2022年10月2日

肌色休暇三日目~避暑地の言いなり人形 08

 この場でブラウスを脱いでブラを外すか、脱がないままモゾモゾ外すか…
 そんなのどっちもおいそれと出来るわけありません。
 今だって少し離れた場所に白いお車が駐車され、大学生風のカップルさんが私たちのほうをチラチラ見遣りながら数メートル前を歩いて行かれたのですから。

「ほら、早くしないと、もっとひどい命令にアップグレードしちゃうよ?」

 とっても愉しげに残酷な笑みを浮かべられる五十嵐さま。
 仕方ありません…
 ブラウスのボタンを外して、脱いで、ブラを取って、またブラウスを着てボタンをして、という行程はあまりにも時間がかかって危険そうなので、着たまま外すことに決めます。

 両手を背中に回してブラウスの布の上からブラのホックを外しました。
 それからブラウスの前ボタンをもうふたつ外し、左半袖の中へ肘のほうから左腕を無理やりブラウスの中に押し込みます。
 この時点でブラウスの前立てはおへそ上まではだけているので、緩んだ薄青色のブラジャーのほとんどが外気に晒されています。

 ブラウス内に潜り込ませた左腕からブラの左肩紐を抜き、急いで左腕を左袖に通し直してブラウスのボタンも留め直しました。
 その後は左手を右半袖に潜り込ませ、右肩紐を引っ張って袖からブラを引き摺り出すだけ。
 その一部始終は、橋本さまが構えられたビデオカメラで記録されているはずです。

「へー、ずいぶん手慣れてるもんだ、すごいすごい。何度もやっていなくちゃ出来ない芸当だね」

 五十嵐さまからのお褒めのお言葉は良いのですが、良くないのはブラが去ってしまった私の格好です。
 炎天下の汗と私の冷や汗が重なり、それでなくても透けやすい生地がべったり肌に貼り付いて、ところどころだけ乳白色な肌色ビニール状態。
 おっぱいの形はもちろん、乳暈と、自分でも恥ずかしいくらい尖りきっている乳首の色と形まで丸わかりなんです。

 外したブラを握ったまま、思わず両手を交差してバストを隠してしまう私。
 五十嵐さまが前抱きにされたリュックからスマホを取り出され、どこかにお電話されています。

「P3のラルフの裏あたりで右のミラーに黄色いバンダナね。了解」

 通話を終えられた五十嵐さまが私に近づかれます。
 無造作に伸ばされた右手でブラがひったくられ、五十嵐さまのリュックの中へ。

「なに今更おっぱい隠しちゃってるの?誰が隠していいって言った?」

 胸の前で交差した私の右手首を握ってこられる五十嵐さま。
 離れる腕に弾かれた乳首がピクンと跳ねて布地を押し上げます。

「あっ、あの、で、でも…」

 木々と建物で隔てられた私の背面側のモールのほうから、キャハハハという数人の女性の甲高い笑い声。
 そこから私が見えているはずはないのに、私に向けての嘲笑に思えてしまいます。

「露出狂のクセにデモもストもないの。えっちな格好をみんなに視てもらって恥ずかしい思いがしたいんでしょう?それで興奮しちゃう変態マゾ女なんでしょう?」

 こんな健全な公共施設の屋外で、変態マゾ女、なんて面と向かって決めつけられたら、それだけでドキンと心臓が口から飛び出しそう。
 同時に両腿の付け根もヒクヒクンと盛大に疼いてしまいます。

「ほら、汗でいい感じの透け具合になってるし、そのいやらしいおっぱいをみんなにしっかり視てもらわなくちゃ」

 おっしゃりながら五十嵐さまに掴まれた手首がゆっくりと私の背中側に回されます。
 されるがままに左手も胸から剥がされ、お尻の上くらいで両手がひとまとめに。
 うつむく私の目前に恥ずかし過ぎる透け乳首がふたつ。

「でも、とか言って嫌がるわりに、全然抵抗はしてこないんだね。直子ってほんとマゾ」

 からかうようにおっしゃった五十嵐さまが後ろ手となった私の手首に何か硬い物を押し付けてこられます。
 あっ!と思う間もなくカチンカチンッと軽めな音が二回。
 そこまでされるとは思っていなかった、想定外の後ろ手錠。

「これでよしっと。さ、みんなのところに戻ろっか。ハッシー?周りの雰囲気込みでじっくり撮ってね」

 五十嵐さまに軽く背中を押され、閑散とした駐車場の端っこから、普通に人とお車が行き交うもう片側のモール沿いのほうへ。
 後ろ手錠されてしまったので、透け透けのおっぱいを隠すことは一切出来ません。
 橋本さまが近づかれたり遠ざかれたり、前へ横へ後ろへとポジショニングされつつ撮影してくださっています。

 施された手錠はその軽さや感触から、お姉さまやシーナさまが私に使われるスチール製の本物仕様ではなく、お子様向けけいさつごっこ用なプラスティック玩具みたい。
 私も以前、同様のものを百円ショップで購入したことがあるので知っているのですが、この手のオモチャは安全対策として鍵を使わなくても手錠本体に外せるボタンが付いている場合がほとんど。
 今されている手錠も、見えないながら表面を指でなぞると、それらしきボタンがちゃんとあるのが確認出来ました。

 それでも私は自分からこの手錠を外すことはしません。
 お姉さまがご懇意にされているかたからのご命令は絶対服従、というレズ便器体質がからだに刷り込まれているのもあるのですが、何よりも自分が、今のこんなご無体な境遇に興奮してしまっているからです。

 五十嵐さまは前抱きリュックのまま薄い笑みを浮かべられたお顔をまっすぐ前に向けられ、私の左横を同じ歩調で歩かれています。
 撮影されている橋本さまが私にレンズを向けての後ずさりな感じになってしまうので、どうしても歩くペースはゆっくりになってしまいます。

 私はと言えば、とても正面に顔を上げることは出来ずうつむきがち、それでもときどき視線だけ動かして周りを窺わずにはいられません。
 お姉さまなら、そんなにモジモジしていると却って悪目立ちするわよ、とすかさずご叱責されることでしょう。
 うつむいた視野には否応なく自分の透け乳首が入り、そこから目を逸らすと青空と駐車場。

 場内を進むごとに、駐車されているお車と周りを行き交う人の数が増えてきます。
 これから進む方向にある空きスペースにお車が駐められ、ドアが開いて男女が出てこられたり、若い女性のおふたり連れと一メートルも隔てていない距離で擦れ違ったり。
 私たちから5、6メートル離れた駐車スペースで棒立ちになられ、明らかに私たちをじーっと見つめている男性おふたり組を視界の端にみつけたとき、視られている、という実感が股間の粘膜を震わせながらせり上がってきました。

 視られて当然です。
 こんなに目立つ首輪を嵌めて、衣服の用を成していないブラウスの下の生おっぱいを見せびらかすように晒している変態女が、ランチタイムの健全なショッピングモールの駐車場を撮影されながら歩いているのですから。

 罪悪感と恐怖感を盾として崩落を食い止めている理性と呼ばれるストッパーが、恥辱願望という性的興奮でみるみる緩んできます。
 こんな恥ずかしい姿、お願い視ないで…という懇願が、どうぞじっくり視て蔑んでください…という被虐の快楽へと飲み込まれそう。

 自分の生活圏ではない一期一会の見知らぬ土地であるという開放感も、大胆さへとそそのかされる呼び水になっているみたい。
 視られている、という実感をより強烈に体感したくなり、歩きながらうつむいている顎を徐々に上げていく私。

 知らぬ間にずいぶん歩いたみたい。
 広い駐車場でも、ひときわ密集してお車が駐車されているほうへと近づいているので、そちら側のショッピングモールへと出るのに便利な場所なのでしょう。
 当然のこと人々の姿も増え、前から後ろから、さまざまな人に追い越されたり擦れ違ったり。

 顔は前に向けたまま、そんな方々と極力目を合わせないよう無表情を繕って、でも浴びせられる視線は充分意識して歩きつづける私。
 時代劇で見たことのある、市中引廻し、みたいな猥雑な見世物になっている気分で心臓はドキドキ冷や汗タラタラ、なのに下半身はキュンキュン感じてしまっているのです。

「やっとみつけた。あそこだね」

 五十嵐さまが突然立ち止まられ、目前を指さされます。
 いろんなお車が前後左右に整然とズラッと並んだ一画に、確かに見覚えのあるシルバーグレイのワゴン車。
 いいえ、さっきのドライブ中の会話で本橋さまがおっしゃっていたお話によると、こういうお車を今はミニバンと呼ぶのだそう。
 そして五十嵐さまがお電話でおっしゃていた通り、確かにミラーのところに黄色いバンダナが巻かれて垂れ下がっています。

 戻ってこられた五十嵐さまや私のはしたない姿をお車のほうでもみつけられたのでしょう、ドアが開いてお姉さま、中村さま、本橋さまもお外に降りてこられました。
 居並ぶお車たちのあいだを縫うように進み、お姉さまたちと合流します。

「そんな姿であそこから歩いてきたの!?」

 私の姿を見られた中村さま、ご驚愕の第一声。

「バンダナ付けてくれて助かったよ。似たような車ばっかりで、もうみんなに一生会えないかと思った」

 中村さまのご驚愕を、大げさなご冗談でスルーされる五十嵐さま。

「バスト丸出しじゃない?透けているっていうレベルじゃないわよ?」

 なおも呆れ果てられている中村さまとご愉快そうに苦笑いのお姉さま。
 唖然としたお顔で私の上半身を見つめられている本橋さま。
 
 みなさまに取り囲まれ、更に周りも背の高いお車ばかりで自分の姿が隠されて、ちょっとホッとしている私。
 そんな私から五十嵐さまがおもちゃの手錠を外してくださいました。
 両手は自由になったのに、あらためておっぱいを隠そうともしないのは、お姉さまが私を見て微笑んでくださっているから。
 
「でも人って意外と他人のこと気にしていないもんなんだね。これだけ凄い格好した女子がすぐ近くを歩いているのに、他所向いてたりスマホに夢中だったり」

 五十嵐さまがあらためてしげしげと私の透けおっぱいを見つめてこられます。
 その後ろから橋本さまも変わらず撮影をつづけておられます。

「もちろんガン見してきたり、痴女?なんてつぶやく声も聞こえたけど、ほとんど男で、うちがそっちに目線向けると慌てて視線逸らすの」
「ひと組だけ中年の夫婦っぽい男女が、一瞥してしかめっ面になって、あ、これはひょっとするとヤバいかな、と思った。あのときが一番焦ったな」
「でもまあ、こんな首輪もしてるし業界風のハッシーも付いているしで、そういう撮影なんだろうって有耶無耶に納得した人たちがほとんどなんじゃないかな」

 五十嵐さまのお言葉で、やっぱりそんなに大勢に視られていたんだ、とゾクゾクがぶり返す私。
 ビクンと震えて視線を上げると、その先にお姉さま。
 薄い笑顔の冷たい目でじっと私を見つめられてから、おっしゃいます。

「でも、ランチタイムのフードコートにその格好はいろいろマズイと思うな。この子は良くてもあたしたちの立場的に」

「うん、うちもそれはそう思う。一応羽織るものも用意してるから、それを着せようかなって」

 五十嵐さまが素直にご同意され、リュック内をもぞもぞされ始めます。

「フードコート行くなら、もう少し車を近いところまで移動させましょうか?見たところ、まだ空きはいっぱいあるし」

 気不味い話題を無理矢理はぐらかされるような本橋さまのご提案で、もう一度みなさまミニバンに乗ることに。
 橋本さまが構えていたカメラを下ろそうとされたとき、お姉さまから待ったがかかります。

「いい機会だからその前にカメラの前で、直子がどういう女なのかはっきりさせておきましょう。直子、スカートをまくりあげなさい」

 お姉さまの冷たいご命令口調。

「は、はい…」

 お姉さまがみなさまに何をお見せになりたいのかは、わかりきっています。
 橋本さまを中心に、みなさまが私の正面に並ばれます。
 私はおずおずと両手をスカートの裾に添え、ゆっくりとめくり上げていきます。

「うわー、グショグショじゃない」
「パンツの色まで変わっちゃって、土手に貼り付いちゃってる」
「腿にも垂れてない?クロッチに雫浮いてるし」
「露出狂って恥ずかしさだけでここまでなっちゃうんだ」

 いたたまれないご感想は、中村さまと五十嵐さまから。
 本橋さまはただただ唖然、お姉さまだけが艶然と微笑まれていらっしゃいます。

「イガちゃんはまだ、直子のパンツまで脱がす気は無いんでしょ?」

「ああ、うん。もっと人目の多い日常的な場所で脱がさせたほうが、露出症的には嬉しいのかな、と」

 お姉さまのご質問に率直に答えられる五十嵐さま。

「正解。見ての通り直子のスケベさは底無しだから、ちゃんと緩急つけておかないと好き勝手に暴走しちゃって、あたしたちまで危ない目に遭うことになるかもしれないの。とくにこういう公然猥褻スレスレ事例だと」

 お姉さまがビデオカメラのお邪魔にならないように一歩前に出られ、私を嗜虐的な瞳で見据えられます。

「直子、今、何がしたい?」

「えっ、あの、何って…」

「オナニーしたいでしょう?早くイキたいのでしょう?」

「えっ、あ、は、はい…」

「でもこんなところでそんなことしちゃったら、どんなことになるかもわかるわよね?」

「はい…」

 唇の両端を微かに上げられたお姉さまがつづけられます。

「聞き分けがよくて助かるわ。ご褒美を上げましょう」

 もう一度唇の両端を上げられたお姉さまの右手が、すっかり私の背中側まで回っていたパイスラポシェットを開けられ、何か取り出されます。
 もちろん私に手渡されたのは例のリモコンローターのローター部分。

「ほら、これを許して上げるから、みなさんの前で、自分で挿れなさい」

「はい…」

 もはや私にはお姉さましか見えていません。
 ゾクゾク感じながら再度自らスカートをまくり上げ、いそいそとショーツを太腿中間まで摺り下げます。

 か細い糸を何本も引いて股間から離れた布片。
 外気に晒された無毛の膣口にローターを押し当て、ズブリと右手で押し込みます。

「んっ!!」

 刺激を渇望していた粘膜がヒクッとざわめき、小さくイッてしまいます。
 そのままの格好で縋るようにお姉さまを見つめる私。
 膣口からはリモコン受信用の柔らかいアンテナがピンと飛び出しています。
 それ以上の刺激が欲しくて堪りません。

「ほら、さっさとパンツ上げなさい。これからみんなでランチなのだから」

 お姉さまの突き放すようなおひと言で、渋々ショーツを股間に戻します。
 はしたない声を抑える準備は出来ていたのに…
 やっぱり一番イジワルなのはお姉さまです。

「ド淫乱でド変態の百合主従で露出狂なドマゾ女…うちが蓄えた知識だけじゃ追いつかなそう…」

 五十嵐さまがお独り言のようにつぶやかれたお言葉で、私とお姉さまだけだった世界が呆気なく崩れ去ります。

「さあ、これで当面は穏やかに過ごせるはず。ランチにしましょう」

 お姉さまの号令で、みなさま我に返られたみたいにお車に乗り込まれます。
 本橋さまがブルンとエンジンをおかけになられ、静かに流れ出すバラード曲、確かジョージ・マイケルさん、に乗ってお車が走り始めます。

 五十嵐さまが羽織らせる用にご用意されていたというお洋服は、薄いニットのクタっとした半袖カーディガンでした。
 淡いピンク色の無地で、丈がバスト下くらいまでしか無いのでボレロカーディガンと呼んだほうがよいかも。
 前ボタンも付いてなく、ブラジャーのセンター位置くらいをリボンで結ぶタイプ。

 羽織ってみると軽くて着心地良く、前リボンを結べばおっぱいもすっぽりキレイに隠れます。
 なんだかブラウスの上から緩いブラジャーを着けたみたい。

 ただ、ブラウスもカーディガンも生地が薄いので、バストトップは露骨に響き、位置も形も丸わかりな感じ。
 それにリボンが解けたら生地が容易に左右に割れ、透けおっぱいは丸出しに逆戻りとなります。

「うーん、やっぱり乳首が露骨だわよね」

 中村さまに、見せて、とお願いされ、お車のスライドドア脇まで出て、膝を屈めた姿勢で胸を突き出しています。

「直子が戻ってきたとき何よりも驚いたのが、その格好よりも左右の乳首の存在感だったのよ」
「痛そうに尖りながら膨らんでいて、うわー卑猥だーこれはどう見ても猥褻物だー、って思ったの」

 中村さまがお隣のお姉さまに向けて力説されます。
 橋本さまが助手席から半身を乗り出され、そんなご様子まで撮影されています。

「だからあの卑猥な勃起乳首は、なるべく不特定多数の公衆の面前には出さないほうがいいと思うのよね」

 捉えようによっては、ずいぶん失礼なご意見ではあります。
 私の乳首って、そんなに卑猥なんだ…

「んなこと言ったって、じゃあどうすんの?またブラ着け直す?なんかそれって調教プレイの流れとしてマヌケ過ぎじゃん」

 中村さまのお話を黙って聞いていらっしゃった五十嵐さまが、ご不満げにご抗議のお声。
 今していることって五十嵐さまの中では、調教プレイ、っていう位置付けなんだ、と妙に納得してしまう私。
 でもすぐに何か新しいアイデアが閃かれたらしい五十嵐さまが、お声のトーンを上げてつづけられます。

「ならこうしない?絆創膏貼るの。グラドルとか着エロでよくある絆創膏ヌード。乳首とワレメだけ絆創膏で隠すやつ。あれなら全裸とはまた違った独特のエロさがあるし、服にも響かなくなるはず」
「うちの予備のニップレスもあるけど、それより断然、絆創膏のほうがエロいよね。見せたいけど見せたくない、ここさえ隠せば裸じゃない的屈折した乙女心」

 みなさまのお返事も待たられずに五十嵐さまが再び、ご自分のリュックの中を漁り始められます。

「あったあった。じゃあ直子、上半身全部脱いで」

 お車はすでにフードコートに近い場所まで移動したようで、今は駐車の状態。
 今度はさっきよりモールの店舗脇通路に近い場所に駐められたらしく、お外から漏れ聞こえる喧騒もさっきより賑やかな気がします。
 スモーク加工が施されたお車の窓をそっと覗くと、平日朝10時過ぎの東池袋駅周辺くらいの人通り。

 そんな中で私は、スライドドアの大きな窓を背中にして、ブラウスのボタンを外し始めました。

2022年9月25日

肌色休暇三日目~避暑地の言いなり人形 07

「あ、それでこちらは某出版社で名塚毬藻先生のご担当を長らくつづけられて、今はフリー編集者の中村佳奈さん。夏のあいだずっと先生とここで過ごされている、言わばこのお屋敷の管理人のおひとり」

 お姉さまのご紹介に身を乗り出されたのが橋本さま。

「名塚先生って、あの、S氏の典雅な生活、の名塚先生ですよね?俺、中坊の頃から大ファンでシリーズ全部持ってます。先生、今いらっしゃるんですか?」

 少し早口お声高になられ、ずいぶんご興奮気味な橋本さま。
 名塚先生って男性向け?たぶんBL?も書かれているんだ、って私もちょっとびっくり。

「ごめんなさいね、名塚は今日は仕事でタカサキのほうまで出ているんです。でも、そんな以前からの作品を今でも読んでくださっている男性ファンがいると知ったら名塚もとても喜びますわ」

 なんだかお仕事っぽい口調になられている中村さま。

「ハッシーはね、こんなサイケなアロハ着てチャラいけれど美大の映像科出てるんだって。だから今日は直子の資料映像の撮影カメラマンもやってもらおうって」
「あ、橋本だからハッシーね。で、こちらのガタイのいいほうが彼のパートナーの本橋さん、モッチー」

 お姉さまのご紹介にペコリと頭を下げられる本橋さま。

「ちょい訂正。俺、美大出てはいない。中退。小難しい理屈ばかりの講義に途中で飽きて嫌になった…」

「あ、でもこいつ、今でもボディビル大会があるとあちこちから呼ばれるほど撮影の腕とセンスはいいんですよ。アングルのとり方とか躍動感の捉え方とか…」

 ご中退告白で少しやさぐれられた橋本さまを、すかさずフォローされる本橋さま。
 五十嵐さまがこれ以上無いくらい嬉しそうにご相好を崩されています。

 そんなご様子を曖昧な笑顔で眺められていた中村さまが、提げていたバッグからスポーツドリンクのペットボトルを二本出され、おふたりにそれぞれ手渡されます。

「ワタシたちはもう少し準備があって、ほら、女の支度は長いから。本当は中で待っていただくのが筋なのだけれど、名塚の滞在中には男性を屋敷の中に入れてはならない、っていうジンクスみたいな不文律みたいなのがあるの。だからあと5分くらい、本当に申し訳ないのだけれど、ここでお待ちいただいていい?」

 おふたりが頷かれるのを見極められてから、お言葉がつづきます。

「渡辺社長のお車は、そこを右に折れて突き当たって左、建物の裏手が駐車場になっていますから、適当に空いているところに入れておいてください」

 なぜだかずっとお仕事っぽくよそよそしい事務的口調な中村さまに促され、私たち4人はもう一度お屋敷の中へ。

「モッチー✕ハッシーいいじゃんっ!お揃いのバミューダパンツ穿いちゃって、見るからにラブラブだねえ」

 上機嫌な五十嵐さまは、ご自分の大きめリュックを覗き込まれ、持っていかれるもののチェックをされているご様子。
 お姉さまが私に近づいてこられ、私のポシェットをたすき掛けのパイスラ仕様にセッティング。

 またブラに布地が貼り付いちゃう、と思ったのですが、乾きも早い生地みたいで空調の効いた室内に戻ったせいか、着たときに感じた通常の透け具合に戻っていました。
 厨房にしばらくこもられてから出てこられた中村さまは、把手の付いた大きなクーラーボックスをぶら下げていらっしゃいます。

「夕方まで時間があるからさ。生鮮食料品は遅めに買って、この中に突っ込んどけばいいわ」

 そのお腰には緑のチュニックによく映えるお洒落可愛い橙色のウエストポーチが巻かれています。

「かなちゃん、ハッシーと話すとき妙によそよそしかったけれど、あの手の男、苦手なの?」

 お姉さまはいつものトートバッグ、たぶん私を虐めるおもちゃもたくさん入っている、を肩に提げられ、中村さまに笑顔でお問いかけ。

「うーん、出版社にいた頃、バイトの女子や作家志望で持ち込みに来る若い女の子にすぐに下品なセクハラまがいかます、ワタシより少し年上の既婚編集者がいてさ、そいつにルックスや雰囲気が似ていたんで、ちょっと身構えちゃった」

 苦笑いを浮かべられる中村さま。

「でも彼、ホモセクシャルなんでしょ?なら心配ないよね。好きだって言っていた先生の小説もちゃんとBLものだったし」

 ご自分に言い聞かせられるように中村さまがおっしゃいます。

「かなぴっぴ?うちらに害をなすかもっていう杞憂なら大丈夫。ハッシーはどう見てもゲイ、それも絶対ウケのほうだよ」

 五十嵐さまが自信満々におっしゃり、私たち声を揃えて、えーーっ!?

「ああいうちょっとヒネた感じのやさ男って、ゲイの中では総じて受けになりがちなんだ。ハッシーは誘い受けだね。ベッドじゃ組み伏せられて悦んでるタイプ、つまるところエム」

「でもあのマッチョな彼のほうが物腰柔らかくて、受けっぽくない?」

 中村さまが異議を申し立てられますが、ふふんとお鼻で笑われる五十嵐さま。

「ううん、彼のほうはベッドじゃたぶんケダモノよ。ラグジャー着ていてあのガタイだもん、絶対脳筋だし、本能に忠実な攻めタイプ」

「ふーん、ホモセクシャルってそういうものなのかしら…」

 何やら生々しい会話が繰り広げられ、私はかなり引き気味。
 そうこうしているうちにみなさまのご準備が整ったようです。

 4人で再びお庭に出て、中村さまがしっかり施錠。
 玄関の壁に掛かったアンティークな振り子時計を見ると、時刻は午前11時を15分くらい過ぎた頃。
 本当に私は、人がたくさん集まっていらっしゃるらしいアウトレット?モール?に、こんな透けブラ姿で連れ出されることになってしまいました。

 見慣れぬ男性おふたりをご警戒されていたのか、少し遠巻きにウロウロされていたジョセフィーヌさまが、現われた私たちをみつけられ嬉しそうに駆け寄ってこられます。
 中村さまが持たれていたコンビニ袋をお見せになられつつ、ジョセフィーヌさまに何事かを語りかけられながら、芝生の小屋へと連れ戻されます。
 
 アプローチには門に向けて方向転換されたシルバーグレイのワゴン車のみ。
 お姉さまのお車は駐車場に入れられたのでしょう、消えていました。

 出てきた私たちに気づかれ、車外へと降りられる本橋さまと橋本さま。
 同時にワゴン車側面のスライドドアがススーっと開いたのですが、それを無視され五十嵐さまが橋本さまに駆け寄られます。

「はい、これビデオカメラ。充電バッチリで32ギガ積んである。頼んだわよ、撮影カントク、ハッシーさん?」

「あ、いや俺、自分の使い慣れたやつ持ってきたから。メモリーカードに録画するから終わったらすぐに渡せる」

 そうおっしゃって右手に嵌めたオレンジ色のハンディビデオカメラを私に向けてこられる橋本さま。
 思わずバストを庇ってしまう私。

「そっか、ならこのビデオはエミリーさんに託そう。撮影されている直子を撮影するのもメイキング映像みたいで面白そう」

 この三日間、私の痴態を記録しつづけてきたビデオカメラが本来の持ち主さまのお手に戻ります。

「おっけー、任せといて」

 お姉さまの朗らかなお声が合図だったかのように、本橋さまと橋本さまがそれぞれ運転席と助手席へ。
 スライドドアから覗く車内はずいぶん広く、座り心地の良さそうな立派な後部座席シートがフロントグラス向きに三列も並んでいます。

 運転席に本橋さま、助手席に橋本さまがお座りになられ、その後ろの席に私と五十嵐さま、その後ろに中村さまとお姉さま。
 それぞれのお荷物を足下に置き、大きなクーラーボックスを積んでもまだまだ余裕な広さ。

 それぞれがシートベルトを締め、スライドドアがススーっと閉じるとブルンッとエンジン音。
 一拍置いて流れてきたノリのいい音楽は、来るときにも聴いた覚えのあるレディ・ガガさまのヒット曲。
 車内にはエアコンがほどよく効いて、フローラル系の芳香剤っぽい香りが甘く漂っています。

「森下さん?大丈夫?臭くない?」

 ゆっくりと滑り出すお車のシートに背中を預けてひと息ついていた私に、唐突にお尋ねくださる本橋さま。

「えっ?あの、えっと、何が…ですか?」

「この車、いつも男ばかりの集団で使っているからさ、シートとかに男臭い体臭が染み込んでるんじゃないかと思って、掃除がてら消臭剤と芳香剤みんなでかけまくってきたんだ。タバコ吸うやつもいるし」

「あ、そうだったのですか…大丈夫です。ぜんぜん気になりません。それにあの、却ってお気を遣わせてしまって、ごめんなさい…」

 その細やかなお心遣いに恐縮してしまう私。
 私、スタンディングキャット社の方々から、本当に姫扱いされているのかもしれません。
 でも、そんなせっかくのご厚意をまぜ返すお声が、私の背後から聞こえてきました。

「あれ?あたしの車のほうは?」

 お姉さまのお声にすかさず応えられたのは橋本さま。

「はいはい、チーフの車は近くのスタンドで洗車ワックスと室内清掃オイル点検殺菌消毒までして、ガス満タンでお戻ししましたよっ」

 お姑さんがお嫁さんに口答えするみたいなニクタラシイご口調でのお答えに車内爆笑。
 和気藹々とした雰囲気で発車です。
 ジョセフィーヌさまのお散歩コースな広場へとつづく曲り角もお車だとすぐに通過。

 お車はずーっと木立の道、未舗装の林道のような道を進んでいきます。
 時折ガタガタはしますが乗り心地はいい感じ。
 なだらかな円周カーブがつづいているので、お山をグルっと周りながら下っているのでしょう。

 風景は見渡す限り延々つづく木立で、その奥はいずれも草木の生い茂る森林です。
 人家や建物っぽいものは何一つ見えず、もちろん信号機もすれ違うお車もひとつもありません。

 お車が走り始めてからしばらくは、お隣に座られた五十嵐さまから、いつ私に恥ずかしいご命令が下されるのか、とビクビクしていたのですが、今のところそんな気配もありません。

 と言うか五十嵐さま、本橋さま橋本さまへの取材に夢中なご様子で、本当に女性の裸を見ても興奮しないのかとか、初見で会ってホモとノンケの区別はつくのかとか、サウナや銭湯の男湯で好みのからだに出会ったらマークするのかとか、いささか下世話なご質問を矢継ぎ早に投げかけられています。

 そんなご質問にひとつひとつ律儀にご丁寧に、ときにユーモアを交えてお答えになられる橋本さまと本橋さま。
 ちなみに、女性の裸で興奮しないのか、というご質問に橋本さまは、綺麗な裸だったら、ああ綺麗だなーと美的芸術的な感心はするけれど性的な興奮は無い、綺麗じゃなかったら不快感しか無い、というお答えでした。

 お姉さまは後ろのお席で、私の知らないお仕事関係のかたのお話で中村さまと盛り上がられているご様子。
 どちらの会話にも混ざれない私だけ暇を持て余し気味に、車窓を流れる森林の景色を漫然と眺めていました。

 そんな感じで20分くらい走った頃、延々つづいていた森林が突然途切れ、草ばかり生い茂る平地に出ました。
 緩いカーブがつづくその道の左右は、以前は何かの畑だったのだろうなと思わせるそれほど広くはない草地となっていて、私の窓の側に凄く久しぶりに見る人の手が入った建物らしきものが迫ってきています。

 通り過ぎるときに目を凝らすと、そこだけ少し人為的に草を刈り取られたっぽい空き地の奥に、お寺か神社かなと思わせる木造二階建ての大きめな建物。
 
 なにぶんお車があっという間に通り過ぎてしまったので、その建物が何なのかまではわかりませんでしたが、もう長いあいだ使われていない=どなたも住まわれてはいない、ということは、見た感じの古さや荒れ具合でわかります。
 せっかくの建物なのに他のどなたも気に留められなかったようで話題にはならず、通り過ぎるとすぐにまた鬱蒼とした森へと入り、木立の林道へと戻りました。

 その林道を更に5分くらい走った後、お屋敷から走り始めて初めてのブレーキ。
 えっ?どしたの?と前を見ると、道の両脇から踏切の遮断機みたいな黄色い棒が行く手を塞いでいました。

 本橋さまが窓を開けられ、傍らの機械にカードみたいのをかざすと棒がスルスルっと左右に割れます。
 お車が通過してから振り向くと、棒がすぐに元に戻って再び通せんぼ。

 なるほど。
 これでみなさまが、ここは私有地だから、とおっしゃる意味が初めて理解出来た気がしました。
 でも、あんな遮断器、その気になればたやすく突破出来ちゃうような気もしますが…

「ほい、カード返しますわ」

 橋本さまが背もたれ越しにカードを私に差し出されてきます。
 受け取ると、表面に少し前に流行った動物を擬人化したアニメの美少女キャラ百合カップルの絵柄シールが貼られたクレジットカード大のプラスティックのカード。
 私も振り返り、斜め後ろのお姉さまに差し出します。

「それはエミリー、持っていていいよ。どうせ来年も来るでしょう?」

 お姉さまは中村さまに渡されようとされたのでしょう、中村さまのそんなお声が聞こえてきました。
 お車はいつの間にかまた木立を抜けて田園風景の中を一直線、やがてT字路に突き当り、舗装された普通の二車線道路が現われます。

「国道だー、やっと外界に降りられたーっ」

 五十嵐さまのずいぶんはしゃいだお声。

「今日は空いていそうだし、ここまで来たらもう20分も走らずに着けるはずです」

 運転席の本橋さまからのご説明。

「今日って金曜日でしょ?やっぱ混んでるんじゃない?先週の金曜日なんて駐車場どこも一杯だったよ」

「いや、でももうガキンチョの夏休みは終わってるから、少なくとも家族連れはもういないでしょ。いるのは暇な大学生と外国人観光客くらいじゃない?」

「でも週末だから、夕方から夜にはカップルとか増えそうね。モール目当ての客目当てで駅周辺にホテルも増えたし」

 口々にいろんなことをおっしゃるみなさま。
 車窓の田園風景にも民家やお店のお姿が混ざり、すれ違うお車も増え、歩道を歩かれる人のお姿もちらほらお見かけして私も、今までいたお屋敷周辺は明らかに別世界だったんだ、と実感しています。

 そんな窓を見ていてふと気づいた、スモーク加工された暗めのガラスに薄っすらと映り込む今の自分の姿。
 赤い首輪を嵌めて青いブラが透けている薄物一枚な私の上半身。

 すっかり別世界に馴染み切っていたので、自分がワンちゃんの首輪を嵌めていることをすっかり忘れていました。
 首輪…マゾ女のシルシ…
 途端に背筋を快感のような悪寒のような、心地良いような悪いようなさざめきがゾゾゾーっと駆け上ります。

「直子的にはギャラリー多いほうが嬉しいんだろうけど、そもそもあのモールって撮影おっけーだったっけ?」

 中村さまから今更ながらの根本的な疑問のご提示。

「うーん、知らないけれど動画投稿サイトであのモールの食レポとかお店ガイドやレビューとかよく見るし、大丈夫なんじゃない?」

 五十嵐さまからのいたって楽天的なお答え。

「でもまあ有名企業の運営だから、あんまり目立たないほうがいいことだけは確かだよね。あたしらは動画をネットに上げる気は更々無いけれど」

 ご慎重なご意見はお姉さまから。

「目立たないようにって言ったって、アブノーマルな首輪嵌めてスケスケ衣装のこんな女の子被写体にしていたら、人目につかないわけないとは思うな」

 中村さまの至極常識的なご意見。

「まあそのへんはハッシーモッチーのボディガード勢に頑張ってもらいましょう」

 あくまで楽天的な五十嵐さま。

「あ、でも先週来てたM女も、ここでけっこうキワドイ撮影したって寺っちが言ってたっけ。ワタシは用事で参加出来なかったのだけれど」

 傍証を思い出された中村さま。

「ヤバいゲリラ撮影したいなら変にコソコソせず、許可ちゃんと取ってまーす、って感じであっけらかんとカメラ向けていれば、見てるほうも、あ、何かのロケだな、って感じで意外とスムースに無駄なトラブル無く撮れるもんだよ」

 橋本さまの、おそらくご経験則からきているのであろうお言葉で、その議論は終りとなりましたが、逆に私のドキドキは最高潮。
 これからどんな辱めが待ち受けるのか、両腿の付け根が潤みっ放しで股間のクロッチがべったり貼り付いているのがわかります。

 お車は舗装された道路を快調に進み、行き交う他のお車や歩道を歩かれる方々のお姿もどんどん増え、日常世界に舞い戻ってしまったことをあらためて思い知ります。
 平日のランチタイムが終わった午後二時過ぎ頃の池袋繁華街くらいに人波とお車が増えてきた頃、進む先の路上に赤い棒を持たれた警備員さまらしき制服を着られた複数の男性のお姿が。

 その警備員さまが振られる赤い棒に導かれ、お車は広大な駐車場へ。
 とうとう着いてしまいました。
 意味も無くブルッと身震いしてしまう私。

 出入口近くこそ色とりどりのお車が整然と駐車されていますが、もっと奥の広大な駐車スペースにはまばらにポツンポツンという感じ。
 お近くに空きスペースをみつけられ駐車態勢に入られようとする橋本さまに、五十嵐さまから待ったがかかります。

「もちろん車は出入口近くに駐めるとして、直子とうちはあの警備員から死角になりそうな遠くで降ろしてくれない?もちろんモッチーもカメラマンとして着いてきて」

 五十嵐カントクさまのご指示が下され、いよいよ私の辱め映像撮影が始まるようです。
 駐車態勢から方向を変えられた橋本さまは、そのままゆっくりと広大な駐車場の出入口から見て一番端っこ、芝生と建物の背面で隔てられた駐車まばらなスペースまでお車を移動されます。

「そうね、この辺でいいわ。戻って車を駐車しておいて。悪いけれどみんなはちょっと待っていてくれる?外が暑かったら車の中で」

 五十嵐さまに促され、お車を降りる私とビデオカメラ片手な本橋さま。
 本橋さまはいつの間にか、これもペイズリー柄の真っ赤なバンダナを頭に海賊巻きにされています。

 お車が私たちを離れ、相変わらず快晴なお空の下、五十嵐さまと私が芝生の手前で対峙し、その横から本橋さまのレンズが私たちを狙っています。
 遠くにはひっきりなしに行き交う人たちのお姿が見え、背中側からはショッピングを楽しまれているのであろう賑やかな人々の喧騒が聞こえてきます。

「さて直子ちゃん、これからお望み通り、あなたの露出癖が充分満足出来るくらいに、おまえを公衆の面前で辱めてあげる。ふふっ、嬉しいでしょう?」

 ずいぶんお芝居がかった、でも充分嗜虐的なお顔になられた五十嵐さま。
 あの、いえ、私、それほど望んでもいないんですけれど…
 
 反発心からか心ではそう思うのですが、反比例するみたいに肉体でざわめく性的興奮。
 聞こえ来る人々の喧騒が頭の中でわんわん鳴り響いています。

「まずはこの場で、そのブラジャーを外しなさい」
 
 最初から悪魔のような五十嵐さまのご命令。

「シャツを脱いでからでも、着たまま両手を中に入れてのモゾモゾでも、どっちでもいいよ。要はさっさと脱いでブラをうちに渡しなさいっ!」

 心の底から蔑み切ったような五十嵐さまのお声が、怯える私に投げつけられました。

2022年9月19日

肌色休暇三日目~避暑地の言いなり人形 06

「メイクはこんなもんでいいでしょ。次はイガちゃんにコーデしてもらいなさい」

 お姉さまのご指示で五十嵐さまのもとへ。
 テーブルの上に色とりどりのお洋服類が乱雑に置かれています。

「ほい、じゃあまずこの下着を着けて」

 五十嵐さまから手渡されたのは、シルクっぽい手触りの薄手なブラとショーツ。
 光沢のある薄い青色で、ブラはハーフカップ、ショーツはローライズ気味のビキニタイプ。

「あれ?ノーブラノーパンで連れ回すんじゃないんだ?」

 ご自身でのメイクを終えられ一段と艶やかなお顔となられた中村さまが、からかうみたいに五十嵐さまへご質問。

「あたりまえじゃない。露出調教のキモって、まわりにたくさん人がいるところでだんだん薄着になって、なんで自分はこんなありえない場所で、ありえないくらい恥ずかしい格好をしているんだろう、っていう背徳的な興奮を愉しむものだもん」
「最初から大サービス全部おっぴろげーじゃ、ファーストインパクトだけですぐ行き詰まっちゃうし、運が悪けりゃ公然猥褻、即通報。ね?直子?」

 ね?と同意を求められても私は、これからされることへの不安7と期待3のドキドキでおっしゃっているお言葉の意味を考えることが出来ず、上目遣いに五十嵐さまを見つめるばかり。

「ふーん、そんなもんなのかー。生憎アタシにはそういう特殊でアンモラルな性癖、ないからなー」

 相変わらず茶化されるみたいにご愉快そうな中村さま。

「はいはい、シャツはこれね」

 中村さまの軽口をスルーでいなされて、クタッとした白い布片を私に渡してくださる五十嵐さま。
 布片を広げてみるとシフォン?の半袖ブラウス。
 一昨日駅に着いたときに、前結びTシャツの上に羽織るのを許されたシャツブラウスによく似た質感。

 襟ぐりと袖口にレースが施してあってふうわり可愛いらしいのですが、生地全体が頼りなさげに薄っぺらい気が…
 前ボタンを全部外してから袖を通すと案の定、薄いスカーフのような真っ白い生地が光を通し、ブラの青色がスケスケ。
 
 はっきりと言うほどではないにしても、薄っすらというほど奥床しくもなく。
 生地はしんなり軽やかで夏向きの良い素材なのでしょうけれど、汗をかいたらすぐにべったり肌に貼り付いちゃいそう。

「で、下はこれ」

 差し出されたのは真っ赤な布地。
 広げてみると台形シルエットのショートスカート、フロントに銀色の大きめなボタンが六つ並んでいます。

 ウエスト部分のボタンをひとつ外して両脚を通すと、丈は膝上10センチくらい。
 ウエストも私にピッタリでベルトをしなくても大丈夫な感じ。
 ただし、普段こんな派手に真っ赤なスカートは穿かないので、なんだか気恥ずかしい。

「シャツはスカートにインしちゃったほうが可愛いいね。うん、そうそう。あと胸元はもうひとつ空けちゃって」

 五十嵐さまのご指示通りにすると、シャツの薄い布地がますますバストに吸い付き、ブラジャーの青色が白地の下にますます浮かび上がってしまいます。
 胸元のボタンは三つ目まで外れ、おっぱいの膨らみ始めまで素肌が覗いています。

「直子って、こういうブリっ子ぽいのもよく似合うんだよね。地下アイドルグループの一番右端、歌はいまいちだけどダンスのキレはダントツ、みたいな」

 お姉さまからの褒めらているんだか、茶化しているだけなのかご不明なご感想。
 私は、明らかに透けているブラが気になって仕方ありません。
 こんな格好で本当に人前に出るのでしょうか…

「あのお姉さま?…このシャツ、ブラが完全に透けちゃっているのですけれど…」

 堪えきれずお姉さまに向かってすがるように直訴してしまう私。
 お手持ちのタブレットに視線を落とされていたお姉さまがお顔を上げられ私を見遣り、ニッと笑いかけておっしゃいます。

「それくらいなら気にすることないわ。透け感コーデはここ数年定着しているし、今年の夏はへそ出しや肌見せも流行っているじゃない」

 にべ無く却下されるお姉さま。

「あ、そのスカート、ポケットに小銭とか入れないでね。左右ともざっくり穴空きだから」

 五十嵐さまがいたずらっぽくおっしゃって、私をじっと見つめてきます。

「どうしてだかわかる?」

 見るからにえっちなお顔で私の顔を覗き込まれる五十嵐さま。

「えっ?あっ、ぃいえ…」

 自分の衣服にもそういう細工を施したことがあるので、思い当たるフシが充分にあるのですが、ここは敢えて知らんぷり。

「直子みたいなスケベな変態ちゃんがいつでもどこでも、ポッケに手を突っ込みさえすればバレずに直でクリちゃんに触れちゃう街角アクメ仕様、って、そんなのAVとかエロ漫画でしか見たこと無いんだけどもね」

 とても嬉しそうに教えてくださった五十嵐さま。
 つまりこれで、私は公然の場でクリ弄りを命ぜられるのが確定したということです。
 それにこのスカートの前ボタン仕様にも不穏な意図を感じています。

「だったら直子の私物はポシェットに入れてぶら下げさせればいいわね」

 五十嵐さまにお応えされつつ、お姉さまが私のポシェットに私のスマホを入れられます。
 これでパイスラも確定。
 ついで、という感じで、一昨日から私を何度も悦ばせてくださったリモコンローターのローター部分だけを放り込まれたのも見逃しません。

「直子はこれでよしとして、うちもお出かけ仕様に着替えようっと」

 その場で何の躊躇もされず、スルスルっとTシャツをお脱ぎになられる五十嵐さま。
 やっぱりノーブラで白い素肌に控えめな膨らみ、淡いピンク色の頂点だけが艶かしく目立っています。

 ふたつの頂点に幅広めなニップレスを貼り付けられた五十嵐さまが、無造作にグレイのスウェット生地らしき半袖パーカーを素肌に羽織られます。
 更にジーンズ地のショートパンツも勢いよく下ろされ、下着は何の変哲も無い白無地フルバックショーツ。
 その上に同じスウェット地の膝丈ボトムを合わせられます。

「ちょ、ちょっと、イガっちの基準だとそれでお出かけ仕様になるの?あたしのジョーシキだと、それってただの部屋着なんだけど」

 心底ご愉快そうにツッコまれるお姉さまを、唇の前でチッチッチと人差し指を振られてお芝居っぽくいなされる五十嵐さま。

「ふふん、うちはジモッティだからね、モールに行くぐらいでいちいちオシャレとかしないのだよ。それに今日はカントクだし」

 得意満面な笑顔を見せられた五十嵐さまが、その笑顔でお姉さまと中村さまをじーっと見つめられました。

「エミリー姉さんは直子のマネージャーみたいなものだから、そのままオシャレッティでいいけど、かなぴっぴのそのキャミ、ちょっとえっち過ぎない?主役にケンカ売ってる的な。かなぴっぴは今回、うちのAD的な役割なんだし」

 中村さまを挑発されるように見つめられる五十嵐さま。
 その視線をまっすぐに受け止められた中村さまの唇が苦笑の形に綻びました。

「ワタシだってこの格好で外に出かけるつもりは無いわよ。ヘンに目立つと後々めんどくさいし、毎年来るところだからね」

 テーブル上の衣類を物色され、やがて決められたのか、キャミワンピの裾を一気にまくり上げられます。
 上下黒で布小さめな三角ブラにTバック、その他は何も身に着けていらっしゃらない中村さまの艶やかな肢体に息を呑む私。

 形良く上向きなバスト、シュッとくびれたウエスト、そのくびれからなだらかにつづく引き締まったヒップ。
 そこから更につづくスレンダーなおみ足が黒いレギンスに包まれ、上半身は鮮やかなグリーンのざっくり半袖チュニックで隠されます。
 先ほど仕上げられたメイクとも相俟って、妖艶な美女ADさまの出来上がり。

「これなら文句無いでしょ?で、お迎えは何時だっけ?」

 最初のは五十嵐さまへ、後のはお姉さまへのお尋ね。

「もうそろそろと思うけれど…」

 お姉さまのお答えが終わらないうちに中村さまの絶叫が響き渡りました。

「あーっ!洗濯物取り込むの忘れてたぁーっ!」

「そう言えばさっきネットニュース見てたら、午後からゲリラ豪雨あるかも、って」

 お姉さまのお言葉にみなさま大慌てで散りました。
 中村さまは厨房の中に一度引っ込まれ、すぐに大きなランドリーバッグを肩に提げて戻られます。
 五十嵐さまはテーブル上に残った衣類をひとまとめにしてスーツケースに戻した後、ホール奥のお廊下のほうへと走られます。

「ほら、あたしたちも手伝わないと」

 お姉さまに手を引かれ、私たちは正面玄関へ。
 扉を開けるとお外はドピーカンの残暑晴れ。
 サンダルをつっかけて芝生へと急ぎます。

 そう言えば、こんなにちゃんと下着まで着けてお洋服を着たのはいつぶりだろう?
 木立を抜けながら考えたら、たぶん出発のとき、お姉さまのお車に乗り込んだとき以来?
 からだに纏わり付く布地の感触に違和感を感じてしまっている自分に少し呆れてしまう私。

 五十嵐さまは芝生のほうの出入口から、大きなランドリーバスケットを携えてご登場。
 ちょうど例のシースルーバスルームのすぐ裏手に当たり、そんなところに出入口があるなんて知りませんでした。
 でもまあ知ったところで、私には使わせていただけないのでしょうけれど…
 
 そよ風にひらひら揺れているお洗濯物たちは、どれも完全に乾いているようでした。
 広大なシーツ類を私たちが取り込んで雑にたたむと五十嵐さまがランドリーバスケットに投げ込まれ、中村さまは下着類のほうを手際良くバッグに取り込まれます。

 急に全員わらわら現われた私たちに気づかれたジョセフィーヌさまが、喜び勇んだご様子で駆け寄ってこられ、中村さまと私とのあいだを行ったり来たりじゃれつかれます。
 まばゆいばかりのお陽さまが真上近くまで昇り、緑の芝生に陽光が燦々と降り注いでいます。

 空調の効いた室内からいきなりの炎天下ですから、全身に汗がじわりと滲み出ます。
 そして気づいてしまいました。

 今着ているこの白いブラウス。
 濡れると嘘みたいに透けるんです。

 大きなシーツを持ち運べるくらいにたたんでランドリーバッグへ。
 それだけの作業で私の首筋から胸元くらいまで汗じんわり。
 濡れたブラウスの布地が私の素肌に貼り付き、その部分がまるで透明ビニールみたいに肌色とブラの青色に透けていました。

 布地を肌から離せばいくらかマシにはなるのですが、濡れた布地はすぐに肌にくっつきたがります。
 全部の取り込みを終える頃には、私のバストアップは満遍なくブラウスが貼り付いて青色ブラジャー丸見え状態。

 これ、もしもノーブラで着せられていたら…
 やっぱりお姉さまにお願いして、せめて上に何か羽織るものくらいお許しいただこう…
 そう決めてお姉さまのお姿を探そうとしたとき、木立の向こうでお車のエンジン音が。

「あ、来たみたいね。タイミングいいじゃない」

 私から離れた支柱から紐を外されていたお姉さまが、お近くにおられた五十嵐さまに話しかけられ、五十嵐さまに紐を預けられて玄関口のほうへと駆け出されました。
 離れて見守っていた私は五十嵐さまと目が合い、五十嵐さまが近づいてこられます。

「へー、そのシャツ、汗で濡れるといい感じに透けるねー。本番が愉しみ…」

 お独り言にしては大きめなのは、ワザと私に聞こえるようにおっしゃったのでしょう。
 そのお一言で私は、お姉さまに助けを乞うタイミングを失います。
 そこにブッ、ブッと短いクラクションの音。

「ほら、直子もお出迎えしなくちゃ。今日の運転手と撮影カントクだってさ」

 今度は五十嵐さまに手を引かれ、正面玄関側へと連れ出されます。
 アプローチにお車が二台。
 玄関に近いところにお姉さまの愛車、その後ろにシルバーグレイで大きめのバン?ワゴン車?

 その傍らでお姉さまとお話されている男性おふたり。
 本橋さまと橋本さま。
 そう言えば昨日、ここまで送っていただいて去り際に、明日お姉さまのお車を戻しにこられる、とおっしゃっていたのを思い出しました。

「あっ、直子が来た。ほら、こっち来てご挨拶なさい」

 お姉さまに呼ばれ近づきます。
 本橋さまは相変わらずのラグビージャージ姿ですが、昨日のとは色が違って今日は黒と山吹色の横縞模様。
 橋本さまもTシャツにアロハはお変わりありませんが、今日のアロハは赤やピンクの極彩色で目眩ましみたいなペイズリー柄。
 ボトムは昨日と同じ、おふたりお揃いの濃茶のバミューダパンツ。

「イガちゃんの取材ツアーに無理言ってつきあってもらうことにしたのよ。ほら、いろいろアブナイことすることになるから、女性だけより周りにゴツい男性もいたほうが何かと心強いでしょ」

 お姉さまに促され、胸元に貼り付いているブラウス布地をさりげなく剥がしてから、よろしくお願いいたします、とお辞儀してご挨拶。

「いやいや、チーフにはいつもお世話になっていますし、今日はちょうどぼくらが買い出し当番だったから予定的にも問題無いんです」

 マッチョ体型の本橋さまがにこやかな笑顔でおっしゃいます。

「それに、森下さんは、あのイベント以来すっかり弊社のアイドルになっているんです。大胆なのに儚げで、絶対に汚してはいけない存在、みたいな。あ、もちろんそこに男女間の性的な意味は一切ないですよ」

 最後の部分だけ慌てたように強調される本橋さま。

「だから今日も、くれぐれも粗相のないように、って言われてきてるんです」
 
 あの急遽モデルをさせられたファッションショーイベントのとき、スタンディングキャット社の方々もたくさんお手伝いに来てくださいました。
 あのときはメイクやウイッグで別人のモデルになりすましたはずだったのですが、その後も両社の交流で社員同士お顔を合わせていたりしていましたので、あのモデルが私だったということは、すっかりバレていました。

「ちょっとモッチーの脚、見てやってくださいよ」

 それまでニヤニヤと本橋さまのお話を聞いておられたアロハ姿の橋本さまが、お話に割り込まれてきます。

「あーっ!」

 私とお姉さまで綺麗なユニゾン。
 確か昨日はモジャモジャだったスネ毛が今日はツルツルのスベスベ。

「昨日の夜の宴会で、チーフたちを迎えに行ったときの話になったんですよ」

 思い出し笑いを堪えきれない、という感じの橋本さま。

「で、俺らが旅館に着いて車から降りて、チーフたちが出迎えてくれたじゃないですか。あのとき、おまえの脚を見て姫が、あ、俺ら身内では森下さんのこと姫って呼んでるんで、姫が怯えてたぞ、と」
「姫が男性のモジャモジャした体毛や体臭が苦手なことは、チーフや玉置さんから聞いてみんな知っているんで。で、明日もお供を頼まれたのにそいつはケシカラン、ってことになって」

 もはや半分笑いながらお話をつづけられる橋本さま。
 私、橋本さまたちから姫なんて呼ばれてたんだ…と、なんともこばゆい気分。

「で、俺ら八人で旅行に来てるんだけど、七人がかりで嫌がるモッチー押さえつけてズボン脱がせて、脱毛テープでスネ毛をバリバリっと…」

 そこまでおっしゃられて、もはやお話できないくらいに吹き出された橋本さま。

「本当ひどいやつらでしょ。でも最近の脱毛テープって意外に痛くないんだね。専用のローションとかもあってスーッとして。スベスベも案外悪くない」

 マッチョな本橋さまが満更でもないお顔でおっしゃいます。
 私あのとき、そんな顔しちゃっていたのかな、と申し訳ない気持ちも湧きますが、お姉さまはただただ呆れられているご表情。
 そこに五十嵐さまが興味津々なお顔で割り込まれてきます。

「あなたたちって、本物のゲイカップルなんだ!?」

 率直と言うかいささか不躾なご質問。
 眉間にちょびっとシワを寄せられたお姉さまが割って入られ、ご紹介が始まります。

「ごめんなさいね。こちらは、この別荘の住人のお友達の五十嵐ショーコさん。あたしも昨日初めてお会いしたばかり。同人で漫画を描かれていて、その取材の一環として今日の直子の大冒険を企画した首謀者でありディレクター。イガちゃんて呼んであげて」

 つづけて五十嵐さまに向けて、

「こちらは、あたしたちの会社とパートナーシップを結んでいるスタンディングキャット社の社員さんで、マッチョなこちらが本橋さん、チャラ男風なこちらが橋本さん」

 チャラ男はひどくね?と本橋さまに小声で訴えられる橋本さま。

「スタンディングキャット社、あたしたちはタチネコ社って呼んでいるんだけど、ていうのは、あたしたちがレズビアン向けのアパレルを扱っているように、タチネコはダンショクカの人たちに向けての商材を専門に扱ってる会社。目指す方向が同じかつ特殊だから生地の相談とか何かと話が早くて、仲良くさせていただいているの」

 そこでいったんお言葉を切られ、いたずらっぽく微笑んだお姉さま。
 
「それでイガちゃんのさっきの質問だけど、答えはイエス。昨日ここに着く前にランチタイム休憩を森の中で別行動で取ったのだけれど、あたしらから離れた場所でここぞとばかりにくんずほぐれつヤッてたみたい」

 本橋さまが照れたようなお顔をされ、五十嵐さまの瞳が爛々と輝いてお独り言みたいにつぶやかれます。

「今日は夢みたい。エロ可愛い真性マゾ娘の野外羞恥露出と本物三次元BLのイチャイチャをこの目で生ライブで堪能できるんだ…」

 感極まって祈るようにお空を見上げる五十嵐さまの瞳からお星様がキラキラ本当に零れてきそう。
 そこへ、お洗濯物のお片付けを終えられたのでしょう中村さまが、片手に小さなバッグを提げられ、私たちへと近づいてこられました。