2011年5月21日

しーちゃんのこと 04

今度は、脱衣所が私たちだけの貸し切り状態でした。
「いいお湯だった、ね?」
「うん」
裸のまま至近距離で、こそっと言葉を交わします。
私としーちゃんの顔がピンク色に火照っているのは、お湯にのぼせたせいだけではないはずです。

バスタオルで丁寧にからだを拭いて、時間をかけてゆっくり服を着ました。
さっさと服を着てしまうのが、なんとなくもったいない気がしたんです。
ショーツとブラを着け終えたとき、壁際に飲み物の自動販売機があるのに気がつきました。
「しーちゃん、何飲みたい?」
「えっ?}
しーちゃんも薄いブルーのスポーツブラとカワイイ青水玉のショーツ姿でした。

「あの自動販売機で牛乳売ってるの。ちゃんと瓶入りのやつみたいだよ。私、おごってあげる」
「えっ、ほんとに?いいの?・・・お風呂あがりは、やっぱり白牛乳だよネ?腰に左手あてて、上向いてゴクーッと飲んでプハァーッってするのっ!」
しーちゃんが愉快そうに笑ってから、
「それに・・・ワタシ、もっと大きくなりたいし・・・」
ちょっと声をひそめたと思ったら、私の顔をまじまじと見つめてクスッと笑い、しーちゃんにしては大きな声で、私を指さして言いました。
「でも、なおちゃんは白牛乳禁止ネ!コーヒー牛乳にしなさいっ。もうそれ以上大きくなったらダメですっ!」
しーちゃんのいたずらっ子なお顔に私が思わず吹き出すと、しーちゃんもプッと吹き出して、しばらく二人でクスクス笑いました。

「なおちゃんは、なんで女子高に行くことにしたの?」
お風呂からお部屋に戻る途中、二人で並んで歩いているときにしーちゃんが突然聞いてきました。
「なんで、って言われても・・・うーん、なんとなく・・・」
どういうふうに答えればいいのか・・・
しーちゃんなら、正直にいろいろお話しちゃってもわかってもらえそうな気もします。
それに、曽根っちのヒミツのことでもわかるように、みんなに言いふらしちゃうような人ではないし。

「なおちゃんは、共学に行くと思ってたヨ。昨夜、愛ちゃんも言ってたけど、なおちゃん、男子にもてそうだしネ」
「うーんと、そういうのは私、まだ苦手なの。男子とか、ちょっと怖い感じがして・・・」
「だから、まわりがみんな女子、っていうほうが気が楽かなー、なんて・・・」
言葉を選びながら、しーちゃんの反応をうかがいます。
「あ、なんとなくわかる。ワタシもそんな感じだヨ。男子がいないほうがラクそー」
しーちゃんは、ニコニコ笑ってうんうんうなずいてくれました。
「ワタシ、絶対なおちゃんと一緒の高校、行きたいっ!」
しーちゃんから手をつないできました。

お部屋に戻ると、勝負はすでに始まっていました。
「あー、お帰りー」
「けっこう長湯だっだねー」
「わたしら、曽根っちからいろいろ聞き出しといたから、トランプやりながら教えてあげようっ!」
あべちんが私たちのために席を空けてくれて、しーちゃんと隣り合って座り、大貧民ととりとめのないおしゃべりで修学旅行最後の夜も楽しく更けていきました。

修学旅行でしーちゃんと仲良しになれたのは、すっごく嬉しいことなのですが、同時に心の中にまた一つ、モヤモヤを抱え込んでしまいました。

修学旅行から戻ったその夜、私にムラムラ期が訪れました。
て言うか、学校で解散して、帰り道に一人になったときからずっと、しーちゃんとのお風呂での出来事ばかりを思い出していました。
あの出来事に私は、発情していました。

その夜、お風呂上りにお部屋の姿見の前で、早速オナニーを始めました。
思い浮かべるのは、しーちゃんからの指の感触、興味津シンシンなお顔、白い裸身、そして、私にさわられたときの困ったような表情・・・
自分の胸をまさぐっている私の両手は、しーちゃんの控えめな胸の感触をはっきり思い出していました。
しーちゃん、カワイイ・・・

その夜は、そのまま突っ走って、しーちゃんとの妄想だけでイってしまいました。
自分でも驚いたのは、私が普段している、痛くしたり、縛ったり、叩かれたりっていう妄想は全然必要なくて、しーちゃんと互いにやさしく愛撫しているのを思い浮かべるだけで、シアワセに気持ち良くイけたことでした。

終わった後、考え込んでしまいました。

私は、しーちゃんとそういうふうになりたいのでしょうか?
しーちゃんはカワイイし、性格もいいし、趣味もけっこう合うようだし、慕ってくれているし、大好きです。
だから、そういうふうになりたいと思うのも当然なこと?
いいえ、そう単純に割り切れない気持ちが、私にはありました。
一学期に経験した相原さんとのことが、私にブレーキをかけていました。

私は、相原さんとおつきあいするうちに、相原さんにどんどん惹かれていきました。
相原さんのお部屋で、二人でからだをさわりあってえっちなことをした後は、もうこれからずっと、いつでもどこでも相原さんと一緒にいたい、と思いました。
でも、相原さんにカレシが出来たことで、あっさり関係は終わってしまいました。
相原さんは、女性を恋愛対象としては見ていませんでした。

そして、日頃身近に接していた大好きな人との関係が終わっていく過程で感じる焦燥感と、終わったことを知った後の喪失感・・・
もうあんな思いは絶対したくないと思っていました。

しーちゃんは、女性同士の恋愛にも大いに興味を持っているように見えました。
二年生のときに冗談めかして、グループの5人の中だったら誰とつきあうか、って聞かれたしーちゃんが、なおちゃん、って答えてくれたのも憶えていました。
でも、そういうのは、あくまでもしーちゃんの空想、コミックやアニメで知って憧れている妄想の中でのお話かもしれません。
現実にしーちゃんが女性とそういう関係を持ってみたいと考えているのか、は、定かではありません。

さらに、しーちゃんがえっちなことについて、どのくらい興味があるのか、オナニーの経験はあるのか、誰かとそういう関係になるのを今現在望んでいるのか、についても、何一つ知りませんでした。

相原さんのときは、そもそもの出会いが、相原さんが私に自分の性的嗜好を披露するところから始まったので、その点はスムースでした。
相原さんと私の嗜好が合致して、短かい間に深い関係になれました。
ただ、相原さんにとって、女性とのそれは、単なる興味本位の遊びだったのだけれど・・・

相原さんとの出来事で、私は、普通のお友達以上の関係、何て言うか、裸で抱き合ってお互い楽しめるような、恋人になってくれる女性が欲しくてたまらなくなっていました。
自分でさわるのとは違う、誰かにさわられる気持ち良さ、が忘れられなくなっていました。
でも、それをしーちゃんに求めていいものなのでしょうか?

しーちゃんとは、おつきあいしてきた時間は長いのだけれど、今までそういうことはまったく話題にしてきませんでした。
だから今さら聞きにくい、ていうのもあります。
もしも私が本能のままにしーちゃんにえっちなアプローチをして、しーちゃんがそれに嫌悪を感じてしまったら・・・
拒絶されてしまったら・・・
その瞬間から、しーちゃんとだけでなく、グループの他のお友達たちとも気まずくなるのは目に見えていました。
それを考えると、やっぱり一歩踏み出すのは、躊躇してしまいます。

私が一番恐れていたのは、しーちゃんに対して私が勘違いなアプローチをして、中学三年間の愛ちゃんをはじめとする仲良しなお友達との思い出が全部崩れ去ってしまうことでした。
平穏な日常は、壊したくありません。
だったら日常のお友達には、そういうことを求めないほうがいいのかもしれません。

いろいろグダグダと考えても、結局答えはみつかりませんでした。
一つだけ確信したのは、私がしーちゃんに恋をし始めている、っていうことでした。
やよい先生や相原さんに感じたのとは、また何かが違う愛おしさ、その何かは自分でもわからないのですけれど、で、しーちゃんのことを想っていました。

しーちゃんのほうからアプローチしてくれないかなあ・・・
そんなムシのいい考えもしたりなんかして。

でも・・・

やっぱり今は、余計なことはしないほうがいいよね。
これからしーちゃんとたくさんいろいろお話すれば、しーちゃんのことももっともっとわかってくるだろうし。
それからだって、遅くはないもの。
とにかく今は、しーちゃんと同じ高校に進めるように精一杯仲良くがんばろう。

その夜にそう決めました。


しーちゃんのこと 05

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