夏休み中は、愛ちゃんたちとほぼ一日おきくらいに会っては、市民プールに泳ぎに行ったり、バレエ教室のある町まで電車で行って、繁華街のゲームセンターで遊んだり、誰かのお家でお泊り会をしたりして楽しく遊んでいました。
そして、本題に入る前にもう一つ、この年の夏休み中で鮮明に記憶に残っている出来事のこともお話しておきます。
その年の夏は、猛暑だったので、市民プールはいつも大混雑でした。
私の家は、市民プールから比較的近かったので、愛ちゃんたちと遊べないときは、一人でも頻繁に泳ぎに行っていました。
いつも更衣室が混んでいたので私は、スクール水着の上からゆったりめのTシャツとジーンズのショートパンツを穿いて自転車でプールに行って、帰りも濡れた水着をタオルで拭った上から、それらを着て帰ってくる、ということをしていました。
プールに行くのは、泳ぐのが好きだから、というのはもちろんですが、ときどきいる、ちょっと大胆な水着を着けている女の人をみつけるのも楽しみの一つでした。
市民プールですから、そんなにスゴイ水着を着けている人は来ませんが、高校生か大学生くらいのカレシと一緒な女の子や小さな子供連れの若い奥様たちの中には、何か勘違いしちゃってるんじゃないかな、と思うくらいの肌露出多めな水着を着けている人がたまにいました。
そういう人たちは、たいがいがほとんど泳がないで、プールサイドに寝そべったり、意味も無くプールのまわりをウロウロしたりして、気持ち良さそうにしていました。
市民プールでは、サンオイル禁止ですから、焼きにきているわけでもなさそう。
やっぱり、誰かに自分のセクシーな水着姿を見てもらいたいんでしょうか。
そして、プールに来ている、とくに若い男性たちや中年のおじさまたちは一様に、そんな大胆水着姿の彼女たちを、ことあるごとにチラチラニヤニヤと眺めているようでした。
私も大人になったら、あんな水着を着てみたいなあ、でもやっぱり恥ずかしいかなあ、なんて思いながら私も、そんな彼女たちを見つけるたびに、チラチラと目線で追ってえっちな妄想を楽しんでいました。
8月に入って2週目のある日。
朝から真夏日だったので、午前中早くに一人で市民プールに泳ぎに行って帰宅したお昼の12時少し前。
門を開けてお庭に入ると、裸の美女が4人、ウッドデッキでくつろいでいました。
「えっ!?」
私は一瞬、絶句してしまいました。
ソロソロと近づいていきながらよーく見ると、母と、同年齢くらいのご婦人方3人でした。
裸に見えたのは、皆さん、布面積の小さめなビキニを着用されているから。
「あら、なおちゃん。ちょうどいいところに帰ってきたわ。これからお庭でバーベキューするの。と言ってもホットプレートで、だけどね」
母が嬉しそうに私に寄ってきます。
母は、鮮やかな赤の布地小さめな大胆ビキニで、その豊満美麗なおっぱいを飾っています。
下半身は、ヒラヒラしたカラフルなパレオに隠れて見えません。
「こちら、ママのお友達の皆さん。ミサコさんには、会ったことあるわよね?」
「こんにちはー、なおちゃん。お邪魔してるわよー」
黒でラメみたいのがキラキラ光ってる、これまた布小さめなビキニで形の良い胸を隠した女性が挨拶してくれました。
そう言えば先月の初め頃、学校から帰ってきたら、この人と母がリビングでおしゃべりをしていて、ご挨拶したことを思い出しました。
その夜、母とミサコさんはずいぶんお酒を飲んだみたいで、泊まっていかれました。
母の大学時代の同級生だそうで、顔全体の作りが派手でお化粧もキッチリしていて、複雑にウェーブしたセミロングな髪が印象的なゴージャスな感じのキレイな人でした。
確かあのときはお名前、聞かなかったなあ。
今日のミサコさんは、つばの広い白い日除け帽子で、その印象的な髪型が隠れています。
とりあえず私はお辞儀しながら、
「こんにちはー」
と挨拶しました。
「こちらのお二人は、ママがフラのスクールでお知り合いになったかたたち。タチバナさんとオオヌキさん。」
タチバナさんとオオヌキさんは、母やミサコさんよりもっと若いみたいでした。
20代後半か30少し超えたくらい?
タチバナさんは、鮮やかなレモンイエローに小さく白い水玉が入った、母たちのよりもっと布部分が小さい水着を着けています。
おっぱいはどちらかというと控えめですが、それを幅が10センチ無いくらいの布を胸に巻いているだけみたいなデザインのストラップレスなビキニで隠しています。水着が今にも胸の隠すべき位置からずり落ちそうな感じで、あやういセクシーさです。
パレオも付けていなくて、ボトムは、腰骨フィットで極端に食い込んだTバック。
前は鋭角なV字、後ろはほぼ紐なので、お尻のお肉がほとんど見えています。
ボーイッシュなショートカットに大きな垂れ目のサングラスで、大きめな口の両端を上げて、ニッと笑いかけてくれました。
オオヌキさんのほうは、もっとスゴクて、ピンポイントに乳首とアソコを三角形に隠すだけ、みたいなスゴク小さな水着でした。
布部分以外は、透明なビニールの細い紐です。
オオヌキさんは、タチバナさんよりもおっぱいが大きいので、形の良い下乳が完全に露出しています。
加えて、その水着の色がベージュなので、遠くから見たらまるっきり裸に見えます。
髪は、漆黒で豊かなセミロングストレートを狭い額を露出して後ろにオールバックで結んでいます。
顔が小さくて目鼻立ちがクッキリしていて、まるでヨーロッパのアンティークドールみたくてすごく綺麗。
でも、4人の中ではオオヌキさんだけがなんだかすごく恥ずかしそうで、私を見てニコっと笑った後、うつむいてモジモジしていました。
「森下直子です。母がお世話になっています。今日はお越しいただいてありがとうございます。どうぞごゆっくり楽しんでいってください」
そんなお二人の姿を間近で見て、私は、なんだかドキマギしてしまい、上ずった声で早口にご挨拶してから、ペコリと頭を下げました。
4人全員、タイプは違うけれどみんな美人さんで、それぞれにキレイでセクシーなからだをしています。
私は、なぜだかドキドキしてきて、やがてどんどん嬉しくなってきました。
「ママの習い事って、フラダンスだったんだあ?」
明るい声で母に問いかけました。
「そうなの。そのお教室で偶然ミサコさんと再会して、このお二人ともお友達になったのよ」
「今日はパパも帰って来ないからミサコさんと相談して、皆さんをお招きしてガーデンパーティをすることにしたの」
「でも、そんな格好でお庭に出て、ご近所に見られちゃったりしない?」
「だいじょうぶよ。我が家は塀が高く作ってあるし、ご近所に高い建物もないし。今日は皆さんにどこか海辺にでも来たと思って、思う存分日光浴していただこうと思ってお招きしたのよ。よく晴れて本当に良かったわあ」
母は、のんびりとそんなことを言いました。
でも、お隣の二階からなら見えちゃうような・・・今はカーテン閉まってるけど・・・
考えながら、私は家の周りを見上げます。
「お隣さんなら両隣とも一昨日から旅行に行ってるはずよ。ママだってちゃんと考えてるの」
そう言ってパチンとウインクしてきます。
「それから、フラっていうのは踊りっていう意味なの。だからフラダンスじゃなくて、フラ、だけでいいのよ」
「ママもやっとフラ、一曲通して踊れるようになったから、今日なおちゃんに見せてあげる。ほら、なおちゃんも水着に着替えてらっしゃい。一緒にお昼食べましょ」
「はーいっ!」
お庭で白昼堂々水着になれる。
それも4人のキレイな大人の女の人たちと一緒に・・・
私は、すごくワクワクしてきました。
*
*トラウマと私 03へ
*
直子のブログへお越しいただきまして、ありがとうございます。ここには、私が今までに体験してきた性的なあれこれを、私が私自身の思い出のために、つたない文章で書きとめておいたノートから載せていくつもりです。
2010年10月9日
2010年10月3日
トラウマと私 01
明日から中学二年生の夏休みという終業式の朝、登校すると靴箱の中に手紙が入っていました。
真っ白な封筒の中に、パソコンのワープロで打ち出したらしい文字が書かれた白い紙が一枚。
「森下様
僕はあなたのことが最初に見たときからずっと好きです。
よかったら夏休み中に僕と一緒に映画でも見に行きませんか?
返事を聞かせてください。
本日11時15分に通用門のところで待っています。」
そして、あまりキレイとは言えない字で、全然知らない男性の名前が黒のボールペンで書かれていました。
これって、ひょっとしてラブレター?
読んだ瞬間は、少しビックリしましたが、すぐに私は、なんだかメンドクサイことになっちゃったなあ、と思っていました。
その頃、自分が男の子とおつきあいするなんて、まったく考えたことなかったし、そんな気も全然ありませんでした。
中二にもなれば、クラスの女子たちの中には、上級生の男子に憧れてきゃーきゃー騒いでいる子たちとか、こっそりクラスの男子とつきあっているらしい子とかもいました。
でも、当時の私は、そういったことに一切関心がありませんでした。
恋愛をしたい、という欲求自体を持っていなかったんです。
当時すでに、オナニーでイくことも覚えてしまっていたけれど、かと言って、早くセックスを経験してみたい、とも全然思っていませんでした。
初めてのブラを買ってもらったとき、母に、自分を大事にしなさいね、って諭されていましたし、当時の私の中では、セックスと恋愛はイコールだったので、まず恋愛をしなければ、セックスもありえません。
そして、私が恋愛するのは、もっと自分のからだがキレイに成長してから、たぶん高校2年生くらい、となぜだか一途に思い込んでいたんです。
なので、当時の私に、どこの誰かもわからない男子と映画を見に行く、という選択肢はありえませんでした。
この呼び出しを無視しちゃおうか、とも思ったのですが、ちゃんとお返事してあげなきゃ悪いかな、とも思いました。
誰かに相談してみよう。
こういうとき、頼りになるのは、川上愛子さんです。
同じバレエ教室に通っている縁でお友達になった川上さんは、明るく活発な人好きのする性格で、クラスの女子の中心的人物でした。
川上さんは、男子女子分け隔てなく気軽におしゃべりできちゃう人気者でしたが、スポーツや学校行事など学校生活自体を楽しむことを一番大切にしているみたいで、童顔ポニーテールなカワイイ系女子なのに、男女交際とかにはあまり興味が向かないタイプのようでした。
バレエ教室の他に陸上部にも入っていて、一年生のときの運動会でも大活躍でした。
二年生になっても川上さんを中心とする仲良しグループがみんな同じクラスになれて、愛ちゃんは、私の一番の親友になってくれていました。
私は、終業式からお教室へ帰る途中に愛ちゃんを呼び止めて、ものかげに行き、手紙を見せました。
「うわー、これラブレターじゃない?」
「そうみたいなの。愛ちゃん、この人知ってる?」
「知らない。内田ねえ・・・何年生なのかなあ?」
「・・・無視しちゃっていいかな?」
「えっ?なんかもったいなくない?カッコいい人かもしれないじゃん?」
「でも・・・私今はそんな気が全然無いの・・・男子とおつきあいするなんて・・・」
「これ、なんか、あんまり頭の良さそうな文章じゃないね・・・」
愛ちゃんは、文面と私の顔を交互にしばらく見比べてから、
「じゃあ、どんな人なのか、顔だけでも見に行かない?あたしもつきあうからさ」
興味シンシンな顔で言いました。
「見てから決めてもいいんじゃない?ヘンなやつだったら、シカトして帰っちゃえばいいよ」
笑いながら私の肩に手をかけます。
「・・・そうだね。悪いけど、愛ちゃん、後で一緒に行ってくれる?」
「もちろんっ!」
私は、どんな人だったとしてもおつきあいする気はまったく無かったのですが、一人で断りに行くよりも愛ちゃんがいてくれたほうが何十倍も心強いので、とても嬉しくなりました。
手紙で指定されていた通用門は、正門から校庭と校舎を隔てた直線上の真裏にあります。
幅5メートルくらいの横開きの門のそばには、自転車通学の人たち用の駐輪場と先生方や来客用の駐車場があって、普段は主に先生方の出入りに使われていて、下校時だけ、生徒もこの門から帰ることができます。
呼び出しの時間の5分くらい前から、私と愛ちゃんは、ちょうどいい具合に駐車場に並んで停まっていた背の高いワゴン車二台の陰に身を潜めて、誰にもみつからないように通用門を見張っていました。
「どんな人なんだろうねえ?なんだかワクワクするねえ、探偵ごっこ」
愛ちゃんが、車の陰に屈んでときどき顔だけ出して通用門を覗き見る私の右肩に顎を乗っけて、同じように通用門に目を向けながら、耳元にヒソヒソ声で囁きます。
自転車を取りに来た生徒がぱらぱらとやって来ては帰っていく以外、あまり通用門を使う人はいないようです。
呼び出しの時間になっても、人待ち顔な男子は、その付近に現れません。
「ひょっとして、そいつも、なおちゃんが現れたら出てくるつもりなんじゃないかな?」
愛ちゃんが言います。
「だとしたらそいつ、サイテーだね。自分から呼び出しといてさ」
約束の時間から5分過ぎても、通用門の前で人を待っている風な男子の姿はありませんでした。
「自分で呼び出しといて時間守らないんだから、どっちみちそいつ、サイテーなやつだよ。なおちゃん、帰ろう」
愛ちゃんはプンプン怒って、私の手を引いてその場を離れました。
クラスのお教室に戻ろうと二人で裏庭を歩き出すと、ふいに後ろから、もりしたさん、と小さく声をかけられました。
「すんません、ちょ、ちょっと時間に遅れちゃって・・・」
振り向くと、息をきらしてハアハア言っている見知らぬ男子がいました。
背は高くもなく低くもなく、太ってもなく痩せてもなく、髪も長くもなく短くもなく、顔も・・・
見て、一回目をつぶるともう忘れてしまうような、そんな顔立ちでした。
愛ちゃんも振り向いて、その男子の顔を敵意丸出しで、まっすぐに睨みつけています。
そんな愛ちゃんを見て私は、なんだかホっとしていました。
こういう人なら、お断りしてもあまり心が咎めません。
最初からまったく縁が無かったのでしょう。
私は、スカートのポケットに入れていた封筒を黙って差し出しました。
その男子は、きょとんとしたまま、封筒を受け取りません。
私は、曖昧な笑顔を浮かべて、
「これ、お返しします」
とだけ言いました。
それでも封筒を受け取らないので、指をゆっくり広げました。
白い封筒がヒラヒラと地面に落ちていきました。
それから、愛ちゃんの手をぎゅっと握って、二度と振り返らずに二人で小走りに校舎の入口へ向かいました。
「あいつ、確かどっかの運動部の3年だよ。部活のときにあの顔、見た覚えがある」
愛ちゃんと教室に戻ると、もうみんな下校してしまったようで誰もいませんでした。
「なんか冴えないやつだったね。あれになおちゃんなんて、もったいなさ過ぎって感じ」
「だいたい3年て、もうすぐに受験じゃない?色気づいてるヒマなんてあるのかしら?」
愛ちゃんは、自分のことのようにご立腹です。
「愛ちゃん、つきあってくれてありがとうね。おかげでなんだかスッキリしたから」
私と愛ちゃんは、それから一緒に下校して、途中コンビ二でアイスの買い食いとかしながら、夏休みに何をして遊ぼうかをたくさんしゃべって、ラブレターのことは、その日のうちにすっかり忘れてしまいました。
*
*トラウマと私 02へ
*
真っ白な封筒の中に、パソコンのワープロで打ち出したらしい文字が書かれた白い紙が一枚。
「森下様
僕はあなたのことが最初に見たときからずっと好きです。
よかったら夏休み中に僕と一緒に映画でも見に行きませんか?
返事を聞かせてください。
本日11時15分に通用門のところで待っています。」
そして、あまりキレイとは言えない字で、全然知らない男性の名前が黒のボールペンで書かれていました。
これって、ひょっとしてラブレター?
読んだ瞬間は、少しビックリしましたが、すぐに私は、なんだかメンドクサイことになっちゃったなあ、と思っていました。
その頃、自分が男の子とおつきあいするなんて、まったく考えたことなかったし、そんな気も全然ありませんでした。
中二にもなれば、クラスの女子たちの中には、上級生の男子に憧れてきゃーきゃー騒いでいる子たちとか、こっそりクラスの男子とつきあっているらしい子とかもいました。
でも、当時の私は、そういったことに一切関心がありませんでした。
恋愛をしたい、という欲求自体を持っていなかったんです。
当時すでに、オナニーでイくことも覚えてしまっていたけれど、かと言って、早くセックスを経験してみたい、とも全然思っていませんでした。
初めてのブラを買ってもらったとき、母に、自分を大事にしなさいね、って諭されていましたし、当時の私の中では、セックスと恋愛はイコールだったので、まず恋愛をしなければ、セックスもありえません。
そして、私が恋愛するのは、もっと自分のからだがキレイに成長してから、たぶん高校2年生くらい、となぜだか一途に思い込んでいたんです。
なので、当時の私に、どこの誰かもわからない男子と映画を見に行く、という選択肢はありえませんでした。
この呼び出しを無視しちゃおうか、とも思ったのですが、ちゃんとお返事してあげなきゃ悪いかな、とも思いました。
誰かに相談してみよう。
こういうとき、頼りになるのは、川上愛子さんです。
同じバレエ教室に通っている縁でお友達になった川上さんは、明るく活発な人好きのする性格で、クラスの女子の中心的人物でした。
川上さんは、男子女子分け隔てなく気軽におしゃべりできちゃう人気者でしたが、スポーツや学校行事など学校生活自体を楽しむことを一番大切にしているみたいで、童顔ポニーテールなカワイイ系女子なのに、男女交際とかにはあまり興味が向かないタイプのようでした。
バレエ教室の他に陸上部にも入っていて、一年生のときの運動会でも大活躍でした。
二年生になっても川上さんを中心とする仲良しグループがみんな同じクラスになれて、愛ちゃんは、私の一番の親友になってくれていました。
私は、終業式からお教室へ帰る途中に愛ちゃんを呼び止めて、ものかげに行き、手紙を見せました。
「うわー、これラブレターじゃない?」
「そうみたいなの。愛ちゃん、この人知ってる?」
「知らない。内田ねえ・・・何年生なのかなあ?」
「・・・無視しちゃっていいかな?」
「えっ?なんかもったいなくない?カッコいい人かもしれないじゃん?」
「でも・・・私今はそんな気が全然無いの・・・男子とおつきあいするなんて・・・」
「これ、なんか、あんまり頭の良さそうな文章じゃないね・・・」
愛ちゃんは、文面と私の顔を交互にしばらく見比べてから、
「じゃあ、どんな人なのか、顔だけでも見に行かない?あたしもつきあうからさ」
興味シンシンな顔で言いました。
「見てから決めてもいいんじゃない?ヘンなやつだったら、シカトして帰っちゃえばいいよ」
笑いながら私の肩に手をかけます。
「・・・そうだね。悪いけど、愛ちゃん、後で一緒に行ってくれる?」
「もちろんっ!」
私は、どんな人だったとしてもおつきあいする気はまったく無かったのですが、一人で断りに行くよりも愛ちゃんがいてくれたほうが何十倍も心強いので、とても嬉しくなりました。
手紙で指定されていた通用門は、正門から校庭と校舎を隔てた直線上の真裏にあります。
幅5メートルくらいの横開きの門のそばには、自転車通学の人たち用の駐輪場と先生方や来客用の駐車場があって、普段は主に先生方の出入りに使われていて、下校時だけ、生徒もこの門から帰ることができます。
呼び出しの時間の5分くらい前から、私と愛ちゃんは、ちょうどいい具合に駐車場に並んで停まっていた背の高いワゴン車二台の陰に身を潜めて、誰にもみつからないように通用門を見張っていました。
「どんな人なんだろうねえ?なんだかワクワクするねえ、探偵ごっこ」
愛ちゃんが、車の陰に屈んでときどき顔だけ出して通用門を覗き見る私の右肩に顎を乗っけて、同じように通用門に目を向けながら、耳元にヒソヒソ声で囁きます。
自転車を取りに来た生徒がぱらぱらとやって来ては帰っていく以外、あまり通用門を使う人はいないようです。
呼び出しの時間になっても、人待ち顔な男子は、その付近に現れません。
「ひょっとして、そいつも、なおちゃんが現れたら出てくるつもりなんじゃないかな?」
愛ちゃんが言います。
「だとしたらそいつ、サイテーだね。自分から呼び出しといてさ」
約束の時間から5分過ぎても、通用門の前で人を待っている風な男子の姿はありませんでした。
「自分で呼び出しといて時間守らないんだから、どっちみちそいつ、サイテーなやつだよ。なおちゃん、帰ろう」
愛ちゃんはプンプン怒って、私の手を引いてその場を離れました。
クラスのお教室に戻ろうと二人で裏庭を歩き出すと、ふいに後ろから、もりしたさん、と小さく声をかけられました。
「すんません、ちょ、ちょっと時間に遅れちゃって・・・」
振り向くと、息をきらしてハアハア言っている見知らぬ男子がいました。
背は高くもなく低くもなく、太ってもなく痩せてもなく、髪も長くもなく短くもなく、顔も・・・
見て、一回目をつぶるともう忘れてしまうような、そんな顔立ちでした。
愛ちゃんも振り向いて、その男子の顔を敵意丸出しで、まっすぐに睨みつけています。
そんな愛ちゃんを見て私は、なんだかホっとしていました。
こういう人なら、お断りしてもあまり心が咎めません。
最初からまったく縁が無かったのでしょう。
私は、スカートのポケットに入れていた封筒を黙って差し出しました。
その男子は、きょとんとしたまま、封筒を受け取りません。
私は、曖昧な笑顔を浮かべて、
「これ、お返しします」
とだけ言いました。
それでも封筒を受け取らないので、指をゆっくり広げました。
白い封筒がヒラヒラと地面に落ちていきました。
それから、愛ちゃんの手をぎゅっと握って、二度と振り返らずに二人で小走りに校舎の入口へ向かいました。
「あいつ、確かどっかの運動部の3年だよ。部活のときにあの顔、見た覚えがある」
愛ちゃんと教室に戻ると、もうみんな下校してしまったようで誰もいませんでした。
「なんか冴えないやつだったね。あれになおちゃんなんて、もったいなさ過ぎって感じ」
「だいたい3年て、もうすぐに受験じゃない?色気づいてるヒマなんてあるのかしら?」
愛ちゃんは、自分のことのようにご立腹です。
「愛ちゃん、つきあってくれてありがとうね。おかげでなんだかスッキリしたから」
私と愛ちゃんは、それから一緒に下校して、途中コンビ二でアイスの買い食いとかしながら、夏休みに何をして遊ぼうかをたくさんしゃべって、ラブレターのことは、その日のうちにすっかり忘れてしまいました。
*
*トラウマと私 02へ
*
また雨の日にカクレガで 20
その日が近づいてくると、私は悩み始めました。
あの日から時間が経つにつれて客観的になってきて、やっぱり、あんな小さな男の子とそんな遊びをするのは、すごくイケナイコトだ、という気持ちが日に日に大きくなってきていました。
でも、心の片隅とからだには、あの日の快感が強烈に刻まれていて、カズキくんともっとあんなこともしたい、こんなこともされたいという気持ちもふくらんでいました。
いよいよその日が近づいてきて、会いに行くのはやめよう、とほぼ決めながらも、まだあれこれ考えていたら、ふと気づきました。
その日、会ったからと言って、またカクレガであんなことが出来るとは限りません。
晴天だったら神社にも人がいて、スカートまくりさえできないかもしれません。
でも、カズキくんに会って普通におしゃべりするだけでも、それはそれで楽しいはずです。
あの日みたいに軽い気持ちで、思い出の場所でちょっと冒険してみるみたいな感じで、過度な期待は持たないで、お友達になったカズキくんに会いに行こう。
約束の日前日に、そう決めました。
当日は、幸か不幸か、時折こまかい雨が降ったりやんだりな小雨模様のお天気でした。
朝早く起きた私は、再び真剣に悩み、迷いました。
神社の様子にもよりますが、この感じだとまた、カクレガへ行くことになりそうな気がします。
やっぱり会いに行くのはやめるべきか・・・
でも、私のからだは、すでにウズウズ疼き始めていました。
カズキくんの小さな手の感触をからだが欲していました。
そして何よりも私自身の心が、もう一度カズキくんの笑顔が見たい、会っておしゃべりがしたいと思っていました。
お友達の家に遊びに行ってくる、と母に告げ、お昼ごはんを食べてから家を出ました。
あの日と同じネイビーブルーのノースリワンピースと素足にヒール低めな白いサンダル。
バッグには、一応着替えの服と、バスタオルとタオルを多めに入れてきました。
目的の駅のトイレで、今日は着替えはしないでワンピースのまま、ショーツだけ脱いでノーパンになりました。
アソコの上の狭い範囲に、ポツポツ薄っすら陰毛が生え始めています。
私は、一回大きく深呼吸をして気持ちを落ち着けてからトイレを出て、改札を抜け、神社に向かいました。
トタン屋根の下に着いたのは、約束の時間の10分前でした。
雨は、小降りですがパラパラと降っていて、蒸しています。
ここに来るまで、神社内では誰にも会いませんでした。
神主さん一家は、今日はいるのかな?
そんなことを考えながら、トタン屋根の下でドキドキしていました。
約束の時間の5分前に、赤い傘をさした小柄な女の子が、ゆっくりとこちらに近づいて来るのが見えました。
傘を低くさしているので顔は見えませんが、白いフワフワなスカートから伸びた細い脚が、一歩一歩近づいてきます。
私の3メートルくらい前まで来て、その脚はピタっと止まり、傘が後ろに傾いて、その子の顔が見えました。
私をじーっと見つめています。
「あ、あのう・・・やましたなお子さん、ですか?」
その女の子の唇が動きました。
その女の子は、見たところ小学校高学年くらい?
夏らしい真っ白なフワフワ半袖ワンピースに白いハイソックスを履いて、通学用らしい濃茶色のローファーを履いています。
髪は、肩までの柔らかそうなウェーブヘアを白いカチューシャで留めています。
細面の、どちらかと言うと内気そうな顔立ちですが、切れ長の目が聡明そうな雰囲気も醸しだしています。
全体的には、ちょっと儚げな感じのするキレイな女の子です。
「は、はい?」
私は、少しドギマギしながら答えました。
「わたしは、今日カズくん・・・あっ、サトナカカズキくんに頼まれて、ここに来ました・・・ナガオカミキっていいます・・・」
落ち着いた感じのよく通る声質です。
「は、はい?」
「えーっと・・・みきねーちゃん・・・」
「ああっ!あのバトンの?・・・」
「はいっ!」
ミキちゃんがニコっと笑いました。
「カズくんは、今日ここに来れないんです。それでわたしがカズくんに頼まれて、なお子さんにこれを渡すようにって・・・」
ミキちゃんが、可愛らしい女の子がペロっと舌を出しているイラストが描かれた赤くて平べったいキャンディの空き缶を私に差し出してきました。
空き缶は、セロテープで厳重に封がされていて、振るとカタカタ音がします。
「中に手紙が入ってるんだと思います。わたしの目の前で読んでもらって、その様子を後で教えて欲しいって、カズくんに頼まれました」
私は、悪い予感を感じながら、その缶に巻かれたテープを苦労して剥がしました。
缶を開くと、キレイに折りたたまれた手紙らしき紙片と、ぐるぐる巻きにした封筒に入った何か小さな塊が入っていました。
私はまず、紙片を広げました。
そこには、縦書きの便箋に丁寧にエンピツで書かれた、カズキくんからのメッセージが書かれていました。
「なお子お姉さんへ
ごめんなさい。ぼくは、今日おやくそくを守ることができません。
ぼくのお父さんとお母さんがきゅうにりこんすることになって、
ぼくは、お父さんといっしょに、とおくの町でくらすことになりました。
ぼくは、すごくくやしいです。
なお子お姉さんともう一どあそびたかったです。
おやくそくを守れなくて、本当にごめんなさい。
お姉さんからもらったうでどけいは、一生大切にします。
あと、かくれがのかぎをお姉さんにあげます。
けんちゃんのお父さんにかえしに行ったら、
おまえが思い出のためにもっていろ、と言われました。
ぼくは、なお子お姉さんが思い出になってほしいので、このかぎをあげます。
ぼくは、本当にかなしいです。
なお子お姉さんにもう一どあいたかったです。
さようなら」
手紙を読んでいる途中から、私の目から大粒の涙が次々に溢れ出てきて、手紙の上にポタポタと落ちました。
手紙を読み終えて、封筒を広げて開けてみると、中から、あの未来から来たネコ型ロボットのフィギュアが付いたキーホルダーが出てきて、一本だけ小さな鍵がぶら下がっていました。
それを見た途端、私はその場に崩れるようにしゃがみ込んで、顔を膝に埋めて本格的に泣き始めてしまいました。
いつの間にかミキちゃんが私の隣に来ていて、同じようにしゃがんで、私の背中をゆっくりとやさしく、さすってくれていました。
「一週間前の夜に、カズくんがわたしの家に、真剣な顔をして来たんです・・・」
ミキちゃんが背中をさすってくれていた手を止めて、震えている私の肩を抱くような形で身を寄せてきて、小さな声で話し始めました。
「最初は、カズくん、すごく興奮していて、何を言いたいのかわからなかったのだけれど・・・」
「カズくんのご両親が離婚することは、知っていました。わたし、あやっち、あ、えーと、カズくんのお姉ちゃんと同じクラスだから・・・」
だとするとミキちゃん、中学一年なんだ・・・
私も、意外な成り行きの最初の衝撃がちょっと収まってきて、膝から顔を上げてミキちゃんのほうを向きました。
カズキくんからみきねーちゃんのことを聞いたときから、みきねーちゃんって小学校5年生くらいの女の子って、勝手に思い込んでいました。
「なんでも、二週間くらい前に神社で、すっごくキレイな大人の女の人とお友達になって、今度の土曜日にまた会う約束をしたのだけれど、カズくんが急に引越しちゃうことになったから、約束守れないから、わたしが代わりに行って謝って欲しい、ってことでした」
「わたし、最初はめんどくさいなあ、って思っちゃって・・・お姉ちゃんに行ってもらえばいいじゃない、って言っちゃって・・・ごめんなさい」
ミキちゃんが私の顔を見つめて、ニコっと笑いました。
「あやっちは、お母さんと一緒にまだしばらくこっちで暮らすんです」
「でも、カズくんは、どうしてもみきねーちゃんじゃなきゃダメなんだ、って言い張るんです」
「わたしが、なんでわたしじゃなきゃダメなの?って聞いたら・・・」
「そのお姉さん、つまり、なお子さんとわたしが、なんとなく雰囲気が似ているからって言うんです」
「カズくん、なお子さんのこと、すごくキレイだキレイだ、って何度も言ってたから、わたしもそんな人に似ているって言われて、ちょっと嬉しかったりもして・・・」
「それで、ちょっと好奇心湧いちゃって、そのお姉さんと、どんなことして遊んだのか教えてくれたら行ってあげる、って言ってみたら、カズくん、顔真っ赤になっちゃって・・・」
「でも、普通におしゃべりしただけ、って言い張って、具体的なことは、何も教えてくれませんでした。あと、みきねーちゃんのバトンをちょっと借りた、って言ってました」
私の顔が赤くなってしまいます。
「カズくんは、今週の木曜日に、迎えに来たお父さんと一緒に引越していきました」
ミキちゃんは、しんみりとそう言ってから、急に顔を上げて、まっすぐに私を見つめます。
「でも、今日、来て良かった。なお子お姉さん、本当にステキですね」
言いながら、ミキちゃんがゆっくりと立ち上がりました。
私も誘われるように、ゆっくり立ち上がります。
「ねえ、なお子お姉さん。カズくんとカクレガで、何して遊んだんですか?」
ミキちゃんが、軽く首をかしげてイタズラっぽく聞いてきます。
私は、答えられるはずがありません。
それにしてもミキちゃん、中学生になってもまだ、小学生の男の子たちと一緒にお医者さんごっこの患者さん役をしているのでしょうか?
あらためてミキちゃんの全身を上から下まで眺めてしまいます。
身長は、私より5センチくらい低いから150センチまん中くらい?
胸もまだそんなに膨らんでいないみたい。
もう初潮は来たのかな?
そんなことを考えながらうつむいて黙っていると、ミキちゃんがゆっくりと建物の軒下のほうに数歩、歩いて行ってから立ち止まりました。
「なお子お姉さん・・・」
私に小さく手招きしています。
「そこに立ってくれますか?」
ミキちゃんの50センチくらい前を指さします。
私たちは、向かい合いました。
ミキちゃんの両手がゆっくりと下へ伸びていき、自分のフワフワな白いスカートの裾をつまむと、またゆっくりと上にまくり上げていきます。
「・・・見てください・・・」
ミキちゃんの白くて細い両腿の付け根付近が徐々に現れてきます。
ミキちゃんは、下着を着けていませんでした。
薄っすらと生え始めたわずかな陰毛に飾られたミキちゃんの幼いアソコが私の目に映りました。
ミキちゃんは、スカートの裾を握ったまま、少し頬を染めて私の顔を潤んだ瞳で見つめています。
「なお子お姉さんのも、見せてくれませんか。今、ノーパンですよね?さっきしゃがんだとき、ちょっと見えました・・・」
ミキちゃんがまたイタズラっぽく微笑みます。
「・・・それともこれから、わたしと二人でカクレガ、行きましょうか?・・・」
*
*
*
あの日から時間が経つにつれて客観的になってきて、やっぱり、あんな小さな男の子とそんな遊びをするのは、すごくイケナイコトだ、という気持ちが日に日に大きくなってきていました。
でも、心の片隅とからだには、あの日の快感が強烈に刻まれていて、カズキくんともっとあんなこともしたい、こんなこともされたいという気持ちもふくらんでいました。
いよいよその日が近づいてきて、会いに行くのはやめよう、とほぼ決めながらも、まだあれこれ考えていたら、ふと気づきました。
その日、会ったからと言って、またカクレガであんなことが出来るとは限りません。
晴天だったら神社にも人がいて、スカートまくりさえできないかもしれません。
でも、カズキくんに会って普通におしゃべりするだけでも、それはそれで楽しいはずです。
あの日みたいに軽い気持ちで、思い出の場所でちょっと冒険してみるみたいな感じで、過度な期待は持たないで、お友達になったカズキくんに会いに行こう。
約束の日前日に、そう決めました。
当日は、幸か不幸か、時折こまかい雨が降ったりやんだりな小雨模様のお天気でした。
朝早く起きた私は、再び真剣に悩み、迷いました。
神社の様子にもよりますが、この感じだとまた、カクレガへ行くことになりそうな気がします。
やっぱり会いに行くのはやめるべきか・・・
でも、私のからだは、すでにウズウズ疼き始めていました。
カズキくんの小さな手の感触をからだが欲していました。
そして何よりも私自身の心が、もう一度カズキくんの笑顔が見たい、会っておしゃべりがしたいと思っていました。
お友達の家に遊びに行ってくる、と母に告げ、お昼ごはんを食べてから家を出ました。
あの日と同じネイビーブルーのノースリワンピースと素足にヒール低めな白いサンダル。
バッグには、一応着替えの服と、バスタオルとタオルを多めに入れてきました。
目的の駅のトイレで、今日は着替えはしないでワンピースのまま、ショーツだけ脱いでノーパンになりました。
アソコの上の狭い範囲に、ポツポツ薄っすら陰毛が生え始めています。
私は、一回大きく深呼吸をして気持ちを落ち着けてからトイレを出て、改札を抜け、神社に向かいました。
トタン屋根の下に着いたのは、約束の時間の10分前でした。
雨は、小降りですがパラパラと降っていて、蒸しています。
ここに来るまで、神社内では誰にも会いませんでした。
神主さん一家は、今日はいるのかな?
そんなことを考えながら、トタン屋根の下でドキドキしていました。
約束の時間の5分前に、赤い傘をさした小柄な女の子が、ゆっくりとこちらに近づいて来るのが見えました。
傘を低くさしているので顔は見えませんが、白いフワフワなスカートから伸びた細い脚が、一歩一歩近づいてきます。
私の3メートルくらい前まで来て、その脚はピタっと止まり、傘が後ろに傾いて、その子の顔が見えました。
私をじーっと見つめています。
「あ、あのう・・・やましたなお子さん、ですか?」
その女の子の唇が動きました。
その女の子は、見たところ小学校高学年くらい?
夏らしい真っ白なフワフワ半袖ワンピースに白いハイソックスを履いて、通学用らしい濃茶色のローファーを履いています。
髪は、肩までの柔らかそうなウェーブヘアを白いカチューシャで留めています。
細面の、どちらかと言うと内気そうな顔立ちですが、切れ長の目が聡明そうな雰囲気も醸しだしています。
全体的には、ちょっと儚げな感じのするキレイな女の子です。
「は、はい?」
私は、少しドギマギしながら答えました。
「わたしは、今日カズくん・・・あっ、サトナカカズキくんに頼まれて、ここに来ました・・・ナガオカミキっていいます・・・」
落ち着いた感じのよく通る声質です。
「は、はい?」
「えーっと・・・みきねーちゃん・・・」
「ああっ!あのバトンの?・・・」
「はいっ!」
ミキちゃんがニコっと笑いました。
「カズくんは、今日ここに来れないんです。それでわたしがカズくんに頼まれて、なお子さんにこれを渡すようにって・・・」
ミキちゃんが、可愛らしい女の子がペロっと舌を出しているイラストが描かれた赤くて平べったいキャンディの空き缶を私に差し出してきました。
空き缶は、セロテープで厳重に封がされていて、振るとカタカタ音がします。
「中に手紙が入ってるんだと思います。わたしの目の前で読んでもらって、その様子を後で教えて欲しいって、カズくんに頼まれました」
私は、悪い予感を感じながら、その缶に巻かれたテープを苦労して剥がしました。
缶を開くと、キレイに折りたたまれた手紙らしき紙片と、ぐるぐる巻きにした封筒に入った何か小さな塊が入っていました。
私はまず、紙片を広げました。
そこには、縦書きの便箋に丁寧にエンピツで書かれた、カズキくんからのメッセージが書かれていました。
「なお子お姉さんへ
ごめんなさい。ぼくは、今日おやくそくを守ることができません。
ぼくのお父さんとお母さんがきゅうにりこんすることになって、
ぼくは、お父さんといっしょに、とおくの町でくらすことになりました。
ぼくは、すごくくやしいです。
なお子お姉さんともう一どあそびたかったです。
おやくそくを守れなくて、本当にごめんなさい。
お姉さんからもらったうでどけいは、一生大切にします。
あと、かくれがのかぎをお姉さんにあげます。
けんちゃんのお父さんにかえしに行ったら、
おまえが思い出のためにもっていろ、と言われました。
ぼくは、なお子お姉さんが思い出になってほしいので、このかぎをあげます。
ぼくは、本当にかなしいです。
なお子お姉さんにもう一どあいたかったです。
さようなら」
手紙を読んでいる途中から、私の目から大粒の涙が次々に溢れ出てきて、手紙の上にポタポタと落ちました。
手紙を読み終えて、封筒を広げて開けてみると、中から、あの未来から来たネコ型ロボットのフィギュアが付いたキーホルダーが出てきて、一本だけ小さな鍵がぶら下がっていました。
それを見た途端、私はその場に崩れるようにしゃがみ込んで、顔を膝に埋めて本格的に泣き始めてしまいました。
いつの間にかミキちゃんが私の隣に来ていて、同じようにしゃがんで、私の背中をゆっくりとやさしく、さすってくれていました。
「一週間前の夜に、カズくんがわたしの家に、真剣な顔をして来たんです・・・」
ミキちゃんが背中をさすってくれていた手を止めて、震えている私の肩を抱くような形で身を寄せてきて、小さな声で話し始めました。
「最初は、カズくん、すごく興奮していて、何を言いたいのかわからなかったのだけれど・・・」
「カズくんのご両親が離婚することは、知っていました。わたし、あやっち、あ、えーと、カズくんのお姉ちゃんと同じクラスだから・・・」
だとするとミキちゃん、中学一年なんだ・・・
私も、意外な成り行きの最初の衝撃がちょっと収まってきて、膝から顔を上げてミキちゃんのほうを向きました。
カズキくんからみきねーちゃんのことを聞いたときから、みきねーちゃんって小学校5年生くらいの女の子って、勝手に思い込んでいました。
「なんでも、二週間くらい前に神社で、すっごくキレイな大人の女の人とお友達になって、今度の土曜日にまた会う約束をしたのだけれど、カズくんが急に引越しちゃうことになったから、約束守れないから、わたしが代わりに行って謝って欲しい、ってことでした」
「わたし、最初はめんどくさいなあ、って思っちゃって・・・お姉ちゃんに行ってもらえばいいじゃない、って言っちゃって・・・ごめんなさい」
ミキちゃんが私の顔を見つめて、ニコっと笑いました。
「あやっちは、お母さんと一緒にまだしばらくこっちで暮らすんです」
「でも、カズくんは、どうしてもみきねーちゃんじゃなきゃダメなんだ、って言い張るんです」
「わたしが、なんでわたしじゃなきゃダメなの?って聞いたら・・・」
「そのお姉さん、つまり、なお子さんとわたしが、なんとなく雰囲気が似ているからって言うんです」
「カズくん、なお子さんのこと、すごくキレイだキレイだ、って何度も言ってたから、わたしもそんな人に似ているって言われて、ちょっと嬉しかったりもして・・・」
「それで、ちょっと好奇心湧いちゃって、そのお姉さんと、どんなことして遊んだのか教えてくれたら行ってあげる、って言ってみたら、カズくん、顔真っ赤になっちゃって・・・」
「でも、普通におしゃべりしただけ、って言い張って、具体的なことは、何も教えてくれませんでした。あと、みきねーちゃんのバトンをちょっと借りた、って言ってました」
私の顔が赤くなってしまいます。
「カズくんは、今週の木曜日に、迎えに来たお父さんと一緒に引越していきました」
ミキちゃんは、しんみりとそう言ってから、急に顔を上げて、まっすぐに私を見つめます。
「でも、今日、来て良かった。なお子お姉さん、本当にステキですね」
言いながら、ミキちゃんがゆっくりと立ち上がりました。
私も誘われるように、ゆっくり立ち上がります。
「ねえ、なお子お姉さん。カズくんとカクレガで、何して遊んだんですか?」
ミキちゃんが、軽く首をかしげてイタズラっぽく聞いてきます。
私は、答えられるはずがありません。
それにしてもミキちゃん、中学生になってもまだ、小学生の男の子たちと一緒にお医者さんごっこの患者さん役をしているのでしょうか?
あらためてミキちゃんの全身を上から下まで眺めてしまいます。
身長は、私より5センチくらい低いから150センチまん中くらい?
胸もまだそんなに膨らんでいないみたい。
もう初潮は来たのかな?
そんなことを考えながらうつむいて黙っていると、ミキちゃんがゆっくりと建物の軒下のほうに数歩、歩いて行ってから立ち止まりました。
「なお子お姉さん・・・」
私に小さく手招きしています。
「そこに立ってくれますか?」
ミキちゃんの50センチくらい前を指さします。
私たちは、向かい合いました。
ミキちゃんの両手がゆっくりと下へ伸びていき、自分のフワフワな白いスカートの裾をつまむと、またゆっくりと上にまくり上げていきます。
「・・・見てください・・・」
ミキちゃんの白くて細い両腿の付け根付近が徐々に現れてきます。
ミキちゃんは、下着を着けていませんでした。
薄っすらと生え始めたわずかな陰毛に飾られたミキちゃんの幼いアソコが私の目に映りました。
ミキちゃんは、スカートの裾を握ったまま、少し頬を染めて私の顔を潤んだ瞳で見つめています。
「なお子お姉さんのも、見せてくれませんか。今、ノーパンですよね?さっきしゃがんだとき、ちょっと見えました・・・」
ミキちゃんがまたイタズラっぽく微笑みます。
「・・・それともこれから、わたしと二人でカクレガ、行きましょうか?・・・」
*
*
*
登録:
コメント (Atom)