2015年10月4日

オートクチュールのはずなのに 22

 全開のシャワーみたいな激しい雨。
 大きな雨粒がとめどなく、顔やはだけた胸をバチバチたたきつけてきました。
 
 走っても歩いてもどうせずぶ濡れなのにやっぱり走って、剥き出しのおっぱいをプルプル揺らしながら赤い庇を目指しました。
 一足先に到着していたお姉さまは、赤い庇の下でレインコートのボタンを外し始めていました。

「ひどい降りになっちゃったわね。空一杯雨雲だし、当分やまなそう」
 脱いだレインコートの水気を払った後、ビニールトートからバスタオルを引っ張り出して渡してくださるお姉さま。

「だけどおかげで、面白い経験が出来そうよ。思った通り、誰もいないようだし」
 お姉さまが背後のガラス戸を、私にも促すみたいに振り返りました。
 バスタオルを濡れた肌に当てつつ、私も振り向きました。

 全面素通しガラス2枚の引き戸の向こう側には、煌々と電気が灯っていました。
 私の真後ろのガラス戸中央に横書きの赤い文字で、コインランドリー。
 その下には白い文字で営業時間のご案内が書かれていました。
 お姉さまがガラガラッと、その引き戸を開けました。

 八畳間くらいのスペース壁際に、洗濯機らしき物体が整然と並んでいます。
 空いたスペースにはデコラ張りの長方形テーブルが置かれ、折りたたみ椅子が二脚。
 テーブルの上には何も置いてなく、床はコンクリート、壁に手書きで、禁煙、の大きな張り紙。
 小じんまりと古くからやっていらしたような、渋めのコインランドリーでした。

「さあ、その濡れたワンピ脱いで、そこの乾燥機で乾かしてもらうといいわ。もちろん下着もね」
 さも当然のことのように、お姉さまがおっしゃいました。
 
 濡れた髪をバスタオルで丁寧に拭いながら室内を見渡していた私は、ギョッと固まります。
 思わず出かかった反問の言葉を何とか飲み込みつつ、お姉さまのほうを見ましたが、えっ!?ここでですか?という私の心からの叫びが、顔に書いてあったと思います。

「大丈夫よ。こんな土砂降りの中、わざわざ洗濯しようって外に出て来る人なんて、いるわけないでしょ?」
 私の顔を見てクスリと笑ったお姉さまが、愉しそうにおっしゃいました。
「少なくとも土砂降りがつづいているうちは大丈夫なはず。小降りになったら、わからないけれどね?」
 イタズラっぽくおっしゃってワザとらしく動かしたお姉さまの視線を追っていくと、一台の乾燥機。

 その乾燥機は、作動終了のランプが点灯していて、丸いガラス窓の奥には、女性ものらしき下着を含む衣類がいくつか横たわっていました。
 そのまま視線を横にずらしていくと、ここのコインランドリーは洗濯機三台、乾燥機三台という陣容。
 作動中の機械はひとつもなく、使用中ランプが点灯しているのは、その乾燥機一台だけでした。

「あとはまあ、さっきのあたしたちみたいに、そこの庇に雨宿りに来る人がいるかもしれないけれど、ここって最寄り駅からけっこう離れているから、可能性は低いはず」
「だから、さっさと脱いで乾燥機動かして、雨がやまないうちにさっさと立ち去ったほうが、あたしは得策だと思うけれどね」
 お姉さまのイジワル声が、本当に愉しそう。

「わ、わかりました・・・」
 お姉さまのおっしゃることが、もっともだと思いました。
 ここでグズグズしていたら、誰かがやって来るリスクが増すばかりです。
 びしょ濡れで素肌にべったり貼り付いているワンピースも気持ち悪いし。

 バスタオルをお姉さまにお返ししました。
 お姉さまは、そのバスタオルをテーブルの上に置くと、再び私を見つめてきます。
 テーブルの上には、ビニールトートとお姉さまが脱いだレインコートが無造作に置いてありました。

 ガラス戸に背を向けて、自分の胸元を見ました。
 おっぱいは左右とも完全にお外に出ていて、痛々しい先っちょがふたつ、宙を突いています。
 右手でその下に位置するボタンを外すと残りはひとつ。
 前屈みになって裾の下のほうに手を伸ばします。

 私、こんなところで今、裸になろうとしている・・・
 今日初めて訪れた街の、明るいコインランドリーの中で・・・
 大雨とは言え、いつ誰が来てもおかしくない公共の場所で・・・

 全身を被虐の血が駆け巡り、その血がどんどん下半身に集まってきて、疼いて疼いておかしくなっちゃいそう。
 でも表情はたぶんきっと、泣きそうな顔になっていると思います。
 テーブルの端にもたれたお姉さまが左側から、そんな私にカメラを向けていました。

 濡れそぼったワンピースを素肌から剥ぎ取るみたいに、両袖を抜きました。
 現われたのは、まるでカップレスブラのようにおっぱいを下から持ち上げている銀色、今や湿って黒ですが、のブラジャーと、何にも覆われていない下半身。
 脱いだワンピースを左腕に提げて両手を後ろに回し、お役目を果たしていないブラジャーを外しました。
 それから左足のミュールを脱ぎ、足首のショーツも外します。
 すべてを終えて、お姉さまのほうを向きました。

 今、私は、全裸。
 正確に言うと、首に巻かれたマゾのシルシである赤い首輪と両足の白いミュール以外、一糸纏わぬ、全裸。
 眩しいくらいの蛍光灯の光が、コインランドリーの狭い空間に情け容赦なく、生まれたままの私の姿を鮮明に浮き上がらせていました。
 その恥ずかし過ぎる光景はしっかりと、お姉さまのカメラで記録されていました。
 意識しなくても自然に両腕が、胸と股間を隠すように動いて、全身が縮こまっていました。

「あそこに水道があるから、ワンピは軽く絞っておくといいわ。直子のおツユだらけのパンティは手洗いしてからのほうがいいわね。ブラは湿っただけっぽいから、そのままでもよさそう」
 カメラを向けたまま、お姉さまが近づいてきました。

「すっごくエロいわよ、直子。こんなところに真っ裸の女の子がいるのって。それも赤い首輪なんかしちゃってるし」
「シュールとか言うより、やっぱりエロティックね。その恥ずかしがっているところがたまらない。思わず襲い掛かりたくなっちゃう」
 カメラを下ろして、お姉さまが私の目の前に立ちました。

 前を隠すように両手で素肌に押し付けていた衣類を、少し強引に引き剥がしてご自身の左手に持ち、右手で私の左手を引くお姉さま。
 洗濯機と乾燥機の隙間に設えられた、小さな受け皿が付いた水道の蛇口まで引っ張られました。
 
 衣類をその受け皿に置くと、私の手を離しました。
「ほら、早くやっちゃいなさい。もたもたしていると、雨、やんじゃうわよ?誰か来ちゃうわよ?」
 私の後方に退いたお姉さまが、再びカメラを向けてきました。

 水道の前に立ちました。
 最初に、たっぷり雨を含んだワンピースを軽く絞り、広げてからあらためて水道水で軽く水洗い。
 それから入念に絞りました。

 次にショーツ。
 手に持ったときから全体がヌルヌルしていました。
 水を流しながら手洗いしていると、だんだんとヌルヌルが消えていきます。
 お出かけ中に、こんなに汚していたんだ・・・
 今更ながらの恥ずかしさに全身がカーッ。
 ブラジャーも軽く水にくぐらせて、軽く絞りました。

「ずいぶんご丁寧なお仕事ぶりだこと。さすが、全裸家政婦を自認するだけのことはあるわね」
 お姉さまのお芝居っぽいからかい声が背後から聞こえてきました。
 
 お姉さま、今の私は家政婦ではありません。
 だって今洗ったのは、自分で汚した自分のお洋服なのですから。
 ただのヘンタイ女の全裸お洗濯です。
 こんな場所で全裸になっていることで自分のマゾ性がどんどん膨張し、より強烈な辱めをからだが欲しているのがわかりました。

「洗濯機も乾燥機もかなり年季が入った古い型みたいね。この手だと、どのくらい回せばいいのかしら?」
 独り言みたくおっしゃって、機械に貼られた取り扱い説明文を読むお姉さま。
「まあ、ブツは少ないし、20分も回せば乾くでしょう」
 お姉さまがランプの点灯している乾燥機のすぐ横の一台に手をかけ、扉を開けました。
 私も絞り終えた衣類を持って、そちらへ移動しました。

 お姉さまに開けていただいた乾燥機の中に、衣類を入れます。
 ワンピースとブラジャーとショーツ。
 大きな円形ドラムの中に小さな布片が三つだけ。
 なんだか間の抜けた光景に見えました。

「これっぽっちだと、ちょっともったいないような気にならない?」
 お姉さまも私と同じことを思われたみたいです。
 少し考えるようなそぶりをされた後、おもむろに着ていたタンガリーシャツのボタンを外し始めました。

「このシャツも少し湿っちゃったし、汗もかいたからさ、この際一緒に乾かしちゃおう。直子、これも水洗いお願い」
 お姉さまから手渡されたタンガリーシャツは、確かに全体に薄っすら湿っていました。
 お姉さまの体温で薄っすら生温かく、お姉さまの香りが薄っすらしていました。

 そして何よりも驚いたこと。
 それは、シャツを脱いだお姉さまがノーブラだったことでした。
 黒無地の半袖ボートネックでピッタリフィットなTシャツ。
 そのバスト部分先端が左右ともクッキリと浮き上がっていました。

「あたしもあんまり外出でノーブラはしないのだけれどね。今日は直子に影響されちゃったみたい。たまにはいいかなと思ってさ」
 私の視線の先に気づかれたお姉さまは、少し照れたみたいにお顔をほころばせ、そうおっしゃいました。

「だけどあたしはノーブラでも、直子みたいに無駄に恥ずかしがったりはしないわよ。それもひとつのファッションと思っているから、照れずに堂々と出来るの」
「直子みたいに、すぐにいやらしい妄想が広がらないからね」
 言い訳っぽくつづけるお姉さまが、なんだか可愛らしい。
 すっごく嬉しい気持ちで水道まで行き、タンガリーシャツを丁寧に手洗いしました。

 乾燥機の中の布片が四つになりました。
 お姉さまが扉を閉め、コインを投入。
 タイマーは30分を示していました。
 
 ということは、私は泣いても笑っても、この場にあと最低30分間は、全裸のままいなければならないわけです。
 そのあいだ私に出来ることと言えば、このまま雨が激しく降りつづけることを祈ることぐらいしかありません。

 乾燥機を離れたお姉さまは、いったんテーブルのほうへ戻り、折りたたみ椅子をひとつ、入口のガラス戸のまん前に置きました。
「ずっとさっきから気になっていたのよ、直子のその濡れた髪。ほら、こっち来て座って」
 なるべくお外から見えないよう、ガラス戸前を避けて隅っこへ隅っこへと逃げていた私を、容赦なく呼びつけるお声。
「肌にあちこち貼りついてエレガントじゃないから、あたしが軽くセットしてあげる」

 ご命令に逆らえるはずもなく、とぼとぼ置かれた椅子のほうへ。
 椅子は、さっき入ってきたガラス戸に向けて置いてありました。
 そこへ座ると、ガラス戸に書かれたコインランドリーというカタカナが鏡文字になって目前にありました。
 ガラス戸の向こうが相変わらず、滝のように降り注ぐ大雨なことだけが、唯一の心の拠りどころ。
 狭い室内に響くザザァーッというこもったような騒音が、いつまでもつづくことを願うばかりです。

「なかなかスリリングでしょ?もしも誰かがここに入ってこようとそのガラス戸を開けたら、最初に目に入るのが直子の裸なの」
「まあ、入ってくることは無いと思うけれど。誰かが道を通ったら、ガラス越しに見えるのかな?この雨じゃガラスも曇って見えないかな?」
 
 お姉さまが背後に立ち、私の濡れた髪をバスタオルで拭いながら、世間話でもするように語りかけてきました。
 なんだかヘアサロンのオネーサンみたい。

「一番来そうなのは、あの乾燥機に残っている洗濯物の持ち主よね。女性みたいだけれど」
 お姉さまが私の髪を指で梳き始めました。

「女性なら、なんとかごまかせるかもしれないわよね。突然の雨でびしょ濡れになっちゃったんですぅ、って」
「だけど、オトコだったら、いろいろややこしくなりそう」
 そこでクスッと笑うお姉さまのご様子は、まったくの他人事のよう。

「でもまあ、あんまり大事になってもアレだから、もしも誰か来る気配があったら、そこのバスタオルをからだに巻くことだけ、許してあげる」
 お姉さまが私の後ろ髪をいくつかに分けているのがわかります。
 どうやら軽く結ってくださるみたい。

「もっとも、巻いていいか決めるのはあたしだけれどね。こんなところでバスタオル一枚っていうのも、考えようによってはかえってエロいかも」
「若い男の子だったら、かなりコーフンしちゃうでしょうね?襲い掛かってきたら、どうする?」
 からかい声のお姉さまですが、両手はテキパキと動いていました。

「はい出来た。ヘアゴム無いから応急処置だけれど。立って、こっち向いてみて」
 お声に促され、うつむきがちに立ち上がりました。
 椅子の赤いビニールレザーに、直径2センチくらいの水溜りが出来ていて、股間とのあいだに短い糸が引きました。
 思わずそれから顔をそむけると、顔の左右に毛先が揺れました。
 どうやらツインに分けて、それぞれを緩く編んでくださったようでした。

「うわー。こういう髪型にすると、直子って幼くなるのね?」
 本当に驚いたお顔で、私の顔をまじまじと見つめてきました。
「そ、そうなのですか?」
 ガラス戸にぼんやり映っていた自分の顔を見た限りでは、そんなに変わったようには見えなかったのですが。
「うん。雨でメイクも落ちちゃったから、ほとんどスッピンなせいもあるのかしら。なんだか頼りなげで、でもどこか生意気そうで、すごく虐めたくなる顔」

 なおもじっと見つめてくるお姉さまの目力に負けて目をそらすと、視線は自然とお姉さまのTシャツ胸元で目立つ突起に貼りついてしまいます。
 お姉さまもずっと私といて、ずっと感じていらっしゃるんだ・・・
 なんとも言えない甘酸っぱいものがこみ上げました。

「生意気顔の原因はそのアイラインね。こんな雨でも落ちないなんて、大したウォータープルーフぶりだこと」
「そのアイラインも落としたら、もっと幼く見えるのでしょうね。それもそれでそそるものはあるけれど」
 お姉さまの口調が早口気味になっていて、それはなんだか興奮されているようにも思えました。
 興奮というのはもちろん、性的に、と言うか、エス的に。

「締め切っているせいか、この部屋ネットリ蒸しちゃってちょっと不快。換気しましょう」
 おっしゃるや否や、ツカツカとガラス戸に歩み寄り、ガラガラっと50センチほど開けてしまいました。
 
 途端に盛大にボリュームが上がる雨音。
 室内よりも少しひんやりとした空気と、ザザザーッという嵐そのものな雨音が、狭いコインランドリーの中を満たしました。

「この調子なら、まだまだ邪魔は入らなそうだから、思い切ってもっと冒険しちゃいましょうか」
 雨音の騒音に負けないよう、大きめになったお姉さまのお声。
 開けた戸はそのままに、テーブルのほうへと戻っていかれました。

「直子、こっちに来なさい」
 開けたままの引き戸がすごく気になるのですが、呼ばれたからには仕方ありません。
 お姉さまは、テーブルの上のビニールトートの中をガサゴソされています。
「これ、着けて」
 差し出されたのは、首輪に繋ぐ鎖のリードでした。

「は、はい・・・」
 差し出されたリードの金具を、首輪のリングに嵌めました。
 重い鎖が垂れ下がり、胸元からお腹にかけての素肌にぴったり触れます。
 そのひんやりとした金属の感触に、背筋がゾクゾクッと震えました。

「ねえ?こういう激しい雨の音って、心を昂ぶらせる何かがあると思わない?」
 リードを着けた私を至近距離で、まっすぐ見つめてくるお姉さま。
「えっと、それは・・・」
「あたしはそうなの。台風の日とか、なぜだかワクワクしちゃうタイプ。雨の音とか風の音とかに」
 お姉さまは、私の返事なんてハナから聞く気はないようでした。
 私を見つめてくるそのふたつの瞳に、エスの炎がメラメラ燃え盛っているのがわかりました。

「そこ開けて、降りしきる雨の音を直に聞いたら、あたしもう、どうにも我慢出来なくなっちゃった」
 お姉さまの右手がリードの途中を掴み、グイッと引っ張られました。
「あうっ!」
 顔が首ごと、お姉さまのお顔にぶつかりそうなほど、引き寄せられました。

「あたし今、直子をめちゃくちゃマゾ扱いしたくて仕方ないの。虐めたくて虐めたくて」
「はうっ!」
 いつの間に手にされていたのか、木製の洗濯バサミで尖った右乳首を素早く噛まれました。
「ああんっ!」
 つづけざまに左も。

「直子、イっていいわよ。今日はずーっとイキたかったのでしょう?あたしが許すわ。ここで思う存分、イキなさい」
 ここ、とおっしゃったとき、右手の人差し指がテーブルの上をコツコツと叩きました。
「えっ?」
「だからここよ。このテーブルの上でオナニーしなさい」
 
 お姉さまのお顔が少しだけ離れ、その唇の端が少しだけクイッと上がりました。
 おそらく微笑まれたのだと思います。

「出来るわよね?」
 テーブルの上でオナニー?でもその最中に雨がやんじゃって誰か来たら・・・
 そんな思いが頭の中をグルグル駆け巡り、お返事出来ないでいると、またグイッとリードが引っ張られました。
 今度は実際に、私とお姉さまのお顔がぶつかりました。
 唇同士で。

 間髪を入れず、お姉さまの熱い舌先が私の腔中にねじ込まれました。
「んぐぅぅ」
 どちらの喉から出た音なのか、なんとも卑猥な吐息が聞こえ、その後、ヌチュヌチュピチャピチャという音に変わりました。
 その他に聞こえるのは、ただ単調でうるさいお外の雨音だけ。

 お姉さまの両手が私の背中に回り、お姉さまのTシャツ越しのおっぱいが私の洗濯バサミ付きおっぱいを押し潰します。
 噛み付いた洗濯バサミが暴れ、捻られ、食い込み、乳首がちぎれそうなほどの痛みが走りました。
「ぬぅぐぅぅぅ・・・」
 塞がれた唇からくぐもって漏れた小さな悲鳴。
 お姉さまが唇を離されたとき、私は小さくイっていました。

 バスタオルでご自分の唇を優雅に拭ったお姉さま。
 その唇が動きました。

「やりなさい」
「はい、お姉さま」
 私は、きちんとイキたくて仕方なくなっていました。


オートクチュールのはずなのに 23


2015年9月27日

オートクチュールのはずなのに 21

 横断歩道を渡り切ると、舗道を行く人影はずいぶん減りました。
 ビニール傘がパタパタとリズミカルに音をたてるくらいの雨が降る中を、お姉さまに寄り添って歩きます。
 ときどき思い出したように、車が車道を走り抜けていきます。

「やっぱり予想通り、閑散としているわね?平日だったらこの辺りも、サラリーマンとOLがひっきりなしなのに」
 お姉さまが私のほうを向いておっしゃいました。
「ここはどの辺りなのですか?」
「方向的には、来るときに乗った地下鉄の駅へ戻っている感じね。ちなみにこの右側の広くて大きな建物は最高裁判所」

「えーっ!?そうだったのですか?」
「今日は休日だからそうでもないけれど、普段はもっとものものしいわよ。入口ごとにケイカンだらけみたいな感じで」
 灰色の建物に横目を遣ると、ちょうど入口のところで、ひとりのオマワリサンが傘もささずに仁王立ちしているのが見え、ビクンとからだが震えました。

「ここを過ぎれば、もう公的な建物もないから、オマワリサンにビクつくこともなくなるわ」
 オマワリサンを見て、お姉さまにからだをいっそうスリ寄せた私をなだめるような、お姉さまのおやさしいお声。
「それにしても本当に人がいないのね。こんな感じなら、直子をここで裸にしちゃってもいいくらい」
 周りを見回すようにしてから、私の顔を覗き込んでくるお姉さま。
 剥き出しの奥がキュンと疼きました。

 街並は、低めのビルが立ち並ぶ、よくあるビジネス街っぽくなっていました。
 時折、お弁当屋さんやレストランぽい建物が混じり始めてはいるのですが、みんなシャッターが下りてお休みみたい。
 通り全体が静まり返り、聞こえてくるのは雨の音ばかり。
 この通りに入ってから見かけた人影は3人だけ。
 どなたも傘を低くさしてうつむきがち、私たちを一顧だにしませんでした。

「でもやっぱり、こんな街中で直子を丸裸にするのは、あたしにとってもちょっとハードル高いから、その代わりゲームをしましょう」
 お姉さまが前方を向いたままおっしゃいました。
「そうね・・・あたしたちの傍らをタクシーが通り過ぎたり、すれ違うたびに、直子のワンピのボタンをひとつ外す、っていうのはどう?」

 どう?とおっしゃられても、私には拒否権が一切ないわけですし。
 前方10メートルくらいにタクシーが一台こちら向きに、ライトをピカピカさせて停車していました。
 お姉さまったら、あのタクシーを見て思いついたに違いありません。
 あのタクシーが走り出すか、私たちがあそこまでたどり着いたとき、私はワンピのボタンをひとつ外すことになるわけです。
 私がコクンとうなずくのが合図だったかのように、停車していたタクシーがこちらへ向かって走り出しました。

「最初は胸元のボタンね。次からは直子の好きなところを外していいわ」
 タクシーが私たちの横を通り過ぎるとお姉さまが立ち止まり、私はご命令通り、胸元上から三つ目のボタンを外しました。
 胸元の圧迫感が消え、胸の谷間が乳輪まで、大胆に露出しました。

「うふふ。おっぱい出たわね。まあ、これからは、なるべく人も車もいなそうな路地を歩いてあげるから、安心して」
 再び歩き始めたお姉さまが愉しげにおっしゃいました。
「この辺から左のほうへずっと歩いていくと、大きめな公園があるはずなの。草木がこんもり茂って小高い山みたいになった自然公園」
「そこで直子にオールヌードになってもらうのが、あたしの当初の計画だったの。でも、この雨だから人が全然いなそうなのよね」

「視てくれる人が全然いないのもつまらないわよね?だから、そのときはボーナスステージ。あたしがたっぷり直子のからだをイタズラしてあげる。持ってきたオモチャで、イかせてあげるわ」
「直子は、都心の公園で丸裸になって、緑の自然の中でイっちゃうわけ。もちろん声だけはがまんすることになるけれど」
「どう?愉しみでしょ?」

 お姉さまがおっしゃったことを、頭の中で妄想してみます。
 雨の降りしきる森みたいな場所で、真っ裸になってお姉さまにイクまで辱められる自分・・・
 からだがはしたなく火照ってきました。
 車道を左のほうへ渡ろうとして立ち止まった私たちの目の前を、黒塗りのタクシーが通過していきました。

「意識して見ると、タクシーって意外と走っているものね。あ、また来た」
 道路渡るまでに2台のタクシーと遭遇し、私はボタンをふたつ外さなければいけないことになりました。
 
 一番影響が少なそうなおへそから股間のあいだのふたつを外しました。
 残るボタンは4つ。
 公園に着くまで、裾の一番下、実質的には下から2番目と、胸元4番目のボタンだけは死守したいところです。

 道路を渡り左に折れる路地に入ると、通りは見事に閑散としていました。
 車一台だけ通れそうな通りには、人っ子一人なく、ただ雨が地面を打つ音だけが響いています。

 その雨が、かなり強くなってきていました。
 さっきまでパラパラだったのが、今はザーザーッという感じ。
 おまけに風も出てきて、私たちが進む方向には向かい風となっていました。

 お姉さまが傘を前向きに傾け、風に逆らうように進みますが、傘をすり抜けた風が私のワンピースをはためかせ、Vゾーンを押し開きます。
 あれよあれよという間に、左右の乳首ともお外に飛び出していました。
 裾も完全に左右に割れっぱなしで、肌色が丸出し。
 ああん、いやんっ!
 胸元や裾を直すことは禁じられているので、そのまま歩くしかありません。

「本格的に降ってきちゃったわね。これじゃちょっと、傘一本じゃキツイ感じ」
「あの庇の下で、とりあえず雨宿りしましょう。あたし、カッパ着るから」
 お休みのお店屋さんらしきシャッター前の軒下を指さすお姉さま。
 私たちが庇の下にたどり着くのを待っていたかのように、雨はいっそう激しく、ザンザン降りになりました。

「せっかく直子が、とんがり乳首とマゾマンコ剥き出しの、こんなにいやらしい格好をして雨宿りしているのに、この雨と風じゃ誰も外に出てこなそう」
 傘を閉じたお姉さまが恨めしげにお空を見上げました。
 私の胸元は、おっぱいが乳首もろとも完全に露出しているので、通りに背を向けて立ちました。

「バッグ貸してくれる?」
「あ、はい」
 雨が強くなってからは左腕で庇うように提げていたので、バッグはビニールの表面以外、そんなに濡れていませんでした。

 バッグの中から半透明の白い包みを取り出すお姉さま。
 どうやらそれがお姉さまのレインコートのようです。

「直子用にも透明のビニールのコートをもってきたのだけれど・・・」
 そこまでおっしゃり、瞳を閉じて少し考えるような仕草をされるお姉さま。
 それからお顔を上げ、ふたつの瞳にたっぷりのイジワルな光をたたえて、こうつづけました。

「もしも直子もレインコートを着たいのなら、そのワンピは脱いで、素肌に直に着てもらうことにするわ」
「それか、今の格好のまま、傘さして歩くか。好きなほうを選ばせてあげる」

 折りたたまれたご自分のレインコートを広げながら、お姉さまがイタズラっぽく笑いかけてきました。
 軒先から出っ張っているビニールらしき庇を、雨粒がザザザザッとやかましく打ちつける音の中で、私はしばし考え込みました。

「お姉さま?質問、いいですか?」
「どうぞ」
「そのレインコートって、完全に透明なのですか?」
「そうよ。このビニール傘と同じようなもの。丈はそのワンピより若干長いと思う」
「これから行く公園ていうのは、遠いのですか?」
「うーん、10分も歩けば着くのではないかしら。でももう少し小降りになってくれないと、行く気しないわね」

「そこに行くまでに、また信号待ちとかありますか?」
「どうだったっけかな?わからないけれど、たぶんありそうね」
「途中で雨がやんでも、そのままなのですよね?」
「そうね。公園でヌードになった後なら、着替えさせてあげてもいいかな」
 お姉さまは、バッグから取り出した白いバスタオルで、濡れたバッグの表面を拭きながら答えてくださいました。

 真剣に悩みました。
 全裸に透明レインコートっていうのも、すっごくやってみたい気にはなっていました。
 確か、やよい先生との初野外露出のときも、ユマさんと一緒に大雨の中で透明レインコートを着ていたっけ・・・
 束の間、懐かしくも恥ずかしい思い出がよみがえりました。

 だけど、いくら大雨で人が通らないと言っても、ここは天下の往来で、時間もまだ午後の4時過ぎ。
 これから10分間歩くあいだ、誰にも会わないという保証はどこにもありません。
 曇っているとはいえ充分明るいですから、透明ビニールの下が全裸であれば、視線を向けさえすれば一目瞭然で、その肌色の意味を知られてしまうことでしょう。
 途中に信号待ちがあって、隣に誰か並ばれでもしたら・・・

「やっぱり、今のまま、このワンピースにしておきます・・・」
「そう。わかったわ。それなら、まだゲームもつづいている、ということでいいわね?こっちを向きなさい」
 
 ご命令に振り返ると、お姉さまがハンディカメラをこちらに向けていました。
 見知らぬお店の軒先でおっぱいを丸出しにしている私のふしだらな姿が、映像記録として残されました。
 そして目の前の通りを、黄色いタクシーが二台つづけてゆっくりと横切っていきました。

 今やみぞおちと土手の上しかボタンが留まっていない、私の頼りないミニワンピース。
 もう金輪際、一台のタクシーも目前に現われないで、と祈る他はありません。
 雨宿りを始めたときより、雨も風も格段に強くなっていました。

「直子が傘さすなら、バッグは濡れないように、あたしが持ったほうがよさそうね」
 左肩にビニールトートを提げて、その上からレインコートを羽織るお姉さま。
 白濁した半透明のレインコートはポンチョっぽい形で、フードをすっぽりかぶったお姉さまは、妙にスラッとしたテルテル坊主さんみたいでした。

「ゲリラ豪雨なのかしらね?ぜんぜんやむ気配が無いのだけれど」
 私にカメラを向けたまま、退屈そうなお姉さまのお声。
 大雨で誰も通らないとは言っても、昼間の街角におっぱい剥き出しで突っ立っているという状況は、あまりにもスリリング。
 充血した乳首を風が撫ぜるたびに、背筋がムズムズ感じていました。

「ここでただボーっと、雨がやむのを待っているのも、芸が無いわね」
 お姉さまがいったんカメラを下ろし、私のおっぱいを舐めるように見つめてきました。
「そうだ!直子、傘さして道路の向こう端まで行って、ゆっくりこっちに歩いてきてよ。それを撮影するから」
「篠突く雨の中、おっぱい丸出しで歩いてくる赤い首輪の女の子、なんて、なんだかアートっぽくない?」
 ご自分のご提案に、満足そうにうなずくお姉さま。
 再びカメラを私に向けてきました。

「わかりました。お姉さまがそうおっしゃるのなら」
 立てかけてあったビニール傘を手に取り、お外のほうへ一歩踏み出しました。

 庇の先端まで行って通りを見渡します。
 数メートル先も霞むほどの勢いで、雨粒の群れが地面を打ちつけていました。
 人も車も通る気配はまったくありません。
 街全体がされるがまま、ひたすらこの雨が通り過ぎるのを待っているような雰囲気でした。
 これなら大丈夫。
 傘を広げました。

 庇から一歩出た途端、頭上から盛大な騒音が響いてきました。
 見た目より風も強いようで、襟ぐりが孕み、ワンピースが素肌から浮き上がります。
 剥き出しの乳首を乱暴に愛撫する風と雨。
 湿度が高いためか、さほど寒くは感じないのが救いでした。
 ゆっくりと道の端まで歩き、回れ右をしました。

 今度は、軒先で構えているお姉さまのカメラレンズに向かって、ゆっくりと近づいていきました。
 さっきとは逆に左からとなった風が、胸元を容赦なくいたぶります。
 裾も大きく風を孕み、下腹部あたりまで露出しています。
 今、そんな自分の姿が記録されているんだ・・・
 下半身がジンジン痺れるように疼きました。

 そのときでした。
 突風が渦巻くようにヒューと鳴き、持っていた傘が飛ばされそうになって手にギュッと力を入れた刹那、あっという間にオチョコになっていました。
 ここぞとばかりに全身に襲い掛かる雨粒たち。
 一瞬にしてズブ濡れ。
 壊れた傘のビニールがハタハタとはためき、私は大慌てで軒先に駆け戻りました。

「あらあら、とんだ災難だったわね、全身ズブ濡れじゃない?」
 至近距離でカメラを向けつづけるお姉さま。
 素肌にぺったり、ワンピースの布地が貼りついたおっぱいや下半身を撮っているようです。

「すっごくエロいわよ。ワンピが肌に密着しちゃって、からだのライン、クッキリ丸わかり」
「でも直子、ここでズブ濡れになったのって、ある意味ラッキーだったのかもよ?」
 ようやくカメラを下ろしたお姉さまが、謎なことをおっしゃいました。

「通りにカメラ向けてズームを弄っていたらね、近くに面白いものがあるのを発見しちゃったの」
「こんな雨なら、たぶん誰も来ないから、ゆっくり出来ると思うわ、いろいろと」
 お姉さまはカメラをポンチョのポケットにしまい、フードを深くかぶり直しました。

「あそこの赤い庇のところね。あそこまで一気に走るわよ」
 さされた指の先十数メートルのところに、雨に煙って確かに赤い庇が見えました。

「その傘はたぶんもう使い物にはならないでしょうけれど、ここに置いていったらご迷惑だから、持ってきなさい」
「直子は、もうそれだけびしょ濡れなのだから、そのままでも平気よね?思う存分濡れちゃいなさい」
「あの、えっと・・・」
「安心なさい。すぐにサッパリ、気持ち良くなれるから。行くわよ?」

 私のほうを向いていたお姉さまがお外に向き直り、間髪を入れず軽やかに大雨の中へ飛び出していきました。
「あ、お姉さまっ!待ってください!」
 私もあわてて、壊れた傘を片手にお姉さまの背中を追いかけました。


オートクチュールのはずなのに 22

2015年9月23日

オートクチュールのはずなのに 20

 左側は長くまっすぐにつづくフェンス、右側はマンションなのかオフィスビルなのか低めのビルが立ち並ぶ、ひと気の無い直線道路。
 その突き当たり曲がり角から現われた、微妙にお揃いっぽい白と青系統のカジュアルなコーディネートで寄り添うラブラブカップルさん。
 
 そのカップルさんと私たちとの距離は、だいたい30メートルくらい。
 ひと足進むごとに、その距離がどんどん縮まっていきます。

 肩をぶつけるように歩きながら、仲睦まじくおしゃべりされていたおふたりのうち、男性のほうが先に、私たちに気づきました。
 お顔を上げて何気なく私たちのほうを見た後、いったん視線をお相手に戻し、またすぐ、今度はじーっと私だけに注目してきました。
 男性の視線が、私の首輪から胸元に移り、下半身を舐めた後、再び胸元に固定されたのがわかりました。
 男性の異変に気づいたらしい女性のかたからの視線も、私に釘付けになりました。

 お姉さまに手を引かれ車道側を歩いている私は、極力何でもないフリで無表情に努めました。
 だけど心の中は大騒ぎ。
 視ている・・・しっかり視られちゃっている・・・
 自分に対するカップルさんのご様子が気になって仕方なく、目線を動かさないようにチラチラ窺がわざるをえません。

 みぞおちの辺りを基点にして首周りのほうへとV字に大きくはだけた私の胸元。
 おっぱいの大部分がお外に露になっているはずです。
 うつむいた自分の視点では、浮き上がった布地の隙間から乳首も何もかも丸見えなのですが、布地が乳首を擦る感触もするので、乳首までは出ていないのかもしれません。
 だけど大きめの乳輪は、確実にお外にはみ出ているはず。

 包み込むものを失くしたふたつの乳房は、ひと足歩くごとにプルプル小刻みに暴れています。
 とくにビニールトートを提げている左肩のほうは、バッグの提げ手でワンピースの肩口の布が袖側に引っ張られ、右に比べて大きくはだけていて、歩くたびにそれがジリジリ広がっている感じなので、いずれ左乳首は出しっぱなしになっちゃうことでしょう。

 あと10メートルくらいでカップルさんとすれ違う、というときに、お姉さまの手が離れました。
「ちょっとそこに立ち止まっていて。撮影したいから」
 おっしゃるなりタッタッタと私の前方に駆け出すお姉さま。

「はい、こっちに目線向けて歩いてきて」
 私の5メートル先くらいで振り返ったお姉さまがハンディカメラを構え、しんと静まり返った道路に大きめのお声が響きました。
 まるでカップルさんに私の存在をあらためてアピールするような、わざとらしくもイジワルな仕打ち。
 案の定、お姉さまの背中の数メートル手前まで迫っていたカップルさんたちも、そのお声に一瞬ビクッとされましたが、それからはもう遠慮無しに興味津々な感じで、私にだけ注目して歩を進めてきました。

 お言いつけ通りトボトボ近づいていく私の姿をレンズとカップルさんがずっと見つめています。
 ふと自分の胸元に視線を落とすと、尖りきった左乳首が完全にお外へ飛び出していました。
 カップルさんがお姉さまの横を通り過ぎ、私に近づき、すれ違いました。

 すれ違いざまのおふたりの表情を、忘れることは出来ません。
 男性の、なんだか嬉しそうで好奇心丸出しの子供みたいな笑顔。
 女性の、汚らわしいものでも見るような軽蔑しきった冷たいお顔。

「なにあれ?アダルトビデオの撮影か何か?」
 私たちをみつけてからすれ違うまで、まったく会話されていなかったカップルさんのヒシヒソ声が、背後から聞こえてきました。
「かもね・・・」
「こんなところで胸出しちゃって、恥ずかしく・・・」

 その後は聞き取れませんでしたが、首輪、とか、エスエムチョーキョー、という言葉が断片的に聞こえた気がしました。
 私のマゾマンコはヒクヒク震え、お姉さまの傍までたどり着いたときには、立っているのもやっと、みたいな状態でした。

「バッチリ注目浴びちゃったわね?嬉しいでしょ?」
 お姉さまに再び手を握られ、そのまま歩きつづけます。
「すれ違った後も、何度もこっちを振り返っていたわよ。それはそうよね、こんなところにおっぱい丸出しの女がいたのだから」
 お姉さまの視線は、痛々しく尖って宙空を突いている、私の剥き出しの左乳首に注がれています。

「カレシのほうはニヤニヤしっ放しで、とても嬉しそうだったわね。バッグの中身にもピンときたみたい。カノジョのほうは呆れていた感じ」
「直子のエロい姿に刺激されて、あのおふたりさんのデートが、これから夜にかけて盛り上がるといいわね?」
 お姉さまが歩調を緩め、私の顔を覗き込みながら、からかうみたくおっしゃいました。

 私はと言えば、いつまた前方から歩行者が現われないかと、気が気ではありません。
 道はもうしばらくまっすぐですが、途中に四つ角もいくつかあるみたいなので、不意に現われる可能性は充分にありました。
 でも、幸いその後は、後ろから追い抜いていった自転車が一台あったきり誰も現われず、私は左乳首を外気に晒したまま歩きつづけました。

「ほら、あそこにオマワリサン」
 お姉さまが不意に立ち止まり、長いフェンスが途切れて門のようになっている空間の奥を指さしました。
 
 その指の先を辿ると確かに、門の車止め数メートル先の詰め所みたいな小さな建物の脇で、ひとりのオマワリサンが長い警棒を杖のように前に持ち、こちらを見ていました。
 その奥には広大な敷地。
 どうやら誰か偉い人の公邸のようでした。
 あわてて、からだごと顔をそむける私。

「そんなにあわてなくても平気よ。あの人の仕事はお邸の警備なのだから、よほど怪しげな人物でもなければ、持ち場を離れることはないはずよ」
 お姉さまがその前を平然と通り過ぎながらおっしゃいました。
「直子が全裸だったりすれば、無線で応援呼んで、別のオマワリサンがお相手してくれるかもしれないけれどね。どう?やってみる?」
 笑いながら笑えないご冗談をおっしゃるお姉さま。

「だけど、ここから先はしばらく人通りが増えそうな幹線道路沿いを歩くから、残念ながら、その乳首はしまっておいたほうがよさそうね」
 門の前を通り越して数メートルくらいのところで、お姉さまがまた立ち止まりました。
 私たちの行く手には、久しぶりの信号機と、高速道路の高架、そしてその下の幹線道路らしき幅広い道路が見えていました。

「ボタンひとつ留めて、おっぱいはしまっていいわ」
 お姉さまのお許しを得て、大急ぎで胸元を直しました。
 バストが窮屈になり、ワンピースの布を押し上げるふたつの突起が復活しました。

「だけど、それだけじゃ面白くないから、こうしましょう。その代わりパンティを脱ぐの」
 お姉さまがハンディカメラをこちらに向けながら愉しげにおしゃいました。

「えっ!?こ、ここでですか!?」
 思わず聞き返してしまってからすぐに、しまった!と後悔しました。
 お姉さまの表情が一変して、もの凄く怖いお顔をして私を睨んできます。
 ご命令に反問するなど、マゾドレイの私には、竜の顎の下の鱗に触れることよりも許されないことなのです。

「ご、ごめんなさい・・・す、すぐに脱ぎますから・・・」
 周りを見渡すと、幸いなことに人影はありません。
 でも、今さっき通り過ぎた数メートルのところにはオマワリサンが見張っていて、幹線道路を行き交う車の音もビュンビュン聞こえてくる、沿道のマンションの窓から誰かが覗いていないとも限らない、街中の無防備な一角なのです。
 こんなところでショーツを脱がなくてはいけないなんて・・・
 思った途端にマゾ性がキューッと悲鳴をあげ、快感がブルブルっと全身をつらぬきました。

「何をぐずぐずしているの!?」
 カメラを構えたお姉さまの鋭いお声。
「は、はいっ!」
 覚悟を決めて、ワンピースの裾に潜り込ませた両手を、前屈みになりながら思い切りずり下げました。
 ショーツは膝のところで紐状となり、直に外気が股間に触れて、ヒヤッとしました。

「全部脱いではダメよ。まずパンティを足首まで下ろしなさい」
 カメラを構えたまま、お姉さまからのご命令。
「単純にノーパンにさせるだけのつもりだったけれど、さっきの口答えに対してお仕置きをしなくちゃね。直子には一切の拒否権は無い、って最初に伝えたわよねぇ?」
 お姉さまがカメラを構えたまま、絡みつくようなお声で尋ねてきました。

「は、はい・・・」
「人通りが増えそうだから、おっぱいしまっていい、ってせっかく気を遣ってあげたのに、そのすぐ後にあれだもの。命令違反は、それ相応の辱めで償ってもらいます」
 まるで学校の先生みたいな、お姉さまの厳かなお声。

 上半身を屈めてショーツを足首まで下ろしました。
 両足首を結ぶ縄の枷のような状態となったショーツ。
 上体を起こしてお姉さま、つまりカメラのレンズを縋るように見つめました。

「そのまま右脚だけ、抜きなさい」
 もちろん、言いなりな私。
「抜いたら、パンティを左足首に巻きつけて結びなさい。落ちないように」
 心の中では、えーっ!?そんな・・・と大きく悲鳴をあげていたのですが、それを声にすることは、なんとか抑えこみました。

「あと、ローターは抜いちゃっていいわ。電池切れみたいだから」
 お姉さまがコントローラーをこれ見よがしに私に向け、指でスイッチを入れました。
 んっ、と身構えましたが、いつまでたっても震えを感じません。
「ここに来るまでに何度かスイッチ入れたのに直子が無反応だったから気づいたの。命令を守らない役立たずに用は無いわ」
 私にあてつけるみたいに、ひどく冷たく、吐き捨てるようにおっしゃるお姉さま。

「は、はい、お姉さま・・・」
 泣きたい気持ちでその場にしゃがみ込みました。
 しゃがみ込むと、自分がノーパンになってしまったことが如実にわかりました。
 閉じていたラビアが半開きとなり、股の下をスースーと風が通り過ぎて、熱を持った粘膜をくすぐっていきます。
 自分の股間を覗き込むようにすると、割れたラビアのあいだから、リモコンローターの白いアンテナ部分がタンポンの紐のように飛び出しているのが見えました。

 股間に右手を伸ばし、ローターのアンテナをつまみます。
「はうっ」
 手探りでやったので、指先が不用意にラビアに触れ、思わず甘い吐息が漏れてしまいます。
 私、こんな街中で自分の性器を弄っている・・・
 そう考えると同時に、このままマゾマンコをめちゃくちゃに弄り回して、後先考えずにイってしまいたい、という欲求が急激に湧き上がりました。

 だめ、だめ、そんなの絶対だめ。
 こんな街中で何を考えているの?
 欲求を懸命になだめつつ、ゆっくりとアンテナを引っ張り始めました。

「んん、ぬぐぅぅ・・・」
 ローターが膣壁を滑り、膣口を内側から抉じ開けてきます。
 ああんっ、もどかしい・・・
 すぐにヌルンとローターが出てきました。
 ポタポタポタッと路上におツユの雫が数滴垂れました。

「それは口に頬張ってキレイにしてからバッグにしまいなさい」
 私の葛藤を知ってか知らずか、お姉さまからの軽蔑しきったような冷ややかなご命令。
「ほら何しているの?いわれた通りにして、早くパンティ結ぶのっ!」
 
 自分のおツユにまみれたピンク色のローターを口に入れました。
 自分のどうしようもないヘンタイマゾぶりが味覚となって、しょっぱ苦酸っぱく口中に広がりました。

 ほっぺを膨らませたまま、紐状になったショーツをぐるりと左足首に巻きつけます。
 クロッチ周辺はグズグズで、つかんだ手のひらがヌルヌルベトベト。
 濡れていない銀色部分と濡れて黒くなったシミ部分がまだらになっています。
 
 両端をキュッと結んでから、急いで立ち上がりました。
 口の端からよだれが零れそう。
 ローターは、お姉さまが渡してくださったティッシュに包み、ビニールトートに入れました。

「直子、以前シーナさんに、脱いだパンティを手首に巻いておくように命令された、て言っていたでしょう?それを思い出したのよ」
 私がショーツを脱いで足首に巻くまでの一部始終を撮影されていたお姉さまがハンディカメラを下ろし、愉しそうにおっしゃいました。

 私も同じことを思い出していました。
 あれは東京で、シーナさまと初対面のとき。
 デパートの屋上でショーツを脱ぐように命令され、脱いだショーツを手首に巻いて放置されたあの日。
 それを下着だと見破った年下の女の子がくださった、軽蔑しきった憐れみの視線は、私が生涯忘れられない恥辱のひとつとなっていました。

「手首だったら、シュシュだと思わせることも出来るかもしれないけれど、足首だと言い逃れは出来ないわよね?そんなアクセなんて世界中探してもたぶん、ないもの」
 お姉さまが私の手を握り、再びゆっくり歩き始めました。

「その足首の飾りに気づいた人は、それを何だと思うかしら?勘のいい人ならピンとくるかもしれないわね?あれってひょっとして、下着じゃないか?って」
「脱いだパンティを足首に巻いて、ノーパンなことを世間様に知らしめながら散歩するの。それがあたしへの命令違反に対するお仕置き」
「乳首のポッチと足首のパンティで、ノーブラノーパンをアピールしながら歩くなんて、すっごく直子、あなたらしいと思わない?」

 イジワル声に磨きがかかり、お姉さまってば、とっても愉しそう。
 私の内腿をツツツッと、粘性の液体が滑り落ちていくのがわかりました。

 幹線道路まで突き当たると、広い舗道に人影も多め。
 そこを右に折れるお姉さまと私。
 さっき降りた地下鉄の駅へとつづくらしい階段の入口も見えました。
 
 見るからにオフィスビル街という佇まいの高架下を、車がビュンビュン走り過ぎていきます。
 一時は少し明るくなっていた空が再び暗くなり、風も少し出てきて、いよいよひと雨きそうな雰囲気を醸し出していました。
 そんな中を私は、今度はワンピースの裾を意識しながら歩かなければいけないことになりました。

 歩くたびに腿が裾を蹴り、ヒラヒラ割れるワンピースの裾。
 そこから覗くのは、さっきまでは黒っぽい布地、イコール私の愛液で汚れたショーツのクロッチ部分でしたが、今はツルンとした肌色、イコール私の抜き出しマゾマンコそのもの、になっていました。
 ただ、昨夜お姉さまもおっしゃった通り、黒っぽい股間より肌色のほうが、かえって目立たないような気もしていました。

 今の私は、ヘンタイ的な見所満載の姿になっています。
 赤い首輪、Vラインの胸のクッキリ谷間、ノーブラ一目瞭然の乳首の突起、左足首のショーツ、ビニールトートから覗くお浣腸薬を代表とする淫靡なお道具たち。
 そして新たに加わった、ミニワンピースの裾からチラチラ覗く剥き出しの股間。

 どれかひとつだけでも充分にヘンタイなのに、それらすべてを合わせたら、紛うこと無き露出過多の見せたがり、正真正銘のアブノーマルヘンタイマゾ女。
 都会的でお洒落な高層ビルが立ち並ぶ幹線道路脇の舗道を、そんな姿で歩きつづけました。
 
 時折すれ違う人はみなさま、まず赤い首輪に目を惹かれるようでした。
 一瞥してすぐ興味をなくす人、二度見する人、遠くからすれ違うまでネットリ見つめつづける人。
 さまざまな視線を浴びせかけられました。

 そして私は、そんな視線の中をミニワンピースのノーブラノーパンで、剥き出しの性器をチラチラさせながら歩いているという事実に大興奮していました。
 お姉さまの左手を汗ばむほどギュッと握り、努めて何食わぬ顔を装いつつも、心臓はずっと早鐘のよう。

 幹線道路を向こう側へ渡るための交差点。
 そこで信号待ちをしているときに、とうとうパラパラと雨が降ってきました。
 信号待ちをしている人は10人くらいで、私のすぐ横に立った40代くらいのおじさまが、私の胸元にチラチラ視線を送ってきています。
 その横のOLさんぽい女性は、私が提げたバッグの中身に目を凝らしているご様子。

「やっぱり傘買っておいて正解だったわね」
 おもむろにビニール傘を開くお姉さま。
 信号待ちの人たちのうち何人かも傘を開き、信号が青に変わると、傘を持っていない人たちが駆け出して行きました。

「ほら、もっとあたしにくっつかないと、濡れちゃうわよ?」
 横断歩道をゆっくり渡りながら、お姉さまからの思いがけないおやさしいお言葉。

 いったん手を解いてお姉さまが傘を左手に持ち替え、私はその腕に右腕をしっかり絡めました。
 私の右半身をお姉さまの左半身になすりつけるみたいにピッタリ寄り添って歩きます。
 お姉さまの体温、お姉さまの匂い、お姉さまの息遣いを感じながら。
 不意にさっきのラブラブカップルさんを思い出していました。
 
 お姉さまとの初めての相合傘に、今の自分の恥ずかしい格好のこともすっかり忘れるくらい、幸福感を感じていました。


オートクチュールのはずなのに 21