そんなことを考えていたら扉が開き、お姉さまが戻ってこられました。
大きな袋を抱えていました。
お姉さまが袋をガサゴソやって、いろんなものを取り出し始めました。
「まずこれね」
最初に手渡されたのは、大きなレジャーシート。
「これを敷いて、フロアの真ん中あたりでやりなさい。これだけ大きければ床を汚すことはないでしょ?」
次に渡されたのは、お店の試着室で使ったバスタオル。
「新しいのじゃなくてごめんね。でもいいわよね?全部あなたのおツユだし」
お姉さまは、たまにすっごくイジワルクなるみたい。
「終わったら、そのシートを汚したおツユは、このバスタオルで拭きとって。ざっとでいいからね」
「そうだっ!あなた、タンポンはどうした?」
「まだ入っています。もう役に立っていないみたいだけれど・・・」
「じゃあ、それ抜いたら、それもこのバスタオルにちゃんと包んでおいて。この部屋に使用済みタンポンが落ちていたなんてことになったら、大変なことになっちゃうから」
お姉さまが笑いながらおっしゃいました。
最後に渡されたのは、何かジャラジャラ音がするものが入った紙袋。
「それは、防音の部屋の中に入ってから開けてね」
「あと、中に入ったら、照明はなるべく明るくしてね。暗くされちゃうとこっち側からよく見えないから。いやらしい姿をよーく見てもらいたいのでしょう?あなたは」
「入ってすぐ左の壁に、照明のスイッチがあるから」
「時間は30分。今4時40分くらいだから、5時10分くらいまで。延長はあなたの熱演しだいね」
「それじゃあ、いい?」
私がコクンとうなずくと、お姉さまは私の手を取って防音のお部屋のドアのところまで見送ってくださいました。
「あなたの気が散らないように、最初のうちは、あまり覗かないから」
お姉さまがまた、やさしいキスをくれました。
そして、私の耳元でセクシーに囁きました。
「愉しんで。そして、あたしも愉しませて・・・」
防音のお部屋に入り、お言いいつけ通りに照明のスイッチを全部点けました。
スライド式になっていて、全部上げると、恥ずかしいくらい明るくなりました。
機械のお部屋にいたときに確認した、あの窓から一番見やすそうな位置まで行き、レジャーシートを広げます。
シートの中心に自分がくるようにシートを再調整してからサンダルを脱ぎ、シートにあがりました。
シートの中心にしゃがみ込んで、まず、渡されたバスタオルを出します。
やっぱり、なまぐさい臭いを放っていました。
その臭いをかいだだけでクラクラしてしまうほど。
次に、中で開けて、と言われた紙袋を覗き込みます。
いろいろなものが入っているようなので、シートの上に袋からぶちまけてみました。
中に入っていたのは・・・
木製の洗濯バサミたくさん。
ルレット2本。
タコ糸とはさみ。
洗濯バサミにぶら下げられる錘4個。
縄手錠2組。
バターナイフ。
塗るとスースーする塗り薬・・・私の愛用品と同じブランドのものでした。
アイマスク。
これはっ!
これってなんなんでしょう?
私がいつも、自宅でのオナニーで使っているものばかりです。
と言うか、使いたくないものは一つも入っていなくて、私の好きなものばかりが入っていました。
ひょっとしたら、私の自宅オナニーを見られていたのではないか、と思えるくらい見事な一致でした。
なぜだかとても、せつない気持ちになってしまいました。
お姉さまは、今日お逢いしたばかりなのにすでに、私のすべてをわかってくださっている・・・
せめてお洋服だけでもお姉さまに脱がせてもらおうと思い、ドアのところまで裸足で駆け出しました。
でもドアは、向こう側から鍵をかけたようで、開きませんでした。
ドアのガラス越しに見てみると、お姉さまは機械のお部屋にもいないみたいです。
おトイレにでも行かれたのかな?と考えながら、とぼとぼ元の位置に戻りました。
まさか、知らない人たちを大勢連れてきて、あの窓越しに見世物にされたりして・・・
いえいえ。
あのお姉さまが、そんなことをするはずありません。
気を取り直します。
素敵なお姉さまに本当の私を、いやらしいヘンタイな私を余すところなくお見せしよう、そう決心しました。
今だったら、このお道具を使わなくても、かんたんに何回でもイケそうです。
でも・・・
立ち上がって、まずブラウスのボタンをはずしました。
今日、これで何度目でしょう。
つづいて、スカートも取りました。
お姉さまに着けていただいたブラをはずします。
乳首は、まだ思いっきり尖っています。
今日は、一日中尖りっぱなしみたい。
最後は、お姉さまに穿かせていただいたパンティです。
お姉さまが結んでくれた紐が、両方とも解けないように、慎重にずり下げました。
これでまた、全裸。
お家ではない、見知らぬ場所で全裸。
脱いだ服を全部丁寧にたたんで、シートの隅のほうに置きました。
元の位置に戻ってしゃがみ、機械のお部屋の窓のほうを向いてゆっくりM字開脚しました。
お姉さまの姿は見えません。
タンポンの紐をゆっくり引っぱります。
ぐっしょり、重さと太さが増したタンポンが徐々に、私の膣壁を擦りながら出てきました。
「んううううーー」
声を押し殺す必要もなく、普通に出せるのが気持ちいい。
録音スタジオって聞いたせいか、声がよく響いている気もしました。
抜き出したタンポンは、お言いつけ通りにバスタオルのところまで行って置きました。
機械のお部屋の窓のほうを、もう一度見てみます。
まだ、お姉さまの姿は見えません。
ムラムラが強いときにいつもお家でやっている手順でオナニーすることにしました。
それを、お姉さまに視てもらいたいのです。
しゃがんでいたお尻をシートにペタンと下ろし、両脚を大きく横に広げました。
スースーする塗り薬を右手人差し指にたっぷり取り、背伸びしている左の乳首に擦りつけました。
尖った乳首にジーーンと冷気が走り、股間がヌルっとゆるんできます。
とくに今日は何をやっても、からだが異常に反応しちゃうみたい。
次に右乳首。
「あっ、あんっ、んー!」
自分でもびっくりするくらい、大きな声が出てしまいました。
考えてみれば、お家でやってるときも、自然と声は抑えめにしています。
いくらお部屋に防音が施してあると言っても、そこは日常の空間。
なかなか思いっきりは出しません。
こんなに自由に声を出してオナニーするのは、いつ以来だろう。
そしてクリトリスへ。
その前にもう一度、塗り薬の缶を取り、指の腹にたっぷり乗せました。
そう言えば今日、自分でクリトリスにさわるのも、初めてでした。
お姉さまにも、直には一回しかさわってもらっていませんでした。
声を出しちゃいけない状況がつづいていたので、自分でさわるのを、がまんしていたのも事実です。
広げた両脚をV字のまま空中に高く上げて、少し後ろに反って腰を上げ、窓のほうにお尻を突き出しました。
クリトリスに近づけていく右腕が、ちょっこと震えていました。
ものすごいことになりそうな予感がします。
塗り薬を盛った右手の人差し指が、テラテラのクリトリスに触れました。
「あーーーっ!」
「あっあっあっ、うーんーっ!」
触れた途端に頭の中がスパークして、気持ちいい電流が全身を駆け巡りました。
腰全体がビクンビクン波打っています。
上げていた両脚は、力無くシートにM字の形で着地していました。
私の右手は、自分が意識するよりも先に、アソコ全体を上下に激しく擦っていました。
中指と薬指が穴の中に潜り込んで激しく内壁をかき回しています。
「あんっあんっあんっあんっ!」
左手全体をおっぱいに擦りつけて激しく上下させ、人差し指と中指が右の乳首をちぎれるような強さでつまんでいました。
「あうあうあうあう」
何度も何度も強い快感がからだを駆け巡り、やがて右腕と左腕のリズムが一緒になり、快感にのけぞるに連れて、仰向けのお腹だけが段々とせり上がってきました。
ブリッジしているみたいな格好から首だけ無理やり起こして、あの窓に目をやります。
お姉さまが頬杖ついて、こちらを眺めているのが見えたとき、今まで味わったことのない快感の波が私のからだを蹂躙しました。
「あーんんー、あっ、あーんっ、あーんっあー、んんんっ!!!」
二本の腕の動きが段々ゆっくりになり、ついに最後は、だらんとシートに垂れました。
私はしばらく、仰向けのまま起き上がれませんでした。
からだ中の皮膚が、ヒクヒクうごめいていました。
まだまだこれからよ、せっかくお姉さまが視てくださっているのだから・・・
自分に言い聞かせてヨロヨロと立ち上がり、窓の向こうを見上げました。
お姉さまがニッコリ笑い、小さく手を振ってくださいました。
私もニッて笑い返してシートに座り直し、第2ラウンドの準備を始めました。
*
*ランジェリーショップ 11へ
*
直子のブログへお越しいただきまして、ありがとうございます。ここには、私が今までに体験してきた性的なあれこれを、私が私自身の思い出のために、つたない文章で書きとめておいたノートから載せていくつもりです。
2010年6月13日
ランジェリーショップ 09
手をつないだままお店を出て、ファッション関係のショップが並ぶ通路をゆっくりと歩いていきました。
お姉さまは空いたほうの手に、さっき私のために使ったバスタオルを入れたビニール袋と、同じくらいの大きさの別なビニール袋を持っていました。
日曜日なのでお買い物客もたくさん歩いていて、ときどき、その人たちを避けるために手が離れてしまいますが、またしっかりつなぎます。
でも、おそろいのサングラスした妙齢の女性がふたり、手をつないで歩いている、って世間的にはどうなのでしょう?
私は嬉しいけれど。
「お姉さまって、店長さんなのですね?」
さっきから聞きたくて、うずうずしてたことを切り出しました。
「うん。そう、今はね」
「すごいですね」
「あたし、この手の仕事、けっこう長いからね。それにスタッフにも恵まれているのよ」
「サトミさん、でしたっけ?」
「うん。サトミは、とくによくできた子よ」
ここで私は、ちょっとためらいがちな口調になります。
「あの・・・さっきみたいなことになったときって、サトミさん、どうされているのですか?」
「しっかり見張りしているわよ。さりげなくBGMの音量上げたり、うるさめの曲に変えたりなんかして・・・」
お姉さまは、くくっ、と小さく笑いました。
そんなことしていたんだ?
ぜんぜん、気がつかなかった・・・
ここで私は、またちょっと口ごもりました。
「あのう・・・。ああいうことって、私以外でもよくあるのですか?」
聞いてしまった・・・
答えを聞きたくない疑問を聞いてしまった・・・
お姉さまは、少し考えてから、
「よくある、ってわけじゃないけれど・・・いろんな子がいるし・・・サトミも最初はお客さんだったし・・・」
「・・・」
「あ。着いたわ」
気がつくと、ファッションビルの縦長なフロアを縦断して、関係者以外立入禁止、と大きく書かれている鉄の扉の前に来ていました。
「ちょっと待ってて」
お姉さまは、私の手を離すとワンピースのポケットから鍵の束を取り出し、手馴れた手つきで鍵穴に差込みました。
扉を引いて中へ入り、お姉さまが内側からの鍵をカチリとまわしました。
そして、なぜだか二人同時に、サングラスをはずしました。
その先は、エレベーターホールになっていました。
私はどこへ連れていかれるのだろう?
ふたりで手をつないだまま、エレベーターが来るのを待ちました。
ほどなくエレベーターが到着し、扉が開きます。
誰も乗っていません。
エレベーターの中に入ると、お姉さまは9階のボタンを押しました。
エレベーターが上昇を始めるのを待って、
「それで・・・」
と、私が口を開こうとした瞬間、お姉さまは持っていた荷物を床に落とし、乱暴に私を抱き寄せ、激しく唇を重ねてきました。
お姉さまの舌が私の口にねじ込まれて、私の舌や唇を激しく吸ってきました。
一瞬戸惑った私ですが、すぐに欲情してお姉さまの舌を激しく求めます。
私の両腕は、お姉さまのなめらかな背中と細いウエストをしっかり抱き寄せ、絡みついていました。
あごから、ふたりのよだれがしたたり落ちていきました。
でもそれもつかの間。
チーンッ!
電子レンジのような間抜けな音がして、エレベーターは停止し、扉が開きました。
ふたりで顔を見合わせて、お互いのあごのよだれを手で拭いながら、
「うふふ」
って、照れ笑い。
お姉さまが荷物を拾い、またふたり、よだれまみれの手をつないでエレベーターの外に出ました。
そこは、会社のオフィスのような雰囲気の空間でした。
背の高いパーテーションで仕切られた小さなお部屋が、いくつもあるようです。
お姉さまと私は、奥へ奥へと歩いていきました。
「ここはね、このビルの事務所兼控え室みたいなところ。休憩のときとかに使うの」
「ちなみに、このフロアは女性オンリー。男性立入禁止なの」
「つまり、私はここで、つづきをやらせてもらえるのですか?」
少し照れながら聞きました。
「そういうこと」
でも、こんなパーテーションで仕切られただけだと、大きな声出したらフロア中に響いちゃう・・・
心配になってきました。
何回も曲がり角を曲がりました。
洗濯機が3つ並んでいるところや、水道の蛇口が五つ並んでいるところがありました。
「なんでもあるわよ。シャワーもあるんのだけれど、残念ながら日曜日は使えないの。ごめんね?」
「ううん」
そんなことをお話しているうちに、エレベーター側から正反対のフロア隅に着いたようです。
「あそこ」
お姉さまが指さしたほうを見ると、頑丈そうなガラスが何枚もはまっている重そうなドアのお部屋が見えました。
お姉さまがまた、ポケットから鍵束を出して、一つを鍵穴に差し込みました。
重い外開きのドアを引いて中へ入ると、お部屋の中には、何か見慣れない機械?装置?がたくさん並んでいました。
「ここはね、館内放送とかの素材を作るための録音スタジオ。今はほとんど使われていないのだけれどね」
「館内放送は、今はこの階の下の放送ブースでやっているし」
「前にこのビルに入っていたデパートが残していったものらしいわ」
私がピアノを習っていた頃、こういうふうな重い扉のお部屋に入ったことはありましたが、本格的な録音スタジオなんて見るのは初めてだったので、なんだかキョロキョロしちゃいました。
「で、あなたが楽しむのは、こっちの部屋」
ずらっと並んでいる機械?装置?の隙間にもう一枚の、これまた頑丈そうなドアがあります。
そのドアを開くと、十二帖ほどの広さの、何一つ置いていない薄暗い空間がありました。
「完全防音。ここで楽器演奏とかしていたのでしょうね」
床にはグレーの薄い絨毯が敷いてあって、ちょこっとカビ臭いかな?
壁が鏡張りならバレエスタジオっぽい雰囲気もあります。
さっきいた機械のあるお部屋に大きな窓ガラスがはまっていて、そこから、こっちのお部屋の様子を見ることが出来る、という仕組みになっているみたいです。
機械のお部屋に戻って、お姉さまと並んでソファーに腰掛けました。
「あの部屋なら、あなたがどんなに大きなヨガリ声を出したって、平気なはずよ?」
お姉さまがイジワルくおっしゃいます。
「だからあなたは、あの部屋で思う存分楽しんでね」
「えっ?お姉さまは?」
「あたしも一緒になってやっちゃったら、誰が見張り番するのよ?」
「ここの責任者もあたしのツレだから、だいじょうぶとは思うけれど、めんどくさい人にみつかっちゃうとめんどくさいことになっちゃうからね」
「だから、残念だけれど、じゃなくて、かわいそうだけれど、あたしは手伝えないの」
「あなた一人で、楽しみなさい。あたしはそんなあなたを視て、愉しむから」
「そんなに寂しそうな顔しないの。安心して、あなたのオナニー、録音したりしないから」
からかうように笑ったお姉さまはまた、私の唇に自分の唇を重ねてきました。
今度は、ソフトでやさしく蕩けるようなキスでした。
私は、思い切りお姉さまのからだを抱きしめてしまいます。
互いのお洋服越しに、お姉さまのおっぱいが私のおっぱいにあたります。
それは予想通り、ちょっと硬い感じのおっぱいでした。
私がお姉さまの胸元に手を差し込もうか、と迷っているところで、やさしくからだを離されました。
「さあ、それでは始めていただきましょう!」
お姉さまがおどけた感じでおっしゃいました。
「ねえ?何か道具いる?バイブとか?」
私は少し考えてから、
「ううん。いらないです。今日なら指だけでも何回でもイけそうだから・・・」
「本当にいやらしい子・・・」
お姉さまの目がまっすぐに私の顔を見つめてきます。
「あっ、でもあなた、愛液多いのよね?あんまり床を汚しちゃってもあれだから・・・ちょっと待ってて」
お姉さまが重い扉を押し開けて、機械のお部屋を出ていきました。
今日は、なんていう日なのだろう。
一人で残された私は考えます。
つい数時間前からの出来事が、まるで夢のようです。
そして、それはまだ終わりません。
今度は、素敵なお姉さまの目の前で、私の本気オナニーをご披露するのです。
そう言えばまだ、お姉さまのお名前、まだ聞いていなかったな・・・
*
*ランジェリーショップ 10へ
*
お姉さまは空いたほうの手に、さっき私のために使ったバスタオルを入れたビニール袋と、同じくらいの大きさの別なビニール袋を持っていました。
日曜日なのでお買い物客もたくさん歩いていて、ときどき、その人たちを避けるために手が離れてしまいますが、またしっかりつなぎます。
でも、おそろいのサングラスした妙齢の女性がふたり、手をつないで歩いている、って世間的にはどうなのでしょう?
私は嬉しいけれど。
「お姉さまって、店長さんなのですね?」
さっきから聞きたくて、うずうずしてたことを切り出しました。
「うん。そう、今はね」
「すごいですね」
「あたし、この手の仕事、けっこう長いからね。それにスタッフにも恵まれているのよ」
「サトミさん、でしたっけ?」
「うん。サトミは、とくによくできた子よ」
ここで私は、ちょっとためらいがちな口調になります。
「あの・・・さっきみたいなことになったときって、サトミさん、どうされているのですか?」
「しっかり見張りしているわよ。さりげなくBGMの音量上げたり、うるさめの曲に変えたりなんかして・・・」
お姉さまは、くくっ、と小さく笑いました。
そんなことしていたんだ?
ぜんぜん、気がつかなかった・・・
ここで私は、またちょっと口ごもりました。
「あのう・・・。ああいうことって、私以外でもよくあるのですか?」
聞いてしまった・・・
答えを聞きたくない疑問を聞いてしまった・・・
お姉さまは、少し考えてから、
「よくある、ってわけじゃないけれど・・・いろんな子がいるし・・・サトミも最初はお客さんだったし・・・」
「・・・」
「あ。着いたわ」
気がつくと、ファッションビルの縦長なフロアを縦断して、関係者以外立入禁止、と大きく書かれている鉄の扉の前に来ていました。
「ちょっと待ってて」
お姉さまは、私の手を離すとワンピースのポケットから鍵の束を取り出し、手馴れた手つきで鍵穴に差込みました。
扉を引いて中へ入り、お姉さまが内側からの鍵をカチリとまわしました。
そして、なぜだか二人同時に、サングラスをはずしました。
その先は、エレベーターホールになっていました。
私はどこへ連れていかれるのだろう?
ふたりで手をつないだまま、エレベーターが来るのを待ちました。
ほどなくエレベーターが到着し、扉が開きます。
誰も乗っていません。
エレベーターの中に入ると、お姉さまは9階のボタンを押しました。
エレベーターが上昇を始めるのを待って、
「それで・・・」
と、私が口を開こうとした瞬間、お姉さまは持っていた荷物を床に落とし、乱暴に私を抱き寄せ、激しく唇を重ねてきました。
お姉さまの舌が私の口にねじ込まれて、私の舌や唇を激しく吸ってきました。
一瞬戸惑った私ですが、すぐに欲情してお姉さまの舌を激しく求めます。
私の両腕は、お姉さまのなめらかな背中と細いウエストをしっかり抱き寄せ、絡みついていました。
あごから、ふたりのよだれがしたたり落ちていきました。
でもそれもつかの間。
チーンッ!
電子レンジのような間抜けな音がして、エレベーターは停止し、扉が開きました。
ふたりで顔を見合わせて、お互いのあごのよだれを手で拭いながら、
「うふふ」
って、照れ笑い。
お姉さまが荷物を拾い、またふたり、よだれまみれの手をつないでエレベーターの外に出ました。
そこは、会社のオフィスのような雰囲気の空間でした。
背の高いパーテーションで仕切られた小さなお部屋が、いくつもあるようです。
お姉さまと私は、奥へ奥へと歩いていきました。
「ここはね、このビルの事務所兼控え室みたいなところ。休憩のときとかに使うの」
「ちなみに、このフロアは女性オンリー。男性立入禁止なの」
「つまり、私はここで、つづきをやらせてもらえるのですか?」
少し照れながら聞きました。
「そういうこと」
でも、こんなパーテーションで仕切られただけだと、大きな声出したらフロア中に響いちゃう・・・
心配になってきました。
何回も曲がり角を曲がりました。
洗濯機が3つ並んでいるところや、水道の蛇口が五つ並んでいるところがありました。
「なんでもあるわよ。シャワーもあるんのだけれど、残念ながら日曜日は使えないの。ごめんね?」
「ううん」
そんなことをお話しているうちに、エレベーター側から正反対のフロア隅に着いたようです。
「あそこ」
お姉さまが指さしたほうを見ると、頑丈そうなガラスが何枚もはまっている重そうなドアのお部屋が見えました。
お姉さまがまた、ポケットから鍵束を出して、一つを鍵穴に差し込みました。
重い外開きのドアを引いて中へ入ると、お部屋の中には、何か見慣れない機械?装置?がたくさん並んでいました。
「ここはね、館内放送とかの素材を作るための録音スタジオ。今はほとんど使われていないのだけれどね」
「館内放送は、今はこの階の下の放送ブースでやっているし」
「前にこのビルに入っていたデパートが残していったものらしいわ」
私がピアノを習っていた頃、こういうふうな重い扉のお部屋に入ったことはありましたが、本格的な録音スタジオなんて見るのは初めてだったので、なんだかキョロキョロしちゃいました。
「で、あなたが楽しむのは、こっちの部屋」
ずらっと並んでいる機械?装置?の隙間にもう一枚の、これまた頑丈そうなドアがあります。
そのドアを開くと、十二帖ほどの広さの、何一つ置いていない薄暗い空間がありました。
「完全防音。ここで楽器演奏とかしていたのでしょうね」
床にはグレーの薄い絨毯が敷いてあって、ちょこっとカビ臭いかな?
壁が鏡張りならバレエスタジオっぽい雰囲気もあります。
さっきいた機械のあるお部屋に大きな窓ガラスがはまっていて、そこから、こっちのお部屋の様子を見ることが出来る、という仕組みになっているみたいです。
機械のお部屋に戻って、お姉さまと並んでソファーに腰掛けました。
「あの部屋なら、あなたがどんなに大きなヨガリ声を出したって、平気なはずよ?」
お姉さまがイジワルくおっしゃいます。
「だからあなたは、あの部屋で思う存分楽しんでね」
「えっ?お姉さまは?」
「あたしも一緒になってやっちゃったら、誰が見張り番するのよ?」
「ここの責任者もあたしのツレだから、だいじょうぶとは思うけれど、めんどくさい人にみつかっちゃうとめんどくさいことになっちゃうからね」
「だから、残念だけれど、じゃなくて、かわいそうだけれど、あたしは手伝えないの」
「あなた一人で、楽しみなさい。あたしはそんなあなたを視て、愉しむから」
「そんなに寂しそうな顔しないの。安心して、あなたのオナニー、録音したりしないから」
からかうように笑ったお姉さまはまた、私の唇に自分の唇を重ねてきました。
今度は、ソフトでやさしく蕩けるようなキスでした。
私は、思い切りお姉さまのからだを抱きしめてしまいます。
互いのお洋服越しに、お姉さまのおっぱいが私のおっぱいにあたります。
それは予想通り、ちょっと硬い感じのおっぱいでした。
私がお姉さまの胸元に手を差し込もうか、と迷っているところで、やさしくからだを離されました。
「さあ、それでは始めていただきましょう!」
お姉さまがおどけた感じでおっしゃいました。
「ねえ?何か道具いる?バイブとか?」
私は少し考えてから、
「ううん。いらないです。今日なら指だけでも何回でもイけそうだから・・・」
「本当にいやらしい子・・・」
お姉さまの目がまっすぐに私の顔を見つめてきます。
「あっ、でもあなた、愛液多いのよね?あんまり床を汚しちゃってもあれだから・・・ちょっと待ってて」
お姉さまが重い扉を押し開けて、機械のお部屋を出ていきました。
今日は、なんていう日なのだろう。
一人で残された私は考えます。
つい数時間前からの出来事が、まるで夢のようです。
そして、それはまだ終わりません。
今度は、素敵なお姉さまの目の前で、私の本気オナニーをご披露するのです。
そう言えばまだ、お姉さまのお名前、まだ聞いていなかったな・・・
*
*ランジェリーショップ 10へ
*
ランジェリーショップ 08
「まだぜんぜん足りない、って顔をしているわね、あなた。そうよね、ここでは大きな声も出せないし、思いっ切り乱れること、出来なかったものね」
「すごくスケベな顔になっているわよ。見る人が見たらわかっちゃう。あなた、今だったら相手、誰でもいいのじゃなくて?」
「あなたが帰り道でヘンな男に襲われでもしたら大変だし・・・」
確かに私のからだ中に、欲求不満が渦巻いていました。
何回かはイったのに・・・
欲望どおりに声が出せない状況が、こんなにつらいものなのだとは知りませんでした。
男の人と、いう選択肢は私にはありえませんが、今だったら駅のおトイレかどこかで、後先考えずに大きな声を出して本気オナニーくらいしちゃいそうです。
なんとかお家まで、私の理性が欲望に勝てればよいのですが・・・
それに、これ以上お姉さまにご迷惑をおかけしてはいけない、予想以上の良い思いが出来たのだから、感謝して、笑顔でさよならを言わなければいけない、ということも、心の底ではわかっているのですが、疼くからだの欲求が大きすぎて、言い出せずにいました。
何よりも、素敵なお姉さまと、このままあっさりお別れしたくない、という想いが、わがままとわかっていても抑え込めませんでした。
何も言えず深くうつむいたままの私。
気まずい沈黙がしばらくつづきました。
「そうだっ!」
突然、お姉さまの大きなお声が試着室に響きました。
「今日、日曜日だったわね?」
「えっ?あ、はい」
「日曜だったらあそこが使えるはず」
お姉さまが私の両手を取りました。
「だいじょうぶ。あなたにたっぷり声を出させて、乱れさせてあげられる」
「あたし、ちょっと準備してくるから、あたしが帰って来るまで、ここで待っていて」
そうおっしゃってから、あらためて私の顔を覗き込んできました。
「それにしてもあなた、ひどい顔になってる」
「髪の毛もヨレヨレ。トイレでお化粧直してきなさい。ブラシとか持ってる?」
「はい、一応・・・」
お姉さまが私の手を取ったまま試着室のカーテンを開けて、お店のフロアに連れ出しました。
レジの前には、来たときとは違う小柄でカワイイ感じな女の子、たぶんサトミさんという人、が立っていました。
「長い時間、お疲れさまでしたー」
ニッコリ笑いながら明るくお声をかけてくれました。
皮肉とかからかいのニュアンスは感じられなかったのですが、お疲れさま、という言葉が、ヘンな意味に聞こえてしまって、見透かされているようで恥ずかしい。
店内フロアにはお客さまがちらほら。
時計を見ると、そろそろ4時になろうとしていました。
どれくらいの時間、試着室の中にいたのだろう?
考えてみますが、入った時間が思い出せません。
レジブースの奥でしばらくガサゴソやっていたお姉さまがフロアに出て来て、私にツバの広いベージュのキャスケットをかぶせ、細いセル縁で淡いピンクのサングラスを手渡してくれました。
「これつけて、このフロアの女子トイレに行って顔を直してきなさい。場所は、そっちの壁沿いを行って右に折れたところ」
このフロアに着いたとき、私が直行した女子トイレのほうを指さしました。
私、知っています、お姉さま。
そのおトイレの場所。
だってお姉さまに逢う少し前に私、そのおトイレの洗面台の鏡の前で、さっきお姉さまが脱がせてくれたピンクのパンティを膝まで下ろしていたのですもの。
そう言ったら驚くだろうな・・・
「身づくろいが終わったら、ここに戻って待っていて。あんまり待たせないようにするつもりだけれど」
お姉さまは再びレジブースへ入っていかれました。
レジ前のベンチのところに置いておいた自分のバッグから、お化粧ポーチを取り出して、おトイレへ出かける前に、なんとなくお姉さまの姿を追ってみます。
お姉さまはレジブースの奥で、さっき私の恥ずかしい液体をたっぷり吸い込んだバスタオルを、お店のロゴが入ったビニールのショッパーに入れているところでした。
そう言えばあの試着室、きっとまだ匂いが残っているよね?
今の私は、馴れてしまっているからわからないけれど、外から来た人は、牝臭さ、と言うか、何かいやらしい臭いに気づいているかも。
淫臭・・・
そんな言葉が浮かんで、字面の恥ずかしさに、性懲りも無く下半身を疼かせる私。
上気してきた顔を隠すように、キャスケットを目深にかぶり直してサングラスをかけ、お店を出て女子トイレに向かいました。
女子トイレの鏡の前で顔を洗い、薄めのお化粧で整えてパフュームをふり、入念に髪をとかしました。
試着室でのことをなるべく思い出さないようにつとめながら鏡に向かっていると、このビルに着いてすぐのときとはうって変わって、入れ替わり立ち代り、たくさんの人がドアを開けて用を足しに来ます。
妄想アソビのときは、本当にラッキーだったんだなあ・・・
のんきなことを考えたのもつかの間、私、こんなにたくさんの知らない人が行き来するファッションビルの試着室で全裸になって、あんなことしちゃったんだ、って今更ながら思い出し、恥ずかしさがドドッとぶりかえしてきてどうにかなりそう・・・
隣の洗面台で手を洗っていたご中年の派手な身なりのおばさまが、鏡を見るともなく頬を染めてボーッと立っている私の横顔をジロッと一瞥した後、スタスタとおトイレを出て行くのが鏡に映っていました。
身づくろいに15分くらいかかって、お店に戻るとお姉さまはいませんでした。
レジ前のサトミさんが、
「おかえりなさあーい」
って笑いかけてきました。
「これ、ありがとうございましたー」
私も精一杯ニッコリ笑って、キャスケットとサングラスをレジカウンターの上に置きました。
それから自分のバッグが置いてあるベンチに座り、お財布を取り出して2万円抜きました。
「お代金、お支払いしまーす」
サトミさんに呼びかけます。
「あっ、はいはーい」
サトミさんの明るいお返事、机の上を何か探しています。
みつけたメモを片手に、
「えーっと、5千円ですねー」
とサトミさん。
「あのー、それは、困りますー」
レジカウンターに2万円置きました。
「いいえ、チーフから言われていますからー」
サトミさんも譲らず、1万円札を一枚取り、レジを打って5千円札とレシート、それに残った1万円札を差し出してきました。
「あの、それでは悪いですしー」
「いえいえ。チーフの命令ですからー。またぜひここにお買い物に来てくださいねー」
サトミさんのニッコリ笑ったお顔を見ると、それ以上言えなくなり、あきらめてお札をお財布に戻しました。
店内にお客さまはいません。
手持ち無沙汰になったので、立ち上がって思い出の試着室のほうへ歩いてみました。
すると、さっきまでは香っていなかった、フローラル系のパフュームのいい香りが漂っていました。
それをかいだ途端、私はまた、カーッっと熱くなってしまいます。
やっぱり、臭っていたんだ・・・
淫臭・・・
私がいなくなった後、サトミさんがパフュームをふりまいてくれたんだ・・・
サトミさんがこちらを見ている気配を感じますが、恥ずかし過ぎてそちらを向けません。
でも、いつまでもそうしていることも出来ず、恐る恐るレジのほうをうかがいました。
サトミさんと目が合うと、サトミさんはとってもやさしげな笑顔でうなずいてくれました。
私がとぼとぼとベンチに戻り、腰を下ろそうとしたとき、
「お待たせー」
大きめなお声でおっしゃりながら、お姉さまが戻られました。
さっき、私が貸していただいたのと同じデザインのサングラスをかけています。
サトミさんがまた、
「おかえりなさーい」
と明るく答えました。
「ごめんごめん、ちょっと準備に手間どっちゃって」
お姉さまは、手に持っていたペットボトルの冷たいスポーツドリンクをくださいました。
すっごく喉が渇いていたので、すっごく嬉しかった。
「それゆっくり飲んで、一息ついたら行くからね」
「でもその前に、もう少しここでやることがあるから、もうちょっとだけ待ってて」
そうおっしゃってお姉さまはまた、レジブースの奥に消えました。
ドリンクを一気に半分くらいゴクゴク飲んで、一息つきます。
美味しいーっ。
残ったドリンクにちびちび口をつけながら、どこへ連れて行ってくれるのだろう?何をしてくれるのだろう?なんてワクワク考えていたら、いつの間にかお姉さまが目の前に立っていました。
「それじゃ行こうか?」
お姉さまが私の右手を取って、立たせてくれました。
「忘れ物は無い?」
自分のトートバッグを肩にして、うなずきます。
「おっと、これはしたほうがいい」
さっきカウンターの上に戻したサングラスを取って、私の顔にかけてくださいました。
そして、再び私の右手を取り、手をつないだままレジの前のサトミさんに、
「サトミ、あたし休憩、はいりまーすっ!」
おどけたお声で告げました。
サトミさんも、
「ごゆっーくりーどーぞー」
おどけて答えています。
そしてお姉さまは、不意に私のほうにお顔を向け、素早くその唇を私の唇に重ねてきました。
ごく軽く。
私の心臓が、トクン、って大きな音を立てました。
視界の隅に見えていたサトミさんは、相変わらずニコニコ笑っていました。
*
*ランジェリーショップ 09へ
*
「すごくスケベな顔になっているわよ。見る人が見たらわかっちゃう。あなた、今だったら相手、誰でもいいのじゃなくて?」
「あなたが帰り道でヘンな男に襲われでもしたら大変だし・・・」
確かに私のからだ中に、欲求不満が渦巻いていました。
何回かはイったのに・・・
欲望どおりに声が出せない状況が、こんなにつらいものなのだとは知りませんでした。
男の人と、いう選択肢は私にはありえませんが、今だったら駅のおトイレかどこかで、後先考えずに大きな声を出して本気オナニーくらいしちゃいそうです。
なんとかお家まで、私の理性が欲望に勝てればよいのですが・・・
それに、これ以上お姉さまにご迷惑をおかけしてはいけない、予想以上の良い思いが出来たのだから、感謝して、笑顔でさよならを言わなければいけない、ということも、心の底ではわかっているのですが、疼くからだの欲求が大きすぎて、言い出せずにいました。
何よりも、素敵なお姉さまと、このままあっさりお別れしたくない、という想いが、わがままとわかっていても抑え込めませんでした。
何も言えず深くうつむいたままの私。
気まずい沈黙がしばらくつづきました。
「そうだっ!」
突然、お姉さまの大きなお声が試着室に響きました。
「今日、日曜日だったわね?」
「えっ?あ、はい」
「日曜だったらあそこが使えるはず」
お姉さまが私の両手を取りました。
「だいじょうぶ。あなたにたっぷり声を出させて、乱れさせてあげられる」
「あたし、ちょっと準備してくるから、あたしが帰って来るまで、ここで待っていて」
そうおっしゃってから、あらためて私の顔を覗き込んできました。
「それにしてもあなた、ひどい顔になってる」
「髪の毛もヨレヨレ。トイレでお化粧直してきなさい。ブラシとか持ってる?」
「はい、一応・・・」
お姉さまが私の手を取ったまま試着室のカーテンを開けて、お店のフロアに連れ出しました。
レジの前には、来たときとは違う小柄でカワイイ感じな女の子、たぶんサトミさんという人、が立っていました。
「長い時間、お疲れさまでしたー」
ニッコリ笑いながら明るくお声をかけてくれました。
皮肉とかからかいのニュアンスは感じられなかったのですが、お疲れさま、という言葉が、ヘンな意味に聞こえてしまって、見透かされているようで恥ずかしい。
店内フロアにはお客さまがちらほら。
時計を見ると、そろそろ4時になろうとしていました。
どれくらいの時間、試着室の中にいたのだろう?
考えてみますが、入った時間が思い出せません。
レジブースの奥でしばらくガサゴソやっていたお姉さまがフロアに出て来て、私にツバの広いベージュのキャスケットをかぶせ、細いセル縁で淡いピンクのサングラスを手渡してくれました。
「これつけて、このフロアの女子トイレに行って顔を直してきなさい。場所は、そっちの壁沿いを行って右に折れたところ」
このフロアに着いたとき、私が直行した女子トイレのほうを指さしました。
私、知っています、お姉さま。
そのおトイレの場所。
だってお姉さまに逢う少し前に私、そのおトイレの洗面台の鏡の前で、さっきお姉さまが脱がせてくれたピンクのパンティを膝まで下ろしていたのですもの。
そう言ったら驚くだろうな・・・
「身づくろいが終わったら、ここに戻って待っていて。あんまり待たせないようにするつもりだけれど」
お姉さまは再びレジブースへ入っていかれました。
レジ前のベンチのところに置いておいた自分のバッグから、お化粧ポーチを取り出して、おトイレへ出かける前に、なんとなくお姉さまの姿を追ってみます。
お姉さまはレジブースの奥で、さっき私の恥ずかしい液体をたっぷり吸い込んだバスタオルを、お店のロゴが入ったビニールのショッパーに入れているところでした。
そう言えばあの試着室、きっとまだ匂いが残っているよね?
今の私は、馴れてしまっているからわからないけれど、外から来た人は、牝臭さ、と言うか、何かいやらしい臭いに気づいているかも。
淫臭・・・
そんな言葉が浮かんで、字面の恥ずかしさに、性懲りも無く下半身を疼かせる私。
上気してきた顔を隠すように、キャスケットを目深にかぶり直してサングラスをかけ、お店を出て女子トイレに向かいました。
女子トイレの鏡の前で顔を洗い、薄めのお化粧で整えてパフュームをふり、入念に髪をとかしました。
試着室でのことをなるべく思い出さないようにつとめながら鏡に向かっていると、このビルに着いてすぐのときとはうって変わって、入れ替わり立ち代り、たくさんの人がドアを開けて用を足しに来ます。
妄想アソビのときは、本当にラッキーだったんだなあ・・・
のんきなことを考えたのもつかの間、私、こんなにたくさんの知らない人が行き来するファッションビルの試着室で全裸になって、あんなことしちゃったんだ、って今更ながら思い出し、恥ずかしさがドドッとぶりかえしてきてどうにかなりそう・・・
隣の洗面台で手を洗っていたご中年の派手な身なりのおばさまが、鏡を見るともなく頬を染めてボーッと立っている私の横顔をジロッと一瞥した後、スタスタとおトイレを出て行くのが鏡に映っていました。
身づくろいに15分くらいかかって、お店に戻るとお姉さまはいませんでした。
レジ前のサトミさんが、
「おかえりなさあーい」
って笑いかけてきました。
「これ、ありがとうございましたー」
私も精一杯ニッコリ笑って、キャスケットとサングラスをレジカウンターの上に置きました。
それから自分のバッグが置いてあるベンチに座り、お財布を取り出して2万円抜きました。
「お代金、お支払いしまーす」
サトミさんに呼びかけます。
「あっ、はいはーい」
サトミさんの明るいお返事、机の上を何か探しています。
みつけたメモを片手に、
「えーっと、5千円ですねー」
とサトミさん。
「あのー、それは、困りますー」
レジカウンターに2万円置きました。
「いいえ、チーフから言われていますからー」
サトミさんも譲らず、1万円札を一枚取り、レジを打って5千円札とレシート、それに残った1万円札を差し出してきました。
「あの、それでは悪いですしー」
「いえいえ。チーフの命令ですからー。またぜひここにお買い物に来てくださいねー」
サトミさんのニッコリ笑ったお顔を見ると、それ以上言えなくなり、あきらめてお札をお財布に戻しました。
店内にお客さまはいません。
手持ち無沙汰になったので、立ち上がって思い出の試着室のほうへ歩いてみました。
すると、さっきまでは香っていなかった、フローラル系のパフュームのいい香りが漂っていました。
それをかいだ途端、私はまた、カーッっと熱くなってしまいます。
やっぱり、臭っていたんだ・・・
淫臭・・・
私がいなくなった後、サトミさんがパフュームをふりまいてくれたんだ・・・
サトミさんがこちらを見ている気配を感じますが、恥ずかし過ぎてそちらを向けません。
でも、いつまでもそうしていることも出来ず、恐る恐るレジのほうをうかがいました。
サトミさんと目が合うと、サトミさんはとってもやさしげな笑顔でうなずいてくれました。
私がとぼとぼとベンチに戻り、腰を下ろそうとしたとき、
「お待たせー」
大きめなお声でおっしゃりながら、お姉さまが戻られました。
さっき、私が貸していただいたのと同じデザインのサングラスをかけています。
サトミさんがまた、
「おかえりなさーい」
と明るく答えました。
「ごめんごめん、ちょっと準備に手間どっちゃって」
お姉さまは、手に持っていたペットボトルの冷たいスポーツドリンクをくださいました。
すっごく喉が渇いていたので、すっごく嬉しかった。
「それゆっくり飲んで、一息ついたら行くからね」
「でもその前に、もう少しここでやることがあるから、もうちょっとだけ待ってて」
そうおっしゃってお姉さまはまた、レジブースの奥に消えました。
ドリンクを一気に半分くらいゴクゴク飲んで、一息つきます。
美味しいーっ。
残ったドリンクにちびちび口をつけながら、どこへ連れて行ってくれるのだろう?何をしてくれるのだろう?なんてワクワク考えていたら、いつの間にかお姉さまが目の前に立っていました。
「それじゃ行こうか?」
お姉さまが私の右手を取って、立たせてくれました。
「忘れ物は無い?」
自分のトートバッグを肩にして、うなずきます。
「おっと、これはしたほうがいい」
さっきカウンターの上に戻したサングラスを取って、私の顔にかけてくださいました。
そして、再び私の右手を取り、手をつないだままレジの前のサトミさんに、
「サトミ、あたし休憩、はいりまーすっ!」
おどけたお声で告げました。
サトミさんも、
「ごゆっーくりーどーぞー」
おどけて答えています。
そしてお姉さまは、不意に私のほうにお顔を向け、素早くその唇を私の唇に重ねてきました。
ごく軽く。
私の心臓が、トクン、って大きな音を立てました。
視界の隅に見えていたサトミさんは、相変わらずニコニコ笑っていました。
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*ランジェリーショップ 09へ
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