その遊びを心地よく愉しむためには、いろいろとややこしい準備をしなければならないことは、やよい先生から聞かされていました。
5月にやよい先生のお宅へお泊りで伺ったとき、私のために特別に、その遊びをしてくださることになりました。
そのときは、やよい先生とパートナーのミイコさま、あ、今までずっとミーチャンさんて呼んでいた人と同じ人ですが、お会いして遊んでいただいたのを機会に、こう呼ばせていただくことにしました、と、ご一緒して、やよい先生の愛車でわざわざホテルまで行ったのでした。
「やっているときは愉しいんだけどさ、後片付けとかいろいろ面倒なのよね」
「エネマプレイと同じくらい、後始末で萎えちゃう」
「フローリングに垂れちゃったりすると剥がすの一苦労だし、掃除機で吸い込んでも飛び散った数が多いと詰まっちゃうしね」
やよい先生が運転中に笑いながらおっしゃっていました。
「だから、お金かかっちゃうけれど、ホテル使ったほうが気がラクなのよ」
そういうホテルに入ったのは、私にとってその日が生まれて初めてでした。
そういうホテルにもいろいろ種類があるらしく、その日に入ったのはSM専用のお部屋のようでした。
壁に磔に出来るような拘束具があったり、両脚が大きく広げられちゃう椅子があったり、鎖が天井からぶら下がっていたり。
なんともおどろおどろしい雰囲気で、そのお部屋に入って器具を見た瞬間に、ゾクゾク感じてしまいました。
「慣れていない人は、うっかりお風呂場でシャワーとかで流しちゃうのよね、終わった後に」
「でもあれって、水に溶けるもんじゃないからさ。詰まっちゃうのはあたりまえよね」
「あたしの知り合いのカップルが、自宅のお風呂でそれやって、詰まらせちゃってさ。排水口」
「あわてて業者呼んだら、排水パイプから溶けた赤色のロウがびっしり出てきて」
「今アロマキャンドル作りに凝っていて、なんて苦しい言い訳したらしいけれど、バレバレよね?かなり恥ずかしかったらしいわ」
フロントでお借りしたらしいシートを敷きながらの、やよい先生の愉快そうなお声を思い出します。
あのホテルのお部屋で味わった、狂おしいほどの苦痛の果ての快楽は、私に強烈なインパクトを残しました。
やよい先生とミイコさまの責め方がお上手だったのはもちろんなのでしょうけれど、私は本当にあられもなく身悶えしまくっちゃいました。
あんな刺激をもう一回、味わいたい。
「うーん・・・ひとりでやるのは、けっこう危険だよね。つまりは火遊びだしさ」
そう言って渋いお顔をされるやよい先生に頼み込んで、注意点を細かくお聞きして絶対守ることをお約束して、ようやくひとり遊びをするお許しをいただいたのでした。
すでにお片付け済みのリビングルーム中央に、三帖分くらいの大きなレジャーシートを敷きます。
「普通のビニールのだと、やっぱ燃えやすいからさ。表面がアルミの銀色のやつなら、万が一のときでも幾分燃え移りにくいと思うよ」
そう教えてくださったやよい先生が、そのお泊りの2週間位後に、わざわざ宅配便で送ってきてくれたものでした。
その他には、太くて赤いローソクが3本と、お皿に釘が突き出ているようなキャンドル立て3つ。
ローソクは、2本が直径5センチくらいの寸胴、もう1本は先細り、じゃなくて先太りな形で、細いほうの直径が3センチくらい。
これらのローソクは、そういう遊び用に作られたもので、低い温度でロウが溶けやすくなっているのだそうです。
そう。
私はこれから、このローソクを自分の肌に垂らして愉しむつもりなんです。
深めのバスボウル二つにお水を張り、レジャーシートの端に置きました。
もちろんこれは、万が一のため。
花火のときにバケツにお水を汲んでおくのと同じ備えです。
「あんまり悶えすぎて足で蹴ったりして、床にこぼさないようにね」
って、やよい先生が笑いながら忠告してくれました。
リビングの電気を薄暗く調整します。
これからキャンドルを灯すのですから、雰囲気が大事。
銀色にピカピカしているレジャーシートの中央付近にお尻ペッタリで座り込んで、裸の全身にボディローションを塗りつけます。
こうしておくと後で、肌についたロウが剝がしやすいのだそうです。
ヌルヌルのローションを素肌になすりつけていると、それだけでいやらしい気持ちがどんどん高ぶってきます。
首から下に満遍なくローションを垂らし、自分のからだをサワサワ撫ぜ回します。
髪はじゃまにならないよう、アップにして上にまとめています。
薄暗い照明にローションがテラテラ反射している全身ヌルヌルな私の姿が、レジャーシートの端に置いた大きな姿見にぼんやり映っています。
銀色のシートが何かのステージのようで、なんだか艶かしいショーの一場面みたい。
低く流れているサティのオジーブの厳かな旋律とも相俟って、何か妖しい儀式が始まりそうな雰囲気でもあります。
私はこれから、耐え難い苦痛と恥辱を浴びせられる哀れな生贄、可哀相な人身御供。
アソコの中は充分にぬるみ、乳首の先が痛いくらいに尖ってきています。
ひとりローソクプレイをするにあたって、どんな格好でするか、については、ずいぶん悩みました。
希望としては、両手両脚をぎっちり縛られての、逃げ出しようの無い拘束姿で、に勝るものはありません。
やよい先生たちにされたときも、そういう感じでした。
両手を後ろ手に縛られ、おっぱいは絞り出すように縛られ、両膝もM字に固定され、まず四つん這いにさせられてお尻に垂らされ、それから仰向けにされておっぱいからだんだんと下へ・・・
今思い出しただけでも、からだの奥から疼いてきてしまいます。
だけど、これからするのはひとり遊び。
両手を拘束してしまったら、自分のからだにロウを垂らすことが出来ません。
それに火を扱うわけですから、もしもの事態になったとき身動きしづらい状態だと大変なことになってしまいます。
いろいろ考えた末、今回は、ひとりでやるのが初めてでもあるし、まったく拘束しないことにしました。
胸を縛ったりローターとかを挿れたりもなし。
純粋にローソクの刺激だけで、どのくらい気持ち良くなれるかを試してみることにしました。
手のひらについたローションをタオルで拭ってから、お医者さまがするような凄く薄いゴム手袋だけ、両手に嵌めました。
この手袋をして自分のからだをまさぐると、触れる手も触れられる肌も、なんだか他の人のもののように感じられ、その違和感みたいなのが、実家にいた頃からの私のお気に入りなんです。
午前中のお洗濯のとき、全裸にピンクのゴム手袋だけ嵌めた自分の姿のフェチなエロさを見て、ローソクのときは絶対こうしようと決めていました。
太くて赤いローソクを1本左手に持ちます。
右手のライターで火を点けるとすぐに、ローソク独特の懐かしいような匂いがかすかに漂い始めます。
薄暗闇の中で一際明るく、ゆらゆら揺れる悩ましげな炎。
ローソクを右手に持ち替えました。
火を点けて10秒も経たないうちに、半透明な赤い液体がローソクの芯のまわりに溜まり始めています。
体育座りのまま左腕を前に出し、右手のローソクをそっと傾けました。
「んっ!」
手首と肘の間、真ん中あたりに最初の一滴がポタリと垂れました。
すごく鋭い針でツンと刺されたような刺激。
痛い、熱い、と思う間もなくロウが冷めて固まり、その部分の肌をかすかにひきつらせます。
「あんっ」
最初の一滴の後は、あとからあとからポタポタと、最初に着地した周辺に溶けたロウが重なっていきます。
「あん、あんっ」
そのたびにチクチク肌を刺す熱さの刺激。
「いやんっ」
からだをひねった拍子にローソクを持った右手が少し揺れ、左腕をすり抜けたロウが左内腿に着地しました。
このあたりは肌が薄いので、刺激も倍増。
「あ、あん、あ、あんっ」
腿にポタポタ垂れるロウに、いちいちいやらしい声が出てしまいます。
そのままゆっくり右腕を右側に引いていきます。
左手は後ろに突いて上半身を少し後ろにのけぞらし、太腿からお腹のあたり、そして、もっと上のほうへとロウを垂らしていきます。
「ん、ぅうんっ、はぁーんっ」
白い肌に転々と飛び散る赤い斑点。
「あぁっ、いやんっ!」
近い距離から熱いロウが左の乳首を直撃しました。
精一杯敏感になっている乳首の先に、喩えようの無い甘美な熱刺激が走り、全身がビクンと震えてしまいました。
「うっうーんっ」
快感の余韻に浸る暇も無く、ポタポタポタポタ、熱い愛撫が肌を染めていきます。
右腕を上下に動かして、ローソクをおっぱいに近づけては離し、自分の乳房を真っ赤に染め上げます。
「ああんっ、だめぇっ」
ローソクを右に移動して、今度は右おっぱい。
乳房のカーブがどんどん赤い飛沫に覆われていきます。
「あっ、あっ、ゆるして、ゆるしてぇ」
薄闇に浮かぶ炎と白手袋。
許しを乞いながらも、その先から垂れる雫の行方を真剣に目で追ってしまいます。
ローソクの刺激って本当に不思議です。
ポタポタ次から次へと垂れている最中は、いや、いや、もうだめ、やめてやめて、って泣きそうなくらいに身悶えして逃れようとしてしまうのに、垂れてこなくなると、なんで?はやく、もっとください、お願いです、って心の底からその刺激を渇望してしまうのです。
一度ロウが垂れたところに重なって落ちるロウは、熱さの刺激は弱まっていますが、幾重ものロウの層が固まりながら肌をひきつらせる範囲をジワジワと広げていって、その部分を誰かに掴まれているような感触になってきます。
おっぱい全体をまーるく赤く染め上げていくうちに、おっぱいの皮膚全体がロウで固められあちこちでひきつり、まるでおっぱいを誰かの手のひらでやんわり包まれているような感覚になってくるのです。
左右のおっぱいからおへそあたりまでを一通り真っ赤に染めてから、一度ローソクを消しました。
ローソクの消えたリビングは再び薄暗がり。
消したとき、ローソク独特のあの匂いがいっそう強くなり、それと競うように手に嵌めているゴム手袋のケミカルな匂いも際立って、両方が混じり合いながら鼻腔をくすぐりました。
薄暗闇に非日常的な匂い。
本当に妖しい儀式の最中みたい。
赤いロウに染まった自分の上半身が、遠くの鏡にぼんやり幻想的に映っています。
ここまで下半身は、左太腿以外まだ無傷です。
可哀相な生贄の直子。
このまま、下半身が白いまま、儀式が終わるはずはありません。
マゾな被虐心が急激にムラムラ昂ぶってきていました。
「さて、それじゃあ、そろそろ本格的に、お仕置きを始めましょうか」
頭の中に、冷たい声が投げつけられました。
女主の設定は、そのまんま、やよい先生。
やっぱりこの遊びだと、春にお相手をしてくれたやよい先生の印象が強烈なので、迷わずそうなりました。
だけどこの女主は、実際のやよい先生よりもっとイジワルで冷酷でサディストです。
「あたしの言いつけは覚えてるでしょ?あたしが戻るまでオナニーは禁止のはずだったわよね?」
「それなのに、今日一日であなた、何十回イったのよ?」
「まったくどうしようもないドスケベ淫乱女なんだから」
呆れたようなお声とは裏腹に、女主さまがニヤリと笑って傍らのローソクに目をやりました。
「そんなオマンコは、もう使えなくしちゃいましょう」
「いやらしい穴は塞いで固めて一生使用不可。言いつけを破ったんだから、それくらい当然よね?」
これから何をされるのか、一瞬のうちに理解した私は、怖くて声も出せません
「覚悟はいい?」
女主さまがそう言いながら、赤いロウでコーティングされた私の乳房を両手でむんずと掴みました。
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*独り暮らしと私 19へ
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