2021年5月22日

肌色休暇一日目~幕開け 16

 「あたしが着けてあげるから、こっちへいらっしゃい」

 空間に余裕のある鏡の前まで移動され、手招きされるお姉さま。
 全裸のままビクビク及び腰で従う私。

「脱衣所みたいな裸になる場所が鏡張りだと、なんだか照れくさいわよね」

 鏡に映ったご自分のお顔を覗き込まれ、その前髪をチョイチョイと弄りつつお姉さまがおっしゃいます。

「あ、でもそっか。直子はこういう部屋でのオナニー、大好物だったっけ」

 からかい口調でお姉さまがおっしゃるのは、私が住むマンションの一室、マジックミラー張りのサンルームのことです。
 夜になって室内の灯りを点けると三方のガラスがすべて鏡と化すサンルーム、通称お仕置き部屋。
 4階なので容易にお外からは覗けないのをいいことに、自分の恥ずかし過ぎる痴態をあらゆる角度に映しながら自虐的自慰行為に励む夜がままあるのは事実でした。

「鏡に向かって真っすぐ立って。足は少し開いて」

 ご自分は一歩下がられ、私を大きな鏡面のすぐ前へと誘導されます。
 スッピン素っ裸の自分の姿が、よく磨き込まれてピカピカな鏡面に等身大で鮮明に映っています。

 背後にはスッピンでも充分お美しく、浴衣姿も超絶お似合いな麗しのお姉さまのお姿。
 自然と両手が後頭部へ伸び、ご命令無しなのに自らすすんでマゾの服従ポーズとなってしまう私。

 真紅の布地の端から左右へと伸びている細い紐をそれぞれの手に持たれたお姉さまの両手が、背後から私のウエストを抱くように交差され、絞るみたいに少しきつめに巻きつかせた紐の両端を、おへその前くらいで蝶結びにされました。
 この時点では、赤い布はお尻側にダランと垂れ下がり、まだ丸出しな恥丘。

 お姉さまの手がお尻側に垂れ下がった布地を持たれ、尻たぶを隠すように股下を前方へとくぐらせて恥丘と下腹部を下から覆ってから、さっき作ったウエストの蝶結びと肌のあいだをくぐり抜かせます。
 まだ余っている長さ30センチに満たないくらいの真っ赤な長方形の布地が、もう一度下腹を覆って垂れ下がりました。

 お姉さまにされるがままになっているあいだ、ふと気づきました。
 これって股縄の縛り方とほぼ同じじゃない?…
 股縄するときは結び目でコブを作って気持ちいいところに当たるようにしたりするけれど…
 そんなことを考えていたら、キュンキュンヒクヒク、赤い布に覆われてしまった股間が疼いてきます。

「へー、かなりイケてるんじゃない?赤フン直子」

 鏡越しに私のおふんどし装着姿を、まじまじと見つめられるお姉さま。
 生まれて初めての自分のおふんどし姿は、何て言うか、すさまじい恥ずかしさ。

 下半身は完全に覆われ下着としての機能性は申し分ないのに、真っ赤というその派手すぎる色のせいか、却って下腹部を強調して注目させたがっているみたい。
 下腹部にハラリと垂れ下がっている前垂れ部分は、その下がちょうど性器部分ですし、ちょびっとめくってみたい、という衝動を思わせぶりに掻き立ててきます。

 鏡のおかげで自分の全身を客観的にも見れるので、おっぱい丸出しで真紅のおふんどし一丁なその姿が他の人からどう見えるのかも想像でき、どんどん恥ずかしさが増してきます。
 
 たとえばワンピースとかスーツとか普通の服装をしていて、何かの拍子で下着姿にならなければいけない場面があって脱いだらおふんどしだったら、見た人たちは面食らうだろうな…
 それで絶対、あの子ヘンタイだ、って噂されちゃうんだ…
 恥ずかしい、というキーワードでみるみる膨らんでしまう私の被虐妄想。

「いい、本当にいいわよ直子、直子と赤フンて相性バッチリ」

 背後からお姉さまの片手が私の肩に軽く置かれ、その手に導かれて私は回れ右をさせられました。
 至近距離で向き合ったお姉さまの瞳が、今度は生身の私のからだを上から下まで舐めるように見つめてきます。

「そう言えば、女子にふんどしを流行らせようとするステマみたいなのって、女性誌やネットでたまに見かけたわよね」
「ゴムの締め付けが無いとか通気性がいいとか、夜寝るときだけでも安眠効果抜群とか。実際に愛用しているって子には会ったこと無いけれど」

 最後の、無いけれど、をなんだか皮肉っぽくおっしゃったお姉さま。

「でも女子とふんどしの組み合わせって言ったら、やっぱりエロ絡みで推すべきよね?直子のその姿見て確信しちゃった」
「まず、そのミスマッチ感がいいわ」

 お姉さまってば、なんだかお仕事モード並に真剣なお顔つきになられています。
 お仕事で新作アイテムのサンプルが上がってきたとき、トルソーに着せてその改善点を吟味されているときのようにバストの下で両腕を組まれ、おふんどし姿の私の周囲を行きつ戻りつされつつ、ご自身の頭の中に渦巻くお考えの要点をおまとめになられているかのようにつぶやかれます。

「年頃の女子なら自分ではまず選ばない種類の下着だから、していたらそれは誰かに無理矢理着せられているのよ。命令とか脅迫とかされて」
「下着っていうことで、その着させている相手との関係が性的なものっていうことも、着せられている子がマゾ気質寄りってことも容易に想像出来ちゃう」

 私の下腹部に垂れる赤い布をピラピラめくったりしながら、お姉さまがつづけられます。

「あと構造のシンプルさゆえの、儚さ、っていうか、あやうさ、みたいなのもいいわよね」
「もちろんふんどし自体、使い勝手の良い実用性に富んだ優れた下着ではあるのだけれど」
「紐をスッと解いたらハラリと崩れて、大事な部分があっさり丸出しになってしまうところとか、一度解いたらただの一枚の布片になって、すぐには元通りに戻せないところとか」

 お姉さまの指が再び赤い前垂れをめくられたので、紐を解かれてしまわないかとハラハラする私。
 お尻の穴の少し手前部分の布地が早くもジワジワ濡れ始めているのを自分でわかっていましたから。

「まあ、中には自分で選んであえて日常的にしている子もいるかもしれないわね。まんまとステマに乗せられちゃった子は別としても、サブカル関係とは相性良さそうだし、厨二病女子が、特別な私、を演じたくてこっそりとか」

「そうだとしても、そのチョイスって、その子の深層心理下で欲している何らかの特殊性癖のあらわれだと思えない?だって、あえてのふんどしだよ?」
「あー、何か面白そうなビジョンが見えてきた。東京帰ったら早速ふんどしの研究しなくちゃ」

 お姉さまがおひとりで、思慮深げに大きく頷かれました。
 それから私の右肩を軽くポンと叩かれ、明るくおっしゃいます。

「さあ、それじゃあ部屋に戻ろっか?」

 ロッカーのところまで戻られてポシェットを取り出され、ロッカー内に他に何も残っていないことをご確認になり扉を閉じられます。
 テーブルの上にビデオカメラとポシェットとカッパさまこけし。
 お姉さまがビデオカメラとポシェットをお取りになり、こけしは直子が持ってって、とお声がけ。

 えっ!?
 ちょ、ちょっと…そんな…

「あ、あの、お姉さまっ!?」

 ドアのほうへと歩き出そうとされていたお姉さまを、思わず服従ポーズを崩して切羽詰まった声で呼び止めます。

「何よ?いきなり大声出して」

 ゆっくり振り向かれるお姉さま。
 両腕を胸の前でX字に組み、丸出しおっぱいを庇うようなポーズに変わった私。

「あの、上のほうは、わ、私の上半身、な、何か羽織るもの…とか…」

 振り向かれたときの不機嫌そうなお顔は、絶対わざと作られたお顔。

「ないわよ」

 素っ気なく吐き捨てられた後、ニンマリとイジワルい笑顔。

「あたし考えたのよ。これって女将さんからの大サービス。あたしたちに気分良く宿泊してもらおうっていう気持ちのこもったサプライズおもてなしなのじゃないかって」

 おふんどしについてご考察されていたときとは一転され、嬉々としたお顔てご自分のお考えをご説明くださるお姉さま。

「直子の浴衣は、汚れているからってキサラギさんが持っていっちゃったワケでしょ?で、代わりにその赤フンを置いていった」
「あたしたちは裸になって露天風呂に入るのだから、帰りに浴衣が無かったら困るのはわかりきっているはずよね?」

「でも、あれから二時間近く経った今も洗濯した直子の浴衣を戻しに来る気配が無い。もしもまだ乾いていないとかなら代替品でも戻すべきよね?」
「夕食の時間も近いのだから、あたしたちがそろそろ部屋に戻るであろう頃なのも、承知のはず」
「それはつまりそういうことなのよ」

 自分のおっぱいに密着させた腕に、ドキンドキンという自分の心臓の音を感じます。
 そんな私をご愉快そうに見つめつつ、お姉さまがつづけます。

「あたしはね、あたしたちの行動はある程度、旅荘側にモニターされていると思っているの。たぶんこのリストバンドにGPSか何か仕込んであるのね」
「だってタイミング良すぎたもの。部屋を出ていったん露天風呂まで直行して、途中で脱衣所に戻ったタイミングを見計らったみたいにキサラギさんが現われたんだよ?」
「まあ、ある程度宿泊客の行動を把握しておかないと、配膳とかアメニティの補充指示の都合とかがあるだろうからね。スマートにおもてなしするためには」

 そこで一呼吸置かれ、少しだけお声を潜められるお姉さま。

「あたしがね、これは女将さんたちの粋なふるまいだな、って確信を持てる事実があるの」
「それはね、あたしがここにひとりで来てロッカー開けたときは、ロッカーの中に湯浴み着もバスタオルもちゃんとふたり分用意されていたのよ」
「それが今見たら、それらも消えていて赤フンだけしか残っていなかった…」

 お姉さまが私をまっすぐに見つめ、その端正な頤を私へと突き出すように動かされました。
 服従ポーズのご合図です。

「未使用のバスタオルか湯浴み着がまだあれば、直子もそれを纏うとかして上半身も隠せるワケじゃない?だけどキサラギさんはそれをも持ち去ってしまった」
「それらのことから導かれる結論はひとつ、直子はトップレスで自由に旅荘内を歩いていい、っていうお墨付きが出た、ってことでいいんじゃない?」
「仲居さんだけの采配で出来ることじゃないから、つまり女将さんからの粋なプレゼントね。女将さん、直子のこと気に入ったぽかったし」

 後頭部に両手を添えておっぱいと両腋を全開にしている私を、お姉さまが何かまだ意味ありげに見つめてきます。
 その愉し気な瞳を見つめ返しながら、これから自分の身に起こることを考えてみます。

 赤フン一丁のおっぱい丸出しで、お部屋まで戻る…
 驚かれ、やがて好奇か憐憫か劣情か、いずれにしても侮蔑満点な見知らぬいくつもの視線に晒される…
 お姉さまの目の前で、両乳首にグングン血液が集まり全身がみるみる火照っていくのが死ぬほど恥ずかしい…

「たぶんそこの電話でフロントに連絡して、浴衣が無いんですけど、とか言えば、すぐに持ってきてくれるとは思うわ。遅れて申し訳ございません、とかシレッと謝りながら」
「でも、今は夕食時の配膳時間で仲居さんたちがてんてこまいだろうからお手数取らせるのは申し訳ないし、何よりそれだと優しい女将さんからのせっかくのご好意をないがしろにしちゃうことになるわよね?」
「見せたがり見られたがりな露出狂の直子がそんな無粋なこと、するわけないわよね?」

 ないわよね?と決めつけるようにおっしゃられたら、はい、ありません、とお答えするほかありません。
 その瞬間私の、赤フントップレス温泉旅荘館内引廻しの刑、が確定しました。

 他の宿泊客さまや従業員さまも往来していらっしゃる旅荘の敷地内を、真っ赤なおふんどし一枚のおっぱい丸出し姿で歩く…
 想像するだけで頭がクラクラ、頬がカッカと熱くなってきます。
 いくら女将さまのお許しが出ているとしても、そんな正しく公然わいせつそのものな行為を本当にやってしまって大丈夫なのでしょうか…

 到着したときも正面玄関で、かなり恥ずかしい着衣で従業員ご一同さまのご歓迎を受けました。
 それでもあのときは、前結びチビTと言えどもおっぱいはちゃんと布地に包まれていました。
 でも今回は、剥き出し、丸出し、トップレス…恥辱と背徳のレベルが格段に違います。

 ここまで来るときに辿った道順を思い出してみます。
 木々のトンネルは遮蔽物が多かったけれど、開けた場所では旅荘の母屋も見渡せたし、階下はお散歩道ぽくベンチも置いてあったような…
 
 館内に入ったら、明らかにお客様がご逗留されているお部屋はあったし、お廊下を仲居さまがたも行き来されていたような…
 つい数時間前のことなのに記憶が曖昧模糊ですが、とにかく、絶対どなたかに視られちゃう、とゾクゾクが止まりません。

「上半身何も無いないのも心細いだろうから、帰りは直子にこれを譲ってあげる」

 お姉さまが嬉しそうにハート型ポシェットを私の肩に掛けてくださいます。
 剥き出しの素肌にパイスラッシュ掛けで。
 素肌に白い紐状ストラップの斜めアクセントが入ったことで、却って余計に剥き出しおっぱいを目立たせている気がします。

「さあ、もう服従ポーズは解いていいから出かけましょう」

 おっしゃりながらビデオカメラレンズを向けてこられるお姉さま。
 こんな姿までもデジタルで残されてしまうんだ…
 赤いおふんどしにおっぱい丸出しな素肌パイスラで片手にこけしを握りしめている女性を目撃したら、そのかたは一体その女性のことを何と思われるのでしょうか…
 
 今の自分の姿の喩えようのない破廉恥さにクラクラしながら、お姉さまが開けられたドアをくぐれば、そこはもうお外。
 大自然の中、絵葉書みたいな黄昏時の綺麗過ぎる夕陽と、自分が今している格好とのそぐわなさに、露天風呂で全裸になったときのン十倍もの羞恥を感じています。

「ほらほら、せっかくの生おっぱい隠してちゃダメじゃない?直子は見せたがりやさんなんでしょ?」

 そのお言葉に、両腕X印でバストを庇っていた姿勢を渋々改めます。
 夕方の優しい風がバストトップを撫ぜていき、その愛撫のせいで乳首が乳暈もろともますます背伸びしてしまいます。

 レンズをこちらにお向けになるために半身捻られた後ずさり、みたいなご体勢で砂利道を進まれるお姉さま。
 自撮り棒持たせてセルフで撮影させればよかったかな…なんて愚痴をつぶやかれています。
 やがて二階へと繋がる木々のトンネルが始まる広場部分へと到着しました。

 二階への上り口前には、↑矢印二階・西側客室入口、の看板。
 その左側には、←矢印母屋正面玄関、という別の看板があり、敷地内のお庭を通るのでしょう、細かい砂利石を敷き詰めた小路が植え込みを左右にしてつづいているようです。

「ああ、こっちの地続きな道からでも建物に戻れるんだ。ねえ、帰りは下の道を通ってみよっか?」
「薄暗くなってきたし、お庭をお散歩している宿泊客なんてもういないんじゃないかな?」

 いたずらっぽくご提案くださるお姉さま。

「えっと、私たちが温泉に入っているあいだに新しく男性のお客様がたが大勢みえていらっしゃるかもしれませんし…」

 ご提案を思いとどまっていただきたくて、とっさに思いついた可能性をあわてて口にしました。
 お散歩道よりもその後に、どうしても回避したい最難関が待ち構えていることに気づいていたからです。

 だってもしも一階から戻るのなら…
 確かにもう薄暗くなってきていますし、お庭では何事も起こらなかったとしても、確実にもう照明が灯っているであろう玄関を通って明るいフロントを横切り、燦々と照明降り注ぐ階段を上がってお部屋まで辿り着かなければなりません。
 
 いくら宿泊客さま少なめと言えども、ご熱心に働いていらっしゃる従業員さまがたには、確実に多数目撃されてしまうでしょう。
 更に、本当に新しい宿泊客さまがたまでご到着されていたら…

 着いた途端に恥ずかしすぎる着衣を従業員さまがたに晒してしまった私でしたが、今の私は、それを充分上書きして余りある程のヘンタイ過ぎる姿なのです。
 目撃され次第、頭のおかしい公然わいせつ痴女、と後ろ指をさされて然るべき機関にツーホーされても何も弁解出来ないくらいに。

 上への道ならば、出会っても仲居さまがた、運が良ければ私の性癖をすでにご承知なキサラギさまだけで済みそうな予感もするので、ここはなんとか下の道を回避したいところでした。
 おそらく今にも泣き出しそうなほど、憐れみを乞う顔付きになっていたと思います。
 私の顔をじっと視られ、それから少し上目遣いに何か考えられた後、お姉さまがお答えくださいました。

「そうね。あたしも何だかんだでお腹空いちゃったし、知らない道行って迷っちゃったら面倒だし、来た道戻ってササッとご馳走にありつきましょう」

 意外と簡単にあきらめてくださったお姉さまのご決断にホッと一息。
 少しだけリラックスして木々のトンネル、お部屋への帰りは上り階段、へと進みました。

 トンネル内は、お外からの目を緑の葉っぱさまたちが遮ってくださいますし、段々と地上よりも高い位置へと導いてくださいますので気分的にラク。
 憂慮すべきは、露天風呂へと逆方向から来られるかたとの至近距離でのすれ違いですが、今はちょうどお夕飯前。
 こんな時間帯にわざわざお風呂へと向かうかたもいらっしゃらないでしょう。

 相変わらず、半身捻られた後ずさりなご体勢で私の赤フンおっぱい丸出し姿を記録されながら、一段一段の距離が長めな階段状通路をゆっくり上がっていかれるお姉さま。
 果たして館内二階のお廊下へとつづくはずのドアまで、どなたとも遭遇せず無事上りきりました。

 檻のような柵で囲まれた踊り場で一息。
 どなたにも視られずに到着してしまうと、逆になんだか残念に感じてしまう…っていうのはムシが良すぎますよね。

 だけどこの先は、従業員さま、宿泊客さま、どなたと出会っても仕方のない建物内です。
 あらためて緊張しつつ、お姉さまがドアを開かれるのを待ちます。

 って、あれ?
 開かないのかな?
 お姉さまがドアノブをガチャガチャさせて押したり引いたりされていますが、一向に開きません。

「そう言えばここ、内鍵だったっけ…」

 ポツンとつぶやかれたお姉さま。
 どなたかが建物内から施錠されてしまわれたみたいです。
 こちら側のドアノブに小さな鍵穴はあるものの、合う鍵なんてもちろん持っていません。
 お外に締め出されてしまった形のお姉さまと私。

「どうやらいったん引き返して庭を抜けて行くしか、部屋に帰る道は無いようね」

 無駄足が確定して、やれやれ、というニュアンスも混じるお姉さまのご宣告に、私の被虐はキュンキュン再燃。
 絶対どなたかが常駐されているはずのフロントを、この公然わいせつ確信犯痴女な姿で通り過ぎなくてはいけないことが確定してしまいました。

2021年5月15日

肌色休暇一日目~幕開け 15

 お三かたよりも遠くの一点を呆けたように見つめている私に気づかれたようで、カレンさまが怪訝そうに後ろを振り返られました。

「あれ?姐さん!もう戻ってきちゃってたんだ」

 バツが悪そうにお道化たカレンさまのお声に、他のおふたりもお姉さまのほうへと振り向かれます。

「あ、これはその、どのくらいマゾなのか、ちょこっと見せてもらってたんだ…」
「スゴいイキオイでイッてたよ、大股開きで腰ガクンガクンさせて…」
「どうして湯浴み着なんか着ちゃってるのかしら、女湯状態なのに…」

 お三かたとも私にお尻を向け、湯船の中をビデオカメラ片手にゆっくり近づいていらっしゃるお姉さまに小さく手を振ってらっしゃいます。
 その揺れるお背中と声音がどなたも何て言うか、ビミョーに後ろめたそう。
 ちょっとヤンチャし過ぎちゃったかな…みたいな。

「お相手していてくださったのね、ありがとうございます」

 島のすぐ近くまで歩み寄られたお姉さまが優雅に会釈されます。
 ストンとしたワンピース型の湯浴み着はホルターネック。
 そこだけ剥き出しになっている両肩の肌色が妙に色っぽくて、まじまじと見惚れてしまいます。

「なんで湯浴み着なんて着ちゃってるわけー?ここ、女しかいない貸切状態なんですけどぉ」

 たじろぎ気味だったカレンさまが仕切り直されるように、先ほどシヴォンヌさまもつぶやかられていた違和感を、ご冗談ぽくなじるようにお姉さまへぶつけられます。

「あたしは裸でも別に構わないのだけれど、この子が嫌がるのよ」

 薄い笑みを浮かべたお姉さまが、ベンチの上でまだM字開脚な私を指さします。

「自分以外があたしの裸を見るのはダメなんだって、男でも女でも」
「他人があたしを、そういう目、で見ること、が許せないらしいわ。自分は辺り構わず脱ぎ散らかして、誰にでも性器の奥まで晒してる露出狂のクセにね」

 お三かたのすぐそばまで来られたお姉さまが、いたずらっぽい笑顔でおっしゃいました。

 でも私、今までお姉さまにそんなことをお願いした覚えはありません。
 確かに、お姉さまのお綺麗過ぎる裸身がたとえ温泉とは言え私以外の目に触れてしまうのは、私にとって愉快なことではないのは事実ですが…

「へー、意外にふたりはラブラブなんだねー」
「ですのちゃんの姐さんは、ご主人様としてただイジワルするだけじゃないんだー」

 サラさまカレンさまの冷やかすようなご指摘に、なんだか照れ臭くも嬉しくなってしまう私。
 お姉さまは、と見ると、余裕綽々のお澄まし顔でみなさまと対峙されています。

「まあ、そんな感じなんで、みなさんはあたしにお構いなく、思う存分この子を慰み者にしてくださって結構よ」

 艶然とした笑みを浮かべつつ、どうぞどうぞ、という感じに両手のひらを上に向けたジェスチャーで煽られるお姉さま。

「あー、でもやっぱりこの姐さん、ドエスだー、キチクだー」
「思う存分慰み者にって、ですのちゃんカンペキにオモチャ扱いじゃん」
「お許しが出たってことは、うちらもですのちゃんのカラダ、あれこれイジっちゃってかまわないのよね?」

 私のほうへと向き直られるお三かた。
 そのすぐ後ろからお姉さまの瞳がまっすぐに私を見つめてきます。

「ほら、あなたからもみなさんに、どうして欲しいのかちゃんとお願いしなきゃダメじゃない?」

 ご愉快そうに唇の両端を歪めた笑顔で、お姉さまからの無慈悲過ぎるサジェスチョン。
 自分の口で自分から辱めを乞いなさい、というご命令。

「あ、は、はい…ど、どうぞみなさま…わ、私をお好きなように虐めてくださいませ…」
「わ、私は、は、恥ずかしいご命令されると感じて濡れてしまうヘンタイマゾですから、ど、どんどん、は、辱めて欲しいんです…」

 なんとか声にした言葉は、マゾを自覚した中学生の頃から自虐オナニーのときに何度も何度も、妄想の中のお相手に向けて訴えかけていたセリフでした。
 言い終えた途端にマゾマンコの奥がヒクンヒクンと盛大に疼きます。
 ついさっき、みなさまに視ていただきながら、頭の中が真っ白になるくらいイキ果ててしまったというのに。

 気がつくとまだM字状態の股間にあてがっていた両手の指が、知らず知らずラビアの左右にかかっていました。
 それだけではなく軽く外側に引っ張るみたいに、その部分の皮膚を引き攣らせてさえいます。

 パックリ開いた私の膣口、濡れそぼった粘膜に当たる空気。
 脳内では電車の中でお姉さまに教わったあの恥ずかし過ぎるセリフを反芻しています。

 …これが直子のマゾマンコです、奥の奥まで、どうぞじっくりご覧ください…

 私のその部分に釘付けなお三かたの呆然とされているような視線。
 どなたよりも早くその瞳孔が細まり、妖しげに揺らいだのはシヴォンヌさまの瞳でした。

「それなら今度はお尻をこちらに向けて、四つん這いになってもらおうかしら」

 シヴォンヌさまが右手に持たれたカッパさまこけしをゆらゆら揺らしながらおっしゃいました。
 シヴォンヌさまのお声でハッと我に返られたようにビクンと肩を震わせる他のおふたり。
 申し合わせたように見合わせられたお顔がみるみるお緩みになり、ご興味津々なご表情に染まっていきました。

 四つん這い…
 その屈辱的なお言葉の響きに私のマゾ性は狂喜乱舞。
 早速体勢を変えようと両足を地面に下ろしたところで、はたと考えてしまいます。

 この狭いベンチの上で、お尻をみなさまに向けて四つん這いって?横向きではダメなのよね?
 ベンチの座席部分は当然ながらお尻を置くほどの幅しかありませんから、その狭い幅に四つん這いって…

「あー、ごめんごめん、ベンチの上でって意味じゃなくて、ベンチ降りてこちらにお尻を突き出しなさい、っていう意味ね」

 シヴォンヌさまの苦笑交じりなご訂正のお声。
 でもお顔を盗み見ると、目だけは笑っておられず、少々苛立ち混じりなのもわかりました。

「ベンチを降りて、後ろ向きになって、両手をベンチに預けて、両脚を開きなさいって言ってるのっ」

 シヴォンヌさまの声音がどんどんSっ気を帯びてきているように感じます。
 ゾクッと両肩が震え、急いでベンチを降りご命令通りの姿勢になります。

「両手をベンチに着くんじゃなくて、頭ごとベンチにひれ伏すのっ。土下座みたいに顔面はベンチに擦り付けてケツをこっちに突き出すのよっ!」
「ほらほら、もっと高くオマンコとコーモンを差し出しなさいっ」

 シヴォンヌさまのヒステリックに上ずったお声が間近に聞こえてきます。
 ご指示通りにからだを動かしているあいだに垣間見えたシヴォンヌさまは、すでに湯船から上がられ、そのゴージャスな全裸ボディを惜しげもなくお陽さまに晒されつつ、あからさまに嗜虐的な笑みを浮かべられていました。

 バシッ!
 あうぅ!

 小気味よい音を立て、シヴォンヌさまの右手のひらが私の左尻たぶを打擲しました。
 石のベンチの上に両手の甲を枕にして顔を押し付けたまま、両膝はほとんど曲げず腰だけ突き出す前屈姿勢な私のお尻を。

 だらしなく垂れ下がった私のおっぱいは、乳首の先端とベンチのコンクリート座面が触れるか触れないかのスレスレ。
 お尻を叩かれた瞬間に緊張していた筋肉が緩み、膝も少し落ちて両乳首先端が石の座面をザリっと擦りました。

 はうっ!
 その予期せぬ強烈な刺激に思わず両膝もいよいよ開いてしまい、弾みでよりパックリ開いた秘唇からダラリとはしたない涎を垂らしてしまう私のマゾマンコ…

「あら、お尻軽くぶっただけなのにずいぶん敏感な反応なのね。さすが、マゾですの、なんて自称するくらいの淫乱ぶりですこと」
「それで顔は出来るだけこっちに向けたまま、さっきのつづきをなさい。第2ラウンド」
「その不自由な格好で手を伸ばして自分の指で弄って。淫らに高まってきたら、今度こそこれをワタシの手でたっぷりご馳走してあげる」

 首だけ捻じ曲げ必死にお声のするほうへと向けている私の顔先に、カッパさまこけしをお見せくださったシヴォンヌさま。
 何もかもを晒し切っている私のお尻の割れスジを、カッパさまの滑らかな木肌がツツーッと撫ぜていかれました。

「はうんっ!は、はい…わかりました…」

 全身被虐の塊と化した私が、ご命令通り右手をそこへ伸ばそうとしたとき…

♪ンターターターター、タータ、タータンタッタッタッタッタター…

 どこからともなく流麗な弦楽の調べがたおやかに流れてきました。
 えっと、このメロディは確かシューベルトさんの、ます、だったっけか…
 ふっとそんな事を考えて伸ばしかけた手が途中で止まったとき、悲鳴にも似た叫声が近くであがりました。

「げげぇーーっ!?もうそんな時間?」
「うちら夕食の仕込みと配膳手伝うって、きり乃さんと約束したじゃん、チョーやべえ」
「これって5時のチャイムだよね?秒で行かんとヤバくね?」

 お三かたが軽くパニクっていらっしゃるご様子。
 私も座面に手を着いて少しだけ上体を起こし、左肩越しに湯船の方を見遣ります。
 お姉さまは、あらま何事?という感じに唖然とされたお顔。

「ですのちゃんも姐さんも本当にゴメンっ!うちら仕事あんのすっかり忘れてたわ」

 カレンさまサラさまがお湯をザブザブと掻き分けて脱衣所に通じる陸地のほうへと急いでいかれます。
 シヴォンヌさまだけがお姉さまとしばし何やらお話をされた後、先に行かれたおふたりの後を追われました。

 最後に湯船から上がられたシヴォンヌさまが剥き出しのお尻をフリフリしつつ視界から消えていきます。
 何がなにやらわからないまま、相変わらずお尻を湯船側に高く差し出したまま、お見送りする私。

「やれやれ。賑やかな人たちだったわね?」

 お姉さまが島のすぐそばまで近づいてこられ、私にニッコリ微笑んでくださいました。
 この恥ずかし過ぎる姿勢をいつ解けばいいのか、タイミングが掴めない私。

「なんかあの人たち、安く泊めてもらう代わりに女将さんにお手伝いを約束していたみたい」
「でもノリのいい人たちだったから面白かったわよね?愉しそうな虐めはお預けになっちゃったけれど」

 湯船に立たれているお姉さまは、湯浴み着の裾ギリギリくらいまでがお湯に浸っています。

「あたしたちはまだ夕飯まで時間あるし、もう少し愉しみましょう、せっかくの露天温泉混浴大浴場が完全貸切状態なのだし」

 おっしゃりつつ背後を振り返られ、何かをご確認されているようなご様子。
 やがてご安心されたお顔で再び私のほうへと向き直られたお姉さまは、おもむろにホルターネックの首後ろの紐をスルスルと解かれました。
 不意にしゃがまれたお姉さまのおからだごと湯浴み着がお湯の中にのみ込まれ、十秒くらい置いて立ち上がられたとき、お姉さまは全裸になられていました。

 そのお姿で両腕をお広げになり、私を迎え入れてくださるポーズをお取りになるお姉さま。
 飼い主に呼ばれたワンちゃんみたいに、一目散にお姉さまの胸中に飛び込んだのは言うまでもありません。

 それからふたり、お湯の中でお互いの気持ち良くなれる秘所をまさぐりまさぐられ。
 両腕、両手、左右の指、唇と両脚は片時も求め求められる感触を外すことを知らず、悩ましい淫声を抑制することも無く、大自然の中で本能のおもむくままに愛し合いました。
 もの凄い開放感、高揚感、満足感、幸福感…

 どのくらいの時が過ぎたでしょうか。
 ようやく一般的に夕方と認識されるくらいにお陽さまが翳った頃、お姉さまと私は裸で湯船の縁に並んで腰掛け、ハアハア荒い息を吐きつつぐったりと足先だけを湯船に浸けていました。

「ハア…やっぱり直子ってスゴい。あたし、ここまで快楽に溺れたことってないわ。溜め込んでいたあれこれ、ぜーんぶ浄化されちゃった気分」

 お姉さまの疲れ切って掠れた、心の底から絞り出されたようなお声に、私も告げたいことが頭の中で大渋滞状態。

 …さっきお姉さまが湯浴み着姿で来てくださった時、凄く嬉しかったんです…
 …その後のお言葉、私がうまく言えなかったことをちゃんとわかっていてくださっていたんだなって思って、涙が出そうなくらい感動でした…
 
 …シヴォンヌさまたちを、ちゃんと私を虐めるように仕向けられるお姉さまの的を射た話術も凄いです…
 …私、お姉さまの笑顔のためなら本当に何でもしますから、どうかお嫌いにならないでください…

 告げたいことは山程あるのに、ハアハアし過ぎて声帯が着いて来ず声には出来ず、ただただお姉さまのお顔を見つめつづけるばかり。
 そんな私をお優しげに見つめ返してくださっていたお姉さまが、一区切り着けるみたいにわざとらしくニッと笑われました。

「おーけー。そろそろお部屋に戻りましょう。帰る頃には、お膳いっぱいに美味しそうなご馳走が並んでいるはずよ」

 温泉から出た岩場の少し離れた岩の上に、真っ白なバスタオルが置いてありました。
 きっとお姉さまが脱衣所から持ってこられたのでしょう。

 最初にお姉さまが丁寧におからだをお拭きになられ、それから私に手渡してくださいます。
 私がからだを拭いている傍らで、お姉さまは湯浴み着の水気を軽く絞った後、手早くおからだに湯浴み着を巻きつけられ、首の後で紐を結ばれました。
 私もからだを拭き終わり、お姉さまには湯浴み着があるから、と自分のからだにバスタオルを巻き付けようと広げると、すかさず伸びてきたお姉さまの右手。

「直子は裸のままでいいでしょう?せっかくまだまだ屋外で全裸で過ごせるのだから。こんな直子好みの不健全なチャンス、滅多に無いわよ?」

 没収したバスタオルを小脇に挟み、ビデオカメラのレンズを向けてくるお姉さま。
 あらためてお言葉でご指摘されると、今私はお外に全裸でいるんだ、ということに全意識が持っていかれてしまい、お姉さまとのラブラブな交わりで満足しきった快楽とはまた別の、マゾ性ゆえの被虐願望みたいな欲求が、イキ疲れているはずのからだを性懲りもなく疼かせ始めてしまいます。
 戻りかけていた理性も、出番を間違えた舞台役者さんみたいにバツが悪そうにフェイドアウト。

 シヴォンヌさまたちがここを去られるきっかけとなったチャイムが5時とおっしゃられていましたから、きっともう夕方6時近いのでしょう。
 あれほどギラギラ全開だったお陽さまも森の向こうに沈みかけ黄昏色間近になった岩場の坂道を、お姉さまが私に向けていらっしゃるカメラのレンズを追いながら歩いていきます。

 私が生まれたままの姿で屋外を歩いている姿が映像に残されちゃっているんだ…
 あられもなく乳首を尖らせたおっぱいも、歩くたびにヌルヌル潤んでくる無毛の女性器も、全部デジタルで鮮明に記録されちゃっているんだ…
 羞恥心と背徳感に煽られ駆り立てられる自虐への衝動は、私のどうしようもないマゾ性をムラムラと蒸し返してきます。

 来たときには素通りした脱衣所に入ります。
 キャンプ場のバンガロー風外見を裏切らないログハウス仕様でウッディな内装。
 水捌けを考慮したプチ高床式なコンクリートの床に素朴な木製スノコを敷き詰めた足元。

 そんな朴訥な空間に、駅前とかによくあるコインロッカー然とした無機質無骨なロッカーが壁に沿って整然と並び、もう片方の壁面はお外を覗ける大きな出窓を真ん中に挟んで、バレエのレッスンルームのような鏡張り。
 木材の温かみと無機質な冷たさのアンバランスな趣が近未来ぽい非日常感を醸し出していて、鏡に映った自分の肌色が妙にエロティックに見えてしまいます。

 お姉さまが右手首に巻かれていたリストバンドから鍵をお取り出しになり、プレートに205と書かれたロッカーの水色の扉を開かれます。
 そそくさとご自分の浴衣を取り出されて傍らのテーブルの上に置いた後、サクサクと和装用下着を身に着けられました。
 つづいて悠然と浴衣を羽織られ、ご自身の着付けへと進まれます。

 私もお手間をお掛けしないように、とロッカーの中を覗き込みます。
 あれ?
 
 ロッカー内に残っているのは、お姉さまにお貸しした私のハート型ポシェットとビニール袋に包まれた真っ赤な手ぬぐい?タオル?いずれにしても小さくて薄っぺらそうな布地だけ。
 お姉さまにお持ちいただいたはずの私の水色の浴衣は、帯もろとも影も形もありません。

「…あのぅ、お姉さま?」

 とっさに感じた切ない予感にドキドキ震えつつ、お姉さまを窺います。
 着付けに夢中になれられているお姉さまから、なあに?という素っ気ないご返事。

「あのぅ…私の浴衣は…」

 チラッとロッカーと私に視線をくださったお姉さま。

「ああ、それね」

 帯を締め終わり、袖やウエストの撓みなど着こなしをご修正されつつ、お姉さまがご説明くださいました。

「直子の浴衣、背中側の裾にけっこう派手に泥が跳ねて汚れていたのよ」

 浴衣をお召し終わり、今度は使われた湯浴み着やバスタオルを丁寧にたたみ直されているお姉さま。

「あたしがここで湯浴み着に着替えているときにちょうどキサラギさんが備品の点検にみえられてね」
「汚れに気づいたのも彼女よ。湯船までの道すがら水たまりかなんか踏まれて跳ねたのでしょうって」
「今ちょうど洗濯機回していますからって言うから、あたしは、いいですよそのくらい、って言ったんだけどさ」

 湯浴み着とバスタオルを返却籠に収められたお姉さまが、私のそばまでやってこられます。

「あたしも湯浴み着に着替え終えたところだったからさ、自分の浴衣とかをロッカーに入れようとしていたら、わたくしが入れておきますから、どうぞごゆっくり露天風呂を楽しんできてくださいって言われて」
「ロッカーは閉めれば自然に鍵がかかっちゃう方式なんだって。それであたしはお言葉に甘えてそのまま外に出て、直子の浴衣の件はうやむや」

 お姉さまがロッカーの中を覗き込まれ、あら本当に入っていないわね、なんて悠長なことおっしゃいます。
 そしてロッカー内のビニール袋に気づかれたのでしょう、手を伸ばされ、それをお取りになりました。

「そう言えばあたしがドアから出ようとしていたら、お連れさま用にこちらを入れておきますね、なんて背中から声が聞こえたっけ」
「あたしも直子がカノジョたちに何されているのか早く視たかったから、確認もせずに、はーい、なんて生返事で出てきちゃったんだ」

 お姉さまの手がビニール袋を破られ、出てきた真っ赤な布地を広げ始めます。
 少し広げられたところで、プッ、と吹き出されるお姉さま。
 ご愉快この上ないというような満面の笑顔で私の顔を覗き込んできました。

「ちょっとこれ、直子ってばVIP待遇並みにこのお宿からおもてなしされているみたいよ」

 どうしたって笑いを噛み殺せない、みたいなニコニコなお顔で私にその真っ赤な布片を広げて見せてくれるお姉さま。
 フェイスタオルを広げたくらいの幅の長めで長方形な布片が真紅に染まっています。
 片方の端に同じ色で左右へと細長く伸びる紐。

「これってどう見てもふんどし。日本が誇る伝統の勝負下着、赤フンだわよね?」

2021年4月25日

肌色休暇一日目~幕開け 14

 帯が浴衣からすっかり離れてしまうと、胸の前で合わさっていた両襟も当然のことながら左右へハラリと割れてしまいます。
 浴衣の下は肩先からくるぶしまであますところなく素肌ですから、当然のことながら浴衣の前が開いてしまう前に襟を掴み、露呈を阻みます。

「こら。あなたはそんなしをらしいことするような種類のオンナじゃないでしょう?」

 イジワルそうな薄い笑みを浮かべ、からかうようなお姉さまのお声。
 私をまっすぐ見つめつつ、ご自分の両手をご自身のおへそのあたりに集め、おもむろに左右へ大きくパッと開くような仕草。

「あなたよく言っているじゃない、一度でいいから裸コートのとき人混みでこうしてみたい、って」

 ご愉快そうにおっしゃるお姉さま。
 でも私、お姉さまにそんなこと、一度も告げたことないはずです。
 
 だけどつまり、それはお姉さまからのご命令。
 えっちなマンガとかでよくある局部見せたがりなヘンシツ者みたく、自ら前をバッと開いてハダカを視ていたただきなさい、というご指図。

 胸の前で浴衣の布地をかき抱くように掴んでいた両手が、諦めたみたいに緩みます。
 左右の指先がそれぞれ左右の衿先を掴みます。
 それからギュッと目をつむり、思い切って両腕をバッと左右へと広げました。
 今まさに滑空しようとしている飛膜を広げたモモンガさんみたいに。

 目を瞑っていてもまぶたにお陽様の強い光を感じます。
 ああんっ、まだ全然明るくておまけにお外なのに、出会ったばかりの見ず知らずの方々の前で私ったら、何て格好をしているの…
 絵に描いて額に飾ったような、まさに、the 露出狂…
 羞恥と被虐と背徳と快感がないまぜとなり、下半身の裂けめを痺れさせてきます。

「おおぅっ!…」
 
 ザバザバと水面が波立つような音と一緒に、どよめくお声が大きく聞こえてきて束の間の陶酔が破られ、恐る恐る目を開けるとお三かたが思いがけずもずいぶん近くまで来ていらっしゃいました。
 お湯の深さは、一番小さくてロリっぽいサラさまでも太ももの付け根辺り。
 お三かたともオールヌード丸出しのお姿で、the 露出狂ポーズを晒している私のカラダをシゲシゲと見つめてきます。

「すげえ、超パイパンっ!」
「その日焼け跡、何よ?どこで焼いたの?どんな水着着たらそんなふうにエロやらしく焼けるのよ?」
「尖った乳首がツンツンにイキリ勃ってて痛そう。下乳は意外に垂れ気味なんだ…」
「クリもでかっ!皮がすっかり剥けちゃって、こっちもビンビンに飛び出してる…」
「首の白いスジは、チョーカーとか首輪の日焼け跡なのかしら…」

 口々に私のハダカの感想を投げ合わられるお三かた。
 温泉の湯船は一段低くなっていますし私は岩場でヘンシツ者ポーズですので、裸のお三かたから股間を仰ぎ見られる態勢。
 その好奇に満ちて不躾な視線の圧、何もかもが視られ吟味されている…という被虐に、マゾの血脈が全身で波打ちます。

「あなたの性癖も、みなさんに愉しめていただけているみたいでよかったじゃない?」
「引かれちゃったらどうしようかと思っていたわ」

 岩場に優雅に腰掛けられたお姉さまも嬉しそうに微笑まれ、片手に持たれていたスマホの画面をチラッとご覧になられました。
 それからスクっとお立ちになると、まだthe 露出狂ポーズな私の背後に来られました。
 
 間髪入れず、剥ぎ取られるように強引に私の背中から離れていく浴衣。
 少し緩めてしまっていた指先から、いとも簡単に私の唯一の着衣はお姉さまの腕の中へ。
 お外で全裸!?と意識するや否や条件反射のように、胸と股間を庇うヴィーナスの誕生ポーズへと移る私。

「だからー、あなたの両手はそこではないでしょ?何今更ぶりっ子しているのかしら?」

 すかさず投げつけられるお姉さまの呆れたような叱責。
 優美な曲線を描くアゴを優雅に、でも私にしかわからないくらい微かにしゃくられるお姉さま。

 はい…ごめんなさい…
 おずおずと両足を休めの姿勢くらいまで開き、両手を重ね合わせ自分の後頭部へと持っていく私。
 
 マゾの服従ポーズで間近のお三かたと向き合います。
 隠そうと思えばたやすく隠せるのに、自ら両手を後頭部にあてがい裸身の何もかもをさらけ出した私の姿を、唖然としたお顔つきで凝視されるお三かた。

「あたしはこれからさっきの脱衣所に戻って、タオルやら何やら、露天風呂を楽しむ準備をしてくるから、あなたはその格好のまま回れ右して、背中の自己紹介もみなさんに見ていただきなさい」
「あなたがどうしようもないヘンタイ性癖なんだって理解してもらえれば、みなさんもあなたも気兼ねなく愉しめるでしょうし」

 おっしゃりながら岩場に落ちていたカッパ様こけしを拾い上げられ、湯船のお三かたのほうへ軽く放られました。
 ポチャンと飛沫を上げて湯船に落ちたカッパ様。
 木製だから沈まずに、お三かたの背後でプカプカ浮かんでいらっしゃいます。

「この子、それ大好きだから、みなさんで好き放題しちゃっていいですから」

 無慈悲なお言葉を残されたお姉さまは、私がさっきまで着ていた浴衣と帯を手早くおまとめになって小脇に挟み、ハンディビデオカメラだけ岩場の高い位置に置き去りにされ、その場を離れられます。
 
 服従ポーズをお三かたに向けたまま首だけ捻じ曲げた姿勢で、脱衣所のほうへと戻られるお姉さまのお背中を未練がましく追っていると、お姉さまが不意に立ち止まられ、こちらを振り返ってくださいました。
 私に向けてニッコリ微笑まれ、右手の指先で空中にクルリと大きな円を描かれ、再びプイッという感じで向き直られ、脱衣所のほうへと歩き始められます。

 そうでした…
 私はお三かたに背中をお向けしなければいけないのでした。
 ある意味、おっぱいや性器を見られるのより恥ずかしい、私の素肌に刻まれた自分のヘンタイ性癖の自己紹介…

 再び湯船のほうへと顔を向け直します。
 お三かたとも湯船の縁まで集まられ、興味津々に舐め回すような六つの瞳が私の裸体を見上げています。
 その視線たちから目をそむけて意を決し、ゆっくりとその場で180度ターン。
 一瞬の沈黙の後、キャハハハと甲高い嘲笑が弾けました。

「なにそれ!マゾですの、だってー!」
「ですのって何よ?ちょーウケるんですけどぉ」
「日焼け跡って、引くまで消えないじゃん。あの姐さん、マジ鬼畜」
「だろうとは思ったけど、そんな言葉を肌に焼きつけちゃうなんて、正真正銘のヘンタイじゃん」
「やっぱり首の白いのは首輪の痕なんだ。マゾだから首輪を普段からさせられてるのね…」

 容赦無い好奇の嘲りが私のお尻に浴びせられます。
 侮蔑的なお言葉責めが切なくて唇をギュッと噛んでしまうのに、ジンジンと火照ってしまう私の乳首とマゾマンコ。
 ひとしきりお三かたのかまびすしい哄笑がつづきました。

「でもまあ、せっかく裸になったんだからさ、マゾですのちゃんも温泉、入んなよ。うちらと楽しもう」

 半笑いのお声ですが、お優しいお言葉を投げてくださったのは、最初にお声がけくださった金髪のカレンさまでしょう。
 そっと振り向くと案の定、さっきお姉さまが放られたカッパ様こけしを右手に握ったカレンさまがお湯の中で立ち上がられ、カッパ様をぶんぶん振っておられます。

 どうしよう…
 お姉さまが戻られるのを待ったほうがいいのかな…
 でもさっきお姉さま、この子を好きにしちゃっていい、ともおっしゃられていたけれど…

 少し迷ったのですが、お言葉に甘えさせていただくことにしました。
 一番の理由は私の股間。
 さっきからの羞恥辱責めで感じ過ぎてしまい、このまま服従ポーズでいるとだらしないマゾマンコから滴り落ちる恥ずかしいおツユまで目撃されてしまいそうだったからです。

「あ、はい…お心遣いありがとうございます。それでは失礼させていただきます…」

 丁寧にお答えしてポーズを解いて向き直り、湯船の縁までゆっくり歩を進めます。
 縁に立つとお三かたが少しだけ後退され、身を屈めた私は右足の先をちゃぷんとお湯に浸けてみます。
 
 熱すぎもせず温すぎもせず、人肌よりちょっと高いくらいの温度。
 両足をそろりと挿し入れ浴槽に立つと、お湯の深さは膝上、腿の真ん中少し上くらい。
 湯船の底は自然石のタイル状石畳になっていました。

 その場にしゃがみ込み肩まで浸かってみます。
 お湯は、ほんのり濁っていて少しポテっと重たい感じで、お肌に優しく絡む感じの滑らかな泉質。
 
 火照った全身がしっとり潤いの人肌に包まれ、うーんっ、気持ちいい…
 裸身もお湯に隠せてホッと一息ついたのも束の間、あっと言う間にお三かたに取り囲まれました。

 それからは、ご質問に次ぐご質問攻め。
 お姉さまとはどういう関係なの?から始まって、本当の仕事は何?それどこで焼いたの?剃毛?それとも永久脱毛?普段はどんな命令をされてるの?イジメじゃないの?今も感じちゃってるの?etc…etc…

 それらのご質問にすべて、正直にお答えしました。
 ご質問のあいだ中、お三かたのどなたかが私のからだに手を伸ばしてくることは無く、それはちょっと意外でした。

「ふーん。ですのちゃんは同性とでしか感じないレズでマゾで露出狂なのかー。けどそれって特殊性癖盛りすぎじゃない?もしオトコ好きだったら引く手あまたでモテモテだろうに…」

 金髪のカレンさまが感心されたようにおっしゃいます。

「アタシも男相手ならドスケベだけど、同性に見られたいってのは信じられないなー。だって、自分がサカって乱れてる姿を見ず知らずの同性に見られるなんて超恥ずくない?屈辱的っていうか…」
「ああ、女はそういうの見下してくる傾向ってあるよね。とくに自分より若かったり可愛かったりすると、嫉妬が絡んだマウンティングっていうか虚勢を張るための軽蔑っていうか。シモネタNGがカワイイと思ってる女ってまだまだ多いから」

 ロリなサラさまのご意見に賛同されるカレンさま。

「こないだのハコネでの宴会、ひどかったじゃない?うちらが何かやるたびに凄い目で睨まれて」
「あー思い出した。なんであんな女性交じりの場にアタシら呼ぶかな?中でも一番薹が立ってたお局様?の目がスゴかった」
「そうそう。他の女も野球拳とか見たくないならさっさと部屋に戻ればいいのに、なぜだかいるんだよね、最後まで」
「でもまあオトコ共も大半萎縮しちゃってある意味、仕事は超ラクだったよね。お酌だけしてりゃいいって感じで」
「場がシラケきってた。あの会社、あの後揉めたろうな。潰れてたりして」

 ご愉快そうな笑い声をあげられるカレンさまとサラさま。

「ですのちゃんのお姉さまって、ですのちゃんが他の女性とえっちなことをしても怒らないのよね?」

 話題を仕切り直すみたいに、ナイスボディなシヴォンヌさまがお口を挟まれてきました。
 そして私の呼び名はいつの間にか、ですのちゃん、で定着しちゃったみたい。

「あ、はい…怒らない、って言うか、私が他の女の人に虐められているのを見るのもお好きみたいです…」

 至近距離で向き合っているシヴォンヌさまの、お湯の波間から見え隠れしているハリウッド女優さんみたいなお胸の谷間にドギマギしながらお答えします。

「やっぱり。ですのちゃんのご主人様は寝取られ属性があるんだ。それじゃあですのちゃんも、いろいろやらされて大変でしょうね」
「…ネトラレ?ですか?」

「あれ?知らない?大好きな人が他の知らない人にヤラれちゃうのを見て悦ぶ特殊性癖。夫婦の旦那のほうが奥さんを他の男にヤラせて、それをこっそり覗き見したり。エスな人の調教の一環だったりもするらしいけれど」
「そんなの…知らなかったです」
「でも、あの姐さんは、そんな感じなんでしょ?そういうのをネトラレって呼ぶのよ」

 妖艶な笑顔のシヴォンヌさまにそう諭されて、確かに私のお姉さまはネトラレなのかな、って思いました。

「おっと、シヴォンヌ姐さんがノッてきたよ」
「アタシらん中じゃ姐さんが一番、エスエムとか詳しいもんね」
「姐さんはエムっぽくにもエスっぽくも変幻自在の百戦錬磨だから」

「じゃあ、ですのちゃんに何かマゾっぽいことしてもらおうよ」
「ですのちゃん見てると、たしかに何かこう、イジメたくなっちゃうの、わかる気がする」
「ドマゾって、痛いのとか屈辱的なのも好きなんじゃなかったっけ?」

 カレンさまとサラさまが俄然はしゃぎ始めます。
 私もお三かたからの虐められモードに突入したことを察知して、お湯の中でぐんぐんムラムラしてきています。

「それじゃあ、ですのちゃんにはとりあえず、オナニーショーでもしてもらおっか?ご主人様の置き土産のこけしもあることだし」

 シヴォンヌさまが艶っぽい半笑いのまなざしを私に向けたまま、他のおふたりにご提案されます。

「いいねいいねー」
「ですのちゃんのえっちなイキ顔見てみたーい」
「アタシ、他の女が男に姦らてるのは見たことあるけど、ひとりえっちでイクとこは見たことなーい」
「でもお湯の中でモゾモゾチャプチャプされてもうちらにはよく見えないし、なんかつまんなくね?」

 カレンさまサラさまの無慈悲なお言葉。

「あー、それもそうね。それじゃあ、あの真ん中の島に上がってやってもらおっか」

 シヴォンヌさまが我が意を得たり、みたいなご表情で温泉中央に設えられている東屋を指さされます。
 私はさっきの、シヴォンヌさまの妖しく翳る瞳を見て、ある程度の覚悟はしていました。
 シヴォンヌさまは絶対最初から、そこで私を晒し者にされるおつもりであったはずです。
 お姉さまが私に残酷なご命令を企まれているときと同じまなざしでしたから。

「いいねいいねー。あそこちょうど足湯っぽく腰掛けられるようになってるから、そこでバーっと大股開きで」
「ライブショー、最前かぶりつきだね」

 カレンさまサラさまがキャッキャとはしゃがれる中、お湯の中でシヴォンヌさまにサッと右手を掴まれました。
 初めてのボディタッチにビクンと震えた刹那、シヴォンヌさまがザバッと立ち上がられたので私も引っ張られて立ち上がらざるを得ません
 
 ナイスボデイな全裸女性に手を引かれ、刑場に連行されるみたいに湯船中央の東屋のほうへ。
 私たちの後からサラさまカレンさまがつづかれ、全裸女性4名での湯中の行進を、ずいぶん傾いてもまだまだ明るい夕陽が煌々と照らしてくださっています。

「さあ、ですのちゃんはこの上にお上がりなさい」

 シヴォンヌさまの声音はあくまでおやさしげでしたが、有無を言わせぬ威厳と言うか高貴さと言うか、人にご命令され慣れているような感じのカリスマ的オーラを感じました。
 
 目の前にある小島には、ちゃんと湯船から陸地まで上がれる石の階段もあり、ふたりぐらい並んで腰掛けられる石のベンチが湯船を見渡す位置に三脚、そして島の中央部分は、更に一段上がっていて陽射しを遮る木製の屋根を設えた東屋になっています。
 
 湯船の中からお三かたが見上げる中、私はシヴォンヌさまのご命令に従い、ひとり島へと上がりました。
 温泉から出た一糸まとわぬ素肌を微かに吹いている風が優しく撫ぜてくださいます。

「そのベンチに座って、まず最初は、ですのちゃんが普段ヤッてるみたいにからだをまさぐって、気分を盛り上げてみて」
「いい感じになってきたら、このこけしを渡してあげる」

 カレンさまから手渡されたのでしょう、カッパさまこけしを片手にシヴォンヌさまからのディレクション。
 湯船の縁に両肘をついた横並びのお三かたがベンチに腰掛けた私を見上げています。

「は、はい…」

 すっかり覚悟を決めた私は、恥ずかしさ半分、辱めていただける嬉しさ半分のマゾモードで両脚を大きく開きました。
 両足はベンチの上に置き、自ら進んでのM字開脚。
 
 左手を右おっぱいに当てると、ビクンと電流。
 乳首が今にもポロリと零れ落ちそうなほど大きく硬く背伸びしています。

 右手をそっと股間に滑らせると同時に、あふんっ。
 手のひらがもろに、充血して腫れ上がった肉芽を擦ったからです。

「うわ、自分からあんなに思いっ切り股広げちゃって、パイパンだからケツの穴まで何もかももろ見えじゃん」
「オマンコの中がビチャビチャにテカってない?」
「呆れた、もう感じちゃってるんだ。本当に視られるのが好きなんだね」
「あ、早くも指の出し挿れし始めちゃった。へー、中指と薬指使うんだ…」

 みなさまからのにぎやかな実況中継が聞こえてくるのですが、私の両手は怯むこと無く自分の性感帯を陵辱しつづけています。
 これまでのあれこれで疼ききっていた私のからだにやっと訪れた快楽のチャンスに、恥も外聞も消し飛んでいます。

 おっぱいを揉みしだき、乳首をつまみ、ひねり潰し、ひっぱり。
 右手のひらでクリットを擦りつつ、膣口に埋めた二本の指でジュブジュブ膣壁を捏ね回します。
 それでもお外にいる、という意識はあるみたいで、目と唇を真一文字に結んで歯を食いしばり、淫らな声は極力我慢しています。

 甘美な刺激は的確に蕩けるような昂りへと変換され、その蓄積がめくるめく頂きへと徐々に昇り詰めていきます。
 ああんっ、そろそろっ、あとちょっと、もう少しぃ…
 
 お三かたは固唾を呑んで見守っていらっしゃるのか、実況中継のお声も聞こえなくなっています。
 視られている、という被虐を実感したくて、そっと顔を上げて瞑っていた瞼を開きます。
 視界の先に唖然という面持ちのみなさまのお顔。

 ああんっ、視て…こんなお外で、みなさまの目の前で、マゾな直子が浅ましくイッてしまうふしだらな姿を、どうぞ存分に視てやってください…んっ!…

 ふと視線を上げると、お三かたの後方数メートルの位置にお姉さまのお姿が見えました。
 濃いめなブルーグレイの湯浴み着をお召しになり、ビデオカメラのレンズをまっすぐ私に向けられたお姉さまのお姿が。
 それに気づいた瞬間、強烈な快感の波が下腹部から全身へと駆け巡り、頭の中が真っ白になりました。

「イッたね…」
「うん…間違いなくイッてる…」
「早くね?始めてからまだ5分も経ってないっしょ?」
「ぐったりハアハアしてるのに、からだのあちこちがヒクヒク痙攣してる…やだっ、ケツの穴まで…」

 そんなお声がどこか遠くのほうから聞こえた気がしました。