2011年6月19日

しーちゃんのこと 13

二学期が始まって少し経ったある木曜日の夜のこと。
バレエ教室のレッスンを終えた私は、愛ちゃんと一緒に帰宅するために駅に向かっていました。
二人、別々の高校の制服姿でした。

「あべちん、はっきりお断りしたみたいだよ」
「へー」
「相手の男、逆ギレ気味だったらしいけど、今後もしヘンなことしたら、あんたの恥ずかしいメール全部、プリントアウトして学校の掲示板に貼り出すからね、って言ってやったら、死ね!ブス!って子供みたいな捨て台詞吐き捨てて、駆け出してったって。なんだかねー」
愛ちゃんが苦笑いを浮かべて教えてくれました。

お教室の発表会が近いため、その準備をお手伝いしていたので、いつもの時間より一時間くらい遅くなって、ターミナル駅に着いたときは7時を少し回っていました。
母にはあらかじめ言っておいたので、門限的な問題はないのですが、別の問題が起こっていました。
駅が大混雑。
2時間くらい前に沿線で人身事故があったらしく、運転再開された直後のようです。
「すごいねー」
「こんな混雑、珍しいねー。乗れんのかなー?」
「ちょっとどっかで時間潰してく?」
「あ、でもあたし今日、8時から絶対見たい番組があったんだ。陸上の大会の総集編」
「そっかー。じゃあ乗っちゃおうか?」

ホームもギッシリ。
こんなに混んでると痴漢とか出そうだから、女性専用車両まで行こうということになったのですが、ホームを進むのもままなりません。
それでも人をかき分け進んでいるうちに、電車がホームに到着しました。
ギッシリ満員状態で、どう見たってこれ以上、乗り込むことは出来そうにありません。
でも、電車のドアが開くと、思った以上にたくさんの人が降りてきました。
ターミナル駅なので、乗り換えのお客さんが多いのでしょう。
ゾロゾロ降りる人の波が途切れると、今度はホームから電車の入口へザザザーッと人が流れ込みます。
人波に押され、私たちも近くのドアに吸い込まれるように飲み込まれてしまいました。
女性専用車両まであと2両というところでした。
愛ちゃんもいるから大丈夫、と思っていたら、いつの間にか隣にいたはずの愛ちゃんの姿が見えなくなっていました。

私は、電車の連結部分のドア横の壁にからだを押し付けられていました。
左手で持っているスクールバッグが壁と自分のからだの腰の辺りの間に挟まれてクッションみたくなっています。
何も持っていない右手は、とりあえず壁にべたっとつきました。
私の左右横は、同じような姿勢の中年サラリーマン。
左肩あたりの背後からぎゅうぎゅう押され、右肩のあたりにかろうじて少し空間がありました。
首を右にひねって見ると、見えるのは誰かの肩や背中ばかり、ドアの窓からの景色さえ見えず、いわんや愛ちゃんの姿をや。
私の右後ろには、OLさんらしいグレイのスーツ姿の女性の背中が見えました。

私が乗り込んだのは、通勤通学時間だけ走っている快速でした。
バレエ教室のあるターミナル駅を出ると、途中駅を二つとばして私の降りる駅まで止まらずに行きます。
こんな混雑ですから、いちいち駅に止まるより一気に走ってくれたほうが時間も短かく済んで助かるかな。
これは、ある意味ラッキー?
そんなことを考えていたら、電車が動き始めました。

電車が揺れるたびに、背後からぎゅうっと押されて、からだが壁に押し付けられます。
さっきから私のお尻、臀部左側に何かがピタッと押し付けられていました。
誰かのカバンか太腿かな?
最初はそう思っていたのですが、そのうち、その押し付けられたものがサワサワと動き始めました。
撫ぜるように、軽く掴むみたいに。
手のひら・・・

痴漢!
一瞬、パニックになりました。
そのスカート越しにお尻を這い回る手の感触は、間違っても気持ちいいなんて種類のものではなく、ゾワゾワと悪寒が何べんも背筋を駆け上ります。
トラウマになっている、あの日の感触にそっくり。
私は、一生懸命腰を引いて、その手から逃れようとしますが、その手はぴったりとお尻に貼り付いて、ますます大胆に動いてきます。
怖い。
助けて。

そのとき唐突に、私がトラウマを受けた後、バレエ教室のやよい先生にご相談したとき、言われた言葉を思い出しました。

「そこでその男に何の負い目も背負わさずに逃がしちゃうと、次また絶対どこかで同じことするのよ、そのバカが」
「それで、また別の女の子がひどい目にあっちゃう可能性が生まれるワケ」
「そのときに大騒ぎになれば、たとえそいつが捕まらなくても、騒ぎになったっていう記憶がそのバカの頭にも残るから、ちょっとはそいつも反省するかもしれないし、次の犯行を躊躇するかもしれないでしょ?」
「もし、万が一、また同じようなことが起きたら、絶対泣き寝入りしないでね。他の女性のためにもね。なおちゃんならできるでしょ?」

逃げちゃだめ。
やよい先生とのお約束、守らなきゃ。

痴漢の対処法は、やよい先生がバレエの合間に教えてくれていました。
大声をあげる。
足を思い切り踏んづける。
さわっている腕を掴まえてひねるようにしながら高く上げる。

足を踏んづけようにも、自分の足もほとんど動かせない状態ですし、私の後ろにある足が痴漢の足とは限りません。
迷っているうちに、お尻を這い回る手は、お尻のワレメのあたりをスリスリし始めました。
まだ電車が走り始めて2分くらい。
次の駅に着くまであと4~5分間もこのままの状態でいるのは耐えられません。

なんとか首を曲げて、左肩越しにいるであろう痴漢の顔を見てやろうと思うのですが、左肩を強く押されていて首が曲げられません。
仕方ないので、反対側の右後方に首をひねりました。

グレイスーツのOLさんの背中肩越しに、OLさんより20センチくらい背の高い、紺のスーツ姿の若いサラリーマンさんが視線を下に落として、こちらを向いていました。
髪をちょっと茶色っぽく染めていて、けっこうヤンチャそうなイケメンさんでした。
OLさんの左手が脇からそのサラリーマンさんの背中に回っていて、OLさんがサラリーマンさんにもたれるように立っているので、二人は恋人同士、カップルさんなのかもしれません。

そのサラリーマンさんがフッとお顔を上げて、私と目が合いました。
サラリーマンさんが私の目をじっと見て、声には出さず、
「ち・か・ん・?」
ていう形に、問い質すようにゆっくり口を動かして、少しだけ首を横に傾けます。
私は、その人の目を見ながら小さくうなずきました。
背の高いあのサラリーマンさんからは、私がさわられているお尻のあたりがきっと見えているのでしょう。
そこに貼りついた手は、今度はスカートの布地をつまんで、ソロリソロリとまくりあげようとしていました。

もうがまんできませんでした。
サラリーマンさんと目があったことで、勇気も湧いてきました。
首を正面に戻して、左手を掴んでいたバッグから離しました。
バッグは私のからだと電車の壁に挟まれているので、下に落ちることはありませんでした。

やめてくださいっ!って大声で叫ぶと同時に、痴漢の腕を掴もう。
そう決めました。

お尻側のスカートの布がスルスルと上に持ち上がっていくのがわかりました。
もう猶予は、ありません。
痴漢の手が中に侵入してきたりなんかしたら・・・

一回深く息を吸って、
「やめてくだいっ!」
ありったけの声をはりあげたとき、
「こいつ、痴漢ですっ!」
後方からも男性の大きな声が聞きこえてきました。
あのサラリーマンさんが、誰かの手首を掴んで高く上に上げていました。
その瞬間、私のスカートも強く引っぱられるようにまくり上げられちゃったみたいでした。

気がつくと、こんなギュウギュウの満員電車のどこにそんな余裕があったのか、私たちのまわりだけ20センチくらいずつの空間が空いていました。
その空間の中にいるのは、私とサラリーマンさんとOLさんのカップルと痴漢の犯人。
サラリーマンさんは素早く痴漢の人を背後から両腕をとって羽交い絞めにしていました。
痴漢の犯人は、白髪まじりで中背、痩せ型の、一見品の良さそうな中年の男性でした。
着ている麻っぽいスーツがちょっとくたびれている感じもしました。

「何するんだっ!冤罪だっ!」
痴漢の人が大声を出して足をジタバタさせています。
「アナタ、お尻さわれてたのよね?」
グレイスーツのOLさんが聞いてきます。
「は、はいっ!」
私は上ずった声をあげて、大きくうなずきました。
「おまえがこの女の子のお尻さわってたの、俺は見てたんだよっ!」
サラリーマンさんが暴れる痴漢を恫喝するように、大声を出します。
「こんなに混んでんだ。もしさわったとしたって不可抗力だ!」
痴漢の人も負けてはいません。
「不可抗力でスカートつまんでまくったりするかい、ボケッ!いい年こいて、恥を知れ!」

まわりの乗客たちが、ある人は驚いたように、ある人は好奇の目で、私たちをジロジロ眺めてきます。
やあねえー、とか、だせーなー、とかヒソヒソ声も聞こえてきます。
みんなに注目されて、すごく恥ずかしいのですが、それ以上にコーフンしていました。
もちろん性的な意味ではなく、何て言うか、正義感的に。

「次の駅でケーサツに突き出すから、覚悟しとけっ!」
サラリーマンさんがもう一度吠えたとき、電車が減速を始めました。
「アナタも一緒に降りてね、面倒だけど」
OLさんがやさしく言ってくれます。
「は、はい。ありがとうございます」
OLさんは、お化粧がちょっと濃い目でしたが、キャリアウーマンぽいお仕事が出来そーな感じのキレイな人でした。

駅のホームに降りると、OLさんが走って駅員さんを呼びに行き、サラリーマンさんは痴漢の人を羽交い絞めにしたまま私と二人で立っていました。
痴漢の人は、観念したのか不貞腐れたのか、大人しくなっていました
ホームに居た人たちが、何事か?みたいな感じで遠巻きに眺めてきます。
愛ちゃんがどこからか駆け寄ってきました。
「痴漢?こいつ?うわー、災難だったねー」
心配そうに私の肩を抱いて、羽交い絞めされている痴漢の人を睨みつけてくれます。
「うん。でも、この人が捕まえてくれたの・・・」
私は、愛ちゃんのお顔を見て、一気に緊張が緩んだみたいで、目頭がジンジン熱くなってきてしまいました。


しーちゃんのこと 14

2011年6月18日

しーちゃんのこと 12

放課後の美術室で強制的にヌードモデルをさせられる妄想、がすっかり気に入ってしまった私は、6月のムラムラ期はずっと、その妄想ばかりで遊んでいました。
妄想の中の美術部先輩がたは、回を重ねるごとにどんどんどんどんイジワルになっていきました。
とんでもなくえっちなポーズを無理矢理とらされたり、写生も兼ねて、と校庭の人目につかない木陰に裸のまま連れ出されたり・・・

ニノミヤ先輩たちとのその後について、しーちゃんからの続報はありませんでした。
あの後、もう一度6人でヌードクロッキー会をやったのか?
すっごく気になっていたのですが、しーちゃんから言ってこない以上、そんなことを唐突に私から聞くのもなんだかいやらしいかな、って思い、聞けないでいました。

そうこうしているうちに学期末のテストが近づき、それが終わるともう、高校生になって最初の夏休みが間近になっていました。

あと数日で夏休みというある日の放課後。
いつものようにしーちゃんと下校しようと一緒にお教室のドアを出たところで、背後から誰かに声をかけられました。
「アナタたち、本当に仲良しなんだねー。いつも一緒じゃん?」
同じクラスの浅野さんでした。

浅野さんとは、ほとんどお話したことはありませんでした。
浅野さんは、中間テストが終わった後、突然、綺麗なウェーブの長い髪を明るめな茶色に染めてきて、クラス中を驚かせた人でした。
先生からは、少し注意を受けたみたいでしたが、テストの成績は優秀だったらしく、それ以上のお咎めはなかったみたい。
学校のバッグの他にブランドのロゴが入った大きなバッグをいつも持ってきていました。

学校には内緒でこっそり雑誌の読者モデルをやっていて、あのバッグには着替えが入っていて、放課後にどこかで私服に着替えて繁華街に遊びに行っている・・・
そんなウワサもある、うちの学校にしては珍しい、遊んでいる系、派手め系の超美人さんでした。
でも、別に怖い雰囲気ではなくて、言葉遣いはちょっと上からっぽいけれど、どちらかと言うと気さくな感じの人でした。
もう一人、同じような感じの本多さんという、これまた美人さんなクラスメイトとよく一緒に行動していました。

「ヒマだったらでいいんだけどさ・・・」
浅野さんが私としーちゃんの顔を交互に見ながら、長い睫をパチパチさせます。
「アナタたち、合コン参加する気、ない?」
思いがけない提案に、私としーちゃんは顔を見合わせます。
「先輩に頼まれちゃってさー。あたしたち、今度の土曜日、夏休み初日ね、ちょっと大規模な合コン企画してんだけど、なるべくカワイイ子、集めてくれって言われちゃってんのよー」
「アナタたちくらいなら、男どもも喜ぶだろーなー、って思ってさ。ちなみに相手は大学生と、社会人でも一流どころ」

男ども、って言われたときに、私は反射的にドキッとしてしまい、たぶんおそらく、一瞬、露骨にイヤな顔をしたんだと思います。

私の右隣に立っていたしーちゃんが左手を伸ばしてきて、私の右腕にスッと絡め、しっかり腕を組んできました。
それからニッコリと浅野さんに微笑みかけて、
「お誘いは嬉しいんだけど、ワタシたち、こういう関係だから、ワタシたちが参加しても男の人たち、しらけちゃうと思うヨー。ネ?」
もう一度ニッコリ浅野さんに笑いかけてから、同意を求めるように今度は私に目を合わせてきました。

「あ、そうだったの?」
浅野さんの大きな瞳がいっそう大きく見開いて、呆気にとられたようなお顔になりましたが、すぐにキレイな笑みに戻りました。
「アナタたち、ガチ百合なんだー?それじゃあしょうがないねー。他あたるかー」
浅野さんは、拍子抜けするほどあっさりとあきらめてくれたみたいです。
そして、また私としーちゃんの顔を交互に見て、長い睫をパチパチさせました。
「アナタたち、イイ感じなんだけど、男に興味ないんじゃーしょうがないねー。お幸せにねー」
浅野さんは、すっごくキレイな微笑を私たちに投げかけてから、右手をヒラヒラ振り、本当にモデルさんみたいな優雅な足取りで、玄関ホールのほうへ去って行きました。

「しーちゃん、あんなこと言っちゃって、いいの?」
浅野さんを見送って、私たちもゆっくりと廊下を歩き始めました。
腕は組んだままでした。
「なおちゃんがなんだか、本当にイヤそうだったからサー、助けなきゃ、と思って咄嗟に言っちゃった」
しーちゃんが照れたみたいにニッって笑います。
「それに、ワタシたちが仲良しなのは本当のことだし」
「しーちゃん、ありがとう」
私は、すっごく嬉しくなって、心を込めて言いました。

「合コン、ってなんだかめんどくさそーだよネー。男がみんなギラギラしてそーで」
しーちゃんがイタズラっぽく笑いながら、私の顔を探るように覗き込んできます。
「それにしてもなおちゃんて、本当に男の人、苦手そうだよネー?」
「うん・・・」
しーちゃんになら、理由、話しちゃってもいいかな・・・
ちょうどそのとき、玄関ホールの靴脱ぎのところに着いてしまったので、どちらからとも無く組んでいた腕をほどき、靴を履き替えました。
しーちゃんは、それ以上、なんで?とか、一切聞いてきませんでした。

「最近、美術部は、どう?」
駅に向かう道で、さりげなくしーちゃんに聞いてみます。
「うん。コンピューターグラフィックがすごーく便利で面白くって、ワタシもずいぶん使いこなせるようになったヨ。夏休みになったらペンタブっていうパソコンにつなぐペンも買うんだ。そしたらマンガもパソコンで描けるんだヨ」
しーちゃんは、とても楽しそうにパソコンでのお絵かきの方法を詳しくお話してくれました。
しーちゃんにCGを教えてくれているのは、確かニノミヤ先輩だったはず・・・

「それって、ニノミヤ先輩が教えてくれてるんでしょ?」
お話の区切りを待って、思い切って聞いてみました。
「うん。ニノミヤ先輩は教え方が上手でネー・・・」
それからしばらく、ニノミヤ先輩は優しくっていい人だ、っていうお話になりましたが、ヌードクロッキー会のその後やニノミヤ先輩の露出症の話題は出てきませんでした。

しーちゃんが遭遇したニノミヤ先輩の一件は、先輩たちが新入生のしーちゃんをからかうために仕組んだ、一回きりの手の込んだオトナなイタズラだったのかもしれません。
私は、もっとえっちっぽい進展を期待していた分のがっかりした気持ち半分と、なぜだかホッとしている気持ちも半分の複雑な気分で、本当に楽しそうに説明してくれるしーちゃんのお話を黙って聞いていました。

その年の夏休みは、8月の頭から二週間、家族でヨーロッパに旅行に行くことになっていました。
私にとっては、初めての海外旅行です。
母の大学の頃のお友達がイギリスとドイツにいるので、その人たちのお世話になりつつ、ヨーロッパ一帯をのんびりと観光することになっていました。
家族で、と言っても、普通だったら父はそんなに休暇が取れないはずなのですが、タイミング良く、と言うより無理矢理、私たちのスケジュールに合わせてフランスへの出張を入れて、二週間のうち10日くらいは、一緒に行動できるようになりました。
それと、父の妹さんの涼子さんとその旦那さま、私が中二のときのトラウマ事件のときにワインを飲ませてくれた、まあるい体型のテレビ局のディレクターさん、も同じ時期にイギリスに居るので、何日か合流する予定でした。

初めての海外旅行にワクワクな私は、その準備で洋服やら何やらのお買い物をしたり、後顧の憂い無く遊び倒すために夏休みの宿題、さすがに進学校だけあって膨大な量でした、を片付けたりで、夏休み前半から、しーちゃんやクラスのお友達とは、ほとんど遊べない状態がつづきました。

二週間のヨーロッパ旅行を満喫した私は、山ほど買ってきたお土産を渡す、という名目で、久しぶりに中学校時代のお友達を我が家に呼んでお泊り会をすることにしました。
夏休みも残すところあと10日となった蒸し暑い日に、愛ちゃん、曽根っち、ユッコちゃん、あべちん、そしてしーちゃんの5人が我が家に勢揃いしました。

愛ちゃんとは、バレエ教室のたびに会っていたので、お互いの近況は知っていました。
愛ちゃんは、高校でもやっぱり陸上部に入って、今は走り高跳びの記録更新に夢中なんだそうです。
夏の間も練習に忙しかったらしく、キレイな小麦色に日焼けしていました。

ユッコちゃんは、名門水泳部に入って毎日プール三昧。
ピッチリしたタンクトップの隙間からところどころ覗く、競泳水着の形の白い肌がセクシーでした。
胸も少し大きくなったみたい。

曽根っちは、中三のときにおつきあいを始めた一つ年上のカレシと順調に交際をつづけているみたいです。
あべちんからえっち関係のことを聞かれて、言葉を濁していましたが、口ぶりからするともうヤっちゃったみたいでした。
言葉の端々に、そんなことは、たいしたことじゃない、みたいな余裕が滲み出ていました。

しーちゃんも元気そうでした。
「ワタシ、あさってから美術部の合宿で湖畔のペンションに行くんだ。二泊三日だって。テニスもできるらしいヨ」
「へー。しーちゃんの口からテニスなんて、なんだかビックリ」
ユッコちゃんが感心したように言いました。
「しーちゃん、高校行ってから、前より明るくなったよねー?」
あべちんも驚いていました。

「あべちんはねー、夏休み前に2年の先輩から告られて、つきあい始めたんだよー」
愛ちゃんがクスクス笑いながら暴露します。
愛ちゃんとあべちんは同じ公立高校に進んで、クラスは別々でしたが、あべちんが告られた日に愛ちゃんの家を訪ねて来て、聞かされたそうです。
私は、夏休み中はバレエ教室もお休みして愛ちゃんとも会っていなかったので、そのお話は初耳でした。

「でもねー。結局タイプじゃなかったんだよねー」
当のあべちんは、浮かない顔をしています。
「始めは、初めてのことだからワクワクしてたんだけどさー・・・」
「何て言うか、チャラくってさー。顔はまあまあなんだけど、やることなすことガキっぽくて、薄っぺらくて」
夏休み中に3回ほどデートしたのだそうですが、話題はテレビのバラエティ番組の受け売りばっかだし、選ぶ映画はミーハー丸出しだし、カラオケでは裏声で女性歌手の歌ばかり歌うし。
「それで、何かとわたしにさわりたがるんだよねー。3度目のデートの別れ際に無理矢理キスしてこようとするから、突き飛ばして、それ以降連絡とってない」
「何て言うか、結局おまえ、ヤりたいだけ違うんか?って感じでさ。あーやだ!」
あべちんが憤懣やるかたない、って様子でつづけます。
「そしたら、今度はやたらメール送ってきてさ。それがまたキザっぽいキモい文面なんだ。似合わねーよって言ってやりたいけど一切返事してない」
「新学期に学校行って会ったら、はっきりお断りすることに決めました」
あべちんは、らしからぬ真面目な調子でしめくくりました。

そんな感じで久しぶりのワイワイガヤガヤ、楽しい夜通しのおしゃべりでした。
一見、中学校のときとまったく変わらない私たちでしたが、やっぱりそれぞれ少しずつ、オトナへの階段を登っているんだなあ、なんて感じていました。


しーちゃんのこと 13

2011年6月12日

しーちゃんのこと 11

制服を着終えた私は、ベッド脇の姿見の前に立って目をつぶり、4月にしーちゃんと一緒に訪れた夕方の美術室の様子を思い出します。
木造のシックな雰囲気と油絵の具の香り、大きな窓からのやわらかい夕陽としんとした静寂。

私は、美術室のフロアの中央にソファーを背にして立っていました。
私の目前には、美術部の先輩がたが7人。
今ボンヤリと思い出せるのは、4月に行ったとき、説明をしてくれた髪の長い落ち着いた感じのキレイな先輩のお顔だけなので、私の妄想の中の先輩がたは、みんなその人に雰囲気の似た、オトナな感じの人たちでした。
少し迷ったのですが、しーちゃんは参加していないことにしました。
先輩がたはみなさん、思い思いの場所で椅子に座ってスケッチブックを開き、私に注目しています。

「これは美術部のしきたりなんだから。あなたも観念して、さっさと裸になりなさい」
先輩の一人が、決めつけるような厳しい口調で言いました。
しーちゃんのお話とは違って、私の妄想の中の美術部部員の先輩がたは、みんなかなりイジワルそうでした。
「で、でも・・・」
「デモもストもないのっ!決まりなんだから、従ってもらわなくちゃ。グズグズしてると、顧問の先生が来ちゃうわよっ!」
別の先輩がからかうように言います。
実際の美術部の顧問の先生は、妙齢のキレイな女性の先生でしたが、私の妄想の中では、毛深くてマッチョな男の先生、っていうことになっていました。

「わ、わかりました」
私は観念して、まずベストを取りました。
私の敏感な乳首は、すでに盛大に反応していて、白いブラウスの薄い布地をこれ見よがしに隆起させています。
それをなるべく隠すように胸に手をやり、ネクタイをスルスルっと抜きました。
先輩がたの視線が、射抜くように私の上半身に注がれています。
両腕でブラウスの突起がバレないように隠しつつ、震える手で一番上から、ブラウスのボタンを一つずつはずしていきます。
姿見に、そんな私の姿が映っています。

ブラウスのボタンを3つ目まではずしたとき、
「あらーっ。アナタ、ノーブラだったのー?」
先輩の一人から驚いたような声がかかりました。
私はビクッとして、ボタンをはずす手が止まってしまいます。
「うわー、大胆ねー」
「いくらベストで乳首のポッチを隠せるからって、そんな姿でいつも授業受けてたんだー」
「この子、ひょっとしたらかなりのヘンタイさん、かもよー?」
先輩がたがドッと沸きます。

「ほら、早くブラウス取っちゃいなさいっ!」
強い口調で促されて、私のブラウスはボタンが全部はずれ、全開になりました。
「もたもたしてないで、脱いで脱いで」
ブラウスの袖を両手から抜くと同時に、両腕を胸の前で交差しておっぱいを隠します。
「何やってんの?隠しちゃだめでしょ!気をつけっ!」
一番偉いっぽい先輩に睨まれながら言われて、私は両腕を両脇にピッタリくっつけ、直立不動になりました。
「見て見て、両方の乳首がビンビンに尖って、上向いてる」
「見られてるだけで、感じちゃってるのよー」
「なんだか誘ってるみたいな、いやらしい形のおっぱい」
「ちょっとさわっただけで、アンアン悶えだしそうねー。スケベそーな子」
てんでに好き勝手なことを言われても、その恥辱に黙って耐えることしか私には出来ません。

「ねえねえ、この子ノーブラだったじゃん?だとすると、ひょっとして・・・」
「あるかもあるかもー、この子だったらやってそー」
「本当にそうだったら、正真正銘ヘンタイ決定だねー」
先輩がたがわざとこちらに聞こえるように、興味シンシンで騒いでいます。
そして、私は実際、その通りなんです。

「それじゃあアナタ、スカート取る前にそのソファーに座って、ソックスから脱ぎなさい」
リーダー格の先輩に言われて、私はベッドの縁に腰掛けました。
「もうちょっと両脚を開いてっ!まず右の腿を高く上げて、右のソックスから」
上半身を屈めて、なるべく脚を上げないようにしてソックスを脱ごうと思っていた私だったのですが、それは先手を打たれて、早々と禁じられてしまいました。
仕方が無いので言われた通り、右の腿をソックスに手が届く位置まで高く上げます。
当然、スカートの布地も一緒に持ち上がり、両腿の付け根のあたりが露になります。
先輩がたの視線が一斉にソコに突き刺さります。
鏡にもハッキリと、だらしなく開いた濡れているピンクの中身が映りました。
私は出来るだけ手早くソックスを脱ぎ、右足を大急ぎで床に下ろしました。

「やっぱり・・・」
「やっぱり!」
「やっぱりねー」
ヒソヒソ声にかぶせるようなご命令の声。
「はい。次は左のソックスっ!」

私は、同じように左太腿を素早く上げて、ソックスを脱ぎました。
「やっぱりだったねー」
「マン毛、うすぅー」
「この子、本当にノーパン、ノーブラで授業受けてたんだー」
「とんだインラン女ねー」
「信じられなーいっ!」
「はい。ドヘンタイ決定っ!」
先輩たちの表情がどんどん険しくなっていくのがわかりました。

「じゃあ立って、さっさとスカート取って。取ったら隠さないで、気をつけっ!」
リーダー格の先輩の声も一層冷たくなって、ヘンタイ淫乱女を見る軽蔑しきった目つきで睨んできました。
私は、スカートのホックをはずしてその場に落とすと、気をつけの姿勢で姿見の前に立ちました。

「ほらほら、脱いだ服はちゃんと片付けなきゃ。だらしないわねー。さっさとやって!」
その声に弾かれるように、私は先輩がたに裸のお尻を突き出し、脱ぎ散らかした制服を拾い集め、ハンガーに掛けてからまた気をつけの姿勢に戻りました。

「それじゃあ、今日は初めてだから、ゴヤの裸のマヤのポーズをやってもらうわね。アナタ、美術部に入るくらいだから、もちろんご存知よね?」
「は、はいっ!」
私は、両手を組んで自分の後頭部にあてるように上に上げてから、ベッドの足側のほうに重ねて置いたお布団に背中をもたれかけ、両脚はピッタリ閉じたまま枕側に伸ばして寝そべりました。
姿見には私の下半身が映っています。

「そう。それでいいんだけど、アナタの場合は、それじゃあツマンナイわね」
リーダー格の先輩が私のほうに近づいてきました。
「右膝を曲げなさい」
「えっ?」
「右膝よ、右膝。お箸持つほうの側の膝」
言いながら私の右太腿がピシャリと手のひらではたかれました。
「あんっ!」
その痛みに呼応して、伸ばしていた右脚の膝を立てます。
「もっと深く曲げてっ!同じように左膝も」
「は、はい」
ベッドの上で、上半身は腹筋運動の途中、下半身は体育座りのような格好になっています。
「両膝を立てたら、左脚だけそのままソファーにつくように横に倒しなさい」
「えーっ?!」
「エーもビーもシーもないのっ!いちいちうるさいわねぇ!さっさと言われた通りにするっ!」
今度は左腿をバチンとはたかれて、私はおずおずと膝を曲げた形の左脚全体を横に倒していきます。
倒れるにつれて両腿の間のスジが徐々に割れていき、左脚がベッドにつく頃には、パックリと割れて濡れそぼった中身が丸見えになっていました。

「こ、こんな姿をスケッチするんですかあ?」
「何言ってるの?嬉しいクセに。たとえアナタが否定しても、そんなになってるソコ見たら、一目瞭然じゃない。あんまり感じすぎてソファー汚さないでよねっ!」
確かに、私の開いたアソコからは、溢れ出した蜜がトロリと内腿をつたい、ベッドのシーツまで糸を引いていました。

「部員のみなさん。今年の文化祭では、今日のモリシタナオコさんの裸婦画を画集にして、裏でこっそり売り捌く予定です。みなさんはりきって克明に描くように」
リーダー格の先輩が嬉しそうに言って、先輩がたがそれぞれ真剣に、私のあられもない姿を凝視しながら描き始めました。

「ちょっとォ、ユラユラしないでくれる?」
「モデルがフラフラ動いたらうまく描けないじゃない!」
「部長!この子のお下品なアヘ顔、なんとかなりません?創作意欲がそがれますぅ!」
「よだれまで垂らしちゃって、ヘンタイ女はどうしようもないわねっ!」
股間を大きく広げたまま、部員のみなさんに疼く裸体を晒している私は、そのあまりの恥ずかしさにジンジンジンジン感じてしまい、全身はプルプル小刻みに震え、火照ったからだ全体からジワジワと汗が滲み出ていました。
姿見には、そんな私の欲情しきった全裸姿が映っていました。

「やれやれ。見せて見られてコーフンしちゃうタイプだから、こうなっちゃうと収まりつきそうも無いわねえ」
部長と呼ばれたリーダー格の先輩が、心底呆れたみたいに見下しきった声で言いながら、私に近づいてきました。
片手に絵筆を持っています。
「いっそのこと、一度イかせちゃおうか?そうすればグッタリして、フラフラ動くこともなくなるんじゃない?」
そう言って、手にした絵筆で私の全開の左腋をサワッと撫ぜました。
「ひゃんっ!」
絵筆が肌の上を移動して、尖りきった左の乳首をチョコチョ撫ぜ回します。
「ああん、いやん、あふーんっ」
「ちょっと!アナタ、何ていう声出してるの?ここがどこだかわかる?神聖なる美術室なの。よくそんな発情しきった牝猫みたいな声、出せるわねっ!」
部長さんは、言葉とは裏腹に、筆先を右の乳首や脇腹、おへその下あたりまで縦横無尽に動かしてきます。
「あん、ああーんっ」
「いやん、だめ、だめーん」
「うーん、あっあっーんっ!」
私は、からだをクネクネ踊らせて、筆先の愛撫に身悶えています。

部長さんが操る筆先が、私の陰毛を下へ滑り、割れ始めの寸前でピタリと止まりました。
「アナタ、オナニーしたことあるわよね?ううん、こんなにいやらしいからだしてて、ない、なんて言わせないわ」
「あたしは、アナタのこんな汗まみれの汚いからだをさわるのはイヤなの。だからアナタ自分で自分を慰めて、さっさとイキなさい」
「ほら、この絵筆貸してあげるから。アナタが夜な夜なやってるみたいに、部員みんなの目の前で思う存分イキなさい」
「ただし、下品な喘ぎ声はなるべく慎んでちょうだいね。大きな声出すと先生がたがやってくるかもしれないから。みつかったら、あたしたちは厳重注意程度で済むだろうけど、素っ裸でオナニーしてたアナタは、間違いなく退学になるわね」
部長さんは、私のアソコのまわりを焦らすようにコソコソと筆で嬲りながら、蔑んだ目に嘲笑を浮かべています。

「ほら、さっさとやって。時間は15分。終わったら今度はフラフラしないで、ちゃんとモデルやるのよ!」
もう一度左腿をピシャリとはたかれて、二本の絵筆を投げつけるように渡されました。

私は、姿見に全身が映るようにベッドの上にお尻をつき、両膝を立てて大きくM字に開きました。
次から次に溢れ出てくる蜜でビチャビチャになったピンク色の奥が丸見えです。
右手には絵筆を二本。
私の目前には、美術部員の先輩がた7人が、私のアソコに熱い視線をぶつけてきます。

太い絵筆の毛先で、尖った乳首をくすぐります。
「あんっ、あはーん」
細い絵筆の毛先で、プックリ露呈しているツヤツヤのクリトリスをツンツンつっつきます。
「ふんっ、うふーんっ!」
二本の筆の間に乳首を挟んで、思い切りひねります。
「あっつううううぅぅ!」
二本の筆の柄を突っ込んで、アソコを大きくこじ開けます。
「いやーーんっーーーううっーん」
とうとうがまんできなくなって、右手の指二本をアソコに挿し込み、グルグルかき回し始めました。

「やだ。あの子の乳首あんなに伸びるのー?」
「痛くないのかしら。あ、そうか、痛いのがいいんだ。さすがヘンタイ」
「うわっ、オマンコの中がヒクヒク波打ってる」
「あの嬉しそうな顔は何?淫乱そのものって感じぃ」
「なんか小さな声で、見て見て見てもっと見て、って言ってるわよ?女の露出狂も本当にいるんだねー。やだー」
「今度クリスとレズらせてみよっかー?」
「あ、背中がのけぞった!そろそろイクみたいよ!」

頭の中にこだまする先輩がたの罵声が、私をどんどん高みに導きます。
アソコに潜らせた指が激しく内部を蹂躙し、親指の爪がクリトリスを引っ掻き回します。
「ぃぃぃーぅぅんーーんぅぅ、いいーーーんふぅぅーっ!!!」
やがてアソコの粘膜が盛大にどよめいて、頭の中が真っ白になりました。


しーちゃんのこと 12