターンでした。

数学や理科は私のほうが得意で、国語と社会はしーちゃん、英語は同じくらい。
お互いの不得意科目は相手に教えてもらって、すっごく楽しく有意義にお勉強できました。
お勉強の合間にしーちゃんの好きなアニメやゲームのことをお話したり、私がバレエのステップを教えたり。
私たちは、すっかり打ち解けていました。

母もしーちゃんのことがとても気に入ったみたいでした。
「しーちゃんて雰囲気がロココよねー。絶対、ゴスロリが似合うわよ。高校合格したらお祝いさせてね」
って、いつも言っていました。

しーちゃんは、私と二人だけのときは、よくしゃべるし表情も豊かで、みんなでいるときよりずっと明るいオーラを発していました。
私がそれについて聞くと、
「ワタシ、3人以上での会話って、苦手なんだよネー。ワタシがしゃべって相手が答えてくれる、相手が何か言ってワタシが答える、っていうくりかえしじゃないとちゃんと伝えられない、っていうか・・・。だから、みんなといるときは聞き役になってたほうが楽しい、みたいな・・・」
「同じこと、曽根っちにも言われてるヨ。曽根っちと二人のときも、ワタシけっこうしゃべってる」
「ふーん」
「なおちゃんも、そういうとこ、あるよネ?ワタシたち、似てるよネ?」
「うん。確かにそうかもしれない・・・」

曽根っちは、カレシとおつきあいを始めてから、私たちといる時間が少なくなりつつありました。
お泊り会も欠席しがち。
カレシにお勉強を教えてもらっているようです。
「しーちゃん、最近、曽根っちがあんまりかまってくれなくて、寂しくない?」
「うーん・・・正直言うとちょっと寂しいけど・・・でも、しょうがないヨ。曽根っちは、それがシアワセなんだもん。ワタシたちのつきあい長いし、曽根っちがシアワセになれるなら、ワタシ嬉しいし、それに・・・」
「それに、今はなおちゃんとこんなに仲良くなれたし、ネ?」
そう言って微笑むしーちゃんを、私はなりふりかまわずその場で抱きしめたくって、がまんするのが大変でした。

年末にかけて、たくさんの時間をしーちゃんと過ごしたことで、しーちゃんと私は、お互いの性格や好み、長所や短所など、たいがいのことは、わかりあえるようになっていました。
しーちゃんは、聡明で、素直で、恥ずかしがりやさんで、可愛らしくて、私はどんどん好きになりました。
ただ、えっちに関することについては、やっぱり言い出せないままでいました。
しーちゃんと親密になればなるほど、どんどん言いづらい感じになっていました。
穏やかな関係に余計な石を投げ入れて波をたてるのが、前以上に怖くなっていました。

その頃、私がお気に入りだった妄想オナニーのシチュエーションは、10月のある夜、確かしーちゃんがお泊りに来て楽しく過ごした次の日の夜、に、唐突に見た夢がヒントになっていました。

なぜだか、しーちゃんが悪い人にさらわれてしまいます。
私は、しーちゃんを助けるべく、悪い人のアジトに潜入します。
悪い人のアジトは、田舎によくある古くて大きいお屋敷みたいな日本家屋で、そのお庭のはずれの大きな土蔵の中にしーちゃんは閉じ込められていました。
なんでそんな建物なのか、と言うと、これは、その数日前にテレビで見た、田舎の旧家を舞台に、ちょっとえっちな場面もある推理サスペンスものの日本映画の影響だと思われます。
父の実家のお屋敷にも似てたかな?

しーちゃんは、薄暗い土蔵の中に下着姿、薄いブルーのスポーツブラとカワイイ青水玉のショーツ姿、で、お腹のところを縄で大きな柱にくくりつけられていました。
口には猿轡をされ、ガックリ首を落としてうなだれています。
「なんでこんなことをするのっ!?」
「それは、アナタをおびき寄せるためよ」
悪い人の声は、女性でした。
悪い人の顔は影に覆われて見えず、ワザと出しているような低い声だけが響きます。
「この子を助けたかったら、あたしの言う通りにすることね・・・」
悪い人の声に気がついたのか、しーちゃんがゆっくりと顔を上げて、私のほうを潤んだ瞳で見つめてきます。
「しーちゃんっ!」
「どうなの?あたしの言う通りにするの?」
「わ、わかりました。言う通りにします。その代わり早くしーちゃんの縄を解いてあげてください」
「聞きわけがよくて助かるわ」
悪い人は、柱の後ろ側にまわってお腹の縄をほどき、しーちゃんは膝から崩れてその場にペッタリ腰を落としました。
しーちゃんの両手は手錠で、両脚は足枷で、まだ繋がれたままです。
「この手錠と足枷は、アナタの今後の服従度次第ね。うふふ。それじゃあまず、服を全部脱ぎなさい・・・」

私は、なぜだか学校の制服を着て、そのアジトに乗り込んできていました。
震える手でブレザーのボタンをはずし、ブラウスのボタンをはずし、スカートのホックをはずし・・・
衣服を全部脱ぎ終えると、なぜだかその下にバレエの真っ白なレオタードを着ていました。
それもバストのカップと下のサポーター無しの、素肌にじかの状態で。

「あらー。やる気マンマンなのね?さあ、早くそれも脱ぎなさい」
何がやる気マンマンなのか、私にはわからないのですが、その言葉に私はカーッと恥ずかしくなって、みるみる乳首が勃ち、アソコが湿ってきてしまい、そのいやらしい証拠が薄い布地越しにクッキリと、バストの突起と股間のスジとなって浮き出てしまいます。
「ほら、早く言う通りにしないと、この子がもっとヒドイめにあうことになるわよ?」
私は、観念してレオタードの肩紐に手をかけて・・・

こんな感じで、この後私は、その悪い人にたっぷり苛められてしまいます。
四つん這いの恥ずかしい格好をさせられたり、洗濯バサミをたくさん挟まれたり、お尻をペンペン叩かれたり、裸のままお外に連れ出されたり・・・

そんな私の恥ずかしくてみじめな姿を、しーちゃんがじーっと見つめています。
お風呂場で私のからだを見つめてくれたときと同じ、食い入るような視線。
その肌に突き刺さるような視線が、ひどく気持ちいいんです。

その夢から目覚めたとき、私のショーツは、まるでオモラシしてしまったみたいにグッショリ濡れていました。
夢だけでこんなに濡れたりするのかな?
たぶん寝ている間に無意識に、いろいろからだをまさぐったのかな?
どちらにせよ、生まれて初めての経験でした。

このえっちな夢がすっかり気に入ってしまった私は、高校入学前後までムラムラ期が来るたびにいつも、責められかたの細部はいろいろ変えつつ、この夢を元にした妄想でオナニーしていました。
もちろん姿見の前で、声を殺して。

しーちゃんに直接手をふれたり、しーちゃんの手でふれられたり、ということは、いっさい考えませんでした。
しーちゃんを助けるために私が恥ずかしいことをしなければならない、っていう状況がひどく気に入っていたみたいです。

夢で見たとき、月の光が土蔵の高いところにある窓から一筋差し込んで、悪い人が相原さんだったとわかる、という場面があったので、妄想するときの悪い人役は、最初から相原さんになっていました。

この夢を細かく分析すれば、その頃の私のいろいろこんがらかってしまった深層心理、受験を控えたストレスとか、相原さんやしーちゃんに対する想いなどなど、がわかるような気もしたのですが、なんだか結論を出すのが怖い感じがするし、考え過ぎてますます迷路にハまってしまいそうな気もしたので、やめておきました。

冬休みに入って、年の瀬も押し迫ったある日、久しぶりにしーちゃんのお家に遊びに行くことになりました。
私たち二人、ずいぶん一生懸命お勉強してきたから、年末に一日くらい、楽しいものがたくさんあるしーちゃんのお部屋でマンガやゲームやアニメ三昧で過ごしてもバチは当たらないだろう、っていう、がんばった自分たちにご褒美お泊り会、でした。

お昼過ぎからしーちゃんのお部屋で、対戦テレビゲームやしーちゃんのおすすめアニメを見て楽しく過ごしました。
お夕食は、ご家族のほうのお部屋に招かれてご一緒しました。
しーちゃんのお父さまとお母さまも一緒で、お姉さんは、お出かけ中のため、いませんでした。
ご両親とも、今までみんなで遊びにきたときに何度もお顔を合わせていたのですが、こうして間近でご一緒してみると、しーちゃんのお父さまの温和そうなお顔は確かに、クイーンのベースの人に似ているかも、と思いました。
お母さまは、しーちゃんをそのままオトナの体つきにしたような可憐なかたで、相変わらずお綺麗でした。

すっごく美味しかったお夕食を終え、しーちゃんのお部屋に二人で戻りました。
「ふーっ。ちょっと食休みネ」
しーちゃんはそう言うと、ベッドに寝転んで、まだ読み終えていないらしい月刊少女マンガ誌を途中から読み始めました。
私は、みんなで来たときだとゆっくりと見れなかった、しーちゃんの膨大なコレクションがぎっしり詰まった本棚を、端からゆっくり眺め始めました。


しーちゃんのこと 06