2015年7月12日

オートクチュールのはずなのに 11

 自宅のベッド以外で目覚めると、決まっていつも軽いパニック状態に陥ります。
 あれ?ここはどこ?私は誰?なんで裸で寝ているの?
 だけど、首周りにまとわりつく異物感に右手が思わず伸びてそれに触れ、自分が置かれている状況を即座に思い出しました。
 見慣れないお部屋を見回しているうちに全身がワクワク感に包まれ、眠気があっさり吹き飛びました。

 枕元に置いた携帯電話の時計を見ると、午前9時10分。
 んーーっ、って大きく伸びをして、立ち上がりました。

 お姉さまは、お昼ごろまで起きないつもり、っておっしゃっていたっけ。
 それまでに家政婦として一仕事、やっつけてしまいましょう。
 その前に洗面所をお借りして、顔を洗って歯を磨いて。
 リビングルームのドアを開け、洗面所に向かいました。

 洗面所の大きな鏡に、赤い首輪を嵌めた裸の上半身が鮮やかに映し出されます。
 首輪を嵌められている、イコール、私はお姉さまの所有物、飼い主とペット・・・
 そんな連想をした途端に、鏡の中のふたつの乳首がみるみる背伸びを始めました。

 歯を磨きながら、午前中の段取りを考えます。
 リビングのお掃除、お洗濯、お姉さまが起きる頃を見計らってブランチの用意。
 とりあえず、そのくらいかな。
 時間があったら、バスルームとおトイレもお掃除しちゃおう。
 それで午後は、お姉さまとゆっくり過ごせたらいいな。

 リビングに戻って、ソファーを元通りに直しました。
 真っ白なカーテン越しにでもわかるくらい、降り注ぐ陽射しがお部屋中を明るく照らしています。
 今日はすごく良いお天気ぽい。
 そう思って無意識にカーテンを開こうとして、ふと気づきました。

 私は今、全裸。
 カーテンを開いて、もしもお向かいにも窓があって誰かいたら、裸を視られてしまいます。
 お姉さまのお部屋の窓から裸の女が見えた、なんてご近所のウワサになったら、私はいいとしても、ここに住んでいるお姉さまにご迷惑がかかってしまいます。
 そう言えば私、ここが何階で、周囲がどんな状況か、ぜんぜん知らないことに、今気がつきました。

 気を取り直して、カーテンの境目から恐る恐る顔だけ出して、お外を覗いてみました。
 窓のすぐ外は広くて奥行きの有るベランダ。
 そのフェンスの向こうは大部分が青空で、遥か遠くにここより高そうな建物が見えました。
 そして、大きな5枚のガラス窓は完全な素通しで、カーテンを開けたら横長のスクリーンのように、お外から室内全体が丸見えになる、ということがわかりました。

 けっこう高い階のお部屋みたいだな。
 顔を引っ込めてから考えました。
 今見た感じでは、窓は大きいけれど、近くの建物から覗かれちゃう心配は少なそう。
 だけど・・・

 もしも、このお部屋をお掃除するとなると、窓を開けて換気をしながら、ということになりそうです。
 昨夜は気がつきませんでしたが、昼間の明るい光の中で見ると、やっぱり家具の上やお部屋の隅にうっすら埃が積もっているので、ダスターをかけて埃を床に落としてから、のほうが効率的なので。
 となると、お姉さまにお伺いを立ててからのほうが良さそうです。
 カーテンはそのままにして、バスルームのお掃除から始めることにしました。
 せっかく裸なのだし。

 バスルームとおトイレを一時間くらいかけてピカピカにしてから、次はお洗濯。
 お洗濯ものはそんなにたくさんはなく、タオル類と私のワンピース、それにお姉さまと私の下着類くらい。
 置いてあった説明書を読みながら洗濯機にはタオル類とワンピースを任せ、下着類は手洗いしました。
 
 出張中に溜め込んだのであろう、色とりどりのお姉さまの下着を手洗いしながら、ふと気がつきました。
 これらのお洗濯物を干すとき、否が応でも私は、あのベランダに裸で出ることになることを。
 からだの奥がキュンと疼きました。

 洗い終えた洗濯物はとりあえず放置して、お料理に移ります。
 お姉さまからのリクエストはホットケーキ。
 油を使うので、昨夜お姉さまから唯一許された着衣として託されたエプロンを広げてみました。

 一見すると真っ白な可愛らしいフリルエプロンなのですが、お姉さまがおっしゃったとおり、お下劣な細工が施してありました。
 バスト部分と腰周りだけ、ビニールみたいな透明な素材で見事にシースルーなのです。
 自分のからだにあてがってみると、尖った乳首が滑らかなビニールにペタッと貼りつきます。

 いやん、えろい。
 お姉さまったら高校のとき、こんなのをアユミさんていうかたに着せて愉しんでいたんだ。
 お会いしたこともないアユミさんが羨ましくて、ちょっぴり嫉妬してしまいます。
 首と背中の紐を結ぶと、とくに視ていただきたい部分だけがスケスケの、いかにも露出狂そのものな裸エプロン姿になりました。

 コールスローを作り、ホットケーキミックスをかき混ぜます。
 腕を動かすたびに、乳首がツツツとひきつるようにビニール地を擦り、ますます硬くなってしまいます。
 その感触でアソコの、いえ、剥き出しマゾマンコの奥もウルウル。
 お姉さま、早く起きてこないかなー。
 
 ホットケーキを、あとは焼くだけ、の状態にして、食器類をダイニングテーブルに並べ始めた頃、リビングのドアが開きました。

「おはよう」
 ざっくりしたシルエットでゆるふわな濃紺のマキシワンピース姿のお姉さまが、近づいてきました。
「あ。おはようございます、お姉さま。お早いですね?まだ12時前ですよ。ゆっくりお休みになられましたか?」
「うん。いつもだったらまだまだ寝ているのだけれど、直子がいると思うとワクワクしちゃって、早めに起きちゃった。あ、でも、昨夜はぐっすり眠れたから問題なし、よ」
 お姉さまが歩くたびに、柔らかそうな生地にからだのラインが浮き上がります。
 たぶんお姉さま、素肌にそれしか着ていないみたい。

「すぐにお食事にされますか?ホットケーキは、もう焼くだけになっていますけれど・・・」
「うん、そうね。って、直子、そのエプロン、やっぱり似合うわね」
 目の前に来られたお姉さまが、私の透けているバスト部分をまじまじと覗き込みました。
「赤い首輪ともよくマッチしている。えっちビデオのタイトルっぽく言うと、ヘンタイ肉奴隷マゾメイド直子、って感じ」
 そのお下品なお見立てが、私のマゾ心をゾクゾク煽り立てます。

「直子のほうがアユミよりおっぱい大きいから、尚更卑猥な感じ。乳首がペッタリ貼りついて、ひしゃげちゃってる」
 布地越しに私の右乳首を無造作につまんでくるお姉さま。
「ああんっ」
「相変わらずコリコリね。朝っぱらからサカっちゃって、いやらしい子」
 
 不意に私の唇が、お姉さまの唇で塞がれました。
 でもすぐ離れて、お姉さまが、んーーって、伸びをひとつ。
 お姉さまからのモーニングキスは、微かに歯磨き粉の香りがしました。

「あら直子?どうしてカーテン開けないの?」
 ふと窓のほうに目を遣ったお姉さまが、訝しげに尋ねてきました。
「あ、それは・・・」
 私がご説明しようと言葉を探しているあいだに、お姉さまはスタスタと窓際に行かれ、ザザーッとカーテンを全開にされました。
「あーっ!」
 お姉さまを追っていた私は、お部屋の中間あたりで、それ以上進めなくなりました。
 素通しガラス5枚分の陽射しで、お部屋の中が一段と明るくなりました。

「うわー、いいお天気だこと!まさに五月晴れだねー」
 のんきにはしゃぐお姉さま。
「直子も来てごらん、空が真っ青だよ」
「あの、えっと、大丈夫ですか?」
「何が?」
「私、今、裸ですから、えっと、その、ご近所さんとか・・・」
「ああ、それを気にして開けなかったんだ。大丈夫。いいから来なさい」
 最後はご命令口調に変わっていましたから、行かないわけにはいきません。
 腕で胸を庇う格好でおどおど近づきました。

「ほら見て。この窓の向こうは学校で、今日はお休み。その奥はずっと神社の森。おまけにここは坂の途中で高台のほうだから、この窓を覗ける建物なんて周りにないのよ」
 お姉さまのお言葉に勇気を得て、思い切って窓際まで行き、お外を覗いてみました。
 
 おっしゃる通り眼下には、ここより低い建物と校庭らしき敷地、その奥には緑がつづいていました。
 そしてお空は抜けるようなライトブルー。
「ね、わかったでしょ?だからおっぱい、隠さなくていいの」
 いつの間にか背後に来ていたお姉さまに、胸を庇った左腕を無理矢理剥がされました。
 腕に弾かれた乳首がプルン。

「向かいの学校はね、けっこう有名な名門女子高なのよ。幼稚園から大学までのお嬢様学園。大学だけ別のところにあるらしいけれどね」
「あたしがここに来るのは、たいてい休日か夜中でしょ?たとえ窓を開け放しでも、いつもしんとしているの。平日の昼間がどのくらいかまびすしいのかは知らないけれど、あたしにとってここの印象は、とても居心地のいい閑静な住宅街なのよ」

「このお部屋は、何階なのですか?」
「えっ?覚えていないの?そう言えば直子、スーパー出てからは、ずーっとボーッとしていたものね、なんだかやり遂げちゃった感じで」
「ここは8階。このマンションの最上階。ここを覗こうと思ったら、たとえば、あのビルからだったら.・・・」
 遥か遠くのビルを指さしてつづけます。
「かなりの高倍率の双眼鏡が必要なはずよ」
 そこまでおっしゃって、お姉さまが何かに気づかれたようなお顔になりました。

「そっか。そういう観点で見たことが無かったから気づかなかったけれど、ここって、直子の趣味にぴったりな部屋だったんだ!」
「まっ裸で窓辺に立とうが、ベランダに出ようが大丈夫っていう、裸になりたがりの露出狂にはうってつけの物件だったのね」
「それならさ、ブランチはベランダでしない?こんないいお天気だし、きっと気持ちいいから。確かガーデンテーブルが物置に入っていたはず」
 みるみるテンションが上がり、愉しそうなお声をあげたお姉さまが次々に窓枠のロックを外し、ススススーッと三面分開きました。
 お外の爽やかなそよ風がふわふわっとお部屋に侵入してきて、私の裸のお尻を優しく撫ぜました。

「あれ?直子はあんまり愉しそうじゃないのね?あ、そうか。誰も覗いてくれないって分かっているから、スリルが無くてつまらないのか」
「いえ!そんなことないです。視られないほうがいいですっ!」
 あわてて否定する私を、ニヤニヤ笑いが迎え撃ちます。
「あらあら、また嘘つき直子に戻っちゃったか。昨夜のスーパーでは、あんなに素直だったのにね?」
 お姉さまのからかうようなお声に、そのときの一連の恥辱が一気によみがえり、全身の体温が数度、カッと跳ね上がりました。

「ベランダのほうはあたしが用意しておくから、直子はパンケーキを焼き始めて」
 浮き浮き声のお姉さまの号令で、女子高の校庭を見下ろしての青空ブランチ開催が有無を言わさず決定しました。
 
 私がキッチンでパンケーキを焼いているあいだ、お姉さまは何度も、ベランダとリビングやキッチンのあいだを往復されていました。
 やがて、焼きあがったパンケーキをお皿に盛ってダイニングテーブルへとひとまず置いたときには、さっき私がテーブルに用意した食器類などはすべて消え失せていました。

 ホカホカのパンケーキを積み上げたお皿ふた皿とシロップ類をトレイに乗せ、しずしずとベランダに向かいます。
 だけど今の私は、赤い首輪におっぱいと下腹部だけスケスケの裸エプロン。
 いくら地上8階で周りから覗かれる心配の無いベランダとはいえ、そんな姿で青空の下に出るには、かなりの勇気を必要としました。
 フローリングから窓枠のレールを跨ぎ、ベランダのコンクリートへと片足を下ろす、その一歩に躊躇してしまいます。
「ほら、何しているの?早く早く」
 お姉さまからの非情な一言で、思い切ってコンクリートに足を着けました。

 横長長方形のベランダは、目隠しフェンスまでの奥行きが3メートルくらいと、かなり広め。
 空間の半分くらいが庇で覆われています。
 エアコンの室外機とフェンスのそばにお洗濯物用のパイプが通っている以外、他に装飾はありません。
 ベランダ中央付近に、大きくて真っ白な日除けパラソルが立っていました。
 その下に、キャンプで使うような木製のテーブルが置かれ、折りたたみの木製椅子が2脚。
 その片方にお姉さまが、優雅に腰掛けていらっしゃいました。

 テーブルには真っ白なクロスが掛けられ、私が作ったコールスローと、氷が詰まったワインクーラーに埋まった白ワイン一本。
 何枚かの取り皿とグラス、ナイフとフォークが奇麗に並べてありました。
 真ん中の空いているスペースにパンケーキのお皿を置きます。
「アーッ、気持ちいい。なんだかいいわよね?優雅な感じで。こんなことになるならもう少し、このベランダも飾っておけばよかった。観葉植物とかで」
 お姉さまがワインのコルク栓をグリグリしながらおっしゃいます。
「あ、でもあたし、めったに帰らないから世話できないか。それじゃ植物がかわいそうだわね」

「このアウトドアセットはね、確か一昨年、河原でみんなでバーベキューすることになって揃えたのよ」
「行きがかり上、保管はあたしに押し付けられて、邪魔って思っていたけれど、捨てなくてよかった」
「会社のみなさまとしたのですか?」
「そう。まだ、たまほのが入る前のことね」
「社員全員でご旅行とか、されるのですか?」
「うーん。とくに決まってはいないけれど、気が向けばね。去年は温泉に行ったな。全員が休めるようにスケジュールが取れればね」
「あ、でも今年は直子も入ったし、ぜひ行きたいわね、秋頃にでも」
 そうおっしゃって、なぜだかパチンとウインクをくださるお姉さま。
 そのときが、私のパイパンがみなさまにバレる日となるのでしょう。
 
 パンケーキを置き終わって、恐る恐る目隠しフェンスのそばまで行ってみました。
 高さは私の肩のちょっと下くらいで、茶色い金属の密なメッシュ状になっていました。
 これなら確かに、たとえ、ここと同じくらいの高さの建物が近くにあったとしても、フェンスの中は覗けなそう。
 唯一覗くことが出来るとしたら、ここより高い位置からだけ、という結論に達して見上げてみれば、近くにそんな建物はひとつもありません。
 ようやくずいぶんホッとして、テーブルのほうに戻りました。

「まだ向こうの部屋から持ってくるものある?無ければ早く席について」
「はい。もう大丈夫です。お待たせしました」
「休日って、昼間からお酒飲めるのも醍醐味よね。眠くなったら寝ちゃえばいいのだから」
 お姉さまがワイングラスにワインを注ぎ始め、私は向かい側に座ろうと椅子を引きました。
「だけど今日は寝るわけにはいかないのよね、直子をいっぱい虐めてあげなくちゃ。だからまあほどほどにしとく。そっちにお水とジュースも入っているから」
 私の足元に置かれたクーラーボックスを指さされました。

「それではカンパイということで」
「はい」
 腰を下ろしながらグラスを持ちました。
「あ、ちょっと待ちなさい」
 椅子にお尻が着く寸前、お姉さまからヒヤリと冷たいお声がかかりました。

「せっかくこうセレブの休日、っぽい雰囲気なのだから、あくまでも優雅にいきましょうよ。直子がエプロンしたままじゃ、ご主人様と使用人のブランチだわ。エレガントさに欠けるでしょう?」
 ドキン!
「えっと、つまり、エプロンを取れ、と・・・?」
「うん。だってそのエプロン、おっぱいが貼りついちゃって卑猥すぎるもの。優雅なブランチには似合わないわ」
 作ったご本人のお言葉とは思えません。
「わ、わかりました・・・」

 下ろしかけた腰を戻しグラスを置き、お姉さまの前で首の紐から解き始めました。
 胸当てがペロンと外れ、さらけ出されたおっぱいに五月の太陽が降り注ぎます。
 つづいて背中側。
 皮膚に触れていた布地一切が取り払われました。
 外したエプロンを折りたたんで置き場所に迷っていると、お姉さまの右手が伸びてきて取り上げられました。

 青空の下、丸裸。
 しかもこれで終わりではありません。
 これからゆっくり、お食事をしなければならないのです。
 全裸のままで、しかも優雅に。

 あんなにお下劣な薄っぺらエプロンでさえ、有ると無いとでは大違いでした。
 からだを覆う布が無くなった瞬間に、周囲からの音が大きくなっていました。
 遥か下を走る自動車の音、時折聞こえてくる誰かの小さな話し声や足音、鳥のさえずり、遠い木々のざわめき・・・
 そういった日常にありふれた喧騒のボリュームが格段に上がり、私の背徳感を煽ってきます。
 おまえはなんでこんなところで裸になっているんだ?と、喧騒たちが私を責め立てているように感じていました。

「うん。いい感じになった。それじゃあ、またひとつ、露出マゾレベルが上がった森下直子さんにカンパーイ!」
 イジワルイお言葉でたたみかけてくるお姉さまをニクタラシク思いながら、ワインのグラスをクゥーッと空けました。

「うん。美味しい。直子のパンケーキは絶品だね」
 本当に美味しそうに頬張りながら、合間合間に私のおっぱいをじーっと見つめてくるお姉さま。
 今の私には味なんてぜんぜんわかりません。
「コールスローも美味しい。これ、明日も作っておいて」
「今夜はパスタにしてね。カルボナーラ。あと夜食用にサンドウィッチも作っておいて欲しいな、チーズとハムのやつ」
 
 お食事のあいだはずっと、屈託の無いお姉さまの笑顔とおしゃべり。
 ご機嫌なご様子のお姉さまを見つめつつ、グラスワイン2杯のほろ酔いで、やがて私も少しづつ、リラックスしてきました。
 私もお腹は空いていたみたいで、パンケーキもけっこうな枚数、食べちゃいました。
 お皿が空になると、お姉さまはまだワイン、私はグレープフルーツジュース。

「西洋の名画とかでさ、ピクニックか何かなのか、着飾った貴族っぽい人たちが森で食事している絵画とかがあるじゃない?」
「ああ。はい・・・」
「ああいうのになぜだかひとりだけ、裸のご婦人とかが混ざっていることがあるけれど、それってつまり、その時代の直子みたいな趣味のご婦人なのかな?」
「そ、そんなの、知りません・・・わ、わかりません・・・」

「直子、今、どんな感じ?こんなところで全裸に首輪で」
「えっと、そ、それは、恥ずかしいです・・・すごく」
「でも、さっき言ったように、ここ、誰にも覗かれないよ?」
「で、でも、お外ですし・・・」
「気持ちいいんでしょ?乳首勃ってるよ?」
「・・・」
「濡れてる?」
「・・・はい・・・」
 もうっ!イジワルなお姉さまが戻ってきちゃった・・・

「あー美味しかった。ワイン3杯も飲んじゃった。ごちそうさまー」
 心底愉しそうなお姉さまがそうおっしゃったとき、下のほうから何か管楽器を合奏する音が小さく聞こえてきました。
 これはたぶん、コパカバーナかな?

「へー。休日でも部活の練習とかするんだ、あの学校も。あっ、そうか。午後一時開始だったのかな」
 お姉さまがふらりと立ち上がり、音のするほうに歩いていかれます。
 たどたどしい感じで曲が進み、ワンコーラスくらいで中断しました。
 音が消えて興味を失ったのか、すぐに戻ってきたお姉さまは、ご自分の席に着かず私の背後に立たれました。

「立って、直子」
「あ、はい」
 何をされるのか、ビクビクしながら立ち上がりました。
 間髪を入れず後ろから抱きつかれました。
 お姉さまの左手は私の胸元に、右手は股間へと。

「あふぅんっ!」
「うわっ、本当にグッショグッショ」
「あっ、あっ、あんっ!」
「だめよ!直子」
 私の右おっぱいを揉みしだき、マゾマンコをさすっていたお姉さまの両手がピタリと止まりました。

「ここは、覗かれはしないけれど声はだめ。前にも教えたでしょう?そういう声って意外と通るのよ?」
「下まで聞こえちゃうかもしれないし、すぐ両隣にだって住んでいる人がいるのよ?もし窓が開いていたら丸聞こえのはず」
「うちの左隣は、上品そうなイギリス人ご夫妻。右隣は知らないな。あたし、あんまり帰ってないから」
「今、お隣さんがいるかどうかわからないけれど、とにかく、あたしに恥をかかせないように、出来る限りがまんなさい」

 おっしゃりたいことだけを私に耳打ちしたお姉さまは、私の返事は待たずに、再び両手を動かし始めました。
 左手は右乳首をぎゅっと潰し、右手の二本の指がズブリと膣口に突き挿さりました。
「んんむぅーーっ!!」
 真一文字に口をつぐんで、必死に悦びの声を抑え込みます。
 私の両手はいつの間にか、後頭部にまわっていました。
 下のほうから再び、合奏の音が聞こえてきました。

「吹奏楽部の無垢なお嬢様たちには、自分たちが一生懸命練習している同じときに、まさかすぐ向かいのマンションのベランダで、素っ裸になった元お嬢様がマゾマンコからだらだらスケベ汁垂らして、いやらしい喘ぎ声を必死にがまんしているなんて、想像も出来ないでしょうね」
 
 とことんイジワルなお姉さまの残酷な囁きが、耳の奥深くに流し込まれます。
 クチュクチュクチュクチュ・・・
 お姉さまが動かす指が、コパカバーナのリズムに乗っています。

 どうか止めないでお姉さま・・・このままイかせてお姉さま・・・声は絶対がまんしますから・・・焦らして寸止めだけは勘弁してください・・・
 心の中でそうお願いしながら、お姉さまからの乱暴な陵辱に身を任せます。

「んっ、んゅ、んぐぅ、ぐぬぅー・・・」
 容赦なくどんどんどんどん高まってくる快感で、歓喜に震えそうになる声帯。
 下唇をギューッと噛みしめ、死に物狂いでそれを封じ込みながら、やがて私のからだは、五月の澄み切った青い空の高みへと、溶け込んでいきました。


オートクチュールのはずなのに 12


2015年7月6日

オートクチュールのはずなのに 10

 座ったまま、あらためてリビングルームを見回してみました。
 すっごく広い。
 確実に20帖以上ありそう。
 玄関からまっすぐ入って突き当たったドアが、リビングルームの横幅のちょうど真ん中あたりに位置して、その先に横長な長方形の空間が広がっています。

 お部屋の突き当たりは、横長な一面全体が白いカーテンで覆われているので、おそらく全面窓なのでしょう。
 だとしたらすごく陽当たり良さそう。
 窓を背にすると左側にダイニングテーブルセット。
 右側は、床にライトブラウンのふかふかそうなシャギーラグが敷かれたソファーコーナー。
 大きなモニターの壁掛けテレビが側面に掛かっていました。
 たとえば8帖のお部屋を横並びに三つ並べて、全部の仕切りを取り払った感じ。
 そのくらい広々とした空間でした。

 私は、そんなお部屋のほぼ中央、周りに何も無いフローリングの上に座っていました。
 私とお姉さまが転げまわったとおりに、床のあちこちに小さな水溜りが出来ていました。
 お姉さまと私の、欲情の落し物。
 大変!まずはお掃除しなくちゃ。
 立ち上がろうとしたとき、お姉さまが戻ってこられました。

「はい、これでとりあえず汗を拭くくらいで、しばらく我慢してね」
 ふかふかのバスタオルをくださいました。
「あと、お料理で油や熱湯を扱うときは、これだけは身に着けてもいいことにするわ」
 折りたたんだ真っ白い布を手渡されました。

「エプロンよ。飛沫が跳ねて、肌を火傷したりしちゃったら可哀相だからね」
 お姉さまが、そこまでおっしゃって、いたずらっぽくニッて微笑みました。
「もっとも、直子みたいな子なら、そういう痛ささえ愉しめるのかもしれないけれど」
「あの、いえ、お気遣い、ありがとうございます」
 まだ全裸のままのお姉さまの、形の良いバストに目が泳いで仕方ありません。

「さっき入ってきたドアを抜けて、左側の最初のドアが洗面所、その向かいのドアがトイレ。トイレ側にある別のドアはあたしの寝室だから開けちゃだめ」
「キッチンは、見れば分かると思うけれど、ダイニングの奥ね。掃除用具とかは洗面所に入ってすぐのロッカーにあるから」
「ということで、あたしはシャワーしてくるから、後はよろしくお願いね」
 左手にまだ何か持ったままの全裸なお姉さまが、今度は玄関のほうへつづくドアへとスタスタ歩いて行かれ、ドアの向こうへ消えました。

 いただいたタオルでざっとからを拭ってから、えいやっ、と家政婦モードに切り替えました。
 まずは、床に脱ぎ散らかしたお姉さまのお洋服一式を回収。
 お姉さまの残り香にアソコがキュン。
 玄関口に置きっ放しだったお買物のレジ袋やふたりの私物をリビングへと運び、片隅にひとまとめ。
 
 キッチンに移動して、お買い物の成果を所定の位置へ。
 キッチンも広々としていて使いやすそう。
 大きな冷蔵庫には、お姉さまがおっしゃった通り、数本の飲み物と調味料類しか入っていませんでした。

 教えていただいた洗面所へのドアを開けると、これまた広々。
 洗面所というより、パウダールームと呼びたいお洒落な内装でした。
 その奥がバスルームらしく、お姉さまがシャワーを使う音が微かに聞こえていました。

 ロッカーから拭き掃除のお道具一式をお借りし、玄関からずーっと廊下を雑巾がけ。
 確かにあまりお掃除していなかったみたいで、バケツに汲んでいたお水がみるみる汚れていきました。
 リビングに戻って、広大なフローリングを四つん這いで這い回りました。

 今日初めて訪れたお宅の床を、なぜだか全裸で雑巾がけしている私。
 自宅でしていた、妄想ごっこ、ではなくて、正真正銘、ご主人さまにお仕えする全裸家政婦状態。
 念願が叶っちゃった、なんて考えたら、四つん這いで垂れ下がったおっぱいの先端へと、血液がぐんぐん集まってきました。

 床のお掃除を終えてキッチンへ。
 お姉さまは軽くとおっしゃっていたけれど、冷凍ピザだけではさみしいので、簡単な野菜サラダを作ることにしました。
 レタスやキュウリを洗い、使いそうな食器類も念のため丁寧に水洗いしました。

 食器棚のガラスやステンレスに、自分の赤い首輪だけの全裸姿が映っています。
 使い慣れていないよそさまのシンクで、お腹の辺りの素肌を濡らしてくる水しぶきの飛沫に、ピクピク反応してしまいます。
 これから二日間、私はずっと裸のままお姉さまのお部屋で過ごすんだ・・・
 艶かしくも甘酸っぱい、エロティックな気分でレタスをちぎりました。

 ダイニングテーブルに食器やドレッシングを並べていたら、リビングのドアがバタンと開きました。
「ふぅー。いい気持ち。さっぱりしたぁー」
 頭にタオル、からだにバスタオルを巻きつけただけのお姉さま。
「サラダも作ったんだ、気が利くじゃん。洗面所で髪乾かしてくるから、もうピザ焼き始めていいわよ。あと、飲み物はビールね」
 それだけ言い残して、再びドアの向こうに消えました。

 ツヤツヤした布地、たぶんシルク、で薄いベージュ色のバスローブを羽織ったお姉さまがダイニングテーブルに着席するのと、二枚目のピザを入れたオーブンレンジがチーンと一声鳴いたのがほぼ同時でした。
 お風呂上りのほんのり上気した艶やかなお顔に、ついさっき、ふたりで貪り合ったときの、悩ましいお顔がオーバーラップします。

「カンパーイッ!」
 チンッ、とガラスが触れ合う音が響いた後、黄金色の液体がなみなみと注がれたくびれグラスをゴクゴク一気に飲み干したお姉さま。
「あーーっ美味しいっ!やっと休日が来た、っていう気分になれたわ」
 ピザをつまみ、サラダをつつき、楽しいおしゃべりタイムの始まりです。

「すごくステキなお部屋ですね。あんまり広いのでビックリしちゃいました」
「うん。西洋型1LDKっていう触れ込みだったの。最初はあたしもただっ広くていいな、って思ってたのだけれど、最近は持て余し気味かな。なんだか逆に寒々しい感じしない?」
「そんなことないです。うらやましいです」
「住み始めの頃は、こんな家具を置いてとか、いろいろ夢膨らませていたのにね。帰ってくるヒマがないから、ぜんぜん弄れなくて。結局今でも、ほとんど引っ越してきたときのまんまなの」
「だからあまり物が置いていないのですね?」
「たまに帰って来ても、結局寝室に閉じ籠っちゃうからね」
「ああ・・・」
「ここは誰かに貸しちゃって、会社のそば、って言うか直子んちのそばにでも引っ越そうかなって、最近は考えたりしてる」
「えーっ!?そんなのもったいないです、こんなにステキなお部屋なのに。あ、でもお姉さまが近くに住まわれたら、すっごく嬉しいですけれど」

「ところで直子、あのエプロンは着けてみた?」
「あ、いいえ。まだ・・・」
「あら残念。あれはなかなかの傑作なのよ。直子なら絶対気に入ると思う。もともとはアユミ用に作ったんだけれど」
「アユミさん?て?」
「忘れちゃった?あたしの学生の頃の友達」
「ああ、服飾部で、なんて言うか、私と同じような感じのかたっていう・・・」
「そう。思い出した?彼女のために作ったお下劣衣装のうちのひとつ。ほとんど彼女が持っていったはずだったのだけれど、なぜだかあれだけ、あたしの手許に残っていたの。捨てなくてよかった」
「へー。ちょっと着けてみましょうか?」
 席を立ち上がろうとして、お姉さまに止められました。
「いいわよ、焦らなくても。明日ゆっくり見せてもらうから」

「直子は、あっちのソファー周辺を陣地にして。一応ゲストテリトリー。背もたれ倒せばベッドになるから。毛布と枕は持ってきてあげる」
「あ、はい」
「ほとんどの電気製品は、あっちのテーブルのリモコンでオンオフ出来るから、勝手に使って」
「わかりました」

「明日起きたら、この部屋に直子が裸でいるのよね?なんだか不思議な感じ。いつの間にかあたしがマゾのメス犬ペットを飼うはめになっているのだもの、って、そうか!直子はゲストじゃなくてペットっだった」
「はい・・・それにそれは、私がお願いしたことですから・・・」
「うん。あたしもかなり愉しみではあるの、直子のマゾっぷり。明日はめいっぱい虐めちゃうつもりだから、覚悟しておきなさい。持ってきたグッズ類は全部出しておいてね」
「はいっ!お姉さま」

「モップもあったのに、わざわざ雑巾がけしてくれたのね?」
 リビングの隅に置きっぱなしの、雑巾を掛けたバケツをご覧になっての一言。
「やっぱりメス犬だから、四つん這いになりたがるのかしら?」
 愉しそうに笑って、グラスを飲み干すお姉さま。
「直子がこの部屋にいるあいだ、身に着けていいのは、さっきのエプロンと、拘束用にロープとかチェーン。あ、手錠と足枷もおっけー。あとは、そうね、洗濯バサミならいくつでもいいわよ」
「明日起きたとき、全裸家政婦直子がどんな姿で迎えてくれるか、今からとっても愉しみ」

 パクパク食べてビールもグイグイ飲んで、いっぱいしゃべる絶好調なお姉さまも、やがてだんだん、なんだかトロンとおねむさんなお顔になってきていました。
「ふぁーっ。なんだか気持ち良く酔ってきた。グッスリ眠れそう」
「少しのあいだ仕事は忘れて、直子をたくさん虐めなきゃ・・・」
 テーブルの上のお料理も、あらかたなくなっていました。

「この感じが消えないうちに、今夜は休ませてもらうわね。あたしって、ホロ酔いが醒めちゃうと、一転して寝付けなくなっちゃうタチだから」
 お姉さまがユラリと立ち上がりました。

「明日は多分、お昼頃まで起きてこないと思って・・・ブランチはホットケーキがいいかな・・・バスルームにはあたしのシャンプーやらが置いてあるし、ドライヤーとかもご自由に」
「あたしが寝ているあいだは、何をしていてもいいから・・・寝室は防音してあるから掃除機でも洗濯機でも使って大丈夫・・・オナニーも許しちゃう・・・あ、もちろん疲れていたら寝ちゃってもいいけれど」
「直子、歯ブラシとか、お泊りセットは持っているわよね?・・・ああ、眠い・・・」
 心底眠たそうなお声で、ゆっくりゆっくり思い出すようにおっしゃるお姉さま。

「あと、あたしの下着とかタオルとかを、洗濯しておいてくれると嬉しいかな、明日でいいから・・・えっと、あたしの服は・・・」
「はい。あそこにまとめてあります」
 部屋の隅を指さす私。
「ああ。ありがとね・・・スーツはクリーニングに出さなきゃだめかな・・・洗濯機は洗面所の奥、洗剤もそのあたりにあるはず・・・ふわーぁ」
 ご自分のバッグと衣類を手にしたお姉さまがフラフラ、ドアの向こうへ消えていきました。

 テーブルを片付け食器類を洗っていると、ドアの開く音。
 あわててリビングに出ると、お姉さまが毛布類を抱えて、ドアの前に立っていらっしゃいました。
「あ。わざわざありがとうございます」
「うん・・・それじゃあ、おやすみー」
 お姉さまのからだが、ふうわりと私を包みました。
 シルクのなめらかな感触に包まれる、私の天使さまからのハグ。

「あー、直子、かなり臭うわよ・・・えっちな臭い・・・寝る前にこんなの嗅いだら、いやらしい夢見ちゃいそう・・・早くシャワーしなさい」
 からだを離したとき、お姉さまがからかうみたいにおっしゃって、ふわーっと大きな欠伸。
 いくら眠くても、イジワル口調を忘れないお姉さま、
「おやすみー」
「おやすみなさい、お姉さま。良い夢を」
「愛してるよ、直子」
「私もです」
 
 今にも崩れ落ちそうなくらい眠たげなご様子だったので、それ以上のわがままは言わず、ドア口でお姿が消えるまでお見送りしてから、キッチンに戻りました。

 洗い物を片付けてから、お姉さまのお言いつけ通りバスルームへ直行。
 赤い首輪は濡らさないように脱衣所で外し、今さっき嗅いだばかりの、お姉さまと同じ香りのローションやシャンプーをお借りして、全身を入念に洗いました。
 お姉さまの香りに包まれながら全身を撫ぜ回していると、自然と今日一日、お姉さまとお逢いしてからのあれこれを思い出してしまいます。

 ほのかさまもいる前でのリモコンローター責め。
 人前での首輪姿ご披露。
 後部座席での全裸オナニーと四つん這いお尻露出行為。
 スーパーでの前開きボタン外しと自発的露出。
 駐車場での下半身丸出し。
 
 どの行為でも、今まで感じたことの無いほどの強烈な羞恥と恥辱、喩えようもないほどの興奮と快感を感じていました。
 とくに、裾の一番下のボタンを外してから、レジカウンターのみなさまに向けての自発的なお尻露出、そして、そのままの格好で駐車場までの夜道を歩いていくときに味わった被虐と羞恥は、このまま世界が終わって欲しい、と思うほどの恥辱感とともに、私でもここまで出来るんだ、という、達成感を伴う淫靡な高揚感で気がヘンになりそうなほどでした。

 同時に思い出す、大好きなお姉さまの蠱惑的なお言葉とその口調、お顔や振る舞い、その愉しげな表情・・・
 そして最後にたどり着いた、ケダモノの交わり。
 私の両手は自然に敏感な場所へと伸び、そこを中心に泡まみれの全身を執拗に、いつまでもいつまでも責め立てつづけました。

 バスルームを出てリビングに戻り、横になったのは夜の11時過ぎ。
 いつもの私なら、まだ眠るには早い時間でした。
 精神的にはとても高揚していて、もう少し起きていたかったのですが、全身が心地良い疲労感でぐったりしきっていました。
 今夜は早く寝て、明日は早く起きて、お姉さまが起きてくるまで家政婦のお仕事をがんばろう!
 そう心に誓って、目をつぶりました。

 さっき脱衣所でからだを拭った後、ごく自然に、当然のように、お化粧台の上に置いておいた赤い首輪に手が伸びていました。 
 今は枕に押し付けられて首周りに当たるそのレザーの感触を、とても愛おしく感じ始めていました。


オートクチュールのはずなのに 11


2015年6月28日

オートクチュールのはずなのに 09

 時間にしたらほんの10秒足らずのことだったでしょう。
 上半身を前に傾け、ワンピース背中側の裾がせり上がるのを意識し、裸のお尻が布地の外へ露出していることを感じて・・・
 前開きの一番下のボタンも外したので、前側の裾はもちろん思い切り左右に割れ、自分の視界には生々しい下腹部の白い肌が、女性器の割れ始めまで大胆に見えっ放しでした。
 
 右手を伸ばして床の500円玉を拾い上げ、ゆっくりと上体を起こすまで、いえ、起こした後も、私のからだは、制御不能の被虐的快感にプルプル打ち震えていました。

 そのあいだ、私の頭の中も大騒ぎでした。
 私、レジカウンターに向けてノーパンのお尻をわざと見せちゃっている・・・
 見知らぬ人たちに注目されていることを承知の上で、破廉恥なことをしている・・・
 剥き出しマゾマンコまで丸出しで・・・
 私のお尻、どんなふうに視えているのだろう・・・
 本当に、正真正銘の露出狂になっちゃったんだ・・・
 でも、気持ちいい・・・

 考えてみれば、公共の場で自らすすんで、まったく面識の無い人たちに自分の恥ずかしい箇所を見せつけるような行為をするのは、生まれて初めてのことでした。
 
 それまででも、同じような状況を味わったことはあります。
 神社やファミレス、デパートの屋上や試着室、営業中のセレクトショップなどで、キワドイ格好になったことが何度もありました。
 だけどそれらの体験では、マゾですからもちろん、そんな状況にゾクゾク感じてはいましたが、生来の臆病さからくる、やっぱり不特定多数の人には視られたくない、公衆の面前でそんな、はしたな過ぎる姿は見せたくない、という健全な羞恥心のほうが、いつも大きく勝っていました。

 今回、決定的に違っていたのは自分自身の意識でした。
 レジにお尻を突き出して500円玉を拾う、という動作をしているあいだ中、上に書いたように頭の中がパニックになりつつも、同時に心の中でずっと、視てください、視て呆れて、蔑んでください、私はこんな行為をして悦ぶヘンタイ女なんです、もっと良く視て、って唱えつづけていたのです。
 これまで無理矢理抑えつけていた自分の欲求に正直になったことで、それまでとは違った種類の、凄まじい性的高揚を感じていました。

 実際に何人くらいの方々が私のお尻を視てくださったかは、振り向かなかったのでわかりません。
 でも、空調の効いた少しヒンヤリとした外気にさらされた裸のお尻に、いくつもの粘り付くような視線を感じていました。
 
 その視線たちが、お尻や性器の穴を蹂躙するように突き刺さり、私の内面までもが犯され、陵辱されているように感じていました。
 500円玉を拾う直前には、ゆっくり拾いなさい、一秒でも長くみなさまに直子のいやらしい姿を視姦していただけるように、という、お姉さまからではなく、私自身からの内なる命令の声が聞こえていました。

 からだをまっすぐに直し、500円玉を手渡すためにお姉さまに顔を向けました。
 お姉さまは、少し唖然としたお顔をされていましたが、私が500円玉を握った右手をゆっくり差し出すと、唇の両端をキュッと上げて、すっごく妖艶な微笑を見せてくださいました。
 その笑顔で、私の恥辱は報われたような気持ちになりました。

 何度も同じことを書いてしまって申し訳ないのですが、私がこんなに大胆に自分の性癖嗜好を素直に曝け出せるのは、偏にお姉さまのおかげでした。
 お姉さまがご一緒してくださるからこそ、今までなら怖くて尻込みしてしまう大胆な行為が出来るのです。

 お姉さまは、大きなレジ袋を左手で持ち、空いている右手で私の右手を500円玉ごと握ると踵を返し、そのまま無言でスタスタとスーパーの出口のほうへ歩き始めました。
 右手を引っ張られる格好の私も、左手に大きなレジ袋を持って、よたよたと着いていきます。
 足を交互に動かすたびに裾が割れ、白い素肌がチラチラ覗きました。

 スーパーの自動ドアを抜け、灯りが届かない大きな木陰のところまで歩いて立ち止まりました。
 お外はすっかり夜。
 人影は、ビル周辺の明るいところにチラホラと見えるだけ。

「直子って、本当にからだが柔らかいのね」
 暗闇で見つめ合ったお姉さまからの第一声は、そんな拍子抜けするようなものでした。
「小銭を拾うとき、完璧な立位体前屈だったじゃない。膝をまったく曲げないで、手のひらを床にべったり着けて」
「そ、そうでしたか?」
 暗くて表情がよく見えないお姉さまに、そんな間の抜けたお返事しか出来ませんでした。

「さあ、あとは車に戻って、愛しの我が家へ一直線。だけどこの荷物、重いわね。ちょっと買いすぎちゃったかな」
 お姉さまが持っていたレジ袋を舗道に置きました。
 いったん右手を解いて500円玉をお姉さまがスーツのポケットに突っ込んでから、再びつなぎ直しました。

「そのワンピの裾、ボタン留め直さないでいわよね?駐車場まですぐだし」
「あ、えっと・・・」
「暗いし、人通りも無さそうだし、そのまま行きましょう」
「も、もしも私が、ボタンを留めさせてください、ってお願いしたら、お姉さまは許可してくださいますか?」
「うーん・・・許可しない」
 お姉さまのお声に、少し笑いが混ざっています。
「それでしたら、このままでいです・・・」

「あっ、直子、そうやってあたしに責任をなすりつけようとしているでしょう?何か起きたら、あたしの命令のせいだって」
 今度は、お姉さまのからかうようなイジワル声。
「いえ、そうではなくて、何て言えばいいか、私はお姉さまがお望みになること、悦ばれることを、したいだけなんです・・・」
 お答えしながら、なぜだか泣き出しちゃいそうな気持ちになっていました。

「ふーん。さっきのスーパーから直子、なんだか雰囲気が変わったわね。大胆になったというか、目覚めちゃったというか・・・」
 お姉さまのお言葉が少しのあいだ途切れ、私も無言でうつむいていました。
 つないだ手と手が、どちらのせいなのか、ジンワリと汗ばんでいました。

「おーけー。それじゃあこのまま行きましょう。そのお買物袋を左右にひとつづつ持ちなさい。ちょっと重いけれど、直子はあたしの使用人なのだから」
 私の手を離したお姉さまのお言葉に、冷たい響きが戻りました。

「わかっているとは思うけれど、両手に荷物を持ったら、ワンピの裾を押さえることは出来ないわよ?」
「はい。わかっています・・・」
「前から誰か来ても、隠すことは出来ないのよ?それでもいいのね?」
「・・・はい」
「つまり直子は、誰とすれ違うかわからない夜道を、剥き出しマゾマンコが覗いてしまう格好で歩きたいのね?」
「・・・はい」
「それは、私の命令だから?それとも直子がそうしたいから?」
「そ、それは、私がそうしたいから、です・・・」
 お答えしたとき、今日何度目かの快感電流がからだをつらぬきました。

 木陰を出て、暗い舗道を歩き始めました。
 両手に大きなレジ袋をぶら下げた私の左隣にお姉さま。
 先に立って私を隠してくださる気もないようです。
 
 うつむいた視線の先に、始終自分の下半身の白い肌がチラチラ見え隠れしています。
 こんなに無防備な、少し風でも吹いたらたちまち裸の下半身剥き出しになってしまうような服装で、夜の街を歩いている私。
 荷物の重さなんて感じる暇もありませんでした。

 歩き始めてすぐ、ビル側の明るい舗道を行くサラリーマン風の男性とすれ違いました。
 お姉さまを挟んで、その人との距離は2メートルくらい。
 私のワンピースのハタハタひるがえる裾を、明らかに凝視しながら近づいてきて、行き過ぎていきました。
 暗いせいなのか、今ひとつ、視られた、という実感が湧いてこなくて、一度振り向いたときに、その人も振り返っていてドッキーン!
 自分が今していることのヘンタイ性を思い知りました。
 
 ビルの敷地外にある歩道から聞こえてくるヒールの音や話し声。
 その向こうにある車道を行く車のヘッドライトが、私を横からぼんやり照らし出して走り去ります。
 そんな些細なことのひとつひとつに、背徳感を感じてしまいます。

 今度はOLさんらしき二人連れ。
 さっきの男性より近い距離ですれ違いました。
 暗い中でも、おふたりが私の下半身の異常に気がついているのがわかりました、
 私は一層身を縮こませながらも、必死に何でもない風を装います。
 私をチラチラ窺がいながら、ヒソヒソ耳打ちし合う、その内容が聞こえてくるようでした。
 お姉さまは私の横をゆっくり歩きながら、そんな私をじーっと視ていらっしゃいました。

 やっとたどりついた駐車場入口。
 しかしながら、駐車場内は夜になると、照明のせいで舗道よりもずいぶん明るく感じます。
 駐車場に向かう坂道に入ると弱い向かい風が吹いていました。

 「やんっ!」
 下り坂に一歩踏み出すと裾が風に煽られ、始終開きっ放しになってしまいました。
 お尻のほうへとマントのようにひるがえるワンピースの裾。
 全開剥き出し状態の私の下半身。
 お姉さまは振り向いたまま、私のそれをずっと視ながら下りていかれます。
 強烈な恥ずかしさに全身が包まれました。
 幸か不幸か、まわりに人影はまったくありませんでした。

 坂道を下りきると風は弱まり、裾が戻りました。
 静まり返った駐車場を進みます。
 さっきの坂道のあいだ数秒間の出来事に、胸のドキドキが収まりません。
 お姉さま以外に、その姿を視てくださる人がいなかったのを、残念と感じていました。

 お姉さまの車の助手席に乗り込んだとき、緊張が一気に解けました。
 からだ中が今更のようにカッカと火照り、心臓が早鐘のように脈打っています。
「あまり視てくれる人がいなくて、つまらなかったのじゃない?」
 ずっと無言だったお姉さまがポツンとおっしゃった一言で、私の欲望が爆ぜ迸りました。

 運転席のお姉さまに飛びついて、しがみつきました。
「私をめちゃくちゃにしてください、お姉さま!ぶって、虐めて、蔑んで、どうか無茶苦茶にしてください!」
「私、このままでは気がヘンになってしまいます!どうか、見捨てないでくださいっ」
 半泣き声で叫んで、やみくもにお姉さまの唇を求めました。

 お姉さまは、黙ってされるがままになっていました。
 唇を重ねても、お姉さまからの積極的な反応は無く、ただやんわりと私の背中に両腕を回してくれただけでした。
 それでも、お姉さまの体温を感じているうちに、私の激情がゆっくりと収まっていきました。
 しばらくそうして抱き合った後、どちらからともなく、ゆっくりとからだが離れました。

「もう少し辛抱していてね。あたしの部屋はもうすぐそこだから」
 お姉さまがシートベルトを締めながら、何も無かったようにそうおっしゃった後、不意に左手を伸ばし、私の股間にあてがいました。
「はぅっ!」
「グッショリ濡れているのにすっごく熱くなってる」
 私の耳奥に蕩けるようなため息を吹き込むお姉さま。
「安心なさい。今日の直子は、すごく可愛かったわ」
 私の股間で汚れた手のひらをペロッと舐めて、おもむろにエンジンをかけました。
 ブルンッ!
 同時に、性懲りも無く再び燃え上がる私のからだ。

 それからお姉さまのお家の玄関にたどり着くまでのことは、ほとんど憶えていません。
 どこをどう走り、どこで車を停め、お姉さまがお住まいのマンションがどんな形で、どういう風にお部屋までたどりついたのか。
 憶えているのは、そんなに時間がかからなかったことと、お姉さまがずっと無言だったことだけでした。

 気がついたら、お姉さまのお部屋の玄関口で、きつく抱き合っていました。
 お互いの唇を舌で貪り合い、右手を互いの股間に伸ばし合っていました。
 私はすでに全裸で、お姉さまはスーツのまま。
 お姉さまの股間は、パンストの上からでもわかるくらい濡れて、熱くなっていました。

「あうっ!お姉さまぁ、もっとぉ」
 お姉さまの右手が私のマゾマンコに深く侵入して、クチュクチュ音をたています。
 私も負けじとお姉さまのパンストを擦り上げます。
「あふうぅ」
 お姉さまの色っぽいお声。

 玄関ドア側に立っていたお姉さまにじりじりとにじり寄られ、しっかり抱き合ったままお相撲でもしているかのような形で、玄関ホールの廊下にあがりました。
 運転用のローファーを穿いたままのお姉さまも、土足であがってきました。

 そのまま抱き合った形でドアを開け、電気も点けず薄暗いリビングらしきお部屋まで入ってから、お姉さまが私に体重をかけてきて、私はそのフローリングの床へ仰向けに押し倒されました。
 私の腰の上に騎乗位の体勢になったお姉さまが、もどかしそうに着衣を脱いでいきます。
 上着を乱暴に脱ぎ捨て、ブラウスのボタンを手際良く外し、サファイア色のブラジャーも床に投げ捨てました。
 仰向けになっても私の両手はお姉さまを求め、腕を伸ばしてお姉さまの股間を擦りながら、もう片方の手でスカートのフックを外そうとしていました。

 お姉さまが上半身裸になると、片時もからだを離したくないふたりは、まずお姉さまの上半身が私に覆いかぶさってきてキスを再開。
 そのあいだに私がお姉さまの下半身を脱がせにかかります。
 両手でスカートを剥ぎ取り、つづいてパンストごとショーツをずり下ろしました。
 膝くらいまで脱げた後は、お姉さまが自らの手で足首まで一気に下ろし、靴もろとも脱ぎ捨てて全裸。
 すぐに両脚を絡ませ、きつくきつく抱き合いました。

 フローリングを上に下になって転げまわりながら、互いを精一杯悦ばせました。
 唇を貪り、乳房を揉みしだき、乳首を噛み、指を潜り込ませ、肉芽を擦り、全身を舐めまわして、指を絡ませて・・・

「あぁ、もっと、もっとぉ」
「ううっ、いいわっ、そこ、そこぉぉ」
「つよく、もっとつよくぅぅ」
「あ、イっちゃう、イっちゃいますぅぅぅぅ」
「イきそう、イキそう、そこ、そこよ、もっと、もっとぉ、イクぅぅぅぅ」

 お姉さまと私の、汗とよだれといろんな体液がひとつに混じり合い、甘酸っぱい官能的な匂いに包まれます。
 肌が密着しているだけで感じる至福感。
 お姉さまがエロっぽく喘いでくださるたびに感じる満足感。
 何度イってもイキ足りないくらいの渇望感。
 お姉さまのお部屋に入って、しばらくのあいだ、ふたりはまさしくケダモノでした。

「はあ、はあ、はあ・・・」
 フローリングにぐったり横たわっていたら、不意にパッと電気が点きました。
 思った以上に広々とした空間が目の前に広がりました。

「はあ、はあ、こんなはずじゃなかったんだけどなあ・・・」
 お声のしたほうを向くと、お姉さまが汗まみれの全裸仁王立ちで、明るい光に照らされていました。
「直子をこの部屋に迎え入れるときは、もっとこう、いろいろ恥ずかしいことをさせて、なんて計画していたのだけれど、全部パーになっちゃった」
 冷たいお水の入ったグラスを差し出してくださるお姉さま。
 そのとき飲んだお水の美味しさは、忘れることが出来ません。

「まあ、仕方ないわね。あたしもどうにも我慢出来なくなっちゃったのだから」
 お姉さまが、まだ寝そべったままの私の傍らにしゃがみ込まれました。
 目の前に濡れそぼったお姉さまのかっこいい逆三角形ヘア。
 うっとり見惚れてしまう私。

「スッキリしたからよしとしましょう。それでここから、直子の全裸家政婦の本番開始ね。家事手伝い、がんばってよ?」
 お尻を軽くパチンと叩かれました。
「あ、はい!」
 あわてて起き上がり、床に正座の形になりました。

「とりあえずあたしは、ゆっくりシャワーを浴びてくるから、そのあいだに今の後始末と、軽く何か食べるものを用意しておいて。さっき買った冷凍のピザでいいわ」
「はい」
「シャワー浴びて一息ついたら、すぐに寝るつもりだから、直子は悪いけれどその後にシャワーしてくれる?」
「はい。もちろん大丈夫です」
「ここでもダイニングでも、戸棚や物入れは勝手に自由に開けて、中のものを自由に使っていいからね。見られて困るようなものは入っていないから」
「わかりました」
「エアコンも好きに調節して。風邪引かないようにね。それじゃあ頼んだわよ」

 立ち上がったお姉さまが、リビングの端にある扉のほうへと全裸のまま歩いて行かれました。


オートクチュールのはずなのに 10