2017年5月28日

三人のミストレス 06

 布地を幅5センチ位づつ、丁寧に折り返していきます。
 
 一度めくり上げたら自然には元に戻らないパツパツなチュニックの裾。
 そして、一度めくり上げたらパーティのあいだ中、元に戻すことは許されないであろうと覚悟していました。
 なので、少しでも見映えを良くしておきたくて、だらしなくズリ上げるよりキレイに折り返すことにしたのです。

「へー。あたしのときより、ずいぶんと大胆なローライズになったのね」
 おへその少し下くらいまで布地を折り返して両手を離しました。
 露になった私の生々しい下腹部に、絵理奈さまの刺すような視線を感じます。

「外性器の寸前までベルトラインを下げちゃったんだ。前貼りもしていないのね」
 その部分を表す名詞に堅苦しいお言葉をわざとらしく使われる絵理奈さま。
 呆れたような薄い笑みを浮かべたお顔とも相俟って、自分がとても非常識な格好をしていると思い知らされ、みじめな気分が増してしまいます。

「裾で隠れているとは言え、そんなジーンズ穿いて夕方の人混み歩いてきて、恥ずかしくなかったの?」
 絵理奈さまが、咎めるような口調でおっしゃいました。

「そ、それは、恥ずかしかった、です・・・」
 お答えしながら粘膜が蠢くのがわかりました。
 絵理奈さまのお言葉の侮蔑的なニュアンスに、あられもなく反応してしまう私のどうしようもないマゾ性。

「ふーん。やっぱり恥ずかしいんだ?そのわりには、今あなた、自分で裾を捲り上げたのよね?」
 薄く笑みを浮かべつつ、窓辺のほうへお顔を向けた絵理奈さま。
「ねえ、ちょっと。そこのメイドさん?」
 唐突にマツイさまにお声をかけられました。

「あ、はい?」
 飲み物のテーブル脇でこちらと、イベントショーでの私の痴態を延々と映し出している壁のディスプレイとを交互に気にされていたマツイさまは、ビクッと小さく肩を震わせてから、こちらを向きました。

 無言の笑顔で二度三度手招きされた絵理奈さまに従い、こちらに近づいてこられるマツイさま。
 そのあいだに絵理奈さまは私の正面から離れ、私が座っていた椅子を代わりに私の手前に置き、その脇にお立ちになりました。

 不安そうなお顔のマツイさまに艶然と微笑まれ、傍らの椅子を勧められる絵理奈さま。
「ちょっとここに座って」
「えっ?あ、はい・・・」
 勧められるまま戸惑いがちに腰を下ろされるマツイさま。

 私はと言えば、松井さまの髪を飾るメイドカチューシャを真上から見下ろす形。
 つまり、腰掛けたマツイさまのお顔の真正面に、私の下腹部があることになります。
 それも息がかかりそうなほどの至近距離。
 両膝が崩れ落ちそうなほどの羞恥が全身を駆け巡りました。

 正直言って、それまでオフィスで連日のように辱めを受けていましたから、会社のみなさまの前ではしたない姿になることに、段々と慣れっこになっていた感じもありました。
 でも今、目の前にいらっしゃるかたは、ついさっきまで一面識もなかった、このお店の可憐な従業員さま。
 それも、女子大生さんとご紹介されましたから、自分と同じくらいか歳下のかた。

 そんなおかたの目前に、スジの割れ始めさえ見えちゃいそうな、無毛剥き出しの恥丘をご命令されるままに突き出している、みじめ過ぎる私・・・
 絵理奈さまからのお言葉責めとも相俟って、単純な羞恥や屈辱、背徳とも言い難い、ある種、新鮮な被虐感にゾクゾクしていました。

 マツイさまは、目の遣り場にお困りのご様子で、うつむきがちながらもチラチラと、目前の赤裸々な素肌へと上目遣いの視線を送ってきます。
 その羞じらいを含んだ視線が却ってもの凄く気恥ずかしく、かろうじてジーンズ地で隠された部分の粘膜がキュンキュン熱を帯び、ヌルヌルの汗を分泌しているのがわかりました。

「どう思う?こんなジーンズ」
 絵理奈さまがマツイさまに尋ねます。
「どう、って言われましても・・・すごい、ですね」
 当惑されたお声のマツイさま。

「すごい、ってどんなふうに?」
「えーと、なんて言うか・・・セクシー、って言うか、えっち過ぎ、って言うか・・・とんでもないですね」
 ピッタリなお言葉がみつからない、という感じで考え込まれたマツイさまですが、もはやうつむきがちではなく、視線をしっかり私の下腹部に向けて、眩しそうに見つめてくるようになっていました。

「穿いてみたい?」
 さっきのお言葉通り、とんでもない、というふうに首を左右に振るマツイさま。
「まさか。こんなすごいの、どこで穿くんですか?下着を穿いたとしたって、下着が丸出しじゃないですか」

 冗談めかすように笑いながら否定されたマツイさま。
 ただ、笑ったことで何かがふっ切れたのか、さっきまでの羞じらいが嘘のように消え、まるで微生物の観察でもするような興味津々の瞳で、まじまじと私の無毛な丘を凝視し始めました。

「それにしてもキレイなパイパン。ツルッツルなんですねぇ・・・」
 思わず零れてしまったような、マツイさまの独り言っぽいつぶやき。
「そうよね。毛穴のプツプツが全然見えないもの。これで生まれつきじゃなくて、脱毛エステなんだって」
 絵理奈さままで中腰になって、私の下腹部を容赦なく凝視してきます。

「あたしもイベントのモデルするためにずっと剃っていたんだけど、ハイジニーナって、してみるとけっこう気持ちいいのよね」
 絵理奈さまがおからだを起こしながらおっしゃいました。

「手術の後、担当のナースさんが笑いながら教えてくれたの、下半身見てびっくりしちゃったって。でも手間がひとつ省けてラクだったって」
「理由を話したら納得していたけれどね。あれからあたしもハイジニーナ派になって、今エンヴィに通っているのよ」

 エンヴィというのは、シーナさまのご紹介で私に脱毛施術してくださったエステサロンです。
 ということは、絵理奈さまも今、パイパン状態なのかな?
 施術のときに私がしたような格好にされている絵理奈さまを想像すると、キュンと疼いてしまいます。

 同時に、私を取り囲む人たちの中から、今の絵理奈さまのパートナー、綾音さまのお顔を探していました。
 綾音さまは、お酒のせいなのか頬をほんのりピンクに染めたとても艶っぽいお顔で、嬉しそうに私たちのほうを眺めていらっしゃいました。

「あたしみたいな仕事だとムダ毛の処理は必須。これから秋口まで水着の仕事も多くなるしね」
 絵理奈さまがマツイさまにご説明されるのを、他のかたたちも興味深そうに聞き入っておられます。
「ハイジニーナだと前貼りも貼りやすいから、夏のあいだはヘアーレスで通すつもりなんだ」

 そこで一呼吸置いた絵理奈さま。
 私を取り囲むように、立っていたり座っていたり、思い思いの格好でくつろいでいらっしゃるみなさまをグルっと見渡しました。
 マツイさまが私の目の前に来られてから、リンコさまたちの傍に退かれていたしほりさまに向けて手招きされ、しほりさまが私の近くに戻られました。

 それをご確認されてから、絵理奈さまがマツイさまに向けて、お話をつづけます。
「でもこの人はね、本業がモデルでもグラビアアイドルでも何でもなくて、普段は近くの高層ビルで働いている、アパレル会社のOLなの」

「なのにこんなにツルツルで、しかも、二度とヘアが生えてこない永久脱毛処理までしちゃったらしいのよ。なぜだと思う?」
 マツイさまに尋ねられる絵理奈さま。

「なぜって、わたしに聞かれましても・・・」
 私の下腹部を凝視しつつ、考え込まれるマツイさま。

「しほり?あなたが言っていた例のアレ、やってみせてよ」
 絵理奈さまが傍らのしほりさまにおっしゃり、しほりさまがニッコリうなずかれました。
「おーけー。わたしも久しぶりだから、なんかキンチョーしちゃう」
 とてもそうは思えないルンルンなお顔で、私の目の前に立たれたしほりさま。

「ナオコ?」
「はい?」
 真正面からじっと睨むように私を見据えたしほりさまのお顔が、クイッと顎を前に突き出すように動きました。

 その瞬間、心臓がビクッと跳ねて、ああやっぱり、と観念する私。
「あっ、はい・・・」
 それからおずおずと両手を上に挙げ始めます。

 決して逆らうことは出来ない、みなさまから私への決め事。
 両手のひらが後頭部で重なったとき、腕の動きにつられて折りたたんだチュニック裾もせり上がり、おへそまで剥き出しになりました。
 更にボレロの前合わせも大きく左右に割れ、薄布一枚越しのおっぱい先端までがみなさまの前で露になっていました。

「へー。本当に言っていた通りするのね。よく躾けられていること」
 からかうような絵理奈さまのお言葉。
 何が起こったのかわからない、というお顔で、瞳をまんまるにして私を見つめるマツイさま。

「今わたし、心の底からゾクゾクしちゃった。これすると、なんて言うか征服感?みたいな、得も言われぬサディスティックな感情が湧き上がってくるのよねー」
 しほりさまがとても愉しげにおっしゃり、私の全身を舐めるように見つめてきます。

「何て呼ぶのでしたっけ?そのポーズ」
 絵理奈さまが私に尋ねてきました。
「あ、はい。あの、えっと、マ、マゾの服従、ポーズ、です・・・」

 今日初めて会ったマツイさまの前で、自分の恥ずかしい性癖である、マゾ、という自己紹介の言葉を自ら口にしなくてはいけない、ほろ苦くも甘酸っぱい屈辱感。
 マツイさまのギョッとされたようなお顔が被虐を更に煽ります。

「ああ、そうだったわね。それであなたは、ここにいる人全員から、今の指示をされたらそのポーズを取ることになっているんですってね?」
 嘲笑混じりの冷やかすような絵理奈さまの口調。
「はい・・・」
 今すぐにでもここから逃げ出したいと思う一方で、これから更に何をされちゃうのか、淫らな期待にキュンキュン咽び泣く私のマゾマンコ。

「そういうことなのよ」
 今度はマツイさまに語りかける絵理奈さま。

「この人はね、外で裸になったり、みんなが視ている前で恥ずかしい格好にされることが大好きな、根っからのヘンタイマゾ女なんだって」
「それが会社の人みんなにバレちゃったから、毎日このジーンズよりももっといやらしい格好にさせられて、嬉しそうにオフィスで勤務しているそうよ」
「バスト丸出しはあたりまえ、その姿で来客にお茶を出したりもしているんですって」

 呆気にとられたように私と絵理奈さまをキョロキョロ交互に見遣るマツイさま。
 確かに絵理奈さまのおっしゃる通りなのですが、こうしてマツイさまのオーバーなリアクションを見せられると、オフィスでの自分がしていることのアブノーマルさを、あらためて思い知らされます。

「それは、えっと、イジメ、とかではなくって、ご本人もご納得の上で、されているのですか?」
 絵理奈さまと私、どちらに聞けば、という感じで首を左右に振りながら尋ねられるマツイさま。

「もちろんイジメとかパワハラとか、そういう陰湿なものじゃないわ。みんなちゃんとしたオトナの社会人ですもの、そんな子供じみた真似はしないわよ」
 可笑しそうに微笑んだ絵理奈さまが、私の股間を指さしてつづけました。
「この人がそういう性癖で、それで嬉しがるのがわかるから、させてあげてるのよ。ほら、ここを見れば一目瞭然でしょ?」

 私の両腿付け根付近を僅かに覆っているジーンズ生地は、一目見てそれとわかるほどグッショリ濡れて、色落ち気味なインディゴブルーの布色が黒色に近い濃紺色へと変色していました。

「ね?こんなジーンズ穿かされているってだけで、こんなに濡らしちゃっているのよ?メイドさんが目の前に座ってからは、お漏らししたみたいに濡れシミがどんどん広がっていたわ」
「見られたがりのマゾだから、自慢の女性器を隅から隅までみんなに見せびらかせたくて、ヘアも全部取っちゃったんでしょ?おかげで愛液垂らしまくり」

 不意に背後からリンコさまがお口を挟んできました。
「本当、直子って濡れやすいよね。イベントのときのアイテムも、ボトムは全部、クロッチのところがベチョベチョに濡れそぼっていたもん」
 ミサさまと並んで椅子に腰掛けられたリンコさまがおっしゃった後、持っていたグラスのワインをクイッと飲み干されました。

「ウォーキングしながら濡らしちゃうなんて信じられない。歩きながら感じちゃっているわけでしょ?あたしには考えられない。そんなんじゃプロのモデルには到底なれないわね」
 絵理奈さまの蔑んだお声。

「うちらはそれを知っていたから、ショーのときに下着も前貼りもさせずに、ずっとノーパンでやらせたんだよ。前貼りに濡れジミが目立っちゃうと途端にエレガントさがなくなっちゃうから」
 リンコさまの嗜虐的な笑顔の横で、ウンウンうなずかれるミサさま。

「そういうわけで、今日はあたしと、こっちのしほりのために、こちらの社長さんが、じっくりこの人のニンフォマニアっぷりを愉しむ場を作ってくださったの。今日はそういうパーティなのよ」
 マツイさまに向けてニッコリ微笑まれた絵理奈さま。

「さっきも言ったみたいに、この森下直子っていう人は、その場にいるすべての人の命令に絶対服従することが一番の悦びだって躾けられている、みんなのおもちゃ、マゾペットなんだって」
「もちろん今夜はその中に、つまり命令する側の中にメイドさん、あなたも入っているの。あなた、そいうのって興味ない?」

「へっ?・・・いえ、あの、えっと・・・」
 突然、予想もされていなかったでしょうご提案を振られ、一瞬固まったマツイさま。
 でもすぐにお顔をお上げになり、高揚されたご様子でお言葉をつづけられました。

「でも面白そうですね、わたしも実は、こんなコスプレとかしちゃうくらい萌えアニメとか大好きで、学校でもその手のサークルに入っているんです」
「まさかそんな人と三次元で会えるなんて・・・露出癖のあるマゾペットなんて、えっちな妄想が膨らんじゃって、すっごく興味あります」
 つぶらな瞳が好奇心に爛々と光り始めるマツイさま。

「えっ、本当?うちらと話が合いそうじゃん」
 コスプレ、というお言葉にすかさず食いついた、我が社のコスプレ大好きユニット、リンコさまとミサさま。

「コスプレの話は後で好きなだけしてもらうとして、あなた、えーっと、ごめんなさい、お名前、何だっけ?」
「あ、はい、松井です。松井宏美」
「あーそうだった。松井ちゃんね。松井ちゃんは、このマゾ女に何させたい?」
「何させたい、ですか?うーん。急に言われても・・・」

 そのとき、階段のほうからチーンとベルのような音が鳴りました。
「あ、新しいお料理が上がってきたみたいです。ちょっとごめんなさい。持ってきますから」
 あわてて立ち上がろうとされた松井さまのお顔が、私の下腹部スレスレまで接近しました。

「あっ!」
 という松井さまのお声とともに吐息が恥丘にかかり、
「あぁんっ!」
 と感じてしまう、ふしだらな私。
 名残惜しそうに、お料理用エレベーターのほうへ駆け寄る松井さまのお背中。

「はいはーい。松井ちゃんがリタイアだったら、ワタシがリクエストしていいかな?」
 松井さまがお席を外されたことで少し緩んだ空気の中、雅さまの明るいお声が響きました。

「ほら、ワタシあんまりオフィスにいないからさ、ナオちゃんのえっちな姿、ぜんぜん拝めてなかったんだよね。ほのかから話聞くだけでさ」
 ほのかさまと連れ立ってフラフラと近づいてこられる雅さま。
 お顔がほんのり火照って、けっこうご酩酊のご様子。

「みんなの前で裸でバレエ踊ったとか、ひとりえっちさせたとか、ランチタイムのカフェでブラとパンツ脱がさせた、とかさ。ワタシ、そういうの聞いてウズウズ羨ましくて仕方なかったんだ」
 ほのかさまったら、そんなことまで雅さまにご報告されていたんだ・・・

 マスキュリンなハンサムレディの雅さまと清楚を絵に描いたようなほのかさまが、どんなお顔で私の噂話をしていたのだろう、と想像すると、なぜだかとても淫靡な気持ちになってきます。

「アユミの頃以来、そんな遊びともずっとご無沙汰だったからさあ、ワタシもほのかと一緒にいろいろ考えてきたんだ、ナオちゃんの虐め方」
 もはや仲睦まじさを隠そうともせず、嬉しそうにおっしゃる雅さま。
「ナオちゃんは、アユミよりも羞じらいが強そうだからさ、虐め甲斐がありそうだよね」

 普段と変わらない明るくフレンドリーな雅さまの口調なのですが、視線やお言葉の端々に、仕留めた獲物をわざと指先でもてあそぶような嗜虐的なニュアンスが感じ取れました。
 ああん、雅さままで・・・

 マゾオーラ全開な直子を目前にすると、誰もが無性にエス心を駆り立てられて、もっともっと虐めたくなっちゃうみたいなのよね・・・
 以前、シーナさまがおっしゃっていたお言葉を思い出していました。

「間宮部長がそうおっしゃるのでしたら、メイドさんが何か思いつくまで、お任せしますわ」
 絵理奈さまが嬉しそうにおっしゃり、一歩退かれました。
 代わりに私の目前に立たれた雅さま。
 アルコールのせいなのでしょう、普段よりトロンとした艶っぽいまなざしで、私の全身を眺めてきます。

「最初から全部脱がせちゃっても面白くないから、ジワジワといきたいな。両手縛って抵抗出来ないようにして。何か紐かなんか、ないかな?」
 雅さまの問い掛けに逸早くお応えされたのは、お姉さまでした。

「そうくると思って、ちゃんと用意しておいたわよ」
 ソファーに置いたバッグの中からスチール製の手錠を取り出されるお姉さま。
「あれって、来るときに直子が提げていたバッグじゃない?」
 リンコさまのお声に、あっ、と驚く私。

「へー。ナオコって、自分を虐める道具をいつも肌身離さず持ち歩いているんだ。ずいぶんと意識高い系のマゾなのね」
 しほりさまのからかうようなお声に、みなさまがアハハと笑います。
 松井さままで、お料理をテーブルに並べながら、そのお背中が小刻みに震えていました。

「さんきゅ」
 お姉さまから手錠を渡された雅さまが、私の背後に回りました。

 後頭部で組んでいた両手に雅さまの手が触れ、そのまま背中側に下ろされて後ろ手にされます。
 手首にひんやりとした金属の感触。
 カチャン、カチャン。
 剥き出しのお尻のすぐ上あたりで、後ろ手のまま施錠されました。

「ふふーん。いい感じ。これでナオちゃんは、ワタシに何をされても抵抗出来ないのよ?」
 私の正面に戻られた雅さまのイジワルそうな薄い微笑み。
 おもむろに右手が私の胸元に伸びてきます。

「ああん、み、雅さま?・・・」
 チューブトップの胸元にかかった雅さまの右手が、そのまま無造作にズルッと布地を引き下げました。


三人のミストレス 07


2017年5月7日

三人のミストレス 05

 夕方6時過ぎでもお外はまだ充分明るく、昼間の真夏日で蓄えられた熱気が肌に絡みつくように漂う中を、大勢の人たちが行き交っていました。

 てんでバラバラな私服で着飾った妙齢の女性8名が一団となってゾロゾロワイワイ歩いていくと、やっぱりかなり人目を惹くみたい。
 すれ違う人や追い越していく人たちのうち、とくに男性から、首の動きがわかるほどの無遠慮な視線を投げかけられます。
 おそらく、お美しいお姉さまや綾音さまたちのお顔やスタイルに見蕩れて目で追っているのでしょうけれど、私にはどうしても、自分の赤い首輪と服装が、いかがわしく目立っているせい、と思えてしまいます。

 大通りを渡り、部室のあるマンションのほうへ。
 マンション前の公園を突っ切って住宅街のほうへ。
 やがて見えてきたのは、私がひとりで帰宅するときたまに使う、人通り少なめな住宅街の路地への入口。

 その入口の角に、いい感じに古びた壁面に緑の草が這っている、小じんまりとした背の低いビルがあります。
 ビルの一階は、大きめな窓で室内を見通せる造りの、喫茶店なのかバーなのかレストランなのか。
 道路沿いにテラスっぽくテーブルが出ているスペースがあって、フランスのカフェみたいだな、と通るたびに思っていたのですが、そこが今夜のパーティ会場のお店でした。

 ウェルカムリースが掛かった扉を引いて、お姉さまたちがお店に入っていきます。
「あ、いらっしゃーい。待ってたわよー」

 数時間前にお聞きしたような、覚えのあるお声のするほうに目を向けると、お店の奥のほうに満面に笑みをたたえた、ややふくよかな体型の人懐っこそうなおばさま。
 お声からして、このかたが、さーこママさま、のようです。

 店内は小じんまりながら木調を生かしたオシャレな雰囲気で、長方形スペースに4人~6人掛けのテーブルが二組、通路を挟んで10人くらい並んで腰掛けられそうなカウンター、カウンターの向こう側は広めな厨房となっているようです。
 テーブル席にアフターファイブらしきOLさん3人組、あと、カウンターにはカップルさんなのでしょう、男女ともスーツ姿の先客様がいらっしゃいました。

 って、えっ!?
 今日は貸し切りではなかったの?
 一般のお客様もおられる中でパーティするのかしら。
 窓ガラス越しにお外からも丸見えな、こんな開放的な環境のお店で・・・

 パーティの席上でみなさまが私をどのように扱われるか定かではありませんが、今日させられた服装から言って、平穏無事に何事も無く終わるとは思えません。
 必ずや、良識ある世間一般のかたたちは普段人前で絶対お見せにならないであろう、公序良俗に反するからだの部分の露出を強要されることでしょう。

 夜が更けて客席に照明が灯れば、闇の中で店内が浮かび上がり、お外を歩く人たちからガラス窓越しに一層覗きやすくなることは必至。
 新規のお客様もご自由に出入りされる、そんなお店の中で私は、半裸か全裸か、はたしてどんな格好でお食事する羽目になるのでしょうか。
 ドキドキが急激に高まりました、

「準備はもう出来ているから、ちょっと時間早いけれど始めちゃっていいわよ。あ、お連れ様も別にいらっしゃるんだったわね?総勢10名様だからあとおふたり」
 おっしゃりながら、お部屋の片隅の階段を上がり始めるさーこママさま。
 その後ろをついて行くお姉さまがた。

 そっか、二階があるんだ。
 二階が貸し切りっていうことなのかな。
 ホッと胸を撫で下ろす私。

 二階に上がるとちょっとビックリ。
 一階の小じんまりとした印象とは真逆な、一階の厨房にあたるスペースまでを含んだ予想外に広々としたワンフロア。
 フローリングの床、壁際にはソファーや本棚、大きなビデオ用壁掛けディスプレイ、それにアップライトピアノまで設えてありました。

 窓際らしきところにはオリーブグリーンのカーテンがかかり、品の良い間接照明がお部屋をムーディに照らしています。
 飲食店と言うよりプライベートなパーティルームみたいで、まるで他所様のお家のリビングダイニングにお邪魔したみたい。

 スペースの中央に大きめなダイニングテーブルがふたつ置かれ、その上にたくさんのお皿と美味しそうなオードブルや中華の点心が並べられているのが、唯一レストランぽいところ。
 思い思いに寛げるよう、あちこちに小さめなラウンドテーブルとソファーも含めて椅子も人数分以上置いてありますが、なんだか立食パーティっぽい雰囲気になりそう。

「飲み物はあそこに、ビールサーバーとワインクーラーにご指名の銘柄を一通り揃えておいたから」
 お部屋の片隅のテーブルを指さされながらご説明してくださるさーこママさま。
 いろんな形のグラスも山ほど置いてありました。

「あ、カーテン開けようか。まだ外は明るいんだし、こっち側の窓からは緑がたくさん見えるから雰囲気いいのよ」
 さーこママさまがツカツカっと壁際に行き、道路沿いと路地沿いのカーテンを全開しました。

 ついでにオーディオもオンにされたのか、ドビュッシーのピアノ曲が低く流れ始めました。
 曇りひとつない路地側の素通しガラス窓から、黄昏どきの低く弱い陽射しが、お外の木々を抜けて木漏れ日となり、フローリングに淡い模様を落としました。

 自然光に満たされてお部屋がクラッシーな雰囲気になったのに、私は小さくドキン。
 一番大きな窓が面している道路沿い、公園側のほうには遮るものが何も無く、公園からちょっと見上げればこの素通しガラスの中、バッチリ覗けちゃうはず。
 夜になって辺りが暗くなったら、お部屋の灯りで一際目立っちゃうことでしょう。
 室内貸し切りだとしても、お外からは丸見え?

「お料理は、出来上がり次第どんどん上げるから、どんどん食べちゃってね」
「ここのお世話は、この、花の女子大生マツイちゃんがつきっきりで担当するから、何かあったら彼女に言って、お酒やおつまみのリクエストとか」

 さーこママさまのお隣でペコリと頭を下げられた、フリルの付いたモノトーンフレンチメイド姿の長身美女さま。
 笑うとエクボがクッキリな愛くるしいお顔から下は、フレンチメイド衣装ゆえ凹凸のメリハリが強調されたナイスクビレのわがままボディ。

「よろしくお願いしまーす」
 そのご容貌からはちょっぴり想定外のソプラノ気味アニメ寄りな可愛らしいお声でご挨拶されたマツイちゃんさまは、テキパキとグラスに飲み物を注ぎ始めました。

「あ、そうそう、それでミャビちゃん、アユミちゃんと同じご趣味のかたって、どなたなの?」
 さーこママさまが雅さまに尋ねられました。

「ふふーん、ママは誰だと思う?」
 イタズラっぽく笑われた雅さま。

 アユミさま、というかたは、お姉さまたちの服飾部時代のご学友で、私と同じような性的嗜好をお持ちだという女性。
 お姉さまたちが私の辱め方に手慣れていらっしゃるのは、アユミさまとご一緒していた頃のご経験があるからということですが、私はまだお会い出来ていません。
 今はモデルさんのお仕事でご活躍されているそうです。

 雅さまったら、そんなことまでお店にお伝えしちゃっていたんだ・・・
 いよいよ逃げ場が無くなった気がして、下半身がキュンキュン疼きました。

「誰?って聞かれてもクイズにならないわよ?わたし、たまほのちゃんまでは、御社の社員さん全員知っているもの」
 おっしゃりながら、さーこママさまを囲むように立っている全員のお顔を見回し、その視線が私の赤い首輪を通り過ぎたと思ったら、また戻りました。

「お名前をまだ存じ上げていないかたは、こちらとこちら、ね」
 正確に里美さまと私を指さされたさーこママさま。
 そのままじーっと、私を見つめてきました。

「あなた、ランチタイムにお弁当届けに行ったとき、窓際で裸でマネキンごっこしていたでしょう?」
 おやさしい声音でとても嬉しそうに、さーこママさまがおっしゃいました。
「あ、えっと、あの、それは・・・」

 完全にバレてた・・・
 抑えようのない羞じらいが一気に全身を駆け巡り、からだ中がカーッと火照りました。

「おおおー。大当たりー」
 ご愉快そうに拍手される雅さまとリンコさま。

「今思い出せば、その赤い首輪がチラッと髪のあいだから見えていたのよね。ガラス窓にもうっすらお顔が映っていたし」
 愉しそうにお言葉をつづけられるさーこママさま。
 ああん、顔まで視られていたんだ、オフィスで全裸の私の姿・・・
 今更ながら逃げ出したいほどの羞恥。

「形のいい綺麗なお尻だったわよね。あなたみたいな可愛い子なら大歓迎よ。遠慮しないでお好きなだけ脱いじゃって。どうせ今日二階は貸し切りだから」
 さーこママさまから、お店で脱ぐことのお墨付きまでいただいてしまいました。

「この子は、今年の春入社した森下直子。あたしの秘書なの。こっちは愛川里美。うちのネットショップ担当。直子はどこでも脱ぐけど里美は脱がないわ。ママさんマツイちゃん、今後ともよろしくね」
 真っ赤になっている私に代わって、お姉さまがご紹介くださいました。
 私は隣でペコリとお辞儀するのが精一杯。

「へー、直子ちゃんていうの。なんならさっきのマネキンごっこみたくスッポンポンになっちゃっても構わないわよ。わたしも後で見せてもらいに来ようっと」
 イタズラっぽくおっしゃったさーこママさまが、雅さまのほうへお顔を向けてお話をつづけました。
「ケータリングで伺った後、うちのケンちゃんが直子ちゃん視て大変だったのよ、すごく羨ましがっちゃって・・・」

 ケンちゃんさまというかたは、オフィスにお弁当を持ってきてくださったとき、一緒に来られたお店のスタッフさんと思われるお若そうなお声の男性です。
 私はお顔を拝見していないのですが、おそらく今も階下の厨房におられるのでしょう。

 私を視て、羨ましい?
 さーこさまのお話がどのように展開するのかドキドキしていると、お部屋の入口のほうからお声がかかりました。

「ごきげんよう。遅くなりましたー」
 お声のしたほうを見ると、絵理奈さまとしほりさまでした。
「あら、いらっしゃいませー」
 さーこママさまとマツイさまがユニゾンでお応えした後、みなさまが口々に、いらっしゃーい、と迎えます。

「お連れさまがお見えになられたようね。では、わたしは下にいるから、みなさん、今夜は楽しんでいってね。マツイちゃん、後はよろしくねー」
「はーい」
 メイド姿のマツイさまの可愛らしいご返事とともに、さーこママさまのお話は尻切れトンボで終わりました。

「あ、そうだった」
 階段を下りかけたさーこママさまが立ち止まり、こちらにお声をかけてきました。
「うちのお店、この階段上りきったところがおトイレだから、たまに一階のお客様が上がってくることもあるけれど、わたしがよく説明しておくから、とくに直子ちゃんは気兼ね無用よ、お好きなだけ愉しんでってね」

 明るくご冗談めかしたさーこママさまのお声に、みなさまが、あはは、と笑います。
 よく説明しておくって、どんなご説明を階下のお客様にされるおつもりなのでしょう・・・

 何はともあれ、絵理奈さまたちが合流されたところで、カンパイということになりました。
 窓辺のラウンドテーブルで、マツイさまが注いでくださった各自お好きな飲み物を手に、中央に置かれたふたつのダイニングテーブル周りに集まります。
 
 私はシャンパンのグラスを手に取り、隣には白ワイングラスのお姉さまと入口寄りのダイニングテーブルへ。
 その横にほのかさま、雅さま、里美さまが立たれました。
 もう一方のダイニングテーブルには、絵理奈さまを中心にしほりさま、綾音さま、リンコさまとミサさまの開発部チーム。
 
 絵理奈さまは、今日は幾分くだけたファッションで、生成りのカットソーに黒のショートパンツ、それにオリエンタルな刺繍の入ったシルク地のショートガウンを合わせたシンプルコーデなのですが、その華やかなお顔と瀟洒な仕草で充分過ぎるほどの芸能人オーラを放っています。
 しほりさまは、いつものイメージ通りの黒ずくめスレンダーコーデ。
 絵理奈さまのお隣に立たれた綾音さまのお顔が、いつになくだらしなくほころんでいらっしゃるのはご愛嬌。

 お姉さまの音頭で、絵理奈さまのご退院とイベントの成功を祝してカンパーイ。
 カンパイの後は、それぞれのフォークがお料理の大皿に伸びつつの雑談タイム。
 サラダ、オードブル、点心、どれも美味しくて、みなさまモグモグと食が進みます。

 お肉料理が出てきたと思ったらお刺身の盛り合わせ、キッシュに唐揚げ、オムレツとバラエティに富んだ美味しそうなお料理がどんどん、マツイさまの手によって運ばれてきます。
 みなさま、お酒のほうもクイクイ進んでいるようで、それにつれておしゃべり声も大きめに。

 お姉さまたちとのおしゃべりの中で雅さまが、さっき途中で終わってしまったケンちゃん氏のお話のつづきを教えてくださいました。

 ケンちゃん氏は、このお店のお料理ご担当の人で、まだ二十代半ばとお若いながら、フランスやスペインで修行されシェフ経験もある優秀なかた。
 そして、スペイン人のカレシさんをお持ちのゲイなかたなのだそうです。

 それでケンちゃん氏は、男性版の私、とも言えるような趣味嗜好もお持ちだとか。
 すなわち、露出願望のケがあるマゾ寄りのかたなので、とくに酔っ払われるとその傾向に拍車がかかり、何度か手痛いしくじりもされちゃっていらっしゃるとのこと。
 それが、オフィスで裸の私を見たときの、羨ましい、というご感想につながったみたいです。

「多分、直子が勤務先のオフィスっていう日常的な場所で同性に囲まれて、ひとりだけ裸にされているのを視て、見せたがりのマゾ心が疼いちゃったのでしょうね」
 お姉さまもケンちゃん氏のその性癖を詳しくはご存知なかったらしく、感心されたような呆れられたような、笑いを押し殺せないお声でご感想をおっしゃいました。

「ナオちゃんは、余計な心配しなくていいのよ。ケンちゃんが裸を見せたいのはあくまでも男性だけ、だから。女性相手だと縮こまっちゃうみたいだし」
 男性の露出狂か・・・男性の全裸は見せられたくないなー、なんて思っていた私の心を見透かしたみたいに、雅さまがご愉快そうにおっしゃいました。

「ただ、お肌のお手入れに何使ってるんですか?とか、熱心に相談されちゃうかもしれないけれどね、アユミみたいに」
 オチをつけるみたく雅さまが付け加えて、一同あはは。

 始まってからしばらくは、誰に何をされるでもなく穏やか健全に過ぎていきました。
 腹ごしらえも一通り落ち着いたみなさまが、グラス片手に思い思いの場所の椅子に腰掛けて、まったりムード。
 お姉さまと雅さまがソファーにゆったり腰掛けられ、私とほのかさまが、その傍に木製の椅子を持ってきて腰掛けました。

 もともと股下が極端に浅いシーンズですから、膝を折って腰を屈めるとお尻側の布地が大きく腿側に引っ張られて、ますますズリ下がりました。
 チュニックの中でお尻が、お尻の穴部分までお外に出ちゃっている生尻状態。
 その手前の穴はどうにかジーンズ地が覆っていますが、落ち着かないこと半端ありません。

「今回はご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ありませんでした」
 自分のお尻に気を取られたモジモジ状態からふと目を上げると、いつの間にいらしたのか、お姉さまの目前に絵理奈さまとしほりさまが立ち、深々とお辞儀をされていました。

「何よ今更あらたまっちゃって。いいのよ。盲腸炎なんて不可抗力で仕方ないもの。なんとか代役で乗り切れたしね」
 お姉さまが立ち上がり、傍らにあった白ワインのボトルをおふたりに差し出されました。

「絵理奈ちゃんもたいしたことなくて、早く退院出来て良かったじゃない。しほりさんにはずいぶんお手伝いしてもらったわね。お疲れさま」
 お姉さまが注いだワインでグラスをチンッと合わせ、お三かたで乾杯。

「秋にやるバイヤー向けのショーモデルは、頼んだわよ?うちのお得意様、絵理奈ちゃんファン、多いんだから」
「はいっ!精一杯がんばります」
 元気の良いお返事にニコッと微笑まれたお姉さまの視線が、私に向きました。
 つられてこちらを振り向かれる絵理奈さま。

「あなたがあたしの代役をしてくださったのよね?えーっと、夕張小夜さんでしたっけ?本名は森下直子さん。今回はありがとうございました」
 絵理奈さまに深々とお辞儀をされ、私もあわてて立ち上がります。
 さりげなく腰に手を遣り、ずり下がった股上をチュニックごとグイグイッとズリ上げました。

「あ、あの、えっと、ご退院おめでとうございます・・・はじめまして、じゃないのかな、何度かオフィスでお見かけしてましたし・・・」
 お顔を上げられた絵理奈さまが、しどろもどろでうろたえている私の全身を、お姉さまに対するフレンドリーな雰囲気から一転、値踏みするような冷ややかな瞳でじっと見つめてきました。

「へー、聞いてはいたけれど、確かにあたしと同じような体型ね。あたしは病院で少し痩せちゃったけれど」
 私の赤い首輪からボレロに隠れたバスト、ピチピチチュニックのウェストを経て、ジーンズの足先まで上下する視線。
 その振る舞いに、何か挑戦的と言うか、一方的な敵意みたいなものを感じました。

「直子さんのご活躍は、いろいろと教えてもらったわ。アレも観せてもらったし、しほりからもいろいろ聞かされたしね」
 アレ、とおっしゃりながら絵理奈さまが指さした壁掛けディスプレイには、いつの間にかあの日のイベントショーの模様が映し出されていました。

 そこには、アオザイ風のボディコンマキシワンピースを身に着けた私がライトを浴び、バスト周りと下腹部周りだけを鮮やかに透けさせて歩いていました。
 ワインクーラーが置かれたテーブルの傍らで待機されているマツイさまが、そのディスプレイの映像を食い入るように視つめていらっしゃいました。

「モデルがあなたに代わったことで、急遽エロティック強め路線に変更して押し切ったらしいじゃない?あたしも映像や写真見せられてびっくりしちゃった」
「で、おかげで大好評だったって聞いて、二度びっくり」
 絵理奈さまが幾分大げさ気味に眉をしかめられました。

「それにあなた、ニプレスも前貼りもしなかったのでしょう?あたしだったら到底考えられない」
 今度は蔑むような口調。

「でも、しほりやリンコさん、早乙女部長さんたちから、あなたが根っからの見せたがりドマゾなんだって、控室や楽屋でのあれこれを聞かせてもらって、なるほどな、とも思ったのよ」
「さすがのあたしも、ヘンタイが相手じゃ勝てないな、って」
 
 最後に憐れむようなお顔を一瞬お見せになってから、私に向けてご自分のワイングラスを差し出してきました。
「あ、はい・・・」
 私もあわてて自分のシャンパングラスを手に取りました。

「ま、何はともあれ、代役、ありがとうね」
 チンとグラスを合わせて一口飲みました。
 絵理奈さまの私を視る瞳がひどく嗜虐的に見えて、胸がドキドキして仕方ありません。

 いつの間にか私たちの周りにみなさまが集まってこられていました。
 私たちの会話を興味津々で見守られていたご様子。
 その中から、心底愉しそうにお顔をほろばせたリンコさまが私に近づいてこられました。

「今日直子はね、ショーのときのローライズを穿いて来てるんだ。リナちゃんのときより股上をもう2センチ浅くすることになって、ショーの直前に急遽アタシが仕立て直したんだよ」
 得意満面なお顔が可愛らしいリンコさま。

「悪いけど、リナちゃんなら穿くのをためらっちゃうような破廉恥さなんだ。アタシの自信作。ほら直子、絵理奈さまに直子ご自慢のパイパンマゾマンコをお見せしなさい」
 
 お酒ですっかりご機嫌になられた、ほろ酔いリンコさまのお下品なお言葉でのご命令。
 その横で黙ってうなずかれるミサさま。
 一斉に起こる、けしかけるような拍手。

「は、はい・・・」
 どうやらみなさまパーティの余興として、私を虐めて遊ぶモード、に入られてしまったようでした。

 ご出張ばかりで滅多にオフィスにおられず、こういう場が初めてな雅さまが、ほのかさまと肩を寄せ合い、ワクワクなお顔で私を見ています。
 綾音さまはトロンとした瞳で頼もしそうに絵理奈さまを見つめ、里美さまとしほりさまは、待ってました、と期待感に溢れた野次馬さん的なお顔。
 マツイさままでが、壁のディスプレイとこちらを交互に気にされていました。

 気がつくとお外もいつの間にか宵闇。
 正面の道路沿いの窓から、公園の外灯がポツリポツリと灯っているのが見えました。
 お部屋に低く流れているピアノ曲は、私の大好きなサティのグノシエンヌの3番。
 
 シャンパングラスをテーブルに置き、おずおずとチュニックの裾に両手を掛けました。


三人のミストレス 06


2017年4月23日

三人のミストレス 04


「あっ、いいなー。チーフと直子、ペアルックみたい」
 ミサさまとおしゃべりされていたリンコさまが私たちを見て、冷やかすようにおっしゃいました。

 足元はおそろいのスニーカー、ボトムはジーンズ、お姉さまはカットソーの上に薄手のシックなブルゾンを羽織ってらっしゃいましたから、ちょっと見では確かにペアルックぽくも見えるでしょう。
 でも実態は大違いでした。

 お姉さまは、大人カジュアルなジーンズにシックなカットソーとブルゾンを合わせたインフォーマルかつエレガントな装い。
 私のは、股上が浅すぎるスキニージーンズにからだのライン丸わかりのチュニック、プラス乳首隠しのボレロ、しかもNPNBというアブノーマルかつエロ過ぎる装い。
 何と言っても、私の首に赤い首輪が巻き付けられていることが、ふたりの違いを決定的に顕わしているはずです。

「直子のジーンズ、イベントのときの・・・」
 ミサさまがリンコさまに向けて、ボソッとつぶやかれました。

 途端にみなさまの視線が私の下腹部に集中してきます。
 チュニックの薄い布に覆われた内側の様子を、みなさまご想像されているのでしょう。
 その不躾な視線だけで私はもう・・・

「ちょっとそこで一回転してみて」
 綾音さまが、いつものお仕事でのご命令口調でおっしゃいました。
「あ、はい」
 バレエのターンの要領でゆっくり一回転。
 ボレロの布地が風を切って浮き、乳房がプルンと揺れました。

「からだのラインがずいぶんとクッキリ浮き出る布質ね」
「隠れているとは言え、生尻の形そのものが布地に直に響いていてエロティック」
「これは、直子じゃなければ着こなせないコーデよね」

 普段のミーティング中みたく、口々にご感想をつぶやかれるみなさま。
 それらを聞いて、ご満足気にうなずかれるお姉さま。

「うん、とても似合っていてよ直子。さ、みんな揃ったことだし、そろそろ向かいましょうか」
 綾音さまがご自分のお席から立ち上がり、みなさまを見渡しました。

「そうだね。早めに着いても、もう用意は出来ていると思うし。さーこママ、久々にワタシに会えるって張り切っていたから」
 雅さまがご冗談ぽく応えられました。

「スタッフみんなでの飲み会も、すっごい久しぶりよね。あたしも明日はオフだし、今日はとことん呑むぞー」
 お姉さまがおどけた調子でおっしゃって、みなさまガヤガヤとお席を離れゾロゾロと玄関へ。
 リンコさまがオフィスの戸締まりをされ、全員フロアに出ました。

 先頭をお姉さまと綾音さま。
 そのすぐ後ろを雅さまとほのかさまが仲睦まじく肩を寄せ合ってつづきます。
 リンコさま、ミサさま、里美さま、そして私とひとかたまりで、その後を追う形になりました。
 
 一歩踏み出すたびに、薄布一枚だけにくるまれたブラをしていないおっぱいがプルンプルン弾んで、尖った乳首がボレロの裏地に擦れます。
 そのたびに、自分が今しているはしたない服装を思い知らされ、マゾ性がぐんぐん高まってしまう私。

 フロアにまったく人影は無く、このフロアの退社時刻のピークは去ったようでした。
「ねえねえ、ちょっとそのニット、めくってみせてよ」
 イタズラっ子なお顔をされたリンコさまが、歩きながらちょっかいをかけてきました。

「えーっ、ここでですか?」
 エレベーターホールへ向かう道すがら、別の会社のドアの前を通り過ぎたところでした。
「大丈夫、今このフロアにはうちらしかいないじゃない」
 おっしゃりながら右腕を私の下半身に伸ばしてくるリンコさま。

「あ、いえ、わかりました。自分でめくりますから」
 その右腕を腰を引いて避けつつ、ちょっと後ずさる私。

 歩きながらチュニック両脇の布を指でつまみ、おずおずと引き上げました。
「おおっ、あらためてこういう場所で見ると、めちゃくちゃエロいね、このジーンズ」
 リンコさまのはしゃぐお声にミサさまもご感想をポツリ。
「直子が穿くから許せる仕様。もしもヘアがもじゃもじゃだったら下品になり過ぎる」

 フロアに煌々と灯る照明を浴びて、私の無毛な恥丘がツヤツヤと露になっていました。
「お尻もほとんど生々しく出ちゃってる。ほんと、えっちなジーパンだこと。いったい誰がデザインしたのかしら」
 私の後ろを歩く里美さまが、リンコさまに向けてからかうようにおっしゃいました。

 チュニックは伸縮性のあるぴったりフィットのニット生地ゆえ、一度ずり上げると裾が腰で留まったまま、指を離しても自然に元に戻ってはくれません。
「あの、もう直していいですか?」
 そろそろエレベーターホールへとつづく曲がり角です。
 エレベーター前でどなたか別の会社の人が待っているかもしれないと思い、リンコさまに裾を戻すお許しを乞いました。

「だーめ。せっかくなんだから、せめてエレベーターまで、名も知らぬ某天才パタンナーがパターンを引いた傑作エロジーンズの出来栄えを堪能させて」
 リンコさまからおどけた口調でダメ出しされ、恥丘とお尻ほぼ丸出しのままエレベーターホールのほうへと曲がりました。

 前を行くお姉さまと綾音さまに、雅さまとほのかさまが追いつかれ、4人で愉しげに談笑されているお背中が見えます。
 そのお背中の更に奥のほうへと目を凝らすと・・・

 よかった、エレベーター前にも誰もいないみたい。
 ホッとしていると、ずっと私の左横を歩かれていたミサさまからお声がかかりました。

「そのニットって、ベアトップなんだ?」
「えっ、そうなの?」
 すかさずリンコさまが反応され、私のボレロの前布をペラっとめくりました。
 白っぽいベージュの薄布ニットに包まれた私の右おっぱいが覗きました。

「ああ、確かにチューブトップ。ノーブラなの丸わかり、ということは、ニットをズルっと下に引っ張ったらおっぱいポロリじゃん」
 愉しそうに私の顔を覗き込むリンコさま。
 社外の人がフロアに居ないのをいいことに、今にもそうされるのではないかとビクビクの私。

「さすがチーフのコーデよね、用意周到サービス満点じゃない?」
 リンコさまは、そうおっしゃっただけで行動には移されませんでした。

 チーフ、というお言葉が聞こえたのでしょう、前を歩かれていたお姉さまが振り返りました。
 恥丘剥き出しローライズで歩かされている私を見てニヤッと笑っただけで、すぐにみなさまとの会話に戻られました。

 そうこうするうちにエレベーターホールに到着。
 私はまだ、傑作ローライズエロジーンズのギリギリっぷりを、世間様に知らしめる格好のままにされています。
 私を取り囲むようにエレベーターを待つスタッフのみなさまが、時折気がついたように、剥き出しのお尻や恥丘に視線を走らせてきます。

「エレベーター乗ってもこのままでいけるかな?」
「監視カメラが付いているからヤバイんじゃない?管理室のおじさんたちに見られちゃうでしょ?」
「でも、カメラって上からだから、下半身はよくわからないんじゃない?まがりなりにも両脚にジーンズは穿いているわけだし」

 わざと聞こえるようにおっしゃっているのが丸わかりな、リンコさまたちの愉しげに無責任なおしゃべり。
 お姉さまに、助けて、と縋りたいのですが、お姉さまは綾音さまとの会話に夢中。

 ピンポーン。
 エレベーター到着の電子音が鳴り、私は裾を直すことを許されないまま、開きつつあるエレベーターのドアのほうへ、仕方なく一歩踏み出しました。

 そのとき、後ろから引っ張られるような感覚がして、スルスルっとチュニックの裾が直されました。
 振り向くとほのかさまのおやさしい笑顔。
 そのまま背中を押されるようにエレベーターに乗り込みました。

 乗った途端にギクッと冷や汗。
 エレベーター内に、すでにおふたりの先客さまがいらっしゃったのでした。

 おそらく私たちより上の階のオフィスのかたたちなのでしょう。
 私とそう年令が変わらなそうなOLさんとスーツ姿の30代くらいの男性。
 私たちが入って行くと、操作パネルのほうにおふたりで移動しながら小さく会釈してくださいました。

 ほのかさまは、エレベーター内に先客がおられることに目ざとく気づかれ、素早く私の裾を直してくださったようでした。
 あらためてほのかさまのほうを見ると、私と目が合ったほのかさまは、ニッコリ笑われウンウンよかったね、という感じで2回うなずかれました。

 もしもあのままの格好でエレベーターに入っていたら・・・
 裾が戻る前の私は、あまりにインパクトの強すぎる姿でしたから、先客のカップルさんも唖然とされたことでしょう。

 こういう下世話な出来事は、広まるのが早いのが世の常。
 カップルさんの所属する会社で噂になり、やがてビル中に・・・
 あのビルのエレベーターに下半身露出女が出没するらしい・・・
 私たちが乗ってきた階もわかっていますから、まずお姉さまの会社が特定され、すぐに私も特定されて・・・
 
 現実的でネガティヴな妄想がどんどん膨らみました。
 ほのかさまの咄嗟の機転にひたすら感謝するしかありません。

 エレベーターは、数階ごとに止まっては幾人かのビジネスパーソンをお乗せして降りていきます。
 いつの間にか20数人乗りのエレベーターがほぼ満員となっていました。
 
 私が立っているのは、箱中央の大きな鏡の前。
 たくさんの人影と一緒に、自分の全身が曇りひとつない鏡面に映し出されていました。
 否応無しに今の自分の服装と向き合わされる形でした。

 チュニックの裾さえきちんとしていれば、ボレロもちゃんとバストを隠してくれているし、ありふれたごく普通の格好、いえ、むしろオシャレと言ってもいいコーディネート。
 赤い首輪さえ、コーデの一部としてキッチュなアクセントになっているはず・・・
 そう思い込もうとしましたが、私の内面がそれをせせら笑っていました。

 何言ってるの?
 あなたは、その薄い布の下はノーパンノーブラで、おまけにマゾドレイの証である首輪まで巻かれているのよ。
 これから連れて行かれるお店で何をされるのかゾクゾクして、シーンズの股まで湿らせちゃってるクセに。
 よくもまあ、そんな澄ました顔をしていられるものよね。

 まわりのみなさまが一様に、ビジネスパーソンらしいカッチリとした服装をされている中で、私の首を飾る赤い首輪はあきらかに異質でした。
 こんなにたくさん人が乗っているのに、エレベーター内は終始無言。
 乗り込んでいるみなさま、とくに男性の方々の目が、チラチラと私の首輪を盗み見されているのが、鏡越しにはっきり見て取れました。

 ピンポーン。
 私的にはすごく遅く感じたエレベーターでしたが、実際には多分、乗り込んで一分ちょっとくらいで1階へ到着しました。

 扉が開くなり耳に飛び込んでくる喧騒。
 週末の午後6時過ぎ。
 お買物のお客様とアフター5の人波とが重なる、建物内に人が一番多い時間帯かもしれません。

「まだちょっと時間が早いから、ウインドウショッピングでもしながら、のんびり行きましょうか」
 なるべく人がいないところを歩きたいと思っている私の気持ちを、絶対ご存知なはずなお姉さまからのイジワル過ぎる一声。

 隣接するショッピングモールへとゾロゾロ移動するみなさまに、黙ってついていくしかない私。
 もちろんショッピングモールには、老若男女、たくさんの人たちが賑やかに行き交っていました。

「やっぱり首輪って人目を惹くんだね。直子、エレベーターでジロジロ見られてた」
「見るからに犬用って感じだもんね。アクセって言うよりプレイ用って感じで」

「SM好きのオトコなら大悦びしちゃうんだろうねー。おっ、マゾ女発見、みたいな」
「直子の首輪見ながら、オレならこう責める、とか妄想逞しくしちゃって」

「SMプレイだと思われたとしたら、アタシらが虐めてる側って見られちゃうよね」
「まあ、実質そうなんだけれど、なんか心外だな。直子が望んでいることをしてあげているだけだもの」

「あとほら、罰ゲームって思われたりも。最近えげつない罰ゲームさせる飲み会とかOLのあいだでも流行っているんだって」
「だったらもっとエロっぽい格好させてもよかったかもね。リードも付けちゃったり」

 リンコさまたちのわざとらしいお言葉責めを、聞こえないふりの私。
 この首輪もファッションアクセのひとつとして着けているんです、と傍から見えるように、お澄まし顔のモデルウォークを心がけて歩きます。
 ただ、これまでのあれこれで私の理性は、滾るマゾの血に胸中深く押し流されつつありました。

 お店でショッピングを楽しまれる人たち、最寄り駅へと家路を急ぐ人たち。
 すれ違うたびに、無数の好奇の視線が自分に注がれているように感じていました。

 首輪でマゾと看過され、不自然なボレロやチュニックのシルエットで露出狂と断定され・・・
 今私が、自分でこの裾をめくってしまったら、この平穏なモール内はどんな騒ぎになっちゃうのだろう・・・
 そんな不埒な妄想が浮かび、あわてて打ち消します。

 不意に横に並んでこられた里美さまにお声をかけられました。
「こないだの耽美研の子たちね、学校が夏休みに入る前にもう一回来るって」
「えっ?」

 すぐにはおっしゃることの意味が掴めなかった私。
 耽美研?・・・あ、ショールームの!
 やっと意味がわかり、カーッとからだが火照りました。

 先月、うちのネットショップのお得意様向けショールームで、私の痴態の限りを目撃された女子大生のお客様お三かた。
 そのかたたちがまた、私に会いたいということなのでしょう。

「学校でこないだのこと話したら興味あるっていう人がけっこういて、今度は6、7人になっちゃうかもだけれどいいですか?って聞かれたの」
「もちろんわたしの答えはイエス。ただし、ひとり何かしらひとつ買っていってね、って条件は付けたけれどね」
 イタズラっぽく微笑まれる里美さま。

「彼女たちが候補に挙げてきた日付の内のひとつがちょうど、こないだ言っていたスパンキングマシーンの試作品納入予定日の一日後だったのよ」
「マシンが納入されたら、動作テストで直子を呼ばなきゃな、と思っていたからグッドタイミング」

「彼女たちも直子に何かして欲しいことがあるみたいだけれど、ついでにみんなの前でマシンにお仕置きされているところも見てもらえるのよ、嬉しいでしょ?」
 里美さまのお話に、リンコさまとミサさまも聞き耳を立てているご様子。

「倉島さんて子、覚えてる?」
「はい。お三かたの中で一番ご熱心だった、確か小説を書かれているとかいう・・・」

「そう。彼女が直子にぞっこんなんだって。あの辛そうに歪む切なげな顔が忘れられないって」
「えっ?」

 倉島さまというかたには、お三かたの中でも一番エムっぽい雰囲気を感じていました。
 ロープでの自縛実演見学をご所望された言い出しっぺのかたとお聞きしていましたし、セルフボンデージのタイマープレイも一番やりたがっていらしたし。
 
 私を虐めたことで、エスに目覚めちゃったのかな?
 意外な気持ちで里美さまにお尋ねしました。

「つまり、倉島さまが、私を辱めることに一番積極的になっておられる、と?」
「ううん。逆。彼女、直子が虐められているのを見て、本来持っていたマゾ性に拍車がかかちゃったらしいの」
 ご愉快そうにおっしゃる里美さま。

「彼女、あの日の直子を思い出しては、同じような責めで自虐して、毎日自分を慰めているみたいよ。お仲間にも手伝ってもらって、お尻虐めてもらったり」
「大学でも、かなりキワドイ露出プレイとか愉しんでいるみたい。彼女の下のヘアは、ヨーコさんがノリノリで全部剃っちゃったんだって」

「耽美研自体がどんどんエロい百合サークルになってきちゃったらしいわ。彼女の学内露出プレイを目撃した人が何人か、新入部員になったり」
「こないだのメールにも、あの日の直子さんは本当に綺麗だった、自分もそうなりたい、って。あなた、彼女に理想のマゾ女として崇拝されちゃっているのよ」
 からかうような里美さまのお言葉。

「だから次のショールームは、直子と一緒に倉島さんも虐められちゃうことになるんじゃないかな。良かったじゃない?直子にマゾ弟子第一号が出来たのよ」
 
 思いがけないお話でした。
 自分と同じ性癖の人と、一緒に辱められる・・・
 それはまだ体験したことの無い、新しいシチュエーションでした。

 あられもない格好で拘束された私と倉島さま。
 そのふたりを容赦なく陵辱してくる幾人もの手やお道具・・・
 その中には必ず、お姉さまもいて欲しい、と切実に思いました。
 お姉さまと一緒に、新しい体験を分かち合いたい、と。
 
「へー。それ面白そう。アタシらも参加したーい」
 横からお口を挟んでくるリンコさま、そのお隣でうなずくミサさま。

「それは上の人次第ね。この話、まだ早乙女部長には通していないから」
「ということは、お姉さま、あ、いえ、チーフもまだご存じないのですか?」
 気になったことが、すんなり口から出ていました。

「うん。でもそれは気にしなくていいんじゃないかな。あの人が、そんな面白そうなことにノーって言うわけないもの」
 
 里美さまがイタズラっぽくおっしゃったとき、ちょうどモールの出口ドアをくぐり、建物からお外へ出ました。


三人のミストレス 05


2017年4月16日

三人のミストレス 03


 今年の春、入社前にお姉さまに誘われてオフィスでやった、面接ごっこ、のことを思い出していました。
 あのときも私は、全裸でこの女子トイレに放置されたのだったっけ。

 でも、あのときは土曜日の夜更けで、同じフロアにまったくひとけが無い状態でしたから、放置されてもずいぶん気が楽でした。
 そのあとも全裸のままフロアに出され、オフィス前の廊下で全裸オナニーまでさせられるくらい、ひとけが無かったのですから。

 だけど今日は平日で、今はちょうど一般的なオフィスの退社時刻です。
 お姉さまは、女子トイレを使う人は、このフロアにはほとんどいないみたい、とおっしゃっていましたが、ご来客様とか、万が一ということがあります。

 もし、そうなってしまったら・・・
 限界へと近づきつつある大腸への苦痛に、破滅を予感させる被虐が加わり、全身が小刻みに震えてきます。
「あぁうぅ・・・お姉さまぁ・・・」
 思わず懇願の呻きが洩れてしまった、そのとき・・・

 カタッ。
 おトイレ入口のほうから、小さく物音が聞こえました。
 ドキン!
 私の全身が大げさに震えました。

 お姉さま?
 全身を耳にして聞こえてくる音に集中します。

 ヒュー、バタン。
 扉が開いて閉じる音。
 カツン、カツン。
 ヒールが床を叩く音・・・

 えっ!?ヒール?
 今日のお姉さまはジーンズだから、確かスニーカーを履いていらっしゃったはず。
 ま、まさか・・・
 あ、でも、夜のパーティのためにオフィスで着替えていらっしゃったのかも・・・

 そこまで考えたとき、怪訝そうなくぐもった女性のお声が聞こえました。
「うわっ!」
 おそらく私が個室から突き出している剥き出しのお尻に気づき、たじろがれたのでしょう。

 その低いお声に聞き覚えはありません。
 万事休す。
 頭の中が真っ白になりました。

 しばしの沈黙の後、カツンカツンとヒールの音がこちらに近づいてきました。
 私は便器の前の床タイルを舐めるように突っ伏して、お尻だけ突き上げている姿勢なので、近づいてくる人を見ることが出来ません。
 だけど気配で、おそらくその人はお姉さまではないと感じました。

 ああ、もう私はこれで終わり・・・
 女子トイレに素っ裸の変質者がいた、ということで、ビルの管理室に通報され、ケーサツに通報され・・・
 ビル中、街中の噂となり、お姉さまの会社からも追放され、両親にも報告されて・・・
 羞恥と屈辱と激しい便意とが絶望という名のもとに収束し、目尻に涙が溢れてきました。

 カツン。
 私のお尻のすぐそばで止まった足音。
 ピシャン!
 すぐに右の尻たぶに痛みを感じました。
「あぅっ!」
 想定外突然の打擲に思わず声が出てしまいました。

 ピシャン!バチン!バッチン!
 それからその人は、矢継ぎ早に私のお尻をスパンキングし始めました。
「あ、いやっ、うっ、あうっ・・・」

 突然始まったお仕置きに便意と恐怖が一時的に引っ込み、身悶えし始めてしまう私。
 皮膚と皮膚がぶつかり合う、拍手のような小気味よい音が、女子トイレ内に響きます。
 どうやらその人は、素手で私のお尻を叩いているみたい。

 床にひれ伏した顔を捻じ曲げて、私のお尻を打擲している人を見ようとします。
 でも視界にかろうじて入るのは、その人が履いているベージュのハイヒールと華奢な足首だけ。
 その足首を見て、その人がお姉さまではないことは、確定しました。

 その人は、私のお尻を打つたびに低く小さなお声で、何事かつぶやかれていました。
「このヘンタイオンナ・・・ロシュツキョウ・・・インランマゾ・・・ベンジョオンナ・・・」
 罵られるたびに私のマゾ性がわななきます。

 同時にひとつの光明が見えてきました。
 この人がこうして私をいたぶっているということは、こういう性癖にご理解のあるかたなのかもしれない。
 現に今もこうして、どこかに通報するでもなく、私を虐めてくださっている。
 その代わり、私が言いなりになるべきご主人様が、またおひとり、増えてしまうことになるでしょうけれど・・・

「あーあ、直子、こちらのかたにみつかっちゃったんだ?」
 不意にすぐそばで、お姉さまの愉しそうなお声が聞こえました。
「あっ、お姉さまぁ?」
 そのお声が耳に届いた途端、全身の緊張がふっと解けました。

「ごめんなさいね、みっともないものお見せしちゃって。これ、うちの社の性的おもちゃなの。インランマゾペット」
「ちょっとお仕置きで、ここにまっ裸で浣腸放置していたんですの」
 お姉さまが、私のお尻を叩いてくださった人に弁明されているようです。

「ああ、そうなんですか。トイレに入ったら肛門に栓した裸のお尻が転がっていて、びっくりしちゃいましたよー。おほほほ」
 シナを作ったような気取ったような、聞き覚えのないお若めなお声がお応えされました。

「それで直子、ちゃんと漏らさず我慢してた?」
「は、はいぃ・・・」
「もちろんマゾマンコ弄ったりしてないわよね?」
「は、はいぃぃ」
「あ、でもこちらのかたにお尻はたいていただいたのでしょ?ちゃんと御礼は言ったの?」
「あ、いえぇ・・・」

「だめじゃない!」
 ピッシャン!
 お言葉と同時に強烈な一撃が左尻たぶをヒット!

「あ、ありがとうございますぅ・・・直子のお尻を虐めてくださって、ありがとうございましたぁぁ・・・」
 床にほっぺたを押し付けながら、ハアハア喘ぎながら御礼の言葉を叫びました。

「あん、そ、それで、お姉さまぁ?」
「何?」
「わ、私、もうげ、限界ですぅぅ・・・お、お腹がや、破れちゃいそう・・・」

 お姉さまのご登場でホッとすると同時に、猛烈な勢いで便意が膨らんでいました。
 アナルプラグが無かったら、すでに無残に垂れ流してしまっていたでしょうほどに。
「もう、だ、出して、出してもいいですか?」
 お腹から下肢までが別の生き物のようにフルフル震え始めています。

「仕方ないわね。見物の人も居ることだし、直子の浅ましい姿をじっくり視ていただきなさい」
 心底ご愉快そうなお姉さまのお声。
 ああ、そうでした。
 今このおトイレにいるのは、お姉さまだけではないのでした。

 私がこれまで、大きいほうの排泄姿を目前でご披露したのはお三かただけ。
 やよい先生とシーナさま、それにお姉さま。
 どなたともそれぞれ、かなり深いおつきあいをさせていただいた上での痴態でした。

 でも今は、どこのどなたとも知らないかたにまで視られてしまう・・・
 女として、なんて恥ずかしく、おぞまし過ぎる屈辱。
 
 そんなことを考えるのですが、事態は切羽詰まっていました。
 お腹の内側を捩るように、液体がグルグル蠢いていました。
 一刻も早く、このお腹の苦痛を解放したい・・・

 なまじ知っている人に視られるより、今日この場だけのご縁の人のほうが気が楽かも。
 お姉さまがいることだし、この人のことはお姉さまがなんとかしてくださるはず。
 そう思うことにして、急いで床に両手をついて立ち上がりました。

 間髪を入れず便座に腰掛け、前に向けた視線でお姉さまのお姿を探します。
 開いたドアからお顔を覗かせる、白衣を羽織ったお姉さま。
 そのお隣には・・・

「あっ!」
 びっくりし過ぎて思わず口を大きく開けたまま固まってしまいました。
「里美さま・・・だったのですか?」
「あれ?なんだ直子、気づいてなかったの?知らない人だと思ってたんだ?」
 お姉さまが嬉しそうにおっしゃいました。

「あたしがちょうどトイレから出たら、里美とバッタリ会ってさ、直子をトイレに裸で放置しているから、からかっていいよ、って頼んだのよ。里美だってバレないように・・・」
 お姉さまが可笑しそうにご説明くださいますが、私はそれどころではありませんでした。
 
 お姉さまのお言葉を遮るように懇願しました。
「あう、お姉さまっ、出ます、出しますぅ、出していいですかぁぁ」
 便意が限界まで迫り、もはや一刻の猶予もありませんでした。

「いいわよ。自分でプラグ抜いて、思う存分出しちゃいなさい。里美も視てるわよ」
 お言葉が終わらないうちに右手がお尻に伸びていました。
 アナルプラグの持ち手に指をかけるのももどかしく、引き抜きます。

 絶望的な破裂音、止まらない水しぶき、ただよい始める淫臭。
 薄い笑みを浮かべてこちらを凝視されている里美さまと目が合ったとき、とてつもない羞恥と屈辱が全身を駆け巡りました。

「いやーっ、視ないでぇ、だめぇーっ!」
 心の底からの恥ずかしさに思わず、マゾドレイらしからぬ言葉を叫んでいました。
 両方の目から、大粒の涙がポロポロこぼれました。
 
 それでも鳴り止まない恥辱の水音。
 私の顔と下半身を交互に見遣り、ニヤッと笑われる里美さま。
 ゾクリ・・・
 しゃくりあげながらも、得も言われぬ甘美な痺れが下半身に広がりました。

 やがて水音が落ち着き、おトイレ内に静寂が訪れました。
 すべてを吐き出した私は、小さくイッてもしまったみたい。
 便座に腰掛けたまま、ぐったりうなだれていました。

「あークサいクサい。ほら直子、早く流しちゃいなさい」
 咎めるお声に顔を上げると、お顔をしかめたお姉さまがお鼻をつままれる仕草をされていました。
 カーッと火照った私は、あわてておトイレのお水を流しました。

「ビデで綺麗に洗って、お尻とプラグもね。オフィスに戻って出かける準備するわよ」
 お姉さまがバスタオルを差し出してくださり、私は急いでお尻シャワーのスイッチを押しました。
 お尻とマゾマンコを満遍なく洗ってから立ち上がり、バスタオルで全身の汗ともども丁寧に拭います。

 パウダールームまで全裸で連れて行かれ、絞ったタオルでもう一度全身を拭いた後、白衣を羽織りました。
 鏡に映った白衣の白に、赤い首輪がいっそう目立っています。
 私の名残で茶褐色に汚れたアナルプラグも丁寧に水洗いして、白衣のポケットに。

「直子、本当にわたしだってわからなかったの?」
 里美さまがイタズラっぽく尋ねてきました。
「はい。お声が違っているような気がして・・・」
「そりゃあ、わたしもバレないようにわざと声音変えていたからね。でも、それにしてはスパンキングしたとき、ずいぶんと嬉しそうだったじゃない?」
 
 そこで意味ありげに区切りを入れた里美さま。
 私の顔を覗き込んでイジワル声でつづけました。

「直子って、虐めてくれるなら誰でも受け入れちゃうんじゃない?」
「いえ、そんなことは・・・」
「そうね。確かにそういうとこあるわよ、この子」
 私の弁明を遮ってお姉さまがおっしゃいました。

「そこが直子とアソンで面白いところでもあるし、心配なところでもあるのよ」
 お姉さまがおっしゃりながら、私がキチンと留めた白衣のボタン4つのうち、胸元だけ残して全部外してしまいました。

「まあ、あたしを困らせるようなことを直子はしない、って信じているから。あたしの目の届く範囲なら、誰に嬲られてもあたしは気にしないわ、むしろ嬉しいかな」
 おやさしいような冷たいような、お姉さまのお言葉に、私はフクザツ。

「そうだ。わたしもおトイレしたかったんだ。すっかり忘れちゃった」
 あわてて個室に駆け込んだ里美さまがお出になるのを待って、三人で連れ立って女子トイレを後にしました。

 フロアに出た途端、遠くからお話し声。
 6時前の退社ピーク時間ですから普通のことなのですが、私はドッキン。
 
 廊下のずっと奥のオフィスから、ご中年ぽい男性社員さん3名が連れ立って出てくるのが見えました。
 お姉さまと里美さまの陰に隠れるように、白衣の合わせをギュッと握ってついていく私。
 男性3名は、エレベーターのほうへ曲がるまでずっと、こちらを凝視したまま歩いていました。
 お姉さまと里美さまが容姿端麗妙齢美人さんですから、無理もないことではあるのですが。
 
 こんなふうに第三者が普通に過ごしている日常的な風景に身を置くと、今さっきまで女子トイレでしていた行為のアブノーマルさが際立ち、私の白衣の下が全裸なことや、ボタンをひとつしか留めていないことが、凄く破廉恥なことなんだと、あらためて思い知ります。

 オフィスに入ると、みなさますっかり着替えもメイクも終えて、お出かけの準備万端。
 メインルームの思い思いの場所で雑談されていました。

「あー。サトミンお帰りー。ついでに直子もお帰りー。ずいぶん長いおトイレだったねー」
 すかさずリンコさまがからかうようにお声をかけてきました。

「ああ、ごめんごめん。もうすぐ6時か。ちょっと待っててね。急いで直子を着替えさせるから」
 お姉さまがおっしゃるなり私の白衣を剥ぎ取り、全員の前で真っ裸。

「うひゃー。直ちゃんのお尻、真っ赤っかに腫れ上がってるー。またチーフにお仕置きされちゃったんだぁー」
 雅さまの冷やかすお声につづいた、みなさまの、あはは、という笑い声を背に受けつつ、お姉さまに右手を引かれ、社長室に連れ込まれました。

「今日のパーティはある意味、直子も主役なのだから、スペシャルコーデを用意したのよ。さ、おめかししましょう」
 お部屋に入るなりクロゼットに向かったお姉さまが、次々にお洋服を出されます。

「まずボトムは、これね」
 イベントショーのときに穿いた、ウルトラ超ローライズのスリムジーンズでした。
 
 あの、ほとんど股上が無く、フロントは恥丘丸出しで性器のスジ覗き始めから、バックはお尻の穴がギリギリ隠れるくらいだけしか覆ってくれない、例えて言うなら、腿までのストッキングをそのまま右左縫い付けて、股上として幅数センチの腰周りをくっつけた、という感じのジーンズ。

「あの、下着は、無しで、ですか?」
 このジーンズでショーツを穿いても、九割方ショーツが露出しちゃうでしょうけれど。

「もちろんよ。穿いたってパンツ丸見えになっちゃうじゃない、みっともない。ノーパン、直穿き」
 やっぱり。

「安心して。それで土手とお尻見せびらかして街を歩きなさい、なんて言うほど、あたしも鬼じゃないから」
 愉快そうにおっしゃったお姉さまが次に取り出したのは、柔らかそうな白っぽいベージュの布。
 広げて見るとボディコンシャスなチュニックのようです。

「それをかぶれば、下半身は腿の真ん中、膝上20センチくらいまでは覆われるはずよ」
 広げた形を見ると袖が無い・・・ノースリーブ?
 あれ?襟口がゴムですぼまっている・・・

「えっと、これも、ノーブラで、ですよね?」
「あたりまえよ。それ、チューブトップだもん。直子の体型にピッタリのはずよ」
 チューブトップなら、ブラ紐が出ちゃうのは確かに無粋です。

「今日の直子は、珍しく下着を着けたがるのね?何?みんなで外にお出かけだから恥ずかしがっているの?」
 からかうようにおっしゃるお姉さま。

「下着を着けたって、どうせ直子はすぐ脱がされちゃうじゃない?我が社であなたは、そういう身分なのだから」
 蔑むような冷たいお言葉で締め括られました。

 おずおずとチュニックをかぶってみます。
 バストの膨らみ始めで留まった布地は、確かに両腿の半分くらいまでを覆ってくれました。
 
 ウエストから下は幾分余裕がありますが、両腋からおへそくらいまではピッチピチ。
 私のおっぱいが、まさしく同じ形の曲線を描く薄い布地でくるまれました。
 もちろん尖ったバストトップもこれ見よがしに。

「お、お姉さま?」
 着ても着なくても同じみたいな、卑猥なカーブを見せる自分の胸元に目を遣りながら、お姉さまに縋り声。
「うわー、いやらしい。おっぱいの形まんま、出ちゃってるわね」
 嬉しそうなお声が弾んでいます。

「まあ、それで外歩いても、一応服は着ているのだからハンザイにはならないでしょう」
「ええーっ!?」
「ただ、オトコたちの目は釘付けでしょうね。女性からは絶対、露出狂のヘンタイ淫乱女って思われるでしょうし」
 おっしゃりながらもう一枚、何か衣装を出してきました。

「でも、うちの会社の品位を疑われちゃうのもアレだから、これを上に羽織っていいわよ。まだ外、明るいしね」
 差し出されたのはジャケットらしきフォルムでした。
 でも、あれ?

 長袖で若草色の薄い生地、フォルムは普通の前合わせブレザーなのですが、丈が異様に短かいのです。
 おへそのはるか上、アンダーバストギリギリくらいの丈。
 つまり、一般に言うボレロ。

 大急ぎで着てみると前合わせのボタンは無く、普通のブレザーをVゾーンの途中からちょん切ったような形。
 それでもボレロの前布がちょうどおっぱいにかかり、乳首の尖りも危ういながら覆ってくれました。
 背中で言うと、上部三分の一程度を覆う丈。

 最後にお姉さまとお揃いの濃紺のスリッポンスニーカーを履かせていただき、モデルポーズで立つように命じられました。
「うん。なかなかいいわ。これで外に出ても公序良俗に反する部分はまったく見えていないわよね」
 私の姿をまじまじと視て、ご満悦なご様子のお姉さま。

 お姉さまはご満悦でしょうが、着ている私はかなり心許ありません。
 薄い布一枚めくれば、恥丘丸出しジーンズの下半身。
 ボレロが風にはためいたら形ごと露わになる、薄布一枚だけの上半身。
 そんな姿でこれからオフィスを出て、パーティ会場のお店まで街中を歩いて行くのです。

「直子にピッタリのコーデよね。これならパーティ始まって誰かに、おっぱい見せて、って言われればチューブトップをペロンて下ろせばいいし、マンコ見せて、って言われたら、裾をサッとめくるだけだもの」
 お姉さまってば、今夜のパーティで私にいったい何をさせる気なのでしょう。

「絵理奈さんもしほりさんも、今日、すっごい愉しみにしているそうよ。さあ、早く行きましょう。あ、あと、これ持って」
 すでにデスクの上にご用意されていた、中身の膨らんだ小さめトートバッグを私に持たせたお姉さま。
 
 それからご自分のバッグと私のバッグをお持ちになり、私の右手を引いてみなさまの待つメインルームへと連れ出しました。


三人のミストレス 04


2017年3月26日

三人のミストレス 02

「お帰りなさーい、おつかれさまでーすっ!」
 みなさまが口々に雅部長さまにお声をかけます。
 ニコニコ顔の目合図でみなさまにお応えしながらも、雅部長さまはドアを半開きにしたまま、お顔だけ覗かせています。
 私も両手を後頭部にあてがったまま、ペコリとお辞儀をしました。

「でもね、ナオちゃんがそんな顔して待ち侘びていたのはワタシじゃないって、悔しいけれど知ってるんだなー」
 からかうようにおっしゃって、やっとミーティングルームへと入ってこられた雅さま。
 その背後にもうひとつの人影?

「あれ?・・・あ、チーフも一緒なんだ!おつかれさまでーす」
 リンコさまのお声に導かれるように、雅さまの背後から室内に入ってこられたスレンダー美女。
 黒いボートネックの七分袖カットソーに、細身のジーンズをすらりと合わせた、普段オフィスでは、まずお見せにならないラフな私服お姿の、お姉さまでした。

「空港のバゲージクレームで偶然、雅と鉢合わせしたから、一緒に帰ってきたの」
「雅は運転がスムースでうまいから、おかげで飛行機降りても二度寝が出来て、スッキリしちゃった」

「チーフがかなりお疲れっぽく見えたからさ、ワタシ車運転するの大好きだし」
「チーフの麗しい寝顔、たっぷり堪能しちゃった。ナオちゃん羨ましいでしょう」

 雅さまが現われたときから、ほのかさまのお顔が本当に嬉しそうにほころんでいます。
 もちろん私も、お姉さまとのお久しぶりの再会ですから同じなのですが、今している格好が格好なのでフクザツ・・・

「開発会議中だったんだね?相変わらず攻めたデザインで、いい感じじゃん」
 乳首責めハーネスでボトムずり下げ状態の私の裸体を、薄い笑みを浮かべた嬉しそうなお顔で、じーっと視つめてくる雅さまとお姉さま。
「邪魔しちゃってごめんねー。ワタシらも荷物片付けたら合流するから、そのままつづけてて」
 雅さまがおっしゃり、ミーティングルームを後にするおふたり。

「あ、わたしもお手伝いしますっ!」
 ほのかさまがその後ろにつづきました。

 結局、ハーネスボトムのアナル用突起については、試作品を作ってみることで決まり、そのアイテムについての議論は終わりました。
 脱ぐように命ぜられ私は全裸に。
 次のフロントジップアップなラテックスビスチェは、バスト周りのデザインとカラーヴァリエーションについて、ほのかさま抜きで真剣な討議が行なわれました。

 そのアイテムの議論も終わり、私がまた全裸になったとき、ミーティングルームのドアが開き、お姉さまと雅さま、そしてほのかさまが入ってこられました。

「うわっ!ナオちゃん、今度はオールヌードっ!?」
 私を見るなり、雅さまの素っ頓狂なお声。
 その大げさなリアクションに私は今更ながらのいたたまれない羞恥が湧き上がり、マゾの服従ポーズのまま小さく会釈を返すのがやっとでした。

「そうだ、チーフたちの分、残してあるんですよ、今日のランチの美味しいサンドイッチ」
 お部屋の片隅に置かれたケータリングのボックスを、リンコさまが指さされました。

「そうね。珍しくスタッフ全員揃ったのだから、キリもいいことだし、開発のディスカッションはこれくらいにして、少し雑談でもしましょうか」
 綾音部長さまがホワイトボードを消しながらおっしゃいました。
「ふたりの出張でのお土産話も聞きたいし」

 再びテーブルが中央に戻され、開発アイテムの数々はリンコさまとミサさまによって回収されました。
 ほのかさまがご用意してくださったらしいお紅茶が配られ、テーブル中央にサンドイッチのお皿。
 あまりお腹空いていないし、今食べてしまうとパーティのお料理がたくさん食べられないから、とおっしゃる雅さまとお姉さまの計らいで、全員で分けることになりました。

 長方形のテーブルのお姉さまと雅さまとのあいだに挟まれる形で座らされた私。
 雅さまのお隣にほのかさま。
 向かい側には、ミサさま、リンコさま、綾音さま、里美さまの順でお座りになられています。
 その中でたったひとりだけ、全裸の私。

 主に雅さまが、出張中に出会ったユニークなお取引先さまのお話や、南アジアの繊維工場であやうく騙されそうになったお話などを面白おかしくご披露され、和やかに時間が過ぎていきました。

 お話の合間合間にチラチラと私の素肌に視線を走らせる雅さま。
 お話が一段落して、テーブルの上のサンドイッチもあらかた片付いた頃、雅さまが、もう辛抱たまらない、というご様子でおっしゃいました。

「それにしてもさ、オフィスにひとりだけ、女の子が裸で働いているって、シュールって言うかインモラルって言うか、エロいよねえ?」
「それも、こんなえっちなからだしたナオちゃんなんだもん。最近、ナオちゃんてオフィスじゃ、いつもこんな扱いなの?」
 どなたに聞くともなく語りかけられました。

「そうですね。あのイベントから、みなさん直子さんのご趣味を理解して、いろいろかまってあげています」
 嬉しそうにお答えされるほのかさま。

「直子も、それを愉しみにしているみたいだしね。あれから一度もチョーカーしないで出社したことないし」
 ニヤニヤ笑いながらお紅茶を注ぎ直すリンコさま。

「そうそう、このあいだの出張レクチャー、凄かったんですよ・・・」
 と、先月、ネットショップのお得意様に菱縄縛りのレクチャーをするためにショールームに伺った際の顛末を、お話し始める里美さま。

 めったにオフィスにいらっしゃらない雅さまは、他のかたよりもオフィスでの私をご存知ない分、私の裸が新鮮なようでした。
 興味津々な雅さまの視線が、忘れかけていた私の羞恥心を呼び醒ましていました。
 そう、私の今の状況って、すごくアブノーマルなことなんだ・・・
 勤務中のオフィスで一糸纏わず、尖った乳首も濡れた性器も露わにして悦んでいるヘンタイ露出狂女・・・

 そっとお姉さまを盗み見ます。
 私が歳下の女子大生さまたちに、どのように辱められたかをニコニコお聞きになっているお姉さま。

 その愉しげな横顔に、全身が恍惚感に包まれます。
 お姉さまが悦んでくださっている・・・
 物理的な刺激は何一つ受けていないのに、マゾの血が内側から、乳首を充血させ粘膜を潤ませました。

「いいなあ。ワタシも出張行かずに、一週間くらいオフィスに詰めて、ずっと裸のナオちゃんを愛でていたいなあ」
 お道化ておっしゃる雅さまに、みなさまがアハハと笑われました。

 時刻はいつの間にか午後4時を大きく過ぎ、今日の会議は終了。
 それぞれ残りのお仕事を終わらせた上で、午後6時に再集合してパーティ会場のお店へ向かう、ということになりました。

 パーティは6時半から。
 絵理奈さまと、スタイリストのしほりさまは現地集合。
 シーナさまと、あともうおひとかた、ご出席のご予定だったのですが、シーナさまに急な打ち合わせが入ってしまい来られないとのこと。
 パーティ出席は、総勢10名ということでした。

 ミーティングルームをお片付けして、リンコさまとミサさまはデザインルームへ。
 雅さま、ほのかさま、綾音さまは、ご自分のデスクへ。
 里美さまは一度ご自分のオフィスへ戻られ、6時前にもう一度こちらへ来られるとのこと。

 私はお姉さまに呼ばれ、全裸のまま社長室へ連れ込まれました。
 今日私が着てきたワンピースと下着は、リンコさまが当然のようにデザインルームに持っていってしまわれたのでした。

「ずいぶんみんなに可愛がってもらえているみたいじゃない?」
 お姉さまがご自分のデスクの椅子にゆったりと腰掛け、からかうようにおっしゃいました。
「あ、はい・・・はしたない格好で、ごめんなさい・・・」
 私も自分の椅子にバスタオルを敷き、裸のお尻を乗せながらお答えしました。

「毎日、愉しいでしょう?」
「あ、はい、あ、いえ、あの・・・」
「それだけ社内でもてあそばれていれば、家に帰ったら疲れてバタンキューなんじゃない?ひとりアソビなんかする気にもならないでしょ?」
「あ、えっと、はい・・・」

 そんなことはありませんでした。
 お家に帰ったら、その日にされたことを文章にして、反芻しながら思い出しオナニー。
 その後、そのお話を膨らませて、オフィス内ではなく、もっと人がたくさんいる場所に置き換えての妄想オナニー。
 その妄想でご命令をくださるのは、もちろん愛しのお姉さま。
 
 つまり、お姉さまにお会い出来ないと私の露出恥辱願望は、エスカレートするばかりなのでした。
 お姉さまと会えないお休みの日には、どうやって自分を虐めるかばかりを考えている始末。
 
 今だって、ショールームで里美さまが教えてくださった、手錠の鍵を投函して恥ずかしい姿でポストへ取りに行くという、自虐恥辱プレイをいつか実行しようと、バッグの中に自分宛ての鍵入り封筒を忍ばせていました。

 でも、そんなことをお忙しいお姉さまに告げても、ただ私のワガママになるだけ。
 一週間ぶりにお会い出来たのに気不味い思いはしたくなかったので、言葉を濁しました。

「あの、お姉さま?私ちょっと、おトイレへ行ってきていいですか?」
 パソコンに向かって何やら真剣に打ち込んでいらっしゃるお姉さまに尋ねました。

 午前中から数杯、お紅茶を口にしていたので、会議の途中から尿意が迫っていました。
 だけど、みなさまが面白がって、ここでしろ、とか、全裸のまま行きなさい、とかご命令されるのが恐ろしくて、口に出せずにいたのでした。
 そろそろ限界でした。

「あら?別にいいけれど、何?ハダカで廊下に出るの?」
「あ、いえ。オフィス外に出るときは、その中の白衣を着ることが許されているんです」
 クロゼットを指差す私。

 そのクロゼットの隙間からは、監視カメラのレンズがこちらを向いています。
 今頃デザインルームで、リンコさまとミサさまが、お姉さまと私とのやりとりを覗き見されているはずでした。

「ふーん。リンコたちも意外と常識はわきまえているんだ」
 ニッとイジワルそうに微笑まれたお姉さまがつづけました。

「あたしが白衣もダメって言ったら、どうする?ハダカで行ってくるか、ここで漏らしちゃいなさい、って言ったら」
「あの、えっと、お姉さまのご命令なら私、裸でおトイレに行きます。お姉さまのお部屋を汚しちゃうわけにはいきませんから・・」

「へー。いい心がけだこと。でも冗談よ。うちのオフィスから全裸のヘンタイ女が飛び出してきてフロアを徘徊している、なんて噂がたったら、ビルから追い出されちゃうもの」
 ご愉快そうに笑ったお姉さまがスクッと立ち上がられました。
「ちょうどよかったわ、あたしも行きたかったの、一緒に行きましょう。早くその白衣とやらを着なさい」

 薄いドクターコートを素肌にまとい、胸元のボタンだけ留めることを許され、お姉さまと連れ立って社長室を出ました。
 メインフロアでは、雅さまとほのかさまがとても楽しげに談笑中、綾音さまはどこかへお電話中でした。
 廊下に出ると、そそくさとおトイレへ。
 時刻は5時半過ぎ、廊下に人影はありませんでした。

 おトイレに入ると、すぐに白衣を脱がされました。
「あっ!?」
「大丈夫よ。このフロアでうち以外に女性社員が居るのって、一社だけみたいなの。その人もご年配らしいから、きっともう5時で退社しているでしょう」
 パウダールームの鏡に、赤い首輪ひとつの裸女の上半身が映っています。

「とりあえず鍵をかけずにオシッコしていなさい」
 そう言い残すと、私の白衣を持ったままスタスタと個室にお入りになるお姉さま。
 私も全裸でお隣の個室の便座に腰掛けました。

 内開きのドアを開いたまま用を足していると、あけすけに見えているパウダールームに今にも誰か入ってきそうで落ち着きません。
 気持ちとは裏腹に、チョロチョロといつまでも止まらない私のオシッコ。
 
 そうこうしているうちにお隣の個室からお水を流す音。
 つづいて個室のドアが開く音がして、私の個室にお姉さまが入ってこられました。

「ずいぶん我慢していたのね?まだ終わらないの?」
 カットソーの上にドクターコートを羽織ったお姉さまは、本物の女医さまみたいでとてもカッコよく見えました。
 相変わらずドアは閉めてくださらないお姉さま。
 やっと私のオシッコが止まりました。

「ビデでキレイに洗ってもらいなさい。それとお尻の穴もね」
 腰掛けた私の真正面に立たれた女医さま姿のお姉さまに、見下されながらのご命令。

「あ、はい・・・」
 ビデのボタンを押すと、勢いの良いぬるま湯の放水が、ヌメった私のマゾマンコ内に流れ込んできます。
 
 あ、気持ちいい・・・
 物理的な刺激に飢えきっていた粘膜がザワザワ悦んでいるのがわかります。
「はい、そのくらいでいいわ。まだ拭かなくていいわよ」
 もっと味わいたいのに、無情にもストップがかかります。

「次はアヌスね」
「はい・・・」
 お尻のほうをボタンを押すと、今度は会陰から肛門に心地良い刺激。

「ああ・・・」
 思わずはしたない吐息が洩れたところでストップ。
 激しい水圧で私の前と後ろの穴は清められたものの、物足りな過ぎてうらめしくお姉さまを見上げる私。

「直子、今日の開発会議モデル役で、いろいろと辱められたのでしょう?」
「・・・はい」
「だけど今日は、まだ一度もイカせてもらっていない?」
「はいっ!」
 そのお言葉に甘酸っぱい期待がグングン膨らみます。

「今日はね、みんなそのつもりで、直子をいたぶっていたらしいわよ」
 お姉さまが白衣の内側に提げた小さなポシェットをゴソゴソしながらおっしゃいました。

「今日の絵理奈さんのパーティの席で、直子が一番サカった状態になるように調整して、絵理奈さんとほのかさんに存分に愉しんでいただこう、っていう趣向なんだって」
 お姉さまがポシェットの中から、見覚えのある果実型のピンク色な容器を取り出されました。

「さっきの会議中、雅と中座したとき後を追ってきた、たまほのが嬉しそうに教えてくれたのよ。だからチーフも、パーティまで絶対、直子をイカせちゃダメですよ、って釘刺されちゃった」
 久々に拝見するお姉さまのエス剥き出しな瞳。

「まあ、今日のパーティはイベントのとき、しほりさんと交わした約束を果たすのが主眼でもあるし、直子もオフィスでの露出は慣れてきちゃっているみたいだしね」
「それで雅と仲のいい、さーこママのお店にしたそうよ。あそこならハメ外しても大丈夫だから」

「そんなわけで、あたしも直子をイカせて楽にしてあげることは出来ないのだけれど、もっと発情しきったドスケベドマゾ顔にすることは出来るな、と思ってこれを持ってきたの」
 ピンクの容器をふたつお見せくださるお姉さま。

「これから直子は、からだの隅々まで絵理奈さんたちにご披露することになるのだから、お腹の中にヘンなものを溜めておいてはいけないわよね」
「キレイキレイににして、安心して心いくまで弄ってもらいましょう」
 ピンクの容器の先端のキャップが外されました。

「便座を下りて、床に四つん這いにおなりなさい」
 お姉さまの冷たいお声が降り注ぎます。
「便座の上で自分でやらせてもいいのだけれど、今の直子に股間をまさぐらせると、別のところまで弄っちゃいそうだからね。このあたしの手でしてあげるんだから、ありがたく思いなさい」
 蔑むお声にゾクリと感じてしまいます。
「は、はい・・・ありがとうございます」

 便器がお部屋内の半分を占める狭い個室内では、うまく四つん這いになれるスペースがありません。
 お姉さまはそれを見越したのか、開けっ放しのドアの向こう側に出てしまわれました。

 とりあえず冷たいタイルの床に両手をつき、個室内で横向きに四つん這いになってみます。
 個室のドアの幅と四つん這いの私とがほぼ同じで、便器前で通せんぼしているような格好。

「それじゃああたしにお尻が見えないじゃない?」
「は、はい・・・」
 仕方がないので便器前に両手をつき直し、お尻をお外に向けて四つん這い。

「そうね。それしかないわね」
 笑いの含んだお声で、お姉さまがおっしゃいました。
「直子のお尻だけ、個室からはみ出しちゃっているわよ?今誰か入ってきたら、何だと思うかしらね?」
 愉しそうにおっしゃって、ピシャリと私のお尻を叩くお姉さま。
「あううぅっ」

「ほら、もっとお尻を突き出しなさいっ!」
 もう一度お尻をはたかれて、個室のタイルを舐めるように顔を埋め、お尻だけ高く突き上げる私。
 マッサージも無く突然ブスっと肛門に何かが突き刺さり、つづいて冷たい液体が体内に注がれる感覚。
「あふぅんっ」

「直子のアナル、ちょっと見ない間にずいぶんと緩くなったんじゃない?毎日何か挿れて愉しんでいるんでしょ?本当、いやらしい子」
 イジワルクおっしゃりながら2本めも注入。

「そのままあたしがいいと言うまで、我慢なさい。たとえ誰か来ても、そのまま動いちゃ駄目よ」
「あうぅんっ!」
 お尻の穴を広げられる感触の後に、ズブっと何かを挿し込まれたようでした。
 たぶんアナルプラグ。

「そんな不様な格好、ただじっと見ていてもつまらないから、あたしは一度オフィスに帰って、また頃合見て戻ってくるから。それまでずっと、その姿勢で我慢していなさい」
「もちろん、あたしがいなくなったからって、自分を慰めるのは禁止よ。直子がイッたかどうかなんて、あたしなら一目でわかっちゃうんだから」
「もしあたしが戻ったときに勝手に排泄したり、勝手にイッたりしていたら、その瞬間に直子はうちの会社、クビね。素っ裸のままオフィスから放り出してあげる」

 冷たいお声が途切れたと思ったら、スタスタと遠ざかる足音。
 そして、おトイレ出入り口のドアを開け閉めするバタンという音が聞こえました。
 本当におトイレから出て行かれたみたい。
 女子トイレの個室の床に全裸で這いつくばり、肛門に栓をされたお尻を個室の外に突き出した格好のまま、放置されてしまった私。

 だけど、あんなことをおっしゃってもお姉さまは、きっとおトイレのすぐそばにいて、人の出入りをチェックしてくださっていると信じていました。
 だって本当に私のこんな姿を身内以外の第三者に見られてしまったら、フロアはおろかオフィスビル中大騒ぎとなって、お姉さまの会社の恥となってしまうことですから。
 そう思うと、今の自分の恥辱を愉しむ余裕が生まれました。

 ああん、なんてみじめなんだろう。
 お浣腸されてオフィスビルの女子トイレに、四つん這い全裸で放置されている私。
 お姉さまは、スタッフのみなさまを全員ここにお連れになって、私の排泄姿を見世物にされるおつもりなのかも・・・

 そう考えた途端、体内でゾワッと被虐の炎が燃え立ちました。
 そう言えば私、オシッコ姿ならあるけれど、お尻のほうの排泄姿は、お姉さま以外にお見せしたことなかったっけ・・・
 そんなの絶対イヤ・・・でも、視て欲しい、と思っている自分もいるみたい・・・

 お腹がグルグル鳴り出して、苦しくなってきました。
 それに呼応するように、急激な欲情のムラムラが全身を駆け巡りました。
 今すぐ両手を伸ばしてマゾマンコを掻き回したい。
 乳首を捻ってクリトリスを掻きむしってエクスタシーを迎えたい・・・

 そんな欲望を必死に抑えながら、お腹のほうも徐々に限界が近づいてきていました。

「ああん、お姉さまぁ・・・早くお戻りになってくださいぃ・・・」


三人のミストレス 03


2017年3月19日

三人のミストレス 01

 7月も半ばを過ぎた、とある週末。
 絵理奈さまの快気祝いパーティが開かれることになりました。

 絵理奈さまというのは、その前の月に行われたうちの社のファッションイベントのショーでモデルを務められるはずだった女性。
 だけど、ショーの前夜に急病になり、出演出来なくなってしまったのでした。

 絵理奈さまと体型がそっくりということで、その代役としてお姉さまから急遽モデル役に指名された私は、結果として自分のヘンタイ性癖の数々を社内関係者を含むイベント参加者全員に、文字通り赤裸々にお披露目する羽目になったのでした。

 その結果イベント以降、私の社内的立場は、みなさまの性的なおもちゃ=言いなりマゾペット状態。
 見せなさいと言われれば見せ、脱ぎなさいと言われれば脱ぎ、挿れなさいと言われれば挿れ、イキなさいと言われればイク淫乱セイドレイ。
 連日裸同然の格好で勤務することになってしまいました。

 その年は、7月になった途端に連日30度を超えるような猛暑の夏。
 当然みなさま薄着になりますが、元々薄着がちな私がもっと薄着になるなら・・・
 ということで、いつもオフィスにいて私にご命令をくださることの多いリンコさまとミサさまがご用意くださったのは、上も下も布面積が3センチにも満たない、ティアドロップ型スーパーマイクロビキニ。

 月曜日から金曜日まで色違いの極小ビキニ5着。
 文字通り、乳首ふたつとワレメのスジだけをやっとギリギリにしか隠せないヒモビキニに赤い首輪とパンプスだけで、お電話を取り、パソコンに向かい、会議の書記役を務め・・・
 少し大きく動いただけで乳首がポロリ、無毛のワレメがチラリ。
 お客様にお茶をお出しするときと、お外にお使いに行くときだけ、ざっくりシルエットな、かぶりのミニワンピースを上に纏うことが許されていました。

 絵理奈さまのパーティ当日は、お姉さまが丸一週間ぶりに出張からお戻りになる日でした。
 スタッフが久しぶりに全員揃う日でしたので、その日は午前中からお姉さまと雅部長さま以外はオフィスにおられました。
 せっかくスタッフが揃うのだから、ということで、その日は一日、新アイテムの開発会議に充てられることになっていました。

 出勤早々の朝のミーティングで、綾音部長さまから全裸になるように命じられました。
 すでにみなさま、私がオフィスで裸になることには慣れてしまわれたようで、冷やかしのお言葉も無く、ただニヤニヤ眺められるだけ。
 そのまま開発会議が始まり、それからずっと私は、開発中アイテムのフィッティングモデルと化しました。

 ミーティングルームのテーブルをどかして真ん中に立たされた私。
 ホワイトボードを背にした綾音部長さまが進行役で、その脇に私。
 取り囲むようにノートを手にしたリンコさま、ミサさま、ほのかさま、そしてネットショップご担当の里美さまが、全裸の私と品の良いサマーブラウス姿の綾音部長さまを見比べるように見つめています。

 その日のアイテム開発テーマが、エレガントボンデージ、なので、主にラテックスやレザー素材の衣装。
 他メーカーの市販のものや開発部作成の試作品を私が身に着けたのを肉眼で見て、デザインの改善点やアイデアを各自出し合うという主旨。
 
 メッシュだったりオープンバストだったりアソコ部分だけ穴が空いていたり、肌の露出度が高いものばかり。
 そんなボンデージスーツを、着ろと言われれば着て、脱げと言われれば脱ぎ、という状況でした。

 たとえばオープンバストのラテックスビスチェ。
 全裸で着るのですから、下半身は丸出しのままです。
 身に着けると綾音さまが、素材やデザインについていろいろご説明なされます。

 それから綾音さまのご命令でいろいろポーズを取らされます。
 後ろを向いたり、両腕を上げ下げしたり、おっぱいを突き出したり。
 それを見てみなさまがそれぞれ思いついた意見をおっしゃいます。

 もう少しバストを持ち上げるようなカットが良いのではないか、とか、ウェストに切れ込みを入れよう、とか。
 おっしゃりながら私のからだを躊躇なくベタベタ触ってくるみなさま。
 脇腹を撫ぜられたり、下乳を持ち上げられたり。
 かと言って私を弄ぶような雰囲気は無く、みなさま真剣な面持ちでのディスカッション。

 ほのかさまが、ウェットティッシュを一枚差し出してくださいます。
「感じちゃっているでしょ?ほら、もう雫が垂れちゃいそう」

 ほのかさまの視線の先に気づいて、あわてて自分の股間をティッシュで押さえます。
 イタズラっぽい笑みを投げてくださったほのかさまの視線は、すぐに真剣な瞳に戻ってホワイトボードへ。
 一番奥手に見えたほのかさままで、マゾな私への接し方を優雅に会得されていました。

 ひとしきり議論を尽くすと脱ぐように言われ、次のアイテムまで全裸で待機。
 脱いだ後に、そのアイテムに対する新しい提案がなされると、その検討が終わるまで全裸のまま放置。

 オフィス内に全裸の女性がいて、どなたもそれを気にも留めない空間。
 真剣な意見が飛び交う会議中に、ただひとり全裸でみなさまの前に立ち尽くすマネキンのような私。
 それが普通となっている非日常的な状況。

 もっと触って欲しい、もっと弄ってほしい・・・
 からだはゾクゾク疼いているのに、素知らぬお顔をされるみじめさ。
 私は今みなさまに、人間として見られていない・・・
 みなさまの真剣な議論をお聞きしながら、自然と両手が頭の後ろに回っていました。

 そんなふうにして、いくつかのアイテムを着ては脱ぎしているうちに午前中が過ぎました。
 お昼どき。
 突然ご来客を告げるチャイムが鳴りました。

「あ、ランチが来たようね。とりあえず一息入れましょう」
 綾音部長さまがおっしゃいました。
 あらかじめ綾音さまが頼まれていたのでしょう、ご昼食のケータリング業者様のようでした。

 こんなときにお出迎えに出なければいけない役目は、秘書という肩書で一番下っ端の私でした。
 でも私は、そのとき全裸。
 こんな場合に羽織ることを許されている白衣やワンピースも、社長室に置いたままでした。

 どうしよう・・・
 マゾの服従ポーズのまま動揺していると、ほのかさまがササッとミーティングルーム内のインターフォンに駆け寄ってくださいました。

「はい?」
「あ、毎度ありがとうございます。ご注文いただいていましたお弁当をお持ちしましたー」
 愛想の良いお若そうな男性のお声が聞こえてきました。

「あ、はい、今ドアを開けますねー」
 ほのかさまも感じ良くお応えして、メインルームに出るドアのほうへと足を踏み出します。

 ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、綾音部長さまがとんでもないことをおっしゃいました。
「八人分だとけっこう嵩張るわよね。いったんテーブルを定位置に戻して、ここまで運んで来てもらいましょう。どうせここで食べるのだから」

 えっ!?
 ここに運んでもらうって・・・
 さっきのお若そうなお声の男性がここまで来ちゃうってこと?
 キュンと感じてしまう股間とは裏腹に、服従ポーズのまま固まってしまう私のからだ。

 そうしているうちにもリンコさまと里美さまで、隅にどかしていたテーブルをミーティングルームの中央に戻し始めます。
 ほのかさまは、小走りに玄関ドアのほうへ。
 ミサさまがアイテム類をまとめてお部屋の隅へ移動して・・・

「あ、そう言えば直子、裸だったわね?」
 綾音部長さまが、さも今気がつかれたかのように私を見ておっしゃいました。
「見てもらう?ハダカ」
 からかうみたいにおっしゃる綾音さまに対し、首をブンブン左右に振る私。

「そうね。直子のいやらしい真っ裸をいきなり真正面からっていうのも、我が社の品位が下がっちゃいそうだし、ケンちゃんも一応若い男性だから、刺激が強すぎるかな・・・」
 ちょっと思案するようなご様子を見せた綾音さまが、すぐにニコッと笑っておっしゃいました。

「その隅っこに背中向けて立っていなさい。オブジェみたいに、マネキン人形に成りきって」
 ミーティングルームの入口ドアから一番距離がある窓際の片隅を指さされました。

「そこでマネキンのフリしてお尻を向けていれば、たぶん気づかれないと思うわ。うちがアパレルだってご存知だし」
 それから嬉しそうに唇の端を少し上げてつづけられました。
「もし気づかれても、ケンちゃんもさーこママもシャレのわかる人だから、気づかれちゃったら正面向いて、はしたなくてごめんなさい、って全部見せてあげなさい」

 オフィス内に入って来られたのであろうケータリングの人とほのかさまとの会話が、開け放たれたドアからかすかに聞こえてきていました。
 ただ、ご機嫌良くあれこれおっしゃっているお声は男性ではなく、聞き覚えのないご中年のおばさまっぽい女性声でした。
 さーこママ、っていうかたなのかな?

 でも今はそんなこと気にしているヒマはありません。
 何はともあれ急いで窓辺に駆け寄り、みなさまに背中を向けました。

「そんな棒立ちじゃ人形っぽくないよ。もっとマネキンらしいポーズしなきゃ」
 ご愉快そうなリンコさまのお声を背中に聞き、少し右手を曲げて、お先にどうぞ、みたいなポーズを取りました。

「指先までしっかり意識して固まっていないと、ちょっとでも動いたらマネキンじゃないな、生身の裸の女だな、ってバレちゃうからね?」
 里美さまがイジワル声と共に、曲げた私の右肘に、私が脱いだワンピースを掛けてくださいました。
「こんなふうにしておけば、よりマネキンって言うか、置き物ぽく見えるんじゃない?」

 そうしているあいだに、おばさまっぽいお声がすぐ近くに聞こえるようになっていました。
「さーこママ、わざわざ悪いわねー」
 親しげにご挨拶される綾音さまのお声。

「いいのよ。今夜はうちで盛大に飲み食いしてくれるんでしょ?今日はランチタイム早めに切り上げて、お店じゃ今せっせと仕込み中よ」
 おばさまの陽気なお声がすぐ後ろから響きます。

「そのテーブルの上に置いてくださる?」
 綾音さまのお声につづき、はいっ!という男性のお声が聞こえました。
「こちらがサンドイッチとサラダのランチセット8名様分。スープとお紅茶にお湯を注ぐのは・・・」
 そこで一瞬、お言葉が途切れました。

「えーっと、5名様分でよろしいですか?」
 自信なさげな男性のお声。
「あ、今ひとり席外していてすぐ戻ってくるから、6人分淹れておいてくれる?」
 少し笑いの含まれたようなお声で応えられた綾音さま。
 それからしばらく、お湯を注ぐ音が聞こえるだけの沈黙がつづきました。

 私の目の前にはガラス越しの真っ青なお空。
 剥き出しのおっぱいに刺すような夏の陽射しが降り注いでいました。

 今、私、お外に向けておっぱいもマゾマンコも丸出しなんだ・・・
 いくら地上二百数十メートルの位置にあるとは言え、頭の上から両腿の真ん中くらいまで窓枠の大きな素通しガラスの窓辺に外を向いて立ち尽くすというのは、とても恥ずかしいものでした。
 お外からこの窓を見上げれば、おそらく豆粒ほどの大きさでしょうが、裸の女が立っているということはわかっちゃうはずです。

 一方室内では、私からほんの5メートルも離れていない位置におられる見知らぬおばさまと若い男性に、剥き出しのお尻を晒していました。
 ぜんぜん会話が聞こえてこない分、みなさまの視線が全部、お尻に集まっているような気になってきます。
 
 ドクドクと音が聞こえそうなほどに全身を駆け巡るマゾの血。
 それでもマネキン人形のフリをして、微動だにせずに居なければならない被虐感。

「はい。以上となります。2名様分のスープとお紅茶はこのまま置いていきますので、お手数ですがお食べになるときにご自分で熱湯を注いでください」
 ハキハキした男性のお声とともにガタガタガサガサと何かを片付ける音。

「それでは今夜、よろしくお願いね」
 綾音部長さまのお声。
「まかせて。美味しいお料理たくさん用意して待ってるからねー。このランチのお会計も夜に一緒にねー」
 おばさまのご陽気なお声が徐々に遠ざかりました。
 どうやらバレずにすんだみたい。

「あれケンちゃん、絶対気づいていたよね?最初はチラチラだったけど、帰るときなんか直子のお尻、ガン見してたし」
 綾音部長さまとリンコさまに挟まれる形で、私ひとりだけ全裸で、ご昼食のテーブルを囲んでいます。
 リンコさまがプラスティックのフォークの先で、私の尖った乳首をチョンとつつきつつ、からかうようにおっしゃいました。
「ずいぶん感じちゃったみたいじゃない?乳首コリッコリ」

「ママさんだってわかっていたんじゃない?直子の姿を上から下まで舐めるように見ていたもの」
 向かいにお座りになられたほのかさま、里美さま、ミサさまのうち、私の真正面におられる里美さまが私の上半身をニヤニヤ眺めながらおっしゃいました。

「さーこママは気づいていて絶対ツッコんでくると思ったのだけれど、ケンちゃんもいたからスルーしたのかしら」
 綾音さまが独り言のようにつぶやかれました。

 お弁当は、スモークサーモンとアボガドのサンドイッチとシーザーサラダにポタージュスープ。
 綾音さまがおっしゃるには、夜にパーティなので軽めにしたそうです。
 きっととても美味しいのでしょうけれど、みなさまの前で全裸で食べるという状況だけで胸が一杯になってしまい、あまり味わえませんでした。

 お食事中のみなさまのおしゃべりを総合すると、今日のパーティは先ほどいらっしゃったさーこママさまのお店で開かれるようです。
 営業部の雅部長さまがよく利用される欧風創作料理の個人経営レストランで、小じんまりとした隠れ家的お店。
 オフィスビルから歩いて3、4分位、住宅街の入口にある路面店で、今夜はうちの貸し切りだそうです。

 食べ終えると早速、会議が続行されました。
 午後のアイテムは、ラブトイズ寄りの淫靡なものばかり。
 バスト部分に乳首クリップが付属しているものとか、股間に突起物が付いているもの、バイブレーターを装着出来るホルダーが付いたものなどなど。

 私が身に着けると綾音部長さまが、なんの躊躇いもなくクリップで挟んだり突起物を挿入してきます。
 そのたびに、うっ!と感じてしまうのですが、会議の雰囲気がシリアスなので、あられもなく身悶えたり喘いだりしてしまうわけにいきません。
 結果、必死に我慢することで、却って被虐と恥辱が煽られる悪循環。

 乳首クリップのチェーンをもっと短くしたほうがいいのでは、とおっしゃってチェーンをグイグイ引っ張ってくるリンコさま。
 重りをぶら下げられる機能を付けるのはどうでしょう?と、チェーンをブラブラ揺らしてくるほのかさま。

 素材を透明にして女性器に埋め込まれた突起を見えるようにしたいと、突起付きボトムを何度も穿いて脱いでとくりかえさせる里美さま。
 アナルにも突起を付けるべき、とアナルブラグで肛門を抉じ開けてくるミサさま。

 私はずっと身悶え、小さく喘ぎつづけていましたが、そんなの眼中に無いかのような白熱したディスカッション。
 でもなんとなくですが、私の性感が高ぶっているのを承知の上で知らんぷりをすることで、みなさま一丸となって私への焦らしプレイを愉しんでいらっしゃるようにも思えました。

 乳首を挟むクリップはどんどんキツくなって、乳首をジンジンと潰していました。
 ハーネスが食い込んだ肌を撫ぜられると、鳥肌から羽毛が生えてきてしまいそうなほどゾクゾク感じました。
 マゾマンコから蜜が溢れビチャビチャになるたびに、ほのかさまがウェットティッシュでおやさしく拭ってくださいました。

 ただし、スジの先端でテラテラとピンク色に腫れ上がって飛び出している肉の芽には、決して触れてくださらないのです。
 私の両足のあいだには、大きめの粘っこそうな水溜りと、丸めたウェットティッシュの小山が出来ていました。

「あーっ、ずいぶん愉しそうなこと、やってるねぇ」
 突然、ミーティングルームのドアが開き、ひょっこりお顔を覗かせたのは、シャギーなセミロングのイケメンレディ。
 お会いするのは確か2週間ぶりくらいの雅部長さまでした。

 そのとき私が着せられていたのは、裸身を菱形模様で飾るボディハーネス。
 柔らかくて伸縮性があり、肌にぴったり吸いつくようなレザー製。
 トップとボトムがベルトで離脱出来るようになっていました。

 バスト上部のリングには左右それぞれ乳首を挟むクリップが短いチェーンで付いていて、それに乳首を挟むとおっぱい全体が乳首に引っ張られて持ち上げられる仕様。
 ボトムは、性器用の突起が付いたベルト状で、ちょうどアナル用の突起をどう付けるか議論中だったので、膝までずり下げられた状態でした。

 眼下に、さっきまで私の膣内に埋め込まれていた凶々しい形状の突起が、ぬめりのある白濁液にまみれてテラテラ光っています。
 雅部長さまは、それをしげしげと見つめた後、私の顔に視線を移し、とても嬉しそうにニッコリ微笑んでおっしゃいました。

「ナオちゃんてば、ずいぶんとえっちなお顔で出迎えてくれるんだねえ。そんなにワタシに会いたかったかい?」


三人のミストレス 02


2017年2月26日

非日常の王国で 15

 気がつくとあたりはすっかり暗くなり、ショールームには煌々と蛍光灯が灯っていました。

「・・・すっかり長居してしまいました・・・」
 耳の中にフェードインしてくるようなお声が聞こえるほうへ目を向けると、倉島さまたちがテーブルの傍らに集まっていらっしゃるのがボーッと見えました。

 その視線を下げて自分の姿に目を移すと、まだあの椅子に拘束されたまま。
 後ろ手錠でM字開脚、ずいぶんと緩んでしまった菱縄縛りのままでした。
 頭の中がボーッとしていて、なんだか事態が飲み込めません。

「あ、マゾ子、気がついたみたい」
 お声にもう一度テーブルのほうを見ると、メグさまが私を指さしています。
「まったくねー。気持ち良さそうにイキまくるだけイキまくって、コトンと寝ちゃうのだもの、いい気なものよね」
 里美さまがイジワルっぽくおっしゃいました。

「そう言えばマゾ子に、鍵を落としてしまったことについてのお仕置きを、まだしていなかったわね」
 里美さまが私に近づいてきます。
「今日はたくさんお買上げいただいたから、最後に特別サービスしちゃう」
 嬉しそうなお顔で私の顔を覗き込んでくる里美さま。

「記念写真を撮りましょう。本当はショールームでのお客様の店内撮影は上から固く禁じられているのだけれど、あなたたちは特別よ」
「マゾ子も倉島さんたちに服従を誓ったんだものね?」
「えっ?」
 里美さまのお言葉に不穏な感覚を覚え、思わず聞き返しました。

「あら?忘れたとは言わせないわよ?さっき、もっともっとってイキまくりながら彼女たちに、セイドレイになります、何でもしますって喘ぎながら宣言したじゃない?」
「ヨーコさん、だっけ?のお部屋がここから徒歩10分くらいで、そこが耽美研の溜り場にもなっているから池袋でよく遊ぶ、っていう話から盛り上がって」
「マゾ子もウィークディは仕事でこのへんウロウロしているから偶然会っちゃうかもね、っていう話になって」

「もし街中でマゾ子をみつけたら、わたしに連絡さえくれれば、好きに拉致していいってことになったじゃない?ヨーコさんちや女子大に」
「マゾ子も、よろしくお願いしますぅ、って喘ぎながら嬉しそうだったわよ」

「そ、そうなんですか?」
 まったく覚えていませんでした。

「その代わりラブトイズ類は必ずうちのショップで買うってことで、うちと耽美研とのあいだで契約成立したのよ?今更反故には出来ないわ」
 
 里美さまがお店の中をあっち行ったりこっち行ったりしながら説明してくださいました。
 私もようやく頭が回り始め、ドキドキオロオロしてきました。

「でも今日のマゾ子は普段のOL姿とはぜんぜん違う髪型だから、みなさんには不公平かな、と思ったのよ。だから記念写真」
「写真を一枚渡しておけば、髪型違っていても幾分探しやすいでしょう?ただし、あなたたちが違う人に声かけて騒ぎになってもわたしは一切関知しないわよ?」
 お三かたにイタズラっぽく告げた里美さま。

「どなたかケータイ貸してくださる?カメラ機能の性能がいいやつがいいと思うわ」
 里美さまのお声にご相談されるお三かた。
 やがてメグさまが一台、おずおずと差し出してきました。

「あら、最新のスマホじゃない。さすがに今どきの女子大生はいいもの持っているのね」
 受け取った里美さまが使い方をメグさまにお聞きになっています。

 私、こんな姿で写真撮られちゃうんだ・・・
 それも、今日会ったばかりの歳下の女子大生さんのケータイで。
 この数時間で数え切れないほどイきまくったからだが、性懲りもなくまたムズムズしてきます。

「マゾ子にもアドバンテージあげる。すぐにみつかっちゃって、彼女たちがうちのショールームに遊びにこなくなったらつまらないしね」
 後ろ手に何かを隠した格好で、里美さまが近づいてきました。

「さっき声のことでヨーコさんが興味あるって言っていたご趣味を満たすグッズよ。口を開けなさい」
 里美さまのご命令で恐る恐る口を開けると、グイッと何かを押し込まれました。
 ところどころ穴の空いたピンポン玉のような赤い玉、ボールギャグでした。

「んぐっ!」
 両方のほっぺを通る細いベルトの金具を頭の後ろに留められて、みるみる口の中に唾液が湧いてきました。

「それと、これね」
 背後に立つ里美さまの手からぶら下がった2つの鈎状の金具に、私の鼻の穴がひとつづつ釣り上げられる感覚があり、そのままグイッと引き上げられました。
そのままベルトがおでこを通り、これも頭の後ろで固定されてしまいます。

「むぐっ!んぶぁーっ」
 ボールギャグを埋め込まれた口では、言葉にならない呻き声にしかなりません。

「ノーズフックは初めて?みっともない豚っ鼻になっちゃった。でも仕方ないわよね、これはお仕置きでもあるのだから」
 里美さまが私の目の前に、わざわざ手鏡をかざしてくださいました。

 鼻先が押し上げられ、ふたつの鼻の穴が正面を向いて豚さんそっくり。
 赤い玉を咥えて半開きの唇をよだれで濡らしたツインテール。
 屈辱と恥辱にまみれた女の顔が、そこにはありました。

「えーっ!?これじゃあかえって素顔がわからなくなっちゃったじゃないですかぁー」
 ヨーコさまがカン高いお声で抗議のお声をあげました。
 だけどお顔はニコニコでとても愉しそう。
 肘で里美さまの腕をつつくように里美さまに擦り寄っています。

「でも、マゾ子の顔をこうしてみたかったんでしょう?大丈夫よ。街で似た子みつけたら、ちょっと鼻の頭上げてもらっていいですか?って声をかけて、写真と見比べればいいじゃない」
 笑いながらご冗談で返す里美さま。
 お三かたと里美さま、今日一日でずいぶん仲良しさんになられたみたい。

「それで仕上げはこれね。やっぱりセイドレイ女の記念写真なんだから、大事なところをちゃんと中までお見せしなくちゃね」
 里美さまがケースから取り出した瞬間にヨーコさまがお声をあげられました。
「あっ、クスコ!」

「そう。正確にはクスコ式膣鏡。さっき言ったネットショップ次回アップデートの、オトナのお医者さんごっこ、特集のメインアイテムになる予定よ」
「膣鏡は英語でスペキュラムっていうのだけれど、クスコ式だけじゃなく、今回世界中からいろんな種類のスペキュラムを集めたの。スペキュラム大特集、ぜひ見てね」
 おっしゃりながら指で私のマゾマンコを無造作に押し開く里美さま。

「んぐぅ」
「ほら、挿れるから力抜きなさい」
 ステンレスらしき冷たい感触がラビアを擦ります。
 やがて左右の膣壁がステンレスに押され、じりじりと穴が広がっていくのがわかりました。

「んーーっ、んぶぁ-」
 いやー、と言いたいのにボールギャグのせいで滑稽な唸り声にしかなりません。

「このくらいでいいか」
 里美さまの指が離れ、膣の中まで外気に晒されて明らかにスースーしている感触がありました。

「さあ、みなさんマゾ子の周りに集まって。3人だからひとりはマゾ子の後ろに回るといいわ」
 しばらくガヤガヤした後、一番背の高い倉島さまが私の背後に、右側にヨーコさま、左側にメグさまと配置が決まりました。

「うん、いい感じ。倉島さんは後ろから手を伸ばしてマゾ子の勃起乳首を引っ張るっていうのはどう?」
「あ、はいっ!」

 弾かれたようなお返事と共に、倉島さまの両手が伸びてきて、左右の乳首を指先でつままれました。
「んむぅ」
 倉島さまはすでにグローブを脱がれていて、少し汗ばんだ素手の感触にゾクッ。

「両隣のふたりはマゾ子のお尻をスパンキングね」
「あ、こんな感じですか?」
 パッチーンと大きな音をたててヨーコさまの素手が右の尻たぶに炸裂。

「んむぅー!」
「おお、キレイな手形がついた。いい感じよ」
 すかさずメグさまの素手もパチーン。
「むぅー!」

「それじゃあ撮るわよ。みんな笑顔でこっち見てねー」
 私も目線をカメラに向けます。
 倉島さまに両乳首を引っ張られ、ヨーコさまメグさまに尻たぶをバチンバチンひっぱたかれている合間に、カシャカシャと5、6回ほどシャッター音が聞こえました。

「おっけー。ちょっと待っててね」
 里美さまがスマホのディスプレイを凝視しつつ何やら操作されています。
「こっちかな、うーん、こっちか、やっぱこれかな・・・」
 数枚の内のベストショットを選んだのでしょう、やがてディスプレイをこちらに向けて近づいてきました。

「ほら、なかなか良いデキじゃない?」
 私もその写真を見ることが出来ました、

 横向けにしたディスプレイ画面長方形の中央に私。
 全裸に赤い首輪、だらしなく緩んだ亀甲縛りロープだけの全裸。
 口に赤いボールギャグ、ノーズフックの豚鼻、眉根にシワを寄せた悩ましくも醜いツインテールのマゾドレイ女が少し顎を上げ、虚ろに宙空を見ています。

 背後に立たれた倉島さまは、満面の笑顔で両手を前面に伸ばし、指先で私の左右の乳首をつまみ上げています。
 硬そうな乳首がグインと上向きに引っ張られて伸び切り、ふたつのおっぱいが下乳ごと不格好に持ち上がっています。

 左右に立たれたメグさま、ヨーコさまもカメラに向けて愉しそうな笑顔。
 右側のヨーコさまの右手と左側のメグさまの左手は、バックスイングの位置から振り下ろされるタイミングでブレていて、すごい躍動感。

 私の尻たぶは、左右ともに手の形に赤くなり、その中央にクスコで押し広げられたマゾマンコ。
 クスコの銀色がフラッシュの光で綺麗な星型の輝きを作り、クスコの穴の奥のピンク色も、そのすぐ下の菊の窄みも鮮明に写っていました。

「とてもマゾ子らしい写真が撮れた。はい。あなたからみんなにメールで送ってあげて」
 里美さまがメグさまにスマホをお返ししながらおっしゃいました。

「その写真、どう使っても結構よ。お友達に見せるもよし、印刷して部室に飾るとかね」
「うわー」
 一斉にピョンピョンはしゃがれるお三かた。

「あ、ネットにあげちゃうのもありですか?」
 ヨーコさまがお声を弾ませてお尋ねされました。
「うーん・・・ま、いいでしょう」
 里美さまが少し考えてからうなずかれました。

「その写真なら素顔のマゾ子を知っている人でもわからないくらいの変顔になってるし、位置情報とかも全部オフっといたから」
「んんぬーっ、むぅぐぬぅーーーっ!」
 そのお言葉をお聞きして、いてもたってもいられません。
 顔を左右にブンブン振り、言葉にならない唸り声をあげて精一杯抗議しました。

「あら、ずいぶん悦んでくれるのね?ネットで大勢の人にマゾ子の抉じ開けられたマゾマンコを見られちゃうのが、そんなに嬉しい?」
 イジワル度満点な里美さまの笑顔。

「心配しないで。ネットにあげるときは、ちゃんとモザイクかけるから。そうしないとあげたアタシらが捕まっちゃうでしょ?」
 ヨーコさまもニヤニヤ笑って愉快そう。
「アタシらだって、ネットに素顔なんて晒したくないから、ちゃんとボカスわよ。マゾ子の顔と裸以外はね」

 お三かたがお帰りの支度をされているあいだ、私はそのままの格好で放置されました。
 さっき撮られた写真での私の顔は無様に変形していて、普段私と接している人でも、被写体が私と分かる人はいないでしょう。
 でも、そんな破廉恥過ぎる姿がインターネット上に晒されてしまうかも、という不安と被虐が私を疼かせていました。

「それでは今日は、ありがとうございました。すごく勉強になりました。また近いうちに遊びにきますね」
 来られたときにはお持ちでなかった大きな紙袋を提げた倉島さまが、里美さまにペコリとお辞儀されています。

「はーい。こちらこそ今日はたくさんのお買上げ、ありがとうございました。また何か欲しいものあったらいつでも寄って」
 里美さまも満面の笑顔でご対応。
 それからヨーコさまのほうを向いてつづけました。

「池袋でマゾ子を探せ、ううん、最近の流行りで言うとマゾ子Goかな、まあ、なんでもいいけれど、がんばってね。あのオフィスビルのショッピングモールなんか要チェックな出現ポイントよ」
 するとメグさまが横からお口を挟んできました。

「ワタシ、自信あります。小さい頃から人の顔覚えるの、得意なんです」
 そうおっしゃって、じーっと私のほうを見つめてから里美さまに向き直りました。

「さっきの写真は確かに参考になりませんし、ヘアスタイルの変化もムズいんですが、パーツの中で特徴的なポイントを押さえておけばいいんです」
「とくにこうして実際に間近で見た人なら、背格好とか雰囲気も知っていますから、今度会ったら95パーセントくらいの確率でゲットする自信があります」
 私に向けてニコッと微笑まれるメグさま。

「そうなんだ。もしみつけたら拉致る前にわたしに必ず連絡ちょうだいね。一応、マゾ子のお姉さまの許可を取るから」
「はい、必ずそうします。それは別としても、必ず近いうちにまた、マゾ子にレクチャーしてもらいに来ます。今度はお医者さんごっこかな」
 ヨーコさまが私の股間を見ながらおっしゃいました。

「それじゃあ、もう暗いから、気をつけて帰ってね」
「はーい」
 ぞろぞろとショールームの出入り口ドアへと向かうみなさま。

 ショールームをお出になる前に、みなさまがもう一度私のほうを振り返り、お声をかけてくださいました。
「じゃーねー、またねー」
「マゾ子、また今度ねー」
「また遊ぼうねー、モリシタナオコさーん・・・」
 おっしゃってからクスクス笑いつつ、ドアのお外へと消えたお三かた。

 最後のお声は、ヨーコさまだったでしょうか?
 なんで?なんで知っているの?
 一瞬、頭の中がパニックになりました。

「おつかれさまー」
 お三かたを送り出して戻ってこられた里美さまが、スタスタと私に近づいてこられました。
 私の背後に回りテキパキとノーズフックを外し、つづいてボールギャグも外されました。

「直子ちゃんががんばってくれたおかげで、今日は大助かり。三人で5~6万くらい使ってくれたのよ」
 マゾマンコのクスコを外しながら教えてくださいました。
「やっぱり私立の女子大生ってお金持っているのね。部費でタイマーボックスとウイップ一本キャッシュで買った以外はカード支払いだったけれど」

「なんで、なんであのかたたちが私の名前、知っているのですか?」
 ボールギャグが外されて自由になった唇で、息せききってお尋ねしました。
「やっぱり気づいてなかったんだ?でもそれって直子ちゃんのミスよ」
 足枷の鎖を外してくださるためにひざまづいていた里美さまが、上体をひねってテーブルのほうを指さされました。

「あそこの椅子の上に、直子ちゃんがロープを入れてきた巾着袋を置きっ放しにしたでしょう?それに小さくだけれどバッチリ書いてあったわよ、ローマ字で、NAOKO MORISHITA、って」
「あっ!」

 そうでした。
 母があの体操服袋を作ってくれたとき、袋の下の方に目立たない感じで小さく名前を刺繍してくれたのだっけ。
 流麗な筆記体がカッコよくて、すごく嬉しかったことを不意に思い出しました。
 ずっと何かを入れて膨らんでいることが多く、そこまで目が届かずにすっかり失念していました。

 そうしているあいだにもテキパキと足枷と手錠も外され、晴れて自由の身。
 放置されているとき、お三かたがお帰りになった後もまだこのままで、今度は里美さまだけでじっくり、いろいろ虐められちゃうのかな、とドキドキしていたので、なんだか拍子抜けでした。

「ロープは自分で解いて、お手入れをしたら、ここで干しておくといいわ。月曜日にでもわたしがオフィスに持っていってあげる。お姉さまや早乙女部長さんへの、今日のご報告も兼ねてね」
 すっかりビジネスのお顔に戻られた里美さまに急かさられるように、自分のからだを這う菱沼縛りを解き始める私。

「あの子たち、かなり直子ちゃんにアテられていたわよ?倉島さんなんて瞳が妖しく潤んじゃって」
「たぶんヨーコさんちに行って、それからくんずほぐれつね。ターゲットは倉島さん。あの子が一番エムっぽいし、他のふたりからよってたかってだと思うわ。バイブをいくつも買っていったし、麻縄もあるし」
 愉快そうにおっしゃった里美さまが、白いバスタオルを差し出してきました。

「あのドアの向こうでシャワー浴びれるから。トイレ共用のユニットバスだから狭いけれど、浴びないよりはマシでしょう?床ビショビショにしないように、ちゃんとシャワーカーテン掛けてね」
「直子ちゃんがシャワーしているあいだに、ここ片付けておくから、一息ついたらどこかに晩ご飯食べに行きましょう。直子ちゃんは今日の売上の功労者だから、わたしが奢っちゃう」

 おやさしくてお仕事のデキる、いつものクールな里美さま。
 お三かたとご一緒に、ついさっきまでドエス全開だったのに、その見事な豹変ぶりにドギマギしつつも、謎の部分が多い里美さまに俄然興味が湧いてしまいます。
 差し出されたバスタオルを手に全裸でオフィス部分に足を踏み入れ、シャワーをお借りしました。

 小さなバスタブの内側にシャワーカーテンを施し、シャワーのコックを捻りました。
 少しぬるめなシャワーの水滴が勢い良く肌を滑り、汗や色々なヌルヌル体液をキレイに流してくれます。

 二の腕やおっぱいの裾野にうっすらと縄の痕。
 まだ熱を持っているお尻と性器。
 そういったところを手で撫ぜていると、今日みなさまの前で行なった恥ずかし過ぎるあれこれがまざまざと脳裏によみがえってきました。

 お姉さまの会社に勤め始めてから、あきらかに私のマゾ度は上がりました。
 より自虐的に、より淫らに、より貪欲に。
 
 それまでは自分ひとりで自分のお部屋で、こっそりと行なっていた非日常的ヘンタイ行為。
 そんな行為をする場所が勤務中のオフィス、イベントショーのステージ、街中のカフェ、今日のように他人様のお店のショールームと、どんどん広がっていました。
 日常的だった場所が、どんどん非日常に侵食されているのです。

 そして、私がヘンタイ行為を、そういった開かれた場所でご披露するたびに、私を辱める権利を持つ人たちが増えていきます。
 今日も初めて出会った倉島さま、ヨーコさま、メグさまが、その権利を得ました。
 街で出会って何かご命令されたら、私は服従しなければなりません。
 私は、そういう人間、だとお三かたに認識されてしまったのですから。
 
 まるで王様ゲームで、ひとり負けつづけの罰ゲーム狙い撃ち状態。
 私の非日常的行為を目撃されたかたたちが次々に王様となり、私に恥辱たっぷりのご命令を下してくるのです。
 最愛のお姉さまが全体を統べる非日常な王様だらけの王国で、たったひとりだけドレイな私・・・

 激しいシャワーに肌を打たれながら、そんなイメージが湧き上がっていました。
 そしてその王国を私は、とても居心地良く感じていました。
 被虐が欲情となり、肌が上気してきます。
 今夜、この後お家に帰り着くまでこの身を委ねる王様に、想いを馳せます。

 里美さまは、どこへお食事に連れていってくれるのかな?
 普通にお食事するだけなのかな?
 お食事中に何か恥ずかしいご命令をくださるかな?
 あれほどイキまくって一時は眠ってしまったほどなのに、性懲りもなくマゾの血が滾り始めていました。

 もしも私が王様ゲームに勝って命令の権利を得たとしても、王様を辱めるような命令を下すことでしょう。


三人のミストレス 01

2017年2月19日

非日常の王国で 14

 椅子の背もたれに背中を押し付け、動かせないからだを小刻みに捩りつつ、果てたと思ったらまたすぐ昇りつめる、をくりかえします
 クネクネと身悶えるたびに、汗とよだれを吸った縄地が、濡れた素肌をヌルヌルと擦っています。
 
 どれだけイッても、二穴一豆責めのバイブレーターたちは動きを止めてくれません。
「あっ、あーっ!いやっ、またっ、あっ、あんっ、あーーっ!!」

「マゾ子のいやらしいヨガリ声、ちょっとうるさくないですか?」
 私のお尻をバチンバチン叩きながら、ヨーコさまが里美さまに尋ねました。

「そう?わたしはとくに気にならないけれど・・・」
 ビデオカメラのレンズを私の股間に向けたまま、里美さまのお答え。

「こういう調教プレイだと、真っ先にボールギャグとかかませて言葉を奪っちゃうじゃないですか?とくに海外のボンデージものなんか」
 ヨーコさまが幾分不服そうにお言葉をつづけました。

「そういうのも支配欲ていうか隷属感が出ていいな、とも思うんですよね。でもテーブルの上に口枷とかマスクの類が見当たらなかったから・・・」

「ああ、声がうるさくないか?って聞いたのはそういう意味だったんだ」
 里美さまが構えたレンズをスーッと私の顔のほうへと上けつつ、おっしゃいました。

「それはね、マゾ子のお姉さまのご要望でもあるの、今日の様子を記録して後で見せるように言われているから」
「彼女はね、ボールギャグとか目隠しとかドレイの顔を弄るプレイは好みじゃないのよ。前頭マスクなんてもってのほか」

「普段取り澄ましている顔が、責められることによってどのくらい浅ましいスケベ顔になるのかを視て愉しむ、根っからの顔フェチなのよ」
「それに言葉で辱めて会話しながら弄ぶタイプでもあるから、めったに口は塞がないらしいわ。このマゾ子はそういうお姉さまに躾けられているの」
 
 あなたたちのことは何でも知っているのよ、とでもおっしゃりたげな、はっきり私に向けての里美さまのお言葉。

「そうなんですか・・・アタシは、そういう、ドレイをモノ扱いする、みたいなシチュも好物なんすけどね」
 ちょっぴり未練がましくおっしゃったヨーコさまが、気を取り直すようにつづけました。

「ただ、ボールギャグ云々以前に、マゾ子の喘ぎ声が大き過ぎてご近所、お隣とか上の部屋まで聞こえちゃわないか、っていう心配もあるんですが・・」
「ああ、その点は心配いらないわ」
 里美さまが間髪を入れずにお応えされました。

「ここはね、以前喫茶店だったのよ。夜営業でカラオケ入れていた時期もあったらしくて、防音はしっかりしているの」
「でなきゃわたしも、こんなに自由にマゾ子を喘ぎっ放しにはさせとかないわ。たちまちご近所から苦情が出ちゃう・・・」

 そこまでおっしゃって何かを思いついたらしく、考えを整理するような少しの間の後に、再び里美さまのお声が聞こえてきました。

「あなた、面白いことに気づかせてくれたわね。マゾ子のいやらしい声を黙らせる遊びを思いついちゃった。ボールギャグなんか使わなくても」
 お言葉の後にニヤリと唇を歪ませたお顔までが見えるような、里美さまの嗜虐的なお声。

「わたしがマゾ子と最初に出会ったのは、とあるファッションビルに入ったランジェリーショップだったのよ」
 里美さまがビデオカメラを私から逸らしたのは、おそらく録画を中断されたのでしょう。

「マゾ子と今のお姉さまが一緒にフィッティングルームに入って、ランジェのフィッティングにかまけて何やらイカガワシイ行為を愉しんだのね、他のお客様がひっきりなしに出入りする営業中に」

「わたしはそのときお店のレジにいて、確か一時間以上もふたりで篭ってた。ふたりが出てきた後、フィッティングルームの中に何とも言えないメスクサい、いやらしい臭いが充満していたわ」
 里美さまが私の顔を覗き込み、ニッと笑いました。

「それがマゾ子とお姉さまの幕開けだったのよ。後から聞いたら、薄っぺらな板で囲まれた狭いフィッティングルームの中で、マゾ子だけ全裸になってマンコ弄られてたみたい」

「売り場との境界も薄っぺらなカーテン一枚よ?その中で真っ裸。試しにお姉さまがカーテン閉めずに売り場に出て放置してみたら、マゾ子、ガタガタ震えながらも健気に表に裸晒したままお姉さまのお帰りを待っていたんだって。その頃から露出狂のドマゾだったのね」

 ヨーコさまに私の声を咎められたときから、私はなるべく悦びの声を我慢するように努めていました。
 もちろんそのあいだも下半身の三点責めバイブレーターは容赦なく私の秘部を蹂躙しつづけていました。
 
 その上、私の恥ずかし過ぎる過去を喜々としてみなさまにご披露しちゃう里美さま。
 物理的刺激に精神的恥辱が加わってオーガズムのインターバルが短かくなり、イッちゃだめ、と思うのにイッちゃうイキっぱ状態。

 それでもなんとか唇を噛み締めて声を押し殺し
「んーーー、んぐうぅ、んっ!!!、はぁはぁはぁ・・・」
 のくりかえし。

「あのときマゾ子は必死に声を我慢していたはずよ。あのとき出来たのだから、それを今もやればいいだけでしょ?」
 イジワルくおっしゃった里美さまが再びビデオカメラを構えられました。

「あっ、今気がついたのだけれど、タイマーボックス、とっくに解除になっていたみたい。もう6時をずいぶん過ぎちゃってる」
 確かにお部屋内がけっこう翳ってきていましたし、里美さまのビデオカメラにもいつからかライトが灯っていました。

「そういうことだから、最後にヨガリ声を押し殺したまま、マゾ子に盛大にイッてもらいましょう」
「ぁぅっ!」
 里美さまが片手のカメラを私に向けたまま、もう片方の手で器用に私の右乳首にさっきの舌鉗子を挟みました。

「どなたか手の空いている人、わたしが合図したらそこの窓を開けてくれる?」
 私の左乳首にも舌鉗子を噛ませた後、私の顔の右横にある窓を指差す里美さま。
 
 お向かいのビルの窓に明かりが灯っているのが見えました。
 その向こうにはいくつかの人影もあるような。
 
 えっ、あの窓を開けちゃうの・・・
 今にもその窓が開いて、ひょっこり誰かお顔を出しそうな気になってきます。
 そこから覗かれたら私の姿は何もかも丸見え・・・
 ああん、そんな・・・
 不安な心とは裏腹に、からだがグングン昂ってビクンビクン!!!

「あの窓を開けたら、あなたのヨガリ声が表の通りに筒抜けになるのは、わかるわよね?」
 里美さまがレンズを向けたまま尋ねました。

「んんーーーっ!!!はぁ、はぁ、はいぃ・・・」
 小さく喘いででうなずく私。
 ちょうどイったタイミングなので息も絶え絶えです。

「今も必死に声を我慢しているみたいだけれど、もしもいやらしく大きな喘ぎ声出したら、通りからこのビルが注目されちゃうわよね?」
 大きく肩で息をしながらうなずく私。

「えっちな声って耳を引くから、誰かがこの部屋に踏み込んできたり、向かいのビルの窓が開いちゃうかもしれない」

「それでヘンな噂がたって、わたしのショップがこのビルから追い出されたりしたら、あなたのお姉さまはとても悲しむわよね?」
「んっ、んーーっ、は、はいぃぃ」
 性懲りもなくまたまた高まっていく私。

「だったらあなたがどうすべきか、わかるわね?」
 そうおっしゃって、タイマーボックスから手錠の鍵を取り出された里美さま。

「我慢なさい。何をされてもいやらしい声を出さず、ひたすら我慢しながら昇りつめなさい。あのランジェリーショップのときみたいに」
 水飲み鳥のお人形見たく、ひたすら頭をコクコク前後させてうなずく私。

「窓を開けたら、あなたの手にこの鍵を握らせてあげるから、自力で手錠を外しなさい。手錠が外れたら今日のお役目終了よ。外せなかったり鍵を落としてしまったら、別のお仕置きを考えるから」
 イジワルっぽくおっしゃって、私から少し離れました。

「さあ、あなたたちもラストスパートで遠慮せずに思い切り虐めちゃって。マゾ子が声を我慢出来ないくらいに」
「はーい!」
 嬉しそうなお声があがり、メグさまが早々と窓辺に駆け寄りました。

「おーけー。それじゃあ窓開けて。全開ね」
 里美さまのお声にザザーッというサッシを開ける音がつづき、街の雑踏がお部屋を満たします。
 
 6時過ぎと言えばオフィス街の退社時刻。
 このビルは地下鉄駅にほど近い通りに面していますから、聞こえてくる人々のおしゃべりや靴音、車のエンジン音やクラクションなど日常的な喧騒と、今の自分の破廉恥過ぎる状況とのギャップが、羞恥心や背徳心を大いに掻き立ててきます。

「はい、これが手錠の鍵ね」
 椅子の背もたれ越しに括られた右手に、小さな金属片が握らされました。
「マゾ子が脱出するまでに何回イカせられるかチャレンジー、はじまりー」
「んんーーーっ!」

 里美さまの号令とともに私のからだに群がる何本もの手。
 ラテックスの感触に乳房を揉みしだかれ、お尻を撫ぜられ。
 
 今までよりもずいぶん積極的に動き回るお三かたの愛撫で、みるみる昇りつめていく敏感過ぎる肉体。
 右手の鍵を握り締めたまま、しばらくは声を我慢することに必死でした。

 どなたかの手が膣のバイブを捏ね上げ、どなたかの手がアヌスのバイブを抜き挿し、どなたかの手が乳首の舌鉗子を引っ張り。
「んぐっ、ん、むぅ、ぬぅ、んんぅぅ、んっっ、んっ、ぐぅぅっ!!!」

 いくら口を真一文字につぐんでも喉の奥から歓喜のわななきが洩れてしまいます。
「んぬぅぅーーーっ!!!」
 早くも今日何度目なのかもはやわからない、ラストスパートでの最初のオーガズム。

 それから右手の鍵を闇雲に左手首の手錠の側面に擦りつけ始めました。
 どこかに鍵穴があって、そこに嵌りさえすれば手錠が外れるはず・・・
 だけど鍵の先端は虚しくスチールの上を滑るばかり。
 そうしているうちに高まりがあっさりピークに達します。

「んんーーっ、ぁ、ぅ、ぅぅぅ、んぁ、んあぁっーーーーー!!!」
 どなたかの指でクリトリスを思い切り引っ張られ、思わず大きな声が。
 その拍子に右手から鍵がポロッ!

「あっ、マゾ子、鍵落としちゃったみたいですよ?」
 どなたかのお声が聞こえて初めて、私もしてしまったことの重大さに気がつきました。

「はぁ、はぁ・・・はぁぅうーーんっ!」
 我慢しようとしても、喉の奥から嗚咽のような嘆息が漏れてしまいます。

「あーあ。これは窓開けておくとヤバそうね。この子もう、理性ゼロのケダモノぽい」
 里美さまの呆れきったお声が聞こえました。

「マゾ子はもう解放される術を自分から放棄しちゃったのだから、とことんイッて壊れてもらうしかないでしょうね」
 心底蔑んだお声とともに窓が閉じられ、街の喧騒がピタッと聞こえなくなりました。

「ほら、もう声我慢しなくていいよ。マゾ子のして欲しいこと、なんでも言ってごらん?」
 里美さまが私の顎を乱暴に掴んで真正面から見据え、頬を軽くパチンとぶたれました。

「あん、はいぃ、もっと、もっとください、もっと直子をめちゃくちゃにしてくださぃぃ・・・」
 鍵を落としてしまったのを知った途端、すっごく悲しい気持ちになっていました。
 涙がポロポロと落ちるのに、からだは疼いて疼いて仕方なく、更なる刺激と陵辱を求めていました。

「ごめんなさいぃ、もっと、もっとしてくださいぃ、やめないでぇ、いじめてくださいぃぃ・・・」
 唇が勝手に動いていました。
 して欲しいことがスラスラと口をついていました。
 ぶってください、つねってください、開いてください、噛んでください、突っ込んでください・・・
 
 それからはよく覚えていません。
 里美さまには、何度かビンタをされ、そのたびに激しいくちづけをくださった気がします。
 すべてのバイブが抜かれた後、そこからはみなさまの指であらゆるところを陵辱されたと思います。
 どなたかに鞭を振るわれ、ひどいお言葉をたくさん投げつけられ、みなさまに謝りながら何度も潮を撒き散らしたはずです。

「いい、そこそこ、もっと、奥まで、いやーっ、ああ、イッちゃう、イッちゃうぅぅぅ!!!」
 
 喉がカラカラに涸れるほど喘ぎまくり、イキまくりました。


非日常の王国で 15


2017年1月29日

非日常の王国で 13

 股下が空洞になっている卑猥な椅子に、思い切り恥ずかしい格好で戒められている私。
 これからされることへの不安と期待で胸が張り裂けそう。
 M字に広げられた両腿の向こうに、テーブルに群がったお三かたのキャピキャピはしゃぐお姿が見えています。

「うわー。何?このイボイボ」
「これってたぶん、吸いつくんだよね?」
「あ、これがお尻用じゃない?」
「こんなの入るのかしら?」

 弾んだお声とは裏腹な、妄想を徒にかきたてる不穏なお言葉がどんどん聞こえてきて、ゾクゾク震えてしまいます。
 からだは熱いのに鳥肌が立っているみたいに、全身の皮膚が戦慄いています。

 やがてお三かたが私の傍らに戻っていらっしゃいました。
 手に手にカラフルなラブトイズを嬉しそうに握って。

 里美さまがキャスターの付いた、いかにも病院に置いてありそうなステンレスのワゴンを運んできて、私の傍らに据えました。
 一番上段のトレイには真っ白なタオルが敷いてあります。

「あ、それを選んだんだ。なかなか良いセンスよ」
 里美さまが、メグさまのお持ちになった赤色のバイブレーターらしきアイテムに目を遣り、愉快そうにおっしゃいました。

「それを試すのだったら、やっぱりみんな、これを身に着けておいたほうがいいかもね」
 里美さまがワゴンの下段に積んであった箱から何か取り出されました。

「このマゾ子はね、感極まってイキまくると、だらしなく潮まで吹いちゃうらしいのよ」
「あなたたちの綺麗なお洋服が、こんな淫乱マゾ子の潮まみれでグショグショになっちゃうなんて嫌でしょう?」
「これ、使い捨てのエプロン。これも医療用なの。トイズはいったん、そのトレイの上に置いて着るといいわ」

 里美さまがみなさまに手渡したのは、半透明な水色の薄いポリエチレン製らしきエプロンでした。
「介護現場とかで使われる本格的なものよ。これなら万が一マゾ子が潮噴射しても、みんなのお洋服を汚さずに済むはずよ」
 おっしゃりながら私の足元にもシーツらしき布地を敷く里美さま。

「アタシ、誰かが潮吹くの見るなんて、初めてっ!愉しみっ」
「あ、これ、ちゃんと袖まである。それに袖口にゴムが入っているんだ。すごーい」
「こんなの着ちゃうと、ますますアブノーマルな人体実験ムードが高まってきちゃうよね」
「うん。本格的に、お医者さんごっこ、っていう感じがしてきた」

 ポリエチレン地がガサガサいう音に混じって、お三かたの愉しそうなお声が聞こえてきます。
 背中の紐をお互いに結びっこして、やがて再び私の周りに集まっていらっしゃいました。

 背もたれを挟む形で後ろ手に、手錠拘束された両腕。
 椅子の肘掛けを跨ぐ形で大きくM字に開かれたまま、鎖に繋がれた両脚。
 ソックスと首輪以外全裸のからだを、菱縄縛りで締め付ける麻縄。
 麻縄に絞られたおっぱいの先端二箇所にぶらさがる、無機質に光る舌鉗子。
 そして絶望的広げられた股間を更に恥ずかしく粘膜の奥まで白日のもとに晒し上げている、ラビアに噛み付いた2本の舌鉗子。

 そんな格好で身動きの出来ない私を、まじまじと見つめてくる好奇に満ち溢れた6つの瞳。
 そのうちのいくつかはすでに、好奇から嗜虐へと輝きが妖しく変わっている気がしました。

 私、これからこのかたたちに、自分が浅ましく喘ぎ悦ぶ痴態のすべてを視られてしまうんだ・・・
 何をされてもあがらえない、こんな無様な姿のまま、みなさまが飽きるまで弄ばれ、嬲られ、辱められるんだ・・・
 被虐が極まり過ぎて、もうその視線だけでイッてしまいそう・・・
 
 その後ろには、里美さまの心底愉しそうなふたつの瞳が見えました。

「グッズで虐める前に、みんなの手だけでマゾ子をリラックスさせてあげよっか?だってほら、マゾ子ったら、あんなに怯えた目になっちゃてる」
 里美さまが私の頭の横まで近寄ってこられ、おもむろに右手を伸ばしてきました。

「お医者さんごっこで言えば、さしずめ触診ね。ほら、こんなふうに」
「あうぅ!」
 里美さまの右手が私の右おっぱいをむんずと掴み、乱暴にワシワシ揉みしだき始めました。
「うん。乳房にシコリはないようね。シコっているのは乳首だけ」
 お芝居じみた里美さまのお声。

「あっ、あっ、あーっ」
 里美さまが指のあいだに逃した舌鉗子の柄が、おっぱいに噛み付いたまブルンブルンと揺れて右乳首がちぎれそう。
 痛みと陶酔の入り混じった甘美な快感に、たまらずからだが大きく跳ねたがります。
 だけど、両腕両脚をガッチリ拘束されたからだは、うねうね身悶えるばかりで、全身に張り巡らされた麻縄が無駄に肌へ食い込むばかり。

「ほら、あなたたちも遠慮しないでやってみて。どこでも好きなところ診察しちゃって」
 今度は左おっぱいを揉み始めた里美さまのお言葉に、お三かたが近づく気配。
 すぐに、そっとお腹や太腿を触られる感覚がつづきました。

「肌がすっごく熱くなってるー」
「ロープもけっこう張りつめているんだね。皮膚に食い込んじゃって、なんか痛々しい」
「マゾ子のお肌スベスベー。でもこの手袋で触ると、なんかヘンな感じ」
「うん。何て言うか大胆になれるよね?うちらでイチャイチャしているときとは違って、相手は実験の被験体なんだから何してもいいんだ、っていう気になってくる」
 最後に恐ろしいことをおっしゃったのはヨーコさまでしょう。

 私のからだを8つの手のひら、40本の指が這い回っていました。
 ラテックスグローブで撫ぜ回される感覚は、素手でされるよりも無機質ぽく、撫ぜている人の感情の情報量が少ない感じがしてかなり不気味。
 目を閉じると胸を、お腹を、脇腹を、内腿を、無数の爬虫類がペタペタと這い回るような錯覚にとらわれました。

「はうっ!あっ、そこはっ!」
 どなたかが下腹部の縄を引っ張ったのか、縄が腫れている肉芽を擦りました。
「うわ、いやらしい声」
 すかさずどなたかの嘲るようなつぶやき。

 撫ぜ回されているうちに全身の皮膚がどんどん敏感になり、切ない感情が湧いてきます。
 ああ早く、もっと決定的なところを触ってください・・・
 そこじゃなくて、もっと下、もっと弄られたがっている私の一番はしたない裂けめ・・・
 そう思ったとき、ヌルっと襞を撫ぜられる感触がしました。

「はうっ!」
 自分でもびっくりするくらい大きな声が出てしまい、それが合図だったかのように一斉に私の下半身への陵辱が始まりました。
 ピチャピチャと恥ずかしい音が聞こえてきます。

「うわー。中まで熱いー」
 舌鉗子で抉じ開けられた膣の中をグルグル陵辱する指。
 膨らんだ肉芽をグリグリつまみ上げる指。
 わしづかみで左右のおっぱいを揉みしだきつづける里美さまの両手とともに、みるみる昂ぶっていく私。

「あーーいいっ、いいっ、そこぉ、ああーっ・・・」
「んんーーっ、もっと、もっとぉー、んんーっ、んぐぅーー」

「うわっ、マゾ子、えげつない声」
「こんな格好でこんなことされて、恥ずかしくないのかしら?本当にヘンタイだね」
「全部の穴、おっ広げちゃって、本気汁ダラダラ垂らしちゃって」
 歳下のかたたちからのお言葉責めが耳に心地いい・・・

 快感に翻弄されながらも、一本だけ不穏な動きをしている指の存在にも気づいていました。
 私の愛液をまぶしたのであろうヌルヌルした指先をお尻の穴にスリスリ撫でつけてくる指。
「あ、そこは・・・だめっ、だめぇーっ、いやぁーーーっ!」
 菊門が抉じ開けられ指がヌルリと侵入してくるのがわかりました。

「うわー、スルッと入っちゃった。中でキュッキュと締め付けてくるー」
 愉快そうなヨーコさまのお声が聞こえ、挿入した指を中でグルグル動かし始めました。
「だめぇー、動かしちゃだめーっ、いやーっ、ゆるしてくださいぃーーっ!!」

 アヌスにズッポリ埋め込まれた指と膣内奥深く潜り込んだ二本の指で、からだの内側から掻き回されます。
 そのあいだにも腫れ上がった肉芽は執拗に捏ね繰り回され、乱暴な手のひらに乳房をもてあそばれています。

「あっ、いやっ、だめっ、もうっ、もうーーーっ」
「どう?面白いでしょう?このままイカせちゃいましょうか?」
 里美さまのお言葉にビクンとからだが震え、のけぞらせていた頭を少しだけ上げ、薄目を開けて自分のからだのほうを見ました。

 舌鉗子が噛み付いた左右乳首を思い切り引っ張る、里美さまの愉しそうなお顔。
 膣の中を掻き回しているのは童顔のメグさま。
 クリトリスを潰していらっしゃるのは、火照ったお顔の倉島さま。
 そして、アヌスに指を挿入してもてあそんでらっしゃるのが、お三かたの中で実は一番ドエスらしいヨーコさまのようです。

「ほら、マゾ子、イッちゃいなさい。虐めてくださるみなさんに感謝して、マゾらしく浅ましく、イッちゃいなさい」
 里美さまの蔑みきったお声に、みなさまの指の動きがいっそう活発化しました。

「ああーーっ、いいっ、いいっ、ィきます、イッちゃいますぅ、あ、ありがとー、ありがとーござまーぁっ!!」
「誰か片手の空いている人、マゾ子のお尻を叩いてやって、そうすればこの子、もっと気持ち良く啼くはずだから」
「あ、はーい」
 アヌス担当のヨーコさまが左手で私の尻たぶを平手打ちし始めます。

 ピシャっ!
「あーーっ!」
 ピシャっ!」
「いいーーっ!」
 ピシャっ!
「もっとぉー、もっとつよくぅ!!・・・」

 もはや頭の中は真っ白でした。
 それでもヨーコさまが私のお尻を叩くたびに、ほらっ、イけっ、イッちゃえっ、このいやらしいメス豚がっ!と小さくつぶやかれているのは、聞こえていました。
 そして、乳首への疼痛も、クリットへの摩擦も、膣壁への圧迫も、アナルへの蹂躙も、尻たぶへの痛みも、からだが全部感じ分けていました。
 それらの刺激がやがて快感という一本の太い激流となって、全身が溶け出してしまいそうなほどの恍惚感に包まれました。

「ああーっ、イキますぅ、イッちゃいますぅぅぅーっ、ううぅぅぅーーーっ!!!」
「うわーーっ、膣の粘膜がキューッと締まって蠢いたよ!?」
「アヌスもっ!すっごい締め付け・・・」
「下腹がヒクヒクしてる・・・これは完全にイッたね?すごいもん視ちゃった・・・」

 みなさまが興奮されたお口ぶりでガヤガヤおっしゃるのを遠くお聞きしながら、すさまじい快感に酔い痴れていました。
 全身の力はグッタリと抜けているのに、おっぱいと下腹部と両腿がそれぞれ別の生き物みたいに、上下したりヒクついたり。
 里美さまがいつの間にか、ビデオカメラを私に向けていました。

「さあ、これだけ深くイッたマゾ子は、ここからはケダモノよ。何やってもいイきまくるはず。今度はトイズをどんどん使ってマゾ子を壊しちゃいましょう」
 里美さまが近づいてきて、乳首の舌鉗子を外してくださいました。

 まず右から。
「あーーっ!」
 そして左。
「あーーーっ!」

 血流が戻る激痛もイッたばかりの余韻の中では、次の欲情を呼ぶ前戯でした。
 つづいてラビアを挟んでいた舌鉗子も外されました。
 大陰唇がジンジンと痺れ、濁った愛液がドロリと滴ります。

「マゾ子のマンコ、鉗子を外されても半開きのままだね?」
 メグさまが可笑しそうに指さしておっしゃいました。
「発情しちゃってるからだよ。何か咥え込みたくて仕方ないんだ、このメス豚の淫乱マンコ」
 ヨーコさまも嘲るようにおっしゃいます。

 お三かたがワゴンのトレイから、それぞれが選ばれたラブトイズをお手に取り、私に近づいてきました。
 もはやこの場にいるかた全員が、冷酷なサディストの笑みを浮かべてらっしゃいました。

 舌鉗子を外され菱縄縛りだけとなった私の裸体を、ニヤニヤ眺めるみなさま。
 おねだりするように尖る乳首と肉芽。
 敏感な箇所をどこも虐められていないことが、かえって疼きを掻き立ててきます。

「イボイボバイブとアナルバイブにクリットローターか。みんな自分で使ってみたいトイズを選んだのかな?」
 里美さまがお三かたのお持ちになったトイズを見て、からかうみたいにおっしゃいました。

「まさかー。アタシ、アナルバイブなんて挿れたくないしー。マゾ子が好きそうなやつを選んでみたんですよ」
 ヨーコさまが代表して、笑いながら否定されました。

「それじゃあいっぺんに装着して、しばらく放置して、マゾ子が壊れていくさまをじっくり見させてもらいましょうか」
 含み笑い混じりのゾクゾクしちゃう里美さまの声音。
 お三かたが私の下半身に群がりました。

 どなたかの手で私のマゾマンコにバイブレーターがズブリと突き立てられました。
 何の前触れもなく、あたかもそれが当然のことのように。
「ああーーっ!」
 胴体にイボイボを纏った、あの赤いバイブレーターのようです。
 かなり太い。
 その一撃で膣内がパンパンに満たされました。

 少し遅れて菊門に異物。
 アナルパールに似た感触が直腸内に、さっきの指先よりも奥まで潜り込んでくる・・・
「ああん、いーやぁーーーっ!」

 同時にクリトリスが何かに吸い付けられて引っ張られる感覚。
 倉島さまの背中が私の股間に覆いかぶさっています。

「まだスイッチを入れては駄目よ。バイブやコントローラー類は、落ちないようにローブに挟んじゃえばいいわ」
 里美さまのお声と同時に、あちこちで麻縄が食い込む感覚がしました。

「なるほどー。股縄していると便利ですねー」
 ヨーコさまの感心したようなお声とともに、マゾマンコとアナルのバイブが縄に押され、より奥深く侵入してきました。
「あぁ、うぅぅ・・・」

「うわー。これが有名な二穴挿入ってやつですね?おまけにクリちゃんまでこんなに腫れ上がらせちゃって」
 ヨーコさまの嬉しそうなお声。

「これでバイブ動かしたらマゾ子、本当におかしくなっちゃうんじゃない?」
 メグさまが心配してくださっています。

「あたし、マゾ子さんのこと、ちょっと羨ましいような気にもなってきちゃった・・・」
 マゾっ気を刺激されちゃったらしい倉島さま。

「いいわね?始めましょう。くれぐれも潮には注意してね?」
 イタズラっぽくおっしゃった里美さまがビデオカメラを構え直されました。
「それでは一斉に、スイッチ、オンっ!」

 里美さまの号令と共に、私の下半身が別の生き物になりました。
 膣壁を、腸壁を、陰核を震わせる強烈な振動。
 大量の虫の羽音のようなヴゥーンという低音に包まれた下半身がみるみる蕩けだしていきます。

「あーーっ、いいーっ、イクっ、イーークゥーっ、ああああーーーっ!!!」
 数秒も保たずに第一波到達。

 でも振動は止まること無くつづき、絶頂の余韻をかき消すように、第一波を凌駕する快感が襲いかかります。
「いいーーーっ、だめぇーっ、もう、もう、もう、イーーークーーーゥっ!!!」
「いやーっ、ゆるしてぇーっ、こわれちゃうぅーっ、いいっ、いいっ、イクゥゥゥっ!!!」
「あっ、またくるっ!きちゃうっ、イッちゃうっ!イッちゃうゥゥーーーっ!!!」
 得も言われぬ甘美な痺れが下腹部から太腿にかけてたてつづけに炸裂しました。

「すごいねー。気持ち良さそー」
「マンコから愛液ダラダラだー。よだれもダラダラー」
「でも下半身は凄いけど、おっぱいがブルンブルン揺れているだけで、刺激が無くて寂しそうだね?」
 最後にメグさまがポツンとおっしゃったお言葉に里美さまが応えました。

「あ、それだったらいいものがあるわ。あなた、ちょっとこれを引き継いでくれる?好きなところにレンズ向けていればいいから」
 撮影されているビデオカメラをメグさまに預け、その場を離れる里美さま。

 そのあいだも私は何度も、イキつづけています。
 イクたびに快感は大きく深くなり、休む間もなく頭の中がスパークしていました。
「いやーっ!だめーっ、もう、もう、とめてーっ、あっ、あっ、いいっ!もっと、もっとぉぉぉっ!!!」

 何度目かに達しようとしていたとき、乳首に新たな刺激を感じました。
 いつの間にか里美さまがお戻りになり、私の右乳首に木製の洗濯バサミを噛ませていました。
「はうぅっ!」
 久しぶりの刺激に乳首の感度が一段上がります。

 里美さまは無造作に、いくつもの洗濯バサミを私の肌に噛ませていきます。
 左右の乳首はもちろん、乳首を囲むようにおっぱいの皮膚をつまみ、左右の脇腹をつまみ、下腹部をつまみ。
 私の上半身は洗濯バサミだらけになっていました。
 それらの洗濯バサミはすべて一本の紐に繋がれていて、その紐の端をビデオカメラと引き換えにメグさまに握らせました。

「いい?マゾ子。次にイキそうなときは、自分でカウントダウンしなさい。そうね、5から0まででいいわ」
 里美さまのご命令口調。
「あっ、はっ、はいぃっ・・・」
 私はすでに、洗濯バサミの痛みで、イク寸前まで高まっていました。

「あなたはマゾ子がゼロって言った瞬間に、その紐を思い切り引っ張るの。マゾ子のこの上ない歓喜の悲鳴を聞けるはずよ」
 愉快そうな里美さま。
「は、はいっ!面白そうっ!」
 お声を弾ませるメグさま。

「あなたたちはマゾ子のお尻を思いっきりひっぱたくといいわ。それもマゾ子にはご褒美だから」
「はいっ!」
 愉しそうな倉島さまとヨーコさまのユニゾン。

「マゾって凄いね。本当に痛さも快感になっちゃうんだ」
「あたしも自虐趣味あるけど、マゾ子さんに較べたらまだまだだな」
「ワタシ、この紐持たされた途端にゾクゾクして、濡れてきちゃったみたい」
「メグってロリのくせに意外と エスっ気あるもんねー」
 キャッキャウフフとはしゃぐお三かた。
 
「さあ、始めましょう」
 里美さまがススッと私の右腿の傍に移動されました。
「ここでちょっと、うちのオリジナルトイズの宣伝させてもらうわね」
「このバイブは振動だけじゃなくてピストンも出来るのよ、前後に」
「この動きはね、Gスポットを刺激して潮吹きを誘発しやすくなるの」
 
 里美さまが私の右腿と縄のあいだに挟まったコントローラーに触れると、私のマゾマンコに埋まったバイブレーターが震えたまま、より奥へと侵入するようにピストン運動を始めました。
 バイブレーターのイボイボが今までとは違う動きで膣壁を擦るのがわかりました。

「あっ、あーーっ、だめですぅ、もうだめですぅ、ィきます、イッちゃいますぅぅぅ」
「えっ、もうなの?」
 ヨーコさまの慌てたようなお声が聞こえ、間髪を入れず左の尻たぶをピシャリとはたかれました。

「それなら早くカウントダウンしなさい」
 里美さまがカメラのレンズを私の顔に向けてのご命令。
 
「あーっっ!ご、ごめんなさいぃ、イキますぅ、ご、ごぉ・・・」
 ピシャン!ピシャン!
 右と左の尻たぶが交互に、手拍手で私のオーガズムを煽るような音をたてています。

「よおんっ、んっ、あ、ありがとうござぃまぁ、さーんっ、んっ、だめ、でちゃうっ!でちゃいそうっ・・・」
「潮に気をつけてっ!」
 里美さまの語気鋭いご注意が聞こえました。

「にぃーっ、あ、もうだめ、イッちゃうっ、出ちゃうっ、イッチャウぅぅ、いいいちっ!!」
 からだがフワッと宙空高く舞い上がります。
「イクぅーーーーっ!ぜーろっ!!」
「あああぁーーーーーーっ!!!」
 ビチャビチャビチャーっ!
「うわーーっ!」

 上半身に夥しい鋭い痛みを連続で感じたと思ったら、すぐにそれらが極上の快感に姿を変えて全身へと広がりました。
 筆舌に尽くせない絶頂感、開放感、爽快感。
 それでも動きを止めないバイブたち。
 いつまでもつづくかのようなイきっ放しの感覚に、喘ぎ、叫び、懇願し、黙り込んで我慢して、再び喘ぎ・・・

 私の心にも脳にも、一欠片の理性も残っていませんでした。
 たった今味わった凄まじい快感の余韻と新たに膨らみつつある快感を同時に貪る、ケダモノのように浅ましい淫らな肉塊と化していました。


非日常の王国で 14


2017年1月8日

非日常の王国で 12

「あ、勢い良く回しすぎて1時間23分になっちゃった。ま、いいか」
 里美さまがニヤニヤを私に投げかけつつ、タイマーのダイアルをポンと押しました。

「はい。これでこのあと約80分間、マゾ子ちゃんはみなさんにされるがままのモルモット。さっきどなたかがおっしゃったけど、まさに生贄状態ね」
 里美さまの右手が私の下腹部に伸び、菱形を作る縄をつまんでグイッと引っ張りました。
「あうぅっ!」
 大股開きの裂け目に食い込んだ縄が手前に動き、ラビアの中に埋もれていた結び目のコブが、テラテラに腫れ上がった肉芽をザラッと押し潰すように擦りました。

 三つ折りソックス以外一糸まとわぬ裸身を菱形模様の麻縄で飾り、ほぼ180度に広げられたM字開脚で椅子に磔られた私。
 中学生の頃、好奇心に駆られて図書館でこっそり見て後悔した生き物図鑑の、解剖される蛙さんの図版を思い出していました。

 里美さまはとても嬉しそうに、つまんだ縄を引っ張っては緩め引っ張っては緩め、そのたびにコブが敏感過ぎる肉芽の上を猛々しく行ったり来たり。
 屈辱と被虐で飽和寸前まで昂ぶっているからだに、里美さまがくりかえす股間の綱引きは、まるで拷問でした。

「あっ、あーんっ、ひっ、いやっ、だめっ、だめぇーっ・・・」
 グングン積み上がる快感に、押し殺そうとしても喉奥から淫声が零れ出てしまいます。

「ほら、いい声で啼くでしょう?みんなも遠慮しないで虐めちゃっていいのよ?」
 里美さまがお誘いになっても、お三かたはじーっと、コブに嬲られる私の股間に見入るばかり。
 ピーク寸前の兆候を見せている私のマゾマンコから、目が離せないのでしょう。

「内腿がヒクヒク痙攣してるね・・・」
「滲み出てくる愛液が白く濁ってきた。これってアレだよね?本気汁・・・」
「穴がパックリ口開けちゃって、別の生き物みたいにビラビラごとヒクついてる・・・」
「クリをこれだけ擦られて、痛くないのかな・・・」
「お腹までプルプルしてきた。もうすぐイッちゃうんじゃない?・・・」
 頼んでもいない実況中継をしてくださるお三かた。

 視られてる・・・私が一番淫らになる瞬間を待ち侘びて、みなさまが固唾を呑まれている・・・
 里美さまの綱引きがスピードアップして、私はもはや限界でした。
「あっ、あーーっ、だめっ、いいっ、いーーっ、イキますぅ、イッちゃいますぅーーーっ」
「あぁーーーーーっ!!!」

 背もたれに背中を押し付けるように頭をのけぞらせ、みなさまに喉仏を見せながら果てました。
 真っ白になった頭の中を、パチパチとまだ小さな星たちが爆ぜているような、強烈なエクスタシーでした。

「あーあ。あっさりイッちゃった。まあ今のは、今日のレクチャーへのギャラ、ご褒美みたいなものと思ってね」
 里美さまが私の顔にお顔を近づけ、笑顔でおっしゃいました。

「マゾ子って、一回イッた後からが凄いらしいじゃない?愉しみだわ」
 私の呼び方から、ちゃん、が消え呼び捨てにした里美さまが、からかうようにおっしゃって、お三かたのほうをお向きにまりました。

「あなたたちも遠慮なさらないで、何でもしたいことしちゃっていいのよ?」
「あ、はい・・・」
 と応えたものの、なんとなく及び腰ふうな倉島さまたち。
 イッたばかりのテラテラな私のマゾマンコを、不安そうに眉根を寄せて、ただじっと見つめるばかり。

「あ、そっか。そうよね。わたしにデリカシーが足りなかったかも。ちょっと待ってて、ちょうどいいものがあるから」
 何かしら思いつかれたらしい里美さまが、おひとりだけご納得のお顔で近くのキャビネットを開け、大きめなダンボール箱を取り出しました。

「考えてみれば今日会ったばかりの、どこの誰ともわからないマゾ子の汗まみれのからだを素手でいじくるのって、気持ち悪いわよね?」
 サラッとショックなことをおっしゃった里美さま。
 私って、気持ち悪いんだ・・・

「いえ、決してそんなことは・・・」
 あわてて否定される倉島さまのお言葉を遮るように、
「ましてやマンコはイッたばかりで、白濁したヨダレをあんなに垂れ流しているんだもの、生々しすぎて年頃の女の子の腰が引けちゃうのも無理ない話よね」
 私を薄笑いで眺めつつずいぶんイジワルくおっしゃって、ダンボール箱から何かを取り出されました。

「はい。これを着けるといいわ。医療用の使い捨てグローブよ。これすればマゾ子もあなたたちも、安心して触り触られ出来るでしょう?衛生的にもバッチリ」
 半透明な白色の薄いラテックス製らしき手袋が、お三かたに配られました。

「うわ。すっごく薄い。コンちゃんくらい?」
「指にピッタリ密着するんだね。なんか感触が自分の手じゃないみたい」
「こんなのしちゃうと、よく映画とかで見る、悪の組織の非道な禁断の人体実験、ぽい雰囲気が漂ってこない?ワタシそういうシチュ、すんごく萌えるんだ」
 愉しそうにはしゃがれるお三かた。

「うちのネットショップの次回の更新でね、ちょうど予定していた特集があるのよ。そのために今、アイテムをいろいろ集めているの。このグローブもそのひとつ」
 里美さまもグローブをお着けになり、両手で、結んで開いて、をしながらおっしゃいます。

「テーマはね、オトナのお医者さんごっこ。それで医療プレイ用のアイテムを、海外を含めてあちこちから取り寄せているの。まだあまり届いていないのだけれど」
 里美さまのグローブ越しの右手人差し指が、私の左内腿を膝の方へとスーッと撫ぜました。
「はうぅん・・・」
 イッたばかりで敏感になり過ぎている肌への刺激に、思わず鼻が鳴ってしまいます。

「ドクターコートとかナース服みたいなコスプレ系はもちろん、聴診器、ピンセットや脱脂綿とか拘束用の包帯とかの小物でしょ」
「あとは、いろんな浣腸器とか、導尿カテーテルや肛門鏡とかも揃えて、かなり本格的に遊べる、医療プレイマニアには堪らない特集になると思うわ」
 お三かたのご様子を窺うと、とくにヨーコさまが興味津々のワクワク顔をされています。

「たとえばこれ、わかる?ちょうど昨日届いたばかりなの」
 里美さまがダンボール箱から引っ張り出されたのは、一見して事務用のハサミのような大きさ、形状の物体でした。
 ステンレス製らしく全体が銀色で、ハサミであれば刃となっている箇所に刃は無く、代わりに重なり合う先端部分2箇所とも、あいだに何かを挟み込めるリング状になっていました。

「あっ!あたし、外国のボンデージ画像でそれ、見たことあります。それで乳首とか肌とか、挟むんですよね?」
 倉島さまが身を乗り出しながらおっしゃいました。

「へー。よくご存知ね。その通り。これでね、マゾ子の勃起乳首を痛めつけちゃうわけ。ご褒美の後はお仕置き、SMの基本の飴と鞭ね」
 
 先端のリング状に私の右乳首が挟まれ、ハサミを閉じる要領で指を絞る里美さま。
 カリカリッと小さな音をたてて冷たい金属の輪に挟まれた乳首がひしゃげ、麻縄に絞られて尖立している右おっぱいの先端に、その用具がぶら下がりました。

「あうぅっ!」
 強めの洗濯バサミほどの疼痛がジンジンと右おっぱいを苛みます。
 さっきカリカリと音がしたところが、ハサミの閉じ具合を調節するストッパーらしく、一度噛み付いたらそのまま、バネ仕掛けの洗濯バサミのように緩むことは無いみたい。
 そのもの自体にけっこう重さがあり、挟まれた乳首が下向きにうなだれて引力に引っ張られています。

「わたしずっと、それって何なんだろう?って思っていたんです。何か化学の実験用具なのかなと思って東急ハンズとかで探しても売っていないし」
 倉島さま、とても嬉しそう。

「これはね、ぜつかんし、っていうの。ぜつは舌のこと。で、かんしは、手術とかで使う鉗子。れっきとした医療用具よ」
 里美さまがもう一本お出しになりながらご説明してくださいます。

「本来は舌を挟んで引っ張り出すための鉗子。ほら、事故とかの緊急時に舌噛んじゃって喉に詰まったりするでしょ?そんなときに気道を確保するために、これで挟んで舌を引っ張り出して出しっ放しにするの」
「この先っちょがリング状のはコラン氏式とかマッチュー氏式って呼ばれるみたい。先っちょの形状がもっと面積広く挟めるように大きくUの字状になっているのがホッチ氏式。そっちは口腔手術に使うんだって」
 おっしゃりながら倉島さまを手招きされる里美さま。

「ほら、これでマゾ子のもう片方のいやらしい乳首も、お仕置きしてあげて」
 舌鉗子を渡された倉島さまがマジマジとそれを見つめています。
「なるほどー。こういう仕組みなんですね」
 何度かカチカチいわせては開き、ご満悦なご様子。

 里美さまに軽く肩を押され、倉島さまが私の上半身のほうへいらっしゃいました。
「し、失礼します・・・本当に挟んじゃっていいんですか?」
 倉島さまが幾分おどおどされながら、私に尋ねてきました。

「ほら、マゾ子?お客様がわざわざお尋ねくださっているのよ?ちゃんとマゾらしくお願いしなさいっ!」
 右乳首の舌鉗子をビューっと引っ張りながらの、里美さまのドSなお声。

「ああんっ、はい・・・どうぞ、私のからだをお好きなだけ、いたぶってやってください・・・」
 もうひとつの乳首にも早く痛みが欲しくて、被虐まみれの科白がスラスラ出てしまいます。

「これって、どのくらい強く挟んでいいものなのですかね?」
 倉島さまが里美さまに振り向きます。
「先っちょがちょこっと浮いてるぐらい締め付けちゃっていいわよ。この子はマゾだから、痛いほど悦ぶわ」
 私に向けて嘲笑うようにお答えになる里美さま。

「このくらい、ですかね・・・」
 倉島さまがお持ちになった舌鉗子の先が、背伸びしている左乳首の裾野にひんやり触れました。
「あふぅっ!」
 期待と不安にいやらしい声が、思わず洩れてしまいます。

 リングが肌にギュウっと押し付けられ、カチカチっと小さな金属音。
 乳首の側面が両側から押し潰されて、切ない痛みが広がっていきます。
「あ、ああっ、あうぅぅっ・・・」
 乳首がグンと引っ張られる感覚がしたのは、倉島さまの手が舌鉗子から離れたからで、舌鉗子は、そのまま左乳首にぶら下がりました。

「やっぱり医療用具っていいわね。洗濯バサミとかSM用のクリップとかいかにもなやつとは違って、インモラルなアート的気品があるわ」
 里美さまがビデオカメラを向けながらおっしゃいました。

「確かにその舌鉗子?がぶら下がっただけで、ますます人体実験ぽい絵面になったっすよね?アタシこういうの、すっごく好きなんです」
 ヨーコさまが、うっとりなお顔でおっしゃいました。

「あと2本あるから、下半身も飾ってあげるわね」
 おっしゃった里美さまが、ツカツカと私の動かせない下半身に歩み寄りました。

 マゾマンコに右手が伸びてきて裂け目上を走る2本の縄をつまみました。
 その縄をクリット下の結び目から大陰唇の外側へと左右に分ける里美さまのグローブの指。
 そうすることによって、だらしなく楕円形の半開きになったマゾマンコ穴とすぐ下のお尻の穴まで、みなさまの眼前で遮るものの無い、剥き出し状態となりました。
 あらためて視線がソコに集まってきます。

「舌鉗子のいいところはね、さすがに医療用だけあって、どんなにヌルヌルしていてもしっかり噛み付いてくれるの。こんなにグショグショなマゾ子のラビアでもね」
 里美さまの指が無造作に私の左側のラビアをつまみ上げ、舌鉗子のリングで挟みました。
 ラテックス越しの指の感触は、生身の指よりも無機質な感じがして、粘膜が戸惑いにわななきました。

「うわ、マゾ子のマンコ、湯気が見えそうなほど熱くなっておねだりしてる。さすが色情淫乱マゾマンコね。ステンレスのひんやりが気持ちいいでしょう?」
 どんどんお下品になっていく里美さまの口調。

「あ、いやんっ!」
 舌鉗子に挟まれたラビアがグイッと外側に引っ張られました。
 見る見る半円形に口を開ける私の粘膜。

「ダメダメ、いやっ、いやーっ」
 大陰唇を太腿側に引っ張ったまま、舌鉗子の胴体ごと白い包帯で左太腿に巻き付けられ、粘膜開きっぱなしで固定されました。
 挟まれたラビアにさほど痛みは感じませんが、グイーっと引っ張られて予想外に伸びだビラビラが恥ずかしすぎます。

「これが最後の1本ね」
 心底嬉しそうな里美さまの手が右側のラビアをつまみ、舌鉗子を噛み付かせました。
「ああん、そんな、さ、里美さまぁ、恥ずかしいですうぅ、赦してくださいぃぃ」
 私の懇願なぞどこ吹く風の里美さまが、手際良く右太腿にも包帯を巻きつけました。

 M字大股開きで精一杯に開かれた私の股間。
 それでも飽き足らず大陰唇に噛み付いた左右2本の舌鉗子に依って、中身を奥底まで覗けるように押し広げられた、粘膜丸見えな私のマゾマンコ。
 正面から見れば、股間の中央にピンク色の穴がポッカリ大きく口を空けているはずです。

「うん。一段と恥ずかしい姿になった。これこそマゾ子のあるべき姿だわ」
 ひとり悦に入る里美さまが、またもやビデオカメラを向けてきました。

「すごーい。奥まで全部見えちゃってる。オシッコの穴まで広がって・・・あたし、自分のも含めて誰かの女性器を、こんなに奥までまじまじ観察したことなかった・・・」
 倉島さまが感に堪えないという面持ちでつぶやかれました。

「こんなことされてるのに、本当にマゾ子、悦んでるよね?ほら見て、ピンクの襞の奥からトロトロ溢れ出てくる・・・」
 私より歳下のメグさまが、呼び捨てで呆れたように蔑んでくださいます。

「うん。お尻の穴までヒクヒク蠢いちゃって、クリトリスは今にも弾けそうなくらい腫れてるし・・・確かにこんなの見せられたら、どんどん虐めたくなっちゃうわー・・・」
 ヨーコさまのメガネ越しの瞳にも、嗜虐の妖しい炎が灯ってきた気がします。
 
 私は、泣き出したい気持ちになっていました。
 それは、悲しいわけでも悔しいわけでもなく、どちらかと言えば感動の部類。
 今の自分の惨め過ぎる姿を客観的に見ているもうひとりの自分が感じている、キュンと胸を締め付けるような切ない思いからくる感情でした。
 
「あの、マゾ子って、お尻の、えっと、アナルも虐めていいんですか?」
 ヨーコさまが、我慢しきれなくなったかのように、媚びるような少し照れたご様子で里美さまにお尋ねになりました。

「ええ。マゾ子はベテランマゾだから、それはもちろんオーケーなのだけれど、なあに?あなたはアナルに興味があるの?」
 里美さまが、ちょっとからかうような口調でヨーコさまにご質問返し。

「あ、はい。って言っても自分でするのはちょっとカンベンなんですけれど、ひとのを弄って、その反応を見てみたいっていうのは、すごくあって・・・でも、そんなこと、身近な人には頼めないし」
 照れが消えたヨーコさまは、好奇心いっぱいのお顔。

「うちらって、たまにBLものも書くのですけれど、BLだと使える穴はこっちだけじゃないですか?こんなとこにツッコんで本当に気持ちいのかな、なんて懐疑的になりながら書いていたりして」
「まあ、うちらは男性器が達したときの気持ち良さだってわからないですから、ひっくるめて妄想で書くのも愉しいんですけど、でも、せっかくの機会だし、手袋もしてることだし・・・」

「いい作品を書くために研究熱心なのは、とても良いことよ」
 学校の先生のような若干上から口調でおっしゃった里美さまが、私に目を向けてつづけました。

「マゾ子は、アナルでもちゃんとイケるのよね?」
 なんてストレートなご質問。
「はいぃ・・・」
 なんてはしたないお答え。

「今日はちゃんとキレイにしてきた?」
「あの、えっと一応、こちらへ伺う前にお浣腸は、してきました・・・」
 ランチもバナナだけにして、オフィスを出る前に念の為にと思い、おトイレでぬるま湯のお浣腸を自分でしてきたのでした。

「ほらね。ちゃんとそのつもりだったみたいだから、思う存分、実験してみるといいわ」
 里美さまが、なぜだか妙に誇らしげにヨーコさまにおっしゃいました。

「あ、でも浣腸の実演は勘弁してね。ここ一応お店だからさ、クサイものぶちまけられちゃうと後始末が大変だから。もちろん聖水プレイもだめよ」
 ご冗談めかして笑う里美さま。

「それとローソクプレイもNGね。どんなに注意深くやっても床に垂れちゃうものだから。床にこびりついた蝋をキレイに剥がすのって一苦労なのよ」
「そうそう、ローソクプレイと言えば、セルフボンデージでひとりきりのときに拘束したままするのも、やめておいたほうがいいわよ。火がカーテンとかに燃え移って、拘束してるからうまく消せなくて、それで火事出しちゃった人もいるらしいから」

「浣腸とかローソクプレイをしてみたかったら、事前に言っておいてくれれば場所を用意するなりしてまた、マゾ子を貸し出すからさ」
 完全に、レンタルセイドレイ=モノ扱いの私です。

「あのテーブルに、アナルビーズもバイブもディルドも、他にもいろいろ面白いオモチャを用意しておいたから、好きなだけ持ってきて、自縛の講義をしてくれたマゾ子先生の淫らなからだを存分に労ってあげて」
「はーいっ!」
 里美さまがテーブルを指さすと、お三かたが我先にという勢いでテーブルに駆け寄られました。


非日常の王国で 13


2017年1月2日

非日常の王国で 11

 里美さまの、あからさまに侮蔑的な私のヘンタイ性癖についてのご説明。
 それを驚きと好奇が入り交じった表情で、真剣にお聞きになっているお三かた。
 里美さまのご説明はすべて本当のことなので、どう反応していいのかわからず、ただうつむく私。

 里美さまのお声が途切れたので上目遣いに窺うと、みなさまが黙ってジーっと私を見つめていました。
 正確に言うと、6つの瞳と里美さまが向けるビデオカメラのレンズ。
 お三かたの瞳が淫靡な期待に輝いているように見えました。
 ビデオカメラが向けられたのは、自縛のレクチャーを始めろ、という里美さまの合図なのだろうと理解して、愛用の麻縄に手を伸ばしました。

「緊縛に用いるロープは基本的に、ふたつ折りにして使用します・・・」
 ひとりだけ全裸の状態でみなさまに語りかける、という行為は、思っていたよりもずっと強い恥辱感がありました。

 一般的に、着衣の中にひとりだけ全裸の同性がいたら、周囲の人は混乱や憐憫から、極力その人を視ないようにしてあげると思います。
 それか、面白がってからかうか。
 今の私の状況は、そのどちらとも違っていました。

 遠慮会釈なしに私のからだを凝視してくるお三かたの視線がもたらす、身が焦げるような羞恥。
 そんな不躾が許されるのは、私がお三かたに向かって語りかけているから。
 言わば自分で、私を視てください、とアピールしているからなのです。

 日常生活では見せてはいけないとされる恥部をすべて剥き出しにしている私を、ここぞとばかりに凝視してくるお三かたの刺すような視線。
 まさに、視姦されている、という実感がありました。
 そして更にこれから、私はそれらの秘められるべき箇所を、より扇情的に目立つように、自らの手で縛り上げていくのです。

 体温がジワジワ上がってくるのがわかります。
 早くロープをからだに巻きつけて、もっと淫らな私を視ていただきたい、という欲求が抑えられません。
 視られている、という悦びに酔い痴れながらも極力冷静を装い、レクチャーをつづけました。

「こうしてロープの先端を合わせて、ふたつ折りにします」
 右手に持ったロープを均等に折り返します。
「8メートルのロープですから、4メートルとなりますね。それで、こちらの輪になった部分を首にかけます」
 ロープの折り返し部分を首にかけようと両手を挙げかけたとき、里美さまからお声がかかりました。

「そのチョーカー、外したほうがいいんじゃない?お姉さまからの大切なプレゼントなのでしょう?縄で押し潰されちゃったりしたら一大事じゃない?」
「あ、はい。そうですね」
 別に気にはしていなかったのですが、それもそうだな、と思い、両手を首の後ろに回しました。

 期せずして、マゾの服従ポーズ、のような姿勢。
 両腋の下がガラ空きとなり、おっぱいを突き出すようにみなさまに向けていると、被虐感がグンと高まりました。

 外したチョーカーは、里美さまが受け取ってくださいました。
「これは大事に預かっておくわね。帰るときに渡してあげる」
 イタズラっぽい笑顔の里美さま。

「それで、この垂れ下がったロープを束ねて、からだの正面に順番に結び目を作っていきます。まず胸元・・・」
「慣れないうちは、首周りは大きめな輪にしておいたほうがやりやすいと思います・・・」
「そして同じように、みぞおちのへん、おへその下、股の付け根あたりにも結び目のコブを作っていきます」

 ご説明しながら、首から垂れたロープを捌き、順番にコブを作っていきました。
 眼前のみなさまが真剣なまなざしで、お手元のノートと私を交互に見ています。

「結び目は、完成したときには今より上に動きますから、思うよりも下気味にしておきます。何度か試すうちにわかってくると思います」
「股間のところにふたつコブを作ったのは、縄が食い込んだときに性器・・・えっと、クリトリスを擦って、刺激してくれるように、です・・・」

 自分で口にした言葉のはしたなさに、ゾクゾクしちゃっています。
 私の当該器官は、すでにジンジン痺れて腫れ上がっていました。
 みなさま嬉しそうにニヤニヤ。

「結び目を作り終えたら、余ったロープを股のあいだにくぐらせて、背中へ持っていきます・・・」
 みなさまに見えるようにと、からだを反転してお尻を向けました。
「首の後ろで輪になっているところに、束ねた二本のロープをくぐらせます・・・」

 ロープを引っ張ると、コブが股の亀裂に食い込みました。
「んっ!えっと、ここからは、ロープを一本づつ左右に分けて、肌に縄を這わせていきます・・・」
 この辺から私の中の理性は米粒ほどになって心中深く引きこもり、自縛に夢中になっていました。

「首の後ろからのロープを左右に分けて、それぞれ一本づつ腋の下から前へ回し、首からの輪に通します・・・」
 みなさまに向き直り、おっぱいを突き出すように胸を張りました。

「輪に通したら折り返し、おっぱいの上の方に這わせて、また背中に回します。左右均等に力を入れるようにすると模様が綺麗に仕上がります」
「それぞれのロープを背中で交差させ、再び前に回します・・・」

 縄がおっぱいの皮膚を這うたびに、淫らな声が出そうになって困りました。
 乳首がこれ以上ないくらい猛りきって、みなさまのほうへと背伸びしています。
 当然、みなさまの視線が刺すように、そこに集中しています。

「戻ってきたロープをふたつめの結び目とのあいだの輪に通し、今度は下乳持ち上げるような角度で背後に回します・・・」
「私は、おっぱいをギュッと絞られるような縛られ方が好きなので、胸元と次の結び目との間隔を狭くして、下乳を潰すように縄が這うようにしています・・・」

 自分のヘンタイ嗜好が、正直にスラスラ口についてしまいます。
 上下の縄でギューッと絞られたおっぱいの先端は、皮膚が引っ張られて引き攣り、ますます痛々しく尖りきっています。

「同じように背後に回したロープを今度は三番目の輪に通して、背後に回します・・・」
「このように、正面の縄の模様が菱形になるところから、菱縄縛りと呼ばれます・・・」
「この模様が亀さんのように六角形になると、亀甲縛りとなります。亀甲縛りにする場合は、縄をくぐらせる回数が増えるので、ロープを二組繋げて使うことになります・・・」

 縄を肌にのめり込ませるようにギュウギュウ引っ張って、自分の裸身に菱縄模様を作っていきました。
 股の裂け目を縄がヌルヌル滑り、どんどん気持ち良くなってしまいます。

「同じように下腹部の輪にも縄を通して腰に回し、最後に余った縄尻を背中に通る縄に結んで巻き付ければ完成です」
「私は、かなりキツメに絞りましたが、慣れないうちは手順を覚えることを優先して、緩めから始めるといいと思います」
「ご覧いただいておわかりになったと思いますが、正面の各結び目が最初のときより、けっこう上に来ています。この辺の加減は何度か試すうちにわかってくると思います・・・」

 そのときの菱縄自縛は、我ながらとてもいい出来でした。
 綺麗な菱形が素肌に均等に満遍なくピタッと吸い付き、股間のコブもしっかりクリトリスのすぐ下に来ていました。
 
 裂け目を通るロープは、もうすでにグジュグジュ。
 この状態だとローブのどこを引っ張られても、ワレメに食い込むロープが滑り、確実に腫れ上がったクリトリスを潰してくることでしょう。
 事実、少し屈めていたからだを起こしただけで、コブがクリトリスを直撃しました。

「あんっ!、そ、それと、最初は、下半身は、下着を着けたままのほうが良いと思います。じ、直だと、刺激が強いので・・・汚れてもいい下着を着けで練習してください」
 ビリビリッと全身をつらぬいた電流にクラクラしつつ、なんとか喘ぎを押し殺して告げました。

「全身が火照ってるね?気持ち良さそう」
「うん。マゾ子ちゃん、縛ってるうちにどんどんエロっぽくなってった」
「縛り自体は、意外と簡単そうじゃなかった?」
 お三かたが小声で口々にご感想を言い合っています。

「それで、この菱縄縛り自体は、ご覧のように拘束というよりも、からだに縄が這っているという背徳感とかアブノーマルさを愉しむのがメインとなります」
「もちろんキツく縛れば、縄が肌に食い込む拘束感も愉しめますし、先ほどそちらのかたがおっしゃられたように、この上に何か着てお散歩するとか、そういう密やかな愉しみ方もいいと思います」
「とくに自縛の場合は、両手を最後まで拘束することが出来ないので、からだを自由に動かせない系の拘束感を愉しみたいのであれば、最後にもう一本ロープを用意して、後ろ手縛り、というのをするとよいです」

「ただし、自縛の場合、手や腕まで不自由にしてしまうと、抜け出すために前もってそれなりの準備が必要となります。ハサミとかナイフとか。ロープを切って解くことになりますから」
「自縛のときの両手の拘束は、私の場合、なるべくロープを切りたくないので、比較的ラクに外せる手錠とか手枷を使っています」
 さっき里美さまにかけられた重い手錠の感触を思い出し、キュンとマゾマンコの奥が震えました。
 
「以上が菱縄縛りの自縛の仕方です。何かご質問は、ございますか?」
「あ、えっと、ちょっと後ろを向いてもらえますか?」
 熱心にペンを滑らせていたノートからお顔を上げたヨーコさまが、ペンをこちらへ向けておっしゃいました。

「あ、はい・・・」
 みなさまに背中を向けるとき、自然と両手が頭の後ろに挙がっていました。
 肩の動きと共にからだを這う縄全体が上向きに引っ張られ、またしてもコブが肉芽を直撃。
「あふっ!」
 みなさまから見えないのをいいことに、眉根を寄せてはしたない声を小さく漏らす私。

「へー。後ろも綺麗にバッテンのシンメトリーなんだ」
「余った縄はあんなふうにグルグル巻きにしちゃうんだね」
「縄がお尻にかなり食い込んでるよね」
 お三かたが思い思いのご感想をつぶやかれる中、里美さまの愉しそうなお声が聞こえました。

「あなたたち、今、マゾ子ちゃんがしているポーズの意味、知ってる?」
「うーん。よくわからないけれど、あれってアメリカ映画とかで警察が犯人に銃を構えて、フリーズ、ってさせたときの、犯人がする格好ですよね?」
 倉島さまのお声。

「おお、よく知っているわね。マゾ子ちゃん?そのまま前向いて」
 お言葉に従って回れ右をすると、ビデオカメラを構えられた里美さま。

「両手を頭の後ろに当てて、おっぱいも腋の下もおへそも、もちろん性器もまったく隠せないポーズ。これを、マゾの服従ポーズ、って呼ぶの」
「ほら、ワンちゃんやネコちゃんが、かまって欲しいときにゴロンと仰向けになってお腹見せちゃうじゃない?あれと同じよ。マゾっ子がしたら、それは、虐めて欲しい、っていうこと」
「わたしのからだを、どうぞご自由にしてください、っていう服従のアピールね」
 
 自分でも、なぜ今このポーズをしたのかわかっていませんでした。
 マゾモードに入った私にとっては、やり慣れたポーズですから自然と出てしまったのでしょう。

「今の実演で自縛ノウハウはだいたい頭に入ったでしょう?あなたたち、かなり真剣にノート取っていたし」
 おっしゃりながら里美さまが立ち上がり、ツカツカと私に近づいてきました。

「お家に帰ってやってみて、何かわからないことがあったら、またいつでもマゾ子ちゃん呼んであげるからね」
「それにしても、わたしも初めて見たけれど、お見事なロープ捌きだったわ」
 私の横に立たれた里美さまが、私の下腹部を走るロープをつまみ、クイッと引っ張りました。

「あっふぅ!」
 コブがクリット直撃。
 すがる目つきで里美さまを仰ぎ見ます。
 もっとしてください、というお願いを込めて。

「そろそろ陽も傾いてきたし、自縛の講義はここまでということにして、このえっちに縛られたマゾ子ちゃんをみんなでちょっと虐めてみない?」
 いつの間にご用意されていたのか、おっきなリングがぶら下がった真っ赤な首輪を首に巻かれました。
 形といい太さといい、街で見かけるワンちゃんの首輪そのものでした。

「愛しのお姉さまのチョーカーの代わりに、わたしが首輪を着けてあげる。うちのショップオリジナルの、人間のマゾペット用の首輪よ」
「一般的にペットって、首輪を着けてあげた人が飼い主になるわよね?今のマゾ子ちゃんの飼い主は誰?」
 先ほどまでとは雰囲気の変わった低めの冷たい声音で尋ねてくる里美さま。
 あ、この人エスの役、やり慣れている、とすぐにわかるお声でした。

「あ、はい・・・目の前にいらっしゃる、愛川里美さまです・・・」
「飼い主の命令は、何でも聞けるわよね?」
「はい・・・」
 信じられない、という面持ちで里美さまと私の顔を交互に見やるお三かた。

「あのテーブルの上のオモチャ、どれでも好きなのをいくつでも試してみていいわよ。マゾ子ちゃんのからだに」
 里美さまのお顔には、ゾクゾクするほど嗜虐的な笑顔が浮かんでいました。
 ああん、やっぱり、そうなるんだ・・・

「そ、それは面白そうですけれど・・・でも、その、えーっと、マ、マゾ子さんは、それでいいのですか?」
 倉島さまが、戸惑いとワクワク半々みたいな困ったようなお顔でおっしゃいました。

「マゾ子ちゃんには、いいも悪いも無いの。そもそもこの子は、そういうことをされるために派遣された、今日ここでみんなに虐められるべき存在なのだから」
「ほら、こんないやらしい顔になっているのよ?火照っちゃって瞳なんかトロンとしちゃって、虐められたくて仕方ない、っていう感じでしょう?}
 冷たく言い放つ里美さま。

 確かにそうでした。
 この自縛のレクチャーを頼まれたときから私は、そのお相手のお客様に弄ばれることを予想していましたし、期待してもいました。
 自縛をご披露して、終わったらそのまま、お疲れさまー、で解放されるとは、まったく思っていませんでした。
 
 菱縄自縛し終えた瞬間から、私の全身が新たな辱めを期待して疼き始めていました。
 そんなふしだらな期待が、後ろを向いて、とおっしゃられたときに、自然と服従ポーズを取ってしまった理由なのでしょう。

「今日のことはちゃんとマゾ子ちゃんのお姉さまからの許可もらっているの。実は、わたしもマゾ子ちゃんをちゃんと虐めるのは今日が初めてなのよね」
「それに、あなたたちが来る前の打ち合わせでマゾ子ちゃんの口から、すべて従うつもりでここに来ました。何でもご命令ください、って宣言までもらったし、一切遠慮は要らないわ」

「あなたたちも耽美な小説を書いているなら、こんな責めをしてみたいとか、されてみたいとか、あるでしょう?いい機会だから、試してみるといいわよ。マゾ子ちゃんのからだで」
 私の首輪をススッと指で撫でた里美さまが、私の右手を取りました。

「そこの椅子に座って」
 私の荷物をどかして椅子を空けてくださいました。
 あのヘンな形の椅子です。

 一見すると、よくある形のゆったりめなラウンジチェア。
 オレンジ色っぽい赤色で背もたれは短かめ、左右に肘掛けがあって座高高め。

 一番ヘンなところは、お尻を乗せる座面でした。
 普通は四角形の平面ですが、この椅子のは、内側に向けてUの字に抉れていました。
 腰掛けてみると、お尻を乗せると言うよりも、左右の腿で座っている感じ。

 洋式便器の楕円形の便座を思い出していただくと、わかりやすいかもしれません。
 あれが半円形になっている感じ。
 実際に座ると、お尻の真下が空間になるのがわかりました。

「なかなか座り心地のいい椅子でしょう?」
 ご冗談ぽく笑った里美さまが、一度テーブルのほうへ行き、すぐに戻られました。

「みなさんがマゾ子ちゃんにイタズラしやすいように、しばらくのあいだ、恥ずかしい格好で拘束させてもらうわね」
 里美さまが座った私の背後に回り、椅子の背もたれの向こう側に私の両腕を束ね、先ほどの本格的な手錠をカチャンとかけました。

 両腕と背中のあいだに背もたれを挟み込み、背もたれの金属支柱に手錠のチェーンが絡むように後ろ手で施錠されたので、上半身がほとんど動かせなくなりました。
「これでマゾ子ちゃんは、この手錠を外さない限り、この椅子から離れられないわね」
 里美さまが、うふふ、とほくそ笑みました。

 それから里美さまは私の足元に屈み込み、私の左右の足首にそれぞれレザーの足枷を巻いて南京錠で施錠されました。
 足枷の色は首輪と同じ赤で、銀のリングに頑丈そうな短い鎖が繋がっています。

「ちょっと失礼」
 里美さまが私の左足首を持ち、無造作にガバッと持ち上げました。
「ああん!いやんっ」

 いきなり大股開きとなった私の左脚は、あれよという間に左側の肘掛けを左膝の裏側に挟むような形で持ち上げられ、足枷から伸びる鎖の端が、手際よく椅子の裏側に繋がれたようでした。
 肘掛けを膝裏で挟んだ形の左脚は、どんなにがんばっても最早閉じることが出来ません。

「あっ、いやーっ、そんなぁ、里美さまぁーっ」
 右足も持ち上げられる気配を感じて身を捩りましたが、上半身を背もたれに磔られている身ではどうしようもありません。
 あっさりと右側の肘掛けも跨がされて固定され、文字通り、大股開き、の格好になりました。
 間髪を入れず背もたれがゆっくりリクライニングし、上半身が沈んだ分だけ下半身が持ち上がります。
「いやーーーっ!」

 みなさまに股縄の股間を180度近くまで開いて、見せつけていました。
 濡れそぼった無毛の膣穴の中央に、2本の麻縄が吸い付いているはずです。
 椅子のUの字に開いた空間から、ポタポタと淫汁がしたたり、床を汚してしまっているはずです。
 お三かたも立ち上がり、無防備に晒されたその部分を覗き込むように凝視されています。

「エロ過ぎだよね、この格好。見事なM字」
「すごーい。ロープまでグショグショに濡れてる」
「この角度だと、ちょっとロープどけたら、お尻の穴まで丸見えじゃん。信じられなーい」
「確かに、こんな恥ずかしい姿にされたツインテの女の子を、現実に自分の目で見ているっていうことが信じられない。まさに生贄って感じ」

 容赦のないお三かたのご感想に被虐感がグングン昂ります。
 それを煽るように里美さまのビデオカメラのレンズが、動けない私に近づいたり遠のいたり、それこそ舐めるように隅々まで撮影されました。

「倉島さん、さっきのタイマーボックスをちょっとお借りするわね?」
 いったんビデオカメラから目線を外された里美さまがおっしゃり、テーブルの上のタイマーボックスを持ってこられ、椅子の脇に立たれました。

「これが、マゾ子ちゃんにかけられた手錠と南京錠を開けられる鍵」
 短いチェーンに繋がった小さな鍵を、私の鼻先でプラプラ揺らす里美さま。

「みなさんうちのお得意様だから大サービスで、最後はタイマー拘束プレイの参加型実演で締めましょう。マゾ子ちゃん、何時間くらい虐められたい?」
「えっ?あの、その、えっと・・・」
 突然のご質問に、言葉が出ない私。

「あなたたち、今日これからのご予定は?」
「あ、いえ、これといって別に。今日はこのショールームに来ることだけを楽しみにしていましたから」
 倉島さまが、里美さまと私を交互に見ながら嬉しそうにおっしゃいました。

「そっか。それなら別に帰りが遅くなってもかまわないんだ?2時間でも3時間でも」
「はいっ!」
 お三かた、綺麗に揃ったユニゾンのお返事。

「でも、あんまり虐めすぎてマゾ子ちゃんが壊れちゃってもマズイし、まあ、1時間位にしておきましょうか」
 タイマーボックスの蓋を開け、チャリンと鍵をボックスの中に落とした里美さま。

「実際、時間が来て鍵がリリースされたとしても、今のマゾ子ちゃんは、鍵を渡してもらわない限り、自分の力でこの拘束を解くことは出来ないのだけれどね」
 イジワルくおっしゃった里美さまが、蓋に付いたタイマーのダイアルをグルリと回されました。


非日常の王国で 12