2011年7月3日

しーちゃんのこと 17

お約束通り、5時から講堂で演劇とバンド演奏を観て、この日は6時半に文化祭が終わりました。
クラスのお教室で後片付けをしてから、美術部の人たちと打ち上げがあるというしーちゃんと別れ、私も文芸部の部室でささやかな打ち上げをして、お家に帰ったのは夜の8時過ぎでした。

寝る前に、どうしてもニノミヤさんの裸の絵とレオタード姿が思い出されて、オナニーをしたい気持ちもあったのですが、それ以上にからだが疲れきっていたみたいで、あっさり眠りに就いていました。

翌日は振り替え休日。
文化祭の後片付けが残っている人は登校しなければいけませんが、それ以外の人はお休み。
私は昨夜、ヤキソバに使った重たいホットプレートも持って帰っていましたし、図書室もすっかり普段通りに戻しておいたので登校する必要は無く、朝の10時過ぎまで、ゆっくり惰眠を貪りました。
お昼は、母と一緒に食べながら文化祭でのしーちゃんのゴスロリ姿や描いてくれた絵のことをコーフン気味におしゃべりして、午後からは、読みかけのコミックスを自分のお部屋でベッドに寝転んで読んだりしてダラダラ過ごしました。

午後の3時前に携帯電話が鳴って、出てみるとしーちゃんからでした。
これから私の家に遊びに行っていいか?という内容で、もちろん私にノーと言う理由は今も昔もまったく無いので、しーちゃんが来ることになりました。
3時少し過ぎくらいに現われたしーちゃんと、最初はリビングで母と3人でお茶を飲みながら、また文化祭の話題をしばらくしていました。
3時半頃、母がお夕食のお買い物へ行くと席を立ったので、しーちゃんと二人で私のお部屋に移動しました。

お部屋でもしばらくは、昨日の友田さんのステージはカッコ良かったね、とか、演劇部のお芝居はなんだかよくわからなかったね、とか他愛もないおしゃべりをしていました。
しーちゃんは、なぜだかいつもより言葉少なでした。
会話が途切れて、何気なくしーちゃんのお顔を見たとき、なんだか思いつめたような表情になっているのに気がつきました。

「しーちゃん、どうかしたの?何かあったの?」
「うんとネ、今日はネ、どうしてもなおちゃんにお話しておかなければならないことがあって、来たの・・・」
「・・・たぶんなおちゃん、びっくりすると思うけど・・・なるべくびっくりしないで、聞いて・・・」
「なおちゃんには、ちゃんと言っておかないといけない、って思ったから・・・」
しーちゃんのお顔は、今までみたことないくらい真剣でした。

「ワタシネ、今、二宮先輩とおつきあい、してるの・・・」
しーちゃんが思い切るみたいに言って、私の顔を見つめてきます。
「おつきあいって言っても、百合ごっこ、みたいのじゃなくてネ、キスもしたし、もっと先までももう・・・」
しーちゃんの突然の告白に、私は文字通り、口をポカンと開けて絶句していました。

「気持ちワルイよネ?女同士でなんて・・・」
ポツンとつぶやいたしーちゃんの言葉に、私は激しく反応しました。
「ううん。ぜんぜん気持ち悪くなんてないっ!女同士だって私、ぜんぜんいいと思う!」
「ほんと?なおちゃん・・・」
しーちゃんがうつむいていたお顔を上げて、再び私を見つめてきました。

私の頭の中は、激しく混乱していました。
しーちゃんが二宮先輩とおつきあいしている・・・
もうキスも、その先までもヤっちゃった・・・
女同士は気持ちワルイ?・・・

その三つしか言われていないのに、それらが何を意味するのか、まったく理解できませんでした。
混乱している頭をごまかすみたいに、思いついたことを口にしていました。
「いつから、そんな感じになってたの?詳しく聞かせて」
しーちゃんが宙に目を泳がせ、思い出すような表情でお話し始めました。

私にも教えてくれた6月のヌードクロッキー会の後、もう一度その機会が訪れたのは、明日から夏休みという終業式の放課後、場所は、三年生の鳥越先輩のマンション。
鳥越先輩は、ご両親のお仕事の関係で、学校の近くのマンションに一人暮らししていました。
て言うか、社会人のお姉さんと一緒に暮らしているのですが、お姉さんがカレシさんのお部屋に入り浸って帰ってこないので、結果的に一人暮らしになっていたのだそうです。
前々から、その日はみんなで集まる、って先輩がたに言われていて、しーちゃんも、きっとあの日のつづきをするんだな、って薄々思っていたので、ちょっとワクワクしていたそうです。

いったんお家に帰って、私服に着替えて再び集まったのは、あの日と同じメンバー、三年生の鳥越先輩と落合先輩、二年生の小川先輩と村上先輩、二宮先輩、そしてしーちゃん。
午後の三時過ぎに集まった6人は、そのままお泊り会をする予定でした。
鳥越先輩のマンションは結構広くて豪華で、
「一部屋改造して、アトリエみたいになってるんだヨー」
と、なぜだか自分のことのように自慢そうなしーちゃん。

広いリビングで一息ついて、アトリエでクロッキーを始めたのが午後の4時頃。
今回は、短時間ではなく、しーちゃんのが仕上がるまでっていうことだったので、クロッキーではなくてデッサンでした。
当然のように、二宮先輩がお洋服をすべてスルスルっと脱ぎ、アトリエのソファーに寝そべって、みんな真面目にデッサンを始めました。
アトリエは、美術室より断然明るかったので、二宮先輩のからだの細かいところ、筋肉のつき方や毛の生え際とかまでクッキリとわかり、二宮先輩は、やっぱり薄っすら頬を染め、恥じらいと高揚感が交錯しているように見えたそうです。

休憩を何度か挟んで2時間弱、なんとかしーちゃんも納得出来る作品に仕上がったので、そこでデッサン会は終わりになりました。
二宮先輩以外の先輩がた4人が、お夕食のお買い物に行ってくる、と言って外出してしまい、お部屋にはしーちゃんと二宮先輩だけが残されました。
「たぶん、先輩たちがあらかじめ打ち合わせてて、ワタシたちを二人きりにしたんだヨ」

デッサンが終わっても二宮先輩はお洋服を着ようとせず、しーちゃんは目のやり場に困ったそうです。
ソファーに並んで座って、しばらくお話タイム。

「しのぶさんには、カレシさんとかいるの?」
「いいえ、ワタシはまだそんなの・・・」
「興味ないの?」
「はい・・・」
「わたしのからだ見たの久しぶりだったよね、どうだった?」
「あ、はい。やっぱりすんごくキレイだと思います。憧れちゃう」
「わー、ありがとう。わたし、しのぶさんのこと部室で初めて見たとき、なんてカワイイ子なんだろう、って思ったの」
「はあ・・・ありがとうございます」
二宮先輩が少し黙ってから、内緒話をするみたいなヒソヒソ声で聞いてきました。
「しのぶさん、女同士でおつきあいするのって、ヘンだと思う?」
「あ、いえ、ワタシは別に・・・」

しーちゃんは実際、女の子同士の恋愛もアリだと思っていたし、これから百合マンガを描いていくためにも、自分の身で経験してみたいなーとも思っていたのだそうです。

「それなら藤原さん、わたしとおつきあいしてみない?」
二宮先輩に小さな声でそう言われたとき、たぶん先輩がからかっているんだろうと思ってお顔を見たら、頬をピンクに染めて思いっきり恥らっていて、その姿がすっごく可愛らしくって、たまらなかったそうです。
「それとも、誰か他に好きな人がいるの?」
そう聞かれたとき、パッと浮かんだのが私の顔・・・でも、何も言えず・・・
「こんなふうに人前で裸になっちゃう、はしたない女じゃ、イヤ?」
「そんなことありませんっ!」
この問いにだけは、しーちゃんはすぐに反発しました。

「二宮先輩は、やさしいし、絵もお上手だし、教え方もうまいし、お顔もからだもキレイだし、お話していて楽しいし、ワタシ憧れてます」
「うわー。今まで生きてきて、一番嬉しい褒め言葉よ、それ。ねえ、お願い、藤原さん?わたしとおつきあいしてください」
二宮先輩は、先輩なのに哀願するような言葉遣いになりました。
「わたしはもっとしのぶさんのことが知りたいし、しのぶさんにももっともっと、わたしのことを知って欲しいの。わたしたち絶対うまくいくと思う」
二宮先輩は、そのつぶらな瞳でしーちゃんのことをすがるようにじーっと見つめ、今にも泣き出しそうな感じだったそうです。
しーちゃんは真剣なそのまなざしにあがらえきれなくなって、首をコクンと縦に振りました。

その途端に、泣き出しそうだったお顔が、雲の切れ間からお日様がパーッとお顔を出したように、満面の笑みに変わって、その笑顔が本当に綺麗で、背中に電流が走ったみたいにゾクゾクッてしちゃうほど。
「嬉しいーっ!」
横向きのしーちゃんに抱きついてきた二宮先輩の裸の胸やお腹がしーちゃんに押し付けられ、そのふうわり柔らかい感触といい匂いは、うまく言葉にできないほど心地良いものだったそうです。

やがて先輩がたが帰ってきて、お夕食の支度。
二宮先輩は、裸にピンクのフリルのエプロンだけかけて、せっせとご馳走を作って、みんなでワイワイ食べました。
「クリスがあんなに上機嫌ていうことは、しのぶちゃん、オッケーしたんだね?」
小川先輩が二宮先輩の目を盗んで、しーちゃんに小声で言いながらウインクしてきます。
やっぱりこの会合は、先輩がたに仕組まれたもののようでした。

お夕食の後、しばらく経ってお風呂タイム。
最初に落合先輩と村上先輩、次に鳥越先輩と小川先輩が入り、必然的にしーちゃんと二宮先輩が一緒に入ることになりました。
二宮先輩の前で裸になるのは、しーちゃんにとってかなり恥ずかしいことでしたが、お風呂上りの先輩がたがみんな、下着だけとか、ノーブラにキャミソールとかでお部屋をウロウロしているので、恥ずかしさの感覚が麻痺しちゃって、ま、いいか、になっちゃったらしいです。

「しのぶさんのからだ、スベスベでお人形さんみたいね」
二宮先輩は、そんなことを言いながらしーちゃんのからだをすみずみまで、やさしく丁寧に洗ってくれました。
フワフワのスポンジをたっぷり泡だてて。
「胸とかをやさしく撫ぜられて、ワタシすんごく感じちゃった・・・」
しーちゃんが照れ臭そうに言いました。

その後、二人でゆったりとバスタブに浸かって、見つめ合っているうちになんとなく、キスしてしまいました。
「なぜだか、そうしないとお風呂から出れないような気がしたんだヨ」
しーちゃんが盛大に照れました。

お風呂から上がると、みんな相変わらず下着姿で、三年の先輩は缶ビールなんかも開けて、ワイワイおしゃべりしていました。
二宮先輩が素肌にタオルを巻いたままの格好でその輪に加わったので、しーちゃんもパジャマを着るのがためらわれ、空気を読んで下着だけの姿でおしゃべりに参加しました。
「でもね、えっちい話なんかぜんぜんしなくて、絵の具の混ぜ方のこととかポスト印象派がどーたらとか、えらく真面目な話ばっかりなんだヨ」
「みんな裸に近いセクシーな格好なクセに、すんごく真剣にマジメな話しているから、何て言うか、シュールでネ。少し笑っちゃった」
「好きなマンガの話もしたから、ワタシもすんごく盛り上がっちゃったヨ」

夏休みに入って、しーちゃんと二宮先輩は何度もデートしました。
「ショッピングしたり、映画観たり、遊園地も行ったしプールも行ったヨ」
そういう場では、二宮先輩はごく普通なやさしい先輩で、しーちゃんのことをすごく気使ってくれて、別れ際にはいつもやさしいキスをして。
二宮先輩は、デートのときにセクシーな服装をしてくるとか、ノーブラで来るとかもぜんぜん無くて、本当にこの人が美術室で裸になりたがる彼女と同じ人なのかな、ってしーちゃんが思うくらいいい人で、しーちゃんもどんどんますます二宮先輩のことが好きになっていったそうです。

そしてこの頃、しーちゃんはひとりエッチがちゃんと出来るようになっていました。


しーちゃんのこと 18

3 件のコメント:

  1. 最近物書きしてて人前で裸になれる女性はみな美しいと思うようになりました。
    身も心も・・・
    二宮さんも綺麗な人なんだろうなと想像しています。
    あかん、リアルと混同してきた!
    人の名前は漢字の方が読みやすいと思います。

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  2. あおいさま
    いつもコメントありがとうございます。

    登場人物の名前のカタカナ→漢字のことですが、何て言うか、完全に自己満足なんですけど、ある種のこだわりと言うか、ルールを決めていて、お話の中で名前が漢字になるタイミングっていうのが私の中にはあるんです。うまく説明できなくてごめんなさい。

    読みづらいかもとは思いますが、目をつぶっていただけると嬉しいです(≧∀≦)ノ

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  3. お名前の件は何かあるんだろうとは思っていましたがルールまでは分かりませんでした。

    ただ書き手としたら何かこだわりを持ってされることも自分遊びで必要と思います。
    7/2更新分だったと思いますが、「ああ~言葉遊びされてるな」と思ったくだりがありました。
    『楽しく書く』のが重要ですよね(*^^)v

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