何かにからだを強く揺さぶられている気がして、目が覚めました。
「・・・と、カゼひいちゃうわよ?」
誰か、女性の声がぼんやりと耳に届きました。
閉じていたまぶたをゆっくりと開けていくと、私の顔を覗き込んでいる誰かと視線が合いました。
「わっ!」
声を出すと同時に意識がハッキリして、私はガバッと上半身を起こしました。
反射的に飛び退く誰か。
「あんまりぐっすり眠っているから、起こすの可哀相とも思ったのだけれど、そんなに汗かいたからだで裸で眠っていたら100%、カゼひいちゃうからさ」
目の前にシーナさまがいました。
ハワイのムームーみたいなカラフルで涼しげなお洋服を着て、私を見てニコニコ笑っています。
「あ、シーナさん!あ、さま・・・なんでここに?」
言ってから私は、意味も無くまわりをキョロキョロ見渡してしまいました。
「直子さんが無事、脱出できたか心配で見に来てあげたのよ。あと、今はプレイ中じゃないから普通にシーナさんでいいって」
シーナさんがまたベッドのほうに近づいてきて、私の枕元の縁にチョコンと腰掛けました。
「一応自力で脱出できたみたいね」
そうだ。
私、最後にイった後、急に眠くなってきて、そのまま眠っちゃったんだ。
私のからだには、大きなバスタオルが2枚、かけられていたみたいでした。
でも、起き上がってしまったから、今はおっぱい丸出し。
タオルの下で開いている膝を閉じようとしたとき、足首の鎖がジャランと鳴って、両脚は鎖に繋がれたままだったことを思い出しました。
お部屋は、心地良い温度に戻っていました。
シーナさんがエアコンを点けてくれたのでしょう。
バスタオルをかけてくれたのもきっとシーナさん。
マイクスタンドも片付けられ、窓にはレースのカーテンだけ引かれていました。
お外はすでに暗くなっていました。
「わざわざありがとうございます、シーナさん。ご心配とお世話をおかけしちゃったみたいで・・・お部屋も片付けていただいたみたいだし・・・」
「いいの、いいの。わたしもおかげですんごく面白いものが見れたから」
シーナさんがイタズラっぽく笑いかけてきました。
「わたしがいつ、ここに戻ってきたのか、知ってる?」
「えっ?」
「わたしがリビングのドアをそっと開けたとき、部屋はカタカタカタカタうるさい音がしてて、この上で直子さんが、すんごい勢いで悶えてた。オマンコいいーっ、なんて、おっきな声で叫びながら」
シーナさんが愉快そうに笑いました。
「えーーーっ!?」
見られちゃってたの?
それも一番見られたくない、恥ずかしすぎる修羅場なワンマンショーを・・・
私の全身を、全血液が逆流しました。
「直子さんたら、ドアを開いても閉じても、ぜんぜん気がつかないんだもの。夢中になってバイブをズボズボ出し挿れして、おっぱいめちゃくちゃに揉みしだいて」
「腰がビクンビクン、いやらしく何度も浮いていたわ。わたし、リビングのドアのところに立って、ずーっと見ていたの」
「そのうち、床に落ちたローターが私の足元まで転がってきたのね」
「カタカタ凄い音だったから、いくら防音とは言え、下に住んでる人が在宅だったら絶対苦情来るなーってハラハラしてたから、思わず拾い上げちゃった」
「そしたらあなたったら、あれだけうるさい音が鳴り止んだことさえ、気がつかないんだから」
シーナさんが苦笑いを私に向けました。
私は、あまりの恥ずかしさに火照ったまま、うつむいて上目遣い。
「とにかくすんごい喘ぎ方だったわねえ。上半身ガクガク震わせて、おっぱいプルンプルン揺らして、両手でからだ中まさぐって。見方によったら悪魔祓いの儀式中、みたいな?」
「潮噴いたのもバッチリ見ちゃったわよ。ずいぶん飛んだわねえ」
「そのうちに、ローターとかスポイトとかを床にぶん投げた、と思ったらぐったりしちゃって、ベッドにひっくり返って。やがて寝息が聞こえてきた」
「部屋はすんごく暑かったけど、固唾を呑んで見守っちゃたわよ。一部始終。それで、直子さんが眠ってから軽く片付けした後、起こした、ってワケ」
「だから、直子さんが眠っていたのは、ほんの15分くらいね。ちなみに、わたしは、出て行ってから1時間20分くらいで戻ってきたの。そのときはもう鍵は落ちていたから、アイスタイマーもだいたい予想通りだったみたいね」
シーナさんは、お話している最中に立ち上がり、お話しながらダイニングへ行って、またすぐ戻ってきました。
「そんなワケでお疲れさま。わたしが目撃した野生の直子さんは、すんごくいやらしくて、すんごくスケベで、すんごく淫乱で、すんごくマゾで・・・」
言いながらシーナさんの指が、依然としてうつむいている私の顎にかかり、クイッと私の顔を上向きに持ち上げました。
シーナさんと見つめ合います。
私は、絶望的な恥ずかしさで、火傷しそうなほど真っ赤に火照っているはずです。
「それで、すんごくセクシーで、すんごく可愛かった」
「目を閉じて、口を大きく開けなさい」
シーナさま、お久しぶりなご命令です。
この冷たい口調を聞くとやっぱり、シーナさん、ではなく、シーナさま、と呼びたくなります。
私は素直に言われた通り従い、両目を閉じて、口を大きく開けました。
私の口の中に何か冷たい雫がポタリと垂れて、思わず目を開けてしまいました。
シーナさまが長さ8センチくらいのゴツゴツした菱形のロックアイスを端から三分の一くらい、ご自身のお口で咥え、そのお顔を私の顔に近づけてきていました。
シーナさまが目を軽く閉じているのを見て、私もあわててまた目を閉じました。
ロックアイスのゴツゴツした感触が私の口中に侵入してきて、一瞬、唇同士が触れた、と思ったら眼前の気配が遠のきました。
「たぶん、すんごく喉が渇いているでしょう?それしゃぶって落ち着いたら、シャワーを浴びてサッパリしちゃいなさい」
シーナさまがやさしくおっしゃいました。
確かに口の中がカラッカラに乾いていて舌がまわらず、しゃべるのにも不自由なほどだったので、シーナさまに口移しでもらった氷の塊は、まさに甘露の味がしました。
その上、今、たしかに触れ合った私とシーナさまの唇・・・
嬉しさに我を忘れて、思わずシーナさまの細い腰に両腕でギューッとしがみつきました。
ずいぶん前にデパートで出会ったときと同じパフュームのいい香りがしました。
「ひーにゃひゃにゃ。ひゃひひゃひょーひょにゃひひゃひゅ!」
氷を口いっぱいに頬張ったまま感激してお礼を言うと、シーナさまが少し照れたようなお顔になり、これじゃイケナイと思い直したのか、キッと真面目なお顔を作って、私の両腕を邪険に払い除けました。
「言っておくけど、今のはキスじゃないからね?喉が渇いてるだろうと思ったから・・・奴隷にあげる飴と鞭の、単なる飴のほうだから・・・」
「それに、直子さん?どうするつもりだったの?この鍵、ずっと向こうのほうまですっ飛んでたわよ?わたしが来なかったら、足の鎖はどうやってはずすつもりだったの?」
シーナさまは、わざと怖いお顔になって、わたしの目の前に輪っかの付いた南京錠の鍵をプラプラさせました。
それは知らなかったけれど、もうそんなことはどうでもいいような気分でした。
私は、シーナさまと唇チューが出来たことで、すっごくルンルンな気持ちになっていました。
もう、シーナさまったらツンデレなんだからー。
シーナさまは、照れると怒った感じになっちゃうみたいです。
シーナさまが私の両脚の鎖もはずしてくれて、ついでに赤いエナメルの手枷と足枷、ショーツとワンピースも脱がせて丸裸にしてくれました。
私はずっとされるがままで、ソファーベッドの上をゴロンゴロン。
口の中の氷は、とっくに溶けて無くなっていました。
「ずいぶんあちこちに痣が出来ちゃったわねえ。見るからにマゾ奴隷って感じでわたしは好きだけど。完全に消えるまで一週間てとこかな?それまでプールとか温泉には、行けないわねえ」
シーナさまはイジワルそうに言いますが、私は、そんなこともどうでもいいと感じていました。
確かに、私のからだのあちこちに、赤紫や真紅やピンクの痣やみみず腫れが痛々しく、白い肌を飾っていました。
でも、それはそれで艶かしく淫靡で、かえってセクシーにも思えました。
シーナさまにぶたれるなら、どんなに痕が残ったって・・・
シーナさまの細い指が気まぐれに、私のおっぱいや太腿やお尻の痕をなぞるたびに、性懲りも無くゾクゾク感じていました。
「さ、ゆっくりシャワーを浴びてきなさい。その間にわたし、お夕食の用意しといてあげる。さすがにお腹、空いたでしょ?」
「あ、はい。でも、いいんですか?」
「さっき、フードコートでいろいろ買い込んできたから。出来合いのお惣菜だけど、美味しいって評判のお店なの。直子さんと一緒に食べようと思って」
「うわー、嬉しいです。今夜は泊まっていかれます?」
「わたしも当初はそのつもりだったんだけど、急に用事が入っちゃってね。夜の9時から」
「9時からお仕事、ですか?」
急激にガッカリしながら聞きました。
「仕事、とも言えるのか、言えないのか・・・奴隷の一人に急に呼び出されてね・・・」
シーナさまが謎なことを言って、言った後また苦笑い。
「奴隷に呼び出されるご主人様、ってのもなんだか可笑しな話だけどね。ま、いろいろあるのよ、長く生きていると」
「直子さんにもそのうち説明する機会があるでしょう。それまでは、今のは聞かなかったことにしといて、ね?」
シーナさまがニッて笑いかけてきました。
「もちろん直子さんとはまた近いうちに時間作って、じっくり遊ぶつもりよ。あなた面白いもの。どんどんアイデアが湧いてくるし、何よりわたしが萌えられる」
「ゆりさまともさっき電話でお話したの。前半戦のご報告がてら。それで、ゆりさまからも直子さんの今後の貸し出し許可もいただいたし、当分わたしからは逃げられないわよ?」
シーナさまがニヤリと笑って、今は普通に戻っている私の右の乳首をピンって人指し指で弾きました。
「いやんっ!」
その途端に私の官能がポッと小さく燃え上がり、背筋がゾクッとしてしまいました。
どうやら私は、本気でシーナさまとのSMアソビを気に入ってしまったようでした。
今夜はダメでも、近いうちにまたシーナさまが遊んでくれる。
そう考えるだけで、心がワクワクして前向きな気持ちになれました。
奴隷の一人、っていう言葉は少し気になったけれど、シーナさまは社会人だし、昔からやよい先生ともお付き合いされていたし、確かにいろいろあるんだろう、って考え直して、そのことについてはそこで思考停止することにしました。
「ほら、早くシャワーしてらっしゃい」
シーナさまに裸の背中をパチンて軽くはたかれました。
「はい。シーナさまとのお夕食、すっごく楽しみです」
確かにお腹も空いていました。
私は、本心からそう言ってシーナさまに深々とお辞儀をしてから、バスルームに駆け出しました。
*
*氷の雫で濡らされて 20へ
*
ご無沙汰しております。 すっかり秋めいてきました。
返信削除小説の方は絶好調ですね。
圧倒的な女性ならではの表現に脱帽しました。
このような表現は男性には書けないんですよね。
ただ凄いの一言です。
アクセスもこのところ飛躍的に伸びたんじゃないでしょうか?
皆さんの期待も高いと思いますので、これからも頑張って下さい。
あおいさま
返信削除コメントありがとうございます(≧∀≦)ノ
あおいさまの新しい露出のお話も、こっそり楽しませていただいています(≧∀≦)ノ
飛躍的、ってほどではないですが、新しいお話をアップすると読みに来てくださる方々がジワジワと増えているみたいで、嬉しいです。
実は最近、個人的にちょっぴりマンネリ虫に取りつかれていたのですが、やっぱりマイペースでちゃんと書いていけばいいのかな、と思い直したりもしていたりします。
また、お時間の許すときに遊びに来てくださいね(≧∀≦)ノ
いや、実はね、ちょこちょこ遊びには来ています。
返信削除(コメントはしていませんが)
マンネリ虫ですか・・・私も時々湧いて出てきます。
特にエッチオンリーの描写時に取りつかれますね。
結局のところ主人公は「何が」したかったのか、わからなくなったりします。
そうなればエッチで『身を焦がす』お話より『脳を焼く』過激なお話を書きたくなります。
なおこさんもマイペースとおっしゃってるのは、心の中で変化が現れているんじゃないでしょうか。
私は進歩として捉えています。
偉そうなことを書いちゃって申し訳ないのですが、お互い頑張りましょう(*^^)v
あおいさま
返信削除コメントありがとうございます。
私のところのマンネリ虫はですね、何て言うか、お話を書いていて、以前ほど自分で、楽しい、って思っていないな、って感じることが、たまにあるんです。
なので、予定していた展開をやめて新しい展開を無理やり考えたりして、どうせ書くなら自分も楽しんで書きたいな、と思っています。
お話を考えるのは大好きですし、長く書いていると登場人物が突然、私が思いもよらなかったことを言い出したりするので、それを楽しみにつづけていきたいな、って思っています(≧∀≦)