2022年7月24日

肌色休暇三日目~避暑地の言いなり人形 02

 どうやらジョセフィーヌさまは、私がいつまで待っても出てこないことに痺れを切らされ、おひとりでお散歩に出かけようと門の近くまで行ってらしたみたい。
 バッグの中からスマホを出して確かめると、午前8時を3分ほど過ぎてしまっていました。
 私のスマホ待受は相変わらず来るときの電車内で撮られた、全裸くぱぁ写真、のままです。

 尻尾をブンブン振り回しつつ私に飛びかかってこられるジョセフィーヌさま。
 爪を立てないように両前肢をちょこんと私のお腹や背中にお乗せになり、いたるところをベロベロ舐めてくださいます。

「ああんっ、ごめんなさい、ごめんなさいぃ…」

 私が遅かったことにご不満なのだろうと、あんあん喘ぎつつ身を屈ませて謝り倒す私。
 やがて完全にしゃがみ込んでしまった私のからだにフサフサのおからだやお顔を押し付けられ、私の周りをグルグル回られます。

 五、六周もしてから、ワンッ、とひと声。
 私の首輪から垂れ下がって地面に転がっているリードの持ち手をパクリと咥えられると、そのまま再びずんずんとお屋敷の門のほうへと歩み始められるジョセフィーヌさま。

「あんっ、ちょっ、ちょっと待ってくださいぃ、ジョセフィーヌさまぁ…」

 しゃがみ込んでしまって肩からずり落ちてしまったバッグ、手放してしまった日傘を拾うあいだにリードがピンと張り詰めます。
 ジョセフィーヌさまのリードに引かれるまま、中腰前屈みでヨタヨタと後を追う私。
 これではワンちゃんと私、どちらがお散歩に連れて行かれるのかわかりません。

 玄関前に広がるお屋敷の広大な芝生と石畳のアプローチをジョセフィーヌさまのご先導で進む全裸の私。
 リードに繋がれた首輪を引かれるお力はとても力強く、まさしく後に従う私のほうがペット状態。

 ところどころに綿アメみたいな真っ白い雲を散りばめた青空の下。
 これからどなたのアシストも無くたったひとり野外で全裸のまましばらく過ごす、という生涯初の大冒険に対するドキドキとも相俟って、私の被虐メーターはとっくにレッドゾーンを振り切っています。

 そうしているうちにお屋敷の門までくぐってしまい、そこからは緑溢れる未舗装の山道。
 自動車一台が通れるくらいの木々が立ち並ぶ緩い下り坂を、確か10分くらい歩くことになるはずです。
 昨日は中村さまとご一緒でしたが、今日は私ひとりが全裸で…

 お屋敷の門を出てすぐにジョセフィーヌさまは、咥えられていたリードの持ち手をお口から放され、おひとりでご自由に山道沿いの草むらを右へ左へとスンスン嗅ぎ回っておられます。
 おそらくジョセフィーヌさまなりのお散歩のルーティーン、チェックポイントがおありになるのでしょう。
 ササーッと駆け出されたかと思うと立ち止まられ、早く早く、とでもおっしゃりたげに私のほうを振り返ってくださるのがとても愛らしい。

 左右の木立からこぼれる木洩れ日は夕方のときより明るく、澄んだ空気を心地よく揺らすそよ風に乗って、チチチッという小鳥さんたちの囀りがどこからともなく聞こえてきます。
 
 なんだか夢見心地と言うか、現実ではないみたい。
 だって、ここは紛れもなくお外で私は紛れもなく裸なのに、どなたかに視られたり襲われたりする不安も恐怖も感じずにいられるのですから。

 緩やかな右カーブを過ぎると周りの景色はいっそう森と言うか樹海っぽくなり、ここまでで広場までの道のり半分くらい。
 
 そう言えば有名な女優さんの芸術性が高いとされている写真集とかだと、鬱蒼とした森の中で裸になっているような幻想的お写真をよく見るような…
 ふと思い立ち、右手のひらに嵌めっ放しだったハンディビデオカメラのレンズを自分に向けてみます。

 小さな液晶モニタを自分側に向けると、緑の木々をバックにして素肌を満遍なく晒している女性の姿。
 その顔は紛れもなく私。
 ゆっくり歩きながら右手を遠くへと伸ばしてなるべく全身が映るように工夫すると、まさしく私が裸でお外を歩いていることが客観的に確認出来ます。

 カメラのレンズを顔からその下のほうへと舐めるように移動すれば、尖った乳首のアップ、無毛な股間のアップが容赦なくモニタに映し出されます。
 嵌めている首輪のせいで健全な芸術性という点には若干疑問が残りますが、確かに森と裸婦という組み合わせは非現実的にシュールで幻想的に思えます。

 周りの木立をぐるっと一周映してから自分の裸体に戻したり、腕を前に伸ばしバストアップ固定にして自分が進んでいく様子を映したり。
 いろいろ工夫を凝らして、この自撮り行為が愉しくなってきていたときでした。

 私の10メートルくらい先まで進んでいらっしゃったジョセフィーヌさまが突然、脱兎の如くの全速力で私のほうへと戻ってこられます。
 えっ?何?と思う間もなく、私の横をあっさり走り抜けられ、今度は私の後方10メートルくらいの位置で急ブレーキ。
 振り向いた私にお尻を向けられ、四肢をしっかり踏ん張られて遠くを見据えられ、ときどきお耳をピクリ、尻尾が忙しなくゆらゆら揺れています。

 その先がちょうどさっきの右カーブ、今の位置からだと左カーブとなっているので、ジョセフィーヌさまがまっすぐ見つめていらっしゃる先は道ではなく木立です。
 何?どうしたの?と頭の中が疑問符だらけな私の耳に、不意にフェードインしてくる物音。

 最初は本当に微かに、舗装されていない林道の砂利や小枝を踏みつけながら近づいてくるような低い振動音。
 その持続的な振動音がだんだんと大きくなり、やがてカーブを抜けて姿を現わした自動車の先端部分。

「えっ!?うそっ!?」

 思わず大きな声で叫んだものの、そこからパニック状態。

 …なな、なんで車が、でもとにかく隠れなきゃ、隠れるってどこに、この日傘を広げてやりすごそうか、でもそれって却って目立つんじゃ…

 頭ではいろいろ考えるのですが足がすくんで動けません。
 そうしているあいだにも自動車は、ゆっくりとですがどんどんこちらに近づいてきます。
 
 鮮やかな山吹色で可愛らしいお顔、少し小さめだけれどカッコいい感じの、いかにもSNS映えしそうな、そういう方々に人気ありそう的オシャレな乗用車。
 その真正面の位置に全裸で呆然と対峙している私。

 フロントグラスには正面からの陽射しがまばゆく反射していて、乗っている人のお姿はわかりません。
 ジョセフィーヌさまは車の邪魔にならないよう助手席側の木立にお入りになり、草むらを車と同じ速さで併走されています。
 車がいよいよ数メートルまで迫り、このままでは轢かれてしまう、となったとき、やっと私の足が動きました。

「いやーっ!」

 もう一度大声で叫び、ジョセフィーヌさまとは反対の、車の運転席側の木立に飛び込みます。
 車に背中を向け、背の高い草むらに紛れるようにしゃがみ込み、背中を丸めてうずくまります。

 でも、こんなことをしても隠れたことにはならないのは、わかりきっています。
 更に隠れてみてもどうしようもないことも知っています。
 車に乗っている人は確実に私の姿を視ているでしょうし、私が女性で、おまけになぜだか全裸なことにも気づいているはずです。

 車の人が男性、それも一昨日私にいやらしいイジワルをしてきたあのお蕎麦屋さんの若い店員さんみたいにえっちな男性だとしたら…
 こんなひと気の無い山の中、腕力ではかないっこない男性に捕まってしまったら…
 それに乗っているのはひとりとは限りません、幾人ものスケベな男性に囲まれて車に連れ込まれ拐われでもしたら…

 悪いほうばかりに想像が広がり、大ピンチを抜け出すための有効な思考が出来ません。
 しゃがみ込んだ足元、葉先の尖った草の葉たちに剥き出しの股間のあちこちをサワサワチクチク撫ぜられています。
 状況は充分に絶望的なのに、その極まりきった被虐感に強い性的興奮を覚えている自分もいるみたい。

 車が私の背後を通り過ぎる音がします。
 どうかそのまま走り去って、の願いも虚しく、低く聞こえつづけていたタイヤの走行音がすぐに途絶えました。
 私のすぐそばで停車したみたい。

 少ししてからバタンッという鈍い音。
 車の人が車外に降りて、ドアを閉じた音でしょう。
 逃げなきゃ!
 本能的な判断で中腰に戻り、木立のより奥のほうへと駆け出そうとしたとき…

「直子っ!」

 聞き覚えあるようなないような、いずれにしても紛れもない女性のお声…
 それに加えて私の名前を知っているということは、お知り合いの中のどなたかのはず…
 ホッと安堵するとともに緊張がドッと緩みます。

 それでも一応念の為、中腰で胸と股間を庇ったへっぴり腰ヴィーナスの誕生ポーズで、恐る恐る草むらを抜け出して道端へ。
 お声のしたほうをそっと窺うと、山吹色の背面扉を見せている自動車の脇に寺田さま。
 右手を高々とお上げになり、おいでおいでと手招きされています。

 そのお姿を確認して緊張が完全に解け、ついでにヴィーナスポーズも解き、剥き出しおっぱいがポヨンポヨン弾むのもかまわず駆け寄ります。
 近づいていくと、昨日とは別人と思えるくらい打って変わられた寺田さまのそのおいでたちにまたビックリ。

 目元口元メイクばっちり、アダルティなショートボブは毛先までシャープに揃えられ、涼しげなシルバーグレイのシュッとしたパンツスーツ姿。
 幾分深めに開けたVゾーンから覗くブラウスを分ける胸元の素肌が超セクシーで、どこからどう見てもお仕事バリバリな美人キャリアウーマンさまそのもの。
 もちろん昨日一日ご一緒した素っぴんTシャツなお姿だって充分お美しいのですが、今日のお姿はよそ行き的アップグレードで百二十点満点です。

「ずいぶん焦ってたみたいじゃない?驚かす気は無かったのに。今朝は先生と出かけるって昨日言ったわよね?」

 ご愉快そうに笑われる寺田さま。

「知らない人が来ちゃったって思ったの?どうしよう、襲われちゃうーって」

「…はい、朝のホールに寺田さまのお姿が見えなかったので、てっきり既にお出かけになられたのだと思っていましたし…見たことのないお車だったので…山道に迷い込まれた観光客のかたか何かだと思い込んでしまって…」

「可愛いらしい車でしょ?先生お気に入りの愛車、クラブマン。でも昨日はずっと駐車場に置いてあったわよ。今日はまず宇都宮でラジオ局の取材なの」

 寺田さまがお車の屋根を軽くポンポンと叩かれます。
 寺田さまのお足元にはジョセフィーヌさまが嬉しそうに纏わりつかれています。

 だけどお言葉ですが寺田さま。
 昨日の私はみなさまから矢継ぎ早に放たれるご命令に脊髄反射でご対応することにイッパイイッパイで、あの敷地内のどこに駐車場があるかもまだ存じ上げていないのです。
 もちろんそんなこと、口には出しませんが。

「車の中で先生も大笑いしてしていたわよ。ほら、先生、って言うか、ここでのオナ子のあるじさまにご挨拶は?」

 からかうように笑われながら助手席のほうを指さされる寺田さま。

「あ、はい」

 寺田さまに促されお車の後ろを回って助手席窓際へ。
 すぐにウインドウがスーッと三分の二くらい下りて、名塚先生がお顔を向けてこられました。

「お、おはようございます、名塚先生…」

「うふふ。朝から面白いものを見せていただいたわ。車が近づいてくるのを見て唖然呆然とされる森下さんのお顔が忘れられない」

 思い出し笑い含みなのであろう笑顔でおっしゃる名塚先生。
 そんな名塚先生も今朝はメイクばっちりの薄紅リップ、薄い紫色の大きなサングラスをおかけになり、ボートネックのゆったりした濃茶系のラメニット。
 こちらも昨日のジャージお姿とは打って変わられ、どなたが見ても異口同音、お上品なセレブリティマダムそのものな装いです。

「留守中のジョセフィーヌのお守り、よろしく頼むわね」

 お優しくおっしゃられた名塚先生が、ふと何か思いつかれたようなお顔になられ、助手席ウインドウをスーッと全部下まで下ろされました。

「もう少しこちらに近づいて来ていただけるかしら?」

 ご自身も窓から乗り出し気味になられながら、私に手招きされる名塚先生。

「あ、はい…」

 私も素直にお車のドア部分に近づきます。
 窓から半身を乗り出されるようにされた名塚先生。
 その左腕までを窓の外に伸ばされ、左手のひらで私の両腿の付け根を包み込むようにツルンと撫ぜてこられました。

「あっ、いやんっ…」

 思わずドアから一歩、飛び退いた私。
 私の足元にじゃれつかれるジョセフィーヌさま。

「やっぱりわたくしが思った通り。森下さん、怖かったけれど性的に興奮もしていたのね。ほら、感じちゃった証拠の愛液がこんなにべったり」

 ご自身のテラテラに濡れた左手のひらを窓から突き出され、お見せくださる名塚先生。
 撫でられたとき、一本だけくの字に曲げられた薬指がすんなり膣内に挿入された感覚も残っていました。
 得も言われぬ恥ずかしさが全身を駆け巡ります。

 私がドアから一歩下がったのをいいことに入れ替わりでドアに取り付かれ、差し出された名塚先生の左手をペロペロと嬉しそうにお舐めになるジョセフィーヌさま。
 それって私の恥ずかしい体液…舐められるがままの名塚先生。

「真性マゾの子ってそういうものよね、ああ面白かった。そういうことなら早くあの広場まで行ってジョセフィーヌにいっぱい慰めてもらいなさい。ジョセフィーヌも直子さんをたくさん気持ち良くさせておあげなさいね。それではごきげんよう、どうぞ良い一日を」

 あくまでもお優しいご口調でそんなふうに告げられてから優雅に左手を引っ込められ、同時に助手席側ウインドウがスーッと上がっていきます。
 いつの間にか寺田さまも運転席に戻られており、お名残惜しそうなジョセフィーヌさまをその場に残されたままお車がスーッと遠ざかっていきました。

 取り残されて思わずその場で見つめ合うジョセフィーヌさまと私。
 最初に視線を逸らされたのはジョセフィーヌさま。
 ご自分に託されたお役目にはたとお気づきになられたみたいに、私の首輪から垂れ下がるリードの持ち手をパクリと咥えられ、グイグイと引っ張られます。

「あんっ、ジョセフィーヌさまぁ…」

 そこからはずっと小走り、軽い駆け足ジョギング状態。
 ピンと張り詰めたリードに首ごと引っ張られ、あれよという間に広場へとつづく小径へと折れ、あれれという間に広場の入口に到着。

「ワンッ」

 私に向かってひと声アピールされるジョセフィーヌさま。

「ハア…ハア…い、いいですよ…どうぞ、どうぞごゆっくり行ってらっしゃいませ…ハアハアハァ…」

 思いがけない強制的な駆け足運動で息が上がってしまうも、昨日中村さまからレクチャーいただいたルーティーンをなんとか思い出し、ジョセフィーヌさまに語りかける私。

 その言葉さえ待ちきれないみたいに咥えられていたリードの持ち手を放り出され、広場の芝生を一目散に突っ切って向かいの繁みに飛び込まれるジョセフィーヌさまなのでした。


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