2016年9月11日

オートクチュールのはずなのに 57

 なんとかこらえて歩きつづけます。

 何?
 何今の・・・

 突起を膣壁が締め付けると同時に、マゾマンコ内にぴったりフィットしたシリコンがローターのようにプルプル振動する感覚がありました。
 膣壁をくまなくゆさぶる予想外の振動が瞬く間に快感となって全身へ広がり、一気に天国一歩手前まで昇り詰めてしまったのです。

 まさか、突起にリモコンが仕込まれていて、どこかで誰かが操作しているとか・・・
 極力何食わぬ顔に努めながらも、心の中では疑心が暗鬼を生んでいました。
 
 だとしたら、またいつ、震えが襲って来るかわからない・・・
 もう一度来て欲しいような、もう絶対に来て欲しくないような・・・

 口に咥えた乗馬鞭の柄をギュッと噛み締めながら、歩幅の狭さがもどかしい鎖に繋がれた両足を懸命に動かし、またいつくるかわからない振動にビクビクしつつも、なんとかランウェイの端までたどりつきました。

 さあ、あとは戻るだけ。
 リモコンローターを仕込まれて街中にいるときと同じドキドキに支配されていました。
 早く戻ろう・・・
 両足のかかとを滑らせてターンしたときでした。

 真っ暗だった会場内がパッと明るくなりました。
 会場のすべての灯りが点けられたみたいで、デパートの食品売り場みたく眩しいほどの明るさになりました。
 でもBGMだけ依然として、ホラー映画のようにおどろおどろしいまま。

「おおっ!」
 お顔が見えるようになったお客様がたも、軽くどよめいていらっしゃいます。
 
 ああん、いやん・・・
 突然、赤裸々となった視界に一テンポ遅れて羞じらいがぶり返し、思わずビクンとからだが震えました。
 その途端にまた、突起がプルプルッと震え、すぐ止まりました。

「んっ!」
 油断していた膣への刺激で顎が上がり、鞭を咥えた唇がたまらず開きそうになり、あわてて歯を食いしばりました。
 同時に下半身にも力を込めると、突起がさっきより激しく振動し始めました。

 だめ、もうだめ・・・
 油断すると震え出す意地悪な突起の振動に翻弄される私は、立ち尽くしたままあきらめかけ、その快感に身を委ね始めていました。
 でも、下半身に込めた力が抜けていくに従って振動は弱くなり、やがて止まりました。

 なんとか膝から崩れ落ちるのを我慢出来た私は、気がつくとまだ、ランウェイの突端。
 中腰、がに股の不格好でうなだれていました。
 赤い首輪から垂れ下がったリードの鎖が、前屈みになった空間にブラブラ揺れています。
 口元からよだれがポタポタと赤いカーペットに滴り落ちるのも見えました。

 あ、いけない!
 ショーモデルにあるまじき、こんな不細工なポーズ。
 あわてて直立モデルポーズに戻った私は、会場中のすべての視線に注目されていました。

 明るすぎるほど明るくなった会場、すべての人たちのお顔がはっきり見えました。
 すべての視線が好奇と侮蔑と嗜虐のいずれかを湛え、私の人となりを吟味するかのように、私のからだのどこかしらを凝視していました。
 さっきまでの暗闇にスポットライトでお客様のご様子がわからないということが、どんなにありがたいことだったのかを思い知りました。

 鞭を咥えて半開きの口元から滴るよだれは、僅かに乳首だけ隠したおっぱいの谷をしとどに濡らしていました。
 赤いレザーでVの字に隠されただけの股間の周辺も両膝の辺りまで、お漏らしでもしたかのように粘液で濡れそぼリ、照明の光にテラテラ光っていました。
 そしてもちろん、そんな私の浅ましい姿が正面の大スクリーンに、大きく映し出されていました。

 もう、こんなのいやっ!
 自虐が極まって、いっそこのままこの場に這いつくばってからだをまさぐり、オナニーを始めちゃいたい気分でした。
 乗馬鞭のグリップをマゾマンコに突っ込んで、アナルの突起をグリグリ掻き回して・・・
 
 それでも今は、ステージまで戻らなければなりません。
 ポーカーフェイスで颯爽と。
 イベントを台無しにすることは、そのまま愛するお姉さまとのお別れを意味していました。
 立派にショーのモデルを務め上げることが、お姉さまとのお約束でありご命令なのですから。

 気を取り直してステージのほうへと歩き出したとき、スタンディングキャット社の男性の誰かが、私に立派なカメラを向けているのが見えました。
 
 いやっ、こんな姿、撮らないで・・・記録に残さないで・・・
 思った途端に突起がブルっと膣壁を震わせました。
 たてつづけにシャッターが押されるのがわかりました。

 カシャッ!だめっ!ビクン!
 カシャッ!いやっ!ビクン!
 カシャッ!撮らないで!ビクン!
 そのたびに突起がブルっと小さく震えました。

 あっ!
 感じると同時に気づきました。
 この突起の振動って、マゾマンコが疼いてキュッと膣をすぼませるたびに起きている・・・
 たぶん、突起を締め付けることで振動する仕組みなんだ。

 その考えが正しいのか試してみたくて仕方なくなりました。
 だけど、私の我慢もそろそろ限界に近くなっていました。
 次に粘膜を大きな刺激が襲ったら、本当にその場で崩れ落ちてしまいそう。

 大事なイベントの、こんな大勢のお客様に視つめられている中で、そんなふしだらなイキ姿をお見せするわけにはいきません。
 でも逆に、そんな姿までみなさまにご披露しちゃうことを、お姉さまはお望みなのかも・・・

 ごちゃごちゃ考えながらステージへ向かって一歩一歩進みます。
 アンジェラさまが、艶然とした笑みを私に向けてきます。
 その横で小野寺さまは、唖然とされたお顔で私の顔を見つめています。
 純さまと桜子さまは、こちらにお顔を向けたまま何やらヒソヒソお話されています。
 シーナさまは、ニヤニヤ笑いを浮かべて嬉しそう。

 ステージまであと十数歩のところまで来たとき、お姉さまのお姿をみつけました。
 どこかでお会いしたことあった気もするお綺麗な女性と並んで座り、私をじっと視つめていました。
 
 何か面白いオモチャをみつけた子供のような、次はどういたぶったら愉しいか企むような、ひややかなまなざし。
 私が一番良く知っている、嗜虐が極まったときにだけ見せていただけるドエスな視線。
 その視線とバッチリ目が合いました。

 その瞬間、お姉さまの唇が動きました。
 実際にお声に出してはいないのでしょうが、私には、その動きだけでお声が聞こえました。
 イッチャイナサイ・・・

 そのお言葉の意味を理解するなり、膣壁がキュウンと疼きました。
 同時に自分でも、漏れそうなオシッコを我慢するみたいに、、下半身にギュウッと力を込めました。

 ビビビビッ!
 今までにない振動が膣から狂おしく全身へとせり上がり、官能を震わせてきます。
「んぐぅぅ!・・・」

 眉間にシワが寄っているのがわかります。
 咥えた鞭の柄を噛み砕かんばかりに噛み締めていました。
 頭の中は真っ白。
 でも足だけは止めず、なんとか前へ前へと踏み出していました。

 イッチャイナサイ・・・
 イッチャイナサイ・・・
 イッチャイナサイ・・・
 
 お姉さまのご命令だけが脳内でエコーしていました。
 そのお言葉が嬉しくてたまりませんでした。

 行かなきゃ。
 お仕事をちゃんとやらなきゃ。
 たとえイッても、とにかくステージまで戻らなくちゃ。

 快感に震えながら、一歩一歩ステージへの階段を踏みしめました。
 もうとっくに自分で下半身に力を込めることはやめているのに、マゾマンコが勝手にビクンッビクンッとわななき、そのたびに弱い振動が起きています。
 左内腿には、見た目でわかるほど白濁した生々しいおツユが溢れ出て、左脚をトロトロ滑り落ちていました。

 ステージに戻り、客席と向き合う形で中央に立ちます。
 綾音部長さまの解説が入るので、すぐに楽屋にもどるな、というお言いつけです。
 リンコさまがタタタッと私の脇に駆けつけて並ばれました。

 試合中のドーム型野球場のように明るい会場内。
 大勢のお客様がたより数段高くなったステージ上で、半裸のマゾドレイそのものな姿を見せつけるみたいに立ち尽くす私。
 
 その姿は破廉恥で浅ましくて、みじめそのものなはずです。
 性的にノーマルな女性でしたら、たまらずに泣き伏してしまうことでしょう。
 だけど私は、そんな状況に強烈な羞恥を感じつつ、一方で愉悦に酔い痴れていました。
 
 全身を蝕む甘美な快感に今すぐにでも身を委ねたいのに、無理して無表情を装います。
 今だにヒクヒク蠢く下半身からビリビリと気持ち良い電流が放電しつづけていて、イッたのか、イキつづけているのか、それともまだイッていないのか、自分でもわからない状態でした。

 BGMのボリュームが下がり、綾音部長さまのお声が流れ始めました。

「只今ご覧頂いたアイテムの実物です。このような形状になっています」
 演壇の上に置いてあった、私が装着しているのと同じ形状のアイテムをお客様に向けてお見せになる綾音部長さま。

「パスティースは、この金具にニップルを挟み、ネジで締め付けることで固定されます」
 わざわざ内側の金具の仕組をお見せになりました。

「当然、若干の痛みを伴いますから、そういったことのお好きな、所謂マゾ傾向の強いかた向けと言えますね」
 ざわざわ広がるお客様がたの忍び笑い。
「ニップルに与える痛みはこのネジで自由に調節出来ますから、マゾ気質のご婦人なら、その度合いに合わせて、必ずや嬉しいご褒美となる装身具と思います」
 
「ボトムはこちらです」
 弓なりのCストリングから飛び出ているふたつの卑猥な突起を、わかりやすいようにみなさまに向けてお見せになる、ご親切な綾音さま。

「おわかりとは思いますが、こちらをヴァジャイナに、こちらはアヌスに挿入する二点留めです」
「挿入することによって、従来のCストリングで懸念される脱落の危険がなくなり、更にA感覚の開発にもなるという、こちらもセックスへの好奇心旺盛なマゾ気質の淑女に最適なアイテムとなっています」
 おっしゃってから綾音さまは、思わせ振りの大きな仕草でステージ真ん中に立つ私のほうへとお顔を向けてきました。

 綾音さまのお顔の動きに吸い寄せられるように、お客様がたの注目が私に集まります。
 視線が放つ好奇の度合いが一段と強くなった気がしました。

 お客様がたの誰もが、今あのモデルの両乳首はネジで締め付けられていて、性器と肛門には卑猥な形をした突起が埋め込まれているのね、と再認識されたことでしょう。
 私はと言えば、そんな好奇と侮蔑の視線の中、上と下の口からよだれをタラタラ垂らしながら、鞭を咥えて後ろ手に括られたまま、澄ました顔をしていなくてはならないのです。

「さらに、このアイテムには、みなさまに内緒にしていた画期的な機能も付属されているのです」
 綾音さまのお芝居じみた口調に、お客様がたの視線が演壇へと戻りました。
「薄々感づいていらしゃるかたもいらっしゃると思いますが、ショーのあいだ、モデルの夕張さんが時折からだをビクンビクンとされていましたよね?」
 そう言えば、みたいな感じにザワザワとざわつく会場。

「実はこのアイテムの手前のほうの突起、ヴァジャイナ挿入部の突起は、ヴァジャイナトレーニングにも適した内容となっているのです」
「ヴァジャイナトレーニングとは、恥骨から尾骶骨に走る筋肉を鍛えることにより、率直に言えばヴァジャイナの締りを良くして、性感を高めるためのトレーニングということです」
 ここでもう一度、綾音さまがCストリングの突起をお客様のほうへ掲げました。

「よくご覧ください、この突起は、締め付けることによって振動する仕組みになっています」
 綾音さまが右手で突起を握り締めました。

「見ただけではわかりづらいですね」
 突起を握っている綾音さまの手に、雅部長さまがご自分のマイクを近づけられました。
 ンーンーンーッ・・・
 ローターが振動するような音が小さく、マイクを通して会場のスピーカーから聞こえてきました。

「強く握るほど、振動も強くなります」
 綾音さまが強く握ったのでしょう、振動音の音程が上がり、ブーンという音がよりはっきり響き渡りました。

「このように、装着したままヴァジャイナの筋肉を動かして突起を締め付けることで、トレーニングと快感の両方を得ること出来るのです」
「女性にありがちな、くしゃみをしたときの尿漏れなども、この筋肉トレーニングで克服することが出来ます」
 へー、なるほど、みたいな感じの場内のさざめき。

 さざめきが鎮まるのを待って、綾音さまが再び、私のほうへお顔を向けてきました。
「ここで実際身に着けてくださっているモデルの夕張さんに、その機能を実演していただこうと思います」
 お客様がたの視線も一斉に私へ戻ってきました。
 えっ!?えーーーーっ!

「わたくしが観ていましたところ、夕張さんはウォークの最中にコツを掴まれたようで、かなり性感も高まっていらっしゃるご様子とお見受けしました、きっと上手く実演してくださることでしょう」
 綾音さまの口調にイジワルさが混ざり始めていました。

「ただし、夕張さんはご覧の通りのクールビューティですから、あまりあからさまにエロティークな反応にはならないかもしれませんけれど」
 会場内にクスクスという忍び笑いと大きな拍手が沸きました。

「それでは夕張さん、お願いします。アヌスをキュッとすぼめるように力を入れてヴァジャイナ全体でコレを締め付けてください」
 
 お客様がたにCストリングの突起を指し示しながら促されました。
 お顔がイタズラっぽく愉快そうに微笑んでいました。
 綾音さままで、私がイク姿をみなさまにご披露することをご所望のようです。

 リンコさまが、お持ちになっていたマイクを私の股間に近づけてきました。
 振動の音を拾おうというのでしょう。
 リンコさまもワクワクなご様子。

 私は、客席にお姉さまのお顔を探しました。
 お姉さまは前から五番めのお席で、薄く微笑みながら私を視つめていらっしゃいました。

 目が合いました。
 お姉さまが一度小さく頷かれ、それからクイッと顎を上にしゃくられました。
 イッチャイナサイ・・・
 覚悟を決めました。

 お姉さま・・・
 お姉さまをまっすぐ見つめながら、マゾマンコに埋め込まれた突起に意識を集中し、下半身に力を入れます。
 お姉さま、私、みなさまの前で、イキます。
 
 弱く身震いを始めた突起が、生き物のように膣の奥へ奥へと、その先端で突いてきます。
 それでもひるまず、もっと奥へと誘いこむように膣壁に力を込めます。
「んぅっ!」
 振動が強くなりました。

 ブーーー-ンッ・・・
 リンコさまのマイクが振動音を拾って、会場に低く流れ始めます。
 私は自ら腰をヒクヒクと淫らに前後に揺らし、突起を締め付けつづけました。

 ブーン、ンンン、ブーン、ンンン・・・
 私が締め付けるリズム通りに、振動も弱くなったり強くなったり。
 それが・・・とても・・・気持ち・・・いいいぃぃ・・・
 鞭の柄を噛み締めながら、喘ぎたがる声を押し殺します。

 今までに着せられたアイテムがもたらした羞恥と被虐と恥辱で、ヘンタイドマゾな私の性的欲求はパンパンに膨れ上がっていました。
 その積み重ねの上にこんなに強烈な肉体的刺激が加わったら、もはや、快楽に抵抗する術など微塵もありませんでした。
 からだが溶けてなくなっちゃいそうなほどの快感の渦が、もうすぐそこまで来ていました。
 
 会場内の照明がフェードアウトするように徐々に暗くなっていきました。
 お姉さまのお顔が、だんだんと闇に溶けていきました。

「ぅあぁぁいぃぃぅあぁぁ、あっ、あっ、いぃぃぃっくぅぅ・・・」
 暗闇の中で私は、自分のからだを駆け巡る快感だけに埋没し、やがて果てました。
 
 会場が真っ暗になる前に二度、リンコさまのマイクが拾ったガタンという大きな音が、ローター音に混じって場内に鳴り響きました。

 一度目の音は、私が咥えていた乗馬鞭が床に落ちた音。
 二度目の音は、とうとうこらえきれずに崩れ落ちた私の両膝が床に激突した音でした。
 
 真っ暗になったステージ上で、盛大な拍手の音だけが聞こえていました。


オートクチュールのはずなのに 58


2016年9月4日

オートクチュールのはずなのに 56

 ほのかさまからリンコさまへと手渡されたのは、さっきと同じようなCストリングの形状をしていました。
 ただ、内側に何やら怪しげな突起が付いていました。
 それもふたつも。

「今度のアイテムはね、ちょっとえげつないんだ。でも、小夜ちんみたいなマゾッ娘にこそお似合いだと思う」
「絵理奈さんと穴の距離が微妙に違うとか言って、アヤ姉が急遽、微調整したらしいよ」
 リンコさまがイタズラっぽく笑って、その突起部分を私の目の前に突き出しました。

 手前には、大きめのローターをふたつ重ねたような赤い突起。
 後方には、丸っこくくびれた円錐型の、まさしくアナルプラグ然とした形状の突起。
 それらが、弓なりに反り返ったレザー製らしき真っ赤なCストリングの裏側に取り付けられていました。

 見た途端に理解しました。
「これを・・・い、挿れるのですか?」
「そう。挟むだけのCストより、外れちゃう可能性が格段に低くなるってわけ」
 とても愉しそうなお顔のリンコさま。

「本場のサンバカーニバル衣装でも、激しい動きで落ちちゃわないように、同じような細工しているのが普通にあるんだ」
「この突起はあくまでもストッパーとしての役目で、決して気持ち良くなるためのものではないんだから、そこ、間違えないでよ?」

 からかうようにおっしゃったリンコさまが、そのCストリングを私の目前からサッと引っ込めてほのかさまに戻しました。

「て言っても、今から穿かせちゃうと小夜ちん、ステージ出るまでに絶対どんどんサカッちゃいそうだから、これは最後。先にアクセ類つけちゃおう」

 リンコさまの号令で、しほりさまに左手を取られ、ほのかさまは私の足元にひざまずかれました。
 突起付きCストリングと同じ素材、色合いのベルト式な手枷と足枷が、おふたりの手で手際よく私の両手足に装着されました。

「このアイテムのコンセプトは、ずばり、ボンデージスレイブ、囚われのセイドレイ、なんだけど、モデルが小夜ちんになったから、ずいぶんとエスカレートしちゃったみたい」
「絵理奈さんのままだったら、ここまで本格的にヘンタイ仕様じゃなかったんだけどね。恨むならチーフを恨みなさい」
 背後に回ってベルト状の赤い首輪を私の首に巻きつけながら、リンコさまが私の右耳にささやきました。

「バストも、絵理奈さんだったら普通のパスティース貼るだけだったんだけど、チーフがこんなもの持ち出してきて」
 リンコさまの手のひらに、私の乳輪ギリギリくらいの、真っ赤なハート型パスティースがふたつ乗っていました。

「これはね、貼り付けるんじゃなくて、ニップルを挟んで固定するの」
 リンコさまがひとつのパスティースを裏返すと、バストトップにフィットするように曲線を描いた内側に、見た瞬間に仕組みがわかる金具が付いていました。

「ホフマン式ピンチコックっていう、化学の実験とかで使う器具があるんだけれど、その応用。本来は、このバーのあいだにゴム菅を挟んで、気体や液体の流れをコントロールするための装置なんだってさ」

 2センチ四方くらいの正方形のスチール枠の一辺がネジ式で可動するようになっていて、その枠内に挟んだものを締め付け出来るような仕組み。
 つまりはイヤリングで耳たぶを挟むのと同じ仕組みが大げさになった感じです。

「あの子、こういうの大好きだから、きっと大悦びするはず、ってチーフが言ってたってさ」
 ひとつを手渡されました。
「ほら、自分で乳首に嵌めて、ネジで落ちないように締め付けなさい」
「あ、はい・・・」

 左おっぱいにあてがいました。
 熱を持った乳頭に金具がひんやり。
 枠の上部分を乳首の根本まで押し付けて、ハート型のお尻部分から覗いているネジを締めていきます。
 やがて下枠の部分が乳首の下まで到達し、そこからは乳首が締め上げられるばかり。

「ああんっ」
 いくら尖ってもずっとほったらかしにされていた私の乳首が、久々にかまってもらえた嬉しさでわななき、思わずはしたない声となって零れてしまいました。

「途中で落ちないように、ぎゅうっと締めること。チーフの話じゃ、洗濯バサミ大好きらしいじゃん」
「小夜さん、乳首大きめだから、挟み甲斐がありそうね」
「ほら、顔がエロくなってるよ。いやらしいことは考えないで、ポーカーフェイス、でしょ?」

 左手でおっぱいを押さえつつ右手でネジを回す私を、リンコさまとしほりさまが口々にからかってきます。
 二枚の細い金属板に上下から挟まれ絞られた乳首のもたらす疼痛が、ジーンと全身を駆けまわります。

「そっちもちゃっちゃと着けちゃって」
「あ、はい・・・」
 同じ要領で右乳首にもハートをかぶせました。

 両乳首がもたらす疼痛がYの字状に下半身へと流れこみ、性器から全身へとジワジワ疼きが広がっていきます。
 これまでに蓄積されてきた、恥ずかしい姿をみなさまに視姦されるという精神的な快楽に、乳首責めという肉体的刺激まで加わったことで、発情のレベルが一気に上がってしまったようでした。
 もっと虐めて、もっと痛い思いをさせて、という欲求だけがどんどん膨らんでいました。

「落ちないようにちゃんと着けた?ちょっとそこでおっぱい揺らしてみてよ」
 リンコさまのイジワルなご命令。
「はい・・・」

 完全に言いなりマゾモードな私は素直にその場で、ラジオ体操の腰をひねる運動のように、上半身を左右に大きく振りました。
 剥き出しのおっぱいがでたらめにブルンブルン揺れると、鎮まりかけていた両乳首からの疼痛が息を吹き返しました。
「あぁ、うぅ」
 思わず洩れたいやらしいため息に向けられた、蔑むようなリンコさまの冷ややかな笑み。

「おっけー。あとはチェーンを繋げるだけだから、Cスト穿かせちゃいましょう」
 テーブルに放置されていた突起付きのCストリングをリンコさまが手に取られました。
「そんなにグショグショなら、ローションなんか塗らなくてもすんなり入っちゃうよね?はい。自分で着けて」
 Cストリングを手渡されました。

 みなさまが興味津々なまなざしで見守る中、手前の突起部分をマゾマンコにあてがいます。
 縦長の楕円を二つ重ねた、いびつな逆雪だるまさんのような形の突起部分は、シリコンみたく柔らかい素材なので、蜜に溢れた膣内に難なくズボッと潜り込みました。

「あうぅっ」
 マゾマンコ全体が今か今かと待ち望んでいた異物挿入の瞬間に、粘膜一同の歓喜のざわめきが実際の声となって洩れてしまいます。
 異物の侵入に溢れ出たおツユが、みるみるCストリングの裏側をヌルヌルに汚しました。

「そろそろ紹介映像が終わります。早めにスタンバってください。引き伸ばせて、最大あと3分です」
 里美さまの事務的なお声が聞こえました。

「ほら、早くアナルも嵌めて。リハのとき絵理奈さん、いちいち喘いだりしないで、ひとりで淡々とこなしてたよ?」
「あ、はい・・・」

 左手で股間を押さえ、右手を背後からお尻に持って行き、溢れたおツユをお尻の穴になすりつけます。
 私、みなさまの視ている前でこれから、お尻の穴に異物を挿入しようとしている・・・
 そう考えると恥ずかし過ぎて、あてがった先端を押し込むことに躊躇してしまいます。

「ううん、もう任せてらんない。アタシが挿れてあげるから。お尻突き出しなさい」
 リンコさまが焦れたようにおっしゃり、私の背中をいきなり押さえつけてきました。

「あうっ」
 お尻をリンコさまに向けて突き出した格好で、前屈みになる私。
「ほら、自分で穴、広げてなさい」
 ドエスそのものなリンコさまのご命令口調。
「は、はいぃ」
 両手をお尻の割れスジにあてがい、みなさまの目の前で自らお尻の穴を押し広げる私。

「あ、あの、わたし、このペットボトルをおトイレで処理してきちゃいます。すぐに戻ってきますので」
 あまりにみじめな私の姿にいたたまれなくなったのか、さっき私がしたオシッコボトルを紙袋に入れたほのかさまが、逃げるように楽屋のドアからお外へ飛び出していかれました。

「たまほのには、ちょっと刺激が強すぎたみたいね」
 傍らのしほりさまへ向けたのでしょう、リンコさまのバツの悪そうなつぶやきが聞こえました。
 と思う間もなく、お尻の穴にひんやりとした感触。

「んぐぅっ」
「力抜いてないと苦しいよ?」

 ヌルっとした感触が徐々にお尻の穴に埋まっていく感触。
 前に埋まっている突起との相乗効果で、下腹部の粘膜全体が心地よく圧迫されてきます。
「あぁうぅぅ」
 押し殺そうとしてもこらえきれない悦びの喘ぎ。

「おーけー。ずいぶんすんなり入っちゃった。普段から使い込んでるんだねえ」
 リンコさまのからかいが、的を射過ぎていて恥ずかし過ぎます。
 
 ゆっくりとからだを起こしました。
 体内に潜り込んだ異物がからだの動きに合わせて粘膜を擦るのがわかります。
 二穴蹂躙。
 えっちなビデオのタイトルか何かで見たことのある、そんな卑猥な言葉が頭をよぎりました。

「んぐっ、うぅぅ」
「ほら、スケベな声出してないで、ドアまで行くよ」
 リンコさまに促され、ステージへと出るドア前まで歩きました。

 脚を交互に動かすと、埋め込まれたふたつの異物が膣壁と腸壁を満遍なく圧迫するようにフィットして、思ったより歩きづらくはありません。
 だけど、これからこの状態で、たくさんのお客様がたの前を100歩以上は、歩かなければいけないのです。
 ポーカーフェイスをつらぬいて絶対に気持ち良くはならない、という自信はまったく持てませんでした。

「それで、最後の仕上げね。言っとくけど発案者は、愛しのお姉さまだから」
 リンコさまがからかうようにおっしゃり、両腕を後ろに回され、両手首の拘束具を後ろ手にガチャリと繋がれました。
 首輪にもおへそくらいまでの太くて重いステンレスチェーンをリードのように垂らされます。
 両足首の拘束具も、ちょうど一歩分くらいの長さにチェーンで繋がれました。

「うわー。すっごく似合ってる。さすがに小夜さんのこと知り尽くしたお姉さまのコーディネートね。エロさ満開」
 しほりさまが私の姿を上から下までしげしげと視つめて、おっしゃいました。
 それからふと思い出したように、リップを塗り直してくださいました。

「スタンバイ、お願いします」
 里美さまのお声で、しほりさまがステージへ向かうドアを開きました。

「マゾっ娘コーデの最後の仕上げは、ステージ袖でね」
 リンコさまが後ろ手に何か隠し持った格好で、私をステージ袖の暗がりへ押し出しました。
 思わず右足をグイと踏み出すと両足幅を繋いだ鎖がピンと張り、グラリとよろけてしまいました。
 背後のリンコさまに支えられ、転ばないで済みました。

「普通の歩幅よりチェーンが短かめになっているから、歩幅調整してゆっくり歩いて。その分、お客様にじっくり視てもらえるはず」
「ステージに戻ったらまた、楽屋に戻らず居残って。アヤ姉たちの解説が入るから」
 リンコさまがおっしゃりながら私の正面に回り込みました。

「いろいろ候補はあったみたいよ。普通のボールギャグとかノーズフックとかね」
 後ろ手に隠し持っていたものを見せてくださるリンコさま。
 お姉さまが私のために手に入れてくださった、あのブランドもの乗馬鞭でした。

「これを咥えて、ランウェイを歩くの。ここがちょうど真ん中でバランス取れるから」
 リンコさまが乗馬鞭の柄の真ん中あたりを人差し指に乗せて、やじろべえみたいにユラユラさせています。

「火の点いた太いローソクを咥えさせて蝋をダラダラ肌に垂らしながら、っていう案もあったらしいけれど、万が一ウイッグに燃え移ったり、絨毯に落としたりしたら危ないしね。消防法にもひっかかりそうだし」
「いろいろ悩んで、これを咥えさせるのが一番アナタらしいって、考えたみたいよ、アナタの愛しいお姉さまは」
 からかうな笑顔がすぐに引っ込み、真顔に戻ったリンコさま。

「口開けて」
 恐る恐る開けた口に乗馬鞭の柄が押し込まれました。

「一度咥えたら、ランウェイ往復して帰ってくるまで、絶対落としちゃだめよ」
 そこまでおっしゃって意味ありげにお言葉を切ったリンコさまが、ゾクッとするほど冷ややかな笑みを一瞬浮かべられ、こうつづけました。
「たとえどんなことが起こっても、ね」

 咥えさせられた乗馬鞭の柄は、思ったよりも弾力があり、左右の糸切り歯がやんわり食い込んでいる感じ。
 顔の左側にベロ部分、右側にグリップ部分。
 鞭自体は軽いので、落とす心配は無さそう。
 でも、口が半開きのままになるから・・・

「よだれなら、どんどん垂らしていいってさ。上の口も、もちろん下の口からもね」
 私の心を見透かしたようなリンコさまのお声が終わるか終わらないかのタイミングで、場内のBGMが変わりました。

 ホラー映画のサントラ盤みたいな、物悲しくも重厚な曲。
 一瞬にしておどろどろしい雰囲気に変わりました。
 場内の灯りも一斉に消え、真っ暗。
 やがてピンスポットがステージ上の、私が出るべき位置だけを丸く照らし出しました。

「お待たせいたいました。それではどうぞじっくりと、ご覧になってください」
 雅部長さまのお芝居がかった綺麗なお声が響き渡り、つづいて盛大な拍手。
 その中を私は、ゆっくりと光の輪の中へと歩を進めました。

「おおおぉぉ」
 光の中に入った途端、会場全体が大きくどよめきました。

 からだの首と名のつく箇所すべてに赤いレザーの拘束具を着けられた、パスティースにCストリングだけの裸体が浮かび上がったのでしょう。
 両手は後ろ手に繋がれ、両足も囚人のようにチェーンで繋がれ、首元からもペットのように鎖を垂らし、自分を痛めつけるための乗馬鞭を自分で咥えた哀れなマゾ女。
 
 スポットライトが私を焦らすかのように、とてもゆっくりとランウェイに導いてくれます。
 ライトから外れるわけにはいかないので、その動きに合わせてゆっくり歩かなければなりません。
 こんな恰好なのに、努めて無表情に。

 首から垂れたチェーンが揺れて横乳を愛撫します。
 足首を繋いだチェーンがジャラジャラと音を立てます。
 鞭を咥えた唇からはよだれが垂れ始め、首筋からおっぱいへと滑り落ちています。

 ランウェイに降りると、ライトの動きはますます遅くなりました。
 一歩進んでは立ち止まるような、周辺のお客様がたに存分に見せつけるようなペースになりました。

 このアイテムの破廉恥な仕組みは当然、私の登場前に綾音さまが、お客様がたにご説明されているでしょう。
 つまり、ここにいるみなさまは全員、今私がどんな状態なのかをご存知なのです。

 パスティースの裏で私のふたつの乳首がネジでギュッと締め付けられていることも。
 Cストリングの裏で私のふたつの穴が卑猥な突起に蹂躙されていることも。

 パスティースのハート型のお尻からは、締め付けるためのネジが2センチくらい覗いていました。
 Cストリングと肌の隙間からは、溢れ出た粘性のおツユがトロトロと内腿をつたっていました。
 
 今私は、自分の性的に敏感な箇所すべてを陵辱されながら歩いている姿を、そうと知っているみなさまにご披露しているのです。
 それは、自分が普段人知れずしているオナニー姿をみなさまに晒しているのとほとんど同じことだと気づき、その恥辱に性懲りもなく更に昂ります。

 リンコさまは、Cストリングの突起を、あくまでもストッパーとしての役目で、決して気持ち良くなるためのものではない、とおっしゃいましたが、それは嘘でした。
 
 きっとそういうふうに設計された形状なのでしょう、
 歩いているうちにマゾマンコに埋められたほうの突起がどんどん奥へと侵入してきて、脚を動かすたびにより奥へ奥へと突かれる感覚がしていました。

 あっ、あっ、んっ・・・これ、気持ちいい・・・
 表情に出さないように努めながらも、どうしても股間の快感に眉間が寄ってしまいそうになってしまいます。

 お客様がたはシンと静まり返り、誰もがスポットライトの中の私の姿を食い入るように凝視しているのがわかりました。
 すすり泣くような物悲しいストリングスのBGMだけが場内に鳴り響いています。
 まるでヨーロッパ中世の古びたお城かどこかに拉致されて、生け贄とか奴隷とか、余興の慰みの見世物にされている気分でした。
 私の中の被虐メーターが振り切れそう。
 
 ランウェイを半分くらいまで進んだところで、今までになく深い所を突かれ、たまらずキュンと膣壁が突起を強く締め付けたのがわかりました。

「ぁんんっ・・・」
 同時に頭の中に真っ白な火花が散り、腰から砕け落ちそうになりました。


オートクチュールのはずなのに 57


2016年8月21日

オートクチュールのはずなのに 55

 それ以降のアイテムはどれも、ほとんど裸、としか言いようのないものばかりでした。
 バストトップと股間をいかにギリギリに隠すか、みたいなコンセプトのものばかり。

 幅3センチにも満たない赤いリボンを胸囲を測るように巻きつけ、同じ幅のリボンがおっぱいの谷間から一直線に下へ伸び、股間を覆って背中側へと通る、正面から見ると、乳首を結んだ線と股間への細いラインがTの字の形にしか肌を隠さない水着。
 
 首に巻いたチョーカーから垂れ下がったチェーンが乳首と股間だけを、小さなハマグリの貝殻みたいなアクセで隠してくれるビキニ。

 Cストリングと呼ばれる、両脚を通すパンツ状の紐も布も無い、ただ股間にパカっと嵌めるだけのC字型カチューシャみたいなボトムスを穿かされたときは、乳首のほうは、小さなハート型のパスティースをペタンと貼り付けただけでした。

 アイテムお着替えの合間に、リンコさまが教えてくださいました。

「こっちに戻ってからの開演前のミーティングでね、当初の予定からの演出変更がけっこうあったんだ」
「どうせなら絵理奈さんじゃ出来なかった、ぶっ飛んだこともしちゃおう、ってさ」

「モデルが絵理奈さんだったら基本、ニプレスと前貼りでずーっと通すつもりだったんだよね。彼女はプロで、イメビとかもけっこう売れているほうだからさ」
「プロのモデルにとって、そういう部分って、ある意味、売り物なわけじゃない?見えた見えないの世界で。まあ、今回は名前出さない予定だったけれど」
「イメビでもまだバストトップ解禁していないランクだからさ、軽々しく見せちゃうと、価値が下がっちゃう、みたいな、オトナの事情もあるし」

「でも小夜ちんがモデルになったことだし、不幸中の幸いを最大限活用して、ここは思いっきりはっちゃけちゃおうって、絵理奈さんだったらNGだった試作アイテムとか、急遽オフィス戻って持ち出してきたり」
「一番ノリノリだったのがチーフ。こういうの、ナオコ悦びそう、とか言っちゃって、アヤ姉とワイワイ盛り上がってた」

 チェーンにハマグリのビキニでステージに出るとき、オモチャの手錠を後ろ手に嵌めることにしたのも、お姉さまのアイデアなのだそうです。
 首に嵌められたチョーカーがベルト式のワンちゃんの首輪っぽいデザインなことも相俟って、私的に一気に、マゾドレイ、な被虐モードに入りました。

 ある意味とても私らしい、こんなマゾ丸出しな姿までお客様がたにお視せすることで、お姉さまもイベントを愉しまれているんだ・・・
 このイベントでは、たとえ私がどんなにアブノーマルな姿を晒しても、お客様がたも含めて誰ひとり、咎めるような人はいない、ということを、これまでの出番で実感していました。
 
 だから直子も遠慮なんかせずに、人知れず隠し持ってきた性癖を、残らずここでさらけ出して開放しちゃいなさい。
 お姉さまに、そう言われているような気がしました。
 そう考えると、お姉さまが私を本当に理解してくださっているんだな、って思えて、キュンキュン萌えちゃいました。
 
 後ろ手に拘束されていても、ランウェイでは胸を張って颯爽と歩かなければなりません。
 ほとんど裸な晒し者姿の私を、食い入るように、その歩み通りに追いかけてくるみなさまの値踏みするような視線。
 なんだかマゾドレイの競り市に出品されちゃった気分。

 天然モノらしい小さなハマグリの貝殻の裏に、背伸びしきった乳首が擦れます。
 大きめのハマグリに軽く覆われただけの股間の奥がジンジン疼きました。
 ただ、それと同時に不穏な兆候を下半身に感じ始めていました。

 最初は、興奮し過ぎて、感じ過ぎちゃっているせいだろうな、って思いました。
 ひとりでオナニーしているときも、たまにそういう感覚に陥るときがあったからです。
 そういうときはたいてい、最終的にはシオを吹いちゃうのでした。

 でも今は、何かを挿れたり、直接刺激とかは一切していないのだけれど・・・
 そこでやっと気づきました。
 これは、尿意。

 考えてみると午前中にお姉さまからお浣腸をされて以来、ずっと排泄行為はしていませんでした。
 ショーが始まってからは、浴びせられるライトの暑さやからだの火照りに任せてスポーツドリンクをゴクゴク飲み干していました。
 当然の結果でした。
 まだ我慢しきれないほどではなかったのですが、楽屋に戻ったとき、リンコさまにご相談してみました。

「あの、おトイレに行かせてもらえますか?」
「えっ?」
 私の貝殻ビキニを脱がせながら、リンコさまが驚いたお声をあげられました。

「大きいほう?小さいほう?」
「あ、えっと、オシッコです」
「したくなっちゃったの?」
「はい・・・」
「我慢出来ないくらい?切羽詰まってる?」
「あ、いえ、まだ、それほどではないですけれど・・・」

 全裸になった私の下腹部を、じっと見つめてくるリンコさま。
 その視線を私の顔に戻した後、唇の両端だけクイッと上げたイジワルそうな笑みを作って、こうつづけました。

「とりあえず次のアイテムは、すぐに着替えて出なきゃならない段取りだから我慢して。その次なら、少し着替え時間に余裕があるから、何か方法、考えておく」
 おっしゃりながら私のからだをタオルで拭ってくださるリンコさま。
 気のせいか下腹部の膀胱の辺りをギュウギュウ押してくるように感じました。

 乳首の上にハート型のパスティースが貼られ、股にCストリングが嵌められました。
「小夜ちん、こういうの初めてでしょ?アイバックっていうんだ」

 両腿の付け根に挟んだだけ、な構造は、ちょっとしたことですぐ外れちゃいそうでとても頼りない感じですが、お尻側に回った細長いワイヤーぽい部分に弾力があり、お尻の割れスジに沿って食い込むように締め付けてくれるので、意外に落ちないみたい。

「ドレスとかでパンティラインを出したくないとき用に考案された、っていう触れ込みなんだけどさ、どう見たってエロ目的だよね、こんなの」
 これからその、こんなの、を身に着けて人前に出る私を目の前にして、他人事のようにおっしゃるリンコさま。

「まあ、アタシがいろいろ改良して、そのへんの市販品よりずっと着け心地良く、外れにくくしてあるからさ。安心してお客様にじっくり見せておいで」

 乳首にはシール、股間にはカチューシャ方式で嵌めただけのCストリングという全裸と大差ない姿でランウェイを往復し、楽屋に戻りました。
 お客様がたからの射るような好奇の視線シャワーにゾクゾク感じつつ、尿意も一段階上がっていました。

「おつかれー。こっち来て」
 戻るなり、リンコさまに手を引かれ、お部屋の中央に連れて行かれました。
 床に今まで私に使用したのであろう、少しヨレたバスタオルが何枚か敷いてありました。

「次のアイテムがラス前だから、あともうひと踏ん張り」
 しほりさまがお声をかけてくださいます。
「次のアイテムはちょっと仕込みに時間かるんだけれど、オシッコどうする?」
 リンコさまが尋ねてきました。

「あ、はい。やっぱりしちゃったほうがいい感じみたいです」
 我慢するのは好きだし得意なのですが、万が一我慢しきれなかったら、お姉さまのイベントを台無しにしてしまいます。
 それに、自分でもはっきりとわかるほどに尿意が高まっていました。

「そっか。でもこのフロアにあるトイレは、ここからかなり離れているから、悠長にトイレに行ってる余裕がタイムスケージュル的にも無さそうなんだ。悪いけれど」
「かと言って無理やり我慢させて、ショーの途中で小をお漏らしさっれちゃったりしたら、目も当てられないからさ、ここでしちゃって」
 しょうもないダジャレ混じりでイジワルに笑いながら、リンコさまがサラッとおっしゃいました。

「え?こ、ここで、ですか?」
「うん。これに」
 差し出されたのは、2リットルの空のペットボトル。
 私がゴクゴク飲んでいたスポーツドリンクの空き容器でした。

「グラビアやイメビの野外ロケとかでもよくあるよ。モデルが急にしたくなっちゃうこと」
 しほりさまが会話に加わってきました。
「近場にトイレ無いことザラだから、いつも携帯トイレをいくつか持ち歩くことにしているんだけれど、今日は生憎持ってなくて。ごめんね」
 もしもしほりさまが携帯トイレをお持ちでも、ここですることに変わりはないようです。

「で、でも、みなさま、いらっしゃるんですよね?」
 てっきりガウンでも着せられて、早く帰ってらっしゃい、とおトイレに送り出されると思っていた私は、ドギマギしすぎて、尿意がどんどん荒ぶるばかり。
 ここで、みなさまに見守られる中で、オシッコしなくちゃならないの?

「仕方ないじゃない。今は大事な仕事中なんだよ?アタシらは、スケジュール通りに一分一秒を争って、次のアイテムを着せなくちゃならないのっ」
 焦れたようにリンコさまがおっしゃいました。

「なんだか拍子抜け。小夜ちんなら、悦んでするだろうって思ったのに」
 リンコさまが真面目なお顔で私を見つめてきました。

「どうしてもここでしたくないって言うのなら、トイレに行ってきてもいいよ、ただし、その格好のまま、ひとりでね」
「このフロアのトイレは、エレベーターロビーの真ん前。今は時間的に他の会場が入れ替えの頃だから、他の催事で来たサラリーマンのお客様とか、たくさんいると思うけどね」
「それで、きっちり3分以内に戻ってきて。それが出来ないなら、ここでしなさい」
 今までにないほど冷たく突き放した、リンコさまのエス度満点な視線。

「あなた、マゾなんでしょう?それともチーフ、呼ぼうか?」
 最後に私の目を射るようにじっと視て、吐き捨てるようにおっしゃいました。

「は、はい・・・わかりました・・・こ、ここで、します・・・」
 マゾマンコの奥から脳天まで、隷属、という名の気持ち良い電流がズキュンとつらぬきました。
 これは、ご命令なんだ・・・
 私は、今日モデルをすると決めたときから、お姉さまの会社のスタッフのみなさま全員の慰み者、マゾドレイになったのだから・・・

「ならさっさとしちゃってよ。それじゃなくても時間押してるんだからっ」
 リンコさまのエスな口調とともに、おっぱいのパスティースが乱暴にベリっと剥がされ、Cストリングスもスポッと外されました。

 全裸にされて敷かれたバスタオルの縁に立ちます。
 中腰になってマゾマンコの割れ始め付近にペットボトルの飲み口の縁を右手であてがいました。

 私の正面にリンコさまとしほりさま、右側にほのかさま、背後に里美さま。
 ほのかさまだけは、ちょっと離れたところで怯えたような瞳で、それでも視線はしっかり私のからだに向いていました。

「一応タオルは敷いたけど、なるべくこぼさないでよ。しっかり狙って」
「はい・・・」
 会社のみなさまに、全裸でオシッコするところを視られている・・・
 ドキドキがひどすぎて、なかなか出てきません。

「自分でラビア広げて、尿道により近づけたほうがいいんじゃないの?」
 リンコさまの蔑んだお声。
「いっそ飲み口を中に突っ込んじゃえば?」
 しほりさまのからかうようなお声。
「そのボトルの飲み口は、ウエットティッシュでちゃんと拭っておいたので、清潔だと思います」
 ほのかさまのひどく真面目なお声。

「は、はい・・・」
 すべてのお声がご命令でした。

 左手をマゾマンコに添え、自分で陰唇をグイッと開きました。
 一瞬で左手の指先がヌルヌルになるほど濡れそぼっていました。
 飲み口をそっと粘膜に近づけます。
 粘膜に直接プラスティックの感触がしたとき、添えた左手の手のひらが、腫れ上がったクリットに触れました。
「あぅ!」

「感じてる場合じゃないでしょ?ほんと、いやらしい子」
 呆れたようなリンコさまのお声と同時に、ペットボトルの底から音がし始めました。

 ジョボ・・・
 ジョボジョボ・・・
 ジョボジョボジョボーーーッ!

 一度出始めると堰を切ったように、勢い良くほとばしる不浄な液体。
 右手で持ったペットボトルがみるみる重くなり、生温かくなってきました。
 ジョボジョボジョボーーーーーッ。
 逃げ出したくなるほど恥ずかしい水音がお部屋一杯に響き渡りました。

 視てる・・・
 視られてる・・・
 明るい蛍光灯の下まっ裸になった私が、オシッコしている姿を・・・
 リンコさまが、しほりさまが、ほのかさまが、里美さまが。

「現在、夕張さん、オシッコ中です。その後、着替えですので、予定より3分前後つないでおいてください。あとで巻きますので」

 背後から美里さまのお声が聞こえてきました。
 そんなこと、わざわざご報告されなくてもいいのに・・・
 交信のお相手は、お姉さまでしょうか、ミサさまでしょうか?
 美里さまのインカム越しに、私の派手な放尿音も聞こえちゃったでしょうか・・・

 永遠につづくように思われた激しい水音もやがてチョロチョロ、せせらぎ程度になっていました。
 ポチャン。
 最後に水面を震わせた波紋を合図に、そっとペットボトルをマゾマンコから離します。
 ツツーっと糸を引くペットボトルの飲み口はヌルヌル。

「済んだ?」
 真正面から一瞬も目をそらさず私の放尿姿を視つめていたリンコさまが、お顔を上げて尋ねてき
ました。

「はい」
「スッキリした?」
「・・・はい」

 ペットボトルの三分の一くらいが、薄黄色の液体で満たされていました。
 たった今、私の体内から排出されたオシッコ。
 その体温くらいに生温かくなったペットボトルを両手で持った全裸の私を、全員が無言で見つめていました。
 たった今、私のマゾマンコから離された、丸くぽっかり空いた飲み口から、独特の不浄な臭いが辺りに漂ってきます。

「けっこうクサイね。早くふたしちゃいなさい」
 リンコさまったら、わざわざおっしゃらなくても・・・

「は、はいっ」
 今更ながらの強烈な恥ずかしさをごまかすみたいに、ほのかさまから渡されたペットボトルのキャップをギュウギュウ締めました。
「スーパーモデル、夕張小夜様のしぼりたて聖水瓶詰めね」
 しほりさまのからかい口調に、いたたまれない程の羞恥で今すぐどこかへ逃げ出したい気持ち。

 ほのかさまがウエットティッシュを差し出してくださっています。
「これで後始末するといいわよ。ソコ」
 私の股間にチラッと目を遣っておっしゃってから、すぐにお顔ごと視線を逸らされました。
「・・・ありがとうございます」
 自分の股間に押し当てた途端、ベトベトになるウェットティッシュ。

「それにしても、あんな姿勢でそんな細い飲み口に、よく一滴もこぼさずに出来たものよね。ひょっとして家でも日常的にやっている熟練者だったりして」
 しほりさまが感心したように尋ねてきました。
「い、いえ、初めてです。ペットボトルにオシッコなんて、今までしたことないです」
 大急ぎで否定する私。
 だって本当のことですもの。

「ふーん。やっぱわたしの、突っ込んじゃえ、っていうアドバイスが良かったのかな」
 自画自賛されるしほりさま。
「でもこれで、マゾプレイのレパートリーが増えたんじゃない?あえてナオコって呼ぶけれど、ナオコのオフィス放尿ショー、なんてね」
 すっかり言葉責めモードに入っているしほりさまのご冗談にも即座に、オフィスでおトイレに行かせてもらえない私が、みなさまの前でペットボトルにオシッコする姿をご披露している妄想を浮かべてしまう、どうしようもない私。

「はいはい。時間押してるよ。次はプレイ編のメインアイテム、そしてオーラスのエンディングアイテム。最後まで気を抜かないで、キメにいくよ」
 
 リンコさまがパンパンと拍手しておっしゃったそのお言葉で、私のオシッコ姿ご披露タイムで緩んでいた場の空気が、再びピリッと張り詰めました。


オートクチュールのはずなのに 56


2016年8月14日

オートクチュールのはずなのに 54

 楽屋口で迎えてくださったのは、ほのかさま。
 剥き出しになった私のおっぱいを一刻も早く隠さなくては、とでも言うような困惑された表情で、バスタオルを広げて待ち構えていてくださいました。

「お疲れさま」
 労るようなおやさしいお声とともに、背中から包み込むように、大きなバスタオルで私の裸身をくるんでくださいます。

 ほのかさまと抱き合うような形で、されるがままになっていたとき、ほのかさまの右肘が私の尖った左乳首にチョンと触れました。
「あうぅ」
 途端にビリリってそこから全身に電気が走り、思わずはしたない声が洩れました。
 ほのかさまが小さくビクンと震えて一歩退きました。

 私、すごく感じやすくなっちゃっている・・・
 全身の皮膚すべてが性感帯のよう。
 背中に触れているタオル地のザラザラした感触にさえ、ムラムラ昂ぶってしまいます。

「あらら。夕張さん、だいぶ出来上がっちゃったみたいね、顔がトロンて蕩けてる」
 少し離れたところで私たちを見守っていたしほりさまが、愉快そうにおっしゃいました。

「ああ、びっくりしたぁ」
 楽屋口のドアを開けて、リンコさまが戻っていらっしゃいました。

「まさか小夜ちんが、あんなに盛大に濡らしちゃっているとは、思わなかったよー」
「本当はステージでショーツまで脱がせちゃう段取りだったんだけどさ、あんなビチョビチョじゃ、お客様に引かれちゃうと思って、急遽中止した」
 
 呆れたようなニヤニヤ笑いを浮かべたリンコさまに手を引かれ、鏡の前に連れて行かれました。
 せっかくほのかさまが巻いてくださったバスタオルは当然のように剥がされ、おっぱい丸出し女の姿が鏡に映ります。

「ほら、ぐずぐずしないで、ショーツも脱いで!」
 リンコさまの口調、エス度が増しているみたい。
「は、はい・・・」
 みなさまが見守る中で身を屈め、自らショーツをずり下げました。

 私のマゾマンコとソコが密着していたショーツの裏側とのあいだに、か細くて粘り気のある、喩えて言うと納豆の糸のような線が何本も引いては途切れました。
 ショーツを足元まで降ろしても、まだがんばって引きつづける糸も何本かありました。

 そんな光景をじっと見つめている楽屋のみなさまの目。
 そして辺りに漂い始める私にとっては嗅ぎ慣れた、薄っすら磯臭いような淫靡な発情の臭い。
 ショーツの裏側にたっぷりねっとり染みついた、この夥しい粘液こそが、私の淫らなヘンタイ性癖を可視化する動かぬ証拠となっていました。

「チーフが前貼りを却下した理由がわかったよ」
 私の股間をタオルでぞんざいに拭いながらリンコさまがおっしゃいました。
「こんなにベチョベチョにしちゃったら、すぐ剥がれちゃうし、ベージュの前貼りは濡れ染みになると茶色く目立ってみっともないもんね」

 タオルを私のマゾマンコに押し付けて、ギュウギュウと膣の中にまで押し込むように、おツユを拭ってくださるリンコさま。
 私はもちろん服従ポーズで、その刺激の快感に耐えていました。
 リンコさまの傍らではほのかさまが、私が汚してしまった透明ショーツの裏側を真剣なお顔で、丁寧に濡れタオルで拭ってくださっていました。

「このショーツも会場のマネキンに穿かせなくてはいけないのでしたよね?」
 私の淫汁を拭い去り、なんとか透明度95パーセントくらいに戻ったショーツをつまみ上げ、ほのかさまがリンコさまに尋ねました。

「マネキンは仕方ないから諦める。本当は水洗いしたいところだけれど、しちゃうと終わりまでに乾かなそうだし。その感じでいいから、あとは楽屋で干しといて」
「商談会でお客様からご希望があれば、実物を手に取ってもらうことになるからさ」

 リンコさまがタオルを私の股間に押し当てたまま私の顔をじっと見てつづけました。
「濡れタオルで拭いただけじゃ、臭っちゃうかもしれないけどね」
 私に向けて、ニマッと笑うリンコさま。

 そのお言葉を聞いた途端、からだ中の血液がカッと燃え上がり、押し付けられたタオルに恥辱の元凶である淫汁がまた、性懲りもなくトロリと溢れ出たのがわかりました。

 次に着せられたのは、同じ透明素材にうっすら赤色が入ったドレスでした。
 よく海外の映画女優さんなどが華やかなパーティでお召しになっているのを見かける、肌の露出部分の多いセクシー系のイブニングドレス。

 ホルターネックのVラインが大胆に下腹部あたりまで切れ込んでいるので、正面からはおへそ下まで、側面からも横乳がほとんど丸見え。
 少し動いただけでもすぐ、乳首がコンニチハしちゃいそう。
 背中も、お尻の割れ始めくらいまで大胆に開いています。
 スレンダーラインの裾はかかとまであるのですが、左側に入ったスリットが腰骨のあたりまで切れ込んでいるので、脚を踏み出すたびに翻り、キワドイところまで露になりそう。

 そしてもちろん、赤みがかっているとは言え透明素材ですから、ドレスの下の私の裸は丸わかり。
 幅5センチくらいの布地の下で息づく乳首の硬直具合までも、肉眼でハッキリわかりました。

 今度は、こんなのを着て、みなさまの前に出るんだ・・・
 ドキドキとワクワクが、頭と心と下半身に充満します。
 私にはすでに、理性はほとんど残ってなく、自分のヘンタイ性癖の基準で物事を判断し始めていました。
 
 恥ずかしい姿の私を、みなさまに視ていただける・・・
 その悦びだけで全身が疼きます。
 一刻も早くステージに出て、お客様がたを私の姿で驚かせたいという気持ちで一杯になっていました。

 そんなふうにしてショーは進んでいきました。

 シースルー素材の次は、ボンデージ系。
 キャットスーツというのでしょうか、ラテックス素材で首から下すべて、手の先から足の爪先までピッタリと覆われるボディスーツ。

 本当にピッタリ誂えたように、私の裸のボディラインそのまんまに素肌に吸いつく極薄ボディスーツ。
 これは本来、絵理奈さまのサイズに合わせて作られたのですから、他の人には着こなせません。
 だけど私にも見事にピッタリで、そのことを見極められた綾音さまのデザイナーとしての眼力に、今更ながら感心してしまいました。

 こういうアイテムは着たことがなかったので、鏡に映った姿を見たときは衝撃でした。
 最初に着せられたのは、真っ白な地にところどころラインの入った、超有名な人気SFアニメに出てくる、プラグスーツを思わせるデザインでした。

 その剥き出しなボディラインとラテックス素材の光沢が艶めかしくて、まさに裸よりエロティック。
 これも独自開発した新素材のラテックスだそうで、本当に極薄で、乳首の形も、股間のスジの食い込みも、まるで何も着ていないかのように見事に浮かび上がっていました。

 着心地も衝撃でした。
 水泳の水着やバレエのレオタードとも違う、肌に吸いつくような悩ましい密着感。
 初めはひんやり感じた素材が、体温で温まって一体化し、それでなくても敏感になっている全身の肌の触感がざわめきだします。
 どこもかしこも常に誰かに触られている感じ。
 これを身に着けたまま、麻縄でギュウギュウに縛られたら、すっごく気持ちいいだろうな、なんて、ふと考えちゃいました。

 2着めのキャットスーツは渋いモスグリーン。
 こちらはご丁寧にも、おっぱいのカップ部分と下半身のクロッチ部分だけ別素材で、特殊なジッパーで着脱出来るようになっていました。
 そしてもちろん、ステージ上で服従ポーズになり、リンコさまの手でその部分を外されました。

「絵理奈さんだったら当然、ニプレスと前貼り、してあげたんだけどね」
 外す寸前、リンコさまが小声で、からかうようにおっしゃいました。

 明るいステージの上。
 ボディラインも露なエロティック衣装の私に、お客様がたの視線が集中する中。
 全身モスグリーンの中で剥き出しとなった3箇所の、誰の目にもあからさまに欲情しているとわかる生身の肌色部分は、さぞかし卑猥に目立っていたことでしょう。

 つづいては、カジュアルラインコーナー。
 街中でも着て歩けるエクスポーズ服、というコンセプトなのだそうですが、どのアイテムも、とてもそうは思えませんでした。

 まずは、ロリータっぽいハイウェストジャンパースカート。
 ドイツの可愛らしい民族衣装=ディアンドル風の、おっぱいのすぐ下にハイウエストの切り替えが来て、おっぱいをドーンと強調しちゃうアレです。
 赤、緑、黒のチェック柄でメルヘンチックなジャンパースカートに白のフリルブラウスを合わせます。

 襟元にえんじのリボン、パフスリーブでふうわり王子様袖という、超可愛らしいデザインのフリルブラウスなのですが、丈だけが異様に短いんです。
 おっぱいの乳首、そのすぐ下くらいまで。
 下乳丸出し。

 ベリーダンスの人がよく着ている、両袖を通した胸が隠れるくらいのボレロ、を思い浮かべてくださるとわかると思います。
 それのボレロ部分がおっぱいの半分までしか届いてないわけです。
 ジャンパースカートの胸当て部分が、そのすぐ下に来て、半分だけ隠れたおっぱい部分をボーンと強調するみたくウェストを引き絞っています。
 ノーブラでそれを着ると、まっすぐ立っていればスレスレでやっと乳首が隠れる感じでした。

 おまけに、ジャンパースカートも超ミニで、膝上20センチ以上。
 ちょっと前屈みになればお尻丸出しになるのは確実でした。

「本当は、可愛い見せパンも穿くんだけれど、小夜ちんが穿いてもまた汚しちゃうだけだから、ノーパンでいいよね」
 リンコさまのイジワル声でステージに送り出されました。

 次に着せられたのは、一見、ストンとしたラウンドネックのシンプルなワンピース。
 色は肌色に近いベージュで七分袖の膝丈。
 なのですが、両サイド裾から腋下のところまでスリットが入っていました。

 つまり、このワンピースを素肌に着ると、一枚の細長い布地を両肩で折り返して、からだの前後に長方形の布を一枚づつぶら下げているだけ、みたいな状態。
 繁華街などでたまに見かける、からだの前と後にお店の広告看板をぶら下げて宣伝されているサンドイッチマンの人みたいな格好を、裸でしていることになるんです。

 その状態でウエスト部分を黒いベルトでキュッと絞られました。
 ウエストを起点にして、上半身は、胸側に一枚、背中側に一枚、下半身は、お腹側に一枚、お尻側に一枚の布に分割されました。
 横から見たら、前後の布のあいだから横乳、脇腹、太腿まで丸見えです。

 おまけに生地がとてもスベスベ柔らかくて軽いこともあり、からだにくっつけばラインがクッキリ、少し動いたらヒラヒラして、裾が大げさにフワリという仕様。
 腕を振ってランウェイを歩くと、上半身の布がベルトを起点にどんどんせり上がってきて、楽屋に戻る頃には、側面がら空き、横からなら乳首までおっぱい見え放題な状態となっていました。

 その次のアイテムは、パンツルック。
「今日の中ではこれが一番、完成まで試行錯誤したんだ」
 と、リンコさま一推しのアイテムでした。

 渡されたのは、一見普通のブルージーンズ。
 でも股上が異常に浅い?
 まず右脚から通すと、足周りはジャストフィットなスリムジーンズ。
 つづいて左脚を通して腰まで上げました。

「えっ!?」
 思わず絶句してリンコさまを見ました。
「凄いでしょ?」
 ご満足そうなリンコさまの笑顔。

 ほとんど股上がありませんでした。
 両腿の付け根から上には、ほんの数センチほどの布地しかありません。
 前は、性器のスジ覗き始めから、後ろはお尻の穴がギリギリ隠れるくらいだけしか覆ってくれていません。
 例えて言うなら、腿までのストッキングをそのまま右左縫い付けて、股上として幅数センチの腰周りをくっつけた、という感じ。
 ウルトラスーパー超ローライズジーンズ。

 かろうじて恥丘の上に来たボタンを留めます。
 当然ジッパー部分は無し。
 鏡には、左右の大腿骨付け根からのラインが作る三角形の下腹部すべてが露出した私の下半身が映っていました。
 後ろを向くと、お尻の割れスジも三分の一以上はみ出しています。

 このジーンズって、絶対しゃがめないよね・・・
 しゃがんだ途端に股上が腿の方にずり下がって、前の穴も後ろの穴も丸出しになっちゃうはず。
 鏡の自分を視つめながら、ステージ上でしゃがんだ自分の姿を想像していました。

「いかにギリギリまで攻めるか、苦労したんだ。弾力のいいコットンとか探してさ」
 私のほぼ剥き出しな下半身を至近距離からじーっと見つめつつ、リンコさまが感慨深げにおっしゃいました。
 確かに腰の動きに合わせて生地が伸びる感じで、穿き心地はすっごくいいんです。
 それを伝えるとリンコさまは、がんばった甲斐があった、って喜んでくださいました。

「こんなの、普通にヘアのある人は、ショーツ着けたって恥ずかしくて穿けないでしょう?まさに生涯パイパンなナオコ、じゃなくて小夜ちんのため、みたいなデザインじゃない?」
「小夜ちんの性器、絵理奈さんより上付き気味だから、ボタンがスジにギリギリだけど、きっと小夜ちんには、そのほうが嬉しいでしょう?」
 イジワルっぽくおっしゃったリンコさま。

「モデルが絵理奈さんだったら、白いTバックショーツを下に穿く段取りだったんだ。ノーパンだとあまりに生々し過ぎるし」
 独り言っぽくつぶやかれてから、まっすぐ私の顔を見て、つづけられました。

「どうせ小夜ちんが会場歩いて帰ってきたら、股上の裏、ベチョベチョに汚しちゃうんだろうから、この試作品は小夜ちんにあげる。オフィスでもよくジーンズ穿いているじゃん。普段着で使うといいよ」
 その口調にエスっぽいニュアンスを感じて、私にはそれがリンコさまからの、オフィスでもこれを穿きなさい、というご命令に聞こえました。

 上半身には、アンダーバストギリギリ丈のパツパツな白チビTシャツをノーブラで着せられ、その上に前開きのラフなデニムジャケットを羽織りました。
 ジャケットのボタンは、おへそから裾まで留めます。
 ボタンを留めている限りは、下のジーンズの股上がどうなっているのか、お客様にはわかりません。

「ランウェイの端に行ったら自分でジャケット脱いで、肩に担いで颯爽と帰って来なさい」
 リンコさまからのご指令。
 ジャケットを脱いで無毛な恥丘丸出しになったときの、驚きと戸惑いが入り混じったような会場のざわめきは、一際大きいものでした。

 そんなふうに、破廉恥な衣装を取っ換え引っ換え着替えさせられては、お客様がたの前に出るという行為を、私は愉しんでいました。
 どんなにキワドイ衣装を着せられても、早くみなさまに視ていただきたい、と思う気持ちのほうが、戸惑いや羞じらいよりも、あきらかに勝っていました。
 私のマゾ的妄想の中でも、幼い頃から一番根強く巣食っていた公然羞恥露出願望が遂に実現して、ヘンタイ性癖の塊と化してしまった私は、今のこの状況に酔い痴れていました。

 私の一挙手一投足を熱っぽく視つめてくださるお客様がたの視線。
 私が動くたびに、一斉に動くたくさんの頭。
 一枚脱ぐたびに、起きるどよめき。
 ステージを去るたびに、鳴り響く拍手。
 それらすべてが私を性的に興奮させていました。

 お客様がたの表情を見渡す余裕も出来ていました。
 私が出てくるたびに身を乗り出すように見つめてくる、最前列にお座りの艶やかに着飾ったご年配のおばさま。
 ランウェイの中ほど左側にお座りの、私と年齢がそう変わらないであろうビジネススーツの女性は、私が前を通るたびに傍目でわかるほど頬を紅潮させ、気恥ずかしそうに、それでも真剣なまなざしで私の姿を追っていました。

 目線は私に向けたまま、お隣の人と何かヒソヒソ話されている人。
 私の顔とからだを交互に見ては、ずっとニヤニヤ笑っている人。
 何度かオフィスでお見かけしたことのあるお顔もいくつかありました。
 驚嘆、好奇、侮蔑、憐憫、嗜虐・・・
 すべてのまなざしが私に何かを訴えかけていました。
 
 そんな中を私は、外見は努めて無表情を装いながら、内心では淫らなことばかりを考えていました。
 
 もう少し胸を張ったほうが、ノーブラ乳首のポッチが目立つかも。
 もっと大きく腕を振れば、生乳首がお外に飛び出したままになるかな。
 ランウェイ端の回れ右のとき、勢い良くターンしてスカートの中身まで視ていただこう。
 歩いているうちにジーンズのボタンが弾け飛んで、マゾマンコ全部見えちゃえばいいのに。

 とにかく自分のもっともっと恥ずかしい姿を、みなさまにさらけ出したくて仕方ない気持ちになっていました、
 私のどうしようもない、ふしだらなヘンタイ性癖を余すこと無く見せちゃいたい・・・

 楽屋に戻るたびに、はしたなく濡らした股間をリンコさまにからかわれながらギュウギュウ拭かれました。
 乳首が勃ちっ放しでスゴイね、ってしほりさまに感心されました。
 次々とふしだらな格好をさせられる私を見る、ほのかさまの憐れむようなまなざしに、マゾの血がキュンキュン疼きました。
 火照って火照って喉が乾くので、戻るたびにスポーツドリンクをゴクゴク飲み干しました。

 カジュアルラインコーナーの次は、プレイルーム編。
 ショーも終盤にさしかかっていました。
 ここからは、よりエロティックさを追求した、女性のためのセクシープレイアイテムばかりとなるそうです。

 最初のアイテム、文字通り乳首と股間のスジをギリギリにしか隠せない極小マイクロビキニを着せられた私は、とてもシアワセそうに見えたと思います。

 ああ、今度はこんな恥知らずな水着を着た私のからだを、お客様がたに視姦してていただけるんだ・・・
 今までに味わったことのある、どんな種類の気持ち良さとも違う、恍惚とする性的高揚感に、身も心もすっかり支配されていました。

 今さっき身に着けたばかりなのに股間をわずかに覆う小さな白い布地は、しとどに濡れそぼり、スジをクッキリ浮き上がらせてベッタリ陰唇に貼り付いていました。


オートクチュールのはずなのに 55


2016年8月8日

オートクチュールのはずなのに 53

 大きな拍手を背に受けながら楽屋に戻りました。
 全身がカッカと火照って、頭がボーッとしています。

「おつかれー。はい、これ飲んで」
 バスタオルで迎えてくださったリンコさまが、冷たいスポーツドリンクのペットボトルを渡してくださいました。
「あ、ありがとう、ございます」

 ゴクゴクゴク。
 美味しいー。
 熱が篭った体内に冷たい水分が沁み渡っていくよう。
 半分ほど飲み干すと、ほのかさまがペットボトルを受け取ってくださりテーブルに置いてくださいました。

「バンザイして」
 リンコさまのご命令。
「あ、はい」
 右襟から腋にかけてのホックが手早く外され、裾を盛大に捲り上げられ、あっという間に全裸。
 すかさずしほりさまがウイッグを整えてくださいます。

「からだ、ホッカホカじゃない。お客様の視線で、そんなに感じちゃったんだ」
 からかうようにおっしゃりながら、タオルで汗をぬぐってくださるリンコさま。
「はうっ」
 硬くなっている乳首をタオル越しにつままれて、思わずはしたない声が漏れてしまいました。

「いいねいいね。その悩ましい感じ。そのエロっぽさでお客様たちを残らず悩殺しちゃいなさい」
 リンコさまの視線が私の内腿周辺にまとわりついています。
 その部分だけ、汗とは違う種類の粘っこそうな体液に濡れ、お部屋の照明にテラテラ光っていました。
 
 私の下腹部にタオルを押し当て、拭ってくださるリンコさま。
 タオル越しの指が私の腫れた部分をコショコショ嬲ってきます。
 いつの間にか服従ポーズになって、必死にポーカーフェースを繕う私。

「おーけー。次のアイテムはちょっとめんどくさいんだ」
 真顔に戻られたリンコさまのお隣に、ハンガーにかかったスーツカバーを持たれたほのかさま。
「次はスーツだからね。ちゃんと下着からフル装備」
 愉快そうにニッと微笑んだリンコさまから、ニュッと両手を差し出されました。

「何ですか、これ?」
 差し出されたリンコさまの手の上に乗っていたのは、透明のビニール袋?
「だから、下着よ」
 言われてみればそんなような形をしている気もしますが、ものの見事に無色透明なんです。

「ビニール製、ですか?」
「ううん。れっきとした植物由来の繊維製。でも布地って言うより紙に近いのかな。これもうちと某社との開発品」
 ちょっぴり得意気におっしゃって、まずブラジャーから着け始めてくださいました。

 形状はごく普通のハーフカップブラ。
 でも、カップも肩紐も留め具も、みんな素通しガラスみたいに透明。
 だからブラに潰されて少しひしゃげた乳首の色まで、外から丸見え。
 ブラの中でおっぱいって、こんなふうになっているんだ・・・
 着け心地は確かに、普通の布地っぽい。

 つづいてショーツ。
 ローライズ気味のフルバックタイプ。
 ゴムのところだけ少し濁って半透明な以外、見事に無色透明。
 だから当然、中身も丸見え。
 せっかく下着を着けていても、これでは何の意味もありません。
 もしも下にヘアがあったら、黒々、すっごく目立つだろうな・・・

「おお。上も下もサイズ、ぴったりだね」
 リンコさまの嬉しそうなお声。
「それで次はこれ」
 リンコさまのお声に、ほのかさまが持たれていたスーツカバーを開けると、中にはこれまた透明なお洋服っぽいものが入っていました。
「まずはブラウス」

 これまた見事に無色透明。
 まるでビニール袋のようなそのペラペラな布地?は、確かに一般的なブラウスの形状はしていました。
 立ち襟で長袖、着丈はウエストちょっと下くらいの短かめ。
 縫製された糸に当たる部分が少しだけ半透明に濁っている以外、ボタンまで綺麗に透明。

 両袖を通すと、リンコさまとほのかさまが、おふたりがかりでテキパキとボタンを留めてくださいました。
 着心地は、普通のやわらかめなブラウスを身に着けているのとぜんぜん変わりません。

「それで、これね」
 ジャケットとスカート。
 これも透明度の高いシースルーなのですが、全体に少しだけうすーいベージュが入っていてやや濁っている感じ。
 一見してスーツのシルエットが識別できるくらいの極薄い色味が入っています。

 スカートは、膝上丈のけっこうパッツンなタイト。
 ブラウスより厚手な生地ですが、ちゃんと透けています。
 ブラウスの裾はインせず、スカートのウエスト部分、ちょうどおへそのところに数センチかかる感じ。

 ジャケットも同じ色味と生地で、シンプルなビジネスタイプのシルエット。
 ジャケットのボタンもキッチリ留めて着終えると、からだの感覚としては確かにスーツを着込んでいる状態なのですが、鏡に映った姿は赤面モノ。
 ベージュがかったスーツシルエットの下に、肌色全裸のボディラインが見事に浮き出ていました。
 肌の色と薄いベージュが同系色なので、とくにバストトップと乳輪の赤みが、全体肌色の中、強烈なアクセントとなって目立ちまくっています。

「このアイテムはね、開発部では、プロジェクトアンデルセン、って呼んでたんだ」
 私の着付けを調整してくださりながら、リンコさまが教えてくださいました。
「あの有名な、裸の王様、の服を作っちゃおう、って」
 イタズラっ子の笑顔で、ハイヒールなパンプスが足元に置かれました。
「ビジネススーツなんだから、ちゃんと足元もキメなきゃね」

 パンプスだけ透明ではなくて、薄いベージュのシンプルなデザインで、ヒールが10センチくらいと高めでした。
 造りがしっかりして、誂えたみたいに履きやすい。
 履いているときに、そろそろです、と里美さまからお声がかかりました。

 今度はこんな、最初から透明スケスケのお洋服でお客様の前に出るんだ・・・
 鏡に映った自分の姿に再度目を遣ると、下半身の奥底から羞じらいが全身にほとばしります。
 スーツをちゃんと着ているクセに、まったくの役立たず。
 隠すべき箇所がまったく隠せていない、裸体同様の破廉恥な自分の姿。

 パンプスを履いたせいで何て言うか、お外にいる感、がグッと増していました。
 だって全裸になるときって普通お家の中のはずで、そんなときに靴なんて絶対履いていないですから。
 
 ハイヒールという、お仕事とかオシャレとか社会性を連想させるものを身に着けたことで、今の自分のアブノーマルな露出症的服装のアブノーマル感がいっそう際立つように感じました。
 さっき会場のフロアに着いてダンボール箱から出て、全裸にパンプスだけ履いた格好でオフィスビルの廊下を歩いたときに感じた、喩えようのない羞恥と背徳感がまざまざと蘇りました。

 ただ、そんな恥ずかしい恰好をしているクセに、心境にポジティヴな変化が訪れていました。
 こんな姿で人前に出るというドキドキ感は止まらないのですが、そのドキドキの中に、そこはかとないワクワク感が混ざり始めていました。

 早くみなさまの前に出て、ふしだらで恥ずかしい私の姿をご披露したい。
 みなさまが驚くご様子が見たい。
 そんなヘンタイ的な高揚感が強くなっていました。

 それは、これまでランウェイを2往復してみて感じた、お客様がたの好奇に満ちた期待を、文字通り素肌で感じ取ったおかげなのでしょう。
 あっと驚くような格好で私が出てくることを、素直に愉しんでいらっしゃるみなさまのリラックスされたご様子に、私も自分の恥ずかしさを愉しむ余裕が出てきたようでした。

「スタンバイ、お願いします」
 里美さまのお声で、舞台袖に上がりました。

「今回は、往復してステージに戻ったら、そのままステージで待っていて。アタシもステージに上がるから」
 リンコさまが小声で耳打ちしてきました。
「そこからは、アヤ姉の説明に従うの。アタシもステージで手助けするから。わかった?」
 リンコさまのご指示にコクンとうなずくと同時に、場内のBGMがミドルテンポのヒップホップ風に変わりました。
「おっけー、ゴーッ!」

 リンコさまに軽く肩を押され、ステージ上に出ました。
「おおっ!」
 軽く会場全体がざわめきました。
 照明が煌々と点いた明るいままの会場に、スケスケ過ぎる私の姿はどんなふうに見えているのでしょう。
 モデルの心得をおさらいしながらステージ中央まで進みました。

 階段を下りて赤絨毯へ。
 歩くたびに腿を撫でるスカート、腕に擦れる袖。
 身体的には紛うこと無くお洋服を着ている感覚なのに、凄い恥ずかしさ。

 まっすぐ固定した視線の両端に、こちらをじーっと見つめてくるお客様がたの瞳の大群。
 小野寺さま、アンジェラさまのお隣にお姉さまのお姿をみつけて、思わず視線がそちらへと動いてしまいます。
 
 ランウェイの端まで行き着き、回れ右。
 今回は暗転も無く、明るいままの会場をステージへと戻ります。
 視界の右端に入るスクリーンには、すでに正面からの私の姿が映し出されていました。

 大きな顔のアップから、徐々にカメラが私のからだを舐めるように下がっていき、バスト部分では、透明繊維にあがらうように背伸びしているふたつの乳首が、ハッキリ鮮明に映し出されました。
 なおも下がるカメラが、うっすらベージュのスカートウェストから透けるおへそを通り、タイトスカートの下半身アップへ。
 上付きな私の無毛恥丘の割れ始め部分も、二枚の透明繊維越しにクッキリ映っていました。

 ああん、私の恥ずかしい箇所があんなに大きく、みなさまの前に映し出されている・・・
 私が通りすぎた場所に座っていらっしゃるかたたちは、きっと生身の私のお尻とスクリーンを交互に、凝視されているのだろうな・・・

 いやん、視ないで・・・
 ああん、でも視て、視てください、どうぞ存分に、私の恥ずかしい姿をご覧になってくださいぃ・・・

 歩きながら心の中で、グングン興奮し発情していました。
 でも、お姉さまのお言いつけ通り、決して悟られないように努めて無表情を装います。
 心臓の鼓動が周りのかたたちにまで聞こえてしまうのではないかと思うくらい、昂ぶっています。
 それを必死に抑え、耐えながら、内側からゾクゾク、ムラムラ感じていました。

 ステージ中央には、リンコさまがすでに待ち構えていらっしゃいました。
 並ぶ形でお隣に立ち、お客様がたのほうへ向き直ります。

「両腕をちょっと左右に開いたポーズで立っていて。そうね、何て言うか、ペンギンみたいに」
 リンコさまの小声のご指示。
 ペンギンさん?
 ちょっと考えて、直立姿勢のまま両腋から腕を30度くらいの角度で離しました。
「うん。それでいい。あとは自分はただのマネキンだと思って、アタシに何されても無表情でいて」

「ご覧いただいた通り、このプロジェクトアンデルセンは、まったくの無色透明のまま、どんなデザインにも縫製することが出来る夢の新素材です」
 司会者演壇の綾音さまがご説明を始めました。
 と同時にリンコさまが私の前にまわり、私が着ているジャケットのボタンを外し始めました。

「今回のスーツで言いますと、ジャケットとスカートには、シルエットがわかりやすいように薄くベージュを入れてあります」
「このように、シースルーのままお好みのカラーを入れることも可能ですので、例えば、イエローのブラウスの上に青みの入ったジャケットを合わせると、透明なので重なった部分だけグリーンになる、といったカラーコンビネーショの楽しみ方も出来るわけです」

 綾音さまのご説明がつづいているうちに、リンコさまの手でスルスルッとジャケットが脱がされました。
 ジャケットの下は、完全に無色透明なブラウスと、その下のブラジャー。
 私のはしたない乳首は、ジャケットを着ていたときより、よりハッキリと、みなさまの目に見えているはずです。

 つづいてスカートウェストのボタンも外され、スカートが足元にストンと落ちました。
「ちょっと動いて落ちたスカートから両足外してくれる?」

 リンコさまのご指示に、透明なブラウスと下着姿になった私は、後ろに右足、左足と一歩づつ下がりました。
 すかさずリンコさまがスカートを拾い上げました。
 雅さまが近づいてきて、スーツの上下を演壇までお持ちになりました。

「ご覧の通り、モデルが下に着ているブラウスは、まったくの無色透明です。また、あのブラウスとこちらのスーツの生地とでは、厚さとやわらかさが違います」
 演壇からまっすぐ私を指さす綾音さま。
 その私はと言えば、リンコさまの手で今度は、ブラウスのボタンをひとつづつ外されていました。
「その下の下着類は、一番薄手の素材を使用しています」

 ブラウスを脱がされゆく私にお客様全員の視線が集中しているのがわかります。
 なにこれ?
 まるでストリップショー・・・
 それも、最初から裸は丸見えなのに、みなさまの面前で衣服を剥がされていくという倒錯した、アンビバレンツな脱衣状況。

 あれよあれよとボタンが外れ、両腕からブラウスの袖が抜かれて、透明ブラとショーツだけの姿となった私。
 それでもまだペンギンポーズで不動のままいなくてはいけないのです。
 まさか、この下着類も、みなさまの前で脱がされちゃうのかしら・・・

 最初から中身がスケスケ丸見えで、隠す、という機能についてはまるで役に立っていない下着たちでしたが、これだけの人たちの目の前で、されるがままに脱がされ生身の全裸になる、という行為は、恥辱以外の何物とも思えません。

「御覧いただいたスーツとブラウス、それに下着を、このマネキンに着せて、ステージ脇に飾っておきますので、わたくしの説明が終わリ次第、みなさまで実際にお手に触れていただいて、その生地の品質と素晴らしい透明度をご堪能いただければと思います」

 今、綾音さま、下着っておっしゃった・・・
 そのお言葉は、私への処刑宣告でした。

 リンコさまが私の背後に周り、さも当然のようにブラジャーのホックを外されました。
 バストを締め付けていた圧迫からの開放感。 
 布地に押さえつけられていたふたつの乳首が、ここぞとばかりに跳ね起き上がりました。
 同時に素肌に触れる空気感。
 とうとうみなさまの目の前で、生おっぱい丸出し状態。
 それでも動いてはいけない私。

 リンコさまの視線が私の下半身に移りました。
 公然ストリップショーも大詰め。
 リンコさまの手がショーツのゴムにかかったとき、遂に正真正銘の丸裸・・・
 でもそれは、私の中のマゾ性が、幼い頃からずっと望んでいたことでもあるのです。

 覚悟を決めてからもリンコさまは、しばし私の下半身を凝視したまま固まっていらっしゃいました。
 それから、ふとお顔を上げ、ちょっと呆れたふうに笑いかけてきました。
「おーけー。私がアヤ姉のほうへ向かったら、ここでいつものポーズをキメて、楽屋に戻っていいよ」
 小声で私に耳打ちしてきました。
 
 どうやらストリップショーは、最後の一枚を残して打ち切りにするみたい。
 4割の安堵と6割のガッカリ感・・・
「は、はい・・・」
 私の震える小声にうなずき、私から脱がせたブラウスとブラジャーを手にしたリンコさまがスタスタと演壇の綾音さまたちのほうへと向かって行かれました。

 綾音さまのお客様がたへのアイテムご説明はまだつづいていました。
 お客様がたは、綾音さまのお話にお耳を傾けながらも、大部分の方々が私の動向に注目しているようです。
 私は、リンコさまのお言いつけ通り、その場でペンギンポーズからゆっくりとマゾの服従ポーズへと切り替えました。
 枷を解かれて剥き出しになったふたつのおっぱいが、自由に弾むのがわかりました。

 そして、後頭部に当てた両手を頭ごと少し後ろへと引き、生おっぱいと透明ショーツ越しのマゾマンコを軽く皆さまの前に突き出すようにのけぞると、自分の目で自分の下半身を見ることが出来ました。
 ショーツのクロッチ先端に当たる周辺に白濁した液体が溢れ、透明度を曇らせているのが一目見ただけでもわかりました。
 リンコさま、これに気づいて私のショーツを脱がせるのを諦められたんだ・・・

 あまりの恥ずかしさで軽い目眩のようにクラっときたのですが、なんとか踏ん張りました。
 同時にオーガズムのような気持ち良い電流が全身をつらぬきました。
 ビクンと震えたからだと心のすべてが、更なる辱めを強烈に欲していました。
 
 視てください、視てください、視てください・・・と、そのはしたな過ぎる部分をお客様がたに見せつけるように向けたままゆっくり5回カウントしてから、ヒールをコツコツ鳴らして逃げるように楽屋へ飛び込みました。


オートクチュールのはずなのに 54


2016年7月24日

オートクチュールのはずなのに 52

 舞台袖までリンコさまが付き添ってくださいました。
 カーテンの陰から垣間見える会場が明るいことに、まずびっくり。
 
 さっきモニターで見たステージ、お姉さまがお話しされていたときは、薄暗い中にライトで照らし出されていたのに。
 今はステージ上もお客様がいらっしゃるフロアも、このビル階下のショッピングモール並に会場全体、電気が煌々と照っています。

「ず、ずいぶん明るいのですね?」
 思わず小声でリンコさまに尋ねてしまいました。

「うん。今はアイテムの前説だからね。お客様も配られた資料をご覧になっているから」
「このショーは、お客様にアイテムを実際に肉眼で見て検討していただく説明会的な位置づけだから。でもまあ演出で、たまに暗くなったりもするよ」
 リンコさまのご説明でなんとなく納得ですが、私としてはもっと暗いほうが気が楽なのに。

 この明るさでこのワンピース、ということは、両脇からおっぱいが覗けちゃいそうな乳首ツンの薄物一枚で、ショッピングモールを歩くのと同じこと。
 さらに、ここにいるお客様がたすべての視線を私だけに惹きつけて、ということになります。
 さっき楽屋で全裸が隠せた安堵感で頼もしく思えたエスニックワンピが急に頼りなく思えてきました。

「・・・ということで、準備が整ったようなので、そろそろショーに移りたいと思います」
 私たちから見てステージの向こう端。
 仲良く肩を並べて司会をされている、ドレス姿の綾音さまとスーツ姿の雅さま。

「それではアイテムナンバー1番・・・」
 雅さまが告げると、BGMがインド音楽っぽいエスニックな曲に変わりました。
 小気味よい太鼓の音に絡まるシタールの音色が、かなり大きめに響き始めます。
 そのあいだに綾音さまがリンコさまにアイコンタクトされ、リンコさまがジェスチャーでオーケーサイン。

「それでは、じっくりお愉しみください」
 雅さまのお声と同時にリンコさまが私の背中を軽く叩きました。
「ほら、お仕事開始。行っといで」
「は、はいっ」

 視線を前方一点に定め、軽くアゴを引いて背筋を伸ばすこと。
 足を前に出すのではなく、腰から前に出る感じ。
 体重を左右交互にかけ、かかっている方の脚の膝を絶対に曲げない。
 両内腿が擦れるくらい前後に交差しながら、踵にはできるだけ体重をかけない。
 肩の力を抜いて、両腕は自然に振る。

 ステージの真ん中へと歩くあいだ、やよい先生から教わったモデルウォークの要点を必死でおさらいしました。
 視線はまっすぐに定めていましたが、どこにも焦点を合わせないよう、敢えて周りを見ないように努めました。
 それでもぼんやりと、会場の状況はわかりました。

 ステージ中央から会場奥へとつづくレッドカーペットを挟んだ両側に、たくさんの方々が着席されているのがわかります。
 昨日並べられたお客様用の長テーブル席すべてが埋まり、更にその外側までテーブルと椅子が増えているみたい。
 50人くらいっておっしゃっていたけれど、なんだかもっといらっしゃる感じ。
 その視線のすべてが自分に注がれているのを肌で感じていました。

 ステージ中央の階段を下り、お客様が並ぶフロアに降ります。
 ここからは、赤い絨毯を一直線。
 お姉さまからのアドバイスに従って、一歩踏み出すごとに歩数を数えながら進みます。
 お客様を意識しちゃうと途端にパニクりそうなので、視界を極力ぼんやりさせたまま、前へと歩くことだけに集中しました。

 それでもやっぱり明るすぎるせいか、場内の雰囲気がわかります。
 私の両脇1メートルくらいの至近距離からジーっと私の姿を目で追ってくる目、目、目。
 ノースリーブの脇からきっと、横おっぱいが覗けているのだろうな・・・
 腕を振りながらテーブルをひとつひとつ通過するたびに、心臓のドキドキが高まっていきました。

 48、49.50・・・
 51歩めで、ランウェイの先端に到達。
 ふぅ、と一息ついた途端、場内の明かりがすべて消え、真っ暗になりました。

「おおっ」
 お客様の小さなどよめきが合図だったかのように、頭上前方から一筋のスポットライトが私めがけて飛びかかってきました。
 暗闇の中ですでに回れ右をしていた私は、真正面から眩し過ぎるライトを全身に浴びました。

「おおぉーっ!」
 さっきとは比べものにならないくらいの大きなどよめきが会場全体に広がりました。

「なお、本日のモデルを務めますのは、今回がショーモデルデビュー、期待のニューフェイス、夕張小夜です。皆様、盛大な拍手をお願いします」
 綾音さまのアナウンスにつづいて沸き起こる割れんばかりの拍手。
 ライトにひるんで少しのあいだ立ち尽くしていた私は、その拍手に促されるように、今度はステージへ向かって歩き始めました。

 1、2,3・・・
 私を中心にして直径2メートルくらいを照らし出しつつついてくるライトのおかげで、赤い絨毯を踏み外す心配はありません。
 場内のお客様がたは、まだ少しザワザワされていますが、会場が暗くなったおかげで私は幾分気が楽になりました。
 視線をステージに合わせてまっすぐ前を向き、モデルウォークを崩さないように慎重に歩きます。
 11、12、13・・・

 15まで数えたときに、ふっと場内に薄明かりが差しました。
 今まで真っ暗だったステージ向かって右側上の大きなディスプレイスクリーンが点灯したようでした。
 会議室によくあるホワイトボードよりやや大きめのスクリーン中央に、私の姿が映っていました。

 カメラはステージ上から向けられているようで、だんだん近づいてくる私のバストアップが、ほぼ正面から映し出されていました。
 そして驚いたことに・・・

 着ているはずのワンピースの布地が完全に透け切っていました。
 茶とグリーンのエスニック模様を身に纏っていたはずなのに、そのお洋服が忽然とどこかへ消え失せてしまったかのように、強い光にハレーション気味な白っぽい肌色の肉体だけがクッキリ映し出されています。
 
 シースルーなんていう生半可なものではなく、まるで最初からワンピースなんて着ていなかったかのよう。
 足を踏み出すたびにプルンプルン揺れるおっぱいの弾みも、布地に擦れてなおも尖ろうとしている硬そうな乳首のピンク色までハッキリとスクリーン上に曝け出されていました。

 ど、どういうこと???
 今、お客様から私は、こんなふうに見えているの?
 少し視線を落として自分の胸のあたりを見てみますが、確かにエスニック模様のワンピースをちゃんと着ていました。
 頭の中が真っ白になりました。

 スポットライトが当たった後、どんな状態になってもあわてちゃだめよ・・・
 出の前のリンコさまのお言葉の意味がわかりました。
 お言いつけ通り、ポーカーフェースに努めながら歩きつづけます。
 視界の右端に見えるスクリーンの中の自分の姿が気になって仕方ありません。

 歩むに連れてカメラがゆっくりと引いていき、スクリーン上には私の全身が真正面から映りました。
 どう見たって何も着ていない状態。
 両脚の付け根まで鮮やかに剥き出しです。
 全裸の女性が歩いているようにしか見えません。
 光の中の私の肉眼では、確かに布地が全身をちゃんと覆っているにも関わらずです。

 私今、ここにいらっしゃるお客様全員に全裸姿をご披露しちゃっているんだ・・・
 恥辱と愉悦が入り混じったような、何とも言えないマゾ的高揚感が背筋を駆け上ったとき、不意にスクリーンが消えました。
 最後に映っていた私の白っぽい裸身の全身像が残像となって、脳裏に刻み込まれました。
 同時にスポットライトが後方からに切り替わりました。

 私は、いつの間にかステージ手前までたどり着いていました。
 あとは階段を上がり、ステージ中央でポーズして楽屋に戻るだけ。
 一刻も早く楽屋に逃げ込みたい・・・
 でも、お姉さまのイベントをぶち壊しにすることは、絶対出来ません。

 動揺を悟られないよう、一歩一歩踏みしめるように階段を上がります。
 背後から私を照らし出すライトの中、お客様がたには、全裸の女が階段を上がる丸い剥き出しのお尻が見えていることでしょう。

 ステージに戻ったら正面を向き、数秒ほど何かポーズを決めなければなりません。
 ライトの中だとこのワンピは透けている、と、わかってしまった私にとって、ここでお客様に向き直る、という振る舞いは、自ら望んでもう一度みなさまに私の全裸正面姿をご披露する、という露出狂らしいヘンタイ行為以外の何物でもありません。
 スクリーンも消え、暗闇のステージ上に私だけが浮かび上がる中、ゾクゾクしながら思い切ってお客様に向き直りました。

 何かポーズ・・・
 向き直った途端、会場のすべての視線が私に集中したのが闇の中でもわかりました。
 右手を脇腹に当ててちょっと気取る感じ、ってリンコさまはおっしゃっていたっけ・・・
 思い出して右手を挙げようとしたら、自然と左手もついてきてしまいました。

 あぁん、どうしよう!
 と思う間もなく両手は脇腹を超え頭近くまで挙がり、両足は休めの位置。
 気がつくと自然に、両手を後頭部で組んだ、例のポーズになっていました。

 そのまま5秒ほど数えるあいだ、ステージ近くからフラッシュが二度三度、光りました。
 そこで場内の灯りが点き、最初のときのような明る過ぎる状態に戻って、割れんばかりの拍手。
 私はポーズを解き、そそくさと楽屋へ向かいました。

「うん。上出来上出来。最初とは思えないくらい落ち着いていたじゃん」
 楽屋へのドア前で見守ってくださっていたらしいリンコさまのバスタオルに出迎えられ、楽屋に入りました。

「お疲れさまー」
 ほのかさま、しほりさま、里美さまが口々にねぎらってくださり、鏡前に連れて行かれました。

「今の感じでいければ問題無いね。ただ、ウォーキングはもう少しゆっくりめがいいかな」
「ポーカーフェース、さまになってたよ。シースルーになってもぜんぜん動じない感じで、よかった」
「最後のポーズもナオコ、いや夕張さんらしかったね。決めポーズは全部あれでいいよ」
「やっぱりけっこう汗かいているのね。興奮しちゃった?拭いてあげる」

 どなたがどれをおっしゃっているのかわからないほど、頭の中が混乱しきっていました。
 今起こったことが現実だとは思えないほど。
 鏡に映っているのが自分なのかもわからなくらい、ボーッと放心状態でした。

 そんな私から手早くワンピースを脱がせ裸にし、次のアイテムを着せてくださるリンコさま。
 同じような生地で、今度はピチピチパツパツ、ボディコンシャスなエスニック柄マキシ丈かぶりワンピースを、もちろん素肌に直で。
 
 長袖でからだのラインがクッキリ浮き出ています。
 スタンドカラーがチャイナドレス風というかアオザイっぽいというか。
 スリットは膝くらいまでで、ちよっと歩きづらそう。
 何をどう感じたらいいのか、思考がぜんぜん定まらない頭で、そんなことを考えていました。
 
「この生地はね、うちと、とあるバイオ研究所との共同開発なの。暗いところで強い光が当たると本当に綺麗に透けるんだ」
 リンコさまが私の着付けを直しながら嬉しそうに教えてくださいました。
 しほりさまは、私の顔にくっつくくらいお顔を寄せて、アイラインを修正してくださっています。

「おお、小夜っちがボディコン着ると、やっぱかなりエロいね。とくにバスト周りが」

 リンコさまのお言葉で自分の胸元に目を遣ると、柔らかい生地が私のおっぱいそのままの形に撓み、肉感的に包み込んでいました。
 もちろん、ふたつの頂点は露骨過ぎるほど生地を派手に押し上げています。
 うわ、いやらしい・・・
 自分で思わず目をそむけちゃうほどの生々しさ。

「はい、スタンバイしてください」
 羞じらいを感じる暇もないほどのあわだたしさで、美里さまからのご指令。
 リンコさまに手を引かれ舞台袖でキューを待ちます。

「このアイテムもさっきのと同じ段取りね。ランウェイ端で暗転するから」
「さっき言ったみたいに、ウォーキングを少しゆっくりめに、音楽のリズムにノッた感じで。アイテムとその優秀な透け具合をじっくり見ていただかなくちゃ」
「このアイテムが終わったら、長めな着替え時間でちょい休憩取れるから、がんばって」

 そんなふうに教えてくださっているあいだに、早くも綾音さまからのゴーサイン。
 最初みたいな明るさに戻ったステージに、ボディラインクッキリのボディコン姿で立ちました。
 BGMは、オリエンタルなメロディのアフタービートが効いたミディアムテンポに変わりました。

 頭の中は、相変わらずしっちゃかめっちゃかなのですが、人前に出る気分はかなり落ち着いてきていました。
 たぶん、先ほどのステージ去り際にいただいた盛大な拍手が、効いたのだと思います。
 あ、私、みなさまから歓迎されている・・・
 それは、生まれて初めて味わった、と言っていいほど、とても気持ちの良いものでした。

 最初のアイテムの暗転の後、スポットライトを浴びた私は、自分では予想もしていなかった全裸姿を、お客様すべてに視られてしまいました。
 暗転してライトが当たった直後に起きたどよめきの意味を、スクリーンに映った自分の姿で知りました。
 そして、最後にステージでもう一度お客様と向かい合い、マゾの服従ポーズをご披露したときにいただいた大拍手。

 それを浴びて私は、お客様がたが私の味方だ、と思えたのでした。
 こんなヘンタイなのにみなさまが私に注目され、私の裸を視たがっていらっしゃる、ということが、とても嬉しかったのです。
 心の中の私のマゾ性=恥ずかしい姿を視られるという恥辱の悦び、が拍手という心強い援軍を得て、臆病な理性と常識を片隅に追い遣りつつありました。

 ボディコンおっぱいが露骨に揺れるのも構わずランウェイを一歩一歩踏みしめながら、お客様がたを見渡せる余裕が出来ていました。
 ざっと数えただけでも、確実に60名以上はいらっしゃるでしょう。
 お若そうなかたからご年配まで、色とりどりに着飾ったご婦人たちが私の動きを目で追っていました。

 ときどき見知ったお顔がいらっしゃるのにも気づきました。
 あそこにアンジェラさまと小野寺さま。
 こっちにはシーナさまと純さま、それに桜子さまも。
 カメラやビデオを構えているのはスタンディングキャット社の男性陣。

 お姉さまのお姿が見つからないな、と思ったとき、ランウェイの端まで来ていました。
 両手を後頭部に添えてポーズを取った瞬間、暗転。
 すかさずスポットライトの洗礼。
「おおっ!」
 どよめく会場。

 ポーズのまま回れ右。
 ポーズを解いて歩き始めます。
 まだスクリーンが映らないので、自分がお客様からどんなふうに見えているのかわかりません。

 今度のはボディコンだから、さっきよりいっそう生々しい全裸姿になっているのだろうな。
 そんな恥ずべかしい姿を、お久しぶりなアンジェラさまや純さまに視られているんだ。
 どうか私だってバレませんように・・・

 今のこんな状況を愉しむ余裕まで出てきたのか、そんなことをワクワク考えながら、さっきよりゆっくりめにランウェイを進んでいると、さっきと同じような位置で、パッとスクリーンが輝き出しました。
 そこに映しだされた自分の姿・・・

 今度は最初から全身が映っていました。
 でも、予想したような全裸姿ではありませんでした。

 首周りまで隠れたチャイナドレス、アオザイ風のボディコンマキシワンピのシルエット。
 そのバスト周りと下腹部周りだけが綺麗に透けていて、その他の部分はちゃんと隠れているんです。
 普通はひと様にお見せしてはいけない部分だけを誇示するように、あからさまにそこだけ、鮮やかに露出しているんです。

 真っ暗な中に浮かび上がる、一見、着衣姿の私。
 シルエットのコントラストで点々と白く浮き上がった私の顔と両手両足、そしておっぱいと股間。
 そんなにソコを見せたくて仕方ないの?って言いたくなっちゃうくらい、あまりにヘンタイな半裸着衣。
 予想を超えるふしだら過ぎる自分の姿に、被虐感と背徳感がギューっと凝縮され、それらが淫らな欲求へと姿を変えて下腹部をキュンキュン疼かせました。

 先ほどみつけたアンジェラさまたちの真横を通り過ぎました。
 これってやっぱり後ろから見たら、おっぱい裏の背中とお尻の部分だけ透けているのだろうな・・・
 喩えようの無い恥ずかしさがマゾマンコの奥を潤ませてきます。

 階段を上がってステージ上へ、スクリーンも消え、スポットライトが闇の中、私だけを照らし出します。
 楽屋に捌ける前に、この破廉恥過ぎる衣装にお似合いの、一番私らしいポーズをみなさまにご覧いただかなくてはなりません。

 クルッと回転してお客様がたと向き合います。
 ゆっくりと両手を後頭部へ。
 自分が今、みなさまからどんな格好に見えているのかを想像すると、羞恥にプルプル震えだしちゃいそうなほど。

 みなさま、どうぞじっくり、ヘンタイドマゾな私の恥さらしな姿をご覧くださいませ・・・
 心の中でお願いしながら、マゾマンコをみなさまに突き出すように少し弓反りになった服従ポーズで、ゆっくり5つ数えました。

 下腹部の透けた部分にじっと目を凝らしていたお客様がおられたなら、少しだけ開いた陰唇のほとりから零れ出た生温くも淫らな液体が左脚の内腿を伝って一筋、ツツツーッと滑り落ちていくのが見えたことでしょう。


オートクチュールのはずなのに 53


2016年7月17日

オートクチュールのはずなのに 51

「し、失礼しまーす」
 自分の格好が格好ですから、どうしても声は小さくなってしまいます。
 リンコさまに軽く背中を押され、そっと楽屋に足を踏み入れました。

「はーい。きたきた。時間通りだね」
 明るいお声、たぶんしほりさま、が聞こえ、こちらに背を向けて立ったまま談笑されていた3つの背中が一斉に振り返りました。

 私の姿を見た瞬間の、しほりさま、ほのかさま、そして里美さまの呆気に取られたお顔は、今でも忘れられません。
 えっ!?という形のままお口をポカンと開けられ、目を見開いて数秒間フリーズしつつ、私の裸を見つめていました。

「まさか、その姿のまんまでマンションから来た、のではないよね?」
 フリーズが最初に解けたしほりさまが、ひどく真面目なお顔で尋ねてきました。
「あっ、いえ、これは・・・」
 おっぱいと股間を両腕で隠し、ゴニョゴニョと弁明しようとしているところに、リンコさまの快活なお声がかぶさりました。

「あはは。実はねナオコ、じゃなくて小夜さん、チーフたちに服を全部取り上げられたまま部室に残されちゃったわけ。だからさー・・・」
 リンコさまが私の隣に並ばれ、嬉しそうにダンボール箱の顛末を面白おかしく、みなさまに説明されました。

 楽屋になったお部屋は、いろいろ物があってけっこう狭く、寄って来られたお三人が私を取り囲むようにして、リンコさまのお話に興味津々に頷きながら、チラチラ視線を送ってきます。
 股間に添えた手のひらが、ジワジワ熱くなってきていることに気がつきました。

「やっぱり直子さんだったんだ。メイクとウイッグで雰囲気違うから、誰かと思っちゃった」
 ベージュのパンツスーツをシックに着こなされた里美さまが少し呆れたようにおっしゃいました。
 その好奇に満ちた視線が私の剥き出しの肌を刺してきます。
 ほのかさまは、困ったような笑顔を浮かべ、まぶしそうに私の顔ばかり見つめていました。

 羞じらいに身を固くしながらも、あらためて楽屋内を見渡してみました。
 6帖くらいの長方形な空間の壁際にテーブルが設えられ、その上にしほりさまのメイクアップお道具が整然と並べられています。
 その横には今日ご披露するアイテムなのでしょう、衣装がズラリと掛かったハンガーラックとシューズボックス。
 
 奥のほうに三人掛けくらいのソファー、あと折りたたみ椅子が数脚。
 スタッフのみなさまの私物らしきバッグやカートがソファーの上に山積みなっていました。

 お化粧品の甘い香りが充満した蛍光灯が明るく煌めく室内で、華やかに着飾られた4人に囲まれ、ただひとり全裸の惨めな私。
 それは、さっき箱詰めにされたときに浮かんだ妄想とも相俟って、お伽話によくある、これから魔物の生け贄に差し出されるお姫様のような、ひどく切ない気持ちとなり、私の被虐願望を強烈に煽り立ててきました。
 
 みなさまにはすでに、私の全裸姿はおろか性癖までも知られちゃっていますし今更隠しても仕方ないのですが、その屈辱的な状況がとても心地良く、ふしだらなおっぱいとマゾマンコを隠す腕にいっそう力を込めて、羞恥に酔い痴れていました。

「さ、それじゃあメイクの最終チェックをしちゃいましょう。小夜さん、ここに腰掛けて」
 しほりさまが壁際の大きな鏡の前にある椅子を指さされました。
「今、社長さんがご挨拶されているから、あと15分ぐらいで出番よ」

 しほりさまのその一言で、それまで和やかだった雰囲気がピリッと張り詰めました。
 私も急激にドキドキしてきました。
 本当に私、これからショーのモデルをして、見知らぬたくさんのお客様に裸同然の姿を視ていただくことになるんだ・・・
 両方の乳首にグングン血液が集まってきているのがわかりました。

 促されるままに鏡の前に座りました。
「背筋伸ばして、まっすぐ鏡を見ていてね・・・」
 それから、しほりさまが鏡越しに私と目が合ったのを確認されてから、ニヤッと笑ってご自分の顎をクイッと前に突き出す仕草。

 ああん、しほりさまのイジワル・・・
 でもお約束したのだから、その仕草=ご命令をされたら逆らうことは出来ません。
 私の両手は、おずおずとおっぱいと股間から離れ、頭の後ろへと。
 リンコさまの愉しそうなお顔と、ほのかさまと里美さまの不思議そうなお顔が、正面の鏡の端に映っていました。

 もはやおっぱいも股間も隠すことは出来ません。
 それどころか、視て、と言わんばかりのおっぱい突き出しポーズ。
 鏡の中で自分の大きめな乳首が痛々しいほど背伸びして尖っているのがわかります。
 そして背後から鏡の中を覗き込むみなさまの視線が、そこに集中していることも。

「まっすぐ前向いていて。よかった。そんなにメイクは崩れてないわね」
 おっしゃりながら、リップやシャドウをチョコチョコっと足してくださるしほりさま。
 ほのかさまもブラシで入念にウイッグを整えてくださっています。

 鏡の横には、会場の様子が映った大きめのモニター。
 薄暗がりの中、スポットにライトに照らしだされた艶やかなお姉さまが、マイク片手に何かお話されている映像が映っていました。

「おっけー。完璧よ。小夜さんは立って。リンちゃん、最初のアイテム着せちゃって」
 しほりさまがテキパキとご指示を出され、リンコさまが茶色っぽい布地を持って傍らにやって来ました。

「そう言えば、マエバリは?するんでしょ?」
 リンコさまが私に最初のアイテムを着せようとして、ふと思いついたように傍らのほのかさまに尋ねられました。

「あ、それなのですけれど、こちらに来てからのミーティングでチーフが部長たちとお話し合いされて・・・」
「今日は小夜さんがモデルだから、パスティースもマエバリも、しなくていいでしょう、って・・・」
 ほのかさまがおっしゃりづらそうに、私の顔と尖った乳首を交互に視ながら、小さなお声でおっしゃいました。
「そのほうが、お客様に与えるインパクトが強くなるし、モデルさん、つまり小夜さんだってノルはず、って、きっぱりと」

「へー。チーフったら、勝負賭けてきたじゃん」
 リンコさまが嬉しそうにおっしゃったとき、不意にお部屋一番奥の壁の一部分が開き、盛大な拍手の音が楽屋内に雪崩れ込んできました。
 どうやらそこがステージへ出るドアのよう。
 つづいて、バッチリメイクをキメたお美しいお姉さまの少し上気されたお顔がひょっこり。

「はあぁぁ、これでお役ご免。あとはゆっくりショーを愉しむだけね」
 うっすらと汗の浮いたお顔でニッコリ微笑まれたお姉さま。
「おつかれさまでーす」
「おつかれさまでーす」
 お姉さまに向け、口々にご挨拶されるみなさま。

「お、来てたわね、期待のスーパーモデル小夜ちゃん。あとはしっかり頼むわよ」
 私だけに向けてニコッと笑って人目も気にせず、まだ全裸のままの私を抱き寄せてギュッとハグしてくださるお姉さま。
 パフュームの心地良い香りに包まれ、スーツの布地に剥き出し乳首がザラッと擦られてマゾマンコがキュン。

 数秒間の抱擁が解けると、お姉さまが至極真面目なお顔で、みなさまに向けておっしゃいました。
「さあ、このあと司会のふたりがざっと最初のアイテムの説明したら、ショーの始まりよ。準備はいい?」

「あ、はいっ!」
 あわてたようにリンコさまが私に最初のアイテムを着せるために私の右腕を取りました。
 里美さまはインカムを装着し、ほのかさまはズラリと衣装がぶら下がったハンガーラックへと駆け寄ります。
 リンコさまの手でかぶりのワンピースのようなお洋服を着せられながら、傍らのお姉さまからレクチャーを受けました。

「ランウェイは片道だいたい50歩くらい。先端まで行ったら5秒ほどポーズ決めて、回れ右ね」
「戻ったらステージでまたお客様に向けてポーズ決めて、ここに戻る、基本的にそれのくりかえし」
「最初のうち緊張気味だったら、頭からっぽにして歩数だけ数えながら歩くといいわ」

「後半のアイテムは、ステージに戻ってから仕様によってはステージ上に残ることもあるけれど、それは事前にリンコが教えてくれるわ。ステージ上ではアヤに従いなさい」
「朝にも言ったように、モデルは基本高飛車ね。ポーカーフェイスをキープ」
「モデルウォークに関しては、まったく心配していないけれど、照れ笑いとか困惑顔は絶対見せちゃだめよ。あくまでもエレガントにね」

 そこまでおっしゃってから、そっと私の耳に唇を寄せてきました。

「思う存分愉しんできなさい。大勢の人前で恥ずかしい姿を晒すの、ちっちゃい頃からの夢だったんでしょ?」
 私の耳朶をくすぐるお姉さまのヒソヒソなイジワル声。

「顔にさえ出さなければ、どんどん感じちゃっていいわよ。直子がずっと溜め込んでいたヘンタイ性癖を今日のお客様に見せつけてやりなさい」
「日曜日には直子の部屋で、ふたりきりでたっぷり反省会してあげる」
 コショコショっと早口でおっしゃって、唇が離れました。

「営業部のがんばりのおかげで、今日は今までで一番たくさんお客様が来てくだっさったし、絶対成功させましょう」
 普通のお声にお戻りになったお姉さまが、みなさまにお聞かせするようにおっしゃいました。
「はいっ!」
 綺麗で力強いユニゾンが楽屋に響きました。

「あたしはミサのところで見てるから、何か急な連絡があったら里美、イヤモニで呼んで」
「はい。了解です」
 里美さまのお答えに頷かれてから、さっき私たちが入ってきたドアの向こうへと、お姉さまが消えました。

 ドアを閉じる前、
「頼んだわよ、夕張小夜さん?あたしを悦ばせてね」
 というお言葉とウインクをひとつ残して。

 私は、いつの間にか最初のアイテムを着せられていました。
 それは、グリーンと茶色をベースにしたアーシーな色合いのワンピースでした。
 か細い糸を幾重にも織り込んだ薄手のとても軽い生地で、丈も長いストンとしたシルエット。
 アジアの暑い国のほうっぽいエスニックなデザインで、シックな感じ。

 今日のイベントのアイテムはキワドイキワドイって、今までさんざんみなさまから吹きこまれていたので、ちょっと拍子抜けでした。
 ノースリーブの脇が大きめに開いていて横から中が覗けちゃいそうな感じな以外、さほどセクシーな印象はありません。
 素肌に直で着て生地が柔らかいため、私の尖ったバストトップはあからさまに浮き出ているのは恥ずかしいけれど。
 確かに素肌にこれだけ着て街中を歩け、と言われたら躊躇してしまうでしょうが、すごく久しぶりにようやく全裸の状態を隠すことが出来たので、なんだかホッとさえしていました。

「そろそろ出番です」
 ラップトップのパソコンに向かっていた里美さまがこちらを振り向き、おっしゃいました。
 ドキン、と心臓が跳ね上がります。
 リンコさまに手を引かれ、先ほどお姉さまが入ってこられたステージへと向かうドアの前に導かれました。

「このアイテムは裸足のままで。裾をひるがえす感じで颯爽と歩いて。足の裏、汚れていない?」
 すかさずほのかさまが濡れタオルを持ってきてくださり、ひざまずいて私の両足を拭いてくださいました。

「そのドアを出るとステージ下手に出るの。司会の演壇は上手。出てすぐはカーテンで隠れているから客席からは見えない」
「ステージに出たら、モデルウォーク開始ね、中央にランウェイに降りる階段が三段あるから、そこまで進んで階段降りて、そのままランウェイを端まで直進ね。出てもお辞儀とか一切しなくていいから」
 リンコさまが真剣なお顔で注意事項をレクチャーしてくださいます。

「端まで行ったら場内が暗転してスポットが当たるから、少し歩調を緩めて戻ってきて」
「ステージに戻ったら、中央付近で一度、お客様のほうに向き直してポーズ。そうね、右手を脇腹に当ててちょっと気取る感じ」
「スポットライトが司会のふたりに移ったところで退場。お辞儀は無しでスタスタと。すぐに次のに着替えるから」

「は、はい。わかりました」
 お答えしながら、どんどんどんどん、ドキドキが高まってきました。

 いよいよショーモデルデビューです。
 最初のアイテムは、脇からおっぱいが覗いちゃいそうな以外、無難なワンピース。
 でも、それは最初だからで、きっとこれからどんどんキワドクなっていくはずです。
 
 午前中に見せていただいたイベントパンフレットに載っていたアイテムたちを思い出そうとしてみますが、自分が着て人前に出たら恥ずかしさでおかしくなってしまいそうなアイテムばかりだった、ということ以外、具体的なことはまったく思い出せませんでした。

 もしも思い出せたとしても、もはや逃げられません。
 イベントはすでに始まっていて、私には、お客様がたの前にそれらを着て出つづけることしか選択肢は無いのです。
 私がどんなに恥ずかしい思いをして、辱められ蔑まれたり嘲られても、それは私の望んだこと。
 そうすることによって、愛するお姉さまに悦んでいただけるのですから、覚悟を決めるしかありません。

「スタンバってください」
 里美さまのお声。
 ほのかさまがドアをそっと開け、私はドアのすぐ前に立たされました。
 早いビートのダンスミュージックぽい音楽が大きめなボリュームで聞こえています。

「緊張してる?大丈夫。リラックスしてがんばって」
 リンコさまが私の右手をギュッと握っておっしゃってくださいました。
 それからイタズラっ子のようなお顔になり、

「暗転してスポットライトが当たった後、どんな状態になってもあわてちゃだめよ。スーパーモデルはポーカーフェイス。忘れないで、ね?」

 ニッとイタズラっぽく笑いかけるリンコさまに背中を押され、ステージ上に一歩、足を踏み出しました。


オートクチュールのはずなのに 52


2016年6月26日

オートクチュールのはずなのに 50

「あっちの部屋でね、いいものみつけちゃったんだ。で、ピンて閃いちゃった」
 洋間のドアを指さしたリンコさまが、含み笑いを浮かべて私をじっと見つめながらおっしゃいました。

「そのいいものって、ガウンとか、お洋服ではないのですよね?」
「もちろん。今持ってきてあげる」
 タタタッと小走りに駈け出したリンコさまが洋間のドアの向こうへ消えました。
 すぐに戻られたリンコさまは、両手で大きな板のようなものを持っていました。

「これね、イベント会場の飾り付けに使うトルソーとかを運ぶためにさ・・・」
 おっしゃりながら、持ってきた一枚の板を慣れた手つきで広げると、ずいぶん大きめなダンボールの箱になりました。

「トルソーを一度に四体詰め込めたから、人ひとりくらいなら余裕で入れるはず」
 6~70センチ四方くらいの底で、高さも同じくらいの頑丈そうなダンボール箱。

「玄関に台車があるから、アタシが押して会場まで運んであげるよ。中に入っちゃえば裸でもへっちゃらじゃん?」
「私が、この中に、入るのですか?」
「うん。アタシ、台車のハンドリング、上手いんだよ。学生の頃、宅配便のバイトしてたことあるから」
 屈託ない笑顔でおっしゃるリンコさま。

「ほら、いけるかどうか、ちょっと入ってみて。そろそろ時間だからさ」
「裸のまんまで、ですよね?」
「仕方ないじゃん。着るものなんもないんだから」
「は、はい・・・」

 リンコさまが押さえてくださっているダンボール箱の縁をまたぎ、恐る恐るな感じで箱の中に足を踏み入れました。
 両足とも踏み入れると、突っ立った姿勢でおへそくらいまでが箱の中。

「それで、しゃがんでごらん」
 お言いつけ通りにすると、ひょっこり頭だけが箱から覗く感じ。
「やっぱりペタッとお尻着けなきゃ、完全には入んないか・・・座り込んじゃってみて」

 お言葉に促され後ろ手を着き、ダンボールの底に裸のお尻を着きました。
 ダンボールがひんやり、おしりの熱を奪います。
 足を崩して胡座をかくような格好になると、その分、箱の中がちょっと窮屈になりました。

 リンコさまが蓋を閉めようと、折れたダンボールを被せてきました。
 私が首をかしげるように折り曲げると、ダンボール内にからだが全部隠れました。
 真っ暗な中に二箇所、おそらく箱の持ち手のために空けられたのであろう細長楕円形長さ10センチ位の穴があり、そこから薄っすらと光が差し込んできます。

「よかった。大丈夫そうじゃん。それじゃ急がなくちゃ。もうすぐ3時になるし」
 蓋が開いて、リンコさまが手を差し入れてきました。
「えっ?出るのですか?」
「あったりまえじゃない。ナオコが入ったままの重い箱なんて、アタシが玄関まで運べるワケないでしょ」
 リンコさまの手に縋って、箱から出ました。

「入り心地はどう?もし窮屈だったら、膝を抱えて丸まって寝転んじゃったほうがラクかもしれない」
 おっしゃりながら、ウイッグとビューラー、サングラスを紙袋に詰め、さっき使った白いバスタオルを箱の底に敷いてくださいました。
 それからご自分のバッグを肩に提げ、ぐるっと周りを見渡したリンコさま。

「忘れ物なし。はい、これ持ってついてきて」
 紙袋を私に渡し、片手で空ダンボールをひきずり、玄関へ向かわれました。
「ほら、もたもたしないで。遅れちゃうよ?」
「あ、はいっ!」
 紙袋片手に全裸のまま、リンコさまを追う私。

 リンコさまは、玄関ドアを外開きに開け、ドアが閉じないようにストッパーをかけた後、玄関先に折りたたまれていた台車をギーガッチャンと組み立てて廊下に置きました。
 その上に空のダンボール箱が置かれます。
 
 私はと言えば、左腕でおっぱいを庇い、右手に持っている紙袋で股間を隠しつつ靴箱の陰から、そんな廊下の様子を見ていました。
 だって、開け放たれた玄関の向こうは、紛れも無く公共の場ですから。

「ナオコの靴、これ?」
 沓脱ぎにポツンと残されたベージュのパンプスを指さしてリンコさまが尋ねてきました。
「はい・・・」
「ヒールがあるから、履いて箱に入ると危なそうだね。いいわ、アタシが持ってってあげる」
 おっしゃるなりパンプスを拾い上げ、ご自分のバッグに押し込みました。

 それから、ダンボール箱の側面に黒くて長いゴムバンドをあてがい、台車の押し手のハンドル部分もろとも括りつけました。

「こうしておけば、台車が前のめりになっても箱が台車から落ちないでしょ?バイト時代に培った隠しワザ」
 ずいぶん得意そうなお顔のリンコさま。

「今ジャスト3時。ほら早く廊下に出て、鍵閉めるから」
 なんでもないことのようにおっしゃるリンコさまですが、お部屋を出てしまえばマンションの公共の廊下、そして私は全裸です。
 どうか廊下に誰もいませんように・・・誰も通りませんように・・・お部屋からも出てきませんように・・・
 祈る気持ちで玄関ドアを裸足でくぐり抜けました。

「はい、入って入って」
 リンコさまがダンボールの縁を押さえながら急き立てます。
 大きく脚を開いてダンボールをまたぎました。

「こんなところで真っ裸の女子を箱に詰めるなんて、かなり淫靡でハンザイぽいシチュだよね?」
 とても嬉しそうなリンコさまのひそめたお声が頭上から降ってきます。

「出来れば後ろ手に縛ったり、M字開脚拘束とかしてると、もっと雰囲気なんだけどなー。猿轡とかさ」
「令嬢ラチユウカイカンキンコウソク、みたいな?もしくは悪の秘密組織の調教済みセイドレイの出荷、みたいな?」

 ワクワク妄想全開なリンコさまのお声を裸の全身に浴びながら、ダンボール箱の中に座り込みました。
 持っていた紙袋はお尻の横に置き、はしたなくお股開き気味の胡座。
 今度はお尻の下にバスタオルが敷かれているので、さっきより少しだけ座り心地がいいみたい。

「おっけー?閉めるからね。それじゃあ、しゅっぱーつ!」
 進行方向前後から蓋が下りてきて、箱の中が真っ暗になりました。
 持ち手用の穴も進行方向の前後に有り、かしげた首の目線を少し上げると、お外の様子がチラチラッと見えました。

 ガラガラと床を転がる4つのキャスターの振動が、台車の荷台とダンボール越しに私のからだをプルプルと震わせています。
 進行方向に向いて立て膝気味の胡座ずわりな私。
 前屈みになっているので、右おっぱいの先が右の太腿に押し付けられています。
 
 絶え間なくつづいていた振動が止まりました。
 前方の持ち手穴を覗くと、エレベーター前のよう。

 いよいよ私、ダンボールに詰め込まれた、モノ、みたいな、こんなふしだらな状態でお外に出されちゃうんだ・・・
 と、思う間もなくエレベーターが到着し、ガタガタっと中へ。
 すぐに下降を始めてチーン。
 台車が動き、マンション一階のエレベーターホール。
 そこで台車が静止しました。

 あれっ?と思っていると、突然、ダンボールハウスの天井が開きました。
 いやんっ、開けちゃだめーっ!
 箱の中に突如差し込んできた眩しい光に、思わず顔を背けてうつむきました。

「大丈夫よ、周りに誰も居ないから。ちょっと一応、記念撮影しとこうと思ってさ」
 そのお声に恐る恐る顔を上げると、箱の方に携帯電話を突き出したリンコさまが笑っていました。
「ほら、ちゃんと顔上げて。おっぱいも見えるように腕どけなさい」
 たてつづけにカシャッカシャッという撮影を告げる電子音が鳴り響き、天井が閉じられました。

「さあ、急がなくちゃ」
 独り言のようなリンコさまのお声を合図に、再び台車が動き始めました。
 ガラガラ音がしばらくつづいた後、急に辺りのざわめきが大きくなりました。
 マンションのエントランスドアを抜け、とうとうお外に出たようです。

「うひゃー。まだポツポツ降ってるんだ」
 濡れた車道を走り抜けるシャーッという自動車のタイヤ音とエンジン音。
 人々が通り過ぎる足音とさざめき。
 ダンボール箱を打ち付けるポツポツという雨音。
 そんな街の喧騒の中、かすかにリンコさまの独り言が聞こえました。

 マンションからオフィスビルへ入るには、舗道を一度一番端の交差点まで行って渡り、そこから少し戻る感じに進むことになります。
 オフィスに通うようになってからは毎日のように行き来してきた、歩き慣れた道。
 沿道に大きめな24時間営業のスーパーマーケットがあるので、交通量、歩行者共に終日かなり多いことも知っています。

 そんな私にとって極めて日常的な空間を、今はダンボール詰めの全裸で運ばれています。
 先ほど出発前にリンコさまがおっしゃった一言を思い出しました。
 ・・・悪の秘密組織の調教済みセイドレイの出荷・・・
 今の私って、まさしくそんな感じに思えました。

 オフィスに着くなりお姉さまのご命令で丸裸にされ、綾音部長さまにからだの隅々まで観察され・・・
 裸コートで離れたマンションの一室に連れ去られ、お姉さまからお浣腸を施され・・・
 他のスタッフ全員の前でも全裸を隠すことは許されず、無毛のマゾマンコまでしっかり目撃され・・・
 初対面のしほりさまに全身隅々もてあそばれ、会社の先輩のリンコさまに何度もイキ顔をご披露し・・・
 今こうしてモノのようにダンボール詰めで運ばれて・・・
 この後は、何人もの見知らぬ方々の前で、エクスポーズ=露出というテーマのお洋服姿を視ていただく・・・

 今日これまでの一連の流れを思い出してみるだけで、自分の中のマゾの血が沸々と滾ってくるのがわかりました。
 そして、今日を境に、自分の人生が確実にガラッと変わってしまうであろうことへの不安と期待。
 もう私は、昨日までには戻れないんだ・・・
 頭の中では、小学校のときに習ったドナドナというお歌のメランコリックなメロディがくり返されていました。

 ダンボール箱の中で揺られながら、いつの間にか左手が左足首を、右手が右足首を掴み、自主的にM字開脚姿勢となっていました。
 少し背中を滑らせて、お尻を宙空に持ち上げて突き出すようにのけぞります。
 あの持ち手の穴から、私の広げたマゾマンコが、チラッとお外に覗いちゃったりしないかな・・・
 自分を辱めたくて仕方なくなっていました。
 狭い箱の中が、嗅ぎ慣れた自分の淫らな臭いで充満しているのがわかりました。

 スロープを下ったり上ったり。
 ガタガタ揺れる箱の中ですっかり被虐に浸っていると、いつの間にか喧騒が遠のいていました。
 どうやらオフィスビル内に入ったみたい。

「やれやれ。この界隈のバリアフリーはあんまり優しくないね。エレベーターに辿り着くまでかなり遠回りだもん」
 不意なお声とともに再び天井がパカっと開き、リンコさまが覗き込んできました。

「あっ!いやんっ」
「って、ナオコ、すごい格好してるじゃん。こっちに向けてオマンコパックリ拡げちゃって」
「あっ、いえ、こ、これは・・・」
 慌ててふんぞり返った姿勢を正そうとすると、リンコさまに止められました。

「だめっ!そのまま足首掴んでなさい。こんな激エロい格好、ナオコの愛するお姉さまにお見せしなくてどうするの?撮影しとかなきゃ」
 素早く携帯電話を構えてカシャカシャっと連写されました。

「で、まあ、それはそれとして、ごめん。失敗しちゃった」
 リンコさまが携帯電話を仕舞いながら、いつにない早口でおっしゃいました。

「アタシ、ずっと興奮してたから気づかなかったけど、今急に、すっごくオシッコしたいのよ。部屋出る前にしておこうと思ってたのに」
「雨に濡れて冷えちゃったのか、交差点の辺りから、すっごくしたくなっちゃって。トイレ見えたら、もう我慢できなくなっちゃった」
「大丈夫。ここは業者用の荷物エレベーター前だから、一般客は使わないから。ほんの1、2分だから、待ってて」

 切羽詰まった感じでそう言い残し、ササッと消えたリンコさま。
 ダンボール箱の蓋を閉めるのも忘れて、私は放置されてしまいました。
 ちょっ?ちょっと、リンコさま・・・
 焦って蓋を閉めようと頭上に手を伸ばしかけ、あらためて、辺りがすごくシンとしていることに気づきました。

 本当に周りに誰もいないみたい。
 だったらちょっと冒険して、状況を把握しておくべきかも。

 恐る恐る箱から頭を出してみると、そこはオフィスビルの一番端っこ、確かに経験上、人通りは少ない場所ではありました。
 吹き抜けの広いバスターミナル沿いで、イベント会場付近に直通しているエレベーターホールのある長い通路の片隅。
 確か、ドアを越えた奥にお客様用エレベーターがあって、ここは駐車場からの出入り業者納品用エレベーター。
 
 そのエレベータードアの前に、私の入ったダンボール箱を載せた台車がポツン。
 女子トイレは確か通路並びで、ここのすぐ横にあったはず。

 状況はつかめたものの全裸でこんなところにひとり放置され、不安であることに変わりはありません。
 いつ、どこかの業者さんがエレベーターの方に来てもおかしくありませんし。
 ここは大人しく、箱に篭ってリンコさまを待つしかないようです。
 再び箱の中に潜り込み、手を上に伸ばして蓋を閉じようとしました。

 よくあるダンボール箱のように、前後二枚を閉じてから左右二枚。
 ただ、前後二枚を引っ張って閉じると、左右の二枚に手を伸ばすことが出来ません。
 仕方がないので、前後の二枚をグイッと内側まで引き込み、空いた空間から手を伸ばして左右の二枚も引き寄せます。

 うまくいった!
 と思って引き寄せていた手を離すと、前後左右4枚ともフワッと浮いて、蓋の真ん中に隙間が出来てしまいます。
 きっと運んでいるときは、リンコさまのバッグか何かを重しに置いて蓋を押さえていてくださったのでしょう。

 蓋が中央に作る隙間は5センチ四方くらい。
 真上から見下ろせば、目を凝らさなくても、中に見える私の肌色に気づいちゃうはず。
 かと言って、隙間を指で引っ掛けて引き寄せたら、却ってその指のほうが注目を惹いちゃいそうだし。
 考えあぐねていたら、ふと自分の左手に触れるものがありました。

 そうだ、リンコさまがウイッグとかを入れてくださったこの紙袋で穴を塞いでしまえば、中は見えなくなる。
 ううん、この紙袋をお外に出して、蓋に載せて重し代わりにするほうがいいかも。
 
 思いついたら即実行と蓋を開けかけたとき、上のほうでガタンと物音が聞こえました。
 つづいてウィーンってモーターが回るような音。

 エレベーターが動いている?
 誰かが傍らに来て呼んだのかしら?
 でもさっきからずっと、周囲で不審な物音はしなかったし。
 だったら、きっと誰かがエレベーターで何階からか、降りてくるんだ。

 私は、左手に持った紙袋を天井の穴を塞ぐようにかざし、箱の中に光が入り込まないようにしてジッと息を殺していました。
 やがてすぐ近くでガタンと物音がし、モーター音が止まりました。
 ポーンという電子音の後、ザザーッと扉が開く音。

「おおっと!どこのどいつだ、こんなところに荷物置きっぱなしにしたやつ!」

 ガラガラなご中年ぽい男性のお怒り声が聞こえたと思ったら、台車がグインと動いてガタンッ!
 前の右角が壁に当たったようです。
 台車の持ち手のところでも、押すか蹴飛ばすか何かされたのでしょう。

 うわ、どうしよう!?
 どこの荷物だこれ?ってダンボール開けられちゃったら・・・
 お相手は、怖そうな男性っぽいし・・・
 一気にパニクりそうになったとき、聞き覚えのある大きなお声がフェードインして聞こえてきました。

「ごめんなさーいっ!おじゃまでしたよねー。今どかしまーすっ!ちょっと、おトイレに寄っていたものでー」
 リンコさまのお声がすぐ近くに聞こえるようになって、ダンボール天井の穴が何か重いもので塞がれました。

「ああ、お姉ちゃんのか。だめだよ、扉の真ん前に置きっぱなしにしちゃ。エレベーター使う人が迷惑だろーが」
「はい。ごめんなさい。ご迷惑おかけしましたー」
 台車が1メートルくらい、ゆっくりと動いた感じがしました。
 たぶん、男性から遠ざけたのでしょう。

「やむをえず置いとくなら隅っこの方にな。ここはみんなが使うんだから。気をつけなよ」
 最後はずいぶんお優しげなお声に変わって、ガラガラと台車を押すような音が遠ざかって行きました。
 入れ違いにエレベーターへ乗り込みます。

「ああびっくりした。あの宅配便のおじさん、箱開けようとしてんだもん。危機一髪だったー」
 エレベーターの中で、リンコさまが心底ホッとされたようなお声でおっしゃいました。

「えっ?そうだったのですか?」
「うん。箱に右手を伸ばしているところが見えたから、大慌てで叫びながら帰ってきたんだから」
 ふぅー、と大きくため息をつかれるリンコさま。

「あれでもし、あのおじさんに箱開けられちゃってたら、どうなってたんだろうんね?ナオコもアタシも。あんまり品のいい人じゃなさそーだったし」
 ポツンとおっしゃったリンコさまのお言葉に、私も今更ながら嫌な汗が背中をツツーッ!

 もう一度リンコさまがハァーッと大きなため息をつかれたとき、ポーンと電子音が鳴り、どうやら目的階に着いたようでした。
 エレベーターを出ると、さっきまでのあれこれが嘘だったみたいに再びシーンと静まり返った中、なんだか眠そうなストリングスBGMが低く聞こえてきました。

「もうこの時間は、どの会場もそれぞれイベントやら会議やらの真っ最中だからね。フロアには人っ子一人いないみたい」
 台車のキャスターの音もお外の道路みたくガタガタせず、ススーっと進んでいます。

「おっけー、着いた。出て」
 えっ?だって会場のドアを開けたようなご様子も全然無かったし、ここってまだフロアの廊下なのでは?
 私の心を知ってか知らずか、天井があっさりパッカリ割れて全開になりました。

「大丈夫だって。ここは楽屋へつづくドアの前の廊下。誰もいないから」
 箱の蓋が開いても立ち上がってこない私を安心させるように、箱の中にリンコさまの右手が差し出されました。

 その手に縋り、恐る恐るゆっくり、立ち上がり始めます。
 周囲の雰囲気は紛うこと無く、昨日下見に訪れたイベント会場フロアそのものでした。

「会場、長細かったでしょう?お客様が出入りする入口ドアはあっち」
 今進んできたのであろう廊下の先を指さされるリンコさま。
「そんで、このドアはステージ側、関係者以外立入禁止の楽屋へ通じるドア」
 目の前のドアを指さされました。

「ここからはナオコじゃなくて、我が社のイベント成功のカギを握るスーパーエロティックモデル、夕張小夜なんだからね」
 台車の横に私のパンプスを、きちんと揃えて置いてくださりました。
 リンコさまが押さえてくださるダンボールの縁をまたいで、ひとまず裸足でリノリュームの床に降り立ち、それから身を屈め、ベージュのパンプスを履きました。

 全裸に、なぜだかパンプスだけの私。
 それもこんな昼下がりの瀟洒なオフィスビルの廊下で・・・

 性懲りもなくぶり返してくる被虐の滾りにクラッとしつつ立ち上がると、更にびっくり。
 会場を仕切る壁沿いに通る廊下のもう一方の側は、ビルの外壁。
 そしてそこに並ぶ、大きな窓。
 
 窓からはお外のお空が見え、雨模様曇りがちなガラス窓には、私の全裸姿がクッキリ鮮やかに、映っていました。
 公共の場所でのありえなくもあられもない自分の姿を客観的かつ強制的に見せつけられ、羞じらいが全身にドッと押し寄せてきました。

 そこにスッとウイッグを被せられました。
 さも当然のようにガラスを鏡代わりに、そこに映った私の裸身をじっと視ながらウイッグを整えてくださるリンコさま。

「さあ、これでいいわ。小夜さん、楽屋に入りましょう」

 前髪パッツン、ストレートセミロングのウイッグとベージュのパンプス以外、何も身に着けていない私の手を引いて、リンコさまがゆっくりと、イベント会場楽屋へのドアをお開けになりました。


オートクチュールのはずなのに 51

2016年6月19日

オートクチュールのはずなのに 49

 あまりの気持ち良さに、背中が弓なりにのけぞりました。
 同時に左乳首への刺激が緩みます。
 ああん、もっと・・・

 カシャン!
 足元で聞こえた音に上体を戻すと、ドレス姿のリンコさまは、いつの間にか椅子のほうへと戻られ、今まさに腰掛けようとされているところでした。
 私と目が合うとニコッと微笑み、黙って私の足元を指さされました。
 まつげビューラーが床に落ちていました。

「使っていいよ」
 リンコさまのお言葉に弾かれたように上体を屈め、ビューラーを右手で拾い上げます。
 からだを起こしたときにはすでに、持ち手の2つの穴に親指と中指を潜り込ませていました。
 迷うことなくビューラーのシリコンゴム部分を今度は右乳首にあてがい、指に力を込めました。

「はうっ、んんんんんーーーーっ!」
 再びあの痛みの快感が戻ってきました。
 今度は背中がのけぞっても、自分で押し当てているビューラーは乳首から外れることなく、噛みつかれたまんまです。

「あっ、あっ、あっ・・・」
 噛みつかせたままビューラーを引っ張ったり捻ったり。
 濃い桜色に染まった乳暈がゴムのように伸びたり縮んだり。
 
 そのあいだに左手は当然のように下腹部へと伸び、中指と薬指が折れ曲がって膣内へ。
 手首の手前、掌の盛り上がった部分で膨らみきったおマメをギュウギュウ潰しながら擦っていました。

「あんっ、あっ、あっ、あーっ」
「んーーっ、あっ、あっ・・・」
「んーっっ、んんーーっ、あんっ、ああんっ、んんーっ!」

 期せずして始まっちゃったオナニーは、もう無我夢中。
 バスルームでお姉さまからイカせていただいて以来今まで、必死に抑え込んできた欲情が暴発しちゃったみたい。
 ギュッと目をつぶった瞼の裏側で、全身の細胞が快感だけを追い求めていました。
 
 股間に貼り付いた左手が、そこだけまるで別の生き物のように、せわしない複雑な動きをくりかえします。
 浅ましくがに股気味に折れた膝がガクガク震え、みるみるうちにグングン高まっていきました。

「あああ、いぃっ、いいっ、いぃぃぃ・・・」
「あっ、いぃ、いく、いくぅぅ・・・」
 からだ中を快感が駆け巡り、その快楽に前のめりになって酔い痴れていると・・・

「あれ?もうイッちゃうの?イクときは、どうするんだっけ?」

 唐突にやけにハッキリとしたお声が、鼓膜を揺らしました。
 そうでした。
 目の前にリンコさまがいらっしゃるのでした。
 とにかくイキたい一心で、完全に自分だけの世界に没入していた私は、リンコさまの存在さえ、すっかり忘れ去っていたのでした。

 私ったら、なんの羞じらいもなく、いつのまにかリンコさまの目の前で、オナニーを始めちゃっていたんだ・・・
 つぶっていた目を薄く開けると、目の前にリンコさまの愉しげな笑顔。
 
 遅まきながらの羞恥が全身に広がり、それは快感の炎を更に燃え立せる油となりました。
 もちろんそうしているあいだも私の両手は欲望に忠実に休むことなく、自分のからだを瀬戸際へと追い立てていました。

「あぅ、イ、イッていいですか?リ、リンコさまぁ、ぁんっ」
 リンコさまをじっと見つめてお願いしました。

 リンコさまに視られている、ということを意識した途端、快感の質がグンと研ぎ澄まされました。
 リンコさまの視線が釘付けとなった私の左手は、その注目に精一杯応えるべく、マゾマンコの内側を抉るように激しく陵辱しています。
 手のひらはクリトリスを、摩擦熱で火が点いてしまいそうなほど乱暴に上下しています。

 視てください、リンコさま・・・私のどうしようもなくふしだらな本当の姿・・・
 もはや待ったなしのところまで来ていました。

「ああん、お願いですぅ、いぃっ、イッていいですかぁ、リンコさまぁぁ・・・」
 両膝がガクガク震え、もう立っていられないかも・・・

「いいよ、最初だしね。そのまま、イッチマイナー」
 最後の部分だけなぜだか外国人のカタコト日本語みたいな発音で、ご冗談ぽくおっしゃったリンコさま。
 そのお言葉を聞いた途端、からだがフワッと浮き上がるような感覚とともに、頭の中が真っ白になりました。

「ああっ、視て、視ててくださいぃリンコさまぁ、イキます、直子、イキますぅぅぅ・・・」
「あぁぁいぃぃぃーーーっ、イクっ、イクっ、イっクぅぅぅーーっ!!!」

 マゾマンコをリンコさまのほうへと見せつけるみたいに突き出して、大きく後ろへのけぞったまま快感に打ち震えました。
 ヒクつく腰をなんとか支えようと、両足が大きく開いていました。
 膝をついてはダメ、というご命令が頭の片隅に残っていたようで、砕けたがる膝を踏ん張りつつ、オーガズムの余韻に酔い痴れていました。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
「これで一回ね。気持ち良かった?」
 リンコさま、呆れたようなお顔をされている・・・

「アタシが見ていようが、おかまいなしなんだ?」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
「恥ずかしくないの?」
「はぁ、はぁ、恥ずかしい・・・です・・・」
「それでもイッちゃうんだ?」
「「はぁ、はぁ、ごめんなさい・・・」

「まだまだイケるよね?ナオコのオマンコ、ポカンて大きく口開けちゃって、ぜんぜん物足りなさそうだもん」

 私は、がに股の両膝に両手を置いた中腰の前屈み姿勢で、快感の余韻に息を荒くしていました。
 座っていらっしゃるリンコさまの視点からだと、腰は引いているものの、私の無防備な股間は丸見えなのでしょう。
 そして、リンコさまも私を、ナオコ、と呼び捨てにし始めたことにも気づきました。

「はぁ、はぁ、はいぃ・・・」
「本番前にエロい気持ち、全部発散させとかなくちゃ、ね?」
 からかうようにおっしゃったリンコさまの瞳に宿った妖しいゆらめきに、私のマゾ性がビンビン反応しています。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・はいぃ」
「それじゃあ今度はさ、アタシの顔をずっと見ながらやってみてよ。うつむいたり目をつぶっちゃダメ、ってことで」
 唇の端に薄い笑みを浮かべたリンコさまは、ゾクゾクするほどお綺麗でした。

 そんなふうにして私は、リンコさまの目の前で何度も、イキつづけました。
 最後のほうは、イク間隔がどんどん短かくなり、触ったらすぐ達しちゃうような状態。
 だから、自分でも何回イッたのか、わからないくらいでした。

 自分の手で膣口を大きく押し広げ、指三本を奥深くまで侵入させて掻き回しました。
 目線はずっとリンコさまを見つめ、イッていいか、何度もお許しを乞いました。
 
 ときにはあっさり許され、ときには無慈悲なまでに焦らされ・・・
 焦らされた代償は、私のマゾマンコからシオとなり、リンコさまの目前までほとばしりました。
 そのときリンコさまが、まさしくネコさんのように敏捷に、椅子を立って避けられるのを見ることが出来ました。

 途中、リンコさまがケータイのカメラを私に向けたことにも気づきましたが、私に拒絶する権利なんてありません。
 リンコさまのケータイの中に、私の浅ましい姿が記録される・・・
 リンコさまがその気になれば、私の恥ずかしい姿を誰にでも容易に見せることが出来るんだ・・・
 そんな考えが私のマゾ性をいっそう激しく煽り立てました。

 リンコさまから時間切れを告げられたとき、私はしゃがみ込み、快感の余韻に全身でハアハア息をしていました。

「残念だけど、そろそろ出かける準備をしなくちゃの時間。どう?ちょっとは落ち着いた?」
 近づいてきたリンコさまにウイッグをスポッと外され、肩にバスタオルを掛けられました。 
「汗びっしょりだから、それで拭くといいわ。あ、でもゴシゴシ擦っちゃダメ。肌をポンポンって叩く感じでね」
 
 いただいたタオルに、まずは顔を埋めて汗やよだれを拭き取りました。
 タオルがフワッとしていて気持ちいい。
 さすがにプロのモデルさん仕様のウォータープルーフ。
 タオルから顔を離すと、白地のタオルにメイクがまったく色移りしていませんでした。

 それからヨロヨロと立ち上がり、お言いつけの通りにからだをタオルでポンポン叩きました。
 そんな私をじっとご覧になっていたリンコさまが立ち上がり、近づいてこられました。

「やっぱし拭っただけじゃ、まだからだがベトベトしてそうね。バスルームに行きましょう」
 リンコさまに促され、バスルームへと移動しました。

 つい数時間前にお姉さまと裸で愛し合い、更にお浣腸までしていただいたバスルームは、全体がまだほんのり湿っていました。

「ナオコはそのバスタブの前辺りに立って、アタシの言う通りにするのよ?」
 おっしゃりながらリンコさまは、シャワーヘッドを何やら弄っていらっしゃいます。
「シャワーのままだと雫が飛び散って、アタシまで濡れちゃいそうだからさ」

「よし、っと。じゃあナオコ?」
 私から2メートルくらい離れた場所でニヤッと笑ったリンコさまが、お芝居っぽいわざとらしさでご自身の顎をグイッと手前にしゃくられました。
 
 ああ、やっぱり・・・
 薄々勘付いていた私は、ゆっくりと両手を挙げ、マゾの服従ポーズを取ります。
 それを見て、なんとも嬉しそうなリンコさまの笑顔。

「汚物は消毒だ~ひゃっはー」
 愉しそうなお声とともに間髪を入れず、勢いのある一筋の水流が私のからだめがけて飛んできました。

「あうっ、冷たいーっ」
 水流は真水で、当たった場所の皮膚が少しへこむほど水圧がありました。
 一直線の水流が、私の両腋の下を狙い、おっぱい、おへそを撃ち抜いて今は恥丘に襲いかかっています。

「ほら、後ろ向きなさい」
 ご命令に、おずおず背中を向けました。
 たちまち背中がびしょ濡れとなります。
 最初は冷たいと思ったお水も、火照ったからだにはちょうどいい気持ち良さに感じていました。

「そのまま前屈みになって、お尻をこっちへ突き出しなさい。マンコの中まで洗ってあげるから」
 お尻の割れスジに水圧を感じながら、すっかり板についてきたリンコさまのご命令口調通りの姿勢になりました。

「もうちょっと脚を広げて」
 そのお声に両足を左右へ滑らせると、水流が一直線に、私の膣付近に当たるようになりました。
 激しい水圧で抉じ開けるように、膣内まで水が侵入してくる感じです。
「んんーっ」
 その気持ち良さに、思わず淫らな声が洩れてしまいました。
 
「またえっちな声出しちゃって。もうすぐにイベントが始まるんだから、切り替えてよね?」
 お口では咎めるように、そんなことをおっしゃるリンコさまですが、その水流は執拗に、私が突き出している下半身のふたつの穴をせわしなく交互に狙っていました。

「あうっ、は、はいぃ・・・ご、ごめんなさいぃ・・・」
 口では謝っているものの、水圧に包皮をめくりあげられ完全に露出したクリトリスへの乱暴な刺激がたまりません。
 ああん、もっとぉ・・・

「ま、こんなもんか」
 肌を嬲る水流と、やかましく響いていた水音が唐突に途絶えました。
 目をつぶって徐々に昂りつつあった私は、なんだかがっかり。

「ほら、早くこっちへおいで。拭いてあげるから」
 シャワーヘッドを所定の場所へと戻されたリンコさまが、白いバスタオルを広げておっしゃいました。

 脱衣所で再びマゾの服従ポーズにされ、全開となった私の全身を、リンコさまが持たれたバスタオルでポンポン水気を拭ってくださいました。
 タオル越しの手のひらで私のおっぱいをふんわり包み込み、やんわりとタオル地を押し付けてくるリンコさま。
 
 タオル越しとはいえ、リンコさまの体温が素肌に伝わってきます。
 お腹、下腹、太腿、背中、お尻・・・
 リンコさまの至近距離でのバスタオルの愛撫に、うっとり、されるがままの私。

「おーけー。これでよしっと。なんとか間に合いそう。ナオコ、服着て」
 リンコさまのバスタオルがからだから離れ、手を引かてれて再びリビングへ。

「早く着て。ちょっと早いけれどもう会場へ出かけちゃいましょう。あ、下着は着けなくていいよ」
「えっと、あの・・・」
「だから、ここに来るときに着てきた服、どこに置いたの?」
「えっと、それは・・・」

 あわててお部屋中を見渡しましたが、それらしいものは見当たりません。
 トルソーもみんな裸ん坊。

 綾音部長さまにお借りしたレインコートは、お部屋に入る前の廊下で脱いでお姉さまにお渡しして・・・
 お姉さまは、お部屋に入ってからすぐにご自分もお洋服を脱いで、そのあとすぐ始めちゃったから・・・
 あのコートを、お姉さまはどこに置かれたのだろう?

「あの、あのですね・・・」
 リンコさまに手短かに、オフィスからここまで来たときのことをご説明しました。
 ご説明しながら、悪い予感が胸に渦巻いてきました。

「ふーん。オフィスでチーフとアヤ姉の前で丸裸にされて、そのままアヤ姉に借りたレインコート一枚で、ここまで来たんだ?」
「はい」
「裸コートっていうやつよね?ヘンタイさんがよくやる。ショッピングモール歩いて興奮した?」
「あ、えっと・・・はい・・・」
「だよね。ナオコは露出願望マゾッ娘だもんね」
 すっごく愉しそうなリンコさまのイジワル口調。

「そのコートなら、アヤ姉がさっき持って帰ったよ」
 リンコさまが素っ気なく、なんでもないことのようにおっしゃいました。

「さっきみんなが会場へ向かったとき、アヤ姉、左手にそれ提げてたもん。渋目のグリーンのやつでしょ?」
「そう・・・です・・・」
「さすがアヤ姉は、いいモノ揃えてるなー、って感心したから、覚えてる」

 ということは・・・

「ということは、今ここにナオコの着るべき服は無い、っていうことになるよね?」
「・・・はい」
「どうする?」
「あの・・・どうするって言われましても・・・」
「その素っ裸のまんま、会場まで行くしかないか。もう入り時間迫ってるし」
 からかうように私を見つめてくるリンコさま。

 全裸のままお部屋を出て、全裸のままマンションのエレベーターに乗り、全裸のまま通りに出て、全裸のまま交差点を渡り、全裸のままオフィスビルに入り・・・
 瞬時にそんな恥ずかし過ぎる情景が、鮮やかな走馬灯のように脳裏を駆け巡りました。
 そんなこと・・・出来る訳ありません。

「なーんてね」
 リンコさまの戯けたお声に顔を上げると、相変わらず超愉しそうな笑顔。

「それってぜひともやらせてみたいけれど、普通に考えて、見た誰かにすぐ通報されちゃうよね?公然ワイセツで。そうなったらイベントもろともアウトだし」
「たぶん羽織るものくらい、何かあるでしょ」

「あの、そう言えばお姉さまが、お風呂上がりにバスローブを着ていらっしゃいました。白くてピカピカした」
 私も必死に考えて思い出しました。
 バスローブを羽織っただけで公共の場に出るのもかなり恥ずかしいことですが、全裸よりは何百倍もマシです。

「なるほどね。私物だろうけど、チーフがそれ、そのままここに置いてってくれたらいいけど」
 おっしゃるや否や、お姉さまがお着替えに利用されていた和室の中へ入られました。

 しばらくして手ぶらで出てこられたリンコさまは、すぐに洋間のほうへ。
 ものの数分で、やっぱり手ぶらで出てこられました。

「いいニュースと悪いニュースがあるの。まず悪いほうね」
 お芝居がかった口調でそうおっしゃったリンコさまは、私の返事も待たずに嬉しそうにつづけました。

「残念ながら今この部屋内には、服のようなものは一切無かった。イベント準備期間中は、けっこうみんなの私物でごちゃごちゃいていたんだけどね。パジャマとかジャージとか」
「イベント前日にチーフがここに泊まるの、みんな聞いていたから、その前に急いで片付けたんだろうね。ナオコの言ってたバスローブもチーフが持っていったみたい」

 えーっ!

「あのあの、リンコさまは、お着替えとか、お持ちじゃないのですか?そのバッグの中に」
 絶望的な気持ちになりながら、お部屋の隅にぽつんと置かれたリンコさまのであろうバッグを指さして、すがるようにお尋ねしました。

「うん。残念ながらねー。今日はこのドレスで家から来ちゃったし。入っているの、スカーフくらいかな」
 相変わらずお芝居っぽく、わざとらしいくらい、さも残念そうにリンコさまがおっしゃいました。

「そ、それなら、会場の誰かにお電話して、大急ぎで綾音さまのレインコートを持ってきてもらうしかないです。リンコさま、ケータイ今お持ちですよね?」

「そんな泣き出しそうな声出さなくても大丈夫よ。アタシ、いいニュースもある、って言ったじゃない?」
 心の底から愉しそうなお顔のリンコさまは、間違いなく私をいたぶることに快感を感じられているようでした。

「アタシ、閃いちゃったんだ。ナオコが裸を晒さずに外へ出て会場まで行ける方法」
 ニコッと微笑んだリンコさまの冷たいお顔は、ゾクッと肩が震えるくらいサディスティックでした。


オートクチュールのはずなのに 50


2016年5月1日

オートクチュールのはずなのに 48

「まだ、そのポーズしているんだ?」
 しほりさまのお見送りから戻られたリンコさまが、ニヤニヤなお顔で私をじーっと見つめてきました。

「こういう見慣れた場所で、マッパの知り合いとふたりきり、って、なんかヤバイ感じ。無駄に照れちゃう」
 そんなお言葉とは裏腹に、リンコさまの舐めるような視線を全身に感じます。

 とくに下半身。
 私の半開きパイパンマゾマンコ。
 リンコさまの視線は、私の顔と上半身をたゆたっては、必ずそこに舞い戻っていました。

「恥ずかしい、よね?」
「・・・はい」
「だけど、その恥ずかしさが、いいんでしょ?」
「・・・はい」
「ふーん。マゾかあ。あの純情そうだったナオっちがねぇ」
 リンコさま、愉しくってたまらない、っていうお顔。

「そのポーズは、勝手にやめちゃいけないんだ?」
「・・・はい。次に何かご命令が、下されるまでは」
「ふーん。ここにはアタシしかいないんだから、次にナオっちが命令をきくのはアタシ、っていうことになるわよね?」
「・・・はい。そうです」

「それなら、もうしばらくそのポーズでいて。あ、違うか。命令だもんね?そのポーズでいなさい、だな」
「はい・・・」
 リンコさまをすがるように見つめながらお答えすると、とても嬉しそうにニッと微笑まれました。

 全裸で立ち尽くす私をしげしげとご覧になりながら、リンコさまが私の周りをゆっくりと一周されました。

 胸元に大きなリボンをあしらったシフォンドレープのベアトップドレス。
 こんな感想は大変失礼なのですが、普段のリンコさまの服装からは想像出来ないほどフェミニンなそのお姿は、意外なことに、とてもお似合いでした。
 パステルパープルがフワフワ揺れる女性的なシルエットの中で、剥き出しの華奢な両肩と端正なネコさん顔にショートヘアが、アンドロジナスな妖しさを醸し出していました。

「こんなふうにアタシに視られているだけでも、感じちゃってる?」
「・・・はい」
「わかってて聞いたんだ。だって、さっきからナオっちのソコ、よだれタラタラだもん」
 
 私の下半身を指さすリンコさま。
 唇が少しだけ開いた無毛のマゾマンコからは、ときどき思い出したようにツツーっと、はしたないおツユが内腿を、かかとのほうへと滑り落ちていました。

「チーフと初めて会ったとき、インナーの試着しながら、フィッティングルームでイッちゃったんだって?」
「あ、えっと・・・はい」

 お姉さまってば、そんなことまで、みなさまにお教しえされちゃったんだ。
 あ、違うか。
 お姉さまが綾音さまにお伝えして、綾音さまからみなさまへ、かな。

「お店、営業中だったんでしょ?」
「はい・・・」
「他にお客さん、いなかったの?」
「えっと、数人いらっしゃったかもしれません・・・ずっと中にいましたから、確かなことは・・・」
「中って言っても、仕切りはカーテン一枚でしょ?大胆ねえ。声は我慢してたんだ?」
「・・・はい」

 興味津々なご様子のリンコさまから、矢継ぎ早なご質問。
 ランジェリーショップのあの日を、鮮やかに思い出しました。
 あのときも狭い試着室の中で、同じポーズになって、お姉さまにされるがまま、だったっけ。

「こないだのアイドル衣装の試着テストのときも、ナオっち、なんだかずいぶんエロっぽかったから、ひょっとしたら、とは思ったけれど、ここまでだったとはねえ」
 感心されているような呆れられているような、ビミョーなまなざしで私を見つめるリンコさま。

「まあ、外面は清純そうなお嬢様タイプの女子の頭の中が実は・・・っていうシチュは、エロ系創作物の定番、腐るほどありがちなんだけれどさ」
「実際こうして目の当たりにしちゃうと戸惑っちゃう。今、ナオっちはアタシの命令、なんでもきいちゃうつもりなんでしょ?」
「・・・はい。そ、そいうことに・・・なります」
 リンコさまが少し困ったような、だけどとても嬉しそうに微笑まれ、私の真正面に立たれました。

「ナオっちは、人様から辱められたいタイプのマゾなんだって?」
「・・・はい」
「みんなの中で、ひとりだけ裸だったり、恥ずかしい服装をさせられたり。そういうのでコーフンしちゃうんだ?」
「はい・・・」

「だったら、今日のイベントなんて、ナオっちの好みにドンピシャのシチュじゃん。マゾっ子としては、夢のような体験になるんじゃない?」
「あ、でも、そう言えば、どんなアイテムなのかは、知らないんだっけ?」

「さっきパンフレットだけは見せていただきました。午前中にモデルのお話をお願いされたときに」
「そりゃそうだよね。どんなの着せられるかわからないまま、引き受ける訳ないか」
 愉快そうに笑うリンコさま。

「見て、どう思った?」
「ただただ、すごいな、って」
「でしょ?テーマがエロティック・アンド・エクスポーズだもの。エクスポーズって、晒す、とか、陳列、露出、っていう意味ね」

「普段、公序良俗的に公衆で見せてはいけない部分を、いかに見せつけるか、っていうコンセプト。まさにナオっちのために作られたようなもんだよね」
 そこまでおっしゃって、ハッと何か思いつかれたような表情になったリンコさま。

「ひょっとしてチーフ、イベントのテーマをナオっちの影響で決めていたりして。ナオっちがチーフと出会ったのって、いつって言ってたっけ?」
 身を乗り出すようにリンコさまが尋ねてきました。

「横浜のランジェリーショップにお邪魔したのは今年の春、3月の始めです」
「なんだ。それじゃあ違うな。テーマが決まって準備を始めたの、1月の終わり頃だったから」
 せっかくの面白そうな思いつきが、あっという間に萎んでしまい、リンコさまがつまらなそうなお顔でおっしゃいました。

「でも、ああいう普段にはとても着られそうもないお洋服を買ってくださるお客様って、いらっしゃるのですか?」
 会話をつづけなくちゃ、と思ったので、パンフレットを見てからずっと思っていた疑問をぶつけてみました。

「それは至極真っ当な疑問よね。でもね・・・」
 リンコさまが、待ってました、という感じの得意げなお顔になられ、説明してくださいました。

「広い世間には、ああいう非日常的なアイテムに対する需要が、意外と大きくあるものなの。ある種の場所や人、ギョーカイでね」
「今日来るお客様は、そういう、ある意味、浮世離れしたところとパイプの繋がっている人たちばかりだから、余裕があったら、お客様の顔をいろいろ観察すると、面白いことがわかるかもしれないよ」

 イタズラっぽくおっしゃるリンコさま。
 ショーモデル初体験の私にお客様がたを観察するなんて、そんな余裕があるとは到底思えませんけれど。

「つまり、世間には意外と、ナオっちみたいな人種も少なからず生息している、っていうことよ。もっともアタシも、直で知り合いになるなんて、初めてだけどさ」
「そういう人たちが、着てみたいな、または、パートナーに着せてみたいな、って思うようなアイテムを、アタシたちは、一生懸命考えて、悩んで、作って、今日めでたく発表する訳」

「だから、アタシらには、そういう性癖の人たちに対して、一切の偏見はないの。もちろんナオっちにもね」
「むしろ、そういう人が仲間になって、企画とかデザインとか断然やりやすくなった、っていう感じ」
「今回のイベント、絵理奈さんよりナオっちのほうが、だんぜんお似合いだと思う。エロさのオーラが一桁違うもん。きっと大成功するよ」

 褒められているのか、面白がっているだけなのか。
 だけど、リンコさまの人懐っこい笑顔を見ていたら、モデルのお役目がんばらなくちゃ、と、今更ながら思いました。

「ついでに言うと、ナオっちがもし気に入ったのがあったら、イベント後は、ナオっちがプライベートやオフィスで着てもいいんじゃない?オートクチュールのサンプルなんだし」
「オフィスで着るのって、いいな。ナオっちがそういう格好で働いていてくれたら、アタシ、すんごくヤル気出ちゃう」

「オフィスは法人で、プライベートとは言えないけれど、万人に開かれたお店でもないんだから、そこでどんな服装で勤務してようが、そこの社員全員に文句がなけりゃ、無問題だよね?」
「アタシらはもう、ナオっちのそういうセーヘキを知っちゃったし、身に着けるのは自社ブランド製品だもの、ブランドショップの店員さんと同じよ。昔で言うところの、ハウスマヌカンだっけ?」

 ご自分の思いつきに酔ってらっしゃるのか、何の屈託なく、ものすごいことをおっしゃるリンコさま。

 そのご提案をお聞きして、少し前から頭をよぎり始めた、イベント後のオフィスでの自分の立場、という妄想が、みるみるうちに広がりました。

 さっき見たパンフレットで、うわすごい、と思ったアイテムを身に着けた自分を想像してみます。
 その姿の自分を勤務中のオフィスに置き、社員のみなさまがいらっしゃる中で、たとえば、お電話を受けたり、打ち合わせをしたり、お客様にお茶をお出ししたり・・・
 それは、考えただけでも、ものすごく恥ずかしいことでした。
 たちまちキュンキュンと粘膜が蠢き、全身がヒクヒクひくつきました。

「おっと、あんまりおしゃべりしていると、どんどん時間がなくなっちゃう。ナオっち、大丈夫?」
「へっ!?」
 話しかけられてパッと妄想が破られ、マヌケな声を出してしまう私。

「ぜんぜん大丈夫じゃないみたいね。どんどん溢れてる」
 リンコさまが私の足元を指さしました。
 内腿を滑り落ちたはしたない液体が、右足のかかとのところにこんもりと、粘っこそうに白濁した水溜りを作っていました。

「一度発散しちゃったほうがよさそう。こんなんじゃアイテムがみんなベトベトになっちゃうもの」
 ちょっとイジワルそうなニヤニヤ笑いを浮かべたリンコさまが、私に一歩近づきました。

「していいよ。そうね、20分あげる。2時45分までね。思う存分しちゃいなさい」
「・・・えっと・・・???」
「だから、ウズウズしてるんでしょ?自分で慰めなさい、っていうこと。クリちゃん、そんなに腫らしちゃって」

「あの、私がひとりでする、っていうことですか?」
「そう。アタシも出来ることなら、ものすごく手伝いたいんだけれど、このドレス、シルクだから水シミになりやすいんだよね」

「そういうおツユとか飛び散っちゃうと、これから人前に出るのに、ちょっとヤバそうだからさ。ナオっちのからだは、さっきからずっと、すぐにでも弄ってみたいんだけど、今日のところは我慢しとく」
 リンコさまが本当に残念そうにおっしゃいました。

「ちなみにチーフからは、キスとアヌス虐め以外なら、どこをどうしてもかまわない、っていう許可も、もらってるんだけどね。本当残念」
 たぶん、みなさまが会場へ行かれる前、おふたりでヒソヒソ話をされていたときにでしょう。

「ナオっち、アヌスも開発済みなんだ?チーフにしてもらったの?」
「は、はい・・・」
「ふーん。チーフもあんな顔して、やることはやってるんだね。あ、でもそっか。今日のアイテムにはプラグ挿すのも、あったんだっけ」

「でも、キスにNG出すっていうのは、恋人同士らしいよね。ナオっち、愛されてるじゃん」
 リンコさまのひやかしに、たちまちすっごくシアワセな気持ちになりました。

「ま、とにかく今日は、ナオっちのオナニー鑑賞で我慢しておくことにする。この先、また何度もチャンスありそうだし」
 明るい笑顔で、ゾクゾクしちゃうようなことをサラッとおっしゃるリンコさま。
 マゾの服従ポーズのまま立っている私の真正面、2メートルくらい離れたところに椅子を移動し、そこにお座りになりました。

「ほら、早く始めないと時間なくなっちゃうよ?ポーズはもう解いていいから」
「は、はい・・・」
「ここからナオっちのアヘ顔、じっくり視ててあげる。あ、でも今日は、スーパーモデル、夕張小夜ちゃんのアヘ顔だったか」

 目の前のリンコさまを見つめながら、ゆっくり両手を下ろしました。
 恥ずかしさより戸惑いが勝っている感じで、どうやって始めたものか、と考えてしまいます。

「そっか。命令されないと、その気になれないのかな?じゃあ、命令してあげよう」
 リンコさまが立ち上がられ、近づいてきました。

「まず、その1。立ったまますること。どんなに気持ち良くてもひざまずいちゃダメ。膝小僧赤くなってるモデルなんて、超カッコワルイでしょ?」
「しゃがむのはオーケーだけど、お尻を床についちゃダメ。理由は膝と同じ」

 間近に見るリンコさまの瞳が、エス色に染まりつつあるように感じました。
「返事は?」
「あ、はいっ」

「その2。なるべくたくさんイクこと。イッた後も手を休めず、アタシがいいと言うまでイキつづけるの。どんどんどんどん。エロい気持ちがすっからかんになるまで」
「はい」

「その3。イキそうなときは、必ずアタシに許可を取ること。イキそうです、イッていいですか?って。まあ、こういうプレイのお約束だけれど」
「アタシがいいって言ったらイッて、ダメっていったら許可するまで我慢ね」
「はい」

「その4。なるべく肌を虐めないように。全身よ。これから人前に出て裸を晒すんだから、おっぱい揉み過ぎて赤く腫らしたりしないように」
「必然的に、弄れるのはオマンコの中と乳首くらいになっちゃうけれど、今のナオっちなら充分よね?」
「は、はい。大丈夫、です」

 リンコさまのお口から、さりげなくオマンコなんていうお下品なお言葉が出てドキン。
 いつになく冷たく響くリンコさまからのご命令のお声を聞いているうちに、全身がどんどん疼いてきて、いてもたってもいられなくなってきました。

「そんなとこかな。あ、あとそれからね・・・」
 リンコさまが一度テーブルのほうへ向かわれ、ご自分のバッグをちょっとガサゴソされてから戻られました。

「さっき、しほりんが別れ際、こんなもの渡してくれたんだ」
 右手に持っていたある物を見せてくださいました。
「これで、ナオコの尖った乳首や腫れ上がったクリットを挟んだら、面白そうじゃない?なんて言ってた」

 その、ある物は、ビューラーでした。
 まつげを挟んでクルンとさせる、別名アイラッシュカーラー。
 ハサミみたいな持ち手が付いて、ハサミみたいにチョキチョキすると、まつげを挟むシリコン部分が開いたり閉じたりする仕組み。
 実は私も、自虐オナニーで使ったことのある、お気に入りのお道具。

 見た瞬間にその感触を思い出しゾクゾクしていたとき、ほぼ同時に実際に、左乳首を同じ快感がつらぬきました。
 リンコさまが素早く、私の左の乳首をビューラーに挟み、力任せにギュッと挟み込んだようでした。

「はぁっぅぅぅーーっんぅんぅんぅうっ!」

 カチコチに固くなった乳首を思い切り絞り上げられ、激痛とともに得も言われぬ快感が脳天を突き抜け、自分の耳にもおぞましいほどの、はしたない歓喜の淫声が喉奥からほとばしり出ました


オートクチュールのはずなのに 49


2016年4月24日

オートクチュールのはずなのに 47

 即席のメイクルームとした場所は、リビングルーム中央にあるダイニングテーブルのすぐ脇。
 リビングへ入った途端、真っ先に視界へと飛び込んでくる場所で、私はご丁寧にもリビングの入口のほうに向いて立っていました。

 先頭を歩いていらした早乙女部長、いえ、綾音さまと目が合うと同時に、ガヤガヤがピタリと止まり、お部屋の中が静まり返りました。
 綾音さまだけが笑みを浮かべられ、他の4名の方々は、立ち止まったままギョッとしたようなお顔で私を見ていました。
 咄嗟に胸と股間を隠そうと、両手がピクッと動いたのですが、訪れた沈黙の重さにそのまま固まってしまい、結局、元の立ち尽くし姿勢のままでいました。

「すごくいいじゃない?しほりさん」
 綾音さまがツカツカと近づきながら、私の横のしほりさまにお声をかけられました。
「ええ。わたし自身も納得のいく出来栄えです」
 しほりさまが満足そうにおっしゃって、私を視ました。

 綾音さまから数歩遅れで、恐る恐るという感じでこちらへとジリジリ近づいてこられる他のみなさま。
「ナオっち・・・だよね?」
 私の顔を穴が空くほど見つめたまま、リンコさまが尋ねてきました。
「あっ、しほりん、オハヨー」
 取ってつけたようにしほりさまに小さく手を振るリンコさま。

「違うわよ。わたくしが東奔西走してようやくみつけてきた、代役のモデルさんよ」
 綾音さまがご冗談ぽくおっしゃる横で、コクンと首を縦に振る私。

「やっぱりナオちゃんなんだ。すごい、見違えちゃったじゃない」
 間宮部長、いえ、雅さまのお顔がパッとほころび、私に駆け寄ってきました。
 
 いつものように抱きつこうとされたのでしょうが、私が全裸なことに今更ながらお気づきになったようで、50センチ手前くらいで立ち止まると、嬉しそうなお顔であらためて、私の全身を吟味するようにしげしげと見つめてきました。
 ほのかさまとミサさまはまだ、信じられない、という微妙なお顔つき。

 不躾な視線、好奇の視線、気まずそうな視線・・・
 それらをいっぺんに集中放火され、私、どうにかなっちゃいそう。
 それも昨日までは普通に、同じオフィスでお仕事をご一緒してきたかたちから。

「みんな揃ったわね。早乙女部長から聞いたと思うけれど、そういうことになっちゃったの。今日は破れかぶれでいいから、イベントが成功するように、一丸となってがんばりましょう」
 いつの間にか背後にいらしたお姉さまが、私の頭越しにみなさまにおっしゃいました。
 それから私の正面に来られ、顔をじーっと見つめられました。

「いい感じじゃない、しほりさん。これなら直子を知っている人が見ても、絶対、直子とは思わないはずよ」
 お姉さまのご登場で、ようやく場が和み始めたようでした。

「そうですよね。アタシ、部屋に入った途端、なんだ、絵理奈さん来ているんじゃない、って思いましたもの。ウイッグ変えたんだ、って」
 リンコさまのお言葉に雅さまも大きくうなずかれました。
「うんうん。ワタシは絵理奈さんをよく知らないから、単純に、ずいぶんセクシーなモデルさんがいるな、って思った」

 さすがに晴れのイベントの日。
 みなさま、とてもおめかしされていました。

 シックな黒のタイトスーツでビシっとキメたお姉さま。
 光沢のあるワインレッドのイブニングドレスを艶やかに着こなした綾音さま。
 ストライプのパンツスーツがマスキュリンかつエレガントな雅さま。
 ミルキーベージュのアフタヌーンドレスで清楚に佇むほのかさま。
 いつもの服装からは想像できないベアトップのパーティドレスで超フェミニンなリンコさま。
 本番でパソコンや機材をを駆使しなくてはならないミサさまは、動きやすそうなミリタリーっぽいオシャレな制服風、きっと何かのアニメのコスプレなのでしょう。

 しほりさまも含めて、そんなオシャレに着飾ったレディたちに取り囲まれた私だけ、一糸も纏わぬ丸裸。
 顔だけは綺麗に飾っていただいたとは言え、女性として普段みなさまに隠しておかなければいけない、性的な箇所はすべて剥き出しのまま立ち尽くす、みじめな私。
 今日何度目かわからない、ほろ苦くも甘酸っぱい羞じらいと屈辱に、全身が熱く火照りました。

「ねえ、ナオっちの顔って、なんか、ゴーゴー、って感じがしない?」
 リンコさまが誰に、というわけでもなさそうな感じでポツンとおっしゃいました。
「わかる。キルビルでしょう?」
 逸早く応えられたのは、雅さまでした。
「ワタシ、あの女優さん、大好きなんだ」

「ハーイ!」
 突然ミサさまに向けて、お顔の横で小さく手を振るリンコさま。
「ゴーゴーダネ」
 すかさずミサさまが、外国人さんぽいカタコトな発音で受けられました。
「ビンゴ。そっちはブラックマンバ」

 そこまでつづけたリンコさまが、ミサさまとお顔を合わせてクスクス。
 雅さまもほのかさまもしほりさまもお姉さまも、知ってる、というふうにうなずく中、ただおひとり、綾音さまだけが怪訝そうなお顔。

「なにそれ?」
 そのお顔のまま綾音さまが、傍のリンコさまに尋ねられました。
「キル・ビルっていう、そこそこ話題になったヘンテコな映画がありまして、それに出てくるゴーゴー夕張っていう女子高校生の殺し屋が、今の森下さんの顔によく似ているんです」

「へー、そうなの?わたくしは、こんなヘアスタイルを見ると真っ先に、山口小夜子さんを思い出してしまうけれど」
「ああ。パリコレに日本人モデルで初めて出演されたっていう、伝説のモデルさんですね」
 一同が深く頷かれました。

「なるほどね。それじゃあ直子のモデルとしての芸名は、夕張小夜、にしましょう。ちょうどさっきひとりで、どんな芸名にしようか考えていたところだったの」
 お姉さまが私の顔を見ながらおっしゃいました。

「ゆうばりさよ、なんだかカッコいいじゃない?」
「ええ。この容姿にぴったりな、聞いた途端、なるほど、って思う、らしい名前ね。いいと思うわ」
 ひとしきり、いいねいいね、のざわめきが立ちました。

 私の顔についての議論が一段落してモデル名が決まる頃には、みなさまの視線は当然の事ながら、私の顔以外に散らばり始めていました。
 とくに、胸のふくらみの先端と下腹部に、興味津々な好奇の視線が頻繁に突き刺さってきます。
 誰も何もおっしゃらず、しばし決まりの悪い沈黙がつづきました。

「さあ、本番前の最終確認をするから、みんなホワイトボードの前に集まって」
 沈黙のあいだ、ずっとニヤニヤとみなさまのご様子を眺めていたお姉さまが、ふと時計を見てあわてたようにパンッとひとつ拍手をし、少し離れたホワイトボードの方へとみなさまを誘導されました。
 ホワイトボードには、今日のイベントの段取りや会場の見取り図が書かれていて、結婚式の二次会パーティみたいに着飾った華やかなみなさまが、ぞろぞろそちらへと移動していきました。

「さ、わたしたちも仕上げてしまいましょう。座って」
 しほりさまに促されて座ると右手を取られ、マニキュアが始まりました。

 ホワイトボードの前では、お姉さまと綾音さまを中心にキビキビと、最終打ち合わせをされています。
 時折お姉さまがこちらを指さし、みなさまが一斉にこちらを振り向きます。
 みなさまから見ると横向きに座っている私は、相変わらず尖りきっている乳首が恥ずかしくてたまりません。

 マニキュアが終わり、つづいてペディキュアのために両脚を向かい側のソファーへ投げ出すように指示されたとき、打ち合わせが終わったようでした。
 みなさまが再びこちらへ集まってこられ、私は座ったまま、右足を向かいのソファーの上に、股を30度くらい開いた左足をしほりさまの手に取られた格好で、みなさまを迎えました。

 立っているみなさまから、私の30度くらいに開かれた両腿の無毛な付け根を、ちょうど真下に見下ろされるような姿勢でした。
 当然のことながら、みなさまからの視線はソコに集中していました。

 ちょっと離れたところでは、お姉さまとリンコさまがおふたりで、私のほうをチラチラ見ながら何かヒソヒソとお話しされていました。
 その他のみなさまは私としほりさまを取り囲み、ペディキュアされつつある私の足先を含む下半身全体を、じっと無言で見守っていました。

 おそらくみなさまも、裸の私に内心ではドギマギされていたのだと思います。
 おちゃらけて冷やかしたり、からかうワケにもいかないし、かといって、会社のためにごめんね、とか、がんばって、ていうのもなにか違うし。
 かける言葉がみつからないから、黙っている。
 そんな、何て言うか、お気遣いをされているような重苦しい雰囲気でした。

 少しして、お話しが終わったらしいお姉さまとリンコさまが輪に加わりました。

「直子、じゃなくて夕張小夜さんは、開演時間、つまり3時になったらここを出て会場に向かって」
 戻ってこられたお姉さまがみなさまにもお聞かせするみたいに、少し大きめなお声でおっしゃいました。
 ようやく沈黙が破られ、私はホッ。

「えっ!?そんな時間で大丈夫なのですか?」
 再び場が沈み込むのが怖かったのと、実際、段取りが不安になったので、間髪を入れずにお尋ねしました。

「もうそろそろお客様が集まって来る頃だからね。開場して、お客様を会場に収容し終わってからのほうがいいと思って」
「入場待ちのお客様がゾロゾロいるところにノコノコ出て行って、せっかくのシークレットモデルが開演前に顔バレしちゃったらつまらないじゃない」

「大丈夫よ。最初はあたしの挨拶だし、早乙女部長の挨拶もあるし。それに、しょっぱなのアイテムは着付けに手こずらないシンプルなやつだから」
「直子も、楽屋入ってスグ本番、無駄にドキドキする時間が無いほうが気がラクでしょう?3時20分見当でお願いね」

「という訳で、あたしたちは先に会場に入っているから。夕張さんの付き人はリンコね。もともと絵理奈さんだったとしてもリンコがする役目だったから、問題無いわよね?」
「はい。もちろんです」
 リンコさまが、なぜだかずいぶん嬉しそうにうなずかれました。

「夕張さんは、あとはリンコの指示に全面的に従って。しほりさんは頃合いを見計らって楽屋でスタンバってください。それじゃあみんな、無事終演までがんばりましょう」
「おーーっ」
 お姉さまの後ろをみなさまがゾロゾロとついて、玄関へと向かわれました。

 私の傍を離れるとき、ほのかさまが私の右耳に唇を寄せてきました。
「なんだか大変なことになっちゃったけれど、がんばってね。今日の直子さん、とっても素敵よ」
 ヒソヒソ声で早口におっしゃってからニコッと微笑まれ、あわててみなさまの後を追っていかれました。
 雅さまとミサさまは笑顔で振り向きつつ、大げさに手を振ってくださいました。

 玄関ドアが閉じる音がして、再び静寂が訪れました。
「ふぅー。これにてすべて終了。乾くまであと5分くらい、動かず、触らずでお願いね」
 私の右足をソファーに戻され、しほりさまが立ち上がられました。
 私の両手両足の爪はすべて、艶やかなローズピンクに染まっていました。

「わたしも大急ぎで片付けて、楽屋でまたお店を広げなくちゃだわ」
 しほりさまがお道具のお片付けを始められました。
「アタシも手伝うよ」
 リンコさまが姿見をどかしたり、散らばったティッシュを拾い始めます。
「ありがと」
 リンコさまに向けてニコッと微笑むしほりさま。

「しっかし驚いたよねえ。ナオっちがこんなことになっちゃうなんて」
 テキパキとお片づけしながらも、おしゃべりは止まらないリンコさま。
 興味津々なご様子が、全身からほとばしっています。

「わたしだって驚いたわよ。いきなり全裸の女の子に出迎えられて、社長さんからは、この子マゾだから、って紹介されたのよ?」
「そうなんだ。それはびっくりするよねー」
 おふたりでキャハハと屈託なく笑い合うお姿は、どうやらとっくに仲良しさんのようでした。

「ナオっちがマゾっちていうのは薄々感じていたけれど、チーフとSMスールの関係だったなんて、アタシには晴天の霹靂だったよー」
「ロープもローソクも楽しんでいらっしゃるご関係だそうよ」
 そのへんはとっくに取材済みよ、とでもおっしゃりたげな、しほりさまのお得意げなお顔。

「さっきもナオコ、じゃなくて夕張さんにボディローション塗っていたら、どんどん感じちゃって苦しそうだったの。だから、イカセてあげようか?って聞いたら、とても嬉しそうだったわ」
「うわー。しほりん大胆。って言うか、しほりんまで、ナオコって、呼び捨てなんだ?」
「うん。社長さんがそう呼べって。それにナオコも自分から、わたしに絶対服従するって宣言してくれたのよ」
「うわー。なんだかエロ小説の世界だね。でもアタシも、さっきチーフに言われたんだ。ナオっちを好きにオモチャにしていい、って。スタッフ全員に絶対服従って言い聞かせてある、って」

 そうおっしゃって、私の顔をイタズラっぽく覗き込んでくるリンコさま。
 ペディキュアが乾くまで動くなというご命令ですから、私は同じ姿勢のまま、気弱に微笑み返すくらいしか出来ません。

「それに、もしナオっちがサカっているようだったらイカせちゃってくれ、って頼まれちゃった。裸を視られているだけで感じちゃうような子だから、本番でヘマをしないように、って」
「それが賢明よね。今だって、ほら」

 しほりさまが呆れたようなお顔で、私の股間を指さされました。
 しほりさまは、気心の知れたリンコさまとおふたりきりになってリラックスされているのか、私に対する口調や表情、態度にエス度が露骨に増していました。

 その指さされた股間は、自分で形容するのがためらわれるくらい、はしたない状態でした。
 しほりさまとリンコさまの、私の性癖に関する情け容赦無いあけすけな会話をお聞きしていて、羞恥と被虐が股間に蓄積された結果でした。
 脚を30度くらいにしか開いていないのに、ラビアがパックリ開ききり、溢れ出た淫液が合皮のソファーにこんもり水溜りを作っていました。

「うわー。これってつまり、感じちゃっているんだよね?ナオっち、インラーン」
「わたしは仕事だから、もう行かなくちゃだけれど、リンちゃんは役得ね、いいなあ」
「ガンガンイカせちゃっても大丈夫よ。メイクもボディも、イベント中保つように強力なウォータープルーフにしたから、ちょっとやそっとじゃ崩れないはず」

 臨時のメイクルームはすっかり片付き、テーブルの上にはしほりさまの大きなバッグだけ。
「ナオコももう動いていいわよ。ただ、まだあんまり塗った所をさわらないこと」
 お言葉に促され、投げ出していた両脚をそっと床に下ろしました。
 潤んだ股間を閉じるとひんやり。

「おおー。しほりん女王様、っていう感じじゃん」
 リンコさまのからかうお声に、ニッと微笑むしほりさま。
「もっと面白いもの、見せてあげる。ナオコ、立ちなさい」
 すっかりエスモードとなった冷たいお声のご命令に、私はゾクゾクしながら立ち上がりました。

「わたしの真正面に」
 しほりさまが照明の真下の明るい場所に移動され、私もついていきました。
 もちろんリンコさまも。

「いい?よく見ていてね」
 斜め後ろのリンコさまを一度振り向いて念を押し、再び私と向き合います。
 あれだろうな、と思ったら、やっぱりあれでした。

 正面に立たれたしほりさまが私を無表情で見つめ、一瞬間を置いて、少し上を向くような仕草をされました。
 お綺麗に尖った顎が私に向けられます。
 同時に私は、下ろしていた両手をまず、降参、みたいな形に肩のところまで上げ、それから頭の後ろ側に回して重ねました。
 
「なにそれ?なにそれ?なんかヤバイ。ゾクッとした」
 リンコさまが身を乗り出してこられ、私としほりさまを交互に見比べています。

「マゾの服従ポーズ、っていうみたいよ。恥ずかしい箇所を無防備にして、服従の意志を表わしているんですって」
「もともとは社長さんとナオコのあいだだけの取り決めだったらしいけれど、なぜだか今日、わたしも使えるようになっちゃった」
 しほりさまが可笑しそうにおっしゃいました。

「顎をしゃくるだけでいいの。もちろんリンちゃんも使えるはずよ。そうよね?ナオコ?」
「・・・はい、もちろんです・・・よろしくお願いいたします、リンコさま」

 私はこんなふうにして、社員のみなさまに服従を誓い、全員の共有マゾドレイになっていくんだ・・・
 そんな想いに全身を震わせながら、すがるようにリンコさま見つめました。
 すっごく嬉しそうなお顔のリンコさま。

「ああん、もうこんな時間。早く行って準備しなくちゃだわ」
 しほりさまが時計をご覧になって、残念そうにショルダーバッグに手をかけました。
「開演まであと一時間ちょっと。わたしにはギリギリだけれど、リンちゃんにはたっぷりよね?羨ましい」
 しほりさまが右肩にバッグを担ぎ終え、私を正面から見つめたままつづけました。

「あたしの代わりにナオコをたっぷり可愛がってあげて。本番でサカッちゃわないように」
「うん。任せといて。あ、カートは玄関までアタシが引いていってあげるよ」
 弾んだお声のリンコさまが、しほりさまのカートに手をかけました。

「それじゃあ、また後ほどね、ドマゾの夕張小夜さん。それと、さっきの約束、忘れないでよ」
 背中を向けたしほりさまをリンコさまが追いかけました。

 私はマゾの服従ポーズのまま、おふたりのお背中を眺めていました。
 この後ふたりきりになったら、リンコさまは私を、どう扱われるおつもりなのだろう?
 人懐っこくて気さくで、いつも明るいリンコさまをよく知っているだけに、お姉さまや綾音さま、そしてしほりさまのように、エスに傾いたリンコさま、というのが、ちょっと想像しにくい感じでした。
 心の中で期待と不安が半分ずつ、シーソーのようにギッタンバッコンしていました。


オートクチュールのはずなのに 48

2016年4月17日

オートクチュールのはずなのに 46

「ふーん。マゾね。裸を視られるだけで感じちゃうんだ?」
 しほりさまが、私の背後に立たれ、正面の鏡越しに視線を合わせてきました。

「あの、えっと・・・」
「でも、相手が男ならともかく、女同士じゃない?そんなのでいちいち感じていたら、お友達と温泉旅行にも行けないんじゃない?」
 私の頭からウイッグを外しながら、しほりさまがからかうようにおっしゃいました。

「だけど興奮しているのは、本当みたいよね。さっきからあなたの乳首、見ていて痛々しいくらい起き上がっちゃってる」
「そういう反応って、なんだか新鮮だわ。わたしが呼ばれるイメージビデオとかの現場って、羞じらいとか、ほとんどないから」

「場数を踏んだグラビアアイドルなんて、カメラが向いているときこそ、えっちな衣装着せられてハズカシー、なんて顔しているけれど、撮影の合間は、平気でスッポンポンで食事とかケータイ弄ったりしているもの」
「撮影スタッフや裏方なんて、それが男でも女でも、人とも思っていないのじゃないかしら?ビジネスライクと言えば、そうなのだけれど」

 しほりさまが私の髪からウイッグ用のネットを外してくださり、半乾きの髪をブラッシングしつつドライヤーをかけてくださっています。

「絵理奈さまも、そうなのですか?」
 ふと気になって、お尋ねしました。

「彼女も堂々としたものよ。一昨日のゲネプロでも、ずっと裸かガウン一枚羽織っただけで、キワドイ衣装を取っ換え引っ換え、淡々とこなしていたわ」
「まあ、自分のからだに自信があって、それが売り物だっていう自覚もあるからでしょうね。そういう現場にも慣れているし」

「わ、私も、そんなふうにもっと、何て言うか、堂々としなくては、いけないでしょうか?」
 絵理奈さまのお話を聞いて、不安になってきました。
 今だってこんなに恥ずかしくてドキドキしている私に、沢山の人たちを前にしたイベントのモデルなんて務まるのでしょうか・・・

「あなた?あなたには無理なんじゃない?だって、視られるだけで感じちゃうマゾなのでしょう?」
「今だって、鏡の中でわたしと目が合うたびにビクビク感じているみたいじゃない?肌もずいぶんと火照っているみたいだし」

 おしゃべりされながらも、しほりさまの両手はテキパキ動き、乾いた髪を再び頭上にまとめられ、ネットをかぶせられました。
「あなたは、そういう人なのだから、そのままでいいんじゃない?」

「でもでも、モデルするときは、不機嫌なくらいのポーカーフェイスにして、決して表情を出してはダメ、って言われているんです。お姉さまから」
「ああ。それは正論だわね。ショーの最中ずっとモデルがそんなエロい顔してランウェイを行ったり来たりしていたら、見ているお客様のほうが困っちゃうもの」

「安心して。わたしが精一杯、生意気そうな顔に仕立ててあげるから。そんなエロ顔さえ怒っているみたいに見えるくらいにさ。それじゃあ、顔に移るわよ」
 しほりさまが愉快そうにおっしゃり、私の顔にファンデーションを塗り始めました。

 しほりさまの少しひんやりとしたしなやかな指が、私の顔を満遍なく撫ぜ回してきます。
 目尻が引っ張られ、鼻先を押し上げられ、唇をなぞられ、耳の穴を穿られ。
 なんだか、やさしく顔面嬲りをされている気分。

「あなたがさっきしたポーズ、社長さんが顎で指図したら取ったポーズって、よくアメリカのドラマとかで、ポリスがハンザイシャにやらせるポーズよね?抵抗するな、っていう感じで」
 しほりさまが私の顔を撫ぜ回しながら、尋ねてきました。

「はい。そう言われてみれば、そうですね・・・」
「ふたりのあいだで、そういう決まりがあるんだ?ああしたら、あのポーズになる、っていう」

「はい・・・あ、あれは、マゾの服従ポーズ、って呼んでいて、何もかも露わにして言いなりになりますから、このからだをご自由にされてください、っていう服従の気持ちを表わしています」
 お答えするために自分で言葉に置き換えながら、その被虐な内容にキュンとなりました。

「ふーん。マゾの服従ポーズかあ。マゾって言ったら、痛いのとか、縛られたりも好きなの?」
「はい・・・」
「縛られて、鞭とか、ローソクとか?」
「・・・はい」
「社長さんと、そういうことして遊んでいるんだ?」
「はい・・・たまにですけれど」
「ふーん」

 しほりさまの両手が私の顔から離れ、あらためて私の顔を鏡越しに、じーっと見つめてきました。

「決めた。やっぱりわたしもあなたのこと、呼び捨てることにするわ。いいわよね?」
「は、はい・・・もちろんです」
「そのほうがあなたも嬉しいみたいだし。本当に根っからのマゾなのね、ナオコって」
「は、はい。ありがとうございます」
 しほりさまから初めて、ナオコ、って呼び捨てにされて、ゾクゾクッとしちゃいました。

 しほりさまの手で、テーブルの上のさまざまなお道具が取っ換え引っ換え選ばれ、本格的なメイクアップが始まりました。
 至近距離にお顔を近づけられ、真剣な眼差しが私の顔面を刺してきます。
 私はずっとされるがまま、鏡の中の自分を見つめていました。

 眉はいつもよりクッキリ太めに。
 マスカラをフル盛りして、更に目尻に毛足の長いつけまつげ。
 アイラインもハッキリ、目尻を上げてシャドウも濃いめ。
 ノーズシャドウにチークも強め。
 リップは濡れたようにぽってりなチェリーレッド。

「はい。こんな感じで、どう?」
 鏡の中の私は、確かに別人になっていました。
 
 連休のとき、オフィス街での露出遊び用にお姉さまがしてくださったメイクより、もっともっと生意気風。
 小生意気じゃなくて、大生意気。
 試しにウイッグをかぶせてもらったら、顔の輪郭まで変わって、本当に別人。
 そして、自分で言うのもはしたないのですが、すいぶんキリッとした美人さんに見えました。

「我ながらうまくいったと思うわ。ほら、こうしても・・・」
 唐突に、しほりさまの両手が背後から、私のおっぱいを両方鷲掴みにしてきました。

「あぁんっ!そんなぁ!」
 生おっぱいを乱暴にギュッと掴まれ、思わずいやらしい声をあげてしまいました。

「ね?悶えてるっていうより、イヤがってるみたいな顔に見えるでしょう?」
 両手をニギニギ動かして私のおっぱいを揉みしだきながら、しほりさまが嬉しそうにおっしゃいました。

 確かに、眉間にシワを寄せて半眼になって身悶える自分の顔が、いつもなら媚びるようなだらしないアヘ顔になってしまうのですが、このメイクだと不快そうにジトッと睨むような顔になっていました。

「それにしてもナオコの乳首、すごい尖りよう。コリッコリに硬くなってる」
「あっ、あっ、あっ・・・」
 指と指のあいだで乳首を挟まれ、ギュギュッと絞られると、もうダメ・・・
 強く弱くおっぱいをもてあそばれ、瞬く間に下半身がムズムズ熱くなってきました。

「会ったときからずっと気になっていたのだけれど、ナオコって、見事に綺麗なパイパンよね?ひょっとしてそれって、生まれつき?」
 私のおっぱいを虐める手は止めず、しほりさまが尋ねてきました。
 鏡に映るしほりさまの視線が、両腿をピッタリ閉じて座った私の、その逆Yの字の部分を凝視しているのがわかりました。

「あんっ、い、いえ、あの、生まれつきではないです・・うぅぅ、薄かったけれど・・・」
「処理しているんだ。でも剃った感じじゃないわよね?抜いたの?永久脱毛?」
「あんっ、あっ、あっ、はいぃ、一年くらい前から、えっ、エステサロンに何度か通って、や、やんっ、やっていただきましたぁ・・・」

「へー。本格的なのね。グラドルにだってそんな子、なかなかいないわよ?ずっと一生パイパンでいいんだ?」
「あぁ・・・は、はいぃぃ・・・」
 しほりさまがおっしゃった、一生パイパン、というお言葉に、私のマゾ性が盛大に疼きました。
 始まったときと同じように、しほりさまの両手が私のおっぱいを、唐突に開放してくださいました。

「ねえ、ちょっと脚、開いてみてよ」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
「あ、そっか。ナオコには、こういう言いかたじゃダメなんだ。こうかな?ナオコ、脚を開きなさい」
 しほりさまが、後半は学校の先生のような無表情になって、ご命令口調でおっしゃいました。

「はぁ、はいぃ・・・」
 お答えしたものの、今、脚を広げるのはすごく恥ずかしい。
 だって、今のおっぱい嬲りで私の下半身にはジンジン血液が集まり、ヌルヌルなことは明白でしたから。
 それでもご命令には逆らえません。
 揃えていた両足を左右に滑らせ、ゆっくりと両腿を開き始めました。

「もっと」
「もっともっと」
「もっともっともっと」
 しほりさまのお声に煽られて、私の両腿は180度近くまで開いていました。

「ここから見ても、中がヌレヌレなのが一目瞭然じゃない?鏡の中で粘膜がキラキラ光ってる」
「ラビアが開ききって、中がヒクヒク蠢いているわよ?いやらしい子」
「わたしに視られて、触られて、そんなに濡らしてくれちゃっていたんだ。なんだか嬉しい」
 しほりさまの恥ずかしすぎるご指摘に、私はビクンビクン震えてしまいます。

「ナオコの反応見ていると、社長さんがナオコを虐めたくなる気持ちがわかる気がする。人の嗜虐欲を絶妙にくすぐる、いちいちエロい反応なのよね。虐め甲斐があるって言うか」
 鏡に映った私の開ききったマゾマンコをじっと見つめながら、しほりさまが愉しそうにおっしゃいました。

 ふと鏡の中で目が合うと、しほりさまはニッとイタズラっぽく笑ってから、軽く顎を上に向けられました。
 それを合図に、もちろん私の両手は頭の後ろへ。
 ご満足そうなしほりさまの笑顔。

「おーけー。それじゃあ立って。今度は全身にファンデーションするから」
 しほりさまから次は、どんなご命令が下されるのか、とドキドキしていた私は肩透かし。
 でもすぐに、そのお言葉の意味に、えっ!?となりました。

「からだにも、ですか?」
「あたりまえじゃない。モデルのからだっていうのは、ショーで身に着けるアイテムを最大限に引き立てるためにあるのだから」

「とくに今回のイベントは、あえて裸を見せる方向のアイテムが多いのだから、からだも綺麗に見せるように、メイクするのはあたりまえなの」
「まあ、ナオコは、素肌も綺麗なほうではあるけれどね。でも、しておけば、汗を抑える効果もあるし。知らないでしょうけれど、舞台照明、とくにスポットライトって、浴びると、かなり暑いのよ」

 両手を後頭部に当てたまま、姿見の前で立ち上がりました。

「わたししかいないのに、そのポーズをしてくれるということは、わたしにもマゾとして絶対服従するつもり、ということよね?」
「はい。その通りです」
「うふふ。嬉しいわ。なんだかすごくいい気分。手、下ろしていいわよ」

「これからわたしがナオコのからだを隅々まで撫ぜ回すけれど、ナオコは絶対、感じてはいけない、ということにしましょう。声を出したり、顔をしかめるのもダメ」
「ショーのときの、社長さんから言われているポーカーフェースのいい練習になるでしょ?どんなに気持ちよくても我慢すること。いい?」
「・・・はい」
 ドキドキしながら、しほりさまの手の感触を待ちました。

 最初にウイッグが外され、すぐに背中にひんやりとした感触がきました。
 クリーミーな粘液が肌を滑るのがわかります。
 しほりさまの手のひらが背中を満遍なく滑っていきます。

 一度首筋まで登った手のひらは、やがて脇腹までいったん下がり、腋の下から右腕へ。
 こそばゆい感覚でやんわり愛撫され、そのもどかしい感触に思わずトロンとしちゃいそう。
 左腕も終わると今度は正面へ。
 鎖骨から胸元、そしておっぱいへと。

 うなじや脇腹、背骨の上など、私が弱いところを優しく撫ぜられるたびに、淫らな声が出そうになって、必死で耐えました。
 全身がポカポカ火照って、クネクネ身悶えたくて仕方ありませんでした。
 でも、我慢するようにとのご命令。
 鏡の中の自分の顔を睨みつけながら、一生懸命堪えました。

 だけど、おっぱいを両手でやさしく包み込まれたとき、とうとう唇が開いてしまいました。
 さっきのような、強く揉みしだくような感じではなく、ふうわりと慈しむような絶妙なタッチ。
 しほりさまの手のひらに、尖った乳首がやさしく押し潰されます。
 それがすっごく気持ち良かったんです。

「あふうぅ・・・」
 喉の奥が鳴ってしまってから、しまった、とあわてて口をつぐみました。
「こらあ。感じちゃダメだって言ったでしょ?」
 そうおっしゃるしほりさまの口調は、怒っているというより、面白がっている感じでした。

 しほりさまの両手は休むことなく下半身へ。
 私の足元にひざまずかれ、左足首からふくらはぎ、そして太腿。
 同じように右脚も太腿途中まで撫ぜてから、唐突にお尻へ。
 お尻の割れスジを抉じ開けるようにして隅々にまで、クリーミーな粘液に覆われました。

 おへそから下に塗るときは、いったんタオルで股間を拭かれました。
 溢れ出しそうな私の愛液を拭ってくださったのでしょう。
 それは、とても恥ずかしいことでした。

 しほりさまの真正面、目と鼻の先に私の股間。
 その部分に右手をあてがい、私の股間を撫でさするしほりさま。
 私は歯を食いしばって、湧き上がる快感に抵抗しました。

「こんなところでいいでしょう」
 立ち上がられたしほりさまが濡れタオルで両手を拭い、私にまたウイッグをかぶせてくださいました。

「うん。なかなかの仕上がりだわ」
 私の全身をしげしげと眺め、ご満悦な表情のしほりさま。
 鏡の中の私は、全身がツヤツヤ、テラテラと輝いていました。

「ナオコって、肌スベスベなのね。ずいぶん念入りにお手入れしているのでしょう?」
「あ、いえ、そんなには・・・」
「それって謙遜にならないわよ?本当だったら、ほとんどの女性を敵に回す発言ね」
 ご冗談ぽくおっしゃるしほりさま。

「そんなことを言うから虐めたくなるのよね。ナオコのクリトリスって、ずいぶんご立派だこと、とか」
 笑いながらおっしゃるしほりさまに、私は全身がたちまちカーーッ。

「テカテカになって爆ぜちゃいそうなくらいに飛び出ていたわよ?ずいぶん感じてくれちゃったみたいね」
「そ、それは・・・」
「今、すごくウズウズしているんじゃない?いっそのこと、ここでわたしが弄って、一度発散してあげようか?」
「あ、あの、えっと・・・」

「なんてね。期待した?でももう、あんまり時間がないから、ちゃっちゃと最後の仕上げをしなくちゃなのよね。残念ながら」
 相変わらずの笑顔で、テーブルの上の他のお道具を物色し始めました。

「でも今のは本心よ。時間があったら、ナオコが乱れるところ、この目で視てみたいと本心から思ったの」
「イベントが無事終わったら、機会作ってよ。社長さんも一緒でいいからさ。ナオコが社長さんに虐められてイッチャウとこ、すごく視てみたいのよ」
 背中を向けたまま、しほりさまがおっしゃいました。

「約束して。わたしからも社長さんにお願いしておくから」
「・・・はい・・・」
 
 そうお答えする他ありません。
 そしてきっとお姉さまも、しほりさまのご提案にご同意されると思いました。
 あたしじゃなくて、しほりさんが存分に虐めちゃっていいわよ、なんておっしゃって。

 私の性癖がみなさまに知られ、これからどんどん、私はそういう扱いの、みなさまの慰み者マゾドレイになっていく・・・
 そんな予感がありました。

「最後は、ペディキュアとマニキュアね。腰掛けていいわよ」
「あ、はい」

 私が座ろうと腰を落としかけたとき、玄関のほうで鍵を開けようとする、ガチャガチャという音がしました。
「えっ?」
 反射的に時計を見ると、午後1時を少し回ったところ。

 社員のかたたちがいらっしゃったんだ!
 開場が2時、開演は3時。
 時間的に、そろそろ集合して会場へ向かうべき頃合いとなっていました。

 とうとう社のスタッフ全員に、私の全裸姿を視られてしまう・・・
 ほのかさまに、リンコさまに、ミサさまに、そして雅部長さまに。

 今すぐどこかへ逃げ出したい、という羞恥と、遂にそのときがきてしまった、という被虐が、恥辱という塊になって全身を駆け巡り、それらは結局、ほろ苦くも甘酸っぱい、ある種の性的快感に姿を変えて全身を麻痺させ、座るのも忘れて立ち尽くしました。

 やがて、玄関のドアが開いて閉じるバタンという音につづき、女性声の華やかなガヤガヤという喧騒が、こちらへと近づいてきました。


オートクチュールのはずなのに 47