2015年1月3日

彼女がくれた片想い 02

 彼女とは一般教養でのクラス分けが同じだったので、語学やコンピュータの講義で必ず顔を合わせていた。
 トイレでの一件以来、彼女のことを気に留めていた私はそれからしばらく、顔を合わせるたびにそれとなく彼女に注目していた。
 
 彼女はたいてい数人の決まった友人たちと行動を共にしていた。
 その中での彼女は人当たり良さそうな笑みをいつも浮かべ、おっとりした雰囲気を醸し出していた。
 
 天然ボケ気味いじられキャラだけれど決して苛められはしないタイプ。
 髪も染めず、ファッションもどちらかと言えば地味目な少女趣味。
 野暮ったさと紙一重ながら自分に似合う服装がわかっているようで、コーディネートのセンスがいいなとは思った。
 
 ざっくりまとめるなら典型的なミッション系女子高出身者。
 共学の学校だったらクラスの異性数人はファンになるであろう、お育ちの良さそうなプチお嬢様という印象だった。

 トイレでの一件から数日経った体育の授業の日。
 テニスを選択していた私は体育館の更衣室で着替えを始めていた。

 体育の授業は提示されたいくつかのスポーツからひとつを選択する仕組みで、クラス分けとはまた別の集団となる。
 すなわち、すべての一年生のうちテニスを選択した人たちの一群。
 
 鍵付きロッカーが整然と並ぶ広めの更衣室内では、同じクラスなのであろう人たちと小さな群れを作ったいくつものグループが姦しく嬌声をあげながら着替えに勤しんでいた。
 私はどのグループにも属さず、隅のロッカーの陰でひとり黙々と着替えた。
 入学以来、誰に話しかけられても無愛想に生返事を返しつづけてきた報いだった。

 その日はジーンズを穿いていた。
 脱ぐためにうつむいてボタンに手をかけた時、誰かのからだが私の肩に触れ、顔を上げると彼女の顔があった。

「あ、ごめんなさいっ…」
 
 身体をぶつけてしまったことを詫びているのであろう彼女と一瞬目が合った。
 軽く会釈してはにかむように微笑み、すぐに目を逸らした彼女はそそくさと私より奥のロッカーへと歩いていった。
 あの様子だと私が彼女と同じクラスなことさえ認識されていなさそう。

 私はその場で、あからさまにならないよう横目で彼女を窺がった。
 彼女は壁際一番奥のロッカーに荷物を入れ、壁のほうを向いて、すなわち皆に背を向けて着替えを始めようとしていた。
 私は自分の着替えをスローペースに切り替えて彼女の着替えをそっと観察することにした。

 彼女は妙にこそこそとしていた。
 ロッカーと壁のあいだの狭い空間に小さく背中を丸め、授業の開始時間が迫っているわけでもないのに何か急いでいる風のせわしなくもひそやかな挙動。
 
 ブラウスのボタンを全部外し、脱ぐと同時に間髪を入れずポロシャツ風のウェアをかぶる。
 セミロングのスカートを穿いたままアンダースコートを着け、スカートを取ると同時にウェアのスコートを大急ぎでたくし上げる。
 
 自分の着替えもあったので一部始終すべてを見ていたわけではないが、まるで一瞬たりとも素肌を外気に曝したくないという決意で臨んだような、ずいぶんあわただしい着替え方だった。

 更衣室には同性の目しかないし、自分のプロポーションを誇示したいのか無駄に下着姿のままいつまでもキャッキャウフフじゃれ合っている子たちさえいる中で、彼女の内気な中学生のような着替え方は新鮮だった。
 ひょっとしたら、他人に素肌を見られたくない理由、たとえば傷跡とかタトゥとかがあるのだろうか。
 それとも単純に極度の恥ずかしがりやなのか。
 私の中で彼女に対する興味が一層増していた。

 授業後の更衣室。

「私、あっちのロッカーだから…」
 
 友人たちに小さく手を振って彼女がひとり、自分の使用ロッカーへと近づいてきた。
 私はすでに着替えを済ませ、ウェアをたたむフリをしながらじっくり彼女の着替えを見てやろうと待ち構えていた。

 壁向きになって、まず上のウェアを脱ぎ始める彼女。
 両腕を袖から抜き、首からも抜いた後、手早くブラウスを羽織る。
 束の間見えた白くて綺麗な背中、そして純白のブラのベルト。
 背中にはタトゥや傷跡は無いみたい。

 それからスコートを床に落とし、一瞬のアンダースコート姿。
 手早くしゃがんでスカートに両脚を入れ、白くしなやかな脚線美がブルーの生地に隠される。
 前屈みのままスカートの中に両手を入れ、アンダースコートがひきずり下ろされる。
 
 これで彼女の着替えは終了。
 と思った瞬間、彼女が思いがけない行動に出た。

 アンダースコートから両脚を抜いた彼女は一度背筋を伸ばしてロッカーのほうへ向き直り、右手をロッカーの中に入れて何かを取り出した。
 彼女がロッカーに向いた時、私はあわててうつむき、自分のウェアを丁寧にたたみ直しているフリをした。
 私が見つめつづけていたことには気づかなかったらしく、彼女は再び背を向けて前屈みになった。

 真っ白な三つ折ソックスの右足、つづけて左足をくぐらせた布片は紛れも無く下着、純白のショーツだった。
 その布片はスカート内に潜らせた彼女の両手によって所定の位置まで一気に引きずり上げられたようだった。

 その後、彼女は再びロッカーのほうへ向き直り、テニスウェア一式が丁寧にたたまれてバッグの中にしまわれた。
 ラケットケースを抱えバッグを肩に提げた彼女はそそくさと私の横を素通りし、出口の方へと向かっていった。
 その間、おそらく3分にも満たない、あれよという間の出来事だった。

 今見たことについて考えてみた。
 彼女はアンダースコートの意味を理解していない。
 身に着けている下着の上に重ね穿きし、下着を隠すいわゆる見せパンとして活用するのが本来のアンダースコートの役目。
 わざわざ下着を脱ぎ、素肌に直接アンダースコートを着けていた彼女はアンダースコート自体を下着として認識しているのだろうか。

 さっきまでのテニスの授業。
 ほとんどラケットの素振りだけに一時限が費やされた。
 
 数十名の学生たちがコートに並び、講師の号令の下、ラケットを振るたびに翻る色とりどりのスコート、露になるアンダースコート。
 ほとんどの人たち、いや、おそらく彼女以外の全員が下着の上にアンダースコートを着けていたはず。
 誰に見られても構わないユニフォームの一部、ファッションの一部として。
 だけど彼女だけは下着を丸出しにしている感覚だったのではないか。

 傍から見ている分には、彼女のアンダースコートと他の人たちのアンダースコートにまったく差異は無い。
 ただ、彼女がわざわざ下着を脱ぎ、その代わりにアンダースコートを着けていたことを知ってしまった私は頭が混乱してきていた。

 これも彼女の天然ボケのひとつなのだろうか。
 それとも意図的に行なったものなのだろうか。
 だったらそれは何のために…

 気がつけば人影もまばらになった更衣室。
 彼女のはにかんだような笑顔が頭に浮かんだ。
 
 ついさっき見た、裸の白い背中としなやかな脚線美。
 それらに先日のトイレでの出来事が加わり、結果として私の思考はどんどんエロティックな方向に流されていった。


彼女がくれた片想い 03


2014年12月28日

就職祝いは柘榴石 13

 そんなお姉さまとのロマンティックなひとときを、台無しにするのはシーナさま。

「ねえ、そう言えば、この鏡、て言うか窓の向こうって、ベランダだったよね?」
 誰ともなしなシーナさまの、イジワルさ全開かつお芝居っぽいお声。
「庇が無いからバルコニーか。でもまあ、どっちにしても窓を開けたら外っていうことよね?」
 シーナさまが私とお姉さまのお顔を交互に見て、イタズラっぽくニッて笑いました。

「それで今、直子さんはその外に向けて、オマンコと肛門剥き出しにしているわけよね?みんな視てーって感じで、まったく無防備に」
「マジックミラーって、中が明るいと外からは素通しになるから、今バルコニーに誰かいたら、その姿、丸見えよね?」
「わたし、ちょっとそれ、見てみたいな。バルコニーの窓越しに、真夜中に外に向けて二穴全開にしているヘンタイ女の姿。写真も撮りたい」
 
 そこまで聞いて、怖くなってきました。
 つまり今、窓を開けちゃう、っていうこと!?
 お外から覗けちゃう状態にしちゃうっていうこと?
 私がこんな姿で、身動きも出来ないっていうのに?
 階下には管理人のおばさまもいらっしゃるのに?
 シーナさまなら、本当にやりかねない。

「お願いですシーナさま、許してください。それはお許しください。もう真夜中でみなさま寝静まっていますし、窓をガタガタさせたらご近所のご迷惑にもなっちゃうかもしれませんし・・・」
 絶望的な恥辱拘束姿で精一杯お願いしました。

「静かにしていれば大丈夫よ。このマンション、ワンフロア一世帯だし、四階だし、周りに高い建物ないし」
「直子さんは露出大好きマゾでもあるのだから、もし誰かに視られたら、一石二鳥じゃない?」
「それに、この部屋の中、だいぶ澱んじゃっているから、空気入れ替えましょう。春の夜風はきっと気持ちいいわよ?」

「でも、でも・・・」
「さっきわたし、こう言ったはずよ。つづけるなら覚悟を決めておきなさい、って。そんなふうに拘束されちゃったら、直子さんはもう、どんなことだって、わたしたちの言うことを聞くしかないの!」
 シーナさまが最後は少し怒ったみたいに、決めつけるようにお言葉を投げつけてきました。

「ふふん。直子さんが今、わたしに逆らったから、また面白いこと思いついちゃったじゃない。本当にちょっと外の空気を吸いたかっただけだったのに」
 悪い笑顔になったシーナさま。
 私のオモチャ箱をガサゴソし始めました。
 探し物はすぐにみつかったようで、私に近づいてきます。

「ほら。これしゃぶって」
 唇に押し付けられたのは、薄紫色卵形のリモコンローターの本体のほうでした。
「うぐっ!」
 口の中に押し込まれたローターをジュルジュル啜りました。
「自分の唾液でよーく消毒しなさい」
 すぐにローターのアンテナ部分の紐を引っ張られ、口から取り出されます。
「あぁんっ!」
 間髪を入れず、上の口に負けず劣らずヨダレを垂らして開いている私のアソコ奥へと、ヌプッと埋め込まれました。

「これだけ大股開きの上に潤滑油もたっぷりだから、難なくツルって入っちゃったわね」
 シーナさまが指に付いたのであろう私のおツユをペロッと舐めました。
 もちろん、もう片方の手にはローターのリモコンが握られています。

「いい?憶えておいてね、直子さん。わたしは今からそこの窓を開けるけれど、女性のヨガリ声って、意外と通るものなのよ」
「以前、真夜中に少し古めの4階建てくらいの団地の前を通ったとき、どこからともなく、なんとも艶かしい声が聞こえてきたことがあったわ」
「あたりがシンとしている中で、かなりハッキリ聞こえたの。荒い息遣いが。団地の窓灯りはほとんど消えていて、窓もみんなしっかり閉じていたのにね」
「まあ、ここは防音がしっかりしているほうだけれど、窓を開けちゃったら、話は別よね?」
「何が言いたいかわかる?聡明な直子さんならわかるわよね?」

 同時にローターが動き始めました。
「んふーっ!」
 これはたぶん、まだ弱。

「今の、んふーっ!っていうの、ずいぶん色っぽかったわね。もしも窓が開いていて、外に耳聡くてスケベなオトコがちょうど歩いていたら、気づかれちゃったかもよ?」
 ローターが止まりました。
「ご近所にヘンなウワサを立てたくないなら、それ相応の努力はしなくちゃダメよ?今日は猿轡も無しだから。わかった?それじゃ開けるからね」
 ガラガラガラー。

 私の目の前の大きな鏡が左のほうへとスライドし、眼前が闇の空間に変わりました。
 室内よりも少し冷たい空気がいっせいに流れ込んできて、私の剥き出しのからだを撫ぜ始めます。
 真夜中過ぎなので、お外はしんと静まりかえり、確かにちょっとした声でもよく通りそう。
「あら、思っていたよりは寒くないのね。気持ちいい。もう春だものね」
 シーナさまののんきなご感想。
 私は、いつローターのスイッチが入るかと、ビクビクしています。

「ねえ?バルコニーに出て、外から直子さんを眺めてみない?」
 幾分ヒソヒソ気味になったお声で、お姉さまにご提案されるシーナさま。
「えっ?でもあたしたちだって、この格好ですよ?」
 おふたりは今、黒のツヤツヤしたビスチェとTバックというボンデージファッションのお姿でした。
「だいじょぶだいじょぶ。真夜中だし、ここのバルコニー、目隠しの壁も高めで近くに高い建物も無いから」
 背を向けた、と思ったら身軽に身を躍らせ、ささっと私の眼前の闇に紛れたシーナさま。

 お姉さまは、少し躊躇っているご様子でした。
「あ、でも、ここに着いた早々、直子も真っ裸で、平気な感じでベランダに出ていたっけ」
 そんな独り言ぽいつぶやきと共に、手招きするシーナさまに引き寄せられるように、結局バルコニーの掃き出しを越えられました。

 灯りが煌々と照るお仕置き部屋の窓際で、恥辱の大開脚まんぐり返し拘束姿にされ、性器と肛門と顔を外に向けている私。
 目の前には真夜中の闇と外気。
 お部屋の光が漏れ出した薄闇の中で、愉しげに寄り添うふたりの女王様。
 おふたりとも黒いボンデージ衣装は闇に紛れ、お顔の輪郭とスラッとした腕と脚だけが闇に白く浮かび上がっていました。
 なんだか幻想的で綺麗だな、と思った瞬間、アソコの中でローターが暴れだしました。

「んぐぅっ!」
 零れそうな声を必死で喉の奥に押し込めます。
 この振動は強!最強!
 目をギュッと瞑り、歯を食いしばり、快感に必死に抗います。
 眼前で二度三度、フラッシュが閃いたのが、瞑った目にもわかりました。
 こんな夜中にフラッシュなんか使ったら、私のお部屋が、このバルコニーが誰かに注目されちゃうかも。
 そんな不安を抱きながらも、振動の快感がどんどん高まってきて、もう、もう声をがまん出来ない・・・

 ガラガラーッバタンッ!
 不意に、全身をくすぐっていた外気の愛撫が止みました。
 目を開けると、窓がピッタリ閉じています。
「んんんんーーっ!」
 状況を理解すると同時に、喉の奥から淫靡な喘ぎが洩れ出していました。

「んふぅー、んぁふぅーんっぅぅぅ・・・」
 一度堰を切ると、もう喘ぎ声の洪水は止められません。
 止めなきゃ、いつまた窓が開くかわからないのだから、止めなくちゃ・・・
 頭ではわかっているのですが、喉が勝手に啼いてしまいます。

「んんっふぅぅぅ、はぁぁぁんっ」
 腰がフワフワ浮いて、どんどん気持ち良くなってきています。
 不自由なからだをよじりながら身悶えます。
 お外でまた、フラッシュが光ったみたい・・・
 ああんっ、もうだめぇぇぇ・・・

「んんっ、んんっんっ、んっ、んっ、んっ、ぅぅぅぅ・・・」
 もはや昂ぶりに身を任せ、高まりの頂点から身を投げる準備をし始めたとき、突然、再び窓がガラガラっと開きました。
「んんふぅぅーっ・・・」
 シーナさま、お姉さまと相次いでお部屋に入られたときも、私は普通に喘いでいました。
 すぐにバタンと窓が閉じられ、つづいてローターの振動がピタリと止まりました。

「知らないからね、直子さん?部屋に戻ろうと思って窓を開けた途端に、いやらしい喘ぎ声がわたしの横をすり抜けて、夜空を駆け抜けていったわよ?」
 シーナさまの愉快そうなお声。
「ほんの数秒だけだったけれど、わかる人にはわかるはずよ、何しているときの声なのか。誰の耳にも届いていなければいいけれどね」

 シーナさまのイジワル声も、今の私には馬耳東風。
 最後までイケなかったがっかり感だけが、全身に渦巻いていました。
「もっとも、さっきのは低めの唸り声ぽかったから、季節柄、どっかの野良猫のサカリ声と勘違いしてくれたかもしれないわね。そうだ!もう一度窓開けて、念のためにニャーッとか、叫んでおく?」
 イジワル顔で覗き込んでくるシーナさまのお顔を、私はなじるように睨みます。

「あらぁ?また拗ねちゃった。イケそうだったのね?それは残念でした」
「でもね、イカなくて正解よ。この後すぐに直子さんは、こんな電動オモチャより何百倍も気持ちのいい経験をするのだもの。快感を溜め込んでおいたほうが、いっそう気持ち良くなれるでしょう?」
 おっしゃりつつ、私に埋め込まれたローターをズボッと無造作に抜き、軽くピシャッとお尻をはたかれました。
「はうっ!」
 昂ぶりが名残惜しそうに減衰していく虚しさとクロスフェードして、シーナさまの今のお言葉への期待感が高まります。

「それにしても、バルコニーでマジックミラー越しに覗く直子さんの痴態は、本当にいやらしかったわよー。エロすぎ」
 シーナさまが、お姉さまに同意を求めるように何度も顎を上下させて、おっしゃいました。
「夜空の下で、ここの窓だけ闇の中に煌々と一際明るく、まるでライヴのステージみたいに浮かび上がっているの。それで、そのステージには、すっ裸でダルマのように拘束された女がひとり」
「そうそう。部屋の灯りがバルコニーに洩れて周辺が浮かび上がって、夜の野外劇場で何かのショーを観ているみたいだった」
 お姉さまも興奮気味に同意されています。

「直子が徐々に高揚していく様子が、ガラス越しにクッキリ浮かび上がって、映画を観ているみたいな感覚にもなったわ」
「えげつないくらい何もかも丸出しなのに、見せびらかすみたいにこっち向きで、どう見たってわたしたちに視てもらいたくてしている、っていう構図だったわよね」
「そうそう。していることはヘンタイそのものなのに絵柄的には幻想的で、直子の顔が切なげに歪むたびに、ゾクゾク感じちゃった。音が聞こえない分、些細なことでエロティックさって増すのね。ある意味、芸術的でさえあったわ」

「そうなのよ。わたしもそう思って、芸術っぽく撮れるかもって、窓越しにカメラ構えたのよ」
 シーナさまが、なぜだか自嘲的なお顔になってつづけました。
「だけどフラッシュ点けたら、こちら側のほうが明るくなるから鏡になっちゃうのね。カメラ構えた自分がハレーションぽく撮れてた。わたしって、ほんとバカ」
「仕方ないから絞り調節して、フラッシュ無しで撮ってみたのがこれ、どう?」
 
 デジタルカメラのモニター部分をシーナさまに突きつけられて、覗いてみました。
 暗がりの中に、今、鏡に映っているのと同じ、浅ましい姿の私が悩ましい顔をして、ソフトフォーカス気味に映っていました。
 確かにパッと見た感じ幻想的で、古いヨーロッパ映画の一場面にありそう、という意味で芸術的とも言えそうですが、私にとってはただの恥ずかし過ぎるえっち写真でした。

「あたし、決めました。夏になったら、夜そこにテーブル出して、冷えたワインでも飲みながら直子にオナニーショーをやらせてゆっくり見物しようと思います。そのときはシーナさんも必ずお呼びしますからね」
「いいわね。呼んで呼んで。知り合いたくさん呼んで、お金取っちゃおうか?」
「それに今度、うちのオフィスからここを望遠鏡で狙ってみて、覗けるようだったら、直子にベランダでオナニーさせる、っていう計画もあるんです」
「それも面白いわね。そのときもぜひ呼んでね」
「もちろん!」
 おふたりともひどくはしゃいで、しばらくおふたりで盛り上がっていました。

「さてと、そろそろ直子さんに、天国へ行ってもらいましょうか?」
 おしゃべりがひと段落した後、シーナさまがグラスのワインを飲み干し、舌なめずりみたいに舌を覗かせました。
「さっきイケなかったぶんまで、思いっきり乱れまくるといいわ。わたしの見たところ、直子さんには充分そっちの素質もありそうだし」

 鏡を遮るように、シーナさまが私の前にしゃがみ込みました。
 その目前には、さらけ出された私のふたつの穴。
「エミリーも新しい手袋を着けたほうがいいわ。それと、あのガーネットビーズを持ってきてくれる?そう、二本とも」
 ご自身も新しい極薄ゴム手袋を装着しながら、お医者さまみたく熱心に、私の穴ふたつを交互に覗き込んでいます。
 そんなにまじまじと視られると、今更ながらでも、やっぱりすっごく恥ずかしい。

「相変わらずグシュグシュなのね、直子さんのオマンコ。ローション要らずで助かるわ、って言いたいところだけれど、次のプレイは長くなりそうだし、痔とか、やっぱりなりたくないでしょ?」
 おっしゃりながら、傍らに置いていた何かを手に取りました。
「これ。アナル専用のローション。デリケートなここ専用に作られたものなの。気持ちいいのよ、このローション」
「滑りが良くて乾きにくいやつ。もちろんからだに無害な成分しか使ってないから安心して」
 なんとなくえっちな形のボトルを見せてくれて、愉しそうに笑うシーナさま。

「あ、エミリー、ありがと。手袋着けた?なら右手出して。ローション垂らしてあげる。あなたのドレイだもの、実技はあなたに任せるわ」
「エミリーがドクター、わたしはナース、クランケ直ちゃんのアナル開発ぅー」
 歌うようにおっしゃりながら、シーナさまの横にしゃがまれたお姉さまの右手のひらに、トロッとした透明のローションがたっぷり垂らされました。
「直子さんは、これをしゃぶって消毒してて。はい、口開けて」
「んぐぅっ」
 恐々開いた口の中に、珠が徐々に大きくなるように連らなったほうのガーネットビーズが押し込まれました。


就職祝いは柘榴石 14

2014年12月21日

就職祝いは柘榴石 12

 気がついてから数秒間、自分がどこにいるのかわかりませんでした。
 開いた目にぼんやり映るものをよーく見ると、見慣れた我が家のリビングの天井ぽい。
 ということは、たぶんここはリビングのソファーの上。
 仰向けに寝かされ、からだにはバスタオルが掛けられていました。
 上半身を起こして辺りを見回すと、脇のソファーに、黒ビスチェボンデージ姿のお姉さまとシーナさまが並んで腰掛けていました。

「あ、おはよう。って言ってもまだ真夜中だけれど」
 お姉さまがクスクス笑いながら、たおやかな笑顔を向けてくださいます。
「すごいイキっぷりだったわね。潮まで吹いちゃって」
 シーナさまは呆れたような薄笑い。
「あ、あの、私・・・」
「気絶しちゃったのよ。あうあう喘いで潮吹いて、急にぐったりして動かなくなっちゃった」
 シーナさまが白ワインらしき飲み物をご自分の唇に運びつつ、教えてくれました。

「でも意外と早く復活したわね。10分ちょっとくらいよ、気絶していたのは」
 シーナさまのお言葉に耳を傾けつつバスタオルをはずし、ソファーに腰掛ける体勢になりました。
 
 首輪と手枷足枷はそのまま、棒枷とリードの鎖は、外されていました。
 からだも軽く洗われたみたいで、ベタベタが消えて、しっとり。
 濡れてしまった髪は、どなたかがタオルで束ねてくれたみたいです。
 縄の痕はまだバストにクッキリ残っているけれど、乳首もアソコも今はひっそり。
 お姉さまが冷えたスポーツドリンクのグラスを渡してくださり、私はそれを一気にゴクゴク飲み干しました。

「このまましばらく起きなかったら、今夜はとりあえず解散かな、ってエミリーと話していたのよ」
「どうする?今は日付が変わった夜中の12時過ぎ。わたしもエミリーも当面の予定は無いから、一晩中つきあうことも出来るけれど、直子さんの体力次第よね」
「一度解散して、明日の昼前くらいから再開っていう手もあるわ。夕方からわたしは出かけなければならないから、若干あわただしいけれど」
「直子さんに任せるわ。どうする?まだまだイキ足りない?もっと恥ずかしいことされたい?みじめな気持ちを味わいたい?徹底的に辱められたい?」

 シーナさまのお言葉責めに、しばしボーっとしていた私のムラムラが性懲りも無く息を吹き返し、ゾワゾワっと全身に広がり始めました。
 からだがムズムズするのは、被虐の血がさざめき始めたからでしょう。
「ほらエミリー、見てよ。わたしがちょっとイジワル言っただけで直子さん、肌が火照ってきて、みるみる乳首が尖っていくわよ?ホントに、どうしようもなくスケベな淫乱ドマゾなのよね、直子さんて」
 シーナさまに指をさされ、私も自分の乳首がゆっくり勃ち上がっていくさまを、じっと見つめてしまいました。

「・・・ぁ、はい。あの、私、まだ大丈夫です・・・お願いします」
 シーナさまが投げつけてくる嘲りのお言葉に、自分のヘンタイ性癖と貪欲なからだが、はしたなくて恥ずかしくてたまらないのですが、それ以上にアソコの奥から湧き出てくる欲望には抗えず、恥じ入りながら小さな声でお答えしました。

「それはつまり、もっとわたしたちに虐めて欲しいっていうこと?」
「はい・・・」
「さっきわたしたちの前であんなにあられもなく何回もイキまくったのに?」
「・・・はい・・・ごめんなさい・・・」
「どうして直子さんは、そんなにスキモノなのかしら?」
「・・・そ、それは、えっと・・・」
「その尖った乳首を見れば、直子さんの意思に反してからだが先に発情しちゃっていることは、わかるけれどね。どうせオマンコもまた、濡らしているんでしょう?」
「・・・は、はい・・・」
 さわらなくても、奥がキュンキュン疼いているので、濡れてきているのは明白でした。

「マゾだものね?正真正銘のド淫乱マゾだものね?いいわ。つきあってあげる。その代わり、絶対服従の覚悟は決めておきなさい」
「・・・はい」
 シーナさまの冷たいお声に、被虐メーターがビンビン反応しています。

「さっきの浣腸でお尻の穴もいい具合にほぐれているでしょうけれど、今度の責めはちょっとキツイかもね。きっと直子さんが初めて経験する快楽なはずだから」
 冷たい瞳なのに、心底愉快そうなシーナさま。
「それじゃあ、お仕置き部屋に移動しましょう。直子さんは、自分で棒枷とリードを取り付けて、あなたのミストレスに連れてきてもらいなさい。わたしは先に行っていろいろ準備しておくわ」
 シーナさまはそう言い残し、テーブルの上のワイングラスにもう一度ワインをなみなみと注いでから片手に持ち、それだけ持ってサンルームへと消えていきました。

「シーナさんて、本当に直子のこと気に入っているのね」
 サンルームへのドアが閉ざされた後、お姉さまがヒソヒソ声で耳打ちしてきました。
「直子が気絶していたとき、このまま終わっちゃうのがすごく名残惜しそうだったもの」
「そうだったのですか?」
「うん。明日の夕方からの予定、キャンセルしちゃおうか、とまで言っていたわよ」
 私の反応を探るみたいな、お姉さまの瞳。
 
 お姉さまの右手が私の頭に伸び、髪をまとめていたタオルを解いてくださいました。
 やさしくブラッシングしてくださるお姉さま。
 ああん、シアワセ・・・

「良い人に出会えて良かったわね、直子。そのおかげであたしも、普通では出来ないような体験させてもらっているし」
「これからでも、たまには直子のこと、貸してあげてもいい、くらいの気持ちにもなってきちゃったわ。でもたぶん、そういうのはシーナさん、断わるだろうとも思うけれど」
「お姉さま?」
 そのお言葉に、ちょっぴり不安になる私。

「そのくらい彼女が魅力的な人だな、って思ったっていうことよ。もちろんあたしだって、直子を手放す気はまったくないわよ?一緒にいてこんなに面白いヘンタイっ子なんて、そうざらにはいないもの」
 イタズラっぽく笑うお姉さまに、私も安堵のホッ。
「さあ、行くわよ直子。四つん這いになりなさい」
「はいっ、お姉さま」
 お姉さまに促され、棒枷を取り付けるために身を屈めました。

 棒枷は明らかに、さっきより長くなっていました。
 お浣腸のときまでは、左右の足のあいだの幅が70センチくらいだったのに、今は少なくとも、もう20センチ以上は広げられています。
「さっきシーナさんが、バーの伸縮ねじを弄っていたわね」
 お姉さまも気づかれたようで、バーに視線を落とされながら、そう教えてくださいました。

 これだけ両足を広げられたまま四つん這いになったら、お尻の割れスジも、もちろんアソコもさっき以上に全開となっちゃうことでしょう。
 その姿になった自分を想像して羞恥にわななきつつ、首輪にリードの留め金を嵌め、持ち手をお姉さまに手渡しました。
 そして、自らゆっくり、床に這いつくばりました。

 両足の泣き別れプラス20センチの威力は、思った以上に凄く、両膝もより開いているので、交互に膝を浮かせて進むという形になりません。
 腰のほうが沈んでしまうので、両腕の力だけで前進して、両膝はずっと床を擦る感じで移動することになりました。
 アソコもお尻もさっき以上に割れていて、粘膜が空気に容赦なく晒されているのがはっきりわかります。

「んふんんぅーんっ」
 あまりの自分の無様さに、いたたまれない羞恥の喘ぎが堪えきれずに洩れてしまいます。
 お姉さまにリードを引かれ、尖った乳首をユラユラさせて這うように従う自分の姿がガラスや鏡に映るのを見て、全身の細胞のひとつひとつまでがマゾ色に染まり、自分の意志とは反して盛大に悦んでいるのが、自分でわかりました。

「おっけー。直子さんはそこに、足の裏を鏡に向けて仰向けに寝てちょうだい」
 お仕置き部屋、ベランダに向いたマジックミラー側が一面鏡と化しているサンルーム、に入るとすぐに、シーナさまのご指示がありました。
 お浣腸の前、お姉さまとふたりで私のオモチャ箱の自虐お道具をひとつひとつ試していたときの私の定位置あたりがざっと片付けられ、大きなバスタオルが一枚敷かれています。
 つまり、その上に横になれということなのでしょう。
 四つん這いのままその場所まで近づきました。

「今回は、直子さんにも自分の目で、何をされているのか全部目撃してもらおうと思っているのね。なんてったって今夜のメインイベントなのだから」
「もちろん録画もするしモニターにも映すけれど、自分で肉眼で観察したほうが絶対、何十倍も恥ずかしさが増すと思うから」
 お言いつけ通り、鏡に両足の裏を向けて仰向け大の字に寝そべった私を見下ろして、シーナさまが冷たそうな笑みを浮かべました。
 そのお顔がどんどん近づいてきて、私の傍らにしゃがみ込みます。

「だから、ちょっと窮屈かもしれないけれど、屈辱的な体位になってもらうわよ。まず上半身を起こしてくれる?」
「は、はい・・・」
 お腹に力を入れて、腹筋の要領で上半身を起こしました。
 真正面の鏡の一番下に、私の大きく開いた両腿のあいだがぼんやりと映っています。

「そのままからだの力を抜いていてね」
 おっしゃりながらシーナさまは私の足のほうへ行き、足枷に繋がれている棒枷のバーが踵側にあったのを左右とも、足の甲側に移動させました。
 それから私の左腕を取りました。

「両膝を立ててくれると、やりやすいのだけれど」
「あ、はい」
 深く考えずご命令通りに、と膝を折り始めると、すぐに気づきました。
 こんな大開脚で両膝を立てたら、それはすなわち大開脚M字ポーズ。
 正面の鏡に、今度はクッキリと、私の恥ずかしい部位があからさまに映し出されました。
「あ、いやんっ」
 目を反らしても、濡れそぼったソコが室内灯にキラキラ反射していた画像が脳裏から離れません。

 そんな私におかまいなく、シーナさまは私の左腕を引っ張り、左手首の革手枷のナスカンを棒枷左端のリングに繋いでしまいました。
「あっ」
 同じように右手首は棒枷右端へ。

 左右の手足首をそれぞれひとつに括られたのと同じ状態となった今の私は、棒枷で強制的に開かれているその間隔のお下品さとも相俟って、さしずめ、世界一だらしない体育座り、みたいな格好になっていました。

「あら直子さん、両膝に力入れて内股にしちゃって、オマンコ全開を阻止しようなんて、らしくないわね?力抜いたほうがラクよ?」
 シーナさまのからかうお声が降ってきますが、やっぱり内股はやめられません。
 だって、鏡に映る自分の姿が、あまりに破廉恥過ぎるのですもの。

「でもね、直子さんの努力は無駄なの。あともうひと行程加えたら、直子さんはただのお肉の塊になっちゃうの。流行の言葉で言えば、そうね、ニクベンキっていうやつ?あ、でも直子さんは男性用ではないから、女性限定ニクガングかな」
 愉快そうなシーナさまに私はドキドキの頂点。
「このリード、外させてもらうわね?」
 お姉さまに向けたシーナさまのお声。
 私の首輪から鎖が外れました。

 外されたリードの代わりに、もっと極端に短い、たぶん20センチ、いえ15センチにも満たない鎖が、赤い首輪の正面にぶら下げられました。
「ちょっと失礼」
 両手足首泣き別れで括られた棒枷のバーが、私の顔のほうに引っ張られました。
 両足が宙に浮き、起こしていた上半身が倒れ、背中がバスタオルに着きました。
 大開脚のお尻が突き出すように浮き上がり、鏡の高い位置に私の秘部が映っています。
 同時に、今度は肩寄りの背中が押されて浮き上がり、首輪の鎖を引っ張られて顔が棒枷のほうへ近づきました。
 えっ!?何?何?
 気がつくと、首輪からの短い鎖が棒枷中央にあるリングにカチンと繋がれていました。

 えーーーっ!?
 何この格好!
「直子さんてからだ柔らかいから、本当ラクね。どんな格好にもさせられる」
 シーナさまののんきそうなお声が聞こえてきますが、私は、それどころではありません。

 私の今の格好は、開脚前転の回転途中で固まった感じ。
 棒枷と首輪が10数センチくらいで繋がっているので、からだ全体を丸めたまま、お尻を高く突き上げている姿勢です。
 確かにこの格好だと、両膝に力を込めたところで大きく開いた両腿の付け根には何の影響も無く、ほぼ全開のままとなってしまいます。
 
 すぐ目の前に自分の下腹部があります。
 自分のアソコが至近距離の視界内で、パックリ大きくお口を空けています。
 もう少しでお尻の穴まで見えそう。
 視線を少し上に上げれば、大きく開いた両脚のあいだから覗く自分の情けない顔が、鏡に映っているのが見えます。
 お下品なのを承知でわかりやすく言うなら、大開脚まんぐり返し、の状態で拘束されてしまったのです。

「すっごく直子さんらしい格好になったわ。ヘンタイ見せたがりマゾそのもの、って感じ。まさに、お似合い、って言葉がピッタリ」
「どう?これなら自分でお尻にどんなイタズラをされているか、鏡見ないでもわかるでしょう?」
「あぁうぅぅ」
 シーナさまの得意そうなお声をニクタラシクも思えないほど、私はショックにうちひしがれていました。
 鏡に映った自分の姿が、あまりにもみじめで卑猥過ぎるのです。

 普通の女性なら、視られたら一番か二番めに恥ずかしいと思うであろう箇所を両方とも開けっぴろげにして、転がされている肉の塊。
 その格好で放置されているだけでも、全身が羞恥で染まってしまいそうな、女性、いえ人間以前の妙にいやらしい物体。
 そして、恥ずかし過ぎるその部分にどんなイタズラをされても、まったく抵抗出来ない無力感。
 おまけに、そのイタズラをすべて自分の肉眼で、目撃だけは出来ると言う屈辱感。
 この姿は、確かにシーナさまのおっしゃるとおり、肉のオモチャ、つまりニクガングそのものだと思い知りました。

 ただ、一方では、まったく別なことも考えていました。
 それは、こんなに完全に恥辱的かつ絶望的な拘束姿には、独り遊びでは絶対になれないな、ということ。
 独り遊びでも、なるだけならなれるかもしれませんが、拘束を外すことはひとりでは絶対に出来ないでしょう。
 シーナさまがいて、お姉さまがいらっしゃるからこそ、安心してこんな格好になれるんだ、って気づいたのです。
 その意味であらためて、お姉さまとスールになれて、おつきあいが始まって本当に良かったな、と考えていたことは、事実でした。
 
 不自由な視界にお姉さまの姿を探しました。
 お姉さまは私の右脇で、私のまんぐり拘束姿をまじまじと見下ろしていらっしゃいました。
 視線が私のお尻から顔へと何度も往復していました。
 その瞳は好奇心で爛々と輝き、お顔は興奮で紅潮され、さらに艶っぽさを増してすっごくお綺麗でした。

 互いの視線が重なったとき、お姉さまがニッと微笑み、視ているこっちが恥ずかしくなるほどいやらしいけれど、でもカワイイわよ、って小声でささやくように、おっしゃってくださいました。
 それを聞いた私は、一生この姿でもいい、って思うほど、嬉しさと恥ずかしさでキュンキュン高まっていきました。


就職祝いは柘榴石 13