2010年12月5日

図書室で待ちぼうけ 05

おばさまたちの声が聞こえなくなるまで、私は息を殺してその場に固まっていました。
「ね、ねえ、相原さん?こんなことしてるとこ、誰かに見られちゃったら、きっと大変なことになっちゃうよ・・・」
私は、再び激しくなってきたどきどきに心とからだを翻弄されながら、小さな声で言いました。

「だいじょうぶ。わたし、運はいいほうだから」
相原さんは、全然気にしていない様子で桜の木から背中を離し、パッパッとスカートの裾を払いました。
「それよりも、暗くなってしまわないうちに、もう一回だけつきあって、ね?」
そう言うなり、再び私の手を取り、今度は象さんのスベリ台のほうに連れていかれました。

象さんのスベリ台は、クリーム色で全体に丸まっこいカワイらしい形で、お鼻のところがすべるところ、お尻のほうが階段になっていて、公園の入口のほうにお鼻を向けて建っています。
前肢から胴体を経て後肢までの部分が立体的なアーチ状に開いていて、大人でもからだを小さく屈めればスベリ台の下に潜り込めます。
相原さんに手を引かれ、そこに二人で潜り込みました。

スベリ台の下も全体がクリーム色、直径2メートルに満たないくらいのまあるいスペースになっていて、カーボンが何かで出来ているらしいドーム状の天井は、一番高いところで私たちの背ギリギリくらいの高さ、必然的に屈んだ体勢になっています。
足元にも天井と同じ面積だけ、まあるく赤茶色のレンガが敷き詰められて、すべるほうの側と階段のほうの側の壁から、子供が二人ずつくらい向き合って座れるようにベンチみたいな突起が出ています。
夕方なので、中はけっこう薄暗いですが、なんだか妙に居心地がいい空間です。
小さな子供なら、ちょっとしたカクレガ気分を味わえることでしょう。

「頭をぶつけないように気をつけて」
相原さんは、階段側の、そのベンチのような突起に腰を下ろしました。
「森下さんは、そっちのベンチに座ってて」
そこに座ってしまうと、ちょうどアーチ状になった側面の壁が私たちの姿を隠し、外からは足元くらいしか見えないようです。

相原さんは、いつのまにかブラウスのボタンを全部はずしていました。
ブレザーごとブラウスを左右に開いて、今度はおっぱいを対面に座っている私に見せつけてきます。
「見て。わたしのおっぱい、よーく見て。森下さん」
私の目をまっすぐ見つめながら、自分のおっぱいを左右の手で下から持ち上げています。
乳首がツンって尖っています。
私はまた、魅入られたようにじっと目を凝らしてしまいます。
心臓がどきどきどきどき波打ってきます。

相原さんは、はだけた胸をこちらに突き出したまま、じりじりと両膝を左右に開いていき、両膝がほぼ180度に開いたとき、両手でバサっとスカートをめくり上げました。
「ほら。ここももうこんなになっちゃってる・・・」
つぶやいた後、上にめくり上げたスカートの裾を自分の口にくわえてから、右手を右内腿に、左手を左内腿に置き、パックリと綴目が開いたアソコを更に自分の手で押し広げました。
薄暗がりの中でもヌラヌラぬめっているのがはっきりわかりました。
相原さんは、スカートの裾をくわえたまま、顎を上げて上を向き、何かに耐えるようにギュっと目をつぶっています。

公園の横の道を通ったのでしょう、バイクのエンジンの音が近づいて来たと思ったら遠ざかって行きました。
そう、ここはお外なんです。
誰もがいつでも入って来れる公園なんです。
私は、その音を聞いてビクっとしましたが、相原さんは微動だにしませんでした。

しばらくそうしてから、ふいに相原さんの口からスカートが離れました。
大きく広げられたアソコの上に、スカートが舞い降ります。
相原さんは顎を下げ、赤いハンカチで口元を拭いてから、私にトロンとした色っぽいまなざしを投げかけてきました。

「ねえ、森下さん。こっちに来て」
「となりに座って、わたしのからだ、さわってくれない?」
ビクンとして、私は思わず立ち上がりかけました。
でもすぐに思い直し、また腰を落として、うつむいて力無くイヤイヤをします。

「相原さん・・・もうやめよう・・・私、やっぱりこういうの、怖い・・・」
うつむいたまま小さな声で、やっと言いました。
「誰かに見られたら、大変だもん。相原さんが学校に来れなくなっちゃうよ。だから・・・」
泣きそうな声になっていました。
私は、この状況に心底びびっていました。
でも、乳首とアソコが正直に反応しているのも事実でした。

しばらく無言のときが過ぎました。
やがて、衣擦れのような音が聞こえてきたので、おそるおそる顔を上げてみます。
相原さんがゆっくりとブラウスのボタンを下からはめているところでした。

「森下さん、ごめんなさい。見てくれる人がいるの初めてだから、わたし、コーフンしすぎて、ついつい、調子に乗っちゃった・・・」
相原さんは、ブラウスのボタンを上から二番目まできっちりはめて、ブレザーの前をかき合わせてから私の顔を見て、本当にすまなそうに弱々しく笑いました。
儚げで、なぜだか切ない気持ちになる笑顔でした。
「わたしのこと、イヤになった?」
「ううん」
私は、顔を左右に小さく振った後、相原さんをまっすぐに見つめます。
「ステキだと思う」

「良かった。ありがと」
相原さんの顔がゆっくりと嬉しそうな顔に変わっていきます。
「それじゃあ、今日はもう遅いから、ここから出ましょ」
腰を屈めてスベリ台の下から出て行きます。
私も後を追いました。

「今までにも何回か、同じようなことしてるの。一人で」
再び住宅街の道に出て、並んでゆっくり歩きながら相原さんが話し始めました。
「もちろん、誰にも見つからないように、細心の注意を払ってる、つもり・・・」
「わたしの場合、誰でもいいからわたしの裸見てー、なんて気持ちはまったく無い。そういう露出狂じゃない、つもり」
「学校で言ったみたいに、誰かに見られちゃうかもしれない、っていうスリルが好きなの」
「でもやっぱり今日みたいに、見られてる、ってわかってると、コーフンの度合いが全然違うんだ、ね」

「だけど本当に、たとえば先生や他の生徒に目撃されちゃったら、学校でもウワサになっちゃうし、すっごくマズイことになっちゃうんじゃない?相原さんが・・・」
私は、真剣に心配して相原さんに問いかけます。
「うん。それはそうだと思うんだけど・・・わたし、あんまり深刻にそういう心配は、してなかった、かな?」
「わたし、結局、中学の二年間で友達、作らなかったから・・・」
「ううん。それは卑怯な言い方・・・友達、出来なかったから・・・」
「小学生の頃は、これでも人並みくらいには、お友達いたんだけどなあ」
相原さんが珍しく寂しそうな声で言います。
私は、何て言ったらいいかわからなくて、黙っていました。

「中一の最初の頃にね、同じクラスの男子と女子数人で、わたしの陰口してるの、偶然聞いちゃったことがあったんだ」
「あの相原って女子は、いつもなんだか人を小馬鹿にしたような顔してて、ツンとすましててナマイキだ、って」
「そんなこと言われてもさあ・・・わたしは生まれてからずっと、こんな顔なんだし・・・」
「でも、確かに気持ち的にそういう傾向があるのも本当。ガキっぽくてバカな男子とか、本当うんざりしてたもん。心の中で」
「そういうのが知らず知らず、顔に出ちゃってるんだろうなあ、って」
相原さんがクスっと笑います。

「私は、そんなこと無いと思う。相原さんの顔、すっごく綺麗だと思う」
私は、本心からそう思っています。
「うふっ。ありがと。森下さんがそう言ってくれるなら、わたし、他にはもう友達なんかいらない」
相原さんは冗談めかして、私に抱きついてきました。
ノーブラの胸の柔らかい感触が、私の二の腕に押し付けられます。
私は、うっとりしてしまいます。

いつも間にか、商店街の入口まで来ていました。
すれちがった買い物客らしいおばさまが、びっくりした顔で私たちのほうを振り返りました。


図書室で待ちぼうけ 06

2010年12月4日

図書室で待ちぼうけ 04

「それがすごくコーフン出来たんで、気に入っちゃって、それから、当てられそうな科目に絞って、ちょくちょくノーパン授業、受けてたの」
「でもどんどん寒くなる季節だったから・・・うちの学校の教室って、冬場は足元からけっこう冷えるじゃない?」
「下着一枚、着けていないだけでも、かなり違うの、寒さが・・・」
「だから、最初のコーフンが薄れてきちゃうと、だんだんやらなくなっちゃった」
「暖かくなるまで大人しくしてよう、って」
相原さんが小さく笑いました。

「三学期になって、ようやく暖かくなってきた頃に、新しいアソビを試してみたの・・・」
「寒い間に、いろいろ考えてて思いついたことなんだけど」
そこで相原さんは言葉を切り、ブラウスの布をコソっと押し上げている右の乳首のあたりに手をあてて、二度、三度、軽く撫ぜました。
目だけは、まっすぐ私を見ています。

「でも、誤解しないで。わたし、いっつもそんなえっちなことばっかり考えて発情してるわけじゃない」
相原さんは、顔を少し上げて目線を窓の外に移しました。
その物思いにふけるような気だるい表情は、大人っぽくてアンニュイな感じで、とっても綺麗です。
「なんだか無性に恥ずかしいことや、えっちなこと、したくなるサイクルがあるみたいなの、わたしって」
「生理の前後とか、性欲が強まる、ってよく言われるけど、わたしのはそれとは関係ないみたい。ある日突然、発情するの」
「一週間で終わるときもあるし、三週間くらいずっとつづいてることもある」
「と思うと、一ヶ月くらい、全然そんな気分にならないこともあるし・・・」

「もちろん、今のわたしは、その発情期の真っ只中!」
相原さんは、おどけるみたいな声でそう言うと、視線を私に戻し、またニコっと笑いました。

「それで、春先に思いついた新しいアソビっていうのは・・・」
「女子トイレの中で、」
相原さんがそこまで言ったとき、突然、教室内にチャイムの音が大きく響き渡りました。
しーんとした教室で、相原さんがお話してくれる静かな声に集中していた私は、その大きな音に驚いて盛大にビクっとしてしまいます。
「あ、もうそんな時間なんだ。最終下校時刻の予鈴。わたしたちもそろそろ引き上げたほうが良さそう」
「このあと、わりとすぐ、見回りの先生が来るから・・・」

「森下さんの家、確か市民プールのほうだったよね?」
「うん」
「わたしは駅のほうだから、商店街までは、一緒に帰れる、ね?」
相原さんと私は、それぞれ自分のスクールバッグを掴んで、肩を並べて三年一組の教室を出ました。

校庭を横切って学校の正門を出るまで、二人とも無言でした。
夕方の空は、まだ夕焼けが残っていて、ときたま気持ちのいい風が私たちの髪を少しだけ揺らします。
相原さんは、私のちょっと前を、何かを考え込むように少しうつむきながら、若干足早気味に歩いています。
私は、その背中を見ながら、ほんの一時間くらい前からの出来事を順番に思い出していました。

「森下さんは、よく本を読んでいるけど、最近は何読んだ?」
相原さんが歩調を緩めて私に並び、話しかけてきました。
住宅街に入ったところです。
ときたま買い物帰りらしきおばさまとすれ違う以外、ほとんど人は歩いていなくて、自動車が一台だけ、狭い道路を徐行しながら私たちを追い越していきました。
「うーんと、最近は・・・」
私は、今読みかけのミステリーの題名を告げて、それからしばらく読書談義になりました。

住宅街の真ん中あたり、路地を少し入ったところの一角に小さな公園があります。
象さんの形をした小さなスベリ台と木の3人掛け程度なベンチが二つしか置いてない小さな公園で、太くて大きな桜の木が一本、公園の端っこに生えていて、その他に、公園を囲む垣根のように、私には名前がわからない高さ二メートルくらいの樹木がまばらに植えてあります。
愛ちゃんたちと一緒に帰るときは、たまにここで、自販機で買ったジュースを飲みながらおしゃべりしていくこともあります。
「森下さん。ちょっと公園に寄ろう」
相原さんが突然、私の手を取って、公園へ向かう路地のほうに引っ張りました。

公園には誰もいませんでした。
相原さんは、私の手を握ったまま公園の中にズンズン入っていきます。
ベンチにでも座るのかなあ・・・
なんて思っていると、ベンチを通り越して、端っこの桜の木のところまで歩いて行きました。
桜の木は、もうとっくに花の季節は終わり、今はキレイな緑色の葉っぱばかりが、たくさんの枝から私たちの頭上を覆っています。
その下だけ、ちょっと薄暗い感じです。
相原さんは、そこで私の手を離し、公園の入口から死角になる、桜の木の裏側に回り込みました。

「森下さんもこっちに来て」
「そこに立ってくれる?」
バッグを自分の足元に置いて、桜の木に背中を預けて立っている相原さんの50センチくらい前の地面を指さします。
私は、言われた通り、相原さんの正面に立ちました。

「森下さん。見てて」
相原さんは、右手を自分のスカートの裾にそろそろと伸ばし、やがて裾を掴むと、またそろそろとスカートをまくり上げていきます。
相原さんの頬がみるみるうちに薄いピンクに染まっていきます。
うつむきがちの上目遣いで私をジーっと見つめながら、右腕だけが徐々に上がっていきます。

「えっ!?あ、相原さ・・・」
「ちょ、ちょっと・・・」
私は、思わず大きな声を出しそうになって、あわてて声をひそめ、まわりをキョロキョロしてしまいます。
さっき見た通り、公園には誰もいません。
視線を戻すと、相原さんの右腕は、自分の胸のところまで上がって止まっていました。
さっきまでスカートに覆われていた相原さんの下半身が剥き出しになって、私の視線の下のほうにありました。
ショーツを着けていない丸出しの白い下半身。
図書室で見たのと同じ、狭い陰毛に飾られたアソコ。
私の胸がどきどき騒ぎ始めます。
視線が下がると同時に、知らず知らずのうちに中腰になっていました。
目を逸らさなくちゃとも思うのですが、どうしても吸い寄せられるように、釘付けになってしまいます。

やがて、私の視界に相原さんの左手がそろそろと降りてきました。
手の甲をこちらに向けて、人差し指と中指を揃えて、あとの指は折り曲げていて、ジャンケンのチョキが閉じているような形です。
その指は、相原さんのアソコの上で止まり、ゆっくりとアソコに押し付けられた後、上半身を軽くのけぞらせる感じで腰全体がグイっと前に突き出されて、閉じていた指と指の間がだんだんと開かれ、本当のチョキの形になっていきました。
「森下さん、わたしの、わたしの中まで、見て・・・奥の、奥まで・・・見て」

指と指の間から、人間の粘膜質な部位特有のピンク色が覗いています。
全体に濡れそぼっていて、ヌラヌラ光っています。
今にも蜜が滴り落ちそうです。
指と指の付け根の真下に、少し皮をかぶりながらも充血してテラテラ光っている小さなお豆も見えます。
私は、瞬きもせず食い入るように見つめてしまいます。
「う、ふうんっ・・・」
相原さんが聞き逃してしまいそうなほど小さな声で、一声啼きました。

見ている前で、そのピンク色の粘膜部分から雫が一滴、ツーっと短い糸を引いてポタリと地面に落ちました。
私は、ハっと我に返って、あわてて腰を伸ばし、目線を相原さんの顔まで上げました。
相原さんは、唇を半開きにしてギューっと目をつぶり、薄っすらと汗ばんでバラ色に染まった顔全体を少し上に上げて、切なそうに眉根にシワを寄せた、見るからにえっちな、悩ましげな顔をしていました。
スカートの裾をつまんだまま胸の真ん中に押し当てている右手には、すごく力が入っているみたいで、つまんでいる指先の血の気が失せて白っぽくなっていました。

ふいに、遠くのほうで女性の話し声みたいなのが聞こえた気がしました。
途端に相原さんの右手指先が緩み、スカートの布がパサっと戻って、相原さんのアソコを隠しました。
同時に左手がブレザーの左ポケットに突っ込まれ、すぐに赤いハンカチを握って外に出てきて、その手で相原さんは自分の額のあたりを軽く拭きました。

話し声がどんどんこっちに近づいてきます。
相原さんは、何もなかったようにゆったりと木にもたれて、私を見てニッコリ笑います。
二人の年配なおばさまがにぎやかにお話をしながら、公園の前の道を通り過ぎ、やがて遠ざかっていきました。


図書室で待ちぼうけ 05

2010年11月28日

図書室で待ちぼうけ 03

図書室に戻って自分のバッグを手に持ち、もう一度戸締りを点検してから廊下に出ます。
図書室のドアに鍵をかけて、階段を一段飛ばしで一階まで駆け下りました、
その間、私の心臓は、ずーっとどきどきしっぱなし。
さっき見た光景が現実にあったこととは、どうしても信じられません。

廊下を走るな!のポスターを横目で見ながら、早足で歩いて職員室のドアの前までたどりつきました。
ドアの前で立ち止まると、ハアハア盛大に息が切れています。
落ち着かなくちゃ・・・
大きく深呼吸して呼吸を整えてから、ノックして、
「失礼しまーす」
大きな声で言いながら、職員室に入りました。

職員室には、先生方が数人いました。
どの先生も目礼だけで、私に声をかけてくる先生はいません。
鍵を所定の場所に吊るして少しホっとしてると、
「ご苦労さま」
音楽の若い女性の先生が声をかけてくれました。
私は、その先生に会釈してから入ってきたドアのほうへ向かい、
「失礼しましたー」
また、大きな声で言って廊下に出ます。

このままお家に帰っちゃおうか・・・
さっき見た光景は、私には刺激が強すぎました。
まさか私が普段妄想していることを現実にやっている人がいるなんて・・・
でも、だからこそ、一方では、相原さんとお話してみたくてたまりませんでした。
聞いてみたいことがたくさんありました。
私には絶対できないことをしている相原さんに。

しばらく職員室の前で迷っていましたが、結局、好奇心が勝ちました。
ただ、私にもそういう願望があることは、極力悟られないようにしようと思いました。
一緒にやろうなんて言われたら、私の身が破滅してしまいます。
さっきの感じだと相原さんは、私に好意を持ってくれているみたいです。
でも、私の隠している性癖を教えてもだいじょうぶなのかどうか、判断できるほど相原さんのことを知りません。
て言うより、ほとんど何も知りません。
とりあえずお友達として、お話を聞いてみよう。
それから判断しよう。
そう決めました。

ゆっくりと階段を上がって3階に戻りました。
三年一組の教室は、電気が消えたままでした。
相原さん、いるのかな?
どきどきしながら一組の教室のドアを開けました。

相原さんは、自分の席、窓際の後ろから3番目の席に座って頬杖をついていました。
私がドアを開ける音を聞いて、顔だけこちらに向けてニッコリ笑い、
「おかえりなさーい」
明るい声で言いました。
制服をブレザーまで、ちゃんと着ています。
私が閉めたカーテンも再び開けられて、窓から夕焼けが射し込んでいます。

「そこに座って」
相原さんの前の席の椅子を指さします。
私は、おずおずとその席まで行き、自分のバッグを机の上に置いてから、黒板のほうを向いている椅子に横座りに腰を下ろして、顔を相原さんのほうに向けました。

「ごめんね。びっくりさせちゃって」
相原さんは、なぜだか嬉しそうな笑みを浮かべて私を見つめます。
「誰にも言わないで、ね?」
私の顔を覗き込むように顔を近づけてきます。
「うん・・・」
私は、気恥ずかしい気持ちになってしまい、うつむきながら、なんとなくチラっと自分のしている腕時計に目をやりました。
5時5分過ぎ。
うちの学校の最終下校時刻は、この時期だと部活参加者なら5時45分、それ以外の生徒はもうとっくに帰っていなければなりません。
「だいじょうぶ。この時間帯は教室の電気さえ点けてなければ、絶対見回りとか来ないから。下校時刻まで。わたしもずいぶんそういうこと、詳しくなっちゃった」

相原さんは、可笑しそうに笑って頬杖を解いてから、両手を組んで上に挙げて、うーんっ、て背伸びしました。
相原さんの胸が私のほうに突き出されます。
ボタンをしていないブレザーの前が割れて、ブラウスの胸が私の目の前に迫ります。
ブラウスは、上から三つ目までボタンをはずしていて、ブラウスの布に突起が二つあります。
ブラジャー着けずに、素肌にじかにブラウス着ているようです。

「うふふ。気がついた?わたし、こういうことするの、好きなの」
相原さんは、私の反応を試すみたいなイタズラっ子の目つきで私を見つめます。
「森下さん、何から聞きたい?」

私には、聞いてみたいことが山ほどありました。
でも、そういうことにまったく興味のないフリをしていないと、感づかれてしまう恐れがあります。
ああいう現場を見て、普通に思うありふれた感想、って何だろう?
あれこれ考えて、出てきた言葉は、
「えっと、どうして学校で、裸になったりするの?」
バカみたいな質問でした。

「どうしてかなあ・・・うーんと・・・スリル・・・かな?」
「わたし、小さい頃から、自分が恥ずかしいめにあうのが、なんでだか、好きだったの。ヘンでしょ?」
相原さんは、落ち着いた声で話し始めました。

相原さんも、お医者さんごっこで患者さん役になるのや、小学校で男子からスカートめくりの標的にされることが、口ではイヤイヤって言ってたけれど、内心、すごくワクワクしていたそうです。
「もっとやってー、て感じで、ね?」
笑いながらも私の反応を確かめるみたいに、私に目を合わせてきます。

「それで、中学二年になったとき、パソコンを買ってもらったの」
突然お話が飛びました。
「そうすると、やっぱりえっちなこととかも調べたくなるじゃない?」
「私、パソコン、持ってないから・・・」
「そうなんだ。インターネットってスゴイよ。調べたら、だいたいのことは教えてくれる。いいことも悪いことも」

私の知ってる限りでは、普段無口でクールな印象だった相原さんが、雄弁に語り始めました。

「それで、野外露出プレイ、っていうのを知ったの」
「女の人が、ありえない場所で胸やお尻やアソコを出したり、裸になってるの。公園とかコンビニとか遊園地とか、もちろん学校でとか」
「ノーパンにミニスカートでコンビニ行って、わざと低いところにある商品を取るとか、観覧車に乗って上のほうに行ったとき胸出すとか、そういう写真がいっぱい載ってるの、インターネットに」
「でも、そういうのにも種類がいろいろあって、外国の人なんかだと、ワタシノカラダキレイデショ?みたいな感じで、堂々と人がいっぱいいる表通りとかをオールヌードで歩いてたりするの。まわりの男の人たちがニヤニヤ喜んじゃって」
「わたし、そういうのはなぜだかあんまり好きじゃない。わたしが好きなのは・・・」
「わたしが好きなのは、やっぱり、見られちゃうかもしれない、って恥ずかしさにドキドキしてる感じのやつ。あと、やりたくないのに脅されているかなんかで無理にやらされてるようなの」
「もちろん男の人にもそういう趣味の人がいて、男の人がやると、夜道で知らない女性や子供に向けてズボンのチャック下げて、自分のモノ見せる、とか、そういうの。変質者。こっちはわたしも見たくない」
相原さんがクスクス笑いました。

そう言えば、春先に近所の小学校周辺にそういう人が現れて、ちょっとした騒ぎになってたなあ・・・
なんて考えつつ、うつむきがちに相原さんのお話のつづきをワクワクしながら待っていたら、相原さんに左肩をポンと叩かれました。

「ごめん。森下さん?こういうえっちぽい話は好きじゃない?苦手?」
「えっ!?うーんと、苦手ってわけじゃないけど・・・私、そういうの、全然よく知らないから・・・」

私は、大嘘つきです。

「つづけていい?」
私は、コクンとうなずきます。

「写真ばっかりじゃなくて、そういうことを実際やってみた、っていう女性からの告白文みたいのや、そういうのを題材にした小説みたいなのも探すとたくさん出てくるの」
「そういうのを読むと、そういうこと考えてるのは、わたしだけじゃないんだなー、って思えてドキドキしちゃって。わたしも恥ずかしいことしてみたい、ってたまらなくなったの」

「最初は、学校でノーパンになってみた。忘れもしない去年の12月1日」
去年って言ったら、私とまだクラスメイトの頃です。
「午前中は、ドキドキしてなかなか決行できなかったのだけれど、昨夜決めたでしょ?って自分に言い聞かせて、お昼休み中に女子トイレでパンティ脱いで、スカートのポケットに入れて、そのまま5時限目の授業を受けたの。佐々木の英語」
「そのとき、ちょうどわたし、当てられてしまって、立って教科書読まされたの。すっごくドキドキした。バレちゃったらどうしよう、って。普通にしてればわかるはずないんだけど。声も上ずっちゃって」
「わたし、あの頃、クラスの真ん中辺りの席だったじゃない?後ろが誰だったか忘れちゃったけど、今スカートめくられたらすっごい恥ずかしい思いをすることになるんだあ、なんて考えて」
「森下さんは、確かわたしの右隣だった、よね?わたしの声がちょっと震えてたの、気がつかなかった?」
私は、顔を左右に振ります。
そんなこと全然気がつきませんでした。

でも、そう告白されると、なんだか私もどきどきしてきます。
そのとき、私の横でノーパンの相原さんが恥ずかしさに震えながら英語の教科書を読まされていた・・・
相原さんは、また私の反応を確かめるみたいに、しばらく私の目を見つめていました。


図書室で待ちぼうけ 04