2016年11月13日

非日常の王国で 05

 おふたりのお背中がドアの向こうに消えたのを確認してから、自分のおっぱいに視線を落としました。
 乳首にガブッと噛み付いて銀色に輝くふたつの目玉クリップ。
 そのうち右のほうの持ち手をそっと指でつまみます。

「はうっぅぅ!」
 目尻に涙が滲みそうな激痛の後に訪れる疼痛をともなう甘い開放感。
 潰されていた皮膚がゆっくりと膨らんでいくのがわかります。
「あうっぅん!」
 2度めの激痛に身を捩らせると同時に、左右の手のひらでおっぱいをひとつづつ、ワシづかみで揉みしだいていました。

 リンコさまがデスクの上に残してくださったバスタオルで、とくにビショビショヌルヌルな股間を押さえつつ、社長室に戻りました。
 これからオフィス外の給湯室まで行ってお水を汲んできて、汚してしまった綾音部長さまのデスクや周辺の床をキレイに拭き掃除しなければいけません。
 バスタオルで軽く全身の汗を拭ってから、お外に出るとき私に唯一許された衣服、先ほど持ってきてくださった白衣をハンガーから外しました。

 手に取ってみると、クタッとした柔らかい生地で軽い感じ。
 そそくさと両腕を通しました。
 敏感になっている乳首や腫れたお尻を布地が滑り、ゾクゾク感じてしまいます。

 着丈は膝上で7分袖、ストンとしたAラインシルエットでちゃんとボタンが左前のレディース仕様。
 ボタンはおっぱいの谷間あたりから下腹くらいまでの4つ。

 ボタンをすべて留め終えると、我ながら妙に似合っている感じ。
 なんだか自分がインテリになって、何やら難しい分野の研究者にでもなったような錯覚を覚えちゃいます。

 ただし、よく見ると∨ゾーンが意外と空いていて、前屈みになったっら隙間からおっぱい全部が覗けちゃいそう。
 更に、柔らかい生地なので、少しでも胸を張ると、白衣上にバストトップの位置があからさまに明示されてしまいます。
 この格好で廊下に出るんだ・・・
 まさしく裸コートに臨むときと同じドキドキ感に全身が震えました。

 そっとオフィスのドアを開き、廊下を窺います。
 夕方5時前のオフィスビルはしんと静まり返り、人影はありません。
 リノリュームの床をカツカツと早足のヒールで蹴り、廊下の直線上右手にある給湯室へと急ぎました。

 給湯室に飛び込んでホッと一息。
 幸い誰にも会わず視られずに済みました。
 蛇口をひねってバケツにお水を汲みつつ、シンクの前の鏡を覗きます。
 白衣の胸元から覗く白い肌が少し汗ばんで、ほんのり上気しているのがわかります。

 せっかくお水を使えるのだから、ここでちゃんとからだを拭いていこうか。
 汗まみれ汁まみれになった後、乾いたバスタオルで拭いただけだったので、からだがベトベトしている気がしていました。
 この給湯室は我が社専用なので、知らない誰かが入ってくる心配はありません。

 そそくさと白衣を脱いで全裸になり、濡らしたタオルで全身を拭きました。
 ミサさまの鞭さばきで熱病のように疼くお尻に、冷たいタオルをあてがったときの気持ち良さと言ったら・・・
 思わず、あーーーっ、と深い溜め息を洩らしてしまったほど。

 この数ヶ月の勤務で見慣れた場所となった給湯室で全裸になったことで、入社する前にお姉さまに案内されて初めて訪れたオフィスでの面接のことを、唐突に思い出していました。
 
 あのときは土曜日でフロアが閑散としていたとは言え、バスタオル一枚で廊下を歩かされ、給湯室のすぐ隣のおトイレで全裸にされちゃったんだっけ。
 それで戻るときは、全裸で廊下に立たされ坊主みたいに放置され、お姉さまが放リ投げたショーツをワンちゃんみたく四つん這いで拾いに行かされて。
 そうそう、正確には全裸じゃなくて、首輪から繋がったチェーンで乳首にチャームをぶら下げ、ラビアクリップで粘膜を押し広げられ、クリットはテグスで絞られてるという破廉恥ドマゾな姿でした。
 あの日感じた、胸を締めつけるような恥辱感が鮮やかによみがえり、性懲りもなく股間が潤んできます。

 だめだめ。
 さっさとお片付けをしなくっちゃ。
 股間に伸びそうになる右手を諌めて再び白衣を着込み、片手にはお水をなみなみとたたえたバケツと雑巾、もう一方の手にはモップと数枚のタオルを持って、給湯室を出ました。

 出てすぐ、廊下の向こうに人影があるのに気づきました。
 淫らモードですっかり気が緩んでいたので、思わず、えっ!?と声をあげて立ちすくむほどびっくりしてしまいました。

 給湯室の脇にあるおトイレへ向かう、同じフロアの別会社の社員さんのようでした。
 白い半袖ワイシャツにストライプのネクタイ、髪をきっちりと七三に分けた30代くらいの男性がズンズンと私のほうに近づいてきました。

 私は、人影に気づいた瞬間にサッとうつむき、廊下の端を重いバケツのせいで幾分ヨタヨタという感じで歩を進めたので、その男性が私をみつけて、どんなリアクションをされたかはわかりません。
 でも、すれちがうときにちょっと会釈気味に頭を動かして窺った感じでは、困惑されているご様子でした。

 それはそうでしょう。
 お医者さまか研究員のような白衣を着た女性が、場違いなバケツとモップを持って廊下をトボトボ歩いているのですから。
 普通に考えてミスマッチ。
 すれ違った後も、振り返った男性からの怪訝そうな好奇の視線を背中に感じていました。

 それとももっと踏み込んで、この不自然に開いた胸元の谷間や、布を押し上げる突起まで気づかれちゃったのかも。
 白衣には合わない首輪型チョーカーまでしているし。
 そっちの方面に詳しい人なら、それだけで私がどんな女なのか、ピンときちゃったかもしれません。

 このフロアの廊下にときどきエロい女が出没する・・・なんて噂になっちゃったりして。
 心の中に得体の知れないどす黒い霧のようなものがモヤモヤと広がりました。
 すれ違った後も極力ゆっくりと歩き、いったん自分のオフィスのドアを通り越し、振り向いて廊下に男性の姿が無いのを確認してから、急いで後戻りしてオフィスのドアに飛び込みました。

 オフィスに戻ったら白衣は脱がなければなりません。
 全裸になって綾音部長さまのデスクを拭き始めます。

 廊下で他の会社の男性社員と出会ったことで、今自分がしている行為のアブノーマルさを今更ながらに思い知らされました。
 このオフィスの壁一枚向こうは普通の世界。
 健全な社会人のみなさまが健全に社会生活を営む公共の場所なのです。

 先ほどの男性がおトイレから戻るとき、まさか廊下沿いの壁の向こう側で、さっきすれ違った白衣の女が全裸になって床掃除をしているなんて、思いもしないでしょう。
 私がしていることは、それほど世間的に考えて異常、つまりヘンタイ的なことなんだ・・・
 被虐と恥辱と背徳に身悶えしながら、モップも使わず自ら四つん這いになり、精一杯の罪滅ぼしのつもりで一所懸命床の拭き掃除をしました。

 リンコさまとミサさまは、その日からほぼ毎日、オフィスで私を恥ずかしい格好にして愉しまれました。
 たいていは午後、綾音部長さまがお出かけになって3人になったとき。

 ある日は、イベントのときに着たシースルーのスーツ上下で勤務。
 ある日は、本当に全裸に白衣だけで、初めてのお客様にお茶出しをしました。
 お茶をお出しするときはどうしても前屈みになってしまうので、∨ゾーンから生おっぱいが丸見えになっていたと思います。
 リンコさまのお客様としていらしたアジア地域の生地のバイヤーだという妙齢のお綺麗な外国人女性のかたは、困ったような呆れたようなお顔で、アリガトと微笑んでくださいました。

 綾音部長さまがずっとオフィスにいらっしゃるときは、メールで指令が来ました。
 その日のご命令は、素肌に短いブラウスだけ着て、下半身は丸出しで勤務。
 綾音さまがいらっしゃるのに、とドギマギしながらもご命令に従って社長室でパソコンに向かっていると、綾音さまから呼び出しがかかりました。

 どうしよう!と思い、その日穿いてきたジーンズに思わず手が伸びたのですが、ブルルっとケータイが震え、そのまま行きなさい、というメール。
 私の行動はすべてリンコさまとミサさまに監視カメラでお見通しなのでした。
 おずおずとそのままの格好で綾音さまの前へ出ました。

 私の姿を視た綾音さまは、一瞬ギョッとされたようでしたが、すぐにニヤッと唇の端をお上げになりました。
 それから、まるで変わったことなんか何ひとつ無いかのようになお顔で、業務の打ち合わせを始められました。

 はい、はい、と綾音さまのお言いつけのメモを取りつつ私は、このオフィスで私がこんな破廉恥な格好をしていることもスタッフのみなさまには普通のことになってしまったんだなー、と、ひどくみじめなような、でも嬉しいような、フクザツな気持ちになっていました。

 そんなこんなの日々が過ぎて迎えた金曜日。
 お姉さまが出張からお戻りになる日なので、朝からルンルン気分。
お姉さまが似合うとおっしゃってくださった、ボディコン気味な白いニットのミニワンピを着て出社しました。
 もちろん首にはお姉さまからのプレゼントの首輪型チョーカーを嵌めて。

 オフィスには綾音部長さまと開発部のおふたり。
 綾音さまには午後、ご来客のご予定があるので、今日はお出かけされないのでしょう。
 お姉さまは午後2時頃出社予定なので、今日はリンコさまもミサさまもちょっかいをかけてこないのではないかな、と勝手に予想していました。

 午前中、いつものルーティーンワークで郵便局や銀行を回り、頼まれごとのおつかいなども済ませた11時過ぎ。
 オフィス最寄りの地下鉄の入口付近で、誰かに後ろからポンと肩を叩かれました。

「直子さん?」
 振り返るとほのかさまが人懐っこく、ニコッと笑っていらっしゃいました。
「あ、ほのかさま。お疲れさまです。今お戻りですか?」
 そう言えば今日は、ほのかさまも出張からお戻りになる日でした。

「そうなの。名古屋で間宮部長と別れて、わたしだけ一足お先にね」
 大きめ無機質なトラベルキャリーカートとシュッとした濃紺のビジネススーツ姿のほのかさまは、いかにも仕事の出来る営業ウーマン、という感じでカッコいい。

「直子さんは銀行?」
「はい。今日はどこも空いていて早く終わったので、これからオフィスに戻ろうかと」
 ほのかさまとお顔を合わせるのはイベント開けの月曜日以来なので、なんだか気恥ずかしい感じです。

「そうなんだ?それならちょっとお茶していかない?わたし、昨日の夜から何も食べていないから、はしたないのだけれど、とってもお腹空いちゃっているの」
 ほのかさまが、お綺麗なお顔を情けなさそうに少し歪め、可愛らしくおっしゃいました。
「直子さんとは、イベントの後ほとんどお話出来なかったし、お昼までに戻れば大丈夫よね?今オフィスには、どなたがいるの?」
 私がお答えするとほのかさまはすぐ、ご自分の携帯電話を取り出してかけました。

「早乙女部長からお許しをいただいたわ。ちょこっとお茶して、それからふたりでオフィスに戻りましょう」
 ニッコリ笑いかけてくるほのかさま。
 そのままカートを引っ張って颯爽と歩き始めました。

 腰を落ち着けたのは、オフィスビルにほど近い、あちこちでよく見かけるチェーン店のカフェテラス。
「お昼前だからあんまり混んでいなくてよかった」
 差し向かいのテーブル席で、ツナを挟んだイングリッシュマフィンとサラダの乗ったプレートとミルクティを前にしたほのかさまがおっしゃいました。
 ガラス張りの明るい店内は、半分くらいの入り。
 ご年配な男性おひとり客と、ショッピングらしきヤングミセスのグループが目立ちます。

「直子さんは、今日もおべんとなのね?」
 アイスレモンティだけ前にした私を見て微笑むほのかさま。
 大きなカートを引っ張っていたので、カートを脇に置ける一番奥壁際の席に通されました。

 お食事のあいだは、ほのかさまがご出張中にお相手されたユニークなクライアントさまの話題。
 マフィンを優雅に頬張りつつ、面白おかしくお話してくださるほのかさまに、何度もクスクス笑わされました。
 やがてお上品にお口許をナプキンで拭ったほのかさまがお紅茶で一口喉を湿らせてから、じっと私を見つめてきました。

「イベントのときの直子さん、凄かった。びっくりしちゃった」
 周りに聞かれてはいけない種類のおしゃべりをするときみたいに、グッとお声を沈めておっしゃいました。
 そのお言葉を聞いた瞬間、私は、来たっ!と思いました。

 実は、ほのかさまにお茶のお誘いいただいたときから、ほのかさまとふたりきりになることについて、そこはかとない居心地の悪さをずっと感じていました。
 その原因は、イベントのときのほのかさまのご様子でした。

 他のスタッフのみなさまは、私が破廉恥な格好をしてはしたない振る舞いをするたびに、何て言うか、好色な好奇心を露わにして愉しんでくださっているように感じました。
 だけど、ほのかさまだけは始終、当惑されているような、動揺されているような、俗な言葉で言えば、ドン引きされているようなご様子に見えました。

 ひょっとしたらほのかさま、こういうヘンタイ性癖には、まったくご理解をお持ちにならないかたなのかもしれない。
 プレイとしての虐めではなく、人間として本気で嫌悪されてしまったらどうしよう・・・
 いくらマゾで人から虐げられるのが好きな性癖と言っても、私が大好きで尊敬しているほのかさまから生理的に嫌われてしまうのは悲しいことでした。

 おそらくほのかさまは、イベントのときの私の浅ましい振る舞いに対して、何かご意見があって私を誘ったんっだ・・・
 あなたみたいな不潔な人は大嫌い。
 もしくは、今からでも遅くはないから、真っ当な人間に戻りなさい。
 面と向かって、そう言われたらどうしよう・・・
 ニコニコとフレンドリーな今のご様子も却って不気味に不安感を煽り、胸が張り裂けそうにドキドキし始めました。

「直子さんは、あんなふうに恥ずかしい服装を人に見せたり、辛い命令に従ったりすることが嬉しくて、気持ちいいのよね?」
 相変わらずヒソヒソ人目を憚るように尋ねてくるほのかさま。
「は、はい・・・ご、ごめんなさい・・・」
 私には小さな声で、そう正直に答えるしかありません。

「ううん。直子さんが謝ることではないの。わたし、そういうの疎くてよく知らなかったからびっくりしてしまって」
 ほのかさまのお声が幾分普通に戻り、ティーカップに一口、唇をつけられました。

「そういうご趣味の人がいるらしい、っていうことはなんとなく知っていたのだけれど、まさか自分のこんな間近にいるとは思っていなくて・・・正直、直子さんがみんなの目の前でオシッコし始めちゃったときは、心臓が止まるかと思うくらい、ショッキングだったわ」
 その場面を思い出すかのように、形の良い顎を少し上げて天を仰ぐほのかさま。

「あの、ごめんなさい。あのとき、ほのかさまがあのペットボトルを・・・」
「あはは。そうだったわね。でもいいのよ。あのときわたし、ドキドキし過ぎちゃって、あれ以上直子さんの前に居られそうになかっただけだから」
 おやさしく微笑まれるほのかさま。

「あの後、まだ生温かいペットボトルの中身をおトイレに流しながら、世の中っていろんな人がいるんだなー、って、しみじみ思っちゃった」
 ほのかさまのイタズラっぽいお声。

「出張中二日間、間宮部長と一緒だったから聞いちゃったの。直子さんのこと、どう思われますか?って」
 ほのかさまが優雅にポットからティーカップへおかわりのお紅茶を注ぎながらつづけました。
「そしたら間宮部長、すごく嬉しそうにいろいろ教えてくださったの」

「チーフたちと学校で服飾部の頃、同学年に亜弓さんていう、直子さんと同じご趣味をお持ちの同級生がいらしたのですってね」
「それで、風でめくれやすい軽いスカートとか、濡れたら見事に透けちゃうブラウスとかを着せて街に出て、いろいろ虐めて遊んでいたって愉しそうにおっしゃっていたの」

「そのかたと同じ匂いがするから直子さんだって、傍から見ると辛そうだけれど、あれで内心は絶対悦んでいる、って断言されていたわ。マゾってそういうものだ、って」
「だから直子さんが虐められている、って気に病むことはないし、ほのかも直子が悦ぶようなことをどんどんしてあげればいいって」
「そんなふうに諭されて、わたしもずいぶん気がラクになって、どんどん好奇心が湧いてきちゃったの」

 私の頭の中では、ほのかさまと雅部長さまが瀟洒なホテルの一室で、お互い裸に近い格好でからだを寄せ合い、私のことを楽しげに話題にしている妄想が浮かんでいました。
 それはとても耽美で美しく、うっとりするほど理想的な百合ップルの光景でした。

「・・・なのよね?」
 すっかり妄想に耽っていた私の耳に、ほのかさまが私へ問いかけるようなお声がぼんやり聞こえました。
「えっ、あっ、ごめんなさい・・・ほのかさまに私のはしたない性癖を知られてしまった恥ずかしさで、少しボーッとしてしまいました」
 訳の分からない言い訳を口走る私。

「ううん。気にしなくていいのよ。それが本当の直子さんなのだったら、わたしも協力したいなって」
「だから、わたしも何か命令したら、直子さんは従ってくれるの?、って聞いておこうと思ったの」
 私の首のチョーカーをじっと見つめつつ、相変わらずたおやかに微笑んでいるほのかさま。

「あ、はい、もちろんです。チョーカーをした私は、スタッフのみなさま全員のせ、性的なドレイ、ですから・・・」
 自分で言葉にしながらゾクゾクっと被虐感が背筋を駆け上ります。
 調子に乗って、こんなことまで付け加えてしまいました。
「大好きなほのかさまが虐めてくださるのなら・・・マ、マゾな私にとって、こんなに嬉しいことはありません」
 私のショーツのクロッチ部分は、もうグショグショでした。

「間宮部長が面白いことをおっしゃっていたの」
 ほのかさまが今まで見たことの無かった艶っぽい表情でおっしゃいました。
「SMっていうと、一般的にはMの人が虐められて可哀想っていうイメージだけれど、実はMの人のほうが愉しんでいる、って」
「虐める側の人は、マゾな人が悦ぶように工夫して虐めなくちゃならないから、SMのSはサービスのSで、Mはサービスを受けて満足のMなのですって」

「わたし、誰かを喜ばせることって大好きだから、直子さんがそういうご趣味なら、これからはそれに沿うように喜ばせてあげよう、って思ったの。わたし、直子さんのこと、好きだから」
 あくまでも生真面目に、じっと私を見つめて語りかけてくださるほのかさま。
「あ、ありがとうございます・・・」
 
 その真剣なご様子に、リンコさまたちとは違うエスっぽい迫力を感じて、タジタジとしてしまう私。
 でも心の中では、ほのかさまも私の本当の姿を受け入れてくださった、という嬉しい気持ちでときめいてもいました。

「わたしに命令されるの、嬉しい?」
「はい・・・」
「何でもわたしの言う通りにしてくれる?」
「はい。何でもします」
「それが直子さんにとっても、嬉しいことなのよね?」
「はい。そうです」
「うふっ。わたしも嬉しい」
 ほのかさまの無邪気な笑顔。

「それなら今、ここで下着をこっそり脱いで、どれだけ嬉しく思っているのか、その証拠を見せてもらっていいかしら?」
 ほのかさまの形良い唇の端が、ちょっぴりイジワルそうにクイッと吊り上がりました。


非日常の王国で 06


2016年10月30日

非日常の王国で 04

 先頭に立って社長室のドアを出て行く、コスプレ姿のミサさま。
 リンコさまの手で促されるように背中をこずかれ、ミサさまの背中につづく全裸の私。
 背後で何かガサゴソする音の後、少し遅れてリンコさまの足音がつづきました。

 昨日、今日と梅雨の晴れ間、何枚もの大きなガラス窓から夏へと向かう眩いくらいの陽射しが射し込む明るいメインルーム。
 整然と並んだデスクの中でも一際大きい、綾音部長さまのデスクを乗馬鞭で指し示されるミサさま。
 余計なものは何ひとつ出ていない広々としたデスクの上に体育座りを命ぜられた私。
 恥辱のショーの始まりでした。

「まずはさ、ミサミサにナオコの剥き出しマゾマンコ、じっくり視てもらいなよ。アタシはイベントの日にイヤって言うくらい見せられたけど、ミサミサはずっと会場でブタカンだったからね」
 右手にハンディなビデオカメラを持たれたリンコさまが、レンズを私に向けながらおっしゃいました。

「えっ!?さ、撮影されるのですか?」
 思わず自分の膝を抱え込むように体育座りを縮こまらせて、顔だけ向けて抗議しました。

「ナオコのお姉さまとの取り決めだもん。ナオコでアソぶときは、後からチーフも愉しめるように、出来る限り記録しといて欲しいんだってさ」
 ニヤニヤ笑いながらレンズを私の顔に近づけてくるリンコさま。

「ほら、そんなに丸まってちゃ、ナオコの剥き出しマゾマンコ、見えないじゃない?脚を開きなさい」
 おっしゃりながら少し後ろへと移動されるリンコさま。
 代わってミサさまが私の正面に来られました。

 ミサさまの乗馬鞭の柄が、ピッタリ閉じた私の両膝小僧のあいだに割り込んできました。
「開け」
 ドスの効いたアルトなお声とともに、乗馬鞭の柄で両膝を左右に割られます。
「は、はい・・・ど、どうぞ、ご覧ください」
 観念して両足を左右に大きく開きました。

 私の股間の目の前に、ミサさまのお顔。
 ミュールを履いたままなのでヒールの高さの分、腰を前方へ突き出す形になってしまいます。
 両脚をMの字に広げた中心部分の裂け目がパックリ開き、粘膜が空気に触れたのがわかります。

 その部分をメガネ越しにじーっと覗き込んでくるミサさまのつぶらな瞳。
 その様子を横から撮影されているリンコさま。
 視線を少し上に上げると見慣れたオフィス、大きな窓に広がる青い空。

 私、こんな真っ昼間に、こんなところで、こんな格好・・・
 喩えようもない背徳感が甘美な快楽信号へと姿を変え、全身をつらぬきました。

「貴様、どうしてこんなに性器を濡らしているんだ?」
 ミサさまが冷たくお芝居っぽく、尋ねてきました。
 息が内腿にかかるほど、お顔を近づけて。

「は、恥ずかしいからです・・・」
「なぜ恥ずかしい?」
「そんなにお近くから、直子のマゾマンコをご覧いただいているので・・・」
「ふん。だが恥ずかしいのと、愛液を垂らすのはイコールではないだろう?愛液とは、気持ちのいいときに分泌されるものではなかったか?」
「はい・・・直子は、恥ずかしいのが、気持ちいいんです・・・そういう、へ、ヘンタイ女なんです・・・」

「だったらさ、もっと恥ずかしくなれば、もっと気持ち良くなれるんだよね?」
 リンコさまがカメラを構えたまま、会話に割り込んでこられました。
「は、はい・・・」
 レンズに顔を向けてお答えする私。

「なら自分の指で押し広げて、ミサミサにナオコのマゾマンコ、奥の奥まで視てもらったら?」
「えっ?あ、は、はい・・・」

 もはや全身が被虐の塊と化していました。
 今、リンコさまが記録されているテープを、お姉さまがご覧になるんだ。
 それならお姉さまにいっぱい愉しんでいただけるよう、心の底からみじめなマゾドレイに成り切らなくちゃ、と。

 うつむいて、両手を自分の股間にあてがいました。
「そういうときは、何かお決まりのセリフがなかったっけ?」
 リンコさまがからかうようにおっしゃいました。
「あ、はい・・・」
 
 リンコさまのお言葉で、今まで妄想の中で何度も口にしてきた定番のセリフがパッと頭に浮かび、スラッと唇からこぼれ出ました。
「ミサさま、リンコさま。どうぞ、どうしようもないヘンタイ直子の淫らな剥き出しマゾマンコを奥の奥まで、じっくり存分に、ご覧くださいませ・・・」

 両手の指先を裂け目の左右にあてがい、思い切り引っ張りました。
 濡れそぼる粘膜がより広範囲、ヒヤッと外気に晒されたのわかりました。

「意外と小じんまりしているんだな、貴様のマゾマンコ」
 ミサさまが顕微鏡を覗く化学者さんみたいなご様子で、メガネを私が自ら押し広げているマゾマンコに近づけています。

「中の襞がときどきヒクヒクうごめいている。奥はけっこう深そうだ」
「触らなくても熱を持っているのがわかる。ホカホカ湯気さえ見えそうだ」
「愛液が白濁しかかっているぞ。それになんとも牝クサイ臭気を発してる」

 今のミサさまにこそ、あの白衣を着ていただきたい、と思うほど、お医者さまのように冷静沈着なご感想。
 それでも決して、そこに触れてはきませんでした。

「この裂け目の先端でテラテラ光っている豆のようなものは何だ?」
「・・・クリトリス、です」
「ずいぶん腫れ上がっているな?興奮しているのか?」
「は、はい・・・ミサさまの手で虐めていただきたくて、仕方ありません・・・」
 おねだりするような口調になってしまいます。

「ふん。貴様のようなヘンタイ女には、この鞭一本で充分だ。私が直接、手を出すまでもないこと」
 乗馬鞭の先のベロで、クリトリスをチョンとつつかれました。
「あうっ!」
その部分から全身へと電流がほとばしり、思わず腰が浮き、後ろへのけぞりました。

「ははっ、ケツの穴までヒクヒクしてるぞ?この淫乱女がっ!」
 ミサさまの乗馬鞭が左の内腿にパシッ!
「あうぅっ!」

 もはや我慢の限界でした。
 鞭打たれてからだがビクンと跳ねた拍子に、右手の人差指と中指がズブリとマゾマンコの中に挿し込まれていました。

「はうんっ!」
 すぐに二本の指が中でくの字に折り曲がってラビアを擦り始めます。
 同時に親指を上へと伸し、腹で膨らんだ肉の芽を捏ね回し始めます。
 空いた左手はおっぱいへ。
「あーんっ、うふぅーーっぅぅ」

「あーあ。勝手にマンズリ始めちゃったよ。こうなるともう、止まらないだろうねえ」
 呆れたようなリンコさまのお声。
「本当に不治のドマゾ女だな。まさにサカッたメス豚だ。まだ真っ昼間で勤務中だって言うのに」
 冷ややかに蔑みきったミサさまのお声。

 おふたりの嘲りの中、それでも私の指は止まりませんでした。
 おふたりに裸になるようにご命令されてから今まで、溜まりに溜まった発情が、闇雲に出口を求めていました。
「あーーっ、いいっ、いいっー」
 自分の指の動きに合わせて、背中がピクピク波打ちます。

「あれー?ナオコちゃん?イクときは、どうするんだっけ?」
 リンコさまのちっちゃな子に向かって諭すようなお声に、カメラのレンズを上目で見つめました。

「ああん、リンコさまぁ、イッテも、イッテもいいですかぁ?」
「違うでしょ。今ナオコが許しを乞うのは、アタシじゃなくてミサミサでしょ?」
「あうっ、ごめんなさいぃ、ミサさまぁ、イッテ、イッテいいですかぁぁ・・・」

 私の真正面で腕組みして私を眺めているミサさまに向けて懇願したとき、私が乗っているデスクの一番端に置いてあった電話機が突然、電子音を発し始めました。
 三人の肩が同時にビクンと震え、フリーズする中、鳴り響きつづける呼び出し音。

 最初にフリーズが解けたのはリンコさま。
「ちょっとこれ、持っていて」
 私に向けたままのビデオカメラをミサさまに託すと、電話機に駆け寄りました。

「はい。お待たせしました、ダブルイーです・・・はい、あ、ワタクシは大沢です。はい、早乙女は生憎出かけておりまして・・・はい・・・」

 リンコさまが急に丁寧な業務口調でご対応されているのを聞いて、今更ながらに、普段なら今がお仕事時間中なこと、そんな時間に自分があるまじき格好であるまじき行為をしていることを思い知り、せつなさとみじめさがこみあげてきました。
 
 追い討ちをかけるように、ミサさまのカメラのレンズが私のマゾマンコから離れ、今の状況をご説明でもするかのように、オフィス内をグルっと一周舐めた後に、私の顔へと戻りました。
 お電話に応対されるリンコさまのすぐ横で、大股開きのマゾマンコに右手を突っ込んでいる私の姿が記録されたはず。
 お姉さまはこの映像をご覧になって、どういうふうに思われるだろう・・・

「はい、携帯電話なら捕まると思います・・・はい・・・よろしくお願いいたします・・・」
 リンコさまが受話器を置き、私の前に戻ってこられました。

「いいところで邪魔が入っちゃったね、って言っても勤務中なんだから仕方ないか。ナオコ、イッた?」
「あ、いえ。お電話にびっくりしてしまって・・・」
 お電話中ずっと息を殺していたのですが、指はマゾマンコに潜り込ませたままでした。
 粘膜がつづきをおねだりするように、ときどきヒクヒク痙攣するのがわかりました。

「電話がくるたびにナオコがおあずけけ食らうのも面白いけど、アタシらもそろそろ仕事に戻らなくちゃいけないし、手っ取り早くイッちゃってもらおうかな」
 リンコさまが足元に置いていたショッパーから何か取り出しました。

「ほら、これ使いな」
 デスクの上に置かれたのは、先程見せられたイボイボの付いたバイブレーターでした。
「ナオコはこれのレビューも書かなきゃいけないんだから、しっかり感触を味わいながらイキなさい」
 見るからに膣壁をいたぶりそうなその凶々しい形状に、再び首筋がゾゾッ。

「それと、これも使うといい」
 ミサさまの手でデスク上に投げ出されたのは、金属製の小ぶりな事務用目玉クリップ2つ。
「マゾって奴は、苦痛も快楽なのだろう?これで貴様のあさましく勃起した乳首を虐めてもらうがいい」
 ミサさまが今にも舌なめずりしそうなほど嗜虐的なお顔でおっしゃいました。

 目玉クリップを手に取ってみると、かなりバネが強いタイプ。
 これで乳首を挟んで、あの凶々しいバイブを突っ込んで・・・
 考えただけで、イク寸前にまで昂りが蘇るよう。

「まず乳首にクリップを噛ませて、それからバイブを挿入しろ。その後バイブを咥え込んだまま四つん這いになって、ケツを私に向けろ。私が貴様に更なる苦痛を与えてやるから」

 ミサさまのはだけた白い胸元が、うっすら汗で光っていました。
 私も汗びっしょりですが、リンコさまを見れば空調は心地よく効いているはず。
 ミサさまも、私の恥辱にまみれた姿をご覧になって、興奮されているんだ・・・
 屈辱的な状況なのに、なんだか嬉しくなってしまいます。

 目玉クリップを手に取って先端を押し広げ、まずは右の乳首に。
「あうっ!」
 思った以上の挟む強さに思わず眉根が寄ってしまいます。

 激痛の後のジーンとした疼痛がからだを駆け巡る中で左乳首にも。
「あうぅぅっ!」
 痛みの源が2箇所となり、おっぱい全体がジンジンと痺れるような鈍痛の渦に包まれます。
「うわーエロい顔」
 リンコさまのレンズが歪みきった私の顔に近づきました。

 それからイボイボのバイブを手に取り、ゆっくりとMの字の中心へ。
 ミサさまのメガネ越しのまなざしと、リンコさまのレンズ越しの視線が、微動だにせず膣穴に集中しています。
 垂れるほど濡れそぼっていますから、膣壁をザラザラいたぶりながらもズルヅルっと侵入していきました。

「あーーーっ!」
 そのおぞましい感覚に思わず大きく淫ら声をあげる私。
 それにずいぶん奥まで届いている。
 こんなの二、三回ピストンしただけで、すぐイッちゃいそう。

 今すぐに動かしたい欲望を振り切って、お言いつけ通り四つん這いになるべく、からだをひねります。
 左手でバイブを押さえたまま右手をつき、からだを右に回転させて両膝をデスクに。
 お尻をおふたりに突き出した格好でバイブを右手に持ち替え、左腕の上に頭を乗せました。
 重力で垂れ下がったおっぱいの先の目玉クリップふたつが、デスクスレスレにプラプラ揺れています。

「うん。いい格好だ。貴様のケツの穴まで丸見えだぞ。ほら、バイブを動かせ」
 ミサさまの乗馬鞭のベロが左の尻タブをぺろんと舐めました。
「あ、は、はい・・・」
 右手で持ったバイブの根本をゆっくり前後に動かし始めます。

「あっ、あっ、あ、いぃ、いぃ、いぃーっ」
 膣の中をザリザリ暴れる細かなイボイボたち。
 グチュグチュという卑猥な音とともに、右手はみるみる愛液まみれ。
「あっ、いいっ、きもちいいっ!あんっ、あっ、あーっ」
 右手のピストンの速度がどんどん上がってしまいます。

「こんな人前で、あさましい格好で自慰行為を見せつけて、貴様にはそれが、そんなに気持ちいいのか?」
 ミサさまが乗馬鞭のベロで私のお尻をスルスル撫でながら尋ねてきます。
「はいぃ。ごめんなさい・・・私は、直子は、こういうのに感じてしまうヘンタイなんですぅぅ」
 私を左横から撮影されているリンコさまに顔を向け、喘ぎ喘ぎにお答えします。

「ふん。とんだヘンタイ社員だな。こうされるともっと嬉しいんだろ?」
 パシッ!
 左の尻タブに小気味良い音の一撃。
「あうっ!!!」
 その鮮烈な刺激にお尻がクイッと跳ね上がった瞬間、頭が真っ白になってイッていました。

 それでも動きを止めない私の右手。
 おまけにイッた瞬間に右手がバイブの根本の何かのスイッチを押してしまったらしく、膣内でブインブイン暴れ始めました。
「あーーっ、いやーーっ、もっと、もっとーーーっ、ミサさまーーっ」
 頭で考える前に唇が懇願していました。

「何をもっとなんだ?」
「お尻にもっと、もっと、鞭をくださいーーっ、ぶってくださいーーーーっ」
 本能からの欲求でした。
 お尻を叩かれることで痛みと快感が重なり合って、上限だと思われたエクスタシーが、より濃密な高みへと導かれるように感じていました。

 ピシッ!バチッ!ピシャッ!
 ヒュンという身の毛もよだつ前奏を伴って奏でられる打擲音。
 その刺激がもたらす苦痛と膣内のバイブによる圧倒的な快感とのほろ苦くも甘美なハーモニー。

「もっとぉ、もっとぉ、もっとぉーっ!!!」
「ミサさま、リンコさま、イッてもいいですか?ィきます、ィきますぅ、イッちゃいますぅ・・・」
 私のからだは、乗馬鞭という指揮棒に従って奏でられる楽器のように、何度も何度もオーガズムという歓喜の旋律を歌い上げました。

「やれやれ、やっとお目覚めのようね」
 気がつくと私は、ベトベトに濡れそぽった台の上に突っ伏していました。
 ぼんやりとした視界に見えるリンコさまとミサさまのお姿。

 そうだ、ここはオフィスで、私はオフィスでオナニーショーをしていたんだ。
 ガバッと起き上がると、お尻がヒリヒリ。
 お尻の上には濡らしたタオルが掛けられていました。

「ごめんね。ちょっとやりすぎちゃったかな?」
 ミサさまがきまり悪そうなお顔で私の顔を覗き込んできました。
「そんなことないよ。ナオコが、もっともっと、っておねだりしてたんだから」
 リンコさまが相変わらずビデオカメラを構えたままおっしゃいました。

「ナオコはね、ミサミサに鞭で叩かれながら何度も何度もイッて、そのうちにパタッと動かなくなっちゃったんだ」
「ヤバイ、と思ったけれど肩やお腹はビクンビクン上下していたし、息もハアハアしていたから、しばらく様子を見ていたら、今復活したってわけ。3、4分くらいかな、ナオコの意識トンでたの」

「一部始終は全部、このビデオで撮ったから、ナオコのお姉さまに後で見せてもらうといいよ。それにしても凄かったね、ミサミサ?」
「うん。ボクの直子を見る目が180度変わった。聞いていた以上のドマゾぶりだったから、これからもいろいろ愉しめそうで、嬉しい」
 素に戻られたミサさまが、やっとカメラを降ろされたリンコさまをじっと見つめながらおっしゃいました。

 なんだかおふたり、やけにピトッと寄り添われている気がします。
 ひょっとすると私の痴態にアテられて、おふたりもムラムラされてきちゃったのかな?
 そんなことをふと思い、同時にお姉さまのお顔が頭に浮かびました。
 そう言えばお姉さまとの最初の出逢いでも、オナニーショーをご披露して、最後に気絶しちゃったんだっけ・・・

「それにしてもひどい有様だこと、床もアヤ姉のデスクも」
 リンコさまに促されてデスクを見ると、辺り一面ビチャビチャのベトベト。
 周辺の床にまで水溜りが出来ていました。

「なんで床にまで・・・」
 思わず口走った疑問にリンコさまが笑いながら応えてくださいました。
「あれ?シオ吹いたの憶えてないの?アタシら横にいたから直撃は免れたけど」

「アタシらは仕事に戻るから。ナオコが自分で汚したんだから、自分で後始末なさい」
「とくにアヤ姉のデスクは、念入りに拭いておかないと。あの人鼻もいいからね。ヘンな臭い残しておくと後から何言われても知らないよ」
「モップやバケツは給湯室ね。オフィス外に出るときは白衣のみ。オフィスに戻ったら当然脱いで全裸」
「アタシらは今日も遅くまで残るから、退社するとき内線ちょうだい。それまではずっと全裸厳守。監視カメラがあることを忘れないでね」
 リンコさまにキビキビと指図され、私はヨロヨロとデスクから降りました。

「ナオコのからだもベトベトだね。水汲んできて、よく拭いてから帰りなさい。クリップは外さなくていいの?」
 リンコさまのお言葉で自分の胸を見ると、ふたつのクリップがまだしっかり噛み付いていました。
 これを外すとき、すっごく痛いだろうな・・・
「あ、大丈夫です。後で外しますから」
 なぜだかおふたりにその姿を見せたくない気がして、そう答えてしまいました。

「ふーん。本当に痛いの、好きなんだねえ。ま、いいけどさ。あともうひとつ忠告しておく」
 リンコさまがイジワルそうに笑って私の下半身を指さしました。
「今夜のシャワーはぬるめにしたほうがいいよ。ナオコのお尻、まんべんなく真っ赤っ赤に腫れ上がってるから」
 そのお言葉を聞いた途端に、お尻全体がジンジンヒリヒリと熱く疼いてきました。
 
 おふたりでお顔を見合わせ愉快そうに笑い合い、肩寄せ合って仲良くデザインルームへと消えていくリンコさまとミサさま。
 時刻はそろそろ午後の4時半になろうとしていました。


非日常の王国で 05


2016年10月23日

非日常の王国で 03

「あ、私出ます」
 マゾの服従ポーズを解き、今度はフルヌードでデスクに駆け寄りました。
 丸出しのおっぱいがプルプル揺れました。

「お待たせいたしました。ダブルイーです、お電話ありがとうございます・・・あ、しほりさま。先日はお疲れさまでした・・・」
 受話器から聞こえてきたお声は、谷口しほりさま。
 イベントのとき、ヘアとメイクを担当してくださった女性です。

「あ、はい。少々お待ちください」
 お電話をいったん保留にして、おふたりのほうへ向き直りました。
「リンコさまにお電話です。しほりさまからです」
「あいよ。しほりん、何の用だろ?」
 リンコさまがツカツカと近づいて来られ、受話器をお渡ししました。

「ごきげんよう。先日はお疲れー・・・うん、うん・・・へー・・・」
 おしゃべりを始められたリンコさまに場所をお譲りし、ミサさまの前に戻ります。
 ミサさまが無言でじっと見つめてこられるので、間がもたない私は、対峙したまま自然と服従ポーズを取ってしまいます。

「へー、そっか、良かったじゃない。うん・・・不幸中の幸いってやつだね・・・」
 リンコさまの元気良いお声を背中に聞きながら、ミサさまの舐めるような視線を全身に浴びていました。
「そうだよ・・・うん・・・今ちょうどね、ナオコを裸にして、アソんでたとこなんだ・・・うん、ミサミサとふたりでさ・・・」

 リンコさまのお口から私の名前が聞こえギクッとした瞬間、ミサさまの乗馬鞭の先が私へと伸びてきて、おへそから下腹部までをベロでスルッと撫でられました。
「ひゃぁんっ!」
 不意を突かれて背筋をゾクゾクっと快感が駆け上がるとともに、淫らな声が洩れてしまいました。

「聞こえた?・・・あはは・・・相変わらずドマゾ全開でしょう?・・・うん、社長室で真っ裸。例のポーズでミサミサにイタズラされてる・・・」
 リンコさまが愉しそうにしほりさまにご報告されているあいだ、ミサさまの乗馬鞭の先は私のおっぱいへと移動し、柔らかいベロで固く尖った乳首を小刻みにプルプル、揺らすように愛撫されていました。

「んっ、むっ、んあっ、うっ、うっ・・・」
 くすぐるみたいに小刻みに震える乗馬鞭のベロが与えてくださる快感に、えっちな声を我慢しようと唇を噛み締めているのに、どうしても喉の奥が唸って息が洩れ、はしたない音声となってしまいます。
 ミサさまは乗馬鞭を動かしながら、薄い笑みを浮かべ、無言で私の顔を見つめています。

「大丈夫よ。チーフからもアヤ姉からもお墨付きもらったし。ナオコはここでは、そういう扱い、ってことに、社内的に決まったの・・・あはは、愉しみでしょ?・・・」
 ミサさまのベロは、私の両腿のあいだに移動していました。

 ベロでマゾマンコを覆うように押し付けられ、ベットリ濡れて滑りの良くなったベロが私の股間をいたぶり始めます。
 お尻の割れ目に、恥丘に、下腹部に、私の愛液を肌になすりつけるように乗馬鞭のベロが肌を這い回ります。
 鞭の柄をマゾマンコの裂け目に食い込ませるみたく、ギュウギュウ押し付けられます。
「あっ、あんっ、あうっ・・・」

 裂け目に食い込んだまま擦るように前後に動く乗馬鞭の柄が、腫れ上がったクリトリスをでたらめに潰してきます。
 踏ん張った両脚がプルプル震え始めました。
「あっ、いやっ、だめっ、あ、あっ、あーっ・・・」

「うん。近いうちに連絡するから。じゃあね、またねー、ごきげんようっ」
 リンコさまが受話器を置いた途端、ミサさまの乗馬鞭の動きが止まりました。
 スッと引かれた乗馬鞭を私の前に差し出すミサさま。
 グリップ以外、満遍なく濡れてテラテラ光っていました。

「だめじゃんナオコ、人が電話中に勝手にイこうとして。ミサミサも抜け駆けはずるいよ」
 リンコさまがニヤニヤ笑いながら、ソファーの前に戻って来られました。

「だいたいミサミサが、ボクもナオコのオナニー見たい、って言い出したのが今日の発端じゃん?計画通り今日はオナニーさせてイカせようよ」
「うん。ごめん。直子があまりにもエロいから、ボクも我を忘れた」
 素直に謝られたミサさまは、私のおツユで汚れた乗馬鞭を、私がさっき脱ぎ去ったピンクのショーツで丁寧に拭い始めました。

「まあ、こうやって寸止めで焦らしつづけるほど、どんどん乱れてヘンタイ度も増して面白いから、それもアリなんだけどね」
 快感の余韻が薄れていくのをもどかしく思っている今の私を、まさに見透かしたようなリンコさまのお言葉。

 私、これからおふたりの前でオナニーさせられるんだ・・・
 ソファーに転がったえっちなお道具にチラッと目を遣って、ゾクゾクっと震えがきました。

「今の電話はさ、絵理奈さんね、今週末にも退院出来そうなんだって。術後も順調で傷跡もほとんど残らなくて済むから、お仕事にも支障は無いって」
 本当に良かった、という感じで柔らかな表情のリンコさま。

「感謝している、って代役されたモデルさんに伝えてくれって言ってたってさ。それとしほりんが、約束忘れないでね、って」
 リンコさまが服従ポーズの私を真正面から眺めつつ、おっしゃいました。

「あ、はい。絵理奈さま、お元気になられてよかったです・・・」
 夥しい粘液の水溜りを足元にみつけ、羞恥に染まりながらもなんとか、そうお答えしました。

 リンコさまは、私とミサさまを交互に見て、それからふと時計に目を遣りました。
 時間は午後の3時ちょっと前。
 こんな平日の昼下がりに私ひとりだけ、なぜオフィスで全裸になっているのでしょう?
 背徳感がザワザワっと、背筋を駆け上がっていきました。

「さあ、電話で予定外に時間くっちゃたし、ナオコも疼いちゃって早くオナニーしたいだろうから、今日持ってきたプレゼントに関して、ちゃっちゃと説明しちゃうね」
 リンコさまが、とりあえず話題を切り替えよう、みたいな感じで、少し早口でおっしゃいました。
 
「半分は業務連絡みたいなもので、これからのナオコのオフィスライフにも大いに関わる大切なことばかりだから、ちゃんと聞いて」
 無理に作ったようなわざとらしく真面目なお顔のリンコさま。

「あ、はい・・・」
 でも、きっとひどく恥辱的なことばかりなのだろうなと予想してしまうドエムな私。

「まずは。これね」
 リンコさまがソファーからつまみ上げて差し出してきたのは、見覚えのあるブラジャーとショーツ。

 それらはイベント当日、私が自宅から身に着けてきて、お姉さまのご命令によりオフィスで自ら脱ぎ捨てて以来、ずっと行方不明となっていた下着類でした。
 イベント後に戻された荷物の中にも、スーツやブラウスはちゃんと入っていたのですが、パンストと下着類だけ無く、きっと私がずいぶん汚しちゃっていたから捨てられたかな、と思っていました。

「ナオコって、春先にチーフがマケリサでランジェリーショップに出てたときに、服を脱がずに外せる下着が欲しい、って相談したんでしょ?」
「アタシ、それ聞いて驚いちゃった。そういう発想がさ、思いつかないもん。シャイな露出願望マゾじゃなきゃ。目からウロコだったよ」
「そういう発想、大事だと思うから、敬意を表して改造してあげたんだ。今後うちのブランドでも作って売り出すことになったし」

 手渡された下着を広げてみました。
 ブラジャーは左右のストラップとカップをそれぞれつなぐ部分が、ショーツは左右の脇部分が、小さなホックで取り外し出来る式に改造されていました。

「それなら、ちょっと服の中に手を潜り込ませてモゾモゾするだけで、簡単に外すことが出来るでしょう?ボトムがパンツでも、わざわざ脱がないでショーツだけウエストから出せるし」
「いつでも好きなときにノーブラノーパンに早変わり。これ、意外と当たりそうな気がするんだ。世の中にシャイなヘンタイって多いから」
「あと、ナオコ用の特別サービスも付けといたんだ。ショーツのクロッチ」

 リンコさまの意味ありげな視線に促され、ショーツを裏返して見ました。
 クロッチ部分に当たるところが小さく二重になっていて、上部分だけ空いたポケット状になっていました。

「そこにローターを入れて穿くと、ローターがちょうどナオコのクリットの上に来るはず。振動直撃。嬉しいでしょ?」
 からかうように私の顔を覗き込んでくるリンコさま。

 私が今までしたことのあるローター遊びは、膣の中に入れてのお散歩とかばかりでした。
 それだってかなり辛かったのに、こんなクリトリスにピッタリ密着する形で振動を受けたら・・・
 おそらく震えだした瞬間に堪えきれず、しゃがみ込んでしまうことでしょう。

「エロい顔になってるねえ。試してみたいんでしょ?でもだめ。下着は帰るときに身に着けなさい。今日は退社までマッパのまま」
 リンコさまがイジワルクおっしゃいました。

「それで、今日脱いだナオコの下着はアタシらがまた、改造してあげる。それをくりかえして、ナオコの手持ちの下着全部、えっちに改造してあげるから」
 私の手から改造済みブラとショーツを取り上げたリンコさまは、壁にハンガーで掛けた私のリネンのジャケットのポケットにそれらを押し込みました。

「次は、ナオコにやってもらう新しい仕事のこと。うちのネットショップ、アダルティなラブトイズを本格的に扱い始めたのは知ってるよね」
「はい・・・」

 イベント前のある日のミーティングで綾音部長さまから、そんなお話がありました。
 このオフィスビルからも近い地下鉄の駅近くのお部屋を借りて、そこを通販部門のオフィス兼倉庫にすること。
 そこをネットショップの拠点として、里美さまが責任者として赴任されること。
 ゆくゆくはアンテナショップとして路面店での営業も視野に入れていること。
 などを聞かされていました。

「それでナオコにはね、ラブトイズのモニターをしてもらうことになったんだ。モニターってわかる?」
「あ、はい。なんとなく・・・」
「簡単に言うと、使い心地の感想とか、ここが良かったとかを言葉にしたレビューを書いて欲しいんだ。それをショップの商品ページに添えるから」

「ナオコなら、すでにいろんなオモチャの経験ありそうだからって、社内満場一致で決定したんだ。ナオコがいないあいだに」
「うちはレズビアン、もしくはバイ女性限定のショップだから、そういう視点で、ナオコが使った印象を書けばいいだけ。最初はこの3点」

 リンコさまに促されデスクのほうへ移動して、デスク上に並べられたえっち用オモチャ。
「こっちのふたつはバイブレーター。充電でも電池でも使えるうちのオリジナル」

 どちらも丸っこくて少し反り曲がったソーセージのような形状で、女子ウケの良さそうな可愛らしくポップな色をしています。
 でも、こういった類のオモチャを使った経験のある者なら、一見して頬が赤らんでしまうほど、外見が刺激的でもありました。

 明るいグリーンのほうのは、ゴーヤの表面のようなトゲトゲと言うかイボイボと言うかがびっしり根本まで施されていました。
 触ってみるとシリコンでぷよぷよ柔らかいのですが、これを挿れて、膣壁を擦られる感触を想像しただけで、首筋の裏がゾゾッとわなないてきちゃいます。

 もうひとつのパステルブルーのほうは、長めで先端がやや曲がっている形状で、いかにも奥まで届きそうな感じ。
 おまけに表面がゆったり波打つ感じに凹凸があって、いかにも膣内でピッタリとフィットしそうな感触。
 
「どっちも振動するだけじゃなくて、根本のスイッチでうねったり、上下にピストン運動とかもする仕様なんだ」
 こんなので奥まで突かれたら、間違いなく私はシオを吹いてしまうことでしょう。
 手でさすっているだけでも、なんだかマゾマンコが感じてきちゃう。
 思わずツバをゴクリと飲み込みました。

 あともうひとつは、リモコンローターみたい。
 見慣れた卵型のローターと、コントローラーらしき箱。

「このローターはね、電波モードが選べて、ノーマルならこのコントローラーで動かすのだけれど・・・」
 リンコさまがおっしゃりながら箱を取りスイッチを押すと、デスクに置いたタオルの上でローターがヴーンと唸り始めました。
 すぐにスイッチを切られるリンコさま。

「こっちのハプニングモードにすると、街中に溢れているあらゆる電波に反応しちゃうんだ」
「だから、これを装着して街に出たら、不意に震えだしちゃうことがままあるってわけ」
「たとえば自動ドアのセンサー電波とか、街中のワイファイ電波、近くにいる人の携帯電話の送信、着信電波にも反応するし、もちろん誰かが近くでリモコンローター遊びをしていたら、その電波にも」

「違う電波を受信するたびにオンとオフをくりかえして、震え方も変わるから、一度震えだしたら取り出して電池を外すまで、自分ではコントロール不能になっちゃう」
「街の中でそこら中の見知らぬ人からマゾマンコを陵辱されているみたいで、ナオコみたいなドエムにはたまらないでしょう?」
 リンコさまがまた、からかうようなお顔で私の顔を覗き込んできました。

「この3つのアイテムを使用してみた感想レビューを、200字以内で今週中に書き上げて、メールで里美さんに提出すること。あとの指示は里美さんに従って」
「ゆくゆくは、新アイテムの開発の仕事にも人柱として参加することになるから、今からえっちなアイデア、たくさん考えておくように、って、これはナオコのお姉さまからの伝言ね」
「もちろんこれは仕事だから、勤務中に試すのもおーけー。バイブもローターも。つまりナオコは今後、勤務中に堂々と仕事としてオナニーが出来る身分になったってわけ。嬉しいでしょ?」

 リンコさまがニッと笑って、ソファーのほうへと戻られます。
 私も後を追いました。

「それで最後に、これね」
 リンコさまのお言葉でミサさまが、ソファーの上に散らばっていた機械やコードなどを手際よく分け始めました。

「今日からこの部屋は、アタシたち開発ルームの管理下に入るの。これはウエッブカメラで、この室内の様子はナオコがいるときに限って、すべて開発室のモニターに映し出される仕組み。つまり監視カメラ」
「これはチーフも了承済み。チーフには、この部屋に取り付けたカメラをすべて無効にする操作方法を伝えてあるから、チーフのプライバシーは守られるけれど、ナオコには、この部屋でのプライバシーは、今日から無い」

 リンコさまがご説明してくださっているあいだ、ミサさまがテキパキとカメラを設置していました。
 デスク前のパソコンモニターの上に一台、お部屋の対角線上に窓際天井近くに一台、壁際天井近くに一台、そしてデスクを真横から映す形で一台。

「昨夜配線は済ましちゃったから、カメラ繋げるだけだし、すぐ終わるよ」
 リンコさまがショッパーの紙袋を丁寧にたたみながらおっしゃいました。
 ミサ様が最後にパソコンモニター上のカメラから伸びたコードをパソコンのUSBに繋いで、ニコッと嬉しそうに笑いました。

「ちょっとあっちのモニター確認してくる」
 ミサさまがタッタッタとドアを出て開発ルームに向かわられたよう。
 すぐに戻って来られました。
「おっけー。バッチリ」
 ニコニコ顔のミサさま。

「これでアタシらが開発ルームで作業しているときでも、ここでナオコが何をしているか、いつでも監視出来るようになったってわけ」
「アタシらが忙しくてこんなふうにアソんであげられないときでも、気が向いたらメールや電話で命令してあげるから、ちゃんと言いつけを守ること」
「は、はい・・・」
 
 つまり、おふたりが対面で虐められない状態のときでも、全裸になりなさい、って電話やメールで一言ご命令されたら、私はひとり、いそいそとお洋服を脱がなくちゃいけない、ってこと?
 それで、カメラで監視されているから、ご命令に背いて脱いだフリして嘘をつくことも、絶対に出来ない・・・
 
 私、なんてみじめな境遇になってしまったのだろう・・・
 まさしくオフィスの慰み者状態。
 私の被虐メーターが振り切れて、頭がクラクラするくらいの恥辱感が全身を火照らせました。
 
「それで、ナオコが好きそうな服、見繕って持ってきたから。このクロゼットに掛けておく」

 ひとつだけまだ膨らんでいたショッパーから次々とお洋服を取り出し、謎のクロゼットにせっせとしまい込むミサさまとリンコさま。
 どんなお洋服なのかはわかりませんが、きっとキワドイものばかりなのでしょう。

「アタシらに、今日はこれを着て過ごしなさい、って言われたら、必ず着替えること。ごまかそうとしても監視カメラでちゃんと見てるからね」
「それで、来客のとき、上に羽織っていいのは今のところ、その白衣だけ」
 イジワルくおっしゃるリンコさまに、黙ってうなずくしかない私。

「さあ、これで準備は整った、っと。ドマゾ女ナオコのオフィスセイドレイ生活のはじまりはじまりー」
 リンコさまが茶化すみたいなお芝居声で、高らかに宣言されました。
「記念すべき初日のフィナーレに、ミサミサリクエストのオナニーショーをじっくりと見せてもらいましょうか」

「せっかくだから、こんな狭い金庫部屋じゃなくて、広々としたメインルームでやってもらおうかな?アヤ姉のデスクの上なんかステージぽいじゃん、どう?」
 リンコさまがイタズラっぽくミサさまにお顔を向けました。

「いいアイデア。明るくてじっくり視れるし、鞭も振るいやすそうだ」
 
 ミサさまの表情からあどけなさが消え、お声が低くなり、乗馬鞭が宙空をヒュンと切り裂きました。
 リンコさまおっしゃるところの、多汗症のドSで男嫌いな裏生徒会副会長、というコスプレキャラが、ミサさまに再び憑依したようでした。


非日常の王国で 04

2016年10月16日

非日常の王国で 02

「やっと一息つけたからさ、息抜きしに来たよ」
 外国のロックバンドのロゴが大きく描かれたダボッとした黒いTシャツにジーンズ姿のリンコさまがニコッと笑いました。
「あっ、お疲れさまです」
 ご挨拶しつつお隣のミサさまのお姿を見てびっくり。

 高校の制服ぽいキャメル色のブレザーにチェック柄のミニスカート姿なのですが、Vゾーンをブラウスごと胸元を大きく開いて、その豊満なおムネの谷間を惜しげもなく大胆に露出されていました。
 ハーフカップらしき黒いブラジャーの縁まで見えています。
 足元はピンヒールのロングブーツ、赤いリボンを首に直接巻いて結び、髪はひっつめにして頭頂部でお団子にまとめ、フォックス型のメガネの奥から私を睨みつけるようにジッと見つめています。

 ミサさまのことですから、おそらく何かのマンガかアニメのコスプレなのでしょうけれど、私には元ネタが何なのかわかりませんでした。
 でも、ミサさまのダイナマイトボディ、そのたわわなおムネの真っ白な谷間を間近に見せつけられ、あまりの艶めかしさに思わず息を呑んでしまいした。

「あらためてイベント、お疲れさま。ナオコのおかげでアタシたち、休む暇無しの大繁盛で感謝してるよ」
 リンコさまがイタズラっぽく微笑まれながら、お部屋の奥へと進まれ、窓際のソファーにお荷物を置かれました。
 ミサさまも無言でリンコさまにつづかれます。

「で、今日はさ、そんなナオコへの感謝と労いの気持ちを込めて、いろいろプレゼントを持ってきたんだ。ナオコのこれからのオフィス勤務がより愉しくなるようなものばかり」
「あ、はい、それは、あ、ありがとうございます・・・あ、何かお飲み物でもお持ちしましょうか?」

 以前は、ナオっちとかナオちゃんとか、親しみを込めて呼んでくださっていたのに、ナオコ、という呼び捨てが定着してしまったリンコさま。
 そんなリンコさまの入口でのニコニコ顔が、お部屋に入った途端どんどんニヤニヤ笑いへと移行している気がして不穏な空気を感じている私。
 間がもたなくて冷蔵庫のほうへと一歩踏み出した私の肩を、リンコさまの右手ががっちり掴みました。

「飲み物なんていいから。それよりもとりあえず、裸になってくれる?」
 
 さも当然のことのように、あっけらかんとおっしゃったリンコさま。
 ハダカ、という単語が耳に届いた途端、全身がズキンと疼きました。

「えっ!?今ですか?なんで裸にならなくてはいけないのですか?」
 股間の粘膜がザワザワさざめき出したのを自覚しつつ、恐る恐るお尋ねしました。

「なんでって、ナオコ、今日もチョーカーしているじゃない?チョーカー着けて出社した日は、アタシらがどんなエロい命令をしても絶対服従、そういうルールじゃなかったっけ?」
 完全にニヤニヤ笑いで嗜虐的なまなざしとなったリンコさまが、とても愉しそうにおっしゃいました。

「プレゼント持ってきた、って言ったでしょ?ナオコが好きそうな衣装とかもあるから、着て見せて欲しいしさ」
 両腕を胸のところに組んで睥睨するように私を見つめてくるおふたりに気圧されて、私は観念しました。

「わ、わかりました・・・」

 やっぱり私はこれから、勤務中でもスタッフのみなさまの慰み者としてもてあそばれることになるんだ・・・
 自分の中に渦巻く被虐願望が勢いづき、常識的な理性の元で健全に保たれている日常的なオフィス空間がぐにゃっと歪んで、非常識な非日常的恥辱空間へと侵食されていく気がしました。

 その日の私の服装は、シンプルな白のシャツブラウスにグレイの膝丈タイトスカート、素足にチョーカーと同じえんじ色のアンクルストラップミュール。
 これからの私は、スタッフのどなたかが気が向いたとき、いつでもどこでも否応なく裸にされてしまう、そんなみじめで恥知らずな存在にならなくていけないんだ・・・
 そんなことを考えながら、少し震える指をシャツブラウスの一番上のボタンにかけたときでした。

「違うだろ?」
 お部屋にいらしてから一言もお口を開かなかったミサさまのお声でした。
 それも、普段とはまるで違う、咎めるような突き放すような、とても冷たいアルトなご発声。
 ミサさまは、いつの間にかお姉さまのピンクの乗馬鞭を片手に持たれていました。

「今日のミサミサはね、すっごく怒ってる。それで、すっごく張り切ってる」
 リンコさまが愉快そうにお口を挟んできました。

「怒ってるのはね、ほら、この子、イベント本番中はパソコンにつきっきりで司令塔状態だったじゃない?だからアタシらが部室や楽屋でナオコにオシッコさせたりオナニーさせたりしてアソんでだって聞いて、激おこなの。ボクも一緒にやりたかったー、って」
「だから今日はいっぱい虐めてやる、って張り切ってる。ミサミサってこう見えて、同人で書くSSとか、かなりのドS炸裂だから、覚悟しといたほうがいいよ?」

 嬉しそうに唇の両端を上げて忠告してくださるリンコさま。
「今日のこのコスプレだって、超レアものだよ。多汗症のドSで男嫌いな裏生徒会副会長。普段のコスプレイベじゃ、絶対ここまでしないもの」
「もしもレイヤーとしてのミサミサファンのオトコどもがこの姿見たら、大喜びでボタボタよだれ垂らしまくっちゃうはず」

 リンコさまのご説明が終わるのを待っていたかのように、ミサさまの、コスプレされているキャラの口調をおそらく真似されているのであろう、まさにSMの女王様のような冷たいお声がつづきました。

「貴様はマゾなんだろ?恥ずかしい姿を視られて悦ぶヘンタイ露出狂女なのだろう?」
 一歩前へと踏み込まれたミサさまの剥き出しの白い胸元が眼前に迫り、頭がクラクラしちゃう。

「あ、はい・・・その通りです・・・」
 履かれているブーツのヒールが高いので、小柄なミサさまでも私と同じくらいの目線となり、わざとなアルトのお声とも相俟っての凄い迫力な女王様ぷりにタジタジ。

「だったら視られて一番恥ずかしい部分を最初にさらけ出すのがマゾ女の作法ってものだろう?貴様の一番恥ずかしい部分はどこだ?」
 メガネ越しの冷たい視線に促され、私の目線はうなだれて自然とスカートの中央付近に。
「ふん。やっぱりそこなんだな。ならば下半身から脱ぎ捨てるのが貴様にはお似合いだ」
 ミサさまの乗馬鞭の先がタイトスカートの裾を揺らしています。

「は、はい・・・わかりました・・・」
 ブラウスの首元で止まっていた両手を下ろし、スカートの後ろホックを外しました。
ジッパーをジジジと下げるとウエストを締め付けていた感触が緩み、引力に引かれてストンとスカートが足元に落ちました。
 ピンク色のレースショーツが丸見えになります。

「し、下着も、ですよね?」
 更なる恥辱を味わいたくて、わざとお尋ねしてみました。
「あたりまえだろうっ!」
 間髪を入れずミサさまの怒声とともにヒュンと乗馬鞭がしなり、左太腿の側面を乗馬鞭のベロが痛打しました。

「あうっ!」
 パチーンと小気味よい音がした割にはそんなに痛くない、と思ったのも束の間、打たれた箇所が徐々にジンジンヒリヒリ疼いてきました。

 両手をショーツのゴムにかけます。
 ミサさまとリンコさまは腕組みして、じーっと私の下半身に注目されています。
 
 ショーツを膝まで一気にずり下ろしました。
 股間から短い糸がツツッと引いて、すぐ切れたのが見えた気がしました。
 膝上で引っかかったままの、だらしないピンクのショーツ。
 両膝を内股気味に閉じると、そのピンクの布片は足元までハラリと落下していきました。

「それを足元から抜いてこちらへ渡せ。靴は脱がなくていい」
 ミサさまからの、乗馬鞭の先で今脱いだショーツとスカートを指しながらのご命令。
 前屈みになってミュールのヒールにひっかからないようにショーツとスカートを足元から抜くと、リンコさまが素早く私の手からそれらを奪い去りました。

 恥丘の上10センチくらいまでにしか届かないブラウスの裾から下はスッポンポン。
 そんな中途半端な格好でオフィスのお部屋にいるという事実が、凄く淫靡に思えます。

「ああ、やっぱり濡らしてる。本当スケベなんだから」
 リンコさまが私から奪い去ったショーツを広げ、クロッチ部分をこちらに指し示されました。
 クロッチの穿いたらちょうど真下くらいに当たる部分に、濡れて濃いピンク色に変色したシミが数センチ出来ていました。

「ミサミサのドSっぷりにもう濡らしちゃってるんだ。ホント感度がいいと言うか、ドスケベって言うか」
 私が汚したショーツのシミを私の眼前に見せつけながら、呆れ声でおっしゃるリンコさま。
 喩えようもないみじめさ、恥ずかしさ・・・

 そのとき唐突に、私のデスクの上の電話が呼び出し音を奏で始めました。
 その場にいた誰もが一瞬、ビクンとたじろぎました。
 二回、三回と鳴り響く電子音。
 ふっと気づいたようにリンコさまが私を見ました。

「ナオコ、出なさい」
「は、はいっ」
 あわててデスクに駆け寄りました。
 剥き出しの両内腿のあいだをスースー風が抜けるのがわかりました。

「大変お待たせいたしました。ダブルイーです、お電話ありがとうございます」
 立ったまま受話器を取り、おふたりに裸のお尻を突き出してのご対応です。

「はい。生憎、早乙女も渡辺も出張中でして・・・はい、お電話のあったことを伝えておきますので・・・はい・・・」
 お電話はお取引先のひとつのご年配の女性からでした。
 綾音部長さまと至急にご連絡が取りたいとのことなので、お電話を終えた後、社のSNSに伝言メモの書き込みをしなければなりません。

 中腰になってパソコンを操作しながら、股間の奥がジンジンと痺れるように感じていました。
 普段何気なくこなしていた通常業務を、こんな破廉恥な姿で社の先輩かたに見守られながら行なっている、というアブノーマルな事実が私を凄く興奮させていました。

 お電話へのご対応中も、普段通り愛想の良い声を発しながらも、でも私今下半身丸出しなんです、剥き出しの女性器を空気に晒してご対応させていただいています、とお相手の女性に向かって心の中で何度も呟いていました。
 ミサさまたちに向けて突き出している裸のお尻の割れスジも、なぜだかジリジリと開いてしまう両足の足幅に比例して広がってしまうのです。

「下半身スッポンポンのクセに普通に仕事しているの見るのって、なんだかシュールでめちゃエロいね。アヌスまで丸見えだし」
 リンコさまも私と同じ気持ちになられたようです。
 そのお言葉にますます悶々と疼いてしまいます。

 パソコン操作を終え、おふたりのほうへと向き直ると、自然と両手が後頭部へと上がっていました。
「あーあ。ナオコ、完全にドマゾモードに入っちゃった」
 リンコさまがからかうようにおっしゃいました。

「よし。では脱衣をつづけろ。貴様のようなマゾ女には不要なその布っきれも、さっさと脱ぎ去れ」
 乗馬鞭が宙空をヒュンと一閃し、ミサさまのお芝居も再開です。

「はい・・・失礼します」
 後頭部に添えていた両手をゆっくり下ろし、ブラウスのボタンを外し始めます。
 ブラウスの両袖を抜いてから両手を背中へ回し、ブラジャーのホックも外しました。
 ブラのカップがハラリとずれて、見ているだけでも痛々しいほどに尖りきった両乳首が外気に晒されました。
 事実、私のふたつのバストトップはズキズキと、やるせない官能を股間と脳内に送り込んできていました。

「やっとマゾ女らしい格好になったな。いいか?貴様は今日一日退社まで、その姿で勤務しろ」
 首にえんじ色の首輪型チョーカー、足元にチョーカーと同じような色のアンクルストラップミュール以外全裸となり、後頭部に両手をあてがう私の裸身を、ミサさまが舐めるようにご覧になりながら冷たいお声をぶつけてきました。

 えっ、何か着せてくださるのではないの?
 たぶん破廉恥な衣装なのでしょうけれど、プレゼントを着せてくださるっておっしゃったのに・・・
 社長室のドアは開けっ放し。
 高層ビルとは言え、畳一枚よりも大きな何枚もの窓もカーテン全開でした。

「返事は?」
 ヒュンと一閃したミサさまの乗馬鞭のベロで、今度は右太腿の側面を痛打されました。
「あうっ!は、はいっ!」
「それから今後、貴様が服を脱ぐときは、今の順番を厳守。何があってもだ。守らなければ罰を与える」
「はいっ。わかりました」

「ところで貴様はその、一番視られたい恥ずかし場所のことを、自分で何と呼んでいる?」
 ミサさまの乗馬鞭の先が私の股間を指しました。
「えっ?えっと・・・」
 突然のあんまりなご質問に、口ごもる私。

「だからその、裂け目から牝クサイよだれを垂らしている貴様の恥知らずな女性器のことを、自分では何と呼ぶのか聞いている。二度も言わせるなっ!」
 バチンとまた右太腿を痛打されました。
「はうっ!」
 痛みとともに粘膜が痺れ、性懲りもなく恥知らずなよだれがトロリ。
 それにしてもミサさまってば、乗馬鞭の扱いがお上手。

「は、はい・・・ごめんなさい・・・マ、マゾマンコです・・・お姉さま、あ、いえ、チーフが名付けてくださいました」
「正確に言うと・・・な、直子の剥き出しマゾマンコ、とチーフが名付けてくださいました・・・わ、私も、気に入っています」

 マゾの服従ポーズのまま、ジンジンしている腿の痛打痕を意識しながらお答えしました。
 内腿をはしたないよだれがダラダラ垂れていきます。

「ふーん。剥き出しマゾマンコか。さすがチーフ。上手いこと名付けたものだ。貴様の無毛な恥知らず女性器にピッタリの名だな」
 ミサさまが乗馬鞭のベロで私の股間をさわるかさわらないかくらいにスリスリもてあそびながらおっしゃいました。
「あと、貴様はチーフのことを、私たちの前でも、お姉さま、と呼んでいいぞ。そのほうが萌える」
「あっ、ミサさま、そ、そこは・・・あんっ!」
 ベロの先が腫れて飛び出した肉芽にコソッと触れ、思わず淫ら声を洩らしてしまいました。

「神聖な職場でいやらしい声を出すな。がまんしろっ」
 すかさず左腿にバチンと乗馬鞭。
「あうっ!はいっ!申し訳ございません」
 内腿を滑るよだれが止まりません。

「今後貴様はいついかなるときでも、裸になれと言われたら真っ先に下半身から脱いで、貴様が言うところの、剥き出しマゾマンコ、をまっ先に世間様に露出するのだ」
「これは絶対服従の命令だ。わかったな?」
「は、はいっ」

 お答えしつつも、今はコスプレされているとはいえ、普段は童顔ロリ美少女のミサさまのお口から、剥き出しマゾマンコ、なんて、はしたな過ぎるお言葉が発せられるのをお聞きして、キュンキュン萌え死んでしまいそうでした。

 ミサさまとリンコさまがお互い目配せをされました。
「今日の来客の予定は?」
「あ、はい・・・今日はありません」
「そうか。もし貴様がマゾ女らしくふしだらな格好をしているときに来客がある場合のみ、この上着の着用を許す」
 ミサさまのお言葉につづいて、リンコさまがショッパーの中から白っぽい布地を取り出しました。

 広げてみるとそれは、お医者様などがよくお召しになっている、所謂白衣。
 ナース服のように柔らかなシルエットではなく、ストンとした、科学や化学関係の研究所員さんが羽織っていそうなドクターコートという感じの白衣でした。

「ニットのワンピとかも考えたんだけどさ、こういうオフィス空間で、すぐ着れてお客様にも失礼じゃない上着って、難しいんだよね」
 リンコさまが広げて見せてくださった白衣をハンガーに掛けながら、説明してくださいました。

「白衣ならなんかインテリっぽいし、高尚ぽいじゃん。ややこしそーなことしているムードも出て」
「理系の大学の教授の秘書にも、白衣着てるの多いって言うし。アカデミックって言うかさ。そんなに社内の雰囲気も崩れないかなーと思って」

「私が裸にされているときに、ご来客があったら、これを上に着てお茶を出したり、応対しなさい、ということなのですね?」
 そんなに私、オフィスで年中裸にされちゃうのだろうか、とゾクゾクしながらお尋ねしました。
「そう。室外のトイレにいくときとかもね。ナオコ、裸コートするの、好きなんでしょ?」
「は、はい、それはそうですけれど・・・」

 素肌に白衣一枚でご近所の郵便局までお使いに行く自分を想像してみます。
 背筋がゾクゾクっと震えました。

「ちゃんとナオコの好み考えて、軽めで上質のコットンで作ってあげたからさ。素肌に貼り付いたら、ちゃんと乳首も浮くはず」
 えーっ、そんな・・・
 そんなこと私、望んでいません。

「これはいつもここに掛けといて、マゾモードナオコの緊急時ユニフォームということで」
 リンコさまが、今日このお部屋に導入されたばかりの謎のスーツロッカーに、その白衣をさも当然のように掛けられました。
 私には一度も着せてくれずに。

 ふとソファーの上に目を遣ると、いつの間にかいろいろなものが散乱していました。
 おふたりがお持ちになったショッパーの中身なのでしょう。
 すなわち私へのプレゼントの数々。

 下着のような布きれ、何か機械のような器具と絡まったコードの塊、私ならどう使うか一目でわかってしまう形状をした卑猥なオモチャの数々。
 おふたりの肩越しにチラッと拝見しただけで、そういったものの存在が認められました。
 これから私、何をされちゃうんだろう?

「どう?ミサミサ。ナオコを虐めるのって、面白いでしょう?」
 リンコさまがミサさまに話しかけました。

「うん。凄く愉しい。直子がこんなにドスケベなマゾ女だとは思わなかった。虐めのアイデアがどんどん湧いてくる。いつものボクらしくなく、とても興奮している」
 素に戻られたミサさまが普段の口調でおっしゃり、メガネの奥から私の裸身をじーっと見つめてきます。

「でしょ?今日は来客もないって言うし、時間もまだあるから、もう少しアソんでいこっか?」
「うん。もちろん」

 おふたりがお顔を合わせてニヤッとうなずいたとき。
 再び電話の呼出音が唐突に鳴り響き始めました。


非日常の王国で 03


2016年10月2日

非日常の王国で 01

 イベント明けの月曜日。
 出勤前の朝、とてもドキドキしていました。

 お約束通り土曜日の午後に私のお部屋にいらしてくださったお姉さまから、私が帰った後のことをお聞きしました。
 
 凄い迫力のショーだった、とお客様がたにも大好評で、イベントでご披露したアイテムの売上も昨年の倍以上いきそうなこと。
 うちでもモデルで使いたい、とか、イメージビデオをぜひ撮らせてくれ、というご依頼も多く、ごまかすのが大変だったこと。
 夕張小夜の本業は学生で、現在イギリスの名門大学に留学中の身なので、日本で表立った活動は出来ない、と断ったそうです。

 お客様がたの中で夕張小夜を森下直子だと見破っていらしたのは、アンジェラさまたちとシーナさま御一行だけだったよう。
 でも、スタンディングキャット社の男性たちは、薄々勘付いていたかもしれない、とお姉さまはおっしゃいました。

「彼らって、同性でも異性でも、自分たちと同じような個性と言うか異端性を嗅ぎ分ける嗅覚、異常に鋭いからね」
 笑いながらおっしゃるお姉さま。

「あと、シーナさんの古いご友人、あ、残念ながら百合草女史ではなくてよ、も数名いらしていたわ。ひょっとしたら直子も知っている人たちかもね」
 どなたなのかすっごく知りたくてお姉さまにお尋ねしたのですが、そのうちわかるわよ、うちともつながりが出来たから、とイタズラっぽく微笑むだけで教えてくださいませんでした。

 そして私が一番気にかかる、社員スタッフのみなさまのご反応。
 これはもう絵に描いたような、興味津々、の一言だったそうです。

 パーティが終わって、それぞれお得意様がたとの二次会までのあいだ、スタッフ宿泊用に取ってあった隣接するホテルのお部屋でスタッフだけの軽い打ち上げをなさったそうなのですが、みなさま、お姉さまに対して、ご質問攻めだったそうです。

「あたしも気分良かったから、いろいろ包み隠さずしゃべっちゃった。あの子はこうしたら悦ぶとかこんな妄想しているとか」
「みんな真剣に聞いてくるから、つい言っちゃったのよね。これからも業務に支障がない程度になら、みんなも好きに虐めていい、って」

「ほら、あたしは忙しいからあまり直子をかまってあげられないでしょう?それで直子を放っておくと、無茶なひとり遊びとかしちゃいがちじゃない」
「だからどうせなら、安全なオフィス内で直子が適当にスタッフたちのオモチャになって発散するのもいいかな、って思ったの」
 
 バスタブに身を寄せ合って浸かり、私の股間をチャプチャプ弄りながらニヤニヤ笑いのお姉さまがおっしゃいました。

「オフィス内で裸にするくらいはぜんぜん構わない、って。それで直子のムラムラが幾分でも解消出来るのなら、あたしも安心だし」
「外に連れ出すときやお客様が来社されるときは、社のイメージを損なわない程度にほどほどに、とは言っておいたから、そんなにひどいことはされないと思うわ」
「まあ、取引先の中にもノリのいいかたいらっしゃるし、いつもお茶を出してくれるあの社長秘書の子はエロい、って評判になっても、あたしはかまわないって思っているのだけれど」

 そんなふうにして、私の扱いについて、社内的にいくつかのルールがみなさまのあいだですでに決められていました。

 私がムラムラして誰かにかまって欲しいときは、首にチョーカーを着けてくること。
 お姉さまとの秘密のお約束が、スタッフ全員とのお約束となっていました。
 逆に、お仕事が猛烈に忙しいとか集中したいとか、そういう気分になれないときはチョーカーを着けずに出社し、スタッフも手を出さない。

 チョーカーを着けて出社したからには、スタッフ全員が私のご主人様となり、性的なご命令には絶対服従すること。
 こういうのは慣れ過ぎてビッチぽくなってしまうと面白くないので、出勤時や退社時など、お外でひとりで行動するときは、きちんとした清楚な服装でお淑やかにしていること。
 当然、屋外での危ないひとり遊びは休日でも一切禁止、どうしてもしたいときはスタッフの誰かに必ず相談して同伴していただくこと。
 そのときはみんな気を配って、好色なドスケベ男性たちにつけいられる隙は、絶対に見せないこと。

「直子、あたしらがいなくなった部室や楽屋でも、いろいろしでかしたらしいじゃない?ルール決めるとき、リンコが一番ノリノリだった」
「それに、あの下ネタ耐性の低いアヤまで愉しそうにニヤニヤしていたのだから、直子が放つマゾオーラの魅力って相当なものよね」

 私が一所懸命に隠し通そうとしていた恥ずかしい性癖の数々は、あのイベントの日一日でスタッフのみなさま全員に知れ渡ってしまいました。

 モデルをすると決まったときから帰るときまで、どなたの前でもほとんど全裸で過ごし、おっぱいも無毛なマゾマンコも、お尻の穴までスタッフ全員にじっくり観察されました。
 初対面のしほりさまには、全身隅々までもてあそばれ、リンコさまの目前で強制的に自虐オナニーをさせられ、楽屋では、ほのかさまや里美さまにまでペットボトルに全裸で放尿する姿を目撃されました。
 
 そして本番では72名、お姉さまからお聞きしたお手伝いのスタッフさんがたも除いた、純粋なお客様としてイベント会場にお越しいただいた方々の数です、ものお客様がたの前で、キワドイ衣装に感極まってオーガズムに達してしまう姿を何度もご披露したのです。

 私という人間の淫乱さ、ヘンタイさ、ドマゾさは、その場にいらっしゃった全員の脳裏に深く刻み込まれたことでしょう。
 もはや後戻りは出来ません。
 私がこの会社に勤めつづける限り、夕張小夜が森下直子だとご存知なみなさま全員が私を、そういう目、で視つづけることでしょう。

 レッテルは貼られてしまいました。
 このレッテルから逃れたいのなら、お姉さまとのスール関係を解消して、この会社から離れるしかありません。
 そしてもちろん私は、お姉さまとお別れするくらいなら死んだほうがまし、とずっと思っています。

「そう言えば直子、しほりさんとも何か約束したんだって?絵理奈さんが退院されたら快気祝いに、どこかで一席設けなくちゃね」
 
 のんきにそんなことをおっしゃるお姉さまのしなやかなからだに、バスタブの中、無言でギュッとしがみつきました。
 月曜日から始まるオフィス勤務がどんなものになってしまうのか、不安六、期待四くらいの割合に胸を震わせながら。

「でもね、うちのスタッフ全員、直子にすっごく感謝しているのは事実よ。あんなアクシデントがあったのに、直子のおかげでイベント大成功だったのだから」
 お姉さまが私に負けないくらいの力で抱きしめ返してくださいました。

 月曜日の朝出社したら、お昼までには羽田へ行って九州行きの飛行機に乗らなければならないというお姉さまは、旅支度のために日曜日の夜9時頃、いったんご自宅に戻られました。

 玄関口まで全裸でお見送りした私にお姉さまは、今までで一番長かったかもしれない、くちづけをくださいました。
 玄関ドアを開け放したまま、全裸の私とスーツ姿のお姉さまは5分以上、互いの舌を絡ませ合いました。
 唇が離れると、したたるよだれを舌でベロっと舐めあげてから私の目を見つめ、ありがとう、と小さなお声でおっしゃり、最後にニッコリと素敵な笑顔をくださいました。

 玄関ドアが閉じるとひとりぼっち。
 でもタイミング良く急激な睡魔が襲ってきました。
 イベント当日から今日まで、張りつめつづけていたドキドキと、滾りつづけていた劣情が、まるで映画で観たことのある燃料切れの飛行機のように失速しつつありました。
 加えてこの三日のあいだ、数え切れないほどの回数昇りつめた、その体力の消耗も相当のものだったはずです。
 なんとか目覚まし時計をセットしてそのままベッドに倒れ込み、すぐに意識が失くなったようでした。

 そうして迎えた月曜日早朝、梅雨の晴れ間。
 朝9時集合を言い渡されていましたから、8時半までには行かなくちゃと7時に合わせていた目覚ましが鳴る前に、目が覚めていました。
 全裸のままシャワーへ直行、ゆっくりと全身を洗いました。
 
 二の腕にうっすらと縄の痕、鏡に映したらお尻にも鞭のミミズ腫れが薄く残っていました。
 その淫靡な痕跡を見て性懲りもなく疼き出すからだには、自分のことながら、その快楽に対する貪欲さに呆れてしまいます。

 丁寧にからだを拭き髪をまとめてから、下着を手に取ります。
 考えてみると、まともな下着を身に着けるのって丸四日ぶり?
 イベント当日からシーナさまと自宅に戻り土曜日にお姉さまと入れ替わりになって今朝目覚めるまで、ずっと裸で過ごしていましたから。
 
 そのあいだに身に着けたものと言えば、突起付きCストリングとか麻縄とか手錠とかハーネスとかバイブが落ちないように穿いたショーツとか洗濯バサミとかばかり。
 久しぶりの布地にやんわり包まれた乳首たちが、なんだかムズ痒い感じ。

 それからお気に入りの白いフリルブラウスに濃い目のベージュの膝丈フレアスカートを合わせます。
 これにリネンのショートジャケットを羽織って出勤するつもり。
 出勤ファッションはお淑やかに、がルールですから。

 鏡に向かってメイクを始めると、どんどんとありふれた日常生活へと戻っている感覚がありました。
 それと同時に昨日までの三日間のあれこれを思い出し、確実にこれまでとは変わるであろう今日からの自分のオフィス勤務に思いが至ります。

 いったい私はこれからどうなっちゃうのだろう。
 オフィスに入ったらすぐに、今日から直子には全裸で勤務してもらうことにします、なんて綾音部長さまからご命令されたりして。
 そこまではいかなくても、何かキワドイ制服を着せられたり、セクハラの慰み者にされたり。

 出勤時間が近づくにつれ、昨夜六対四だった不安と期待は、八対二くらいにまで不安のほうが勝ってきていました。
 しっかりなさい、小心者直子、お姉さまに逢いたくないの?
 そう自分を叱責して私は、オフィスへと向かいました。
 首には、お姉さまからいただいた涙型のチャームがぶら下がった白いレザーベルトのチョーカーを巻いて。

 8時25分、オフィス到着。
 ドアキーを解除しようとしたら、もう開いていました。
 あれ?もうどなたかいらしているんだ・・・
 ほのかさまかな?
 ドアを開けて、そっと中を覗き込むと大きな拍手の音が。

 すでにお姉さま以下スタッフ全員が揃っていました。
 里美さまのお顔まで見えます。
 みなさま、私が出社するのを待ち構えていてくださったみたいでした。

「おつかれさまー」
「おつかれー」
「ナオコにはイベント当日、きちんと御礼と挨拶、出来なかったからね」
「イベント大成功の立役者、VIPだから、ちゃんと感謝の気持ちを伝えたかったの」

 みなさまニコニコ、口々に褒め称えてくださいました。
 なんだか気持ち悪いくらいに。
 みなさま一様に、私がチョーカーを首に巻いているのをご確認され、嬉しそうなご様子をされているような気もしましたが。

 それから全員応接ルームに移動して、お紅茶とケーキで、あらためてお疲れさまー。
 お紅茶も今日は、雅部長さまとほのかさまが淹れてくださいました。
 ひとしきり花咲く雑談も、イベントにいらしていたお取引先様やお客様がたに関することばかり。

 やがて始まった反省会議。
 反省会と言っても、ネガティヴなご発言は全く無く、どのアイテムがどのお客様とご商談成立したかのご報告が相次ぎ、ショーの個人的な感想などに言及するのも一切無し。
 最後に、各々の今週これからのご予定を確認して、終始和やかな雰囲気で終わりました。

 10時前に会議が終了すると、お姉さまと綾音部長さま、それに営業の雅部長さまとほのかさまは、イベントで商談成立したお客様がたとの打ち合わせのために、それぞれ東京駅や羽田へと旅立っていきました。
 里美さまもご自分のオフィスへとお戻りになられ、オフィスに残されたのは、私と開発部のリンコさまとミサさまの三人に。
 そのリンコさまとミサさまも、ご自分たちの開発ルームにこもりきりとなられました。

 私も、イベント中の経費の精算や売上見込の集計、小口現金の出し入れのために銀行へ行ったりと、一日中あわただしく過ごしました。
 
 いつの間にか退社時刻となり、リンコさまたちに内線でご連絡をしてみました。
 開発部もイベントの余波で、たくさんのパターンを大急ぎで引かなければならず、出来るだけ済ませちゃいたいので今日はおふたりとも部室にお泊りになるとのこと。

「先に上がっていいよー。お疲れさまー、また明日ねー」
 いつもと変わらないご様子で明るくおっしゃってくださいました。
 私、どうされちゃうのだろう、って緊張していた分、なんだか肩透かしの気分でした。

 今日されたえっちなことと言えば、雅さまがいつものようにハグしてきたとき、右腕だけふたりのからだのあいだに入れ、右手で私の左おっぱいを服の上から強くモミモミされたことくらいでした。
 雅さまがそんなことをなさるのは初めてでしたが、私はほのかさまの視線が気になって仕方ありませんでした。
 やられながらチラ見するとほのかさまは、背筋がゾクッとするような妖艶な笑みを薄く浮かべて私たちのことを見ていました。
 ほのかさまがそんな表情をお見せになったのも、初めてな気がしました。

 お家に帰ると早速全裸になり、イベントショーの思い出しオナニーをしました。
 数回イッて落ち着くと、自然とまた、これからのことを考え始めてしまいます。

 社員のかたたちはみなさまオトナだから、私を自由にしてもいい、って言われても、がっつくケダモノみたいに、すぐ虐めてきたりはしないのだろうな。
 何かを企んで、いつか仕掛けてくるのでは、とも思うけれど。
 意外とこのまま普通に、軽いセクハラ程度の平穏なオフィス勤務のままなのかもしれないな。
 そう考えると、被虐を期待していた分がっかりするのと同時に、心の奥底で大きく安堵のため息をついていることにも気づきました。

 お姉さまは今日から九州で、戻られるのは週末、早く逢いたいな。
 数日ぶりに穏やかな眠りにつきました。

 でもそれは俗に言う、嵐の前の静けさ、に過ぎなかったようです。

 次の日、出社すると社長室内の壁際に、見慣れない茶色いチェック柄の不織布に覆われたスーツロッカーが設えてありました。
 不審に思ってチャックを開けてみると、中に吊るされているのは紛れもなくイベントでご披露したアイテムの数々。

 光が当たるとシースルーになるワンピース、透明ビニールのように見事にスケスケなベージュのスーツ上下、ぴったりフィットのキャットスーツ、恥丘丸出しな超ウルトラローライズジーンズ・・・
 どれも、イベント会場でお客様がたにご披露したときの、身を切るような羞恥と甘美な昂りを思い出させる破廉恥アイテムばかり。
 
 でもなぜ、これをこのお部屋に・・・
 イベントの最中、ちょうどあのローライズジーンズをご披露するときにリンコさまがおっしゃった、あるお言葉に思い当たり、マゾマンコがキュンと疼きました。

 見なかったフリをして業務に戻りました。
 その日は、綾音部長さまが朝からデスクでお電話をかけまくり取りまくりなさっていて、お姉さまと営業部のおふたりは出張中、開発部のおふたりは相変わらず開発ルームにこもりきり、という状況でした。
 私も綾音さまが取り切れないお電話に対応したり、そろそろ迫ってきた月末に向けてご請求とお支払の再チェックをしたりと午前中は忙しく過ごしました。

 午後になり、綾音さまが、直帰するから、とお出かけされて少し経ったとき、それは始まりました。

 私のお仕事も一段落して、ネットでも見で息抜きしようかな、と立ち上がったとき。
 社長室のドアがコンコンとノックされ、ドアを開けるとリンコさまとミサさまがニコニコなお顔で立っていらっしゃいました。
 おふたりともそれぞれ片手にひとつづつ、大きくふくらんだショッパーの紙袋をお持ちになっていました。


非日常の王国で 02


2016年9月25日

オートクチュールのはずなのに 59

 楽屋に戻ると、すぐにマントを脱がされ、つづいて乳首の輪っかを緩められました。
「あふうっ」
 尖りきった乳首をぞんざいにつままれた上に血流の戻る痛さも加わり、昂りきった淫声がふしだらに漏れました。
 ゴージャスなチョーカーも外されましたが、一番下のチェーンに繋がる部分は、首周りもシルバーのチェーンつづきになっていて、そこだけチョ-カーと別物になっているようで、クリットに繋がったまま残されました。

 あれよあれよという間に、突起付きCストリングとクリットチェーン、それにミュールだけの丸裸にされていました。
 リンコさまが脇腹に両手をあて、学校の体育の先生みたいな姿勢で私の前に立ちました。

「ほら、もたもたしてて5時近くなったら、他の会場のお客様たちがフロアに溢れて、小夜ちんが思いっきり恥ずかしい思いをすることになるよ?」
 背後から、ほのかさまでしょうか、ペラペラのビニールみたいなのが肩に掛けられました。

「袖通して、ボタン留めて、急いで!」
 リンコさまの叱責声に両腕をもぞもぞ動かしました。
 駅の売店で売っているような乳白色で薄っすら透けているようなビニールの使い捨てレインコート。
 着終わると絵理奈さまのゲーノー人サングラスを渡されて、右手を掴まれました。

「さあ、行くよ」
「行くって、どこへですか?」
「どこへって、小夜ちんはこれでお役ご免。お疲れさん。だからお家に帰るのよ」
「お家に・・・私だけ、ですか?」

「そう。きょうのエロ過ぎモデル、夕張小夜は、お客様たちにはマボロシにしときたいの。だからアヤ姉たちが足止めのためにトークで時間を稼いでいる今のうちに、さっさと消えるの。お客様とエレベーターで鉢合わせ、なんてイヤでしょ?」
「それに、うちのスタッフの森下直子は、今日は家庭の事情で欠勤、っていうことになっているんだから、この後の商談会でナオコが登場するのおかしいでしょ?」
「大丈夫よ。お家まで車で送ってあげるから。お家でゆっくり、ショーのこと思い出しながら、存分に思い出しオナニーでも何でもするといいわ」

 からかうような笑みを浮かべておっしゃるリンコさまのお言葉で、つい数分前のランウェイでの快感がよみがえりました。
 ステージに出てから楽屋へ戻るまでの断片的な記憶がフラッシュバックのように現れては消えていきます。

 一歩進むたびに張りつめてはたわむシルバーチェーン。
 張りつめたときにクイッと上へ引っ張られるクリトリスへのもどかしい刺激。
 そのもどかしさに呼応して膣壁を震わせてくるCストリングの突起。
 何度も真っ白になりかける頭の中。
 ちゃんと歩かなきゃ、と快楽に溺れることを律する、ほんのひとかけらの理性。

 食い入るように私の顔とからだを見つめてくるお客様がたの視線。
 満足そうに嗜虐的な笑みを浮かべられたお姉さま、シーナさま、アンジェラさまのお顔。
 両脚をダラダラと滑り落ちつづける淫らなおツユの感触。
 スクリーンにアップで映し出された両乳首を紐で絞られた剥き出しのおっぱい。
 おっぱいが揺れるたびにユラユラ綺麗な波を作るドレープドレス。

 ステージ上で、夕張小夜でした、と大きなお声で紹介してくださった綾音部長さま。
 お声につづいて、みなさまお立ち上がりになり沸き起こった嵐のような大拍手。
 その喝采で今までになく激しく振動を始める股間のローター。
 ついに頭の中が真っ白になり、崩れ落ちるところをリンコさまの腕で抱きとめられた私。

 すべてが夢の中の出来事のようでした。
 そしてまだ、その白昼夢から醒め切れていないみたい。
 全身が快感の余韻に酔い痴れていました。

「ほら、行くよ。さっきも言ったけど、今ならフロアに誰も居ないと思うから」
 リンコさまに強く手を引かれ、出口のドアまでつんのめりました。

「たまほの、あとは頼んだよ。商談会の最中には戻れると思うから」
「はい。お気をつけていってらっしゃい」
「うん」
 ドアを開けてフロアの廊下に出ました。

 フロアは、相変わらず眠たげなストリングスミュージックの低いBGMが流れている以外、しんと静まり返っていました。
 ドアの横に、私をここまで運んで来たダンボール箱と台車が折りたたまれ、壁に立てかけてありました。

「あっ、雨やんだみたい」
 独り言のようにおっしゃったリンコさまにつられて窓を見ると、大きな白い雲の合間に青空が覗いていました。
 まだお外はこんなに明るかったんだ。
 そうよね、5時前っておっしゃっていたし、夏至を過ぎたばっかりだものね。

 そんなことをのんきに考えながらもう一度窓を見て、ビクンッと焦りました。
 お外が見える窓ガラスにうっすら映った自分の姿に。

 素肌の上にペラペラのビニールレインコート一枚の私。
 乳白色のビニール地は曇ってはいるのですが、やっぱりうっすら透けていました。
 からだの中でとくに色の濃いところ、つまりふたつの乳首と股間のCストリングの赤は、それが何なのか職別出来るくらいには透けていました。
 更に、丈が腿の半分くらいまでは来ているのですが、最後のボタンが恥丘の上くらいのところなので、腿が裾を蹴ると前が割れて太腿が付け根まで丸見えになりそうでした。

 まさかこんな格好で、ショッピングモールやお外のスーパーマーケット前をまた、歩かされるのかしら・・・
 夢見心地な気分が急激にフェイドアウトしていくにつれ、代わりに日常に戻ったという現実感と片隅に追いやられていた理性が働き始めていました。
 恥ずかしい、と思う気持ちが膨らむほど、さっきまでのイベント会場での恥辱的なあれこれを、たまらなく愛おしく懐かしく感じ始めていました。

 そんな私の葛藤などおかまいなしに、リンコさまは私の右手を引いて無言でズンズン歩いていました。
 廊下を過ぎてフロアの中央付近まで出ても、お言葉通り人っ子一人見当たりませんでした。
 どの会場のドアもピッタリ閉じられたまま。
 私とリンコさまのヒールの音だけ、カツカツとやけに大きく響きました。

「ふー。計画通り、誰にも視られずに脱出できそう」
 あと少しでエレベーターホール、とういうところまで来てリンコさまが振り返り、お声をかけてきました。
「あ、そうですね」
「ひとりふたりは覚悟してたけど、今のナオコの格好だって、一般常識的にかなりエロい・・・」

 歩調を緩めずに歩いていたリンコさまがエレベーターホールへの角を曲がってすぐ、おしゃべりと足が同時にピタッと止まりました。

 振り向いて、私に向かって唇に人差し指を1本立て、シーッのポーズ。
 繋いでいた手を解き、ヒソヒソ声で、モデルウォーク、と耳元にささやかれました。

 それからカツカツとおひとりでエレベーターホールのほうへ歩き出されたリンコさま。
 私も少し間を置いて、モデルウォークで後につづきます。
 久々のチェーンがクリットを引っ張る刺激に顔が歪みそう。

 エレベータードアの前では、見るからにOLさんという感じなお揃いのグレイのベストの制服を着た女性おふたりがエレベーターを待っていらっしゃいました。
 リンコさまは、そのOLさんたちから5メートルくらい離れたところで立ち止まり、OLさんたちに一度会釈をして、澄ましたお顔でエレベーター待ちの状態に入られました。
 OLさんたちも会釈を返してくださったので、私も会釈して、リンコさまの脇に立ちました。

 OLさんたちがこちらをチラチラ窺い視ているのがわかります。
 おふたりとも20代半ばくらいの髪を濃い目の茶に染めた今どきOLさん風。
 おひとりはキレイ系、もうひとりは可愛い系で仲良さそう。
 可愛い系のかたが社名の入った大きなバインダーをお持ちになっているので、今このフロアの別の会場でイベントか会議をやってらっしゃる会社のかたなのかな。

 おふたりは好奇の瞳でこちらを盗み視つつ、ときどきヒソヒソお話されています。
 タレント?モデルさん?ファッションショー、エロい、といった単語が途切れ途切れに聞こえてきました。
 何をおしゃっているのかすっごく気になりながらの居心地悪い時間が流れ、やっとエレベーターがやって来ました。

 空のエレベーターにOLさんたちが先に乗り込み、階数パネルの脇に陣取って、開、のボタンを押してくださっています。
 リンコさまと私は会釈をしつつ奥へ。

「何階ですか?」
 可愛い系のOLさんが可愛らしいお声で尋ねてくださいました。
「あっ、恐れ入ります。地下3階をお願いします。ありがとうございます」
 
 リンコさまがバカ丁寧に答えると、OLさんは1FとB3のボタンを押しました。
 そっか、駐車場はこのビルの地下なんだ。
 この格好でショッピングモールやお外を歩くことは回避されたようで、ホッとするような、ちょっぴり残念なような。

 奥に乗り込んだ私は、OLさんたちに背中を向けるために、必然的に正面奥に貼られた大きな鏡と向き合う形になりました。
 綺麗に磨かれた鏡には、私の破廉恥な姿がクッキリと映し出されていました。

 乳白色のビニールの下にうっすらと透ける私のボディライン。
 バストの頂点二箇所で目立つ薄紅色の乳輪と突起。
 両脚の付根を逆三角形に狭く隠す赤いCストリング。
 首から股間へと一着線に走る不自然なシルバーチェーン。
 誰が視ても、レインコートの下にはそれしか身に着けていないことが明白でした。
 セミロングボブのウイッグとタレントサングラスで素顔が窺い知れないことがせめてもの慰め。
 さっき、この格好でお外を歩けないのがちょっぴり残念と思った気持ちを、全面的に取り消しました。

 OLさんたちは、私が背を向けているのをいいことに、薄いビニール一枚越しの私の剥き出しなお尻をジロジロ眺めているのが鏡越しにわかりました。
 ひょっとすると、お尻の穴にまで何か挿入されているのもわかっちゃうかも。
 時々する上を見上げる仕草で、鏡に映った私の正面を、天井隅の凸面鏡で盗み視ているのもわかりました。
 リンコさまは、ツンとお澄まし顔で階数パネルをじっと視ていらっしゃました。

 恥ずかしさにどんどんからだが熱くなってくる中、頭の片隅ではショーでの極まりすぎた羞恥がもたらしてくれた快感がぶり返していました。
 私はモデルだから、こんな格好でもぜんぜん恥ずかしくないの。
 さあ、視て、じっくり視て、私のからだ・・・
 この状況でそんなふうに思っている自分自身に驚きました。

 ポーンという音がして一階に着きました。
 ドアが開くと、そこには10人くらいの見知らぬ人たちが待ち構えていました。
 大半はスーツ姿の男性たち、それに着飾ったおばさまがたが少々。
 ああん、いやんっ。
 来るときも通った見慣れた景色とも相俟って、白昼夢気分が掻き消え、一気に現実に引き戻されました。

 OLさんたちが降りると、我先にと乗り込んできたひとりのおばさま。
「まだ下に行きますよ?」
 やんわりと追い出して、閉、を押すグッジョブなリンコさま。
 扉が閉まる寸前に、露出狂か?と誰かに問うような男性のお声が聞こえた気がしました。
 ふたりきりになって更に下降をつづけるエレベーター。

「危機一髪だったみたいね。そろそろ他の会場で入れ替え時間だから」
 リンコさまがやっと、愉快そうにお口を開かれました。

「もう一本遅れていたら、フロアに今のサラリーマンたちがごちゃごちゃいたはずだから、ナオコのからだは、さっきのOLさんたちとは全く質の違うオトコどもの好色な視線の餌食になってたはず」
「もっとも、さっきのOLさんたちだって、自分たちのオフィスで、さっきエレベーターにスケスケの露出狂女が乗ってた、って言いふらすでしょうけどね」
 ニヤニヤ笑いのからかい口調。

 エレベーターのドアが開くと、今度は誰もいませんでした。
 明るいエレベーターホールを抜けると、冷たそうに静まり返ったコンクリートの広い駐車場。
 その薄暗さが妙に心地よく、ホッと息をつきました。

 幸い駐車場内にも誰もいないようでシンと静まり返った中、カンカンカンとリンコさまと私がヒールの音を響かせて駐車場を進みます。
 壁際に見覚えのある青っぽい色の自動車。
 有名なサイダーのマークに似たエンブレムの、お姉さまの愛車でした。

「ナオコは後ろね。ナオコが朝、持ってきたバッグとかも全部、もう積んであるから。脱がされたスーツもね」
 お姉さまのお車の両端のライトが電子音とともにピカッと光り、リンコさまが右側の後部座席を開けてくださいました。
 私が乗り込むのを見届けて、自らは運転席にお座りになるリンコさま。

「リンコさまが送ってくださるのですか?」
「うん。送り届けたら速攻で戻って、商談会やパーティ。まだまだ仕事は終わらないよ」
「そうですか・・・」
「パーティ、出たかった?」
「うう・・・微妙です、ね」
「だろうね。あんな格好をお客様に披露しちゃった後だしね」
 愉快そうに笑うリンコさま。

「連絡事項ね。そのチェーンとCストは、ナオコのものだから、私物として使っていいって。ナオコの穴の間隔に合わせた、まさにオートクチュールだしね。ただし、どちらもオフィスに置いておくこと」
「あ、では今、外したほうがいいのですか?」
「ううん。今日はいいの。今外されたら車のシートがベトベトになってクサくなっちゃうでしょ?」
「月曜日にオフィスに持ってきて、それからは着けるのもオフィス限定、っていうこと」
 私、今後これをオフィスで着けるようなこと、あるんだ・・・

「あ。それから、そのウイッグはチーフがしほりんから買い取ったから、それもナオコの私物にしていいってさ。これは別にプライベートでもご自由に」
「はい」
「それ、ほんと似合うよね。アタシ今度、そういう髪型のアニメキャラのコスプレ、作ってあげる。これがナオコに超合いそうなんだ」
 久々に見る、普段のリンコさまのオタクっぽい笑顔。

「あと、7時位にケータリングが届くから。パーティに出れないナオコのために、ご馳走のお裾分け」
「だから7時までに一段落しときなさいよ?オナニー真っ最中だったとか、お店の人にうちらまで笑われちゃうから」
 あはは、って屈託ない笑い声。

「それで月曜は朝9時集合で、イベントの反省会議してから通常業務に戻るから。いつもより早いけど遅れずに来ること」
「はい」
 そこでお話が途切れ、しばし沈黙。

 それでもリンコさまは、お車を発進させません。
 誰か待っているのかしら?
 あ、ひょっとしたらお姉さまが・・・

 お尋ねしようと思ったとき、リンコさまがお声をあげました。
「ああ、来た来た」
 ルームミラーで後方を覗かれていたのでしょう、ドアのロックが外される音が微かにしました。
 私はあえて窓から覗かず、ドキドキ。

 カタッと軽い音がして左側の後部座席のドアが開きました。
「お待たせー」
 お声と共に乗り込んで来られたのはシーナさま。
 その意外なお顔にびっくりと一緒にちょっとがっかり。

「あ、今ナオコ、あからさまにがっかりしたー。チーフじゃないかって期待してた?」
 すかさずツッコんでくるリンコさま。
「あ、いえ、そんなことは・・・」
 図星を突かれてうろたえる私。
「あら、せっかくクリュッグロゼの誘惑を振り切って抜け出してきてあげたのに、ずいぶんなご挨拶ねえ」
 いつも通りなシーナさま。

「それにしても今日の直子さん、すごかったー。あ、そうか、直子さんじゃなくて、何だっけ?えっと帯広サトコさん?」
 シーナさまがズズっとお尻を滑らせて私に寄り添い、私を視つめて勢い込んでトンチンカンなことをおっしゃってきました。
「帯広じゃなくて夕張です。夕張小夜さん」
 すかさずリンコさまがツッコミました。

「そう。その夕張さんが出てきたとき、わたし、あれ?って思ったんだ。このからだには見覚えあるな、って」
「それで暗くなってヌードが見えたとき、確信したの。絶対直子さんだって」
「それで、直子さんだって思いながら視ていたら、どんどんワクワクしてきちゃって」
 シーナさまにしては珍しく、ちょっと興奮気味の口調でたたみかけてきました。

「直子さんたら、あんなにキワドイ衣装取っ換え引っ換え着せられちゃって、内心恥ずかしくて仕方ないクセに、一生懸命ツンと取り澄ました顔して歩いているんですもの」
「もうマゾオーラ全開。そっと忍び寄って、ウイッグひっぺがしてやろうか、って思うくらいムラムラしちゃった」
「最後のほうでは、完全に歩きながらイッちゃっているし、本当、ヘンタイマゾ女として一皮も二皮も剥けちゃった、っていう感じ」
 
 シーナさまの指がビニールレインコートの上から、私のまだ尖りつづけている左乳首をピンと弾きました。
「あうっ」

「やっぱり、今だにサカっているのね?わたしの見た感じではショーのあいだにお客さんの前で5、6回はイッてるように見えたけれど」
「楽屋でも2、3回、イッてましたよ」
 リンコさまがお口を挟みます。

「でしょ?なのにまだこんなにサカっちゃっているドヘンタイマゾ女。それでね、考えたんだって、このまま直子さんをひとりで家に帰したら危険だって。直子さんのお姉さまが」
 おっしゃってから、私の顔をじっと覗き込むように見つめてくるシーナさま。

「さすが直子さんのお姉さまね?性癖をよくご存知でいらっしゃること。それでエミリーに頼まれたのよ、明日まで直子の面倒を見てくれって」
「エミリーは社長さんだから、この後も商談会だ、パーティだってお客さんたちのご機嫌伺いで大変なのよ。地方から出てきたお得意さんたちに連れ回されて、おやすみなさいは明け方になるのじゃないかしら」
「わたしは、クリュッグロゼは飲みたかったし、アンジーたちとゆっくりおしゃべりもしたかったけれど、大人数のパーティは苦手でさ。直子さん虐めるの久しぶりだし、二つ返事で引き受けちゃった」

「エミリー、すごく心配していたわよ?直子をひとりにしておいてムラムラが極まって、あられもない格好で週末の夜の街をフラフラされたりしたら取り返しがつかないから、見張っていてくれって」
「その代わり、今夜は直子さんに何してもかまわないとまで、言ってくれたの。たぶん今の直子は、激しく虐められることを望んでいるはずだからって。そうなの?」
 私の顔を覗き込んでくるシーナさま。

 確かに今の私は、誰かにめちゃくちゃに虐めて欲しい気持ちでした。
 麻縄でギチギチに縛られて、身動きの出来ない格好でマゾマンコをぐちゃぐちゃに掻き回されたい・・・
 熱い蝋をおっぱいにダラダラ垂らされて、お浣腸を我慢して、お尻にバチバチ鞭打たれて・・・

 たくさんの人たちの前であんなに破廉恥な姿をさらけ出してしまったどうしようもないヘンタイマゾ女には、そのくらいのお仕置きは当然でした。
 もちろん、出来ればお姉さまの手で、それらをしていただきたいのですが・・・
 シーナさまに言葉でお返事する代わりに、コクリと一回うなずいて、すがるように見つめました。

「部下思いのいい上司じゃない?直子さんのお姉さまは。それにドレイ思いのいいご主人様でもあるし」
 シーナさまがしんみりとおっしゃいました。
「エミリーは、明日の夕方には直子さんのお家に駆けつけるそうよ。よかったわね直子さん、いいパートナーとめぐり逢えて」
「はい・・・」
 私もなんだかしんみりしてしまい、視界がちょっぴりぼやけそう。

「おーけー。それじゃあ直子、今夜はわたしがエミリーの代わりだから。帰ったらまず何して欲しい?」
「あ、はい、M字開脚で両手両足動かせないように縛られて床に転がされて、鞭でバシバシお尻を叩かれたいです」
「わかったわ。やってあげる、覚悟しなさい、小生意気な夕張さん?」
 おっしゃると同時に、私の首からたわんで垂れていたシルバーチェーンをグイッと上へ引っ張ったシーナさま。
「あうっぅー!!」
 クリトリスが千切れそうなほど引っ張られ、膣の中でローターが大暴れ。

「あははは」
 乾いたお声で愉快そうに笑われたリンコさまがブルンとエンジンを掛け、キュルキュルキュルとタイヤを鳴らして、3人を乗せたお姉さまの愛車が薄暗い駐車場をゆっくり滑り出しました。

 そんなふうにして、降って沸いたような私のヘンタイ性癖お披露目イベントショーモデル体験は、幕を閉じたのでした。


非日常の王国で 01


2016年9月18日

オートクチュールのはずなのに 58

 リンコさまに肩を支えられ、引き摺られるように楽屋に戻りました。
「おつかれー。すごかったねー」
 しほりさまがバスタオルで、全身汗とよだれと恥ずかしい粘液まみれな私のからだを拭いてくださいます。
 陶酔の余韻で過敏になり過ぎている素肌を撫でられるだけで、貪欲な膣壁がヒクヒク蠢きます。

「モニターで観ていたけどエロかったー。イキ顔のアップになって照明がスーッと落ちていって、なんだか幻想的でさえあったよ」
 後ろ手錠のまま、うっとり立ち尽くす私の上半身から下半身へとタオルが移動していって・・・
「うわっ、凄い。白く濁って、これって本気汁ってやつじゃない。腿のところまでベットリ」

「ぁあんっ!」
 しほりさまのイジワルなご指摘にマゾマンコが大きくキュンと身悶えて、振動がブーン。
 右の内腿を拭いてくださっていたしほりさまの手をタオルごと、思わず両腿でギュッと挟んでしまいました。

「また疼いちゃったんだ?ほんと、底無しの淫乱どヘンタイさんなんだねぇ」
 苦笑い混じりにしほりさまがからかうお声を、乗馬鞭を手にされたリンコさまが引き継ぎました。

「アタシなんて、小夜ちんのお股と目と鼻の先の至近距離だったから、何とも言えない牝クサい、いやらしい臭いが漂ってきて、こっちまでおかしくなっちゃいそうだったよ」
「でしょうね、わかるわかる。わたしだって今、クサいもん。このタオル、どれだけ小夜さんのマン汁、吸っているんだか」

 おふたりにお言葉責めされているあいだも、夢の中にいるような心地良い快感の名残りに浸っていました。
 みなさまに注目されているピンスポットのステージ上でイッてしまったということが、もの凄く恥ずかしいクセに、もの凄く気持ち良かったのです。

「さあ。ついにフィナーレよ。最後は、来てくださったお客様に感謝を込めた素敵な露出狂ドレス」
 リンコさまが後ろ手の手枷を外してくださいました。

 テーブルの上にリンコさまが置かれたピンクの乗馬鞭に目を遣ると、私が咥えていた柄の真中辺りだけ真っ赤なルージュでベットリ汚れ、左右の糸切り歯の間隔にクッキリと凹みが出来ていました。
 そのテーブルの向こう側ではほのかさまが、何か思い詰めたような真剣なお顔で、私を凝視していました。

 リンコさまに首輪も外され、しゃがみ込んだしほりさまの手で足枷とチェーンも外されました。
 リンコさまの手がおっぱいに伸びてきます。

「ずいぶん長いあいだ挟みっ放しなのに、痛くないの?」
「あ、いえ、もちろん、痛いです・・・」
「ふーん。でもその痛いのが、イイんだよね?淫乱マゾは」
 おっしゃりながら右おっぱいに着けたパスティースのネジをリンコさまの指がつまみました。

 以前にもご説明しましたが、敏感なところを挟んで虐める洗濯バサミなどは、挟むときの激痛が去ると、付けているあいだは我慢出来るくらいの疼痛に変わります。
 揺らされたり弾かれたりすれば痛みもぶり返しますが、そのうちに感覚が失くなったような状態になってきます。
 そして一番辛く激しい痛みが襲うのは、実は外すときなのです。
 この痛みは、挟んでいた時間が長いほど激しくなります。

「あーうっ!」
 激痛を覚悟して身構えていた私に、リンコさまは、更に追い打ちをかけるイタズラを仕掛けてきました。
「ごめんごめん。こっちに回すと余計締まっちゃうんだ。逆に回すんだった」

 かなりキツメに乳首を挟み込んでいた金具が、更にギュウッと乳首にめり込んできたとき、予想していたのとは別の種類の激痛が全身を駆け巡りました。
 その単純な痛みに顔は歪み、膣内はキュンキュン跳ね回り、反応したローターが強モードでブルブル震えました。
 苦痛と快感の鬩ぎ合いに身悶えしているとき、今度は予想していた、じんわりした激痛がすぐに後追いで襲ってきました。
 リンコさまが今度はちゃんとネジを緩めてくださったようです。

「あーーっ、いぃぃっつぅぅーっ!」
 このCストリングの突起の、膣が蠢くたびに震え始めるという仕組みは、本当に残酷だと思いました。
 普通の人ならただ辛いだけの痛さという刺激に対し性的興奮を覚えてしまっているアブノーマルな自分の反応を、振動というハッキリした形に変えて思い知らせてくるのですから。
 その振動で更にもっと気持ち良くなってしまうという、ヘンタイマゾな私の出口の無い悪循環。

「いいぃーやーーっあっあっあーーーっ!!!」
 左乳首にも同じイタズラをされつつパスティースを外されるあいだ中、マゾマンコの中の突起は激しく振動しつづけていました。
 膝と腰がヒクヒク震え、内腿に本気汁が溢れ出し、激痛に他の液体も少し漏らしてしまったかもしれません。

「あーあ。またイッちゃったよ、この子」
「またマン汁垂らしちゃって。せっかく拭いてあげたのに」
「これってひょっとして、ボルチオイキっていうやつじゃないかな?一度それでイクとしばらくのあいだは、耳に息を吹きかけただけでも感じまくっちゃう、っていう」
「へー。そんなのあるんだ?」
「アタシもよくは知らないんだけれど、マンコのずっと奥の子宮の辺りに性感帯があって、そこでイッちゃうとスイッチが入っちゃうらしい」
「じゃあ今、小夜さん、超ド淫乱メス犬状態なんだ」

 私を視ながら嘲るようにあけすけなお言葉遣いで蔑んでくださるおふたりを、すがるように見ている私。
 からだが疼いて疼いて仕方ありませんでした。
 誰でもいいから私を視て、触って、虐めて、辱めて、この疼きを鎮めて・・・

 ふと視線を自分のからだに落とすと、まだジンジンと鈍痛を感じるふたつの尖った乳首の側面に、痛々しく潰された凹みが残っていました。
 自分のからだに刻まれた憐れな陵辱痕に被虐を感じて、性懲りもなくマゾマンコがヒクヒクブルブル。

「だったら予定外だけどさ、このCストは嵌めっ放しにしといてあげようか。どうせドレスの下半身は隠れちゃうし」
「最後だから、お客様に小夜さんの淫乱アヘ顔を堪能していただこうっていういうわけ?リンちゃんもドSだねえ。でも上の人に一応了解取ったほうがいいんじゃない?」
「だって、今これ抜いちゃったら、あの仕掛けもあることだし、きっとマン汁ダラダラ垂れ流しになるよ?それに、小夜ちんのアヌスにも挿さってた、こんなベトベトなの、アタシら弄りたくないじゃん」

 ひややかにおっしゃったリンコさまが、ちょっと考えてつづけました。
「でも、報告だけはしておいたほうが良さそうか、里美さん?聞いてみてくれる?」

「あ、はい」
 ずっとモニターに向かっている里美さまの背中が応え、インカムに向けておっしゃったお言葉がハッキリと聞こえました。

「夕張さんが例のCスト、ずいぶん気に入っちゃったようで、はい、次のアイテムでも着けたままでいいでしょうか、という大沢さんからのご提案なのですが・・・」
 数秒間の沈黙の後。
「はい、わかりました」
 里美さまが私たちのほうへと振り向かれ、主に私をじっと視ながらおっしゃいました。

「チーフからオーケー出ました。夕張さんへの伝言です。歩きながらマゾマンコをキュッキュと締め付けて、みなさんの前でイッちゃいなさい、ただし無表情で。とのことです」
「今のは、チーフがおっしゃった言葉通り、そのままお伝えしました。ちなみにわたしも、その姿をとても愉しみにしていることを、申し添えておきます」

 可愛らしいお顔で、事務的な口調で告げられました。
 ああん、またローターがプルプル震えてる・・・

「おーけー。それじゃあ。とっとと着せちゃおう」
 リンコさまのお言葉に、それまで無言でじーっと私たちの様子を眺めていらっしゃったほのかさまが、弾かれたようにハンガーラックへと駆け寄りました。

 リンコさまへと手渡されたのは、軽くて柔らかそうなカーテンみたいな黒っぽい布地で、全体的にクタッとしていました。
 色は黒のようですが、布そのものかなり薄いようなので、シースルーなことは間違い無さそうです。

「国産の最高級シルクを使っているの。アクセも含めて今日のアイテムの中じゃ一番お高い逸品ね」
 リンコさまがフワッと広げたその布地は、なんだかマントのような形状でした。
 だけど、ほのかさまが似たような布地をもうひとつお持ちになって、脇に控えていらっしゃいます。

「まず、これをこうして・・・」
 私の背後に回ったリンコさまが私の首に細い紐を絡めました。
 思った通り、それは紛うことなきマントでした。
 首の紐を正面で丁寧に結ばれると、裸の背中が足首の少し上くらいまで、緩くドレープのかかったシースルーの黒いシフォン地に覆われました。

 正面からの姿を鏡に映してみると、首元から逆V地に広がったマントが肩口から両腕を隠して、それ以外の真正面は丸出し。
 裸にマントだけの、マンガかアニメで見たことのあるヘンタイさん寄り女性ヒーローの姿そのものでした。
 でも、あの人のマントは赤で、お顔も仮面で隠していたんだっけ?

「それで、これ」
 ほのかさまから手渡されたもう一枚の布地を持って、私の前に回ってこられたリンコさま。
 ああ、やっぱり前も隠すんだ。
 ホッとして広げられた布地を見ると、なんだか形がヘン。
 どこがどう、と具体的な指摘は出来ないのですが、直感的に違和感を感じました。

「ちょっと失礼」
「ああんっ!」
 突然ギュッと右の乳首をリンコさまにつままれてビクン、ローターがブーン。

「うわー、まだコリッコリだねえ、デカ乳首。それに熱持って熱い」
 乳首をクイクイこねくりまわされ、私はあふんあふん喘いでしまいます。
 それから乳首の根本がギュウッと絞られた感覚がしました。
「ああんっ、だめぇ・・・」
 薄れつつあった乳首の疼痛が鮮烈に蘇りました。

 気がつくと私の右乳首から黒いシフォン生地が垂れ下がっていました。
 リンコさまは、私の淫ら声などにはもういちいいち反応せず、無造作に左乳首も弄んでシフォン生地がからだの全面を覆うようになりました。
 私の感じた違和感は、ドレスなのに袖と襟ぐりが無いなと思ったからなんだ、と気づいたときには、ウエスト付近で布に繋がっていた細い紐をエプロンのように背中側で結ばれていました。

 ふたつの乳首を起点として垂れ下がった薄い布地が足首の付け根くらいまでを隠していました。
 乳首には細い糸の輪が巻きついていて、輪の円周を調節出来るストッパーを絞ることで固定されていました。
 布地自体が凄く軽いので、乳首が下に引っ張られるような重さを感じることはありませんでしたが、リンコさまがかなりキツク乳首根本を絞り上げたので、両方の乳首がジンジン疼いていました。

 これって私がお家でひとりのときやお姉さまの前で時々している、マゾドレイの裸エプロンと同じだ。
 全裸にエプロンを着けて、布地の上から両方の乳首に洗濯バサミを挟んでエプロンが落ちないように留めてから、首の紐を解いちゃう、私のお気に入りのマゾ装束。
 そこにマントを加えてお尻を隠しても、布地が薄過ぎてほとんどスケスケ。
 ライトを浴びたらクッキリとボディラインが浮き上がることでしょう。

 ちょっと見はエレガントなシフォンドレープドレス姿なのですが、胸元が致命的でした。
 おっぱい丸出しの上、乳首で布地を支えているのです。
 鏡を見ると、黒いドレス姿の中で乳首まで丸出しなおっぱいのところだけ、逆ハート型にくっきり白く、嫌というほど目立ちまくっていました。
 布地越しに、膣と肛門を虐めているCストリングが嵌ったままなのもハッキリわかります。
 マゾマンコに埋まったローターがまた、ブルブル激しく震えました。

「仕上げはこれね」
 リンコさまが再び私の背後に回られ、首全体を覆うような幅の広いチョーカーが巻かれました。
 シルバーの地にキラキラしたパールとか白系の細かい宝石がびっしりと散りばめられた、どこかの王女様が召されるような見るからにゴージャスなチョーカー。

 そのチョーカー正面一番下の真ん中から細いシルバーチェーンが一本、首輪のリードのようにまっすぐに垂れ下がっていました。
 ちょうど私の恥丘のすぐ下くらいまでの長さで。
 その先端には、私の乳首を締め上げているのと同じ輪っかが付いていました。

「見てわかるでしょう?それは、アナタのお姉さまからの特別オプションプレゼント」
 私がシルバーチェーンの先端を見つめていることに気づかれたのでしょう、リンコさまが愉快そうにおっしゃいました。

「当初の企画通りだったら、ここで絵理奈さんのニップル初解禁、のはずだったんだ」
「最後だから、せっかくいらしたお客様にちょっとサービスしちゃえ、って感じでね。もちろん下は普通の黒いTバックショーツの予定だった」
「誰かさんのヘンタイ性癖のおかげで、誰かさんのお姉さままで悪ノリしちゃって、こんなアブノーマルなフィナーレになっちゃった」
 リンコさまのからかうようなお声がそこで途切れ、真面目なお顔に変わりました。

「本来なら、エレガントレディのちょっぴり大胆エクスポーズ大冒険。って感じで、エレガント寄りに締めて大団円っていう予定だったのに、アナタがヘンタイなおかげで、アブノーマルな方向に大暴走」
「そのドレスも、アナタみたいな人しか着てくれないんじゃないか、って思えてきちゃった。出来たときはユニークだから、けっこう気に入っていたのに、今じゃただのヘンタイドレスにしか見えなくなった」
「さしずめ、競りに出された囚われのセイドレイの貰われ先が決まって、精一杯おめかししたマゾペットデビュー披露パーティのドレス、っていう感じ」

 リンコさまの口調がエス度の増したひややかさに戻りました。
 でも、私を見る瞳には、怨嗟と言うか嫉妬と言うか、ひょっとしたら羨望みたいな、そういう類のフクザツな感情が混ざっているような気もしました。

「アナタなら、そのチェーンの先をどうすればいいか、言われなくてもわかるでしょ?」
「はい・・・」

 もはや名前さえ呼んでくださらなくなってしまったリンコさまに促され、チョーカーから垂れたチェーンをドレスと素肌のあいだに落としました。
 思っていた通り、チェーンの先端が恥丘の少し先まで届いていました。
 薄い布地からハッキリとチェーンの行末が見えていました。

 ドレスの脇から両手を差し込み、まず左手でターゲットを捕捉します。
 Cストリングの先端に隠れるか隠れないかのところで息吹いていた、その腫れ上がった肉の芽は、今まで放っておかれていたことに抗議するかのような敏感さで、自分の指でコソッと触れただけなのに強烈な快感を放電しました。

「ああんっ!!」
 思わずガクンと片膝が砕け、はしたない声がほとばしります。

 体勢を立て直してから、そっと指で根本を押さえ固定し、右手で輪っかを引っ掛けます。
 輪っかがおマメに触れたときにもビリっと電流が流れました。
「んんーっ!」

「ほら、悶えているヒマなんてないの。もうすぐスタンバイよ?」
「あ、はいぃ」
 肉の芽が輪っか内に完全に補足された感触がしたので、デタラメにストッパーを締め付けながら、前屈みになっていたからだを起こしました。
「あああーーーっ!!!」

 からだがまっすぐになると同時に、おマメがギューっと上へ引っ張られるのがわかりました。
 充血を更に絞り上げられ、胸の鼓動のドクンドクンと同じ速さのジンジンする痛みがマゾマンコ全体を痺れさせます。
 当然、膣内のローターは震えっ放しで、下半身全体がヒクヒクしっ放し。

 少し肩を落としていれば普通なのですが、胸を張って真っ直ぐに立つと、クリトリスも首から繋がるチェーンにグイッと引っ張り上げられる状態に。
 そしてもちろんショーモデルは、胸を張って姿勢良くランウェイを歩かなければなりません。
 首から剥き出しおっぱいの谷間を抜けてクリットへと、ギターの弦みたいにピンと張り詰めたシルバーチェーン。
 なんてイジワルな、絶妙なチェーンの長さ。

 こんな状態で私、ちゃんとみなさまの前を歩けるのだろうか・・・
 不安に思う一方で、早くお客様がたの前に出たい、淫らな私の格好を視姦していただきたいと思う欲求も沸々と滾っていました。
 根本から絞り込まれて今にも弾けそうに欲情している私の敏感な充血三銃士が、更なる刺激とあられもない恥辱を熱烈に欲していました。

「スタンバイお願いします」
 里美さまが振り向かれ、ニッコリ微笑みかけてきました。
「おーけー。それじゃあ、これ履いて」
 かなりヒール高めでエレガントな黒いミュールを足元に置かれました。
 ヒールが高いと、なおさら背筋を伸ばしていなければ格好がつきません。

 ほのかさまがひざまずいてミュールのベルトを留めてくださいます。
 しほりさまが最後のメイク直しを手早く施してくださいます。
 リンコさまに付き添われて、明るいステージの袖に立ちました。

「ランウェイの先端まで行ったら、肩脱ぎになって、剥き出しおっぱいさらけ出して帰ってきなさい」
 ステージ袖で、そうおっしゃって、ふっと微笑んだリンコさま。
 穏やかなお顔になって、つづけました。

「でもね、アタシこういうはっちゃけたの、嫌いじゃないよ。初めてで要領もよくわからないのに、ナオコはよくがんばった、上出来だわ」
「アタシ、これからナオコと一緒にオフィスで働くの、すっごく愉しみ。お望み通り、いろいろ虐めてあげるから、あ、もちろん性的な意味でね、だから覚悟しておきなさい」
 イタズラっぽい口調でおっしゃいました。

「最後に、ナオコはナオコらしく、ドヘンタイマゾらしく、乳首ツンツンおっ勃てた姿をみんなに視せびらかせてやりなさい。マン汁ダラfダラ垂らしながら、視られてイクところをお客様に魅せつけてきちゃいなさい」
 
 リンコさまに背中をやさしくトンと押されて私は、明るいステージの中央へと歩み出ました。


オートクチュールのはずなのに 59


2016年9月11日

オートクチュールのはずなのに 57

 なんとかこらえて歩きつづけます。

 何?
 何今の・・・

 突起を膣壁が締め付けると同時に、マゾマンコ内にぴったりフィットしたシリコンがローターのようにプルプル振動する感覚がありました。
 膣壁をくまなくゆさぶる予想外の振動が瞬く間に快感となって全身へ広がり、一気に天国一歩手前まで昇り詰めてしまったのです。

 まさか、突起にリモコンが仕込まれていて、どこかで誰かが操作しているとか・・・
 極力何食わぬ顔に努めながらも、心の中では疑心が暗鬼を生んでいました。
 
 だとしたら、またいつ、震えが襲って来るかわからない・・・
 もう一度来て欲しいような、もう絶対に来て欲しくないような・・・

 口に咥えた乗馬鞭の柄をギュッと噛み締めながら、歩幅の狭さがもどかしい鎖に繋がれた両足を懸命に動かし、またいつくるかわからない振動にビクビクしつつも、なんとかランウェイの端までたどりつきました。

 さあ、あとは戻るだけ。
 リモコンローターを仕込まれて街中にいるときと同じドキドキに支配されていました。
 早く戻ろう・・・
 両足のかかとを滑らせてターンしたときでした。

 真っ暗だった会場内がパッと明るくなりました。
 会場のすべての灯りが点けられたみたいで、デパートの食品売り場みたく眩しいほどの明るさになりました。
 でもBGMだけ依然として、ホラー映画のようにおどろおどろしいまま。

「おおっ!」
 お顔が見えるようになったお客様がたも、軽くどよめいていらっしゃいます。
 
 ああん、いやん・・・
 突然、赤裸々となった視界に一テンポ遅れて羞じらいがぶり返し、思わずビクンとからだが震えました。
 その途端にまた、突起がプルプルッと震え、すぐ止まりました。

「んっ!」
 油断していた膣への刺激で顎が上がり、鞭を咥えた唇がたまらず開きそうになり、あわてて歯を食いしばりました。
 同時に下半身にも力を込めると、突起がさっきより激しく振動し始めました。

 だめ、もうだめ・・・
 油断すると震え出す意地悪な突起の振動に翻弄される私は、立ち尽くしたままあきらめかけ、その快感に身を委ね始めていました。
 でも、下半身に込めた力が抜けていくに従って振動は弱くなり、やがて止まりました。

 なんとか膝から崩れ落ちるのを我慢出来た私は、気がつくとまだ、ランウェイの突端。
 中腰、がに股の不格好でうなだれていました。
 赤い首輪から垂れ下がったリードの鎖が、前屈みになった空間にブラブラ揺れています。
 口元からよだれがポタポタと赤いカーペットに滴り落ちるのも見えました。

 あ、いけない!
 ショーモデルにあるまじき、こんな不細工なポーズ。
 あわてて直立モデルポーズに戻った私は、会場中のすべての視線に注目されていました。

 明るすぎるほど明るくなった会場、すべての人たちのお顔がはっきり見えました。
 すべての視線が好奇と侮蔑と嗜虐のいずれかを湛え、私の人となりを吟味するかのように、私のからだのどこかしらを凝視していました。
 さっきまでの暗闇にスポットライトでお客様のご様子がわからないということが、どんなにありがたいことだったのかを思い知りました。

 鞭を咥えて半開きの口元から滴るよだれは、僅かに乳首だけ隠したおっぱいの谷をしとどに濡らしていました。
 赤いレザーでVの字に隠されただけの股間の周辺も両膝の辺りまで、お漏らしでもしたかのように粘液で濡れそぼリ、照明の光にテラテラ光っていました。
 そしてもちろん、そんな私の浅ましい姿が正面の大スクリーンに、大きく映し出されていました。

 もう、こんなのいやっ!
 自虐が極まって、いっそこのままこの場に這いつくばってからだをまさぐり、オナニーを始めちゃいたい気分でした。
 乗馬鞭のグリップをマゾマンコに突っ込んで、アナルの突起をグリグリ掻き回して・・・
 
 それでも今は、ステージまで戻らなければなりません。
 ポーカーフェイスで颯爽と。
 イベントを台無しにすることは、そのまま愛するお姉さまとのお別れを意味していました。
 立派にショーのモデルを務め上げることが、お姉さまとのお約束でありご命令なのですから。

 気を取り直してステージのほうへと歩き出したとき、スタンディングキャット社の男性の誰かが、私に立派なカメラを向けているのが見えました。
 
 いやっ、こんな姿、撮らないで・・・記録に残さないで・・・
 思った途端に突起がブルっと膣壁を震わせました。
 たてつづけにシャッターが押されるのがわかりました。

 カシャッ!だめっ!ビクン!
 カシャッ!いやっ!ビクン!
 カシャッ!撮らないで!ビクン!
 そのたびに突起がブルっと小さく震えました。

 あっ!
 感じると同時に気づきました。
 この突起の振動って、マゾマンコが疼いてキュッと膣をすぼませるたびに起きている・・・
 たぶん、突起を締め付けることで振動する仕組みなんだ。

 その考えが正しいのか試してみたくて仕方なくなりました。
 だけど、私の我慢もそろそろ限界に近くなっていました。
 次に粘膜を大きな刺激が襲ったら、本当にその場で崩れ落ちてしまいそう。

 大事なイベントの、こんな大勢のお客様に視つめられている中で、そんなふしだらなイキ姿をお見せするわけにはいきません。
 でも逆に、そんな姿までみなさまにご披露しちゃうことを、お姉さまはお望みなのかも・・・

 ごちゃごちゃ考えながらステージへ向かって一歩一歩進みます。
 アンジェラさまが、艶然とした笑みを私に向けてきます。
 その横で小野寺さまは、唖然とされたお顔で私の顔を見つめています。
 純さまと桜子さまは、こちらにお顔を向けたまま何やらヒソヒソお話されています。
 シーナさまは、ニヤニヤ笑いを浮かべて嬉しそう。

 ステージまであと十数歩のところまで来たとき、お姉さまのお姿をみつけました。
 どこかでお会いしたことあった気もするお綺麗な女性と並んで座り、私をじっと視つめていました。
 
 何か面白いオモチャをみつけた子供のような、次はどういたぶったら愉しいか企むような、ひややかなまなざし。
 私が一番良く知っている、嗜虐が極まったときにだけ見せていただけるドエスな視線。
 その視線とバッチリ目が合いました。

 その瞬間、お姉さまの唇が動きました。
 実際にお声に出してはいないのでしょうが、私には、その動きだけでお声が聞こえました。
 イッチャイナサイ・・・

 そのお言葉の意味を理解するなり、膣壁がキュウンと疼きました。
 同時に自分でも、漏れそうなオシッコを我慢するみたいに、、下半身にギュウッと力を込めました。

 ビビビビッ!
 今までにない振動が膣から狂おしく全身へとせり上がり、官能を震わせてきます。
「んぐぅぅ!・・・」

 眉間にシワが寄っているのがわかります。
 咥えた鞭の柄を噛み砕かんばかりに噛み締めていました。
 頭の中は真っ白。
 でも足だけは止めず、なんとか前へ前へと踏み出していました。

 イッチャイナサイ・・・
 イッチャイナサイ・・・
 イッチャイナサイ・・・
 
 お姉さまのご命令だけが脳内でエコーしていました。
 そのお言葉が嬉しくてたまりませんでした。

 行かなきゃ。
 お仕事をちゃんとやらなきゃ。
 たとえイッても、とにかくステージまで戻らなくちゃ。

 快感に震えながら、一歩一歩ステージへの階段を踏みしめました。
 もうとっくに自分で下半身に力を込めることはやめているのに、マゾマンコが勝手にビクンッビクンッとわななき、そのたびに弱い振動が起きています。
 左内腿には、見た目でわかるほど白濁した生々しいおツユが溢れ出て、左脚をトロトロ滑り落ちていました。

 ステージに戻り、客席と向き合う形で中央に立ちます。
 綾音部長さまの解説が入るので、すぐに楽屋にもどるな、というお言いつけです。
 リンコさまがタタタッと私の脇に駆けつけて並ばれました。

 試合中のドーム型野球場のように明るい会場内。
 大勢のお客様がたより数段高くなったステージ上で、半裸のマゾドレイそのものな姿を見せつけるみたいに立ち尽くす私。
 
 その姿は破廉恥で浅ましくて、みじめそのものなはずです。
 性的にノーマルな女性でしたら、たまらずに泣き伏してしまうことでしょう。
 だけど私は、そんな状況に強烈な羞恥を感じつつ、一方で愉悦に酔い痴れていました。
 
 全身を蝕む甘美な快感に今すぐにでも身を委ねたいのに、無理して無表情を装います。
 今だにヒクヒク蠢く下半身からビリビリと気持ち良い電流が放電しつづけていて、イッたのか、イキつづけているのか、それともまだイッていないのか、自分でもわからない状態でした。

 BGMのボリュームが下がり、綾音部長さまのお声が流れ始めました。

「只今ご覧頂いたアイテムの実物です。このような形状になっています」
 演壇の上に置いてあった、私が装着しているのと同じ形状のアイテムをお客様に向けてお見せになる綾音部長さま。

「パスティースは、この金具にニップルを挟み、ネジで締め付けることで固定されます」
 わざわざ内側の金具の仕組をお見せになりました。

「当然、若干の痛みを伴いますから、そういったことのお好きな、所謂マゾ傾向の強いかた向けと言えますね」
 ざわざわ広がるお客様がたの忍び笑い。
「ニップルに与える痛みはこのネジで自由に調節出来ますから、マゾ気質のご婦人なら、その度合いに合わせて、必ずや嬉しいご褒美となる装身具と思います」
 
「ボトムはこちらです」
 弓なりのCストリングから飛び出ているふたつの卑猥な突起を、わかりやすいようにみなさまに向けてお見せになる、ご親切な綾音さま。

「おわかりとは思いますが、こちらをヴァジャイナに、こちらはアヌスに挿入する二点留めです」
「挿入することによって、従来のCストリングで懸念される脱落の危険がなくなり、更にA感覚の開発にもなるという、こちらもセックスへの好奇心旺盛なマゾ気質の淑女に最適なアイテムとなっています」
 おっしゃってから綾音さまは、思わせ振りの大きな仕草でステージ真ん中に立つ私のほうへとお顔を向けてきました。

 綾音さまのお顔の動きに吸い寄せられるように、お客様がたの注目が私に集まります。
 視線が放つ好奇の度合いが一段と強くなった気がしました。

 お客様がたの誰もが、今あのモデルの両乳首はネジで締め付けられていて、性器と肛門には卑猥な形をした突起が埋め込まれているのね、と再認識されたことでしょう。
 私はと言えば、そんな好奇と侮蔑の視線の中、上と下の口からよだれをタラタラ垂らしながら、鞭を咥えて後ろ手に括られたまま、澄ました顔をしていなくてはならないのです。

「さらに、このアイテムには、みなさまに内緒にしていた画期的な機能も付属されているのです」
 綾音さまのお芝居じみた口調に、お客様がたの視線が演壇へと戻りました。
「薄々感づいていらしゃるかたもいらっしゃると思いますが、ショーのあいだ、モデルの夕張さんが時折からだをビクンビクンとされていましたよね?」
 そう言えば、みたいな感じにザワザワとざわつく会場。

「実はこのアイテムの手前のほうの突起、ヴァジャイナ挿入部の突起は、ヴァジャイナトレーニングにも適した内容となっているのです」
「ヴァジャイナトレーニングとは、恥骨から尾骶骨に走る筋肉を鍛えることにより、率直に言えばヴァジャイナの締りを良くして、性感を高めるためのトレーニングということです」
 ここでもう一度、綾音さまがCストリングの突起をお客様のほうへ掲げました。

「よくご覧ください、この突起は、締め付けることによって振動する仕組みになっています」
 綾音さまが右手で突起を握り締めました。

「見ただけではわかりづらいですね」
 突起を握っている綾音さまの手に、雅部長さまがご自分のマイクを近づけられました。
 ンーンーンーッ・・・
 ローターが振動するような音が小さく、マイクを通して会場のスピーカーから聞こえてきました。

「強く握るほど、振動も強くなります」
 綾音さまが強く握ったのでしょう、振動音の音程が上がり、ブーンという音がよりはっきり響き渡りました。

「このように、装着したままヴァジャイナの筋肉を動かして突起を締め付けることで、トレーニングと快感の両方を得ること出来るのです」
「女性にありがちな、くしゃみをしたときの尿漏れなども、この筋肉トレーニングで克服することが出来ます」
 へー、なるほど、みたいな感じの場内のさざめき。

 さざめきが鎮まるのを待って、綾音さまが再び、私のほうへお顔を向けてきました。
「ここで実際身に着けてくださっているモデルの夕張さんに、その機能を実演していただこうと思います」
 お客様がたの視線も一斉に私へ戻ってきました。
 えっ!?えーーーーっ!

「わたくしが観ていましたところ、夕張さんはウォークの最中にコツを掴まれたようで、かなり性感も高まっていらっしゃるご様子とお見受けしました、きっと上手く実演してくださることでしょう」
 綾音さまの口調にイジワルさが混ざり始めていました。

「ただし、夕張さんはご覧の通りのクールビューティですから、あまりあからさまにエロティークな反応にはならないかもしれませんけれど」
 会場内にクスクスという忍び笑いと大きな拍手が沸きました。

「それでは夕張さん、お願いします。アヌスをキュッとすぼめるように力を入れてヴァジャイナ全体でコレを締め付けてください」
 
 お客様がたにCストリングの突起を指し示しながら促されました。
 お顔がイタズラっぽく愉快そうに微笑んでいました。
 綾音さままで、私がイク姿をみなさまにご披露することをご所望のようです。

 リンコさまが、お持ちになっていたマイクを私の股間に近づけてきました。
 振動の音を拾おうというのでしょう。
 リンコさまもワクワクなご様子。

 私は、客席にお姉さまのお顔を探しました。
 お姉さまは前から五番めのお席で、薄く微笑みながら私を視つめていらっしゃいました。

 目が合いました。
 お姉さまが一度小さく頷かれ、それからクイッと顎を上にしゃくられました。
 イッチャイナサイ・・・
 覚悟を決めました。

 お姉さま・・・
 お姉さまをまっすぐ見つめながら、マゾマンコに埋め込まれた突起に意識を集中し、下半身に力を入れます。
 お姉さま、私、みなさまの前で、イキます。
 
 弱く身震いを始めた突起が、生き物のように膣の奥へ奥へと、その先端で突いてきます。
 それでもひるまず、もっと奥へと誘いこむように膣壁に力を込めます。
「んぅっ!」
 振動が強くなりました。

 ブーーー-ンッ・・・
 リンコさまのマイクが振動音を拾って、会場に低く流れ始めます。
 私は自ら腰をヒクヒクと淫らに前後に揺らし、突起を締め付けつづけました。

 ブーン、ンンン、ブーン、ンンン・・・
 私が締め付けるリズム通りに、振動も弱くなったり強くなったり。
 それが・・・とても・・・気持ち・・・いいいぃぃ・・・
 鞭の柄を噛み締めながら、喘ぎたがる声を押し殺します。

 今までに着せられたアイテムがもたらした羞恥と被虐と恥辱で、ヘンタイドマゾな私の性的欲求はパンパンに膨れ上がっていました。
 その積み重ねの上にこんなに強烈な肉体的刺激が加わったら、もはや、快楽に抵抗する術など微塵もありませんでした。
 からだが溶けてなくなっちゃいそうなほどの快感の渦が、もうすぐそこまで来ていました。
 
 会場内の照明がフェードアウトするように徐々に暗くなっていきました。
 お姉さまのお顔が、だんだんと闇に溶けていきました。

「ぅあぁぁいぃぃぅあぁぁ、あっ、あっ、いぃぃぃっくぅぅ・・・」
 暗闇の中で私は、自分のからだを駆け巡る快感だけに埋没し、やがて果てました。
 
 会場が真っ暗になる前に二度、リンコさまのマイクが拾ったガタンという大きな音が、ローター音に混じって場内に鳴り響きました。

 一度目の音は、私が咥えていた乗馬鞭が床に落ちた音。
 二度目の音は、とうとうこらえきれずに崩れ落ちた私の両膝が床に激突した音でした。
 
 真っ暗になったステージ上で、盛大な拍手の音だけが聞こえていました。


オートクチュールのはずなのに 58


2016年9月4日

オートクチュールのはずなのに 56

 ほのかさまからリンコさまへと手渡されたのは、さっきと同じようなCストリングの形状をしていました。
 ただ、内側に何やら怪しげな突起が付いていました。
 それもふたつも。

「今度のアイテムはね、ちょっとえげつないんだ。でも、小夜ちんみたいなマゾッ娘にこそお似合いだと思う」
「絵理奈さんと穴の距離が微妙に違うとか言って、アヤ姉が急遽、微調整したらしいよ」
 リンコさまがイタズラっぽく笑って、その突起部分を私の目の前に突き出しました。

 手前には、大きめのローターをふたつ重ねたような赤い突起。
 後方には、丸っこくくびれた円錐型の、まさしくアナルプラグ然とした形状の突起。
 それらが、弓なりに反り返ったレザー製らしき真っ赤なCストリングの裏側に取り付けられていました。

 見た途端に理解しました。
「これを・・・い、挿れるのですか?」
「そう。挟むだけのCストより、外れちゃう可能性が格段に低くなるってわけ」
 とても愉しそうなお顔のリンコさま。

「本場のサンバカーニバル衣装でも、激しい動きで落ちちゃわないように、同じような細工しているのが普通にあるんだ」
「この突起はあくまでもストッパーとしての役目で、決して気持ち良くなるためのものではないんだから、そこ、間違えないでよ?」

 からかうようにおっしゃったリンコさまが、そのCストリングを私の目前からサッと引っ込めてほのかさまに戻しました。

「て言っても、今から穿かせちゃうと小夜ちん、ステージ出るまでに絶対どんどんサカッちゃいそうだから、これは最後。先にアクセ類つけちゃおう」

 リンコさまの号令で、しほりさまに左手を取られ、ほのかさまは私の足元にひざまずかれました。
 突起付きCストリングと同じ素材、色合いのベルト式な手枷と足枷が、おふたりの手で手際よく私の両手足に装着されました。

「このアイテムのコンセプトは、ずばり、ボンデージスレイブ、囚われのセイドレイ、なんだけど、モデルが小夜ちんになったから、ずいぶんとエスカレートしちゃったみたい」
「絵理奈さんのままだったら、ここまで本格的にヘンタイ仕様じゃなかったんだけどね。恨むならチーフを恨みなさい」
 背後に回ってベルト状の赤い首輪を私の首に巻きつけながら、リンコさまが私の右耳にささやきました。

「バストも、絵理奈さんだったら普通のパスティース貼るだけだったんだけど、チーフがこんなもの持ち出してきて」
 リンコさまの手のひらに、私の乳輪ギリギリくらいの、真っ赤なハート型パスティースがふたつ乗っていました。

「これはね、貼り付けるんじゃなくて、ニップルを挟んで固定するの」
 リンコさまがひとつのパスティースを裏返すと、バストトップにフィットするように曲線を描いた内側に、見た瞬間に仕組みがわかる金具が付いていました。

「ホフマン式ピンチコックっていう、化学の実験とかで使う器具があるんだけれど、その応用。本来は、このバーのあいだにゴム菅を挟んで、気体や液体の流れをコントロールするための装置なんだってさ」

 2センチ四方くらいの正方形のスチール枠の一辺がネジ式で可動するようになっていて、その枠内に挟んだものを締め付け出来るような仕組み。
 つまりはイヤリングで耳たぶを挟むのと同じ仕組みが大げさになった感じです。

「あの子、こういうの大好きだから、きっと大悦びするはず、ってチーフが言ってたってさ」
 ひとつを手渡されました。
「ほら、自分で乳首に嵌めて、ネジで落ちないように締め付けなさい」
「あ、はい・・・」

 左おっぱいにあてがいました。
 熱を持った乳頭に金具がひんやり。
 枠の上部分を乳首の根本まで押し付けて、ハート型のお尻部分から覗いているネジを締めていきます。
 やがて下枠の部分が乳首の下まで到達し、そこからは乳首が締め上げられるばかり。

「ああんっ」
 いくら尖ってもずっとほったらかしにされていた私の乳首が、久々にかまってもらえた嬉しさでわななき、思わずはしたない声となって零れてしまいました。

「途中で落ちないように、ぎゅうっと締めること。チーフの話じゃ、洗濯バサミ大好きらしいじゃん」
「小夜さん、乳首大きめだから、挟み甲斐がありそうね」
「ほら、顔がエロくなってるよ。いやらしいことは考えないで、ポーカーフェイス、でしょ?」

 左手でおっぱいを押さえつつ右手でネジを回す私を、リンコさまとしほりさまが口々にからかってきます。
 二枚の細い金属板に上下から挟まれ絞られた乳首のもたらす疼痛が、ジーンと全身を駆けまわります。

「そっちもちゃっちゃと着けちゃって」
「あ、はい・・・」
 同じ要領で右乳首にもハートをかぶせました。

 両乳首がもたらす疼痛がYの字状に下半身へと流れこみ、性器から全身へとジワジワ疼きが広がっていきます。
 これまでに蓄積されてきた、恥ずかしい姿をみなさまに視姦されるという精神的な快楽に、乳首責めという肉体的刺激まで加わったことで、発情のレベルが一気に上がってしまったようでした。
 もっと虐めて、もっと痛い思いをさせて、という欲求だけがどんどん膨らんでいました。

「落ちないようにちゃんと着けた?ちょっとそこでおっぱい揺らしてみてよ」
 リンコさまのイジワルなご命令。
「はい・・・」

 完全に言いなりマゾモードな私は素直にその場で、ラジオ体操の腰をひねる運動のように、上半身を左右に大きく振りました。
 剥き出しのおっぱいがでたらめにブルンブルン揺れると、鎮まりかけていた両乳首からの疼痛が息を吹き返しました。
「あぁ、うぅ」
 思わず洩れたいやらしいため息に向けられた、蔑むようなリンコさまの冷ややかな笑み。

「おっけー。あとはチェーンを繋げるだけだから、Cスト穿かせちゃいましょう」
 テーブルに放置されていた突起付きのCストリングをリンコさまが手に取られました。
「そんなにグショグショなら、ローションなんか塗らなくてもすんなり入っちゃうよね?はい。自分で着けて」
 Cストリングを手渡されました。

 みなさまが興味津々なまなざしで見守る中、手前の突起部分をマゾマンコにあてがいます。
 縦長の楕円を二つ重ねた、いびつな逆雪だるまさんのような形の突起部分は、シリコンみたく柔らかい素材なので、蜜に溢れた膣内に難なくズボッと潜り込みました。

「あうぅっ」
 マゾマンコ全体が今か今かと待ち望んでいた異物挿入の瞬間に、粘膜一同の歓喜のざわめきが実際の声となって洩れてしまいます。
 異物の侵入に溢れ出たおツユが、みるみるCストリングの裏側をヌルヌルに汚しました。

「そろそろ紹介映像が終わります。早めにスタンバってください。引き伸ばせて、最大あと3分です」
 里美さまの事務的なお声が聞こえました。

「ほら、早くアナルも嵌めて。リハのとき絵理奈さん、いちいち喘いだりしないで、ひとりで淡々とこなしてたよ?」
「あ、はい・・・」

 左手で股間を押さえ、右手を背後からお尻に持って行き、溢れたおツユをお尻の穴になすりつけます。
 私、みなさまの視ている前でこれから、お尻の穴に異物を挿入しようとしている・・・
 そう考えると恥ずかし過ぎて、あてがった先端を押し込むことに躊躇してしまいます。

「ううん、もう任せてらんない。アタシが挿れてあげるから。お尻突き出しなさい」
 リンコさまが焦れたようにおっしゃり、私の背中をいきなり押さえつけてきました。

「あうっ」
 お尻をリンコさまに向けて突き出した格好で、前屈みになる私。
「ほら、自分で穴、広げてなさい」
 ドエスそのものなリンコさまのご命令口調。
「は、はいぃ」
 両手をお尻の割れスジにあてがい、みなさまの目の前で自らお尻の穴を押し広げる私。

「あ、あの、わたし、このペットボトルをおトイレで処理してきちゃいます。すぐに戻ってきますので」
 あまりにみじめな私の姿にいたたまれなくなったのか、さっき私がしたオシッコボトルを紙袋に入れたほのかさまが、逃げるように楽屋のドアからお外へ飛び出していかれました。

「たまほのには、ちょっと刺激が強すぎたみたいね」
 傍らのしほりさまへ向けたのでしょう、リンコさまのバツの悪そうなつぶやきが聞こえました。
 と思う間もなく、お尻の穴にひんやりとした感触。

「んぐぅっ」
「力抜いてないと苦しいよ?」

 ヌルっとした感触が徐々にお尻の穴に埋まっていく感触。
 前に埋まっている突起との相乗効果で、下腹部の粘膜全体が心地よく圧迫されてきます。
「あぁうぅぅ」
 押し殺そうとしてもこらえきれない悦びの喘ぎ。

「おーけー。ずいぶんすんなり入っちゃった。普段から使い込んでるんだねえ」
 リンコさまのからかいが、的を射過ぎていて恥ずかし過ぎます。
 
 ゆっくりとからだを起こしました。
 体内に潜り込んだ異物がからだの動きに合わせて粘膜を擦るのがわかります。
 二穴蹂躙。
 えっちなビデオのタイトルか何かで見たことのある、そんな卑猥な言葉が頭をよぎりました。

「んぐっ、うぅぅ」
「ほら、スケベな声出してないで、ドアまで行くよ」
 リンコさまに促され、ステージへと出るドア前まで歩きました。

 脚を交互に動かすと、埋め込まれたふたつの異物が膣壁と腸壁を満遍なく圧迫するようにフィットして、思ったより歩きづらくはありません。
 だけど、これからこの状態で、たくさんのお客様がたの前を100歩以上は、歩かなければいけないのです。
 ポーカーフェイスをつらぬいて絶対に気持ち良くはならない、という自信はまったく持てませんでした。

「それで、最後の仕上げね。言っとくけど発案者は、愛しのお姉さまだから」
 リンコさまがからかうようにおっしゃり、両腕を後ろに回され、両手首の拘束具を後ろ手にガチャリと繋がれました。
 首輪にもおへそくらいまでの太くて重いステンレスチェーンをリードのように垂らされます。
 両足首の拘束具も、ちょうど一歩分くらいの長さにチェーンで繋がれました。

「うわー。すっごく似合ってる。さすがに小夜さんのこと知り尽くしたお姉さまのコーディネートね。エロさ満開」
 しほりさまが私の姿を上から下までしげしげと視つめて、おっしゃいました。
 それからふと思い出したように、リップを塗り直してくださいました。

「スタンバイ、お願いします」
 里美さまのお声で、しほりさまがステージへ向かうドアを開きました。

「マゾっ娘コーデの最後の仕上げは、ステージ袖でね」
 リンコさまが後ろ手に何か隠し持った格好で、私をステージ袖の暗がりへ押し出しました。
 思わず右足をグイと踏み出すと両足幅を繋いだ鎖がピンと張り、グラリとよろけてしまいました。
 背後のリンコさまに支えられ、転ばないで済みました。

「普通の歩幅よりチェーンが短かめになっているから、歩幅調整してゆっくり歩いて。その分、お客様にじっくり視てもらえるはず」
「ステージに戻ったらまた、楽屋に戻らず居残って。アヤ姉たちの解説が入るから」
 リンコさまがおっしゃりながら私の正面に回り込みました。

「いろいろ候補はあったみたいよ。普通のボールギャグとかノーズフックとかね」
 後ろ手に隠し持っていたものを見せてくださるリンコさま。
 お姉さまが私のために手に入れてくださった、あのブランドもの乗馬鞭でした。

「これを咥えて、ランウェイを歩くの。ここがちょうど真ん中でバランス取れるから」
 リンコさまが乗馬鞭の柄の真ん中あたりを人差し指に乗せて、やじろべえみたいにユラユラさせています。

「火の点いた太いローソクを咥えさせて蝋をダラダラ肌に垂らしながら、っていう案もあったらしいけれど、万が一ウイッグに燃え移ったり、絨毯に落としたりしたら危ないしね。消防法にもひっかかりそうだし」
「いろいろ悩んで、これを咥えさせるのが一番アナタらしいって、考えたみたいよ、アナタの愛しいお姉さまは」
 からかうな笑顔がすぐに引っ込み、真顔に戻ったリンコさま。

「口開けて」
 恐る恐る開けた口に乗馬鞭の柄が押し込まれました。

「一度咥えたら、ランウェイ往復して帰ってくるまで、絶対落としちゃだめよ」
 そこまでおっしゃって意味ありげにお言葉を切ったリンコさまが、ゾクッとするほど冷ややかな笑みを一瞬浮かべられ、こうつづけました。
「たとえどんなことが起こっても、ね」

 咥えさせられた乗馬鞭の柄は、思ったよりも弾力があり、左右の糸切り歯がやんわり食い込んでいる感じ。
 顔の左側にベロ部分、右側にグリップ部分。
 鞭自体は軽いので、落とす心配は無さそう。
 でも、口が半開きのままになるから・・・

「よだれなら、どんどん垂らしていいってさ。上の口も、もちろん下の口からもね」
 私の心を見透かしたようなリンコさまのお声が終わるか終わらないかのタイミングで、場内のBGMが変わりました。

 ホラー映画のサントラ盤みたいな、物悲しくも重厚な曲。
 一瞬にしておどろどろしい雰囲気に変わりました。
 場内の灯りも一斉に消え、真っ暗。
 やがてピンスポットがステージ上の、私が出るべき位置だけを丸く照らし出しました。

「お待たせいたいました。それではどうぞじっくりと、ご覧になってください」
 雅部長さまのお芝居がかった綺麗なお声が響き渡り、つづいて盛大な拍手。
 その中を私は、ゆっくりと光の輪の中へと歩を進めました。

「おおおぉぉ」
 光の中に入った途端、会場全体が大きくどよめきました。

 からだの首と名のつく箇所すべてに赤いレザーの拘束具を着けられた、パスティースにCストリングだけの裸体が浮かび上がったのでしょう。
 両手は後ろ手に繋がれ、両足も囚人のようにチェーンで繋がれ、首元からもペットのように鎖を垂らし、自分を痛めつけるための乗馬鞭を自分で咥えた哀れなマゾ女。
 
 スポットライトが私を焦らすかのように、とてもゆっくりとランウェイに導いてくれます。
 ライトから外れるわけにはいかないので、その動きに合わせてゆっくり歩かなければなりません。
 こんな恰好なのに、努めて無表情に。

 首から垂れたチェーンが揺れて横乳を愛撫します。
 足首を繋いだチェーンがジャラジャラと音を立てます。
 鞭を咥えた唇からはよだれが垂れ始め、首筋からおっぱいへと滑り落ちています。

 ランウェイに降りると、ライトの動きはますます遅くなりました。
 一歩進んでは立ち止まるような、周辺のお客様がたに存分に見せつけるようなペースになりました。

 このアイテムの破廉恥な仕組みは当然、私の登場前に綾音さまが、お客様がたにご説明されているでしょう。
 つまり、ここにいるみなさまは全員、今私がどんな状態なのかをご存知なのです。

 パスティースの裏で私のふたつの乳首がネジでギュッと締め付けられていることも。
 Cストリングの裏で私のふたつの穴が卑猥な突起に蹂躙されていることも。

 パスティースのハート型のお尻からは、締め付けるためのネジが2センチくらい覗いていました。
 Cストリングと肌の隙間からは、溢れ出た粘性のおツユがトロトロと内腿をつたっていました。
 
 今私は、自分の性的に敏感な箇所すべてを陵辱されながら歩いている姿を、そうと知っているみなさまにご披露しているのです。
 それは、自分が普段人知れずしているオナニー姿をみなさまに晒しているのとほとんど同じことだと気づき、その恥辱に性懲りもなく更に昂ります。

 リンコさまは、Cストリングの突起を、あくまでもストッパーとしての役目で、決して気持ち良くなるためのものではない、とおっしゃいましたが、それは嘘でした。
 
 きっとそういうふうに設計された形状なのでしょう、
 歩いているうちにマゾマンコに埋められたほうの突起がどんどん奥へと侵入してきて、脚を動かすたびにより奥へ奥へと突かれる感覚がしていました。

 あっ、あっ、んっ・・・これ、気持ちいい・・・
 表情に出さないように努めながらも、どうしても股間の快感に眉間が寄ってしまいそうになってしまいます。

 お客様がたはシンと静まり返り、誰もがスポットライトの中の私の姿を食い入るように凝視しているのがわかりました。
 すすり泣くような物悲しいストリングスのBGMだけが場内に鳴り響いています。
 まるでヨーロッパ中世の古びたお城かどこかに拉致されて、生け贄とか奴隷とか、余興の慰みの見世物にされている気分でした。
 私の中の被虐メーターが振り切れそう。
 
 ランウェイを半分くらいまで進んだところで、今までになく深い所を突かれ、たまらずキュンと膣壁が突起を強く締め付けたのがわかりました。

「ぁんんっ・・・」
 同時に頭の中に真っ白な火花が散り、腰から砕け落ちそうになりました。


オートクチュールのはずなのに 57


2016年8月21日

オートクチュールのはずなのに 55

 それ以降のアイテムはどれも、ほとんど裸、としか言いようのないものばかりでした。
 バストトップと股間をいかにギリギリに隠すか、みたいなコンセプトのものばかり。

 幅3センチにも満たない赤いリボンを胸囲を測るように巻きつけ、同じ幅のリボンがおっぱいの谷間から一直線に下へ伸び、股間を覆って背中側へと通る、正面から見ると、乳首を結んだ線と股間への細いラインがTの字の形にしか肌を隠さない水着。
 
 首に巻いたチョーカーから垂れ下がったチェーンが乳首と股間だけを、小さなハマグリの貝殻みたいなアクセで隠してくれるビキニ。

 Cストリングと呼ばれる、両脚を通すパンツ状の紐も布も無い、ただ股間にパカっと嵌めるだけのC字型カチューシャみたいなボトムスを穿かされたときは、乳首のほうは、小さなハート型のパスティースをペタンと貼り付けただけでした。

 アイテムお着替えの合間に、リンコさまが教えてくださいました。

「こっちに戻ってからの開演前のミーティングでね、当初の予定からの演出変更がけっこうあったんだ」
「どうせなら絵理奈さんじゃ出来なかった、ぶっ飛んだこともしちゃおう、ってさ」

「モデルが絵理奈さんだったら基本、ニプレスと前貼りでずーっと通すつもりだったんだよね。彼女はプロで、イメビとかもけっこう売れているほうだからさ」
「プロのモデルにとって、そういう部分って、ある意味、売り物なわけじゃない?見えた見えないの世界で。まあ、今回は名前出さない予定だったけれど」
「イメビでもまだバストトップ解禁していないランクだからさ、軽々しく見せちゃうと、価値が下がっちゃう、みたいな、オトナの事情もあるし」

「でも小夜ちんがモデルになったことだし、不幸中の幸いを最大限活用して、ここは思いっきりはっちゃけちゃおうって、絵理奈さんだったらNGだった試作アイテムとか、急遽オフィス戻って持ち出してきたり」
「一番ノリノリだったのがチーフ。こういうの、ナオコ悦びそう、とか言っちゃって、アヤ姉とワイワイ盛り上がってた」

 チェーンにハマグリのビキニでステージに出るとき、オモチャの手錠を後ろ手に嵌めることにしたのも、お姉さまのアイデアなのだそうです。
 首に嵌められたチョーカーがベルト式のワンちゃんの首輪っぽいデザインなことも相俟って、私的に一気に、マゾドレイ、な被虐モードに入りました。

 ある意味とても私らしい、こんなマゾ丸出しな姿までお客様がたにお視せすることで、お姉さまもイベントを愉しまれているんだ・・・
 このイベントでは、たとえ私がどんなにアブノーマルな姿を晒しても、お客様がたも含めて誰ひとり、咎めるような人はいない、ということを、これまでの出番で実感していました。
 
 だから直子も遠慮なんかせずに、人知れず隠し持ってきた性癖を、残らずここでさらけ出して開放しちゃいなさい。
 お姉さまに、そう言われているような気がしました。
 そう考えると、お姉さまが私を本当に理解してくださっているんだな、って思えて、キュンキュン萌えちゃいました。
 
 後ろ手に拘束されていても、ランウェイでは胸を張って颯爽と歩かなければなりません。
 ほとんど裸な晒し者姿の私を、食い入るように、その歩み通りに追いかけてくるみなさまの値踏みするような視線。
 なんだかマゾドレイの競り市に出品されちゃった気分。

 天然モノらしい小さなハマグリの貝殻の裏に、背伸びしきった乳首が擦れます。
 大きめのハマグリに軽く覆われただけの股間の奥がジンジン疼きました。
 ただ、それと同時に不穏な兆候を下半身に感じ始めていました。

 最初は、興奮し過ぎて、感じ過ぎちゃっているせいだろうな、って思いました。
 ひとりでオナニーしているときも、たまにそういう感覚に陥るときがあったからです。
 そういうときはたいてい、最終的にはシオを吹いちゃうのでした。

 でも今は、何かを挿れたり、直接刺激とかは一切していないのだけれど・・・
 そこでやっと気づきました。
 これは、尿意。

 考えてみると午前中にお姉さまからお浣腸をされて以来、ずっと排泄行為はしていませんでした。
 ショーが始まってからは、浴びせられるライトの暑さやからだの火照りに任せてスポーツドリンクをゴクゴク飲み干していました。
 当然の結果でした。
 まだ我慢しきれないほどではなかったのですが、楽屋に戻ったとき、リンコさまにご相談してみました。

「あの、おトイレに行かせてもらえますか?」
「えっ?」
 私の貝殻ビキニを脱がせながら、リンコさまが驚いたお声をあげられました。

「大きいほう?小さいほう?」
「あ、えっと、オシッコです」
「したくなっちゃったの?」
「はい・・・」
「我慢出来ないくらい?切羽詰まってる?」
「あ、いえ、まだ、それほどではないですけれど・・・」

 全裸になった私の下腹部を、じっと見つめてくるリンコさま。
 その視線を私の顔に戻した後、唇の両端だけクイッと上げたイジワルそうな笑みを作って、こうつづけました。

「とりあえず次のアイテムは、すぐに着替えて出なきゃならない段取りだから我慢して。その次なら、少し着替え時間に余裕があるから、何か方法、考えておく」
 おっしゃりながら私のからだをタオルで拭ってくださるリンコさま。
 気のせいか下腹部の膀胱の辺りをギュウギュウ押してくるように感じました。

 乳首の上にハート型のパスティースが貼られ、股にCストリングが嵌められました。
「小夜ちん、こういうの初めてでしょ?アイバックっていうんだ」

 両腿の付け根に挟んだだけ、な構造は、ちょっとしたことですぐ外れちゃいそうでとても頼りない感じですが、お尻側に回った細長いワイヤーぽい部分に弾力があり、お尻の割れスジに沿って食い込むように締め付けてくれるので、意外に落ちないみたい。

「ドレスとかでパンティラインを出したくないとき用に考案された、っていう触れ込みなんだけどさ、どう見たってエロ目的だよね、こんなの」
 これからその、こんなの、を身に着けて人前に出る私を目の前にして、他人事のようにおっしゃるリンコさま。

「まあ、アタシがいろいろ改良して、そのへんの市販品よりずっと着け心地良く、外れにくくしてあるからさ。安心してお客様にじっくり見せておいで」

 乳首にはシール、股間にはカチューシャ方式で嵌めただけのCストリングという全裸と大差ない姿でランウェイを往復し、楽屋に戻りました。
 お客様がたからの射るような好奇の視線シャワーにゾクゾク感じつつ、尿意も一段階上がっていました。

「おつかれー。こっち来て」
 戻るなり、リンコさまに手を引かれ、お部屋の中央に連れて行かれました。
 床に今まで私に使用したのであろう、少しヨレたバスタオルが何枚か敷いてありました。

「次のアイテムがラス前だから、あともうひと踏ん張り」
 しほりさまがお声をかけてくださいます。
「次のアイテムはちょっと仕込みに時間かるんだけれど、オシッコどうする?」
 リンコさまが尋ねてきました。

「あ、はい。やっぱりしちゃったほうがいい感じみたいです」
 我慢するのは好きだし得意なのですが、万が一我慢しきれなかったら、お姉さまのイベントを台無しにしてしまいます。
 それに、自分でもはっきりとわかるほどに尿意が高まっていました。

「そっか。でもこのフロアにあるトイレは、ここからかなり離れているから、悠長にトイレに行ってる余裕がタイムスケージュル的にも無さそうなんだ。悪いけれど」
「かと言って無理やり我慢させて、ショーの途中で小をお漏らしさっれちゃったりしたら、目も当てられないからさ、ここでしちゃって」
 しょうもないダジャレ混じりでイジワルに笑いながら、リンコさまがサラッとおっしゃいました。

「え?こ、ここで、ですか?」
「うん。これに」
 差し出されたのは、2リットルの空のペットボトル。
 私がゴクゴク飲んでいたスポーツドリンクの空き容器でした。

「グラビアやイメビの野外ロケとかでもよくあるよ。モデルが急にしたくなっちゃうこと」
 しほりさまが会話に加わってきました。
「近場にトイレ無いことザラだから、いつも携帯トイレをいくつか持ち歩くことにしているんだけれど、今日は生憎持ってなくて。ごめんね」
 もしもしほりさまが携帯トイレをお持ちでも、ここですることに変わりはないようです。

「で、でも、みなさま、いらっしゃるんですよね?」
 てっきりガウンでも着せられて、早く帰ってらっしゃい、とおトイレに送り出されると思っていた私は、ドギマギしすぎて、尿意がどんどん荒ぶるばかり。
 ここで、みなさまに見守られる中で、オシッコしなくちゃならないの?

「仕方ないじゃない。今は大事な仕事中なんだよ?アタシらは、スケジュール通りに一分一秒を争って、次のアイテムを着せなくちゃならないのっ」
 焦れたようにリンコさまがおっしゃいました。

「なんだか拍子抜け。小夜ちんなら、悦んでするだろうって思ったのに」
 リンコさまが真面目なお顔で私を見つめてきました。

「どうしてもここでしたくないって言うのなら、トイレに行ってきてもいいよ、ただし、その格好のまま、ひとりでね」
「このフロアのトイレは、エレベーターロビーの真ん前。今は時間的に他の会場が入れ替えの頃だから、他の催事で来たサラリーマンのお客様とか、たくさんいると思うけどね」
「それで、きっちり3分以内に戻ってきて。それが出来ないなら、ここでしなさい」
 今までにないほど冷たく突き放した、リンコさまのエス度満点な視線。

「あなた、マゾなんでしょう?それともチーフ、呼ぼうか?」
 最後に私の目を射るようにじっと視て、吐き捨てるようにおっしゃいました。

「は、はい・・・わかりました・・・こ、ここで、します・・・」
 マゾマンコの奥から脳天まで、隷属、という名の気持ち良い電流がズキュンとつらぬきました。
 これは、ご命令なんだ・・・
 私は、今日モデルをすると決めたときから、お姉さまの会社のスタッフのみなさま全員の慰み者、マゾドレイになったのだから・・・

「ならさっさとしちゃってよ。それじゃなくても時間押してるんだからっ」
 リンコさまのエスな口調とともに、おっぱいのパスティースが乱暴にベリっと剥がされ、Cストリングスもスポッと外されました。

 全裸にされて敷かれたバスタオルの縁に立ちます。
 中腰になってマゾマンコの割れ始め付近にペットボトルの飲み口の縁を右手であてがいました。

 私の正面にリンコさまとしほりさま、右側にほのかさま、背後に里美さま。
 ほのかさまだけは、ちょっと離れたところで怯えたような瞳で、それでも視線はしっかり私のからだに向いていました。

「一応タオルは敷いたけど、なるべくこぼさないでよ。しっかり狙って」
「はい・・・」
 会社のみなさまに、全裸でオシッコするところを視られている・・・
 ドキドキがひどすぎて、なかなか出てきません。

「自分でラビア広げて、尿道により近づけたほうがいいんじゃないの?」
 リンコさまの蔑んだお声。
「いっそ飲み口を中に突っ込んじゃえば?」
 しほりさまのからかうようなお声。
「そのボトルの飲み口は、ウエットティッシュでちゃんと拭っておいたので、清潔だと思います」
 ほのかさまのひどく真面目なお声。

「は、はい・・・」
 すべてのお声がご命令でした。

 左手をマゾマンコに添え、自分で陰唇をグイッと開きました。
 一瞬で左手の指先がヌルヌルになるほど濡れそぼっていました。
 飲み口をそっと粘膜に近づけます。
 粘膜に直接プラスティックの感触がしたとき、添えた左手の手のひらが、腫れ上がったクリットに触れました。
「あぅ!」

「感じてる場合じゃないでしょ?ほんと、いやらしい子」
 呆れたようなリンコさまのお声と同時に、ペットボトルの底から音がし始めました。

 ジョボ・・・
 ジョボジョボ・・・
 ジョボジョボジョボーーーッ!

 一度出始めると堰を切ったように、勢い良くほとばしる不浄な液体。
 右手で持ったペットボトルがみるみる重くなり、生温かくなってきました。
 ジョボジョボジョボーーーーーッ。
 逃げ出したくなるほど恥ずかしい水音がお部屋一杯に響き渡りました。

 視てる・・・
 視られてる・・・
 明るい蛍光灯の下まっ裸になった私が、オシッコしている姿を・・・
 リンコさまが、しほりさまが、ほのかさまが、里美さまが。

「現在、夕張さん、オシッコ中です。その後、着替えですので、予定より3分前後つないでおいてください。あとで巻きますので」

 背後から美里さまのお声が聞こえてきました。
 そんなこと、わざわざご報告されなくてもいいのに・・・
 交信のお相手は、お姉さまでしょうか、ミサさまでしょうか?
 美里さまのインカム越しに、私の派手な放尿音も聞こえちゃったでしょうか・・・

 永遠につづくように思われた激しい水音もやがてチョロチョロ、せせらぎ程度になっていました。
 ポチャン。
 最後に水面を震わせた波紋を合図に、そっとペットボトルをマゾマンコから離します。
 ツツーっと糸を引くペットボトルの飲み口はヌルヌル。

「済んだ?」
 真正面から一瞬も目をそらさず私の放尿姿を視つめていたリンコさまが、お顔を上げて尋ねてき
ました。

「はい」
「スッキリした?」
「・・・はい」

 ペットボトルの三分の一くらいが、薄黄色の液体で満たされていました。
 たった今、私の体内から排出されたオシッコ。
 その体温くらいに生温かくなったペットボトルを両手で持った全裸の私を、全員が無言で見つめていました。
 たった今、私のマゾマンコから離された、丸くぽっかり空いた飲み口から、独特の不浄な臭いが辺りに漂ってきます。

「けっこうクサイね。早くふたしちゃいなさい」
 リンコさまったら、わざわざおっしゃらなくても・・・

「は、はいっ」
 今更ながらの強烈な恥ずかしさをごまかすみたいに、ほのかさまから渡されたペットボトルのキャップをギュウギュウ締めました。
「スーパーモデル、夕張小夜様のしぼりたて聖水瓶詰めね」
 しほりさまのからかい口調に、いたたまれない程の羞恥で今すぐどこかへ逃げ出したい気持ち。

 ほのかさまがウエットティッシュを差し出してくださっています。
「これで後始末するといいわよ。ソコ」
 私の股間にチラッと目を遣っておっしゃってから、すぐにお顔ごと視線を逸らされました。
「・・・ありがとうございます」
 自分の股間に押し当てた途端、ベトベトになるウェットティッシュ。

「それにしても、あんな姿勢でそんな細い飲み口に、よく一滴もこぼさずに出来たものよね。ひょっとして家でも日常的にやっている熟練者だったりして」
 しほりさまが感心したように尋ねてきました。
「い、いえ、初めてです。ペットボトルにオシッコなんて、今までしたことないです」
 大急ぎで否定する私。
 だって本当のことですもの。

「ふーん。やっぱわたしの、突っ込んじゃえ、っていうアドバイスが良かったのかな」
 自画自賛されるしほりさま。
「でもこれで、マゾプレイのレパートリーが増えたんじゃない?あえてナオコって呼ぶけれど、ナオコのオフィス放尿ショー、なんてね」
 すっかり言葉責めモードに入っているしほりさまのご冗談にも即座に、オフィスでおトイレに行かせてもらえない私が、みなさまの前でペットボトルにオシッコする姿をご披露している妄想を浮かべてしまう、どうしようもない私。

「はいはい。時間押してるよ。次はプレイ編のメインアイテム、そしてオーラスのエンディングアイテム。最後まで気を抜かないで、キメにいくよ」
 
 リンコさまがパンパンと拍手しておっしゃったそのお言葉で、私のオシッコ姿ご披露タイムで緩んでいた場の空気が、再びピリッと張り詰めました。


オートクチュールのはずなのに 56


2016年8月14日

オートクチュールのはずなのに 54

 楽屋口で迎えてくださったのは、ほのかさま。
 剥き出しになった私のおっぱいを一刻も早く隠さなくては、とでも言うような困惑された表情で、バスタオルを広げて待ち構えていてくださいました。

「お疲れさま」
 労るようなおやさしいお声とともに、背中から包み込むように、大きなバスタオルで私の裸身をくるんでくださいます。

 ほのかさまと抱き合うような形で、されるがままになっていたとき、ほのかさまの右肘が私の尖った左乳首にチョンと触れました。
「あうぅ」
 途端にビリリってそこから全身に電気が走り、思わずはしたない声が洩れました。
 ほのかさまが小さくビクンと震えて一歩退きました。

 私、すごく感じやすくなっちゃっている・・・
 全身の皮膚すべてが性感帯のよう。
 背中に触れているタオル地のザラザラした感触にさえ、ムラムラ昂ぶってしまいます。

「あらら。夕張さん、だいぶ出来上がっちゃったみたいね、顔がトロンて蕩けてる」
 少し離れたところで私たちを見守っていたしほりさまが、愉快そうにおっしゃいました。

「ああ、びっくりしたぁ」
 楽屋口のドアを開けて、リンコさまが戻っていらっしゃいました。

「まさか小夜ちんが、あんなに盛大に濡らしちゃっているとは、思わなかったよー」
「本当はステージでショーツまで脱がせちゃう段取りだったんだけどさ、あんなビチョビチョじゃ、お客様に引かれちゃうと思って、急遽中止した」
 
 呆れたようなニヤニヤ笑いを浮かべたリンコさまに手を引かれ、鏡の前に連れて行かれました。
 せっかくほのかさまが巻いてくださったバスタオルは当然のように剥がされ、おっぱい丸出し女の姿が鏡に映ります。

「ほら、ぐずぐずしないで、ショーツも脱いで!」
 リンコさまの口調、エス度が増しているみたい。
「は、はい・・・」
 みなさまが見守る中で身を屈め、自らショーツをずり下げました。

 私のマゾマンコとソコが密着していたショーツの裏側とのあいだに、か細くて粘り気のある、喩えて言うと納豆の糸のような線が何本も引いては途切れました。
 ショーツを足元まで降ろしても、まだがんばって引きつづける糸も何本かありました。

 そんな光景をじっと見つめている楽屋のみなさまの目。
 そして辺りに漂い始める私にとっては嗅ぎ慣れた、薄っすら磯臭いような淫靡な発情の臭い。
 ショーツの裏側にたっぷりねっとり染みついた、この夥しい粘液こそが、私の淫らなヘンタイ性癖を可視化する動かぬ証拠となっていました。

「チーフが前貼りを却下した理由がわかったよ」
 私の股間をタオルでぞんざいに拭いながらリンコさまがおっしゃいました。
「こんなにベチョベチョにしちゃったら、すぐ剥がれちゃうし、ベージュの前貼りは濡れ染みになると茶色く目立ってみっともないもんね」

 タオルを私のマゾマンコに押し付けて、ギュウギュウと膣の中にまで押し込むように、おツユを拭ってくださるリンコさま。
 私はもちろん服従ポーズで、その刺激の快感に耐えていました。
 リンコさまの傍らではほのかさまが、私が汚してしまった透明ショーツの裏側を真剣なお顔で、丁寧に濡れタオルで拭ってくださっていました。

「このショーツも会場のマネキンに穿かせなくてはいけないのでしたよね?」
 私の淫汁を拭い去り、なんとか透明度95パーセントくらいに戻ったショーツをつまみ上げ、ほのかさまがリンコさまに尋ねました。

「マネキンは仕方ないから諦める。本当は水洗いしたいところだけれど、しちゃうと終わりまでに乾かなそうだし。その感じでいいから、あとは楽屋で干しといて」
「商談会でお客様からご希望があれば、実物を手に取ってもらうことになるからさ」

 リンコさまがタオルを私の股間に押し当てたまま私の顔をじっと見てつづけました。
「濡れタオルで拭いただけじゃ、臭っちゃうかもしれないけどね」
 私に向けて、ニマッと笑うリンコさま。

 そのお言葉を聞いた途端、からだ中の血液がカッと燃え上がり、押し付けられたタオルに恥辱の元凶である淫汁がまた、性懲りもなくトロリと溢れ出たのがわかりました。

 次に着せられたのは、同じ透明素材にうっすら赤色が入ったドレスでした。
 よく海外の映画女優さんなどが華やかなパーティでお召しになっているのを見かける、肌の露出部分の多いセクシー系のイブニングドレス。

 ホルターネックのVラインが大胆に下腹部あたりまで切れ込んでいるので、正面からはおへそ下まで、側面からも横乳がほとんど丸見え。
 少し動いただけでもすぐ、乳首がコンニチハしちゃいそう。
 背中も、お尻の割れ始めくらいまで大胆に開いています。
 スレンダーラインの裾はかかとまであるのですが、左側に入ったスリットが腰骨のあたりまで切れ込んでいるので、脚を踏み出すたびに翻り、キワドイところまで露になりそう。

 そしてもちろん、赤みがかっているとは言え透明素材ですから、ドレスの下の私の裸は丸わかり。
 幅5センチくらいの布地の下で息づく乳首の硬直具合までも、肉眼でハッキリわかりました。

 今度は、こんなのを着て、みなさまの前に出るんだ・・・
 ドキドキとワクワクが、頭と心と下半身に充満します。
 私にはすでに、理性はほとんど残ってなく、自分のヘンタイ性癖の基準で物事を判断し始めていました。
 
 恥ずかしい姿の私を、みなさまに視ていただける・・・
 その悦びだけで全身が疼きます。
 一刻も早くステージに出て、お客様がたを私の姿で驚かせたいという気持ちで一杯になっていました。

 そんなふうにしてショーは進んでいきました。

 シースルー素材の次は、ボンデージ系。
 キャットスーツというのでしょうか、ラテックス素材で首から下すべて、手の先から足の爪先までピッタリと覆われるボディスーツ。

 本当にピッタリ誂えたように、私の裸のボディラインそのまんまに素肌に吸いつく極薄ボディスーツ。
 これは本来、絵理奈さまのサイズに合わせて作られたのですから、他の人には着こなせません。
 だけど私にも見事にピッタリで、そのことを見極められた綾音さまのデザイナーとしての眼力に、今更ながら感心してしまいました。

 こういうアイテムは着たことがなかったので、鏡に映った姿を見たときは衝撃でした。
 最初に着せられたのは、真っ白な地にところどころラインの入った、超有名な人気SFアニメに出てくる、プラグスーツを思わせるデザインでした。

 その剥き出しなボディラインとラテックス素材の光沢が艶めかしくて、まさに裸よりエロティック。
 これも独自開発した新素材のラテックスだそうで、本当に極薄で、乳首の形も、股間のスジの食い込みも、まるで何も着ていないかのように見事に浮かび上がっていました。

 着心地も衝撃でした。
 水泳の水着やバレエのレオタードとも違う、肌に吸いつくような悩ましい密着感。
 初めはひんやり感じた素材が、体温で温まって一体化し、それでなくても敏感になっている全身の肌の触感がざわめきだします。
 どこもかしこも常に誰かに触られている感じ。
 これを身に着けたまま、麻縄でギュウギュウに縛られたら、すっごく気持ちいいだろうな、なんて、ふと考えちゃいました。

 2着めのキャットスーツは渋いモスグリーン。
 こちらはご丁寧にも、おっぱいのカップ部分と下半身のクロッチ部分だけ別素材で、特殊なジッパーで着脱出来るようになっていました。
 そしてもちろん、ステージ上で服従ポーズになり、リンコさまの手でその部分を外されました。

「絵理奈さんだったら当然、ニプレスと前貼り、してあげたんだけどね」
 外す寸前、リンコさまが小声で、からかうようにおっしゃいました。

 明るいステージの上。
 ボディラインも露なエロティック衣装の私に、お客様がたの視線が集中する中。
 全身モスグリーンの中で剥き出しとなった3箇所の、誰の目にもあからさまに欲情しているとわかる生身の肌色部分は、さぞかし卑猥に目立っていたことでしょう。

 つづいては、カジュアルラインコーナー。
 街中でも着て歩けるエクスポーズ服、というコンセプトなのだそうですが、どのアイテムも、とてもそうは思えませんでした。

 まずは、ロリータっぽいハイウェストジャンパースカート。
 ドイツの可愛らしい民族衣装=ディアンドル風の、おっぱいのすぐ下にハイウエストの切り替えが来て、おっぱいをドーンと強調しちゃうアレです。
 赤、緑、黒のチェック柄でメルヘンチックなジャンパースカートに白のフリルブラウスを合わせます。

 襟元にえんじのリボン、パフスリーブでふうわり王子様袖という、超可愛らしいデザインのフリルブラウスなのですが、丈だけが異様に短いんです。
 おっぱいの乳首、そのすぐ下くらいまで。
 下乳丸出し。

 ベリーダンスの人がよく着ている、両袖を通した胸が隠れるくらいのボレロ、を思い浮かべてくださるとわかると思います。
 それのボレロ部分がおっぱいの半分までしか届いてないわけです。
 ジャンパースカートの胸当て部分が、そのすぐ下に来て、半分だけ隠れたおっぱい部分をボーンと強調するみたくウェストを引き絞っています。
 ノーブラでそれを着ると、まっすぐ立っていればスレスレでやっと乳首が隠れる感じでした。

 おまけに、ジャンパースカートも超ミニで、膝上20センチ以上。
 ちょっと前屈みになればお尻丸出しになるのは確実でした。

「本当は、可愛い見せパンも穿くんだけれど、小夜ちんが穿いてもまた汚しちゃうだけだから、ノーパンでいいよね」
 リンコさまのイジワル声でステージに送り出されました。

 次に着せられたのは、一見、ストンとしたラウンドネックのシンプルなワンピース。
 色は肌色に近いベージュで七分袖の膝丈。
 なのですが、両サイド裾から腋下のところまでスリットが入っていました。

 つまり、このワンピースを素肌に着ると、一枚の細長い布地を両肩で折り返して、からだの前後に長方形の布を一枚づつぶら下げているだけ、みたいな状態。
 繁華街などでたまに見かける、からだの前と後にお店の広告看板をぶら下げて宣伝されているサンドイッチマンの人みたいな格好を、裸でしていることになるんです。

 その状態でウエスト部分を黒いベルトでキュッと絞られました。
 ウエストを起点にして、上半身は、胸側に一枚、背中側に一枚、下半身は、お腹側に一枚、お尻側に一枚の布に分割されました。
 横から見たら、前後の布のあいだから横乳、脇腹、太腿まで丸見えです。

 おまけに生地がとてもスベスベ柔らかくて軽いこともあり、からだにくっつけばラインがクッキリ、少し動いたらヒラヒラして、裾が大げさにフワリという仕様。
 腕を振ってランウェイを歩くと、上半身の布がベルトを起点にどんどんせり上がってきて、楽屋に戻る頃には、側面がら空き、横からなら乳首までおっぱい見え放題な状態となっていました。

 その次のアイテムは、パンツルック。
「今日の中ではこれが一番、完成まで試行錯誤したんだ」
 と、リンコさま一推しのアイテムでした。

 渡されたのは、一見普通のブルージーンズ。
 でも股上が異常に浅い?
 まず右脚から通すと、足周りはジャストフィットなスリムジーンズ。
 つづいて左脚を通して腰まで上げました。

「えっ!?」
 思わず絶句してリンコさまを見ました。
「凄いでしょ?」
 ご満足そうなリンコさまの笑顔。

 ほとんど股上がありませんでした。
 両腿の付け根から上には、ほんの数センチほどの布地しかありません。
 前は、性器のスジ覗き始めから、後ろはお尻の穴がギリギリ隠れるくらいだけしか覆ってくれていません。
 例えて言うなら、腿までのストッキングをそのまま右左縫い付けて、股上として幅数センチの腰周りをくっつけた、という感じ。
 ウルトラスーパー超ローライズジーンズ。

 かろうじて恥丘の上に来たボタンを留めます。
 当然ジッパー部分は無し。
 鏡には、左右の大腿骨付け根からのラインが作る三角形の下腹部すべてが露出した私の下半身が映っていました。
 後ろを向くと、お尻の割れスジも三分の一以上はみ出しています。

 このジーンズって、絶対しゃがめないよね・・・
 しゃがんだ途端に股上が腿の方にずり下がって、前の穴も後ろの穴も丸出しになっちゃうはず。
 鏡の自分を視つめながら、ステージ上でしゃがんだ自分の姿を想像していました。

「いかにギリギリまで攻めるか、苦労したんだ。弾力のいいコットンとか探してさ」
 私のほぼ剥き出しな下半身を至近距離からじーっと見つめつつ、リンコさまが感慨深げにおっしゃいました。
 確かに腰の動きに合わせて生地が伸びる感じで、穿き心地はすっごくいいんです。
 それを伝えるとリンコさまは、がんばった甲斐があった、って喜んでくださいました。

「こんなの、普通にヘアのある人は、ショーツ着けたって恥ずかしくて穿けないでしょう?まさに生涯パイパンなナオコ、じゃなくて小夜ちんのため、みたいなデザインじゃない?」
「小夜ちんの性器、絵理奈さんより上付き気味だから、ボタンがスジにギリギリだけど、きっと小夜ちんには、そのほうが嬉しいでしょう?」
 イジワルっぽくおっしゃったリンコさま。

「モデルが絵理奈さんだったら、白いTバックショーツを下に穿く段取りだったんだ。ノーパンだとあまりに生々し過ぎるし」
 独り言っぽくつぶやかれてから、まっすぐ私の顔を見て、つづけられました。

「どうせ小夜ちんが会場歩いて帰ってきたら、股上の裏、ベチョベチョに汚しちゃうんだろうから、この試作品は小夜ちんにあげる。オフィスでもよくジーンズ穿いているじゃん。普段着で使うといいよ」
 その口調にエスっぽいニュアンスを感じて、私にはそれがリンコさまからの、オフィスでもこれを穿きなさい、というご命令に聞こえました。

 上半身には、アンダーバストギリギリ丈のパツパツな白チビTシャツをノーブラで着せられ、その上に前開きのラフなデニムジャケットを羽織りました。
 ジャケットのボタンは、おへそから裾まで留めます。
 ボタンを留めている限りは、下のジーンズの股上がどうなっているのか、お客様にはわかりません。

「ランウェイの端に行ったら自分でジャケット脱いで、肩に担いで颯爽と帰って来なさい」
 リンコさまからのご指令。
 ジャケットを脱いで無毛な恥丘丸出しになったときの、驚きと戸惑いが入り混じったような会場のざわめきは、一際大きいものでした。

 そんなふうに、破廉恥な衣装を取っ換え引っ換え着替えさせられては、お客様がたの前に出るという行為を、私は愉しんでいました。
 どんなにキワドイ衣装を着せられても、早くみなさまに視ていただきたい、と思う気持ちのほうが、戸惑いや羞じらいよりも、あきらかに勝っていました。
 私のマゾ的妄想の中でも、幼い頃から一番根強く巣食っていた公然羞恥露出願望が遂に実現して、ヘンタイ性癖の塊と化してしまった私は、今のこの状況に酔い痴れていました。

 私の一挙手一投足を熱っぽく視つめてくださるお客様がたの視線。
 私が動くたびに、一斉に動くたくさんの頭。
 一枚脱ぐたびに、起きるどよめき。
 ステージを去るたびに、鳴り響く拍手。
 それらすべてが私を性的に興奮させていました。

 お客様がたの表情を見渡す余裕も出来ていました。
 私が出てくるたびに身を乗り出すように見つめてくる、最前列にお座りの艶やかに着飾ったご年配のおばさま。
 ランウェイの中ほど左側にお座りの、私と年齢がそう変わらないであろうビジネススーツの女性は、私が前を通るたびに傍目でわかるほど頬を紅潮させ、気恥ずかしそうに、それでも真剣なまなざしで私の姿を追っていました。

 目線は私に向けたまま、お隣の人と何かヒソヒソ話されている人。
 私の顔とからだを交互に見ては、ずっとニヤニヤ笑っている人。
 何度かオフィスでお見かけしたことのあるお顔もいくつかありました。
 驚嘆、好奇、侮蔑、憐憫、嗜虐・・・
 すべてのまなざしが私に何かを訴えかけていました。
 
 そんな中を私は、外見は努めて無表情を装いながら、内心では淫らなことばかりを考えていました。
 
 もう少し胸を張ったほうが、ノーブラ乳首のポッチが目立つかも。
 もっと大きく腕を振れば、生乳首がお外に飛び出したままになるかな。
 ランウェイ端の回れ右のとき、勢い良くターンしてスカートの中身まで視ていただこう。
 歩いているうちにジーンズのボタンが弾け飛んで、マゾマンコ全部見えちゃえばいいのに。

 とにかく自分のもっともっと恥ずかしい姿を、みなさまにさらけ出したくて仕方ない気持ちになっていました、
 私のどうしようもない、ふしだらなヘンタイ性癖を余すこと無く見せちゃいたい・・・

 楽屋に戻るたびに、はしたなく濡らした股間をリンコさまにからかわれながらギュウギュウ拭かれました。
 乳首が勃ちっ放しでスゴイね、ってしほりさまに感心されました。
 次々とふしだらな格好をさせられる私を見る、ほのかさまの憐れむようなまなざしに、マゾの血がキュンキュン疼きました。
 火照って火照って喉が乾くので、戻るたびにスポーツドリンクをゴクゴク飲み干しました。

 カジュアルラインコーナーの次は、プレイルーム編。
 ショーも終盤にさしかかっていました。
 ここからは、よりエロティックさを追求した、女性のためのセクシープレイアイテムばかりとなるそうです。

 最初のアイテム、文字通り乳首と股間のスジをギリギリにしか隠せない極小マイクロビキニを着せられた私は、とてもシアワセそうに見えたと思います。

 ああ、今度はこんな恥知らずな水着を着た私のからだを、お客様がたに視姦してていただけるんだ・・・
 今までに味わったことのある、どんな種類の気持ち良さとも違う、恍惚とする性的高揚感に、身も心もすっかり支配されていました。

 今さっき身に着けたばかりなのに股間をわずかに覆う小さな白い布地は、しとどに濡れそぼり、スジをクッキリ浮き上がらせてベッタリ陰唇に貼り付いていました。


オートクチュールのはずなのに 55


2016年8月8日

オートクチュールのはずなのに 53

 大きな拍手を背に受けながら楽屋に戻りました。
 全身がカッカと火照って、頭がボーッとしています。

「おつかれー。はい、これ飲んで」
 バスタオルで迎えてくださったリンコさまが、冷たいスポーツドリンクのペットボトルを渡してくださいました。
「あ、ありがとう、ございます」

 ゴクゴクゴク。
 美味しいー。
 熱が篭った体内に冷たい水分が沁み渡っていくよう。
 半分ほど飲み干すと、ほのかさまがペットボトルを受け取ってくださりテーブルに置いてくださいました。

「バンザイして」
 リンコさまのご命令。
「あ、はい」
 右襟から腋にかけてのホックが手早く外され、裾を盛大に捲り上げられ、あっという間に全裸。
 すかさずしほりさまがウイッグを整えてくださいます。

「からだ、ホッカホカじゃない。お客様の視線で、そんなに感じちゃったんだ」
 からかうようにおっしゃりながら、タオルで汗をぬぐってくださるリンコさま。
「はうっ」
 硬くなっている乳首をタオル越しにつままれて、思わずはしたない声が漏れてしまいました。

「いいねいいね。その悩ましい感じ。そのエロっぽさでお客様たちを残らず悩殺しちゃいなさい」
 リンコさまの視線が私の内腿周辺にまとわりついています。
 その部分だけ、汗とは違う種類の粘っこそうな体液に濡れ、お部屋の照明にテラテラ光っていました。
 
 私の下腹部にタオルを押し当て、拭ってくださるリンコさま。
 タオル越しの指が私の腫れた部分をコショコショ嬲ってきます。
 いつの間にか服従ポーズになって、必死にポーカーフェースを繕う私。

「おーけー。次のアイテムはちょっとめんどくさいんだ」
 真顔に戻られたリンコさまのお隣に、ハンガーにかかったスーツカバーを持たれたほのかさま。
「次はスーツだからね。ちゃんと下着からフル装備」
 愉快そうにニッと微笑んだリンコさまから、ニュッと両手を差し出されました。

「何ですか、これ?」
 差し出されたリンコさまの手の上に乗っていたのは、透明のビニール袋?
「だから、下着よ」
 言われてみればそんなような形をしている気もしますが、ものの見事に無色透明なんです。

「ビニール製、ですか?」
「ううん。れっきとした植物由来の繊維製。でも布地って言うより紙に近いのかな。これもうちと某社との開発品」
 ちょっぴり得意気におっしゃって、まずブラジャーから着け始めてくださいました。

 形状はごく普通のハーフカップブラ。
 でも、カップも肩紐も留め具も、みんな素通しガラスみたいに透明。
 だからブラに潰されて少しひしゃげた乳首の色まで、外から丸見え。
 ブラの中でおっぱいって、こんなふうになっているんだ・・・
 着け心地は確かに、普通の布地っぽい。

 つづいてショーツ。
 ローライズ気味のフルバックタイプ。
 ゴムのところだけ少し濁って半透明な以外、見事に無色透明。
 だから当然、中身も丸見え。
 せっかく下着を着けていても、これでは何の意味もありません。
 もしも下にヘアがあったら、黒々、すっごく目立つだろうな・・・

「おお。上も下もサイズ、ぴったりだね」
 リンコさまの嬉しそうなお声。
「それで次はこれ」
 リンコさまのお声に、ほのかさまが持たれていたスーツカバーを開けると、中にはこれまた透明なお洋服っぽいものが入っていました。
「まずはブラウス」

 これまた見事に無色透明。
 まるでビニール袋のようなそのペラペラな布地?は、確かに一般的なブラウスの形状はしていました。
 立ち襟で長袖、着丈はウエストちょっと下くらいの短かめ。
 縫製された糸に当たる部分が少しだけ半透明に濁っている以外、ボタンまで綺麗に透明。

 両袖を通すと、リンコさまとほのかさまが、おふたりがかりでテキパキとボタンを留めてくださいました。
 着心地は、普通のやわらかめなブラウスを身に着けているのとぜんぜん変わりません。

「それで、これね」
 ジャケットとスカート。
 これも透明度の高いシースルーなのですが、全体に少しだけうすーいベージュが入っていてやや濁っている感じ。
 一見してスーツのシルエットが識別できるくらいの極薄い色味が入っています。

 スカートは、膝上丈のけっこうパッツンなタイト。
 ブラウスより厚手な生地ですが、ちゃんと透けています。
 ブラウスの裾はインせず、スカートのウエスト部分、ちょうどおへそのところに数センチかかる感じ。

 ジャケットも同じ色味と生地で、シンプルなビジネスタイプのシルエット。
 ジャケットのボタンもキッチリ留めて着終えると、からだの感覚としては確かにスーツを着込んでいる状態なのですが、鏡に映った姿は赤面モノ。
 ベージュがかったスーツシルエットの下に、肌色全裸のボディラインが見事に浮き出ていました。
 肌の色と薄いベージュが同系色なので、とくにバストトップと乳輪の赤みが、全体肌色の中、強烈なアクセントとなって目立ちまくっています。

「このアイテムはね、開発部では、プロジェクトアンデルセン、って呼んでたんだ」
 私の着付けを調整してくださりながら、リンコさまが教えてくださいました。
「あの有名な、裸の王様、の服を作っちゃおう、って」
 イタズラっ子の笑顔で、ハイヒールなパンプスが足元に置かれました。
「ビジネススーツなんだから、ちゃんと足元もキメなきゃね」

 パンプスだけ透明ではなくて、薄いベージュのシンプルなデザインで、ヒールが10センチくらいと高めでした。
 造りがしっかりして、誂えたみたいに履きやすい。
 履いているときに、そろそろです、と里美さまからお声がかかりました。

 今度はこんな、最初から透明スケスケのお洋服でお客様の前に出るんだ・・・
 鏡に映った自分の姿に再度目を遣ると、下半身の奥底から羞じらいが全身にほとばしります。
 スーツをちゃんと着ているクセに、まったくの役立たず。
 隠すべき箇所がまったく隠せていない、裸体同様の破廉恥な自分の姿。

 パンプスを履いたせいで何て言うか、お外にいる感、がグッと増していました。
 だって全裸になるときって普通お家の中のはずで、そんなときに靴なんて絶対履いていないですから。
 
 ハイヒールという、お仕事とかオシャレとか社会性を連想させるものを身に着けたことで、今の自分のアブノーマルな露出症的服装のアブノーマル感がいっそう際立つように感じました。
 さっき会場のフロアに着いてダンボール箱から出て、全裸にパンプスだけ履いた格好でオフィスビルの廊下を歩いたときに感じた、喩えようのない羞恥と背徳感がまざまざと蘇りました。

 ただ、そんな恥ずかしい恰好をしているクセに、心境にポジティヴな変化が訪れていました。
 こんな姿で人前に出るというドキドキ感は止まらないのですが、そのドキドキの中に、そこはかとないワクワク感が混ざり始めていました。

 早くみなさまの前に出て、ふしだらで恥ずかしい私の姿をご披露したい。
 みなさまが驚くご様子が見たい。
 そんなヘンタイ的な高揚感が強くなっていました。

 それは、これまでランウェイを2往復してみて感じた、お客様がたの好奇に満ちた期待を、文字通り素肌で感じ取ったおかげなのでしょう。
 あっと驚くような格好で私が出てくることを、素直に愉しんでいらっしゃるみなさまのリラックスされたご様子に、私も自分の恥ずかしさを愉しむ余裕が出てきたようでした。

「スタンバイ、お願いします」
 里美さまのお声で、舞台袖に上がりました。

「今回は、往復してステージに戻ったら、そのままステージで待っていて。アタシもステージに上がるから」
 リンコさまが小声で耳打ちしてきました。
「そこからは、アヤ姉の説明に従うの。アタシもステージで手助けするから。わかった?」
 リンコさまのご指示にコクンとうなずくと同時に、場内のBGMがミドルテンポのヒップホップ風に変わりました。
「おっけー、ゴーッ!」

 リンコさまに軽く肩を押され、ステージ上に出ました。
「おおっ!」
 軽く会場全体がざわめきました。
 照明が煌々と点いた明るいままの会場に、スケスケ過ぎる私の姿はどんなふうに見えているのでしょう。
 モデルの心得をおさらいしながらステージ中央まで進みました。

 階段を下りて赤絨毯へ。
 歩くたびに腿を撫でるスカート、腕に擦れる袖。
 身体的には紛うこと無くお洋服を着ている感覚なのに、凄い恥ずかしさ。

 まっすぐ固定した視線の両端に、こちらをじーっと見つめてくるお客様がたの瞳の大群。
 小野寺さま、アンジェラさまのお隣にお姉さまのお姿をみつけて、思わず視線がそちらへと動いてしまいます。
 
 ランウェイの端まで行き着き、回れ右。
 今回は暗転も無く、明るいままの会場をステージへと戻ります。
 視界の右端に入るスクリーンには、すでに正面からの私の姿が映し出されていました。

 大きな顔のアップから、徐々にカメラが私のからだを舐めるように下がっていき、バスト部分では、透明繊維にあがらうように背伸びしているふたつの乳首が、ハッキリ鮮明に映し出されました。
 なおも下がるカメラが、うっすらベージュのスカートウェストから透けるおへそを通り、タイトスカートの下半身アップへ。
 上付きな私の無毛恥丘の割れ始め部分も、二枚の透明繊維越しにクッキリ映っていました。

 ああん、私の恥ずかしい箇所があんなに大きく、みなさまの前に映し出されている・・・
 私が通りすぎた場所に座っていらっしゃるかたたちは、きっと生身の私のお尻とスクリーンを交互に、凝視されているのだろうな・・・

 いやん、視ないで・・・
 ああん、でも視て、視てください、どうぞ存分に、私の恥ずかしい姿をご覧になってくださいぃ・・・

 歩きながら心の中で、グングン興奮し発情していました。
 でも、お姉さまのお言いつけ通り、決して悟られないように努めて無表情を装います。
 心臓の鼓動が周りのかたたちにまで聞こえてしまうのではないかと思うくらい、昂ぶっています。
 それを必死に抑え、耐えながら、内側からゾクゾク、ムラムラ感じていました。

 ステージ中央には、リンコさまがすでに待ち構えていらっしゃいました。
 並ぶ形でお隣に立ち、お客様がたのほうへ向き直ります。

「両腕をちょっと左右に開いたポーズで立っていて。そうね、何て言うか、ペンギンみたいに」
 リンコさまの小声のご指示。
 ペンギンさん?
 ちょっと考えて、直立姿勢のまま両腋から腕を30度くらいの角度で離しました。
「うん。それでいい。あとは自分はただのマネキンだと思って、アタシに何されても無表情でいて」

「ご覧いただいた通り、このプロジェクトアンデルセンは、まったくの無色透明のまま、どんなデザインにも縫製することが出来る夢の新素材です」
 司会者演壇の綾音さまがご説明を始めました。
 と同時にリンコさまが私の前にまわり、私が着ているジャケットのボタンを外し始めました。

「今回のスーツで言いますと、ジャケットとスカートには、シルエットがわかりやすいように薄くベージュを入れてあります」
「このように、シースルーのままお好みのカラーを入れることも可能ですので、例えば、イエローのブラウスの上に青みの入ったジャケットを合わせると、透明なので重なった部分だけグリーンになる、といったカラーコンビネーショの楽しみ方も出来るわけです」

 綾音さまのご説明がつづいているうちに、リンコさまの手でスルスルッとジャケットが脱がされました。
 ジャケットの下は、完全に無色透明なブラウスと、その下のブラジャー。
 私のはしたない乳首は、ジャケットを着ていたときより、よりハッキリと、みなさまの目に見えているはずです。

 つづいてスカートウェストのボタンも外され、スカートが足元にストンと落ちました。
「ちょっと動いて落ちたスカートから両足外してくれる?」

 リンコさまのご指示に、透明なブラウスと下着姿になった私は、後ろに右足、左足と一歩づつ下がりました。
 すかさずリンコさまがスカートを拾い上げました。
 雅さまが近づいてきて、スーツの上下を演壇までお持ちになりました。

「ご覧の通り、モデルが下に着ているブラウスは、まったくの無色透明です。また、あのブラウスとこちらのスーツの生地とでは、厚さとやわらかさが違います」
 演壇からまっすぐ私を指さす綾音さま。
 その私はと言えば、リンコさまの手で今度は、ブラウスのボタンをひとつづつ外されていました。
「その下の下着類は、一番薄手の素材を使用しています」

 ブラウスを脱がされゆく私にお客様全員の視線が集中しているのがわかります。
 なにこれ?
 まるでストリップショー・・・
 それも、最初から裸は丸見えなのに、みなさまの面前で衣服を剥がされていくという倒錯した、アンビバレンツな脱衣状況。

 あれよあれよとボタンが外れ、両腕からブラウスの袖が抜かれて、透明ブラとショーツだけの姿となった私。
 それでもまだペンギンポーズで不動のままいなくてはいけないのです。
 まさか、この下着類も、みなさまの前で脱がされちゃうのかしら・・・

 最初から中身がスケスケ丸見えで、隠す、という機能についてはまるで役に立っていない下着たちでしたが、これだけの人たちの目の前で、されるがままに脱がされ生身の全裸になる、という行為は、恥辱以外の何物とも思えません。

「御覧いただいたスーツとブラウス、それに下着を、このマネキンに着せて、ステージ脇に飾っておきますので、わたくしの説明が終わリ次第、みなさまで実際にお手に触れていただいて、その生地の品質と素晴らしい透明度をご堪能いただければと思います」

 今、綾音さま、下着っておっしゃった・・・
 そのお言葉は、私への処刑宣告でした。

 リンコさまが私の背後に周り、さも当然のようにブラジャーのホックを外されました。
 バストを締め付けていた圧迫からの開放感。 
 布地に押さえつけられていたふたつの乳首が、ここぞとばかりに跳ね起き上がりました。
 同時に素肌に触れる空気感。
 とうとうみなさまの目の前で、生おっぱい丸出し状態。
 それでも動いてはいけない私。

 リンコさまの視線が私の下半身に移りました。
 公然ストリップショーも大詰め。
 リンコさまの手がショーツのゴムにかかったとき、遂に正真正銘の丸裸・・・
 でもそれは、私の中のマゾ性が、幼い頃からずっと望んでいたことでもあるのです。

 覚悟を決めてからもリンコさまは、しばし私の下半身を凝視したまま固まっていらっしゃいました。
 それから、ふとお顔を上げ、ちょっと呆れたふうに笑いかけてきました。
「おーけー。私がアヤ姉のほうへ向かったら、ここでいつものポーズをキメて、楽屋に戻っていいよ」
 小声で私に耳打ちしてきました。
 
 どうやらストリップショーは、最後の一枚を残して打ち切りにするみたい。
 4割の安堵と6割のガッカリ感・・・
「は、はい・・・」
 私の震える小声にうなずき、私から脱がせたブラウスとブラジャーを手にしたリンコさまがスタスタと演壇の綾音さまたちのほうへと向かって行かれました。

 綾音さまのお客様がたへのアイテムご説明はまだつづいていました。
 お客様がたは、綾音さまのお話にお耳を傾けながらも、大部分の方々が私の動向に注目しているようです。
 私は、リンコさまのお言いつけ通り、その場でペンギンポーズからゆっくりとマゾの服従ポーズへと切り替えました。
 枷を解かれて剥き出しになったふたつのおっぱいが、自由に弾むのがわかりました。

 そして、後頭部に当てた両手を頭ごと少し後ろへと引き、生おっぱいと透明ショーツ越しのマゾマンコを軽く皆さまの前に突き出すようにのけぞると、自分の目で自分の下半身を見ることが出来ました。
 ショーツのクロッチ先端に当たる周辺に白濁した液体が溢れ、透明度を曇らせているのが一目見ただけでもわかりました。
 リンコさま、これに気づいて私のショーツを脱がせるのを諦められたんだ・・・

 あまりの恥ずかしさで軽い目眩のようにクラっときたのですが、なんとか踏ん張りました。
 同時にオーガズムのような気持ち良い電流が全身をつらぬきました。
 ビクンと震えたからだと心のすべてが、更なる辱めを強烈に欲していました。
 
 視てください、視てください、視てください・・・と、そのはしたな過ぎる部分をお客様がたに見せつけるように向けたままゆっくり5回カウントしてから、ヒールをコツコツ鳴らして逃げるように楽屋へ飛び込みました。


オートクチュールのはずなのに 54