踊り始めたら、夢中でした。
旋律に合わせてからだが勝手に動き始めていました。
このヴァリエーションをレッスンしていた頃、いつもやよい先生からいただいていた注意点をご指摘されるお声が、頭の中で鮮やかに再生されていました。
「ピルエット・アン・ドゥ・オール、ペアテ、音にちゃんと乗って、膝伸ばして・・・」
「指先と爪先まで気を遣ってデベロッペ、上へ上へ伸ばしてー。脚もっと高くキープ・・・」
「ピケ・ターンでマネージュ。アラベスクはちゃんと一瞬止まって、ジュネは思い切りよく・・・」
パチパチパチ・・・
気がついたら踊り終えていました。
レヴェランス、お辞儀したまま上目使いで窺がうと、早乙女部長さまたちが盛んに拍手をしてくださっています。
そのまま、自分の胸元に視線を移すと、汗でインナーが肌に貼りつき、乳首の形が露骨過ぎるほどクッキリ浮き出ていました。
スペースがあまり広くないので全体に動きがチマチマとしてしまったし、裸足なので爪先立ち、ポワントすべき箇所もドゥミ・ポワントまでにしか出来なかったのですが、久しぶりにしては自分でも、うまく踊れたほうだと思いました。
そして、こんな裸に近い姿でのダンスをじーっと注目されていた状況に、マゾのほうの私もゾクゾク悦んでいました。
「すごいわ。よくあれだけクルクル廻れるものねー。しなやかで、とても美しかったわ」
「表情もとても良かった。誘惑の踊りって言うだけあって、艶やかで、いつもの直子さんとは別人みたいだった」
「そうそう。セクシー過ぎてアタシ、ヘンにドキドキしちゃったもの」
みなさま、私の全身を遠慮無く眺めつつ、口々に褒めてくださいました。
右の肩紐が落ちて乳首ギリギリで止まっていた胸元の布をさりげなく直し、もう一度ペコリとお辞儀をしました。
予想通り、ショーツの布がお尻に食い込んで尻たぶほとんど露出の超ハイレグ状態でしたが、みなさま私から視線を逸らさないので、こっそり直すわけにもいきません。
踊っている最中に、何度か乳首が風を切る感触がしていました。
激しい動きで、胸ぐりや腋からときどき露になってしまっていたのは間違いありません。
「それだけ踊れれば、気持ちいいでしょうね。やっぱり森下さんは思った通り、フィッティングモデルに最適だわ」
部長さまが目を細めて、私の全身をあらためて見返しながらおっしゃいました。
「おかげで、いろいろアイデアも浮かんだし、この衣装が完成したら、もう一度踊ってもらいたいわ。それまでにわたくしも、有名なバレエ音楽を調べて、ライブラリーに揃えておくから」
嬉しそうに微笑んでから、みなさまを見渡す部長さま。
「ま、今日はこんなところでしょう。たまほのも森下さんも、ご協力、どうもありがとう」
「今日出た問題点を加味した上で、煮詰めていきましょう」
リンコさまもノートをパタンと閉じ、突然のアイドル衣装開発会議はどうやら終了のようでした。
私もホッと一息。
「わたくしはこの後、恵比寿寄ってからアトリエに戻るから、リンコは5時過ぎに合流してちょうだい。ミサは、早速Bタイプのインナーのパターンを修正してアトリエにメールで送ってください」
「わかりました」
リンコさまとミサさまのユニゾンなお答え。
部長さまはご自分の上着とバッグを掴み、早々とお出かけの態勢です。
ドアに向かいかけた部長さまが足を止め、私に振り向きました。
「そうそう、森下さん?」
「あ、はい」
「これから着替えるのでしょうけれど、そのチョーカーは外さなくていいわよ」
「はい?」
「それ、とても似合っているから、プレゼントするわ。今日のお礼の意味も込めて」
「えっと・・・」
「モノはいいわよ。レザーもチェーンもジュエリーも。職人さんの手造り。今日頑張ってくれた、お礼」
「あ、はい・・・あ、ありがとうございます」
部長さまは、ニコッっと笑みをひとつくださり、スタスタとドアの向こうへ消えました。
「よかったじゃん、ナオっち。確かにそれはいいモノだよ」
部長さまのお姿が見えなくなったらすぐに、リンコさまが寄ってきて私の首のチョーカーを指さしながらおっしゃいました。
「それに確かに、ナオっちに超似合ってる」
リンコさまの横でコクコクうなずくミサさまとほのかさま。
「そ、そうでしょうか?」
ドキドキしつつ、首のチョーカーをそっと指で撫ぜる私。
全身にビビビッと、マゾの電流が走ります。
「うん。さっき、それ着けて飛んだり跳ねたりしているのを見ていたら、フェアリー系?妖精っぽいて言うのかな?とにかくすっごく可憐だった」
そういう捉え方もあるのか・・・
私は、首輪、これはチョーカーですけれども、そういった首輪っぽいもの、と言えば、マゾとかドレイとかSM的なイメージしか浮かばないのだけれど、ちゃんとファッション的に捉えて似合っていると言われたことを、嬉しく感じました。
それなら普段着けていても大丈夫かも、とも。
「首にアクセントがあると全体が引き締まるのよね。ナオっち首細いし。それにやっぱり、そこはかとないエロさも加わる」
リンコさまが私の胸元をチラ見しつつ、イタズラっぽくおっしゃいました。
「それは今の服装のせいもある」
ポツンとつぶやくミサさま。
そんなおしゃべりをしながらゾロゾロと、着替えるために応接ルームへと移動しました。
テキパキと衣装を脱いで下着姿になってから、スルスルっとワンピースをかぶるほのかさま。
「ふー、やっと落ち着いた。ああ、恥ずかしかったー」
カワユクおっしゃるほのかさまは、膝下まで届く裾にご満悦。
「あ、ファスナー上げてあげて」
リンコさまがすかさずミサさまをつつき、ほのかさまの背中を指さしました。
照れたようにお顔を火照らせて、おずおずとほのかさまに近づくミサさまもカワユイ。
この隙に私もさっさと、と、みなさまに背中を向け、ほとんど役に立たなかったスカートをストンと足元に落とし、大急ぎでジーンズに両脚を突っ込んでずり上げました。
ショーツのお尻はハイレグ状態のままでしたが、一刻も早くジーンズで覆いたかったので仕方ありません。
後でおトイレにでも行って直さなくちゃ。
脱いだ衣装はリンコさまが回収され、丁寧にたたまれました。
次に上、と思ってテーブルを見ると、白いフリルブラウスはあったのですが、ブラジャーが見当たりません。
「あれ?」
ブラウスの下にも、ひょっとしてと思いテーブルの下も見てみましたが、どこにもありません。
「直子さん、どうかした?」
キョロキョロしている私を不思議そうに見ているほのかさま。
「あの、私のブラジャー、知りませんか?」
「あっ!」
私の質問に、ほのかさまの横にいたリンコさまが大きなお声をあげました。
「さっきあっちでナオっちがブラ外したとき、アタシが受け取ったでしょ?それで部長の傍に戻ったら、部長が手を差し出してきたの、渡しなさい、っていう感じで」
「それで渡したら、部長は丁寧に折りたたんで、当然のことみたいに自分のバッグにしまっちゃったのよね」
「えーっ?本当ですか?」
「アタシも一瞬あれっ?って思ったのだけれど、そう言えば、このブラはサイズが合わないから取り替えてあげます、みたいなことをナオっちに言っていたなーって思い出して」
「それから今まで、ぜんぜん疑問に思わなかった。考えてみれば、今日取り替えるっていう話ではなかったんだよね。止めなきゃいけなかったんだ。アタシって、ほんとバカ」
リンコさまがすまなそうに、上目遣いで私を見ました。
「余ってるブラとかなかったっけ?サンプルで」
「直子に合いそうなサイズは、たぶんない」
リンコさまのご質問にミサさまが即答。
ひょっとして私、これから家に帰るまで、ブラウスにノーブラで過ごすことになるのかしら?
それはマゾ的には、なかなか蠱惑的なハプニングではありました。
でも、オフィスを出て家までの帰り道は、ひとりなのでちょっと怖いけれど。
「わたし、下のお店で買ってきてあげましょうか?」
ほのかさまがおやさしくおっしゃってくださいました。
「あ、いえ、そこまでしていただかなくても・・・」
私の心は、思いがけずに訪れた、強制ノーブラ勤務の自虐に傾き始めていました。
みなさまの視線が当然のように、薄いインナーの布を露骨に浮き上がらせている、私の胸元のふたつの突起に集中しているのを感じながら。
「そうだ。いいものがある。ちょっと待ってて」
いつものようにポツリとおっしゃったミサさまが、デザインルームのほうに駆け出されました。
すぐに戻ってこられたミサさまの手には、肌色の薄くて小さなゴムっぽい物体。
「ああ。ニップルパッドか」
リンコさまが少し拍子抜けされたようなお声でおっしゃいました。
「アタシは別に、乳首が浮こうが気にしないけどなー」
いつもノーブラなリンコさまが、私をからかうみたいにおっしゃいました。
「リンコはそうだろうけど、直子はたぶん気にする。恥ずかしがり屋だから」
ミサさまの助け舟。
「そうですね。同じノーブラでも、トップを気にしなくていいのは、気分的にずいぶん楽です」
ほのかさまも同調してくださいました。
「ふーん。そういうもんですかねー」
ちょっぴり拗ねたように、おふたりのバスト周辺に視線を走らせたリンコさま。
「使い方わかる?」
ミサさまが手渡しながら尋ねてきます。
「はい。貼る、のですよね?」
「うん。ぺったり」
手渡していただいたニップルパッドは、池袋でお姉さま、いえ、チーフと再会したとき、居酒屋さんで裸にされて貼られたものと同じ製品でした。
再びみなさまに背を向けて、インナーのジッパーを下ろしました。
インナーを脱ぎ去ると、ミサさまが回収してくださいました。
上半身裸になって、バストトップにニップルパッドを貼り付けます。
ヘンにコソコソせず、出来るだけ自然な感じで。
貼り付け終えても、どなたも私にブラウスを手渡してくださいませんでした。
自分で振り向いて、テーブルの上のブラウスを取り、みなさまの前で袖に腕を通すしかないようです。
トップは隠れているとはいえ、ついにみなさまに、私の生おっぱい全体をご披露することになりました。
極力平静を装いながら、内心マゾマンコをキュンキュンさせつつ、ゆっくりとみなさまと向き合いました。
6つの瞳から放たれた視線が値踏みでもするように、一斉に私ののっぺらおっぱいに群がるのがわかりました。
私がブラウスを着るあいだ中、どなたも何もおっしゃいませんでした。
ただただ視線たちが名残惜しそうに、私の全身を縦横無尽に這い回るのだけを感じていました。
ボタンを留め終えると、肩の荷を降ろしたような、ホッと一息ついた雰囲気が一同に広がりました。
「いけない。もうこんな時間になっちゃった。急いでアトリエ行かなきゃ」
リンコさまがあわててオフィスを飛び出して行きました。
「直子は、やっぱり総受けだね」
ミサさまは、謎の科白を残してデザインルームへ。
ほのかさまとは、しばらくふたりでバレエのお話をしました。
ほのかさま、ずいぶんご興味をお持ちになったみたい。
「直子さん、さっきヴァリエーションっておっしゃっていたけれど、あれは、ひとつの曲でいろいろ踊り方がある、っていう意味?」
「いえ。ヴァリエーションていうのは、バレエ用語で、ソロの踊りっていう意味で・・・」
これから少しづつ、初歩的なステップから、ほのかさまにお教えすることになりました。
結局、最後までどなたも、私の尖った乳首やショーツの濡れジミを話題にしたり、からかわれるかたはいませんでした。
否が応にも目についたはずの、恥ずかし過ぎる性的反応。
私のマゾ性が丸わかりだったはずなのに。
みなさま大人なんだなー。
安堵した反面、残念に思う気持ちも少なからずありました。
社長室にひとり戻り、暗くなったガラス窓に自分の姿を映してみました。
首に赤いチョーカー、ブラウスの下は乳首こそ隠しているもののノーブラ。
ジーンズの下のショーツは、ヌルヌルに濡れそぼっているはず。
朝オフィスに来たときには、予想だにしなかった私らしい姿に変わり果てていました。
こんな姿で、オフィスにいることが不思議でした。
つい数時間前からさっきまで、みなさまの前でご披露した恥辱的行為と、それをすることで味わった自分の昂ぶりを反芻すると、もういてもたってもいられなくなってきました。
今日は早めに帰らせてもらおう。
一刻も早くお家に帰って、思い切りオナニーしたくて仕方ありませんでした。
その日の夜、ひとしきり自分を慰めた後、どうしても我慢出来ずにチーフ、いえ、お姉さまにお電話をして、出来事をすべて包み隠さずご報告しました。
不意の男性お客さま襲来から、突然のフィッティングモデル抜擢、羞恥のノーブラバレエご披露まで。
もちろんクチュクチュクチュクチュ、マゾマンコをまだ弄りながら。
お姉さまは神戸のホテルでリラックスされていたようで、興味津々なご様子で一部始終を聞いてくださいました。
「へー。そんなことがあったんだ。あたしもその場にいたかったなー」
「スタンディングキャットの彼らは、ユニークな連中よ。何も怖がる必要はないわ」
「そう言えば、あたしの前でちゃんと直子がバレエを踊ったことって、なかったわよね?今度見せてもらおうっと。うんと恥ずかしい衣装みつけなくちゃ」
「アヤたちは絶対、直子がサカっているの、気がついていたはず。でも気づかないフリをしたの。オトナの嗜みとしての、見なかったフリね」
神聖なオフィスでそんなにいやらしく発情して、って叱られるかも、とも思っていたのですが、お姉さまは愉快そうにクスクス笑いながら会話してくださいました。
中でも一番ウケたのは、部長さまがチョーカーをくださったことと、私のブラジャーを持って帰ってしまったことでした。
「つまり直子は、ノーブラにニプレスで、首輪着けたまま池袋の夜道をひとりで歩いて帰ったのね?濡れすぎちゃって困ったんじゃない?」
からかうようにおっしゃって、お電話の向こうで愉しげに笑っています。
「そろそろうちのスタッフにも、直子のドマゾバレが時間の問題みたいね。それから直子とみんなの関係がどうなっちゃうのか、とても愉しみだわ」
そこで少し沈黙があってから、そうだ!というお姉さまの弾んだお声が聞こえてきました。
「アヤがチョーカー似合うって言ったのなら、直子がオフィスに着けて来るのも問題無いのよね?」
「そうだと思います」
「この前、直子、出来ることならずっと首輪を着けて過ごしたい、って言っていたじゃない?それが叶うわけよね?」
「えっと、そう・・・ですか?」
「さすがに犬の首輪という訳にはいかないから、あたしが、直子にピッタリなアクセっぽいチョーカーを探してプレゼントしてあげる。つまりそれが、直子からあたしへの、マゾドレイ服従の証としての首輪となるの」
「直子がそれを着けていたら、私はムラムラ期です、発情しています。っていうサインなワケ。あたしも、虐めて欲しいんだな、ってすぐわかるし。いいアイデアだと思わない?ふたりだけの秘密のサイン」
「えっと・・・」
「決まりね。このへんいい宝石商多いし、明日真剣に探してみるわ」
ノリノリなお姉さまがどんどん決めてしまいました。
「それまでは、そのアヤがくれたチョーカーをずっと着けていなさい。どうせあたしに会うまでムラムラは鎮まらないのでしょう?」
「はい・・・」
「あたしは明後日戻るから、それまでの辛抱よ。今週末は休めそうだから、たっぷり虐めてあげる」
お姉さまとの長電話が途切れても私の指は、執拗にマゾマンコを責め立てていました。
お姉さまと、ふたりだけの秘密のサイン。
その甘美な響きに、私のからだは何度も何度も、グングン高まっていきました。
頭の中では、そんな私の淫らではしたない姿を取り囲んで、早乙女部長さま、ほのかさま、リンコさま、ミサさまが、蔑むような冷やかなまなざしで、じっと私を見下していました。
*
*オートクチュールのはずなのに 33へ
*
直子のブログへお越しいただきまして、ありがとうございます。ここには、私が今までに体験してきた性的なあれこれを、私が私自身の思い出のために、つたない文章で書きとめておいたノートから載せていくつもりです。
2016年1月11日
2016年1月3日
オートクチュールのはずなのに 31
戸惑っている私を察してくださったのか、早乙女部長さまがフッと微笑み、表情を柔らげて説明してくださいました。
「森下さんはうちに来てまだ間もないから、恥ずかしがるのもわかるわ。突然、スタッフみんなの前でブラを取れと言われてもね」
「でも、これはわたくしたちの大切な仕事なの。クライアントに頼まれて、その要求がエロティックさの追求であれば、それに応えなければならないのよ。スタッフみんなで協力して、いろいろアイデア出し合って」
「今まで見てきたところでは、森下さんて、とても恥ずかしがり屋さんのようね?でも、自信持っていいのよ。あなたのからだは、とても奇麗だわ」
「バレエやっていただけあって、柔軟でリズム感もいい。わたくしの要求に応えられる素養がある。アパレル開発のフィッティングモデルにうってつけなの」
「だから、協力して、ね?」
私の目をじっと見つめながら、諭すように丁寧におっしゃってくださいました。
お役御免となって見物側にまわったほのかさまを含め、八つの瞳が私の顔をじっと見つめていました。
どなたのまなざしも真剣そのもので、お仕事に集中されているときにお見せになるお顔でした。
そうでした。
これは大事なお仕事なのです。
みなさま、より良いものを造ろうと知恵を出し合っている現場なのです。
それなのに私だけ、えっちな妄想ばかり先走ってしまって・・・
性的な意味のほうでは無く、自分を恥ずかしく思いました。
「わかりました。やります」
私もちゃんとお仕事に徹して、少しでもみなさまのお役に立たなければ。
そんな決意を込めてうなずき、あらためてインナーのジッパーに手をかけました。
「恥ずかしいのなら、わたくしたちに背中を向けて着替えていいわよ」
部長さまからのおやさしいお言葉。
「あ、はい」
お言葉に甘えてみなさまに背を向けると、目の前に広がる青い空。
そう、ここは窓際でした。
だけど、見えるのは空だけの超高層ビルの窓。
地上までだって二百メートルくらいあるのですから、覗かれる心配なんていりません。
思い切ってジッパーを一気に下ろし、インナーの前を開きました。
「ホック、外してあげる」
背中に回そうとした腕を遮るようにリンコさまが近づいてきて、コソッと外してくださいました。
「あ、ありがとうございます」
インナーを脱ぎ去り、ブラのストラップを肩から外します。
リンコさまが背後で待機してくださっているのがわかります。
ヘンにおっぱいを隠したりせず、出来るだけ自然に、堂々と。
上半身、裸になりました。
脱いだ衣服はリンコさまが受け取ってくださり、代わりに着替えるべきインナーを無言で手渡して、退かれました。
手渡されたインナーを広げながら、まっすぐ窓を向き、気持ちを落ち着かせるために深呼吸をひとつ。
さっきより陽が傾いて少しだけ翳り始めた青い空が、曇りひとつ無く磨かれた素通しガラスの向こうに広がっていました。
窓の外、辛うじて視界に入る低いところを、一羽のカラスさんがスーッと横切って行きました。
私、今、お外に向けておっぱいを丸出しにしているんだ・・・
ついさっきの、お仕事に徹する、という決意はどこへやら。
すぐにいやらしい妄想が頭をもたげてしまう、どうしようもない私。
それと同時に気づいてしまいました。
ピカピカのガラス窓に薄っすらですがハッキリと、私の姿が映りこんでいることを。
首には、マゾの首輪と見紛うような赤いチョーカー。
一糸纏わずさらけ出したおっぱいの先端はふたつとも、誰かに摘んで欲しくてたまらない、といった様子で尖りきっています。
おへそからなだらかに下降する下腹部を、申し訳程度に覆い隠す幅の狭いスカート。
その裾ギリギリにチラリと姿を見せている、黒い濡れジミの逆三角形。
なんてはしたない、恥ずかしい姿。
そして、私の後方1メートルくらいのところにズラリと並び、私をじーっと見つめているみなさまの目、目、目。
その視線は、私の背中を通り越してガラスに映った私のおっぱいに集中しているように感じました。
見られてる、視られちゃってる・・・
こんな恥ずかしい状況で、露骨に反応してしまっている私のふしだらな乳首。
ついにチーフ以外の会社のみなさまにも、私のいやらしい性癖をご披露してしまった・・・
ドキドキが高鳴り、全身がキュンキュンざわめき始めました。
ううん、いけない、いけない。
このままマゾの血が騒ぐに任せてえっちな妄想に囚われていたら、またみなさまにご迷惑をかけてしまう。
これはお仕事、これはお仕事なのだから・・・
自分にそう言い聞かせながら、急いで着替えのインナーに腕を通しました。
「着終えたようね。こっち向いて、またわたくしたちのリクエストに応えてちょうだい」
ジジーッというジッパーを上げ終わる音が合図だったようで、部長さまからお声がかかりました。
「はいっ」
これはお仕事、これはお仕事と、呪文のように頭の中でくりかえしつつ、みなさまの前に向き直りました、
「今度のは、あまりピチピチではないでしょう?」
「はい。ウエストにも余裕があって、これならせり上がることはないと思います」
そうお答えはしたものの、実際は問題大有りでした。
さっきまでのインナーよりルーズフィットになった分、胸元も腋も浮きやすくなってしまい、少し前屈みになると胸ぐりからバスト全体が覗けそうなほど。
たぶん腋からも。
バスト周りも数ミリの余裕があるので、ノーブラになった分動くたびに裏地に乳首の先が直に擦れて、ますます尖ってしまいそう。
薄い生地ですからもちろん、まっすぐ立っているだけでもバストトップの位置が丸わかりなくらいに布を浮かしていました。
これでさっきみたいに飛んだり跳ねたりしたら・・・
淫らな妄想に嵌まり込みそうになっているところを、部長さまのお声が遮りました。
「それではまず、さっきみたいにジャンプしてみて。いくわよ?はい、ワンツーワンツー」
パンッパンッ!パンッパンッ!
真剣なまなざしで両手を打ち始める部長さま。
「あ、はい」
拍手を聞いた途端、条件反射のように跳ね始める私。
さっきみたい、ということは、腕の動きも付け加えなくちゃ。
両腕を水平から頭上へ、ワンツーのツーのところでパンッと両手を打ち鳴らします。
「ジャンプしながら90度くらいづつその場で回転してみてくれる?360度見たいから」
「は、はい」
ぴょんと飛び跳ねたらからだをひねり、着地するときはみなさまに対して右向きになるように、次は背中、次は左向きとグルグル回りながら跳ねつづけます。
ジャンプし始めてすぐに、さっき考えかけた妄想が現実になったことを知りました。
ブラジャーの支えを失った乳房が、ジャンプするたびにインナーの中で自由奔放に暴れまわります。
尖った乳首が裏地に擦れまくり、そのたびにピリピリと全身に心地良い刺激が走り、どうにかなちゃいそう。
両腕を挙げると胸ぐりはがら空きで、今にもおっぱい全体がこぼれ出そう。
肩紐は落ちそうになり、腋も全開。
腋の空間から乳首まで、丸ごと見えてしまっているかも。
もちろん超ミニスカートは、黒ジミショーツを隠す暇もなくひるがえりっ放しでした。
部長さまは手を叩きながら私の全身にくまなく視線を走らせ、時折傍らのリンコさまに何かコショコショ耳打ちされています。
逐一それをメモするリンコさま。
ほのかさまとミサさまは、微動だにせず視線だけが上下していました。
「はい、そのくらいでいいわ。ありがとう」
二分くらい連続でジャンプさせられ、ようやくお赦しが出ました。
ハア、ハア、ハア・・・
私の頬が火照り、息が上がり気味なのは、急に運動させられたせいだけではありませんでした。
みなさまに、こんな裸に近い姿をずーっと見つめられつづけていることに、私のからだが私の意志とは関係なく大興奮していました。
「こちらのほうが、何て言うか、ダイナミックな感じがしない?布地の動き、とくにシワが動くことで柄も躍動して」
部長さまが誰に尋ねるというわけでもなく、おっしゃいました。
「そうですね。ピッタリめだとからだのラインは奇麗に出るけれど、小じんまりしちゃうかもしれませんね」
リンコさまのお答え。
「だけど、こっちの場合、胸元とサイドは再考の余地有りです。無防備に過ぎる、と言うか」
そんなことをおっしゃるということは、やっぱり乳首まで見えてしまっていたのでしょうか。
「森下さんは、実際に着ていて、何か気がついた点、ある?」
部長さまからの突然のご指名。
「あ、はい。気がついた点、ですか?あの、えっと・・・」
「遠慮しないで。率直な意見を聞きたいの」
語気鋭い部長さまの、真剣そのものなお顔。
「は、はい・・・」
その迫力に気圧されて、思ったことを素直に告げることにしました。
「えっと、ノーブラになって、激しくからだを動かすとですね、あの、ちく、あ、いえ、バストトップがお洋服の裏地に擦れて、な、何て言うか、気まずいって言うか、落ち着かないと言うか・・・」
「ああ。なるほどね」
「あ、その点は、当然ニップルパッドを着けることになるので、本番では問題ないかと」
リンコさまがすかさず解決策を示されました。
「そう。でもかなり激しく動き回ることになるから、強力な接着力が必要になるわね。剥がれ落ちないように」
「はい。いっそ医療用のバンソーコーのほうがいいかもしれませんね」
「その他には?」
部長さまが私に向き直りました。
「あとは、とくに、別に・・・」
「そう。では、森下さん的には、今のとさっきの、どちらがいいと思う?」
「私的には・・・うーん、こちらでしょうか。踊っていて裾がせり上がってしまうのは、やっぱり落ち着かないです」
「そっか。なるほどね。ありがとう。参考にさせていただくわ」
そうおっしゃってから、少し考え込むような仕草をなさった部長さまが、思い切るようにお顔を上げ、まっすぐ私を見つめてきました。
「ねえ、森下さん?あなた、何かアイドルの曲で振付けまで憶えているような曲、ある?」
突然のお尋ねに面食らう私。
「アイドル、ですか?・・・私、そういうの、ぜんぜん疎くて・・・」
パッと思い浮かんだのはスパイスガールズでしたが、ダンスを全部憶えているワケではないし。
日本のアイドルさんの曲は、まったくと言っていいほど知らないし。
「それならバレエでもいいわ。長くやっていらしたのでしょ?」
「はい。バレエであればいくつかは・・・でも、音楽がないと・・・」
「あら、わたくしのクラシックライブラリーは凄いのよ。プレイヤーにデーターにして詰め込んでいるのだけれど、CDで言えば優に1000枚は超えているはず」
オフィスに絶えず低く流れているクラシック曲は、早乙女部長さまのライブラリーだったんだ。
「でもバレエ音楽は、あまりなかったかな・・・あ、そうそう。チャイコフスキー。チャイコなら定番よね?」
クラシック音楽の話題になって、いつになくウキウキした感じの部長さまが新鮮です。
「白鳥の湖と眠れる森の美女、くるみ割り人形。この3つなら何種類かづつ入ってるはずよ」
「白鳥の湖なら、オディールのヴァリエーションはずいぶん練習したので、今でも憶えているとは思いますが・・・」
「よかった。それは何ていう曲で踊るの?」
「あの、えっと、第三幕のパ・ド・シスの・・・あの、今、ここで踊るのですか?」
ご自分のデスクの上に置いてある音楽プレイヤーらしきものを操作し始めた部長さまに向けて、戸惑いながら問いかけました。
「お願いしたいのよ。さっきみたいにぴょんぴょん跳ねるだけではなくて、実際に曲に乗ってダンスしているところを見ることで、何かインスピレーションが湧いてくるかも、って思ったの」
「せっかく踊れる人材がいるのだもの、使わない手はないな、って」
最後の部分だけ、お仕事の鬼な部長さまらしい言い回しでした。
「はあ・・・」
「やっぱりトゥシューズ履かないと難しい?」
私があまり乗り気でないのがわかったのか、少ししょんぼりした感じの部長さまらしくないお声が聞こえて、胸がズキンと痛みました。
「いえ、そんなことはありません。裸足になれば何とかなるとは思いますが。でもちゃんと出来るかどうかは・・・」
部長さまをがっかりさせたくなくて、期待させてしまうようなことを返してしまう私。
「出来なんて気にしなくていいわ。バレエ音楽はあまり詳しくはないけれど、見るのは好きなの。こんなに間近で見れるなんて嬉しい」
部長さまをすっかりその気にさせてしまったようでした。
「それで、何ていう曲をかければいいの?」
「あ、えっと確か第三幕の第19曲目。パ・ド・シスのf、ヴァリシオン5という曲です」
「なんだか呪文みたいな曲名」
ミサさまが独り言のようにポツンとつぶやかれました。
「この曲かな」
麗しいハープの調べがボリュームの上がったスピーカーから流れてきました。
つづいて始まる、どことなくオリエンタルで軽快なメロディ。
懐かしさと共に、その振付けをはっきり思い出しました。
やよい先生のご指導の下、ひとつひとつ身につけていったアラベスク、フェッテ、ピルエット・・・
覚えるたびにうれしくなって夢中で練習した日々。
「ずいぶん短かい曲なのね」
しばしノスタルジーに浸っていた私を、部長さまのお声が現実に引き戻しました。
「でも耳に残る面白い曲。この曲にどんなダンスが乗るのかしら?ここはどういう場面なの?」
「あ、はい。オディールっていうのは悪魔の娘の化身の黒鳥で、物語のヒロインである白鳥の女王オデットとそっくりさんなんです。それで、そのオディールが主人公を騙して誘惑するという場面です」
「誘惑の場面ということは、バレエだとしても何かしらセクシーな感じになったりするのかしら。ますます楽しみだわ」
セクシー・・・
部長さまの弾んだお言葉に、私もハッと思い出しました。
バレエのお話と思い出に夢中になっていて、すっかり忘れていました。
今の自分の服装のことを。
この曲の振付けは、かなり大きな動きがいろいろ出てきます。
クルクル回るフェッテやピルエットでは、短すぎるスカートがひるがえりショーツが丸出しになるでしょう。
脚を大きく振り上げれば、ショーツの両腿の付け根まで丸見え。
腕は常に鳥のように羽ばたいていますから、腋もがら空き。
最後のほうでは、両脚を前後に広げて跳ぶグラン・パ・ドゥ・シャもあったはず。
すべてやったら、おそらくショーツは股深く食い込み、肩紐はずれて、胸元ははだけて・・・
踊り終えた後、私はどんな姿になっているのでしょうか。
唐突に、ずいぶん昔、バレエレッスンのときに試してみた、ある冒険のことを思い出していました。
あれはまだ高校生の頃。
自分のヘンタイ性癖には気づいていたけれど、それにどう対処すればいいのかわからなかった臆病者の私が好奇心を抑えきれず、公然露出の心境を味わってみたいと精一杯勇気を出して挑戦したプチヘンタイ行為。
その頃憧れていたバレエ講師のやよい先生の気を惹きたい、という気持ちもあったと思います。
いつものバレエレッスンのとき、インナーショーツとタイツをわざと忘れて、素肌に直にレオタードだけ着てレッスンルームに出たのでした。
ルームには他の生徒さんたち、学校の親友さえもいるのに、股間を濡らして、布をスジに食い込ませて、その姿を鏡に映して。
あのときはまだ、薄めだけれど毛も生えていたっけ。
タイツを忘れてきた私への罰、それはスジを食い込ませた恥ずかしい私の姿をみなさまに晒すこと・・・
視ないで・・・でも視て・・・
鏡の前で課題のパをひとり黙々と練習しながら、そんな行為に人知れず、まだ幼いマゾマンコを疼かせていた私。
あのとき何食わぬお顔で話しかけてきたやよい先生。
後にやよい先生と初めてSMプレイをしたときに、気づいていたことを知らされたけれど、そのときはバレていないと信じ込み、鏡に映った自分のいやらしい姿に心臓がバクバク波打っていました
あのとき感じた、ほろ苦い中にもちょっぴり甘酸っぱい自虐の快感。
スリル、羞恥、恥辱、背徳・・・
それらが鮮やかによみがえってきました。
あの感覚を、もう一度味わいたい。
「森下さん、準備はいい?曲、流すわよ?」
部長さまからお声がかかり、我に返りました。
「あ、はいっ」
みなさまの前で精一杯踊ろう。
服装がどうなろうとなりふり構わず、私のすべてを視ていただこう。
だって私は視て欲しくて、それがお仕事のためにもなるのだから。
バレエ教室での最初の発表会のとき、確か中二だったかな、みたいにドキドキしていました。
ひとつ深呼吸をしてから目をつぶり、最初の音を聞き逃さないように耳を澄ませました。
*
*オートクチュールのはずなのに 32へ
*
「森下さんはうちに来てまだ間もないから、恥ずかしがるのもわかるわ。突然、スタッフみんなの前でブラを取れと言われてもね」
「でも、これはわたくしたちの大切な仕事なの。クライアントに頼まれて、その要求がエロティックさの追求であれば、それに応えなければならないのよ。スタッフみんなで協力して、いろいろアイデア出し合って」
「今まで見てきたところでは、森下さんて、とても恥ずかしがり屋さんのようね?でも、自信持っていいのよ。あなたのからだは、とても奇麗だわ」
「バレエやっていただけあって、柔軟でリズム感もいい。わたくしの要求に応えられる素養がある。アパレル開発のフィッティングモデルにうってつけなの」
「だから、協力して、ね?」
私の目をじっと見つめながら、諭すように丁寧におっしゃってくださいました。
お役御免となって見物側にまわったほのかさまを含め、八つの瞳が私の顔をじっと見つめていました。
どなたのまなざしも真剣そのもので、お仕事に集中されているときにお見せになるお顔でした。
そうでした。
これは大事なお仕事なのです。
みなさま、より良いものを造ろうと知恵を出し合っている現場なのです。
それなのに私だけ、えっちな妄想ばかり先走ってしまって・・・
性的な意味のほうでは無く、自分を恥ずかしく思いました。
「わかりました。やります」
私もちゃんとお仕事に徹して、少しでもみなさまのお役に立たなければ。
そんな決意を込めてうなずき、あらためてインナーのジッパーに手をかけました。
「恥ずかしいのなら、わたくしたちに背中を向けて着替えていいわよ」
部長さまからのおやさしいお言葉。
「あ、はい」
お言葉に甘えてみなさまに背を向けると、目の前に広がる青い空。
そう、ここは窓際でした。
だけど、見えるのは空だけの超高層ビルの窓。
地上までだって二百メートルくらいあるのですから、覗かれる心配なんていりません。
思い切ってジッパーを一気に下ろし、インナーの前を開きました。
「ホック、外してあげる」
背中に回そうとした腕を遮るようにリンコさまが近づいてきて、コソッと外してくださいました。
「あ、ありがとうございます」
インナーを脱ぎ去り、ブラのストラップを肩から外します。
リンコさまが背後で待機してくださっているのがわかります。
ヘンにおっぱいを隠したりせず、出来るだけ自然に、堂々と。
上半身、裸になりました。
脱いだ衣服はリンコさまが受け取ってくださり、代わりに着替えるべきインナーを無言で手渡して、退かれました。
手渡されたインナーを広げながら、まっすぐ窓を向き、気持ちを落ち着かせるために深呼吸をひとつ。
さっきより陽が傾いて少しだけ翳り始めた青い空が、曇りひとつ無く磨かれた素通しガラスの向こうに広がっていました。
窓の外、辛うじて視界に入る低いところを、一羽のカラスさんがスーッと横切って行きました。
私、今、お外に向けておっぱいを丸出しにしているんだ・・・
ついさっきの、お仕事に徹する、という決意はどこへやら。
すぐにいやらしい妄想が頭をもたげてしまう、どうしようもない私。
それと同時に気づいてしまいました。
ピカピカのガラス窓に薄っすらですがハッキリと、私の姿が映りこんでいることを。
首には、マゾの首輪と見紛うような赤いチョーカー。
一糸纏わずさらけ出したおっぱいの先端はふたつとも、誰かに摘んで欲しくてたまらない、といった様子で尖りきっています。
おへそからなだらかに下降する下腹部を、申し訳程度に覆い隠す幅の狭いスカート。
その裾ギリギリにチラリと姿を見せている、黒い濡れジミの逆三角形。
なんてはしたない、恥ずかしい姿。
そして、私の後方1メートルくらいのところにズラリと並び、私をじーっと見つめているみなさまの目、目、目。
その視線は、私の背中を通り越してガラスに映った私のおっぱいに集中しているように感じました。
見られてる、視られちゃってる・・・
こんな恥ずかしい状況で、露骨に反応してしまっている私のふしだらな乳首。
ついにチーフ以外の会社のみなさまにも、私のいやらしい性癖をご披露してしまった・・・
ドキドキが高鳴り、全身がキュンキュンざわめき始めました。
ううん、いけない、いけない。
このままマゾの血が騒ぐに任せてえっちな妄想に囚われていたら、またみなさまにご迷惑をかけてしまう。
これはお仕事、これはお仕事なのだから・・・
自分にそう言い聞かせながら、急いで着替えのインナーに腕を通しました。
「着終えたようね。こっち向いて、またわたくしたちのリクエストに応えてちょうだい」
ジジーッというジッパーを上げ終わる音が合図だったようで、部長さまからお声がかかりました。
「はいっ」
これはお仕事、これはお仕事と、呪文のように頭の中でくりかえしつつ、みなさまの前に向き直りました、
「今度のは、あまりピチピチではないでしょう?」
「はい。ウエストにも余裕があって、これならせり上がることはないと思います」
そうお答えはしたものの、実際は問題大有りでした。
さっきまでのインナーよりルーズフィットになった分、胸元も腋も浮きやすくなってしまい、少し前屈みになると胸ぐりからバスト全体が覗けそうなほど。
たぶん腋からも。
バスト周りも数ミリの余裕があるので、ノーブラになった分動くたびに裏地に乳首の先が直に擦れて、ますます尖ってしまいそう。
薄い生地ですからもちろん、まっすぐ立っているだけでもバストトップの位置が丸わかりなくらいに布を浮かしていました。
これでさっきみたいに飛んだり跳ねたりしたら・・・
淫らな妄想に嵌まり込みそうになっているところを、部長さまのお声が遮りました。
「それではまず、さっきみたいにジャンプしてみて。いくわよ?はい、ワンツーワンツー」
パンッパンッ!パンッパンッ!
真剣なまなざしで両手を打ち始める部長さま。
「あ、はい」
拍手を聞いた途端、条件反射のように跳ね始める私。
さっきみたい、ということは、腕の動きも付け加えなくちゃ。
両腕を水平から頭上へ、ワンツーのツーのところでパンッと両手を打ち鳴らします。
「ジャンプしながら90度くらいづつその場で回転してみてくれる?360度見たいから」
「は、はい」
ぴょんと飛び跳ねたらからだをひねり、着地するときはみなさまに対して右向きになるように、次は背中、次は左向きとグルグル回りながら跳ねつづけます。
ジャンプし始めてすぐに、さっき考えかけた妄想が現実になったことを知りました。
ブラジャーの支えを失った乳房が、ジャンプするたびにインナーの中で自由奔放に暴れまわります。
尖った乳首が裏地に擦れまくり、そのたびにピリピリと全身に心地良い刺激が走り、どうにかなちゃいそう。
両腕を挙げると胸ぐりはがら空きで、今にもおっぱい全体がこぼれ出そう。
肩紐は落ちそうになり、腋も全開。
腋の空間から乳首まで、丸ごと見えてしまっているかも。
もちろん超ミニスカートは、黒ジミショーツを隠す暇もなくひるがえりっ放しでした。
部長さまは手を叩きながら私の全身にくまなく視線を走らせ、時折傍らのリンコさまに何かコショコショ耳打ちされています。
逐一それをメモするリンコさま。
ほのかさまとミサさまは、微動だにせず視線だけが上下していました。
「はい、そのくらいでいいわ。ありがとう」
二分くらい連続でジャンプさせられ、ようやくお赦しが出ました。
ハア、ハア、ハア・・・
私の頬が火照り、息が上がり気味なのは、急に運動させられたせいだけではありませんでした。
みなさまに、こんな裸に近い姿をずーっと見つめられつづけていることに、私のからだが私の意志とは関係なく大興奮していました。
「こちらのほうが、何て言うか、ダイナミックな感じがしない?布地の動き、とくにシワが動くことで柄も躍動して」
部長さまが誰に尋ねるというわけでもなく、おっしゃいました。
「そうですね。ピッタリめだとからだのラインは奇麗に出るけれど、小じんまりしちゃうかもしれませんね」
リンコさまのお答え。
「だけど、こっちの場合、胸元とサイドは再考の余地有りです。無防備に過ぎる、と言うか」
そんなことをおっしゃるということは、やっぱり乳首まで見えてしまっていたのでしょうか。
「森下さんは、実際に着ていて、何か気がついた点、ある?」
部長さまからの突然のご指名。
「あ、はい。気がついた点、ですか?あの、えっと・・・」
「遠慮しないで。率直な意見を聞きたいの」
語気鋭い部長さまの、真剣そのものなお顔。
「は、はい・・・」
その迫力に気圧されて、思ったことを素直に告げることにしました。
「えっと、ノーブラになって、激しくからだを動かすとですね、あの、ちく、あ、いえ、バストトップがお洋服の裏地に擦れて、な、何て言うか、気まずいって言うか、落ち着かないと言うか・・・」
「ああ。なるほどね」
「あ、その点は、当然ニップルパッドを着けることになるので、本番では問題ないかと」
リンコさまがすかさず解決策を示されました。
「そう。でもかなり激しく動き回ることになるから、強力な接着力が必要になるわね。剥がれ落ちないように」
「はい。いっそ医療用のバンソーコーのほうがいいかもしれませんね」
「その他には?」
部長さまが私に向き直りました。
「あとは、とくに、別に・・・」
「そう。では、森下さん的には、今のとさっきの、どちらがいいと思う?」
「私的には・・・うーん、こちらでしょうか。踊っていて裾がせり上がってしまうのは、やっぱり落ち着かないです」
「そっか。なるほどね。ありがとう。参考にさせていただくわ」
そうおっしゃってから、少し考え込むような仕草をなさった部長さまが、思い切るようにお顔を上げ、まっすぐ私を見つめてきました。
「ねえ、森下さん?あなた、何かアイドルの曲で振付けまで憶えているような曲、ある?」
突然のお尋ねに面食らう私。
「アイドル、ですか?・・・私、そういうの、ぜんぜん疎くて・・・」
パッと思い浮かんだのはスパイスガールズでしたが、ダンスを全部憶えているワケではないし。
日本のアイドルさんの曲は、まったくと言っていいほど知らないし。
「それならバレエでもいいわ。長くやっていらしたのでしょ?」
「はい。バレエであればいくつかは・・・でも、音楽がないと・・・」
「あら、わたくしのクラシックライブラリーは凄いのよ。プレイヤーにデーターにして詰め込んでいるのだけれど、CDで言えば優に1000枚は超えているはず」
オフィスに絶えず低く流れているクラシック曲は、早乙女部長さまのライブラリーだったんだ。
「でもバレエ音楽は、あまりなかったかな・・・あ、そうそう。チャイコフスキー。チャイコなら定番よね?」
クラシック音楽の話題になって、いつになくウキウキした感じの部長さまが新鮮です。
「白鳥の湖と眠れる森の美女、くるみ割り人形。この3つなら何種類かづつ入ってるはずよ」
「白鳥の湖なら、オディールのヴァリエーションはずいぶん練習したので、今でも憶えているとは思いますが・・・」
「よかった。それは何ていう曲で踊るの?」
「あの、えっと、第三幕のパ・ド・シスの・・・あの、今、ここで踊るのですか?」
ご自分のデスクの上に置いてある音楽プレイヤーらしきものを操作し始めた部長さまに向けて、戸惑いながら問いかけました。
「お願いしたいのよ。さっきみたいにぴょんぴょん跳ねるだけではなくて、実際に曲に乗ってダンスしているところを見ることで、何かインスピレーションが湧いてくるかも、って思ったの」
「せっかく踊れる人材がいるのだもの、使わない手はないな、って」
最後の部分だけ、お仕事の鬼な部長さまらしい言い回しでした。
「はあ・・・」
「やっぱりトゥシューズ履かないと難しい?」
私があまり乗り気でないのがわかったのか、少ししょんぼりした感じの部長さまらしくないお声が聞こえて、胸がズキンと痛みました。
「いえ、そんなことはありません。裸足になれば何とかなるとは思いますが。でもちゃんと出来るかどうかは・・・」
部長さまをがっかりさせたくなくて、期待させてしまうようなことを返してしまう私。
「出来なんて気にしなくていいわ。バレエ音楽はあまり詳しくはないけれど、見るのは好きなの。こんなに間近で見れるなんて嬉しい」
部長さまをすっかりその気にさせてしまったようでした。
「それで、何ていう曲をかければいいの?」
「あ、えっと確か第三幕の第19曲目。パ・ド・シスのf、ヴァリシオン5という曲です」
「なんだか呪文みたいな曲名」
ミサさまが独り言のようにポツンとつぶやかれました。
「この曲かな」
麗しいハープの調べがボリュームの上がったスピーカーから流れてきました。
つづいて始まる、どことなくオリエンタルで軽快なメロディ。
懐かしさと共に、その振付けをはっきり思い出しました。
やよい先生のご指導の下、ひとつひとつ身につけていったアラベスク、フェッテ、ピルエット・・・
覚えるたびにうれしくなって夢中で練習した日々。
「ずいぶん短かい曲なのね」
しばしノスタルジーに浸っていた私を、部長さまのお声が現実に引き戻しました。
「でも耳に残る面白い曲。この曲にどんなダンスが乗るのかしら?ここはどういう場面なの?」
「あ、はい。オディールっていうのは悪魔の娘の化身の黒鳥で、物語のヒロインである白鳥の女王オデットとそっくりさんなんです。それで、そのオディールが主人公を騙して誘惑するという場面です」
「誘惑の場面ということは、バレエだとしても何かしらセクシーな感じになったりするのかしら。ますます楽しみだわ」
セクシー・・・
部長さまの弾んだお言葉に、私もハッと思い出しました。
バレエのお話と思い出に夢中になっていて、すっかり忘れていました。
今の自分の服装のことを。
この曲の振付けは、かなり大きな動きがいろいろ出てきます。
クルクル回るフェッテやピルエットでは、短すぎるスカートがひるがえりショーツが丸出しになるでしょう。
脚を大きく振り上げれば、ショーツの両腿の付け根まで丸見え。
腕は常に鳥のように羽ばたいていますから、腋もがら空き。
最後のほうでは、両脚を前後に広げて跳ぶグラン・パ・ドゥ・シャもあったはず。
すべてやったら、おそらくショーツは股深く食い込み、肩紐はずれて、胸元ははだけて・・・
踊り終えた後、私はどんな姿になっているのでしょうか。
唐突に、ずいぶん昔、バレエレッスンのときに試してみた、ある冒険のことを思い出していました。
あれはまだ高校生の頃。
自分のヘンタイ性癖には気づいていたけれど、それにどう対処すればいいのかわからなかった臆病者の私が好奇心を抑えきれず、公然露出の心境を味わってみたいと精一杯勇気を出して挑戦したプチヘンタイ行為。
その頃憧れていたバレエ講師のやよい先生の気を惹きたい、という気持ちもあったと思います。
いつものバレエレッスンのとき、インナーショーツとタイツをわざと忘れて、素肌に直にレオタードだけ着てレッスンルームに出たのでした。
ルームには他の生徒さんたち、学校の親友さえもいるのに、股間を濡らして、布をスジに食い込ませて、その姿を鏡に映して。
あのときはまだ、薄めだけれど毛も生えていたっけ。
タイツを忘れてきた私への罰、それはスジを食い込ませた恥ずかしい私の姿をみなさまに晒すこと・・・
視ないで・・・でも視て・・・
鏡の前で課題のパをひとり黙々と練習しながら、そんな行為に人知れず、まだ幼いマゾマンコを疼かせていた私。
あのとき何食わぬお顔で話しかけてきたやよい先生。
後にやよい先生と初めてSMプレイをしたときに、気づいていたことを知らされたけれど、そのときはバレていないと信じ込み、鏡に映った自分のいやらしい姿に心臓がバクバク波打っていました
あのとき感じた、ほろ苦い中にもちょっぴり甘酸っぱい自虐の快感。
スリル、羞恥、恥辱、背徳・・・
それらが鮮やかによみがえってきました。
あの感覚を、もう一度味わいたい。
「森下さん、準備はいい?曲、流すわよ?」
部長さまからお声がかかり、我に返りました。
「あ、はいっ」
みなさまの前で精一杯踊ろう。
服装がどうなろうとなりふり構わず、私のすべてを視ていただこう。
だって私は視て欲しくて、それがお仕事のためにもなるのだから。
バレエ教室での最初の発表会のとき、確か中二だったかな、みたいにドキドキしていました。
ひとつ深呼吸をしてから目をつぶり、最初の音を聞き逃さないように耳を澄ませました。
*
*オートクチュールのはずなのに 32へ
*
2015年12月27日
オートクチュールのはずなのに 30
「着けてあげる」
リンコさまがスルスルっと近寄ってきて、私の背後に立ちました。
「ちょっと上向いててくれる?」
「あ、はい」
首筋を伸ばすように顎を前に突き出していると、喉にヒヤッと冷たいものが触れました。
「はふぅん・・・」
その瞬間、からだ中にゾワゾワっと不穏な電流が走り、思わずヘンな声を洩らしてしまいました。
「ひんやりした?スベスベのレザー使っているからね。どう?キツクない?」
「あ、はい。大丈夫です」
首の後ろをコソコソさわるリンコさまの指にうっとりしそうになるのを、ここはオフィスで今はお仕事中なのだから、と自分に言い聞かせて戒めました。
「なるほど。こうして見ると、チョーカーっていうのも悪くはないわね」
リンコさまからチョーカーを着けられる私を、じーっと見つめていた早乙女部長さまが、感心したようにおっしゃいました。
「着けると何て言うか、その子が従順そうに見えてくる。何でも思い通りになりそうな。着ける子の雰囲気にもよるのでしょうけれど」
部長さまの視線が私の全身にもう一度、素早く走りました。
「生意気そうな子が着けていたら、それはそれで征服感みたいなものを感じるかもね。確かにオタク受けは良さそうだわ」
部長さまの傍らに戻ったリンコさまも、そのお言葉にウンウンと真剣に頷いていらっしゃいます。
「一応、上着も着てみましょう」
部長さまに促され、テーブルの上の上着を手に取りました。
これも思っていたよりペラペラ。
ほのかさまが着ているブレザーとデザインや色使いは同じですが、布地が違うみたい。
「着終わったら、ふたり並んでみて」
部長さまのお声で、ほのかさまが私に近づいてきました。
「これにあと、ソックスとシューズ、よね?」
ほのかさまと並んで直立不動の私の前に、早乙女部長さま、リンコさま、ミサさまが立ちはだかるように並び、私たちをジロジロ見つめていました。
「はい。Aタイプは白のハイソ、Bタイプは三つ折です。靴はどちらもブラウンのローファー」
リンコさまが何かの書類をめくりながら、部長さまの質問にテキパキお答えされています。
ほのかさまとこうして並んでみると、あらためて私の穿いているスカートの短かさが際立ちました。
私より少し背の高いほのかさまのスカートの裾と私のとを較べると、身長差を差し引いても10センチ以上の差がありました。
股下0センチ、クロッチ部分ギリギリ丈の頼りないペラペラなスカート。
少し背伸びしただけでも覗いてしまうその部分が今、どんな状況になっているのか、気が気ではありませんでした。
朝からいろいろと発情していた私ですから、この試着を始める前からすでに、たとえばもしも真下からスカートの中を覗かれたらわかる範囲には確実に、銀色ショーツに黒い濡れジミを作っているはずでした。
問題は、その後でした。
このお着替えを始めてからも、何度も奥の潤みを感じていました。
溢れ出したおシルは確実に前へ後ろへ、ショーツの布への侵食を広げているはずです。
おそらく正面から見ても、クロッチ部分の先端が黒ずんでいるのがわかるほどには。
だけど今のところ、みなさまからそういうご指摘はありません。
知ってか知らずか・・・
たとえ気づいていたとしても、事が事ですからご指摘を憚られているのかもしれませんが。
チョーカーを嵌められてマゾ性へ大きく傾きがちになっている私は、みなさまにそんな姿を気づかれ呆れられることを欲していましたが、辛うじて残っている理性の部分では、この試着が一刻も早く終わり、普段の服装に戻れることを願っていました。
「おーけー。ここは狭いから、ちょっと広いところへ行きましょう」
リンコさまとあれこれ打ち合わせをされていた部長さまがおっしゃるなり、スタスタ歩き始めました。
ぞろぞろと後につづく私たち。
会議室のドアを出て、オフィスのメインフロアのデスクやロッカーが置いていない、窓際の広めなスペースに誘導されました。
ロールカーテン全開の大きな素通し窓からは、抜けるような青空。
「窓を背にして、ふたり並んで立ってくれる、あ、もう少し間隔を空けたほうがいいわ」
五月らしい晴天の明るい陽射しが差し込む大きな窓を背に、ほのかさまと私が2メートル位の間隔を空けて並びました。
窓は、私の膝よりも低い位置から始まっていますから、お尻ギリギリのスカート直下から剥き出しな私の生足が、ガラスを挟んでお外へ丸見えとなっていることでしょう。
もっとも、地上数百メートルの高さですから、見上げて目を凝らさなければわからないでしょうが。
お近くのデスクに寄りかかるように、私たちの前で並んだお三方。
部長さまを真ん中に、私の側にリンコさま、ほのかさまの側にミサさま。
これから何を始める気なのだろう・・・
怖いような待ち遠しいような、ヘンな胸騒ぎを感じていました。
「ここであなたたちに、いろいろ動いてもらいたいの。ほら、アイドルって、かなり激しいダンスをしながら歌うから、それ風なダンスっぽい動きをね」
部長さまが私とほのかさまを交互に見ながらおっしゃいました。
ウンウンとうなずくほのかさま。
つられてうなずく私でしたが、心の中は大騒ぎ。
こんな、少し背伸びしただけでも下着が出てしまう衣装でダンスなんてしたら・・・
ひるがえるスカート、丸出しのショーツ、一目瞭然な銀色と黒のグラデーションを描く恥ずかし過ぎるシミ・・・
そんな光景が即座に頭に浮かび、あきらめにも似た陶酔感に襲われます。
視られちゃう・・・
心の中の大部分が、もはやマゾ色に染まっていました。
「それではまず手始めに、その場で軽くジャンプしてみてくれる?ぴょんぴょんぴょん、って感じで」
部長さまは、普通におっしゃっているのでしょうが、私の耳にはエスなかたからの冷たいご命令口調に変換されていました。
「はい」
ほのかさまがお返事と共に、ぴょんぴょんと軽やかにジャンプし始めました。
ミニスカートが微妙にひるがえり、ブレザーの中でバストが波打っているのがわかりました。
うわっ!可愛い!
ジャンプに合わせて髪の毛がフワフワ揺れて、跳び方もいかにも女の子っぽい可憐さで、本当のアイドルさんみたい。
しばし見惚れていると強い視線を感じ、部長さまが私をじっと見ているのに気づきました。
私もあわてて、ほのかさまに合わせて跳ね始めました。
思っていた通りでした。
膝を軽く曲げて跳び上がると同時に、ペラペラの頼りないスカートが風を受け、おへそのところらへんまでフワリと舞い上がりました。
当然のことながらショーツ丸出し。
2度3度、ジャンプするたびに、面白いくらい大げさにスカートがはためきます。
着地すると、腿の付け根辺りに辛うじて布の感触が戻ります。
そしてついに、自分の目で確認出来てしまいました。
銀色ショーツの正面下部、クロッチ部分で言うとほぼ全体、銀色の布地が濡れて黒く変色しているのを。
私が、こんな恥ずかしいことをさせられながらもはしたなく感じて、淫らに濡れてしまっている決定的な証拠。
私がマゾであることの証。
目前に並んだ六つの瞳に、バッチリ視られている・・・・
パンパン!
「はい、いいわ。ありがとう。どこか動きづらいところとか、あった?肩や袖が窮屈とか」
私たちの動きを真剣に見つめていた部長さまが手を叩き、尋ねてきました。
「いえ、これといって・・・」
ほのかさまが即答。
内心ドキドキな私も顔を上下にコクコクうなずきました。
「今度は、ジャンプすると同時に両腕を上に挙げてくれる?こんな感じで」
部長さま自ら、上半身だけでお手本を示してくださいました。
パチン!
小気味の良い拍手の音が響きました
それはなんだか、コンサートの最後で両手を頭の上に挙げて、アンコール!ってやっているような動きでした。
「こうですか?」
ほのかさまがすかさず、その場でやってみせてくださいました。
ぴょんと跳び上がりながら水平に開いた両腕を左右から上げていき、ジャンプの頂点のときに頭上で拍手をパチンッ。
「そうそう。うまいわ」
部長さまが満足そうに微笑みました。
「それと、森下さんは上着、取ってくれる?」
突然、部長さまがおっしゃいました。
「えっと、はい?」
「Bタイプはステージ用で、ブレザーは最初の数曲で脱いじゃうのよ。ステージの大部分はインナーだけで踊ることになるから」
あくまで真面目なお顔でご説明くださる部長さま。
「あ、はい。そういうことでしたら、わかりました」
薄っぺらなブレザーを脱ぐと、ノースリーブのボディコンビスチェ風。
大胆に開いた胸元からおっぱいの谷間が、ハーフカップのブラジャーの布まで見えそうなほど、これ見よがしに露出していました。
両腕は腋まで丸出し、おっぱいの谷間丸出し、おへそ丸出し、両脚も付け根まで丸出し。
それが今の自分の格好でした。
そして私は、みなさまの前でそんな格好になることを、心地良く感じ始めていました。
「それではやってみて。いい?はいっ!ワンツー、ワンツー」
部長さまの手拍子と号令に合わせて、ほのかさまと一緒に跳び始めました。
跳ねるたびに丸見えになるショーツ。
薄い布越しのバストも露骨なほど上下に跳ねています。
更に、両腕を大きく動かしていると、上半身に貼り付いていたインナーの布がどんどん肌をせり上がって行くのがわかりました。
おへそ上だった丈がウエストをせり上がり、お腹丸出しになって、遂にはアンダーバストのすぐ下あたりまでたくし上がってしまいました。
まるでスポーツブラをしているみたいな見た目。
伸縮性のあるピッタリ布地なので、一度せり上がってしまうとそこで留まったまま、自然には直りません。
その分、胸元の布がたるみ、私の視界には、余裕の出来た隙間からハーフカップブラの浅めな布地まで丸見えになっていました。
さすがにこれは直したほうがいいだろう、と思い、いったん動きを止めようとしたら、すかさず部長さまから鋭いお声。
「直しちゃだめっ!そのままでもう少しつづけて!」
真剣な目で睨まれました。
「はいっ!」
あわててほのかさまの動きに合わせました。
「おーけー。ちょっと止まって。森下さんはインナー直していいわ」
部長さまのお言葉に、すばやく布地を引っ張って、お腹を隠す私。
部長さまは何かコソコソ、リンコさまとご相談。
「今度は上半身の動きはさっきと同じ。ただし、ジャンプじゃなくて、拍手のタイミングで脚を左右交互に蹴り上げて見せて。いくわよ。はいっ、ワンツー、ワンツー」
少し戸惑ったようなご様子だったほのかさまが、部長さまのリズムに乗って唐突にからだを動かし始めました。
「こんな感じでいいですか?」
ほのかさまが再び、率先してお手本を見せてくださいました。
拍手のタイミングでラインダンスのように右、左と交互に蹴り上がるしなやかなおみ足、ひるがえるスカート。
真正面に陣取るお三方には、そのたびにほのかさまの純白ショーツが露になっていることでしょう。
絶望的なのに、なぜだか甘美な被虐感が全身をつらぬき、私もいつしかほのかさまの動きに合わせていました。
たちまちせり上がるインナー。
全開になる両腿の付け根。
「うん、いい感じよ。もう少しテンポを上げてみましょう。ワンツーワンツー」
部長さまの手拍子に合わせて、若干遠慮がちに脚を上げる私。
「森下さんはバレエ経験者でしょう?もっと高く脚を上げられるのじゃない?」
手拍子を打ちながら部長さまが叱責するようにおっしゃいました。
その目は真剣に私たちの動きを追っています。
「は、はいっ!」
それにお応えするべく、もう、なるようになれ、という気持ちで、グランバットマンのように高く右脚を蹴り上げました。
もはや絶対、完全に気づかれている。
こんな短かい、スカートの役も果たしていないような布を腰に巻き、盛んに脚を高く振り上げている私。
丸出しとなっているはずの銀色ショーツの布地に隠された、女性の女性たる部分。
その部分を中心として外へと広がっているはずの黒い濡れジミ。
こんなに至近距離で、これだけ高く脚を振り上げていれば、その異変に気がつかない人がいるはずがありません。
それでも、部長さまもリンコさまもミサさまも、そのことについては何もおっしゃらず、真剣な表情で私たちの即興ラインダンスを凝視しつづけていらっしゃいました。
ときどき何かメモを取り、私たちの前に回ったり後ろに回ったりしながら。
私が脚を振り上げるたびに、そのシミは今もジワジワ広がっているはずなのに。
両脚を激しく動かしているせいで、フルバックなショーツの後ろ側も、お尻の割れスジに沿って布地が集まってきてしまい、食い込むようなTバック状態になっていました。
お尻の皮膚に当たる空気の感触が増えたせいで、それがわかりました。
もちろん、前も食い込んできているはずです。
結果、シミの範囲も広がって・・・
そこまで考えたとき、ストップがかかりました。
「Bタイプのインナーは少しフィットさせ過ぎたかしら?」
「そうですね。でも、たくし上がりは、妙にエロティックで、見方によってはクライアントの要望に沿っているとも言えますよ」
「それはそうなのだけれど・・・確かもう少しルーズなタイプも作ったわよね?」
「その場合、襟ぐりや腋の余裕の調整が難しそうですね。隙間からポロリ問題が」
「Aタイプのほうは、問題無さそうね。スカートのひるがえり方もそこそこだし」
「重めにつくりましたから。あの程度のチラリなら、メディアでも許容範囲かと・・・」
「ミスリードさせたいなら、両タイプ共Tバック着用が必須のようね・・・」
私たちに休憩を命じた部長さまは、リンコさまにミサさまも加わって、何やら真剣にディスカッションされています。
私は急な運動で乱れた呼吸を整えるため、窓と窓のあいだの柱に背中を預けてうなだれていました。
そこへ、こちらも少し息を切らせた感じのほのかさまが、お声をかけてくださいました。
「こんな衣装を着て歌って踊らなきゃならないなんて、アイドルさんて、意外と大変な職業なのね」
顔を上げると、ほんのり火照ったような、ほのかさまの可憐な笑顔。
私の顔を嬉しそうに覗き込んできます。
「あ、はい。私もそう思います・・・」
「わたしは、この衣装、すごく恥ずかしいわ。こんな超ミニ、私生活では絶対に穿かないもの」
おっしゃってから私の下半身にチラッと視線を投げるほのかさま。
「でも直子さんが着ると、セクシーですっごくいい。やっぱり若いっていいな。肌もプルンプルンでうらやましい。プロポーションだって抜群だし」
インナーのせり上がりで丸見えになっているまま直しそびれていたお腹を中心に、ほのかさまからの熱い視線を素肌に感じ、モジモジするばかり。
「そ、そんなこと・・・ほのかさんのほうがずーっとお綺麗ですし・・・」
「ここに入ってからいろんな衣装を着せられたけれど、今日のはかなりキワドイ部類。直子さん、よくがんばったわ」
ほのかさまがニッコリと微笑み、イタズラっぽくウインクまでしてくださいました。
「それに直子さんて、お若いわりにずいぶんイロっぽい表情されるのね。隣で踊っているとき、横目でチラチラ見ながら見惚れちゃった」
「そ、そんな・・・」
「ううん。すごくいじらしいお顔だったわよ。なんだかギュッと抱きしめたくなっちゃうような」
憧れのほのかさまのお言葉に何てお答えすればいかわからず、ただドギマギするだけの私。
「ねえ?ちょっとお腹、さわっていい?」
「えっと、あの・・・」
そんな会話に、部長さまが不意に割り込んできました。
「はいっ、おつかれさま。Aタイプのほうには、大きな問題は無いみたい。たまほのはそのまま、休んでいていいわ」
ほのかさまへ向いて、おやさしくおっしゃる部長さま。
「Bタイプのほうは、もう少し見てみたいの。悪いけれど、森下さんはもう少しつきあってください」
部長さまがいつもの業務命令と同じ口調でおっしゃいました。
「は、はい・・・」
「上をこっちに着替えてくれる?」
今着ているのと同じようなインナーを差し出されました。
「今のよりルーズフィットなサイズ。これに着替えてもう一度踊ってみて」
私の顔を真正面から見つめて、無表情でおっしゃる部長さま。
「わかりました」
その手から衣装を受け取り、部長さまの端正なお顔を見つめてうなずきました。
部長さまの形の良い唇が、つづけて確かにこう動きました。
「今度はブラも取ってください」
「えっ!?」
着替えようとインナーのジッパーに伸ばしかけていた指が宙ぶらりんに止まりました。
「ブラって、ブラジャー、も、ですか?」
「そう。ユニットの中に何人かノーブラを売りにする子もいる、っていう話なのよ。だからそっちの具合も見ておきたいの」
「は、はい・・・」
突然の羞恥責め的なご命令に、とりあえずそう答える以外の言葉が出てきませんでした。
*
*オートクチュールのはずなのに 31へ
*
リンコさまがスルスルっと近寄ってきて、私の背後に立ちました。
「ちょっと上向いててくれる?」
「あ、はい」
首筋を伸ばすように顎を前に突き出していると、喉にヒヤッと冷たいものが触れました。
「はふぅん・・・」
その瞬間、からだ中にゾワゾワっと不穏な電流が走り、思わずヘンな声を洩らしてしまいました。
「ひんやりした?スベスベのレザー使っているからね。どう?キツクない?」
「あ、はい。大丈夫です」
首の後ろをコソコソさわるリンコさまの指にうっとりしそうになるのを、ここはオフィスで今はお仕事中なのだから、と自分に言い聞かせて戒めました。
「なるほど。こうして見ると、チョーカーっていうのも悪くはないわね」
リンコさまからチョーカーを着けられる私を、じーっと見つめていた早乙女部長さまが、感心したようにおっしゃいました。
「着けると何て言うか、その子が従順そうに見えてくる。何でも思い通りになりそうな。着ける子の雰囲気にもよるのでしょうけれど」
部長さまの視線が私の全身にもう一度、素早く走りました。
「生意気そうな子が着けていたら、それはそれで征服感みたいなものを感じるかもね。確かにオタク受けは良さそうだわ」
部長さまの傍らに戻ったリンコさまも、そのお言葉にウンウンと真剣に頷いていらっしゃいます。
「一応、上着も着てみましょう」
部長さまに促され、テーブルの上の上着を手に取りました。
これも思っていたよりペラペラ。
ほのかさまが着ているブレザーとデザインや色使いは同じですが、布地が違うみたい。
「着終わったら、ふたり並んでみて」
部長さまのお声で、ほのかさまが私に近づいてきました。
「これにあと、ソックスとシューズ、よね?」
ほのかさまと並んで直立不動の私の前に、早乙女部長さま、リンコさま、ミサさまが立ちはだかるように並び、私たちをジロジロ見つめていました。
「はい。Aタイプは白のハイソ、Bタイプは三つ折です。靴はどちらもブラウンのローファー」
リンコさまが何かの書類をめくりながら、部長さまの質問にテキパキお答えされています。
ほのかさまとこうして並んでみると、あらためて私の穿いているスカートの短かさが際立ちました。
私より少し背の高いほのかさまのスカートの裾と私のとを較べると、身長差を差し引いても10センチ以上の差がありました。
股下0センチ、クロッチ部分ギリギリ丈の頼りないペラペラなスカート。
少し背伸びしただけでも覗いてしまうその部分が今、どんな状況になっているのか、気が気ではありませんでした。
朝からいろいろと発情していた私ですから、この試着を始める前からすでに、たとえばもしも真下からスカートの中を覗かれたらわかる範囲には確実に、銀色ショーツに黒い濡れジミを作っているはずでした。
問題は、その後でした。
このお着替えを始めてからも、何度も奥の潤みを感じていました。
溢れ出したおシルは確実に前へ後ろへ、ショーツの布への侵食を広げているはずです。
おそらく正面から見ても、クロッチ部分の先端が黒ずんでいるのがわかるほどには。
だけど今のところ、みなさまからそういうご指摘はありません。
知ってか知らずか・・・
たとえ気づいていたとしても、事が事ですからご指摘を憚られているのかもしれませんが。
チョーカーを嵌められてマゾ性へ大きく傾きがちになっている私は、みなさまにそんな姿を気づかれ呆れられることを欲していましたが、辛うじて残っている理性の部分では、この試着が一刻も早く終わり、普段の服装に戻れることを願っていました。
「おーけー。ここは狭いから、ちょっと広いところへ行きましょう」
リンコさまとあれこれ打ち合わせをされていた部長さまがおっしゃるなり、スタスタ歩き始めました。
ぞろぞろと後につづく私たち。
会議室のドアを出て、オフィスのメインフロアのデスクやロッカーが置いていない、窓際の広めなスペースに誘導されました。
ロールカーテン全開の大きな素通し窓からは、抜けるような青空。
「窓を背にして、ふたり並んで立ってくれる、あ、もう少し間隔を空けたほうがいいわ」
五月らしい晴天の明るい陽射しが差し込む大きな窓を背に、ほのかさまと私が2メートル位の間隔を空けて並びました。
窓は、私の膝よりも低い位置から始まっていますから、お尻ギリギリのスカート直下から剥き出しな私の生足が、ガラスを挟んでお外へ丸見えとなっていることでしょう。
もっとも、地上数百メートルの高さですから、見上げて目を凝らさなければわからないでしょうが。
お近くのデスクに寄りかかるように、私たちの前で並んだお三方。
部長さまを真ん中に、私の側にリンコさま、ほのかさまの側にミサさま。
これから何を始める気なのだろう・・・
怖いような待ち遠しいような、ヘンな胸騒ぎを感じていました。
「ここであなたたちに、いろいろ動いてもらいたいの。ほら、アイドルって、かなり激しいダンスをしながら歌うから、それ風なダンスっぽい動きをね」
部長さまが私とほのかさまを交互に見ながらおっしゃいました。
ウンウンとうなずくほのかさま。
つられてうなずく私でしたが、心の中は大騒ぎ。
こんな、少し背伸びしただけでも下着が出てしまう衣装でダンスなんてしたら・・・
ひるがえるスカート、丸出しのショーツ、一目瞭然な銀色と黒のグラデーションを描く恥ずかし過ぎるシミ・・・
そんな光景が即座に頭に浮かび、あきらめにも似た陶酔感に襲われます。
視られちゃう・・・
心の中の大部分が、もはやマゾ色に染まっていました。
「それではまず手始めに、その場で軽くジャンプしてみてくれる?ぴょんぴょんぴょん、って感じで」
部長さまは、普通におっしゃっているのでしょうが、私の耳にはエスなかたからの冷たいご命令口調に変換されていました。
「はい」
ほのかさまがお返事と共に、ぴょんぴょんと軽やかにジャンプし始めました。
ミニスカートが微妙にひるがえり、ブレザーの中でバストが波打っているのがわかりました。
うわっ!可愛い!
ジャンプに合わせて髪の毛がフワフワ揺れて、跳び方もいかにも女の子っぽい可憐さで、本当のアイドルさんみたい。
しばし見惚れていると強い視線を感じ、部長さまが私をじっと見ているのに気づきました。
私もあわてて、ほのかさまに合わせて跳ね始めました。
思っていた通りでした。
膝を軽く曲げて跳び上がると同時に、ペラペラの頼りないスカートが風を受け、おへそのところらへんまでフワリと舞い上がりました。
当然のことながらショーツ丸出し。
2度3度、ジャンプするたびに、面白いくらい大げさにスカートがはためきます。
着地すると、腿の付け根辺りに辛うじて布の感触が戻ります。
そしてついに、自分の目で確認出来てしまいました。
銀色ショーツの正面下部、クロッチ部分で言うとほぼ全体、銀色の布地が濡れて黒く変色しているのを。
私が、こんな恥ずかしいことをさせられながらもはしたなく感じて、淫らに濡れてしまっている決定的な証拠。
私がマゾであることの証。
目前に並んだ六つの瞳に、バッチリ視られている・・・・
パンパン!
「はい、いいわ。ありがとう。どこか動きづらいところとか、あった?肩や袖が窮屈とか」
私たちの動きを真剣に見つめていた部長さまが手を叩き、尋ねてきました。
「いえ、これといって・・・」
ほのかさまが即答。
内心ドキドキな私も顔を上下にコクコクうなずきました。
「今度は、ジャンプすると同時に両腕を上に挙げてくれる?こんな感じで」
部長さま自ら、上半身だけでお手本を示してくださいました。
パチン!
小気味の良い拍手の音が響きました
それはなんだか、コンサートの最後で両手を頭の上に挙げて、アンコール!ってやっているような動きでした。
「こうですか?」
ほのかさまがすかさず、その場でやってみせてくださいました。
ぴょんと跳び上がりながら水平に開いた両腕を左右から上げていき、ジャンプの頂点のときに頭上で拍手をパチンッ。
「そうそう。うまいわ」
部長さまが満足そうに微笑みました。
「それと、森下さんは上着、取ってくれる?」
突然、部長さまがおっしゃいました。
「えっと、はい?」
「Bタイプはステージ用で、ブレザーは最初の数曲で脱いじゃうのよ。ステージの大部分はインナーだけで踊ることになるから」
あくまで真面目なお顔でご説明くださる部長さま。
「あ、はい。そういうことでしたら、わかりました」
薄っぺらなブレザーを脱ぐと、ノースリーブのボディコンビスチェ風。
大胆に開いた胸元からおっぱいの谷間が、ハーフカップのブラジャーの布まで見えそうなほど、これ見よがしに露出していました。
両腕は腋まで丸出し、おっぱいの谷間丸出し、おへそ丸出し、両脚も付け根まで丸出し。
それが今の自分の格好でした。
そして私は、みなさまの前でそんな格好になることを、心地良く感じ始めていました。
「それではやってみて。いい?はいっ!ワンツー、ワンツー」
部長さまの手拍子と号令に合わせて、ほのかさまと一緒に跳び始めました。
跳ねるたびに丸見えになるショーツ。
薄い布越しのバストも露骨なほど上下に跳ねています。
更に、両腕を大きく動かしていると、上半身に貼り付いていたインナーの布がどんどん肌をせり上がって行くのがわかりました。
おへそ上だった丈がウエストをせり上がり、お腹丸出しになって、遂にはアンダーバストのすぐ下あたりまでたくし上がってしまいました。
まるでスポーツブラをしているみたいな見た目。
伸縮性のあるピッタリ布地なので、一度せり上がってしまうとそこで留まったまま、自然には直りません。
その分、胸元の布がたるみ、私の視界には、余裕の出来た隙間からハーフカップブラの浅めな布地まで丸見えになっていました。
さすがにこれは直したほうがいいだろう、と思い、いったん動きを止めようとしたら、すかさず部長さまから鋭いお声。
「直しちゃだめっ!そのままでもう少しつづけて!」
真剣な目で睨まれました。
「はいっ!」
あわててほのかさまの動きに合わせました。
「おーけー。ちょっと止まって。森下さんはインナー直していいわ」
部長さまのお言葉に、すばやく布地を引っ張って、お腹を隠す私。
部長さまは何かコソコソ、リンコさまとご相談。
「今度は上半身の動きはさっきと同じ。ただし、ジャンプじゃなくて、拍手のタイミングで脚を左右交互に蹴り上げて見せて。いくわよ。はいっ、ワンツー、ワンツー」
少し戸惑ったようなご様子だったほのかさまが、部長さまのリズムに乗って唐突にからだを動かし始めました。
「こんな感じでいいですか?」
ほのかさまが再び、率先してお手本を見せてくださいました。
拍手のタイミングでラインダンスのように右、左と交互に蹴り上がるしなやかなおみ足、ひるがえるスカート。
真正面に陣取るお三方には、そのたびにほのかさまの純白ショーツが露になっていることでしょう。
絶望的なのに、なぜだか甘美な被虐感が全身をつらぬき、私もいつしかほのかさまの動きに合わせていました。
たちまちせり上がるインナー。
全開になる両腿の付け根。
「うん、いい感じよ。もう少しテンポを上げてみましょう。ワンツーワンツー」
部長さまの手拍子に合わせて、若干遠慮がちに脚を上げる私。
「森下さんはバレエ経験者でしょう?もっと高く脚を上げられるのじゃない?」
手拍子を打ちながら部長さまが叱責するようにおっしゃいました。
その目は真剣に私たちの動きを追っています。
「は、はいっ!」
それにお応えするべく、もう、なるようになれ、という気持ちで、グランバットマンのように高く右脚を蹴り上げました。
もはや絶対、完全に気づかれている。
こんな短かい、スカートの役も果たしていないような布を腰に巻き、盛んに脚を高く振り上げている私。
丸出しとなっているはずの銀色ショーツの布地に隠された、女性の女性たる部分。
その部分を中心として外へと広がっているはずの黒い濡れジミ。
こんなに至近距離で、これだけ高く脚を振り上げていれば、その異変に気がつかない人がいるはずがありません。
それでも、部長さまもリンコさまもミサさまも、そのことについては何もおっしゃらず、真剣な表情で私たちの即興ラインダンスを凝視しつづけていらっしゃいました。
ときどき何かメモを取り、私たちの前に回ったり後ろに回ったりしながら。
私が脚を振り上げるたびに、そのシミは今もジワジワ広がっているはずなのに。
両脚を激しく動かしているせいで、フルバックなショーツの後ろ側も、お尻の割れスジに沿って布地が集まってきてしまい、食い込むようなTバック状態になっていました。
お尻の皮膚に当たる空気の感触が増えたせいで、それがわかりました。
もちろん、前も食い込んできているはずです。
結果、シミの範囲も広がって・・・
そこまで考えたとき、ストップがかかりました。
「Bタイプのインナーは少しフィットさせ過ぎたかしら?」
「そうですね。でも、たくし上がりは、妙にエロティックで、見方によってはクライアントの要望に沿っているとも言えますよ」
「それはそうなのだけれど・・・確かもう少しルーズなタイプも作ったわよね?」
「その場合、襟ぐりや腋の余裕の調整が難しそうですね。隙間からポロリ問題が」
「Aタイプのほうは、問題無さそうね。スカートのひるがえり方もそこそこだし」
「重めにつくりましたから。あの程度のチラリなら、メディアでも許容範囲かと・・・」
「ミスリードさせたいなら、両タイプ共Tバック着用が必須のようね・・・」
私たちに休憩を命じた部長さまは、リンコさまにミサさまも加わって、何やら真剣にディスカッションされています。
私は急な運動で乱れた呼吸を整えるため、窓と窓のあいだの柱に背中を預けてうなだれていました。
そこへ、こちらも少し息を切らせた感じのほのかさまが、お声をかけてくださいました。
「こんな衣装を着て歌って踊らなきゃならないなんて、アイドルさんて、意外と大変な職業なのね」
顔を上げると、ほんのり火照ったような、ほのかさまの可憐な笑顔。
私の顔を嬉しそうに覗き込んできます。
「あ、はい。私もそう思います・・・」
「わたしは、この衣装、すごく恥ずかしいわ。こんな超ミニ、私生活では絶対に穿かないもの」
おっしゃってから私の下半身にチラッと視線を投げるほのかさま。
「でも直子さんが着ると、セクシーですっごくいい。やっぱり若いっていいな。肌もプルンプルンでうらやましい。プロポーションだって抜群だし」
インナーのせり上がりで丸見えになっているまま直しそびれていたお腹を中心に、ほのかさまからの熱い視線を素肌に感じ、モジモジするばかり。
「そ、そんなこと・・・ほのかさんのほうがずーっとお綺麗ですし・・・」
「ここに入ってからいろんな衣装を着せられたけれど、今日のはかなりキワドイ部類。直子さん、よくがんばったわ」
ほのかさまがニッコリと微笑み、イタズラっぽくウインクまでしてくださいました。
「それに直子さんて、お若いわりにずいぶんイロっぽい表情されるのね。隣で踊っているとき、横目でチラチラ見ながら見惚れちゃった」
「そ、そんな・・・」
「ううん。すごくいじらしいお顔だったわよ。なんだかギュッと抱きしめたくなっちゃうような」
憧れのほのかさまのお言葉に何てお答えすればいかわからず、ただドギマギするだけの私。
「ねえ?ちょっとお腹、さわっていい?」
「えっと、あの・・・」
そんな会話に、部長さまが不意に割り込んできました。
「はいっ、おつかれさま。Aタイプのほうには、大きな問題は無いみたい。たまほのはそのまま、休んでいていいわ」
ほのかさまへ向いて、おやさしくおっしゃる部長さま。
「Bタイプのほうは、もう少し見てみたいの。悪いけれど、森下さんはもう少しつきあってください」
部長さまがいつもの業務命令と同じ口調でおっしゃいました。
「は、はい・・・」
「上をこっちに着替えてくれる?」
今着ているのと同じようなインナーを差し出されました。
「今のよりルーズフィットなサイズ。これに着替えてもう一度踊ってみて」
私の顔を真正面から見つめて、無表情でおっしゃる部長さま。
「わかりました」
その手から衣装を受け取り、部長さまの端正なお顔を見つめてうなずきました。
部長さまの形の良い唇が、つづけて確かにこう動きました。
「今度はブラも取ってください」
「えっ!?」
着替えようとインナーのジッパーに伸ばしかけていた指が宙ぶらりんに止まりました。
「ブラって、ブラジャー、も、ですか?」
「そう。ユニットの中に何人かノーブラを売りにする子もいる、っていう話なのよ。だからそっちの具合も見ておきたいの」
「は、はい・・・」
突然の羞恥責め的なご命令に、とりあえずそう答える以外の言葉が出てきませんでした。
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