「あの、お姉さま、バスタオルか何かをお借り出来ますでしょうか?」
「いいけれど、なぜ?」
私が自分の足元に視線を落とすと、つられてお姉さまも、同じ場所に目線を移されました。
ニーハイソックスを脱がされてしまったため、内腿を滑り落ちるおツユを途中で堰き止めてくれるものがなくなり、床に恥ずかしい水溜りが出来ていました。
「このまま座ったら、ソファーを汚してしまいます」
「そんなこと気にしなくていいわ。そのソファー合皮だし、あとで拭き取れば大丈夫。それより早く、いやらしく悶える顔を見せて」
お姉さまに促され、おずおずとソファーに腰掛けました。
お尻の下がヌルッと滑ります。
両手は後頭部で組んだまま、両膝をピッタリ閉じて、背もたれに背中を預けました。
火照った素肌に、冷たいソファーが気持ちいい。
「両手、解いていいのよ。直子の好きなようにからだをまさぐって、好きなだけイキなさい」
両手を腰に当てたお姉さまが私の真正面に立ち、ソファーに座った全裸の私を見下ろしていました。
「明るいままでいいわよね?視られたがりなのだから」
「あ、はい」
お姉さまの瞳が妖しく輝いています。
射抜くように見つめてくるお姉さまの瞳に視線を合わせ、ゆっくりと両手を後頭部から放し、体の前に持ってきます。
居酒屋さんや街中での羞恥プレイで焦らしに焦らされた昂ぶりを、ついに慰めることが出来るのです。
それも、大好きなお姉さまに間近で視られながら。
すぐにイッちゃうだろうな・・・
そう思いながら、自分のふたつの乳房を、左右それぞれの手でわしづかみました。
「はうんっ!」
乳首に手のひらが触れた途端、からだがビクンと震え、閉じていた膝がだらしなく開き、恥ずかしい声がほとばしりました。
ずっと長いあいだ物理的な刺激を渇望しながらもお預け状態だった私のからだは、全身が性感帯と化していました。
乳首を指のあいだに逃がしてギュッと挟みつけながら、おっぱいをわしわしと揉みしだきます。
「あっ、あっ、あうっん!」
おっぱいが歪むたびに下半身の奥がジーンと痺れ、粘膜から粘液がジワジワ滲み出てくるのがわかります。
「んっ、んっ、ぅうぅっん!!!」
自分のからだが欲している淫らな刺激をお姉さまにもわかっていただけるように、すがるようにじっと見つめつつ、自分のおっぱいをいたぶりました。
両方の乳首を指先で思い切り潰すように責めていたら、早くも頭の中で火花が炸裂しました。
腰全体がクネクネ大きく悶えて、おっぱい虐めだけであっさりイってしまいました。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
無我夢中でついつぶってしまった両目を開けると、お姉さまの視線とぶつかりました。
お姉さまが形の良い唇の端を微かに上げて、小さな笑みをくださいます。
「はあんっ、お姉さまぁ・・・」
その微笑にお応えしたくて、両膝を大きく広げました。
両足をそれぞれソファーの上に乗せ、全開のアソコだけ前に突き出すような恥ずかしいM字です。
直子のいやらしく濡れたオマンコ、中までじっくり視てください、お姉さま・・・
お姉さまが大好き過ぎて、実際に声に出すことを躊躇してしまうヘンタイな科白を、心の中でつぶやきました。
左手はおっぱいにそのまま、右手を裂け目へ。
瞬く間にベットリ濡れる右手のひら。
つづけてイキたい、何度でもイキたい。
割れ始め付近でプックリ腫れている肉芽を、ギューッとつまみました。
「あうぅぅっ!!!」
全身を電流がビリビリッとつらぬき、腰がソファーから大きく浮き上がりました。
「あっ、あっ、あぁっ・・・」
親指と人差し指でおマメをつまんだまま、中指と薬指を曲げて穴へ潜り込ませました。
そのまま膣壁をひっかくようにピストン運動。
左腕でおっぱい全体を潰し、指先で右乳首を執拗に捻り回します。
「あああ、いい、いい、いぃーのぅっ!」
お姉さまのお顔を見上げながら、訴えるように喘ぎます。
「あ、あっ、イク、イク、イッちゃうぅぅぅ!!!」
潜り込んでいる指が強くキュッと締め付けられました。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
右手全体が濡れてふやけてふにゃふにゃ。
そのヌルヌルの手で左おっぱいを掴み、交代に左手を股間へ。
ソファーの上で膝立ちの四つん這いになり、お尻をお姉さまに向けました。
このほうがオマンコの奥までよく視ていただけるし、お尻の穴だって視て欲しいから。
今度は左手の指三本を潜り込ませ、粘膜をかきまわします。
ヂュプヂュプヂュプヂュプ・・・
卑猥な淫音が自分の股間から聞こえてきます。
首を思い切り捻ってお姉さまに向けると、バチッと視線がぶつかりました。
「何回イッたの?」
相変わらず両手を腰に当て、真剣なご表情で私を見守るお姉さま。
「ああんっ、えっと、3回か、4回か・・・」
自分のアソコを嬲る手は止めず、喘ぎ喘ぎお答えします。
「すごいわね。いくらか落ち着いた?」
「い、いいえ、どんどんどんどん昂ぶっちゃって、どんどんどん気持ち良くなっちゃっていますぅ・・・」
お姉さまに高く掲げたお尻をぶって欲しい、思いっきり強く、何度も何度もぶって欲しい・・・
そんな願望も口に出せないまま、それでもグングンのぼりつめていきます。
「あっ、あっ、あぁぁーーっ!」
お姉さまの視線、お姉さまのお声、お姉さまの香り、お姉さまの息遣い・・・
それらをこんなに近くに感じながら、浅ましく恥ずかしい自慰姿をご披露出来るだけで、本当に夢のよう。
「あーっ、あんっ、あぅんっ、え、絵美お姉さま、だ、大好きですぅぅ・・・!!!」
はしたなくも贅沢な願望は封印して、心の底から想っている本心を叫ぶように声にすると、クリトリスを擦る速度が猛烈に上がって、またまたイってしまいました。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
四つん這いだとお姉さまのほうを向きにくいことに気づき、再びM字に戻りました。
今度こそずーっとお姉さまを見つめながらイこう。
そう決めて、再び右手を股間に滑らせました。
お姉さまは私から目線をはずし、うつむいていました。
両手がご自分のおへそのあたりでゴソゴソしています。
「ああんっ、お姉さまぁ?・・・」
アソコをまさぐる手は止めず、こちらを向いて欲しくて語尾が上がりました。
「んっ?」
気づいたお姉さまが上目遣いで私を見ました。
「あたしのことは気にしないで、つづけてて」
おっしゃりながらお姉さまは、スーツのスラックスのベルトをはずし、ジッパーをジジジッと下げました。
「直子の凄いオナニー姿見ていたら、あたしもがまん出来なくなっちゃった」
照れたようにおっしゃってから身を屈め、スラックスを脱ぎ捨てました。
お姉さまがお洋服を脱いでいる!
お姉さまが裸になる!?
一瞬、何がおきているのかわからなくなり、軽いパニック状態。
それまでの私は、私だけが裸になってお相手は着衣のまま辱められる、という羞恥マゾプレイばかりを経験していたので、今日も、それが当然と思い込んでいたようでした。
ランジェリーショップのときもそうでしたし。
でも今日は、お姉さまも裸になって、私のお相手をしてくださるおつもりなんだ!
考えてみれば、おつきあいを始めたふたりが夜更けにお部屋でふたりきりなのですから、そうなるのはあたりまえのことなのですが、マゾプレイに馴れ過ぎていた私にはひどく新鮮でした。
今夜はマゾプレイではなく、恋人同士。
初めてお姉さまの裸が見れる。
初めてお姉さまと裸で抱き合える。
初めてお姉さまと一緒にイける。
ワクワクが止まりません。
お姉さまは、スラックスの下は生足で、品の良いパープル色の布地が小さめな下着を着けていらっしゃいました。
レースっぽいキラキラした生地で、とてもローライズ。
ああいうのをスキャンティって呼ぶのかな。
薄い布地にうっすら翳りが透けているような気がします。
ブラウスのボタンをはずし始めるお姉さま。
スキャンティとお揃いなパープル色のお洒落な小さめブラが覗きました。
キリッとしたビジネススーツの下に、あんなえっちぽい下着を着けていたんだ。
それってひょっとして、私のため?
心臓がドキドキ弾んでいます。
「ほら、手が止まっているわよ?」
セクシー過ぎるランジェリー姿になった美し過ぎるお姉さまが、ゆっくりソファーに近づいてきました。
私の目前で立ち止まり、右手を伸ばしてきます。
この世の人とは思えないほどクールビューティ!
「立って」
お姉さまの右手を右手で捕まえると、ゆっくり引っ張られました。
よろけるように立ち上がった瞬間、お姉さまのしなやかな両腕が私の背中に絡みつきました。
「むぐぅ・・」
強く抱きすくめられると同時に、お姉さまの唇が私の唇を塞ぎました。
あのショッピングビルのエレベーターのときと同じように。
お姉さまの甘い舌が私の口内に挿し込まれます。
「むぅう・・・」
私も舌を伸ばして迎え入れ、ふたりの舌が激しく絡み合います。
お姉さまの右手は私の裸のお尻を撫で回し、私はお姉さまの背中に回した手探りで、ブラのホックをはずしにかかります。
長く熱いくちづけの後からだを離すと、お姉さまのブラがスルスルッとふたりのあいだに落ちました。
「直子のからだ、すっごく熱くなっているのね。それにベトベト」
「お姉さまのからだ、ほんとにほんとに、すっごくお綺麗です」
初めて見るお姉さまの生おっぱいは、少し小ぶりながら上向きにツンと尖った円錐形で、まさに美乳。
淡いピンクな小さめ乳輪の中心に、感度の良さそうな小さめ乳首が精一杯背伸びをしていました。
たまらず今度は、私からお姉さまにしがみつきます。
私が勢い良く飛びついたために、お姉さまがバランスを崩してよろけ、ソファーの上にお姉さまを押し倒すような格好になってしまいました。
仰向けになっても崩れない、お姉さまの美乳。
「あ、ごめんなさい、お姉さま」
あわててからだを離す私。
「大丈夫よ。脱がせて」
ソファーに腰掛け直したお姉さまが両脚をまっすぐに揃えて、私の前に突き出してきます。
私は床にひざまづき、お姉さまの腰から慎重に、スキャンティを抜き取りました。
お姉さまのソコには、細い逆三角形に美しく刈り揃えた小さな茂みがありました。
スキャンティの内側がしっとり湿っています。
お姉さまも感じていらっしゃるんだ。
すっごくシアワセな気持ちになりました。
「隣に来て。ふたりで気持ち良くなりましょう」
オールヌードのお姉さまがご自分の右隣をトントンと叩きました。
「はいっ」
喜び勇んでピッタリ寄り添います。
「試着室のときから、ずっとこうしたいと思っていたのよ。あなたとふたりきりで」
お姉さまが私の耳元でささやき、今度はやさしく唇が重なりました。
お姉さまの右手が私の股間をまさぐり、負けずに私もお姉さまのソコへ指を侵入させます。
ヘアがある人のをさわるのは、すっごく久しぶり。
サワサワした感触が新鮮です。
お姉さまの中も、すでに充分潤っていて、とっても熱くなっていました。
それから長いあいだ、お姉さまと私は互いのからだを貪り合いました。
唇を合わせ、乳房を揉みしだき、乳首をつまみ、肌を吸い、爪を立て、舌を這わせました。
指でかきまわし、宝石を磨き、蜜を舐め合い、粘膜を擦りつけ合って、再び唇を合わせました。
お姉さまのソコはやや上付きで、ラビア派手めで薔薇の花のようにとっても綺麗。
クリちゃんは、私よりぜんぜん小さいけれど感度良好。
ラブジュースも私より少ないながら、酸味ちょっぴりのしょっぱめで、大変美味でした。
しなやかでしっとりとした素肌は、肌を合わせると吸いつくようで、いつまででも抱いていたい、抱かれていたいからだでした。
「あぁっ!いいわっ。そこ、そこよっ!」
「直子、上手よ!そこをもっと、もっとぉーーー!」
「ああん、お姉さま、イキますぅ、イっちゃいますうぅ」
「あっ、だめっ、いやっ、もっとっ、だめーーーっ!」
貪欲に、何度も何度も求め合い、何度も何度もイカせ合いました。
ソファーからフローリングの床の上へ、そして、ふたりのからだ中がヌルヌルのベトベトになると、お姉さまのご提案でバスルームに移動。
泡まみれで抱き合いながら、お互いのからだをからだで洗いました。
湯船の中で向き合い、互いの股間に伸ばした指で同時にイったあと、ようやくふたり、落ち着きを取り戻しました。
湯船の中でギューッと抱き合い、お顔を寄せ合って、うふふ、って笑い合いました。
バスルームから出て、パウダールームでからだを拭き合いながら、お姉さまが私の無毛な土手を指さしました。
「直子って、オナニー好きを自認するだけあって、すごく上手よね、ソコへの愛撫が」
「あたし、こんなに乱れたの、生まれて初めてよ。自分では、そういうのには淡白なほうだと思っていたのに」
「私も、縛ったり痛くしていないのに、こんなに何度も何度も気持ち良くなったの、初めてです」
「きっとお姉さまが素敵過ぎるんです。だからキスされるだけでもう、舞い上がってしまうんです」
「そっか、そう言えば直子って、ドMのヘンタイさんだったわね。抱き合ったらすっかり忘れちゃっていたわ」
お姉さまが白いバスローブを羽織りながらおっしゃいました。
「それだったら、もっと虐めてもっと奉仕してもらえば良かったわ。直子のフィンガーテクに負けられない、って夢中になっちゃった」
おどけておっしゃるお姉さま。
「おっしゃってくだされば、いつでも精一杯ご奉仕させていただきます。だって私はお姉さまという魅惑のカゴの中の小鳥、恋のドレイなのですから」
私もおどけて返すと、お姉さまがあははと笑いました。
「ドレイだったら服はいらないわね。直子、自分の家ではほとんどいつも全裸って言っていたじゃない」
「あとはもう寝るだけだから、今夜はずっと裸でいてね。バスタオルも巻いちゃダメ」
「あたし直子の裸好きだから、ずっと視ていたいの」
「はい。もちろんです。ドレイ直子はいつでもお姉さまの仰せのままに・・・」
いやん、あんなにイったのに、また疼いてきちゃう。
リビングに戻ると、ソファー周辺が悲惨な有様でした。
「やだっ!もうこんな時間!?まいったなー。明日の朝早いのに」
ホワイトボードの脇に掛けてある学校にあったような丸いアナログ時計を見ると、すでに深夜0時を大きく回っていました。
「お姉さまは先にお寝みください。床とソファーは私が綺麗にしておきますから。ほとんど私が汚したようなものですし」
「何言ってるの?こんなのふたりでやればあっという間の楽勝じゃない。あたしはソファーを拭くから、直子は床をお願いね」
バスローブ一枚のお姉さまと全裸の私で拭き掃除開始。
固く絞ったタオルを何度かゆすいで、10分くらいで後片付けが終わりました。
髪を乾かし身繕いをして、寝室に入ったのは1時を過ぎた頃でした。
*
*ランデブー 6:42 10へ
*
直子のブログへお越しいただきまして、ありがとうございます。ここには、私が今までに体験してきた性的なあれこれを、私が私自身の思い出のために、つたない文章で書きとめておいたノートから載せていくつもりです。
2014年8月31日
2014年8月24日
ランデブー 6:42 08
「直子って、本当に面白いわね」
エレベーターの中で、お姉さまはずっとクスクス笑いっぱなしでした。
「あそこの床に、そんな仕掛けがあったなんて、あたしも今まで気がつかなかったわ」
「立った位置とか光の加減にもよるのでしょうけれど、あんなにハッキリ映ってしまうものなのね」
「ひとりで真っ赤になっているから、何事?って思ったわよ」
「そばに誰も居なくてよかったわね?あ、それとも残念?」
矢継ぎ早にからかってくるお姉さまにジト目を返す私。
「まあ、あたしは、そこまで短いスカートを、しかもノーパンでなんて絶対穿くつもりないから、関係ないけれどね」
この姿はお姉さまの仕業じゃないですか、って抗議しようとしたらチーンと鳴り、エレベーターの扉が開きました。
ホテルみたいな間接照明のオシャレな廊下を少し歩いた先で、お姉さまがカードキーをかざしました。
「さ、どうぞ」
玄関の扉を開いてお姉さまが先に立ち、奥へと案内してくださいました。
通されたお部屋は、どう表現したらいいのか、不思議な雰囲気の空間でした。
10帖以上はある広いフローリングのお部屋のほぼ中央に、会議テーブルくらい大きくてシックなダイニングテーブルがどーん。
その左右に3脚づつ、キャスター付きのダイニングチェアーが並んで収まっています。
壁際にはソファー、その対面に大画面テレビ。
もう一方の壁際には、オーディオラックとブックシェルフが並び、その脇にはワイヤートルソーが1、2、3・・・6体も。
一番広い壁には、大きなホワイトボードと、雑誌の切り抜きか何かなのか、ピンナップみたいな写真がたくさんピンで留められたコルクボードが掛けてありました。
普通の一般的な家庭のリビングとは、明らかに趣を異にするお部屋。
ホテルのミーティングルームが少しくだけた感じ、みたいな。
「あら、たまほのったら、ずいぶん綺麗にかたづけていってくれたのね」
お姉さまが独り言みたいにおっしゃって、脱いだスーツの上着を当然のように、一体のワイヤートルソーに掛けました。
つられて私も、上着を取ろうか、と一瞬思いましたが、ジャケットの下のことをすぐに思い出してやめました。
「このトルソーはね、うちのスタッフの体型に合わせて特注したものなのよ。それぞれ自分専用なの」
とするとみなさん、プロポーションよさげです。
真っ白なシャツブラウス姿になったお姉さまの大きく開いた胸元がすっごく艶かしくて、ドキドキしちゃいます。
「ヘンな部屋、って思っているのでしょう?」
「あ、えっと、なんだか、隠れ家ぽい個室レストラン、みたいな感じで、素敵だと思います。生活感が希薄で・・・」
思っていたことを正直にお答えしました。
「ここはスタッフ全員が使う部屋だから、私物とか置くのは一切禁止にしているの。ほら、なくなったとかで身内で揉めるのって馬鹿らしいじゃない」
「ここにあるものは全部、全員が協議の上で選んだ共有物。あとは所有を放棄してご自由にお使いください的なもの。だからインテリアが誰か一個人の趣味志向に偏らなくて、結果、生活感も出ないのよ」
「うちのスタッフは、この部屋のこと、部室、って呼んでいるわ」
ああ、なるほど。
言われてみれば、この妙に居心地の良さそうな雰囲気は、学生時代の部活やサークルの部室に似ていました。
気の合う仲間だけが気軽に集まれるヒミツのカクレガ、みたいな。
それのゴージャス版。
「あ、そうだった。洗面所はあそこだからね。外から帰ったらまず手を洗ってうがいでしょ?」
お姉さまが突然、今入って来た玄関のほうを指さしておっしゃいました。
「あ、はい」
「それと、寝るときはどっちがいい?そっちの洋間にはベッドがふたつ。くっつけることも出来るわよ。こっちの和室だったらお布団敷いて」
今度はリビング内のふたつのドアを順番に指さすお姉さま。
「うーんと、それでしたら和室、かな?お布団敷いて寝るのって、旅行以外ではしたことないですから・・・」
「おっけー。それじゃあ準備しておくから、直子は手を洗ったら、そこのソファーにでも座ってくつろいでいて」
「あ、私もお手伝いしますよ?」
「いいのいいの。直子はお客さまなのだから」
お姉さまが先に手を洗い、洗面所に私を残してどこかへ消えました。
私がリビングに戻ると、テーブルの上にペットボトルのお茶とグラスがふたつ出ていました。
そのお茶をいただきながら、お部屋内を観察してみます。
リビングの突き当りがお外に向いた窓のようで、今は綺麗なターコイズブルーのカーテンで閉ざされています。
そこから壁に沿ってゆっくり歩いてみます。
ブックシェルフの本や雑誌は、やっぱりファッション関係が多く、発行順にきれいに並べられています。
コミックスや小説、DVDもぎっしり。
CDの背表紙は横文字が多くて、私が知らないのばっかりみたい。
トルソーは、一見アンティークぽい感じで、作りもしっかりしていて、見るからに高級そう。
一番バストが大きいかたのは、ウエストもキュッとくびれていてプロポーション凄そう。
お姉さまの上着からはふうわり、グリーン系のパフュームが香っていました。
ホワイトボードは、落書きなど無くてほぼ真っ白。
一行だけ、一番左端に女の子らしい可愛らしい文字で、
おつかれさまでした!次の企画もみんなでがんばりましょう!!! ほのか
と、小さく書いてありました。
ソファーの上の壁に掛かっている大きなコルクボードにピンで留められた写真たちを、ソファーに両膝を乗せて眺めます。
近くで見ると、雑誌の切抜きだったり、手描きイラストだったり、チェキだったり。
乱雑にたくさん貼り付けてありました。
素敵なドレスを召した超美人のファッションモデルさんらしき外国人女性の写真が多いみたい。
たまに、私でも知っている映画スターやロックスターの写真も混ざっています。
カラフルで綺麗で、なんだか楽しくなって、順番にじっくり見てしまいました。
「お待たせ。準備完了。あら、これを見ていたのね」
いつの間にかお姉さまが私の背後に来ていました。
「あ、はい。これってデヴィッドボウイさんですよね?」
突然お声をかけられ驚いてビクンとして、そのとき考えていたことがそのまま口から出てしまいました。
「え?あ、そうね」
私が指さした切抜きを見てうなずくお姉さま。
お部屋に小さく、ラヴェルのピアノ曲が流れているのに気づきました。
「その写真はジギースターダストの頃ね。この頃のボウイが一番素敵だわ。って直子、よく知っているわね?もうン十年前よ?もちろんあたしもまだ生まれていないけれど」
「両親が、とくに父が昔から洋楽好きなんです。ちっちゃい頃から父の部屋にはレコードやCDがたくさんあって、よく聴かせてくれたから」
「なるほどね。それで直子はボウイのファンなの?」
「いえ、別にですけれど、綺麗なお顔だな、とは思っていました」
「うちのスタッフのひとりがね、この頃の彼に顔がそっくりなのよ。あたしの高校からの友達なのだけれど」
「高校の頃からもうモテモテだったわよ。バレンタインデイなんて下級生からのチョコの山。女子高だけれどね」
「あっ、そのスタッフさんて、女性なのですね?」
お姉さまの、高校からのお友達、というお言葉にひっかかった私は、ホッと胸を撫で下ろします。
「そう。うちの会社って、高校のときの服飾部がそのまま会社になったようなものなの。創立メンバーは同期の部員3人だから」
「へー、ステキですね。ボウイさんそっくりなお顔の女性のかた、一度お会いしてみたいです」
「あはは。まあそのうちね」
「このかたは、どなたなのですか?」
さっきから気になっていた写真のことを尋ねてみました。
素肌に白いシャツ一枚でイタズラっぽくこちらを見ている西洋系の超美人さん。
髪型はまったく違うけれど、お顔の、とくに瞳の雰囲気がお姉さまにすっごく似ていました。
「ああ、それはジーナガーション。アメリカの映画女優」
「お姉さまに似ていますよね?」
「そう?たまに言われるけれど、あたし、そんなにアヒル口ではないわよ?」
少し照れたようなお姉さま。
確かにお口は少し違うけれど、このかたのお口をもう少し小さくして、東洋系の細面にすればズバリ、お姉さまです。
「この人はね、えっちな映画が多いのよ、知らない?けっこう前に悪い意味で話題になったショーガールっていうラスヴェガスのストリップダンサーの映画」
「あっ!知ってます。興味があってDVDで観ようかなって少し調べたら、男の人とのそういうシーンも多そうなので、あきらめましたけれど」
「ああ、直子はそういうのも気になっちゃうのね。ま、無理して観るほどの映画ではなかったわ。衣装とジーナは良かったけれど」
「それよりも直子だったら、バウンド、は観たほうがいいわ。これもジーナが出ていて、こっちはレズビアンの話だから。DVD持っているから、今度貸してあげる」
お話が途切れた、と思ったら、ソファーの背もたれのほうに向かって膝立ちになっている私の背中に、お姉さまが突然、覆いかぶさってきました。
私の背中にシャツ越しのお姉さまのバストが密着します。
「あっ、お姉さま・・・」
背後から抱きつかれた形の私が驚いて首をひねると、私の左肩にお姉さまのお顔がありました。
頬と頬がぶつかります。
「そんなことより、どうして直子はいつまでもジャケットを脱がないの?自分の家だと思ってリラックスしていいのよ?直子は自分の家だといつも裸ん坊なのでしょ?」
お姉さまの両手がジャケットのボタンをふたつともはずし、ジャケットと一緒にお姉さまのからだも離れました。
「ああん、いやんっ」
「さあ直子、ソファーの前に立って、こっちを向いて」
上半身裸にされた私は、ソファーから降り、おずおずとお姉さまのほうへ向きました。
両腕でバストをかばったまま。
お姉さまと目が合い、私を見つめたまま、ご自分の端正な顎を少し上にしゃくりました。
うなずくときの動作と反対の動作です。
その動作に促されるように、私の両手はバストを離れ、頭の後ろへ。
「本当に良く躾けられているのね、直子って。なんだか悔しいわ」
マゾの服従ポーズになった私を、お姉さまが薄い笑いを浮かべながら見つめてきます。
「そのニップルパッドもずいぶんがんばったわね。あたしが取ってあげるわ」
お姉さまの右手が私の左おっぱいに近づいてきて、皮膚を爪の先で軽くひっかかれた、と思ったら、スルッという感じで剥がれました。
異物感が去り、ホッとする開放感。
背伸びしたい欲求をシリコンの下で虐げられ、皮膚にいくぶんめり込んでいた乳首が息を吹き返すのが、自分でもわかりました。
「直子の大きなコリコリ乳首に負けないで、よく今までしがみついていたものだわ。優秀な製品ね」
右乳首のも剥がされて、私の乳首たちが久しぶりにお姉さまの視線に晒されます。
そう考えた途端に、今まで以上に乳首がムズムズ疼きだすのを感じました。
「どうだった?ニップルパッド初体験は?」
お姉さまが私の乳首をじーっと見つめて尋ねます。
「そ、そうですね・・・」
マゾの服従ポーズのまま、お答えしようとしますが、乳首がどんどんムズムズしてたまりません。
「や、やっぱり、肌に何か貼り付けている、という違和感が気になりました。ムズ痒い、と言っても、気持ち良いほうのではない、不快感て言うか・・・」
「あと、うまく言えないのですが、ズルイと言うか、ただ隠すために着けている気がして、スリルが無いって言うか・・・」
「ふーん。で?」
お姉さまが小さく首を傾けて、先を促してきます。
「実は私、お外歩いているときも、どうせなら着けていないほうが良かったな、なんて思っていたんです。べ、別に、誰かに見せたい、っていうわけではないのですけれど・・・」
「そのほうがもっとドキドキ出来るし、スリルを感じられるのにな、なんて・・・」
「なんだか、安心感が逆に残念だったんです・・・」
「私は、今日みたいな場合だったら、すっごく布面積の小さなマイクロビキニブラとか、シースルーブラとか、逆にそこだけ穴の空いているTシャツとかを下に着ていたほうが、もっとゾクゾクしたと思います」
「ああ。なんとなくわかる気がするわ」
お姉さまが近づいてきました。
「考えてみると、ニップルカバーって、乳首だけは絶対見せたくない、っていう人がするものだものね。セクシーな格好をしてもそこだけは見えない安心感、が売り物の」
「あと、セクシータレントとかグラビアモデルやダンサーが、自分の最後の砦を死守、と言うか、より価値を上げたいために着けているイメージもあるし」
「乳首さえ見せなければ、ってほぼ全裸で嬉しそうにニッコリしているのもなんだかなって思うし、隠すためだけのもの、っていう実用性一点張りなのは、エレガントではないわ」
「直子みたいに、見えちゃうかも、気づかれちゃうかもっていうスリルを味わいたいヘンタイさんとは、相容れないものなのかもね」
おっしゃりながら私のスカートのウエストを手際良く直し、ホックをはずしてジッパーを下げ、お話が終わると同時に私のスカートがストンと床に落ちました。
「うん。素敵よ、直子の裸」
お姉さまの視線に私の全身が上から下まで、くまなく舐め回されます。
「もうこれも取っちゃいましょう」
お姉さまが私の足元にひざまづき、左のニーハイソックスに手をかけました。
「うわー。ソックスの履き口のところ、両方ともベトベトよ?ずいぶん下まで湿っちゃっているわ」
「あ、私、自分で脱ぎます!」
あまりの恥ずかしさに、思わず体勢を崩す私。
「いいからいいから。直子のおツユの洪水にはもう慣れちゃったから、あたし」
手馴れた手つきで左右のソックスがクルクルっと丸められ、私の両足を離れました。
「これで今日初めての、正真正銘オールヌードね。気分はどう?」
私の目の前50センチくらいに立ち、腰に手を当てて挑むように尋ねてくるお姉さま。
「・・・は、恥ずかしいです」
「あたししか見ていないのに?」
「お姉さまだから・・・です」
「へー、可愛らしいこと言ってくれるのね。それならあたしのお願いも、聞いてくれるわよね?」
「はい。もちろんです。何だって喜んで」
マゾの服従ポーズで熱くお姉さまのお顔を見つめます。
内腿をまた、おツユがツツーッと滑り落ちていきます。
「そこのソファーに座って、オナニーをしてみせてくれる?」
「今日はえっちな道具無しで、直子の指だけで、あたしを見ながら。出来るわよね?」
「はい・・・」
そのご命令だけで、すでにもうイキそうでした。
*
*ランデブー 6:42 09へ
*
エレベーターの中で、お姉さまはずっとクスクス笑いっぱなしでした。
「あそこの床に、そんな仕掛けがあったなんて、あたしも今まで気がつかなかったわ」
「立った位置とか光の加減にもよるのでしょうけれど、あんなにハッキリ映ってしまうものなのね」
「ひとりで真っ赤になっているから、何事?って思ったわよ」
「そばに誰も居なくてよかったわね?あ、それとも残念?」
矢継ぎ早にからかってくるお姉さまにジト目を返す私。
「まあ、あたしは、そこまで短いスカートを、しかもノーパンでなんて絶対穿くつもりないから、関係ないけれどね」
この姿はお姉さまの仕業じゃないですか、って抗議しようとしたらチーンと鳴り、エレベーターの扉が開きました。
ホテルみたいな間接照明のオシャレな廊下を少し歩いた先で、お姉さまがカードキーをかざしました。
「さ、どうぞ」
玄関の扉を開いてお姉さまが先に立ち、奥へと案内してくださいました。
通されたお部屋は、どう表現したらいいのか、不思議な雰囲気の空間でした。
10帖以上はある広いフローリングのお部屋のほぼ中央に、会議テーブルくらい大きくてシックなダイニングテーブルがどーん。
その左右に3脚づつ、キャスター付きのダイニングチェアーが並んで収まっています。
壁際にはソファー、その対面に大画面テレビ。
もう一方の壁際には、オーディオラックとブックシェルフが並び、その脇にはワイヤートルソーが1、2、3・・・6体も。
一番広い壁には、大きなホワイトボードと、雑誌の切り抜きか何かなのか、ピンナップみたいな写真がたくさんピンで留められたコルクボードが掛けてありました。
普通の一般的な家庭のリビングとは、明らかに趣を異にするお部屋。
ホテルのミーティングルームが少しくだけた感じ、みたいな。
「あら、たまほのったら、ずいぶん綺麗にかたづけていってくれたのね」
お姉さまが独り言みたいにおっしゃって、脱いだスーツの上着を当然のように、一体のワイヤートルソーに掛けました。
つられて私も、上着を取ろうか、と一瞬思いましたが、ジャケットの下のことをすぐに思い出してやめました。
「このトルソーはね、うちのスタッフの体型に合わせて特注したものなのよ。それぞれ自分専用なの」
とするとみなさん、プロポーションよさげです。
真っ白なシャツブラウス姿になったお姉さまの大きく開いた胸元がすっごく艶かしくて、ドキドキしちゃいます。
「ヘンな部屋、って思っているのでしょう?」
「あ、えっと、なんだか、隠れ家ぽい個室レストラン、みたいな感じで、素敵だと思います。生活感が希薄で・・・」
思っていたことを正直にお答えしました。
「ここはスタッフ全員が使う部屋だから、私物とか置くのは一切禁止にしているの。ほら、なくなったとかで身内で揉めるのって馬鹿らしいじゃない」
「ここにあるものは全部、全員が協議の上で選んだ共有物。あとは所有を放棄してご自由にお使いください的なもの。だからインテリアが誰か一個人の趣味志向に偏らなくて、結果、生活感も出ないのよ」
「うちのスタッフは、この部屋のこと、部室、って呼んでいるわ」
ああ、なるほど。
言われてみれば、この妙に居心地の良さそうな雰囲気は、学生時代の部活やサークルの部室に似ていました。
気の合う仲間だけが気軽に集まれるヒミツのカクレガ、みたいな。
それのゴージャス版。
「あ、そうだった。洗面所はあそこだからね。外から帰ったらまず手を洗ってうがいでしょ?」
お姉さまが突然、今入って来た玄関のほうを指さしておっしゃいました。
「あ、はい」
「それと、寝るときはどっちがいい?そっちの洋間にはベッドがふたつ。くっつけることも出来るわよ。こっちの和室だったらお布団敷いて」
今度はリビング内のふたつのドアを順番に指さすお姉さま。
「うーんと、それでしたら和室、かな?お布団敷いて寝るのって、旅行以外ではしたことないですから・・・」
「おっけー。それじゃあ準備しておくから、直子は手を洗ったら、そこのソファーにでも座ってくつろいでいて」
「あ、私もお手伝いしますよ?」
「いいのいいの。直子はお客さまなのだから」
お姉さまが先に手を洗い、洗面所に私を残してどこかへ消えました。
私がリビングに戻ると、テーブルの上にペットボトルのお茶とグラスがふたつ出ていました。
そのお茶をいただきながら、お部屋内を観察してみます。
リビングの突き当りがお外に向いた窓のようで、今は綺麗なターコイズブルーのカーテンで閉ざされています。
そこから壁に沿ってゆっくり歩いてみます。
ブックシェルフの本や雑誌は、やっぱりファッション関係が多く、発行順にきれいに並べられています。
コミックスや小説、DVDもぎっしり。
CDの背表紙は横文字が多くて、私が知らないのばっかりみたい。
トルソーは、一見アンティークぽい感じで、作りもしっかりしていて、見るからに高級そう。
一番バストが大きいかたのは、ウエストもキュッとくびれていてプロポーション凄そう。
お姉さまの上着からはふうわり、グリーン系のパフュームが香っていました。
ホワイトボードは、落書きなど無くてほぼ真っ白。
一行だけ、一番左端に女の子らしい可愛らしい文字で、
おつかれさまでした!次の企画もみんなでがんばりましょう!!! ほのか
と、小さく書いてありました。
ソファーの上の壁に掛かっている大きなコルクボードにピンで留められた写真たちを、ソファーに両膝を乗せて眺めます。
近くで見ると、雑誌の切抜きだったり、手描きイラストだったり、チェキだったり。
乱雑にたくさん貼り付けてありました。
素敵なドレスを召した超美人のファッションモデルさんらしき外国人女性の写真が多いみたい。
たまに、私でも知っている映画スターやロックスターの写真も混ざっています。
カラフルで綺麗で、なんだか楽しくなって、順番にじっくり見てしまいました。
「お待たせ。準備完了。あら、これを見ていたのね」
いつの間にかお姉さまが私の背後に来ていました。
「あ、はい。これってデヴィッドボウイさんですよね?」
突然お声をかけられ驚いてビクンとして、そのとき考えていたことがそのまま口から出てしまいました。
「え?あ、そうね」
私が指さした切抜きを見てうなずくお姉さま。
お部屋に小さく、ラヴェルのピアノ曲が流れているのに気づきました。
「その写真はジギースターダストの頃ね。この頃のボウイが一番素敵だわ。って直子、よく知っているわね?もうン十年前よ?もちろんあたしもまだ生まれていないけれど」
「両親が、とくに父が昔から洋楽好きなんです。ちっちゃい頃から父の部屋にはレコードやCDがたくさんあって、よく聴かせてくれたから」
「なるほどね。それで直子はボウイのファンなの?」
「いえ、別にですけれど、綺麗なお顔だな、とは思っていました」
「うちのスタッフのひとりがね、この頃の彼に顔がそっくりなのよ。あたしの高校からの友達なのだけれど」
「高校の頃からもうモテモテだったわよ。バレンタインデイなんて下級生からのチョコの山。女子高だけれどね」
「あっ、そのスタッフさんて、女性なのですね?」
お姉さまの、高校からのお友達、というお言葉にひっかかった私は、ホッと胸を撫で下ろします。
「そう。うちの会社って、高校のときの服飾部がそのまま会社になったようなものなの。創立メンバーは同期の部員3人だから」
「へー、ステキですね。ボウイさんそっくりなお顔の女性のかた、一度お会いしてみたいです」
「あはは。まあそのうちね」
「このかたは、どなたなのですか?」
さっきから気になっていた写真のことを尋ねてみました。
素肌に白いシャツ一枚でイタズラっぽくこちらを見ている西洋系の超美人さん。
髪型はまったく違うけれど、お顔の、とくに瞳の雰囲気がお姉さまにすっごく似ていました。
「ああ、それはジーナガーション。アメリカの映画女優」
「お姉さまに似ていますよね?」
「そう?たまに言われるけれど、あたし、そんなにアヒル口ではないわよ?」
少し照れたようなお姉さま。
確かにお口は少し違うけれど、このかたのお口をもう少し小さくして、東洋系の細面にすればズバリ、お姉さまです。
「この人はね、えっちな映画が多いのよ、知らない?けっこう前に悪い意味で話題になったショーガールっていうラスヴェガスのストリップダンサーの映画」
「あっ!知ってます。興味があってDVDで観ようかなって少し調べたら、男の人とのそういうシーンも多そうなので、あきらめましたけれど」
「ああ、直子はそういうのも気になっちゃうのね。ま、無理して観るほどの映画ではなかったわ。衣装とジーナは良かったけれど」
「それよりも直子だったら、バウンド、は観たほうがいいわ。これもジーナが出ていて、こっちはレズビアンの話だから。DVD持っているから、今度貸してあげる」
お話が途切れた、と思ったら、ソファーの背もたれのほうに向かって膝立ちになっている私の背中に、お姉さまが突然、覆いかぶさってきました。
私の背中にシャツ越しのお姉さまのバストが密着します。
「あっ、お姉さま・・・」
背後から抱きつかれた形の私が驚いて首をひねると、私の左肩にお姉さまのお顔がありました。
頬と頬がぶつかります。
「そんなことより、どうして直子はいつまでもジャケットを脱がないの?自分の家だと思ってリラックスしていいのよ?直子は自分の家だといつも裸ん坊なのでしょ?」
お姉さまの両手がジャケットのボタンをふたつともはずし、ジャケットと一緒にお姉さまのからだも離れました。
「ああん、いやんっ」
「さあ直子、ソファーの前に立って、こっちを向いて」
上半身裸にされた私は、ソファーから降り、おずおずとお姉さまのほうへ向きました。
両腕でバストをかばったまま。
お姉さまと目が合い、私を見つめたまま、ご自分の端正な顎を少し上にしゃくりました。
うなずくときの動作と反対の動作です。
その動作に促されるように、私の両手はバストを離れ、頭の後ろへ。
「本当に良く躾けられているのね、直子って。なんだか悔しいわ」
マゾの服従ポーズになった私を、お姉さまが薄い笑いを浮かべながら見つめてきます。
「そのニップルパッドもずいぶんがんばったわね。あたしが取ってあげるわ」
お姉さまの右手が私の左おっぱいに近づいてきて、皮膚を爪の先で軽くひっかかれた、と思ったら、スルッという感じで剥がれました。
異物感が去り、ホッとする開放感。
背伸びしたい欲求をシリコンの下で虐げられ、皮膚にいくぶんめり込んでいた乳首が息を吹き返すのが、自分でもわかりました。
「直子の大きなコリコリ乳首に負けないで、よく今までしがみついていたものだわ。優秀な製品ね」
右乳首のも剥がされて、私の乳首たちが久しぶりにお姉さまの視線に晒されます。
そう考えた途端に、今まで以上に乳首がムズムズ疼きだすのを感じました。
「どうだった?ニップルパッド初体験は?」
お姉さまが私の乳首をじーっと見つめて尋ねます。
「そ、そうですね・・・」
マゾの服従ポーズのまま、お答えしようとしますが、乳首がどんどんムズムズしてたまりません。
「や、やっぱり、肌に何か貼り付けている、という違和感が気になりました。ムズ痒い、と言っても、気持ち良いほうのではない、不快感て言うか・・・」
「あと、うまく言えないのですが、ズルイと言うか、ただ隠すために着けている気がして、スリルが無いって言うか・・・」
「ふーん。で?」
お姉さまが小さく首を傾けて、先を促してきます。
「実は私、お外歩いているときも、どうせなら着けていないほうが良かったな、なんて思っていたんです。べ、別に、誰かに見せたい、っていうわけではないのですけれど・・・」
「そのほうがもっとドキドキ出来るし、スリルを感じられるのにな、なんて・・・」
「なんだか、安心感が逆に残念だったんです・・・」
「私は、今日みたいな場合だったら、すっごく布面積の小さなマイクロビキニブラとか、シースルーブラとか、逆にそこだけ穴の空いているTシャツとかを下に着ていたほうが、もっとゾクゾクしたと思います」
「ああ。なんとなくわかる気がするわ」
お姉さまが近づいてきました。
「考えてみると、ニップルカバーって、乳首だけは絶対見せたくない、っていう人がするものだものね。セクシーな格好をしてもそこだけは見えない安心感、が売り物の」
「あと、セクシータレントとかグラビアモデルやダンサーが、自分の最後の砦を死守、と言うか、より価値を上げたいために着けているイメージもあるし」
「乳首さえ見せなければ、ってほぼ全裸で嬉しそうにニッコリしているのもなんだかなって思うし、隠すためだけのもの、っていう実用性一点張りなのは、エレガントではないわ」
「直子みたいに、見えちゃうかも、気づかれちゃうかもっていうスリルを味わいたいヘンタイさんとは、相容れないものなのかもね」
おっしゃりながら私のスカートのウエストを手際良く直し、ホックをはずしてジッパーを下げ、お話が終わると同時に私のスカートがストンと床に落ちました。
「うん。素敵よ、直子の裸」
お姉さまの視線に私の全身が上から下まで、くまなく舐め回されます。
「もうこれも取っちゃいましょう」
お姉さまが私の足元にひざまづき、左のニーハイソックスに手をかけました。
「うわー。ソックスの履き口のところ、両方ともベトベトよ?ずいぶん下まで湿っちゃっているわ」
「あ、私、自分で脱ぎます!」
あまりの恥ずかしさに、思わず体勢を崩す私。
「いいからいいから。直子のおツユの洪水にはもう慣れちゃったから、あたし」
手馴れた手つきで左右のソックスがクルクルっと丸められ、私の両足を離れました。
「これで今日初めての、正真正銘オールヌードね。気分はどう?」
私の目の前50センチくらいに立ち、腰に手を当てて挑むように尋ねてくるお姉さま。
「・・・は、恥ずかしいです」
「あたししか見ていないのに?」
「お姉さまだから・・・です」
「へー、可愛らしいこと言ってくれるのね。それならあたしのお願いも、聞いてくれるわよね?」
「はい。もちろんです。何だって喜んで」
マゾの服従ポーズで熱くお姉さまのお顔を見つめます。
内腿をまた、おツユがツツーッと滑り落ちていきます。
「そこのソファーに座って、オナニーをしてみせてくれる?」
「今日はえっちな道具無しで、直子の指だけで、あたしを見ながら。出来るわよね?」
「はい・・・」
そのご命令だけで、すでにもうイキそうでした。
*
*ランデブー 6:42 09へ
*
2014年8月16日
ランデブー 6:42 07
手をつないだまま小走りに路地を抜け、公園が見えなくなって、やっとお姉さまが歩調を緩めました。
「ああびっくりしたー」
私を振り向いたお姉さまの愉しそうなお顔。
おトイレの鏡から目を逸らしてお外を見たとき。
おトイレ入口の2メートルくらい向こうに、ぼんやり人影が見えました。
入るとき、そこには誰も居なかったはず。
おトイレの電気を点けてからも、一度お外を見たので確実です。
その人影は、4人掛けくらいの細長いベンチの一番端に座っていました。
少し前のめりになって、真正面にある女子トイレの入口をじーっと窺がっていたように見えました。
その人影にびっくりした私が小さく悲鳴を上げると、お姉さまもすでに気づかれていたようで、さっと壁に腕を伸ばし、おトイレの電気を消して真っ暗にしました。
それから私の右手を引っ張り、おトイレの建物の裏手へと誘導してくださいました。
幸いその近くにも公園への出入り口があったので、そこから路上に出て、路地を小走りに公園から離れました。
「あの人、私たちがトイレに入るのを見て、近づいてきたのでしょうね」
「外を見てすぐに気づいたわ。あたしを見てニヤって笑った気がしたから、気持ち悪くて咄嗟に電気を消したの」
「黒っぽいカーディガンみたいの着ていて浮浪者風ではなかったわね。夜なのにサングラスなんかして、プロの覗き魔か何かかしら」
「周りがしんとしていたから、トイレ内での会話も聞かれちゃっていたかも」
「あの様子だと今頃女子トイレに侵入して、あたしたちの置き土産をみつけているでしょうね」
矢継ぎ早に話しかけてくるお姉さま。
お姉さまも意外に興奮されているご様子。
「直子、どうする?あなたのえっちなおツユの臭い、絶対オカズにされちゃっているわよ?」
茶化すようなお姉さまのイジワル声。
「そ、それは、恥ずかしいですし、気持ちも悪いですけれど、でもちょっとだけ、その恥ずかしさにちょこっと疼いちゃうような感じも・・・」
「あら?変態覗き魔男のオカズにされちゃうのよ?直子は男性が苦手、なんじゃなかったっけ?」
「あ、はい。それはそうなのですが、でも今は、お姉さまといるから・・・」
さっきおトイレで告げられた、何かあったらあたしが守ってあげる、というお姉さまの頼もしいお言葉に、私の男性恐怖症さえ霞んでいました。
「さっきお姉さまに手を引っ張られたとき、弾みでスカートが思い切り暴れちゃったんです」
「電気は消えていたけれど、きっとあの人に私のお尻、視られちゃったと思います」
その瞬間を思い出してゾクゾクしながら、お姉さまに告げました。
「あらあら。ずいぶんサービスしちゃったのね。今頃あの覗き魔男の右手、止まらなくなっちゃっているのじゃないかしら」
お姉さまが笑いながら、お下品なご想像を述べました。
「それにしてもひどいトイレだったわね。まだスーツに臭いが染み付いているような気がするわ」
ご自分の右袖をクンクンされるお姉さま。
同感でしたし、行く手にまた別のコンビニの灯りが見えて、つい言ってしまいました。
「私、あのときお姉さまに、コンビニに寄ってくれませんか?って頼もうとしたんです。そこでおトイレをお借りしようかと」
「そしたらお姉さまが、公園のことをおっしゃられて・・・」
「ああ、なるほど。コンビニね。そういう手もあったわね」
感心したようにおっしゃってから急に立ち止まり、イタズラっぽい笑顔で振り向いて、私を見つめてきました。
「直子はもしコンビニ入ったら、まっすぐトイレに直行する気だったの?」
「いえ、それはちゃんと店員さんに許可をいただいて・・・」
「そうよね。トイレ借りるならちゃんと断って、帰り際にガムのひとつでも買っていくのが都会人としてのたしなみよね」
お姉さまが愉しそうなイジワル顔になっています。
「そっか。直子はコンビニのレジで店員さんに、そのえっちな胸元を間近で視てもらいたかったんだ」
「コンビニみたいな明るいところなら、店員さんにもお客さんにも、セクシーな姿をじっくり視てもらえるものね。ごめんね、気がつかなくて」
「ブラウスを取る前だって、見事に胸の谷間が見えてとてもコケティッシュだったもの。それを見せるチャンスを奪っちゃったのね、あたし」
お芝居っぽくおっしゃって、私の手を引いて再び歩き出すお姉さま。
「あっ、いえ、違うんです。そういう意味ではなくて・・・」
そんなこと、まったく思い当たらなかった私は、大いにあわてます。
そうでした。
コンビニの店内って、すっごく明るいんでした。
「直子が恥ずかしいかなー、と思って、なるべく人通りの少ない、暗めの道を選んでここまで来たのだけれど、直子の旺盛な露出欲にとっては、余計なお世話だったみたいね?」
「いえいえいえ、そんなことぜんぜんっありません。暗いほうがいいです。人通りが無いほうがいいですぅ。ごめんなさいぃ」
この後の展開が容易に読めたので、必死になって謝ります。
コンビニがどんどん近づいてきます。
「ちょうどあそこにもコンビニがあるから、寄って行きましょうか。露出魔ナオちゃんのリクエストにお応えして」
ふたり、コンビニの灯りの少し手前で立ち止まりました。
間近で見るコンビニ店内は、明る過ぎるくらい明るくて、健全でした。
お姉さまの肩越しにそっと覗くと、店内にお客さんが3人くらい、レジの店員さんは若い男性でした。
そして、そのコンビニの周辺を見渡したとき、不意に気づいてしまいました。
そのあたりは、私が昼夜問わずよく利用する、完全に生活圏内であることを。
コンビニに面した通りには、マンガやアニメ関係のグッズやコスプレ用品を扱うお店がたくさん集まっていて、私もよく通っていました。
もちろんそのコンビニにも、何度も入ったことがありました。
通りを渡ると自動車教習所があって、郵便局があって・・・
東京に来てから、数え切れないくらい行き来した一帯で、私は今、裸ブレザーにミニスカノーパンでした。
お姉さまと一緒にいる楽しさから薄れていた、羞恥心と背徳感が一気に、強烈によみがえりました。
こんな格好でいるところを、誰か知っている人に見られたら・・・
アニメ関係のお店には、顔見知りになった店員さんも何人かいます。
夜更けなのでお店は全部閉まっているでしょうけれど、お仕事を終えた彼女たちに出会ってしまったら・・・
偶然ご近所さんに目撃されちゃったら・・・
いてもたってもいられず、一刻も早くこの通りを離れ、どこか暗い路地に逃げ込みたい心境でした。
「お姉さま、お願いですから許してください。ここのコンビニ、けっこう使っているんです。こんな恥ずかしい姿を店員さんに視られたら、もう来れなくなっちゃいますぅ」
お姉さまの手をギューッと握り締め、祈るようにお願いしました。
「だと思ったわ。この辺はアニメ関係のお店多いから、きっと直子も通っているだろうな、って」
「うふふ。わかったわ。直子がこの界隈で露出狂のヘンタイさんとして有名になっちゃったら可哀想だものね。コンビニ露出は許してあげる。別に買うものも無いしね」
「だからそんな、今にも泣き出しそうな顔しないの。あ、でも直子のそういう顔は、あたし好きよ」
私を虐めてご機嫌なご様子のお姉さまに手を引かれ、明るいコンビニの脇を素通りし、ちょうど車が途切れた車道を横切りました。
そこからはオフィス街なので、灯りの点いた窓もまばら、外灯だけの薄暗さに戻りました。
人通りもほとんどなくなって、しんとした静けさ。
お姉さまのヒールの音だけがコツコツと響きます。
「直子と一緒に居ると退屈しないわね。次から次へと面白いことがおこるから」
「そのたんびに直子の表情がコロコロ変わって、ほんと見ていて飽きないわ」
からかうようにおっしゃるお姉さまの手をギュッと握り、左腕に寄り添うようにからだを寄せて、暗い道をしばらく幸せに歩きました。
灯りが全部消えて真っ暗になっている立体駐車場のような外観の広い自動車教習所のはずれを右に曲がると、池袋のランドマークとも言える一画に出ます。
有名な高層ビルを中心に、高層ホテル、ショッピングモール、イベント会館などが一体となった広大なエリア。
私も毎日と言っていいくらい、行き来する見慣れた場所です。
思わず緊張が増しますが、夜更けなので灯りも少なく人通りもあまり無くてホッ。
「この信号を渡ればもうすぐよ。このエリアの向こう側だから」
信号待ちをしながらお姉さまが指さす方向だけ、やけに明るく闇に浮かんでいました。
エリアのはずれの、昼間は観光バスとか荷物のトラックとかが出入りしている、向こう側まで吹き抜けになっている広い場所でした。
「あそこだけ、ずいぶん明るいですね?こんな夜更けなのに」
「ああ、あれは高速バスを待っている人たちがいるのよ。昼間にも観光バスとかが停まっているでしょ。夜はその一画が深夜高速バスのターミナルになるの」
「ここから関西とか信州上越とかに車中泊で行って、朝から現地で遊ぼうっていう人たちね」
「学生さんは今春休みだから、テニスやらお花見やらするのでしょうね。うらやましいこと」
信号を渡って近づくと、夜更けにしては派手めな嬌声がキャッキャウフフと聞こえてきました。
若めな男女が2、30人くらいいるみたい。
「建物の横の道をバカ正直にまっすぐ行くより、ここを斜めに突っ切っちゃうと、近道なんだけどなあ」
お姉さまがイタズラっぽく、私の顔を覗き込んできます。
「えっ!?こんな、こんなに明るいところを、ですか?人もたくさん居るし・・・」
自分のえっちな胸元をあらためて確認してドキドキしながら、出来れば許して欲しい、というニュアンスを込めてお答えしました。
「大丈夫よ。さっきやりたがっていたコンビニ露出よりは、ぜんぜんリスクは小さいから」
お姉さまったらもう!私、やりたがってなんていません!
「コンビニだと店員さんやお客さんが地元民の確率が高いけれど、ここに今来ている人たちは、ただバスに乗るためにいろんな所から集まってきただけだし、バスが来れば乗ってどこかへ行っちゃう、一過性の人たちだもの」
「たとえ視られたって、直子がどこの誰かなんてわかるはずないし、目的地で遊んで帰って来る頃には忘れているわ」
よくわけのわからない理屈で、説得にかかるお姉さま。
「ね?大丈夫よ。だってあたしがついているのだから、ね?」
「そ、そうですね・・・」
結局、その殺し文句でその気になっちゃう私。
勇気を出してその明るい空間に一歩足を踏み入れました。
ワイワイガヤガヤのボリュームが一段上がります。
バスを待つ人が集まっているのは、私たちが立つ出入り口周辺の壁際の一画、空間全体の四分の一くらいだけで、その奥の広い空間には誰もいないみたいです。
ただし、そちらのほうも満遍なく灯りが点いていて明るいですが。
「さあ、行くわよ。なるべく堂々と歩きなさいね」
お姉さまが私の右耳にささやきます。
「それと、遊びに行く前の若い子たちってテンション上がっているから、ヘンなのにみつかったらお下品に冷やかされるかもしれないわ。その覚悟だけはしておきなさい」
とても愉しそうなお姉さまのお声。
「さ、行きましょう」
私の右手を握り直し、お姉さまがみなさまのたむろする壁側、私がその左側を少し遅れて、という形でゆっくり歩き始めました。
壁際でてんでばらばらにワイワイしている一団の5、6メートルくらい前を斜めに横切ることになります。
煌々と照っている明るい灯りの下、裸ブレザーにミニスカノーパンという破廉恥な格好の私が堂々としていられるわけがありません。
「あっ、あの男の子、直子のほう視てる」
「隣の子の肩つっついて、こっちを指さしているわよ」
「おい、あれって露出狂じゃねーの、なんて言ってるのかしら」
「あ、あっちの子もじーっと視てるわ」
小声でいちいちイジワルく実況中継してくださるお姉さまのお言葉を、嘘かほんとか確かめることなど出来るはずも無く、ひたすらうつむいて自分の足元を見ながら歩く私。
お姉さまの優雅な歩き方に比べて、肩を落とした私は、叱られたばかりの子供のようだったでしょう。
私たちが近づいていくとガヤガヤのトーンが急に下がったように感じたので、みなさまに注目されてしまったのは確かなようです。
ジャケット一枚だけに覆われた心臓はドッキドキ、足を動かすごとに空気が直に撫ぜてくるアソコの奥がキュンキュン。
一団の前を通り過ぎるまで、すごく長い時間がかかったような気がしました。
なんとか無事に通り過ぎて、行く手が無人の空間になったとき、ターミナル内に低いエンジンの音が響きました。
「バスがやって来たようね」
甲高い女性声で行き先や乗車の仕方を告げるアナウンスが大きく聞こえ、ガヤガヤザワザワが再びボリュームアップ。
私もホッと一息です。
もう彼らからは、私の背中しか見えません。
「けっこう視られていたわよ、男にも女にも。みんなしきりにこっち見てヒソヒソしていたもの」
もうすぐターミナルの外、というところでお姉さまが立ち止まり、バスのほうを振り返りました。
バスの低音なアイドリング音が空間内を満たし、さざめきを飲み込んでいました。
「あら?まだバスに乗り込まずに、バスの前で未練たらしくこっちを見ている男の子がいるわ」
「ずいぶんなスケベさんね。ご褒美としてちょっとサービスしてあげましょう」
おっしゃるなり、お姉さまの手が私のスカートのお尻側を、大きくペロンとめくり上げました。
「あ、だめぇ!」
めくられたのは後ろなのに、咄嗟に前を押さえる私。
「大丈夫よ。一瞬だったし10メートル以上も向こうだもの。パンツ穿いているかいないかさえ、わかりっこないわ」
「でもあのスケベさんには、この一連の行為が、直子の恥ずかしい姿を見せたいがためのもの、ということはわかってもらえたはずよ。どう?嬉しい?」
心底愉しそうなお姉さまのお声も上の空。
私は、こんな見慣れた普段使いの公共の場所で、意図的に生お尻を露出して、そしてそれを目撃した赤の他人が確実にひとりはいた、という公然猥褻な事実に、ズキンズキン感じまくっていました。
足腰がもうフラフラです。
エリアの反対側の通りに出ました。
「ここまで来れば、もうすぐそこよ」
「で、でも、こっち側は人通りが多いですね。灯りも多いし」
通りの向こう側へ渡ろうと、車が途切れるのを待っている私たちに、行き交う人がチラチラ視線を飛ばしてくるのを感じていました。
「そうね。こっち側には24時間営業の大きなスーパーもあるし、地下鉄の駅も近いから」
おっしゃりながらもキョロキョロ左右に目を配り、車の流れが途絶えた隙を突いて、通りに飛び出すお姉さま。
手を引かれた私もおたおたと、車道を突っ切って反対側へ。
支えの無いバストがジャケットの下でプルプル揺れて、スカートの裾もヒラヒラ揺れました。
すぐに通りを逸れて路地に入るお姉さま。
「ここよ」
マンションの入口らしきゲートが、まぶしいくらいの電飾で煌々と照らし出されていました。
「ずいぶん立派なマンションですねー」
ゲートも入口も乳白色の大理石でツヤツヤ光り、カードキーで入ったエントランスには、品の良い柔らかそうなソファーがでーんと置いてありました。
大きな姿見に自分の姿が映ってドキンッ!
「そうね。建物自体はけっこう古いみたいだけれど、お手入れも行き届いているし、調度品の趣味もいいし、住み心地はいいわよ」
エントランスの奥にエレベーターホール。
空間全体が明るく照らし出されていますが、幸い誰の姿も無く私たちだけだったので、少しリラックス。
エレベーターが降りてくるのを待ちます。
うわー、ここは床も大理石なのかな?
墨汁に白い糸をパラパラ散らしたような模様の黒光りする床が、ピカピカに磨かれて輝いています。
12階にいたエレベーターが6階を通過しました。
そのとき何気なく自分の足元を見て、愕然としてしまいました。
「いやんっ!」
思わずつないでいた手を振りほどき、両手でスカートの前を押さえて、前屈みの中腰になっていました。
「どうしたの?」
お姉さまが驚いたお顔で聞いてきます。
私は真っ赤になって首を振るだけ。
内腿を勢い良く、おツユが垂れていくのがわかりました。
このマンションのお掃除の係りの人、お仕事がんばりすぎです。
ピカピカに磨き上げられた床は鏡となり、短いスカートの下で剥き出しな私のワレメが、ソコを真下から覗き込んだらそう見えるであろう構図で、黒光りの床にクッキリと映し出されていたのでした。
*
*ランデブー 6:42 08へ
*
「ああびっくりしたー」
私を振り向いたお姉さまの愉しそうなお顔。
おトイレの鏡から目を逸らしてお外を見たとき。
おトイレ入口の2メートルくらい向こうに、ぼんやり人影が見えました。
入るとき、そこには誰も居なかったはず。
おトイレの電気を点けてからも、一度お外を見たので確実です。
その人影は、4人掛けくらいの細長いベンチの一番端に座っていました。
少し前のめりになって、真正面にある女子トイレの入口をじーっと窺がっていたように見えました。
その人影にびっくりした私が小さく悲鳴を上げると、お姉さまもすでに気づかれていたようで、さっと壁に腕を伸ばし、おトイレの電気を消して真っ暗にしました。
それから私の右手を引っ張り、おトイレの建物の裏手へと誘導してくださいました。
幸いその近くにも公園への出入り口があったので、そこから路上に出て、路地を小走りに公園から離れました。
「あの人、私たちがトイレに入るのを見て、近づいてきたのでしょうね」
「外を見てすぐに気づいたわ。あたしを見てニヤって笑った気がしたから、気持ち悪くて咄嗟に電気を消したの」
「黒っぽいカーディガンみたいの着ていて浮浪者風ではなかったわね。夜なのにサングラスなんかして、プロの覗き魔か何かかしら」
「周りがしんとしていたから、トイレ内での会話も聞かれちゃっていたかも」
「あの様子だと今頃女子トイレに侵入して、あたしたちの置き土産をみつけているでしょうね」
矢継ぎ早に話しかけてくるお姉さま。
お姉さまも意外に興奮されているご様子。
「直子、どうする?あなたのえっちなおツユの臭い、絶対オカズにされちゃっているわよ?」
茶化すようなお姉さまのイジワル声。
「そ、それは、恥ずかしいですし、気持ちも悪いですけれど、でもちょっとだけ、その恥ずかしさにちょこっと疼いちゃうような感じも・・・」
「あら?変態覗き魔男のオカズにされちゃうのよ?直子は男性が苦手、なんじゃなかったっけ?」
「あ、はい。それはそうなのですが、でも今は、お姉さまといるから・・・」
さっきおトイレで告げられた、何かあったらあたしが守ってあげる、というお姉さまの頼もしいお言葉に、私の男性恐怖症さえ霞んでいました。
「さっきお姉さまに手を引っ張られたとき、弾みでスカートが思い切り暴れちゃったんです」
「電気は消えていたけれど、きっとあの人に私のお尻、視られちゃったと思います」
その瞬間を思い出してゾクゾクしながら、お姉さまに告げました。
「あらあら。ずいぶんサービスしちゃったのね。今頃あの覗き魔男の右手、止まらなくなっちゃっているのじゃないかしら」
お姉さまが笑いながら、お下品なご想像を述べました。
「それにしてもひどいトイレだったわね。まだスーツに臭いが染み付いているような気がするわ」
ご自分の右袖をクンクンされるお姉さま。
同感でしたし、行く手にまた別のコンビニの灯りが見えて、つい言ってしまいました。
「私、あのときお姉さまに、コンビニに寄ってくれませんか?って頼もうとしたんです。そこでおトイレをお借りしようかと」
「そしたらお姉さまが、公園のことをおっしゃられて・・・」
「ああ、なるほど。コンビニね。そういう手もあったわね」
感心したようにおっしゃってから急に立ち止まり、イタズラっぽい笑顔で振り向いて、私を見つめてきました。
「直子はもしコンビニ入ったら、まっすぐトイレに直行する気だったの?」
「いえ、それはちゃんと店員さんに許可をいただいて・・・」
「そうよね。トイレ借りるならちゃんと断って、帰り際にガムのひとつでも買っていくのが都会人としてのたしなみよね」
お姉さまが愉しそうなイジワル顔になっています。
「そっか。直子はコンビニのレジで店員さんに、そのえっちな胸元を間近で視てもらいたかったんだ」
「コンビニみたいな明るいところなら、店員さんにもお客さんにも、セクシーな姿をじっくり視てもらえるものね。ごめんね、気がつかなくて」
「ブラウスを取る前だって、見事に胸の谷間が見えてとてもコケティッシュだったもの。それを見せるチャンスを奪っちゃったのね、あたし」
お芝居っぽくおっしゃって、私の手を引いて再び歩き出すお姉さま。
「あっ、いえ、違うんです。そういう意味ではなくて・・・」
そんなこと、まったく思い当たらなかった私は、大いにあわてます。
そうでした。
コンビニの店内って、すっごく明るいんでした。
「直子が恥ずかしいかなー、と思って、なるべく人通りの少ない、暗めの道を選んでここまで来たのだけれど、直子の旺盛な露出欲にとっては、余計なお世話だったみたいね?」
「いえいえいえ、そんなことぜんぜんっありません。暗いほうがいいです。人通りが無いほうがいいですぅ。ごめんなさいぃ」
この後の展開が容易に読めたので、必死になって謝ります。
コンビニがどんどん近づいてきます。
「ちょうどあそこにもコンビニがあるから、寄って行きましょうか。露出魔ナオちゃんのリクエストにお応えして」
ふたり、コンビニの灯りの少し手前で立ち止まりました。
間近で見るコンビニ店内は、明る過ぎるくらい明るくて、健全でした。
お姉さまの肩越しにそっと覗くと、店内にお客さんが3人くらい、レジの店員さんは若い男性でした。
そして、そのコンビニの周辺を見渡したとき、不意に気づいてしまいました。
そのあたりは、私が昼夜問わずよく利用する、完全に生活圏内であることを。
コンビニに面した通りには、マンガやアニメ関係のグッズやコスプレ用品を扱うお店がたくさん集まっていて、私もよく通っていました。
もちろんそのコンビニにも、何度も入ったことがありました。
通りを渡ると自動車教習所があって、郵便局があって・・・
東京に来てから、数え切れないくらい行き来した一帯で、私は今、裸ブレザーにミニスカノーパンでした。
お姉さまと一緒にいる楽しさから薄れていた、羞恥心と背徳感が一気に、強烈によみがえりました。
こんな格好でいるところを、誰か知っている人に見られたら・・・
アニメ関係のお店には、顔見知りになった店員さんも何人かいます。
夜更けなのでお店は全部閉まっているでしょうけれど、お仕事を終えた彼女たちに出会ってしまったら・・・
偶然ご近所さんに目撃されちゃったら・・・
いてもたってもいられず、一刻も早くこの通りを離れ、どこか暗い路地に逃げ込みたい心境でした。
「お姉さま、お願いですから許してください。ここのコンビニ、けっこう使っているんです。こんな恥ずかしい姿を店員さんに視られたら、もう来れなくなっちゃいますぅ」
お姉さまの手をギューッと握り締め、祈るようにお願いしました。
「だと思ったわ。この辺はアニメ関係のお店多いから、きっと直子も通っているだろうな、って」
「うふふ。わかったわ。直子がこの界隈で露出狂のヘンタイさんとして有名になっちゃったら可哀想だものね。コンビニ露出は許してあげる。別に買うものも無いしね」
「だからそんな、今にも泣き出しそうな顔しないの。あ、でも直子のそういう顔は、あたし好きよ」
私を虐めてご機嫌なご様子のお姉さまに手を引かれ、明るいコンビニの脇を素通りし、ちょうど車が途切れた車道を横切りました。
そこからはオフィス街なので、灯りの点いた窓もまばら、外灯だけの薄暗さに戻りました。
人通りもほとんどなくなって、しんとした静けさ。
お姉さまのヒールの音だけがコツコツと響きます。
「直子と一緒に居ると退屈しないわね。次から次へと面白いことがおこるから」
「そのたんびに直子の表情がコロコロ変わって、ほんと見ていて飽きないわ」
からかうようにおっしゃるお姉さまの手をギュッと握り、左腕に寄り添うようにからだを寄せて、暗い道をしばらく幸せに歩きました。
灯りが全部消えて真っ暗になっている立体駐車場のような外観の広い自動車教習所のはずれを右に曲がると、池袋のランドマークとも言える一画に出ます。
有名な高層ビルを中心に、高層ホテル、ショッピングモール、イベント会館などが一体となった広大なエリア。
私も毎日と言っていいくらい、行き来する見慣れた場所です。
思わず緊張が増しますが、夜更けなので灯りも少なく人通りもあまり無くてホッ。
「この信号を渡ればもうすぐよ。このエリアの向こう側だから」
信号待ちをしながらお姉さまが指さす方向だけ、やけに明るく闇に浮かんでいました。
エリアのはずれの、昼間は観光バスとか荷物のトラックとかが出入りしている、向こう側まで吹き抜けになっている広い場所でした。
「あそこだけ、ずいぶん明るいですね?こんな夜更けなのに」
「ああ、あれは高速バスを待っている人たちがいるのよ。昼間にも観光バスとかが停まっているでしょ。夜はその一画が深夜高速バスのターミナルになるの」
「ここから関西とか信州上越とかに車中泊で行って、朝から現地で遊ぼうっていう人たちね」
「学生さんは今春休みだから、テニスやらお花見やらするのでしょうね。うらやましいこと」
信号を渡って近づくと、夜更けにしては派手めな嬌声がキャッキャウフフと聞こえてきました。
若めな男女が2、30人くらいいるみたい。
「建物の横の道をバカ正直にまっすぐ行くより、ここを斜めに突っ切っちゃうと、近道なんだけどなあ」
お姉さまがイタズラっぽく、私の顔を覗き込んできます。
「えっ!?こんな、こんなに明るいところを、ですか?人もたくさん居るし・・・」
自分のえっちな胸元をあらためて確認してドキドキしながら、出来れば許して欲しい、というニュアンスを込めてお答えしました。
「大丈夫よ。さっきやりたがっていたコンビニ露出よりは、ぜんぜんリスクは小さいから」
お姉さまったらもう!私、やりたがってなんていません!
「コンビニだと店員さんやお客さんが地元民の確率が高いけれど、ここに今来ている人たちは、ただバスに乗るためにいろんな所から集まってきただけだし、バスが来れば乗ってどこかへ行っちゃう、一過性の人たちだもの」
「たとえ視られたって、直子がどこの誰かなんてわかるはずないし、目的地で遊んで帰って来る頃には忘れているわ」
よくわけのわからない理屈で、説得にかかるお姉さま。
「ね?大丈夫よ。だってあたしがついているのだから、ね?」
「そ、そうですね・・・」
結局、その殺し文句でその気になっちゃう私。
勇気を出してその明るい空間に一歩足を踏み入れました。
ワイワイガヤガヤのボリュームが一段上がります。
バスを待つ人が集まっているのは、私たちが立つ出入り口周辺の壁際の一画、空間全体の四分の一くらいだけで、その奥の広い空間には誰もいないみたいです。
ただし、そちらのほうも満遍なく灯りが点いていて明るいですが。
「さあ、行くわよ。なるべく堂々と歩きなさいね」
お姉さまが私の右耳にささやきます。
「それと、遊びに行く前の若い子たちってテンション上がっているから、ヘンなのにみつかったらお下品に冷やかされるかもしれないわ。その覚悟だけはしておきなさい」
とても愉しそうなお姉さまのお声。
「さ、行きましょう」
私の右手を握り直し、お姉さまがみなさまのたむろする壁側、私がその左側を少し遅れて、という形でゆっくり歩き始めました。
壁際でてんでばらばらにワイワイしている一団の5、6メートルくらい前を斜めに横切ることになります。
煌々と照っている明るい灯りの下、裸ブレザーにミニスカノーパンという破廉恥な格好の私が堂々としていられるわけがありません。
「あっ、あの男の子、直子のほう視てる」
「隣の子の肩つっついて、こっちを指さしているわよ」
「おい、あれって露出狂じゃねーの、なんて言ってるのかしら」
「あ、あっちの子もじーっと視てるわ」
小声でいちいちイジワルく実況中継してくださるお姉さまのお言葉を、嘘かほんとか確かめることなど出来るはずも無く、ひたすらうつむいて自分の足元を見ながら歩く私。
お姉さまの優雅な歩き方に比べて、肩を落とした私は、叱られたばかりの子供のようだったでしょう。
私たちが近づいていくとガヤガヤのトーンが急に下がったように感じたので、みなさまに注目されてしまったのは確かなようです。
ジャケット一枚だけに覆われた心臓はドッキドキ、足を動かすごとに空気が直に撫ぜてくるアソコの奥がキュンキュン。
一団の前を通り過ぎるまで、すごく長い時間がかかったような気がしました。
なんとか無事に通り過ぎて、行く手が無人の空間になったとき、ターミナル内に低いエンジンの音が響きました。
「バスがやって来たようね」
甲高い女性声で行き先や乗車の仕方を告げるアナウンスが大きく聞こえ、ガヤガヤザワザワが再びボリュームアップ。
私もホッと一息です。
もう彼らからは、私の背中しか見えません。
「けっこう視られていたわよ、男にも女にも。みんなしきりにこっち見てヒソヒソしていたもの」
もうすぐターミナルの外、というところでお姉さまが立ち止まり、バスのほうを振り返りました。
バスの低音なアイドリング音が空間内を満たし、さざめきを飲み込んでいました。
「あら?まだバスに乗り込まずに、バスの前で未練たらしくこっちを見ている男の子がいるわ」
「ずいぶんなスケベさんね。ご褒美としてちょっとサービスしてあげましょう」
おっしゃるなり、お姉さまの手が私のスカートのお尻側を、大きくペロンとめくり上げました。
「あ、だめぇ!」
めくられたのは後ろなのに、咄嗟に前を押さえる私。
「大丈夫よ。一瞬だったし10メートル以上も向こうだもの。パンツ穿いているかいないかさえ、わかりっこないわ」
「でもあのスケベさんには、この一連の行為が、直子の恥ずかしい姿を見せたいがためのもの、ということはわかってもらえたはずよ。どう?嬉しい?」
心底愉しそうなお姉さまのお声も上の空。
私は、こんな見慣れた普段使いの公共の場所で、意図的に生お尻を露出して、そしてそれを目撃した赤の他人が確実にひとりはいた、という公然猥褻な事実に、ズキンズキン感じまくっていました。
足腰がもうフラフラです。
エリアの反対側の通りに出ました。
「ここまで来れば、もうすぐそこよ」
「で、でも、こっち側は人通りが多いですね。灯りも多いし」
通りの向こう側へ渡ろうと、車が途切れるのを待っている私たちに、行き交う人がチラチラ視線を飛ばしてくるのを感じていました。
「そうね。こっち側には24時間営業の大きなスーパーもあるし、地下鉄の駅も近いから」
おっしゃりながらもキョロキョロ左右に目を配り、車の流れが途絶えた隙を突いて、通りに飛び出すお姉さま。
手を引かれた私もおたおたと、車道を突っ切って反対側へ。
支えの無いバストがジャケットの下でプルプル揺れて、スカートの裾もヒラヒラ揺れました。
すぐに通りを逸れて路地に入るお姉さま。
「ここよ」
マンションの入口らしきゲートが、まぶしいくらいの電飾で煌々と照らし出されていました。
「ずいぶん立派なマンションですねー」
ゲートも入口も乳白色の大理石でツヤツヤ光り、カードキーで入ったエントランスには、品の良い柔らかそうなソファーがでーんと置いてありました。
大きな姿見に自分の姿が映ってドキンッ!
「そうね。建物自体はけっこう古いみたいだけれど、お手入れも行き届いているし、調度品の趣味もいいし、住み心地はいいわよ」
エントランスの奥にエレベーターホール。
空間全体が明るく照らし出されていますが、幸い誰の姿も無く私たちだけだったので、少しリラックス。
エレベーターが降りてくるのを待ちます。
うわー、ここは床も大理石なのかな?
墨汁に白い糸をパラパラ散らしたような模様の黒光りする床が、ピカピカに磨かれて輝いています。
12階にいたエレベーターが6階を通過しました。
そのとき何気なく自分の足元を見て、愕然としてしまいました。
「いやんっ!」
思わずつないでいた手を振りほどき、両手でスカートの前を押さえて、前屈みの中腰になっていました。
「どうしたの?」
お姉さまが驚いたお顔で聞いてきます。
私は真っ赤になって首を振るだけ。
内腿を勢い良く、おツユが垂れていくのがわかりました。
このマンションのお掃除の係りの人、お仕事がんばりすぎです。
ピカピカに磨き上げられた床は鏡となり、短いスカートの下で剥き出しな私のワレメが、ソコを真下から覗き込んだらそう見えるであろう構図で、黒光りの床にクッキリと映し出されていたのでした。
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*ランデブー 6:42 08へ
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