2011年10月1日

氷の雫で濡らされて 20

シャワーをゆっくり丁寧に浴びて、からだ中の汗やいろんな液体を洗い流してサッパリしました。
白いバスタオル一枚巻いてリビングに戻ると、いい匂いがしていました。
隣接したダイニングのテーブルの上に、美味しそうなお料理がたくさん並んでいました。

シーナさまのおススメで、シーナさまに買っていただいたグリーンのボートネックのチュニックを素肌にかぶり、リビングのソファーに腰掛けて髪をドライヤーで乾かしました。
胸元の布地が2箇所、控えめに浮き出ていてちょっぴり気恥ずかしい。
そうしている間にシーナさまは、お料理をレンジで温めたり、スープをコンロで炙ったり、イチゴを洗ったりキウイを剥いたり、とテキパキお夕食の準備を進めていました。

「いただきまーす」
グラスに注いだビールで乾杯した後、お夕食が始まりました。
4人掛けのテーブルの長いほうの一辺に、シーナさまと隣り合わせに並んで座りました。
BGMはドビュッシーのピアノ曲。
「いろんな種類が食べたくて、たくさんを少量づつ買ってみたの。だから見た目より、そんなに量的には多くないわ」
シーナさまがトマト系のパスタをお皿に取ってくれながら言いました。

テーブルの上には、色とりどりのいろんなお惣菜が、どれも湯気をたてて並んでいます。
シーナさまは、その小柄なからだに似合わず、モリモリと美味しそうにフォークを小さなお口に運んでいました。
私も今まで使った体力の分、正しくお腹が空いていたので、テーブルのあちこちへフォークを伸ばしてモグモグ食べました。

お食事の間中、シーナさまとたくさんおしゃべりしました。
えっち系な話題ではなくて、フツーのおしゃべり。
主にシーナさまが話題を振って、私が答える感じ。
学校ではどんな科目を専攻してるのか、とか、普段はどこで何を食べているのか、とか、お友達はどんな子たちか、とか、東京に来てからどこへ遊びに行ったか、とか。
まるで、昔からのお友達と喫茶店でおしゃべりしているときみたいに、和気藹々と楽しい時間が流れました。
ちなみに、シーナさまが一番好きな食べ物は、以前地元で働いていたファミレスのエビマカロニグラタンだそうです。

「あらら。もうこんな時間!?」
テーブルの上のお料理もあらかた空になってホッと一息ついた頃、壁に掛かかったまあるい時計に目をやったシーナさまが声をあげました。
8時半を少し過ぎていました。

「あんまり居心地が良くて油断しちゃったわ。そろそろ行かないと」
シーナさまが席を立ち、ご自分のバッグのところへ行って何やら点検をし始めました。
確か9時のお約束、って聞いていました。
「だいじょうぶですか?間に合いますか?」
私も席を立ち、意味も無くアタフタしてしまいます。

「うん。それはだいじょうぶ。後片付けのお手伝い、出来なくてごめんなさいね。散らかすだけ散らかしちゃって・・・」
「いえいえ。そんなの私一人でラクショーですから。それより、長々とお引止めしちゃって、美味しいお夕食までご馳走になっちゃって」
オタオタしながらシーナさまの傍に駆け寄った私の言葉を聞いているのかいないのか、シーナさまは、パチンとバッグを閉じて肩に提げてから立ち上がり、私のほうに向きました。

「今日使った鎖とか道具は、みんなキレイに拭いてからこのカートの中に入れたから。このカートは当分、直子さんちに預けておくわ。そのほうがわたしも次来るときラクだし」
「もちろん中身は自由に使っていいわよ。自分で工夫して、セルフボンデージの拘束アイスタイマー遊び、やってみるといいわ」
シーナさまがニッと笑いかけてくれます。
「直子さんの学校もそろそろ夏休みでしょ?わたしも時間作って必ず近いうちにまた、遊びに来るから。そのときはもっとダイタンでいやらしい遊び、しましょーね」
「はいっ!私も楽しみに待ってます!」

期待に満ち溢れた目を爛々と輝かせた私の答えを聞いたシーナさまは、ニコッと微笑んでからテーブルのほうへ戻り、テーブルの上のアイスペールに右手を突っ込み、大きめの氷を一かけら掴んで戻って来ました。

「んー」
シーナさまがその氷をお口に咥えて私のほうにお顔を突き出しました。
「えっ?」
不意をつかれてキョトンとしている私を見て、シーナさまは咥えていた氷をいったん指でつまんではずし、じれったそうなお顔で私を見ました。
「ほら、早くしてっ!」
言ってから、もう一度氷を咥え直します。
「あ。はいっ!」

いささか情緒に欠けてしまった鈍い私。
気を取り直して、ドキドキしながらシーナさまの咥えた氷に唇を近づけていきました。
今度は二人とも、目は開けたまま。
シーナさまと私の視線が至近距離で交わります。
両腕は、お互いの背中にまわり、互いにギュッと自分のほうへ抱き寄せています。
氷の雫がポタリと垂れて、私とシーナさまの胸元を小さく濡らします。
見つめ合ったまま、互いの唇が重なりました。
2秒、3秒、4秒・・・
7秒間、じっと唇を合わせた後、シーナさまのほうからからだを引きました。
私の口の中に、冷たい氷が残りました。

「それじゃあ、またね。ごきげんよう。鍵は全部、閉めていくからねー」
背中を向けたまま右手だけ上げてヒラヒラさせて、シーナさまがリビングのドアの向こうに消えました。
「ほひへんほー」
口一杯の氷を頬張ったまま、私も大きな声でご挨拶。
玄関まで見送ったほうがいいのかな、とも思ったのですが、なんとなくこのまま、シーナさまの唇の感触の余韻に浸っていたい気分でした。
その場にボーッと立ち尽くしたまま、玄関のドアが閉じるバタンという音を聞きました。

「やっぱり一つだけ、謎が残っているよねー」
流しでお皿やグラスを洗いながら、独り言をつぶやいてしまいました。
シャワーを浴びている最中に、ふっと湧いた疑問でした。
お食事のときにシーナさまに聞いてみようと思っていたのですが、あまりにおしゃべりが楽しくて、聞きそびれてしまいました。

その謎とは・・・
いったんお外に出たシーナさまが、どうしてもう一度私のお部屋に戻ってこれたのか?

前にちょこっとご説明した通り、私のお部屋に来るためには、エレベーターの解除キーを私に申請しなければなりません。
4階にエレベーターを止めるためには、マンションのエントランスでエントランスキーで操作するか、部屋番号を押して私へ連絡して、こちらで操作するかしなければならないのです。
たぶんシーナさまは、私がやよい先生にお渡しした私のお部屋の玄関の鍵は、やよい先生から借りてきていたと思います。
でも、その鍵ではエレベーターは操作出来ませんし、エントランスキーの暗証番号は、私の母以外には、誰にも、やよい先生にもお教えしていませんでした。
それなのにシーナさまは、一度外出され、エレベーターの解除キー申請無しでまた戻ってこられました。

まさかシーナさま、一時間以上の間、蒸し暑い4階のドアの外で待っていたとか?
いえいえ、だってシーナさま、その間にお洋服着替えていらしたし、鞭とか一部の私物は持って帰られたみたいだし、それはありえません。
ていうことは、???・・・

いくら考えても納得のいく結論が出なかった謎の答えは、その夜10時頃にかかってきたやよい先生からの電話で氷解しました。

「なんだかずいぶん盛り上がったみたいね?シーナったら、あの子にしては珍しく大コーフンしてたわよ?」
やよい先生のお声にかぶさって、なんだかガヤガヤ猥雑とした雰囲気が感じられます。
お店からみたい。

「ん?そう。ようやくお店の客足が落ち着いて常連さんばっかになったから、他の子に任せて一息ついて休憩中」
「それよりシーナ、なおちゃんのことずいぶん気に入っちゃったみたいだよ?普段のあの子の趣味とはぜんぜん違うのに」
「えっ?シーナ、言ってないの?ま、わざわざ言わないか。シーナはね、フケ専なの。百合的に言うとウバ専?」
「あはは。なおちゃん、わかんないよねー。つまり、自分より年上の女性を苛めるのが大好きなのよ、シーナは。それも親子ほど年上などっかの有名会社の社長夫人とか、お嬢様育ちのゴージャス系なご婦人とか」
「そういうおばさまがたに、あの子、妙に気に入られちゃうんだよねー。あ、おばさまって言っても、それなりの容姿のキレイでお上品系な女性でないとダメなんだけど」

「そういう人たちには独自のネットワークがあるみたいでね。あと、普段きらびやかに着飾って、ある種、傲慢に振舞っているご婦人方って、意外とマゾ性が強い人が多いみたいなんだよね。ほら、そういう人の配偶者ってお金持ちだから外にもいっぱい女囲ってるじゃない?」
「あんまり構ってもらえないから若い男と浮気でもしたいけれど、バレるとややこしいし自分の生活も危うくなる。その点、女性とならいくらでもごまかし効くし、って、どんどんプレイに嵌まっていくみたい」
「で、そんなお金持ちおばさまのネットワークで、シーナは超人気アイドルなの。シーナ自身も年上苛めが大好きだから、お互いハッピー」
「たまに、おばさまたちが連れて来たM男も苛めてるんだって。男の場合は、絶対に素手ではさわらない、さわらせないで徹底的に泣くまでやる、って言ってた」
やよい先生が愉快そうに笑いました。

「そんなシーナがなおちゃんとのこと、すっごく嬉しそうに言ってきたからさ、あたし、さすがなおちゃん、て見直しちゃった」
「だから、今夜のことは許してあげてね。相手のおばさま、シーナのある意味パトロンだから」
「そのおばさま、なおちゃんのマンションの一番上に住んでいるんだよ」
シーナさまが、そのうち説明する、って言葉を濁していた事情を、やよい先生があっさり暴露してしまいました。

なるほど。
それならエレベーターの謎も、なんとなく解けた気がします。
同じマンション内の行き来なら、なんとでもなりそう。
きっと非常階段を使ったんだ。

「一番上の階は、ペントハウス風になっててね、お部屋部分はその分ちょっと狭いけれど、塀も高くめぐらされてるからまわりから見えないし、庭でキワドイ水着とか素っ裸でも日光浴が出来たりするんだ。今度一緒におジャマしよっか?」
「そのおばさまもそこに住んでいるわけじゃなくて、週に2回くらい、シーナと遊びにやって来る程度。もちろんおばさまの持ち物よ。それで普段はシーナが一人で住んでるんだ」
「そのおばさまとは、あたしも何度か会って、もう気心が知れてるから心配いらないよ。なおちゃんも絶対知ってる有名大会社の社長夫人」
「おばさまは40ちょいくらいの、見るからにお上品な感じの美人さんなんだけど、ドMでねえ。いやらしいカラダつきなんだ・・・」
やよい先生は、お酒が入っているのか少しお下品になっているみたいです。

ご機嫌いいみたいで普段より饒舌なやよい先生は、ずっとしゃべりっぱなし。
私は、一々驚きながらそのお話に耳を傾けていました。

わかったことは、シーナさまがおばさま好きなこと。
私が住んでいるマンションの一番上の階に住んでいること。
そのお部屋の持ち主は、お金持ちでお上品な美人さんのドMで、シーナさまのパトロンさんなこと。
シーナさまがお手伝いしているという、やよい先生のお仕事のことを聞くと、それだけはまたいずれ、とお話をはぐらかされてしまいました。

「だから、これからシーナとなおちゃんは、もう勝手に遊んでいいからね。シーナなら信頼出来るから、あたしも安心してなおちゃんを任せられる」
長くなっちゃったから、そろそろ電話切らなきゃ、ってなった後、やよい先生がポツンと言いました。
なんだか、やよい先生から突き放されたみたいで、一気に悲しい気持ちになりました。
「あ、でも、あたしはあたしでまた、なおちゃんちに行くからね。せっかくなおちゃん、東京に来たんだもの、たくさん苛めなきゃもったいない」
私の沈みかかった気持ちに気づいて持ち上げるみたいに、やよい先生が明るく言ってくれました。
途端に晴れ上がる私の気持ち。
単純だなー。

電話が切れた後、私はしばらくボーッとしていました。
今日のお昼過ぎから今までのことが、あれこれいろいろ頭に浮かんでは消えていきました。
なんだかすっごくたくさんのことが起こって、脳が処理しきれていない感じ。
からだの奥からジーンとしてきて、どんどん眠気が高まっていました。
あれだけたくさんイったからだは、さすがにまだまだグッタリ疲れているみたいです。
今頃シーナさまは、4階分離れた頭上のお部屋で、美人なおばさまを苛めているのかな?
そんなことをふっと考えて、あわてて頭をブンブン振りました。
考えても仕方の無いことは、考えないほうがいいですよね。

とにかく私は、シーナさまというステキなパートナーにめぐり会えたんです。
それも、すっごく身近に住んでいて、会おうと思えばいつでも会えるパートナー。
その上、やよい先生も、まだまだ私と遊んでくれそう。
眠いながらも、気持ちがどんどんワクワクしてきました。

今年の夏は、いつもに増して楽しく過ごせそうです。
まずは明日、シーナさまにメールを入れて、次にお会いする日を相談しよう。
明日が早く来るように、今夜はまだ早いけど、ゆっくり休もう。

冷蔵庫から取り出したロックアイスのかけらを一つ、口いっぱいに頬張りました。
シーナさまの唇の感触が鮮やかによみがえりました。
電気を全部消してチュニックを脱ぎ、裸でベッドに潜り込みました。
仰向けになって目を閉じて、唇をチュッと闇に突き出しました。

おやすみなさい、シーナさま。


独り暮らしと私 01 へ

2011年9月25日

氷の雫で濡らされて 19

何かにからだを強く揺さぶられている気がして、目が覚めました。
「・・・と、カゼひいちゃうわよ?」
誰か、女性の声がぼんやりと耳に届きました。

閉じていたまぶたをゆっくりと開けていくと、私の顔を覗き込んでいる誰かと視線が合いました。
「わっ!」
声を出すと同時に意識がハッキリして、私はガバッと上半身を起こしました。
反射的に飛び退く誰か。

「あんまりぐっすり眠っているから、起こすの可哀相とも思ったのだけれど、そんなに汗かいたからだで裸で眠っていたら100%、カゼひいちゃうからさ」
目の前にシーナさまがいました。
ハワイのムームーみたいなカラフルで涼しげなお洋服を着て、私を見てニコニコ笑っています。
「あ、シーナさん!あ、さま・・・なんでここに?」
言ってから私は、意味も無くまわりをキョロキョロ見渡してしまいました。

「直子さんが無事、脱出できたか心配で見に来てあげたのよ。あと、今はプレイ中じゃないから普通にシーナさんでいいって」
シーナさんがまたベッドのほうに近づいてきて、私の枕元の縁にチョコンと腰掛けました。
「一応自力で脱出できたみたいね」

そうだ。
私、最後にイった後、急に眠くなってきて、そのまま眠っちゃったんだ。
私のからだには、大きなバスタオルが2枚、かけられていたみたいでした。
でも、起き上がってしまったから、今はおっぱい丸出し。
タオルの下で開いている膝を閉じようとしたとき、足首の鎖がジャランと鳴って、両脚は鎖に繋がれたままだったことを思い出しました。

お部屋は、心地良い温度に戻っていました。
シーナさんがエアコンを点けてくれたのでしょう。
バスタオルをかけてくれたのもきっとシーナさん。
マイクスタンドも片付けられ、窓にはレースのカーテンだけ引かれていました。
お外はすでに暗くなっていました。

「わざわざありがとうございます、シーナさん。ご心配とお世話をおかけしちゃったみたいで・・・お部屋も片付けていただいたみたいだし・・・」
「いいの、いいの。わたしもおかげですんごく面白いものが見れたから」
シーナさんがイタズラっぽく笑いかけてきました。

「わたしがいつ、ここに戻ってきたのか、知ってる?」
「えっ?」
「わたしがリビングのドアをそっと開けたとき、部屋はカタカタカタカタうるさい音がしてて、この上で直子さんが、すんごい勢いで悶えてた。オマンコいいーっ、なんて、おっきな声で叫びながら」
シーナさんが愉快そうに笑いました。

「えーーーっ!?」
見られちゃってたの?
それも一番見られたくない、恥ずかしすぎる修羅場なワンマンショーを・・・
私の全身を、全血液が逆流しました。

「直子さんたら、ドアを開いても閉じても、ぜんぜん気がつかないんだもの。夢中になってバイブをズボズボ出し挿れして、おっぱいめちゃくちゃに揉みしだいて」
「腰がビクンビクン、いやらしく何度も浮いていたわ。わたし、リビングのドアのところに立って、ずーっと見ていたの」
「そのうち、床に落ちたローターが私の足元まで転がってきたのね」
「カタカタ凄い音だったから、いくら防音とは言え、下に住んでる人が在宅だったら絶対苦情来るなーってハラハラしてたから、思わず拾い上げちゃった」
「そしたらあなたったら、あれだけうるさい音が鳴り止んだことさえ、気がつかないんだから」
シーナさんが苦笑いを私に向けました。
私は、あまりの恥ずかしさに火照ったまま、うつむいて上目遣い。

「とにかくすんごい喘ぎ方だったわねえ。上半身ガクガク震わせて、おっぱいプルンプルン揺らして、両手でからだ中まさぐって。見方によったら悪魔祓いの儀式中、みたいな?」
「潮噴いたのもバッチリ見ちゃったわよ。ずいぶん飛んだわねえ」
「そのうちに、ローターとかスポイトとかを床にぶん投げた、と思ったらぐったりしちゃって、ベッドにひっくり返って。やがて寝息が聞こえてきた」
「部屋はすんごく暑かったけど、固唾を呑んで見守っちゃたわよ。一部始終。それで、直子さんが眠ってから軽く片付けした後、起こした、ってワケ」
「だから、直子さんが眠っていたのは、ほんの15分くらいね。ちなみに、わたしは、出て行ってから1時間20分くらいで戻ってきたの。そのときはもう鍵は落ちていたから、アイスタイマーもだいたい予想通りだったみたいね」

シーナさんは、お話している最中に立ち上がり、お話しながらダイニングへ行って、またすぐ戻ってきました。

「そんなワケでお疲れさま。わたしが目撃した野生の直子さんは、すんごくいやらしくて、すんごくスケベで、すんごく淫乱で、すんごくマゾで・・・」
言いながらシーナさんの指が、依然としてうつむいている私の顎にかかり、クイッと私の顔を上向きに持ち上げました。
シーナさんと見つめ合います。
私は、絶望的な恥ずかしさで、火傷しそうなほど真っ赤に火照っているはずです。

「それで、すんごくセクシーで、すんごく可愛かった」
「目を閉じて、口を大きく開けなさい」
シーナさま、お久しぶりなご命令です。
この冷たい口調を聞くとやっぱり、シーナさん、ではなく、シーナさま、と呼びたくなります。
私は素直に言われた通り従い、両目を閉じて、口を大きく開けました。

私の口の中に何か冷たい雫がポタリと垂れて、思わず目を開けてしまいました。
シーナさまが長さ8センチくらいのゴツゴツした菱形のロックアイスを端から三分の一くらい、ご自身のお口で咥え、そのお顔を私の顔に近づけてきていました。
シーナさまが目を軽く閉じているのを見て、私もあわててまた目を閉じました。
ロックアイスのゴツゴツした感触が私の口中に侵入してきて、一瞬、唇同士が触れた、と思ったら眼前の気配が遠のきました。
「たぶん、すんごく喉が渇いているでしょう?それしゃぶって落ち着いたら、シャワーを浴びてサッパリしちゃいなさい」
シーナさまがやさしくおっしゃいました。

確かに口の中がカラッカラに乾いていて舌がまわらず、しゃべるのにも不自由なほどだったので、シーナさまに口移しでもらった氷の塊は、まさに甘露の味がしました。
その上、今、たしかに触れ合った私とシーナさまの唇・・・
嬉しさに我を忘れて、思わずシーナさまの細い腰に両腕でギューッとしがみつきました。
ずいぶん前にデパートで出会ったときと同じパフュームのいい香りがしました。

「ひーにゃひゃにゃ。ひゃひひゃひょーひょにゃひひゃひゅ!」
氷を口いっぱいに頬張ったまま感激してお礼を言うと、シーナさまが少し照れたようなお顔になり、これじゃイケナイと思い直したのか、キッと真面目なお顔を作って、私の両腕を邪険に払い除けました。
「言っておくけど、今のはキスじゃないからね?喉が渇いてるだろうと思ったから・・・奴隷にあげる飴と鞭の、単なる飴のほうだから・・・」
「それに、直子さん?どうするつもりだったの?この鍵、ずっと向こうのほうまですっ飛んでたわよ?わたしが来なかったら、足の鎖はどうやってはずすつもりだったの?」
シーナさまは、わざと怖いお顔になって、わたしの目の前に輪っかの付いた南京錠の鍵をプラプラさせました。

それは知らなかったけれど、もうそんなことはどうでもいいような気分でした。
私は、シーナさまと唇チューが出来たことで、すっごくルンルンな気持ちになっていました。
もう、シーナさまったらツンデレなんだからー。
シーナさまは、照れると怒った感じになっちゃうみたいです。

シーナさまが私の両脚の鎖もはずしてくれて、ついでに赤いエナメルの手枷と足枷、ショーツとワンピースも脱がせて丸裸にしてくれました。
私はずっとされるがままで、ソファーベッドの上をゴロンゴロン。
口の中の氷は、とっくに溶けて無くなっていました。

「ずいぶんあちこちに痣が出来ちゃったわねえ。見るからにマゾ奴隷って感じでわたしは好きだけど。完全に消えるまで一週間てとこかな?それまでプールとか温泉には、行けないわねえ」
シーナさまはイジワルそうに言いますが、私は、そんなこともどうでもいいと感じていました。
確かに、私のからだのあちこちに、赤紫や真紅やピンクの痣やみみず腫れが痛々しく、白い肌を飾っていました。
でも、それはそれで艶かしく淫靡で、かえってセクシーにも思えました。
シーナさまにぶたれるなら、どんなに痕が残ったって・・・
シーナさまの細い指が気まぐれに、私のおっぱいや太腿やお尻の痕をなぞるたびに、性懲りも無くゾクゾク感じていました。

「さ、ゆっくりシャワーを浴びてきなさい。その間にわたし、お夕食の用意しといてあげる。さすがにお腹、空いたでしょ?」
「あ、はい。でも、いいんですか?」
「さっき、フードコートでいろいろ買い込んできたから。出来合いのお惣菜だけど、美味しいって評判のお店なの。直子さんと一緒に食べようと思って」
「うわー、嬉しいです。今夜は泊まっていかれます?」
「わたしも当初はそのつもりだったんだけど、急に用事が入っちゃってね。夜の9時から」
「9時からお仕事、ですか?」
急激にガッカリしながら聞きました。
「仕事、とも言えるのか、言えないのか・・・奴隷の一人に急に呼び出されてね・・・」
シーナさまが謎なことを言って、言った後また苦笑い。

「奴隷に呼び出されるご主人様、ってのもなんだか可笑しな話だけどね。ま、いろいろあるのよ、長く生きていると」
「直子さんにもそのうち説明する機会があるでしょう。それまでは、今のは聞かなかったことにしといて、ね?」
シーナさまがニッて笑いかけてきました。

「もちろん直子さんとはまた近いうちに時間作って、じっくり遊ぶつもりよ。あなた面白いもの。どんどんアイデアが湧いてくるし、何よりわたしが萌えられる」
「ゆりさまともさっき電話でお話したの。前半戦のご報告がてら。それで、ゆりさまからも直子さんの今後の貸し出し許可もいただいたし、当分わたしからは逃げられないわよ?」
シーナさまがニヤリと笑って、今は普通に戻っている私の右の乳首をピンって人指し指で弾きました。
「いやんっ!」
その途端に私の官能がポッと小さく燃え上がり、背筋がゾクッとしてしまいました。

どうやら私は、本気でシーナさまとのSMアソビを気に入ってしまったようでした。
今夜はダメでも、近いうちにまたシーナさまが遊んでくれる。
そう考えるだけで、心がワクワクして前向きな気持ちになれました。
奴隷の一人、っていう言葉は少し気になったけれど、シーナさまは社会人だし、昔からやよい先生ともお付き合いされていたし、確かにいろいろあるんだろう、って考え直して、そのことについてはそこで思考停止することにしました。

「ほら、早くシャワーしてらっしゃい」
シーナさまに裸の背中をパチンて軽くはたかれました。
「はい。シーナさまとのお夕食、すっごく楽しみです」
確かにお腹も空いていました。
私は、本心からそう言ってシーナさまに深々とお辞儀をしてから、バスルームに駆け出しました。


氷の雫で濡らされて 20

2011年9月24日

氷の雫で濡らされて 18

「んんんーーーーっ!!」
セルフ焦らしによって蓄積されてきた全身を啄ばむ被虐的官能が、クリトリストを嬲る震動と激しく共鳴していました。
からだのあちこちから湧き起こる凄まじい快感が束ねられ、一点めがけて押し寄せてきます。
「んぐぅーーーーーっ!!」

私は、あえて自分に身悶えることを禁じ、両手両足先に力を入れて、じっと横たわったまま快感の波に耐えてみることにしました。
許して、許して・・・
でも、それも一分ともたず、押し寄せる快感に知らず知らず、腰が激しく上下左右にグイングインとグラインドしていました。
両手両足はウネウネと波打って、私の自由を奪う鎖がジャランジャランと派手な音を響かせました。
「んぬぐぅーーーーーっ!!!」

自分のからだであって、自分のからだではありませんでした。
空っぽの頭の中に、気持ちいい、っていう言葉だけが浮かんでいました。
まるで誰かの体内で精製された快感という液体を、頭の中になみなみと流し込まれたよう。
私とは関係の無い肉塊と化した淫らな肉体は、気持ちよさそうにフワフワクネクネと頭上を漂っていました。

そして今回は、クリトリス責めを止めることが出来ません。
鍵を手にして鎖の拘束から逃げ出せるまでは、嬲られっぱなし。
イった後、ほんの少しだけ遠ざかった気がしたクリトリスへのキツイ刺激が、急激にフェードインしてきました。
この責めを止めるためのスイッチは、イジワルなシーナさまに捨てられてしまった。
そんな妄想が、いっそうの被虐感を煽ります。

発情しきって沸点の低くなったからだに、すぐさま絶頂へ至る波が押し寄せてきます。
自分ではコントロール出来ない、強制的な快感。
来る、来る来る来る・・・
欧米のえっちなビデオで金髪のお姉さんがイきそうなとき、come,come,って喘いでいる訳がわかったような気がしました。
とてつもなく甘美な感覚が、からだの奥底から私に襲いかかってきます。
来る、来る、来るぅ・・・来たぁーーーーっ!
「うんぐぅーーーーーーーっ!!!」
再び私の肉体が空高く放り投げられました。

短かいスパンでたてつづけに何度もイきました。
イった直後の短かいインターバルの間、気絶することさえ許してもらえませんでした。
クリトリスに吸い付いた悪魔の器具からの刺激は、遠のこうとする意識をその都度強引に、現実へ連れ戻しました。

何度目かのインターバルのとき、ふっと顔を上に向けると、すでに輪っかはストッキングを通り抜けて、鍵が落下していました。
あわてて右側に向けた私の視界に、私の右手スレスレで左右にブラブラ揺れている、糸で吊り下げられた鍵が見えました。
ベッド際に立てたマイクスタンドのブーム部分の根元に糸で結ばれ、揺れが収まればちょうど私の右手に鍵が届く位置に調節されていました。
強制陵辱の終焉に目途が立ちホッと安堵したのも束の間、からだがまたまた勝手に昂ぶってきていました。
とりあえず鍵を掴まなきゃ。

高まる快感にあがらいながら上半身をよじって右に向け、右手の指先を伸ばして、でたらめにブラブラ揺れている鍵を捕まえようとします。
・・・触れた。
んっ!
人差し指と中指の間に小さくて平べったい金属が挟まりました。
取れた!
掴んだ途端に鍵をグイッと引っぱったので、マイクスタンドに繋いでた糸がプツンと切れました。
「んんんーーーーーっ!!!」
右手のひらに鍵をしっかり握ったまま上半身がのけぞり、またイきました。
ストッキングからはまだ、ポタポタポタポタ水滴が落ちて、ワンピースのおっぱいを濡らしていました。

次は、右手首の南京錠をはずす番です。
右半身をひねって顔を右手首のほうに寄せ、不自由な右手の鎖を目一杯内側に引っぱって顔のほうに寄せます。
意識を鍵だけに集中させて快感を遮ろうと試みますが、震動は容赦なく全身の官能を炙ってきます。
「んうぅーーんっ!」
上体をひねったおかけで左腿が浮き上がり、股間のバイブレーターの柄が左内腿に当たって激しく膣壁を擦りました。
イレギュラーな刺激に全身が快感で激しく呼応し、あやうく右手を開いて鍵を落としそうになりました。
「んっ!!」
なんとか持ちこたえました。

猿轡をされた口のビチャビチャな布地を舌先で口の奥に押し込み、開いた唇の隙間に鍵を咥えます。
鍵は、長さ10センチくらいの糸で直径5~6センチの金属リングに繋がれていました。
鍵を咥えると、鍵に結ばれた紐の下にリングがぶら下がる格好になります。
重いというほどではないですが、かなりジャマ。
快感の波にさらわれて鍵を挟む唇の力を少しでも緩めたら、鍵は重力によってたやすく下に落っこちてしまうことでしょう。
私の首の上か、胸の上か。
落ちてしまった鍵を再び咥えるのは、容易なことではありません。

私は、なるべく全身を動かさないように唇と手首以外の力を抜きました。
右に捻った顔の唇から飛び出した鍵の先を、手首が届く空間に突き出すように、自分の顔を固定しました。
それから、右手首をソロソロと慎重に顔に近づけていき、手首の南京錠の鍵穴を、突き出した鍵に差し込もうと試みました。
鍵穴が近づくにつれて目の焦点がボヤケ、鍵穴を目視できません。
快感がどんどん高まってきていますが、流されまいと必死に理性が抵抗しています。
カン頼りで3回トライして、ようやく鍵が鍵穴に差し込まれました。

そのまま、顔と手首をおのおの反対方向にひねります。
カチッ!
鍵がはずれたみたい。
鍵は唇に咥えたまま、右手首を顔から離します。
右手首の南京錠が付いた側をタオルケットに何度も擦りつけていると、南京錠のUの字が開きました。
すかさず右手首をでたらめに振って、南京錠がつないでいる鎖をふるい落とします。
カターンッ!
はずれた南京錠が床まで飛ばされて、赤いエナメルの手枷はつけたまま、右手が鎖から解放されました。

間髪を入れず咥えていた鍵を右手でつまみ、上体を左側に傾けます。
左手首の南京錠も右手の鍵で難なくはずれ、やっと両手が自由になりました。

それからの行動は、今思い出してもあまりにはしたなくて、思い出すたびに脊髄反射的に火照ってしまうほど恥ずかしいものでした。

右手は、躊躇無くまっすぐ股間へ伸び、暴れまわるバイブレーターの根元をショーツの布ごとしっかり掴んで、より奥へとグイグイ押し込んでいました。
左手は、口元の猿轡を顎方向へずり下げた後、ワンピースの上から自分のおっぱいを、貼られた電動ハブラシごと激しく、めちゃくちゃに揉みしだいていました。
「あああーーーんっ、もっとぉ、もっとーーーつよくぅぅぅーーーっ!!」
自由になった口が思い切り淫らに悦びの叫びをあげていました。
自由になった上半身がむっくり起き上がり、左手の愛撫で盛大に身悶えていました。

右手は、ショーツの下に突っ込んでバイブの柄を直に持ち、チュプチュプ音を響かせながら高速ピストン運動をくりかえしました。
ショーツは腿の真ん中へんまでずり下がり、びしょ濡れのピンクの布片が左右にだらしなく一文字に伸び切っていました。
もちろんクリトリスは吸いつかれて震わされたまま。
「ああんっ!あああんっ!ああああーーーっ!!」

左手は、ワンピの肩紐を両肩から抜いて、おへそのあたりまでだらしなく諸肌脱ぎになり、露になった赤い痣だらけの右おっぱいを鷲掴みにしていました。
右腕は左おっぱいにギュッと押し付けられてせわしなく上下しています。
腋の下や脇腹に貼りつけてあったローターはとっくにテープが剥がれ、タオルケットの上や脱ぎかけワンピースの中でブーンって唸っていました。
乳首を挟んでいた特製電動ハブラシも、左右ともとっくにはずれていました。

今、わたしのおっぱいは、私の左手で自由自在に陵辱されていました。
乳首をつままれ、ひねられ、引っぱられ、そのたびに大きなアンアン声が響き渡ります。
鎖に繋がれている間中、もっとこうして欲しい、と思っていたことを、一つ残らず左手が実現してくれていました。
爪の痕が残るくらい、おっぱいのお肉に食い込む左手の5本の指。
全身汗でヌルヌルになったからだを激しく撫ぜまわすうちに、左手全体がみるみるふやけていきました。

「あーーんっ、もっと、もっと、もっとぉーーっ!」
「めちゃくちゃにして、めちゃくちゃにしてっ、めちゃくちゃにしてぇーーっ!!」
「あ、オマンコいいっ!オマンコいいっ!オマンコいっちゃうぅぅーー!!」

ローターの一つが床に転がり落ちたらしく、カタカタカタとやかましく響き始めました。
すごくうるさい音なのですが、私にはぜんぜん気になりませんでした。
拘束放置責め最後を締めくくる絶頂を、最高のものにするために必死で自分のからだをいじくりまわしていました。

「ああ、ああ、ああ、ああ・・・」
「もうだめ、もうだめもうだめもう・・・」
自由な上半身を思う存分身悶えさせ、下半身はバイブレーターをより奥へ引きずり込むみたいに激しく上下し、右手が右乳首を、左手が左乳首をギュッとつまんで力任せに思い切り上に引っぱっていました。
両目は半開き。
でも、目先の快楽以外、何も見えてはいませんでした。

「いやっ、だめっ、イっちゃうん、イっちゃうぅーんっ!!」
「ふぅーっはぁーっ、ふぅーっはぁーっ、ふぅーっはぁーっ・・・」
「イク、イクイクイクイク、イクぅーーーーっ!!」
「んっ!!!」
起こしていた上半身が後ろへ大げさにのけぞり、力尽きるように背中がタオルケットに着地しました。
まだ蠢いている電動ハブラシといくつかのローターが、私の背中の下敷きになり、それでも健気に震動を送ってきます。

イった、と自覚した後、ワンテンポ置いて上半身を起こし、右手でクリトリスのスポイトを強引に引き剥がしました。
「んんーーーーっ!!」
グリトリスがありえないくらいグイーッと引っぱられてから、スポンと抜けました。
つづいてバイブレーターを膣壁を思い切り擦りながら抜きました。
ビチャッ!
バイブの先が膣口から飛び出たと同時にアソコ全体が震えたように感じて何かの液体が大量に勢いよく噴出、ベッドを飛び越えて床に飛び散りました。

「ハア、ハア、ハア、ハア・・・」
運動会の徒競走で全力疾走した後の数百倍、息が切れていました。
もうダメ・・・
起こした上半身を再びベッドに倒しました。
背中に当たるローターたち。
「んーーもうっ!」
私は、不機嫌に背中起こし、手に触れたローターを片っ端から胴をひねって電池の通電を止め、ベッドの下に落としました。
2組の電動ハブラシとバイブレーターもスイッチを止めてベッドの隅に放り、クリ責めスポイトは震えているまま遠くに放り投げました。

もう一度背中からベッドに倒れ込みます。
室内は、熱気が充満してすごく暑くなっていました。
全身グッショリ。
エアコン、点けたいな・・・
でも、両足の鎖をはずしてエアコンのリモコンを探すのが億劫で仕方ありませんでした。

床に一個、落ちたはずのローターの音は、いつの間にか、なぜだか聞こえなくなっていました。
見上げると、伸びきったストッキングがだらしなくぶら下がっていました。
氷は、全部溶けちゃったみたい。
ピンクのショーツは、両腿の中間辺りで紐状に、ベージュのワンピースは、お腹のおへその辺りで紐状になっていました。
私は、相変わらず両足首を鎖に繋がれたまま、おっぱいと下半身丸出しで仰向けに寝転んでいました。

両方のまぶたが急激に、重たくなってきました。


氷の雫で濡らされて 19