2011年7月9日

しーちゃんのこと 18

「お風呂で二宮先輩にからだを洗ってもらったときの感触が気持ち良かったから、忘れられなくて、ある日の夜に自分の部屋で、自分で同じようにからだをさわってみたら、だんだんヘンな気持ちになってきちゃってネ」
「ここなんて・・・」
しーちゃんが自分の股間を指さします。
「ヌルヌルになっちゃってて、それでもいろいろ弄っていたら、今までに感じたことないような気持ち良さの波がやってきて・・・」
しーちゃんは、すっごく恥ずかしそうにうつむいて、しばらく言葉が途切れました。
私も何も言わず、しーちゃんが再び語り始めるのを静かに待ちました。

「それで、二宮先輩にもう一度ワタシのからだ、さわって欲しいナー、なんて考えていたら、8月の中旬、夏休みの合宿の前に、打ち合わせでまた、鳥越先輩のお家に集まることになったのネ」
「その日は、デッサンとかはしないで、合宿に持っていく荷物の分担とか、向こうでやる遊びの企画とかを話してたのネ。二宮先輩は、清楚な感じの白いノースリワンピ、着てたナ」
「鳥越先輩たちは、ワタシたちがつきあい始めたことに興味シンシンでネ、いろいろ冷やかしたり、質問してきたりするの」
「それで、その日の先輩たちは、なんだかみんなエッチでサ。その手の話ばっかりで盛り上がってたの」
そこで、しーちゃんはじっと私を見つめてきました。

「なおちゃんも薄々勘付いてると思うけど、鳥越先輩と小川先輩、落合先輩と村上先輩は、カップルなのネ。おつきあいしてる恋人同士なの」
「美術部には、他にも二組、あ、ワタシたち入れると三組か、百合なカップルがいるんだ」
「前に、お姉ちゃんにそれとなく聞いてみたことがあるのネ。あの人、学校内のそういう事情に詳しいから。そしたら美術部って、伝統的に代々、百合カップル率が高いことで、生徒会では有名なんだって」
「美術部のビは、ビアンのビ、なんて格言があるくらい。そういうのは、格言って言わないけど」
「絵画とか美術に興味のある人には、そういう嗜好の人が多い、なんて説は聞いたこと無いんだけど、なぜだか美術部では、カップル成立率が高いんだよねー、って笑ってた」
「ワタシに向かって、あんたは絶対にその手の人には受けいいから、その気が無いんだったら充分気をつけなさい。でももしその気があるんだったら、きっと天国よ。なんて、からかわれちゃった」
しーちゃんがクスッと笑いました。

「それで、鳥越先輩のお家で、先輩たちがエッチな話で盛り上がってたとき、小川先輩がワタシに、ひとりエッチしてるの?って聞いてきたのネ」
「ワタシは、さっき言ったみたいに、その気持ち良さを知ったばっかりで、正直に言っちゃうと、毎晩、っていうくらいしてた・・・」
しーちゃんが上目遣いに私をチラッと盗み見て、すぐにつづけます。
「でも、絶対そんなこと言えないから、黙ってうつむいてたのネ」
「そしたら鳥越先輩が、ひょっとしてやりかた、知らないんじゃないの?とか囃し立ててきて、みんなでワイワイ言い出して、それじゃクリス、やって見せてあげなよ、って話になって・・・」

「ワタシ、先輩たち、まさか二宮先輩に、みんなが見ている前でそういうことをやらせようとしてるのかな、って思っちゃって。みんなエッチな感じでニヤニヤしてたし・・・」
「でも、二宮先輩は今はワタシの恋人なんだから、そんなのヒドイと思って、ワタシは二宮先輩のそんな姿を他の人には見せたくないと思って、何か言わなきゃって思ったのだけど、言葉が出てこなくて・・・」
「でもさすがに先輩たちはみんなオトナで、その後すぐ、いつかみたいに4人で夕食の買出しに出かけてくれて、ワタシたち二人きりにしてくれたのネ」
「また先輩たちに乗せられてるナー、ってちょこっと思ったけど・・・」

「で、二宮先輩が、見たい?って聞くから、ワタシ黙ってうなずいて、二宮先輩がソファーに浅く腰掛けて、恥ずかしそうにワンピースの肩紐ずらして、スカートの裾まくって・・・」
「二宮先輩のせつなげな声が聞こえてきて、しのぶちゃん、こっちに来て、さわって、って言われて」
「ワタシもがまんできなくなって、二宮先輩に抱きついて、キスして、お互いのからだをまさぐりあって・・・」
「二宮先輩の指で、何回もイっちゃった・・・」
しーちゃんは、私の顔を見ずに、うつむいたまま言いました。

「それで、二人ともほとんど裸のままソファーで抱き合ってグッタリしてたら、先輩たちが帰ってきちゃって、お二人さん、結ばれたのねー、なんて冷やかされて」
「わたしもムラムラしてきちゃったー、って小川先輩が言って、鳥越先輩にキスし始めて、落合先輩と村上先輩も服を脱ぎ始めて」
「結局その後は6人とも、ほとんど裸の状態でごはん食べたりゲームしたりして、ずっとイチャイチャしちゃった。裸でツイスターゲームやると、すんごくエッチなんだヨー、ありえないポーズになっちゃったりして」
楽しそうにしーちゃんが言った後、しまった、っていうお顔になって私を見ました。

「なおちゃん?やっぱりヘンだと思ってるでしょ?女同士でそんなことして・・・」
「ううん・・・」
即座に否定したものの、その後につづける言葉がみつかりません。

私は、すっごくうらやましい気持ちでした。
そして、悔しい気持ちと寂しい気持ちもありました。
その気持ちの正体はわかりきっているのですが、認めたくなくて、私は、唐突に中三のときに経験した相原さんとのことを、しーちゃんに話し始めていました。

相原さんが図書室で裸になっていたことや、二宮先輩みたいな裸になりたがり、だったことは伏せて、図書室で知り合って、相原さんのお家に呼ばれて、そこで抱き合った、ということだけをお話しました。
相原さんにさわられて、相原さんにさわって、すっごく気持ち良くって、相原さんをどんどん好きになっていった、っていうことは、包み隠さず正直に告白しました。

私の告白を聞き終えたしーちゃんのお顔には、なんだかホッとした、みたいな安堵の表情と、聞きたくなかった、みたいな寂しげな表情が入り混じった、複雑な表情が浮かんでいました。

しばらく二人とも黙ったままでした。
しーちゃんが自分の腕時計にチラッと目をやって、ンーーッって大きく伸びをしてから居住まいを正し、あらためて私の顔を見つめて語りかけてきました。

「それで、昨日文化祭で、なおちゃんが部室に来てくれたでしょ?あの後、二宮先輩に言われちゃったの。わたしたちのこと、森下さんには言ってあるの?って」
「きっと森下さんはしのぶちゃんのこと大好きだし、しのぶちゃんも彼女のこと好きなんでしょ?って。二人が親友だったら、わたしたちのこと、つまりワタシと二宮先輩がつきあっていることを、たとえば他の人から聞かされたり、風のウワサで知ったとしたら、森下さんは、あんまりいい感じがしないだろう、って」
「親友だからこそ、ちゃんとしのぶちゃんの口から、言っておくべきじゃない?って」

「ワタシも別に隠すつもりはなかったのだけれど、夏休み中はあんまりなおちゃんと会えなかったし、二宮先輩と実際に深い関係になっちゃったら、なんだか恥ずかしくって、言い出せなくて・・・」
「だから今日、なおちゃんに全部言って、謝ろうと思って、来たのネ・・・」

「謝るなんて・・・」
私は、自分の胸の中で騒いでいる落胆の気持ちを一生懸命抑えつけながら、つとめて普通の感じを心がけて、言いました。
「しーちゃんが私に謝る必要なんて、全然ないよ。しーちゃんが可愛くて魅力的な女の子だからこそ、ステキなパートナーさんと巡り会えたんだから」
「しーちゃんが誰とおつきあいしていても、私はしーちゃんのこと大好きだし、しーちゃんが二宮先輩とシアワセになるなら、私いくらでも応援するよ」
「ほんと?ありがとーっ!そう言ってくれるとワタシも嬉しいヨー」
しーちゃんが私の両手をとって、ギューッと握りしめてきました。

「ワタシ、昨夜、なおちゃんのお家に明日行こうって決めて、ベッドに横になったとき考えたんだ・・・」
「ワタシ、本当はなおちゃんと、二宮先輩とのおつきあいみたいな関係になりたかったんじゃないのかナー、って」
「なおちゃんをそういう関係に誘いたかったんだけど、どうすればいいのかわからなくって・・・」

それは私も同じことでした。
少なくとも夏前までは、私のほうがえっちなことに関しては、リードすべき立場でした。
でも私がグズグズしているうちに、しーちゃんには二宮先輩というステキなパートナーが現われて、私の恋心はまた一人ぼっちで、取り残されてしまいました。

「私もしーちゃんと、そういう関係にもなってみたかった気持ちはあったんだけど、タイミングが合わなかったみたいだね」
「ステキな人をみつけたんだから、今はその人を大切にしなきゃ」
「私としーちゃんは、これからもずっと親友だし、何があってもずーっと、私はしーちゃんの味方だから」
なるべくしんみりしないように、明るめな声を出して、私はしーちゃんへの恋心をあきらめようとしていました。
「そうだ、今日はうちでお夕食も食べて、泊まっていきなよ?二宮先輩とのこと、もっと聞きたいし」
「私、しーちゃんのお家に電話して、お泊りの許可、もらってくるっ!」
これ以上ここに二人でいると、涙がこぼれてきちゃいそうだったので、サッと席を立って、私は階下に駆け出していました。


しーちゃんのこと 19

2 件のコメント:

  1. 辛いね、苦しいね、切ないね、哀しいね、寂しいね。
    やる瀬ない思い、愁いを帯びた哀愁の瞳が君の頬を濡らす。
    たった一言「好き」の言葉が言えず、ひとりベッドで慟哭を放つ。
    そんな淡くてにがい経験のひとつやふたつ(もっといっぱい?)持ってますよね。

    さて、なおちゃん。
    ここは相原さんのときみたく吹っ切るのでしょうか?
    それとも一夜を共にして新たな新展開が発展するのか?
    いずれにしてもなおちゃんの選択肢は限られている。
    次回更新が楽しみです(*^^)v

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  2. あおいさま
    いつもコメントありがとうございます。

    しーちゃんのお話も、そろそろ終わりが見えてきました。
    楽しんでいただけていたら、嬉しいです。

    たぶん再来週くらいから、新しいお話に移れそうです。
    今度のは、えっち全開にするつもりなので、またおヒマをみつけて読みにいらしてくださいませ(≧∀≦)ノ

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