2016年8月8日

オートクチュールのはずなのに 53

 大きな拍手を背に受けながら楽屋に戻りました。
 全身がカッカと火照って、頭がボーッとしています。

「おつかれー。はい、これ飲んで」
 バスタオルで迎えてくださったリンコさまが、冷たいスポーツドリンクのペットボトルを渡してくださいました。
「あ、ありがとう、ございます」

 ゴクゴクゴク。
 美味しいー。
 熱が篭った体内に冷たい水分が沁み渡っていくよう。
 半分ほど飲み干すと、ほのかさまがペットボトルを受け取ってくださりテーブルに置いてくださいました。

「バンザイして」
 リンコさまのご命令。
「あ、はい」
 右襟から腋にかけてのホックが手早く外され、裾を盛大に捲り上げられ、あっという間に全裸。
 すかさずしほりさまがウイッグを整えてくださいます。

「からだ、ホッカホカじゃない。お客様の視線で、そんなに感じちゃったんだ」
 からかうようにおっしゃりながら、タオルで汗をぬぐってくださるリンコさま。
「はうっ」
 硬くなっている乳首をタオル越しにつままれて、思わずはしたない声が漏れてしまいました。

「いいねいいね。その悩ましい感じ。そのエロっぽさでお客様たちを残らず悩殺しちゃいなさい」
 リンコさまの視線が私の内腿周辺にまとわりついています。
 その部分だけ、汗とは違う種類の粘っこそうな体液に濡れ、お部屋の照明にテラテラ光っていました。
 
 私の下腹部にタオルを押し当て、拭ってくださるリンコさま。
 タオル越しの指が私の腫れた部分をコショコショ嬲ってきます。
 いつの間にか服従ポーズになって、必死にポーカーフェースを繕う私。

「おーけー。次のアイテムはちょっとめんどくさいんだ」
 真顔に戻られたリンコさまのお隣に、ハンガーにかかったスーツカバーを持たれたほのかさま。
「次はスーツだからね。ちゃんと下着からフル装備」
 愉快そうにニッと微笑んだリンコさまから、ニュッと両手を差し出されました。

「何ですか、これ?」
 差し出されたリンコさまの手の上に乗っていたのは、透明のビニール袋?
「だから、下着よ」
 言われてみればそんなような形をしている気もしますが、ものの見事に無色透明なんです。

「ビニール製、ですか?」
「ううん。れっきとした植物由来の繊維製。でも布地って言うより紙に近いのかな。これもうちと某社との開発品」
 ちょっぴり得意気におっしゃって、まずブラジャーから着け始めてくださいました。

 形状はごく普通のハーフカップブラ。
 でも、カップも肩紐も留め具も、みんな素通しガラスみたいに透明。
 だからブラに潰されて少しひしゃげた乳首の色まで、外から丸見え。
 ブラの中でおっぱいって、こんなふうになっているんだ・・・
 着け心地は確かに、普通の布地っぽい。

 つづいてショーツ。
 ローライズ気味のフルバックタイプ。
 ゴムのところだけ少し濁って半透明な以外、見事に無色透明。
 だから当然、中身も丸見え。
 せっかく下着を着けていても、これでは何の意味もありません。
 もしも下にヘアがあったら、黒々、すっごく目立つだろうな・・・

「おお。上も下もサイズ、ぴったりだね」
 リンコさまの嬉しそうなお声。
「それで次はこれ」
 リンコさまのお声に、ほのかさまが持たれていたスーツカバーを開けると、中にはこれまた透明なお洋服っぽいものが入っていました。
「まずはブラウス」

 これまた見事に無色透明。
 まるでビニール袋のようなそのペラペラな布地?は、確かに一般的なブラウスの形状はしていました。
 立ち襟で長袖、着丈はウエストちょっと下くらいの短かめ。
 縫製された糸に当たる部分が少しだけ半透明に濁っている以外、ボタンまで綺麗に透明。

 両袖を通すと、リンコさまとほのかさまが、おふたりがかりでテキパキとボタンを留めてくださいました。
 着心地は、普通のやわらかめなブラウスを身に着けているのとぜんぜん変わりません。

「それで、これね」
 ジャケットとスカート。
 これも透明度の高いシースルーなのですが、全体に少しだけうすーいベージュが入っていてやや濁っている感じ。
 一見してスーツのシルエットが識別できるくらいの極薄い色味が入っています。

 スカートは、膝上丈のけっこうパッツンなタイト。
 ブラウスより厚手な生地ですが、ちゃんと透けています。
 ブラウスの裾はインせず、スカートのウエスト部分、ちょうどおへそのところに数センチかかる感じ。

 ジャケットも同じ色味と生地で、シンプルなビジネスタイプのシルエット。
 ジャケットのボタンもキッチリ留めて着終えると、からだの感覚としては確かにスーツを着込んでいる状態なのですが、鏡に映った姿は赤面モノ。
 ベージュがかったスーツシルエットの下に、肌色全裸のボディラインが見事に浮き出ていました。
 肌の色と薄いベージュが同系色なので、とくにバストトップと乳輪の赤みが、全体肌色の中、強烈なアクセントとなって目立ちまくっています。

「このアイテムはね、開発部では、プロジェクトアンデルセン、って呼んでたんだ」
 私の着付けを調整してくださりながら、リンコさまが教えてくださいました。
「あの有名な、裸の王様、の服を作っちゃおう、って」
 イタズラっ子の笑顔で、ハイヒールなパンプスが足元に置かれました。
「ビジネススーツなんだから、ちゃんと足元もキメなきゃね」

 パンプスだけ透明ではなくて、薄いベージュのシンプルなデザインで、ヒールが10センチくらいと高めでした。
 造りがしっかりして、誂えたみたいに履きやすい。
 履いているときに、そろそろです、と里美さまからお声がかかりました。

 今度はこんな、最初から透明スケスケのお洋服でお客様の前に出るんだ・・・
 鏡に映った自分の姿に再度目を遣ると、下半身の奥底から羞じらいが全身にほとばしります。
 スーツをちゃんと着ているクセに、まったくの役立たず。
 隠すべき箇所がまったく隠せていない、裸体同様の破廉恥な自分の姿。

 パンプスを履いたせいで何て言うか、お外にいる感、がグッと増していました。
 だって全裸になるときって普通お家の中のはずで、そんなときに靴なんて絶対履いていないですから。
 
 ハイヒールという、お仕事とかオシャレとか社会性を連想させるものを身に着けたことで、今の自分のアブノーマルな露出症的服装のアブノーマル感がいっそう際立つように感じました。
 さっき会場のフロアに着いてダンボール箱から出て、全裸にパンプスだけ履いた格好でオフィスビルの廊下を歩いたときに感じた、喩えようのない羞恥と背徳感がまざまざと蘇りました。

 ただ、そんな恥ずかしい恰好をしているクセに、心境にポジティヴな変化が訪れていました。
 こんな姿で人前に出るというドキドキ感は止まらないのですが、そのドキドキの中に、そこはかとないワクワク感が混ざり始めていました。

 早くみなさまの前に出て、ふしだらで恥ずかしい私の姿をご披露したい。
 みなさまが驚くご様子が見たい。
 そんなヘンタイ的な高揚感が強くなっていました。

 それは、これまでランウェイを2往復してみて感じた、お客様がたの好奇に満ちた期待を、文字通り素肌で感じ取ったおかげなのでしょう。
 あっと驚くような格好で私が出てくることを、素直に愉しんでいらっしゃるみなさまのリラックスされたご様子に、私も自分の恥ずかしさを愉しむ余裕が出てきたようでした。

「スタンバイ、お願いします」
 里美さまのお声で、舞台袖に上がりました。

「今回は、往復してステージに戻ったら、そのままステージで待っていて。アタシもステージに上がるから」
 リンコさまが小声で耳打ちしてきました。
「そこからは、アヤ姉の説明に従うの。アタシもステージで手助けするから。わかった?」
 リンコさまのご指示にコクンとうなずくと同時に、場内のBGMがミドルテンポのヒップホップ風に変わりました。
「おっけー、ゴーッ!」

 リンコさまに軽く肩を押され、ステージ上に出ました。
「おおっ!」
 軽く会場全体がざわめきました。
 照明が煌々と点いた明るいままの会場に、スケスケ過ぎる私の姿はどんなふうに見えているのでしょう。
 モデルの心得をおさらいしながらステージ中央まで進みました。

 階段を下りて赤絨毯へ。
 歩くたびに腿を撫でるスカート、腕に擦れる袖。
 身体的には紛うこと無くお洋服を着ている感覚なのに、凄い恥ずかしさ。

 まっすぐ固定した視線の両端に、こちらをじーっと見つめてくるお客様がたの瞳の大群。
 小野寺さま、アンジェラさまのお隣にお姉さまのお姿をみつけて、思わず視線がそちらへと動いてしまいます。
 
 ランウェイの端まで行き着き、回れ右。
 今回は暗転も無く、明るいままの会場をステージへと戻ります。
 視界の右端に入るスクリーンには、すでに正面からの私の姿が映し出されていました。

 大きな顔のアップから、徐々にカメラが私のからだを舐めるように下がっていき、バスト部分では、透明繊維にあがらうように背伸びしているふたつの乳首が、ハッキリ鮮明に映し出されました。
 なおも下がるカメラが、うっすらベージュのスカートウェストから透けるおへそを通り、タイトスカートの下半身アップへ。
 上付きな私の無毛恥丘の割れ始め部分も、二枚の透明繊維越しにクッキリ映っていました。

 ああん、私の恥ずかしい箇所があんなに大きく、みなさまの前に映し出されている・・・
 私が通りすぎた場所に座っていらっしゃるかたたちは、きっと生身の私のお尻とスクリーンを交互に、凝視されているのだろうな・・・

 いやん、視ないで・・・
 ああん、でも視て、視てください、どうぞ存分に、私の恥ずかしい姿をご覧になってくださいぃ・・・

 歩きながら心の中で、グングン興奮し発情していました。
 でも、お姉さまのお言いつけ通り、決して悟られないように努めて無表情を装います。
 心臓の鼓動が周りのかたたちにまで聞こえてしまうのではないかと思うくらい、昂ぶっています。
 それを必死に抑え、耐えながら、内側からゾクゾク、ムラムラ感じていました。

 ステージ中央には、リンコさまがすでに待ち構えていらっしゃいました。
 並ぶ形でお隣に立ち、お客様がたのほうへ向き直ります。

「両腕をちょっと左右に開いたポーズで立っていて。そうね、何て言うか、ペンギンみたいに」
 リンコさまの小声のご指示。
 ペンギンさん?
 ちょっと考えて、直立姿勢のまま両腋から腕を30度くらいの角度で離しました。
「うん。それでいい。あとは自分はただのマネキンだと思って、アタシに何されても無表情でいて」

「ご覧いただいた通り、このプロジェクトアンデルセンは、まったくの無色透明のまま、どんなデザインにも縫製することが出来る夢の新素材です」
 司会者演壇の綾音さまがご説明を始めました。
 と同時にリンコさまが私の前にまわり、私が着ているジャケットのボタンを外し始めました。

「今回のスーツで言いますと、ジャケットとスカートには、シルエットがわかりやすいように薄くベージュを入れてあります」
「このように、シースルーのままお好みのカラーを入れることも可能ですので、例えば、イエローのブラウスの上に青みの入ったジャケットを合わせると、透明なので重なった部分だけグリーンになる、といったカラーコンビネーショの楽しみ方も出来るわけです」

 綾音さまのご説明がつづいているうちに、リンコさまの手でスルスルッとジャケットが脱がされました。
 ジャケットの下は、完全に無色透明なブラウスと、その下のブラジャー。
 私のはしたない乳首は、ジャケットを着ていたときより、よりハッキリと、みなさまの目に見えているはずです。

 つづいてスカートウェストのボタンも外され、スカートが足元にストンと落ちました。
「ちょっと動いて落ちたスカートから両足外してくれる?」

 リンコさまのご指示に、透明なブラウスと下着姿になった私は、後ろに右足、左足と一歩づつ下がりました。
 すかさずリンコさまがスカートを拾い上げました。
 雅さまが近づいてきて、スーツの上下を演壇までお持ちになりました。

「ご覧の通り、モデルが下に着ているブラウスは、まったくの無色透明です。また、あのブラウスとこちらのスーツの生地とでは、厚さとやわらかさが違います」
 演壇からまっすぐ私を指さす綾音さま。
 その私はと言えば、リンコさまの手で今度は、ブラウスのボタンをひとつづつ外されていました。
「その下の下着類は、一番薄手の素材を使用しています」

 ブラウスを脱がされゆく私にお客様全員の視線が集中しているのがわかります。
 なにこれ?
 まるでストリップショー・・・
 それも、最初から裸は丸見えなのに、みなさまの面前で衣服を剥がされていくという倒錯した、アンビバレンツな脱衣状況。

 あれよあれよとボタンが外れ、両腕からブラウスの袖が抜かれて、透明ブラとショーツだけの姿となった私。
 それでもまだペンギンポーズで不動のままいなくてはいけないのです。
 まさか、この下着類も、みなさまの前で脱がされちゃうのかしら・・・

 最初から中身がスケスケ丸見えで、隠す、という機能についてはまるで役に立っていない下着たちでしたが、これだけの人たちの目の前で、されるがままに脱がされ生身の全裸になる、という行為は、恥辱以外の何物とも思えません。

「御覧いただいたスーツとブラウス、それに下着を、このマネキンに着せて、ステージ脇に飾っておきますので、わたくしの説明が終わリ次第、みなさまで実際にお手に触れていただいて、その生地の品質と素晴らしい透明度をご堪能いただければと思います」

 今、綾音さま、下着っておっしゃった・・・
 そのお言葉は、私への処刑宣告でした。

 リンコさまが私の背後に周り、さも当然のようにブラジャーのホックを外されました。
 バストを締め付けていた圧迫からの開放感。 
 布地に押さえつけられていたふたつの乳首が、ここぞとばかりに跳ね起き上がりました。
 同時に素肌に触れる空気感。
 とうとうみなさまの目の前で、生おっぱい丸出し状態。
 それでも動いてはいけない私。

 リンコさまの視線が私の下半身に移りました。
 公然ストリップショーも大詰め。
 リンコさまの手がショーツのゴムにかかったとき、遂に正真正銘の丸裸・・・
 でもそれは、私の中のマゾ性が、幼い頃からずっと望んでいたことでもあるのです。

 覚悟を決めてからもリンコさまは、しばし私の下半身を凝視したまま固まっていらっしゃいました。
 それから、ふとお顔を上げ、ちょっと呆れたふうに笑いかけてきました。
「おーけー。私がアヤ姉のほうへ向かったら、ここでいつものポーズをキメて、楽屋に戻っていいよ」
 小声で私に耳打ちしてきました。
 
 どうやらストリップショーは、最後の一枚を残して打ち切りにするみたい。
 4割の安堵と6割のガッカリ感・・・
「は、はい・・・」
 私の震える小声にうなずき、私から脱がせたブラウスとブラジャーを手にしたリンコさまがスタスタと演壇の綾音さまたちのほうへと向かって行かれました。

 綾音さまのお客様がたへのアイテムご説明はまだつづいていました。
 お客様がたは、綾音さまのお話にお耳を傾けながらも、大部分の方々が私の動向に注目しているようです。
 私は、リンコさまのお言いつけ通り、その場でペンギンポーズからゆっくりとマゾの服従ポーズへと切り替えました。
 枷を解かれて剥き出しになったふたつのおっぱいが、自由に弾むのがわかりました。

 そして、後頭部に当てた両手を頭ごと少し後ろへと引き、生おっぱいと透明ショーツ越しのマゾマンコを軽く皆さまの前に突き出すようにのけぞると、自分の目で自分の下半身を見ることが出来ました。
 ショーツのクロッチ先端に当たる周辺に白濁した液体が溢れ、透明度を曇らせているのが一目見ただけでもわかりました。
 リンコさま、これに気づいて私のショーツを脱がせるのを諦められたんだ・・・

 あまりの恥ずかしさで軽い目眩のようにクラっときたのですが、なんとか踏ん張りました。
 同時にオーガズムのような気持ち良い電流が全身をつらぬきました。
 ビクンと震えたからだと心のすべてが、更なる辱めを強烈に欲していました。
 
 視てください、視てください、視てください・・・と、そのはしたな過ぎる部分をお客様がたに見せつけるように向けたままゆっくり5回カウントしてから、ヒールをコツコツ鳴らして逃げるように楽屋へ飛び込みました。


オートクチュールのはずなのに 54


3 件のコメント:

  1. はじめまして!まおと申します。

    最近サイトを発見してはまってしまい、
    過去の投稿されたお話もすべて
    読ませていただきました。

    わたしも露出願望があるようで…
    自分がナオコさんになったつもりで
    どきどきしながらお話を楽しんでいます。

    オートクチュールの更新も楽しみに待っています!

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  2. 匿名さま

    コメントありがとうございます。
    お話、気に入っていただけたようで、とても嬉しいです。
    週末に更新出来ると思いますので、お時間のあるときにまた
    覗きにいらしてくださいませ。

    直子

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  3. まおさま

    ごめんなさい。お名前を書かれていましたね。
    上記のコメントは、まおさまのコメントへの御礼です。
    失礼いたしました。

    直子

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